(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】リソース制限されたデバイスと、非静止衛星および関連システムとの間のデータの送信のための方法
(51)【国際特許分類】
H04W 72/1268 20230101AFI20230906BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20230906BHJP
【FI】
H04W72/1268
H04W84/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580924
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 IB2020000888
(87)【国際公開番号】W WO2022003388
(87)【国際公開日】2022-01-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522501306
【氏名又は名称】ユーテルサット・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒルシュ,アントナン
(72)【発明者】
【氏名】ブリヒラー,ジョフロワ
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067AA43
5K067BB27
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
本発明は、地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部の、少なくとも1つの非静止衛星への送信のための方法に関し、方法は、非静止衛星によって実行され、以下のステップ、すなわち:- 少なくとも1つの無線カバレッジ測定を定期的に実行するステップ、- 実行された最後の無線カバレッジ測定に基づいて、動的高度発信基準を計算するステップ、- 少なくとも1つの信号を地球に向けて定期的に発信するステップであって、信号は、少なくとも動的高度発信基準を含む、ステップ、- 地上デバイスの位置に対する非静止衛星の位置が、動的高度発信基準を検証する場合:- 地上デバイスによって送信された少なくとも1つの信号を受信するステップであって、信号は、少なくとも1つの地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部を含む、ステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部の、少なくとも1つの非静止衛星への送信のための方法であって、方法は、非静止衛星によって実行され、以下のステップ、すなわち、
- 少なくとも1つの無線カバレッジ測定を定期的に実行するステップ、
- 実行された最後の無線カバレッジ測定に基づいて、動的高度発信基準を計算するステップ、
- 少なくとも1つの信号を地球に向けて定期的に発信するステップであって、信号は、少なくとも動的高度発信基準を含む、ステップ、
- 地上デバイスの位置に対する非静止衛星の位置が、動的高度発信基準を検証する場合、
地上デバイスによって送信された少なくとも1つの信号を受信するステップであって、信号は、少なくとも1つの地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部を含む、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
無線カバレッジ測定が、スペクトル分析、ノイズフロア測定、および干渉測定を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動的高度発信基準の計算が、リンクバジェットを計算するステップを含み、リンクバジェット計算が、無線カバレッジ測定、衛星受信周波数、および受信周波数に対する衛星無線カバレッジを使用して実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
無線カバレッジ測定および発信が実行される期間が異なることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部の、少なくとも1つの非静止衛星への送信のための通信システムであって、非静止衛星は、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される、通信システム。
【請求項6】
非静止衛星が、低地球軌道衛星であることを特徴とする、請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
地上デバイスが、リソース制限されたデバイスであることを特徴とする、請求項5または6に記載の通信システム。
【請求項8】
プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法のうちのいずれか1つを、コンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
コンピュータによって実行されると、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法のうちのいずれか1つを、コンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、非静止衛星および地上デバイスを備えるシステムにおける通信の分野である。
【0002】
本明細書は、リソース制限されたデバイスと、非静止衛星および関連システムとの間のデータの送信のための方法に関し、特に、非静止衛星は、低地球軌道(「LEO」)衛星であり、LEO衛星のビーコン信号の利用を活用することによって、通信が強化される。
【背景技術】
【0003】
モノのインターネット(「IoT」)ネットワークおよび低電力広域ネットワーク(「LPWAN」)の発展に伴い、低地球軌道衛星コンステレーションは、そのようなシステムと特に良好に統合されるため、興味深いことが判明した。実際、LEO衛星によると、たった1つの衛星から、全世界をカバーできる。LEO衛星コンステレーションは、たとえば、データ収集、LPWANまたはIoTネットワークの一部からのデータの取得、および前記ネットワークの他の部分へのデータの配信に使用される。
【0004】
ほとんどの場合、これらコンステレーションは、位置に起因してネットワークの残りの部分と通信できない地上オブジェクトから、データを取得し、前記データを、ネットワークの地上局に配信して、このデータを、ネットワークの残りの部分によるアクセスを可能にする。オブジェクトは、衛星の無線可視範囲にあるとき、LEO衛星にメッセージを発信し、LEO衛星は、地上局の無線可視範囲にあるとき、地上局にメッセージを発信する。そのため、LEO衛星コンステレーションは、コンステレーションと、LPWANまたはIoTネットワークとを備えるシステムにおける中継として使用される。
【0005】
Argos(R)、Orbcomm(R)など、これらシステムの大部分では、LEOコンステレーションによって提供されるカバレッジは、一定ではなく、これは、オブジェクトが、メッセージを送信するために、常に無線可視範囲にLEO衛星を有している訳ではないことを意味する。
【0006】
