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特表2023-538911流体送達装置の貯留部に外部配置された複動式伸縮スクリュー駆動ポンプ機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】流体送達装置の貯留部に外部配置された複動式伸縮スクリュー駆動ポンプ機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20230905BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61M5/142 522
A61M5/145 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512059
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021046184
(87)【国際公開番号】W WO2022040105
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,832
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/401,871
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ピッツォチェロ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ムザファー ヤルギン オズセセン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ブラム
(72)【発明者】
【氏名】エリック ハッセンプフルーク
(72)【発明者】
【氏名】コリー ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ヘルド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066HH02
4C066HH12
4C066HH17
(57)【要約】
流体送達装置は、プランジャを備えた注射器筒型の貯留部と、筒の後側でかつ外側に配置された複動、伸縮式のリードスクリューを含むプランジャ駆動アセンブリとを有する。同時にかつ相互に反対方向に回転するスリーブスクリューと軸心スクリューは、スリーブスクリューが回転されたとき、プランジャ駆動アセンブリの入れ子構成から伸長し、個々の等しいピッチおよびリードのパラメータの倍の割合で貯留部に入る。筒の端部に配置されたねじ付きナットおよびギヤ留め具は、スリーブスクリューを受け入れ、ねじ付きナットは、モータ動作に応答してスリーブスクリューを並進および回転させる。軸心スクリューの遠位端は、モータがねじ付きナットおよびスリーブスクリューに回転を与えているときに、回転防止制限のためにプランジャ押し部に固定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送達装置であって、
遠位端の出口ポートと、貯留部の長手方向軸に沿って移動可能なプランジャとを備える前記貯留部であって、プランジャは、当該プランジャの第1の側に画定された、前記出口ポートを含む流体室にもたらされる流体が、前記プランジャの第2の側によって画定された前記貯留部の一部に漏れるのを防ぐために、前記貯留部の内壁に対して密封するように構成された、前記貯留部と、
前記貯留部の近位端に取り付けられ、相似したピッチおよびリードのパラメータを有した、伸縮式で同時に相互逆回転するスクリューを含むプランジャ駆動アセンブリであって、ねじ付きナットが回転するとき、前記貯留部の中に伸長しない入れ子構成から、それぞれのスクリューのピッチ及びリードのそれぞれのパラメータの倍の割合で前記貯留部の中に伸長する延長構成に移動するプランジャ駆動アセンブリと、
を備える流体送達装置。
【請求項2】
前記スクリューは、それぞれが反対方向回りの外ねじ山を有した、スリーブスクリューと軸心スクリューを備え、前記スリーブスクリューの外ねじ山が左回りねじ山である場合前記軸心スクリューの外ねじ山は右回りねじ山であり、前記スリーブスクリューの外ねじ山が右回りねじ山である場合前記軸心スクリューの外ねじ山は左回りねじ山である、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項3】
前記スリーブスクリューの内ねじ山と前記スリーブスクリューの外ねじ山は、相互に反対方向回りのねじ山を有する、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項4】
前記ねじ付きナットは、当該ねじ付きナットが回転するとき、前記スリーブスクリューを前記貯留部内に進めるために前記スリーブスクリューの外ねじ山と協働する内ねじ山を備えた開口部を有する、請求項2に記載の流体送達装置。
【請求項5】
前記貯留部は、その近位端に取り付けられたギア留め具をさらに備え、前記ギア留め具は、前記スリーブスクリューの遠位端を受け入れ、前記ねじ付きナットが回転するときに前記スリーブスクリューと前記軸心スクリューが前記貯留部内に伸長することを可能にする寸法の開口部を備える、請求項4に記載の流体送達装置。
【請求項6】
前記ギア留め具は、通気のための貫通穴を備える、請求項5に記載の流体送達装置。
【請求項7】
前記プランジャ駆動アセンブリは、前記軸心スクリューの遠位端に結合されたプランジャ押し部をさらに備える、請求項2に記載の流体送達装置。
【請求項8】
前記プランジャ駆動アセンブリが、前記相互逆回転のスクリューを使用して前記プランジャを変位させることにより前記貯留部内の前記流体室から所定量の流体を排出するように制御されるとき、前記プランジャ押し部は、前記プランジャに取り外し可能に当接し、当該プランジャを前記貯留部の遠位端に向かって軸方向に押すように構成される、請求項7に記載の流体送達装置。
【請求項9】
前記軸心スクリューは、前記プランジャ押し部に結合され、回転防止機構によって回転が制約される、請求項2に記載の流体送達装置。
