(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】流体送達装置のリザーバプランジャにキー止めされた最内側のねじの回転を防止する多重伸縮ねじ駆動ポンプ機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20230905BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20230905BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20230905BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61M5/145 500
A61M5/31 530
A61M5/315 510
A61M5/315 550A
A61M5/142 522
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512058
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2021046136
(87)【国際公開番号】W WO2022040085
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ダナ コート
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ピッツォチェロ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066FF05
4C066GG01
4C066GG11
4C066HH03
4C066HH05
4C066HH14
4C066HH17
(57)【要約】
流体送達装置は、プランジャと、プランジャ又は中間プッシャの第1の側に回転を防止するためにキー止めされた最内側のねじからなる入れ子式伸縮ねじからなるプランジャ駆動アセンブリを有する注射器バレル型のリザーバを有する。完全に引き込まれた状態では、入れ子になっているねじはリザーバ内に延びない。入れ子になっているねじはすべて右ねじで、それぞれの内ねじと外ねじの設計に同じピッチが採用されている。最外側のねじは、モータに接続され、回転を制御することができる。最外側のねじ部材から最内側のねじ部材へのトルク比の低下と回転防止機能により、最内側のねじは、隣接する同心ねじ部材が対応するねじ内で回転と前進を始める前に、プランジャをリザーバ内に進め、プランジャの他の第2の側に画定された流体室内で流体を排出するように、プランジャを並進させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送達装置であって、
リザーバであって、遠位端に出口ポートと、前記リザーバの長手方向軸に沿って移動可能なプランジャと、を備え、前記プランジャは、前記プランジャの第1の側に画定され、前記出口ポートを構成する流体室に送達される流体が、前記プランジャの第2の側によって画定される前記リザーバの部分に漏れるのを防止するために、前記リザーバの内壁に対してシールを提供するように構成される、リザーバと、
前記リザーバの近位端に取り付けられ、最外側の駆動ねじが回転すると、前記リザーバ内に延びない入れ子構成から、前記リザーバの前記近位端から前記リザーバ内に延びる延長構成に移動する複数の入れ子式伸縮ねじからなるプランジャ駆動アセンブリと、を備え、
前記複数の入れ子式伸縮ねじは、前記プランジャに連結され、回転防止機構によって回転を拘束される最内側のねじからなる、流体送達装置。
【請求項2】
前記リザーバは、注射器バレル型の容器である、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項3】
前記回転防止機構は、前記最外側の駆動ねじが回転したとき、前記リザーバ内の前記プランジャの回転を防止するために、非円形断面を有する前記リザーバ及び前記プランジャである、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項4】
前記リザーバ及び前記プランジャがそれぞれ、楕円形状の断面を有する、請求項3に記載の流体送達装置。
【請求項5】
前記回転防止機構は、前記プランジャと前記最内側のねじの遠位端との間に配置されたプッシャを備え、前記プッシャは、前記プランジャの近位側に隣接し、前記最外側のねじの回転に応答して、前記リザーバの前記長手方向軸に沿って移動するように構成される、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項6】
前記プッシャが、前記最内側のねじの前記遠位端の対応するキーイング機構と協働して、前記最内側のねじを前記プッシャと係合するキーイング機構を備える、請求項5に記載の流体送達装置。
【請求項7】
前記プッシャの前記キーイング機構は、戻り止めからなり、前記最内側のねじの前記遠位端の対応する前記キーイング機構は、対応する寸法及び/又は形状の前記戻り止めに圧入されるように、寸法及び/又は形状が決められる、請求項6に記載の流体送達装置。
【請求項8】
前記戻り止めは、前記プッシャの遠位側への貫通孔を備え、前記最内側のねじの前記遠位端が、前記貫通孔を通って延びる、請求項7に記載の流体送達装置。
【請求項9】
前記最内側のねじの前記遠位端が、前記貫通孔で、前記プッシャの前記遠位側に熱カシメされる、請求項8に記載の流体送達装置。
【請求項10】
前記貫通孔が、回転防止溝を備える、請求項9に記載の流体送達装置。
【請求項11】
前記プッシャが、前記プッシャの前記遠位側に突出部を備え、前記貫通孔が、前記突出部を通って延びる、請求項8に記載の流体送達装置。
【請求項12】
前記プッシャが、通気用の少なくとも1つの貫通孔を備える、請求項5に記載の流体送達装置。
【請求項13】
前記プッシャが、通気のために、前記プッシャの周囲の少なくとも一部に沿った窪みを備える、請求項5に記載の流体送達装置。
【請求項14】
前記回転防止機構が、前記最外側の駆動ねじが回転したときに、前記プランジャが、前記リザーバの前記内壁に対して回転するのを防止するために、前記最内側のねじの遠位端と協働するように寸法決めされた前記プランジャの前記第2の側の戻り止めを備える、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項15】
