(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】溶融加工可能な耐衝撃性繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20230905BHJP
C08L 77/10 20060101ALI20230905BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230905BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20230905BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20230905BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230905BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230905BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20230905BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230905BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230905BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L77/10
C08K3/04
C08K3/38
C08K3/40
C08K3/08
C08K3/22
C08K5/05
C08L23/26
C08L63/00
C08K5/5415
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512056
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 IB2021057571
(87)【国際公開番号】W WO2022038518
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ホッブス,テリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ピュン,ユーミ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB212
4J002BB21X
4J002CD002
4J002CD00X
4J002CL031
4J002CL03W
4J002CL061
4J002CL06W
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA066
4J002DE097
4J002DK006
4J002EC067
4J002EX037
4J002FA046
4J002FD016
4J002GC00
(57)【要約】
繊維強化複合材料は、熱可塑性ポリアミド樹脂のマトリックスと、少なくとも3重量%の少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、7~60重量%の不連続メタアラミド繊維の繊維強化剤とを含む。複合材料は、溶融加工可能であり、且つASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法によって測定した際に少なくとも12ft-lbs/in(640J/m)の値を有する耐衝撃性である。複合材料を使用して、安全物品などの物品を調製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド樹脂を含むマトリックスと、
前記複合材料の総重量に基づいて少なくとも3重量%を構成する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、
前記複合材料の総重量に基づいて7~60重量%の繊維強化剤と
を含み、前記繊維強化剤は不連続メタアラミド繊維を含み、前記複合材料は、溶融加工可能であり、且つASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法によって測定した際に少なくとも12ft-lbs/in(640J/m)の値を有する耐衝撃性である、複合材料。
【請求項2】
前記マトリックスが、脂肪族ポリアミド又は半芳香族ポリアミドを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記繊維強化剤が、1~50ミリメートルの長さを有するメタアラミド繊維を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記繊維強化剤が、1ミリメートル未満の長さを有するメタアラミド繊維を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記繊維強化剤が、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)又はポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)のコポリマーを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記繊維強化剤が、炭素繊維、ホウ素繊維、e-ガラス繊維、s-ガラス繊維、a-ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、グラファイト繊維、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの他の部類の繊維を更に含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料が少なくとも1つの添加剤を更に含み、前記添加剤が、難燃剤、又はマレエート化ポリオレフィン、長鎖アルコール、エポキシポリマー若しくは樹脂、ジルコネート、チタネート、オルガノシロキサン剤、及びこれらの組み合わせから選択される界面改質剤を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
前記複合材料が難燃性添加剤を含み、前記難燃性添加剤がリンを含有する、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記メタアラミド繊維強化剤が、前記複合材料組成物の総重量に基づいて10~50重量%の配合量で存在する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン6,6、又はナイロン9Tを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
繊維強化複合材料を含む物品であって、前記繊維強化複合材料は、
少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド樹脂を含むマトリックスと、
前記複合材料の総重量に基づいて少なくとも3重量%を構成する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、
前記複合材料の総重量に基づいて7~60重量%の繊維強化剤と
を含み、前記繊維強化剤は不連続メタアラミド繊維を含み、前記複合材料は、溶融加工可能であり、且つASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法によって測定した際に少なくとも12ft-lbs/in(640J/m)の値を有する耐衝撃性である、物品。
【請求項12】
前記マトリックスが、脂肪族ポリアミド又は半芳香族ポリアミドを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記繊維強化剤が、1~50ミリメートルの長さを有するメタアラミド繊維を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記繊維強化剤が、1ミリメートル未満の長さを有するメタアラミド繊維を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記繊維強化剤が炭素繊維を更に含む、請求項11に記載の物品。
