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特表2023-538896電気化学を用いた金属のIN-SITUで制御された溶解
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】電気化学を用いた金属のIN-SITUで制御された溶解
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/48 20060101AFI20230905BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20230905BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230905BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20230905BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G01N27/48 301
G01N27/30 B
G01N33/543 521
G01N33/553
G01N33/483 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511797
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2021073701
(87)【国際公開番号】W WO2022043477
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】20193267.0
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110634
【氏名又は名称】イーティーエイチ・チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレシュ, ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】タンノ, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ティーフェナウアー, ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ブリッケンシュトルファー, イヴ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045FB03
2G045FB05
2G045FB15
(57)【要約】
本発明は、生体感知用途に適した金属の溶解の分野に属する。本発明は、in-situ制御を可能にし、検体の検出及び定量化に適している、ハロゲン化物の生化学的性質を用いた、金属粒子の電気化学的に制御された分解のための方法及びデバイスを意味する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)自由に浮遊した、又は基板上若しくは内に吸着させた金属片又は金属粒子を提供するステップ
B)不活性な前駆体を含有する溶液に前記金属又は前記金属粒子を接触させるステップ
C)前記不活性な前駆体を含有する前記溶液に電気化学電位を印加し、それによって前記金属又は前記金属粒子を分解する溶液を生成するステップ
を含む、電気化学的に制御された金属の分解のための方法。
【請求項2】
前記不活性な前駆体がハロゲン化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属又は前記金属粒子を分解する前記溶液を電気化学的に生成するための電気化学電位を印加するために少なくとも2つの電極が使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属又は前記金属粒子が、基板上又は内に吸着されており、前記基板が、非導電性基板又は非導電性コーティングされた導電性基板である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
D)前記分解された金属を電気的又は電気化学的に定量化するステップ
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
溶液中の検体の定量化に使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
競合若しくはサンドイッチアッセイとして操作され得るラテラルフローアッセイ内の検体の存在の検出及び/又は検体の定量化のために使用される、及び/又は単一実験で複数の検体の存在を同時に検出するのに使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップD)が、検出電極へのメッキ電位の印加による分解によって引き起こされる金属イオンのメッキと、その後のメッキされた金属イオンの電気化学的溶解によって引き起こされる電流の測定とを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの電極、
自由に浮遊した、又は電気化学回路に直接電気的に接続されていない基板上若しくは内に吸着させた金属片又は金属粒子、及び
不活性な前駆体を含有する溶液
を含み、前記不活性な前駆体を含有する前記溶液への電気化学電位の印加が、前記金属を分解する溶液を生成するのに適している、電気化学的に制御された金属の分解のためのデバイス。
【請求項10】
前記不活性な前駆体がハロゲン化物である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
3つの電極を含み、その2つの電極が、金属を分解する溶液の電気化学的な生成のための電気化学電位の印加に適しており、1つの電極が参照又は制御電極である、或いは
少なくとも4つの電極を含み、これらの電極が:少なくとも2つの作用電極、1つの対電極及び参照若しくは制御電極である1つの電極である、或いは
少なくとも2つのセットの電極を含み、各セットが、少なくとも1つの検出電極、少なくとも1つの溶解電極、少なくとも1つの対電極、及び少なくとも1つの参照電極を含む、請求項9又は10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記金属片又は前記金属粒子が、基板上又は内に吸着されており、前記基板が、非導電性基板又は非導電性コーティングされた導電性基板である、請求項9~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記金属が、検体に特異的に結合できる分子と結合した金属粒子である、請求項9~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
