(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】プロピオン酸フルチカゾンと硫酸アルブテロールの吸入製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/72 20060101AFI20230906BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230906BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20230906BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20230906BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230906BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230906BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230906BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230906BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61K9/72
A61K47/26
A61K31/56
A61K31/137
A61P11/00
A61K9/14
A61P43/00 121
A61P11/06
A61M15/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511684
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2021072718
(87)【国際公開番号】W WO2022034241
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】オニール, ブライアン ポール
(72)【発明者】
【氏名】シャー, ハルディク キルティクマール
(72)【発明者】
【氏名】ブレア, ジュリアン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エドリン, クリス デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】マキーオン, シェーン ミッチェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB22
4C076CC15
4C076DD67
4C076FF31
4C076FF68
4C086AA01
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4C206FA14
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4C206MA77
4C206NA10
4C206NA12
4C206NA13
4C206ZA59
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、プロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールをα-ラクトース一水和物担体とともに含有する合剤型乾燥粉末吸入製剤に関する。当該製剤において、硫酸アルブテロールはプロピオン酸フルチカゾンを安定化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物を含有する乾燥粉末吸入製剤であって、吸入されるプロピオン酸フルチカゾンの粒度分布がd10=0.4~1.0μm、d50=1.0~3.0μm、d90=2.5~7.5μmおよびNLT99%<10μmである、乾燥粉末吸入製剤。
【請求項2】
硫酸アルブテロール対プロピオン酸フルチカゾンの重量比は、1.0~10.0:1.0であり、2.0~5.0:1.0であることが好ましい、請求項1に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項3】
前記製剤は第3の添加剤を含んでいない、請求項1または2に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項4】
前記製剤は、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物からなる、請求項1から3のいずれかに記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項5】
喘息またはCOPDの治療において使用するための、請求項1から4のいずれかに記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項6】
喘息および/またはCOPDの長期治療ならびに喘息および/またはCOPDの急性増悪の治療に使用するためのものであって、前記製剤は喘息の長期治療のためのメインテナンス薬として投与され、喘息の急性増悪の治療においてレスキュー薬として必要に応じて(p.r.n)使用される、請求項5に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項7】
プロピオン酸フルチカゾンの1日総投与量が1000μgを超えず、硫酸アルブテロールの1日総投与量が800μgを超えない、請求項5または6に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項8】
プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物を混合して前記製剤を調製することを含む、請求項1から7のいずれかに記載の乾燥粉末吸入製剤を調製するプロセス。
【請求項9】
プロピオン酸フルチカゾンおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製して、第1の混合物を得る工程(i)と、
硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製して、第2の混合物を得る工程(ii)と、
前記第1の混合物と前記第2の混合物とを混合して、前記製剤を得る工程と(iii)
を備える
請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記製剤をコンディショニングする工程(iv)をさらに備える、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記工程(iv)が、21日~36日の期間にわたって65%RH/30℃へ前記製剤を曝露することを含むか、または前記工程(iv)が、28日~35日の期間にわたって65%RH/30℃へ前記製剤を曝露することを含むか、または前記工程(iv)が、28日の期間にわたって65%RH/30℃へ前記製剤を曝露することを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記製剤が乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填され、前記乾燥粉末吸入器は前記工程(iv)の実行に先立ってトレイに置かれる、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記製剤は乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填され、前記乾燥粉末吸入器はトレイに置かれて、前記吸入器および前記トレイは前記工程(iv)の実行に先立ってポリエチレンラップで包装される、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか1項に記載のプロセスによって得ることができる製品。
【請求項15】
乾燥粉末吸入製剤を調製するためのプロセスであって、
プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製する工程(i)と、
前記混合物をコンディショニングする工程(ii)と、
を備えるプロセス。
【請求項16】
前記工程(ii)が、21日から36日の期間にわたって65%RH/30℃へ前記製剤を曝露することを含むか、または前記工程(ii)が、28日から35日の期間にわたって65%RH/30℃へ前記製剤を曝露することを含むか、または前記工程(ii)が28日間にわたって65%RH/30℃へ前記製剤を曝露することを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記製剤は、乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填され、前記乾燥粉末吸入器は前記工程(ii)の実行に先立ってトレイに置かれる、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記製剤は、乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填され、前記乾燥粉末吸入器は、トレイに置かれ、前記吸入器および前記トレイは、前記工程(ii)の実行に先立ってポリエチレンラップで包装される、請求項15または16に記載のプロセス。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか1項に記載のプロセスによって得ることができる製品。
【請求項20】
乾燥粉末吸入器、または、乾燥粉末の凝集を分解するサイクロンデアグロメレーターを備える乾燥粉末吸入器であって、請求項1から7、14または19のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入製剤を含有する、乾燥粉末吸入器。
【請求項21】
前記デアグロメレーターは
第1の端部から第2の端部まで軸に沿って延在する渦流室を画定する内壁と、
前記吸入器の乾燥粉末送達路と前記渦流室の前記第1の端部との間で流体の連通が可能となるように、前記渦流室の前記第1の端部にある乾燥粉末供給口と、
前記渦流室の前記第1の端部に隣接する前記渦流室の前記内壁に設けられている少なくとも1つの注入口であって、前記デアグロメレーターの外部領域と前記渦流室の前記第1端との間で流体の連通を可能とする注入口と、
前記渦流室の前記第2端と、前記デアグロメレーターの外部領域との間で流体の連通を可能とする排出口と、
前記渦流室の前記第1の端部にある複数の羽根であって、前記渦流室の前記軸から径方向外側に少なくとも一部が延在し、前記複数の羽根のそれぞれの斜面は前記軸を横切る方向に少なくとも一部が向くことにより、前記排出口で呼吸により低圧が発生すると、前記乾燥粉末供給口および前記注入口を通って前記渦流室に空気が流入する、複数の羽根と
を有する、請求項20に記載の吸入器。
【請求項22】
吐出口を有する封止リザーバと、
前記吐出口と連通するチャネルであって、圧力解放口を含むチャネルと
前記封止リザーバの内部と前記チャネルの前記圧力開放口との間で流体の連通を可能とするコンジットと、
前記チャネル内に移動可能に収容されているカップアセンブリと
を備え、
