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特表2023-539224剥離コーティングを提供するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】剥離コーティングを提供するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230906BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230906BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230906BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230906BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20230906BHJP
   C09D 131/04 20060101ALI20230906BHJP
   C08J 7/043 20200101ALI20230906BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
C09D133/00
C09D5/02
C09J7/40
C09D131/04
C08J7/043 Z CER
C08J7/043 CEZ
B32B27/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513224
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 US2021047412
(87)【国際公開番号】W WO2022046816
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/069,453
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564010
【氏名又は名称】オムノバ ソリューションズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョール イー.ゴールドスタイン
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB37
4F006AB64
4F006AB65
4F006BA11
4F100AK01A
4F100AK22A
4F100AK22J
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK25J
4F100AK42B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00C
4F100CC01A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100JA07A
4F100JK06
4F100YY00A
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004DA02
4J004DA05
4J038CF021
4J038CG141
4J038CH151
4J038GA09
4J038JC13
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA10
4J038PA19
4J038PB14
4J038PC08
(57)【要約】
接着テープ基材に剥離性を付与するために使用することのできる水性組成物を、同じ又は類似の剥離ポリマーを含む以前に入手可能であった組成物において必要とされた塗工量よりもはるかに少ない塗工量で適用することができる。少量のスーパーウェッターを含めることで、改善された塗工性と、接着テープをそのロールから剥離する過程の間に発せられる音の量の減少とがもたらされる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に剥離コーティングを提供するための方法であって、前記方法は、少なくとも1種の剥離ポリマーと、前記組成物に対してゼロ質量%超~2質量%の少なくとも1種のスーパーウェッターとを含む水性組成物を基材に適用することを含み、ただし、前記組成物はシリコーン系剥離ポリマーを含まないことを条件とする、方法。
【請求項2】