【請求項16】
前記複合材料が少なくとも1つの添加剤を更に含み、前記添加剤が、難燃剤と、マレエート化ポリオレフィンコポリマー、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、エポキシポリマー及びオリゴマー樹脂、半芳香族ナイロンコポリマー、ブロックコポリマー、ジルコネート、チタネート、オルガノシロキサン剤、及びこれらの組み合わせから選択される界面改質剤とを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項17】
前記繊維強化剤が、前記複合材料組成物の総重量に基づいて10~50重量%の配合量で存在する、請求項11に記載の物品。
【請求項18】
前記物品が、頭部保護物品、顔保護物品、保護メガネ、又はこれらの組み合わせから選択される個人用安全物品を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項19】
前記個人用安全物品が、ヘルメット、フェイスシールド若しくは溶接用物品、マスク、安全メガネ、動力付き空気レスピレータ若しくは動力付き空気レスピレータの構成要素、自給式呼吸器、空気フィルタ、フィルタハウジング、保護イヤウェア、保護ブーツ、又はブーツインサートを含む、請求項18に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融加工可能であり、優れた衝撃特性を示す繊維強化複合材料、及び複合材料から調製される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な複合材料が、広範な物品を調製するために使用されてきた。複合材料(composite material)(一般に「複合材料(composite)」と略記される)は、組み合わされた場合に個々の構成要素とは異なる特性を有する材料を生成する、有意に異なる物理的又は化学的特性を有する2つ以上の構成材料から作製される材料である。個々の構成要素は、完成した構造内で分離して区別されたままであり、混合物及び固溶体から複合材料を区別する。新規の材料は、多くの理由で好ましい場合がある。一般的な例としては、従来の材料と比較した場合に、より強い、より軽い、又はより剛性の材料が挙げられる。
【0003】
複合材料の例としては、鉄筋コンクリート及び石積み、合板(plywood)及びファイバーボードなどの複合木材材料、ガラス繊維強化ナイロンなどの強化プラスチック、セラミックマトリックス複合材料、並びに金属マトリックス複合材料が挙げられる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、溶融加工可能であり、優れた衝撃特性を示す繊維強化複合材料、及び複合材料から調製される物品に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、複合材料は、少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド樹脂を含むマトリックスと、複合材料の総重量に基づいて少なくとも3重量%を構成する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、複合材料の総重量に基づいて7~60重量%の繊維強化剤とを含む。繊維強化剤は不連続メタアラミド繊維を含む。複合材料は、溶融加工可能であり、且つASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法によって測定した際に少なくとも12ft-lbs/in(640J/m)の値を有する耐衝撃性である。
【0006】
物品もまた開示される。いくつかの実施形態では、物品は、繊維強化複合材料であって、少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド樹脂を含むマトリックスと、複合材料の総重量に基づいて少なくとも3重量%を構成する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、複合材料の総重量に基づいて7~60重量%の繊維強化剤とを含む、繊維強化複合材料を含む。繊維強化剤は不連続メタアラミド繊維を含む。複合材料は、溶融加工可能であり、且つASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法によって測定した際に少なくとも12ft-lbs/in(640J/m)の値を有する耐衝撃性である。いくつかの実施形態では、物品は、個人用安全物品を含む。個人用安全物品の中には、ヘルメット、フェイスシールド、マスク、安全メガネ、動力付き空気レスピレータ若しくは動力付き空気レスピレータの構成要素、自給式呼吸器、空気フィルタ、フィルタハウジング、保護イヤウェア、保護ブーツ、又はブーツインサートが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
広範な複合材料が、広範な物品を調製するために使用されてきた。複合材料(composite material)(一般に「複合材料(composite)」と略記される)は、組み合わされた場合に個々の構成要素とは異なる特性を有する材料を生成する、有意に異なる物理的又は化学的特性を有する2つ以上の構成材料から作製される材料である。個々の構成要素は、完成した構造内で分離して区別されたままであり、混合物及び固溶体から複合材料を区別する。新規の材料は、多くの理由で好ましい場合がある。一般的な例としては、従来の材料と比較した場合に、より強い、より軽い、又はより剛性の材料が挙げられる。
【0008】
多くの複合材料は、強化材料の格子を形成し、この格子を硬化性マトリックス材料で囲み、マトリックスを硬化させて複合材料を形成することによって形成される。例としては、金属棒(鉄筋)の格子を形成し、次いでコンクリートを格子の周りに注いで硬質化させる鉄筋コンクリートが挙げられる。別の例は、FRP(繊維強化ポリマー又は繊維強化プラスチック)であり、この場合、プリフォームと呼ばれる強化繊維の布又は繊維ウェブを硬化性樹脂(熱硬化性エポキシなど)によって取り囲み、次いで硬化性樹脂を硬化させて複合材料を形成する。繊維強化複合材料は広く知られており、40年以上にわたって様々な用途で工業的に使用されてきた。トウの形態で又は織布として連続繊維を利用する複合材料は、優れた機械的特性を示し、連続繊維複合材料として一般に知られている。
【0009】
これらのタイプの複合材料は非常に有用であるが、連続繊維を利用せず、複合材料全体が溶融加工可能である複合材料が依然として必要とされている。このような複合材料は不連続繊維複合材料と呼ばれ、典型的には長さ25mm未満の合成繊維を使用する。不連続繊維複合材料は、熱硬化射出成形又は熱可塑性射出成形などの一般的なプラスチック加工技術によって、高度に湾曲した形状を含む多種多様な形状に形成することができる。不連続繊維複合材料は、当該技術分野において周知であり、様々な用途において広く使用されている。これらとしては、合成ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、又はアラミド繊維で強化されるポリアミド(ナイロン)熱可塑性樹脂が挙げられる。不連続ガラス繊維強化及び炭素繊維強化ナイロンは非常に良好な機械的特性を有することが知られているが、不連続アラミド強化熱可塑性ナイロンは、引張強度及び衝撃強度などの機械的特性が比較的劣っている。これは、優れた衝撃特性を示す連続アラミド繊維複合材料及びアラミド織布とは正反対である。実際、熱硬化性エポキシで製造された連続アラミド複合材料は、小口径銃器に対してであっても弾道特性を有することが知られている。これらの複合材料は軽量及び耐衝撃性の両方であるので、様々な航空機及び船舶用途に使用され、連続ハイブリッド複合材料を形成するためにガラス繊維又は炭素繊維を含むことが多い。一方、不連続アラミド強化熱可塑性プラスチックは、連続アラミド繊維複合材料とは反対の特性を有することがよく知られており、耐衝撃性が低く、非常にノッチ感度が高い。
【0010】
