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特表2023-539113フェネチルアミン誘導体、組成物およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】フェネチルアミン誘導体、組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 217/60 20060101AFI20230906BHJP
   C07D 317/58 20060101ALI20230906BHJP
   C07D 327/04 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 31/39 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230906BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230906BHJP
   C07C 323/32 20060101ALI20230906BHJP
   C07C 217/62 20060101ALI20230906BHJP
   C07B 59/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C07C217/60
C07D317/58 CSP
C07D327/04
A61K31/36
A61K31/39
A61K31/137
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P29/00
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/30
A61P1/14
A61P3/04
A61P25/28
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/02
A61P15/10
A61P3/02
A61P11/00
A61P9/00
A61P25/32
A61P25/34
A61K9/20
A61K47/36
A61K47/06
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/34
A61K47/02
A61K9/12
A61P43/00 123
C07C323/32
C07C217/62
C07B59/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512107
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021072898
(87)【国際公開番号】W WO2022038171
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/067,303
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/131,974
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】522452581
【氏名又は名称】サイビン アイアールエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ベルサー,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】キャナル,クリントン イー.
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,ブレット ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハートセル,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ニヴォロツキン,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】パルフレイマン,マイケル ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】サリチュロ,フランチェスコ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA25
4C076AA36
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC29
4C076DD28
4C076DD34
4C076EE04
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE12
4C076EE16
4C076EE24
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE38
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA13
4C086BB05
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA66
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA21
4C086ZA24
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA69
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZC21
4C086ZC39
4C086ZC41
4C086ZC54
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA11
4C206JA41
4C206MA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA55
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA77
4C206MA86
4C206NA14
4C206NA15
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA05
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZA18
4C206ZA21
4C206ZA24
4C206ZA36
4C206ZA59
4C206ZA69
4C206ZA70
4C206ZA81
4C206ZB11
4C206ZC21
4C206ZC39
4C206ZC41
4C206ZC54
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006AB21
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BP30
4H006BU40
4H006CN10
(57)【要約】
幻覚剤化合物および向精神薬化合物、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患の治療における当該化合物の使用、当該化合物を含有する例えば錠剤組成物などの医薬組成物およびキット、吸入を介してミスト中で当該化合物を送達する方法、ならびに例えば中枢神経系(CNS)障害または心理学的障害などのセロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を、本発明化合物を用いて治療する方法、が開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、またはRおよびRは、それに結合された原子と共に任意で結合されて、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを形成し、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、および
条件(i)~(iii)のうちの少なくとも一つが満たされ、
(i)X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つは重水素を含み、
(ii)RおよびRは、それに結合される原子と共に結合されて、重水素またはフッ素を含むヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール、および/またはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を形成し、
(iii)Rは、-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルであり、
ただし、X、X、Y、およびYがそれぞれ水素または重水素である場合、RおよびRの両方が-ORではない、式(I)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
、X、Y、Y、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つが重水素を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRは、それに結合される原子と共に結合されて、重水素またはフッ素を含むヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール、および/またはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は-OR、または-SRであり、Rは一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、セロトニン5-HT受容体のアゴニストである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が、セロトニン5-HT2A受容体のアゴニストである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式(II)の構造を有する請求項1に記載の化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
AはOまたはSであり、
およびZは独立して、水素、重水素またはフッ素であり、
AがOである場合、X、X、Y、Y、R、R、R、R、Z、Zの少なくとも一つは重水素を含み、および/またはZとZの少なくとも一つはフッ素である、式(II)の構造を有する請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【請求項8】
が-ORである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
およびXが水素である、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
およびXが重水素である、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
が水素または重水素であり、Xが置換または非置換C-Cアルキルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
AがSである、請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
AがOである、請求項7に記載の化合物。
【請求項14】
およびZが水素である、請求項7に記載の化合物。
【請求項15】
およびZが重水素である、請求項7に記載の化合物。
【請求項16】
【化3】
からなる群から選択される請求項7に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【請求項17】
式(III)の構造を有する請求項1に記載の化合物:
【化4】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
は、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、および
、X、Y、Y、R、Rの少なくとも一つは、重水素を含み、および/またはRは、-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルである、式(III)の構造を有する請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【請求項18】
が、-SMe、-SCD、-SCF3、-SEt、-Sn-Pr、
‐SCHCHCF、-SCHCHCFH、-SCHCHCFH、-Me、-CD、-CF、-OMe、-OCD、-OCF
-OCHCHCF、-OCHCHCFH、-OCHCHCFHまたは-Brである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
各Rが独立して-Me、-CD、または-CFである、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
およびXが水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
およびXが重水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
【化5】
からなる群から選択される請求項17に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグ。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記化合物が、前記医薬組成物中に存在する前記化合物のアイソトポログの総量に基づき、少なくとも50重量%の純度で前記医薬組成物中に存在する、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
重水素を有する前記化合物の任意の位置が、前記重水素化部位において少なくとも50原子%の最小重水素取り込みを有する、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記化合物の他のアイソトポログを実質的に含まない、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項27】
経口投与用に製剤化された、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
吸入を介した投与用に製剤化された、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項29】
セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有する対象を治療する方法であって、
請求項1に記載の化合物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項30】
セロトニン5-HT受容体に関連する前記疾患または障害が、精神神経系疾患もしくは障害、または炎症性の疾患もしくは障害である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
セロトニン5-HT受容体に関連する前記疾患または障害が、中枢神経系(CNS)の障害である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記中枢神経系(CNS)の障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記中枢神経系(CNS)の障害が、疼痛である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記中枢神経系(CNS)の障害が、性機能障害である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
セロトニン5-HT受容体に関連する前記疾患または障害が、自律神経系(ANS)の障害である、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記自律神経系(ANS)の障害が、肺障害または心血管系障害である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物が、経口投与、舌下投与、口腔投与、局所投与、注射により投与、または吸入により投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
請求項1に記載の化合物、およびポリマーを含む、単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項39】
前記組成物が、最大持続放出に適合される、請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項40】
前記錠剤組成物が、(i)水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクス、(ii)一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマー、および(iii)前記化合物、の組み合わせを含む、請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項41】
前記水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクスは、単独の、またはデンプン、ワックス、中性ゴム、ポリメタクリレート、PVA、PVA/PVP混合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される構成要素と混合することによって強化された、セルロース系ポリマーから選択される、請求項40に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項42】
前記セルロース系ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項41に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項43】
前記一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマーが、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリレートカルボン酸塩、カチオン交換樹脂、粘土、ゼオライト、ヒアルロン酸、アニオン性ゴム、それらの塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項40に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項44】
前記アニオン性ゴムが、天然物質および半合成物質からなる群から選択される、請求項43に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項45】
前記天然物質が、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンゴム、アラビアゴム、カラヤゴム、グアーガム、およびトラガカントゴムからなる群から選択される、請求項44に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項46】
前記半合成物質が、カルボキシメチル-キチンおよびセルロースゴムからなる群から選択される、請求項44に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項47】
疼痛治療を目的とした治療有効量の前記化合物を含む、請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項48】
脳外傷治療を目的とした治療有効量の前記化合物を含む、請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項49】
うつ病治療を目的とした治療有効量の前記化合物を含む、請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項50】
セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害の治療における使用を目的とした治療有効量の前記化合物を含む、請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項51】
前記疾患または障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満からなる群から選択される中枢神経系(CNS)障害である、請求項50に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項52】
前記疾患または障害が、自律神経系(ANS)の状態である、請求項50に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項53】
前記疾患または障害が、肺障害である、請求項52に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項54】
前記疾患または障害が、心血管系障害である、請求項52に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項55】
前記組成物が、10~500ng/mlの範囲の前記化合物の血漿統合濃度を達成し、この濃度を放出期間中、維持する、請求項50に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項56】
前記ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
【請求項57】
請求項1に記載の化合物、およびポリマーを含む、経口投与用に製剤化された錠剤組成物。
【請求項58】
前記ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、請求項57に記載の錠剤組成物。
【請求項59】
前記ポリマーが、一つまたは複数の酸基を含む、請求項57に記載の錠剤組成物。
【請求項60】
前記ポリマーが、水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクスを含む、請求項57に記載の錠剤組成物。
【請求項61】
前記水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクスは、単独の、またはデンプン、ワックス、中性ゴム、ポリメタクリレート、PVA、PVA/PVP混合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される構成要素と混合することによって強化された、セルロース系ポリマーから選択される、請求項60に記載の錠剤組成物。
【請求項62】
前記セルロース系ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項61に記載の錠剤組成物。
【請求項63】
1)請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)疼痛治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
【請求項64】
前記ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
1)請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)脳外傷治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
【請求項66】
前記ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
1)請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)うつ病治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
【請求項68】
前記ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
1)請求項38に記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害の治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
【請求項70】
前記ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
ミストの液相に溶解した幻覚剤を、吸入を介して投与することを含む、その必要のある患者に幻覚剤を送達する方法であって、前記幻覚剤が、請求項1に記載の化合物を含む、方法。
【請求項72】
前記幻覚剤が、前記患者の中枢神経系に送達される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記幻覚剤が、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物と共に送達される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記幻覚剤が、ヘリウムと酸素の混合物と共に送達される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ヘリウムと酸素の混合物が、約50℃~約60℃に加熱される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記ヘリウムが、約50~90%で、前記ヘリウムと酸素の混合物中に存在し、前記酸素が、約10~50%で、前記ヘリウムと酸素の混合物中に存在する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記ヘリウムと酸素の混合物、および前記幻覚剤の投与の前に、前治療吸入療法を行うことをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記前治療が、吸入によって前記患者に約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を投与することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
(i)吸入によって前記患者に約90℃~120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を投与すること、および(ii)吸入によって前記患者に約50℃~60℃に加熱されたヘリウムと酸素、および前記幻覚剤を含むミストを投与することをさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項80】
工程(i)および(ii)を少なくとも一回繰り返すことをさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記幻覚剤が、経口送達と比較して少なくとも25%の薬物生物学的利用能の改善、経口送達と比較して少なくとも25%のCmaxの増加、経口送達と比較して少なくとも50%のTmaxの低下、またはそれらの組み合わせを伴い、前記患者の中枢神経系に送達される、請求項71に記載の方法。
【請求項82】
吸入によって、ミスト中に溶解された幻覚剤を投与することを含む、中枢神経系(CNS)の障害または心理学的障害を治療する方法であって、前記幻覚剤が、請求項1に記載の化合物を含む、方法。
【請求項83】
前記幻覚剤が、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物と共に送達される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記幻覚剤が、前記ヘリウムと酸素の混合物とともに送達され、前記患者への前記幻覚剤の投与前に前記ヘリウムと酸素の混合物が約50℃~約60℃に加熱される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記CNSの障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病または肥満である、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有する対象を治療する方法であって、
自動注入デバイスを介して、前記対象に、請求項1に記載の化合物の治療有効量を経皮投与、皮下投与、または筋肉内投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年8月18日に出願された米国仮特許出願第63/067,303号、および2020年12月30日に出願された米国仮特許出願第63/131,974号の利益を主張するものであり、各出願はその全体で参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は概して化合物に関するものであり、一部の実施形態では、セロトニン5-HT受容体アゴニストに関し、および5-HT受容体に関連する疾患の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において提供される「背景」に関する記述は、本開示の状況を一般的に提示する事を目的としている。本願の発明者らの研究は、当該背景技術の項に記載される限りにおいて、ならびに出願時に先行技術として適格とはなり得ない記述の態様において記載される限りにおいて、本発明に対する先行技術として明示的または黙示的にも認められない。
【0003】
セロトニン5-HT受容体(5-HTRs)には、5-HT2A、5-HT2B、および5-HT2Cの三種類の密接に関連するサブタイプが存在し、それ受容体は古典的なセロトニン作動性の幻覚剤であるリセルグ酸ジエチルアミド(LSD)や2,5-ジメトキシ-4-ブロモアンフェタミン(DOB)の主な標的である。古典的なセロトニン作動性の幻覚剤およびエンタクトゲンは、多くの中枢神経系(CNS)障害の緩和について、医学界で積極的に研究が行われている(Reiff,C.M.,Richman,E.E.,Nemeroff,C.B.,Carpenter,L.L.,Widge,A.S.,Rodriguez,C.I.,Kalin,N.H.,and McDonald,W.M.,2020,Psychedelics and Psychedelic-Assisted Psychotherapy,Am J Psychiatry 177,391-410)。そのような研究としては、例えば、(i)心的外傷後ストレス障害(PTSD)(Jerome,L.,Feduccia,A.A.,Wang,J.B.,Hamilton,S.,Yazar-Klosinski,B.,Emerson,A.,Mithoefer,M.C.,and Doblin,R.,2020,Long-term follow-up outcomes of MDMA-assisted psychotherapy for treatment of PTSD:a longitudinal pooled analysis of six phase 2 trials,Psychopharmacology(Berl)237,2485-2497)、(ii)大うつ病性障害(MDD)、(iii)治療抵抗性うつ病(TRD)(Goldberg,S.B.,Pace,B.T.,Nicholas,C.R.,Raison,C.L.,and Hutson,P.R.,2020,The experimental effects of psilocybin on symptoms of anxiety and depression:A meta-analysis,Psychiatry Res 284,112749)、(iv)強迫性障害(OCD)(Moreno,F.A.,Wiegand,C.B.,Taitano,E.K.,and Delgado,P.L.,2006,Safety,tolerability,and efficacy of psilocybin in 9 patients with obsessive-compulsive disorder,J Clin Psychiatry 67,1735-1740)、(v)社会不安障害(ClinicalTrials.gov,number NCT02008396)、(vi)限定されないがアルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、(vii)神経性無食欲症、(viii)神経性過食症(ClinicalTrials.gov,numbers NCT04454684およびNCT04052568)、(ix)アルツハイマー病(ClinicalTrials.gov,number NCT04123314)、ならびに(x)群発頭痛および片頭痛(Nichols,D.E.,2016,Psychedelics,Pharmacol Rev 68,264-355;Johnson,M.W.,Hendricks,P.S.,Barrett,F.S.,and Griffiths,R.R.,2019,Classic psychedelics:An integrative review of epidemiology,therapeutics,mystical experience,and brain network function,Pharmacol Ther 197,83-102;Sewell,R.A.,Halpern,J.H.,and Pope,H.G.,Jr.,2006,Response of cluster headache to psilocybin and LSD,Neurology 66,1920-1922;ClinicalTrials.gov,number NCT04218539)がある。
【0004】
これらの薬剤は、特に肺障害(例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)および心血管系障害(例えばアテローム性動脈硬化症)をはじめとする自律神経系の状態の緩和についても研究されている(Nichols,D.E.,Johnson,M.W.,and Nichols,C.D.,2017,Psychedelics as Medicines:An Emerging New Paradigm,Clin Pharmacol Ther 101,209-219;Flanagan,T.W.,Sebastian,M.N.,Battaglia,D.M.,Foster,T.P.,Cormier,S.A.,and Nichols,C.D.,2019,5-HT2 receptor activation alleviates airway inflammation and structural remodeling in a chronic mouse asthma model,Life Sci 236,116790;Flanagan,T.W.,Sebastian,M.N.,Battaglia,D.M.,Foster,T.P.,Maillet,E.L.,and Nichols,C.D.,2019,Activation of 5-HT2 Receptors Reduces Inflammation in Vascular Tissue and Cholesterol Levels in High-Fat Diet-Fed Apolipoprotein E Knockout Mice,Sci Rep 9,13444;Sexton,J.D.,Nichols,C.D.,and Hendricks,P.S.,2019,Population Survey Data Informing the Therapeutic Potential of Classic and Novel Phenethylamine,Tryptamine,and Lysergamide Psychedelics,Front Psychiatry 10,896)。
【0005】
例えばPTSD治療のための3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の使用(Feduccia,A.A.,Jerome,L.,Yazar-Klosinski,B.,Emerson,A.,Mithoefer,M.C.,and Doblin,R.,2019,Breakthrough for Trauma Treatment:Safety and Efficacy of MDMA-Assisted Psychotherapy Compared to Paroxetine and Sertraline,Front Psychiatry 10,650)など、いくつかの研究は第III相試験にまで進み、3,4,5-トリメトキシフェネチルアミン(メスカリン)の第I相試験が開始された(ClinicalTrials.gov,number NCT04227756)。
【0006】
機構的に、幻覚剤のフェネチルアミン/アンフェタミンの治療効果は、フェネチルアミンとセロトニン(5-HT)受容体、特に5-HT2A受容体との相互作用により介在されると考えられているが、5-HT1A受容体を含む他の標的も関与している可能性がある(Nichols,D.E.,2016,Psychedelics,Pharmacol Rev 68,264-355;Canal,C.E.,2018,Serotonergic Psychedelics:Experimental Approaches for Assessing Mechanisms of Action,Handb Exp Pharmacol 252,227-260)。5-HT2C受容体による関与は、古典的な幻覚剤に関して報告されている抗中毒性の原因である可能性がある(Canal,C.E.,and Murnane,K.S.,2017,The serotonin 5-HT2C receptor and the non-addictive nature of classic hallucinogens,J Psychopharmacol 31,127-143)。MDMAを含むエンタクトゲンのフェネチルアミンの効果は主にモノアミントランスポーター、特にセロトニン(SERT)とドーパミン(DAT)のトランスポーターとの相互作用によって介在される(Jayanthi,L.D.,and Ramamoorthy,S.,2005,Regulation of monoamine transporters:influence of psychostimulants and therapeutic antidepressants,AAPS J 7,E728-738)。
【0007】
