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特表2023-539105オペランドの電池状態監視の方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】オペランドの電池状態監視の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230906BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230906BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20230906BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20230906BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 Z
G01R31/382
G01R31/385
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512087
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2021113083
(87)【国際公開番号】W WO2022037589
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010832469.7
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512000260
【氏名又は名称】ジナン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Jinan University
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】グゥオ、トゥアン
(72)【発明者】
【氏名】マイ、ヤオフア
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ジアチィァン
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ、シホン
(72)【発明者】
【氏名】リ、カイウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ゾン、ハイ
(72)【発明者】
【氏名】タラスコン、ジャン-マリー
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
5H030AA09
5H030AS20
5H030FF51
(57)【要約】
【要約】
電気化学デバイスの状態をオペランド、インサイチュ、およびリアルタイムで監視するための方法およびシステムが、電気化学装置内の光ファイバープローブによる電池によって提供される。この方法は、入力光を光ファイバプローブに入射させ、そこから伝達された出力光を検出する工程と、出力光に基づいて、電気化学装置の健全状態を判定する工程とを含む。判定工程は、屈折率の変化、クラッドモードまたは表面プラズモン共鳴の変化に基づくことができ、すべて出力光に由来し、前の状態と比較した現在の状態である。この方法では、電気化学装置内の充電状態、温度、圧力、歪み、変位、振動、ガス放出などの他のパラメータを同時に検出できる。補正用のコアモードにより、これらのパラメータの判定も高い精度を実現できる。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置の内部に配置された光ファイバープローブによって前記電気化学装置の状態を監視する方法であって、
(1)入力光を前記光ファイバープローブに入射させ、前記光ファイバープローブから伝達された出力光を検出する工程と、
(2)前記出力光に基づいて前記電気化学装置の健全状態(SoH)を判定する工程と、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記出力光に基づいて前記電気化学装置の健全状態(SoH)を判定する工程(2)が、以下のサブ工程:
(i)前記出力光に基づいて屈折率を取得する工程と、
(ii)前記電気化学装置の前の状態に対する前記屈折率の変化に基づいて、前記電気化学装置のSoHを判定する工程と、
を有するものである、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記出力光に基づいて屈折率を取得するサブ工程(i)は、以下のサブ工程:
(a)前記出力光からクラッドモードまたは表面プラズモン共鳴(SPR)のうちの1つを取得する工程と、
(b)前記クラッドモードまたはSPRの1つに基づいて前記屈折率を計算する工程と、
を有するものである、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記出力光からクラッドモードまたは表面プラズモン共鳴(SPR)のうちの1つを取得するサブ工程(a)において、前記出力光からコアモードがさらに取得され、前記サブ工程(b)では、前記コアモードの補正と共に前記屈折率がさらに計算されるものである、方法。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の方法において、前記電気化学装置の前の状態に対する前記屈折率の変化に基づいて前記電気化学装置のSoHを判定するサブ工程(ii)は、前記屈折率が電気化学装置の前の状態と比較して少なくとも1%変化した場合、前記電気化学装置は不健全と判定するものである、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記出力光に基づいて前記電気化学装置の健全状態(SoH)を判定する工程(2)は、以下のサブ工程:
(i)前記出力光からクラッドモードまたは表面プラズモン共鳴(SPR)のうちの1つを取得する工程と、
(ii)前記電気化学装置の前の状態に対する前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの1つの波長シフトまたは振幅変化に基づいて前記電気化学装置のSoHを判定する工程と、
を有するものである。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記電気化学装置の前の状態に対する前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの1つの波長シフトまたは振幅変化に基づいて前記電気化学装置のSoHを判定するサブ工程(ii)は、時間、電圧、電流、抵抗、および容量からなる群から選択された1つに関して、前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの1つの微分を取る工程と、前記微分に基づいて前記電気化学デバイスのSoHを判定する工程とを有するものである、方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法において、
請求項7記載の方法において、前記電気化学装置の前の状態に対する前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの1つの波長シフトまたは振幅変化に基づいて前記電気化学装置のSoHを判定するサブ工程(ii)は、(a)クラッドモードまたはSPRのうちの1つの振幅または波長が、電気化学装置の前の状態に対して少なくとも1%変化した場合、電気化学装置が不健全であると判定する工程を有するものである、方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、
前記光ファイバープローブの検出面の少なくとも一部が前記電気化学装置の電解質と接触しており、前記サブ工程(a)において前記電気化学装置が不健全であると判定する工程は、前記電解質が不健全であることを判定する工程を有するものである、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、
前記出力光に基づいて前記電気化学装置の健全状態(SoH)を判定する工程(2)は、以下のサブ工程:
(i)前記出力光からクラッドモードまたは表面プラズモン共鳴(SPR)のうちの1つを取得する工程と、
