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特表2023-539164調節可能なライドハイトを有するデュアルレート車両サスペンションシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】調節可能なライドハイトを有するデュアルレート車両サスペンションシステム
(51)【国際特許分類】
   B60G 11/50 20060101AFI20230906BHJP
   B60G 3/20 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B60G11/50
B60G3/20
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023512382
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 US2020047352
(87)【国際公開番号】W WO2022039752
(87)【国際公開日】2022-02-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514056403
【氏名又は名称】マルチマティック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MULTIMATIC INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】アダモフスキ、 マイケル フランシス アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ホルト、 ローレンス ジェイ.
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA01
3D301CA11
3D301DA09
3D301DA10
3D301DA21
3D301DA22
3D301DA27
3D301DA33
3D301DA87
3D301DB20
3D301DB40
(57)【要約】
ばね構造が、円筒状ダンパ(5)と、予め定められた第1のばねレートKlを有する一次コイルばね(9)と、予め定められた第2のばねレートK2を有する二次コイルばね(11)とを含み、コイルばねは円筒状ダンパの周りに直列に配置されて全体の合成ばねレートKTを提供し、アクチュエータ(20)がコイルばね(9、11)を圧縮及び減圧するように構成され、停止具(12)が停止位置で二次コイルばねを非作動にするように構成され、システムが第1の快適モードにあるとき、全体のサスペンションばねレートは直列方程式1/KT=1/Kl+1/K2によって定義され、システムが第2のハンドリングモードにあるとき、全体の車両サスペンションばねレートは直列方程式KT=Klによって定義され、これにより低いレートで最適な乗り心地の設定と高いレートで最適なハンドリングの低いライドハイトの設定の両方を選択的かつ切り替え可能に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に切り替え可能なデュアルレート車両サスペンションシステムであって、車両の1つのコーナーのばね下質量とばね上質量との間に配置されるように構成されたばね構造であって、円筒状ダンパと、予め定められた第1のばねレートK1を有する一次コイルばねと、予め定められた第2のばねレートK2を有する二次コイルばねとを含み、前記一次コイルばね及び前記二次コイルばねは前記円筒状ダンパの周りに直列に配置されて全体の合成ばねレートKTを提供するばね構造と、
前記一次コイルばね及び前記二次コイルばねを圧縮及び減圧するように構成されたアクチュエータと、
停止位置で前記二次コイルばねを非作動にするように構成された停止具と
を含み、
前記サスペンションシステムが第1のモードにあるとき、全体のサスペンションばねレートは直列方程式1/KT=1/K1+1/K2によって定義され、前記サスペンションシステムが第2のモードにあるとき、全体の車両サスペンションばねレートは直列方程式KT=K1によって定義され、これにより前記第1のモードでの低いレートで最適な乗り心地の設定と前記第2のモードでの高いレートで最適なハンドリングの低いライドハイトの設定の両方を選択的かつ切り替え可能に提供する、サスペンションシステム。
【請求項2】
