(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(54)【発明の名称】母体自己抗体を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230905BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230905BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230905BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230905BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230905BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230905BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20230905BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/17
A61P43/00 111
A61P25/00
G01N33/53 N
C07K16/28
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535971
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 US2021047106
(87)【国際公開番号】W WO2022046614
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523063690
【氏名又は名称】マラバイオ システムズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウッディー,ジェイムズ,エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZC42
4C084ZC51
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書には、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体を減少させる方法であって、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に投与する工程を含む方法が記載される。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体を減少させる方法であって、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を、前記妊娠中の個体、前記妊娠を試みる個体、前記妊娠を検討している個体、または前記妊娠のために代理母を務める個体に投与することにより、前記妊娠中の個体の自己反応性抗体を減少させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記自己反応性抗体が、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
胎芽または胎児が前記CNS標的を発現する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記自己反応性抗体が、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記自己反応性抗体が、乳酸脱水素酵素A(LDHA)、乳酸脱水素酵素B(LDHB)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記自己反応性抗体が、乳酸脱水素酵素コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)とストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)の両方からなる群から選択される標的に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
胎芽または胎児が標的を発現する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記自己反応性抗体が、胎児により発現される神経抗原に結合する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記阻害剤が、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記阻害剤が、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記阻害剤が、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記阻害剤が、抗体もしくはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、ポリペプチド、または核酸を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記阻害剤が、抗体またはその抗原結合性フラグメントである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体またはその標的結合性フラグメントがFcRnに結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体またはその標的結合性フラグメントが、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体またはその標的結合性フラグメントが、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記阻害剤が、アプタマー、オリゴヌクレオチド、または小分子である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記小分子が表1から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記阻害剤がペプチド阻害剤である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチド阻害剤が表2から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記阻害剤がポリペプチドである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリペプチドが、Fc分子変異体またはそのFcRn結合性フラグメントを含み、Fc領域分子変異体またはそのFcRn結合性フラグメントが、野生型免疫グロブリンFc領域に比べてFcRnへの結合が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記妊娠中の個体、前記妊娠を試みる個体、前記妊娠を検討している個体、または前記妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料をアッセイすることで、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体抗体を検出する工程を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生体試料が、母体血漿試料、母体血清試料、唾液、羊水、臍帯血血漿、臍帯血血清試料、胎児血漿、胎児血清、または組織試料からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記妊娠中の個体、前記妊娠を試みる個体、前記妊娠を検討している個体、または前記妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料が、胎児神経抗原に結合する母体抗体を含む、請求項23または24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記生体試料が、血漿試料、血清試料、または組織試料からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記妊娠中の個体が30歳を超えている、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記妊娠中の個体が35歳を超えている、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記妊娠中の個体が40歳を超えている、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記妊娠中の個体が45歳を超えている、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、30歳を超えている人から得た精子である、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、35歳を超えている人から得た精子である、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、40歳を超えている人から得た精子である、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、45歳を超えている人から得た精子である、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記妊娠中の個体または前記妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることが、自閉症または自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
投与することが、前記妊娠中の個体の妊娠期間中に少なくとも1回行われる、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
投与することが、前記妊娠中の個体の妊娠期間中に1回より多く行われる、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
投与することが、妊娠中三半期ごとに少なくとも1回行われる、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
投与することが第1三半期中に行われる、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
投与することが第2三半期中に行われる、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
投与することが第3三半期中に行われる、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
投与することが毎日行われる、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
投与することが毎週行われる、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
投与することが毎月行われる、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記妊娠中の個体または妊娠を試みる個体が、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
阻害剤が、受胎後約30日、60日、90日、または100日までに前記妊娠中の個体に投与される、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記阻害剤が、受胎後約100日、150日、または200日以降に前記妊娠中の個体に投与される、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記妊娠中の個体における胎児の在胎期間が、約30日、60日、90日、または100日未満である、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記妊娠中の個体における胎児の在胎期間が、約100日、150日、または200日より長い、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法であって、
妊娠中の個体または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体から生体試料を得る工程と、
胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程と、
胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定したとき、前記妊娠中の個体、または前記妊娠を検討しているかもしくは試みる個体に新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程と
を含む方法。
【請求項51】
前記生体試料が、血漿試料、血清試料、または組織試料からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記アッセイがイムノアッセイである、請求項50から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記母体抗体が、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記阻害剤が、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記阻害剤が、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記阻害剤が、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記阻害剤が、抗体もしくはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、またはポリペプチドを含む、請求項50から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記阻害剤が抗体である、請求項50から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記抗体がFcRnに結合する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体が、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記阻害剤が小分子である、請求項46から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
小分子が、[提供されることとなる小分子の表]からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記阻害剤がペプチド阻害剤である、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記妊娠中の個体または妊娠を試みる個体が、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している、請求項50から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
阻害剤が、受胎後約30日、60日、90日、または100日未満で前記妊娠中の個体に投与される、請求項50から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記阻害剤が、受胎後約100日、150日、または200日よりも後で前記妊娠中の個体に投与される、請求項50から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記妊娠中の個体における胎児の在胎期間が、約30日、60日、90日、または100日未満である、請求項50から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記妊娠中の個体における胎児の在胎期間が、約100日、150日、または200日より長い、請求項50から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記妊娠中の個体が30歳を超えている、請求項50から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記妊娠中の個体が35歳を超えている、請求項50から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記妊娠中の個体が40歳を超えている、請求項50から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記妊娠中の個体が45歳を超えている、請求項50から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、30歳を超えている人から得た精子である、請求項50から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、35歳を超えている人から得た精子である、請求項50から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、40歳を超えている人から得た精子である、請求項50から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記妊娠中の個体の卵子を受精させた精子が、45歳を超えている人から得た精子である、請求項50から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
投与する工程が、前記妊娠中の個体の妊娠期間中に少なくとも1回行われる、請求項50から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
投与する工程が、前記妊娠中の個体の妊娠期間中に1回より多く行われる、請求項50から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
投与する工程が、妊娠中三半期ごとに少なくとも1回行われる、請求項50から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
投与する工程が第1三半期中に行われる、請求項50から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
投与する工程が第2三半期中に行われる、請求項50から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
投与する工程が第3三半期中に行われる、請求項50から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
投与する工程が毎日行われる、請求項50から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
投与する工程が毎週行われる、請求項50から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
投与する工程が毎月行われる、請求項50から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用。
【請求項87】
妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を処置するための薬剤の製造における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用。
【請求項88】
前記自己反応性抗体が、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する、請求項86または87に記載の使用。
【請求項89】
前記自己反応性抗体が、乳酸脱水素酵素A(LDHA)、乳酸脱水素酵素B(LDHB)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する、請求項88に記載の使用。
【請求項90】
前記自己反応性抗体が、乳酸脱水素酵素コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)とストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)の両方からなる群から選択される標的に結合する、請求項88に記載の使用。
【請求項91】
胎芽または胎児が標的を発現した、請求項86から90のいずれか一項に記載の使用。
【請求項92】
前記自己反応性抗体が、胎児により発現される神経抗原に結合する、請求項86から90のいずれか一項に記載の使用。
【請求項93】
前記阻害剤が、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項94】
前記阻害剤が、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項95】
前記阻害剤が、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項96】
前記阻害剤が、抗体もしくはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、もしくはポリペプチド、または核酸を含む、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項97】
抗体またはその標的結合性フラグメントが、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項98】
前記阻害剤が、アプタマー、オリゴヌクレオチド、または小分子である、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項99】
小分子が表1から選択される、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項100】
前記阻害剤がペプチド阻害剤である、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項101】
ペプチド阻害剤が表2から選択される、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項102】
前記阻害剤がポリペプチドである、請求項86から92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項103】
前記ポリペプチドが、変異体Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントを含み、Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントのFcドメインが、野生型免疫グロブリンFc領域に比べてFcRnへの結合が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項102に記載の使用。
【請求項104】
妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体において胎芽または胎児に接触する自己反応性抗体を減少させる方法であって、前記妊娠中の個体、前記妊娠を試みる個体、前記妊娠を検討している個体、または前記妊娠のために代理母を務める個体に、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年8月24日出願の米国仮特許出願第63/069,632号に基づく利益を主張し、この仮特許出願はその全体を参照することで本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、小児期に現れる異種神経発達障害の一群であり、コミュニケーション、行動、および社会的欠陥により定義される。強い遺伝的および環境的な関連性が多数の報告で実証されているが、ASDの明確な病因学的根拠は不足している。ASDの病因の根底にある機構に関しては、免疫系がASDの発症において役割を果たす可能性がある。異常な免疫応答、神経炎症、および、胎芽または胎児の細胞に発現されるタンパク質を標的とする母体自己抗体の存在は、ASD発症におけるリスク増加因子である。顕著なことに、かかる母体自己抗体は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、もしくは妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に存在する可能性があり、神経発達を変質させるおそれがある。
【発明の概要】
【0003】
本明細書には、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清中に存在する量)を減少させる方法が提供される。特定の例では、提供される自己反応性抗体を減少させる方法は、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与することにより、単回投与後であっても自反応性抗体の減少を達成できるという発見に基づいている。このような方法は、概して妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体に、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程を含む。本明細書に開示される方法の実施により、胎芽または胎児により発現される標的に結合する母体自己反応性抗体の減少が容易となる。かかる自己反応性抗体は、胎芽または胎児の発達過程に影響を及ぼす、および/または変質させるおそれがあるので、母体自己反応性抗体を減少させるか、母体自己反応性抗体が胎芽もしくは胎児に接触するのを防止するか、または胎盤にわたる母体抗体の輸送を防止することにより、少なくとも部分的に利益が得られる。このため、本明細書に開示される方法は、小児がASDを発症するリスクを減少させるか、またはASD症状を減少させるために使用できる。本明細書に開示される方法はまた、母体自己抗体の存在に関連するASDのリスクまたは症状を減少させるためにも使用できる。
【0004】
したがって、本明細書には、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させる方法であって、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程を含む方法が、開示される。
【0005】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む。特定の実施形態では、胎芽または胎児は、CNS標的を発現する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0006】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、自己反応性抗体が胎児または胎芽と接触するのを防止および/または阻止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎芽または胎児に接触する自己反応性抗体の数を減少させる。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が胎盤関門を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が合胞体栄養細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が栄養膜細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が絨毛間質を通過するのを阻害または防止する。
【0007】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する。特定の実施形態では、阻害剤は、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する。
【0008】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、もしくはポリペプチド、または核酸を含む。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメントである。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、FcRnに結合する。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体はロザノリキシズマブである。特定の実施形態では、抗体はSYNT001である。特定の実施形態では、抗体はM281である。特定の実施形態では、抗体はArgx-113である。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Gである。特定の実施形態では、抗体はDX-2504である。特定の実施形態では、抗体はDX-2507である。特定の実施形態では、抗体は、ABY039、IMVT-1401/RVT1401である。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤(例えば、血清中抗体濃度を再利用(recylcing)し、維持する)は、小分子である。特定の実施形態では、小分子は表1から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ペプチドは表2から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、タンパク質である。特定の実施形態では、タンパク質は、IgG分子のFc領域を含む。特定の実施形態では、IgG分子のFc領域は、野生型Fc分子に比べてFcRnに対する親和性が増加している1つまたは複数の突然変異を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤(例えば、血清中抗体濃度を再利用し、維持する)は、抗体結合ドメイン領域(例えば、別の抗体のFc領域に結合するエピトープまたは抗体可変ドメインを含むポリペプチド)および変異体Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントを含み、Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントのFcドメインは、野生型免疫グロブリンFc領域に比べてFcRnへの結合が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、変異体Fc領域を含むポリペプチドである。特定の実施形態では、変異体Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントは、野生型IgG1 Fc領域に比べてFcRn(例えば、本明細書に記載のもの)への結合が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでいる。特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、EU位置252、254、256、433、434、および436にてそれぞれY、T、E、K、F、およびYを含み、Fc領域は、野生型IgG1 Fc領域に比べて親和性が増加し、pH依存性が低下しているFcRnに結合する。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、変異体Fc領域を含む抗体であり、この抗体(例えば、FcRn機能を阻害する抗体)は、抗体のFc領域を認識する可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ポリペプチドと変異体Fc領域を含む融合ポリペプチドである。特定の実施形態では、ポリペプチドは、自己反応性抗体に特異的なエピトープを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料をアッセイすることで、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体抗体を検出する工程をさらに含む。特定の実施形態では、生体試料は、母体血漿試料、母体血清試料、唾液、羊水、臍帯血血漿、臍帯血血清試料、胎児血漿、胎児血清、または組織試料からなる群から選択される。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料は、胎児の神経抗原に結合する母体抗体を含む。特定の実施形態では、生体試料は血漿試料である。特定の実施形態では、生体試料は血清試料である。特定の実施形態では、生体試料は組織試料である。
【0012】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は30歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は35歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は40歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は45歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体は、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している。
【0013】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、30歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、35歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、40歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、45歳を超えている個人から得た精子である。
【0014】
いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の個体の妊娠期間中に複数回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の三半期ごとに少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第1三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎日行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎週行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎月行われる。
【0015】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約30日、60日、90日、または100日までに妊娠中の個体に投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約100日、150日、または200日以降に妊娠中の個体に投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約30日、60日、90日、または100日未満である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約100日、150日、または200日より長い。
【0017】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清中に存在する量)を減少させることは、自閉症または自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、母体自己抗体関連型自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。
