(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置において液圧フォールバックレベルの可用性をチェックするための方法、電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置のための電子制御器、および、電子制御器を備えた電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20230906BHJP
B60T 8/96 20060101ALI20230906BHJP
B60T 8/1761 20060101ALI20230906BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B60T17/22
B60T8/96
B60T8/1761
B60T8/17 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512113
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021066006
(87)【国際公開番号】W WO2022037820
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102020210598.7
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ローフェルマン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハーク,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】マルカルト,マルティン
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB05
3D049BB14
3D049CC02
3D049HH12
3D049HH53
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3D246JB43
3D246LA15Z
3D246LA26Z
3D246LA63Z
3D246LA73Z
3D246MA01
3D246MA16
3D246MA23
3D246MA26
(57)【要約】
【課題】
本発明は、電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置において液圧フォールバックレベルの可用性をチェックするための方法、電子制御器、および、電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置に関する。
【解決手段】
パワーブレーキ装置(10)は、ドライバーがブレーキ圧増圧に関与していなくても、通常作動中に制動過程を実施する。制動要件は、電子制御器(24)によって検知されてブレーキ圧に関連付けられ、ブレーキ圧はその後第1次の圧力発生器(20)の駆動部(22)の電気起動によって調整される。たとえばブレーキ圧を車輪で支配的なスリップ状況に車輪個別に適合させるため、パワーブレーキ装置(10)は電気起動可能な第2次の圧力発生器(30)を多重に備えている。第2次の圧力発生器は、前記第1次の圧力発生器(20)に対し並列に車輪ブレーキ(16)と接触し、液圧フォールバックレベルにおいてブレーキ圧増圧の用を成すために使用することができる。安全上の理由から、前記パワーブレーキ装置(10)の前記通常制動作動中に、この液圧フォールバックレベルの可用性のチェックを、特定のタイムインターバルで実施することを提案する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車の電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置(10)において液圧フォールバックレベルの可用性をチェックするための方法であって、
前記パワーブレーキ装置(10)が、接続されている車輪ブレーキ(16)に圧力媒体をブレーキ圧のもとで供給するため、複数の圧力発生器(20;30)を有し、そのそれぞれの駆動部(22;32)が少なくとも1つの電子制御器(24)によって互いに別個に起動可能であり、
前記パワーブレーキ装置(10)は、必要な制動事象を前記電子制御器(24)によって検知して、第1次の圧力発生器(20)の前記駆動部(22)を対応的に電気起動することによって前記車輪ブレーキ(16)において調整可能なブレーキ圧に関係づける通常作動において作動され、