前記一次コイルばね及び前記二次コイルばねの両方が中間ばね当接部に接続される、請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項3】
前記アクチュエータは、下側ばね当接部を介して前記二次コイルばねに作用する、請求項1又は2に記載のサスペンションシステム。
【請求項4】
前記アクチュエータは、油圧シリンダと油圧ピストンとを含む、請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項5】
前記二次コイルばねは、減圧されたときに非作動にされる、請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項6】
前記中間ばね当接部は、油圧ピストンを有する油圧シリンダを含む、請求項2に記載のサスペンションシステム。
【請求項7】
前記二次コイルばねは、圧縮されたときに非作動にされる、請求項6に記載のサスペンションシステム。
【請求項8】
前記油圧シリンダは、前記円筒状ダンパの外壁に支えられて動く、請求項7に記載のサスペンションシステム。
【請求項9】
前記停止具は、前記油圧シリンダの接触部分が当接する前記円筒状ダンパの外壁の停止部分を含む、請求項8に記載のサスペンションシステム。
【請求項10】
前記二次コイルばねを前記停止位置に保持するように構成されたロックアウト手段をさらに含む、請求項6から9のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項11】
第3の操縦モードをさらに含み、前記第3の操縦モードでは、前記二次コイルばねを減圧し、前記一次コイルばねを上昇させて前記ライドハイトを前記最適な乗り心地の設定より上に増大させる、請求項6に記載のサスペンションシステム。
【請求項12】
前記円筒状ダンパは、最適な車両の快適性及びハンドリングのために、ばねレートの変化に適合するように調節可能な減衰を提供する、請求項1から11のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のサスペンションシステムに関し、特に2つの異なる動作モードを提供するサスペンションシステムに関する。乗り心地の最適化と路上走行車のハンドリング能力の最適化との間でなされなければならない固有の妥協を克服するために、本発明は、一次ロードコイルばねのレートを最適なハンドリングの設定と最適な乗り心地の設定との間で切り替えることができるデュアルモードサスペンションシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサスペンションの基本的な前提は、車両の車輪が独立して凸凹などの路面外乱を上ったり渡ったりすることを可能にし、車両全体及びその乗員をそのように移動させないことである。乗客が路面外乱の影響を直接受けない場合、乗客の乗り心地は大幅に向上する。また、車両全体ではなく車輪を路面外乱の上で動かすだけで、大幅なエネルギー節約が実現する。さらに、車両の質量全体が路面外乱の上で縦揺れしないため、車両のステアリング制御が速度の増加と共に大幅に向上する。
【0003】
車両のサスペンションは様々に構成することができるが、一般に、エネルギー貯蔵媒体、通常はある種のばねを用いて、「ばね上質量」と呼ばれる車体本体を「ばね下質量」と呼ばれるホイールシステムから分離するように配置される。ばねは、ハブ、ブレーキ、運動制御リンク機構を含むホイールシステムが路面外乱に応答して車体本体に対して移動できるように、エネルギーを貯蔵する。外乱を通過すると、ばねはその貯蔵エネルギーを放出して、ホイールシステムを外乱のない状態に戻す。単純ばね質量系での制御されていない振動応答を回避するために、何らかの形態の減衰装置が使用される。通常、油圧ベースのコンポーネントが速度に比例する力を生成してばね運動の両方向に抵抗力を提供し、ばねが外乱のない位置でゼロ速度に戻るのを支援する。このダンパは、車両の重量を支えない二次的なコンポーネントである。
【0004】
車両の動的応答の限界に近づくにつれて、運動制御リンク機構とエネルギー貯蔵及びダンパコンポーネントとを含むサスペンションシステムは、最適性能レベルに到達する際の制約要因となる。路面外乱からの高度な乗員分離を提供するために、ばね及びダンパを比較的柔らかく調整すると、ドライバーのステアリング、加速及びブレーキ要求によって発生する横方向及び縦方向の力に応答してばね上質量が過剰に移動する傾向がある。これらの要求は、一般に「ハンドリングレスポンス」と呼ばれるものをもたらし、乗員分離の質は「ライドレスポンス」と呼ばれる。
