(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】化粧用途のための球状ポリマー粒子を調製するプロセス
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230906BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230906BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20230906BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20230906BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230906BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20230906BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20230906BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20230906BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20230906BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230906BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230906BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230906BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L77/00
C08L67/04
C08K3/34
C08L71/02
C08J3/12 Z CFD
C08J3/12 CFG
A61K8/85
A61K8/88
A61Q19/08
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509668
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 IB2021056111
(87)【国際公開番号】W WO2022034392
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/057561
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523046017
【氏名又は名称】ローディア ブラジル エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コルデイロ バストス, タルチス
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス レメ, エジソン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ド ラーゴ, ギリェルメ
【テーマコード(参考)】
4C083
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB281
4C083AB311
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4C083AB361
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4J002HA09
(57)【要約】
ポリマーマトリックスに分散された少なくとも2種の充填剤を含有するポリマーの球状ポリマー粒子であって、粒子の重量の50%までは、充填剤によって構成される、球状ポリマー粒子を調製するプロセス。プロセスは、少なくとも2種の充填剤を含有するポリマーマトリックスを、ポリマーマトリックスと混和性ではない連続相及び作用物質と共に溶融ブレンドして、エマルションを形成することを含む。このエマルションは、次いで、押出され、冷却され、及び連続相の溶媒が加えられて、球状粒子が回収される。充填剤は、例えば、具体的には皮膚加齢の徴候を予防し且つ/又は減少させるための化粧用途のために使用され得る球状粒子に異なる特性を与えることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーマトリックスMであって、前記熱可塑性ポリマーマトリックスMに分散された少なくとも2種の充填剤Fを含む熱可塑性ポリマーマトリックスMを含む球状粒子を調製するプロセスであって、
A - 混合物であって、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスMであって、それに分散された50%までの少なくとも2種の充填剤Fを含む少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスM;
b)前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーMと異なり、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスMと混和性ではなく、且つポリグリコール、多糖、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、シリコーン、蝋及びこれらの混合物を含む群において選択される少なくとも1種の化合物P、及び
c)両親媒性化合物であって、前記熱可塑性ポリマーマトリックスMと化学的又は物理的に反応することができるその構造の第1部分及び前記化合物Pと化学的又は物理的に反応することができるその構造の第2部分を有し、その構造の前記第1部分は、前記熱可塑性ポリマーマトリックスMと同一であるポリマー鎖を含有しない、両親媒性化合物である少なくとも1種の作用物質C
を含む混合物を溶融ブレンドし、したがって化合物P及び作用物質Cの連続相並びに熱可塑性ポリマーマトリックスM及び充填剤Fの液滴を含有するエマルションを形成する工程;
B - 工程Aで得られた前記溶融ブレンドを前記ブレンドの軟化温度未満の温度に冷却する工程、
C - 前記冷却されたブレンドを、化合物P及び作用物質Cが可溶性である溶媒に入れて、化合物P及び作用物質Cの可溶化を与える工程、
D - 前記熱可塑性ポリマーマトリックスM及びそれに分散された前記少なくとも2種の充填剤Fを含む球状粒子を回収する工程