【0018】
本明細書にはさらに、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清中に存在する量)を減少させる方法であって、(a)妊娠中の個体または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体から生体試料を得る工程と、(b)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程と、(c)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定したとき、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体に新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程とを含む方法が、開示される。
【0019】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む。特定の実施形態では、胎芽または胎児は、CNS標的を発現する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、乳酸脱水素酵素B(LDH-B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2、CRIMP2)タンパク質、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0020】
いくつかの実施形態では、アッセイはイムノアッセイである。いくつかの実施形態では、生体試料は、母体血漿試料、母体血清試料、唾液、羊水、臍帯血血漿、臍帯血血清試料、胎児血漿、胎児血清、または組織試料からなる群から選択される。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料は、胎児の神経抗原に結合する母体抗体を含む。特定の実施形態では、生体試料は血漿試料である。特定の実施形態では、生体試料は血清試料である。特定の実施形態では、生体試料は組織試料である。
【0021】
いくつかの実施形態では、アッセイは、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体抗体の存在および/または濃度を検出する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、母体抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0022】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、自己反応性抗体が胎児または胎芽と接触するのを防止および/または阻止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎芽または胎児に接触する自己反応性抗体の数を減少させる。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が胎盤関門を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が合胞体栄養細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が栄養膜細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が絨毛間質を通過するのを阻害または防止する。
【0023】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する。特定の実施形態では、阻害剤は、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する。
【0024】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、もしくはポリペプチド、または核酸を含む。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメントである。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、FcRnに結合する。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体はロザノリキシズマブである。特定の実施形態では、抗体はSYNT001である。特定の実施形態では、抗体はM281である。特定の実施形態では、抗体はArgx-113である。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Gである。特定の実施形態では、抗体はDX-2504である。特定の実施形態では、抗体はDX-2507である。特定の実施形態では、抗体は、ABY039、IMVT-1401/RVT1401である。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、小分子である。特定の実施形態では、小分子は表1から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ペプチドは表2から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、タンパク質である。特定の実施形態では、タンパク質は、IgG分子のFc領域を含む。特定の実施形態では、IgG分子のFc領域は、野生型Fc分子に比べてFcRnに対する親和性が増加している1つまたは複数の突然変異を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は30歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は35歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は40歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は45歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体は、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している。
【0027】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、30歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、35歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、40歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、45歳を超えている個人から得た精子である。
【0028】
いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の個体の妊娠期間中に複数回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の三半期ごとに少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第1三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎日行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎週行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎月行われる。
【0029】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約30日、60日、90日、または100日までに妊娠中の個体に投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約100日、150日、または200日以降に妊娠中の個体に投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約30日、60日、90日、または100日未満である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約100日、150日、または200日より長い。
【0031】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、自閉症または自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、母体自己抗体関連型自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。
【0032】
本明細書にはさらに、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用が開示される。本明細書にはまた、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を処置するための薬剤の製造における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用も開示される。
【0033】
参照による援用
本明細書中で言及される刊行物、特許、および特許出願はすべて、それぞれの個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照によって援用されると示されている場合と同程度に、参照により本明細書で援用される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に特殊性を伴って明記される。本発明の特徴と利点は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を明記する以下の詳細な説明、およびその添付図面を参照することによってより良く理解されるであろう。
【0035】
【
図1】妊娠中の個体の自己反応性抗体を減少させるためのFcRn阻害剤の使用に関する例示的な概略図を示す図である。
【
図2】妊娠中の個体の自己反応性抗体を減少させるためのFcRn阻害剤の使用に関する例示的な概略図を示す図である。
【
図3】妊娠を試みるかまたは検討している個体の自己反応性抗体を減少させるためのFcRn阻害剤の使用に関する例示的な概略図を示す図である。
【
図4】妊娠を試みるかまたは検討している個体の自己反応性抗体を減少させるためのFcRn阻害剤の使用に関する例示的な概略図を示す図である。
【
図5】妊娠の代理母を務める個体の自己反応性抗体を減少させるためのFcRn阻害剤の使用に関する例示的な概略図を示す図である。
【
図6A】FcRn機能の阻害剤を投与後の自己抗体の減少を実証するin vivoデータを示す図である。
【
図6B】FcRn機能の阻害剤を投与後の自己抗体の減少を実証するin vivoデータを示す図である。
【
図6C】FcRn機能の阻害剤を投与後の自己抗体の減少を実証するin vivoデータを示す図である。
【
図6D】FcRn機能の阻害剤を投与後の自己抗体の減少を実証するin vivoデータを示す図である。
【
図6E】FcRn機能の阻害剤を投与後の自己抗体の減少を実証するin vivoデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書には、新生児Fc受容体(FcRn)の機能を阻害するのに有用な方法が提供される。かかる方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体内にある母体自己反応性抗体(自己抗体)を減少させるのに有用である。概して、自己反応性抗体の減少は、小児が自閉症スペクトラム障害(ASD)を患う可能性を防止および/または減少させるのに使用できる。
【0037】
本明細書には、神経発達タンパク質を標的とする母体自己抗体を減少させる方法が開示される。本明細書中での本開示の実施を通じて、母体抗体が胎芽または胎児に接触するのを防止するFcRn阻害は、小児の母体自己抗体関連型(MAR)ASDの予防および/または減少に有用な可能性がある。特定の例では、FcRn機能の阻害は、母体自己抗体の数を減少させることができる。このような例では、FcRnの阻害による母体抗体の減少は、小児のMAR ASDの可能性を予防および/または減少させるのに有用である。このため、本明細書中の開示と一貫する、母体自己抗体を減少させるための方法の使用および/または実施は、小児のMAR ASDを予防、減少、および/または処置するためにFcRn阻害剤の広範な適用を容易にする。
【0038】
母体自己抗体は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に、FcRn機能の阻害剤を投与することにより減少させることができる。これは、公知のFcRn阻害剤を含むあらゆるFcRn阻害剤の投与により行われる。診断スクリーニングの方法、試験、およびキットが、母体自己抗体を減少させるための方法に使用できる。例えば、母体自己抗体の有無は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に対して判定することができ、診断方法の結果は、妊娠前または妊娠中のFcRn阻害剤の投与に関する様々なパラメータを通知することができる。
【0039】
本明細書に記載の方法は、いくつかの利点を提供することができる。例えば、これらの方法は、複雑な因果関係に関連する疾患であるASDを予防するための創薬可能な標的であるFcRnを特定する。FcRn標的の評価により、母体自己反応性抗体におけるFcRn機能を減少させ、および/もしくは母体自己反応性抗体が胎芽または胎児に接触するのを防止する阻害剤の適用ならびに/または開発が可能となる。結果として、本明細書中の開示は、母体自己抗体を減少させ、母体自己反応性抗体が胎芽もしくは胎児と接触するのを防止し、および/またはASDを予防する方法の適用を容易にする。別の例として、FcRn機能を阻害する方法での診断的使用は、MAR ASDの処置もしくは予防を通知および/または指示するための読出し情報(readout)を提供することができる。
【0040】
自閉症
本明細書で提供される方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に対するFcRn機能の阻害により、ASDまたはMAR ASDのリスクを低下させることができる。「自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)」、「自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorder)」、「自閉症」、および「ASD」という用語は、互換的に、反復的および定型的な行動を伴う社会的相互作用とコミュニケーションの障害を特徴とする神経発達障害のスペクトルを指す。「MAR ASD」という用語は、母体自己抗体の存在と関連し、母体自己抗体の存在と相関し、かつ/または母体自己抗体の存在によって生じるASDを指す。自閉症として、社会的相互作用およびコミュニケーションの障害のスペクトルが挙げられるが、この障害は、社会的相互作用およびコミュニケーションの障害の程度に応じて、「高機能自閉症」または「低機能自閉症」に大別することができる。「高機能自閉症」と診断された個体は、最小限ではあるが識別可能な社会的相互作用およびコミュニケーションの障害(すなわち、アスペルガー症候群)を患っている。自閉症スペクトラム障害に関する追加情報は、例えば、Autism Spectrum Disorders:A Research Review for Practitioners,Ozonoffら編,2003,American Psychiatric Pub;Gupta,Autistic Spectrum Disorders in Children,2004,Marcel Dekker Inc;Hollander,Autism Spectrum Disorders,2003,Marcel Dekker Inc;Handbook of Autism and Developmental Disorders,Volkmar編,2005,John Wiley;Sicile-Kira and Grandin,Autism Spectrum Disorders:The Complete Guide to Understanding Autism,Asperger’s Syndrome,Pervasive Developmental Disorder、and Other ASDs,2004,Perigee Trade;およびDuncanらによるAutism Spectrum Disorders[Two Volumes]:A Handbook for Parents and Professionals,2007,Praegerに見ることができる。
【0041】
「ASDを発症するリスクの上昇」という用語は、本明細書に記載の1つもしくは複数のバイオマーカ(例えば、乳酸脱水素酵素AもしくはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1もしくは2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、またはそれらのあらゆる組合せから選択される)に結合する抗体に、または、1つもしくは複数のバイオマーカに対する抗体であって所定の閾値レベルを超えるレベルの抗体に曝露される胎児または小児におけるASDの症状を発症する可能性または確率が、1つもしくは複数のバイオマーカに対する抗体に、または、1つもしくは複数のバイオマーカに対する抗体であって所定の閾値レベル未満のレベルの抗体に曝露されていない胎児または小児におけるリスク、可能性、または確率と比較して上昇することを意味する。
【0042】
「ASDを発症するリスクの低下」という用語は、本明細書に記載の1つもしくは複数のバイオマーカ(例えば、乳酸脱水素酵素AもしくはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1もしくは2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、またはそれらのあらゆる組合せから選択される)に対する抗体に、または、1つもしくは複数のバイオマーカに対する抗体であって所定の閾値レベルを超えるレベルの抗体に曝露されており、例えばバイオマーカに結合する抗体を阻止、不活性化、もしくは除去する治療介入を母親が受けたことがある胎児または小児における、ASDの症状を発症する可能性または確率が、バイオマーカに対する抗体に、または1つもしくは複数のバイオマーカに対する抗体であって所定の閾値レベルを超えるレベルの抗体に曝露されているが母親が治療介入を受けていない胎児または小児がASDの症状を発症する可能性または確率と比較して低下することを意味する。
【0043】
FCRN
新生児Fc受容体(FcRn)は、免疫グロブリンクラスG(IgG)抗体のin vivo代謝調節に重要である。FcRnは、細胞リソソーム分解経路からIgG抗体をレスキューするか保護することで、クリアランスの低下と半減期の延長を生じさせるように機能する。本明細書中で言及されるFcRnは、新生児Fc受容体(FcRn)としても知られるヒトIgG受容体α鎖(そのアミノ酸配列はUniProt番号P55899に開示される)と、β2ミクログロブリン(β2β)(そのアミノ酸配列はUniProt番号P61769の下にある)との間の非共有結合性複合体を指す。FcRnは、2つのポリペプチド、すなわち、50kDaのクラスI主要組織適合遺伝子複合体様タンパク質(α-FcRn)および15kDaのβ2-ミクログロブリン(β2m)からなるヘテロ二量体タンパク質である(例えば、Huberらによる(1993)J.Mol.Biol.230,1077-1083を参照)。
【0044】
FcRn機能は、概してFcRnを介したIgGの細胞の内在化と再利用、in vivoでIgG濃度を維持できるプロセスを指す。FcRnは、クラスIgGの抗体のFc領域におけるCH2-CH3部分に高親和性で結合する。クラスIgGの抗体とFcRnとの相互作用はpH依存性であり、1つのIgG抗体分子が2つのFcRn分子に対しその2つの重鎖Fc領域ポリペプチドを介して相互に作用することのできる1:2の化学量論量で生じる可能性がある。いくつかの実施形態では、FcRnの機能を阻害することは、自己反応性抗体のレスキューまたは再利用を阻害することを含み、特定の例では、自己反応性抗体のレスキューまたは再利用により、個体におけるIgG濃度の維持が促進される。いくつかの実施形態では、FcRnの機能を阻害することは、自己反応性抗体のレスキューまたは再利用を阻害することを含み、特定の例では、自己反応性抗体のレスキューまたは再利用により、自己反応性抗体の半減期が延びる。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、FcRnと自己反応性抗体との相互作用を(例えば、抗体、小分子、ペプチド、またはタンパク質を用いて)阻害することを含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、FcRnとの相互作用(例えば、間接的相互作用)を増強することによって自己反応性抗体を分解経路へと往復させることにより、分解のために自己反応性抗体を標的とすることを含む。
【0045】
他の機能の中でもとりわけ、FcRnは、胎児への体液性免疫の伝達に必須であり得る(例えば、RoopenianらによるNat Rev Immunol.2007 Sep;7(9):715-25を参照)。少なくとも部分的にFcRn機能はさらに、FcRn媒介活性輸送機構による妊娠初期から妊娠中期までの胎児への母体IgG抗体の胎盤を介した移動を指し、母体IgGは、胎盤の合胞体栄養細胞中のエンドソーム小胞に発現されるFcRnに結合した後、胎児循環へと放出される。
【0046】
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の胎芽および/または胎児に接触可能な自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させるための方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みるかもしくは検討している個体の中でのFcRn機能の阻害を特徴とする。本明細書に開示されるこのような方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させるためにも使用できる。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害することは、胎盤障壁にわたる母体抗体の移動を阻害することを含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、抗体が胎芽または胎児に接触し得る領域に母体抗体が移動するのを阻害することを含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、胎盤の合胞体栄養芽細胞中のエンドソーム小胞にわたるか、またはその全体におけるFcRn媒介IgG移動を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害することは、FcRnと抗体分子との相互作用を阻害または阻止することを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害することは、抗体分子のFcRn媒介再利用もしくはレスキューを阻害、阻止、および/または減少させることを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害することは、FcRn機能に関与する補助分子を阻害することを含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を阻害または阻止することを含む。
【0047】
このため、理解されるように、IgGのFcRn結合特性/特徴は、血液循環中でのそのin vivo薬物動態特性を示す。FcRnとIgGクラスの抗体におけるFc領域との相互作用には、重鎖CH2-ドメインおよびCH3-ドメインの異なるアミノ酸残基が関与している。FcRnと相互作用するアミノ酸残基は、およそEU位置243とEU位置261との間、およそEU位置275とEU位置293との間、およそEU位置302とEU位置319との間、およそEU位置336とEU位置348との間、およそEU位置367とEU位置393との間、およびおよそEU位置424とEU位置440との間に位置する。より具体的には、以下のKabatのEUナンバリングによるアミノ酸残基が、Fc領域とFcRnとの相互作用に関与する:F243、P244、P245P、K246、P247、K248、D249、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、P257、E258、V259、T260、C261、F275、N276、W277、Y278、V279、D280、V282、E283、V284、H285、N286、A287、K288、T289、K290、P291、R292、E293、V302、V303、S304、V305、L306、T307、V308、L309、H310、Q311、D312、W313、L314、N315、G316、K317、E318、Y319、I336、S337、K338、A339、K340、G341、Q342、P343、R344、E345、P346、Q347、V348、C367、V369、F372、Y373、P374、S375、D376、I377、A378、V379、E380、W381、E382、S383、N384、G385、Q386、P387、E388、N389、Y391、T393、S408、S424、C425、S426、V427、M428、H429、E430、A431、L432、H433、N434、H435、Y436、T437、Q438、K439、およびS440。部位特異的変異誘発試験では、FcRnに対するIgGのFc領域における重要な結合部位はヒスチジン310、ヒスチジン435、およびイソロイシン253であり、さらに少ない程度ではヒスチジン433およびチロシン436であることが証明されている(例えば、Kim,J.K.らによるEur.J.Immunol.29(1999)2819-2825;Raghavan,M.らによるBiochem.34(1995)14649-14657;Medesan,C.らによるJ Immunol.158(1997)2211-2217を参照)FcRnへのIgG結合を増大させる方法は、種々のアミノ酸残基:スレオニン250、メチオニン252、セリン254、スレオニン256、スレオニン307、グルタミン酸380、メチオニン428、ヒスチジン433、およびアスパラギン434にてIgGを突然変異させることにより行われている(Kuo,T.T.らによるJ.Clin.Immunol.30(2010)777-789を参照)。
【0048】
母体自己反応性抗体およびその検出
妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体は、胎芽または胎児の発達を生じさせるか、またはそれに影響を及ぼす可能性がある。一例として、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体は、胎芽または胎児の神経発達に影響を及ぼすか、またはそれを変質させる可能性がある。別の例では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体は、小児にASDを発症させるおそれがある。
【0049】
「自己反応性抗体」という用語は、本明細書では「自己抗体」という用語と互換的に使用され、発達中の胎芽および/または胎児により発現される1つもしくは複数のタンパク質または抗原を標的とするか、それに結合することができる抗体を記述する。したがって、いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、胎芽または胎児により発現されるか、またはそれに関連する標的に結合する。様々な実施形態では、自己反応性抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、胎芽または胎児は、CNS標的を発現する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、乳酸脱水素酵素AもしくはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1もしくは2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、またはそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する。
【0050】
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させる方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みるかもしくは検討している個体の中でのFcRn機能の阻害を特徴とし、自己反応性抗体の存在および/または定量を判定するための診断方法、工程、または試験を含むことができる。例示的な実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法は、(a)妊娠中の個体または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体から生体試料を得るか提供する工程と、(b)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程と、(c)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定したとき、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体に新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程とを含む。種々の実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠する前に行われる。いくつかの実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠を試みる前に行われる。いくつの実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠を検討している間に行われる。種々の実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠した後に行われる。いくつかの実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠を試み始めた後に行われる。
【0051】
加えて、本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させる方法は、自己反応性抗体の存在および/または定量を判定するための診断方法、工程、または試験を含む。例示的な実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法は、(a)妊娠中の個体または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体から生体試料を得る工程と、(b)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程と、(c)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定したとき、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体に新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程とを含む。種々の実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠する前に行われる。いくつかの実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠を試みる前に行われる。いくつの実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠を検討している間に行われる。種々の実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠した後に行われる。いくつかの実施形態では、胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程は、個体が妊娠を試み始めた後に行われる。
【0052】
妊娠中の個体、または妊娠を試みるかもしくは検討している個体の自己反応性抗体を検出する方法は、妊娠中の個体、または妊娠を試みるかもしくは検討している個体から得た生体試料中、本明細書に記載のバイオマーカ(例えば、乳酸脱水素酵素AもしくはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1もしくは2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、またはそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される)のうち1つまたは複数に結合する母体抗体を特定する工程を含むことができ、1つまたは複数のバイオマーカに特異的に結合する母体抗体の存在は、胎児または小児がASDを発症する可能性の上昇を示す。別の実施形態では、上記方法は、本明細書に記載のバイオマーカのうちの1つまたは複数に結合する母体抗体の存在によって、胎児または小児が自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症する可能性を判定する工程を含む。
【0053】
母親から採取された生体試料に関して、抗体を含有するいずれかの流体試料を使用できる。例えば、生体試料は、血液、血清、血漿、羊水、尿、母乳、または唾液であってよい。もちろん、1つまたは複数の異なる体液を、1つまたは複数のバイオマーカに特異的に結合する抗体について精査することができる。
【0054】
生体試料は、バイオマーカ(例えば、乳酸脱水素酵素AもしくはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1もしくは2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、またはそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される)のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、またはそれより多くに特異的に結合する抗体の存在について精査される。
【0055】
「乳酸脱水素酵素」または「LDH」という用語は、互換的に、NADHとNAD+の同時の相互変換によりピルビン酸と乳酸の相互変換を触媒する酵素を指す。乳酸脱水素酵素は、4つの異なる酵素クラスに存在する。そのうちの2つはシトクロムc依存性酵素であり、それぞれがD-乳酸(EC1.1.2.4)またはL-乳酸(EC1.1.2.3)のいずれかに作用する。残り2つはNAD(P)依存性酵素であり、それぞれがD-乳酸(EC1.1.1.28)またはL-乳酸(EC1.1.1.27)のいずれかに作用する。LDH酵素は4つのサブユニットで構成され、サブユニットは「M」または「H」のいずれかである。LDHA遺伝子は、互換的にLDH-MやLDH-Aとして知られるMサブユニットをコードする。LDHB遺伝子は、互換的にLDH-HやLDH-Bとして知られるHサブユニットをコードする。それぞれ4つのサブユニットを含有する5つのLDHアイソザイムが存在する。骨格筋と肝臓の主要なLDHアイソザイムであるLDH-5(M4)は4つの筋肉(M)サブユニットを有しており、一方でLDH-1(H4)は、大半の種において4つの心臓(H)サブユニットを含有する心筋における主要なアイソザイムである。他の変異体は、両タイプのサブユニット、例えば、網状内皮系におけるLDH-2(H3M1)、肺におけるLDH-3(H2M2)、および腎臓におけるLDH-4(H1M3)を含有する。LDH-2は血清に存在する主な形態である。LDHAは、LDH1、LDH筋肉サブユニット、LDH-M、EC1.1.1.27、腎臓癌抗原NY-REN-59、細胞増殖誘導遺伝子19タンパク質、PIG19、およびL-乳酸脱水素酵素A鎖としても知られ、LDHBは、LDH2、LDH-H、またはTRG-5としても知られ、LDHCは精巣に特異的である。