【請求項10】
前記回転防止機構は、前記スリーブスクリューが回転するときに前記貯留部内の前記プランジャ押し部の回転を防止する、非円形断面を有した、前記貯留部および前記プランジャ押し部である、請求項9に記載の流体送達装置。
【請求項11】
前記プランジャ駆動アセンブリは、前記スリーブスクリューが回転するとき、前記プランジャ押し部が前記貯留部の内壁に対して回転するのを防止するために、前記軸心スクリューの遠位端と協働するような寸法とされた、前記プランジャ押し部の近位側の戻り止めを備えた回転防止機構をさらに備える、請求項2に記載の流体送達装置。
【請求項12】
前記軸心スクリューの遠位端は、対応する寸法および/または形状の戻り止めに圧入されるような寸法および/または形状とされる、請求項11に記載の流体送達装置。
【請求項13】
前記戻り止めは、前記プランジャ押し部の遠位側に至る貫通穴を含み、前記軸心スクリューの遠位端は、前記貫通穴を通って延在する、請求項11に記載の流体送達装置。
【請求項14】
前記軸心スクリューの遠位端は、前記貫通穴において前記プランジャ押し部の遠位側で熱カシメされる、請求項13に記載の流体送達装置。
【請求項15】
前記貫通穴は、熱カシメを容易にするための回転防止スロットを含む、回転防止スロットを含む、請求項14に記載の流体送達装置。
【請求項16】
前記プランジャ押し部はその遠位側に突起部を含み、前記貫通穴は前記突起部を通って延在する、請求項13に記載の流体送達装置。
【請求項17】
前記プランジャ押し部は、通気のための少なくとも1つの貫通穴を含む、請求項7に記載の流体送達装置。
【請求項18】
前記プランジャ押し部は、通気のためのその周囲の少なくとも一部に沿った窪みを含む、請求項7に記載の流体送達装置。
【請求項19】
前記貯留部は、前記流体送達装置に設けられる充填ポートに入口流体経路を介して接続されて充填装置と結合する入口ポートを含み、前記プランジャは、流体が前記入口ポートから前記流体室に導入されると、前記貯留部の近位端に向かって変移するように構成され、前記プランジャ駆動アセンブリは、充填中に入れ子で構成される、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項20】
前記貯留部は注射器筒型の貯留部である、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項21】
前記貯留部および前記プランジャは、非円形形状および楕円形断面から選択される断面形状を有する、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項22】
それぞれの前記スクリューは等しいピッチを有する、請求項1に記載の流体送達装置。
【請求項23】
前記プランジャ駆動アセンブリに対するエンコーダをさらに備え、前記プランジャ駆動アセンブリの動きに関連するフィードバックデータを生成する、請求項1に記載の流体送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年8月18日に出願された米国仮出願第63/066,832号の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
例示的な実施形態は、一般に、ウェアラブル薬剤注入パッチなどの流体送達装置で用いるためのポンプ機構に関する。例示的な実施形態は、一般に、生体適合性を確保するために貯留部容積に影響を及ぼさず、貯留部の外部で完全に格納可能であり、回転防止制御のために貯留部内に固定される、注射器筒型の貯留部内のプランジャ駆動機構を制御可能に延長しまたは後退させるためのスクリューに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な薬剤送達パッチ型ポンプの設計は、小型、低消費電力、正確な送達、高い信頼性、および低い製造コストを達成する必要性を課題としている。さらに、薬剤送達パッチ型ポンプの設計は薬剤の品質に影響を与えられない。例えば、送達された流体に接触するポンプ機構の構成部分に用いられる材料は、生体適合性の問題を生じられない。
【発明の概要】
【0004】
上述した課題やその他の課題は、例示的な実施形態によって、克服され、さらなる利点が実現される。
【0005】
本開示の例示的な実施形態は、装置サイズを示す包絡線ないしフォームファクタを最小限に抑える一方で、薬剤ペンおよびペンニードル、注射器、またはリードスクリュー駆動機構を用いたより高価な非ポータブルポンプシステムなどの、信頼性が高く実績のあるシステムの有益な特徴を保持するなどいくつかの利点を実現する。
【0006】
例示的な実施形態の態様は、流体送達装置を介して送達される薬剤や他の流体に、薬物に優しいまたは生体適合性であることが実証されている注射器筒型薬物容器または同様の容器を用いることを可能にする、改良された新規の複動伸縮式スクリュー駆動ポンプ機構の構造を提供することである。
【0007】
例示的な実施形態によれば、遠位端の出口ポートと、貯留部の長手方向軸に沿って移動可能なプランジャとを備える貯留部であって、プランジャは、プランジャの第1の側に画定された、出口ポートを含む流体室にもたらされる流体が、プランジャの第2の側によって画定された貯留部の一部に漏れるのを防ぐために、貯留部の内壁に対して密封するように構成された、貯留部と、貯留部の近位端に取り付けられ、相似したピッチおよびリードのパラメータを有した、伸縮式で同時相互逆回転するスクリューを含むプランジャ駆動アセンブリであって、ねじ付きナットが回転するときに、貯留部の中に伸長しない入れ子構成から、それぞれのスクリューのピッチ及びリードのそれぞれのパラメータの倍の割合で貯留部の中に伸長する延長構成に移動するプランジャ駆動アセンブリと、を備える流体送達装置が提供される。例示的な実施形態の態様によれば、プランジャ駆動アセンブリの動きに関連するフィードバックデータを生成するために、プランジャ駆動アセンブリに対してエンコーダ(複数可)を設けることができる。
【0008】
