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特表2023-539197PET放射性トレーサとしての[18F]標識イミダゾピリジン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】PET放射性トレーサとしての[18F]標識イミダゾピリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20230906BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C07D471/04 108A
C07D471/04 CSP
A61K31/437
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P21/02
A61K51/04 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513123
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 IB2021057680
(87)【国際公開番号】W WO2022038572
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/068,476
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520116713
【氏名又は名称】ファースト・バイオセラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】1ST BIOTHERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ファジュン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA03
4C065BB06
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH03
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL07
4C065PP03
4C065PP04
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB39
4C085LL13
4C086AA01
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA94
(57)【要約】
本開示は、ストレスをシグナル伝達する非受容体チロシンキナーゼc-ablをイメージングするのに適した陽電子放射断層撮影(PET)トレーサとしての[18F]標識イミダゾピリジン誘導体又はその塩、並びにインビボ診断、前臨床及び臨床イメージング、c-ablの変異状況に基づく患者の層別化、及び治療的処置への応答を評価することに関する。本開示はさらに、PET放射性トレーサとしての[18F]標識イミダゾピリジン誘導体の使用に関する。本開示はまた、[18F]標識イミダゾピリジン誘導体の放射性合成のための工程を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
が、-Hである場合に、Rは、-CHCH 18F若しくは-OCHCH 18Fであるか、又は
が、-Fである場合に、Rは、-CHCH 18F若しくは-OCHCH 18Fである)で示される化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
式(IIA):
【化2】

(式中、Rは、-H又は-Fである)で示される化合物、又はその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(IIB):
【化3】

(式中、Rは、-H又は-Fである)で示される化合物、又はその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(3-フルオロ-2-(2-(フルオロ-18F)エトキシ)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド;
(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(2-(2-(フルオロ-18F)エトキシ)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド;
(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(2-(2-(フルオロ-18F)エチル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボ
キサミド;及び
(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(3-フルオロ-2-(2-(フルオロ-18F)エチル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド、
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の治療有効量と、医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
【請求項6】
神経変性疾患を処置するための方法であって、
それを必要とする対象に、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項7】
前記神経変性疾患が、α-シヌクレイノパチー、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症(MSA)、アルツハイマー病、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酵素阻害活性を決定する方法であって、
請求項1に記載の化合物を生物学的試料に塗布すること;及び
前記化合物をイメージングして前記酵素阻害活性を決定すること、
を含む、方法。