【0005】
4つのホイールコーナーのそれぞれでばねレート(ばね定数)と減衰係数を変更することによって、車両の乗り心地及びハンドリング性能を最適化することができる。一般に、単位変位あたりの力で測定される硬いばねレートは、より硬い乗り心地と優れた車体制御を生じ、一方、柔らかいばねレートは、より柔らかい乗り心地を提供するが、制御性が低くなる。減衰係数は通常、関連するばねレートに直接合わせられる。残念なことに、最適なライドレスポンスは低いばねレートで生じ、最適なハンドリングレスポンスは高いばねレートで生じる。これにより、歴史的に車両はライドレスポンスとハンドリングレスポンスの妥協点に合わせて調整されてきた。
【0006】
当技術分野で説明されている多数の適応型及び手動式のデュアルレートサスペンションシステムがある。しかしながら、最近まで、コイルばね、板ばね、又はねじりばねなどの金属製エネルギー貯蔵装置を使用して必要とされる性能車両の特性を提供できるものはなかった。
【0007】
選択的に切り替え可能なデュアルレートサスペンションシステムが、Holtらの特許文献1に記載されている。プッシュロッドで作動する内側ばね構造がトーションバーとコイルばねとを直列に含み、それぞれが独自のばねレートを有する。ロックアウトアクチュエータが、コイルばねと平行に配置される。第1のモードでは、コイルばねが自由に動くことができるので、全体のばねレートにはトーションバーばねレートとコイルばねレートの両方が寄与している。第2のロックアウトモードでは、コイルばねの動きが妨げられ、全体のばねレートがトーションバーのばねレートに変更される。これにより、低いレートで最適なライドハイトの快適な設定と、高いレートで低いライドハイトの最適なハンドリングの設定の両方が選択的に提供される。この選択的に切り替え可能なデュアルレートサスペンションシステムは非常に効果的であるが、プッシュロッドの構成を採用しているため、一般に非常に高性能な車両に使用が制限される。したがって、より幅広い自動車に使用できる選択的に切り替え可能なデュアルレートサスペンションシステムが必要とされている。
より一般的に適用可能なデュアルレートサスペンションシステムを設計するためにいくつかの試みがなされてきた。しかしながら、それらのいずれも、高いばねレートの最適ハンドリングモードでより低いライドハイトを提供するアクティブで選択的に切り替え可能なシステムではない。例えば、Doerfelの特許文献2は、ストラットの周りに配置された2つのコイルばねを有する、手動で調節できない構造について説明している。ばねアセンブリは、マスターばね、スライド、停止具、及びマスターばねと直列に接続された少なくとも1つの補助ばねを有する。ばねアセンブリの圧縮中、補助ばねが予め定められた点まで圧縮されると、停止具がスライドに接触し、補助ばねの更なる圧縮を防ぐ。並列に接続されたばねを有する別の構成も記載されている。Wakemanの特許文献3及びMasonの特許文献4には同様の構造が記載されている。どちらも1つのばねの完全なロックアウトを伴わない。Masonは全体としてライドハイトを維持しようとするが、Wakemanは無負荷又はニュートラル状態からライドハイトを上げることはできるが、下げることはできない。どちらも、高いばねレートの最適ハンドリングモードでライドハイトを下げる手段を提供しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017/120509号(PCT/US2017/012588)
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0302559号明細書
【特許文献3】米国特許第9,162,548号明細書