前記最内側のねじの前記遠位端が、対応する寸法及び/又は形状の戻り止めに圧入されるように、寸法及び/又は形状が決められる、請求項14に記載の流体送達装置。
【請求項16】
前記複数の入れ子式伸縮ねじが、スリーブねじを受け入れるように寸法決めされた、内径及び内ねじを有する前記最外側の駆動ねじを備え、前記スリーブねじは、前記内ねじと協働して、前記最外側の駆動ねじが回転したときに、前記最外側の駆動ねじの中に、前記スリーブねじを進めるように構成された外ねじを有する、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項17】
前記スリーブねじが、前記最内側のねじを受け入れるように寸法決めされた、内径及び内ねじを有し、前記最内側のねじは、前記スリーブねじの前記内ねじと協働して、前記スリーブねじが回転したときに、前記スリーブねじの中に、前記最内側のねじを進めるように構成された外ねじを有する、請求項16に記載の流体送達装置。
【請求項18】
前記最内側のねじのトルク比は、前記スリーブねじのトルク比よりも小さく、前記スリーブねじのトルク比は、前記スリーブねじが前記最外側の駆動ねじに対して回転を開始し、前記リザーバ内に進む前に、回転を拘束された前記最内側のねじが前記スリーブねじに沿って前記リザーバ内に延びることを可能にするために、前記最外側の駆動ねじのトルク比よりも小さい、請求項17の流体送達装置。
【請求項19】
前記複数の入れ子式伸縮ねじが、右ねじと、それぞれ同じピッチを採用する内ねじパラメータ及び外ねじパラメータと、を有する、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項20】
前記複数の入れ子式伸縮ねじが、左ねじと、それぞれ同じピッチを採用する内ねじパラメータ及び外ねじパラメータと、を有する、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項21】
前記リザーバが、前記リザーバの近位端に取り付けられた歯車アンカーをさらに備え、前記歯車アンカーは、前記最外側の駆動ねじの遠位端を受け入れ、前記最外側の駆動ねじが回転されるときに、前記入れ子式伸縮ねじが前記リザーバ内に延びることを可能にする寸法にした開口部を備える、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項22】
前記歯車アンカーが、ディスク形状であり、前記リザーバの前記近位端に圧入されるような寸法である、請求項21に記載の流体送達装置。
【請求項23】
前記歯車アンカーが、通気用の貫通孔を備える、請求項21に記載の流体送達装置。
【請求項24】
前記歯車アンカーの前記開口部は、前記最外側の駆動ねじが前記歯車アンカーに対して回転することを可能にしながら、前記最外側の駆動ねじに安定した支持を提供するように構成される、請求項21に記載の流体送達装置。
【請求項25】
前記プランジャ駆動アセンブリが、入れ子構成にあるとき、前記最内側のねじの前記遠位端は、前記歯車アンカーの遠位側に対して同一平面上にある、請求項21に記載の流体送達装置。
【請求項26】
前記プランジャ駆動アセンブリが入れ子構成にあるとき、前記最内側のねじの前記遠位端は、前記プランジャの前記第2の側、又は、前記プランジャと前記最内側のねじの前記遠位端との間の中間プッシャのいずれかに設けられた、戻り止めの深さに対応する所定の長さで、前記歯車アンカーの遠位側から突出する、請求項21記載の流体送達装置。
【請求項27】
前記プランジャ駆動アセンブリに対して設けられたスラスト軸受機構と、前記伸縮ねじからの軸方向のスラスト荷重を最小化する前記プランジャ駆動アセンブリの支持構造体と、をさらに備える、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項28】
前記スラスト軸受機構は、前記最外側の駆動ねじに配置されたキャップを備え、前記キャップは、前記プランジャ駆動アセンブリの前記近位端に向けられ、前記プランジャ駆動アセンブリ、前記プランジャ又は前記流体室内の流体によって生じる軸方向のスラスト荷重に抵抗するために前記支持構造体の一部に接触するボスを有する請求項27の流体送達装置。
【請求項29】
前記プランジャ駆動アセンブリの操作に関連するフィードバックデータを生成するために、前記プランジャ駆動アセンブリに対して設けられるエンコーダをさらに備える、請求項1に記載の流体送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月18日に出願された米国仮出願第63/066,851号の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
例示的な実施形態は、一般に、着用可能な薬物注入パッチなどの流体送達装置に使用するためのポンプ機構に関する。例示的な実施形態は、一般に、注射器バレル型のリザーバ内のプランジャ駆動を制御可能に伸縮させるための入れ子式伸縮ねじに関するもので、生体適合性を確保するためにリザーバ容量に影響を与えず、リザーバ外に完全に収納可能で、回転防止のためにプランジャにキー止めされる。
【背景技術】
【0003】
一般的な薬物送達用パッチポンプの設計は、小型、低消費電力、正確な送達、高い信頼性、低い製造コストの必要性という課題を抱えている。さらに、薬物送達用パッチポンプの設計は、薬剤の品質に影響を与えることはできない。例えば、送達された流体に接触するポンプ機構の部品に使用される材料は、生体適合性に問題があってはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記及び他の問題は、例示的な実施形態によって、克服され、さらなる利点が実現される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の例示的な実施形態は、投薬ペン及びペンニードル、注射器、又はリードねじ駆動機構を採用するより高価な非携帯型ポンプシステムなどの信頼性が高く実績のあるシステムの有益な特徴を保持しながら、装置サイズを示す包絡線又はフォームファクタを最小限に抑えるなどのいくつかの利点を実現する。
【0006】
例示的な実施形態の態様によれば、流体送達装置を介して送達される薬物及び他の流体と薬物親和性又は生体適合性があることが証明されている注射器バレル型の薬剤容器又は同様のリザーバの使用を可能にする、改善及び新規の入れ子式伸縮ねじ設計を提供することにある。
【0007】
