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特表2023-538996ペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20230906BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20230906BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20230906BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/86
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579919
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2021008061
(87)【国際公開番号】W WO2022010147
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084012
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】チョ,アン ナ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251FA02
5F251FA04
5F251GA03
5F251XA61
(57)【要約】
本発明は、ペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池に係り、より詳細には、(ステップS1)基板層、第1電極層及び金属酸化物を含む正孔輸送層(HTL)が順次に積層された積層物の正孔輸送層に、a)酸化剤を処理するか、b)紫外線及びオゾン処理するか、c)酸素プラズマ処理するか、またはd)二酸化窒素ガス処理して、金属酸化物を酸化させる段階;及び(ステップS2)積層物の正孔輸送層上にペロブスカイト層、電子輸送層及び第2電極層を順次に積層させる段階;を含むペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ステップS1)基板層、第1電極層及び金属酸化物を含む正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)が順次に積層された積層物の前記正孔輸送層に、a)酸化剤を処理するか、b)紫外線及びオゾン処理するか、c)酸素プラズマ処理するか、またはd)二酸化窒素ガス処理して、前記金属酸化物を酸化させる段階と、
(ステップS2)前記積層物の前記正孔輸送層上にペロブスカイト層、電子輸送層及び第2電極層を順次に積層させる段階と、
を含む、ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記(ステップS1)は、前記正孔輸送層に前記酸化剤を含む溶液を処理して、前記金属酸化物を酸化させた後、前記溶液に含まれた溶媒を除去する段階をさらに含む、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記(ステップS1)の前記金属酸化物は、NiOxである、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記(ステップS1)で、前記NiOxを酸化させて前記正孔輸送層のNi空孔を向上させた、請求項3に記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記(ステップS1)で、前記NiOxを酸化させて前記正孔輸送層に含まれたNi2+の一部をNi3+に酸化させた、請求項3に記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記Ni3+の含量と、前記Ni2+及びNi3+の全体含量の比が、0.6以下である、請求項5に記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記第1電極層及び前記第2電極層は、互いに独立してITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、及びZnOからなる群から選択される何れか1つ以上を含む、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記電子輸送層は、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物、及びSrTi酸化物からなる群から選択される何れか1つ以上を含む、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項9】
基板層、第1電極層、金属酸化物を含む正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、ペロブスカイト層、電子輸送層及び第2電極層が順次に積層されたものであり、
前記金属酸化物は、NiOxであり、
前記正孔輸送層は、Ni2+及びNi3+を含む、ペロブスカイト太陽電池。
【請求項10】
前記Ni3+の含量と、前記Ni2+及びNi3+の全体含量の比が、0.6以下である、請求項9に記載のペロブスカイト太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池に係り、より詳細には、他の構成要素の損傷を最小化しながら正孔輸送層の正孔移動度を向上させるペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(Solar Cell)は、太陽光を直接電気に変換させる太陽光発電の核心素子であって、現在、家庭はもとより、宇宙に至るまで電源供給用として広範囲に活用されている。最近、航空、気象、通信分野に至るまで使われており、太陽光自動車、太陽光エアコンなども注目されている。
