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特表2023-538859レボドパ送達のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】レボドパ送達のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230905BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230905BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P25/16
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/18
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509769
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 US2021048218
(87)【国際公開番号】W WO2022047298
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/072,661
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508150854
【氏名又は名称】パーデュー、ファーマ、リミテッド、パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ハイヨン フー
(72)【発明者】
【氏名】シェト,マンジュナス,エス.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA22
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC42
4C076DD51
4C076FF34
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZC412
4C084ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA48
4C206MA79
4C206NA13
4C206ZA02
(57)【要約】
特定の実施形態では、レボドパまたはその薬学的に許容される塩及び正荷電アミノ酸を含む医薬組成物を、それを必要とする患者の鼻の嗅部に投与することを含む、パーキンソン病を処置する方法が開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病を処置する方法であって、処置を必要とする患者の鼻の嗅部に、レボドパまたはその薬学的に許容される塩、及び正荷電アミノ酸を含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記組成物が、さらに、経鼻的に許容されるビヒクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経鼻的に許容されるビヒクルが、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲル、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩が、前記経鼻的に許容されるビヒクルに溶解または懸濁している、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記正荷電アミノ酸が、前記経鼻的に許容されるビヒクル中に溶解または懸濁している、請求項2~5のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物が、前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩、及び前記正荷電アミノ酸を含む固体粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記正荷電アミノ酸が、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記正荷電アミノ酸が、アルギニンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物が、デカルボキシラーゼ阻害剤を含まない、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物のpH値が、約6~約9である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物のpH値が、約6.5~約8.5である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記医薬組成物のpH値が、約7~約8である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物のpH値が、約7.5である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬組成物が、投与中に前記患者の嗅神経に接触する、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩が、4mg/mLを超える濃度で前記医薬組成物中に存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩が、6mg/mLを超える濃度で前記医薬組成物中に存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物中に存在するレボドパまたはその薬学的に許容される塩の前記濃度が、約6mg/mL~約10mg/mLである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物中のレボドパまたはその薬学的に許容される塩の前記濃度が、約7mg/mL~約9mg/mLである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬組成物中のレボドパまたはその薬学的に許容される塩の前記濃度が、約8mg/mLである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記正荷電アミノ酸の前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩に対する比(w/w)が、約2:1超、約5:1超、約8:1超、約10:1超、または約12:1超である、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
