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特表2023-539122コンパクトディスクスタック型サイクロン分離器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】コンパクトディスクスタック型サイクロン分離器
(51)【国際特許分類】
   B04C 3/00 20060101AFI20230906BHJP
   B04C 3/06 20060101ALI20230906BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20230906BHJP
   B04C 5/26 20060101ALI20230906BHJP
   B04C 5/28 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B04C3/00 Z
B04C3/06
B04C5/04
B04C5/26
B04C5/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512126
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 IB2021062284
(87)【国際公開番号】W WO2022144739
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】2001007538
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523055983
【氏名又は名称】ヤオヴァパンクル,ルクスナラ
【氏名又は名称原語表記】Yaovaphankul,Luxnara
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤオヴァパンクル,ルクスナラ
【テーマコード(参考)】
4D053
【Fターム(参考)】
4D053AA01
4D053AA03
4D053AB01
4D053AB04
4D053BA01
4D053BA04
4D053BA07
4D053BB02
4D053BB04
4D053BC01
4D053BD01
4D053BD04
4D053CA05
4D053CA22
4D053CB02
4D053CC01
4D053CD01
(57)【要約】
本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器は、流体吸入口と、層状旋回流を発生させる強制渦発生器と、円錐形渦発生チャンバと、上流側開口端部および下流側開口端部を有する軸方向積層コーンとを備え、各コーンは、互いに離間して取り付けられて、コーン間に細い隙間を形成して表面沈降領域を増大させる。より大きい、またはより高比重の粒子を含む流体(重相流体)は、より大きな遠心力を受け、押し出されて渦の外側周縁部を流れ、コーンの内壁に沿うように流れる。旋回して積層コーンに至ると、押し出されて積層コーンの内壁に沿うように流れ、コーン間の細い隙間を通って下方に旋回しながら流れる。より小さい、またはより低比重の粒子を含む流体(軽相流体)は、より小さな遠心力を受け、渦の内側周縁部を流れ、旋回したまま次のコーンまで流れる。この分離プロセスは、軸方向積層コーンの数に応じて繰り返し行われる。分離された重相流体は、積層コーンの底部開口端部に位置する重相流体用の収集チャネルで集められ、重相流体の吐出口を通して除去されるが、軽相流体の吐出口は、積層コーンの最後のコーンの開口端部にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吸入口と、層状旋回流を発生させる強制渦発生器と、円錐形渦発生チャンバ(5)と、上流側開口端部および下流側開口端部を有する軸方向積層コーン(21…n)であり、各コーンが互いに離間して取り付けられて、コーン間に細い隙間(10…n)を形成して表面沈降領域を増大させる、軸方向積層コーン(21…n)と、より大きい、またはより高比重の粒子を含む流体(重相流体)用の収集チャネル(25)と、重相流体の吐出口(36)と、より小さい、またはより低比重の粒子を含む流体(軽相流体)用の吐出口(34)と、を備える、コンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項2】
流体吸入口(203)と、層状旋回流を発生させる強制渦発生器と、円錐形渦発生チャンバ(205)と、上流側開口端部および下流側開口端部を有する軸方向積層コーン(221…n)であり、各コーンが互いに離間して取り付けられて、コーン間に細い隙間(210…n)を形成して表面沈降領域を増大させる、軸方向積層コーン(221…n)と、重相流体用の収集チャネル(225)と、重相流体用の蓄積チャンバ(234)と、を備えるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器であって、軽相流体(微細汚染物質を含む)は、軽相流体の吸入口(240)を介して、流体分配チャンバ(242)内に、またコアンダ効果の原理を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを備える小型のサイクロン分離器(241)に導入され、渦を発生させるデバイスは、内部空洞(312)と、前記トランスミッションベースの周りに対称に設置された複数の貫通孔(313)と、各貫通孔の横に位置する貫通孔側縁部ブロック(314)とを有する倒立円錐形のトランスミッションベース(243)を含み、前記トランスミッションベースの前記内部空洞内に位置する内側貫通孔側縁部壁面は、前記貫通孔の噴出軸(a)に最も近い表面である前記トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面(315)であり、前記貫通孔(313)、前記貫通孔の前記噴出軸(a)、前記貫通孔側縁部ブロック(314)、および前記トランスミッションベースの前記内壁に向かって湾曲したいくつかの凸状湾曲縁部表面(315)は、前記トランスミッションベースの外壁および前記内壁の両方において前記トランスミッションベース(243)の周囲で対称に配置され、倒立円錐形である渦を発生させるためのサイクロンコーンの内部空洞(244)、重相流体の流体吐出口は、サイクロンの底部吐出口(246)に位置し、サイクロンの渦ファインダ(245)、前記渦ファインダの上側吐出口(248)に位置する軽相流体の流体吐出口、いくつかの小型のサイクロン分離器は、円錐形内部構造(231)と外部構造(233)の間の上側空間において、前記円錐形内部構造(231)の上側部分の周りに対称に設置され、前記上側空間は、サイクロンコーンの上部に、前記円錐形内部構造と前記外部構造の間の前記空間を重相流体を収集するための下側チャンバ(235)と軽相流体を集めるための上側チャンバ(250)とに分割する上側仕切壁(219)を有し、前記小型のサイクロン分離器から出る清浄な分離された流体または前記軽相流体は、集められ、吐出口(251)を通して取り出される、コンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項3】
流体分配チャンバの外壁の接線方向吸入口(3)と、流体分配チャンバ(4)と、円錐形渦発生チャンバ(5)の一部であるトランスミッションベースの内部空洞(12)中に流体を案内する貫通孔(13)、貫通孔側縁部ブロック(14)、およびトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面(15)を含むトランスミッションベース(11)と、を備え、前記表面は、前記貫通孔の噴出軸(a)に最も近い表面であり、前記貫通孔(13)、前記貫通孔側縁部ブロック(14)、および前記トランスミッションベースの前記内壁に向かって湾曲した前記凸状湾曲縁部表面(15)は、前記外壁および前記内壁の両方において前記トランスミッションベースの周囲で対称に配置される、コアンダ効果の原理を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを有する請求項1に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項4】
前記流体を流体分配チャンバ(104)中に案内して、円錐形渦発生チャンバ(105)の一部であるトランスミッションベースの内部空洞(12)中に前記流体を案内する貫通孔(13)、貫通孔側縁部ブロック(14)、およびトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面(15)を含むトランスミッションベース(111)中に分配する軸方向流体吸入口(103)を備え、前記表面は、前記貫通孔の噴出軸(a)に最も近い表面であり、前記貫通孔(13)、前記貫通孔側縁部ブロック(14’)、および前記トランスミッションベースの前記内壁に向かって湾曲した前記凸状湾曲縁部表面(15)は、前記外壁および前記内壁の両方において前記トランスミッションベースの周囲で対称に配置される、コアンダ効果の原理を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを有する請求項1および2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項5】