【0003】
このような太陽電池は、主にシリコン半導体を利用しているが、高純度シリコン半導体の原材料の価格及びそれを用いた太陽電池セルの製造工程の複雑性によって発電コストが高いという問題点がある。すなわち、従来の化石燃料による発電コストよりも3~10倍高いために、各国政府の補助によって市場が成長しているという限界を抱えている。このような理由でシリコンを使用しない太陽電池の研究開発が活性化され、1990年代からは有機半導体素材である染料を利用した染料感応型太陽電池(Dye-Sensitized Solar Cell;DSSC)と導電性高分子を利用した高分子太陽電池(Polymer Solar Cell)とが本格的に研究され始めた。このようなDSSCと高分子太陽電池のような有機半導体基盤の太陽電池とが学界と産業界との多くの努力にも拘らず、事業化段階に至ることができなかったが、最近、DSSCと高分子太陽電池との長所を融合したペロブスカイト太陽電池(perovskite solar cell、PSC)の出現によって次世代太陽電池に対する期待感が一層高くなっている状況である。
【0004】
ペロブスカイト太陽電池は、従来のDSSCと高分子太陽電池との融合型太陽電池であって、DSSCのように液体電解質を使用せず、信頼性が改善され、ペロブスカイトの光学的優秀性によって高効率が可能な太陽電池であり、最近、工程改善、素材改善及び構造改善を通じて持続的に効率が向上している。
【0005】
図1は、ペロブスカイト太陽電池を示す図面である。図1を参照すれば、ペロブスカイト太陽電池100は、基板層10、第1電極層20、正孔輸送層30、ペロブスカイト層40、電子輸送層50及び第2電極層60で構成される。
【0006】
ペロブスカイト太陽電池100は、前記各層での電子または正孔(hole、ホール)の移動度も重要であるが、各層間の界面での電荷抽出も、非常に重要である。前記界面で電荷を迅速に抽出することができなければ、電子とホールとが再結合(recombination)する現象が発生する。
【0007】
一例として、正孔輸送層30に含まれるNiOxは、有機正孔輸送体と比較した時、物質内の高い正孔移動度を有しているが、ペロブスカイト層40との界面で効率的に正孔抽出(hole extraction)を行うことができなくて太陽電池100の特性に悪影響を与えることができる。正孔抽出度を向上させるために、添加剤を使用するか、高い熱を利用してNi空孔(vacancy)の調節が可能であるが、正孔輸送層30の下面に積層されている基板層10または第1電極層20として主に使われるITO(Indium tin oxide)は、200℃以上の温度で抵抗が大きく増加するなど、高温熱処理による損傷が発生するために、基板層10または第1電極層20に損傷を加えず、正孔抽出度を向上させる方法に対する改善策が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、基板層または電極層の損傷を最小化しながら正孔輸送層の正孔移動度及び正孔抽出度を向上させるペロブスカイト太陽電池の製造方法及びそれから製造されたペロブスカイト太陽電池を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を果たすために、本発明の一側面によるペロブスカイト太陽電池の製造方法は、(ステップS1)基板層、第1電極層及び金属酸化物を含む正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)が順次に積層された積層物の前記正孔輸送層に、a)酸化剤を処理するか、b)紫外線及びオゾン処理するか、c)酸素プラズマ処理するか、またはd)二酸化窒素ガス処理して、前記金属酸化物を酸化させる段階;及び(ステップS2)前記積層物の前記正孔輸送層上にペロブスカイト層、電子輸送層及び第2電極層を順次に積層させる段階;を含む。
【0010】
ここで、前記(ステップS1)は、前記正孔輸送層に前記酸化剤を含む溶液を処理して、前記金属酸化物を酸化させた後、前記溶液に含まれた溶媒を除去する段階をさらに含みうる。
【0011】
そして、前記(ステップS1)の前記金属酸化物は、NiOxでもある。
【0012】
この際、前記(ステップS1)で、前記NiOxを酸化させて前記正孔輸送層のNi空孔を向上させたものである。
【0013】
そして、前記(ステップS1)で、前記NiOxを酸化させて前記正孔輸送層に含まれたNi2+の一部をNi3+に酸化させたものである。
【0014】
この際、前記Ni3+の含量と、前記Ni2+及びNi3+の全体含量の比が、0.6以下である。
【0015】
一方、前記第1電極層及び前記第2電極層は、互いに独立してITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、及びZnOからなる群から選択される何れか1つ以上を含むものである。
【0016】
そして、前記電子輸送層は、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物、及びSrTi酸化物からなる群から選択される何れか1つ以上を含むものである。
【0017】
一方、本発明の他の側面によるペロブスカイト太陽電池は、基板層、第1電極層、金属酸化物を含む正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)、ペロブスカイト層、電子輸送層及び第2電極層が順次に積層されたものであり、前記金属酸化物は、NiOxであり、前記正孔輸送層は、Ni2+及びNi3+を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、正孔輸送層に200℃以上の高温熱処理を加えず、a)酸化剤を処理するか、b)紫外線及びオゾン処理するか、c)酸素プラズマ処理するか、またはd)二酸化窒素ガス処理して、正孔輸送層に含まれた金属酸化物を酸化させることにより、基板層または電極層に損傷を加えずとも、正孔輸送層の正孔移動度または正孔抽出度を向上させうる。
