(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ヘテロ環化合物、それを含む有機発光素子、および有機発光素子の有機物層用組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 405/04 20060101AFI20230906BHJP
C07D 405/10 20060101ALI20230906BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20230906BHJP
C07D 409/04 20060101ALI20230906BHJP
C07D 409/14 20060101ALI20230906BHJP
C07D 491/048 20060101ALI20230906BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230906BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20230906BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230906BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230906BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20230906BHJP
H10K 50/18 20230101ALI20230906BHJP
C07D 495/04 20060101ALI20230906BHJP
H10K 101/25 20230101ALN20230906BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
C07D405/10
C07D405/14
C07D409/04
C07D409/14
C07D491/048
H10K85/60
H10K50/12
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K50/18
C07D495/04 105Z
H10K101:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511788
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2021009979
(87)【国際公開番号】W WO2022045606
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0106968
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513298491
【氏名又は名称】エルティー・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LT Materials Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】113-19, Dangha-Ro, Namsa-Myeon, Cheoin-Gu, Yongin-si, Gyeonggi-do 17118, korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ス-ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウィ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】モ,ジュン-テ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン-ジュン
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
4C063
4C071
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC12
3K107CC21
3K107CC24
3K107DD53
3K107DD59
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3K107DD75
3K107DD78
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB08
4C050CC16
4C050EE02
4C050FF05
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4C050HH03
4C063AA01
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4C071AA01
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4C071FF05
4C071GG01
4C071GG02
4C071JJ01
4C071JJ06
4C071KK11
4C071LL05
(57)【要約】
本出願は、ヘテロ環化合物、および前記ヘテロ環化合物が有機物層に含有されている有機発光素子および有機物層用組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるヘテロ環化合物:
【化28】
前記化学式1において、
Y1はO;またはSであり、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であり、mおよびnはそれぞれ0~3の整数であり、mおよびnがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
N-Hetは置換または非置換であり、Nを1つ以上含む単環または多環のヘテロ環基であり、
Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
RpおよびRqは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;あるいは、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基であり、pおよびqはそれぞれ0~3の整数であり、pおよびqがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【請求項2】
前記置換または非置換とは、重水素;シアノ基;ハロゲン基;炭素数1~60の直鎖または分枝鎖のアルキル;炭素数2~60の直鎖または分枝鎖のアルケニル;炭素数2~60の直鎖または分岐鎖のアルキニル;炭素数3~60の単環または多環のシクロアルキル;炭素数2~60の単環または多環のヘテロシクロアルキル;炭素数6~60の単環または多環のアリール;炭素数2~60の単環または多環のヘテロアリール;-SiRR’R’’;-P(=O)RR’;炭素数1~20のアルキルアミン;炭素数6~60の単環または多環のアリールアミン;および炭素数2~60の単環または多環のヘテロアリールアミンからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換または非置換されるか、前記例示の置換基の中から選択された少なくとも2つの置換基が連結された置換基で置換または非置換されることを意味し、前記R、R’およびR’’は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリールであることを意味する、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項3】
前記化学式1は、下記化学式1-1~1-4のいずれかで表される、請求項1に記載のヘテロ環化合物:
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
前記化学式1-1~1-4において、置換基の定義は化学式1と同一である。
【請求項4】
前記N-Hetは、下記化学式3で表される基である、請求項1に記載のヘテロ環化合物:
【化33】
前記化学式3において、
X1はCR1またはNであり、X2はCR2またはNであり、X3はCR3またはNであり、X4はCR4またはNであり、X5はCR5またはNであり、前記X1~X5のうち少なくとも1つはNであり、
R1~R5は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ基;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル基;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル基;置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ基;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル基;置換または非置換の炭素数2~60のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基;-P(=O)R10R12;およびNR13R14からなる群から選択されるか、互いに隣接する2以上の基は互いに結合して置換または非置換の脂肪族または芳香族炭化水素環またはヘテロ環を形成し、前記R10~R14は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基;置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
【化34】
は前記化学式1と連結される部位である。
【請求項5】
前記Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基;置換または非置換のビフェニル基;置換または非置換のターフェニル基;置換または非置換のフルオレニル基;または置換または非置換のナフチル基である、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項6】
前記RpおよびRqは水素である、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項7】
前記化学式1は、下記化合物のいずれかで表される、請求項1に記載のヘテロ環化合物:
【化35】
【請求項8】
第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極との間に設けられた少なくとも1層の有機物層を含み、前記有機物層の少なくとも1層は、請求項1~7のいずれか一項に記載のヘテロ環化合物を含む、有機発光素子。
【請求項9】
前記有機物層は、少なくとも1層の発光層を含み、前記発光層は、前記ヘテロ環化合物を含む、請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記発光層は、2つ以上のホスト物質を含んでもよく、前記ホスト物質のうち少なくとも1つは、前記ヘテロ環化合物を発光材料のホスト物質として含む、請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記有機発光素子は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔補助層および正孔阻止層からなる群から選択される1層または2層以上をさらに含む、請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記有機物層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を第1化合物として含み、下記化学式2で表されるヘテロ環化合物を第2化合物としてさらに含む、請求項8に記載の有機発光素子:
【化36】
前記化学式2において、
Y2はO;またはSであり、
L3およびL4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であり、aおよびbはそれぞれ0~3の整数であり、aおよびbがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