【特許文献4】米国特許第9,821,621号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主要な態様では、選択的に切り替え可能なデュアルレート車両サスペンションシステムは、車両の1つのコーナーのばね下質量とばね上質量との間に従来通り配向され、円筒状ダンパと、予め定められた第1のばねレートK1を有する一次コイルばねと、予め定められた第2のばねレートK2を有する二次コイルばねとを含み、一次コイルばね及び二次コイルばねは円筒状ダンパの周りに直列に配置されて全体の合成ばねレートKTを提供するばね構造と、一次コイルばね及び二次コイルばねを圧縮及び減圧するように構成されたアクチュエータと、停止位置で二次コイルばねを非作動にするように構成された停止具とを含み、サスペンションシステムが第1の快適モードにあるとき、全体のサスペンションばねレートは直列方程式1/KT=1/K1+1/K2によって定義され、サスペンションシステムが第2のハンドリングモードにあるとき、全体の車両サスペンションばねレートは直列方程式KT=K1によって定義され、これにより低いレートで最適な乗り心地の設定と高いレートで最適なハンドリングの低いライドハイトの設定の両方を選択的かつ切り替え可能に提供する。
【0010】
本発明の更なる態様では、一次コイルばね及び二次コイルばねの両方が中間ばね当接部に接続される。
【0011】
本発明の更なる態様では、アクチュエータは、下側ばね当接部を介して二次コイルばねに作用する。
【0012】
本発明の更なる態様では、アクチュエータは、油圧シリンダと油圧ピストンとを含む。
【0013】
本発明の更なる態様では、二次コイルばねは、減圧されたときに非作動にされる。
【0014】
本発明の更なる態様では、中間ばね当接部は、油圧ピストンを有する油圧シリンダを含む。
【0015】
本発明の更なる態様では、二次コイルばねは、圧縮されたときに非作動にされる。
【0016】
本発明の更なる態様では、油圧シリンダは、円筒状ダンパの外壁に支えられて動く。
【0017】
本発明の更なる態様では、停止具は、油圧シリンダの接触部分が当接する円筒状ダンパの外壁の停止部分を含む。
【0018】
本発明の更なる態様では、サスペンションシステムは、二次コイルばねを停止位置に保持するように構成されたロックアウト手段をさらに含む。
【0019】
本発明の更なる態様では、サスペンションシステムは、二次コイルばねを減圧し、一次コイルばねを上昇させてライドハイトを最適な乗り心地の設定より上に増大させる、第3の操縦モードをさらに含む。
【0020】
本発明の更なる態様では、円筒状ダンパは、最適な車両の快適性及びハンドリングのために、ばねレートの変化に適合するように調節可能な減衰を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】車両の1つのコーナー、典型的にはフロントコーナーで使用するために、従来のダブルウィッシュボーンサスペンションシステムに取り付けられたフロントアセンブリ単動シリンダシステムの斜視図を示す。
【0022】
図1B】フロントアセンブリ単動シリンダシステムの様々な角度からの斜視分離図を示す。
図1C】フロントアセンブリ単動シリンダシステムの様々な角度からの斜視分離図を示す。
図1D】フロントアセンブリ単動シリンダシステムの様々な角度からの斜視分離図を示す。
【0023】
図2A】単動シリンダシステムの一部の立面断面図を示す。
【0024】
図2B】単動シリンダシステムの一部と特定のダンパコンポーネントの斜視図を示す。
【0025】
図3図3A図3B及び図3Cは、従来のダブルウィッシュボーンサスペンションシステムに取り付けられたフロントアセンブリ単動シリンダシステムをそれぞれ下降、トリム及び上昇車高構成において複数の立面図で示す。
【0026】
図4A-4B】図4A及び図4Bは、フロントアセンブリ単動シリンダシステムを、下降車高構成におけるシステムの1対の立面断面図及び標準図で示す。
【0027】
図4C-4D】図4C及び図4Dは、フロントアセンブリ単動シリンダシステムを、トリム車高構成におけるシステムの1対の立面断面図及び標準図で示す。
【0028】
図4E-4F】図4E及び図4Fは、フロントアセンブリ単動シリンダシステムを、上昇車高構成におけるシステムの1対の立面断面図及び標準図で示す。
【0029】
図5図5Aは、代替的なフロントアセンブリ複動シリンダシステムを斜視分離図で示す。
【0030】
図5Bは、図5Aの代替的なフロントアセンブリ複動シリンダシステムの部分的に拡大された部分を斜視分離図で示す。
【0031】
図5Cは、図5Aの代替的なフロントアセンブリ複動シリンダシステムを別の角度から示す。
【0032】
図6】複動シリンダシステムの一部の立面断面図を示す。
【0033】
図7図7Aは、従来のダブルウィッシュボーンサスペンションシステムに取り付けられた代替的なフロントアセンブリ複動シリンダシステムの立面図を示す。