送信できるようにするために、オブジェクトは、コンステレーション内の衛星の将来の通過を予測する必要があり、多くの場合、衛星可視範囲は、その無線カバレッジに等しくないので、システムの無線カバレッジ内で送信し、無線送信を最適化するために、衛星可視範囲内での相対位置を知る必要もある。
【0007】
既存のシステムは、コンステレーション天体暦に依存して、送信のために、LEO衛星の通過および時間ウィンドウを予測する。天体暦の使用には、主に2つの欠点がある。
【0008】
第1に、LEO衛星の次の通過を予測できるようにするために、送信オブジェクトもそれ自体の位置を知る必要があり、これは:
- 固定送信機オブジェクトの場合、送信機オブジェクトが使用されるときにその位置を送信機オブジェクトに示すこと、
- モバイル送信機オブジェクトの場合、(たとえば、地球測位システム「GPS」タイプの)無線測位システムを追加することを示唆する。GPSの追加は、オブジェクトの無線モジュールのコストと、オブジェクトのバッテリ消費とに大きな影響を与え、これは、送信機が非常に限られた電源で、数年間、メッセージを送信可能である必要がある性質上、LPWA送信の重要な特徴である。
【0009】
第2の欠点は、(特に、抗力摂動(drag perturbation)のモデル化が不正確であるため、高度500から600kmを周回する衛星の場合)天体暦を規則的にオブジェクトに送信する必要があることである。送信機は:
- 通過推定の誤差が、十分に信頼できることを保証するために、数週間程度のオーダの頻度で、および/または
- オブジェクトの衛星可視時間などの短いウィンドウを推定する必要がある場合は、1日程度のオーダの頻度で
天体暦を更新する必要がある。
【0010】
更新された天体暦を送信するには:
- 送信機がこの情報を、外部のソースから(たとえば、地上ネットワークを介して)衛星へダウンロードし、したがって、モバイルオブジェクトが、地上ネットワークから十分規則的に見えるようにすることが必要である。多くの用途では、これは当てはまらない。たとえば、海上輸送の場合、コンテナは、海上で数週間/数か月過ごすことがある。
- あるいは、LEO衛星が、これら天体暦を、通信チャネルを介して、オブジェクトにブロードキャストする。このソリューションの問題は、LEO衛星に大きな影響を与え、毎秒数百ビットの送信チャネルの実現を必要とすることである。さらに、オブジェクトによるこれら天体暦の受信は、かなりの量の電力を消費する可能性があるため、自律性に影響を与える。
【0011】
モバイル地上オブジェクトの別の問題は、LEO衛星の受信周波数にリンクしている。使用される周波数は、国によって地理的に異なる。たとえば、米国(902-921MHz)におけるISM帯域は、欧州(868-870MHz)で使用されているものとは異なるため、衛星を介して通信するハイブリッドオブジェクトに、中心周波数および帯域幅情報を提供する必要がある。モバイルオブジェクトの場合、(GPSなどの測位モジュールを介して)その位置を知り、規制周波数を参照するテーブルを有する必要がある。天体暦と同様に、現在、この情報をダウンロードまたは更新するには、オブジェクトが地上ネットワークによってカバーされているか、または接続されている必要がある。
【0012】
主な問題は、現在のシステムが、オブジェクトの位置に関する情報を収集して有し、この情報を転送するために、地上オブジェクトにGPSを装備する必要があることである。この要件は、地上オブジェクトのコストおよびエネルギ消費に影響を与える。この位置データは、情報の意図された受信者ではないエンティティによってさらに傍受され得る。
【0013】
別の問題は、衛星の無線カバレッジ内の地上オブジェクトの分布にリンクする衝突問題であり:複数のオブジェクトが同時に発信しようとすると、信号が衝突するリスクがあり、したがって、LEO衛星がすべてのオブジェクトから、すべてのデータを受信しないという問題が発生する可能性がある。オブジェクトからの低いエネルギ消費しか要求せずに、衝突の低減を可能にするソリューションは、最新技術に存在しない。
【0014】
別の問題は、ISM(産業、科学、および医療)帯域において、干渉のレベルが経時的に変化することである。ノイズフロアは、密集した無線エリア(たとえば、衛星が大都市の上空を通過する場合)において上昇する。これにより、リンクバジェットが閉じるエリアが減少する可能性がある。そのような場合、無線受信カバレッジ内にあるがカバレッジの端に位置するオブジェクトは、フレームを送信しようとするが、リンクバジェットが閉じないため(つまり、同等のリンクマージンが発生しないため)、フレームは衛星によって復号されない。これにより、サービス品質(QoS)が低下する。
【0015】
したがって、地上デバイスが、必要とするエネルギが少なく、低コストの地上デバイスで、強化されたサービス品質を有するデータを、衛星に送信できるようにするためのソリューションが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本明細書は、低コストの地上デバイスが、低電力しか必要とせずに、強化されたサービス品質を有するデータを送信できるソリューションを提供することによって、上記の問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、これは、地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部の、少なくとも1つの非静止衛星への送信のための方法を提供することによって満たされ、方法は、非静止衛星によって実行され、以下のステップを含む:
- 少なくとも1つの無線カバレッジ測定を定期的に実行するステップ。
- 実行された最後の無線カバレッジ測定に基づいて、動的高度発信基準を計算するステップ。
- 少なくとも1つの信号を地球に向けて定期的に発信するステップであって、この信号は、少なくとも動的高度発信基準を含む、ステップ。
- 地上デバイスの位置に対する非静止衛星の位置が、動的高度発信基準を検証する場合:
- 地上デバイスによって送信された少なくとも1つの信号を受信するステップであって、この信号は、少なくとも1つの地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部を含む、ステップ。
【0018】
本発明のおかげで、非静止衛星が無線カバレッジ内にあるとき、地上デバイスは常にデータを送信することを保証され、ノイズレベルが十分に低いのでデータを受信することができる。非静止衛星は、無線ノイズの定期的な測定を実行して、ビーコン信号の最新の高度基準を維持する。このソリューションによって、非静止衛星側で測定を実行し、この情報を低エネルギ消費手法で送信することにより、少量のエネルギしか消費しない地上デバイスを有することができる。
【0019】
本発明による方法はまた、個別に、または技術的に可能なそれらの任意の組合せに従って考慮される、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る:
- 無線カバレッジ測定は、スペクトル分析、ノイズフロア測定、および干渉測定を含む。
- 動的高度発信基準の計算は、リンクバジェットを計算するステップを含み、リンクバジェット計算は、無線カバレッジ測定、衛星受信周波数、および受信周波数に対する衛星無線カバレッジを使用して実行される。
- 無線カバレッジ測定および発信が実行される期間は異なる。
【0020】
本発明の別の態様は、地上デバイスによって記憶されたデータの少なくとも一部の、少なくとも1つの非静止衛星への送信のための通信システムに関し、非静止衛星は、本発明の第1の態様による方法を実行するように構成される。
