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特表2023-538957張り出し人工心弁送達デバイスおよびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】張り出し人工心弁送達デバイスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513748
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 US2021048478
(87)【国際公開番号】W WO2022047395
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/072,813
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512052029
【氏名又は名称】シファメド・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】サラヒエ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】マルケィヒー,コナー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,アリス
(72)【発明者】
【氏名】ブラシュタウザー,サビーナ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC12
4C097CC18
4C097SB02
(57)【要約】
罹患自己弁を治療するためのデバイスは、非拡大構成および拡大構成を有するフレーム構造、フレーム構造に連結された複数のリーフレット、および中央環状部分の周りに延びるように構成された螺旋アンカーを含む。拡大構成のフレーム構造は、張り出し心房部分、中央環状部分、および張り出し心室部分を含む。フレーム構造は、複数の拡張可能セルおよび複数のパドルを含む。パドルの各々は、複数の拡張可能セルのうちの1つの頂点から軸方向に延びる。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
罹患自己弁を治療するためのデバイスであって、
非拡大構成と拡大構成とを有するフレーム構造であって、前記拡大構成の前記フレーム構造は、張り出し心房部分、中央環状部分、および張り出し心室部分を有し、さらに前記フレーム構造は、複数の拡張可能セルおよび複数のパドルを含み、前記パドルの各々は、前記複数の拡張可能セルのうちの1つの拡張可能セルの頂点から軸方向に延びる、フレーム構造と、
前記フレーム構造に連結される複数のリーフレットと、
前記中央環状部分の周りに延びるように構成される螺旋アンカーと、を含む、デバイス。
【請求項2】
前記フレーム構造の外側表面の周りに配置されたスカート部をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記スカート部は、前記パドルの各々の外側表面を覆うように構成された複数のタブを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数のパドルの各々が、線形伸長部およびアイレットを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記フレーム構造が前記非拡大構成から前記拡大構成に移行するとき、前記線形伸長部は非短縮状態にあり、前記複数の拡張可能セルは短縮状態にある、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記パドルの各々は、前記頂点から離れるように径方向に延び、次いで心房方向に軸方向に向くように湾曲する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記複数の拡張可能セルの前記拡張可能セルは、複数の環状列に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記複数の環状列が3つの環状列を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記フレーム構造は、前記拡大構成において35mm未満の軸方向長さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記螺旋アンカーが平坦な螺旋アンカーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記フレーム構造は、前記非拡大構成から前記拡大構成に自己拡張するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記フレーム構造がニチノールを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記拡張可能セルの各々は、前記フレームが前記拡大構成にあるとき、実質的に菱形である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記張り出し心房部分は、前記張り出し心室部分よりもさらに径方向外側に延びるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記張り出し心房部分の1つおきの頂点が、前記頂点から延びる、前記複数のパドルのうちの1つのパドルを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
