(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】体内紫外線療法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20230906BHJP
A61M 25/10 20130101ALN20230906BHJP
【FI】
A61N5/06 B
A61M25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509643
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 US2021046011
(87)【国際公開番号】W WO2022036263
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】レザイ アリ
(72)【発明者】
【氏名】ピメンテル マーク
(72)【発明者】
【氏名】メルメド ギル ワイ.
【テーマコード(参考)】
4C082
4C267
【Fターム(参考)】
4C082PA03
4C082PC03
4C082PE09
4C082PG20
4C082PJ30
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB22
4C267BB28
(57)【要約】
胃腸管の炎症及び/または感染を、治療及び/または改善するために、管腔内紫外線療法を行うための1つ以上の方法及びシステムを提供する。一実施例では、光送達カテーテルが光放出部分と非照明部分とを含み得、光放出部分は1つ以上のUV透明性バルーンを含み得る。いくつかの実施例では、UV光源は、335nm~349nmの間の領域内の波長を有する狭帯域光を放出するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放出部分を備えた送達チューブであって、光放出部分が、335nm~349nmの間の紫外線A(UV-A)領域内の波長で狭帯域光を放出するように構成された複数の光源を含む、送達チューブと;
該光放出部分にて該送達チューブに接続された複数の膨隆可能バルーンであって、その各々がそれぞれの膨張ポートと流体連結している、複数の膨隆可能バルーンと
を備え、
該複数の膨隆可能バルーンの各々が紫外線(UV)透明性材料で組成されている、
管腔内光線療法を行うための光送達デバイス。
【請求項2】
前記複数の膨隆可能バルーンの各々が、前記複数の光源から放出されて対応する管腔内治療部位に送達される光の、放射照度及び/または放射照度分布を増大させるように構成されている、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項3】
前記複数の膨隆可能バルーンが光放出部分の長さに沿って直列的に配列され、かつ該複数の膨隆可能バルーンのうち任意の2つの間の分離が調整可能である、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項4】
光放出部分が、前記複数の膨隆可能バルーンに接続されていない1つ以上のセグメントを備え、かつ該1つ以上のセグメントが前記複数の光源のうち1つ以上の光源を含む、請求項3記載の光送達デバイス。
【請求項5】
前記複数の光源が、電源に電気的に接続された発光ダイオード(LED)であり、かつ該複数の光源が、送達デバイスから外に向かって光を放出するように構成されている、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項6】
前記複数の光源が、送達デバイス内の冷却チューブ上に位置決めされ、冷却チューブが、医療等級のコンプレッサと冷却器とを含む冷却システムから冷却空気を受けるように構成されている、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項7】
前記複数の光源が、338nm~346nmの間のUV-A領域内のピーク波長を放出するように構成されている、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項8】
前記複数の膨隆可能バルーンの各々を、それぞれのバルーン膨張ポートを介して膨張及び/または脱膨張させるように構成された、バルーン制御ユニット
をさらに備える、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項9】
送達チューブ内にありかつ該送達チューブの長さ全体にわたって延在するガイドワイヤチャネルであって、患者の管腔内に位置決めされたガイドワイヤ上に送達デバイスを通すように構成された、ガイドワイヤチャネル
をさらに備える、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項10】
UV透明性材料が、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、または環状オレフィンコポリマー(COC)、またはシリコーンである、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項11】
前記複数の膨隆可能バルーンが少なくとも3つのバルーンを含む、請求項1記載の光送達デバイス。
【請求項12】
管腔内紫外線(UV)療法を行うための方法であって、
複数の光放出セグメントを備えた送達チューブであって、該複数の光放出セグメントの各々が、338nm~346nmの間の紫外線A(UV-A)領域内の波長を有する狭帯域光を放出するように構成された複数の発光ダイオード(LED)を含んでいる、送達チューブと、
複数の膨隆可能バルーンであって、複数の膨隆可能バルーンの各々が、該複数の光セグメントのうち1つに結合されており、かつ該複数の膨隆可能バルーンの各々が、バルーン制御ユニットに結合されたそれぞれの膨張ポートに流体的に結合されており、複数の膨隆可能バルーンがUV透過性材料で組成されている、複数の膨隆可能バルーンと
を備えたUV光送達デバイスを提供する段階;
該複数の膨隆可能バルーンの各々が脱膨張状態で、患者の胃腸(GI)管の管腔内で該送達チューブを位置決めする段階;
該バルーン制御ユニットを介して該複数の膨隆可能バルーンを選択的に膨張させる段階;ならびに、
該GI管の障害のタイプ及び全体的な重症度のうち1つ以上に基づいて、閾値持続時間にわたり閾値強度で該複数のLEDに通電する段階
を含む、方法。
【請求項13】
管腔内で送達チューブを位置決めする段階が、前記複数の膨隆可能バルーンのうち1つ以上を該管腔内の1つ以上の患部と並置させることを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記複数の膨隆可能バルーンを選択的に膨張させる段階が、前記1つ以上の患部と並置された前記1つ以上の膨隆可能バルーンを膨張させ、一方で、正常な健常組織と並置された残りの数のバルーンを脱膨張状態のまま維持することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の患部と並置された前記1つ以上の膨隆可能バルーンを選択的に膨張させる段階が、該1つ以上の膨隆可能バルーンが管腔の上皮層に接触する閾値圧力まで、該1つ以上の膨隆可能バルーンを加圧することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
閾値圧力が管腔の直径に基づく、請求項14記載の方法。
【請求項17】
1つの状態の間に、異なる重症度の感染及び/または炎症を1つ以上の標的エリアが有する場合に、所与の光放出セグメントについて、該1つ以上の標的エリアにおける感染及び/または炎症の局所的な重症度に基づいて光の強度の大きさを調整する段階
をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
送達チューブが、コンプレッサから冷却空気を受けるように構成された冷媒チューブを含み;かつ
前記方法が、サーミスタを介して該送達チューブの温度をモニターする段階と、該冷媒チューブを通る冷媒流量を該温度に基づいて調整する段階とをさらに含む、
請求項11記載の方法。
【請求項19】
送達チューブが、管腔を可視化するための1つ以上のカメラを備えた内視鏡として構成されている、請求項11記載の方法。
【請求項20】
UV透過性材料が、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、または環状オレフィンコポリマー(COC)、またはシリコーンを含む、請求項11記載の方法。
【請求項21】
管腔内で送達チューブを位置決めする段階が、内視鏡を用いて該管腔内に位置決めされたガイドワイヤ上に該送達チューブを通すことを含む、請求項11記載の方法。
【請求項22】
発光ダイオード(LED)のセットを含む光放出部分と、該光放出部分に結合された少なくとも1つの膨隆可能バルーンとを備えた送達チューブを提供する段階;
該送達チューブを患者の胃腸管の管腔内に誘導する段階であって、紫外線(UV)光治療を必要とする該管腔内の標的エリアと並置するように、該少なくとも1つの膨隆可能バルーンを位置決めする、段階;
該少なくとも1つの膨隆可能バルーンに流体的に結合したバルーン膨張ポートを介して、該少なくとも1つの膨隆可能バルーンを膨張させる段階;及び
該送達チューブに接続されかつ該少なくとも1つの膨隆可能バルーン内部に位置決めされた該LEDのセットを、胃腸障害を治療するのに充分な持続時間と強度とで通電する段階
を含み、
該LEDのセットは、335nm~349nmの間のUV領域内の波長を有する狭帯域光を放出するように構成されている、
患者における胃腸障害を治療、改善、及び/または予防する方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンが、8パーセント~100パーセントの範囲のUV透過率を有するUV透過性材料で組成されている、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンが、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、または環状オレフィンコポリマー(COC)、またはシリコーンを含む材料を用いて構築される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンを膨張させる段階が、該少なくとも1つの膨隆可能バルーンが管腔の上皮層の望ましい表面積と直接接触する閾値圧力まで、該少なくとも1つの膨隆可能バルーンを加圧することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
閾値圧力が管腔の直径に基づく、請求項21記載の方法。
【請求項27】
強度が、少なくとも1,100マイクロワット/cm
2、1,500マイクロワット/cm
2、2,000マイクロワット/cm
2、2,100マイクロワット/cm
2、2,200マイクロワット/cm
2、2,300マイクロワット/cm
2、2,400マイクロワット/cm
2、2,500マイクロワット/cm
2、2,600マイクロワット/cm
2、2,700マイクロワット/cm
2、2,800マイクロワット/cm
2、2,900マイクロワット/cm
2、3,000マイクロワット/cm
2、または4ミリワット/cm
2を含む、請求項21記載の方法。
【請求項28】
胃腸障害が炎症性腸疾患の一形態である、請求項21記載の方法。
【請求項29】
炎症性腸疾患の形態が、潰瘍性大腸炎及び/またはクローン病を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
胃腸障害が、潰瘍性大腸炎、クローン病、嚢炎、直腸炎、瘻孔、炎症性の狭窄、顕微鏡的大腸炎、感染性下痢、難治性のヘリコバクター・ピロリ(helicobater pylori)、MALTリンパ腫、結腸無力症、熱帯性スプルー、セリアック病、小腸内細菌異常増殖、盲腸炎、骨髄移植後感染症、偽ポリープ、放射線腸炎、難治性のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、胃腸癌、肝胆道感染、ならびに/または、粘膜及び粘膜下の炎症及び癌のうち、少なくとも1つを含む、請求項21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、体内紫外線療法と題された、2020年8月13日に出願された米国仮出願第63/065,167号に対する優先権を主張するものであり、この米国仮出願の内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示の分野
本発明は、炎症性疾患の治療に伴う使用を含めて、患者を治療するための紫外線療法用のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本開示の背景
以下の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される情報のうちのいずれかが、先行技術であること、もしくは現在請求されている発明に関連していること、または具体的もしくは黙示的に参照されている任意の刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
胃腸(GI)障害には、食道、胃、小腸、結腸、及び直腸の疾患が含まれる。GI障害は最も蔓延している障害の一部であるが、その症状は効果的に管理されてはおらず、一部の症例においては利用できる有効な治療選択肢がない。GI管に悪影響を及ぼす障害のうち、最も広くみられる病態の1つに炎症性腸疾患(IBD)がある。
【0005】
炎症性腸疾患(IBD)は、遺伝的感受性がある個人において、消化管内の共生フローラに対する異常な宿主免疫応答から生じると考えられている。IBDには潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)という2つの主な形態がある。IBD患者は病的状態及び重度の生産性低下に直面する可能性がある。現在の傾向は、IBDの発生率及び有病率の増大を示している;しかし、有効な長期的治療選択肢及び/または治療法はいまだ同定されていない。結果として、IBDは世界中のヘルスケアシステムにかなりの財政負担をもたらしている。
【0006】
IBDの形態の1つであるUCは、結腸上皮の持続的な炎症を伴い、直腸及び結腸の様々な解剖学的部位に影響を及ぼす。UC患者のうち、約35%は直腸及びS状結腸に影響が及び、40%は残存結腸全体に影響が及び、そして25%は結腸のより近位部にも及ぶ広範な炎症を有する。UCの症状には下痢、直腸の出血、及び腹痛が含まれ、著しい病的状態、費用、及び生活の質への影響と関連する。
【0007】
UCに対して現在承認されている療法では、軽症に対してメサラミン、そして中等症~重症の患者に対しては生物学的製剤及び小分子による広範囲アプローチまたは標的アプローチを介した、免疫抑制または免疫修飾が用いられる。これらの治療は、全身感染、リンパ腫、及び免疫介在反応を含む有害作用の潜在可能性を有する。軽度ならびに中等度~重度のUCにおける治療薬についての臨床試験では、用量を最適化した生物学的療法を免疫修飾剤と組み合わせても大多数の患者が緩解に至らないことが示されている。中等度~重度の潰瘍性大腸炎に対して現在承認されている療法は、少数の患者において有効であるにすぎず、そして(薬剤のクラスによっては)感染、悪性腫瘍、血栓症、及び免疫介在反応のリスクと関連する。
【0008】
よって、IBDなどのGI管障害の安全かつ有効な治療について、軽症の患者にとっても中等症~重症の患者にとっても、満たされていない重大なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の概要
本発明者らは、UV-A領域内の波長で放出されるUV-A光を用いた微生物フローラの操作が、IBDに対する安全かつ有効な治療を提供する可能性があることを同定した。さらに本発明者らは、UV-A光をGI管の任意の長さに沿って安全かつ有効な様式で腔内投与できる可能性があることを同定した。したがってUV-A光は、IBDを含むGI管の様々な感染性及び/または炎症性病態に対する、有効なマイクロバイオーム修飾及び/または抗炎症的な光治療のために使用できる可能性がある。
【0010】
本明細書に開示されるように、UV-A光の適用は、広範囲の細菌、ウイルス、及び他の生体に対して、著明な抗菌効果を有する。さらに、335nm~348nmの間の領域内の波長で放出されたUV-A光は、335nm~348nmの間の領域内の波長が細胞外微生物を標的にして、(細胞表面に取りついた微生物に対する)細胞外の抗菌治療を提供するという、ユニークな治療ウィンドウを提供する。さらに、335~349nmの領域内で放出されたUV-A光は、細胞内を貫通して細胞質内に入り、UV誘発性のDNA損傷を引き起こすことなく、(細胞に侵入しまたは細胞質内に内在化された微生物に対して)有効な細胞内抗菌応答を引き起こす。したがって、335nm~348nmの間の波長で放出されたUV-A光は、腸管マイクロバイオームを修飾する(すなわち、細胞外及び細胞内の抗菌効果を提供する)ことによって、かつ/またはGI管の管腔内の炎症を低減させることによって、GI管に悪影響を及ぼす疾患を治療、改善、及び/または予防するために安全かつ有効に使用できる。
【0011】
したがって、一実施例では、管腔内光線療法を行うためのデバイスは、光放出部分を備えた送達チューブであって、光放出部分が335nm~349nmの間の紫外線A(UV-A)領域内の波長で狭帯域光を放出するように構成された複数の光源を含む、送達チューブと;各々がそれぞれの膨張ポートと流体連結している、光放出部分で送達チューブに接続された複数の膨隆可能バルーンとを備え、前記複数の膨隆可能バルーンの各々はUV透明性材料で組成されている。
【0012】
この方式で、複数のバルーンを用いることによって、UV光投与中に送達デバイスが所定の位置に安定化され得、それは管腔内の治療エリアに一貫したUV曝露を提供する。さらに、バルーンが、治療部位への光分布の均一性を増大させ得る。結果として、バルーンは、治療部位における放射照度分布を増大させる。
【0013】
さらに、GI管内の治療用に利用される場合に、バルーンがその膨張状態において結腸の1つ以上の襞及び膨起を引き伸ばし、それによって治療中に結腸の表面積を増大させ得る。結果として、バルーンは、結腸の表面にわたって均一に露光量を増大させ、それはUV光治療の効率及び有効性を向上させる。さらに、バルーンの膨張はまた、光源と結腸上皮との間で妨げとなる大便/デブリも押しのける。さらに、バルーンは、送達デバイスと結腸上皮との間で障壁として作用し得る外来性デブリ/バイオフィルムを拡散させることを助ける可能性がある。さらになお、バルーンは、大便が治療セグメント内まで下降してくることも防ぐ。すなわち、バルーンは、近位側のデブリ及び糞便が順行して結腸粘膜へのUV発光をブロックすることを許容しない。少なくとも上述のこれらの効果を通じて、バルーンは放射照度も結腸上皮への放射照度分布も向上させ、それによってUV光治療の効率及び有効性を増大させる。
【0014】
さらになお、マルチバルーンのアプローチは、肝弯曲部及び脾弯曲部を通過する時のデバイスの可撓性をもたらし得るとともに、個人の疾患の程度に相関して膨らませたセグメントを選択的に照明することを通じて、炎症を呈しているセグメントだけに光を送達し、かつ例えば非炎症性セグメントへの曝露を低減させるなど、カスタム化された方式ももたらす可能性がある。
【0015】
したがって、マルチバルーンの体内UV-A光線療法は、本明細書に開示されるように、IBD及び他の胃腸管障害に対する抗炎症療法及び免疫抑制療法に代わる安全かつ有効な代替法を提供できる可能性がある。したがって、UV-A光の抗菌特性及び/または抗炎症特性が、IBD患者における腸管マイクロバイオームを操作しかつ/または炎症を低減させるために利用され、一方で、前記複数のバルーンは、UV光分布及び放射照度を向上させ、大便及びバイオフィルム形成に起因する妨げを低減させ、かつ、UV-A光治療中にGI管を安定させかつ送達デバイスも安定させるために用いられる。
【0016】
後述の詳細な説明のセクションにおいて説明するように、インビトロ及びインビボの安全性データが示すところによれば、UV-Aは、DNA損傷、細胞増殖阻害、または組織学的炎症のエビデンスを伴うことなく、短距離であっても様々なヒト細胞タイプに安全に適用できる。
【0017】
本明細書に開示されるさらなる特徴及び利点は、以下の説明に示され、部分的には、その説明から明らかになり、または本明細書に開示されている原理の実践によって習得することができる。本明細書に開示される特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された器具及び組み合わせによって実現し、得ることができる。本明細書に開示されるこれら及び他の特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から完全に明らかになり、または本明細書に示された原理の実践によって習得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
上述の開示、ならびにその利点及び特徴を得られ方法を記載するために、上述の原則のさらに具体的な説明は、添付の図面に示す具体例を参照することで行われる。これらの図面は、本明細書に開示される例示の態様を表すにすぎず、したがって、その範囲を制限するとみなされるべきではない。これらの原則は、以下の図面を用いて、さらに具体的かつ詳細に記載されて説明される。
【0019】
【
図1A】本開示の実施形態による、光治療システムの概要を描写した略ブロック図を示す。
【
図1B】本開示の別の実施形態による、
図1Aの光治療システムの略ブロック図を示す。
【
図2A】本開示の実施形態による、複数のバルーンを備えた光カテーテルアセンブリの概略図を示す。
【
図2B】本開示の実施形態による、単一バルーン内に光放出部分を備えた光カテーテルアセンブリの概略図を示す。
【
図3】
図3A及びBは、本開示の実施形態による、それぞれ脱膨張状態及び膨張状態における、複数のバルーンを備えた光カテーテルアセンブリの概略図を示す。
【
図4】
図4Aは、本開示の実施形態による、単一バルーン要素を備えた例示的なUV発光デバイスの概略図を示す。
図4Bは、本開示の別の実施形態による、単一バルーン要素を備えた例示的なUV発光デバイスの概略図を示す。
【
図5A】本開示の実施形態による、複数のバルーンを備えた送達デバイスを用いてGI管疾患を治療、改善、及び/または予防するための例示的な方法を示したフローチャートを示す。
【
図5B】本開示の実施形態による、複数のバルーンを備えた送達デバイスを用いてUV光を投与しながらバルーン及びUV LEDのうち1つ以上の動作を調整するための例示的な方法を示したフローチャートを示す。
【
図6A】
図6A~Gは、本開示の実施形態による、複数のLEDと複数の膨隆可能バルーンとを含む例示的な送達デバイスの、大腸の管腔内における配置を描写した概略図を示す。