【0056】
構造上、LDH-Aアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号AAP36496.1、BAD96798.1、NM-005566.3→NP-005557.1(アイソフォーム1)、NM-001135239.1→NP-001128711.1(アイソフォーム2)、NM-001165414.1→NP-001158886.1(アイソフォーム3)、NM-001165415.1→NP-001158887.1(アイソフォーム4)、またはNM-001165416.1→NP-001158888.1(アイソフォーム5)のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、LDH-A核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号BC067223、CR604911、BC051361、X02152.1、NM-005566.3→NP-005557.1(アイソフォーム1)、NM-001135239.1→NP-001128711.1(アイソフォーム2)、NM-001165414.1→NP-001158886.1(アイソフォーム3)、NM-001165415.1→NP-001158887.1(アイソフォーム4)、またはNM-001165416.1→NP-001158888.1(アイソフォーム5)の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0057】
構造上、LDH-Bアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-002300.6→NP-002291.1(変異体1)またはNM-001174097.1→NP-001167568.1(変異体2)のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、LDH-B核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号BC002361.1、Y00711.1、NM-002300.6→NP-002291.1(変異体1)、またはNM-001174097.1→NP-001167568.1(変異体2)の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0058】
「コラプシン反応媒介タンパク質1」または「CRMP1」という用語(DRP1、DRP-1、CRMP-1、DPYSL1、ULIP-3としても知られる)は、神経分化および軸索誘導において機能すると知られる細胞質リンタンパク質を指す。CRMP1は、専ら神経系に発現される細胞質リンタンパク質ファミリーのメンバーである。コードされたタンパク質は、神経発達中にセマフォリン誘導型成長の円錐崩壊に関与するセマフォリンシグナル伝達経路の一部であると考えられている。代替スプライシングは、複数の転写バリアントをもたらす。構造上、CRMP1アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-001014809.1→NP-001014809.1(アイソフォーム1)またはNM-001313.3→NP-001304.1(アイソフォーム2)のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、CRMP1核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-001014809.1→NP-001014809.1(アイソフォーム1)またはNM-001313.3→NP-001304.1(アイソフォーム2)の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0059】
「ストレス誘導リンタンパク質1」または「STIP1」という用語(Hsp70/Hsp90-組織化タンパク質(HOPI)、STI1、STILL IEF-SSP-3521、およびP60としても知られる)は、HSP70およびHSP90のフォールディングを補助するアダプタタンパク質を指す。STIP1はまた、HSP70のATPase活性を刺激しながらHSP90のATPase活性を阻害するため、調節的な役割が認められる。さらに、STIP1は細胞プリオンタンパク質PrPcに結合し、短期および長期の記憶固定を調節する。構造上、STIP1アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-006819.2→NP-006810.1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、STIP1核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-006819.2→NP-006810.1の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0060】
「グアニンデアミナーゼ」および「GDA」という用語(Cypin、グアナーゼ、KIAA1258、MGC9982、およびNedasinとしても知られる)は、グアニンの加水分解性脱アミノ化を触媒してキサンチンおよびアンモニアをもたらす酵素を指す。GDAはまた、PSD-95シナプス後ターゲティングを調節すると示されている。構造上、GDAアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-004293.3→NP-004284.1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、GDA核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-004293.3→NP-004284.1の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0061】
「ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2」または「DPYSL2」という用語(CRMP-2またはCRMP2としても知られる)は、軸索指定(axonal specification)中の軸索におけるSema3Aの反発効果を媒介することにより軸索ガイダンスに関与するタンパク質を指す。構造上、DPYSL2アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-001386.4→NP-001377.1またはBAD92432のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、DPYSL2核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-001386.4→NP-001377.1の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0062】
「バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(alpha subunit of the barbed-end actin binding protein Cap Z)」、または「キャッピングタンパク質(アクチンフィラメント)筋肉Z線、α2(capping protein(actin filament)muscle Z-line,alpha 2)」、または「CAPZA2」という用語(CAPPA2、CAPZとしても知られる)は、F-アクチンキャッピングタンパク質αサブユニットファミリーのメンバーを指す。CAPZA2は、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニットである。アクチンフィラメントのバーブエンドをキャッピングすることにより、CapZは、バーブエンドにてアクチンフィラメントの成長を調節する。構造上、CAPZA2アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-006136.2→NP-006127.1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、CAPZA2核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-006136.2→NP-06127.1の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0063】
「Yボックス結合タンパク質1」または「YBX1」という用語(BP-8、CSDA2、CSDB、DBPB、MDR-NF1、MGC104858、MGC110976、MGC117250、NSEP-1、NSEP1、YB1、およびYB1としても知られる)は、pre-mRNA代替スプライシング調節を媒介するタンパク質を指す。YBX1はpre-mRNA中のスプライス部位に結合してスプライス部位の選択を調節し、細胞質mRNAに結合して安定させ、mRNAと真核生物開始因子との相互作用を調節することにより翻訳の調節に寄与し、例えばHLAクラスII遺伝子に見られるY-ボックス(5’-CTGATTGGCCAA-3’、配列番号1)を含有するプロモータに結合し、ミスマッチを含有するかまたはシスプラチンにより修飾されるDNA鎖の分離を促進する。構造上、YBX1アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-004559.3→NP-004550.2のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、YBX1核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-004559.3→NP-004550.2の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0064】
「真核生物翻訳伸長因子1A1」および「EEF1A1」という用語は、アミノアシルtRNAをリボソームに輸送する伸長因子-1複合体のαサブユニットのアイソフォームを指す。1A1アイソフォームは、脳、胎盤、肺、肝臓、および膵臓に発現され、フェルティ症候群の実施形態の66%における自己抗原である。フェルティ症候群は、関節リウマチ、脾腫。および好中球減少症が組み合わさっていることを特徴とする。構造上、EEF1Aアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-001402.5→NP-001393.1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、EEF1A核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-001402.5→NP-001393.1の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0065】
「微小管結合タンパク質Tau」および「MAPT」という用語(DDPAC、FLJ31424、MAPTL、MGC138549、MSTD、MTBT1、MTBT2、PPND、およびTAUとしても知られる)は、その転写物が複雑で調整された代替スプライシングを受けて、成熟状態およびニューロンの種類に基づき、ニューロンに見られる広範な異なるMAPT mRNA転写物を生じさせるタンパク質を指す。突然変異または有害なスプライス変異体は、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭痴呆症、皮質基底変性症、および進行性核上麻痺を含む神経変性疾患と関連する。構造上、MAPTアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-016835.4→NP-058519.3(アイソフォーム1)、NM-005910.5→NP-005901.2(アイソフォーム2)、NM-016834.4→NP-058518.1(アイソフォーム3)、NM-016841.4→NP-058525.1(アイソフォーム4)、NM-001123067.3→NP-001116539.1(アイソフォーム5)、またはNM-001123066.3→NP-001116538.2(アイソフォーム6)のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、MAPT核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号M-016835.4→NP-058519.3(アイソフォーム1)、NM-005910.5→NP-005901.2(アイソフォーム2)、NM-016834.4→NP-058518.1(アイソフォーム3)、NM-016841.4→NP-058525.1(アイソフォーム4)、NM-001123067.3→NP-001116539.1(アイソフォーム5)、またはNM-001123066.3→NP-001116538.2(アイソフォーム6)の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0066】
「ダイナミン1様タンパク質」および「DNM1L」(DLP1、DRP1、DVLP、DYMPLE、HDYNIV、およびVPS1としても知られる)という用語は、細胞質中のミトコンドリア細管の分布を制御するミトコンドリアの形態を調節する役割を果たすGTPaseのダイナミンファミリーのメンバーを指す。DNM1L遺伝子は、代替的にポリアデニル化される3つの代替スプライス変異体を生成する。構造上、DNM1Lアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-012062.3→NP-036192.2(アイソフォーム1)、NM-012063.2→NP-036193.2(アイソフォーム2)、NM-005690.3→NP-005681.2(アイソフォーム3)のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、DNM1L核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-012062.3→NP-036192.2(アイソフォーム1)、NM-012063.2→NP-036193.2(アイソフォーム2)、NM-005690.3→NP-005681.2(アイソフォーム3)の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0067】
「ニューロフィラメント、軽鎖ポリペプチド」および「NEFL」(CMT1F、CMT2E、NF-L、およびNFLとしても知られる)という用語は、軽鎖、中鎖、および重鎖からなるIV型中間フィラメントヘテロポリマーを指す。NEFLは軸骨格の構成成分であり、ニューロンの形態を維持するように機能し、軸索および樹状突起への細胞内輸送の役割を果たす場合がある。NEFLの突然変異により、シャルコー・マリー・トゥース病1F型(CMT1F)および2E型(CMT2E)が生じ、ともに末梢神経系障害である。NEFLはまた、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)と関連付けられている。構造上、NEFLアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-006158.3→NP-006149.2のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、NEFL核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-006158.3→NP-006149.2の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0068】
「ラジキシン」または「RDX」(DFNB24としても知られる)という用語は、アクチンの原形質膜への連結に関与する細胞骨格タンパク質を指す。RDXは、エキシリンおよびモエシンに対して高い配列同一性を呈する。構造上、RDXアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-002906.3→NP-002897.1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、RDX核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-002906.3→NP-002897.1の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0069】
「モエシン」、「MSN」、および「膜組織拡張スパイクタンパク質(membrane-organizing extension spike protein)」は、エズリンおよびラジキシンを含むERMファミリーのメンバーを指す。ERMタンパク質は、原形質膜とアクチン系細胞骨格との間のクロスリンカーとして機能する。モエシンは、細胞間認識およびシグナル伝達、ならびに細胞運動に重要な糸状突起および他の膜状突起に局在化されている。構造上、MSNアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-002444.2→NP-002435.1のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、MSN核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-002444.2→NP-002435.1の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0070】
「非特異的エノラーゼ」、「ENO2」、「NSE」、および「γエノラーゼ」という用語は、γエノラーゼのホモ二量体であるNSEがニューロンおよびニューロン起源の細胞に見出される3つのエノラーゼ酵素であって、広範囲の中枢神経系(CNS)ニューロン上で神経栄養性および神経保護性の特性を有するエノラーゼ酵素をコードする遺伝子を指す。構造上、NSEアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001975.3→NP_001966.1、またはNCBI Gene ID 2026のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、NSE核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000、1200の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001975.3→NP_001966.1、またはNCBI Gene ID 2026の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0071】
「Caspr2」および「コンタクチン関連タンパク質2」(CNTNAP2、CDFE、NRXN4、AUTS15、PTHSL1としても知られる)という用語は、脊椎動物神経系において細胞接着分子および受容体として機能するニューレキシンファミリーの遺伝子メンバーを指す。Caspr2は、表皮成長因子リピートおよびラミニンGドメインを含み、加えてF5/8タイプCドメイン、ディスコイジン/ニューロピリンおよびフィブリノーゲン様ドメイン、トロンボスポンジンN末端様ドメイン、ならびに推定上のPDZ結合部位を含む。Caspr2は有髄軸索の傍パラノード部(juxtaparanodes)に局在化され、神経系の発達中にニューロンとグリアとの相互作用を仲介できる。Caspr2はまた、分化軸索内のカリウムチャネルの局在化で機能することもできる。構造上、Caspr2アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_014141.6→NP_054860.1またはNCBI Gene ID 26047のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、Caspr2核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000、1500、2000、2500、3000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_014141.6→NP_054860.1またはNCBI Gene ID 26047の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0072】
「KCNAB2」、「カリウム電圧ゲートチャネルサブファミリーA調節性βサブユニット2」、および「電圧ゲートカリウムチャネルサブユニットβ-2」(AKR6A5、KCNA2B、HKvbeta2、KV-BETA-2、HKvbeta2.1、HKvbeta2.2としても知られる)という用語は、カリウムチャネルの電圧ゲート・シェーカ関連サブファミリー(potassium channel,voltage-gated,shaker-related subfamily)のメンバーを指す。KCNAB2はβサブユニットの一つであり、機能的Kv-αサブユニットと関連する補助タンパク質である。KCNAB2は、KCNAB4遺伝子産物の機能特性を変化させる。この遺伝子の代替スプライシングにより、異なるアイソフォームをコードする複数の転写変異体が生じる。構造上、KCNAB2アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001199860.2→NP_001186789.1、NM_001199861.2→NP_001186790.1、NM_001199862.2→NP_001186791.1、NM_001199863.2→NP_001186792.1、NM_003636.4→NP_003627.1、NM_172130.3→NP_742128.1、またはNCBI Gene ID 8514のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、KCNAB2核酸配列は、少なくとも300、500、750の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001199860.2→NP_001186789.1、NM_001199861.2→NP_001186790.1、NM_001199862.2→NP_001186791.1、NM_001199863.2→NP_001186792.1、NM_003636.4→NP_003627.1、NM_172130.3→NP_742128.1、またはNCBI Gene ID 8514の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0073】
「KCNAB1」および「カリウム電圧ゲートチャネルサブファミリーA調節性βサブユニット1」(hKvb3、AKR6A3、KCNA1B、Kvb1.3、hKvBeta3、KV-BETA-1としても知られる)という用語は、カリウムチャネルの電圧ゲート・シェーカ関連サブファミリーのメンバーを指す。KCNAB1は、チャネル形成αサブユニットの特性を調節する細胞質カリウムチャネルサブユニットである。構造上、KCNAB1アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001308217.1→NP_001295146.1、NM_001308222.1→NP_001295151.1、NM_003471.3→NP_003462.2、NM_172159.3→NP_751891.1、NM_172160.2→NP_751892.1、またはNCBI Gene ID 7881のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、KCNAB1核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000、1200の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001308217.1→NP_001295146.1、NM_001308222.1→NP_001295151.1、NM_003471.3→NP_003462.2、NM_172159.3→NP_751891.1、NM_172160.2→NP_751892.1、またはNCBI Gene ID 7881の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0074】
「内皮インテグリンリガンド」、「EDIL3」、「EGF様リピートおよびディスコイジンドメイン3」、および「DEL1」という用語は、インテグリンリガンドを指す。EDIL3は、α-v/β-3インテグリン受容体との相互作用を介して内皮細胞の接着を促進するように機能し、胚発生でのリモデリングの血管形成の調節において機能することができる。構造上、EDIL3アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001278642.1→NP_001265571.1、NM_005711.5→NP_005702.3、またはNCBI Gene ID 10085のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、EDIL3核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000、1200の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001278642.1→NP_001265571.1、NM_005711.5→NP_005702.3、またはNCBI Gene ID 10085の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0075】
「IVD」、「イソバレリル-CoAデヒドロゲナーゼ」、および「ACAD2」という用語は、ロイシン異化反応の第3工程を触媒するミトコンドリアマトリックス酵素を指す。構造上、IVDアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001159508.3→NP_001152980.2、NM_001354597.3→NP_001341526.1、NM_001354598.3→NP_001341527.2、NM_001354599.3→NP_001341528.2、NM_001354600.3→NP_001341529.2、NM_001354601.3→NP_001341530.2、NM_002225.5→NP_002216.3、またはNCBI Gene ID 3712のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、IVD核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000、1200の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001159508.3→NP_001152980.2、NM_001354597.3→NP_001341526.1、NM_001354598.3→NP_001341527.2、NM_001354599.3→NP_001341528.2、NM_001354600.3→NP_001341529.2、NM_001354601.3→NP_001341530.2、NM_002225.5→NP_002216.3、またはNCBI Gene ID 3712の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0076】
「脳特異的スルホトランスフェラーゼ」、「SULT4A1」、および「スルホトランスフェラーゼファミリー4Aメンバー1」(NST、BRSTL1、SULTX3、BR-STL-1、DJ388M5.3、hBR-STL-1としても知られる)という用語は、スルホトランスフェラーゼファミリーのメンバーを指す。SULT4A1は、神経伝達物質の代謝において機能可能な脳特異的スルホトランスフェラーゼである。構造上、SULT4A1アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号XM_011530121.1→XP_011528423.1、XM_024452212.1→XP_024307980.1、XM_011530120.3→XP_011528422.1、またはNCBI Gene ID 25830のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、SULT4A1核酸配列は、少なくとも300、500、750の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号XM_011530121.1→XP_011528423.1、XM_024452212.1→XP_024307980.1、XM_011530120.3→XP_011528422.1、またはNCBI Gene ID 25830の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0077】
「TNIP2」および「TNFAIP3相互作用タンパク質2」(KLIP、ABIN2、FLIP1としても知られる)という用語は、NFκB活性化の阻害剤を指す。TNIP2はまた、先天性免疫応答でのMAP/ERKシグナル伝達経路、および内皮細胞中でのアポトーシスの調節においても機能することができる。構造上、TNIP2アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001161527.2→NP_001154999.1、NM_001292016.2→NP_001278945.1、NM_024309.4→NP_077285.3、またはNCBI Gene ID 79155のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、TNIP2核酸配列は、少なくとも300、500、750、900の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001161527.2→NP_001154999.1、NM_001292016.2→NP_001278945.1、NM_024309.4→NP_077285.3、またはNCBI Gene ID 79155の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0078】
「レチノイン酸誘導16」、「RAI16」、および「配列類似性160メンバーB2を有するファミリー」という用語は、神経組織に発現される遺伝子を指す。構造上、RAI16アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、500、600、700のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001354250.2→NP_001341179.1、NM_001354251.2→NP_001341180.1、NM_022749.7→NP_073586.5、またはNCBI Gene ID 64760のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、RAI16核酸配列は、少なくとも300、500、750、900、1200、1500、1800、2100の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_001354250.2→NP_001341179.1、NM_001354251.2→NP_001341180.1、NM_022749.7→NP_073586.5、またはNCBI Gene ID 64760の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0079】
「GDP D6」および「グリセロホスホコリンホスホジエステラーゼ1」(GPCD1、EDI3、GDE5、GDPD6、PREI4としても知られる)という用語は、グリセロホスホコリンホスホジエステラーゼを指す。構造上、GDP D6アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、500、600のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_019593.5→NP_062539.1、またはNCBI Gene ID 56261のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、GDP D6核酸配列は、少なくとも300、500、750、900、1200、1500の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM_019593.5→NP_062539.1、またはNCBI Gene ID 56261の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0080】
「エズリン」および「EZR」(CVL、CVIL、VIL2、MGC1584、FLJ26216、DKFZp762H157としても知られる)という用語は、微絨毛中でタンパク質-チロシンキナーゼ基質として機能する細胞質周辺膜タンパク質を指す。ERMタンパク質ファミリーのメンバーとして、このタンパク質は原形質膜とアクチン細胞骨格の間で中間体として機能する。EZRタンパク質は、細胞表面構造の接着、遊走、および組織化において役割を果たし、様々なヒト癌に関係がある。構造上、EZRアミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350のアミノ酸の配列長、またはポリペプチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-003379.4→NP-003370.2(アイソフォーム1)またはNM-001111077.1→NP-001104547.1(アイソフォーム2)のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造上、EZR核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000の核酸の配列長、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えば、GenBank受託番号NM-003379.4→NP-003370.2(アイソフォーム1)またはNM-001111077.1→NP-001104547.1(アイソフォーム2)の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のいずれかのアライメントアルゴリズム、例えば、BLAST、ALIGN、デフォルト設定への設定を用いて行うことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、自己抗体の存在の検出は、受胎前に行われる。いくつかの実施形態では、自己抗体の検出は、妊娠を確認した時点で行われる。いくつかの実施形態では、自己抗体の検出は、妊娠を確認した後に行われる。いくつかの実施形態では、検出は、妊娠中に毎週行われる。いくつかの実施形態では、検出は毎月行われる。いくつかの実施形態では、検出は、三半期ごとに少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体の検出は、出産後に行われる。
【0082】
抗体
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体内のFcRn機能を阻害するための方法は、FcRn結合抗体またはその標的結合性フラグメントの投与を特徴とする。
【0083】