耐衝撃性は、非常に重要な工学設計要件であることが多く、工学設計中に材料の選択で使用される製品特徴である。耐衝撃性は、最終使用用途に応じて様々な技術によって測定することができる。プラスチック及び複合材料の両方について材料製造業者によって多くの場合使用される1つの試験方法は、ノッチなしアイゾット衝撃試験(unnotched Izod impact test)(ASTM D4812に従う)と呼ばれる。この試験では、棒の一端を万力に垂直に保持し、制御された条件下で打撃装置によって棒を打撃する。試験棒を破壊するのに必要なエネルギーを記録する。この試験方法は、特定の環境条件下で2つ以上の異なる材料を比較するために日常的に使用されている。
【0011】
不連続アラミド複合材料は耐衝撃性が低いにもかかわらず、他の望ましい特性を有するので、これらの複合材料に相当な努力が向けられてきた。短アラミド繊維強化ナイロンなどの当該技術分野で公知の不連続アラミド複合材料は、それらのガラス強化対応物と比較して1つの利点:優れた耐摩耗性を有する。結果として、それらは、摺動部品、ギア、スプロケット、ピニオンなどの特殊用途に商業的に使用されている。これらの複合材料は、ノッチなしアイゾット(ASTM D4812)により測定した際に衝撃強度が典型的には9~10ft-lbs/inである低い衝撃特性にもかかわらず、優れた耐摩耗性を有することがよく知られている。そのような不連続アラミド繊維複合材料は、RTP company,Celanese Inc.及びDuPont,Inc.を含む様々なプラスチック配合業者から入手可能である。長繊維アラミドナイロン複合材料も当該技術分野で公知であり、Celaneseによって市販されている。より長い繊維長(12mm)にもかかわらず、35重量%のアラミド繊維を有するこれらの材料は、依然として低い衝撃強度(10ft-lbs/in.)を有する。比較すると、35重量%の繊維を有する市販の長ガラス繊維複合材料は、優れた衝撃強度(16~20ft-lbs/in)を有する。耐衝撃性、剛性、強度、及び耐薬品性のそれらの優れた組み合わせから、ガラス強化ナイロンは、最近45年間にわたって最も広く使用された工学材料の1つである。
【0012】
本明細書では、優れた衝撃特性及びホットメルト加工性を含む様々な望ましい予想外の特性を有する新しい部類の不連続アラミド繊維複合材料が提示される。これらの複合材料は、33ft-lbs/in.を超え得るノッチなしアイゾット衝撃値を有し、これにより、様々な工業、医療、及び安全用途のための工学熱可塑性材料として非常に有用になる。優れた衝撃特性から、本開示の複合材料は、ナイロン、ガラス強化ナイロン、ポリカーボネート、アセタール、及びポリエステルなどの従来の工学熱可塑性材料を置き換えるのに特に有用である。本明細書では、ナイロンマトリックスと、耐衝撃性改良剤と、不連続メタアラミド繊維と、を含有する、そのようなタイプの複合材料が開示される。繊維の不連続性とは、繊維がマトリックス中に分散され、個別の長さを有することを意味する。不連続繊維複合材料は、短繊維複合材料(1mm以下の繊維長を有する)又は長繊維複合材料(成形前の平均繊維長が1~50mm、典型的には約12mmである)として更に分類することができる。不連続繊維複合材料は、通常、最初の出発繊維長及び製造中の成形条件に応じた繊維長の分布を有すると理解すべきである。
【0013】
メタアラミド繊維は、KEVLAR又はポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)などのパラアラミド繊維ほどよく知られておらず、パラアラミドとは異なる特性を有する。市販のメタアラミド繊維は、ポリマーであるポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)に基づく。メタアラミド繊維とパラアラミド繊維との間の特性の違いは、ポリマー主鎖のフェニレン環上の置換部位が異なる部位であることの直接的な結果である。置換部位がフェニレン環上の1,4位にあるより線状のパラアラミドポリマーとは対照的に、メタアラミド系ポリマーでは置換部位がフェニレン環上の1,3位にあるという事実のために、メタアラミドポリマーは、ポリマー主鎖の固有のねじれを有する。メタアラミド繊維は、それらのパラアラミド対応物と比較して有意に弱く、より低い結晶化度、より低いガラス転移温度、及びより低い熱安定性を有することが周知である。加えて、それらはより低い分子配向及び引張弾性率を有する。しかしながら、メタアラミド繊維はパラアラミド繊維よりも少なくとも4倍弱いにもかかわらず、それらは依然として比較的強く、引張強度は一般的な合金鋼と同様である(600~800MPa)。加えて、パラアラミド繊維とは異なり、メタアラミド繊維は非常に延性であり、パラアラミド繊維の3~4%の伸びと比較して20%を超える破断伸び値を有する。理論に束縛されるものではないが、不連続メタアラミド繊維を使用する利点の1つは、それらが溶融加工中に比較的柔軟であり、それらのより低い剛性及びより高い延性に起因して、それらの繊維長をより良好に保持することができる(すなわち、加工中に破断しない)ことであると考えられる。また、本開示の複合材料は、特定のナイロンマトリックスポリマーへのメタアラミド繊維のより良好な繊維接着性、メタアラミド繊維のより高い延性、及び繊維のより低い剛性の組み合わせから、非常に強靭であると考えられる。これらの特徴の全ては、柔軟性及び耐衝撃性を改善し、衝撃荷重が複合材料においてより均一且つ広く分布することを可能にする。本開示の複合材料は、延性材料としても機能し、脆性破壊することなく大きな歪み(>15%)の適用に耐えることができる。これは、より低い歪みで破壊する従来の複合材料(ガラス繊維複合材料及びパラアラミド繊維複合材料など)と比較して、エネルギー吸収の増加という別の機構を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示の複合材料は、界面改質剤を更に含む。メタアラミド繊維とマトリックスナイロンとの間の界面接着性は、複合材料中に界面改質剤を添加することによって改善又は最適化することができると考えられる。いくつかの実施形態では、本開示の複合材料は、不連続アラミド繊維と共に界面改質剤を使用することによって、非常に高い衝撃強度を有する。理論に束縛されるものではないが、特定の界面改質剤は、繊維表面及びナイロン樹脂の両方に共有結合することができると考えられる。改質剤はまた、強化繊維の表面エネルギーを変えることができ、及び/又は水素結合力を高めることができる。これらの改質剤は、場合により、繊維表面で同種親和性(like-like)若しくは極性相互作用を強化すること、又は更には繊維表面で鎖の絡み合いを作り出すことができる。
【0015】
本開示の複合材料は、優れた衝撃特性を有し、当該技術分野で公知の不連続アラミド繊維熱可塑性複合材料と比較してはるかに優れている。いくつかの実施形態では、複合材料は、市販されているほとんどの短ガラス繊維強化ナイロン及び短炭素繊維強化ナイロンよりも更に優れているほど高い衝撃強度(例えば、ノッチなしアイゾット値>34ft-lbs/in)を有する。結果として、本開示の複合材料は、ガラス強化ナイロン及びガラス強化ポリエステルを含むこれらの従来の短繊維複合材料の代替品として非常に有用である。ガラス強化繊維は摩耗性で、より高い密度を有し得るので、ガラス強化繊維の代替品が望ましい。対照的に、メタアラミド不連続繊維を有する本開示の複合材料は非摩耗性であり、より低い密度を有する。結果として、射出成形などの製造操作中、本開示の複合材料を用いたモールド及びスクリューの工具寿命は、ガラス充填材料と比較して10~20倍長くなり得る。これは、数年にわたる部品当たりのコストに有意な影響を及ぼすことができる。
【0016】
更に、本開示の複合材料は、非常に低い密度を有する。これは、ガラス繊維と比較して密度が低い(1.37g/cc対2.70g/cc)メタアラミド繊維の使用に起因する。低密度及び高衝撃強度から、本明細書に開示される複合材料は、自動車部品、航空機部品、並びにレスピレータ、ヘルメット、防火製品、ゴーグル、及び溶接シールドが挙げられるがこれらに限定されない安全製品の構成要素を含む軽量用途に非常に有用である。
【0017】
