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特表2023-538936組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ
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  • 特表-組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ 図1A
  • 特表-組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ 図1B
  • 特表-組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ 図2
  • 特表-組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ 図3A
  • 特表-組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ 図3B
  • 特表-組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】組織工学のための、セルロース結合ドメイン(CBD)細胞エフェクタータンパク質(CEP)キメラ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230905BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 14/51 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 14/79 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 14/485 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 14/49 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230905BHJP
   C12N 1/22 20060101ALI20230905BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230905BHJP
   C07K 14/33 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C07K14/575 ZNA
C07K14/52
C07K14/51
C07K14/79
C07K14/485
C07K14/49
C07K19/00
C12N1/22
C12N5/07
C07K14/33
C07K14/475
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513176
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 IL2021051017
(87)【国際公開番号】W WO2022043991
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/069,080
(32)【優先日】2020-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523062132
【氏名又は名称】バイオベター リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOBETTER LTD.
【住所又は居所原語表記】2 Tarshish Street, Kiryat Shmona ISRAEL
(71)【出願人】
【識別番号】598025706
【氏名又は名称】イッスム・リサーチ・デベロプメント・カムパニー・オブ・ザ・ヘブリュー・ユニバシティー・オブ・エルサレム リミテッド
【住所又は居所原語表記】Hi Tech Park, The Edmond J. Safra Campus, The Hebrew University of Jerusalem, Givat Ram, P.O.Box 39135, 9139002 Jerusalem, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】ショーセヨフ、 オデッド
(72)【発明者】
【氏名】ヤーリ、 アミット
(72)【発明者】
【氏名】ツヴィリン、 ツヴィ
(72)【発明者】
【氏名】バラン エルメドヴィ、 シリ
(72)【発明者】
【氏名】アヴィガド ラロン、 エフラット
(72)【発明者】
【氏名】エラン、 ヨナタン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA21
4B029BB11
4B029BB15
4B029CC02
4B029GA03
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065BB19
4B065BB32
4B065BC41
4B065CA41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA20
4H045EA01
4H045FA74
(57)【要約】
セルロース結合ドメイン(CBD)、細胞エフェクタータンパク質(CEP)及びCBDをCEPに連結するリンカーを含む、試験管内組織工学において使用するためのキメラポリペプチド並びにそれを利用するシステム及び方法が開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド並びに少なくとも1つの層及び/又は繊維のセルロースを含む試験管内組織工学システムであって、ここで、当該ポリペプチドは、セルロース結合ドメイン(CBD)、細胞エフェクタータンパク質(CEP)、及びCBDをCEPに連結するリンカーを含む、試験管内組織工学システム。
【請求項2】
当該CBDが、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の相同性を有する、請求項1に記載の組織工学システム。
【請求項3】
当該リンカーが10~25個のアミノ酸の長さを有する、請求項1又は2に記載の組織工学システム。
【請求項4】