を含むプロセス。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーマトリックスMは、合成又は生分解性ポリマーから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーマトリックスMは、合成ポリマーであり、且つポリエステル、ポリオレフィン、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロースなどのセルロースエステルに基づくポリマー、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリヘキサメチレンアジポアミド(PA66)、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリアミド5.6、PA6.10、PA10.10及びPA12などのポリアミド、前記ポリマーの任意の比率でのコポリマー並びにこれらの混合物の群の少なくとも1つのメンバーから選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーマトリックスMは、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド56並びに任意の比率のポリアミド6/ポリアミド66、ポリアミド6/ポリアミド56及びポリアミド66/ポリアミド56のコポリマーから選択されるポリアミドである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーマトリックスMは、生分解性ポリマーであり、且つ
ポリ乳酸(PLA)、
ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、
熱可塑性デンプン(TPS)、
ポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)、
ポリ(ブチレンスクシネートアジペート)(PBSA)、
ポリブチレンアジペート(PBA)、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)又はポリ乳酸(PLA)/ポリカプロラクトン(PCL)、及び
生分解特性を与える添加剤を含む熱可塑性ポリマー
からなる群の少なくとも1つのメンバーから選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーマトリックスMは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、好ましくはポリヒドロキシブチレート(PHB)又はポリヒドロキシブチレート-co-バレレート(PHBV)である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記充填剤Fは、2μm~20μmの範囲の遠赤外領域の吸収及び/又は発光特性を有する少なくとも2種の鉱物充填剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記鉱物充填剤Fは、酸化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びケイ酸塩からなる群から選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記鉱物充填剤Fは、酸化物、硫酸塩及びケイ酸塩からなる群から選択され、より好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム及びトルマリンから選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1種の鉱物充填剤Fは、アクチノライト、マイカ、トルマリン、サーペンティン、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト及びこれらの混合物からなる群において選択されるケイ酸塩であり、より好ましくはトルマリンである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記球状粒子の総重量に対する充填剤Fの重量比率は、1%以上、好ましくは5%以上、さらにより好ましくは15%以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記球状粒子の総重量に対する充填剤Fの重量比率は、50%以下、好ましくは35%以下、さらにより好ましくは30%以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
化合物Pは、ポリオキシエチレン(POE)及びポリアルキレングリコール(PAG)からなる群において選択され、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記化合物Pは、1500~60000g/mol、好ましくは6000~35000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記作用物質Cは、500~10000g/mol、好ましくは3000~7000g/molの範囲の分子量を有するエトキシ化/プロポキシ化ブロックポリマーである、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記作用物質Cは、2~10、好ましくは5~7の範囲のPO/EO比を有するエトキシ化(EO)/プロポキシ化(PO)ブロックポリマーである、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
工程Cで使用される前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群において選択され、好ましくは水である、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記球状粒子は、工程D後に乾燥される、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
工程Aの前記溶融ブレンド混合物は、
a)15~80重量%、好ましくは20~50重量%の熱可塑性ポリマーマトリックスM+Fであって、好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム及びトルマリンである3種の充填剤Fを含むPHB又はPA6.6である熱可塑性ポリマーマトリックスM+F、及び;
b)15~80重量%、好ましくは40~70重量%の化合物Pであって、好ましくはPEGである化合物P;
c)1~20重量%、好ましくは5~10重量%の作用物質Cであって、エトキシ化/プロポキシ化ブロックコポリマーである作用物質C
を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
溶融ブレンドの前記工程Aは、100℃超且つ300℃未満、好ましくは160℃超且つ270℃未満の温度で行われる、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記溶融ブレンドは、エンドレススクリューミキサー又はスターラーミキサーから選択される押出機、好ましくは二軸押出機又は多軸押出機での押出によって処理される、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記粒子は、5000mg/kg以下、好ましくは3000mg/kg以下、さらにより好ましくは2260mg/kg以下の量において、移動した充填剤Fを含有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができるか又は得られるポリマーの球状粒子。