既に言及したように、連続繊維強化複合材料は、製造された部品の長さにわたって延び、強度及び耐衝撃性を提供する、長い、概して連続した繊維を有する。不連続繊維の使用は、引張強度又は曲げ強度などの連続繊維で得られた優れた強度特性を与えるとは予想されない。しかしながら、不連続メタアラミド繊維を使用する本複合材料は、耐衝撃性及び延性において予想外に大きな特性改善を有し、それらはより低い密度も有することが見出された。
【0018】
不連続繊維を有する複合材料は、不連続繊維を熱可塑性マトリックス材料と混合することによって調製することができる。複合材料は、二軸押出機又は単軸押出機などの高剪断混合又は低剪断混合を伴う様々な方法によって配合及び調製することができる。ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、及びパラアラミド繊維などの更なる不連続繊維を複合材料に含めることができる。いくつかの繊維、特に比較的硬いガラス繊維は、加工装置及びモールドに対して摩耗性であることがあり、これは、前述のように、望ましくないことがある。
【0019】
強く柔軟性の複合材料に対する1つの必要性は、個人用安全物品の使用におけるものである。例としては、ヘルメット、フェイスシールド、保護メガネ、再利用可能なレスピレータなどが挙げられる。これらの物品は、広範囲の形状になり、望ましくは軽量である。耐衝撃性は、このような物品にとって特に重要である。耐衝撃性は、物理的変化を受けることがない機械的衝撃に対する材料の耐性の尺度である。耐衝撃性は、様々な方法で測定することができる。前述のように、耐衝撃性を測定するのに特に有用であることが見出された1つの試験は、実施例のセクションに記載されているように、ASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法である。この試験は、プラスチック産業において広く使用されており、2つ以上の材料を互いに直接比較することを可能にする。
【0020】
別途指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる特徴部寸法、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解するものとする。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。端点による数値範囲の記載には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明示していない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。例えば、「層」についての言及は、1つ、2つ、又はそれ以上の層を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、用語「又は」は、内容が別途明示していない限り、「及び/又は」を含む意味で全般的に用いられる。
【0022】
用語「熱可塑性」は、ポリマー技術分野において一般に理解されている定義と一致して使用され、特定の高温で柔軟又は成形可能になり、冷却すると固化するプラスチックポリマー材料を指す。固化が恒久的である熱硬化性材料とは異なり、熱可塑性材料では、柔軟になるための加熱及び冷却時の固化のサイクルを多数回繰り返すことができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「ポリアミド」は、ポリアミド結合を有するポリマーを指す。本明細書におけるポリアミドは、「ナイロン」という用語と互換的に使用されることが多い。アミド結合は、-(-Rb-(CO)-NRa-Rc-)-[式中、Rbはアルキレン基又はアリーレン基であり、Raは水素又はアルキル基であり、Rcはアルキレン基又はアリーレン基であり、(CO)はカルボニル基-C=Oである]の型のものである。ポリアミド(ナイロンと呼ばれることも多い)は、ジアミン及び二塩基酸との縮合、又は単一分子中にアミン及び酸官能基の両方を含有するアミノ酸の縮合のいずれかから作製される。本明細書で使用される場合、用語「アラミド」は、アミド結合により連結した少なくとも85%のアリール基を含有するポリアミドを指す。
【0024】
用語「室温」と「周囲温度」とは、互換的に使用され、20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0025】
用語「Tg」及び「ガラス転移温度」は、互換的に使用される。測定する場合、Tg値は、別途指示がない限り、10℃/分の走査速度で示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。典型的には、コポリマーのTg値は測定されないが、当業者に理解されるように、モノマー供給業者によって提供されるホモポリマーTg値を使った周知のFox式を用いて計算される。
【0026】
2つの層を指すとき、本明細書で使用する場合、用語「隣接する」は、2つの層が互いに近接しており、それらの間に介在する開放空間がないことを意味する。これらは、互いに直接接触していてもよい(例えば、一緒に積層されてもよい)、又は介在層が存在してもよい。
【0027】
用語「ポリマー」及び「高分子」は、本明細書において、化学における一般的な使用法と一致して使用される。ポリマー及び高分子は、多くの繰り返しサブユニットから構成される。本明細書で使用する場合、用語「高分子」は、複数の繰り返し単位を有するモノマーに結合した基を説明するために使用される。用語「ポリマー」は、重合反応から形成された得られた材料を説明するために使用される。
【0028】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンの基である一価の基を意味する。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、1個~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1個~18個、1個~12個、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である一価の基を指す。アリールは、芳香環に接続している又は縮合している、1個~5個の環を有し得る。その他の環構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
用語「アルキレン」は、アルカンの基である二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、多くの場合、1個~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1個~18個、1個~12個、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子上にあってもよく(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあってもよい。
【0031】
用語「アリーレン」は、炭素環でありかつ芳香族である二価の基を指す。この基は、接続しているか、縮合しているか、又はこれらの組み合わせである、1個~5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、最大5個の環、最大4個の環、最大3個の環、最大2個の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであってもよい。
【0032】
用語「ヘテロアルキレン」は、チオ、オキシ、又は-NR-[式中、Rはアルキルである]によって接続された、少なくとも2つのアルキレン基を含む、二価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖状であるか、分枝状であるか、環状であるか、アルキル基によって置換されているか、又はこれらの組み合わせであってもよい。一部のヘテロアルキレンは、ヘテロ原子が酸素であるポリオキシアルキレン、例えば、
-CH2CH2(OCH2CH2)nOCH2CH2-などである。
【0033】
