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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】臓器保存のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
A01N1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512397
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 IL2021051009
(87)【国際公開番号】W WO2022038607
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,925
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】521452991
【氏名又は名称】イチロヴ テック リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523057770
【氏名又は名称】エー.エー.キャッシュ テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャニ,ニル
(72)【発明者】
【氏名】グール,エヤル
(72)【発明者】
【氏名】リ,シュジュン
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,オア
(72)【発明者】
【氏名】アラヴ,アミール
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011BB03
4H011BB07
4H011BB23
4H011CA01
4H011CB05
4H011CC01
4H011CD02
4H011CD06
4H011DA13
(57)【要約】
本発明は、限定されるものではないが肢などの血管化組織、神経再支配化組織またはその両方を含む生体試料の長期凍結保存のための方法および装置に関する。
【選択図】図6C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を凍結保存するための方法であって、
a.50:1~1:1の範囲の体積/体積(v/v)比で生体試料をガラス化溶液(VS)と接触させる工程と、
b.工程(a)の前記生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する第1の工程と、
c.工程(b)の前記生体試料を少なくとも3分の期間にわたって前記VSのガラス転移点温度(Tg)と等しいかそれを超える温度であって-140℃~-100℃の範囲の温度に供する第2の工程と
を含み、
それにより前記生体試料を凍結保存する方法。
【請求項2】
それを必要とする対象への移植のために生体試料を調製するための方法であって、
a.50:1~1:1の範囲の体積/体積(v/v)比で生体試料をVSと接触させる工程と、
b.工程(a)の前記生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する第1の工程と、
c.工程(b)の前記生体試料を少なくとも3分の期間にわたって前記VSのTgと等しいかそれを超える温度であって-140℃~-100℃の範囲の温度に供する第2の工程と
を含み、
それによりそれを必要とする対象への移植のために前記生体試料を調製する方法。
【請求項3】
前記生体試料は血管化、神経再支配化またはその両方がなされている組織または臓器を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体試料は肢を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
肢を凍結保存するための方法、それを必要とする対象への移植のために肢を調製するための方法またはその両方であって、
a.50:1~1:1の範囲の体積/体積(v/v)比で前記肢を含む生体試料をVSと接触させる工程と、
b.工程(a)の前記肢を含む前記生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する第1の工程と、
c.工程(b)の前記肢を含む前記生体試料を少なくとも3分の期間にわたって前記VSのTg’と等しいかそれを超える温度であって-140℃~-100℃の範囲の温度に供する第2の工程と
を含み、
それにより肢を凍結保存するか、それを必要とする対象への移植のために肢を調製するかまたはその両方を行う方法。
【請求項6】
前記第2の供する工程の後に、前記生体試料を-1℃/分~-10℃/分の範囲の速度で前記Tg未満または-197℃~-150℃の温度までさらに冷却することを含む、前記生体試料を保存する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の後に得られた前記生体試料を前記VSに浸漬するか、前記VSによって覆うか、あるいはその両方を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させる工程は真空条件下におけるものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させる工程は弾性袋中におけるものである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)の後に得られた前記生体試料には本質的に空気は存在しない、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)の後に得られた前記生体試料は前記VSに接触している外面を含み、前記外面は-20℃~0℃の範囲の温度を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の供する工程は-330℃/分~-500℃/分の速度で凍結することである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の供する工程は極低温液体のスラッシュ中または-220℃~-150℃の極低温条件下におけるものである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の供する工程は-3℃/分~-10℃/分の速度で凍結することである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の供する工程は(a)極低温液体の蒸気中、または(b)-85℃~-75℃の範囲の温度下およびその後の極低温液体の蒸気を与える冷却条件下におけるものである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
-85℃~-75℃の範囲の温度を与える前記冷却条件は-85℃~-75℃の範囲の温度を有する冷却液体を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(c)の少なくとも3分の前記期間は少なくとも30分である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)に先行する前記生体試料を前記VSで灌流することを含む工程をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記灌流する工程は最長5分の期間にわたって室温におけるものある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記VSは浸透性凍結保護剤、非浸透性凍結保護剤またそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み、かつ任意に巨大分子、抗酸化剤、培地またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記VSは、15~25%(w/v)のエチレングリコール、15~25%(v/v)のジメチルスルホキシド、15~25(v/v)のウシ胎児血清および0.3~0.7Mのトレハロースを含み、それらは全てWisconsin静的保存溶液中にある、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記凍結保存された生体試料を少なくとも24時間の期間にわたって保存することを含む工程(d)をさらに含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
それを必要とする対象において生体試料を移植するための方法であって、(a)請求項1~22のいずれか1項に記載の方法に従って前記生体試料を凍結保存する工程と、(b)前記凍結保存された生体試料を解凍または加温し、かつ前記対象に移植する工程とを含む方法。
【請求項24】
前記対象は臓器置換を必要としている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記凍結保存された生体試料を洗浄および灌流する工程をさらに含み、前記工程は前記凍結保存された生体試料の前記対象への移植に先行する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記移植する工程は自家移植することまたは同種異系移植することである、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
試料を保持するために構築された第1の容器と、
冷却軸に沿った通路を通して前記第1の容器の位置を調整するように構成されたアクチュエータと、
前記第1の容器に接触している加熱要素と、
前記アクチュエータおよび前記加熱要素と動作可能に通信状態にあり、かつ(a)前記第1の容器の位置が前記冷却軸に沿った前記通路を通して調整されるような前記アクチュエータの構成、(b)前記第1の容器に所定の量の熱を加えるための前記加熱要素、あるいは(a)および(b)を命令することにより前記試料の温度を制御するように構成された制御ユニットと
を備える装置。
【請求項28】
前記軸は前記通路の長手軸に平行である、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記加熱要素は前記第1の容器の上に位置決めされており、かつ少なくとも部分的にそこに重なっている、請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
少なくとも1つの温度センサをさらに備える、請求項27~29に記載の装置。
【請求項31】
前記第1の容器の温度が前記温度センサによって測定可能であるように、前記少なくとも1つの温度センサは前記第1の容器に結合されている、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記制御ユニットは前記少なくとも1つの温度センサと動作可能に通信状態にある、請求項30または31に記載の装置。
【請求項33】
極低温液体、そのスラッシュ、その蒸気またはそれらの任意の組み合わせを含むために構築された第2の容器をさらに備える、請求項27~32のいずれか1項に記載の装置。
【請求項34】
前記極低温液体は液体窒素(LN2)を含む、請求項33に記載の装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月18日に出願された「臓器保存のための装置および方法」という発明の名称の米国仮特許出願第63/066,925号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は生体材料、例えば組織の氷温貯蔵に関し、より詳細にはその目的に適合させた装置およびそれを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現代の医療再建を導く主要な原理は、「似たもの同士(like with like)」での置換である。従って損傷または変形した体の部分はそれらの同様の損傷していない対応物で置換される。当該分野においてここ数十年間でなされた大きな進歩にも関わらず、再建は利用可能な自家(すなわち「自己」)置換部分の限られた数および複雑性によってなお制限されている。大外傷の間に、この制限は損傷した組織の大きさおよび複雑性と相関して悪化し、供与部位の可用性をさらに制限する。急速に進化している血管化複合同種移植(VCA)分野で最近実証されたように、手足の切断または大きな顔面損傷などのいくつかの異なる組織からなる複合欠陥に関わる損傷は自家組織と置換することができず、同種異系の(すなわち「外来の」)供与された組織の使用を必要とする。肢および顔面移植におけるその見事な成功にも関わらず、VCA分野は移植された複合組織の強い免疫拒絶(あらゆる他の分野の移植におけるものよりも高い)によって妨げられており、同種移植片生着を保証するために高用量の生涯にわたる免疫抑制管理体制を必要とし、これは深刻な生命を脅かすことさえある有害事象を引き起こす可能性がある。
【0004】
外傷後の切断された組織(すなわち神経、腱および血管化皮弁および骨移植片)を用いた即座の自家肢再移植または顕微手術再建は非常に有益であり、VCAを必要とすることなく済む場合さえあり、免疫抑制の絶対的使用を不要にする。しかし急性蘇生および救命処置は「肢の前に命」戦略に従って優先を決め、かつ肢虚血の短い治療可能域(4~6時間)により、自家肢もしくは組織の即時再移植が可能となることは稀である。特定の手術室機器および訓練された顕微手術チーム必要とする複雑な顕微手術再移植または顕微手術再建が実際に不可能である戦闘手術条件下では、時間制約はさらに厳しくなる。
【0005】
