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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】エスケタミン懸濁TTS
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20230906BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230906BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230906BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230906BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K31/13
A61K47/24
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/16
A61K47/22
A61K47/10
A61P25/04
A61P25/24
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023507560
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2021070578
(87)【国際公開番号】W WO2022028913
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】20189832.7
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ハムズ
(72)【発明者】
【氏名】アンヤ・トメレリ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・クロイドゲン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD37N
4C076DD37S
4C076DD41N
4C076DD45N
4C076DD52N
4C076DD59S
4C076EE23N
4C076EE27
4C076FF34
4C076FF63
4C206AA01
4C206AA10
4C206FA29
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA11
4C206ZA08
4C206ZA12
(57)【要約】
本発明は、活性成分に対して透過性ではない裏打ち層と、該裏打ち層の片側上の少なくとも1つのマトリックス層とを含む経皮治療システムであって、ここでマトリックス層は、少なくとも1つの感圧接着剤とケタミン又はその薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物とを含有し、少なくとも1つの感圧接着剤がシリコーン感圧接着剤を含む上記経皮治療システムに関し、さらには薬剤としてのその使用、特に抑うつ及び疼痛の処置のための使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分に対して透過性ではない裏打ち層と、該裏打ち層の片側上の少なくとも1つのマトリックス層とを含む経皮治療システムであって、ここでマトリックス層は、少なくとも1つの感圧接着剤とケタミン又はその薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物とを含有し、少なくとも1つの感圧接着剤がシリコーン感圧接着剤を含む、上記経皮治療システム。
【請求項2】
ケタミンは、(S)-ケタミンまたはその薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
ケタミン、好ましくは(S)-ケタミンは、ケタミン遊離塩基の形態で存在する、請求項1又は2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
シリコーン感圧接着剤は、ジメチコノール/トリメチルシロキシケイ酸クロスポリマー及び/又はトリメチルシリル処理されたジメチコノール/トリメチルシロキシケイ酸クロスポリマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
シリコーン感圧接着剤は、マトリックス層の総質量に基づいて70~95質量%の量でマトリックス層中に存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
マトリックス層は少なくとも1つの浸透促進剤を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
【請求項7】
少なくとも1つの浸透促進剤は、レブリン酸、吉草酸、ヘキサン酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、3-メチルブタン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノレン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、プロピオン酸メチル、吉草酸メチル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸エチル、デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ジエチルトルアミド、モノカプリル酸プロピレングリコ-ル、プロピレングリコ-ル、ポリエチレングリコール、アジピン酸ジイソプロピル、オイゲノール、トランスクトール、乳酸ラウリル、及び/又はオレイルアルコール、より好ましくはラウリン酸メチルから選択される、請求項6に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