当該CEPが、成長因子、ホルモン、サイトカイン、アポトーシス促進性因子、抗アポトーシス性因子、血管成長因子、細胞分化因子、骨成長因子、細胞生存能のために要求されるトランスフェリンのような他のタンパク質又はそれらの組合せから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項5】
当該CEPが、細胞分化因子、成長因子、サイトカイン又は成長ホルモンである、請求項4に記載の組織工学システム。
【請求項6】
当該CEPが、FGF2、IGF1、TGFβ1、EGF、LIF、アクチビンA、NRG1、PDGF、IL6、IL13又はそれらの任意の組合せから選択される、請求項4に記載の組織工学システム。
【請求項7】
当該リンカーが、部位特異的プロテアーゼによる所定の切断効率での切断を可能にし、当該ポリペプチドが当該プロテアーゼに対して曝露されると、当該CBDからのCEPの徐放が得られることを特徴とする切断部位を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項8】
当該切断部位が、当該CEPのN末端の上流5アミノ酸以下又は当該CEPのC末端の下流5アミノ酸以下に位置する、請求項7に記載の組織工学システム。
【請求項9】
当該切断部位が、TEV-プロテアーゼ切断部位である、請求項7又は8に記載の組織工学システム。
【請求項10】
当該切断部位が、当該切断部位の未修飾版と比較して、より低い切断効率を提供するように修飾されている、請求項7から9のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項11】
当該修飾が、1個以上のアミノ酸の欠失、1個以上のアミノ酸の付加又は1個以上のアミノ酸の置換を含む、請求項10に記載の組織工学システム。
【請求項12】
当該修飾が、1個以上のアミノ酸の化学的修飾を含む、請求項11に記載の組織工学システム。
【請求項13】
当該切断部位が、通常の哺乳動物細胞成長条件で1.5×103m-1s-1未満の触媒効率(kcat/KM)を有するプロテアーゼの切断部位である、請求項7から12のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項14】
当該CEPの半減期が、CBD及び/又は当該リンカーに結合している場合には、その遊離形態と比較してより高い、請求項1から13のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項15】
当該リンカーが、当該CBDの半減期を増大する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項16】
少なくとも2つの層及び/又は繊維のセルロースを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項17】
前記少なくとも2つの層及び/又は繊維の各々が、異なるCEPを含むキメラペプチドと会合している、請求項16に記載の組織工学システム。
【請求項18】
少なくとも1つの層が、各々異なるCEPを含む少なくとも2種類のキメラポリペプチドを含む、請求項16から17のいずれか一項に記載の組織工学システム。
【請求項19】
前記2種類のキメラポリペプチドのうち第1のものは、分化因子を含み、前記2種類のキメラポリペプチドのうち第2のものは、分化と関連する成長因子を含む、請求項18に記載の組織工学システム。
【請求項20】
前記2種類のキメラポリペプチドのうち第1のもののリンカーが、部位特異的プロテアーゼによる第1の所定の切断効率での切断を可能にすることを特徴とする第1の切断部位を含むリンカーを含み、前記2種類のキメラポリペプチドのうち第2のもののリンカーが、部位特異的プロテアーゼによる第2の所定の切断効率での切断を可能にすることを特徴とする第2の切断部位を含むリンカーを含み、第2の切断効率は、第1の切断効率よりも低い、請求項19に記載の組織工学システム。
【請求項21】
以下を含む、試験管内組織工学において使用するためのキメラポリペプチド:
a. セルロース結合ドメイン(CBD)、
b. 細胞エフェクタータンパク質(CEP)、及び
c. CBDをCEPに連結するリンカー。
【請求項22】
当該CBDが、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の相同性を有する、請求項21に記載のキメラポリペプチド。
【請求項23】
当該リンカーが、10~25個のアミノ酸の長さを有する、請求項21又は22に記載のキメラポリペプチド。
【請求項24】
当該CEPが、成長因子、ホルモン、サイトカイン、アポトーシス促進性因子、抗アポトーシス性因子、血管成長因子、細胞分化因子、骨成長因子、細胞生存能のために要求されるトランスフェリンのような他のタンパク質又はそれらの組合せから選択される、請求項21から23のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項25】
当該CEPが、細胞分化因子、成長因子、サイトカイン又は成長ホルモンである、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項26】
当該CEPが、FGF2、IGF1、TGFβ1、EGF、LIF、アクチビンA、NRG1、PDGF、IL6、IL13又はそれらの任意の組合せから選択される、請求項24に記載のキメラポリペプチド。
【請求項27】
当該リンカーが、部位特異的プロテアーゼによる所定の切断効率での切断を可能にし、当該ポリペプチドが当該プロテアーゼに対して曝露されると、当該CBDからのCEPの徐放が得られることを特徴とする切断部位を含む、請求項21から26のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項28】
当該切断部位が、CEPのN末端の上流5アミノ酸以下又はCEPのC末端の下流5アミノ酸以下に位置する、請求項27に記載のキメラポリペプチド。
【請求項29】
当該切断部位が、TEV-プロテアーゼ切断部位である、請求項26又は27に記載のキメラポリペプチド。
【請求項30】
当該切断部位が、切断部位の未修飾版と比較して、より低い切断効率を提供するように修飾されている、請求項26から28のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項31】
当該修飾が、1個以上のアミノ酸の欠失、1個以上のアミノ酸の付加又は1個以上のアミノ酸の置換を含む、請求項29に記載のキメラポリペプチド。
【請求項32】
当該修飾が、1個以上のアミノ酸の化学的修飾を含む、請求項30に記載のキメラポリペプチド。