【0021】
本発明による通信システムはまた、以下の特徴の1つ以上を有し得、個別に、または技術的に可能なその任意の組合せに従って考慮される:
- 非静止衛星は、低地球軌道衛星または中地球軌道衛星である。
- 地上デバイスは、リソース制限されたデバイスである。
【0022】
本発明の別の態様は、プログラムがコンピュータによって実行されると、本発明による方法のいずれか1つをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、コンピュータによって実行されると、本発明による方法のいずれか1つをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体に関する。
【0024】
本発明は、地上デバイスがモバイルであり、地上ネットワークへの接続が不可能であるときに特に興味深い。実際、本発明によって、リソース制限された地上デバイスは、天体暦を維持する必要なく、GPSに依存することなく、位置を変更することができ、長期間、非静止衛星にデータを送信するのに十分な自律性を有し、常に位置に関係なく、正確なポジショニングと、強化されたサービス品質とを有することができる。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、指針として、限定しない、以下に与えられる説明から明らかになる:
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】地上デバイスによって実行される本発明による方法の概略図である。
【
図3】地上デバイスによって実行される本発明による方法のステップの概略図である。
【
図4】非静止衛星によって実行される本発明による方法の概略図である。
【
図5】
図2の方法を実行する地上デバイスと、
図4の方法を実行する非静止衛星との間の交換の概略図である。
【
図6】地上デバイスによって実行される本発明による別の方法の概略図である。
【
図7】非静止衛星によって実行される本発明による別の方法の概略図である。
【
図8】非静止衛星によって実行される本発明による別の方法の概略図である。
【
図9】地上デバイスによって実行される本発明による別の方法の概略図である。
【
図10】非静止衛星による地域情報のブロードキャスティングと、別の地域に位置する地上デバイスによる情報の受信との概略図である。
【
図11】非静止衛星による地域情報のブロードキャスティングと、2つの地上デバイスによる情報の受信との概略図である。
【
図12】非静止衛星による地域情報のブロードキャスティングと、2つの地上デバイスによる情報の受信との概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
より明確にするために、同一または類似の要素は、すべての図において同一の参照符号によって印される。
【0028】
図1は、本発明による方法を実施する通信システム1を示す。通信システム1は、非静止衛星20および地上デバイス10を備える。
【0029】
非静止衛星20は、地球などの天体を周回する衛星である。非静止衛星20が地球を周回するとき、非静止衛星20は、(軌道高度が2000km未満の)低地球軌道衛星、または(軌道高度が2000kmよりも高く、静止軌道よりも低い)中地球軌道衛星となることができる。非静止衛星20は、少なくともプロセッサおよびメモリを備え、メモリは、プロセッサによって実行されると、後述する方法のステップをプロセッサに実行させる命令を記憶している。非静止衛星20はさらに、少なくとも1つの通信ペイロードを備え、通信ペイロードは、天体に向けて信号を送受信するように構成された少なくとも1つのトランスポンダを備える。信号は、たとえば40度または60度(視野の半分の衛星ビーム)など、様々な幅のスポットビームで送信できる。
【0030】
地上デバイスは、少なくともプロセッサおよびメモリを備えるデバイスであり、メモリは、プロセッサによって実行されると、後述する方法のステップをプロセッサに実行させる命令を記憶している。好ましくは、地上デバイス10は、モバイルデバイスであり、これは、デバイスが、たとえば軽量であることにより、またはデバイスを移動可能にする手段を備えることにより、移動可能であることを意味する。好ましくは、地上デバイス10は、リソース制限されたデバイスである。リソース制限されたデバイスとは、低コストプロセッサおよび/または低コストメモリなどの限られたプロセッサおよび/または限られたメモリ、あるいは、Sigfix(R)ネットワーク、Lora(R)ネットワーク、またはIoTデバイスのリンクを可能にする他の任意のネットワークのようなIoTネットワークに接続可能であるモノのインターネットデバイスなどのデバイスであると理解される。さらに、地上デバイスは、少なくとも非静止衛星20と通信する、すなわち、信号を送受信するように構成された少なくとも通信モジュールを備える。さらに、地上デバイス10の通信モジュールは、たとえば地上局30に向かって、地上IoTネットワークを通して、または他の任意のネットワークを通して、有線手段またはワイヤレスで、通信するように構成できる。地上IoTネットワークを通して、または他の任意のネットワークを通して、有線手段またはワイヤレスによって、たとえば、地上局30に向けて通信するために、地上デバイス10は、別の通信モジュールを備えることができる。
図1に表される例では、地上デバイス10は、地上局30に直接到達することも、地上局30に到達することを可能にするネットワークに到達することもできない。好ましくは、リソース制限された地上デバイス10は、本明細書に記載された本発明による方法のうちの少なくとも1つの方法を使用して、非静止衛星20に到達することができる。
【0031】
本発明による第1の方法が、
図2に表される。
図2に表される方法M1aは、地上デバイス10によって実行され、6つのステップを含む。
【0032】
第1のステップ11において、地上デバイス10は覚醒モードに入る。地上デバイス10は、たとえば、覚醒モードおよび休止モードなどのいくつかの機能モードを有することができる。休止モードでは、地上デバイス10は、通信を受信できない可能性があり、したがってエネルギを節約する。休止モードにある地上デバイス10は、処理能力が制限される可能性がある。覚醒モードでは、地上デバイス10は、非静止衛星20からの信号を能動的に探索する。覚醒モードには、定期的に、たとえば1分ごとに5秒間入る。そのようにして、地上デバイス10は、最新技術と比較してエネルギを節約し、依然として非静止衛星20と通信することができる。覚醒モードにあるとき、地上デバイスは、非静止衛星20からの少なくとも1つの信号をリスンする。地上デバイス10が覚醒モードにある間、たとえば5秒間の間、少なくとも1つの信号を受信しない場合、地上デバイス10は、所定の期間、休止モードに戻る。
【0033】
ステップ12において、連続するドップラシフト推定が実行される。ドップラシフト推定は、2つのサブステップ121およびサブステップ122を含む。
【0034】
最初に、受信のサブステップ121において、地上デバイス10は、地上デバイス10が覚醒モードにある間、非静止衛星20から少なくとも1つの信号を受信する。この信号は、以下、「ビーコン信号」または「信号」と同様に呼ばれる。受信された信号は、非静止衛星20によって使用される現在の受信周波数の少なくとも1つの周波数パラメータと、少なくとも1つの高度発信基準とを含む。有利なことに、本発明は、ドップラシフトを推定するために信号が受信されるという事実と、受信された信号の内容との両方を使用して、エネルギ消費を制限しながら地上デバイス10の能力を高めることを可能にする。