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の胎芽および/または胎児に接触可能な自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させるための方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みるかもしくは検討している個体の中での、抗体またはそのフラグメントによるFcRn機能の阻害を特徴とする。開示されるこのような抗体は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体においてIgG分子とFcRnとの相互作用を防止することにより、自己反応性抗体を減少させるためにも使用できる。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する抗体は、胎盤障壁にわたる母体抗体の移動を阻害する抗体を含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害する抗体は、母体抗体が胎芽または胎児に接触し得る領域への母体抗体の移動を阻害する抗体を含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害する抗体は、胎盤の合胞体栄養芽細胞中のエンドソーム小胞にわたるか、またはその全体におけるFcRn媒介IgG移動を阻害する抗体を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する抗体は、FcRnと抗体分子との相互作用を阻害または阻止する抗体を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する抗体は、抗体分子のFcRn媒介再利用もしくはレスキューを阻害、阻止、および/または減少させる抗体を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する抗体は、FcRn機能に関与する補助分子を阻害する抗体を含む。
【0084】
提供される抗体の中には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体および多反応性抗体)、および抗体フラグメントがある。抗体には、キメラ分子といった、抗体コンジュゲートおよび抗体を含む分子が挙げられる。このため抗体には、完全長およびネイティブ抗体のほか、その結合特異性を保持するフラグメントおよびその部分、例えば、任意数の免疫グロブリンクラスおよび/またはアイソタイプを有するものを含むいずれかの特異的結合部分(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、IgE、およびIgM)、ならびにFab、F(ab’)2、Fv、およびscFv(一本鎖または関連実体)を含むがこれらに限定されない生体関連(抗原結合性)フラグメントまたはその特異的結合部分が挙げられるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体は、概して実質的に均一な抗体の組成物内にある抗体であり、このため、モノクローナル抗体組成物内に含まれる個々の抗体は、起こり得る自然発生の突然変異のうち微量で存在し得るものを除き同一である。ポリクローナル抗体は、概して2つ以上の異なる決定基(エピトープ)に向けられる様々な配列の異なる抗体を含む調製物である。モノクローナル抗体は、ヒトIgG1定常領域を含むことができる。モノクローナル抗体は、ヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0085】
本明細書中の「抗体」という用語は最も広い意味で使用されており、インタクト抗体およびその機能性(抗原結合性)抗体フラグメント、例えば、フラグメント抗原結合性(Fab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fvフラグメント、組換えIgG(rIgG)フラグメント、一本鎖可変フラグメント(sFvまたはscFv)などの一本鎖抗体フラグメント、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)フラグメントを含む、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が挙げられる。この用語は、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多特異性抗体、例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFvなどの遺伝子操作および/またはその他の方法で修飾された形態の免疫グロブリンを包含する。別段の定めのない限り、「抗体」という用語は、その機能性抗体フラグメントを包含すると理解されたい。この用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、ならびにIgDを含むいずれかのクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクトまたは完全長の抗体も包含する。抗体は、ヒトIgG1定常領域を含むことができる。抗体は、ヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0086】
「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、当該技術分野では抗体可変領域内のアミノ酸の非近接配列を指し、抗原特異性および/または結合親和性を付与する。概して、各重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)があり、各軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」は、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すと当該技術分野で知られている。概して、各完全長重鎖可変領域には4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4)があり、各完全長軽鎖可変領域には4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、FR-L4)がある。所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列の境界は、多数の周知のスキームのうちいずれかを用いて容易に判定することができ、Kabat(1991)らによる「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al-Lazikani(1997)らによるJMB 273,927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム)、MacCallumらによるJ.Mol.Biol.262:732-745(1996),「Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography」,J.Mol.Biol.262,732-745.(「Contact」ナンバリングスキーム)、Lefranc MPらによる「IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains」,Dev Comp Immunol,2003 Jan;27(1):55-77(「IMGT」ナンバリングスキーム)、Honegger AとPluckthun Aによる「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool」,J Mol Biol,2001 Jun 8;309(3):657-70(「Aho」ナンバリングスキーム)、およびWhitelegg NRとRees ARによる「WAM:an improved algorithm for modelling antibodies on the WEB」,Protein Eng.2000 Dec;13(12):819-24(「AbM」ナンバリングスキーム)が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、Aho、Abm、またはそれらの組合せから選択される方法によって定義することができる。
【0087】
所与のCDRまたはFRの境界は、特定に使用されるスキームに応じて変動し得る。例えば、Kabatスキームは構造アラインメントに基づくが、Chothiaスキームは構造情報に基づく。KabatおよびChothiaの両スキームにおけるナンバリングは、最も一般的な抗体領域配列長に基づいており、挿入は挿入文字、例えば「30a」により順応され、欠失は一部の抗体に現れる。この2つのスキームは、特定の挿入と欠失(「インデル」)を異なる位置に配し、その結果、ナンバリングは差動的となる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の解析に基づいており、多くの点でChothiaナンバリングスキームに類似する。
【0088】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体を抗原に結合させるのに関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、概して類似の構造を有しており、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つのCDRを含む(例えば、KindtらによるKuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照)。単一のVHまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分な場合もある。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合してそれぞれ相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングする、抗体のVHドメインまたはVLドメインを用いて単離される場合がある(例えば、PortolanoによるJ.Immunol.150:880-887(1993);ClarksonらによるNature 352:624-628(1991)を参照)。
【0089】
提供される抗体の中には、抗体フラグメントがある。「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の結合対象である抗原に結合するインタクト抗体の一部を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFvまたはsFv)、および抗体フラグメントから形成された多特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、抗体は、scFvなどの可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む一本鎖抗体フラグメントである。
【0090】
抗体フラグメントは、インタクト抗体のタンパク質分解消化のほか、組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されない様々な技法により作製可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、自然に生じない配置を含むフラグメント、例えば、合成リンカー、例えばポリペプチドリンカーにより結合される2つ以上の抗体領域もしくは抗体鎖を含むもの、および/または自然に生じるインタクト抗体の酵素消化により産生されないものなど、組換えにより産生されるフラグメントである。いくつかの態様では、抗体フラグメントはscFvである。
【0091】
「ヒト化」抗体は、すべてまたは実質的にすべてのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、すべてまたは実質的にすべてのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意選択でヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含む場合がある。非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を経て、典型的に親である非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながらヒトに対する免疫原性を低下させる、非ヒト抗体の変異体を指す。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の由来となる抗体)由来の対応する残基で置換されて、例えば抗体特異性または親和性を回復するか改善する。
【0092】
提供される抗体の中には、ヒト抗体がある。「ヒト抗体」とは、ヒト抗体ライブラリを含むヒト抗体レパートリまたは他のヒト抗体コード配列を利用するヒト源、ヒト細胞源、または非ヒト源により産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する抗体である。この用語には、すべてまたは実質的にすべてのCDRが非ヒトである領域など、非ヒト抗原結合領域を含む非ヒト抗体のヒト化形態は含まれない。
【0093】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応じてインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって、調製され得る。かかる動物はヒト免疫グロブリン座位のすべてまたは一部を含有しており、一般的には内因性免疫グロブリン座位を置き換えているか、または染色体外に存在する、もしくは動物の染色体に無作為に一体化されている。このようなトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン座位は全体的に不活性化されている。またヒト抗体は、ヒトレパートリに由来する抗体コード配列を含有する、ファージディスプレイおよび無細胞ライブラリを含むヒト抗体ライブラリに由来する場合もある。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。変異体は、一般的に1つもしくは複数の置換、欠失、付加、および/または挿入があるという点で、本明細書に具体的に開示されるポリペプチドとは異なる。このような変異体は、自然に生じ得るか、または、例えば、本発明の上記ポリペプチド配列の1つもしくは複数を修飾し、本明細書に記載のポリペプチドの1つもしくは複数の生体活性を評価し、および/または多数の公知の技法のいずれかを使用して、合成的に生成することができる。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生体特性を改善することが望ましい場合があり、抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入するか、またはペプチド合成により調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、ならびに/または抗体のアミノ酸配列内への残基の挿入および/もしくは置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換のあらゆる組合せを行うことで、最終構築物が所望の特徴、例えば抗原結合を有することを前提に最終構築物を得ることができる。
【0095】
参照ポリペプチド配列に対する配列同一性パーセント(%)とは、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合であるが、いずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮されない。アミノ酸配列同一性パーセントを判定する目的のアライメントは、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公衆が利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、公知の様々な方法で達成することができる。比較対象である配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するのに必要なアルゴリズムを含め、配列をアライメントするのに適切なパラメータを判定することが可能である。しかし、本明細書中の目的では、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作り出したものであり、そのソースコードは、ワシントンD.C.、20559の米国著作権局にユーザ文書とともに提出されており、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、カリフォルニア州サウスサンフランシスコのGenentech,Inc.から入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標)V4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステムで使用するためにコンパイルする必要がある。配列比較パラメータはすべて、ALIGN-2プログラムにより設定され、変動しない。
【0096】
ALIGN-2がアミノ酸配列の比較に利用される状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bに対して特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、またはそれを含んでいる所与のアミノ酸配列Aと言い換えることができる)は、次のように100×分数X/Yで算出され、式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2により、AとBのアライメントで同一致とスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%に等しくないことが認識されるであろう。別段の定めのない限り、本明細書で使用されるアミノ酸配列同一性%値はすべて、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。
【0097】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換による突然変異誘発の目的部位として、CDRおよびFRが挙げられる。アミノ酸置換は目的の抗体に導入することができ、その生成物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされる。
【0098】
いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、1つまたは複数のCDR内で生じる場合があり、この時に置換、挿入、または欠失は、抗原への抗体結合を実質的に低下させない。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的置換をCDR中で行う場合がある。このような改変は、CDR「ホットスポット」の外部で行われる場合がある。変異体VHおよびVL配列のいくつかの実施形態では、各CDRは改変されていない。
【0099】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するためにCDR中で行われる場合がある。このような改変は、体細胞成熟中に突然変異率が高くなるCDRコードコドンにおいて行われる場合があり(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照)、得られた変異体は結合親和性について試験することができる。親和性成熟(例えば、エラー傾向PCR(error-prone PCR)、鎖シャッフリング、CDRの無作為化、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発を用いる)を使用することで、抗体親和性を改善することができる(例えば、HoogenboomらによるMethods in Molecular Biology 178:1-37(2001)を参照)。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャン突然変異誘発またはモデリングを用いて特異的に特定される場合がある(例えば、Cunningham and Wells Science,244:1081-1085(1989)を参照)。特にCDR-H3とCDR-L3が標的とされることが多い。代替的または付加的に、抗体間の接触点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的化されるか、または排除される場合がある。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含むかどうかを判定する場合もある。
【0100】
アミノ酸配列の挿入および欠失には、長さが1つの残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでの範囲であるアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合のほか、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入および欠失が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体のN末端またはC末端の、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTにおける)またはポリペプチドへの融合が挙げられる。抗体分子の配列内挿入変異体の例には、軽鎖中での3つのアミノ酸の挿入が挙げられる。末端欠失の例には、軽鎖の末端に7個以下のアミノ酸の欠失を有する抗体が挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗体は、(例えば、1つまたは複数のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより)そのグリコシル化を増加または減少させるように改変される。抗体のFc領域に結合した炭水化物が改変される場合もある。哺乳動物細胞由来のネイティブ抗体は、一般的にFc領域のCH2ドメインのAsn297へのN連結により結合された分枝した二分岐オリゴ糖を含む(例えば、WrightらによるTIBTECH 15:26-32(1997)を参照)。オリゴ糖は、二分岐オリゴ糖構造の幹中でGlcNAcに結合した種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、フコースとすることができる。抗体中のオリゴ糖の修飾は、例えば、特定の改善された特性を有する抗体変異体を作製するために行うことができる。抗体グリコシル化変異体は、改善されたADCCおよび/またはCDC機能を有することができる。いくつかの実施形態では、FC領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、このような抗体中のフコース量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコース量は、糖鎖内のAsn297でのフコースの平均量を算出し、Asn297に結合したグリコ構造体すべての合計と比較することによって判定される(例えば、国際公開第08/077546号を参照)。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEUナンバリング、例えば、EdelmanらによるProc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85を参照)。しかし、Asn297は、抗体中のわずかな配列変動が原因で、297位の上流または下流から約±3のアミノ酸、すなわち294位と300位の間に位置する場合もある。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有することができる(例えば、OkazakiらによるJ.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、およびYamane-OhnukiらによるBiotech.Bioeng.87:614(2004)を参照)。細胞株、例えばノックアウト細胞株、およびその使用方法を使用して、脱フコシル化抗体、例えば、タンパク質フコシル化を欠いたLec13 CHO細胞、およびα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞を産生することができる(例えば、RipkaらによるArch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、Yamane-OhnukiらによるBiotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,YらによるBiotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)を参照)。他の抗体グリコシル化変異体も挙げられる(例えば、米国特許第6,602,684号明細書を参照)。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体標的に対して約1μM、100nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、0.05nM、0.01nM、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。抗体標的は、[挿入]標的とすることができる。KDは、いずれかの好適なアッセイにより測定することができる。特定の実施形態では、KDは、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して(例えば、BIACORE(登録商標)-2000やBIACORE(登録商標)-3000、Octetを使用して)測定することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸修飾を、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入することにより、Fc領域変異体が生成される場合がある。本明細書中のFc領域は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域である。Fc領域は、ネイティブ配列Fc領域および変異体Fc領域を含む。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、すべてではないが一部のエフェクタ機能を有する変異体であり、この機能により、in vivoでの抗体半減期が重要ではあるが特定のエフェクタ機能(補体やADCCなど)が不要または有害となる用途に望ましい候補となる。in vitroおよび/またはin vivoでの細胞毒性アッセイを行うことで、CDCおよび/またはADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行うことで、抗体がFcγR結合を欠きながらも(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)、FcRn結合能を保持することを確実にすることができる。目的の分子のADCC活性を評価するin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書と第5,821,337号明細書に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法(例えば、ACTI(商標)およびCytoTox 96(登録商標)の非放射性細胞毒性アッセイ)が利用される場合もある。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば「thioMAb」を作製するのが望ましい場合もある。いくつかの実施形態では、置換された残基は、抗体の接近可能な部位に生じる。反応性チオール基は、免疫複合体を作製するために、薬物部分またはリンカー薬物部分などの他の部分に対するコンジュゲーションの部位に位置付けることができる。いくつかの実施形態では、軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)のうちいずれか1つまたは複数が、システインで置換されてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、公知であって入手可能である追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾される場合がある。抗体の誘導体化に適した部分として水溶性ポリマーが挙げられるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストラもしくはポリ(nビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中で安定することから製造に都合が良い場合がある。ポリマーは任意の分子量のポリマーであってもよく、分枝または未分枝であってもよい。抗体に結合するポリマーの数は変動する場合があり、2つ以上のポリマーが結合している場合、これらは同じ分子または異なる分子の可能性がある。
【0107】
本明細書に記載の抗体は、核酸によりコードすることができる。核酸は、2つ以上のヌクレオチド塩基を含むポリヌクレオチドの一種である。特定の実施形態では、核酸は、ポリヌクレオチドをコードするポリペプチドを細胞へと転写するのに使用可能なベクターの成分である。本明細書で使用するとき、「ベクター」という用語は、核酸分子であって、その核酸分子が連結されている別の核酸を輸送可能である核酸分子を指す。ベクターの一種は、宿主細胞の染色体DNAに統合することができるゲノム統合ベクター、すなわち「統合ベクター」である。ベクターの別の種類は、「エピソーム」ベクター、例えば、染色体外複製が可能な核酸である。ベクターが動作可能に連結されている遺伝子の発現を指示することが可能なベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と称される。好適なベクターは、プラスミド、細菌人工染色体、酵母菌人工染色体、ウイルスベクターなどを含む。発現ベクターでは、転写の制御に使用される、プロモータ、エンハンサ、ポリアデニル化シグナルなどの調節要素は、哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫の遺伝子から得ることができる。通常は複製起点により付与される宿主中での複製能、および形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子を、追加で組み込む場合もある。レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルス由来のベクターを利用する場合もある。染色体位置への統合のためにプラスミドベクターを線形化することができる。ベクターは、ゲノム中の規定位置または制限部位のセットへの部位特異的統合(例えば、AttP-AttBの組換え)を指示する配列を含むことができる。加えて、ベクターは転置可能な要素に由来する配列を含むことができる。
【0108】
「相同(homologous)」、「相同性(homology)」、および「相同性パーセント(percent homology)」という用語は、アミノ酸配列または核酸配列を記述するために本明細書で使用するとき、参照配列と比較して、KarlinおよびAltschulにより記述された式を用いて判定することができる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268,1990、改訂版としてProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877,1993)。このような式は、Altschulらのベーシック・ローカル・アライメント・サーチ・ツール(BLAST)プログラムに組み込まれる(J.Mol.Biol.215:403-410,1990)。配列の相同性パーセントは、本出願の出願日時点で最新版のBLASTを用いて判定することができる。
【0109】
本明細書に記載の抗体をコードする核酸を使用することで、核酸に適切な細胞を感染、トランスフェクト、形質転換、またはその他の方法でトランスジェニックにすることができ、こうして、市販または治療用途での抗体の産生が可能になる。大規模細胞培養から抗体を産生するための標準の細胞株および方法が、当該技術分野で公知である。例えば、Liらによる「Cell culture processes for monoclonal antibody production.」Mabs.2010 Sep-Oct;2(5):466-477を参照されたい。特定の実施形態では、細胞は真核細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、抗体を産生するのに有用な細胞株であり、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chines Hamster Ovary cell)(CHO)の細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞である。特定の実施形態では、抗体をコードする核酸は、抗体を産生するのに有用な細胞のゲノム座位へと統合される。特定の実施形態では、本明細書には、抗体を作製する方法であって、当該抗体の産生と分泌を可能にするのに十分なin vitro条件下で、抗体をコードする核酸を含む細胞を培養する工程を含む方法が記載される。
【0110】
非ASD疾患モデル(例えば、自己免疫疾患)で使用される公知のFcRn抗体は、FcRn機能を阻害するために使用することができる。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001(ALXN1830)、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体はロザノリキシズマブ(「Generation and characterization of a high affinity anti-human FcRn antibody,rozanolixizumab,and the effects of different molecular formats on the reduction of plasma IgG concentration」MAbs.2018 Oct;10(7):1111-1130.doi:10.1080/19420862.2018.1505464.Epub 2018 Sep 12に開示されるもの)である。特定の実施形態では、抗体はSYNT001(「Blocking FcRn in humans reduces circulating IgG levels and inhibits IgG immune complex-mediated immune responses」Sci Adv.2019 Dec 18;5(12):eaax9586.doi:10.1126/sciadv.aax9586.eCollection 2019 Decに開示されるもの)である。特定の実施形態では、抗体M281(「M281,an Anti-FcRn Antibody:Pharmacodynamics,Pharmacokinetics,and Safety Across the Full Range of IgG Reduction in a First-in-Human Study」Clin Pharmacol Ther.2019 Apr;105(4):1031-1039.doi:10.1002/cpt.1276.Epub 2018 Dec 4に開示されるもの)である。特定の実施形態では、抗体はArgx-113(「Randomized phase 2 study of FcRn antagonist efgartigimod in generalized myasthenia gravis」Neurology.2019 Jun 4;92(23):e2661-e2673.Epub 2019 May 22に開示されるもの)である。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Gである(米国特許第10,280,207号明細書)。特定の実施形態では、抗体はHL161-1Aである(米国特許第10,280,207号明細書)。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Hである(米国特許第10,280,207号明細書)。特定の実施態様では、抗体はDX-2504(「Fully human monoclonal antibody inhibitors of the neonatal fc receptor reduce circulating IgG in non-human primates」Front Immunol.2015 Apr 23;6:176.doi:10.3389/fimmu.2015.00176.eCollection 2015に開示されるもの)である。特定の実施形態では、抗体はDX-2507(「Fully human monoclonal antibody inhibitors of the neonatal fc receptor reduce circulating IgG in non-human primates」Front Immunol.2015 Apr 23;6:176.doi:10.3389/fimmu.2015.00176.eCollection 2015に開示されるもの)である。特定の実施形態では、抗体は、ABY039、IMVT-1401/RVT1401である。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む。