さらに、第2の量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩及びデカルボキシラーゼ阻害剤を経口投与することを含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記経鼻投与が、前記経口投与と関連する、それを必要とする前記患者のオフピリオドを処置するものである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、治療的有効量のレボドパまたはその代謝産物を、前記患者の脳に提供する、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、治療的有効量のレボドパを、前記患者の前記脳に提供する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、治療的有効量のドーパミンを、前記患者の前記脳に提供する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記脳内のドーパミンの最大濃度の全身血漿中のドーパミンの最大濃度に対する比が、10,000:1超;1,000:1超;10:1超;50:1超、または約100:1超である、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記脳内のドーパミンの最大濃度の全身血漿中のドーパミンの最大濃度に対する前記比が、10,000:1超である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記脳内のドーパミンの最大濃度の全身血漿中のドーパミンの最大濃度に対する前記比が、1,000:1超である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物中の、前記正荷電アミノ酸の前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩に対するモル比が、2:1超、約5:1超、または約10:1超である、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物が、前記鼻の前記嗅部に前記組成物を送達するように適合させた経鼻デバイスから投与される、請求項1~29のいずれか記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物が、1日1回投与される、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物が、1日2回投与される、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記医薬組成物が、1日3回投与される、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記医薬組成物が、1日4回投与される、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩、正荷電アミノ酸、及び薬学的に許容される経鼻ビヒクルを含み、前記医薬組成物のpH値が、約7~約8である、医薬組成物。
【請求項36】
治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩、正荷電アミノ酸、及び薬学的に許容される経鼻ビヒクルを含み、前記正荷電アミノ酸の前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩に対するモル比が、2:1より大きい、医薬組成物。
【請求項37】
ヒトの鼻の嗅部にペイロードを送達するように適合させたデバイスと、レボドパまたはその薬学的に許容される塩、正荷電アミノ酸、及び薬学的に許容される経鼻ビヒクルを含む経鼻組成物とを含む、システム。
【請求項38】
レボドパ療法を必要とすると同定された患者に、レボドパまたはその薬学的に許容される塩を送達する方法であって、
前記患者の鼻の嗅部に、レボドパまたはその薬学的に許容される塩及び正荷電アミノ酸を含む医薬組成物を投与することを含み、
前記方法が、治療的有効量の前記レボドパまたはその薬学的に許容される塩を前記患者の脳組織に選択的に送達する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月31日に出願された米国仮出願第63/072,661号に対する優先権を主張し、この内容全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、経鼻投与に適した医薬組成物に関するものである。特定の実施形態では、本発明は、経鼻投与により神経系障害(例えば、パーキンソン病)を処置するためのレボドパ(すなわち、L-Dopa)またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病は、患者の動きに影響を与える進行性の神経系障害である。パーキンソン病では、脳のニューロンが、徐々に分解または死滅する。症状の多くは、脳内の化学伝達物質であるドーパミンを生成するニューロンの喪失によるものであると考えられる。(Parkinson’s Disease,Mayfield Brain & Spine,p.1,April 2018)。ドーパミンレベルが減少すると、異常な脳活動が引き起こされ、運動障害及びパーキンソン病の他の症状がもたらされる。症状は徐々に始まり、場合により、片手だけでほとんど目立たない振戦から始まる。振戦は一般的であるが、この障害は、通常、こわばりまたは動きの鈍化も引き起こす。パーキンソン病を現時点では治癒させることができないが、薬物処置が症状を大幅に改善し得る。
