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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】原子間力顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20230906BHJP
   G01B 9/02 20220101ALI20230906BHJP
   G01Q 20/02 20100101ALI20230906BHJP
   G01Q 60/24 20100101ALI20230906BHJP
【FI】
G02B21/00
G01B9/02
G01Q20/02
G01Q60/24
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023512435
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 IB2021000583
(87)【国際公開番号】W WO2022038419
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】16/996,403
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】523058249
【氏名又は名称】オックスフォード インスツルメンツ アサイラム リサーチ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】523058250
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール ド リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】505257028
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ラブーダ アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ポティエ バジル
(72)【発明者】
【氏名】ベロン ルドヴィック
【テーマコード(参考)】
2F064
2H052
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064FF01
2H052AA01
2H052AA04
2H052AC10
2H052AC14
2H052AC34
(57)【要約】
【課題】干渉計の特質を原子間力顕微鏡の望ましい用途に合うようにカスタマイズすることができる干渉計を提供する。
【解決手段】原子間力顕微鏡(「AFM」)に基づく干渉計は、光源と、光ビームを信号光ビーム及び基準光ビームに分割する分割光学界面とを使用する。信号及び基準光ビームの両方は、AFMカンチレバーの近くに合焦される。ビーム変位器は、信号光ビームと基準光ビームの間に横方向変位を導入し、横方向変位は、ビーム変位器と合焦レンズ構造体の間の少なくとも1つの平面内で信号光ビームの中心が基準光ビームの中心からこの平面上でのそれらのビーム直径の和の半分よりも大きく分離されるようなものである。検出器は、カンチレバーの移動に関する情報を決定するために信号光ビームと基準光ビームの間の光路長の差を決定するように作動する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子間力顕微鏡(「AFM」)に基づく干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビームと基準光ビームに分割するように配置された分割光学界面と、
AFMカンチレバーと、
前記信号及び基準光ビームの両方を前記AFMカンチレバーの近くに合焦させるように配置された合焦レンズ構造体と、
前記信号光ビーム及び基準光ビームの間に横方向変位を導入するように配置されたビーム変位器であって、該横方向変位が、該ビーム変位器と前記合焦レンズ構造体の間の少なくとも1つの平面内で該信号光ビームの中心が該基準光ビームの中心から該平面上でのそれらのビーム直径の和の半分よりも大きく分離されるようなものである前記ビーム変位器と、
前記カンチレバーの移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備えることを特徴とする干渉計。
【請求項2】
前記信号光ビーム及び基準光ビームは、前記分割光学界面で別様に屈折することを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
前記分割光学界面は、その少なくとも一方が複屈折のものである2つの材料の間の界面であることを特徴とする請求項2に記載の干渉計。
【請求項4】
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの一方は、前記分割光学界面から反射し、他方の光ビームは、該分割光学界面を通過することを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項5】
前記分割光学界面は、偏光選択性誘電体コーティングであることを特徴とする請求項4に記載の干渉計。
【請求項6】
前記合焦レンズ構造体は、単レンズであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項7】
前記合焦レンズ構造体は、顕微鏡対物レンズであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項8】
前記顕微鏡対物レンズは、0.25よりも大きい開口数を有することを特徴とする請求項7に記載の干渉計。
【請求項9】
基準場所が、前記カンチレバー上であり、前記基準光ビーム及び前記信号光ビームの両方は、該カンチレバー上に合焦されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項10】
前記信号光ビームは、前記AFMカンチレバーの場所であって、前記サンプルと相互作用する該カンチレバー上の場所に近い前記場所に合焦され、前記基準光ビームは、該カンチレバーのベース、カンチレバー支持チップ上、又は該カンチレバー支持チップに剛的に接続された反射物体上のうちの1つである別の場所に合焦されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項11】
前記AFMカンチレバーの近くのサンプルの画像をユーザに提供するように作動する追加の光学系、照明光学系、及び画像センサを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項12】
前記サンプルの前記画像は、サンプル平面で測定された2μmよりも良好な分解能を有することを特徴とする請求項11に記載の干渉計。
【請求項13】
前記サンプルの前記画像は、前記サンプル平面で測定された250ライン対毎ミリメートルの空間周波数で50%又はそれよりも高い変調伝達関数を有することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の干渉計。
【請求項14】
前記AFMカンチレバーの近くで前記サンプル上に第2の光源からの光を導入する追加の光学系を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項15】
前記AFMカンチレバーの近くで前記サンプルから放出された光を検出する追加の光学系及び1又は2以上の光検出器とを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項16】
第2の光源からの光を該第2の光源からの該光が前記AFMカンチレバー上に合焦するように導入するための追加の光学系を更に含み、
前記第2の光源からの前記光は、前記カンチレバーの移動を引き起こす、
ことを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項17】
前記ビーム変位器は、前記合焦レンズ構造体によって前記AFMカンチレバーから分離された無限遠空間内で前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の横方向変位を生成し、該信号光ビームと該基準光ビームの間の該横方向変位は、該信号光ビーム及び該基準光ビームのビーム直径の和の半分を超えることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項18】
前記分割光学界面及び前記ビーム変位器は、光学要素の結合アセンブリの中に組み込まれることを特徴とする請求項17に記載の干渉計。
【請求項19】
前記結合アセンブリは、少なくとも一方の光ビームを2回又は少なくとも両方の光ビームを1回反射することによって2つの実質的に平行な光ビームを生成することを特徴とする請求項18に記載の干渉計。
【請求項20】
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの1又は2以上に挿入され、それによってカンチレバー近傍からの反射の後に入射光ビームとは異なる経路に沿うように戻り光ビームを向け直す1又は2以上の4分の1波長板を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項21】
単一4分の1波長板が、前記信号光ビームと前記基準光ビームの両方に組み込まれることを特徴とする請求項20に記載の干渉計。
【請求項22】
第1の4分の1波長板が、前記信号光ビームに組み込まれ、第2の4分の1波長板が、前記基準光ビームに組み込まれることを特徴とする請求項20に記載の干渉計。
【請求項23】
前記4分の1波長板は、真のゼロ次の4分の1波長板であることを特徴とする請求項21に記載の干渉計。
【請求項24】
両方の4分の1波長板が、真のゼロ次の4分の1波長板であることを特徴とする請求項22に記載の干渉計。
【請求項25】
前記結合アセンブリを移動するために活性化されるアクチュエータを該アクチュエータが前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長差を変更するように更に備えることを特徴とする請求項18に記載の干渉計。
【請求項26】
前記結合アセンブリは、少なくとも1つの光学楔プリズムを組み込むことを特徴とする請求項18に記載の干渉計。
【請求項27】
前記光学楔プリズムは、前記光ビーム間を前記合焦レンズ構造体の裏側焦点面で交差させる角度及び楔位置を有することを特徴とする請求項26に記載の干渉計。
【請求項28】
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの少なくとも一方に配置された少なくとも1つの光学楔プリズムを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項29】
前記光学楔プリズムを移動し、それによって前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長差を変更するアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項28に記載の干渉計。
【請求項30】
前記アクチュエータは、電気的に作動されることを特徴とする請求項29に記載の干渉計。
【請求項31】
前記アクチュエータは、前記信号及び基準光ビーム間の光路長差に対する前記検出器の応答を較正するために前記楔を百万分の1メートル程度の距離だけ作動することを特徴とする請求項29に記載の干渉計。
【請求項32】
各レンズに関して前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのいずれかが該レンズを通過し、他方の光ビームが該レンズを通過しないように配置された1又は2以上の光学レンズを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項31のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項33】
前記1又は2以上の光学レンズは、前記AFMカンチレバーの近くで前記信号光ビーム、前記基準光ビーム、又は該信号及び基準光ビームの両方の発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更することを特徴とする請求項32に記載の干渉計。
【請求項34】
前記光学レンズのうちの少なくとも1つを移動し、それによって前記AFMカンチレバーの近くで前記信号光ビーム、前記基準光ビーム、又は該信号及び基準光ビームの両方の前記発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更するアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項33に記載の干渉計。
【請求項35】
前記1又は2以上の光学レンズのうちの少なくとも1つを前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのうちの少なくとも一方の中に挿入する及び取り出すための機構を更に備えることを特徴とする請求項32に記載の干渉計。
【請求項36】
前記光源は、低コヒーレンス光源であることを特徴とする請求項1から請求項35のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項37】
前記信号光ビーム及び基準光ビームのうちの少なくとも一方の中に該信号光ビームの前記光学群経路長が該基準光ビームの該光学群経路長に200μm以内で等しいように導入される追加の適合光学要素を更に備えることを特徴とする請求項36に記載の干渉計。
【請求項38】
前記適合光学要素は、窓の厚み、屈折率、及び分散が、前記信号光ビームの前記光学群経路長が前記基準光ビームの該光学群経路長に実質的に等しいようなものである光学窓を備えることを特徴とする請求項37に記載の干渉計。
【請求項39】
前記低コヒーレンス光源は、スーパールミネセントダイオードであることを特徴とする請求項37又は請求項38に記載の干渉計。
【請求項40】
前記追加の適合光学要素は、信号光ビーム経路又は基準光ビーム経路のいずれかに置かれた光学楔プリズムを備え、
前記光学楔プリズムが置かれた前記光ビームの伝播の軸に垂直である運動の成分によって該光学楔プリズムを平行移動させ、それによって両方の光ビーム経路の間の光学群経路長差を前記低コヒーレンス光源のコヒーレンス長以内に調整するアクチュエータ、
を更に備えることを特徴とする請求項37に記載の干渉計。
【請求項41】
前記光学楔プリズムは、前記光ビームを前記合焦レンズ構造体の裏側焦点面で交差させる角度及び楔位置を有することを特徴とする請求項40に記載の干渉計。
【請求項42】
前記追加の適合光学要素は、前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのいずれかに置かれた第1の光学楔プリズム及び第2の光学楔プリズムを備え、
前記楔を横断する前記光ビームの平行移動を低減するように該楔を同時に移動する1又は2以上のアクチュエータ、
を更に備えることを特徴とする請求項37に記載の干渉計。
【請求項43】
前記追加の適合光学要素は、前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の光学群経路長差を個別的に変更するための交換可能窓を備えることを特徴とする請求項37に記載の干渉計。
【請求項44】
前記追加の適合光学要素は、光学群経路長を変更するための特定の厚みを有するかつ前記AFMカンチレバーの近くで光ビームの発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更するための特定の屈折力及び場所を有する交換可能レンズを備えることを特徴とする請求項37に記載の干渉計。
【請求項45】
前記追加の適合光学要素は、前記光ビーム間の光学群経路長差を調整するためにかつ前記AFMカンチレバーの近くで前記信号光ビーム、基準光ビーム、又は両方の光ビームの発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを調整するために挿入可能かつ取り出し可能レンズ及び挿入可能かつ取り出し可能窓を備えることを特徴とする請求項37に記載の干渉計。
【請求項46】
交換機構を更に備え、
前記交換機構を作動させることが、前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの少なくとも一方での追加の適合光学要素の配置を変更し、
前記交換機構を作動させることが、光学群経路長と前記AFMカンチレバーの近くでの光ビームの発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかとの2又は3以上の望ましい組合せの間で選択する、
ことを特徴とする請求項45に記載の干渉計。
【請求項47】
前記光ビームのコヒーレンス長を周期的誤差及びアーチファクトを部分的に抑制するのにレーザ光源と比較して十分に短いが前記信号光ビームの光学群経路長と前記基準光ビームの光学群経路長の間の差を超えるのに十分に長い値まで増大させる帯域通過フィルタを更に備えることを特徴とする請求項37に記載の干渉計。
【請求項48】
光スループットを最大にするように帯域通過中心波長を光源中心波長に適合させるために前記帯域通過フィルタを回転させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項47に記載の干渉計。
【請求項49】
第2の分割光学界面と光学ビーム光検出器を更に備え、
前記第2の分割光学界面は、光ビームの一部を分離し、かつそれを前記光学ビーム光検出器に向けて誘導し、該光学ビーム光検出器は、前記AFMカンチレバーからの前記信号光ビームの反射の角度を測定するように作動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項50】
前記第2の分割光学界面は、偏光選択性コーティングを備え、
干渉計が、少なくとも1つの4分の1波長板を更に備え、
前記4分の1波長板及び偏光選択性コーティングは、前記AFMカンチレバーからの反射の前の前記信号光ビームが前記第2の分割界面によって分割されないように、かつ該AFMカンチレバーからの反射の後の該信号光ビームが、一方の光ビームが前記光学ビーム光検出器に向けて誘導される2つの光ビームに該第2の分割界面によって分割されるように配置される、
ことを特徴とする請求項49に記載の干渉計。
【請求項51】
前記第2の分割光学界面は、光学要素の結合アセンブリの中に組み込まれ、該光学要素の結合アセンブリはまた、前記第1の分割光学界面及びビーム変位器を組み込むことを特徴とする請求項49に記載の干渉計。
【請求項52】
軸に沿ってカンチレバー支持チップを該軸と前記合焦レンズ構造体の軸の間の角度が20°よりも小さいように平行移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項53】
原子間力顕微鏡に基づく干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビームと基準光ビームに分割するように配置された分割光学界面と、
AFMカンチレバーと、
干渉計応答の較正中に前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の光路差を変調するように電気的に作動可能であり、かつ前記カンチレバーの移動の測定中に電気的に起動停止される電気制御式複屈折液晶デバイスと、
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームを前記AFMカンチレバーの近くで2つの場所上に入射するように案内し、かつ該場所から反射した光を案内するための光学系と、
使用時に前記場所から反射する前記案内光を受光し、かつ前記カンチレバーの前記移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備えることを特徴とする干渉計。
【請求項54】
前記液晶デバイスは、前記信号光ビーム及び前記基準光ビームうちの一方にのみ位相シフトを付与するように優先的に向けられることを特徴とする請求項53に記載の干渉計。
【請求項55】
前記液晶デバイスは、前記光源と前記分割光学界面の間に位置付けられることを特徴とする請求項54に記載の干渉計。
【請求項56】
前記液晶デバイスは、前記信号光ビームにのみ位相シフトを付与することを特徴とする請求項53に記載の干渉計。
【請求項57】
前記液晶デバイスは、前記基準光ビームにのみ位相シフトを付与することを特徴とする請求項53に記載の干渉計。
【請求項58】
前記信号光ビーム及び基準光ビーム間に横方向変位を導入するビーム変位器を更に備え、
前記横方向変位は、前記液晶デバイスを前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの一方のみの経路に位置決めすることができるように、該信号光ビーム及び基準光ビームの直径の和の半分よりも大きい、
ことを特徴とする請求項53から請求項57のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項59】
前記信号光ビーム及び基準光ビームは、前記AFMカンチレバーからの反射後に再結合光ビームに組み合わされ、
前記液晶デバイスは、前記再結合光ビームの経路に位置決めされ、かつ前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの一方のみに位相シフトを付与するように優先的に向けられる、
ことを特徴とする請求項53から請求項58に記載の干渉計。
【請求項60】
干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビームと基準光ビームに分割するための光学スプリッタと、
ターゲット物体及び基準物体上にそれぞれ入射するように前記信号光ビーム及び前記基準光ビームを案内し、かつ該ターゲット物体及び該基準物体から反射する光を案内するための光学系と、
前記基準物体に対する前記ターゲット物体の移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備え、
前記検出器は、モノリシック直交位相解析器と少なくとも2つの光検出器とを含む、
ことを特徴とする干渉計。
【請求項61】
前記モノリシック直交位相解析器は、非偏光立方体ビームスプリッタと、2つの偏光立方体ビームスプリッタと、前記基準光ビームと前記信号光ビームの間の位相を45°だけシフトさせるように向けられた少なくとも1つの波長板とを含むことを特徴とする請求項60に記載の干渉計。
【請求項62】
前記検出器と前記直交位相解析器の対応する面との間の4分の1波長板を更に備え、
前記4分の1波長板は、前記直交位相解析器内の全てのビームに共通である平面から45°回転され、それによって前記反射光を該直交位相解析器の未使用面に通させるその特別軸を有する、
ことを特徴とする請求項60に記載の干渉計。
【請求項63】
干渉計が、原子間力顕微鏡に基づく干渉計であり、前記ターゲット物体は、AFMカンチレバーであることを特徴とする請求項60から請求項62のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項64】