再建目的のために自家組織の使用を可能にする1つの手法は、患者の状態が再建手術を可能にするまでその生着能を保存することであろう。汚染創などの大部分の現代の外傷および戦闘損傷では、最初の12時間は被害対策ならびに最も緊急の血管および整形外科介入に専念される。損傷後1日または2日以内に選ばれた患者において若干の再建努力が試みられる場合はあるが、これらの複雑な再建処置の大部分は損傷後数時間から数日してからやっと試みられ得る。エクスビボ灌流および氷点下保存などの技術的改良は、実質臓器の回収と移植との間の時間を引き延ばすのを助けることができる。それにも関わらず、肝臓移植の場合にこれらの技術を用いた移植片生着を引き延ばす楽観的な範囲はそれぞれ、24時間および96時間を超えることはない。これまでに長期間(数日から数ヶ月)の臓器もしくは組織保存のために提案されている唯一の方法は、どちらも(-80℃)未満の温度下での生体組織の凍結保存に基づく一方向凍結(DF)またはガラス化のいずれかによる低い氷点下凍結保存である。DFを使用してヒツジ卵巣、ヒト卵巣、ラットおよびブタ全肝ならびにラット心臓などの様々な組織を凍結保存することに成功してきた。ガラス化を使用してウサギ腎臓、血管、角膜および弁を凍結保存することに成功してきた。DFおよびガラス化の両方によるその7日間の凍結保存後の完全なラット後肢の移植の成功が最近になって報告されたが、肢生着は72時間の期間でのみ実証された。
【0006】
凍結保存の主要な課題は、従来の凍結保存方法によって生じる細胞内および細胞外氷晶の形成によって誘発される損傷を予防することにある。
【0007】
ガラス化は液体の固体ガラス相への凝固である。組織のガラス化は、高濃度の凍結保護剤(CPA)の存在下での組織の急速冷却および急速加温によって達成される。ガラス化の確率=CRまたはWR×η×1/Vであり、従ってガラス化の確率は、冷却/加温速度(CRまたはWR)の上昇および粘度(η)の増加ならびに体積(V)の減少に伴って上昇する。これらの条件は、ガラス形態へのそれらの変換前に氷が形成されることなく細胞および組織の凍結保存を可能にし、それにより凍害を劇的に減らす。凍結保存におけるその大きな潜在能力にも関わらず、ガラス化は、(1)大きい組織において最小の氷核および成長のために必要とされる急速均質冷却および加温は非常に難しい、(2)組織のガラス化の成功のために必要とされる高濃度のCPAは、導入されて素早く除去されない場合に不可逆的な組織毒性および浸透圧損傷を引き起こすことがある、および(3)ガラス相転移温度(Tg’)を超える急速冷却により組織破壊が生じる、という大きい組織/臓器のためのその使用をこれまで妨げてきた3つの主要な欠点を抱えている。最速の利用可能な冷却方法は液体窒素(LN)スラッシュ(-204℃~(-210℃))によるものである。LNスラッシュを達成するために、LNはその凝固点(-210℃)近くで冷却する必要がある。LNスラッシュは負圧を印加することにより生成され、それによりLNの温度を-205℃~-210℃に低下させる。次いでLNスラッシュが形成され、冷却速度が劇的に上昇する。冷却速度は特に室温から0℃に冷却する場合に冷却の第1段階で高められる。冷却速度はLN(-196℃)に投入する場合よりも2~6倍高められる。
【0008】
CRまたはWRおよびηの上昇がガラス化の確率を上昇させるが、それは破壊の確率も上昇させる。これは、粘度(η)の上昇がTg’も上昇させ、これがΔTの上昇によりCRまたはWRを上昇させるからである。ガラス化はこれまで、細胞および小さい組織、卵母細胞、精子、胚および卵巣スライス、血管、角膜、弁およびウサギ腎臓の凍結保存においてのみ成功してきた。
【0009】
複合血管化組織、例えば肢および臓器などの大きい組織の長期凍結保存を可能にし、それにより同系再移植後にそれらの長期生着を可能にするガラス化の装置および/または方法が今なお大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、急速かつ短い低温凍結工程およびその後の徐々に長くなる凍結工程を含む生体試料、例えば組織を凍結保存するための二段階方法に関する。
【0011】
本発明は部分的に、本明細書に開示されている方法に従って凍結保存された組織により同系再移植後に長期生着が得られたという驚くべき発見に基づく。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は生体試料を氷点下温度に下げる第1の秒長さの(例えば急速)凍結工程と、生体試料を試料のガラス転移点温度(Tg’)に低下させるその後の第2の分長さの(例えば漸進的)凍結工程とを含む。同系再移植後の本明細書に記載されている生体試料の長期生着の向上は、最適な長期保存のために生体試料をより低い温度の液体窒素またはその蒸気ではなくTg’に維持すべきことを示唆している。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は試料を保持するのに適した第1の容器と、冷却軸に沿った通路を通してその容器の位置を調整するように構成されたアクチュエータと、その容器に接触している加熱要素と、アクチュエータおよび加熱要素と動作可能に通信状態にあり、かつ所定の温度を試料に与えるように構成された制御ユニットとを備える装置に関する。
【0014】
第1の態様によれば、生体試料を凍結保存するための方法であって、(a)50:1~1:1の範囲の体積/体積(v/v)比で生体試料をガラス化溶液(VS)と接触させる工程と、(b)工程(a)の生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する第1の工程と、(c)工程(b)の生体試料を少なくとも3分の期間にわたってVSのガラス転移点温度(Tg)と等しいかそれを超える温度であって-140℃~-100℃の範囲の温度に供する第2の工程とを含み、それにより生体試料を凍結保存する方法が提供される。
【0015】
別の態様によれば、それを必要とする対象への移植のために生体試料を調製するための方法であって、(a)50:1~1:1の範囲の体積/体積(v/v)比で生体試料をVSと接触させる工程と、(b)工程(a)の生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する第1の工程と、(c)工程(b)の生体試料を少なくとも3分の期間にわたってVSのTgと等しいかそれを超える温度であって-140℃~-100℃の範囲の温度に供する第2の工程とを含み、それによりそれを必要とする対象への移植のために生体試料を調製する方法が提供される。
【0016】
別の態様によれば、肢を凍結保存するための方法、それを必要とする対象への移植のために肢を調製するための方法またはその両方であって、(a)50:1~1:1の範囲の体積/体積(v/v)比で肢を含む生体試料をVSと接触させる工程と、(b)工程(a)の肢を含む生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する第1の工程と、(c)工程(b)の肢を含む生体試料を少なくとも3分の期間にわたって前記VSのTg’と等しいかそれを超える温度であって-140℃~-100℃の範囲の温度に供する第2の工程とを含み、それにより肢を凍結保存するか、それを必要とする対象への移植のために肢を調製するか、またはその両方を行う方法が提供される。
【0017】
別の態様によれば、それを必要とする対象において生体試料を移植するための方法であって、(a)本発明の方法に従って生体試料を凍結保存する工程と、(b)凍結保存された生体試料を解凍または加温し、かつそれを対象に移植する工程とを含む方法が提供される。
【0018】
別の態様によれば、試料を保持するために構築された第1の容器と、冷却軸に沿った通路を通して第1の容器の位置を調整するように構成されたアクチュエータと、第1の容器に接触している加熱要素と、アクチュエータおよび加熱要素と動作可能に通信状態にあり、かつ(a)冷却軸に沿った通路を通して第1の容器の位置が調整されるようなアクチュエータの構成、(b)第1の容器に所定の量の熱を加えるための加熱要素、あるいは(a)および(b)に命令することにより試料の温度を制御するように構成された制御ユニットとを備える装置が提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、生体試料は血管化、神経再支配化またはその両方がなされている組織または臓器を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、生体試料は肢を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、本方法は第2の供する工程の後に、生体試料を-1℃/分~-10℃/分の範囲の速度でTg未満または-197℃~-150℃の温度までさらに冷却することを含む生体試料を保存する工程をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、工程(a)の後に得られた生体試料をVSに浸漬するか、VSによって覆うか、あるいはその両方を行う。
【0023】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は真空条件下におけるものである。
【0024】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は弾性袋中におけるものである。
【0025】
いくつかの実施形態では、工程(a)の後に得られた生体試料には本質的に空気は存在しない。
【0026】
いくつかの実施形態では、工程(b)の後に得られた生体試料はVSに接触している外面を含み、その外面は-20℃~0℃の範囲の温度を有することを特徴とする。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の供する工程は-330℃/分~-500℃/分の速度で凍結することである。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1の供する工程は極低温液体のスラッシュ中または-220℃~-150℃の極低温条件下におけるものである。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2の供する工程は-3℃/分~-10℃/分の速度で凍結することである。
【0030】
いくつかの実施形態では、第2の供する工程は(a)極低温液体の蒸気中、または(b)-85℃~-75℃の範囲の温度下およびその後の極低温液体の蒸気を与える冷却条件下におけるものである。
【0031】
いくつかの実施形態では、-85℃~-75℃の範囲の温度を与える冷却条件は-85℃~-75℃の範囲の温度を有する冷却液体を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、工程(c)の少なくとも3分の期間は少なくとも30分である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は工程(a)に先行する生体試料をVSで灌流することを含む工程をさらに含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、灌流する工程は最長5分の期間にわたって室温におけるものである。
【0035】
いくつかの実施形態では、VSは浸透性凍結保護剤、非浸透性凍結保護剤またそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み、かつ任意に巨大分子、抗酸化剤、培地またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、VSは15~25%(w/v)のエチレングリコール、15~25%(v/v)のジメチルスルホキシド、15~25(v/v)のウシ胎児血清および0.3~0.7Mのトレハロースを含み、それらは全てWisconsin静的保存溶液中にある。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、凍結保存された生体試料を少なくとも24時間の期間にわたって保存することを含む工程(d)をさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、対象は臓器置換を必要としている。
【0039】
いくつかの実施形態では、本方法は凍結保存された生体試料を洗浄および灌流する工程をさらに含み、この工程は凍結保存された生体試料の対象への移植に先行する。
【0040】
いくつかの実施形態では、移植する工程は自家移植することまたは同種異系移植することである。
【0041】
いくつかの実施形態では、当該軸は通路の長手軸に平行である。
【0042】
いくつかの実施形態では、加熱要素は第1の容器の上に位置決めされており、かつ少なくとも部分的にそこに重なっている。
【0043】
いくつかの実施形態では、本装置は少なくとも1つの温度センサをさらに備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1の容器の温度が温度センサによって測定可能であるように、少なくとも1つの温度センサは第1の容器に結合されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、制御ユニットは少なくとも1つの温度センサと動作可能に通信状態にある。
【0046】
いくつかの実施形態では、本装置は極低温液体、そのスラッシュ、その蒸気またはそれらの任意の組み合わせを含むために構築された第2の容器をさらに備える。
【0047】
いくつかの実施形態では、極低温液体は液体窒素(LN2)を含む。
【0048】
特に定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料が以下に記載されている。矛盾する場合は定義を含む本特許明細書が優先される。また材料、方法および実施例は単に例示であり、必ずしも限定的であることを意図するものではない。