【0004】
レボドパは50年以上前にパーキンソン病を処置するために承認され、今日、依然として、主要な処置である。レボドパ(「L-Dopa」としても既知)は、ドーパミン作動性抗パーキンソン病薬と呼ばれるクラスの治療薬であり、脳内でドーパミンに変換されることにより作用する。レボドパは、一般に、脳外でドーパミンに変換された用量の割合を制限し、それが脳に到達する前に分解されるのを防ぐために、カルビドパ等のデカルボキシラーゼ阻害剤と共に同時投与される。経口摂取の場合、レボドパの吸収は、小腸上部で生じ、レボドパの薬理学的活性は、好ましくない吸収動態により悪化する。
【0005】
パーキンソン病を処置する方法、及びレボドパの標準的な経口療法の好ましくない吸収動態を回避する対応する医薬組成物に対する当該技術分野にニーズがある。
【0006】
発明の目的及び概要
本発明の特定の実施形態の目的は、パーキンソン病を処置するための医薬組成物を提供することである。
【0007】
本発明の特定の実施形態の目的は、本開示の医薬組成物の経鼻投与によりパーキンソン病を処置する方法を提供することである。
【0008】
本発明の特定の実施形態の目的は、経口レボドパ療法に伴う好ましくない吸収動態を回避する医薬組成物及びその方法を提供することである。
【0009】
本発明の特定の実施形態の目的は、本明細書に開示される医薬組成物を含有する経鼻投与デバイスを含むシステムを提供することである。
【0010】
本発明の特定の実施形態の目的は、本明細書に開示される医薬組成物及びシステムを製造する方法を提供することである。
【0011】
上記の目的及び他の目的は、本発明により達成され得、特定の実施形態では、これは、パーキンソン病を処置する方法に関するものであり、この方法は、それを必要とする患者の鼻の嗅部に、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの正荷電アミノ酸を含む医薬組成物を投与することを含む。特定の実施形態では、レボドパ及び正荷電アミノ酸は複合体を形成する。
【0012】
特定の実施形態では、本発明は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩、正荷電アミノ酸、及び薬学的に許容される経鼻ビヒクルを含む医薬組成物に関するものであり、医薬組成物のpH値は約7~約8である。
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩、正荷電アミノ酸、及び薬学的に許容される経鼻ビヒクルを含む医薬組成物に関するものである。特定の実施形態では、正荷電アミノ酸のレボドパまたはその薬学的に許容される塩に対するモル比は、2:1超である。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、ヒトの鼻の嗅部にペイロードを送達するように適合させたデバイス、及び経鼻組成物を含むシステムに関するものであり、経鼻組成物は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩、少なくとも1つの正荷電アミノ酸、及び薬学的に許容される経鼻ビヒクルを含む。
【0015】
特定の実施形態では、本発明は、レボドパ療法を必要とすると同定された患者に、レボドパまたはその薬学的に許容される塩を送達する方法に関し、方法は、レボドパまたはその薬学的に許容される塩及び正荷電アミノ酸を含む医薬組成物を患者(例えば、ヒト)の鼻の嗅部に投与することを含み、該方法は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩を患者の脳組織に選択的に送達する。
【0016】
特定の実施形態では、本発明は、レボドパまたはその薬学的に許容される塩、正荷電アミノ酸、及び経鼻的に許容されるビヒクルを任意の順序で組み合わせることを含む、本明細書に開示される医薬組成物を製造するためのプロセスに関するものである。
【0017】
特定の実施形態では、本発明は、ヒトの鼻の嗅部にペイロードを送達するように適合させたデバイス内に、本明細書に開示される医薬組成物を含有することを含むシステムを製造するためのプロセスに関するものである。
【0018】
本発明の上記及び他の特徴、それらの性質、ならびに様々な利点は、添付の図面と併せた以下の詳細な説明の考察後に、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】雄のSprague-Dawleyラットにおける、レボドパ(1.2mg/kg)及び10%のアルギニンの鼻腔内投与後のレボドパの個別の血漿中濃度を示す。
図2】雄のSprague-Dawleyラットにおける、レボドパ(1.2mg/kg)及び10%のアルギニンの鼻腔内投与後のレボドパの平均血漿中濃度を示す。
図3】雄のSprague-Dawleyラットにおける、レボドパ(1.2mg/kg)及び10%のアルギニンの鼻腔内投与後のレボドパの平均血漿中濃度を示す。
図4】雄のSprague-Dawleyラットにおける、レボドパ(1.2mg/kg)及び10%のアルギニンの鼻腔内投与後のドーパミンの平均脳組織中濃度を示す。
図5】雄のSprague-Dawleyラットにおける、レボドパ(2.4mg/kg)及び10%のアルギニンの鼻腔内投与後のレボドパの平均血漿中濃度を示す。
図6】雄のSprague-Dawleyラットにおける、レボドパ(2.4mg/kg)及び10%のアルギニンの鼻腔内投与後のレボドパの平均脳組織中濃度を示す。
図7】雄のSprague-Dawleyラットにおける、10%のアルギニンを伴うレボドパ(3.6mg/kg)の鼻腔内投与後のレボドパの平均血漿中濃度を示す。
図8】雄のSprague-Dawleyラットにおける、10%のアルギニンを伴うレボドパ(3.6mg/kg)の鼻腔内投与後のレボドパの平均脳組織中濃度を示す。
図9】雄のSprague-Dawleyラットに5%のアルギニンを伴うレボドパ(2.4mg/kg)の鼻腔内投与後のレボドパの平均血漿中濃度を示す。