前記渦発生チャンバの前の前記流体吸入口内に軸方向に設置された案内羽根を備え、前記複数の案内羽根は、層状旋回流で強制渦を発生させることができる方向および角度で螺旋状になっている、層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを有する請求項1および2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項6】
前記渦発生チャンバの前の前記流体吸入口内に軸方向に設置されたインペラを備え、前記複数のインペラのブレードは、層状旋回流で強制渦を発生させることができる方向および角度で螺旋状になっている、層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを有する請求項1および2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項7】
前記積層コーンの前記下流側開口端部は、前記コーンの上流側開口端部より小さく、前記積層コーンの内部に円錐形空洞チャンバが形成されて、前記流体を、前記コーン間の全ての前記細い隙間を通って下方に旋回するように分配するようになっている、
請求項1および2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項8】
前記積層コーンのコーン壁面は、中実な壁面である、請求項1および2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項9】
前記積層コーンは、断面が三角形のウェッジワイヤであり、ワイヤの平坦側面が内側に向いてコーンの内壁(22’)として機能するようにコーン構造に長手方向に沿って接着されたウェッジワイヤでその壁面が覆われたコアンダスクリーンコーン(21’)であり、前記ワイヤの三角形側は、外側に向いてコーンの外壁(23’)として機能し、前記ウェッジワイヤは、2本の隣接するウェッジワイヤ間に細い隙間を残して前記コーンの周りに取り付けられ、前記コーンの周縁の曲率により、次のウェッジワイヤの平坦側面は、直前のウェッジワイヤの平坦側面に対して立ち上がり角を有する、請求項1および2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項10】
重相流体用の蓄積チャンバの上側部分に、重相流体を前記分離器から放出する前に濾過するために外部構造(33)の壁面上にフィルタスクリーンまたはフィルタ要素を備えた吐出口が設置される、請求項1に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項11】
軽相流体用の吐出口に、直線状の吐出口を閉止して管の側面に側方吐出口を開くキャップシール401を備えた丸形管が設置される、請求項1および2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項12】
重相流体用の吐出口(246’)である小型のサイクロン分離器(241’)の底部吐出口の中心には、サイクロンコーンの底部吐出口(252’)の直径より小さい直径を有する円錐形尖体(246’)が、逆旋回流を補助するために設置される、請求項2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項13】
流体吸入口(240)と、流体分配チャンバ(242)と、円錐形または円筒形のトランスミッションベース(243)と、を備え、前記円錐形または円筒形のトランスミッションベース(243)は、内部空洞(312)と、前記トランスミッションベース(243)の周りに対称に設置された複数の貫通孔(313)と、貫通孔側縁部ブロック(314)とを備え、前記貫通孔側縁部ブロックの前記内部空洞内の縁部表面は、前記貫通孔の噴出軸(a)に最も近い表面である前記トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面(315)であり、前記トランスミッションベースの前記内壁に向かって湾曲したいくつかの凸状湾曲縁部表面と、前記貫通孔とは、前記トランスミッションベースの前記内壁の周りで対称に配置され、前記トランスミッションベースの前記内壁(312)に隣接して、倒立円錐形の渦発生チャンバ(244)があり、前記コーンの端部には、全ての貫通孔の吸入口の総断面積より小さい断面積を有する重相流体の吐出口であるサイクロンコーンの底部吐出口(246)があり、前記コーンの反対側には、前記流体分配チャンバおよび前記渦発生チャンバを覆う上側カバー(249)があり、サイクロンの前記上側カバーには、軽相流体の吐出口(248)として機能する、両方の開口端部が前記コーンの中心に位置する円筒管である渦ファインダ(245)がある、コアンダ効果の原理を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを有するサイクロン流体分離器。
【請求項14】
請求項3に記載の前記分離器は、分離効率を高めるために、後続の渦発生チャンバの開口端部が直前の分離器(CDSCS I)の軽相流体の流体吐出口に接続されるように請求項3に記載の分離器を後続の分離器に接続することによって、複数セットを互いに接続することができ、流体ポンプを使用して流体を吸入口(503)を通して第2の分離器(CDSCS II)内に注入して、旋回速度を前記直前の分離器の旋回より高くなるように加速し、前記直前の分離器からの旋回する流体をより高い速度に加速し、より大きな遠心力を発生させて分離効率を高め、前記第2の分離器から分離される重相流体は、吐出口(536)から第2の蓄積部(蓄積部II)内に除去され、前記蓄積部内の流体は、継続的に送り返されて前記旋回を加速する、請求項3に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項15】
サイクロン分離器の沈殿速度を高めるデバイスであって、上流側開口端部および下流側開口端部を有する積層平頭コーン(21)を備え、各コーンは、コーン間に細い隙間(10)、(23…n)を形成して表面沈降領域を増大させるように配置され、前記積層コーンの内部空洞は、渦発生チャンバと前記サイクロン分離器の軽相流体用の流体吐出口との間で軸方向に接続され、前記積層コーンは、重相流体の流体収集のためのチャネル(25)としてコーンカバーと前記積層コーンとの間に隙間を残してコーンカバー(31)の内部に設置され、前記コーンカバーは、重相流体用の吐出口(32)を含み、軽相流体用の流体吐出口(34)は、最後の積層コーンの下流側開口端部に位置する、サイクロン分離器の沈殿速度を高めるデバイス。
【請求項16】
軸方向流体吸入口(203)を含む前記分離器は、複数使用して、後続の渦発生チャンバの上流側開口端部が直前の分離器の下流側開口端部に接続されるように直前の分離器に接続することによって互いに接続して分離効率を高めることができ、前記接続される分離器の流体吸入口は、前記直前の分離器の軽相流体の吐出口(251)に接続され、本請求項に記載の分離器は、分離器の下流側吐出口に設置された流体を吸引するためのインペラを使用する分離器であることが好ましい、コアンダ効果の原理を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを有する請求項2に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【請求項17】
前記積層コーンは、中実壁面コーンまたはコアンダスクリーンコーン21’であり、各積層コーンの底部縁部は、積層コーン31、231を覆うための内部構造によって完全に覆われ、各積層コーンの前記底部縁部には、重相流体が重相流体用の収集チャンバ35、234に向かって下方に流れることを可能にし、軽相流体が積層コーン間の次の隙間に向かって上方に流れることを可能にする、重相流体用のチャネルとして機能する少なくとも1つの開口または孔があり、前記積層コーンの底部縁部の開口の総断面積は、軽相流体に対する重相流体の適切な流れ分配比により、最初のグループの積層コーンの間の隙間から重相流体用の収集チャネル25、225を通った後に最後のグループの積層コーンの間の隙間を通って軽相流体吐出口34に流れる、または小型のサイクロンの流体吸入口240に旋回して入る短絡流を生じることなく、積層コーン間の全ての隙間に旋回流を分配することが可能になるように決定される、請求項1、2、3、4、5、6のいずれか一項に記載のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトディスクスタック型サイクロン分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクロン分離器は、百年以上使用されている。過去20年の間に、サイクロン分離器は、例えば米国特許第4373228(A)号による真空掃除機などの真空掃除機のように家庭でよく見られる器具として導入され、広く使用されている。これは、サイクロン分離器が、布袋を使用する従来の真空掃除機とは異なりメンテナンスが容易であり、集塵トレイを取り外して中身を空けるだけで済むからである。布袋は詰まりやすく、詰まると吸引および除塵の効率が急速に低下し、布袋を清掃するために取り外すと、塵が飛散して衛生的でなく、したがって健康にも影響を及ぼし、また、フィルタスクリーンを使用する場合には、定期的に交換する必要があり、不経済である。