例示的な実施形態の態様によれば、スクリューは、それぞれが反対方向回りの外ねじ山を有した、スリーブスクリューと軸心スクリューを含み、スリーブスクリューの外ねじ山が左回りねじ山である場合、軸心スクリューの外ねじ山は右回りねじ山であり、スリーブスクリューの外ねじ山が右回りねじ山である場合、軸心スクリューの外ねじ山は左回りねじ山である。
【0009】
例示的な実施形態の態様によれば、スリーブスクリューの内ねじ山と外ねじ山は相互に反対方向回りのねじ山を有する。
【0010】
例示的な実施形態の態様によれば、ねじ付きナットは、ねじ付きナットが回転されるとき、スリーブスクリューを貯留部内に進めるためにスリーブスクリュー上の外ねじ山と協働する内ねじ山を備えた開口部を有する。
【0011】
例示的な実施形態の態様によれば、貯留部は、その近位端に取り付けられたギア留め具をさらに備え、ギア留め具は、スリーブスクリューの遠位端を受け入れ、ねじ付きナットが回転するときにスリーブスクリューと軸心スクリューが貯留部内に伸長することを可能にする寸法の開口部を備える。さらに、ギア留め具は、通気のための貫通穴を有することができる。
【0012】
例示的な実施形態の態様によれば、プランジャ駆動アセンブリは、軸心スクリューの遠位端に結合されたプランジャ押し部材をさらに備える。
【0013】
例示的な実施形態の態様によれば、プランジャ駆動アセンブリが、逆回転スクリューを使用してプランジャを変位させることによって貯留部内の流体室から所定量の流体を排出するように制御されるとき、プランジャ押し部は、プランジャに取り外し可能に当接し、プランジャを貯留部の遠位端に向かって軸方向に押すように構成される。
【0014】
例示的な実施形態の態様によれば、軸心スクリューは、プランジャ押し部に結合され、回転防止機構によって回転が制約される。
【0015】
例示的な実施形態の態様によれば、回転防止機構は、スリーブスクリューが回転するときに貯留部内のプランジャ押し部の回転を防止する、非円形断面を有した、貯留部およびプランジャ押し部である。
【0016】
例示的な実施形態の態様によれば、プランジャ駆動アセンブリは、スリーブスクリューが回転するとき、プランジャ押し部が貯留部の内壁に対して回転するのを防止するために、軸心スクリューの遠位端と協働するような寸法とされた、プランジャ押し部の近位側の戻り止めを備えた回転防止機構をさらに備える。例えば、軸心ないし最も内側のスクリューの遠位端は、対応する寸法および/または形状の戻り止めに圧入されるような寸法および/または形状とされる。さらに、戻り止めは、プランジャ押し部の遠位側に至る貫通穴を含むことができ、軸心スクリューの遠位端は、例えば、貫通穴を通って延在することができる。軸心スクリューの遠位端は、貫通穴においてプランジャ押し部の遠位側に熱カシメすることができる。貫通穴は、熱カシメを容易にするための回転防止スロットを含むことができる。あるいは、プランジャ押し部はその遠位側に突起部を含み、貫通穴は突起部を通って延在することができる。別の態様によれば、プランジャ押し部は、通気のための少なくとも1つの貫通穴、および/または通気のためのその周囲の少なくとも一部に沿った窪みを含むことができる。
【0017】
例示的な実施形態の態様によれば、貯留部は、流体送達装置に設けられる充填ポートに入口流体経路を介して接続されて充填装置と結合する入口ポートを含み、プランジャは、流体が入口ポートから流体室に導入されると、貯留部の近位端に向かって変移するように構成され、プランジャ駆動アセンブリは、充填中に入れ子で構成される。
【0018】
例示的な実施形態の態様によれば、貯留部は、注射器筒型の貯留部である。
【0019】
例示的な実施形態の態様によれば、貯留部およびプランジャは、非円形形状および楕円形断面から選択される断面形状を有する。
【0020】
例示的な実施形態の態様によれば、それぞれのスクリューは等しいピッチを有する。
【0021】
例示の実施形態の追加の態様および/または他の態様ならびに利点は、以下の説明に記載されることになるか、説明から明らかとなるか、または、例示の実施形態の実施により知ることができる。例示的な実施形態は、上記の態様のうちの1つもしくは複数、および/またはそれらの特徴もしくは組み合わせのうちの1つもしくは複数を有する装置およびその装置を動作させるための方法を含み得る。例示の実施形態は、例えば、添付の特許請求の範囲に記載されている上記の態様の1つもしくは複数の特徴および/または組み合わせを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
例示的な実施形態の上記および/または他の態様ならびに利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
図1図1は、例示的な実施形態に従って構成された着用可能な流体送達装置の斜視図である。
図2A図2Aは、例示的な実施形態に従って構成された、図1の流体送達装置のカバーを取り外した状態で示す部分上面図である。
図2B図2Bは、例示的な実施形態に従って構成された、図1の流体送達装置のカバーを取り外した状態で示す斜視図である。
図2C図2Cは、例示的な実施形態に従って構成された、図1の流体送達装置のカバーを取り外した状態で示す側面図である。
図2D図2Dは、例示的な実施形態に従って構成された、図1の流体送達装置のカバーを取り外した状態で示す上面図である。
図3図3は、例示的な実施形態に従って構成された流体送達装置の例示的な構成要素のブロック図である。
図4A図4Aは、例示的な実施形態に従って構成され、カバーを取り外した状態の流体送達装置の、貯留部を充填する異なる段階を示す上面斜視図である。
図4B図4Bは、例示的な実施形態に従って構成され、カバーを取り外した状態の流体送達装置の、貯留部を充填する異なる段階を示す上面斜視図である。
図4C図4Cは、例示的な実施形態に従って構成され、カバーを取り外した状態の流体送達装置の、貯留部を充填する異なる段階を示す上面斜視図である。
図4D図4Dは、例示的な実施形態に従って構成され、カバーを取り外した状態の流体送達装置の、貯留部を充填する異なる段階を示す上面斜視図である。