N-Hetは置換または非置換であり、Nを1つ以上含む単環または多環のヘテロ環基であり、
Ar3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
RrおよびRsは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;または、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基であり、rは0~2の整数であり、rが2である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、sはそれぞれ0~6の整数であり、sが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【請求項13】
前記化学式2は、下記化合物のいずれかで表される、請求項12に記載の有機発光素子:
【化37】
【請求項14】
請求項1に記載の前記化学式1で表されるヘテロ環化合物および下記化学式2で表されるヘテロ環化合物を含む、有機発光素子の有機物層用組成物:
【化38】
前記化学式2において、
Y2はO;またはSであり、
L3およびL4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であり、aおよびbはそれぞれ0~3の整数であり、aおよびbがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
N-Hetは置換または非置換であり、Nを1つ以上含む単環または多環のヘテロ環基であり、
Ar3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
RrおよびRsは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;または、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基であり、rは0~2の整数であり、rが2である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、sはそれぞれ0~6の整数であり、sが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【請求項15】
前記組成物内の前記化学式1で表されるヘテロ環化合物:前記化学式2で表されるヘテロ環化合物の重量比は、1:10~10:1である、請求項14に記載の有機発光素子の有機物層用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年08月25日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0106968号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【0002】
本明細書は、ヘテロ環化合物、それを含む有機発光素子、および有機発光素子の有機物層用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
電界発光素子は、自発光型表示素子の一種であり、視野角が広く、コントラストに優れるだけでなく、応答速度が速いという利点を有している。
【0004】
有機発光素子は、2つの電極間に有機薄膜を配置した構造を有している。このような構造の有機発光素子に電圧が印加されると、2つの電極から注入された電子と正孔が有機薄膜で結合して対を成した後、消滅しながら光を発する。前記有機薄膜は、必要に応じて単層または多層で構成されてもよい。
【0005】
有機薄膜の材料は、必要に応じて発光機能を有してもよい。例えば、有機薄膜材料としては、それ自体が単独で発光層を構成することのできる化合物が用いられてもよく、またはホスト-ドーパント系発光層のホストまたはドーパントの役割を果たせる化合物が用いられてもよい。他にも、有機薄膜の材料として、正孔注入、正孔輸送、電子遮断、正孔遮断、電子輸送、電子注入などの役割を果たすことのできる化合物が用いられてもよい。
【0006】
有機発光素子の性能、寿命または効率を向上させるために、有機薄膜の材料の開発が絶えず要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヘテロ環化合物、それを含む有機発光素子、および有機発光素子の有機物層用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の一実施態様は、下記化学式1で表されるヘテロ環化合物を提供する。
【化1】
【0010】
前記化学式1において、
Y1はO;またはSであり、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であり、mおよびnはそれぞれ0~3の整数であり、mおよびnがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
N-Hetは置換または非置換であり、Nを1つ以上含む単環または多環のヘテロ環基であり、
Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
RpおよびRqは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;あるいは、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基であり、pおよびqはそれぞれ0~3の整数であり、pおよびqがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【0011】
また、本出願の他の実施態様は、第1電極、第2電極および前記第1電極と第2電極との間に設けられた1層以上の有機物層を含み、前記有機物層のうち1層以上は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本出願の一実施態様によるヘテロ環化合物は、有機発光素子の有機物層材料として用いることができる。前記ヘテロ環化合物は、有機発光素子における正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、電荷生成層などの材料として用いられてもよい。特に、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物は、有機発光素子の発光層の材料として用いられてもよい。また、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物有機発光素子に用いる場合、素子の駆動電圧を下げ、光効率を向上させ、化合物の熱的安定性により素子の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1~
図4は、それぞれ本出願の一実施態様による有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
【
図2】
図1~
図4は、それぞれ本出願の一実施態様による有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
【
図3】
図1~
図4は、それぞれ本出願の一実施態様による有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
【
図4】
図1~
図4は、それぞれ本出願の一実施態様による有機発光素子の積層構造を概略的に示す図である。
【発明の実施のための最善の形態】
【0014】
以下、本出願について詳細に説明する。
【0015】
本出願の一実施態様は、下記化学式1で表されるヘテロ環化合物を提供する。
【化2】
【0016】
前記化学式1において、
Y1はO;またはSであり、
L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であり、mおよびnはそれぞれ0~3の整数であり、mおよびnがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
N-Hetは置換または非置換であり、Nを1つ以上含む単環または多環のヘテロ環基であり、
Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
RpおよびRqは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;あるいは、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基であり、pおよびqはそれぞれ0~3の整数であり、pおよびqがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【0017】
前記化学式1は、ジベンゾフランまたはジベンゾチオフェン構造にアミン基およびNを少なくとも1つ含む単環または多環のヘテロ環基を置換基として有することにより、電子がより豊富になり、これにより前記化学式1で表される化合物を素子に使用する場合、電流の流れがよくなり、駆動電圧が低くなる効果がある。また、前記化学式1は、正孔特性を有するアミン基を置換基として有することにより正孔輸送能力が優れるため、前記化学式1で表される化合物を素子に用いる場合、駆動電圧が低くなる効果がある。
【0018】
本明細書において、前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合された水素原子の代わりに他の置換基が結合することを意味し、置換される位置は、水素原子が結合する位置、すなわち、置換基が結合可能な位置であれば限定されず、2以上が置換される場合、2以上の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0019】
本明細書において、「置換または非置換」とは、重水素;シアノ基;ハロゲン基;炭素数1~60の直鎖または分枝鎖のアルキル;炭素数2~60の直鎖または分岐鎖のアルケニル;炭素数2~60の直鎖または分岐鎖のアルキニル;炭素数3~60の単環または多環のシクロアルキル;炭素数2~60の単環または多環のヘテロシクロアルキル;炭素数6~60の単環または多環のアリール;炭素数2~60の単環または多環のヘテロアリール;-SiRR’R’’;-P(=O)RR’’;炭素数1~20のアルキルアミン;炭素数6~60の単環または多環のアリールアミン;および炭素数2~60の単環または多環のヘテロアミンからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換または非置換されるか、前記例示された置換基の中から選択された少なくとも2つの置換基が連結された置換基で置換または非置換されることを意味し、前記R、R’およびR’’は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~炭素数60のアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリールであることを意味する。
【0020】
本明細書において、「化学式または化合物構造に置換基が表示されない場合」とは、炭素原子に水素原子が結合されたことを意味する。ただし、重水素(2H、Deuterium)は水素の同位元素であるため、一部の水素原子は重水素であってもよい。
【0021】
本出願の一実施態様において、「化学式または化合物構造に置換基が表示されない場合」は、置換基として来られる位置が全て水素または重水素であることを意味することができる。すなわち、重水素の場合、水素の同位元素であり、一部の水素原子は同位元素である重水素であってもよく、このとき重水素の含量は0%~100%であってもよい。
【0022】
本出願の一実施態様において、「化学式または化合物構造に置換基が表示されない場合」において、重水素の含量が0%、水素の含量が100%、置換基はいずれも水素など重水素を明示的に排除しない場合には、水素と重水素は化合物に混在して使用されてもよい。