特に、前記車輪ブレーキ(16)に付設されている車輪においてそれぞれまさに支配的である前記ブレーキ圧を車輪スリップに適合させるために、少なくとも1つの電気起動可能な第2次の圧力発生器(30)が設けられ、
前記パワーブレーキ装置(10)は、前記第1次の圧力発生器(20)によるブレーキ圧発生に障害があることに基づいてこのブレーキ圧を前記第2次の圧力発生器(30)の前記駆動部(32)の対応的な電子起動によって前記パワーブレーキ装置(10)の前記車輪ブレーキ(16)内で調整可能である液圧フォールバックレベルにおいて作動される、
前記方法において、
前記パワーブレーキシステム(10)の前記通常作動中に、前記液圧フォールバックレベルの可用性のチェックを、設定可能なタイムインターバルで実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
制動要望がある場合に、前記パワーブレーキ装置(10)の前記通常作動中に前記電子制御器(24)により前記第1次の圧力発生器(20)の駆動部(22)を抑止し、そして前記第2次の圧力発生器(30)の前記駆動部(32)を電気起動させて、前記車輪ブレーキ(16)内でブレーキ圧を増圧させることにより、前記液圧フォールバックレベルの可用性をチェックすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遅くとも前記第2次の圧力発生器(30)の前記駆動部(32)の前記電気起動とともに、この第2次の圧力発生器(30)と前記車輪ブレーキ(16)との間の液圧結合を、特に前記第2のアッセンブリ(14)の弁機構(34)の電気起動によって、中断させる場合に、制動要望がなくても、前記パワーブレーキ装置(10)の前記通常作動中に前記第2次の圧力発生器(30)の駆動部(32)を電気起動することにより、前記液圧フォールバックレベルの可用性をチェックすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パワーブレーキ装置(10)を備えた自動車が停止した後に前記液圧フォールバックレベルの可用性をチェックし、この停止中に、前記車輪ブレーキ(16)の少なくとも1つでブレーキ圧を増圧させるために、前記第2次の圧力発生器(30)の駆動部(32)の電気起動を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2次の圧力発生器(30)によって発生した前記ブレーキ圧が、前記パワーブレーキ装置(10)の前記電子制御器(24)内にファイルされている予め設定可能な、このブレーキ圧に対する制限値と同じ大きさか、より大きい場合に、前記液圧フォールバックレベルの可用性があると推定することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電気起動された前記第2次の圧力発生器(30)によって発生させた前記ブレーキ圧を前記パワーブレーキ装置(10)内で直接測定して評価し、または、前記第2次の圧力発生器(30)の前記駆動部(32)から入力される電力に対する特性値をベースにして、行われたブレーキ圧増圧を間接的に推定することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2次の圧力発生器(30)の前記電力の検知を、その前記駆動部(32)へ流れる電流の強さの測定に基づいて行うことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施するために形成されている、特に電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置(10)のための電子制御器(24)。
【請求項9】
請求項8に記載の電子制御器(24)を備えている、電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念を成す構成要件による、電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置において液圧フォールバックレベルの可用性をチェックするための方法に関するものである。さらに、本発明は、請求項8の構成要件による、電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置のための電子制御器、および、請求項9の構成要件による、電子制御器を備えた電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明には、従来技術から知られている電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置が基礎になっている。これに関してはたとえば特許文献1を指摘する。