【0035】
この受信は、
図4に表される方法M2aのステップ21における非静止衛星20による信号の発信に続く。方法M2aでは、信号を地上デバイス10に向けて発信するステップが、非静止衛星20によって定期的に実行され、信号は、非静止衛星20によって使用される現在の受信周波数の少なくとも1つの周波数パラメータと、少なくとも1つの高度発信基準とを含む。このステップは、たとえば、非静止衛星20側のエネルギを節約するために5秒ごとに1秒間定期的に繰り返されるが、連続的に実行することもできる。衛星側で連続的に実行されるとき、5秒ごとに1秒間とは対照的に、地上デバイス10は、その5分の1しかリスンできない。したがって、このパラメータは、非静止衛星20に搭載された電力と、地上デバイス10の自律性との両方を考慮して選択する必要がある。
【0036】
「周波数パラメータ」とは、信号の発信時に非静止衛星20によって使用された現在の受信周波数を、地上デバイス10が取得できるようにする任意のインディケーションであると理解される。現在の受信周波数は、好ましくは、使用される中心周波数およびチャネル幅を含む。このインディケーションは、信号におけるビットで符号化されることが好ましい。ビット数は、非静止衛星20によって使用される可能な受信周波数の総数に依存する。たとえば、8つの異なる受信周波数(または8つの異なる無線構成)の場合、3ビットしか使用できず、16の異なる受信周波数の場合、4ビットを使用できる。インディケーションを受信すると、地上デバイス10は、たとえば、ビット形式の番号が、使用されるべき所与の周波数、およびチャネル幅にリンクされているルックアップテーブルをチェックする。たとえば、第1の構成は、中心周波数が868.4MHzであり、チャネル幅が400kHzである欧州の構成とすることができる。別の構成では、たとえばアジアでは、中心周波数が902MHzであり、チャネル幅が400kHzであり得る。別の実施形態では、非静止衛星20に発信するときに使用すべき周波数と、チャネル幅とを、信号に挿入することによって、パラメータを、信号に直接含めることができる。このことは、地上デバイス10における周波数ルックアップテーブルの必要性を取り除くが、信号データを、より大きくする。本発明は、ビーコン信号で地上デバイス10に送信するために、または、ビーコン信号を使用して地上デバイス10に送信するために、この情報をフォーマットする他の任意の手法をカバーする。
【0037】
「高度発信基準」とは、地上デバイス10が非静止衛星20に発信するために、非静止衛星20が検証すべき、地上デバイス10の上方の最小高度を定義する基準を、地上デバイスが取得できるようにする任意のインディケーションであると理解される。インディケーションを受信するときに、地上デバイスは、たとえば、ビット形式の番号が、高度しきい値にリンクされるルックアップテーブルを備える。インディケーションは、信号内のビットで符号化されることが好ましい。ビット数は、可能な無線構成の数に依存する可能性がある。可能な無線構成は、非静止衛星20ビームの幅に依存する可能性がある。たとえば、2つの可能な構成は、狭いビームの場合は「狭」、広いビームの場合は「広」であり得る。インディケーションを受信すると、地上デバイス10は、たとえば、ビット形式の構成番号が、非静止衛星20に発信するために使用されるべき所与の高度しきい値にリンクされているルックアップテーブルをチェックする。高度しきい値は、各構成にリンクされ得る。たとえば、広ビーム構成の場合、20度の高度しきい値を指定できる一方、狭ビーム構成の場合、45度の高度しきい値を指定できる。別の実施形態では、高度基準は、非静止衛星20に発信するときに使用されるべき高度しきい値を信号に挿入することによって、信号に直接含めることができる。このことは、地上デバイス10における周波数ルックアップテーブルの必要性を取り除くが、信号データを、より大きくする。本発明は、ビーコン信号で地上デバイス10に送信するため、またはビーコン信号を使用して地上デバイス10に送信するために、この情報をフォーマットする他の任意の手法をカバーする。
【0038】
サブステップ122において、地上デバイス10は、受信された信号の周波数に基づいてドップラシフト推定を実行する。そのようなドップラシフトは、Hz単位において、信号で発信された連続波の受信された周波数と、地上デバイス10によって記憶された、連続波の発信時に予想された周波数との差を計算することによって取得される。
【0039】
地上デバイス10は、好ましくはリソース制限されたデバイスであるため、低コストまたは低品質の発振器を使用して、以前のドップラシフト推定を実行する。このように、地上デバイス10によって実行されるドップラシフト推定は、大きく偏り、ドップラシフトの全振幅を超える可能性のある誤差をもたらす。バイアスは通常約20ppmであるが、ドップラシフトは高度550kmで+/-23ppm変動する。本発明は、
図2および
図5に表されるように、ステップ12で連続するドップラシフト推定を実行し、連続するドップラシフト推定に基づく複数の周波数ドップラ変化率に基づいてドップラ変化率を推定することにより、その問題を克服することを可能にする。
【0040】
連続するドップラシフト推定は、たとえば5秒ごとなどの固定周期ベースで、またはたとえば、5秒間隔、その後20秒間隔、その後15秒間隔、その後5秒間隔、または、たとえば5秒間隔で5回の測定、その後30秒間待機してから、その後再び5秒間の5回の測定など、不規則周期ベースで実行することができる。固定回数のドップラシフト測定、つまり同じエネルギ消費の場合、たとえば、5秒間隔で5回の測定を実行し、その後、30秒間待機し、その後、5秒間の5回の測定を再び実行する方が、5秒間隔で10回の測定を実行するより効果的であるため、不規則周期ベースは、規則的周期よりも、より効率的である。実際、第1のケースでは、カバーされる衛星軌道弧は、第2のケースにおけるよりも大きく、そのため、第1のケースおよび第2のケースにおける同じエネルギ消費に対して、地上デバイス10の上方の経路の幾何形状の推定精度が改善される。
【0041】
図5に表されるように、非静止衛星20は、ステップ21において、少なくとも周波数パラメータおよび高度基準パラメータを含むビーコン信号を、非静止衛星20が周回する天体に向けて発信する。ビーコン信号は、方法M1aのステップ12を実行する、すなわち、受信された信号の周波数に基づいてドップラシフト推定を実行する地上デバイス10によって受信される。その後、地上デバイス10は、ドップラ周波数変化率の推定のステップ13における、後での使用のために、実行されたドップラシフトを記憶する。
【0042】
方法M1aにおける
図2において、および
図5において表されるステップ13では、地上デバイスは、ドップラ周波数変化率の推定を実行して、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置を取得し、推定は、複数の計算されたドップラ周波数変化率に関する推定方法を使用することによって実行され、ドップラ周波数変化率の推定は、ドップラシフト測定の導出を含む。たとえば、時間t1からtNで実行されるN個のドップラシフト推定f1、...、fNの場合、地上デバイス10は:
【数1】
を計算することによってN-1個の導関数を計算する。