サイケデリックとエンタクトゲンの安全面は、臨床用途における主要な課題であり、治療プロトコルが以下の要因によって挑戦されている。1)精神活性治療利益の比較的遅い発現;2)長時間作用効果、多くの場合、患者の終日の監視を必要とする;3)不安、恐れ、頻脈、高血圧、体温上昇、吐き気、嘔吐など、多くの急性精神神経系および胃腸系有害作用があり、多くの急性有害作用は、経口投与直後の血中薬物濃度の高さ(以下、「スパイク」)に起因する;4)低い脳の生物学的利用能(例えば、メスカリンで観察されたように);5)高用量の経口投与を必要とする治療効果(例えば、メスカリンとMDMAで観察されたように);および6)神経毒性および心臓毒性などの毒性(Schenk,S.,and Newcombe,D.,2018,Methylenedioxymethamphetamine(MDMA)in Psychiatry:Pros,Cons,and Suggestions,J Clin Psychopharmacol 38,632-638;Garcia-Romeu,A.,Kersgaard,B.,and Addy,P.H.,2016,Clinical applications of hallucinogens:A review,Exp Clin Psychopharmacol 24,229-268;Morgan,L.,2020,MDMA-assisted psychotherapy for people diagnosed with treatment-resistant PTSD:what it is and what it isn’t,Ann Gen Psychiatry 19,33;Schenk,S.,and Newcombe,D.,2018,Methylenedioxymethamphetamine(MDMA)in Psychiatry:Pros,Cons,and Suggestions,J Clin Psychopharmacol 38,632-638;Huang,X.-P.,Setola,V.,Yadav,P.N.,Allen,J.A.,Rogan,S.C.,Hanson,B.J.,Revankar,C.,Robers,M.,Doucette,C.,and Roth,B.L.,2009,Parallel Functional Activity Profiling Reveals Valvulopathogens Are Potent 5-Hydroxytryptamine(2B)Receptor Agonists:Implications for Drug Safety Assessment,Molecular Pharmacology 76,710-722;Rothman,R.B.,and Baumann,M.H.,2009,Serotonergic drugs and valvular heart disease,Expert Opin Drug Saf 8,317-329;Parrott,A.C.,2014,The potential dangers of using MDMA for psychotherapy,J Psychoactive Drugs 46,37-43;Meyer,J.S.,2013,3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA):current perspectives,Subst Abuse Rehabil 4,83-99;Baylen,C.A.,and Rosenberg,H.,2006,A review of the acute subjective effects of MDMA/ecstasy,Addiction 101,933-947;Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.,1991,Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA;Barrett,F.S.,Bradstreet,M.P.,Leoutsakos,J.S.,Johnson,M.W.,and Griffiths,R.R.,2016,The Challenging Experience Questionnaire:Characterization of challenging experiences with psilocybin mushrooms,J Psychopharmacol 30,1279-1295)。
【0008】
3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、3,4-メチレンジオキシアンフェタミン(MDA)、3,4-メチレンジオキシフェネチルアミン(MDPEA)など、メチレンジオキシ環を含有する薬物の場合、O-脱メチレン化を含む代謝分解(主にCYP2D6酵素によって媒介される)は、曝露不良に寄与する(Tucker,G.T.,Lennard,M.S.,Ellis,S.W.,Woods,H.F.,Cho,A.K.,Lin,L.Y.,Hiratsuka,A.,Schmitz,D.A.,and Chu,T.Y.Y.,1994,The demethylenation of methylenedioxymethamphetamine(“ecstasy”)by debrisoquine hydroxylase(CYP2D6),Biochemical Pharmacology 47,1151-1156;Schmid,Y.,Vizeli,P.,Hysek,C.M.,Prestin,K.,Meyer Zu Schwabedissen,H.E.,and Liechti,M.E.,2016,CYP2D6 function moderates the pharmacokinetics and pharmacodynamics of 3,4-methylene-dioxymethamphetamine in a controlled study in healthy individuals,Pharmacogenet Genomics 26,397-401)。例えば、MDPEAは、広範な初回通過代謝により生物学的に不活性であり、MDMAなどの薬物の代謝は非線形の薬物動態に従うため、用量の比較的わずかな増加で血漿MDMA濃度が不均衡に上昇し、毒性上昇の一因となる(de la Torre,R.,Farre,M.,Roset,P.N.,Pizarro,N.,Abanades,S.,Segura,M.,Segura,J.,and Cami,J.,2004,Human pharmacology of MDMA:pharmacokinetics,metabolism,and disposition,Ther Drug Monit 26,137-144;de la Torre,R.,Farre,M.,Ortuno,J.,Mas,M.,Brenneisen,R.,Roset,P.N.,Segura,J.,and Cami,J.,2000,Non-linear pharmacokinetics of MDMA(‘ecstasy’)in humans,British journal of clinical pharmacology 49,104-109;Farre,M.,de la Torre,R.,Mathuna,B.O.,Roset,P.N.,Peiro,A.M.,Torrens,M.,Ortuno,J.,Pujadas,M.,and Cami,J.,2004,Repeated doses administration of MDMA in humans:pharmacological effects and pharmacokinetics,Psychopharmacology(Berl)173,364-375)。実際に、メチレンジオキシ含有薬物の代謝は、心毒性代謝物であるMDMAの場合の3,4-ジヒドロキシメタンフェタミンなど、毒性代謝物への高い曝露を引き起こす(Schindler,C.W.,Thorndike,E.B.,Blough,B.E.,Tella,S.R.,Goldberg,S.R.,and Baumann,M.H.,2014,Effects of 3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA)and its main metabolites on cardiovascular function in conscious rats,Br J Pharmacol 171,83-91)。
【0009】
アンフェタミン、例えば、MDMA、2,4,5-トリメトキシフェニルアンフェタミン(TMA-2)、および1-(2,5-ジメトキシ-4-(メチルチオ)フェニル)プロパン-2-アミン(DOT)の場合、フェネチルアミン足場上の親油性α側鎖メチル基は、一般に、フェネチルアミンと比較して、薬物動態特性および薬力学特性を強化する。したがって、それらは一般的にフェネチルアミンよりも長い半減期を有する。それらはまた、例えば、置換アンフェタミンサイケデリックが、部分アゴニストであるフェネチルアミン類似体と比較して、Gタンパク質共役受容体(GPCR)において完全アゴニストであるなど、標的において高い内因活性を有する(Rickli,A.,Luethi,D.,Reinisch,J.,Buchy,D.,Hoener,M.C.,and Liechti,M.E.,2015,Receptor interaction profiles of novel N-2-methoxybenzyl(NBOMe)derivatives of 2,5-dimethoxy-substituted phenethylamines(2C drugs),Neuropharmacology 99,546-553;Monte,A.P.,Marona-Lewicka,D.,Parker,M.A.,Wainscott,D.B.,Nelson,D.L.,and Nichols,D.E.,1996,Dihydrobenzofuran analogues of hallucinogens.3.Models of 4-substituted(2,5-dimethoxyphenyl)alkylamine derivatives with rigidified methoxy groups,J Med Chem 39,2953-2961;Monte,A.P.,Waldman,S.R.,Marona-Lewicka,D.,Wainscott,D.B.,Nelson,D.L.,Sanders-Bush,E.,and Nichols,D.E.,1997,Dihydrobenzofuran analogues of hallucinogens.4.Mescaline derivatives,J Med Chem 40,2997-3008;Pottie,E.,Cannaert,A.,and Stove,C.P.,2020,In vitro structure-activity relationship determination of 30 psychedelic new psychoactive substances by means of beta-arrestin 2 recruitment to the serotonin 2A receptor,Arch Toxicol;Rickli,A.,Moning,O.D.,Hoener,M.C.,and Liechti,M.E.,2016,Receptor interaction profiles of novel psychoactive tryptamines compared with classic hallucinogens,Eur Neuropsychopharmacol 26,1327-1337)。したがって、一般的に、置換されたアンフェタミンは、置換されたフェネチルアミンと比較して、副作用および毒性のリスクが比較的高い。さらに、エナンチオマーのアンフェタミンは、異なる効果を誘発し、異なる速度で代謝されることがあり、性別および人種に依存し、代謝がおそい人と速い人に区別されるため、さらに予測不可能な薬物動態の結果をもたらす。例えば、MDMAの(S)-エナンチオマーは、より大きな刺激剤様特性を呈し、(R)-エナンチオマーは、より大きな5-HT介在性サイケデリック様特性を呈することが示されている。MDMAの(S)-エナンチオマーはまた、(R)-エナンチオマーよりも迅速に代謝され、1)(R)-エナンチオマーと比較して(S)-エナンチオマーのAUCおよび血漿中半減期が低い、および2)(S)-エナンチオマーの活性代謝物MDAのより持続的な生物学的利用能の二つの効果をもたらす。
【0010】
ペヨーテ(Lophophora williamsii)およびサンペドロ(Echinopsis pachanoi)などのサボテンに見られるメスカリンなどの3,4,5-置換フェネチルアミンの場合、サイケデリック効果は、5-HT2Aアゴニズムの結果として生成されるが、5-HT2Cおよび5-HT1A受容体でのアゴニズムも寄与している(Nichols,D.E.,2004,Hallucinogens,Pharmacol Ther 101,131-181;Rickli,A.,Luethi,D.,Reinisch,J.,Buchy,D.,Hoener,M.C.,and Liechti,M.E.,2015,Receptor interaction profiles of novel N-2-methoxybenzyl(NBOMe)derivatives of 2,5-dimethoxy-substituted phenethylamines(2C drugs),Neuropharmacology 99,546-553;Braden,M.R.,Parrish,J.C.,Naylor,J.C.,and Nichols,D.E.,2006,Molecular interaction of serotonin 5-HT2A receptor residues Phe339(6.51)and Phe340(6.52)with superpotent N-benzyl phenethylamine agonists,Mol Pharmacol 70,1956-1964)。このクラスの他のメンバーと同様に、メスカリンは、その報告されている神経心理療法および精神霊的利益の根底にあり得る知覚、認識、感情、および気分の変化を誘発する(Johnson,M.W.,Hendricks,P.S.,Barrett,F.S.,and Griffiths,R.R.,2019,Classic psychedelics:An integrative review of epidemiology,therapeutics,mystical experience,and brain network function,Pharmacol Ther 197,83-102)。メスカリンは経口的に活性であるが、脳の生物学的利用能が低いため、高用量(例えば、約300mg)でのみ作用し、作用の開始が遅く、悪心を引き起こす(Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.,1991,Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA)。
【0011】
明らかに、メチレンジオキシ環、アンフェタミン、および3,4,5-置換フェネチルアミンを含有するものなどのサイケデリックおよびエンタクトゲンに対する安全な治療域は非常に狭く、薬物曝露を制御し、薬物濃度を安全かつ有効な範囲で維持することが困難であることが証明された。
【発明の概要】
【0012】
前述の観点から、より短時間で作用し、生物学的に利用可能であり、サイケデリック効果の問題を克服し、毒性が低く、より低い用量で強化された経口活性を示す、改善された、予測可能な薬物動態特性を有する新規のサイケデリックおよびエンタクトゲン化合物に対するニーズがある。さらに、神経学的に毒性のある(例えば精神異常作用がある)血漿濃度を生じさせない、効率的で、利便性が高く、そして制御可能な化合物製剤も求められている。
【0013】
したがって、これらの基準を満たす新規化合物の提供が、本発明の一つの目的である。
【0014】
当該化合物を含有する新規医薬組成物の提供も、本開示のもう一つの目的である。
【0015】
当該化合物を用いて、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有する対象の治療方法の提供も、本開示のもう一つの目的である。
【0016】
例えば当該化合物を含有する単層経口投与用錠剤組成物などの新規錠剤組成物の提供も、本開示のもう一つの目的である。
【0017】
治療に使用するための当該化合物の製剤を含有する新規キットの提供も、本開示のもう一つの目的である。
【0018】
例えば中枢神経系(CNS)障害または心理学的障害の治療など、ミスト中での吸入を介して当該化合物を送達する新規方法の提供も本開示のさらにもう一つの目的である。
【0019】
例えば中枢神経系(CNS)障害または心理学的障害など、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有する対象を治療するための化合物の新規用途の提供も本発明のさらにもう一つの目的である。
【0020】
以下の詳細な記述で明白となる、これら目的および他の目的は、本明細書に記載される新規化合物(例えば、式(I)~式(III)の化合物)が、例えば5-HT受容体などのGタンパク質共役型受容体(GPCR)への優先的な結合を維持していること、生物学的に利用可能であること(例えば、経口で生物学的に利用可能)、曝露が改善されたこと(すなわち、投与後急激に観測される薬物高濃度(スパイク)の予防)、および毒性代謝物への生体内活性化を防ぐ有益な酵素分解プロファイルを有していることを本発明者らが発見したことにより達成された。その結果として、本開示化合物は、副作用、毒性、および患者間変動を低減し、それによって治療域を改善し、臨床現場での実用的な使用が可能となった。新規化合物は、特定の部位での酵素分解を遅延または短絡させる、および/または他の部位に代謝ソフトスポットを導入する特定の分子修飾に基づいており、それらは、重要な研究の後でのみ、特定されるものであった。
【0021】
したがって、本発明は、以下を提供する:
(1)式(I)の構造を有する化合物:
【化1】

またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、またはRおよびRは、それに結合された原子と共に任意で結合されて、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを形成し、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、および
条件(i)~(iii)のうちの少なくとも一つが満たされ、
(i)X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つは重水素を含み、
(ii)RおよびRは、それに結合される原子と共に結合されて、重水素またはフッ素を含むヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール、および/またはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を形成し、
(iii)Rは、-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルであり、
ただし、X、X、Y、およびYがそれぞれ水素または重水素である場合、RおよびRの両方が-ORではない、式(I)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
(2)X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つが重水素を含む、(1)の化合物。
(3)RおよびRが、それに結合される原子と共に結合されて、重水素またはフッ素を含むヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール、および/またはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を形成する、(1)または(2)の化合物。
(4)Rは-OR、または-SRであり、Rは一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルである、(1)または(2)の化合物。
(5)当該化合物が、セロトニン5-HT受容体のアゴニストである、(1)~(4)のいずれか一つに記載の化合物。
(6)当該化合物が、セロトニン5-HT2A受容体のアゴニストである、(1)~(5)のいずれか一つに記載の化合物。
(7)式(II)の構造を有する(1)~(3)または(5)~(6)のいずれか一つに記載の化合物:
【化2】

またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
AはOまたはSであり、
およびZは独立して、水素、重水素またはフッ素であり、
AがOである場合、X、X、Y、Y、R、R、R、R、Z、Zの少なくとも一つは重水素を含み、および/またはZとZの少なくとも一つはフッ素である、式(II)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
(8)Rが-ORである、(7)に記載の化合物。
(9)XおよびXが水素である、(7)または(8)に記載の化合物。
(10)XおよびXが重水素である、(7)または(8)に記載の化合物。
(11)Xが水素または重水素であり、Xが置換または非置換C-Cアルキルである、(7)または(8)に記載の化合物。
(12)AがSである、(7)~(11)のいずれか一つに記載の化合物。
(13)AがOである、(7)~(11)のいずれか一つに記載の化合物。
(14)ZおよびZは、水素である、(7)~(13)のいずれか一つに記載の化合物。
(15)ZおよびZは、重水素である、(7)~(13)のいずれか一つに記載の化合物。
(16)以下からなる群から選択される、(7)~(15)のいずれか一つに記載の化合物:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】


またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
(17)式(III)の構造を有する(1)~(2)または(4)~(6)のいずれか一つに記載の化合物:
【化12】

またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
は、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、および
、X、Y、Y、R、Rの少なくとも一つは、重水素を含み、および/またはRは、-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-C アルキルである、式(III)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
(18)Rが、-SMe、-SCD、-SCF3、-SEt、-S n‐Pr、
‐SCHCHCF、-SCHCHCFH、-SCHCHCFH、-Me、-CD、-CF、-OMe、-OCD、-OCF
-OCHCHCF、-OCHCHCFH、-OCHCHCFHまたは-Brである、(17)に記載の化合物。
(19)各Rが独立して-Me、-CD、または-CFである、(17)または(18)に記載の化合物。
(20)XおよびXは、水素である、(17)~(19)のいずれか一つに記載の化合物。
(21)XおよびXは、重水素である、(17)~(19)のいずれか一つに記載の化合物。
(22)以下からなる群から選択される、(17)~(21)のいずれか一つに記載の化合物:
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】

またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグ。
(23)(1)~(22)のいずれか一つに記載の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
(24)当該化合物が、当該医薬組成物中に存在する当該化合物のアイソトポログの総量に基づき、少なくとも50重量%の純度で当該医薬組成物中に存在する、(23)に記載の医薬組成物。
(25)重水素を有する当該化合物の任意の位置が、当該重水素化部位において少なくとも50原子%の最小重水素取り込みを有する、(23)または(24)に記載の医薬組成物。
(26)当該化合物の他のアイソトポログを実質的に含まない、(23)~(25)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(27)経口投与用に製剤化された、(23)~(26)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(28)吸入を介した投与用に製剤化された、(23)~(27)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(29)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有する対象を治療する方法であって、
(1)~(22)のいずれか一つに記載の化合物の治療有効量を当該対象に投与することを含む、方法。
(30)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害が、精神神経系疾患もしくは障害、または炎症性の疾患もしくは障害である、(29)に記載の方法。
(31)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害が、中枢神経系(CNS)の障害である、(29)または(30)に記載の方法。
(32)当該中枢神経系(CNS)の障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満からなる群から選択される、(31)に記載の方法。
(33)当該中枢神経系(CNS)の障害が、疼痛である、(31)または(32)に記載の方法。
(34)当該中枢神経系(CNS)の障害が、性機能障害である、(31)または(32)に記載の方法。
(35)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害が、自律神経系(ANS)の障害である、(29)または(30)に記載の方法。
(36)当該自律神経系(ANS)の障害が、肺障害または心血管系障害である、(35)に記載の方法。
(37)当該化合物が、経口投与、舌下投与、口腔投与、局所投与、注射により投与、または吸入により投与される、(29)~(36)のいずれか一つに記載の方法。
(38)(1)~(22)のいずれか一つに記載の化合物、およびポリマーを含む、単層経口投与用錠剤組成物。
(39)当該組成物が、最大持続放出に適合される、(38)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(40)当該錠剤組成物が、(i)水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクス、(ii)一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマー、および(iii)当該化合物、の組み合わせを含む、(38)または(39)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(41)当該水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクスは、単独の、またはデンプン、ワックス、中性ゴム、ポリメタクリレート、PVA、PVA/PVP混合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される構成要素と混合することによって強化された、セルロース系ポリマーから選択される、(40)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(42)当該セルロース系ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、(41)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(43)一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマーが、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリレートカルボン酸塩、カチオン交換樹脂、粘土、ゼオライト、ヒアルロン酸、アニオン性ゴム、それらの塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、(40)~(42)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(44)当該アニオン性ゴムが、天然物質および半合成物質からなる群から選択される、(43)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(45)当該天然物質が、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンゴム、アラビアゴム、カラヤゴム、グアーガム、およびトラガカントゴムからなる群から選択される、(44)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(46)当該半合成物質が、カルボキシメチル-キチンおよびセルロースゴムからなる群から選択される、(44)または(45)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(47)疼痛治療を目的とした治療有効量の当該化合物を含む、(38)~(46)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(48)脳外傷治療を目的とした治療有効量の当該化合物を含む、(38)~(46)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(49)うつ病治療を目的とした治療有効量の当該化合物を含む、(38)~(46)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(50)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害の治療における使用を目的とした治療有効量の当該化合物を含む、(38)~(46)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(51)当該疾患または障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満からなる群から選択される中枢神経系(CNS)障害である、(50)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(52)当該疾患または障害が、自律神経系(ANS)の状態である、(50)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(53)当該疾患または障害が、肺障害である、(52)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(54)当該疾患または障害が、心血管系障害である、(52)に記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(55)当該組成物が、10~500ng/mlの範囲の化合物の血漿統合濃度を達成し、この濃度を放出期間中、維持する、(50)~(54)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(56)当該ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、(38)~(55)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物。
(57)(1)~(22)のいずれか一つに記載の化合物、およびポリマーを含む、経口投与用に製剤化された錠剤組成物。
(58)当該ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、(57)に記載の錠剤組成物。
(59)当該ポリマーが、一つまたは複数の酸基を含む、(57)または(58)に記載の錠剤組成物。
(60)当該ポリマーが、水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクスを含む、(57)~(59)のいずれか一つに記載の錠剤組成物。
(61)当該水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクスは、単独の、またはデンプン、ワックス、中性ゴム、ポリメタクリレート、PVA、PVA/PVP混合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される構成要素と混合することによって強化された、セルロース系ポリマーから選択される、(60)に記載の錠剤組成物。
(62)当該セルロース系ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、(61)に記載の錠剤組成物。
(63)1)(38)~(56)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)疼痛治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
(64)当該ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、(63)に記載のキット。
(65)1)(38)~(56)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)脳外傷治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
(66)当該ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、(65)に記載のキット。
(67)1)(38)~(56)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)うつ病治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
(68)当該ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、(67)に記載のキット。
(69)1)(38)~(56)のいずれか一つに記載の単層経口投与用錠剤組成物、および2)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害の治療における使用を目的とした説明書、を含む、対象の治療用のキット。
(70)当該ポリマーが、一つまたは複数の負荷電基を含む、(69)に記載のキット。
(71)ミストの液相に溶解した幻覚剤の吸入を介して投与することを含む、その必要のある患者に幻覚剤を送達する方法であって、当該幻覚剤が、(1)~(22)のいずれか一つに記載の化合物を含む、方法。
(72)当該幻覚剤が、患者の中枢神経系に送達される、(71)に記載の方法。
(73)当該幻覚剤が、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物と共に送達される、(71)または(72)に記載の方法。
(74)当該幻覚剤が、ヘリウムと酸素の混合物と共に送達される、(71)~(73)のいずれか一つに記載の方法。
(75)当該ヘリウムと酸素の混合物が、約50℃~約60℃に加熱される、(74)に記載の方法。
(76)当該ヘリウムが、約50~90%で、ヘリウムと酸素の混合物中に存在し、当該酸素が、約10~50%で、ヘリウムと酸素の混合物中に存在する、(74)または(75)に記載の方法。
(77)ヘリウムと酸素の混合物、および幻覚剤の投与の前に、前治療吸入療法を行うことをさらに含む、(74)~(76)のいずれか一つに記載の方法。
(78)当該前治療が、吸入によって患者に約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を投与することを含む、(77)に記載の方法。
(79)(i)吸入によって患者に約90℃~120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を投与すること、および(ii)吸入によって患者に約50℃~60℃に加熱されたヘリウムと酸素、および幻覚剤を含むミストを投与することをさらに含む、(71)~(78)のいずれか一つに記載の方法。
(80)工程(i)および(ii)を少なくとも一回繰り返すことをさらに含む、(79)に記載の方法。
(81)当該幻覚剤が、経口送達と比較して少なくとも25%までの薬物生物学的利用能の改善、経口送達と比較して少なくとも25%までのCmaxの増加、経口送達と比較して少なくとも50%までのTmaxの低下、またはそれらの組み合わせを伴い、患者の中枢神経系に送達される、(71)~(80)のいずれか一つに記載の方法。
(82)吸入によって、ミスト中に溶解された幻覚剤を投与することを含む、中枢神経系(CNS)の障害または心理学的障害を治療する方法であって、当該幻覚剤が、(1)~(22)のいずれか一つに記載の化合物を含む、方法。
(83)当該幻覚剤が、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物と共に送達される、(82)に記載の方法。
(84)当該幻覚剤が、ヘリウムと酸素の混合物とともに送達され、患者への幻覚剤の投与前に当該ヘリウムと酸素の混合物が約50℃~約60℃に加熱される、(83)に記載の方法。
(85)当該CNSの障害が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病または肥満である、(82)~(84)のいずれか一つに記載の方法。
(86)セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有する対象を治療する方法であって、
自動注入デバイスを介して、当該対象に、(1)~(22)のいずれか一つに記載の化合物の治療有効量を経皮投与、皮下投与、または筋肉内投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
前述の段落は、一般的な導入を目的として提供されており、以下の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。記載される実施形態は、添付図面と併せて検討されるとき、以下の詳細な説明を参照することによってさらなる優位性をもって最も良く理解されるであろう。
【0023】
図1図1は、非置換アミノ(-NH)基を有する式(II)の化合物、例えば、化合物II-1、II-4、II-5、II-9~II-21、II-27、II-29、およびII-44を作製するための合成経路を示す。
図2図2は、化合物II-11を作製するための合成経路を示す。
図3図3は、化合物II-14を作製するための合成経路を示す。
図4図4は、化合物II-15を作製するための合成経路を示す。
図5図5は、化合物II-16を作製するための合成経路を示す。
図6図6は、化合物II-17を作製するための合成経路を示す。
図7図7は、メチルアミノ(-NHMe)またはメチル-d3-アミノ基(-NHCD)を有する式(II)の化合物、例えば、化合物II-2、II-3、II-6~II-8、II-31、II-33、II-35、II-40、II-42、II-45、II-47、およびII-48を作製するための合成経路を示す。
図8図8は、化合物III-1を作製するための合成経路を示す。
図9図9は、化合物III-2を作製するための合成経路を示す。
図10図10は、化合物III-3を作製するための合成経路を示す。
図11図11は、化合物III-4を作製するための合成経路を示す。
図12図12は、化合物III-7を作製するための合成経路を示す。
図13図13は、分別再結晶を使用したフェニルプロパン-2-アミン(例えば、アンフェタミン)エナンチオマーの分解の一般的な手順を示す。