【0111】
本明細書に記載の抗体は、公知のFcRn抗体から得ることができ、かつ、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、またはABY039、IMVT-1401/RVT1401に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖および/または軽鎖可変領域を含むことができる。これら抗体はいずれも、エフェクタ機能が低下したIgG4、またはエフェクタ機能を低下させる1つもしくは複数の突然変異または修飾を含むIgG4などの定常領域上にフォーマット化することができる。本明細書に記載の、可変領域およびCDR領域を含む抗体および抗体フラグメントは、エフェクタ機能が低下した抗体の一部として好適にフォーマット化される場合がある。特定の実施形態では、抗体はF(ab’)2であってもよく、Fc領域を欠いている。特定の実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞毒性や補体依存性細胞毒性など、エフェクタ機能を低下させる抗体重鎖の定常領域に対する1つまたは複数の突然変異を含む場合がある。特定の実施形態では、抗体はIgG4定常領域を含む場合がある。特定の実施形態では、組換え抗体またはその抗原結合性フラグメントの1つまたは複数のエフェクタ機能を低下させる1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングシステムによるIgG4のN434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、およびそれらのあらゆる組合せから選択される、突然変異または一組の突然変異を含む。特定の実施形態では、抗体は、EUナンバリングシステムによる重鎖のS228Pに相当する突然変異を有するIgG4定常領域を含む場合がある。特定の実施形態では、抗体はIgG4PAAを含む場合があり、これは、EUナンバリングシステムによる重鎖のS228P、F234A、およびL235Aに相当する突然変異を有する。Parekhらによる「Development and validation of an antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity-reporter gene assay.」MAbs 2012 May 1;4(3):310-318を参照されたい。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、FcRn機能を阻害する抗体)は、IgG分解を増強するFc操作された抗体である。特定の例では、抗体は、酸性pHとほぼ中性のpHの両方で、親和性が増加した状態でFc領域を介してFcRnに結合するように操作された抗体である。このような場合、FcRn結合を改変(例えば、増強)することで、標的抗体(例えば、母体の自己抗体)の分解が促進される。いくつかの実施形態では、抗体(例えば、FcRn機能を阻害する抗体)は、抗体のFc領域、および可変Fc領域、またはそれらのFcRn結合性フラグメントを認識する可変ドメインを含み、Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントは、野生型IgG1 Fc領域と比較して結合性FcRn(例えば、本明細書に記載されるもの)が増加した1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、EU位置252、254、256、433、434、および436にてそれぞれY、T、E、K、F、およびYを含み、Fc領域は、野生型IgG1 Fc領域に比べて親和性が増加し、pH依存性が低下しているFcRnに結合する。このような抗体および変異体Fcはまた、米国特許第10,316,073号明細書、およびVaccaro C,Zhou J,Ober RJ,Ward ES.Engineering the Fc region of immunoglobulin G to modulate in vivo antibody levels.Nat Biotechnology.2005 Oct;23(10):1283-8.doi:10.1038/nbt1143にも例証されている。
【0113】
抗体は、あらゆる治療有効量で投与可能である。特定の実施形態では、治療上許容される量は、約0.1mg/kg~約50mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療上許容される量は、約1mg/kg~約40mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療上許容される量は、約5mg/kg~約30mg/kgの間である。治療有効量には、処置される疾患または苦痛に関連する1つまたは複数の症状を改善するのに十分な量が含まれる。
【0114】
小分子
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体内のFcRn機能を阻害するための方法は、FcRn小分子薬物阻害剤の投与を特徴とする。
【0115】
小分子薬物は、疾患において役割を果たす、またはその他の点でヒトもしくは動物の構造や機能に影響を及ぼすことが意図される低分子量のあらゆる物品、化学的実体、または生物学的実体の可能性がある。同様に、小分子薬物は、生体プロセスに影響を及ぼして、5kDa以下の分子量を有するものなど比較的低分子量を含むあらゆる有機化合物の可能性がある。
【0116】
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の胎芽および/または胎児に接触可能な自己反応性抗体を減少させるための方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みるかもしくは検討している個体の中での小分子によるFcRn機能の阻害を特徴とする。開示されるこのような小分子は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体においてIgG分子とFcRnとの相互作用を防止することにより、自己反応性抗体を減少させるためにも使用できる。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する小分子は、胎盤障壁にわたる母体抗体の移動を阻害する小分子を含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害する小分子は、母体抗体が胎芽または胎児に接触し得る領域への母体抗体の移動を阻害する小分子を含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害する小分子は、胎盤の合胞体栄養芽細胞中のエンドソーム小胞にわたるか、またはその全体におけるFcRn媒介IgG移動を阻害する小分子を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する小分子は、FcRnと小分子との相互作用を阻害または阻止する小分子を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する小分子は、小分子のFcRn媒介再利用もしくはレスキューを阻害、阻止、および/または減少させる小分子を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害する小分子は、FcRn機能に関与する補助分子を阻害する小分子を含む。
【0117】
FcRn機能に結合する、および/またはそれを阻害する小分子をスクリーニングかつ特定するための方法は、当業者によって想到されることができる。FcRnとIgG Fc分子またはそのフラグメントとの相互作用に対するin vitro阻害は、in vivoでFcRn機能を阻害することが期待され得る。例示的な方法は、例えば、Wang Z,Fraley C,Mezo AR.Discovery and structure-activity relationships of small molecules that block the human immunoglobulin G-human neonatal Fc receptor(hIgG-hFcRn)protein-protein interaction.Bioorg Med Chem Lett.2013 Mar 1;23(5):1253-6.doi:10.1016/j.bmcl.2013.01.014、またはGrevys,A.,Nilsen,J.,Sand,K.M.K.らによるA human endothelial cell-based recycling assay for screening of FcRn targeted molecules.Nat Commun 9,621(2018)、またはVaccaro C,Zhou J,Ober RJ,Ward ES.Engineering the Fc region of immunoglobulin G to modulate in vivo antibody levels.Nat Biotechnol.2005 Oct;23(10):1283-8.doi:10.1038/nbt1143に開示される。特定の実施形態では、Abdeg(例えば、実施例で提供するAbdeg)とほぼ同等以上の競合阻害。
【0118】
小分子のFcRnへの結合は、IgG分子のFcRnへの結合を阻害するのに十分であり得る。特定の実施形態では、小分子のFcRnに対する結合親和性は、約1nm~約500nmである。特定の実施形態では、小分子のFcRnに対する結合親和性は、約1nm~約10nm、約1nm~約50nm、約1nm~約100nm、約1nm~約500nm、約1nm~約1nm、約10nm~約50nm、約10nm~約100nm、約10nm~約500nm、約10nm~約1nm、約50nm~約100nm、約50nm~約500nm、約50nm~約1nm、約100nm~約500nm、約100nm~約1nm、または約500nm~約1nmである。特定の実施形態では、小分子のFcRnに対する結合親和性は、約1nm、約10nm、約50nm、約100nm、約500nm、または約1nmである。特定の実施形態では、小分子のFcRnに対する結合親和性は、最低約1nm、約10nm、約50nm、約100nm、または約500nmである。特定の実施形態では、小分子のFcRnに対する結合親和性は、最大約10nm、約50nm、約100nm、約500nm、または約1nmである。
【0119】
小分子は、FcRn機能を阻害するのに十分な、競合アッセイに由来する最大半数阻害濃度(IC50)を含むことができる。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合の小分子阻害剤のIC50値は、約1nm~約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合の小分子阻害剤のIC50値は、約1nm~約10nm、約1nm~約100nm、約1nm~約250nm、約1nm~約500nm、約1nm~約750nm、約1nm~約1,000nm、約1nm~約5,000nm、約1nm~約10,000nm、約1nm~約1,000,000nm、約10nm~約100nm、約10nm~約250nm、約10nm~約500nm、約10nm~約750nm、約10nm~約1,000nm、約10nm~約5,000nm、約10nm~約10,000nm、約10nm~約1,000,000nm、約100nm~約250nm、約100nm~約500nm、約100nm~約750nm、約100nm~約1,000nm、約100nm~約5,000nm、約100nm~約10,000nm、約100nm~約1,000,000nm、約250nm~約500nm、約250nm~約750nm、約250nm~約1,000nm、約250nm~約5,000nm、約250nm~約10,000nm、約250nm~約1,000,000nm、約500nm~約750nm、約500nm~約1,000nm、約500nm~約5,000nm、約500nm~約10,000nm、約500nm~約1,000,000nm、約750nm~約1,000nm、約750nm~約5,000nm、約750nm~約10,000nm、約750nm~約1,000,000nm、約1,000nm~約5,000nm、約1,000nm~約10,000nm、約1,000nm~約1,000,000nm、約5,000nm~約10,000nm、約5,000nm~約1,000,000nm、または約10,000nm~約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合の小分子阻害剤のIC50値は、約1nm、約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、約10,000nm、または約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合の小分子阻害剤のIC50値は、最低約1nm、約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、または約10,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合の小分子阻害剤のIC50値は、最大約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、約10,000nm、または約1,000,000nmである。
【0120】
いくつかの実施形態では、小分子は表1から選択される。
【0121】
【0122】
【0123】
ペプチド
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体内のFcRn機能を阻害するための方法は、ペプチドまたはポリペプチドであるFcRn阻害剤の投与を特徴とする。
【0124】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は本明細書中で互換的に使用され、ペプチド結合を介して共有結合して連結された2個以上のアミノ酸の分子鎖を含む。この用語は、生成物の特定の長さを指すものではない。このため、「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、ポリペプチドの定義内に含まれる。「ペプチドアナログ」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、少なくとも1つのアミノ酸の内部付加もしくは内部欠失、および/またはアミノもしくはカルボキシ末端でのトランケーションもしくは付加、ならびに/あるいはカルボキシ末端でのアミド化により、自然に存在するペプチド配列とは異なる配列を有するペプチドを指す。「内部欠失」は、N末端またはC末端以外の位置に自然に存在する配列由来のアミノ酸が存在しないことをいう。同様に、「内部付加」は、N末端またはC末端以外の位置に自然に存在する配列にアミノ酸が存在することをいう。
【0125】
模倣ペプチドまたはペプチド模倣物は、目的の自然に生じるタンパク質、例えば、毒素ペプチド分子、例えば自然に生じるIgGまたはFcペプチドなどであるがこれらに限定されないものと同等の生体活性を有するペプチドまたはタンパク質を指すことができる。これらの用語は、自然に生じる分子の作用を増強するなどにより、自然に生じるペプチド分子の活性を間接的に模倣するペプチドをさらに含む。
【0126】
アンタゴニストペプチド、ペプチドアンタゴニスト、および阻害剤ペプチドという用語は、FcRn受容体の生体活性を阻止、もしくは何らかの方法で妨害するか、または、FcRnに結合しIgG Fc分子の結合を阻害する抗体などであるがこれに限定されない目的の公知の受容体アンタゴニストもしくは阻害剤と同等の生体活性を有する、ペプチドとすることができる。
【0127】
FcRn阻害剤タンパク質分子またはそのドメイン。タンパク質のドメインは、タンパク質全体のあらゆる部分であり、最大で完全なタンパク質を含むが、一般的には完全に満たないタンパク質を含む。ドメインは、必ずしもではないが、タンパク質鎖の残部から独立してフォールディングを行い、特定の生物学的、生化学的、もしくは構造的な機能または位置(例えば、リガンド結合ドメイン、または細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、もしくは細胞外ドメイン)と相関させることができる。融合タンパク質は、複数の親タンパク質またはポリペプチドに由来するポリペプチド成分を含むタンパク質である。一般的に、融合タンパク質は、1つのタンパク質からのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質からのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列とフレーム内で付加され、任意選択でリンカーにより分離されている融合遺伝子から発現される。その後に融合遺伝子は、組換え宿主細胞により単一のタンパク質として発現することができる。例示的な融合ポリペプチド(例えば、タンパク質)は、US PGPUB US20200031948、およびDevanaboyina,S.,Khare,P.,Challa,D.らによるEngineered clearing agents for the selective depletion of antigen-specific antibodies.Nat Commun 8,15314(2017)にて例証されている。https://doi.org/10.1038/ncomms15314
【0128】
ペプチドまたはタンパク質は組換え分子とすることができ、組換えとは、材料(例えば、核酸またはポリペプチド)がヒトの介入により人為的または合成的(すなわち、非自然)に改変されていることを示す。この改変は、その自然環境または状態の中にあるか、またはそこから除外された材料に対して行うことができる。例えば、「組換え核酸」は、例えばクローニング、DNAシャッフリング、または他の周知の分子生物学的手順の間に核酸を組み換えることにより作製される核酸である。「組換えDNA分子」は、DNAのセグメントで構成されている。
【0129】
FcRn機能を阻害するペプチドは、胎盤障壁にわたって母体抗体の移動を阻害するペプチドを含むことができる。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、母体抗体が胎芽または胎児に接触し得る領域に母体抗体が移動するのを阻害するペプチドを含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害するペプチドは、胎盤の合胞体栄養芽細胞中のエンドソーム小胞にわたるか、またはその全体におけるFcRn媒介IgG移動を阻害するペプチドを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するペプチドは、FcRnと抗体分子との相互作用を阻害または阻止するペプチドを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するペプチドは、抗体分子のFcRn媒介再利用もしくはレスキューを阻害、阻止、および/または減少させるペプチドを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するペプチドは、FcRn機能に関与する補助分子を阻害するペプチドを含む。
【0130】
FcRn機能を阻害するペプチドは、胎盤障壁にわたって母体抗体の移動を阻害するポリペプチドを含むことができる。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、母体抗体が胎芽または胎児に接触し得る領域に母体抗体が移動するのを阻害するポリペプチドを含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害するポリペプチドは、胎盤の合胞体栄養芽細胞中のエンドソーム小胞にわたるか、またはその全体におけるFcRn媒介IgG移動を阻害するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するポリペプチドは、FcRnと抗体分子との相互作用を阻害または阻止するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するポリペプチドは、抗体分子のFcRn媒介再利用もしくはレスキューを阻害、阻止、および/または減少させるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するポリペプチドは、FcRn機能に関与する補助分子を阻害するペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、変異体Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントを含み、Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントのFcドメインは、野生型IgG(例えば、IgG1)と比較してFcRnへの結合(本明細書に記載されるもの)が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、EU位置252、254、256、433、434、および436にそれぞれY、T、E、K、F、およびYを含む。特定の実施形態では、Fc領域は、野生型IgG1 Fc領域と比較して親和性が増加し、pH依存性が低下したFcRnに結合する。このような抗体および変異体Fcはまた、米国特許第10,316,073号明細書、およびVaccaro C,Zhou J,Ober RJ,Ward ES.Engineering the Fc region of immunoglobulin G to modulate in vivo antibody levels.Nat Biotechnology.2005 Oct;23(10):1283-8.doi:10.1038/nbt1143にも例証されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはエフガルチギモド(ARGX-113)である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはエフガルチギモド(ARGX-113)である。
【0131】
FcRn機能に結合する、および/またはそれを阻害する小分子をスクリーニングかつ特定するための方法は、当業者によって想到されることができる。FcRnとIgG Fc分子またはそのフラグメントとの相互作用に対するin vitro阻害は、in vivoでFcRn機能を阻害することが期待され得る。例示的な方法は、例えば、「Structure-activity relationships of a peptide inhibitor of the human FcRn:human IgG interaction」Bioorg Med Chem.2008 Jun 15;16(12):6394-405に開示されている。
【0132】
ペプチド阻害剤の結合は、FcRn機能を十分に阻害することができない。いくつかの実施形態では、ペプチドのFcRnに対する結合親和性は、IgG分子の結合を阻害するのに十分である。特定の実施形態では、ペプチドのFcRnに対する結合親和性は、約1nm~約500nmである。特定の実施形態では、ペプチドのFcRnに対する結合親和性は、約1nm~約10nm、約1nm~約50nm、約1nm~約100nm、約1nm~約500nm、約1nm~約1nm、約10nm~約50nm、約10nm~約100nm、約10nm~約500nm、約10nm~約1nm、約50nm~約100nm、約50nm~約500nm、約50nm~約1nm、約100nm~約500nm、約100nm~約1nm、または約500nm~約1nmである。特定の実施形態では、ペプチドのFcRnに対する結合親和性は、約1nm、約10nm、約50nm、約100nm、約500nm、または約1nmである。特定の実施形態では、ペプチドのFcRnに対する結合親和性は、最低約1nm、約10nm、約50nm、約100nm、または約500nmである。特定の実施形態では、ペプチドのFcRnに対する結合親和性は、最大約10nm、約50nm、約100nm、約500nm、または約1nmである。
【0133】
ペプチド阻害剤は、FcRn機能を阻害するのに十分な、競合アッセイに由来する最大半数阻害濃度(IC50)を含むことができる。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のペプチド阻害剤のIC50値は、約1nm~約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のペプチド阻害剤のIC50値は、約1nm~約10nm、約1nm~約100nm、約1nm~約250nm、約1nm~約500nm、約1nm~約750nm、約1nm~約1,000nm、約1nm~約5,000nm、約1nm~約10,000nm、約1nm~約1,000,000nm、約10nm~約100nm、約10nm~約250nm、約10nm~約500nm、約10nm~約750nm、約10nm~約1,000nm、約10nm~約5,000nm、約10nm~約10,000nm、約10nm~約1,000,000nm、約100nm~約250nm、約100nm~約500nm、約100nm~約750nm、約100nm~約1,000nm、約100nm~約5,000nm、約100nm~約10,000nm、約100nm~約1,000,000nm、約250nm~約500nm、約250nm~約750nm、約250nm~約1,000nm、約250nm~約5,000nm、約250nm~約10,000nm、約250nm~約1,000,000nm、約500nm~約750nm、約500nm~約1,000nm、約500nm~約5,000nm、約500nm~約10,000nm、約500nm~約1,000,000nm、約750nm~約1,000nm、約750nm~約5,000nm、約750nm~約10,000nm、約750nm~約1,000,000nm、約1,000nm~約5,000nm、約1,000nm~約10,000nm、約1,000nm~約1,000,000nm、約5,000nm~約10,000nm、約5,000nm~約1,000,000nm、または約10,000nm~約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のペプチド阻害剤のIC50値は、約1nm、約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、約10,000nm、または約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のペプチド阻害剤のIC50値は、最低約1nm、約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、または約10,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のペプチド阻害剤のIC50値は、最大約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、約10,000nm、または約1,000,000nmである。
【0134】
いくつかの実施形態では、ペプチド阻害剤は表2から選択される。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
タンパク質またはポリペプチドはまた、FcRn機能の阻害剤としても使用できる。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するタンパク質は、胎盤障壁にわたる母体抗体の移動を阻害するタンパク質を含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害することは、母体抗体が胎芽または胎児に接触し得る領域に母体抗体が移動するのを阻害するタンパク質を含む。特定の実施形態では、FcRn機能を阻害するタンパク質は、胎盤の合胞体栄養芽細胞中のエンドソーム小胞にわたるか、またはその全体におけるFcRn媒介IgG移動を阻害するタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するタンパク質は、FcRnと抗体分子との相互作用を阻害または阻止するタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するタンパク質は、抗体分子のFcRn媒介再利用もしくはレスキューを阻害、阻止、および/または減少させるタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能を阻害するタンパク質は、FcRn機能に関与する補助分子を阻害するタンパク質を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、タンパク質のFcRnに対する結合親和性は、IgG分子の結合を阻害するのに十分である。特定の実施形態では、タンパク質のFcRnに対する結合親和性は、約1nm~約500nmである。特定の実施形態では、タンパク質のFcRnに対する結合親和性は、約1nm~約10nm、約1nm~約50nm、約1nm~約100nm、約1nm~約500nm、約1nm~約1nm、約10nm~約50nm、約10nm~約100nm、約10nm~約500nm、約10nm~約1nm、約50nm~約100nm、約50nm~約500nm、約50nm~約1nm、約100nm~約500nm、約100nm~約1nm、または約500nm~約1nmである。特定の実施形態では、タンパク質のFcRnに対する結合親和性は、約1nm、約10nm、約50nm、約100nm、約500nm、または約1nmである。特定の実施形態では、タンパク質のFcRnに対する結合親和性は、最低約1nm、約10nm、約50nm、約100nm、または約500nmである。特定の実施形態では、タンパク質のFcRnに対する結合親和性は、最大約10nm、約50nm、約100nm、約500nm、または約1nmである。
【0141】
タンパク質阻害剤は、FcRn機能を阻害するのに十分な、競合アッセイに由来する最大半数阻害濃度(IC50)を含むことができる。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のタンパク質阻害剤のIC50値は、約1nm~約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のタンパク質阻害剤のIC50値は、約1nm~約10nm、約1nm~約100nm、約1nm~約250nm、約1nm~約500nm、約1nm~約750nm、約1nm~約1,000nm、約1nm~約5,000nm、約1nm~約10,000nm、約1nm~約1,000,000nm、約10nm~約100nm、約10nm~約250nm、約10nm~約500nm、約10nm~約750nm、約10nm~約1,000nm、約10nm~約5,000nm、約10nm~約10,000nm、約10nm~約1,000,000nm、約100nm~約250nm、約100nm~約500nm、約100nm~約750nm、約100nm~約1,000nm、約100nm~約5,000nm、約100nm~約10,000nm、約100nm~約1,000,000nm、約250nm~約500nm、約250nm~約750nm、約250nm~約1,000nm、約250nm~約5,000nm、約250nm~約10,000nm、約250nm~約1,000,000nm、約500nm~約750nm、約500nm~約1,000nm、約500nm~約5,000nm、約500nm~約10,000nm、約500nm~約1,000,000nm、約750nm~約1,000nm、約750nm~約5,000nm、約750nm~約10,000nm、約750nm~約1,000,000nm、約1,000nm~約5,000nm、約1,000nm~約10,000nm、約1,000nm~約1,000,000nm、約5,000nm~約10,000nm、約5,000nm~約1,000,000nm、または約10,000nm~約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のタンパク質阻害剤のIC50値は、約1nm、約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、約10,000nm、または約1,000,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のタンパク質阻害剤のIC50値は、最低約1nm、約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、または約10,000nmである。特定の実施形態では、IgGへのFcRn結合のタンパク質阻害剤のIC50値は、最大約10nm、約100nm、約250nm、約500nm、約750nm、約1,000nm、約5,000nm、約10,000nm、または約1,000,000nmである。
【0142】
IgG分子またはその突然変異体または変異体のFc領域を使用して、FcRn機能を阻害することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、IgG分子(Fc分子)のFc領域である。特定の実施形態では、Fc分子は、IgGの野生型Fc領域と比較してFcRn分子への結合が増加している。特定の実施形態では、Fc分子は、野生型と比較して少なくとも1つの突然変異(「Selection of IgG Variants with Increased FcRn Binding Using Random and Directed Mutagenesis:Impact on Effector Functions」Front Immunol.2015;6:39.Published online 2015 Feb 4、または「IgG Fc engineering to modulate antibody effector functions」Protein Cell.2018 Jan;9(1):63-73.doi:10.1007/s13238-017-0473-8.Epub 2017 Oct 6に開示されるもの)を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、変異体Fc分子またはそのFcRn結合性フラグメントであり、Fc領域またはフラグメントは、EU位置252、254、256、433、434、および436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含む。特定の実施形態では、変異体F c分子は、完全長抗体(例えば、Abdeg)ではない。特定の実施形態では、変異体Fc分子は、抗体可変領域もCH1ドメインも含まない。特定の実施形態では、変異体Fc分子は遊離システイン残基を含まない。特定の実施形態では、変異体Fc分子は、IgG Fc領域(例えば、1つまたは複数の突然変異を有するヒトIgG Fc領域)に由来する。特定の実施形態では、変異体Fc分子は、IgG1 Fc領域(例えば、1つまたは複数の突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域)に由来する。特定の実施形態では、Fc領域はキメラFc領域である。