【
図7】
図2AのUV光カテーテルの拡大部分の概略図を示す。
【
図8】本開示の実施形態による、送達チューブ内に含まれた1つ以上のチップオンボード(COB)小型バーを備えた例示的なUV光カテーテルの概略図を示す。
【
図9】
図9Aは、本開示の実施形態による、UV LED光源に結合された光ファイバシステムの概略図を示す。
図9B及びCは、本開示の実施形態による、光ファイバシステムとともに埋め込むための複数のUV LED光源の概略図を示す。
【
図10】
図10Aは、本開示の実施形態による、1つ以上のUV LED光源と併せて利用される可撓性プリント回路基板(PCB)の平形構成及び管状構成を示す。
図10Bは、本開示の実施形態による、UV光カテーテルに実装される例示的なヒートシンクの概略図を示す。
【
図11】
図11Aは、本開示の実施形態による、複数のLED及び複数の線形リフレクタの構成例の概略図を示す。
図11Bは、本開示の実施形態による、UV光カテーテルに実装される例示的なヒートシンクの概略図を示す
図11Cは、本開示の実施形態による、複数のLEDと複数の線形リフレクタとを含む例示的なUV LED光源における例示的な光分布の概略図を示す。
【
図12A】例示的なUV発光デバイスを実施した場合の大腸菌(E. coli)の増殖曲線を示す。
【
図12B】本開示の例示的なUV発光デバイスを実施した場合の大腸菌の増殖曲線を示す。
【
図13】本開示の原理による、マウスの結腸内で実施された例示的なUVA発光デバイスの概略図を示す。
【
図14】
図14A及びBは、本開示の原理による、ラットの膣管内に挿入された本開示の例示的なUVA発光デバイスの概略図を示す。
【
図15】
図15Aは、例示的な狭帯域UVA発光デバイスを実施した場合の、大腸菌を含有する液体培養の増殖曲線を示す。
図15Bは、大腸菌を含有する液体培養上で実施された例示的な狭帯域UV-A発光デバイスを示す。
【
図16】例示的な狭帯域UV-A発光デバイスを実施した場合の、大腸菌を含有する液体培養の増殖曲線を示す。
【
図17】
図17A及びBは、例示的な狭帯域UV-A発光デバイスを実施した場合の、大腸菌を含有する液体培養の増殖曲線を示す。
【
図18】例示的なUV発光デバイスを実施した場合の、大腸菌を含有する液体培養の増殖曲線を示す。
【
図19】例示的なUV発光デバイスを実施した場合の、大腸菌を含有する液体培養の増殖曲線を示す。
【
図20】例示的なUV発光デバイスを実施した場合の、大腸菌を含有する液体培養の増殖曲線を示す。
【
図21】
図21A及びBは、例示的なUV発光デバイスを実施した場合の、大腸菌を含有する液体培養の増殖曲線を示す。
【
図22】一実施例において細菌培養物に適用される狭帯域UV-A光の強度と曝露持続時間とを示す表を示す。
【
図23】一実施例における狭帯域UV-A光曝露中の経時的な細菌数を示す表を示す。
【
図24】例示的なシステムを用いた狭帯域UV-A光曝露中の経時的な細菌数を示す増殖曲線を示す。
【
図25-1】
図25Aは、狭帯域UV-A光に曝露させた細菌を含有するペトリ皿の経時的な画像を対照と比較して示す。
図25Bは、その後にプレーティングした場合の大腸菌液体培養物の狭帯域UV-A処理の効果を示す、ペトリ皿の画像である。
【
図25-2】
図25C~Fは、例示的なシステムを用いて様々な強度のUV光に曝露させた経時的な大腸菌細菌数を示す増殖曲線を示す。
【
図25-4】
図25G~Jは、例示的なシステムを用いて様々な強度のUV光に曝露させた経時的な緑膿菌(P. aeruginosa)細菌数を示す増殖曲線を示す。
【
図25-6】
図25K及びLは、例示的なシステムを用いた、それぞれ20分及び40分時点での、様々な強度における対数的減少を比較する増殖曲線を示す。
【
図25-7】
図25Mは、例示的なシステムを用いた、様々な強度及び処理時間における大腸菌コロニー径の減少を示す増殖曲線を示す。
図25Nは、例示的なシステムを用いた、様々な強度及び処理時間における緑膿菌コロニー径の減少を示す増殖曲線を示す。
【
図26-1】
図26Aは、例示的なシステムを用いたUV-A光への曝露中の細胞増殖を示す棒グラフを示す。
図26Bは、例示的なシステムを用いたUV-A光への曝露中の細胞増殖を示す棒グラフを示す。
【
図26-2】
図26Cは、例示的なシステムを用いたUV-A光への曝露中の細胞増殖を示す棒グラフを示す。
図26Dは、例示的なシステムを用いたUV-A光への曝露中に細胞に対するDNA損傷が存在しないことを示す棒グラフを示す。
【
図26-3】
図26Eは、例示的なシステムを用いたUV-A光への曝露中に細胞に対するDNA損傷がないことを示す棒グラフを示す。
図26Fは、例示的なシステムを用いたUV-A光への曝露中に細胞に対するDNA損傷がないことを示す棒グラフを示す。
【
図27】例示的なシステムを用いたUV光への曝露中のウイルス感染細胞の増殖を示す棒グラフを示す。
【
図28】例示的なシステムを用いた72時間のUV光適用後の感染細胞の細胞数を対照と比較して示す棒グラフを示す。
【
図29】NB-UVA光で処理した繊毛性気管上皮細胞における96時間時点でのコロナウイルス229Eの細胞内検出と、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質(MAVS)のレベルとを示すウェスタンブロットを示す。
【
図30】本開示の実施形態による、コクサッキーウイルスでトランスフェクトした肺胞細胞と、トランスフェクトした肺胞細胞に対するUVA処理の効果との、蛍光画像を示す。
【
図31】本開示の実施形態による、コクサッキーウイルスでトランスフェクトしたHeLa細胞の生存に対する狭帯域UV-A処理の効果を示す棒グラフを示す。
【
図32】本開示の実施形態による、コロナウイルス229Eによるトランスフェクションと狭帯域UV-A光による処理とに応じた繊毛性気管上皮細胞の生存度を示す棒グラフを示す。
【
図33】本開示の実施形態による、コロナウイルス229Eによるトランスフェクションと狭帯域UV-A光による処理とに応じた繊毛性気管上皮細胞の生存度を示す棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
別途定義されない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。SzycherのDictionary of Medical Devices CRC Press,1995は、本明細書で使用される多くの用語及び語句に有用な案内を提供することができる。当業者であれば、本発明の実施に使用し得る本明細書に記載されたものと同様または同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。実際に、本発明は、具体的に記載された方法及び材料に決して限定されるものではない。例えば、図は、主に胃腸管における本発明を示しているが、全体を通して示されるように、開示されたシステム及び方法は、他の用途に使用することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明し特許請求するために使用される寸法、形状、相対位置などの特性は、「約」という用語によって修飾されたものとして理解されるべきである。
【0022】
次に、本発明の様々な実施例を説明する。以下の説明では、これらの実施例を十分に理解し説明を可能にするための具体的詳細を提供する。しかしながら、当業者であれば、本発明がこれらの詳細の多くを必要とせずに実践し得ることを理解するであろう。同様に、当業者はまた、本発明が本明細書に詳細に記載されていない他の多くの明白な特徴を含み得ることを理解するであろう。さらに、関連する説明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、いくつかの周知の構造または機能については、以下には詳細に示さず、または説明しない場合がある。
【0023】
以下で使用されている用語は、本発明の特定の具体的な実施例の詳細な説明と併せて使用されている場合でも、最も広く合理的に解釈されるべきである。実際に、特定の用語が、以下で強調されることさえある。しかし、限定的に解釈されることを意図した用語は、この発明を実施するための形態の節で明確かつ具体的にそのようなものとして定義される。
【0024】
本明細書において用いる「LED」という用語は、様々な可視光及び不可視光スペクトルにわたって光を放出する半導体光源である発光ダイオードを指す。LEDは、典型的に、その発光スペクトル領域上で強度が様々である波長セットを含む発光スペクトルを有し、かつ典型的に、その波長領域上でベル形または類似形状の強度曲線に従う。具体的なLEDは、典型的に、そのピーク発光強度の波長、またはそのLEDが最大強度の照射を放出する波長を用いて記述される。
【0025】
したがって、LEDは典型的に、ある波長領域にわたって光を放出し、そして具体的なLEDは、閾値強度(いくつかの実施例ではLEDの最大強度のパーセンテージ)を超えて放出する波長の領域を用いて記述されることがある。例えば、所与のLEDが、335nm~345nmの波長でのみ、その最大発光強度の少なくとも10%の光を放出する可能性がある。335nm未満及び345nm超でのそのLEDの発光強度は、そのLEDのピーク強度発光波長(本明細書において「ピーク波長」)の10%未満である可能性があり、いくつかのケースにおいては低すぎて治療に関連しない可能性がある。したがって、多くの治療用途に対して、その具体的LEDの場合は335nm~345nmの間の波長のみが治療上の影響を有すると考えられる。
【0026】
したがって、本明細書に記載される波長領域は、特定の治療用途、持続時間、及び、そのLEDによって治療部位に送達される(またはそのLEDによって放出される出力に基づく)放出の強度について、治療的に有効または有意である波長領域であり得る。いくつかの実施例では、波長領域は、ピーク発光強度の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%である強度を有する、そのLEDによって放出される波長の領域であり得る。
【0027】
したがって、様々なLED光源について、そのLEDの最大強度の閾値強度パーセンテージが放出される領域に対応した発光スペクトル領域が、本明細書に開示される。様々なLEDスペクトル発光領域及び市販のLEDのピーク強度発光波長の例は、その内容全体が参照により組み入れられる、Filippo, et al, “LEDs: Sources and Intrinsically Bandwidth-Limited Detectors” に記述されている。
【0028】
本明細書には多くの具体的な実施態様の詳細が記載されているが、これらは任意の発明の範囲または特許請求される可能性のあるものの範囲への制限として解釈されるべきではなく、特定の発明の特定の実施態様に特有である特徴の説明として解釈されるべきである。本明細書で別々の実施態様との関連で説明されている特定の特徴は、単一の実施態様で組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施態様との関連で説明されている様々な特徴を、複数の実施態様で別々に、または任意の好適なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特徴は特定の組み合わせで機能するものとして上記で説明され、当初はそのように特許請求されることさえあり得るが、特許請求された組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、その組み合わせから分離することができ、その特許請求された組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形を対象としてもよい。
【0029】
同様に、操作が特定の順序で図面に描かれる場合があるが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が、図示された特定の順序で、もしくは順次的な順序で実行されること、または図示される全ての操作が実行されることを要求するものと理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスク処理及び並列処理が有利な場合がある。さらに、上記の実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施態様においてそのような分離を必要とするものと理解されるべきではなく、説明されるプログラム構成要素及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に統合され得るか、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化され得ることが理解されるべきである。
【0030】
概要
胃腸管を患部とする炎症性及び/または感染性疾患を、治療、改善、及び/または予防するための、方法及びシステムを提供する。具体的には、紫外線A(UV-A)領域内の波長で放出される狭帯域光を用いて、胃腸管を患部とする炎症性及び/または感染性疾患の、治療、改善、及び/または予防における有効性と安全性とを向上させるための、方法及びシステムを提供する。いくつかの実施例では、本明細書に記載する方法及びシステムが、膣の感染及び/または炎症の治療に適用され得る。複数のUV光源と複数の膨隆可能バルーンとを備えたUV光カテーテルアセンブリを含む例示的なUV光治療システムを
図1A及び
図1Bに示す。複数の発光ダイオード(LED)と複数の膨隆可能バルーンとを含む光放出部分を有する送達チューブを備えたUV光カテーテルアセンブリの例を
図2A、3A、及び3Bに示す。さらに、光放出部分に結合された単一バルーンを備えた単一バルーンデバイスを
図2Bに示す。単一バルーンデバイスのさらなる例を
図4A及び4Bに示す。
図5Aは、複数のバルーンを備えた送達デバイスを用いて、GI管の感染性及び/または炎症性病態を、治療、改善、及び/または予防するための例示的な方法を説明する。さらに、
図5Bは、UV光治療中にバルーンの動作及び送達デバイスの動作を制御するための例示的な方法を示す。
図6A~6Gは、大腸の管腔内におけるマルチバルーンUV光送達デバイスの例示的な位置決め及び配置を示す。
図7~11Cは、UV光治療を提供するために送達デバイス内に含まれ得る例示的なUV光源を示す。
図12A~33は、様々な微生物に対するUV-A光の抗菌的な有効性及び安全性を示す実験データを示す。
【0031】
UV光送達デバイスに結合された1つ以上のバルーンを用いることの技術的利点には、治療部位におけるUV光分布と、光分布の均一性と、放射照度とが向上することによる、UV光治療の有効性の向上が含まれ、その向上は、治療部位におけるバルーンと結腸上皮との間の接触エリアで襞及び膨起を引き伸ばすことによって治療部位の表面積を増大させること;UV光源までの距離が均一であること;治療部位にて妨げとなる大便及び/またはデブリ(例えばバイオフィルム)を位置ずれさせること;ならびに、近位側の大便及び/またはデブリが治療部位まで下降してくることを防ぐこと;のうち1つ以上を通じてもたらされる。1つ以上のバルーンを含む送達デバイスを用いることの別の技術的利点には、治療エリアの数及び/または治療エリアの位置に基づく選択的な治療が含まれる。1つ以上のバルーンを用いることによって、感染及び/または炎症の位置と、重症度と、広がりの程度及びパターンとのうち、1つ以上に応じてバルーンを選択的に動作かつ/または調整することを通じて、UV光線療法がカスタム化され得る。さらに、1つ以上のバルーンは、結腸上皮と接触するように膨張された時に、結腸の壁を安定させ得るとともに、送達デバイスも管腔内で安定させ得、したがって送達デバイスの配置中及び治療中に引き起こされる傷害を低減させ得る。さらに、1つ以上のバルーンは、光治療中に治療部位とUV光源との間の距離を一定に維持し、それによって治療の持続時間にわたって均一な光送達を提供する。さらに、1つ以上のバルーンを含む送達デバイスは、GI管の管腔を通って(例えば肝弯曲部及び/または脾弯曲部を通って)効率的に誘導できる可能性があり、それによってGI管内の任意の位置にUV光を送達できる可能性がある。
【0032】
UV光治療システム
図1Aに例示的なUV光治療システム100の概要を示す。UV光治療システム100は、感染性及び/または炎症性病態を、治療、改善、低減、及び/または予防するために、胃腸(GI)管の1つ以上の部分にUV光を送達するために構成され得る。例えば、UV光治療システムは、GI管の1つ以上の部分にUV光を腔内投与するように構成され得る。GI管の1つ以上の部分には、大腸の1つ以上のエリア(例えば直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸)、小腸の1つ以上のエリア(例えば十二指腸、空腸、回腸)、胃の1つ以上のエリア、及び/または食道内の1つ以上のエリアが含まれ得るが、それに限定されるわけではない。いくつかの実施形態では、
図4A及び4Bについて論じるように、膣の感染及び/または炎症を治療するようにUV光治療システム100が構成され得る。さらに、UV光治療システム100は、GI管の標的エリア上にUV光を均等に投与して(すなわち、標的エリア上のUV光の均等な分布)、標的エリアにおける放射照度と放射照度分布とを向上させるように、構成され得る。標的エリアは、本明細書において代替的に治療エリアともいい、GI管病態による患部を生じたGI管内のエリアを含む。いくつかの実施例では、UV光治療が予防目的で適用され得、よって標的エリアは、感染及び/もしくは炎症をよりきたしやすいエリア(例えば、感染及び/もしくは炎症エリアに隣接するエリア)、または、感染及び/もしくは炎症を有すると疑われるエリアを含み得る。他のいくつかの実施例では、感染及び/または炎症の再発を予防するために、すでに治療されまたは治癒したエリアにUV光治療が適用され得る。標的エリアは、GI管内の1つの管腔内エリア、GI管内の1つ以上の隣り合った管腔内エリア、または、GI管内の1つ以上の隣り合っていない管腔内エリアを含み得る。
【0033】
さらに、UV光治療システム100は、GI管の1つ以上の部分内で選択的にUV療法を投与するように構成され得る。非限定的実施例として、UV光治療システム100は、S状結腸の一部分またはS状結腸の全部にUV光を送達するように構成され得る。別の非限定的実施例では、UV光治療システム100が、下行結腸の一部分とS状結腸の一部分とにUV光を送達し得る。なお別の実施例では、UV光治療システム100が、大腸の隣り合っていないエリア(例えばS状結腸の一部分及び横行結腸の一部分)に同時にUV光を選択的に送達し得る。よって、UV光治療システム100は、単一エリア、1つ以上の隣り合ったエリア、1つ以上の隣り合っていないエリア、またはそれらの組み合わせであり得る、標的エリア(すなわち、感染及び/または炎症エリア)に基づいて、UV治療をカスタム化するように構成され得る。さらに、いくつかの実施例では、複数の標的エリアを標的とする場合に、UV光治療の効率とスピードとを向上させるためにUV療法が同時に投与され得る。
【0034】
UV光治療システム100は、1つ以上のUV光源142と、1つ以上のバルーン144と、UV光カテーテルアセンブリを所望の温度範囲に維持しかつ過熱を低減するように構成された冷却ユニット146とを備えたUV光カテーテルアセンブリ140を含む。一実施例では、前記1つ以上のUV光源142と冷却ユニット146とが送達チューブ(例えば円柱状の可撓性チューブ)内に位置決めされ得、一方で、前記1つ以上のバルーンは送達チューブの長さに沿って送達チューブ上に配され得る。送達チューブはまた、本明細書においてカテーテルまたは光カテーテルともいう。別の実施例では、前記1つ以上の光源142と前記1つ以上のバルーン144とが送達チューブ上に位置決めされ得、一方で、冷却ユニットがハウジングカテーテル内に位置する。なお別の実施例では、ハウジングカテーテル内もしくはその上に位置決めされまたはこれに埋め込まれた前記1つ以上の光源142を含む送達カテーテルに取り付けられたハンドル部分内に、冷却ユニット146が位置決めされ得る。この実施例では、前記1つ以上のバルーン144が送達チューブ上に位置決めされ得る。
【0035】
一実施形態では、ハウジングカテーテルの遠位部分(例えば、後述する制御ユニット102に接続する近位部分とは反対側にある遠位部分)に単一バルーンが位置決めされ得る。単一の拡張可能バルーンを含むUV光カテーテルアセンブリの非限定的実施例を
図2Bに示す。いくつかの実施例では、
図4A及び4Bに示す例示的デバイスなど、膣または直腸へのUV投与用のUV光カテーテルアセンブリが、インビボで位置決めされた際に展開され得る単一バルーンを有し得る。
【0036】
別の実施例では、感染エリアの長さ全体(例えば結腸の長さ全体)の様々な位置で感染を治療するために、前記1つ以上のバルーン144が送達チューブの長さに沿って位置決めされ得る。1つ以上のバルーン144は、UV光源142からそれぞれの標的部位までUV光の伝送を可能にするためにUV透明性バルーンとして構成され得る。バルーンは、100%のUV透明性を提供する材料(すなわち、その材料を通るUV透過率が100%である材料)を用いて構築され得、または、100%~80%の間の範囲のUV透明性を提供する(すなわち、100%~80%の間の範囲のUV透過率である)任意の材料もしくは材料の組み合わせを用いて構築され得る。一実施例では、UV透明性バルーンがポリエーテルブロックアミド(PEBA)から作られ得る。PEBAは部分的にUV透明性(すなわち、強度損失が約15%)である。別の実施例では、UV透明性バルーンが、100%のUV透明性である環状オレフィンコポリマー(COC)から構築され得る。なお別の実施例では、UV透明性バルーンがシリコーンで組成され得る。さらに、1つ以上のバルーン144を構築するために用いられるUV透明性材料は医療等級の材料であり得る。さらに、UV透明性材料(すなわち、UV透過性材料)がまたUV安定性でもあり得る。
【0037】
前記1つ以上のバルーン144は、光投与中にデバイスを所定の位置に確実固定して、それによってハウジングカテーテルの望ましくない動きを低減するために利用され得る。さらに、1つ以上のバルーン144は、GI管内の襞を引き伸ばして、標的エリアにより均一な露光を提供するために利用され得る。さらに、前記1つ以上のバルーン144は、光カテーテルアセンブリ140と上皮との間で障壁として作用し得る外来性デブリ/バイオフィルムを拡散させるために利用され得る。さらになお、1つ以上のバルーン144は、大便が治療セグメント内まで下降してくることを防いでもよく、それによって、UV光治療デバイスを介して提供されるUV光治療の有効性、効率、均等性、及び一貫性を高める。
【0038】