前記組成物が、14質量パーセント以下の総固形分含量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記総固形分含量が、12質量パーセント以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記総固形分含量が、10質量パーセント以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記総固形分含量が、8質量パーセント以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の剥離ポリマーが、少なくとも50モルパーセントのアクリレートマーを有するポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の剥離ポリマーが、少なくとも50モルパーセントのアクリレートマーを有するポリマーである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アクリレートマーの少なくとも一部が、少なくとも2つの(チオ)カルボニル基と複数のさらなるヘテロ原子とを含むペンダント基を含む、請求項6~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の剥離ポリマーが、少なくとも50モルパーセントの酢酸ビニルマーを有するポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の剥離ポリマーが、少なくとも50モルパーセントの酢酸ビニルマーを有するポリマーである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の剥離ポリマーの各ポリマーが、125±25kg/molの質量平均分子量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、前記組成物に対して少なくとも0.25質量パーセントの少なくとも1種のスーパーウェッターを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記組成物が、前記組成物に対して0.1~1.5質量パーセントの少なくとも1種のスーパーウェッターを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、前記組成物に対して0.75~1.25質量パーセントの少なくとも1種のスーパーウェッターを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種のスーパーウェッターの各々が、シロキサン基もF原子を含まない、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種のスーパーウェッターがスルホスクシネートを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1種のスーパーウェッターがスルホスクシネートである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スルホスクシネートがジオクチルスルホスクシネートである、請求項16~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法により提供される剥離コーティング。
【請求項20】
請求項19に記載の剥離コーティングを有する基材を含む物品。
【請求項21】
さらに、接着剤の層を含む、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
それにより被覆された基材に剥離性を付与するのに有用な水性組成物であって、前記組成物は、14質量%以下の総固形分含量を有し、かつ、以下を含む、水性組成物:
a)シリコーン系剥離ポリマーを含まず、かつ、少なくとも1種の剥離ポリマーを含む剥離ポリマー成分であって、前記少なくとも1種の剥離ポリマーは、少なくとも50モル%のアクリレート又は酢酸ビニルマーを含み、かつ、125±75kg/モルの質量平均分子量を有する、剥離ポリマー成分、及び
b)前記組成物に対して0.1~1.5質量%の少なくとも1種のスルホスクシネート。
【請求項23】
シリコーン系剥離ポリマーを含まない剥離コーティングであって、前記剥離コーティングは、(a)少なくとも1種のスルホスクシネートと、(b)少なくとも50モル%のアクリレート又は酢酸ビニルマーを含み、かつ、125±75kg/モルの質量平均分子量を有する少なくとも1種の剥離ポリマーとを含み、前記剥離コーティングは、14質量%以下の総固形分含量を有し、かつ、0.1~1.5質量%の前記少なくとも1種のスルホスクシネートを含む組成物から提供される、剥離コーティング。
【請求項24】
前記少なくとも1種のスルホスクシネートがジオクチルスルホスクシネートであり、前記少なくとも1種の剥離ポリマーが、少なくとも50モル%のアクリレートマーを含み、前記アクリレートマーの少なくとも一部が、少なくとも2つの(チオ)カルボニル基と複数のさらなるヘテロ原子とを含むペンダント基を含み、前記組成物が10質量%以下の総固形分含量を有する、請求項23に記載の剥離コーティング。
【請求項25】