【0019】
このように、正孔輸送層の正孔抽出度が向上すれば、ペロブスカイト層との界面で非効率的な正孔抽出による再結合を防止して究極的に光電変換効率を向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を行うものなので、本発明は、そのような図面に記載の事項のみに限定されて解釈されてはならない。
【0021】
図1】ペロブスカイト太陽電池を示す側面図である。
図2】本発明による基板層、第1電極層及び正孔輸送層が積層された積層物を示す側面図である。
図3】本発明の一実施例による酸化剤処理を通じて正孔輸送層のNi空孔を向上させたことを示す概念図である。
図4】NiOxを含む正孔輸送層を酸化処理していない場合のUPS分析結果を示すグラフである。
図5】NiOxを含む正孔輸送層を酸化処理した場合のUPS分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面を参照して詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常の、または辞書的な意味として限定されてはならず、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義できるという原則を踏まえて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されねばならない。
【0023】
したがって、本明細書に記載の構成は、本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をいずれも代弁するものではないので、本出願時点において、これらを代替しうる多様な均等物と変形例とがあることを理解しなければならない。
【0024】
図2は、本発明による基板層、第1電極層及び正孔輸送層が積層された積層物を示す図面である。図2を参照して、本発明によるペロブスカイト太陽電池の製造方法を説明すれば、次の通りである。
【0025】
まず、基板層10、第1電極層20及び金属酸化物を含む正孔輸送層(HTL、Hole Transport Layer)30が順次に積層された積層物の前記正孔輸送層30に、a)酸化剤を処理するか、b)紫外線及びオゾン処理するか、c)酸素プラズマ処理するか、またはd)二酸化窒素ガス処理して、前記金属酸化物を酸化させる(ステップS10)。
【0026】
このように、前記正孔輸送層30に200℃以上の高温熱処理を加えず、酸化剤を処理するなどの前記方式を通じて、正孔輸送層30に含まれた金属酸化物を酸化させることにより、基板層10または第1電極層20に損傷を加えずとも、正孔輸送層30の正孔移動度または正孔抽出度を向上させうる。
【0027】
この際、前記酸化剤は、金属酸化物を酸化させて、正孔輸送層に含まれた金属空孔を向上させるか、金属イオンの酸化数を増加させる物質であれば、いずれも使用が可能であるが、具体的には、H、HNO、HSO、KNOなどが使われる。
【0028】
ここで、前記(ステップS1)は、前記正孔輸送層30に前記酸化剤を含む溶液を処理して、前記金属酸化物を酸化させた後、前記溶液に含まれた溶媒を除去する段階を含みうる。
【0029】
この際、前記酸化剤を含む溶液を前記正孔輸送層30の上面にスピンコーティングするか、前記積層物を前記溶液に浸漬させるディッピングコーティングなどの溶液工程を進行した後、前記金属酸化物を酸化させた後、溶媒を蒸発させて除去することができる。
【0030】
前記溶媒は、追って蒸発を容易にするために、揮発性を有する溶媒であり、さらに具体的には、脱イオン水、エチルエーテル、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどを含むアルコール類などが可能であるが、これに限定されるものではない。前記溶媒蒸発時に、ペロブスカイトに損傷を加えないようにするために、150℃以下の温度で熱を加えることができる。
【0031】
そして、本発明による前記紫外線及びオゾン処理は、最小5分以上処理することにより、金属酸化物を酸化させることができる。
【0032】
また、本発明の酸素プラズマ処理は、200℃未満の温度に保持される低温酸素プラズマ処理である。
【0033】
また、本発明の前記二酸化窒素ガス処理は、二酸化窒素を含む乾燥空気(dry air)を前記正孔輸送層30の上面に流すことにより、前記金属酸化物を酸化させるものである。この際、前記乾燥空気内の二酸化窒素の濃度は、5~1,000ppmであり、温度は、25~35℃に保持されるものである。
【0034】
金属酸化物を酸化させる段階を通じて前記正孔輸送層30の表面のみを酸化させることもでき、前記正孔輸送層30の全体を酸化させることもできる。
【0035】
一方、前記基板層10は、光を通過させる透明な物質を含みうる。また、前記基板層10は、所望の波長の光を選別的に通過させる物質を含みうる。前記基板層10は、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)のようなTCO(Transparent Conductive Oxide)、ガラス、石英、またはポリマーを含み、例えば、前記ポリマーは、ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)のうち少なくとも何れか1つを含みうる。
【0036】