金属を分解する溶液の電気化学的な生成のための電気化学電位の印加に使用されているものと同じではない前記溶解した金属を検出するための電極、及び/又はいくつかの検出領域内に配置された、前記溶解した金属を検出するためのいくつかの電極を含み、各検出領域は単一検体又は特定の検体濃度を意味する、請求項9~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
溶液中の検体の定量化に適している、請求項9~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、生体感知用途に適した金属の溶解の分野に属する。本発明は、in-situ制御を可能にし、検体の検出及び定量化に適している、ハロゲン化物の生化学的性質を用いて金属粒子を溶解するデバイス及び方法を意味する。
【0002】
[発明の背景]
本発明は、金属を電気回路に直接接続しないで電気化学的に制御された反応で金属を分解する新しい方法を含む。金属を分解する伝統的な方法には、電位/電流を直接印加し、それによって電気化学的溶解反応が直接引き起こされることによる溶液中の分解が含まれる。或いは、金属は、酸又はKI/I溶液のようなエッチング溶液を加えることによって分解することができる。本発明は、直接接続されていないか、又は電位によって接続可能で、エッチング溶液を直接加えない金属の分解を可能にする。代わりに、金属は、不活性で、したがって非エッチングの前駆体分子から活性なエッチング分子を局所的に生成することによって分解される。この手法により、直接電気的に接続されていない又は接続できない金属の電気的に制御されたエッチング(制御されたエッチング開始、エッチング停止及びエッチング速度)が可能になる。例えば、非導電性基板上に固定化された金属粒子又は溶液中で自由に浮遊している金属粒子である。本明細書に記載されている技術は、したがって、すすぎ工程又は毒性物質を必要としないで、そのような金属粒子を溶解することができる。さらに、この技術により、バイオアッセイにおける検体の検出が促進される。
【0003】
[発明の概要]
したがって、本発明の目的は、
A)自由に浮遊した、又は基板上若しくは内に吸着させた金属片又は金属粒子を提供するステップ
B)不活性な前駆体を含有する溶液に金属を接触させるステップ
C)不活性な前駆体を含有する溶液に電気化学電位を印加し、それによって金属を分解する溶液を生成するステップ
を含む、電気化学的に制御された金属の分解のための方法を提供することである。
【0004】
発明は、金属又は金属粒子を分解するために使用される方法又はデバイスを含む。用語「金属片又は金属粒子」は、各金属片又は金属合金を意味する。本発明は、金属、金属塩又は金属合金の分解に適している。好ましい金属は:金、鉄又は酸化鉄、銀、白金、カドミウム、テルル、鉛、インジウム、亜鉛、銅、アルミニウム、ゲルマニウム、ニオブ、ストロンチウム、バナジウム、チタン、クロム、水銀、ガリウム、及びパラジウムの群から選択することができる。金属塩は、好ましくは金属の酸化物、硫化物又は硝酸塩であり、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化亜鉛、亜硫酸鉄、酸化金(III)(Au)、硫化亜鉛、及び硫化カドミウム亜鉛からなる群から選択することができる。
【0005】
適当な金属粒子は、コロイド金ナノ粒子、ユウロピウムナノ粒子、磁性粒子、例えばFe粒子又は磁赤鉄鉱(Fe、γ-Fe)粒子、セレンナノ粒子、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、パラジウムナノ粒子、銅ナノ粒子、モリブデンナノ粒子、タングステンナノ粒子、チタンナノ粒子、アルミニウムナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、硫化亜鉛ナノ粒子、硫化カドミウムナノ粒子、硫化鉛ナノ粒子、及びヒ化ガリウムナノ粒子である。好ましいのは、バイオアッセイのラベルとして使用できる金属粒子である。一実施形態では、金属粒子はコロイド粒子である。したがって、金属粒子は、非常に低い濃度で検出できるはずであり、生体認識分子と結合後に金属粒子の特性を保持しているはずである。最も好ましいのは、金ナノ粒子及び銀ナノ粒子である。
【0006】
本出願のステップB)では、金属は、不活性な前駆体を含有する溶液に接触する。これらの溶液は、金属を分解しないので、最初のエッチング速度は0である。不活性な前駆体は、金属を分解又はエッチングできる活性物質又は分子に転換(変換)され得る金属を分解又はエッチングできない分子であり得る。不活性な前駆体は、好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンは、負に帯電したハロゲン原子である。ハロゲン化物イオンは、ヨウ化物(I)、フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)及びアスタチン化物(At)からなる群から選択することができる。溶液は、2つ以上の異なるハロゲン化物イオンの混合物も含有していてもよい。好ましいハロゲン化物イオンはヨウ化物である。ハロゲン化物イオン、特にヨウ化物は、通常、ハロゲン化物塩を溶液に溶解させることによって加えられる。好ましい塩はヨウ化物塩である。ヨウ化物塩は:KI、NaI、LiI、HI、RbI、CsI、CuI、AgI、AuI、AtI、IBr、ICI、又はTiIを含む群から選択することができる。
【0007】
不活性な前駆体は、使用した金属の総量を分解するのに十分な量で存在又は使用してもよい。適当な濃度は、体積、電極の大きさ、及び分解すべき金属の量などの異なる特徴によって決まる。不活性な前駆体の量は、1μM~1M、好ましくは0.1~100mM、好ましくは0.5~50mM、さらにより好ましくは1~20mMの範囲であってもよい。
【0008】