【0049】
さらなる実施形態および本発明の全適用範囲は、本明細書の下に与えられている詳細な説明から明らかになるであろう。但し当然のことながら、詳細な説明および具体例は本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の趣旨および範囲内の各種変形および修飾がこの詳細な説明から当業者に明らかになるため単に例示として与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1A図1Fは-80℃での長期凍結保存後の血管化鼠径皮弁の長期生着を示す顕微鏡写真およびグラフを含む。(図1A)血管化鼠径皮弁を凍結保護剤(CPA)で室温において灌流し、指示された回数で液体窒素(LN)スラッシュの中に浸漬し、LN蒸気に2分間移し、温め、同系レシピエントに再移植し、写真を撮影した。(図1B)血管化鼠径皮弁を当該スキームに従って凍結保存し、-80℃で24時間(図1C)または9日間(図1D)の貯蔵後に同系移植した後、指示された回数で写真を撮影するか、手術後(POD12)に組織学のために取り出した。-80℃で24時間(図1Ea~図1Ec)または9日間(図1Ed~図1Ef)貯蔵した皮弁の組織学的切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、写真を撮影した。血管化鼠径皮弁をCPAで灌流し、LNスラッシュの中に3秒間浸漬し、次いでLN蒸気に30分間移し、皮弁内温度を測定した(図1F)。
図2図2A図2Cは、Tg’での凍結保存後の血管化鼠径皮弁の長期生着を示すグラフ、図表および顕微鏡写真を含む。(図2AのI)ガラス化溶液(VS)のTg’を示差走査熱量測定(DSC)分析により決定した。(図2AのII)血管化鼠径皮弁をCPAで室温において灌流し、次いでLN蒸気に移した。Tg’に到達するまで皮弁内温度を測定した。(図2Bおよび図2CのI)血管化鼠径皮弁をCPAで室温において灌流し、LN蒸気中に30分間温置し、温め、再移植し、指示された回数で写真を撮影した。(図2CのII)図2Bに記載されているように凍結保存され、かつ移植された血管化鼠径皮弁を組織学的分析のためにPOD12において取り出した。スライドをH&Eで染色し、写真を撮影した。
図3図3A図3Cは凍結保存後の後肢の長期安定性を示す図表、グラフを含む。(図3A)二段階肢凍結保存プロトコルのスキーム。(図3BのI)肢を凍結保護剤(CPA)で室温において灌流し、LNスラッシュの中に4秒間浸漬し、次いでLN蒸気に移した。肢内温度を17分間測定した。(図3BのII)肢をCPAで室温において灌流し、LNスラッシュの中に4秒間浸漬し、LN蒸気に10分間移し、温め、再移植し、指示された回数で写真を撮影した。針穿刺により誘発された出血によりPOD10およびPOD32において末梢四肢灌流が実証された。POD32において組織学的分析のために肢を取り出し、切片をH&Eで染色した(図3C)。正常な皮膚および筋肉構造が実証された。
図4図4A図4EはTg’での凍結保存後の後肢の長期生着を示す図表および顕微鏡写真を含む。肢を凍結保護剤(CPA)で室温において灌流し、LNスラッシュの中に4秒間浸漬し、LN蒸気に2時間移し、温め、再移植し(図4A)、指示された回数で写真を撮影した(図4B)。(図4C)POD28において針穿刺により誘発された出血により末梢四肢灌流が実証された。POD32において組織学的分析のために肢を取り出し、回収された肢の前側(図4DのI)および後側(図4DのII)の写真を撮影し、切片をH&Eで染色した。正常な皮膚、脂肪および筋肉構造が実証された(図4E)。
図5図5A図5Cは、再移植された凍結保存された肢における神経再生および機能的な感覚を示す図表および顕微鏡写真を含む。(図5AのI)図3Aに記載されている二段階凍結保存プロトコルを用いて肢を凍結保存し、次いでレシピエントラットの腰に第5の肢として移植した。(図5AのII)POD12においてレシピエント肢の膝下切断後に、レシピエントの大腿血管からのその血液供給を止めずに移植された凍結保存された肢をその腰位置から膝下位置まで移動させ、縫合した。レシピエントの脛骨神経を凍結保存された肢に接合して神経再生および感覚の回復を可能にした。(図5B)膝下移植後22日目に、ラットは凍結保存された肢を用いて歩行することができた。(図5CのI)膝下移植後23日目に、脛骨神経を組織学的分析のために取り出し、神経フィラメント(NF(軸索全体))およびコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT(運動軸索)タンパク質について、神経吻合の近位および遠位側からの切片を染色した。核染色のためにDAPIも施用した。(図5CのII)デジタルシステムを用いて行われた定量的繊維数を示すグラフ。
図6図6A図6Cは、移植された凍結保存された新鮮な肢は同様の筋肉完全性を実証していることを示す組織学的顕微鏡写真およびグラフを含む。膝下肢移植体を生理食塩水またはCPAで灌流し、洗浄し、新鮮な対照(それぞれ生理食塩水およびCPA対照)として即座に移植し、それぞれ図3Aおよび図4Aに示されているプロトコルに従って約-80℃またはTgに冷却した同様の移植体と比較した。手術後(POD)12目以降に、肢を取り出し、固定し、肢の異なる部分から切片を調製し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、文書化した。筋肉品質をスコア化し、盲検病理学者によって比較した。(図6A)異なる対照および実験群の筋肉切片の選ばれた提示を示す組織学的顕微鏡写真。(図6BのI)実験肢の対照の筋肉スコアの比較統計分析を示すグラフ。(図6BのII)新鮮な対照と実験肢との間で筋肉品質において有意差が観察されなかったことを示す垂直棒グラフ(p=0.6)。(図6C)一方向凍結(DF)を用いて凍結させた肢、Tgよりも低い温度までガラス化された肢およびTg以上の温度までガラス化された肢の群間の長期肢生着の比較を示す垂直棒グラフ。
図7】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第1の容器の全体簡略化図を含む。
図8】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の制御ユニットの背面簡略化図を含む。
図9】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の全体簡略化図を含む。
図10】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第1の容器の全接続簡略化図を含む。
図11】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第1の容器の上側拡大簡略化図を含む。
図12】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の制御ユニットパネルの全体簡略化図を含む。
図13】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第2の容器制御部の全体簡略化図を含む。
図14】本発明のいくつかの実施形態に係る装置のアクチュエータの全体簡略化図を含む。
図15】本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第2の容器の全体簡略化図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、凍結保存された血管化および/または神経再支配化組織の長期生着を与えるガラス化の装置および方法に関する。
方法
【0052】
いくつかの実施形態によれば、生体試料を凍結保存するための方法が提供される。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、例えばそれを必要とする対象への移植のための生体試料を調製するための方法が提供される。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、肢を凍結保存するための方法、それを必要とする対象への移植のために肢を調製するための方法またはその両方が提供される。
【0055】
いくつかの実施形態では、本方法は(a)50:1~1:1の範囲の体積/体積(v/v)比で生体試料をガラス化溶液(VS)と接触させる工程と、(b)生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する第1の工程と、(b)工程(a)の生体試料を少なくとも3分の期間にわたってVSの転移ガラス温度(Tg)と等しいかそれを超える温度であって-140℃~-100℃の範囲の温度に供する第2の工程とを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、本方法は第2の供する工程の後に、試料を-1℃/分~-10℃/分の範囲の速度でVSのガラス転移点温度未満または-197℃~-150℃の温度までさらに冷却することを含む生体試料を保存する工程をさらに含む。
【0057】
本明細書で使用される「保存する」および「貯蔵する」という用語は互換可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、凍結保存された生体試料をVSのTgである温度で貯蔵する。いくつかの実施形態では、凍結保存された生体試料をVSのTgよりも低い温度で貯蔵する。いくつかの実施形態では、凍結保存された生体試料をVSのTgよりも高い温度で貯蔵する。
【0059】
いくつかの実施形態では、生体試料は組織または臓器を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、組織または臓器は脈管構造系を含む。いくつかの実施形態では、組織または臓器は少なくとも1つの神経、ニューロン、軸索、樹状突起、神経節またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、組織または臓器は血管化、神経再支配化またはその両方がなされている。
【0061】
いくつかの実施形態では、組織または臓器は肢、腎臓、心臓、肝臓、肺、膵臓、腸、皮膚またはそれらから得られた組織断片から選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、生体試料は肢を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、肢は1本の上肢、1本の下肢あるいは2本の上肢、2本の下肢またはそれらの組み合わせを含む複数の肢を含む。
【0064】
本明細書で使用される「供する」、「冷却する」、「冷蔵する」および「凍結する」という用語は互換可能である。
【0065】
いくつかの実施形態では、生体試料とVSは50:1~1:1、100:1~1:1、250:1~1:1、40:1~10:1、25:1~5:1または45:1~6:1の範囲の(v/v)比である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0066】
いくつかの実施形態では、工程(a)の後に得られた生体試料をVSに浸漬するか、VSによって覆うか、あるいはその両方を行う。
【0067】
いくつかの実施形態では、工程(a)の後に得られた生体試料を少なくとも部分的にVSに浸漬するか、少なくとも部分的にVSによって覆うか、あるいはその両方を行う。
【0068】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は真空条件下におけるものである。
【0069】
いくつかの実施形態では、本方法は生体試料を弾性袋に入れる工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は生体試料を弾性袋の中に提供する工程を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は弾性袋中におけるものである。いくつかの実施形態では、弾性袋はビニール袋を含む。いくつかの実施形態では、弾性袋は密封性弾性袋を含む。いくつかの実施形態では、生体試料が弾性袋の中にある状態で真空を印加する。いくつかの実施形態では、弾性袋はVSに接触している生体試料に真空を印加した後に密封される。
【0071】
いくつかの実施形態では、生体試料を弾性袋中で50:1~1:1、100:1~1:1、250:1~1:1、40:1~10:1、25:1~5:1または45:1~6:1の範囲の(v/v)比でVSと接触させる。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0072】
いくつかの実施形態では、生体試料およびVSを含む弾性袋中に空気が存在しない状態になったか空気が本質的に存在しない状態になった後に、真空の印加を停止、中止、中断するかそれらの任意の組み合わせおよび同等の行為を行う。
【0073】
本明細書で使用される「真空」という用語は大気圧よりも低いあらゆる圧力の印加を包含する。
【0074】
いくつかの実施形態では、工程(a)の後に得られた生体試料には空気は存在しない。いくつかの実施形態では、工程(a)の後に得られた生体試料には本質的に空気は存在しない。
【0075】
いくつかの実施形態では、例えば真空の印加により生じる工程(b)の後に得られた生体試料はVSに接触している外面を含む。いくつかの実施形態では、生体試料の外面は0℃~-20℃、-1℃~-15℃、-3℃~-19℃または0℃~-17℃の範囲の温度を有することを特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0076】