図14図14は、参照化合物1を作製するための合成経路を示す。
図15図15は、参照化合物2を作製するための合成経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の実施形態に関する以下の詳細な説明において、本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細を記載する。しかし、本開示の実施形態は、これらの具体的な詳細が無くとも実施され得ることは、当業者には明白であろう。他の例では、本開示の実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、公知の方法、手順、構成要素、および回路は詳細には記載されていない。
【0025】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0026】
「アルキル」とは、1~10個の炭素原子、例えば1~6個の炭素原子、または1~5個、または1~4個、または1~3個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。当該用語には、例として、例えばメチル(CH-)、エチル(CHCH-)、n-プロピル(CHCHCH-)、イソプロピル((CHCH-)、n-ブチル(CHCHCHCH-)、イソブチル((CHCHCH-)、sec-ブチル((CH)(CHCH)CH-)、t-ブチル((CHC-)、n-ペンチル(CHCHCHCHCH-)、およびネオペンチル((CHCCH-)などの直鎖状および分岐状のヒドロカルビル基が含まれる。
【0027】
「置換アルキル」という用語は、アルキル鎖中の一つまたは複数の炭素原子が任意で例えば-O-、-N-、-S-、-S(O)-(式中、nは、0~2)、-NR-(式中、Rは水素またはアルキル)などのヘテロ原子で置換され、1~10個の置換基を有する、本明細書に定義されるアルキル基を指し、当該置換基は、重水素、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、および-NRからなる群から選択され、式中、R’およびRは、同じであっても異なっていてもよく、水素、任意で置換されるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環から選択される。
【0028】
「アルキレン」とは、1~6個、例えば1~3個の炭素原子を有する、二価の脂肪族ヒドロカルビル基を指し、直鎖状または分岐状であってもよく、任意で-O-、-NR10-、-NR10C(O)-、-C(O)NR10-などから選択される一つまたは複数の基が割り込んでいる。当該用語には例として、メチレン(-CH-)、エチレン(-CHCH-)、n-プロピレン(-CHCHCH-)、イソ-プロピレン(-CHCH(CH)-)、(-C(CHCHCH-)、(-C(CHCHC(O)-)、(-C(CHCHC(O)NH-)、(-CH(CH)CH-)などが含まれる。
【0029】
「置換アルキレン」とは、以下の「置換された」の定義において炭素について記載されるように、置換基で1~3個の水素が置換されたアルキレン基を指す。
【0030】
「アルカン」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基およびアルキレン基を指す。
【0031】
「アルキルアミノアルキル」、「アルキルアミノアルケニル」、および「アルキルアミノアルキニル」という用語は、R’NHRの基を指し、R’は、本明細書に定義されるアルキル基であり、Rは、本明細書に定義されるアルキレン基、アルケニレン基、またはアルキニレン基である。
【0032】
「アルカリル」または「アラルキル」という用語は、-アルキレン-アリールおよび-置換アルキレン-アリールの基を指し、この場合においてアルキレン、置換アルキレン、およびアリールは、本明細書に定義される。
【0033】
「アルキルオキシ」とは、-O-アルキル基を指し、この場合においてアルキルは本明細書に定義されるとおりである。アルコキシには、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシなどが含まれる。「アルコキシ」という用語は、アルケニル-O-、シクロアルキル-O-、シクロアルケニル-O-、およびアルキニル-O-の基も指し、この場合においてアルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびアルキニルは、本明細書に定義されるとおりである。
【0034】
「置換アルコキシ」という用語は、置換アルキル-O-、置換アルケニル-O-、置換シクロアルキル-O-、置換シクロアルケニル-O-、および置換アルキニル-O-の基を指し、この場合において置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、および置換アルキニルは、本明細書に定義されるとおりである。
【0035】
「アルコキシアミノ」という用語は、-NH-アルコキシ基を指し、この場合においてアルコキシは本明細書で定義される。
【0036】
「ハロアルコキシ」という用語は、アルキル-O-基を指し、この場合においてアルキル基上の一つまたは複数の水素原子はハロ基で置換され、例として、トリフルオロメトキシなどの基が挙げられる。
【0037】
「ハロアルキル」という用語は、上述の置換アルキル基を指し、この場合においてアルキル基上の一つまたは複数の水素原子は、ハロ基で置換されている。そのような基の例としては限定されないが、例えばトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロエチルなどのフルオロアルキル基が挙げられる。
【0038】
「アルキルアルコキシ」という用語は、-アルキレン-O-アルキル、アルキレン-O-置換アルキル、置換アルキレン-O-アルキル、および置換アルキレン-O-置換アルキルの基を指し、この場合においてアルキル、置換アルキル、アルキレン、および置換アルキレンは、本明細書に定義されるとおりである。
【0039】
「アルキルチオアルコキシ」という用語は、-アルキレン-S-アルキル、アルキレン-S-置換アルキル、置換アルキレン-S-置換アルキル、および置換アルキレン-S-置換アルキルの基を指し、この場合において、アルキル、置換アルキル、アルキレン、および置換アルキレンは本明細書に定義されるとおりである。
【0040】
「アルケニル」とは、2~6個の炭素原子、例えば2~4個の炭素原子を有し、少なくとも1個、例えば1~2個の二重結合不飽和部位を有する直鎖状または分岐状のヒドロカルビル基を指す。当該用語には、例えば、ビ-ビニル、アリル、およびブタ-3-エン-1-イルが含まれる。当該用語には、シス異性体およびトランス異性体、またはこれらの異性体の混合物が含まれる。
【0041】
「置換アルケニル」という用語は、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有する本明細書に定義されるアルケニル基を指し、当該置換基は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリールおよび-SO-ヘテロアリールから選択される。
【0042】
「アルキニル」とは、2~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を有し、少なくとも1個、例えば、1~2個の三重結合不飽和部位を有する、直鎖状または分岐状の一価ヒドロカルビル基を指す。そのようなアルキニル基の例としては、アセチレニル(-C≡CH)、およびプロパルギル(-CHC≡CH)が挙げられる。
【0043】
「置換アルキニル」という用語は、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有する本明細書に定義されるアルキニル基を指し、当該置換基は、重水素、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリールおよび-SO-ヘテロアリールから選択される。
【0044】
「アルキニルオキシ」とは、-O-アルキニル基を指し、この場合においてアルキニルは、本明細書に定義されるとおりである。アルキニルオキシには、例として、エチニルオキシ、プロピニルオキシなどが含まれる。
【0045】
「アシル」とは、H-C(O)-、アルキル-C(O)-、置換アルキル-C(O)-、アルケニル-C(O)-、置換アルケニル-C(O)-、アルキニル-C(O)-、置換アルキニル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、置換シクロアルキル-C(O)-、シクロアルケニル-C(O)-、置換シクロアルケニル-C(O)-、アリール-C(O)-、置換アリール-C(O)-、ヘテロアリール-C(O)-、置換ヘテロアリール-C(O)-、ヘテロシクリル-C(O)-、および置換ヘテロシクリル-C(O)-の基を指し、この場合において、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。例えば、アシルは、「アセチル」基のCHC(O)を含む。
【0046】
「アシルアミノ」とは、-NR20C(O)アルキル、-NR20C(O)置換アルキル、NR20C(O)シクロアルキル、-NR20C(O)置換シクロアルキル、-NR20C(O)シクロアルケニル、-NR20C(O)置換シクロアルケニル、-NR20C(O)アルケニル、-NR20C(O)置換アルケニル、-NR20C(O)アルキニル、-NR20C(O)置換アルキニル、-NR20C(O)アリール、-NR20C(O)置換アリール、-NR20C(O)ヘテロアリール、-NR20C(O)置換ヘテロアリール、-NR20C(O)複素環、および-NR20C(O)置換複素環の基を指し、この場合においてR20は、水素またはアルキルであり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0047】
「アミノカルボニル」または「アミノアシル」という用語は、-C(O)NR2122の基を指し、この場合においてR21およびR22は独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環からなる群から選択され、R21およびR22が任意でそれらが結合する窒素とともに連結して、複素環または置換複素環の基を形成し、この場合において、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0048】
「アミノカルボニルアミノ」とは、-NR21C(O)NR2223基を指し、R21、R22、およびR23は独立して、水素、アルキル、アリールまたはシクロアルキルから選択されるか、または二つのR基が連結して、ヘテロシクリル基を形成する。
【0049】
「アルコキシカルボニルアミノ」という用語は、-NRC(O)OR基を指し、この場合において各Rは独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、この場合においてアルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書に定義されるとおりである。
【0050】
「アシルオキシ」という用語は、アルキル-C(O)O-、置換アルキル-C(O)O-、シクロアルキル-C(O)O-、置換シクロアルキル-C(O)O-、アリール-C(O)O-、ヘテロアリール-C(O)O-、およびヘテロシクリル-C(O)O-の基を指し、この場合においてアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書に定義されるとおりである。
【0051】
「アミノスルホニル」とは、-SONR2122基を指し、この場合においてR21およびR22は独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環からなる群から選択され、R21およびR22は任意でそれらが結合する窒素とともに連結して、複素環または置換複素環の基を形成し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0052】
「スルホニルアミノ」とは、-NR21SO22基を指し、この場合においてR21およびR22は独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環からなる群から選択され、R21およびR22は任意でそれらが結合する原子とともに連結して、複素環または置換複素環の基を形成し、この場合においてアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0053】
「アリール」または「Ar」とは、一つの環を有する(例えば、フェニル基中に存在する)、または複数の縮合環を有する環系を有する(そのような芳香族環系の例としては、ナフチル、アントリルおよびインダニルが挙げられる)、6~18個の炭素原子の一価芳香族炭素環式の基を指し、当該縮合環は、芳香族であっても無くてもよいが、ただし結合点は、芳香族環の原子を介するものである。当該用語には、例として、フェニルおよびナフチルが含まれる。アリール置換基に関する定義により特に制約されない限り、そのようなアリール基は任意で1~5個の置換基、または1~3個の置換基で置換されてもよく、置換基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリル、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、およびトリハロメチルから選択される。
【0054】
「アリールオキシ」とは、-O-アリール基を指し、この場合においてアリールは本明細書に定義されるとおりであり、例として、任意で置換されるアリールを含む、フェノキシ、ナフトキシなどが挙げられ、これも本明細書に定義されるとおりである。
【0055】
「アミノ」とは、-NH基を指す。
【0056】
「置換アミノ」という用語は、-NRR基を指し、各Rは独立して、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択されるが、ただし少なくとも一つのRは、水素ではない。
【0057】
「アジド」という用語は、-N基を指す。
【0058】
「カルボキシル」、「カルボキシ」または「カルボン酸塩」とは、-COHまたはその塩を指す。
【0059】
「カルボキシルエステル」または「カルボキシエステル」または「カルボキシアルキル」または「カルボキシアルキル」という用語は、-C(O)O-アルキル、-C(O)O-置換アルキル、-C(O)O-アルケニル、-C(O)O-置換アルケニル、-C(O)O-アルキニル、-C(O)O-置換アルキニル、-C(O)O-アリール、-C(O)O-置換アリール、-C(O)O-シクロアルキル、-C(O)O-置換シクロアルキル、-C(O)O-シクロアルケニル、-C(O)O-置換シクロアルケニル、-C(O)O-ヘテロアリール、-C(O)O-置換ヘテロアリール、-C(O)O-複素環、および-C(O)O-置換複素環の基を指し、この場合においてアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0060】
「(カルボキシエステル)オキシ」または「炭酸塩」とは、-O-C(O)O-アルキル、-O-C(O)O-置換アルキル、-O-C(O)O-アルケニル、-O-C(O)O-置換アルケニル、-O-C(O)O-アルキニル、-O-C(O)O-置換アルキニル、-O-C(O)O-アリール、-O-C(O)O-置換アリール、-O-C(O)O-シクロアルキル、-O-C(O)O-置換シクロアルキル、-O-C(O)O-シクロアルケニル、-O-C(O)O-置換シクロアルケニル、-O-C(O)O-ヘテロアリール、-O-C(O)O-置換ヘテロアリール、-O-C(O)O-複素環、および-O-C(O)O-置換複素環の基を指し、この場合においてアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0061】
「シアノ」または「ニトリル」とは、-CN基を指す。
【0062】
「シクロアルキル」とは、縮合環、架橋環、およびスピロ環系を含む、一つまたは複数の環を有する3~10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。好適なシクロアルキル基の例としては、例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどが挙げられる。そのようなシクロアルキル基としては、例として、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単一環構造、または例えばアダマンタニルなどの複数の環構造が挙げられる。
【0063】
「置換シクロアルキル」という用語は、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有するシクロアルキル基を指し、当該基は、重水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリールおよび-SO-ヘテロアリールから選択される。
【0064】
「シクロアルケニル」とは、単一または複数の環を有し、少なくとも一つの二重結合、例えば1~2個の二重結合を有する、炭素数3~10の非芳香族環状アルキル基を指す。
【0065】
「置換シクロアルケニル」という用語は、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有するシクロアルケニル基を指し、当該基は、重水素、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリールおよび-SO-ヘテロアリールから選択される。
【0066】
「シクロアルキニル」とは、単一または複数の環を有し、少なくとも一つの三重結合を有する、炭素数5~10の非芳香族シクロアルキル基を指す。
【0067】
「シクロアルコキシ」とは、-O-シクロアルキルを指す。
【0068】
「シクロアルケニルオキシ」とは、-O-シクロアルケニルを指す。
【0069】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。
【0070】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」とは、-OH基を指す。
【0071】
「ヘテロアリール」とは、1~15個の炭素原子、例えば1~10個の炭素原子と、酸素、窒素および硫黄からなる群から選択される1~10個の環内ヘテロ原子の芳香族基を指す。そのようなヘテロアリール基は、環系内に一つの環(例えばピリジニル、イミダゾリル、またはフリル)、または複数の縮合環(例えば、インドリジニル、キノリニル、ベンゾフラン、ベンズイミダゾリル、またはベンゾチエニルなどの基にある)を有してもよく、この場合において環系内の少なくとも一つの環は、芳香族であり、環系内の少なくとも一つの環は、芳香族であるが、ただし結合点は、芳香族環の原子を介するものとする。特定の実施形態では、ヘテロアリール基の窒素環原子および/または硫黄環原子は任意で酸化されて、N-オキシド(N→O)部分、スルフィニル部分、またはスルホニル部分を提供する。この用語には、例として、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、およびフラニルが含まれる。ヘテロアリール置換基に関する定義により特に制約されない限り、そのようなヘテロアリール基は任意で1~5個の置換基、または1~3個の置換基で置換されてもよく、置換基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリル、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、およびトリハロメチルから選択される。
【0072】
「ヘテロアラルキル」という用語は、-アルキレン-ヘテロアリール基を指し、この場合においてアルキレンおよびヘテロアリールは、本明細書に定義される。この用語には、例として、ピリジルメチル、ピリジルエチル、インドリルメチルなどが含まれる。
【0073】
「ヘテロアリールオキシ」とは、-O-ヘテロアリールを指す。
【0074】
「複素環」、「複素環式」、「ヘテロシクロアルキル」、および「ヘテロシクリル」とは、一つの環または複数の縮合環を有する飽和または不飽和の基を指し、縮合架橋環系およびスピロ環系を含み、1~10個のヘテロ原子を含む、3~20個の環原子を有する。これらの環原子は、窒素、硫黄、または酸素からなる群から選択され、この場合において、縮合環系において、環の一つまたは複数が、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってもよいが、ただし結合点は、非芳香族環を介するものとする。特定の実施形態では、複素環基の窒素原子および/または硫黄原子は任意で酸化されて、N-オキシド部分、-S(O)-部分、または-SO-部分を提供する。
【0075】
複素環およびヘテロアリールの例としては限定されないが、アゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリニル、チオモルホリニル(チオモルホリニルとも呼称される)、1,1-ジオキソチオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニル、ベンゾ[b][1,3]オキサチオール、ベンゾ[b][1,3]ジオキソールなどが挙げられる。
【0076】
複素環置換基に関する定義により特に制約されない限り、そのような複素環基は任意で1~5個の置換基、または1~3個の置換基で置換されてもよく、置換基は、重水素、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、および縮合複素環から選択される。
【0077】
「ヘテロシクリルオキシ」とは、-O-ヘテロシクリル基を指す。
【0078】
「ヘテロシクリルチオ」という用語は、複素環-S-基を指す。
【0079】
「ヘテロシクレン」という用語は、本明細書で定義されるように、複素環から形成されるジラジカル基を指す。
【0080】
「ヒドロキシアミノ」という用語は、-NHOH基を指す。
【0081】
「ニトロ」とは、-NO基を指す。
【0082】
「オキソ」とは、原子の(=O)を指す。
【0083】
「スルホニル」とは、SO-アルキル、SO-置換アルキル、SO-アルケニル、SO-置換アルケニル、SO-シクロアルキル、SO-置換シクロアルキル、SO-シクロアルケニル、SO-置換シクロアルケニル、SO-アリール、SO-置換アリール、SO-ヘテロアリール、SO-置換ヘテロアリール、SO-複素環、およびSO-置換複素環の基を指し、この場合においてアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。スルホニルには、例として、メチル-SO-、フェニル-SO-、および4-メチルフェニル-SO-が含まれる。
【0084】
「スルホニルオキシ」とは、-OSO-アルキル、OSO-置換アルキル、OSO-アルケニル、OSO-置換アルケニル、OSO-シクロアルキル、OSO-置換シクロアルキル、OSO-シクロアルケニル、OSO-置換シクロアルケニル、OSO-アリール、OSO-置換アリール、OSO-ヘテロアリール、OSO-置換ヘテロアリール、OSO-複素環、およびOSO-置換複素環の基を指し、この場合においてアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0085】
「アミノカルボニルオキシ」という用語は、-OC(O)NRR基を指し、この場合において各Rは独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環であり、この場合においてアルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書に定義されるとおりである。
【0086】
「チオール」とは、-SH基を指す。
【0087】
「チオキソ」または「チオケト」という用語は、原子の(=S)を指す。
【0088】
「アルキルチオ」または「チオアルコキシ」という用語は、-S-アルキル基を指し、この場合においてアルキルは本明細書に定義されるとおりである。特定の実施形態では、硫黄は、-S(O)-に酸化されてもよい。スルホキシドは、一つまたは複数の立体異性体として存在し得る。
【0089】
「置換チオアルコキシ」という用語は、-S-置換アルキル基を指す。
【0090】
「チオアリールオキシ」という用語は、アリール-S-基を指し、この場合においてアリール基は、本明細書に定義されるとおりであり、任意で置換されるアリールを含み、これも本明細書に定義される。
【0091】
「チオヘテロアリールオキシ」という用語は、ヘテロアリール-S-基を指し、この場合においてヘテロアリール基は、本明細書に定義されるとおりであり、任意で置換されるアリールを含み、これも本明細書に定義される。
【0092】
「チオヘテロシクロオキシ」という用語は、ヘテロシクリル-S-基を指し、この場合においてヘテロシクリル基は、本明細書で定義されるとおりであり、任意で置換されるヘテロシクリル基を含み、これも本明細書に定義される。
【0093】
本明細書の開示に加えて、特定の基またはラジカルを修飾するために使用されるとき、「置換される」という用語は、指定される基またはラジカルの一つまたは複数の水素原子がそれぞれ互いに独立して、以下に定義される同じ置換基または異なる置換基で置換されることを意味する場合もある。
【0094】
本明細書の個々の用語に関して開示される基に加えて、指定される基またはラジカル中の飽和炭素原子上の一つまたは複数の水素(一つの炭素上の任意の二つの水素が、=O、=NR70、=N-OR70、=Nまたは=Sと置換され得る)を置換するための置換基は、別段の指定がない限り、重水素、-R60、ハロ、=O、-OR70、-SR70、-NR8080、トリハロメチル、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO、=N、-N、-SO70、-SO、-SOOR70、-OSO70、-OSO、-OSOOR70、-P(O)(O(M、-P(O)(OR70)O、-P(O)(OR70、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)O、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR8080、-C(NR70)NR8080、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)O-M、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70CO 、-NR70CO70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR8080、-NR70C(NR70)R70および-NR70C(NR70)NR8080であり、この場合においてR60は、任意で置換されるアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、各R70は独立して、水素またはR60であり、各R80は独立してR70であるか、あるいは二つのR80がそれら結合する窒素原子と一緒に5、6または7員のヘテロシクロアルキルを形成し、当該ヘテロシクロアルキルは任意で、O、NおよびSからなる群から選択される同じ、または異なる追加ヘテロ原子を1~4個含んでもよく、そのうちのNは、-HまたはC-Cアルキル置換を有してもよく、および各Mは、正味の一正電荷とのカウンターイオンである。各Mは独立して例えばアルカリイオン、例えば、K、Na、Li;アンモニウムイオン、例えばN(R60;またはアルカリ土類イオン、例えば[Ca2+0.5、[Mg2+0.5、または[Ba2+0.5(「下付き0.5は、かかる二価アルカリ土類イオンのカウンターイオンの一つは本開示の化合物のイオン化型であり、他方は例えば塩化物などの典型的なカウンターイオンであり得ること、または本明細書に開示される二つのイオン化化合物が、かかる二価アルカリ土類イオンのカウンターイオンとしての役割を果たし得ること、または本開示の二重イオン化化合物が、かかる二価アルカリ土類イオンのカウンターイオンとしての役割を果たし得ること、を意味する)であってもよい。具体的な例として、-NR8080は、-NH、-NH-アルキル、N-ピロリジニル、N-ピペラジニル、4N-メチル-ピペラジン-1-イル、およびN-モルホリニルを含むことが意図される。
【0095】
本明細書の開示内容に加えて、「置換される」アルケン基、アルキン基、アリール基およびヘテロアリール基中の不飽和炭素原子上の水素に対する置換基は、別段の指定がない限り、重水素、-R60、ハロ、-O、-OR70、-SR70、-S、-NR8080、トリハロメチル、-CF、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO、-N、-SO70、-SO 、-SO70、-OSO70、-OSO 、-OSO70、-PO -2(M、-P(O)(OR70)O、-P(O)(OR70、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-CO 、-CO70、-C(S)OR70、-C(O)NR8080、-C(NR70)NR8080、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OCO 、-OCO70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70CO 、-NR70CO70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR8080、-NR70C(NR70)R70および-NR70C(NR70)NR8080であり、この場合においてR60、R70、R80およびMは、上記に定義されるとおりであるが、ただし、置換アルケンまたは置換アルキンの場合、置換基は、-O、-OR70、-SR70、または-Sではない。
【0096】
本明細書の個々の用語に関して開示される基に加えて、「置換される」ヘテロアルキル基およびシクロヘテロアルキル基中の窒素原子上の水素に対する置換基は、別段の指定がない限り、-R60、-O-M、-OR70、-SR70、-S-M、-NR8080、トリハロメチル、-CF、-CN、-NO、-NO、-S(O)70、-S(O)O-M、-S(O)OR70、-OS(O)70、-OS(O)O-M、-OS(O)OR70、-P(O)(O-)(M、-P(O)(OR70)O-M、-P(O)(OR70)(OR70)、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR8080、-C(NR70)NR8080、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70C(O)OR70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR8080、-NR70C(NR70)R70および-NR70C(NR70)NR8080であり、この場合においてR60、R70、R80およびMは、上記に定義されるとおりである。
【0097】
本明細書の開示内容に加えて、特定の実施形態では、置換される基は、1、2、3もしくは4個の置換基、1、2もしくは3個の置換基、1もしくは2個の置換基、または1個の置換基を有する。
【0098】
上記で定義される全ての置換基において、それ自体に対するさらなる置換基で置換基を定義することによって得られるポリマー(例えば、置換基として置換アリールを有する置換アリールは、それ自体が置換アリール基で置換されており、さらに置換アリール基で置換される、など)を本明細書に含めることは意図されていない。そのような場合、かかる置換の最大数は、三回である。例えば、本明細書で具体的に予期される置換アリール基の連続置換は、置換アリール-(置換アリール)-置換アリールに限定される。しかし、例えばポリエーテルなどとして定義される置換基は、3回より多い連続置換を含んでもよく、例えば、-O-(CHCHO)-Hの場合、nは、1、2、3またはそれ以上であってもよい。
【0099】
別段の示唆がない限り、本明細書に明示的に定義されていない置換基の命名は、官能基の末端部分から結合点に向かって隣接する官能基を命名することによって行われる。例えば、置換基の「アリールアルキルオキシカルボニル」とは、(アリール)-(アルキル)-O-C(O)-を指す。
【0100】
一つまたは複数の置換基を含有する本明細書に開示される基のいずれについても、当然のことながら、そのような基は、立体的に非現実的である、および/または合成的に実現不可能であるいかなる置換または置換パターンも含まないことが理解される。さらに、対象化合物は、これらの化合物の置換から精製される全ての立体化学異性体を含む。
【0101】
置換基または基が、「重水素を含む」または「重水素を含むこと」と定義されるとき、置換基または基それ自体が重水素であってもよく、または置換基または基がその化学構造中に少なくとも一つの重水素置換を含有してもよいことを理解されたい。例えば、置換基の「-R」が重水素を含むように定義される場合、-Rは、-D(-重水素)であってもよく、または例えば-CDなど、-Rに関して記載される他の要件に合致する基であってもよいことを理解されたい。
【0102】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、例えば哺乳動物などの患者に対する投与に許容可能な塩を意味する(所与の投与レジメンに対して許容可能な哺乳動物の安全性を有する対イオンを有する塩)。そのような塩は、薬学的に許容可能な無機塩基または有機塩基から誘導されてもよく、および薬学的に許容可能な無機酸または有機酸から誘導されてもよい。「薬学的に許容可能な塩」とは、化合物の薬学的に許容可能な塩を指し、当該塩は、当分野に公知の様々な有機対イオンおよび無機対イオンから誘導され、例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどの塩が挙げられる。分子が塩基性官能基を含む場合には、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸または無機酸の塩が挙げられる。
【0103】
「それらの塩」という用語は、酸のプロトンが、例えば金属カチオンまたは有機カチオンなどのカチオンによって置換されるときに形成される化合物を意味する。適切な場合には、当該塩は薬学的に許容可能な塩であるが、患者への投与が意図されない中間体化合物の塩にはこれは必須ではない。例として、本発明化合物の塩としては、化合物が無機酸または有機酸によってプロトン化されてカチオンを形成する場合、塩のアニオン性成分として無機酸または有機酸のコンジュゲート塩基を含むものが挙げられる。
【0104】
「溶媒和物」とは、溶媒分子と、溶質の分子またはイオンの組み合わせによって形成される複合体を意味する。溶媒は、有機化合物、無機化合物、またはそれら両方の混合物であってもよい。溶媒のいくつかの例としては限定されないが、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、および水が挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は、水和物である。
【0105】
「立体異性体」とは、同じ原子接続性を有するが、空間内での原子配置が異なる化合物を指す。立体異性体としては、シス-トランス異性体、EおよびZ異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマーが挙げられる。例えば、化合物のラセミ体および光学的に純粋な立体異性体など、すべての形態が本明細書において予期される。少なくとも一つの立体形成中心を有するが、立体化学を考慮せずに描かれる化学式および化合物は、ラセミ化合物、ならびに別個の立体異性体、例えば、R立体異性体および/またはS立体異性体、ジアステレオマーが幾何学的に実現可能である限りにおいてジアステレオマーの各配列のすべてを包含することが意図される。
【0106】
「互変異性体」とは、原子の電子的結合および/またはプロトンの配置においてのみ異なる、分子の別の形態を指し、例えば、エノール-ケト互変異性体およびイミン-エナミン互変異性体があり、または例えばピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾールおよびテトラゾールなどの-N=C(H)-NH-環原子配置を含むヘテロアリール基の互変異性型がある。当業者であれば、他の互変異性型の環原子配置も可能であることを認識するであろう。
【0107】
本明細書の化合物は、異なる塩、溶媒和物、および立体異性体の形態で存在することが可能であり、本開示は、対象化合物の立体異性体の薬学的に許容可能な塩の溶媒和物など、塩、溶媒和物および立体異性体のすべての配列を含むことが意図されることを認識されたい。
【0108】
本明細書で使用される場合、「最大持続放出」という文言は、放出期間を最大値まで増加させるように製剤化された本開示の特定の製剤に関する放出枠を記述するものであり、消化管が食物とともにすべての薬剤を自然に排泄する時間に最終的には限定される。
【0109】
「不正開封防止」という文言は、静脈内使用のために抜き出すことによって製剤の薬剤部分を乱用するような製剤使用が困難な薬剤の態様を記述すると当分野で認識されており、これにより、薬物乱用のリスクが低下する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「定常」という用語は、分子濃度、例えば、本明細書に記載される任意の化合物の濃度の安定した、または定常状態のレベルを記述するものである。
【0111】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、「製剤」という用語と同等である。
【0112】
本明細書で使用される場合、「投与イベント」という文言は、例えば、10分未満などの短い時間枠内で、一つまたは複数の丸薬の形態で所与の投与量を対象に投与することを記述するものである。
【0113】
本明細書で使用される場合、「放出期間」という文言は、本明細書に記述される任意の化合物がマトリクスから放出されて、本明細書に記述される化合物の血漿濃度が得られる時間枠を記述するものである。放出期間の開始時刻は、対象への経口投与の時点からと定義され、胃への流入、および胃の酵素および酸による初期溶解とほぼ同等と考えられている。
【0114】
本明細書で使用される場合、「治療すること」または「治療」という用語は、例えば哺乳動物などの患者(特にヒト)において、疾患もしくは医学的状態を処置すること、または治療することを意味し、例えば、患者において疾患もしくは医学的状態を消滅させること、または退縮を生じさせること、患者において疾患もしくは医学的状態の発現を減速または停止させることによって疾患または医学的状態を抑制すること、または患者において疾患もしくは医学的状態の症状を緩和することなど、疾患または医学的状態を改善することを含む。一部の実施形態では、予防的治療は、対象において、疾患または医学的状態の発生を防止することであってもよい。
【0115】
