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特表2023-539149食用中空繊維において増殖した筋肉細胞を用いて生成された可食組織様構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】食用中空繊維において増殖した筋肉細胞を用いて生成された可食組織様構造
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20230906BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230906BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230906BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230906BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20230906BHJP
【FI】
C12N5/077
C12M3/00 A
C12N5/10
A23L5/00 A
A23L13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512340
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2021073078
(87)【国際公開番号】W WO2022038240
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/068,397
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイセンバッハ,ジャン-ルイ
(72)【発明者】
【氏名】シルビア,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】フォン・デア・ブレリー,アルムート
(72)【発明者】
【氏名】ブランドル,メラニー
(72)【発明者】
【氏名】フェーゼンフェルト,ミヒャエラ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B035
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B035LC16
4B035LE20
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG15
4B035LG20
4B035LG41
4B035LP31
4B035LP59
4B042AC09
4B042AD36
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK14
4B042AP21
4B042AP30
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA41
(57)【要約】
本発明は、食用中空繊維及び本発明の中空繊維を含むカートリッジ及びバイオリアクター、並びに本発明の中空繊維、カートリッジ及びバイオリアクターを用いて製造された構造化された培養肉製品の製造方法、並びに前記方法によって製造された構造化された培養肉製品に関する。食用中空繊維に増殖した構造化された培養肉の巨視的構造は、独特の最終構造をもたらす。この最終構造は、単位面積当たり有限量の繊維を含むことになる。繊維の外側に肉を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.2mm~約2.0mmの外径、0%~約75%の多孔性及び約0.05mm~約0.4mmの壁の厚みを有する、親水コロイド及びタンパク質からなる群から選択される1つ以上の材料を含む食用中空繊維。
【請求項2】
前記壁の厚みが約0.08mm~0.2mmである、請求項1に記載の中空繊維。
【請求項3】
前記多孔性が約40%~約60%である、請求項1に記載の中空繊維。
【請求項4】
前記中空繊維が、アルギネート、セルロース、キトサン、コラーゲン、ゼイン、寒天、イヌリン、グルテン、ペクチン、マメ科タンパク質、メチルセルロース、ペクチン、ゼラチン、タピオカ、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ビーンガム、植物タンパク質、デンプン、植物単離物、脂質及びリン脂質の1つ以上を含む、請求項1に記載の中空繊維。
【請求項5】
前記タンパク質が、トウモロコシタンパク質、ジャガイモタンパク質、小麦タンパク質、モロコシタンパク質、動物性タンパク質、動物性タンパク質単離物、牛肉タンパク質単離物、カゼインタンパク質及びホエータンパク質のうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の中空繊維。
【請求項6】
前記植物単離物が、大豆、ゼイン、カゼイン及び小麦タンパク質の1つ以上を含む、請求項4に記載の中空繊維。
【請求項7】
前記脂質が、遊離脂肪酸、トリグリセリド、天然ワックス及びリン脂質の1つ以上を含む、請求項4に記載の中空繊維。
【請求項8】
前記中空繊維が、1つ以上のマメ科タンパク質及び1つ以上の親水コロイドを含む、請求項1に記載の中空繊維。
【請求項9】
各々が第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1の端部及び前記第2の端部が互いに位置的に対向しており、ある量の前記中空繊維が本質的に平行に配置され、前記中空繊維の前記第1の端部が第1の保持デバイスに固定され、前記中空繊維の前記第2の端部が第2の保持デバイスに固定されるように位置決めされ、前記第1及び第2の保持デバイスが前記中空繊維の前記長手方向配向に対して本質的に垂直に配向され、かつ、互いに本質的に平行に配向され、少なくとも1つの保持デバイスが前記中空繊維の内部への流体の流れを可能にし、それによって中空繊維カートリッジを作製する、請求項1に記載の中空繊維。
【請求項10】
前記中空繊維が、約40~約120/cmの密度である、請求項9に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項11】
前記中空繊維が、約60~約100/cmの密度である、請求項9に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項12】
前記中空繊維が、約70~約90/cmの密度である、請求項9に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項13】
中空繊維間にボイドスペースを有し、前記中空繊維間の前記ボイドスペースが、前記中空繊維カートリッジの総体積の約25%~約75%である、請求項9に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項14】
中空繊維間のボイドスペースが、前記中空繊維カートリッジの総体積の約40%~約60%である、請求項9に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項15】
前記中空繊維カートリッジが、ハウジング内に取り外し可能に挿入されるように設計されている、請求項9に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項16】
前記ハウジングが、バイオリアクター又はバイオリアクターシステムの一部である、請求項15に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項17】
中空繊維細胞培養リアクターであって、
a)請求項9に記載の中空繊維カートリッジ、
b)前記中空繊維カートリッジを保持するように寸法決めされたハウジング、
c)前記ハウジングの1つ以上の入口に流体接続された媒質供給源、
d)前記ハウジングの1つ以上の媒質出口及び
e)前記1つ以上の媒質入口及び/又は1つ以上の媒質出口を通して前記中空繊維カートリッジに媒質を供給する、及び/又は前記中空繊維カートリッジから廃棄媒質を除去するための1つ以上のポンプ
を備える、中空繊維細胞培養リアクター。
【請求項18】
前記入口が、前記中空繊維の内部に流体接続されている、請求項17に記載の中空繊維細胞培養リアクター。
【請求項19】
自動コントローラをさらに含む、請求項17に記載の中空繊維細胞培養リアクター。
【請求項20】
中空繊維カートリッジが、約20/cm~約100/cmの密度の中空繊維を含む、請求項17に記載の中空繊維細胞培養リアクター。
【請求項21】
中空繊維カートリッジが、約30/cm~約60/cmの密度の中空繊維を含む、請求項17に記載の中空繊維細胞培養リアクター。
【請求項22】
食肉製品の製造方法であって、約10細胞/ml~約10細胞/mlの密度で、筋細胞、筋細胞様細胞又は1つ以上の筋細胞様特徴を発現する遺伝子操作された細胞のうちの1つ以上を、請求項17に記載の前記中空繊維リアクターの中空繊維間のボイドスペースに播種し、約80%~約99%のコンフルエンスを達成するまで前記細胞を培養することを含む、方法。
【請求項23】
前記細胞が約80%~約99%のコンフルエンスを達成した後、中空繊維細胞培養リアクターから前記中空繊維カートリッジを取り出すことをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の保持デバイス及び前記第2の保持デバイスを前記中空繊維の第1の端部及び第2の端部からそれぞれ取り外すことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、約85%~約99%のコンフルエンスを達成するまで培養される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、約90%~約99%のコンフルエンスを達成するまで培養される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
脂肪細胞、脂肪細胞様細胞若しくは1つ以上の脂肪細胞様特徴を発現する遺伝子操作された細胞及び/又は線維芽細胞、線維芽細胞様細胞若しくは1つ以上の線維芽細胞様特徴を発現する遺伝子操作された細胞のうちの1つ以上を中空繊維リアクターに播種することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、中空繊維の第1の端部及び第2の端部の一方又は両方を介して前記中空繊維の内部に、及び前記中空繊維の壁を介して前記細胞が播種された前記中空繊維間のボイドスペースに、及び1つ以上の前記出口を介して前記ハウジング内に、媒質を細胞に供給することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
細胞がコンフルエンスを達成した後、中空繊維の内部及び/又は前記細胞間の任意の残りのボイドスペースに脂肪、香味料、色、塩及び防腐剤のうちの1つ以上を注入することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
構造化された培養肉製品であって、
a)50~90%の培養動物細胞、
b)10~30%の食用中空繊維及び/又は中空繊維材料、
c)1~30%のボイドスペースであって、前記培養動物細胞の間に位置する、及び/又は前記培養動物細胞が散在する、ボイドスペース及び
d)1~30%の添加剤
を含む、構造化された培養肉製品。
【請求項31】
請求項22に記載の方法によって製造された構造化された培養肉製品であって、
a)50~90%の培養動物細胞、
b)10~30%の食用中空繊維及び/又は中空繊維材料、
c)1~30%のボイドスペースであって、前記培養動物細胞の間に位置する、及び/又は前記培養動物細胞が散在する、ボイドスペース及び
d)1~15%の添加剤
を含む、構造化された培養肉製品。
【請求項32】
前記添加剤が、香味料、質感向上剤、栄養添加剤、防腐剤及び/又は酸化防止剤、並びに脂肪及び/又は油のうちの1つ以上を含む、請求項31に記載の構造化肉製品。
【請求項33】
前記香味料が、エッセンシャルオイル、オレオレジン(ESO)、酵素(ENZ)、天然物質及び抽出物(NAT)、非栄養甘味料(NNS)、栄養甘味料(NUTRS)、スパイス、天然調味料及び香味料(SP)、並びに合成香味料(SY/FL)、燻蒸剤(FUM)、人工甘味料及び酵母抽出物のうちの1つ以上から選択される、請求項32に記載の構造化された培養肉製品。
【請求項34】
前記質感向上剤が、裏ごしされた植物材料、グアーガム、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、ベータグルカン、大豆、小麦、トウモロコシ及びイネ単離物及びビート繊維、エンドウ繊維、竹繊維、植物由来繊維、植物由来グルテン、カラギーナン、キサンタンガム、レクチチン、ペクチン、寒天、アルギネート、天然多糖類、穀物殻、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び塩のうちの1つ以上から選択される、請求項32に記載の構造化された培養肉製品。
【請求項35】