【請求項33】
当該切断部位が、通常の哺乳動物細胞成長条件で1.5×103m-1s-1未満の触媒効率(kcat/KM)を有するプロテアーゼの切断部位である、請求項26から32のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項34】
当該CEPの半減期が、CBD及び/又は当該リンカーに結合している場合には、その遊離形態と比較してより高い、請求項21から33のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項35】
当該リンカーが、当該CBDの半減期を増大する、請求項21から34のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項36】
以下を含む、試験管内組織工学のための方法:
a. 少なくとも1つの層及び/又は繊維のセルロースを含む細胞成長培地を提供すること、ここで、少なくとも1つの層のセルロースは、セルロース結合ドメイン(CBD)、細胞エフェクタータンパク質(CEP)及び当該CBDを当該CEPに連結するリンカーを含むキメラポリペプチドを含む;
b. 少なくとも1つの層のセルロース上に哺乳動物細胞を播種すること;
c. 組織化された組織が得られるまで細胞を成長させること;
d. 当該組織を回収すること。
【請求項37】
当該少なくとも1つの層及び/又は繊維が、第1のCEPを含む第1のキメラポリペプチドを備える第1の層、及び、第2のCEPを含む第2のキメラポリペプチドを備える第2の層を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
哺乳動物細胞を播種することが、第1の層上に第1の細胞型を、及び第2の層上に第2の細胞型を播種することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
第1の細胞型が筋肉細胞を含み、第2の細胞型が脂肪細胞を含み、当該の組織化された組織が食肉である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
第1のCEPが筋肉特異的成長因子であり、第2のCEPが脂肪特異的成長因子である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
哺乳動物細胞が、複能性又は多能性細胞であり、前記第1及び第2の因子が、異なる細胞型への細胞の分化を引き起こす、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
第1のCEPが、前記複能性又は多能性細胞の筋肉細胞への分化を引き起こし、かつ、第2のCEPが、前記複能性又は多能性細胞の脂肪細胞への分化を引き起こす、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
当該リンカーが、部位特異的プロテアーゼによる切断を可能にすることを特徴とする切断部位を含み、当該方法が、当該少なくとも1つの層のセルロースを部位特異的プロテアーゼに対して曝露することをさらに含み、その結果、当該CEPが細胞成長培地中に持続的に放出される、請求項36から42のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、繊維性組織及び他の非等方性組織、特に、培養肉の生成のための新規成長誘導性/操作性足場を対象とする。具体的には、本発明は、細胞エフェクタータンパク質(CEP)に融合された組換えセルロース結合ドメイン(CBD)に関し、CEPは、セルロース繊維足場に結合される。
【背景技術】
【0002】
細胞外マトリックス(ECM)は、細胞外高分子、小分子、エフェクタータンパク質及びミネラルからなる三次元ネットワークであり、細胞成長、増殖及び分化の重要な制御因子である。さらに、それは、組織の秩序及び方向に貢献し、十分に機能する組織が生成されることを確実にする。しかし、この段階では、ECM環境の、及び試験管内での組織生成の対費用効果の高い模倣を可能にする利用可能な技術はない。組織工学の分野における最近の技術の中では、足場の使用が重要な要素である。しかし、既存の技術は、ECM様環境を提供する能力を欠く。支持構造として働きながら、細胞の方向性分布を可能にしない多孔性、繊維性、ハイドロゲル、ミクロスフェア及び無細胞足場を含む多数の種類の足場があり、それらは、各種類の細胞のための複雑な操作を必要とし、細胞生存能の低減に関連し、時には、酸性副生成物を生成する。
【0003】
成長因子は、細胞の運命を方向付け、組織の形成を可能にすることによって組織工学において重要な役割を果たす。しかし、成長因子は、天然に存在する変化のためにその生理活性を失う傾向を抱えている。ハイドロゲル(例えば、ゼラチン、アルギネート)及び疎水性ポリマー(例えば、ポリカプロラクトン)のような特定の材料の使用を含む、いくつかの戦略が、この不利点を克服するために開発されたが、短い半減期及び不安定性が依然として、効率的な組織工学の大きな障害である。
【0004】
したがって、本来の組織生成を模倣する十分に秩序だった、機能的組織の効率的な生成を可能にする組織工学足場が依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
以下の実施形態及びその態様は、例示的及び例証的であり、範囲を制限しないものとする組成物及び方法とともに説明及び例証される。種々の実施形態では、上記の問題のうち1つ以上が、低減又は排除され、一方で、他の実施形態は、他の利点又は改善に向けられる。
【0006】
一部の実施形態によれば、試験管内組織工学のための、キメラポリペプチド並びにそれを利用するシステム及び方法が提供される。
【0007】
本明細書において開示されるキメラポリペプチドは、炭水化物結合分子(CBM)、好ましくは、セルロース結合ドメイン(CBD)、細胞エフェクタータンパク質(CEP)及びCBDをCEPに連結するリンカーを含む。本明細書において開示されるポリペプチドは、有利なことに、所望の組織を作出するために必要とされる、必要な特異性、秩序、方向性及び機能性を提供するテーラーメード環境を提供するように構成される。
【0008】
一部の実施形態によれば、リンカーは、ポリペプチドが部位特異的プロテアーゼに対して曝露されると、CBDからのCEPの徐放が得られるような、所定の切断効率での当該部位特異的プロテアーゼによる切断を可能にすることを特徴とする切断部位を含み得る。これは、有利なことに、CEPの半減期を増大し、それによって組織工学システムの効率を増大する。