【0143】
特定の実施形態では、変異体Fc分子は、配列番号1に明記されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、変異体Fc分子は、配列番号1、2、または3に明記されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、変異体Fc分子は、配列番号2に明記されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、変異体Fc分子は、野生型IgG1 Fc領域の親和性と比較して、Fc受容体に対する親和性が改変されて上昇している(すなわち、結合がさらに強くなっている)。
【0144】
特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、EU位置297に、N連結型グリカンを含まない変異体Fc領域を含む。特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、EU位置297に、アフコシル化N連結型グリカンを含む変異体Fc領域を含む。特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、EU位置297に、二等分のGlcNacを有するN連結型グリカンを含む変異体Fc領域を含む。特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、半減期延長物質(half-life extender)に連結された変異体Fc領域を含む。特定の実施形態では、半減期延長物質は、ポリエチレングリコールまたはヒト血清アルブミンである。
【0145】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体の減少は、胎児抗原に結合可能な自己反応性抗体の数を減少させることにより達成できる。このような実施形態では、自己反応性抗体により結合されるエピトープを含むポリペプチドが投与され、それにより胎児抗原に結合可能な自己反応性抗体の数が減少する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、乳酸脱水素酵素AもしくはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1もしくは2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、およびエズリン(EZR)からなる群から選択される。
【0146】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体の減少は、胎児抗原に結合可能な自己反応性抗体の数を減少させることにより達成できる。このような実施形態では、自己反応性抗体により結合されるエピトープを含むポリペプチドが投与され、それにより胎児抗原に結合可能な自己反応性抗体の数が減少する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、乳酸脱水素酵素AもしくはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1もしくは2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、およびエズリン(EZR)からなる群から選択される。
【0147】
本明細書に記載のポリペプチドは、あらゆる治療有効量で投与可能である。特定の実施形態では、治療上許容される量は、約0.1mg/kg~約50mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療上許容される量は、約1mg/kg~約40mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療上許容される量は、約5mg/kg~約30mg/kgの間である。治療有効量には、処置される疾患または苦痛に関連する1つまたは複数の症状を改善するのに十分な量が含まれる。アプタマー(別名、合成抗体)または類似の一本鎖DNAもしくはRNAオリゴヌクレオチドは、ヒト用治療薬として投与できる形態にあり、FcRn機能に結合してそれを阻害し得る。
【0148】
核酸系阻害剤
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体内のFcRn機能を阻害するための方法は、核酸分子を含むFcRn阻害剤の投与を特徴とする。核酸分子は、転写の過程、またはメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の処理と翻訳を含む転写後事象を乱すFcRを阻害することができる。このため、核酸分子は、デオキシリボ核酸(DNA)分子またはリボ核酸(RNA分子)とすることができる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、FcRnを発現する細胞中でのFcRn遺伝子発現を低下させる。特定の実施形態では、核酸分子は、FcRnを発現する細胞中でのFcRn mRNA発現を低下させる。特定の実施形態では、核酸分子は、FcRnを発現する細胞中でのFcRnタンパク質発現を低下させる。特定の実施形態では、FcRn分子をコードするmRNAの標的化は、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、ショートヘアピンRNA、干渉RNA、またはRNA-デコイ分子の使用により達成できる。
【0149】
FcRnの阻害はまた、FcRn阻害剤をコードする核酸分子を細胞に与えることによっても達成できる。いくつかの実施形態では、核酸分子はタンパク質分子をコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、抗体またはその標的結合性フラグメントをコードする。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、送達される核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子を含む発現ベクターを含む。
【0150】
FcRn機能を阻害するための方法は、FcRn遺伝子を標的化してFcRnの発現を低下させる工程も含むことができる。例えば、使用され得るDNAエンドヌクレアーゼには、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ホーミングエンドヌクレアーゼ、dCas9-Foklヌクレアーゼ、またはMega Talヌクレアーゼが挙げられる。当該技術分野で知られるように、かつ本明細書に記載およびさらに例示されるように、DNAエンドヌクレアーゼは、DNAエンドヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドの導入および/または発現を含む様々な手段により、FcRnを発現する細胞に導入され得る。特定の実施形態では、DNAエンドヌクレアーゼ、および/またはCas9ゲノム編集の実施形態におけるガイドRNAなどのゲノム編集系の他の成分は、FcRnを発現する細胞に導入されたRNAによりコードされる。いくつかの実施形態では、DNAエンドヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼであり、上記方法は、FcRn遺伝子を標的とする、Cas9および少なくとも1つのガイドRNAをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含む。他の実施形態では、DNAエンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であり、上記方法は、FcRnを発現する細胞に、FcRn遺伝子を標的とするZFNをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを導入する工程を含む。代替的に、TALENまたは他のエンドヌクレアーゼが使用されてもよい。
【0151】
投与
本明細書に開示される、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の胎芽および/または胎児に接触可能なFcRn機能を阻害する、および/または自己反応性抗体を減少させるための方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みるかもしくは検討している個体にFcRn機能の阻害剤を投与することを特徴とする。開示される投与は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体においてIgG分子とFcRnとの相互作用を防止することにより、自己反応性抗体を減少させるためにも使用できる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤を投与することで、胎盤障壁にわたる母体抗体の移動が防止または阻害される。特定の実施形態では、FcRn阻害剤を投与することで、抗体が胎芽または胎児に接触し得る領域への母体抗体の移動が防止または阻害される。特定の実施形態では、FcRn阻害剤を投与することで、胎盤の合胞体栄養芽細胞中のエンドソーム小胞にわたるか、またはその全体におけるFcRn媒介IgG移動が防止または阻害される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤を投与することで、FcRnと抗体分子との相互作用が防止、阻害、または阻止される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤を投与することで、抗体分子のFcRn媒介再利用もしくはレスキューが防止もしくは阻害、阻止、および/または減少される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤を投与することで、FcRn機能に関与する補助分子が防止または阻害される。
【0152】
特定の実施形態では、抗FcRn抗体およびFcRn阻害分子は、抗体を含有する医薬組成物の投与に適したあらゆる経路、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内の経路により、投与を必要とする対象に投与することができる。特定の実施形態では、抗FcRn抗体およびFcRn阻害分子は、静脈内投与される。特定の実施形態では、抗FcRn抗体およびFcRn阻害分子は、皮下投与される。
【0153】
FcRn阻害剤は、妊娠前または妊娠中にFcRn機能を阻害するため設計された種々のスケジュールを通じて投与することができる。FcRn機能の阻害剤は、妊娠中いつでも個体に投与することができる。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎児の脳が発達し始めた後、例えば、妊娠の約12週後に投与される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎児の脳が発達し始める前に投与される。いくつかの実施形態では、投与することは、妊娠の期間にわたり少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、妊娠中の三半期ごとに1回行われる。特定の実施形態では、投与することは、第1三半期中に1回行われる。特定の実施形態では、投与することは、第2三半期中に1回行われる。特定の実施形態では、投与することは、第3三半期中に1回行われる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤の投与は、妊娠中に毎日行われる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤の投与は、妊娠前に毎日行われる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤の投与は、妊娠中に毎週行われる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤の投与は、妊娠前に毎週行われる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤の投与は、妊娠中に毎月行われる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤の投与は、妊娠前に毎月行われる。
【0154】
投与戦略は、個体が妊娠する前に適用することができる。いくつかの実施形態では、投与は、個体が妊娠する前に少なくとも1回行われる。特定の実施形態では、投与は、妊娠する前に約1回~妊娠する前に約10回行われる。特定の実施形態では、投与は、妊娠する前に約1回~妊娠する前に約2回、妊娠する前に約1回~妊娠する前に約3回、妊娠する前に約1回~妊娠する前に約4回、妊娠する前に約1回~妊娠する前に約5回、妊娠する前に約1回~妊娠する前に約10回、妊娠する前に約2回~妊娠する前に約3回、妊娠する前に約2回~妊娠する前に約4回、妊娠する前に約2回~妊娠する前に約5回、妊娠する前に約2回~妊娠する前に約10回、妊娠する前に約3回~妊娠する前に約4回、妊娠する前に約3回~妊娠する前に約5回、妊娠する前に約3回~妊娠する前に約10回、妊娠する前に約4回~妊娠する前に約5回、妊娠する前に約4回~妊娠する前に約10回、または妊娠する前に約5回~妊娠する前に約10回行われる。特定の実施形態では、投与することは、妊娠する前に約1回、妊娠する前に約2回、妊娠する前に約3回、妊娠する前に約4回、妊娠する前に約5回、または妊娠する前に約10回行われる。特定の実施形態では、投与することは、少なくとも妊娠する前に約1回、妊娠する前に約2回、妊娠する前に約3回、妊娠する前に約4回、または妊娠する前に約5回行われる。特定の実施形態では、投与することは、多くとも妊娠する前に約2回、妊娠する前に約3回、妊娠する前に約4回、妊娠する前に約5回、または妊娠する前に約10回行われる。
【0155】
FcRn阻害剤は、妊娠前または妊娠中にFcRn機能を阻害するため設計された種々のスケジュールを通じて投与することができる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は、個体が妊娠する前に投与される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は、受胎の約0日前~受胎の約100日前に投与される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は、受胎の約0日前~受胎の約10日前、受胎の約0日前~受胎の約20日前、受胎の約0日前~受胎の約30日前、受胎の約0日前~受胎の約40日前、受胎の約0日前~受胎の約60日前、受胎の約0日前~受胎の約100日前、受胎の約10日前~受胎の約20日前、受胎の約10日前~受胎の約30日前、受胎の約10日前~受胎の約40日前、受胎の約10日前~受胎の約60日前、受胎の約10日前~受胎の約100日前、受胎の約20日前~受胎の約30日前、受胎の約20日前~受胎の約40日前、受胎の約20日前~受胎の約60日前、受胎の約20日前~受胎の約100日前、受胎の約30日前~受胎の約40日前、受胎の約30日前~受胎の約60日前、受胎の約30日前~受胎の約100日前、受胎の約40日前~受胎の約60日前、受胎の約40日前~受胎の約100日前、または受胎の約60日前~受胎の約100日前に投与される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は、受胎の約0日前、受胎の約10日前、受胎の約20日前、受胎の約30日前、受胎の約40日前、受胎の約60日前、または受胎の約100日前に投与される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は、少なくとも受胎の約0日前、受胎の約10日前、受胎の約20日前、受胎の約30日前、受胎の約40日前、または受胎の約60日前に投与される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は、多くとも受胎の約10日前、受胎の約20日前、受胎の約30日前、受胎の約40日前、受胎の約60日前、または受胎の約100日前に投与される。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は受胎当日に投与される。
【0156】
FcRn阻害剤は、妊娠中または受胎後に投与することができる。いくつかの実施形態では、FcRn阻害剤は、妊娠中または受胎後に投与される。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約30日、60日、90日、または100日未満である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約100日、150日、または200日より長い。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約0日~約200日である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約0日~約10日、約0日~約20日、約0日~約30日、約0日~約40日、約0日~約60日、約0日~約100日、約0日~約150日、約0日~約200日、約10日~約20日、約10日~約30日、約10日~約40日、約10日~約60日、約10日~約100日、約10日~約150日、約10日~約200日、約20日~約30日、約20日~約40日、約20日~約60日、約20日~約100日、約20日~約150日、約20日~約200日、約30日~約40日、約30日~約60日、約30日~約100日、約30日~約150日、約30日~約200日、約40日~約60日、約40日~約100日、約40日~約150日、約40日~約200日、約60日~約100日、約60日~約150日、約60日~約200日、約100日~約150日、約100日~約200日、または約150日~約200日である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約0日、約10日、約20日、約30日、約40日、約60日、約100日、約150日、または約200日である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、少なくとも約0日、約10日、約20日、約30日、約40日、約60日、約100日、または約150日である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、多くとも約10日、約20日、約30日、約40日、約60日、約100日、約150日、または約200日である。
【0157】
特定の実施形態では、本開示の抗FcRn抗体または分子は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、および希釈剤を含む医薬組成物に含まれる。特定の実施形態では、本開示の抗体は、滅菌溶液中に懸濁されて投与される。特定の実施形態では、溶液は、約0.9%のNaClを含む。特定の実施形態では、溶液は、約5.0%のデキストロースを含む。特定の実施形態では、溶液は、緩衝液、例えばアセテート、シトラート、ヒスチジン、スクシネート、ホスフェート、重炭酸塩、およびヒドロキシメチルアミノメタン(Tris);界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20)、およびポロクサマー188;ポリオール/二糖類/多糖類、例えばグルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびデキストラン40;アミノ酸、例えばグリシンやアルギニン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、メチオニン;またはキレート剤、例えばEDTAやEGTAのうち、1つまたは複数をさらに含む。
【0158】
特定の実施形態では、本開示の抗体または分子は、凍結乾燥されて出荷/保管され、投与前に再構成される。特定の実施形態では、凍結乾燥抗体製剤は、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、デキストラン40、またはそれらの組合せなどの増量剤を含む。凍結乾燥製剤は、ガラスまたは他の適切な非反応性材料で構成されたバイアル中に含めることができる。抗体は製剤化されると、再構成されるか否かにかかわらず、特定のpH、一般に7.0未満で緩衝化することができる。特定の実施形態では、pHは、4.5~6.5、4.5~6.0、4.5~5.5、4.5~5.0、または5.0~6.0の間とすることができる。
【0159】
妊娠中の個体
「妊娠中の個体」という用語は、妊娠中であるか、あるいは体内で胎芽もしくは胎児、または子供もしくは子(young)が発達している個体を指すことができる。妊娠(pregnancy or gestation)の診断は、当該技術分野で公知の検査および/または手順を使用して、個体または医師が容易に判定することができる。「代理母」または「妊娠代理母」とは、妊娠を開始する目的で受精胎芽が移植された女性個体を指す。一般的に、胎芽の遺伝的構成は、代理母でない個体2名での体外受精の結果となる。
【0160】
「妊娠を試みる」という用語は、妊娠を試みているか、または積極的に妊娠を求めている個体を指すことができる。いくつかの実施形態では、妊娠を試みるとは、受胎調節も避妊も使用しない性交を含む場合がある。いくつかの実施形態では、妊娠を試みるとは、医師または家族計画カウンセラーとの相談を含む場合がある。いくつかの実施形態では、妊娠を試みるとは、妊娠中の状態を補助、促進、または支持することに関連する妊婦用ビタミンまたはサプリメントを個体が服用することを含む場合がある。いくつかの実施形態では、妊娠を試みる個体は、体外受精処置を受けているか、またはその実施を計画している。
【0161】
「妊娠を検討している(considering becoming pregnant)」または「妊娠を検討している(considering pregnancy)」という用語は、妊娠を検討している個体を指すことができる。いくつかの実施形態では、妊娠を検討しているとは、受胎調節も避妊も使用しない性交を含む場合がある。いくつかの実施形態では、妊娠を検討しているとは、医師または家族計画カウンセラとの相談を含む場合がある。いくつかの実施形態では、妊娠を検討しているとは、妊娠中の状態を補助、促進、または支持することに関連する妊婦用ビタミンを個体が購入または服用することを含む場合がある。
【0162】
妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の過去の妊娠または子孫は、自己反応性抗体が個体に存在する可能性および/またはリスクに影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体は、ASDと診断された小児を少なくとも1人出産している。
【0163】
妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の年齢は、自己反応性抗体が個体に存在する可能性および/またはリスクに影響を及ぼす可能性がある。種々の実施形態では、上記方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の年齢に左右される可能性がある。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体は、約30歳~約45歳である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体は、約30歳~約35歳、約30歳~約40歳、約30歳~約45歳、約35歳~約40歳、約35歳~約45歳、または約40歳~約45歳である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体は、約30歳、約35歳、約40歳、または約45歳である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体は、少なくとも約30歳、約35歳、または約40歳である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体は、多くとも約35歳、約40歳、または約45歳である。
【0164】
精子が得られる個体の年齢は、ASDリスクに影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態では、精子を提供する、または精子を提供することになる個体の年齢である。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の卵子を受精させるために精子を提供するか、または提供した個人の年齢は、約30歳~約50歳である。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の卵子を受精させるために精子を提供するか、または提供した個人の年齢は、約30歳~約35歳、約30歳~約40歳、約30歳~約45歳、約30歳~約50歳、約35歳~約40歳、約35歳~約45歳、約35歳~約50歳、約40歳~約45歳、約40歳~約50歳、または約45歳~約50歳である。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の卵子を受精させるために精子を提供するか、または提供した個人の年齢は、約30歳、約35歳、約40歳、約45歳、または約50歳である。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の卵子を受精させるために精子を提供するか、または提供した個人の年齢は、少なくとも約30歳、約35歳、約40歳、または約45歳である。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、または妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の卵子を受精させるために精子を提供するか、または提供した個人の年齢は、多くとも約35歳、約40歳、約45歳、または約50歳である。
【0165】
本出願全体を通して、種々の実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記述は、単に利便性と簡潔性のためのものであり、あらゆる実施形態の範囲に対する厳格な制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記述は、範囲内で生じ得る部分範囲すべてに加え、個々の数値を具体的に開示していると考慮されるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲に加え、その範囲内にある個々の値、例えば1、2、3、4、5、および6を具体的に開示していると考慮されるべきである。これは範囲の幅に関係なく適用される。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確な定めのない限り、複数形を含む。例えば、「試料(a sample)」という用語は、その混合物を含め複数の試料を含む。
【0167】
「判定すること」、「測定すること」、「精査すること」、「評価すること」、および「解析すること」という用語は、しばしば本明細書中で互換的に使用されて測定の形態を指す。これらの用語には、ある要素が存在するか否かの判定(例えば、検出)が含まれる。これらの用語には、量的、質的、または量的で質的な判定が含まれる場合がある。評価することは、相対的または絶対的の可能性がある。「~の存在を検出すること」には、文脈に応じて、存在するものの量を判定することに加えて、そのものが存在するか存在しないかを判定することが含まれる場合がある。
【0168】
「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、しばしば互換的に使用される。「対象」は、発現された遺伝物質を含有する生物学的実体であり得る。生物学的実体は、植物、動物、または微生物、例えば細菌、ウイルス、真菌、および原生動物であり得る。対象は、in vivoで得られた、またはin vitroで培養された生物学的実体の組織、細胞、およびそれらの後代であり得る。対象は哺乳動物であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。対象は、疾患のリスクが高いと診断されるか、またはその疑いがある場合がある。いくつかの実施形態では、対象は、必ずしも疾患のリスクが高いと診断されるか、またはその疑いがあるとは限らない。
【0169】
「in vivo」という用語は、対象の体内で起こる事象を記述するために使用される。
【0170】
「ex vivo」という用語は、対象の体外で起こる事象を記述するために使用される。ex vivoアッセイは、対象に実施されない。むしろ、対象とは別の試料に実施される。試料に実施されるex vivoアッセイの例は、「in vitro」アッセイである。
【0171】
「in vitro」という用語は、材料を入手する生体源から実験用試薬が分離されるような、実験用試薬を保持する容器中で生じる事象を記述するために使用される。in vitroアッセイは、生細胞または死細胞が利用される、細胞を用いるアッセイを包含することができる。in vitroアッセイはまた、インタクト細胞が使用されない無細胞アッセイを包含することができる。
【0172】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、その数のプラスまたはマイナス10%の数を指す。「約」という用語の範囲は、その最小値のマイナス10%、およびその最大値のプラス10%の範囲を指す。
【0173】
本明細書で使用するとき、「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」という用語は、レシピエントにおいて有益または所望の結果を得るための薬学的またはその他の介入レジメンに言及して使用される。有益または所望の結果には、治療利益および/または予防利益が含まれるが、これらに限定されない。治療利益は、処置されている症状または根底にある障害の根絶または軽快を指す場合がある。また、治療利益は、対象が依然として根底にある障害に罹患し得ることにもかかわらず対象に改善が観察されるように、根底にある障害に関連する生理学的症状のうち1つもしくは複数の根絶または軽快により達成することもできる。予防効果には、疾患もしくは状態の出現を緩徐化、予防、もしくは排除すること、疾患もしくは疾病の症状の発症を緩徐化もしくは排除すること、疾患もしくは疾病の進行を遅延、停止、もしくは逆転すること、またはそれらの組合せが含まれる。予防利益において、特定の疾患を発症するリスクのある対象、または疾患の生理学的症状のうちの1つもしくは複数を報告する対象は、この疾患の診断が行われなかった場合であっても、処置を受ける場合がある。
【0174】
したがって、本明細書には、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させる方法であって、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程を含む方法が、開示される。
【0175】
図1は、妊娠中の個体に対する臨床診断およびFcRn阻害剤の投与のスキームを例示する図である。妊娠中の個体、または妊娠中の個体の生体試料を、自己反応性抗体の存在についてアッセイまたは検査することができる(例えば、(102)および/または(104)を参照)。(102)および/または(104)では、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体自己抗体の存在について、妊娠中の個体の試料をアッセイすることができる。場合により、妊娠中の個体はASDと診断された小児を少なくとも1人出産していることが把握される(103)。(102)および/または(104)のアッセイで少なくとも1つの母体自己抗体を認めると、FcRn阻害剤を投与する臨床的決定がなされる(107)。FcRnを妊娠中に毎週、妊娠中に毎月、または三半期ごとに1回投与する、FcRn阻害剤投与のスケジュールをデザインすることができる(それぞれ、(108)、(109)、(110)を参照;破線は、投与に利用可能な1つより多くのスケジュールの選択肢を示す)。妊娠期間中、および/またはFcRn阻害剤の投与後、妊娠中の個体を、胎芽または胎児により発現される標的に結合する自己反応性抗体の存在および/もしくはレベルについて、試験ならびに/またはモニタリングすることができる((111)を参照)。
【0176】
図2は、妊娠中の個体に対する臨床診断およびFcRn阻害剤の投与のスキームを例示する図である。妊娠中の個体が、ASDと診断された小児を少なくとも1人出産していることが把握された場合(103)、FcRn阻害剤を投与する臨床的決定がなされる(207)。FcRnを妊娠中に毎週、妊娠中に毎月、または三半期ごとに1回投与する、FcRn阻害剤投与のスケジュールをデザインすることができる(それぞれ、(208)、(209)、(210)を参照;破線は、投与に利用可能な1つより多くのスケジュールの選択肢を示す)。妊娠期間中、および/またはFcRn阻害剤の投与後、妊娠中の個体を、胎芽または胎児により発現される標的に結合する自己反応性抗体の存在および/もしくはレベルについて、試験ならびに/またはモニタリングすることができる((211)を参照)。
【0177】
図3は、妊娠を試みるか妊娠を検討している個体に対する臨床診断およびFcRn阻害剤の投与のスキームを例示する図である。妊娠を試みるか妊娠を検討している個体を、自己反応性抗体の存在についてアッセイまたは検査することができる(例えば、(302)および/または(304)を参照)。(302)および/または(304)では、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体自己抗体の存在について、妊娠中の個体の試料をアッセイすることができる。場合により、妊娠を試みるか妊娠を検討している個体はASDと診断された小児を少なくとも1人出産していることが把握される(303)。(302)および/または(304)のアッセイで少なくとも1つの母体自己抗体を認めると、妊娠前および/または妊娠中にFcRn阻害剤を投与する臨床的決定がなされる(307)。FcRnを妊娠前に毎週、妊娠前に毎月、妊娠中に毎週、妊娠中に毎月、および/または三半期ごとに1回投与する、FcRn阻害剤投与のスケジュールをデザインすることができる(それぞれ、(308)、(309)、(310)を参照;破線は、投与に利用可能な1つより多くのスケジュールの選択肢を示す)。妊娠前、妊娠期間中、および/またはFcRn阻害剤の投与後、妊娠を試みるか妊娠を検討している個体を、胎芽または胎児により発現される標的に結合する自己反応性抗体の存在および/もしくはレベルについて、試験ならびに/またはモニタリングすることができる((311)を参照)。
【0178】
図4は、妊娠を試みるか妊娠を検討している個体に対する臨床診断およびFcRn阻害剤の投与のスキームを例示する図である。妊娠を試みるか妊娠を検討している個体が、ASDと診断された小児を少なくとも1人出産していることが把握された場合(403)、FcRn阻害剤を投与する臨床的決定がなされる(407)。FcRnを妊娠前に毎週、妊娠前に毎月、妊娠中に毎週、妊娠中に毎月、および/または三半期ごとに1回投与する、FcRn阻害剤投与のスケジュールをデザインすることができる(それぞれ、(408)、(409)、(410)を参照;破線は、投与に利用可能な1つより多くのスケジュールの選択肢を示す)。妊娠前、妊娠期間中、および/またはFcRn阻害剤の投与後、妊娠を試みるか妊娠を検討している個体を、胎芽または胎児により発現される標的に結合する自己反応性抗体の存在および/もしくはレベルについて、試験ならびに/またはモニタリングすることができる((411)を参照)。