【0034】
図7Bは、代替的なフロントアセンブリ複動シリンダシステムの斜視分離図を示す。
【0035】
前の段落、特許請求の範囲、又は以下の説明及び図面の実施形態、実施例及び代替物は、それらの様々な態様又はそれぞれの個々の特徴のいずれかを含め、独立して又は任意の組み合わせで採用することができる。一実施形態に関連して説明した特徴は、そのような特徴が不適合でない限り、すべての実施形態に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
第1の実施形態では、サスペンションシステム1は、フロントアセンブリ単動シリンダ装置3を含む。円筒状ダンパ5、すなわちストラットは、従来のダブルウィッシュボーン7のサスペンションシステムにおいて衝撃吸収を提供する。単一のコイルばねがストラットの周りに同軸に取り付けられる従来のストラット配置とは異なり、典型的には異なるばねレートを有する2つのコイルばねが、円筒状ダンパ又はストラット5の周りに同軸に直列に取り付けられる。これらは、ばねレートK1の一次コイルばね9と、ばねレートK2の二次コイルばね11である。共通のばね当接部13が、2つのコイルばね9、11を接続する役割を果たす。一次コイルばね9は、ストラット5の自由端16でトップマウント15に接続され、又は当接する。下側ばね当接部17が、共通のばね当接部13から遠位の二次コイルばね11に接続され、又は当接する。
【0037】
直列に接続された2つのばねを含むばねシステムでは、合成ばねレートKTは式1/KT=1/K1+1/K2によって定義される。
【0038】
油圧シリンダアクチュエータ20が、下側ばね当接部17と円筒状ダンパ5の非自由端21との間で円筒状ダンパ5の周りに取り付けられる。好ましい油圧シリンダアクチュエータが説明されているが、アクチュエータは、電気的、空気圧的、又はその他を含む任意の適切な機構を含むことができる。
【0039】
下側ばね当接部17が下方のサスペンションコンポーネント23の上に載るように二次コイルばね11を完全に伸ばし、アクチュエータ20を後退させると、二次ばね11は全体のばねレートKTに寄与しない。この状態では、二次ばねレートK2は式から抜け、ばねレートは1/KT=1/K1と定義される。これは、直列の2つのばねの合成ばねレートがどちらか一方のばねだけの単一のばねレートよりも常に低いため、より硬いサスペンションに相当する。これはまた、滑らかな高速道路又はレーストラックなどの道路状況での最適なハンドリングのためのより低いライドハイトに相当する。このより低いライドハイトの構成を図3A図4A及び図4Bに示す。
【0040】
アクチュエータ20が油圧下で伸長すると、特定の時点でばね当接部13がばね止め12から持ち上がり、二次コイルばね11が式1/KT=1/K1+1/K2に従って全体のばねレートに再び寄与し始めるまで、アクチュエータ20が二次コイルばね11を圧縮する。これは、最適な乗り心地のためのより柔らかいサスペンションに相当し、典型的にはより凹凸の多い道路状況において最適である。このモードではライドハイトも高くなり、より凹凸の多い可能性のある道路状況からの車両クリアランスとして好ましい。この快適なライドハイト、すなわちトリムモードの構成は、図3B図4C及び図4Dに示されている。
【0041】
通常の変わりやすい道路状況で運転するために、最適な乗り心地の設定及び高さ、すなわちトリムモードは、アクチュエータ20を円筒状ダンパ5に対して特定の位置でロックすることによって選択することができる。図示の油圧アクチュエータ20では、これはバルブ25を閉じてアクチュエータ20に出入りする油圧流体の流れ27を止めることによって達成される。
【0042】
アクチュエータ20は、油圧ピストン29にスライド可能にシールされた油圧シリンダ19を含むことができ、油圧ピストン29は、同様に円筒状ダンパ5の外壁にスライド可能にシールされる。油圧ピストン29の位置は、油圧シリンダ19の内壁35、円筒状ダンパ5の外壁31、及びピストン29によって画定される油圧チャンバ33内の油圧流体の体積によって決まる。ピストン29は、油圧ピストン29と下側ばね当接部17が円筒状ダンパ5に対して縦一列になって往復運動するように、下側ばね当接部17に接触することができる。先に示したように、シール39は、比較的低摩擦の往復運動を可能にしながら、これらのコンポーネント間の油圧流体の漏れを防止する。バルブ25を閉じて油圧チャンバ33内の油圧流体の体積を定め、アクチュエータ20をサスペンションシステムのトリムモードのための位置にロックすることができる。