(ii)前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの前記1つに少なくとも1つの二次ピークが存在する場合、前記電気化学装置が不健全であると判定する工程と、
を有するものである、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記光ファイバープローブは、前記電気化学装置の電極の内部または近傍
にあり、前記電気化学装置が不健全であると判定するサブ工程(2)は、前記電極が不健全であると判定する工程を含むものである、方法。
【請求項12】
前記のいずれか1項に記載の方法において、入力光を前記光ファイバープローブに入射させ、前記光ファイバープローブから伝達された出力光を検出する工程(1)の後に、前記出力光に基づいて、前記電気化学装置の充電状態(SoC)を判定する工程をさらに含むものである、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記出力光に基づいて、前記電気化学装置の充電状態(SoC)を判定する工程は、以下のサブ工程:
(i)前記出力光からクラッドモードまたはSPRのうちの1つを取得する工程と、
(ii)前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの前記1つに基づいて、前記電気化学装置のSoCを判定する工程と、
を有するものである、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、
前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの前記1つに基づいて、前記電気化学装置のSoCを判定するサブ工程(ii)は、前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの前記1つに基づいて屈折率を計算する工程と、前記屈折率に基づいてSoCを判定する工程と、を有するものである、方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法において、前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの前記1つに基づいて、前記電気化学装置のSoCを判定するサブ工程(ii)は、時間、電圧、電流、抵抗、容量の群から選択された1つに関して前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの前記1つの微分を取る工程と、前記微分に基づいて SoCを判定する工程と、を有するものである、方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載の方法において、
前記出力光からクラッドモードまたはSPRのうちの1つを得るサブ工程(i)において、コアモードが前記出力光からさらに取得され、前記クラッドモードまたは前記SPRのうちの前記1つに基づいて、前記電気化学装置のSoCを判定するサブ工程(ii)において、SoCは、前記コアモードの更なる補正と一緒に判定されるものである、方法。
【請求項17】
前記いずれか1項の請求項に記載の方法において、入力光を前記光ファイバープローブに入射させ、前記光ファイバープローブから伝達された出力光を検出する工程(1)の後に、前記出力光に基づいて、前記電気化学装置内の温度、圧力、歪み、変位、振動、またはガスの内の少なくとも1つを判定する工程を有するものである、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記出力光に基づいて、前記電気化学装置内の温度、圧力、歪み、変位、振動、またはガスの内の少なくとも1つを判定するサブ工程において、前記ガスは、O、H、CO、CO、C、CH、またはHFのうちの少なくとも1つを含むものである、方法。
【請求項19】
電気化学装置の状態を監視するためのシステムであって、
前記電気化学装置内に配置された光ファイバープローブと、
光源装置であって、前記光ファイバープローブの第1の端部に光学的に結合され、前記光ファイバープローブに入力光を提供するように構成されている光源装置と、
前記光ファイバープローブに光学的に結合された信号検出処理装置であって、前記信号検出処理装置は、前記光ファイバープローブからの出力光を受信し、前記出力光から信号を取得し、請求項1~17に記載の方法のいずれかに記載の工程(2)が実施されるように前記信号を処理するように構成される信号検出処理装置と、
を有する、システム。
【請求項20】
請求項19記載のシステムにおいて、
前記光ファイバープローブは、グレーティング付き光ファイバー、キャビティ付き光ファイバー、マイクロファイバー、ナノファイバー、テーパーファイバー、側面研磨ファイバー、微細構造ファイバー、およびフォトニック結晶ファイバーからなる群から選択される1つである、システム。
【請求項21】
請求項20記載のシステムにおいて、
前記光ファイバープローブは、グレーティングを有する光ファイバであり、前記グレーティングのタイプは、ファイバブラッググレーティング(FBG)、傾斜ファイバブラッググレーティング(TFBG)、長周期ファイバグレーティング(LPG)、チャープファイバーグレーティング、および位相シフトグレーティングからなる群から選択される1つである、システム。
【請求項22】
請求項21記載のシステムにおいて、前記グレーティングのタイプは、傾斜ファイバブラッググレーティング(TFBG)である、システム。
【請求項23】
請求項22記載のシステムにおいて、前記光ファイバープローブは、コアと、前記コアを取り囲むクラッドとを含み、前記コアには、この縦軸に対して90°未満の傾斜角を有する傾斜グレーティングが設けられるものである、システム。
【請求項24】
請求項23記載のシステムにおいて、
前記傾斜グレーティングの傾斜角度は、約2°~45°の範囲である、システム。
【請求項25】
請求項23または24記載のシステムにおいて、
光ファイバープローブは、前記クラッドの外面をコーティングするSPR層をさらに有し、前記SPR層は、表面プラズモン共鳴(SPR)に対して活性的な組成物を有し、前記組成物は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)、半導体材料、金属酸化物材料、二次元(2D)材料、または光メタマテリアルのうちの少なくとも1つを含むものである、システム。
【請求項26】
請求項25記載のシステムにおいて、
前記光ファイバープローブは、前記SPR層の外面上に保護フィルム層をさらに有し、前記保護フィルム層は、ダイヤモンド、シリコン、酸化インジウムスズ(ITO)、過酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)酸化インジウム(In□O□)、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)のうちの少なくとも1つを含むものである、システム。
【請求項27】
請求項25または26記載の方法において、
前記光ファイバープローブは、前記クラッドと前記SPR層との間に挟まれた移行フィルム層をさらに含み、この移行フィルム層は、前記ベースフィルム層の前記光ファイバへの接着を改善するように構成されたものであり、前記移行フィルム層は、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、またはクロム(Cr)のうちの少なくとも1つを含むものであるシステム。
【請求項28】
請求項19~27のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記光ファイバープローブは、その第2の端部に配置されたミラーを備え、前記ミラーは、前記光ファイバープローブの内側に面する反射面を有するものであるシステム。
【請求項29】
請求項19~28のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記光ファイバープローブが一点構成を有するものである、システム。
【請求項30】
請求項19~28のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記光ファイバープローブは、直列または並列に配置された複数の点を有する多点構成を有するものである、システム。
【請求項31】