「患者」とは、ヒトおよび非ヒト対象を指し、特に哺乳動物対象を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「予防する」、「予防すること」および「予防」という用語は、疾患、障害、もしくは状態の発症、再発、もしくは拡散の予防、またはそれらの一つまたは複数の症状の予防を指す。当該用語は、特定の疾患、障害、もしくは状態の症状の阻害または減少を包含する。特に疾患、障害または状態の家族歴を有する対象は、特定の実施形態において、予防レジメンの候補となる。さらに、再発性の症状の既往を有する対象も、予防の潜在的な候補となる。これに関して、「予防すること」という用語は、「予防的治療」と相互交換可能に使用され得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「管理する」、「管理すること」および「管理」という用語は、疾患、障害もしくは状態、またはそれらの一つまたは複数の症状の進行、拡散または悪化を予防すること、または遅延させることを指す。多くの場合、予防的な剤および/または治療的な剤に由来する有益な効果は、疾患、障害または状態の治癒を生じさせるものではない。これに関して、「管理すること」という用語は、疾患、障害、または状態の再発を予防または最小限にする試みにおいて、特定の疾患、障害、または状態に罹患した対象を治療することを包含する。
【0118】
「薬学的に有効な量」および「治療有効量」とは、特定の障害もしくは疾患、またはその症状のうちの一つまたは複数を治療する、および/または疾患もしくは障害の発生を防止するのに充分な化合物の量を指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、および別途指定されない限り、活性剤の「予防有効量」は、疾患、障害、もしくは状態を予防する、またはその再発を予防するのに充分な量である。「予防有効量」という用語は、全体的な予防効果を改善する、または別の予防剤の予防的有効果を強化する両を包含し得る。
【0120】
「神経学的に毒性のあるスパイク」という文言は、本明細書において、例えば幻覚、めまい、および悪心などの鎮静または精神異常生の副作用をもたらす、本明細書に記載される任意の化合物の濃度におけるスパイクを記述するために使用され、当該副作用は即時性の影響だけでなく、治療コンプライアンスにも影響を与え得る。特に副作用は、300ng/Lを超える血中濃度レベルでさらに顕著となり得る。
【0121】
本明細書で使用される場合、および別段の指定がない限り、「精神神経系疾患または障害」は、公知の神経学的な状態に関連する行動上の問題または心理上の問題であり、典型的には共存する症状のクラスターとして定義される。精神神経系障害の例としては限定されないが、統合失調症、統合失調症の認知障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、双極性障害および躁病、うつ病またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「炎症性状態または炎症性疾患」とは、広く慢性的または急性的な炎症性疾患を指す。炎症状態および炎症性疾患としては限定されないが、リウマチ性疾患(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎)、脊椎関節症(例えば、強直性脊椎炎、反応性関節炎、ライター症候群)、結晶性関節症(例えば、痛風、偽痛風、ピロリン酸カルシウム沈着症)、多発性硬化症、ライム病、リウマチ性多発性筋痛、結合組織疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群)、血管炎(例えば、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群)、外傷または虚血の結果を含む炎症状態、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化性血管疾患、アテローム性動脈硬化症および血管閉塞性疾患を含む血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心筋梗塞、脳卒中、末梢血管疾患)、および血管ステント再狭窄、ブドウ膜炎、角膜疾患、虹彩炎、虹彩毛様体炎 および白内障を含む眼疾患が挙げられる。
【0123】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙項目のうちの一つまたは複数のいずれか、およびすべての組み合わせを含む。本明細書の記述、および以下の特許請求の範囲の全体を通して使用される場合、文脈が別途明確に示唆しない限り、「a」、「an」および「the」の意味は、複数形ならびに単数形を含む。数値に関連する「約」という用語は、値が5%まで上下に変動することを意味する。例えば、約100という値については、95~105(または95~105の間の任意の値)を意味する。
【0124】
化合物
発明者らは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、例えば5-HT受容体への優先的結合を示し、生物学的に利用可能であり(例えば、経口で生物学的に利用可能)、曝露が改善された(すなわち、投与後急激に観測される薬物高濃度(スパイク)の防止)、および毒性代謝物への生体内活性化を防ぐ有益な酵素分解プロファイルを有する、特定の分子修飾に基づいた新規のフェネチルアミン型化合物を特定した。その結果として、本開示化合物は、副作用、毒性、および患者間変動を低減し、それによって治療域を改善し、臨床現場での実用的な使用が可能となった。新規のフェネチルアミン型化合物は、特定の部位での酵素分解を遅延または短絡させる、および/または他の部位に代謝ソフトスポットを導入する特定の分子修飾に基づいており、それらは、重要な研究の後でのみ、特定されるものであった。
【0125】
式(I)
本明細書において、式(I)に従う化合物:
【化17】

またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグが開示され、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、またはRおよびRは、それに結合された原子と共に任意で結合されて、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを形成し、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、および
条件(i)~(iii)のうちの少なくとも一つが満たされ、
(i)X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つは重水素を含み、
(ii)RおよびRは、それに結合される原子と共に結合されて、重水素またはフッ素を含むヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール、および/またはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を形成し、
(iii)Rは、-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルであり、
ただし、X、X、Y、およびYがそれぞれ水素または重水素である場合、RおよびRの両方が-ORではない、式(I)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【0126】
およびXは、同じであっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、XおよびXは、同じである。一部の実施形態では、XおよびXは、水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、重水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、異なっている。一部の実施形態では、Xは水素または重水素であり、Xは置換または非置換C-Cアルキルである。一部の実施形態では、Xは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては、メチル、エチル、およびn-プロピル、好ましくはメチルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Xは、置換C-Cアルキルである。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、XおよびXのうちの一つは重水素であり、他方は水素である。
【0127】
およびYは、同一であっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、YおよびYは、同じである。一部の実施形態では、YおよびYは、水素である。一部の実施形態では、YおよびYは、重水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、異なっている。一部の実施形態では、YおよびYのうちの一つは重水素であり、他方は水素である。一部の実施形態では、Yは、置換または非置換C-Cアルキルである。一部の実施形態では、Yは、置換または非置換C-Cアルキルである。
【0128】
一部の実施形態では、Rは重水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは、ハロゲン、例えば、-Br、-F、-Cl、または-Iである。一部の実施形態では、Rは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは、置換C-Cアルキルである。Rが置換C-Cアルキルである場合、好ましい置換基としては、限定されないが、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、例えばヒドロキシル置換基またはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられる。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、Rは-ORである。一部の実施形態では、Rは-SRである。
【0129】
一部の実施形態では、Rは重水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは、ハロゲン、例えば、-Br、-F、-Cl、または-Iである。一部の実施形態では、Rは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは、置換C-Cアルキルである。Rが置換C-Cアルキルである場合、好ましい置換基としては、限定されないが、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、例えばヒドロキシル置換基またはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられる。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、Rは-ORである。一部の実施形態では、Rは-SRである。
【0130】
一部の実施形態では、Rは重水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは、ハロゲン、例えば、-Br、-F、-Cl、または-Iである。一部の実施形態では、Rは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは、置換C-Cアルキルである。Rが置換C-Cアルキルである場合、好ましい置換基としては、限定されないが、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、例えばヒドロキシル置換基またはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられる。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、Rは-ORである。一部の実施形態では、Rは-SRである。
【0131】
一部の実施形態では、Rは、-SMe、-SCD、-SCF、-SEt、-Sn-Pr、-SCHCHCF、-SCHCHCFH、-SCHCHCFH、-Me、
-CD、-CF、-OMe、-OCD、-OCF、-OCHCHCF、-OCHCHCFH、-OCHCHCFH または-Brである。
【0132】
一部の実施形態では、Rは重水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは、ハロゲン、例えば、-Br、-F、-Cl、または-Iである。一部の実施形態では、Rは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは、置換C-Cアルキルである。Rが置換C-Cアルキルである場合、好ましい置換基としては、限定されないが、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、例えばヒドロキシル置換基またはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられる。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、Rは-ORである。一部の実施形態では、Rは-SRである。
【0133】
一部の実施形態では、RおよびRは、それに結合される原子と共に結合されて、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを形成し、具体的にはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基またはベンゾ[d][1,3]ジオキソール基が挙げられる。RおよびRが、それに結合される原子と共に結合されて、ベンゾ[d][1,3]オキサチオール基またはベンゾ[d][1,3]ジオキソール基を形成する実施形態では、オキサチオール環またはジオキソール環のいずれかがさらに、本明細書に定義される置換基、例えば重水素置換基で置換されてもよい。
【0134】
およびRは、同一であっても、または異なってもよい。RおよびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびヘキシル)、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキル(例えば、-CDH、-CDH、-CD)であってもよい。
【0135】
各Rは独立して、水素、重水素、非置換C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシル)、または置換C-Cアルキルであってもよく、好ましい置換基には、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、ヒドロキシルまたはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Rは、置換または非置換C-Cアルキル、好ましくはC-Cアルキル、好ましくは置換または非置換Cアルキルであってもよく、その例としては限定されないが、-CH、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CFが挙げられる。一部の実施形態では、各Rは、-CHである。一部の実施形態では、各Rは、-CDである。一部の実施形態では、二つ以上のRが存在する。このような場合、各Rは、同じであっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、各Rは同じである。一部の実施形態では、各Rは異なっており、例えば一つのRは、-CHであり、他方は、-CDである。
【0136】
の上記説明に従い、R~Rの任意の一つまたは複数は、互いに独立して、-ORまたは-SRであってもよく、その例には、-SMe、-SCD3、-SCF3、-SEt、-Sn-Pr、-SCHCHCF、-SCHCHCFH、-SCHCHCFH、-OMe、-OCD、-OCF、-OCHCHCF、-OCHCHCFH、および-OCHCHCFHが含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
上述の通り、条件(i)~(iii)のうちの少なくとも一つが満たされている限り、式(I)の化合物の上記の実施形態のいずれも提供することができる:(i)X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つは重水素を含み、(ii)RおよびRは、それに結合された原子と共に結合されて、重水素またはフッ素を含むヘテロシクロアルキルもしくはヘテロアリール、および/またはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を形成し、(iii)Rは-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルであり、ただし、X、X、Y、およびYがそれぞれ水素または重水素である場合、RおよびRの両方がそれぞれ-ORではない。
【0138】
一部の実施形態では、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、Rの少なくとも一つは重水素を含む。一部の実施形態では、RおよびRは、それに結合される原子と共に結合されて、重水素またはフッ素を含むヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール、および/またはベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を形成し、これらは、例えば、一つまたは複数の重水素で任意に置換されてもよい。一部の実施形態では、Rは、-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルである(すなわち、Rは、-O-C-Cアルキル基であり、該アルキル基は、一つまたは複数のハロゲンで置換され、または-S-C-Cアルキル基であり、該アルキル基は、一つまたは複数のハロゲンで置換されている)。
【0139】
式(II)
一部の実施形態では、式(II)の構造を有する化合物:
【化18】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびRは独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
AはOまたはSであり、
およびZは独立して、水素、重水素またはフッ素であり、
AがOである場合、X、X、Y、Y、R、R、R、R、Z、Zの少なくとも一つは重水素を含み、および/またはZとZの少なくとも一つはフッ素である、式(II)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【0140】
およびXは、同じであっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、XおよびXは、同じである。一部の実施形態では、XおよびXは、水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、重水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、異なっている。一部の実施形態では、Xは水素または重水素であり、Xは置換または非置換C-Cアルキルである。一部の実施形態では、Xは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては、メチル、エチル、およびn-プロピル、好ましくはメチルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Xは、置換C-Cアルキルである。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、XおよびXのうちの一つは重水素であり、他方は水素である。
【0141】
およびYは、同一であっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、YおよびYは、同じである。一部の実施形態では、YおよびYは、水素である。一部の実施形態では、YおよびYは、重水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、異なっている。一部の実施形態では、YおよびYのうちの一つは重水素であり、他方は水素である。一部の実施形態では、Yは、置換または非置換C-Cアルキルである。一部の実施形態では、Yは、置換または非置換C-Cアルキルである。
【0142】
一部の実施形態では、Rは重水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは、ハロゲン、例えば、-Br、-F、-Cl、または-Iである。一部の実施形態では、Rは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは、置換C-Cアルキルである。Rが置換C-Cアルキルである場合、好ましい置換基としては、限定されないが、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、例えばヒドロキシル置換基またはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられる。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、Rは-ORである。一部の実施形態では、Rは-SRである。
【0143】
一部の実施形態では、Rは重水素である。一部の実施形態では、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは、ハロゲン、例えば、-Br、-F、-Cl、または-Iである。一部の実施形態では、Rは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは、置換C-Cアルキルである。Rが置換C-Cアルキルである場合、好ましい置換基としては、限定されないが、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、例えばヒドロキシル置換基またはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられる。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、Rは-ORである。一部の実施形態では、Rは-SRである。
【0144】
およびRは、同一であっても、または異なってもよい。RおよびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびヘキシル)、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキル(例えば、-CDH、-CDH、-CD)であってもよい。
【0145】
各Rは独立して、水素、重水素、非置換C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシル)、または置換C-Cアルキルであってもよく、好ましい置換基には、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、ヒドロキシルまたはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Rは、置換または非置換C-Cアルキル、好ましくはC-Cアルキル、好ましくは置換または非置換Cアルキルであってもよく、その例としては限定されないが、-CH、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CFが挙げられる。一部の実施形態では、各Rは、-CHである。一部の実施形態では、各Rは、-CDである。一部の実施形態では、二つ以上のRが存在する。このような場合、各Rは、同じであっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、各Rは同じである。一部の実施形態では、各Rは異なっており、例えば一つのRは、-CHであり、他方は、-CDである。
【0146】
の上記説明に従い、RおよびRは、互いに独立して、-ORまたは-SRであってもよく、その例には、-SMe、-SCD3、-SCF3、-SEt、-Sn-Pr、-SCHCHCF、-SCHCHCFH、-SCHCHCFH、-OMe、-OCD、-OCF、-OCHCHCF、-OCHCHCFH、および-OCHCHCFHが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Rは-ORまたは-SRであり、Rは水素である。一部の実施形態では、Rは-ORまたは-SRであり、Rは水素である。
【0147】
一部の実施形態では、AはO(酸素)である。一部の実施形態では、AはS(硫黄)である。
【0148】
およびZは、同一であっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、ZおよびZは、同じである。一部の実施形態では、ZおよびZは、水素である。一部の実施形態では、ZおよびZは、重水素である。一部の実施形態では、ZおよびZは、フッ素である。一部の実施形態では、ZおよびZは、異なっている。一部の実施形態では、ZおよびZのうちの一つは重水素であり、他方は水素である。
【0149】
上述のように、AがOであるとき、X、X、Y、Y、R、R、R、R、Z、Zの少なくとも一つが重水素を含み、および/またはZおよびZの少なくとも一つがフッ素である限り、式(II)の化合物の上記の実施形態のいずれかを提供することができる。
【0150】
一部の実施形態では、化合物、例えば、式(II)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【0151】
上記で特定される化合物の化合物番号、IUPAC名、および置換基のリストを表1に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0152】
式(II)の化合物は、有利なことに、毒性副生成物をもたらす代謝分解、例えば、O-脱メチル化の形成を遅延または短絡させ、毒性およびオフターゲット活性が減少した生物学的に利用可能な投与レジメンを可能にし得る。式(II)の化合物はまた、代謝不安定基、例えば、ベンゾ[d][1,3]オキサチオール基を有する化合物などを、制御された、一貫した曝露、および短縮された効果のために導入してもよい。
【0153】
式(III)
一部の実施形態では、式(III)の構造を有する化合物:
【化27】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグであって、
式中、
およびXは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
およびYは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、
は、置換もしくは非置換C-Cアルキル、-OR、または-SRであり、
およびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキルであり、
各Rは独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換C-Cアルキルであり、および
、X、Y、Y、R、Rの少なくとも一つは、重水素を含み、および/またはRは、-OR、または-SRであり、R中のRは、一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキルである、式(III)の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ。
【0154】
およびXは、同じであっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、XおよびXは、同じである。一部の実施形態では、XおよびXは、水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、重水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、異なっている。一部の実施形態では、Xは水素または重水素であり、Xは置換または非置換C-Cアルキルである。一部の実施形態では、Xは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては、メチル、エチル、およびn-プロピル、好ましくはメチルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Xは、置換C-Cアルキルである。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、XおよびXのうちの一つは重水素であり、他方は水素である。
【0155】
およびYは、同一であっても、または異なってもよい。一部の実施形態では、YおよびYは、同じである。一部の実施形態では、YおよびYは、水素である。一部の実施形態では、YおよびYは、重水素である。一部の実施形態では、XおよびXは、異なっている。一部の実施形態では、YおよびYのうちの一つは重水素であり、他方は水素である。一部の実施形態では、Yは、置換または非置換C-Cアルキルである。一部の実施形態では、Yは、置換または非置換C-Cアルキルである。
【0156】
一部の実施形態では、Rは、非置換C-Cアルキルであり、その例としては限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは、置換C-Cアルキルである。Rが置換C-Cアルキルである場合、好ましい置換基としては、限定されないが、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、例えばヒドロキシル置換基またはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられる。アルキル基は、一つ、または複数の置換基を含んでもよい。例えば、アルキル基がCアルキル基(すなわち、メチル基)である場合、置換Cアルキル基は、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CF等であってもよい。一部の実施形態では、Rは-ORである。一部の実施形態では、Rは-SRである。一部の実施形態では、Rは、-SMe、-SCD、-SCF、-SEt、-Sn-Pr、-SCHCHCF、-SCHCHCFH、-SCHCHCFH、-Me、-CD、-CF、-OMe、-OCD、-OCF、-OCHCHCF、-OCHCHCFH、-OCHCHCFHまたは-Brである。
【0157】
およびRは、同一であっても、または異なってもよい。RおよびRは独立して、水素、非置換C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびヘキシル)、または一つまたは複数の重水素で置換されたC-Cアルキル(例えば、-CDH、-CDH、-CD)であってもよい。
【0158】
各Rは独立して、水素、重水素、非置換C-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびヘキシル)、または置換C-Cアルキルであってもよく、好ましい置換基には、重水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、ヒドロキシルまたはポリエーテル置換基などの極性置換基が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Rは、置換または非置換C-Cアルキル、好ましくはC-Cアルキル、好ましくは置換または非置換Cアルキルであってもよく、その例としては限定されないが、-CH、-CDH、-CDH、-CD、-CFH、-CFH、-CFが挙げられる。各Rは、存在する任意の他のRと同一であってもよく、または異なっていてもよい。一部の実施形態では、各Rは同じである。一部の実施形態では、各Rは、-CHである。一部の実施形態では、各Rは、-CDである。一部の実施形態では、各Rは異なっている。一部の実施形態では、フェニル基のメタ位置に位置するRは両方とも同一であり、一方、Rに存在する任意のRは、フェニル基のメタ位置にあるものと同一であっても、異なっていてもよい。一部の実施形態では、各Rは独立して、-Me、-CD、-CF、-Et、-n-Pr、-CHCHCF、-CHCHCFH、または-CHCHCFHである。
【0159】
上述のように、X、X、Y、Y、R、Rの少なくとも一つが重水素を含み、および/またはRが-OR、または-SRであり、R中のRが一つまたは複数のハロゲンで置換されたC-Cアルキル基である限り、式(III)の化合物の上記実施形態のいずれかを提供することができる(すなわち、Rは、-O-C-Cアルキル基であり、該アルキル基は一つまたは複数のハロゲンで置換されている;または-S-C-Cアルキル基であり、該アルキル基は一つまたは複数のハロゲンで置換されている)。
【0160】
一部の実施形態では、化合物、例えば、式(III)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【化28】
【化29】
【化30】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグ。
【0161】
上記で特定される化合物の化合物番号、IUPAC名、および置換基のリストを表2に示す。
【表5】
【表6】
【0162】
式(III)の化合物は、有利な脳生物学的利用能を有する場合があり、したがって、より低い用量でも強化された経口活性を示す。結果として、式(III)の化合物は、毒性の低下を伴う長期的な治療利益を実現するマイクロドージングに適し得る。
【0163】
式(I)~(III)の化合物は、立体中心を含有してもよい。その場合、式(I)~(III)およびそれらに属する化合物が立体化学を考慮せずに描かれていたとしても、化合物は様々な立体異性体型として存在し得る。したがって、本開示は、全ての可能性のある立体異性体を含み、ラセミ化合物だけでなく、個々のエナンチオマー(エナンチオマー的に純粋な化合物)およびその非ラセミ混合物も同様に含む。単一のエナンチオマーとしての化合物が望ましい場合、立体特異的な合成によって、最終生成物もしくは任意の好適な中間体の分解によって、またはキラルクロマトグラフィー法によって当該化合物を取得してもよく、それら方法は当分野で公知である。最終製品、中間体、または出発物質の分解は、当分野で公知の任意の適切な方法によって行われてもよい。
【0164】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)~(III)の化合物は、ラセミである。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)~(III)の化合物は、エナンチオマー的に純粋である。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)~(III)の化合物は、非立体(アキラル)である。
【0165】
一部の実施形態では、化合物は、セロトニン5-HT受容体のアゴニストである。
【0166】
一部の実施形態では、化合物は、セロトニン5-HT2A受容体のアゴニストであってもよい。
【0167】
治療用途および治療方法
本明細書において、本明細書に開示される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)の治療有効量を対象に投与することを含む、疾患または障害を有する対象を治療する方法も開示される。
【0168】
投与される化合物の用量および頻度(単回または複数回の投与)は、様々な要因に応じて変化する場合があり、当該要因としては限定されないが、治療される疾患/状態、投与経路、レシピエントの大きさ、年齢、性別、健康状態、体重、体格指数、および食事、治療される疾患の性質および症状の程度、他の疾患の存在または他の健康に関連する問題、併用療法の種類、ならびに任意の疾患または治療レジメンに由来する合併症が挙げられる。他の治療レジメンまたは治療剤を、本明細書に開示される方法および化合物と併用して使用することができる。
【0169】
ヒトでの使用に対する治療有効量は、動物モデルから決定されてもよい。例えば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることが判明した濃度を実現するように策定されてもよい。ヒトでの用量は、治療に対する応答を監視し、用量を上向き、または下向きに調整することによって調節することができる。
【0170】
用量は、対象の要件、および採用される化合物に応じて変化し得る。本明細書に提示される医薬組成物の文脈において、対象に投与される用量は、対象において長い期間、有益な治療応答をもたらすのに充分な量でなければならない。投与量の多寡も、任意の有害な副作用の存在、性質、および程度により決定される。一般的に治療は少量の用量で開始され、開始用量は、化合物の最適用量よりも少ない。その後、その状況下で最適な効果が得られるまで、用量は少しずつ増加される。
【0171】
投与量および投与間隔は、治療される特定の臨床適応症に有効な投与化合物のレベルを提供するために個別に調整することができる。これにより、個人の疾患状態の重症度に見合った治療レジメンが提供される。
【0172】
投与スケジュールは、採用される化合物、治療される状態などに応じて変化し得る。例えば、投与は、1日1回(QD)で行われてもよく、または例えば1日2回(BID)、1日3回(TID)、もしくは1日4回(QID)など、1日を通して分割された用量で行われてもよい。一部の実施形態では、投与は、毎晩(QHS)行われてもよい。一部の実施形態では、化合物/医薬組成物は、必要に応じて(PRN)投与されてもよい。
【0173】
一部の実施形態では、本開示の製剤使用は、単独で行われる治療として使用されてもよい。一部の実施形態では、本開示の製剤使用は、アジュバント/併用療法として使用されてもよい。
【0174】
本明細書に提供される教示を活用することによって、それほど毒性をもたらさず、それでも特定の患者によって示される臨床症状の治療には非常に有効な予防レジメンまたは治療レジメンを計画することができる。この計画には、例えば化合物の効力、相対的な生物学的利用能、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、好ましい投与方法、ならびに選択された薬剤の毒性プロファイルなどの要因を検討することにより、注意深く活性化合物を選択することを含まなければならない。
【0175】
本明細書において治療される対象は、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害を有し得る。
【0176】
一部の実施形態では、疾患または障害は、精神神経系疾患もしくは障害、または炎症性の疾患もしくは障害である。一部の実施形態では、疾患または障害は、中枢神経系(CNS)の障害からなる群から選択され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害(例えば、低性欲)、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満が挙げられる。一部の実施形態では、疾患または障害は、自律神経系(ANS)の状態を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、肺障害(例えば、喘息および慢性閉塞性肺障害(COPD))を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、心血管系障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)を含み得る。