【0009】
一部の実施形態によれば、キメラタンパク質は、組織成長のための足場として働くセルロース繊維の繊維又は層に結合される、又は結合可能である。有利なことに、1つより多い足場を利用でき、それによって、複雑な組織(すなわち、1種より多い種類の細胞、例えば、それだけには限らないが、脂肪及び筋肉組織の両方を含む組織で作製された組織)の生成を可能にする。
【0010】
一部の実施形態によれば、試験管内組織工学において使用するためのキメラポリペプチドである、炭水化物結合モジュール(CBM)、細胞エフェクタータンパク質(CEP)及びCBMをCEPに連結するリンカーを含むポリペプチドが提供され、リンカーは、ポリペプチドが部位特異的プロテアーゼに対して曝露されると、CBMからのCEPの徐放が得られるような、所定の切断効率での当該部位特異的プロテアーゼによる切断を可能にすることを特徴とする切断部位を含む。
【0011】
一部の実施形態によれば、CBMは、セルロース結合ドメイン(CBD)である。一部の実施形態によれば、CBDは、配列番号1:(ELQLNLKVEFYNSQPSDTTNSINPQFKVTNTGSSAIDLSKLTLRYYYTVDGQKDQTFWCDHAAIIGSQGSYNGITSNVKGTFVKMSSSTNNADTYLEISFTGGTLEPGAHVQIQGRFAKNDWSQYTQSNDYSFKSASQFVEWDQVTAYLNGVLVWGKEPGGSVVPSTQPVTTPPATTKPPATTIPPS)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の配列相同性を有する。各可能性は、別個の実施形態である。
【0012】
一部の実施形態によれば、リンカーは、5~50個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸、5~20個のアミノ酸、10~25個のアミノ酸の長さ又は5~50個のアミノ酸の範囲内の任意の他の適した長さを有する。各可能性は、別個の実施形態である。
【0013】
一部の実施形態によれば、リンカーは、配列番号2:(GAGGGSGGGSGGGSAGGG)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の配列相同性を有する。各可能性は、別個の実施形態である。
【0014】
一部の実施形態によれば、切断部位は、配列番号3(ENLYFQG)又は配列番号4:(ENLYFSG)に示されるアミノ酸配列を有し得る。
【0015】
一部の実施形態によれば、切断部位は、CEPのN末端の上流約5アミノ酸以下又はCEPのC末端の下流約5アミノ酸以下に位置する。一部の実施形態によれば、切断部位は、リンカーに隣接している場合もある。一部の実施形態によれば、リンカー-切断部位-ペプチドをコードするアミノ酸は、配列番号5:(GAGGGSGGGSGGGSAGGGENLYFXG)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95又は100%の配列相同性を有し得る。各可能性は、別個の実施形態である。
【0016】
一部の実施形態によれば、リンカー-切断部位-CBD-ペプチドをコードするアミノ酸は、配列番号6:(ELQLNLKVEFYNSQPSDTTNSINPQFKVTNTGSSAIDLSKLTLRYYYTVDGQKDQTFWCDHAAIIGSQGSYNGITSNVKGTFVKMSSSTNNADTYLEISFTGGTLEPGAHVQIQGRFAKNDWSQYTQSNDYSFKSASQFVEWDQVTAYLNGVLVWGKEPGGSVVPSTQPVTTPPATTKPPATTIPPSGAGGGSGGGSGGGSAGGGENLYFXG)(式中、X=Q又はS)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の配列相同性を有する可能性がある。各可能性は、別個の実施形態である。
【0017】
一部の実施形態によれば、CEPは、成長因子、ホルモン、アポトーシス促進性因子、抗アポトーシス性因子、血管成長因子、細胞分化因子、骨成長因子、細胞生存能のために要求されるトランスフェリンのような他のタンパク質又はそれらの組合せから選択される。各可能性は、別個の実施形態である。一部の実施形態によれば、CEPは、細胞分化因子、成長因子又は成長ホルモンである。各可能性は、別個の実施形態である。
【0018】
一部の実施形態によれば、CEPは、サイトカイン又はFGF2、IGF1、TGFβ1、EGF、LIF、アクチビンA、NRG1、PDGF、IL6、IL13もしくはそれらの任意の組合せから選択される成長因子であり得る。各可能性は、別個の実施形態である。
【0019】
一部の実施形態によれば、CEPは、配列番号7:(PSLPEDGGSGAFPPGHFKDPKRLYCKNGGFFLRIHPDGRVDGVREKSDPHIKLQLQAEERGVVSIKGVCANRYLAMKEDGRLLASKCVTDECFFFERLESNNYNTYRSRKYSSWYVALKRTGQYKLGPKTGPGQKAILFLPMSAKS)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の配列相同性を有するウシFGF2のアイソフォームであり得る。各可能性は、別個の実施形態である。
【0020】
一部の実施形態によれば、キメラポリペプチドは、ER保持シグナルをさらに含み得る。一部の実施形態によれば、保持シグナルは、配列番号8(KDEL)に示されるアミノ酸配列を有する可能性がある。
【0021】
一部の実施形態によれば、キメラポリペプチドは、配列番号9:(ELQLNLKVEFYNSQPSDTTNSINPQFKVTNTGSSAIDLSKLTLRYYYTVDGQKDQTFWCDHAAIIGSQGSYNGITSNVKGTFVKMSSSTNNADTYLEISFTGGTLEPGAHVQIQGRFAKNDWSQYTQSNDYSFKSASQFVEWDQVTAYLNGVLVWGKEPGGSVVPSTQPVTTPPATTKPPATTIPPSGAGGGSGGGSGGGSAGGGENLYFXGPSLPEDGGSGAFPPGHFKDPKRLYCKNGGFFLRIHPDGRVDGVREKSDPHIKLQLQAEERGVVSIKGVCANRYLAMKEDGRLLASKCVTDECFFFERLESNNYNTYRSRKYSSWYVALKRTGQYKLGPKTGPGQKAILFLPMSAKSKDEL)(式中、X=Q又はS)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の配列相同性を有する配列を含み得る。各可能性は、別個の実施形態である。