【0020】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈で特に明確に指示されない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「賦形剤」への言及には、単一の賦形剤及び2つ以上の異なる賦形剤の混合物等が含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、測定された量または時間との関連における用語「約」とは、測定を行い、測定の目的に見合ったレベルの注意を払う際に当業者によって予測されるような、その測定された量または時間の正常な変動を指す。特定の実施形態では、「約」という用語には、「約10」には9~11が含まれるか、または「約1時間」には54分~66分が含まれるように、列挙された数±10%が含まれる。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「活性薬剤」とは、治療効果、予防効果、または他の意図される効果を生み出すことが意図される任意の物質を指し、それを目的として政府機関により承認されているか否かは問わない。特定の薬剤に関するこの用語には、薬学的に活性な薬剤、ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び結晶形全てが含まれ、塩、溶媒和物、及び結晶形は、薬学的に活性である。
【0023】
本明細書で使用される場合、「治療上有効な」及び「有効量」という用語は、所望の治療結果を得るために必要な、活性薬剤の量または投与速度を指す。
【0024】
「患者」という用語は、処置の必要性を示唆する特定の症状(複数可)の臨床症状を示しているか、ある状態に対して予防的(preventatively)もしくは予防的(prophylactically)に処置されるか、または処置されるべき状態と診断されている対象(好ましくは、ヒト)を意味する。
【0025】
「対象」という用語は、「患者」という用語の定義を含み、「健康な対象」という用語を含み、全ての点または特定の状態に関して完全に正常な個体(例えば、ヒト)を指す。
【0026】
「の処置」及び「処置すること」という用語には、状態の重症度を軽減するための活性薬剤(複数可)の投与が含まれる。
【0027】
「の予防」及び「予防すること」という用語には、活性薬剤の予防的投与による状態の発症の回避または遅延が含まれる。
【0028】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示のない限り、単に、範囲内に入るそれぞれ別々の値を個別に参照する簡略な方法として役立つことを意図しており、それぞれ別々の値は、本明細書で個々に列挙されるように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法は全て、本明細書で別途指示されない限り、または別途文脈と明らかに矛盾しない限り、あらゆる好適な順序で実施可能である。本明細書で記載されるあらゆる例、または例示的な言い回し(例えば、「等の」)の使用は、特定の材料及び方法を明確にすることのみを意図しており、範囲に制限を設けるものではない。本明細書内のいかなる言語も、特許請求されていない任意の要素を、開示の材料及び方法の実施に不可欠な要素として示していると解釈されるべきではない。
【0029】
本明細書で使用される「同時に(concurrently)」という用語は、ある薬剤の用量が別の薬剤の投与間隔の終了前に投与されることを意味する。例えば、特定の投与間隔を有する経鼻レボドパの用量は、経口レボドパの投与間隔内に経鼻投与が投与される場合、経口レボドパと同時に投与されると見なされる。
【0030】
本明細書で使用される「同時に(simultaneously)」という用語は、薬剤が同じもしくは異なる投与経路を介して別々に投与されるか、または単一の医薬組成物もしくは剤形で投与されるかにかかわらず、ある薬剤の用量が別の薬剤とほぼ同時に投与されることを意味する。例えば、経鼻レボドパの用量は、経口レボドパの用量とは別々ではあるが同時に投与され得る。
【0031】
本明細書で使用される「逐次的に」という用語は、ある薬剤の用量が最初に投与され、その後、同じまたは異なる薬剤の別の用量が2番目に投与されることを意味する。例えば、経口レボドパの用量が最初に投与され得、その後、経鼻レボドパの用量を次に投与され得る。第2の薬剤のその後の投与は、第1の薬剤の投与間隔の内側または外側であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の特定の実施形態により、レボドパ医薬組成物の経鼻投与により患者のパーキンソン病の症状を管理する方法が提供される。特定の実施形態では、投与は、患者の鼻の嗅部に向けられ、したがって、患者の脳に直接レボドパを送達するための経路を提供し、そこで、レポドバがドーパミンに代謝される。特定の実施形態では、本発明の方法によるレボドパの全身送達は、最小限であるか、または検出不可能であり、デカルボキシラーゼ阻害剤を同時投与する必要がない。但し、デカルボキシラーゼ阻害剤の同時投与は、本発明の特定の実施形態において企図される。
【0033】
特定の実施形態では、本発明は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩及び少なくとも1つの正荷電アミノ酸を含む医薬組成物を、それを必要とする対象または患者の鼻の嗅部に投与することを含む、パーキンソン病の処置方法に関するものである。特定の実施形態では、医薬組成物は、投与中に対象または患者の嗅神経と接触する。
【0034】
特定の実施形態では、本発明は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩及び正荷電アミノ酸を含む医薬組成物に関するものであり、医薬組成物のpH値は約7~約8である。
【0035】
特定の実施形態では、本発明は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩及び正荷電アミノ酸を含む医薬組成物に関するものであり、正荷電アミノ酸のレボドパまたはその薬学的に許容される塩に対するモル比は、約2:1超である。
【0036】