前記栄養添加剤が、微量元素、生物活性化合物、内因性酸化防止剤、ビタミンA、ビタミンB複合体、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、亜鉛、チアミン、リボフラビン、セレン、鉄、ナイアシン、カリウム、リン、オメガ-3、オメガ-6、脂肪酸、マグネシウム、タンパク質、アミノ酸塩、クレアチン、タウリン、カルニチン、カルノシン、ユビキノン、グルタチオン、コリン、グルタチオン、リポ酸、スペルミン、アンセリン、リノール酸、パントテン酸、コレステロール、レチノール、葉酸、食物繊維及びアミノ酸のうちの1つ以上から選択される、請求項32に記載の構造化された培養肉製品。
【請求項36】
前記脂肪が、飽和脂肪、一価不飽和脂肪、多価不飽和脂肪、トウモロコシ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、オリーブ油、ピーナッツ油、大豆、亜麻仁油、ゴマ油、キャノーラ油、アボカド油、種子油、ナッツ油、ベニバナ及びヒマワリ油、パーム油、ココナッツ油、オメガ-3、魚油、ラード、バター、加工動物脂肪、脂肪組織、細胞農業由来の脂肪精油及びオレオレジンのうちの1つ以上から選択される、請求項32に記載の構造化された培養肉製品。
【請求項37】
前記中空繊維が、1つ以上のマメ科タンパク質及び1つ以上の親水コロイドを含む、請求項31に記載の構造化された培養肉製品。
【請求項38】
前記ボイドスペースが、細胞及び/又は細胞材料を欠いている、請求項31に記載の構造化された培養肉製品。
【請求項39】
前記防腐剤及び/又は酸化防止剤が、ナトリウム塩、塩化物塩、ヨウ素塩、硝酸塩、ニトロソアミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム及びベンゼンアスコルビン酸、クエン酸、カリウム、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)、二酸化硫黄、亜硫酸塩、抗生物質のうちの1つ以上から選択される、請求項32に記載の構造化された培養肉製品。
【請求項40】
前記ボイドスペースが、細胞又は細胞材料以外の材料で少なくとも部分的に充填されている、請求項31に記載の構造化された培養肉製品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの場合「培養肉」と呼ばれる実験室で増殖した肉又は肉様製品は、人口の増え続ける人間に食品を供給する上で重要な役割を果たす可能性が高い。しかしながら、この分野における努力は、限られた成功しか収めていない。その理由の一部は、現在の技術で生成された製品は、構造をほとんど又は全く有しておらず、せいぜい、それに肉様の構造及び質感を与えるべく他の成分と組み合わせなければならない挽いた肉様物質に似たものでしかないためである。
【0002】
構造化された培養肉を生成するために、骨格を使用しなければならない。実用的で費用効果的であるために、骨格は食用及び/又は溶解可能でなければならず、実際の肉又は本来の肉(すなわち、動物由来の肉)を連想させる食感を与える最終生成物の質感及び構造をもたらす。これは、骨格が少なくとも3つの質を備えていなければならないこと、つまり1)食用であること、2)実際の肉に似た質感及び食感をもたらすこと、及び3)筋細胞又は筋細胞様細胞及び他の細胞型が効率的に増殖し、本来の筋肉に似た筋肉構造(例えば、筋細管を形成し、組織様細胞密度を達成する)を形成するのに適した培養環境であることを意味する。
【0003】
これらの目的の各々を達成することは、当技術分野における課題であった。1つの培養システムにおいてこれらの目的の3つすべてを達成することは、3つの目的のうちのいずれか1つを達成することが他の1つ又は両方を達成することに相反して作用し得るので、当技術分野では大部分が達成されていない。
【0004】
この理由は何重もある。それらのうちのいくつかをここで検討する。食用マイクロキャリアが試みられてきたが、食用マイクロキャリアは、追加の処理ステップ及び/又は材料なしに、組織様細胞密度を達成することができず、肉組織の食感又は質感をもたらすことができない(例えば、Margaの米国特許出願公開第2015/0079238号明細書を参照されたい)。
【0005】
ヒドロゲルチューブが使用されてきた。1つの利点は、筋細胞がヒドロゲルチューブにおいて筋細管を形成することができることである。しかしながら、細胞密度は十分に高くなく、最終的な巨視的構造は本来の肉に似ていない。さらなる処理が、例えば、筋管アラインメントのために必要とされるであろう(Qiang,Li,et al.,2018 Biofabrication 10:025006を参照されたい)。
【0006】
三次元(3D)ヒドロゲルマトリックスは周知であり、市販されている。残念なことに、このフォーマットは組織様細胞密度にあまり適していない。これは、少なくとも部分的に、血管新生/媒質拡散が制限されるためである(Bramfeldt,et al.,Curr Med Chem.2010;17(33):3944-3967)。さらに、この構造は、不自然なスポンジ状の食感を与える。
【0007】
3次元印刷が、Redefine Meat,Ltd.(Ness Ziona、イスラエル)などの企業によって行われきて、非食肉ベースの構造化された食肉様製品を組み立てる構造及び細胞密度の側面において、進歩がなされている。しかしながら、この手法は仕上げのステップである。細胞の増殖の大部分は事前に完成させておく必要があり、細胞は3D構造に処理され、工程に過剰な時間とコストを加える。
【0008】
脱細胞化された植物材料(例えば、セロリ及びダイオウ)が、骨格の材料として記載されている(Gershlak,J.,et al.,Biomaterials,2017 May;125:13-22を参照されたい)。しかしながら、流体の管理が実験室の規模を超える課題となり、脱細胞化された植物材料を使用する任意の工程を製造規模に拡大することを困難にさせている。さらに、最終的な構造は、植物性材料を反映し、肉様製品にとって食感及び食感が不十分になる。脱細胞化された植物性材料は、細胞の正しい配向を可能にし、培養細胞の血管新生を助けるようであるが、スケールアップは克服すべき重要な障害であることが判明している。さらに、食感は、本来の肉よりも植物界の物質によく似ている場合がある。例えば、Decellularized Plant-based Scaffold for Guided Alignment of Myoblast Cells-Santiago Campuzano,et al.,2020,in press and www.new-harvest.org/santiago_campuzanoを参照されたい。
【0009】
植物ベースの中空繊維は、食用製品を供給することに関して問題となり得る。全粒デンプンは食用であるが、細胞培養媒質に溶解するため、細胞の培養又は細胞の接着には適していない。セルロースは、濾過産業において広く使用されている。セルロースは、既存の食品内の材料として認識されているが、膜の形式では、セルロースは、典型的には化学的に修飾され、プラスチックのように挙動する。セルロースのこの巨視的挙動は、セルロースを食べるのに望ましくないものにする。同様に、コラーゲン混合中空繊維が記載されている。しかしながら、これらの製品は、人間が食するため、又は培養肉産業(WO2018162857 A1、Hollow Cellular Microfibre and Method for Producing Such a Hollow Cellular Microfibreを参照されたい)で使用するために設計されたものではなく、この領域での使用には適さない可能性が高い。
【0010】
さらに、既存の食用骨格は、数百ミクロンよりも厚い構造化肉を生成するために必要な血管新生を可能にしない。食用骨格の例は、上記のように、マイクロキャリアである。マイクロキャリアは、培養容器に懸濁させるか、充填床又はバルク材料の形態でなければならない。これらの場合、細胞培養物は、骨格が浸漬される媒質のみから供給される。したがって、培養増殖は組織での媒質の拡散によって制限され、200μm未満であると報告されている。
【0011】
骨格は、材料の電界紡糸シートなどの本質的に二次元の形式でも報告されている(例えば、Yang,F.,et al.,Materials(Basel),2017 Oct 12;10(10)を参照)。これらの二次元シートは、シートを通る媒質の拡散及び周囲の媒質によって供給されることができる。
【0012】
さらに、先行技術の骨格で増殖させた筋組織の配向は、筋原線維の形成を含むように正しく配向していない。食用の構造化された培養肉製品を製造するために必要に応じて記載される骨格は、当技術分野で知られておらず、市販もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0079238号明細書
【特許文献2】国際公開第2018/162857号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Qiang,Li,et al.,2018 Biofabrication 10:025006
【非特許文献2】Bramfeldt,et al.,Curr Med Chem.2010;17(33):3944-3967
【非特許文献3】Gershlak,J.,et al.,Biomaterials,2017 May;125:13-22
【非特許文献4】Decellularized Plant-based Scaffold for Guided Alignment of Myoblast Cells-Santiago Campuzano,et al.,2020,in press and www.new-harvest.org/santiago_campuzano
【非特許文献5】Yang,F.,et al.,Materials(Basel),2017 Oct 12;10(10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、構造化された培養肉製品を生成するために、改良された細胞培養材料、並びにそれらの材料を使用する装置及び方法が現在必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、1)食用であり、2)実際の肉に類似した質感、構造及び食感を提供し、3)筋細胞及び他の細胞型の本来の筋肉に似た構造への増殖を促進する骨格を含む食用の培養肉製品を提供する細胞培養デバイス及びシステムに関する。さらに、骨格及び骨格での培養肉の増殖は、例えば加工(すなわち、切断又はスライス)及び料理の最中の本来の肉に似た質感及び取り扱い性を有する。言い換えれば、本発明は、質感加工された構造化肉製品を製造するのに適した材料及び方法を提供する。本発明は、食用中空繊維を用いた培養システム、本発明の食用中空繊維を利用した培養デバイス及び本発明の培養デバイスを利用した培養方法によって、これらの目的を達成する。本発明の中空繊維はまた、後述するように、部分的に又は完全に溶解可能であってもよい。
【0017】
本発明者らは、本発明の食用中空繊維を使用することにより、費用対効果の高い構造化された培養肉を生成できることを見出した。本発明の中空繊維は、筋肉構造並びに他の望ましい特性に関して、構造化された培養肉の最終生成物の質を高める。さらに、培養期間の終わりに中空繊維の管腔を脂質系成分で満たすことにより、所望の最終生成物の脂肪含有量を調整し、生成物全体に均一に分布させることができる。
【0018】
本発明の中空繊維組成物は、最終生成物の食感だけでなく、最終生成物の味においても補助することができる。また、培養期間終了時の中空繊維の中心に、例えばコロイド状の材料やその他の材料で香味料を付与することもできる。コロイド状の材料は、脂質(脂肪)及び香味料、並びに他の成分の一方又は両方を含む液体又はスラリーであり得る。
【0019】
中空繊維を生成するために材料の可変性を使用することにより、構造化された培養肉最終生成物の香味料及び食感に影響を及ぼすことができる。この意味で、本発明の中空繊維は、所望の最終生成物に応じてカスタマイズすることができる。例えば、中空繊維を製造するために使用される材料は、増殖する肉の種類に応じて調整することができ、間隔(すなわち、中空繊維と中空繊維の直径との間)は、例えば、異なる最終的な質感を与えるように変更することができる。当業者は、本明細書の教示により、所望されているように、本発明の中空繊維及び任意の関連する中空繊維装置(例えば、中空繊維カートリッジ)を、最終的な最終生成物の特性に影響を及ぼすように改変することができる。
【0020】
細胞の増殖特性は、本発明の中空繊維の構造及び組成に基づいて制御することもできる。例えば、粒子又は微粒子ではなく、中空繊維の構築に繊維成分を利用することは、異なる細胞接着特性、及び最終的には、繊維と最終的な培養肉製品の両方の異なる最終生成物質感をもたらす可能性がある。例えば、本発明の中空繊維の構築において繊維成分を利用することは、繊維に沿って細胞の増殖を配向させることが本発明者らによって理解されている。同様に、表面が質感加工された繊維は、最終生成物に影響を及ぼす可能性がある。さらに、本発明の繊維は、本発明の中空繊維の表面に組み込まれるか、又は適用される因子(例えば、増殖因子、付着因子)を有することができる。本発明の中空繊維に対する上述の変更のいくつかはまた、最終的な生成物の味、構造、強度、質感及び食感の1つ以上に影響を及ぼすことができる。