請求項19~30のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記光ファイバープローブは、その少なくとも一部が前記電気化学装置の電解質と接触するように配置されるものである、システム。
【請求項32】
請求項19~30のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記光ファイバープローブは、その少なくとも一部が前記電気化学装置の電極に近接するように配置されるものである、システム。
【請求項33】
請求項19~32のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記電気化学装置が電池またはスーパーキャパシタである、システム。
【請求項34】
請求項33記載のシステムにおいて、前記電気化学装置が、リチウムイオン電池、鉛酸電池、リン酸鉄リチウム電池、燃料電池、ナトリウムイオン電池、ナトリウム・硫黄電池、フロー電池、全固体電池、ハイブリッド固液電池、リチウム金属電池、Zn-MnO電池からなる群から選択される電池である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年8月18日に出願された中国特許出願第202010832469.7号に対する優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、電池などの電気化学装置の状態監視技術に関し、具体的には、電気化学装置の状態をオペランド、インシチュ、およびリアルタイムで監視できる光ファイバベースの方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車の幅広い受け入れと、モノのインターネット(IoT)の新しい時代とともに、使用期間にわたって電池の信頼性と持続可能性を確保する方法が必須になっている。そのような要求を満たすために、オペランド、インシチュ、および/またはリアルタイムの方法で機能する電池に埋め込まれている高度な診断/予後ツールを開発することが重要になり、電池の機能(容量など)に悪影響を与える可能性のある通常の充電-放電サイクルの間の電池の変化する化学を監視、および/または、突然の衝突などの好ましくないイベント、または内部温度/圧力/ひずみ/変位/振動の蓄積を引き起こし、電池が発火したり爆発させる高リスクを生じさせる電池内の特定の内部変化(例:樹状突起の成長)によって引き起こされる電池の突然の状態変化が監視される。
【0004】
現在、電流と電圧の使用、または最新の電気自動車における複数の熱プローブの配置位置以外に、新しい診断技術の探求にかなりの努力が払われている。一般的なリチウムおよびナトリウムイオン電池は、液体電解質に浸漬された2つの電極で構成される。現在、オペランドでは、等温熱量測定による熱流の監視や、音響または光学手段のいずれかで電極クラッキングの追跡など、電池全体の変化を追跡することができる。対照的に、オペランドでは、電池の寿命に大きく影響する固体電解質間期(SEI)の核形成と成長を主に支配する電解質の電気化学的安定性を監視できるのはごくわずかである。赤外線分光法、質量分析、核磁気共鳴などのEx Situ方法は、電解質分解に関する貴重な情報を提供する。ただし、そのような手法では、通常、現実世界の電池動作から遠ざかる特定のセル設計が必要である。最近の報告によると、微分熱分析(DTA)は、電解質の組成を調べるのに役立つが、音響伝達マッピングが電解質の枯渇をインシチュでプローブする方法も報告されていることを示している。それにもかかわらず、電気自動車に実装するには、これらの2つの方法は、やっかいなDTA装置や音響のための液体結合剤など、いくつかの課題を克服する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらはすべて、通常の使用で電池の日常的な監視に使用することは明らかに不可能であり、リアルタイムおよびオペランドの電池の監視、およびシステムオペレーターに診断情報を提供するために、地味で安価で信頼できるデバイスが(少なくとも大規模なエネルギー貯蔵システムで)展開できるデバイスが非常に必要になっている。これを達成するためには、予想される動作寿命にわたって電池内に一般的に見られる過酷な電解環境と互換性のあるマルチパラメーターセンサーを埋め込むための新しい手法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
既存の電池監視アプローチに関連する欠点を考慮して、本開示は、電池の物理的、化学的、および電気化学的パラメーター(電解質化学、イオン活性、SEI、樹状突起成長を含む)を電池の動作を摂動せずにインシチュで継続的に監視できる光ファイバーベースのシステムと方法を提供する。
【0007】
第1の観点では、電気化学装置内に配置された光ファイバープローブを使用することによりオペランド、インシチュ、およびリアルタイムで電気化学装置の状態が監視できる方法が提供される。この方法は、(1)光ファイバープローブに入力光を照射し、光ファイバープローブから送信される出力光を検出する工程と、(2)出力光に基づいて電気化学装置の健全状態(SOH)を判定する工程とを有する。
【0008】
本明細書および本開示の他の箇所で使用される場合、「電気化学装置」という用語は、化学反応から電気を生成するか(例えば、電池またはスーパーキャパシタ)、または電気エネルギーを使用して化学反応( 例:触媒)を引き起こすデバイスまたは装置を指す。ここで、電池には、二次電池と使い捨て電池とが含まれる。「電池」の例としては、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、鉛蓄電池、燃料電池、ナトリウムイオン電池、アルカリ電池、ナトリウム硫黄電池、フロー電池、全固体電池、ハイブリッド固液電池、金属空気電池または Zn-MnO電池が挙げられる。「触媒」の例としては、光電気化学セル、光電解セル、光触媒セル、電気触媒セル、などが挙げられる。電気化学装置は、 ユニットセル、モジュール、パック、またはハイブリッドエネルギー貯蔵デバイスの形態が可能である。
【0009】
本明細書で使用される場合、電気化学装置の「状態」という用語は、電気化学装置の状態と見なすことができ、その例として、該当する電気化学装置の健全(SoH)および/または充電状態(SoC)を含むことができる。
【0010】
本明細書において、「健全状態(SoH)」という用語は、電気化学装置のいずれかの構成要素が健全であるか否かに関する電気化学装置の状態を指す。電気化学装置が長時間使用された場合、充電/放電率が高すぎる場合、または特定の好ましくない物理的または化学的問題(例:漏れ、異常な高温/低温、異常な衝突、など)、電気化学装置内の特定のコンポーネント(電解質、電極、またはセパレータなど)の物理化学的特性は、電気化学装置の健全状態が損なわれる程度に変化する可能性がある。以下に、いくつかの例を示す。
【0011】
一例では、電池の長時間の使用により、電池の電解質は、電解質を濁らせ、それによって電解質の屈折率に影響を与える可能性がある特定の固体堆積物を含む場合がある。重要なことは、このような電解質の濁度の増加は、電池の容量の減少と相関している可能性があり、したがって電池の健全状態に関連しているということである。
【0012】
別の例では、リチウム電池に発生した特定の状況により、リチウム樹枝状突起がリチウム電池の一方または両方の電極で成長する可能性があり、これは効率に影響を与えるだけでなく、リチウム電池が発火する高いリスクを引き起こす可能性があり、リチウム電池の健全状態に影響を与える。Li、Na、K、Mg、Zn、Alアノード、またはグラファイト電極などの金属アノードを備えた他の充電式電池も、動作中に好ましくない樹枝状突起を成長させる可能性があると報告されている。
【0013】
さらに別の例では、特定の状況により、電気化学装置内の内部温度、圧力、ひずみ、変位、または振動の1つまたは組み合わせに変化が生じる場合は、電気化学装置の健全状態にも影響を与える可能性がある。たとえば、内部温度の上昇および/または内部圧力の上昇は、リチウム電池が発火または爆発する危険性と関連していることがわかっている。
【0014】
さらに別の例では、特定の状況により、電気化学装置内で望ましくない化学反応の副産物としてガス(例えば、O、H、CO、CO、C、CH、HFなど)が生成される場合がある。これは、電気化学装置の健全状態の指標となる可能性があり、および/または電気化学装置の健全状態に直接影響を与える可能性がある。
【0015】