干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビーム及び基準光ビームに分割するための光学スプリッタと、
ターゲット物体及び基準物体上にそれぞれ入射するように前記信号光ビーム及び前記基準光ビームを案内し、かつ該ターゲット物体及び該基準物体から反射する光を誘導するための光学系と、
前記基準物体に対する前記ターゲット物体の移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備え、
干渉計内の少なくとも1つの光学要素が、89°よりも小さいか又は91°よりも大きい頂角を各々が有する少なくとも2つのガラス二等辺三角形プリズムから組み立てられる、
ことを特徴とする干渉計。
【請求項65】
前記二等辺三角形プリズムのうちの少なくとも1つが、二等辺三角形の底辺に対応する面上に偏光選択性コーティングを有することを特徴とする請求項64に記載の干渉計。
【請求項66】
前記二等辺三角形プリズムのうちの少なくとも1つが、二等辺三角形の底辺に対応する面上に波長選択性コーティングを有することを特徴とする請求項64に記載の干渉計。
【請求項67】
前記二等辺三角形プリズムのうちの少なくとも1つが、二等辺三角形の底辺に対応する面上に非偏光ビームスプリッタコーティングを有することを特徴とする請求項64に記載の干渉計。
【請求項68】
前記光学要素は、少なくとも一方がその最も広い面上に偏光選択性コーティングを有する2つの50°-50°-80°三角形プリズムから組み立てられることを特徴とする請求項65に記載の干渉計。
【請求項69】
干渉計が、原子間力顕微鏡に基づく干渉計であり、前記ターゲット物体は、AFMカンチレバーであることを特徴とする請求項64から請求項68のいずれか1項に記載の干渉計。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
原子間力顕微鏡(AFM)は、カンチレバー上の鋭い先端と検査しているサンプルとの間のナノスケール力を先端の測定変位に変換するために顕微鏡カンチレバーを使用する。カンチレバーの偏向を感知するための数々の技術が存在するが、殆どのAFMは、カンチレバーの背面から合焦光ビームを反射する技術をこれらの技術が高感度、低ノイズ、及び使い易さを提供するので採用している。これらの光学方法は、本明細書では2つの分類:すなわち、干渉計検出方法と光学ビーム偏向(OBD)方法の変形とに以下で広義に分割される。
【0002】
その設計単純性、高い感度、及び良好なノイズ性能に起因して、殆どの市販AFMは、OBD方法を採用している。この方法では、反射光ビームは、カンチレバーの角度偏向の測定を可能にする分割光検出器に向けて誘導される。四象限光検出器の使用は、垂直及び側方偏向と呼ぶ2次元の角度偏向の測定を可能にする。側方偏向は、トライポロジーを研究している研究者に特に関連がある。
【0003】
しかし、OBD方法によって測定されるカンチレバーの角度偏向は、先端変位の間接的尺度である。その結果、光検出器信号から先端変位を推測するために数々の較正方法が考案されてきた。先端変位への測定カンチレバー角度偏向の慎重な較正にも関わらず、10%よりも小さく較正誤差を低減することは困難である場合がある。多くのカンチレバー測定モードに関して容易にアクセス可能な規格が欠如しているので、誤差は、多くの場合にユーザにとって明らかではない。この場合に、大きくかつ系統的な誤差が信号に存在する場合があるが、ユーザは、OBD角度偏向信号が真のカンチレバー先端変位を表すと誤って信じる場合がある。
【0004】
OBD方法の別の制約は、光点サイズがカンチレバーサイズに適合している時に最適な信号対ノイズ比(SNR)が達成されることである。これは、様々なカンチレバー上で1つの計器を用いて最適SNRを達成することを困難にする。所与のスポットサイズに対して、より大きいカンチレバーは、より高いノイズを有することになる。更に、一部のカンチレバーは、光点が、サイズ的に制限され、従って準最適SNRを提供しなければならないように、中空ベースを有する三角形形状を有する。
【0005】
他方で、干渉分光法は、カンチレバー端部のその先端の変位に直接に関連する変位を直接に測定する代替光学方法である。これは、研究者が関連する量、すなわち、先端変位を時間を消費して非常に不正確である場合がある追加の較正方法論に対する必要性なしに測定することを可能にする。較正は、光の波長に基づいているので、較正誤差は、数パーセントよりも小さく低減することができる。更に、干渉分光法は、SNRを最適化するのに光点サイズをカンチレバーのサイズに適合させる必要がないので、OBD方法よりも良好なノイズ性能を達成することができる。言い換えれば、様々な形状及びサイズのカンチレバーの変位は、小さい合焦光点を用いて高SNRで測定することができる。
【0006】
干渉計AFMの設計及びそれらの利点に関する学術論文には事欠かないが、市販AFMは、それらの複雑さに起因してそのような主流の技術を広くは採用してこなかった。ファイバベースの干渉計も学術研究者によって広く採用されてきたが、そのような干渉計は、カンチレバーの近くへのファイバの骨の折れる位置決め及び限られた光学アクセスの理由で市販AFMから期待される使い易さを欠いている。
【0007】
測定ターゲット物体への高品質光学アクセス、並びに使い易さを可能にする典型的な干渉計は、信号レーザビームを対物レンズを通して導入し、一方で基準光ビームが、ターゲット物体から何らかの距離でミラーのような基準物体から反射される。典型的には、基準光ビームは、干渉計の光学系から射出しない。そのような干渉計は、ターゲット物体の振動を測定するのに使用することができるが、信号光ビーム及び基準光ビームの経路は非常に異なっており、従って、異なる熱ドリフト及び振動を受けるので、低周波数で非常に劣化した安定性を被る。これらのアーチファクトは、ターゲット物体の変位から区別不能である。この問題を軽減するために、全ての部類の微分干渉計は、信号光ビーム及び基準光ビームの両方が対物レンズを横断する設計原理を採用してきた。信号光ビームは、ターゲット物体上に合焦され、基準光ビームは、ターゲット物体に近い基準物体上に合焦される。ターゲット物体及び基準物体の位置の間の差は、測定干渉信号になる。信号及び基準光ビームを互いに近接して維持することは、望ましくないドリフト及び計器の振動の殆どを当業者に公知の共通モード排除原理を通して排除する。従来技術でのAFMに対するそのような微分干渉計設計は、カンチレバーの近くに位置付けられた複屈折プリズムに頼っているので、それらは、対物レンズを通した結像の光学品質を大きく妨げ、その結果、それらは、使い易さが劣る場合がある。これに代えて、他の従来技術設計は、複屈折プリズムを結像レンズの裏側焦点面に置き、それによって同じくターゲット物体への高品質光学アクセスを妨げる。従って、AFMの関連での高性能微分干渉計対使い易さ及びカンチレバーへの高品質光学アクセスの間に妥協が存在する。
【0008】
OBD方法に基づくAFMと干渉計方法の間の明確な差は、光源の要件である。AFMに使用される干渉計は、光源としてヘリウム-ネオン(HeNe)レーザ又はレーザダイオードのような高コヒーレンスレーザ光源を利用し、それによって高コントラスト干渉信号を保証する。同じく、そのようなレーザ光源の狭いスペクトル帯域幅は、光学設計に使用される光学ガラスによる分散によって引き起こされる場合がある信号コントラストのいずれの損失も防ぐ。他方で、OBD AFMは、光源のコヒーレンスに頼らず、それらは、いずれの高コヒーレンスレーザ光源も使用することができ、又はそれらは、代わりにスーパールミネセントダイオード(SLD)のような低コヒーレンス光源を使用することができる。低コヒーレンス光源を使用する利益は、例えば、より良好な長期測定安定性と、後方反射の望ましくない干渉によって引き起こされる測定アーチファクトの低減とを含む。これらの理由から、後方反射がアーチファクトを引き起こす場合があるOBD AFMを使用するある一定の実験に対してスーパールミネセントダイオードが好ましく、一方で干渉計AFMに対して高コヒーレンスレーザを必要とすることは当業者に公知である。
【0009】
他方で、SLDは、特に高周波数でレーザと比較してより高いノイズを有する場合がある(US特許8370960B2)。この理由から、OBD AFMの一部の製造業者は、SLD光源又はレーザダイオード光源から選択するオプションを提供している。OBD AFMが使用されることになる実験に応じて、レーザダイオードのより低いノイズ又はSLDの後方反射アーチファクトの低減を利用することがより有益である場合がある。
【0010】
OBD方法に基づくAFMとは異なり、干渉計AFMは、長年を通して様々な異なる実施に見られている。干渉計の最も単純な実施は、1880年代に発明されたマイケルソン干渉計である。それは、今日の干渉計技術の多くの背後にある基礎に留まっている。
【0011】
図1は、AFMの関連でのマイケルソン干渉計の単純な設計を描いている。光ファイバコネクタ030で終端する偏光維持光ファイバ020の中にレーザ010が結合される。レーザ光は、フファイバ端部から発散する。発散光から平行化レンズ050によって光源光ビーム040が平行化される。平行光源光ビーム040の直径060は、光ファイバ030を射出する光ビームの発散と共に平行化レンズの焦点距離によって決定される。偏光が、非常に線形であり、かつ光学系の残余に対して測定感度を最大に高めるのに最適な角度に差別的に向けられることを保証するために偏光子070が使用される。そのような偏光子は、吸光性膜偏光子、ワイヤグリッド偏光子、偏光立方体ビームスプリッタ(作図しているもの)、又は単一直線偏光状態を透過又は反射する機能を有するいずれかのそのような光学構成要素である場合がある。これに代えて、光ファイバを排除することができ、ファイバ結合レーザの代わりにヘリウムネオンレーザ又はレーザダイオードのような自由空間レーザ光源から直接放出された平行光ビームを使用することができる。
【0012】
平行光ビームは、半透ミラー080又はいずれか均等な光学ビームスプリッタによって2つの光ビームに分離される。これら2つの光ビームを本明細書では信号光ビーム090及び基準光ビーム100と呼ぶ。一部の人々は、「信号」光ビームを「測定」光ビームと呼ぶことに注意されたい。
【0013】
半透ミラー080から反射された信号光ビーム090は、取り扱い目的でカンチレバー支持クリップ130に繋留された顕微鏡カンチレバー120(ターゲット物体)上に顕微鏡対物レンズ110を通して合焦される。光がカンチレバーに到達する時に縮小する信号光ビーム090の直径062が示されている。カンチレバー支持クリップは、カンチレバーをAFMの中に導入し、それをいずれかのクランプ機構を用いて押さえ付けることによって固定させるためにAFMユーザが一般的にピンセットを用いて触れる巨視的な物体である。カンチレバー支持クリップは、一般的に、長さ及び幅が数ミリメートル程度であり、通常は1ミリメートル厚よりも薄い。合焦信号光ビーム090は、カンチレバーから反射して対物系を通って戻る。対物レンズは、信号光ビーム090を平行化し、次に、このビームは半透ミラー080に戻る。
【0014】
半透ミラー080を透過した基準光ビーム100は、基準ミラー140に到達する。基準ミラー140は、手動のもの又はある程度自動化されたもののいずれかである変位機構150によって移動することができる。基準ミラーから反射された基準光ビームは、半透ミラー080に戻る。戻り基準光ビーム100が次に説明するように信号光ビーム090と空間的に重なることを保証するために、基準ミラー140に傾斜調節機構を必要とする場合がある。
【0015】
両方の戻り光ビームは、半透ミラー080で再結合される。各ビームの一部分は、再結合光ビーム200に再結合され、光検出器160に向けて誘導される。エネルギ保存則が、光の全量が不変のままに留まることを必要とするので、戻り光ビームの残余は、光源光ビーム040の光路に沿って光源に向けて戻る。光検出器160に到達する光の量は、信号光ビーム090が通過する光路長と基準光ビーム100が通過する光路長との差の正弦関数であり、この正弦関数の周期は、レーザ光源の波長λによって決定されるλ/2である。この周期を図1bに示している。信号光ビーム090の光路長は、カンチレバーからの反射の前の入射部分に沿う経路長の和を戻り部分(カンチレバーからの反射の後の)の経路長の和に加算したものを含むことに注意されたい。同じく、基準光ビーム100の光路長は、入射光路長と戻り光路長の和である。
【0016】
感度を最適化するために、光の半分が光源に戻り、半分が光検出器160に到達するように、基準ミラー140に取り付けられた変位機構150が調節される。本明細書で「中心化干渉計」と呼ぶこの条件は、基準ミラー140を最大でλ/4だけ変位させることによって達成することができる。この機構は、光検出器160に光の全てが到達するか又は光が全く到達しないかのいずれかの時に感度がゼロになり、従って、その後に信号を検出することができないので必要である。同じく、この干渉計に関する最大感度の位置は、正弦波応答関数が局所的に線形である最大線形位置と適合する。すなわち、カンチレバー変位の変化に対する信号応答は、変位機構150の適切な位置決めによって干渉計が中心に配置された場合に最も線形になる。
【0017】
より一般的には、従来技術は、信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の位相差を調整又は変調するための手段を有する利点を教示している。変位機構150は、この調整又は変調をもたらす1つの手法であるが、他の場合に、2つの光ビームの間の位相差を調整又は変調するために液晶デバイスが使用される。干渉計を「中心化干渉計」条件下で作動させるために、位相差を調整するための手段を正しい状態に維持しなければならないことに注意されたい。調整手段が圧電要素又は液晶デバイスのような電気起動式機構である場合に、干渉計測定を通してこの機構を連続的に起動又は通電させ続けなければならない。これは、測定値にノイズ及び/又はドリフトを導入する場合がある。
【0018】
レーザ光源の波長が既知である場合に、ほぼ1回の波長サイクルを通して変位機構150を平行移動させることにより、干渉計の感度を較正することができる。この時点で、光検出器160でのいずれの電力変化も、メートルを単位としてカンチレバーの正確な変位測定値に較正することができる。
【0019】
図1に示す単純なマイケルソン干渉計は、光の半分がレーザ光源の中に戻り、この光がレーザ発振の不安定性をもたらす可能性があるという重大な欠点を有する。そのような不安定性は、光検出器160によって測定されるカンチレバー変位に類似して誤差をもたらす可能性がある屈折力変化をもたらす。この設計では、電力の変化をカンチレバー変位と区別することができない。レーザ発振の不安定性を低減するために、図2に示すように光ファイバに沿ってファラデーアイソレータ170を設置することができる。これに代えて、自由空間レーザでは、類似の利点を有する自由空間アイソレータを使用することができる。
【0020】
この干渉計配置は、カンチレバーへのアクセスを有する観察システムを可能にしない。図3に示す代替配置は、図2の設計の浄化偏光子070と半透ミラー080の間に追加されたビームスプリッタ180を使用する。これは、顕微鏡対物系110を通して見られるカンチレバー及び合焦レーザスポットの画像を発生させるのに使用することができるカメラシステム190のための視覚アクセスを提供する。一般的に、カメラシステム190は、画像センサと、平行光を画像センサに合焦させるためのレンズと、白色光照明系と、照明光を導入するためのビームスプリッタとを含む。これらの要素は、顕微鏡対物系110の特質と意図するAFM用途とに依存して様々な手法で配置すること、修正すること、又は排除することができる。カメラシステム190のためのアクセスを可能にするのと同時に、半透ミラー080は、信号光ビーム090と基準光ビーム100の両方をビームスプリッタ180に向けて戻し、次に、ビームスプリッタ180は、この光の一部分を光検出器160に向けて反射する。この場合に、測定されることになる再結合光ビーム200は、光源光ビーム040に沿って戻され、その後に、光検出器160に経路変更される。上述の場合のように、光検出器160での屈折力は、カンチレバー変位の尺度であり、カンチレバー変位に関して正弦的に変化する。異なる配置では、光検出器160の位置とカメラシステム190の位置とを類似の機能及び性能を用いて交換することができる。
【0021】
この干渉計の設計は、光の波長λによって制限されるダイナミック・レンジを有する。カンチレバー変位の最大運動範囲はλ/4である。この範囲のいずれの端点でも、感度はゼロになり、従って、干渉計は、これらの位置でカンチレバー変位を測定することができない。実際に、特に高い精度と低いノイズが望ましく、非線形性が回避される場合に、干渉計の使用可能範囲はλ/4よりもかなり小さい。
【0022】
干渉計の限られたダイナミック・レンジは、特許US6020963で使用されるような直交検出によって解消することができる。信号光ビーム090の経路と基準光ビーム100の経路の間の光路差を測定するのに、再結合光ビーム200の経路での屈折力をモニタする代わりに、再結合光ビーム200の偏光状態が使用される。偏光状態を測定する段階は、光検出器を用いて屈折力を単純に測定するものよりも複雑である。この測定方式は、図4の設計によって使用される。
【0023】
半透ミラー080を用いて光源光ビーム040を2つの経路に分割するのではなく、信号光ビーム090と基準光ビーム100は、直交干渉計内で偏光ビームスプリッタ210を用いて光源光ビーム040を2つの直交偏光状態に分割することによって生成される。信号光ビーム090と基準光ビーム100の両方が再結合光ビーム200に再結合される時に、屈折力は、マイケルソン干渉計内で変化するようにはカンチレバー変位の関数として変化しない。代わりに、偏光状態が、カンチレバー変位の関数として直線と楕円形と円形との間で変化する。光ビーム偏光状態の楕円率の程度(そのうちで直線偏光と円偏光とが極端な場合である)は、カンチレバー変位に直接関連する。偏光ビームスプリッタ210によって反射された再結合光ビーム200の一部分を解析し、直交位相解析器220を使用することによってこの部分の偏光の楕円率を決定することができる。
【0024】
直交位相解析器の1つの可能な構成を図4bに示している。この構成は、非偏光ビームスプリッタ230を用いて光ビームを2つのアームに分割する段階を含む。「同相」アームと呼ぶ一方のアームに沿って、半波長位相遅延板240を用いてその複屈折特別軸を信号光ビーム090の偏光軸又は基準光ビーム100の偏光軸に対して22.5°に回転させることによって2つの偏光状態が混合される。次に、偏光ビームスプリッタ250を用いて信号光ビーム090及び基準光ビーム100の各々の半分は、US6020963のような2つの光検出器260及び262に向けて誘導される。「直交」アームと呼ぶ他方のアームに沿って、4分の1波長位相遅延板270を用いてその複屈折特別軸を信号光ビーム090の偏光軸及び基準光ビーム100の偏光軸に対して45°に回転させることによって2つの偏光状態が混合される。このアーム内では、偏光ビームスプリッタ280を同じく用いて信号光ビーム090及び基準光ビーム100の各々の半分が2つの光検出器264及び266に向けて誘導される。
【0025】
同相アームからの光検出器260と光検出器262の間の屈折力の差が、両方の光検出器の屈折力の和で割り算され、この正規化された差が同相信号Iになる。同じく、直交アーム内の両方の光検出器264と266とを用いて直交信号Qが測定される。Q対Iをプロットすることにより、図4cに示すリサージュプロットがもたらされる。理想的な干渉計では、この応答は単位円284である。この場合に、いずれかの時点での信号光ビーム090と基準光ビーム100の間のいずれかの光路構成が、単位円上で位相状態点290と呼ぶ点をもたらす。リサージュプロットの原点と位相状態点290の間にベクトル286を定めることができる。このベクトルとリサージュプロットのx軸の間の角度φを次式の通りに二変数逆正接関数を用いて計算することができる。
ここで、
であり、整数mと逆正接関数の分岐の両方は、φ∈{-π,π}のような幅2πの間隔にわたって連続する結果を与えるように選択される。逆正接関数のこの二変数形態atan2は、コンピュータプログラミング技術者には公知であり、FORTRAN言語、Perl言語、並びにJava、C、.NET、及びPythonのための標準数学ライブラリに見られる。
【0026】
カンチレバーがλ/2だけ変位した時に、直交位相解析器220によって測定される位相状態点290は、リサージュを完全に一周する。角度φは、信号光ビームと基準光ビームの間の位相差の直接に測定値であり、カンチレバー変位dを次式によって推測するのに使用することができる。
上式中のnは、カンチレバーを取り囲む媒質の屈折率である。言い換えれば、カンチレバーの変位によって引き起こされる信号アームの光路長の変化は、リサージュプロット上の角度変化として測定される信号光ビームと基準光ビームの間の位相差をもたらす。変位信号dでの不連続性を回避するために、関数atan2の出力を当業者に公知の方法を用いてアンラップしなければならない。このアンラップは、変位信号がλ/2よりも大きい範囲にわたって変化することになる場合に特に重要である。
【0027】
光学構成要素及び光学系アセンブリの不完全性に起因して直交位相解析器220によって測定されるカンチレバー変位への応答は、一般的に、リサージュプロット上で理想的な単位円284ではなく楕円282である。単純に理想的な応答を仮定すると、再現変位信号の周期的誤差がもたらされる。周期的誤差を防ぎ、カンチレバー変位の高精度の測定を保証するために、楕円282上の測定応答を以下の較正手順によって補正してシステムの対応する理想的な単位円284の応答を推測することができる。理想円リサージュからの逸脱を補正するのに使用されるモデルは、Bellon他、Opt.Commun.207、49~56(2002年)に示されているような楕円リサージュモデルである。楕円のサイズ、場所、及び角度を定める5つのパラメータを測定する段階は、信号アームと基準アームの間の光路差を変調する(例えば、カンチレバーを意図的に変位させることにより)段階と、リサージュ形状を記録する段階とを含む。次に、非線形最小二乗法を用いて楕円関数が当て嵌められ、リサージュ形状を表す最も正確なパラメータが決定される。その後に、これらの記録された5つのパラメータを用いて光検出器応答が正確なカンチレバー変位として解釈される。AFMを位置合わされる段階はこれら5つのパラメータのうちの1又は2以上を変化させる場合があるので、全ての実験の前にこの較正手順を実施する必要がある場合がある。
【0028】
このカンチレバー変位信号をI信号とQ信号の両方から発生させる段階は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のようなデジタル電子機器を用いて実施することができる非線形計算を必要とする。この計算は、正確なカンチレバー変位信号を再現するために測定中のカンチレバー変位よりもかなり高い頻度を用いて実施しなければならない。
【0029】