【0021】
本明細書では、新規かつ非自明の中空繊維の発明が提供され、個々の中空繊維に沿って、及び配置された中空繊維に沿って均一又は実質的に均一な密度になるように細胞材料(すなわち、限定されないが、筋肉細胞、脂肪細胞及び線維芽細胞などの細胞)を均一又は実質的に均一に増殖させるのに適していて、所望のパターンであり、前記配置された中空繊維間のボイドスペースの均一又は実質的に均一な分布を有する。本発明はまた、本発明の中空繊維を少なくとも部分的に利用するバイオリアクター、並びに構造化された培養肉製品及び本発明の中空繊維を用いて製造された構造化された培養肉製品を製造する方法(process及びmethod)に関する。本発明は理論に限定されないが、本発明の中空繊維の驚くべき予想外の特性は、少なくとも繊維材料、繊維の構成、繊維の多孔性及び繊維の寸法の組み合わせに起因すると考えられる。さらに、本発明の中空繊維のこれらの特徴は、本発明の構造化された培養肉製品の製造において培養されている1つ又は複数の細胞型と相乗的に、及び組み合わせて作用すると考えられる。
【0022】
一態様では、本発明は、約0.2mm~約2.0mmの外径、0%~約75%の多孔性及び約0.05mm~約0.4mmの壁の厚みを有する、親水コロイド及びタンパク質からなる群から選択される1つ以上の材料を含む食用中空繊維に関する。別の態様では、中空繊維は、約0.08mm~0.2mmの壁の厚みを有する。別の態様では、中空繊維は、約40%~約60%の多孔性を有する。
【0023】
別の態様では、本発明の中空繊維は、アルギネート、コラーゲン、セルロース、キトサン、コラーゲン、ゼイン、寒天、イヌリン、グルテン、ペクチン、マメ科タンパク質、メチルセルロース、ペクチン、ゼラチン、タピオカ、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ビーンガム、植物タンパク質、デンプン、植物単離物(例えば、大豆/ゼイン/カゼイン/小麦タンパク質)、脂質、(例えば、遊離脂肪酸、トリグリセリド、天然ワックス及びリン脂質の1つ以上を含む。本発明の別の態様では、中空繊維のタンパク質は、トウモロコシタンパク質、ジャガイモタンパク質、小麦タンパク質、モロコシタンパク質、動物性タンパク質、動物性タンパク質単離物、牛肉タンパク質単離物、カゼインタンパク質及びホエータンパク質のうちの1つ以上を含む。本発明の別の態様では、中空繊維の植物単離物は、大豆、ゼイン、カゼイン及び小麦タンパク質の1つ以上を含む。本発明の別の態様では、本発明の中空繊維の脂質は、遊離脂肪酸、トリグリセリド、天然ワックス及びリン脂質の1つ以上を含む。本発明のさらに別の態様では、中空繊維は、1つ以上のマメ科タンパク質及び1つ以上の親水コロイドを含む。
【0024】
本発明の別の態様では、本発明の各中空繊維は、各々が第1の端部及び第2の端部を有し、第1の端部及び第2の端部が互いに位置的に対向しており、ある量の中空繊維が平行又は本質的に平行に配置され、中空繊維の第1の端部が第1の保持デバイスに固定され、中空繊維の第2の端部が第2の保持デバイスに固定されるように位置決めされ、第1及び第2の保持デバイスが中空繊維の長手方向配向に対して本質的に垂直に配向され、互いに平行又は本質的に平行に配向され、少なくとも1つの保持デバイスが中空繊維の内部への流体の流れを可能にし、それによって中空繊維カートリッジを作製する。本発明の別の態様では、中空繊維カートリッジの中空繊維は、約40~約120/cmの密度である。本発明の別の態様では、中空繊維カートリッジの中空繊維は、約60~約100/cmの密度である。本発明のさらに別の態様では、中空繊維カートリッジの中空繊維は、約70~約90/cmの密度である。
【0025】
本発明の別の態様では、本発明の中空繊維カートリッジは、中空繊維間のボイドスペースを有し、中空繊維間のボイドスペースは、中空繊維カートリッジの総体積の約25%~約75%である。本発明のさらに別の態様では、中空繊維間のボイドスペースは、中空繊維カートリッジの全体積の約40%~約60%である。
【0026】
本発明の別の態様では、中空繊維カートリッジは、ハウジングに取り外し可能に挿入されるように設計される。本発明の別の態様では、ハウジングは、バイオリアクター又はバイオリアクターシステムの一部である。
【0027】
別の態様では、本発明は、本発明の中空繊維細胞培養カートリッジと、本発明の中空繊維カートリッジを保持するように寸法決めされたハウジングと、ハウジングの1つ以上の入口に流体接続された細胞培養媒質源と、ハウジングの1つ以上の出口と、媒質入口及び/又は出口を通して中空繊維カートリッジに媒質を供給し、及び/又は廃棄媒質及び/又はガスを除去するための1つ以上のポンプとを備える中空繊維細胞培養リアクターに関する。本発明の別の態様では、入口は中空繊維の内部に流体接続されている。本発明の別の態様では、入口は中空繊維間のボイドスペースに流体接続され、出口は中空繊維の内部に流体接続され、それによって中空繊維の外側から内側への流体の流れを生成する。本発明のさらに別の態様では、中空繊維細胞培養リアクターは自動コントローラを含む。自動コントローラは、コンピュータを含んでもよい。
【0028】
本発明の一態様では、本発明は、食肉製品の製造方法であって、約10細胞/ml~約10細胞/mlの密度で、筋細胞、筋細胞様細胞又は1つ以上の筋細胞様特徴を発現する遺伝子操作された(engineered)細胞のうちの1つ以上を、本発明の中空繊維リアクターの中空繊維間のボイドスペースに播種し、約80%~約99%のコンフルエンス、約85%~約99%のコンフルエンス又は約90%~約99%のコンフルエンスを達成するまで細胞を培養することを含む、方法に関する。本発明の別の態様では、方法は、細胞が所望のコンフルエンスを達成した後、中空繊維カートリッジを中空繊維細胞培養リアクターから取り出すことをさらに含む。本発明の別の態様では、本発明の方法は、中空繊維の第1の端部及び第2の端部からそれぞれ第1の保持デバイス及び第2の保持デバイスを取り外すことをさらに含む。本発明の別の態様では、本発明の方法は、1つ以上の脂肪細胞様特徴を発現する脂肪細胞、脂肪細胞様細胞若しくは遺伝子操作された細胞及び/又は1つ以上の線維芽細胞様特徴を発現する線維芽細胞、線維芽細胞様細胞若しくは遺伝子操作された細胞の1つ以上を中空繊維リアクターに播種すること(すなわち、筋細胞に加えて、筋細胞様細胞又は上述の1つ以上の筋細胞様特徴を発現する遺伝子操作された細胞)をさらに含む。
【0029】
本発明の別の態様では、本発明の方法は、中空繊維の第1の端部及び第2の端部の一方又は両方を介して中空繊維の内部に、中空繊維の壁を介して細胞が播種された中空繊維間のボイドスペースに、及び1つ以上の前記出口を介して前記ハウジング内に、媒質を細胞に供給することをさらに含む。本発明の別の態様では、媒質の流れは、培養方法の少なくとも一部について逆にされる。
【0030】
本発明の別の態様では、本発明の方法は、細胞がコンフルエンスを達成した後、中空繊維の内部及び/又は細胞間の任意の残りのボイドスペースに脂肪、香味料、色、塩及び防腐剤の1つ以上を注入することをさらに含む。
【0031】
本発明の別の態様では、本発明は、構造化された培養肉製品であって、a)50~90%の培養動物細胞、b)10~30%の食用中空繊維及び/又は中空繊維材料、c)1~30%のボイドスペースであって、培養動物細胞の間に位置する、及び/又は培養動物細胞が散在する、ボイドスペース及びd)1~30%の添加剤を含む、構造化された培養肉製品に関する。本発明の中空繊維細胞培養リアクター及び中空繊維を用いて、本発明の方法により構造化された培養肉製品を製造してもよい。
【0032】
本発明の態様では、本発明の構造化された培養肉製品に添加される添加剤は、香味料、質感向上剤、栄養添加剤、防腐剤、及び脂肪のうちの1つ以上を含む。本発明の態様では、香味料は、エッセンシャルオイル、オレオレジン(ESO)、酵素(ENZ)、天然物質及び抽出物(NAT)、非栄養甘味料(NNS)、栄養甘味料(NUTRS)、スパイス、天然調味料及び香味料(SP)、並びに合成香味料(SY/FL)、燻蒸剤(FUM)、人工甘味料及び酵母抽出物のうちの1つ以上から選択される。本発明の別の態様では、質感向上剤が、裏ごしされた材料、グアーガム、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、ベータグルカン、大豆、小麦、トウモロコシ及びイネ単離物及びビート繊維、エンドウ繊維、竹繊維、植物由来繊維、植物由来グルテン、カラギーナン、キサンタンガム、レクチチン、ペクチン、寒天、アルギネート、天然多糖類、穀物殻、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び塩のうちの1つ以上から選択される。本発明の別の態様では、栄養添加剤は、微量元素、生物活性化合物、内因性酸化防止剤、ビタミンA、ビタミンB複合体、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、亜鉛、チアミン、リボフラビン、セレン、鉄、ナイアシン、カリウム、リン、オメガ-3、オメガ-6、脂肪酸、マグネシウム、タンパク質、アミノ酸塩、クレアチン、タウリン、カルニチン、カルノシン、ユビキノン、グルタチオン、コリン、グルタチオン、リポ酸、スペルミン、アンセリン、リノール酸、パントテン酸、コレステロール、レチノール、葉酸、食物繊維及びアミノ酸のうちの1つ以上から選択される。本発明のさらに別の態様では、脂肪は、飽和、一価不飽和、多価不飽和脂肪、トウモロコシ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、オリーブ油、ピーナッツ油、大豆、亜麻仁油、ゴマ油、キャノーラ油、アボカド油、種子油、ナッツ油、ベニバナ及びヒマワリ油、パーム油、ココナッツ油、オメガ-3、魚油、ラード、バター、加工動物脂肪、脂肪組織、細胞農業由来の脂肪精油及びオレオレジンのうちの1つ以上から選択される。本発明の別の態様では、防腐剤及び/又は酸化防止剤は、ナトリウム塩、塩化物塩、ヨウ素塩、硝酸塩、ニトロソアミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム及びベンゼンアスコルビン酸、クエン酸、カリウム、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)、二酸化硫黄、亜硫酸塩、抗生物質のうちの1つ以上から選択される。ここで、任意の1つの添加剤、香味料、質感向上剤、栄養添加剤、油脂及び/又は防腐剤/酸化防止剤が、本発明の構造化された培養肉製品に2つ以上の属性を供給し得ることに留意されたい。
【0033】
本発明の態様では、本発明の構造化された培養肉製品の中空繊維は、中空繊維が、1つ以上のマメ科タンパク質及び1つ以上の親水コロイドを含む。本発明の別の態様では、ボイドスペースは、細胞及び/又は細胞材料のボイドである。本発明のさらに別の態様では、ボイドスペースは、細胞又は細胞材料以外の材料で少なくとも部分的に充填される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】本発明の中空繊維の幾何学的配置の特定の実施形態を示す。図1Aは矩形のパターンを示し、図1Bは三角形のパターンを示す。図は、繊維の配置の例示のみを目的としている。本発明の実際の中空繊維カートリッジにおける繊維の間隔は、図示されているよりも大きな繊維間のボイドスペースを有することができる。同様に、個々の中空繊維間の間隔は変化し得る。
図1B】本発明の中空繊維の幾何学的配置の特定の実施形態を示す。図1Aは矩形のパターンを示し、図1Bは三角形のパターンを示す。図は、繊維の配置の例示のみを目的としている。本発明の実際の中空繊維カートリッジにおける繊維の間隔は、図示されているよりも大きな繊維間のボイドスペースを有することができる。同様に、個々の中空繊維間の間隔は変化し得る。
図2A】本発明の中空繊維での細胞の増殖の端部の見え方を表したものの特定の実施形態を示す。図は、いくつかの例では、細胞の増殖後であっても、最小限のボイドスペースが依然として存在し得ることを示す。
図2B】本発明の中空繊維での細胞の増殖の端部の見え方を表したものの特定の実施形態を示す。図は、いくつかの例では、細胞の増殖後であっても、最小限のボイドスペースが依然として存在し得ることを示す。
図3】Aが中空繊維の中心又は管腔であり、Bが多孔質中空繊維の壁であり、Cが細胞塊である、本発明の単一の中空繊維の断面の実施形態を表現したものを示す。
図4】異なる繊維の直径(OD=外径)に基づく培養肉(「肉」)、繊維及びボイドスペースの例示的な計算された割合を示す。当業者は、より大きい又はより狭いODの繊維についてこれらの図から推定することができるであろう。
図5A】3つの異なる繊維ODの培養肉(「肉」)、繊維及びボイドスペースの例示的な計算された割合を示す。
図5B】3つの異なる繊維ODの培養肉(「肉」)、繊維及びボイドスペースの例示的な計算された割合を示す。
図5C】3つの異なる繊維ODの培養肉(「肉」)、繊維及びボイドスペースの例示的な計算された割合を示す。