【0003】
しかし、真空掃除機にサイクロン分離器を使用することには、依然として、掃除機を通過した空気を周囲に放出する前に、その空気に含まれる細塵を完全に分離することが不可能であるという欠点がある。それには、複数のサイクロンを複数の層にして配置する必要があり、その結果、大きくてかさばるサイクロン真空掃除機になる。米国特許出願公開第2006/0230724(A1)号および米国特許第9451859(B2)号による例が見られるが、サイクロン分離器は、サイクロン分離器の接線方向吸入口から旋回流を生じさせるので、細塵を分離する効率が低い。旋回流はその中心に向かって流れ、旋回流の流速は旋回流がその中心に向かって流れるにつれて増大し、この種の旋回流は、自由渦と呼ばれる。遠心力は渦の速度に比例するので、自由渦の遠心力は、渦の外周で小さく、渦の内周で大きい。したがって、より小さい、またはより低比重の粒子を含む流体(軽相流体)は、より遠心力の小さい場である渦の外周を循環し、より大きい、またはより高比重の粒子を含む流体(重相流体)は、渦の内周を循環する。渦がサイクロンの底部吐出口付近を流れると、逆渦が発生し、これが強制渦に変換される。逆渦が発生する点が、流体の分離点である。この点で、渦の最も外側の周縁部は、自由渦から生じる軽相流体である。それに続く周縁部は、重相流体であり、その最も内側の周縁部は、逆渦による強制渦から生じる軽相流体である。したがって、分離点においては、軽相流体および重相流体の両方が、サイクロンの底部吐出口から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4373228(A)号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0230724(A1)号
【特許文献3】米国特許第9451859(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のサイクロン流体分離器を真空掃除機に使用する際には、問題が発生する。すなわち、従来のサイクロン流体分離器は、細塵を完全に分離することができず、分離効率が低く、したがって、多数のサイクロン分離器が必要となり、その結果として大きくてかさばる真空掃除機になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器は、分離器に流体を供給するための吸入口と、流体分配チャンバと、層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスと、渦発生チャンバと、渦発生チャンバに長手軸方向に隣接して設置された上流側開口端部および下流側開口端部を有する積層平頭コーンであって、各コーンが互いに離間して取り付けられてコーン間に細い隙間を形成して表面沈降領域を増大させる積層平頭コーンと、積層コーンの底部開口に位置する重相流体用の流体収集チャネルであって、それに隣接して重相流体用の流体蓄積チャンバがある、重相流体用の流体収集チャネルと、分離器から重相流体を放出するための吐出口とを備え、最後の積層コーンの開口端部に、分離器から軽相流体を除去するための吐出口がある。
【0007】
流体は、上流側吸入口を介した圧力、または下流側吐出口を介した吸引によって、あるいはその両方を同時に使用して、分離器の軸方向吸入口または接線方向吸入口を通って本発明の分離器に入る。
【0008】
流体が本発明の分離器に入ると、その流体は、流体分配チャンバに収集され、渦発生デバイスに分配される。渦発生デバイスは、トランスミッションベースの周りに対称に配置された複数の貫通孔を有する構成の内部空洞を有する円錐形または円筒形のトランスミッションベースである。貫通孔の横には、貫通孔側縁部ブロックがあり、貫通孔の入口には、流体を貫通孔内に案内するための貫通孔側縁部ブロックの壁面があり、トランスミッションベースの内部空洞の内部の貫通孔の吐出口には、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面の形状をした貫通孔側縁部ブロックの壁面がある。貫通孔の入口の貫通孔側縁部ブロックの壁面の反対側は、貫通孔に向けられた直線状縁部表面があり、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面は、貫通孔の噴出軸に最も近い表面となる。特定の圧力および/または特定の吸引力を有する流体が貫通孔を通って流れると、その流体は、コアンダ効果(噴出する流体は、その壁面が貫通孔の噴出軸の噴出流線から逸脱していても、最も近い壁面に向かって流れ、その壁面に沿って流れる傾向を有する。その結果として、その領域は圧力が低くなり、それにより周囲の流体を内向きに流れ、次いでその壁面に沿うように流れるようにする)によって偏向されて、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面に沿って流れ、渦発生チャンバの一部であるトランスミッションベースの内部空洞内の流体を内向きに流れ、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面に沿って流れるように誘導する。トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面により、流体は、トランスミッションベースの内壁に沿うように流れる。トランスミッションベースの周りの外壁および内壁の両方に対する貫通孔の対称的配置、ならびに凸状湾曲縁部表面およびトランスミッションベースの内壁の周りの貫通孔の噴出軸の対称的配置により、各凸状湾曲表面の流れは、互いに中継するように流れて、内部空洞の内壁上の流れに、空洞内の旋回流を生じさせる。コアンダ効果により、それは層状旋回流を生じさせる。動的力は、凸状湾曲縁部表面とトランスミッションベースの内壁の周縁部との接点で最高であるので、渦の速度は、渦の最も外側の周縁部である凸状湾曲縁部表面で最高となり、渦の速度は、流れが渦の中心に近づくにつれて次第に減少する。遠心力は渦の速度に比例して変化する。強制渦によって発生する遠心加速度勾配プロフィルにおいて、遠心力は、最も外側の周縁部で最高であり、その後、渦の中心に近づくにつれて次第に低下する。遠心力の影響下にある流体粒子分布では、重相流体は、より大きな遠心力を受け、押し出されて、流れの外側周縁部を流れるが、軽相流体は、より小さな遠心力を受け、内側周縁部を循環する。本発明による分離器で生じる渦は層状旋回流であるので、粒子は、生成される遠心加速度の勾配プロフィルに対応して、その比重または形態学的大きさに応じて、すなわち大きいか小さいかに応じて、複数の分配層に容易に分離される。
【0009】
渦発生チャンバまたは渦発生チャンバの一部分は、円錐形である。その円周は円錐の軸方向の長さに沿って連続的に短くなるので、旋回速度の加速度および遠心力は軸方向に沿って増大する。流体流は、渦発生デバイスにより層状旋回流で強制渦を形成し、渦発生チャンバ内で旋回するときに、旋回を加速させ、遠心力を増大させる。遠心力が増大すると、明白な流体分離層が生じる。重相流体は、渦の外側周縁部に分離され、軽相流体は、渦の内側周縁部を流れる。円錐形の渦発生チャンバに隣接して、上流側開口端部および下流側開口端部を有する積層平頭コーンがある。各コーンは、コーンを分離してコーン間に細い隙間を形成して表面沈降領域を増大させる突起を有する。流体が、渦発生チャンバのコーンと積層コーンの間の細い隙間を通って渦発生チャンバから最初の積層コーンに流れるとき、次のコーンの方が半径が長いので、渦の円周が突然大きくなる。重相流体からなる渦の外側層は、次のコーンの内壁に押し付けられ、そのコーンの底部吐出口を通って下方に旋回して、重相流体用の収集チャネルに流れる。これは、積層コーンの上流側開口端部の下の隙間であり、コーンカバーと積層コーンとの間の隙間である。軽相流体は、最初は内側周縁部を旋回し、次いで渦の外側周縁部を旋回し、この渦は、コーンの内壁の次の部分に沿って旋回し、コーンの上側開口端部を通って旋回し続ける。重相流体(全ての旋回する流体と比較して)は、最初のコーンの内壁を旋回して通過するときに、押し出されて、次のコーンの内壁に沿って旋回するようになる。このプロセスは、上述のように繰り返され、最後のコーンの下流側開口端部に到達するまで、積層コーンの数に応じて複数回繰り返される。これにより、流体が旋回しながら通る全てのコーンから重相流体を分離し、残った流体は、より小さい、またはより低比重の粒子の流体となり、意図した軽相流体が得られる。
