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▶ ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20230905BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20230905BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20230905BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230905BHJP
   C09D 181/06 20060101ALI20230905BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230905BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230905BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L81/06
C08G59/50
C09D163/00
C09D181/06
C09D7/63
C09D7/65
C08L51/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511794
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021046213
(87)【国際公開番号】W WO2022040125
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,335
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509282365
【氏名又は名称】ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド,デレク
(72)【発明者】
【氏名】ル,ドン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BC032
4J002BG052
4J002BJ002
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD081
4J002CG012
4J002CH022
4J002CH072
4J002CH092
4J002CL002
4J002CM042
4J002CN032
4J002FD010
4J002FD110
4J002GH01
4J002GM00
4J036AD08
4J036AF06
4J036AH07
4J036DC10
4J036FB03
4J036FB12
4J036FB13
4J036HA12
4J036JA01
4J038DB001
4J038DK012
4J038JB07
4J038KA03
4J038NA11
4J038NA12
4J038NA14
4J038PA19
4J038PB06
4J038PC02
(57)【要約】
本開示は、熱硬化性樹脂と、多段重合体及び熱可塑性強靭化剤を含む強靭化剤成分と、及びフェニルインダンジアミン硬化剤と、を含む、硬化性樹脂組成物を提供する。本硬化性樹脂組成物は、各種用途、例えば、産業用途、自動車用途、及び電子用途の、特に高温運転条件が関与するもののコーティングとして使用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱硬化性樹脂と、(b)多段重合体及び熱可塑性強靭化剤を含む強靭化剤成分と、並びに(c)フェニルインダンジアミン硬化剤と、を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、一官能性エポキシ樹脂、二官能性エポキシ樹脂、三官能性エポキシ樹脂、四官能性エポキシ樹脂、及びそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、さらに、4,4’-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチル-アニリン)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性強靭化剤は、ポリエーテルスルホンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記フェニルインダンジアミン硬化剤は、以下の構造を有する化合物であり
【化1】
式中、インダン環のアミノ基は、5位又は6位にあり、Rは、独立して、水素、ハロゲン、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、及びbは、独立して、1~4の整数である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
硬化性樹脂組成物であって、以下
(a)約50重量%~約95重量%の熱硬化性樹脂と、
(b)約1重量%~約15重量%の、多段重合体及び熱可塑性強靭化剤を含む強靭化剤成分と、並びに
(c)約5重量%~約50重量%のフェニルインダンジアミン硬化剤と、
を含み、前記重量%は、前記硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいている、
前記組成物。
【請求項8】
前記強靭化剤成分は、約5重量%~約10重量%の前記多段重合体と、及び約0.1重量%~約10重量%の前記熱可塑性強靭化剤と、を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記フェニルインダンジアミン硬化剤は、以下の構造を有する化合物であり
【化2】
式中、インダン環のアミノ基は、5位又は6位にあり、Rは、独立して、水素、ハロゲン、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、及びbは、独立して、1~4の整数である、
請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性強靭化剤は、ポリエーテルスルホンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物で少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項12】
前記基材は、金属配管である、請求項11に記載の基材。
【請求項13】
前記基材は、非金属である、請求項11に記載の基材。
【請求項14】
前記基材は、鋼管、構造用鋼、貯蔵タンク、弁、並びに石油ガス生産用導管及び保護管である、請求項11に記載の基材。
【請求項15】
以下の工程:
(a)請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を、基材の表面に塗布する工程と、及び
(b)前記硬化性樹脂組成物を80℃超の温度で加熱して、前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程と、
を含む、コーティングされた基材を形成するプロセス。
【請求項16】
前記基材は、金属配管である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記表面は、前記基材の外側表面である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記表面は、前記基材の内側表面である、請求項15に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願番号第63/066,335号、出願日2020年8月17日、の利益を主張する。この出願の全内容は明白に本明細書中参照として援用される。
【0002】
本開示は、概して、高いガラス転移温度、向上した靭性耐性(toughness resistance)、並びに優れた熱酸化耐性及び加水分解耐性を有する硬化性樹脂組成物に関する。本硬化性樹脂組成物は、産業用途、自動車用途、及び電子用途、特に高温運転条件が関与する用途のコーティングとして使用するのに特に適している。
【背景技術】
【0003】
熱硬化性材料、例えば、硬化エポキシ樹脂などは、その耐熱性及び耐薬品性で有名である。これらは、良好な機械特性も示すが、靭性に欠けることが多く、非常に脆い傾向にある。このことは、こうした材料の架橋密度が上昇するにつれて、又は単量体官能性が2より高い場合に、特に当てはまる。エポキシ樹脂及び他の熱硬化性材料、例えば、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂などに様々な強靭化材料を組み込むことにより、それらを強化又は強靭化する試みがなされてきた。
【0004】