いくつかの実施形態では、第1の供する工程は長くとも7分、長くとも6分、長くとも5分、長くとも4分、長くとも3分、長くとも2分または長くとも1分あるいはその間の任意の値および範囲内で生体試料の温度を摂氏零度以下まで低下させるのに適した任意の条件下におけるものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0077】
いくつかの実施形態では、生体試料の温度を摂氏零度以下まで低下させるの適した条件は-5℃/分以上の任意の冷却速度を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1の供する工程は-10℃/分~-20℃/分、-5℃/分~-40℃/分、-30℃/分~-70℃/分、-60℃/分~-120℃/分、-130℃/分~-270℃/分、-230℃/分~-350℃/分、-330℃/分~-370℃/分、-310℃/分~-390℃/分、-300℃/分~-385℃/分、-295℃/分~-365℃/分、-280℃/分~-395℃/分または-315℃/分~-375℃/分の速度で凍結することを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1の供する工程は極低温液体のスラッシュ中におけるものである。いくつかの実施形態では、第1の供する工程は-220℃~-190℃の極低温条件下におけるものである。いくつかの実施形態では、第1の供する工程は極低温液体の蒸気中におけるものである。いくつかの実施形態では、第1の供する工程は-150℃~-90℃の極低温液体中または極低温条件下におけるものである。
【0080】
いくつかの実施形態では、第2の供する工程は-6℃/分~-10℃/分、-3℃/分~-15℃/分、-2℃/分~-13℃/分、-4℃/分~-11℃/分、-5℃/分~-17℃/分、-6℃/分~-12℃/分、-6℃/分~-8℃/分の速度で凍結することである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0081】
いくつかの実施形態では、第2の供する工程は(a)極低温液体の蒸気、または(b)-120℃~-40℃の範囲の温度を有する冷却液体中およびその後の極低温液体の蒸気中におけるものである。いくつかの実施形態では、第2の供する工程は(a)極低温液体の蒸気中、または(b)-85℃~-75℃の範囲の温度下およびその後の極低温液体の蒸気を与える冷却条件下におけるものである。
【0082】
いくつかの実施形態では、-85℃~-75℃の範囲の温度を与える冷却条件は、-85℃~-75℃の範囲の温度を有する冷却液体を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、少なくとも3分の期間は少なくとも4分、少なくとも5分、少なくとも7分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも45分、少なくとも60分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも7日、少なくとも14日、少なくとも1ヶ月または少なくとも3ヶ月あるいはその間の任意の値および範囲を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、少なくとも3分の期間は3~10分、5~25分、5~40分、10~60分、15~90分、1~3時間、2~12時間、4~18時間、8~24時間、12~36時間、1~3日、2~7日、5~14日、2~5週間または1~3ヶ月を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0084】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は生体試料を灌流することを含む。
【0085】
生体試料(例えば血管を含む組織)を灌流するための方法は一般的であり、当業者には明らかであろう。
【0086】
いくつかの実施形態では、灌流する工程は生体試料の少なくとも1つの血管を灌流することを含む。いくつかの実施形態では、灌流する工程は生体試料の少なくとも1つの動脈を灌流することを含む。いくつかの実施形態では、灌流する工程は生体試料の少なくとも1つの血管を(a)生理食塩水、ヘパリンまたはそれらの組み合わせを含む溶液、(b)平衡溶液、(c)ガラス化溶液あるいは(a)~(c)の任意の組み合わせと接触させることを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、本方法は生体試料を凍結保護剤で灌流することを含む工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は生体試料を生理食塩水、ヘパリンまたはそれらの組み合わせを含む溶液で灌流することを含む工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は生体試料を平衡溶液で灌流することを含む工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は生体試料をVSで灌流することを含む工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、生体試料を灌流することを含む工程は、第1の生体試料を3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供する工程(例えば工程(a))に先行する。
【0088】
いくつかの実施形態では、「平衡溶液」という用語は、生体試料を調製するかその極低温耐久性もしくは安定性を高めるのに適したあらゆる溶液を包含する。いくつかの実施形態では、平衡溶液は生体試料を生理食塩水、ヘパリンまたはそれらの組み合わせを含む溶液で灌流した後に生体試料に与えられる。いくつかの実施形態では、平衡溶液は生体試料をVSで灌流する前に生体試料に与えられる。いくつかの実施形態では、平衡溶液はVSの凍結保護活性もしくは効果を高めるか上げる。
【0089】
本明細書で使用される「極低温耐久性」または「極低温安定性」とは、最小の組織損傷(例えば凍害、出血など)を有するか有さずに凍結保存に耐え、それによりその後の凍結保存された組織または臓器の操作または利用、例えばその加温/解凍および/または移植を可能にする組織または臓器の能力を指す。
【0090】
一実施形態では、平衡溶液は5~10%(v/v)のエチレングリコール(EG)、2.5~10%(v/v)のDMSOおよび5~25%(v/v)のウシ胎児血清(FCS)を含み、それらは全てWisconsin静的保存溶液中にある。
【0091】
本明細書で使用される「凍結保護剤」および「凍結防止剤」という用語は互換可能であり、氷形成損傷、例えば氷晶の形成またはあらゆる他の凍結関連の損傷から生体試料、例えば細胞、組織、臓器またはそれらの一部あるいはそれらの任意の組み合わせを保護するために使用することができるあらゆる化合物を包含する。
【0092】
いくつかの実施形態では、灌流する工程は少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも40秒、少なくとも50秒、少なくとも60秒、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分または最長5分あるいはその間の任意の値および範囲の期間にわたるものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、灌流する工程は5~60秒、1~3分、1~4分、1~5分、2~3分、2~4分、2~5分、3~4分、3~5分または4~5分の期間にわたるものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0093】
いくつかの実施形態では、接触させる工程、灌流する工程またはその両方は室温で行う。いくつかの実施形態では、接触させる工程、灌流する工程またはその両方は周囲温度で行う。いくつかの実施形態では、接触させる工程、灌流する工程またはその両方は15℃~28℃の範囲の温度で行う。
【0094】
生体試料および/または組織灌流への凍結保護剤の添加は一般的であり、当業者には明らかであろう。凍結保護剤の非限定的な例としては、限定されるものではないがDMSO、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、スクロース、トレハロース、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)および/またはその他が挙げられる。
【0095】
いくつかの実施形態では、VSは浸透性凍結保護剤、非浸透性凍結保護剤またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、VSは巨大分子、抗酸化剤、培地またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、VSは浸透性凍結保護剤、非浸透性凍結保護剤またはそれらの組み合わせを含み、任意に巨大分子、抗酸化剤、培地またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、VSは浸透性凍結保護剤、非浸透性凍結保護剤、巨大分子、抗酸化剤、培地またはそれらの組み合わせを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、浸透性凍結保護剤はDMSO、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、グリセリン(GLY)またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0097】
いくつかの実施形態では、非浸透性凍結保護剤は二糖、オリゴ糖、多糖またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、非浸透性凍結保護剤はスクロース、トレハロース、デキストランまたはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0098】
本明細書で使用される「巨大分子」という用語はウシ胎児血清、ヒト血清アルブミン、フィコール、それらの任意の組み合わせまたはそれらの任意の等価物を包含する。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗酸化剤は没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、アスタキサンチンまたはそれらの組み合わせを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、培地は細胞および/または臓器培養に適したあらゆる増殖培地を含む。いくつかの実施形態では、培地はPBS、HDMIまたはそれらの組み合わせを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、VSは15~25%(w/v)のエチレングリコール、15~25%(v/v)のジメチルスルホキシド、15~25(v/v)のウシ胎児血清および0.3~0.7Mのトレハロースを含み、それらは全てWisconsin静的保存溶液中にある。
【0102】
いくつかの実施形態では、本方法は少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、1ヶ月または3ヶ月あるいはその間の任意の値および範囲の期間にわたって凍結保存された試料を保存することを含む工程をさらに含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本方法は1~3日、2~5日、1~7日、3~12日、6~14日、1~3週間、2~5週間、3~6週間または1~4ヶ月、1~100年の期間にわたって凍結保存された試料を保存することを含む工程をさらに含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0103】
いくつかの実施形態では、保存期間は再移植後の組織の生着が7~28日間の期間にわたって維持される限りあらゆる期間を含む。いくつかの実施形態では、保存期間は再移植後の組織の生着が少なくとも7日、14日、21日、28日あるいはその間の任意の値および範囲の期間にわたって維持される限りあらゆる期間を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0104】
いくつかの実施形態では、保存する工程は、凍結保存された試料のガラス転移温度(Tg)±1℃、±2℃、±3℃、±4℃、±5℃、±6℃、±7℃、±8℃、±9℃または±10℃あるいはその間の任意の値および範囲におけるものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0105】
いくつかの実施形態では、TgはVSのTgを含むかそれからなる。
【0106】
本明細書で使用される「Tg」および「Tgプライム(Tg’)」という用語は互換可能である。
【0107】