【0022】
一部の実施形態によれば、切断の際、CEPは、C末端グリシン(切断部位の残部)及びER保持シグナルを含み得る。
【0023】
限定されない例として、切断後、キメラポリペプチドは、配列番号10(GPSLPEDGGSGAFPPGHFKDPKRLYCKNGGFFLRIHPDGRVDGVREKSDPHIKLQLQAEERGVVSIKGVCANRYLAMKEDGRLLASKCVTDECFFFERLESNNYNTYRSRKYSSWYVALKRTGQYKLGPKTGPGQKAILFLPMSAKSKDEL)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の配列相同性を有する配列を含み得る。
【0024】
一部の実施形態によれば、切断部位は、切断部位の未修飾版と比較して、より低い切断効率を提供するように修飾される。一部の実施形態によれば、修飾は、1個以上のアミノ酸の欠失、1個以上のアミノ酸の付加又は1個以上のアミノ酸の置換を含む。各可能性は、別個の実施形態である。一部の実施形態によれば、修飾は、1個以上のアミノ酸の化学的修飾を含む。限定されない例として、TEVプロテアーゼ認識部位のP’1位(C末端)のグリシン側鎖を、タンパク質分解効率にほとんど影響を及ぼさずに変更できるDOI:10.1016/S0006-291X(02)00574-0。
【0025】
一部の実施形態によれば、切断部位は、通常の哺乳動物細胞成長条件で1.5×103m-1s-1未満の、1×103m-1s-1未満の、0.5×103m-1s-1未満の、1.5×103m-1s-1未満の、又は15×10m-1s-1未満の触媒効率(kcat/KM)を有するプロテアーゼ(proteas)の切断部位である。各可能性は、別個の実施形態である。
【0026】
一部の実施形態によれば、切断部位は、CEPが、CBDから放出されると生物学的に活性であるように位置する。一部の実施形態によれば、切断部位は、CEPが、CBDから放出された場合にのみ生物学的に活性であるように位置する。一部の実施形態によれば、CEPは、切断の結果としてCBDから放出された場合にのみ生物学的に活性である。一部の実施形態によれば、CEPの半減期は、CBD及び/又はリンカーに結合している場合には、その遊離形態と比較してより高い。一部の実施形態によれば、リンカーは、CBDの半減期を増大する。
【0027】
一部の実施形態によれば、本明細書において開示されるポリペプチドと、少なくとも1つの層及び/又は繊維のセルロースを含む試験管内組織工学システムが提供される。
【0028】
一部の実施形態によれば、システムは、少なくとも2つのセルロースの層及び/又は繊維を含む。一部の実施形態によれば、少なくとも2つの層及び/又は繊維の各々は、異なるCEPを含むキメラペプチドと会合している。
【0029】
一部の実施形態によれば、少なくとも1つの層は、各々異なるCEPを含む少なくとも2種類のキメラポリペプチドを含む。一部の実施形態によれば、2種類のキメラポリペプチドのうち第1のものは、分化因子を含み、2種類のキメラポリペプチドのうち第2のものは、分化と関連する成長因子を含む。
【0030】
一部の実施形態によれば、2種類のキメラポリペプチドのうち第1のもののリンカーは、第1の所定の切断効率での部位特異的プロテアーゼによる切断を可能にすることを特徴とする第1の切断部位を含むリンカーを含み、2種類のキメラポリペプチドのうち第2のものは、第2の所定の切断効率での部位特異的プロテアーゼによる切断を可能にすることを特徴とする第2の切断部位を含むリンカーを含み、第2の切断効率は、第1の切断効率よりも低い。
【0031】
一部の実施形態によれば、本明細書において開示されるキメラポリペプチドを含むベクターが提供される。一部の実施形態によれば、図3で示されるような(pCAMBIAベクター)がある。
【0032】
一部の実施形態によれば、試験管内組織工学のための方法であって、
a. 少なくとも1つの層及び/又は繊維のセルロースを含む細胞成長培地を提供すること、ここで、セルロースの少なくとも1つの層は、セルロース結合ドメイン(CBD)、細胞エフェクタータンパク質(CEP)及びCBDをCEPに連結するリンカーを含むキメラポリペプチドを含み、ここでリンカーは、部位特異的プロテアーゼによる切断を可能にすることを特徴とする切断部位を含む、
b. セルロースの少なくとも1つの層上に哺乳動物細胞を播種すること、
c. セルロースの少なくとも1つの層を部位特異的プロテアーゼに対して曝露し、その結果、CEPが細胞成長培地中に持続的に放出されること、
d. 組織化された組織が得られるまで細胞を成長させること、
e. 組織を回収すること
を含む方法が提供される。
【0033】
一部の実施形態によれば、試験管内組織工学のための方法であって、
a. 少なくとも1つの層及び/又は繊維のセルロースを含む細胞成長培地を提供すること、ここで、セルロースの少なくとも1つの層は、セルロース結合ドメイン(CBD)、細胞エフェクタータンパク質(CEP)及びCBDをCEPに連結するリンカーを含むキメラポリペプチドを含む、
b. セルロースの少なくとも1つの層上に哺乳動物細胞を播種すること、
c. 組織化された組織が得られるまで細胞を成長させること、
d. 組織を回収すること
を含む方法が提供される。
【0034】
一部の実施形態によれば、少なくとも1つの層及び/又は繊維は、第1のCEPを含む第1のキメラポリペプチドを有する第1の層及び第1のCEPを含む第2のキメラポリペプチドを含む第2の層を含む。
【0035】
一部の実施形態によれば、哺乳動物細胞を播種することは、第1の層上に第1の細胞型を、及び第2の層上に第2の細胞型を播種することを含む。一部の実施形態によれば、第1の細胞型は筋肉細胞を含み、第2の細胞型は脂肪細胞を含み、組織化される組織は食肉である。一部の実施形態によれば、第1のCEPは筋肉特異的成長因子であり、第2のCEPは脂肪特異的成長因子である。
【0036】
一部の実施形態によれば、哺乳動物細胞は、複能性又は多能性細胞であり、第1及び第2の因子は、異なる細胞型への細胞の分化を引き起こす。一部の実施形態によれば、第1のCEPは、筋肉細胞への複能性又は多能性細胞の分化を引き起こし、第2のCEPは、脂肪細胞への複能性又は多能性細胞の分化を引き起こす。
【0037】