【0177】
一部の実施形態では、本開示は、限定されないが、がんの疼痛、例えば難治性がんの疼痛;神経因性疼痛;術後疼痛;オピオイド誘導性痛覚過敏症およびオピオイド関連耐性;神経性疼痛;術後/外科手術後疼痛;複合性局所疼痛症候群(CRPS);ショック;手足の切断;重度の化学火傷および熱傷;捻挫、靱帯裂傷、骨折、負傷、および他の組織外傷;歯科の手術、手技および病気;分娩;理学療法中;放射能中毒;後天性免疫不全症候群(AIDS);硬膜外線維症;整形外科的疼痛;背部疼痛;脊椎手術後疼痛および椎弓手術後疼痛;坐骨神経痛;痛みを伴う鎌状赤血球クリーゼ;関節炎;自己免疫性疾患;難治性の膀胱痛;特定のウイルスに関連する疼痛、例えば帯状疱疹の疼痛またはヘルペスの疼痛;急性の悪心、例えば悪心を引き起こし得る疼痛または頻繁に重度の悪心を伴う腹部疼痛;片頭痛、例えば前兆を伴う片頭痛;ならびにうつ病(例えば急性うつ病または慢性うつ病)、疼痛を伴ううつ病、アルコール依存症、急激な興奮、難治性喘息、急性喘息(例えば関連性のない疼痛状態が喘息を引き起こす場合がある)、てんかん、急性脳外傷、および脳卒中を含む他の状態、アルツハイマー病、ならびに他の障害を含む様々な種類の疼痛の管理を提供する。疼痛は、数週間から数年にわたる持続性の、または慢性的な疼痛であってもよく、一部の症例では、疼痛を引き起こした外傷や病気は治癒または治まっており、一部の症例では、過去に投薬および/または治療を受けている。さらに本開示は、これらのタイプの疼痛または状態の任意の組み合わせの治療/管理を含む。
【0178】
一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、急性の突出痛であり、または慢性的な疼痛状態で発生し得る締め括りに関連する疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、がんの疼痛、例えば、難治性がんの疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、術後疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、整形外科的な疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、背部疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、神経因性疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、歯の痛みである。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される状態は、うつ病である。本開示の一部の実施形態では、治療/管理される疼痛は、オピオイド耐性患者における慢性疼痛である。
【0179】
一部の実施形態では、本開示は、性機能障害の管理を提供するものであり、性機能障害としては限定されないが、性欲障害、例えば性欲低下;性的興奮障害、例えば、欲望の欠如、興奮の欠如、性交中の痛み、および無オーガズム症などのオーガズム障害を引き起こす障害;ならびに勃起障害;特に心理学的要因に起因する性機能障害が挙げられる。
【0180】
複数の実施形態において本開示は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)活性を調節することによって疾患または状態を治療する方法に関し、当該方法は、本明細書に記載される化合物のいずれか(例えば、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか)の有効量を、その必要のある対象に投与することを含む。複数の実施形態では、疾患または状態は、レボドパ誘導型運動障害;認知症(例えば、アルツハイマー型認知症)、耳鳴り、治療抵抗性うつ病(TRD)、大うつ病性障害、神経因性疼痛、アルツハイマー病に起因する、もしくは関連する興奮、偽延髄麻痺作用(pseudobulbar effect)、自閉症、延髄機能(Bulbar function)、全般性不安障害、アルツハイマー病、統合失調症、糖尿病性神経障害、急性疼痛、うつ病、双極性うつ病、自殺傾向、神経因性疼痛、または外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される。複数の実施形態では、疾患または状態は、精神医学的障害(例えば、統合失調症、気分障害、物質誘導性精神病、大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、双極性うつ病(BDep)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、自殺念慮、不安感、強迫性障害(OCD)、および治療抵抗性うつ病(TRD))である。他の実施形態では、疾患または状態は、神経学的障害(例えば、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、または全身性エリテマトーデス(SLE))である。
【0181】
例えば一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の経口投与用錠剤組成物、例えばマトリクス組成物を対象に投与して、当該対象が治療される工程を含む。
【0182】
投与を行う医師は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の量およびタイミングを、治療される障害または状態の一つまたは複数の症状の所見に基づき調整することによって、予防的または治療的である治療方法を提供することができる。
【0183】
本開示の一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。
【0184】
本開示の一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0185】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の連続的経口投与方法を提供する。本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩は、錠剤組成物、例えば単層錠剤に製剤化されてもよく、当該錠剤は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の血漿濃度において、例えば鎮静作用性または精神異常性の毒性スパイクなどの神経学的な毒性スパイクを伴うことなく、完全放出期間にわたって治療有効濃度の化合物を安定的に放出する。錠剤組成物は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の連続的な治療有効濃度が対象に提供されるように、対象に経口投与されてもよい。
【0186】
本開示の化合物は、有益な代謝分解プロファイルを有しており、当該プロファイルによって投与後急激に観測される高濃度薬剤を予防しながら、活性化合物の脳レベルを向上させ、一部の実施形態では治療用量が低下され得る。その結果として、化合物は、例えば心臓弁膜症に関連する5-HT2B受容体の活性化に関連する毒性などの毒性が低下しており、長期的な治療利益を実現するマイクロドージングに適し得る(Rothman,R.B.,and Baumann,M.H.,2009,Serotonergic drugs and valvular heart disease,Expert Opin Drug Saf 8,317-329)。
【0187】
医薬組成物
本明細書に開示される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)、または薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物も本明細書において開示される。
【0188】
化合物は、医薬組成物中に存在する化合物のアイソトポログの総重量に基づき、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%の純度で医薬組成物中に存在し得る。好ましい化合物および組成物において、重水素を有する化合物中の任意の位置は、重水素の部位で少なくとも10原子%、少なくとも20原子%、少なくとも25原子%、少なくとも30原子%、少なくとも40原子%、少なくとも45原子%、少なくとも50原子%、少なくとも60原子%、少なくとも70原子%、少なくとも80原子%、少なくとも90原子%、少なくとも95原子%、少なくとも99原子%の最小重水素取り込みを有する。好ましい実施形態では、組成物は、化合物の他のアイソトポログを実施的に含まず、例えば組成物は、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1または0.5モルパーセント未満の化合物の他のアイソトポログを有する。
【0189】
医薬組成物は、例えば、式(I)~(III)の化合物などの本開示のエナンチオマー的に純粋な化合物、または化合物のラセミ混合物を用いて製剤化されてもよい。本明細書に記載されるように、式(I)~(III)のラセミ化合物は、異性体のうちの一つのモル比(約48~約52モル%、または約1:1の比率)に基づき、約50%のRおよびS立体異性体を含有してもよい。一部の実施形態では、組成物、薬剤、または治療方法は、別個に作製されたRおよびS立体異性体の化合物を、およそ等しいモル比(約48~52%)で組み合わせることを含んでもよい。一部の実施形態では、薬剤または医薬組成物は、異なる比率でRおよびS立体異性体の別個の化合物の混合物を含有してもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、過剰(50%を超える)なR-エナンチオマーを含有する。R/Sの好適なモル比は、約1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれ以上であってもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、過剰なS-エナンチオマーを含有してもよく、R/Sに対する比は逆転する。他の適切な量のR/Sを選択してもよい。例えば、R-エナンチオマーは、少なくとも約55%~100%、または少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、約95%、約98%、または100%の量で存在してもよい。他の実施形態では、S-エナンチオマーは、高い割合で存在してもよく、例えば少なくとも約55%~100%の量、または少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、約95%、約98%、または100%の量で存在してもよい。これらの例示的な実施形態のすべてと、それらよりも大きい、およびそれらよりも小さいが本開示の範囲内にある間の比は、すべて含まれる。組成物は、式(I)~(III)のラセミ体と別個の化合物との混合物を、遊離塩基の形態および/または塩の形態で含有してもよい。
【0190】
「賦形剤」という用語は、希釈剤、アジュバント、ビヒクル、または担体を指し、それらとともに本開示の化合物は哺乳動物への投与用に製剤化される。「薬学的に許容可能な賦形剤」は、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されている、または例えばヒトなどの哺乳動物での使用に関して米国薬局方に列記されている、または一般的に認識されている他の薬局方に列記されている希釈剤、アジュバント、ビヒクルまたは担体であってもよい。そのような薬学的に許容可能な賦形剤は、固体または液体であってもよく、例えば、石油、動物性油、植物性油、または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、水や油であってもよい。薬学的に許容可能な賦形剤は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、滑石、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであってもよい。さらに、助剤、安定剤、崩壊剤、増粘剤、潤滑材、風味剤、緩衝剤、および着色剤を使用してもよい。
【0191】
哺乳動物に投与されるとき、本開示の化合物および組成物は、滅菌されていてもよい。一部の例では、対象化合物が静脈内投与または吸入を介して投与される場合、例えば水、生理食塩水、および水性デキストロース、およびグリセロール溶液などの水性媒体がビヒクルとして採用される。
【0192】
医薬組成物は、カプセル、錠剤、丸薬、ペレット、トローチ、粉末、顆粒、シロップ、エリキシル、溶液、懸濁液、エマルション、座薬、またはそれらの持続放出型製剤、または哺乳動物への投与に適した任意の他の形態の形態を取ることができる。一部の例では、医薬組成物は、ヒトへの経口投与または静脈内投与に適合された医薬組成物として、日常的な手順に従って、投与用に製剤化される。好適な医薬用ビヒクルの例、およびその製剤方法は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Alfonso R.Gennaro ed.,Mack Publishing Co.Easton,Pa.,19th ed.,1995のチャプター86、87、88、91および92に記載されており、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。賦形剤の選択は、特定の化合物によって、ならびに組成物投与に使用される特定の方法によって部分的には決定される。したがって、対象医薬組成物について、様々な適切な処方がある。
【0193】
対象化合物の投与は、全身または局所であってもよい。特定の実施形態では、哺乳動物へ投与することによって、本開示の化合物は全身性の放出される(例えば血流内に放出される)。投与方法には、例えば経口、口腔、舌下、および直腸などの経腸経路;例えば経皮(例えば、本明細書の化合物の皮膚パッチ製剤を使用する)および皮内などの局所投与;例えば、ネブライザーまたは吸入器を介した吸入による投与、および非経口投与(例えば、注射による)が含まれ得る。静脈内注射に加えて、他の注射投与経路としては限定されないが、自動注入デバイスを使用した経皮、皮下、および筋肉内の投与が挙げられる。一部の好ましい実施形態では、本明細書の医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。一部の好ましい実施形態では、本明細書の医薬組成物は、吸入による投与用に製剤化される。一部の好ましい実施形態では、本明細書の医薬組成物は、経皮投与用の皮膚パッチの形態で製剤化される。
【0194】
一部の実施形態では、医薬組成物は、本開示の化合物、およびポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、(i)水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクス、および(ii)一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマー、を含む。
【0195】
一部の実施形態では、水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクスは、単独の、またはデンプン、ワックス、中性ゴム、ポリメタクリレート、PVA、PVA/PVP混合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される構成要素と混合することによって強化された、例えばHPMCなどのセルロース系ポリマーから選択される。一部の実施形態では、セルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0196】
一部の実施形態では、一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマーは、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリレートカルボン酸塩、カチオン交換樹脂、粘土、ゼオライト、ヒアルロン酸、アニオン性ゴム、それらの塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0197】
一部の実施形態では、アニオン性ゴムは、天然物質または半合成物質である。一部の実施形態では、天然物質は、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンゴム、アラビアゴム、カラヤゴム、グアーガム、およびトラガカントゴムからなる群から選択される。一部の実施形態では、半合成物質は、カルボキシメチル-キチンおよびセルロースゴムからなる群から選択される。
【0198】
一部の実施形態では、放出調節型経口製剤が提供される。一部の実施形態では、経口製剤は、本明細書に記載される化合物を使用して構築され得る低用量の維持療法用であり、本明細書に記載のフェネチルアミン型化合物がアニオン性ポリマーと結合する能力を有効利用している。
【0199】
一部の実施形態では、製剤は、肺障害(例えば、喘息)および心血管系障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)を含む、自律神経系障害の治療を目的とした、経口的に活性で、局所制限された5-HTアゴニストである、本開示の化合物を含有する。
【0200】
医薬組成物は、様々な用量製剤で調製および投与されてもよい。記載される化合物は、経口投与、局所投与(クリームまたはパッチ)、直腸投与、吸入を介して投与、または注射により投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内)されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、自動注入デバイスを介して投与されてもよい。
【0201】
自動注入デバイスによって、本明細書に開示される組成物の患者への送達方法が提供される。本明細書に開示される組成物は、多くの公知のデバイスを介して、自動注入デバイスを使用して患者に投与されてもよく、そのようなデバイスの非限定的な列記としては、経皮、皮下、および筋肉内の送達が挙げられる。
【0202】
一部の経皮、皮下、または筋肉内への用途において、本明細書に開示される組成物は、皮膚を通して吸収される。受動的な経皮パッチデバイスは多くの場合、皮膚の外層上に置かれる吸収層または膜を含む。膜は、典型的には、患者に組成物を送達するために皮膚を通して吸収されることが許容される用量の物質を含有する。典型的には、皮膚の外層を通して容易に吸収される物質のみが、かかる経皮パッチデバイスで送達され得る。
【0203】
本明細書に開示される他の自動注入デバイスは、皮膚浸透性を向上させて、開示組成物の送達を改善するように構成される。浸透性を増加させて皮膚内、皮膚を横切る、または筋肉内への組成物の移動を改善するために使用される構造物の非限定的な例としては、一つまたは複数の極微針の使用が挙げられ、一部の実施形態では、極微針は本明細書に開示される組成物でコーティングされてもよい。あるいは中空極微針を使用して、皮膚の外層の下に本開示組成物を送達するための流体チャネルを提供してもよい。本明細書に開示される他のデバイスとしては、イオントフォレーシス、ソノフォレーシス、リバースイオントフォレーシス、またはそれらの組み合わせによる経皮送達、ならびに皮膚浸透性を増加させて薬剤送達を促進することが当分野で知られている他の技術が挙げられる。
【0204】
本明細書に記載される化合物からの医薬組成物の調製について、薬学的に許容可能な賦形剤は、固体または液体のいずれであってもよい。固体の調製物としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェー、座薬、および分散性顆粒が挙げられる。固体の担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としての機能も果たし得る一つまたは複数の物質であってもよい。
【0205】
粉末の場合、担体は、微粉化された活性成分と混合される、微粉化された固体であってもよい。錠剤の場合、活性成分は、必要な結合特性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状およびサイズで圧縮されてもよい。
【0206】
粉末および錠剤は、約5重量%~約70重量%、または約10重量%~約60重量%、または約20重量%~約50重量%、または約30重量%~約40重量%の活性化合物を含有してもよい。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。「調製物」という用語は、カプセルを提供するための担体として封入材料を含む活性化合物の製剤を含むことが意図され、この場合、活性成分は他の担体とともに、または他の担体は伴わずに、担体によって囲まれており、したがって担体と活性成分は関連付けられている。同様に、カシェーおよびトローチも含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェー、およびトローチは、経口投与に適した固体剤形として使用することができる。
【0207】
座薬の調製に関しては、例えば脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物などの低融点ワックスを最初に融解させ、攪拌することによって、その中に活性成分を均一に分散させる。次いで、融解した均一な混合物を公的なサイズの型に注いで、冷却させ、固化させる。
【0208】
液体形態の調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルション、例えば、水、または水/プロピレングリコール溶液が含まれる。非経口注射については、液体調製物は、水性ポリエチレングリコール水溶液中で、製剤溶液にしてもよい。
【0209】
経口使用に適した水溶液は、活性成分を水に溶解し、所望に応じて適切な着色剤、香味料、安定剤、および増粘剤を加えることによって調製してもよい。経口使用に適した水性懸濁液は、微粉化された活性成分を、粘性物質、例えば天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の公知の懸濁剤などとともに水中に分散させることによって作製してもよい。
【0210】
また、使用直前に、経口投与用の液体形態の調製物に変換されることが意図された固体形態の調製物も含まれる。そのような液体形態としては、溶液、懸濁液、およびエマルションが挙げられる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香味料、安定剤、緩衝剤、人工甘味料および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0211】
医薬調製物は、単位剤形であってもよい。単位剤形の場合、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、例えば、包装された錠剤、カプセル、およびバイアルもしくはアンプル中の粉末などの、個々の量の調製物を含有するパッケージなど、包装された調製物であってもよい。また単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェー、またはそれ自体のトローチなどであってもよく、または包装形態での適切な数のこれらのいずれかであってもよい。
【0212】
単位用量調製物中の活性成分の量は、例えば、0.001mg~100mg、または0.001mg~75mg、または0.001mg~50mg、または0.001mg~25mg、または0.001mg~10mg、または0.01mg~8mg、または0.1mg~5mg、または1mg~3mgなどに変動または調整されてもよく、または特定の用途および活性成分の効力に従い合理的な医学的判断のもと適切とみなされるように変動または調整されてもよい。組成物は、所望の場合、他の適合性のある治療剤を含有してもよい。
【0213】
一部の化合物は、水への溶解度が限定的であり得るため、組成物中に界面活性剤または他の適切な共溶媒が必要となる場合がある。そのような共溶媒としては以下が挙げられる:ポリソルベート20、60、および80;Pluronic F-68、F-84、およびP-103;シクロデキストリン;ならびにポリオキシル35ヒマシ油。そのような共溶媒は、典型的には、約0.01重量%~約2重量%のレベルで採用される。製剤を分注する際の変動を減少させるため、製剤の懸濁液もしくはエマルションの成分の物理的な分離を減少させるため、および/または別段により製剤を改善するために、シンプルな水溶液の粘度よりも高い粘度が望ましい場合もある。そのような粘度増大剤としては例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、硫酸コンドロイチンおよびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、ならびに前述のものの組合せが挙げられる。そのような媒は、典型的には、約0.01重量%~約2重量%のレベルで採用される。
【0214】
医薬組成物は、持続放出および/または快適さを提供するための成分を追加的に含んでもよい。そのような成分としては、高分子量アニオン性の粘液様ポリマー、ゲル化多糖類、および微粉化された薬剤担体基質が挙げられる。これらの成分は、米国特許 第4,911,920号、第5,403,841号、第5,212,162号、および第4,861,760号において詳細に検討されている。これらの特許の全内容は、参照によりその全体で、すべての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0215】
医薬組成物は、静脈内使用を意図される場合もある。薬学的に許容可能な賦形剤としては、静脈内使用に対して望ましい範囲にpHを調整するための緩衝剤が挙げられる。例えばリン酸塩、ホウ酸塩、および硫酸塩などの無機酸の塩を含む、多くの緩衝剤が公知である。
【0216】
医薬組成物は、有効成分が、治療有効量、すなわち意図される目的を実現するのに有効な量で含有される組成物を含んでもよい。特定の適用に対して有効な実際の量は特に、治療される状態に依存する。
【0217】
錠剤組成物(例えば、単層経口投与用錠剤組成物)
また本明細書において、錠剤組成物、すなわち経口投与用に製剤化された医薬組成物、例えば、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、例えば丸薬、カプセル、カプレット、トローチ、薬用キャンディ、カシェー、ジェルカプセル、カプセル(caps)、ペレット、ボーラス、芳香錠、経口崩壊錠、舌下錠、およびバッカル錠、例えば単層錠剤組成物が開示される。医薬組成物は、血漿濃度において鎮静または精神異常性の毒性スパイクを生じさせずに、本明細書に記載の化合物の治療有効量を安定的に放出させるよう製剤化されてもよい。血漿濃度において、そのようなスパイクは、重篤な精神異常指向性の副作用があることが充分に立証されており、そのような副作用としては限定されないが、幻覚、めまい、および悪心が挙げられる。それらは即時性の影響だけでなく、治療コンプライアンスにも有害な影響を与え得る。これに関し、本開示は、沈静および精神異常性の副作用を減少させながら、式(I)~(III)の化合物のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を長期的に安定して放出させることが判明した最適マトリクスを含む、経口投与用の新規で発明性のある製剤を提供する。
【0218】
一部の実施形態では、医薬組成物(例えば、単層錠剤組成物など、経口投与用に製剤化された錠剤組成物)は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩、およびポリマーを含む。
【0219】
本開示の一部の実施形態では、錠剤組成物は、持続放出、好ましくは最大持続放出に適合された調節放出型錠剤である。
【0220】
本開示の一部の実施形態では、錠剤組成物は、不正開封防止に適合される。一部の実施形態では、錠剤組成物は、例えばHPMCと組み合わされて、約2,000~約7,000KDaのMWのポリエチレンオキシド(PEO)を含む。一部の実施形態では、錠剤組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG 8Kをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、錠剤組成物は、一つまたは複数の負荷電基、例えば、ポリアクリル酸を担持するポリマーをさらに含んでもよい。特定の実施形態では、PEOを含む錠剤組成物に、例えば押出成形などの、加熱/アニーリングがさらに行われる。
【0221】
本開示の一部の実施形態では、医薬組成物は、(i)水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクス、(ii)一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマー、および(iii)本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩、の組み合わせを含む。
【0222】
本開示の一部の実施形態では、一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマーは、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリレートカルボン酸塩、カチオン交換樹脂、粘土、ゼオライト、ヒアルロン酸、アニオン性ゴム、それらの塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、アニオン性ゴムは、天然物質および半合成物質からなる群から選択される。一部の実施形態では、天然物質は、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンゴム、アラビアゴム、カラヤゴム、グアーガム、およびトラガカントゴムからなる群から選択される。別の特定の実施形態では、半合成物質は、カルボキシメチル-キチンおよびセルロースゴムからなる群から選択される。
【0223】
さらに、理論に拘束されることは望まないが、一部の実施形態では、一つまたは複数の負荷電基、例えば、本明細書に記載の酸性ポリマーの部分のような酸性部分を担持するポリマーによって、驚くべきことに、マトリクス中に本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩が顕著に保持される。一部の実施形態では、この負荷電は、例えばpKaおよび特定のpH条件下によるプロトン放出に基づきその位置で発生し、または静電相互作用/負荷電の発生を介して発生し得る。さらに、酸性ポリマーは、対応する弱酸の塩であってもよく、胃内で関連プロトン化酸となる。理論に拘束されることは望まないが、これによって電荷が中和され、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩と、マトリクスの相互作用が低下し得る。さらに放出マトリクスは、例えば充填剤、崩壊剤、流動性向上剤、潤滑剤、着色剤、味覚マスキング剤などの適切な固形剤形の調製を補助する他の不活性医薬品成分によってさらに補完されてもよい。
【0224】
本開示の一部の実施形態では、錠剤組成物は、不正開封防止に適合される。一部の実施形態では、錠剤組成物は、例えば約2,000~約7,000KDaのMWのポリエチレンオキシド(PEO)を含む。特定の実施形態では、PEOを含む錠剤組成物に、例えば押出成形などの加熱/アニーリングがさらに行われる。
【0225】
本開示の一部の実施形態では、非イオン性マトリクスは、単独の、またはデンプン、ワックス、中性ゴム、ポリメタクリレート、PVA、PVA/PVP混合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される構成要素と混合することによって強化された、例えばHPMCなどのセルロース系ポリマーから選択される。
【0226】
本開示の一部の実施形態では、セルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。一部の実施形態では、錠剤組成物は、約20~60重量%もしくは約30~50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、約10~30重量%もしくは約15~20重量%のデンプン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0227】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、疼痛の治療を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。一部の実施形態では、治療される疼痛は、がんの疼痛、例えば、難治性がんの疼痛である。一部の実施形態では、治療される疼痛は、術後の疼痛である。一部の実施形態では、治療される疼痛は、整形外科的な疼痛である。一部の実施形態では、治療される疼痛は、背部疼痛である。一部の実施形態では、治療される疼痛は、神経因性疼痛である。一部の実施形態では、治療される疼痛は、歯の痛みである。一部の実施形態では、治療される疼痛は、慢性疼痛である。一部の実施形態では、治療される疼痛は、オピオイド耐性患者における慢性疼痛である。
【0228】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、うつ病の治療を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0229】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、脳外傷の治療を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0230】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、脳卒中の治療を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0231】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、片頭痛、例えば前兆を伴う片頭痛における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0232】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、難治性喘息における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0233】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、アルコール依存症の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0234】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0235】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、うつ病(例えば、治療抵抗性うつ病(TRD)または双極性うつ病)の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0236】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、大うつ病性障害(MDD)の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0237】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、不安感(例えば全般性不安障害)の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0238】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、統合失調症の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0239】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、双極性障害の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0240】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、自殺傾向または自殺念慮の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0241】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、自閉症の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0242】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、糖尿病性神経障害の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0243】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、神経因性疼痛の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0244】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、急性疼痛(例えば、急性外傷痛)の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0245】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、慢性疼痛の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0246】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、レボドパ誘導型運動障害の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0247】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、偽延髄麻痺作用(pseudobulbar effect)もしくは延髄機能(bulbar function)の治療または調節における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0248】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、アルツハイマー病またはアルツハイマー病関連状態(例えば、アルツハイマー型認知症またはアルツハイマー病による興奮)の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0249】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、耳鳴りの治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0250】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害の治療における使用を目的とした本明細書に記載の化合物のいずれかの治療有効量を含む。