特定の実施形態では、本発明は、ヒトの鼻の嗅部にペイロードを送達するように適合させたデバイスと、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩、及び正荷電アミノ酸を含む経鼻組成物と、を含むシステムに関するものである。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、さらに、経鼻的に許容されるビヒクルを含む。ビヒクルは、例えば、水溶液、有機溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲル、またはそれらの組み合わせであり得る。特定の実施形態では、ビヒクルは、約50%超の水、約60%超の水、約75%超の水、約90%超の水、または約95%超の水を含有する水溶液である。特定の実施形態では、ビヒクルは、生理食塩水である。
【0038】
特定の実施形態では、レボドパまたはその薬学的に許容される塩は、経鼻的に許容されるビヒクルに溶解または部分的に溶解している。他の実施形態では、レボドパまたはその薬学的に許容される塩(複数可)は、経鼻的に許容されるビヒクル中に懸濁または部分的に懸濁している。懸濁液は、均一または不均一のいずれかである可能性があった。
【0039】
他の実施形態では、正荷電アミノ酸は、経鼻的に許容されるビヒクルに溶解または部分的に溶解している。他の実施形態では、正荷電アミノ酸は、経鼻的に許容されるビヒクル中に懸濁または部分的に懸濁している。
【0040】
特定の実施形態では、医薬組成物は、レボドパ及び正荷電アミノ酸を含む固体粒子を含み、液体ビヒクルなしで(例えば、乾燥粉末として)投与される。そのような実施形態では、固体粒子は、ポリマー(例えば、ポリ乳酸グリコール酸)を含む賦形剤を含んでもよい。
【0041】
特定の実施形態では、正荷電アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、正荷電アミノ酸は、アルギニン(L-アルギニンとしても既知)を含む。
【0042】
特定の実施形態では、医薬組成物は、デカルボキシラーゼ阻害剤(例えば、カルビドパ)を含まない。特定の実施形態では、組成物は、全身血漿に送達される最小量のレボドパがあるので、デカルボキシラーゼ阻害剤を含まない。
【0043】
他の実施形態では、本発明の医薬組成物には、デカルボキシラーゼ阻害剤(例えば、カルビドパ)が含まれる。デカルボキシラーゼ阻害剤を、レボドパと同じ経路または異なる経路で投与することができる。例えば、デカルボキシラーゼ阻害剤を経口投与することができる。
【0044】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは、約6~約9;約6.5~約8.5;約7~約8;または約7.5である。
【0045】
特定の実施形態では、レボドパまたはその薬学的に許容される塩は、約4mg/mL超;約6mg/mL超;約12mg/mL超;約15mg/mL超;約18mg/mL超;約22mg/mL超;約6mg/mL~約30mg/mL;約15mg/mL~約25mg/mL;約16mg/mL~約25mg/mL;約10mg/mL~約20mg/mL;約20mg/mL~約30mg/mL;約6mg/mL~約10mg/mL;約7mg/mL~約9mg/mL;または約8mg/mLの濃度で医薬組成物中に存在する。
【0046】
特定の実施形態では、レボドパまたはその薬学的に許容される塩は、約0.5mg/kg超;約1mg/kg超;約2mg/kg超;約3mg/kg超;約0.5mg/kg~約10mg/kg;約1mg/kg~約9mg/kg;約2mg/kg~約8mg/kg;約3mg/kg~約7mg/kg;約1mg/kg~約2mg/kg;約1mg/kg~約3mg/kg;約1mg/kg~約5mg/kg;約2mg/kg~約3mg/kg;約1mg/kg~約4mg/kg;または約1.2mg/kg、約2.4mg/kg、もしくは約3.6mg/kgの量で投与される。
【0047】
特定の実施形態では、正荷電アミノ酸(例えば、アルギニン)は、医薬組成物の重量に基づいて、約0.1%超;約0.5%超;約1%超;約5%超;約10%超;約20%超;約0.5%~約20%;1%~約10%;約5%~約15%;または約5%もしくは約10%の濃度で医薬組成物中に存在する。
【0048】
特定の実施形態では、正荷電アミノ酸のレボドパまたはその薬学的に許容される塩に対する比(w/w)は、約2:1超;約5:1超;約8:1超;約10:1超;約12:1超;約25:1超;または約50:1超である。他の実施形態では、正荷電アミノ酸のレボドパまたはその薬学的に許容される塩に対する比(w/w)は、約2:1~約50:1;約5:1~約20:1;約8:1~約18:1;約10:1~約15:1;または約12.5:1である。
【0049】
特定の実施形態では、本発明の経鼻投与される医薬組成物は、経口投与されるレボドパまたはその薬学的に許容される塩及びデカルボキシラーゼ阻害剤と同時に(concurrently)、同時に(simultaneously)、または逐次的に投与され、これを、経口または異なる経路によって投与することができる。特定の実施形態では、本発明の経鼻組成物は、それを必要とする患者において、経口レボドパ処置と関連する「オフピリオド」または突発症状を処置するために投与される。別の実施形態では、経鼻投与は、関連する経口レボドパ投与を伴わない唯一のレボドパ療法である。
【0050】
特定の実施形態では、本発明の方法は、治療的有効量のレボドパまたはその代謝物(例えば、ドーパミン)を患者の脳に提供する。
【0051】
特定の実施形態では、経鼻投与に起因するドーパミンの全身血漿レベルは、最小であり、すなわち、検出限界未満である。
【0052】
特定の実施形態では、本発明の方法は、約10:1超、約50:1超、約100:1超;約500:1超;約1,000:1超;約5,000:1超;または約10,000:1超の値の、脳内ドーパミン最大濃度の全身血漿中のドーパミン最大濃度に対する比を提供する。他の実施形態では、比は、約10:1~約10,000:1;約50:1~約5,000:または約100:1~約1,000:1である。