本明細書では、複合材料が開示される。いくつかの実施形態では、複合材料は、少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド樹脂を含むマトリックスと、複合材料の総重量に基づいて少なくとも3重量%、例えば3~35重量%を構成する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、不連続繊維強化剤とを含む。繊維強化剤は不連続メタアラミド繊維を含み、複合材料は、溶融加工可能であり、且つASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法によって測定した際に少なくとも12ft-lbs/in(640J/m)の値を有する耐衝撃性である。
【0034】
複合材料は、少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド樹脂を含むマトリックスを含む。広範囲のポリアミド樹脂が好適である。ポリアミド樹脂であるマトリックスは、メタアラミド繊維強化剤との相溶性を促進すると考えられる。理論に束縛されるものではないが、ポリアミド樹脂はアラミド繊維の表面と水素結合し、それによって接着を促進することができると考えられる。更に、マトリックスナイロン中の高濃度の芳香族基は、繊維表面での混和性を改善すると考えられる。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド又は半芳香族ポリアミドである。熱可塑性ポリアミドは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。熱可塑性ポリアミドの混合物及びブレンドも使用してよい。
【0035】
好適なポリアミド材料は、一般式1:
【化1】
[式中、A及びBは独立してアルキレン、ヘテロアルキレン、アラルキレン、又はアリーレン基であり、(CO)はカルボニル基、-C=Oであり、R
1は水素原子又はアルキル基である]の繰り返し単位によって記載することができる。A又はBのうちの少なくとも1つがアラルキレン基又はアリーレン基である場合、ポリアミドは半芳香族と記載される。概ね、基A及びBは、1~20個の炭素原子を含み、1個以上のヘテロ原子、概して酸素、窒素又は硫黄を含有してもよい。いくつかの実施形態では、基A及びBは、1~15個の炭素原子又は更には1~10個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、ポリアミドは、ナイロン6,6としても知られるポリ(ヘキシレンアジペート)などのA-B型コポリマーである。
【0036】
多くの場合、ポリアミドポリマーは、反応スキーム1:
【化2】
[式中、A及びB及びR
1は、上記のとおりである]に示されるように、二酸(又はハロゲン化アシルなどの等価物)とジアミンとの縮合反応から調製される。
【0037】
広範囲の熱可塑性ポリアミド樹脂が好適である。これらとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ナイロン6,10、ナイロン9T、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)としても知られるナイロン6I、PPA、及びテレフタル酸又は他の芳香族酸をビルディングブロックとして利用する高温ナイロン(HTN)樹脂などの市販のナイロンが挙げられる。更に、主要なポリマー成分としてポリアミド又はコポリアミドを構成するナイロンブレンドを使用してもよい。これらのブレンドは、少量成分としてポリエステル、ポリプロピレン、又はシロキサンコポリマーを利用してもよい。
【0038】
複合材料は、ベースナイロンポリマーの耐衝撃性を改善する添加剤である耐衝撃性改良剤を含む。ナイロン自体が強靭な材料として知られていることは注目に値する。特定の組成物に使用される耐衝撃性改良剤の量は、その組成物の意図される最終使用用途に応じて異なることが多い。耐衝撃性改良剤は、軟質又は硬質材料であり得るが、概して、エラストマー状である、通常は直径が約0.2~3.0マイクロメートルのナイロンマトリックス内に相分離した個別のドメインを形成する材料を損なう。この形態は、ホストポリマーにおける増加した剪断降伏、クレージング、及び場合によってはキャビテーションの既知の機構を使用して、ホストポリマーがエネルギーを吸収する能力を有意に高める。これは、マレエート化オレフィンエラストマー、コアシェル粒子、グラフト化ブロックコポリマー、エポキシ変性ポリマー、エラストマーコポリマー、エチレンターポリマー、アイオノマー、及びコアシェル粒子を含む変性ブタジエンコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない様々なポリマー添加剤材料を耐衝撃性改良剤として使用することによって達成することができる。ナイロン樹脂のための耐衝撃性改良剤の使用は、当該技術分野において公知である。特に好適な耐衝撃性改良剤の中でも、コアシェル粒子及びマレエート化エラストマーがある。市販の耐衝撃性改良剤の例としては、Dow Chemical製のPARALOID EXL 2335及びEXL 2314(MBSコアシェル改良剤)、並びにAddivantから入手可能なROYALTUF 485及びROYALTUF 527が挙げられる。本開示の複合材料組成物において、複合材料の耐衝撃性を向上させるために、1つ以上の耐衝撃性改良剤を使用してもよい。脂肪族ナイロンを有するいくつかの組成物において、耐衝撃性改良剤は、繊維への接着性を改善することによって二次的な役割を果たし得ると考えられる。コアシェル粒子は、所望の形態及び粒径を達成するために高剪断混合を必要としないので、特に有用な耐衝撃性改良剤である。概ね、耐衝撃性改良剤は、複合材料の総重量に基づいて少なくとも3重量%~最大35重量%程度、より典型的には8~25重量%の濃度で使用される。衝撃性能を改善することに加えて、耐衝撃性改良剤は、延性/脆性遷移を変化させることによって低温での複合材料の延性を改善することもできる。本開示の複合材料における耐衝撃性改良剤の全体的な役割は、ナイロンマトリックスを変化させ、降伏を促進することである。これは、複合応力状態において20%を超える歪みであっても非常に延性であるので、以下に記載される複合材料において特に明白である。結果として、最適な濃度に配合された場合、本明細書に記載される組成物は、特に成形部品がほぼ平衡含水率に達することが可能になった後に、非常に強靭であり、実際に分解されにくい。
【0039】
複合材料はまた、不連続メタアラミド繊維である繊維強化剤を含む。メタアラミド繊維は、芳香族環上の1,3位にアミド結合を有する芳香族ポリアミドである。ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)としても知られる周知のメタアラミドの一般構造は、一般式2に示される。このポリマー構造を有するメタアラミド繊維は、例えば、Dupont製のNOMEX及び帝人製のTEIJINCONEXとして市販されている。本明細書において、メタアラミド繊維は、アミドの少なくとも85%がポリマー主鎖中の芳香族基に結合し、アミド基の少なくとも25%が芳香族メタ結合を含む、ポリアミド繊維として定義される。上記のように、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)は、全てメタの結合を含有する周知のメタアラミド繊維である。メタアラミド及びパラアラミド結合の両方を含有する芳香族コポリアミドから調製された繊維は、それらがメタアラミド繊維の上述の定義を満たすのに十分なメタ結合を含有する限り、本開示に従って有用であり得る。本開示の複合材料に好適な市販のメタアラミド繊維としては、Dupont製のNOMEX繊維、帝人の一員であるテイジンアラミド製のTEIJINGCONEX、及びToray Advanced Materials Korea Inc.によるARAWIN繊維が挙げられる。本開示において有用な繊維は、典型的には、10~25マイクロメートルの直径を有し、断面形状が非円形又は楕円形であってもよい。繊維は完全に無傷であり、フィブリル化されていないことが望ましい。フィブリル化は表面積を増加させ得るが、この形態学的特徴は不要であり、加工中の溶融物中で熱可塑性複合材料の粘度を増加させることがある。フィブリル化アラミド繊維の使用は、例えば、欧州特許公開第3,401,355号に教示されている。
【化3】
【0040】