【0251】
一部の実施形態では、疾患または障害は、中枢神経系(CNS)の障害からなる群から選択され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満が挙げられる。
【0252】
一部の実施形態では、疾患または障害は、自律神経系(ANS)の状態を含む。
【0253】
一部の実施形態では、疾患または障害は、喘息および慢性閉塞性肺障害(COPD)を含む肺障害を含む。
【0254】
一部の実施形態では、疾患または障害は、アテローム性動脈硬化症を含む心血管系障害を含む。
【0255】
一部の実施形態では、錠剤組成物は、12~24時間、例えば24時間にわたって、0.05~2mg/kg/時の速度でマトリクスから放出される量の本明細書に記載される化合物のいずれかを含む。
【0256】
本開示の一部の実施形態では、組成物は、約10~500ng/mlの範囲で、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の血漿統合濃度を実現し、この濃度を放出期間の間、維持する。一部の実施形態では、組成物は、約10~300ng/mlの範囲で、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の血漿統合濃度を実現し、この濃度を放出期間の間、維持する。一部の実施形態では、組成物は、約10~100ng/mlまたは約50~100ng/mlの範囲で、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の血漿統合濃度を実現し、この濃度を放出期間の間、維持する。一部の実施形態では、組成物は、約10~20ng/mlの範囲で、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の血漿統合濃度を実現し、この濃度を放出期間の間、維持する。
【0257】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、4時間超である。
【0258】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約8時間超である。
【0259】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約12時間超である。
【0260】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約16時間超である。
【0261】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約20時間超である。
【0262】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約24時間以上である。
【0263】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約28時間以上である。
【0264】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約32時間以上である。
【0265】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約36時間以上である。
【0266】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約48時間未満である。
【0267】
本開示の一部の実施形態では、本開示の製剤中の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の放出期間は、約36時間未満である。
【0268】
本開示の一部の実施形態では、本開示の錠剤組成物は、1日2回(BID)、1日3回(TID)、または1日4回(QID)の適用として利用される。
【0269】
本開示の一部の実施形態では、本開示の錠剤組成物は、1日1回(QD)の適用として利用される。
【0270】
本開示の一部の実施形態では、本開示の錠剤組成物は、毎晩(QHS)の適用として利用される。
【0271】
本開示の一部の実施形態では、本開示の錠剤組成物は、必要に応じて(PRN)の適用として利用される。
【0272】
本開示の一部の実施形態では、経口医薬組成物が強化される。一部の実施形態では、投与効率に起因して、医薬組成物は、治療を目的として少ない活性化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩)を用いて製剤化され、本開示に記載されない比較用経口錠剤と同等の効果を達成し得る。
【0273】
本開示の一部の実施形態では、適切な単一単位用量を提供する経口投与事象は、一回の一錠剤または複数錠剤を含み得る。
【0274】
さらに、胃内の酸性環境から錠剤を保護し、長期的な放出を維持するために、一部の実施形態では様々なタイプの腸溶性コーティングが使用されてもよい。
【0275】
本開示の一部の実施形態では、単層の錠剤またはカプレットを、不活性医薬成分の保護層でコーティングして調節放出型製剤を形成することにより、例えば、マトリクスから薬剤を安定的に放出させ、早期放出時点での濃度バーストを回避する。
【0276】
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の製剤を、調節放出型製剤として提供するものであり、当該製剤は、当該化合物の血漿濃度において、沈静または精神異常性の毒性スパイクを伴うことなく、かかる経口調節放出型製剤から治療有効濃度のいずれか化合物を安定的に放出するものである。この製剤は、錠剤、カプレットまたは顆粒などの浸透圧制御放出型医薬組成物中に製剤化された、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む。これらの製剤では、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩(例えば、本明細書に記載される他の錠剤製剤により定義される)を含有する単一コア層は、薬物送達孔を有する、または有さない半透過膜により囲まれる。理論に拘束されることは望まないが、これらシステムは活性物質の制御送達のために水浸透圧を使用するため、送達速度は消化管の状態とは無関係であることが予測される。本開示の新規および発明性のある態様との組み合わせにおいて、浸透性非対称膜技術(osmotic asymmetric-membrane technology)またはAMT(例えば、制御された相分離によって生成される不溶性で非対称性の微多孔膜でコーティングされた単層の錠剤、カプレットまたは顆粒を対象とする技術)を使用して、本明細書に記載される治療方法およびキットに有用な製剤を作製してもよい。
【0277】
本開示の一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物のいずれかは、例えば塩酸塩、アスパラギン酸塩、コハク酸塩などの薬学的に許容可能な塩として製剤化されてもよく、それによって、対イオンは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~式(III)の化合物)のいずれかに関し、本明細書に記載される製剤に重大な影響は与えず、または当該化合物のいずれかによる望ましい治療効果の実現に重大な影響を与えない。すなわち、例えば錠剤、カプレット、カプセル、ジェルカプセル、カプセル(cap)または顆粒などの経口医薬組成物から(適応症に基づく)治療有効量が同様に安定的に放出され、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~式(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の濃度において、沈静または精神異常性の毒性スパイクを伴わない。当該範囲内にある塩の例としては限定されないが、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、過塩素酸、硫酸またはリン酸などの無希さんとの塩;および例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸との塩;および当業者に公知の他のミネラルおよびカルボン酸との塩が挙げられる。追加的な例としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、亜鉛などの無機カチオンとの塩;および例えばアンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、リシン、アルギニン、N-メチルグルカミン、プロカインなどの薬学的に許容可能なアミンで形成される塩が挙げられる。特定の実施形態では、薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩である。
【0278】
一般的な錠剤製剤
本開示の製剤は、例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルカプセル、およびカプセル(cap)組成物などの経口投与型医薬組成物を含み、それらはコーティングされていない錠剤またはコーティングされた錠剤、カプレットおよびカプセル(フィルムコーティング、糖衣錠および消化管耐性/腸溶コーティング錠剤を含む)を含み得る。経口使用のための経口医薬組成物は、例えば希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、粉体流改善剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および防腐剤などの薬学的に許容可能な不活性賦形剤と混合された、例えば本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれかなどの有効成分を含んでもよい。さらに、本開示の経口医薬組成物は、例えば、粉末もしくは顆粒の単回または複数回の圧縮を伴う乾式造粒によって得られる、経口投与が意図される固形剤形である。一部の実施形態では、経口医薬組成物は、湿式造粒技術を使用して取得されてもよい。一部の実施形態では、経口医薬組成物は、成形、加熱/アニーリング、または押出成形技術によって取得されてもよい。
【0279】
一部の実施形態では、経口錠剤は、固体直円柱であり、その端面は平坦または凸状であり、その縁は傾斜していてもよい。一部の実施形態では、表面は、凸状である。さらに、線または割れ目マーク(break-mark)(掠痕(scoring))、記号、または他のマークを有してもよい。
【0280】
一部の実施形態では、割れ目マークは、錠剤を正確に再分割して1錠未満の用量を提供することが意図される。本開示の一部の実施形態では、錠剤組成物は、例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤、潤滑剤、消化管内の剤形および有効成分の挙動を改変することができる物質、適切な国または地域当局によって認可された着色物質、および香味物質などの一つまたは複数の賦形剤を含む。そのような賦形剤を使用する場合、それらが有効成分の安定性、溶解速度、生物学的利用能、安全性または有効性に悪影響を及ぼさないことが確保される必要がある。剤形の構成要素のいずれかの間にも不適合があってはならない。
【0281】
コーティングされた錠剤は、例えば天然または合成の樹脂、ポリマー、ゴム、充填剤、糖類、可塑剤、ポリオール、ワックス、適切な国または地域当局によって認可された着色物質、および香味物質などの物質の混合物の一つまたは複数の層で覆われた錠剤である。そのようなコーティング物質は、有効成分、例えば、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含有しない。錠剤は、例えばマトリクスからのバースト放出、空気、湿気または光からの有効成分の保護、不快な味覚および臭気のマスキング、または外観の改善など、様々な理由のためにコーティングされてもよい。コーティングに使用される物質は、溶液または懸濁液として塗布されてもよい。
【0282】
一部の実施形態では、例えば錠剤などの経口医薬組成物の製造工程は、製造管理および品質管理に関する基準(GMP)の要件を満たす。一部の実施形態では、経口医薬組成物の製造に以下から選択される一つまたは複数の措置が講じられる:賦形剤との混合が、均質性を確保する方法で実施されることを確保する;経口医薬組成物が、例えばコーティング、保管および分配などのその後の処理で崩壊したり破壊したりしないように適切な機械的強度を保有することを確保する;有効成分の分解を最小限にする;微生物汚染のリスクを最小限にする;交差汚染のリスクを最小限にする。さらに、1錠未満の用量を提供するために再分割が意図されている、掠痕付きの錠剤(割れ目マークまたはマークがついた錠剤)の製造において、以下の措置が講じられる:患者が意図される用量を得るように、適宜、再分割された部分の質量または含量の均一性に関し、割れ目マークの有効性を確保する。
【0283】
一般的に、適切な用量は、1日当たり、レシピエントの体重1キログラム当たり、約0.01~約10mgの範囲であり、好ましくは1日当たり、体重1キログラム当たり、約0.1~約5mgの範囲であり、好ましくは1日当たり、体重1キログラム当たり、約0.5~約3mgの範囲であり、好ましくは1日当たり、体重1キログラム当たり、約1~約2mgの範囲である。製剤技術および投与技術に関する追加の詳細は、科学文献および特許文献に詳細に記載されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton Pa.(“Remington’s”)の最新版を参照のこと。医薬組成物が許容可能な担体中で製剤化された後、それを適切な容器に入れ、適応症の治療用にラベル貼付してもよい。本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む製剤の投与について、そのようなラベルは、例えば、量、頻度、投与方法、治療レジメンおよび適応症に関する指示を含む。
【0284】
キット
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療するためのキットを提供するものであり、当該キットは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本明細書に記載される製剤のいずれか一つで丸薬のような経口投与用医薬組成物などの医薬組成物、および本明細書に記載される例えば疼痛などの疾患、障害もしくは状態の治療、予防または管理における使用を目的とした説明書、を含む。
【0285】
本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、がんの疼痛、例えば、難治性がんの疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、術後疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、整形外科的な疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、背部疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、神経因性疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、歯の痛みである。本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、慢性疼痛である。本開示の一部の実施形態では、治療される疼痛は、オピオイド耐性患者における慢性疼痛である。
【0286】
一部の実施形態では、疾患または障害は、セロトニン5-HT受容体に関連する疾患または障害である。
【0287】
一部の実施形態では、疾患または障害は、中枢神経系(CNS)の障害からなる群から選択され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満が挙げられる。一部の実施形態では、疾患または障害は、自律神経系(ANS)の状態を含む。
【0288】
一部の実施形態では、疾患または障害は、喘息および慢性閉塞性肺障害(COPD)を含む肺障害を含む。
【0289】
一部の実施形態では、疾患または障害は、アテローム性動脈硬化症を含む心血管系障害を含む。
【0290】
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療するためのキットを提供するものであり、当該キットは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本開示の製剤のいずれか一つで丸薬のような経口投与用錠剤医薬組成物などの医薬組成物、および脳外傷の治療における使用を目的とした説明書、を含む。
【0291】
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療するためのキットを提供するものであり、当該キットは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本開示の製剤のいずれか一つで丸薬のような経口投与用錠剤医薬組成物などの医薬組成物、およびうつ病の治療における使用を目的とした説明書、を含む。
【0292】
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療するためのキットを提供するものであり、当該キットは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本開示の製剤の丸薬のような経口投与用錠剤医薬組成物などの医薬組成物、および片頭痛、例えば前兆を伴う片頭痛の治療における使用を目的とした説明書、を含む。
【0293】
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療するためのキットを提供するものであり、当該キットは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本開示の丸薬のような経口投与用錠剤医薬組成物などの医薬組成物、および難治性喘息の治療における使用を目的とした説明書、を含む。
【0294】
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療するためのキットを提供するものであり、当該キットは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本開示の製剤のいずれか一つで丸薬のような経口投与用錠剤医薬組成物などの医薬組成物、および脳卒中の治療における使用を目的とした説明書、を含む。
【0295】
本開示の一部の実施形態は、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて対象を治療するためのキットを提供するものであり、当該キットは、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本開示の製剤のいずれか一つで丸薬のような経口投与用錠剤医薬組成物などの医薬組成物、およびアルコール依存症の治療における使用を目的とした説明書、を含む。
【0296】
一部の実施形態では、使用説明書は、錠剤組成物用の包装に統合された構成要素を形成する。
【0297】
複数の実施形態では、本開示は、例えばフェネチルアミン治療が適応、検討または推奨され得る疾患、障害または状態と診断された、罹患している、または感受性のある対象の治療を目的とした、対象に経口投与するための経口調節放出型医薬組成物を特徴としており、この場合において、当該対象は、当該経口調節放出型医薬組成物を用いた治療を必要としており、当該経口調節放出型医薬組成物は、
(a)対象において、疾患、障害もしくは状態を治療、予防および/または管理するのに有効な量である、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される薬剤、および
(b)薬学的に許容可能な賦形剤、を含み、
それにより、当該対象に当該調節放出型医薬組成物が経口投与されたとき、当該調節放出型医薬組成物からの当該薬剤の安定的な放出が維持されるため、当該医薬組成物からの当該薬剤の放出期間中、対象の血漿において神経学的に毒性のあるスパイクが発生しない。
【0298】
医薬品承認基準の順守
一部の実施形態では、本開示の製剤は、特定の業界で認められた医薬品承認基準に準拠し、連邦食品医薬品化粧品法を順守する。特に、本開示の製剤は、外観検査、質量分析の均質性、含有量分析での均質性、および/または溶解/崩壊解析のもと、準拠し、許容可能であるとみなされる。それら分析はすべて、関連医薬品承認基準により確立されたものである。
【0299】
一部の実施形態では、製造全体を通して、特定の手順は適切な工程内管理を実施することによって検証および監視される。これらは、製造の各段階の有効性を保証するように設計されている。錠剤製造中の工程内管理には、最終潤滑混合物の水分含量、顆粒のサイズ、最終混合物の流量、および関連する場合にはコーティング前の錠剤コアの質量の均一性が含まれ得る。錠剤製造中の工程内管理には、最終剤形の寸法(厚さ、直径)、質量の均一性、硬度および/または粉砕力、摩損度、壊変率、または溶解率(例えば、調節放出型錠剤について)も含まれ得る。これらの特性のいくらかを実証するために使用され得る適切な試験方法が、当分野に公知である。
【0300】
一部の実施形態では、包装は、錠剤を含む医薬組成物を、輸送中の光、水分、および損傷から保護するためにおそらく適切であり、または適切であることが求められる。
【0301】
追加の実施形態において、市販の製剤(例えば、キット)は、製造管理および品質管理に関する基準(GMP)のもと確立された表示要件を順守する。そのような表示には、以下が含まれる。
(1)医薬品の名称;
(2)有効成分の名称;可能な限り国際一般的名称(INN)を使用しなければならない;
(3)各錠剤中の有効成分の量および容器中の錠剤の数;
(4)製造業者が割り当てたバッチ番号(ロット番号);
(5)有効期限、および必要に応じて製造日;
(6)必要とされ得る何らかの特別な保管条件または取り扱い上の注意事項;
(7)必要とされ得る使用指示、警告、および注意事項;
(8)製品を市場販売する際の製造業者または責任者の指名および住所;
(9)掠痕付きの錠剤については、使用に関する指示に1錠未満の用量を提供するための再分割が含まれる場合、ラベルには以下を含まなければならない:ただちには摂取されない、または投与されない再分割部分についての保管条件および使用期間。
【0302】
一部の実施形態では、例えば錠剤などの医薬組成物は、その完全性を失うことなく、包装および輸送を含む取り扱いに耐えることができる。
【0303】
一部の実施形態は、本開示は、当該化合物のいずれかの血漿濃度において、例えば鎮静または精神異常性の毒性スパイクをなどの神経学的な毒性スパイクを伴うことなく、経口錠剤からの治療有効濃度の当該化合物のいずれかの安定的放出を確保するために、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を製剤化する方法を提供するものである。一部の実施形態では、方法は、(i)水不溶性の中性荷電非イオン性マトリクス、(ii)一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマー、および(iii)本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩、を組み合わせて、例えば単層の経口投与用錠剤組成物を作製する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、(i)HPMCを含む、例えば、約2,000~約7,000KDaのMWのポリエチレンオキシド(PEO)、および(ii)本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩、を組み合わせて、例えば、単層の経口投与用錠剤組成物を作製する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、HPMCを含むポリエチレンオキシド(PEO)と、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩とを組み合わせる工程を含み、当該錠剤組成物はさらに、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG 8K、一つまたは複数の負荷電基を担持するポリマー、例えば、ポリアクリル酸を含んでもよく、および/またはさらに加熱/アニーリング状態、例えば押出成形が行われてもよい。一部の実施形態では、本開示の製剤は、他の活性治療剤、例えば疼痛を低下させるためのオピオイドと組み合わせて投与されてもよい。一部の実施形態では、本開示の製剤は、オピオイド倹約医薬品という目的を果たすものであり、すなわち、患者の治療に必要なオピオイドの量を低下させる。
【0304】
一部の実施形態では、本開示の製剤は、他の活性治療剤と組み合わせて投与されない。
【0305】
一部の実施形態では、本開示の製剤は、別のフェネチルアミン製剤またはその誘導体、例えばフェネチルアミンの高速放出製剤またはその誘導体と組み合わせて投与されてもよい。
【0306】
一部の実施形態は、本開示は、当該化合物のいずれかの血漿濃度において、鎮静または精神異常性の毒性スパイクを伴うことなく、経口錠剤からの治療有効濃度の当該化合物のいずれかの安定的放出を確保するために、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を製剤化する方法を提供するものである。方法は、浸透圧制御放出型錠剤での、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)から(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩の製剤を含む。これらの製剤では、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)のいずれか、またはその薬学的に許容可能な塩を含有する単一コア層は、薬物送達孔を有する、または有さない半透過膜により囲まれる。一部の実施形態では、本開示の新規および発明性の医薬組成物(例えば、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~式(III)の化合物)のいずれかを含有する)と、浸透性非対称膜技術(osmotic asymmetric-membrane technology)またはAMT(例えば、制御された相分離によって生成される不溶性で非対称性の微多孔膜でコーティングされた単層の錠剤を対象とする技術)の組み合わせを使用して、本明細書に記載される方法およびキットに有用な製剤を作製してもよい。
【0307】
吸入投与
また、本明細書において、幻覚剤のミスト吸入投与方法が開示される。例えば、DMT(塩形態)を含む大部分の幻覚剤は水溶解性が良好であり、このためミスト吸入が可能な投与経路となる。
【0308】
ミスト吸入投与に使用され得る幻覚剤としては、本明細書に記載される化合物(例えば、式(I)~(III)の化合物)、またはその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0309】
幻覚剤(本明細書に記載の化合物、例えば、式(I)~(III)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む)の用量は、変化し得る。医薬組成物は、幻覚剤が治療有効量で含有される組成物を含み得る。「有効量」または「治療有効量」は、状態、障害もしくは疾患を治療または改善するのに充分な量の薬剤である。特定の適用に対して有効な実際の量は特に、治療される状態に依存し得る。投与される幻覚剤の用量および頻度(単回または複数回の投与)は、投与経路を含む様々な要因に応じて変化し得、当該要因としては、レシピエントの大きさ、年齢、性別、健康状態、体重、体格指数、および食事、治療される疾患の性質および症状の程度、他の疾患の存在または他の健康に関連する問題、併用療法の種類、ならびに任意の疾患または治療レジメンに由来する合併症が挙げられる。他の治療レジメンまたは治療剤を、本明細書に開示される方法および化合物と併用して使用することができる。
【0310】
ヒトでの使用に対する治療有効量は、動物モデルから決定され得る。例えば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることが判明した濃度を実現するように策定されてもよい。ヒトでの用量は、治療に対するヒトの応答を監視し、用量を上向き、または下向きに調整することによって調節することができる。
【0311】
用量は、対象の要件、および使用される幻覚剤に応じて変化し得る。本明細書に提示される幻覚剤の文脈において、対象に投与される用量は、対象において長い期間、有益な治療応答を誘導するのに充分な量でなければならない。投与量の多寡も、任意の有害な副作用の存在、性質、および程度により決定される。治療は少量の用量で開始され、開始用量は、幻覚剤の最適用量よりも少ない。その後、当該状況下で最適な効果が得られるまで、投薬量は少しずつ増加され得る。
【0312】
投与量および投与間隔は、治療される臨床適応症に有効な投与化合物のレベルを提供するために個別に調整することができる。これにより、個人の疾患状態の重症度に見合った治療レジメンが提供される。
【0313】
それほど毒性をもたらさず、それでも患者によって示される臨床症状の治療には非常に有効な予防レジメンまたは治療レジメンを計画することができる。この計画には、例えば化合物の効力、相対的な生物学的利用能、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、投与方法、ならびに選択された幻覚剤の毒性プロファイルなどの要因を検討することにより、幻覚剤を選択することを含んでもよい。
【0314】
幻覚剤は、1回の吸入セッション当たり、約1μg~約10.0mg、またはそれ以上(または約1μg~約10.0mgの間の任意の範囲)、例えば、約1μg、2μg、5μg、6μg、10μg、13μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、210μg、220μg、230μg、240μg、250μg、260μg、270μg、280μg、290μg、300μg、400μg、500μg、1.0mg、2.0mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、10.0mgまたはそれ以上で投与されてもよい。一部の実施形態では、対象は、1日当たり約1、2、3、4、5またはそれ以上の吸入セッションを受けてもよい。一部の実施形態では、対象は、1日おき、週に2回、または週に3回、約1、2、3、4、5またはそれ以上の吸入セッションを受けてもよい。一部の実施形態では、対象は、1月おき、月に2回、月に3回、または月に4回、約1、2、3、4、5またはそれ以上の吸入セッションを受けてもよい。
【0315】
幻覚剤を含む医薬組成物は、様々な用量製剤で調製および投与されてもよい。液体形態の調製物には、溶液、およびエマルション、例えば、水、水/プロピレングリコール溶液、または有機溶媒が含まれる。
【0316】
吸入使用に適した水性溶液は、活性幻覚剤またはその誘導体を水に溶解することによって調製され得る。適切な安定剤および増粘剤を添加してもよい。吸入使用に適した水性エマルションは、液体幻覚剤またはその誘導体を、粘性物質、例えば天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の懸濁剤などとともに水中に分散させることによって作製してもよい。
【0317】
一部の幻覚剤は、水への溶解度が限定的であり得るため、組成物中に界面活性剤または他の適切な共溶媒が必要となる場合がある。そのような共溶媒としては以下が挙げられる:ポリソルベート20、60、および80;Pluronic F-68、F-84、およびP-103;シクロデキストリン;ならびにポリオキシル35ヒマシ油。そのような共溶媒は、典型的には、約0.01重量%~約2重量%のレベルで採用される。製剤を分注する際の変動を減少させるため、製剤のエマルションの成分の物理的な分離を減少させるため、および/または別段により製剤を改善するために、シンプルな水溶液の粘度よりも高い粘度が望ましい場合もある。そのような粘度増大剤としては例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、硫酸コンドロイチンおよびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、ならびに前述のものの組合せが挙げられる。そのような媒は、典型的には、約0.01重量%~約2重量%のレベルで採用される。
【0318】
塩形態の場合、幻覚剤またはその誘導体は、有機溶媒に溶解されてもよい。有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロメタン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエチレン、またはキシレンであってもよい。有機溶媒は、例えば、エステル溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、アミド溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒などの官能基カテゴリーに属してもよく、それら各々を使用することができる。
【0319】
ミスト
【0320】
一部の実施形態では、ミスト吸入によって幻覚剤を送達する方法が提供される。ミストは、空気、酸素、および/または酸素とヘリウムの混合物を使用して送達されてもよい。空気、酸素、および/または酸素とヘリウムの混合物は、室温で、または加熱されて送達されてもよい。一部の実施形態では、幻覚剤またはその誘導体を含むミストは、加熱されたヘリウム-酸素(HELIOX)混合物を使用した吸入を介して送達される。ヘリウムの粘度は非常に低いため、ヘリウム-酸素の混合物によって、層流を特徴とする気体流が生じる。吸入を介した用量送達にとっての大きな障害の一つに薬剤の気道沈着があるが、層流は、これを減少させ、肺深部領域に到達させるという非常に望ましい特性がある。患者は、幻覚剤もしくその誘導体の溶解遊離塩基または塩の製剤をミストとして、患者の肺の肺胞領域内に吸入することができる。幻覚剤または誘導体は、肺の肺胞領域の被覆液(fluid lining)に送達されてもよく、患者の血液循環内に全身性に吸収されてもよい。これら製剤は有益なことに、肺の肺胞領域に吸入された時点で血流に効率的に送達されることができる。
【0321】
加熱もしくは非加熱の空気、酸素、またはヘリウム-酸素混合物の送達に適したデバイスとしては例えば、連続モードネブライザーのFlo-Mist (Phillips社)およびHope(B&B Medical Technologies社)、ならびに例えばMedipure(商標)Heliox-LCQ System(PraxAir)などのレギュレーターといった装身具、および例えばPrecision Control Flow(PraxAir社)などの制御ボックスが挙げられる。一部の実施形態では、完全送達セットアップは、例えば、ロシア特許第RU199823U1号に記載されるデバイスであってもよい。
【0322】
本明細書で使用される場合、「Heliox」という用語は、ヘリウムガス(He)と酸素ガス(O)の呼吸ガス混合物を指す。一部の実施形態では、Heliox混合物は、ヘリウムと酸素の混合物中、ヘリウムを約50%、60%、70%、80%、または90%で含有してもよく、およびヘリウムと酸素の混合物中、酸素を約50%、40%、30%、または10%で含有してもよい。したがって、heliox混合物は、ヘリウムと酸素を、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10の比率、またはその間の任意の比率で含有してもよい。一部の実施形態では、helioxは、層流性の増加および乱流における抵抗性の減少を通じて、気道抵抗が低くする場合がある。
【0323】
heliox混合物を加熱することで、薬剤吸収にとって重要な物理的障壁の透過性を増加させ、薬剤送達をさらに向上させることができる。粘膜表面を加熱することで、末梢血液循環が向上し、間質接合部を弛緩させ、ならびに他の機序によって、透過性を増加させることができる。ヘリウムは、酸素や窒素よりもほぼ10倍高い熱伝導率を有しており、より効率的に熱伝達を促進することができる。無水heliox混合物は、110℃もの高さまで加熱されても、前治療工程として安全に使用することができる。そのため、無水heliox混合物は、肺および気道の粘膜表面をより効率的に加熱することができる。
【0324】
様々なタイプの個人用吸入器が当分野で公知である。一般的に個人用吸入器は、固体の薬剤または化合物を加熱することを特徴とする。吸入器は、固体の薬剤または化合物を薄煙点(smoldering point)まで直接加熱することによって作動する。固体または固体濃縮物の蒸気化は、コンダクション(conduction)上の対流によって行われる。固体濃縮物の対流加熱は、発熱素子が水または別の液体と接触し、次いで蒸気化することを伴う。次に高温蒸気が固体または固体濃縮物を薄煙点まで直接加熱し、蒸気を放出してユーザーに吸入させる。コンダクション加熱は、固体または固体濃縮物と発熱体との間の直接接触を伴うもので、これによって固体は薄煙点に到達し、蒸気が放出されてユーザーが吸入する。吸入器は肺損傷という観点では喫煙よりも有益であるが、蒸気化される薬剤/活性剤が気化熱によって相当に劣化する場合がある。
【0325】
蒸気は、その臨界温度よりも低い温度での気相中の固形物質であり、これは蒸気が、温度を低下させずに圧力を増加させることによって、液体へと液化され得ることを意味する。
【0326】
本明細書で使用される場合、ミストとは、蒸気とは異なり、気相(例えば、空気、酸素、ヘリウム、およびそれらの混合物)中に懸濁された液滴(液相)の分散である。ミストの液滴は、水性液体または有機溶媒に溶解された幻覚剤またはその誘導体を含むことができる。ミスト液滴の液相は、数千または数百万の分子を含有することができる。ミストの気相は、空気、酸素、ヘリウム、およびそれらの混合物を含有することができる。ミストは固形粒子を含まない。ミストは、例えば、吸入器またはネブライザーの使用を含む、任意の適切な方法によって作製することができる。
【0327】
一部の実施形態では、幻覚剤は、ネブライザーを介して送達される。ネブライザーは幻覚剤を含有する水滴ミストを形成し、幻覚剤は任意で加熱されたヘリウム-酸素混合物と組み合わされる。例えば幻覚剤の調製物は液性媒体中に置かれ、ネブライザーなどのデバイスによってミスト内に入れられてもよい。一部の実施形態では、ネブライザーは、例えば、圧縮空気コンプレッサーネブライザー、超音波ネブライザー、振動メッシュもしくはホーン型ネブライザー、またはマイクロプロセッサ制御型呼気作動式ネブライザーであってもよい。一部の実施形態では、ネブライザーデバイスは、例えば、ロシア特許第RU199823U1号に記載されるデバイスであってもよい。