【0010】
積層コーンは、上流側のコーンの開口端部よりも下流側のコーンの開口端部が小さくなるように設計されることがある。積層コーンの開口端部は、軸の長手方向の長さに沿って最後のコーンまで積層されるにつれて次第に小さくなり、積層コーンの内部空洞は円錐形になっている。これにより、コーン間の全ての細い隙間を通して流体を分配することができる。重相流体がコーン間の隙間を通って旋回するとき、この流体は、さらに、積層コーンを覆うコーンの内部の構造の内壁に沿って旋回することになる。積層コーンの壁面、および積層コーンを覆うコーンの内壁に沿って流れる流体の一部分は、円錐形または円筒形の外部構造と積層コーンを覆う円錐形内部構造との間の隙間である重相流体の蓄積チャンバに沈殿する。流体蓄積チャンバ内の重相流体は、必要に応じて、または継続的に解放することができる弁を備えることもある吐出口を通して放出することができる。
【0011】
上側天井または側壁上の重相流体用の流体蓄積チャンバの壁面は、重相流体(汚染されている)を分離器から放出する前に濾過するために外部構造の壁面上にフィルタスクリーンを備える吐出口を備えることができる。清浄流体吐出口とも呼ばれる軽相流体用の吐出口、または最後の積層コーンの開口端部は、直線状の端部吐出口を閉止して側方吐出口を開いて軸方向流を減少させ、側方吐出口から流出するように偏向させて、渦発生チャンバ内の旋回流を安定させてより高い分離効率が得られるようにするキャップシールを備えた丸形管を備えることがある。
【0012】
分離器内の積層コーンは、中実壁面コーンであっても、コアンダスクリーンコーンであってもよい。コアンダスクリーンコーンは、ウェッジワイヤで覆われた壁面を有する円錐形構造を備える。ウェッジワイヤは、三角形の断面を有し、各ウェッジワイヤの間に細い隙間を空けて長手方向に沿ってコーン構造に固定される。ウェッジワイヤ間の隙間空間は、ワイヤに沿って同じである。ウェッジワイヤは、平坦側面を内向きにして内壁になるようにしてコーンの周りに配置され、三角形側は、外側に向いてコーンの外壁になる。コーンの外周の曲率により、次のウェッジワイヤの平坦側面は、(旋回方向に沿って)その前のウェッジワイヤの平坦側面に対して立ち上がり角をなし、前のウェッジワイヤの平坦側面からの直線状の流線が次のウェッジワイヤの三角形側の壁面に向かって流れるようにする。遠心力下でより大きな遠心力を受けながら渦の外側周縁部を旋回する重相流体は、ウェッジワイヤの平坦表面に沿うように流れ、次いでコアンダ効果によって次のウェッジワイヤの三角形側の壁面に向かってまっすぐに流れ、その後、コアンダスクリーンコーンから流出して現在のコーンと次のコーンの間の隙間に流入し、重相流体用の流体収集チャネルに流入する。軽相流体は、より小さな遠心力を受け、渦の内側を流れ、前のウェッジワイヤの平坦表面から次のウェッジワイヤの平坦表面に流れ、次いでコアンダスクリーンコーンの内側を流れ、次いで軸方向に旋回してコアンダスクリーンコーンの次の部分に流れる。コーン間の隙間でコーン内を旋回する軽相流体は、新たに入ってくる流体に巻き込まれて、下流側開口端部に戻る。汚染物質分離とも呼ばれる、軽相流体から重相流体を分離するプロセスは、積層されたコアンダスクリーンコーンの全ての層で繰り返し行われる。コーンの外壁におけるウェッジワイヤ間の隙間はコーンの内壁におけるウェッジワイヤの隙間より大きいので、コアンダスクリーンは詰まりにくい。
【0013】
本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器は、沈殿せずに残った重相流体を、重相流体用の蓄積チャンバの上方にある吐出口で分離器から放出する前に濾過するためのフィルタスクリーンまたはフィルタ要素を必要としない別のバージョンに発展させることができる。上記の吐出口を省略し、最後の積層コーンの下流側吐出口に元々ある軽相流体の吐出口を閉止して、円錐形内部構造の下側縁部より上方に仕切壁を形成して重相流体用の蓄積領域を分離し、また外部構造を円錐形内部構造より高くなるように拡大することにより、上記の改造によって生じる全ての空間が、事前スクリーニングされた流体を後に分離するための空間となる。
【0014】
事前スクリーニングされた流体を後に分離するための空間は、重相流体用の収集チャンバからの流体吸入口を備える、積層コーンを覆う内部構造の周囲に対称に取り付けられたいくつかの小型のサイクロン分離器からなる。この流体吸入口は、最後の積層コーンの底部開口端部より上方に位置する。これは、沈殿していない流体を、各小形のサイクロン分離器につながる流体分配チャンバに導入するためである。小型のサイクロン分離器は、倒立円錐形を有する。小型のサイクロン分離器は、コアンダ効果の原理を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスと、サイクロンコーンの底部にある分離された重相流体または汚染流体用の流体吐出口とからなる。除去された粒子は、蓄積チャンバに蓄積され、分離された粒子を分離器から放出するための弁を有することがある吐出口があり、渦ファインダが、サイクロンコーンの最上部の中心にあり、これが、浄化された流体がサイクロンから流出するための軽相流体吐出口であり、これは、浄化された流体を分離器の各小型のサイクロンから除去するための、外部構造の最上部の中心にある共通の吐出口である。
【0015】
小型のサイクロン分離器の渦発生デバイスは、コアンダ効果の原理を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスであり、そのトランスミッションベースは、内部空洞を有する倒立円錐形または円筒形であり、好ましくは倒立円錐形である。渦発生デバイスのトランスミッションベースの周りに、外部流体をトランスミッションベースの内部空洞に案内するための複数の貫通孔が対称に設置される。貫通孔の横には、貫通孔側縁部ブロックがある。内部空洞内の貫通孔の吐出口の縁部の片側は、別の貫通孔側縁部表面と比較して貫通孔の噴出軸に最も近い表面である、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面であり、貫通孔の縁部および貫通孔は、渦発生デバイスのトランスミッションベースの内壁の周りに対称に設置される。
【0016】
流体が積層コーンから分離されるときに、重相流体は、積層コーンの壁面である表面沈降領域に沿うように旋回し、積層コーンを覆うコーンの内部構造壁面は、沈殿し、収集されて、下方の蓄積チャンバに蓄積される。沈殿しない軽相流体(または微細汚染物質を含む流体)は、流体収集チャネルより上方に流れる。この流体は、次いで、積層コーンを覆う内部円錐構造の周りに対称に設置された小型のサイクロンの流体分配チャンバにつながる吸入口に流入する。流体分配チャンバ内の流体は、渦発生デバイスのトランスミッションベースに分配される。トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面を有する貫通孔および貫通孔の噴出軸をコアンダプロフィルに従って配置することにより、流体は、偏向してトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面に沿って流れ、渦発生デバイスのチャンバの一部であるトランスミッションベースの内部空洞内の流体を、内向きに流れ、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面に沿うように流れるように誘導する。トランスミッションベースの周りの外壁および内壁の両方に対する複数の貫通孔の対称的配置、ならびに凸状湾曲縁部表面およびトランスミッションベースの内壁の周りの貫通孔の噴出軸の対称的配置により、流れる流体は、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面に沿うように流れ、互いに中継するように流れて、それにより層状旋回流で強制渦を発生させるチャンバの内壁上を流れる。動的エネルギーは、凸状湾曲縁部表面と渦発生チャンバの内壁の周縁部との接点で最高であるので、旋回流の速度は、渦の最も外側の周縁部である凸状湾曲縁部表面で最高となり、旋回流の速度は、動的エネルギーの減少に対応して、渦の中心に近づくにつれて次第に減少する。このような渦は、強制渦である。遠心力は、渦の速度に比例して変化する。強制渦によって遠心加速度勾配プロフィルが生じるので、遠心力は、最も外側の周縁部で最高であり、その後、遠心力下にある粒子分布に従って、渦の中心に近づくにつれて次第に低下する。すなわち、重相流体が、より大きな遠心力を受け、押し出されて、外側周縁部を流れる。