(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】その表面が最適化される、特にはエスケープメント車である、具体的には時計車である、マイクロ機械構成要素
(51)【国際特許分類】
G04B 15/14 20060101AFI20230906BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G04B15/14 B
G04B15/14 A
G04B13/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511636
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2021074026
(87)【国際公開番号】W WO2022058159
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ニクー,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニエ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ロデル,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】エルフェ,ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】シャルボン,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】コーレル,フレデリク
(57)【要約】
少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料を有する基質を有する、特にはエスケープメント車である、具体的には時計車である、マイクロ機械構成要素であり、この基質が、少なくともニッケルを含み、第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料の被覆物により、車の基質の少なくとも1つの表面上で、覆われ、第2の材料が、基質のこの少なくとも1つの表面のところで、車の周辺層を構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料である基質を有する時計車であって、前記基質は、少なくともニッケルを含み、前記第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料の被覆物により、前記車の前記基質の少なくとも1つの表面上で、覆われること、および、前記第2の材料は、前記車の前記基質の前記少なくとも1つの表面のところで、前記車の周辺層を構成すること、を特徴とする、車。
【請求項2】
前記基質は、前記第2の材料の被覆物により、前記車の摩擦面に隣接する少なくとも1つの表面上で、覆われ、前記第2の材料は、前記車の摩擦面に隣接する前記少なくとも1つの表面のところで、前記車の前記周辺層を構成する、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項3】
前記第1の材料は、重量で1%から15%の間の割合を有するリンを含む、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の車。
【請求項4】
前記第1の材料は、非磁性であり、重量で10%から15%の間の割合のリンを有するリンを含む、ことを特徴とする、請求項3に記載の車。
【請求項5】
前記第1の材料は、ニッケルおよびリンのみを含む、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の車。
【請求項6】
前記第2の材料は、非磁性であり、重量で10%から15%の間の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車。
【請求項7】
前記第2の材料は、重量で6%から12%の間の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車。
【請求項8】
前記第2の材料は、重量で1%から6%の間の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車。
【請求項9】
前記第2の材料は、重量で1%以下の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車。
【請求項10】
前記第2の材料はリンを含まない、ことを特徴とする、請求項9に記載の車。
【請求項11】
前記第2の材料はニッケルおよびリンのみを含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車。
【請求項12】
前記第2の材料はホウ素を含む、ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の車。
【請求項13】
前記第2の材料はニッケルおよびホウ素のみを含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車。
【請求項14】
前記第2の材料は純ニッケルで作られる、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の車。