【0179】
図5は、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または代理母を務める個体に対する臨床診断およびFcRn阻害剤の投与のスキームを例示する図である。妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または代理母を務める個体を、自己反応性抗体の存在についてアッセイまたは検査することができる(例えば、(502)および/または(504)を参照)。(502)および/または(504)では、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体自己抗体の存在について、妊娠中の個体の試料をアッセイすることができる。場合により、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または代理母を務める個体はASDと診断された小児を少なくとも1人出産していることが把握される(503)。(502)および/または(504)のアッセイで少なくとも1つの母体自己抗体を認めると、妊娠前および/または妊娠中にFcRn阻害剤を投与する臨床的決定がなされる(507)。FcRnを妊娠前に毎週、妊娠前に毎月、妊娠中に毎週、妊娠中に毎月、および/または三半期ごとに1回投与する、FcRn阻害剤投与のスケジュールをデザインすることができる(それぞれ、(508)、(509)、(510)を参照;破線は、投与に利用可能な1つより多くのスケジュールの選択肢を示す)。妊娠前、妊娠期間中、および/またはFcRn阻害剤の投与後、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または代理母を務める個体を、胎芽または胎児により発現される標的に結合する自己反応性抗体の存在および/もしくはレベルについて、試験ならびに/またはモニタリングすることができる((511)を参照)。
【0180】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む。特定の実施形態では、胎芽または胎児は、CNS標的を発現する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0181】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、自己反応性抗体が胎児または胎芽と接触するのを防止および/または阻止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎芽または胎児に接触する自己反応性抗体の数を減少させる。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が胎盤関門を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が合胞体栄養細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が栄養膜細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が絨毛間質を通過するのを阻害または防止する。
【0182】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する。特定の実施形態では、阻害剤は、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する。
【0183】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、もしくはポリペプチド、または核酸を含む。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメントである。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、FcRnに結合する。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体はロザノリキシズマブである。特定の実施形態では、抗体はSYNT001である。特定の実施形態では、抗体はM281である。特定の実施形態では、抗体はArgx-113である。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Gである。特定の実施形態では、抗体はDX-2504である。特定の実施形態では、抗体はDX-2507である。特定の実施形態では、抗体は、ABY039、IMVT-1401/RVT1401である。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、小分子である。特定の実施形態では、小分子は表1から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ペプチドは表2から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、タンパク質である。特定の実施形態では、タンパク質は、IgG分子のFc領域を含む。特定の実施形態では、IgG分子のFc領域は、野生型Fc分子に比べてFcRnに対する親和性が増加している1つまたは複数の突然変異を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、上記方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料をアッセイすることで、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体抗体を検出する工程をさらに含む。特定の実施形態では、生体試料は、母体血漿試料、母体血清試料、唾液、羊水、臍帯血血漿、臍帯血血清試料、胎児血漿、胎児血清、または組織試料からなる群から選択される。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料は、胎児の神経抗原に結合する母体抗体を含む。特定の実施形態では、生体試料は血漿試料である。特定の実施形態では、生体試料は血清試料である。特定の実施形態では、生体試料は組織試料である。
【0186】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は30歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は35歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は40歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は45歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体は、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している。
【0187】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、30歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、35歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、40歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、45歳を超えている個人から得た精子である。
【0188】
いくつかの実施形態では、投与することは、妊娠中の個体の妊娠期間中に複数回行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、妊娠中の三半期ごとに少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、第1三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、毎日行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、毎週行われる。いくつかの実施形態では、投与することは、毎月行われる。
【0189】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約30日、60日、90日、または100日までに妊娠中の個体に投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約100日、150日、または200日以降に妊娠中の個体に投与される。
【0190】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約30日、60日、90日、または100日未満である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約100日、150日、または200日より長い。
【0191】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、自閉症または自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、母体自己抗体関連型自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。
【0192】
さらに本明細書には、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法であって、(a)妊娠中の個体または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体から生体試料を得る工程と、(b)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程と、(c)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定したとき、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体に新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程とを含む方法が、開示される。
【0193】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む。特定の実施形態では、胎芽または胎児は、CNS標的を発現する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、乳酸脱水素酵素B(LDH-B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2、CRIMP2)タンパク質、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0194】
いくつかの実施形態では、アッセイはイムノアッセイである。いくつかの実施形態では、生体試料は、母体血漿試料、母体血清試料、唾液、羊水、臍帯血血漿、臍帯血血清試料、胎児血漿、胎児血清、または組織試料からなる群から選択される。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料は、胎児の神経抗原に結合する母体抗体を含む。特定の実施形態では、生体試料は血漿試料である。特定の実施形態では、生体試料は血清試料である。特定の実施形態では、生体試料は組織試料である。
【0195】
いくつかの実施形態では、アッセイは、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体抗体の存在および/または濃度を検出する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、母体抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0196】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、自己反応性抗体が胎児または胎芽と接触するのを防止および/または阻止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎芽または胎児に接触する自己反応性抗体の数を減少させる。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が胎盤関門を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が合胞体栄養細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が栄養膜細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が絨毛間質を通過するのを阻害または防止する。
【0197】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する。特定の実施形態では、阻害剤は、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する。
【0198】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、もしくはポリペプチド、または核酸を含む。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメントである。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、FcRnに結合する。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体はロザノリキシズマブである。特定の実施形態では、抗体はSYNT001である。特定の実施形態では、抗体はM281である。特定の実施形態では、抗体はArgx-113である。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Gである。特定の実施形態では、抗体はDX-2504である。特定の実施形態では、抗体はDX-2507である。特定の実施形態では、抗体は、ABY039、IMVT-1401/RVT1401である。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、小分子である。特定の実施形態では、小分子は表1から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ペプチドは表2から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、タンパク質である。特定の実施形態では、タンパク質は、IgG分子のFc領域を含む。特定の実施形態では、IgG分子のFc領域は、野生型Fc分子に比べてFcRnに対する親和性が増加している1つまたは複数の突然変異を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は30歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は35歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は40歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は45歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体は、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している。
【0201】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、30歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、35歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、40歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、45歳を超えている個人から得た精子である。
【0202】
いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の個体の妊娠期間中に複数回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の三半期ごとに少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第1三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎日行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎週行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎月行われる。
【0203】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約30日、60日、90日、または100日までに妊娠中の個体に投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約100日、150日、または200日以降に妊娠中の個体に投与される。
【0204】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約30日、60日、90日、または100日未満である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約100日、150日、または200日より長い。
【0205】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、自閉症または自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、母体自己抗体関連型自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。
【0206】
本明細書にはさらに、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用が開示される。本明細書にはまた、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を処置するための薬剤の製造における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用も開示される。
【0207】
例示的実施形態
本明細書には、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体の自己反応性抗体(例えば、血液または血清に存在する量)を減少させる方法であって、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体に、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程を含む方法が、提供される。
【0208】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む。特定の実施形態では、胎芽または胎児は、CNS標的を発現する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0209】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、自己反応性抗体が胎児または胎芽と接触するのを防止および/または阻止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎芽または胎児に接触する自己反応性抗体の数を減少させる。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が胎盤関門を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が合胞体栄養細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が栄養膜細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が絨毛間質を通過するのを阻害または防止する。
【0210】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する。特定の実施形態では、阻害剤は、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する。
【0211】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、もしくはポリペプチド、または核酸を含む。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメントである。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、FcRnに結合する。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体はロザノリキシズマブである。特定の実施形態では、抗体はSYNT001である。特定の実施形態では、抗体はM281である。特定の実施形態では、抗体はArgx-113である。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Gである。特定の実施形態では、抗体はDX-2504である。特定の実施形態では、抗体はDX-2507である。特定の実施形態では、抗体は、ABY039、IMVT-1401/RVT1401である。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、抗体結合ドメイン領域(例えば、別の抗体のFc領域に結合するエピトープまたは抗体可変ドメインを含むポリペプチド)および変異体Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントを含み、Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントのFcドメインは、野生型免疫グロブリンFc領域に比べてFcRnへの結合が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、変異体Fc領域を含むポリペプチドである。特定の実施形態では、変異体Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントは、野生型IgG1 Fc領域に比べてFcRn(例えば、本明細書に記載のもの)への結合が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでいる。特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、EU位置252、254、256、433、434、および436にてそれぞれY、T、E、K、F、およびYを含み、Fc領域は、野生型IgG1 Fc領域に比べて親和性が増加し、pH依存性が低下しているFcRnに結合する。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、変異体Fc領域を含む抗体であり、この抗体(例えば、FcRn機能を阻害する抗体)は、抗体のFc領域を認識する可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ポリペプチドと変異体Fc領域を含む融合ポリペプチドである。特定の実施形態では、ポリペプチドは、自己反応性抗体に特異的なエピトープを含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、小分子である。特定の実施形態では、小分子は表1から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ペプチドは表2から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、タンパク質である。特定の実施形態では、タンパク質は、IgG分子のFc領域を含む。特定の実施形態では、IgG分子のFc領域は、野生型Fc分子に比べてFcRnに対する親和性が増加している1つまたは複数の突然変異を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤はFc分子変異体またはそのFcRn結合性フラグメントであり、Fc領域分子変異体またはそのFcRn結合性フラグメントは、野生型免疫グロブリンFc領域に比べてFcRnへの結合が増加している1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、Fc分子変異体は、酸性pHとほぼ中性のpHの両方で、親和性が増加した状態でFc領域を介してFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では、Fc領域のFcドメイン、またはそのFcRn結合性フラグメントが、EU位置252、254、256、433、434、および436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、Fc領域が、野生型IgG1 Fc分子に比べて親和性が増加し、pH依存性が低下した状態でFcRnに結合する、Fc分子変異体またはそのFcRn結合性フラグメント。
【0215】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、IgG分解を増強するFc操作された抗体を含む抗体(例えば、FcRn機能を阻害する抗体)である。いくつかの実施形態では、抗体は、酸性pHとほぼ中性のpHの両方で、親和性が増加した状態でFc領域を介してFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では、抗体(例えば、FcRn機能を阻害する抗体)は変異体Fc領域またはそのFcRn結合性フラグメントを含み、Fc領域のFcドメイン、またはそのFcRn結合性フラグメントは、EU位置252、254、256、433、434、および436にそれぞれアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、Fc領域は、野生型IgG1 Fc分子に比べて親和性が増加し、pH依存性が低下した状態でFcRnに結合する。
【0216】
いくつかの実施形態では、上記方法は、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料をアッセイすることで、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体抗体を検出する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、母体自己抗体は、LDHA、LDHB、CRMP1、STIP1、またはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、母体自己抗体はLDHAである。いくつかの実施形態では、母体自己抗体はLDHBである。いくつかの実施形態では、母体自己抗体はCRMP1である。いくつかの実施形態では、母体自己抗体はSTIP1である。いくつかの実施形態では、母体自己抗体は、LDHA、LDHB、CRMP1、および/またはSTIP1のあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、母体自己抗体はCRMP1とSTIP1である。
【0217】
特定の実施形態では、生体試料は、母体血漿試料、母体血清試料、唾液、羊水、臍帯血血漿、臍帯血血清試料、胎児血漿、胎児血清、または組織試料からなる群から選択される。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料は、胎児の神経抗原に結合する母体抗体を含む。特定の実施形態では、生体試料は血漿試料である。特定の実施形態では、生体試料は血清試料である。特定の実施形態では、生体試料は組織試料である。
【0218】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は30歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は35歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は40歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は45歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体は、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している。
【0219】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、30歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、35歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、40歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、45歳を超えている個人から得た精子である。
【0220】
いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の個体の妊娠期間中に複数回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の三半期ごとに少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第1三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎日行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎週行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎月行われる。
【0221】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約30日、60日、90日、または100日までに妊娠中の個体に投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約100日、150日、または200日以降に妊娠中の個体に投与される。
【0222】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約30日、60日、90日、または100日未満である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約100日、150日、または200日より長い。
【0223】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、自閉症または自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、母体自己抗体関連型自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。
【0224】
さらに本明細書には、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させる複数の方法であって、(a)妊娠中の個体または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体から生体試料を得る工程と、(b)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定する工程と、(c)胎児神経抗原に結合する母体抗体の存在を少なくとも1つのアッセイにより判定したとき、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体に新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤を投与する工程とを含む複数の方法が、開示される。
【0225】
いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、中枢神経系(CNS)標的に結合する抗体を含む。特定の実施形態では、胎芽または胎児は、CNS標的を発現する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、乳酸脱水素酵素B(LDH-B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2、CRIMP2)タンパク質、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、自己反応性抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0226】
いくつかの実施形態では、アッセイはイムノアッセイである。いくつかの実施形態では、生体試料は、母体血漿試料、母体血清試料、唾液、羊水、臍帯血血漿、臍帯血血清試料、胎児血漿、胎児血清、または組織試料からなる群から選択される。特定の実施形態では、妊娠中の個体、妊娠を試みる個体、妊娠を検討している個体、または妊娠のために代理母を務める個体から得た生体試料は、胎児の神経抗原に結合する母体抗体を含む。特定の実施形態では、生体試料は血漿試料である。特定の実施形態では、生体試料は血清試料である。特定の実施形態では、生体試料は組織試料である。
【0227】
いくつかの実施形態では、アッセイは、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される標的に結合する母体抗体の存在および/または濃度を検出する。特定の実施形態では、自己反応性抗体は、標的LDH-Aに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的LDH-Bに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的GDAに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的CRMP1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的STIP1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的DPYSL2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的YBX1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的NSEに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的Caspr2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的KCNAB2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的KCNAB1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的EDIL3に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的IVDに結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的SUL4A1に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的TNIP2に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的RAI16に結合する。特定の実施形態では、母体抗体は、標的GDP D5に結合する。いくつかの実施形態では、母体抗体は、胎児により発現される神経抗原に結合する。