方法のステップB)は、基板上への乾燥した不活性な前駆体分子の析出によって実施することができる。別の実施形態では、不活性な前駆体は、個々の基板に吸着させてもよい。第2のサブステップでは、乾燥した不活性な前駆体を溶解する。前駆体は、方法のセットアップまで溶媒をピペッティングすることによって溶解することができる。適当な溶媒は、水(HO)又は水性溶液(緩衝溶液、塩溶液、酸性、若しくは塩基性溶液、有機溶媒含有溶液、油含有乳濁液、又はヒドロゲルなど)である。不活性な前駆体は、検出すべき検体を含有する流体試料(唾液、血液、尿、涙液、汗、環境試料、乳など)によって溶解することもできる。加えた溶媒又は試料は、金属が溶解される場所に不活性な前駆体及び/又はその活性生成物及び/又は金属粒子を輸送し得る。或いは、不活性な前駆体を含有する溶液は、ピペッティング又はマイクロ流体注入によって導入することができる。溶液はまた、セットアップに存在していてもよく、ステップB)で金属片又は金属粒子が溶液に加えられる。
【0009】
本発明による方法のステップC)は、「不活性な前駆体を含有する溶液に電気化学電位を印加し、それによって金属を分解する溶液を生成するステップ」を意味する。不活性な前駆体を含有する溶液に電気化学電位を印加するには、少なくとも2つの電極を溶液と接触させ、電極に十分な過電位を印加する。これは、電極に接続された外部電源を取り付けるか若しくはオンにすること又は電気化学反応をさらに加えて必要な過電位を生じさせることによって行うことができる。したがって、本発明の一実施形態は、金属を分解する溶液を電気化学的に生成するための電気化学電位を印加するために少なくとも2つの電極が使用される方法を意味する。これらの電極は、作用電極及び対電極であってもよい。
【0010】
参照電極などの他の電極を用いた実施形態が好ましい。いくつかの作用電極又は作用電極と対電極のセットを使用する実施形態も好ましい。異なる作用電極は、分解電極(第1の作用電極)又は検出電極(第2の作用電極)として使用することができる。電極セットは、多重検出を可能にするマルチ検出アッセイを可能にするように配置することができる。したがって、本発明によるデバイスは、少なくとも5つの電極、金属を分解する溶液を電気化学的に生成するための電気化学電位を印加するための少なくとも2対の電極及び参照又は制御電極である1つの電極を含んでいてもよい。デバイスはまた、複数(2より多く、好ましくは10より多い)セットの電極を含んでいてもよく、各セットは、少なくとも対電極、参照電極、溶解電極及び検出電極を含む。前記セットはまた、2つの対電極、2つの参照電極、2つの溶解電極及び1つの検出電極を含んでいてもよい。
【0011】
したがって、本発明は、金属が最初は電気化学回路に直接電気的に接続されていない方法を意味する。金属の分解は、活性な分解又はエッチング分子の電気化学的な生成によって開始及び制御される。つまり、この方法は、in-situで制御された反応として金属の電気化学的に制御された分解を可能にする。
【0012】
用語「金属を分解する溶液を生成すること」は、不活性な前駆体分子の、金属を分解、エッチング又は溶解できる溶液内の分子(活性な金属分解分子)への転換を意味する。この転換又は反応は、電極上で電気化学反応によって引き起こされ、活性な金属溶解溶液の生成がもたらされる。
【0013】
溶液中の不活性な前駆体としてのヨウ化物の場合、電極上での電気化学反応により、ヨウ化物がヨウ素及び三ヨウ化物に転換されて、金属の分解が行われる。この局所的な活性な金属分解溶液の生成により、金属が外部過電位に直接接続していなくても、金属の電気化学的に制御されたエッチングが可能になる。分解反応速度論は、さらに、溶液中の異なる濃度の不活性な前駆体分子、例えばヨウ化物(又は別のハロゲン化物)などの使用によって制御することができる。その上、活性な金属分解分子の量は、外部印加電源によって、電気化学的に正確に制御することができる。より長い期間印加されるより大きな過電位及び複数の過電位は、より大量の活性な金属分解分子を生成しており、金属の分解がより速くなり(エッチング速度)、電極からさらに離れて金属が分解される(エッチング場所)。さらに、反応速度は異なる材料で大きく異なり得るので、電極材料は制御の要素として使用することができる。所定の場所の所望の金属分解パラメーター、反応速度及び量は、このように、適切な濃度の活性な金属分解分子、例えばヨウ化物を使用することによって、且つ電極材料に適した定電位若しくは電流、電位若しくは電流ステップ、電位若しくは電流ランプ、パルス電位若しくは電流又はその組合せを含むがそれだけには限定されない、適切な外部電力機能を適用することによって、達成することができる。
【0014】
単一酸化インジウムスズ作用電極及びヨウ化物前駆体に適した陽極電位は、1~50mM KIで0.1~60秒間に0.5~2ボルト(炭素参照電極に関して)であってもよい。プロセスは、異なる電位及び/又は異なる材料の複数の電極を制御することによってより正確に制御することができる。これは、第2の電極で陰極反応を引き起こすことにより、溶解化学的性質の減少をもたらす可能性があるヨウ素などの特定の化学製品の過剰生成の回避を可能にする。2つの電極の適切な組合せは、0.1mM~5M KIで10~2000秒間に-1.1V~-0.1Vの範囲の電位における酸化インジウムスズと+1V~+0.2Vの範囲の電位における炭素(炭素参照電極に関して)である。その上、このようなセットアップは、金属の溶解と析出を同時に可能にするという利点がある。出願によっては、析出は、金属の検出に有用であり得る。
【0015】
この方法又はデバイスによって分解された金属は、続いて、陽極ストリッピングボルタンメトリー、インピーダンス分光法又は電極若しくは回路の抵抗素子(例えばナノワイヤ)の金属メッキ後の抵抗変化を含むが、それだけには限定されない既知の金属検出技術によって検出することができる。
【0016】
記載された発明は、金属粒子に含有されている金属の量の電気化学的定量化に使用することができる。このような結果は、金属粒子の大きさ又は数のいずれかを定量化するのに使用することができる。記載された発明を使用した金属粒子の定量化の用途は、分子感知方法又はデバイスであり、ここでは金属粒子と結合させ、続いて記載された方法又はデバイスを使用して金属粒子を定量化することによって分子を定量化する。
【0017】
記載された方法は、生体感知用途内での検体の検出に特に適している。生体分子レポーター分子を使用して検体を検出するアッセイにおける検出及び/又は定量化の方法として使用することができる。したがって、本発明の方法は、免疫アッセイ、例えばラテラルフローアッセイ(LFA)、ワンポットアッセイに関連して使用でき、一般的にマイクロ流体アッセイの検出方法として使用することができる。一般に、本発明の方法は、溶液中の検体の検出及び/又は定量化に使用することができる。検体は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、多糖類、ポリヌクレオチド、代謝産物、ホルモン、毒又は薬物分子のようなどんな種類の分子あってもよい。