【0053】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物の用量は、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与され得る。他の実施形態では、用量は、72時間毎、48時間毎、24時間毎、12時間毎、8時間毎、6時間毎、または4時間毎に投与され得る。他の実施形態では、用量は、週1回、週2回、週3回、週4回、または週5回投与され得る。別の実施形態では、用量は、経口レボドパ療法の突発症状のために必要に応じて投与される。
【0054】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、鼻の嗅部に組成物を送達するように適合させた経鼻デバイスから投与される。いくつかの実施形態では、経鼻デバイスには、本明細書に開示される医薬組成物を収容するための適切な容器(例えば、ガラスまたはプラスチック製)が含まれ得る。デバイスは、経鼻スプレーアプリケーター、スクイーズボトル、ピペット付きスポイトボトル、噴射チューブ付きライニルカテーテル、または定量スプレーポンプであり得る。デバイスは、使い捨てであり得る、または複数回投与を実現し得る。本発明の特定の実施形態で使用することができる経鼻デバイスの例は、米国特許第10,507,295号に記載される。
【0055】
特定の実施形態では、本発明は、レボドパ療法を必要とすると同定された患者に、レボドパまたはその薬学的に許容される塩を送達する方法に関し、方法は、レボドパまたはその薬学的に許容される塩及び正荷電アミノ酸を含む医薬組成物を患者の鼻の嗅部に投与することを含み、該方法は、治療的有効量のレボドパまたはその薬学的に許容される塩を患者の脳組織に選択的に送達する。これらの実施形態では、方法は、それにより、患者のレボドパ療法で処置可能または管理可能な疾患または障害(例えば、パーキンソン病)を効果的に処置する。
【0056】
治療活性薬剤
本明細書に開示される送達システム及び医薬組成物には、レボドパまたはその薬学的に許容される塩が治療活性薬剤として含まれる。薬学的に許容される塩には、無機酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等;有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩等;スルホナート、例えば、メタンスルホナート、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート等;及び金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等;有機アミン塩、例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、治療上有効な薬剤は、レボドパ遊離塩基である。
【0057】
正荷電アミノ酸
本発明の正荷電アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン等、またはそれらの組み合わせであってよい。特定の実施形態では、正荷電アミノ酸は、アルギニン(すなわち、L-アルギニン)またはその誘導体を含む。特定の実施形態では、アルギニンは、アルギニングルタメートまたはアルギニンアルファケトグルタル酸として送達される。特定の実施形態では、本発明の組成物に組み込まれ得る他のアミノ酸には、正電荷(例えば、プロトン化)を有する天然及び合成アミノ酸化合物の両方が含まれる。
【0058】
薬学的に許容される賦形剤
本発明による医薬組成物は、経鼻投与に適した1つ以上の薬学的に許容されるビヒクル、担体、及び他の賦形剤を含んでもよい。可能な薬学的に許容されるビヒクル、担体、及び他の賦形剤の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association(6th Edition,2009 Publication)に記載され、これは、参照により本明細書に組み込まれる。経鼻製剤に適したビヒクル、担体、及び他の賦形剤には、抗酸化剤、緩衝剤、希釈剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、親水性ポリマー、追加の吸収もしくは浸透促進剤、防腐剤、浸透圧剤、等張化剤、pH調整剤、溶媒、共溶媒、増粘剤、ゲル化剤、懸濁剤、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書に開示される製剤のための好適な界面活性剤には、ポリソルベート80 NF、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書に開示される医薬組成物に好適な等張化剤には、デキストロース、ラクトース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、様々なポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルスターチ、グリシン等、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書に開示される製剤のための好適な懸濁剤には、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムNF、ポリアクリル酸、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、キサンタンガム等、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
適切な防腐剤には、フェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、またはベンゾエート、例えば、安息香酸ナトリウムが含まれる。
【実施例
【0063】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために記載されており、本明細書に記載され特許請求される本発明を具体的に限定するものと解釈されるべきではない。当業者らの技量の範囲内と考えられる、現在知られているかもしくは後に開発される任意もしくは全ての均等物の置換のような本発明の変形、及び製剤の変更または治療設計の軽微な変更は、本明細書に組み込まれる本発明の範囲内に入ると見なされるべきである。