そうした強靭化剤は、それらの構造特性、形態特性、又は熱特性により、互いに比較することができる。強靭化剤の骨格構造としては、芳香族、脂肪族、又は芳香族と脂肪族の両方であることが可能である。芳香族強靭化剤、例えば、ポリエーテルエーテルケトン又はポリイミドは、強靭化、いわゆる衝撃後圧縮の合理的な改善と、強靭化剤の芳香族構造を理由とする、高温湿潤環境に供された場合の水分取り込みの低さと、を呈する熱硬化性材料をもたらす。反対に、脂肪族強靭化剤、例えば、ナイロン(別名ポリアミド)は、衝撃後圧縮の顕著な改善を呈するものの、高温湿潤環境に供された場合の水分取り込みが所望より高い熱硬化性材料をもたらし、この高い水分取り込みは、圧縮強度及び圧縮係数の低下を招く可能性がある。他の強靭化剤、例えば、コアシェル重合体は、良好な損傷耐性(damage resistance)を呈する熱硬化性材料をもたらすことができる。しかしながら、こうした強靭化剤は、熱硬化性材料の加工性及びガラス転移温度に悪影響を及ぼす傾向にある。
【0005】
熱硬化性樹脂組成物に近年使用されるようになった強靭化剤の1種として、特に、多段重合体があり、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7に記載されるものがある。こうした強靭化剤は、熱硬化性マトリクスに容易に分散して均一分散体をもたらすことがわかってきたものの、硬化生成物は、依然として、適切な靭性及び化学特性を欠く可能性がある。
【0006】
したがって、硬化すると、硬化生成物が、高いガラス転移温度を呈するとともに、過酷な操作条件に晒される様々な基材用コーティングとして使用するのに特に適している機械特性及び化学特性を呈するようになる、熱硬化性材料に、強靭化剤成分及び硬化剤を活用することにより、当該分野の現状をさらに改善する必要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2016102666
【特許文献2】WO2016102658
【特許文献3】WO2016102682
【特許文献4】WO2017211889
【特許文献5】WO2017220793
【特許文献6】WO2018002259
【特許文献7】WO2019012052
【発明の概要】
【0008】
本開示は、概して、(a)熱硬化性樹脂と、(b)多段重合体及び熱可塑性強靭化剤を含む強靭化剤成分と、並びに(c)フェニルインダンジアミン硬化剤と、を含む、硬化性樹脂組成物を提供する。硬化性樹脂組成物は、急速硬化させると、少なくとも150℃のガラス転移温度、改善された靭性、並びに高い熱酸化耐性及び加水分解耐性を呈する組成物が必要とされる用途をはじめとする、様々な用途に使用可能である。すなわち、硬化性樹脂組成物は、産業用配管(例えば、化学産業及び石油ガス産業用)、建築用途、及び電子デバイス又は他の商業用途のコーティングとしての使用に特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、概して、(a)熱硬化性樹脂と、(b)多段重合体及び熱可塑性強靭化剤を含む強靭化剤成分と、並びに(c)フェニルインダンジアミン硬化剤と、を含む、硬化性樹脂組成物を提供する。多段重合体と熱可塑性強靭化剤の組み合わせは、フェニルインダンジアミン硬化剤と合わせて、相乗的に作用して、観察される強靭化効果が単独で予想されるものよりも大きくなり、並びに優れた熱酸化耐性及び加水分解耐性を呈する硬化コーティングをもたらすことが、期せずして見出された。本明細書中以下で記載される硬化性樹脂組成物は、先進の高温用途に必要な水性環境及び乾燥環境の両方で高い耐熱性を実証する。硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるコーティングは、ガラス転移温度Tg>150℃、好ましくはTg>170℃、最も好ましくはTg>190℃も呈する。
【0010】
以下の用語は、以下の意味を有するものとする:
【0011】
「硬化する(cure)」、「硬化した(cured)」、又は類似する用語の「硬化している(curing)」、若しくは「硬化(cure)」という用語は、化学架橋による熱硬化性樹脂の硬化を指す。「硬化性(curable)」という用語は、組成物を、硬化又は熱硬化した状態又は状況にする条件に供することが可能である組成物を意味する。
【0012】
「多段重合体」という用語は、多段重合プロセスにより逐次様式で形成された重合体を指す。多段重合プロセスは、多段乳化重合プロセスが可能であり、その場合、第一重合体は第一段階重合体であり、第二重合体は第二段階重合体である(すなわち、第二重合体は、第一乳化重合体の存在下で乳化重合により形成される)。
【0013】
「(メタ)アクリル酸重合体」という用語は、(メタ)アクリル酸単量体を含む(メタ)アクリル酸重合体であって、この単量体が当該重合体の50重量%以上を占める重合体で本質的に構成される(メタ)アクリル酸重合体を示す。
【0014】
「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、どのような追加の要素、工程、又は手順であれ、それが本明細書中開示されているか否かにかかわらず、その存在を排除することを意図しない。あらゆる疑問を回避する目的で、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて本明細書中特許請求される全ての要素は、反対する記述がない限り、あらゆる追加の付加物又は化合物を含むことができる。反対に、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、本明細書中登場する場合、あらゆる後続の列挙の範囲から、実施可能性について
必須ではないものを除いて、任意の他の要素、工程、又は手順を排除し、「~からなる(consisting of)」という用語は、使用される場合、具体的に描写又は列挙されていないどのような要素、工程、又は手順も、排除する。「又は」という用語は、特に記載がない限り、列挙される要素を、個別に指すとともに、任意の組み合わせでも指す。
【0015】
冠詞の「a」及び「an」は、本明細書中、その冠詞の文法上の目的語が1つであるか又は1つより多い(すなわち少なくとも1つであること)を指すのに使用される。例として、「エポキシ樹脂(an epoxy resin)」は、1種類のエポキシ樹脂又は1種類より多いエポキシ樹脂を意味する。
【0016】
「1つの実施形態において」、「1つの実施形態に従って」などの語句は、概して、その語句に続く特定の特長、構造、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの態様に含まれているとともに、本開示の1つより多い実施形態に含まれている可能性があることを意味する。重要なことは、そのような用語が、必ずしも同じ実施形態を指すのではないことである。
【0017】
明細書において、ある要素若しくは特長が、含まれている又はある特徴を有することを記述するのに「may」、「can」、「could」、又は「might」が使用される場合、その特定の要素若しくは特長は、含まれていること又はその特徴を有することを必要としない。
【0018】
「約」という用語は、本明細書中使用される場合、ある値又は範囲にある程度の変動性を許容することを可能にし、例えば、それは、記述される値の又は記述される範囲限度の、10%以内、5%以内、又は1%以内が可能である。
【0019】
範囲形式で表現される値は、範囲の限度として明記される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される個別の数値又はサブ範囲も、各数値及びサブ範囲が明記されているかのように含まれるとして、柔軟な様式で解釈されなければならない。例えば、1~6などの範囲は、1~3、2~4、3~6などのサブ範囲、並びにその範囲内に含まれる個別の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされなければならない。これは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0020】
「好適である」及び「好ましくは」という用語は、ある特定の状況下で、ある特定の利益を提供することが可能な実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も、同一又は他の状況下で、好適である可能性がある。そのうえさらに、1つ又は複数の好適な実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを暗示するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から排除することを意図しない。
【0021】
第一の実施形態に従って、本開示は、(a)熱硬化性樹脂と、(b)多段重合体及び熱可塑性強靭化剤を含む強靭化剤成分と、並びに(c)フェニルインダンジアミン硬化剤と、を概して含む、硬化性樹脂組成物を提供する。