直交解析器方式の主な利点は、この場合に、信号ダイナミック・レンジがλ/4よりも大きいとすることができ、同時に光学系によって設定されるある程度の制限内でカンチレバー変位に関係なく低ノイズ性能を維持することである。更に、この信号の線形性は、干渉計の開始条件に依存せず、変位≪λ/4に制限されない。言い換えれば、信号光ビーム090の経路と基準光ビーム100の経路の間の光路差のいずれの開始点も等しく、高線形性及び低ノイズの測定を可能にするので、干渉計は、上述のように「中心化」する必要はない。
【0030】
直交位相解析器220の多くの構成が提案されている。一部は、第1のビームスプリッタの前に4分の1波長板を配置する(TaeBong Eom他、Meas.Sci.Technol.12、1734(2001年))。一部は、直交位相解析器220を光ビームの光軸の周りに45°だけ機械的に回転させることによって半波長位相遅延板を排除する(Bellon他、Opt.Commun.207、49~56(2002年))。他の提案は、偏光立方体ビームスプリッタの代わりに複屈折結晶を使用する(Paolino他、Rev.Sci.Instrum.84、095001(2013年))。他の設計は、偏光測定を実施するために各アームに1つずつ合計で2つの光検出器しか用いない(Weber他、Rev.Sci.Instrum.90、083503(2019年))。より複雑な設計(US2006/0087658A1)は、光が偏光子で失われることを代償として共通モード誤差を低減することを目的として全てがそれぞれの光検出器に到達する前に偏光子を通過する4つの位相シフト信号(0°、90°、180°、270°)を発生させる。各構成は、性能と製造の単純性の間である程度の妥協を有する。
【0031】
図4の設計の1つの欠点は、それが微分のものではないことである。従って、いずれのアーム(信号光ビーム090又は基準光ビーム100)でも振動又は熱誘導ドリフトのようないずれかの機械的運動がカンチレバー変位として間違って感知される場合がある。更に、信号光ビーム090及び基準光ビーム100の経路長が長いほど、システムがこれらの誤差発生源になる傾向が強い。
【0032】
従来技術では、カンチレバーの近くで複屈折材料を使用することによって両方の偏光状態の経路の間の光路差を低減する一部の微分干渉計構成が提案されてきた(Schonenberger他、Rev.Sci.Instrum.60、3131(1989年))。この構成を図5に示しており、この図では、光源光ビーム040を直交偏光状態を有する2つの平行ビームに分割するためのカルサイト窓300がカンチレバーの近くに配置されている。この設計の欠点は、カンチレバーの近くで液体によって容易に損傷を受ける脆弱な結晶の存在である。同じく、異なる偏光を有する光からの情報がカメラでは別様にオフセットされるので、カンチレバー及びサンプルのカメラ視野は、カルサイトの複屈折に起因して複視を有する。光源光ビーム040は、カンチレバーの近くで信号光ビーム090と基準光ビーム100とに分割されるので、従来の実施に使用された偏光ビームスプリッタ210は、この場合はダイクロイックミラー310によって置換される。この利点は、レーザから到着する全ての光が入射経路内でカンチレバーに向けて反射され(カンチレバーからの反射の前に)、更に戻り経路上に完全に反射され(カンチレバーからの反射後に)、同時に異なる波長の一部の光が観察に向けてカメラシステム190に到達することを可能にすることである。基準光ビーム100の直径064は、信号光ビーム090の直径062と類似の方式で収束し、なぜならば、これら両方の光ビームが同じレンズを通して合焦されるからである。
【0033】
信号光ビーム090は、AFMカンチレバーに向けて進行し、カンチレバーから反射し、次にカンチレバーから実質的に同じ信号光ビーム経路に沿って離れるように進行する。これらのビームを区別する必要がある場合に、カンチレバーからの反射の前の信号光ビームを「入射」信号光ビームと呼び、カンチレバーからの反射の後のビームを「戻り」光ビームと呼ぶ。これらのビームは、その空間的な重ね合わせに起因して図では区別することができず、両方を090と表示する。同じく、基準光ビーム100は、カンチレバーからの反射の前に「入射」と呼び、反射後に「戻り」と呼ぶ。
【0034】
図6は、角度分割複屈折プリズム320を用いて両方の偏光状態をカンチレバー上の2つの異なる場所に合焦させることができる2つのビームに分割する構成(den Boef他、Rev.Sci.Instrum.62、88(1991年))を示している。この構成では、US5315373に使用されるような異なる角度を有する2つの光ビームを発生させる複屈折プリズム、例えば、Wollastonプリズム、Rochonプリズム、又はSenarmontプリズムを使用することが好ましい。下記で説明する理由から、この設計では、従来の図に示した顕微鏡対物系110は、結像レンズ340によって置換される。角度分割複屈折プリズム320の幾何学形状は、カンチレバーでの光ビームの望ましい分離をもたらすために結像レンズ340に対して特定的に選択される両方の光ビームの角度分離を発生させるように調整することができる。両方のビームがカンチレバー上への同じ入射角を有することを保証するために、角度分割複屈折プリズム320は、結像レンズ340の裏側焦点面330に位置付けられなければならない。
【0035】
顕微鏡対物系110の裏側焦点面330は物理的に顕微鏡対物系110の内側に位置付けられ、複屈折プリズム320を裏側焦点面330に配置することができるとは考えられないので、この配置では顕微鏡対物系110を使用することができないことに注意されたい。従って、代わりに使用しなければならない結像レンズ340は、色消し二重レンズ、単レンズ、又は他の単純な結像レンズのようなより低い品質のレンズである。結像レンズ340がカンチレバー及びその周りのより低い品質の画像を与えるだけでなく、角度分割複屈折プリズム320は、直交偏光を異なる角度を有する別個の経路に分割するのでカメラシステム190で2つの画像を発生させる。
【0036】
このシナリオでは、信号光ビーム090と基準光ビーム100は、互いに横並びで非常に類似の経路を辿る。角度分割複屈折プリズム320の幾何学形状及び光学特性は、カンチレバーで信号光ビーム090と基準光ビーム100の間に定められた分離距離を発生させるように設計段階で最適化される。この設計では、理想的な分離距離は、測定中のカンチレバーの長さよりも若干小さい。信号光ビーム090は、カンチレバー端部(ターゲット物体)にあり、一方で基準光ビーム100は、カンチレバーベース(基準物体)にある。これは、サンプルの力の下でカンチレバーが偏向する時に変化するこれら2つの場所の間の変位差を測定することを可能にする。
【0037】
図6からは、この設計が様々なサイズのカンチレバーを即座に受け入れることができないことが明らかである。しかし、長さが約10μmから500μmで様々な形状にある市販のカンチレバーが利用可能である。1つの手法は、一方のビームがカンチレバー上に合焦され、他方がカンチレバー支持クリップ上に合焦されるようにカンチレバー長よりも大きいビーム分離を使用することである(Paolino他、Rev.Sci.Instrum.84、095001(2013年))。500μm長のカンチレバーの場合に、この分離は、基準光ビーム100が、この関連での基準物体であるカンチレバー支持クリップ130上に合焦される状態で、500μmよりも大きい分離を含意すると考えられる。しかし、カンチレバー支持クリップの厚みは、結像レンズ340を通して合焦されるレーザの焦点深度よりも大きく、低いコントラストを招く又は完全な信号欠如さえも招く場合がある。従って、各ビームをそれらが反射する面上に合焦させることができるようにこれら2つのビームの軸上焦点位置に差を導入することが有利である。1994年にCunningham他によって提案されているように(Cunningham他、Meas.Sci.Technol.5(11)、1350(1994年))、信号光ビーム090をカンチレバー120上に合焦させ、同時に基準光ビーム100をカンチレバー支持クリップ130上に合焦させるように、図7に示すように信号光ビームに焦点ぼけガラス窓350が追加される。この配置では、小さいカンチレバーと大きいカンチレバーの両方の偏向を同じ光学系を用いて測定することができる。更に、静止したカンチレバー支持チップ130に対するカンチレバー120の偏向が測定され、従って、この測定は、信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の分離距離に依存しない。
【0038】
これに代えて、Goto他は、カンチレバーでの信号光ビーム090と基準光ビーム100との相対的な合焦を変更するために光源光ビーム040内の偏光のうちの1つの合焦を若干外すための複屈折焦点ぼけレンズを用いた(Goto他、Rev.Sci.Instrum.66、3182(1995年))。複屈折レンズは、信号光ビーム090と基準光ビーム100の両方が空間的に実質的に重なり、従って、標準の光学系は、これらの光ビームの一方に対して他方に影響を及ぼすことなく使用することができないので必要である。
【0039】
光源光ビーム040の直径060が、顕微鏡対物系110又は結像レンズ340の焦点距離との組合せでカンチレバーでの合焦光ビームの発散と、光点直径と、合焦光ビームの焦点深度とを決定することに注意されたい。残存するか又は熱誘導の内部応力に起因して湾曲することのない真っ直ぐなカンチレバーでは、広範囲にわたる直径の光源光ビーム040が高いコントラスト信号をもたらすと考えられる。なぜならば、これらの光ビームが、カンチレバー120及びチップ130からの反射及び再結合光ビーム200への再結合の後に実質的に重なることになることにある。それとは逆に、図7bに示すように湾曲したカンチレバーでは、反射信号光ビーム090は、入射信号光ビーム090の経路とは若干異なる経路に沿って戻ることになる。その結果、信号光ビーム090と基準光ビーム100は、再結合光ビーム200に再結合される時に部分的にしか重ならないことになる。この部分的な重ね合わせは、低い干渉計コントラスト、弱い信号、及び高い測定ノイズを招く。しかし、光源光ビーム040の直径を増大させることにより、強い信号につながり、その結果、低いノイズをもたらす再結合光ビーム200での基準光ビーム100と信号光ビーム090との間のより大きい重ね合わせを保証する。結論として、大きい直径の光源光ビーム040を選択することにより、システムは、望ましくないカンチレバー湾曲に対する許容性が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
他方で光源光ビーム040の直径を増大させることにより、小さい焦点深度がもたらされ、それによってシステムは、カンチレバー支持チップの厚みの変化に対する許容性が低くなる。図7bに示すチップ厚の誤差は、カンチレバーを加工するのに使用される基板及び微細加工工程の差に起因してもたらされる場合がある。チップ厚誤差の結果は、戻り信号光ビーム090と戻り基準光ビーム100とが再結合光ビーム200に再結合される時にこれらの光ビームが互いに対して焦点ぼけすることになることである。これは、低い干渉計コントラスト、弱い信号、及び高い測定ノイズを招く。しかし、設計厚に対するカンチレバー支持チップ厚の所与の誤差に対して小さいビーム直径は、小さいコントラスト損失、強い信号、及び低い測定ノイズをもたらすことになる。結論として、光源光ビーム040の直径を選択する時は、光源光ビーム040の小さい直径060がチップ厚誤差に対してより高い許容性をもたらすが、カンチレバー湾曲に対してより低い許容性しかもたらされず、その逆も同様であるという妥協がある。同じく、光源光ビーム040の大きいビーム直径060は、チップ傾斜誤差に対する低い許容性を招く。図7bに示すチップ傾斜誤差は、例えば、チップホルダの機械加工公差に起因してもたらされる場合がある。チップ傾斜のいずれの誤差も、信号光ビーム090と基準光ビーム100とが一部の距離だけ分離されるので、これら2つの光ビームの間の相対的な焦点ぼけをもたらす。いずれか所与の量のチップ傾斜誤差に関してこれらの戻り光ビームの間の相対的な焦点ぼけは、大きい光ビーム直径では大きくなる。言い換えれば、光源光ビーム040の小さいビーム直径060は、チップ傾斜誤差に対する高い許容性をもたらす。カンチレバー湾曲とチップ厚及びチップ傾斜の誤差との間で妥協点を見つけるには、光源光ビーム040の適切なビーム直径060を選択しなければならない。従来技術では、これらの設計選択を行う機能が限られており、従って、干渉計の特質を原子間力顕微鏡の望ましい用途に合うようにカスタマイズすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】US8370960B2
【特許文献2】US6020963
【特許文献3】US2006/0087658A1
【特許文献4】US5315373
【特許文献5】特許13/999,614
【特許文献6】US10338096B2
【非特許文献】
【0042】
【非特許文献1】Bellon他、Opt.Commun.207、49~56(2002年)
【非特許文献2】TaeBong Eom他、Meas.Sci.Technol.12、1734(2001年)
【非特許文献3】Paolino他、Rev.Sci.Instrum.84、095001(2013年)
【非特許文献4】Weber他、Rev.Sci.Instrum.90、083503(2019年)
【非特許文献5】Schonenberger他、Rev.Sci.Instrum.60、3131(1989年)
【非特許文献6】den Boef他、Rev.Sci.Instrum.62、88(1991年)
【非特許文献7】Cunningham他、Meas.Sci.Technol.5(11)、1350(1994年)
【非特許文献8】Goto他、Rev.Sci.Instrum.66、3182(1995年)
【非特許文献9】Labuda他、Appl.Phys.Lett.106、253103(2015年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明は、特許請求の範囲によって説明する原子間力顕微鏡に関する。本発明の実施形態は、カンチレバー先端と検査下にあるサンプルの間の力によって引き起こされるカンチレバー偏向の直接変位測定に向けて微分干渉計を使用する。一般的に、微分干渉計は、ファイバ結合光源からの平行光を直交偏光状態を有する2つのアームに横方向変位ビームスプリッタを用いて分割することによって機能し、信号アーム光ビームは、一般的に、対物レンズを通してカンチレバー上に合焦され、基準アーム光ビームは、一般的に、同じ対物レンズを通してカンチレバー支持チップ上に合焦される。有利な特徴は、信号光ビームと基準光ビームとを対物レンズを通して合焦させる前のこれらの光ビームの完全な空間的分離である。この幾何学形状は、複屈折光学系ではなく標準の光学系を用いたこれらの光ビームの別個の操作を可能にする。基準アーム光ビームがカンチレバーではなくカンチレバー支持チップを望むように基準アーム光ビームに対して偏角を与えるために、好ましくは、光学楔が使用される。信号光ビームと基準光ビームとが対物レンズの裏側焦点面で交差することを保証するために、好ましくは、同じ楔が適切に配置される。基準アーム光ビームが指定の厚み及び傾斜角のカンチレバー支持チップ上に良好に合焦されるようにこの光ビームの合焦を信号アームに対して外すための光学レンズが、一般的に基準アームに使用される。反射後に、両方の光ビームは、好ましくは平行化され、これらの光ビームを送出したものと同じ光学系によって再結合される。再結合光が光源に戻る代わりに直交位相解析器に向けて横方向変位ビームスプリッタによって経路変更されるように、信号光ビームと基準光ビームの両方は、一般的に、4分の1波長板を2回通過する。好ましくは、この直交位相解析器は、偏光光学系を用いて光を4つの光検出器上に分散させる直交検出光学方式を用いて基準光ビームと信号光ビームの間の光路長差を測定する。干渉計は、液晶デバイスを変調してその応答を観察することによって較正することができる。その後に、デジタル電子機器が、この較正と既知の光源波長とに基づいて4つの光検出器信号からカンチレバー変位信号を再現することができる。
【0044】
上述の光源は、レーザとすることができ、又は好ましくはスーパールミネセントダイオードのような低コヒーレンス光源とすることができる。そのような光源の低コヒーレンスに起因して信号光ビーム経路と基準光ビーム経路との間で光学群経路長を適合させるために補償窓が使用される。更に、各実験の前に、上述の楔を機械的に作動させて干渉計コントラストを最大に高めるように両方の光ビーム経路の間の光学群経路長を非常に正確に変更することができる。更に、各々が特定の焦点距離、厚み、及び材料を有する複数の切換可能レンズは、様々な厚みを有する異なるタイプのカンチレバーを受け入れるために基準アームの焦点と光学群経路長の両方を再構成することを可能にする。同じく、カンチレバーの周りへの水のような様々な流体の導入によって引き起こされる焦点及び光学群経路長の変化を補償するために、追加の光学系を光学系の中に挿入するか又はそこから取り出すことができる。
【0045】
更に、カンチレバーから戻る光ビームの一部をサンプリングしてこの部分光ビームを四象限光検出器に向けて経路変更するためにビームスプリッタが使用される。これは、光学レバー方法としても公知の光学ビーム偏向方法を用いてカンチレバーの角度偏向の2次元測定を可能にする。この追加の測定は、直交検出から得られる干渉計変位測定と同時に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】AFMの関連でのマイケルソン干渉計の単純な設計を描く図である。
図2】ファラデーアイソレータが追加されたマイケルソン干渉計を示す図である。
図3】ビームスプリッタを使用するマイケルソン干渉計を示す図である。
図4】偏光状態を測定するマイケルソン干渉計を示す図である。
図5】カンチレバーの近くに複屈折材料を使用することによって両方の偏光状態の経路間の光路差を低減する微分干渉計構成を示す図である。
図6】角度分割複屈折プリズムを使用する構成を示す図である。
図7】信号光ビームに追加された焦点ぼけガラス窓を示す図であり、bは、カンチレバー及びチップ内の誤差発生源を示す図である。
図8】微分干渉計の斬新な配置を描く図である。
図9】顕微鏡対物系とカメラシステムの間の経路の外側にプリズム対を移動する段階を示す図である。
図10】基準ビーム焦点ぼけレンズを示す図である。
図11】光ビームの焦点ぼけさせて望ましい偏角を与えるための軸外レンズを示す図であり、bは、標準レンズのある程度の部分を研削して除去することによって軸外レンズを標準レンズからどのように製造することができるかを示す図である。
図12】横方向変位ビームスプリッタを使用する段階を示す図であり、bは、三角形プリズムを使用する横方向変位ビームスプリッタを示す図である。
図13】リサージュを較正する段階を示す図である。
図14】横方向変位ビームスプリッタ及び液晶デバイスを組み合わせた基準ビーム焦点ぼけレンズを示す図である。
図15】ビーム直径の縮小を提供する実施形態を示す図である。
図16】4分の1波長板を使用する実施形態を示す図であり、bは、入射信号光ビーム及び入射基準光ビームの経路を示す図であり、cは、戻り信号光ビーム及び戻り基準光ビームの経路を示す図である。
図17】垂直の入射光ビームと透過光ビームとを回避する偏光菱形ビームスプリッタ500を使用する実施形態を示す図である。
図18】信号光ビームと基準光ビームの間の干渉計コントラストを達成するために楔プリズム515を用いて延長された基準アームの光学群経路長を示す図である。
図19図18の二重楔設計の代替実施形態を示す図である。
図20】基準ビーム焦点ぼけレンズと光学群経路適合窓とを単一固体ビーム焦点ぼかし器に組み合わせた図である。
図21】スーパールミネセントダイオードのスペクトル帯域幅を縮小させるのに使用される光学帯域通過フィルタを示す図である。
図22】システムに使用されてカンチレバーの周りへの流体の導入によって導入される変化を受け入れることができる追加の光学要素を示す図である。
図23】干渉計と光学ビーム偏向システムの両方に対して同じ光源が使用される実施形態を示す図である。
図24】ビームスプリッタの機能が横方向変位ビームスプリッタに統合されて単一結合アセンブリになった実施形態示す図である。
図25】カンチレバーが機械アクチュエータに取り付けられた実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図8は、微分干渉計の斬新な配置を示し、かつ本発明の第1の実施形態である。この実施形態では、角度分割複屈折プリズム320と併わせた複屈折横方向ビーム変位器360の導入により、信号光ビーム090と基準光ビーム100とが両方のプリズムの外側の点で交差することを可能にする。光源光ビーム040は、複屈折界面363では屈折及び分割し、信号光ビーム090と基準光ビーム100とを発生させることに注意されたい。複屈折横方向ビーム変位器360は、信号光ビーム090と基準光ビーム100の間に横方向変位を導入し、それに対して角度分割複屈折プリズム320は、信号光ビーム090に対する基準光ビーム100の偏角を導入する。
【0048】
2つの光ビームの間の横方向変位は、いずれかの光ビームの伝播軸の他方の光ビームの伝播軸に対するいずれの軸に対しても実質的に垂直な方向の平行移動として定められる。この方向を横断方向と呼ぶ場合がある。一般的に、横方向変位は、一方又は両方のビームの屈折及び/又は反射によって導入される。本明細書で定める場合に、横方向変位は、2つの非平行伝播光ビームの間で単純にこれらの光ビームが非平行であることによって引き起こされる距離変化を意味しない。
【0049】
図8に示す本発明の実施形態は、信号光ビーム090と基準光ビーム100との交点365を複屈折横方向ビーム変位器360と角度分割複屈折プリズム320の両方の外側に配置することを可能にする。更に、この交点365は、顕微鏡対物系110、例えば、以前の配置に使用されていた顕微鏡対物系110の内側に配置することができる。この配置は、光ビームが反射時にカンチレバーとチップの両方に直交することを保証するために交点365を顕微鏡対物系110の裏側焦点面330に配置するのに最適であるので好ましい。同じ効果を達成するために複屈折プリズムの異なる配置を使用する他の実施形態が可能である。例えば、空間内のいずれかの場所、例えば、顕微鏡対物系110の裏側焦点面330内に交点365を生成するために2つの角度分割複屈折プリズム320又は特殊設計の単一角度分割複屈折プリズム320を使用することができる。
【0050】
上述のプリズム対を顕微鏡対物系110とカメラシステム190の間の経路の外側に移動することにより、図9に示す本発明の別の実施形態を提供する。光源光ビーム040は、ダイクロイックミラー310からの反射の前に信号光ビーム090と基準光ビーム100とに分離される。これは、カメラシステム190が捉える時のカンチレバーの高品質撮像を可能にする。更に、この光学アクセスは、特許13/999,614及びLabuda他、Appl.Phys.Lett.106、253103(2015年)に説明されているような追加の光学ビーム位置決めユニット370を補助ダイクロイックミラー390を用いて光学系の中に導入することを可能にする。補助ダイクロイックミラー390は、いずれかのタイプのビーム分割光学系とすることができるが、好ましくは、当該の特定波長範囲を反射し、一方で他の波長を透過する。これは、一部の例を含むと、カンチレバーの光熱励起、局所熱探査、サンプルの光起電励起、サンプルの振動分光測定励起(局部のラマン赤外線分光測定又はフーリエ変換赤外線分光測定に必要とされる)、光電子生成、又は光正孔生成のような機能を有する1又は2以上の補助光ビーム380(図9には1つしか示していない)を光学系の中に導入することを可能にする。これらの例は全て、カンチレバー上又はその近くに合焦し、信号光ビーム090及び基準光ビーム100とは独立に制御されるこれらの補助光ビーム380から利点を達成することができる。
