(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】少なくとも1つの電池の冷却システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/659 20140101AFI20230905BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230905BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230905BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230905BHJP
【FI】
H01M10/659
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/625
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513611
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2021067057
(87)【国際公開番号】W WO2022042899
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】102020210927.3
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】グライター,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ティーフェンバッハ,アンディ
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031HH06
(57)【要約】
伝導性電池ケースを有する少なくとも1つの電池の冷却システムであって、イ)交換可能な少なくとも1つの熱要素と、ロ)少なくとも1つの電池収納部であって、前記電池ケースは、前記電池収納部内の前記熱要素によって少なくとも部分的に取り囲まれているものと、を含む、冷却システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性電池ケースを有する少なくとも1つの電池(101、201(1)、201(2))の冷却システム(100、200)であって、
イ)交換可能な少なくとも1つの熱要素(103、203)と、
ロ)少なくとも1つの電池収納部(102、202)であって、前記電池ケースが、前記電池収納部(102、202)内の前記熱要素(103、203)によって少なくとも部分的に取り囲まれているものと、
を含む、冷却システム(100、200)。
【請求項2】
前記熱要素(103、203)は、相変化材料、特にパッド、クッションおよび/またはゲル、または熱容量の大きい液体を含む、請求項1に記載の冷却システム(100、200)。
【請求項3】
前記相変化材料は、30℃から50℃の間の温度限界を有する、請求項2に記載の冷却システム(100、200)。
【請求項4】
前記相変化材料は変形可能であり、特に弾性的に変形可能である、請求項2または3に記載の冷却システム(100、200)。
【請求項5】
前記熱要素(103、203)は、電気絶縁性、難燃性および/または自己消火性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却システム(100、200)。
【請求項6】
前記電池ケースは、熱伝導性金属、特にアルミニウムから形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷却システム(100、200)。
【請求項7】
前記電池ケースの対向する少なくとも2つの側面は、略楕円形の横断面を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷却システム(100、200)。
【請求項8】
前記電池ケースは外側に複数のリブを有することで、前記電池ケースと前記熱要素(103、203)との間の熱交換を増進させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の冷却システム(100、200)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却システム(100、200)の製造方法であって、
イ)少なくとも1つの電池(101、201(1)、201(2))を熱伝導性電池ケースに挿入するステップと、
ロ)前記電池ケースを電池収納部(102、202)に挿入するステップと、
ハ)少なくとも1つの熱要素(103、203)を前記電池収納部(102、202)に取り付けるステップであって、これにより、前記熱要素(103、203)が少なくとも部分的に前記電池ケースを取り囲むステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却システム(100、200)の、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、航空機、アシスト自転車またはEバイク、情報通信またはデータ処理用携帯機器、電動手工具または台所機械用の電気エネルギ蓄積装置、および、特に再生可能電気エネルギを蓄積するための定置型蓄積装置における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立形式請求項の前提部に記載の、熱伝導性電池ケースを有する少なくとも1つの電池の冷却システム、冷却システムの製造方法および冷却システムを起点とする。
【背景技術】
【0002】
自動車分野で使用される電池は、電池の電力消費が大きい場合、損失電力も増加するため、一般的に能動的冷却または能動的熱管理が行われる。
能動的冷却または能動的熱管理は、空気または液体に基づくことが多いが、これらは、例えばより電力の大きい車両では、場合によって電池を加熱することもあり得る。
【0003】
このようなシステムは高価であり、相当程度の追加部品と追加の設置スペースが必要である。そのため、例えばeスクータのような小型車両には、通常、受動冷却を行う電池が使用される。
【0004】
そのような電池の欠点は、長時間の動作後、特に高負荷での動作後に電池が熱くなりすぎて、それ以上の動作ができなくなることや、走行終了後に充電することができず、所望の充電プロセスを開始する前に、まず数時間受動的に冷却しなければならないことである。
【0005】
米国特許出願公開第2017/005381号明細書の文献は、内部を循環する冷却剤を有する冷却剤部を含む、エネルギ蓄積システム用冷却サブシステムを開示している。
米国特許出願公開第2006/073377号明細書の文献は、電力供給システムおよび関連する動作方法を開示している。
【0006】
米国特許出願公開第2011/293986号明細書の文献は、電池セルを保持して、セルの温度を効率的に調整するためのセルホルダを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/005381号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/073377号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/293986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来技術をさらに改善することである。