【0022】
1つの実施形態において、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、又はそれらの混合物であることが可能である。1つの特定の実施形態において、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である。
【0023】
一般に、任意のエポキシ含有化合物が、本開示におけるエポキシ樹脂としての使用に適しており、例えば、米国特許第5,476,748号に開示されるエポキシ含有化合物な
どがそうである。米国特許第5,476,748号は本明細書中参照として援用される。1つの実施形態に従って、エポキシ樹脂は、一官能性エポキシ樹脂、二官能性エポキシ樹脂(すなわち2つのエポキシド基を有する)、三官能性エポキシ樹脂(すなわち3つのエポキシド基を有する)、四官能性エポキシ樹脂(すなわち4つのエポキシド基を有する)、及びそれらの混合物から選択される。
【0024】
一官能性エポキシ樹脂の限定ではなく典型的な例として、以下がある:フェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール及び他のアルキルフェノール、ブタノール、2-エチル-ヘキサノール、並びにC8~C14アルコールの、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、及びグリシジルエーテルなど。
【0025】
二官能性エポキシ樹脂の限定ではなく典型的な例として、以下がある:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシラート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びそれらの混合物。実施形態によっては、二官能性エポキシ樹脂は、一官能性反応性希釈剤で修飾されていてもよく、そのような希釈剤として、p-tertiaryブチルフェノールグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、及びC-C14グリシジルエーテルなどがあるが、これらに限定されない。
【0026】
三官能性エポキシ樹脂の限定ではなく典型的な例として、以下がある:パラ-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、メタ-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノ-m-又は-5-アミノ-o-クレゾール型エポキシ樹脂、及び1,1,1-(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂。
【0027】
四官能性エポキシ樹脂の限定ではなく典型的な例として、以下がある:N,N,N’,N’-テトラグリシジルメチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、及びテトラグリシジルグリコールウリル。
【0028】
使用可能な市販されているエポキシ樹脂の例として、ARALDITE(登録商標)PY306エポキシ樹脂(未修飾ビスフェノール-F系液状エポキシ樹脂)、ARALDITE(登録商標)MY721エポキシ樹脂(メチレンジアニリンに基づく四官能性エポキシ樹脂)、ARALDITE(登録商標)MY0510エポキシ樹脂(パラ-アミノフェノールに基づく三官能性エポキシ樹脂)、ARALDITE(登録商標)GY6005エポキシ樹脂(一官能性反応性希釈剤で修飾したビスフェノール-A系液状エポキシ樹脂)、ARALDITE(登録商標)6010エポキシ樹脂(ビスフェノール-A系液状エポキシ樹脂)、ARALDITE(登録商標)MY06010エポキシ樹脂(メタ-アミノフェノールに基づく三官能性エポキシ樹脂)、ARALDITE(登録商標)GY285
エポキシ樹脂(未修飾ビスフェノール-F系液状エポキシ樹脂)、ARALDITE(登録商標)EPN1138、1139、及び1180エポキシ樹脂(エポキシフェノールノボラック樹脂)、ARALDITE(登録商標)ECN1273及び9611エポキシ樹脂(エポキシクレゾールノボラック樹脂)、ARALDITE(登録商標)GY289エポキシ樹脂(エポキシフェノールノボラック樹脂)、ARALDITE(登録商標)PY307-1エポキシ樹脂(エポキシフェノールノボラック樹脂)、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
1つの実施形態において、硬化性樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づき、約10重量%~約95重量%、又は約20重量%~約75重量%、又は約30重量%~約60重量%、又は約40重量%~約50重量%の量であることが可能である。別の実施形態において、硬化性樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づき、約50重量%~約95重量%、又は約65重量%~約90重量%の量であることが可能である。
【0030】
さらに別の実施形態において、エポキシ樹脂は、少なくとも1種の三官能性エポキシ樹脂若しくは四官能性エポキシ樹脂又はそれらの混合物と、及び任意選択で少なくとも1種の二官能性エポキシ樹脂と、で構成されてもよい。そのような実施形態において、三官能性エポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物中、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づき、約25重量%~約50重量%、又は約35重量%~45重量%の量で存在することが可能であり、及び四官能性エポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物中、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づき、約1重量%~20重量%、又は約5重量%~約15重量%の量で存在することが可能である。
【0031】
別の実施形態に従って、熱硬化性樹脂は、ベンゾオキサジン樹脂である。ベンゾオキサジン樹脂は、少なくとも1つのベンゾオキサジン部分を有する任意の硬化性単量体、オリゴマー、又は重合体であることが可能である。すなわち、1つの実施形態において、ベンゾオキサジンは、一般式(1)で表すことが可能であり
【化1】
式中、bは、1~4の整数であり;各Rは、独立して、水素、置換若しくは無置換のC-C20アルキル基、置換若しくは無置換のC-C20アルケニル基、置換若しくは無置換のC-C20アリール基、置換若しくは無置換のC-C20ヘテロアリール基、置換若しくは無置換のC-C20炭素環式基、置換若しくは無置換のC-C20複素環基、又はC-Cシクロアルキル基であり;各Rは、独立して、水素、C-C20アルキル基、C-C20アルケニル基、又はC-C20アリール基であり;及び、Zは、直接結合(b=2の場合)、置換若しくは無置換のC-C20アルキル基、置換若しくは無置換のC-C20アリール基、置換若しくは無置換のC-C20ヘテロアリール基、O、S、S=O、O=S=O、又はC=Oである。置換基として、ヒドロキシ、C-C20アルキル基、C-C10アルコキシ基、メルカプト、C-Cシクロアルキル基、C-C14複素環基、C-C14アリール基、C-C14ヘテロアリ
ール基、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバマート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
式(1)内の特定の実施形態において、ベンゾオキサジンは、以下の式(1a)で表すことができ
【化2】
式中、Zは、直接結合、CH、C(CH、C=O、O、S、S=O、O=S=O、及び
【化3】
から選択され、
各Rは、独立して、水素、C-C20アルキル基、アリル基、又はC-C14アリール基であり;及びRは、上記のとおり定義される。
【0033】
別の実施形態において、ベンゾオキサジンは、以下の一般式(2)に包含される場合があり
【化4】
式中、Yは、C-C20アルキル基、C-C20アルケニル基、又は置換若しくは無置換のフェニルであり;及び各Rは、独立して、水素、ハロゲン、C-C20アルキル基、C-C20アルケニル基、又はC-C20アリール基である。フェニルの適切な置換基は、上記に記載されるとおりである。
【0034】
式(2)内の特定の実施形態において、ベンゾオキサジンは、以下の式(2a)で表すことができ
【化5】