より小さな遠心力を受ける軽相流体は、内側周縁部を流れ、本発明による小型のサイクロン分離器の渦発生デバイスによって発生する渦は、層状旋回流である。したがって、粒子は、遠心加速度勾配プロフィルに従って比重または大きさの分布層に分離されるので、容易に分離できる。小型のサイクロンは、直径が小さいので大きな渦速度を生じ、つまり大きな遠心力を生じ、またこの短いサイクロン半径により、粒子が容易に遠心分離されてサイクロンコーンの壁面に沿うように流れ、それにより遠心力による高い沈殿率を生み出すので、微細汚染物質の分離が非常に効率的になる。サイクロンの周縁部は長手方向に向かって次第に短くなるので、円錐形の渦発生チャンバ内を流れる渦の発生した大きな速度は、端部開口(下流側開口)までコーンに沿って次第に増大する。この端部開口は、流体に含まれる微細汚染物質とも呼ばれる重相流体の流体吐出口であり、この底部吐出口の断面積は、小型のサイクロン分離器の渦発生デバイスの貫通孔の総断面積より小さい。これは、流体流をサイクロン分離器に導入して、底部吐出口が放出できる量より多くの流体が入るようにして逆流を発生させるチャネルである。発生する渦は、強制渦であるので、重相流体(流体中の微細汚染物質とも呼ばれる)を有する流体は、底部吐出口において、分離器から微細汚染物質を除去するための弁を備える吐出口を有する重相流体(または流体中の微細汚染物質)用の蓄積チャンバ中に分離される。軽相流体(浄化流体とも呼ばれる)は、サイクロンコーンの最上部まで上方に旋回する。底部吐出口の中心には、旋回流の逆流を補助するために円錐形尖体を設置することができる。コーンの上側壁面の中心には、流体が巻き込まれて分離器から旋回して流出するようにすることができる渦ファインダを備える。渦ファインダの吐出口には、分離効率を高めるために、直線状の吐出口を塞いで側方吐出口を開いて、直線的な流れを阻止し、側方吐出口を通して流れを偏向させて、渦発生チャンバ内の渦を安定させる、キャップシールを備える丸形管を備えることもある。全ての小型のサイクロン分離器からの浄化流体は、軽相流体の収集チャネルに集まり、次いで軽相流体(または浄化流体)用の流体吐出口を通して吸引され、または押し出されて、本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器から放出される。
【0017】
本発明の目的は、真空掃除機、特に携帯型真空掃除機、エアコンディショナの空気フィルタまたは内燃機関の空気フィルタ、浄水器、あるいは様々な産業の流体分離器での使用に適した、高い分離効率および小型のサイズを有するサイクロン分離器を作製することである。本発明によるサイクロン分離器の渦発生デバイスは、層状旋回流で強制渦タイプの渦を発生させる。渦の速度は、渦の外周で最高であり、渦の中心に近づくにつれて低下する。遠心力は、渦の流速に比例して変化するので、発生した強制渦から得られる遠心加速度勾配プロフィルは、遠心力下の流体粒子の分布に対応する。すなわち、より大きな遠心力を受ける重相流体は、外側周縁部を循環し、より小さな遠心力を受ける軽相流体は、渦の内側周縁部を循環して、複数の分離層に明白に分離されるので容易に分離される。したがって、本発明による流体分離器の分離効率は、従来のサイクロン分離器より高い。従来のサイクロン流体分離器は、サイクロンの接線方向吸入口によって渦を生じさせて、自由渦タイプの渦を生じ、渦の中心に向かう旋回を生じ、渦の速度は次第に増大する。速度は、渦の中心で最高であり、これは、遠心力下の粒子の分布とは反対である。従来のサイクロン流体分離器の渦は、渦が逆に流れると強制渦タイプの渦に変わる。逆流点では、これは、流体の分離点となる。渦の最も外側の周縁部は、元の自由渦によって生じる軽相流体である。次の層は、重相流体の層である。その後、さらに次の層は、逆流の強制渦によって生じる軽相流体である。分離点において、最大層の小さな粒子とその後の層のより大きな粒子の両方が、サイクロンの底部吐出口を介して分離される。その結果として、塵を分離するために使用される、または真空掃除機で使用される従来のサイクロン流体分離器は、細塵も放出することになる。これにより、サイクロン流体分離器の分離効率が低くなる。本発明によるサイクロン流体分離器は、軸方向の強制渦流を生じることができるので、コーンを軸方向に積層して、表面沈降領域を増大させることができる。1つのコーンがサイクロン分離器と同等であり、したがって、複数積層することにより、表面沈降領域はかなり増大する。これは、軸に沿って層状に積層されたコーンによって、分離効率を大幅に高めるためである。このように、コーンは、限られた空間で複数層に積層することができる。したがって、本発明の積層コーンを備えたサイクロン分離器は、サイズが小型である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】コンパクトディスクスタック型サイクロン分離器を示す図である。
図2】接線方向流体吸入口を有する渦発生デバイスを示す図である。
図3】軸方向流体吸入口を有する渦発生デバイスを示す図である。
図4】渦発生デバイスのトランスミッションベースを示す図である。
図5】渦発生デバイスのトランスミッションベースの動作概略図である。
図6】速度勾配プロフィル/遠心加速度勾配プロフィルを示す強制渦の概略図である。
図7】渦発生チャンバに隣接して設置される積層コーンを示す図である。
図8】積層コーンを覆う円錐形内部構造を示す図である。
図9】サイクロン流体分離器の円錐形外部構造を示す図である。
図10】コアンダスクリーンコーンを示す図である。
図11】流体に含まれる細塵または微細な流体粒子を分離するための小型のサイクロン流体分離器を備えたコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器を示す図である。
図12】小型のサイクロン流体分離器を示す図である。
図13A】小型のサイクロン流体分離器の動作概略図である。
図13B】逆流を促進するために底部吐出口の中心に円錐形尖部を備えた小型のサイクロン流体分離器の動作概略図である。
図14】小型のサイクロン流体分離器の渦発生デバイスの円錐形トランスミッションベースをひっくり返して示す図である。
図15】小型のサイクロン分離器の渦発生デバイスのトランスミッションベースの動作概略図である。
図16】内部の構成要素を示す、流体に含まれる細塵または微細な流体粒子を分離するために小型のサイクロン流体分離器を有する積層コーンを備えたサイクロン流体分離器の3D画像を示す図である。
図17a】直線状の吐出口を遮断して側方吐出口を通して流れを偏向させるキャップシールを有する管端部を覆う丸形ボックスを示す図である。
図17b】直線状の吐出口を覆って側方吐出口を通して流れを偏向させる丸形ボックスを示す図である。
図18】コアンダ効果の原理を利用する、層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを有する積層コーンを備えたサイクロン流体分離器の接続概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器は、流体吸入口と、層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスと、円錐形渦発生チャンバと、上流側開口端部および下流側開口端部を有する積層平頭コーンであって、各積層コーンがコーンを分離してコーン間に細い隙間を形成して表面沈降領域を増大させる突起を有する、積層平頭コーンと、積層コーンの底部吐出口に位置する重相流体用の流体収集チャネルと、重相流体用の吐出口と、積層コーンの最後のコーンの下流側開口端部にある軽相流体用の吐出口とを備える。
【0020】
上記のコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器は、層状旋回流で強制渦を発生させるチャンバの前で軸方向流体吸入口に取り付けられた案内羽根またはインペラである渦発生デバイスと共に使用することができる。
【0021】
以下、コアンダ効果を利用する層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを使用する本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器について述べる。
【0022】
図1は、本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器を示している。このコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器は、分離器内に流体を案内する吸入口3と、流体分配チャンバ4を含む渦発生デバイス2と、トランスミッションベース11と、層状旋回流を生み出すコアンダ効果の原理を利用する渦発生デバイス5と、コーン10間に狭い隙間23…nを空けて各コーンを分離して表面沈降領域を増大するコーン壁面上の突起を有する、上流側開口端部および下流側開口端部を有する積層平頭コーン21…nと、重相流体用の流体収集チャネル25と、重相流体用の蓄積チャンバ35と、重相流体用の吐出口36と、軽相流体を放出する吐出口34と、を備える。