【0018】
検体は、どんな種類の試料にも存在していてもよい。バイオセンサー用途の大部分は、臨床分析にある。それには、全血、血清、唾液、汗、涙、血漿、尿、細胞、組織及び他の生物学的試料中の種々の臨床検体の検出が含まれる。さらに適当な試料は:水、燃料、食物、飲料、及び植物からの抽出物である。
【0019】
検体を検出及び/又は定量化できるように、金属粒子は、検体に結合可能な分子と直接又は間接的に結合することができる。バイオセンサー用途は、サンドイッチアッセイ(一般により大きい検体に使用される)又は競合アッセイ(一般に小さい検体に使用される)の原理に基づいていてもよい。バイオセンサー用途は、多重アッセイとしてさらに設計されていてもよい。バイオセンサー用途は、単一実験で複数の検体の存在を同時に検出するのに使用することができる。1つのアッセイ内で測定した検体数は、3より多くてもよく、より好ましくは10よりも多く、又はさらに100よりも多い。
【0020】
バイオアッセイのステップは、関連する分子間の結合を可能にするのに適した条件下で実施しなければならない。これらの条件は、当業者に既知であり、例えば温度、時間、pH値を意味する。1つの条件は、関連する分子が、それらの構造を変えてはならないということである(例えばタンパク質は変性してはならない)。
【0021】
その結果、本方法の一実施形態は、生体分子と結合している金属粒子の分解を含む。生体分子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、アプタマー、ポリヌクレオチド、ポリ炭水化物、例えばオリゴ糖類、又は脂質であってもよい。生体分子は、特定の検体を認識及び結合する能力を有する任意の分子であってもよい。例は、受容体、リガンド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド、抗体、及び抗体フラグメントである。適当な抗体フラグメントは:Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、Fd’フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、scFv(一本鎖)フラグメント、単離されたCDR領域、dsFvダイアボディ、一本鎖抗体、及びその組合せである。金属粒子を標識するためのプロトコル、例えばNHS-エステル変性に基づくプロトコルは、分野内でよく知られている。
【0022】
免疫アッセイでは、金属粒子及び/又は不活性な前駆体が基板に又は基板内に吸着されることが適していることもある。それにより、基板は非導電性基板であることが好ましい。基板は、ガラス板、マルチウェルプレート(微量定量プレート)などのプラスチック板、マイクロ流路壁、多孔質3次元基板(例えば紙、硝酸セルロース膜又はガラス繊維膜)又は非導電性コーティングされた電極であってもよい。基板は、液体輸送が可能な場合がある。
【0023】
本発明の方法を使用すると、試料内の検体を定量化することが可能である。検体を定量化できるようにするには、分解された金属の量を定量化しなければならない。したがって、本発明はさらに、追加の、
D)分解された金属を電気的又は電気化学的に検出及び/又は定量化するステップ
を含有する実施形態を意味する。
【0024】
溶解された金属の検出は、分解反応を引き起こすために使用したものと同じ又は異なる電極を使用して行われる。陽極ストリッピングボルタンメトリー、インピーダンス分光法又は類似の技術に対するメッキ電極抵抗変化は、分解された金属の定量化に適した技術である。
【0025】
ステップ「分解された金属を電気的又は電気化学的に定量化するステップ」は、メッキ電位の印加、続いてメッキされた金属の溶解によって、分解された金属(金属イオン)を電極、例えばメッキ電極又は検出電極にメッキすることを含んでいてもよい。その後のメッキされた金属の溶解により、メッキされた金属の量に比例し、したがって試料中に存在する検体の量に比例する電流が発生する。したがって、本発明の一実施形態は、ステップD)が、検出電極へのメッキ電位の印加による分解によって引き起こされる金属粒子のメッキと、その後のメッキされた金属粒子の電気化学的溶解によって引き起こされる電流の測定とを含む方法を意味する。金属メッキは、分解トリガー電位の印加中又は印加後に行うことができる。
【0026】
本発明の一態様は、
A1)溶液内の検体に特異的な分子と結合している金属片又は金属粒子を提供するステップ
A2)A1)の溶液を、検体に特異的な別の分子が電極に結合し検体を結合させたセットアップに加えるステップ
A3)検体に金属粒子を結合させるステップ
B)不活性な前駆体を含有する溶液に金属を接触させるステップ
C)不活性な前駆体を含有する溶液に電気化学電位を印加し、それによって金属を分解する溶液を生成するステップ
D)分解された金属を電気的又は電気化学的に定量化するステップ
を含み得る、本発明の方法を含むバイオアッセイを意味する。
【0027】
本発明の別の態様は、
A1)溶液内の検体に特異的な分子と結合している金属片又は金属粒子を提供するステップ
A2)A1)の溶液を、検体に特異的な別の分子が電極に結合しているセットアップに加えるステップ
A2’)検体を、検体に特異的で電極に結合している分子に結合させるステップ
A3)検体に金属粒子を結合させるステップ(検体に特異的で金属粒子と結合している分子を介して)
B)不活性な前駆体を含有する溶液に金属を接触させるステップ
C)不活性な前駆体を含有する溶液に、電極を介して電気化学電位を印加し、それによって金属を分解する溶液を生成するステップ
D)分解された金属を電気的又は電気化学的に定量化するステップ
を含み得る、本発明の方法を含むバイオアッセイを意味する。
【0028】
上記のステップの時系列順は、変更しても、同時に行ってもよい。
【0029】
本発明の一態様は、
A1)検体に特異的で基板に結合している分子に近接して少なくとも2つの電極を有する基板を含有するセットアップを提供するステップ
A2)A1)のセットアップに、検体に特異的な別の分子と結合している金属片又は金属粒子を加えるステップ
A3)セットアップに不活性なエッチング前駆体を加えるステップ
B1)A3)のセットアップに検体(例えば試料)を含有する溶液を加えるステップ
B2)溶液に金属粒子及び不活性な前駆体を溶解させるステップ