前記カップアセンブリは、前記吐出口と一致したときに製剤を受容するように適合されている凹部と、前記凹部が前記吐出口と一致していない場合に前記吐出口を封止するように適合されている第1の封止面と、前記凹部が前記吐出口と一致したときに前記圧力解放口を封止し、前記凹部が前記吐出口と一致していない場合には前記圧力解放口を封止しないように適合されている第2の封止面とを有する、
請求項20または21に記載の吸入器。
【請求項23】
乾燥粉末吸入製剤でプロピオン酸フルチカゾンを安定化するための硫酸アルブテロールの使用。
【請求項24】
吸入される硫酸アルブテロールの粒度分布が、d10=0.4~1.0μm、d50=1.0~3.0μm、d90=2.5~9.0μm、NLT99%<10μmである、請求項1に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項25】
吸入されるα-ラクトース一水和物の粒度分布が、d10=10~25μm、d50=85~105μm、d90=140~180μm、NLT99%<300μm、1.5-8.5%<10μm、またはd10=19-43μm,d50=50-65μm,d90=75-106μm,NLT99%<300μm、1.5-2-5%<10μmである、請求項1または24記載の乾燥粉末吸入製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入製剤に関し、特にフルチカゾンおよびアルブテロールを含有する合剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入コルチコステロイドおよび短時間作用型β2アゴニストは、呼吸器疾患(例:喘息、COPD)の治療のために開発された2つの有効成分クラスを代表する薬である。クラス毎に、対象および効果が異なる。
【0003】
吸入コルチコステロイド(ICS)は、呼吸器疾患を長期にわたってコントロールする場合に使用されるステロイドホルモン剤である。気道の炎症を抑える機能がある。「コントロール」薬または「メインテナンス」薬と呼ばれることが多い。
【0004】
その一例がフルチカゾンである。フルチカゾンは、喘息およびアレルギー性鼻炎の治療に適応のある吸入コルチコステロイドである。また、好酸球性食道炎の治療にも使用される。S-(フルオロメチル)-6α,9-ジフルオロ-11β,17-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸-17-プロパノエートと命名されている。フルチカゾンは通常、プロピオン酸塩として投与され、その構造は関連技術分野で公知である。
【0005】
短時間作用型β2-アゴニスト(SABA)は、気管支拡張薬の一例で、気管支および細気管支を拡張し、気道の抵抗を減少させることで、肺への気流を増加させるために使用される。気管支拡張剤には短時間作用型と長時間作用型がある。短時間作用型気管支拡張剤は、急性の気管支収縮を速やかに緩和する(「レスキュー」薬または「リリーバー」薬と呼ばれることが多い)のに対し、長時間作用型気管支拡張剤は、より長期にわたって症状をコントロールして予防することに効果を発揮する。
【0006】
アルブテロール(別名:サルブタモール)は、短時間作用型β2-アゴニストで、喘息の治療に適応がある。4-[2-(tert-ブチルアミノ)-1-ヒドロキシエチル]-2-(ヒドロキシメチル)-フェノールと命名されている。アルブテロールは通常、硫酸塩として投与され、その構造は関連技術分野で公知である。
【0007】
これら2つの有効成分は、呼吸器疾患、特に喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療と管理の必要性に応えるべく特別に開発されたものである。
【0008】
グローバル・イニシアチブ・フォー・アズマ(GINA)のガイドラインによると、治療には段階的なアプローチが取られる。ステップ1では、軽症の喘息であるため、硫酸アルブテロールなどのSABAを必要に応じて患者に投与する。ステップ2では、SABAと並行して通常の低用量ICSを投与する。ステップ3では、LABA(Lはロング(長時間)を意味する)が追加される。ステップ4では投与量を増やし、ステップ5ではさらにアドオン治療が導入される。
【0009】
グローバル・イニシアチブ・フォー・クロニック・オブストラクティブ・ラング・ディズイーズ(GOLD)のガイドラインでも同様の段階的な治療が定められている。
【0010】
これらの有効成分の調製および製剤にあたっては、吸入することで送達されるよう、乾燥粉末吸入器(DPI)、加圧式定量吸入器(pMDI)、ネブライザーなど、多くの手法を採用してきた。
【0011】
肺への送達を容易にするために、微粉化された有効成分は粗担体(coarse carrier)の表面に付着し、吸入時に有効成分が粗担体から分離して肺に入る(これについては、以下に
図23を参照して本明細書で詳細に説明する)。粗担体の粒径は、吸入後、粒子の大半が吸入器内に留まるか、口や上気道に沈着する大きさである。そのため、有効成分粒子が下気道に到達するためには、担体粒子から離れて、気流中に再分散する必要がある。
【0012】
高エネルギーを持ち、微粉化された有効成分粒子は、凝集性が高く、大型化した不安定な凝集体を形成する。このような凝集体が形成されると、粉体の流動性や均質性が低下し、化学分解が加速され、(担体に対する)付着性/分散性が最適ではなくなってしまう。これらの要因は、吸入可能な乾燥粉末療法として処方された場合、有効成分の放出特性に望ましくないバラツキが発生する原因であり、回避するのが理想的である。
【0013】
プロピオン酸フルチカゾンまたは硫酸アルブテロールを含有する乾燥粉末吸入製剤が知られている。
【0014】
プロピオン酸フルチカゾン(Fp)は、例えば、Flixotide(登録商標)Accuhaler(登録商標)およびFlixotide(登録商標)Diskhaler(登録商標)として販売されている。Flixotide Accuhalerでは、微粒子状のフルチカゾンプロピオン酸エステル(50、100、250または500マイクログラム(μg))と、それより大きな粒径の乳糖とを混合させている。
【0015】
硫酸アルブテロールは、例えば、Ventolin(登録商標)Accuhaler(登録商標)およびEasyhaler(登録商標)として販売されている。Ventolin(登録商標)Accuhaler(登録商標)は、微粒子状のアルブテロール硫酸塩(200μg)と、それより大きな粒径の乳糖とを混合させている。
【0016】
患者のコンプライアンスを改善し、そして利便性を向上させるために、多剤混合薬の吸入器が利用可能である。しかし、製剤にあたっては、製剤が適合したものであり、保存期間が妥当なものになることを保証しなければならない。
【0017】
安定性はすべての製剤にとって特に重要であり、安定性(化学的および物理的)が向上することで、薬剤の性能が発揮される期間が長くなると同時に、保存期間が長くなり、患者の利便性が向上し、廃棄量が減る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
プロピオン酸フルチカゾンは、乾燥粉末製剤としての製剤化が困難である。この点に関して説明すると、乾燥粉末製剤は通常、微粉化された有効成分と、粗担体とを含む。有効成分は微粉化された状態でなければならない(通常、空気力学的質量中位径が1~10μm、より一般的には2~5μmである)。このサイズの粒子であれば、吸入時に肺を貫通することが可能である。しかし、このような粒子は表面エネルギーが高く、製剤を計量可能とするには粗担体が必要である。粗担体は通常、乳糖で、通常α-ラクトース一水和物の形態である。
【0019】
有効成分の表面エネルギーが高いと、乾燥粉末製品の経時的安定性に影響がある可能性がある。
【0020】
プロピオン酸フルチカゾン微粉末は特に、保護包装材から取り出してしまうと、環境条件に影響を受けやすい。例えば、温度や湿度は、乾燥粉末製剤の空気力学的粒度分布(APSD)および微粒子率(FPF)に悪影響を及ぼす。このため、プロピオン酸フルチカゾン単剤(ArmonAir(登録商標)Respiclick、55mcg)は通常、いわゆる「開封後保存期間」が1か月であるとして市販されており、プロピオン酸フルチカゾン単剤(ArmonAir(登録商標)、25mcg、フェーズIIB)は「開封後保存期間」が2ヶ月であることが分かっている。
【0021】
一方、アルブテロール製剤(ProAirRespiclick(登録商標)、90mcg)は、安定性がより高く、開封後保存期間は13ヶ月と長めである。そのため、ICSおよびSABAを含む配合剤の製剤は難しい。例えば、プロピオン酸フルチカゾン(SABA配合時)の使用時安定性は、SABAの使用時安定性に近くなるよう、より長期間化する必要がある。このように長期間化できなければ、配合剤の安定性は最も安定性の低い有効成分(ArmonAir(登録商標)Respiclickのプロピオン酸フルチカゾン)で決まることになる。
【0022】
関連技術分野では、プロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールを含む乾燥粉末吸入製剤で、使用時保存期間が短いという欠点がない製剤が依然として必要とされている。また、当技術分野では、プロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールの配合剤によって喘息症状を治療する要望も依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
したがって本発明は、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物担体を含む乾燥粉末吸入製剤を提供する。
【0024】
α-ラクトース一水和物担体を用いて製剤した場合、硫酸アルブテロールがプロピオン酸フルチカゾンに対して安定化効果を持つことが示唆されている。プロピオン酸フルチカゾンと硫酸アルブテロールとを併用した場合の使用時保存期間を延ばすための製剤開発を行った。どちらの分子も混和性を確実に示すよう製剤開発は進められた。
【0025】
この製剤は、安定性プロファイルが良好であり、劣化しにくく、薬剤性能および使用時保存期間が(それぞれの単剤と比較して)長期間化する。
【0026】
本発明を以下で添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図面の説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】好ましい実施形態による乾燥粉末吸入器を第1の側から見た等角図である。
【
図2】
図1の吸入器を分解した様子を示す第2の側から見た等角図である。
【
図3】
図1の吸入器のメインアセンブリの第2の側から見た等角図である。
【
図4】ヨークを取り外した状態の
図1の吸入器のメインアセンブリを第2の側から見た等角図である。
【
図5】
図1の吸入器のメインアセンブリを第1の側から見た等角分解図である。
【
図6】
図1の吸入器の製剤カップの分解拡大等角図である。
【
図7】
図1の吸入器のデアグロメレーター(deagglomerator)およびホッパーを第1の側から見た等角分解図である。
【
図8】
図1の吸入器のデアグロメレーターの渦流室の屋根およびホッパーを第2の側から見た等角分解図である。
【
図9】
図1の吸入器のケース、カムおよびマウスピースカバーを第1の側から見た等角分解図である。
【
図10】
図1の吸入器のカムのうち1つを示す拡大側面等角図である。
【