式中、各Rは、独立して、C-C20アルキル又はC-C20アルケニル基、これらの基のそれぞれは、任意選択で、1つ又は複数のO、N、S、C=O、COO、及びNHC=Oで置換されているかこれらが挿入されている、及びC-C20アリール基であり;並びに各Rは、独立して、水素、C-C20アルキル又はC-C20アルケニル基、これらの基のそれぞれは、任意選択で、1つ又は複数のO、N、S、C=O、COOH、及びNHC=Oで置換されているかこれらが挿入されている、あるいはC-C20アリール基である。
【0035】
あるいは、ベンゾオキサジンは、以下の一般式(3)に包含される場合があり
【化6】
式中、pは、2であり;Wは、ビフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルイソプロパン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、及びジフェニルケトンから選択され;並びにRは、上記のとおり定義される。
【0036】
ベンゾオキサジンは、複数の供給元から市販されており、そのような供給元として、Huntsman Advanced Materials Americas LLC、Georgia Pacific Resins Inc.、及びShikoku Chemicals Corporationが挙げられる。
【0037】
ベンゾオキサジンは、水が除去される条件下、フェノール化合物、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はフェノールフタレインと、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒドと、及び第一級アミンとを、反応させることにより、得ることも可能である。フェノール化合物対アルデヒド反応体のモル比は、約1:3~1:10、あるいは約1:4:~1:7が可能である。さらに別の実施形態において、フェノール化合物対アルデヒド反応体のモル比は、約1:4.5~1:5が可能である。フェノール化合物対第一級アミン反応体のモル比は、約1:1~1:3、あるいは約1:1.4~1:2.5が可能である。さらに別の実施形態において、フェノール化合物対第一級アミン反応体のモル比は、約1:2.1~1:2.2が可能である。
【0038】
第一級アミンの例として、以下が挙げられる:芳香族モノ又はジアミン、脂肪族アミン、シクロ脂肪族アミン、並びに複素環モノアミン、例えば、アニリン、o-、m-、及びp-フェニレンジアミン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、シクロヘキシルアミン、ブチルアミン、メチルアミン、ヘキシルアミン、アリルアミン、フルフリルアミンエチレンジアミン、並びにプロピレンジアミン。アミンは、それらの個々の炭素部分において、C-Cアルキル又はアリルで置換されてもよい。1つの実施形態にお
いて、第一級アミンは、一般式RNHを有する化合物であり、式中、Rは、アリル、無置換若しくは置換フェニル、無置換若しくは置換C-Cアルキル、又は無置換若しくは置換C-Cシクロアルキルである。R基の適切な置換基として、アミノ、C-Cアルキル、及びアリルが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態によっては、1~4つの置換基がR基に存在することができる。1つの特定の実施形態において、Rは、フェニルである。
【0039】
1つの実施形態に従って、ベンゾオキサジンは、硬化性組成物中、硬化性組成物の合計重量に基づいて、約10重量%~約90重量%の範囲の量で存在することができる。別の実施形態において、ベンゾオキサジンは、硬化性組成物中、硬化性組成物の合計重量に基づいて、約60重量%~約90重量%の範囲の量で存在することができる。
【0040】
硬化性樹脂組成物は、多段重合体及び熱可塑性強靭化剤を含む強靭化剤成分も、含む。
【0041】
多段重合体(例えば、WO2016/102411及びWO2016/102682に記載されるとおりのもの、これらの内容は本明細書中参照として援用される)は、重合体組成の異なる段階を少なくとも2段階有し、第一段階は、コアを形成するものであり、第二段階又はその後の全ての段階は個々のシェルを形成する。多段重合体は、重合体粒子、特に球状粒子の形状にあることができる。こうした重合体粒子は、コアシェル粒子とも呼ばれ、コアを形成する第一段階、及び個々のシェルを形成する第二段階又はその後の全ての段階を持つ。1つの実施形態において、重合体粒子は、20nm~800nm、又は25nm~600nm、又は30nm~550nm、又は40nm~400nm、又は75nm~350nm、又は80nm~300nmの重量平均粒径を有することができる。重合体粒子は、凝集させて重合体粉末にすることもできる。
【0042】
すなわち、重合体粒子は、約10℃未満のガラス転移温度を有する重合体(A1)を含む少なくとも1つの層(又は段階)(A)と、及び約30℃を超えるガラス転移温度を有する重合体(B1)を含む少なくとも別の層(又は段階)(B)と、を含む多層構造を有することができる。実施形態によっては、重合体(B1)は、重合体粒子の外側層である。他の実施形態において、重合体(A1)を含む段階(A)は第一段階であり、重合体(B1)を含む段階(B)は、重合体(A1)を含む段階(A)にグラフトされる。
【0043】
上記のとおり、重合体粒子は、多段階プロセス、例えば、2段、3段、又はそれより多い段階を含むプロセスにより得ることができる。層(A)の約10℃未満のガラス転移温度を有する重合体(A1)は、多段階プロセスの最終段階中に作られることは決してない。このことは、重合体(A1)が粒子の外側層に決して存在しないことを意味する。したがって、層(A)の約10℃未満のガラス転移温度を有する重合体(A1)は、重合体粒子のコア又は内部層のうちの1つのいずれかに存在する。
【0044】
実施形態によっては、層(A)の約10℃未満のガラス転移温度を有する重合体(A1)は、多層構造を有する重合体粒子のコアを形成する多段階プロセスの第一段階中に及び/又は重合体(B1)の前に、作られる。
【0045】
他の実施形態において、約30℃を超えるガラス転移温度を有する重合体(B1)は、重合体粒子の外側層を形成する多段階プロセスの最終段階で作られる。1つ又は複数の中間段階で得られる追加の中間層が1つ又は複数存在する可能性がある。
【0046】
1つの実施形態において、層(B)の重合体(B1)の少なくとも一部は、先行層に作られた重合体にグラフトされる。段階(A)及び段階(B)の2つしか存在せず、それぞれが重合体(A1)及び重合体(B1)を含む場合、重合体(B1)の一部が、重合体(
A1)にグラフトされる。実施形態によっては、重合体(B1)の少なくとも50重量%がグラフトされる。
【0047】
1つの実施形態に従って、重合体(A1)は、アクリル酸アルキル由来の単量体を少なくとも50重量%含む(メタ)アクリル酸重合体である。さらなる実施形態において、重合体(A1)は、重合体(A1)が約10℃未満のガラス転移温度を有する限り、アクリル酸アルキルと共重合可能な共重合単量体を1種又は複数含む。重合体(A1)中の1種又は複数の共重合単量体は、(メタ)アクリル酸単量体及び/又はビニル単量体から選択することができる。(メタ)アクリル酸共重合単量体は、(メタ)アクリル酸C-C12アルキルから選択される単量体を含むことができる。さらに他の実施形態において、重合体(A1)中の(メタ)アクリル酸共重合単量体は、(メタ)アクリル酸C-Cアルキル単量体及び/又はアクリル酸C-Cアルキル単量体を含む。特に好ましくは、重合体(A1)のアクリル酸共重合単量体又はメタクリル酸共重合単量体は、重合体(A1)が約10℃未満のガラス転移温度を有する限り、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、及びそれらの混合物から選択される。
【0048】
別の実施形態において、重合体(A1)は、架橋している(すなわち、架橋剤が、その他の1つ又は複数の単量体に付加される)。架橋剤は、重合可能な基を少なくとも2つ有することができる。
【0049】
1つの具体的実施形態において、重合体(A1)は、アクリル酸ブチルの同種重合体である。別の具体的実施形態において、重合体(A1)は、アクリル酸ブチル及び少なくとも1種の架橋剤の共重合体である。架橋剤は、この共重合体の5重量%未満の量で存在することができる。
【0050】
さらに別の実施形態において、約10℃未満のガラス転移温度を有する重合体(A1)は、シリコーンゴム系重合体である。シリコーンゴムは、例えば、ポリジメチルシロキサンが可能である。
【0051】
さらに別の実施形態において、約10℃未満のガラス転移温度を有する重合体(A1)は、イソプレン又はブタジエンに由来する重合体単位を少なくとも50重量%含み、段階(A)は、重合体粒子の最内部層である。言い換えると、重合体(A1)を含む段階(A)は、重合体粒子のコアである。例として、コアの重合体(A1)は、イソプレン同種重合体又はブタジエン同種重合体、イソプレン-ブタジエン共重合体、イソプレンと最大98重量%のビニル単量体との共重合体、及びブタジエンと最大98重量%のビニル単量体との共重合体で作られていることが可能である。ビニル単量体は、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキル、又はブタジエン若しくはイソプレンであることが可能である。1つの実施形態において、コアは、ブタジエン同種重合体である。