【請求項15】
前記第2の材料は10マイクロメートル未満の厚さを有する、ことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の車。
【請求項16】
前記第2の材料は0.2マイクロメートルから2.0マイクロメートルの間の厚さを有する、ことを特徴とする、請求項15に記載の車。
【請求項17】
エスケープ車またはアンクルを構成する、請求項1~16のいずれか一項に記載の少なくとも1つの車を有する時計エスケープメント機構であって、前記車は、少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料を有する基質を含み、前記車の前記基質は、少なくともニッケルを含み、前記第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料の被覆物により、前記車の摩擦面に隣接する表面の全体上で、覆われること、および、前記第2の材料は、アンクルもしくはエスケープ車またはテンプ輪と協働するために、前記車内に含まれる前記摩擦面に隣接する前記表面のところで、前記車の前記周辺層を構成すること、を特徴とする、機構。
【請求項18】
前記車の前記摩擦面上に潤滑物質を有する、請求項17に記載の機構。
【請求項19】
その摩擦面ではない前記被覆物の少なくとも1つの表面上にエピラメ層を有する、請求項18に記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にはエスケープメント車(escapement wheel)である、その表面が最適化される具体的には時計車(timepiece wheel)である、マイクロ機械構成要素に関する。
【0002】
本発明はまた、エスケープ車(escape wheel)またはアンクルを構成する非磁性の性質の少なくとも1つの車を有する時計エスケープメント機構に関する。
【0003】
本発明は時計機構の分野に関し、より詳細には、少なくとも一方が非磁性の性質のものである、少なくとも1つのエスケープ車および少なくとも1つのアンクルを有するエスケープメント機構に関する。
【背景技術】
【0004】
スイス・レバーの時計エスケープメント機構では、スイス・レバーのエスケープ車は、歴史的に、ニッケルめっき鋼で作られ、磁界に反応する。
【0005】
非磁性の振る舞いをする、「LIGA」(リソグラフィ、電気めっき、モールディングを意味する、Lithographie und Galvano-Abformung)法によって実装されるニッケル-リンNiP12などの材料を用いる代替手段が知られている。
【0006】
しかし、ニッケル-リンまたは同様のものなどの、このような材料を使用することは、特定の気象条件の影響を大きく受けることになる可能性があり、これは、特には摩擦トルクの2つの対抗する成分が同様のLIGA材料で発生する場合に、具体的には振幅の不変性、動作停止(stoppage)、またはさらには経年劣化に関しての、性能の低下を招く可能性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、通常の時計学的潤滑剤(horological lubricant)の抵抗力(resistance)の技術的問題、またより具体的には、非強磁性であるLIGA NiP12または同様のもので作られた構成要素上での、特にはスイス・レバーのエスケープ車上での、通常の気象条件での、エピラメ(epilame)効果を保証するという技術的問題を解決することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、請求項1による、特にはエスケープメント車である、具体的には時計車である、その表面が最適化されるマイクロ機械構成要素に関連する。
【0009】
本発明はまた、エスケープ車またはアンクルを構成する少なくとも1つのこのような車を有する時計エスケープメント機構に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、マイクロ機械構成要素の、より具体的には時計車の、分野に関連する。
【0011】
本発明は、特にはスイス・レバーのエスケープメント機構の車上にある、非強磁性であるLIGA NiP12または同様のもので作られた構成要素上での、通常の気象条件での、通常の時計学的潤滑剤の抵抗力の技術的問題を解決することを提案する。
【0012】
スイス・レバーの時計エスケープメント機構では、アンクルのルビーで作られた送り爪とエスケープ車の歯との間の接触が、フォークとアンクル石のピン(pallet-stone pin)との間のまたはフォークとアンクル・バンキング・ピン(pallet banking-pin)との間の接触と同様に、特に影響を受けやすい。
【0013】
具体的には、これは、エスケープ車とアンクルとの間の接触面上での潤滑剤の存在を保証することと、エスケープ車およびアンクルの経年劣化を軽減することとに関係する。
【0014】
主要な問題はエスケープ車のプレート上でのエピラメ効果が失われることであり、これにより、オイルが分散し、車の歯とルビーで作られた送り爪との間の接点のところで潤滑剤が失われる。
【0015】
アンクルの送り爪とエスケープ車との間の接点のところでの潤滑剤の持続性が、振幅の一貫性を保証するのを可能にしなければならない。