【請求項24】
平均粒径D50は、5μm~60μm、好ましくは10μm~40μmの範囲である、請求項23に記載の粒子。
【請求項25】
0.5~1.0、好ましくは0.75~1.0から選択される球形因子比を有する、請求項23又は24に記載の粒子。
【請求項26】
好ましくは皮膚加齢の徴候を予防するか又は減少させるための化粧組成物のための、請求項23~25のいずれか一項に記載の球状粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された少なくとも2種の鉱物充填剤を含有する球状ポリマー粒子であって、粒子の重量の50%までは、充填剤によって構成される、球状ポリマー粒子を調製するプロセスに関する。プロセスは、少なくとも2種の充填剤を含有するポリマーマトリックスを連続相化合物及び作用物質と共に溶融ブレンドしてエマルションを形成すること、冷却すること、連続相の可溶化を与えること及び球状粒子を回収することを含む。本発明は、具体的には皮膚加齢の徴候を予防し且つ/又は減少させるための化粧用途のための、球状ポリマー粒子の使用にも関する。
【0002】
本発明は、充填剤を含有する球状ポリマー粒子を製造するプロセスに関する。
【0003】
本発明の主題は、皮膚加齢の徴候を予防するか又は減少させるための生体刺激性を有するそのような球状ポリマー粒子の化粧品分野での使用でもある。
【背景技術】
【0004】
添加される担体としての球状粒子は、化粧品、塗料、コーティング、選択的レーザー焼結、接着剤、蝋、潤滑剤及び紙を含む多様な用途に使用され得る。
【0005】
粉末形態のポリマー、特に一般的に1mm未満、好ましくは100μm未満の制御された直径を有する球状粒子の形態のポリマーは、いくつかの用途におけるいくつかの特性を改善することができる。これらの球状粒子は、塗料、例えば滑り止め性を有しなければならないスポーツホールの床を被覆するための塗料中の添加剤として使用され得、日焼け止め剤、体又は顔をケアするためのクリーム及び化粧落とし製品などの化粧品にも導入され得る。それらは、インク及び紙の分野でも使用され得る。
【0006】
ポリマー粒子の球形を制御するために様々な技術が使用されている。
【0007】
一部の技術は、1ミクロン未満の直径を有するポリマーの球状粒子を調製するために使用されている。例えば、溶解状態のラクタムのアニオン重合により、ポリアミド粉末などのポリマー粉末を得ることが知られている。しかし、この技術は、ポリマーの性質に関して限定されており、粒径の制御は、アニオン性モノマーの高い反応性のために困難である。
【0008】
公開されたPCT出願国際公開第2005/000456号パンフレットは、ポリアミド製の球状粒子の製造に使用される技術を開示している。サイズが100ミクロン未満の球状粒子が乳化重合を利用して得られた。しかし、粒径の制御は、限定的である。
【0009】
Herveらの米国特許出願公開第2010/009189号明細書及び第2009/072424号明細書は、ポリアミドに関して制御されたサイズを有する球状粒子を得ることが可能であるプロセスを開示している。プロセスは、可溶性材料が連続相である高内相エマルション(HIPE)原理を使用する。粒子は、ポリマー粒子と可溶性ポリマーとの間の溶融ブレンドから得られ、押出機内での混合エネルギーの印加は、可溶性ポリマーによって形成された連続相に分散された熱可塑性材料の別個の粒子の形成を可能にする。溶融ブレンドは、冷却され、粒子は、連続相の可溶化によって分離される。しかし、これらのプロセスは、労力を要して得られた高価な添加剤である、超分岐形態の同じポリアミドの性質を有する適切な独自開発の添加剤を使用して、ポリアミドに関して良好に実施される。ポリマーの性質が変化すると、連続相を変化させ、それでも制御されたサイズを有する球状粒子を得るために、多くの欠点に直面する。
【0010】
米国特許出願公開第2015/0147364号明細書は、内部に鉱物充填剤が分散されたポリアミドの球状粒子を含有する化粧組成物を開示している。記載されるポリアミド粒子の調製のプロセスは、HIPE原理及び労力を要して得られた高価な添加剤である、その構造が超分岐形態の同じポリアミドの性質を有する適切な独自開発の添加剤を使用する。
【0011】
低体積分率の連続相中に高体積分率の分散された液滴を得る能力は、例えば、有機半導体、フィルターメンブレン、組織工学のためのスキャホールド、食品製品及び薬物送達系など、種々の用途に使用される多孔性材料のテンプレートとして広範囲の分野での使用のために魅力的なHIPE技術となった。この場合、分散された液滴は、可溶性ポリマーによって構成されるが、それは、共押出プロセス後に除去され、多孔性材料がもたらされる。
【発明の概要】
【0012】
制御された方法でのポリマー粒子の製造のための技術の進歩にもかかわらず、異なる種類のポリマーに応用され得、同時にその粒子がポリマーマトリックスでの良好な分散性と共に充填剤としての添加剤を有することを可能にする、前記粒子の形状及びサイズを制御することが可能であるプロセスを提供することが必要とされている。
【0013】
この分野での研究を追求して、本出願人は、ここで、異なる種類のポリマーに応用可能である、充填剤がポリマーマトリックスに分散されたままであることを確実にもするような制御された球形を有する微細な球状ポリマー粒子を調製する独自のプロセスを発見した。
【0014】
したがって、本発明の第1の目的は、ポリマーマトリックスに分散された50%までの少なくとも2種の充填剤を含有することが可能である球状ポリマー粒子を製造するプロセスを提供することである。
【0015】
本発明のプロセスは、合成及び生分解性のものの両方の任意のポリマー熱可塑性材料から球状粒子を製造することを可能にし、後者は、持続可能であるという利点を有する。
【0016】
したがって、本発明は、熱可塑性ポリマーマトリックスMであって、熱可塑性ポリマーマトリックスMに分散された少なくとも2種の充填剤Fを含む熱可塑性ポリマーマトリックスMを含む球状粒子を調製するプロセスであって
A - 混合物であって、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスMであって、それに分散された50%までの少なくとも2種の充填剤Fを含む少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスM;
b)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーMと異なり、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスMと混和性ではなく、且つポリグリコール、多糖、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、シリコーン、蝋及びこれらの混合物を含む群において選択される少なくとも1種の化合物P、及び