【0023】
図2は、本発明による分離器への流体の導入を示す図であり、流体は、分離器の接線方向吸入口3、または図3による分離器の軸方向吸入口103を介して入ることができる。流体は、上流側の圧力、または下流側吐出口の吸引力を用いて、あるいはその両方を同時に利用して、取り込むことができる。
【0024】
図1によれば、分離対象の流体が本発明による分離器1内に送り込まれると、その流体は、渦発生デバイス2の流体分配チャンバ4内に収集され、トランスミッションベース11内に分配される。
【0025】
図4によれば、この渦発生デバイスは、円錐形または円筒形のトランスミッションベース11と、トランスミッションベースの構成に対応する内部空洞12と、トランスミッションベース11の周りに対称に配置された複数の細い垂直方向の矩形の隙間を形成する貫通孔13とからなり、貫通孔13の横に、貫通孔側縁部ブロック14および貫通孔の入口の縁部壁面16がある。貫通孔13が内部空洞12に入るところでは、貫通孔側縁部ブロックの壁面は、トランスミッションベース15の内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面15となる。縁部壁面16の反対側の貫通孔側縁部壁面は、縁部壁面17である。縁部壁面16と縁部壁面17の間の隙間は、入口では広く開いており、その後貫通孔13のところで細くなって、流体が貫通孔13を通って集めやすくなるようになっている。貫通孔13は、縁部壁面16とは位置合わせされないが、図5によれば貫通孔の噴出軸aである縁部壁面17と位置合わせされる。
【0026】
図5によれば、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲する凸状湾曲縁部表面15は、貫通孔の出口付近で他の縁部壁面と比較して貫通孔の噴出軸に最も近い表面になるように配置される。特定の圧力および/または特定の吸引力を有する流体が貫通孔13内を流れると、その流体は、コアンダ効果によって偏向されて、破線bに沿ってトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面15に沿うように流れ、トランスミッションベース11の内部空洞12内の流体を、破線Aに沿って内向きに流れ、また破線bに沿ってトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面15に沿って流れるように誘導する。トランスミッションベース11の周囲の貫通孔の対称的な配置と、凸状湾曲縁部表面15およびトランスミッションベース11の内壁の周りの貫通孔の噴出軸aの対称的な配置とにより、各凸状湾曲縁部表面上の流体流は互いに中継するように流れて、コアンダ効果によって、破線Bに沿った、渦発生チャンバ5の一部であるトランスミッションベースの内壁の周面上の流体流を生み出して、層状旋回流を生じさせる。
【0027】
図6によれば、図6内の円周は図5の破線流Bであり、凸状湾曲縁部表面15が渦発生チャンバの内壁の周面に接触する点で動的エネルギーは最大になる。したがって、渦の速度は、図6では円周として示されている渦の最外周である凸状湾曲縁部表面15で最高になる。渦の速度は、渦が渦の中心に近づくにつれて、動的エネルギーの減衰に対応して次第に低下する。このような渦は、強制渦である。強制渦によって生じる遠心加速度の勾配プロフィルにおいて、遠心力は、図6の概略図に示すように、最も外側の周縁部で最高となり、渦の中心に近づくにつれて次第に低下する。遠心力下にある流体粒子分布では、重相流体は、より大きな遠心力を受け、外側周縁部に遠心分離され、一方、軽相流体は、より小さな遠心力を受けるので、内側周縁部を循環する。したがって、層状旋回流である本発明による渦発生デバイスによって発生される渦の結果として、粒子は、発生した遠心加速度勾配プロフィルに相関して、その比重または大きさに応じて、すなわち大きいか小さいかに応じて複数の分配層に分離されるので、容易に分離される。
【0028】
図1によれば、渦発生チャンバ5または渦発生チャンバの一部分は、平頭円錐形であり、下流側コーンの開口端部の円周は、上流側コーンの開口端部の円周より短く、これにより渦の加速度を生じさせ、渦発生チャンバ5の長手方向軸に沿って遠心力を増大させる。
【0029】
図1および図7によれば、円錐形渦発生チャンバ5に隣接して、上流側開口端部および下流側開口端部の両方を有する積層コーン21…nがある。各コーンは、各コーンを分離してコーン10の間に細い隙間23…nを形成して表面沈降領域を増大させる突起を有する。旋回流が、渦発生チャンバの開口端部7に隣接する最初の積層コーンに到達すると、その後のコーン21の直径が渦発生チャンバ5のコーンの開口端部の直径より大きいので、渦の外周が突然長くなる。重相流体を含む外周渦は、遠心分離されて次のコーン21の内壁9に沿って旋回し、そのコーンの底部の開口端部まで旋回しながら降下して、重相流体用の流体収集チャネル25に流入する。これは、積層コーンの底部開口端部にある隙間であり、それらは、積層コーンおよび積層コーンの底部開口端部を覆う図1および図8による円錐形内部構造31の間の空間である。渦の内周を旋回する軽相流体は、次のコーンの傾斜した内壁表面9に沿うように旋回することになる。この流体は、コーンの下流側開口端部24に向かって循環し続ける。流体の旋回が最初の積層コーンの内壁9を通過するとき、重相流体(全ての旋回流体と比較して)は、遠心分離されて次のコーンの内壁22に沿うことになる。上述の分離プロセスは、積層コーンの数に応じて数回繰り返され、この分離プロセスは、最初の積層コーンから、図9による外部構造の吐出口34と位置合わせされたチャネルである最後のコーンの下流側開口端部まで行われる。
【0030】
図1によれば、重相流体は、コーン10の間の隙間23…nから旋回して下方に向かい、その後、積層コーンを覆う内部コーン構造31の内壁に沿って流れる。この流体は、積層コーンの内壁および積層コーンを覆う円錐形内部構造31の内壁30に沿って旋回し、その流体の粒子の一部分は、円錐形内部構造31の底部縁部の吐出口32を通って、円錐形または円筒形の外部構造33と図8による積層コーンを覆う円錐形内部構造31との間の空間である重相流体用の蓄積チャンバ35に沈殿する。流体蓄積チャンバ内の重相流体は、吐出口36を介して放出することができ、適宜または継続的に流体を放出することができる弁37が設けられることもある。
【0031】
重相流体用の蓄積チャンバ内の沈降しない流体は、上方に向かって旋回して重相流体用の蓄積チャンバの上側部分に至る。この部分は、汚染された重相流体を分離器から放出する前に濾過するために、図9による外部構造33の壁面上にフィルタスクリーンを含む吐出口を備えることができる。
【0032】
図1および図17a、図17bによれば、軽相流体、すなわち無汚染の流体用の吐出口34には、分離効率を高めるために、直線状の吐出口を閉止して側方吐出口404を開け、直接流を遮断して偏向させて側方吐出口404を通して旋回させてチャンバ内の旋回流を維持するために、キャップシール401を備えた丸形管が設置されることがある。
【0033】
分離器内の積層コーンは、中実の壁面コーンであってもよいし、図10によるコアンダスクリーンコーンであってもよい。コアンダスクリーンコーン21’は、壁面としてウェッジワイヤで覆われ、ウェッジワイヤ間に細い隙間を有する円錐形構造からなり、ウェッジワイヤは、三角形の断面を有するワイヤであり、円錐形構造に長手方向に接着される。ウェッジワイヤ間の隙間は、ワイヤに沿って同じである。ウェッジワイヤは、平坦側面を内壁として内側に向けてコーンの周りに配置され、三角形の頂点側は、外側に向いてコーンの外壁となる。コーンの周りに配置されたウェッジワイヤは、コーンの円周の曲率を有し、次のウェッジワイヤの平坦側面は、その前のウェッジワイヤの平坦側面に対してw度の立ち上がり角を有し、実線の流線に示すように、その前のウェッジワイヤの平坦側面からまっすぐに次のウェッジワイヤの三角形の側壁に向かう流体流を生じる。コアンダ効果によって渦の外周を流れる重相流体は、ウェッジワイヤの平坦側面に沿って流れ、そのままその後のウェッジワイヤの三角形の側壁に流れ、次いでコアンダスクリーンから流出して、図1による次のコーンの間の隙間23に流入し、次いで旋回しながら重相流体用の収集チャネル25に入る。渦の内周を旋回する軽相流体は、コアンダスクリーンコーン内を旋回し、その後、その結果としてコアンダスクリーンコーンの次の部分に旋回しながら流れる。コーン間の隙間内で旋回する軽相流体は、逆に、上方に向かってコーンの下流側開口端部24まで旋回して流れ、新たに入ってくる旋回流体流に巻き込まれる。重相流体を軽相流体から分離する(汚染物質を除去するともいう)プロセスは、積層コーンの全ての層で行われる。外壁のウェッジワイヤ間の隙間が内壁のウェッジワイヤ間の隙間より大きいので、コアンダスクリーンは詰まりにくい。