前記基板層10は、例えば、100~150μmの範囲の厚さを有することができ、例えば、125μmの厚さを有しうる。しかし、前記基板層10の材質及び厚さは、前記記載の内容のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想によって適切に選択されうる。
【0037】
そして、前記第1電極層20は、透光性を有する導電性素材で形成されうる。透光性を有する導電性素材は、例えば、透明導電性酸化物、炭素質導電性素材及び金属性素材などを含みうる。透明導電性酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ZnOなどが使われる。炭素質導電性素材としては、例えば、グラフェンまたはカーボンナノチューブなどが使われ、金属性素材としては、例えば、金属(Ag)ナノワイヤ、Au/Ag/Cu/Mg/Mo/Tiのような多層構造の金属薄膜が使われる。本明細書において、「透明」という用語は、光を一定程度以上透過することを言い、必ずしも完全な透明を意味するものと解釈されない。前述した物質は、必ずしも前述した実施例に限定されるものではなく、多様な材質で形成され、その構造も、単層または多層になるなど、多様な変形が可能である。
【0038】
この際、前記第1電極層20は、前記基板層10上に積層されて形成されても、前記基板層10と一体として形成されても良い。
【0039】
そして、前記第1電極層20上には、正孔輸送層30が積層され、これは、ペロブスカイト層40から生成される正孔を第1電極層20に伝達する役割を果たす。前記正孔輸送層30は、酸化タングステン(WOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化バナジウム(V)、酸化ニッケル(NiOx)及びこれらの混合物から選択される金属酸化物のうちの少なくとも何れか1つを含みうる。また、単分子正孔輸送物質及び高分子正孔輸送物質からなる群から選択される少なくとも何れか1つを含みうるが、これに限定されず、当該業界で使われる物質であれば、限定されずに使用することができる。例えば、前記単分子正孔輸送物質としてspiro-MeOTAD[2,2’,7,7’-tetrakis(N,N-p-dimethoxy-phenylamino)-9,9’-spirobifluorene]を使用することができ、前記高分子正孔輸送物質としてP3HT[poly(3-hexylthiophene)]、PTAA(polytriarylamine)、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)またはpolystyrene sulfonate(PEDOT:PSS)を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
また、前記正孔輸送層30には、ドーピング物質がさらに含まれ、前記ドーピング物質としては、Li系ドーパント、Co系ドーパント、Cu系ドーパント、Cs系ドーパント及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるドーパントを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
前記正孔輸送層30は、第1電極層上に正孔輸送層用前駆体溶液を塗布し、乾燥して形成され、前記前駆体溶液を塗布する前、第1電極層にUV-オゾン処理を通じて第1電極層20の仕事関数(work function)を下げ、表面不純物を除去し、親水性処理ができる。前駆体溶液の塗布は、スピンコーティングのような方法を使用することができるが、これに限定されるものではない。形成された正孔輸送層30の厚さは、10~500nmである。
【0042】
この際、前記正孔輸送層30の金属酸化物は、NiOxであることが望ましいが、他の有機正孔輸送体または他の金属酸化物と比較した時、物質内の高い正孔移動度を有している長所がある。
【0043】
一方、図3は、本発明の一実施例による酸化剤処理を通じて正孔輸送層30のNi空孔を向上させたことを示す概念図である。図3を参照すれば、前記(ステップS1)で、前記NiOxを酸化させて前記正孔輸送層30のNi空孔を向上させたものである。そして、前記NiOxを酸化させて前記正孔輸送層30に含まれたNi2+の一部をNi3+に酸化させたものである。このようにNi空孔が増加するか、Ni2+の一部をNi3+に酸化させれば、正孔移動度が増加し、抵抗が減少して、正孔輸送層30の正孔抽出度を向上させる。
【0044】
ここで、前記Ni3+の含量と、前記Ni2+及びNi3+の全体含量の比が、0.6以下、具体的には、0.3以下でもある。この際、前記含量の比が0.6を超過すれば、すなわち、Ni3+の含量が過度に多くなれば、光透過率(Optical transmittance)が減少する問題が発生する。そして、Ni3+の比率が大きくなるほど、前記正孔輸送層30のvalence band maximum(VBM)は、下向き移動(downward shift)する。前記Ni3+の含量と、前記Ni2+及びNi3+の全体含量の比が、0.6、さらに望ましくは、0.3程度である場合には、ペロブスカイト層とエネルギーマッチング(energy matching)がよく起こって効率的な電荷抽出(charge extraction)が起こりうるが、もし、Ni3+の含量が過度に多くなって、VBM(work function)が過度に落ちれば、ペロブスカイトとの界面でエネルギーレベルアライメント(energy level alignment)のミスマッチ(mismatch)が発生するために、界面での正孔抽出を妨害する問題が発生する。
【0045】
図4は、NiOxを含む正孔輸送層を酸化処理していない場合のUPS分析結果を示すグラフであり、図5は、NiOxを含む正孔輸送層を酸化処理した場合のUPS分析結果を示すグラフであり、下記表1は、前記それぞれの場合に対するwork functionとvalence band edge値とを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