図6図5の例示的なデータを表形式で示す図である。
図7A】本発明の中空繊維の実施形態に関する例示的な計算データを表形式で示す。
図7B】本発明の中空繊維の実施形態に関する例示的な計算データを表形式で示す。
図7C】本発明の中空繊維の実施形態に関する例示的な計算データを表形式で示す。
図8】溶解したアルギネート:タンパク質混合物を示す。左から右へ順に大豆酸加水分解物、牛肉タンパク質単離物、ホエータンパク質単離物、玄米タンパク質単離物、エンドウ豆タンパク質単離物、大豆タンパク質単離物であった。
図9】様々なアルギネート単独(タンパク質なし)を示す。大きな瓶はオートクレーブ処理されている;小さな瓶はオートクレーブ処理されていない。
図10A】製造後の繊維を示す。
図10B】倍率100倍の繊維を示す。
図10C】倍率100倍の繊維を示す。
図10D】50倍の倍率での別の繊維を示す。
図11】本発明の中空繊維が、バイオリアクターにおいて必要とされるそれらの重量を容易に支えることができることを示す。示されている繊維は2メートルの長さである。
図12A】5:2のホエータンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。(A)100倍。
図12B】5:2のホエータンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。(B)5000倍。
図13A】5:2のホエータンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(A)スケールバー=10μm、(B)スケールバー=1μm、(C)スケールバー=1μm(図13Bと比較してより大きなスケールバーは、倍率が図13Bの倍率の約3倍であることを示す)、(D)スケールバー=100nm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図13B】5:2のホエータンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(A)スケールバー=10μm、(B)スケールバー=1μm、(C)スケールバー=1μm(図13Bと比較してより大きなスケールバーは、倍率が図13Bの倍率の約3倍であることを示す)、(D)スケールバー=100nm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図13C】5:2のホエータンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(A)スケールバー=10μm、(B)スケールバー=1μm、(C)スケールバー=1μm(図13Bと比較してより大きなスケールバーは、倍率が図13Bの倍率の約3倍であることを示す)、(D)スケールバー=100nm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図13D】5:2のホエータンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(A)スケールバー=10μm、(B)スケールバー=1μm、(C)スケールバー=1μm(図13Bと比較してより大きなスケールバーは、倍率が図13Bの倍率の約3倍であることを示す)、(D)スケールバー=100nm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図14A】大豆タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(A)100倍。
図14B】大豆タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(B)5000倍。
図15A】5:2の大豆タンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(A)スケールバー=10μm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図15B】5:2の大豆タンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(B)スケールバー=1μm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図16A】5:2の大豆タンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加をさらに示す。(A)図15Aとは異なる面積を示す:スケールバー=1μm、(B)スケールバー=200 nm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。また、本発明の食用中空繊維の腐敗しやすい性質を示す、図16Aに見られる細菌汚染も注目に値する。
図16B】5:2の大豆タンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加をさらに示す。(A)図15Aとは異なる面積を示す:スケールバー=1μm、(B)スケールバー=200 nm。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。また、本発明の食用中空繊維の腐敗しやすい性質を示す、図16Aに見られる細菌汚染も注目に値する。
図17A】カボチャタンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(A)1000倍。。
図17B】カボチャタンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(B)10,000倍。
図18A】カボチャタンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(A)20,000倍。
図18B】カボチャタンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(B)40,000倍。
図19A】5:2のカボチャタンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(A)スケールバー=10μm。試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図19B】5:2のカボチャタンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(B)スケールバー=1μm。試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図19C】5:2のカボチャタンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(C)スケールバー=100nm。試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図19D】5:2のカボチャタンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加を示す。(D)スケールバー=1μm。試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図20A】エンドウ豆タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(A)100倍。
図20B】エンドウ豆タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(B)5000倍。
図21A】牛肉タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(A)1000倍。。
図21B】牛肉タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(B)10,000倍。
図22A】牛肉タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(A)20,000倍。
図22B】牛肉タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(B)40,000倍。
図23A】5:2の牛肉タンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加をさらに示す。(A)スケールバー=1μm。試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図23B】5:2の牛肉タンパク質:アルギネートから作られた中空繊維の倍率の増加をさらに示す。(B)スケールバー=1μm。試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。
図24A】(A)スケールバー=1μm、(B)スケールバー=100nmを示す。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。図23A図23B及び図24Aからの1μmスケールは、中空繊維の異なる領域からのものである。
図24B】(A)スケールバー=1μm、(B)スケールバー=100nmを示す。これらの試料は、臨界点乾燥とそれに続くSEMを用いて作製した。図23A図23B及び図24Aからの1μmスケールは、中空繊維の異なる領域からのものである。
図25A】米タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(A)1000倍。
図25B】米タンパク質:アルギネートの混合物から作製された本発明の中空繊維の極低温SEMを示す。(B)5000倍。
図26】本発明の中空繊維でのC2C12マウス筋肉細胞の細胞の増殖を示す。細胞の増殖は、ATP生成を示す未処理発光単位(RLU)によって測定される相対的なものである。実施例1Cを参照されたい。
図27A】本発明の、実施例1Cに記載の中空繊維に増殖し付着した細胞を示す。(A)生細胞及び死細胞の両方の染色を示す。
図27B】本発明の、実施例1Cに記載の中空繊維に増殖し付着した細胞を示す。(B)生細胞の染色を示す。
図27C】本発明の、実施例1Cに記載の中空繊維に増殖し付着した細胞を示す。(C)死細胞の染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、食用及び/又は溶解可能な中空繊維、例えば構造化された培養肉の製造のための本発明の中空繊維を含むバイオリアクター、並びにそれを用いた構造化された培養肉の製造方法、及び本発明の中空繊維を用いて製造された構造化された培養肉を企図する。培養肉は、当技術分野では、細胞の大規模培養に適した実験室、工場又は他の製造施設で細胞から増殖させた肉又は肉様製品(本明細書では集合的に「培養肉」又は「培養肉製品」と呼ばれる)として定義される。
【0036】
「構造化肉製品」又は「構造化された培養肉製品」は、動物由来の本来の肉に類似する又は本来の肉を彷彿とさせるような質感及び構造を有する食肉製品又は培養肉製品である。本発明の構造化肉製品は、1)食感及び外観において、2)調理及び消費のために調理されるときの扱いやすさ(例えば、スライス、粉砕、料理などされる場合)において、及び3)人によって消費されるときの食感において、本来の肉に似た食感及び構造を有する。本発明の材料及び方法は、構造化された培養肉の製造に使用される場合、これらの基準のうちの少なくとも1つ、これらの基準のうちの2つ、又はこれらの基準のうちの3つすべてを達成する。従来技術は、これらの基準のいずれかを十分に満たす構造化肉製品を製造することができない。
【0037】
本発明の構造化肉製品は、本発明の中空繊維を含むバイオリアクター(後述)で適切な細胞(同様に後述)を培養することによって、これらの基準を満たす。本発明の中空繊維は、少なくともかなりの部分において、製品の所望の外観、扱いやすさ及び食感をもたらす最終的な構造化された培養肉製品に構造及び質感を与える。さらに、本発明の中空繊維は、構造化された培養肉製品への細胞の増殖に適した環境をもたらすのに役立つ。これに関連して、本発明の中空繊維は、培養された細胞の付着、筋細胞又は筋細胞様細胞に類似する(すなわち、構造及び外観において筋細胞に実質的に類似する)形態への細胞の伸長、及び筋細胞の筋細管又は筋細管様構造(すなわち、構造及び外観において筋細管に実質的に類似している)への形成に適した少なくとも1つの表面を設ける。
【0038】