【0051】
図9に作図した光学系は、例示の理由から現実の実施とは別様に向けられたダイクロイックミラー310の反射を有する可能性があることに注意されたい。2次元のページ上での作図を助けるためのこの技術を「光学系の折り畳み」と呼ぶ。その代わりに、現実には、好ましい実施形態は、ページによって定められる平面の中に入るか又はそこから出るように光ビームを様々な角度で誘導するダイクロイックミラー310の反射を有することができる。同じく、製図の限界に起因して本明細書の他の図は、本発明の実施形態ではページの中に入るか又はそこから出るように誘導することができる光ビームをページの平面に提供する。同じく、本明細書の図は、実際にはページの平面の前又は背後に配置される場合の装置の要素をページの平面にあるものとして示す場合がある。
【0052】
信号光ビーム090と基準光ビーム100は、その交点365からの予め決められた距離よりも大きいと、これらの光ビームの直径060よりも大きい距離だけ分離された状態になる。この距離及びそれを超えた場所では、ビームは、空間的に分離されていると見なされる。空間的に分離された信号光ビーム090と基準光ビーム100とを有する利点は、各ビームを標準の光学系を用いて独立に成形することができること、及び各アームの光路長を独立に調整することができることである。両方の偏光状態が空間的に分離されるので、従来技術に説明されているような複屈折レンズは必要ではない。例えば、図10は、基準光ビーム100がカンチレバーではなくカンチレバー支持チップ上に合焦され、一方で信号光ビーム090がカンチレバー上に合焦されたままに留まるように基準ビーム焦点ぼけレンズ400がどのように基準光ビーム100の合焦を若干外すことができるかを示している。
【0053】
これまでは、カンチレバー湾曲とチップ厚誤差及びチップの傾斜誤差によって引き起こされる焦点ぼけとの間の全体誤差を低減するための光学設計によって信号光ビーム090の直径が選択された。この実施形態の利点は、信号光ビーム090の直径と基準光ビーム100の直径の両方を独立に調整することができることである。信号光ビーム090の直径は、カンチレバー湾曲の予想誤差を受け入れるように調整することができる。一方で基準光ビーム100の直径は、カンチレバー湾曲と、チップ傾斜誤差によって引き起こされる焦点ぼけと、チップ厚誤差によって引き起こされる焦点ぼけとの間の全体誤差を低減するように調整することができる。言い換えれば、この追加の自由度は、光学系の設計をこれら3つ全ての発生源からの誤差に対して許容性の高いものにすることを可能にする。
【0054】
同じく、光ビームを焦点ぼけさせること及び望ましい偏角を与えることという2つの機能を同時にもたらすために軸外レンズ410を使用することができる。これは、軸外レンズ410が基準光ビーム100を逸脱させ、それと共にそれを焦点ぼけさせる図11に示している。図11bは、この特性を達成するように標準レンズのある程度の部分を研削して除去することによって軸外レンズを標準レンズからどのように製造することができるかを示している。これに代えて、あるレンズをその幾何学形状を変更することなく軸外に使用することができる。しかし、この特殊設計では、信号光ビーム090と基準光ビーム100との近接度の理由から研削作業は必要であり、基準光ビーム100のみが軸外レンズ410を通過するように設計される。他の設計は、信号光ビーム090と基準光ビーム100の両方を合焦させ、同時に偏角を一方の光ビームだけに与えて他方には与えないか、又は両方の光ビームの軸に対するレンズ軸の位置に依存してある程度の偏角を両方の光ビームに与えるのに十分大きい単レンズを使用することができる。
【0055】
複屈折横方向ビーム変位器360のような複屈折結晶を使用することなく空間分離光ビーム幾何学形状を同じく達成する本発明の代替実施形態を図12に示している。横方向変位ビームスプリッタ420が、光源光ビーム040を信号光ビーム090と基準光ビーム100とに分離する。図12bに示すように、横方向変位ビームスプリッタ420は、平行四辺形プリズム422に結合された三角形プリズム421から構成される。光を分離するのに屈折を使用する横方向ビーム変位器とは異なり、横方向変位ビームスプリッタ420は、部分反射光学界面423を用いて光源光ビーム040を信号光ビーム090と基準光ビーム100とに分割し、次に、最初に反射されたビームを部分反射光学界面423と平行な完全反射光学界面424を用いて反射し、この反射によってこの2回反射ビームと最初に透過されたビームの両方は、横断方向に何らかの距離だけ分離された平行ビームとして横方向変位ビームスプリッタから射出するようになる。図12によって説明する実施形態では、信号光ビームが基準光ビームの偏光状態に実質的に直交する偏光状態を有するように偏光する部分反射光学界面423が使用される。しかし、低いSN比を代償として非偏光横方向変位ビームスプリッタを使用することができる。図12では、部分反射光学界面423は、信号光ビーム090を反射し、基準光ビーム100を透過する偏光選択性コーティングを有する。しかし、信号光ビーム090が透過され、基準光ビーム100が反射される同等な光学配置が存在する。一方で信号光ビーム090を基準光ビーム100と平行であるように向け直す完全反射光学界面424は、内部全反射、金属コーティング、又は誘電体コーティングを利用することができる。
【0056】
信号光ビーム090及び基準光ビーム100が横方向変位ビームスプリッタ420を射出した後に、光路楔430を用いて基準光ビーム100に対して偏角が与えられる。(この楔は、後に光ビームの光路長を変更するのに使用されることになるのでこれを「光路楔」と呼ぶことに注意されたい)。この関連での楔は、それを通過する光ビームに偏角を与えるために光ビームを透過する両方の光学面が意図的に平行でないように設計されたプリズム又は窓である。両方の光学面の間の角度は楔角である。透過光の偏角Δθは、楔角αと楔を製造するのに使用されたガラスの屈折率nglassとによって次式で定められる。
この式は、小さい角度αに対する良好な近似である。偏角は、カンチレバーで信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の望ましい光ビーム分離を達成するように設計することができる。この分離は、顕微鏡対物系110の焦点距離及び基準光ビーム100と信号光ビーム090の間の偏角の関数である。この設計は、大きい複屈折光学系に頼る以前の実施形態よりも小型である。同じく、この実施形態での光学構成要素は、複屈折材料よりも低いコスト及び高い光学品質で製造することができる。
【0057】
図12に図示の実施形態は、横方向変位ビームスプリッタ420を利用して一方が光路楔430を用いて後に逸脱される2つの平行ビームを発生させる。しかし、単一光学構成要素が、両方の機能を実施することができる。例えば、平行四辺形プリズム422が台形プリズムによって置換された横方向変位ビームスプリッタ420に対する代替ビームスプリッタは、光源光ビーム040をその間に定められた角度を有する信号光ビームと基準光ビームとに分割することができる。そのようなビームスプリッタから射出する両方の光ビームの間の角度は、台形プリズムの両方の反射面の間の角度と台形プリズムの材料の屈折率との関数である。これに代えて、横方向変位ビームスプリッタ420と類似の幾何学形状を有するが、三角形プリズム421と平行四辺形プリズム422とが異なるガラスタイプから製造されたビームスプリッタは、透過光ビームを両方のガラスタイプの屈折率によって決定される角度だけ逸脱させることができる。提案するこれら2つの機構は、楔プリズムの必要なく信号ビームと基準ビームの間の偏角をもたらすと考えられる。
【0058】
横方向変位ビームスプリッタ420は、空隙を有するか又は互いにセメントで固められるかのいずれかの2つの偏光立方体ビームスプリッタによって置換することができることに注意されたい。これに代えて、偏光立方体ビームスプリッタとミラーとを用いて横方向変位ビームスプリッタ420と同じ機能をもたらすことができる。そのようなプリズムは、殆どの光学系製造業者から難なく利用可能であるので、これらの設計は、コストを低減することを可能にする。横方向変位ビームスプリッタ420の機能は、第1のビームと第2のビームの間の横方向変位、すなわち、第1のビームの軸に対して垂直な方向の変位を与えることであることに注意されたい。基本的な光学構成要素の組合せを使用する多くの光学装置を用いてそのような機能を導入することができる。しかし、両方の反射界面が複数の光学要素の結合アセンブリの一部である配置は、カンチレバー変位の測定誤差を導入する可能性がある両方の反射界面の間のドリフト及び振動の可能性を低減するので最適である。
【0059】
光路楔430は、アクチュエータ440に取り付けられる。アクチュエータ440は、光路楔430を1つの方向に平行移動させることができ、それによって光ビームがその偏角を変化させることなく通過するガラスの量が変化する。アクチュエータは、少数の例を挙げると、圧電変換器、ステッパモータ、内部モータとすることができる。アクチュエータの平行移動軸は、これらの楔光学面のうちのいずれかと同一面内か又はこれらの光学面に対していずれかの角度にあるとすることができる。通過ガラス厚に光の波長程度の変化をもたらす変位は、基準光ビーム100の経路と信号光ビーム090の経路の間の光路差を変更することを可能にする。この変更は、光路楔430の移動中に干渉計応答関数を測定し、測定された干渉計応答関数を当て嵌めることによってリサージュを較正することを可能にする。光路楔430は、カンチレバーで設計スポット分離を達成するための基準光ビーム100の偏角、並びにアクチュエータ440による光路楔430の作動によるリサージュの較正という2つの機能を実施することに注意されたい。
【0060】
これに代えて、基準光ビーム100の経路と信号光ビーム090の経路の間の光路差を約光波長1つ分だけ変更するために横方向変位ビームスプリッタ420を傾斜させることができる。この傾斜は、横方向変位ビームスプリッタ420に偏角を与えるように圧電変換器を作動させることによって達成することができる。光路楔430は、信号光ビーム090の経路と基準光ビーム100の経路の間の光路長を変更するのに平行移動を必要とするのに対して、横方向変位ビームスプリッタ420は、同じ機能を実施するのに回転を必要とする。リサージュを較正するための信号光ビーム090の経路と基準光ビーム100の経路の間の光路長差を与えるために他の光学構成要素を作動させることができる。リサージュを適正に較正するのに必要とされる光路長差は、理想的には光波長の少なくとも半分であるが、正確なリサージュモデルを取得データに当て嵌めるほど十分な楕円弧を与えるにはより小さい比率で十分な場合がある。
【0061】
圧電アクチュエータは、光学要素を高速かつナノメートル分解能で移動することができる。本発明では、この移動は、ユーザがリサージュを非常に迅速にかつ非常に高い分解能で較正することを可能にすると考えられる。この較正は、一部の用途では利点を有する。しかし、他の用途では、リサージュを非常に安定した方法を用いてリサージュを較正することが有利である場合がある。圧電アクチュエータは、時間及び温度によるクリープを受け、このクリープは、作動信号が停止された後であっても信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の光路差を経時的に不適切に変化させる場合がある。光路差のそのような変化は、カンチレバー変位と間違われる場合がある。
【0062】
図13は、リサージュを較正するのにより安定した手法をもたらす本発明の実施形態を示している。基準光ビーム100と信号光ビーム090の間の位相差を変調するために光路楔430又は他の光学構成要素を作動させる代わりに、この場合は液晶デバイス450を用いて基準光ビーム100と信号光ビーム090の間に位相シフトが与えられる。液晶デバイスは、液体の複屈折特性を変更するために2つの透明電極の間にある特殊な液体の分子を向けるデバイスである。これらの分子の向きは、電極への印加電圧に起因する電界によって誘導される。液晶デバイス450によって発生する位相シフトの程度は、液晶デバイス450に印加される電圧の強度に依存する。液晶材料の厚みは、完全に作動された時にリサージュの周りにほぼ一周をもたらすように選択される。一般的に、液晶は、与えられる差と印加電圧の間に非線形関係を有する。液晶応答の非線形性は、液晶デバイスが較正後に停止される時にノイズ及びドリフトが発生することを防止するので有利である。予め決められた電圧(一般的に、1V前後)よりも小さいと、液晶は、両方の偏光状態の間で固定されて安定した位相シフトを用いて安定する。液晶デバイス電圧が0Vの近くに設定された時に、液晶デバイスに印加される電圧上のノイズは、測定カンチレバー変位に対して無視することができる効果のみを有する。従って、実験構成中に干渉計応答を較正するために液晶デバイス450を電気的に作動させて使用することは有利であるが、従来技術とは異なり、測定中に液晶デバイスを停止させてそれを非作動状態に(0Vの近くに)維持するのも有利である。リサージュ較正の後に液晶デバイスを電気的に起動停止することにより、液晶デバイスがカンチレバー変位測定のノイズを増大することが防止される。時々に測定を一時停止し、液晶デバイス450を電気的に作動させて干渉計応答及びリサージュ形状を再較正し、液晶デバイスを電気的に起動停止して測定を継続することが有利である場合がある。
【0063】
液晶デバイス450は、信号光ビーム090の経路又は基準光ビーム100の経路の中に配置することができる。これに代えて、液晶デバイス450は、光源光ビーム040の経路又は再結合光ビーム200の経路の中に配置し、信号光ビーム090の偏光軸又は基準光ビーム100の偏光軸のいずれかに最大位相シフトを付与するように相応に向けることができる。しかし、液晶デバイスは、干渉信号のコントラストを低減する波面収差と大きい後方反射との両方をもたらす場合がある。この非理想的挙動の効果を低減するために、図13に示すように液晶デバイス450を再結合光ビーム200に配置することができる。液晶デバイス450の偏光軸を信号光ビーム090又は基準光ビーム100のいずれかの偏光軸に適合するように向けることにより、液晶デバイス450は、位相シフトを一方の偏光軸に差別的に与え、それに対して他方に実質的に影響を及ぼさないことができる。この場合に、液晶デバイス電圧を変調することにより、カンチレバー変位の効果をシミュレートすることによってリサージュの較正を可能にする位相シフトが導入される。重要な点として液晶デバイス450が再結合光ビーム200の経路(信号光ビーム090又は基準光ビーム100の別個の経路ではなく)に配置される場合に、液晶デバイス450の波面の軽度の歪みは、光検出器260、262、264、及び266でのコントラストを実質的に劣化させることにはならない。なぜならば、そのような波面歪みは、信号光ビームと基準光ビームとに等しく影響を及ぼすことになるからである。直交位相解析器220内で信号光ビームが基準光ビームと干渉する時は、信号光ビームの位相は、基準光ビームの位相から減算され、いずれの軽度の波面歪みからの位相シフトも減算されることになる。
【0064】
図10で基準ビーム焦点ぼけレンズ400を導入したのと同じ理由から、基準ビーム焦点ぼけレンズ400を類似の理由で類似の利点を用いて横方向変位ビームスプリッタ420及び液晶デバイス450との組合せに使用することができる。これは、図14に示す本発明の別の実施形態をもたらす。
【0065】
図15に示す本発明の実施形態は、基準光ビーム100が、正レンズ460と負レンズ470とで構成されるビーム拡大器を通過する光学方式を明らかにしている。これらのレンズ及びその間の距離の適切な選択は、基準光ビーム100のビーム直径062に対する基準光ビーム100のビーム直径064の望ましい縮小をもたらすことになる。レンズの順序を逆転することは、基準光ビーム100のビーム直径064を拡大することを可能にする。先に議論したように、このビーム直径を制御することは、AFMカンチレバーの近くでの基準光ビームの発散及び焦点深度の最適化を可能にする。いずれか所与の状況に関して干渉計コントラストを最適化するのに、状況に依存してビーム直径の異なる縮小量又は拡大量が望ましい場合がある。同じく、これらの光学構成要素は、カンチレバー120の近くでの信号光ビーム090の発散を調整するために信号光ビーム090に配置することができる。
【0066】
図15はまた、本明細書でビーム拡大器アクチュエータ480と呼び、一方又は両方のレンズ(460及び470)に取り付けてこれらのレンズの間の距離を変更することができる作動機構を示している。作動機構は、手動又はコンピュータ制御式とすることができる。これは、計器を作動させながらカンチレバー支持チップでの焦点の慎重な調整を可能にする。この調整は、特に、光ビームの焦点深度がカンチレバー支持チップ厚の変化よりも小さい場合に、様々なカンチレバー支持チップ厚に関してコントラストを増大させるのに有益とすることができる。
【0067】
これまでに議論した実施形態では、光が光源に戻り、不安定性をもたらすことを防止するためにファラデーアイソレータ170を用いた。この使用は、再結合光ビーム200の一部分しか直交位相解析器220に向けて反射しないビームスプリッタ180の結果である。光ビームの残余は光源に戻っていた。図16には、信号光ビーム090と基準光ビーム100の両方に関して偏光状態を入射光と戻り光との間で90°だけ回転させることができるように4分の1波長板490を使用する本発明の実施形態を提供する。図16では、横方向変位ビームスプリッタ420に対する標準の光学系命名法に従って入射光ビームの偏光状態及び戻り光ビームの偏光状態を「S」及び「P」とラベル付けする。両方のビームが通過する単一4分の1波長板490を用いて、信号光ビーム090と基準光ビーム100の両方に対してこの90°の回転を実施することができる。これに代えて、第1の4分の1波長板を信号光ビーム090に配置することができ、第2の4分の1波長板を基準光ビーム100に配置することができる。図16bは、入射信号光ビーム090及び入射基準光ビーム100の経路を示している。図16cは、この場合は4分の1波長板490が両方のビームに関して「S」偏光と「P」偏光とを入れ替えた戻り信号光ビーム090及び戻り基準光ビーム100の経路を示している。この作動の結果は、再結合光ビーム200が光源光ビーム040の経路に沿って戻らず、代わりに横方向変位ビームスプリッタ420内の偏光選択性コーティングが、戻り基準光ビーム100と戻り信号光ビーム090の両方を横方向変位ビームスプリッタ420の側面ファセットから経路変更することである。これは、従来の実施形態で使用されていたビームスプリッタ180の排除を可能にする。更に、この場合は殆どの光が直交位相解析器220に向けて誘導され、この構成では無視することができるほど少量の光しか光源に戻らないので、ファラデーアイソレータ170を排除することができる。
【0068】
特にファラデーアイソレータ170の取り外しの後に、レーザ010の中に戻ることができる後方反射の量を低減することが望ましい。典型的な立方体ビームスプリッタは、その光学面に対して垂直な光ビームで作動するように設計される。そのような幾何学形状は、図16に示す浄化偏光子070の場合と同じく大部分がレーザ010の中に戻ることができる後方反射をもたらす。ビーム分割コーティングは、45°の入射角に適するように設計されるので、後方反射がレーザに戻ることを防止するために立方体ビームスプリッタを回転させることにより、立方体ビームスプリッタの性能の低下がもたらされる場合がある。同じく、立方体を回転させる段階は、組立及び製造中に弊害を招く場合がある。板ビームスプリッタは望ましいオプションではなく、このビームスプリッタが光ビーム軸に対して大きい角度に使用される時であっても平行な界面がエタロン該干渉縞をもたらす可能性がある窓として製造される。図17には、ビームスプリッタの外面に対して垂直な入射光ビーム及び透過光ビームを回避する偏光菱形ビームスプリッタ500の斬新な設計を提供する。これは、ビームスプリッタの外面から反射されるいずれの迷光も、大部分がレーザ010に戻るのではなく大きい角度で光学系を射出することを保証する。図17bは、偏光菱形ビームスプリッタ及び光路の幾何学形状のより詳細な図を示している。偏光菱形ビームスプリッタは、2つの同じ二等辺三角形プリズムを三角形の底辺に対応する面に沿って結合することによって製造される。三角形の底辺以外の辺に対応する4つの面は、偏光菱形ビームスプリッタアセンブリの外面を含む。結合の前に結合ターゲット面のうちの少なくとも一方の上に偏光ビームスプリッタコーティングが導入される。外面の一部又は全ては、偏光菱形ビームスプリッタを通る光の透過を最大に高めるために光源波長及び入射角に対して最適化された反射防止コーティングを有することができる。更に、ビームスプリッタの主要な意図する機能では使用されない面のうちの一部は、光学系内で望ましくない干渉をもたらす可能性があるこれらの面からの鏡面反射を抑制するために研削することができる。更に、他に光学系内で反射又は散乱されると考えられるいずれか迷光の吸収によってもこれらの迷光を更に低減するために、これらの研削面を黒色に塗装することができる。
【0069】
偏光菱形ビームスプリッタ500の外面は互いに直交しないが、透過光ビームは、標準の立方体ビームスプリッタの場合と同じく入射光ビームと平行である。同じく、偏光菱形ビームスプリッタが、入射光ビームに対して偏光菱形ビームスプリッタが適合するように設計された入射角で向けられる場合に、反射ビームは、入射光ビームに対して垂直である。θinc=5°の入射角に適合するように設計された偏光菱形ビームスプリッタは、次式によって計算される頂角ψvertex=80°を有する二等辺三角形プリズムから製造される。
【0070】
この場合に、この偏光菱形ビームスプリッタを組み立てるのに使用される両方のプリズムは、50°-50°-80°三角形プリズムである。設計入射角で作動される時に、偏光菱形ビームスプリッタ500の内側にある光ビームは、偏光菱形ビームスプリッタ500の外面の角度と、偏光菱形ビームスプリッタ500の屈折率とによって定められる何らかの角度にある。この場合に、内部ビーム分割界面上への入射角を次式によって計算することができる。
上式中のnglassは、プリズムを製造するのに使用されるガラスの屈折率である。最適作動に対して、ビーム分割コーティングは、θintの入射角での作動に適合するように特別に設計される。例えば、意図する用途が、高度に直線偏光された光出力を保証することであるという理由から、偏光菱形ビームスプリッタ500に使用されるコーティングは、最大偏光消光比を有するように設計された。図17bから明らかなように、入射ビームと透過ビームは共線ではなく、従って、透過ビームの平行移動を光学機械設計の中に考慮しなければならない。図17bには、入射角θint=5°を有する偏光菱形ビームスプリッタ500を示すが、θint=0°(立方体ビームスプリッタに対応する)と十分に異なるいずれの角度も、光学系からの後方反射の排除に有益である場合がある。