【0016】
この目的のために、LIGA NiP12で作られたエスケープ車上に、好適であるガルバニック・ニッケル(Ni)もしくは化学ニッケル(例えば、NiP6~9)、またはさらには、化学的に付着されたニッケル-ホウ素、の層の形態の被覆物を追加することが、ムーブメントの性能を有意に向上させるのを可能にする。
【0017】
実際に、この顕著な改善が、例えば摂氏50度および90%の湿度レベルである、所定の気象条件でのエピラメのより良好な抵抗力に関連するものであることが、種々の試験によって実証されている。発明者らは、表面上のリンの量が減少するときのこの材料上でのエピラメのより良好な付着性を観察した。結果として、リンの量が少ないときでも潤滑剤の抵抗力はより良好のままとなる。
【0018】
1つの変形形態では、ガルバニック・ニッケルの被覆物が合金であってよく、例えば、Ni-FeまたはNi-Wなどであってよい。
【0019】
したがって、本発明は、具体的には時計車である、マイクロ機械構成要素に関連する。
【0020】
この構成要素が、有利には、時計車を製造するための方法により作製可能であり、この方法によると、基質が、少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料を用いて作製され、この基質が、車の幾何形状となるように成形され、基質の被覆が、具体的には10マイクロメートル未満である小さい厚さを有する少なくとも1つの第2の材料を用いて、車の基質の少なくとも1つの表面上で、ガルバーニ電気により(galvanically)および/または化学的に、実施され、この第2の材料が、車の基質のこの少なくとも1つの表面のところに車の周辺層を構成し、この第2の材料が少なくともニッケルを含み、この第2の材料が第1の材料よりも少ないリンを含むか、またはこの第2の材料がニッケルを含むがリンを含まない。
【0021】
より具体的には、この第1の材料が非磁性である。
【0022】
より具体的には、この第2の材料が非磁性である。より具体的には、第2の材料が非磁性の性質を有する。
【0023】
ニッケルが非磁性ではないこと、および、NiP6~9%が必ずしも非磁性ではなく、この部分に非磁性の性質を付与する付着物の厚さが小さくなる、ことに留意されたい。
【0024】
特定の実施形態では、基質が、配合NiPxのニッケル-リンであり、xが重量で1%から15%の間であるかまたはより具体的にはxが重量で10%から15%の間であり、後者の範囲では被覆物の非磁性の性質を保証することが可能となる。
【0025】
基質を覆う被覆物が少ないリンを含み、その厚さが、限定しないが、0.2マイクロメートルから10.0マイクロメートルの間であり、より具体的には、0.2マイクロメートルから2.0マイクロメートルの間である。
【0026】
好適には、被覆物が0.5マイクロメートルの厚さを有する。
【0027】
本発明による、少ないリンを含む被覆物を用いる被覆処理が、ガルバーニ電気により実行され得る。
【0028】
具体的にはガルバーニ電気によるものである付着オペレーションの前に基質に対して熱処理を適用することが可能であるか、または、具体的にはガルバーニ電気によるものである付着オペレーションの後で、基質およびその被覆物によって形成された組立体に対して熱処理を適用することが可能である。
【0029】
具体的にはガルバーニ電気によるものである被覆物の付着を促進することを目的として、その表面特徴を修正するために基質に対して化学処理を適用することも可能である。
【0030】
別法として、本発明による、少ないリンを含むかまたはリンを含まない被覆物を用いる被覆処理が、純ニッケル、もしくは、例えば重量で6%から9%のリンを含むNiP6~9の少ないリンを含むニッケル-リン、またはさらには、ニッケル-ホウ素NiBであってよい、化学ニッケルを加えるための方法に従って、化学的に実行され得る。
【0031】
ニッケルの層またはNiP6~9もしくはNiBの層を追加することが、あらゆる気象条件におけるエピラメの持続性、エピラメの付着性、ひいては、任意の通常の時計学的潤滑剤の抵抗力を向上させるのを可能にする。
【0032】
より具体的には、使用されるエピラメがフッ素に基づく配合である。
【0033】
さらに、潤滑剤および潤滑剤スポンジとして機能する二硫化モリブデンMoS2に基づくペーストの形態での補完により、潤滑剤がエスケープメント車上に付着され得る。
【0034】
有利には、関連するエスケープメント車が、接触面を最小限度まで縮小するのを可能にする幾何形状を有し、例えば丸みをつけられたアンクルを使用することが好適であり、この丸みをつけられたアンクルは、プレート・ピンおよびバンキング・ピンに接触させられることを意図したフォークの能動面を円形にしているアンクルであり、それにより接触線の代わりに接触点を有することが可能となる。
【0035】
エスケープメント機構の革新的な実施形態が、LIGAで作られたアンクル、または、少なくともそのアンクル石がLIGAで作られているアンクルを有する。このような事例では、アンクルのLIGAで作られた部分が同じ問題の被害を受け、同じ解決策が適用可能である。
【0036】
本発明は、具体的には、例えばシリコンのアンクルよりも良好な衝撃抵抗を保証する丸みをつけられたLIGAのニッケル-リンのアンクルの存在下で、通常の経年劣化条件、振幅の一貫性、および動作停止しないことを保証するのを可能にする。