【請求項9】
前記化合物が、陽電子放射断層撮影(PET)トレーサとして用いられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
PETイメージング方法である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
AD誘導マウスのADモデル又はアルファ-シヌクレインPFF誘導マウスのPDモデルにおいて用いられる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
脳内のc-abl上方制御又は活性化を決定するために用いられる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
c-abl治療又は予測バイオマーカとしての他の疾患修飾剤のためのコンパニオン診断用である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
神経変性疾患の患者のために用いられる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月21日出願の米国特許出願第63/068,476号の優先権を主張するものである。この段落で識別された出願の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は一般に、フッ素-18標識イミダゾピリジン化合物を含む酵素阻害活性をイメージングするための陽電子放射断層撮影(PET)トレーサとしての該化合物、並びに診断及びイメージングのために該化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
陽電子放射断層撮影(PET)は、陽電子を生成する放射性核種により間接的に放出される一対のガンマ線を検出する核イメージングの方法論である。放射性トレーサは、診断ツールとして、そして該当する分子の組織濃度をイメージングするために、PETで用いられる。
【0004】
分子イメージングバイオマーカの開発は、治療薬の開発に密接に関連する。潜在的ターゲットのうち、チロシンキナーゼc-ablは、成長、生存及びストレス応答をはじめとする広範囲の細胞工程に関与する、緊密に調節された非受容体プロテインキナーゼであり(Nat Rev Mol Cell Biol, 2004, 5:33-44)、c-ablは、複数の細胞工程の調節に関与し、神経生成を制御することによる中枢神経系の発達に関連づけられている。より近年になり、様々な実験モデル系からの増加するエビデンスにより、c-ablがアルツハイマー病、パーキンソン病、ニーマン・ピック病C型及びタウオパチーなどの神経変性疾患において活性化されることも明らかとなった(Human Molecular Genetics, 2014, Vol. 23, No.11)。
【0005】
ストレスをシグナル伝達する非受容体チロシンキナーゼc-ablは、チロシンリン酸化を介してParkinを孤発型のパーキンソン病に結びつける。c-ablによるParkinのチロシンリン酸化は、Parkin機能の損失及び孤発性パーキンソン病の疾患進行につながる主要な翻訳後修飾である。c-ablの阻害は、パーキンソン病進行を遮断するための新しい治療機会を提示する(The Journal of Neuroscience, 2011, 31(1):157-163)。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの進行性死亡を特徴とする致命的神経変性疾患である。低分子干渉RNA(siRNA)でのc-ablのノックアウトも、ALSの運動ニューロン変性を動員した(Imamura et al., Sci. Transl. Med. 9, 2017)。多系統萎縮症(MSA)は、稀な急速進行性神経変性疾患であり、いずれの現行処置もない。MSAでは、黒質、線条体、オリーブ橋小脳構造及び脊髄のニューロン及び乏突起膠細胞においてα-シヌクレインの蓄積が存在する(J Neural Trans Vienna Austria 1996. 2016;123(6))。
【0006】
チロシンキナーゼ阻害剤ニロチニブの投与は、トランスジェニック及びレンチウイルス遺伝子導入モデルにおいてc-abl活性を低下させ、α-シヌクレインの自食浄化(autophagic clearance)を好転させる。マウス前頭葉におけるc-ablの活性化は、海馬及び線条体において神経変性を誘導する。それゆえ、リン酸化を介
したc-ablの増加は、パーキンソン病及び他の神経変性疾患で検出されるα-シヌクレインの病理に関連づけられ得る(Hum Mol Genet. 2013 Aug 15)。
【0007】
c-ablは、α-シヌクレイノパチー、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALS、レビー小体型認知症、及びMSAの潜在的な治療ターゲットである。近年の試験で、直接リン酸化を通したアルファ-シヌクレイン凝集の誘導、Parkinの不活性化及び神経炎症の誘導など、パーキンソン病(PD)におけるc-ablの重大な役割が明らかとなった。Y412及びY214リン酸化形態により測定された総c-abl及び活性化c-ablの発現レベルが、様々な動物モデルのPD発病の際に、そしてより重要なこととしてPD患者からの死後全脳又は線条体試料などのヒト標本において、上方制御されることが知られている。
【0008】
しかし、生存するPD患者の黒質又は線条体におけるc-ablレベルが上方制御されるか否かは、依然として探究されていない。PD患者の脳のc-abl発現レベルを検査することにより、PDにおけるc-ablのための病理生理学的役割と、疾患段階及び症状の状況との機能的つながりを理解することが、重大な意味を持つであろう。
【0009】
本発明は、インビトロ及びインビボ画像研究のためのPETトレーサとしてc-ablを標的化するために選択性がある新しいフッ素-18放射性標識化合物を提供する。
【0010】