【0023】
本出願の一実施態様において、重水素は水素の同位元素(isotope)の一つであり、プロトン(proton)1つと中性子(neutron)1つからなる重陽子(deuteron)を原子核(nucleus)として有する元素であり、水素-2で表すことができ、元素記号はDまたは2Hと書くことができる。
【0024】
本出願の一実施態様において、同位元素は、原子番号(atomic number,Z)は同一であるが、質量数(mass number,A)が異なる原子を意味する同位元素は、同数のプロトン(proton)を有するが、中性子(neutron)の数が異なる元素としても解釈できる。
【0025】
本出願の一実施態様において、特定置換基の含量T%の意味は、基本となる化合物が有し得る置換基の総数をT1と定義し、そのうち特定の置換基の数をT2と定義する場合、T2/T1×100=T%と定義することができる。
【0026】
すなわち、一例において、
【化3】
で表されるフェニル基において重水素の含量20%というのは、フェニル基が有し得る置換基の総数は5(式中T1)個であり、そのうち重水素の個数が1(式中T2)である場合、20%と表示されることができる。すなわち、フェニル基において重水素の含量20%というのは、下記構造式で表され得る。
【化4】
【0027】
また、本出願の一実施態様において、「重水素の含量が0%のフェニル基」の場合、重水素原子が含まれない、すなわち水素原子5つを有するフェニル基を意味してもよい。
【0028】
本明細書において、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってもよい。
【0029】
本明細書において、前記アルキル基は、炭素数1~60の直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよい。前記アルキル基の炭素数は、1~60、具体的には1~40、より具体的には1~20であってもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、前記アルケニル基は、炭素数2~60の直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよい。前記アルケニル基の炭素数は、2~60、具体的には2~40、より具体的には2~20であってもよい。具体例としては、ビニル基、1-プロぺニル基、イソプロぺニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、アリル基、1-フェニルビニル-1-イル基、2-フェニルビニル-1-イル基、2,2-ジフェニルビニル-1-イル基、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル基、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル基、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書において、前記アルキニル基は、炭素数2~60の直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよい。前記アルキニル基の炭素数は、2~60、具体的には2~40、より具体的には2~20であってもよい。
【0032】
本明細書において、アルコキシ基は、直鎖、分岐鎖または環鎖であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~20であることが好ましい。具体的には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシ、ベンジルオキシ、p-メチルベンジルオキシなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本明細書において、前記シクロアルキル基は、炭素数3~60の単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよい。ここで、多環とは、シクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合した基を意味する。ここで、他の環基とは、シクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えばヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記シクロアルキル基の炭素数は、3~60、具体的には3~40、さらに具体的には5~20であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などがあるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書において、前記ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロ原子としてO、S、Se、NまたはSiを含み、炭素数2~60の単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよい。ここで、多環とは、ヘテロシクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合した基を意味する。ここで、他の環基とは、ヘテロシクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えばシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記ヘテロシクロアルキル基の炭素数は、2~60、具体的には2~40、さらに具体的には3~20であってもよい。
【0035】
本明細書において、前記アリール基は、炭素数6~60の単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよい。ここで、多環とは、アリール基が他の環基と直接連結または縮合した基を意味する。ここで、他の環基とは、アリール基であってもよいが、他の種類の環基、例えばシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記アリール基はスピロ基を含む。前記アリール基の炭素数は、6~60、具体的には6~40、より具体的には6~25であってもよい。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、クリセニル基、フェナントレニル基、ぺリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、フェナレニル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基、インデニル基、アセナフチレニル基、ベンゾフルオレニル基、スピロビフルオレニル基、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル基、それらの縮合環基などが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
【0036】
本明細書において、ホスフィンオキシド基は-P(=O)R101R102で表され、R101およびR102は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;アルキル基;アルケニル基;アルコキシ基;シクロアルキル基;アリール基;およびヘテロ環基のうち少なくとも1つからなる置換基であってもよい。前記ホスフィンオキシド基は、具体的にはジフェニルホスフィンオキシド基、ジナフチルホスフィンオキシドなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0037】
本明細書において、シリル基はSiを含み、前記Si原子がラジカルとして直接結合される置換基であり、-SiR104R105R106で表され、R104~R106は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;アルキル基;アルケニル基;アルコキシ基;シクロアルキル基;アリール基;およびヘテロ環基の少なくとも1つからなる置換基であってもよい。シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
本明細書において、前記フルオレニル基は置換されてもよく、隣接した置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0039】
本明細書において、前記スピロ基は、スピロ構造を含む基として、炭素数15~60であってもよい。例えば、前記スピロ基は、フルオレニル基に2,3-ジヒドロ-1H-インデン基またはシクロヘキサン基がスピロ結合された構造を含んでもよい。具体的には、下記スピロ基は、下記構造式の基のいずれかを含んでもよい。
【化5】
【0040】
本明細書において、前記ヘテロアリール基は、ヘテロ原子としてS、O、Se、NまたはSiを含み、炭素数2~60の単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよい。ここで、前記多環とは、ヘテロアリール基が他の環基と直接連結または縮合した基を意味する。ここで、他の環基とは、ヘテロアリール基であってもよいが、他の種類の環基、例えばシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基などであってもよい。前記ヘテロアリール基の炭素数は、2~60、具体的には2~40、さらに具体的には3~25であってもよい。前記ヘテロアリール基の具体例としては、ピリジル基、ピロリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、フラニル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、フラザニル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ジチアゾリル基、テトラゾリル基、ピラニル基、チオピラニル基、ジアジニル基、オキサジニル基、チアジニル基、ジオキシニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、イソキナゾリニル基、キノゾリリル基、ナフチリジル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、イミダゾピリジニル基、ジアザナフタレニル基、トリアザインデン基、インドリル基、インドリジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、フェナジニル基、ジベンゾシロール基、スピロビ(ジベンゾシロール)、ジヒドロフェナジニル基、フェノキサジニル基、フェナントリジル基、イミダゾピリジニル基、チエニル基、インドロ[2,3-a]カルバゾリル基、インドロ[2,3-b]カルバゾリル基、インドリニル基、10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b、f]アゼピン基、9,10-ジヒドロアクリジニル基、フェナントラジニル基、フェノチアチアジニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾリル基、5,10-ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]アザシリニル、ピラゾロ[1,5-c]キナゾリニル基、ピリド[1,2-b]インダゾリル基、ピリド[1,2-a]イミダゾ[1,2-e]インドリニル基、5,11-ジヒドロインデノ[1,2-b]カルバゾリル基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
