(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】宿主細胞DNAの金属アフィニティー抽出
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230906BHJP
C12N 7/02 20060101ALN20230906BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
C12N7/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512381
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021072951
(87)【国際公開番号】W WO2022038190
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521262714
【氏名又は名称】ザルトリウス ビーアイエー セパレーションズ ディー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガニオン、ピーター スタンリー
(72)【発明者】
【氏名】ドルモタ プレビル、サラ
(72)【発明者】
【氏名】レスコヴィチ、マーヤ
(72)【発明者】
【氏名】ストランカー、アレス
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065BD14
(57)【要約】
所望のタンパク質、ウイルス、又は細胞外小胞の種を含む試料から宿主細胞DNAを除去する方法であって、
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材に金属イオンを担持させるステップ、
pH6~pH10の範囲のpH、及び1Mまでの濃度範囲の塩濃度を有する緩衝液で、前記基材を平衡化するステップ、ここで前記塩は前記アニオン性金属アフィニティーリガンドと化学錯体を形成しない、
前記試料を前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と接触させるステップ、
前記試料から前記基材を分離するステップ、ここで、前記試料は減少した混入DNAの含有量を有する、
を含む前記方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、ウイルス、又は細胞外小胞の所望の種(species)を含む試料から宿主細胞DNAを除去する方法であって、
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材に金属イオンを担持させるステップ、
pH4~pH10の範囲のpH、及び1Mまでの濃度範囲の塩の濃度を有する緩衝液で、前記基材を平衡化するステップ、ここで前記塩は前記アニオン性金属アフィニティーリガンドと化学錯体を形成しない、
前記試料を前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と接触させるステップ、
前記試料から前記基材を分離するステップ、ここで、前記試料は減少した宿主細胞DNAの含有量を有する、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記アニオン性金属アフィニティーリガンドが、アミノ-ジカルボン酸およびアミノ-トリカルボン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオン性金属アフィニティーリガンドが、イミノ二酢酸(IDA)またはニトリロ酢酸(NTA)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する前記基材が、粒子、ナノフィラメント、多孔質膜、モノリス、ヒドロゲル、深層濾過材、可溶性ポリマー媒体の形態である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する前記基材が、フロースルークロマトグラフィー装置の形態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基材の平衡化が、pH7.0~9.5、または8.0~9.0の範囲のpHを有する緩衝液を用いて実施される、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記基材の平衡化が、1Mまで、または50mM~750mM、または100mM~500mM、または125mM~250mMの範囲の前記塩の濃度を有する緩衝液によって実施される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基材の平衡化に使用される前記緩衝液が、ウイルスまたは細胞外小胞の結合を妨げるがDNAの結合を許容し、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、もしくは酢酸カリウムなどの無機塩;アルギニン-HCl、リジン-HCl、またはイミダゾリウムカチオン、ヒスチジルカチオン、もしくはヒスタミニルカチオンに基づく塩などの有機塩;およびグアニジニウムカチオンもしくはチオシアネートアニオンまたはその両方を含むもの、などのカオトロピック塩;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される前記塩によって調整された塩条件を提供する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材に、2価以上の正電荷を有する金属イオン、好ましくは鉄(II)、マンガン(II)、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、銅(II)、亜鉛(II)、バリウム(II)、ニッケル(II)、コバルト(II)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される金属イオンを担持させる、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物、細胞溶解物、または部分精製調製物であり、前記所望の種が、AAVカプシドなどの脂質エンベロープを有さないタンパク質カプシドウイルス粒子;インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどの脂質エンベロープを有するウイルスまたはウイルス様粒子;バクテリオファージ、エキソソームなどの細胞外小胞;および抗体などのタンパク質;ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記AAVカプシドが、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV2/8またはAAV2/9のような組換えハイブリッド血清型、合成組換え血清型、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、請求項1に記載の金属アフィニティーステップの後に生物学的アフィニティークロマトグラフィーによって、金属アフィニティー後にカチオン交換によって、請求項1に記載の金属アフィニティーステップの後に疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、および/または請求項1に記載の金属アフィニティーステップの後にタンジェンシャルフロー濾過によって、処理される、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記タンジェンシャルフロー濾過が、1MDa以下、特に30~50kDa、30~100kDa、または200kDa~700kDaの範囲の孔径カットオフを有する膜を使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
減少したDNAの含有量を有する前記試料が、さらにアニオン交換クロマトグラフィーによって処理される、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物または細胞溶解物である、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、前記試料を前記金属担持アニオン性金属アフィニティー基材に接触させるステップの前にいかなるクロマトグラフィーステップも経ていない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質、ウイルス、又は細胞外小胞の所望の種(species)を含む試料から宿主細胞DNAを除去する方法における、アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材の使用。
【請求項18】
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物または細胞溶解物である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記試料が、前記試料を前記基材に接触させるステップの前にいかなるクロマトグラフィーステップも経ていない、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記試料がアルカリ条件を有する、請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質、ウイルス、または細胞外小胞の所望の種を含有する試料から宿主細胞DNAを除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宿主細胞由来DNAは、細胞培養によって産生される全ての生物製剤に遍在する混入物である。規制当局は、生物学的治療薬の宿主DNA混入を極めて低いレベルまで低減することを要求するが、それは治療を受けている患者に病原性ウイルスまたは発がん性DNA配列が意図せずに伝達される可能性を最小限にするためである。
【0003】
宿主細胞DNAは、細胞培養物中に独立した混入物クラスとして存在するかのように言及されるが、それは常にタンパク質と強く会合(associate)しており、ほぼ明確に判別された化合物構造にある。細胞培養回収物中の宿主細胞DNAは、目的の生物学的治療薬を産生するために使用された細胞の染色体塊の残余物である。この塊はクロマチンと呼ばれる。クロマチンは主に、染色体DNAと、DNAを圧縮し、細胞の核における転写を調節するヒストンタンパク質とを含む。細胞培養物の回収物(harvests)では、クロマチンは約12~400nmの範囲のサイズの1~約30個のヌクレオソームの線状アレイ、および約2~12nmの範囲のより小さいヒストン会合DNA断片へと分解されている。断片のサブセットは、ヌクレオソームアレイと複合集合体を形成する。
【0004】
クロマチンは、すべての公知の精製方法および培地と非特異的に相互作用するので、細胞培養回収物および細胞溶解物のクロマチン混入も重要である[1~3]。それは容量を減少させ、宿主タンパク質による混入を増大させ、凝集物含有量を増大させることが記録されておりのみならず、その除去が論理的に期待される多段階精製プロセスにわたって過剰なレベルのDNAを存続させる。
【0005】