B3)金属粒子に検体を結合させるステップ
B4)基板上の分子に検体を結合させるステップ
B5)溶液を、A3)のセットアップの電極に接触させるステップ
C)不活性な前駆体を含有する溶液に、電極を介して電気化学電位を印加し、それによって金属を分解する溶液を生成するステップ
D)分解された金属を電気的又は電気化学的に定量化するステップ
を含み得る、本発明の方法を含むバイオアッセイを意味する。
【0030】
上記のステップの時系列順は、変更しても、同時に行ってもよい。近接とは、したがって、少なくとも1つの電極と、検体に特異的で基板と結合している分子との間の距離が10mm以下、好ましくは3mm未満、さらにより好ましくは1mm未満であることを意味する。
【0031】
本発明の別の態様は、
A1)検体に特異的で溶液内で自由に浮遊している分子と結合している金属片又は金属粒子を提供するステップ
A2)A1)の溶液に検体(例えば試料)を加えるステップ
A3)A2)の溶液を、既知量の検体が固定化されているセットアップに加えるステップ
A3)固定化された検体に金属粒子を結合させるステップ
B)不活性な前駆体を含有する溶液に金属を接触させるステップ
C)不活性な前駆体を含有する溶液に電気化学電位を印加し、それによって金属を分解する溶液を生成するステップ
D)分解された金属を電気的又は電気化学的に定量化するステップ
を含み得る、本発明の方法を含むバイオアッセイを意味する。
【0032】
本発明の別の態様は、
A1)検体に特異的な結合分子を介して金属粒子に特異的に結合している基板に結合した既知量の検体分子に近接して少なくとも2つの電極を有する基板を含有するセットアップを提供するステップ
A2)セットアップに不活性なエッチング前駆体を加えるステップ
B1)A2)のセットアップに検体(例えば試料)を含有する溶液を加えるステップ
B2)溶液に不活性な前駆体を溶解させるステップ
B3)基板に結合した検体を、自由に浮遊している検体で置き換え、基板から金属粒子の一部を解離するステップ
B4)溶液を、A3)のセットアップの電極に接触させるステップ
C)不活性な前駆体を含有する溶液に、電極を介して電気化学電位を印加し、それによって残存する金属を分解する溶液を生成するステップ
D)分解された金属を電気的又は電気化学的に定量化するステップ
を含み得る、本発明の方法を含むバイオアッセイを意味する。
【0033】
本発明は、少なくとも1つの洗浄ステップも含んでいてもよく、その場合、未結合の検体分子及び又は未結合の金属粒子は洗い流される。その上、本発明は、金属粒子などのアッセイの異なる成分との非特異的結合をブロックするのに適している可能性がある。当業者は、そのような洗浄又はブロッキングステップが何時必要になるかを知っているか、又は決定することができる。
【0034】
本発明の方法を実施するのに好ましいアッセイは、ラテラルフローアッセイである。ラテラルフローアッセイは、種々の試薬とプロセスステップを1つのアッセイストリップに組み合わせたアッセイのサブセットであり、それによって検体を検出するための高感度で迅速な手段を提供する。ラテラルフローアッセイでは、不活性な前駆体は、結合パッド又は追加の別のパッドに乾燥させて加えることができる。
【0035】
一般的な方法では、検体を含有している可能性のある液体試料は、いくつかの成分の配置からなり得る多孔質担体に加えられる。より具体的には:計測時間、例えば5秒間、又は計測体積、例えば2滴で、多孔質担体のサンプリング末端(「近位末端」とも呼ばれる)における指定領域に導入される。続いて、液体試料は、多孔質担体内を乾燥末端(「遠位末端」とも呼ばれる)の方向へ移動する。多孔質担体中を移動している間、試料は、多孔質担体中に可逆的(一時的)に固定化されたラベルとして作用する金属粒子を可動化する。或いは、金属粒子は、試料溶液と一緒に加えてもよい。検体は結合した金属粒子と相互作用する一方、液体試料及び可動化された金属粒子は、多孔質担体内を検出区域に向かってさらに移動し、ここで同じ検体と結合する試薬は、通常、線の形(ドットであってもよい)に固定又は固定化される。検体が、液体試料中に存在する場合、可動化された金属粒子:検体:固定された試薬という形態の「サンドイッチ」が形成され、得られた金属粒子の濃度は、検出区域において出現する目に見える線をもたらし、その線は陽性の結果を示す。或いは、金属粒子は、本発明の方法を使用して最初に分解されて、検出可能になる。いずれの場合にも、金属粒子、したがって検体は、本発明の金属の分解のための方法を使用して定量化することができる。
【0036】
したがって、不活性な前駆体はまた、試料流体によって溶解され、検出区域に輸送される。吸着した金属粒子を定量化するために、粒子は最初本発明の方法を使用して溶解され、続いて、陽極ストリッピングボルタンメトリー、インピーダンス分光法又は電極抵抗変化によって同じ又は異なる電極を使用することにより、溶解した金属分子が検出される。
【0037】
検出区域の後、対照区域がある場合があり、そこで別の試薬が固定化される。この試薬は、結合した粒子に直接結合する。試験が適切に実施された場合、試薬は対照として機能する。対照は、光学的に、又は記載された本発明の方法で分析することができる。
【0038】
本発明の第2の態様は、上記の方法を実施するためのデバイスを意味する。したがって、本発明の一実施形態は、少なくとも2つの電極、自由に浮遊した、又は電気化学回路に直接電気的に接続されていない基板上若しくは内に吸着させた金属片又は金属粒子、及び不活性な前駆体を含有する溶液を含み、不活性な前駆体を含有する溶液への電気化学電位の印加が、金属を分解する溶液を生成するのに適している、電気化学的に制御された金属の分解のためのデバイスを意味する。
【0039】
不活性な前駆体はハロゲン化物であることが好ましい。その上、上記の方法に関連して開示された全ての態様は、デバイスにも適用されるべきである。デバイスは、電源と電極への導線をさらに含んでいてもよい。その上、デバイスが参照電極をさらに含むことが好ましい。したがって、デバイスの一実施形態は、3つの電極を含む。2つの電極は、金属を分解する溶液の電気化学的な生成のための電気化学電位の印加のためであり、1つの電極は、参照電極である。
【0040】