【0071】
偏光菱形ビームスプリッタ500と類似の手法を横方向変位ビームスプリッタ420に適用することができる。横方向変位ビームスプリッタ420は、後方反射がレーザ010に戻ることを回避するために45°、90°、及び135°とは若干異なる面の間の角度を有するプリズムで構成することができる。
【0072】
これまでに示す本発明の実施形態では、信号光ビーム090と基準光ビーム100の両方が遭遇する光路長及び全体的な分散の大きい不適合に起因して高干渉コントラストを保証するのに高コヒーレンスレーザ光源、すなわち、長いコヒーレンス長を有する光源が選択される。コヒーレンス長が光路長の差(光学設計及び機械設計の公差の蓄積に起因する誤差を含む)よりも大きい限り、高干渉コントラストを観察することができる。これは、数十センチメートル程度又はそれよりも大きいコヒーレンス長を有するHeNeレーザの場合である。高コントラストを達成するためには信号光ビーム090の光路と基準光ビーム100の光路の間の不適合が必要であるので、そのような高コヒーレンス光源の使用は、光学系の設計自由度を与える。しかし、基準アームの光路長と信号アームの光路長とを適合させることには利益がある。例えば、信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の光路長の不適合は、干渉信号の望ましくないドリフト又は不連続性をもたらす場合がある。レーザの波長のいずれのドリフト(例えば、温度変化に起因する)も、信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の光路長の差に比例して強弱する干渉信号のドリフトをもたらす。同じく、レーザの波長のモードホッピングは、光路長差に比例する不連続性を干渉信号にもたらす。これらの問題は、信号光ビーム090の光路長と基準光ビーム100の光路長とが適合する場合に有意に低減し、これは、干渉計の望ましい特性であるとして当業者に公知である。
【0073】
広めのスペクトル帯域幅を有するスーパールミネセントダイオード(SLD)のような非コヒーレント光源では、いずれの不適合も、その結果として干渉信号がもたらされない可能性があるので、両方のアームの間の適合要件は非常に厳密である。スーパールミネセントダイオードは、10μm程度の短いコヒーレンス長を有する。このコヒーレンス長は、殆どの光学機械構成要素の公差よりも小さい。この理由から、設計者は、AFMでは光学ビーム偏向方法のためにSLDを普段から使用しているが、従来技術は、HeNeレーザ又はレーザダイオードのような高コヒーレンスレーザ光源の使用をAFMでの干渉計に対する基礎として教示している。言い換えれば、従来技術の熟練設計者は、SLDの低コヒーレンスが非常に問題であるので、SLDの潜在的な利点にも関わらず干渉計に対して高コヒーレンスのレーザを選択する。
【0074】
SLDの分散及び比較的広範なスペクトル帯域幅に起因して干渉計コントラストを達成するための信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の適合基準が光路長変数(先に議論した)並びに分散変数を含むことに注意されたい。光学構成要素の光路長lOPLは、次式として定められる。
上式中のxは、光学構成要素の厚みであり、nOは、低コヒーレンス光源の中心波長λOでの屈折率である。それとは対照的に、光学群経路長は、分散効果(1次の)を含み、次式として定められる。
上式中の∂n/∂λ項は、ガラスの1次分散を表している。光路長の場合と同じく、信号光ビーム090の光学群経路長は、入射部分(カンチレバーからの反射の前)と戻り部分(カンチレバーからの反射の後)との和であり、基準光ビーム100の光学群経路長に関しても同様である。
【0075】
基準光路と信号光路とが対称ではない干渉計設計では、SLDを用いて干渉計コントラストを達成する際に両方のアームの光路長を適合させるだけでは十分ではない。高コントラストを保証するのに必要な基準は、光学コントラストに対する条件を決定するのに関与する両方のアームの間の分散の差を考慮した両方のアームの間の全光学群経路長を適合させることである。以下では、SLDを用いてコントラストを達成するための基準は、単純に分散の不在下で十分な「光路長の適合」ではなく、信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の「光学群経路長の適合」を意味するものとする。
【0076】
図18に示す斬新な設計でスーパールミネセントダイオード510を使用するために、基準アームの光学群経路長は、信号光ビーム090と基準光ビーム100の間の干渉計コントラストを達成するために延長しなければならない。この延長は、図18に示すように楔プリズム515を用いて光ビームを光軸から離れるように逸脱させることによって達成することができる。次に、光路楔430を用いて従来の設計によって必要とされるように光ビームを指定角度に逸脱させることができる。この場合の光路楔430の角度に関する要件は、楔プリズム515に対する選択角度の選択による影響を受ける。両方の楔の間の距離、並びに選択楔角は、基準光ビーム100が信号光ビーム090と同じ光学群経路長を有することを保証するように調整することができる。スーパールミネセントダイオード510によって必要とされるように両方のアームの間の光学群経路長を適合させることより、そのような低コヒーレンス光源の利点、例えば、低い背景信号、周期的誤差、及びアーチファクトをこの干渉計AFMの状況で利用することができる。本発明の他の実施形態では、信号アームの光学群経路長を基準アームよりも長くする必要がある場合があり、この場合は類似の楔が代わりに信号アームに配置されると考えられることに注意されたい。同じく、自由空間レーザ光源の状況で上述したように、ファイバ結合スーパールミネセントダイオードの代替自由空間スーパールミネセントダイオードの使用が任意的であることにも注意されたい。
【0077】
図19に示す本発明の実施形態は、図18に提示する二重楔設計の代替案を提案するものである。基準光ビーム100と信号光ビーム090の両方の光学群経路長が緊密に適合するように、基準光ビーム100内に光学群経路適合窓520が導入される。これは、複数の楔を用いる光ビームの逸脱なく光学群経路長の適合を可能にする。この関連での光学群経路適合窓520は、単純に光学窓であり、この場合に、ガラスのタイプは、その分散特質に関して慎重に選択され、窓の厚みは、基準光ビーム100の光学群経路長が信号光ビーム090の光学群経路長に適合するように十分に制御された量の光学群経路長を基準光ビーム100に導入するように正確に調整される。幾何学的な光学制約条件内で理想的な光学群経路長の適合をもたらすために、光学群経路適合窓520をシナリオに依存して信号光ビーム090、基準光ビーム100、又はこれら両方の中に導入する必要がある場合がある。
【0078】
10μm程度であるスーパールミネセントダイオード510の非常に短いコヒーレンス長に起因して、両方のアームの光学群経路長の適合は、一般的に、計器の製造及び生産で達成することができない。この理由から、計器が組み立てられて作動状態にある時に両方のアームを精密に適合させるために、調整可能な光学群経路長を有するデバイスを信号光ビーム090の経路、基準光ビーム100の経路、又はこれら両方の経路に導入しなければならない。好ましいことに、光路楔430は、基準光ビーム100が通過するガラスの量を変更し、それによってそのアームの光学群経路長を変更するように光軸に対して垂直な方向に移動することができる。典型的な楔角では、この移動は、両方のアームを光学公差及び金属機械加工公差内で適合させるほど十分な範囲を達成するために光路楔430の1mm程度の運動を可能にするアクチュエータ440を必要とする。光学群経路長の適合には別個の楔を使用することができるが、基準光ビーム100の角度を変更するのに先に用いた光路楔430をこの状況でも使用することが好ましい。両方の目的で光路楔430を使用することにより、製造される光学構成要素の数が低減し、更に、後方反射の回数及び光学系の複雑さが低減する。この設計では、光路楔430は、基準光ビーム100に対して偏角を与えること、光の波長程度の小さい運動でリサージュを較正すること、及び基準光ビーム100と信号光ビーム090との間で幾何学経路長を1mm程度の大きい運動で適合させることという3つの機能に使用されることに注意されたい。
【0079】
異なるカンチレバータイプは、非常に異なるカンチレバー支持チップ厚を有することができる。例えば、シリコンチップは、通常はほぼ300μm厚であり、それに対して窒化珪素チップは、通常はほぼ500μm厚である。2つのそのようなカンチレバーの間のスイッチングは、SLDのような低コヒーレンス光源が使用される場合に基準ビーム焦点ぼけレンズ400の焦点距離を変更しなければならないこと及び光学群経路長を適合させなければならないことという最大コントラストを達成するための光学設計の2つの実質的な変更を必要とする。基準ビーム焦点ぼけレンズ400は、異なるカンチレバー厚を受け入れるように変更することができるが、光学群経路長の変化は、光路楔430の平行移動が補償することができる範囲よりも大きい場合がある。この理由から、カンチレバータイプの間でスイッチングを行う時に異なる型式の光学群経路適合窓520の間でスイッチングを行うことが好ましい場合がある。各光学群経路適合窓520は、異なるカンチレバー支持チップ厚に対して最適化することができる。カンチレバータイプを変更した後に2つの光学構成要素を置換することを必要とする場合があるという事実は、この計器の光学設計を複雑にする。好ましいことに、図20の実施形態は、基準ビーム焦点ぼけレンズ400と光学群経路適合窓520とを固体ビーム焦点ぼかし器530という単一光学構成要素に組み合わせる。この光学構成要素は、カンチレバータイプの間で変更を行う時に発生する焦点の変更及び光学群経路長の変更という2つの機能を満足させる。この設計は、両方の機能を設計レベルで組み合わせて、従って計器が作動している間に弊害が発生することを回避することを可能にする。固体ビーム焦点ぼかし器530は、単純に焦点距離及び厚みが特定の用途に合うようになった単レンズとすることができ、又はいずれかの他のタイプの光学レンズとすることができることに注意されたい。図20に示すように、固体ビーム焦点ぼかし器530の厚みは、その直径を大きく超えることが必要である場合がある。
【0080】
更に、固体ビーム焦点ぼかし器530の設計と図14の実施形態の状況で説明したビームの拡大又は縮小という第3の機能とを組み合わせることができる。この場合に、厚いメニスカスレンズを固体ビーム拡大器540として使用することは、いずれの特定の用途及びカンチレバー設計に関しても調整することができる全ての3つの機能を達成することを可能にする。固体ビーム拡大器540と固体ビーム焦点ぼかし器530は、単一ガラス片から製造することができ、又は代わりに互いにセメントで固められる複数のガラス片から製造することができることに注意されたい。固体ビーム拡大器540のいずれかの界面の厚み及び曲率半径の選択に依存して、基準光ビーム100のビーム直径064は、信号光ビーム090のビーム直径062よりも小さいか又は大きく調整することができる。
【0081】
一般的に、信号光ビーム090のビーム直径062は、信号光ビームの経路に沿って変化し、同じくビーム直径064も基準光ビーム100の経路に沿って変化する。これらの直径を比較する時に、顕微鏡対物レンズ110の裏側焦点面330での各光ビームの直径を評価することが有利である。裏側焦点面330で測定される光ビームの直径がDBFPである場合に、AFMカンチレバーの近くの同じビームの発散は次式になる。
上式中のδFFPは、カンチレバーの近くの対応する光ビームの円錐半角として測定されるものであり、fは、対物レンズ110の焦点距離である。しかし、信号光ビーム090と基準光ビーム100とが重なるか否かを決定する時に、信号光ビーム又は基準光ビームのいずれかに対して実質的に垂直な平面を選択しなければならず、この平面内で、ビーム中心及びビーム直径は、当業者に公知の方法に従って例えばISO11145:2018に説明されている1次モーメント及び2次モーメントによって評価しなければならない。本発明の目的に対して、ビーム中心間の距離がその直径の和の半分を超えた場合に、これらのビームは、平面で分離されると考えられる、すなわち、それらは有意には重ならない。
【0082】
図20には、2又は3以上の固体ビーム拡大器540又は固体ビーム焦点ぼかし器530の間のスイッチング又はこれらのあらゆる組合せを可能にする機械アセンブリ550を示している。ユーザが2又は3以上の組立式固体ビーム拡大器540又は固体ビーム焦点ぼかし器530の間のスイッチングを手動で行うことを可能にすることにより、光学系は、異なるチップ厚を有することができるいくつかの異なるカンチレバータイプを受け入れるように設計することができる点で多用途のものになる。
【0083】
スーパールミネセントダイオード510のスペクトル帯域幅を縮小させるために、図21に示すような光学帯域通過フィルタ560を使用することができる。スーパールミネセントダイオード510のスペクトル帯域幅を縮小させることにより、ある程度の屈折力を失うことを代償としてコヒーレンス長が増大する。コヒーレンス長lcは、次式の場合のように光源の中心波長λ0とスペクトル帯域幅λBWとの関数である。
スペクトル帯域幅を縮小させることにより、コヒーレンス長によって決定される信号光ビーム090の経路と基準光ビーム100の経路の間の使用可能光路差の範囲が拡大する。チップ130の厚みの変化よりも大きいコヒーレンス長lcを使用することにより、干渉計コントラストを最大に高めるように光路楔430を移動するのに使用されるアクチュエータ440は、図21に示すように設計から排除することができる。この代替実施形態は、製造及び使い勝手を簡素化する。
【0084】
製造中に、透過光の量を最大に増すために光学帯域通過フィルタ560を傾斜させることができる。この方法は、計器の特定のスーパールミネセントダイオード510の中心波長に合うような光学帯域通過フィルタ560の有効中心波長の調整を可能にする。この調整は、所与のモデルからのSLDが一般的に中心波長で大きい製造誤差を有するので必要である場合がある。
【0085】
空気以外の流体、例えば、水又は油をカンチレバーの周りに導入する時に、基準光ビーム100と信号光ビーム090の両方の光学群経路長が更に影響を受ける。固体ビーム拡大器540(又は固体ビーム焦点ぼかし器530)の別のセットをカンチレバータイプとそれを取り囲む流体とのあらゆる組合せに適応させることができる。2つのカンチレバータイプ及び2つの流体に関して可能な4つの組み替えを受け入れるために、可能性として4つの固体ビーム拡大器540を製造する必要があると考えられる。これに代えて、図22の実施形態は、カンチレバーの周りへの流体の導入によって導入される変化を受け入れることができる追加の光学要素のシステム内への導入を提案する。基準光ビーム100は、流体焦点ぼけレンズ570を用いた光ビームの焦点ぼけを必要とし、一方で両方のアームの間のいずれの光学群経路長差も、信号光ビーム090内への流体補償窓580の導入によって補償される。流体焦点ぼけレンズ570は、単純に、用途に合わせて特別に選択される焦点距離、厚み、及び材料を有する何らかの光学レンズであることに注意されたい。同じく、流体補償窓580は、単純に、光学設計によって必要とされる通りに光学群経路長を補償するように選択される厚み及び材料を有する光学窓である。製造中に光学群経路長が光学系公差によって必要とされる通りに十分に緊密に適合することを保証するために、流体焦点ぼけレンズ570と流体補償窓580の両方の厚みを非常に慎重に制御しなければならない。この設計では、2つの固体ビーム拡大器540の間の選択と、570と580の両方の挿入又は取り出しとを併せて4つの組み替えを受け入れることができる。図22の流体補償スライダー590は、ユーザが570と580の両方を一緒に単一作動機構を用いて光学系の内外に摺動させることを可能にする機構である。流体補償スライダー590は、ユーザが手動で又はコンピュータ制御することができる自動機構によって作動させることができる。
【0086】
カンチレバー長から独立した信号精度及び低ノイズのような干渉分光法の全ての利点にも関わらず、光学ビームの偏向は、干渉分光法が直接に測定することができない2つの方向(垂直及び水平)へのカンチレバーの角度曲げの測定を可能にする。この理由から、AFMユーザは、近年Oxford Instrumentsによって市販で利用可能になった干渉計との併用でOBDを使用することで利点を達成することができる。この従来技術の計器では、2つの独立した測定法をユーザに提供するためにUS10338096B2に説明されているような2つの別個の光源及び光学ビーム位置決めユニット370が同時に使用される。それに対して図23によって示す本発明では、干渉計とOBDシステムの両方に対して同じ光源を使用する。両方の機能をもたらすのに単一光源を使用することの明らかなコストの利点、並びに設計の単純性がある。図23に示すように、OBD光路での使用に向けてカンチレバーから戻る何らかの光を反射するために信号光ビーム090の経路内で光学ビーム偏向ビームスプリッタ600が使用される。この光学ビーム偏向ビームスプリッタ600は、光ビームを透過光ビームと反射光ビームとに分割する立方体ビームスプリッタ又は板ビームスプリッタのようないずれかのタイプのビームスプリッタとすることができる。好ましくは、光学ビーム偏向ビームスプリッタ600は、戻り信号光ビーム090上のみのかなりの量の光が反射され、それに対して入射信号光ビーム090上の最小量の光しか反射によって失われないように偏光する性質とすることができる。反射光ビームを光学ビーム偏向光ビーム610と呼ぶ。光学ビーム偏向光ビーム610は、次に、光学ビームジンバル640又は他の回転機構を使用することによって光学ビーム偏向光ビーム610を光学ビーム光検出器630に対して中心化するのに使用することができる光学ビームミラー620から反射される。図示していない別のオプションは、代わりに光学ビーム光検出器630を光学ビーム偏向光ビーム610に対して中心化するために光学ビーム光検出器630に取り付けられた平行移動台を使用することである。光学ビーム偏向光ビーム610を光学ビーム光検出器630に対して中心化することにより、OBD方法の当業者に公知であるように最大感度が得られる。カンチレバーの垂直及び水平の角度偏向の測定を行うために、光学ビーム偏向光ビーム610の屈折力のうちの僅かな分量を光学ビーム偏向ビームスプリッタ600によって反射するだけで十分である。これら2つの測定は、これら3つ全ての測定がカンチレバー上に合焦された単一光ビームから行われるのにも関わらず、同時に発生する干渉計変位測定とは独立している。
【0087】
図23では、光学ビーム偏向ビームスプリッタ600から射出する反射光が光学系内の他の光ビーム反射光と同一面内にあるように示されている。しかし、光損失を回避するために偏光光学ビーム偏向ビームスプリッタ600を利用するには、ビームスプリッタが光を同一面内の代わりに同一面外に反射することを必要とする場合がある。2次元図面によって課せられる制約条件に起因して図23にはこの配置を示していない。
【0088】
上述の光学ビーム偏向ビームスプリッタ600の機能が横方向変位ビームスプリッタ420に統合されて単一光学要素結合アセンブリ、すなわち、サンプラー付き横方向変位ビームスプリッタ635になった本発明の別の実施形態を図24に例示している。横方向変位ビームスプリッタ420は完全反射光学界面424を使用するのに対してサンプラー付き横方向変位ビームスプリッタ635は、光学ビーム偏向測定での使用に向けて図24cに示すように戻り信号光ビーム090からの光の一部をサンプリングするために図24bに示す部分反射界面636を代わりに使用する。部分反射界面636は、光学ビーム偏向ビームスプリッタ600によって実施される機能、すなわち、戻り信号光ビーム090の一部を光学ビーム光検出器630に向けて逸脱させる機能を置換する。干渉計測定に使用される信号光ビーム090が通過する光学界面の個数の低減は、干渉計コントラストを改善する。横方向変位ビームスプリッタ420に関するサンプラー付き横方向変位ビームスプリッタ635内への追加の三角形プリズム637(図24bに示す)の導入は任意的であることに注意されたい。追加のプリズムは、図24に示すように光検出器に向けて光を経路変更するのに有益とすることができ、更に部分反射界面636を保護するのに有益とすることができる。部分反射界面636は、特定の偏光特質を持たないコーティングとすることができる。しかし、好ましい実施形態では、光損失を回避するために入射信号光ビーム090上の全ての光を反射し、同時に図24cに示すように戻り信号光ビーム090上の指定分量の光を透過する偏光コーティングが使用される。光学ビーム偏向光ビーム610と呼ぶ信号光ビーム090の透過部分は、内部反射によってサンプラー付き横方向変位ビームスプリッタ635から経路変更され、直前の実施形態の場合と同じく光学ビームミラー620から光学ビーム光検出器630に向けて反射される。
【0089】
図25は、カンチレバーが、圧電変換器を有するアセンブリのような機械アクチュエータ650に取り付けられた本発明の実施形態を示している。この実施形態は、カンチレバーを顕微鏡対物系110の光軸と平行に又は光軸に対していずれかの角度で移動することを可能にする。この機械アクチュエータ650を用いて、例えば、AFM撮像中にサンプルのトポグラフィを辿ることができる。干渉計の微分性に起因してカンチレバー変位信号は、カンチレバーとカンチレバー支持チップの間の変位差を記録し続ける。この信号は、カンチレバー先端に対して作用されている力に比例するので、AFMユーザに対して当該の信号である。機械アクチュエータ650に関する使用可能運動範囲は、合焦される信号光ビーム090及び基準光ビーム100の焦点深度程度である。この焦点深度は、時として合焦光ビームのレイリー範囲と呼ばれる。この運動範囲よりも大きいと、より高いノイズを招く干渉計コントラストの損失がもたらされる。信号光ビーム090及び基準光ビーム100の焦点深度は、上述の本発明の方法で、機械アクチュエータ650の所要の運動範囲に適合するように調整することができる。
【0090】
カンチレバーを顕微鏡対物系110の焦点面の近くで光軸に沿って移動する機械アクチュエータ650は、光検出器によって測定される信号内にカンチレバーのこの運動とカンチレバーのチップに対するいずれかのカンチレバー変位との間のクロストークによって引き起こされるアーチファクトを導入する場合がある。このクロストークを低減するために、図25に示す裏側焦点面結像レンズ660を導入し、その焦点距離及び場所は、顕微鏡対物系110の裏側焦点面330を光学ビーム光検出器630上に投射するように選択することができる。裏側焦点面結像レンズ660は、光検出器が実質的にカンチレバー偏向信号のみを測定し、一方で測定信号に対する機械アクチュエータ650の運動の効果を最小にすることを保証する。更に、裏側焦点面結像レンズ660は、光学ビーム偏向光ビーム610を光学ビーム光検出器630に対して中心化するのに光学ビームジンバル640によって必要とされる範囲を縮小することができる。