【0328】
ネブライザーは、例えば幻覚剤などの薬剤の溶液または懸濁液を微細ミストにして肺に送達するデバイスである。ネブライザーは、アトマイザーと呼称される場合もある。霧化とは、溶解した薬剤を霧状にすることである。噴霧によって薬剤を送達するために、薬剤は、例えば水、エタノール、またはプロピレングリコールなどの液性媒体に分散されてもよい。さらに幻覚剤またはその誘導体は、例えば、リポソーム、ポリマー、エマルション、ミセル、ナノ粒子、またはポリエチレンイミン(PEI)などのビヒクル中で輸送されてもよい。ネブライザー用の液体薬剤の構造は、例えば、水溶液または粘性溶液であってもよい。強制分散(例えばガスのジェット、超音波またはメッシュの振動)を行った後、溶解した幻覚剤は、液滴内に含有され、次いでこれが吸入される。ミストは空気中または別の期待混合物(例えば、ヘリウムと酸素の混合物)中に薬剤を含有する液滴であってもよい。
【0329】
ジェットネブライザー(圧縮空気式ネブライザーまたはコンプレッサーネブライザーとしても知られる)は、ミスト作製に圧縮ガスを使用する。一部の実施形態では、ジェットネブライザーは、マイクロプロセッサ制御型の呼気作動式ネブライザーであり、呼気作動式ネブライザーとも呼ばれる。呼気作動式ネブライザーは、患者が継続的にミストを生じるのではなく、吸入しているときにのみミストを生じる。ミストは、例えば、ネブライザーのボウルまたはカップ内のベンチュリに空気の流れを通過させることによって作製されてもよい。ベンチュリは、円すい形の管に流体を詰め込むことによって流体の流れを速めるシステムである。その制限下では流体は速度を増加させ、それによって圧力を減少させて、部分真空を作らなければならない。流体が圧縮点から出ると、その圧力増加は大気圧またはパイプレベルの圧力に戻る。これによって低圧ゾーンが形成され、低圧ゾーンによってネブライザーボウル内の薬剤溶液から供給管を通して液滴が引っ張られて、続いて霧状液滴の流れが発生し、マウスピースへと流れる。空気の流れが大きくなると、粒子サイズが減少し、アウトプットが増加する。液滴および溶媒が放出気体を飽和させるため、ジェットネブライザーはネブライザー内の薬液を冷却し、残留体積中の溶質濃度を増加させることができる。ネブライザーボウルまたはカップ内のバッフルにはより大きな粒子が詰め込まれ、それらを保持し、ネブライザーボウルまたはカップ内の溶液に戻して、再度霧状化させることができる。対象が吸入した際にネブライザーボウルを通して空気が混入すると、吸気中のミスト出力を増加させることができる。粒子サイズの分布が小さいとミスト生成が発生し得るが、粒子サイズを小さくすると、噴霧時間も長くなり得る。
【0330】
一般的に液滴サイズに使用される測定単位は、質量メジアン直径(MMD)であり、これは質量による平均液滴直径として定義される。この単位は、質量平均空気力学的直径、またはMMADと呼称される場合もある。ジェットネブライザーのMMD液滴サイズは、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0μm以上(または約1.0~10.0μmの任意の範囲)であってもよく、当該範囲は、超音波ネブライザーよりも小さい場合がある。
【0331】
超音波ネブライザーは、交流電流を高周波(約1~約3MHz)音響エネルギーに変換する圧電性結晶の振動を使用してミストを生成する。溶液は表面で液滴に分解され、その結果生じるミストは患者の吸入によってデバイスから引き出され、またはデバイスを通じて小さなコンプレッサーによって生成された気流によって押し出される。超音波ネブライザーは、大容量超音波ネブライザーおよび小容量超音波ネブライザーを含み得る。液滴サイズは、ジェットネブライザーよりも超音波ネブライザーの方が大きくなる傾向がある。超音波ネブライザーのMMD液滴サイズは、約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0μm以上(または約2.0~10.0μmの任意の範囲)であってもよい。超音波ネブライザーは、約100、150、200、250、300μm/L以上の液滴で、高密度ミストを生成することができる。
【0332】
メッシュネブライザーデバイスは、圧電性結晶の振動を使用して、間接的にミストを生成する。メッシュネブライザーとしては、例えば、能動的メッシュネブライザーおよび受動的メッシュネブライザーが挙げられる。能動的メッシュネブライザーは圧電素子を使用し、圧電素子は、電流の印加を縮小および拡張させて、薬液と接触している精密な穴の開いたメッシュを振動させてミストを生成する。圧電性結晶の振動を使用して、数千の穴が開いた薄い金属板を振動させることができる。プレートの一方の面は霧化される液体と接触し、穴を通じてこの液体に振動が伝わり、小さな液滴のミストが形成される。受動的メッシュネブライザーはホーン型振動子を使用して、先細の穴の開いたプレートに受動振動を誘導してミストを形成する。能動的メッシュネブライザーの例としては、Aeroneb(登録商標)(Aerogen社、アイルランド・ゴールウェー)およびeFlow(登録商標)(PARI社、ドイツ・シュタルンベルク)が挙げられ、一方でMicroair NE-U22(登録商標)(Omron社、イリノイ州バノックバーン)は受動的メッシュネブライザーである。メッシュネブライザーは精密であり、カスタマイズ可能である。メッシュの孔サイズを変更することによって、デバイスは様々な粘度の薬液の使用に調整することができ、出力速度は変化する。この霧化方法を使用することで、いくつかの利点が得られる。メッシュ内の穴のサイズ(用途に合わせてカスタマイズされ得る)によって液滴サイズが決定されるため、液滴サイズはきわめて正確であり得る。例えば電着、電気めっきおよびレーザー切断などの方法を使用して呼吸に適した範囲の液性粒子を気体中に生成するネブライザーメッシュを製造することができる。メッシュは、金属合金から作製することができる。メッシュ製造に使用される金属としては、プラチナ、パラジウム、ニッケル、およびステンレス鋼が挙げられる。液滴のサイズは、メッシュ穴の約二倍のサイズである。したがって、メッシュ穴は、約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0μm以上(または約0.1~5.0μmの任意の値)であってもよい。メッシュネブライザーでのミストの生成は、メッシュの形状、メッシュが作製された材料、およびメッシュが生成された方法に基づいて変化し得る。言い換えれば、様々なメッシュが、様々なサイズの液性粒子を気体中に懸濁させて生成することができる。一般的に、メッシュネブライザー用のMMD液滴サイズは、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5.、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0μm以上(約1.0~7.0μmの任意の値)であってもよい。
【0333】
さらに、液滴サイズは、プログラム可能である。特に、ネブライザーに幾何学的変更を加えて、特定の望ましい液滴サイズを提供することができる。さらに、液滴サイズは、液滴の速度とは無関係に制御することができる。霧化される液体の体積、および液滴の速度も、メッシュ振動の周波数および振幅を調整することによって正確に制御することができる。さらに、メッシュ内の穴の数、およびメッシュ上のそれらのレイアウトをカスタマイズすることができる。メッシュネブライザーは、電気または電池のいずれでも電力供給され得る。
【0334】
(本明細書に記載される任意の霧化方法に対し)、1分当たりの定常雲(standing cloud)1mLにおけるミスト出力速度は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9mL/分以上(または約0.1~0.9mL/分の任意の範囲)の範囲であってもよく、および任意のタイプのネブライザーリザーバ中の残留体積は、約0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mL以上(または約0.01~2.0mLの任意の範囲)の範囲であってもよい。正確に液滴サイズを制御できることは、液滴サイズが薬物放出動態(KDR)に直接相関し得るという点で有利である。KDRの正確な制御は、液滴サイズの正確な制御によって実現可能である。幻覚剤またはその誘導体は、任意の方法を使用して約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0μm以上(または約0.5~10.0μmの任意の範囲)のMMD液滴サイズを伴うミストによって、送達することができる。
【0335】
一部の実施形態では、幻覚剤は、連続的な陽圧気道圧(CPAP)または他の圧力補助呼吸装置を介して送達することができる。圧力補助呼吸装置は、マウスまたは鼻キャップを着用している患者の顔および鼻に対して、固定された指定圧力で、連続的な柱状の圧縮空気または他の気体を押し出す。吸入するために患者の声門が開くとき、気道全体に圧力が伝達され、声門が開くのを補助する。患者が息を吐き出すと、収縮する肺と胸壁からの圧力は、二つの圧力が等しくなるまで連続的な圧力に対して空気を押し出す。呼気の最後で気道内の気圧は、機械の外気圧と等しくなり、「スプリント」が気道を開くのを補助し、酸素化と気道の確保が改善される。圧力補助呼吸装置は、呼吸回路内の気流にミスト粒子を導入するための手段、および/または患者が息を吐くときに呼吸回路へのミスト粒子導入を中断する手段と連結されてもよい。例えば、米国特許第7,267,121号を参照のこと。
【0336】
一部の実施形態では、ミストは、例えば定量吸入器(MDI)等のデバイスによって送達されてもよい。MDIは、幻覚剤を含有する有機溶媒-液滴ミストを生成し、当該ミストは任意で加熱されたヘリウム-酸素混合物を組み合わせられる。一部の実施形態では、幻覚剤またはその誘導体は、定量吸入器のMDIを介して送達されてもよい。MDIデバイスは、幻覚剤またはその誘導体および推進剤を含有するキャニスター、キャニスターから薬剤を分注する計量弁、キャニスターを受容し、経口吸入のための開口部を形成するアクチュエータ本体、ならびにキャニスターから薬剤を受容し、アクチュエータ本体の開口部に薬剤を誘導するアクチュエータステムを含んでもよい。アクチュエータ本体およびアクチュエータステムに対して薬剤キャニスターを移動させることによって、計量弁は所定量の薬剤を放出する。一部の実施形態では、幻覚剤またはその誘導体は、MDIの加圧容器に貯蔵された液体推進剤混合物(少量の揮発性有機溶媒を含む場合もある)に溶解されてもよい。「定量用量」は、単回用量吸入器に予めパッケージされた用量であり、または複数回用量吸入器の場合には、吸入用調製においてリザーバから自動的に測定される用量である。MDIデバイスは、スペーサーを用いて補助されてもよい。MDIスペーサーは、MDIとMDIのユーザーの口の間にあるスペーサーである。MDIスペーサーによって、霧化された用量中の液滴が少し沈殿し、空気または他の気体と混合する。それによって、吸入された際にユーザーの肺に効率的に定量用量が送達されるようになる。MDIでは用量が非常に速く移動しているため、肺に定量用量の薬剤が送達されるように設計されているにもかかわらず、MDIからの霧化スプレーの液滴はユーザーの肺に吸入されるのではなく、ユーザーの喉の後部に当たってくっ付いてしまう。そこで、MDIスペーサーは、ユーザーがMDIから直接定量用量を吸入してしまわないように補助する。MDIデバイスは、定期的投与の利点を提供するものであり、定期的投与は薬剤の製造において制御することができる。
【0337】
幻覚剤およびヘリウム酸素混合物の送達
本明細書に開示される方法は、低用量の幻覚剤またはその誘導体の全身送達を提供する。特に、幻覚剤またはその誘導体を、患者のCNSに送達することができる。用量は、個々の患者の代謝および治療ニーズに対して最適化することができる。高用量は有害または望ましくない副作用を伴うため、低用量を使用することによって回避される場合がある。様々な中枢神経系(CNS)疾患および他の状態を治療する方法が本明細書に記述される。方法は、薬剤、および例えば空気、酸素、ヘリウム、またはヘリウムと酸素の混合物(すなわち、heliox混合物)などの気体を含むミストの吸入を介して、その必要のある患者に、幻覚剤またはその誘導体を送達することを含む。一部の実施形態では、空気、酸素、ヘリウム、またはヘリウムと酸素の混合物を加熱してもよい。方法は、気体または空気の接続管によって互いに接続されたレデューサーとマスクを備えた、酸素-ヘリウム混合物を含むバルーンを含有するデバイスを使用することをさらに含んでもよく、当該デバイスは、最大120℃までtガスを加熱することができる追加的な加熱素子、振動する多孔性のプレートまたはメッシュを備えて5ミクロン未満のサイズの液滴の通過を確保するネブライザー、および消毒ユニットを含む。
【0338】
一部の実施形態では、幻覚剤またはその誘導体は、例えば、肺胞、肺胞管および/または細気管支などの肺区画などの下気道に送達される。そこから薬剤は血流に入り、中枢神経系に移動することができる。本開示の一部の実施形態では、ミストの吸入を介して、その必要のある患者へ幻覚剤を送達することによって、肝臓を通過することなく患者のCNSに幻覚剤を送達することができる。吸入を介して投与することによって、気体状の薬剤、または液体やミストに分散した薬剤は、初回通過代謝をバイパスして幻覚剤またはその誘導体を迅速に血流に送達させることができる。「初回通過効果」または「前全身性代謝」としても知られる初回通過代謝とは、薬剤が肝臓に入り、大きな生体内変化を受けることを記載するものである。
【0339】
一部の実施形態では、方法は、治療工程を提供し、当該工程において、幻覚剤は、約50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃以上(または50℃~60℃の任意の範囲)に加熱されたヘリウムと酸素の混合物と、霧化された幻覚剤またはその誘導体を吸入を介して投与することにより、その必要のある患者に投与することができる。一部の実施形態では、幻覚剤のミストまたは蒸気は、約0.1ミクロン~約10ミクロン(例えば、約10、5、4、3、2、1、0.1またはそれ以下のミクロン)の粒子サイズを有してもよい。一部の実施形態では、幻覚剤またはその誘導体は、ネブライザーを介して霧化されることができ、ネブライザーは、溶解した幻覚剤を含むミストとして吸入薬を生成する。一部の実施形態では、霧化された幻覚剤は、患者が吸入することによって、患者送達ラインが引き下げられる。一部の実施形態では、霧化された幻覚剤は、搬送ガスを使用して患者が吸入することによって、患者送達ラインが引き下げられる。搬送ガスは、空気、酸素、酸素とヘリウムの混合物、加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物であってもよい。
【0340】
一部の実施形態では、治療工程は、前治療工程が先行してもよい。一部の実施形態では、前治療工程は、幻覚剤またはその誘導体のミストの投与前に、前治療吸入療法を最初に投与することを含んでもよい。一部の実施形態では、前治療吸入工程は、(i)吸入を介して、約90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃以上(または90℃~120℃の任意の範囲)まで加熱された空気、酸素またはヘリウムと酸素の混合物を投与し、幻覚剤は投与しないこと、次いで(ii)空気、酸素、酸素とヘリウムの混合物、加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物を吸入する治療工程を投与すること、を含んでもよい。加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物は、霧化された幻覚剤またはその誘導体と組み合わされて、約50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃以上(または約50℃~60℃の任意の範囲)に加熱されてもよい。
【0341】
本開示の一部の実施形態では、前治療工程(i)および治療工程(ii)を、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返してもよい。本開示の一部の実施形態では、工程(i)および(ii)は、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返され、その後に治療工程が続き、治療工程は、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返されてもよい。本開示の一部の実施形態では、治療工程は、前治療工程を伴わずに、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返されてもよい。
【0342】
治療は、任意で前治療を伴い、週に1回、週に2回、1日1回、1日2回、1日3回またはそれ以上投与されてもよい。各治療は、約1分、5分、10分、20分、30分、45分、60分またはそれ以上であってもよい。
【0343】
薬物送達手順には、プライミング用の薬剤を含まない熱いheliox混合物を吸入し、効率的に粘膜床を予熱すること、続いて低温で加熱されたhelioxにより再度運ばれた霧化幻覚剤を吸入すること、を含んでもよく、霧化幻覚剤を吸入するための、吸入プライミング用の薬剤を含まない熱いheliox混合物を含んでもよい。これは、無水吸入ガス流と比較して、湿潤吸入ガス流に対する耐熱性の低さにより決定される。結果として、この手順は複数回の反復サイクルで実施されてもよく、この場合において標的PKおよび薬剤曝露は、薬剤の濃度、温度、ヘリウム酸素混合物の流量、混合物の組成、サイクルの数および持続期間、時間、および上記の組み合わせによって制御される。
【0344】
本明細書に記載される送達方法は、特定の疾患および障害を治療するために使用されてもよい。治療および処置と、状態、障害、疾患、または状態、障害、もしくは疾患の一つまたは複数の症状、またはそれらの組み合わせを軽減または消滅させる方法を指す。治療または処置には、状態、障害、疾患の進行の部分的もしくは完全な停止、または状態、障害、疾患の部分的もしくは完全な反転を含み得る。治療は、根底にある状態、疾患または障害に関連する生理学的または心理学的な症状のうちの一つまたは複数の根絶または改善などの治療利益を提供することができ、たとえ患者がまだ当該状態に影響を受けていたとしても、当該患者において改善は観察される。
【0345】
したがって、本明細書において、中枢神経系(CNS)の障害または心理学的障害を治療する方法が提供され、当該方法は、吸入を介して、ヘリウムと加熱酸素の加熱混合物と、霧化された幻覚剤を投与することを含む。治療によって、障害の一つまたは複数の症状を軽減することができる。
【0346】
一部の実施形態では、幻覚剤は、CNS疾患または他の障害の治療のために投与されてもよい。一部の実施形態では、幻覚剤は大うつ病、メランコリー型うつ病、非定型うつ病または気分変調症を含むうつ病を治療するために投与されてもよい。一部の実施形態では、幻覚剤は、不安障害、強迫性障害、中毒(麻薬中毒、タバコ中毒、オピオイド中毒)、アルコール依存症、うつ病および不安感(慢性的であるか、または生命を脅かす疾患もしくは末期疾患の診断に関連する)、強迫行動、または関連する症状を含む心理学的障害を治療するために投与されてもよい。
【0347】
一部の実施形態では、疾患または障害は、中枢神経系(CNS)の障害からなる群から選択され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮、自殺行動、自殺念慮または自殺行動を伴う大うつ病性障害、非自殺性自傷障害(NSSID)、I型双極性障害、II型双極性障害を含む双極性障害および関連障害、気分循環性障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、およびコカイン使用障害を含む物質使用障害、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、アルツハイマー病、群発頭痛および片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛および神経因性疼痛、アファンタジア、小児期発症流ちょう症、認知症、軽度認知症、性機能障害、慢性疲労症候群、ライム病、ならびに肥満が挙げられる。一部の実施形態では、疾患または障害は、自律神経系(ANS)の状態を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、肺障害(例えば、喘息および慢性閉塞性肺障害(COPD))を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、心血管系障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)を含み得る。
【0348】
ネブライザーを介して(例えば、加熱されたヘリウム-酸素混合物を使用することを含む)、CNS(全身性薬剤送達)に幻覚剤を送達する方法は、経口送達と比較して複数のPKパラメータに有益な改善をもたらし得る。特に、幻覚剤は血液脳関門を通過し、脳に送達されることができる。経口送達と比較して、任意選択的に加熱されたheliox混合物とともにネブライザーを介して幻覚剤をCNSに送達する方法は、経口送達と比較して、少なくとも25%まで生物学的利用能を増加させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようにネブライザーを介してCNSに幻覚剤を送達する方法は、生物学的利用能を約10%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上増加させることができる。本明細書に記載されるようにネブライザーを介してCNSに幻覚剤を送達する方法は、経口送達と比較して、Tmaxを少なくとも50%まで低下させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようにネブライザーを介してCNSに幻覚剤を送達する方法は、Tmaxを約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上減少させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようにネブライザーを介してCNSに幻覚剤を送達する方法は、経口送達と比較して、Cmaxを少なくとも25%まで増加させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようにネブライザーを介してCNSに幻覚剤を送達する方法は、Cmaxを約10%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上増加させることができる。さらに、本明細書に記載されるようにネブライザーを介してCNSに幻覚剤を送達する方法によって、用量漸増と、さらに曝露制御が可能な臨床プロトコルとすることができる。曝露制御によって、患者の曝露歴を調整し、全体的な治療転帰の改善をもたらすことができる。
【0349】
一部の実施形態では、幻覚剤(またはその塩)を投与するためのシステムが提供され、当該システムは、幻覚剤(またはその誘導体もしくは塩)化合物製剤の溶液を含有する容器、および当該容器に物理的に連結または同梱され、約0.1ミクロン~約10ミクロン(例えば、約10、5、4、3、2、1、0.1ミクロン以下)の粒子サイズを有する溶液のミストを生成するように適合されるネブライザーを含む。
【実施例
【0350】
I.合成経路
本開示の化合物および参照化合物は概して、図1~15に示される以下の合成手順に従って、または以下の合成手順と同様に、調製され得る。
【0351】
実施例1~19
実施例1~19は、Shulgin(Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.(1991)Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA)により報告され、後にMaresh(Maresh,J.J.,Ralko,A.A.,Speltz,T.E.,Burke,J.L.,Murphy,C.M.,Gaskell,Z.,Girel,J.K.,Terranova,E.,Richtscheidt,C.,and Krzeszowiec,M.(2014)Chemoselective Zinc/HCl Reduction of Halogenated beta-Nitrostyrenes:Synthesis of Halogenated Dopamine Analogues,Synlett 25,2891-2894)により改変された改変一般手順を使用して概略的な図1に従い調製される。好適な出発物質Aを、Zelleによって概説される手順(Zelle,R.E.,and Mcclellan,W.J.,1991,A Simple,High-Yielding Method for the Methylenation of Catechols,Tetrahedron Letters 32,2461-2464)に従って、炭酸セシウム、およびDMF中のブロモクロロメタンまたは重水素化ブロモクロロメタンのいずれかで処理し、環化中間体Bを形成する。次に、ニトロメタンまたはニトロエタンのいずれかおよび緩衝酢酸を用いたニトロアルドール縮合により、中間体Cを得る。
【0352】
α-重水素化を伴う類似体を合成するために、中間体Cを水素化ホウ素ナトリウムおよび二酸化ケイ素で還元し、アルケンを中間体Dに選択的に還元する(Sinhababu,A.K.,and Borchardt,R.T.,1983,Silica Gel-Assisted Reduction of Nitrostyrenes to 2-Aryl-1-Nitroalkanes with Sodium-Borohydride,Tetrahedron Letters 24,227-230)。Yamadaが開発した塩基性樹脂WA30および重水素化水を用いて、α位で重水素交換を行い(Yamada,T.,Kuwata,M.,Takakura,R.,Monguchi,Y.,Sajiki,H.,and Sawama,Y.(2018)Organocatalytic Nitroaldol Reaction Associated with Deuterium-Labeling,Adv Synth Catal 360,637-641)、中間体Eを形成する。塩酸を含有するメタノール中の亜鉛ダストによりニトロ基を還元すると、HCl塩として最終生成物Fが得られる。
α-水素類似体を合成するために、中間体Cを、塩酸を含有するメタノール中の亜鉛ダストでニトロ基およびアルケンをビス還元し、HCl塩として最終生成物Gが得られる。
【0353】
実施例1:
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-1)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例2:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)プロパン-2-アミン(II-4)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例3:
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-5)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例4:
2-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-9)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例5:
2-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-10)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例6:
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)エタン-1-アミン(II-11)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図2に従って化合物(II-11)を調製し、それによってジヒドロキシベンズアルデヒド(II-11a)の重水素交換が中間体(II-11b)を形成し、次いでこれを炭酸カリウムおよびジクロメタン-d2を用いて環化し、中間体(II-11c)を形成する。次に、ニトロメタンおよび緩衝酢酸を用いたニトロアルドール縮合により、中間体(II-11d)を得、これを次に、水素化アルミニウムリチウム、およびジエチルエーテル中のHClを用いてビス還元して、HCl塩として最終生成物II-11を得る。
実施例7:
2-(6-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-12)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例8:
2-(6-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)エタン-1-アミン(II-13)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例9:
2-(ベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル)エタン-1-アミン(II-14)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図3に従って化合物(II-14)を調製し、それによって出発物質(II-14a)はジメチルチオカルバモイルクロリドと反応して中間体(II-14b)を生成し、次いでこれを、ジフェニルエーテル溶媒を用いて220℃のマイクロ波条件下で転位させて中間体(II-14c)を形成する。次に、BBr3によるメチル基の脱保護により、中間体(II-14d)を得、続いてDCM中のトリフルオロ酢酸で処理すると、ベンゾオキサチオール-2-オン中間体(II-14e)が得られる。還流条件下で、重炭酸ナトリウム水溶液およびジブロモメタンで処理すると、中間体(II-14f)が得られる。次に、ニトロメタンおよび緩衝酢酸を用いたニトロアルドール縮合により、中間体(II-14g)を得、これを次に、水素化アルミニウムリチウム、およびジエチルエーテル中のHClを用いてビス還元して、HCl塩として最終生成物II-14を得る。
実施例10:
2-(ベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル-2,2-d2)エタン-1-アミン(II-15)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図4に従って化合物(II-15)を調製し、それによって中間体(II-14e)(図3、実施例9を参照)をメタノール中の水酸化ナトリウムでけん化し、得られた中間体(II-15a)が重水素交換して中間体(II-15b)を形成する。炭酸カリウムおよびジクロメタン-d2を使用した環化は、次いで中間体(II-15c)を形成する。次に、ニトロメタンおよび緩衝酢酸を用いたニトロアルドール縮合により、中間体(II-15d)を得、これを次に、水素化アルミニウムリチウム、およびジエチルエーテル中のHClを用いてビス還元して、HCl塩として最終生成物II-15を得る。
実施例11:
1-(ベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル)プロパン-2-アミン(II-16)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図5に従って化合物(II-16)を調製し、それによって中間体(II-14f)(図3、実施例9を参照)がニトロエタンおよび緩衝酢酸とのニトロアルドール縮合に供され、中間体(II-16a)をもたらし、次いで水素化アルミニウムリチウム、およびジエチルエーテル中のHClを使用してビス還元されて、HCl塩として最終生成物II-16を得る。
実施例12:
1-(ベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル-2,2-d2)プロパン-2-アミン(II-17)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図6に従って化合物(II-17)を調製し、それによって中間体(II-15c)(図4、実施例10を参照)がニトロエタンおよび緩衝酢酸とのニトロアルドール縮合に供され、中間体(II-17a)をもたらし、次いで水素化アルミニウムリチウム、およびジエチルエーテル中のHClを使用してビス還元されて、HCl塩として最終生成物II-17を得る。
実施例13:
2-(5-メトキシベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル)エタン-1-アミン(II-18)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例14:
2-(5-メトキシベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル-2,2-d2)エタン-1-アミン(II-19)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例15:
1-(5-メトキシベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル)プロパン-2-アミン(II-20)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例16:
1-(5-メトキシベンゾ[d][1,3]オキサチオール-6-イル-2,2-d2)プロパン-2-アミン(II-21)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例17:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)プロパン-2-d-2-アミン(II-27)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例18:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)プロパン-2-d-2-アミン(II-29)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例19:
1-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)プロパン-2-d-2-アミン(II-44)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例20~32
実施例20~32は、一般的な図7に従って調製される。化合物FまたはG(図1を参照)を、(i)シアノ重水素化ホウ素ナトリウムおよび重水素化ホルムアルデヒド(CDO)、または(ii)シアノ水素化ホウ素ナトリウムおよびホルムアルデヒド(CHO)のいずれかと還元的アミノ化させて、生成物HまたはIを得る。
実施例20:
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-メチルエタン-1,1-d2-1-アミン(II-2)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例21:
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(メチル-d3)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-3)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例22:
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)-N-メチルエタン-1,1-d2-1-アミン(II-6)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例23:
2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)-N-(メチル-d3)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-7)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例24:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)-N-メチルプロパン-2-アミン(II-8)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例25:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-メチルプロパン-2-d-2-アミン(II-31)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例26:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)-N-(メチル-d3)プロパン-2-d-2-アミン(II-33)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例27:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(メチル-d3)プロパン-2-d-2-アミン(II-35)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例28:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル-2,2-d2)-N-(メチル-d3)プロパン-2-アミン(II-40)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例29:
1-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(メチル-d3)プロパン-2-アミン(II-42)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例30:
1-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-メチルプロパン-2-d-2-アミン(II-45)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例31:
1-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(メチル-d3)プロパン-2-d-2-アミン(II-47)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例32:
2-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(メチル-d3)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-48)。製品の構造は、H NMRによって確認される。