本開示の複合材料中の繊維は不連続であり、これは、繊維が画定された長さの個別の繊維であることを意味する。繊維は、概ね50ミリメートル以下の長さである。しかし、圧縮成形などの特定のプロセスでは、長さが50~62mmなどのより長い繊維を使用してもよい。本開示の溶融加工可能な複合材料での使用に好適な繊維の2つの全般的なカテゴリーが存在する。第1の全般的なカテゴリーは、1mm超の長さの「長」繊維であり、概ね1~50ミリメートル、又は更には1~20ミリメートルの長さを有する。第2の全般的なカテゴリーは、1ミリメートル未満の長さの「短」繊維である。
【0041】
繊維強化剤は少なくともメタアラミド繊維を含んでおり、他の繊維も含んでよい。いくつかの実施形態では、繊維強化剤は炭素繊維を更に含む。炭素繊維は、概して、繊維強化剤の少量成分として存在し、これは、炭素繊維が繊維強化剤の総重量の50重量%未満として存在することを意味する。しかしながら、構造部品については、炭素繊維が繊維強化剤の総重量の60~75重量%などのより高い濃度であることが有用であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の複合材料は、優れた衝撃特性及び低密度の両方を有するメタアラミド繊維と炭素繊維とのハイブリッド複合材料である。メタアラミド繊維強化剤単独と比較して、メタアラミド及び炭素繊維の両方を使用するこれらのハイブリッド材料は、より高い熱変形温度(HDT)、より高い剛性、並びにより高い曲げ強度及び圧縮強度を含む有益な特性の数が増加する。このような複合材料は、優れた機械的特性の全体的バランスを有し、25ft-lbs/inを超えるノッチなしアイゾット衝撃値を有する優れた耐衝撃性を依然として維持する。更に、機械的特性及び密度は、組成物中のメタアラミド繊維及び炭素繊維の百分率割合を調整することによって、所与の用途のために「調整」することができる。炭素繊維を有するハイブリッド複合材料は、耐溶剤性、低密度、高耐衝撃性、高強度、高剛性、優れた耐摩耗性、及び高温耐性(>100℃)などの望ましい特性の全体的バランスを示すので、それらは、可動部品及び固定部品を含む多数の用途において商業的に使用することができる。例としては、機械部品、レバー、工具、ねじ、ギア、コンベヤ部品、繊維機械部品、農業及び加工装置、化学及び流体ポンプ、自動車構成要素部品、航空宇宙部品、エンジン構成要素、冷却系部品、オフロード用ビークル(off road vehicles)、スポーツ用品用途、ボルト、ねじ付きアセンブリ、家庭用及び業務用器具、精密機械加工部品、並びに船舶用途が挙げられる。これらの材料はまた、広範囲の安全及び工学用途に非常に有用である。1つの非限定的な例は、軽量部品用の工学材料としてのアルミニウム及び鋳造マグネシウム合金の代替物である。これらのハイブリッド繊維強化ナイロン複合材料はまた、多くの産業にわたって成形品を製造するために大量に使用される従来のガラス強化ナイロンを置き換えるのに非常に有用である。いくつかの実施形態では、ハイブリッド複合材料は、異なる繊維長の繊維を利用してもよい。例えば、短炭素繊維と長メタアラミド繊維との組み合わせを使用することができ、又は短炭素繊維と短アラミド繊維などの異なる組み合わせを使用することができる。後者は、非常に薄い壁の部品又は成形部品における非常に微細なフィーチャを射出成形するのに有用であり得る。別の実施形態では、ハイブリッド複合材料は、以下に記載されるような難燃剤を更に含んでもよい。このような複合材料は、電気的、電子的、及び防火用途に有用である。
【0042】
いくつかの実施形態では、繊維強化剤は、メタアラミド繊維に加えて、炭素繊維以外の合成繊維を含有することができる。これらの繊維としては、e-ガラス繊維、s-ガラス繊維、a-ガラス繊維、グラファイト繊維、ホウ素繊維、金属繊維、他のアラミド繊維、ステンレス鋼繊維、及びセラミック繊維が挙げられる。メタアラミド繊維とガラス繊維との組み合わせは、コストが低くなり、加工が容易であり、特性のバランスがとれているので、特に好適である。
【0043】
広範囲の繊維配合量が、本開示の複合材料に好適である。いくつかの実施形態では、繊維強化剤は、複合材料組成物の総重量に基づいて7~60重量%、いくつかの実施形態では、10~50重量%の配合量で存在する。
【0044】
上記の熱可塑性ポリアミド樹脂、耐衝撃性改良剤、及び繊維強化剤に加えて、複合材料は、他の追加の任意選択の添加剤を更に含んでもよい。任意選択の添加剤は、上記の望ましい特性を向上させることができ、又は更なる望ましい特性を提供することができる。好適な任意選択の添加剤の例としては、難燃剤、界面改質剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの難燃剤が複合材料に添加される。ハロゲン化及び非ハロゲン化難燃剤を含む広範囲の難燃剤が好適である。特に好適な部類の難燃性添加剤は、金属ホスフィン酸塩及び赤リンを含むリン含有難燃剤である。別の有用な部類は臭素化ポリマー難燃剤である。赤リンは、比較的低い濃度でナイロン複合材料組成物において有効であるので、特に望ましい難燃剤である。特に、赤リンは、約7重量%の濃度でナイロン複合材料において有効な難燃剤であり得る。10重量%未満を使用することができるので、赤リンが衝撃性能に有意に悪影響を及ぼすとは予想されない。他の難燃剤は、有効であるためにより高い濃度、典型的には20~25重量%を必要とし、これらのより高い濃度は、複合材料の衝撃性能又は他の望ましい特性に悪影響を及ぼし得ることが予期される。
【0046】
広範囲の界面改質剤が本開示の複合材料に含めるのに好適である。界面改質剤は、これらの複合材料において様々な役割を果たすことができる。これらの役割としては、繊維とマトリックスとの接着性を向上及び/又は最適化すること、溶融粘度を減少させること、成形での応力を減少させること、界面張力及び溶融粘度を減少させること、並びに繊維及び/又は耐衝撃性改良相への応力移動を改善することが挙げられる。これらの役割の多くは、衝撃性能を改善するのに役立つ。いくつかの界面改質剤は、繊維強化剤と熱可塑性ポリアミドマトリックスとの相溶化剤としても機能し得る。反応性基を含有する低分子量官能性有機化合物、コポリマー、及びポリマーを含む、広範囲の界面改質剤が好適であり得る。好適な界面改質剤の例としては、マレエート化ポリオレフィンコポリマー、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、エポキシポリマー及びオリゴマー樹脂、半芳香族ナイロンコポリマー、ブロックコポリマー、ジルコネート、チタネート、オルガノシロキサン剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。後者の3つは、合成強化繊維の表面を改質するのに特に有用である。半芳香族ナイロンコポリマー及びポリマーは、メタアラミド繊維と同様の溶解度パラメータを有し、水素結合及び極性相互作用を介して接着性を改善するセグメントを含有し得るので、有用であり得る。更に、高温下では、それらは絡み合い、バルクナイロンマトリックスとのアミド交換反応を受けることができる。したがって、それらは相互作用し、繊維とマトリックスとの間の接着性を改善する。マレエート化ポリオレフィン、マレエート化オレフィンコポリマー、及びエポキシ官能性ポリマーなどのマレエート化ポリマーは、ナイロンマトリックス及び/又は繊維強化剤と化学的に反応することができるので、特に有用である。これは、ポリマー鎖を特定の材料相に共有結合的にグラフトすること、及び化学的適合性を作り出す又は改善する手段を提供することの両方に役立つ。繊維界面におけるこの表面改質は、極性官能基(アミド結合を含む)の生成を含み、これは、水素結合及び/又は他の極性力(すなわち、双極子相互作用)を介して界面接着性を強化し、ポリマーグラフト化を介して接着性を改善することができる。繊維表面などの1つの材料相に共有結合したポリマー鎖は、ナイロンマトリックス相又は耐衝撃性改良剤相中のポリマー鎖と自由に絡み合い、相互作用し、及び/又は結晶化する。
【0047】
本開示の複合材料に有用な他の好適な添加剤及び改質剤としては、充填剤、潤滑剤、加工助剤、水分スカベンジャー、鎖延長剤、熱安定剤、UV吸収剤及び安定剤、腐食防止剤、酸化防止剤、金属塩、着色剤、核形成剤、カーボンブラック、グラスバブルズ、セラミック粉末、フルオロポリマー、並びに可塑剤が挙げられる。いくつかの材料は、多機能であり得る、すなわち、2つ以上の機能を果たし得ることに留意することが重要である。例えば、長鎖アルコール及び長鎖酸は、潤滑剤及び界面改質剤の両方として作用することができる。