本明細書において、前記アミン基は、モノアルキルアミン基;モノアリールアミン基;モノヘテロアリールアミン基;-NH2;ジアルキルアミン基;ジアリールアミン基;ジヘテロアリールアミン基;アルキルアリールアミン基;アルキルヘテロアリールアミン基;およびアリールヘテロアリールアミン基からなる群から選択されてもよく、炭素数は特に限定されないが、1~30であることが好ましい。前記アミン基の具体例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、ジビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9-メチル-アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基、ビフェニルナフチルアミン基、フェニルビフェニルアミン基、ビフェニルフルオレニルアミン基、フェニルトリフェニレニルアミン基、ビフェニルトリフェニレニルアミン基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価基を意味する。これらはそれぞれ2価基であることを除いて、前述のアリール基の説明を適用することができる。また、ヘテロアリーレン基は、ヘテロアリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価基を意味する。これらはそれぞれ2価基であることを除いて、前述のヘテロアリール基の説明を適用することができる。
【0043】
本明細書において、「隣接した」基は、該当置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味し得る。例えば、ベンゼン環でオルソ(ortho)位置に置換された2つの置換基および脂肪族環で同一炭素に置換された2つの置換基は、互いに「隣接した」基と解釈されることができる。
【0044】
本出願の一実施態様によるヘテロ環化合物は、前記化学式1で表されることを特徴とする。より具体的には、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物は、前記のようなコア構造および置換基の構造的特徴によって有機発光素子の有機物層材料として用いられてもよい。
【0045】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のY1はO;またはSであってもよい。
他の一実施態様において、前記Y1はOである。
他の一実施態様において、前記Y1はSである。
【0046】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のL1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0047】
本出願の一実施態様において、前記L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~40のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~40のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0048】
本出願の一実施態様において、前記L1およびL2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0049】
本出願の一実施態様において、前記L1は直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であってもよい。
他の一実施態様において、前記L1は直接結合である。
また他の一実施態様において、前記L1は炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基である。
また他の一実施態様において、前記L1はフェニレン基である。
【0050】
本出願の一実施態様において、前記L2は直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であってもよい。
他の一実施態様において、前記L2は直接結合である。
また他の一実施態様において、前記L2は炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基である。
また他の一実施態様において、前記L2はフェニレン基である。
【0051】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のmおよびnはそれぞれ0~3の整数であり、mおよびnがそれぞれ2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
他の一実施態様において、前記mは0である。
また他の一実施態様において、前記mは1である。
また他の一実施態様において、前記mは2である。
また他の一実施態様において、前記mは3である。
【0052】
本出願の一実施態様において、前記mが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
他の一実施態様において、前記nは0である。
また他の一実施態様において、前記nは1である。
また他の一実施態様において、前記nは2である。
また他の一実施態様において、前記nは3である。
【0053】
本出願の一実施態様において、前記nが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0054】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のN-Hetは置換または非置換であり、Nを少なくとも1つ含む単環または多環のヘテロ環基であってもよい。
【0055】
本出願の一実施態様において、前記N-Hetは、下記化学式3で表される基であってもよい。
【化6】
【0056】
前記化学式3において、
X1はCR1またはNであり、X2はCR2またはNであり、X3はCR3またはNであり、X4はCR4またはNであり、X5はCR5またはNであり、前記X1~X5のうち少なくとも1つはNであり、
R1~R5は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ基;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル基;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル基;置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ基;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル基;置換または非置換の炭素数2~60のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基;-P(=O)R10R12;およびNR13R14からなる群から選択されるか、互いに隣接する2以上の基は、互いに結合して置換または非置換の脂肪族または芳香族炭化水素環またはヘテロ環を形成し、前記R10~R14は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基;置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
【化7】
は、前記化学式1と連結される部位である。
【0057】
本出願の一実施態様において、前記化学式3は、下記化学式3‐1~3-4のうち1つで表され得る。ここで、
【化8】
は前記化学式1と連結される部位である。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0058】
化学式3‐1において、X1、X3およびX5のうち少なくとも1つはNであり、残りは化学式3で定義したとおりであり、
化学式3‐2において、X1、X2およびX5のうち少なくとも1つはNであり、残りは化学式3で定義したとおりであり、
化学式3‐3において、X1~X3の少なくとも1つはNであり、残りは化学式3で定義したとおりであり、
化学式3‐4において、X1、X2およびX5のうち少なくとも1つはNであり、残りは化学式3で定義したとおりであり、
Z1はO;またはSであり、
R2、R4およびR6~R9は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ基;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル基;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル基;置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ基;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル基;置換または非置換の炭素数2~60のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基;-P(=O)R10R12;およびNR13R14からなる群から選択されるか、互いに隣接する2以上の基は互いに結合して置換または非置換の脂肪族または芳香族炭化水素環またはヘテロ環を形成し、前記R10~R14は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基;置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基である。
【0059】
本出願の一実施態様において、前記化学式3は、以下のグループAのいずれかで表されるものであってもよい。
【化13】
【0060】
前記グループAのR1~R5および
【化14】
の定義は化学式3のとおりである。
【0061】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のAr1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であってもよい。
【0062】
本出願の一実施態様において、前記Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~40のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~40のヘテロアリール基であってもよい。
【0063】
本出願の一実施態様において、前記Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~20のヘテロアリール基であってもよい。
【0064】
本出願の一実施態様において、前記Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基;置換または非置換のビフェニル基;置換または非置換のターフェニル基;置換または非置換のフルオレニル基;あるいは、置換または非置換のナフチル基であってもよい。
【0065】
本出願の一実施態様において、前記Ar1およびAr2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基;置換または非置換のビフェニル基;置換または非置換のターフェニル基;炭素数1~10のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つで置換または非置換のフルオレニル基;あるいは、置換または非置換のナフチル基であってもよい。
他の一実施態様において、前記化学式1のRpおよびRqは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;あるいは、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基であってもよい。
また他の一実施態様において、前記RpおよびRqは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;あるいは、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基であってもよい。