複数のタブをさらに含み、前記複数のタブの各々は、前記複数のパドルのうちの1つのパドルから延び、前記複数のタブは、弁送達システムと係合するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記フレーム構造の心室側端部に沿って延びるように構成されたウェブ材料をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記ウェブ材料が縫合部を含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ウェブ材料がスカート部を含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記複数の拡張可能セルの拡張可能セルが、前記フレーム構造の心室側端部におけるよりも前記フレーム構造の心房側端部において小さい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記張り出し心房部分上の心房スカート部と、前記張り出し心室部分上の心室スカート部とをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記心房スカート部が織られており、前記心室スカート部が編まれている、請求項21に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2020年8月31日に出願された「FLARED PROSTHETIC CARDIAC VALVE DEVICES AND SYSTEMS」という名称の米国仮特許出願第63/072,813号に関連しており、その全体が参照により組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
[0002]心内腔の間の血流は、自己弁、すなわち僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁、および三尖弁によって調節される。これらの弁の各々は、圧力差に反応して開閉する受動的な一方向弁である。弁膜症の患者は、少なくとも1つの弁の解剖学的構造および/または機能に異常がある。例えば、弁は、弁が完全に閉じない場合に、反流とも呼ばれる機能不全に陥り、それによって血液が逆行して流れるのを可能にしてしまうことがある。弁狭窄は、弁が適切に開くのを失敗させ得る。他の疾患も弁の機能障害につながり得る。
【0003】
[0003]僧帽弁は、例えば、左心房と左心室との間に位置し、適切に機能すると、逆方向への逆流または反流を防止しながら、血液が左心房から左心室に流れるのを可能にする。しかし、罹患僧帽弁の自己弁リーフレットは完全には逸脱せず、患者は反流を経験することになる。
【0004】
[0004]罹患自己弁を治療するために薬物療法を使用することができるが、障害のある弁は、患者の生涯のある時点で修復または置換される必要があることが多い。既存の人工弁ならびに外科的修復および/または置換の手技は、高いリスクを有し、限定的である耐用年数を有し、および/または非常に侵襲的である。侵襲性の低い経カテーテルの選択肢もいくつか利用可能であるが、ほとんどは理想的ではない。例えば、既存の経カテーテル僧帽弁デバイスの主要な制約は、僧帽弁デバイスの直径が大きすぎて経中隔的に送達できず、代わりに経心尖的アクセスが必要になることである。さらに、既存の僧帽弁置換デバイスは、強度と重量の比率に関して最適化されておらず、多くの場合、弁室内の空間を過度に占有し、それにより、心室から大動脈への流出の閉塞症および/または血栓症を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]したがって、これらの欠陥の一部またはすべてを克服する新しい弁デバイスが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一般に、一実施形態では、罹患自己弁を治療するためのデバイスは、非拡大構成と拡大構成とを有するフレーム構造、フレーム構造に連結された複数のリーフレット、および中央環状部分の周りに延びるように構成された螺旋アンカーを含む。拡大構成のフレーム構造は、張り出し心房部分、中央環状部分、および張り出し心室部分を含む。フレーム構造は、複数の拡張可能セルおよび複数のパドルを含む。パドルの各々は、複数の拡張可能セルのうちの1つの拡張可能セルの頂点から軸方向に延びる。
【0007】