【0052】
重合体(B1)は、二重結合を持つ単量体及び/又はビニル単量体を含む、同種重合体及び共重合体で作られていることが可能である。好ましくは、重合体(B1)は、(メタ)アクリル酸重合体である。好ましくは、重合体(B1)は、(メタ)アクリル酸C-C12アルキルから選択される単量体を少なくとも70重量%含む。さらにより好ましくは、重合体(B1)は、メタクリル酸C-Cアルキル単量体及び/又はアクリル酸C-Cアルキル単量体を少なくとも80重量%含む。特に好ましくは、重合体(B1)のアクリル酸単量体又はメタクリル酸単量体は、重合体(B1)が少なくとも約30℃のガラス転移温度を有する限り、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル
、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、及びそれらの混合物から選択される。有利には、重合体(B1)は、メタクリル酸メチル由来の単量体単位を少なくとも70重量%含む。
【0053】
別の実施形態において、既に記載したとおりの多段重合体は、追加の段階を有し、これは、(メタ)アクリル酸重合体(P1)である。この実施形態に従う一次重合体粒子は、約10℃未満のガラス転移温度を有する重合体(A1)を含む少なくとも1つの段階(A)と、約30℃を超えるガラス転移温度を有する重合体(B1)を含む少なくとも1つの段階(B)と、及び約30℃~約150℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリル酸重合体(P1)を含む少なくとも1つの段階(P)と、を含む多層構造を有することになる。好ましくは、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、重合体(A1)又は(B1)のいずれにもグラフトされていない。
【0054】
(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、約100,000g/mol未満、又は約90,000g/mol未満、又は約80,000g/mol未満、又は約70,000g/mol未満、有利には約60,000g/mol未満、より有利には約50,000g/mol未満、さらにより有利には約40,000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有することができる。
【0055】
(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、約2000g/mol超、又は約3000g/mol超、又は約4000g/mol超、又は約5000g/mol超、有利には約6000g/mol超、より有利には約6500g/mol超、さらにより有利には約7000g/mol超、最も有利には約10,000g/mol超の質量平均分子量Mwを有することができる。
【0056】
(メタ)アクリル酸重合体(P1)の質量平均分子量Mwは、約2000g/mol~約100,000g/mol、又は約3000g/mol~約90,000g/mol又は約4000g/mol~約80,000g/mol、有利には約5000g/mol~約70,000g/mol、より有利には約6000g/mol~約50,000g/mol、最も有利には約10,000g/mol~約40,000g/molであることができる。
【0057】
好ましくは、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、(メタ)アクリル酸単量体を含む共重合体である。より好ましくは、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、(メタ)アクリル酸重合体である。さらにより好ましくは、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、(メタ)アクリル酸C-C12アルキルから選択される単量体を少なくとも50重量%含む。有利には、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、メタクリル酸C-Cアルキル及びアクリル酸C-Cアルキル並びにそれらの混合物から選択される単量体を少なくとも50重量%含む。より有利には、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、重合したメタクリル酸メチルを少なくとも50重量%、さらにより有利には少なくとも60重量%、最も有利には重合したメタクリル酸メチルを少なくとも65重量%含む。
【0058】
1つの実施形態において、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、メタクリル酸メチルを50重量%~100重量%、メタクリル酸メチルを80重量%~100重量%、又はメタクリル酸メチルを80重量%~99.8重量%と、アクリル酸C-Cアルキル単量体を0.2重量%~20重量%含む。有利には、アクリル酸C-Cアルキル単量体は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、又はアクリル酸ブチルから選択される。
【0059】
別の実施形態において(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、官能性単量体を0.01重量%~50重量%含む。好ましくは、(メタ)アクリル酸重合体(P1)は、官能性単
量体を、0.01重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~30重量%、さらにより好ましくは2重量%~30重量%、有利には3重量%~30重量%含む。
【0060】
1つの実施形態において、官能性単量体は、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリル酸又はメタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸由来のアミド、例えば、ジメチルアクリルアミド、アクリル酸2-メトキシエチル又はメタクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-アミノエチル又はメタクリル酸2-アミノエチル(これは任意選択で四級化される)、ホスホナート若しくはホスファート基を有するアクリル酸又はメタクリル酸単量体、(メタ)アクリル酸アルキルイミダゾリジノン、及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/mol~10,000g/molの範囲の分子量を有する。
【0061】
1つの実施形態において、強靭化剤成分は、熱可塑性強靭化剤も含む。1つの実施形態において、熱可塑性強靭化剤は、ポリエーテルスルホンである。ポリエーテルスルホンの限定ではなく例として、Sumitomo Chemicalsが販売するポリエーテルスルホンである商標Sumnikaexcel(登録商標)で販売される粒子状ポリエーテルスルホン、並びにSolvay Chemicalsが販売するポリエーテルスルホンである商標Veradel(登録商標)及びVirantage(登録商標)で販売されるものが挙げられる。高密度ポリエーテルスルホン粒子も使用可能である。ポリエーテルスルホンの形状は、特に重要ではない。なぜならポリエーテルスルホンは、硬化性樹脂組成物の形成中に溶解することが可能だからである。高密度ポリエーテルスルホン粒子は、米国特許第4,945,154号の教示に従って作ることができ、米国特許第4,945,154号の内容は本明細書により参照として援用される。高密度ポリエーテルスルホン粒子は、Hexcel Corporationが商標HRI-1で販売するものを利用することもできる。実施形態によっては、ポリエーテルスルホンの平均粒径は、熱硬化性樹脂中にポリエーテルスルホンが完全に溶解することを促進し及び確実にするために100ミクロン未満である。
【0062】
別の実施形態において、熱可塑性強靭化剤は、以下の熱可塑性重合体のうちのいずれかが可能である:ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミド(PA)、ポリ(フェニレン)オキシド(PPO)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、フェノキシ、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(スチレン)(PS)、ポリカーボネート(PC)、又はそれらの混合物。1つの実施形態に従って、ポリエーテルスルホンは、硬化性樹脂組成物中に含まれる唯一の熱可塑性強靭化剤である(すなわち、硬化性樹脂組成物は、ポリエーテルスルホン以外にはどのような熱可塑性重合体強靭化剤も含まない)。