宿主DNAレベルは、場合によっては多段階クロマトグラフィー精製の過程で十分に低減され得るが、全ての場合において、クロマトグラフィー精製が開始される前にクロマチン負荷の一部が除去されれば、DNA低減が増強される。IgG精製の分野では、正に荷電した粒子との共沈、正に荷電したポリマーを用いてのフロキュレーション、正に荷電した有機物を用いてのフロキュレーション、および正に荷電した深層濾過材を用いての除去を含む、多くの事前クロマチン除去方法が記載されている[1~4]。DNAは正に荷電したアニオン交換クロマトグラフィーカラムに結合するが、該カラムは細胞培養回収物および細胞溶解物中の大量のクロマチンでは汚染されて詰まってしまうため、バルクDNA除去には実用的ではない。
【0006】
負に荷電した有機試薬(脂肪酸)を用いてのフロキュレーションは特にヒストンタンパク質を標的とするが、それらに会合した宿主DNAを共沈させる。脂肪酸と正に荷電したフロキュレーション剤との組み合わせは、いずれかの一方のみよりも有効である。それらの有効性は両者がアラントインと組み合わされると、さらに増強され、これは特に、高分子量凝集体などの大きな種(species)を除去する傾向がある[1、2]。
【0007】
いくつかの細胞培養生成物からのDNAの抽出は、異なる生成物クラスの特性がDNAと異なる程度で重複するため、他のものよりも単純である。IgGモノクローナル抗体の化学は、DNAとは基本的に異なる。これにより、抗体調製物からDNAを選択的に除去するために、多種多様な化学的方法を適用することが実用的になる。このような処理のほとんどではIgGとの相互作用がなく、したがって、溶液中に留まり、高収率で回収することができる。
【0008】
ウイルスおよび細胞外小胞の調製物は、リン酸基の存在によって少なくとも部分的に付与される正味の負電荷を含む、いくつかの化学的類似性を共有するので、該調製物からのDNA低減はより困難である。正電荷がDNAと共にウイルスおよび小胞を除去するので、正電荷を利用するDNA抽出方法は不適格となる。それはまた、リン酸残基に対する親和性を利用する方法が損なわれるであろうことも意味する。
【0009】
脂肪酸を用いたフロキュレーションもまた、脂質エンベロープを有するウイルスおよび小胞との使用には、脂肪酸がそれらの脂質膜を不安定化することから不適格である。アラントインは、大きな種を無差別に共沈させるので、同様に不適格である。ウイルスと小胞は、細胞回収においてクロマチンと同じ大きさの範囲を占めているので、アラントインはそれらをクロマチンと共に除去してしまう。
【0010】
ウイルスおよび小胞の調製の分野においてDNA除去のための方法が存在しないことは、酵素的溶解によるDNA低減に依存することにつながった。このアプローチは部分的には成功しているが、宿主細胞DNAはヒストンタンパク質との強力な会合によって保護されているので、全ての宿主細胞DNAを除去することはできない。
【0011】
ポリヒスチジル(his-tag)の形態の金属結合部位が組換えにより導入されたタンパク質、ウイルス、エキソソーム、およびDNAを精製するための固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)の手法が知られている。そのようなカラムはほとんどの場合、イミダゾールで溶出がなされるが、pHを低下させることによる溶出は少ない。RNAの精製は、銅、ニッケル、亜鉛、およびコバルト(最も強力なものから最も弱いものの順)を担持したイミノ二酢酸を使用するIMACカラムを使用することが知られている[5]。RNAはその窒素塩基との配位結合の形成を介してこれらの金属に結合し、プリン塩基はピリミジンよりも強く結合する。
【0012】
DNAは、その窒素塩基が鎖間の塩基対形成に関与する結果として立体的に接近できないので、IMACに対して示す親和性が低い。これにより、DNAの大部分がカラムを通過する。IMACカラムがDNAに結合できないことは、その窒素塩基がIMAC媒体の表面上の金属イオンに立体的に接近可能になるように、DNAを熱またはアルカリ解離で個別鎖にすることによって、克服することができる[6]。
【0013】
空の(empty)および完全な(full)アデノ随伴ウイルスカプシドの分離のための塩勾配による溶出を伴うアニオン交換クロマトグラフィーの使用は、公知である[7~9]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ある態様では、本発明の方法は、タンパク質、ウイルス、または細胞外小胞の所望の種を含有する試料からの宿主細胞DNAの除去に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の方法は、
pH4~pH10の範囲のpH、及び1Mまでの濃度範囲の塩の濃度を有する緩衝液で、前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材リガンドを平衡化するステップ、ここで前記塩は前記アニオン性金属アフィニティーリガンドと化学錯体を形成しない、
前記試料を前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と接触させるステップ、
前記試料から前記基材を分離するステップ、ここで、前記試料は減少した宿主細胞DNAの含有量を有する、
を含む方法である。
【0016】
平衡化緩衝液による基材の平衡化は、典型的には、緩衝液条件を、ウイルスまたは細胞外小胞の結合は妨げるが混入DNAの結合は可能にするpH条件と塩条件との組み合わせに調整することによって実施される。選択される各条件は、当業者によって容易に決定され得る。指標として、pHはpH6~pH10の範囲で調整され得、塩濃度は、1Mまで(up to 1 M)であり得る。
【0017】
本明細書の読みやすさを確保することを試みて、技術的に正しいものの冗長な表現「金属を担持するアニオン性金属アフィニティー基材と化学錯体を形成しない塩」は、非公式の用語「非キレート化塩」に置き換えられている。より非公式な用語「非キレート化塩」が使用される文節が、より技術的な表現「金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と化学錯体を形成しない塩」を意味するものであることを当業者は理解すると考えられる。したがって、以下では簡便性のために、「金属を担持するアニオン性金属アフィニティー基材と化学錯体を形成しない塩」という表現は「非キレート化塩」とも称される。
【0018】
用語「宿主DNA」または「混入DNA」は、粒子中に封入されていないか、またはウイルス、ウイルス様粒子、カプシド、小胞、エキソソーム、リポソームなどの粒子上に吸着されていないDNAであることを意味すると理解される。
【0019】
第2の態様において、本発明は、細胞培養によって産生された生物学的生成物からクロマチンを抽出するのに有効であるが、ウイルス粒子および細胞外小胞の調製物から宿主DNAを選択的に除去するその能力において特に特徴的である、2段階方法に関する。第1の工程は、過剰な宿主細胞DNAを含有する所望のタンパク質、ウイルス、または細胞外小胞を含有する試料を、金属イオンを担持するアニオン性金属アフィニティー基材で処理することからなる。第2の工程は、アニオン交換クロマトグラフィーによって、金属アフィニティー処理された試料を処理することからなる。
【0020】
本発明の方法の一実施形態では、アニオン性金属アフィニティーリガンドは、アミノ-ジカルボン酸およびアミノトリカルボン酸からなる群より選択され得る。
【0021】
本発明の方法のさらなる実施形態において、アニオン性金属アフィニティーリガンドは、イミノ二酢酸(IDA)またはニトリロ酢酸(NTA)であり得る。
【0022】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材は、粒子、ナノフィラメント、多孔質膜、モノリス、ヒドロゲル、深層濾過材、可溶性ポリマー媒体の形態であり得る。特に、アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材は、フロースルークロマトグラフィー装置の形態であり得る。
【0023】
本発明の方法のなおさらなる実施形態において、基材および/または試料を平衡化することは、pH7.0~9.5、7.0~9.0、7.5~9.0または8.0~9.0の範囲のpHを有する緩衝液を用いて実施されうる。
【0024】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、基材および/または試料を平衡化することは1Mまで、または50mM~750mM、または100mM~500mM、または125mM~250mMの範囲の塩濃度を有する緩衝液を用いて実施されうる。
【0025】
本発明の方法の一実施形態では、緩衝液が塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、もしくは酢酸カリウムなどの無機塩;アルギニン-HCl、リジン-HCl、またはイミダゾリウム、ヒスチジル、もしくはヒスタミニルカチオンに基づく塩などの有機塩;およびグアニジニウムカチオンもしくはチオシアネートアニオン、またはその両方を含むもの、などのカオトロピック塩;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と化学錯体を形成しない塩によって調整することができる。当業者は、ウイルスまたは細胞外小胞の結合を妨げるが、DNAの結合を可能にする様式で、塩条件を容易に調整することができる。
【0026】
本発明の方法の別の実施形態では、金属担持アニオン性金属アフィニティー基材には、2価以上の正電荷を有する金属イオン、好ましくはカルシウム、マグネシウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ニッケル、コバルト、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属イオンを、担持させることができる。
【0027】
本発明の方法のさらなる実施形態では、ウイルスおよび細胞外小胞の試料は、AAVカプシドなどの脂質エンベロープを有さないタンパク質カプシドウイルス粒子;インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどの脂質エンベロープを有するウイルスまたはウイルス様粒子;バクテリオファージ、エキソソームなどの細胞外小胞;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、細胞回収物、細胞溶解物または実体を含み得る。特に、AAVカプシドは、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV2/8またはAAV2/9のような組換えハイブリッド血清型、合成組換え血清型、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0028】
本発明の方法の一実施形態では、試料は、混入DNAの除去方法の前または後に、生物学的アフィニティークロマトグラフィー、金属アフィニティー後のカチオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および/またはタンジェンシャルフロー濾過によって処理されてもよい。生物学的アフィニティークロマトグラフィーは分子または分子構造に対する親和性を有するリガンドを利用するクロマトグラフィーを意味し、抗体、例えばFcまたはFabフラグメントのような抗体フラグメント;レクチン、プロテインAなどのタンパク質性の性質のものである。しかし、他のリガンド、例えばビオチン/アビジンも当業者に知られている。