【0003】
この公知のパワーブレーキ装置は、非人力によって操作される常用ブレーキと、筋力によって操作可能な補助ブレーキとを含んでいる。常用ブレーキを用いると、通常条件の下で、ドライバーがブレーキ圧増圧に関与せずに、制動過程を行うことができる。このため、制動の必要性はドライバーまたは車両センサ装置によって設定または認識され、電子制御器に通知される。この制御器は必要なブレーキ圧を演算して、圧力発生器の駆動部を対応的に起動させる。補助ブレーキは、常用ブレーキの故障の場合に車両をドライバーによって筋力で減速させるために設けられている。
【0004】
前記公知のパワーブレーキ装置は、いくつかのアッセンブリで構成される。それらはたとえば互いに別個に製作され、液圧的に互いに接触している。その理由は、とりわけ、1台の車両内でのスペース状況が狭いこと、および、この非統合型構成に伴なって複数のアッセンブリを異なる場所に配置する可能性があることである。第1のアッセンブリは、ドライバーによって与えられた制動要望を検知するために設けられている。このため、第1のアッセンブリは、上述のブレーキ操作要素と、必要なブレーキ圧の増圧のための第1次または第1の圧力発生器とを備えている。第1次の圧力発生器は電気起動可能な駆動部を有し、その起動は電子制御器によって行われる。
【0005】
第2のアッセンブリは、通常条件の下で、この調整されたブレーキ圧を、車輪ブレーキに付設されている車両の車輪において現時点で支配的であるスリップ状況に車輪個別に適合させるために用いられる。このため、この第2のアッセンブリは、電気制御で駆動可能な第2次または第2の圧力発生器を備え、加えて同様に電気起動可能な弁機構を備えている。この弁機構は、複数の切換え可能な方向制御弁を含んでいる。
【0006】
両アッセンブリとも、自動車の車輪ブレーキと液圧的に互いに並列に接触している。
【0007】
前記公知のパワーブレーキ装置は種々の作動モードで作動できる。第1の作動モード(通常作動)では、上述したようなブレーキ圧を第1次または第1のブレーキ圧発生器によって提供し、必要な場合には第2次または第2の圧力発生器によって車輪個別に調整する。
【0008】
パワーブレーキ装置の第2の作動モード(液圧フォールバックレベル)では、第1のアッセンブリによる圧力発生が阻害されており、引き続き機能できる第2次の圧力発生器を使用することで、車輪ブレーキをブレーキ圧で付勢する。したがって、第2のアッセンブリは、上述の車輪個別のブレーキ圧調整に加えて、パワーブレーキ装置を第1のアッセンブリにありうる障害から防護するために設けられている。圧力発生時に冗長性が付与されるので、このパワーブレーキ装置は自律走行可能または自動操縦走行可能な自動車での使用に適している。
【0009】
通常条件の下で第2のアッセンブリが作動していることはまれにしかないので、この第2のアッセンブリに機能障害が起こった場合にこれを適時に認識できず、したがって液圧フォールバックレベルを必要な場合に使用できない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018222488号明細書
【発明の概要】
【0011】
第2のアッセンブリの障害を適時に認識し、場合によってはドライバーに警告を発するために、請求項1は、液圧フォールバックレベルの可用性を、したがって第2のアッセンブリの機能性を、その第2次または第2の圧力発生器を用いて、パワーブレーキ装置の通常作動中に、安全上の理由から規則的な間隔でチェックすることを提案する。個々のチェックサイクルの間のタイムインターバルは任意に設定可能であり、たとえばパワーブレーキ装置に生じた負荷に依存して変えることができる。
【0012】
提案した方法は、ドライバーの関与なしに、すなわちドライバーから切り離して実施され、第1のアッセンブリの、特に第1次の圧力発生器の正常な機能が万一不調であっても、車両を確実に停止のために減速させることができることを保証する。その際、この不調がたとえば圧力発生器での機械的な原因によるものなのか、たとえばこの圧力発生器の駆動部での電気的な原因によるものなのか、および/または、前記駆動部の起動における電子的な原因によるものなのかは問題でない。
【0013】
従属項により、提案したこのチェック方法の有利な更なる構成が請求されている。
【0014】