c)両親媒性化合物であって、熱可塑性ポリマーマトリックスMと化学的又は物理的に反応することができるその構造の第1部分及び化合物Pと化学的又は物理的に反応することができるその構造の第2部分を有し、その構造の第1部分は、熱可塑性ポリマーマトリックスMと同一であるポリマー鎖を含有しない、両親媒性化合物である少なくとも1種の作用物質C
を含む混合物を溶融ブレンドし、したがって化合物P及び作用物質Cの連続相並びに熱可塑性ポリマーマトリックスM及び充填剤Fの液滴を含有するエマルションを形成する工程;
B - 工程Aで得られた溶融ブレンドをブレンドの軟化温度未満の温度に冷却する工程、
C - 冷却されたブレンドを、化合物P及び作用物質Cが可溶性である溶媒に入れて、化合物P及び作用物質Cの可溶化を与える工程、
D - 熱可塑性ポリマーマトリックスM及びそれに分散された少なくとも2種の充填剤Fを含む球状粒子を回収する工程
を含むプロセスを提供する。
【0017】
そのようなプロセスにより、ポリマーマトリックスに分散された少なくとも2種の充填剤を含有する本発明による球状ポリマー粒子を得ることが可能である。
【0018】
したがって、本発明は、HIPE原理を使用することによって実施されるプロセスを提供する。
【0019】
制御された小液滴を有するHIPEを作製し、添加剤を液滴内部に充填剤として維持する能力は、大きい課題である。
【0020】
本発明は、独自の作用物質Cを、分散熱可塑性ポリマーマトリックスM、充填剤F及び連続相、化合物P間のブレンドによって形成されるエマルション中に含ませることは、エマルションを安定化させることに効果があるだけでなく、熱可塑性ポリマーマトリックスM中の充填剤Fの適切な分散も保証するという発見に基づく。
【0021】
本発明によると、異なる種類のポリマーの球状粒子は、同じ作用物質Cを使用することによって提供される。
【0022】
実際に、本出願人は、完全に意外にも、その構造の一部分として、熱可塑性ポリマーマトリックスMと同一であるポリマー鎖を含有しない作用物質Cが、ポリマー粒子の球形を安定化させ、また共押出プロセス中、充填剤Fが熱可塑性ポリマーマトリックスM中に分散されたままであることを確実にする必須事項であることを発見した。
【0023】
別の課題は、化合物Pと熱可塑性ポリマーマトリックスMとの間の親和性が、応力共有に寄与する相間の理想的な粘度差により、エマルション形成を可能にするのに十分であることを確実にすることである。
【0024】
「親和性」とは、異なる化合物又は化合物の混合物間の起こり得る化学的又は物理的反応/相互作用を示唆する特性の類似性を意味するものとする。
【0025】
エマルションのような流体の粘度は、所与の割合の変形に対するその抵抗の尺度である。一般的に、乳化及び独立した液滴の破裂のプロセスは、内相と外相との間の粘度比及び機械的せん断応力に依存する。小さい液滴サイズは、外相粘度を増加させるために好ましい。他方で、粘度増加により、エマルションを形成するためにより多くのエネルギーが必要となる。
【0026】
そのため、外相の粘度は、乳化プロセス及び最終的なエマルションの粘度の両方において重要な役割を果たし得る。乳化中、より高い粘度は、より低い最終液滴サイズをもたらすであろう。しかし、液滴サイズ及び形状を得ることが困難である、臨界の外部ポリマー粘度/内部ポリマー粘度比がある。
【0027】
本発明によると、適切な作用物質Cの使用は、界面の特性及び印加された応力の影響下での物体の時間依存性変形に関連する連続相レオロジーに対するその効果を通して重要である。
【0028】
本発明の第2の目的は、異なる充填剤によって提供され得る、得られた球状ポリマー粒子の機能的生体刺激性効果の、特に化粧品分野において、皮膚加齢の徴候を予防し且つ/又は減少させるための使用である。
【0029】
それ自体公知の方法により、用語「皮膚加齢の徴候」は、特にしわ及び年齢によるしみなど、皮膚の外観を変化させ、一般的に美しくないと考えられる、加齢現象から生じた皮膚に存在する印を指す。
【0030】
上述の利点は、図から当業者により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の共押出プロセスによって製造されたポリアミド6.6球状粒子に関して得られた走査型電子顕微鏡法(SEM)画像(SEI、15kV、230×)を示す。
【
図2】本発明の共押出プロセスによって製造されたポリヒドロキシブチレート(PHB)球状粒子に関して得られた走査型電子顕微鏡法(SEM)画像(SEI、15kV、450×)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
請求項を含む本明細書全体を通して、全てのプロセス用語は、方法という用語と同義であると理解されるべきである。
【0033】
ASTMの定義として、用語「生分解性ポリマー」は、細菌、真菌及び藻類などの天然の微生物の作用による分解を指す。結果として、生分解性材料は、分解して、バイオマス、二酸化炭素及びメタンとなり、それらは、非毒性、生体適合性及び生分解性のような特殊な特性を有する。生分解性が海洋環境で起こる場合、ポリマーは、海洋生分解性ポリマーである。
【0034】
本明細書で使用される通り、用語「生体刺激効果」は、皮膚の外観を向上させ、皮膚の状態を和らげる、皮膚の完全性に対する生物学的作用を指す。
【0035】
本明細書で使用される通り、用語「可溶性」は、25℃の温度での化合物P及び作用物質Cの99%の回収を指す。
【0036】
「両親媒性」は、親水性と疎水性との両方を有する化学化合物を記載する用語である。そのような化合物は、両親媒性(amphiphilic)又は両親媒性(amphipathic)と呼ばれる。
【0037】
「エマルション」は、第1液体が第2液体と混和性ではない、第2液体でできた相中の第1液体でできた懸濁液である。連続相内の不連続相がその場合に得られる。
【0038】
本発明は、熱可塑性ポリマーマトリックスM及びそれに分散された少なくとも2種の鉱物充填剤Fを含む球状粒子を調製するプロセスに基づく。
【0039】
一実施形態において、熱可塑性ポリマーマトリックスMは、特に、ポリエステル、ポリオレフィン、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース及び同じファミリーのポリマーなどセルロースエステルに基づくポリマー、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリヘキサメチレンアジポアミド(PA66)、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリアミド5.6、PA6.10、PA10.10及びPA12などのポリアミド、これらのポリマーのあらゆる比率でのコポリマー並びにこれらのポリマーのいずれかの間のブレンドを含む群から選択され得る。
【0040】
ある優先的な実施形態によると、熱可塑性ポリマーマトリックスMは、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド56並びにあらゆる比率のポリアミド6/ポリアミド66、ポリアミド6/ポリアミド56及びポリアミド66/ポリアミド56のコポリマーから選択されるポリアミドからなる。
【0041】