一実施例では、前記1つ以上のバルーン144が、流体源(例えばエアポンプ)に結合された1つ以上の対応するポートを通じて膨張可能であってもよく、よって、UV光源への給電前にUV光カテーテルアセンブリをインビボの所望のポジションに誘導した際に膨張され得る。さらに、1つ以上のバルーン144は、1つ以上のバルーンのポジションを調整できるように構成され得る。例えば、1つ以上のバルーンはモジュール構成を有し得、よって、病態(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、病態の位置(例えば、結腸のどのエリアが患部であるかに基づいて)、及び、患部における病態の進行度のうち、1つ以上に基づいて、バルーンの数とバルーンの位置決めとがカスタム化され得る。さらに、
図2Aについて後述するように、いくつかの実施形態では、病態、病態の位置、標的エリアの直径、ならびに/または、同定された病態による患部の炎症及び/もしくは感染の度合いに基づいて、前記1つ以上のバルーンの各々の膨張の程度が調整され得る。例えば、第1の標的エリアが第2の標的エリアより小さい直径を有する可能性がある。すなわち、第1の標的エリアが、(例えば結腸狭窄のゆえに)第2の標的エリアより狭い可能性がある。したがって、第1のエリアに光を送達するために用いられる第1のバルーンの第1の膨張量が、直径がより大きい第2の標的エリアに光を送達するために用いられる第2のバルーンの第2の膨張量より少なくてもよい。
【0039】
前記1つ以上のUV光源142は、UV-A領域内の波長を有する狭帯域幅UV光を送達するように構成され得る。UV-A領域内の波長を有する光は、有効な抗菌特性を有し、かつ、患者体内で大きな面積(例えば、S状結腸全体、または患者体内の任意の大きな面積)にわたって体内投与するうえで安全である。さらに、本発明者らは、UV-A領域内のある一定の波長が細胞内を貫通して、UV誘発性のDNA損傷を引き起こすことなく抗菌応答を活性化させることを同定した。一実施例では、UV-A領域内の波長が335nm~349nmの間の領域内であり得る。さらに、UV-A領域内の波長は、335~349nmの間、339nm~346nmの間、338~342nmの間、または338nm~346nmの間のピーク波長を有し得る。
【0040】
別の実施例では、前記1つ以上の光源142が、338nm~342nmの間または339nm~346nmの間のUV-A領域内の波長を伴う光を放出し得る。したがって、その波長は338nm~342nmの間または339nm~346nmの間のピーク波長を有し得る。いくつかの実施例では、前記1つ以上の光源142が、335nm~349nmの間、338nm~342nmの間、339nm~346nmの間、または338nm~346nmの間の1つ以上のピーク波長を伴う光を放出し得る。
【0041】
一実施例では、前記1つ以上の光源が複数の発光ダイオード(LED)であり得、ここで各LEDは、UV-A領域内の波長を有する狭帯域幅の光を放出するように構成される。上述したように、狭帯域幅の光は、335nm~349nmの間、338nm~346nmの間、338nm~342nmの間、または339nm~346nmの間の波長を有し得る。
【0042】
様々な実施形態において、LED以外の他のタイプの光源が用いられ得る。光源の例を
図8~12に関して説明する。
【0043】
UV光カテーテルアセンブリ140は制御ユニット102に結合され得る。一実施例では、制御ユニット102が、UV光アセンブリの温度を調節するためにUV光カテーテルアセンブリ140内の冷却ユニット146を通して冷媒流を提供するための冷却システム108を含む。冷却システム108は、コンプレッサ109(例えば医療等級のコンプレッサ)と、空気冷却器111(例えば医療等級の空気冷却器)と、冷却ユニット146から戻ってくる空気に対するフローセンサ(図示せず)と、弁106と、冷媒流を開始及び/もしくは停止させるため、かつ/または冷却チューブを通る冷媒流を調整するための調圧器112とを含む。
【0044】
制御ユニット102は、高温冷媒コネクタ148、低温冷媒コネクタ150、及び電気コネクタ152のうち1つ以上と結合するために、(後述するように、1つ以上のコネクタまたはアンビリカルを介して制御ユニット102とUV光アセンブリとの間で)接続インタフェースを提供する、コネクタ110を含む。高温冷媒コネクタ148は、UV光カテーテルアセンブリから制御ユニット102まで高温冷媒を流すためのチュービングであり得、低温冷媒コネクタ150は、冷却システムからの低温冷媒がそれを通ってUV光カテーテルアセンブリまで流れ得る第2のチュービングであり得、電気コネクタ152は、UV光カテーテルアセンブリと制御ユニット102との間に電気的な結合を提供し得る。一実施例では、コネクタ152が、有線接続もしくは無線接続、またはそれらの組み合わせであり得る。一実施例では、コネクタ152が、前記1つ以上の光源142の電源をオンまたはオフにするために制御ユニット102から電気信号を送るために用いられ得る。いくつかの実施例では、前記1つ以上の光源142の強度、及び/または1つ以上の光源142の持続時間が、コネクタ152を介して制御され得る。
【0045】
いくつかの実施例では、UV光カテーテルアセンブリ140は、各光セグメントが複数の光源を備えている1つ以上の光セグメントを含み得る。いくつかの実施例では、各光セグメントの動作(電源ON時間、電源OFF時間、強度調整、動作の持続時間など)が制御ユニット102を介して独立に調整され得る。したがって、制御ユニット102が、対応する光セグメントの様々な動作を調整するための1つ以上の光セグメント制御ユニット(図示せず)を含み得る。いくつかの実施例では、全ての光セグメントの動作が、同期した様式で調整され得る(例えば電源ON時間、電源OFF時間、動作の持続時間、強度など)。いくつかの実施例では、いくつかの動作(例えば電源ON時間)が同期され得、一方で、他のいくつかの動作(例えば強度、電源OFF時間、持続時間など)が独立して調整され得る。非限定的実施例として、第1の標的エリアが第2の標的エリアと比較して異なる度合いの感染及び/または炎症を有する場合に、第1の標的エリアに光を送達する第1の光セグメントの第1の強度が、第2の標的エリアに光を送達する第2の光セグメントの第2の強度と異なり得る。
【0046】
制御ユニット102は、前記1つ以上のバルーン144の膨張と脱膨張とを調整するためのバルーン制御ユニット120をさらに含む。バルーン制御ユニット120は、前記1つ以上のバルーン146と流体連結している1つ以上の圧力センサ122に通信的に結合され得る。一実施例では、前記1つ以上のバルーンの各々が、対応する圧力センサに結合され得、そして、バルーン制御ユニット120のコントローラ及び/または制御ユニット102のコントローラ103を介して各バルーン内部の圧力が個々にモニターされ得る。さらに、UV光アセンブリの漏れの状態及び温度のうち1つ以上を評価するために、各バルーン内の圧力変動がコントローラを介してモニターされ得る。
【0047】
いくつかの実施例では、バルーン制御ユニット120は、UV光線療法デバイス100の配置中に前記1つ以上のバルーン142を所望の圧力及び所望のバルーン体積まで加圧するために用いられ得る膨張用流体(例えば空気)を貯蔵するためのリザーバ130をさらに含む。一実施例では、1つ以上のバルーン146は、バルーン制御ユニット120を介してリザーバからの流体を用いて選択的に加圧され得る。したがって、一実施例では、1つ以上のバルーンの各々は、1つ以上のバルーン膨張ポート124に流体的に結合され得る。各バルーン膨張ポートはバルーン制御ユニット120を介してリザーバ130に結合され得る。よって、選択されたバルーンの加圧中に、流体がリザーバ130からそれぞれのバルーン膨張ポートまで流れ、UV光カテーテルアセンブリ内の(バルーン膨張ポートとバルーンとの間の)チャネルまたは通路を通り抜け、その後に、選択されたバルーンに入り得る。
【0048】
さらに、バルーン制御ユニット120が、前記1つ以上のバルーンを選択的に除圧するために用いられ得る。例えば、UV光治療アセンブリが患者の結腸内に位置決めされている間、治療持続時間の完了後に、UV光治療アセンブリを患者から除去する前に、膨張されたバルーンが脱膨張され得る。いくつかの実施例では、バルーン膨張ポート及び通路が、除圧中にバルーンから流体を除去するためにもまた用いられ得る。他のいくつかの実施例では、バルーンを脱膨張させるために別個のバルーン脱膨張ポート及び通路が提供され得る。加圧と同様に、前記1つ以上のバルーンが選択的に除圧され得、または、膨張(すなわち加圧)された全てのバルーンが同時に脱膨張(すなわち除圧)され得る。さらに、バルーン制御ユニットは、各バルーンの加圧と除圧とを切り替えるための1つ以上の弁(図示せず)を含み得る。いくつかの実施形態では、バルーン制御ユニット120が、前記1つ以上のバルーン144を加圧及び/または除圧するための1つ以上のポンプ(図示せず)を含み得る。いくつかの実施例では、前記1つ以上のポンプが雰囲気に結合され得、よって、バルーンを加圧するために大気を用い得る。同様に、除圧中に、バルーンからの空気が雰囲気中に放出され得る。他のいくつかの実施形態では、バルーンの加圧用に提供される空気をフィルタリングするために、(例えばポンプの吸気口に)1つ以上のフィルタが提供され得る。
【0049】
さらに、前記1つ以上のバルーン144の各々の内部における所望の圧力をモニター及び/または維持するために、1つ以上の圧力センサ130が前記1つ以上のバルーン膨張ポートに結合され得る。例えば、膨張中に、選択されたバルーンがそれぞれのバルーン膨張ポートを介して膨張され得、そして、選択されたバルーン内部の圧力が、それぞれのバルーン膨張ポートに流体的に結合されたそれぞれの圧力センサを介してモニターされ得る。圧力センサは圧力信号をバルーン制御ユニット120に伝送し得る。制御ユニット120は、UV光治療システム100の動作中にそれぞれの圧力センサからの信号に基づいて各バルーン内部の圧力信号をモニターし得、そして、所望の圧力に基づいて、1つ以上のバルーンの加圧及び/または除圧を自動的に調整し得る。非限定的な一実施例として、ユーザが、各バルーンについてそれぞれの所望の圧力を、制御ユニット120を介して指定し得る。したがって、膨張量、膨張レート、及び脱膨張レートのうち1つ以上が個々に調整され得る。いくつかの実施例では、膨張レート、膨張量、及び脱膨張レートのうち1つ以上が、動作下にある全てのバルーンについて(すなわち、送達デバイス上のバルーンの総数より少ないかまたはこれに等しい数の、動作しているバルーンについて)、同期した様式で調整され得る。1つ以上のバルーンを加圧するための例示的な流体フローは126で示され、1つ以上の圧力センサ122を介する例示的な圧力信号は128で示されている。図では分離して示されているが、各圧力センサは、それぞれのバルーン内部の圧力をモニターするためにそれぞれのバルーン膨張ポートに結合され得る。
【0050】
一実施例では、標的エリアと光源との間の治療的距離が、標的エリア内に配置されたバルーンの加圧量に基づいて調整され得る。換言すると、いくつかの実施例では、所与のバルーンの膨張量が管腔の直径に基づいて調整され得る;管腔の直径は、患者自身のGI管の解剖学的特徴(例えば小腸か大腸か)、疾患のタイプ、及び/または、標的エリアに影響を及ぼしている疾患の重症度に基づく可能性がある。例えば、標的エリアがより大きな直径を有する場合に、バルーンは、標的エリアと接触するために、かつバルーンの湾曲した外面全体にわたる一貫した接触を確保するために、より高い第1の圧力まで加圧され得る;それは、(例えば、大便、デブリ、バイオフィルムを位置ずれさせること;近位側の大便が標的エリアまで下降してくることを防ぐこと;襞を広げて表面積を増大させること;などによって)投与されるUV光の照射の1つ以上を増大させ、一方で、標的エリア上へのUV光の照射分布を向上させる。さらに、管腔の狭小化を引き起こす、より高度の炎症及び/または感染を標的エリアが有するならば、上述したように上皮との必要な接触をもたらし、かつ放射照度及び/または放射照度分布を向上させるために、それに従ってバルーンが加圧され(例えば、より小さな体積まで膨張され)得る。さらに、いくつかの実施例では、それに加えて、選択的な光治療のために病態に基づいて光源パラメータが変更され得る(例えば強度を増大または低減させるために電流を調整するなど)。
【0051】
図1A及び1Bは、制御ユニット102と統合されたバルーン制御ユニット120とリザーバ130とを示しているが、バルーン制御ユニット120及び/またはリザーバ130が制御ユニット102とは別個であり得ることが認識されるであろう。同様に、冷却システム108が制御ユニット102に(図に示すように)統合され得、またはこれとは別個であり得る。
【0052】
膨張用流体は、前記1つ以上の光源142からのUV光が効果的に通り抜けることを可能にするUV透明性の流体であり得る。さらに、1つ以上の光源142から335nm~350nmの領域内の波長で放出されたUV-A光がバルーン144を通って伝送されて標的組織に到達することを可能にする、UV透明性材料を用いて、前記1つ以上のバルーン144が構築され得る。用いられ得る例示的なUV透明性材料には、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、環状オレフィンコポリマー(COC)、及びシリコーンが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0053】
いくつかの実施形態では、
図1Bに示すように、制御ユニット102をUV光カテーテルアセンブリ140と結合するためにアンビリカルアセンブリ131が利用され得る。例えば、(アンビリカルアセンブリ131のコントローラ側132にある)アンビリカルチューブアセンブリ131の高温冷媒コネクタ134、低温冷媒コネクタ136、及び電気コネクタ138のうち、1つ以上と結合するために、コネクタ110が用いられ得る。
【0054】
アンビリカルチューブアセンブリ131は制御ユニット102をUV光カテーテルアセンブリ140と接続する。アンビリカルチューブアセンブリ131は、UV光カテーテルアセンブリ140内のLED用の電気接続ワイヤ、UV光カテーテルアセンブリのサーミスタまでの電気接続ワイヤ、ならびに、高温及び低温冷媒チュービングのうち1つ以上がその中に配される外側シースを含む。電気接続ワイヤならびに低温及び高温冷媒チュービングは、外側シースの長さに沿って通過する。いくつかの実施例では、低温冷媒チュービングが、環境からの熱伝達を低減させるための追加的な断熱を含み得る。
【0055】
アンビリカルチューブアセンブリ131のUV光カテーテル側141では、高温及び低温冷媒チュービング、ならびに(UVカテーテルアセンブリのサーミスタとLEDとにつながる)前記1つ以上の電気接続ワイヤが、高温冷媒コネクタ152、低温冷媒コネクタ150、及び電気コネクタ148として出て、それらは、カテーテル‐アンビリカル接続インタフェース141を介して、UV光カテーテルアセンブリ140の対応する高温冷媒コネクタ、低温冷媒コネクタ、及び電気コネクタに結合される。
【0056】
一実施例では、アンビリカルチューブアセンブリ131は、1つ以上の通気路(例えば、光カテーテルアセンブリから温気を戻すための高温冷媒チュービング、冷却された冷媒を光カテーテルアセンブリに提供するための低温冷媒チュービング)と、1つ以上の導電体(例えば、光カテーテルアセンブリ及び/または光カテーテルアセンブリのサーミスタに電源を提供するための電源コンダクタ)とを含み得る。さらに、前記1つ以上の導電体はまた、光カテーテルアセンブリの温度提示をサーミスタから制御ユニットに提供し得る。制御ユニット102は、温度に応答して、光カテーテルアセンブリの動作及び光カテーテルアセンブリまでの冷媒流のうち1つ以上を調節し得る。アンビリカルチューブアセンブリは、光カテーテルアセンブリに接続するように構成された光カテーテルコネクタと、制御ユニット(またはコンプレッサシステム)に接続するように構成された制御ユニットコネクタ(またはコンプレッサコネクタ)とをさらに含み得る。
【0057】
アンビリカルチューブアセンブリ131は、約4、5、もしくは6フィートの長さであり得、またはUV光カテーテルアセンブリ140を制御ユニット102に接続するための他の好適な長さであり得る。アンビリカルチューブアセンブリ131は、制御ユニット102が入ったベッドサイドカートから患者まで到達できるだけ充分に長くてもよい。上述したように、アンビリカルチューブアセンブリ131は、LED用の電気ワイヤと、サーミスタ用のワイヤと、光カテーテルアセンブリ140までの冷却空気用のチュービング及び/または光カテーテルアセンブリ140からの温気戻り用のチュービングとを含み得る。したがって、一実施例では、アンビリカルチューブアセンブリ131は、気体冷媒及び電気の両方を伝送するための単一のハイブリッドコネクタとして機能することによって、光カテーテルアセンブリ140を制御ユニット102と接続し得る。例えば、中央の通路が空気を伝送し得る(例えば、冷却空気を光カテーテルアセンブリ140まで伝送し、かつ適用可能ならば第2の通路に沿って温気を制御ユニット102まで戻してもよい)。さらに、1つ以上の電気コネクタ/ワイヤが、外周の周りに間隔を空けて置かれ得、または通気路に対する任意の構成であり得る。
【0058】
一実施例では、冷媒は空気である。したがって、冷却ユニット108からの冷却された空気は、低温冷媒コネクタ136と、アンビリカルシース内の低温冷媒チュービングと、低温冷媒コネクタ150とを通って流れてUV光カテーテルアセンブリ140に入り得る。一実施例では、コンプレッサ109からの空気は冷却器111(例えば熱電クーラ)によって冷却され得、かつ低温冷媒コネクタ136に流入し得る。さらに、UV光カテーテルからの温まった空気は次に、高温冷媒コネクタ152と、アンビリカル131内の高温冷媒チュービングと、高温冷媒コネクタ134とを経由し、そこから、リサイクル、流量のモニタリング、漏れのモニタリング、及び/または雰囲気中への排出のために制御ユニット102まで戻される。いくつかの実施例では、温気は、アンビリカルアセンブリ131と光カテーテルアセンブリ140との間の接続インタフェースにおいて、またはアンビリカルアセンブリ内の弁調節式の開通口を介して、排出され得る。UV光カテーテルがGI管腔内に配置された時の冷媒流の詳細は
図7についてさらに後述する。いくつかの実施例では、他の気体冷媒も用いられ得、それも本開示の範囲内にある。
【0059】
制御ユニット102は、少なくとも1つのプロセッサ(CPU)103と、プロセッサに動作可能に結合され得るコンピュータ可読媒体を備える、読み出し専用メモリROM及び/またはランダムアクセスメモリRAMなど、少なくとも1つのメモリ105と、を含み得る。よって、少なくとも1つのメモリ105は、プロセッサによって実行された時に、本明細書に記載される動作のうち1つ以上、例えば、UV光カテーテルの動作中にUV光カテーテルを冷却することと;前記1つ以上のバルーンを動作させることと;UV光カテーテルの温度及び/またはバルーンの圧力に従って、UV光及び/または1つ以上のバルーンの動作を制御することと;のうち1つ以上など、を行うシステム命令を含み得る。プロセッサ103は、様々な感覚構成要素(例えば、UV光カテーテル内で結合されたサーミスタ、各バルーン内の圧力を感知するように構成されたそれぞれの圧力センサ)からの1つ以上の入力信号を受け取り得、かつ、本明細書に記載される様々な制御構成要素に(例えば、UV光カテーテルの冷却チューブを通る冷媒の流れを調節するために制御ユニット内の冷却システム108に、UV光カテーテルに結合された電源に、前記1つ以上のバルーンの加圧を調整するためにバルーン制御ユニット120のポンプに、など)、1つ以上の制御信号を出力し得る。本実施例は制御ユニット102の構成例を示すが、制御ユニット102が他の構成で実施され得ることが認識されるであろう。
【0060】
非限定的な一実施例として、制御ユニット102は、AlliedによるTimeter PCS-414など医療等級のエアコンプレッサを含有し得、かつ、50psiまたは他の好適な範囲で14LPMの空気を出力し得る。上述したように、制御ユニット102は、デジタル読み出し104と、アンビリカルチューブへのコネクタ(ハイブリッドコネクタであり得る)と、ユーザコントロール及び状態インジケータとを含み得る。加えて、冷却システム108は空気弁及び調圧器を含有し得る。制御ユニット102はまた、冷却空気用の圧力センサ及びフローコントロールと、フローセンサとを含有し得る。いくつかの実施例では、制御ユニット102は、光カテーテルに送達されて冷却チューブを通る冷却空気の温度及び/または流量を決定するために、サーミスタからの閉鎖フィードバックループを提供し得る。
【0061】
図2Aを参照すると、
図1BのUV光治療システム100などであるUV光治療システムの、
図1Bのアンビリカル131などであるアンビリカルアセンブリと、
図1Bの制御ユニット102などである制御ユニットとに結合され得るか;または、
図1Aに示すようにアンビリカルアセンブリを伴わずに制御ユニットに結合され得る、UV光カテーテルアセンブリ200の概略図が示されている。さらに、UV光カテーテルアセンブリ200は、
図1A及び1Bに示されるUV光カテーテルアセンブリ140の実施例であり得る。この実施例では、UV光カテーテルアセンブリ200は、保護スリーブ126内に格納されていない解放位置において示されている。配置前に(すなわち、アセンブリ200が配置用に準備されていないかまたは配置されていない時に)、UV光カテーテルアセンブリ200は保護スリーブ126内に格納され得る。
【0062】
UV光カテーテルアセンブリ200は、光放出部分204を備えた送達チューブ202(本明細書においてハウジングカテーテルともいう)を含む。光放出部分204は複数のLED222を含む。さらに、送達チューブ202は、光放出部分204に複数のバルーン230、232、234、及び236を含む。本実施例は4つのバルーンを示しているが、UV光カテーテルアセンブリはそれより少ないかまたは多いバルーンも含み得る。例えば、バルーンの数は1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、バルーンの数が2つより多くてもよい。すなわち、バルーンの最少の数が3つであってもよい。例えば、大腸内でUV光を腔内投与するように構成された送達デバイスにおいて、3つ以上のバルーンが利用され得る。
【0063】
いくつかの実施例では、バルーンの数は、UV光放出部分の全長、送達チューブの全長、及び、光カテーテルの長さに沿って存在する各バルーンの軸の長さ(例えば、バルーンが楕円体の形状になっている場合は長軸、または、バルーンが球状である場合はバルーンの直径)のうち、1つ以上に基づき得る。
【0064】