マトリックス層は、マトリックス層の総質量に基づいて1~15質量%の量で少なくとも1つの浸透促進剤を含む、請求項6又は7に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
マトリックス層は、(メタ)アクリレート基を含むいずれの感圧接着剤も含まない、請求項1~8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
マトリックス層は、マトリックス層の質量に基づいて1~25質量%の量でケタミンを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
マトリックス層は、好ましくはアルファ-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル及び/又はジブチルヒドロキシトルエンからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
マトリックス層は面積質量30~400g/mを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
経皮治療システムは、裏打ち層が配置されていないマトリックス層の側に取外し可能な保護層を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
薬剤としての使用のための、請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
抑うつ及び/又は疼痛の処置における使用のための、請求項1~14のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてケタミンを含む経皮治療システム(TTS)に関する。本発明はさらに、薬物として、特に抑うつ及び/又は疼痛の処置における使用のための、上記システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この数年で、経皮治療システムは、一般的な投薬形態を超える利点を有するので、多数の疾患を処置するための投薬形態として増々重要になってきた。例えば、それらの利点は、血漿中の活性成分の一定の濃度に必要な正確かつ一定の薬物放出である。さらに、患者は錠剤を定期的に摂取する必要がないので、初回通過効果を回避することができ、そして服薬遵守が高まり得る。軟膏又はクリーム剤のような他の局所適用システムに優る経皮治療システムの利点は、面積を正確に適用することができ、それ故投薬量を正確に適用することができること、及び軟膏を拭き取る際に偶発的に他の領域を汚染する危険性がないことである。さらに、活性成分の持続放出は通常他の方法で達成することができないので、軟膏又は錠剤は定期的に投与されなければならない。
【0003】
数年前、経皮治療システムにおける活性成分の実装は容易に達成可能であり、この適用形態は多数の活性成分に利用可能だろうと考えられていた。しかし、皮膚を通る成分の分子輸送は制限因子を生じるので、これは正しくないことがわかった。従って、新しい活性成分の投与のための経皮治療システムを提供するために常に熱心な研究が必要とされる。
【0004】
活性成分ケタミンは、疼痛の処置について長年知られている。近年、ケタミンが心理学的障害、特に抑うつの処置に適していることも見出された。
【0005】
経皮治療システムは、ケタミンの投与のための魅力的な選択肢を提供する。
【0006】
ケタミンの投与のための経皮治療システムは先行技術から公知である。
【0007】
例えば、特許文献1及び特許文献2は、ケタミンの投与のためのTTSを開示し、ここで遊離カルボキシル基に加えて結晶化抑制剤を含む感圧接着剤が使用される。
【0008】
(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤を利用する公知の配合において、ケタミンは、(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤中に溶解される。(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤中のケタミンの飽和濃度がかなり低いために、これは問題となり得る。ケタミンが(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤中により高い濃度で存在する場合、ケタミンは(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤中で再結晶する傾向がある。従って、(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤中のケタミンのより高い濃度は、通常は結晶化抑制剤及び溶解性向上剤をさらに使用することによってのみ達成され得る。全ての場合において、ケタミンは(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤中で再結晶する傾向があり、このような配合の安定性に悪影響を与える。
【0009】
さらに、先行技術から公知のケタミンの投与のためのTTSは、活性成分の皮膚透過速度(flux)及びマトリックス層中に含有される活性成分の利用に関して最適化を必要とする。さらに、結晶化抑制剤及び/又は溶解性向上剤を利用することなくケタミンが安定な形態で存在する配合を提供することは有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 2017/003935 A1
【特許文献2】WO 2018/195318 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、活性成分の最適な、すなわち特に適用後最初の2時間~12時間の可能な限り高い皮膚透過速度を有し、かつマトリックス層中に含有されるケタミンが最適な様式で利用される、ケタミンの投与のためのTTSを提供することが本発明の目的であった。さらに、TTSに含有されるケタミンは、化学的及び物理的に可能な限り安定である条件下で存在するべきである。さらに、TTSは、設計が複雑でなく、かつその製造において経済的であるべきである。特に、ケタミンは再結晶を防止することができるように、非溶解状態でTTS中に存在するべきである。さらに、TTSは、結晶化抑制剤を含むべきではない。しかし、本発明に従うTTSは、(メタ)アクリレートベースの感圧接着剤に基づく公知の製剤に匹敵するケタミンの皮膚透過速度を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、驚くべきことに請求項1に記載の経皮治療システムにより解決された。