【0064】
実施例1
製剤の調製
約0.9mLの滅菌水を、8mgのL-Dopa及び100mgのL-アルギニンの粉末混合物に添加することにより、8mg/mLのL-Dopa経鼻組成物を調製した。pH測定後、酢酸を使用して、溶液のpHを7.5に調整した。最後に、総量が1.0mLになるまで、水を添加した。
【0065】
投与溶液分析
測定された投与溶液濃度を表1に示す。投与溶液をラット血漿に希釈し、3分割して分析した。全ての濃度をmg/mLで表す。公称投与レベルを全ての計算で使用した。
【表1】
【0066】
定量的サンプル分析
血漿及び脳のサンプルを抽出し、以下に記載の方法を使用して分析した。
【0067】
分析ストック溶液の調製
分析ストック溶液(1.00mg/mLの遊離薬物)をDMSOで調製した。
【0068】
組織のホモジナイズ
脳のサンプルを、Virsonic100超音波ホモジナイザーでホモジナイズした。最初に、各脳のサンプルを計量し、次に、20:80のメタノール:水 2mLをサンプルの各グラムに添加した。次に、サンプルを氷上でホモジナイズし、分析まで凍結保存した。
【0069】
標準の調製
EDTAを抗凝固剤として含有するSprague-Dawleyラット血漿またはラット脳ホモジネート中で、標準を調製した。25%のメタ重硫化ナトリウムを用いて、10:1で血漿のサンプルを処理した。作業溶液を、50:50のアセトニトリル:水中で調製した。次に、作業溶液をマトリックスに添加し、最終濃度1000、500、250、100、50.0、20.0、10.0、及び5.00ng/mLの較正標準を作成した。標準を研究のサンプルと同様に処理した。
【0070】
サンプルの抽出
スナップキャップ微量遠心管で、血漿及び脳のサンプルを手動で抽出した。
【表2】
HPLC条件
装置:Waters Acquity UPLC
カラム:Waters Acquity BEH C18、100×2.1mm id、1.7μm
水性リザーバー(A):水中の0.1%のギ酸
有機リザーバー(B):100%のメタノール
勾配プログラム:
【表3】
流速:400μL/分
注入量:10μL
実行時間:4.00分
カラム温度:40℃
サンプル温度:8℃
強力なオートサンプラー洗浄:0.2%のギ酸を含む1:1:1(v:v:v)HO:MeCN:IPA
弱いオートサンプラー洗浄:水中の0.1%のギ酸
質量分析計の条件
装置:Waters Xevo TQ-S MS
インターフェース:エレクトロスプレー
モード:多重反応モニタリング(MRM)
コリジョンガス:0.41mL/分
脱溶媒温度:600℃
キャピラリー電圧:2.8kV
ネブライザーガス流量:7バール
【表4】
【0071】
L-Dopa及びドーパミンの個々の及び平均血漿濃度を表2、3、及び4に示す。L-Dopaまたはドーパミンのいずれかのデータをng/mLとして表す。脳組織中濃度を表5に示す。組織グラムあたりのL-Dopaまたはドーパミンのデータを、ngとして表す。定量限界を下回ったサンプルを、平均の計算には使用しなかった。血漿濃度対時間のデータを、図1図3にプロットする。脳組織中濃度対時間データを、図4にプロットする。
【0072】
データ分析
血漿及び脳組織中濃度の時間経過から、薬物動態パラメーターを計算し、表2、3、及び4に提示する。スパースサンプリングの有無にかかわらず非コンパートメントモデルを使用して、薬物動態パラメーターをPhoenix WinNonlin(v8.0)ソフトウェアで決定した。スパースサンプリングオプションは、各時点での3分割したサンプルの平均濃度を使用する。対象毎のサンプル数が限られているので、これを使用した。IN投与後の最大血漿濃度(Cmax)及び最大血漿濃度に達するまでの時間(tmax)をデータから観察した。最後の定量化可能なデータポイントまで計算し、該当する場合は無限大に外挿し、線形台形則を使用して、時間濃度曲線下の面積(AUC)を計算した。血漿及び脳の半減期(t1/2)を、0.693/最終排泄相の勾配から計算した。モーメント曲線下面積(AUMC)をAUCで除することにより、平均滞留時間(MRT)を計算した。薬物動態データ分析では、定量限界未満の任意のサンプルをゼロとして処理した。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0073】
結果の概要
本研究では、雄のSprague-Dawleyラットにおける、製剤(L-Dopa+アルギニン)の鼻腔内(IN)投与後の、レボドパ(L-Dopa)及びその代謝産物であるドーパミンの曝露を評価した。血液及び脳組織のサンプルを投与後2時間まで収集し、L-Dopa及びドーパミン(これらのいくつかは、内因性のものであってよい)の血漿及び脳内濃度をLC-MS/MSで測定した。スパースサンプリングの有無にかかわらず、Phoenix WinNonlin(v8.0)ソフトウェアを使用して、薬物動態パラメーターを決定した。
【0074】
L-Dopa(1.2mg/kg)+10%のアルギニンのIN投与後、連続サンプリング後のL-Dopaの最大血漿濃度(平均9.19±3.92ng/mL)を、投与の30分後~1時間後に観察した。連続サンプリング後のL-Dopaの平均総曝露量(AUClast)は、17.4時間*ng/mLであり、用量で正規化されたAUClastは、14.5時間*kg*ng/mL/mgであった。L-Dopa(1.2mg/kg)+10%のアルギニンのIN投与後、スパースサンプリング後の血漿中のL-Dopaの平均(±SE)Cmaxは、15.0±2.30ng/mLであり、tmaxは、30分であり、半減期を決定することができず、平均(±SE)用量正規化AUClastに基づく曝露は、16.2±2.30時間*kg*ng/mL/mgであった。脳組織中の全てのL-Dopa濃度は、定量限界未満であった。
【0075】
L-Dopa(1.2mg/kg)+10%のアルギニンのIN投与後、脳組織中のドーパミンの平均(±SE)Cmaxは、105.7±7.2ng/mLであった。血漿中の全てのドーパミン濃度は、定量限界未満であった。
【0076】
実施例2