また他の一実施態様において、前記RpおよびRqは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;あるいは、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
また他の一実施態様において、前記RpおよびRqは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;または重水素であってもよい。
また他の一実施態様において、前記RpおよびRqは水素である。
【0066】
本出願の一実施態様において、前記化学式1のpおよびqはそれぞれ0~3の整数であり、pおよびqがそれぞれ2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
他の一実施態様において、前記pは0である。
また他の一実施態様において、前記pは1である。
また他の一実施態様において、前記pは2である。
また他の一実施態様において、前記pは3である。
【0067】
本出願の一実施態様において、前記pが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
他の一実施態様において、前記qは0である。
また他の一実施態様において、前記qは1である。
また他の一実施態様において、前記qは2である。
また他の一実施態様において、前記qは3である。
【0068】
本出願の一実施態様において、前記qが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0069】
本出願の一実施態様において、前記化学式1は、下記式1-1~1-4のいずれかで表され得る。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0070】
前記化学式1-1~1-4において、置換基の定義は化学式1と同一である。
【0071】
本出願の一実施態様によれば、前記化学式1は以下の化合物のいずれかで表されることができるが、これに限定されない。
【化19】
【0072】
また、前記化学式1の構造に様々な置換基を導入することにより、導入された置換基の固有特性を有する化合物を合成することができる。例えば、有機発光素子の製造に用いられる正孔注入層物質、正孔輸送用物質、発光層物質、電子輸送層物質および電荷生成層物質に主に用いられる置換基を前記コア構造に導入することにより、各有機物層で要求される条件を満たす物質を合成することができる。
【0073】
また、前記化学式1の構造に様々な置換基を導入することにより、エネルギーバンドギャップを微細に調節することが可能とし、一方で有機物の間の界面での特性を向上させ、物質の用途を多様にすることができる。
【0074】
一方、前記ヘテロ環化合物は、ガラス転移温度(Tg)が高く、熱的安定性に優れる。この熱的安定性の増加は、素子に駆動安定性を提供する重要な要因となる。
【0075】
本出願の一実施態様によるヘテロ環化合物は、多段階化学反応で製造することができる。一部の中間体化合物が先に製造され、その中間体化合物から化学式1の化合物が製造されてもよい。より具体的には、本出願の一実施態様によるヘテロ環化合物は、後述する製造例に基づいて製造されてもよい。
【0076】
本出願の他の実施態様は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む有機発光素子を提供する。前記「有機発光素子」は、「有機発光ダイオード」、「OLED(Organic Light Emitting Diodes)」、「OLED素子」、「有機電界発光素子」などの用語で表現することができる。
【0077】
前記ヘテロ環化合物は、有機発光素子の製造時に、真空蒸着法だけでなく、溶液塗布法により有機物層に形成されてもよい。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらに限定されるものではない。
【0078】
具体的には、本出願の一実施態様に係る有機発光素子は、第1電極、第2電極および前記第1電極と第2電極との間に設けられた1層以上の有機物層を含み、前記有機物層のうち1層以上は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む。前記有機物層に前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む場合、有機発光素子の発光効率および寿命に優れる。
【0079】
本出願の一実施態様において、前記第1電極は陽極であり、前記第2電極は陰極であってもよい。
【0080】
また他の一実施態様において、前記第1電極は陰極であり、前記第2電極は陽極であってもよい。
【0081】
本出願の一実施態様において、前記有機発光素子は赤色有機発光素子であり、前記化学式1によるヘテロ環化合物を赤色有機発光素子の材料として使用してもよい。前記化学式1によるヘテロ環化合物は、HOMOレベル(level)が高く、有機発光素子のレッド(red)ホストとしてさらに好適であるといえる。
【0082】
本出願の一実施態様において、前記化学式1によるヘテロ環化合物は、P型ホストとして使用されてもよい。
【0083】
本出願の有機発光素子において、前記発光層はドーパントをさらに含んでもよい。前記ドーパントとしては、当技術分野において通常の物質が使用されてもよく、(piq)2(Ir)(acac)のような物質が使用されてもよい。
【0084】
前記ドーパントの含量は、発光層全体を基準にして0.5重量%~5重量%、好ましくは1重量%~4重量%、さらに好ましくは1.5重量%~3.5重量%であってもよい。
【0085】
また、前記有機物層は、1層以上の発光層を含み、前記発光層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む。前記有機物層のうち、発光層に前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む場合、有機発光素子の発光効率および寿命により優れる。
【0086】
また、本出願の有機発光素子において、前記有機物層は、下記化学式2で表されるヘテロ環化合物をさらに含んでもよい。
【化20】
【0087】
前記化学式2において、
Y2はO;またはSであり、
L3およびL4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であり、aおよびbはそれぞれ0~3の整数であり、aおよびbがそれぞれ2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
N-Hetは置換または非置換であり、Nを1つ以上含む単環または多環のヘテロ環基であり、
Ar3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であり、
RrおよびRsは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;または、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル基であり、rは0~2の整数であり、rが2である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、sはそれぞれ0~6の整数であり、sが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【0088】
本出願の一実施態様において、前記化学式2のY2はO;またはSであってもよい。
他の一実施態様において、前記Y2はOである。
また他の一実施態様において、前記Y2はSである。
【0089】
本出願の一実施態様において、前記化学式2のL3およびL4は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0090】
本出願の一実施態様において、前記L3およびL4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~40のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~40のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0091】
本出願の一実施態様において、前記L3およびL4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0092】
本出願の一実施態様において、前記L3は直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であってもよい。
他の一実施態様において、前記L3は直接結合である。
また他の一実施態様において、前記L3は炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基である。
また他の一実施態様において、前記L3はフェニレン基である。
また他の一実施態様において、前記L3はナフチレン基である。
【0093】
本出願の一実施態様において、前記L4は直接結合;置換または非置換の炭素数6~60のアリーレン基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基であってもよい。
他の一実施態様において、前記L4は直接結合である。
また他の一実施態様において、前記L4は炭素数6~60のアリーレン基;または置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリーレン基である。
また他の一実施態様において、前記L4はフェニレン基である。
【0094】
本出願の一実施態様において、前記化学式2のaおよびbはそれぞれ0~3の整数であり、aおよびbがそれぞれ2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
他の一実施態様において、前記aは0である。
また他の一実施態様において、前記aは1である。
また他の一実施態様において、前記aは2である。
また他の一実施態様において、前記aは3である。
【0095】
本出願の一実施態様において、前記aが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
他の一実施態様において、前記bは0である。
また他の一実施態様において、前記bは1である。
また他の一実施態様において、前記bは2である。
また他の一実施態様において、前記bは3である。
【0096】
本出願の一実施態様において、前記bが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0097】
本出願の一実施態様において、前記化学式2のN-Hetは前記化学式1の定義が適用されてもよい。
【0098】
本出願の一実施態様において、前記化学式2のAr3は、置換または非置換の炭素数6~60のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~60のヘテロアリール基であってもよい。
【0099】
本出願の一実施態様において、Ar3は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~40のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~40のヘテロアリール基であってもよい。
【0100】
本出願の一実施態様において、前記Ar3は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~40のアリール基;あるいは、置換または非置換の炭素数2~40のヘテロアリール基であってもよい。
【0101】
本出願の一実施態様において、前記Ar3は置換または非置換のフェニル基;置換または非置換のビフェニル基;置換または非置換のフルオレニル基;あるいは、置換または非置換のナフチル基であってもよい。
【0102】