別の実施形態において、熱可塑性ポリマーマトリックスMは、例えば、
- ポリヒドロキシブチレート(PHB)、
- ポリヒドロキシブチレート-co-バレレート(PHBV)、
- ポリ乳酸(PLA)、
- ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、
- ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、
- 熱可塑性デンプン(TPS)、
- ポリ(ブチレンスクシネート)(PBS)、
- ポリ(ブチレンスクシネートアジペート)(PBSA)、
- ポリブチレンアジペート(PBA)、
- ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)又はポリ乳酸(PLA)/ポリカプロラクトン(PCL)のようなブレンド、及び
- 生分解性を与える添加剤と共に製造された熱可塑性ポリマー
など、固有の生分解性を有するあらゆるポリマーを指す海洋生分解性ポリマーからなる。
【0042】
熱可塑性ポリマーに生分解性を与える添加剤の例として、例えば、名称BioSphere(登録商標)201及びEcopure(登録商標)CNY-EP-04C-NYの市販の添加剤が言及され得る。
【0043】
ある優先的な実施形態によると、熱可塑性ポリマーマトリックスMは、好ましくは、ポリヒドロキシブチレート(PHB)及びポリヒドロキシブチレート-co-バレレート(PHBV)から選択されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)からなる。
【0044】
本発明によると、50%までの分散された充填剤Fを含有する熱可塑性ポリマーマトリックスMは、固体形態で特に顆粒として使用される。
【0045】
一般に、事前に押出され、ポリマー及び少なくとも2種の充填剤Fを含有する顆粒は、溶融ブレンド前に調製される。
【0046】
一実施形態によると、前記顆粒は、溶融ブレンドエマルション中において、エマルションの総重量に基づいて80重量%未満且つ15重量%超、好ましくは50重量%未満且つ20重量%超の量で存在する。
【0047】
充填剤F:
本発明によると、充填剤Fは、熱可塑性ポリマーマトリックスMに分散されている。用語「分散された」は、充填剤Fが主に熱可塑性ポリマーマトリックスM内部及び/又は球状粒子内部に組み込まれていることを意味するものとする。特に、充填剤は、ポリマーマトリックス及び/又は粒子中に捕捉されている。したがって、それらは、例えば、ポリマーの表面でのコーティングの形態における、ポリマー上に堆積した鉱物充填剤ではない。
【0048】
一実施形態において、前記充填剤Fは、熱可塑性ポリマーマトリックスM中に例えば押出プロセスによって導入され得、次いで顆粒状にされるか、又は重合プロセス中、有利には重合の終わりに導入され得る。充填剤Fを融解状態のポリマーに導入することも可能である。
【0049】
一実施形態において、本発明のプロセスは、有利には、生体刺激効果を促進することができる、熱可塑性ポリマーマトリックスMに分散された少なくとも2種の充填剤Fを有する球状ポリマー粒子をもたらす。
【0050】
本発明によると、生体刺激効果は、有機又は無機充填剤によって提供され得、それらは、赤外領域の放射の吸収/発光能力を有し、ポリマー性基材に組み込まれる。好ましくは、3~20μm、さらにより好ましくは3~15μmの範囲の領域で遠赤外発光(FIR)性を有する鉱物充填剤Fである。
【0051】
赤外放射吸収スペクトルは、当業者に公知である任意の方法によって測定され得る。可能な一方法は、分解能が4cm-1であるBruker Equinox 55装置の使用である。この場合、得られるスペクトルは、ZnSe結晶を使用するATR(「減衰全反射」)形態である。
【0052】
本発明によって使用可能な鉱物充填剤Fは、以下の群の組合せから選択され得る:酸化物群、硫酸塩群、炭酸塩群、ケイ酸塩群及びリン酸塩群。
【0053】
好ましくは、酸化物は、二酸化チタン、二酸化ケイ素及び酸化マグネシウムから選択される。
【0054】
硫酸塩は、有利には、硫酸バリウム、硫酸カルシウム及び硫酸ストロンチウムから選択され得る。
【0055】
好ましくは、炭酸塩は、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムから選択される。
【0056】
リン酸塩は、有利には、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、アパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム及び他の可能なリン酸塩から選択され得る。
【0057】
好ましくは、ケイ酸塩は、アクチノライト、マイカ、トルマリン、サーペンティン、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト及び他のアルミニウムシリケートから選択され、好ましくはトルマリンである。
【0058】
一実施形態において、少なくとも1種の鉱物充填剤Fは、ケイ酸塩であり、好ましくはアクチノライト、マイカ、トルマリン、サーペンティン、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト及び他のアルミニウムシリケート並びにこれらの混合物からなる群において選択され、より好ましくはトルマリンである。
【0059】
別の実施形態において、鉱物充填剤Fは、好ましくは、酸化物、硫酸塩及びケイ酸塩からなる群から選択され、より好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム及びトルマリンである。
【0060】
本発明の一実施形態によると、球状粒子の総重量に対する充填剤Fの重量比率は、1%以上、好ましくは5%以上、さらにより好ましくは15%以上である。
【0061】
別の実施形態において、球状粒子の総重量に対する充填剤Fの重量比率は、50%以下、好ましくは35%以下、さらにより好ましくは30%以下である。
【0062】
化合物P
本発明のプロセスによると、化合物Pは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーMと異なり、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスMと混和性ではない。
【0063】
一実施形態において、化合物Pは、ポリグリコール、多糖、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、シリコーン、蝋及びこれらの混合物を含む群において選択される。
【0064】
好ましくは、選択されるポリグリコールは、ポリエチレングリコール(PEG)であった。
【0065】
有利には、化合物Pは、ポリオキシエチレン(POE)及びポリアルキレングリコール(PAG)からなる群において選択され、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0066】