図11】
図1の吸入器のヨークを第2の側から見た等角図である。
【
図12】
図1の吸入器のヨークの第1の側から見た等角図であり、ヨークのラチェットおよびプッシュバーを示す図である。
【
図13】
図1の吸入器のヨークのラチェットおよびプッシュバーを縦方向に移動させた場合の製剤カップのボスの横方向の移動を示す概略図である。
【
図14】
図1の吸入器のドーズカウンターの拡大等角図である。
【
図15】
図1の吸入器のドーズカウンターの分解拡大等角図である。
【
図16】
図1の吸入器の一部を示す一部断面拡大等角図であり、吸入器を介した製剤の吸入を示す。
【
図17】本開示によるデアグロメレーターの分解等角図である。
【
図23】強吸着状態および弱吸着状態での粗担体からの微粉化有効成分の分離および吸入可能乾燥粉末製剤の気流への混入を示す図である(Particulate Interactions in Dry Powder Formulations for Inhalation,X.M.Zengetal.Taylor&Francis,London,2000を参照)。
【
図24】登録商標であるArmonAir Respiclick Batch RD1404(プロピオン酸フルチカゾン単剤)および混合物7(プロピオン酸フルチカゾン+硫酸アルブテロール配合剤)におけるプロピオン酸フルチカゾンの使用時安定性(30℃/65%RH、包装無し)を示したグラフである。
【
図25】混合物7(プロピオン酸フルチカゾン+硫酸アルブテロール配合剤)のアルブテロールの使用時安定性(30℃/65%RH、包装無し)を示すグラフである。
【
図26】フェーズIIBのArmonAir開発バッチRD1119(プロピオン酸フルチカゾン単剤)、混合物10(プロピオン酸フルチカゾン+硫酸アルブテロール配合剤)および混合物11(ステアリン酸マグネシウム入りプロピオン酸フルチカゾン+硫酸アルブテロール配合剤)におけるプロピオン酸フルチカゾンの使用時安定性(30℃/65%RH、包装無し)を示すグラフである。
【
図27】混合物10(プロピオン酸フルチカゾン+硫酸アルブテロール配合剤)および混合物11(ステアリン酸マグネシウム入りプロピオン酸フルチカゾン+硫酸アルブテロール配合剤)におけるアルブテロールの使用時安定性(30℃/65%RH、包装無し)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、プロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールをα-ラクトース一水和物担体とともに含有する合剤型乾燥粉末吸入製剤に関する。当該製剤において、硫酸アルブテロールはプロピオン酸フルチカゾンの安定化に役立つものと考えられている。
【0029】
微粉化された医薬品有効成分は一般的に、高い表面エネルギーを持つ(主な理由として粒径が小さいため表面積が大きいことが挙げられる)。表面エネルギーの他の要因としては、有効成分の化学組成および構造アーキテクチャから生じる固有の静電効果が挙げられる。特定の化合物の静電特性および静電挙動は、ファンデルワールス力(原子間の距離に依存する相互作用)に起因しており、ファンデルワールス力は特に粉体内の凝集力の原因として知られている。
【0030】
このため、有効成分は、化学組成および構造アーキテクチャによって静電構成が決まるので、隣接する粒子およびより広い外囲環境(例えば、大気中の水蒸気など)との粒子間相互作用および粒子内相互作用に基づいて安定性が決まる。
【0031】
プロピオン酸フルチカゾンを微粉化した場合、保存期間が短いという点で特に問題があることが知られている。微粉化されたプロピオン酸フルチカゾンは物理的に不安定であり、水分を吸着して表面特性が変化するため、使用時の状態で保存するとFPFが低下するものと理解されている。そのため、製剤時に微粉末の安定性をコントロールすることは困難である。例えば、粒子をより小さなサイズ(すなわち吸入可能なサイズ)に分解するために細粒化工程が必要であるが、この工程の副産物として、バルク粉末内の静電エネルギー量が増加することで劣化しやすくなる。
【0032】
本発明は、プロピオン酸フルチカゾンと硫酸アルブテロールとを混合することにより、α-ラクトース一水和物担体が存在する中でプロピオン酸フルチカゾンの物理的安定性を向上させる。単剤に比べ、プロピオン酸フルチカゾンの薬剤性能、すなわち使用時保存期間が長くなる。
【0033】
このように、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物を組み合わせると、プロピオン酸フルチカゾンおよびα-ラクトース一水和物の単剤と比較して開封後の物理的安定性が高く(すなわち、粗大化が少なく)なり、有用性の高い乾燥粉末合剤吸入製剤の製剤が可能になる。
【0034】
本発明により、プロピオン酸フルチカゾンの物理的安定性が向上することが判明した。データ(表1および表2、
図24~27を参照)から、ArmonAir Respiclick単剤で現在採用している6週間(30℃/65%RH、包装無し)の平衡化工程を、ICS:SABA(プロピオン酸フルチカゾン:硫酸アルブテロール)MDPI合剤(55/90mcgおよび25/90mcg)については4週間に短縮できることが示唆される。この評価結果から、4週間の平衡化ステップを導入することで使用時保存期間を5ヶ月にできることが示唆される。
【0035】
硫酸アルブテロール対プロピオン酸フルチカゾンの重量比は、製剤の総重量で1.0~10.0:1.0とすることが好ましい。また、硫酸アルブテロール対プロピオン酸フルチカゾンの重量比が2.0~5.0:1.0であることが好ましい。硫酸アルブテロール対プロピオン酸フルチカゾンの重量比が、製剤の総重量で3.5~5.0:1.0であることが最も好ましい。比率をこのように設定することで、プロピオン酸フルチカゾンの安定性、したがって乾燥粉末吸入製剤の安定性の点で特に効果が得られる。
【0036】
本発明のプロセスにおいて使用されるプロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールの粒径(空気力学的質量中央粒子径、MMAD)はそれぞれ、10μm未満であり、より好ましくは1~4μmである。MMADは、次世代インパクター(NGI)を用いて測定することができる。
【0037】
粒径をこのように設定することにより、混合時に粒子がα-ラクトース一水和物に効果的に付着し、また(すなわち吸入装置の作動時に)粒子が分散して空気流に混入して下肺野に沈着することが保証される。
【0038】
吸入されたプロピオン酸フルチカゾンの粒度分布は、d10=0.4~1.0μm、d50=1.0~3.0μm、d90=2.5~7.5μm、NLT99%<10μmとなることが好ましい。吸入されたプロピオン酸フルチカゾンの粒度分布は、d10=0.5~0.9μm、d50=1.5~2.5μm、d90=4.1~6.2μm、NLT99%<10μmとなることが最も好ましい。スパン値(計算値)は、好ましくは1.2~3.8である。
【0039】
プロピオン酸フルチカゾンの粒径は、水性分散液として、例えばMalvern(マルバーン)社のMastersizer(マスターサイザー)2000と呼ばれる装置を用いてレーザー回折により測定することができる。特に、湿式分散法を採用する。本装置の光学パラメータは、プロピオン酸フルチカゾンの屈折率=1.530、分散水の屈折率=1.330、吸収率=3.0、オブスキュレーション=10~30%に設定されている。試料懸濁液は、25mLのガラス容器において、約50mgの試料と、Tween80を1%含む脱イオン水10mLとを混合して調製する。この懸濁液をマグネチックスターラーで中程度の速度で2分間攪拌する。Hydro2000S分散ユニットのタンクには、約150mLの脱イオン水が充填されている。脱イオン水の超音波処理では、超音波のレベルを100%に設定して30秒間経過した後、超音波を0%に戻す。分散ユニットタンク内のポンプ/スターラーを3500rpmまで回し、その後ゼロまで下げて泡を除去する。分散媒に1%のTA-10XFG消泡剤を約0.3mL添加し、ポンプ/スターラーを約2000rpmまで回転させた後、バックグラウンドを測定する。調製した懸濁液サンプルを、10~20%の安定した初期オブスキュレーションに達するまで、分散ユニットにゆっくりと滴下する。サンプルは、そのまま分散ユニット内で2000rpmで約1分間攪拌した後、超音波をオンにしてレベルを100%に設定する。ポンプと超音波の両方をオンにして5分間超音波処理を行った後、サンプルを3回測定する。この手順をさらに2回繰り返す。
【0040】
硫酸アルブテロールの粒度分布は、d10=0.4~1.0μm、d50=1.0~3.0μm、d90=2.5~9.0μm、NLT99%となることが好ましい。硫酸アルブテロールの粒度分布は、d10=0.6~0.7μm、d50=1.1~1.7μm、d90=2.4~3.8μm、NLT99%<10μmとなることが最も好ましい。スパン値(計算値)は、好ましくは1.5~2.0である。
【0041】
硫酸アルブテロールの粒度分布は、気中分散として、例えば、RODOS分散機とROTARY(回転式)フィーダーとを備えたSympatecHELOS/BFを用いて、レーザー回折法を用いて測定することができる。具体的には、レンズタイプR3:0.5/0.9...175μmが使用される。当該機器は、密度=3.2170g/cm3、形状係数=1.00、計算モード=HRLD、強制安定=0、リミットカーブ=使用しない、と設定されている。トリガー条件は、名称=チャネル28≧2%、参照時間=10s(シングル)、タイムベース=100ms、測定前のフォーカス=無し、通常測定=標準モード、開始=0.000s、チャネル28≧2%、有効=常に、停止=5s後、チャネル28≦2%、または後=99.000s、リアルタイム、トリガタイムアウト=0s、繰り返し測定=0回、繰り返しフォーカス=無し、と設定されている。分散条件は、名称3.0bar、分散タイプ=RODOSインジェクター=4mm、カスケードエレメント=0個、一次圧力=3.0bar、フィーダータイプ=ROTARY(回転式)、回転:18%、測定前の一次圧力確認=無し、真空抽出型=Nilfisk、遅延=2s、と設定されている。
【0042】
試料を適量、約1.0g秤量し、回転式(rotary)フィーダーの溝に充填する。これをRODOS乾燥粉末分散機によって圧縮空気で測定ゾーンを通じて吹き付けて、測定のトリガーとする。試料の粒径を測定し、D90[D(v,0.9)],D50[D(v,0.5)],D10[D(v,0.1)]およびスパンを記録する。
【0043】
粒径の測定に関してさらに詳細な内容はJ.P.MitchellおよびM.W.Nagelの「Particle size analysis of aerosols from medicinal inhalers」、KONANo.2004,22,32」を参照されたい。適切な粒径はまた、本明細書に記載の凍結乾燥プロセスで得られるが、さらなる微粉化を、ミル、例えばエアジェットミル、ボールミルまたはバイブレーターミルでの粉砕、ふるい分け、結晶化、噴霧乾燥またはさらなる凍結乾燥によって行うことができる。
【0044】
本発明の製剤はさらに、α-ラクトース一水和物担体を含有する。このような担体は、肺に混入する微粒子と区別するために「粗担体」と呼ばれる。粗担体は関連技術分野で公知であり、多くの供給元から市販されていて容易に入手可能である。粗担体には通常、同一材料の微細粒子(もともと存在するもの、および/または、意図的に添加されたもの)が含まれている。このような微細粒子が存在することで、粗担体から有効成分を放出しやすくなる。