上記のいずれも、本明細書に開示された方法を利用して検出できることに留意されたい。さらに、これらの上記の例は、説明のみを目的としており、決して本開示の範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【0016】
ここで、「充電状態(SoC)」という用語は、電池が完全に充電されたときの最大容量に対する利用可能な容量の割合として定義され、電池容量の残りのパーセンテージを表す。
【0017】
ここで、「光ファイバープローブ」という用語は、主に光ファイバーを利用して機能する感知または検出装置を指し、グレーティングを備えた光ファイバー、キャビティを備えた光ファイバー、マイクロファイバー、ナノファイバー、テーパーファイバー、面研磨ファイバー、微細構造ファイバー、フォトニック結晶ファイバーなどがある。任意に、光ファイバープローブは光ファイバーグレーティングのタイプであり、グレーティングはファイバーブラッググレーティング(FBG)、傾斜ファイバーブラッググレーティング(TFBG)、長周期ファイバーグレーティング(LPG)、チャープファイバーグレーティング、および位相シフトグレーティングの群から選択されたものであり得る。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、グレーティングのタイプは、傾斜ファイバブラッググレーティング(TFBG)であり、したがって、コアと、コアをコーティングするクラッドとを含むことができる。コアには、コアの縦軸に対して90°未満の傾斜角度を有する傾斜グレーティングを設けることができる。ここで、傾斜グレーティングの傾斜角は、約2°~45°の範囲であり得る。さらに任意選択で、光ファイバープローブは、クラッドの外面を被覆する表面プラズモン共鳴(SPR)層をさらに備えることができ、これは、SPRに対してアクティブな組成を有する。そのような組成は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)、半導体材料、金属酸化物材料、二次元(2D)材料または光メタマテリアルのうちの少なくとも1つを含み得る。さらに任意選択で、光ファイバープローブは、SPR層の外面上に保護フィルム層をさらに備えることができ、保護フィルム層は、ダイヤモンド、シリコン、酸化インジウムスズ(ITO)、過酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In□O□)、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)のうちの少なくとも1つを含むことができる。さらに任意選択で、光ファイバープローブは、クラッドとSPR層との間に挟まれた移行フィルム層をさらに備えてもよく、移行フィルム層は、ベースフィルム層の光ファイバへの接着を改善するように構成され、移行フィルム層は、 チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、またはクロム(Cr)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0019】
通常、光ファイバープローブの動作メカニズムは次の通り:光源装置から入力光を受信すると、光ファイバープローブ内の光ファイバーが出力光を放出し、信号検出処理装置が光源装置からの出力光を受信し、出力光から信号を取得/抽出し、信号を処理および分析して、関連する情報を取得したり、他の特定の情報を決定したりする。
【0020】
ここで、「電気化学装置の内部」という表現は、光ファイバープローブが電気化学装置の内部の任意の場所に任意の構成で空間的に配置できることが言及される。例えば、光ファイバープローブは、電解質、電極の一方または両方、セパレーター、またはそれらの組み合わせのいずれかに配置することができ、または上記の構成要素のいずれかの間の界面(例えば、電解質-電極界面、または電極の近くで)にあってもよい。
【0021】
この方法の特定の実施形態によれば、電気化学装置のSoHの決定は、出力光から導き出される屈折率(RI)の計算に依存する。したがって、出力光に基づいて電気化学装置の健全状態(SoH)を判定する工程(2)は、以下のサブステップ:
(i)出力光に基づいて屈折率を取得する工程と、
(ii)電気化学装置の前の状態に対する屈折率の変化に基づいて、電気化学装置のSoHを判定する工程、とを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「電気化学デバイスの前の状態に対する屈折率の変化」という用語は、電気化学装置の現在の状態での屈折率と前の状態での屈折率との差として言及される。(すなわち、現在の屈折率- 前の屈折率)。ここで、「電気化学デバイスの前の状態」という用語は、電気化学装置の現在の状態よりも前の電気化学装置の状態を指す。例えば、そのような以前の状態は、電池の元の状態(例えば、製造後、または工場からの出荷時の状態)であってもよいし、または最初の充放電サイクルの1つの状態(つまり、初期状態から 2~10 のサイクル)、または現在の瞬間(つまり、現在の充電-放電サイクル)よりも早い充電-放電サイクルであってもよい。
【0023】
任意に、上記のサブステップ(i)は、以下のサブ工程:(a)出力光からクラッドモードまたは表面プラズモン共鳴(SPR)のいずれかを取得する工程と、(b)クラッドモードまたはSPRの1つに基づいて屈折率を計算する工程を含んでもよい。
【0024】
特定の実施形態によれば、光ファイバープローブは、コア、クラッド、およびクラッドをコーティングするSPR層を備えることができ、したがって、出力光は、SPRを有し、それに基づいて屈折率の計算を実行することができる。いくつかの他の実施形態によれば、光ファイバープローブは、コアおよびクラッドを含み、SPR層を含まなくてもよく、したがって、出力光はクラッドモードを含み、それに基づいて屈折率の計算が実行されてもよい。
【0025】
上記実施形態のいずれにおいても、出力光はコアモードを含み、オプションとして、上記サブ工程(b)において、コアモードの補正により屈折率をさらに計算することができる。
【0026】
本方法の特定の実施形態によれば、上記のサブ工程(ii)は、屈折率が電気化学装置の前の状態と比較して少なくとも第1の閾値だけ変化する場合、電気化学装置が健全でないと判定する工程をさらに含む。ここで、第1の閾値は、感度レベルに応じて1%、2%、5%、10%、または20%等、0%を超えるパーセンテージであり得る。
【0027】
この方法のいくつかの他の実施形態によれば、電気化学装置のSoHの決定は、出力光を屈折率の計算に変換することなく、出力光に直接依存することができる。
【0028】
本方法の特定の実施形態によれば、上記の工程(2)は、以下のサブ工程である、(i)出力光からクラッドモードまたは表面プラズモン共鳴(SPR)のいずれかを取得する工程と、(ii)電気化学装置の前の状態に対するクラッドモードまたはSPRのうちの1つの波長シフトまたは振幅変化に基づいて、電気化学装置のSoHを判定する工程と、を含む。
【0029】
ここで任意に、上記のサブ工程(ii)は、以下のサブ工程:(a)時間、電圧、電流、抵抗および容量からなる群から選択される1つに関して、クラッドモードまたはSPRのうちの1つの微分を取る工程と、(b)微分に基づいて電気化学デバイスのSoHを判定する工程を含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、サブ工程(ii)は、(a)クラッドモードまたはSPRのうちの1つの振幅または波長が、電気化学デバイスの以の状態よりも少なくとも第2の閾値だけ変化した場合、電気化学装置が不健全であると判断する工程を含むことができる。ここで、第2の閾値は、感度レベルに応じて1%、2%、5%、10%、または20%の0%を超えるパーセンテージが可能である。
【0031】
ここで、特定の実施形態によれば、光ファイバープローブの検出面の少なくとも一部は、電気化学装置の電解質と接触しており、したがって、サブ工程(a)において電気化学装置が不健全であると判定する工程は、 電解質が不健全であると判定する工程を含む。本明細書で使用される「不健全」という用語は、電気化学装置の機能/動作に悪影響を与える可能性がある電解質の異常な状況を指す。例としては、電解質が老化、劣化、変性などしていることが挙げられる。
【0032】