【0091】
レーザに関するスーパールミネセントダイオードの使用は、迷反射の効果を低減してカンチレバー変位の正確な測定を維持するが、それにも関わらず、迷反射が精度を低減し、ノイズを増大させる場合がある。この理由から、光学構成要素を互いにセメントで固めることは、後方反射を招く可能性がある空気-ガラス界面の個数を低減するのに最適とすることができる。図25bに示す直交位相解析器220は、セメントで固められる光学構成要素、すなわち、2つの偏光ビームスプリッタと、非偏光ビームスプリッタと、半波長板と、4分の1波長板とを用いて製造される。セメント設計は、AFMを組み立てて試験する間に光学要素を個々に回転及び/又は傾斜させることによるシステムの光学特質の微調整を阻止する。この理由から、光学干渉計コントラストを保証するには、直交位相解析器220に使用される波長板の慎重な製造及びコーティングでの位相シフトの厳しい仕様が必要である。セメントで固められた直交位相解析器を組み立てる利点は、光学界面の低減だけではなく、光学系が熱ドリフト、機械的衝撃、又は他の形態の破損を受けにくくすることによる直交位相解析器の光学特質のロバスト性を更に含む。最後に、セメント設計の小型性は、計器の製造可能性に役立つ。直交位相解析器220のこの構成は、本発明の配置のいずれにも有利に使用することができる。
【0092】
直交位相解析器220の1つの可能な実施形態では、4分の1波長板270及び半波長板240は、真のゼロ次波長板として製造される。真のゼロ次波長板は、複数の複屈折材料片からの相殺を使用することなく常光線と異常光線の間に1つの波長よりも短い位相差を有する波長板である。真のゼロ次波長板を製造するには、石英のような複屈折材料を数十マイクロメートル厚まで高い精度で研削及び研磨する段階が必要である。この製造段階の追加コストは、直交位相解析器220の性能の改善及び入力光ビームの角度誤差に対する直交位相解析器220の性能の低い感度、並びに設計波長(波長板の)と光源の中心波長の間の差に対する低い感度によって補償される。光ビーム波長に対する感度の低減は、光源の広範なスペクトルが波長板の望ましい挙動を近似しかすることができないことを含意する低コヒーレンス光源では特に重要である。真のゼロ次波長板は、それほど波長に依存しないので、低コヒーレンス光源の最大スペクトル帯域幅にわたって高品質の性能を有する。性能の類似の理由から、信号光ビーム及び基準光ビーム内の4分の1波長板490又は他の4分の1波長板を真のゼロ次型のものにすることが好ましい。
【0093】
これに加えて、光検出器からの後方反射が大きく、反射防止コーティングを用いて低減することが困難である場合がある。これらの後方反射光が光学系に入射することを回避するために、図25bに示すように4つの4分の1波長板670を偏光ビームスプリッタ280及び250と4つの光検出器260、262、264、及び266の各々の間に配置することができる。4分の1波長板の常軸及び特別軸は、光軸の周りにビームスプリッタ軸に対して45°だけ回転させなければならない。この配置では、光検出器から反射された光は、直交位相解析器内で再結合光ビーム200と干渉するのではなく直交位相解析器の未使用ファセットを射出することになる。
【0094】
実験中に基準光ビーム100の光路長と信号光ビーム090の光路長の間のいずれのドリフトも、カンチレバー変位として誤解釈される場合がある。このドリフトは、光学系に使用されるガラスの屈折率の熱依存性、並びにレンズを互いに対して保持する材料の熱膨張によって引き起こされる場合がある。全てのレンズを接続する金属台の温度を安定化し、それによって室温が経時的に変化する場合であっても光学系を一定の温度に保つために温度制御システムを使用することができる。そのようなシステムは、1又は2以上の温度センサと、温度を変更することができる1又は2以上の要素、例えば、抵抗加熱器又はペルチェ熱電冷却器と、空気流れを制御するための任意的なデバイス、例えば、送風機と、温度センサからの信号に応答して温度変更要素を作動させることができるコントローラ、例えば、比例積分微分コントローラとを組み込むことができる。そのような温度制御システムは、当業者に公知である。
【0095】
これまでは、カンチレバーは、顕微鏡対物系110の光軸と垂直に配置されてきた。この配置は、ある一定の状況には最適ではない可能性がある特定のシナリオである。好ましい実施形態では、光ビームは、裏側焦点面330に中心を外れて入射し、それによって顕微鏡対物系110の光軸に対するいずれかの非垂直角度で配置されたカンチレバー及びチップと垂直に合焦されながらこの対物系をその光軸に対するある角度で射出する。そのような配置は、US8370960B2に詳細に説明されており、この場合に、AFMは、約11°の角度を用い、光は、この角度を受け入れるように対物系に軸外で入射する。本特許に提示する全ての実施形態は、そのような幾何学形状を達成するように修正することができる。意図的に傾斜させたカンチレバーを受け入れるのに必要な条件を満足することにより、これまでに引き出した結論は、有効なままに留まる。例えば、この実施形態で定められた0°の設計角度から逸脱するカンチレバーのいずれの傾斜も、11°に対して最適化された実施形態で定められた11°のカンチレバーからのいずれの傾斜逸脱とも類似の効果を有すると見なすことができる。
【0096】
総括すると、原子間力顕微鏡の設計では、AFMカンチレバーのタイプのユーザ選択に関係なく高い精度、低いノイズ、低いドリフト、良好な光学アクセス、及び同等に良好な位置ノイズ性能を達成することが望ましい。これら及び他の理由から、本明細書で「対物レンズ」と呼ぶレンズは、干渉計を構成し、かつそれを信号光ビームと基準光ビームとをAFMカンチレバー上又はその近くに合焦させるように構成することが有利である。対物レンズは、顕微鏡対物レンズ、二重レンズ、結像レンズ、又は当業者に公知の他のタイプのレンズとすることができる。AFMカンチレバーの典型的な幅は3μmと50μmの間であり、カンチレバーの幅は、信号光点の最大サイズを設定し、更に信号光点の最大サイズは、カンチレバーとレンズの間の空間での信号光ビームの最小発散を設定する。更に、AFMカンチレバーの典型的な長さは10μmと500μmの間であり、典型的な顕微鏡対物レンズの視野の直径は4mmよりも小さい。これらの因子は、AFMカンチレバーと対物レンズの間の空間での信号光ビームと基準光ビームとの最大分離を制限する。これらの因子は、遠視野内で信号光ビームと基準光ビームの間の重ね合わせをもくろみ、設計目標を達成するためにこれらのビームを独立に操作することを困難にする。
【0097】
本発明の実施形態は、信号光ビーム090と基準光ビーム100が、レンズ110(「対物レンズ」)を用いてAFMカンチレバー120の近くに合焦され、対物レンズによってAFMカンチレバー120から分離された光学空間(本明細書で「無限遠空間」と呼ぶ光学空間)のいずれの部分に関しても信号光ビームと基準光ビームとが実質的に重ならず、無限遠空間の当該領域内で独立に操作される原子間力顕微鏡での使用に適する微分干渉計を提供する。すなわち、無限遠空間の当該領域内の少なくとも1つの平面内で、この平面との信号光ビームの軸の交点は、基準光ビームの軸とこの平面との交点からこれらのビームの直径の和の半分よりも大きく分離される。この微分干渉計を分離ビーム微分干渉計と呼び、この基本的な革新技術は、下記で議論することになるいくつかの精緻化及び改善を容易にする。
【0098】
分離ビーム微分干渉計では、信号光ビーム090は、一般的に、AFMカンチレバー120の端部又はその近くのカンチレバー上でサンプルと相互作用する場所の近くに合焦されることになる。基準光ビーム100は、カンチレバー120のベースにあるカンチレバー支持チップ130上に又はカンチレバー支持チップに剛的に接続された反射物体上に合焦させることができる。分離ビーム幾何学形状は、対物レンズ110とAFMカンチレバー120の間に望ましくない光学要素を挿入することなく、基準光点の焦点の横断方向位置、発散、及び軸線方向位置を操作するための設計自由度を与える。
【0099】
原子間力顕微鏡では、AFMカンチレバーを用いて探査される着目領域を選択するためにサンプル及びカンチレバーの高分解能高コントラスト光学画像を取得することが有利である。一部の用途では、カンチレバーの曲げの光熱作動のためのレーザによるカンチレバー120の照明、サンプルの光起電応答を測定するためのサンプルの照明、及び/又はサンプルから放出された光の検出のような目的で追加の別個の光路(例えば、経路380及び光学ビーム位置決めユニット370)を導入することも有利である。この目的に対して、0.25よりも大きい開口数を有する顕微鏡対物レンズとの組合せ、球面収差の調節可能な補正を提供する顕微鏡対物レンズとの組合せ、セミアポクロマート補正又はそれよりも良好なレベルの色補正を有する顕微鏡対物レンズとの組合せ、サンプル平面で2μmよりも良好な分解能を与える顕微鏡対物レンズ、チューブレンズ、及びカメラシステム190との組合せ、サンプル平面で250ライン対毎ミリメートルで50%又はそれよりも良好な変調伝達関数を与える顕微鏡対物レンズ、チューブレンズ、及びカメラシステム190との組合せ、動作波長で対物レンズの開口数に対する回折限界の2倍の範囲の分解能を有する顕微鏡対物レンズ、チューブレンズ、及びカメラシステム190との組合せに、カンチレバー及びサンプルに対して固定された又は移動可能な照明スポットを与える1又は2以上の光路、カンチレバーの光熱励起に適するように構成された移動可能時間変調照明スポットを与える光路、サンプル又はカンチレバーからの光の検出に適するように構成された1又は2以上の光路を加えたもののうちの1又は2以上で分離ビーム微分干渉計を使用することが有利である。
【0100】
微分干渉計では、信号光ビーム090を基準光ビーム100から逸脱させ、次に、ターゲット物体及び基準物体からの反射の後にこれらのビームを再結合させる必要がある。本発明の多くの実施では、信号光ビームと基準光ビームとを分割及び再結合するために従来技術に使用される複屈折光学系よりも低いコストであり、容易に利用可能であり、設計に構成することが容易であり、かつ大きい有効開口及び良好な透過波面仕様を与える偏光選択性誘電体コーティングを用いてこれらのビームを分割及び再結合することが有利である。誘電体コーティングのこの使用は、分離ビーム微分干渉計内の無限遠空間でのビームの分離によって初めて可能である。
【0101】
偏光選択性誘電体コーティングを使用する分離ビーム微分干渉計の1つの実施は、基準光ビームを信号光ビームから分割する第1の立方体ビームスプリッタと、信号光ビームが基準光ビームに対して実質的に平行であるように信号光ビームを向け直す第2の立方体ビームスプリッタとを組み込んでいる。別の実施は、内部反射が信号光ビームを基準光ビームと平行に向け直すように配置された45°-45°-90°プリズムで第2の立方体ビームスプリッタを置換する。別の実施は、この経路変更をもたらすためのミラー又は他の反射光学系で第2の立方体ビームスプリッタを置換する。別の実施は、第1の立方体ビームスプリッタの機能と第2の光学系とを組み合わせて本明細書で「横方向変位ビームスプリッタ」420と呼ぶモノリシック複合プリズムにし、この場合に、適切なコーティングを有する複数のプリズム要素が互いに結合され、基準光ビームを信号光ビームから分割してこれら2つのビームを互いに対して実質的に平行に誘導するアセンブリになる。これらの実施のうちのいずれでも、システム内の他の光学要素が、信号光ビーム及び基準光ビームがターゲット物体及び基準物体にそれぞれ正しく合焦するように配置される限り、光学設計の当業者は、基準光ビームを信号光ビームから分割し、次に、信号光ビームを経路変更することを選択することができ、又は代わりに信号光ビームを基準光ビームから分割し、次に、基準光ビームを経路変更することを選択することができる。斬新な分離ビーム微分干渉計でのこれらのビームの分離により、光学系に関する設計目標を達成するためにこれらの構成要素を選択及び配置する自由度が改善される。
【0102】
横方向変位ビームスプリッタ420を使用する分離ビーム微分干渉計は、設計に対する更に別の改善を可能にする。第1に、戻り信号光ビーム090及び戻り基準光ビーム100を光検出器に可能な限り多く伝達することが望ましい。これは、光検出器の最良のノイズ性能、並びに光学源の最良の安定性を与える。上記で議論した横方向変位ビームスプリッタ又は同等の光学配置が分離ビーム微分干渉計と併用される時に、対物レンズと横方向変位ビームスプリッタの間に1又は2以上の波長板を挿入することによって戻り光の実質的に全てを光検出器に伝達することができる。特別軸が45°に回転された単一4分の1波長板490は、信号光ビーム及び基準光ビームがそれを通過するように配置することができる。これに代えて、第1の4分の1波長板を信号光ビームに配置することができ、第2の4分の1波長板を基準光ビームに配置することができる。誘電体コーティングのような光学系の他の組合せを用いて4分の1波長板と類似の効果を生成することができる。
【0103】
別の改善は、信号光ビームと基準光ビームの間に相対位相シフトを導入するように横方向変位ビームスプリッタを作動させることができることである。この作動は、ユーザが位相シフトに対する光検出器の応答を較正し、信号光ビームと基準光ビームの間の位相シフトのより正確な解釈を生成することを可能にするので望ましい。これは、ターゲット物体と基準物体の間の距離のより正確な測定を可能にする。
【0104】
AFMカンチレバーの近くで基準光ビームと信号光ビームの間の望ましい横断分離を生成するために、無限遠空間内で基準光ビーム100と信号光ビーム090の間の対応する角度差を生成するように光学系を位置決めなければならない。従来技術では、この角度差は、これらのビームを互いに対して逸脱させるために320のような複屈折光学系を用いて得られる。本発明の実施形態では、分離ビーム微分干渉計での信号光ビームと基準光ビームの間の分離に起因してこの角度差は、代わりに光学楔プリズム430を信号光ビームではなく基準光ビームの中に導入することによって生成することができる。光学楔プリズムの角度及び屈折率を選択することにより、基準光ビームを信号光ビームに対する望ましい角度だけ逸脱させることができる。これに代えて、光学楔プリズムは、基準光ビームではなく信号光ビームの中にのみ導入することができ、又は異なる角度及び/又は屈折率の楔は、これらの楔要素の組合せ効果が無限遠空間内で信号光ビームと基準光ビームの間に望ましい角度差を生成し、基準光ビーム及び信号光ビームを基準物体及びターゲット物体にそれぞれ正しく誘導することになる限り、信号光ビームと基準光ビームの両方の中に導入することができる。この目的に対して、光学楔プリズムは、複屈折光学系よりも廉価で容易に利用可能であり、この用途に光学楔プリズムを使用する利点は、本発明の実施形態での分離ビームによって初めて実現することができる。
【0105】
分離ビーム微分干渉計内で望ましい角度差を生成するために光学楔プリズムを使用することは、本発明に追加の利点を提供する。例えば、反射光の集光を最大に高めるために又はカンチレバー又は対物レンズの軸線方向移動によって引き起こされる位置合わせ不良を最小にするために、基準光ビームと信号光ビームとがカンチレバーの近くで実質的に平行であるように設計を構成することが望ましい場合がある。カンチレバーの近くで平行ビームを達成するには、信号光ビームと基準光ビームとを対物レンズ110の裏側焦点面330内で交差させるように光学系を配置することが必要である。この交差は、上記で議論した偏角基準を維持しながら達成しなければならない。光学楔プリズムを使用する設計では、この達成は、楔の場所を信号光ビームと基準光ビームの間の横方向変位の大きさとの組合せで選択することによって達成することができる。これに代えて、515及び430のような複数の光学楔プリズムは、裏側焦点面での正しい角度差、並びに交差をもたらすように配置することができる。
【0106】
本発明の実施形態に従って分離ビーム微分干渉計内で1又は2以上の光学楔プリズムを使用することによって更に別の利点が与えられる。これらのビームの分離に起因して光学楔プリズムは、基準光ビーム内にのみ(又はこれに代えて信号光ビーム内にのみ)存在することができる。そのような光学楔プリズムは、これらのビームのうちの一方のみの光学群経路長を変更し、ビームの角度又は場所間の実質的な位置合わせ不良を生成することなくそれを行うように平行移動させることができる。この平行移動は、信号光ビームと基準光ビームの間に調節可能な相対位相を生成する。この調節機能は非常に望ましい。この調節機能に適する1つの用途は、信号光ビームと基準光ビームの間の既知の位相差に対して光検出器応答を較正することである。これは、ターゲット物体と基準物体の間の高さの差のより正確な測定を可能にする。第2の用途は、信号光ビームと基準光ビームの間の位相差の初期値をあらゆる望ましい値に調節することである。光学楔プリズムが小さい楔角を有する場合に、この調節は、通常の光学機械構成要素を用いて波長の小さい比率の範囲のような非常に正確なものにすることができる。光学楔プリズムの平行移動は、電動式送りねじ平行移動台、圧電アクチュエータ、送りねじ台と圧電アクチュエータとの組合せ、又は当業者に公知の他の平行移動手段のようなアクチュエータ440を用いて達成することができる。
【0107】
本発明では、分離ビーム微分干渉計での基準光ビームからの信号光ビームの分離は、一方又は両方のビーム内への400又は460及び470のような光学レンズの導入を可能にすることによって更に別の利点を提供する。これは、光ビームの一部の特質の望ましい制御を可能にする。例えば、分離ビーム微分干渉計の1つの構成は、信号光ビームをAFMカンチレバーの端部(ターゲット物体)に誘導し、基準光ビームをカンチレバー支持チップ(基準物体)に誘導する。最高のコントラストを維持するために、信号光ビームの焦点の軸線方向位置は、ターゲット物体の面上又はその近くになければならず、基準光ビームの焦点の軸線方向位置は、基準物体の面上又はその近くになければならない。しかし、これらの面は、異なる軸線方向位置にある。光学系は、この焦点差を生成するように構成しなければならず、対物レンズとカンチレバーの間に光学構成要素を導入することなくこの構成を行うことが好ましい。分離ビーム微分干渉計内では、ビームの分離に起因してこの焦点差を1又は2以上のレンズは、信号光ビーム及び基準光ビームのうちの一方又は両方の中に全て無限遠空間内で導入することによって達成することができる。例えば、正味の正の屈折力を有する単レンズ又は複合レンズを無限遠空間内で基準光ビームの中に導入し、基準光ビームの焦点を信号光ビームの焦点と比較して軸線方向に対物レンズに向けてシフトさせることができる。これに代えて、正味の負の屈折力を有するレンズを無限遠空間内で信号光ビームの中に導入することによって類似の効果を達成することができる。これに代えて、レンズの組合せがターゲット物体での信号光ビームと基準物体での基準光ビームとの間に望ましい相対合焦変化(以下では「スポット焦点差」)を生成する限り、レンズは、両方の光ビームの中に導入することができる。
【0108】
本発明の実施形態では、レンズを信号光ビームと基準光ビームの中に独立に導入する機能を分離ビーム微分干渉計の作動に関するより一層の利点を提供する特定の手法で使用することができる。そのような干渉計を使用するAFMに対して望ましい特徴は、様々な異なるカンチレバータイプ(シリコンカンチレバーと窒化珪素カンチレバーの両方のような)を用いて機能する機能、及び様々な流体(空気、水、又は油のような)中にあるサンプルを撮像する機能である。様々なカンチレバータイプは、様々な厚みを有する支持チップを有し、支持チップは、カンチレバー支持チップ厚に対する様々な公差範囲を有する。様々な流体は、様々な屈折率値を有し、流体の屈折率は、AFMカンチレバーの近くの信号光ビーム及び基準光ビームの軸線方向焦点位置に影響を及ぼす。これらの因子は、組合せで、作動中にスポット焦点差を調節することができることが有利であることを意味する。この調節性を達成する1つの手法は、無限遠空間内で一方又は両方の光ビームの中に、可変スポット焦点差を生成するように調節することができるレンズの組合せ(530と540等又は580と570のような)を導入することである。これに代えて、各々がスポット焦点差に対する異なる効果を生成する1又は2以上の固定レンズアセンブリを構成し、ユーザが固定レンズアセンブリのうちの1又は2以上を無限遠空間内でビームのうちの1又は2以上の中に導入することができるように、これらの固定レンズアセンブリを1又は2以上の選択手段と組み合わせることができる。好ましくは、選択手段は、ユーザによる追加の位置合わせを必要とすることなく各固定レンズアセンブリを導入するようにこれらのアセンブリの入れ替えを可能にすると考えられる。信号光ビーム、基準光ビーム、又はその両方内への導入に向けてこれらの固定レンズアセンブリのうちの1又は2以上を選択することにより、ユーザは、次に、条件の特定の組合せに対する最良のコントラストを与える望ましいスポット焦点差を選択することができ、例えば、ある日に空気中のシリコンカンチレバーに合わせて最適化し、別の日に水中の窒化珪素カンチレバーに合わせて最適化することができる。
【0109】
特に、交換可能固定レンズアセンブリの場合に、作動条件に対するスポット焦点差の適合では一定範囲の公差が存在することになる。従って、この場合に、AFMカンチレバーの近くで信号光ビーム、基準光ビーム、又はこれら両方のビームの焦点深度を制御する更に別の利点を与えることができる。この制御は、AFMカンチレバーの近くで信号光ビーム及び基準光ビームの発散を制御することによって達成される。この発散は、次に、無限遠空間内で対応するビームの直径を操作することによって制御することができる。本発明の実施形態は、レンズを一方又は両方のビーム内に独立に導入することによってこれらの発散を自由に独立に操作する利点を提供する。この操作は、レンズ又は交換可能固定レンズアセンブリの可変組合せの光学設計をこれらが望ましい正又は負の電力だけでなくAFMカンチレバーの近くで対応する光ビームに対する望ましい焦点深度をもたらすように選択されるビーム直径変化も生成するように調節することによって上述した可変スポット焦点差設計又は選択可能スポット焦点差設計との組合せで行うことができる。
【0110】