【0043】
次いで、これらドップラシフト導関数(すなわち、ドップラ周波数変化率)は、ピーク時の衛星の最大高度によって定義された、衛星の現在の経路の幾何形状、および衛星の現在の経路における一時的な地上デバイス10の位置を決定するために、たとえば最小二乗推定方法などの推定方法における入力として使用される。これは、アバカス(つまり、1つ以上の行列)を作成することによって実行され、アバカスは、ピーク時の最大高度と、ピーク前の時間とに応じて、ドップラシフトの値を与える。次いで、地上デバイス10は、推定方法を使用してこれらアバカスを補間し、ドップラ率の連続値からピーク時およびピーク前の時間における最大高度の値を取得する。前記アバカスは、以下の方法から取得される:
【0044】
【数2】
ここで、Reは、天体の半径、R_satは、衛星の高度と天体の半径Rの加算、ωは、天体を中心とした固定フレーム内の衛星のrad/s単位での角速度、θ_maxは、ラジアン単位での経路最大高度、tは、ピーク前の時間、cは、光速、およびfは、周波数である。
【0045】
このようにして、非静止衛星20に対する地上デバイス10の位置が取得される。
【0046】
ドップラシフトの導関数(すなわち、ドップラ周波数変化率)に推定方法を適用することによって、低コスト発振器によって導入された誤差が除去され、結果に影響を与える唯一の値は、ドップラ推定分散である。
【0047】
さらに、方法M1aのステップ14において、地上デバイス10は、送信ウィンドウを定義し、送信ウィンドウは、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置が高度発信基準を検証する期間である。非静止衛星20の推定された現在の経路と、現在の経路における一時的な地上デバイス10の位置とを使用して、高度が高度発信基準よりも上方にある時間ウィンドウの開始および終了の瞬間を推定することによって、たとえば、時間に応じて非静止衛星20の高度を決定するために以下の式を使用して、ウィンドウを定義することができる:
【0048】
【数3】
ここで、γ(t)は、[「Doppler Characterization for LEO Satellites」,Irfan Aliら、1998年3月]に記載されたように、球面三角形において表される場合、時間tにおける非静止衛星20の天底と、地上デバイス10との間の距離である。球面三角形は、3つの頂点M,NおよびPを含み、ここで、γ(t_0)は、頂点M(最大高度における非静止衛星20の天底)とP(地上デバイス10)との間の距離であり、γ(t)は、頂点N(時刻tにおける非静止衛星20の天底)とP(地上デバイス10)との間の距離である。頂点Mと頂点Nとの間の辺は、非静止衛星20が、時間tから地上デバイス10にとって最大高度にある時間t_0まで、地上トレースに沿って天体の表面上で測定された角距離である。
γ(t)は、以下の式を用いて計算できる:
【0049】
【数4】
ここで
【数5】
であり、ここで、t_0は最大高度における瞬間であり、t_vは、非静止衛星20が、地上デバイス10から見えるようになった瞬間であり、γ_0は、瞬間t_vにおける、非静止衛星20の天底と地上デバイス10との間の距離である。
最後に、R_satは、以下の式を使用して判明される:
【0050】
【0051】
ステップ15では、送信ウィンドウ内の送信時間が定義される。送信時間は、別の実施形態で後述するように、ランダムに定義することができる、または、地上デバイス10の位置が、高度基準を検証する最初の時間として、または、送信ウィンドウの開始後の所定の固定遅延における時間、または他の任意の定義として定義することができる。
【0052】
ステップ16において、地上デバイス10は、送信ウィンドウに含まれる送信時間において、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置が、高度発信基準を検証することを検証する。このチェッキングは、非静止衛星20に対する地上デバイス10の、以前のドップラシフト測定値を使用して、以前に計算された相対位置を使用して、実行できるか、または、別の推定が、より少ない数の新たなドップラシフト導関数、およびドップラ率計算を使用して実行できる。たとえば、これは3つの受信された信号を使用して実行できる。
【0053】
方法M1aのステップ17では、地上デバイス10は、送信時間およびビーコン信号で受信された現在の受信周波数で、地上デバイス10によって記憶されたデータの少なくとも一部を含む少なくとも1つの信号を発信する。ステップ17において、地上デバイス10によって発信された信号はさらに、ステップ13またはステップ16で推定された非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置を含むことができる。
【0054】
別の実施形態では、地上デバイス10は、ステップ17において、発信する前に、地上デバイス10が掩蔽された環境にあるか否かであるという事実を有利に考慮する。そうするために、地上デバイス10は、地上デバイス10が送信時間前の期間中に非静止衛星20から別の信号を受信する場合にのみ、発信のステップ17を実行する。この期間は、たとえば10秒とすることができる。これにより、可能な場合にのみ発信することにより、サービス品質(QoS)を向上させ、非静止衛星20による受信を行わない、または受信を低下させる発信を低減することができる。
【0055】
方法M2aのステップ22では、
図4および
図5に表されるように、非静止衛星20は、ビーコン信号内で送信された現在の受信周波数で地上デバイス10によって送信された信号を受信し、信号は、少なくとも1つの地上デバイス10によって記憶されたデータの少なくとも一部を含む。受信された信号はまた、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置と、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置が推定されている時間に関するタイムスタンプとを含む。これにより、地上デバイス10の位置を特定すること、および/または、位置を、地上デバイス10によるその位置の推定時における、受信されたデータの一部に関連付けることが可能になる。非静止衛星20がその絶対位置を知っているので、または地上衛星局40が知っているので、非静止衛星および/または地上衛星局40は、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置に基づいて、および非静止衛星20の絶対位置に基づいて、地上デバイス10の絶対位置を計算することができる。
【0056】
次に、非静止衛星20が、地上衛星局40の上空を通過するとき、非静止衛星20は、
図5に表されるように、データの少なくとも一部を地上局40に送信する。
【0057】
方法M1aの別の実施形態では、非静止衛星20によって送信され、地上衛星20によって受信されるビーコン信号は、信号の発信時間における、非静止衛星20の現在の高度の少なくとも1つの情報をさらに含む。この実施形態では、現在の高度情報を、送信ウィンドウを定義するステップ14で使用して、調整された送信ウィンドウを定義することができる。以前に示したように、高度は、アバカスの計算に介入する。高度情報を使用して、地上デバイス10は、いくつかのアバカスが、地上デバイス10において実施される場合、最適なアバカスを選択することができる。この選択は、複雑さとパフォーマンスとの間のトレードオフである。高度は、可視範囲の持続時間および高度の計算にも介入する。両方のケースで高度を考慮すると、推定誤差を下げることができるため、送信ウィンドウを推定する際のマージンを少なくすることができる。調整された送信ウィンドウは、送信のためにより最適な送信ウィンドウであり、たとえば、同時にまたは重複期間中に発信する異なる地上デバイス10の信号間の信号衝突を回避するためのより大きな送信ウィンドウである。