本開示のある特定の実施形態は、上記の利点のうち一部もしくはすべてを含む場合があり、又は全く含まない場合がある。1以上の技術的利点は、本明細書に含まれる図面、説明及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかとなり得る。さらに、特定の利点が上記で列挙されたが、種々の実施形態が、列挙された利点のすべて、一部を含む場合があり、又は全く含まない場合がある。
【0038】
上記の例示的態様及び実施形態に加えて、図面を参照することによって、及び以下の詳細な説明の研究によって、さらなる態様及び実施形態が明らかとなろう。
【0039】
本発明をここで、以下の例証的図面を参照して、ある特定の実施例及び実施形態との関連で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A図1Aは、リンカーによってCBDに融合されたCEP(例えば、GF、ホルモンなど-青色星様丸)を含む本明細書において開示されるキメラポリペプチドの概略図である。
図1B図1Bは、リンカーキメラポリペプチドによってCBDに融合されたCEP(例えば、GF、ホルモンなど-青色星様丸)を含む本明細書において開示されるキメラポリペプチドの概略図であり、CBDは、組織成長のための足場として働くセルロース(灰銀色)に結合されている。
図2図2のA(FIG.2A)は、所望の多層状足場を提供するように配置されたセルロースの層を含む多層状セルロース足場の概略図である。各層は、異なる種類の細胞の分化及び/又は成長に適した因子を提供する異なるキメラポリペプチドを含有し得る。図2のB(FIG.2B)は、異なる細胞の足場として働くセルロースの異なる層を有する多層状セルロース足場の概略図である。例えば、それぞれ筋肉及び脂肪組織の作出のための筋肉及び脂肪細胞。図2のC(FIG.2C)は、足場層に付着しているCEPに従う細胞の分化及び/又は拡大増殖によって得られた、所望の特徴(例えば、形態、テクスチャーなど)を有する組織、例えば、それだけには限らないが、培養肉の概略図である。
図3A図3は、バイナリープラスミドpCAMBIAの内部のCBD-FGF2146aaカセットのマップである。
図3B図3は、バイナリープラスミドpCAMBIAの内部のCBD-FGF2146aaカセットのマップである。
図4図4は、異なる成長条件(10% FCSを補給した培地、FCS不含培地又は市販のFGF2標準/146aaウシFGF2アイソフォーム/CBD-FGF2を補給したFCS不含培地)下で72時間成長させたMCF7細胞で実施されたレザズリンアッセイによって測定されたような細胞生存能のレベルを示す図である。結果は、相対蛍光単位(RFU)として示されている。*=<0.05のp値及び**=<0.005のp値。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明では、本開示の種々の態様を説明する。説明の目的上、本開示のさまざまな態様の十分な理解を提供するために特定の構成及び詳細が示される。しかし、具体的な詳細が本明細書において提示されなくても本開示を実行できることも当業者には明らかとなろう。さらに、本開示を不明瞭にしないために、周知の特徴を省略する、又は簡略化する場合がある。
【0042】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0043】
「1つ(a)」及び「1つ(an)」という用語は、冠詞の文法目的語のうち1つ又は1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「エレメント」とは、1つのエレメント又は1つより多くのエレメントを意味する。
【0044】
「約」という用語は、測定可能な値、例えば、量、時間的持続期間などに言及する場合、指定の値から±20%、または一部の場合には、10%、または一部の場合には、±5%、または一部の場合には、±1%、または一部の場合には、±0.1%の変動を包含するものとし、そのようなものとして、変動は、開示される方法を実施するために適している。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、同義的に使用でき、アミノ酸残基のポリマーを指す。これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的類似体であるアミノ酸ポリマーに、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。本発明のポリペプチドは、標準分子生物学技術によって、または人工合成及び方法によって生成できる。
【0046】
本発明の特定のポリペプチド(すなわち、参照ポリヌクレオチド)のバリアントは、配列同一性パーセントの比較によって評価できる。したがって、例えば、配列番号1のポリペプチドに対して所与の配列相同性パーセントを有するポリペプチドが開示される。任意の2つのポリペプチド間の配列同一性パーセントは、本明細書において別の場所に記載される配列アラインメントプログラム及びパラメータを使用して算出できる。例えば、本明細書において開示されるCBDをコードするポリペプチドは、配列番号1の全体にわたって少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれより多い配列同一性を有するポリペプチドを有し得る。
【0047】
炭水化物結合モジュール(CBM)は、種々の異なる生物において見られる。セルロース結合ドメイン(CBD)は、CBMの一例である。CBDは、細菌クロストリジウム・セルロボランス(Clostridium cellulovorans)又は任意の他の適した遺伝源(http://www.cazy.org/)から単離されたタンパク質ドメインである。セルロースに強力に結合し、ずり応力並びにpH(pH4~10)及び塩分(10mM~飽和NaCl)の軽度の変化に耐えることができる安定であるが可逆的な連結を形成する。CBDを細胞エフェクタータンパク質、例えば、それだけには限らないが、成長因子(GF)又はホルモンに連結することによって、CEPに対する安定性が増大する。さらに、本明細書において開示されるキメラポリペプチドの大きさのために、CEPの内部移行速度はより遅く、その半減期は増大し、したがって、より低い作業濃度が必要となる。さらに、CBDの存在が、CEPを、組織成長の足場として働き、別の例では、例えば、繊維性筋肉又は多方向組織などの組織の非等方性成長及び発達を容易にして、所望の3D構造をもたらすセルロースベースの足場に連結する。