【0013】
好ましい実施形態は従属請求項に示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示において、表現「含むこと」又は「含有すること」は「からなること」も意味し得る。
【0016】
本発明は、活性成分に対して透過性ではない裏打ち層と、該裏打ち層の片側上の少なくとも1つのマトリックス層とを含む経皮治療システムに関し、ここでマトリックス層は、少なくとも1つの感圧接着剤とケタミン又はその薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物とを含有し、該経皮治療システムは、少なくとも1つの感圧接着剤がシリコーン感圧接着剤を含むことを特徴とする。
【0017】
一般に、当業者には数種類の経皮治療システムが知られている。裏打ち層、リザーバー層、接着層及び場合により取外し可能な保護層を含むDIR(リザーバー中の薬物(drug-in-reservoir))システムがある。これらのシステムにおいて、薬学的に活性な成分はリザーバー層中にのみ存在して接着層には存在せず、この接着層は少なくとも1つの接着性ポリマーを含有する。
【0018】
さらに、DIA(接着剤中の薬物(drug-in-adhesive))システムが公知であり、ここでリザーバー層は除かれ、薬学的に活性な成分は、少なくとも1つの接着性ポリマーを含有する接着層(マトリックス層とも呼ばれる)中に直接存在する。
【0019】
DIRシステムに優るDIAシステムの利点は、とりわけ複雑ではない製造プロセス及び乱用のより低い危険性である。乱用のより低い危険性は、特に活性成分ケタミンとの関連性が非常に高い。
【0020】
従って、本発明に従う経皮治療システムは好ましくはDIAシステムである。すなわち、活性成分のケタミン又はその薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物は、好ましくは1つの同じ層中で少なくとも1つの感圧接着剤と一緒に存在する。
【0021】
このようなTTSは、その比較的単純な設計と、それ故経済的に有利な製造とを特徴とする。さらに、このようなTTSは、公知のTTSと比較して活性成分のより高い皮膚透過速度を有する。
【0022】
重要なことには、ケタミンは、シリコーン感圧接着剤中で1質量%以下の十分に低い濃度でしか溶解せず、このような低い溶解度ではケタミンは溶解していない状態で存在し、従って再結晶する傾向はなく、いずれのさらなる結晶化抑制剤及び/又は溶解性向上剤も必要としない。
【0023】
従って本発明に従うTTSは好ましくは懸濁TTSであり、これはケタミンが溶解していない状態でシリコーン感圧接着剤中に存在することを意味する。ケタミンは、好ましくは99%又はそれ以上の量で溶解していない状態でシリコーン感圧接着剤中に存在し、かつシリコーン感圧接着剤中には1%又はそれ以下の量しか溶解しない。
【0024】
シリコーン感圧接着剤中のケタミンの濃度、特に飽和濃度は、以下の方法により決定され得る。
【0025】
結晶懸濁物として活性成分を部分的に含有するポリマーフィルム(ドナー層)は、薬物を含まないパッチマトリックス(アクセプター層)と拡散膜を介して接触する。
【0026】
この「サンドイッチ」は貯蔵され、そしてパッチマトリックス中の活性成分の濃度は、膜から取り外された後に特定の時間間隔の後に決定される。それが一定のままである場合、飽和濃度に達している。
【0027】
この場合、ドナーはシリコーン感圧接着剤である。膜は適切な膜であり、そしてドナーよりも小さいべきであるアクセプターは、アクセプターと同じ材料のものである。アクセプターのより小さい面積質量は、飽和濃度の達成を速める。
【0028】
活性物質の含有量及び濃度を測定するために、アクセプター層は、膜から取り外し可能でなければならない。
【0029】
シリコーン感圧接着剤中のケタミンの濃度、特に飽和濃度を決定するための別の方法は以下のとおりである:
可能な限り小さい種結晶を、薬物担持ポリマーフィルムと接触させ、そしてそれらの成長及び溶解挙動を特定の間隔で顕微鏡により評価する。
【0030】
従って、様々な濃度の活性成分を有するフィルムを製造し、そしてそれらの自発的再結晶挙動を顕微鏡により調べる。これらのフィルムは顕微鏡スライド上で直接調製され得る。
【0031】
さらに、シリコーン感圧接着剤中のケタミンの濃度、特に飽和濃度を決定するための別の方法は以下のとおりである:
様々な濃度の活性成分を有する塊をバイアル中で調製し、そしてそれらの自発的再結晶挙動について巨視的に調べる。バイアルは閉じられていないので、溶媒は室温条件下で蒸発することができる。
【0032】
上記の3つの方法は全て本質的に同じ結果をもたらすが、「サンドイッチ」法が好ましい。
【0033】
さらに、マトリックス層中に含有されるケタミンは、最適なやり方で利用され得る。
【0034】
さらに、本発明に従うTTSは高い皮膚寛容性を有する。
【0035】
用語「最適なやり方で利用される」は、マトリックス層中に含有されるケタミンが、マトリックス層から患者の皮膚に、患者の皮膚上のTTSの適用の間、適用後にマトリックス層に残る「未利用」の活性成分が可能な限り少なくなるように、可能な最も広い程度まで拡散することを示す。
【0036】
用語「活性成分に対して透過性ではない裏打ち層」は、裏打ち層が、活性成分ケタミンに対して本質的に、好ましくは完全に不透過性であることを示す。
【0037】