【0029】
本発明の方法のさらなる実施形態では、タンジェンシャルフロー濾過で、1MDa以下、特に200kDa~700kDaの範囲の孔径カットオフを有する膜を使用することができる。
【0030】
好ましい実施形態では、所望の種を含有する試料は、細胞回収物または細胞溶解物である。この実施形態では、本発明の方法は、回収または溶解の直後に、透明または清澄化された試料に適用される。このような清澄化は、濾過工程を含んでもよい。この実施形態では、本発明の方法の前に、イオン交換クロマトグラフィーステップは適用されない。好ましくは、本発明の方法の前に、クロマトグラフィーステップは適用されない。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明の方法では、金属担持アニオン性金属アフィニティー基材への所望の種の結合を回避するpHおよび塩濃度が使用される。
【0032】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、DNAの含有量が減少した試料をアニオン交換クロマトグラフィーによって処理して、混入DNAのレベルをさらに減少させる。
【0033】
本発明の別の態様はまた、アルカリ条件下でウイルスおよび細胞外小胞の試料から混入DNAを除去するための方法における、アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材の使用である。
【0034】
この方法の有用性は、一連の予期せぬ発見に由来する。第一の発見は、ウイルスおよび小胞が、金属アフィニティー結合を媒介するための遺伝子改変(例えばHisタグなど)を欠く場合でさえ、特定の金属と複合体を形成しているアニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材に結合する天然の傾向を有することである。それらの天然の金属との親和性により、金属アフィニティー基材へのそれらの部分的結合がもたらされ、それは、結合した生成物の損失をもたらす。そのような結合を、アルカリ性pHで低下させることができることが発見された。金属アフィニティー方法では、酸性pHにおいてはIgGおよびHisタグタンパク質を溶出させるが、pHの上昇が溶出を引き起こすかまたは結合を防止することができるという反対の状況は知られていなかったため、これは驚くべきことである。予測では、pHを上昇させることは、結合を維持または増加させるはずであった。
【0035】
より驚くべきことに、pHと非キレート化塩濃度との間には、非キレート化塩の量が増加すると、中性および酸性の値においてウイルスおよび細胞外小胞のより強い結合が克服されるという、逆相関の関係が発見されている。金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と化学錯体を形成しない塩(非キレート化塩)は一般に金属アフィニティー結合に影響しないことが、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)の分野を通して知られているため、これは予想外であった。金属アフィニティーによって結合されたタンパク質が非キレート化塩の濃度を増加させることによって溶出され得る例は、当該技術分野において知られていない。pHと塩濃度との間に逆相関の関係があろうことは、さらに予想外である。
【0036】
さらに驚くべき発見は、従来技術ではDNAがほとんど結合しないことが示されていた[5、6]にもかかわらず、ウイルスおよび細胞外小胞の結合を弱める条件が宿主細胞DNAの結合を可能にすることである。RNAは固定化された金属に結合することが知られているものの、それぞれ最も強力~最も弱い順に銅、ニッケル、亜鉛、およびコバルトのみが結合する。本方法は鉄およびマンガンとのその最も強力なDNA結合を提供するが、マグネシウム、カルシウム、およびバリウムとも作用し、その機構が、公知の固定化金属基材との核酸結合の方法とは異なることをさらに強調する。
【0037】
DNA結合が起こるメカニズムは不明である。DNAは熱や水酸化ナトリウムではその構成成分である一本鎖に変性しないので、結合はその窒素塩基を介しては起こり得ないとみられる。これは、DNAがそのリン酸残基を介して金属に結合する可能性を残す。しかしながら、これは、同じ金属がウイルスおよび小胞上のリン酸残基に結合すると予想されるため、妥協点を強調する。本方法を実施するために特定された条件下では、ウイルスも小胞も結合しない。
【0038】
これらの驚くべき発見は共に、特にウイルスおよび細胞外小胞を含有する調製物から宿主DNAを除去するための、新規なアプローチの基礎を作り出す。実験結果は、この方法が、金属アフィニティー基材のDNA結合能力を保存しつつタンパク質、ウイルス、および細胞外小胞に対する金属親和性を十分に低下させる結合条件で、何らかの形で「針に糸を通す」ことを示唆する。続いて、アニオン交換体に、DNAが欠けた処理後試料(DNA-deficient post-treatment sample)が適用され、DNAを保持しながら所望の生成物を放出する勾配による溶出が行われる。
【0039】
簡単に説明すると、この方法は一連のステップからなる。アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材に金属イオンを担持させる。基材は、所望のタンパク質、ウイルス、または細胞外小胞の結合を妨げるがDNAの結合を可能にするpH及び塩の条件の組み合わせに平衡化される。DNAが混入した所望のタンパク質、ウイルス、または細胞外小胞を含有する試料を、同じ条件に平衡化し、金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と接触させる。続いて、基材を試料から分離し、DNAを欠くが、所望のタンパク質、ウイルス、または細胞外小胞の大部分を依然として含有する試料を残す。次いで、金属アフィニティー処理された試料は混入DNAのレベルをさらに低減するために、アニオン交換クロマトグラフィーによって処理される。
【0040】
アデノ随伴ウイルス(AAV)および宿主細胞DNAを含有する調製物への本方法の適用を記載する1つの非限定的な例においては:
- アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する固相に鉄などの金属を担持させる。
- 固相をpH約9に平衡化する。これは、試料の適用が慣例的に中性pHで行われる金属アフィニティークロマトグラフィーの分野においては、非常に稀であると認識されよう。
- 宿主細胞DNAおよびAAVを含有する細胞溶解物が、pH約9に平衡化される。
- 試料を金属アフィニティー固相と接触させる。AAVの大部分は結合しない。宿主細胞DNAは結合する。
- 固相に結合したDNAを残したまま、アニオン性金属アフィニティー固相を試料から分離する。
- AAVをアニオン交換クロマトグラフィーによって分画して、宿主細胞DNAの含有量をさらに減少させる。
【0041】
別の非限定的な例では、前記の第1の例の条件およびステップが、試料からのアニオン性金属アフィニティー基材の分離を通して繰り返される。その後:
- 孔径カットオフ等級が300kDaである膜を使用するタンジェンシャルフロー濾過によって試料を処理して、AAVを濃縮し、タンパク質による混入を低減する。
- AAVをアニオン交換クロマトグラフィーによって分画して、宿主細胞DNAの含有量をさらに減少させる。
【0042】
別の非限定的な例では、前記の第1の例の条件およびステップが、試料からのアニオン性金属アフィニティー基材の分離を通して繰り返される。その後:
- 試料をアフィニティークロマトグラフィーによって処理する。
- AAVをアニオン交換クロマトグラフィーによって分画して、宿主細胞DNAの含有量をさらに減少させる。
【0043】
本発明の方法はまた、抗体を含むタンパク質でも機能し、宿主細胞DNAの含有量を減少させるために他の化学的機構を利用する既知の方法よりも有利であることが証明され得る。
【0044】
本発明の方法を
図1に示す。本方法の全範囲を例示するさらなる詳細および変形が、以下のセクションにおいて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図2】
図2は、pH9.0ではAAVカプシドはマグネシウム担持アニオン性金属アフィニティーリガンドに結合しないが、DNAは強く結合し、溶出させるには水酸化ナトリウムを必要とすることを示す。
【
図3】
図3は、pH 7.0およびpH 9.0での別々の実験における、マグネシウム担持アニオン性金属アフィニティーリガンドへのAAVカプシド結合の比較を示す。280nmにおけるプロファイルである。
【
図4】
図4は、塩勾配で溶出がなされた第四級アミンアニオン交換体による空のAAVカプシドおよび完全なAAVカプシドのDNA除去および分画を示す。
【
図5】
図5は、pH勾配で溶出がなされた第一級アミンアニオン交換体による空のAAVカプシドおよび完全なAAVカプシドのDNA除去および分画を示す。
【
図6】
図6は、エキソソームを含む細胞外小胞を含有する細胞培養物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す。
【
図7】
図7は、本発明の方法によってDNAを除去した後の、細胞外小胞を含有する細胞培養物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す。
【
図8】
図8は、特にDNAを含む、一般的な混入物の減少を強調するために重ね合わされた
図7および8のサイズ排除溶出プロファイルを示す。
【
図9】
図9は、塩勾配で溶出がなされた第四級アミンアニオン交換体を用いた、部分的に精製された細胞外小胞のDNA除去および分画を示す。
【
図10】
図10は、第二鉄を担持したイミノ二酢酸モノリスを通って流れるバクテリオファージT4を示す。
【
図11】
図11は、塩勾配で溶出がなされた第四級アミンアニオン交換体上でのクロマトグラフィーによるDNAの二次除去およびバクテリオファージT4の分画を示す。
【
図12】
図12は、塩勾配で溶出がなされた第一級アミンアニオン交換体上でのクロマトグラフィーによるDNAの二次除去およびバクテリオファージT4の分画を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
試料は、細胞培養によって産生されたタンパク質、ウイルス粒子、または細胞外小胞の所望の種を含有し、かつ宿主細胞由来DNAも含有する調製物からなる。一実施形態では、試料は細胞培養回収物からなる。かかる実施形態の一つでは、細胞培養回収物は抗体を含有する。別のかかる実施形態では、細胞培養回収物はウイルスまたはウイルス様粒子を含有する。別のかかる実施形態では、細胞培養回収物は細胞外小胞を含有する。別の実施形態では、試料は細胞溶解物からなる。別の実施形態では、試料は宿主細胞DNA内容を減少させるためにヌクレアーゼ酵素で処理された細胞培養回収物または細胞溶解物からなる。別の実施形態では、試料は最終生成物中で所望または許容されるよりも多くの宿主細胞DNAを依然として含有する部分的に精製された調製物からなる。かかる実施形態の一つでは、試料はクロマトグラフィー装置から溶出される生成物画分である。かかる実施形態の一つでは、試料はアフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出生成物である。別のかかる実施形態では、試料はサイズ排除クロマトグラフィーカラムからの溶出生成物である。別のかかる実施形態では、試料は疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムからの溶出生成物である。別のかかる実施形態では、試料は陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからの溶出生成物である。かかる実施形態の別の一つでは、試料は固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィー・カラムから溶出された製品である。別のかかる実施形態では、試料はアパタイトクロマトグラフィーカラムからの溶出生成物である。別のかかる実施形態では、試料はタンジェンシャルフロー濾過から濃縮および/または透析濾過された生成物である。