【0063】
1つの実施形態に従って、硬化性樹脂組成物中に存在する強靭化剤成分の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約25重量%未満である。別の実施形態において、硬化性樹脂組成物中に存在する強靭化剤成分の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約22.5重量%未満、又は約20重量%未満、又は約17.5重量%未満、又は約15重量%未満である。別の実施形態に従って、硬化性樹脂組成物中に存在する強靭化剤成分の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、少なくとも約1重量%、又は少なくとも約5重量%、又は少なくとも約7.5重量%である。さらに別の実施形態において、硬化性樹脂組成物中に存在する強靭化剤成分の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約1重量%~約25重量%、又は約5重量%~約20重量%、又は約7重量%~約16重量%である。別の実施形態において、硬化性樹脂組成物中に存在する強靭化剤成分の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約1重量%~約15重量%である。
【0064】
別の実施形態に従って、硬化性樹脂組成物中に存在する多段重合体の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約3重量%~約20重量%、又は約4重量%~約15重量%、又は約5重量%~約10重量%である。さらに別の実施形態において、硬化性樹脂混合物中に存在する熱可塑性強靭化剤の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.5重量%~約8重量%、又は約1重量%~約7重量%である。
【0065】
硬化性樹脂組成物の硬化は、フェニルインダンジアミンの添加により達成することができる。1つの実施形態において、フェニルインダンジアミンは、以下の構造を有する化合物であり
【化7】
式中、Rは、水素又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、独立して、水素、ハロゲン、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;及び、bは、独立して、1~4の整数であり、及びインダン環のアミノ基は、5位又は6位にある。
【0066】
フェニルインダンジアミンは、フェニルインダンジアミン化合物の異性体又は置換異性体を任意の組み合わせで含むことができる。例えば、フェニルインダンジアミンは、0モル%~100モル%の5-アミノ-3-(4’-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチルインダンを、100モル%~0モル%の6-アミノ-3-(4’-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチルインダンと組み合わせて含むことができる。さらに、これら異性体の一方又は両方が、0~100%の全範囲にわたって、置換ジアミン異性体のいずれかにより置換可能である。そのような置換ジアミン異性体の例として、5-アミノ-6-メチル-3-(3’-アミノ-4’-メチルフェニル)-1,1,3-トリメチルインダン、5-アミノ-3-(4’-アミノ-Ar’,Ar’-ジクロロフェニル)-Ar,Ar-ジクロロ-1,1,3-トリメチルインダン、6-アミノ-(4’-アミノ-Ar’,Ar’-ジクロロ-フェニル)-Ar,Ar-ジクロロ-1,1,3-トリメチルインダン、4-アミノ-6-メチル-3(3’-アミノ-4’-メチル-フェニル)-1,1,3-トリメチルインダン、及びAr-アミノ-3-(Ar’-アミノ-2’,4’-ジメチルフェニル)-1,1,3,4,6-ペンタメチルインダンがある。上記式中の接頭語Ar及びAr’は、与えられる置換基の位置がフェニル環中で限定されないことを示す。
【0067】
フェニルインダンジアミンのなかでも、Rが、独立して、水素又はメチルであり、及びRが、独立して、水素、メチル、クロロ、又はブロモであるものを挙げることができる。特に、適切なフェニルインダンジアミンは、Rが水素又はメチルであり、及びRが、独立して、水素、メチル、クロロ、又はブロモであり、並びにアミノ基が5位又は6位にあり、及び3’位又は4’位にあるものである。相対的な入手可能性を理由に、特に好適なフェニルインダンジアミンとして、Rがメチルであり、各Rが水素であり、並びにアミノ基が5位又は6位にあり及び4’位にある化合物が挙げられる。こうした化合物は、5(6)-アミノ-3-(4’-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチルインダン(DAPI)として知られる。
【0068】
フェニルインダンジアミン及びそれらの調製法は、米国特許第3,856,752号及び同第3,983,092号に記載されており、これら特許は、そのような材料の調製に関係するそれらの開示に関して本明細書中参照として十分に援用される。
【0069】
フェニルインダンジアミンに加えて、他の硬化剤も含まれる場合があり、そのような硬化剤として、芳香族アミン、環状アミン、脂肪族アミン、アルキルアミン、ポリエーテルアミン(ポリプロピレンオキシド及び/又はポリエチレンオキシドに由来することが可能なポリエーテルアミンを含む)、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン(CAF)、酸無水物、カルボン酸アミド、ポリアミド、ポリフェノール、クレゾール及びフェノールノボラック樹脂、イミダゾール、グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、第三級アミン、ルイス酸錯体、例えば三フッ化ボロン及び三塩化ホウ素、並びにポリメルカプタンがあるが、これらに限定されない。上記の硬化剤の任意のエポキシ修飾アミン生成物、マンニッヒ修飾生成物、及びマイケル修飾付加生成物も、使用可能である。上記で言及される硬化剤は全て、単独でも任意の組み合わせでも使用可能である。
【0070】
芳香族アミンの例として、1、8ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、ジエチレントルエンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチル-エチルインデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチルインデン)]ビスアニリン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、及びビス(4-アミノ-2-クロロ-3,5-ジエチルフェニル)メタンが挙げられるが、これらに限定されない。そのうえさらに、芳香族アミンとして、米国特許第4,427,802号及び同第4,599,413号に開示されるとおりの複素環多官能性アミン付加物を挙げることができ、米国特許第4,427,802号及び同第4,599,413号は両方とも、そのまま全体が参照として本明細書に援用される。
【0071】
環状アミンの例として、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、m-キシレンジアミン、イソホロンジアミン、メンテンジアミン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)-フェノール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、及び2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
脂肪族アミンの例として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)-プロピルアミン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン;3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、及びテトラメチル-エチレンジアミン;エチレンジアミン;3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン);アリルアミン、ジアリルア