製剤の調製
3つの異なる投与濃度を試験した:群(1)、L-Dopa(2.4mg/kg)+10%のアルギニン;群(2)、L-Dopa(3.6mg/kg)+10%のアルギニン;群(3)、L-Dopa(2.4mg/kg)+5%のアルギニン。群(1)の用量を調製するために、16mgのL-Dopa及び100mgのL-アルギニンの粉末混合物に約0.9mLの滅菌水を添加することにより、16mg/mLのL-Dopa経鼻組成物を調製した。pH測定後、酢酸を使用して、溶液のpHを7.5に調整した。最後に、総量が1.0mLになるまで、水を添加した。群(2)の用量を調製するために、群(1)について記載されたのと同様のステップを使用した。すなわち、24mgのL-Dopa及び100mgのL-アルギニンの粉末混合物に約0.9mLの滅菌水を添加することにより、24mg/mLのL-Dopa経鼻組成物を調製した。pH測定後、酢酸を使用して、溶液のpHを7.5に調整した。最後に、総量が1.0mLになるまで、水を添加した。群(3)の用量を、以下の通り調製した。16mgのL-Dopa及び50mgのL-アルギニンの粉末混合物に約0.9mLの滅菌水を添加することにより、16mg/mLのL-Dopa経鼻組成物を調製した。pH測定後、酢酸を使用して、溶液のpHを7.5に調整した。最後に、総量が1.0mLになるまで、水を添加した。
【0077】
研究設計
群(1)、(2)、及び(3)用に調製された投与量を使用した研究設計を表6に示す。
【表9】
【0078】
分析ストック溶液の調製
分析ストック溶液(1.00mg/mLの遊離薬物)をDMSOで調製した。
【0079】
組織のホモジナイズ
脳のサンプルを、Virsonic100超音波ホモジナイザーでホモジナイズした。最初に、各脳のサンプルを計量し、次に、20:80のメタノール:水 2mLをサンプルの各グラムに添加した。次に、サンプルを氷上でホモジナイズし、分析まで凍結保存した。
【0080】
標準の調製
EDTAを抗凝固剤として含有するSprague-Dawleyラット血漿またはラット脳ホモジネート中で、標準を調製した。25%のメタ重硫化ナトリウムを用いて、10:1で血漿のサンプルを処理した。作業溶液を、50:50のアセトニトリル:水中で調製した。次に、作業溶液をマトリックスに添加し、最終濃度1000、500、250、100、50.0、20.0、10.0、及び5.00ng/mLの較正標準を作成した。標準を研究のサンプルと同様に処理した。
【0081】
サンプルの抽出
スナップキャップ微量遠心管で、血漿及び脳のサンプルを手動で抽出した。サンプルを、実施例1に記載の通り分析した。
【0082】
結果を以下の表に提示する。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0083】
結果の概要
本研究では、雄のSprague-Dawleyラットにおける、製剤(L-Dopa+アルギニン)の鼻腔内(IN)投与後の、L-Dopa及びその代謝産物であるドーパミンの曝露を評価した。血液及び脳組織のサンプルを投与後8時間まで収集し、L-Dopa及びドーパミン(これらのいくつかは、内因性のものであってよい)の血漿及び脳内濃度をLC-MS/MSで測定した。スパースサンプリングの有無にかかわらず、Phoenix WinNonlin(v8.0)ソフトウェアを使用して、薬物動態パラメーターを決定した。
【0084】
L-Dopa(2.4及び3.6mg/kgのL-Dopa)+10%のアルギニンをそれぞれIN投与した後、ラットの脳組織で検出可能なレベルのドーパミンが観察された。10%のアルギニンと共に3.6mg/kgのL-Dopaを投与している群(2)のラットのラット脳ホモジネートでは、1時間でドーパミンレベル(155ng/mL)の有意な増加が観察された。ドーパミンのレベルが8時間以上検出可能であったことも留意された。
【0085】
上述の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、特定の詳細、例えば、特定の材料、プロセスパラメーター等が記載される。特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされ得る。「例」または「例示的」という語は、本明細書では、例(example)、例(instance)、または実例の役割を果たすことを意味するために使用される。「例」または「例示的」として本明細書に記載される任意の態様または設計は、必ずしも他の態様もしくは設計よりも好ましいかまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示的」という語の使用は、概念を具体的な方法で提示することを単に意図している。本出願で使用される場合、「または」という用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を意味することが意図される。すなわち、他に明記されているかまたは文脈から明らかでない限り、「XにはAまたはBが含まれる」は、自然の包括的な並べ替えのいずれも意味することを意図している。すなわち、XにはAが含まれる;XにはBが含まれる;またはXにはA及びBの両方が含まれる、という場合には、前述の例のいずれの下でも「Xには、AまたはBが含まれる」が満たされている。本明細書全体にわたる「実施形態」、「特定の実施形態」、または「一実施形態」への言及は、実施形態と関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な箇所の「実施形態」、「特定の実施形態」、または「一実施形態」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではなく、非限定的である。
【0086】
本発明は、その特定の例示的な実施形態を参照して説明されている。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で見なされるべきである。本明細書で示され記載されている変更に加え、本発明の様々な変更が当業者らには明らかとなり、それらは添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】