【0047】
一実施形態において、本発明の方法は、宿主細胞DNAが混入した所望の非脂質エンベロープタンパク質カプシドウイルス粒子を含有する試料を処理するために使用される。AAVには多くの血清型がある。一実施形態では、本発明の方法によってプロセシングされる所望のAAV血清型は、AAV1、またはAAV2、またはAAV3、またはAAV4、またはAAV5、またはAAV6、またはAAV7、またはAAV8、またはAAV9、またはAAV10、またはAAV11、または別の血清型であり得る。別の実施形態では、本発明の方法によって処理されるAAV血清型は、AAV2/8またはAAV2/9のような組換えハイブリッド血清型、または別のハイブリッド血清型であってもよい。別の実施形態では、本発明の方法によって処理されるAAV血清型は、合成組換え血清型であってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、混入DNAの含有量をさらに低減しながら、完全なカプシドから空のカプシドを分離するために、アニオン交換ステップが実施されてもよい。かかる実施形態の一つでは、アニオン交換体は、塩で溶出がなされる強アニオン交換体(第四級アミン)である。別のかかる実施形態では、アニオン交換体は、上昇pH勾配で溶出がなされる弱アニオン交換体(第一級アミン)である。
【0048】
別の実施形態では、試料は、宿主細胞DNAが混入した所望の脂質エンベロープを有するウイルスまたはウイルス様粒子を含有する。かかる実施形態の一つでは、アニオン交換工程は、非感染性ウイルス粒子を感染性ウイルス粒子から分離しうる。かかる実施形態の一つでは、ウイルスはインフルエンザウイルスである。別のかかる実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。
【0049】
別の実施形態では、試料は、宿主細胞DNAが混入した所望のバクテリオファージを含有する。
【0050】
別の実施形態では、本発明の方法は、宿主細胞DNAが混入した細胞外小胞を含有する試料を処理するために使用される。かかる実施形態の一つでは、細胞外小胞は、宿主細胞DNAが混入したエキソソームである。
【0051】
本発明の方法の一実施形態では、試料は、宿主細胞DNAの含有量を減少させる効果を有する方法を含めて、予め部分的に精製されていてもよい。
【0052】
本発明の方法を実施するのに適したアニオン性金属アフィニティー基材としては、固定化アミノカルボン酸が挙げられる。一実施形態では、固定化アミノカルボン酸は、イミノ二酢酸(IDA)などのジカルボン酸であってもよい。別の実施形態では、アミノカルボン酸は、ニトリロ酢酸(NTA)などの固定化トリカルボン酸であってもよい。別の実施形態では、IDA基材およびNTA基材の混合体を使用することができる。アニオン性金属アフィニティー基材は様々な物理的形態で市販されており、所望の任意の形式で合成することができる。それらは、粒子、不溶性ナノフィラメント、多孔質膜、モノリス、ヒドロゲル、深層濾過材、可溶性ポリマー媒体、または他のフォーマットの形成であってもよい。多くの場合、そのような基材はそれらの使用を容易にするために、フロースルークロマトグラフィー装置の形態で利用可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、アニオン性金属アフィニティーリガンドの選択が、所望のタンパク質、ウイルス、または細胞外小胞である生成物を保持しないことに寄与し得る。いくつかのかかる実施形態では、NTAがIDAの担う負電荷が2価のみであるところNTAの担う負電荷は3価であることから、いくつかの実施形態ではNTAがIDAよりも好ましい場合がある。二価金属カチオンとIDAとの錯体が生成するリガンド-金属錯体による正味電荷はゼロだが、二価金属カチオンとNTAとの錯体はマイナス1(1-)の正味電荷を生成し、これは所望の生成物の結合を妨げる傾向があり得る。三価金属カチオンとIDAとの錯体が生成するリガンド-金属錯体による正味電荷はプラス1(1+)であり、これは、所望のタンパク質、ウイルス、または細胞外小胞による結合に有利なアニオン交換特性を錯体に与え得る。三価金属カチオンとNTAとの錯体は正味の電荷がゼロとなり、これは、錯体に有意なアニオン交換能力を与えない。この方法をルーティン適用するためには、IDAとNTAの両方を評価することが望ましい。
【0054】
非脂質エンベロープタンパク質-カプシドウイルスは堅牢である傾向があり、多くの場合、広範囲の塩濃度にわたってpH9を許容することが、当業者には理解されるであろう。これは、本発明の方法のいずれかまたは両方のステップを約9のpHで実施することを簡潔とする。脂質エンベロープを有するウイルス、ウイルス様粒子、バクテリオファージ、および細胞外小胞はより不安定であり、生成物の安定性を維持するためにpHの調節を必要とし得ることは、同様に理解されるであろう。かかる実施形態の一つでは、金属アフィニティーステップが約8のpHおよび約250mMの塩化ナトリウム濃度で実施されうる。耐性の低い種は、中性よりわずかに高いpHおよび100mMに近い塩濃度への低減を必要とし得る。より堅牢な種は、8.75のpHおよび375mMまでまたはそれ以上の塩の濃度に耐えることができる。一般的に、金属アフィニティーステップ中の標的生成物の生成物結合を防止するために必要な塩の最低濃度は、本方法の最終工程において処理済試料がアニオン交換体に結合するために希釈されなければならない程度を最小限にするので、有利である。また、一般に、pHが中性に近ければ近いほど、脂質膜を有するものなどの不安定な生成物によって許容される可能性が高くなる。
【0055】
緩衝液pHは、所望のタンパク質、ウイルス、または細胞外小胞の安定性要件に応じて、pH4.0~pH10.0、または5.0~9.5、または6.0~9.0、または6.5~8.5、または7.0~8.0、または6.5~7.5、または異なるもしくはより狭い範囲であり得る。いくつかの緩衝剤が金属と相互作用し得[10]、本発明の方法の性能を調節するために利用され得ることが、本技術分野の知識を有する者には認識されるであろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と化学錯体を形成しない塩(非キレート化塩)が0.1mM~1.0M、または50mM~750mM、または100mM~500mM、または125mM~250mMの範囲の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態では、塩の存在がウイルス粒子または細胞外小胞を安定化させるのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、500mMを超える塩濃度への細胞外小胞または脂質エンベロープを有するウイルスの曝露は、生成物への損傷を最小限に抑えるために短時間であるべきである。いくつかの実施形態では、本発明の金属アフィニティーステップで、1M、または2M、または3M、または4M、または5Mの塩濃度で、または非キレート化塩の飽和濃度でさえ、クロマチンを結合する。かかる高濃度は本発明の方法の全体的な実施にはほとんどまたは決して有益ではなく、特に、所望の生成物がかかる条件に不安定である場合では有益でないが、かかる条件がクロマチンの選択的除去を依然として支援しうることは認識されるであろう。
【0057】
いくつかの実施形態では、生成物の安定性を保存するために使用される、金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と化学錯体を形成しない塩の種(非キレート化塩)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの無機塩、または別の塩でありうる。
【0058】
密接に関連する実施形態では、非キレート化塩は、アルギニン-HCl、リジン-HClなどの有機塩、またはイミダゾリウム、ヒスチジル、もしくはヒスタミニルカチオンに基づく塩でありうる。
【0059】
別の密接に関連する実施形態において、非キレート化塩は、グアニジニウムカチオンもしくはチオシアネートアニオン、またはその両方、または他のカオトロピックイオンを含むカオトロピック塩であってもよい。しかしながら、そのような塩は脂質膜を有する生成物を損傷する可能性があるので、そのような塩の使用がタンパク質およびタンパク質-タンパク質カプシドウイルスに限定されるということは、当業者によって認識されるであろう。
【0060】
金属カチオンを結合する強力な能力を有するアニオンはアニオン性固相リガンドに結合した金属を除去する傾向があり、クロマチンを結合するアニオン性金属アフィニティー基材の能力を損なう。強い金属結合能を有することが知られているアニオンとしては、クエン酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’、N’-四酢酸(別名egtazic acid(EGTA)として知られる)、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミンが挙げられる。
【0061】
本方法を実施するのに適した多価金属カチオンとしては、特に、第二鉄およびマンガンが挙げられる。第二銅(cupric copper)、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、およびバリウムも使用することができる。とりわけ、ニッケルおよびコバルトなどの重金属イオンもDNA低減を媒介するが、それらの使用はそれらの毒性のため推奨されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、金属イオンの選択はまた、所望のウイルスまたは細胞外小胞生成物を保持しないことに寄与し得る。リン酸残基に対して特に高い親和性を有する金属イオンは、リン酸親和性がより弱い金属イオンよりも強く全リン酸化物種に結合する傾向がある。リン酸塩残基に対して高い親和性を有する金属イオンとしては、特に、第二鉄およびマンガンが挙げられる。実験データは、カルシウムおよびマグネシウムなどの金属が有するリン酸塩に対しての親和性がより低いことを示す。第二銅などの金属は、リン酸基に対して中間的な親和性を媒介する。所望のタンパク質、ウイルス、または小胞種がアニオン性金属アフィニティー固相に結合した金属イオンに対して本質的に低い親和性を示す実施形態では、クロマチン結合を最大にする目的で鉄またはマンガンを使用することが有利であり得る。所望のタンパク質、ウイルス、または小胞種が高度にリン酸化されている実施形態では、所望の生成物の回収を最大限にする目的で銅、カルシウム、またはマグネシウムを使用することが有益であり得る。