各非放射性化合物:式IIA及びIIBのc-abl触媒阻害のためのIC50は、0.59nM~10nMの範囲内である。本発明者らは、対応する低温化合物を利用して、PET用の18F放射性トレーサを合成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、c-ablキナーゼ阻害活性を有する化合物、該化合物を含む組成物、及び神経変性疾患を処置するのに有用な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態において、該化合物は、式(I):
【化1】

(式中、R及びRは、以下に定義される通りである)で示される化合物である。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、式(I)で示される化合物又はその医薬的に許容される塩の鏡像異性体、ジアステレオマー又はラセミ体を提供する。
【0014】
さらに別の実施形態において、本開示は、脳の異常、細胞死及び神経傷害を神経イメージングの多様な景観で視覚化するために該化合物を使用する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】HPLC法1を利用した254nmのUVでの実施例1のHPLCクロマトグラムである(RT=9.504分)。
【0016】
図2】HPLC法1を利用した254nmのUVでの前駆体である化合物5のHPLCクロマトグラムである(RT=29.876分)。
【0017】
図3】HPLC法1を利用した254nmのUVでの実施例1のジアステレオマーAのHPLCクロマトグラムである(RT=11.690分)。
【0018】
図4】HPLC法1を利用した254nmのUVでの実施例1のジアステレオマーBのHPLCクロマトグラムである(RT=11.684分)。
【0019】
図5】HPLC法1を利用した、配合された[18F]実施例1のHPLCクロマトグラムである(RT=9.633分)。
【0020】
図6】HPLC法1を利用した254nmのUVでの実施例3のHPLCクロマトグラムである(RT=8.987分)。
【0021】
図7】HPLC法1を利用した254nmのUVでの前駆体である化合物8のHPLCクロマトグラムである(RT=27.502分)。
【0022】
図8】HPLC法1を利用した254nmのUVでの実施例3のジアステレオマーAのHPLCクロマトグラムである(RT=10.988分)。
【0023】
図9】HPLC法1を利用した254nmのUVでの実施例3のジアステレオマーBのHPLCクロマトグラムである(RT=10.993分)。
【0024】
図10】HPLC法1を利用した、配合された[18F]実施例3のHPLCクロマトグラムである(RT=9.199分)。
【0025】
図11】HPLC法2を利用した254nmのUVでの実施例1のHPLCクロマトグラムである(RT=10.710分)。
【0026】
図12】HPLC法2を利用した254nmのUVでの前駆体である化合物5のHPLCクロマトグラムである(RT=12.392分)。
【0027】
図13】HPLC法2を利用した254nmのUVでの実施例1のジアステレオマーAのHPLCクロマトグラムである(RT=11.114分)。
【0028】
図14】HPLC法2を利用した254nmのUVでの実施例1のジアステレオマーBのHPLCクロマトグラムである(RT=11.116分)。
【0029】
図15】HPLC法2を利用した254nmのUVでの実施例3のHPLCクロマトグラムである(RT=10.637分)。
【0030】
図16】HPLC法2を利用した254nmのUVでの前駆体である化合物8のHPLCクロマトグラムである(RT=12.331分)。
【0031】
図17】HPLC法2を利用した254nmのUVでの実施例3のジアステレオマーAのHPLCクロマトグラムである(RT=11.019分)。
【0032】
図18】HPLC法2を利用した254nmのUVでの実施例3のジアステレオマーBのHPLCクロマトグラムである(RT=11.011分)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の記載は、本質的に例示に過ぎず、本開示、適用又は使用を限定するものではない。
【0034】
定義
本明細書で用いられる用語「医薬的に許容される」は、医薬調製物中での使用に適すること、一般にそのような使用に安全と見なされること、そのような使用のために国若しくは州の規制当局により公式に認可されていること、又は米国薬局方若しくは動物での、より特にヒトでの使用のための他の一般に認識された薬局方に列挙されていることを意味する。
【0035】
本明細書で用いられる用語「医薬的に許容される担体」は、希釈剤、アジュバント、賦形剤若しくは担体、又は医薬的に許容でき、本発明の化合物と共に投与される他の原材料をいう。
【0036】
本明細書で用いられる用語「医薬的に許容される塩」は、所望の薬学活性を増強し得る塩をいう。医薬的に許容される塩の例としては、無機又は有機酸で形成された酸付加塩、金属塩及びアミン塩が挙げられる。無機酸で形成された酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸での塩が挙げられる。酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o-(4-ヒドロキシ-ベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ)酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル-酢酸、酢酸tert-ブチル、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシ-ナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸及びムコン酸などの有機酸で形成された酸付加塩。金属塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、及び亜鉛イオンでの塩が挙げられる。アミン塩の例としては、アンモニア、及びカルボン酸での塩を形成するのに充分強い有機窒素性塩基での塩が挙げられる。
【0037】