図5A図5Aは、例示的な実施形態に従って構成されたギア留め具の後面斜視図である。
図5B図5Bは、例示的な実施形態に従って構成されたギア留め具の正面斜視図である。
図6A図6Aは、例示的な実施形態に従って構成されたプランジャ押し部の正面斜視図である。
図6B図6Bは、例示的な実施形態に従って構成されたプランジャ押し部の後面斜視図である。
図7A図7Aは、例示的な実施形態に係る、ギア留め具に対して収縮位置にあるプランジャ駆動アセンブリの側面図である。
図7B図7Bは、例示的な実施形態に係る、ギア留め具に対して収縮位置にあるプランジャ駆動アセンブリの図7Aに示される構成要素の分解図である。
図8A図8Aは、例示的な実施形態に従って構成された、プランジャ駆動アセンブリを介して貯留部から流体を排出する異なる段階を示す、カバーが取り外された状態の流体送達装置の上面斜視図である。
図8B図8Bは、例示的な実施形態に従って構成された、プランジャ駆動アセンブリを介して貯留部から流体を排出する異なる段階を示す、カバーが取り外された状態の流体送達装置の上面斜視図である。
図8C図8Cは、例示的な実施形態に従って構成された、プランジャ駆動アセンブリを介して貯留部から流体を排出する異なる段階を示す、カバーが取り外された状態の流体送達装置の上面斜視図である。
図8D図8Dは、例示的な実施形態に従って構成された、プランジャ駆動アセンブリを介して貯留部から流体を排出する異なる段階を示す、カバーが取り外された状態の流体送達装置の上面斜視図である。
図8E図8Eは、例示的な実施形態に従って構成された、プランジャ駆動アセンブリを介して貯留部から流体を排出する異なる段階を示す、カバーが取り外された状態の流体送達装置の上面斜視図である。
図9図9は、例示的な実施形態に従って構成された重要な機能を備えた軸心スクリューの斜視図である。
図10A図10Aは、例示的な実施形態による、割出しおよび暴走防止機能および/またはエンコーダを有する流体送達装置のそれぞれブロック図である。
図10B図10Bは、例示的な実施形態による、割出しおよび暴走防止機能および/またはエンコーダを有する流体送達装置のそれぞれブロック図である。
【0023】
図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の要素、特徴、および構造を指すと理解されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
当業者によって理解されるように、本明細書に開示される実施形態による流体送達装置用のポンプ機構の例、改良、および配置を実施するための多数の方法がある。図面および以下の説明に示される例示的な実施形態を参照するが、本明細書に開示される実施形態は、開示される技術的解決策に包含される様々な代替構成および実施形態を網羅することを意図したものではなく、当業者は、様々な修正が行われ得、開示される技術的解決策の範囲から逸脱して様々な組み合わせが行われ得ることを容易に理解する。
【0025】
本開示の例示的な実施形態は、装置サイズを示す包絡線ないしフォームファクタを最小限に抑える一方で、薬剤ペンおよびペンニードル、注射器、またはリードスクリュー駆動機構を用いたより高価な非ポータブルポンプシステムなどの、信頼性が高く実績のあるシステムの有益な特徴を維持するなどいくつかの利点を実現する。本明細書に記載の例示的な実施形態によれば、流体送達装置のための新規なポンプ機構が提供される。流体送達装置を介して送達される薬剤および他の流体について薬剤に適したことあるいは生体適合性であることが証明されている注射器筒型の薬剤容器または同様の容器の使用を可能にするポンプ機構には、入れ子式の伸縮スクリュー構成が採用されている。複動式の伸縮式リードスクリュー機構は、注射器筒型容器の後ろ側でかつ外側に位置する。本明細書に記載の例示的な実施形態は、薬剤の品質に最小限または全く影響を及ぼさない、高精度、制御可能、コンパクト、および効率的なポンプ構造を達成する。例示的な実施形態によれば、等しいそれぞれのピッチ/リードパラメータの倍の割合で入れ子構成から伸縮する、伸縮式で、同時に相互逆回転する、スリーブスクリューおよび軸心スクリューが採用される。逆回転機能を実現するには、最も内側のスクリューとスリーブスクリューの外ねじ山(および貯留部キャップねじ山)が反対の利き手特性でなければならない。スリーブスクリューの外ねじ山(および貯留部キャップ内側ねじ山)がそれぞれ右回りまたは左回りである場合、最も内側ないし軸心スクリューは左回りまたは右回りのいずれかであり得る。さらに、スリーブスクリューの内側ねじ山は、同じスクリューの外側ねじ山と、常に反対の利き手特性である。電源は、ナットを介してスリーブスクリューを回転させるギア列を回転させる。プランジャ押し部に固定されて回転できない軸心スクリューは、スリーブスクリューのねじ山が軸心スクリューの周りを回転するにつれて前進する。伸縮動作によって、例えば、既存のパッチ型ポンプで用いられる単一の前進リードスクリューとは対照的に、プランジャ駆動機構の全体的な取り付け面積が低減される。留意すべきは、全体のスクリュー駆動トルクが、最内側のスクリューとスリーブスクリューの回転の組み合わせトルク(全体の有効リードと同様に付加される)と等しいことである。また、駆動機構、モータおよび/または指示器からの力が選択的な回転方向を有さない限り、最内側のスクリューが左回りであるか右回りであるかは、ある程度任意である。
【0026】
図1は、例示的な実施形態に従って構成された着用可能な流体送達装置10の斜視図である。流体(例えば、薬剤)送達装置10は、ベースプレート12、カバー14、および非配備位置の挿入機構16を備える。貯留部流体送達装置10は、充填された注射器36の針を、充填ポートから貯留部への入口流体経路を有するベースプレート12に設けられた充填ポート(不図示)に挿入することによって、流体(例えば、薬剤)を充填することができる。流体送達装置10は、異なる機構および方法を用いて流体(例えば、薬剤)を充填することができることに留意されたい。
【0027】