【0063】
多くのタイプのアニオン交換体が世界中で市販されている。かかる実施形態の一つでは、アニオン交換体は、強アニオン交換体としても知られる第四級アミンアニオン交換体である。別のかかる実施形態では、アニオン交換体は、弱アニオン交換体としても知られる第三級アニオン交換体である。アニオン交換体はまた、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ならびに第一級、第二級、第三級、および第四級アミノ基の組み合わせを使用してもよい。そのような材料の1つは、より一般的にTRENと呼ばれるN,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミンである。他の混合組成物のアニオン交換体は、とりわけ、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、およびエチレンジアミンからなるリガンドを使用する。本方法を実施するのに適したアニオン交換体はまた、剰余する疎水性、水素結合、またはその両方を付与するための追加の残基を含む正に荷電したアミン誘導体を含むと理解される。剰余する疎水性および/または水素結合を付与するためのさらなる残基を含むアニオン交換体は一般に、マルチモーダル交換体または混合モード交換体と呼ばれる。本明細書を通して、前述の材料の全てをアニオン交換体と呼ぶ。それらの全ては、粒子、不溶性ナノフィラメント、多孔質膜、モノリス、ヒドロゲル、深層濾過材、または他のフォーマットを含む、様々な物理的形態で世界中で市販されている。多くの場合、それらは、それらの使用を容易にするために、フロースルークロマトグラフィーまたは濾過装置の形態で利用可能である。一実施形態では、金属アフィニティー基材およびアニオン交換体がいずれも、最初に金属アフィニティー装置がある配置で順次配管されたクロマトグラフィー装置の形態にある。かかる実施形態の一つでは、それらはタンデムで平衡化され、タンデムでロードされ、タンデムで洗浄され、タンデムで溶出がなされ、タンデムで洗浄される。別のかかる実施形態では、それらはタンデムで平衡化され、タンデムでロードされ、タンデムで洗浄され、次いで、金属アフィニティーはフローストリームから除去され、アニオン交換体が独立して溶出に供される。装置を順番に配管することが、所望の製品を処理するのに必要な水、緩衝液および塩、緩衝液の調製、処理時間、装置、および人員配置の量を大幅に減少させることから、工業ユーザにとって魅力的であり得ることは、当業者によって認識されるであろう。これらの利点の全てはより高い設備容量に寄与し、最終的にはより低い費用でより高い生産性をもたらす。
【0064】
いくつかの実施形態では、金属アフィニティー処理された試料は試料中の残留遊離金属イオンを懸念することなく、アニオン交換体に適用され得るが、それは正に帯電しているそのような金属イオンがアニオン交換体の表面によって反撥され、試料適用中に除去されるからである。他の実施形態において、金属イオンは、試料およびアニオン交換緩衝液に意図的に添加され得る。かかる実施形態では、それらの存在が有益な方法でウイルスまたは小胞の表面電荷または表面トポグラフィーを改変し得る。かかる実施形態の一つでは、緩衝液中のカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンの存在が、完全なAAVカプシドからの空のAAVカプシドの分離の改善に寄与する。
【0065】
いくつかの実施形態では、アニオン交換クロマトグラフィーが金属アフィニティーステップの直後に実施される。金属アフィニティークロマトグラフィーステップおよびアニオン交換クロマトグラフィーステップが連続して行われる一実施形態では、両方の媒体がクロマトグラフィー装置または濾過装置の形態で使用される。金属アフィニティークロマトグラフィーステップおよびアニオン交換クロマトグラフィーステップが中断されず順次実施される別の実施形態では、金属アフィニティーステップは、不溶性金属アフィニティー基材を試料に添加し、それをDNAに結合させて共沈させ、次いで除去して、DNA欠乏上清をアニオン交換体に適用することができるようにして実施される。金属アフィニティークロマトグラフィーステップおよびアニオン交換クロマトグラフィーステップが中断されず順次実施される別の実施形態では、金属アフィニティーステップは、金属アフィニティーリガンドを有する可溶性ポリマー基材を試料に添加し、それを架橋させてクロマチンを沈殿させ、次いで遠心分離および/または濾過によって沈殿物を除去して、アニオン交換クロマトグラフィーによって処理されるべきDNA欠乏上清を得ることによって実施される。
【0066】
400mMの塩化ナトリウムまでの塩濃度で実施される関連する実施形態において、金属アフィニティークロマトグラフィー基材は正に帯電した粒子またはポリマーと組み合わせて試料に添加されてもよく、これは、金属アフィニティークロマトグラフィー媒体と会合したDNAに共架橋し、さらにDNA低減に寄与する。一方、高濃度となった塩は、本発明の基材または正に荷電した基材のいずれかとの所望のタンパク質、ウイルス、または小胞の結合を妨げる。一般的に、塩の濃度は、所望のタンパク質、ウイルス、または小胞が本発明の基材または正に荷電した基材に結合するのを防ぐために必要な濃度以下である。処理後、塩濃度は必要であれば、アニオン交換クロマトグラフィーによって試料を処理することを可能にするために、低減されてもよい。
【0067】
別の密接に関連する実施形態では、本発明の方法は、脂肪酸による処理と組み合わせることができる。いくつかのかかる実施形態では、脂肪酸は0.01%~1.0%の範囲の濃度のヘプタン酸、またはオクタン酸、またはノナン酸であり得、pHは4~6の範囲のであり得る。いくつかのかかる実施形態では、脂肪酸は、金属担持アニオン性金属アフィニティー基材を有する粒子またはポリマーが存在するのと同時に存在してもよい。いくつかのかかる実施形態において、脂肪酸処理は、本発明の方法の前または後に行われ得る。脂肪酸を含む処置が、ウイルスおよび脂質膜を有する細胞外小胞に不適切であることは、当業者には明らかであろう。
【0068】
別の密接に関連する実施形態では、本発明の方法は、アラントインによる処理と組み合わせることができる。いくつかのかかる実施形態において、アラントインは、2%~10%の範囲の量で存在し得る。アラントインを含む処理が、いくつかのウイルスおよび細胞外小胞には不適切であることは、当業者には明らかであろう。
【0069】
別の実施形態では、金属アフィニティーステップの後、およびアニオン交換クロマトグラフィーステップの前に、1つまたは複数の追加の処理ステップを挿入することができる。
【0070】
かかる実施形態の一つでは、試料は、金属アフィニティーの後、生物学的アフィニティークロマトグラフィーによって処理される。かかる実施形態の一つにおいて、アフィニティークロマトグラフィーリガンドは、AAVの1つ以上の血清型に特異的な生物学的リガンドである。別のかかる実施形態では、親和性リガンドは、抗体に特異的な生物学的リガンドである。かかる実施形態の一つでは、親和性リガンドは、プロテインAまたはその変異体である。
【0071】
関連する実施形態では、試料は、金属アフィニティーステップの後、陽イオン交換クロマトグラフィーによって処理され、次いで、アニオン交換クロマトグラフィーによって処理される。かかる実施形態の一つでは、陽イオン交換体が、AAVを捕捉するために使用される。別の実施形態においては、陽イオン交換体が、抗体を捕捉するために使用される
【0072】
別の関連する実施形態では、試料は、金属アフィニティーの後、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって処理され、次いで、アニオン交換クロマトグラフィーによって処理される。
【0073】
別の関連する実施形態では、試料は、アニオン性金属アフィニティーDNA除去ステップの後に、アニオン性固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって処理され、次いで、アニオン交換クロマトグラフィーによって処理される。かかる実施形態の一つでは、この変形(variation)が、ヒスチジンクラスターを自然に有する、または人工的なヒスチジンのクラスター、尾部、またはタグを有するようにさせる組換え遺伝子構築物から産生された生体分子に適用される。かかる実施形態の一つにおいて、IgGは、所望の生成物のヒンジ領域にヒスチジンクラスターを天然に有する。かかる実施形態の一つでは、DNA除去ステップのためのアニオン性金属アフィニティーリガンドは第二鉄を担持し、その後の精製ステップのためのアニオン性金属アフィニティーリガンドはニッケルを担持する。この工程はIgGを結合する。IgGは、イミダゾールとの競合、pHの低下、または両方の組み合わせによって溶出され得る。次いで、溶出したIgGをアニオン交換クロマトグラフィーで精製(polish)する。かかる実施形態の一つでは、アニオン交換体はマルチモーダルアニオン交換体である。上記実施形態の変形形態では、第二鉄はマンガンで置き換えられる。上記実施形態の別の変形形態では、ニッケルが銅、亜鉛、またはコバルトで置き換えられる。上記の実施形態の別の変形形態では、前記2つの金属アフィニティーステップが一緒に配管された1対のカラムを用いて実施され、一連の処理においての最初(the first in the sequence)は第二鉄を担持するIDAカラムであり、二番目は亜鉛を担持するIDAである。かかる実施形態の一つでは、IgGモノクローナル抗体を含有する濾過細胞培養回収物を両方のカラムに通し、ここで、第1のカラムはDNAを除去し、第2のカラムはIgGを捕捉する。カラムを洗浄し、次いで緩衝液を適用して、第2のカラムからIgGを溶出する。一方、DNAは、後にNaOHで除去されるまで、第1のカラムに結合したままである。このアプローチの別の変形形態では、目的の生成物は、抗体ではなく、Hisタグ付きタンパク質、またはHisタグ付きエキソソーム、またはHisタグ付きウイルス粒子である。
【0074】
別の関連する実施形態では、試料は、金属アフィニティーの後、アニオン交換クロマトグラフィーの前に、タンジェンシャルフロー濾過によって処理される。ウイルス粒子および細胞外小胞は一般に20nmから200nmを超えるサイズの範囲の大きな複雑な集合体を表すので、かかる実施形態の多くは、目的の生成物を保持する最大孔を有するタンジェンシャルフロー濾過による統合処理から利益を得るであろう。いくつかのかかる実施形態では、これは200kDA~700kDAの範囲の孔径カットオフ、およびいくつかの場合、1MDaなどの非常に大きい孔径等級を有するTFF膜を含む。そのようなフィルタは、膜の細孔を通過することによって、より小さな汚染物質の除去を可能にする。かかる実施形態の1つでは、マグネシウムを担持する金属アフィニティー粒子またはポリマーを、溶解物である細胞培養回収物とアルカリ性pHで混合して、DNAを結合させる。次いで、固体を遠心分離および/または膜濾過によって除去し、清澄化された上清を濃縮および/または透析濾過して、アニオン交換クロマトグラフィーに備えて試料を濃縮および/または緩衝液交換を行う。所望の生成物がIgG抗体である、関連する実施形態では、膜の孔径カットオフは30~50kDaであり得る。かかる実施形態の一つでは、後続のアニオン交換クロマトグラフィーステップは、マルチモーダルアニオン交換体を用いて行われる。所望の生成物がIgM抗体である、密接に関連する実施形態では、膜の孔径カットオフは30~100kDaであり得、その後のアニオン交換クロマトグラフィーステップは第四級アミンアニオン交換体などの強アニオン交換体を用いて行われる。