本明細書で用いられる、本発明の化合物に適用される場合の用語「治療有効量」の意味は、障害若しくは疾患状態の進行、又は障害若しくは疾患の症状の進行を好転させる、緩和する、安定化させる、回復させる、緩徐化する、又は遅延させるのに充分な化合物の量を表すものとする。一実施形態において、本発明の方法は、化合物の併用での投与を提供する。そのような例では、「治療有効量」は、予定される生物学的効果を引き起こすのに充分となる併用での本発明の化合物の量である。
【0038】
本明細書で用いられる用語「処置」又は「処置すること」は、疾患若しくは障害の進行若しくは重症度を好転若しくは回復させること、又はそのような疾患若しくは障害の1つ若しくは複数の症状若しくは副作用を好転若しくは回復させることを意味する。本明細書で用いられる「処置」若しくは「処置すること」はまた、疾患若しくは障害のシステム、状態若しくは状況の進行を阻害又は遮断する、つまり遅らせること、停止させること、抑制すること、妨害すること、又は阻害することを意味する。本発明の目的では、「処置」又は「処置すること」はさらに、有益な、又は所望の臨床結果を得るためのアプローチを意味し、ここで「有益な、又は所望の臨床結果」は、部分的又は全体のどちらかにかかわ
らず、症状の軽減、障害又は疾患の程度の減少、安定化した(即ち、増悪していない)疾患又は障害状況、疾患又は障害状況の遅延又は緩徐化、疾患又は障害状況の好転又は緩和、及び疾患又は障害の寛解を包含するが、これらに限定されない。
【0039】
別の実施形態において、式(I)で示される化合物は、プロテインキナーゼc-ablの活性を調整するために用いられる。
【0040】
本明細書で用いられる用語「調整すること」又は「調整」は、プロテインキナーゼの触媒活性の改変をいう。特に調整することは、プロテインキナーゼが暴露される化合物若しくは塩の濃度に応じたプロテインキナーゼの触媒活性の活性化若しくは阻害、又はより好ましくはプロテインキナーゼの触媒活性の阻害をいう。本明細書で用いられる用語「触媒活性」は、プロテインキナーゼの直接的又は間接的な影響の下でのチロシン、セリン、又はトレオニンのリン酸化の割合をいう。
【0041】
キナーゼ活性の薬理学的阻害剤が類別される3種の主な分類は、(1)ATP結合部位でATPと直接拮抗するI型又は「DFG-in」ATP拮抗阻害剤(即ち、二重SRrcABL阻害剤ダサチニブ)、(2)ATP結合部位に結合することに加え、キナーゼが不活性化構成にある(即ち、活性化ループが、基質結合を遮断する立体配座で配列されている)場合のみアクセス可能な隣接する疎水性結合部位にもエンゲージするII型又は「DFG-out」ATP拮抗阻害剤(即ち、イマチニブ、ニロチニブ)、及び(3)キナーゼの活性に影響を及ぼすATP結合部位の外側の部位に結合する非ATP拮抗阻害剤(即ち、GNF-2)、である。
【0042】
本明細書で用いられる語句「この/本開示の化合物」は、式(I)で示される任意の化合物(複数可)及びそのクラスレート、水和物、溶媒和物、又は多形を包含する。そして、用語「本開示の化合物」が、医薬的に許容される塩に言及していないとしても、その用語は、その塩を包含する。一実施形態において、本開示の化合物は、立体化学的に純粋な化合物、例えば他の立体異性体を実質的に含まない(例えば、85%eeを超える、90%eeを超える、95%eeを超える、97%eeを超える、又は99%eeを超える)それらのものを包含する。即ち、本開示による式(I)で示される化合物又はその塩が、互変異性体及び/又は立体異性体(例えば、幾何異性体及び立体配座異性体)であるなら、そのような単離された異性体及びそれらの混合物もまた、本開示の範囲に含まれる。本開示の化合物又はその塩が、構造内に不斉炭素を有するなら、それらの活性光学異性体及びそれらのラセミ混合物もまた、本開示の範囲に含まれる。
【0043】
本明細書で用いられる用語「多形」は、本開示の化合物又はその複合体の固形結晶形態をいう。同じ化合物の異なる多形は、異なる物理的、化学的及び/又は分光学的特性を呈し得る。異なる物理的特性としては、安定性(例えば、熱又は光に対して)、圧縮性及び密度(配合及び製品製造において重要)、並びに溶解率(生物学的利用度に影響を及ぼし得る)が挙げられるが、これらに限定されない。安定性の差は、化学反応性(例えば、投与剤形が1つの多形で構成された場合に別の多形で構成された場合より急速に変色するような識別される酸化)、又は機械的特徴(例えば、動力学的に好適な多形は熱力学的により安定した多形に変換するため、錠剤は貯蔵時に崩壊する)、又はその両方(例えば、1つの多形の錠剤は、高湿度では破砕をより受け易い)の変化から生じ得る。多形の異なる物理的特性は、それらの処理に影響を及ぼし得る。例えば1つの多形は、例えばその粒子の形状又はサイズ分布により、別の多形より、溶媒和物を形成する可能性が高くなり得るか、又は不純物を含まずに濾過若しくは洗浄することが困難になり得る。
【0044】
本明細書で用いられる用語「溶媒和物」は、非共有結合の分子間力により結合された溶媒の理論量又は非理論量をさらに含む本開示による化合物又はその塩を意味する。好まし
い溶媒は、揮発性及び非毒性であり、並びに/又は微量でのヒトへの投与に許容され得る。
【0045】
本明細書で用いられる用語「水和物」は、非共有結合の分子間力により結合された水の理論量又は非理論量をさらに含む本開示による化合物又はその塩を意味する。
【0046】
本明細書で用いられる用語「クラスレート」は、内部に捕捉されたゲスト分子(例えば、溶媒又は水)を有する空間(例えば、チャネル)を含有する結晶格子の形態の化合物又は塩を意味する。
【0047】
本開示の化合物
本開示は、式(I):
【化2】
【0048】
(式中、Rが、-Hである場合に、Rは、-CHCH 18F若しくは-OCHCH 18Fであるか、又はRが、-Fである場合に、Rは、-CHCH 18F若しくは-OCHCH 18Fである)による化合物、又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0049】
一実施形態において、式(I)で示される化合物は、式(IIA):
【化3】
【0050】
(式中、Rは、-H又は-Fである)による化合物及びその医薬的に許容される塩から選択される。
【0051】