本方法の特定の実施形態によれば、工程(2)は、以下のサブ工程:(ii)クラッドモードまたはSPRのいずれかに少なくとも1つで二次ピークが存在する場合、電気化学装置が不健全であると判定する工程を含む。本明細書で使用される「二次ピーク」という用語は、クラッドモードまたはSPRにおける予想される一次ピーク以外の任意のピークを指し、具体的な例およびより多くの説明を以下に提供する。
【0033】
特定の実施形態によれば、光ファイバープローブは、電気化学装置の電極の内部または電極の近傍にあり、したがって、サブ工程(ii)において電気化学装置が不健全であると判定する工程は、電極が不健全であると判定することを含む。本明細書で使用される「不健全」という用語は、電気化学装置の機能/動作に悪影響を及ぼし得る電極の異常な状況を指す場合がある。例としては、電極上に樹枝状突起が成長したり、老化したり、壊れたりしたことが挙げられる。
【0034】
前述の実施形態のいずれか1つにおいて、本方法は、工程(1)の後に、出力光に基づいて電気化学装置の充電状態(SoC)を判定する工程をさらに含んでもよい。
【0035】
特定の実施形態によれば、出力光に基づいて電気化学装置の充電状態(SoC)を判定する上記の工程は、以下のサブ工程:(i)出力光からクラッドモードまたはSPRのいずれかを取得する工程と、(ii)クラッドモードまたはSPRの1つに基づいて、電気化学装置のSoCを判定する工程とを含む。
【0036】
ここで、いくつかの実施形態によれば、上記のサブ工程(ii)は、以下のサブ工程:(a)クラッドモードまたはSPRの1つに基づいて屈折率を計算する工程と、(b)屈折率に基づいてSoCを判定する工程とを含む。いくつかの他の実施形態によれば、上記サブ工程(ii)は、(b)屈折率に基づいてSoCを判定する。いくつかの他の実施形態によれば、上記のサブステップ(ii)は、(a)時間、電圧、電流、抵抗、および容量からなる群から選択された1つに関して、クラッドモードまたはSPRのうちの1つの微分を取る工程と、(b)微分に基づいてSoCを判定する工程と、を含む。
【0037】
SoCが決定される上記の実施形態のいずれにおいても、サブ工程(i)において、出力光からコアモードを任意にさらに取得することができ、サブ工程(ii)において、SoCは、 コアモードの更なる補正と一緒に判定される。
【0038】
上記の実施形態のいずれか1つにおいて、本方法は、工程(1)の後に、出力光に基づいて電気化学装置内の温度、圧力、歪み、変位、振動、またはガス放出のうちの少なくとも1つを判定する工程をさらに含んでもよい。ここで、特定の実施形態によれば、ガスが判定され、O、H、CO、CO、C、CH、およびHFのうちの1つまたはそれ以上であってもよい。
【0039】
ここで、温度の判定は、コアモード、クラッドモードまたはSPRの波長シフトに基づくことができる。圧力/歪み/変位/振動の判定は、コアモードとクラッドモードまたはSPRのいずれかとの間の差分波長シフトまたは振幅変化に基づくことができる。ガス放出の判定は、コアモードとクラッドモードまたはSPRのうちの1つとの間の差分波長シフトまたは振幅変化に基づくことができる。また、ガスの種類の判定は、特定のスペクトル吸収に基づくか、特定の材料の機能化によって行うことができる。
【0040】
第2の態様では、本方法の上述の実施形態のいずれかを実装し、それによって電気化学装置の状態のインオペランド、インサイチュ、およびリアルタイム監視を実現できるシステムがさらに提供される。
【0041】
このシステムは、光ファイバープローブ、光源装置、および信号検出処理装置を備える。光ファイバープローブは、電気化学装置の内部に配置される。光源装置は、光ファイバープローブの第1の端(すなわち、入光端)に光学的に結合され、光ファイバープローブに入力光を提供するように動作する。信号検出処理装置は、光ファイバープローブに光学的に結合され、光ファイバープローブから出力光を受信することによって機能し、出力光から信号を取得し、上記の方法の実施形態のいずれか1つにおいて、出力光に基づいて電気化学装置の健全状態(SoH)を判定する工程(2)が実施されるように、信号を処理する。
【0042】
本明細書における電気化学装置、光ファイバープローブに関する詳細な説明は、方法に関して提供された上記の説明を参照することができるので、簡潔にするためにここでは省略する。
【0043】
異なる実施形態によれば、光ファイバープローブは、伝送モードまたは反射モードで動作することができる。
【0044】
伝送モードでは、光源装置と信号検出処理装置は、実質的に光ファイバ プローブの2つの対向する側に配置され、光源装置は光プローブの第1端(つまり、入光端)に光学的に結合され、信号検出処理装置は、光ファイバープローブの第2の端部(すなわち光出力端部)に光学的に結合される。
【0045】
反射モードでは、光源装置および信号検出処理装置は、実質的に光ファイバープローブの同じ側に配置され、光ファイバープローブの同じ端部(すなわち、第1の端部)に光学的に結合される。ここで、光ファイバープローブの第1の端部は、実質的に入光端と出光端の両方である。このモードでは、通常、ミラーが第2の端部(すなわち、第1の端部と反対側の端部)に配置され、その反射面は光ファイバープローブの内側に面するように配置される。ミラーは、光ファイバープローブ内の光(すなわち生成および/または伝送された光)を光ファイバープローブの第1の端(すなわち入光端)に向かって反射するように構成される。さらに、このモードでは、システムは、入力光経路に沿って光源装置と光ファイバープローブとの間、および出力光経路に沿って光ファイバープローブと信号検出処理装置との間に光学的に配置される光ファイバサーキュレータをさらに含んでもよい。光ファイバサーキュレータは、入力光経路と出力光経路とを分離するように構成され、これにより、信号検出処理装置は、入力光の影響を受けることなく、光ファイバープローブからクラッドモードまたはSPRの信号を得ることができる。
【0046】
ここで、光源装置は、光源、オプションの偏光子、およびオプションの偏光コントローラを備えてもよく、これらは、光ファイバープローブへの光経路に沿って順次配置される。いくつかの実施形態によれば、光源は広帯域光源(BBS)を含み、信号検出処理装置は光スペクトル分析器(OSA)を含む。いくつかの他の実施形態によれば、光源は波長可変レーザ光源(TLS)を含み、信号検出処理装置は光検出器およびアナログ/デジタル変換器を含む。光検出器は、感知装置からの信号を検出し、アナログ電気信号に変換するように構成される。アナログ・デジタル変換器は、アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するように構成される。
【0047】
ここで、異なる実施形態に応じて、光ファイバープローブは、シングルポイント構成またはマルチポイント構成を有することができる。一実施形態では、光ファイバープローブは、特に特定の目的、例えば、電池の電解質の屈折率変化の検出のための単一の機能モジュール(単一の光ファイバーセンサーと見なすことができる)を含むシングルポイント構成を有することができる。さらに、光ファイバーが多重センシング機能を提供できるという事実により、複数の機能モジュール(つまり、それぞれが異なる目的を果たす1つの光ファイバーセンサーと見なすことができる)が1つの単一の光ファイバープローブで(つまり、直列的に)作動し、これらは、単一の光ファイバープローブに動作可能に接続された同じ光源装置および同じ信号検出処理装置を共に共有する。さらに、特定の実施形態によれば、複数の機能モジュール(すなわち、光ファイバセンサ)は、複数のファイバで(すなわち、並列経路を介して)動作することができ、それらは複数の光ファイバープローブに動作可能に接続されている同じ光源装置および同じ信号検出および処理装置を共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1A図1A図1Bは、電池状態を監視するために利用される光ファイバープローブの2つの実施形態の斜視図をそれぞれ示す。
図1B図1A図1Bは、電池状態を監視するために利用される光ファイバープローブの2つの実施形態の斜視図をそれぞれ示す。
図2図2は、電気化学装置状態監視システムのブロック図を示す。
図3A図3A図3Bは、電解質濃度に応じた出力光信号のクラッドモード振幅の変化を示す図である。
図3B図3A図3Bは、電解質濃度に応じた出力光信号のクラッドモード振幅の変化を示す図である。
図4A図4A図4Bは、電解質濃度に応じた出力光信号の波長の変化を示す図である。