請求項2は、たとえば、通常作動中に制動要望がある場合に第1次の圧力発生器の駆動部を電子制御器により抑止し、その代わりに第2次の圧力発生器の駆動部を電気起動させることを提案する。換言すれば、制動過程が選択された場合に、ブレーキ圧を通常のように第1次の圧力発生器によって発生させずに、第2次の圧力発生器によって発生させることで、これを介してその機能性を検査する。
【0015】
第2次の圧力発生器によるブレーキ圧増圧が予想通りに行われるならば、すなわちブレーキ圧が予想通りに増圧して、第2次の圧力発生器の電気起動の開始から予想されるタイムスパン内に所望のブレーキ圧に到達するならば、液圧フォールバックレベルは正常な状態にあるということから出発することができる。その後、請求項2に記載の制動過程に続く制動過程は、標準どおりに、再び第1次の圧力発生器を用いて実施することができる。
【0016】
これとは異なり、請求項3に記載の方法により提案されるのは、制動要望がない場合に第2次のブレーキ圧発生器を電気起動させ、遅くとも第2次の圧力発生器のこの電気起動と同時に、この第2次のブレーキ圧発生器と接触している車輪ブレーキとの間の液圧結合を中断させることである。このために、有利には、第2のアッセンブリの弁機構を使用することができる。
【0017】
したがって、この方法では、車輪ブレーキ内でのブレーキ圧増圧は行われず、よって車両の制動過程は行われない。パワーブレーキ装置の、液圧的に見て第2次の圧力発生器と車輪ブレーキとの間にある領域のみが、ブレーキ圧で付勢されている。
【0018】
この領域での増圧は、たとえば、もともと設けられているパワーブレーキ装置のブレーキ圧調整用のセンサにより検知して評価できる。制動事象が要求されない限りは、請求項3に記載の方法は同様に車両の通常の走行動作の間に実施することができる。
【0019】
請求項3に記載の方法の特別な利点は、第2次の圧力発生器の始動に伴って既存の走行音および環境音により発生する騒音を乗員が不快に感じないこと、或いは、理想的には、チェック方法の進行に乗員が気づかないことである。
【0020】
請求項4は、車両が停止した場合に方法を実施することを提案する。その際、請求項3に記載の方法とは異なり、車輪ブレーキもブレーキ圧で付勢される。この場合も、ブレーキ圧増圧の過程を監視し、評価し得るが、このために第2次の圧力発生器と車輪ブレーキとの結合を中断させる必要はない。したがってこの方法は、パワーブレーキ装置の電気起動可能なわずかな数量のアクチュエータのみが操作され得ること、または、これによりこの方法を実施するための電力がわずかで済むことを特徴としている。
【0021】
車両は、通常の走行動作での停止過程の後、または、駐車した場合、或いは、原動機を切った場合、停止している。すなわち、請求項4に記載の方法は、必ずしも車両駆動部が作動していること、または、ドライバーがいることを前提としていない。
【0022】
請求項5により、液圧フォールバックレベルの可用性を判断するための1つの可能な判断基準として、第2次の圧力発生器によって発生したブレーキ圧(実測ブレーキ圧)を、電子制御器内にファイルされているこのブレーキ圧に対する制限値(目標ブレーキ圧)と比較することが提案される。発生したブレーキ圧がこの制限値と同じ大きさか、より大きい場合に、液圧フォールバックレベルの可用性がある。すでに述べたように、圧力検知は、もともとパワーブレーキ装置内にあるブレーキ圧調整用センサ装置を用いて実施でき、その結果付加的な部品コストは生じない。
【0023】
請求項6は、これとは択一的に、発生した圧力の代わりに、ブレーキ圧増圧中の駆動部の電力消費量を第2次の圧力発生器により評価することを提案する。というのは、電力消費量は増圧と比例関係にあるからである。第2次の圧力発生器の駆動部の電力消費量は、駆動部へ流れる電流の強さを測定することにより、パワーブレーキ装置の電子制御器によって検知できる(請求項7)。
【0024】
本発明の他の利点または有利な更なる構成は、必要な場合は本発明の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明を、図面を用いた以下の説明で詳細に述べる。このために図面はいくつかの図を含んでいる。
【
図1A】本発明の基礎になっているパワーブレーキ装置の液圧配置図である。
【
図1B】本発明の基礎になっているパワーブレーキ装置の液圧配置図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のフローチャートである。
【
図3】本発明の第2実施形態のフローチャートである。
【