実施例33
2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(III-1)の合成。
2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(III-1)の合成は、Shulgin (Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.(1991)Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA)により報告され、後にMaresh (Maresh,J.J.,Ralko,A.A.,Speltz,T.E.,Burke,J.L.,Murphy,C.M.,Gaskell,Z.,Girel,J.K.,Terranova,E.,Richtscheidt,C.,and Krzeszowiec,M.(2014)Chemoselective Zinc/HCl Reduction of Halogenated beta-Nitrostyrenes:Synthesis of Halogenated Dopamine Analogues,Synlett 25,2891-2894)により改変された改変一般手順を使用して、図8に従い実施される。出発物質3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドIII-1aは、ニトロメタンおよび緩衝酢酸によるニトロアルドール縮合を受け、続いて、水素化ホウ素ナトリウムおよび二酸化ケイ素による中間体III-1bの選択的アルケン還元を受け、アルケンが中間体III-1cに選択的に還元される(Sinhababu,A.K.,and Borchardt,R.T.,1983,Silica Gel-Assisted Reduction of Nitrostyrenes to 2-Aryl-1-Nitroalkanes with Sodium-Borohydride,Tetrahedron Letters 24,227-230)。Yamadaが開発した塩基性樹脂WA30および重水素化水を用いて、α位で重水素交換を行い(Yamada,T.,Kuwata,M.,Takakura,R.,Monguchi,Y.,Sajiki,H.,and Sawama,Y.(2018)Organocatalytic Nitroaldol Reaction Associated with Deuterium-Labeling,Adv Synth Catal 360,637-641)、中間体III-1dを形成する。メタノール含有塩酸中で、亜鉛ダストを用いたニトロ基の還元により、最終生成物(III-1)をHCl塩として得る。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図8に従って化合物(III-1)が生成され、それによって出発物質III-1aを水素化ホウ素ナトリウムで還元してベンジルアルコール(III-1e)を得、その後、これをPBrで臭化ベンジル(III-1f)に変換する。次いで、シアン化カリウムで置換して、シアン化ベンジル(III-1g)を得、その後、塩化アルミニウムの存在下で重水素化リチウムアルミニウムで還元して、最終生成物(III-1)を得る。
実施例34
2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エタン-1,1,2,2-d4-1-アミン(III-2)の合成。
2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エタン-1,1,2,2-d4-1-アミン(III-2)の合成は、Shulgin(Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.(1991)Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA)により報告され、後に Maresh (Maresh,J.J.,Ralko,A.A.,Speltz,T.E.,Burke,J.L.,Murphy,C.M.,Gaskell,Z.,Girel,J.K.,Terranova,E.,Richtscheidt,C.,and Krzeszowiec,M.(2014)Chemoselective Zinc/HCl Reduction of Halogenated beta-Nitrostyrenes:Synthesis of Halogenated Dopamine Analogues,Synlett 25,2891-2894)により改変された改変一般手順を使用して図9に従い実施される。3,4,5-トリメトキシベンゾニトリルIII-2aは、Chaによって開発された方法を使用して、リチウムトリス(ジヘキシルアミノ)アルミニウム重水素(Li(hex---N)AlD)を使用して還元することによって重水素化し、重水素化ベンズアルデヒドIII-2bとする(Cha,J.S.,Lee,S.E.,and Lee,H.S.,1992,Selective Conversion of Aromatic Nitriles to Aldehydes by Lithium Tris(Dihexylamino)Aluminum Hydride,Org Prep Proced Int 24,331-334)。β-ニトロスチレンIII-2cは、緩衝酸性条件下で、ニトロメタンとのニトロアルドール縮合を使用して形成される。続いて重水素化ホウ素ナトリウムおよび二酸化シリコンを用いた処理によりアルケンを還元して、中間体III-2d(Sinhababu,A.K.,and Borchardt,R.T.(1983)Silica Gel-Assisted Reduction of Nitrostyrenes to 2-Aryl-1-Nitroalkanes with Sodium-Borohydride,Tetrahedron Letters 24,227-230)を得て、続いてYamada (Yamada,T.,Kuwata,M.,Takakura,R.,Monguchi,Y.,Sajiki,H.,and Sawama,Y.(2018)Organocatalytic Nitroaldol Reaction Associated with Deuterium-Labeling,Adv Synth Catal 360,637-641)により開発された、塩基性樹脂WA30および重水を使用したα位の重水素交換を行い、中間体III-2eが形成される。メタノール含有塩酸中で、亜鉛ダストを用いたニトロ基の還元により、最終生成物(III-2)をHCl塩として得る。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図9に従って化合物(III-2)を生成し、それによって、中間体III-1g(図8、実施例33を参照)を塩基性条件下で重水素化水でベンジル重水素交換すると、シアン化ベンジル(III-2f)を得、続いて塩化アルミニウムの存在下で、重水素化リチウムアルミニウムで還元して、最終生成物(III-2)を得る。
実施例35
2-(3,4,5-トリス(メトキシ-d3)フェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(III-3)の合成。
2-(3,4,5-トリス(メトキシ-d3)フェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(II-3)の合成は、Shulgin (Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.(1991)Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA)により報告され、後にMaresh (Maresh,J.J.,Ralko,A.A.,Speltz,T.E.,Burke,J.L.,Murphy,C.M.,Gaskell,Z.,Girel,J.K.,Terranova,E.,Richtscheidt,C.,and Krzeszowiec,M.(2014)Chemoselective Zinc/HCl Reduction of Halogenated beta-Nitrostyrenes:Synthesis of Halogenated Dopamine Analogues,Synlett 25,2891-2894)により改変された改変一般手順を使用して図10に従い実施される。3,4,5-ヒドロキシベンズアルデヒド(III-3a)のメチル化は、Ouk(Ouk,S.,Thiebaud,S.,Borredon,E.,and Le Gars,P.,2003,High performance method for O-methylation of phenol with dimethyl carbonate,Appl Catal A-Gen 241,227-233)に従って、ニート重水素化炭酸ジメチルで行われる。ベンズアルデヒドIII-3bは次いで、ニトロメタンおよび緩衝酢酸によるニトロアルドール縮合を受け、続いて、水素化ホウ素ナトリウムおよび二酸化ケイ素による中間体III-3cの選択的アルケン還元を受け、アルケンが中間体III-3dに選択的に還元される(Sinhababu,A.K.,and Borchardt,R.T.,1983,Silica Gel-Assisted Reduction of Nitrostyrenes to 2-Aryl-1-Nitroalkanes with Sodium-Borohydride,Tetrahedron Letters 24,227-230)。Yamadaが開発した塩基性樹脂WA30および重水素化水を用いて、α位で重水素交換を行い(Yamada,T.,Kuwata,M.,Takakura,R.,Monguchi,Y.,Sajiki,H.,and Sawama,Y.(2018)Organocatalytic Nitroaldol Reaction Associated with Deuterium-Labeling,Adv Synth Catal 360,637-641)、中間体III-3eを形成する。メタノール含有塩酸中で、亜鉛ダストを用いたニトロ基の還元により、最終生成物(III-3)をHCl塩として得る。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図10に従って化合物(III-3)を生成し、それによって出発物質III-3aは、CDIで過アルキル化されて中間体(III-3f)を形成し、その後、これを水素化ホウ素ナトリウムで還元して、ベンジルアルコール(III-3g)を得る。臭化ベンジル(III-3h)への変換は、PBrを用いて達成される。次いで、シアン化カリウムで置換して、シアン化ベンジル(III-3i)を得、その後、塩化アルミニウムの存在下で重水素化リチウムアルミニウムで還元して、最終生成物(III-3)を得る。
実施例36
2-(3,5-ジメトキシ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(III-4)の合成。
2-(3,5-ジメトキシ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(III-4)の合成は、ニトロ基の存在下での選択的アルケン還元のためにShulgin(Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.,1991,Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA.)により報告され、後にSinhababu(Sinhababu,A.K.,and Borchardt,R.T.,1983,Silica Gel-Assisted Reduction of Nitrostyrenes to 2-Aryl-1-Nitroalkanes with Sodium-Borohydride,Tetrahedron Letters 24,227-230)によって、改変された改変一般ニトロスチレン経路を使用して、図11に従って実施される。3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(III-4a)は、水素化ナトリウム、二硫化炭素、およびヨウ化メチルで連続的に処理され、キサントゲン酸エステルIII-4bを形成する。HF/ピリジンおよびジブロモヒダントイン(DBH)との反応は、中間体III-4cを形成し、次いで、ニトロメタンおよび緩衝酢酸によるニトロアルドール縮合を経て、水素化ホウ素ナトリウムおよび二酸化ケイ素により選択的なアルケン還元を行い、アルケンを中間体III-4dに選択的に還元する。Yamadaによって開発された塩基性樹脂WA30を使用して、ニトロ基に対するアルファプロトンを重水素に交換する(Yamada,T.,Kuwata,M.,Takakura,R.,Monguchi,Y.,Sajiki,H.,and Sawama,Y.,2018,Organocatalytic Nitroaldol Reaction Associated with Deuterium-Labeling,Adv Synth Catal 360,637-641)。中間体III-4e中のニトロ基の還元は、Maresh(Maresh,J.J.,Ralko,A.A.,Speltz,T.E.,Burke,J.L.,Murphy,C.M.,Gaskell,Z.,Girel,J.K.,Terranova,E.,Richtscheidt,C.,and Krzeszowiec,M.,2014,Chemoselective Zinc/HCl Reduction of Halogenated beta-Nitrostyrenes:Synthesis of Halogenated Dopamine Analogues,Synlett 25,2891-2894)に従って、塩酸を含有するメタノール中の亜鉛ダストを用いて完了し、HCl塩として最終生成物(III-4)を得る。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図11に従って化合物(III-4)が生成され、それによって中間体III-4cを水素化ホウ素ナトリウムで還元してベンジルアルコール(III-4f)を得、その後、これをPBrで臭化ベンジル(III-4g)に変換する。次いで、シアン化カリウムで置換して、シアン化ベンジル(III-4h)を得、その後、塩化アルミニウムの存在下で重水素化リチウムアルミニウムで還元して、最終生成物(III-4)を得る。
実施例37
2-(3,5-ジメトキシ-4-((トリフルオロメチル)チオ)フェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(III-7)の合成。
2-(3,5-ジメトキシ-4-((トリフルオロメチル)チオ)フェニル)エタン-1,1-d2-1-アミン(III-7)は、ニトロ基の存在下での選択的アルケン還元のために、Shulgin(Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.,1991,Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA.)によって報告され、後にSinhababu(Sinhababu,A.K.,and Borchardt,R.T.,1983,Silica Gel-Assisted Reduction of Nitrostyrenes to 2-Aryl-1-Nitroalkanes with Sodium-Borohydride,Tetrahedron Letters 24,227-230)によって改変された、改変一般ニトロスチレン経路を使用して、図12に従って実施する。4-メルカプト-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド(III-7a)は、カリウムt-ブトキシドおよびトリフルオロメチルブロミドでフルオロアルキル化されて、中間体III-7bを得、次いで、ニトロメタンおよび緩衝酢酸によるニトロアルドール縮合を経て、水素化ホウ素ナトリウムおよび二酸化ケイ素により選択的なアルケン還元を行い、アルケンを中間体III-7cに選択的に還元する。Yamadaによって開発された塩基性樹脂WA30を使用して、ニトロ基に対するアルファプロトンを重水素に交換する(Yamada,T.,Kuwata,M.,Takakura,R.,Monguchi,Y.,Sajiki,H.,and Sawama,Y.,2018,Organocatalytic Nitroaldol Reaction Associated with Deuterium-Labeling,Adv Synth Catal 360,637-641)。中間体III-7d中のニトロ基の還元は、Maresh(Maresh,J.J.,Ralko,A.A.,Speltz,T.E.,Burke,J.L.,Murphy,C.M.,Gaskell,Z.,Girel,J.K.,Terranova,E.,Richtscheidt,C.,and Krzeszowiec,M.,2014,Chemoselective Zinc/HCl Reduction of Halogenated beta-Nitrostyrenes:Synthesis of Halogenated Dopamine Analogues,Synlett 25,2891-2894)に従って、塩酸を含有するメタノール中の亜鉛ダストを用いて完了し、HCl塩として最終生成物(III-7)を得る。製品の構造は、H NMRによって確認される。
あるいは、図12に従って化合物(III-7)は生成され、それによりヨードベンズアルデヒド出発物質III-7eとAgSCFとの間のPd/XPhos-触媒クロスカップリングを、ヨウ化フェニルトリエチルアンモニウムの存在下で(1,5-シクロオクタジエン)ビス(トリメチルシリルメチル)パラジウム(II)触媒を使用して実施し、中間体(III-7b)を得た。水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元により、ベンジルアルコール(III-7f)を得て、次いでこれをPBrで臭化ベンジル(III-7g)に変換する。次いで、シアン化カリウムで置換して、シアン化ベンジル(III-7h)を得、その後、塩化アルミニウムの存在下で重水素化リチウムアルミニウムで還元して、最終生成物(III-7)を得る。
実施例38
フェニルプロパン-2-アミン(例えば、アンフェタミン)エナンチオマーの分解の一般的な手順。
所望により、フェニルプロパン-2-アミンエナンチオマーは、酒石酸塩として結晶化することによって、またはAldous(Aldous,F.A.,Barrass,B.C.,Brewster,K.,Buxton,D.A.,Green,D.M.,Pinder,R.M.,Rich,P.,Skeels,M.,and Tutt,K.J.,1974,Structure-activity relationships in psychotomimetic phenylalkylamines,J Med Chem 17,1100-1111)によって概説された分別再結晶手順を介して、キラルクロマトグラフィーで分離することができる。図13を参照のこと。このスキームでは、フェニルイソプロピルアミンは、N-ベンジルオキシカルボニル-L-(またはD-)フェニルアラニンp-ニトロフェニルエステルと反応し、得られたジアステレオマーアミドは、不溶性画分の沈殿によって分離される。所望のフェニルイソプロピルアミンの回収は、接触水素化に続いて、エドマン分解によって行われる。
参照化合物1
3,4,5-トリメトキシフェネチルアミン(参照化合物1)(メスカリン)の合成。
メスカリン(参照化合物1)の合成は、Shulgin (Shulgin,A.,and Shulgin,Ann.(1991)Pihkal:a chemical love story,Transform Press,Berkeley,CA)により報告され、後にMaresh (Maresh,J.J.,Ralko,A.A.,Speltz,T.E.,Burke,J.L.,Murphy,C.M.,Gaskell,Z.,Girel,J.K.,Terranova,E.,Richtscheidt,C.,and Krzeszowiec,M.(2014)Chemoselective Zinc/HCl Reduction of Halogenated beta-Nitrostyrenes:Synthesis of Halogenated Dopamine Analogues,Synlett 25,2891-2894)により改変された改変一般手順を使用して図14に従い実施された。出発物質3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドAは、ニトロメタンおよび緩衝酢酸によるニトロアルドール縮合を経て、中間体B中のニトロ基およびアルケンを、塩酸を含有するメタノール中の亜鉛ダストでビス還元し、HCl塩として最終生成物(参照化合物1)を得た。生成物の構造をH NMRにより確認した。総収率90%。
参照化合物2
1-(2,5-ジメトキシ-4-(メチルチオ)フェニル)プロパン-2-アミン(参照化合物2)(「DOT」)の合成。
1-(2,5-ジメトキシ-4-(メチルチオ)フェニル)プロパン-2-アミン(参照化合物2)のエナンチオ選択的合成が図15に従って実施される。ヨードベンズアルデヒド出発物質Cとメタンチオレートナトリウムとの間のPd(dba)/キサンホス触媒クロスカップリングは、中間体Dを提供し、次いで、これを緩衝酸性条件下でニトロエタンとニトロアルドール縮合を行い、ニトロ中間体Eを形成する。その後、鉄および塩酸で還元してオキシムを形成し(図示せず)、これを、ワークアップ中に加水分解して、Pearl(Pearl,I.A.,Beyer,D.L.J.Org.Chem.1951,16,2,221-224)の報告した手順を使用してメチルベンジルケトン中間体Fを得る。メチルベンジルケトン中間体Fを次にエルマンのスルフィンアミド(t-ブタンスルフィンアミド、IV-5e)のいずれかのエナンチオマーと縮合して中間体Gを形成し、次いでこれを水素化ホウ素ナトリウムで、Hの(R,R)または(S,S)ジアステレオマーのいずれかに選択的に還元し、Cinelli(Cinelli,M.A.et al.J.Med.Chem.2017,60,9,3958-3979)に記載される手順を用いてメタノール中のHClで加水分解し、エナンチオマー形態、すなわち、(R)-1-(2,5-ジメトキシ-4-(メチルチオ)フェニル)プロパン-2-アミンまたは(S)-1-(2,5-ジメトキシ-4-(メチルチオ)フェニル)プロパン-2-アミンのいずれかで、HCl塩として最終生成物(参照化合物2)を得る。製品の構造は、H NMRによって確認される。
【0354】
II.製剤
イオン交換樹脂複合体の調製
化合物の遊離塩基は、強力なカチオン交換樹脂(ナトリウム型、Amberlite IRP69、Rohm & Haas社、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、医薬グレードUSP、粒子径75~150ミクロン)と複合体化される。上記樹脂の最大負荷量は、約5meqv/gであることが知られている。典型的な手順では、化合物の遊離塩基(10mmol)は、20mlのエタノールに溶解される。この溶液に、2gのIRP69樹脂(3×50mlのエタノールで洗浄)を、磁気攪拌器を使用して室温で加え、2時間攪拌し続ける。次いで樹脂をろ過し、エタノール(2×20ml)で洗浄する。樹脂複合体からの化合物放出は、pH1(0.1M HCl)および7.4(0.1M リン酸緩衝液)で、I型(basket)溶解装置を使用して試験される。酸性環境において放出は高速プロセスであり、薬剤の90%超が30分以内に溶出する。中性pHでは、放出は相当に遅くなり、薬剤の約50%が1時間で放出され、80%が2時間で放出される。薬物濃度は、Agilux 1100セットアップおよびUV検出を使用してHPLCによって決定される。
【0355】
腸溶コーティングによりコーティングされたイオン交換樹脂複合体のビーズ調製
シールコーティング
化合物-イオン交換樹脂複合ビーズは、Wursterコーティングモジュール(ボトムフィード)を備えたNiro-Aeromatic STREA 1流動床装置上で、水-アルコール溶媒系(88:12、イソプロパノール:水)中、Opadry 03K19229コーティング(Colorcon社、米国ニュージャージー州、6%固体で再構成)を使用して2重量%でシールコーティングされる。
【0356】
腸溶コーティング
次いで得られたビーズを、Opadry Enteric 94O白色コーティング(Colorcon社、米国ニュージャージー州)を使用してコーティングする。コーティング分散体は、水-アルコール溶媒系(88:12、イソプロパノール:水)中で10%固体で再構成され、5%または12%の重量増加のいずれかに適用される。プラセボ錠剤の腸溶コーティングは、先行するシールコーティング工程を行わずに実施される。サンプルは、5、6、7、8、10、および12%の重量増加で採取される。
【0357】
薬物放出試験
低pHでの薬物放出は、100rpmで、I型装置1(バスケット)を使用して決定される。最初の段階では、溶解媒体は、37℃(±0.5℃)で、1000mlの0.1N HClであり、ビーズ負荷量は2gである。この媒体中で1時間の動作後、分注物が回収され、HPLCにより薬剤含有量が合計1%未満であると判定される。これにより、塗布された腸溶コーティングの完全性が確認される。中性pHでの薬物放出は、100rpmで、I型装置1(バスケット)を使用して決定される。第二の段階では、溶解媒体は、pH7.4、37℃(±0.5℃)で、1000mLの0.1M リン酸緩衝液であり、2gのビーズ負荷量である。媒体分注物は、15分、30分、60分、90分、および120分で回収され、薬物含有量は、Agilux 1100セットアップおよびUV検出を使用してHPLCにより決定される。薬剤の放出は、1時間で約50%、2時間で80%であることが判明し、非コーティング樹脂ビーズと同様の経時的な放出プロファイルであった。
【0358】
経口崩壊錠の製造
経口崩壊錠剤は、持続的な放出特性を有する薬剤-イオン交換樹脂複合体のマイクロビーズを、高速経口崩壊成分のマトリクス内に組み込むことにより設計される。当該マトリクスは、薬剤のより簡便な投与を目的としており、口腔内への活性物質の分散を補助し、続いて水を用いずに嚥下できるようにする。
【0359】
化合物は、経口崩壊性放出錠剤形態である組成物PI-ODT-1に製剤化される。当該組成物は、糖ベースの高速崩壊マトリクスであるPharmaburst 500(SPI、PA、USA)を使用した乾燥造粒により調製される。100gのPharmaburst 500は、20gの腸溶コーティングされた化合物-イオン交換樹脂複合体ビーズと混合し、40枚のメッシュふるいによりふるいにかけられ、塊が破砕される。その後、400mlのチューブブレンダー中で、混合物を15分間、200rev/分で混合する。混合後、ステアリン酸マグネシウム(200mg)を加え、さらに3分間混合する。約20mgの活性化合物を含有する250mgの凸状錠剤は、TDP錠剤プレスおよび9mm染料を使用して圧縮される。8kNの圧縮力を与えることによって、10~15kPの範囲の硬度の錠剤が生成される。錠剤崩壊時間は、60~75秒と決定される。錠剤溶解は、1xPBS緩衝液、pH=6.8を浸漬媒体として使用し、100rpm、37℃で、II型溶解装置(パドル(paddle))(Distek Premiere 5100溶解システム、Distek Inc.、米国ノースブランスウィック)で実施される。所定の間隔で1mlの試料を回収し(交換はない)、ろ過し、分析する。放出された化合物の量は、Agilent 1100セットアップを使用してHPLCにより測定される(Nagy,J.,and Veress,T.,2016,HPLC Analysis of Hallucinogenic Mushroom Alkaloids (Psilocin and Psilocybin)Applying Hydrophilic Interaction Chromatography (HILIC),J Forensic Res 7,356)。濃度が判明している化合物溶液を使用して、放出された薬物の量を計算する。
【0360】
化合物の脂肪酸塩
化合物の遊離塩基(10mmol)を30mlのアセトンに溶解し、10mmolのデカン酸を加え、5分間混合する。混合物を一晩冷蔵庫で冷却することによって、1:1塩の白色結晶性沈殿物が形成される。塩の組成は、元素分析によって確認される。
【0361】
III.試験
5-HT セロトニン受容体の薬理学的試験
化合物の結合アフィニティ(K)および機能的効力(EC50)の値が測定される。重水素化は、重要な受容体標的でのアフィニティおよび機能性にほとんど影響を与えないことが判明する。受容体アフィニティアッセイ:過去に報告された(Canal,C.E.,Cordova-Sintjago,T.,Liu,Y.,Kim,M.S.,Morgan,D.,and Booth,R.G.,2013,Molecular pharmacology and ligand docking studies reveal a single amino acid difference between mouse and human serotonin 5-HT2A receptors that impacts behavioral translation of novel 4-phenyl-2-dimethylaminotetralin ligands,J Pharmacol Exp Ther 347,705-716;Armstrong,J.L.,Casey,A.B.,Saraf,T.S.,Mukherjee,M.,Booth,R.G.,and Canal,C.E.,2020,(S)-5-(2’-Fluorophenyl)-N,N-dimethyl-1,2,3,4-tetrahydronaphthalen-2-amine,a Serotonin Receptor Modulator,Possesses Anticonvulsant,Prosocial,and Anxiolytic-like Properties in an Fmr1 Knockout Mouse Model of Fragile X Syndrome and Autism Spectrum Disorder,ACS Pharmacol Transl Sci 3,509-523)ように、5-HT1A、5-HT2(A,B,C)受容体のアフィニティが放射性リガンド競合結合により決定される。簡潔に述べると、セロトニン作動性受容体を発現するCHO-K1細胞またはHEK293細胞から膜を収集し、K濃度の放射性リガンドと、受容体結合部位について競合する被験化合物とともに、アッセイ緩衝液中でインキュベートする。平衡化後、反応を、リガンド-受容体-膜複合体(Microbeta、PerkinElmer社)を収集することによって終了させ、シンチレーションカウンター(Microbeta2、PerkinElmer社)によって放射能を測定する。データを非線形曲線に適合させ、K値はCheng-Prusoff方程式に従って計算される。
【0362】
受容体機能アッセイ:5-HT1A受容体介在性のGi刺激(環状アデノシン一リン酸(cAMP)レベルの減少)および5-HT2(A、B、C)受容体介在性のGq刺激(イノシトールリン酸塩1(IP1)の産生をもたらすホスホイノシチド加水分解)は、標準的なシグナル伝達経路であり、過去に報告される(Canal,C.E.,Cordova-Sintjago,T.,Liu,Y.,Kim,M.S.,Morgan,D.,and Booth,R.G.,2013,Molecular pharmacology and ligand docking studies reveal a single amino acid difference between mouse and human serotonin 5-HT2A receptors that impacts behavioral translation of novel 4-phenyl-2-dimethylaminotetralin ligands,J Pharmacol Exp Ther 347,705-716;Canal,C.E.,Morgan,D.,Felsing,D.,Kondabolu,K.,Rowland,N.E.,Robertson,K.L.,Sakhuja,R.,and Booth,R.G.,2014,A Novel Aminotetralin-Type Serotonin (5-HT)(2C)Receptor-Specific Agonist and 5-HT2A Competitive Antagonist/5-HT2B Inverse Agonist with Preclinical Efficacy for Psychoses,J Pharm Exp Ther 349,533)ように測定され、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術(例えば、LANCE Ultra cAMP TR-FRET (PerkinElmer社)やIP-One HTRF (Cisbio社)キット)を採用する市販キットを使用して、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)が可能なマイクロプレートリーダー(例えば、Mithras LB 940、Berthold社)を用いて測定される。簡潔に述べると、セロトニン作動性受容体を発現するCHO-K1細胞またはHEK293細胞を、刺激緩衝液中、被験化合物とともにインキュベートする。平衡化後、溶解緩衝液中のドナーおよびアクセプターの蛍光コンジュゲートを用いて反応を終了させ、FRETを測定する。データを非線形曲線に適合させ、陽性対照(例えば、セロトニン)と比較した効力(例えば、EC50)および有効性(例えば、EMAX)を計算する。
【0363】
インビトロでの肝臓代謝および重水素同位体の速度効果
化合物(2μm溶液を10μl)を、100mgのラット肝ミクロソーム、NADPH再生系(1mM NADP、1単位/mlのイソクエン酸デヒドロゲナーゼ、5mMのイソクエン酸、5mMの塩化マグネシウム)、および25mMのリン酸緩衝液(pH7.4)を含有する200μlの培地中でインキュベートする。様々な時点(0~60分)で、300μlのアセトニトリルを添加することによって反応を終了させる。生成物の分析については、沈殿した塩およびタンパク質を遠心分離機上でスピンアウトし、残留溶液を300μlの水で希釈して、LC/MS(ABS Sciex 4000 QTRAP LC/MS/MS質量分析計と接続されたAgilent 1200システム)に注入する。代謝の安定性は、主要親ピークの消失速度を評価することによって推定され得る。
【0364】
ラットおよびマウスにおけるPK試験
化合物の薬物動態をラットで研究する。典型的な実験において、カセットドージングとしての実験は、外科的に挿入された内頸静脈カテーテルを有するWistarのメスラット(Charles River社、マサチューセッツ州アンドーバー)(200~250g)5匹の2群を12時間絶食させ、次いで5mg/kgの化合物、および5mg/kgの参照化合物(例えば、非重水素化化合物)を各群にカテーテルを介してまたは強制経口投与で投与するものとする。0、15、30、60分、ならびに2、4、8、および24時間の時点で、得られた血漿を、LC/MS分光法を使用して親分子について分析する。血液と血漿の比(BPR)を決定するために、5匹の動物の二つの別個の群を使用する。各群は、それぞれ15分および30分の時点で安楽死され、脳および血漿中の親薬剤の濃度をLC/MS分光法によって決定される。
【0365】
本明細書の任意の場所において言及される全ての特許、特許出願、および他の科学文献または技術文献が、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に説明的に記載される実施形態は、本明細書において具体的に開示される、または具体的には開示されない任意の要素や限定が存在しない場合でも実施することができる。したがって、例えば本明細書のそれぞれの例において、「含む」、「本質的に~からなる」、および「~からなる」という用語はいずれも、その通常の意味を保持しながら、他の二つの用語のいずれにも置換され得る。採用された用語および表現は、限定ではなく、説明の用語として使用される。示される、および記載される特性、またはその一部の任意の均等を除外するような用語および表現の使用において意図はないが、特許請求の範囲内で様々な改変が可能であることは認識される。したがって、本発明の方法および組成物は、実施形態および任意の特性によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される概念の改変および変形は、当業者によって再分類されてもよく、そのような改変および変形は、明細書および添付の特許請求の範囲によって定義される組成物および方法の範囲内であるとみなされることが理解されよう。
【0366】
本明細書に記載される任意の一つの用語、一つの要素、一つの文言、用語の群、文言の群、または要素の群はそれぞれ、特許請求の範囲から具体的に除外されることができる。
【0367】
例えば、温度範囲、時間範囲、組成、または濃度範囲などの範囲が本明細書に提示される場合、全ての中間範囲および下位範囲、ならびに提示される範囲に含まれる全ての個々の値が、本開示に含まれることが意図される。本明細書の記述に含まれる範囲または下位範囲の任意の下位範囲または個々の値は、本明細書の態様から除外されることが理解されよう。本明細書の記述に含まれる任意の要素または工程が、請求される組成物または方法から除外されることが理解されよう。
【0368】
さらに、組成物および方法の特性または態様がマーカッシュ群または他の代替的な群で記述される場合、当業者は、当該組成物および方法が、マーカッシュ群または他の群の任意の個々の構成要素または構成要素の下位群に関しても記述されていると認識するであろう。
【0369】
したがって、前述の内容は単に方法および組成物の主旨を例示しているに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的に記述または示されてはいないが、本開示の主旨を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な配置を考案し得ることが理解されよう。さらに、本明細書に列挙されるすべての例および条件付き文言は主に、本開示の主旨、および本発明者らが当分野の促進に貢献した概念の理解において、読み手を補助することが意図されており、そのような具体的に列挙される例および条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。さらに、本開示の主旨、態様、および実施形態ならびにその具体的な実施例を列挙する本明細書のすべての記述は、その構造的および機能的な均等を包含することが意図される。さらに、そのような均等には、現在公知の均等、および将来開発される均等の両方が含まれること、すなわち構造に関係なく、同じ機能を実行するよう開発されたすべての要素が含まれることが意図される。したがって、本開示の範囲は、本明細書に示され、記述される例示的な実施形態に限定されることは意図されない。むしろ、本開示の範囲および精神は、以下によって具体化される。
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【国際調査報告】