いくつかの実施例では、各バルーン230、232、234、及び236が光放出部分204上にのみ位置決めされる可能性があり、一方で、光放出部分206を伴わない(すなわちUV LEDを伴わない)送達チューブ202のエリアはバルーンを含まない可能性がある。よって、各バルーンは光放出部分206の光放出セグメントを覆い得る。本実施例は、10cmの長さを有する各光放出セグメントを示す。様々な実施形態では、各バルーンによって覆われる光放出セグメントが、5、6、7、9、10、11、12、13、14、もしくは15cm、または光カテーテルの他の好適な長さであり得る。
【0065】
いくつかの実施例では、
図2Aに示すように、バルーンは、第1のバルーン230の遠位端と、第1のバルーンに隣接する第2のバルーン232の近位端との間に最小の距離を伴って、背中合わせに位置決めされ得る。しかし、いくつかの実施例では、UV光カテーテルアセンブリ200は、送達チューブ202上のバルーン間の相対的な間隔を調整できるように構成され得る。例えば、バルーン234と236との間の距離が増大するように、ユーザがバルーン236及び/またはバルーン234の位置を変更し得る。よって、いくつかの実施例では、いくつかの光放出部分206がバルーンによって覆われない可能性がある。バルーン間の間隔のこの調整は、特定の治療エリアを標的にするためにユーザがバルーンの位置決めを調整することを可能にし得る。特に、患者の体腔内への挿入及び標的部位への誘導前に、バルーン間の間隔が調整され得る。換言すると、配置前、及び、送達チューブが管腔内にある配置中ではない時に、バルーン位置が調整され得る。
【0066】
非限定的実施例として、炎症性及び/または感染性病態が連続的でなく、健常組織によって分離された大腸の第1のエリアと第2のエリアとにおいて存在するならば、送達チューブ202が大腸の管腔内に配置された時に第1のバルーンが第1のエリアと並置され得かつ第2のバルーンが第2のエリアと並置され得るように、ユーザがバルーンの位置決めを調整し得る。例えば、第1の標的エリアと、第2の標的エリアと、第1及び第2の標的エリアの間の分離とが、内視鏡検査によって同定され得る。続いて、UV光放出部分上でバルーン位置が調整され得る。さらに、第1及び第2のバルーンの間の、送達チューブの光放出部分206の一部分が、バルーンによって包まれないのであってもよい。したがって、UV LEDが電源ONにされた時に、感染及び/または炎症をきたした第1のエリアと第2のエリアとは、その間の正常組織より大きい放射照度及び放射照度分布で治療される。上述したように、膨張時に、バルーンの湾曲した外面は管腔上皮と接触して、上皮上の大便、デブリ、及び/またはバイオフィルムの除去を容易にし得、さらに、襞及び/または膨起を引き伸ばすことを助け得、かつ、治療エリア外の大便及び/またはデブリが治療に干渉することを予防し得る。よって、バルーンは、標的組織(すなわち、この実施例では第1及び第2のエリア)上のUV光分布と放射照度量とを向上させ得る。そうであるから、UV LEDが電源ONにされた時に、第1のエリア及び第2のエリア(すなわち炎症及び/または感染エリア)は、UV LEDから放出されたUV光をバルーンを通して受け得、そしてバルーンを通して、第1のエリア及び第2のエリアは、それらの間の健常組織より放射照度と放射照度分布とが増大したUV光を受け得る。この方式で、バルーンは、UV光によって提供される抗菌効果及び/または抗炎症効果をさらに向上させる。
【0067】
さらに、いくつかの実施例では、バルーンエリア内に存在するUV LEDのみが治療中に選択的に電源ONにされ、一方で、バルーンによって包まれていないUV LEDは電源ONにされなくてもよいように、UV光カテーテルアセンブリが構成され得る。この方式で、バルーンは、標的エリア上に均一な分布と均一な強度とを提供するためのみならず、GI管腔内で選択的な治療を提供するためにも、利用され得る。
【0068】
バルーンの位置を調整することに加えて、疾患の影響を受けているエリア及び/または疾患の進行の程度に基づいて選択的な治療を提供するために、バルーンの加圧量が調整され得る。例えば、中等度の潰瘍性大腸炎がS状結腸内でのみ観察されるならば、バルーン230、232、234、及び236がそれらの間の間隔を最小にして位置決めされ得、そして(例えば光送達部分206及びバルーンが所望の標的エリアと並置するように)送達チューブ224を所望の標的エリアまで誘導した後に、全てのバルーンが所望の圧力まで加圧され得、そして、中等度の潰瘍性大腸炎について所望の標的エリアを治療するために、所望の強度でかつ所望の持続時間にわたってUV LEDが電力供給され得る。しかし、いくつかの状態の間に、標的エリア内の管腔の直径、及び/または広がりの程度(すなわち、標的エリア内の、感染による影響を受けたエリア)を含む、標的エリアの1つ以上のパラメータに基づいて、各バルーンがそれぞれの所望の圧力に調整され得る。いくつかの実施例では、管腔の直径は、標的エリア内の炎症及び/または感染の度合いに基づき得る。
【0069】
さらに、いくつかの実施例では、
図3A及び3Bに示すように、2つのバルーン間のエリアがLEDを含まないのであってもよい。
図3A及び3Bを参照すると、バルーン230、232、234、及び236内の光放出セグメント330、332、334、及び336を伴う送達チューブ324が示されている。
図3Aは除圧(すなわち脱膨張)状態にあるバルーン230、232、234、及び236を示し、
図3Bは、完全に加圧された(すなわち完全に膨張された)状態にあるバルーン230、232、234、及び236を伴う送達チューブ324を示す。バルーン間において、1つ以上のエリア310が、LEDが位置決めされていない非照明エリアに対応する。
【0070】
さらに、
図1Aに関して上述したように、バルーン230、232、234、及び236の各々が、バルーン制御ユニット(例えば
図1Aまたは
図1Bにおけるバルーン制御ユニット120)を介して所望の圧力まで加圧され得、それは、除圧状態における脱膨張圧力と、完全加圧状態における完全膨張圧力との間の圧力であり得る。所望の圧力は、例えば、標的エリア内の管腔の直径と、標的エリア内の感染及び/または炎症の広がりの程度とに基づいて設定され得る。さらに、いくつかの実施例では、標的エリアの直径と、炎症及び/または感染の広がりの程度とを含む、上述したような標的エリアの1つ以上のパラメータに基づいて、各バルーンについて所望の圧力が異なり得る。さらに、他のいくつかの実施例では、所望の圧力が、全てのバルーンについて(例えば同様の直径及び同様の標的エリアについて)同じ圧力に設定され得る。
【0071】
図2Aを参照すると、バルーン230、232、234、及び236は、点線矢印212で示されるように、UV LED222によって放出されるUV光の均一な分布をそれぞれの標的エリア上に提供する。さらに、光カテーテルの近位端218はバルーン内に入れられていない。いくつかの実施例では、
図3A及び3Bに示されるように、光カテーテルの近位端218が近位バルーン230内に位置決めされ得る。
【0072】
さらに、
図2Aに戻ると、各バルーン230、232、234、及び236は、
図1Aまたは
図1Bについて論じたバルーン制御ユニット120などのバルーン制御ユニットに結合された、それぞれの膨張ポート231、233、235、及び237に流体的に結合され得る。このことは、配置中の各バルーンに対する選択的な膨張、脱膨張、膨張レート、脱膨張レート、及び/または圧力調整を可能にする。
【0073】
さらに、光カテーテルアセンブリ200の遠位端221は、接続ポート154の実施例であり得る、カテーテルの高温冷媒コネクタ(例えばコネクタ152)、カテーテルの低温冷媒コネクタ(例えばコネクタ150)、及びカテーテル電気コネクタ(例えば148)までの接続ポート216を介して、それぞれアンビリカル(例えばアンビリカル131)の高温冷媒コネクタ、低温冷媒コネクタ、及び電気コネクタに結合される。この方式で、アンビリカルは、冷却用の冷媒と、(電気コネクタ148を介して)UV光カテーテルアセンブリの複数のLEDへの電源と、サーミスタ228への電源とをもたらす。UV光カテーテルアセンブリ200は、近位部分に光放出部分206を含み、これは、
図7に拡大して示され、かつ以下に詳述される。
【0074】
次に
図2Bを参照すると、UV光カテーテルアセンブリの単一バルーン実施形態が示されている。この実施例では、単一バルーン210が、複数のLED222を備えた光放出部分を包む。いくつかの実施例では、単一バルーンデバイスは婦人科病態の治療に利用され得、それには細菌性もしくは真菌性の膣疾患、直腸膣瘻/結腸膀胱瘻、ならびに/または、粘膜及び粘膜下の癌が含まれるが、それに限定されるわけではない。さらなる実施例では、単一バルーンデバイスが送達チューブの非照明部分に結合され得、そして送達チューブの全長に応じて、単一バルーンデバイスが直腸など遠位の標的部位まで誘導され得る。単一バルーンデバイスは、結腸鏡検査または鎮静を必要とすることなく、遠位の標的(例えば直腸または膣)までの誘導を容易にするために用いられ得、医師のオフィス内で行われ得る。他のいくつかの実施例では、上行結腸など単一の近位の標的部位まで誘導し、そして遠位の挿入部位から遠く離れて局在する感染及び/または炎症を治療するために、充分な長さの非照明部分を伴う単一バルーンデバイスが用いられ得る。
【0075】
さらに、送達チューブが複数のバルーンを含む
図2Aに関して上述したように、単一バルーン210内部の圧力量は、
図1Aのバルーン制御ユニット120などのバルーン制御ユニットに結合され得るバルーン膨張ポート204を介して調整され得る。
【0076】
単一バルーンデバイスの他の実施例が
図4A及び4Bに示される。具体的には、
図4A及び4Bは、いくつかの実施例においてUV光の膣送達または直腸送達に利用され得る、例示的なUV発光デバイス400及び450をそれぞれ示す。
図4A及び4Bの両方を参照すると、UV発光デバイス400、450は送達チューブ/ロッド402を含み得る。いくつかの実施例では、送達チューブ/ロッド402は、4つの側面の各側面上にUV光源422(例えばUV LED)を含む、4側面の細長い本体を含む。他のいくつかの実施例では、送達チューブ/ロッド402が円柱状のボディを有し得、そしてUV光源422は、送達チューブの全長にわたって送達チューブの周囲に沿ってUV光を送達するように、円柱状ボディの曲面上に位置決めされ得る。送達チューブが4側面の細長い本体として構成されている場合に、UV光源422が送達チューブ/ロッド100の各側面上で互い違いになっていてもよい。例示的なデバイス400及び450は、4つの側面を有する送達チューブを示しているが、側面の数は3つ、5つ、6つ、7つ、または8つであってもよい。いくつかの実施形態では、UV光源422が送達チューブ/ロッド100の全長に沿って分布し、そして遠位端410においてUV光源422のより広い適用を実現する。
【0077】
いくつかの実施形態では、送達チューブ/ロッド402は、送達チューブ/ロッド402全体が光ってUV光を均質に伝送するように構成される。いくつかの実施形態では、送達チューブ/ロッド100は、UV-A領域内でのみ光波を放出し、UV-BもしくはUV-C、または可視領域内では光波を放出しないように構成される。例えば、UV光源422は、335nm~349nmの間、338nm~342nmの間、または339nm~346nmの間の狭帯域幅UV光を放出するように構成され得る。さらに、UV光源422のピーク波長は340nmを含み得、そして335nm~349nm、338nm~342nm、または339nm~346nmの間の領域内に存在し得る。より広い他の実施形態では、光源422が、320nm~410nmの間の波長を有するUV光を送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、垂直方向の照明長さが、送達チューブ/ロッド100の周りで8~10cmの間にわたって延在する。
【0078】
送達チューブ/ロッド402は、生体適合性であるかまたは生体適合性コーティングを有する様々なポリマーを含む、任意の好適な構築様式(例えば剛性または可撓性など)で作られ得る。いくつかの実施形態では、光源422からのUV光が送達チューブ/ロッド422から外に向かって放射され得るように、送達チューブ/ロッド402がUV透明性材料424の外層を含み得る。いくつかの実施形態では、送達チューブ/ロッド402が、例えばケイ素、シリカ、ポリウレタン、ポリエチレン、テフロン/PTFE、ホウケイ酸塩、または他の好適な材料などから作られた外面を有し得る。いくつかの実施形態では、送達チューブ/ロッド402が、ホウケイ酸塩の外層を伴う銅を用いて構築される。最適な冷却と、曝露面積と、均一性とのために、送達チューブ/ロッド402は、銅製バー上で互い違いになった複数の発光ダイオード(LED)を含み得る。光源422に間隔が空けられていることが、最適な垂直方向の照明長さを可能にする。銅を用いて送達チューブ/ロッド422のボディを製造することによって、送達チューブ/ロッド402は高水準の温度に達することに耐えられる。銅はヒートシンクとして役立って、送達チューブ/ロッド402が不快な温度に達することを防ぐ。いくつかの実施例では、送達チューブ/ロッド402の温度を最適化するために、光源422が特定の電流で動作され得る。いくつかの実施例では、光源422が60~100mAの範囲で動作され得る。この範囲において、送達チューブ/ロッド402の温度は40℃より上に上昇しない可能性があり、したがって適切な冷却ソリューションを実施するという目標を達成できる。いくつかの実施例では、追加的または代替的に、送達チューブ/ロッドからの熱を放散させるために1つ以上のファンを含むように基部412及び/またハンドル430が構成されてもよい。
【0079】
さらに、UV発光デバイス400、450はそれぞれ、送達ロッド/チューブ402の全長上の膨張可能バルーン410を含み得る。バルーン410は、膨張時に、患者体内の標的エリア上にUV光のより均一な分布を提供し得る。さらに、いくつかの実施例では、バルーン410が放射照度を増大させ得、かつ標的エリアにより均一な放射照度分布を提供し得る。さらに、バルーンは、光カテーテルと上皮層との間で障壁として作用し得る外来性デブリ/バイオフィルムを妨げることを容易にし得、それによって標的組織におけるUV光の照射と照射分布とを向上させ得る。バルーン410は、拡張可能かつUV透明性で、かつUV照射分布を向上させる、任意の好適な材料で作られ得、いくつかの実施例では、その材料が標的エリアにおける放射照度を増大させ得る。例示的な材料は、PEBA、COC、またはシリコーンで組成され得る。
【0080】
バルーン410は、バルーン制御ユニット420に結合される膨張ポート404に結合され得る。バルーン制御ユニット420は、配置中にバルーンを加圧及び除圧するように構成され得る。バルーン制御ユニット420は、
図1Aについて説明したバルーン制御ユニット120と同様であり、簡潔さのためその説明は繰り返さない。簡潔には、バルーン制御ユニット420は、バルーン410内の圧力をモニターするための圧力センサを含み得る。さらに、バルーン制御ユニット420は、バルーンを加圧及び除圧するためのポンプシステム(例えばシリンジ式のポンプシステム、またはモーター式のポンプシステム)を含み得る。さらに、バルーン制御ユニット420は、患者体内への送達ロッドの配置中及びUV光治療の送達中に、バルーン410を、一定した、またはほぼ一定した、圧力と体積とに維持するために用いられ得る。さらに、バルーン制御ユニット420は、圧力センサからの入力を用いて、閾値限界を超えたバルーン410の加圧を可能にしないのであってもよい。いくつかの実施例では、患者体内への挿入及び位置決め前に、バルーン410がバルーン制御ユニット420を介して、より小さい第1の体積まで膨張され得、それは送達ロッド/チューブ402の挿入と位置調整とを容易にし得る。患者体内の所望の位置まで誘導されたら、バルーン410がより大きい第2の体積まで膨張され得、それはバルーンがさらに拡張することを可能にする。続いて、UV光を送達するためにUV光源422が電源ONにされ得る。UV光が患者に送達されている治療中に、バルーンの体積と圧力とがバルーン制御ユニット420によって一定に維持され得る。よって、バルーン制御ユニット420を介して、体積と、圧力と、温度とを含む1つ以上のバルーンパラメータが、望ましい拡張を維持するためにモニター及び調整され得る。
【0081】
送達チューブ/ロッド402は近位端408と遠位端410とを含む。細長い本体402の4つの側面は、遠位端409に向かって収束して、丸みを帯びた表面104になる。送達チューブ/ロッド402の遠位端409は、上述したように、患者体内への挿入用に構成される。対照的に、反対側の近位端408は、把持要素を介して送達チューブ/ロッド402を操舵しやすいように構成される。一実施例では送達チューブ/ロッド402の近位端は、ハンドル430として構成される把持要素に結合され得る(
図4A)。
図4Aを参照すると、ハンドル430は、基部412を介して送達チューブ/ロッド402の近位端408に取り付けられ得る。ハンドル430は、医師または医療提供者にとって人間工学的に充分であるように構成され得る。ハンドル430はまた、ユーザ入力を受けるように構成された1つ以上の入力構成要素432(例えば、電源ON/OFFボタン、強度選択ボタン、持続時間選択ボタンなど)も含み得る。入力構成要素432は、送達チューブ/ロッド402及びUV光源422の機能性を変更する内部プロセッサに接続され得る。いくつかの実施形態では、送達チューブ/ロッド402は2~20個の間のUV光源を含む。本明細書に示される送達チューブ/ロッド402は、4つの側面の各側面上に3つのUV光源422、合計12(12)個のUV光源422を含む。本明細書に開示される特徴を組み込んでいる他の構成も実現可能であることが理解されるべきである。
【0082】
いくつかの実施形態では、ハンドル430が、送達チューブ/ロッドと結合する端部とは反対側にある近位端に回転ベース(図示せず)を含み得る。回転ベースは、UV光源422から放出される光が均一になるように、送達チューブ/ロッド402の回転を可能にし得る。回転する送達チューブ/ロッド422で患者を治療する場合は、均一なUV放出が微生物増殖の治療の助けとなる可能性が高い。いくつかの実施例では、送達チューブ/ロッド402または回転ベースが、回転ベースの回転を可能にするためのステッパモータもまた含み得る。
【0083】
図4Bを参照すると、例示的なUV光送達システム450は、基部412に結合されたコントローラ460を含む。この実施例では、基部412はハンドルとして機能するように構成され得る。コントローラ460は、1つ以上のプロセッサと、メモリと、電池または他の電源とを含み得る。メモリは、本明細書に開示されるように様々な強度及び/または持続時間を用いて適用され得る様々な療法レジメンを伴う命令を含み得る。例えば、メモリは、プロセッサによって実行された時に所与の強度またはタイミングで光源422に電力を提供するデータ構造を含み得る。コントローラは、膣及びGI管をベースとするUV光送達デバイスを含む、本明細書に開示される任意の実施形態に利用され得る。
【0084】
次に、
図5Aは、UV光カテーテルアセンブリを用いて感染性及び/または炎症性病態を治療、予防、及び/または改善するための、高次の方法500を示すフローチャートを示す。具体的には、方法500は、
図1Aもしくは1Bについて説明したUV光治療システム100か、
図2A、2B、3A、もしくは3Bについて説明したUV光カテーテルアセンブリか、または、
図4Aもしくは4Bについて説明したUV発光デバイスなどの、UV光治療システムを用いて行われ得る。方法500は、
図1A、
図1B、
図2A、
図2B、
図3A、または
図3Bに関して説明されるが、本開示の範囲から逸脱することなく方法500が他の同様のUV光治療システムに適用され得ることが認識されるであろう。
【0085】
方法500は、502において、GI管の健康状態を評価する段階を含む。GI管の健康状態を評価する段階は、他にある診断手順の中でも特に、症状、生検を伴うかまたは伴わない結腸鏡検査などの内視鏡手技、血液分析、及び大便分析のうち1つ以上に基づいて、医療提供者によって行われ得る。
【0086】
GI管の健康状態を評価する段階は、GI管の炎症性及び/または感染性病態のタイプを決定することを含み得る。例示的なGI管の炎症性及び/または感染性病態には、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び他の慢性炎症性疾患、非IBD関連性の直腸炎、IBD関連性または非IBD関連性の瘻孔、炎症性の狭窄、顕微鏡的大腸炎、感染性下痢、難治性のヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)及びMALTリンパ腫、食道の扁平苔癬及び尋常性天疱瘡、難治性のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、結腸無力症、熱帯性スプルー、セリアック病、小腸内細菌異常増殖、盲腸炎、骨髄移植後感染症、偽ポリープ(鼻ポリープに類似)及び放射線腸炎、異形成を伴うかまたは伴わないバレット食道、肝性脳症、Roux-en-Y法における盲係蹄症候群、肛門周囲瘻、胃腸癌、肝胆道感染、炎症、ならびに癌が含まれ得る。
【0087】
さらに、潰瘍性大腸炎及びクローン病の形態の炎症性腸疾患(IBD)に関して方法500をさらに後述するが、本開示の範囲から逸脱することなくGI管の任意の炎症性及び/または感染性病態を治療、改善、及び/または予防するために方法500が行われ得ることが認識されるであろう。いくつかの実施例では、経皮栄養チューブまたはサクションチューブに関連する感染の率を低減させるために方法500が適用され得る。他のいくつかの実施例では、
図5A及び5Bに示した例示的システムなど、膣用及び/または直腸用の用途向けに構成されたUV発光デバイスを用いて方法500が行われ得る。
【0088】
さらに、GI管の健康状態を評価する段階は、炎症性及び/または感染性病態の進行度を決定することを含み得る。例えば、進行度は、その疾患に基づく好適なスケール(例えば軽度、中等度、重度など)に基づいて決定され得る。いくつかの実施例では、GI管の健康状態を評価する段階は、GI管組織のどの層が影響を受けているかを決定することをさらに含み得る。例えば、方法500は、患者の大腸を評価する場合に、炎症性及び/または感染性病態が粘膜層、粘膜下層、筋層、及び漿膜層のうち1つ以上にあるかを決定する段階を含み得る。
【0089】
さらに、方法500は、504において、UV光治療を必要とする1つ以上の標的エリアを同定する段階を含む。例えば、潰瘍性大腸炎について大腸を評価する場合に、腸のどのエリアが影響を受けているかを同定するために結腸鏡検査などの撮像アプローチが用いられ得る。いくつかの実施例では、症状と、非侵襲または低侵襲の1つ以上の検査とに基づいて、結腸の一部分が(例えば直腸と大腸の下方部分とを調べるためのS状結腸鏡検査を介して)評価され得、または、結腸全体が(例えば結腸鏡検査を介して)評価され得る。
【0090】
次に、方法500は、506において、前記1つ以上の標的エリアをUV光で治療するために、
図2Aにおける送達チューブ202または