【0034】
図18によれば、本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器(CDSCS)の分離効率は、コアンダ効果の原理を適用して渦発生チャンバの内壁において層状旋回流で強制渦を発生させるデバイスを使用する、本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器の多数のセットを接続することによって最適化することができる。特に、産業用途での流体分離プロセスの場合。分離対象の流体は、吸入口403から分離器に導入される。本発明による分離器(CDSCS I)から分離された後で、重相流体は、吐出口436を通して蓄積タンク1(蓄積部I)内に送られるが、軽相流体は、第1の分離器の軽相流体吐出口と第2の分離器(CDSCS II)の渦発生チャンバの上流側吸入口とを接続する円筒形連結管を通して次の分離器まで旋回し続け、第2の分離器(CDSCS II)の渦発生チャンバに流入する。渦は、加速用の流体および加速される流体の粘性によって加速される。加速用の流体は、第1の分離器1の渦発生デバイスによって生じる速度より高い速度の渦を発生させる圧力で吸入口503に注入される。分離された重相流体は、吐出口536から蓄積タンク2(蓄積部II)内に放出され、渦を加速するために吸入口503を通して継続的に戻される。この分離は、分離器1(CDSCS I)から入ってくる流体および蓄積タンク2(蓄積部II)に蓄積される加速用の流体の両方を用いて行われる。蓄積タンク2内の分離された流体の粒子サイズまたは比重が均一になると、分離された流体は、蓄積タンク2から放出される。
【0035】
分離器は、必要な数だけ接続することができる。渦の速度は、加速されて次第に増大するので、層ごとに増大する。発生する遠心力は、次第に大きくなる。したがって、非常に小さな粒子を有する流体を分離することができ、また、各層で流体を分離して、所望の粒子サイズを得ることもできる。
【0036】
図11によれば、本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン分離器は、重相流体用の蓄積チャンバ35の上方に位置する沈降しない流体用の吐出口が省略され、そのためフィルタの洗浄または交換が不要(メンテナンス不要)となる別のモデルに発展させることができる。本発明によるコンパクトディスクスタック型サイクロン201は、分離器内に流体を案内する吸入口203と、流体分配チャンバ204からなる渦発生デバイス202と、トランスミッションベース211と、コアンダ効果の原理を利用する、層状旋回流で強制渦を発生させる渦発生デバイス205と、各コーンを分離してコーン間に狭い隙間223…nを形成して表面沈降領域を増大するコーン壁面上の突起を有する、上流側開口端部および下流側開口端部を有する積層平頭コーン221…nと、重相流体用の流体収集チャネル225と、重相流体用の蓄積チャンバ234と、重相流体用の吐出口236と、重相流体用の流体収集チャネル内に沈殿せずに残った軽相流体を小型のサイクロン流体分離器241内に導入するための吸入口240と、コーンの底部に位置する重相流体用の吐出口246と、汚染物質である微細粒子の蓄積チャンバ235と、清浄流体を小型のサイクロン流体分離器から外部に放出する吐出口251と、を備える。
【0037】
図11によれば、所要の分離用流体が本発明による分離器201に導入されると、流体をトランスミッションベース211を取り囲む流体分配チャンバ204内に放出する前にメッシュ付き通気口(g)を通して分配して大きな汚染物質をスクリーニングしてトランスミッションベース211内に分配するために、流体は、円錐体209を通して分配される。
【0038】
図4によれば、トランスミッションベース211は、トランスミッションベース11と同様であるので、発明者等は、トランスミッション11を説明する同じ図面を使用する。トランスミッションベース11は、内部空洞12を有する円錐形を有し、トランスミッションベース11の周りに対称に配置された複数の細い垂直方向の矩形の隙間である貫通孔13があり、貫通孔13の横に、貫通孔の入口に側壁16を有する貫通孔側縁部ブロック14があり、貫通孔13が内部空洞12に入るところにおいて、貫通孔側縁部ブロック14の内部空洞内の部分は、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲する凸状湾曲縁部表面15であり、貫通孔の横にある縁部壁面16の反対側の壁面は、縁部壁面17である。縁部壁面16と縁部壁面17の間の隙間は、入口では広く、その後貫通孔13のところで細くなり、貫通孔13を流れる流体を集めやすいようになっている。貫通孔13は、縁部壁面16にまっすぐに沿って流れるのではなく、貫通孔の噴出軸を決定する縁部壁面17と位置合わせされる。
【0039】
図5によれば、渦発生デバイス211は渦発生デバイス11と同様であるので、このデバイスについては、図5を用いて詳細に説明する。トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲する凸状湾曲縁部表面15は、貫通孔13の噴出軸aに最も近い表面として配置され、特定の圧力および/または特定の吸引力を有する流体が貫通孔13内を流れると、その流体は、コアンダ効果によって偏向されて、破線bに沿ってトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面15に沿って流れ、トランスミッションベース11の内部空洞12内の流体を破線Aに沿って巻き込んで、破線bに沿ってトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面15に沿って流れるように誘導し、それにより、流体をトランスミッションベースの内壁に沿うように流す。複数の貫通孔13、凸状湾曲縁部表面15、およびトランスミッションベース11の内壁の周りの貫通孔の噴出軸aは、対称に配置されている。したがって、流体は、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した各凸状湾曲表面15上を流れ、互いに中継するように流れ、それにより破線Bに沿ってトランスミッションベースの内壁の周縁上を流れて、渦発生チャンバ(図11による)の一部である内部空洞12内に渦を生じさせる。コアンダ効果により、発生する渦は、層状旋回流による強制渦である。
【0040】
図6によれば、凸状湾曲表面15が渦発生チャンバの内壁の周面に接触する点で動的エネルギーは最大になり、したがって、渦の速度は、渦の最外周である凸状湾曲縁部表面15で最高になる。それは、図6に円周として示す、図5の破線Bに沿った流れである。渦の速度は、動的エネルギーが減少するにつれて渦が渦の中心に近づくにつれて次第に低下する。このような渦は、強制渦である。遠心力は、渦の速度に正比例して変化するので、強制渦によって生じる遠心加速度の勾配プロフィルにおいて、遠心力は、最も外側の周縁部で最高となり、渦の中心に近づくにつれて次第に低下する。図6の概略図に示すように、流体粒子が遠心力下にあるとき、重相流体は、より大きな遠心力を受け、遠心分離されて外側周縁部を循環する。軽相流体は、より小さな遠心力を受けて、内側周縁部を循環する。本発明による渦発生デバイスによって発生される渦の結果は、層状旋回流である。粒子は、発生した遠心加速度勾配プロフィルに対応する、その比重または大きさに応じた複数の分配層に分離されるので、容易に分離される。
【0041】
図11によれば、円錐形渦発生チャンバ205に隣接して、軸方向に積層された、上流側開口端部および下流側開口端部を有する複数の平頭コーン221がある。各コーンは、各コーンを分離してコーン210の間に細い隙間を形成して表面沈降領域を増大させる突起を有する。旋回する流体が、積層されたコーンのうちの最初のコーン221に到達すると、旋回流の外周は重相流体からなり、旋回流は、コーンの内壁209に沿うように旋回し、コーン210間の隙間を通って下方に旋回し、旋回しながらコーンの底部吐出口に向かう。旋回流は、旋回して重相流体用の流体収集チャンバ225に入る。これは、積層コーンの底部吐出口にある隙間であり、これは、積層コーンの底部吐出口と、積層コーンを覆う円錐形内部構造231との間の空間である。渦の内周を旋回する軽相流体は、旋回し続けてさらにコーンの内壁表面209の次の部分に向かい、コーンの上流側開口端部224に向かい続けることになるが、重相流体(全ての旋回する流体と比較して)は、最初のコーンの内壁を旋回して通過するときに、次のコーンの内壁222に向かって押し出されることになる。上述のプロセスは、積層コーンの数に応じて数回繰り返される。分離は、全ての層の表面沈降領域の円錐形壁面で行われる。重相流体は、コーン間の細い隙間を通して、重相流体用の流体収集チャンバ225中に分離される。渦は、別の表面沈降領域である円錐形内部構造231の壁面に沿うように旋回し続け、沈殿して、円錐形内部構造の吐出口232を通って降下し、重相流体用の流体蓄積チャンバ234に蓄積され、この重相流体用の流体収集チャンバ234は、汚染物質である微細粒子用の蓄積チャンバ235との分離壁238と、必要に応じて大きな粒子を分離器から取り除くために開閉される弁237を有することがある重相流体用の吐出口236とを有する。沈降しない流体は、上方に重相流体用の流体収集チャンバ225より上まで旋回する。積層コーンを覆う円錐形内部構造231の内壁230の上側部分には、流体を小型のサイクロン分離器241内に分配する流体分配チャンバ242内に流体を導入するための吸入口240がある。