【0045】
一般的に、α-ラクトース一水和物担体の粒径は、空気流に混入することはあっても、肺の重要な標的部位に沈着しないようなものでなければならない。したがって、α-ラクトース一水和物は、平均粒径が40ミクロン以上であることが好ましく、α-ラクトース一水和物粒子は体積平均径(VMD)が50~250ミクロンであることがより好ましい。
【0046】
α-ラクトース一水和物バッチの粒子は実質的にすべて、300μm未満の粒径であることが好ましい。
【0047】
α-ラクトース一水和物画分の粒度分布が、d10=10~25μm、d50=85~105μm、d90=140~180μm、NLT99%<300μm、1.5~8.5%<10μm、またはd10=19~43μm、d50=50~65μm、d90=75~106μm、NLT99%<300μm、1.5~2~5%<10μmであることがより好ましい。
【0048】
α-ラクトース一水和物には元々、微細な含有物(すなわち、微細な乳糖)が含まれているとしてもよい。このような乳糖は、粒径が10μm未満、より好ましくは1~5μmである。
【0049】
微細なα-ラクトース一水和物は、α-ラクトース一水和物担体(市販品サプライヤーから提供されたもの)内に元々存在し、含まれている粒子である。このような微粒子は通常、粒径が10μm未満、より好ましくは1~5μmである。元から存在している微粒子のMMADは、次世代インパクター(NGI)を用いて測定することができる。α-ラクトース一水和物担体と同一物質の微粒子は、製剤に意図的に添加することも可能である。有効成分および担体の粒子以外に第三の物質を追加しているわけではないので、第三の添加剤とはみなさない。
【0050】
第三の添加剤の粒度分布は、d10=0.5~6.0μm、d50=7.0~12.0μm、d90=15.0~30.0μm、NLT99%<10μmとなることが好ましい。
【0051】
本明細書で提供する乳糖の粒度分布は、気中分散として、例えば、RODOS分散機とVIBRIフィーダーとを備えたSympatecHELOS/BFを用いて、レーザー回折法を用いて測定することができる。具体的には、レンズタイプR5:0.5/4.5...875μmが使用される。当該機器の設定は、密度=1.5500g/cm3、形状係数=1.00、計算モード=HRLD、強制安定=0、となっている。トリガー条件は、名称=CH12、0.2%、参照時間=10s(シングル)、タイムベース=100ms、測定前のフォーカス=有り、通常測定=標準モード、開始=0.000s、チャネル12≧0.2%、有効=常に、停止=5.000s後、チャネル12≦0.2%、または後=60.000s、リアルタイム、繰り返し測定=0、繰り返しフォーカス=無し、と設定されている。分散条件は、名称1.5bar;85%;2.5mm、分散タイプ=RODOS/M、インジェクター=4mm、カスケードエレメント=0、一次圧力=1.5bar、参照測定前に必ず自動調整=無し、フィーダータイプ=VIBRI、供給率=85%、ギャップ幅=2.5mm、漏斗回転=0%、クリーニング時間=10s、VIBRI制御の使用=無し、真空抽出型=Nilfisk、遅延=5s、と設定されている。試料を適量、約5g、清潔で乾燥したステンレス製スパチュラで計量紙に移し、VIBRIシュート上の漏斗に流す。試料を測定する。圧力は約1.4~1.6bar、測定時間=1.0~10.0秒、Copt=5~15%、真空度≦7mbarに維持する。この手順をさらに2回繰り返す。
【0052】
これに代えて、乳糖の粒度分布は、気中分散として、例えば、RODOS分散機、RODOS/M分散機、または、OASIS/M分散機と、VIBRIフィーダーユニットとを備えたSympatecHELOS/BFを用いて、レーザー回折法を用いて測定することができる。具体的には、レンズタイプR4:0.5/4.5...350μmが使用される。当該機器の設定は、密度=1.550g/cm3、形状係数=1.00、計算モード=HRLD、強制安定=0、となっている。トリガー条件は、名称=光学濃度>0.5%、参照時間=4s(シングル)、タイムベース=100ms、測定前のフォーカス=有り、通常測定=標準モード、開始=0.000s、光学濃度≧0.5%、有効=0.5%≦チャネル9≦99.0%、停止=1s後、光学濃度<0.5%、または後=20.000s、リアルタイム、トリガタイムアウト=0s、繰り返し測定=0回、繰り返しフォーカス=無し、と設定されている。分散条件は、名称1.5bar;75%;1.8mm、分散タイプ=RODOS/M、インジェクター=4mm、カスケードエレメント=0、一次圧力=1.5bar、参照測定前に必ず自動調整=無し、フィーダータイプ=VIBRI、供給率=75%、ギャップ幅=1.8mm、漏斗回転=0%、クリーニング時間=10s、VIBRI制御の使用=無し、真空抽出型=Nilfisk、遅延=5s、と設定されている。試料を適量、約5g秤量し、VIBRIシュート上の漏斗に流す。その後、RODOS乾燥粉末分散器を使用して圧縮空気で測定ゾーンを通じて吹き付けて、測定のトリガーとする。試料の粒径を測定する。
【0053】
乾燥粉末吸入製剤は、第三の添加剤を含むとしてもよい。第三の添加剤は関連技術分野で公知であり、有効成分にさらなる安定性を与えるために使用される。一般的に、水吸着量を減らし、粗担体の粒子からの有効成分の放出を促進することによって、さらなる安定性が得られる。
【0054】
第三の添加剤は、力制御剤(force control agent)、滑沢剤または付着防止剤として知られている。有効成分および担体にさらに三番目の材料を加えて製剤化するため、「第三」という言葉が使われる。粗担体(つまり、α-ラクトース一水和物)には通常、同一材料の微細粒子(元々存在するもの、および/または、意図的に添加されたもの)が含まれていることに留意されたい。このような、粗担体と同一材料の微粒子は、第三の添加剤ではない。
【0055】
本発明は、プロピオン酸フルチカゾンの安定性を単剤の場合に比べて向上させるものであるため、第三の添加剤は安定性を高めるために必須の特徴ではない。しかし、プロピオン酸フルチカゾンの安定性や粉体流動性をさらに向上させ、微粒子率を高くするために添加することがある。
【0056】
したがって、本発明は2つの異なる実施形態を提供する。本発明の一実施形態では、乾燥粉末吸入製剤は第三の添加剤を含まない。例えば、製剤は、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロール、およびα-ラクトース一水和物(α-ラクトース一水和物担体、任意でα-ラクトース一水和物微粒子を含む)から成るとしてよい。
【0057】
本発明の別の実施形態では、乾燥粉末吸入製剤はさらに、第三の添加剤を含む。
【0058】
本発明の製剤に配合され得る第三の添加剤の代表例としては、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムなど)、脂肪酸(ステアリン酸など)、アミノ酸(ロイシンなど)およびリン脂質(レシチンなど)が挙げられる。
【0059】
本発明の製剤に配合される第三の添加剤はステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。また、製剤中に含まれるステアリン酸マグネシウムの割合が、製剤の重量に対して0.01~3.0%であることが好ましい。
【0060】
第三の添加剤は、安定性を高めるために使用され得る。
【0061】
本発明の製剤は、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物を混合して調製することが好ましい。
【0062】
本発明の製剤は、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物を(任意の順序で)混合して製剤を形成することにより調製することが好ましい。
【0063】
本発明の製剤は、プロピオン酸フルチカゾンおよびα-ラクトース一水和物と、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物とを別個に混合して、両者を混合して製剤することが好ましい。
【0064】
より具体的には、本発明に係る乾燥粉末吸入製剤は、
プロピオン酸フルチカゾンおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製して、第1の混合物を形成する工程(i)と、
硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製して、第2の混合物を形成する工程(ii)と、
第1の混合物と第2の混合物とを混合して、製剤を形成する工程(iii)と
を含むプロセスを用いて調製される。
【0065】
また、本発明はこのプロセスによって得られる製品を提供する。
【0066】
より具体的には、本発明に係る乾燥粉末吸入製剤は、
プロピオン酸フルチカゾンおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製して、第1の混合物を形成する工程(i)と、
硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製して、第2の混合物を形成する工程(ii)と、
第1の混合物と第2の混合物とを混合して、製剤を形成する工程(iii)と
製剤をコンディショニングする工程(iv)と
を含むプロセスを用いて調製される。
【0067】
本プロセスが製剤をコンディショニングする工程を含む場合、その工程は製剤を高湿度条件に曝露することを含む。高湿度条件は通常、温度30℃で相対湿度65%(RH)である。
【0068】
製剤をコンディショニングすることは、製剤を65%RH/30℃に21~36日間にわたって曝露することを含むことが好ましい。より好ましくは、製剤をコンディショニングすることは、製剤を65%RH/30℃に28~35日間にわたって曝露することを含む。最も好ましくは、製剤をコンディショニングすることは、製剤を65%RH/30℃に28日間にわたって曝露することを含む。
【0069】
製剤は、乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填され、乾燥粉末吸入器は工程(iv)の実行前にトレイに置かれることが好ましい。
【0070】
これに代えて、製剤は、乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填され、乾燥粉末吸入器はトレイに置かれ、吸入器およびトレイは工程(iv)の実行前にポリエチレン包装で包装する。
【0071】
コンディショニング工程の間、吸入器およびトレイは包装無しとすることが好ましい。
【0072】
トレイはコンディショニング工程中に撹拌されるとしてもよい(吸入器内の製剤粒子が全て湿潤雰囲気に均等に曝露されるようにすることを主な目的とする)。攪拌することで、コンディショニング工程中に粒子が凝集することを回避または抑制することにつながる。
【0073】
また、本発明は、このプロセスによって得られる製品を提供する。
【0074】
本発明はまた、
(i)プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物の混合物を調製する工程と、
(ii)当該混合物をコンディショニングする工程と