それにより被覆された基材に剥離性を付与するための水性組成物であって、前記組成物は、ポリシロキサンを含まず、かつ、以下を含む、水性組成物:
a)シリコーン系剥離ポリマーを含まず、かつ、少なくとも1種の剥離ポリマーを含む剥離ポリマー成分であって、前記少なくとも1種の剥離ポリマーが、少なくとも50モル%のアクリレート又は酢酸ビニルマーを含み、かつ、125±75kg/モルの質量平均分子量を有する、剥離ポリマー成分、及び
b)ゼロ質量%超~2質量%以下の、シロキサン基もF原子を含まない少なくとも1種のスーパーウェッター。
【請求項26】
前記スーパーウェッターが、
アミンオキシド、
ポリソルベート、
1-アルキル-2-ピロリドン、又は
1-ウンデカノールとラウリル硫酸ナトリウムと1-オクチル-2-ピロリドンとエトキシル化ウンデカノールとの混合物、
から選ばれる、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
シリコーン系剥離ポリマーを含まない剥離コーティングであって、前記剥離コーティングは、(a)シロキサン基もF原子を含まない少なくとも1種のスーパーウェッターと、(b)少なくとも50モルパーセントのアクリレート又は酢酸ビニルマーを含み、かつ、125±75kg/molの質量平均分子量を有する少なくとも1種の剥離ポリマーとを含み、前記剥離コーティングは、ゼロ質量%超~2質量%の前記少なくとも1種のスーパーウェッターを含む組成物から提供される、剥離コーティング。
【請求項28】
前記スーパーウェッターが、
アミンオキシド、
ポリソルベート、
1-アルキル-2-ピロリドン、又は
1-ウンデカノールとラウリル硫酸ナトリウムと1-オクチル-2-ピロリドンとエトキシル化ウンデカノールとの混合物、
から選ばれる、請求項27に記載の剥離コーティング。
【請求項29】
請求項23~24及び27~28のいずれか一項に記載の剥離コーティングを有する基材を含む物品
【請求項30】
さらに、接着剤の層を含む、請求項29に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術情報
一般的にロール状で提供される接着テープは、主な要素として、基材と、基材の互いに反対側の主面にそれぞれ設けられた接着剤及び低接着性バックサイズ(LAB)とを含む高度な技術的物品である。低接着性バックサイズ(LAB)は、基材の1つの層に担持された接着剤層が基材の別の層に隣接しているという事実にもかかわらず、可逆的な接着又はロール製品を巻き戻す能力を提供し、取り扱い特性を改善する。LABの組成と一般的な物理的形態に関する詳細について、興味ある読者は、D. Satas, “Release Coatings”, Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology, 3d ed. (1999)の第26章を参照されたい。
【0002】
接着テープの製造に採用される基材の主な種類は、繊維系(例えば、紙)とポリマーフィルムである。これらは、それぞれ、良好なLABの提供に関して、独自の一連の課題がある。
【0003】
ポリマーフィルムバッキングの場合、LABの提供は、いわゆる剥離剤に関係する。剥離剤の例としては、非イオン性界面活性剤、長鎖アルキルカルボン酸及びエステル、長鎖側基を有する(メタ)アクリレート、ポリウレタン、シリコーンポリマー(特にポリジアルキルシロキサンホモ及びコポリマー)、並びにフッ素化ポリマー及びワックスが挙げられ、剥離剤の詳細については、興味のある読者は、例えば、以下のような種々のテキスト及び概説のいずれか、例えば、Kenning and Schneider,“Release Coatings for Pressure Sensitive Adhesives”, Adhesion Science and Engineering - Surfaces, Chemistry, and Applications, pp. 535-71 (2002)の第12章を参照されたい。コーティング技術には、以下のものがある:(1)フィルム形成性ポリマーと1種以上の剥離剤とを含む液体組成物(例えば、エマルジョン、懸濁液、分散液)の塗布とその後の乾燥によりポリマーネットワークに取り込まれた剥離剤(1種以上)の剥離フィルムを得る技術、及び(2)例えばポリオレフィンなどの押出可能なポリマーとブレンドされた1種以上の剥離剤を含むLAB組成物の押出成形。
【0004】
シリコーン系化合物(すなわち、ポリシロキサン)は、単独で、又は炭化水素ポリマーとブレンドされた状態で、非常に有効な剥離剤であることができる。しかしながら、少量のシリコーン化合物がしばしば接着剤に移行し、「クレーター」又は「フィッシュアイ」を生じさせることがある。
【0005】
ある種の接着剤物品は、例えば酢酸ビニル、アクリレート類又はカルバメート類などの非シリコーンポリマー、例えばPVODC又は米国特許第10,889,736号に記載のタイプを使用して剥離特性を提供する。