裏打ち層に適した材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンもしくはポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルのようなポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン)及び/又はポリウレタンのような材料を含む。裏打ち層は複合材料から構成されていてもよく、そして好ましくはアルミニウム被覆フィルム及び上記の材料のうちの1つを含む。
【0038】
感圧接着剤は、DIN EN 923:2016-03において定義されるような、感圧接着剤として作用するポリマーを含むか又は好ましくはそのポリマーである。
【0039】
本発明に従うTTSは、薬学的に活性な成分としてケタミンを含む。
【0040】
ケタミンは、(S)-(+)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン ((S)-ケタミン)、(R)-(-)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン ((R)-ケタミン)、さらにはラセミ体(RS)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オンである。これらの化合物の薬学的に許容しうる塩及び溶媒和物も含まれる。これらの化合物の混合物がさらに含まれる。
【0041】
本発明に従う経皮治療システムにおいて、ケタミンは、好ましくは(S)-ケタミン及び/又は(S)-ケタミン・HClのようなその薬学的に許容しうる塩として存在する。
【0042】
最も好ましくは、本発明に従う経皮治療システムにおける薬学的に活性な成分は(S)-ケタミンを含み、これはケタミン遊離塩基の形態で存在する。
【0043】
特定の実施形態において、TTSはケタミンとは別の任意のさらなる薬学的に活性な成分を含んでいてもよく、これは、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID、例えば、イブプロフェン、ケトプロフェン、メロキシカム、ピロキシカム、インドメタシン)、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ)、オピオイド類(例えば、フェンタニル、ブプレノルフィン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロモルヒネ、ペチジン)、MAOI類(不可逆的及び非選択的、例えば、フェネルジン、トラニルシプロミン、イソカルボキサジド)、MAOI類(MAO-Aの可逆的阻害剤、例えば、モクロベミド)、MAOI類(MAO-Bの優先的阻害剤、例えば、デプレニル)、三環系(及び四環系)抗うつ薬(例えば、クロミプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、マプロチリン、アモキサピン、ドキセピン、デシプラミン、トリミプラミン)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えば、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(例えば、レボキセチン、アトモキセチン)、ノルアドレナリン及びドパミン再取り込み阻害剤/放出薬(例えば、ブプロピオン)、セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害剤(例えば、ベンラファキシン、ミルナシプラン、デュロキセチン)、セロトニンアンタゴニスト/再取り込み阻害剤(例えば、ネファゾドン、トラゾドン)、アルファ2-アドレナリン受容体アンタゴニスト(例えば、ミルタザピン)の群の1つ又はそれ以上であり得る。
【0044】
好ましくは、シリコーン感圧接着剤は、シラノール末端ブロックポリジメチルシロキサン(PDMS)とシリケート、好ましくはシリケート樹脂との間の縮合反応の後に得られる。接着剤ポリマーのシラノール含有量を減少させるために、シリコーン感圧接着剤を、好ましくはトリメチルシリルとさらに反応させる。次いで、シリコーン感圧接着剤を、好ましくは適切な溶媒、例えばn-ヘプタンで希釈して、溶剤系シリコーン感圧接着剤を得る。
【0045】
原理上、溶媒は限定されない。しかし、ケタミンが不溶性であるか又は不十分にしか溶けない溶媒を使用することが好ましい。好ましくは、ケタミンは、3質量%未満、好ましくは2質量%未満、そして最も好ましくは1質量%未満の量しか溶媒に溶解しないべきである。
【0046】
最も好ましくは、溶媒はn-ヘプタンを含むか又はn-ヘプタンである。
【0047】
好ましくは、本発明に従って使用することができるシリコーン感圧接着剤は、シリコーンポリマーに基づいて製造された感圧接着剤、例えばジメチコノール/トリメチルシリルオキシシリケートクロスポリマー及び/又はトリメチルシリル処理ジメチコノール/トリメチルシリルオキシシリケートクロスポリマーであり、これらは、シリケートに関して好ましくは、少なくとも30質量%、特に35~95質量%、特に好ましくは40~90質量%又は40~60質量%又は45~55質量%のシリコーンポリマーを含有する。
【0048】
一実施形態において、本発明に従って使用することができるシリコーン感圧接着剤は、シリコーンポリマーに基づいて製造された感圧接着剤、例えば、ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマー及び/又はトリメチルシリル処理ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーであり、これは好ましくはシリコーンポリマー40質量%及びシリケート60質量%を含有する。このような接着剤は「弱粘着(medium tack)接着剤」と呼ばれ得る。
【0049】
別の実施形態において、本発明に従って使用することができるシリコーン感圧接着剤は、シリコーンポリマーに基づいて製造された感圧接着剤、例えば、ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマー及び/又はトリメチルシリル処理ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーであり、これは好ましくは、シリコーンポリマー45質量%、及びシリケート55質量%を含有する。このような接着剤は、「強粘着(high tack)接着剤」と呼ばれ得る。