いくつかの実施形態では、生体試料は少なくとも1cm、15cm、50cm、100cm、150cm、200cm、300cm、500cm、1,000cm、2,000cm、3,000cm、5,000cm、7,000cm、8,500cm、10,000cmあるいはその間の任意の値および範囲の体積を有する組織または臓器を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、生体試料は3~50cm、30~250cm、25~500cm、55~650cm、200~1,500cm、300~5,000cm、450~6,500cm、300~7,500cm、1,000~9,500cm、2,000~8,500cm、3,000~10,000cmまたは1,000~12,000cmの体積を有する組織または臓器を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0108】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象において生体試料を移植するための方法であって、(a)本明細書に開示されている方法に従って生体試料を凍結保存する工程と、(b)凍結保存された試料を解凍および/または加温して対象に移植する工程とを含む方法が提供される。
【0109】
「解凍する」および「加温する」という用語は本明細書では互換的に使用される。
【0110】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象において生体試料を移植するための方法であって、(a)本明細書に開示されている方法に従って生体試料を凍結保存する工程と、(b)凍結保存された試料を対象に移植する工程とを含む方法が提供される。
【0111】
いくつかの実施形態では、本方法は、凍結保存された試料を対象に移植する工程の前に凍結保存された試料を解凍および/または加温する工程をさらに含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、対象は限定されるものではないがヒト対象などの哺乳類対象である。
【0113】
いくつかの実施形態では、対象は臓器置換を必要としている。
【0114】
いくつかの実施形態では、臓器置換は臓器損傷もしくは疾患によるものである。いくつかの実施形態では、臓器損傷は損傷誘発性もしくは損傷関連の臓器損傷を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、損傷は外傷を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、対象は外傷に冒されているか冒されたことがある。
【0117】
いくつかの実施形態では、外傷は切断を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、本方法は凍結保存された試料の解凍の前後に凍結保護剤を洗い流す、除去する、排出する、捨てる工程またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は凍結保存された試料の移植の前後に凍結保護剤を洗い流す、除去する、排出する、捨てる工程またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本方法は凍結保存された生体試料を灌流する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は凍結保存された生体試料の移植前に凍結保存された生体試料を灌流する工程をさらに含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、洗浄する工程および/または灌流する工程はスクロースを含む溶液の使用を含む。いくつかの実施形態では、洗浄する工程および/または灌流する工程は、本明細書に記載されている現在の手順に適した当業者に知られてるあらゆる溶液の使用を含む。いくつかの実施形態では、洗浄する工程および/または灌流する工程はスクロースを含む溶液の使用を含む。いくつかの実施形態では、当該溶液は少なくとも100mM、少なくとも125mM、少なくとも250mM、少なくとも500mMまたは少なくとも1,000mM(1M)あるいはその間の任意の値および範囲の濃度のスクロースを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、当該溶液は100mM~500mM、250mM~750mMまたは100mM~1,000mMの範囲の濃度のスクロースを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0121】
いくつかの実施形態では、移植する工程は自家移植である。
【0122】
いくつかの実施形態では、移植する工程は同種異系移植することである。
【0123】
装置
いくつかの実施形態によれば、試料104を保持するために構築された第1の容器102と、冷却軸に沿った通路を通して第1の容器102の垂直位置を調整するように構成されたアクチュエータ300と、第1の容器102に接触している加熱要素152と、アクチュエータ300および加熱要素152と動作可能に通信状態にあり、かつ試料104の温度を制御するように構成された制御ユニット200とを備える装置が提供される。
【0124】
いくつかの実施形態では、冷却軸は通路の長手軸に平行である。
【0125】
いくつかの実施形態では、本装置は少なくとも1つの温度センサをさらに備える。本明細書で使用される「温度センサ」および「熱電対」という用語は互換可能である。
【0126】
いくつかの実施形態では、第1の容器102の温度が温度センサによって測定可能であるように、少なくとも1つの温度センサは第1の容器102に結合されている。
【0127】
いくつかの実施形態では、制御ユニット200は少なくとも1つの温度センサと動作可能に通信状態にある。
【0128】
いくつかの実施形態では、生体試料が本明細書に開示されている方法に従って凍結保存されるように、制御ユニット200は加熱要素を制御するように構成されているかそれと通信状態にある。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法の工程(a)の生体試料が3~10秒の期間にわたって-210℃~-197℃の範囲の温度に供されるように、制御ユニットは加熱要素を起動させるか制御する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法の工程(b)の生体試料が少なくとも3分の期間にわたって-140℃~-100℃の範囲の温度に供されるように、制御ユニット200は加熱要素を起動させるか制御する。
【0130】
いくつかの実施形態では、本装置は極低温液体190、そのスラッシュ、その蒸気またはそれらの任意の組み合わせを含むために構築された第2の容器126をさらに備える。
【0131】
いくつかの実施形態では、極低温液体は液体窒素(LN2)を含む。いくつかの実施形態では、極低温液体はLN2スラッシュを含む。いくつかの実施形態では、極低温液体はLN2蒸気を含む。
【0132】
試料104を保持するために構築された第1の容器102と、定位置リミットスイッチ106と、制御ユニット200と、トレイ204と、第1の容器ケーブル110と、リミットスイッチストッパ112と、第1の容器支持ケーブル(短手側)114と、第1の容器支持ケーブル116と、第1の容器カバー締付ネジ(短手側)118と、加熱要素バネケーブル120と、熱電対バネケーブル122と、第1の容器カバー締付ネジ(長手側)124と、極低温液体を含むために構築された第2の容器126と、熱電対128と備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の構成要素のいくつかの全体簡略化図である図5を参照する。
【0133】
真空ポンプ電源ソケット402と、主電源ソケットと、ヒューズスイッチ202とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の制御ユニット200の背面簡略化図である図6を参照する。
【0134】
制御ユニット200と、第1の容器102と、本装置のハウジング500と、真空パイプ404と、真空ポンプ406と、極低温液体/スラッシュ190と、極低温液体を含むために構築された第2の容器126と、熱電対128とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の全体簡略化図である図7を参照する。
【0135】
熱電対128の熱電対ソケット132と、熱電対ソケット134と、熱電対128の熱電対プラグ130と、熱電対バネケーブル134と、熱電対128の熱電対ケーブル136と、熱電対プラグ138と、加熱要素ソケット140と、リミットスイッチホルダ142と、加熱要素バネケーブル120と、第1の容器支持ケーブル(短手側)114と、第1の容器カバー締付ネジ(長手側)124と、第1の容器吊り下げフック144と、リミットスイッチ146と、第1の容器吊り下げ金属リング148と、第1の容器支持ケーブル114と、加熱要素カバープレート150と、加熱要素152と、試料104と、第1の容器カバー締付ネジ(短手側)118とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第1の容器の全体簡略化図である図8を参照する。
【0136】
リミットスイッチホルダ142と、リミットスイッチ144と、熱電対128の熱電対プラグ130と、加熱要素ソケット140と、加熱要素プラグ152と、制御ユニット200と、トレイ204と、第1の容器ケーブル110と、リミットスイッチストッパ112と、第1の容器吊り下げフック144と、第1の容器吊り下げ金属リング148とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の上部の上側拡大簡略化図である図9を参照する。
【0137】
制御ユニット前面パネル206と、真空ポンプ停止/開始スイッチ208と、開始プロセススイッチ210と、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)液晶ディスプレイ(LCD)212と、警報赤色インジケータLED214と、真空ポンプオン緑色インジケータLED216と、冷却プロセス進行中緑色インジケータLED218とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の制御ユニット200パネルの全体簡略化図である図10を参照する。
【0138】
真空弁多岐管154と、真空逃がし弁156と、真空供給弁158と、真空計160と、第2の容器カバーOリング162と、第2の容器126と、熱電対通り抜け口164と、第2の容器カバー166と、熱電対128とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第2の容器制御部の全体簡略化図である図11を参照する。
【0139】
熱電対128の熱電対ソケット130と、加熱要素プラグソケット140と、熱電対ソケット134と、真空ポンプ電源ソケット402と、ケーブル回収ホイール302と、第1の容器ケーブル110と、ステップモータホルダパネル304と、一体型駆動装置を備えたステップモータ306と、主電源ソケットおよびヒューズスイッチ202とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置のアクチュエータ300の全体簡略化図である図12を参照する。
【0140】
真空弁多岐管154と、真空逃がし弁156と、真空供給弁158と、真空計160と、熱電対128と、極低温液体/スラッシュ190と、第2の容器126とを備える、本発明のいくつかの実施形態に係る装置の第2の容器の全体簡略化図である図13を参照する。
【0141】
いくつかの実施形態では、第2の容器は長手軸を有する。いくつかの実施形態では、長手軸は冷却軸に平行である。いくつかの実施形態では、アクチュエータ300は冷却軸に沿った通路を通して第1の容器102の位置を調整するように構成されている。
【0142】
いくつかの実施形態では、加熱要素152は第1の容器102に接触している。いくつかの実施形態では、加熱要素152は第1の容器102の上に位置しており、かつ少なくとも部分的にそこに重なっている。いくつかの実施形態では、加熱要素152は第1の容器を加熱し、それにより試料の温度を上げるように構成されている。
【0143】
いくつかの実施形態では、制御ユニット200はアクチュエータ300および加熱要素152と動作可能に通信状態にある。いくつかの実施形態では、制御ユニット200は(a)第1の容器102を冷却軸に沿った通路を通して移動させるようなアクチュエータ300の構成、(b)第1の容器102に所定の量の熱を加えるための加熱要素152、または(a)および(b)を命令することにより試料104の温度を制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、アクチュエータ300は、第1の容器の位置を冷却軸に沿って調整するように構成されている。いくつかの実施形態では、アクチュエータ300は第1の容器の位置を第2の容器の下部に調整し、それにより試料の温度を下げる。いくつかの実施形態では、アクチュエータ300は第1の容器の位置を第2の容器の上部に調整し、それにより試料の温度を上げる。いくつかの実施形態では、アクチュエータ300は、第1の容器が第2の容器の上部の1cm、2cm、5cm、7cm、10cm、15cm、20cmまたは25cm上あるいはその間の任意の値および範囲で上に位置決めされるように第1の容器の位置を調整する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0144】
いくつかの実施形態では、アクチュエータ300は第1の容器が第2の容器内に貯蔵されているか入れられている極低温液体の表面から1cm、2cm、5cm、7cm、10cm、15cm、20cmまたは25cm上あるいはその間の任意の値および範囲で上に位置決めされるように第1の容器の位置を調整する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0145】