図3Aにおける送達チューブ324など、複数の光源(例えばUV-LED)と複数のバルーンとを備えたUV光カテーテルアセンブリの送達チューブを位置決めする段階を含む。大腸内で送達チューブを位置決めするための例示的な方法を
図6A~6Gに関して図示及び説明する。一実施例では、送達チューブの配置が、セルディンガー法に基づきガイドワイヤを用いて結腸鏡検査を介して行われ得る。
【0091】
図6A~6Gを見ると、これらの図は、UV光カテーテルアセンブリの送達チューブの配置の様々なステージの際の、大腸610の断面を示す概略図を示している。
図6Aは、配置手順を開始する前の大腸610を、管腔602を含めて示す。
図6Bは、大腸610の上行結腸620までの結腸鏡614の挿入を示す。例えば、送達チューブの配置中、送達チューブを挿入及び位置決めする前に、大腸を観察し、続いてガイドワイヤを位置決めするために、大腸610の管腔を通って大腸の管腔内の所望の位置まで結腸鏡614が挿入される。
図6Bは、結腸鏡614が上行結腸620の近位領域630まで上行結腸620の管腔内に挿入されることを示しているが、結腸鏡は、上行結腸620、横行結腸622、下行結腸624、S状結腸626、または直腸628内の任意の位置など、大腸610の管腔内の任意の位置まで挿入され得る。
【0092】
次に、結腸鏡612が挿入及び位置決めされたら、ガイドワイヤ614が結腸鏡612のチャネルを通って挿入される(
図6C)。ガイドワイヤ614は、結腸鏡612のチャネルを通過し、そして、この実施例では上行結腸内に位置する結腸鏡612の端部で開通口から出る。よって、結腸鏡は、管腔を観察するために用いられるとともに、UV光カテーテルの最終的な位置決めを容易にするためにガイドワイヤ614を所望の位置に位置決めするためにも用いられる。ガイドワイヤ614が挿入されたら、
図6Cに示すように結腸鏡612が管腔から引き抜かれる(矢印615で示される)。この方式で、大腸610の管腔内にガイドワイヤ614を位置決めするために結腸鏡612が利用される。
図6Cに示すこの実施例では、結腸鏡は、ガイドワイヤ614を上行結腸620内に位置決めするために用いられる。ガイドワイヤ614が大腸610の管腔内のどこに位置決めされてもよいことが認識されるであろう。
図6Dは、ガイドワイヤの近位端642が上行結腸620内に位置決めされるように、結腸鏡612を通って大腸610の管腔内に位置決めされたガイドワイヤ614を示す。上述したように、ガイドワイヤ614は、感染及び/または炎症の、位置及び/または広がりの程度に基づいて、大腸610の管腔内のどこに位置決めされてもよい。非限定的実施例として、左半分の結腸における潰瘍性大腸炎(左側大腸炎)があると患者が診断されているならば、ガイドワイヤ614の近位端642が、横行結腸622が始まる部分(下行結腸に隣り合って始まる部分)または下行結腸624が終わる部分(横行結腸に隣り合って下行結腸が終わる部分)に位置決めされ得るように、ガイドワイヤ614が位置決めされ得る。別の非限定的実施例として、横行結腸の一部分及び下行結腸の一部分における炎症を含む、健常組織によって分離された炎症のポケットがあると診断されている患者に対して、ガイドワイヤ614が直腸と下行結腸と横行結腸とを通過し、そして、ガイドワイヤ614の近位端が横行結腸内の炎症領域かまたはそれを超えた下流(下行結腸から上行結腸への方向における下流)で終わるように、ガイドワイヤ614が位置決めされ得る。
【0093】
ガイドワイヤ614が位置決めされ結腸鏡が引き戻されたら、ガイドワイヤ614を用いてUV光カテーテルアセンブリの送達チューブ652が腸の管腔内に挿入される。
図6Eは、ガイドワイヤ614(
図6Eには図示せず)上で位置決めされた送達チューブ652を示す。送達チューブ652は、上述した送達チューブ202または送達チューブ324の一実施例である。送達チューブ652は、ガイドワイヤが通り抜けるためのガイドワイヤチャネル(例えば
図1Aにおけるガイドワイヤチャネル160)を含み得る。ガイドワイヤ614の位置決め後に、複数のUV LED656と複数のバルーン658とを備えた送達チューブ652が、大腸610内に位置決めされたガイドワイヤ614上に送達チューブのガイドワイヤチャネルを通すことによって、大腸610の管腔を通って誘導される。一実施例では、送達チューブを管腔内に誘導している間、バルーン232など前記複数のバルーンの全てが脱膨張状態にあってもよい。いくつかの実施例では、送達チューブ652の端部にある(最初に管腔に入る)第1のバルーンが、送達チューブ652の動きを容易にするために、制御ユニット660に結合されたその対応するバルーン膨張ポートを介して部分的に膨張されてもよく、一方で、残りのバルーンは送達チューブ652の誘導中に脱膨張状態のままであってもよい。非限定的実施例として、(例えば、結腸全体にわたる広範な大腸炎を治療及び/または改善するために)送達チューブ652が結腸の大部分を通って誘導され、そして端部が上行結腸に位置決めされる場合に、送達チューブ652の端部659またはその近くにある第1のバルーンが部分的に膨張されてもよく、一方で、残りのバルーンは誘導及び位置決め中に脱膨張状態にあってもよい。いくつかの実施例では、例えば肝弯曲部及び/または脾弯曲部を通過することを容易にするために、1つより多いバルーンが配置中に部分的に膨張され得る。
【0094】
制御ユニット660は、
図1Aについて論じた制御ユニット102の実施例であり得、よって、前記複数のバルーン658の加圧と除圧とをモニター及び/または調整するためのバルーン制御ユニットを含み得る。これもまた
図1Aに関して論じたように、制御ユニット660は、UV LED656の動作(例えば、電源on/off、治療エリア及び/またはバルーン配置に対応する1つ以上のUV LEDセグメントの選択的な給電、UV光強度の調整、UV光強度のサイクリング、など)を調整し得、かつ、配置及び治療中に送達チューブ654の温度制御(例えば、光放出部分内に位置決めされた1つ以上のサーミスタからのUV LED温度に基づき、制御ユニットのコンプレッサから送達チューブ内の冷却チューブ内までの冷媒流を用いて行う温度調整)を提供し得る。
【0095】
上述の実施例は結腸鏡とガイドワイヤとを用いて送達デバイスを配置することを例証しているが、いくつかの実施例では、送達チューブが、管腔内部を可視化するための1つ以上のカメラを備えた内視鏡(例えば結腸鏡)として構成され得る。
【0096】
図5Aに戻ると、1つ以上のバルーンが治療部位と並置するように送達チューブ(すなわちUV光カテーテル)を管腔内に位置決めした後に、方法500は510に進む。510において、方法500は、前記1つ以上のバルーンを膨張させる段階を含む。一実施例では、膨張されるバルーンの数は治療エリアに基づき得る。例えば、UV光治療を必要とする感染エリア及び/または炎症エリアと並置されたバルーンのみが膨張されるのであってもよく、一方で、正常組織と並置された他のバルーンは膨張されないのであってもよい。しかし、いくつかの実施例では、結腸内への送達デバイスの挿入の程度に応じて、結腸を安定させかつ結腸の望ましくない反射運動を潜在的に低減させるとともに、送達デバイスも安定させて、それにより送達デバイスの望ましくない動きを低減させるために、正常組織と並置された1つ以上の追加的なバルーンも膨張され得る。例えば、複数のバルーンを備えた送達デバイスが上行結腸まで誘導され、かつ治療部位が上行結腸及び横行結腸にある場合に、上行結腸及び横行結腸にある治療部位と並置されたバルーンを膨張させることに加えて、送達デバイスのさらなる安定化が望ましいならば、正常組織と並置された1つ以上のバルーンが膨張され得る。そうしたケースにおいて、膨張量が低減され得る(例えば、正常な健常組織エリアと並置されたバルーンにおける膨張量がより少ないなど)。
【0097】
一実施例では、前記1つ以上の膨隆可能バルーンを膨張させる段階は、前記1つ以上の膨隆可能バルーンの各々が管腔の上皮層の望ましい表面積と直接接触する閾値圧力まで、前記1つ以上の膨隆可能バルーンの各々を加圧することを含む。一実施例では、閾値圧力は標的部位における管腔の直径に基づき得る。一実施例では、望ましい表面積は感染の広がりの程度に基づく。一実施例では、閾値圧力は、管腔の上皮層の表面上のデブリ、大便、及びバイオフィルムのうち1つ以上を押しのけるのに充分な圧力である。
【0098】
いくつかの実施例では、方法500は、1つ以上のバルーンを選択的に膨張させる段階に加えて、治療エリアにおける疾患の進行度に基づいて各バルーン内の光の強度を選択的に調整する段階(514について後述)を含み得る。具体的には、治療部位の感染及び/または炎症の重症度が増大するほど、放出されるUV光の強度が増大され得る。結果として、疾患の重症度の増大に伴って、標的部位における放射照度量が増大される。
【0099】
図6Fを参照すると、同図は膨張後の全てのバルーン658を示している。具体的には、送達チューブ652がガイドワイヤ上に位置決めされたら、それぞれのバルーン膨張ポートとバルーン制御ユニット660とを介してバルーン658に膨張用流体(例えば空気)を提供することによって、前記複数のバルーン658が膨張される。
図6Fにおける本実施例は膨張された全てのバルーンを示しているが、いくつかの実施例では、治療エリアに基づいて1つ以上のバルーン658が選択的に膨張され得る。非限定的実施例として、治療エリアが上行結腸及び横行結腸にあるが下行結腸にはないならば、上行結腸620内の第1のバルーンと横行結腸622内の第2のバルーンとが膨張されてもよく、一方で、下行結腸624内の第3のバルーンとS状結腸626内の第4のバルーンとは、膨張されないか、または(例えば送達デバイスの安定化のために)第1及び第2のバルーンより少なく膨張されるのであってもよい。
【0100】
さらに、いくつかの実施例では、
図6Fに示すように、全てのバルーン658が、それぞれのバルーン膨張ポート(図示せず)を介して、かつバルーン制御ユニット660を用いて、同じ大きさの圧力まで膨張される。
【0101】
他のいくつかの実施例では、膨張量が各バルーンについて独立に調整され得る。一実施例では、膨張量は、治療エリアの感染及び/または炎症の、直径及び/または広がりの程度に基づき得る。
【0102】
まとめると、治療エリアの数及び/または治療エリアの位置に基づいて、1つ以上のバルーンが選択的に加圧され得る(すなわち、1つ以上のバルーンが加圧され、一方で残りのバルーンは加圧されない)。追加的または代替的に、膨張時、(全てのバルーンが膨張されたか、または1つ以上のバルーンが選択的に膨張されたかにかかわらず)膨張されたバルーンの各々における拡張量が、治療エリアの直径及び程度のうち1つ以上に基づいて、(例えば、バルーン制御ユニットを介して膨張量を調整するなどによって)選択的に調整され得る。さらに、選択的なバルーン膨張に加えて、より詳しく後述するように、1つ以上のUV光パラメータが配置中に調整され得る。この方式で、感染及び/または炎症の、位置と、重症度と、広がりの程度及びパターンとのうち1つ以上に応じた、バルーンの選択的な動作及び/または調整を通じて、UV光線療法がカスタム化され得る。
【0103】
図5Aに戻ると、514において、方法500は、前記1つ以上のバルーンを膨張させた後にUV光治療を提供する段階を含む。UV光治療を提供する段階は、送達デバイス内のUV LEDから放出されるUV光の強度、及びUV LEDから放出されるUV光の持続時間のうち、1つ以上を調整することを含む。一実施例では、UV LEDから放出されるUV光の強度及び持続時間のうち1つ以上を調整することは、対応する治療エリアにおける炎症及び/または感染の、程度及び/または重症度に基づいて、各バルーンについて強度及び持続時間のうち1つ以上を調整すること(ステップ516)を含み得る。例えば、重度がより低い感染及び/または炎症を治療する、送達デバイスのセグメントと比較して、より重度の病態を治療する1つ以上のセグメントにおいて、UV LEDからの光出力の持続時間及び/または強度が増大され得る。強度及び持続時間の調整は、治療エリアにUV光を送達するセグメント上の対応バルーン内の膨張量を調整することに加えて、またはその代替として、行われ得る。
【0104】
いくつかの実施例では、病態の全体的な重症度に基づいて、光放出部分内の全てのLEDが同じ強度及び/または持続時間で動作され得る。
【0105】
いくつかの実施例では、UV関連性のDNA損傷を引き起こすことなく充分な抗菌効果を提供するUV波長は、335、336、337、338、339、340、341、342、342、344、345、346、347、348、349、または350nmのうち1つ以上を含み得る。したがって、本明細書に開示されるUV LEDは、前記の波長のうち1つ以上を備えた光を、治療的に有意な強度で放出し得る。さらに、標的エリアにおいてUV光分布を向上させかつ放射照度を増大させるためにバルーンを用いることによって、患者のGI管内の広い面積(例えば結腸全体)にわたる治療について安全でありながら、UV光治療の有効性がさらに向上される。
【0106】
いくつかの実施例では、UV光カテーテルアセンブリを用いて治療されるGI管腔の長さは5cm~45cmの間の範囲であり得る。いくつかの実施例では、40cm超の長さを有する治療部位が本送達デバイスを用いて治療され得る。
【0107】
いくつかの実施例では、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、または349nmを中心とする最大発光強度の波長を有する光を放出するLEDを備えた送達チューブが、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、60、80、または90分間、通電され得る。治療の繰り返しは、疾患の進行、症状、及び/または医療提供者によって行われる他の評価に基づき得る。適用される強度は、感染の重症度に基づいて、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300uW/cm2、またはこれら範囲の間の他の好適な強度であり得る。
【0108】
いくつかの実施例では、前記複数のUV LEDの各々が、335nm、336nm、337nm、338nm、339nm、340nm、341nm、342nm、343nm、344nm、345nm、346nm、347nm、348nm、349nm、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nmのピーク波長を放出し得る。いくつかの実施例では、LEDは、そのピーク強度発光波長を中心にして+/-2、3、4、5、または6nmの範囲で有意な強度の光を放出し得る。
【0109】
いくつかの実施例では、LEDの各々が100~150度の間のビーム角で光を放出し得る。一実施例では、LEDの各々が120~135度の間のビーム角で光を放出し得る。
【0110】
他の実施例では、光線療法が、10分間、15分間、18分間、19分間、20分間、21分間、22分間、23分間、24分間、25分間、26分間、27分間、28分間、29分間、30分間、60分間、90分間、120分間、もしくは160分間、10~160分間の間の任意の範囲、または他の好適な時間にわたって、ケア提供者によって送達され得る。加えて、本発明の方法は、少なくとも10分間、15分間、18分間、19分間、20分間、21分間、22分間、23分間、24分間、25分間、26分間、27分間、28分間、29分間、30分間、または60分間の閾値持続時間にわたって療法を施す段階を含み得る。光源強度は、用途と、治療有効性に関連する他の要因とに応じて、少なくとも1,000マイクロワット/cm2、1,100マイクロワット/cm2、2,000マイクロワット/cm2、2,100マイクロワット/cm2、2,200マイクロワット/cm2、2,300マイクロワット/cm2、2,400マイクロワット/cm2、2,500マイクロワット/cm2、2,600マイクロワット/cm2、2,700マイクロワット/cm2、2,800マイクロワット/cm2、2,900マイクロワット/cm2、3,100マイクロワット/cm2、3100マイクロワット/cm2、3,200マイクロワット/cm2、1,000~5,000マイクロワット/cm2、または他の好適な強度であり得る。本発明者らは、UV-A光を最大で5,000マイクロワット/cm2の強度まで安全に適用できることを確認している。いくつかの実施例では、上記の光が継続的に放出されることになり、他の実施例では、その光がパルス療法に組み込まれることになる。
【0111】
大腸の管腔内にUV光を提供する例示的な動作を
図6Gに関して以下に説明する。
【0112】
図6Gは、電源ONにされた前記複数のUV LEDを含む送達チューブ654を示す。UV光治療の開始前に、前記1つ以上のバルーンを膨張させたら、ガイドワイヤが除去される。次に、1つ以上のバルーン658を膨張させたら、UV LEDが電源ONにされて、対応するバルーンを通して治療部位を照明する。加えて、いくつかの実施例では、バルーンによって覆われていないUV LEDもまた電源ONにされ得、それによってバルーンに隣り合ったエリアを照明し得る。UV LEDによって放出されたUV光は、膨張したバルーン658を通って治療部位まで伝送される。太線670で示されるように、バルーンは治療部位における放射照度を増大させ、そして追加的に、治療部位におけるUV光分布も向上させる。さらに、前記複数のバルーン658は、膨張されて粘膜と接触した時に、襞を減らし、かつ、結腸上皮上に形成される可能性があるバイオフィルムまたは外来性デブリの拡散を促すとともに、UV光が結腸上皮に効果的に到達することを防ぐ可能性がある障壁を低減させる。さらに、前記複数のバルーン658は、大便が治療エリアまで下降してくることを低減させ得る。
【0113】
この方式で、バルーンを備えたUV光カテーテルアセンブリは、GI管内のUV光治療の効率と有効性とを向上させる。さらになお、前記複数のバルーン658は、結腸上皮と接触するように膨張された時に、結腸の壁を安定させ得るとともに、送達デバイスも管腔内で安定させ得、送達デバイスの配置中及び治療中に引き起こされる傷害を低減させ得る。
【0114】
図5Bに、
図1A、2A、または3Aについて論じたUV光カテーテルアセンブリなどのUV光カテーテルアセンブリを用いて患者のGI管の管腔内に送達されるUV光治療中に、バルーン膨張量及びUV光強度のうち1つ以上を調整するための例示的な方法550を示す、高次のフローチャートを示す。いくつかの実施例では、UV光カテーテルアセンブリ内のUV LEDに通電したら、バルーン制御ユニット120などのバルーン制御ユニット、及びUV光カテーテルアセンブリに結合された1つ以上のセンサ(例えばサーミスタ)と併せて、制御ユニット102などの制御ユニットの、非一時的メモリ105などのメモリ内に保存された、実行可能な命令に基づいて、コントローラ103などのコントローラによって、方法550が実行され得る。
【0115】
方法500は、552において、
図5Aについて上述したように、患者にUV光治療を提供する段階を含む。次に、方法500は、554において、治療レジメンが完了したかを決定する段階を含む。例えば、ユーザが、前記複数のLED(例えば
図2AにおけるLED222)から放出される所望の強度のUV光で20分間にわたってUV光治療を提供することを含む、治療レジメンを設定し得る。コントローラが光治療の持続時間をモニターし得、そして、持続時間をモニターするタイマーがゼロ値に達したことに応答して、治療が完了したと決定され得る。治療レジメンが完了したならば、方法550は562に進む。562において、方法550は、LEDへの電力供給を停止する段階を含み、続いて564において、方法550は、膨張された1つ以上のバルーンを脱膨張させる段階を含む。一実施例では、前記1つ以上のバルーンが完全に脱膨張され得る。患者からの送達チューブの除去中に送達チューブが肝弯曲部及び/または脾弯曲部を通って誘導される場合などの、別の実施例では、送達チューブがGI管の管腔を通過することを容易にするために、かつ、送達チューブと結腸上皮との接触を低減させ、それによって、光治療を提供する送達チューブによる潜在的な傷害を低減させるために、前記1つ以上の膨張したバルーンは、前記1つ以上の膨張したバルーンをより小さな体積に維持するように、部分的に脱膨張され得る。前記1つ以上のバルーンを(部分的にまたは完全に)脱膨張させたら、ユーザが送達チューブを管腔から除去し得る。
【0116】
554に戻ると、554における答えが「いいえ」ならば、UV光治療は継続し、そして方法550は556に進んで、UV光の提供を続ける。これは、558において、送達チューブの温度と、前記1つ以上のバルーンの各々の内部の圧力とのうち、1つ以上をモニターすることを含む。送達チューブの温度は、送達チューブ内に位置決めされかつ送達チューブ温度を出力する、サーミスタ228などのサーミスタからの信号に基づいてモニターされ得る。一実施例では、
図2Aに示すように、サーミスタ228は光放出部分の端部に位置決めされ得る;しかし、サーミスタ228が送達チューブの光放出部分内の任意の位置に位置決めされ得ることが認識されるであろう。いくつかの実施例では、バルーンによって包まれた各光放出セグメントに対応する温度をモニターするために、バルーンに結合された(光放出部分の)各光放出セグメントがサーミスタを含み得る。例えば、
図3Aにおける各光放出セグメント330、332、334、336が、バルーン230、232、234、及び236内にあるそれぞれの光放出セグメント内の温度をモニターするために、それぞれサーミスタを含み得る。
【0117】
さらに、各バルーン内の圧力が、それぞれの膨張ポートと流体連結した圧力センサを介してモニターされ得る。すなわち、各バルーン膨張ポートがそれぞれの圧力センサに流体的に接続され、そして、各圧力センサからの圧力信号が、バルーン制御ユニット及び/またはコントローラを介して受け取られ得、かつモニターされ得る。圧力センサを通じて、コントローラがバルーンからの漏れをモニターし得る。さらに、いくつかの実施例では、バルーンに対応する個々の光セグメント内の温度をモニターするために、サーミスタと併せて圧力センサが用いられ得る。
【0118】
さらに、方法550は、560において、送達チューブ温度と、各バルーン内のそれぞれの圧力とのうち、1つ以上に基づいて、UV光強度、持続時間、及び/またはバルーン膨張量のうち1つ以上を調整する段階を含む。例えば、バルーン内の温度が上昇した時は、温度上昇の結果として生じる空気の拡張によって、バルーン内の圧力が上昇し得る。閾値を上回る温度上昇と、閾値圧力を上回る圧力上昇とのうち、1つ以上に応答して、コントローラがアクチュエータを調整し得、その調整は、(例えば、過剰な圧力をかけることなくバルーンと上皮との望ましい接触を確保するために)バルーン内の圧力が閾値圧力内になるように、冷媒流の増大及び/または除圧をもたらすために行われる。いくつかの実施例では、異なる直径の治療エリアを治療するバルーンについて、閾値圧力が異なり得る。例えば、閾値圧力は、より大きな直径の標的エリアを治療するバルーンについて、より高くなり得る。