【0043】
特定の車両操縦目的のために、車高をさらに高くすることが有利である。例えば、車両が車道に入るために急勾配の私設車道を下らなければならない場合、車高を高くすることは、車両の一部が私設車道又は路面に接触するのを防ぐために有益であり得る。この状況では、アクチュエータ20をさらに伸ばして車両の前面を高くすることができる。この特別に高くした位置にあるシステムは、図3C図4E及び図4Fに示すような操縦モードと呼ぶことができる。操縦モードでは車両をかなりの速度で運転することは意図されていないが、特定の条件では有用なオプションである。
【0044】
第2の実施形態では、図5A~5C、図6及び図7A~7Bに示すように、システムは、フロントアセンブリ複動シリンダ装置を含む。第1の実施形態、単動シリンダ装置と同様に、第2の実施形態のサスペンションシステムは、一次及び二次コイルばね9、11が直列に接続され、円筒状ダンパ5の周りに同軸に取り付けられた円筒状ダンパ5を含む。しかしながら、この実施形態では、コイルばね9、11を接続するばね当接部13はまた、円筒状ダンパ5に沿って移動する往復動油圧シリンダ41を含む。また、二次コイルばね11は、円筒状ダンパ5が取り付けられるサスペンションコンポーネント23に対して、ばね当接部13よりも遠位端で固定される。このようにして、ばね9、11の圧縮又は減圧は、油圧シリンダ41によってばねの間の位置から発生する。
【0045】
油圧シリンダ41は、円筒状ダンパ5の外壁37の一部に沿って往復運動するように取り付けられる。油圧チャンバは、油圧シリンダ41と円筒状ダンパ5の外壁37との間のピストンの両側にある。油圧チャンバ43、45の一方に油圧流体を供給することによって、油圧シリンダ41は、円筒状ダンパ5に沿って一方向に移動するように付勢される。図示の実施形態では、第1の油圧チャンバ43内の油圧流体圧力が増大すると、油圧シリンダ41が一次コイルばね9を圧縮し、車高を上げる。対照的に、第2の油圧チャンバ43内の油圧流体圧力が増大すると、油圧シリンダ41が二次コイルばね11を圧縮し、車高を下げる。車両が十分に下降したとき、バルブ25を閉じて油圧チャンバ43、45内の油圧流体の更なる流れを止めることができる。これにより、油圧シリンダ41は円筒状ダンパ5に対してロックされ、移動が制限されるため、二次コイルばね11も全体のばねレートKTに寄与しないようにロックアウトされる。この最適ハンドリングモードでは、全体のばねレートKTは一次コイルばねレートK1と等しく、ばねレートは式1/KT=1/K1によって決まる。
【0046】
バルブ25を開き、二次コイルばね11が全体のばねレートに再び寄与することが可能になると、ばねレートは再び式1/KT=1/K1+1/K2によって決まる。最適な快適モードであるこのトリムモードでは、油圧シリンダ41は一次及び二次コイルばね9、11の圧縮によって制御されて縦方向に自由に移動し、油圧流体は第1の油圧チャンバ43と第2の油圧チャンバ45との間を自由に流れ、ライドハイトは最適ハンドリングモードよりも高いままである。
【0047】
円筒状ダンパ5の外壁37には、油圧シリンダ41の接触部分49に当接する壁止め47を設けることができる。接触部49は、十分な油圧流体が第1の油圧チャンバ43に押し込まれると壁止め47に当接し、これにより車高がさらに上昇する。この上昇した高さの操作モードは、バルブ25を閉じて第1の油圧チャンバ43と第2の油圧チャンバ45との間の油圧流体の流れを再び止めることによって維持することができる。
【0048】
注目すべきは、調節可能な減衰システムが、記載されるサスペンションシステムと共に使用する場合に、ばねレートとライドハイトの変化を補正するのに非常に有益であるということである。
【0049】
また、図示の実施形態では特定の構成要素の配置が開示されているが、他の配置が本願明細書から利益を得るであろうことも理解されるべきである。特定のステップシーケンスが示され、説明され、特許請求されているが、別段の指示がない限り、ステップは任意の順序で実行され、分離又は結合されてもよく、本発明から依然として利益を得ることが理解されるべきである。
【0050】
異なる実施例が図に示された特定の構成要素を有するが、本発明の実施形態はそれらの特定の組み合わせに限定されない。1つの実施例の構成要素又は特徴の一部を、別の1つの実施例の特徴又は構成要素と組み合わせて使用することができる。