いくつかの実施形態では、温度センサは熱電対であってもよい。いくつかの実施形態では、温度センサは無線温度センサであってもよい。いくつかの実施形態では、温度センサは赤外線センサであってもよい。いくつかの実施形態では、本装置は第1の容器に試料の温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサを備える。いくつかの実施形態では、本装置は第2の容器にLN2スラッシュの温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサを備える。いくつかの実施形態では、温度センサは制御ユニットと動作可能に通信状態にある。
【0146】
いくつかの実施形態では、本装置は非熱伝導性部分、例えば断熱部分をさらに備える。いくつかの実施形態では、非導電性部分は非熱伝導性材料、例えば断熱材料を含む。
【0147】
当該技術分野で知られているあらゆる非熱伝導性材料を使用することができる。いくつかの実施形態では、非熱伝導性材料はブタン、ヒドラジン、クロロホルム、ヒドラジン、1,1,2-トリクロロ-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロテトラフルオロエタン、テトラフルオロエタン、アルゴン、二酸化炭素、ジエチルエーテル、イソブタン、ペンタン、パーフルオロシクロブタン、プロパン、テトラフルオロメタン、CFC-11、HCFC-141b、メタノール、Bアルコール、グリセリン、エーテル、アセトン、エチレングリコール、ガラス(ガラス繊維またはガラスビーズなど)を含有する非熱伝導性ポリオキソ含有流体、プロピレングリコール、アクリルガラス、アスファルト、セメント、粘土、コンクリート、コーリアンが充填されたセラミック、コルク、脱脂綿断熱材、珪藻土、エポキシ樹脂、ガラス繊維、泡ガラス、ガラスビーズまたはビーズ、ガラスウール、石膏、マグネサイト、酸化マグネシウム断熱材、ミネラル断熱材、ナイロン、パーライト、発泡プラスチック断熱材、発泡ポリスチレン、ポリウレタン、陶材、PTFE、PVC、パイレックスガラス、砂、バーミキュライトエアロゲル、スチレンフォーム、ウレタンフォーム、バーミキュライト、ビニルエステルおよびそれらの組み合わせから選択される。
【0148】
いくつかの実施形態では、非熱伝導性部分は複数の連続層を含む。いくつかの実施形態では、非熱伝導性部分は複数の同心層を含む。
【0149】
本明細書で使用される「複数」という用語は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7または少なくとも10の任意の整数あるいはその間の任意の値および範囲を指す。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、複数は2~5、2~7、2~10、3~8または3~10を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0150】
いくつかの実施形態では、複数の連続層の各層は少なくとも別の層に接触している。いくつかの実施形態では、複数の連続層の層は互いに接触していない。いくつかの実施形態では、互いに接触していない複数の連続層の層間の空隙は空気または不活性ガスで満たされている。いくつかの実施形態では、互いに接触していない複数の連続層の層間の空隙にはどんな液体またはガスも存在しない。いくつかの実施形態では、互いに接触していない複数の連続層の層間の空隙には空気は存在しない。
【0151】
一般的事項
本明細書で使用される「約」という用語は±10%を指す。
【0152】
「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」という用語およびそれらの活用形は、「限定されるものではないが~を含む」を意味する。
【0153】
「~からなる(consisting of)」という用語は「~を含み、かつそれらに限定される」を意味する。
【0154】
「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、本組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含んでもよいが、さらなる成分、工程および/または部分が請求項に係る組成物、方法または構造の基本的および新規な特性を実質的に変えない場合にのみそうであることを意味する。
【0155】
「例示的」という言葉は本明細書では、「一例、実例または例示として機能すること」を意味するように使用される。「例示的」なものとして記載されている任意の実施形態は必ずしも、他の実施形態よりも好ましいか有利であるものものとして、および/または他の実施形態からの特徴の組み込みを排除するように解釈されるべきではない。
【0156】
「任意に」という言葉は本明細書では、「いくつかの実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するために使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り複数の「任意の」特徴を含み得る。
【0157】
本明細書で使用される単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記(その)(the)」は、その文脈が明らかにそうでないことを示していない限り複数の指示対象を含む。例えば「化合物」または「少なくとも1種の化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0158】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は範囲形式で示されている場合がある。当然のことながら、範囲形式での記載は単に便宜および簡潔性のためのものであり、本発明の範囲に対する変更の余地がない限界として解釈されるべきではない。従って、範囲の記載は具体的に開示されている全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を有するように解釈されるべきである。例えば1~6などの範囲の記載は1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示されている部分範囲など、ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5および6を有するように解釈されるべきできある。これはその範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0159】
数の範囲が本明細書に示されている場合は常に、示されている範囲内の任意の列挙されている数(分数または整数)を含むことが意図されている。「第1の指示数と第2の指示数との間の範囲(にある)」という語句および「第1の指示数~第2の指示数の範囲(にある)」は本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数およびその間の全ての分数および整数を含むことが意図されている。
【0160】
本明細書で使用される「方法」という用語は、限定されるものではないが化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の実施者に知られているか公知の様式、手段、技術および手順から容易に開発される様式、手段、技術および手順を含む、所与の作業を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0161】
明確性のために、別個の実施形態の文脈に記載されている本発明の特定の特徴が単一の実施形態において組み合わせで提供される場合もあることが理解される。逆に簡潔性のために、単一の実施形態の文脈に記載されている本発明の様々な特徴は本発明の任意の他の記載されている実施形態において別々に、あるいは任意の好適な部分的組み合わせまたは好適な組み合わせとして提供される場合もある。様々な実施形態の文脈に記載されている特定の特徴は、当該実施形態がそれらの要素なしでは実施できないということがない限り、それらの実施形態の必須の特徴とみなされるべきではない。
【0162】
本発明の様々な実施形態の説明は例示のために提供されており、網羅的であることまたは開示されている実施形態に限定されることは意図されていない。記載されている実施形態の範囲および趣旨から逸脱しない多くの修正および変形が当業者には明らかになるであろう。本明細書で使用される用語は、当該実施形態の原理、実際の適用または市場に存在する技術からの技術的改良を最も良く説明するために、あるいはその他の当業者が本明細書に開示されている実施形態を理解することを可能にするために選択された。
【0163】
本明細書の上に詳述されており、かつ以下の特許請求の範囲の箇所で特許請求されている本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的確証が得られている。
【実施例
【0164】
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明において利用される研究室手順は、化学的、分子的、生化学的および微生物学的技術ならびに組換えDNA技術を含む。そのような技術は文献に十分に説明されている。例えば、「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning:A laboratory Manual)」,Sambrookら,(1989)、「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」第I~III巻,Ausubel,R.M.編(1994)、Ausubelら,「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」,John Wiley and Sons,メリーランド州ボルティモア(1989)、Perbal,「分子クローニングの実践ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」,John Wiley & Sons,ニューヨーク(1988)、Watsonら,「組換えDNA(Recombinant DNA)」,Scientific American Books,ニューヨーク、Birrenら(編),「ゲノム分析:研究室マニュアルシリーズ(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series)」,第1~4巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク(1998)、米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号および第5,272,057号に記載されている方法論、「細胞生物学:研究室ハンドブック(Cell Biology:A Laboratory Handbook)」,第I~III巻,Cellis,J.E.編(1994)、「動物細胞の培養-基本的技術マニュアル(Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique)」,Freshney著,Wiley-Liss,N.Y.(1994),第3版、「免疫学における現在のプロトコル(Current Protocols in Immunology)」第I~III巻,Coligan J.E.編(1994)、Stitesら(編),「基本的な臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(第8版),Appleton&Lange,コネチカット州ノーウォーク(1994)、MishellおよびShiigi(編),「細胞免疫学における選択された方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」,W.H.Freeman and Co.,ニューヨーク(1980)」を参照されたく、利用可能な免疫学的検定は特許および科学文献に広範囲に記載されており、例えば米国特許第3,791,932号、第3,839,153号、第3,850,752号、第3,850,578号、第3,853,987号、第3,867,517号、第3,879,262号、第3,901,654号、第3,935,074号、第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号、第4,098,876号、第4,879,219号、第5,011,771号および第5,281,521号、「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」,Gait,M.J.編(1984)、「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」,Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985)、「転写および翻訳(Transcription and Translation)」,Hames,B.D.およびHigginsS.J.編(1984)、「動物細胞培養(Animal Cell Culture)」,Freshney,R.I.編(1986)、「固定化細胞および酵素(Immobilized Cells and Enzymes)」,IRL Press(1986)、「分子クローニングの実践ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」,Perbal,B.,(1984)および「酵素学における方法(Methods in Enzymology),第1~317巻,Academic Press、「PCRプロトコル:方法および応用のガイド(PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications)」,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990)、Marshakら,「タンパク質精製のための戦略および特性評価-実験室コースマニュアル(Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual)」,CSHL Press(1996)を参照されたく、それらの全ての内容が参照により組み込まれる。他の一般的な参考文献が本明細全体を通して提供されている。