金属片又は金属粒子は、基板上又は内に吸着でき、ここで、基板は、非導電性基板又は非導電性コーティングされた導電性基板である。デバイスは、基板並びに電極を含有するハウジング及び/又はバッキングを含んでいてもよい。デバイスの推奨される例は、作用、対及び参照電極を含む3電極セットアップの使用である。作用電極は、炭素、グラフェン、カーボンナノチューブ、金、銀、塩化銀、白金、ホウ素ドープダイヤモンド、水銀滴、ビスマス又は酸化インジウムスズのような任意の導電性材料又は導電性材料の組合せで作製されていてもよい。対電極は、炭素、グラフェン、カーボンナノチューブ、金、銀、塩化銀、白金、ホウ素ドープダイヤモンド、水銀滴、ビスマス又は酸化インジウムスズのような任意の導電性材料又は導電性材料の組合せで作製されていてもよい。参照電極は、炭素、グラフェン、カーボンナノチューブ、金、銀、塩化銀、白金、ホウ素ドープダイヤモンド、ビスマス、水銀滴又は酸化インジウムスズのような任意の導電性材料又は導電性材料の組合せで作製されていてもよい。
【0041】
本発明の別の実施形態は、溶解した金属のための少なくとも1つ又は第1の電極対、及び金属を分解する溶液の電気化学的な生成のための電気化学電位の印加に使用する第2の電極対を含有するデバイスを意味する。金属粒子を迅速に分解し、記載された方法又はデバイスを使用して金属の溶解量を正確に測定する目的では、1つより多くの作用電極を含めた2つより多くの電極を含む電極セットアップを使用する必要はないが、有益である。1つの(サブセットの)作用電極(複数可)は、溶解化学的性質をもたらすのに使用できるが、別の(サブセットの)作用電極(複数可)は、溶解した金属の検出に使用でき、溶解化学的性質をもたらすのに関与していない可能性がある。
【0042】
本発明によるデバイスは、溶液中の検体の定量化に適していることが好ましい。したがって、デバイスは、ラテラルフローアッセイなどのバイオアッセイの典型的なセットアップで設計することができる。デバイスは、いわゆるワンポットアッセイを可能にする単一アッセイチャンバーであってもよい。
【0043】
溶解した金属の最も正確な定量化は、マイクロ又はナノサイズの検出作用電極(複数可)を使用することによって実現し得る。信号対雑音比を最大化するために、メッキ中に捕獲された分解した金属の量を最大にすると同時に、発生しているバックグラウンド電流を最小限に抑えるために配置及び接続された複数のマイクロ又はナノサイズの検出作用電極を使用することによって、最良の結果を得ることができる。
【0044】
ある実施形態では、ダイナミックレンジは、異なる検体濃度範囲用に構成された複数の検出領域によって拡大することができる。個々の濃度範囲の組合せであるため、アッセイ又はデバイスの全ダイナミックレンジが増加するように、各領域は異なる薬剤濃度範囲のレポーターである。この効果は、検体結合分子の濃度が一定の又は変化する複数の検出領域によって達成することができる。或いは、金属粒子の電気化学分解時間は、短時間から長時間まで、異なる領域で変化させることができる。これにより、大きなダイナミックレンジが可能になるが、長い分解時間を必要としない場合は迅速な試験結果も維持する。第3の手法は、異なる検出領域で異なる濃度の不活性な前駆体を使用することである。これは、別々の隔離されたチャンネルで多重化することによって達成することができる。したがって、一実施形態は、複数の検出領域を含む本発明のデバイスを意味し、例えば、デバイスの組み合わせた全ダイナミックレンジを増加させるか、又は定量化精度を改善するために、各領域のダイナミックレンジが異なる濃度範囲内にあるように、異なる構成にすることができる。また、いくつかの異なる検体を定量化することも可能である。したがって、一実施形態は、異なる検体の多重検出に適した本発明のデバイスを意味する。多重測定は、時間若しくは場所の両方で、又は互いに隣接して又は互いに重なり合って、或いは異なる金属又は異なる電極を使用することによって、順次実行することができる。
【0045】
本発明はまた、少なくとも1つの基準領域を使用するデバイスを意味する。電気化学的若しくは光学的読出し方法を使用することによる陽性若しくは陰性対照基準又はその組合せ、又は追加的に導入された電気活性化学種などの1つ若しくは複数の電気化学基準である。
【0046】
本発明の別の実施形態は:
少なくとも2つの電極
前記で定義した生体分子と結合し得る金属粒子
溶液に溶解していてもよい前記で定義した不活性な前駆体
を含む、電気化学的に制御された金属の分解のためのキットである。
【0047】
これらのキットは、不活性な前駆体、検体を結合した分子、ブロッキング緩衝液、対照又は標準試薬を溶解させるために溶液をさらに含有していてもよい。分子生物学又は医療診断におけるキットは、特定の方法又は単一のステップを実施するために必要な全ての材料を含むパッケージである。任意の標準的な分子生物学、化学又は医学研究所に存在する標準的な化学物質は、通常含まれていない。それにもかかわらず、これらの標準的な化学物質の一部は、本発明のアッセイ又は方法を適切に実施するのに不可欠であるかもしれない。全ての材料が、科学、診断、及び産業上の用途の大部分で望ましい反応を適切に実行できる量で提供されることを理解されたい。常時ではないが多くの場合、これらの材料は、即時使用可能又は即時使用可能に近い、既に準備された溶液で提供される。既に一緒に加えられている異なる材料の組合せもあり得る。さらなる利点は、このようなキットは、検査済みであることである。したがって、操作者は、診断法の実行可能性を再度証明する必要がなく、少なくともいくつかの対照実験を省くことができる。したがって、キットは、研究、診断、及び産業の実験室で非常に人気のある手段である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明による方法とその方法のためのデバイスの概略図を示す。
図2】検体の検出に適した本発明による方法と、検体の検出及び定量化のためのアッセイチャンバーの概略図を示す。
図3】ラテラルフローアッセイとして配置されている本発明による方法を行うのに適したデバイスの概略図(上面図)を示す。
図4】ラテラルフローアッセイとして配置されている本発明による方法を行うのに適したデバイスの概略図(側面図)を示す。
図5図3に示したデバイスの代替電極設計の上面図を示す。
図6図3に示したデバイスの別の代替電極設計の上面図を示す。
図7図3に示したデバイスの膜形状の代替電極設計の上面図を示す。
図8】異なる標的濃度範囲を構成する複数の検出領域を含む適切なアッセイの例示的な設計を示す。
図9図10から14に示した測定値を取得するために使用したデバイスを示す。
図10】電気絶縁された粒子のエッチングの成功を示す、ウシ血清アルブミンの層によって絶縁された透明な酸化インジウムスズ電極上の金ナノ粒子の光学顕微鏡像を示す。