【0042】
図16および図11によれば、いくつかの小型のサイクロン流体分離器241が、円錐形内部構造231の外壁の上側部分の周りに対称に取り付けられ、外部構造233と円錐形内部構造231との間の空間には、その空間をサイクロンの上側部分と下側部分に分離する仕切壁249がある。小型のサイクロン流体分離器241は、仕切壁249に取り付けられる。各サイクロンの渦ファインダ管245は、そのサイクロンの上方上側空間に通じる吐出口248を有する。サイクロンの底部吐出口246は、分離された微細汚染粒子用の蓄積チャンバであるサイクロン下方の空間に開いている。
【0043】
図12および図13Aによれば、小型のサイクロン流体分離器241は、倒立円錐形を有し、コアンダ効果の原理を利用して層状旋回流で強制渦を発生させる渦発生デバイス243と、倒立円錐形の渦発生チャンバ244と、重相流体用の吐出口であるサイクロンコーンの底部吐出口246と、下向きに渦発生チャンバ内に延びる、サイクロンの上側カバー249の中心に取り付けられた丸形管である渦ファインダ245と、渦ファインダ吸入口247とを備え、渦ファインダ吐出口248の端部には、清浄流体用の吐出口がある。図13Bによれば、サイクロンコーンの底部吐出口246’の中心に、流れを逆に上向きに旋回させるのを支援するための円錐形尖体252’を有することがあり、その円周の最も広い部分は、サイクロンの底部吐出口246’の円周より小さく、サイクロンの底部吐出口246’として環状の空間を形成している。
【0044】
図14および図15によれば、小型のサイクロン分離器の渦発生デバイスは、トランスミッションベース243の周りに対称に設置されたいくつかの貫通孔313を備えた倒立円錐形のトランスミッションベース243を備え、貫通孔の脇には、貫通孔側縁部ブロック314があり、貫通孔313の入口には、孔側縁部壁面316があり、貫通孔側縁部壁面316の反対側には、孔側縁部壁面317がある。孔側縁部壁面316と孔側縁部壁面317の間の隙間は、入口で広く、貫通孔313に近づくほど狭くなる。孔側縁部壁面316は、内部空洞内で直線状ではない。縁部壁面317は、貫通孔313と位置合わせされて、貫通孔の噴出軸aと位置合わせされる。内部空洞内の貫通孔側縁部壁面は、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面315となる。トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面315は、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面315の反対側の、貫通孔の内側吐出口で反対側にある孔側縁部壁面と比較して、貫通孔の噴出軸に最も近い表面となる。
【0045】
図11によれば、流体が積層コーン221…nによる分離プロセスを通過すると、重相流体は、積層コーンの表面沈降領域および積層コーンを覆う円錐形内部構造231の内壁230に沿うように旋回し、この流体は、沈殿し、重相流体用の蓄積チャンバである底部蓄積チャンバに収集される。沈殿せずに残った流体または微細粒子で汚染された流体は、旋回して上方に向かい、流体収集チャンバ225の上まで流れ、次いで流体を流体分配チャンバ242内に向けて送る吸入口240に流入し、積層コーンを覆う円錐形外側構造231の周りに対称に設置された複数の小型のサイクロン流体分離器241に流れる。流体は、流体分配チャンバ242に導入され、次いで、小型のサイクロン流体分離器の渦発生デバイスのトランスミッションベース243内に分配される。
【0046】
図15によれば、流体は、コアンダ効果の原理を利用する渦発生デバイスのトランスミッションベースの貫通孔313を通って流れる。トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面315を、コアンダプロフィルに従って貫通孔の噴出軸aに最も近い表面となるように配置することにより、流体は偏向されて、破線bに沿ってトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面315に沿うように流れ、トランスミッションベースの内部空洞312内の流体を巻き込んで、破線Aに沿って内向きに流れ、破線bに沿ってトランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した凸状湾曲縁部表面315に沿って流れるように誘導する。貫通孔13と、トランスミッションベースの周りの外壁および内壁の両方と、凸状湾曲縁部表面315と、トランスミッションベースの内壁の周りの貫通孔の噴出軸aとが、対称に配置されている。これにより、流体は、トランスミッションベースの内壁に向かって湾曲した各凸状湾曲縁部表面上を流れ、各凸状湾曲縁部表面を中継するように流れる。これにより、破線Bに沿って、図11によるサイクロン分離器の渦発生チャンバ244の内壁の一部であるトランスミッションベースの内壁の周縁上の流れを生じさせる。「コアンダ効果」により、層状旋回流が生じる。
【0047】
図6によれば、小型のサイクロン流体分離器241の渦発生デバイス243は、渦発生デバイス11と同じ動作原理を有するので、図6を用いて説明する。動的エネルギーは、凸状湾曲縁部表面が渦発生チャンバの内壁の周面に接触する点で最大になる。したがって、渦の速度は、図6では渦の最外周であり、図15では破線Bに沿った流れである、凸状湾曲縁部表面で最高になる。渦の速度は、動的エネルギーの減少に対応して旋回流が渦の中心に近づくにつれて次第に低下する。これは、強制渦タイプの渦である。強制渦によって生じる遠心加速度の勾配プロフィルにおいて、遠心力は、最も外側の周縁部で最高となり、渦の中心に近づくにつれて次第に低下するが、これは、遠心力下にある粒子の分布に対応する。すなわち、重相流体は、より大きな遠心力を受けて、外側周縁部に押し出され、軽相流体は、より小さな遠心力を受けて、内側周縁部を流れる。本発明による小型のサイクロン分離器の渦発生デバイスによって発生される渦は、層状旋回流である。流体粒子は、遠心加速度勾配プロフィルに対応して、その比重または大きさに応じて、すなわち大きいか小さいかに応じて、複数の分配層に分離され、分配されるので、容易に分離される。
【0048】
図11によれば、小型のサイクロン241であるので、渦発生チャンバ244の直径が小さく、その渦の速度は速く、また大きな遠心力を発生させ、渦の半径が短いことと相まって、旋回する粒子は、渦発生チャンバ244であるサイクロンコーンの壁面に向かって押し出されやすい。したがって、沈殿率が高く、倒立円錐形の渦発生チャンバ内を旋回する高速度の渦は、渦発生チャンバの周縁により、上流側から下流側に向かって長手方向に連続的に小さくなるので、旋回速度は、汚染流体中の微細汚染物質とも呼ばれる重相流体の吐出口である底部吐出口246に向かって下方に旋回するときに加速されることになる。底部吐出口246の断面積は、流体を渦発生チャンバ244内に送る小型のサイクロン分離器の渦発生デバイスのトランスミッションベースの全ての吸入口の総断面積より小さいので、底部吐出口246容量を超える流体流が入ってくるとそれを放出し、上向きの逆旋回流を生じる。微細汚染物質とも呼ばれる重相流体は、底部吐出口246で微細汚染物質用の蓄積チャンバ235内に分離される。分離器から微細汚染物質を除去するための弁239bを有することもある吐出口239aがある。軽相流体または清浄流体は、旋回しながらサイクロンの上部に向かい、旋回しながら渦ファインダの吸入口247を通り、次いで旋回しながらサイクロンコーンの上側カバー249の中心にある渦ファインダ245の吐出口248を通る。各小形のサイクロン流体分離器からの清浄流体は、清浄流体収集チャンバ250で集められる。次いで、吐出口251を介して放出される。
【0049】
図17aおよび図17bによれば、渦ファインダの吐出口は、渦ファインダの直線状の吐出口を閉止し、側方吐出口404を開けて、直接流を遮断して、側方吐出口404を通して流れを偏向させて、分離効率を高めるために渦発生チャンバ内の渦を安定させるのを助ける、キャップシール401を有する丸形管を備えることがある。
【0050】
発明の最良の方法
本発明の詳細な説明で言及した通りである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17a
図17b
図18
【国際調査報告】