【0165】
材料および方法
動物
12~16週齢の雄のドブネズミを従来の条件下に収容し、肢の従属栄養性同系移植のドナーおよびレシピエントの両方として使用した。テルアビブSouraskyメディカルセンター動物実験委員会(Tel Aviv Sourasky Medical Center Institutional Animal Care and Use Committee)は全ての動物実験を認可した。
【0166】
外科的処置
肢の回収
誘導ケージにおいて5L/分の流速でのイソフルラン2%および酸素の吸入により麻酔を誘導した。1~2%イソフルラン吸入剤により麻酔を維持した。ドナー手術部位を調製し、膝上1cmのレベルで右後肢の外周の周りで皮膚切開を行った。第1に、上側大腿の皮膚を動かして大腿二頭筋および大腿内側の内転筋群を露出させた。大腿に由来するが膝と交わっていない全ての表層筋群を膝関節の周りで切断して膝関節を露出させた。腸靱帯の上で大腿四頭筋の腱を切除した。腓腹筋およびヒラメ筋を除去したが、アキレス腱は保存した。膝関節包を開いた後に、全ての靱帯を切断することにより膝を完全に分離した。これらの筋肉および靱帯は二次修復のために残留組織の十分な縁を残していた。第2に、後膝関節の後ろに坐骨神経を見つけて脛骨神経および共通の腓骨神経を露出させた。10-0ナイロンの目印縫合を配置した後、脛骨神経をふくらはぎの中央の腓骨神経において切除し、腓骨小頭の上で切り離した。これらの神経は中央神経組織を保存していた。第3に、大腿血管を鼠径靭帯から上腹部の開始レベルまで分離した。次いで大腿血管を先に配置した縫合目印の上でクランプして切除した。22ゲージの血管カテーテルを用いて、静脈流出液が透明になるまで約5mLの温かい生理食塩水0.9%および50Uのヘパリンを大腿動脈を通して手動で灌流させた。切り離したら、ドナー肢(移植体)をそれがガラス化するまで湿ったガーゼで包んだ。ドナー動物を安楽死させた。
【0167】
肢の移植
凍結および加温後にレシピエント動物を麻酔し、外科手術のために準備した。臀部に約1.5cmの長さの斜めの切開を行って、肢の僅か上で、大腿血管の露出および分割をさらに遠位で行い、ドナー肢と近似する適切な長さを保存した。10-0ナイロンの単純な結節縫合で血管吻合を行うことによりドナー肢を移植した。筋肉群を腹壁に近づけ、6-0プロリーンを用いて乳酸リンゲル液(5mL、IP)を投与した。4-0ナイロンでの結節縫合により皮膚を閉じた。
【0168】
膝下位置への肢移植体の再配置
レシピエントの肢の膝下切断
肢を受け取ったラットを麻酔し、その動物の右後肢および腰のくびれた部分を剪毛した。腰から内側大腿領域まで切開を行った。吻合のために膝関節の上で大腿動脈および大腿静脈を分離した。ガラス化の後に、吻合中の安定な状況のためにその肢を最初に固定した。吻合血管は適切な張力を維持している。
【0169】
膝下位置決めおよび凍結保存された肢の接合
第5の肢として凍結保存された肢の移植から10~14日後に、表層筋を露出させるためにその肢の同じ側で、レシピエントの肢のふくらはぎの前側脛骨領域に切開を行った。次にレシピエントの腓腹筋、ヒラメ筋、アキレス腱および足首位置の約1cm上で終了している脛骨神経の一部を保持しながらレシピエントの肢の膝下切断を行った。凍結保存された肢瘢痕を元の切開部に沿って切断し、血管茎が完全に自由になるまで皮下筋膜および線維索を分離した。次いで凍結保存された肢を切断された膝関節の下に移動させた。凍結保存されたものをそれに応じて膝下位置において、第1に、膝関節の後側関節包を縫合して接合した。第2に、膝靱帯すなわち1)膝の十字靭帯、2)両側の側副靭帯、3)膝関節の前側および左右の関節包を修復した。第3に、膝蓋靱帯およびアキレス腱を縫合した。第4に、足首の1cm上でレシピエントおよびドナーの脛骨神経の吻合を行った。第5に、表層筋(内側広筋、外側広筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋および内転筋群)を修復した。第6に、調整された受け入れ領域の皮膚を凍結保存された肢の皮膚と縫合した。
【0170】
血管化鼠径部皮弁
皮弁の回収
ドナーにおいて、大腿動脈および静脈に基づく3×4cmの皮弁を腹部筋肉の真上の面において下にある皮筋および鼠径部の脂肪組織を含む鼠径部から回収した。回収後に、静脈流出量が透明になるまで皮弁をヘパリン添加された乳酸リンゲル液(10mlの乳酸リンゲル液中に50Uのヘパリン)で灌流した。
【0171】
皮弁移植
同じ大きさの欠陥をレシピエントラットの右側に作り出した。皮弁の挿入物を凍結および解凍した後に、標準的な顕微手術技術を用いて手術用顕微鏡拡大下で10/0ナイロン縫合糸を用いてレシピエントおよびドナーの大腿動脈の動脈の端々吻合を行う。次に、4/0吸収性縫合糸(バイクリル(Vicryl)、Ethicon社)を用いて皮弁を欠陥に縫合する。
【0172】
肢のガラス化手順
回収した肢を5mLの以下の溶液それぞれで手動で0.5分間灌流した。
1.平衡化溶液(E.S):Wisconsin静的保存溶液(SPS-1、臓器保存システム)中に7.5%のエチレングリコール(EG)+7.5%のDMSO+20%のウシ胎児血清(FCS)。
2.ガラス化溶液(V.S):SPS-1中に20%のEG+20%のDMSO+20%のFCS+0.5Mのトレハロース。
【0173】
灌流が終了した後、その肢を空のサイトバッグ(cryobag)(クライオマックス(CryoMACS)(登録商標)凍結バッグ、Miltenyi Biotec社、ベルギッシュグラートバッハ、ドイツ)の中に挿入し、5mLのV.Sを添加し、そのバッグを真空にし、加熱密封した。次いで、そのバッグをVitMaster装置(IMT、ネスジオナ、イスラエル)を用いてLNスラッシュ(-205~-210℃)の中に4秒間挿入し、その後にそれを指示されたとおりにLN蒸気中のLN表面から1cmの場所に2分間~2時間置いた。
【0174】
肢の加温手順
凍結させたバッグをその肢が解凍するまで(約2~3分間)、38℃まで加熱された水浴の中に挿入した。そのバッグを開けて肢を取り出し、1Mのスクロースを添加したSPS-1の中に2分間、次いで生理食塩水の中にさらに2分間挿入した。
【0175】
次いで、その肢を以下の洗浄溶液、すなわち洗浄溶液1(WS1):SPS-1中に1Mのスクロースおよび20%のFBS、WS2:SPS-1中にWS1の1/1希釈溶液、WS3:SPS-1中にWS2の1/1希釈溶液、WS4:SPS-1中にWS3の1/1希釈溶液で手動で灌流した(溶液ごとに1ml/0.5分)。WS4の後に、その肢を10~20mlの生理食塩水で洗浄した。
【0176】
血管化鼠径部皮弁のガラス化手順
回収した皮弁を1mLの以下の溶液それぞれで手動で0.5分間灌流した。
1.平衡化溶液(E.S):Wisconsin静的保存溶液(SPS-1、臓器保存システム)中に7.5%のエチレングリコール(EG)+7.5%のDMSO+20%のウシ胎児血清(FCS)。
2.ガラス化溶液(V.S):SPS-1中に20%のEG+20%のDMSO+20%のFCS+0.5Mのトレハロース。
【0177】
灌流が終了した後に、皮弁を空のサイトバッグ(cryobag)(クライオマックス(CryoMACS)(登録商標)凍結バッグ、Miltenyi Biotec社、ベルギッシュグラートバッハ、ドイツ)の中に挿入し、1mLのV.Sを添加し、そのバッグを真空にし、加熱密封した。次いで、そのバッグをVitMaster装置(IMT、ネスジオナ、イスラエル)を用いてLNスラッシュ(-205~-210℃)の中に3秒間挿入し、その後にそれをLN蒸気中のLN表面から1cmの場所に2分間置き、次いで24時間または7~9日間の-80℃の冷凍庫における貯蔵に移した。あるいは皮弁を含むバッグを加温の前にLN蒸気の中に30分間即座に置いた。
【0178】
皮弁の加温手順
その肢が解凍するまで(約30秒間)、凍結させたバッグを38℃まで加熱された水浴の中に挿入した。そのバッグを開けて、皮弁を取り出し、1Mのスクロースを添加したSPS-1の中に2分間、次いで生理食塩水の中にさらに2分間挿入した。
【0179】
次いで、その肢を以下の洗浄溶液、すなわち洗浄溶液1(WS1):SPS-1中に1Mのスクロースおよび20%のFBS、WS2:SPS-1中にWS1の1/1希釈溶液、WS3:SPS-1中にWS2の1/1希釈溶液、WS4:SPS-1中にWS3の1/1希釈溶液で手動で灌流した(溶液ごとに1ml/0.5分)。WS4の後に、その肢を10~20mlの生理食塩水で洗浄した。
【0180】
移植後の治療
全ての移植されたラットに手術後2日目(POD2)からPOD30までエリザベスカラーを付け、クレキサン(75IU/kg)およびバイトリル(5mg/kg)の腹膜内注射によりPOD7まで毎日治療した。
【0181】
組織学
動物の屠殺後に肢および皮弁試料を回収し、パラフィン切片を調製した。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、Philips画像管理システム3.3.1HF1によって画像をキャプチャした。
【0182】
神経再生の免疫組織化学染色
近位および遠位癒合部位を含む脛骨神経を取り出し、2.5%のパラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。神経試料を切断して神経吻合の近位(レシピエントの部分)および神経吻合から0.5cm遠位(ドナーの凍結保存された部分)の2つのセグメントに分けた。次いでこれらの組織をパラフィンブロックの中に埋め込み、約5μm厚さの切片にした。スライドを抗コリンアセチルトランスフェラーゼ抗体(運動ニューロン繊維のためのマーカーとしてのChAT(Millipore社製のヤギ抗ChAT AB144)、および一般的なニューロン繊維マーカーとしての抗神経フィラメント(NF)抗体(Novus社製のCD-NB300-133))で染色した。非特異的細胞核染色のためにDAPIを使用した。ニューロン繊維の総数と比較してインタクトな運動繊維の数を評価するために、2種類の染色(ChATおよびNF)を別々に行う。染色された切片を調べ、カメラ(DS-Qi1、NiKOn)に接続されたプランフルオール(Plan Fluor)対物レンズ(6×、20×)を備えた蛍光OR顕微鏡(Eclipse Ni-U、Nikon社、東京、日本)を用いて写真を撮影した。病理学者によって盲検のデジタル形態計測分析を行い、デジタルシステムを用いて定量的細胞計数を行った。デジタル画像を回収し、Image Proソフトウェアを用いて分析した。Adobe Photoshop(Adobe Systems社、カリフォルニア州サンホゼ)を用いて画像を組み立てた。
【0183】
実施例1:移植後の凍結保存された血管化鼠径皮弁の長期生着
血管化鼠径部皮弁ラットモデルを用いて大きい組織のガラス化プロトコルの主要パラメータを較正し、これは日常的な形成再建手術治療で使用されている血管化皮弁を刺激する。凍結保護剤灌流時間の較正により、長期灌流(5分超)により移植から最初の3日以内に皮弁壊死が生じるが、5分よりも短い灌流時間により長期鼠径部皮弁生着が可能になることが実証された(データは示さず)。CPA曝露をさらに減らすために、LNスラッシュを用いて鼠径部皮弁を零度以下の温度まで急速冷却した。LNスラッシュへの曝露時の組織亀裂/破壊を最小限に抑えるために、鼠径皮弁を増加する間隔にわたってLNスラッシュ中で冷却し、損傷を評価した。最長7秒間のスラッシュ曝露および2分間のLN蒸気凍結後に血管化鼠径皮弁の血液再灌流が観察され、出血または損傷の兆候は見られなかった。対照的に、10秒間のLNスラッシュおよびその後の2分間のLN蒸気に曝露された皮弁において血管への損傷を示す複数の出血点が認められた(図1A)。LNスラッシュへの皮弁曝露を20秒までさらに延長することにより血管の完全な切断が生じ、加温後の皮弁移植を行わなかった(図1A)。従って次の段階では皮弁を灌流し、LNスラッシュ中で短時間(3秒間)で冷却し、LN蒸気中で約-60℃まで5分間冷却し、24時間(図1C)または9日間(図1D)の長期冷却のために-80℃の冷凍庫に即座に移した。凍結保存後に皮弁を温め、洗浄し、同系レシピエントに再移植し、それらの生着を追跡した。図に示すように24時間または9日間のいずれかで凍結保存された皮弁は、POD21からの発毛を含む長期生着能を示した。興味深いことに、全ての凍結保存された皮弁は皮膚の「乳白色」を呈し、それは白色の毛の成長を伴う場合もあった。24時間(図1Ea~図1Ec)または9日間(図1Ed~図1Ef)凍結保存されたPOD12皮弁において行われた組織学で異なる皮膚層および皮下脂肪組織の完全性がさらに実証された。それらの良好な生着にも関わらず、9日間凍結保存された皮弁は24時間凍結保存された皮弁と比較して苦痛の臨床徴候の上昇を示し、これは予測することができるように、凍結保護剤Tg’よりも高い温度で生組織を保存することに関しての不安定性を示している。
【0184】