一実施形態において、式(I)で示される化合物は、式(IIB):
【化4】
【0052】
(式中、Rは、-H又は-Fである)による化合物及びその医薬的に許容される塩から選択される。
【0053】
さらに別の実施形態において、式(I)で示される化合物又はその医薬的に許容される
塩の治療有効量と、医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供される。
【0054】
別の実施形態において、神経変性疾患又は障害を処置するための方法が提供され、該方法は、それを必要とする対象に、式(I)で示される化合物又はその医薬的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む。即ち、式(I)で示される化合物又はその医薬的に許容される塩の医薬使用が提供され、ここで式(I)又はその医薬的に許容される塩は、活性剤として用いられる。幾つかの実施形態において、該神経変性疾患は、α-シヌクレイノパチー、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症(MSA)、アルツハイマー病、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群から選択される。
【0055】
一実施形態において、本開示は、フッ素-18標識イミダゾピリジン化合物を含む酵素阻害活性をイメージングするための陽電子放射断層撮影(PET)トレーサとしての該化合物、並びに診断及びイメージングのために該化合物を使用する方法に関する。一実施形態において、神経変性疾患を処置するための方法が提供され、該方法は、それを必要とする対象に、上記化合物又はその医薬的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む。
【0056】
別の実施形態において、酵素阻害活性を決定する方法が提供され、該方法は、上記化合物を生物学的試料に塗布すること、及び該化合物をイメージングして該酵素阻害活性を決定すること、を含む。様々な実施形態において、該化合物は、陽電子放射断層撮影(PET)トレーサとして用いられる。該方法は、PETイメージング方法であり得る。同じく該方法は、AD誘導マウスのADモデル又はアルファ-シヌクレインPFF誘導マウスのPDモデルにおいて用いられ得る。該方法は、脳内のc-abl上方制御又は活性化を決定するために用いられ得る。幾つかの実施形態において、該方法は、c-abl治療又は予測バイオマーカとしての他の疾患修飾剤のためのコンパニオン診断用である。該方法は、神経変性疾患の患者のために用いられ得る。
【実施例
【0057】
本明細書の以後において、本開示は、当業者による本開示の理解を支援するために実施例を用いてかなり詳細に記載されている。しかし、以下の実施例は、例示として提示されており、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、又は本質的利点の全てを犠牲にすることなく、様々な変更が施され得ることは、明白である
【0058】
式(IIA)化合物の合成
【0059】
本開示の例示的化合物が、スキーム1に記載される。
【化5】
【0060】
実施例1.(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(3-フルオロ-2-(2-(フルオロ-18F)エトキシ)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0061】
ステップ1) 2-(2-ブロモ-6-フルオロフェノキシ)エタン-1-オール
【0062】
MeCN(50mL)中の化合物1(5g、26.18mmol、1当量)、2-ブロモエタノール(6.54g、52.36mmol、3.72mL、2当量)の溶液に、KCO(7.60g、54.97mmol、2.1当量)が添加された。混合物が、80℃で12時間撹拌された。反応混合物が濾過され、減圧濃縮されて、残渣を与えた。残渣がシリカゲルクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル:酢酸エチル=1:0-10:1)により精製された。化合物2(6.0g、25.53mmol、収率97.51%)が、黄色油状物として得られた。
【0063】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.46 (td, J
= 1.5, 8.1 Hz, 1H), 7.33 (ddd, J = 1.4,
8.4, 11.0 Hz, 1H), 7.10 (dt, J = 5.5, 8.3 Hz, 1H), 4.83 - 4.60 (m, 2H), 4.39 - 4.24 (m, 2H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 236.05 (M+H)+。
【0064】
ステップ2) (1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(3-フルオロ-2-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0065】
ジオキサン(0.4mL)及びHO(0.1mL)中の化合物2(1g、4.25mmol、1当量)及び化合物3(1.76g、5.11mmol、1.2当量)の溶液に、N雰囲気下でNaCO(901.84mg、8.51mmol、2当量)及びPd(dppf)Cl(155.65mg、212.72μmol、0.05当量)が添加された。混合物が、N雰囲気下、80℃で12時間撹拌された。反応混合物が水200mLで希釈され、酢酸エチル(200mL×2)で抽出された。ひとまとめにされた有機層がブライン100mLで洗浄され、NaSOで脱水され、濾過されて減圧濃縮され、残渣を与えた。残渣が、シリカゲルクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル:酢酸エチル=1:0-0:1)により精製された。化合物4(770mg、2.06mmol、収率48.48%)が、黄色固体として得られた。