この課題は、独立形式請求項の特徴によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一方で、独立形式請求項固有の特徴を有する本発明に係る方法は、冷却システムが、
イ)交換可能な少なくとも1つの熱要素と、
ロ)少なくとも1つの電池収納部であって、電池ケースが、電池収納部内の熱要素によって少なくとも部分的に取り囲まれているものと、
を含むという利点を有する。
【0010】
本発明によれば、電池から生じた損失熱は、例えば手動で交換可能な熱要素によって取り除くことができる。これにより、特に高い周辺温度において、受動的に冷却される電池の冷却性が向上する。
【0011】
これにより、電池内のホットスポット、すなわち局所的な過剰温度を回避することができ、電池ケース内の熱分布の向上および熱伝達性の向上を達成することができる。
交換可能な熱要素により、電池のさらなる損失熱が、特に暖かい環境条件下において、電池温度のさらなる上昇を引き起こすことはない。
【0012】
さらなる有利な実施形態は、引用形式請求項の主題である。
熱要素は、相変化材料、特にパッド、クッションおよび/またはゲル、または熱容量の大きい液体を含む。特に、例えば潜熱蓄熱材などの相変化材料(PCM:Phase Change Material)を使用する場合、相変化温度に到達した際に、損失電力に起因する電池の損失熱が電池温度のさらなる上昇を引き起こすことはない。
【0013】
少なくとも熱容量の大きい液体を使用する場合、少なくとも1つの電池収納部は液密に構成されており、これにより、液体の流出を確実に防止することができる。
有利には、相変化材料は交換可能であり、これにより、電池の動作後に冷却段階を省略することができ、これにより、例えば充電プロセスを直ちに開始することができる。
【0014】
相変化材料は、30℃から50℃の間の相変化温度の温度限界を有する。これにより、電池の電気化学エネルギ蓄積セルを最適な温度範囲で動作させることができ、これにより、早期の経年劣化を防止することができる。
【0015】
相変化材料は変形可能であり、特に弾性的に変形可能である。これにより、相変化材料は電池ケースの幾何学的形状に適合し、これにより、電池ケースに押圧力を加え、熱伝達性を向上させる。
【0016】
熱要素は、電気絶縁性、難燃性および/または自己消火性を有する。これにより、電池セルの熱暴走が発生した場合に火災が防止されるか、少なくとも遅延される。
電池ケースは、熱伝導性金属、特にアルミニウムから形成されている。これにより、電池からの効果的な放熱が確実に行われる。
【0017】
電池ケースの対向する少なくとも2つの側面は、略楕円形の横断面を有する。これにより、機械的に特に安定した形状が達成される。
電池ケースは外側に複数のリブを有することで、電池ケースと熱要素との間の熱交換を増進させる。これにより、電池内のホットスポット、すなわち局所的な過剰温度を回避することができる。
【0018】
本発明に係る冷却システムの製造方法は、
イ)少なくとも1つの電池を熱伝導性電池ケースに挿入するステップと、
ロ)電池ケースを電池収納部に挿入するステップと、
ハ)少なくとも1つの熱要素を電池収納部に取り付けるステップであって、これにより、熱要素は少なくとも部分的に電池ケースを取り囲むステップと、
を含む。
【0019】
有利には、本発明に係る冷却システムは、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、航空機、アシスト自転車またはEバイク、情報通信またはデータ処理用携帯機器、電動手工具または台所機械用の電気エネルギ蓄積装置、および、特に再生可能電気エネルギを蓄積するための定置型蓄積装置に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る冷却システムの第1実施形態の概略図である。
【
図2】本発明に係る冷却システムの第2実施形態の概略図である。 同じ参照符号は、全ての図において同じ装置構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る冷却システム100の第1実施形態の概略図である。冷却システム100は、熱伝導性電池ケースを有する電池101と、電池収納部102と、交換可能な熱要素103、特に、例えば水などの熱容量の大きい液体と、を含む。
【0022】
電池101は、有利には、大きな表面積または熱伝導が良好な接触面積を有し、図示の実施形態における電池ケースはアルミニウムから構成されている。
電池101の損失熱は、十分な量の液体によって吸収することができる。小型車両用の電池101と、熱要素102としての水を用いた計算例では、電池101周辺の介在空間として約6.51の体積が必要であることが示されている。
【0023】
【0024】
図2は、本発明に係る冷却システム200の第2実施形態の概略図である。冷却システム200は、それぞれ熱伝導性電池ケースを有する第1の電池201(1)および第2の電池201(2)と、例えば冷却クッションなどの相変化材料を含む交換可能な熱要素203と、を含む。
【0025】
熱要素203は、電池201(1)、201(2)の上および/または下に配置され、または図示の実施形態では、冷却クッションは2つの電池201(1)、201(2)の間に挟まれている。電池201の動作中、これは電池201の損失熱エネルギを吸収し、停止時には、別の既に冷却された冷却クッションと交換することができる。これにより、負荷の少ない電池201の動作が可能になり、電池201のより大きい到達範囲、およびより大きい電力が可能になる。
【0026】
本発明の有利な実施形態によれば、相変化材料を含む熱要素203が、電池201の広い面積の側面に、適切な形態で取り付けられることが企図されている。
有利には、複数の冷却クッションを使用してもよく、または、それぞれ複数の側面で1つまたは複数の電池201を直接取り囲む冷却クッションを使用してもよい。体積は、冷却クッションの厚さおよび/または形状によって、用途に最適に適合させることができる。
【0027】
冷却システム200のモジュール構成は、様々な用途へ容易に拡張することができる。また、能動的な冷却システムが不要であり、これにより、コストおよび設置スペースを節約することができる。
【0028】
さらに、冷却システム200は、既に存在する受動冷却型電池201における後付けソリューションとしても使用可能であり、これにより、適合にコストがかからない。
さらなる利点は、電池201の動作直後に充電プロセスが可能であることであり、そうでなければ、電池温度が高すぎる場合には、通常冷却段階を待つ必要があり、これは極端な場合、数時間続くことがある。
【0029】
以下の表は、限界温度が48℃の熱要素203として相変化材料を使用する場合の効果を示す。例では相変化のエネルギのみを考慮したが、相変化温度に到達するまでに、既にエネルギは吸収されている。
【0030】
【0031】
特に高温は電池201の不釣り合いな経年劣化を引き起こすため、冷却システム200によって、電池201の経年劣化挙動が著しく改善される。
【国際調査報告】