より信頼性の高い長期凍結保存技術を可能にするという試みにおいて、本発明者らは、皮弁をより安定なガラス化溶液Tg’まで冷却する効果を評価し、これによりそれが約-121℃であると決定した(図2AのI)。皮弁の比較的薄い性質およびLN蒸気におけるその急速冷却により、本発明者らはLNスラッシュ凍結段階を除き、LN蒸気中での30分間のその温置により皮弁のTg’への全体凍結を行い、約80℃/分の冷却速度を可能にし(図2AのII)、これは成功した組織凍結の他の報告に匹敵していた(図2B)。移植後のその長期生着(図2CのI)ならびに手術後12日目(POD12)での組織学的評価における全ての皮膚層および皮下脂肪の正常な外観(図2CのII)から実証されているように、ガラス化溶液のTg’まで皮弁を冷却することは成功であった。従って、Tg’への急速冷却およびTg’での長期貯蔵は、LNスラッシュ急速冷却および凍結保存の効率的な代替方法を提供することができる。
【0185】
実施例2:移植後の凍結保存された血管化後肢の長期生着
次に、新規な凍結保存プロトコルをより大きく、かつより複雑な後肢モデルに適用した。鼠径部皮弁と比較した場合により大きい体積の肢により、より漸進的なLN蒸気段階の前に短い(4秒間)LNスラッシュ冷却段階を含めた(図2A)。この2段階冷却戦略により、肢移植後の長期生着(30日間)、正常な発毛および末梢血灌流から証明されるように、組織損傷または亀裂を生じることなく零度以下の温度(-4℃)への急速冷却およびその後の-70℃へのより漸進的な冷却(7℃/分)が可能になった(図2B図2C)。重要なことに、正常な皮膚組織学に加えて、肢筋肉の大きい部分は凍結後、移植後(POD0)および移植から最長30日後に正常な構造を示し(図2BのII)、これは神経再支配が起きた後の機能的肢回復の実現可能性を示している。
【0186】
実施例3:Tg’での凍結保存後の長期肢生着
皮弁について実証されているように、次に本発明者らはLN蒸気またはそのような温度を保持することができるあらゆる他の凍結装置に貯蔵した場合にその長期生着を保証することができるより安定なTg’までの凍結に耐える肢の能力を調べた。肢温度をTg’まで下げるのに十分な短い(4秒間)LNスラッシュ冷却段階およびその後の2時間のLN蒸気段階を含むガラス化プロトコル(図3A)に肢を供した。移植後に、凍結保存された肢はPOD28での実験の終了まで生着し、これは毛髪再生(図3B)および良好な末梢血灌流(図3C)を示した。図3Dに示すように、移植中に皮下に埋め込まれた肢の大きい部分は皮下筋肉領域の正常な十分に灌流された外観を示した。屠殺後に採取された生検は正常な皮膚構造を示した(図3E)。神経再支配が達成されると機能的な肢の回復には筋肉生着が必須であり、筋肉は最も繊細な肢組織であるとみなされているので、凍結保存後の筋肉生着および回復を評価し、凍結させていない移植された対照の筋肉と比較した。9つの肢の異なる肢の部分から採取された生検および組織学的切片をH&E染色後に評価した。図6Aおよび図6Bに示すように、約-80℃またはTgでの凍結保存後の筋肉状態は、移植前に生理食塩水またはCPAのいずれかで灌流した新鮮な肢移植体における筋肉状態とは有意に異なっていなかった(図6A図6B)。全ての標本は正常な皮膚、皮下および筋膜様相を示した。筋肉束の大部分は、正常な構造および末梢核を有する保存された筋線維を示した。数個の束は壊死の兆候および中心核を有する再生を示した。いくつか束は、浮腫ならびにマクロファージおよびリンパ球からなる筋周囲/筋内膜炎症性浸潤を示した。いくつか束は帯状の神経原性萎縮を示した。最終的にいくつか束を脂肪組織で置き換えた。新鮮な対照および凍結保存された肢は移植後に同様の特徴を示し、有意差は認められず、これは筋肉完全性の保存における本発明者らの凍結保存方法の有効性を示している。組織学的発見に一致して、このプロトコルによって凍結保存された肢の長期生着は、DFによって凍結保存されたかガラス化溶液Tgよりも低い温度まで冷却された肢の生着よりも有意に優れていた(図6C)。
【0187】
実施例4:凍結保存された肢の移植は神経再生および機能的感覚を示す
その機能性を取り戻すための凍結保存された肢の能力を実証するために、新規な二段階移植モデルを開発し、ここでは凍結保存された肢を移植処置からのその回復(約POD12)まで第5の肢として最初に移植し、次いで膝下切断部を置き換えるために移した(図4A)。重要なことに、肢が最初に移植されていたラットの腰から膝下位置への肢の再配置中に、それは血管に接合されたままであり、血管吻合およびその結果としての肢虚血の必要性がなくなる。レシピエントの膝へのその再配置および接合後に、移植された肢の足首の近くでレシピエントドナーの脛骨神経の吻合を行った。膝下位置への肢の再配置から21日後までに、ラットはその移植された肢で自由に歩くことができ、その肢は生着可能であった(図4B)。歩行のための凍結保存された肢の使用は主にレシピエントの筋肉によって支持されていたが、ラットの体重および機能的歩行を支持するためのその肢の能力を実証した。またその肢の使用は、手の移植後の患者の物理療法と同様に神経再生を高めるために重要であり得る。重要なことに、神経再接合から21日後に、神経は近位足領域において痛感を取り戻した(データは示さず)。神経再生は免疫組織化学分析によってさらに実証され、これは神経吻合部から約0.5cm遠位において神経フィラメントおよび運動ニューロン染色を示した(図4C)。
【0188】
考察
大きい組織、肢または臓器の凍結保存の成功は、医療再建および臓器移植の分野に革命を起こす可能性を有する。本発明者らは最近になって、一方向凍結またはガラス化のいずれかによる凍結保存後のラット後肢の短期間(3日間)の生着の成功を報告した。本研究は、凍結保存およびラットモデルにおける移植後の血管化鼠径部皮弁および後肢の長期生着の成功を初めて実証した。これは、3つの重要なパラメータにおいて既存のガラス化プロトコルを修正した新規な凍結保存プロトコルを用いて達成された。第1にそれは室温での急速凍結保護剤灌流を含んでいた。第2に零度以下の温度(約360℃/分)への急速冷却およびその後のTg’(-121℃)へのより漸進的な冷却(約-8℃/分)による二段階で凍結を行った。最後に長期保存温度は、LNを用いたドライシッパーコンテナ中に存在するより低い液体窒素(-180℃)または低い液体窒素蒸気凍結条件(<-150℃)下ではなく当該溶液のTg’下におけるものであった。肢の生着能が発毛、末梢血灌流および正常な皮膚、POD28~32での脂肪および筋肉組織学によって実証された。さらに肢の神経再支配を含んでいた新規な膝下移植モデルを用いて、神経再生および凍結保存された肢における機能的感覚の回復が実証された。要するに、これらの発見は大きい組織、肢および臓器凍結保存プロトコルの将来的な開発のための強固な基礎を提供する。
【0189】
血管化組織/肢/臓器の凍結保存の利点の1つは、非血管化組織とは対照的に凍結保護剤の物質移動の限界を動脈灌流によって解決することができ、それらの急速かつ効率的な分布を可能にするという点である。高濃度の凍結保護剤(本明細書に開示されているガラス化溶液中に40%V/V)の毒性により、この研究は灌流時間を最小まで減少させた状態で室温での凍結保護剤灌流の有効性を評価した。この決定は予備実験に基づいており、これは5分超の急速灌流を経た皮弁のみが移植後にそれらの生着能を保持することを実証し、大部分は恐らく凍結保護剤によってそれらの血管に与えられる損傷が少ないことに起因していた。凍結保護剤毒性および冷害をさらに減らすために、LNスラッシュを含む冷却工程が200℃/分超の肢伝熱のために導入および提供され、これは4秒以内で零度以下の温度に到達した。
【0190】
これまでのガラス化の唯一の実際の使用は小さい組織および細胞(すなわち卵母細胞、精子、胚)の凍結保存においてであり、これは氷晶成長をほぼ伴わない急速冷却および加温ならびに比較的低い凍結保護剤濃度を用いる損傷のない凍結保存から恩恵を受ける。そのような場合、氷晶成長は凍結保護剤の存在下での伝熱の速さによって阻止される。しかしそのような急速冷却および加温は大きい組織では現在のところ不可能である。本発明は、零度以下の温度の素早い達成を可能にする短期間の液体窒素スラッシュ浸漬およびその後の液体窒素蒸気中でのより遅い冷却(7℃/分)を含む二段階冷却プロトコルを提供する。実際に、本明細に開示されている成功した二段階の漸進的凍結(約7℃/分)プロトコルとは対照的に、肢をLNスラッシュ浸漬(約400℃/分)によって約-80℃に急速冷凍する本発明者らの試みは成功とならず、血餅形成によりPOD2において肢の壊死が生じた(データは示さず)。
【0191】
-186℃のMVEドライシッパー中での肢または皮弁の短期間貯蔵を行うという繰り返しの試みは成功とならず、移植後のそれらの急速壊死が生じた。示された結果により、組織をTg’温度近くに維持した場合に凍結保存が最も成功することが実証された。提案されている二段階ガラス化手順を標準化するために、本発明者らは所定の期間にわたってLNスラッシュ中での急速冷却を制御し、かつ次いで長期貯蔵のために温度をTg’まで上昇させる新しいガラス化装置を開発した(図6図14)。提案されているプロトコルおよび装置の単純さにより、病院および戦闘環境の両方において切断された肢および組織の即座の凍結保存のための単純な方法が可能になる。
【0192】
現代の再建手術は主に、それらの回収が能力障害を引き起こさない供与部位からの自家の体の部分(例えば、血管化皮弁、骨および神経)に依存している。その大きな成功にも関わらず、損傷が広範囲であり、かつ肢または顔などの複雑な構造において生じる場合にさらにいっそうそうである場合に再建はなお制限される。VCAの最近の出現は、脳死ドナーからの外来の複合移植片を利用することによる再建の限界を広げた。しかしその成功にも関わらず、VCAの日常的な臨床用途は、外来の移植片に対するレシピエントが苦しめられる広範囲の免疫拒絶により遅れており、移植片生着を可能にするために生涯にわたる免疫抑制剤の使用を必要とし、深刻な有害事象を生じたり、時には死亡にさえも至ったりすることが多い。本発明者らは、外傷後の切断された肢および血管化組織の即座の凍結保存が患者の安定化後まで、あるいは条件がそのような複雑な処置(熟練の顕微手術チーム+顕微手術手術室および外傷中に汚染された組織の使用)を可能にするまで自家の再建/再移植の延期を可能にすることを示唆している。さらに需要に対して不足している実質臓器の入手可能性とは異なり、需要がさらに少ない肢は将来的使用のために貯蔵/保存することができる。そのような保存はドナーとレシピエントとの間のHLA適合性を高めるのを可能にすることによりVCA分野を進歩させ、これは同種移植片拒絶反応のリスクを低下させる。それは限られた回収後の肢の生着能(最大6時間)によって課される厳しい時間制約もなくし、計画された移植処置を可能にする。さらに実質臓器とは異なり、肢適合は審美的適合も必要とし、これは肢の保存により向上させることができる。
【0193】
この手法に従って、現在の研究は外傷後の複雑な組織再建を高めるために、凍結保存の臨床用途へのさらなる一歩を踏み出した。本明細書に開示されている凍結保存プロトコルを用いて、Tg’近くの温度(<-100℃)への凍結後の肢および血管化皮弁の両方の長期生着ならびに移植を達成した。初めて達成された凍結保存されたこの組織の長期生着は、72時間よりも長い期間にわたる大きい生体組織の保存のための基礎を築き、救命処置のための治療可能域を広げる。重要なことに、有益な再建は完全な肢再移植に依存する必要がないだけでなく、より小さい組織の構成要素(血管化皮弁および骨移植片、神経、皮膚移植など)を用いる再建にも依存せず、これは多くの場合にその後の広範囲の外傷をなくし、かつ供与部位の罹患を防止する。重要なことに単なる肢の生着に加えて、組織学的分析は凍結保存および長期移植後の生着可能な筋肉を実証することができ、これは筋肉の回復に依存する機能的な凍結保存された肢の回復の実現可能性を示している。筋束全体の良好な保存にも関わらず、POD10よりも後に組織学的分析は筋肉細胞再生も実証し、これは凍結誘導損傷または手足の切断中の神経障害による除神経に応答したものであり得る。凍結保存後の肢機能回復の実現可能性のさらなる支持が、本発明者らが膝下再移植および神経吻合後に神経の再生および肢感覚を示すのを可能にした本発明者らの新規な二段階移植モデルを用いて達成された。まとめると、ここに提供されている発見は、外傷後の機能的肢再移植または肢同種移植片のクライオバンキングを劇的に向上させるための本発明者らの凍結保存手法の実現可能性を実証している。
【0194】
本発明についてその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、修飾および変形が当業者には明らかであることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲に含まれる全てのそのような代替、修飾および変形を包含することが意図されている。
【0195】
本明細書において言及されている全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的に、かつ個々に示されているかのように同程度に、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。また本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が先行技術として本発明に利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用されている限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。

図1
図2-1】
図2-2】
図3
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図6
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図14
図15
【国際調査報告】