図4B図4A図4Bは、電解質濃度に応じた出力光信号の波長の変化を示す図である。
図5A図5A図5Bは、温度に応じた出力光信号の波長の変化を示す図である。
図5B図5A図5Bは、温度に応じた出力光信号の波長の変化を示す図である。
図6図6は、電気化学装置のSoHに応じた出力光信号のスペクトルの変化を示す。
図7A-7C】図7A~7Cは、サイクル数の関数としての電解質の屈折率および濁度の測定された変化と共に容量維持を示す。
図8A-8C】図8A~8Cは、充放電時の電極の樹枝状突起成長状態と出力光との関係の一種を示す図である。
図9A-9C】図9A~9Cは、充放電時の電極の樹枝状突起成長状態と出力光との別の関係を示す図である。
図10A図10Aは、電極表面付近の電解質-電極相互作用の電気化学信号、光信号および光信号の変化率の間の相関を示す。
図10B図10Bは、充放電時の光信号d(dB)/dtと電位との関係曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下では、例示的な実施形態が提供され、当業者が上述の方法およびシステムを具現化および実装できるように十分に詳細に説明される。これらの実施形態は、多くの様々な形態で提供することができ、本開示によってカバーされる範囲への限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0050】
第1の観点では、電気化学装置の状態をオペランド、インサイチュ、およびリアルタイムで監視するための上述の方法で利用される光ファイバープローブが提供される。光ファイバープローブは、電気化学装置(例えば電池)の内部に配置される。図1Aおよび1Bは、光ファイバープローブの2つの実施形態の斜視図をそれぞれ示す。
【0051】
図1Aを参照すると、光ファイバープローブ100の実施形態は、実質的に、傾斜したファイバブラッググレーティング(すなわち、TFBG)を有する光ファイバであり、コア10と、コア10をコーティングするクラッド20とを含み、これらは光ファイバを一緒に形成するために同軸に配置される。光ファイバープローブ100のコア10は、傾斜グレーティング12、すなわち内部傾斜角θ(コア10の軸に実質的に垂直な面に対するグレーティングの各面の角度として定義される)を有するグレーティングを備える。光ファイバープローブ100のクラッド20は、電気化学装置の電解質または電極などの1つの構成要素Sと接触して、SoHを含む電気化学装置の様々なパラメータ、オプションとして、SoC、内部温度、内部圧力、内部歪み、内部変位、および/または内部振動を決定する。入力光1が第1の側面(すなわち、入光端面)Aから光ファイバープローブ100に入り、コア10に沿って透過されると、傾斜グレーティング12は、光ファイバープローブ100のクラッド20への入力光を反射および/または屈折させることができる(このように反射または屈折された光は、図1Aでは2として示されている)。このように第2の側面(すなわち光出力端面)Bから放射される出力光は、コアモード3およびクラッドモード2を含むことができる。クラッドモード2は、上述の様々なパラメータの決定に使用できる情報を含むことができる。
【0052】
図1Bは、光ファイバープローブ100の別の実施形態を示し、これは、図1に示される実施形態と構成的に類似しているが、クラッド 20 の外側をコーティングするSPR層30を追加で含む点で異なる。SPR層30は、約20~70nm、好ましくは約30~50nmの厚さを有することができ、表面プラズモン共鳴(SPR)に対して活性な組成物を含むことができ、したがって、入力光1が入光端面Aから光ファイバープローブ100に入射し、コア10に沿って伝送されると、出力光は、コアモード3とクラッドモード2に加えて、表面プラズモン波(すなわち、SPR)4を含むことができる。SPR4は、上述のように電気化学装置の様々なパラメータの決定に使用できる情報を含むことができる。上記2つの実施形態のいずれにおいても、入力光1は、任意選択で、光ファイバープローブの入光端面Aに光学的に接続された光源装置により発生させ、出力光は、光分光計を含むことができる光ファイバープローブの光出力端面Bに光学的に接続された信号検出処理装置によって捕捉することができる。任意選択で、図1Aおよび図1Bに示される光ファイバープローブ100の2つの実施形態のそれぞれについて、光ファイバープローブ100の内側に面する反射面を有するミラーが、光ファイバープローブ100の第2の端面Bに配置されてもよく、ミラーは、出力光を反射して、光ファイバープローブ100の第1の端面A(これにより、光入射端面および光出射端面の両方)から出射することができる。
【0053】
図1Bに示される光ファイバープローブの実施形態に加えて、オプションとして、保護フィルム層がSPR層の外面上に配置されてもよく、遷移フィルム層がクラッドとSPR層との間に挟まれてもよい。SPR層、保護フィルム層、および/または遷移層についてのさらなる詳細は、上述されているのでここでは省略する。
【0054】
図1Aおよび1Bに示した2つの実施形態に加えて、光ファイバープローブには様々な実施形態があり得ることに留意されたい。例えば、光ファイバープローブは、ファイバグレーティング、マイクロナノファイバ、マイクロ構造ファイバ、ファイバマイクロキャビティなどであり得る。光ファイバーの材料は、石英、ポリマー、微細構造の光ファイバーなどが可能である。
【0055】
ファイバーグレーティングには、均一グレーティング、チャープファイバーグレーティング、位相シフトグレーティング、傾斜ファイバーブラッググレーティング(TFBG)、ファイバーブラッググレーティング(FBG)、長周期ファイバー グレーティング(LPG)が含まれますが、これらに限定されない。異なるドープ材料に基づく光ファイバー用のグレーティング、たとえば、ドープされたポリメチルメタクリレート(PMMA)ファイバに基づいて作成されたブラッググレーティングがある。
【0056】
第2の側面では、電気化学装置の状態のオペランド、インサイチュ、およびリアルタイム監視に利用される上述の光ファイバープローブを備える監視システムがさらに提供される。図2に示すように、システム1000は、光ファイバープローブ100に加えて、光源装置200、および信号検出処理装置300を備える。光源装置200および信号検出処理装置300は、それぞれ光ファイバープローブ100に光学的に接続されるように構成されている(図2には示されていない入光端面および出光端面を介して)。監視システム1000の光ファイバープローブ100は、電気化学装置2000の内部に具体的に配置されることによって、電気化学装置2000と動作可能に結合される。光源装置200および信号検出処理装置300の異なるタイプおよび構成に関して、詳細は上記の説明を参照することができる。
【0057】
監視システム1000において、光源装置200は、光ファイバープローブ100に入力光を提供することによって機能し、信号検出処理装置300は、光ファイバープローブからの出力光を受信することによって機能し、出力光から信号を取得し、信号を処理し、SoH、および随意にSoC、内部温度、内部圧力、内部歪み、内部変位、振動、および/またはガスを含む、電気化学装置2000の様々なパラメータを導き出すことができるようにする。
【0058】
光ファイバープローブ100は、2つの異なる動作モードで動作することができる。伝送モードでは、光源装置200および信号検出処理装置300は、光ファイバープローブ100の対向する2つの端にそれぞれ配置される(すなわち、入光端面と出光端面は異なる)。反射モードでは、光源装置200および信号検出処理装置300はそれぞれ、光ファイバープローブ100の同じ側に配置される、すなわち、両方が同じ第1の端面(すなわち、出光端面は実質的に入光端面でもある)に接続され、このモードでは、出力光を反射して第1の端面に戻すために、第1の端面に対向する第2の端面にミラーが配置される。さらに、この反射モードでは、監視システム1000は、入力光経路と出力光経路とを分離することができる光ファイバサーキュレータ(図示せず)をさらに含むことができる。
【0059】
以下の注意事項がある。電気化学装置は、電解質と少なくとも2種類の電極、すなわち少なくとも正極と負極とを含む電池であってもよい。光ファイバープローブは、電気化学装置に部分的に浸すことも、電気化学装置に完全に浸すこともできる。電気化学装置における光ファイバープローブの位置は限定されない。例えば、それは電解質内にあってもよいし、電極に隣接していてもよい。本願でいう「隣接」とは、光ファイバープローブが電極に密着していることを意味してもよいし、光ファイバープローブと電極とが少し離れていることを意味してもよいが、本発明の実施形態ではこれらに限定されない。