【0075】
一実施形態では、本発明の方法は、アデノ随伴ウイルスを処理するために使用され、アニオン交換体は完全なカプシドから空のカプシドを分画する追加の機能を果たす。完全なカプシドという用語は、治療用プラスミドDNAの意図されるペイロードを含有するカプシドを指すと理解される。空のカプシドという用語は、完全な治療用DNAプラスミドを欠くカプシドを指すと理解される。かかる実施形態の一つでは、アニオン交換体は、塩勾配の上昇に連れて溶出がなされる強アニオン交換体である。別のかかる実施形態では、アニオン交換体は、pH勾配の上昇に連れて溶出がなされる一級アミンアニオン交換体である。別のかかる実施形態において、アニオン交換体は、混合アミノアニオン交換体である。かかる実施形態の一つでは、アニオン交換体はTRENである。
【0076】
一実施形態では、本発明の方法は、エキソソームを含む細胞外小胞を処理するために使用される。かかる実施形態の一つでは、アニオン交換体は、塩勾配の上昇に連れて溶出がなされる強アニオン交換体である。別のかかる実施形態では、アニオン交換体は、塩勾配で溶出がなされる第三級アミン(弱)アニオン交換体である。
【0077】
一実施形態では、本発明の方法は、DNA含有量を減少させるためのヌクレアーゼ酵素を用いる試料処理と置き換えるために使用される。別の実施形態では、本発明の方法は、ヌクレアーゼ酵素による処理によって達成されるDNA低減の程度を増強するために使用される。かかる実施形態の一つでは、本発明の金属アフィニティーステップは、ヌクレアーゼ酵素による処理の前に実施される。別のかかる実施形態では、本発明の方法はヌクレアーゼ酵素での処理後に実施され、それらの伴う金属イオン補因子(their associated metal ion cofactors)にヌクレアーゼ酵素を結合させることによって、さらなる有用性を提供する。かかる実施形態の一つでは、アニオン性金属アフィニティーリガンドに、ヌクレアーゼ酵素の補因子として使用されるのと同じ金属イオン種が担持される。かかる実施形態の一つでは、金属イオン種はマグネシウムである。別のかかる実施形態では、金属イオン種はカルシウムである。試料がヌクレアーゼ酵素で処理されることと同時に金属アフィニティーステップが行われる実施形態において、アフィニティー基材に担持させるために使用される金属イオンは、酵素補因子とは金属イオン種とは異なる。例えば、酵素補因子がマグネシウムである場合、金属アフィニティー基材がDNAの溶解中に酵素に結合しないように、金属アフィニティーリガンドは第二鉄を担持し得る。前述の実施形態のいずれかにおいて、金属アフィニティーリガンドは、複数の可溶性ポリマーに共有結合で付着された多くのものうちの1つであってもよい。別のかかる実施形態において、金属アフィニティーリガンドは、複数の不溶性固相粒子に共有結合的に付着され得る。
【0078】
金属アフィニティーDNA低減工程がリガンド-金属錯体を有する遊離粒子または可溶性ポリマーを用いて実施される一実施形態においては、沈殿物および共沈物が形成され得る。これらの固体は、所望のウイルスまたは小胞種を含有する上清のさらなる処理の前に除去され得る。一実施形態では、膜濾過、または遠心分離、またはこれら2つの組み合わせによって除去することができる。固体の除去後、試料は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって処理することができる。かかる実施形態の一つでは、TFFは、関心対象のウイルスまたは小胞は保持するが、より小さい混入種(contaminating species)は細孔を通過させて排除されるようにする最大細孔径を有する膜を使用して、実施される。かかる実施形態の一つでは、孔径カットオフ等級は100kDa、または300kDa、または500kDa、または700kDa、または1MDa、またはより大きいもしくは中間の分子量カットオフ(MWCO)であり得る。前述の実施形態のほとんどまたはすべてにおいて、TFFステップは特に、会合していた宿主細胞DNAの溶解によって遊離されたヒストンタンパク質の除去を可能にする。前述の実施形態のいずれにおいても、TFFステップは、試料を濃縮するために、および/または、クロマトグラフィーステップを実施するのに適した緩衝液中に試料を透析濾過するために使用されてもよい。
【0079】
前述の実施形態のいずれにおいても、金属アフィニティーステップによる試料の処理は試料がより濾過しやすく、TFFまたはクロマトグラフィーによる処理をより容易にする程度まで、大きな凝集物および細胞残屑を除去し得る。かかる実施形態の一つでは、TFFを使用して、試料を濃縮し、DNAレベルをさらに低下させるためのヌクレアーゼ酵素による酵素消化に適した条件となるように透析濾過することができる。一実施形態では、金属アフィニティーによって処理された試料は、アニオン交換クロマトグラフィーによって試料を処理する前に、またはアニオン交換クロマトグラフィーの前の中間クロマトグラフィーステップによって、ヒストンタンパク質を除去するために、TFFによってさらに処理され得る。
【0080】
いくつかの実施形態においては、生成物調製物中に二次添加剤(secondary additives)が含まれて、所望の生成物と処理表面との間の非特異的相互作用を抑制するかまたは所望の生成物を安定化しうる。そのような添加剤としては、非イオン性または双性イオン性の界面活性剤、例えば、とりわけ、オクタグルコシド、ポロキサマー188、プルロニックF68、CHAPS、またはCHAPSOが挙げられ得る。かかる安定化化合物は、それに代えて、またはそれに加えて、糖、例えば、とりわけ、スクロース、ソルビトール、キシロース、マンニトール、またはトレハロースを含み得る。かかる安定化化合物は、それに代えて、またはそれに加えて、とりわけ、ベタイン、タウロベタイン、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンなどのアミノ酸を含み得る。これらの剤の全ては、安定な生成物の溶解性および/または回収率を改善する傾向があることから、バイオ医薬分野で知られている。場合によっては、それらはまた、望ましくない種からの所望の生成物の分画を改善する。
【0081】
本発明の方法の両方のステップがクロマチン除去の副産物として他のリン酸化された混入物を除去する可能性を有することが認識されるであろう。他のリン酸化された混入物は潜在的に、RNA、エンドトキシン、リンタンパク質、およびリン脂質を含む。
【実施例】
【0082】
実施例1
マグネシウムを用いたアニオン性金属アフィニティーによるアデノ随伴ウイルス(AAV)の調製物からの宿主細胞DNAの事前除去
イミノ二酢酸(IDA)キレート残基を有するモノリスにマグネシウムを担持させ、pH9.0に平衡化した。陽イオン交換精製したカプシドの試料を同じ条件に平衡化し、カラムにロードした。AAVカプシドは結合されずにカラムを通過した。宿主細胞DNAは結合し、後に1M NaOHで除去された。結果を
図2に示す。
【0083】
実施例2
マグネシウムを用いたアニオン性金属アフィニティーによるAAVの調製物からの宿主細胞DNAの事前除去
IDAキレート残基を有するモノリスにマグネシウムを担持させ、pH7.0に平衡化した。陽イオン交換精製したカプシドの試料を同じ条件に平衡化し、カラムにロードした。AAVカプシドはDNAと共に部分的に結合した(
図3。
図2と比較のこと)。AAVカプシドはpH7.0で部分的に結合していたにもかかわらず、結果は、約250mM NaClでAAVカプシドが溶出したことを示す。これは、平衡化された試料およびカラム中に当該量の塩を含ませることが、それらの結合を妨げたことを意味する。
図4は、塩化ナトリウム勾配で溶出がなされる強力な(第四級アミン)アニオン交換体を用いたアニオン交換クロマトグラフィーによるDNAの除去と同時に起こる、空のAAVカプシドおよび完全なAAVカプシドの分離を示す。
図5は、pH勾配で溶出がなされる弱アニオン(第一級アミン)交換体を用いたアニオン交換クロマトグラフィーによるDNAの除去と同時に起こる、空のAAVカプシドおよび完全なAAVカプシドの分離を示す。
【0084】
実施例3
細胞外小胞の調製物からのDNAの事前除去
IDAキレート残基を有するモノリスに第二鉄を担持させ、50mM Hepes、50mM NaCl、pH7.0で平衡化した。清澄化された哺乳動物細胞培養回収物をモノリスに通した。
図6は、IDA-Feモノリスに適用される前の試料の分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイルを示す。約10分~約23分の260nmにおける過剰なUV吸光度に留意されたい。これは、核酸の存在を示し、クロマチンが通常溶出する区域に対応する。
図7は、IDA-Feモノリスに適用した後の試料の分析用サイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示す。260nmでの過剰な吸光度の除去、および10~23分のUVシグナルの一般的な減少に注目されたい。これはクロマチン除去と一致する。
図8は、マルチアングル光散乱(MALS、LS)および免疫蛍光(IFL)によってモニターされた分析用サイズ排除クロマトグラフィーの前後の結果を示す。光散乱は、エキソソーム、微小胞、アポトーシス体、クロマチン、および細胞残屑を含む細胞外小胞などの大きな溶質の光学的検出を選択的に増幅する。免疫蛍光(IFL)はクロマトグラフィーの前に試料に蛍光標識抗体を添加し、次いで蛍光検出器を用いてランをモニタリングすることによって、SECと併せて実施される。IFLは、抗体が向けられる特異的免疫学的マーカーを有する溶質のみを検出する。この実験において、抗体は、エキソソームに特徴的であることが知られているマーカーであるCD63に向けられた。「処理後」試料についてのMALSおよびIFLシグナル強度は、本発明の方法による早期処理中の5倍試料希釈を補償するために、5倍上方に調整された。MALSに対するIFLの比が、処理の結果として増加したことに留意されたい。これは、本方法の金属アフィニティーステップがエキソソームマーカーを欠く試料成分を選択的に除去し、それによって、より濃縮されたエキソソーム画分を生成することを示す。これは、
図6のMALSによって検出された10~12分の溶質の大部分がクロマチンと会合していたことを示唆している。
図9は50mM Hepes、50mM NaCl、pH7.0に平衡化された強アニオン交換体(第四級アミン)上にロードされ、次いで、1M NaOHで洗浄される前に、2M NaClに向かう線形勾配で溶出された、部分精製細胞外小胞調製物の処理を示す。細胞外小胞はほとんど1M未満のNaClで溶出する。クロマチンの大部分の溶出にはNaOHを必要とする。
【0085】
実施例4
バクテリオファージT4の調製物からの宿主DNAの事前除去
IDAキレート残基を有するモノリスに第二鉄を担持させ、pH7.0に平衡化した。濾過した細胞培養回収物をモノリスに通してDNAを除去した。
図10に溶出プロファイルを示す。バクテリオファージはモノリス中を流れて通過した。いくつかの混入物が結合し、NaClで溶出された。その後、DNAを1M NaOHで除去した。
図11は、pH7における塩化ナトリウム勾配で溶出がなされた強アニオン交換体(第四級アミン)上のアニオン交換クロマトグラフィーによる高度精製(polishing purification)を示す。