ミン、トリアリルアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、及びポリオキシプロピレントリアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
アルキルアミンの例として、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、及びジ-2-エチルヘキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
酸無水物の例として、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、2-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-メチル-2-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、コハク酸無水物、4-メチル-1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジックメチルアンヒドリド(nadic methyl anhydride)、ドデセニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、及びそれらの任意の誘導体又は付加物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
イミダゾールの例として、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-イソプロピル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1,2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチルイミダゾール、及び1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
置換グアニジンの例として、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、及びシアノグアニジン(ジシアンジアミド)がある。挙げることが可能な代表的なグアナミン誘導体としては、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、又はメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンがある。置換尿素として、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)、又は3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)を挙げることができる。
【0077】
第三級アミンの例として、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-ベンジルアミン、ピリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルアミノピリジン、モルホリン誘導体、例えば、ビス(2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノ)エチル)-(2-(4-モルホリノ)エチル)アミン、ビス(2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノ)エチル)-(2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2-(4-モルホリノ)エチル)アミン、及びトリス(2-(4-モルホリノ)プロピル)アミン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、並びにアミジン結合を有する複素環化合物、例えばジアザビシクロノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
アミン-エポキシ付加物は、当該分野で周知であり、例えば、米国特許第3,756,984号、同第4,066,625号、同第4,268,656号、同第4,360,649号、同第4,542,202号、同第4,546,155号、同第5,134,239号、同第5,407,978号、同第5,543,486号、同第5,548,058号、同第5,430,112号、同第5,464,910号、同第5,439,977号、同第5,717,011号、同第5,733,954号、同第5,789,498号、同第5,798,399号、及び同第5,801,218号、に記載されている。これら特許はそれぞれ、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。そのようなアミン-エポキシ付加物は、1種又は複数のアミン化合物と1種又は複数のエポキシ化合物の間の反応生成物である。好ましくは、付加物は、室温ではエポキシ樹脂に溶解しない固体であるが、加熱すると、溶解性になり、促進剤として機能して、硬化速度を速める。任意の種類のアミンが使用可能である(少なくとも1個の第二級窒素原子を有する複素環アミン及び/又はアミンが好適である)ものの、イミダゾール化合物が、特に好適である。例示のイミダゾールとして、2-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。他の適切なアミンとして、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾール、プリン、及びトリアゾールが挙げられるが、これらに限定されない。任意の種類のエポキシ化合物が、付加物用の他方の出発物質として採用可能であり、そのようなエポキシ化合物として、一官能性及び多官能性エポキシ化合物、例えば、エポキシ樹脂成分に関して既に記載したものが挙げられる。
【0079】
1つの実施形態において、本開示の硬化性樹脂組成物は、フェニルインダンジアミン硬化剤を、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約5重量%~約50重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約40重量%~約50重量%の量で含有することができる。
【0080】
さらに別の実施形態において、硬化性樹脂組成物は、それぞれの目的用途に有用である他の添加剤も1種又は複数含有することができる。例えば、有用な任意選択添加剤として、希釈剤、安定剤、界面活性剤、流れ調整剤、離型剤、艶消し剤、ガス抜き剤、熱可塑性粒子(例えば、カルボキシル末端液状ブタジエンアクリロニトリルゴム(CTBN)、アクリル末端液状ブタジエンアクリロニトリルゴム(ATBN)、エポキシ末端液状ブタジエンアクリロニトリルゴム(ETBN)、エラストマー及び前成形コアシェルゴムの液状エポキシ樹脂(LER)付加物)、硬化開始剤、硬化阻害剤、湿潤剤、加工助剤、蛍光化合物、UV安定剤、抗酸化剤、耐衝撃性改良剤、防錆剤、粘着付与剤、高密度粒子状充填剤(例えば、各種天然粘土、例えば、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト若しくは改質モンモリロナイト、アタパルジャイト、及びバックミンスターフラー土;他の天然材料又は天然由来材料、例えば、雲母、炭酸カルシウム、及び炭酸アルミニウム;各種酸化物、例えば、酸化第二鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム、及び二酸化ケイ素(例えば
、砂);各種人工材料、例えば、沈殿炭酸カルシウム;並びに各種廃棄物、例えば、粉砕した溶鉱炉スラグ)、導電性粒子(例えば、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、並びに導電グレードの炭素及びカーボンナノチューブ)、並びにそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0081】
存在する場合、硬化性樹脂組成物中に含まれる添加剤の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、少なくとも約0.5重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の量が可能である。他の実施形態において、硬化性樹脂組成物中に含まれる添加剤の量は、硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて、約30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下が可能である。
【0082】