【0006】
接着テープ用の剥離コーティングを提供するためにシリコーンフリー剥離ポリマーがコートされる場合、有機液体を担体液(carrying liquid)として使用したときに、ポリマー約3%(w/w)の固形分含量を使用することができる。有機液体は、ポリマーフィルム上で均質かつ連続的なコーティングを提供する。
【0007】
しかしながら、これらの同じシリコーンフリー剥離ポリマーをベースとするコーティングの場合に、担体液を水に変更すると、VOCが減少するため、規制上の利点があるが、フィルム基材を確実にカバーするには、20%(w/w)程度の固形分含量が必要である。これにより、得られるテープの質量が増加するとともに、水性剥離コーティング組成物は、それらのより高VOCの有機液体対応物と比較して、コスト面で大きく不利なものとなる。
【0008】
依然として望ましいのは、有機液体剥離コーティング組成物で達成可能な上記の3%(w/w)という数値に塗工量で適用でき、シリコーン系剥離ポリマーを含まない剥離コーティングを提供する、ポリマーフィルム接着テープ基材用の水性剥離コーティング組成物である。
【発明の概要】
【0009】
本開示では、接着テープ基材に剥離性を付与するのに有用な水性組成物を提供する。これらの組成物は、VOCフリーの形態で提供することができ、高湿度下でのエージング後でも優れた剥離性を示す表面又はコーティングを提供することができる。有利なことに、これらの組成物は、同じ剥離ポリマーを含む以前に入手可能な組成物において必要とされた塗工量よりもはるかに少ない塗工量で適用することができる。
【0010】
水及び1種類以上の非シリコーン系剥離ポリマーに加えて、これらの組成物は、低レベルのスーパーウェッター(superwetter)、例えば、ゼロ超から2%(w/w、組成物全体に対して)のスーパーウェッターを含む。このタイプの組成物は、組成物の固形分が、以前は実際に必要であったものをはるかに下回る場合でも、剥離組成物の均質なコーティングを提供することができる。
【0011】
接着テープ基材を、14%以下、12%以下、10%以下、さらには8%以下の固形分(すべてw/w)を含む組成物で被覆することができる。これは、同じ剥離ポリマーを含む以前に入手可能な組成物と比較して、固形分含量の30~60%の減少をもたらす。
【0012】
コーティング組成物中の剥離ポリマーは、ラベルライナーや巻き付けテープのような物品に最も一般的に使用されるタイプの基材に対して、適用時及び高湿度下及び/又は低温又は高温でのエージング後の両方で良好な接着を示す。さらに剥離ポリマーは、天然ゴム、アクリル及びホットメルトなど(これらに限定されない)の多種多様な接着剤から良好な剥離性を提供するものである。
【0013】
したがって、別の態様では、接着剤層を有する表面と、接着剤層と接触する、このような組成物から提供された剥離層を有する表面とを含む物品も提供される。接着剤層と剥離層は、テープ物品では、同じ基材の互いに反対側の面に存在することができる。ラベル物品では、接着剤層を1つの基材に適用することができ、一方、剥離層は別の基材に適用され、これら2つの基材は、接着剤層及び剥離層が直接接触するように配置される。
【0014】
このような物品を製造する方法も提供される
【0015】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明を理解するのを助けるために、いくつかの定義がすぐ下に提供される。これらは、周囲の文章が反対の意図を明示的に示さない限り、全体に適用されることを意図している。
「含む(comprising)」は、記載した成分(ただしそれらに限定されない)を含むことを意味する。
「からなる(consisting of)」は、記載した成分と少量の不活性添加剤又はアジュバントのみを含むことを意味する。
「から本質的になる(consisting essentially of)」は、記載した成分と、ポリマー、コーティング又はLABの剥離特性を補足するか、及び/又は意図した最終用途を考慮して望ましい副次的効果(例えば耐酸化性)を提供する少量(5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.25%又は0.1%w/v未満)の他の成分、及び/又は不活性添加剤又はアジュバントのみを含むことを意図する。
「ポリマー」は、1つ以上のモノマーの重合生成物を意味し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及びテトラポリマーなどを包含する。
「コポリマー(copolymer)」は、典型的にはモノマーである2種の反応物から誘導されたマー単位(mer unit)を含むポリマーであり、ランダム、ブロック、セグメンティド、グラフトなどのコ-ポリマーを包含する。