[0007]この実施形態および他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。デバイスは、フレーム構造の外側表面の周りに配置されたスカート部をさらに含むことができる。スカート部は、パドルの各々の外側表面を覆うように構成された複数のタブを含むことができる。複数のパドルの各々は、線形伸長部およびアイレットを含むことができる。フレーム構造が非拡大構成から拡大構成に移行するとき、線形伸長部は非短縮状態であり、複数の拡張可能セルは短縮状態であり得る。パドルの各々は、頂点から離れるように径方向に延び、次いで心房方向に軸方向に向くように湾曲され得る。複数の拡張可能セルの拡張可能セルは、複数の環状列に配置することができる。複数の環状列は、3つの環状列を含むことができる。フレーム構造は、拡大構成において35mm未満の軸方向長さを有することができる。螺旋アンカーは平坦な螺旋アンカーであり得る。フレーム構造は、非拡大構成から拡大構成に自己拡張するように構成され得る。フレーム構造はニチノールを含むことができる。拡張可能セルの各々は、フレームが拡大構成にあるとき、実質的に菱形であり得る。張り出し心房部分は、張り出し心室部分よりもさらに径方向外側に延びるように構成され得る。張り出し心房部分の1つおきの頂点は、そこから延びる複数のパドルのうちの1つのパドルを含むことができる。デバイスはさらに複数のタブを含むことができ、各タブは複数のパドルのうちの1つのパドルから延びることができる。タブは、弁送達システムと係合するように構成され得る。デバイスは、フレーム構造の心室側端部に沿って延びるように構成されたウェブ材料をさらに含むことができる。ウェブ材料は縫合部(換言すれば、縫合糸)を含むことができる。ウェブ材料はスカート部を含むことができる。複数の拡張可能セルの拡張可能セルは、フレーム構造の心室側端部よりもフレーム構造の心房側端部で小さくすることができる。デバイスは、張り出し心房部分に上の心房スカート部と、張り出し心室部分上の心室スカート部とをさらに含むことができる。心房スカート部は織ることができ、心室スカート部は編むことができる。
【0008】
[0008]本発明の新規な特徴は、以下の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]弁フレームを示す。
図2A】[0010]パドルを備えた弁フレームを示す。
図2B】[0011]図2Aの弁フレームの平坦化されたパターンを示す。
図3A】[0012]y軸が剛性であり、x軸が心室側端部から心房側端部までのフレームに沿った距離である、2つの異なる弁フレームの剛性プロファイルを示す。
図3B】[0013]弁フレームがアンカーに対して拡張された、パドルを有する弁フレームを示す。
図3C】[0014]弁フレームがアンカーに対して拡張した、パドルのない弁フレームを示す。
図4】[0015]パドルおよび外側心房スカート部および心室ウェブ材料を有する弁フレームを示す。
図5A】[0016]パドルを有する弁フレームの別の実施形態を示す。
図5B】[0017]パドルを有する弁フレームの別の実施形態を示す。
図6A】[0018]図6Aは、パドル、外側心房および心室スカート部、ならびに内側心室スカート部を有する弁フレームを示す。
図6B図6Bは、パドル、外側心房および心室スカート部、ならびに内側心室スカート部を有する弁フレームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0019]本明細書では、僧帽弁などの心臓の罹患自己弁の治療または置換のためのシステム、デバイス、および方法が説明される。
【0011】
[0020]概して、弁フレームおよびその周りの螺旋アンカーを含むことができる置換補綴が本明細書に記載される。
【0012】
[0021]図1は、拡大構成の弁フレーム12を示す。弁フレーム12は、その中に複数のリーフレット(換言すれば、小葉)を保持するように構成され得る。さらに、弁フレーム12(およびその中のリーフレット)は、僧帽弁を置換または修復する方法の間に、折り畳み構成から拡大構成に配備され得る。図1に示されるように、弁フレーム12は、実質的に菱形のセル122の複数の列(例えば、3~7列)を含むことができる。弁フレーム12は、セル122の構造により、送達中に(すなわち、弁フレーム12が折り畳み構成から拡大構成に移行するにつれて)短縮することができる。いくつかの実施形態では、弁フレーム12は、折り畳み構成から拡大構成に自己拡張するように構成され得る(例えば、ニチノールで作ることができる)。
【0013】
[0022]弁フレーム12の1つまたは複数の部分は、弁フレーム12をある位置(例えば、自己心臓弁の孔内)に固定するのを助けるように成形または構成され得る。例えば、弁フレーム12は、解剖学的構造においてフレームを固定するのを助けるように構成された、心房張り出し部分102および心室張り出し部分103を含むことができる。心房および心室張り出し部分102、103は、中央円周部分101から径方向外側に延びることができる。心房張り出し部分102は、例えば、弁補綴が自己僧帽弁内に配備されると、中央円周部分101から心臓の心房内に延びることができる。次に、心室張り出し部分103は、弁補綴が自己僧帽弁内に配備されると、中央円周部分101から心臓の心室内に延びることができる。心房および心室張り出し部分102、103は、例えば、弁フレーム12を解剖学的構造に固定するために、外側の平坦な螺旋アンカー(例えば、索に巻き付けられる)の両側に配置されるように構成され得る。代替的または追加的に、心房および心室張り出し部分102、103は、組織と係合して弁補綴が自己弁孔を通って滑り落ちるのを防止するように構成され得る。
【0014】
[0023]図1に示すように、心房張り出し部分102は、心室張り出し部分103よりさらに径方向に延びることができる。心房張り出し部分が大きいほど、PVLの予防に役立ち得る。
【0015】