【0050】
好ましくは、本発明に従うTTSは、1:1(質量)比の上記のような「弱粘着接着剤」と「強粘着接着剤」とを含む。
【0051】
このような混合物の利点は、いわゆる「コールドフロー」を最小化することができることである。「コールドフロー」は、特に貯蔵の間に、TTSの端から接着剤が漏出することと理解される。
【0052】
前述のシリコーン感圧接着剤は全て、好ましくはn-ヘプタンを溶媒として含有する。
【0053】
前述のシリコーン感圧接着剤は、好ましくはそれぞれの溶媒中、好ましくはn-ヘプタン中、50~80質量%の量で、好ましくは約60~75質量%の固体含有量で存在する。
【0054】
好ましくは、シリコーン感圧接着剤は、上で定義されるような強粘着接着剤について約700g/cm及び/又は弱粘着接着剤について900g/cmの引き剥がし粘着力を有する。
【0055】
好ましくは、シリコーン感圧接着剤は、上で定義されるような強粘着接着剤について約14kg/6.3cm、及び弱粘着接着剤について約17kg/6.3cmのせん断値を有する。
【0056】
好ましくは、シリコーン感圧接着剤は、上で定義されるような強粘着接着剤について0.01rad/s及び30℃(P)で約5x10P、及び弱粘着接着剤について約1x10Pの粘度を有する。
【0057】
好ましくはn-ヘプタンに基づく場合の上記シリコーン感圧接着剤の使用は、ケタミンがこれらの物質に溶解しないということである。
【0058】
好ましい実施形態によれば、本発明に従う経皮治療システムは、感圧接着剤として上記のシリコーン感圧接着剤の少なくとも1つを含み、これは好ましくはポリジメチルジフェニルシロキサンから形成されたシリコーンポリマーをさらに含有する。
【0059】
本発明における使用のためのシリコーン感圧接着剤は、シリコーン油及び/又は他の軟化剤(可塑剤)をさらに含有してもよい。
【0060】
さらに、シリコーン樹脂及びポリオルガノシロキサン類の混合物又は縮合物もまた考慮される。アミン耐性シリコーン感圧接着剤はさらに好ましく、これらはSi-OH基がアルキル化されているので遊離シラノール官能基を含有しないか、わずかしか含有しないことを特徴とする。
【0061】
好ましい実施形態によれば、加熱された場合に軟化し、それにより1、2又はそれ以上の固形の薬物を組み込むために適した粘性を達成するシリコーン感圧接着剤が使用され、さらにスロット押し出し又はコーティングを用いる適用については、冷却後に再び非流動性状態で存在するシリコーン感圧接着剤が使用される。
【0062】
適切なシリコーン感圧接着剤の軟化温度は、50℃と200℃との間、好ましくは75℃と170℃との間、そして特に好ましくは100℃と150℃との間の範囲にある。
【0063】
本発明における使用に適したシリコーン感圧接着剤は、例えば、Dow Corningのホットメルト感圧接着剤BIO-PSA Q7-4201及び/又はBIO-PSA 4301である。それにより、上で定義されたように、BIO-PSA Q7-4201は「弱粘着接着剤」であり、そしてBIO-PSA Q7-4301は「強粘着接着剤」である。
本発明における使用に適しており、そして上に記載されるようなシリコーン感圧接着剤及び特にシリコーンホットメルト感圧接着剤は、当業者に公知であり、そして市販されている。
【0064】
さらに、本発明に従う経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つのシリコーン感圧接着剤が、マトリックス層の総質量に基づいて、70~95質量%、好ましくは75~95質量%、より好ましくは78~92質量%の量でマトリックス層中に存在することを特徴とする。
【0065】
さらに、本発明に従う経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が、(メタ)アクリレート基を含むいずれの感圧接着剤も含まないことを特徴とする。このことは、ケタミンがTTS中で溶解していない状態で存在するという利点を有する。それにより、再結晶は防止される。
【0066】
特に、マトリックス層は、遊離ヒドロキシル基を含む、酢酸2-エチルヘキシルアクリル、酢酸ビニル、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルから選択されるアクリルコポリマーを含むいずれの感圧接着剤も含むべきではない。
【0067】
マトリックス層において回避されるべき感圧接着剤は、Henkel、Germanyの商品名DURO-TAK、特にDURO-TAK 87-4287、DURO-TAK 87-2516、DURO-TAK 2287又はDURO-TAK 2510で知られる。
【0068】
さらに、本発明に従う経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層が少なくとも1つの浸透促進剤を含むことを特徴とする。
【0069】
少なくとも1つの浸透促進剤は、活性成分を安定化し、そしてそれ故、活性成分の皮膚を通した比較的高く長期にわたって安定な吸収をもたらす化合物である。
【0070】
浸透促進剤は、好ましくはカルボン酸、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル類、例えばレブリン酸、吉草酸、ヘキサン酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、3-メチルブタン酸、ネオヘプタン酸、ネオナノン酸(neonanonic acid)、イソステアリン酸,オレイン酸、パルミトレイン酸、リノレン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、プロピオン酸メチル、吉草酸メチル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸エチル、デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及び/又はオレイン酸イソプロピルから選択される。