図11図9のようなセットアップの実験結果をプロットで示す。溶液中のヨウ化カリウムの有無、印加電位サイクルを含めた、時間に対する粒子の散乱強度をプロットしている。
図12】定電位を印加し、ヨウ化カリウムの量を変化させた、図9のようなセットアップの実験結果をプロットで示す。
図13】ヨウ化カリウムが一定量で、印加電位を変化させた、図9のようなセットアップの実験結果をプロットで示す。
図14図15に示した実験測定値を取得するために使用した、本発明による方法の生体感知用途のための概念実証実験デバイスを図示する。
図15】様々な量の金粒子の溶解後の定量的な読み出し電流を含めた、図14のようなセットアップの実験結果をプロットで示す。
【0049】
[好ましい実施形態の説明]
本方法の実施形態についての以下のより詳細な説明は、技術の例示的な実施形態を代表するものであり、全体を通して同様の部分に同じ数字が付けられている。
【0050】
図1は、本発明による方法とその方法に使用するエッチングチャンバーの概略図を示す。チャンバー内には、3つの電極、対電極102、作用電極106及び参照電極104が配置されている。セットアップは、電源100と電極への導線(101、103、105)をさらに含む。Iを含有する溶液は、チャンバー内に充填され、電極及び少なくとも1つの金属粒子(107金など)と接触している。電源がオフである限り、エッチングは起こらない。電源(図1B)の起動により、IからI の局所生成(108;又は他のハロゲン化物分子を用いた類似の反応)及び金属粒子の効率的なエッチングが生じる。第1の反応121でヨウ素元素122が形成され、第2の反応123でこのヨウ素元素は金粒子と反応し、AuI 124が得られる。この反応は、Ag、Pt又は他の金属粒子を溶解するのに使用することもできる。対及び参照電極は、2つの別個の電極であっても、又は1つの電極に融合されていてもよい。
【0051】
図2は、検体の検出に適した本発明による方法と、検体の検出及び定量化のためのアッセイチャンバーの概略図を示す。分子の検出及び定量化のためのアッセイチャンバーである。図2A)では、検体分子204を結合するためのアッセイが完了している。検体204は、受容体分子203(例えば捕獲IgG)と結合しており、金属粒子206は、第2の受容体分子205(例えばレポーターIgG)と結合している。結合アッセイの間、第2の受容体分子205は検体204と結合していた。図2B)では、エッチング反応が開始され、金属粒子206が溶解されて金属イオン220が生じる。溶解電極201と対電極207を使用して電気化学電位が印加されると、エッチング反応が実施される。検出電極202(対電極208)へのメッキ電位の印加は、検出電極202上の金属イオンのメッキをもたらす(電気メッキされた金属イオン240)。メッキされた金属粒子240の電気化学的溶解により、メッキ金属の量に比例し、したがって試料中に存在する検体分子204の量に比例する電流が発生する。
【0052】
図3は、液体試料中の分子の検出に適したラテラルフローアッセイとして配置されている本発明による方法を行うのに適したデバイスの概略図(側面図及び上面図)を示す。図3A)は側面図を示す。試料は、試料パッド300上に堆積され、回収パッド306及び読み出しデバイス307に向かって、パッド及びろ過膜303を通って運ばれる。電極及び試料担体ストリップは、絶縁体317によって分離されている。
【0053】
図3B)は、例示的なラテラルフローアッセイの上面図を示す。基板底面308は、ろ過膜301で分離されている試料パッド300と結合パッド302を支持している。試料担体ストリップ303は、検出領域304と対照領域305を含む。末端に回収パッドが配置されている。
【0054】
図3C)は、下にある構造を明らかにする、パッドと膜のない上面図を示す。ここでは、電極の配置を見ることができ、電極の配置は2回存在し、1セットは試料検出用、1セットは対照ストライプ用である。試験対電極309は、試験参照電極310の隣に配置され、続いて試験作用電極311(溶解電極)が配置される。その隣に試験作用電極312(検出電極)が配置されている。対照用のセットには、対照対電極313、対照参照電極314、対照作用電極(溶解電極)315及び対照作用電極(検出電極)316が含有されている。図3D)は、下にある構造を明らかにする、パッド、膜及び絶縁層のない別の上面図を示す。
【0055】
図は、図3に示したデバイスの代替設計である、ラテラルフローアッセイとして配置されている本発明による方法を行うのに適した代替デバイスの概略図(側面図)を示す。1つの違いは、試験作用電極312(検出電極)を含有する基板上面400である。
【0056】
図5は、対照対電極313及び試験参照電極310が試験作用電極312(検出電極)の周りに同心円状に配置された代替電極設計を示す。
【0057】
図6は、本発明によるデバイスに適した検出電極の代替設計である。検出電極312は、1つの領域であってもよく、又は絶縁体317によっていくつかの領域に分離されていてもよい。
【0058】
図7は、図3又は4に示したデバイスの膜形状の代替設計の上面図を示す。膜の厚さは、検出領域304と対照領域305が配置されている中央に向かって減少してもよい(検体溶液の濃度)。
【0059】
図8は、全ダイナミックレンジの増加又は定量化精度の改善又は異なる分子の多重定量化のための、異なる標的濃度範囲を構成する複数の検出領域を含む適切なアッセイの例示的な設計を示す。図8Aに示すとおり、異なる検出領域(800、801、802)は、試料担体ストリップ303に次々に配置され、その後に1つの対照領域305が配置されてもよい。或いは、試料担体ストリップ303は、多重チャネルバリア806、807によって異なるチャネルに分離されていてもよく(例えば平行に配置される)、各チャネルは、1つの各検出領域(800、801、802)及び1つの対照領域(803、804、805)を含有する。個々の検出領域(800、801、802)及び対照領域(803、804、805)が、千鳥形配列を示すことが好ましい。
【0060】
図9Aは、概念実証実験に使用したセットアップを示す。酸化インジウムスズ被覆顕微鏡用スライド(図9Bに示す)は、ウシ血清アルブミンでコーティングされ、続いて金ナノ粒子(40nm)でコーティングされた。スライドは、暗視野顕微鏡を使用したin situ画像法を可能にする開放ウェルを提供するフローセルにさらに搭載された。
【0061】