図2A図2B図2C、および図2Dは、例示的な実施形態に従って構成された、図1の流体送達装置のカバーを取り外した状態で示す、それぞれ、部分上面図、斜視図、側面図、および上面図である。ベースプレート12は、挿入機構16、モータ18、電池20などの電源、制御基板50、および貯留部の出口ポートから挿入機構16への出口流体経路24を介して使用者に送達される流体を貯留するための貯留部22すなわち容器を支持する。貯留部22はまた、入口流体経路26を介して充填ポート(例えば、ベースプレート12に設けられる)に接続された入口ポートを有することができる。貯留部22内には、ストッパアセンブリを有したプランジャ28がある。貯留部22の近位端はまた、伸縮式の同時に相互逆回転する、スリーブスクリュー72と軸心スクリュー74を有するプランジャ駆動アセンブリ30、ギア留め具34、モータ18およびギヤボックス44に接続されたギア列32を介して回転されるナット70を備える。
【0028】
図3は、例示的な実施形態に従って構成された流体送達装置の例示的な構成要素のブロック図である。カバー/ハウジングすなわち装置10のハウジングは14で示される。装置10は、装置10を使用者の皮膚に接続するための粘着性パッドなどの皮膚保持サブシステム40を有する。流体送達装置10は、貯留部22、挿入機構16、およびモータ18、モータハウジングおよびギアボックス44、ギア列32、ポンプ機構(例えば、プランジャ駆動アセンブリ30)、および出口経路24を含むことができる流体移動モジュール42をさらに備える。流体送達装置はさらに、電源モジュール(例えば、バッテリ20)および、コントローラ52、モータドライバ54、流体流動状態(例えば、閉塞またはポンプ機構の暴走)を感知するための任意選択の感知モジュール56、任意選択のオーディオドライバ58(例えば、投与中、ブザーなどの可聴アラームによって、貯留量の低下、閉塞、外部装置との組合せの成功、または他の状態を示す)、および発光ダイオードによって視覚フィードバックをもたらす任意選択の視覚ドライバ60および/または振動要素によって触覚フィードバックをもたらす任意選択の触覚ドライバ、ならびに流体送達装置と任意選択のリモートポンプコントロール装置(例えば、スマートフォンまたは専用コントローラ63)との間の無線通信のための任意選択の無線ドライバ62を備える電気モジュール50、などの電気構成要素を備える。感知モジュール56に関して、流体送達装置は、例えば、割り出しおよびポンプ機構の暴走防止目的のために、駆動機構(例えば、プランジャ駆動アセンブリ30)のフィードバックをもたらすための1つまたは複数のエンコーダを備えることができる。
【0029】
図4A図4B図4C、および図4Dは、例示的な実施形態に従って構成された、カバーを取り外した状態の流体送達装置の、それぞれ貯留部を充填する異なる段階を示す上面斜視図である。貯留部22内の流体充填室64はプランジャ28の遠位側ないし前側に画定され、そのプランジャは、プランジャの近位側すなわち後側に画定される貯留部の一部に流体が入らないように流体を遮断するように構成され、その結果、流体が貯留部から送達される際に流体がプランジャ駆動アセンブリ30またはギア留め部34との接触がないようにしている。
【0030】
図4Aでは、貯留部22は流体がない空状態であり、プランジャ28はその最も遠位の位置にある。プランジャ駆動アセンブリ30は、図4Aから図4Dを通して十分に収縮した状態にあることが示されている。使用者は、図2Dに示されるように、充填ポートから貯留部22への入口流体経路26を有するベースプレート12に設けられた充填ポート(不図示)に、充填された状態の注射器36の針を挿入することができる。流体が入口流体経路26を介して注射器36から貯留部22に移送されると、図4B図4Cおよび図4Dにそれぞれ示されるように、プランジャ28の前面によって貯留部22に画定される流体室の体積が増加する。プランジャ28は、貯留部22の流体室部分64に保持された流体の漏れを防止するためのストッパアセンブリを有する。ストッパアセンブリは、例えば、注射器ストッパと同様の弾性材料を含むことができる。
【0031】
図5Aおよび図5Bは、例示的な実施形態に従って構成されたギア留め具34のそれぞれ後面斜視図および正面斜視図である。ギア留め具34は、貯留部取り付け部(例えば、ベースプレート上の壁、取り付けプレート、上部構造、または装置ハウジング14における他の構造)に設けられたピンまたは他の構成要素(不図示)に圧入するかまたは係合するための突起部80を有する。突起部(例えば、タブ)80は、プランジャの動きおよび流体圧力からの力に反応するためにギア留め具34を所定の位置に保持することができるが、他の代替の例示的な実施形態では、局所的な変形を回避するために、比較的大きな領域にわたってギア留め具34を支持するように用いることができる。ギア留め具34は、ナット70の第1の部分を受け入れるための開口部82を有する。開口部82は、スリーブスクリュー72の外側ねじ山72aと協働するように構成されたねじ山84を有する。ねじ山84の数は、トルクと移動安定性とのバランスをとるように調整することができる。ねじ山84の数は、長さに悪影響を与えることなく追加することができる(すなわち、駆動ナット形状のわずかな変更のみが必要となる)。凹んだ裏面86は、ナット70の遠位端を回転可能に受け入れるように構成されている。ギア留め具34は、(例えば、図4Dに示されるように)プランジャ駆動アセンブリ30が完全に収縮し貯留部が充填されたとき、プランジャ押し部76に当接し得る前面88を有するが、ギア留め具34は、貯留部22およびプランジャ駆動アセンブリ30の寸法によってはプランジャに当接する必要はない。ギア留め具34はまた、通気のための少なくとも1つの開口部ないし貫通孔85を有する。以下に記載されるように、押し部76はまた、貯留部22内で軸方向に移動するときに通気を可能にする開口部および/または隙間を有する。
【0032】