図4】本発明の第3実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、液圧回路図記号とその相互液圧結合とを用いて、本発明の基礎になっているパワーブレーキ装置の基本構成およびレイアウトを示している。このパワーブレーキ装置の詳細に関しては独国特許出願公開第102018222488号明細書における開示を指摘する。以下の説明は、本発明の理解に必要な事項にもう一度立ち入る。
【0027】
基礎になっているパワーブレーキ装置(10)は、冒頭で述べたように2つのアッセンブリ(12;14)に区分され、これらのアッセンブリはたとえば構造的に互いに切り離して形成され、且つ液圧的に互いに接触している。両アッセンブリ(12;14)は液圧的に見て並列に接続され、たとえばパワーブレーキ装置(10)の4つの車輪ブレーキ(16)に圧力媒体をブレーキ圧のもとで供給する。これら4つの車輪ブレーキのそれぞれ2つは、パワーブレーキ装置(10)の全部で2つのブレーキ回路のうちの1つのブレーキ回路の中にまとめられている。
【0028】
第1のアッセンブリ(12)はとりわけ操作要素(18)を含み、操作要素を介して自動車のドライバーによって制動要望を与えることができる。操作要素(18)はペダルとして図示されているが、ハンドレバーであってもよい。さらに、第1のアッセンブリ(12)は、電気起動可能な駆動部(22)によって操作可能な第1次の圧力発生器(20)を含んでいる。電気起動は電子制御器(24)によって決定され、電子制御器は、制動要望に対応する起動信号を検出して、第1次の圧力発生器(20)の駆動部(22)に転送する。それに基づいて、駆動された圧力発生器(20)はパワーブレーキ装置(10)の車輪ブレーキ(16)に圧力媒体を同じブレーキ圧で供給する。
【0029】
第1のアッセンブリ(12)に液圧的に並列に接続され、車輪ブレーキ(16)と接触している第2のアッセンブリ(14)は、第2のまたは第2次の圧力発生器(30)を備えている。第2次の圧力発生器(30)およびその駆動部(32)以外に、第2のアッセンブリ(14)は、パワーブレーキ装置(10)を制御するための複数の方向制御弁から成る弁機構(34)を含んでいる。これらの方向制御弁は、第2次の圧力発生器(30)の駆動部(32)と同様に電気起動可能である。第2のアッセンブリ(14)の課題は、ブレーキ圧を車輪個別にコントロールし、その際に車輪ブレーキ(16)に付設されている車輪において現時点で支配的であるスリップ挙動に適合させることである。これに対応する、第2次の圧力発生器(30)の駆動部(32)および場合によっては弁機構(34)の方向制御弁の電気起動は、必要な場合に同様に電子制御器(24)によって決定されて行われる。
【0030】
このように構成されたパワーブレーキ装置(10)は、上述したような通常作動において作動可能であり、或いは、液圧フォールバックレベルにおいて作動可能である。液圧フォールバックレベルでは、第1のアッセンブリ(12)の圧力発生に障害があり、ブレーキ圧増圧は第2のアッセンブリ(14)の第2次の圧力発生器(30)の電気起動によって行われる。同時に、パワーブレーキ装置(10)を修復させるために、ドライバーへの警告が発せられる。
【0031】
したがって、第2のアッセンブリ(14)は液圧フォールバックレベルにおいてパワーブレーキ装置(10)の機能性を防護し、それ故安全上の理由から時折その機能性をチェックする必要がある。以下の図で、そのための方法を説明する。
【0032】
本発明の基礎になっている、電子的にスリップコントロール可能なパワーブレーキ装置(10)における液圧フォールバックレベルの可用性をチェックするための第1の方法を
図2が示している。この方法の前提は、パワーブレーキ装置(10)が通常作動モードにあり、それ故、このチェック方法の第1の方法ステップS1はその点についての問い合わせにある。
【0033】
問い合わせの結果が肯定的であれば、ステップS2で、現時点での制動必要性または制動要望があるかどうかを問い合わせる。これがあれば、電子制御器(24)により、制動要望に対応するブレーキ圧、および、これに対応する、第2次の圧力発生器(30)またはその駆動部(32)を起動するための起動信号を検出して、出力する(ステップ3)。同時に、通常作動時にブレーキ圧を発生させる第1次の圧力発生器(20)の駆動部(22)の電気起動を抑止する。
【0034】