「インターポリマー(interpolymer)」は、典型的にはモノマーである少なくとも2種の反応物から誘導されたマー単位(mer unit)を含むポリマーを意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを包含する。
「マー(mer)」又は「マー単位」は、単一の反応物分子から誘導されたポリマーの部分を意味する(例えば、エチレンマーは一般式-CH2CH2-を有する)。
「置換された」は、その基の意図した目的を妨げないヘテロ原子又は官能基(例えばヒドロカルビル基)を含むものを意味する。
「ポリエン(polyene)」は、分子、典型的にはモノマーであって、最長の部分又は鎖に位置する少なくとも2つの二重結合を有するものを指し、具体的には、ジエン、トリエンなどを包含する。
「ポリジエン」は、1つ以上のジエンに由来するマー単位を含むポリマーを意味する。
「剥離剤」は、剥離プロセスの間にその接着剤に移行せずに、化合物が適用された表面から、接着剤を滑らかに制御可能に剥離することを許容するように設計されているか又は意図される化合物又は化合物の混合物を意味する。
「剥離剤」とは、1種の化合物又は複数の化合物の混合物であって、接着剤が、剥離プロセス中にその接着剤に転写せずに、当該化合物(1種以上)が塗布された表面から円滑かつ制御可能に剥離するように設計又は意図された化合物又は複数の化合物の混合物を意味する。
「剥離ポリマー(release polymer)」はポリマー剥離剤を意味する。
「低接着性バックサイズ」又は「LAB」は、少なくともコーティングポリマーと剥離剤とを含む組成物であって、多くの場合、1種以上の界面活性剤を含む成分との組み合わせで少なくともコーティングポリマーと剥離剤とを含む組成物を意味する。
「VOCフリー(VOC-free)」は、標準的な分析試験手順に供された場合に、揮発性の有機化学物質が、一般的に0.5ppm未満、通常は0.25ppm未満、典型的には0.1ppm未満、好ましくは0.05ppm未満であることを意味する。
形式素「(チオ)」は、この形式素に関連して使用した化合物又は基のS含有類似体を包含する意図を示す。
「イソ(チオ)シアネート」は、一般式-N=C=Oもしくは-N=C=Sの基、又はかかる基を含む化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
「活性水素」は、H原子が含まれている化合物がツェレビチノフ判定試験(Zerewitinoff determination testing)に供された場合、メタンの生産をもたらすH原子である。
「低級アルキル」は、最大6個までの炭素原子を含むアルキル基を意味する。
「長鎖アルキル」は、少なくとも12個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。
「スーパーウェッター」(「スーパースプレッダー(super-spreader)」としても知られている)とは、その一滴を室温でパラフィン表面に置くと、自発的に広がるタイプの表面活性剤(界面活性剤)を意味する。
「基(radical)」は、反応の結果としていくらかの原子が得られるか又は失われるかに関わらず、別の分子と反応した後に残った分子の部分を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
先の概要の項で示唆したように、本組成物は、わずか3つの成分:水、非シリコーン系剥離ポリマー、及び最大2%(w/w)のスーパーウェッターを含むことができる。
【0017】
本組成物で使用できる剥離ポリマーは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%の酢酸ビニル又はアクリレートマー(acrylate mer)を含有するポリマーを含む。(前記の各々はモル%である)。
【0018】
それらは、典型的な製造条件下で処理(例えば、乾燥)したときにホルムアルデヒドを発生しない、VOCフリー組成物を含む極低VOC組成物を提供できるため、米国特許第10,889,736号明細書に記載のそれらのポリマーは、アクリレートマーを含む剥離ポリマーの一つの好ましい群である。それらのポリマーの説明の要約を、参照を容易にするためにここに提供する。
【0019】
この好ましい群のポリマーは、少なくとも2つの(チオ)カルボニル基と複数のさらなるヘテロ原子とを含むペンダント基を有するマー単位を含む。
【0020】
特定の実施形態では、複数のペンダント基の複数の(チオ)カルボニル部分のうちの1つのC原子は、2つのさらなるヘテロ原子に結合しており、そのうちの1つはNであり、他方はO、S及びNから選択される。
【0021】
これらの実施態様のうちのいくつかでは、ペンダント基は以下の一般式によって表すことができる。
【化1】