図6Aおよび図6Bは、例示的な実施形態に従って構成されたプランジャ押し部76のそれぞれ正面斜視図および後面斜視図である。プランジャ押し部76は、軸心スクリュー74のキー部74bを受容するために、後面に戻り止め90を有する。プランジャ押し部76前面の任意の突起92は、プランジャ28の後面に押し込むことができる。押し部76は、貯留部22のキャップ34と共に、または代わりに、通気を可能にするための機構(複数可)を備えている。例えば、空気排出構成は、押し部76の周囲の少なくとも一部に沿って設けられ、窪み76aを含む、貝のような波を打った縁の形態とすることができる。窪み76aが押し部76の周囲に設けられている場合、これらの機構は、これらの機構76aのいくつかの周縁の構成および許容差を偏らせることによって残りの窪みの縁がより盛り上がるようにし、軸方向の並進摩擦を最小限に抑え、内部の貯留部筒の面と最初に接触させて回転を防止するように構成することができる。押し部76はまた、通気のために押し部のプレート状部分に1つ以上の貫通孔76bを備えることができる。
【0033】
図7Aおよび図7Bは、それぞれ、例示的な実施形態に係る、ギア留め具34に対して収縮位置にあるプランジャ駆動アセンブリ30の側面図、および図7Aに示される構成要素の分解図である。プランジャ駆動アセンブリ30は、ギア列32およびモータ18と係合する歯70bをその一部に有したナット70を備える。ナット70の遠位部分は、ギア留め具34内に回転可能に受け入れられる。ナット70の内側ねじ山70cは、スリーブスクリュー72の外側ねじ山72aと係合する。スリーブスクリューの空洞内の内側ねじ山72bは、最内側ないし軸心スクリュー74の外側ねじ山74aと係合する。図9に関して説明されるように、軸心スクリュー74の遠位端には、プランジャ押し部76の戻り止め90と係合するキー部74bが設けられている。図6Aに示されるように、突起92は、回転防止溝92aを備えることができる。組み立てられたとき、最内側のスクリュー74の遠位端の柱は、押し部76を通りその突起部92をわずかに超えて戻り止め90内に延在することができる。最内側スクリュー74の遠位端の柱は、押し部76に対する最内側スクリュー74の熱かしめの間、溝92aと協働する。突起部92の熱かしめされた端部は、例えば、図7Aに示される。ナット70は、割出しおよび正確な用量送達のためのエンコーダ70aを備え、電気モジュール50にフィードバックをもたらして、駆動ナット70の暴走または望ましくないまたは不正確なポンプモータ動作や回転をさらに防ぐことができる。
【0034】
図8A図8B図8C図8Dおよび図8Eは、例示的な実施形態に従って構成された、プランジャ駆動アセンブリ30を介して貯留部から流体を排出するそれぞれの異なる段階を、カバーが取り外された状態で示す流体送達装置の上面斜視図である。図8Aでは、プランジャ駆動アセンブリ30は十分に収縮した位置にあり、貯留部22の流体充填室部分64の体積が最大限とされている。貯留部22の後ろに取り付けられたプランジャ駆動アセンブリ30の複動伸縮式リードスクリュー設計の構造は、貯留部の利用できる流体量を最大化しながら、ベースプレート12上の貯留部の全体的な設置面積を最小限とするのに有益である。スリーブスクリュー72の後部は、プランジャ駆動アセンブリ30が完全に収縮した位置にあるときナット70を超えて延在するが、非配備状態のプランジャ駆動アセンブリ30の全長、したがって、貯留部22およびプランジャ駆動アセンブリ30の全体的な設置面積は、例示的な実施形態による複動式の伸縮リードスクリュー設計によって最小限に抑えられる。
【0035】
図8Bでは、ナット70は、その歯70bの係合によって、モータおよびギアボックス18ならびに中間の動力伝達ギア列32によって回転されている。ナットの内側ねじ山70bおよびギア留め具34の開口ねじ山84は、スリーブスクリュー72の外側ねじ山72aと協働して、スリーブスクリュー72をナット70およびギア留め具34を通って貯留部22の中を前進させる。同時に、スリーブスクリュー72の回転は、プランジャ押し部76に固定される軸心スクリュー74の非回転前進を引き起こす。その結果、プランジャ28は、プランジャ押し部76がプランジャ28に当接するようにして遠位に前進するにつれて遠位に前進される。図8C図8Dおよび図8Eは、ナットがモータおよびギアボックス18および中間動力伝達ギア列32によって回転されるとき、スリーブスクリュー72および軸心スクリュー74の本質的に等しい長さでのさらなる複動伸長を示している。
【0036】
図6Bおよび図9を参照すると、プランジャ駆動アセンブリ30のナットがモータおよびギアボックス18および中間動力伝達ギア列32によって回転されているとき、軸心スクリュー74のキー部74bと、プランジャ押し部76の後面における対応する戻り止め90は、貯留部22に対するプランジャ押し部76の回転防止機構となる。軸心スクリュー74は、プランジャ押し部76と係合するためにキー部を用いる。このキー部は、非円形のプランジャ押し部形状と係合することができ、これにより回転は形状によって防止されるか、またはキー部は動作中の注射器筒型の貯留部22の回転を防止するように作用する中間構造と係合することができる。このキー部74bは、アセンブリの後端から組み立てられることができるように、同じ最内側のスクリュー(例えば、軸心スクリュー74)の外ねじよりも小さいことが必要である。例えば、軸心スクリュー74の遠位端は、他の構成要素70および72によって軸心スクリュー74に付与された制限された回転が、貯留部22の内壁に対してプランジャ押し部76の回転を引き起こすのを防ぐ、プランジャ押し部76における対応する寸法および/または形状の戻り止めないし窪み90と係合するように寸法および/または形状を決定することができる。この構造はまた、楕円形の注射器筒型貯留部22に依存し、薬物を含有して、回転防止機能性をもたらすことができる。楕円形状には、潜在的に装置の高さを低めにするという追加の利点もある。