【0066】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.03 (s, 1H), 8.83 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.51 - 7.41 (m, 2H), 7.35 - 7.26 (m, 2H), 7.25 -
7.16 (m, 1H), 5.06 - 4.84 (m, 1H), 4.82
- 4.73 (m, 1H), 3.93 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.55 (q, J = 4.4 Hz, 2H), 2.21 - 2.08
(m, 1H), 1.74 - 1.58 (m, 1H), 1.21 - 1.07 (m, 1H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 374.35 (M+H)+。
【0067】
ステップ3) 2-(2-フルオロ-6-(2-((1S,2S)-2-フルオロシクロプロパン-1-カルボキサミド)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル)フェノキシ)エチル 4-メチルベンゼンスルホナート
【0068】
THF(20mL)中の化合物4(690mg、1.85mmol、1当量)の溶液に、TEA(467.52mg、4.62mmol、643.09μL、2.5当量)、DMAP(22.58mg、184.81μmol、0.1当量)及びTsCl(704.68mg、3.70mmol、2当量)が添加された。混合物が、N雰囲気下、25℃で12時間撹拌された。反応混合物が減圧濃縮され、水200mLで希釈され、酢酸エチル(200mL×2)で抽出された。ひとまとめにされた有機層が、ブライン100mLで洗浄され、NaSOで脱水され、濾過されて減圧濃縮され、残渣を与えた。残渣が、シリカゲルクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル:酢酸エチル=1:0-85:15)により精製された。化合物5(470mg、890.93μmol、収率48.21%)が、黄色固体として得られた。
【0069】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.06 (s, 1H), 8.65 (d, J = 0.6 Hz, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.59 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.43 - 7.38 (m, 1H), 7.36 - 7.28 (m, 4H), 7.28 - 7.19 (m, 2H), 5.06 - 4.82 (m, 1H), 4.16 -
4.05 (m, 4H), 2.37 (s, 3H), 2.21 - 2.12
(m, 1H), 1.74 - 1.62 (m, 1H), 1.22 - 1.13 (m, 1H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 528.54 (M+H)+。
【0070】
ステップ4) (1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(3-フルオロ-2-(2-(フルオロ-18F)エトキシ)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0071】
18F]フッ化物が、[18O]HOリキッドターゲット(liquid target)を利用したIBA Cyclone(登録商標)18/9サイクロトロン中での18O(p,n)18F核反応により生成された。照射の後、ターゲットの水が、Chromafix 45mg PS-HCO18F分離カートリッジに通された。捕捉された[18F]フッ化物が、水性KSO溶液(500μL、0.1M)で溶出されて、DMF(850μL)を含有するバイアルに入れられた。DMF中のN,N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリン(150μL、0.1M)の溶液が添加され、温度が40℃に設定された。形成された[18F]トリフリルフルオリドが、ドライングカラム(P)で蒸留されてDCB(850μL)及びK222/KCO溶液(100μL MeCN中の12μmol K222及び12μmol KCO)を含有
するバイアル中に入れられ、遊離[18F]フッ化物を得た。蒸留物を受け取ったバイアルは、蒸留の間に-5℃に冷却されて、[18F]トリフリルフルオリドを効率的に捕捉した。蒸留は、およそ5分後に終了した。その後、DCB(50μL)中の前駆体の化合物5(0.5mg)が添加された。混合物が120℃で10分間加熱され、その後、冷却された後にペンタン(1.5ml)で希釈された。希釈された混合物がシリカカートリッジ(Sep-Pak Silica Light Cartridge、Waters)ですすがれて、DCBを除去し、未反応の[18F]Fを捕捉した。生成物がMeCN(1ml)で溶出され、水(1ml)で希釈された後、0.1%TFAを含む水中でのイソクラティック40%MeCNを用いたAltima C18 5μmカラムでの流速4ml/分で30分のセミ分取HPLCにより精製された。これらの条件により、[18F]実施例1が、3.4%±1.0%(n=3)のRCY(d.c.)及び99±35GBq/μmol(n=3)のAで単離された。実施例1の単離画分が水(50ml)で希釈され、生成物がtC18カートリッジ(Sep-Pak tC18 Plus Short Cartridge、Waters)に捕捉された。EtOHが真空下、80℃で10分間のHe(15ml/分)流れにより除去された。残渣が冷却された後、動物試験のために適当な容量のEtOH/生理食塩水に再配合された。放射性標識、精製、単離及び再配合を含む合計合成時間は、59~65分であった。