本発明の食用及び/又は溶解可能な中空繊維は、親水コロイド(例えば、キサンタン、メチルセルロース、アルギネート、寒天、ペクチン、ゼラチン、グアー/タラ/ビーン/他のガム)、タンパク質(例えば、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質及びアミノ酸、例えば、様々なデンプン(トウモロコシ/ジャガイモ/イネ/小麦/ソルガム)、植物単離物(例えば、大豆/ゼイン/カゼイン/小麦タンパク質)、脂質、(例えば、遊離脂肪酸、トリグリセリド、天然ワックス及びリン脂質)、アルコール(例えば、ポリアルコール)、炭水化物及び他の天然物質、例えばアルギネートの1つ以上から作成される。さらに、細胞の付着及び細胞の増殖を助ける他の材料を中空繊維に添加するか、又は中空繊維にコーティングすることができることが企図されている。例えば、中空繊維添加剤又はコーティングは、植物から単離されるか、又はより単純な物質から合成される、当業者に公知の細胞外マトリックス(ECM)成分及び抽出物、ポリ-D-リジン、ラミニン、コラーゲン(例えば、コラーゲンI及びコラーゲンIV)、ゼラチン、フィブロネクチン、植物ベースのECM材料、コラーゲン様、フィブロネクチン様及びラミニン様材料を含む、当業者に公知のタンパク質、ヒドロゲル、又は他のコーティングの1つ以上であることが企図される。全体的な結果は、本発明の繊維が肉及び食肉製品の質感及び構造を付与し、本発明によって製造された構造化された培養肉製品に、実際の肉と同様の質感、外観、扱いやすさ及び食感を与えることである。
【0039】
より具体的には、本発明の中空繊維は、セルロース、キトサン、コラーゲン、ゼイン、アルギネート、寒天、イヌリン、グルテン、ペクチン、マメ科タンパク質、メチルセルロース、ゼラチン、タピオカ、キサンタン/グアー/タラ/ビーン/他のガム、タンパク質(例えば、様々な形態のトウモロコシ/ジャガイモ/イネ/小麦/モロコシデンプン、植物単離物及び大豆/ゼイン/カゼイン/小麦タンパク質を含むがこれらに限定されないポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質及びアミノ酸、これらはすべて当業者に公知である)、脂質(例えば、遊離脂肪酸、トリグリセリド、天然ワックス及びリン脂質)の1つ以上を含み得る。セルロースポリマーは、酢酸酪酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロースなどを含み得る。より具体的には、本発明の中空繊維は、1つ以上のマメ科タンパク質と親水コロイドとの混合物を含み得る。
【0040】
実施形態では、本発明の中空繊維は、食用で溶解可能であるか、食用又は溶解可能であることが企図されている。換言すれば、繊維は、食用であるか溶解可能であるか、又はその両方であり得る。さらに、溶解可能な繊維については、異なる溶解度が存在し得る。例えば、いくつかの繊維は、適切な溶媒(例えば、米国食品医薬品局(FDA)又は消耗可能な物質の安全性を評価する資格があると認識されている他の組織によって一般に安全であると認識されている非毒性溶媒)に曝すと容易に溶解し得る。他の繊維は、より溶解しにくい場合がある。これに関して、培養されている細胞が必要なレベルのコンフルエンスに達した後に、より溶解しにくい繊維を部分的に溶解することができ、それにより、本発明の構造化された培養肉に所望の食感及び質感をもたらすのに十分な繊維が残るが、本発明の構造化された培養肉製品を強靱又は噛み応えがあるように思わせ得る過剰な繊維は残らない。溶解性中空繊維の成分は、当業者に公知である。例えば、アルギネートは、Ca2+キレート剤に曝露されると溶解可能である。本発明の実施形態では、本発明の中空繊維は、繊維を部分的に溶解可能にする量のアルギネートを含むこと、及び/又は本発明の中空繊維を含むデバイスの繊維の何パーセントかがアルギネートを含むことが企図される。
【0041】
架橋剤。本発明の実施形態では、1つ以上の架橋剤が本発明の中空繊維に使用されることが企図される。架橋剤は、その名称が暗示するように、中空繊維の他の構成成分の1つ以上を結合して強化する。本発明の実施形態において、架橋剤は、本発明の中空繊維の溶解成分であってもよく、溶解成分の1種であってもよい。本発明によって企図される例示的な架橋剤及び架橋機構には、共有結合エステル架橋(米国特許第7,247,191号明細書)及びUV架橋(米国特許第8,337,598号明細書)が含まれるが、これらに限定されず、これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、中空繊維の製造における架橋剤の使用は、当業者に公知である。例えば、米国特許第9,718,031号明細書、第8,337,598号明細書、第7,247,191号明細書、第6,932,859号明細書、第6,755,900号明細書を参照されたい。これらすべては、全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
中空繊維製造技術は、当業者に知られている。(例えば、Vandekar,V.D.,Manufacturing of Hollow Fiber Membrane,Int’l J Sci&Res,2015,4:9,pp.1990-1994、及びそこに引用されている参考文献を参照されたい)。公知の方法には、溶融紡糸、乾式紡糸及び湿式紡糸が含まれるが、これらに限定されない。溶融紡糸では、ポリマーは通常、不活性雰囲気で溶融又はそれを越えるように加熱される。次いで、溶融ポリマーは、所望のサイズの中空繊維を生成するようなサイズのノズルである「紡糸口金」を通して押し出される。押し出されたポリマーは直ちに固化し、均一な構造及び寸法を有する毛細管が形成される。繊維をさらに延伸して、50pm未満の直径及び5pm程度の薄い壁の厚みを有する繊維を製造することができる。
【0043】
乾式紡糸は、ポリマーを非常に揮発性のある溶媒に溶解することを含む。溶媒/ポリマー混合物は、押出及び溶媒の蒸発後に加熱され、ポリマーは固化する。
【0044】
湿式紡糸は、方法が変更可能なより多くのパラメータを含むため、より汎用性がある。ポリマーと溶媒の混合物が押し出されて、非溶媒に浸され、それにおいて、溶媒と非溶媒の交換のためにデミックス及び/又は相分離が起こる。押し出すことと非溶媒に浸すことの間には、空隙が存在し、中空繊維膜の形成が始まる。
【0045】
溶媒の使用を排除又は最小限に抑えることができる技術は、冷間延伸による溶融紡糸(MSCS)である。この手法は、費用効果の高い製造をもたらすが、構造の制御及び食品材料の潜在的な劣化を犠牲にする可能性がある。この技術では、材料は押出のために加熱され、次いで中空繊維の壁に細孔を機械的に形成するように冷却されるときに引っ張られる。これらの技術の3つすべてが広く研究されており、それらが十分に要約されることが当技術分野で知られている(Tan,XM.and Rodrigue,D.,Polymers(Basel),2019,Aug 5:11(8)参照)。
【0046】
これらの技術の改変も当業者に知られている。例えば、複数のポリマー及びポリマー層から構成される中空繊維を製造するための改変版湿式紡糸押出方法が開示されているWO2011/108929号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。非合成材料からの中空繊維の製造も当業者に知られている。例えば、その全体が本明細書に組み込まれる、Suzukiの米国特許第4,824,569号明細書を参照されたい。
【0047】
実施形態では、本発明の中空繊維の巨視的構造は、繊維に沿った細胞の配向を促進することが企図される。これに関して、中空繊維が構築される成分分子の配向は、中空繊維の長さに平行、本質的に平行又は大部分に平行に配向されることが本発明によって望まれる。成分分子は、少なくとも中空繊維の外面に、細胞の付着を助け、細胞の配向を補助する表面の質感を作り出すことがさらに企図される。したがって、実施形態では、本発明の中空繊維の表面の質感は、細胞付着のための付着点を形成することが企図されている。別の実施形態では、本発明の中空繊維において増殖させた細胞(特に、筋細胞、筋細胞様細胞又は筋細胞の特徴を有する細胞)が、インビボで筋細胞に類似し、似ている中空繊維の長さに沿って配向し、延在することがさらに企図される。
【0048】
したがって、骨格の表面構造の配向は、形成している間の筋管の整列と直接相関する。あたかも骨格筋が既存の構造に沿って形成されることを望んでいるかのように考えることができる。線維束は、整列した筋管の形成のために骨格筋構造を厳密に模倣することが想定され得る。したがって、中空繊維バイオリアクターは、組織様細胞密度を達成するだけでなく、他の技術では達成されない筋管の整列も達成し、論じられているすべての技術の最も現実的な食感をもたらす。アライメント現象は、以下の、The alignment phenomena can be better understood by reviewing:My mistake:Decellularized Apium graveolens Scaffold for Cell Culture and Guided Alignment of C2C12 Murine Myoblast-Santiago Campuzano,2020,Ph.D.thesis,University or Ottawa,pp 58-59を検討することによってよりよく理解することができる。
【0049】
本発明の中空繊維は、本発明に適したサイズの範囲を有することが企図されている。本発明の中空繊維は、中空繊維上で増殖した細胞が実際の肉の密度と同様の密度を成し、細胞間に最小限のボイドスペースを有するようにスペースを空けて配置されることも企図されている。一実施形態では、本発明の中空繊維は、約0.1mm~約3.0mmの外径、約0%の多孔性(これを拡散ベースにする)~約75%の多孔性、及び約.008~約0.5mm又は約0.01mm~約0.2mmの壁の厚み、又は上部で具体的に反復されていない.008mm~0.5mmの任意の厚みを有することが企図されている。本発明者らは、このサイズが繊維の管腔を通る媒質の輸送に適しており、中空繊維の壁を通る媒質の適切な流れを可能にすると同時に、細胞の増殖を支えるのに十分な剛性を有し、さらに所望の最終生成物の構造、質感、扱いやすさ及び食感をもたらすことを見出した。しかしながら、所望の構造化された培養肉製品(例えば、牛肉、家禽、魚、豚肉など)に応じて、繊維の直径、壁の厚み及び多孔性の変化に関する他の実施形態が企図されており、後述する。
【0050】
繊維の多孔性。本発明の中空繊維は、繊維の壁を通る媒質の適切な流れを可能にすると同時に、細胞の増殖及び細胞の支えのための適切な表面を確実にする多孔性を有する必要がある。中空繊維の多孔性は、部分的に、中空繊維の壁の厚さ及び中空繊維の組成に関連する。壁が十分に薄い場合、0%の多孔性で十分であり、媒質が中空繊維の壁を通って拡散することを可能にする。本発明の中空繊維の多孔性は75%と高くてもよい。したがって、本発明の中空繊維の多孔性の範囲は、0%~約75%、約10%~約65%、約30%~約60%、又は上部で具体的に反復されていない0%~75%の間の任意のパーセンテージの値である。
【0051】
本発明の中空繊維は、細孔形成ステップを経てもよい。細孔形成機構は、膜形成の分野で周知の以下の技術のうちの1つであろう:IPS=熱誘起相分離、NIPS=非溶媒誘起相分離、VIPS=蒸気誘起相分離、MSCS=伸長と組み合わせた溶融紡糸(Review on Porous Polymeric Membrane Preparation.Part II:Production Techniques with Polyethylene,Polydimethylsiloxane,Polypropylene,Polyimide,and Polytetrafluoroethylene Xue Mei Tan 1,2,2019を参照)。すべてのシナリオにおいて、ポリマーは、熱溶融又は化学溶解のいずれかによって液相になる。そこからポリマーを円筒状に押し出し、スピンドルの上に引き込む。押出ステップの間、中空繊維形態がそれ自体について崩壊するのを防止するために、ボア流体を使用することができる。押出ノズルと巻戻しスピンドルとの間には、水の槽又は大気環境チャンバなどの細孔形成チャンバも存在し得る。
【0052】
本発明はまた、バイオリアクターにおける本発明の中空繊維の構成を企図する。繊維の構成は、繊維の位置決め及びスペーシングの一方又は両方を含むことができる。繊維は、コンフルエンスで細胞間に最小限のボイドスペースを有する細胞集団の増殖を可能にする任意の構成で構成され得る。例えば、繊維は、正方形/長方形(行と列、図1Aを参照されたい)又は三角形/六角形(ハニカム、図1B参照)のパッキングモードで配向することができる。他のパッキング/スペーシングの構成を図2に示す。したがって、一実施形態では、繊維は、端から見たときに、行及び列の順序付けられたパターンを形成するように配置されることが企図されている。別の実施形態では、繊維は、端部で見ると、ハニカムパターンを形成することが企図されている。別の実施形態では、本発明の繊維はランダム又は半分ランダムに配置されることが企図されている。別の実施形態では、中空繊維は、様々な密度の規則的又は半規則的なパターンで配置されることが企図されている。
【0053】
中空繊維は、外径が約0.1mm~約3.0mm、約0.5mm~約2.0mm及び約0.8mm~約1.3mmの範囲であり得、引用された値の間の任意の値であり得る。1.0mmの中空繊維は、外径の周りに約0.3mm~約0.5mmの肉の増殖を想定している。約1.1mmの端部直径は、約85中空繊維/cmの肉を生じることができる。
【0054】