[0024]いくつかの実施形態では、折り畳まれた弁フレーム12の長手方向の長さを最小化することができ、これは、弁フレーム12の送達に有利であり得る。例えば、折り畳まれた弁フレーム12の長手方向の全長を最小化することにより、デバイスの構造強度を維持しながら、送達デバイス内での操作性を改善することが可能となり得る。場合によっては、折り畳まれた弁フレーム12の長手方向全体の全長を最小化することにより、より長いデバイスが横断するのが困難なアクセス経路(例えば、蛇行性の通路または鋭い湾曲部を有する通路を含むアクセス経路)を通して弁フレーム12を挿入することが可能になり得る。場合によっては、非拡大構成の弁フレーム12は、1mmから50mm、1mmから45mm、1mmから40mm、1mmから35mm、1mmから30mm、1mmから25mm、1mmから20mm、1mmから10mm、10mmから45mm、20mmから45mm、20mmから30mm、25mmから35mm、または27.5mmから32.5mmの長手方向の全長を有する。場合によっては、拡大構成の弁フレーム12は、1mmから45mm、10mmから45mm、15mmから45mm、15mmから35mm、16mmから34mm、17mmから33mm、18mmから32mm、19mmから31mm、20mmから30mm、25mmから35mm、または27.5mmから32.5mmの長手方向の全長を有することができる。いくつかの実施形態では、弁フレーム12は、拡大構成における長さが折り畳み構成における長さよりも短くなるように、拡張するにつれて短縮することができる。
【0016】
[0025]いくつかの実施形態では、弁フレーム12および/または補綴全体は、剛性を高め、弁配備の制御を改善し、中央円周部分の均一な径方向拡張を促進し、弁輪内で確実に固定し、および/またはPVLを減少させるように設計された特定の機能を有することができる。
【0017】
[0026]図2A~2Bは、例示的なフレーム12aを示す。フレーム12aは、セル122の複数(例えば、3つ)の列を含むことができる。セル122は、実質的に菱形であり得、配備中に短縮するように構成され得る。さらに、フレーム12aの心房張り出し部分102は、心房セル122のいくつかまたはすべての頂点から(すなわち、心房側先端から)延びる複数のパドル133を含むことができる(例えば、図2A~2Bに示されるように1つおきの頂点から)。各パドルは、線形伸長部132およびアイレット222を含むことができる。パドル133は、移植されたとき、心房張り出し部分102の他の部分の上に留まる(または隆起する)ように構成され得る。いくつかの実施形態では、パドル133は、径方向外側に延び、最後に部分的に軸(心房)方向を指すように湾曲するように構成され得る。
【0018】
[0027]パドル133の線形伸長部132は、配備中に短縮しないことが可能であり、これは、フレーム12aの送達中に心房張り出し部分102の追従性およびシースを有利に助けることができる。非短縮伸長部132は、心房張り出し部102の剛性の増加および/または並置をさらに有利に提供することができ、それによって解剖学的構造内でフレーム12aをより良好に固定するのに役立つ。いくつかの実施形態では、弁フレーム12aがパドル133を含むので、菱形セル122の軸方向長さは、弁全体の長さを同じに維持しながら減少させることができる。より短い菱形のセルは、弁フレーム12aの剛性の増加に寄与することができる。アイレット222は、フレーム12にスカート部分を(例えば、縫合部を介して)取り付けるために使用され得る。さらに、アイレット222は、配備中に弁フレーム12aの把持および/または操作を有利に可能にすることができる(例えば、アイレット222をフックまたは縫合部で把持して、フレーム12aの制御された送達、再配置、または再捕捉を可能にすることができる)。
【0019】
[0028]いくつかの実施形態では、フレーム12aは、アイレット222から延び、配備のために弁送達システムと係合するように構成された複数(例えば、3つ)のフレームタブ144をさらに含むことができる。一実施形態では、フレームタブ144の各々は、120°離間させることができる。
【0020】
[0029]図3A~3Cは、パドル133のない弁フレーム312に対する、パドル133を有する弁フレーム12aの剛性および拡張の比較を示す。例えば、図3Aは、弁フレーム312に対する弁フレーム12aの径方向剛性プロファイルを示す。図3Aに示されるように、心房側端部における弁フレーム12aの剛性は、心房側端部における弁フレーム312の剛性よりもはるかに高く、解剖学的構造内で弁フレーム12aを固定するのに有利に役立つことができる。弁フレーム12aの心房部分102の増加した剛性は、(図3Bと3Cとの間の差異に示されるように)弁フレーム12aが心房側から心室側端部までより均等に拡張されることをさらに確実にすることができる(例えば、フレーム12aがアンカー15に押し付けられるので)。この均等な拡張は、リーフレットの適切な開閉を有利に確実にすることができ、および/または自己弁輪との弁補綴のシールを強化することができる。さらに、フレーム12aの心房部分102の増加した剛性は、弁輪に向かってより高くアンカー15を有利に保持することができ、弁補綴の適切な固定を保証する。
【0021】
[0030]フレーム12の追加の変形が可能である。例えば、図5Aは、弁フレーム12aと同様であるが、3列ではなく4列のセル122を含む弁フレーム12bを示す。さらに、弁フレーム12bは、各交連部(commissure)(換言すれば、接合部)位置に短い心室セル122を含む(例えば、リーフレットが開閉するときの拍動歪みを低減するために交連部でセル122の剛性を増加させるために)。図5Bは、フレーム12cが、1つおきの頂点ではなくすべての心房側頂点に接続されたパドル133を含むことを除いて、フレーム12aと同様のフレーム12cを示す。