【0072】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.04 (s, 1H), 8.73 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.53 - 7.20 (m, 5H), 5.13 - 4.77 (m, 1H), 4.60 -
4.44 (m, 2H), 4.20 - 4.07 (m, 2H), 2.21
- 2.10 (m, 1H), 1.75 - 1.57 (m, 1H), 1.16 (tdd, J = 6.0, 9.1, 12.2 Hz, 1H)。; LCMS (エレクトロスプレー) m/z 375.35 (M+H)+。
【0073】
実施例2. (1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(2-(2-(フルオロ-18F)エトキシ)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0074】
合成方法は、実施例1と同様である。
【化6】
【0075】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.02 (s, 1H), 8.67 (t, J = 1.4 Hz, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.44-7.35 (m, 4H), 7.16 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.10-7.06 (m, 1H), 5.01-4.82 (m, 1H), 4.72 (dt, J = 47.8, 3.8 Hz, 2H), 4.29 (dt, J = 29.7, 3.8 Hz, 2H), 2.15-2.12 (m, 1H), 1.68-1.62 (m, 1H), 1.18-1.13
(m, 1H)。;LCMS (エレクトロスプレー) m/z 357.36 (M+H)+。
【0076】
式(IIB)化合物の合成
【0077】
本開示の例示的化合物が、スキーム2に記載される。
【化7】
【0078】
実施例3. (1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(2-(2-(フルオロ-18F)エチル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0079】
ステップ1) (1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(2-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0080】
ジオキサン(4mL)及びHO(16mL)中の化合物6(2.54g、7.36mmol、1当量)及び化合物3(1.48g、7.36mmol、1当量)の溶液に、N雰囲気下でNaCO(1.56g、14.7mmol、2当量)及びPd(dppf)Cl(538mg、0.74mmol、0.1当量)が添加された。混合物がN雰囲気下、80℃で12時間撹拌された。反応混合物が濾過され、水(20mL)で希釈され、その後、酢酸エチル(40mL×3)で抽出されて、ひとまとめにされた有機層がNaSOで脱水され、濾過されて減圧濃縮され、残渣を与えた。残渣がシリカゲルクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル:酢酸エチル=1:4)により精製されて、化合物7(990mg、2.92mmol、収率39.6%)を褐色固体として与えた。
【0081】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.02 (s, 1H), 8.53 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.46 (d,
J = 9.17 Hz,1H), 7.39 - 7.33 (m, 2H), 7.31 - 7.24 (m, 2H), 7.21 - 7.19 (m, 2H),
5.01 - 4.93 (m, 1H), 4.61 (t, J = 5.3 Hz,1H), 3.52 - 3.47 (m, 2H), 2.74 (t, J =
7.27 Hz,2H), 2.17 - 2.13 (m, 1H), 1.70 - 1.62 (m, 1H), 1.19 - 1.13 (m, 1H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 340.10 (M+H)+。
【0082】
ステップ2) 2-(2-((1S,2S)-2-フルオロシクロプロパン-1-カル
ボキサミド)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル)フェネチル4-メチルベンゼンスルホナート
【0083】
DCM(80mL)中の化合物7(940.00mg、2.77mmol、1当量)の混合物に、TsCl(3.17g、16.62mmol、6当量)及びTEA(1.96g、19.39mmol、2.70mL、7当量)及びDMAP(101.52mg、830.97μmol、0.3当量)がNの下、0℃で一度に添加され、その後、混合物が0℃で10分間撹拌され、その後、20℃に加熱されて、4時間撹拌された。反応混合物が0℃のHO 20mLの添加によりクエンチされ、その後、NaHCO(40mL×2)で洗浄された。有機層が飽和NaCl溶液 40mLで洗浄され、NaSOで脱水され、濾過されて減圧濃縮され、残渣を与えた。残渣が、カラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=4/1-1/3)により精製された。化合物8(860mg、1.74mmol、収率62.91%)が、白色固体として得られた。
【0084】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.08 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.53 (d,