150mM NaCl溶液を加えた後、金ナノ粒子は、-0.2~1.4Vのサイクリックボルタンメトリーを6サイクル適用している間、一定強度を示す(図10(a)及び図11(a)参照)。図10(b)及び図11(b)に例示されているように、150mM NaCl中のKIの3mM溶液を加えた後、Auナノ粒子は、電気化学電位が印加される前は変化がないままだが、印加電位が1.2Vに達すると非常に迅速にエッチングされる。同じセットアップ(図9)を使用して、図12のヨウ化カリウムの使用量と図13の印加過電位によって決まる溶解反応速度を測定した。
【0062】
図14は、概念実証実験、すなわち3つの電極セットアップとラテラルフローアッセイストリップを含む電気化学ラテラルフローアッセイの概念実証実施形態に使用した別のセットアップを示す。吸着した金ナノ粒子のラインが前記ストリップに加えられ、図14Aに示されている。金ナノ粒子の電気化学的溶解後の同じセットアップが、図14Bに例示されている。金ナノ粒子はビオチンで官能化され、検出/定量化ラインはストレプトアビジンで官能化され、ストレプトアビジンは金ナノ粒子上にビオチンを特異的に結合する。上記の試験ストリップのサイクリックボルタンメトリーを使用した対応する読み出し電流を図15(a)、金ナノ粒子の溶解後(丸)と金ナノ粒子を含まない対照実験(十字形)、に示す。図15(b)は、金ナノ粒子の希釈系列のピーク電流の線形応答を示す。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)自由に浮遊した、又は基板上若しくは内に吸着させた、特定の検体を認識及び結合する能力を有する生体分子と結合している金属粒子を提供するステップ
B)ステップC)まで不活性のままである不活性な前駆体を含有し、前記金属粒子を分解しない溶液に、前記金属粒子を接触させるステップ
C)前記不活性な前駆体を含有する前記溶液に電気化学電位を印加し、それによって前記金属粒子を分解する溶液を生成するステップ
D)前記分解された金属粒子を電気的又は電気化学的に検出又は定量化するステップ
を含む、電気化学的に制御された、生体分子と結合している金属粒子の分解のための方法。
【請求項2】
前記不活性な前駆体がハロゲン化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属を分解する溶液を電気化学的に生成するための電気化学電位を印加するために少なくとも2つの電極が使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
記金属粒子が、基板上又は内に吸着されており、前記基板が、非導電性基板又は非導電性コーティングされた導電性基板である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
競合若しくはサンドイッチアッセイとして操作され得るラテラルフローアッセイ内の検体の存在の検出及び/又は検体の定量化のために使用される、及び/又は単一実験で複数の検体の存在を同時に検出するのに使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップD)が、検出電極へのメッキ電位の印加による分解によって引き起こされる金属イオンのメッキと、その後のメッキされた金属イオンの電気化学的溶解によって引き起こされる電流の決定とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出電極が、酸化インジウムスズから作製されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
生体分子と結合している金粒子を分解するステップ
酸化インジウムスズ作用電極上で、陽極ストリッピングボルタンメトリーを用いて、前記分解された金の量を定量化するステップ
を含み、前記分解及び定量化がヨウ化物の存在下で行われる、生体分子と結合している金粒子の定量化のための方法。
【請求項9】
少なくとも2つの電極、
特定の検体を認識及び結合する能力を有する生体分子と結合している金属粒子であって、自由に浮遊した、又は電気化学回路に直接電気的に接続されていない基板上若しくは内に吸着させた金属粒子、及び
不活性な前駆体を含有する溶液
を含み、前記不活性な前駆体を含有する前記溶液への電気化学電位の印加が、次いで検出又は定量化される前記金属粒子を分解する溶液を生成するのに適している、溶液中の検体の検出又は定量化に適した、電気化学的に制御された金属粒子の分解のためのデバイス。
【請求項10】
前記不活性な前駆体がハロゲン化物である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
3つの電極を含み、2つの電極が、金属を分解する溶液の電気化学的な生成のための電気化学電位の印加をするためのものであり、1つの電極が参照電極である、或いは
少なくとも4つの電極を含み、少なくとも2つの作用電極(溶解電極及び検出電極)電極及び参照電極である1つの電極である、或いは
少なくとも2つのセットの電極を含み、各セットが、少なくとも1つの検出電極、少なくとも1つの溶解電極、少なくとも1つの対電極、及び少なくとも1つの参照電極を含む、請求項9又は10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記金属片又は金属粒子が、基板上又は内に吸着されており、前記基板が、非導電性基板である、請求項9~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
金属を分解する溶液の電気化学的な生成のための電気化学電位の印加に使用されたものと同じではない前記溶解した金属を検出するための電極、及び/又はいくつかの検出領域内に配置された、前記溶解した金属を検出するためのいくつかの電極を含み、各検出領域は単一検体又は特定の検体濃度を意味する、請求項9~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記検出電極が、酸化インジウムスズから作製されている、請求項9~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
生体分子と結合している金ナノ粒子の定量化又は検出に適した、酸化インジウムスズから作製されている作用電極を含む、少なくとも2つの電極を含むデバイスであって、前記定量化のための方法が、
a.生体分子に結合している金ナノ粒子を分解するステップ
b.酸化インジウムスズ作用電極上で、陽極ストリッピングボルタンメトリーを用いて前記分解された金の量を定量化するステップであって、前記分解及び定量化がヨウ化物の存在下で行われるステップ
を含む、デバイス。
【国際調査報告】