本出願の一実施態様において、前記Ar3は置換または非置換のフェニル基;置換または非置換のビフェニル基;炭素数1~10のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つで置換または非置換のフルオレニル基;あるいは、置換または非置換のナフチル基であってもよい。
【0103】
本出願の一実施態様において、前記化学式2のRrおよびRsは水素である。
【0104】
本出願の一実施態様によれば、前記化学式2は、下記化学式2-1~2-3のいずれかで表され得る。
【化21】
【化22】
【化23】
【0105】
前記化学式2-1~2-3において、置換基の定義は化学式2と同一である。
【0106】
本出願の一実施態様によれば、前記化学式2は、以下の化合物のいずれかで表されることができるが、これに限定されない。
【化24】
【0107】
また、前記有機物層は、1層以上の発光層を含み、前記発光層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を第1化合物として含み、前記化学式2で表されるヘテロ環化合物のうち1つを第2化合物としてさらに含む。前記有機物層のうち、発光層に前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む場合、有機発光素子の発光効率および寿命により優れる。
【0108】
本出願の一実施態様において、前記化学式2によるヘテロ環化合物はN型ホストとして使用されてもよい。
【0109】
これにより、強い正孔伝達特性を有するP型HOST化合物に該当する出願による前記化学式1で表されるヘテロ環化合物と、本出願によるN型HOST化合物に該当する前記化学式2で表されるヘテロ環化合物とを同時に含む場合、エキシプレックス(exciplex)現象が起きたと予想できる。
【0110】
また、前記化学式2の構造に様々な置換基を導入することにより、導入された置換基の固有特性を有する化合物を合成することができる。例えば、有機発光素子の製造に用いられる正孔注入層物質、正孔輸送用物質、発光層物質、電子輸送層物質および電荷生成層物質に主に用いられる置換基を前記コア構造に導入することにより、各有機物層から要求される条件を満たす物質を合成することができる。
【0111】
また、前記化学式2の構造に様々な置換基を導入することにより、エネルギーバンドギャップを微細に調整することを可能とし、一方で有機物間の界面での特性を向上させ、物質の用途を多様にすることができる。
【0112】
一方、前記ヘテロ環化合物はガラス転移温度(Tg)が高く、熱的安定性に優れる。このような熱的安定性の増加は、素子に駆動安定性を提供する重要な要因となる。
【0113】
本出願の一実施態様によるヘテロ環化合物は、多段階の化学反応で製造してもよい。一部の中間体化合物が先に製造され、その中間体化合物から化学式2の化合物が製造され得る。より具体的には、本出願の一実施態様によるヘテロ環化合物は、後述する製造例に基づいて製造されてもよい。
【0114】
また、前記有機物層は、少なくとも1層の発光層を含み、前記発光層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物および前記化学式2で表されるヘテロ環化合物のうち一つを同時に含む。前記有機物層のうち、発光層に前記化学式1で表されるヘテロ環化合物および前記化学式2で表されるヘテロ環化合物のうち1つを含む場合、エキシプレックス(exciplex)現象により有機発光素子の発光効率および寿命により優れる。
【0115】
本出願の有機発光素子において、前記有機物層は発光層を含み、前記発光層は、前記ヘテロ環化合物を発光材料のホスト物質として含んでもよい。
【0116】
本出願の有機発光素子において、前記発光層は2つ以上のホスト物質を含んでもよく、前記ホスト物質の少なくとも1つは前記ヘテロ環化合物を発光材料のホスト物質として含んでもよい。
【0117】
本出願の有機発光素子において、前記発光層は、2つ以上のホスト物質を予混合(pre-mixed)して使用してもよく、前記2つ以上のホスト物質のうち少なくとも1つは、前記ヘテロ環化合物を発光材料のホスト物質として含んでもよい。
【0118】
前記予混合(pre-mixed)とは、前記発光層は、2つ以上のホスト物質を有機物層に蒸着する前に、まず材料を混合して1つの供源に入れて混合することを意味する。
【0119】
本出願の有機発光素子において、前記発光層は、2つ以上のホスト物質を含んでもよく、前記2つ以上のホスト物質は、それぞれ1つ以上のp型ホスト材料およびn型ホスト材料を含み、前記ホスト物質の少なくとも1つは、前記ヘテロ環化合物を発光材料のホスト物質として含んでもよい。この場合、有機発光素子の駆動、効率、寿命に優れることができる。
【0120】
本出願の有機発光素子において、前記発光層が2つ以上のホスト物質を含む場合にもドーパントをさらに含んでもよい。前記ドーパントとしては、当技術分野で通常の物質が使用されてもよく、(piq)2(Ir)(acac)のような物質が使用されてもよい。
【0121】
前記ドーパントの含量は、発光層全体を基準にして0.5重量%~5重量%、好ましくは1重量%~4重量%、さらに好ましくは1.5重量%~3.5重量%であってもよい。
【0122】
本発明の有機発光素子は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔補助層および正孔阻止層からなる群から選択される1層または2層以上をさらに含んでもよい。
【0123】
本出願の一実施態様による有機発光素子は、上述のヘテロ環化合物を用いて有機物層を形成することを除いて、通常の有機発光素子の製造方法および材料によって製造されてもよい。
【0124】
また、本出願の他の実施態様は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物および前記化学式2で表されるヘテロ環化合物のうち一つを同時に含むものである有機発光素子の有機物層用組成物を提供する。
【0125】
本出願の他の実施態様は、前記組成物内の前記化学式1で表されるヘテロ環化合物:前記化学式2で表されるヘテロ環化合物の重量比は、1:10~10:1であり、1:8~8:1であってもよく、1:5~5:1であってもよく、1:2~2:1であってもよいが、これに限定されない。
【0126】
前記有機物層用組成物が含む化学式1で表されるヘテロ環化合物および前記化学式2で表される化合物についての具体的な内容は前述と同様である。
【0127】
図1~
図3に、本出願の一実施態様に係る有機発光素子の電極と有機物層の積層順序を例示した。しかしながら、これらの図によって本出願の範囲が限定されることを意図したものではなく、当技術分野で知られている有機発光素子の構造を本出願にも適用することができる。
【0128】
図1によれば、基板100上に陽極200、有機物層300、および陰極400が順次積層された有機発光素子が示されている。しかし、このような構造に限定されるものではなく、
図2のように、基板上に陰極、有機物層および陽極が順次積層された有機発光素子が具現されてもよい。
【0129】
図3は、有機物層が多層である場合を例示したものである。
図3に係る有機発光素子は、正孔注入層301、正孔輸送層302、発光層303、正孔阻止層304、電子輸送層305および電子注入層306を含む。しかしながら、このような積層構造によって本出願の範囲が限定されるものではなく、必要に応じて発光層を除いた残りの層は省略されてもよく、必要な他の機能層がさらに追加されてもよい。
【0130】
また、本出願の一実施態様による有機発光素子は、第1電極;前記第1電極上に設けられ、第1発光層を含む第1スタック;前記第1スタック上に設けられる電荷生成層;前記電荷発生層上に設けられ、第2発光層を含む第2スタック;および前記第2スタック上に設けられる第2電極を含む。
【0131】
このとき、前記電荷生成層は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含んでもよい。前記ヘテロ環化合物が電荷生成層に用いられる場合、有機発光素子の駆動、効率、寿命が優れることができる。
【0132】
また、前記第1スタックおよび第2スタックは、それぞれ独立して、上述した正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層などを1種以上さらに含んでもよい。
【0133】
本出願の一実施態様に係る有機発光素子として、2‐スタックタンデム構造の有機発光素子を下記
図4に例示的に示した。
【0134】
このとき、以下の
図4に記載の第1電子阻止層、第1正孔阻止層、第2正孔阻止層などは、場合によっては省略されてもよい。
【0135】
本出願の一実施態様に係る有機発光素子において、前記化学式1のヘテロ環化合物以外の材料を以下に例示するが、これらは例示のためのものであり、本出願の範囲を限定するものではなく、当技術分野に公知の材料で置き換えることができる。
【0136】
陽極材料としては、比較的仕事関数の大きい材料を用いることができ、透明導電性酸化物、金属または導電性高分子などを用いてもよい。前記陽極材料の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはそれらの合金;酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO2:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらに限定されない。
【0137】
陰極材料としては、比較的仕事関数の低い材料を用いることができ、金属、金属酸化物、または導電性高分子などを用いてもよい。前記陰極材料の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫、鉛のような金属またはそれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alのような多層構造物質などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
正孔注入材料としては、公知の正孔注入材料を用いることもでき、例えば、米国特許第4,356,429号に開示されている銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物または文献[Advanced Material、6、p.677(1994)]に記載されているスターバースト型アミン誘導体類、例えばトリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、4,4’,4’’-トリ[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、1,3,5-トリス[4-(3-メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(m-MTDAPB)、溶解性のある導電性高分子のポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonic acid)またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/Poly(4-styrenesulfonate))、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Polyaniline/Camphor sulfonic acid)またはポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(Polyaniline/Poly(4-styrene-sulfonate))などを用いてもよい。
【0139】
正孔輸送材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン系誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などが用いられてもよく、低分子または高分子材料が用いられてもよい。
【0140】
電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体などを使用することができ、低分子物質だけでなく、高分子物質が使用されてもよい。