一実施形態によると、本発明の化合物Pとして使用される特定のポリマーは、1500~60000g/mol、好ましくは6000~35000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)である。
【0067】
別の実施形態において、本発明のブレンドの重量に対する化合物Pの重量による比率は、15~80重量%の好ましくはPEGである化合物Pであり、好ましくは40~70重量%である。
【0068】
作用物質C:
本発明のプロセスによると、作用物質Cは、両親媒性化合物であって、熱可塑性ポリマーマトリックスMと化学的又は物理的に反応することができるその構造の第1部分及び化合物Pと化学的又は物理的に反応することができるその構造の第2部分を有し、その構造の第1部分は、熱可塑性ポリマーマトリックスMと同一であるポリマー鎖を含有しない、両親媒性化合物である。
【0069】
本発明の例として、作用物質Cは、エトキシ化/プロポキシ化ブロックコポリマーである。
【0070】
好ましい実施形態において、本発明によって使用される作用物質C、エトキシ化(EO)/プロポキシ化(PO)ブロックポリマー(EO/PO)は、適切なHLB及び分子量を有する。これらの種類のポリマーは、親水性エチレンオキシド(EO)ブロック及び疎水性プロピレンオキシド(PO)ブロックからなる両親媒性分子である。そのため、EO/POブロックコポリマーのような分子の両親媒性は、親水親油バランス(HLB)によって特性化され得る。いくつかの実験的及び数的な方法が長年にわたり開発されて、HLB数が測定されてきた。
【0071】
所望の分子量及びHLBを有する適切なEO/POコポリマーは、分散相としてのポリエステル(ポリヒドロキシブチレート-PHB、ポリヒドロキシブチレート-co-バレレート-PHBV又はポリヒドロキシアルカノエート-PHAなど)及びポリエチレングリコール(PEG)のような連続相を含有するエマルションのための安定なHIPEの形成を可能にする。コポリマー由来のEOブロックは、より極性のあるポリマー(化合物P)に可溶化されるようである一方、POブロックは、極性が低い相、分散された熱可塑性ポリマーマトリックスMに可溶化されるようである。
【0072】
作用物質CのEO比の増加は、HLB値の増加をもたらし、それは、HIPEの安定性に直接影響し、その結果、最終的な球状ポリマー粒子形成に影響する。
【0073】
作用物質Cの親油性部分は、熱可塑性ポリマーマトリックスMとより強力に相互作用して、2つの利益をもたらす1種のバリアを作る。第1に、それは、充填剤Fの移動を阻害し、第2には、それは、界面張力を減少させ、形成された液滴の変形を軽減する。
【0074】
しかし、化合物P中の充填剤Fの親和性は、熱可塑性ポリマーマトリックスMへのその最大の含有を確実にするために、前記マトリックスMに向かって減少されなければならない。
【0075】
本発明のプロセスのために有利に選択される作用物質Cは、適切なHLB及び分子量のエトキシ化/プロポキシ化ブロックコポリマー(EO/PO)である。
【0076】
特に、本発明の作用物質Cは、500~10000g/mol、好ましくは3000~7000g/molの範囲の分子量を有するエトキシ化/プロポキシ化ブロックポリマーである。
【0077】
一実施形態において、作用物質Cは、PO/EO比が2~10、好ましくは5~7の範囲であるエトキシ化(EO)/プロポキシ化(PO)ブロックポリマーである。
【0078】
別の実施形態によると、本発明のブレンドの重量に対する作用物質Cの重量比率は、1~20重量%、好ましくは5~10重量%から選択される。
【0079】
好ましい実施形態によると、溶融ブレンドの工程Aは、100℃超且つ300℃未満、好ましくは160℃超且つ270℃未満の温度で行われる。
【0080】
特に、本発明の溶融ブレンドは、エンドレススクリューミキサー又はスターラーミキサーから選択される押出機での押出によって処理され、好ましくは、押出機は、二軸押出機又は多軸押出機である。
【0081】
典型的には、本発明の押出プロセスは、約100~600rpm、より具体的には200~500rpmの回転押出機によって行われる。
【0082】
工程Aで得られた溶融ブレンドを冷却する工程Bは、最も頻繁にはブレンドの軟化温度未満の温度で任意の適切な手段によって実施される。空冷又は液体中での急冷が特に言及され得る。
【0083】
好ましい実施形態において、熱可塑性ポリマーマトリックスMがPHB又はPA6.6であり、化合物PがPEGであり、作用物質Cがエトキシ化/プロポキシ化(EO/PO)ブロックコポリマーであるブレンドでは、工程Bは、15~40℃の範囲の温度で実施される。
【0084】
本発明の工程Cは、通常、工程Bで得られた冷却されたブレンドを、化合物P及び作用物質Cが可溶性である溶媒を含有する浴に浸漬させて、化合物P及び作用物質Cの可溶化を与えることによって実施される。
【0085】
代わりに、冷却工程B及び可溶化工程Cは、同じ溶媒によってなされ得る。
【0086】
化合物P及び作用物質Cは、熱可塑性ポリマーマトリックスMとの低い溶解度及び高い非相溶性を有することが強く推奨される。このようにして、化合物P及び作用物質Cの可溶化プロセスは、球状ポリマー粒子の損失なしに実施され得、プロセスの収率を増加させる。
【0087】
通常、工程Cに使用される溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群において選択され、好ましくは水である。
【0088】
工程Cによるそのような可溶化により、例えば、濾過、沈降による分離、遠心分離又は噴霧によって単離され得る粒子の分散液をもたらすことが可能である。
【0089】
可溶化工程C中、必要に応じて、摩擦、せん断、粉砕、超音波処理又はねじれなどの機械力を印加することが可能である。
【0090】
本発明の工程Dは、熱可塑性ポリマーマトリックスM及びそれに分散された少なくとも2種の充填剤Fを含む球状粒子を回収することによって実施される。
【0091】
有利には、次いで、球状粒子は、工程D後に乾燥される。乾燥の工程は、例えば、炉のような装置中において30~110℃の温度範囲で実施され得る。
【0092】
有利な実施形態において、本発明のプロセスは、下記を含む工程Aの溶融ブレンド混合物を含む:
a)15~80重量%、好ましくは20~50重量%の熱可塑性ポリマーマトリックスM+Fであって、好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム及びトルマリンである3種の充填剤Fを含むPHB又はPA6.6である熱可塑性ポリマーマトリックスM+F、及び;
b)15~80重量%、好ましくは40~70重量%の化合物Pであって、好ましくはPEGである化合物P;
c)1~20重量%、好ましくは5~10重量%の作用物質Cであって、エトキシ化/プロポキシ化ブロックコポリマーである作用物質C。
【0093】
本発明のプロセスは、規則正しい形状及びサイズのポリマー粒子の調製を可能にする。
【0094】
本明細書で使用される通り、用語「粒子」は、個別化された存在物を指す。
【0095】
本発明の粒子は、そのバルクによって特性化され得、それは、その大きい量から特性化され得ることを意味する。