別の実施形態では、繊維は、様々な程度又は量の繊維間の空間を有することが企図されている。例えば、より高い密度の繊維の列がより低い密度の繊維間に散在することを使用して、天然の魚肉で一般的であるような、最終的な構造化された培養肉製品の質感の変化を生成することができる。さらにまた、様々な直径、多孔性及び壁の厚みの繊維を同じ中空繊維カートリッジで使用して、やはり本来の肉の外観、質感、扱いやすさ及び食感をシミュレートすることができることが企図されている。
【0055】
任意の構成において、繊維は、繊維間のスペーシングが、媒質の適切な流れ(及びそこに含まれる栄養素、増殖因子など)が細胞塊のすべてに到達することを可能にする距離であるようにスペーシングされる。これは、当然のことながら、少なくとも部分的には、媒質の流速及び中空繊維の壁の多孔性に関連するが、中空繊維の外壁の表面から細胞までの物理的距離に大きく関連する。換言すれば、媒質及び栄養素は、細胞塊を通って限られた距離だけ移動又は消失する。現在、酸素及び栄養素の拡散の最大値は200μmであると考えられている。Rouwkema,J.,et al.,(2009)Supply of Nutrients to Cells in Engineered Tissues,Biotechnology and Genetic Engineering Reviews,26:1,163-178.したがって、繊維間のスペーシングは、一方の繊維の外壁から隣接する繊維の外壁まで約400μmにすべきである。いかなる特定の寸法にも限定されることなく、図2は、中空繊維の構成に関する細胞塊を表現したものを示す。いかなる特定の寸法にも限定されないが、図3は、Aが中空繊維の中心又は管腔であり、Bが多孔質中空繊維の壁であり、Cが細胞塊である、本発明の単一の中空繊維の断面の実施形態を表現したものを示す。媒質が中空繊維と中空繊維間の間隔の両方を通って流れる培養条件では、間隔はより大きくなり得る。例えば、間隔は、一方の繊維の外壁から隣接する繊維の外壁まで800μmであり得る。これらの図は、培養方法が拡散のみに依存する場合である。しかしながら、(例えば)ポンプの使用は、中空繊維から、中空繊維間の細胞培養スペースを通って、(拡散のみに頼るのではなく)ハウジングの出口への媒質の流れを生じさせ、繊維をさらに離すことを可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、繊維間の最大の距離は、約0.05mm(50μm)~約5.0mm、約0.1mm~約3.0mm、約0.1mm~約2.0mm、約0.1mm~約1.0mm若しくは約0.2mm~約0.5mm、又は記載された値の間の任意の距離であると企図されている。媒質が中空繊維の中心から培養物を通ってハウジングの出口に流れることが好ましい実施形態であるが、媒質の流れは逆方向であってもよく、又は所望に応じて一方向から他方向に交互になってもよいことも企図されている。媒質の流れる方向を交互にすることは、すべての細胞が適切な媒質を供給することを確実にするのを補助すると考えられる。
【0056】
図4~7は、本発明にとって許容できる繊維、細胞、及びボイドスペースの間の比率の計算されたデータ及び概略的な表現を提示する。図4は、異なる繊維の直径(OD=外径)に基づく培養肉(「肉」)、繊維及びボイドスペースの例示的な計算された割合を示す。当業者は、より大きい又はより狭いODの繊維についてこれらの図から推定することができるであろう。図5は、3つの異なる繊維ODの培養肉(「肉」)、繊維及びボイドスペースの例示的な計算された割合を示す。図6は、図5の例示的なデータを表形式で示す。図7は、本発明の中空繊維の実施形態に関する例示的な計算データを表形式で示す。
【0057】
本発明の実施形態では、無作為性の程度は、本発明の中空繊維の離間に固有のものである。前の段落で与えられた図は、所与のアセンブリの平均繊維間距離である。本発明の実施形態では、スペーサ及び/又は組立技術を使用して、繊維間の距離を確保、正規化、又は制御することができる。例えば、Han G,Wang P,Chung TS.,Highly robust thin-film composite pressure retarded osmosis(PRO)hollow fiber membranes with high power densities for renewable salinity-gradient energy generation,Environ Sci Technol.2013 Jul 16;47(14):8070-7.Epub 2013 Jun 28又はChun Feng Wana,Bofan Li a,Tianshi Yang a,Tai-Shung Chung,Design and fabrication of inner-selective thin-film composite(TFC)hollow fiber modules for pressure retarded osmosis(PRO),Separation and Purification Technology,172:32-42,2017を参照されたい。
【0058】
細胞密度が高くなりすぎるか、又は細胞塊の厚さが厚くなりすぎると、媒質が中空繊維から最も離れた細胞に到達し得るのが困難になる。これらの細胞に対する媒質の欠如は、リアクターの死細胞及び/又は細胞が増殖できないデッドスペースをもたらし得る。当然ながら、媒質は中空繊維カートリッジを通ってハウジングの出口に流れる必要がある。すなわち、媒質の流れは、少なくともコンフルエンスが達せられ、構造化された培養肉製品が取り入れられるまで維持される必要がある。当業者は、本明細書の教示に基づいて、所与の所望の構造化された培養肉製品について、本発明の繊維の正確な間隔及び多孔性を計算することができる。
【0059】
本発明の中空繊維は、本明細書で「中空繊維カートリッジ」と呼ばれるものに配置及び固定することができる。一実施形態では、中空繊維カートリッジは、中空繊維の端部を所望の配置でエンドピースに固定することによって作製されることが企図されている。例えば、各繊維は、第1の端部及び第2の端部を有する。各端部は、エンドピース、すなわち第1及び第2のエンドピースに固定される。エンドピースは、例えば、不活性であり、細胞に対して非毒性であることが当技術分野で知られている樹脂又はプラスチックであり得る。中空繊維の第1又は第2の端部の少なくとも一方は、中空繊維の内側管腔が外部環境と流体連通するようにエンドピースに配置される。したがって、エンドピースの中空繊維のこの位置決めにより、中空繊維の外部環境(すなわち、中空繊維の外側であるが、例えば滅菌バイオリアクターの内側)から中空繊維の内腔に媒質を流すことができる。
【0060】
当業者は、中空繊維をモジュール又はカートリッジに組み立てる方法を理解している。これらの技術は、本発明の中空繊維に適用可能である。手短に言えば、紡糸後、中空繊維は長さに切断され、繊維の端部は、繊維端部の周りを流れて固化する樹脂に包まれる(すなわち、ポッティングされる)。時には、「ポッティング溶液」、すなわち液体樹脂が繊維の細孔に入ったり、細孔を塞いだりしないように、繊維の部分を物質(例えば、パリのプラスター又は当業者に知られている他の容易に除去可能な材料)で覆って繊維の細孔を閉じることができる。例えば、Vandekar,V.D.,Manufacturing of Hollow Fiber Membrane,Int’l J Sci&Res,2015,4:9,pp.1990-1994、及びそこに引用されている参考文献を参照されたい。本発明では、本発明の構造化された培養肉の製造に使用するために束がハウジングに挿入されると、「ポッティングされた」束の端部の一方又は両方がトリミング又は切断されて繊維の開口端部を露出させ、媒質の流れを可能にする。
【0061】
さらに、いくつかの実施形態では、本発明の中空繊維カートリッジは、第1のエンドピースと第2のエンドピースとの間に所望の距離を維持するための固定デバイスを有することが企図されている。これは、例えば、本発明の中空繊維カートリッジをバイオリアクターハウジングなどに容易に挿入するために必要である、又は好ましい場合がある。
【0062】
したがって、一実施形態では、本発明の中空繊維カートリッジは、所望の配置で配置された多数の中空繊維を含むことが企図されている。本発明の中空繊維は、第1の端部と第2の端部とを有する。中空繊維の第1の端部及び第2の端部を第1及び第2のエンドピースに固定することによって、配置が維持される。中空繊維は、記載のように固定されると、そのとき、互いに平行、実質的に平行、又は本質的に平行に配置される。さらに、第1及び第2のエンドピースは、互いに平行、実質的に平行、又は本質的に平行に配置される。さらにまた、本発明の中空繊維カートリッジの中空繊維は、本発明の中空繊維カートリッジの端部のピースに対して垂直、実質的に垂直又は本質的に垂直に配置される。中空繊維カートリッジの直径及び長さは、製造される所望の構造化された培養肉製品及びバイオリアクターの構成次第である。
【0063】
本発明の実施形態では、本発明の中空繊維カートリッジの中空繊維は、約40~約120/cmの平均密度、約60~約100/cmの平均密度、約70~約90/cmの平均密度、又は上記の値の間であるが、具体的に反復されていない任意の値であることが企図される。
【0064】
本発明の実施形態では、本発明の中空繊維カートリッジの中空繊維は、細胞の添加前に中空繊維間にボイドスペースを有し、中空繊維間のボイドスペースは、中空繊維カートリッジの全面積の約25%~約75%、又は中空繊維カートリッジの全面積の約40%~約60%、又は上記の値の間であるが、特異的に反復されないの任意の値であることが企図される。
【0065】
本発明の実施形態では、本発明の中空繊維カートリッジは、ハウジングに取り外し可能に挿入されるように設計されることが企図される。すなわち、カートリッジは、本発明の構造化された培養肉製品の任意のさらなる所望の加工のために、製造運転の開始時にハウジングに挿入され、製造運転の終了時に取り出される、すなわち取り入れられることができる。構造化された培養肉製品の取り入れ後、本発明の新しい中空繊維カートリッジをハウジングに挿入し、方法を繰り返すことができる。これに関して、本発明の中空繊維カートリッジ用のハウジングは、バイオリアクター又はバイオリアクターシステムの一部である。
【0066】
リアクターの構成。本発明は、培養物及び除去される廃棄物を通して適切な媒質の流れを維持することができる限り、いかなる特定のリアクターの構成又はリアクターのシステムの構成にも限定されない。中空繊維リアクターは、典型的には管の形状であるが、楕円形、平坦(シート状)、長方形、又は任意の他の形であってもよい。好ましい実施形態では、リアクターは、本発明の中空繊維を含む挿入可能/取り外し可能なインサートを含む。コンフルエントな細胞の増殖(本明細書で定義されるようなもの)に達した後、インサートを除去し、インサート端部の除去及び任意のさらなる所望の処理によって製品を完成させることができる。さらなる処理は、例えば、スライス、表面テクスチャ加工、香味料の追加などの形態をとることができる。又は、取り入れ及びデバイスの分解の前にさらなる肉の改善を行うことができる。例えば、媒質を中空繊維デバイスから洗い流すことができ、次いで添加剤を繊維の中又は周囲に直接送り込むことができる。
【0067】
適切なリアクターシステムの非限定的な例。最も適切なタイプのリアクターシステムは供給バッチシステムであるが、任意の利用可能なリアクターが本発明の中空繊維及び中空繊維カートリッジと共に使用するのに適していることが企図されている。例えば、Mobius(R)システム(MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)は、本発明で使用するために容易に変換することができる商用システムの例である。構造化された培養肉製品が製造されるバイオリアクター(すなわち、本発明の中空繊維を含むリアクター)に、別のバイオリアクターで増殖させた細胞を播種してもよい。中空繊維デバイスを播種しているバイオリアクター(細胞の増殖(増殖)及び細胞の拡張に適したリアクター)は、既存の市販のリアクター、例えば撹拌タンク又は波型リアクターであり得る。増殖/拡張バイオリアクターは、例えば撹拌タンク又は波型リアクター(当業者に知られているもの)であり、懸濁液、凝集バイオマス、マイクロキャリア培養物、又は当業者に知られている他の適切なリアクターであることが企図される。製造バイオリアクター(すなわち、本発明の中空繊維を含むリアクター)は、例えば、単回使用、複数回使用、半連続又は連続であってもよいことが企図されている。本発明はさらに、本発明の中空繊維を含む複数のリアクターのマニホールドを企図する。
【0068】
したがって、本発明の例示的なリアクターシステムは、本発明のより多い中空繊維カートリッジ、前記中空繊維カートリッジを保持するように寸法決めされたハウジング、前記ハウジングの1つ以上の入口に流体接続された媒質供給源、前記ハウジングの1つ以上の媒質出口及び前記媒質入口及び/又は出口を通して前記中空繊維カートリッジに媒質を供給し、及び/又は廃棄媒質を除去するための1つ以上のポンプの1つを備えることが企図されている。さらにまた、入口は、中空繊維の内部に流体接続されている。さらにまた、中空繊維バイオリアクターは、自動コントローラ又は自動制御システムを備えてもよい。
【0069】