【0037】
したがって、好適な手法では、具体的には時計車である、このようなマイクロ機械構成要素を製造するための方法が、以下のこと:
- 基質が、少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料を用いて製造され、
- この基質の被覆が、少なくとも1つの第2の材料を用いて、車の基質の少なくとも1つの表面上で、実施され、この第2の材料が、基質のこの少なくとも1つの表面のところで車の周辺層を構成し、
- この少なくとも1つの第2の材料が、少なくともニッケルを含み、第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、この少なくとも1つの第2の材料が、ニッケルを含み、リンを含まない、
によって実施される。
【0038】
より具体的には、基質のこの被覆が、この少なくとも1つの第2の材料を用いて、車の摩擦面に隣接する少なくとも1つの表面上で、実施され、この第2の材料が、摩擦面に隣接するこの少なくとも1つの表面のところで、車の周辺層を構成する。「隣接すること」は、2つの表面が接触しているかまたは少なくとも正接関係にあり、非常に小さい部分の谷部分に限定したとしても、それらの隙間が存在しない、ことを意味する。
【0039】
したがって、具体的には時計車である、このようなマイクロ機械構成要素が、最適化される表面を有する。
【0040】
より具体的には時計車である、このマイクロ機械構成要素が、少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料である基質を有する。本発明によると、この基質が、少なくともニッケルを含み、第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料の被覆物により、車の基質の少なくとも1つの表面上で、覆われ、第2の材料が、基質の少なくとも1つの表面のところで、車の周辺層を構成する。
【0041】
より具体的には、基質の被覆物が、一自由度に従って枢動するところであるかまたは誘導を行うところである車のガイド面ではない車の表面上で、基質を覆う。より具体的には、基質の被覆物が、ガイド面ではない車の表面の全体上で、基質を覆う。
【0042】
より具体的には、基質が、少なくともニッケルを含み、第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料の被覆物により、車の摩擦面に隣接する少なくとも1つの表面上で、覆われ、この第2の材料が、摩擦面に隣接するこの少なくとも1つの表面のところで、車の周辺層を構成する。
【0043】
より具体的には、被覆物が、一自由度に従って枢動するところであるかまたは誘導を行うところである車のガイド面ではない、車の摩擦面に隣接する少なくとも1つの表面上で、基質を覆う。
【0044】
より具体的には、基質の被覆物が、一自由度に従って枢動するところであるかまたは誘導を行うところである車のガイド面ではない、車の摩擦面に隣接する表面の全体上で、基質を覆う。
【0045】
より具体的には、基質の被覆物が、一自由度に従って枢動するところであるかまたは誘導を行うところである車のガイド面を含めた車の摩擦面に隣接する表面の全体上で、基質を覆う。
【0046】
より具体的には、基質の被覆物が、一自由度に従って枢動するところであるかまたは誘導を行うところである車のガイド面を含めた車の表面の全体上で、基質を覆う。
【0047】
より具体的には、第1の材料が、ニッケルおよびリンのみを含む。
【0048】
より具体的には、第1の材料が、重量で1%から15%の間の割合を有するリンを含む。より具体的には、第1の材料が、非磁性であり、重量で10%から15%の間の割合のリンを有するリンを含む。
【0049】
より具体的には、重量で15%以下の割合のリンを有する第2の材料が選択される。より具体的には、重量で10%から15%の間の割合のリンを有する第2の非磁性の材料が選択される。
【0050】
1つの代替形態では、重量で6%から12%の間の割合のリンを有する第2の材料が選択される。別の代替形態では、重量で1%から6%の間の割合のリンを有する第2の材料が選択される。別の代替形態では、重量で1%以下の割合のリンを有する第2の材料が選択される。
【0051】
より具体的には、第2の材料が、ニッケルおよびリンのみを含む。
【0052】
より具体的には、第2の材料がホウ素を含む。より具体的には、第2の材料が、ニッケルおよびホウ素のみを含む。
【0053】
より具体的には、第2の材料が純ニッケルで作られる。
【0054】
被覆物が10マイクロメートル未満の厚さを有する。より具体的には、被覆物が5マイクロメートル未満の厚さを有する。より具体的には、被覆物が、0.2マイクロメートルから2.0マイクロメートルの間の厚さを有する。
【0055】
好適には、被覆物の厚さが0.5マイクロメートルである。
【0056】
別の変形形態では、被覆物が、0.2マイクロメートル未満、具体的には約0.1マイクロメートルの、厚さで、加えられる。
【0057】
本発明はさらに、限定しないが具体的にはエスケープメント機構である、時計機構に関連する。この有利な適用では、時計エスケープメント機構が、例えばエスケープ車またはアンクルによって形成される、少なくとも1つのこのような車を有する。