硬化性樹脂組成物は、例えば、個々の成分をプレミックスし、次いで、これらプレミックスを混合することにより、又は通常の装置、例えば、撹拌容器、撹拌棒、ボールミル、サンプルミキサー、スタティックミキサー、高剪断ミキサー、リボンブレンダーを用いて成分全てをまとめて混合することにより、又はホットメルトにより、調製することができる。
【0083】
すなわち、別の実施形態に従って、本開示の硬化性樹脂組成物は、約10重量%~約95重量%の熱硬化性樹脂と、約1重量%~約15重量%の強靭化剤成分と、約5重量%~約50重量%の硬化剤をまとめて混合することにより調製することができ、重量%は硬化性樹脂組成物の合計重量に基づくものである。
【0084】
別の実施形態に従って、硬化性樹脂組成物を、基材に塗布して基材の少なくとも一部分(又は実質的に全部)をコーティングし、次いで約80℃より高温で加熱することにより硬化させて、コーティングされた基材を形成させることができる。硬化性樹脂組成物は、任意の既知の手段、例えば、噴霧、浸漬、流動床などにより、塗布することができる。別の実施形態において、塗布後、硬化性樹脂組成物は、約80℃~約180℃、好ましくは約100℃~約160℃の範囲の温度で加熱することにより硬化させることができる。加熱は、当該分野で既知である任意の手段により、例えば、コーティングされた基材をオーブンに入れることにより、実現可能である。IR照射もまた、コーティングされた基材を加熱硬化させるのに使用可能である。粉末コーティングされた表面は、組成物が硬化して実質的に連続した均一コーティングになるのに十分な時間の間、硬化温度に晒されなければならない。典型的には、約1分間~約10分間又はそれより長い硬化時間で、組成物は実質的に連続した均一コーティングに変換される。所望であれば、硬化は、2段階以上の段階で、例えば、低温で部分硬化させ、次いで温度を上昇させて完全硬化させることにより、行うことができる。なおさらなる実施形態において、硬化性樹脂組成物は、約80℃~約160℃の範囲の温度で硬化させた場合、5分以内、好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内、最も好ましくは45秒以内に、完全状態の85%硬化を達成することができる。
【0085】
別の実施形態において、熱硬化性樹脂組成物は、混合及び硬化させると、150℃超、好ましくは170℃超、最も好ましくは180℃超、特に好ましくは190℃超のガラス転移温度を有するフィルムをもたらす。
【0086】
本開示の硬化性樹脂組成物は、様々な用途、例えば、鋳造、積層、含浸、コーティング、接着、封止、塗装、結合、絶縁に、又は埋込、プレス、射出成形、押出加工、砂型結合、発泡及び耐蝕性材料に使用することができる。
【0087】
一部の実施形態に従って、熱硬化性樹脂組成物は、封止剤、接着剤、又はコーティング
剤の調製に、及び/又は、封止剤、接着剤、又はコーティング剤として、使用することができる。硬化性樹脂組成物を含む封止剤、接着剤、又はコーティング剤は、1つ又は複数の基材の表面(内側又は外側あるいはその両方)に塗布することができ、加熱することで硬化フィルムを形成することができる。基材は、金属でも非金属でもよい。基材の例として、金属配管、例えば、化学及び石油ガス産業で一般的なものなど各種化学物質の輸送に使用されるもの、ケイ酸化合物、金属酸化物、コンクリート、木材、プラスチック、ボール紙、パーティクルボード、セラミック、ガラス、グラファイト、セルロース材料、電子チップ材料、並びに半導体材料が挙げられる。実施形態によっては、基材には、鋼管、コンクリート中若しくは海洋環境中で使用される構造用鋼、貯蔵タンク、弁、並びに石油ガス生産用導管及び保護管の、内側表面及び/又は外側表面が含まれる。所望であれば、硬化性樹脂組成物の塗布前又は塗布に続いて、基材の表面を、機械的処理、例えばブラスト処理などに供することができ、それに続いて、金属基材の場合には、酸洗浄を行い、又はクリーニングし、続いて化学処理を行う。また、コーティングしようとする基材を、予備加熱してから、粉末組成物を塗布することができる。
【0088】
硬化性樹脂組成物がコーティングとして使用される実施形態において、硬化性樹脂組成物は、1層コーティングシステムで、又は多層フィルム型の1つのコーティング層として、使用することができる。本開示に従う硬化性樹脂組成物は、基材表面に直接塗布することも可能であれば、プライマー層に塗布することも可能であり、このプライマーは、液体でも粉末系プライマーでも可能である。本開示に従う硬化性樹脂組成物は、液体又は粉末コートに基づく、例えば、着色及び/又は特殊効果付与ベースコート層に塗布された粉末若しくは液体クリアコート層又は下地に塗布された有色素1層型粉末若しくは液体トップコートに基づく、多層コーティングシステムのなかの1コーティング層としても、塗布することができる。硬化性樹脂組成物は、既知の手段により、例えば、噴霧、浸漬、展着、ローリングなどにより、一塗り(single sweep)で又は数回の工程で、基材に塗布することができる。塗布後、次いで基材表面に塗布されたコーティングを、組成物を硬化させフィルムコーティングされた基材を形成するのに十分な温度で加熱する。実施形態によっては、フィルムコーティングは、概して、硬化後、約1~10ミル、好ましくは約2~4ミルの厚さを有することになる。
【0089】
本開示の別の実施形態において、硬化性樹脂組成物は、同じ又は異なる基材でできた部品を糊付け又は接着して物品を形成するための接着剤として使用することができる。硬化性樹脂組成物を、最初に、接着させようとする2つ以上の同じ又は異なる基材のうち少なくとも1つに接触させて配置する。1つの実施形態において、硬化性樹脂組成物を、第一基材と第二基材で挟む。次いで、硬化性樹脂組成物及び基材を、80℃超の温度で加熱する。加熱することにより、基材が互いに接着されて物品を形成するようにして接着剤の結合が形成される。
【0090】
本開示の様々な実施形態の作成及び使用について上記に詳細に記載してきたものの、本開示が、多種多様な具体的状況において実現可能である応用可能な本発明の概念を多数提供することが、認められなければならない。本明細書中検討される具体的実施形態は、本発明を作成及び使用する具体的やり方の例示にすぎず、本発明の範囲を定めるものではない。
【実施例
【0091】
表1の「実施例1」に列挙される成分を用いて、例示樹脂配合物を調製した。DAPI、エポキシ樹脂(Araldite(登録商標)MY0510、Huntsman International LLC又はその関連会社から入手可能)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(「MBS」)コアシェル添加剤粉末(Clearstrength(登録商標)XT100、Arkemaから購入可能)、及びポリエーテルスルホン
強靭化剤(Virantage(登録商標)VW-10200RFP、Solvay Specialty Polymers USA、LLCから購入可能)をブレンドすることにより、配合物を調製した。
【0092】
次いで、実施例1の配合物を、160℃で3時間硬化させ、200℃で1時間、後硬化させた。次いで、硬化試料を、空気循環オーブン中、150℃及び170℃で、高温エージングに供し、次いで、35~42日間の期間にわたり、DMAによりTg変化を試験し、並びに柔軟性歪み及び強度を試験した。
【0093】
比較例1~3(比較例1、比較例2、及び比較例3)を、上記の実施例1と同様にして、ただし表1に記載されるとおり異なる配合を用いて、調製し、硬化させ、評価した。詳細には、比較例1の組成は、MBSコアシェル添加剤もポリエーテルスルホン強靭化剤も含んでおらず、比較例2の組成は、MBSコアシェル添加剤を含むがポリエーテルスルホン強靭化剤を含んでおらず、比較例3は、ポリエーテルスルホン強靭化剤を含むがMBSコアシェル添加剤を含んでいなかった。
【0094】
実施例1及び比較例1~3の試験データを、以下の表2~4に記載する。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
表2及び表3の結果から、ポリエーテルスルホン強靭化剤を、コアシェル添加剤と併用した場合の予期せぬ相乗効果が明確に示される。比較例2及び比較例3で実証されるとおり、当業者なら、ポリエーテルスルホン強靭化剤とコアシェル添加剤の併用は、ポリエーテルスルホン強靭化剤(比較例3)のみを含む系のTg値を低下させると予想したと思われる。しかしながら、実施例1は、この併用が、予期せぬことに、比較例3及び比較例2よりも高いTgを有することを示す。同じく予期せずして改善された特性が表3で実証されており、これは、ポリエーテルスルホン強靭化剤とコアシェル添加剤の併用が、硬化試料を170℃でエージングさせた場合に、それ自身、比較例2及び比較例3のいずれよりも顕著に上昇した柔軟性強度を有することを示す。当業者なら、本明細書中開示される硬化性樹脂組成物の各種実形態に同様な利益を予想すると思われる。
【国際調査報告】