例示的な実施形態の態様によれば、遠位端に出口ポートを含むリザーバと、リザーバの長手方向軸に沿って移動可能なプランジャとを備える流体送達装置が提供される。プランジャは、プランジャの第1の側に画定され、出口ポートを構成する流体室内に提供された流体が、プランジャの第2の側によって画定されるリザーバの部分に漏れるのを防ぐために、リザーバの内壁に対してシールを提供するように構成される。流体送達装置は、リザーバの近位端に取り付けられたプランジャ駆動アセンブリであって、最外側の駆動ねじが回転されると、リザーバ内に延びない入れ子構成からリザーバの近位端からリザーバ内に延びる延長構成に移動する複数の伸縮ねじからなるものを有する。複数の入れ子式伸縮ねじは、プランジャに連結され、回転防止機構によって回転を拘束される最内側のねじからなる。
【0008】
例示的な実施形態の態様によれば、リザーバは、注射器バレル型の容器である。
【0009】
例示的な実施形態の態様によれば、回転防止機構は、最外側の駆動ねじが回転したときに、リザーバ内のプランジャの回転を防止するための非円形断面を有するリザーバ及びプランジャである。例えば、リザーバ及びプランジャはそれぞれ楕円形状の断面を有する。
【0010】
例示的な実施形態の態様によれば、回転防止機構は、プランジャと最内側のねじの遠位端との間に配置されたプッシャを備える。プッシャは、プランジャの近位側に接し、最外側のねじの回転に応答してリザーバの長手方向軸に沿って移動するように構成される。
【0011】
例示的な実施形態の態様によれば、プッシャは、最内側のねじの遠位端の対応するキーイング機構と協働して、最内側のねじをプッシャと係合するキーイング機構を含む。例えば、プッシャのキーイング機構は戻り止めからなり、最内側のねじの遠位端の対応するキーイング機構は、対応する寸方及び/又は形状の戻り止めに圧入されるように寸法及び/又は形状が決められる。さらに、戻り止めは、プッシャの遠位側への貫通孔を構成することができ、最内側のねじの遠位端は、例えば、貫通孔を通って延びることができる。最内側のねじの遠位端は、貫通孔のプッシャの遠位側で熱カシメすることができる。貫通孔は、熱カシメを容易にするために、回転防止溝を構成することができる。あるいは、プッシャは、その遠位側に突出部を構成し、貫通孔は突出部を貫通して延びることができる。別の態様によれば、プッシャは、通気用の少なくとも1つの貫通孔、及び/又は通気用のその周囲の少なくとも一部に沿った窪みを含むことができる。
【0012】
例示的な実施形態の態様によれば、回転防止機構は、最外側の駆動ねじが回転されるときに、プランジャがリザーバの内壁に対して回転するのを防止するために、最内側のねじの遠位端と協働するように寸法決めされたプランジャの第2の側の戻り止めを備える。例えば、最内側のねじの遠位端は、対応する寸法及び/又は形状の回り止めに圧入されるように寸法及び/又は形状が決められる。
【0013】
例示的な実施形態の態様によれば、複数の入れ子式伸縮ねじは、最外側の駆動ねじを備え、最外側の駆動ねじは、最外側の駆動ねじが回転したときに、最外側の駆動ねじ内でスリーブねじを進めるために、内ねじと協働するように構成された外ねじを有するスリーブねじを受け入れるように寸法付けられた内径及び内ねじを有する。
【0014】
例示的な実施形態の態様によれば、スリーブねじは、最内側のねじを受け入れるように寸法決めされた内径及び内ねじを有する。最内側のねじは、スリーブねじの内ねじと協働して、スリーブねじが回転したときに、最内側のねじをスリーブねじ内で前進させるように構成された外ねじを有する。
【0015】
例示的な実施形態の態様によれば、最内側のねじのトルク比は、スリーブねじのトルク比よりも小さく、スリーブねじのトルク比は、スリーブねじが最外側の駆動ねじに対して回転を開始し、リザーバ内に進む前に、回転を拘束された最内側のねじがスリーブねじに沿ってリザーバ内に延びることを可能にするために、最外側の駆動ねじのトルク比よりも小さい。
【0016】
例示的な実施形態の態様によれば、複数の入れ子式伸縮ねじは、右ねじと、それぞれ同じピッチを採用する内ねじパラメータ及び外ねじパラメータと、を有する。あるいは、複数の入れ子式伸縮ねじは、左ねじと、それぞれ同じピッチを採用する内ねじパラメータ及び外ねじパラメータと、を有する。
【0017】
例示的な実施形態の態様によれば、リザーバは、その近位端に取り付けられた歯車アンカーをさらに備え、歯車アンカーは、最外側の駆動ねじの遠位端を受け入れ、最外側の駆動ねじが回転されるときに、入れ子式伸縮ねじがリザーバの中に延びることを可能にするように寸法付けられた開口部を含む。例えば、歯車アンカーはディスク形状で、リザーバの近位端に圧入されるような寸法になっている。例えば、歯車アンカーの開口部は、最外側の駆動ねじを歯車アンカーに対して回転させることを可能にしながら、最外側の駆動ねじの安定した支持を提供するように構成することができる。さらに、歯車アンカーには、通気のための貫通孔を設けることができる。
【0018】
例示的な実施形態の態様によれば、プランジャ駆動アセンブリがその入れ子構成にあるとき、最内側のねじの遠位端は、歯車アンカーの遠位側に対して同一平面上にある。
【0019】
例示的な実施形態の態様によれば、プランジャ駆動アセンブリがその入れ子構成にあるとき、最内側のねじの遠位端は、プランジャの第2の側又はプランジャと最内側のねじの遠位端との間の中間プッシャのいずれかに設けられた戻り止めの深さに対応する所定の長さで歯車アンカーの遠位側から突出する。
【0020】
例示的な実施形態の態様によれば、流体送達装置は、プランジャ駆動アセンブリに対して設けられるスラスト軸受機構と、伸縮ねじからの軸方向のスラスト荷重を最小化するプランジャ駆動アセンブリの支持構造体と、を備える。例えば、スラスト軸受機構は、最外側の駆動ねじに配置されたキャップからなり得、キャップは、プランジャ駆動アセンブリの近位端に向けられ、プランジャ駆動アセンブリ、プランジャ又は流体室内の流体によって発生する軸方向のスラスト荷重に抵抗するために支持構造体の一部に接触するボスを有する。
【0021】