【0071】
別の実施形態において、本発明に従うTTSはレブリン酸を含まない。
【0072】
さらに、ジエチルトルアミド(DEET)、モノカプリル酸プロピレングリコ-ル、プロピレングリコ-ル、ポリエチレングリコール、アジピン酸ジイソプロピル、オイゲノール、トランスクトール(transcutol)、乳酸ラウリル及び/又はオレイルアルコールのような化合物が、浸透促進剤として適している。
【0073】
ラウリン酸メチルは、ケタミンが経皮流動の速い開始を示すという利点を有するので、本発明に従う経皮治療システムは、より好ましくは少なくとも1つの浸透促進剤がラウリン酸メチルを含むという特徴を有する。
【0074】
本発明に従う経皮治療システムは、より好ましくは、1つの浸透促進剤のみ、好ましくはラウリン酸メチルのみが少なくとも1つのマトリックス層中に存在することを特徴とする。
【0075】
さらに、本発明に従う経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つの浸透促進剤が、マトリックス層の質量に基づいて、1~15質量%、好ましくは2~12質量%、最も好ましくは約10質量%の量でマトリックス層中に存在するということを特徴とする。
【0076】
本発明に従う経皮治療システムが、マトリックス層の質量に基づいて、1~25質量%、好ましくは5~15質量%の量でマトリックス層中にケタミンを含有することが好ましい。
【0077】
本発明に従う経皮治療システムは、さらに好ましくは、マトリックス層が少なくとも1つの抗酸化剤を含むことを特徴とする。
【0078】
少なくとも1つの抗酸化剤は、他の物質、特に活性成分の酸化を防止するか又は減少させ、従って治療システムの経年劣化に対して作用する化学化合物である。特に、抗酸化剤は、ラジカル補足剤としてのそれらの効果、及びそれらが感受性分子の、特に活性成分の空気の酸素により生じる酸化的分解を防止することを特徴とする。少なくとも1つの抗酸化剤は、好ましくは、アルファ-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル及び/又はジブチルヒドロキシトルエンからなる群から選択される。
【0079】
好ましくは、本発明に従う経皮治療システムは、マトリックス層の全体の質量に基づいて、0.001~5質量%、好ましくは0.01~2質量%の量でマトリックス層中に少なくとも1つの抗酸化剤を含有する。
【0080】
上述の成分とは別に、マトリックス層は一般的な添加剤をさらに含んでいてもよい。それらの機能に従って、これらは軟化剤/可塑剤、粘着付与剤、担体及び/又は増量剤として分類され得る。関連する生理学的に無批判な物質は、当業者に公知である。
【0081】
シリカゲル、二酸化チタン、及び酸化亜鉛のような担体及び/又は増量剤は、凝集性及び結合強度のような特定の物理的パラメーターに所望のやり方で影響を及ぼすためにポリマーと併せて使用され得る。
【0082】
さらに、その乱用の可能性を予防するか又は少なくとも減少させるために乱用防止剤を経皮治療システムに加えてもよい。乱用防止剤として使用され得る物質の例は、苦味剤、ゲル形成剤、刺激剤、急性の胃腸、心臓又は呼吸器の効果を生じる物質、ひどい悪心又は嘔吐を生じる物質、不快な匂いを生じる物質、睡眠誘導物質、抽出を試みると活性成分の不活化又は分解をもたらす物質である。
【0083】
さらに、経皮治療システムはまた、その意図された使用、すなわち経皮適用以外のいずれかの方法で使用される場合に、活性物質及び/又はシステムを無効にする乱用防止特徴を含み得る。
【0084】
好ましくは、本発明に従う経皮治療システムは、マトリックス層が30~400g/m、好ましくは50~250g/m、最も好ましくは70~150g/mの面積質量を有することをさらに特徴とする。
【0085】
好ましくは、本発明に従う経皮治療システムは、経皮治療システムが、裏打ち層が配置されていないマトリックス層の側に取外し可能な保護層を含むことをさらに特徴とする。
【0086】
マトリックスと接触しており、かつ適用前に取り外される取外し可能な保護層は、例えば裏打ち層の製造のために使用された材料と同じ材料を含むが、ただし、それらは例えばシリコーン処理により、取り外し可能にされている。他の取外し可能な保護層は、ポリテトラフルオロエチレン、表面加工紙、セロファン、ポリ塩化ビニルなどである。
【0087】
さらに、本発明は、薬剤としての上記の経皮治療システムに関する。
【0088】
本発明はまた、大うつ病性障害(MDD)(簡単に抑うつとしても知られる)の処置における使用のための上記の経皮治療システムに関する。特に、記載される経皮治療システムは、自殺の危険性の減少のため、かつ/又は治療抵抗性うつ病(TRD)の処置のために使用され得る。
【0089】
大うつ病性障害(MDD)は、低い自尊心及び普段は楽しめる活動における興味又は喜びの喪失を伴う広汎性かつ持続性の気分の落ち込みを特徴とする精神障害である。大うつ病性障害は、その人物の家族、仕事又は学校生活、睡眠及び食生活、並びに全体的な健康に有害な影響を及ぼす身体障害性状態である。
【0090】
処置抵抗性うつ病(TRD)は、適切な抗うつ薬適用の過程に特定の期間内に適切に応答しない、大うつ病性障害(MDD)を有する人々が患う状態を記載する。
【0091】
The American Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5)により認識されるさらなるサブタイプは、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、緊張型うつ病、不安による苦痛を伴ううつ病、周産期発症うつ病及び季節性感情障害である。
【0092】
本発明はまた、疼痛の処置における使用のための上記経皮治療システムに関する。
【0093】