【0048】
本開示の複合材料は、様々な技術によって調製することができる。全般的に、材料は2段階プロセスで調製する。第1の工程では、熱可塑性ペレットを調製する。第2の工程では、熱可塑性ペレットを乾燥させ、次いで、それを使用して射出成形、回転成形、又は圧縮成形などの当該技術分野で公知のプロセスによって物品を製造する。
【0049】
熱可塑性ペレットは、低剪断プロセス又は高剪断プロセスのいずれかを使用する様々な技術によって調製することができる。短繊維メタアラミド複合材料を調製する1つの特に好適な方法は、二軸押出機による従来のプラスチック配合を使用する。このプロセスでは、熱可塑性ポリアミド樹脂及び耐衝撃性改良剤は、任意選択の界面改質剤を伴って、バレルの始めで最初に混合され、繊維強化剤は機械バレルの終わりでプロセスの後半部分に導入され、繊維の破断を最小限に抑え、繊維のフィブリル化を防止する。次いで、溶融した材料を冷却し、個別の長さのペレットが形成されるペレット化操作に通す。次いで、これらのペレットを貯蔵し、輸送し、又は後で使用するために取っておくことができる。ペレットを使用して、以下に記載されるような第2の工程を介して様々な物品を形成することができる。
【0050】
複合材料はまた、1段階プロセス、に従って調製することができる:熱可塑性ポリアミド樹脂、耐衝撃性改良剤、繊維強化剤、及び任意選択の添加剤をホットメルト混合した後、溶融物を高温のモールドに直接注入する。様々なホットメルト混合機器を使用する様々なホットメルト混合技術が、好適である。バッチ及び連続混合機器の両方を使用することができる。バッチ法の例としては、BRABENDER(例えば、C.W.Brabender Instruments,Inc.(South Hackensack,NJ)から市販されているBRABENDER PREP CENTER)又はBANBURY内部混合及びロールミリング装置(例えば、Farrel Co.(Ansonia,CN)から入手可能な装置)を使用するものが挙げられる。連続法の例としては、単軸押出、二軸押出、ディスク押出、プランジャー式(reciprocating)単軸押出及びピンバレル単軸押出が挙げられる。連続方法は、分配要素、ピン混合要素、静的混合要素、並びにMADDOCK混合要素及びSAXTON混合要素などの分散要素を利用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、2段階プロセスを使用してペレット形態で調製される。ペレットは、二軸押出機を使用して細断繊維及び他の成分を使用する配合物を含むプラスチック配合産業に公知の技術を使用して調製し、上記のような短繊維複合材料を作製することができる。あるいは、他の実施形態では、長繊維ペレットは、長炭素繊維及び長ガラス繊維ペレットを製造するために商業的に使用される繊維引出成形プロセスを使用して製造することができる。このプロセスにおいては、繊維のトウは、特化した装置を使用して、圧力下で高温ポリマー溶融物を通して引っ張られ、得られた完全に含浸された繊維束は、特定の長さに細断されて円筒形ペレットを形成する。したがって、繊維長はペレットと同じ長さである。このプロセスを使用して、3~60mmのカスタム繊維長を有するメタアラミド繊維を含む長繊維ペレットを製造することができる。引出成形プロセスは、繊維自体が損傷されず、プロセス中に低剪断力のみが短時間、多くの場合25秒未満使用されるので、本開示のペレットを作製するための非常に望ましいプロセスである。次いで、ペレットは、物品及び成形品を製造するための様々な公知の技術によって、第2の工程において引き続き加工することができる。長繊維ペレットを加工するための好適な溶融加工技術としては、射出成形及び圧縮成形が挙げられる。
【0052】
射出成形は、本開示の複合材料ペレットから成形品を製造するための非常に有用な技術である。射出成形は、おそらく、プラスチック成形品及び部品を製造するために世界中で最も広く使用されている技術である。本開示の複合材料は、商業的に使用されるガラス強化ナイロンと同様の方法で加工することができる。成形前に、樹脂ペレットを、典型的には、0.14重量%以下の含水率まで乾燥させる。概して、本開示の複合材料は、成形部品中の空隙を最小限に抑えるのに適切な保持圧力及び時間で、中程度乃至速い射出速度及びより高い成形温度(60~150℃)を使用して成形する。本開示の組成物は、プラスチック、他のポリマー複合材料、発泡体、金属、及びエラストマーと併せてオーバーモールディング又はインサート成形にも有用である。
【0053】
本開示の複合材料ペレットを用いて成形部品を作製するために、圧縮成形、回転成形、オーバーモールディング、押出成形、及び3Dプリンティングを含む他の溶融加工方法を使用してもよい。本開示の組成物は、溶融加工によってフィラメントに作製することもできる。
【0054】
本開示の複合材料は室温で延性であるので、形成プロセスを使用して物品を作製することもできる。「形成」という用語は、圧力下でナイロン複合材料プリフォームを再成型することを意味するために使用される。例えば、本開示のナイロン6,6系複合材料は、180~200℃の温度及び16,000~20,000psiの圧力での単純な形成プロセスで再成型することができる。形成は、溶融プロセスによって達成できない程度の強度及び靭性をもたらすことができる。
【0055】
また、上記の複合材料から調製された物品が開示される。いくつかの実施形態では、物品は、繊維強化複合材料であって、少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド樹脂を含むマトリックスと、複合材料の総重量に基づいて少なくとも3重量%を構成する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、複合材料の総重量に基づいて少なくとも7重量%を構成する繊維強化剤とを含む、繊維強化複合材料を含む。繊維強化剤は不連続メタアラミド繊維を含む。複合材料は、溶融加工可能であり、且つASTM D4812に従ったノッチなしアイゾット試験法によって測定した際に少なくとも12ft-lbs/in(640J/m)の値を有する耐衝撃性である。
【0056】
マトリックス、耐衝撃性改良剤、及び繊維強化剤は、上記に詳細に記載されている。いくつかの実施形態では、マトリックスは、脂肪族ポリアミド又は半芳香族ポリアミドを含む。耐衝撃性改良剤は、軟質又は硬質材料であり得るが、概して、ゴム状である、直径がおよそ0.2~3.0マイクロメートルの相分離した個別のドメインを形成する材料を損なう。これらのドメインは、複合材料標本内でサイズ及び形状が変化し得る。繊維強化剤は、1~50ミリメートル、より典型的には1~20ミリメートルの長さを有するメタアラミド繊維(長繊維)、1ミリメートル未満の長さを有するメタアラミド繊維(短繊維)、これらの混合物を含み、炭素繊維、ガラス繊維、又は上記のような他の合成繊維などの他の繊維も含んでもよい。加えて、いくつかの実施形態では、複合材料は少なくとも1つの添加剤を更に含み、添加剤が、難燃剤と、マレエート化ポリオレフィンコポリマー、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、エポキシポリマー及びオリゴマー樹脂、半芳香族ナイロンコポリマー、ブロックコポリマー、ジルコネート、チタネート、オルガノシロキサン剤、又はこれらの組み合わせから選択される界面改質剤とを含む。いくつかの実施形態では、繊維強化剤は、複合材料組成物の総重量に基づいて7~60重量%、いくつかの実施形態では、10~50重量%の配合量で存在する。
【0057】
複合材料は、広範囲の物品を調製するために使用することができる。いくつかの実施形態では、物品は、頭部保護物品、顔保護物品、保護メガネ、又はこれらの組み合わせから選択される個人用安全物品を含む。好適な個人用安全物品の例としては、ヘルメット、フェイスシールド若しくは溶接用物品、マスク、安全メガネ、動力付き空気レスピレータ若しくは動力付き空気レスピレータの構成要素、自給式呼吸器、空気フィルタ、フィルタハウジング、保護イヤウェア、保護ブーツ、又はブーツインサートが挙げられる。好適な構成要素としては、ターボハウジング、ファンブレード、バッテリハウジング、バッテリパック、バックル、クリップ、バルブ本体、空気レギュレータ部品、チューブ、ねじ付きコネクタ、バルブ、ブロワ部品、ハウジングなどを挙げることができる。