【0022】
[0031]いくつかのフレームの実施形態では、心房張り出し部分102内および/またはそれに近接するセル122は、中央円周部分101または心室張り出し部分103内のセルよりも小さくすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、パドル133の伸長部132は、少なくとも2つの屈曲点(inflection point)を含むことができ、これは、心房張り出し部分102のパドル133を解剖学的構造から離す方向に向けるのに役立ち、それによってパドル133の外傷を少なくすることができる。追加的または代替的に、パドル133の端部は、非外傷性にするために丸くするかまたは湾曲させることができる。
【0023】
[0032]本明細書に記載の弁フレーム12(例えば、フレーム12a~12c)のいずれも、その上に1つまたは複数のスカート部またはシールを含むことができる。例えば、弁フレーム12は、内側スカート部および/または外側スカート部を含むことができる。内側スカート部または外側スカート部は、織布、編布、またはそれらの組み合わせを含むことができる。布は、ポリエステル、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの生体適合性材料を含むことができる。内側スカート部または外側スカート部は、1つまたは複数のコーティングを備えることができ、例えば、コーティングにはウレタン(例えば、クロノフレックス(Chronoflex))が含まれる。
【0024】
[0001]図4を参照すると、一実施形態では、弁フレーム12の心房張り出し部分102は、その周りに形成された心房外側スカート部224を有することができる。心房外側スカート部224は、パドル133の形状に適合および/またはそれを厳密に模倣するように切断されるように構成され得る。したがって、例えば、心房外側スカート部224は、パドル133の外側部分を覆うように構成されたスカートタブ229を含むことができる。いくつかの実施形態では、スカートタブ229は、アイレット222でパドル133に縫い付けられ得る。心房外側スカート部224は、大部分が円形のアンカー弁をD字形の自己弁内に配備するときに生じ得る交連部間の隙間を有利に覆うことができる。心房外側スカート部224は、追加的または代替的に内方成長を促進することができ、これは弁12の固定を支援することができる。いくつかの実施形態では、心房外側スカート部224は、中央円周部分101および/または心室張り出し部分103まで延びることができる。引き続き図4を参照すると、いくつかの実施形態では、心室張り出し部分103は、その上にウェブ材料(webbing)をさらに含むことができる。ウェブ材料は、例えば、縫合線441および/または外側スカート部を含むことができる。ウェブ材料は、索が心室張り出し部分103のセルおよび/もしくは先端に詰まるのを有利に防止することができ、ならびに/または心室張り出し部分103の外傷を少なくするのを助けることができる。
【0025】
[0002]図6Aおよび6Bを参照すると、別の実施形態では、弁フレーム12の心房張り出し部分102は、心房外側スカート部224を含むことができ、心室張り出し部分103は、心室外側スカート部225および心室内側スカート部226の両方を含むことができる。心房外側スカート部224および心室外側スカート部225は、弁フレーム12の外側表面に沿って互いに結合および/または重なり合うことができる。いくつかの実施形態では、心房張り出し部分102のスカート部(例えば、心房外側スカート部224)は織物材料で作ることができ、一方、心室張り出し部分103のスカート部(例えば、心室外側スカート部225または心室内側スカート部226)は、編まれた材料で作ることができる。有利なことに、織られたスカート部はより少ない伸びを有し、それによって非短縮パドル133とよく一致し得、一方、編まれたスカート部はより大きな伸びを有し、それにより短縮セル122とよく一致し得る。
【0026】
[0007]弁フレーム12はリーフレットを内側に保持することができる。いくつかの実施形態では、リーフレットは、優先機能のために多層材料から形成され得る。リーフレットは、弁フレーム12に直接取り付けられてもよい。あるいは、リーフレットは、弁フレーム12に接続される中間弁構造に取り付けられてもよい。リーフレットは、フレーム構造が自己弁に隣接して配備される前または後に、弁フレーム12に接続され得る。リーフレットは、生体適合性一方向弁を含み得る。一方向の流れはリーフレットを偏向し、開き、逆方向の流れはリーフレットを閉じる原因となり得る。弁フレーム12は、ステントのように構成され得る。弁フレーム12は、例えば、形状記憶材料(例えば、ニチノール、NiTi)から形成された菱形パターンの足場を備え得る。当業者は、フレーム構造に多くの他の構造、材料、および構成が採用され得ることを理解するであろう。例えば、弁フレーム12は、十分な弾性を有するポリマーから形成され得る。弁フレーム12は、ポリマーで覆われた金属(例えば、形状記憶材料)など、金属とポリマーとの組み合わせから形成されてもよい。弁フレーム12は、菱形以外の様々なパターンを含むことができる。