例示の実施形態の追加および/もしくは他の態様ならびに利点は、以下の説明に記載されることになるか、説明から明らかとなるか、または、例示の実施形態の実施により知り得る。例示的な実施形態は、上記の態様のうちの1つもしくは複数、および/またはそれらの特徴もしくは組み合わせのうちの1つもしくは複数を有する同様な動作のための装置および方法を含み得る。例示の実施形態は、例えば、添付の特許請求の範囲に記載されている上記の態様の1つもしくは複数の特徴、および/または、組み合わせを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施形態の上記および/または他の態様ならびに利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に従って構成された着用可能な流体送達装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、カバーを取り外した状態の
図1の流体送達装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、例示的な実施形態に従って構成された流体送達装置の例示的な構成要素のブロック図である。
【
図4A】
図4Aは、例示的な実施形態に従って構築されたプランジャ駆動アセンブリを明確に描写するためにカバーを取り外した流体送達装置の上面図である。
【
図4B】
図4Bは、例示的な実施形態に従って構築されたプランジャ駆動アセンブリを明確に描写するためにカバーを取り外した流体送達装置の上面斜視図である。
【
図5】
図5は、例示的な実施形態に従って構成され、3層の伸縮式リードねじ設計を備えるプランジャ駆動アセンブリを示す図である。
【
図6A】
図6Aは、例示的な実施形態に係る歯車アンカーの背面斜視図を示す。
【
図6B】
図6Bは、例示的な実施形態に係る歯車アンカーの正面斜視図を示す。
【
図7A】
図7Aは、例示的な実施形態に従って、最内側の入れ子式ねじにキー止めされるように構成されたプッシャアセンブリを示す。
【
図7B】
図7Bは、例示的な実施形態に従って、最内側の入れ子式ねじにキー止めされるように構成されたプッシャアセンブリを示す。
【
図7C】
図7Cは、例示的な実施形態に従って、最内側の入れ子式ねじにキー止めされるように構成されたプランジャストッパを示す。
【
図8A】
図8Aは、4層伸縮リードねじ設計を採用する別の例示的な実施形態に従って構築されたプランジャ駆動アセンブリを明確に描写するために、カバーを取り外した流体送達装置の上面図である。
【
図8B】
図8Bは、4層伸縮リードねじ設計を採用する別の例示的な実施形態に従って構築されたプランジャ駆動アセンブリを明確に描写するために、カバーを取り外した流体送達装置の上面斜視図である。
【
図10】
図10は、例示的な実施形態に従って構成され、4層伸縮式リードねじ設計からなるプランジャ駆動アセンブリを示す図である。
【
図11】
図11は、軸方向スラスト軸受機構を有するように例示的な実施形態に従って構成された流体送達装置の部分側面図である。
【0023】
図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の要素、特徴、および構造を指すと理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
当業者によって理解されるように、本明細書に開示される実施形態によるポンプの実施例、改善、及び配置を実施するための多数の方法がある。図面及び以下の説明に示される例示的な実施形態を参照するが、本明細書に開示される実施形態は、開示される技術的解決策に包含される様々な代替設計及び実施形態を網羅するものではなく、当業者は、様々な修正が行われ得、開示される技術的解決策の範囲から逸脱して様々な組み合わせが行われ得ることを容易に理解するであろう。
【0025】
本開示の例示的な実施形態は、投薬ペン及びペンニードル、注射器、又はリードねじ駆動機構を採用するより高価な非携帯型ポンプシステムなどの信頼性が高く実績のあるシステムの有益な特徴を保持しながら、装置サイズを示す包絡線又はフォームファクタを最小限に抑えるなどのいくつかの利点を実現する。本明細書に記載される例示的な実施形態に従って、流体送達装置を介して送達される薬剤及び他の流体と薬剤親和性又は生体適合性があることが証明されている、注射器ベースの薬剤容器又は同様のリザーバの使用を可能にする、新規な入れ子式伸縮ねじ設計が採用される。
【0026】
図1は、例示的な実施形態に従って構成された着用可能な流体送達装置10の斜視図である。薬物送達装置10は、ベースプレート12と、カバー14と、使用状態にない位置の挿入機構16と、を備える。リザーバ流体送達装置10は、充填ポート(図示せず)からリザーバへの入口流体経路を有するベースプレート12に設けられた充填ポートに、ユーザが充填済み注射器36の針を挿入することによって、流体(例えば、薬剤)で充填することができる。流体送達装置10は、異なる機構及び方法を用いて流体(例えば、薬物)を充填することができることを理解されたい。
【0027】
図2は、カバーを取り外した状態の
図1の流体送達装置の斜視図である。ベースプレート12は、挿入機構16、モータ18、バッテリ20などの電源、制御基板(図示せず)、及び、リザーバの出口ポートから挿入機構16への出口流体経路24を介して、ユーザに送達される流体を貯留するリザーバ22又は容器を支持する。リザーバ22はまた、入口流体経路26を介して、充填ポート(例えば、ベースプレート12に設けられる)に接続された入口ポートを有することができる。リザーバ22は、ストッパアセンブリ29を有するプランジャ28を含む。リザーバ22の近位端はまた、複数の伸縮可能な入れ子式ねじ、歯車アンカー34、モータ18に接続された歯車列38を介して回転される最外側の駆動ねじ36を有するプランジャ駆動アセンブリ30を備える。例示のために歯車列38を示したが、駆動機構は歯車、ラチェット、又は、モータから回転を誘導する他の方法とすることができる。
【0028】
図3は、例示的な実施形態に従って構成された流体送達装置の例示的な構成要素のブロック図である。カバー/ハウジング又は装置10のハウジングは、14で示される。装置10は、装置10をユーザの皮膚に接続するための粘着パッドなどの皮膚保持サブシステム40を有する。流体送達装置10は、リザーバ22と、挿入機構16と、モータ18、歯車列38、ポンプ機構(例えば、プランジャ駆動アセンブリ30)、及び、出口経路24を含むことができる流体移動モジュール42と、をさらに備える。流体送達装置は、パワーモジュール(例えば、バッテリ20)と、コントローラ52、モータドライバ54、流体流状態(例えば、閉塞又はポンプ機構の暴走)を感知するオプションの感知モジュール56、オプションの聴覚ドライバ58(例えば、ブザーなどの可聴アラームを介して投与中、低リザーバ、閉塞、外部装置とのペアリング成功、又は、他の状態を示すための)、及び、発光ダイオード(複数可)を介して視覚的フィードバックを提供するためのオプションの視覚ドライバ60、及び/又は、振動成分を介して触覚フィードバックを提供するためのオプションの触覚ドライバ、ならびに流体送達装置と任意の遠隔ポンプ制御装置(例えば、スマートフォン又は専用コントローラ63)との間の無線通信のための任意の無線ドライバ62、などの電気モジュール50とをさらに備える。感知モジュール56に関して、流体送達装置は、例えば、指標及びポンプ機構の暴走防止目的のために、駆動機構(例えば、プランジャ駆動アセンブリ30)のフィードバックをもたらすための1つ又は複数のエンコーダを備えることができる。