従来技術手法とは対照的に、本発明者は、スーパールミネセントダイオード510のような低コヒーレンス光源を用いて干渉計を作動させることがある一定の利点を提供することを見出した。本明細書で考察する本発明の場合に、AFMカンチレバーから光源のコヒーレンス長よりも実質的に遠い場所にある面は、干渉信号に寄与しない。低コヒーレンス光源の使用は、それによって干渉計出力内でそうでなければ他の光学面での部分反射によって引き起こされると考えられる周期的な誤差及びアーチファクトを抑制する。本明細書では、そのような周期的な誤差及びアーチファクトをこれらをもたらす部分反射の厳密な性質とは関係なく「三波混合」と呼ぶ。本発明の分離ビーム微分干渉計を低コヒーレンス光源を用いて作動させるために、信号光ビームの光学群経路長と基準光ビームの光学群経路長は、スーパールミネセントダイオードでは、一般的に、20μmよりも短い光源のコヒーレンス長よりもかなり小さい範囲で適合させる必要がある。本発明の分離ビームは、この適合をもたらすためのいくつかの利点を提供する。1又は2以上の光学楔プリズムは、光ビームのうちの一方又は両方内でターゲット物体及び基準物体上での光ビーム又はその焦点の位置合わせ不良をもたらすことなく光学群経路長間を適合させるように作動させることができる。小さい楔角の場合に、光学群経路長は、通常の光学機械位置決め器を用いて波長の小さい比率内で適合させることができる。更に、信号光ビームの光学群経路長と基準光ビームの光学群経路長の間に大きい不適合がある場合に、これらのビームの光学群経路長間を近似的に適合させるように選択された厚み及び屈折率を有する厚い光学窓520を一方又は他方のビーム内に固定することができる。一方又は両方のビームの中に導入された540及び530のような選択可能レンズアセンブリが存在する場合に、ユーザによって選択可能なレンズアセンブリの全ての組合せの下でこれらのビームの光学群経路長間をほぼ適合させるように選択された厚み及び屈折率を有する厚い窓を組み込むようにこれらのレンズアセンブリを設計することができる。これらの場合の両方では、厚い窓による適合は、残りの光学群経路長差を1又は複数の光学楔プリズムの調節によって排除することができるほど十分に近くなければならない。
【0111】
本発明の一部の実施では、上述のように光学群経路長差を厳密に適合させることは過度に負担になる場合がある。そのような状況では、レーザ光源と比較して三波混合を部分的に抑制するほど十分に短いが、信号光ビームの光学群経路長と基準光ビームの光学群経路長との間の十分に良好な適合を容易にもたらすほど十分に長い中間のコヒーレンス長を有する光源を有することが望ましい場合がある。レーザは過度に長いコヒーレンス長を有し、スーパールミネセントダイオードは過度に短いコヒーレンス長を有するので、この光源は、容易に利用可能ではない場合がある。この場合に、分離ビーム微分干渉計は、スーパールミネセントダイオード光源510を用いて構成され、次に、光源と信号ビーム及び基準ビームを互いに分割する光学系との間に帯域通過フィルタ560を挿入することが有利である。好ましくは、この帯域通過フィルタは、スーパールミネセントダイオード光源の放出スペクトル幅を縮小し、それによってそのコヒーレンス長を望ましい中間値に増大させるように選択される。スーパールミネセントダイオードの中心波長及び帯域通過フィルタの中心波長の製造変動に起因して調節可能な傾斜を組み込む光学機械マウントを有する帯域通過フィルタを設けることを更に望ましいとすることができる。帯域通過フィルタの中心波長は、その傾斜角に依存するので、この可変傾斜は、スーパールミネセントダイオードの放出スペクトルと帯域通過フィルタの透過スペクトルとの間のスペクトル重ね合わせを最大化し、それによって干渉計光検出器での光スループット及びSN比を最大に高めるように調節することができる。これに代えて、中間コヒーレンス長を有するビームを生成するのに、ダイオードレーザをRF変調光源と組み合わせることのような他の手段を使用することができる。
【0112】
本発明の実施形態により、分離ビーム微分干渉計は、カンチレバーの角度に関係なくAFMカンチレバーの変位を測定する。殆どの用途では、この測定は十分であるが、一部の用途では、カンチレバーの垂直方向及び水平方向の角度を測定することが望ましいか又は必要である。分離ビーム微分干渉計では、この角度測定を追加のビーム分割要素600を信号光ビームの中に導入することによって達成することができる。この追加のビーム分割要素は、カンチレバーから戻る光を捕捉し、その一部分(この部分は「角度検出ビーム」である)を中心化手段(例えば、640)によって分割光ダイオード、四象限光ダイオード、又は線形位置感知検出器(「角度光検出器」630)に経路変更する。中心化手段は、角度光検出器上への光の中心化を可能にする平行移動台、傾斜台装着ミラー640、又はいずれかの他の調節可能要素とすることができる。分離ビーム微分干渉計に上述した横方向変位ビームスプリッタ420が設けられる場合に、例えば、信号光ビームを基準光ビームと平行に反射する面を戻り信号光ビームから角度検出ビームを分離することになる部分反射コーティングで置換することにより、追加のビーム分割要素をサンプラー付き横方向変位ビームスプリッタ635のアセンブリ内に組み込むことができる。
【0113】
これに加えて、分離ビーム微分干渉計に戻り光の実質的に全てを光源から離れるように伝達するように構成された1又は2以上の波長板が設けられる場合に、戻り光の実質的に全てが干渉計光検出器又は角度光検出器のいずれかに到達するように、追加のビーム分割要素は、偏光選択性コーティングを有するように設計することができる。このようにして光を伝達することにより、干渉計光検出器260、262、264、266又は角度光検出器630のいずれかの上でのSN比の不要な低下が回避される。
【0114】
原子間力顕微鏡の一部の用途では、走査中にサンプル面を辿るようにAFMカンチレバーをサンプルと垂直に作動させることが有利である。例えば、サンプルは、それを迅速に作動させるには過度に大きいか又は重い場合があり、従って、AFMカンチレバーを作動させることにより、サンプルのより迅速な撮像をもたらすことができる。そのような場合に、本発明の分離ビーム干渉計は、信号光ビーム及び基準光ビームを合焦させるのに使用される対物レンズの軸の20°内にある軸に沿ってカンチレバー支持チップを移動する機械アクチュエータ650上に装着されたAFMカンチレバーと組み合わせることが有利である。
【0115】
本発明の実施形態による分離ビーム微分干渉計、更に他の微分干渉計では、光検出器の応答は、信号光ビームと基準光ビームの間の位相差の関数として較正することが望ましい。光学系の中に電気制御式複屈折液晶デバイス(LCD)450を導入することによってこの較正をもたらすことが有利である。信号光ビームと基準光ビームの間の位相差を変調することができるいくつかのLCD配置が存在する。LCD450は、信号光及び基準光の一方だけに実質的な位相シフトを付与するように差別的に向けられた状態で、ビームスプリッタ光学系420と直交位相解析器220との間で再結合光ビームに配置することができる。これに代えて、LCDは、信号光及び基準光の一方だけに実質的な位相シフトを付与するように差別的に向けられた状態で、光源とビームスプリッタ光学系の間に配置することができる。これに代えて、LCDは、分離ビーム微分干渉計の場合に限って、分離ビーム経路の空間内で信号光ビーム内にのみ又は基準光ビーム内にのみ配置することができる。カンチレバーを測定する前にリサージュを較正するためにLCDを電気的に活性化し、次に、カンチレバーの測定中にLCDの電圧を1Vよりもかなり低く設定することによってLCDを電気的に起動停止することが更に有利である場合がある。この起動停止は、測定値内のノイズ及びドリフトを低減する。
【0116】
本発明は、1又は2以上のビームスプリッタと1又は2以上の波長板(例えば、230、240、250、270、280)とを組み込んだアセンブリとの組合せに配置された複数の光検出器(260、262、264、及び266)を組み込むことができ、この光学要素アセンブリを本明細書では「直交位相解析器」と呼ぶ。分離ビーム微分干渉計内で、直交位相解析器220は、信号光ビームと基準光ビームとの間で実質的に異なる追加位相シフトを各々が有する少なくとも2つの明確に異なる光路内の信号光ビームと基準光ビームとを干渉させる。これらの光学要素をモノリシック光学アセンブリとして与えることが有利であり、各光学要素は、それに隣接する光学要素との直接光学接触状態で結合され、各要素は、正しい向き及び位置合わせで結合される。そのようなモノリシックアセンブリは、結合界面での屈折率の適合に起因して従来技術配置でのガラス-空気界面の反射と比較して弱い反射のみを有する。モノリシックアセンブリは、それによって干渉計の出力内の望ましくない信号及びアーチファクトを低減する。更に、モノリシックアセンブリは、両方共に干渉計の出力内に望ましくないアーチファクトを導入する機械的衝撃と熱誘導とによるビームスプリッタ及び波長板の機械的ドリフトとに対して従来技術よりも高い耐性を有する。望ましくて小さい構成要素寸法を維持しながらこのモノリシックアセンブリを実施するには、特別軸が縁部に対して22.5°の角度にある正方形半波長板240及び特別軸が縁部に対して45°の角度にある正方形4分の1波長板270のような非従来的な光学構成要素設計を必要とする場合がある。モノリシックアセンブリの構成は、結合の後に位置合わせが不可能であるので厳しい仕様公差及び構成要素位置合わせを必要とする場合がある。しかし、これらの公差が満足されると、完成したモノリシックアセンブリは、安定した位置合わせをいつまでも保持し、干渉計の作動に対する利点を提供する。斬新なモノリシック直交位相解析器の用途は、原子間力顕微鏡での使用に適する分離ビーム微分干渉計に限定されない。代わりに、そのようなモノリシックアセンブリは、信号光ビームと基準光ビームの間で実質的に異なる追加位相シフトを各々が有する少なくとも2つの明確に異なる光路内の信号光ビームと基準光ビームとを干渉させ、かつ複数の光検出器を組み込む他のデバイスに用途を見出すことができる。そのような他の用途は、原子間力顕微鏡以外の用途向けの分離ビーム微分干渉計、微分方式から構成されるか否かに関わらない直交干渉計、並びに量子計算及び量子暗号技術での量子状態の測定を含むことができる。
【0117】
より具体的には、本発明の一部の実施形態では、モノリシック直交位相解析器の特に有利な構成は、信号光ビームと基準光ビームを受光し、これら両方を2つの光路の間で分割する非偏光立方体ビームスプリッタ230と、これらの光ビームの間に第1の追加位相シフト(任意的にゼロの)を生成する任意的な第1の波長板240と、第1の追加位相シフトを有する光ビーム間を干渉させて偏光によってこの光を分割し、各偏光光を光検出器に向けて誘導する第1の偏光立方体ビームスプリッタ250と、これらの光ビームの間に第2の追加位相シフトを生成する第2の波長板270と、第2の追加位相シフトを有する光ビーム間で干渉させて偏光によってこの光を分割し、各偏光光を光検出器に向けて誘導する第2の偏光立方体ビームスプリッタ280とを組み合わせる。この配置では、第1の追加位相シフトと第2の追加位相シフトは、実質的に90°に近い、270°に近い、又は90°の別の奇数倍数に近い値だけ異ならなければならない。追加位相シフトのこの組合せを完成させるために当業者が選択することができる多くの波長板構成が存在する。例えば、第1の波長板は、特別軸がアセンブリの平面に対して22.5°傾斜した半波長板とすることができ、第2の波長板は、特別軸がアセンブリの平面に対して45°傾斜した4分の1波長板とすることができる。これに代えて、第1の波長板を排除することができ、第2の波長板は、特別軸がアセンブリの平面に対して45°傾斜した4分の1波長板とすることができ、モノリシック直交位相解析器全体は、アセンブリの平面が信号光ビームの偏光に対して45°になるように配置される。このアセンブリ内では、上述のように望ましくない反射を抑制し、ドリフトを低減し、耐衝撃性構を改善するように構成要素がモノリシックに結合される。モノリシック直交位相解析器のこの特定の実施形態は、上記で詳述したように原子間力顕微鏡以外の分野に用途を見出すことができる。
【0118】
モノリシック直交位相解析器の利点にも関わらず、この直交位相解析器は、光検出器の面からの反射に起因するアーチファクトを依然として被る場合がある。本発明の実施形態では、各光検出器260、262、264、266と直交位相解析器220の対応する面との間に波長板670を追加する更に別の利点が存在する。この波長板は、直交位相解析器内の全てのビームに共通する平面から特別軸が45°回転した4分の1波長板でなければならない。そのような波長板は、各光検出器からの後方反射光の偏光を変更し、反射光を直交位相解析器の未使用面に通過させ、それによって反射光によって引き起こされると考えられるアーチファクトを軽減することになる。これらの波長板は、反射効果を更に軽減し、光検出器に到達する光学的損失を低減するように上述のモノリシック直交位相解析器に結合することができる。
【0119】
本発明では、ターゲット物体及び基準物体以外の光学面からの反射が干渉計の出力内に望ましくない信号及びアーチファクトを引き起こす場合があり、又は光を光源に戻して光出力内に不安定性を引き起こす場合がある。浄化偏光子070のような誘電体偏光立方体ビームスプリッタが、その入射面及び射出面からの反射源である可能性がある。分離ビーム微分干渉計では、菱形プリズムの形態を有する偏光菱形ビームスプリッタ500(「菱形ビームスプリッタ」)で偏光立方体ビームスプリッタを置換することによってこれらの反射効果を抑制することが有利である。偏光菱形ビームスプリッタは、例えば、少なくとも一方がその幅広面上に適切なビームスプリッタコーティングを有する2つの50°-50°-80°三角形プリズムから組み立てることができる。偏光菱形ビームスプリッタが、光学系の通常のビーム経路の外側に反射光を投射するほど十分に形状が立方体から逸脱し、それによって三波混合のようなアーチファクト干渉計効果を防止し、更にそれによって光源に戻る光の量を低減する限り、他の角度を選択することができる。本明細書に説明する本発明では偏光菱形ビームスプリッタ500が浄化偏光子070を置換するが、偏光菱形ビームスプリッタ500と類似の幾何学形状を有する非偏光菱形ビームスプリッタは、例えば、ビームスプリッタ180のような非偏光立方体ビームスプリッタを置換するのに有利と考えられる。より一般的には、内部界面上にいずれかのタイプの光学コーティングを有する菱形ビームスプリッタは、その外部界面からの後方反射の効果を低減する菱形幾何学形状から利益を受けることができる。内部界面上の光学コーティングは、偏光、非偏光、ダイクロイック(すなわち、波長選択性)のもの、又はこれらのあらゆる組合せとすることができる。立方体ビームスプリッタとは異なり、菱形ビームスプリッタは、そのベースが光軸と平行な単純な光学機械マウントを使用することができるが、そのように装着された場合でも、ビームスプリッタコーティング上への光学ビームの入射角をその最適値に維持することができる。そのような菱形ビームスプリッタは、視野(特に暗視野構成にある)を撮像するための又は散乱光を検出するための光学系のような反射による悪影響を受ける他の光学系に有利である場合がある。
【符号の説明】
【0120】
070 浄化偏光子
090 信号光ビーム
100 基準光ビーム
120 顕微鏡カンチレバー
330 裏側焦点面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2023-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子間力顕微鏡(「AFM」)に基づく干渉計であって、
光ビームを放出するための光源(010)と、
前記光ビームを信号光ビーム(090)と基準光ビーム(100)に分割するように配置された分割光学界面(363,423)と、
AFMカンチレバー(120)と、
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームの両方を前記AFMカンチレバーの近くに合焦させるように配置された合焦レンズ構造体(110)と、
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームの間に横方向変位を導入するように配置されたビーム変位器であって、前記横方向変位が、前記ビーム変位器と前記合焦レンズ構造体の間の少なくとも1つの平面内で前記信号光ビームの中心が前記基準光ビームの中心から前記平面上でのそれらのビーム直径の和の半分よりも大きく分離されるようなものである前記ビーム変位器(360)と、
前記AFMカンチレバーの移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器(190)と、
を備えることを特徴とする干渉計。
【請求項2】
前記信号光ビームは、前記AFMカンチレバーの場所であって、サンプルと相互作用する前記AFMカンチレバー上の場所に近い場所に合焦され、前記基準光ビームは、前記AFMカンチレバーのベース、カンチレバー支持チップ(130)上、又は前記カンチレバー支持チップに剛的に接続された反射物体上のうちの1つである別の場所に合焦されることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項3】
前記ビーム変位器は、前記合焦レンズ構造体によって前記AFMカンチレバーから分離された無限遠空間内で前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の横方向変位を生成し、前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の前記横方向変位は、前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのビーム直径の和の半分を超えることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項4】
前記ビーム変位器は、全反射光学界面(424)を備える横方向変位ビームスプリッタ(420)を備え、
前記分割光学界面は、前記横方向変位ビームスプリッタの偏光選択性コーティングを含む部分反射光学界面(423)を備え、
前記全反射光学界面(424)は、前記部分反射光学界面(423)と平行であり、
干渉計が、前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの1又は2以上に挿入され、それによってカンチレバー近傍からの反射の後に入射光ビーム(100)とは異なる経路に沿うように戻り光ビーム(090)を向け直す1又は2以上の4分の1波長板(490)を更に備えることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項5】
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの少なくとも一方に配置された少なくとも1つの光学楔プリズム(430)を更に備えることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項6】
前記光学楔プリズムを移動し、それによって前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長差を変更するアクチュエータ(440)を更に備えることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項7】
各レンズに関して前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのいずれかが前記レンズを通過し、他方の光ビームが前記レンズを通過しないように配置された1又は2以上の光学レンズを更に備えることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項8】
前記1又は2以上の光学レンズは、前記AFMカンチレバーの近くで前記信号光ビーム、前記基準光ビーム、又は前記信号光ビーム及び前記基準光ビームの両方の発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更することを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項9】
前記1又は2以上の光学レンズ(530,540)のうちの少なくとも1つを前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのうちの少なくとも一方の中に挿入して取り出すための機構(550)を更に備えることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項10】
前記信号光ビーム及び基準光ビームのうちの少なくとも一方の中に前記信号光ビームの光学群経路長が前記基準光ビームの光学群経路長に200μm以内で等しいように導入される追加の適合光学要素(520,580)を更に備え、
前記光源は、スーパールミネセントダイオード(510)であることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項11】
前記追加の適合光学要素は、信号光ビーム経路又は基準光ビーム経路のいずれかに置かれた光学楔プリズムを備え、
前記光学楔プリズムが置かれた前記光ビームの伝播の軸に垂直である運動の成分によって前記光学楔プリズムを平行移動させ、それによって両方の光ビーム経路の間の光学群経路長差を低コヒーレンス光源(510)のコヒーレンス長以内に調整するアクチュエータ(440)を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の干渉計。
【請求項12】
前記追加の適合光学要素は、光学群経路長を変更するための特定の厚みを有するかつ前記AFMカンチレバーの近くで光ビームの発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更するための特定の屈折力及び場所を有する交換可能レンズ(570)を備えることを特徴とする請求項10に記載の干渉計。
【請求項13】
前記光ビームのコヒーレンス長を周期的誤差及びアーチファクトを部分的に抑制するのにレーザ光源と比較して十分に短いが前記信号光ビームの光学群経路長と前記基準光ビームの光学群経路長の間の差を超えるのに十分に長い値まで増大させる帯域通過フィルタ(560)を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の干渉計。
【請求項14】
第2の分割光学界面(600,636)と光学ビーム光検出器(630)を更に備え、
前記第2の分割光学界面は、光ビームの一部を分離し、かつそれを前記光学ビーム光検出器に向けて誘導し、前記光学ビーム光検出器は、前記AFMカンチレバーからの前記信号光ビームの反射の角度を測定するように作動することを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【請求項15】
軸に沿ってカンチレバー支持チップを前記軸と前記合焦レンズ構造体の軸の間の角度が20°よりも小さいように平行移動させるアクチュエータ(650)を更に備えることを特徴とする請求項に記載の干渉計。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