【0060】
第3の観点では、電気化学装置2000の状態のオペランド、インサイチュ、およびリアルタイム監視のために上記監視システム1000を実質的に利用する方法がさらに提供される。
【0061】
この方法は、(1)入力光を光ファイバープローブに入射させ、光ファイバープローブから送信された出力光を検出する工程と、(2)出力光に基づいて電気化学装置の健全状態(SoH)を判定する工程とを含む。
【0062】
任意選択で、異なる実施形態の方法によれば、(1)の工程の後、充電状態(SoC)、内部温度/圧力/歪み/変位/振動/ガスなどの他のタイプの情報も、出力光の分析によって判定可能である。
【0063】
異なる信号処理手法に応じて、工程(2)は、出力光を屈折率の計算に変換し、さまざまなパラメータを決定することによって、あるいは出力光のクラッドモードまたはSPRを直接分析することによって実現することができる。電気化学装置の前の状態に対する電気化学装置の現在の状態における屈折率の変化またはクラッドモードまたはSPRの変化(例えば、振幅変化または波長シフト)を検査することができ、特定の事前設定されたしきい値(たとえば、1%、2%、5%、10%、20%、または 50% など)を超えるそのような変化の検出は、電気化学装置にとって、またはより具体的には 電気化学装置内の光ファイバープローブの実際の配置がわかっている場合は、電解質または電極にとって不健全な状態と見なされる。
【0064】
以下では、より詳細な説明のために3つの異なる例(実施例1、2、および3)を以下に提供するが、これらの例は例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0065】
本出願は、説明のための例としてTFBGおよびリチウムイオン電池を使用し、TFBGの角度および長さは、本出願の実施形態において限定されない。以下の説明において、使用する傾斜ファイバーグレーティングの角度をθ、長さをLとする。使用するリチウムイオン電池は、正極と負極の2つの電極を備える。別の実施形態によれば、電解質の屈折率は、電気化学装置のSoHを検出するためのクラッドモードまたはSPRの振幅から導き出すことができる。すなわち、クラッドモードの振幅は屈折率とともに変化し、電解質の劣化、ひいては電気化学装置のSoHの悪化を示す。言い換えれば、電気化学装置が劣化すると、電解質の劣化の可能性がその屈折率の変化を引き起こし、最終的に出力光信号の振幅変化につながる。好ましくは、電気化学装置は、振幅法によって測定された屈折率が少なくとも1%変化する場合、不健全であると決定される。
【0066】
具体的には、図3Aは、電解質濃度に応じた出力光信号のクラッドモード振幅の変化の例を提供する。図3Aに示すように、横軸はスペクトル範囲を表し、縦軸は出力光の電力(振幅)を表す。一例として、1510~1515nmおよび-32~-26dBm内のスペクトルが図3Aに示されている。実線、破線、および点線、および一点鎖線は、プローブがそれぞれ濃度 A、B、C、およびDの電解液(A<B<C<Dである)に浸されたときの出力スペクトルを示す。図3Aは、様々な電解質濃度による異なるスペクトルを示すが、すなわち、クラッドモードの振幅は、電解質の濃度とともに減少する。図3Aに示す3つのクラッドモードのうち、分析のために少なくとも1つのモードが選択される必要がある。したがって、図3Bは、電解質の屈折率と1つのクラッドモードの振幅との間の相関関係を提供する。特に、電解質の屈折率は、基準に従って濃度から導き出すことができるが、ここでは説明を省略する。図3Bの横軸と縦軸は、出力光の屈折率範囲(1.33から1.38まで)およびピークツーディップ電力(1から6dBmまで)をそれぞれ表す。他の振幅分析方法が実行可能であり、ピークからディップまでの電力に限定されないことに留意していただきたい。たとえば、単一のピークの電力または上下のエンベロープである。図3Bは、ピークからディップの電力の減少と共に屈折率がAからDに増加することを示している。
【0067】
別の実施形態によれば、電解質の屈折率は、電気化学装置のSoHを検出するための出力光の波長から導き出すことができる。つまり、波長は屈折率に応じて増加または減少する。波長のシフト方向は光プローブの種類に依存し、ここでは詳細に説明しないことに留意いただきたい。電気化学装置が不健全になり、電解質の屈折率が変化すると、リアルタイムで監視される波長がドリフトする。電気化学装置は、振幅法によって測定された屈折率が少なくとも1%変化した場合、不健全であると判定されるのが好ましい。
【0068】
具体的には、図4Aは、電解質濃度に応じた出力光信号の波長の変化の例を提供する。図4Aに示すように、横軸は出力光のスペクトル範囲(一例として1545~1548nm)、縦軸は出力光の電力(振幅、一例として-50~-20dBm)をそれぞれ表す。実線、破線、および点線、および一点鎖線は、プローブがそれぞれ濃度A、B、C、および D の電解液に浸されたときの出力スペクトルを示しますが、ここでA<B<C<Dである。図4Aは、様々な電解質濃度による異なるスペクトルを示すもので、すなわち、クラッドモードの波長は、電解質の濃度とともに増加する。図3Aに示す3つのクラッドモードのうち、分析のために少なくとも1つのモードが選択されるべきである。したがって、図4Bは、電解質の屈折率と1つのクラッドモードの波長との間の相関関係を提供する。図4Bの横軸は、出力光の屈折率範囲(1.33から1.38まで)と波長(1547.10から1547.45nmまで)をそれぞれ表している。図4Bは、屈折率が波長の増加と共にAからDまで増加することを示す。
【0069】
別の実施形態によれば、デバイスの温度は、出力光の波長から導き出すことができる。すなわち、温度によって波長が変化する。
【0070】
具体的には、図5Aは、温度に応じた出力光信号の波長の変化の例を提供する。図5Aに示すように、横軸と縦軸は、出力光のスペクトル範囲(例えばクラッドモードとコアモードでそれぞれ1538~1541nmと1589.7~1590.5nm)と電力(振幅、例えばクラッドモードとコアモードでそれぞれ-35~-23dBmと-22.8~-22.4 nm)を表す。実線、破線、および点線は、プローブがそれぞれ温度 A、B、および C である場合の出力スペクトルを示し、ここで、A<B<C である。図5Aは、温度が変化した場合の異なるスペクトルを示すが、すなわち、クラッドおよびコアモードの波長は、電解質の濃度とともに増加する。図5Aに示す3つのクラッドモードと1つのコアモードのうち、分析のために少なくとも1つのモードが選択されるべきである。したがって、図5Bは、1つのクラッドモードおよび1つのコアモードの温度と波長との間の相関を提供する。図5Bの横軸と縦軸は縦軸は、出力光の温度範囲(5~65℃)および波長(1539~1540.5nmおよび1589.5~1591nm)をそれぞれ表す。屈折率と温度の計算は、図3B図4B、および図4Bに示される較正曲線に従って行うことができる。
【0071】
以下は、電池のSoHを検出する際の上記の方法の特定の適用である。
【0072】
実施例1では、電解質の濁度は、電気化学装置のSoHを検出するための誘導クラッドモードの振幅から導き出すことができる。すなわち、誘導クラッドモードの振幅は電解質の濁度とともに減少し、電解質の劣化、つまり電気化学装置のSoHの減衰を示す。言い換えれば、電気化学装置が劣化すると、電解質の劣化が濁度の変化を引き起こし、最終的に出力光の振幅変化につながる。濁度測定基準、すなわち誘導クラッドモードの振幅が少なくとも1%変化する場合、電気化学装置は不健全であると判定するのが好ましい。
【0073】
具体的には、図6は、電気化学装置のSoHに応答した出力光信号のスペクトルの変化の例を提供する。図6に示すように、横軸は、出力光のスペクトル範囲(1500~1600nm)、縦軸は出力光の電力(振幅-41~-18dBm)を表す。黒、灰色、薄い灰色の線は、電気化学装置がそれぞれ A、B、C のSoHにあるときの出力スペクトルを示すが、ここで、A>B>Cである。図6は、SoHが変化した場合の異なるスペクトルを示している。すなわち、誘導クラッドモードの振幅は、電気化学装置のSoHの減少とともに減少する。