【0058】
ビーコン信号が高度情報を含む実施形態と互換性のある方法M1aの別の実施形態では、地上デバイス10は、強化されたウェイクアップ方法を使用し、覚醒モードに入るステップ11は、
図3に表されるように、2つのサブステップ111およびサブステップ112を含む。
【0059】
第1のサブステップ111では、短縮されたウェイクアップ時間ウィンドウが、地上デバイス10によって計算される。短縮されたウェイクアップ時間ウィンドウの計算は、非静止衛星20の他の通過中に、サブステップ121で、非静止衛星20から以前に受信した信号を使用して、非静止衛星20の軌道周期を計算することを含む。
【0060】
短縮されたウェイクアップ時間ウィンドウ計算は、以下の3つのサブステップを含む:
- 第1は、軌道周期の計算または取得である。このサブステップは、以前の実施形態のビーコン信号に含まれる高度を使用して、および/または、後述するピーク・トゥ・ピークアルゴリズムを使用して実行することができる。高度を使用する場合、軌道周期は、次の式を使用して判明される:
【0061】
【数7】
ここで、Tは、非静止衛星20の軌道周期であり、μは、天体標準重力パラメータ(天体の重力定数とその質量との積)であり、R_satは、非静止衛星20が周回している天体の半径R_eに、非静止衛星20の高度を加算して計算される、非静止衛星20の半径である。
- 第2は、現在の経路のピークの決定である。これは、ステップ14で、送信ウィンドウの定義を使用して、または、ドップラシフトの符号の変化(ドップラシフトがヌルであるとき、これは、非静止衛星20が、その現在の経路のピークにあることを意味する)を観察することによって行うことができる。
- 第3は、(誤差マージンありで)決定されたピークにおける次の経路を推定するための軌道周期の適用である。次の通過の時間を決定するために軌道周期を適用するときは、以下の点を考慮する必要がある:
- 非静止衛星20が、(南から北への)上昇経路(それぞれ、北から南への下降経路)から上昇経路(それぞれ下降経路)へと移る場合、2つのピーク間の差は、1軌道周期に等しい。
- 非静止衛星20が、上昇経路(それぞれ下降経路)から下降経路(それぞれ上昇経路)へと移る場合、2つのピーク間の差は、もはや1軌道周期ではなく、(1+f1)*軌道周期(それぞれ、(1+f2)*軌道周期)に等しい。これら分率f1および分率f2は、後述するピーク・トゥ・ピークアルゴリズムを使用して計算される。
【0062】
次に、ピーク・トゥ・ピークアルゴリズムが説明される。
【0063】
ピークにおける非静止衛星20の各経路において、地上デバイス10は、時間を記憶し、時間を非静止衛星20に関連付ける。次に、地上デバイス10は、記憶されたすべての時間から、軌道周期を決定する。地上デバイス10はまた、前述したf1分率およびf2分率も決定する:
- 軌道周期を取得するために、地上デバイス10は、第1に、ピーク間のデルタ時間を、ハードコードされた軌道周期推定値で除算する。ハードコードされた値は、第1の計算のためには、たとえば、高度550kmにおける衛星の、知られている軌道周期である。たとえば、初期化時に、地上デバイス10は、高度550kmにおける衛星に対して、95.6分の軌道周期を使用する。
- 上昇経路から上昇経路へ、または下降経路から下降経路への2つの経路の間で計算を実行する場合、この除算は実質的に整数となる。ピーク間の異なるデルタ時間について、ピーク間のデルタ時間を、取得されたこの整数で複数回除算し、その結果の平均値を計算することによって、軌道周期の正確な値が判明する。
- 計算が、上昇経路から下降経路へ、または下降経路から上昇経路への2つの経路間で実行される場合、除算は、複数回実行され、平均値の計算により、(上昇経路から下降経路への)分率f1および(下降経路から上昇経路への)分率f2が得られる。
【0064】
軌道周期を取得するために、計算を実行するのに十分な経路が利用可能である場合、上昇経路から上昇経路への経路、または下降経路から下降経路への経路のみを使用することができる。十分な経路がない場合は、すべての経路を使用して軌道周期を取得し、上昇経路から下降経路への経路、または下降経路から上昇経路への経路を考慮することができる。
【0065】
次の1つ以上の経路が知られると、地上デバイス10は、ウェイクアップするための短縮された時間ウィンドウを定義し、電力消費を大幅に低減する。非静止衛星20が地上デバイス10の上方にある初期時間T0から、地上デバイス10は:
- 上昇経路から上昇経路へ、または下降経路から下降経路へ:Tが軌道周期である場合、時間T0+Tにおいて
- 上昇経路から下降経路へ:時間T0+T*f1において
- 下降経路から上昇経路へ:時間T0+T*f2において
ウェイクアップする必要がある。
【0066】
ウェイクアップする間の時間ウィンドウの数をよりさらに低減するために、非静止衛星20によって発信されるビーコン信号は、経路のタイプ(上昇または下降経路)に関する情報をさらに含むことができる。
【0067】
サブステップ112において、地上デバイス10は、定義された短縮された時間ウィンドウの間だけ、覚醒モードに入る。これにより、有利なことに、非静止衛星20が地上デバイス10の近くを通過する短縮された時間ウィンドウにおいて、非静止衛星20からの信号を探索するだけで、地上デバイス10のエネルギ消費を低減できる。
【0068】
本発明による第2の方法が、
図6に表される。
図6に表される方法M1bは、複数の地上デバイス10によって実行され、5つのステップを含む。各地上デバイス10は、それ自体で方法を実行し、方法M1bは、少なくとも2つの地上デバイス10の両方が、非静止衛星20の無線カバレッジ内に同時にある、または重なり合う期間中に、少なくとも2つの地上デバイス10が、非静止衛星20に発信したいときに、信号間の衝突を低減することを可能にする。
【0069】
方法M1bのステップ12,13,14および17は、方法M1aのステップ12,13,14および17と同じである。方法M1bは、送信ウィンドウに含まれる送信時間において、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置が、高度発信基準を検証するか否かをチェックするステップ16を含まない。
【0070】
実際、方法M1bでは、送信時間は、ランダムに定義される。方法M1bの発明は、有利には、送信ウィンドウ内の発信のランダム化を使用することによって、衝突の可能性が、大幅に減少し、非静止衛星20の無線カバレッジ内の地上デバイス10の分布とは無関係になるという事実に依存する。これは、かなりの数の地上デバイス10が、同じ限られたエリア内で発信する必要があるときに特に有利である。
【0071】
したがって、方法M1bのステップ15は、送信時間を定義する方法M1aのステップ15であり、送信時間は、送信ウィンドウに含まれるが、方法M1bのステップ15は、方法M1aのステップ15と比較して、ランダムに定義される送信時間に限定される。これにより、地上デバイス10の両方が、非静止衛星20の無線カバレッジ内で発信したいときに、地上デバイス10間の同期の必要性を取り除くことが可能になる。