を含む、乾燥粉末吸入製剤を調製するためのプロセスも提供する。
【0075】
製剤をコンディショニングすることは、製剤を65%RH/30℃に21~36日間にわたって曝露することを含むことが好ましい。より好ましくは、製剤をコンディショニングすることは、製剤を65%RH/30℃に28~35日間にわたって曝露することを含む。最も好ましくは、製剤をコンディショニングすることは、製剤を65%RH/30℃に28日間にわたって曝露することを含む。
【0076】
製剤は、乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填して、工程(ii)の実行前に乾燥粉末吸入器をトレイに置くことが好ましい。
【0077】
これに代えて、製剤は、乾燥粉末吸入器の製剤リザーバに装填され、乾燥粉末吸入器はトレイに置かれ、吸入器およびトレイは工程(iv)の実行前にポリエチレン包装で包装する。
【0078】
コンディショニング工程の間、吸入器およびトレイは包装無しとすることが好ましい。
【0079】
トレイはコンディショニング工程中に撹拌されるとしてもよい(吸入器内の製剤粒子が全て湿潤雰囲気に均等に曝露されるようにすることを主な目的とする)。攪拌することで、コンディショニング工程中に粒子が凝集することを回避または抑制することにつながる。
【0080】
また、本発明は、このプロセスによって得られる製品を提供する。
【0081】
第三の添加剤は、製剤に含まれる場合、第1の混合物および第2の混合物の調製に使用するためにα-ラクトース一水和物を分注する前に、α-ラクトース一水和物に添加することが最も好ましい。
【0082】
したがって、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物を含む乾燥粉末吸入製剤は、本明細書に開示するプロセスによって得ることができる。
【0083】
粉末の混合は、混合条件および混合装置がエアロゾル化性能に直接影響するため、乾燥粉末吸入式製剤を提供する際に慎重に考慮すべき事項であるこれは、乾燥粉末製剤が有効に作用できるかどうかは、接着性混合物が形成されるかどうかだけでなく、薬物の担体からの解放および担体への分配の両方によっても決まるためである。
【0084】
流体を混合させる場合は2つの成分の混合が単に濃度勾配に左右されるが、これとは異なり、粉末粒子を混合する場合には混合を促進するためにエネルギー(すなわち運動エネルギー)を投入する必要がある。そのため、粉体混合装置では、粉体または製剤が収容された容器を回転/並進運動させることによって、または、粉体混合容器内に設けられているインペラおよびチョッパーと接触させることで粉体や製剤を運動させることが必要となる。
【0085】
乾燥粉末吸入器に特化した混合方法として2つの方法が利用可能である。これらの混合方法は、低速での混合に使用されるタンブリングミキサー(「ブレンダー」と呼ばれることもある)(Turbula(登録商標)およびV-blenderなど)と、混合アーム(インペラまたはチョッパーまたは両者の組み合わせなど)を使用する高速ミキサー(PharmaConnect(登録商標)など)とを利用して実行される。
【0086】
低速タンブリングミキサー容器は通常、混合装置のフレーム内に取り付けられている。この容器は、軸を中心に回転可能に支持されている。運転時には、タンブリング動作によって容器内に円形の混合領域および混合経路が形成される。このように、タンブリングミキサーは、ミキサーがタンブリング(つまり回転)することにより、重力の作用下で粉体を混合する。粉体粒子同士、そして、粉体粒子とミキサーの壁との間の相互作用により、せん断混合が起こる。混合物中の粉体または基材が受けるせん断力の強さは、混合速度によって決まる。
【0087】
高速ミキサーは通常、容器を有しており、当該容器内にミキシングアームが設けられている。混合アームは、インペラブレード、チョッパーブレード、またはそれらの組み合わせであることが多い。インペラブレードは通常、ミキサーの容器の底の中央に取り付けられている。チョッパーブレードは通常、混合容器の側壁に設置されている。運転中、混合アームは有効成分の粒子および粗担体と直接接触し、粉体に力を加える。その際、混合アームは遠心力によって混合ボウルの中心から壁面に向かって粉を投げ出す。その後、粉体は上方に押し上げられて、混合アームの中心に向かって戻る。このようなパターンにしたがって粒子が移動することで、高速混合アームが粉体粒子に直接接触することで発生する高いせん断力のおかげで粉体が高速に混合される可能性が高い。
【0088】
せん断混合の原理は一般常識として公知であり、例えば、Aulton’s Phar
maceutics The Design and Manufacture of Medicines,M.E.Aulton,Philadelphia,Elsevier Limited,2007に記載されている。
【0089】
本発明の製剤は、喘息またはCOPDの治療に使用するためのものである。喘息および/またはCOPDの長期治療ならびに喘息および/またはCOPDの急性増悪の治療に使用するためのものであって、本製剤が喘息の長期治療のためのメインテナンス薬として投与され、喘息の急性増悪の治療のためのレスキュー薬として必要に応じて(p.r.n)投与されるとしてよい。
【0090】
本発明の製剤は、喘息の治療に使用することが好ましい。喘息の長期治療ならびに喘息の急性増悪の治療に使用するためのものであって、本製剤が喘息の長期治療のためのメインテナンス薬として投与され、喘息の急性増悪の治療のためのレスキュー薬として必要に応じて(p.r.n)投与されるとしてよい。
【0091】
本発明の製剤は、グローバル・イニシアチブ・フォー・アズマ(GINA)2005ガイドラインで定義されたステップ2の喘息患者における喘息の治療に使用するのが好ましい。これらの患者は、軽度の持続性喘息であると見なされる。ステップ2はまた、ピークフロー量(PEF)または1秒間の強制呼気量(FEV1)の測定に基づく患者の気流制限を参照して定義される(FEV1およびPEFは通常、測定値のばらつきを最小限に抑えるために、少なくとも1つの短時間作用型吸入気管支拡張剤を適量投与した後に測定する)。
【0092】
GINAで定義されたステップ2喘息の患者は、PEFまたはFEV1の気流制限が予測値の80%以上、PEFばらつきが20~30%である。
【0093】
GINAで定義されたステップ2喘息の患者はまた、症状がほぼ毎日、1週間に1回以上1日1回未満出る。
【0094】
GINAで定義されるステップ2喘息の患者はまた、夜間に症状が出ることが月に2回以上、週に1回以下である。
【0095】
本発明の製剤は、グローバル・イニシアチブ・フォー・クロニック・オブストラクティブ・ラング・ディズイーズ(GOLD)の委員会が2017ガイドラインで定義した内容によって気流制限が重度GOLD2にあたる患者のCOPDの治療に使用するのが好ましい。これらの患者は、中程度のCOPDと見なされる。GOLD2はまた、気管支拡張剤投与後のFEV1の測定に基づく患者の気流制限を参照して定義される(患者のFEV1は通常、測定値のばらつきを最小限に抑えるために、少なくとも1つの短時間作用型吸入気管支拡張剤を適量投与した後に測定する)。GOLD2のCOPDの患者は、気流制限が予測値の50%≦FEV1<80%である。
【0096】
また、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物担体を、喘息またはCOPDを治療するための製剤を調製するべく使用する。また、プロピオン酸フルチカゾン、硫酸アルブテロールおよびα-ラクトース一水和物担体を含む乾燥粉末吸入製剤の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、喘息またはCOPDを治療する方法が提供される。この治療は喘息および/またはCOPDの長期治療ならびに喘息および/またはCOPDの急性増悪の治療であって、本製剤が喘息の長期治療のためのメインテナンス薬として投与され、喘息の急性増悪の治療のためのレスキュー薬として必要に応じて(p.r.n)投与されるとしてよい。
【0097】
本発明が提供する製剤は、プロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールを単一の製剤で併用して治療することにより、患者は1回の処方量に毎日のメインテナンス薬とレスキュー薬とをまとめることが出来るという利点がある(「固定容量配合剤」または「FDC」と呼ばれる)。患者の症状が悪化した場合(増悪時)には、同じデバイスをレスキュー薬として使用し、二次的服用方法(頻度指示)に従う。当該デバイスを複数回操作することで、患者は硫酸アルブテロールの投与量を増やし、気管支拡張を誘発することで症状を緩和し、同時に吸入コルチコステロイドを増量して、症状の悪化の原因となる炎症に対応する。このようなアプローチによって、多面的治療を1つのデバイスに集約することで、患者の利便性やコンプライアンスが改善する。第一に、本発明によれば、それぞれが異なる有効成分を含む別々の吸入器を2つ用意する場合とは対照的に、患者が持ち運ぶ吸入器は1つとなり、利便性が高い。第二に、レスキュー薬として使用する場合、患者は硫酸アルブテロールの投与により症状が緩和するだけでなく、プロピオン酸フルチカゾンも追加で摂取するという点で、患者のコンプライアンスは直に働きかけることで向上する。本発明のこの特徴は、患者がメインテナンス薬を服用しなかった場合に、特に重要で有益である。
【0098】
プロピオン酸フルチカゾンの1日総投与量が1000μgを超えず、硫酸アルブテロールの1日総投与量が800μgを超えないことが好ましい。好ましい値は、各有効成分の定量投与に基づく場合,1回の作動あたりプロピオン酸フルチカゾンが55μgまたは/および30μg、ならびに硫酸アルブテロールが90μgである。
【0099】
本発明ではさらに、乾燥粉末吸入製剤でプロピオン酸フルチカゾンを安定化するために硫酸アルブテロールを使用する。すなわち、硫酸アルブテロールはプロピオン酸フルチカゾンと相互作用し、プロピオン酸フルチカゾンの粒度分布(すなわち、プロピオン酸フルチカゾンの物理的安定性)を経時的に維持する。
【0100】
乾燥粉末製剤は、カプセル、例えばゼラチンカプセルまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに、当該カプセルが単位用量の有効成分を含むように計量充填するとしてよい。乾燥粉末が単位用量の有効成分を含むカプセルに入っている場合、組成物の総量は、カプセルの大きさおよびカプセルが使用される吸入デバイスの特性に応じて決まる。しかし、1カプセルあたりの乾燥粉末の総充填重量の例は通常、1~25mgである。これに代えて、本発明に係る乾燥粉末組成物は、マルチドーズ式乾燥粉末吸入器(MDPI)のリザーバに充填することができる。
【0101】
マルチドーズ式乾燥粉末吸入器は、有効成分および担体の凝集を分解するためのサイクロン型デアグロメレーターを含むことが好ましい。これは、患者が粉末を吸入する前に行われる。デアグロメレーターは、第1の端部から第2の端部まで軸に沿って延びる渦流室を画定する内壁と、乾燥粉末供給口と、注入口と、排出口とを含む。
【0102】
供給口は、吸入器の乾燥粉末送達路と渦流室の第1の端部との間で流体の連通が可能となるように、渦流室の第1の端部にある。注入口は、渦流室の第1の端部に隣接する渦流室の内壁に設けられており、デアグロメレーターの外部領域と渦流室との間で流体の連通を可能とする。排出口は、渦流室の第2の端部と、デアグロメレーターの外部領域との間で流体の連通を可能とする。