【0051】
例示的な実施形態が開示されているが、当業者は、特定の変更が特許請求の範囲内にあることを認識するであろう。そのため、以下の特許請求の範囲を検討し、その真の範囲及び内容を特定するべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2023-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の1つのコーナーのばね下質量とばね上質量との間に配置されるように構成された、選択的に切り替え可能なデュアルレート車両サスペンションシステムであって
円筒状ダンパと、
予め定められた第1のばねレートK1を有する一次コイルばね及び予め定められた第2のばねレートK2を有する二次コイルばねであって、前記一次コイルばね及び前記二次コイルばねは両方が共通のばね当接部に接続され、前記円筒状ダンパの周りに直列に配置されて全体の合成ばねレートKTを提供する一次コイルばね及び二次コイルばねと、
前記円筒状ダンパに取り付けられ、前記一次コイルばね及び前記二次コイルばねを圧縮及び減圧するように構成されたアクチュエータと、
少なくとも1つの停止位置で前記二次コイルばねを非作動にするように構成された停止手段
を含み、
前記サスペンションシステムが第1のモードにあるとき、全体のサスペンションばねレートは直列方程式1/KT=1/K1+1/K2によって定義され、前記サスペンションシステムが第2のモードにあるとき、全体の車両サスペンションばねレートは直列方程式1/KT=1/K1によって定義され、これにより前記第1のモードでの低いレートで最適な乗り心地の設定と前記第2のモードでの高いレートで最適なハンドリングの低いライドハイトの設定の両方を選択的かつ切り替え可能に提供する、サスペンションシステム。
【請求項2】
前記アクチュエータは、油圧シリンダと油圧ピストンとを含む、請求項に記載のサスペンションシステム。
【請求項3】
前記油圧シリンダは、前記円筒状ダンパの外壁に支えられて動く、請求項に記載のサスペンションシステム。
【請求項4】
前記停止手段は、前記油圧シリンダの接触部分が当接する前記円筒状ダンパの外壁の停止部分を含む、請求項に記載のサスペンションシステム。
【請求項5】
前記アクチュエータは、下側ばね当接部を介して前記二次コイルばねに作用する、請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項6】
前記二次コイルばねは、減圧されたときに非作動にされる、請求項1から5のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項7】
第3の操縦モードをさらに含み、前記第3の操縦モードでは、前記二次コイルばね及び前記一次コイルばねの両方が前記第1のモードを超えて圧縮され、車両のライドハイトを前記第1のモードの最適な乗り心地の設定におけるライドハイトよりも増大させる、請求項1から6のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項8】
前記アクチュエータは前記共通のばね当接部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項9】
前記停止手段は、前記二次コイルばねを複数の選択された停止位置に保持するように構成されたロックアウト手段を含む、請求項8に記載のサスペンションシステム。
【請求項10】
前記ロックアウト手段は、前記油圧シリンダ内の油圧流体の流れを阻止するバルブ手段を含む、請求項9に記載のサスペンションシステム。
【請求項11】
第3の操縦モードをさらに含み、前記第3の操縦モードでは、前記二次コイルばねを減圧し、前記一次コイルばねを上昇させて車両のライドハイトを前記第1のモードの最適な乗り心地の設定におけるライドハイトより上に増大させる、請求項8から10のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項12】
前記円筒状ダンパは、最適な車両の快適性及びハンドリングのために、ばねレートの変化に適合するように調節可能な減衰を提供する、請求項1から11のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【国際調査報告】