式中、XはO又はSを表し、EはOもしくはS原子又はNR’基を表し、ここで、R’はH又はC1-C6アルキル基であり、Rは低級アルキル、アリール、アルカリール又はアラルキル基(活性水素原子が存在しないという条件で、任意選択的に、例えばOなどのヘテロ原子を含んでいてもよい)を表し、Zは二価の(チオ)カルボニル含有基であって、(チオ)カルボニル部分のC原子に結合した2つさらなるヘテロ原子をさらに含む二価の(チオ)カルボニル含有基を表し、Rは、長鎖アルキル基を表すか、又は長鎖アルキル基を含むより大きな官能基を表す。Z中のカルボニル部分のC原子に結合していてもよいさらなるヘテロ原子の例としては、O、S及びNが挙げられ、当該さらなるヘテロ原子のうちの少なくとも1つは、典型的にはNである。(Zの主な形態は、E及びXの個々の素性と、ある程度、反応が行なわれる条件に依存する。)
【0022】
一般式(I)のタイプのペンダント基を含む好ましいポリマーは、下記一般式で表されるモノマーから提供することができる。
【化2】
ここで、R、R、E及びXの各々は上記のように定義され、RはH又はメチル基である。
【0023】
他の実施形態では、ペンダント基は、下記一般式で表すことができる。
【化3】
ここで、R、X及びEは上記のように定義され、nは0又は1であり、Rは反応性の異なる2つのイソ(チオ)シアネート基を有する炭化水素化合物の基であり、Rは、連結基、例えばカルボニル、エーテル、アミンなどの基である。一般式(II)のペンダント基は、ZとR(一般式(I)から)が直接結合しておらず、代わりに、さらなる連結基によって分離されていることを除いて、一般式(I)によって定義されるものと同様である。
【0024】
一般式(II)のタイプのペンダント基を含むポリマーは、下記一般式で表されるモノマーから提供することができる。
【化4】
ここで、R、R、E及びXの各々は上記のように定義され、Rは重合性基であり、任意選択的であるが、典型的には、線状又は環状の連結基、例えば-RXC(X)-基を介して、隣接するE原子に結合されている。
【0025】
一般式(II-a)で定義されるポリマーに関連するものとして、2段階の反応スキームから得られるものがある。反応性の異なるイソ(チオ)シアネート基を有するジイソ(チオ)シアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)など、及びそれぞれの硫黄類似体(sulfur analogs)を、2つのEH基を含有する化合物(ただし、EがNR’である場合、妨害反応を防ぐために、R’は好ましくはHではない)と反応させる。EH基の一方は重合性官能基を含み、他方は長鎖アルキル基(又は長鎖アルキル基を含むより大きな官能基)、例えば具体的にはC15-C25、好ましくはC16-C20、より好ましくはC17-C18の置換又は非置換のアルキル基を含む。
【0026】
第1のタイプのEH基含有化合物の非限定的な例としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【化5】
ここで、R、R、n、E及びXは上記のように定義され、Rはフェニル基又はC1-C6アルキル基である。(特定の実施形態では、Rは好ましくはC1-C6アルキル基である)。
【0027】
nが0である一般式(III-b)の化合物の1つのサブセットは、下記一般式で定義される、Rがフェニル基であるものを含む、置換スチレン類であり。
【化6】
ここで、Eは上記のように定義される。この式の変異形も可能であり、例えば、一般式(III-b-1)の化合物のα-メチルスチレン類似体は、EH基が、スチレン環に、例えばヒドロカルビル連結基を介して、間接的に結合している化合物のように、有用であると期待される。
【0028】
nが0である一般式(III-b)のタイプの化合物の別のサブセットは、ビニルアルコール/エーテル、すなわち、Rが低級アルキル基、好ましくはC1~C3アルキレン基、より好ましくはC1~C2アルキレン基である一般式(III-b)化合物である。これらの化合物の硫黄及びアミン類似体、すなわち、EがS又はNR’である実施形態も企図されている。
【0029】
nが1である一般式(III-b)のタイプの化合物の1つのサブセットは、ジオールビニルエーテル、すなわち、XがO原子であり、Rが低級アルキレン基、好ましくはC1-C4アルキレン基である、一般式(III-b)の化合物である。これらの化合物の硫黄及びアミン類似体、すなわち、EはS又はNR’である実施形態、及びXがSであるそれらの類似体も企図される。
【0030】
第2のタイプのEH基含有化合物の非限定的な例としては、R及びEが上記のように定義されるR-EHによって定義されるものが挙げられる。
【0031】
他の好ましいポリマーは、下記一般式で表されるペンダント基を有するマー(mer)単位を含む。
【化7】
ここで、X、n、Z、R及びRは上記のように定義される。
【0032】
一般式(IV)タイプのペンダント基を含むポリマーは、すべての可変要素(variables)が上記のように定義される、下記一般式で表されるモノマーから提供することができる。