【0119】
いくつかの実施例では、追加的または代替的に、UV光強度または持続時間がコントローラを介して調整され得る。
【0120】
方法550は次に554に戻る。
【0121】
非限定的な一実施例として、前記1つ以上のバルーンを通した狭帯域UV光治療は、胃腸管の粘膜層及び/または粘膜下層にのみ影響を及ぼしている炎症性及び/または感染性病態を治療するために提供される。別の実施例では、粘膜層及び/または粘膜下層に加えて、またはその代替として、粘膜及び/または粘膜下より腸管腔から遠い、1つ以上のより深い層に影響を及ぼしている炎症性及び/または感染性病態を治療するために、前記1つ以上のバルーンを通した狭帯域UV光治療が提供される。前記1つ以上のより深い層には、固有筋層及び/または漿膜が含まれ得る。
【0122】
図7を参照すると、同図は、送達チューブ202内におけるLED222及び冷却チューブ224の例示的な位置決めを含む、送達チューブの光放出部分206の概略図を、冷媒流の呈示とともに示している。この実施例においてバルーンは示されていない。具体的には、光放出部分206は、送達チューブ202内部に配された複数のLED222と、これも送達チューブ202内部に配された冷却チューブ224とを含む。一実施例では、図に示されるように、LED222が電力供給された時に送達チューブ202の長さに沿って送達チューブ202から外に向かって360度のパターンでLED222が光を放出するように、LED222は、互いから90度回転されかつ送達チューブ202に向くように位置決めされる。さらに、この実施例では、隣り合う各LEDが90度回転される。例えば、第1のLEDはゼロ度の基準角度にあり、送達チューブ202の長さに沿って第1のLEDと隣り合って位置決めされる第2のLEDは(すなわち、第1のLEDのすぐ次にある第2のLEDは)第1のLEDから90度回転される。さらに、送達チューブ202の長さに沿って第2のLEDと隣り合う第3のLEDは、第2のLEDに対して90度(つまり第1のLEDに対して180度)回転され、以後も同様に、(N-1)番目のLEDと隣り合うN番目のLEDは、N番目のLEDに対して90度回転される;ここでNは、送達チューブ202に沿った光放出の望ましい長さに応じた任意の数である。
【0123】
いくつかの実施例では、LEDは円周状の構成に配列され得る。例えば、第1のLEDと第3のLEDとが背中合わせに位置決めされ、第2のLEDと第4のLEDとが背中合わせにあり、第2のLEDは第1のLEDと第3のLEDとの間にあり、第4のLEDは第3のLEDと第1のLEDとの間にあり、4つのLEDは互い違いではなく、かつ電力供給された時に4つのLEDが送達チューブ202の周囲360度に光を放出するように、4つのLEDが互いから90度に配列されてもよい。送達チューブ202の望ましい長さにわたって連続的で実質的に均一な照明を提供するために、4つのLEDの別のセットが、前記4つのLEDから短距離のところに位置決めされてもよい。照明するための、カテーテルチューブの望ましい長さを網羅するために、この方式でLEDの複数のセットが位置決めされ得る。カテーテルチューブの望ましい長さに沿った360度照明を網羅する、LEDの他の構成も可能であり、それも本開示の範囲内にある。例えば、ビーム角がより広いLEDが用いられる時は、360度照明を提供するために4つより少ないLEDが用いられ得る。非限定的実施例として、互い違いの様式(チューブの長さに沿って隣り合って位置決めされた様式)または円周状の様式(冷却チューブの周囲で隣り合った様式)に配列された、互いからそれぞれ120度回転された3つのLEDが利用され得る。この方式で、3つのLEDのいくつかのセットが360度照明を提供し得る。
【0124】
さらに、冷却チューブ224が送達チューブ202内に位置決めされて、送達チューブ202に冷却空気をもたらす。送達チューブ202はカテーテルチューブの近位端218に向かって開放端704を有し、冷却空気はそれを通って冷却チューブから出て、LEDを冷却するためにLEDに向かって循環して戻る(冷却空気流を矢印702で示す)。冷却チューブ224は、
図1Aにおけるコンプレッサ108などのコンプレッサから冷却空気を受けるように構成され得る。冷却チューブ224はLED222に対して中心に位置決めされる。具体的には、LED222は、各LEDの一部分が冷却チューブ224と接触するように位置決めされる。例えば、LED222は、後方部分(例えばLED基板の一部分)が冷却チューブ224と接触するように配列される。いくつかの実施例では、LED222は、内側チューブ内に1つ以上の冷却チューブを含み得る内側チューブ(例えば
図3A及び3Bにおけるチューブ324)上に位置決めされ得る。
【0125】
さらに、冷却チューブ224は可撓性で、各LEDの後方部分を通って屈曲し、それはLEDをコンパクトな様式で配列することを可能にする。いくつかの実施例では、冷却空気が1つ以上の追加的な出口ポイントから出ることを可能にするために、1つ以上の追加的な開通口が冷却チューブに提供され得る。
【0126】
図8、
図9A~9C、
図10A~10B、
図11A~11C、及び
図12は、1つ以上のバルーンに結合され得る送達チューブの光放出部分に使用され得るいくつかの異なる実施形態を示す。これには、
図8に示されるように、送達チューブ802に接続され得る1つ以上のチップオンボード(COB)小型バーが含まれ得る。送達チューブは、標的組織においてUV分布を向上させ得かつ放射照度を増大させ得る、バルーン808を含み得る。システム全体が可撓性の金属ロッド804に接続され得、それが電源ユニット(図示せず)に接続され得る。1つ以上のCOB小型バーを伴う本実施例は、10cmの長さを有するUV照射エリアを示す。その長さは用途に応じて10cm未満または10cm超であり得ることが認識されるであろう。いくつかの実施例では、送達チューブ802のより長い長さを網羅するために、小型バー805及び806に加えて1つ以上のさらなるCOB小型バーが含まれ得る。
【0127】
光線療法を広げるために送達チューブと一体化され得るCOB光エンジン902による例示的な光ファイバソリューションを
図9A~9Cに示す。この実施例では、単一のLED(
図9Aにおける904)または複数のLED(
図9B及び9C)が、UV放射エリアに光を伝送する光ファイバケーブル908に(例えば906の結合を介して)接続され、光ファイバはチューブのその部分において光を放射するように構築または処理される。さらに、いくつかの実施例では、
図9Cに示されるように、光を集束させかつ導いて光ファイバケーブル908に通すためにコリメーティングレンズ914が利用され得る。上述したように、光ファイバケーブル908は、送達チューブの望ましい長さにわたって光を放出するように構成され得る。
【0128】
図10A~10Bは、LED1010を含む、ヒートシンク(
図10B)を伴う可撓性プリント回路基板(PCB)1004の一実施例を示す。一実施例では、LED1010がチューブ1005の周囲に位置決めされるように、可撓性PCBがチューブ1005へと形成され得る。この実施形態は、可撓性PCBの表面積が大きいことにより、熱を放散させるのに役立つ。さらに、可撓性PCBチューブの冷却を向上できるように1つ以上の空気穴1008が提供され得る。
【0129】
図11A~11Cは、一続きの線形リフレクタ及びLEDを含む送達チューブの別の実施形態の様々な構成要素を示す。
図11Bに示されるように、送達チューブは、近傍のリフレクタに向けられた一連のLEDユニットを含む。各LEDユニットは、LED1108と、リフレクタ1110と、基板1114とを含む。2つのLED1108間の例示的な距離は9mmであり得、LED1108と、LEDからの光を受けるリフレクタ1110の端部との間の距離は2mmであり得る。例えば、リフレクタが光を受けてそれを広げることができるように、LEDとリフレクタ端部との間の距離が充分に小さくてもよい。この方式で、送達チューブの均等性を向上させながら、より大きな光分布が実現される。
図11Bは、
図11Aの実施形態に実装され得る例示的なヒートシンクを示す。さらに、
図11Aに示される送達チューブに利用され得る狭帯域(例えば343~345nm)LEDの例示的なビーム角は135度であり得る。
【実施例】
【0130】
以下の一連の実験データは、本願により特許請求される発明をより良く説明するために提供されており、範囲を限定するものとして解釈されることを意図していない。
【0131】
実施例1:大腸菌
図12A及び
図12Bは、本明細書に開示されるUV発光デバイスが、大腸菌の増殖を防止するために使用される実施例を示す実験データを示す。図示するように、UV光が適用されなかった対照群は増殖し続けたが、UV発光デバイスによってUV光が適用された試験群は、経時的に大腸菌数の連続的な減少を示した。UV光は、大腸菌の増殖を防ぎ、時間の経過とともにバクテリアを死滅させることが示されている。
【0132】
図15Bは、本明細書に開示されるUV発光デバイスが、大腸菌を含む液体培養で使用される実施例を示す。この実験と、他の細菌、及び真菌であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の同様の実験との結果を、例えば、
図15A、及び
図16、
図17A~
図17B、
図18~
図20、
図21A、及び
図21Bに示す。全ての結果は、UVA光及びUVB光が本明細書に開示されるUV発光デバイスによって液体サンプル上に放出された液体サンプル中の、大腸菌及び他の感染性病原体の増殖の有意な減少を示している。
【0133】
実施例2:細菌
別の実施例では、本明細書による2つの例示的なデバイスを、細菌を処理するためのUVA実験で使用した。第1のデバイスは、希硫酸、フッ化水素ナトリウム、硫酸バリウム、及び重フッ化アンモニウムの混合物で繰り返しエッチングしたホウケイ酸塩ロッド(外径3mm)であり、ロッドの端に、UVAが側面から放出される反射コーティングを付加した。この過程で、分光器(Ocean Optics;Extech)で確認したところ、UVA(ピーク波長345nm)の側面発光ロッドが得られた。第2のデバイスには、ピーク波長(345nm)の狭帯域LEDを組み込んだ。
【0134】
UVAロッドを液体培地に挿入した。光源として水銀灯(Asahi Max 303, Asahi Spectra Co., Tokyo, Japan)を使用した。第2のUVA発光デバイスは、ヒートシンク(Seoul Viosys, Gyeonggi-Do, Korea)に取り付けた小型発光ダイオード(LED)アレイ(ピーク波長345nm)であった。このデバイスを、以下に示すメッキ実験に使用した。
【0135】
大腸菌(Escherichia coli)、大腸菌GFP、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)、及びカンジダ・アルビカンスの保存培養は、
図22に示す表に示されるように、適切な液体培地及び条件で培養した。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)株と1つの臨床分離株とは、各微生物(Manassas, VA, USA)についてATCCが提案した指示に従って、適切な固体培地及び液体培地で培養した。滅菌技術を使用して、微生物株を含むバイアルを開封し、ペレット全体を約500μLの液体ブロスで再水和させた。
【0136】
無菌的に、再懸濁したペレットを、細胞を再懸濁するために使用したのと同じ液体ブロス56mLを含むチューブに移した。一次ブロスチューブを数滴使用して、固形微生物寒天に接種し、単一コロニー形成単位(CFU)を分離した。液体及び固体の培養物を、
図22に記載の特定の温度、雰囲気条件及び時間でインキュベートした。
【0137】
最初に、UVA療法中の菌株の純度を保証するために、各微生物の単一のCFUから液体培養を調製した。実験中は、新しい純粋な液体培養のみを使用した。1つの単一コロニーを5mLの液体培地を含む10mLの滅菌チューブに加え、続いて十分にボルテックスして微生物細胞を均質化させた。
図22に示す液体培養を、マクファーランド比濁法で0.5に達するまでインキュベートした。標準濁度を満たした後、微生物培養を1分間十分に混合し、1000μLの液体培養を2本の1.7mLマイクロ遠心滅菌チューブに移して、処理及び対照として使用した。各チューブの100μLのアリコートを連続希釈し、固体微生物培地にプレーティングして、
図23に示すようにベースラインでのCFU/mL数を決定した。
【0138】
UVA光線療法より前に、加熱したガラス棒を使用して上部に小さな穴を開けることにより、いくつかの滅菌1.7mLチューブキャップを用意した。その穴には、UVA光を透過させるために使用するロッドの形状及び大きさを持たせた。
【0139】
無菌的に、1.7mLチューブ内の液体培養からの元のキャップを、穴のある滅菌キャップに交換した。各キャップの上部に作製した穴に、UV光伝送ロッド(70%エタノールで滅菌)を入れた。同一のロッドを、対照チューブにも入れた。光は、MAX-303キセノン光源(Asahi Spectra USA, Inc., Torrance, CA)を使用して、チューブに挿入したガラス棒を透過させた。UVバンド幅と放射照度ピークとを評価した(Flame UV-VIS光ファイバ分光計、Ocean Optics)。UV強度は、SDL470及びUV510UV光メーター(Extech、NH、USA)Extechで測定した。UVCが存在しないことは、SDL470UV光メーター(Extech、NH、USA)を使用して確認した。
図22は、細菌培養物に適用したUVA光の強度及び曝露期間を記載する。
【0140】
処理時間の終了後、ロッドを処理チューブ及び対照チューブから取り出し、穴のない新しい滅菌キャップを使用して液体培養を閉じた。処理群及び対照群の両方をボルテックスにより均質化した。次に、各チューブの100μLのアリコートを連続希釈し、固体微生物培地にプレーティングして、
図23に示した表に示すように、UVA処理後のCFU/mL数を測定した。このプロセスは、
図23に記載されている全ての時点を達成するまで繰り返した。
【0141】
各時点(ベースライン及びUVA処理後)の後、100μLの液体微生物培養(処理及び対照)を滅菌1xPBS(EMD Millipore, Billerica, MA)で連続希釈した。最終的な連続希釈倍率は、1:10(微生物培養100μLと滅菌1xPBS 900μL)、1:100、1:1000、1:10,000、1:100,000とした。各希釈液の100μLを固体寒天プレートに重複してプレーティングし、
図22に記載の時間、温度、及び雰囲気条件でインキュベートした。インキュベーション後、Scan 300自動コロニー計数器(Interscience, Woburn, MA, USA)を用いてコロニーを数え、体積と希釈倍率とを補正してCFU/mL数を定義した。
【0142】
これらの実験で使用された第2のデバイスは、アルミニウムヒートシンク(Seoul Viosys, Gyeonggi-Do, Korea)に取り付けた小型発光ダイオード(LED)アレイ(ピーク波長345nm、バンド幅10nm)を組み込んだものである。最初の実験では、このシステムを、大腸菌の厚い菌叢を伴う培養プレートの表面から1cmに設置し、約2000μW/cm2で20分間置いた。続いて、この光源を別々の実験で、102CFU/mLの大腸菌及び緑膿菌の液体培養に適用した。
【0143】
両方の条件で、UVAを、500、1000、2000、及び3000μW/cm2の強度で、1cmで20分及び40分間、別々の一連の実験でテストし、線量反応曲線を作成した。インキュベーション後、Scan 300自動コロニー計数器(Interscience)を用いてコロニーを数え、コロニーサイズを測定し、体積と希釈倍率とを補正してCFU/mL数を定義した。
【0144】
結果
UVAへの曝露は、
図23に示す表に示すように、カンジダ・アルビカンス(P=0.007)及びクロストリジウム・ディフィシル(P=0.01)を含む様々な病原微生物の有意な減少と関連していた。UVA光の曝露時間20分(強度1300~3500μW/cm
2)は、肺炎桿菌(P=0.17)、エンテロコッカス・フェカーリス(P=0.1)、及び化膿性レンサ球菌(P=0.64)を除くほとんどの微生物で、対照群と比較して減少が認められた(P<0.05)。未処理の対照と比較した場合、40分及び60分のUVA光曝露時間は、試験した全ての微生物に対して有効であった(P<0.05、
図33)。特に、殺菌効果及び殺真菌効果は、UVA光に対して線量依存的な応答を示し、
図23に示すように、より長い曝露時間に関連してより大きな微生物の減少が見られた。
【0145】
UVA光線治療をまた、ヒトの尿路から得られた臨床的に分離された大腸菌株にも適用した。UVA光を、5回の連続実験セットでテストし、この細菌培養物を20、40、60、及び80分間、1100~1300μW/cm
2のUVAに曝露させた。ベースラインと比較して、UVA光に曝露された細菌培養物において観察されたCFU/mL数は、
図24に示すように、20分(P=0.03)、40分(P=0.0002)、60分(P<0.0001)及び80分(P<0.0001)を含む評価された全ての時点で減少した。
【0146】
最後に、LED狭帯域UVA(345nmのピーク波長)が大腸菌及び緑膿菌に及ぼす影響をテストする実験を行った。これらの実験では、この特定の波長のUVAにより、
図25A~
図25Nに示すように、細菌細胞の有意な減少が見られた。例えば、
図25Aは、ペトリ皿中の細菌コロニーの写真と、20分及び40分でのLED光の適用部位の周りのコロニーの消失パターンとを示す。
図25Bは、その後にプレーティングした場合の、大腸菌液体培養物のUVA処理の効果を示す。大腸菌液体培養物を、3000W/cm2で20分間処理し(右)、または対照として未処理のままとし(左)、次に固体培地上にプレーティングした。UVA処理後の大腸菌コロニーの数とサイズとに顕著な低減が見られた(右のプレート)。
【0147】
図25C~
図25Fは、ピーク波長345nmのUVA光を様々な強度で照射した場合の、大腸菌のコロニー形成単位(CFU)の経時変化を示すグラフを示す。図示のように、2000uWの強度で40分までにほとんどの細菌が除去され(
図25E)、3000uWの強度で20分までにほとんどの細菌が除去された(
図25F)。同じ光を500uW及び1000uWの強度で照射した場合、40分後までにCFUの有意な減少が見られたが、約半分にすぎなかった(
図25C及び
図25D)。
【0148】
図25G~
図25Jは、ピーク波長345nmのUVA光を様々な強度で照射した場合の、緑膿菌のコロニー形成単位(CFU)の経時変化を示すグラフを示す。図示するように、1000uW、2000uW、及び3000uWの強度で処理すると、対照と比較してCFUの有意に大きな減少を示し(
図25H、
図25I及び
図25J)、2000uW及び3000uWの強度で20分までに、ほとんどの細菌が除去された(
図25I及び
図25J)。
【0149】
図25K~
図25Lは、それぞれ20分と40分における様々な強度での緑膿菌の対数減少を比較した増殖曲線を示す。
図25Mは、様々な強度及び処理時間での大腸菌コロニー直径の減少を示す増殖曲線を示す。
図25Nは、様々な強度及び処理時間での緑膿菌コロニー直径の減少を示す増殖曲線を示す。
【0150】
大腸菌及び緑膿菌の減少に対する光強度の効果を調べると、細菌量とコロニーサイズとの両方に線量応答効果が見られた(
図25B~
図25N)。細菌に影響を与える理想的なUVA強度は、ピーク波長345nmの狭帯域LEDを使用した場合、2000~3000μW/cm2であるように見え、いくつかの実施例では、細菌または病原体のタイプ及び種、ならびに本明細書に開示される他の要因に依存する可能性がある。
【0151】
実施例3:安全性データ
哺乳類細胞に対するUVAの安全性を評価するために、3つの実験を行った。第1の実験では、培養中のHeLa細胞をUVAに曝露した。HeLa細胞は、60x15mm細胞培養ディッシュ(ファルコン)内のDMEM細胞培養液(Gibco,Waltham,MA)プラス10%ウシ血清(Omega Scientific,Tarzana,CA)及び1x抗生物質-抗真菌剤(100xGibco)に添加し、37℃(5%CO2)で24時間培養して1プレート当たり1,000,000~1,800,000個とした。この時点で、細胞を、UVA LED光(1800μW/cm2)に、0分(対照)、10分、または20分曝露した。24時間後、0.05%トリプシンEDTA(1x)(Gibco)で細胞を除去し、トリパンブルー(トリパンブルー0.4%使用準備済(1:1)(Gibco))で染色し、自動細胞計数器(Biorad T20,Hercules,CA)で定量化した。同様の実験で、LED UVA光をより高い強度(5000μW/cm2)で20分間使用した。再び、UVA曝露後24時間でHeLa細胞を定量化した。
【0152】
UVAの安全性をまた、2種類のヒト呼吸器系細胞型でも検討した。これらは、肺胞(ATCC A549)及び一次繊毛化気管上皮細胞(HTEpC)(PromoCell,Heidelberg,Germany)を含んでいた。各細胞株について、250,000個の細胞をプレーティングし、DMEM中で48時間、プレートあたりの細胞数が約750,000個になるまで増殖させた。この時点で、細胞をUVA(2000μW/cm2)に0分(対照)または20分(処理)曝露し、24時間後に細胞数を取得した。
【0153】
UVAで処理した細胞のDNA中の8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)のレベルもまた、分析した。8-OHdGは、酸化的DNA損傷及び酸化的ストレスの高感度マーカーとして広く受け入れられている。DNAは、AllPrep DNA/RNA/Protein Miniキット(Qiagen)を使用して、製造元の指示に従って抽出した。8-OHdGのレベルは、EpiQuik(商標)8-OHdGDNA損傷定量化ダイレクトキットを製造元の指示(Epigentek,Farmingdale,NY)に従って使用して検出した。最適な定量化のために、基本的な8-OHdGが一般に全DNAの0.01%未満であるため(Epigentek,Farmingdale,NY)、入力DNA量は300ngとした。
【0154】
UVA光安全性試験には、野生型129S6/SvEvマウス(n=20、メス=10)及びBALB/cJマウス(n=10、メス=5)を使用した。処置前に全ての動物に麻酔をかけた。UVA光線治療の前に、動物をイソフルラン麻酔ガス(1~5%)を含む誘導室に入れた。イソフルランのキャリアガスは圧縮酸素(100%酸素)であった。呼吸数が遅くなったところで(1秒間に約1回呼吸)、動物を誘導室から取り出し、ノーズコーン麻酔(1~2%イソフルラン)を使用して鎮静下に維持した。麻酔の深さは、つま先をつまんで反応しないことにより確認した。