本発明はまた、食肉製品を製造する方法であって、例えば100,000細胞~1億(10~10)の密度で1つ以上の筋細胞様特徴を発現する筋細胞、筋細胞様細胞又は遺伝子操作された細胞の1つ以上を、本発明の中空繊維リアクターの中空繊維間のボイドスペースに播種し(Radisic,et al.,Biotechnol Bioeng,2003 May 20:82(4):403-414)、約80%~約99%のコンフルエンス、85%~約99%のコンフルエンス、約90%~約99%のコンフルエンス、約95%~約99%のコンフルエンス、約98%~約99%のコンフルエンス又は約100%のコンフルエンス(又は列挙されたパーセントの値の間の任意の値)を達成するまで細胞を培養し、前記第1の保持デバイス及び前記第2の保持デバイスをそれぞれ前記中空繊維の第1の端部及び第2の端部から除去することを含む、方法を企図している。
【0070】
播種後、中空繊維カートリッジは、中空繊維の第1の端部及び第2の端部の一方又は両方を介して中空繊維の内部に、中空繊維の壁を介して前記細胞が播種された中空繊維間のボイドスペースに、及び1つ以上の前記出口を介して前記ハウジングに供給される媒質を有する。別の実施形態では、媒質はまた、デバイスの入口及び出口の両方から繊維間を流れることができることが企図されている。例えば、1つの流体経路は繊維の壁を通り、第2の流体経路は繊維の周りにある。デバイスは、複数の入口及び出口を有することができることが企図されている。細胞がコンフルエンスに達した後、任意の残留媒質及び廃棄物を洗い流し、中空繊維の内部及び/又は細胞間の任意の残りのボイドスペースに脂肪、香味料、色、塩及び防腐剤のうちの1つ以上を注入する。
【0071】
本発明の構造化された培養肉製品への添加に適した脂肪には、飽和、一価不飽和、多価不飽和脂肪、例えばトウモロコシ油、キャノーラ油、ヒマワリ油及びベニバナ油、オリーブ油、ピーナッツ油、大豆、亜麻仁油、ゴマ油、キャノーラ油、アボカド油、種子油、ナッツ油、ベニバナ及びヒマワリ油、パーム油、ココナッツ油、オメガ-3、魚油、ラード、バター、加工動物脂肪、脂肪組織、又は細胞農業由来の脂肪、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。オレオレジンなどの合成脂肪も使用することができる。実際、食品医薬品局(FDA)によって認識される任意の脂肪は、本発明における使用に適しており、本発明の構造化された培養肉製品における使用が企図される。FDA食品添加物リストには、天然物質及び抽出物(NAT)、栄養素(NUTR)、エッセンシャルオイル及び/又はオレオレジン(無溶媒)(ESO)がある。
【0072】
本発明の構造化された培養肉製品に使用するのに適した香味料には、FDAの食品添加物リストに記されている任意の香味料が含まれるが、これらに限定されない。これらは、天然香味剤(FLAV)、エッセンシャルオイル及び/又はオレオレジン(溶媒料)(ESO)、酵素(ENZ)、天然物質及び抽出物(NAT)、非栄養甘味料(NNS)、栄養甘味料(NUTRS)、スパイス、他の天然調味料及び香味料(SP)、合成香味料(SY/FL)、燻蒸剤(FUM)、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン及びアセスルファムカリウム及び酵母抽出物を含む人工甘味料、又はそれらの組み合わせとして文書化されてもよく、本発明の構造化された培養肉製品における使用が企図される。
【0073】
本発明の構造化された培養肉製品に使用するのに適した質感向上剤としては、限定されないが、裏ごしされた材料、グアーガム、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、ベータグルカン、大豆、小麦、トウモロコシ又はイネ単離物及びビート繊維、エンドウ繊維、竹繊維、植物由来繊維、植物由来グルテン、カラギーナン、キサンタンガム、レクチチン、ペクチン、寒天、アルギネート及び他の天然多糖類、穀物殻、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び塩、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ、本発明の構造化された培養肉製品に使用することが企図される。これらは、可溶化剤及び分散剤(SDA)並びに天然物質及び抽出物(NAT)としてFDAの食品添加物リストに記録され得る。
【0074】
本発明の構造化された培養肉製品に使用するのに適した栄養添加剤としては、ビタミン、微量元素、生物活性化合物、内因性酸化防止剤、例えばビタミンA、ビタミンB複合体、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、亜鉛、チアミン、リボフラビン、セレン、鉄、ナイアシン、カリウム、リン、オメガ-3、オメガ-6、脂肪酸、マグネシウム、タンパク質及びタンパク質抽出物、アミノ酸塩、クレアチン、タウリン、カルニチン、カルノシン、ユビキノン、グルタチオン、コリン、グルタチオン、リポ酸、スペルミン、アンセリン、リノール酸、パントテン酸、コレステロール、レチノール、葉酸、食物繊維、アミノ酸、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されず、本発明の構造化された培養肉製品での使用が意図されている。一般に安全(GRAS)と認識されているか、又はFDAによって承認されている任意の食品添加物は、本発明の構造化された培養肉製品における使用が企図され、本明細書に組み込まれる。例えば、www.fda.gov/food/food-additives-petitions/food-additive-status-listを参照されたい。
【0075】
一般に安全と認められている(GRAS)か、又はFDAによって承認されている、天然又は人工の任意の食品着色料は、本発明の構造化された培養肉製品における使用が企図されている。例えば、www.fda.gov/industry/color-additive-inventories/color-additive-status-listを参照されたい。
【0076】
予言細胞タイプ。本発明の中空繊維は、インビトロ又は実験室で増殖させた肉及び食肉製品、すなわち本発明の構造化された培養肉の製造に適した特定の細胞型を増殖させるために使用されるように設計される。したがって、多くの異なる種類の細胞が中空繊維(本発明の中空繊維カートリッジにおいて、必要に応じて)において増殖することができるが、繊維は、筋肉細胞(すなわち、筋細胞)、又は筋肉細胞の特徴を有する細胞、又は筋肉細胞の特徴を有するように遺伝子操作された細胞(本明細書ではまとめて筋肉細胞又は筋細胞と呼ぶ)を増殖させるために使用されるように開発され、コンフルエンスになり、筋肉(すなわち、肉)の自然の構造を模倣するように開発された。好ましくは、筋肉は骨格筋である。すなわち、本発明の中空繊維は、筋細胞を増殖させて筋線維又は筋原線維を得るのに適しているように、本発明者らによって設計されている。さらに、本発明の中空繊維上及び本発明の中空繊維を含むリアクター内で、他の種類の細胞を増殖させることができる。これらの細胞は、独立して、又は筋肉細胞と組み合わせて増殖させることができる。例えば、脂肪細胞又は脂肪細胞の特徴を有するか、又は脂肪細胞の特徴を有するように遺伝子操作された細胞(本明細書では集合的に脂肪細胞と呼ばれる)を筋肉細胞と共に培養して、本来の筋肉又は肉に似た最終生成物を得ることができる。本発明の中空繊維は、本発明の筋肉細胞と共培養される他の細胞、例えば線維芽細胞、線維芽細胞の特徴を有する細胞、又は線維芽細胞の特徴を有するように遺伝子操作された細胞を含めることにも適している。
【0077】
筋肉細胞と脂肪細胞との共培養に特に関して、脂肪細胞に対する筋肉細胞の比は、99:1、95:5、92:8、90:10、88:12、85:15 82:18、80:20、75:25、又は100:0から75:25までの任意の比であってもよい。
【0078】
本発明での使用に適した細胞は、現在食物が得られている任意の動物から得られてもよく、又はそれに由来していてもよい。重要な例は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ブタ(例えば、マグロ、サケ、タラ、ハドック、サメなどの魚)、甲殻類、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルなど)である。養殖するのではなく伝統的に捕獲されている動物(例えば、シカ、ヘラジカ、アメリカヘラジカ、クマ、ウサギ、ウズラ、シチメンチョウなど)又はそれらの組み合わせなど、より外来性の細胞源を使用することもできる。
【0079】
本発明で使用される細胞は、所望の特徴を有する分化細胞の生成に適した任意の様式によって誘導され得る。例えば、分化した筋細胞様特徴、脂肪細胞様特徴などを有する細胞を誘導するのに適した任意の手順である。筋細胞のそのような特徴には、例えば、長い管状細胞の外観を有し、ミオシン及びアクチンの大きな相補体を有することが含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。筋細胞はまた、他の筋細胞と融合して筋原線維を形成することができ、筋原線維は、筋肉、すなわち肉、その特有の質感を与えるのに役立つ筋肉の単位である。脂肪細胞(当技術分野では脂肪細胞(lipocyte)や脂肪細胞(fat cell)とも呼ばれる)のそのような特徴には、例えば、細胞の体積の90%以上を占めることがある大きな脂質空胞を有することが含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。本発明の中空繊維は、少なくとも部分的に、骨格筋に典型的に見られる結合組織(当技術分野で「筋膜」と呼ばれる)の置換をもたらす。
【0080】
本発明において有用な細胞には、間葉系幹細胞又は人工多能性幹細胞(iPSC)に由来する細胞が含まれるが、これらに限定されない。iPSCは、多数の細胞型を誘導することができるそれらの多能性のある状態に戻るように遺伝子操作された細胞である。換言すれば、iPSCは、体細胞から直接作製することができる多能性幹細胞である。この技術は2006年に最初に報告され(Takahashi K,Yamanaka S,25 August 2006,”Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors”Cell,126(4):663-76)、その時点から進歩し(例えば、Li,et al.,30 April 2014,”Generation of pluripotent stem cells via protein transduction” Int.J.Dev.Biol.,58:21-27を参照)、筋肉細胞の生成を含み(例えば、Rao,et al.,9 January 2018,”Engineering human pluripotent stem cells into a functional skeletal muscle tissue”Nat Commun.,9(1):1-12)、当業者に周知である。
【0081】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0082】
本開示の要素又はその好ましい実施形態を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、1つ以上の要素があることを意味することを意図している。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味する。
【0083】
移行句の「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」は、MPEP 2111.03(特許審査手続便覧;米国特許商標庁)に示されている意味を有する。移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」を使用するいずれかの請求項は、本発明の必須の要素のみを列挙していると理解され、従属請求項に列挙された他のいずれかの要素は、それらが従属する請求項に列挙され、本発明にとって必須ではないと理解される。
【0084】
すべての範囲は、その数値を含むすべての整数、分数及び小数を含む、引用された範囲内のすべての値を含む。
【実施例
【0085】
[実施例1A]
本発明の中空繊維の製造の予測的な例。
【0086】
ゼイン、グルテン及びアルギネートのブレンドをグリセロール及びエタノールの溶媒ブレンドに混合する。次いで、この粘性混合物は、0.5μmの内径を有する加熱された紡糸口金を通して押し出される。ノズルを出ると、溶媒を豊富に含む繊維が水槽に沈められ、中空繊維の相分離が完了する。巻き戻し中の繊維への張力は、引っ張りの効果をもたらし、繊維をさらに構造化する。次いで、繊維のスプールは、繊維が平行な向きにあるところで切断され、束を生成する。そこから、束が次いでカートリッジに挿入され、ポッティングされ、次いで切断される。追加のエンドキャッピングステップは、管腔を通る流体の経路を完成させる。
【0087】