【0029】
図4A及び
図4Bは、例示的な実施形態に従って構築されたプランジャドライバアセンブリを描写するために、明確にするためにカバーを取り外した流体送達デバイスの上面図及び上面斜視図である。プランジャ駆動アセンブリ30は、
図4Aでは完全に引き込まれた状態で、
図4Bでは完全に延びた状態で示される。モータ18は、リザーバ22の流体室部分64から流体のそれぞれの指定された投与量を送達するために、伸縮ねじ部材を図示の完全に引き込まれた位置から完全に延びた位置まで徐々に動かすようにプランジャ駆動アセンブリ30を制御できることが理解されるであろう。モータ18及び歯車列38は、プランジャ駆動アセンブリ30上の最外側の駆動ねじ70を回転させる。歯車列38は、異なる構成を有することができる。例えば、歯車列38は、機械的に制御された量だけ駆動ナット又は最外側の駆動ねじ90を正確に回転させるラチェット割り出し機構、又は、他の割り出し機構の形態とすることもできる。プランジャ駆動アセンブリ30のモータ18及び関連する歯車列部品38と最外側の駆動ねじ70は、ベースプレート12に固定された取り付けプレート66、又は、他の機構を介して、互いに対して取り付けることができる。リザーバ22は、リザーバマウント(例えば、ベースプレート12上の壁、取り付けプレート66、装置ハウジング14内の上部構造又は他の構造)を介してベースプレート12に固定することができる。
図4Bに示すように、モータハウジング44は、ベースプレート12に対してモータ18を固定し、ハウジングとベースプレートは一体型部品とすることができる。
【0030】
図4Bを引き続き参照すると、出荷前に、又は、流体送達装置10を使用する前に、ユーザがリザーバを充填できるように、ベースプレート12の下側の充填ポート(図示せず)からリザーバ22の入口ポート(図示せず)までの入口流体経路を提供することができる。歯車アンカー34は、リザーバ22の近位端に設けられており、リザーバ22に対して静止している。プランジャ28は、リザーバ22内に設けられ、プランジャ駆動アセンブリ30及びモータ18の動作によってリザーバ22の長手方向軸に沿って制御可能に並進するように構成される。
【0031】
図5は、最外側の駆動ねじ70、スリーブねじ72及び最内側のねじ74からなる3層伸縮リードねじを含む例示的な実施形態によるプランジャ駆動アセンブリ30を示す。最外側の駆動ねじ70は、モータ18によって作動する歯車列38の隣接する歯車の歯と協働する駆動歯車歯70aと、スリーブねじ72の外ねじ72aと協働する、ねじ付開口部70bを有する第1の部分を有する。スリーブねじ72は、その近位端に、スリーブねじ72が最外側の駆動ねじ70から駆動されるのを防止するための端部機構72bを有し、その遠位端に、最内側のねじ74の外ねじ74aと協同する、内ねじを有するねじ付開口部72cを有する。最内側のねじ74は、その近位端に、最内側のねじ74が、スリーブねじ72から駆動されることを防止するための端部機構74bを有し、その遠位端にキーイング機構74cを有する。キーイング機構74cは、最外側のねじ70がモータ18及び歯車列38によって回転されるときに、最内側のねじ74が、プランジャ28に対して回転しないように拘束しながら、最内側のねじ74をプランジャ28上の協働キーイング機構に結合させる選択形状又は突出部、または、他の特徴又は部品であり得る。言い換えれば、最外側の駆動ねじ70が、モータ18及び歯車列38を介して駆動されると、最内側のねじ74の遠位端は、プランジャ28又はプランジャ駆動アセンブリ30の他の表面内に固定される。最外側の駆動ねじ70は、スリーブねじ72と最内側のねじ74を前進させながら時計回りに回転する。ねじ部材70,72,74は、例えば、右ねじであるが、全て、左ねじとなるように設計することもできる。例えば、ねじ部材70,72,74の各々は、同じピッチ及び他のパラメータにわずかなバリエーションを有する、同じ内ねじ及び/又は外ねじ設計を有する。
【0032】
例示的な実施形態によれば、駆動ねじ70の長さは、ねじが全て入れ子となる又は折り畳まれるときに、それらが全て駆動ねじ70に含まれるような寸法にされる。さらに、駆動ねじ70は、その近位端にスラスト軸受キャップ98を備え、以下にさらに説明するように、装置10が軸方向のスラスト荷重を吸収するのを助ける。
【0033】
別の例示的な実施形態によれば、プッシャ80は、内ねじ74とプランジャ28との間に別個の構成要素として設けられる。プッシャ80は、プランジャ28の代わりにキーイング機構(例えば、82)を設けて、最内側のねじ74からのキーイング突出部又は他の機構74cを受けることができ、全体的に最内側のねじ74の回転を防止する形状である。プッシャ80を使用する利点は、その設計を、制御されないプランジャのぐらつきによって運動の精度及び全体の体積送達に悪影響を及ぼす可能性のある軸外力を低減するようにすることができることである。
【0034】
ねじ72とねじ74の間のトルク比は、各部品の直径に関連しており、最も小さい駆動トルクは、最内側のねじ74の小さい直径に関連する。最適な条件下では、プランジャ28の表面又はそれが固定されている他の表面又は部材によって回転が拘束される場合、最内側のねじ又は最小のねじ74が、おそらく最初に前方に駆動する。次に、スリーブねじ72が回転を開始し、前進する。製造上のばらつきや公差により、繰り出し動作の順序が変わることがあるが、一般的には各パーツの共通ピッチに従って繰り出すだけである。駆動歯車歯70aを有する最外側の駆動ねじ70を除いて、各内ねじは、ねじが組立パッケージから追い出されるのを防止する端部機構を必要とすることになる。サイズを最小化するために、この機構の長さを最小化することができる。しかし、この機構は、ねじの軸方向の動きを安定させ、軸方向でない動きを防ぐことにも役立つ。
【0035】