【0048】
一部の実施形態によれば、キメラポリペプチドは、適したプロテアーゼの切断部位を含有するリンカーを含む。有利なことに、リンカー自体は、CEPのコンホメーション的及びタンパク質分解的安定性に寄与するように構築される。一部の実施形態によれば、プロテアーゼは、部位特異的プロテアーゼ、内因性植物プロテアーゼ(セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ又は他のもの)、ペプチダーゼなどであり得る。各可能性は、別個の実施形態である。
【0049】
一部の実施形態によれば、プロテアーゼ切断部位は、成長した組織の特定の発達段階に対して特異的である場合がある。一部の実施形態によれば、CEPの切断依存性放出は、有利なことに培養培地中へのCEPの制御放出を確実にし、それによって、半減期を延長し、したがって、より低い作業濃度が必要となる。
【0050】
一部の実施形態によれば、プロテアーゼは、TEVプロテアーゼ(EC 3.4.22.44、タバコエッチウイルス核内封入体aエンドペプチダーゼ)であり得る。有利なことに、TEVプロテアーゼは、タバコエッチウイルス(TEV)由来の高度配列特異的システインプロテアーゼである。一部の実施形態によれば、プロテアーゼは、Arg-X-X-Argの最小切断部位を有するフューリンプロテアーゼであり得る。一部の実施形態によれば、プロテアーゼは、全SUMOドメインの三次配列を特異的に認識し、二重グリシン(GG)モチーフをその認識部位のC末端で切断除去するSUMOプロテアーゼであり得る。このプロセスは、標的タンパク質に余分な残留物を残さない。さらに、SUMOプロテアーゼは、SUMOドメインを認識するので、それらは他のプロテアーゼよりも高度に特異的である。本明細書で使用される場合、「細胞エフェクタータンパク質(CEP)」という用語は、細胞の成長培地中に存在する時、細胞成長及び/又は分化に影響を及ぼす任意の因子を指す場合がある。一部の実施形態によれば、CEPは、成長因子(例えば、TGFベータ、FGF2)、ホルモン(例えば、インスリン)、組織の血管新生に影響を及ぼす因子又はアポトーシスを誘導する因子などであり得る。各可能性は、別個の実施形態である。
【0051】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドを紹介する「キメラ」という用語は、元来別個のタンパク質をコードするアミノ酸を繋げているペプチドを指す。このキメラペプチドの翻訳は、元のタンパク質各々に由来する機能的特性を有する単一ポリペプチドをもたらす。
【0052】
有利なことに、本明細書において開示されるキメラポリペプチド及びそれを利用する試験管内組織工学システムは、多用途である、すなわち、CEP(複数可)の組成、CEP(複数可)の濃度、異なるCEPを含む異なるキメラ分子間の比率及びセルロース足場上でのその分布に基づいて、種々の組織をエンジニアリングできる。
【0053】
一部の実施形態によれば、キメラポリペプチドを、キメラポリペプチドを発現するように遺伝子改変された、植物、例えば、それだけには限らないが、タバコ植物において発現させることができる。タバコ植物におけるタンパク質発現は、他の発現系を上回る大きな利点を保有する。これらの利点の中には、低コストの生成、大規模栽培の可能性及びヒト病原体が植物において複製できないことを反映する固有の安全性がある。別の実施形態によれば、キメラポリペプチドを、例えば、ダイズ及びトウモロコシなどの他の植物において発現させることができる。別の実施形態によれば、キメラポリペプチドを、例えば、ウキクサ、酵母、細菌、真菌又は藻類などの別の生物において発現させることができる。各可能性は、別個の実施形態である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態をより十分に例証するために、以下の例を提示する。しかし、それらは、決して、本発明の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変法及び改変を容易に考案できる。
【0055】
ここで、部位特異的プロテアーゼの切断部位を含有するリンカー130によってCBD120に融合された、CEP110(例えば、GF、ホルモンなど)を含む、本明細書において開示されるキメラポリペプチド100の概略図である図1Aが参照される。図1Bからわかるように、キメラポリペプチド100のCBD120は、組織成長のための足場として働くセルロース140に結合される、または結合可能である。
【0056】
ここで、多層状セルロース足場の概略図である図2A図2Cが参照される。図2Aにおいて見られるように、足場は、所望の多層状足場を提供するように配置されたセルロースの層を含み得る。図2Bに示されるように、各層は、各々異なる種類の細胞(例えば、それぞれ脂肪細胞及び筋細胞)の分化及び/又は成長を可能にする異なるCEP(例えば、脂肪細胞成長因子及び筋細胞成長因子)を有するキメラポリペプチドを含有し得る。細胞は、結果として、提供されるCEPに従って分化及び/又は拡大増殖し、それによって、所望の特徴(例えば、形態、テクスチャーなど)、例えば、それだけには限らないが、培養肉のものを有する組織を生成し得る(図2Cを参照されたい)。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態をより十分に例証するために、以下の実施例を提示する。しかし、それらは、決して、本発明の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変法及び改変を容易に考案できる。
【実施例
【0058】
実施例1 - 本明細書において開示されるポリペプチドの存在下で飢餓培地において成長した細胞の生存能
【0059】
CBDに結合した成長因子の活性を評価するために、飢餓培地で成長させ、本明細書において開示されるキメラポリペプチドのみを補給した細胞の生存。
【0060】
手短には、MCF-7細胞を、96ウェルプレート(ウェルあたり10K個細胞)において、10%ウシ胎児血清(FCS)を補給したEMEM培地中(陽性対照)、FCS不含EMEM中(完全飢餓-陰性対照)又は漸増濃度の市販の組換えヒトFGF2標準(rhFGF2、Peprotech、USA番号100-18b)FGF2、146aaウシFGF2アイソフォーム(配列番号6)もしくはTEV切断含有リンカーを介してCBDに連結された146aaウシFGF2アイソフォーム(CBD-FGF2-配列番号10に示される)を補給した飢餓培地中で3日間成長させた。