図12は、pH7における塩化ナトリウム勾配で溶出がなされた弱アニオン交換体(第一級アミン)上のアニオン交換クロマトグラフィーによる高度精製を示す。
【0086】
実施例5
IgGモノクローナル抗体を含有する調製物からの宿主DNAの除去
IDAモノリスに第二鉄を担持させ、過剰の鉄を1M NaClで洗い流す。IDA-Fe基材を水で洗浄して、過剰な塩を除去する。IgGモノクローナル抗体を含有する濾過細胞培養回収物を、ほぼ生理学的条件下でモノリスに通す。生理学的条件という用語は、約6.5~7.5のpHおよび50~200mS/cmの導電率に対応する塩濃度を含むと理解される。抗体は流れて通過する。クロマチンは結合する。モノリスをすすぎ、抗体を全て回収する。次いで、マルチモーダルアニオン交換クロマトグラフィーによって抗体を処理して、DNA含有量をさらに減少させる。
【0087】
実施例6
IgGモノクローナル抗体の精製
クロマチンの金属アフィニティー除去後にTFFステップを挿入することを除いて、実施例5の方法を繰り返す。TFFは、IgGが保持され、一方、低分子量タンパク質および低分子量混入物の含有量がアニオン交換クロマトグラフィーステップの前に低減されるように、分子量カットオフ(MWCO)が30kDAである膜を用いて実施される。このプロセスの変形例では、DNAの金属アフィニティー除去を、実施例5に記載されるようなフロースルークロマトグラフィー装置に代えて、バルク形態の回収物をIDA-Fe粒子で処理することによって実施することができる。
【0088】
実施例7
IgMモノクローナル抗体を含有する調製物からの宿主DNAの除去
IDAモノリスに第二鉄を担持させ、過剰の鉄を1M NaClで洗い流す。IDA-Fe基材を水で洗浄して、過剰な塩を除去する。IgMモノクローナル抗体を含有する濾過細胞培養回収物を、ほぼ生理学的条件下でモノリスに通す。抗体は流れて通過する。クロマチンは結合する。モノリスをすすぎ、抗体を全て回収する。次いで、塩勾配で溶出がなされる強アニオン交換体で抗体を処理して、DNA含有量をさらに減少させる。
【0089】
実施例8
IgMモノクローナル抗体の精製
クロマチンの金属アフィニティー除去後にTFFステップを挿入することを除いて、実施例7の方法を繰り返す。TFFは、IgMが保持され、一方、低分子量タンパク質および低分子量混入物の含有量がアニオン交換クロマトグラフィーステップの前に低減されるように、MWCOが100kDAである膜を用いて実施される。このプロセスの変形例では、DNAの金属アフィニティー除去を、実施例7に記載されるようなフロースルークロマトグラフィー装置に代えて、バルク形態の回収物をIDA-Fe粒子で処理することによって実施することができる。
【0090】
参照文献
本明細書に引用される全ての参考文献は、その組み込みが本明細書の明示的な教示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
[1] R Nian, W Zhang, L Tan, J Lee, X Bi, YS Yang, HT Gan, P Gagnon, Advance chromatin extraction improves capture performance of protein A affinity chromatography, J Chromatogr A 1431 (2016) 1-7.
[2]. R Nian, P Gagnon, Advance chromatin extraction enhances performance and productivity of cation exchange chromatography-based capture of immunoglobulin G monoclonal antibodies, J Chromatogr A 1453 (2016) 54-61.
[3] P Gagnon, R Nian, L Tan, J Cheong, V Yeo, YS Yang, HT Gan, Chromatin-mediated depression of fractionation performance on electronegative multimodal chromatography media, its prevention, and ramification for purification of immunoglobulin G, J Chromatogr A 1374 (2014) 145-155.
[4] T McNerney, A Thomas, A Senczuk, K Petty, X Zhao, R Piper, J Carvalho, M Hammond, S Sawant, J Bussiere, pDADMAC flocculation of Chinese hamster ovary cells: enabling a centrifuge-less harvest process for monoclonal antibodies, mAbs 7 (2015) 413-427.
[5] J Murphy, D Jewell, K White, G Fox, R Wilson, Nucleic acid separations utilizing immobilized metal affinity chromatography, Biotechnol Progr 19 (2003) 982-986.
[6] T Cano, J Murphy, G Fox, R Wilson, Separation of genomic DNA from plasmid DNA by selective renaturation with immobilized metal affinity capture, Biotechnol Progr 21 (2005) 1472-1477.
[7] M Lock, Luc Vandenberghe, J Wilson, Scalable production method for AAV, US Patent US9198984B2, Adjusted expiration August 31, 2028.
[8] M Lock, Luc Vandenberghe, J Wilson, Scalable production method for AAV, US Patent US20160040137A1, Anticipated expiration April 4, 2027.
[9] M Lock, M Alvira, Scalable purification method for AAV9, World patent application WO2017160360A9, Priority date December 11, 2015.
[10] C Ferreira, I Pinto, E Soares, H Soares, (Un)suitability of the use of pH buffers in biological, biochemical, and environmental studies and their interaction with metal ions - a review, RSC Adv 5 (2015) 30989-31003.
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
参照文献
本明細書に引用される全ての参考文献は、その組み込みが本明細書の明示的な教示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
[1] R Nian, W Zhang, L Tan, J Lee, X Bi, YS Yang, HT Gan, P Gagnon, Advance chromatin extraction improves capture performance of protein A affinity chromatography, J Chromatogr A 1431 (2016) 1-7.
[2]. R Nian, P Gagnon, Advance chromatin extraction enhances performance and productivity of cation exchange chromatography-based capture of immunoglobulin G monoclonal antibodies, J Chromatogr A 1453 (2016) 54-61.
[3] P Gagnon, R Nian, L Tan, J Cheong, V Yeo, YS Yang, HT Gan, Chromatin-mediated depression of fractionation performance on electronegative multimodal chromato
graphy media, its prevention, and ramification for purification of immunoglobulin G, J Chromatogr A 1374 (2014) 145-155.
[4] T McNerney, A Thomas, A Senczuk, K Petty, X Zhao, R Piper, J Carvalho, M Hammond, S Sawant, J Bussiere, pDADMAC flocculation of Chinese hamster ovary cells:
enabling a centrifuge-less harvest process for monoclonal antibodies, mAbs 7 (2015) 413-427.
[5] J Murphy, D Jewell, K White, G Fox, R Wilson, Nucleic acid separations utilizing immobilized metal affinity chromatography, Biotechnol Progr 19 (2003) 982-986.
[6] T Cano, J Murphy, G Fox, R Wilson, Separation of genomic DNA from plasmid DNA by selective renaturation with immobilized metal affinity capture, Biotechnol Progr 21 (2005) 1472-1477.
[7] M Lock, Luc Vandenberghe, J Wilson, Scalable production method for AAV, US Patent US9198984B2, Adjusted expiration August 31, 2028.
[8] M Lock, Luc Vandenberghe, J Wilson, Scalable production method for AAV, US Patent US20160040137A1, Anticipated expiration April 4, 2027.
[9] M Lock, M Alvira, Scalable purification method for AAV9, World patent application WO2017160360A9, Priority date December 11, 2015.