いくつかの実施形態では、弁フレーム12は、血流がその中のリーフレットを強制的に通過するように閉じたフレームであってもよい。1つまたは複数のスカート部および/またはシールは、リーフレットを通して血液を押し出すのを助けることができる。例示的な弁フレームおよび弁補綴は、2019年8月21日に出願された「PROSTHETIC CARDIAC VALVE DEVICE,SYSTEMS,AND METHODS」という名称のPCT出願番号PCT/US2019/047542、現在、PCT公開番号WO2020/041495、2020年4月10日に出願された「MINIMAL FRAME PROSTHETIC CARDIAC VALVE DELIVERY DEVICES,SYSTEMS,AND METHODS」という名称の国際特許出願番号PCT/US2020/027744、現在、PCT公開番号WO2020/210685、および2021年6月16日に出願された「MINIMAL FRAME PROSTHETIC CARDIAC VALVE DELIVERY DEVICES,SYSTEMS,AND METHODS」という名称の国際特許出願番号PCT/US2021/037661で説明され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
[0008]さらに、いくつかの実施形態では、記載されている弁補綴は、アンカー15を含み得る。アンカー15は、中心点から径方向外向きに螺旋状になっている複数の巻き線またはループを有する平坦な螺旋形状を含み得る。平坦な螺旋形状のアンカー15のループは、ほぼ同じ平面内に配置され得る。アンカー15は、形状記憶材料(例えば、NiTi)から形成され得る。アンカー15は、弁補綴を適所に保持するために、弁(例えば、僧帽弁)の索の周りおよび弁フレーム12の周りに延びるように構成され得る。平坦な螺旋状のアンカーは、2019年12月20日に出願された「PROSTHETIC CARDIAC VALVE DEVICES, SYSTEMS,AND METHODS」という名称の米国特許出願第16/723,537号、現在、米国公開番号US-2020-0261220-A1に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
[0009]本明細書に記載の弁補綴(例えば、弁フレームおよび/またはアンカー)は、送達システムを介して送達され得る。例示的な送達システムは、2020年3月19日に出願された「PROSTHETIC CARDIAC VALVE DEVICES,SYSTEMS,AND METHODS」という名称の国際出願番号PCT/US2020/023671、現在、PCT公開番号WO2020/191216、および2021年7月7日に出願された「VALVE DELIVERY SYSTEM」という名称の国際出願番号PCT/US2021/040623に記載され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
[0003]一実施形態に関して本明細書に記載された任意の特徴は、別の実施形態に関して記載された任意の特徴と置き換えられるかまたは組み合わされ得ることを理解されたい。
【0030】
[0004]特徴または要素が本明細書で別の特徴または要素の「上」にあると言及される場合、それは他の特徴または要素のすぐ上にあり得るか、介在する特徴および/または要素も存在し得る。対照的に、特徴または要素が別の特徴または要素の「直接上」にあると言及される場合、介在する特徴または要素は存在しない。特徴または要素が別の特徴または要素に「接続されている」、「取り付けられている」、または「連結されている」と言及される場合、他の特徴または要素に直接接続、取り付け、または連結され得るか、介在する特徴または要素が存在し得ることも理解されるであろう。対照的に、特徴または要素が別の特徴または要素に「直接接続されている」、「直接取り付けられている」、または「直接連結されている」と言及される場合、介在する特徴または要素は存在しない。一実施形態に関して説明または図示されているが、そのように説明または図示された特徴および要素は、他の実施形態に適用することができる。また、別の特徴に「隣接して」配置される構造または特徴への言及は、隣接する特徴と重なるまたは下にある部分を有し得ることも、当業者には理解されるであろう。
【0031】
[0005]本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としており、本発明を限定することを意図していない。例えば、本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、別段文脈で明確に指示されない限り、複数形も含むことを意図している。「含む」および/または「含んでいる」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないということがさらに理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連するリスト項目の1つまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含み、「/」と省略され得る。
【0032】