最内側のねじ74は、プランジャ28と係合するためにキーイング機構を必要とする。このキーイング機構は、非円形断面のプランジャ形状と係合し、それによって回転が形状によって防止されるか、又は、動作中の注射器バレル内で回転を防止するように作用する中間構造(例えば、プッシャ80)と係合することが可能である。この端部機構74cは、アセンブリ30の後端から組み立てることができるように、同じ最内側のねじ74の外ねじより最適に小さい。例えば、最内側のねじ74の遠位端は、他の構成要素70及び72によって最内側のねじ74に付与される任意の回転が、リザーバ22の内壁に対するプランジャ28の回転を引き起こすことを防止する、プランジャ28又はプッシャ80の対応する寸法及び/又は形状の戻り止め、又は、窪み82に係合する寸法及び/又は形状にされ得る。最内側のねじの遠位端にあるキーイング機構74cは、ねじよりも小さく、相対的な回転を避けるためにプッシャに押し付けられ、又は、強固に係合するような機構及び/又は形状を有している。必要に応じて、他のより強力でより大きな機構を、ねじ74の前端又は遠位端に取り付けることができる。この設計では、楕円形状の注射器バレル型のリザーバ22を採用して、薬剤を収容し、回転防止機能を提供することができる。また、楕円形状には、潜在的に装置の高さを低めにするという追加の利点がある。さらに、例示的な実施形態の伸縮式入れ子式リードねじの設計を、適切なラチェット/割り出し機構によって補完し、送達分解能をさらに向上させることができる。
【0036】
図6A及び
図6Bは、それぞれ、例示的な実施形態に係る歯車アンカー34の背面斜視図及び正面斜視図を示す。歯車アンカー34は、リザーバ22の近位端の開口部に挿入されるディスク形状の部材であり、リザーバ上のピン66aに対する圧入又はスナップフィットを容易にするためのスロット34dを有する突出部34aなどのオプション機能を有することができる。歯車アンカー34は、第1の部分70aよりも小さい円周を有する最外側の駆動ねじ70の遠位端70dを受け入れるように寸法決めされた開口部34bと、最外側の駆動ねじ70の遠位端と協働して最外側の駆動ねじ70を歯車アンカー34に対して固定するリップ34cを備える。リップ又はフランジ34cは、ねじ列の軸方向の設置面積を減らすために除去することができることを理解されたい。一般的な荷重は面とは反対方向に反応するため、その機能は限定的である。代替的な配置では、リザーバキャップ又は歯車アンカー34の外面に負担をかけるようなリングを駆動ねじ70に追加することができる。また、歯車アンカー34は、通気用の開口部又は貫通孔34aを少なくとも1つ有する。以下に説明するように、プッシャ80はまた、リザーバ22内で軸方向に移動する際に、通気することを可能にするための開口部(複数可)及び/又は、隙間を有することができる。
【0037】
図7A,
図7B及び
図7Cは、それぞれ、例示的な実施形態に従って、最内側のねじ74にキー止めされたプッシャ80を有するプランジャ28及びストッパアセンブリ29を示す。プランジャ28又は中間プッシャ80は、最外側の駆動ねじ70がモータ18及び歯車列34によって開口部22b内で回転されているときに、リザーバ22の内壁に対するプランジャ28の回転を防止するために、最内側のねじ74の遠位端のキーイング機構74cと協働する戻り止め、窪み、又は、他の機構82を有するディスク状部材からなり得ることが理解されるであろう、その結果、ねじ部材72及び74は、それぞれのねじ山の協働を介して並進的に伸縮する。プランジャ28は、ねじから切り離すことができ、中間部材(例えば、プッシャ80)は回転防止機構を提供する(例えば、最内側のねじの遠位端とプッシャ80の近位側との間にボールジョイントインターフェースが設けられて軸外荷重伝達を制限する)ことが理解されよう。プッシャ80の前面にあるオプションの突出部81は、プランジャ28の後面に押し込むことができる。
図7Aに示すように、突出部81には、回転防止溝81aを設けることができる。組み立てられたとき、最内側のねじ74,96の遠位端のポストは、プッシャ80を通り、その突出部81をわずかに超えて、戻り止め90内に延びることができる。最内側のねじ74,96の遠位端のポストは、プッシャ80に対する最内側のねじの熱カシメの際に、溝81aと協働する。プッシャ80は、リザーバ22上のキャップ34とともに、あるいは代替的に、通気を可能にするための機構(複数可)を備える。例えば、空気通気機構は、プッシャ80の周囲の少なくとも一部に沿って設けられ、切り欠き80aからなる波形の縁部の形態とすることができる。プッシャ80の外周に切り欠き80aを設ける場合、これらの機構は、回転を防止するために内部リザーババレル面に最初に接触するように、これらの構成80aのいくつかの周りの縁部が残りの切り欠き縁部より盛り上がるように設計及び公差を偏らせて、軸方向の並進摩擦を最小化するように配置することができる。また、プッシャ80は、プッシャのプレート状部分に通気用の貫通孔80bを1つ以上設けることもできる。
【0038】
プランジャ28は、リザーバ22の流体室部分64に保持された任意の流体の漏れを防止するためのストッパアセンブリ29を有する。ストッパアセンブリ29は、例えば、注射器ストッパと同様の弾性材料からなり、プランジャ28のディスクの表面に取り付けられたディスクとして、又は、プランジャ28のディスクを囲む帯状の材料として構成された弾性部材84で構成され得る。あるいは、プランジャ28は、それぞれのOリング(複数可)を収容するように寸法設定された1つ以上(例えば、2つ)の円周溝を有するように構成され得る。例えば、Oリングを2個使用することで、(例えば、長さが長くなっても)安定性が向上する。投与量精度の要求に応じて、Oリングは、1個でも可能ですが、高精度を求める場合は、特に、2個のOリングが有効である。
【0039】