【0103】
呼吸により排出口が低圧になることで、乾燥粉末供給口および注入口から渦流室に空気が流れ込む。この空気の流れは、排出口から排出される前に、互いに、また、渦流室の壁と衝突し、有効成分が担体(乳糖)から分離する。デアグロメレーターはさらに、混入した粉体にさらに衝突および衝撃を与えるために、渦流室の第1の端部に羽根を持つ。
【0104】
第1の呼吸誘発空気流は、第1の端部と第2の端部との間に長手方向に延びるチャンバの第1の端部へと吸入器から乾燥粉末を混入させるように方向付けられ、第1の呼吸誘発空気流は長手方向に方向付けられる。
【0105】
第2の呼吸誘発気流は、実質的に横方向に方向付けられ、チャンバの第1の端部に流れ込み、気流同士が衝突して実質的に統合される。
【0106】
次に、統合された空気流の一部は、チャンバの第2の端部に向かって実質的に長手方向に偏向され、統合された空気流の残りの部分は、チャンバの第2の端部に向かって螺旋状の経路を描く。統合された空気流の全て、そして混入している乾燥粉末は、チャンバの第2の端部から患者の口へと送達される。
【0107】
デアグロメレーターにより、有効成分の粒子が確実且つ十分に細粒化され、患者が吸入すると肺の気管支領域に粉末が十分に浸透する。
【0108】
したがって、本発明の乾燥粉末製剤がマルチドーズ式乾燥粉末吸入デバイスと組み合わせて使用される場合、吸入デバイスのデアグロメレーターは、第1の端部から第2の端部まで軸に沿って延びる渦流室を画定する内壁と、吸入器の乾燥粉末送達路と渦流室の第1の端部との間で流体の連通を可能とするべく渦流室の第1の端部にある乾燥粉末供給口と、渦流室の第1の端部に隣接する渦流室の内壁に設けられている少なくとも1つの注入口であって、デアグロメレーターの外部領域と渦流室の第1の端部との間で流体の連通を可能とする少なくとも1つの注入口と、渦流室の第2の端部とデアグロメレーターの外部領域との間で流体の連通を可能とする排出口と、渦流室の第1の端部に設けられている複数の羽根であって、少なくとも一部が渦流室の軸から径方向外側に延在し、それぞれの羽根の斜面の少なくとも一部が軸を横切る方向に向いていることにより、呼吸によって排出口で低圧となると、乾燥粉末供給口および注入口を通じて渦流室に空気を流入させる、複数の羽根とを備えることが好ましい。
【0109】
吸入器は、製剤を収容するためのリザーバと、リザーバから定量の製剤を送達する送達部とを有することが好ましい。リザーバは通常、圧力システムである。吸入器は、分注口を含む密閉リザーバと、分注口と連通し、圧力開放口を含むチャネルと、密閉リザーバの内部とチャネルの圧力開放口との間で流体の連通を可能とするコンジットと、チャネル内に移動可能に収容されているカップアセンブリとを備えることが好ましい。カップアセンブリは、分注口と一致したときに製剤を受容するように適合されている凹部と、凹部が分注口と一致していない場合に分注口を封止するように適合されている第1の封止面と、凹部が分注口と一致したときに圧力解放口を封止し、凹部が分注口と一致していない場合には圧力解放口を封止しないように適合されている第2の封止面とを含む。
【0110】
吸入器は、ドーズカウンターを有することが好ましい。吸入器は、患者が吸入するためのマウスピースと、所定の経路に沿って移動可能な爪部を含む用量計量部であって、当該用量計量部によるマウスピースへの製剤の用量の計量中に移動する容量計量部と、ドーズカウンターと、を含む。
【0111】
好ましい態様において、ドーズカウンターは、ボビンと、回転可能なスプールと、ボビンの軸を中心に回転可能なロール状リボンであって、ボビン上に収容されたロール状リボンとを含む。リボンは、スプールに固定されたリボンの第1の端部とボビン上に配置されたリボンの第2の端部の間に連続的に設けられる指標を有する。ドーズカウンターはさらに、スプールから径方向外側に延在して爪部の所定の経路に到達する歯部を含む。このため、マウスピースへの用量の計量中に、スプールが爪部によって回転し、リボンがスプール上に前進する。
【0112】
好ましい形態の吸入器は、患者が吸入できるように乾燥粉末製剤を離散的な量または用量で分注する、簡素な構造で、正確性を有し、一貫性のある機械的用量計量システムと、用量を確実に一貫して吐出するリザーバ圧力システムと、吸入器に残っている回数を示すドーズカウンターとを含む。
【0113】
吸入器10は一般的に、ハウジング18と、ハウジング内に収容されたアセンブリ12とを含む(
図2参照)。ハウジング18は、開口端22および患者が吸入するためのマウスピース24を有するケース20と、ケース20の開口端22に固定されて開口端22を塞ぐキャップ26と、マウスピース24を覆うためにケース20に回動可能に取り付けられたカバー28とを含む(
図1、
図2および
図9参照)。ハウジング18は、ポリプロピレン、アセタールまたは成型ポリスチレンなどのプラスチック製が好ましいが、金属または他の適切な材料で製造してもよい。
【0114】
内部のアセンブリ12は、バルク状態で乾燥粉末製剤を収容するためのリザーバ14と、送達路34とマウスピース24との間で製剤を分解するデアグロメレーター10´と、リザーバをデアグロメレーターに接続するスペーサ38とを含む。
【0115】
リザーバ14は一般的に、折り畳み可能なベローズ40と、ベローズ40が少なくとも部分的に折り畳まれてリザーバの内部容積が減少することで製剤を吐出するための吐出口44(
図2から
図5および
図7から
図8を参照)を有するホッパー42とから構成される。
【0116】
ホッパー42は、乾燥粉末製剤をバルク状態で保持するためのものであり、開口端46を有する。開口端46は、可撓性でアコーディオン状のベローズ40によって実質的に気密に塞がれている。空気フィルタ48は、ホッパー42の開口端46を被覆しており、ホッパー42から乾燥粉末製剤が漏れないように防ぐ(
図7参照)。
【0117】
ホッパー42の基部50はスペーサ38に固定され、このスペーサ38はデアグロメレーター10´に固定される(
図3から
図5、
図7から
図8を参照)。ホッパー42、スペーサ38およびデアグロメレーター10´は、ポリプロピレン、アセタールまたは成型ポリスチレンなどのプラスチック製が好ましいが、金属または他の適切な材料で製造してもよい。
【0118】
ホッパー42、スペーサ38およびデアグロメレーター10´は、部品間の気密性が確保されるように接続されている。このため、例えば、ヒートシールまたはコールドシール、レーザー溶接や超音波溶接を利用し得る。
【0119】
スペーサ38およびホッパー42によって、製剤送達路34が画定され、当該送達路は、混入空気流を作り出すためのベンチュリ36(
図16参照)を含むことが好ましい。スペーサ38は、ホッパー42の吐出口44と連通しているスライドチャネル52と、製剤送達路34とデアグロメレーター10´の供給口22´との間で流体の連通を可能とするチムニー54とを画定している(
図7および
図8参照)。スライドチャネル52は、吸入器10の軸「A」に対して概ね垂直に延在している。
【0120】
デアグロメレーター10´は、乾燥粉末がマウスピース24を通って吸入器10から放出される前に、乾燥粉末製剤の凝集を分解する。
【0121】
図17から
図22を参照すると、デアグロメレーター10´は、患者が製剤を吸入する前に、製剤の凝集、または、製剤および担体の凝集を分解する。
【0122】
デアグロメレーター10´は概して、第1の端部18´から第2の端部20´まで軸線A´に沿って延在する渦流室14´を画定する内壁12´を含む。軸A´を横切る方向に配置された渦流室14´の円形断面領域は、渦流室14´の第1の端部18´から第2の端部20´に向かうにつれて小さくなり、渦流室の第1の端部から第2の端部に進む任意の空気流が細く絞られて少なくとも一部が渦流室の内壁12´に衝突するようにする。
【0123】
渦流室14´の断面積は単調減少することが好ましい。さらに、内壁12´は、
図22が最も分かりやすいが、凸状、すなわち、軸A´に向かって内向きに弧を描くことが好ましい。
【0124】
図17、
図19および
図22に示すように、デアグロメレーター10´は、吸入器の乾燥粉末送達路と渦流室14´の第1の端部18´との間で流体の連通を可能とするべく、乾燥粉末供給口22´がさらに渦流室14´の第1の端部18´に設けられている。乾燥粉末供給口22´は、軸A´に実質的に平行な方向に向いていることが好ましい。
図22において矢印1´で示される、供給口22´を通って渦流室14´に入る空気流が、少なくとも最初は、渦流室の軸A´に対して平行になっている。
【0125】
図17から
図22を参照すると、デアグロメレーター10´はさらに、渦流室の第1の端部18´に隣接または近接して渦流室14´の内壁12´に少なくとも1つの注入口24´を含む。これにより、デアグロメレーターの外部領域と渦流室14´の第1の端部18´との間に流体連通が得られる。この少なくとも1つの注入口は、径方向で対向する2つの注入口24´、25´を含むことが好ましい。注入口24´、25´は、軸A´を実質的に横切る方向であって、渦流室14´の円形断面に対して実質的に接線となる方向に延在している。このため、
図17および
図21において矢印2´および3´で示される空気流は、注入口を通って渦流室14´へと入り、少なくとも初期は、渦流室の軸A´を横切る方向に向かい、供給口22´を通って入る空気流1´と衝突して、乱流を発生させる。このように混合した空気流は、
図21および
図22に矢印4´で示され、渦流室14´の内壁12´に衝突して渦を発生させ、渦流室の第2の端部20´へと向かうことでさらなる乱流を生じさせる。
【0126】
図17から
図19および
図22を参照すると、デアグロメレーター10´は、渦流室14´の第1の端部18´に羽根26´が設けられ、羽根26´は、渦流室の軸A´から少なくとも部分的に径方向外側に延びる。羽根26´の斜面28´はそれぞれ、少なくとも一部が渦流室の軸A´を横切る方向に向いている。羽根26´の大きさは、
図22に示すように、混合空気流4´の少なくとも一部4A´が斜面28´に衝突するように決まっている。羽根26´は4つ設けられることが好ましく、それぞれは、軸A´と整列しているハブ30´と、渦流室14´の壁12´との間に延在している。
【0127】
図17から
図22に示すように、デアグロメレーター10´はさらに、渦流室14´の第2の端部20´とデアグロメレーターの外部領域との間の流体の連通を可能とする排出口32´を含む。排出口32´で呼吸により低圧が生じると、空気流1´が供給口22´を通り、空気流2´、3´が注入口を通り、混合空気流4´が渦流室14´を通り抜ける。そして、混合空気流4´は、排出口32´を通ってデアグロメレーター10から出る。空気流4´が排出口32´の内壁に衝突してさらなる乱流を生じさせるように、排出口32´は軸線A´に対して実質的に横方向に延在することが好ましい。
【0128】
吸入器とデアグロメレーター10´とを組み合わせて使用すると、排出口32´で患者が吸入することによって、空気流1´、2´、3´がそれぞれ乾燥粉末供給口22´および注入口を通って流入する。図示していないが、供給口22´を通る空気流1´により、乾燥粉末が渦流室14´に混入する。空気流1´および混入した乾燥粉末は供給口22´によって長手方向に渦流室内へと導かれる一方、注入口からの空気流2´、3´は横方向に導かれて空気流同士が衝突して実質的に混合される。