【0096】
本発明の第1の好ましい実施形態によると、ポリマー性組成の粒子は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によると実質的に球形を有し、すなわち、粒子は、球体のものに類似の形状を有し、それらは、程度の差はあるが、規則正しく、例えば回転楕円体及び/又は楕円体であり得る。
【0097】
本発明の粒子は、それらの粒径分布D50(手短に言うと「D50」)によって特性化され得、それは、中央径又は粒径分布の中央値としても知られ、それによると、試料中の粒子の50%がより大きく、試料中の粒子の50%がより小さい。粒径分析は、例えば、Malvern Mastersizer 3000レーザー粒度計で実施され得る。
【0098】
一実施形態によると、本発明の球状粒子は、5μm~60μm、好ましくは10μm~40μmの範囲の平均粒径D50を呈する。
【0099】
粒子から移動する充填剤F
本発明の主な利点は、大部分の(50%超)充填剤Fが球状粒子内に位置することであり、それは、充填剤Fが熱可塑性ポリマーマトリックスM中に分散されていることを意味する。
【0100】
熱可塑性ポリマーマトリックスMから、粒子、例えばPHB及びPA6.6の表面に移動した充填剤Fの含量は、熱可塑性ポリマーマトリックスMの粒子と遊離の充填剤Fの粒子との間の体積の差を使用して粒径分析データから推定され得る。無機充填剤Fは、抗加齢効果を有し、高価であり、そのため、押出混合工程中のその損失を避けることにより、経済的なプロセスを有することが可能になる。
【0101】
一実施形態において、粒子に関して見出された移動した充填剤Fパラメーターは、溶融ブレンド工程中に加えられた作用物質Cの量によって変化し、作用物質Cの添加によって20~5000mg/kgで変化し、作用物質Cの添加なしで140000mg/kgに達する。
【0102】
一実施形態において、粒子から移動した充填剤Fは、5000mg/kg以下、好ましくは3000mg/kg以下、さらにより好ましくは2260mg/kg以下である。
【0103】
球形因子
本発明のプロセスにより、球状粒子を得ることが可能である。
【0104】
粒子の球形は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって証明され得、それにより表面、界面及びバルク材料の内部の微細構造の特徴を直接観察することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)は、電子の集光ビームによって表面を走査することにより、試料の画像をもたらす種類の電子顕微鏡である。電子は、試料中の原子と相互作用し、表面トポグラフィー及び試料の組成に関する情報を含む種々のシグナルをもたらす。
【0105】
ポリマー粒子の球形度を評価する手順は、粒子の中心を通る長軸及び短軸を使用して走査型電子顕微鏡法(SEM)によって実施され、得られた比は、球形因子比を反映する。
【0106】
一実施形態において、本発明の球形因子比は、0.5~1.0、好ましくは0.75~1.0から選択される。
【0107】
用途:
本発明の球状ポリマー粒子は、好ましくは、皮膚加齢の徴候を予防するか又は減少させるための種々の用途において、とりわけ化粧組成物のために使用され得る。
【0108】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、それは、本発明をその詳細に限定すると見なされないものとする。
【実施例】
【0109】
本発明は、以下の実施例によって説明される。
【0110】
実施例において、種々の略語は、以下の意味を有する。
【0111】
PHB:ポリヒドロキシブチレートポリマー。PHBは、BIOMERからBIOMERバイオポリエステルの名称で得られる。
【0112】
PHB+FIR:ポリヒドロキシブチレートポリマーに加えて遠赤外吸収/発光充填剤F。
【0113】
PA6.6:ポリアミド6.6ポリマー。PA6.6は、Solvayによって製造され、Polyamide 6.6 Brilliantの名称で市販されている。
【0114】
PA6.6+FIR:ポリアミド6.6に加えて遠赤外吸収/発光充填剤F。
【0115】
充填剤Fは、Venator及びMicroserviceから二酸化チタン、硫酸バリウム及びトルマリンの名称で得られた。
【0116】
PEG:ポリエチレングリコールポリマー。PEGは、Sigma-Aldrichによってポリエチレングリコールの名称で得られる。
【0117】
PEG 6000、PEG 20000及びPEG 35000:それぞれ6000、20000及び35000g/molの分子量のポリエチレングリコールポリマー。
【0118】
作用物質Cは、エトキシ化/プロポキシ化ブロックコポリマーであり、SolvayからAntarox L 101の名称で市販されている。
【0119】
d(0.1)=総体積の10%がd(0.1)より小さい直径を有する粒子によって表される。
【0120】
d(0.5)=総体積の50%がd(0.5)より小さい直径を有する粒子によって表される。
【0121】
d(0.9)=総体積の90%がd(0.9)より小さい直径を有する粒子によって表される。
【0122】
二軸押出機装置:Thermo Scientific Torque Rheometerと接続された共回転二軸Polylab OS Rheodrive 7/HAAKE Rheomex OS Extruder PTW16型、L/D 16mm。
【0123】
粒径分析は、Malvern Mastersizer 3000レーザー粒度計によって測定した。
【0124】
走査型電子顕微鏡法は、JEOL JSM-6610LV SEM/EDX顕微鏡で実施した。
【0125】
粒子から移動した充填剤F含量は、Malvern Mastersizer 2000レーザー粒度計及び分散媒体としてのエタノールを使用して、粒径データ分析によって測定した。
【0126】
実施例1
ブレンドを表1に従って製造した。
【0127】
試行組成物を、事前に二軸押出機SHJ20を使用して調製したPHB+30%の充填剤F(FIR)の顆粒を使用して製造した。PHBと30重量%のFIR添加剤の顆粒は、69重量%のPHBを1.0重量%のクエン酸、15.75重量%のトルマリン、10.5重量%の硫酸バリウム及び3.75重量%の二酸化チタンと共に混合する溶融押出プロセスによって得た。プロセス中の押出機の種々のゾーンの押出機温度プロファイルは、173℃~151℃であり、回転スピードは、65rpmであった。
【0128】
次いで、顆粒を作用物質C及びPEGと共に、300rpmで回転している二軸押出機装置に導入し、溶融ブレンドを調製した。
【0129】
導入は、重量による原料供給によって実施した。液相にある作用物質Cを事前にPHBと混合した。PHB及びPEGは、固体形態でそれぞれ顆粒及びペレットであった。
【0130】
第1段階中、材料の効率のよいブレンディングを促進するには、適正なスクリュープロファイルが必要とされる。後に、生成物の性質及びHIPEエマルションから形成された液滴の破裂を与えるのに十分な滞留時間に従ったスクリュー及び温度のプロファイルが適用された。