【0155】
麻酔下で、カスタマイズされたロッド(D=4mm、L=40mm)を肛門から脾湾曲部まで導入した。対照群には、同じだが点灯されていないロッドを用いて同じ手順を適用した。光源及び測定装置は、液体培養実験で説明したものと同じものを使用した。
【0156】
第1の実験では、5匹のBALB/cJマウスに、30分間の結腸UVA曝露(2,000μW/cm2)を施し、同じ手法で無点灯の光学ロッドで治療した5匹のマウスと比較した。
【0157】
第2の実験では、129S6/SvEvマウス10匹に、1日20分の結腸UVA曝露(3,000~3,500μW/cm2)を2日連続で行い、無点灯のロッドで処置したマウス10匹(オス=5)と比較した。
【0158】
UVA光線療法前後の結腸内視鏡検査
硬性小児用膀胱鏡(Olympus A37027A)を使用して、7日間のUVA曝露の前後の腸粘膜を評価した。内視鏡検査は麻酔をかけた動物で行った。鎮静の方法は前述の通りである。
【0159】
肛門をまず水性ゲル(Astroglide(登録商標),BioFilm,Inc.、Vista,CA,USA)で潤滑した。次に、内視鏡を脾湾曲部まで挿入し、内視鏡ポートから注入した室内気を使用して結腸に送気した。全ての内視鏡検査は、動物モデル内視鏡検査に精通した2人の胃腸科医により記録され、盲検下で解釈された。内視鏡像は、肛門周囲の検査、腸壁の透明度、粘膜出血、及び局所性病変などをもとに解析した。
【0160】
14日目に、対照及び処置したマウスを安楽死させ、Bialkowska et al.で提案されるように、結腸全体のスイスロール標本を作製した。簡単に説明すると、結腸全体を取り出し、修正されたブアンの固定液(dH2O中50%エタノール/5%酢酸)ですすいだ。はさみを使用して、結腸を腸間膜線に沿って縦方向に開き、1xPBSを含むペトリ皿で簡単にすすいだ。管腔側を特定し、開いた組織のスイスローリングを実行した。結腸の全長を丸めたところで、結腸を慎重に組織処理/包埋カセットに移した。カセットを室温で一晩10%緩衝ホルマリンに入れておき、その後結腸のパラフィン切片を切り出し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、盲検病理医(SS)が評価した。
【0161】
グループ間の細菌数のデータは正規分布ではないため、ノンパラメトリック検定(Mann Whitney U検定)を使用して比較した。他の定量データは、GraphPad Prism 7(GraphPad,San Diego,CA)を使用したt検定によって比較した。
【0162】
結果
全体として、経時的な細胞増殖に基づいて、LED UVAは、試験した哺乳類細胞(HeLa、肺胞A549、及び初代気管細胞)においては安全であるように思われた。全てのプレートで、UVA曝露にかかわらず、細胞増殖が継続し、プレートあたりの細胞数は対照の1.5~2倍となり、強固な複製が継続することが示された。HeLa細胞の場合、
図26Aに示すように、UVAは、曝露されしていない対照と比較して、24時間後の生細胞数に影響を与えなかった(約2000μW/cm
2のUVAを10分間及び20分間、それぞれP=0.99及びP=0.55)。より高強度のUVA(5000μW/cm
2)は、
図26Bに描かれた棒グラフに示すように、HeLa細胞の増殖に影響を与えなかった。同様の所見は、
図26Cに示すように、2000μW/cm
2、20分の肺胞細胞でも見られた(P=0.99)。最後に、繊毛上皮細胞の成長も、UVAを約1000μW/cm
2及び約2000μW/cm
2に20分間照射した後で、影響を受けなかった。
【0163】
さらに、UVAへの曝露は、分析したいずれの細胞株においてもDNA損傷を引き起こさず、
図26D(HeLa細胞)、
図26E(肺胞細胞)、及び
図26F(気管細胞)に示すように、狭帯域LED UVAで処理した細胞における8-オキソ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)のレベルはUVAに曝露しない対照と類似した(P<0.05)。LED UVAの強度が高いほど(5000μW/cm
2)、8-OHdGのレベルが上昇するように見えたが(P=0.07)、8-OHdGの割合はDNA全体の0.01%という一般に認められている閾値をはるかに下回ったままであった。
【0164】
UVA光曝露は内視鏡的損傷または組織学的損傷と関連しない
体内の内臓細胞及び組織に対するUVA療法の安全性を評価するために、2種類の異なる野生型マウス系統を、広域スペクトルUVAを均一に側方放射するように設計された光学ロッドを使用して、結腸内広域スペクトルUVA光に曝露させた。脾湾曲部までの結腸の左側のみをUVA光に曝露させたので、曝露していない右側は自己対照として機能した。第1の実験では、麻酔下で5匹のマウスに30分間の結腸UVA曝露(2,000μW/cm2)を施し、同じ手法で無点灯の光学ロッドで治療した5匹のマウスと比較した。
【0165】
第2の実験では、10匹のマウス(129S6/SvEv、オス=5)に、1日20分の結腸広域スペクトルUVA曝露(3,000~3,500μW/cm2)を2日連続で行い、無点灯のロッドで処置したマウス10匹(オス=5)と比較した。いずれの実験でも、穿孔、出血、または死亡は見られなかった。マウスの結腸内視鏡検査画像では、UVA曝露前後で変化が見られない。
【0166】
いずれの実験でも、UVA投与前後のマウスを内視鏡で評価したところ、粘膜の紅斑、破砕、潰瘍または出血は巨視的に認められなかった。盲検病理医(SS)による評価では、広域スペクトルUVAに曝露させた全厚さの結腸検体では、対照及び未処理の結腸セグメントと比較して、慢性/急性炎症、膀胱炎、クリプト膿瘍、肉芽腫、潰瘍、または異形成が見られなかった。
【0167】
RNAウイルス実験データ
さらに、開示されたシステム及び方法を利用して、様々なRNAウイルスをUVA光で処理する実験データを取得した。結果的に、データは、ピーク波長340nmのLEDから放出されるUVA光が、コクサッキーウイルスなどのRNAウイルスを死滅させることができることを示すデータである。例えば、コクサッキーウイルスに感染したHela細胞は、このUVA治療を適用した場合は生存したが、感染後にUVA光線治療を適用しなかった場合は生存しなかった。さらに、実験データは、ETチューブを通過した後のUVA光の損失がわずか15%であることを示した。
【0168】
2019年12月下旬に、中国武漢市で新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2またはCOVID-19、以前は2019-nCoVとして知られていた)の集団発生が報告された。COVID-19は、上気道で効率的に複製されるウイルス感染症である。その作用機序の一部として、ウイルスは繊毛のある気管上皮細胞に感染し、その後その細胞が剥がれ落ちて肺胞の機能を低下させる。二次的な細菌感染も指摘されており、これらのプロセスはいずれも、さらなる炎症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こし、最終的には死に至る可能性がある。感染者の10~15%が重度の臨床経過をたどり、約5%が呼吸器系などの臓器不全のために人工呼吸器が必要になる重篤な状態になると推定されている。COVID-19の症例致死率は0.5%から9.5%の範囲であると推定されているが、この推定値は症状のある患者を優先的に検査することと、症状発現までに最大で14日間のタイムラグがあることとで混乱している。死亡は、ARDSの設定における呼吸不全、及び/または人工呼吸器関連肺炎(VAP)を含む二次感染が原因であると考えられている。
【0169】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、少なくとも48時間、機械的人工呼吸を受けている集中治療室(ICU)患者で発症する可能性があり、COVID-19患者ではよく見られる。VAPの発生率は、使用する診断基準及び調査対象の患者集団に応じて、5%から67%の幅広い範囲に及ぶ。原因菌には、腸内細菌(25%)、黄色ブドウ球菌(20%)、緑膿菌(20%)、インフルエンザ菌(10%)、及びレンサ球菌(13)などがある。多剤耐性菌は、遅発性の症例に多く見られる。早期発症のVAPによる死亡率は約6%、後期発症のVAPによる死亡率は10%と言われている。
【0170】
現在、COVID-19の治療薬はなく、機械的人工呼吸器装着患者の二次感染を減らすための従来の手段では、これまで不十分であることが証明されている。これらの患者に対して安全で効果的な幅広い抗ウイルス及び抗菌アプローチは、ウイルス量、二次感染及びVAP、機械的換気の時間、呼吸不全による死亡を潜在的に減らすはずである。
【0171】
本明細書で開示するように、紫外線(UV)光は抗菌性を有する。UVC(110~280nm)は工業用殺菌に広く使用されているが(16)、ヒトのDNAに有害な影響を及ぼすとされている。外部UVA(320-400nm)及びUVB(280-320nm)デバイスは、乾癬、湿疹、皮膚リンパ腫などのヒト疾患に対する適応がFDAにより承認されている。これらの波長は、粘膜組織及び粘膜下組織を透過する。3つのスペクトルのうち、UVAは哺乳類細胞へのダメージが最も少ないようである。現在のところ、UVA光の体内適用による細菌またはウイルス感染への効果を示す研究はない。発光ダイオード(LED)の進歩により、狭帯域のUVAを内臓に照射することが実現可能になりつつある。
【0172】
したがって、VAPに関連することが知られている一般的な細菌性病原体の治療のための広帯域及び/または狭帯域UVAの効果を示す実験データが開示されている。さらに、B群コクサッキーウイルス及びコロナウイルス229Eに対する特定の波長のUVAの効果を示すデータが開示されている。最後に、さらなるデータは、哺乳類細胞及びインビボ上皮細胞に対するUVA曝露の安全性を示している。
【0173】
実施例4:コクサッキーウイルス
コクサッキーウイルスサンプルの取得と細胞への感染
高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP-CVB)プラスミドを発現する組換えコクサッキーウイルスB(pMKS1)を、ClaI制限酵素(ER0142、Thermo Fisher)を使用して線形化し、線形化したプラスミドを標準的なフェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿とを使用して精製した。次に、mMessage mMachine T7転写キット(AM1344、Thermo Fisher)を使用してウイルスRNAを生成した。次に、Lipofectamine 2000(11668027、Thermo Fisher)を使用して、ウイルスRNAをHeLa細胞(約80%のコンフルエンシー)にトランスフェクトした。細胞が約50%の細胞変性効果を示した時点で、細胞をこそげ取り、細胞/培地懸濁液を回収した。次に、この混合物を3ラウンドの急速凍結融解サイクルにかけ、1000xgで10分間遠心分離して、細胞破片の培地を清澄化した。上清を継代1ウイルスストックとして使用した。次に、継代1のウイルスストックを別々のHeLa細胞(約80%のコンフルエンシー)に重ねて、ストックを継代2のウイルスストックに拡張し、その後の実験に使用した。
【0174】
B群コクサッキーウイルスに感染したHeLa細胞のUVA処理
HeLa細胞は、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現B群コクサッキーウイルス(EGFP-CVB)を使用した4つの異なる実験に使用した。第1の実験では、HeLa細胞(プレートあたり253,000)(n=12プレート)を24時間培養した。EGFP-CVBアリコートの半分をLED UVA(2000μW/cm2、ピーク波長340nm)に20分間曝露し、もう一方は曝露しなかった。次に、HeLa細胞をUVAに曝露させたウイルスまたはUVAに曝露させていないウイルスのいずれかに感染させた(MOI=0.1)。6時間後、上清を除去し、細胞を1x滅菌PBS(pH=7.0)で2回洗浄した。新しいDMEM培地を追加した。UVAに曝露したウイルスに感染したプレートは、さらに20分間UVA(2000μW/cm2)に曝露した。上清中の死細胞を、24時間後に収集して定量した。6枚のプレート(UVA処理済み及びUVA未処理の各3枚)の生細胞を評価した。残りの6枚のプレートのうち、最初にピーク波長340nmのUVAに曝露した3枚のプレートは、さらに20分間UVA(2000μW/cm2)に曝露した。さらに24時間後、残りのプレートから死細胞と生細胞の数を取得した。
【0175】
B群コクサッキーウイルス感染に対するUVAによるHeLa細胞の前処理
第2の実験では、HeLa細胞(235,000細胞)をプレーティングし、その後、DMEMで24時間インキュベートした。次に、プレートを、未曝露の対照(n=3)と、LED UVA(2000μW/cm2、ピーク波長340nm)に20分間曝露(n=3)したものとに分けた。さらに24時間後、全てのプレートをEGFP-CVB(MOI=0.1)に感染させた。さらに24時間後、前述のように細胞をカウントした。
【0176】
HeLa細胞感染に対するUVAによるB群コクサッキーウイルスの前処理
第3の実験では、HeLa細胞を24時間培養した後、EGFP-CVB(MOI=0.1)に感染させた。感染直前に、EGFP-CVBアリコートの半分をLED UVA(2000μW/cm2、ピーク波長340nm)に曝露し、残りの半分は曝露しないままであった。24時間後、生細胞数を取得した。
【0177】
B群コクサッキーウイルス感染進行中のHeLa細胞の長期的UVA処理
この実験では、250,000個のHeLa細胞をプレーティングした。24時間後、細胞を3つのグループに分けた。第1のグループでは、細胞にEGFP-CVB(MOI=0.1)を感染させた。これらの細胞は、陽性の感染対照として機能した。グループ2では、UVA処理(2000μW/cm2、20分、ピーク波長340nm)したEGFP-CVB(MOI=0.1)をHeLa細胞に感染させ、6時間後、その感染細胞をUVA(2000μW/cm2、ピーク波長340nm)で20分間処理した後、2日目に20分間を8時間間隔で2回、3日目に20分間を8時間間隔で2回と、計4回の追加処理を実施した。グループ3はEGFP-CVBに感染させていないが、グループ2で使用したのと同じタイムポイントで5回、UVAで処理した。これは、UVAの安全性を実証するための非感染陽性対照であった。全ての条件において、イメージングと細胞数を取得した。
【0178】
B群コクサッキーウイルスに感染した肺胞(A549)細胞へのUVA処理
肺胞細胞を用いた予備実験では、感染による細胞死の理想的なタイムポイントは感染後48時間であると判断した。本試験では、200,000個の肺胞細胞をプレーティングし、48時間後にカウントした(細胞数754,000個)。その後、肺胞細胞をEGFP-CVBに感染させた(MOI=0.1)。感染24時間後に肺胞細胞プレートを、LED UVA(2000μW/cm2、ピーク波長340nm)に、0分(対照)または20分(処理)曝露し、これを24時間ごとに3日間繰り返し、感染後96時間でイメージングと細胞数とを計測した。
【0179】
結果
B群コクサッキーウイルスをHeLa細胞に感染させる前にのみUVAで前処理しても、感染は軽減しない
この実験では、HeLa細胞を含むプレートの半分をEGFP-CVBで処理し、残りの半分を、ピーク波長340nm、約2000μW/cm2のLED UVA光に20分間曝露したB群コクサッキーウイルスで処理した。24時間での感染率への影響はグループ間で異ならなかった。
【0180】
B群コクサッキーウイルス感染前のHeLa細胞のUVA前処理は、ウイルスの影響を軽減しない
この実験では、HeLa細胞のあるプレートの半分を未処理のまま、残りの半分を、ピーク波長340nm、約2000μW/cm2のLED UVAで20分間前処理し、それ以上のUVA処理を行わなかった。両グループにEGFP-CVBを添加した。両方のグループが等しく感染しており、感染前にHeLa細胞を処理しても感染率に影響がなかったことを示唆している。
【0181】
B群コクサッキーウイルス感染後のUVA処理はHeLa細胞へのウイルス作用を軽減した
本研究では、HeLa細胞がEGFP-CVBに感染した後にUVAを適用した。処理した細胞は、感染後6時間でピーク波長340nm、約2000μW/cm
2のLED UVAに曝露し、その後、感染後72時間で細胞数を測定し、さらに2日間、1日2回曝露した。これを、感染しているが未処理の対照と比較した。処理グループでは、UVA光によりEGFP-CVBからの細胞死が防止され、
図27に描かれた棒グラフに示すように、72時間で細胞数が339,333±60,781に増加したのに対し、未処理対照では48時間及び72時間でプレート上に生細胞が残存していないことがわかった。重要なことは、感染していないが同じ時間間隔でUVA曝露を行った第3のHeLa細胞群では、72時間後の細胞数が2,413,333±403,773となり、正常な細胞増殖が見られたことである。
【0182】
GFP標識したコクサッキーウイルスB(EGFP-CVB)によるさらなる実験データ
GFP-CVBで感染させた肺胞細胞の蛍光顕微鏡分析によるUVA処理のアセスメント(
図30)
24時間培養した肺胞細胞をGFP-CVBでトランスフェクトし、48時間後に蛍光顕微鏡観察を行ってベースラインを確立した(画像3002)。次に、トランスフェクト細胞をUVAで処理し、トランスフェクションから24時間後(画像3006)及び48時間後(画像3010)に撮像した。対照群は、GFP-CVBトランスフェクト細胞であるがUVA処理を伴わない細胞を含んでいた。UVA処理を伴わない対照群もまた、トランスフェクションから24時間後(画像3004)及び48時間後(画像3008)に撮像した。
図30の画像に見られるように、UVA処理は、24時間後にGFP-CVB感染の約70の低減、48時間後にGFP-CVBの約90の低減をもたらした。UVA処理は、345nmにピーク波長を有するUV LEDで20分間行った。
【0183】
GFP-CVBで感染させたHeLa細胞の定量分析によるUVA処理のアセスメント(
図31)
24時間培養したHeLa細胞を、GFP-CVBによるトランスフェクション前に計数した(
図31におけるゼロ時点)。トランスフェクション後、HeLa細胞をGFP-CVBとともに24時間培養した。24時間時点で1つの群にUVA処理を行った。対照群は、UVA処理を伴わない、GFP-CVBトランスフェクトHeLa細胞を含んでいた。UVA処理後及び未処理のGFP-CVBトランスフェクトHeLa細胞に対して最終的な細胞計数を行った。
図31に示されるように、HeLa細胞の生存はUVA処理によって有意に増大した。上述の実験と同様に、UVA処理は、345nmにピーク波長を有するUV LEDで20分間の持続時間にわたって行った。
【0184】
B群コクサッキーウイルスに感染した肺胞(A549)細胞に対するUVA処理の効果
EGFP-CVBを感染させた肺胞細胞では、細胞死はHeLa細胞で見られたものより、はるかに少なかった。感染後96時間では、対照群の細胞に明確かつ広範囲な感染が見られた。ピーク波長340nmのLED UVAで処理した肺胞細胞も感染を示したが、目視評価では感染率は低く、ウイルス性EGFPシグナルを発する細胞ははるかに少ないことが示唆された。また、生細胞数は、未処理グループと比べた場合、UVA処理グループでより高い値を示したようであった。
【0185】
実施例5:コロナウイルス
別の実施例では、コロナウイルスに感染した繊毛性気管上皮細胞(HTeC)を、以下に開示するようにUV光で処理した。
【0186】
繊毛性気管上皮細胞(Promocell,Heidelberg,Germany)を3つのグループに分けてプレーティングした(プレートあたり135,000個)。1グループはコロナウイルス229E(Cov-229E)に感染させた(プレートあたり50uL)。もう1つのグループでは、感染直前にコロナウイルス229Eをピーク波長340nm(2000μW/cm2)のLED UVAで20分間処理した。第3のグループは、感染もUVAも受けなかった。感染後、細胞を毎日20分間、UVA(距離4cm、プレート表面で2000μW/cm2、ピーク波長340nm)で処理した。プレートは16時間、72時間、及び96時間で画像化し、感染後72時間と96時間とで細胞数を取得した。
【0187】
(コロナウイルス229Eに)すでに感染している繊毛性気管上皮細胞を救済するためのUVA
この実験では、繊毛性気管上皮細胞(HTeC)のプレートを上記のようにCov-229Eに感染させた。24時間後、プレートを2つのグループに分けた。グループ1は、そのまま感染を継続させた。グループ2では、プレートをピーク波長340nmのUVA(距離4cm、プレート表面で2000μW/cm2)で20分間処理した。48時間後、プレートを画像化し、生細胞数を求めた。
【0188】
コロナウイルスに感染した繊毛性気管上皮細胞を近距離で治療するためのUVA
UVA技術を用いた気管内デバイスを想定して、別の実験を、1日20分間、より低い強度の光(わずか1cmの距離からプレートの表面で1300μW/cm2)を用いた上記の実験と同一に実施した。これは、気管内チューブの内側から換気されている患者の気管細胞と光カテーテルとの間の予想される距離である。
【0189】
UVA処理した細胞またはUVA処理していない細胞におけるコロナウイルス量
AllPrep DNA/RNA/Protein Miniキット(Qiagen)を用いて、細胞サンプルからの総タンパク質の抽出を行った。タンパク質をBolt 4~12% Bis-Trisゲル(NW04122 Thermo Fisher)にロードし、Biotrace NTニトロセルロース膜(27376-991,VWR)上に移した。全タンパク質をポンソーS溶液(P7170、Sigma-Aldrich)で染色した。その後、ブロッキング液(3%ウシ血清アルブミン(A7030,Sigma-Aldrich)と0.1%Tween20(P1379,Sigma-Aldrich)を含む、トリス緩衝生理食塩水)で、膜をブロッキングした。次に、膜を、ブロッキング溶液で希釈したウサギ抗コロナウイルススパイクタンパク質抗体(1:1000;PA5-81777,Thermo Fisher)またはマウス抗MAVS(mitochondrial antiviral signaling)抗体(1:200;SC-166583,Santa Cruz Biotechnology)とともに、4℃で一晩インキュベートした。トリス緩衝生理食塩水+0.1%Tween 20(TBS-T)で洗浄後、膜をホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗ラビットIgG抗体(1:300;95058-734、VWR)またはHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体(1:300;5220-0286、SeraCare)のいずれかと重ね合わせた。次に、膜をTBS-Tで洗浄し、続いて強化化学発光溶液(RPN2235、GE Healthcare)にさらした。免疫反応性タンパク質バンドを、ChemiDocイメージングシステム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA USA)を使用して画像化した。