【0037】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、送達される薬剤ないし流体を含有するために、楕円形の注射器筒型貯留部22を採用する。楕円形の注射器筒型貯留部22は、回転防止機能およびそれに関連した利点をもたらす。例えば、楕円形の注射器筒型貯留部22の本質的な構造によってもたらされる回転防止は、トルクが作用するときに必然的に筒の回転を防止するものである。楕円形状には、潜在的に装置の高さを低めにするというさらなる利点もある。しかしながら、同じ回転防止を達成するために別個の構成要素を用いることもできる。例えば、軸心スクリュー74を、プランジャ押し部76の戻り止めまたは他の部分90にキーで固定することができる。従って、貯留部22が楕円形でなくても(例えば、丸い断面を有する)、軸方向移動中に貯留部22の内壁に対するプランジャ駆動アセンブリ30の回転防止が依然として達成される。
【0038】
貯留部22は、耐久性があるように構成することができ、すなわち、取り外し可能ではなく、むしろ流体送達装置のハウジング14内に予め備え付けられる。貯留部22は、注射器筒およびそれに関連したストッパと材料を同様のものとすることができる。貯留部22は、予め充填されることができ、プランジャ駆動アセンブリ30は、最初は収縮位置にある。代替形態として、流体送達装置のハウジング14は、充填ポートおよび充填ポートから貯留部22までの流体経路26を備えることができる。充填ポートは、使用者が注射器で、または充填ポートに流体的に結合する充填ステーションを用いることによって、充填するように構成することができる。
【0039】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、(a)スクリューのくさび力(例えば、スリーブスクリュー72と軸心スクリュー74の対向するねじ山)、(b)駆動部と、内ねじ付きナット70と、スリーブスクリュー72と、の間のスライド結合(例えば、内ねじ付きナット70とスリーブスクリュー72は一緒に回転するが、スクリュー72はナット70の外側を軸方向に並行して移動する)、(c)筒型貯留部内部の軸心スクリュー74の回転防止機能(例えば、プランジャ押し部76または別個の構造のいずれか)、(d)ナット70および様々なねじ部材に関する摩擦および歯車動力伝達、(e)注射器筒型の薬剤の容器ないし貯留部22および投薬精度を薬剤種類と使用計画に変えるための縦横比、および(f)任意のスペースを小さくする平らなセルタイプのバッテリ―、など多くの技術的原理を用いる。
【0040】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、操作上の変形および代替的な構成の対象となり得ることを理解されたい。例えば、投薬精度を変更するために、異なるリードスクリュー構造を用いることができる。エンコーダは、駆動機構30のフィードバックをもたらすために用いることができる。割り出し駆動方式を用いて、プランジャ28を繰り返しおよびフェールセーフで前進させることができる。一般に、非円形注射器筒の断面を用いて、スペースの利用を最適化し、使用者の快適性に最適な装置サイズに調整することができる。薬剤の種類及び送達速度、必要な精度に応じて、注射器筒型貯留部22は、縦横比で変更することができる。すなわち、より小さい比(より広い断面積、より短い筒)を用いて低精度で薬剤を送達することができ、一方、より正確な投与を容易にするために大きな縦横比を用いることができる。また、構造は、押し上げトルクが作用する軸荷重(力または圧力)、ねじ山ピッチ、摩擦パラメータ、および直径の関数である、基本的なスクリュー駆動機構に基づいている。場合によっては、方程式をさらに拡張して、フランク角、リード角、および他の多くの特有のパラメータなど、ねじ山形状の詳細を取り込むことができる。ACMEスレッドは、一般的に、押し上げトルク、必要な電力、効率、および操作の滑らかさやコストなどの他の機能パラメータのバランスを調整するために用いることができる。
【0041】
図10Aおよび図10Bは、例示的な実施形態による、割り出しおよび暴走防止機能96および/またはエンコーダ98を有する流体送達装置それぞれのブロック図である。割り出しおよび暴走防止装置96は駆動ナット70に設けられ、モータによるナット70の制御された回転を確実にし、それによってポンプ機構の暴走を防止することができる。上述したように、駆動ナット70の回転は、スリーブスクリュー72の軸方向の並行移動を引き起こし、これはまた、本明細書に記載されるように、スクリューの伸縮と、同時の相互逆回転の構成に起因して、軸心スクリュー74の軸方向の並行移動を引き起こす。軸心スクリュー74は、プランジャ28の押し部76に軸方向の動きを与える。貯留部キャップすなわちギヤ留め具34は、スリーブスクリューによる摩擦に対して注射器筒型の容器ないし筐体のための縦方向の固定支持をもたらす。ギヤ留め具34はまた、最内側のスクリュー74の係合による押し部の軸方向の移動およびトルクに対して、通気、ならびに固定支持、および注射器筒型の容器ないし筐体の縦方向の回転支持をもたらすことができる。エンコーダ(例えば、バックアップエンコーダ)98はまた、駆動ナット70に接続されて、電気モジュール50にフィードバックを与え、駆動ナット70の暴走または望ましくないまたは不正確なポンプモータの動作および回転からさらに保護することができる(例えば、電気モジュールは、暴走状態がエンコーダ98によって感知された場合、モータの電源を切ることができる)。
【0042】
本明細書に記載の例示的な実施形態およびそれらの同等の変形例は、既存の流体送達装置、特にパッチタイプすなわちウェアラブル流体送達装置における多くの技術的課題に対する技術的解決策をもたらす。例えば、本明細書に記載の入れ子で、伸縮式の、同時に相互逆回転するスクリュー技術を備えた既存のウェアラブル、使い捨てパッチポンプは存在しない。例示的な実施形態の利用によって、標準的な注射器筒型の容器を貯留部22として用いることが可能となり、したがって、注射器筒の完全な外側で移動プランジャ28の後側に存在する機械的駆動機構の大幅な省スペース化をもたらしつつ、薬剤互換性を簡易にする。市販されている既存の装置機能を超える大量の貯留部を用いることができる。
【0043】