【0129】
その後、混合空気流4´の一部および混入した乾燥粉末は、羽根26´の斜面28´に衝突して、乾燥粉末の粒子および凝集が斜面に衝突すると共に互いにぶつかり合う。渦流室14´の形状により、混合空気流4´および混入した乾燥粉末は、渦流室を通る際に、乱流による螺旋状の経路、すなわち渦を描くことになる。渦流室14´の断面が徐々に小さくなっていることにより、螺旋を描く混合空気流4´および混入した乾燥粉末は、方向が連続的に変わり、速度が増加すると理解されたい。したがって、乾燥粉末の粒子および凝集が継続的に、渦流室14´の壁12´に衝突すると共に互いに衝突し、粒子と凝集部分との間で互いに粉砕または破砕の作用が生じる。さらに、羽根26´の斜面28´から逸れた粒子および凝集部分が、さらなる衝撃および衝突を発生させる。
【0130】
混合空気流4および混入乾燥粉末は、渦流室14´を出ると、方向が再度変化して、軸A´に対して横方向になり、排出口32´を通る。混合空気流4´および混入乾燥粉末は、渦流成分を保持し、空気流4´および混入乾燥粉末が螺旋を描きながら排出口32´を通る。渦流によって排出口32´においてさらに衝突が発生し、患者が吸入する前に、残っていた凝集部分がさらに分解される。
【0131】
図17から
図22に示すように、デアグロメレーターは、カップ状のベース40´およびカバー42´の2つの部品から成るアセンブリであることが好ましい。ベース40´およびカバー42´が連結されて、渦流室14´が形成されている。カップ状のベース40´は、渦流室の壁12´および第2の端部20´を持ち、排出口32´を画定する。また、ベース40´には、渦流室14´の注入口も設けられている。カバー42´は、羽根26´を形成し、供給口22´を画定する。
【0132】
デアグロメレーターのベース40´およびカバー42´は、ポリプロピレン、アセタールまたは成型ポリスチレンなどのプラスチック製が好ましいが、金属または他の適切な材料で製造してもよい。カバー42´は帯電防止添加剤を含むことが好ましく、これによって乾燥粉末が羽根26´に付着しないようにする。ベース40´およびカバー42´は、部品間を気密封止するように接続されている。このため、例えば、ヒートシールまたはコールドシール、レーザー溶接または超音波溶接を利用し得る。
【0133】
吸入器10は、特定のデアグロメレーター10´と共に図示されているが、図示されたデアグロメレーターと共に使用されることに限定されず、他の種類のデアグロメレーターまたは簡素な構造の渦流室と共に使用することができる。
【0134】
用量計量システムは、第1ヨーク66および第2ヨーク68を含む。第1ヨーク66および第2ヨーク68は、ハウジング18内の内部アセンブリ12に取り付けられ、吸入器10の軸「A」と平行な直線方向に移動可能である(
図2参照)。作動バネ69は、両ヨークをマウスピース24に向かって第1の方向に付勢するために、ハウジング18のキャップ26と第1ヨーク66との間に配置される。具体的には、作動バネ69は、第1ヨーク66をベローズ40に対して、第2ヨーク68をマウスピースカバー28に取り付けられたカム70に対して、付勢する(
図9参照)。
【0135】
第1ヨーク66には、ベローズ40のクラウン74を収容しつつ保持する開口72がある。このため、第1のヨーク66は、キャップ26に向かって、すなわち作動バネ69(
図2参照)に抗して移動させると、ベローズ40を引っ張って拡張させる。第2ヨーク68は、第1ヨーク66を収容するベルト76と、ベルトから第1ヨーク66と反対方向に(
図3、
図11、
図12参照)マウスピースカバー28のカム70(
図9、
図10)に向かって伸びる2つのカムフォロア78とを含む。
【0136】
用量計量システムはさらに2つのカム70を含む。カム70は、マウスピースカバー28(
図9および
図10参照)に取り付けられ、カバー28と共に開位置と閉位置との間で移動可能である。カム70にはそれぞれ開口80があり、外側に向けて延在するケース20のヒンジ82が開口80を通過して、カバー28の第1の凹部84に収容される。カム70にはさらにボス86が設けられている。ボス86は、外側に延在して、カバー28の第2の凹部88に収容されており、カバー28がヒンジ82を中心に枢動し、カム70がヒンジを中心にカバー28とともに移動する。
【0137】
各カム70はさらに、第1、第2および第3のカム面90、92、94を含み、第2ヨーク68のカムフォロア78は、作動バネ69によってカム面に対し付勢される。カム面90、92、94は、カムフォロア78が、カバー28が閉じられたときに第1カム面90に、カバー28が部分的に開かれたときに第2カム面92に、カバー28が完全に開かれたときに第3カム面94に、順次係合するように配置される。第1カム面90は、第2カム面および第3カム面よりもヒンジ82から離間しており、第2カム面92は、第3カム面94よりもヒンジ82から離間している。したがって、カム70によって、カバー28を開けると、作動バネ69がヨーク66、68を、第1位置、第2位置および第3位置を経て、吸入器10の軸「A」と平行に第1方向(マウスピース24の方向)へと、移動させる。また、カム70は、カバー28が閉じられると、第3位置、第2位置および第1位置を介して、ヨーク66、68を軸線「A」と平行に第2方向に(作動バネ69に抗して、ハウジング18のキャップ26に向かって)押す。
【0138】
用量計量システムはさらに、リザーバ14の吐出口44と送達路34との間で移動可能なカップアセンブリ96を含む。カップアセンブリ96は、ホッパー42の下方のスペーサ38のスライドチャネル52にスライド可能に収容されているそり部100に取り付けられた製剤カップ98を含む(
図5および
図6を参照)。製剤カップ98には、リザーバ14の吐出口44から製剤を受け取るように適合されている凹部102が設けられている。凹部102のサイズは、充填されたときに所定量の乾燥粉末製剤を保持する大きさとなっている。カップそり部100は、ホッパー42に固定されたカップバネ104によって、ホッパー42の吐出口44から送達路34に向かってスライドチャネル52に沿って付勢されている(
図4および
図5参照)。
【0139】
用量計量システムはさらに、カップそり部100のボス110に係合する、第2ヨーク68のカムフォロア78の1つに設けられたラチェット106およびプッシュバー108を含む(
図5、
図11および
図12参照)。ラチェット106は、可撓性フラップ112に取り付けられており、そり部100のボス110がプッシュバー108に係合すると、ボス110が沈んでラチェット106の上を通過できるような形状を持つ。用量計量システムの動作については、後述する。
【0140】
リザーバ圧力システムは、リザーバ14の内部と流体連通する圧力解放コンジット114(
図7および
図8を参照)と、スライドチャネル52(
図5および
図8参照)の壁に形成されており、ホッパー42の圧力解放コンジット114と流体連通する圧力解放口116とを含む。
【0141】
製剤カップアセンブリ96は、カップアセンブリが送達路34に移動すると吐出口44を封止するように適合されている第1封止面118を含む(
図5および
図6参照)。封止バネ120が、そり部100とカップ98との間に設けられており、リザーバ14の吐出口44を封止するべくホッパー42の底面に対して製剤カップ98を付勢する。カップ98は、当該カップをリザーバに対して付勢しつつ当該カップをそり部100内に保持するクリップ122を含む。
【0142】
そり部100は、カップ98の凹部102が吐出口44に一致したときに圧力解放口116を封止するように適合されている第2の封止面124と、第1の封止面118が吐出口44に一致したときに圧力解放口116を封止しないように適合されているくぼみ126(
図6参照)とを含む。圧力システムの動作については後述する。
【0143】
用量計量システム16は、ホッパー42に取り付けられており、連続する数字またはその他の適切な指標が印刷されているリボン128を含む。リボン128は、ハウジング18(
図2参照)に設けられた透明窓130と一致している。用量計量システム16は、回転可能なボビン132と、一方向に回転可能なインデックススプール134と、ボビン132に巻きつけられるように収容されているリボン128であって、第1の端部127がスプール134に固定されているリボン128とを含む。スプール134が回転または前進するにつれて指標が連続的に表示されるように、リボン128はボビン132から繰り出される。
【0144】
スプール134は、リザーバ14から送達路34へと一定量の製剤を送達するべくヨーク66、68が移動すると回転するように配置され、リボン128上の数字が前進して吸入器10が一定量を吐出したことを示す。リボン128は、スプール134の回転に伴って数字または他の適切な指標が増加または減少するように配置することができる。例えば、リボン128は、吸入器10に残っている投与回数を示すために、スプール134が回転すると数字または他の適切な指標が減少するように配置することができる。
【0145】
これに代えて、リボン128は、スプール134が回転すると数字または他の適切な指標が増加し、吸入器10が一定容量を吐出した回数を示すように配置することができる。
【0146】
インデックススプール134は、径方向に延在する歯部136を含むことが好ましい。歯部136は、第2ヨーク68が移動してインデックススプール134を回転または前進させると、第2ヨーク68のカムフォロア78(
図3および
図11を参照)のうちの1つから延在する爪部138に係合する。より詳細に説明すると、爪部138は、マウスピース24のカバー28が閉じられ、ヨーク66、68がハウジング18のキャップ26に向かって戻されたときにのみ、歯部136に係合してインデックススプール134を進めるように形成され配置されている。
【0147】
用量計量システム16はさらに、用量計量システムをホッパー42に固定するシャーシ140を含み、ボビン132およびインデックススプール134を収容するためのシャフト142、144を含む。ボビンシャフト142は、フォーク状であることが好ましく、シャフト142に設けられるボビン132の回転に対して弾力的な抵抗を生じさせるための径方向のナブ146を含む。クラッチバネ148は、インデックススプール134の端部に収容されており、シャーシ140にロックされて一方向(
図14に示すように反時計方向)のみにスプール134の回転を可能にする。用量計量システム16の動作については後述する。
【0148】
図13は、マウスピースカバー28の開閉に伴い、カップそり部100のボス110と、第2ヨーク68のラチェット106およびプッシュバー108とが相対的に動く様子を説明する図である。ヨーク66、68の第1の位置(カバー28が閉じられ、カムフォロア78がカム70の第1のカム面90に接触している)では、ラチェット106は、カップバネ104がカップそり部100を送達路34に移動させないように抑制する。用量計量システムは、両ヨークが第1の位置にあるとき、製剤カップ98の凹部102がリザーバ14の吐出口44とぴったりと一致するように、そして、スペーサ38の圧力解放口116がカップそり部100の第2の封止面124によって封止されるように、配置される。
【0149】