[10] C Ferreira, I Pinto, E Soares, H Soares, (Un)suitability of the use of pH buffers in biological, biochemical, and environmental studies and their interaction with metal ions - a review, RSC Adv 5 (2015) 30989-31003.
本願発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1>
タンパク質、ウイルス、又は細胞外小胞の所望の種(species)を含む試料から宿主細
胞DNAを除去する方法であって、
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材に金属イオンを担持させるステップ、
pH4~pH10の範囲のpH、および1Mまでの濃度範囲の塩の濃度を有する緩衝液で、前記基材を平衡化するステップ、ここで前記塩は前記アニオン性金属アフィニティーリガンドと化学錯体を形成しない、
前記試料を前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と接触させるステップ、
前記試料から前記基材を分離するステップ、ここで、前記試料は減少した宿主細胞DNAの含有量を有する、
を含む前記方法。
<2>
前記アニオン性金属アフィニティーリガンドが、アミノ-ジカルボン酸およびアミノ-トリカルボン酸からなる群より選択される、<1>に記載の方法。
<3>
前記アニオン性金属アフィニティーリガンドが、イミノ二酢酸(IDA)またはニトリロ酢酸(NTA)である、<2>に記載の方法。
<4>
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する前記基材が、粒子、ナノフィラメント、多孔質膜、モノリス、ヒドロゲル、深層濾過材、可溶性ポリマー媒体の形態である、<1>~<3>のいずれか一項に記載の方法。
<5>
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する前記基材が、フロースルークロマトグラフィー装置の形態である、<4>に記載の方法。
<6>
前記基材の平衡化が、pH7.0~9.5、または8.0~9.0の範囲のpHを有する緩衝液を用いて実施される、<1>~<5>のいずれか一項に記載の方法。
<7>
前記基材の平衡化が、1Mまで、または50mM~750mM、または100mM~500mM、または125mM~250mMの範囲の前記塩の濃度を有する緩衝液によって実施される、<1>~<6>のいずれか一項に記載の方法。
<8>
前記基材の平衡化に使用される前記緩衝液が、ウイルスまたは細胞外小胞の結合を妨げるがDNAの結合を許容し、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、もしくは酢酸カリウムなどの無機塩;アルギニン-HCl、リジン-HCl、またはイミダゾリウムカチオン、ヒスチジルカチオン、もしくはヒスタミニルカチオンに基づく塩などの有機塩;およびグアニジニウムカチオンもしくはチオシアネートアニオンまたはその両方を含むもの、などのカオトロピック塩;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される前記塩によって調整された塩条件を提供する、<1>~<7>のいずれか一項に記載の方法。
<9>
前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材に、2価以上の正電荷を有する金属イオン、好ましくは鉄(II)、マンガン(II)、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、銅(II)、亜鉛(II)、バリウム(II)、ニッケル(II)、コバルト(II)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される金属イオンを担持させる、<1>~<8>のいずれか一項に記載の方法。
<10>
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物、細胞溶解物、または部分精製調製物であ
り、前記所望の種が、AAVカプシドなどの脂質エンベロープを有さないタンパク質カプシドウイルス粒子;インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどの脂質エンベロープを有するウイルスまたはウイルス様粒子;バクテリオファージ、エキソソームなどの細胞外小胞;および抗体などのタンパク質;ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、<1>~<9>のいずれか一項に記載の方法。
<11>
前記AAVカプシドが、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV2/8またはAAV2/9のような組換えハイブリッド血清型、合成組換え血清型、およびそれらの組合せからなる群より選択される、<10>に記載の方法。
<12>
前記試料が、<1>に記載の金属アフィニティーステップの後に生物学的アフィニティークロマトグラフィーによって、金属アフィニティー後にカチオン交換によって、<1>に記載の金属アフィニティーステップの後に疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、および/または<1>に記載の金属アフィニティーステップの後にタンジェンシャルフロー濾過によって、処理される、<1>~<11>のいずれか一項に記載の方法。
<13>
前記タンジェンシャルフロー濾過が、1MDa以下、特に30~50kDa、30~100kDa、または200kDa~700kDaの範囲の孔径カットオフを有する膜を使用する、<12>に記載の方法。
<14>
減少したDNAの含有量を有する前記試料が、さらにアニオン交換クロマトグラフィーによって処理される、<1>~<13>のいずれか一項に記載の方法。
<15>
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物または細胞溶解物である、<1>~<14>のいずれか一項に記載の方法。
<16>
前記試料が、前記試料を前記金属担持アニオン性金属アフィニティー基材に接触させるステップの前にいかなるクロマトグラフィーステップも経ていない、<15>に記載の方法。
<17>
タンパク質、ウイルス、又は細胞外小胞の所望の種(species)を含む試料から宿主細
胞DNAを除去する方法における、アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材の使用。
<18>
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物または細胞溶解物である、<17>に記載の使用。
<19>
前記試料が、前記試料を前記基材に接触させるステップの前にいかなるクロマトグラフィーステップも経ていない、<18>に記載の使用。
<20>
前記試料がアルカリ条件を有する、<17>に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、ウイルス、又は細胞外小胞の所望の種(species)を含む試料から宿主細
胞DNAを除去する方法であって、
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材に金属イオンを担持させるステップ、
pH4~pH10の範囲のpH、及び1Mまでの濃度範囲の塩の濃度を有する緩衝液で、前記基材を平衡化するステップ、ここで前記塩は前記アニオン性金属アフィニティーリガンドと化学錯体を形成しない、
前記試料を前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材と接触させるステップ、
前記試料から前記基材を分離するステップ、ここで、前記試料は減少した宿主細胞DNAの含有量を有する、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記アニオン性金属アフィニティーリガンドが、アミノ-ジカルボン酸およびアミノ-トリカルボン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオン性金属アフィニティーリガンドが、イミノ二酢酸(IDA)またはニトリロ酢酸(NTA)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する前記基材が、粒子、ナノフィラメント、多孔質膜、モノリス、ヒドロゲル、深層濾過材、可溶性ポリマー媒体の形態である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する前記基材が、フロースルークロマトグラフィー装置の形態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基材の平衡化が、pH7.0~9.
5の範囲のpHを有する緩衝液を用いて実施される、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記基材の平衡化が、1Mま
での範囲の前記塩の濃度を有する緩衝液によって実施される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基材の平衡化に使用される前記緩衝液が、ウイルスまたは細胞外小胞の結合を妨げるがDNAの結合を許容し
、無機塩、有機塩、およ
びカオトロピック塩
、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される前記塩によって調整された塩条件を提供する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材に、2価以上の正電荷を有する金属イオ
ンを担持させる、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物、細胞溶解物、または部分精製調製物であり、前記所望の種が
、脂質エンベロープを有さないタンパク質カプシドウイルス粒子
、脂質エンベロープを有するウイルス、ウイルス様粒子
、バクテリオファージ
、細胞外小胞
、およ
びタンパク質
、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記所望の種が、AAVカプシドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記AAVカプシドが、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11
、組換えハイブリッド血清型、合成組換え血清型、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、請求項1に記載の金属アフィニティーステップの後に生物学的アフィニティークロマトグラフィーによって、金属アフィニティー後にカチオン交換によって、請求項1に記載の金属アフィニティーステップの後に疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、および/または請求項1に記載の金属アフィニティーステップの後にタンジェンシャルフロー濾過によって、処理される、請求項1~請求項
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記タンジェンシャルフロー濾過が、1MDa以
下の範囲の孔径カットオフを有する膜を使用する、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
減少したDNAの含有量を有する前記試料が、さらにアニオン交換クロマトグラフィーによって処理される、請求項1~請求項
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物または細胞溶解物である、請求項1~請求項
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、前記試料を前記金属担持アニオン性金属アフィニティー基材に接触させるステップの前にいかなるクロマトグラフィーステップも経ていない、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
タンパク質、ウイルス、又は細胞外小胞の所望の種(species)を含む試料から宿主細
胞DNAを除去する方法における、アニオン性金属アフィニティーリガンドを有する基材の使用。
【請求項19】
前記所望の種を含む前記試料が、細胞回収物または細胞溶解物である、請求項
18に記載の使用。
【請求項20】
前記試料が、前記試料を前記基材に接触させるステップの前にいかなるクロマトグラフィーステップも経ていない、請求項
19に記載の使用。
【請求項21】
前記試料がアルカリ条件を有する、請求項
18に記載の使用。
【請求項22】
前記基材の平衡化が、8.0~9.0の範囲のpHを有する緩衝液を用いて実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項23】
前記基材の平衡化が、100mM~500mMの範囲の前記塩の濃度を有する緩衝液によって実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項24】
前記無機塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項25】
前記有機塩が、アルギニン-HCl、リジン-HCl、および、イミダゾリウムカチオン、ヒスチジルカチオン、またはヒスタミニルカチオンに基づく塩からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項26】
前記カオトロピック塩が、グアニジニウムカチオンを含む塩、チオシアネートアニオンを含む塩、および、その両方からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項27】
前記の金属担持アニオン性金属アフィニティー基材に担持させる、2価以上の正電荷を有する前記金属イオンが、鉄(II)、マンガン(II)、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、銅(II)、亜鉛(II)、バリウム(II)、ニッケル(II)、コバルト(II)、および、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項28】
前記合成組換え血清型が、AAV2/8またはAAV2/9である、請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】