リザーバ22及びプランジャ28に対するプランジャ駆動アセンブリ30の構成要素の構成は、多くの利点を実現する。例えば、リザーバ22の近位端に取り付けられ、最外側の駆動ねじが回転するまでリザーバ内に延びない入れ子構成を有するプランジャ駆動アセンブリ30は、送達前のプランジャ駆動部品を収容する必要がなく、流体送達用のリザーバ室の使用を最適化する。さらに、リザーバの全長は、最外側の駆動ねじ70の駆動歯車歯70aへの歯車列34の接続を収容するための少量のヘッドスペースを加えて、ハウジングの長さと実質的に同じであり得る。したがって、ポンプ機構の全体の設置面積は、流体送達装置のハウジングの長手方向軸の寸法と同様に最小化される。プランジャ28及びプランジャ駆動アセンブリ30の使用はまた、流体と流体送達ハウジングの間の生体適合性を確保するために、ポンプ機構と送達される流体の接触を最小限にするように 設計される。本明細書に記載される例示的な実施形態は、適切なサイズ及びねじ構成の入れ子式伸縮ねじを採用して、注射器バレル型のリザーバプランジャ28の制御された移動を実現する。ねじの技術は、明確に定義され、理解されており、反復可能で強力な動きが可能となる。モータ18によって適切な分解能で制御された動きで駆動されると、入れ子式ねじ(例えば、72及び74)は、実質的に全ての環境条件下で正確な動きを提供できる。さらに、駆動機構(例えば、プランジャ駆動アセンブリ30)は、薬剤が存在する流体室64の基本容積に影響を与えないので、いかなる互換性の問題にも影響を与えない。
【0040】
実施形態例の技術的解決は、リフティングトルクが適用された軸方向荷重(力又は圧力)、ねじピッチ、摩擦パラメータ、及び直径の関数である基本的なねじ駆動機構に基づいている。場合によっては、方程式をさらに拡張して、フランク角やリード角などのねじ形状の詳細や、その他多くの特殊なパラメータを取り込むことができる。ACMEねじの業界標準サイズは、一般的に、押し上げトルク、必要な電力、効率、及び、操作の滑らかさやコストなどの他の機能パラメータのバランスを調整するために使用することができる。また、バットレスねじ(Buttress threads)など、他のねじ形状を使用することで、荷重移動を正確に制御し、投与エラーを最小限に抑えることもできる。各ねじ設計はトルクに影響を与える可能性があるため、モータとギアボックス又は割出(index)駆動サブシステムの能力に適合する方法で変更を行う必要がある。
【0041】
例示の実施形態によって採用される設計は、非常に小規模なスケールで歯車減速伝達で駆動することに適している。歯車を動かすのに必要なトルクは、システムに使われている歯車の数とは無関係で、主に、ねじの材料や形状の選択に影響される。そのため、小型のモータや低い変速機減速比を採用することができ、コンパクトな装置10を実現することができる。逆に言えば、それぞれのねじでトルクが異なり、最内側のねじでトルクが小さく、最外側のねじでトルクが大きくなる。動力伝達の効率は、多くのインターフェースの影響を受け、全体的な効率を低下させるが、所望の押し上げトルクを決定する方程式の調整パラメータを使用して許容レベルに調整することができる。しかし、バッテリやその他の入力電力が豊富にあれば、このデザインは、現在の医療用薬物送達ポンプとは異なり、多くの薬物療法のための高精度ポンプを作る可能性がある。
【0042】
図8A及び
図8Bは、
図10に示されるように、最外側の駆動ねじ90、第1のスリーブねじ92、第2のスリーブねじ94及び最内側のねじ96を含む4層伸縮リードねじを採用する別の例示的な実施形態に従って構築されたプランジャ駆動アセンブリ30を明確化に描写するために、カバーを取り外した流体送達装置の上面図及び上面斜視図である。最内側ねじ96とプランジャ28(又はプッシャ80)との間のキーイング82は、3層伸縮リードねじを採用する上述の実施形態と同様である。
図10を参照すると、第1のスリーブねじ92、第2のスリーブねじ94及び最内側のねじ96は、それぞれ、その近位端に端部機構を有し、それが入れ子にされているプランジャ駆動アセンブリ30から駆動されるのを防止する。
【0043】
前述のスラスト軸受キャップ98は、外ねじの近位端にスナップフィットなどで圧入することができるが、
図8Bでは取り外し、
図9A~9Cでは所定の位置にある状態を示している。例示的な実施形態に従って
図11に示されるように、キャップ98は、リザーバ、ねじ、及び、モータを支持する上部構造66、又は、ベースプレート12上で、一般に100で示される壁のいずれかと相互作用する隆起ボス102を有する。この上部構造66又は壁100は、ねじ、場合によっては、プランジャOリング及び流体圧力からの軸方向のスラスト荷重を吸収又は最小化し、それによって投与量精度の損失を防止するのに役立つ。キャップ98の小さなボス102は、駆動系に課される追加トルクを最小にするように、直径が小さい。ボス102は、支持壁への掘込みや摩耗を避けるために十分に大きい寸法にすることができ、材料選択はこの設計を支援することができる。ねじの動きは、ねじアセンブリ30を後方に押し戻す可能性があるため、スラスト軸受キャップ98は、支持構造体を損傷することなくトルクを低減するために、これらの力を十分に小さな領域に分散させて処理するという利点を提供する。あるいは、駆動ねじやナット70の他の場所でも、スラスト荷重を制御することができる。例えば、分割リザーバキャップは、分割キャップ内で回転する外側リングを有する代替駆動ナットの構成でスロットを採用することができる。分割キャップは、駆動ナットの周りに組み立て、リザーバに挿入することを可能にするプレスピンを持つことができる。
【0044】
図4A~4B及び
図8A~8Bの両実施形態は、それぞれ、プランジャ駆動アセンブリ30によって使用される内部リザーバ22スペースを最小化し、それによって流体室64容積を最適化すると同時に、ベースプレート上のリザーバ設置面積を最小限に抑え、したがって、全体ハウジング寸法を最小化するために有利である。両方の実施形態では、リザーバ室22は、流体室64と、プランジャ28及びストッパアセンブリ29によって取られる容積とからなり、公称リザーバ容積は、完全に引き込まれた位置にあるときに、プランジャ駆動アセンブリ30によって取られる。
【0045】
図8A及び
図8Bのプランジャ駆動アセンブリは、
図9Aでは完全に引き込まれた状態、
図9Bでは中間位置、
図9Cでは完全に延びた状態で示される。モータ18は、リザーバ22の流体室部分64から指定された投与量の流体を送達するために、プランジャ駆動アセンブリ30を、図示の完全に引き込まれた位置から完全に延びた位置まで漸進的に移動するように制御できることが理解されるであろう。最外側の駆動ねじ70,90に関して、間欠割出装置と暴走防止装置を設けることで、モータによる、ねじ70,90の制御回転を確保し、それによってポンプ機構の暴走を防止することができる。例えば、駆動ねじやナット70,90は、割出付き及び正確な用量送達のためにエンコーダ(複数可)を備えることができ、暴走又は望ましくないもしくは不正確なポンプモータ動作及び駆動ナット70の回転からさらに保護するために、電気モジュール50にフィードバックを提供する。