【0072】
好ましくは、スロット付きALOHA方式が実施される。スロット付きALOHA方式は時間のスロットを定義するために、実施される時間基準を必要とし、スロットの開始時に地上デバイス10が発信を試みるべきである。したがって、この時間基準は、非静止衛星20によって送信される信号に含まれる。たとえば、時間基準は、非静止衛星20によって送信された信号の「データ」部分の最初のビットの地上デバイス10による受信時間であり得る。スロット付きALOHA方式は、所定の期間のスロットを定義し、各スロットの開始時のみに地上デバイスが発信できるようにする。これにより、2つ以上の地上デバイス10が、非静止衛星20の無線カバレッジ内で発信したいときに、衝突のリスクをさらに低減することができる。スロット付きALOHA方式は、送信時間のランダム化と共に実施でき、スロット付きALOHA方式の送信のタイムスロットは、ランダムに定義される。
【0073】
方法M1bは、方法M1aの覚醒モードおよび強化覚醒モードに入るステップ11をさらに含むことができ、それにより、各地上デバイス10のエネルギ消費を低減する。
【0074】
方法M1aにおけるように、送信ウィンドウを定義するステップ14は、高度情報をさらに使用して、調整された送信ウィンドウを定義することができる。
【0075】
本発明による第3の方法が
図7に表される。
図7に表される方法M2bは、非静止衛星20によって実行され、4つのステップを含む。方法M2bは、少なくとも1つの無線カバレッジ測定を定期的に実行するステップ23と、実行された最後の無線カバレッジ測定に基づいて動的高度発信基準を計算するステップ24と、それぞれ信号を発信し、信号を受信する方法M1bのステップ21およびステップ22とを含む。
【0076】
第1のステップ23において、非静止衛星20は、定期的に少なくとも1つの無線カバレッジ測定を実行する。無線カバレッジ測定は、ノンストップで実行できる。また、観測されたシステムの状態が将来にわたって十分に静止し続けると決定するのに十分な期間、たとえば数十秒間、実行することもできる。無線カバレッジ測定は、たとえば、868MHzに近いISM帯域において、100Hz(100ビット/秒)の14dBmで、たとえば、SDRペイロード(「ソフトウェア定義無線」ペイロードに対する)を使用して、たとえば、スペクトル分析、ノイズフロア測定、および干渉測定を含むことができる。
【0077】
ステップ23の無線カバレッジ測定が実行されると、非静止20は、ステップ24において、高度基準を定義するか、または既存の高度基準を更新する。ステップ24におけるこの定義は、たとえば、リンクバジェット計算を実行することを含むことができる。
【0078】
リンクバジェット計算は、地上デバイス10と、非静止衛星20との間の異なる高度について、デシベル単位でリンクマージンを推定することを含む。たとえば、20度の最小高度で干渉ノイズがない場合、868MHzに近いISM帯域において、100Hz(100ビット/秒)の14dBmで、リンクマージンは、2.5dBになる可能性があり、これは、非静止衛星20が、そのような高度で地上デバイス10によって発信された信号を受信することが可能であることを意味する。したがって、非静止衛星20は、動的高度基準を、20度の値に設定できる。しかし、868MHzに近いISM帯域において、100Hz(100ビット/秒)の14dBmで、20度の最小高度と干渉ノイズがある場合、リンクマージンは-5.2dBになり得、これは、非静止衛星20が、そのような高度で地上デバイス10によって発信された信号を受信しないことを意味する。正のリンクマージンを有する次の最小高度は、0.8dBのリンクマージンを有する40度の高度である。次いで、非静止衛星20は、動的高度基準を、40度の値に設定することができ、その結果、有用なカバレッジが1150km、すなわち、干渉ノイズがない場合と比較してほぼ75%減少するが、フレームは喪失せず、したがって、カバレッジおよびサービス品質が、現在の環境に可能な限り一致することを保証する。
【0079】
ここでなされる説明は、200kHzチャネル全体にわたる均一なノイズレベルを考慮している。本発明は、各スライスで測定されたノイズレベルに応じて、ビーコンが帯域スライス(たとえば、50kHzまたは10kHz)ごとに異なる高度基準を送信するときをさらにカバーすると十分に理解できる。
【0080】
動的高度発信基準が設定されているとき、非静止衛星20は、方法M2aのステップ21およびステップ22を実行し、すなわち、高度発信基準を含む信号を定期的に発信し、地上デバイス10の位置に対する非静止衛星20の位置が、動的高度発信基準を検証するのであれば、非静止衛星20は、地上デバイス10によって送信された少なくとも1つの信号を受信し、この信号は、少なくとも1つの地上デバイス10によって記憶されたデータの少なくとも一部を含む。非静止衛星20によるビーコン信号の発信は、高度発信基準が変更されていない間は定期的に実行することができ、変更されたときには、新たな高度発信基準を定期的に発信し続けることができる。
【0081】
方法M2bのおかげで、高度発信基準は動的であり、つまり、地球に向かって定期的に送信される信号に含まれる高度発信基準は、非静止衛星20によって実行される無線カバレッジ測定に応じて変化する。これは、地上デバイス10が非静止衛星20の実際の現在の無線カバレッジと首尾一貫する高度基準を使用するので、より良いサービス品質を有することを可能にする。
【0082】
本発明による第4の方法が
図8に表される。
図8に表される方法M2cは、非静止衛星20によって実行され、2つのステップを含む。
【0083】
方法M2cは、少なくとも1つの非静止衛星20から、少なくとも1つの地上デバイス10へ、地域固有の情報を送信するための方法であり、方法M2cは、非静止衛星20によって実行され、少なくとも1つの信号を定期的に地球に向けて発信するステップ21を少なくとも含み、信号は、地域固有の情報および高度基準を含み、地域固有の情報は、非静止衛星の天底周辺の地域に固有であり、高度基準は、非静止衛星の天底周辺の地域に対する。
【0084】
実施形態では、方法M2cのステップ21で発信される信号における地域固有の情報は、地上デバイス10が、非静止衛星20の天底周辺の地域にあるとき、非静止衛星20に発信するときに、地上デバイス10によって使用される、衛星20の地域的な受信周波数である。地域固有の情報が、衛星20の地域的な受信周波数である場合、方法M2cは、地上デバイス10の位置に対する非静止衛星20の位置が、高度発信基準を検証する場合、非静止衛星20の地域的な受信周波数で、地上デバイス10によって送信された少なくとも1つの信号を受信する、別のステップ22を含むことができる。
【0085】
実施形態では、非静止衛星20の天底が、地域を変えると、信号に含まれる地域固有の情報が変化する。これは、地域的な受信周波数に適用される。
【0086】
天底周辺の地域は、地域固有の情報の情報リフレッシュレートと、地域固有の情報の不確実性の大きさとの間のトレードオフを実行することによって定義される。「情報リフレッシュレート」とは、地域固有の情報が、地上デバイス10によって有効であるとみなされるレートであると理解される。たとえば、送信速度は2時間とすることができ、これは、地上デバイス10が、2時間ごとに有効な情報を受信したとみなされることを意味する。トレードオフを実行するとき、「情報リフレッシュレート」は、たとえば、(高度525kmを周回する非静止衛星20の直径に対応する)直径351km、259km、171km、および85kmの天底点を中心とする不確実性(または地域)に対応する、それぞれ70,75,80および85度など、様々な高度に対して評価される。