本発明では、ターゲット物体及び基準物体以外の光学面からの反射が干渉計の出力内に望ましくない信号及びアーチファクトを引き起こす場合があり、又は光を光源に戻して光出力内に不安定性を引き起こす場合がある。浄化偏光子070のような誘電体偏光立方体ビームスプリッタが、その入射面及び射出面からの反射源である可能性がある。分離ビーム微分干渉計では、菱形プリズムの形態を有する偏光菱形ビームスプリッタ500(「菱形ビームスプリッタ」)で偏光立方体ビームスプリッタを置換することによってこれらの反射効果を抑制することが有利である。偏光菱形ビームスプリッタは、例えば、少なくとも一方がその幅広面上に適切なビームスプリッタコーティングを有する2つの50°-50°-80°三角形プリズムから組み立てることができる。偏光菱形ビームスプリッタが、光学系の通常のビーム経路の外側に反射光を投射するほど十分に形状が立方体から逸脱し、それによって三波混合のようなアーチファクト干渉計効果を防止し、更にそれによって光源に戻る光の量を低減する限り、他の角度を選択することができる。本明細書に説明する本発明では偏光菱形ビームスプリッタ500が浄化偏光子070を置換するが、偏光菱形ビームスプリッタ500と類似の幾何学形状を有する非偏光菱形ビームスプリッタは、例えば、ビームスプリッタ180のような非偏光立方体ビームスプリッタを置換するのに有利と考えられる。より一般的には、内部界面上にいずれかのタイプの光学コーティングを有する菱形ビームスプリッタは、その外部界面からの後方反射の効果を低減する菱形幾何学形状から利益を受けることができる。内部界面上の光学コーティングは、偏光、非偏光、ダイクロイック(すなわち、波長選択性)のもの、又はこれらのあらゆる組合せとすることができる。立方体ビームスプリッタとは異なり、菱形ビームスプリッタは、そのベースが光軸と平行な単純な光学機械マウントを使用することができるが、そのように装着された場合でも、ビームスプリッタコーティング上への光学ビームの入射角をその最適値に維持することができる。そのような菱形ビームスプリッタは、視野(特に暗視野構成にある)を撮像するための又は散乱光を検出するための光学系のような反射による悪影響を受ける他の光学系に有利である場合がある。
本発明のその他の実施態様を以下に記載する。
[実施態様1]
原子間力顕微鏡(「AFM」)に基づく干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビームと基準光ビームに分割するように配置された分割光学界面と、
AFMカンチレバーと、
前記信号及び基準光ビームの両方を前記AFMカンチレバーの近くに合焦させるように配置された合焦レンズ構造体と、
前記信号光ビーム及び基準光ビームの間に横方向変位を導入するように配置されたビーム変位器であって、前記横方向変位が、前記ビーム変位器と前記合焦レンズ構造体の間の少なくとも1つの平面内で前記信号光ビームの中心が前記基準光ビームの中心から前記平面上でのそれらのビーム直径の和の半分よりも大きく分離されるようなものである前記ビーム変位器と、
前記カンチレバーの移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備えることを特徴とする干渉計。
[実施態様2]
前記信号光ビーム及び基準光ビームは、前記分割光学界面で別様に屈折することを特徴とする実施態様1に記載の干渉計。
[実施態様3]
前記分割光学界面は、その少なくとも一方が複屈折のものである2つの材料の間の界面であることを特徴とする実施態様2に記載の干渉計。
[実施態様4]
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの一方は、前記分割光学界面から反射し、他方の光ビームは、前記分割光学界面を通過することを特徴とする実施態様1に記載の干渉計。
[実施態様5]
前記分割光学界面は、偏光選択性誘電体コーティングであることを特徴とする実施態様4に記載の干渉計。
[実施態様6]
前記合焦レンズ構造体は、単レンズであることを特徴とする実施態様1から実施態様5のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様7]
前記合焦レンズ構造体は、顕微鏡対物レンズであることを特徴とする実施態様1から実施態様6のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様8]
前記顕微鏡対物レンズは、0.25よりも大きい開口数を有することを特徴とする実施態様7に記載の干渉計。
[実施態様9]
基準場所が、前記カンチレバー上であり、前記基準光ビーム及び前記信号光ビームの両方は、前記カンチレバー上に合焦されることを特徴とする実施態様1から実施態様8のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様10]
前記信号光ビームは、前記AFMカンチレバーの場所であって、前記サンプルと相互作用する前記カンチレバー上の場所に近い前記場所に合焦され、前記基準光ビームは、前記カンチレバーのベース、カンチレバー支持チップ上、又は前記カンチレバー支持チップに剛的に接続された反射物体上のうちの1つである別の場所に合焦されることを特徴とする実施態様1から実施態様9のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様11]
前記AFMカンチレバーの近くのサンプルの画像をユーザに提供するように作動する追加の光学系、照明光学系、及び画像センサを更に備えることを特徴とする実施態様1から実施態様10のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様12]
前記サンプルの前記画像は、サンプル平面で測定された2μmよりも良好な分解能を有することを特徴とする実施態様11に記載の干渉計。
[実施態様13]
前記サンプルの前記画像は、前記サンプル平面で測定された250ライン対毎ミリメートルの空間周波数で50%又はそれよりも高い変調伝達関数を有することを特徴とする実施態様11又は実施態様12に記載の干渉計。
[実施態様14]
前記AFMカンチレバーの近くで前記サンプル上に第2の光源からの光を導入する追加の光学系を更に備えることを特徴とする実施態様1から実施態様13のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様15]
前記AFMカンチレバーの近くで前記サンプルから放出された光を検出する追加の光学系及び1又は2以上の光検出器とを更に備えることを特徴とする実施態様1から実施態様14のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様16]
第2の光源からの光を前記第2の光源からの前記光が前記AFMカンチレバー上に合焦するように導入するための追加の光学系を更に含み、
前記第2の光源からの前記光は、前記カンチレバーの移動を引き起こす、
ことを特徴とする実施態様1から実施態様15のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様17]
前記ビーム変位器は、前記合焦レンズ構造体によって前記AFMカンチレバーから分離された無限遠空間内で前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の横方向変位を生成し、前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の前記横方向変位は、前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのビーム直径の和の半分を超えることを特徴とする実施態様1から実施態様16のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様18]
前記分割光学界面及び前記ビーム変位器は、光学要素の結合アセンブリの中に組み込まれることを特徴とする実施態様17に記載の干渉計。
[実施態様19]
前記結合アセンブリは、少なくとも一方の光ビームを2回又は少なくとも両方の光ビームを1回反射することによって2つの実質的に平行な光ビームを生成することを特徴とする実施態様18に記載の干渉計。
[実施態様20]
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの1又は2以上に挿入され、それによってカンチレバー近傍からの反射の後に入射光ビームとは異なる経路に沿うように戻り光ビームを向け直す1又は2以上の4分の1波長板を更に備えることを特徴とする実施態様1から実施態様19のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様21]
単一4分の1波長板が、前記信号光ビームと前記基準光ビームの両方に組み込まれることを特徴とする実施態様20に記載の干渉計。
[実施態様22]
第1の4分の1波長板が、前記信号光ビームに組み込まれ、第2の4分の1波長板が、前記基準光ビームに組み込まれることを特徴とする実施態様20に記載の干渉計。
[実施態様23]
前記4分の1波長板は、真のゼロ次の4分の1波長板であることを特徴とする実施態様21に記載の干渉計。
[実施態様24]
両方の4分の1波長板が、真のゼロ次の4分の1波長板であることを特徴とする実施態様22に記載の干渉計。
[実施態様25]
前記結合アセンブリを移動するために活性化されるアクチュエータを前記アクチュエータが前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長差を変更するように更に備えることを特徴とする実施態様18に記載の干渉計。
[実施態様26]
前記結合アセンブリは、少なくとも1つの光学楔プリズムを組み込むことを特徴とする実施態様18に記載の干渉計。
[実施態様27]
前記光学楔プリズムは、前記光ビーム間を前記合焦レンズ構造体の裏側焦点面で交差させる角度及び楔位置を有することを特徴とする実施態様26に記載の干渉計。
[実施態様28]
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの少なくとも一方に配置された少なくとも1つの光学楔プリズムを更に備えることを特徴とする実施態様1から実施態様17のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様29]
前記光学楔プリズムを移動し、それによって前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長差を変更するアクチュエータを更に備えることを特徴とする実施態様28に記載の干渉計。
[実施態様30]
前記アクチュエータは、電気的に作動されることを特徴とする実施態様29に記載の干渉計。
[実施態様31]
前記アクチュエータは、前記信号及び基準光ビーム間の光路長差に対する前記検出器の応答を較正するために前記楔を百万分の1メートル程度の距離だけ作動することを特徴とする実施態様29に記載の干渉計。
[実施態様32]
各レンズに関して前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのいずれかが前記レンズを通過し、他方の光ビームが前記レンズを通過しないように配置された1又は2以上の光学レンズを更に備えることを特徴とする実施態様1から実施態様31のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様33]
前記1又は2以上の光学レンズは、前記AFMカンチレバーの近くで前記信号光ビーム、前記基準光ビーム、又は前記信号及び基準光ビームの両方の発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更することを特徴とする実施態様32に記載の干渉計。
[実施態様34]
前記光学レンズのうちの少なくとも1つを移動し、それによって前記AFMカンチレバーの近くで前記信号光ビーム、前記基準光ビーム、又は前記信号及び基準光ビームの両方の前記発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更するアクチュエータを更に備えることを特徴とする実施態様33に記載の干渉計。
[実施態様35]
前記1又は2以上の光学レンズのうちの少なくとも1つを前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのうちの少なくとも一方の中に挿入する及び取り出すための機構を更に備えることを特徴とする実施態様32に記載の干渉計。
[実施態様36]
前記光源は、低コヒーレンス光源であることを特徴とする実施態様1から実施態様35のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様37]
前記信号光ビーム及び基準光ビームのうちの少なくとも一方の中に前記信号光ビームの前記光学群経路長が前記基準光ビームの前記光学群経路長に200μm以内で等しいように導入される追加の適合光学要素を更に備えることを特徴とする実施態様36に記載の干渉計。
[実施態様38]
前記適合光学要素は、窓の厚み、屈折率、及び分散が、前記信号光ビームの前記光学群経路長が前記基準光ビームの前記光学群経路長に実質的に等しいようなものである光学窓を備えることを特徴とする実施態様37に記載の干渉計。
[実施態様39]
前記低コヒーレンス光源は、スーパールミネセントダイオードであることを特徴とする実施態様37又は実施態様38に記載の干渉計。
[実施態様40]
前記追加の適合光学要素は、信号光ビーム経路又は基準光ビーム経路のいずれかに置かれた光学楔プリズムを備え、
前記光学楔プリズムが置かれた前記光ビームの伝播の軸に垂直である運動の成分によって前記光学楔プリズムを平行移動させ、それによって両方の光ビーム経路の間の光学群経路長差を前記低コヒーレンス光源のコヒーレンス長以内に調整するアクチュエータ、
を更に備えることを特徴とする実施態様37に記載の干渉計。
[実施態様41]
前記光学楔プリズムは、前記光ビームを前記合焦レンズ構造体の裏側焦点面で交差させる角度及び楔位置を有することを特徴とする実施態様40に記載の干渉計。
[実施態様42]
前記追加の適合光学要素は、前記信号光ビーム又は前記基準光ビームのいずれかに置かれた第1の光学楔プリズム及び第2の光学楔プリズムを備え、
前記楔を横断する前記光ビームの平行移動を低減するように前記楔を同時に移動する1又は2以上のアクチュエータ、
を更に備えることを特徴とする実施態様37に記載の干渉計。
[実施態様43]
前記追加の適合光学要素は、前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の光学群経路長差を個別的に変更するための交換可能窓を備えることを特徴とする実施態様37に記載の干渉計。
[実施態様44]
前記追加の適合光学要素は、光学群経路長を変更するための特定の厚みを有するかつ前記AFMカンチレバーの近くで光ビームの発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを変更するための特定の屈折力及び場所を有する交換可能レンズを備えることを特徴とする実施態様37に記載の干渉計。
[実施態様45]
前記追加の適合光学要素は、前記光ビーム間の光学群経路長差を調整するためにかつ前記AFMカンチレバーの近くで前記信号光ビーム、基準光ビーム、又は両方の光ビームの発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかを調整するために挿入可能かつ取り出し可能レンズ及び挿入可能かつ取り出し可能窓を備えることを特徴とする実施態様37に記載の干渉計。
[実施態様46]
交換機構を更に備え、
前記交換機構を作動させることが、前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの少なくとも一方での追加の適合光学要素の配置を変更し、
前記交換機構を作動させることが、光学群経路長と前記AFMカンチレバーの近くでの光ビームの発散、直径、及び軸線方向焦点位置のうちのいずれかとの2又は3以上の望ましい組合せの間で選択する、
ことを特徴とする実施態様45に記載の干渉計。
[実施態様47]
前記光ビームのコヒーレンス長を周期的誤差及びアーチファクトを部分的に抑制するのにレーザ光源と比較して十分に短いが前記信号光ビームの光学群経路長と前記基準光ビームの光学群経路長の間の差を超えるのに十分に長い値まで増大させる帯域通過フィルタを更に備えることを特徴とする実施態様37に記載の干渉計。
[実施態様48]
光スループットを最大にするように帯域通過中心波長を光源中心波長に適合させるために前記帯域通過フィルタを回転させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする実施態様47に記載の干渉計。
[実施態様49]
第2の分割光学界面と光学ビーム光検出器を更に備え、
前記第2の分割光学界面は、光ビームの一部を分離し、かつそれを前記光学ビーム光検出器に向けて誘導し、前記光学ビーム光検出器は、前記AFMカンチレバーからの前記信号光ビームの反射の角度を測定するように作動する、
ことを特徴とする実施態様1に記載の干渉計。
[実施態様50]
前記第2の分割光学界面は、偏光選択性コーティングを備え、
干渉計が、少なくとも1つの4分の1波長板を更に備え、
前記4分の1波長板及び偏光選択性コーティングは、前記AFMカンチレバーからの反射の前の前記信号光ビームが前記第2の分割界面によって分割されないように、かつ前記AFMカンチレバーからの反射の後の前記信号光ビームが、一方の光ビームが前記光学ビーム光検出器に向けて誘導される2つの光ビームに前記第2の分割界面によって分割されるように配置される、
ことを特徴とする実施態様49に記載の干渉計。
[実施態様51]
前記第2の分割光学界面は、光学要素の結合アセンブリの中に組み込まれ、前記光学要素の結合アセンブリはまた、前記第1の分割光学界面及びビーム変位器を組み込むことを特徴とする実施態様49に記載の干渉計。
[実施態様52]
軸に沿ってカンチレバー支持チップを前記軸と前記合焦レンズ構造体の軸の間の角度が20°よりも小さいように平行移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする実施態様1に記載の干渉計。
[実施態様53]
原子間力顕微鏡に基づく干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビームと基準光ビームに分割するように配置された分割光学界面と、
AFMカンチレバーと、
干渉計応答の較正中に前記信号光ビームと前記基準光ビームの間の光路差を変調するように電気的に作動可能であり、かつ前記カンチレバーの移動の測定中に電気的に起動停止される電気制御式複屈折液晶デバイスと、
前記信号光ビーム及び前記基準光ビームを前記AFMカンチレバーの近くで2つの場所上に入射するように案内し、かつ前記場所から反射した光を案内するための光学系と、
使用時に前記場所から反射する前記案内光を受光し、かつ前記カンチレバーの前記移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備えることを特徴とする干渉計。
[実施態様54]
前記液晶デバイスは、前記信号光ビーム及び前記基準光ビームうちの一方にのみ位相シフトを付与するように優先的に向けられることを特徴とする実施態様53に記載の干渉計。
[実施態様55]
前記液晶デバイスは、前記光源と前記分割光学界面の間に位置付けられることを特徴とする実施態様54に記載の干渉計。
[実施態様56]
前記液晶デバイスは、前記信号光ビームにのみ位相シフトを付与することを特徴とする実施態様53に記載の干渉計。
[実施態様57]
前記液晶デバイスは、前記基準光ビームにのみ位相シフトを付与することを特徴とする実施態様53に記載の干渉計。
[実施態様58]
前記信号光ビーム及び基準光ビーム間に横方向変位を導入するビーム変位器を更に備え、
前記横方向変位は、前記液晶デバイスを前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの一方のみの経路に位置決めすることができるように、前記信号光ビーム及び基準光ビームの直径の和の半分よりも大きい、
ことを特徴とする実施態様53から実施態様57のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様59]
前記信号光ビーム及び基準光ビームは、前記AFMカンチレバーからの反射後に再結合光ビームに組み合わされ、
前記液晶デバイスは、前記再結合光ビームの経路に位置決めされ、かつ前記信号光ビーム及び前記基準光ビームのうちの一方のみに位相シフトを付与するように優先的に向けられる、
ことを特徴とする実施態様53から実施態様58に記載の干渉計。
[実施態様60]
干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビームと基準光ビームに分割するための光学スプリッタと、
ターゲット物体及び基準物体上にそれぞれ入射するように前記信号光ビーム及び前記基準光ビームを案内し、かつ前記ターゲット物体及び前記基準物体から反射する光を案内するための光学系と、
前記基準物体に対する前記ターゲット物体の移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備え、
前記検出器は、モノリシック直交位相解析器と少なくとも2つの光検出器とを含む、
ことを特徴とする干渉計。
[実施態様61]
前記モノリシック直交位相解析器は、非偏光立方体ビームスプリッタと、2つの偏光立方体ビームスプリッタと、前記基準光ビームと前記信号光ビームの間の位相を45°だけシフトさせるように向けられた少なくとも1つの波長板とを含むことを特徴とする実施態様60に記載の干渉計。
[実施態様62]
前記検出器と前記直交位相解析器の対応する面との間の4分の1波長板を更に備え、
前記4分の1波長板は、前記直交位相解析器内の全てのビームに共通である平面から45°回転され、それによって前記反射光を前記直交位相解析器の未使用面に通させるその特別軸を有する、
ことを特徴とする実施態様60に記載の干渉計。
[実施態様63]
干渉計が、原子間力顕微鏡に基づく干渉計であり、前記ターゲット物体は、AFMカンチレバーであることを特徴とする実施態様60から実施態様62のいずれか一つに記載の干渉計。
[実施態様64]
干渉計であって、
光ビームを放出するための光源と、
前記光ビームを信号光ビーム及び基準光ビームに分割するための光学スプリッタと、
ターゲット物体及び基準物体上にそれぞれ入射するように前記信号光ビーム及び前記基準光ビームを案内し、かつ前記ターゲット物体及び前記基準物体から反射する光を誘導するための光学系と、
前記基準物体に対する前記ターゲット物体の移動に関する情報を決定するために前記信号光ビーム及び基準光ビーム間の光路長の差を決定するように作動する検出器と、
を備え、
干渉計内の少なくとも1つの光学要素が、89°よりも小さいか又は91°よりも大きい頂角を各々が有する少なくとも2つのガラス二等辺三角形プリズムから組み立てられる、
ことを特徴とする干渉計。
[実施態様65]
前記二等辺三角形プリズムのうちの少なくとも1つが、二等辺三角形の底辺に対応する面上に偏光選択性コーティングを有することを特徴とする実施態様64に記載の干渉計。
[実施態様66]
前記二等辺三角形プリズムのうちの少なくとも1つが、二等辺三角形の底辺に対応する面上に波長選択性コーティングを有することを特徴とする実施態様64に記載の干渉計。
[実施態様67]
前記二等辺三角形プリズムのうちの少なくとも1つが、二等辺三角形の底辺に対応する面上に非偏光ビームスプリッタコーティングを有することを特徴とする実施態様64に記載の干渉計。
[実施態様68]
前記光学要素は、少なくとも一方がその最も広い面上に偏光選択性コーティングを有する2つの50°-50°-80°三角形プリズムから組み立てられることを特徴とする実施態様65に記載の干渉計。
[実施態様69]
干渉計が、原子間力顕微鏡に基づく干渉計であり、前記ターゲット物体は、AFMカンチレバーであることを特徴とする実施態様64から実施態様68のいずれか一つの干渉計。
【国際調査報告】