その次のステップS4で、パワーブレーキ装置(10)内で行われているブレーキ圧増圧を電子制御器(24)によって検知する。そこでは、このために設けられているロジックがたとえば増圧の速度および/または一定のタイムスパンで達成された圧力レベルを評価する。制御器(24)内にファイルされている目標値との比較(ステップS5)の結果、ブレーキ圧増圧が予想通りに行われていれば、液圧フォールバックレベルの可用性はあると推定し、方法を終了させる。これに対し、ブレーキ圧増圧が予想に対応していなければ、液圧フォールバックレベルの障害があると推定し、たとえば音響方式および/または光学方式の警告信号をドライバーへ送る。
【0035】
ステップS1またはステップS2での問い合わせが否定的な結果に至れば、方法をその都度中止し、設定可能なタイムインターバルの経過後に最初から新たに実施する。
【0036】
【0037】
まず、この方法では、ステップS1bを実施して、通常作動であるかどうかの問い合わせを行う。
【0038】
通常作動である場合には、次のステップS2bで制動の必要性があるかどうかの問い合わせを行い、この方法は、
図2の方法とは異なり、制動要望がない場合にだけ続行する。いま、ステップS3bにより、パワーブレーキ装置(10)の第2次の圧力発生器(30)を操作し、同時にこの操作の開始とともに車輪ブレーキ(16)への圧力媒体結合を中断させる。このため、有利な態様では、第2のアッセンブリ(14)の弁機構(34)の弁を対応的に電気起動させることができる。その結果、第2次の圧力発生器(30)と車輪ブレーキ(16)の間にあるパワーブレーキ装置(10)の1つの領域だけがブレーキ圧で付勢されるが、しかし車輪ブレーキ(16)自体は付勢されない。したがって、車両の制動過程は行われない。
【0039】
ブレーキ圧増圧は、ステップS4bで再び電子制御器(24)によって検知して評価する。制御器(24)内にファイルされている目標値との比較の結果、ブレーキ圧増圧が予想に対応していれば、S5bで液圧フォールバックレベルの可用性があると推定し、方法を終了させる。これに対し、ブレーキ圧増圧が予想に対応していなければ、液圧フォールバックレベルの障害があると推定し、たとえば音響方式および/または光学方式の警告信号をドライバーへ送る。
【0040】
ステップS1bでの問い合わせが否定的な結果に至れば、或いは、ステップS2bでの問い合わせが肯定的な結果に至れば、方法をその都度中止し、設定可能なタイムインターバルの経過後に新たにスタートさせる。
【0041】
図4は、チェック方法の第2の択一的実施形態を説明する図で、そのフローチャートは
図2の方法のそれに対応している。
【0042】
この第2の択一的実施形態では、ステップS1cで、パワーブレーキ装置が通常作動であるかどうかの問い合わせを行う。イエスであれば、車両が停止状態にあるかどうかの問い合わせを行う。この方法は肯定的な応答の場合だけ続行させ、他の場合は中止させるか、或いは、後で改めてスタートさせる。
【0043】
その後、ステップS3cにより、電子制御器(24)によって第2次の圧力発生器(30)の駆動部の電気起動を行い、これと並行して、パワーブレーキ装置(10)内の増圧をそれに接続されている車輪ブレーキ(16)をも含めて行う。増圧の電子的検知と評価とは、ステップS4cで電子制御器(24)内で行う。ステップS4cとステップS5cは、上述したステップS4とステップS5、または、ステップS4bとステップS5bに対応している。
【0044】
もちろん、独立請求項で請求される本発明の基本思想から逸脱しなければ、説明した方法の変更または補完が考えられる。
【0045】
これに関連して指摘しておくと、説明したすべての態様において、パワーブレーキ装置(10)の液圧回路内での圧力測定を既存のブレーキ圧調整センサ装置を用いて実施することで、第2次の圧力発生器(30)による増圧を直接に検知して評価する。
【0046】
しかしながら、基本的には間接的な圧力検知も考えられる。このため、増圧時に第2次の圧力発生器(30)の駆動部(32)から入力される電力を関連付けることができる。この電力は、駆動部(32)へ流れる電流強さから導出でき、発生させたブレーキ圧に比例する関係がある。
【0047】
それぞれ説明したチェック方法は、時間間隔で反復される。その際、2つのチェックサイクルの間のタイムインターバルは任意に設定可能であり、たとえばその間に行われるパワーブレーキ装置の負荷に依存して変化させることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 パワーブレーキ装置
12 第1のアッセンブリ
14 第2のアッセンブリ
16 車輪ブレーキ
20 第1または第1次の圧力発生器
22 第1または第1次の圧力発生器の駆動部
24 電子制御器
30 第2または第2次の圧力発生器
32 第2または第2次の圧力発生器の駆動部
34 弁機構
【国際調査報告】