【0087】
この結果は、天底周辺の地域の大きさに求められる精度が小さいほど、送信速度が速くなることを示す。
【0088】
非静止衛星20によって発信された信号は、非静止衛星20の現在の受信周波数をさらに含むことができる。これは
図10から
図12に表される。
【0089】
図10に表される例は、受信周波数が「周波数1」に設定された非静止衛星20を含む。非静止衛星20は、規制周波数が周波数1である地域A上を通過する。地上デバイス10は、非静止衛星20の無線カバレッジ内にあり、
図9に表される方法M1cに示されるように、ステップ18において、地上デバイス10は、周波数に関連する情報の2つの部分、すなわち:非静止衛星20の受信周波数である周波数1と、
図10における周波数1でもある、非静止衛星20の位置の天底周辺の地域における規制周波数とを含むビーコン信号を受信する。ビーコン信号は、規制周波数と共に、地域高度基準、すなわち、天底周辺の地域の大きさを定義する基準をさらに含むことができる。高度基準は、代わりに、地上デバイス10によって決定または評価することができる。ステップ19において、地上デバイス10の位置に対する非静止衛星20の位置が地域高度基準を検証する場合、それは、地上デバイス10が、天底周辺の定義された地域(
図10のハッチングされたエリア)内にあるので、地上デバイス10が、その発信周波数を、地域周波数、すなわち、
図10における周波数1として定義することを意味する。
図10に矢印で示すように、地上デバイス10が、地域Bから地域Aに移動する場合、および、地上デバイス10が、地域Bの周波数2で発信するように構成されている場合、特に有利であり、このとき、地域Aの規制周波数であるから、周波数1を使用する必要がある。次いで、地上デバイス10は、非静止衛星20の天底周辺の地域にあるので、地域高度基準を検証すると、規則周波数を周波数1に設定することができる。本発明は、非静止衛星20に対する地上デバイス10の位置が、地域高度基準を検証するとき、地上デバイス10において地域情報を「正しい」と定義するだけで、地上デバイス10において正確な地域情報を維持することを可能にする。実際、地域高度基準は、非静止衛星20の天底周辺のハッチングされた地域を定義する。この実施形態では、地域高度基準および高度発信基準が、2つの異なる高度基準であることに注意することが重要であり:地域高度基準は、非静止衛星20の天底周辺の地域を定義し、地上デバイス10の位置が地域高度基準を検証する場合、地域固有の情報を記憶するために地上デバイス10によって使用される一方、高度発信基準は、地上デバイス10が非静止衛星20に発信する状態であるか(つまり、適切に配置されているか)否かを知るために使用される。
【0090】
好ましくは、
図9に表されるように、位置は方法M1aにおけるように取得され、したがって、ビーコン信号の使用を活用し、位置を取得するための地上デバイス10のエネルギ消費を制限する。ステップ18およびステップ19で説明される本発明は、ステップ12からステップ16を使用する位置の獲得に限定されず、地上デバイス10の位置を獲得する任意の手法に限定されることが理解されるであろう。
【0091】
図9に表されるように、方法M1cは、連続するドップラシフトを推定するステップ12と、ドップラ周波数変化率を推定して、非静止衛星20の位置に対する地上デバイス10の位置を取得するステップ13とを含む。位置が取得されると、ステップ19を実行することができる。さらに、任意選択的に、ステップ14からステップ16は、地上デバイス10が、内部的に設定された規制周波数を使用して発信するために実行することができる。
【0092】
図11に表されるように、地上デバイス10aは、非静止衛星20の天底周辺の地域にある。衛星の受信周波数は、周波数2に設定され、規制周波数、つまり地域固有の情報は、周波数1である。この実施形態では、非静止衛星20は、それ自体の受信周波数だけでなく、地域的な受信周波数もアドバタイズする。地上デバイス10aは、非静止衛星20からビーコン信号を受信すると、その位置が、地域高度基準を検証するか否かをチェックし、
図10のハッチングされたエリアの円錐内に配置されているので、結果は肯定的である。したがって、ステップ19において、地上デバイス10aは、その周波数を地域周波数「周波数1」として定義する。その後、地上デバイス10aは、ビーコンで受信された現在の受信周波数が、非静止衛星20の現在の受信周波数と等しいか否かをチェックし、結果は否定的である。したがって、地上デバイス10aは、そのメッセージを発しない。地上デバイス10bの位置は、地域の高度発信基準を検証しない(すなわち、ハッチングされたエリアにない)ので、その周波数を地域周波数として設定しない。しかしながら、地上デバイス10bは、周波数2に設定されたその発信周波数を有し、非静止衛星20は、周波数2に設定された受信周波数も有するので、したがって、非静止衛星20に発信することができる。非静止衛星20に設定された現在の受信周波数と、地域周波数とが異なるそのような場合は、たとえば、非静止衛星20が、存在する第1の地域と、存在することになる第2の地域との間の境界を越えようとしており、地上デバイス10の分布が、第2の地域において、より重要になる場合に生じる可能性がある。
【0093】
図12に表されるように、地上デバイス10aは、非静止衛星20の天底周辺の地域(すなわち、ハッチングされたエリア)に位置しておらず、その発信周波数は、地域Aの地域周波数である周波数1に設定されている。非静止衛星は、周波数2に設定された受信周波数を有するので、地上デバイス10aの位置が、高度発信基準を検証しても、地上デバイス10aは、非静止衛星20に発信できない。地上デバイス10bは、周波数2に設定された発信周波数を有する。この発信周波数は、非静止衛星20の受信周波数と同じであるため、非静止衛星20に発信することができ、地上デバイス10bはまた高度発信基準を検証する。地上デバイス10bが、地域周波数が周波数2である地域Bから、地域周波数が周波数1である地域Aに移動する場合、地上デバイス10bは、周波数2に設定された発信周波数を依然として有する。したがって、地上デバイス10bは、非静止衛星20に依然として発信することができる。なぜならそれらの周波数が同じであるからである。しかし、地上デバイス10bは、地域Aにあり、その発信周波数がここで周波数1を使用する必要があるため、周波数2の使用は禁止される。本発明は、この問題を解決することを可能にする。そうするために、地上デバイス10bが、ハッチングされたエリア、すなわち、非静止衛星20の天底周辺の地域に入ると、地上デバイス10bの位置が、ここで地域高度基準を検証し、次にその発信周波数を、非静止衛星20によってビーコン信号でブロードキャストされる地域周波数として設定する。新たに設定された発信周波数は、現在、地域周波数である周波数1である。地域を変更した地上デバイス10bはここで、その発信周波数、すなわち、周波数1として設定された正しい地域周波数を有するので、問題は解決される。この問題を解決すると、地上デバイス10bは、周波数が異なるため、非静止衛星20に発信できなくなり、これは、予想される振舞である。
【国際調査報告】