疼痛は、しばしば強い又は傷害性の刺激により引き起こされる苦痛の感覚である。長期にわたって持続する疼痛は慢性又は持続性と呼ばれ、そして急速に消散する疼痛は急性と呼ばれる。
【0094】
侵害受容性疼痛は、有害な強度に近いか又はそれを超える刺激に応答する感覚神経線維の刺激(侵害受容器)により引き起こされ、そして侵害性刺激の様式に従って分類され得る。最もよく知られたカテゴリーは、熱、機械及び化学である。一部の侵害受容器は、これらの感覚様相の1つより多くに応答し、その結果他様式に設計される。
【0095】
侵害受容性疼痛はまた、「内臓」痛、「深部体性」痛及び「表在体性」痛に分けられ得る。
【0096】
神経障害性疼痛は、身体感覚に関与する神経系(体性感覚系)の任意の部分に影響を及ぼす損傷又は疾患により引き起こされる。神経障害性疼痛は、末梢、中枢、又は混合性(抹消及び中枢)神経障害性疼痛に分けられ得る。抹消神経障害性疼痛は、しばしば「灼熱」、「ズキズキする」、「電気的」、「刺すような」又は「しびれてピリピリする」と言い表される。
【0097】
さらに、本発明の経皮治療システムは、様々な投与スキームで、例えば継続的な、繰り返しの又は時間差の(staggered)投与で使用され得る。
【0098】
継続的投与において、経皮システムは、個体の血漿中で活性成分濃度を達成するために少なくとも12時間持続する間隔で適用される。
【0099】
繰り返し投与は、好ましくは、遅延することなく連続して行われ、すなわち、本発明に従う1つ又はそれ以上のTTSが適用間隔の終わりに除去される場合、その後の適用間隔のための本発明に従う1つ又はそれ以上のTTSはすぐに適用される。好ましくは、本発明に従うTTSが身体に全く適用されていなくてもよい時間間隔は、10分以下、より好ましくは5分以下である。
【0100】
時間差投与において、経皮システムは、個体の血漿中で活性成分濃度を達成するために少なくとも4時間持続する間隔で適用される。
【0101】
時間差投与は、好ましくは毎日、週に2回、又は週に1回行われ、すなわち、本発明に従う1つ又はそれ以上のTTSが適用間隔の終わりに除去される場合、その後の適用間隔のための本発明に従う1つ又はそれ以上のTTSは、少なくとも18時間の無投薬間隔を考慮して適用される。
【0102】
本発明に従う経皮治療システムに意図される適用期間は、好ましくは少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、そしてなおより好ましくは少なくとも24時間である。活性成分の量は、好ましくは所望の適用時間に適合される。
【0103】
好ましい実施形態において、本発明に従う全てのTTSは、期間全体にわたって個体の同じ皮膚領域に投与され、すなわち、個体の所定の皮膚領域は、本発明に従うTTSで覆われるか又はそれを貼り付けられる。
【0104】
別の好ましい実施形態において、本発明に従う全てのTTSは、期間全体にわたって毎回個体の異なる皮膚領域上に投与され、すなわち、個体の所定の皮膚領域は本発明に従うTTSで繰り返し覆われることも、本発明に従うTTSを繰り返し貼り付けられることもない。
【0105】
本発明は、非限定的な実施例を使用して以下でさらに記載される。
【実施例
【0106】
以下の実施例において、以下の成分が使用された。
【0107】
BIO-PSA Q7-4201及びBIO-PSA 4301:トリメチルシリル処理ジメチコノール/トリメチルシロキシケイ酸クロスポリマー。
DURO-TAK 387-4287:架橋剤を使用せずに得られた、遊離ヒドロキシル基を含むアクリレート酢酸ビニルコポリマーに基づく感圧接着剤。
DURO-TAK 387-2054:架橋剤を使用して得られた、遊離カルボキシル基を含むアクリレート酢酸ビニルコポリマーに基づく感圧接着剤。
Plastoid B:メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルのコポリマー(結晶化抑制剤)
トランスクトール:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(促進剤)。
Eutanol HD:9-オクタデカン-1-オール(促進剤)
HPC/イソプロパノール:イソプロパノール中に溶解されたヒドロキシプロピルセルロース(ゲル化剤;固体含有量 2質量%)。
HPC/1,2-プロパンジオール:1,2-プロパンジオール中に溶解されたヒドロキシプロピルセルロース(ゲル化剤;固体含有量 2質量%)
クロスポビドン:架橋 ポリビニルポリピロリドン(構造剤)
【0108】
実施例1:
この実施例のS-ケタミン含有コーティング組成物の配合を、以下の表1にまとめる。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例1aのために、ビーカーにS-ケタミン塩基を、溶媒(酢酸エチル)、レブリン酸及びラウリン酸メチルと共に入れた。アクリル感圧接着剤ポリマーDURO-TAK 387-4287を加え、次いで均一な混合物が得られるまでこの混合物を300rpmまでで撹拌した(撹拌時間は約90分であった)。
【0111】
実施例1bのために、ビーカーにS-ケタミン塩基を、溶媒(n-ヘプタン)及びラウリン酸メチルと共に入れた。この混合物を約30分間300rpmで撹拌し、次いでシリコーン感圧接着剤 DOW CORNING BIO-PSA Q7-4201及びDOW CORNING BIO-PSA Q7-4301を加えた。次いでこの混合物を、均一な混合物が得られるまで900rpmまでで撹拌した(撹拌時間は約90分であった)。
【0112】
実施例1cのために、ビーカーにHPC/イソプロパノール溶液、ラウリン酸メチル及びS-ケタミン塩基を入れた。この混合物を約30分間300rpmで撹拌し、次いでシリコーン感圧接着剤 DOW CORNING BIO-PSA Q7-4201及びDOW CORNING BIO-PSA Q7-4301を加えた。次いでこの混合物を、均一な混合物が得られるまで900rpmまでで撹拌した(撹拌時間は約90分であった)。
【0113】