【0141】
電子注入材料としては、例えば、LiFが当業界で代表的に使用されるが、本出願はこれに限定されない。
【0142】
発光材料としては、赤、緑、青の発光材料が用いられてもよく、必要に応じて2つ以上の発光材料を混合して使用することができる。また、発光材料として蛍光材料を用いてもよいが、燐光材料として用いてもよい。発光材料としては、単独で陽極と陰極からそれぞれ注入された正孔と電子を結合して発光させる材料が用いられてもよいが、ホスト材料とドーパント材料が共に発光に関与する材料を用いてもよい。
【0143】
本出願の一実施態様による有機発光素子は、使用される材料に応じて、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であってもよい。
【0144】
本出願の一実施態様によるヘテロ環化合物は、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどを始めとする有機電子素子においても有機発光素子に適用されるのと同様の原理で作用することができる。
【実施例】
【0145】
以下では、実施例を通じて本明細書をより詳細に説明するが、これらは本出願を例示するためのものであり、本出願の範囲を限定するものではない。
【0146】
【0147】
1)化合物3-eの製造
一つ口のラウンドボトムフラスコ(One neck Round Bottom Flask,One neck r.b.f)に(4-クロロ-2-メトキシフェニル)ボロン酸((4-chloro-2-methoxyphenyl)boronic acid)(化合物3-f)(30.98g、166.21mmol)、1-ブロモ-2-フルオロ-3-ヨードベンゼン(1-bromo-2-fluoro-3-iodobenzene)(50g、151.10mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Tetrakis(triphenylPhosphine)palladium(0))(8.73g、7.56mmol)、炭酸カリウム(Potassium carbonate)(41.77g、302.2mmol)、および1,4-ジオキサン/水(1,4-Dioxane/H2O)(500ml/150ml)の混合物を120℃で還流した。その後、ジクロロメタン(Dichloromethane)で抽出し、MgSO4で乾燥した。乾燥後、カラム(Column)精製して化合物3-eを得た。(34.8g、73%)
【0148】
2)化合物3-dの製造
一つ口のラウンドボトムフラスコ(One neck Round Bottom Flask,One neck r.b.f)に2’-ブロモ-4-クロロ-6’-フルオロ-2-メトキシ-1,1’-ビフェニル(2’-bromo-4-chloro-6’-fluoro-2-methoxy-1,1’-biphenyl)(化合物3-e)(34.8g、110.28mmol)、およびメチレンクロライド(MethyleneChloride,MC)(348ml)混合物を0℃に温度を下げ、BBr3(20.9ml、220.56mmol)を滴下し、常温に昇温して2時間撹拌した。蒸留水で反応を終了し、ジクロロメタン(Dichloromethane)で抽出し、MgSO4で乾燥した。乾燥後、シリカゲルフィルター後、濃縮して化合物3-dを得た。(33.25g、100%)
【0149】
3)化合物3-cの製造
一つ口のラウンドボトムフラスコ(One neck Round Bottom Flask,One neck r.b.f)に2’-ブロモ-4-クロロ-6’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール(2’-bromo-4-chloro-6’-fluoro-[1,1’-biphenyl]-2-ol)(化合物3-d)(33.25g、110.27mmol)、Cs2CO3(71.86g、220.54mmol)、およびジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)(330ml)混合物を150℃で撹拌した。冷却後、フィルターし、濾液の溶媒をシリカゲルフィルターして化合物3-cを得た。(24.84g、80%)
【0150】
4)化合物3-bの製造
一つ口のラウンドボトムフラスコ(One neck Round Bottom Flask,One neck r.b.f)に1-ブロモ-7-クロロジベンゾ[b,d]フラン(1-bromo-7-chlorodibenzo[b,d]furan)(化合物3-c)(24.84g、88.23mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(Bis(pinacolato)diboron)(44.81g、176.46mmol)、カリウムアセテート(Potassium acetate)(25.98g、264.69mmol)、PdCl2(dppf)(3.23g、4.41mmol)、および1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)(240ml)混合物を140℃で還流した。その後、ジクロロメタン(Dichloromethane)で抽出し、濃縮後、シリカゲルフィルターして化合物3-bを得た。(34.79g、over収率)
【0151】
5)化合物3-aの製造
一つ口のラウンドボトムフラスコ(One neck Round Bottom Flask,One neck r.b.f)に2-(7-クロロジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-(7-chlorodibenzo[b,d]furan-1-yl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)(化合物3-d)(34.79g、105.87mmol),2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(2-chloro-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine)(A)(31.18g、116.46mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))(6.12g、5.29mmol)、炭酸カリウム(Potassium carbonate)(29.26g、211.74mmol) 、および1,4-ジオキサン/水(1,4-dioxane/water)(340ml/102ml)混合物を120℃で3時間還流した。この後、常温(Room Temperature、RT)でフィルター後、蒸留水およびアセトン(Acetone)で洗浄して化合物3-aを得た。(44.56g、97%)
【0152】
6)目的化合物3の製造
一つ口のラウンドボトムフラスコ(One neck Round Bottom Flask,One neck r.b.f)に2-(7-クロロジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(2-(7-chlorodibenzo[b,d]furan-1-yl)-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine)(化合物3-a)(44.56g、102.70mmol),ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)アミン(di([1,1’-biphenyl]-4-yl)amine)(B)(36.31g、112.97mmol),Pd(dba)2(5.95g、5.14mmol)、水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide)(8.22g、205.4mmol)、SPhos(6.32g、15.41mmol)およびキシレン(Xylene)(445ml)混合物を180℃で8時間(h)還流した。これを冷やした後、フィルターし、蒸留水およびアセトン(Acetone)で洗浄して目的化合物3を得た。(61.28g、83%)
【0153】
前記製造例1の目的化合物3の製造過程において、2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(2-chloro-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine)(A)およびジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)アミン(di([1,1’-biphenyl]-4-yl)amine)(B)を用いる代わりに、それぞれ下記表1の中間体AおよびBを用いることを除いて、同じ製造方法で下記表1の目的化合物を製造した。
【0154】
【0155】
前記製造例1と同様の方法で化合物を製造し、前記製造例以外の化合物も全て合成し、その合成確認結果を下記表2および表3に示した。下記表2はFD‐質量分析計(FD-MS:Field desorption mass spectrometry)の測定値であり、下記表3は1H NMR(CDCl3、200Mz)の測定値である。
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
化合物183-2の合成
化合物183-3 5g(13.5mmol)、化合物SM1 4.6g(16.2mmol)、Pd(PPh3)4(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))0.8g(0.67mmol)およびK2CO3 3.7g(27mmol)を250mLの丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気を作った後、1,4-ジオキサン80mLおよびH2O 20mLを入れ、120℃で12時間撹拌した。反応が終了した後、反応温度を室温に下げ、水で洗浄し、メチレンクロライドで抽出した。抽出した有機溶媒をMg2SO4で乾燥した後、濃縮した。シリカゲルカラムおよび再結晶して白色固体の化合物183-2 2.9g(6.5mmol、収率48%)を得た。
【0160】
化合物183-1の合成
化合物183-2 2.9g(6.5mmol)、化合物4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-octamethyl-2,2’-bi(1,3,2-dioxaborolane))2.5g(9.8mmol),Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))0.3g(0.3mmol)、XPhos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル)1.2g(2.6mmol)およびKOAc1.3g(13mmol)を100mLの丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気を作った後、1,4-ジオキサン50mLを入れ、110℃で3時間撹拌した。反応が終了した後、反応温度を室温に下げ、水で洗浄し、メチレンクロライドで抽出した。抽出した有機溶媒をMg2SO4で乾燥した後、濃縮した。シリカゲルカラムおよび再結晶して白色固体化合物183-1 3.0g(5.54mmol、収率85%)を得た。
【0161】
化合物183の合成
化合物183-1 3.0g(5.54mmol)、化合物SM2 1.8g(6.6mmol)、Pd(PPh3)4 0.3g(0.27mmol)およびK2CO31.5g(11mmol)を100mLの丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気を作った後、1,4-ジオキサン40mLおよびH2O 10mLを入れ、120℃で4時間撹拌した。反応が終了した後、反応温度を室温に下げ、水で洗浄し、メチレンクロライドで抽出した。抽出した有機溶媒をMg2SO4で乾燥した後、濃縮した。シリカゲルカラムおよび再結晶して黄色固体化合物183 3.1g(4.7mmol、収率85%)を得た。