NiOxを酸化処理した後、Ni3+の比率が増加するにつれて、work functionの数値は増加し、valence band edge値と近くなることを確認することができ、これは、p typeドーピングのような効果があることを意味する。
【0048】
1)NiOx(w/o treatment)場合、
work function:21.22eV(He|UPS spectra)-16.56eV=4.66eV
valence band edge:4.66(work function)eV+0.95eV=5.61eV
【0049】
2)NiOx(w/treatment)場合、
work function:21.22eV(He|UPS spectra)-16.06eV=5.16eV
valence band edge:5.16(work function)eV+0.53eV=5.69eV
【0050】
引き続き、前記積層物の前記正孔輸送層30上にペロブスカイト層40、電子輸送層50及び第2電極層60を順次に積層させる(ステップS2)。
【0051】
本発明によるペロブスカイト太陽電池100では、太陽光を吸収して光電子-光正孔対を生成する光活性物質としてペロブスカイト化合物を採択した。ペロブスカイトは、直接型バンドギャップ(direct band gap)を有しながら光吸収係数が550nmで1.5×10cm-1程度と高く、電荷移動の特性に優れ、欠陥に対する耐性に優れているという長所がある。
【0052】
また、ペロブスカイト化合物は、溶液の塗布及び乾燥という極めて簡単かつ容易であり、低価の単純な工程を通じて光活性層を成す光吸収体を形成できるという長所があり、塗布された溶液の乾燥によって自発的に結晶化が行われて、粗大結晶粒の光吸収体の形成が可能であり、特に、電子と正孔いずれに対する伝導度に優れている。
【0053】
このようなペロブスカイト化合物は、下記の化学式1の構造で表示される。
ABX
(ここで、Aは、1価の有機アンモニウム陽イオンまたは金属陽イオン、Bは、2価の金属陽イオン、Xは、ハロゲン陰イオンを意味する)
【0054】
ペロブスカイト化合物は、例えば、CHNHPbI、CHNHPbICl3-x、MAPbI、CHNHPbIBr3-x、CHNHPbClBr3-x、HC(NHPbI、HC(NHPbICl3-x、HC(NHPbIBr3-x、HC(NHPbClBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbI、(CHNH)(HC(NH1-yPbICl3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbIBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbClBr3-xなどが使われる(0≦x、y≦1)。また、ABXのAにCsが一部ドーピングされた化合物も使われる。
【0055】
そして、前記電子輸送層50は、前記ペロブスカイト層40上に位置し、ペロブスカイト層40から生成された電子を第2電極層60に容易に伝達させる機能を行える。電子輸送層50は、金属酸化物を含み、例えば、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物、SrTi酸化物などが使われる。本発明による電子輸送層50は、コンパクトな構造のTiO、SnO、WOまたはTiSrOなどを含むこともある。このような電子輸送層50は、必要に応じてn型またはp型ドーパントをさらに含みうる。
【0056】
前記のような正孔輸送層30/ペロブスカイト層40/電子輸送層50は、前述した層間構造及び/または物質以外にも、ペロブスカイト太陽電池100を構成する多様な層構造及び物質が適用され、前記正孔輸送層30と前記電子輸送層50は、互いに位置が変わって形成されうる。
【0057】
そして、前記第2電極層60は、透光性を有する導電性素材で形成されうる。透光性を有する導電性素材は、例えば、透明導電性酸化物、炭素質導電性素材及び金属性素材などを含みうる。透明導電性酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ZnOなどが使われる。炭素質導電性素材としては、例えば、グラフェンまたはカーボンナノチューブなどが使われ、金属性素材としては、例えば、金属(Ag)ナノワイヤ、Au/Ag/Cu/Mg/Mo/Tiのような多層構造の金属薄膜が使われる。本明細書において、「透明」という用語は、光を一定程度以上透過することを言い、必ずしも完全な透明を意味するものと解釈されない。前述した物質は、必ずしも前述した実施例に限定されるものではなく、多様な材質で形成され、その構造も、単層または多層になるなど、多様な変形が可能である。
【0058】
一方、図示されていないが、第2電極層60上には、第2電極層60の抵抗を下げ、電荷の伝達をさらに容易にするために、バス電極(図示せず)がさらに配されてもよい。前記バス電極は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr及び/またはこれらの化合物などで形成されうる。
【0059】
一方、本明細書と図面とに開示された本発明の実施例は、本発明の技術内容を容易に説明し、本発明の理解を助けるために、特定の例を提示したものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。これに開示された実施例の以外にも、本発明の技術的思想に基づいた他の変形例が実施可能であるということは、当業者に自明である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】