【0228】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、自己反応性抗体が胎児または胎芽と接触するのを防止および/または阻止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、胎芽または胎児に接触する自己反応性抗体の数を減少させる。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が胎盤関門を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が合胞体栄養細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が栄養膜細胞障壁を通過するのを阻害または防止する。特定の実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、母体自己反応性抗体が絨毛間質を通過するのを阻害または防止する。
【0229】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、FcRnと免疫グロブリンG(IgG)分子との相互作用を防止する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IgG分子のFcRn媒介レスキューを防止する。特定の実施形態では、阻害剤は、FcRnとヒト血清アルブミン分子との相互作用を防止する。
【0230】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメント、小分子、ペプチド、もしくはポリペプチド、または核酸を含む。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体またはその標的結合性フラグメントである。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、FcRnに結合する。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体はロザノリキシズマブである。特定の実施形態では、抗体はSYNT001である。特定の実施形態では、抗体はM281である。特定の実施形態では、抗体はArgx-113である。特定の実施形態では、抗体はHL161-11Gである。特定の実施形態では、抗体はDX-2504である。特定の実施形態では、抗体はDX-2507である。特定の実施形態では、抗体は、ABY039、IMVT-1401/RVT1401である。特定の実施形態では、抗体またはその標的結合性フラグメントは、ロザノリキシズマブ、SYNT001、M281、Argx-113、HL161-11G、HL161-11H、HL161-1A、DX-2504、DX-2507、ABY039、IMVT-1401/RVT1401、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される抗体の相補性決定領域を含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、小分子である。特定の実施形態では、小分子は表1から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、ペプチド阻害剤である。特定の実施形態では、ペプチドは表2から選択される。いくつかの実施形態では、FcRn機能の阻害剤は、タンパク質である。特定の実施形態では、タンパク質は、IgG分子のFc領域を含む。特定の実施形態では、IgG分子のFc領域は、野生型Fc分子に比べてFcRnに対する親和性が増加している1つまたは複数の突然変異を含む。
【0232】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は30歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は35歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は40歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体は45歳を超えている。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体は、自閉症または自閉症スペクトラム障害と診断された小児を少なくとも1人出産している。
【0233】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、30歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、35歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、40歳を超えている個人から得た精子である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体の卵子を受精させた精子は、45歳を超えている個人から得た精子である。
【0234】
いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の個体の妊娠期間中に複数回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、妊娠中の三半期ごとに少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第1三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第2三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、第3三半期中に行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎日行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎週行われる。いくつかの実施形態では、投与する工程は、毎月行われる。
【0235】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約30日、60日、90日、または100日までに妊娠中の個体に投与される。いくつかの実施形態では、阻害剤は、受胎後約100日、150日、または200日以降に妊娠中の個体に投与される。
【0236】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約30日、60日、90日、または100日未満である。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体における胎児の在胎期間は、約100日、150日、または200日より長い。
【0237】
いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、自閉症または自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。いくつかの実施形態では、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を減少させることは、母体自己抗体関連型自閉症スペクトラム障害に関連する症状を予防または減少させる。
【0238】
本明細書にはさらに、妊娠中の個体、または妊娠を検討しているかもしくは試みる個体の自己反応性抗体を減少させる方法における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用が開示される。本明細書にはまた、妊娠中の個体または妊娠を試みる個体の自己反応性抗体を処置するための薬剤の製造における、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の使用も開示される。
【0239】
本明細書で使用するとき、「a」または「an」は、特許請求の範囲および/または本明細書で「含む」という用語とともに使用するとき、「1つの(one)」を含み、かつ/またはそれを指し、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、および「1つより多くの(one or more than one)」の意味にも一致する。同様に、「別の」という語は、少なくとも別の1つまたは複数(a second or more)を意味する場合がある。
【0240】
本明細書で使用するとき、「含む(comprising)」という語(および、「含む(comprise)」や「含む(comprises)」などのあらゆる形態)、「有する(having)」という語(および、「有する(have)」や「有する(has)」などのあらゆる形態)、「含む(including)」という語(および、「含む(include)」や「含む(includes)」などのあらゆる形態)、または「含有する(containing)」という語(および、「含有する(contain)」や「含有する(contains)」などのあらゆる形態)は、包括的または開放的(open-ended)であり、列挙していない追加の要素またはプロセス工程を排除するものではない。また本明細書で使用するとき、本明細書に記載のあらゆる例または実施形態では、「含む(comprising)」は、本明細書で使用される「から本質的になる(consisting essentially of)」および/または「からなる(consisting of)」に置き換えられ、本明細書に記載のあらゆる例または実施形態では、「含む(comprises)」は、本明細書で使用される「から本質的になる(consists essentially of)」および/または「からなる(consists of)」に置き換えらる場合がある。
【0241】
本明細書で使用するとき、所与の値または範囲の文脈における「約」という用語は、所与の値または範囲の10%以内にある値または範囲を含む、および/またはそれを指す。
【0242】
本明細書で使用するとき、「および/または」という用語は、他の特徴もしくは要素を含む場合、または含まない場合の2つの特定の特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として考慮されるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、それぞれが本明細書で個別に提示されたかのように、(i)A、(ii)B、および(iii)AとBのそれぞれの具体的な開示として考慮されるべきである。
【実施例】
【0243】
以下の例示的な実施例は、本明細書に記載の組成物および方法の実施形態を表すものであり、いかなる形でも限定されることを意図していない。
【0244】
実施例1:妊娠中の個体へのFcRn阻害剤の投与
女性患者番号1(P1)は、医師への訪問3日前に在宅妊娠検査で陽性を確認し、この在宅検査は当該技術分野で慣例的な方法により診察室で確認される。P1は、以前の妊娠でASDと診断された小児を少なくとも1人出産したことがあることを医師に示す。医師はFcRnを標的とする抗体をP1に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P1の妊娠期間中毎週、静脈内投与されることとなる。
【0245】
女性患者番号2(P2)は、医師への訪問3日前に在宅妊娠検査で陽性を確認し、この在宅検査は当該技術分野で慣例的な方法により診察室で確認される。P2は、以前の妊娠でASDと診断された小児を少なくとも1人出産したことがあることを医師に示す。医師はP2から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P2は、検査においてパネル中の抗原のうち少なくとも1つに対し陽性を示す。医師はFcRnを標的とする抗体をP2に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P2の妊娠期間中2週間毎に静脈内投与されることとなる。
【0246】
女性患者番号3(P3)は、医師への訪問3日前に在宅妊娠検査で陽性を確認し、この在宅検査は当該技術分野で慣例的な方法により診察室で確認される。P3は、子供を出産したことがないことを医師に示す。医師はP3から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P3は、検査においてパネル中の抗原のうち少なくとも1つに対し陽性を示した。医師はFcRnを標的とする抗体をP3に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P3の妊娠期間中毎週、静脈内投与されることとなる。
【0247】
女性患者番号4(P4)は、医師への訪問3日前に在宅妊娠検査で陽性を確認し、この在宅検査は当該技術分野で慣例的な方法により診察室で確認される。P5は、子供を出産したことがないことを医師に示す。医師はP4から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P4は、検査においてパネル中の少なくとも1つの抗原に対し陽性を示さなかった。医師は最初の診察予約から21日後のP4の診察予約中に別の検査を推奨する。P4は、検査においてパネル中の少なくとも1つの抗原に対し陽性を示した。医師はFcRnを標的とする抗体をP4に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P4の妊娠期間中毎週、静脈内投与されることとなる。
【0248】
女性患者番号5(P5)は、医師への訪問3日前に在宅妊娠検査で陽性を確認し、この在宅検査は当該技術分野で慣例的な方法により診察室で確認される。P5は、子供を出産したことがないことを医師に示す。医師はP5から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P5は、検査においてパネル中の抗原のうち少なくとも1つに対し陽性を示した。医師はFcRnを標的とする抗体をP5に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P5の妊娠期間中毎週、静脈内投与されることとなる。医師はP5の妊娠中毎月、P5から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。その後P5において、FcRnを標的とする抗体投与の開始月の後に検査した抗体の少なくとも1つに結合する抗体に、レベルの低下を認めた。
【0249】
実施例2:妊娠を試みるか妊娠を検討している個体へのFcRn阻害剤の投与
女性患者番号6(P6)は、医師(例えば、家庭医、家族プランナ(family planner)、または遺伝カウンセラ)を訪問する。P6は、以前の妊娠でASDと診断された小児を少なくとも1人出産したことがあることを医師に示す。医師はP6から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P6は、検査においてパネル中の抗原のうち少なくとも1つに対し陽性を示した。医師はFcRnを標的とする抗体をP6に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P6が積極的に妊娠を試みる間、隔週で静脈内投与されることとなる。医師はFcRnを標的とする抗体をP6に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P6が妊娠した後、P6の妊娠期間中に毎週静脈内投与されることとなる。
【0250】
女性患者番号7(P7)は医師(例えば、家庭医、家族プランナ、または遺伝カウンセラ)を訪問し、このときにP7は、体外受精による妊娠を計画している。P7は、以前の妊娠でASDと診断された小児を少なくとも1人出産したことがあることを医師に示す。医師はP7から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P7は、検査においてパネル中の抗原のうち少なくとも1つに対し陽性を示した。医師はFcRnを標的とする抗体をP7に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P7が積極的に妊娠を試みる間、毎週静脈内投与されることとなる。医師はFcRnを標的とする抗体をP7に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P7が妊娠した後、P7の妊娠期間中に毎週静脈内投与されることとなる。
【0251】
女性患者番号8(P8)は医師(例えば、家庭医、家族プランナ、または遺伝カウンセラ)を訪問し、このときにP8は、体外受精による妊娠を計画している。P8は、以前の妊娠でASDと診断された小児を出産したことがないことを医師に示す。医師はP8から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P8は、検査においてパネル中の抗原のうち少なくとも1つに対し陽性を示した。医師はFcRnを標的とする抗体をP8に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P8が積極的に妊娠を試みる間、毎週静脈内投与されることとなる。医師はFcRnを標的とする抗体をP8に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P8が妊娠した後、P8の妊娠期間中に毎週静脈内投与されることとなる。
【0252】
女性患者番号9(P9)は、医師(例えば、家庭医、家族プランナ、または遺伝カウンセラ)を訪問する。P9は、以前の妊娠でASDと診断された小児を少なくとも1人出産したことがあることを医師に示す。医師はFcRnを標的とする抗体をP9に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P9の妊娠期間中毎週、静脈内投与されることとなる。医師はFcRnを標的とする抗体をP9に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P9が積極的に妊娠を試みる間、隔週で静脈内投与されることとなる。医師はFcRnを標的とする抗体をP9に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P9が妊娠した後、P9の妊娠期間中に毎週静脈内投与されることとなる。
【0253】
女性患者番号10(P10)は、医師(例えば、家庭医、家族プランナ、または遺伝カウンセラ)を訪問する。P10は、代理母を務める予定があることを医師に示す。医師はP10から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P10は、検査においてパネル中のバイオマーカのいずれにも陽性を示さない。
【0254】
女性患者番号11(P11)は、医師(例えば、家庭医、家族プランナ、または遺伝カウンセラ)を訪問する。P11は、代理母を務める予定があることを医師に示す。医師はP11から血清試料を採取し、乳酸脱水素酵素AまたはB(LDH A、B)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、コラプシン反応媒介タンパク質1または2(CRMP1、2)、ストレス誘導リンタンパク質1(STIP1)、バーブエンドアクチン結合タンパク質CapZのαサブユニット(CAPZA2)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、真核生物翻訳伸長因子1A1(EEF1A1)、微小管結合タンパク質Tau(MAPT)、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質2(DPYSL2)、ダイナミン1様タンパク質(DNM1L)、ラジキシン(RDX)、モエシン(MSN)、非特異的エノラーゼ(NSE)、Caspr2、KCNAB2、KCNAB1、内皮細胞インテグリンリガンド(EDIL3)、IVD、脳特異的スルホトランスフェラーゼ(SULT4A1)、TNIP2、レチノイン酸誘導16(RAI16)、GDP D5、エズリン(EZR)、およびそれらのあらゆる組合せからなるパネル中の少なくとも1つの標的に結合する抗体について血清試料を検査する。P11は、検査においてパネル中のバイオマーカのうち1つまたは複数に対し陽性を示す。医師はFcRnを標的とする抗体をP11に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P11の妊娠期間中毎週、静脈内投与されることとなる。医師はFcRnを標的とする抗体をP11に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P11が積極的に妊娠を試みる間、隔週で静脈内投与されることとなる。医師はFcRnを標的とする抗体をP11に処方し、FcRnを標的とする抗体は、P11が妊娠した後、P11の妊娠期間中に毎週静脈内投与されることとなる。
【0255】
実施例3:FcRn阻害剤はin vivoで自己反応性抗体を減少させる
試験ラットをLDHAとB、CRMP1、およびSTIP1で免疫化し(MARラットと称する)、ラットがタンパク質のそれぞれに対してIgG応答を有することを確認した後、2匹の動物に、Abdeg(wt IgGと同等のFcRnへのFcRn結合を有する変異体Fc分子、例えば配列番号1~3を参照)変異抗体5mg/用量(原液約20mg/mLから提供)を1回IV注射した。被験物質の投与前に、LDHA、LDHB、CRMP1、またはSTIP1抗体のベースライン量を測定した。投与後24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、および160時間に測定を行った。対照MAR陽性動物を野生型IgGで処置した。対照MAR陰性動物をアジュバントのみ、および野生型IgGで処置した。ベースライン時に動物に採血を行い、その後1週間毎日採血を行った。LDHA、LDHB、CRMP1、またはSTIP1抗体の量は、イムノアッセイを介し吸光度により検出した。表1に吸光度データを示す。
図6A~
図6Eは、LDHA、LDHB、CRMP1、STIP1、および総IgGの量に関するプロットを示す図である。表1と
図6A~
図6Eより、LDHA、LDHB、CRMP1、およびSTIP1を標的とする自己反応性抗体は、新生児Fc受容体(FcRn)機能の阻害剤の単回投与後でも減少することが認められる。興味深いことに、明らかな総IgGの減少は、
図6Eに示すように判別できなかった。
【0256】
【0257】
この減少は単回投与後でも確認され、複数回投与でさらに飛躍することが予想される。加えて、試験されたラットは特異的に免疫化されると、非免疫化マウスでは通常高レベルで見られない特定の母体自己反応性抗体のレベルを増加させるため、その効果は、母体自己反応性抗体の増加がより小さな可能性がある個体においてより顕著となり得る。
【0258】
実施例4:ASD様表現型の防止におけるIV抗FcRn抗体の能力を実証するためのMARラットモデルに対する前臨床試験
出生前のMAR抗体曝露が子孫の神経発達に及ぼす影響、および妊娠中のIV抗FcRn抗体の投与によるこれらの効果の修復を調べるため、MARラットモデルをデザインした。ヒトの症状に一致するとは仮定されるためではなく、根本的な脳プロセスの観点での科学的な疑問に対処するために、新たに確立されたNIHガイドライン(NOT-MH-19-053)に従う行動測定を使用かつ選択する。臨床上最も顕著であった3つのAB(抗体)パターンの行動変化を評価するためのラットモデルに対する洗練された社会的および認知レパートリの検査を、試験のために計画する。種の典型的な社会的発達に焦点を当てるという判断は、マウスMARモデルからの以前の所見のほか、実施例3での観察に基づく。
【0259】
抗原誘発マウスモデル:ASD関連母体ABが標的とする7つの抗原タンパク質上でのペプチドエピトープ配列の特定により、第1の抗原誘発動物モデルを発達させる機会を得て、そこではC57BL/6Jマウスを惹起させた(initiated)。LDH-A、LDH-B、CRMP1、およびSTIP1抗原を反映するABパターンを使用した。従来の試験では受動的抗体アプローチを採用していたのに対し、抗原誘発モデルでは、メスに特異的ペプチド抗原を投与して繁殖させることで、受胎から出生までに内因性に生成された抗体への継続的な曝露を確実とした。行動アッセイの包括的シーケンスのほか、健康と発達の測定を用いてオスおよびメスの子孫に対し検査を行い、MAR抗体への継続的な妊娠曝露の病原的有意性を評価した。種の典型的な社会的行動の変化を、同じ性別の若年二分子間での社会的相互作用中、および成体であるオスとメスとの社会的相互作用中に観察した。
【0260】
若年MAR-ASDマウスの行動。MAR-ASDマウスでは、鼻同士の嗅ぎ合い、鼻による肛門性器の嗅ぎ合い、プッシュクロール運動行動、正面の接近行動、および追跡行動が顕著に少なく、対照に比べて社会的相互作用のレベルが低いことが認められる。MAR ABへの出生前の暴露はまた、反復的な自己グルーミング行動にも影響を及ぼし、MAR-ASD若年マウスでは対照に比べて反復的な自己グルーミング行動が顕著に多かった。いずれのパラメータについても、子孫の性別または処置×性相互作用に顕著な効果は認められなかった(p>0.10)。
【0261】
成体MAR-ASDマウスの行動。成体のMAR-ASDオスは、鼻による肛門性器の嗅ぎ合い、身体の嗅ぎ合い、正面の接近、および追跡行動に費やす時間が顕著に少なく、5分間の検査セッションで発せられた総USVは顕著に少なかった。このため、第1の抗原誘導マウスモデルより、LDH-A/B、STIP1とCRMP1に特異的なエピトープに対する組合せ暴露は、社会的およびコミュニケーション行動に変化は生じ、反復的行動が増加したマウス子孫を生成したことが実証された。
【0262】
抗原誘導ラット:マウスは前臨床モデルで注目を集めたが、特定の複雑な行動や生理学的プロセスは、これらの動物でモデル化することは困難または不可能である。この原因は、複雑な認知処理や社会的行動に重要な領域である前頭前野などの特定の脳領域がマウスに存在しないか、またはその発達が少ないことによる。抗原誘導MARラットモデルを確立する実現可能性を判定するための試験をラットに実施した。ラットのメス親(dam)に、元々のパターン(LDH-A/B、STIP1、CRMP1)からのMAR ASD特異的抗原をフロイントアジュバントとともに4週間皮下(SubQ)注射した。注射後、繁殖前にメス親の血清に対するELISA解析により、ラットのメス親のAB力価を確認した。MARと対照のメス親の同腹仔を出生後2日目(PND2)にオス4匹とメス4匹に選別し、一連の行動検査を様々な時点で実施し、寿命全体での行動成果に対するMARの影響を判定した。
【0263】
MAR子孫でのコミュニケーション欠落:データより、MAR子孫(N=48)は、対照(N=40)と比較して、PND12で一時的に母親から切り離したときに発する音声が顕著に少なかった。
【0264】
社会的運動の減少と反復行動の増加。ラットは、社会的発達の重要な指標をもたらす若年期の運動を長期間呈する。若年MAR子孫(N=24)は対照動物(N=20)と比較して運動行動に従事する時間が少なく、成体MAR子孫は、対照動物(N=20)と比較して自発的な自己グルーミングに従事する時間が多かった。げっ歯類モデルでは、自己グルーミングは、反復行動を評価するための有用な読み出し情報(readout)であり、複雑な神経回路の適切な調整を含むタスクである(89)。
【0265】
向社会的行動の障害。ラットが呈する種の典型的な「向社会的行動」を評価する試験。ラットが脱出ドアを開くことにより親密なラットが拘束からの脱出するのを補助することを学習するタスクを使用して、ラットの向社会的支援行動を評価できる。IDDRC Rodent Behavior Core(RBC)により、両性別の若年ラットと成体ラットがこの補助行動を容易に学習することを見出した。興味深いことに、MAR曝露ラットと対照ラットの両方がこの検査を学習できたが、MARで処置された子孫は、検査が進行するにつれて種に典型的な向社会的反応から逸脱した。
【0266】
実験的アプローチ:抗原誘導マウスモデルからのMAR子孫は、種に典型的なマウス社会的行動の減少を示し、本発明者らの抗原誘導ラットモデルからのパイロットデータは、種に典型的なラットの社会的行動の同様の減少を示唆している。今後、ラットの豊富な社会的レパートリを活用し、MAR ASD特異的抗体を出生前に曝露した後の行動結果について、IV抗FcRnを投与することでそれらの行動がレスキューされるかどうかを判定する試験を予定する。
【0267】
エピトープ特異的ABの生成。本試験は、UC Davis IACUC委員会の勧告と承認を厳守して実施する。Sprague Dawleyラットを商業ベンダーから購入し、同じ性別で同じ株のペアにし、温度と湿度を制御したビバリウムに収容して、12時間ごとの明暗サイクルを行った。試験全体を通じて食料と水を自由に摂取できるようにする。LDH-A+LDH-B+STIP1+CRMP1の元々のモデルパターンからの抗原を用いて実現可能性を確立させた、上述のラットパイロット試験で確立された方法に従う。ラットのメス親に対し抗体応答を誘導し、Multiple Antigenic Peptides(MAPs)システムを用いてMAR特異的抗体を生成する。MAR特異的ペプチドを購入し(LifeTein,NJ)、4つに分岐したリジン骨格足場(LifeTein,Germany)にコンジュゲートさせて、ペプチドとコア分子のモル比を高くし、キャリアタンパク質の必要性を無くす。この同じ戦略は、性的にナイーブなメスのマウスにおいて目的のABの生成を成功させることが、記載した試験で実証されており、本発明者らのラットパイロット研究でも実証されている。MAR特異的抗体誘導を確認するために、血清を採取し、MAR抗体力価をELISAにより判定する。繁殖前のメスのSprague DawleyラットにABを生成するために、MAR特異的自己抗原LDH-A+LDH-B+STIP1+CRMP1のペプチドエピトープに対する耐性を破壊する。これら標的に対する抗体力価は、繁殖前のメスの成体に生成される。これにより、胎芽は妊娠中を通じてメス親に生じたABに曝露され、炎症が生じない。
【0268】
対照処置のメスに、生理食塩水中のフロイントのアジュバントからなる同一の数および量の免疫化を行う。AB産生の確認後、2:1のメス親:オス親の繁殖スキームを用いて、メス親を、種畜として確立したオスと対にした。繁殖コホートは、子孫の行動研究に順応するように予定されており、各処置群の代表者を含む。本発明者らによる以前の研究に基づき最大の検定力を達成するために、実験処置群あたり少なくとも36の子孫(オス18、メス18)を後の行動解析用に生成する。
【0269】
抗FcRnプロトコル。時期指定妊娠のメスに妊娠10日目と15日目、生理食塩水中の抗FcRnを5mg/用量で静脈内投与した。対照動物には野生型対照IgGを5mg/用量で投与する。パイロット研究での抗FcRnの効果は、パイロット研究において48~72時間の間でMAR抗体の最大減少を実証した。げっ歯類においてIgGは12日目まで胎盤を通過し始めない。このため、初回注射を10日目に行うことで、IgGが胎盤を通過し始めたときに遮断抗体が所定の位置にあるのを確実にする。遮断抗体の効果は約5日間持続するので、第2の用量を15日目に投与する。子は20~21日目から生まれ始める。
【0270】
標準行動評価。すべての行動試験は、IDDRCのげっ歯類行動コア(RBC)のラットサブコアにより実施する。包括的で縦断的な行動研究は、RBCで確立したプロトコルを用いて実施する(88)。処置群ごとにオスを18匹、メスを18匹とする。PND4、8、12で子の隔離における超音波発声コール(USV)を含む、ラットに対し標準化されたバッテリ(battery)を用いて、発達の診査事項と神経反射を評価する。PND21では、子孫は離乳し、治療のために均衡を保たれたケージに同性の動物2匹を収容する。PND26で開始してPND150で終了する行動検査バッテリを用いて、出生前MAR曝露の効果を特徴解析する。検査は、連続して行った場合の影響を軽減するために設計された順序で別々の日に実施し、若年、青年、および成体の時点での行動の範囲を評価する。新規の社交パートナ(社交二分子(social dyad)同士の相互作用をPND36、55、103に記録し、MARパイロットに記載する社会的欠如をさらに追求する。持続時間の測定に加えて、開始され受け取られた正の社会的相互作用の頻度を定量化し、MAR曝露ラットにおける社会的相互作用の減少に寄与する因子への見識を得る。探査(オープンフィールド)、感覚運動ゲーティング(プレパルス抑制[PPI])、不安(高架式十字迷路)、および反復行動(二分子中に定量化)を含む適切な制御措置も精査する。認知発達はMARラットモデルで評価されていないため、既存の検査バッテリからの認知の評価には、(i)文脈的恐怖条件付け、(ii)Barnes/Morris水迷路、(iii)ノベルオブジェクト(位置、記憶、時間的順序)、(iv)T迷路反転学習(T-maze reversal learning)(固執行動)、および/または(V)タッチスクリーンテスト(本発明者らのIDDRC RBCに特有)が含まれる。
【0271】
社会発達の拡大特徴解析。ラットの高度な社会的レパートリを探り、MARパイロットで観察された借地相互作用の全体的な減少をさらに特徴づける行動アッセイも、実施する。(a)隔離呼び出しの分類 - RBCは近年、ラットの子隔離USVを分類するプロトコルを開発しており、このアプローチを適用して、呼び出し頻度の単純な自動評価以外の隔離呼び出しの発達の軌跡を評価することとなる。(b)プレイバックアプローチ - ラットが成熟すると、USVは重要なコミュニケーション機能を伝える状況依存型の感情信号として機能する。向社会的超音波コミュニケーションは、Silverman Laboratoryで記載された50kHz USV放射状迷路プレイバックパラダイムにより、信頼性が高く高度に標準化された方法で試験することができ、近年ではRBCでの使用ためにSilverman Laboratoryにより適合されている。放射状迷路プレイバックパラダイムを使用して、MARの子孫が、各社会的二分子に続いて、向社会的50kHz USVに対して種特異的な応答を示すかどうかを判断する。(c)社会的動機づけ - 種の典型的な向社会的行動の欠如を評価する向社会的動機づけの検査が新たに追加されている。以前のMARコホートからのパイロットデータは、MARの子孫が、共感の本質的な前駆体として解釈されている、親しい同種の苦痛に対する種典型的な応答を示さないことを示唆している。向社会的行動を成体MARと対照ラットとで比較する。
【0272】
統計解析:BBRDCにより統計解析を実施する。断面行動試験から、MAR処置ラットと対照群の5つの異なる群における行動測定の年齢依存型プロファイルを、オスとメス両方に対し試験する。分散分析(ANOVA)、または共変量として重要な交絡因子(例えば、性別、体重、除脂肪体重、脂肪量など)を用いた多変量回帰分析を用いて、行動測定における群ごとの差を判定する。群ごとの有意差が見出される場合、テューキーまたはダネット検定を使用して事後解析を行い、2群のうちどちらが互いに特異的に異なるかを判定する。縦断データについては、多変量データに対する従来の一般化線形モデルや古典的な潜在変数モデルに適応した一般化線形と潜在の混合効果モデルのフレームワークを使用し、探索的および確証的因子解析測定モデル(相関された複数の行動検査モジュールを関連付けるもの)や構造方程式モデルが含まれる。このフレームワークにより、MAR ABに関連する行動特性の包括的評価が得られる。パラメトリック統計検定の仮定すべてを確認し、仮定がすべて満たされていない場合、仮定を満たすようにデータを変換するか、または非パラメトリック検定に置き換える。多数のアウトカムが同じ動物から測定されるため、ボンフェローニ補正や偽発見率(FDR)など、多数の検査に対する統計的補正が保証される。
【0273】
本発明の好ましい実施形態を本明細書中で示し、説明してきたが、かかる実施形態はほんの一例として提供されることが当業者には明白であろう。当業者には、本発明から逸脱することなく多数の変形、変化、および置換えが相当される。本明細書に記載する本発明の実施形態に対する種々の代案が本発明の実施に利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定めるものであり、特許請求の範囲内の方法と構造とそれらの等価物はそれにより包含されることが意図される。
【0274】
【配列表】
【国際調査報告】