J = 8.3 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 9.2Hz, 1H), 7.34 - 7.32 (m, 3H), 7.27 - 7.24 (m, 3H), 7.04 (dd, J = 1.5, 9.2 Hz, 1H), 5.03 - 4.85 (m, 1H), 4.09 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.91 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.37 (s, 3H), 2.19 - 2.16 (m, 1H), 1.72 - 1.65 (m,
1H), 1.20 - 1.15 (m, 1H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 494.10 (M+H)+。
【0085】
ステップ3) (1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(2-(2-(フルオロ-18F)エチル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0086】
18F]フッ化物が、[18O]HOリキッドターゲットを利用したIBA Cyclone(登録商標)18/9サイクロトロン中での18O(p,n)18F核反応により生成された。照射の後、ターゲットの水が、Chromafix 45mg PS-HCO18F分離カートリッジに通された。捕捉された[18F]フッ化物が、水性KSO溶液(500μL、0.1M)で溶出されて、DMF(850μL)を含有するバイアルに入れられた。DMF中のN,N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリン(150μL、0.1M)の溶液が添加され、温度が40℃に設定された。形成された[18F]トリフリルフルオリドが、ドライングカラム(P)で蒸留されてMeCN(900μL)及びK222/KCO溶液(100μL MeCN中の12μmol K222及び12μmol KCO)を含有するバイアル中に入れられ、遊離[18F]フッ化物を得た。蒸留物を受け取ったバイアルは、20℃の温度を有した。蒸留は、およそ5分後に終了した。その後、MeCN(100μL)中の前駆体の化合物8(1mg)が添加された。混合物が80℃で10分間加熱され、その後、冷却された後に水(1mL)が希釈のために添加され、その後、精製された。希釈された混合物が、20mM NHOAc(pH4)中の45%MeCNを用いたLuna C18 5μmでのセミ分取HPLCにより精製された。これらの条件により、[18F]実施例3が、6.7%±3.5%(n=4)のRCY(d.c.)及び132±60GBq/μmol(n=4)のAで単離された。単離画分が水(60ml)で希釈され、生成物がtC18カートリッジ(Sep-Pak tC18 Plus Short Cartridge、Waters)に捕捉された。カートリッジが水(25mL)で洗浄され、[18F]実施例3がEtOH(1mL)で溶出された。EtOHが真空下、80℃で10分間の
He(15ml/分)流れにより除去された。残渣が冷却された後、動物試験のために適当な容量のEtOH/生理食塩水に再配合された。放射性標識、精製、単離及び再配合を含む合計合成時間は、62~68分であった。
【0087】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.03 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.49 - 7.42 (m, 2H), 7.39 (dt, J = 1.7, 7.3 Hz, 1H), 7.36 - 7.28 (m, 2H), 7.19 (dd, J = 1.7, 9.1 Hz, 1H), 5.04 - 4.80 (m, 1H), 4.63 - 4.46 (m, 2H), 3.06 - 2.91 (m, 2H),
2.21 - 2.08 (m, 1H), 1.74 - 1.59 (m, 1H), 1.16 (tdd, J = 6.2, 9.2, 12.3 Hz, 1H)。;LCMS (エレクトロスプレー) m/z 341.10 (M+H)+。
【0088】
実施例4. (1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(3-フルオロ-2-(2-(フルオロ-18F)エチル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
【0089】
合成方法は、実施例3と同様である。
【化8】
【0090】
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.05 (s, 1H), 8.56 (s, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.48 (t,
J = 9.1 Hz, 1H), 7.43-7.24 (m, 2H), 7.22-7.14 (m, 2H), 5.03-4.82 (m, 1H), 4.50 (dt, J = 46.9, 6.5 Hz, 2H), 3.02 (dt, J = 22.0, 6.3 Hz, 2H), 2.18-2.11 (m, 1H), 1.71-1.60 (m, 1H), 1.20-1.12 (m, 1H)。;LCMS (エレクトロスプレー) m/z 359.35 (M+H)+。
【0091】
分析HPLCクロマトグラム
2種の分析HPLC法、つまりイソクラティックの1種(HPLC法1)と勾配の1種(HPLC法2)が、確立された。HPLC法1は、トレーサ例のAを決定するために用いられた。表1は、HPLC法1の条件、並びに実施例1、実施例3及び異性体の滞留時間である。HPLCクロマトグラム(UV及び放射能検出)は、図1~10に示された。
【0092】
【表1】
【0093】
表2は、HPLC法2の条件、並びに実施例1、実施例3及び異性体の滞留時間である。HPLCクロマトグラム(UV及び放射能検出)は、図11~18に示された。
【0094】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】