【0131】
プロセス中に使用した押出機条件は、回転300rpm、押出スクリューの種々のゾーンの温度166~170℃及びスループット0.4kg/時であった。
【0132】
溶融ブレンドを水中で冷却し、ブレンドからのPEGの可溶化は、ほとんどの試行組成物で瞬時に起こる。
【0133】
【0134】
最終的な粒子を遠心分離によって回収し、100℃で一晩乾燥させた。
【0135】
試行1は、冷却されたブレンドを水に導入したとき、即座に分解しなかった。この試行では、熱可塑性ポリマーMが連続相となり、そのため、この試行では球状粒子が得られなかった。
【0136】
実施例2:
実施例1の試行組成物の粒径分布を分析し、結果を表2に表した。
【0137】
試料の粒径分布を、溶媒分散液での分析を可能にするHydro LVアクセサリーと接続したMalvern Mastersizer 3000レーザー粒度計を使用して測定した。Mastersizer 3000は、レーザー回折を使用して、材料の粒径及び粒径分布を測定する。それは、レーザー光線が試料の分散された粒子と相互作用する際に散乱光の強度を測定する。
【0138】
試行組成物を、分散媒としてのエタノールを使用して粒度計に加えた直後に分析した。
【0139】
【0140】
粒径分布に関して分析した試行組成物に見出された結果は、6μm~50μmの範囲のD50を示した。
【0141】
実施例3
走査型電子顕微鏡法:
球状ポリマー粒子の球形度を評価する手順を、粒子の中心を通る長軸及び短軸を使用して走査型電子顕微鏡法(SEM)によって実施した。走査型電子顕微鏡法(SEM)で特定した各粒子を収集し、互いに直角に交わる軸を測定し、球形因子を長軸に対する短軸の比として計算した。少なくとも100回の測定(50個の粒子)を各アッセイで実施した。
【0142】
結果を実施例1の試行組成物に関して表3に記載する。
【0143】
【0144】
表3で分かる通り、作用物質Cを押出混合工程中に加えることにより、0.75より高い形状因子が観察され、球状粒子がもたらされた。作用物質Cを押出混合工程中に加えない場合、球状粒子は、観察されなかった。
【0145】
実施例4
粒子から移動した充填剤F:
熱可塑性ポリマーマトリックスM含量から移動した充填剤Fを全体の粒子と遊離充填剤Fとの間の体積の差に従って粒径分布データによって測定し、充填剤Fと全体の粒子との間の質量比を使用して計算した。同じ密度を全粒子に仮定し、遊離充填剤Fによって表される1.5μmより小さい直径を有する粒子の体積を使用して質量を計算した。
【0146】
得られた結果を実施例1の試行組成物に関して表4に記載する。
【0147】
【0148】
作用物質Cを加えた場合の球状粒子に見出された移動した充填剤Fパラメーターは、23~2260mg/kgで変化したが、作用物質Cを加えなかった場合、移動した充填剤Fは、140000mg/kgに達した。
【0149】
実施例5
実施例1による製造プロセスを使用して、表5に従ってブレンドを得た。
【0150】
試行組成物は、事前に二軸押出機SHJ20を使用して調製したPA6.6+30%の充填剤F(FIR)の顆粒を使用して製造した。PA6.6と30重量%のFIR添加剤の顆粒は、70重量%のPA6.6を15.75重量%のトルマリン、10.5重量%の硫酸バリウム及び3.75重量%の二酸化チタンと共に混合する溶融押出プロセスによって得た。プロセス中の押出機の種々のゾーンの押出機温度プロファイルは、265℃~284℃であり、回転スピードは、460rpmであった。
【0151】
次いで、顆粒を作用物質C及びPEGと共に二軸押出機装置に導入し、プロセス中の種々のゾーンの温度プロファイルは、300rpmで回転して250℃~270℃であり、溶融ブレンドを調製した。
【0152】
導入は、重量による原料供給によって実施した。液相にある作用物質Cを事前にPA6.6+FIRと混合した。PA6.6+FIR及びPEGは、固体形態であり、それぞれ顆粒及びペレットであった。
【0153】
第1段階中、材料の効率のよいブレンディングを促進するには、適正なスクリュープロファイルが必要とされる。後に、生成物の性質及びHIPEエマルションから形成された液滴の破裂を与えるのに十分な滞留時間に従ったスクリュー及び温度のプロファイルが適用された。
【0154】
プロセス中に使用した押出機条件は、回転300rpm、押出スクリューの種々のゾーンの温度250~270℃及びスループット0.4kg/時であった。
【0155】
溶融ブレンドを水中で冷却し、ブレンドからのPEGの可溶化は、ほとんどの試行組成物で瞬時に起こる。
【0156】
【0157】
最終的な粒子を遠心分離によって回収し、100℃で一晩乾燥させた。
【0158】
実施例6:
実施例5の試行組成物の粒径分布を分析し、結果を表6に表した。
【0159】
試料の粒径分布を、溶媒分散液での分析を可能にするHydro LVアクセサリーに接続されたMalvern Mastersizer 3000レーザー粒度計を使用して測定した。Mastersizer 3000は、レーザー回折を使用して、材料の粒径及び粒径分布を測定する。それは、レーザー光線が試料の分散された粒子と相互作用する際に散乱光の強度を測定する。
【0160】
【0161】
粒径分布に関して分析された試行組成物に見出された結果は、20μm~40μmの範囲のD50を示した。
【0162】
実施例7
走査型電子顕微鏡法:
球状ポリマー粒子の球形度を評価する手順を、粒子の中心を通る長軸及び短軸を使用して走査型電子顕微鏡法(SEM)によって実施した。走査型電子顕微鏡法(SEM)で特定した各粒子を収集し、互いに直角に交わる軸を測定し、球形因子を長軸に対する短軸の比として計算した。少なくとも100回の測定(50個の粒子)を各試行で実施した。
【0163】
結果を実施例5の試行組成物に関して表7に記載した。
【0164】
【0165】
表7において分かる通り、作用物質Cを使用するPA6.6+FIR粒子の形状因子は、球状粒子をもたらした。
【0166】
実施例8
粒子から移動した充填剤F:
熱可塑性ポリマーマトリックスM含量から移動した充填剤Fを全体の粒子と遊離充填剤Fとの間の体積の差に従って粒径分布データによって測定し、充填剤Fと全体の粒子との間の質量比を使用して計算した。同じ密度を全粒子に仮定し、遊離充填剤Fによって表される1.5μmより小さい直径を有する粒子の体積を使用して質量を計算した。
【0167】
結果を実施例5の試行組成物に関して表8に記載した。
【0168】
【0169】
充填剤Fの移動は、1未満%であり、著しい値を有しなかったことを意味する。
【0170】
したがって、驚くべきことに、同じ作用物質C及び異なる種類のポリマーを使用するプロセスは、ポリマーマトリックスに分散された充填剤Fを含有する球状ポリマー粒子を、形状及びサイズが制御された方法で製造することが可能であり、前記プロセスは、共押出プロセス中に熱可塑性ポリマーマトリックスM内部で充填剤Fの永続性を保証することが可能であったことが見出された。
【0171】
本発明は、上記の説明によって限定されず、本明細書に添付される特許請求の範囲によって限定されることが理解されるべきである。
【国際調査報告】