【0061】
72時間の飢餓の間のMCF-7細胞の生存能の保持における植物由来組換えウシFGF2の能力を評価するために、レザズリンアッセイを実施した。古い培地を廃棄し、レザズリン(カタログ番号ab129732、ABCAM、USA)を含有する透明なDMEM培地(高グルコース、フェノールレッドなし)と置き換えた。細胞を37℃及び5%CO2で4時間インキュベートし、その間の蛍光強度(励起:535nm、発光波長:590nm)を4時間後に測定した。
【0062】
図4からわかるように、陽性対照(10% FCS)と比較して、3日の飢餓の結果として細胞生存能は著しく低下したが、細胞にFGF2(標準であろうと、146aaウシアイソフォームであろうと)が供給された場合には有意なレスキューが観察された。重要なことに、同様のレスキューはまた、細胞にCBDに結合したFGF2が供給された場合にも観察され、これは、CBDに結合したFGF2が成長因子として働くことができること及びCBDは生存に負の影響を及ぼさないことを示す。
【0063】
実施例2 - 植物におけるキメラポリペプチドの生成
【0064】
タバコ植物を、本明細書において開示されるキメラポリペプチドを発現するように形質転換し、植物を成長させる。
【0065】
植物の十分なバイオマスが生成されると、植物の葉を収集し、キメラポリペプチドを断片化及び絞り取りによって葉から抽出する。抽出後、ホモジネートを0.2μmフィルターで濾過する。
【0066】
この時点で、3つの異なる選択肢を利用可能である。
【0067】
1.第1の選択肢は、セルロース繊維を生成することであり、次いで、各繊維をCBDを介してキメラポリペプチドに連結する。このように、所望のCEPを含有するテーラーメード足場。その後、細胞を足場上に播種して、所望の秩序及び方向で組織形成(例えば、食肉)を開始する。
【0068】
2.第2の選択肢は、所望のセルロース-キメラポリペプチド複合体をプレプリントすることである。この場合には、キメラポリペプチドキメラをカートリッジ(充填材料)として使用する。やはり、この適用によって、培養組織の秩序及び方向を制御することが可能となる。
【0069】
3.最後に、キメラポリペプチドを、セルロースベースの足場を含有する細胞培養培地に添加すること。
【0070】
本発明のある特定の実施形態が例証及び記載されたが、本発明が、本明細書において記載される実施形態に制限されないことは明確となろう。当業者には、以下の特許請求の範囲によって記載されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多数の改変、変化、変法、置換及び等価物が明らかとなろう。
【0071】
実施例3 - セルロースに結合したFGF2の生物活性の試験:
【0072】
この実験の目的は、セルロースに結合した成長因子を含有する飢餓培地においてヒト上皮細胞株、MCF-7の接着及び成長を誘導することによって、セルロースに結合した成長因子、すなわち、ウシFGF2の生物活性を実証することである。
【0073】
手短には、96ウェルポリ-L-リジンプレートを、細胞接着及び成長の基礎としてクリスタルナノセルロース(Crystal Nano Cellulose)(CNC)でコーティングし、これを細胞生存能についてレザズリンアッセイによって後に評価する。CNCコーティングによって、CBD-セルロース相互作用を介した、セルロース結合ドメイン(CBD)に融合された標的タンパク質のプレートの底への強力な接着が可能となる。CNCコーティングされたプレートを調製するために、CNCを添加し、25℃で10分間インキュベートする。事前希釈した標準曲線及びCBDが融合したタンパク質(複数可)のサンプルをウェルに添加し、4℃で2時間インキュベートし、任意のCBD-タンパク質融合タンパク質がCNCに結合することを可能にする。この実施例では、CBDは、ウシFGF2の155個のアミノ酸のアイソフォームに連結される。
【0074】
インキュベーション後、洗浄バッファーでプレートを洗浄し(任意の非反応性成分を除去するために)、種々の条件:(a)血清の豊富な培地、(b)血清不含培地(「飢餓条件」)及び(c)CBD-FGF2が供給された血清不含培地下での接着及び成長のために、プレートに細胞を直ちに添加する。24、48、72及び96時間後に細胞の代謝活性を検出及び定量化するレザズリン細胞生存能蛍光アッセイを実施して、細胞接着、成長及び生存能に対するCBD-FGF2の効果を決定する。このアッセイでは、代謝的に活性な細胞において青色非蛍光レザズリン試薬がデヒドロゲナーゼ酵素によって高度に蛍光性のレゾルフィンに還元される。この変換は生細胞においてのみ生じ、したがって、生成したレゾルフィンの量は、サンプル中の生細胞数に正比例する。アッセイにおいて形成されたレゾルフィンは、蛍光光度計(Ex=530~570nm、Em=590~620nm)を使用して相対蛍光単位(RFU)を測定することによって定量化できる。
【符号の説明】
【0075】
[図2]
Cellulose strip: セルロースストリップ
Adipocyte GF: 脂肪細胞成長因子
Myocyte GF: 筋細胞成長因子
Adipocyte: 脂肪細胞
Myocyte: 筋細胞
[図3]
T DNA left border: T DNA左境界
INSERT: インサート
BACKBONE: 骨格
kanamycin resistance: カナマイシン耐性
origin of replication: 複製起点
left border repeat from C58 T-DNA: C58 T-DNAからの左境界リピート
2X 35S Omega: 2X 35Sオメガ
Linker: リンカー
nos (nopaline synthase) 3'UTR (poly A signal): nos(ノパリン合成酵素)3'UTR(ポリAシグナル)
His tag: Hisタグ
STA region from pVS1 plasmid: pVS1プラスミドからのSTA領域
bom site from pBR322: pBR322からのbom部位
Start: 開始
[図4]
Relative fluorescence units (RFU): 相対蛍光単位(RFU)
standard: 標準
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
【配列表】
2023538936000001.app
【国際調査報告】