[0006]「下」、「下方」、「下側」、「上」、「上側」などの空間的に相対的な用語は、図に示されるように、ある要素または特徴と別の要素または特徴との関係を説明するために、説明を容易にするために本明細書で使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの様々な向きを包含することを意図していることを理解されたい。例えば、図中のデバイスが反転されている場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、例示的な用語「下」は、上および下の両方の向きを包含することができる。デバイスは別の方向に向けられてもよく(90度回転または他の向きに)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。同様に、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などの用語は、特に別段の指示がない限り、説明の目的でのみ本明細書で使用される。
【0033】
[0007]「第1」および「第2」という用語は、本明細書では様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために使用され得るが、文脈上別段の指示がない限り、これらの特徴/要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を別の特徴/要素と区別するために使用され得る。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下で論じる第1の特徴/要素を第2の特徴/要素と呼ぶことができ、同様に、以下で論じる第2の特徴/要素を第1の特徴/要素と呼ぶことができる。
【0034】
[0008]本明細書および以下の特許請求の範囲を通じて、文脈上特に必要としない限り、「含む」という言葉、ならびに「含む」および「含んでいる」などの変形は、様々な構成要素が方法および物品において一緒に使用できることを意味する(例えば、デバイスおよび方法を含む組成物および装置)。例えば、「含んでいる」という用語は、述べられた任意の要素またはステップを含むことを意味するが、他の任意の要素またはステップを除外することを意味しないと理解される。
【0035】
[0009]本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、実施例で使用される場合を含め、別段の明示的な指定がない限り、すべての数字は、「約」または「およそ」という用語が明示的に表示されていない場合でも、「約」または「およそ」という用語が前置されているかのように読まれ得る。「約」または「およそ」という語句は、大きさおよび/または位置を記述するときに、記述された値および/または位置が、値および/または位置の合理的な期待範囲内であることを示すために使用され得る。例えば、数値は、記載された値(または値の範囲)の+/-0.1%、記載された値(または値の範囲)の+/-1%、記載された値(または値の範囲)の+/-2%、記載された値(または値の範囲)の+/-5%、記載された値(または値の範囲)の+/-10%などの値を有し得る。本明細書で与えられる任意の数値はまた、文脈上別段の指示がない限り、約その値またはおおよそその値を含むと理解されるべきである。例えば、「10」という値が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書に列挙される任意の数値範囲は、そこに含まれるすべての下位範囲を含むことを意図している。当業者によって適切に理解されるように、或る値が開示されている場合、当該値より小さいか当該値に等しいこと、当該値より大きいか当該値に等しいこと、及び値間の可能な範囲も開示されていると理解される。例えば、値「X」が開示される場合、「X以下」および「X以上」(例えば、Xが数値である場合)も開示される。本出願を通じて、データは多数の異なる形式で提供され、これらのデータは終点と開始点、およびデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」と特定のデータポイント「15」が開示されている場合、10~15の間だけでなく、10および15より大きい、10および15より大きいか等しい、10および15より小さい、10および15より小さいか等しい、および10および15に等しいことが開示されていると見なされることが理解される。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されることも理解される。例えば、10と15が開示されている場合は、11、12、13、および14も開示されている。
【0036】
[0010]本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、当業者には、そのような実施形態が単なる例として提供されていることが明らかであろう。現在、当業者は、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換を想起するであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明を実施する際に採用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの等価物がそれによってカバーされることが意図されている。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】