【0058】
この車が、少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料で作製された基質を有し、この基質が、少なくともニッケルを含み、第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料で作製された被覆物により、車の摩擦面に隣接する表面の全体上で、覆われる。
【0059】
第2の材料が、アンクルもしくはエスケープ車またはテンプ輪と協働するために、車内に含まれる摩擦面に隣接する表面のところで、車の周辺層を構成する。
【0060】
車が、有利には、時計学の当業者には知られている、精密なマイクロエンジニアリングの用途に合うように適合された例えばオイルまたは合成グリースの、潤滑物質をその摩擦面上で受けることができる。このような潤滑物質は、二硫化モリブデンMoS2に基づくペーストと混合され得る。
【0061】
さらに、車が、有利には、潤滑物質の抵抗力をより良好なものとするのを可能にするために、その摩擦面ではない被覆物の少なくとも1つの表面上にエピラメ層を受けることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料である基質を有する時計車であって、前記基質は、少なくともニッケルを含み、前記第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料の被覆物により、前記車の前記基質の少なくとも1つの表面上で、覆われること、および、前記第2の材料は、前記車の前記基質の前記少なくとも1つの表面のところで、前記車の周辺層を構成すること、を特徴とする、車。
【請求項2】
前記基質は、前記第2の材料の被覆物により、前記車の摩擦面に隣接する少なくとも1つの表面上で、覆われ、前記第2の材料は、前記車の摩擦面に隣接する前記少なくとも1つの表面のところで、前記車の前記周辺層を構成する、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項3】
前記第1の材料は、重量で1%から15%の間の割合を有するリンを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項4】
前記第1の材料は、非磁性であり、重量で10%から15%の間の割合のリンを有するリンを含む、ことを特徴とする、請求項3に記載の車。
【請求項5】
前記第1の材料は、ニッケルおよびリンのみを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項6】
前記第2の材料は、非磁性であり、重量で10%から15%の間の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項7】
前記第2の材料は、重量で6%から12%の間の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項8】
前記第2の材料は、重量で1%から6%の間の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項9】
前記第2の材料は、重量で1%以下の割合のリンを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項10】
前記第2の材料はリンを含まない、ことを特徴とする、請求項9に記載の車。
【請求項11】
前記第2の材料はニッケルおよびリンのみを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項12】
前記第2の材料はホウ素を含む、ことを特徴とする、請求項10に記載の車。
【請求項13】
前記第2の材料はニッケルおよびホウ素のみを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項14】
前記第2の材料は純ニッケルで作られる、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項15】
前記第2の材料は10マイクロメートル未満の厚さを有する、ことを特徴とする、請求項1に記載の車。
【請求項16】
前記第2の材料は0.2マイクロメートルから2.0マイクロメートルの間の厚さを有する、ことを特徴とする、請求項15に記載の車。
【請求項17】
エスケープ車またはアンクルを構成する、請求項1に記載の少なくとも1つの車を有する時計エスケープメント機構であって、前記車は、少なくともニッケルおよびリンを含む第1の材料を有する基質を含み、前記車の前記基質は、少なくともニッケルを含み、前記第1の材料よりも少ないリンを含むか、または、リンを含まない、第2の材料の被覆物により、前記車の摩擦面に隣接する表面の全体上で、覆われること、および、前記第2の材料は、アンクルもしくはエスケープ車またはテンプ輪と協働するために、前記車内に含まれる前記摩擦面に隣接する前記表面のところで、前記車の前記周辺層を構成すること、を特徴とする、機構。
【請求項18】
前記車の前記摩擦面上に潤滑物質を有する、請求項17に記載の機構。
【請求項19】
その摩擦面ではない前記被覆物の少なくとも1つの表面上にエピラメ層を有する、請求項18に記載の機構。
【国際調査報告】