【0162】
前記製造例1において、SM1の代わりに下記表4の中間体Aを用い、SM2の代わりに下記表4の中間体Bを用いたことを除いて、前記製造例1の製造と同様の方法で製造して目的化合物を合成した。
【0163】
【0164】
<実験例1>
1)有機発光素子の製造
1,500Åの厚さでインジウムチンオキシド(ITO、Indium Tinoxide)が薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水超音波で洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、アセトン、メタノール、イソプロピルアルコールなどの溶剤で超音波洗浄を行い乾燥させた後、UV(Ultraviolet)洗浄機でUVを用いて5分間UVO(Ultraviolet Ozone)処理した。その後、基板をプラズマ洗浄機(PT)に移送した後、真空状態でITO仕事関数および残膜除去のためにプラズマ処理を行い、有機蒸着用熱蒸着装置に移送した。
【0165】
前記ITO透明電極(陽極)上に共通層である正孔注入層2-TNATA(4,4’,4’’-Tris[2-naphthyl(phenyl)amino]triphenylamine)および正孔輸送層NPB(N,N’-Dinaphthyl)-N,N’-diphenyl-(1,1’-biphenyl)-4,4’-diamine)を形成した。
【0166】
その上に発光層を次のように熱真空蒸着した。具体的には、発光層の赤色ホストとして、下記表5の実施例1~5および比較例1~4に記載の化合物を用い、赤色燐光ドーパントである(piq)2(Ir)(acac)を前記赤色ホストに3wt%ドーピングして厚さ500Åの発光層を蒸着した。その後、正孔阻止層としてバソクプロイン(Bathocuproine、以下、BCP)を60Å蒸着し、その上に電子輸送層としてAlq3を200Å蒸着した。
【0167】
最後に、電子輸送層上にリチウムフルオリド(lithium fluoride:LiF)を10Åの厚さに蒸着して電子注入層を形成した後、電子注入層上にアルミニウム(Al)陰極を1,200Åの厚さに蒸着して陰極を形成することにより、有機発光素子を作製した。
【0168】
また、発光層の蒸着過程で緑色ホストとして下記表5の実施例6~8に記載の化合物を用い、緑色燐光ドーパントであるIr(ppy)3を前記緑色ホストに発光層全体重量を基準に7wt%ドーピングして厚さ500Åの発光層を蒸着することを除いて、実施例1~5および比較例1~4の有機発光素子と同一の製造方法で有機発光素子を製造した。
【0169】
一方、OLED素子作製に必要な全ての有機化合物は、材料別にそれぞれ10-6~10-8torr下で真空昇華精製してOLED作製に使用した。
【0170】
具体的には、比較例1~4に用いられた化合物A~Dは以下のとおりであった。
【化27】
【0171】
2)有機発光素子の駆動電圧および発光効率
前記のようにして製造された実施例1~8および比較例1~4の有機発光素子について、マックサイエンス社のM7000で電界発光(EL)特性を測定し、その測定結果をもってマックサイエンス社で製造された寿命測定装置(M6000)を通じて基準輝度が6,000cd/m2のとき、T90を測定した。前記T90は、初期輝度に対して90%となる時間である寿命(単位:h、時間)を意味する。
測定された有機発光素子の特性は、下記表5のとおりであった。
【0172】
【0173】
発光層の材料として分子量の高い化合物を用いる場合、分子間の結合力が高く蒸気化が難しいため、蒸着工程を進行しにくく、分子量が低い化合物の場合、溶媒の選択に困難が生じることがあるが、本出願による前記化学式1で表されるヘテロ環化合物は、熱安定性が高いながらも、有機発光素子の発光層に用いるのに適した分子量を有する。これは、本出願による化学式1で表される化合物は、有機発光素子の発光層の形成に容易な物質であることを意味する。また、化学式1で表される化合物が有するバンドギャップは、発光層の電子と正孔の損失を防ぎ、効果的な再結合領域(recombination zone)の形成に役立つ。
【0174】
すなわち、本出願による前記化学式1で表されるヘテロ環化合物のように、適当な位置に置換されたアリールアミン基が付いた化合物は、その位置に置換されたアリールアミン基の強い正孔伝達(Hole Transfer,HT)特性がドーパントから起こる正孔阻止(Hole trap)現象を解消することを確認することができる。また、電子輸送(Electron Transfer、ET)グループに応じてしきい値電圧を調節することができる。
【0175】
具体的には、本出願の化学式1で表されるヘテロ環化合物は、HOMO、LUMOの電子雲が広がっておらず分離されることが確認できた。その反面、比較化合物A~Dの場合、HOMO、LUMOの電子雲が広がっていることが確認できた。電子雲が広がっておらず分離されているほど、ドーパントで起こる正孔阻止(Hole trap)現象を解消することがより容易である。
【0176】
また、下記表6のように、振動子強度(oscillator strength)値を計算した結果、本出願の化学式1で表されるヘテロ環化合物より比較化合物A~Dの場合、その値が著しく低いことが確認できた。これは、本出願の化学式1で表されるヘテロ環化合物の蛍光物質吸光度がより優れていることを意味する。すなわち、本出願の化学式1で表されるヘテロ環化合物を用いた有機発光素子の場合、発光層に用いるのに一層優れた物質であることが確認できた。
【0177】
最後に、本出願の化学式1で表されるヘテロ環化合物の場合、比較化合物A~Dよりも蛍光量子効率(Photoluminescence Quantum Yeid、PLQY)値が高いことも確認できた。その結果、本出願の化学式1で表されるヘテロ環化合物を用いた有機発光素子の場合、素子寿命に優れることが確認できた。
【0178】
このような違いは、本出願による前記化学式1で表されるヘテロ環化合物の場合、適切な位置に置換されたアリールアミン基が置換されているためと判断される。
【0179】
【0180】
したがって、前記表5の素子評価から分かるように、比較例よりも本出願による前記化学式1で表されるヘテロ環化合物が改善されたパフォーマンスを示す。すなわち、前記表5の素子評価から分かるように、前記本出願による前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を有機発光素子の発光層として用いる場合、そうでない場合に比べて、寿命、効率、および駆動電圧の特性で優れた効果を示すことが確認できた。
【0181】
<実験例2>
1)有機発光素子の製造
1,500Åの厚さでインジウムチンオキシド(ITO、Indium Tinoxide)が薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水超音波で洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、アセトン、メタノール、イソプロピルアルコールなどの溶剤で超音波洗浄を行い乾燥させた後、UV(Ultraviolet)洗浄機でUVを用いて5分間UVO(Ultraviolet Ozone)処理した。その後、基板をプラズマ洗浄機(PT)に移送した後、真空状態でITO仕事関数および残膜除去のためにプラズマ処理を行い、有機蒸着用熱蒸着装置に移送した。
【0182】
前記ITO透明電極(陽極)上に第1正孔注入層2-TNATA(4,4’,4’’-Tris[2-naphthyl(phenyl)amino]triphenylamine)および第1正孔輸送層NPB(N,N’-)Di(1-naphthyl)-N,N’-diphenyl-(1,1’-biphenyl)-4,4’-diamine)を形成した。
【0183】
その上に第1の発光層を以下のように熱真空蒸着した。具体的には、第1発光層の赤色ホストとして第1ホストである下記表7に記載の本出願の前記化学式1で表されるヘテロ環化合物および第2ホストである下記表7に記載の本出願の前記化学式2で表されるヘテロ環化合物を下記表7に記載の割合で混合して使用し、赤色燐光ドーパントである(piq)2(Ir)(acac)を前記赤色ホストに第1発光層の全体重量を基準に2wt%ドーピングして厚さ400Åの第1発光層を蒸着した。
【0184】
その後、第1電子輸送層としてAlq3を120Å蒸着し、その上にN型電荷生成層としてBphenを120Å蒸着し、その上にP型電荷生成層としてMoO3を100Å蒸着した。また、P型電荷生成層上に第2正孔輸送層NPB(N,N’-Di(1-naphthyl)-N,N’-diphenyl-(1,1’-biphenyl)-4,4’-diamine)を形成させた。
【0185】
その上に第2発光層を次のようにして熱真空蒸着した。具体的には、第2発光層の赤色ホストとして第1ホストである下記表6に記載の本出願の前記化学式1で表されるヘテロ環化合物および第2ホストである下記表6に記載の本出願の前記化学式2で表されるヘテロ環化合物を下記表6に記載の割合で混合して使用し、赤色燐光ドーパントである(piq)2(Ir)(acac)を前記赤色ホストに第2発光層の全重量を基準に2wt%ドーピングして厚さ400Åの第2発光層を蒸着した。
【0186】
その後、第2電子輸送層としてAlq3を300Å蒸着した。最後に、第2電子輸送層上にリチウムフルオリド(lithium fluoride:LiF)を20Å厚さに蒸着して電子注入層を形成した後、電子注入層上にアルミニウム(Al)陰極を1,200Åの厚さに蒸着して陰極を形成することにより、比較例5および実施例9~30の有機電界発光素子を作製した。
【0187】
一方、OLED素子の作製に必要な全ての有機化合物は、材料別にそれぞれ10-6~10-8torr下で真空昇華精製してOLED作製に使用した。
【0188】
また、本出願による前記化学式1で表示されるヘテロ環化合物はP型HOST化合物に該当し、本出願による前記化学式2で表されるヘテロ環化合物はN型HOST化合物に該当する。したがって、下記表6のN:Pは、N型HOST化合物(前記化学式2で表される化合物)とP型HOST化合物(前記化学式1で表される化合物)との重量比を意味する。より具体的には、第1ホストと第2ホストの重量比を意味する。
【0189】
2)有機発光素子の駆動電圧および発光効率
前記のようにして製造された比較例5および実施例9~30の有機発光素子について、マックサイエンス社のM7000で電界発光(EL)特性を測定し、その測定結果をもってマックサイエンス社で製造された寿命測定装備(M6000)により基準輝度が6,000cd/m2のとき、T90を測定した。
本発明の有機電界発光素子の特性は、下記表7のとおりである。
【0190】
【0191】
前記表7の素子評価から分かるように、有機発光素子の有機物層を本出願に係る前記化学式1で表されるヘテロ環化合物および前記化学式2で表されるヘテロ環化合物を混合して蒸着する場合、有機発光素子がより優れた駆動を示し、効率および寿命効果を示すことが確認できた。
【0192】
この結果は、アリールアミン基を含む化合物の寿命が減少する現象を改善した結果と判断することができる。これは、強い正孔伝達特性を有するP型HOST化合物に該当する出願による前記化学式1で表されるヘテロ環化合物と、本出願に係るN型HOST化合物に該当する前記化学式2で表されるヘテロ環化合物とを同時に含む場合、エキシプレックス(exciplex)現象が起こったと予想することができる。
【0193】
エキシプレックス(exciplex)現象は、N型HOST化合物およびP型HOST化合物の2分子間の電子交換によりドナー(p-host)のHOMOレベル、アクセプタ(n-host)のLUMOレベルの大きさのエネルギーを放出する現象である。正孔輸送能力のよいドナー(p-host)と電子輸送能力のよいアクセプタ(n-host)が発光層のホストとして用いられる場合、正孔はp-hostに注入され、電子はn-hostに注入されるため、駆動電圧を下げることができ、それにより寿命向上に役立つことができる。
【国際調査報告】