【0074】
別の実施形態によれば、図7A~7Cは、サイクル数の関数としての電解質の屈折率および濁度の測定された変化とともに、容量維持を示す。図示されるように、横軸はサイクル数(3から125まで)を表し、上(図7A)、中(図7B)、および下(図7C)パネルの縦軸は容量維持(90から102 %)、屈折率の変化(-10から220RIUまで)、および濁度の変化(0.85から1.05 まで)を表す。黒い四角と薄い灰色の菱形は、電気化学装置がそれぞれ悪い電解質と良い電解質を採用したときのデータを示す。図6は、悪い電解質を有する電気化学装置の容量維持が、良好な電解質を有する電気化学装置よりも速く減少し、急速に劣化した電気化学装置は、屈折率および濁度においてより多くの変化も示すことを示している。これらの結果は、屈折率と濁度の監視を使用して、電気化学装置のSoHを監視できることを裏付けている。
【0075】
実施例2では、リチウム樹枝状突起は、電気化学装置のSoHを検出するためのカットオフモードの電力から得ることができる。
【0076】
特に、電気化学装置には、液体電解質内に2つの対称的なLi金属電極が含まれている。対称セルは、石英電解セル内で距離を置いた2つの同一のリチウム金属電極によって組み立てられた。
【0077】
そして、電解質は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)(それぞれ、1:1:1、v/v/v)中の4モルL-1リチウムヘキサフルオロホスフェートを含んで調製された(4モルL-1LiPFEC:EMC:DMCと示される)。電極表面近くの表面に局在し、急速に変化するイオン濃度のために光ファイバープローブは、電極の1つにしっかりと取り付けられた。
【0078】
可能な実施方法では、樹枝状突起の成長は、出力光のクラッドモードの波長または電力の変化によって定性的に分析することができる。具体的には、クラッドモードの波長または電力の変化が大きいか、二次ピークがあるかを観察することで、樹枝状突起成長の有無を判断することができる。
【0079】
図8A~8Cは、充電および放電中の電極の樹枝状突起成長状態と出力光との間の関係を示す。図8に示すように、横軸は測定時間(0から20000秒まで)を表し、上段、中段、下段のパネルの縦軸は電力、電圧(-0.25Vから0.20Vまで)、電力(-0.6dBmから1.2dBmまで)および電力(0dBmから2.4dBmまで)を表す。図8Aは、電圧信号と時間との間の関係を示す。このうち、「a」は充電過程を表し、「b」は放電過程を表す。これは、0秒から20000秒までの間、充電電圧が同じままであり、放電電圧が同じままであり、充電と放電の頻度が等しく、電気化学装置の光信号を測定することを意味する。図8Bは、樹枝状突起成長のない電気化学装置の光信号変化のグラフを示す。図8Cは、樹枝状突起成長を伴う電気化学装置の光信号変化のグラフを示す。図からわかるように、樹枝状突起の成長がない場合、クラッドモードの波長または電力はほとんど変化しないか、わずかに変化し、メインピーク「c」は1つしかない。しかし、樹枝状突起成長がある場合、波長とクラッドモード電力の2つの現象があり、1つは振幅の増加であり、もう1つは一次ピーク「c」と二次ピーク「d」の二重ピークである。したがって、樹枝状突起成長の有無はクラッドモードの波長または電力から定性的に判断できる。特に、樹枝状突起が成長した場合、電気化学装置は不健全であると判断される。
【0080】
別の可能な実施方法では、樹枝状突起の成長は、クラッドモードの波長または電力の変化によって定量的に分析することができる。
【0081】
図9Aおよび9Bは、充電および放電の間の電気信号および光信号を示す。図9Aの横軸は、測定時間(0秒から40000秒まで)を示し、縦軸は電圧(-04Vから0.4Vまで)を示す。このうち、「a」は充電過程を表し、「b」は放電過程を表す。これは、0秒から40000秒までの間、充電電圧が同じままであり、放電電圧が同じままであり、充電と放電の頻度が等しく、電気化学装置の光信号を測定することを意味する。図9Bは、樹枝状突起の成長に伴うクラッドモードの波長または電力の変化を示す。横軸は測定時間(0~40000秒)、縦軸はクラッドモードの波長または電力(図ではクラッドモードの電力のみ表示)で、範囲は-42dBm~-36dBmである。この図から、クラッドモードの波長または電力は、樹枝状突起の成長と一定の量的な関係があることがわかる。例えば、線形関係、二次関数関係など。本出願の実施形態は限定されない。
したがって、Li-樹枝状突起成長状態に著しく特徴的な二次ピークとともに、はるかに強い光学応答が検出された。光学応答の著しい増加は、Li金属電極の近くでの Liイオン移動の効率が低いかブロックされている結果であり(電池のクーロン効率が低下していることを意味する)、顕著な特徴的な二次ピークがリチウムイオンの枯渇とリチウム樹枝状突起の成長の間の動的平衡(各充電/放電サイクル内の樹枝状突起の成長と溶解における「周期的な呼吸」効果のようなもの)に由来することが明らかになり、これにより、樹枝状突起の成長が潜在的に有用な早期警告を提供し、壊滅的な電池障害のリスクを減らす。
【0082】
実施例3では、イオン移動は、電気化学装置の充電状態(SoC)を検出するためのクラッドモードまたはSPRの電力変化から導き出すことができる。
【0083】
電気化学装置の充電および放電プロセス中に、イオン移動活動が電極電解質表面で発生する。イオン移動のプロセスにより、クラッドモードまたは SPRで変化が生じ、これにより電気化学装置のSoCを推測できる。
【0084】
可能な実装は、クラッドモードまたはSPRに基づいて電解質の屈折率の変化を計算し、屈折率の変化に従ってSoCを判定することである。その実装は、図3A図4Bの関連説明を参照することができる。
【0085】
別の可能な実装は、電気化学装置のSoCを決定できるように、クラッドモードまたは SPRのいずれかを時間に関して微分することである。なお、微分は一次微分に限らず、二次微分、三次微分等であってもよい。本出願のこの実施形態は、これを限定しない。
【0086】
ここで、光ファイバープローブは、金属膜でコーティングされた傾斜ファイバーグレーティングであり、ファイバープローブは電極に埋め込まれ、電極表面にしっかりと接続され、電極はMnO膜でメッキすることができる。本出願の実施形態は限定されない。
【0087】
定電流充電/放電(GCD)試験、SPR電力、および光電力の微分の曲線を図10Aに示す。光電力の微分(図10Aの二点鎖線)は、光電力の変化率を表す時間に対するSPR電力レベルを微分することによって得られる。電気化学曲線の変化は、光学的結果と極めて一致することが示される。そして最も重要なことは、イオン移動速度との安定した再現可能な相関関係を示すことが判明したことである。0.62V(点a)と0.18V(点b)の2つの放電プラットフォームに対応する時間で、SPR電力は減少するが、光電力曲線の微分はピークに達する。これは、イオンが放電中にカソード材料にすばやく移動してインターカレートし、電極と電解質の界面でのイオン濃度が低下するためです。そして、光学曲線は放電の終わりに向かって平坦になる。充電開始時(c点)、光信号が急激に減少し、d(dBm)/dt曲線でピークが観測された。電気化学信号と光信号の両方が時間の関数であるため、光信号の変化率はP’/V関係曲線として電圧にマッピングできる。図10Bは、MOカソードの最初の3番目の充電および放電サイクルのP'/V曲線を提示し、これはCV曲線と形状が類似している。第1サイクルは、MnO電極材料に共通する結晶構造の変化により不可逆的である。曲線は、2番目のサイクルの後、徐々に横ばいになり、イオンのインターカレーション/デインターカレーションを伴う可逆的な酸化還元反応を示す。さらに、充電の平坦部と2つの放電の平坦部を観察することもできる。
【0088】
最後に、前述の実施形態は、本開示の技術的解決法を説明することのみを意図していることに留意されたい。本開示は、前述の実施形態を参照して詳細に説明されているが、当業者は、本開示の実施形態の技術的解決策の範囲から逸脱することなく前述の実施形態で説明された技術的解決策に変更を加えたり、それらの技術的特徴の一部またはすべてを同等物に置き換えたりできることを理解する必要がある。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A-7C】
図8A-8C】
図9A-9C】
図10A
図10B
【国際調査報告】