【0046】
図8A~
図10の4層伸縮式リードねじは、
図4A~
図5の3層伸縮式リードねじと同じ軸方向の設置面積で、直径/横断寸法がわずかに大きくなるが、さらに移動可能という利点を有する。本明細書に記載の実施形態は、2つの入れ子式ねじから4つ以上の入れ子式ねじ、すなわち、機械的及び電気的に実現可能な数だけ働くように適合させることができる。例えば、最小限の2層から使用でき、サイズの制限によって駆動される最大層数を使用することができる。入れ子式伸縮ねじの数が増えると、ねじの界面で発生する損失により、設計の効率は低下する。しかし、最終的には、サイズの制約と利用可能な電力のバランスによって、これらの設計のいずれもが有益となる可能性がある。
【0047】
押し上げトルクは、軸方向荷重(力又は圧力)、ねじピッチ、摩擦パラメータ、直径の関数である基本的なねじ駆動機構に基づいている。場合によっては、方程式をさらに拡張して、フランク角、リード角、および他の多くの特有のパラメータなど、ねじ形状の詳細を取り込むことができる。ACMEねじは、一般的に、押し上げトルク、必要な電力、効率、および操作の滑らかさやコストなどの他の機能パラメータのバランスを調整するために用いることができる。
【0048】
このような機構を用いた装着型の使い捨てパッチポンプは存在ない。これは、ねじなどのくさび設計に基づく基本的な機構を新規に利用したものである。この設計の新しさは、多少の機械的な損失を交換しながらも、大きなスペースの利点をもたらすことである。この省スペース化により、高い送達精度が期待できる、新しい薬物送達ポンプの設計空間が大きく広がる。本開示の例示的な実施形態の設計は、ラチェット式又は割出式の駆動伝達で補完することができ、運動分解能をさらに向上させ、正確な薬剤送達をもたらす。
【0049】
本明細書に記載された例示的な実施形態は、送達される薬物又は流体を収容するために、楕円形状の注射器バレル型のリザーバ22を採用する。楕円形状の注射器バレル型のリザーバ22は、回転防止機能及び関連する利点を提供する。例えば、楕円形の注射器バレル型のリザーバ22の本質的なデザインによって提供される回転防止は、トルクが加えられたときにバレルの回転を自然に防止することができる。また、楕円形状は、装置全体の高さを抑えることができるというメリットもある。しかし、同じ回転防止を実現するために、別部品を採用することも可能である。例えば、最内側のねじは、ストッパアセンブリ28の戻り止め、又は、他の特徴、又は、プランジャ駆動アセンブリ30の駆動部品又は表面に対してキーイングすることができる。したがって、リザーバ22が楕円形状でない(例えば、円形断面を有する)場合であっても、軸方向並進中のリザーバ22の内壁に対するプランジャ駆動アセンブリ30の回転防止は達成される。
【0050】
リザーバ22は、取り外し可能ではなく、耐久性があるように構成することができ、流体送達装置のハウジング14内に予め設置されるように構成され得る。リザーバ22は、注射器のバレル及び関連するストッパと同様の材料であり得る。リザーバ33は、予め充填され、プランジャ駆動アセンブリ30は、最初、引き込まれた位置にあることができる。あるいは、流体送達装置のハウジング14は、充填ポート及び充填ポートからリザーバ22への流体経路26を備えることができる。充填ポートは、ユーザが注射器で充填するため、あるいは、充填ポートに流体的に結合する充填ステーションを使用するために構成されることができる。
【0051】
患者又は医療従事者を含み、これらに限定されない様々な人も、本開示の例示的な実施形態を操作又は使用することができるが、簡潔さのために、以下では、操作者又はユーザを、「ユーザ」と称することにする。
【0052】
本開示の例示的な実施形態では、様々な流体を採用することができるが、簡潔にするために、以下では、注入デバイス内の液体を、「流体」と称することにする。
【0053】
本開示が、以下で説明にされるか、または図面に図示される、構造の詳細、および構成要素の配置に、その適用が限定されないことが当業者によって理解されよう。本明細書の実施形態は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行または実施することができる。また、本明細書にて使用される表現、および用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとみなすべきではないことが理解されよう。本明細書における「含む」、「備える」、または「有する」、およびそれらの変形例の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物に加えて。追加のアイテムを包含することを意味する。特に限定されない限り、本明細書における「接続された」、「結合された」、および「据え付けられた」という用語、およびそれらの変形例は、広範囲に用いられ、直接的および間接的な接続、結合、および取り付けを包含する。さらに、「接続された」および「結合された」という用語、およびそれらの変形例は、物理的または機械的な、接続または結合に限定されない。さらに、上、下、底面、および上面などの用語は、相対的であって、図解を補助するために使用されるものではあるが、限定するものではない。
【0054】
図示された実施形態に従って採用された図示の装置、システム、および方法の構成要素は、少なくとも部分的には、デジタル電子回路、アナログ電子回路、またはコンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、もしくはそれらの組み合わせで実装することができる。これらの構成要素は、例えば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、もしくは複数のコンピュータのようなデータ処理装置による実行用の、またはそれらの動作を制御するための情報媒体もしくは機械可読記憶デバイスに明確に具現化されたコンピュータプログラム、プログラムコード、またはコンピュータ命令などのコンピュータプログラム製品として実装することができる。
【0055】
上記の説明および図は、例としてのみ意図されており、以下の特許請求の範囲に記載されている場合を除いて、決して本発明を限定することは意図されていない。当業者は、他の多くの方法で上述した、様々な例示的な実施形態の様々な要素の様々な技術的態様を、容易に組み合わせることができ、それらは総て特許請求の範囲内であると見なされることに特に留意されたい。
【国際調査報告】