実施例1dのために、ビーカーにHPC/1,2-プロパンジオール溶液、ラウリン酸メチル及びS-ケタミン塩基を入れた。この混合物を約30分間300rpmで撹拌し、次いでシリコーン感圧接着剤 DOW CORNING BIO-PSA Q7-4201及びDOW CORNING BIO-PSA Q7-4301を加えた。この混合物を、均一な混合物が得られるまで900rpmまでで撹拌した(撹拌時間は約90分であった)。
【0114】
実施例1eのために、ビーカーにS-ケタミン塩基を、溶媒(酢酸エチル)、レブリン酸、Eutanol HD及びトランスクトールと共に入れた。アクリル感圧接着剤ポリマーDURO-TAK 387-2054を加え、次いでこの混合物を300rpmまでで約30分間撹拌した。Plastoid Bを加え、次いでこの混合物を、均一な混合物が得られるまで350rpmまでで撹拌した(撹拌時間は約120分であった)。
【0115】
実施例1fのために、ビーカーにHPC/1,2-プロパンジオール溶液及びS-ケタミン塩基を入れた。この混合物を約30分間300rpmで撹拌し、次いでシリコーン感圧接着剤 DOW CORNING BIO-PSA Q7-4201及びDOW CORNING BIO-PSA Q7-4301を加えた。次いでこの混合物を、均一な混合物が得られるまで900rpmまでで撹拌した(撹拌時間は90分であった)。
【0116】
実施例1a及び1eについて、得られたS-ケタミン含有コーティング組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(シリコーン処理、厚さ75μm、これは剥離ライナーとして機能し得る)上にコーティングし、そして約15分間室温で、そして15分間60℃で乾燥した。コーティングの厚さは、それぞれ78.9g/m(実施例1a)及び81.5g/m(実施例1e)のマトリックス層の面積質量を生じた。乾燥したフィルムを、ポリエチレンテレフタレート裏打ち層(厚さ23μm)と積層して、S-ケタミン含有粘着性層構造を得た。
【0117】
実施例1b、1c、1d及び1fについて、得られたS-ケタミン含有コーティング組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(フルオロポリマー処理(fluorpolymerized)、厚さ75μm、これは剥離ライナーとして機能し得る)上にコーティングし、そして約15分間室温で、そして15分間60℃で乾燥した。このコーテイング厚さは、それぞれ71.0g/m(実施例1b)、81.9g/m(実施例1c)、78.5g/m(実施例1d)及び79.6g/m(実施例1f)のマトリックス層の面積質量を生じた。乾燥したフィルムをポリエチレンテレフタレート裏打ち層(厚さ19μm)と積層して、S-ケタミン含有粘着層構造を得た。
【0118】
次いで、個々のシステムをS-ケタミン含有粘着層構造から打ち抜いた。特定の実施形態において、上記TTSは、活性剤を含まない感圧接着性マトリックス層を含む、好ましくは角を丸められより大きな表面積のさらなる粘着性層を備えていてもよい。これは、TTSが、その物理的特性のみに基づいて、皮膚に十分に接着しない場合、かつ/又はS-ケタミン含有マトリックス層が、無駄を避ける目的のために目立つ角を有する(四角又は長方形)場合に有利である。次いで、このシステムを打ち抜き、そして一次包装材料の袋中に密封する。
【0119】
皮膚透過速度の測定
実施例1a~1fに従って製造されたTTSの透過量及び対応する皮膚透過速度を、OECDガイドライン(2004年4月13日採択)及び経皮パッチの品質に関するEMAガイドライン(EMA/CHMP/QWP/608924/2014、2014年10月23日採択)に従って7.0mlフランツ型拡散セルを用いて行ったインビトロ実験により決定した。分層ヒト腹部皮膚(女性)を使用した。全てのTTSについて表皮はインタクトなままで皮膚の厚さを500μmに準備するためにデルマトームを使用した。面積1.152cmのダイカットをTTSから打ち抜いた。温度32±1℃でのフランツ型セルのレセプター媒体(抗細菌剤として0.1%食塩水アジドを含むリン酸緩衝液pH5.5)中のS-ケタミン透過量を、72時間後に測定し、そして対応する皮膚透過速度[μg/cm*時]を計算した。結果を表2及び図1に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
S-ケタミンの利用
72時間でのS-ケタミンの利用をレセプター中のs-ケタミンの透過量及びTTS中の初期S-ケタミン含有量に基づいて計算した。結果を表3及び図2に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
図1図2にまとめた結果は、アクリル接着剤を用いた配合と比較して、活性成分の改善された利用及び活性成分の改善された皮膚透過速度を示す。
【0124】
実施例2:
実施例2a~dのS-ケタミン含有コーティング組成物の配合を、実施例1に記載されるものと同様に製造し、そして以下の表4にまとめる。
【0125】
【表4】
【0126】
皮膚透過速度を実施例1と同様にして決定し、そしてそれを図3にまとめる。
【0127】
S-ケタミンの利用
72時間でのS-ケタミンの利用を、レセプター中のs-ケタミンの透過量及びTTS中の初期S-ケタミン含有量に基づいて計算した。結果を表5及び図4に示す。
【0128】
【表5】
【0129】
図3図4にまとまめた結果は、コーティング質量を減少させたことにより活性成分の改善された利用、及びより高い濃度の促進剤を使用したことによる皮膚透過のより速くかつより高い開始を示す。クロスポビドンはHPCと比較して等価な代替物である。
【0130】
実施例3:
実施例3a~hのS-ケタミン含有コーティング組成物の配合を、実施例1に記載されるものと同様に製造し、そして以下の表6にまとめる。
【0131】
【表6】
【0132】
皮膚透過速度及び(S)-ケタミン利用を、実施例1と同様にして分析した。
【0133】
それぞれの結果をそれぞれ図5及び6に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】