さらに、例示的な実施形態によって提供されるコンパクトな構造は、貯留部の断面構造におけるさらなる柔軟性を可能にし、したがって、流体送達装置の設計者が、例えば断面積をわずかに減少させ(および長さを延長する)、それによって、最小限の流体用量を分配するためにより多くの移動を必要とすることによって投薬精度に利益をもたらし得る追加の設計制御を有することを可能とする。この移動量の増加は、回転駆動ギヤのより大きな回転に対応し、これは、駆動運動がより正確になり得ることを意味する。
【0044】
例示的な実施形態によって提供されるさらなる技術的解決策は、貯留部22用の楕円形断面の注射器筒型容器を用いることである。(例えば、ナット70およびギヤ留め具34の構成を介して)筒を押す回転スクリュー(例えば、スクリュー72)は、普通、筒22に回転運動をするようにする。したがって、形状的特徴は、回転を防止するのに有益である。楕円形の注射器断面は、円形断面のような回転を許さないように、この要件を獲得する。貯留部およびプランジャの断面形状は、非円形形状であれば任意の形状とし得ることを理解されたい。楕円形は、密封および釣り合いの力を促進するために幾何学的に実装しやすい断面形状であるが、他の形状はより良好なパッケージングを可能にし得る。充填処理をどのように実装するかに応じて、回転を防止するための追加の方法を実装することができる。例えば、(例えば、患者によって操作される)注射器36に可変充填が望まれる場合、プランジャ28は、底面に取り付けられ、充填量だけ初期位置に押し込まれるようにすることができる。最も内側のスクリュー(例えば、軸心スクリュー74)に取り付けられた回転防止構成によって、そのスクリューセットは、予め整列された係合構成を有することによって、プランジャを前進させそれを適切に係合させることができる。
【0045】
貯留部22およびプランジャ28に対するプランジャ駆動アセンブリ30構成要素の構成は、他のいくつかの利点を実現する。例えば、貯留部22の近位端に取り付けられたプランジャ駆動アセンブリ30を有し、ナット70が回転するまで貯留室内に伸長しない入れ子構成を有することは、プレ送達プランジャ駆動構成要素を収容する必要があるのに代わって、流体送達のための貯留室の使用を最適化する。また、貯留部の全長は、ナット70の駆動ギア歯70bへのギア列34の接続を提供するための少量の上部空間、および完全に収縮した位置でナットから延びるスリーブスクリュー72の公称長さが加わった、ハウジングの長さと実質的に同じものとすることができる。従って、ポンプ機構の全体的な設置面積は、流体送達装置のハウジング14の長手方向軸寸法と同様に最小化される。プランジャ28およびプランジャ駆動アセンブリ30の構成を用いることはまた、ポンプ機構と送達される流体との接触を最小限に抑え、流体と流体送達ハウジングとの間の生体適合性を確保する。本明細書に記載の例示的な実施形態は、適切なサイズおよびねじ構成の入れ子の伸縮スクリューを用い、注射器筒型貯留部プランジャ28の制御された動きを達成する。スクリューねじ技術は明確に規定され、理解されており、反復可能で強力な動きが可能となる。モータ18によって適切な分解能で制御された動きで駆動されるとき、入れ子のスクリュー(例えば、72および74)は、事実上すべての環境条件下で正確な動きを提供することができる。さらに、駆動機構(例えば、プランジャ駆動アセンブリ30)は、薬剤が存在する流体室64の基本容積に影響を及ぼさず、したがって、いかなる互換性の問題にも影響を及ぼさない。
【0046】
患者または医療従事者を含み、これらに限定されない様々な人も、本開示の例示的な実施形態を操作または使用することができるが、簡潔に、以下では、操作者または使用者を、“使用者”と称することにする。
【0047】
本開示の例示的な実施形態では、様々な流体を用いることができるが、簡潔に、以下では、注入装置内の液体を、“流体”と称することにする。
【0048】
本開示は、上記説明に記載されるか、図面に図示される、詳細な構造および構成部品の構成に、その適用が限定されないことは当業者によって理解される。本明細書に記載の実施形態は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行または実施することができる。また、本明細書で用いられる表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。本明細書における「含む」、「備える」、または「有する」、およびそれらの変形例の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物並びに追加のアイテムを包含することを意味する。特に限定されない限り、本明細書における「接続された」、「結合された」、および「装着された」という用語およびそれらの変形例は、広範囲に用いられ、直接的および間接的な接続、結合、および装着を包含する。さらに、「接続された」および「結合された」という用語、およびそれらの変形例は、物理的または機械的な、接続または結合に限定されない。さらに、上、下、底面、および上面などの用語は、相対的であって、説明を補助するために用いられるものではあり、限定するものではない。
【0049】
図示の実施形態に従って採用された実例の装置、システム、および方法の構成要素は、少なくとも部分的には、デジタル電子回路、アナログ電子回路、またはコンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、もしくはそれらの組み合わせで実装することができる。これらの構成要素は、例えば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、もしくは複数のコンピュータのようなデータ処理装置による実行用の、またはそれらの動作を制御するための、情報媒体もしくは機械可読記憶デバイスに明確に具現化されたコンピュータプログラム、プログラムコード、またはコンピュータ命令などのコンピュータプログラム製品として実装することができる。
【0050】
上記の説明および図は、例としてのみ意図されており、以下の特許請求の範囲に記載されているものを除いて、いかなる方法でも本発明を限定することを意図したものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10A
図10B
【国際調査報告】