【実施例】
【0058】
これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。使用した溶媒類及び他の試薬類は、特記しない限り、Sigma-Aldrich Chemical Company;Milwaukee,Wisconsinより入手した。以下の略語が使用される:mm=ミリメートル;m=メートル;ft=フィート;in=インチ;RPM=1分当たりの回転数;psi=1平方インチ当たりのポンド数;lb=ポンド;J=ジュール;min=分;hrs=時間;RH=相対湿度。「重量%(weight %)」、「重量%(% by weight)」、及び「重量%(wt%)」という用語は互換的に使用される。
【表1】
【0059】
試験方法
ノッチなしアイゾット衝撃試験
試験棒を下記のように調製し、ASTM D4812に従ってノッチなしアイゾット試験を完了した。試験値をJ/m(1メートル当たりのジュール)で測定し、より慣例的に使用される1インチ当たりのフィートポンド(ft-lbs/in)の値に変換した。2本の試験棒の平均を、両方のセットの単位を用いて報告する。
【0060】
燃焼性試験
試験棒を下記のように調製し、アンダーライターズラボラトリー(UL)試験に従って燃焼性について試験した。
【0061】
延性試験
試験棒を下記のように調製し、複合材料の降伏点を超えて20°の角度まで試験棒を曲げることによって延性について試験した。試験棒が、30°の角度を超えるほど曲げられることができ、複合材料試験棒が延性である(>10%の歪み)ことを示す恒久的変形を有していた場合、結果を「あり」として記載した。
【0062】
実施例
成形材料の調製
全ての実施例は、3~4分の総混合時間で、100rpmのコニカルバッチ二軸混合ユニットを使用して、プレカット繊維(繊維長7~10mm)をポリマー溶融物に混合することによって調製した。ポリマー及び添加剤を混合チャンバに2分の混合時間でゆっくりと添加して均一な溶融相を作り出すことによって、複合材料樹脂を調製した。2分間混合した後、不連続繊維を短い時間枠にわたって添加し、ポリマー溶融物と高剪断下で55~70秒間混合した。炭素繊維を含有する試料については、炭素繊維を最初に溶融物に導入し、続いてメタアラミド繊維を導入した。ポリマー溶融温度は、全てのナイロン-2(ナイロン9T)試料については318℃であり、全ての耐衝撃性改良ナイロン-1(ナイロン6,6)試料については300℃であった。高剪断混合後、ポリマー溶融物を、280psiの圧力下で20秒の滞留時間にわたって加熱されたモールドに注入して、複合材料試験棒(127mm×12.5mm×3.2mm)を生成した。モールド温度は、ナイロン-2(ナイロン9T)試料については130℃であり、全てのナイロン-1(ナイロン6,6)試料については102℃であった。次いで、試料をモールドから取り出し、別段の記載がない限り、試験前に室温及び50%RHで2週間コンディショニングした。
【0063】
実施例1及び比較例C1~C3
23重量%のMA繊維及び2重量%の界面改質剤-1とナイロン-1とを使用して、上記の方法を使用して試料試験棒を調製した。市販の繊維強化材料について同じ試験方法を使用した比較試料の結果を表1に示す。試料試験棒についてノッチなしアイゾット試験を行い、表1に報告する。このデータは、室温及び湿度50%で2週間エージングした標本についてのものである。
【表2】
【0064】
実施例2
以下の組成:ナイロン-2(56重量%);MA繊維(22重量%);FR-1(22重量%)で、2本の個々の試験棒を上記のように個々に成形した。2本の棒を、上記の燃焼性試験に従って燃焼性について試験した。試料はどちらも、V-0の結果を有した。1本の試験棒は、複合材料の降伏点を超えて30°の角度まで曲げられ、複合材料試験棒が延性であり(>10%の歪み)、恒久的変形を有することを示した。試験棒は、メタアラミド繊維を有していない試験棒と比較して有意に高い剛性を示した。
【0065】
実施例3
2つの異なる濃度のFR-2を有する試験棒を上記のように調製した。燃焼性及び曲げ試験データを以下の表2に示す。
【表3】
【0066】
実施例4
以下の組成:ナイロン-1(67重量%);耐衝撃性改良剤-1(3重量%);及びMA繊維(30重量%)で、試験棒を成形した。MA繊維を、配合前に真空オーブン内にて75℃で4時間乾燥させた。耐衝撃性改良剤-1は耐衝撃性改良剤として添加されるが、界面改質剤及び耐衝撃性改良剤の両方として機能し得る。試験棒を、室温で大気条件下にて4週間エージングした。試験棒を金属クランプ内で90°の角度に曲げたところ、複合材料が極めて延性であり(>25%の歪み)、脆性破壊しないことが示された。
【0067】
実施例5.
以下の組成:ナイロン-1(72重量%);界面改質剤-2(1重量%);及びMA繊維(27重量%)で、2本の試験棒を成形した。界面改質剤であるベヘニルアルコールは潤滑剤としても作用する。2週間エージングした後、ノッチなしアイゾット衝撃強度の平均は、23.7ft-lbs/in(1,265J/m)であった。
【0068】
実施例6.
この実施例は、ハイブリッド複合材料が優れた耐衝撃性を有することを実証するものである。以下の組成:ナイロン-2(72重量%);炭素繊維(14重量%);及びMA繊維(14重量%)で、2本の試験棒を成形した。試験棒を室温及び湿度約50%で3カ月間平衡化させた。1本の試験棒を90°の角度で曲げることにより手で曲げると、恒久的延性変形がもたらされた。これは、材料が、脆性破壊することなく>20%の歪みレベルに達することができ、延性挙動を示すことを示している。これらの成形試験棒を12カ月間エージングし、ASTM D4812に従って試験した場合、ノッチなし衝撃値の平均は、36.2ft-lbs/in(1,932J/m)であった。
【0069】
実施例7.
以下の組成:ナイロン-2(45重量%);FR-2(15重量%);及びMA繊維(40重量%)で、試験棒を調製した。この試験棒は、実施例1と比較してはるかに高い曲げ剛性を示し、60°の角度で曲げた場合に破壊することなく延性挙動も示した。衝撃で試験した場合、ノッチなしアイゾット値の平均は39.2ft-lbs/in(2,092J/m)であった。この実施例は、より高い繊維配合量を有する複合材料が優れた耐衝撃性を示すことを示すものである。
【0070】
実施例8.
4本の試験棒(各組成物のうちの2つ)を、以下の2つの組成物で調製した。組成物1は、ナイロン-1(73重量%);界面改質剤-1(2重量%);及びMA繊維(27重量%)を含んでいた。組成物2は、27重量%のMA繊維を有する組成物1と同じであったが、界面改質剤を含有しなかった。室温で6カ月間コンディショニングした後、90°の角度を超えて手で曲げることによって組成物を試験した。組成物はどちらも非常に延性であり、破壊することなく高い歪み(>20%)で曲げることができ、恒久的変形がもたらされた。組成物2は、組成物1と比較して、曲げによる曲げ(flexural bend)の引張側で視覚的により多くの応力白化を示した。12カ月のエージング後、両方の組成物をASTM D4812に従って試験し、ノッチなしアイゾット衝撃値は>41.8ft-lbs/in(2,231J/m)であり、全ての試験棒が試験中に破壊しなかった。この実施例は、本開示による組成物が、長ガラス繊維ナイロン複合材料を含む任意の既知の不連続繊維熱可塑性複合材料よりもはるかに優れた、優れた延性及び耐衝撃性の両方を有することを示すものである。この実施例はまた、これらの材料が実世界条件でのエージング後に非常に高い衝撃強度を有することを示すものである。ナイロン6,6は平衡含水率がかなり高く、含水率が高くなるにつれて衝撃特性が向上することがよく知られている。
【0071】
実施例9.
以下の組成:ナイロン-2(37重量%);FR-1(17重量%)、MA繊維(30重量%)、及び炭素繊維(16重量%)で、1本の試験棒を調製した。試験棒は、高い繊維含有量のために非常に剛性であった。
【国際調査報告】