窪みを含むデバイスは、円筒形(カートリッジ)形式又は長方形(カセット)形式のいずれかであり得る。両方の構成において、中空繊維は、ポッティングステップが開始される前に所望のように配向される。中空繊維は、繊維の周りに媒質が流れるのを補助するためにコアの周りに巻き付けられ得る。コアの構成要素の代わりに、外部ハウジングと中空繊維との間に拡散障壁を使用することができる。ポッティング材料は、中空繊維と同じ材料、又は別のGRAS承認材料であってもよい。又は、食品グレードの合成ポリマーであってもよい。ポッティング材料の固化は、熱硬化性又は熱可塑性であり得る。エンドキャップがハウジングに接着される前に、中空繊維のすべての開口端を露出させるためのいくつかの切断手順がある。エンドキャップは、繊維の管腔への入口/出口を有する。繊維の周りの流体の経路の入口/出口は、ハウジング又はエンドキャップに一体化されてもよい。
【0088】
[実施例1B]
本発明の例示的な中空繊維の製造例
エタノールへのゼインの溶解性により、ゼインが、この出願由来の興味深い材料となる。残念なことに、これは、水の槽での部分的な溶解性のために、押出ベースの相分離技術ではあまり機能しない。本発明者らは、ゼインが一成分であり、アルギネート、キトサン、又はセルロースなどの二次ポリマーを使用して三次元構造の設定を助ける系を企図した。しかしながら、これらの親水性及び疎水性ポリマーのブレンドは困難であった。
【0089】
アルギネートはエタノールで沈殿させることができる。本発明者らは、2%のアルギネートが約25%のエタノールでゲル化し始めることを見出した。本発明者らは、最終生成物の孔径を増加させる可能性がある細孔形成挙動を助けると考えて、凝固槽又はポリマードープ自体のいずれかにアルコールが含まれる系を企図した。
【0090】
アルギネート及びタンパク質系:
このシステムを非常に驚くべきかつ予想外にしたのは、大量のタンパク質含有量で混合することができ、しかも粗い溶媒、酸、又は塩基を使用せずに中空繊維構造を瞬時に凝固させることができることであった。
【0091】
本発明者らは、15g/Lの塩化カルシウムを架橋剤として含む2gのアルギン酸ナトリウム、7gのタンパク質粉末及び91gの水又は緩衝液の乾燥成分を秤量することによって、混合物を作製した。2:7アルギネート:タンパク質の固形分の比をもたらす。アルギネート:タンパク質の比は、2:0、2:2、2:4、2:5、2:7、2:9からも作製した。系は、ひと際高いタンパク質の比率に押し上げることができ、タンパク質は植物又は動物由来であり得る。図8に示すように、ここで例示するタンパク質試料は、(左から右へ順に)大豆酸加水分解物、牛肉タンパク質単離物、ホエータンパク質単離物、玄米タンパク質単離物、エンドウ豆タンパク質単離物、大豆タンパク質単離物であった。示されていないが、本発明者らは、他のものと共に、カボチャタンパク質単離物、ヒマワリ種子タンパク質単離物も実験した。
【0092】
これらの組み合わせをホモジナイザーによって混合し、続いてハイブリダイザーで、40℃で一晩混合した。動物由来のタンパク質は、見られる透明性のレベルに由来する溶解能を有することが観察された。これは、植物タンパク質分離株の中の不溶性成分(通常、固体の10%未満)に起因する可能性が高い。
【0093】
これらのタンパク質単離物を、シリンジポンプにより、rame-hart instrument co(Succasunna、ニュージャージー州)から供給された同軸のニードルを通して押し出した。使用した凝固槽は、15g/L塩化カルシウムを含むMilliQ水(MilliporeSigma、マサチューセッツ州ベッドフォード)であった。カルシウム槽で数分間静置した後、繊維を除去し、MilliQ水ですすぐ。すすいだ後、それらをMilliQ水のジャーに浸し、126℃で1時間オートクレーブ処理した。
【0094】
本発明者らは次に、タンパク質含有のない(すなわち、タンパク質を含まない)アルギネート繊維を使用して、熱処理/オートクレーブからの効果があるかどうかを実証した。繊維は固形分に対して100%アルギネートであった。図9に示す大きな瓶はオートクレーブ処理したが、小さな瓶はオートクレーブ処理しなかった。オートクレーブされた繊維は白色に変わるので、光はもはやそれらを通過せず、ポリマー鎖の構造変化があることを示すと結論付けることができる。
【0095】
図12~25は、この例の食用中空繊維の多孔性を示すSEMを示す。これらの混合物のそれぞれが、著しく異なる表面構造、スキニング効果、表面多孔性、並びに内部多孔性を有することは予想外であった。植物系タンパク質単離物は、繊維表面全体に大きな空隙を有する傾向があり、これは表面から脱落した不溶性粒子から形成されると予想される。これらのデータはまた、驚くべきことに、予想外に、表面の構造及び孔径が、タンパク質の供給源を変えることによって、又は(すなわち、1つ以上)タンパク質を組み合わせることによって制御され得ることを示す。
【0096】
図10は、繊維の外径及び内径を示す。繊維の外径及び内径は、同軸ニードルを通るドープの流量によって制御した。繊維の寸法は、ノズルの直径、流量、槽からの距離、及び理論的には、繊維の延伸/張力を通して調整した。図11は、製造された繊維がバイオリアクターに入る必要があるとき、それらの湿潤重量を容易に支えることができることを示す。図11に示す例は2メートルの繊維であるが、はるかに長い繊維を作製することができ、それらの自重を支えることができる。
【0097】
[実施例1C]
本発明の中空繊維での細胞の増殖。
【0098】
実施例1Bに詳述されているようにして作製した、牛肉タンパク質:アルギネート、玄米タンパク質:アルギネート又はエンドウ豆タンパク質:アルギネートを含む中空繊維をPBSで洗浄し、DMEM/F12、1×グルタミン及び10%ウシ胎児血清(FBS)で、15mlコニカルチューブ中で一晩インキュベートした。C2C12細胞(マウス筋肉細胞株、ATCC、バージニア州マナサス)を100,000細胞/2mlで播種した。細胞を6日間増殖させ、2つの時点、3日及び6日でアッセイした。細胞の増殖をATP生成によってアッセイした(CellTiter-Glo(R)2.0 Cell Viability Assay、カタログ番号G 9421、Promega、ウィスコンシン州マディソン)。読み出しは生の発光単位(RLU)で行い、結果は相対的かつ線形的であった。3日目のデータが示されている図26を参照されたい。各中空繊維配合物(牛肉:アルギネート、米:アルギネート、エンドウ豆:アルギネート)は、2つの異なる製造試行で製造され、データでは1又は2として示されている。各条件を3連で実行した。バーは標準偏差を示す。玄米:アルギネート混合物は、強い細胞の増殖を支えるようである。牛肉タンパク質:アルギネート及びエンドウ豆タンパク質:アルギネート混合物も細胞の増殖を支える。
【0099】
玄米タンパク質での細胞の増殖及び細胞の付着;本発明のプロトコルに従って製造されたアギネート中空繊維は、他の繊維及び製造試行の代表である。図27は、玄米で作られた中空繊維での細胞の付着及び増殖を示す。アルギネート1中空繊維を細胞培養の3日目に運用する。図27Aは、CellTrace(商標)Calcein Green,AMで検出された生細胞及びBOBOTM-3ヨウ化物を含む死細胞を用いたLIVE/DEAD(商標)Cell Imaging Kit(ThermoFisher、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用した生細胞及び死細胞の両方の染色を示す。図27Bは、Calcein Green,AMによる生細胞の染色を示し、図27Cは、同じ視野のBOBO(商標)-3による死細胞染色を示す。この組み合わせた画像から明らかなように、生細胞は細胞塊の大部分を構成する。この実施例は、本発明の中空繊維が細胞の付着及び増殖を支えていることを示す。
【0100】
[実施例2]
本発明のカートリッジの設計の予測的な例示。
【0101】
カートリッジは、特定の流体経路を有するように設計されている。第1の流体経路は、媒質が繊維を排他的に通ることを可能にする入口及び出口を有する。この流体経路は、特定の媒質リザーバに接続される。第2の流体経路は、繊維の周りの一方向の流れのために設計されている。2つの入口は一方のエンドキャップ上にあり、2つの出口は他方のエンドキャップ上にある。均一な流れを作り出すために、カートリッジのコア壁とシェルとの間にほぼ同じ数の繊維が存在するコアがカートリッジの中心にある。カートリッジの長さは、カートリッジ全体の細胞の増殖の均一性を最適化するために、中空繊維の内径及び壁の厚みに基づいて設計される。
【0102】
[実施例3]
本発明の中空繊維を本発明のバイオリアクターへ入れるアセンブリの予測的な例示。
【0103】
デバイスは、細胞の増殖システム全体に実装された後、バイオリアクターと見なされる。中空繊維バイオリアクターは、先の例で説明したように、2つの別個の流体経路を有するシステムに配管される。最初に説明した流体経路は、リアクターの繊維の周りを均一に移動する。この流体経路は、食用中空繊維の表面にある細胞の播種を担う。播種方法が完了した後、この流体経路は、カートリッジを通って中空繊維の周りに媒質の層流を有する。この流体経路は、繊維表面からの細胞の除去を防止するように調整可能である。第2の流体経路は、中空繊維の管腔を通る。カートリッジ内の繊維アスペクト比、繊維数、及び流量のバランスをとることによって、細胞密度勾配が最小化され、それによって本質的に均一な細胞塊の形成が可能になる。
【0104】
[実施例4]
本発明の中空繊維の実施形態を利用するリアクターの予測的な例示。この例では、1.1mm~1.2mmの外径及び0.1mmの壁の薄さを有する、アルギネート又は同様の材料を含む中空繊維を含むリアクターが、約83本/cmの繊維を有する中空繊維装置に組み立てられる。リアクターに、iPSCに由来する細胞を播種し、筋細胞の形態学的特徴を有する細胞に分化するようにプログラムする。細胞を10/cmの密度で播種する。播種された細胞は、増殖媒質に依然として播種され得るか、又は分化を促進する媒質に既に播種され得る。細胞を播種した後、媒質は筋細胞様細胞が好ましい媒質となる。リアクターを媒質供給源に滅菌で接続し、細胞のコンフルエンスが得られるまで、播種密度及び細胞型に基づいて14~21日間運転し、ここでは繊維間の10%未満の自由空間として定義され、細胞は、中空繊維に接着した筋管様構造の形成を含む筋細胞様特徴を発達させた。この時点で、細胞/中空繊維混合物は、リアクターから除去され、もしあれば、さらなる処理のために、そして最終的に消費される。
【0105】
[実施例5]
本発明の中空繊維の実施形態を利用する第2のリアクターの予測的な例示。この例では、1.1mm~1.2mmの外径及び0.1mmの壁の薄さを有する、アルギネート又は同様の材料を含む中空繊維を含むリアクターが、約83本/cmの繊維を有する中空繊維装置に組み立てられる。リアクターに、iPSC由来の細胞を播種し、筋細胞の形態学的特徴を有する細胞:脂肪細胞の形態学的特徴を有する細胞が約90:10の比で、筋細胞の形態学的特徴を有する細胞に分化するようにプログラムするか、又は脂肪細胞の形態学的特徴を有する細胞に分化するようにプログラムする。細胞を10/cmの総密度で播種する。リアクターを媒質供給源に滅菌で接続し、細胞のコンフルエンスが得られるまで、14~21日間運転し、ここでは繊維間の10%未満の自由空間として定義され、細胞は、中空繊維に接着した筋管様構造の形成を含む筋細胞様特徴を発達させた。この時点で、細胞/中空繊維混合物は、リアクターから除去され、もしあれば、さらなる処理のために、そして最終的に消費される。
【0106】
[実施例6]
細胞培養のコンフルエンスに達した後に脂肪、香味料などを中空繊維の管腔に添加する予測的な例示。本発明の培養される構造化された培養肉製品において所望のコンフルエンスに達した後、残留する媒質を洗い流し、製品に例えば生理食塩水を注入する。生理食塩水の濃度は、例えば、最終生成物の所望の塩分濃度によって決定される。本発明の構造化された培養肉製品は、塩を含む肉製品が望まれる場合にはより高い濃度の塩(複数可)を注入され、塩を含まない肉製品が望まれる場合には0に近いより低い濃度の塩を注入される。さらに、脂肪、香味料、防腐剤などが、所望されるように、また最終生成物によって決定されるように、本発明の培養済みの構造化された培養肉製品のボイドスペース及び中空繊維の内腔に注入される。
【0107】
[実施例7]
取り入れられた細胞/中空繊維の加工を示す予測的な例。本発明の培養方法によって培養肉製品(すなわち、「構造化された培養肉」)が製造され、任意の所望の香味、脂肪又は他の添加剤が中空繊維の管腔及び/又は残りのボイドスペースに注入されると、本発明の中空繊維カートリッジはハウジングから取り外される。次いで、中空繊維カートリッジはさらなる処理を受ける。少なくとも、第1及び第2の端部ピースは、中空繊維カートリッジから取り外され、培養済みの構造化された培養肉製品を本発明の中空繊維に無傷のまま残す。次いで、構造化された培養肉製品をスライスし、質感加工し、香味料付けし、又はさらに味付けし、所望されるように、卸売又は小売販売のために包装することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26
図27A
図27B
図27C
【国際調査報告】