【0190】
LED UVA光が、コロナウイルス229Eに感染した繊毛性気管上皮細胞を保存する
繊毛性気管上皮細胞をコロナウイルス229Eで前処理し、毎日LED UVA(2000μW/cm
2;ピーク波長340nm)に20分間曝露した場合を、対照細胞(UVAなし、感染なし)及びコロナウイルスに感染したがUVA曝露なしの細胞と比較した。直接可視化したところ、感染に伴う細胞形態(UVAなし)の明確な変化が示された。また一方、対照細胞と毎日UVAで処理した感染細胞とは、同様の形態を示した。96時間後に上清を除去し、(プレートに付着している)生細胞を数えた。対照とUVAで処理した感染細胞との間で、気管細胞数に差はなかった。しかし、
図28に示す棒グラフに示すように、UVA処理細胞(P=0.005)と比較して、感染細胞の間で生細胞の著しい減少が見られた。
【0191】
興味深いことに、LED UVAで処理した感染細胞は、処理していない感染細胞と比較した場合、Cov-229Eスパイク(S)タンパク質(約130kDa)の減少を示した。さらに、Cov-229Eに感染しUVAで処理したレベルは、Cov-229Eに感染したがUVAで処理していない細胞と比較した場合、MAVSのレベルが上昇していた(
図29)。
図29におけるカラム1、2、及び3は、CoV-229Eに感染した細胞を表す;カラム4、5、及び6は、CoV-229Eに感染しNB-UVAで処理した細胞を表す。ゲル上にロードされたタンパク質の量をチェックするために、ポンソーS染色を用いて全体のタンパク質バンドの位置を出した。したがって、本実験データは、肺上皮組織に感染した後のコロナウイルス229EをUV-A光が死滅させることを確認するとともに、コロナウイルス感染患者の治療としてETチューブ及び他のデバイスと併用して肺組織に照射するというUV-A光の用途を検証するものである。
【0192】
図32及び33は、UVA処理から48時間後及び72時間後における、コロナウイルス229EトランスフェクトHTeC細胞に対するUVA処理の効果を、未処理の対照群と比較して示す棒グラフである。
図33及び34においてエビデンスが示されたように、UVA処理はコロナウイルス229EトランスフェクトHTeC細胞の細胞生存度を増大させる。
【0193】
さらなる実施形態
ある実施形態では、1つ以上のバルーンと1つ以上のUV LEDとを備えた内視鏡、または送達チューブ202など他の送達チューブが、口腔と食道とを通って胃内まで挿入され得る。この実施例では、GI管内の感染または炎症性疾患が、UV光源222と、胃内の、ならびに/または十二指腸、空腸、及び回腸のうち1つ以上を含む小腸内の、1つ以上の標的エリアに対して選択的に膨張された1つ以上のバルーンとで、治療され得る。
【0194】
ある実施形態では、管腔内光線療法を行うための光送達デバイスが提供される。光送達デバイスは:光放出部分を備えた送達チューブであって、光放出部分が335nm~349nmの間の紫外線A(UV-A)領域内の波長で狭帯域光を放出するように構成された複数の光源を含む、送達チューブと;光放出部分にて送達チューブに接続された複数の膨隆可能バルーンであって、その各々がそれぞれの膨張ポートと流体連結している複数の膨隆可能バルーンとを含み、前記複数の膨隆可能バルーンの各々は紫外線(UV)透明性材料で組成される。本光送達デバイスの第1の実施例では、前記複数の膨隆可能バルーンの各々が、前記複数の光源から放出されそして対応する管腔内治療部位に送達される光の、放射照度及び/または放射照度分布を増大させるように構成されている。第1の実施例を任意で含み得る、本光送達デバイスの第2の実施例では、前記複数の膨隆可能バルーンは光放出部分の長さに沿って直列的に配列され;かつ、複数の膨隆可能バルーンのうち任意の2つの間の分離は調整可能である。第1及び第2の実施例のうち1つまたは両方を任意で含み得る、本光送達デバイスの第3の実施例では、光放出部分は、前記複数の膨隆可能バルーンに接続されていない1つ以上のセグメントを備え;かつ、前記1つ以上のセグメントは前記複数の光源のうち1つ以上の光源を含む。第1~第3の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本光送達デバイスの第4の実施例では、前記複数の光源は、電源に電気的に接続された発光ダイオード(LED)であり、かつ送達デバイスから外に向かって光を放出するように構成されている。第1~第4の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本光送達デバイスの第5の実施例では、前記複数の光源は、医療等級のコンプレッサと冷却器とを含む冷却システムから冷却空気を受けるように構成された、送達デバイス内の冷却チューブ上に位置決めされる。第1~第5の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本光送達デバイスの第6の実施例では、前記複数の光源は、338nm~346nmの間のUV-A領域内のピーク波長を放出するように構成される。第1~第6の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本光送達デバイスの第7の実施例では、光送達デバイスは、前記複数の膨隆可能バルーンの各々を、それぞれのバルーン膨張ポートを介して膨張及び/または脱膨張させるように構成されたバルーン制御ユニットをさらに備える。第1~第7の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本光送達デバイスの第8の実施例では、光送達デバイスは、送達チューブ内にありかつ送達チューブの長さ全体にわたって延在するガイドワイヤチャネルであって、患者の管腔内に位置決めされたガイドワイヤ上に送達デバイスを通すように構成されたガイドワイヤチャネルをさらに備える。第1~第8の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本光送達デバイスの第9の実施例では、UV透明性材料は、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、または環状オレフィンコポリマー(COC)、またはシリコーンである。第1~第9の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本光送達デバイスの第10の実施例では、前記複数の膨隆可能バルーンが少なくとも3つのバルーンを含む。
【0195】
ある実施形態は、以下の段階を含む管腔内紫外線(UV)療法を行うための方法に関する:複数の光放出セグメントを備えた送達チューブであって、前記複数の光放出セグメントの各々が、338nm~346nmの間の紫外線A(UV-A)領域内の波長を有する狭帯域光を放出するように構成された複数の発光ダイオード(LED)を含んでいる、送達チューブと;複数の膨隆可能バルーンであって、前記複数の膨隆可能バルーンの各々が、前記複数の光セグメントのうち1つに結合されており、かつ前記複数の膨隆可能バルーンの各々が、バルーン制御ユニットに結合されたそれぞれの膨張ポートに流体的に結合されており、前記複数の膨隆可能バルーンがUV透過性材料で組成されている、複数の膨隆可能バルーンとを備えたUV光送達デバイスを提供する段階;複数の膨隆可能バルーンの各々が脱膨張状態で、患者の胃腸(GI)管の管腔内で送達チューブを位置決めする段階;バルーン制御ユニットを介して複数の膨隆可能バルーンを選択的に膨張させる段階;ならびに、GI管の障害のタイプ及び全体的な重症度のうち1つ以上に基づいて、閾値持続時間にわたり閾値強度で前記複数のLEDに通電する段階。本方法の第1は、管腔内で送達チューブを位置決めする段階が、前記複数の膨隆可能バルーンのうち1つ以上を管腔内の1つ以上の患部と並置させることを備えることを含む。第1の実施例を任意で含み得る、本方法の第2の実施例では、複数の膨隆可能バルーンを選択的に膨張させる段階が、前記1つ以上の患部と並置された前記1つ以上の膨隆可能バルーンを膨張させ、一方で、正常な健常組織と並置された残りの数のバルーンを脱膨張状態のまま維持することを含む。第1及び第2の実施例のうち1つまたは両方を任意で含み得る、本方法の第3の実施例では、前記1つ以上の患部と並置された前記1つ以上の膨隆可能バルーンを選択的に膨張させる段階が、前記1つ以上の膨隆可能バルーンが管腔の上皮層に接触する閾値圧力まで、前記1つ以上の膨隆可能バルーンを加圧することを含む。第1~第3の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本方法の第4の実施例では、閾値圧力は管腔の直径に基づく。第1~第4の実施例を任意で含み得る、本方法の第5の実施例では、1つの状態の間に、異なる重症度の感染及び/または炎症を1つ以上の標的エリアが有する場合に、所与の光放出セグメントについて、前記1つ以上の標的エリアにおける感染及び/または炎症の局所的な重症度に基づいて光の強度の大きさが調整される。第1~第5の実施例を任意で含み得る、本方法の第6の実施例では、送達チューブが、コンプレッサから冷却空気を受けるように構成された冷媒チューブを含み、かつ方法は、サーミスタを介して送達チューブの温度をモニターする段階と、その温度に基づいて冷媒チューブを通る冷媒流量を調整する段階とをさらに含む。第1~第6の実施例を任意で含み得る、本方法の第7の実施例では、送達チューブが、管腔を可視化するための1つ以上のカメラを備えた内視鏡として構成される。第1~第7の実施例を任意で含み得る、本方法の第8の実施例では、UV透過性材料は、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、または環状オレフィンコポリマー(COC)、またはシリコーンを含む。第1~第8の実施例を任意で含み得る、本方法の第9の実施例では、管腔内で送達チューブを位置決めする段階が、内視鏡を用いて管腔内に位置決めされたガイドワイヤ上に送達チューブを通すことを含む。
【0196】
別の実施形態は、患者における胃腸障害を治療、改善、及び/または予防する方法であって、発光ダイオード(LED)のセットを含む光放出部分と、光放出部分に結合された少なくとも1つの膨隆可能バルーンとを備えた、送達チューブを提供する段階;送達チューブを患者の胃腸管の管腔内に誘導する段階、紫外線(UV)光治療を必要とする前記管腔内の標的エリアと並置するように、前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンを位置決めする段階;前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンに流体的に結合したバルーン膨張ポートを介して、前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンを膨張させる段階;及び、送達チューブに接続されかつ前記少なくとも1つの膨隆可能バルーン内部に位置決めされたLEDのセットを、胃腸障害を治療するのに充分な持続時間と強度とで通電する段階;を含み、LEDのセットは、335nm~349nmの間のUV領域内の波長を有する狭帯域光を放出するように構成されている、方法に関する。本方法の第1の実施例は、前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンが、8パーセント~100パーセントの間の範囲のUV透過率を有するUV透過性材料で組成されることを含む。第1の実施例を任意で含み得る、本方法の第2の実施例では、前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンが、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、または環状オレフィンコポリマー(COC)、またはシリコーンを含む材料を用いて構築される。第1及び第2の実施例のうち1つまたは両方を任意で含み得る、本方法の第3の実施例では、前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンを膨張させる段階が、前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンが管腔の上皮層の望ましい表面積と直接接触する閾値圧力まで、前記少なくとも1つの膨隆可能バルーンを加圧することを含む。第1~第3の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本方法の第4の実施例では、閾値圧力は管腔の直径に基づく。第1~第4の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本方法の第5の実施例では、強度が、少なくとも1,100マイクロワット/cm2、1,500マイクロワット/cm2、2,000マイクロワット/cm2、2,100マイクロワット/cm2、2,200マイクロワット/cm2、2,300マイクロワット/cm2、2,400マイクロワット/cm2、2,500マイクロワット/cm2、2,600マイクロワット/cm2、2,700マイクロワット/cm2、2,800マイクロワット/cm2、2,900マイクロワット/cm2、3,000マイクロワット/cm2、または2ミリワット/cm2を含む。第1~第5の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本方法の第6の実施例では、胃腸障害が、潰瘍性大腸炎、クローン病、嚢炎、直腸炎、瘻孔、炎症性の狭窄、顕微鏡的大腸炎、感染性下痢、難治性のヘリコバクター・ピロリ、MALTリンパ腫、結腸無力症、熱帯性スプルー、セリアック病、小腸内細菌異常増殖、盲腸炎、骨髄移植後感染症、偽ポリープ、放射線腸炎、難治性のクロストリジウム・ディフィシル、胃腸癌、肝胆道感染、ならびに、粘膜及び粘膜下の炎症及び癌のうち、少なくとも1つを含む。第1~第6の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本方法の第7の実施例では、胃腸障害は炎症性腸疾患の一形態である。第1~第6の実施例のうち1つ以上を任意で含み得る、本方法の第8の実施例では、IBDの前記形態が潰瘍性大腸炎及び/またはクローン病を含む。
【0197】
一実施形態では、UV光治療アセンブリは、1つ以上のバルーンと1つ以上のLEDとを備えるUV光カテーテルを備える。非限定的な一実施例として、UV光カテーテルは、単一バルーンデバイスとして構成された場合に、LEDライトを含有しかつUV透明性の膨張可能バルーンでシース化された10cmのセグメントを含めて、長さが約15cmであり得る。別の非限定的実施例では、UV光カテーテルは、マルチバルーンデバイスとして構成された場合に、長さが約100cmであり得、そして、それぞれUV透明性の膨張可能バルーン内にシース化された、LEDライトの10cmのセグメントを4つ含み得る。UVライトは電子プリント回路基板上に配線され得る。冷却された空気が、LEDの間に巻きつけられた冷却チューブ内部でカテーテル内にポンプ送りされ得、そして、カテーテルを出たらLEDライトの周りで循環する。カテーテルは、ガイドワイヤ技法を用いて近位結腸内に入れる操作を可能にするために、可撓性であり得る。さらに、カテーテルは、熱を検出し、それが体温を超えたならばデバイスをオフにする、サーミスタを含む。いくつかの実施例では、光カテーテルは単回使用用に提供され得る。UV光治療システムは、コンプレッサと冷却器とを含むコントローラをさらに備える。コントローラはLEDライトに電力供給し、タイマーと、ユーザインタフェース/ディスプレイとを含む。コントローラはまた、熱傷害のリスクを軽減するために、冷却された空気をカテーテル内にポンプ送りするように構成された空気冷却器/コンプレッサも含む。さらに、いくつかの実施例では、コントローラ及びコンプレッサ/冷却器が可動性カート上に格納され得、かつ再使用可能であり得る。UV光治療システムはアンビリカルアセンブリをさらに含む。アンビリカルは、コントローラをカテーテルに接続する可撓性チューブを含む。可撓性チューブは、カテーテルを動作させるための、必要な配線とチュービングとを格納し得る。アンビリカルは再使用可能であり得る。
【0198】
UV透明性バルーンの利点には、光投与中に光送達デバイスを所定の位置に確実固定することが含まれる;それはひいては、より広い直径の結腸に、より均一な露光を提供し、光送達デバイス(すなわち光カテーテル)と結腸上皮との間で障壁として作用し得る外来性デブリ/バイオフィルムを拡散させ、かつまた、大便が治療セグメント内まで下降してくることも防ぐ。さらに、バルーンは、光源と標的組織との間に一定した距離を提供して、均一な曝露投与量をもたらす。マルチバルーンのアプローチはさらに、肝弯曲部及び脾弯曲部を通過する時のデバイスの可撓性をもたらすとともに、個人の疾患の程度に相関して膨らませたセグメントを選択的に照明することを通じて、非炎症性セグメントへの曝露を伴わずに炎症を呈しているセグメントだけに光を送達する、カスタム化された方式ももたらす可能性がある。
【0199】
結論
上記の種々の方法及び手法は、本発明を実施する多数の手段を提供する。当然ながら、本明細書に記載されるいずれかの特定の実施形態に従って、記載される全ての目的または利点を必ずしも達成することができるとは限らないことを理解されたい。よって、例えば、当業者は、本明細書で教示または示唆される他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点群を達成または最適化するように、方法を行うことができることを認識するであろう。様々な代替が本明細書において言及される。いくつかの実施形態は、1つの、別の、またはいくつかの特徴を具体的に含むが、他のものは、1つの、別の、またはいくつかの特徴を具体的に除外し、さらに他のものは、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴を含めることによって特定の特徴を軽減することを理解されたい。
【0200】
さらに、当業者は、異なる実施形態からの様々な特徴の適用可能性を認識するであろう。同様に、上記で議論される様々な要素、特徴、及びステップ、ならびにそのような各要素、特徴、またはステップの他の既知の同等物は、当業者によって様々な組み合わせで使用して、本明細書に記載される原理に従った方法を行うことができる。様々な要素、特徴、及びステップの中で、いくつかは具体的に含まれ、他は様々な実施形態で具体的に除外される。
【0201】
本出願は、特定の実施形態及び例の文脈で開示されたが、当業者によって、本出願の実施形態が、具体的に開示される実施形態を超えて他の代替的な実施形態及び/または使用ならびにその修正及び同等物に及ぶことが理解されるであろう。
【0202】
いくつかの実施形態では、本出願の特定の実施形態を説明する文脈で(特に、以下の特許請求の範囲の特定の文脈で)使用される「a」及び「an」及び「the」という用語ならびに類似の指示対象は、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈することができる。本明細書の値の範囲の列挙は単に、範囲内に入るそれぞれの別々の値を個々に指す簡単な方法として役立つことが意図される。本明細書で別段の指示がない限り、各個々の値は、本明細書で個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供される任意の及び全ての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、本出願をより良く示すことのみを意図しており、他の方法で特許請求される本出願の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書のいかなる言語も、本出願の実施に不可欠な任意の非請求の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0203】
本出願の特定の実施形態が本明細書に記載されている。それらの実施形態に対する変形は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかになるであろう。当業者は、そのような変形を適切に使用することができ、本明細書に具体的に記載される以外の方法で本出願を実施することができることが企図される。したがって、本出願の多くの実施形態は、適用法によって許容されるように本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される患者の問題の全ての修正及び同等物を含む。さらに、本明細書中に別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせが本出願によって包含される。
【0204】
患者の問題の特定の実施態様を説明してきた。他の実施態様は、以下の特許請求の範囲内にある。場合によっては、特許請求の範囲に記載されている動作は、異なる順序で実行することができ、それでも望ましい結果を達成することができる。さらに、添付の図に示されているプロセスは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示されている特定の順序または連続した順序を必要としない。
【0205】
本明細書で参照される全ての特許、特許出願、特許出願の公報、ならびに記事、書籍、明細書、刊行物、文書、物品、及び/またはそのようなものなどの他の資料は、参照によってその全体が、全ての目的のために本明細書に組み込まれるが、それらと関連付けられるいずれかの審査ファイル経過、本文書と不一致であるかもしくは矛盾するもののいずれか、または現在もしくは将来に本出願文書と関連付けられる特許請求の範囲の最も広い範囲に関して限定的な影響を有し得るもののいずれかは除外される。例として、組み込まれる資料のいずれかに関連する用語の説明、定義、及び/または使用と、本文書に関連するものとの間に不一致または矛盾がある場合、本文書における用語の説明、定義、及び/または使用が優先するものとする。
【0206】
最後に、本明細書に開示される本出願の実施形態は、本出願の実施形態の原理の例示であることを理解されたい。使用することができる他の修正は、本出願の範囲内であり得る。よって、限定ではなく例として、本出願の実施形態の代替的な構成を本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本出願の実施形態は、示され、記載される正確なものに限定されない。
【国際調査報告】