カム70の第2のカム面92がカムフォロア78に係合するようにカバー28を部分的に開くと、作動バネ69は、ヨーク66、68をマウスピース24に向かって直線状に第2の位置まで移動させ、製剤リザーバ14のベローズ40を部分的に縮める。部分的に縮められたベローズ40は、リザーバ14の内部を加圧し、リザーバの吐出口44から吐出された製剤で製剤カップ98の凹部102を充填させ、所定用量を投与する。しかし、第2の位置では、ラチェット106により、カップそり部100が送達路34へと移動しないように抑制され、製剤カップ98の凹部102がリザーバ14の吐出口44と一致したままとなり、スペーサ38の圧力解放口116がカップアセンブリ96の第2の封止面124によって封止されたままとなる。
【0150】
第3のカム面94がカムフォロア78に係合するようにカバー28を全開させると、作動バネ69は、ヨーク66、68をマウスピース24に向かってさらに第3の位置まで移動させる。第3の位置に移動すると、ラチェット106は、カップそり部100のボス110と係合しなくなるか、または、下方に外れるので、カップばね104がカップそり部100を移動させ、満杯になっているカップ98の凹部102が送達路34のベンチュリ36に移動し、リザーバ14の吐出口44がカップアセンブリ96の第1の封止面118によって封止される。さらに、圧力解放口116は、そり部100の側面のくぼみ126によって覆われておらず、リザーバ14から圧力を解放し、ベローズ40がさらに縮んでヨーク66、68の第3位置への移動が可能となる。そして、吸入器10を使って患者が送達路34にある所定用量の製剤を吸入する準備が整う。
【0151】
図16に示すように、呼吸によって発生した空気流4´は、迂回して送達路34を通り、ベンチュリ36を通過して、製剤を混入させ、製剤を吸入器10のデアグロメレーター10´へと運搬する。呼吸によって発生した別の2つの空気流2´、3´(図示しているのは1つのみ)は、径方向に対向する注入口24´、25´を通ってデアグロメレーター10´に入り、送達路34からの製剤が混入している空気流150と混合する。そして、混合空気流4´および混入した乾燥粉末製剤は、デアグロメレーターの排出口32´に移動し、患者が吸入できるようマウスピース24を通過する。
【0152】
吸入が完了すると、マウスピースカバー28を閉じることができる。カバー28を閉じると、トリガーカム70はヨーク66、68を上方に移動させ、第1のヨーク66がベローズ40を広げ、第2のヨーク68の爪部138が用量計量システム16のインデックススプール134を前進させて、所定用量が吐出されたことを視覚で分かるように表示する。さらに、カップアセンブリ96は、上方に移動する第2ヨーク68(
図13参照)のプッシュバー108によって第1位置へ強制的に戻される。そして、カップそり部100のボス110が第2ヨーク68のラチェット106に係合して保持される。
【0153】
次に本発明を以下の実施例を参照して説明する。以下の例は本発明を限定することを意図していない。
【0154】
実施例1
混合物7(高強度-Fp/Alb/α-ラクトース一水和物)の調製
プロピオン酸フルチカゾン(Fp)とα-ラクトース一水和物とを、TangoMixブレンダーを用いて0.4kgスケールで750rpm(回転数/分)の高速混合プロセスで混合した。硫酸アルブテロール(Alb)とα-ラクトース一水和物担体とを、TangoMixブレンダーを使用して0.4kgスケールで750rpmの高速混合プロセスで混合した。次に、Fp含有混合物およびAlb含有混合物を等量ずつ加え、手動でタンブリングして(360度回転/50回)、0.4kgスケールで0.52%のプロピオン酸フルチカゾン(サイズ4用量カップで51μgの投与に適切)および1.13%の硫酸アルブテロール(サイズ4用量カップで90μgの投与に適切)を含む最終混合物を得た。そして、最終混合物を乾燥粉末吸入デバイスのリザーバに充填した。このデバイスを30℃/65%RHの環境下で4週間にわたって包装無しでトレイに置いてコンディショニングを行い、安定性評価を行った。ArmonAirのデータと比較する際には、1ヶ月使用時データを時刻0とした。これは、ArmonAir製品は30℃/65%RHで6週間にわたって平衡化(コンディショニング)するためである。本実施例に関するデータは、
図24、
図25、表1、表2(混合物7として)に掲載する。
【0155】
実施例2
混合物10(低強度-Fp/Alb/α-ラクトース一水和物)の調製
プロピオン酸フルチカゾン(Fp)とα-ラクトース一水和物とを、TangoMixブレンダーを用いて0.5kgスケールで750rpmの高速混合プロセスで混合した。硫酸アルブテロール(Alb)とα-ラクトース一水和物担体とを、TangoMixブレンダーを使用して0.5kgスケールで750rpmの高せん断混合プロセスで混合した。次に、Fp含有混合物およびAlb含有混合物を等量ずつ加え、手動でタンブリングして(360度回転/50回)、0.5kgスケールで0.25%のプロピオン酸フルチカゾン(サイズ4用量カップで25μgの投与に適切)および1.13%の硫酸アルブテロール(サイズ4用量カップで90μgの投与に適切)を含む最終混合物を得た。そして、最終混合物を乾燥粉末吸入デバイスのリザーバに充填した。このデバイスを30℃/65%RHの環境下で4週間にわたって包装無しでトレイに置いてコンディショニングを行い、安定性評価を行った。ArmonAirのデータと比較する際には、1ヶ月使用時データを時刻0とした。これは、ArmonAir製品は30℃/65%RHで6週間にわたって平衡化(コンディショニング)するためである。本実施例に関するデータは、
図26、
図27、表2(混合物10として)に掲載する。
【0156】
実施例3
混合物11(低強度-Fp/Alb/α-ラクトース一水和物/ステアリン酸マグネシウム)の調製
α-ラクトース一水和物担体を、0.5kgスケールで0.5%のステアリン酸マグネシウム(MS)と共に手動でタンブリングした(360度回転/50回)。プロピオン酸フルチカゾン(Fp)と0.5%のMS/α-ラクトース一水和物担体とを、0.5kgスケールで750rpmの高速混合プロセスで混合した。硫酸アルブテロール(Alb)と0.5%のMS/α-ラクトース一水和物とを、0.5kgスケールで750rpmの高速混合プロセスで混合した。次に、Fp含有混合物およびAlb含有混合物を等量ずつ加え、手動でタンブリングして(360度回転/50回)、0.5kgスケールで0.25%のプロピオン酸フルチカゾン(サイズ4用量カップで25μgの投与に適切)、1.13%の硫酸アルブテロール(サイズ4用量カップで90μgの投与に適切)、0.5%のMSを含む最終混合物を得た。そして、最終混合物を乾燥粉末吸入デバイスのリザーバに充填した。このデバイスを30℃/65%RHの環境下で4週間にわたって包装無しでトレイに置いてコンディショニングを行い、安定性評価を行った。ArmonAirのデータと比較する際には、1ヶ月使用時データを時刻0とした。これは、ArmonAir製品は30℃/65%RHで6週間にわたって平衡化(コンディショニング)するためである。本実施例に関するデータは、
図26、
図27、表1(混合物11として)に掲載する。
【0157】
比較例1
RD1404(高強度-Fp/α-ラクトース一水和物)の調製
プロピオン酸フルチカゾン(Fp)と、α-ラクトース一水和物担体とを120rpmのブレンダーで高速混合プロセスで混合し、プロピオン酸フルチカゾン0.49%(サイズ4用量カップで51mcgの投与に適切)を含む単剤を得た。そして、最終混合物である単剤を乾燥粉末吸入デバイスのリザーバに充填した。デバイスは、ポリエチレン袋で包装したトレイに載せ、30℃/65%RHで6週間にわたってコンディショニングを行った。コンディショニング後にデバイスをCRT(乾燥剤と共に包装、25℃/60%RH)に6ヶ月間にわたって載置し、1ヶ月後と2ヶ月後に使用中評価(30℃/65%RH、包装無し)を実施した。本比較例に関するデータは、
図24、
図25、表1、表2(RD1404、ArmonAirレジストレーションバッチを参照)に掲載する。
【0158】
比較例2
RD1119(低強度-Fp/α-ラクトース一水和物)の調製
プロピオン酸フルチカゾン(Fp)と、α-ラクトース一水和物担体とを120rpmのブレンダーで高速混合プロセスで混合し、プロピオン酸フルチカゾン0.49%(サイズ3用量カップで25mcgの投与に適切)を含む単剤を得た。そして、最終混合物である単剤を乾燥粉末吸入デバイスのリザーバに充填した。デバイスは、ポリエチレン袋で包装したトレイに載せ、30℃/65%RHで6週間にわたってコンディショニングを行った。コンディショニング後にデバイスをCRT(乾燥剤と共に包装、25℃/60%RH)に6ヶ月間にわたって載置し、1ヶ月後と2ヶ月後に使用中評価(30℃/65%RH、包装無し)を実施した。本比較例に関するデータは、
図26、
図27、表1(RD1119)に掲載する。
【0159】
実施例および比較例で示した%はすべて、全組成物に対する重量%である。
【0160】
図表において上から下へと読むことは、棒(bar)を左から右へと読むことに対応する。
【0161】
表1は、実施例1から3および比較例1から2の混合物の安定性の相対的変化をそれぞれ示す。これらのデータは、使用中条件(30℃/65%相対湿度で包装なし)でのT1(1ヶ月)および6ヶ月後にそれぞれの混合物内に残っているプロピオン酸フルチカゾンの量を示す。同一条件下でT0(6週間にわたって平衡化)および6ヶ月後のArmonAirRespiclick単剤と比較している。
【0162】
表2は、プロピオン酸フルチカゾンの量が相対的に変化する様子を、比較例1(有効成分としてプロピオン酸フルチカゾンのみを含有)については2カ月間にわたって、実施例1/混合物7(有効成分としてプロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールの両方を含有)については5ヶ月間にわたって示す。
【0163】
有効成分量は、高速液体クロマトグラフ(UPLC)を用いて算出した。
【0164】
UPLCクロマトグラフは、Waters Acquity UPLC CSHフェニルヘキシル1.7μm、50mmx2.1mmカラムとインラインフィルターとを備えたWaters Acquity UPLCシステムを用いて実施した。試料をMeOH:MeCN:水(40:40:20)希釈液に溶解させ、移動相Aおよび移動相Bという2つの移動相でグラジエント溶出を行うことで精製した。移動相Aは、100%緩衝液(20mMリン酸二水素ナトリウム、85%オルトリン酸でpHpf3.1に調整)であり、移動相Bは100%アセトニトリルである。検出器セットのUV波長は238nmに設定した。
【0165】
表1。実施例1から3および比較例1から2で説明した混合物におけるプロピオン酸フルチカゾンの量の相対的な変化。(RD1404およびRD1119はプロピオン酸フルチカゾンを唯一の有効成分として含有。混合物7(実施例1)、混合物10(実施例2)および混合物11(実施例3)はそれぞれ、プロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールの両方を有効成分として含有)。表1において「MOC」はマイクロオリフィスコレクターを意味する。
【0166】
【0167】
表2。比較例1(有効成分としてプロピオン酸フルチカゾンのみを含有)および混合物7(有効成分としてプロピオン酸フルチカゾンおよび硫酸アルブテロールの両方を含有)におけるプロピオン酸フルチカゾンの量の相対的な変化。表2において「MOC」はマイクロオリフィスコレクターを意味する。
【0168】
【国際調査報告】