【化8】
ここで、Zの主な形態は、EとXの個々の素性と、ある程度は反応が行われる条件に依存する。一般式(IV)のタイプの化合物の重合から得られるポリマーは、一般式(IV)で定義される複数のペンダント基を有する炭化水素主鎖を有する。
【0033】
1つの具体的な非限定的な例として、一般式(III-b-1)の化合物をR-NCX化合物(R及びXは上記のように定義される)と反応させて、下記一般式で表されるモノマーを提供することができる。
【化9】
ここで、E、X及びRは上記のように定義される。R-NCX化合物と様々な他の一般式(III-b)の化合物との反応生成物も可能である。
【0034】
特定の実施形態では、上記の各一般式における各Xは酸素原子であることができる。
【0035】
これらのタイプのポリマーの各々の調製は、先に参照した米国特許第10,889,736号明細書に記載されている。重合は、ホモ重合であることができ、2種以上のそのような化合物を含むことができるか、あるいは、乳化重合に参加することができ、ラジカル開始されることができる1種以上のコモノマー、例えばポリエン、特に共役ジエンと、ビニル化合物、特に(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体を含むことができる。長鎖アルキルペンダント基を含む、及び/又は得られるインターポリマーのガラス転移温度(Tg)及び/又は溶融温度(Tm)を上昇させるか又は実質的に低下させないコモノマーが好ましい。
【0036】
上記のカルバメート部分を含有するペンダント基の1つ以上に由来するマー(mer)の数(モル)割合は、少なくとも33%、一般的に少なくとも50%、55%、60%又は65%、通常は少なくとも67%又は70%、典型的には少なくとも75%又はそれ以上である。本発明の剥離ポリマーに由来するマーの数(モル)割合は、しばしば少なくとも80%、85%、90%又は95%にもなる。
【0037】
このようなポリマーのVOC含有量は、一般的に5ppm未満、通常は3ppm未満、より通常は2ppm未満、典型的には1ppm未満である。多くの実施形態において、ポリマーはVOCフリーである。
【0038】
剥離ポリマーを製造するために使用される個々のモノマーにかかわらず、乳化重合の所産は、典型的には、ポリマーの水性分散液であって、125±75kg/mol、通常は125±50kg/mol、典型的には125±25kg/molのオーダーの質量平均分子量(Mw)を有するポリマーの水性分散液である。
【0039】
剥離ポリマーの乳化重合は、一般的に、約15~約75%(w/w)、好ましくは約20~約70%(w/w)の固形分含量を有することができ、約25~65%(w/w)の固形分含量が好ましい。固形分含量を最大限に高めることは、通常、望ましく、ポリモーダル(多峰性)粒度分布によって促進できる特徴である。第2の又は次の粒子径は、シードポリマーの導入、過剰な乳化剤の添加、又はミニエマルション(mini-emulsions)の添加によって生成することができる。
【0040】
剥離ポリマーは、その水性分散液の形態で使用することができ、あるいは、回収してさらに処理することができる。このようなさらなる処理の前に界面活性剤、開始剤、連鎖移動剤などを除去する必要はない。
【0041】
上述のように、本発明の組成物は、≦14%、≦12%、≦10%、さらには≦8%の固形分(すべてw/w)を含むため、所望の固形分含量を達成するために典型的な乳化重合の生成物を水で希釈することができる。
【0042】
水及び1種以上の非シリコーン系剥離ポリマーに加えて、本発明の組成物は、0%(w/w)超から2%(w/w)までの1種以上のスーパーウェッターを含む。
【0043】
特定の実施形態において、スーパーウェッター(1種以上)の量は、少なくとも0.25%(w/w)であることができる。好ましい量としては、0.1~1.5%、0.5~1.5%、特に0.75~1.25%(いずれも組成物全体の質量に基づくw/w)が挙げられる。
【0044】
直前の段落の値及び範囲は、ジオクチルスルホスクシネート(DOSS)の分子量と同様の分子量を有するスーパーウェッター、すなわちMWが450g/mol±20%にほぼ等しいスーパーウェッターに適用される。より高い分子量(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、MWは1300g/molにほぼ等しい)、又はより低い分子量を有するスーパーウェッター(例えば、ミリスチルジメチルアミンオキシド、MWは250g/molにほぼ等しい;ラウリルジメチルアミンオキシド、MWは230g/molにほぼ等しい;及び1-オクチル-2-ピロリドン、MWは200g/molにほぼ等しい)の場合、質量パーセントの値及び範囲は、ほぼ等モル量のスーパーウェッター(1種以上)を組成物に与えるように適切に調整することができる。
【0045】
組成物に上記の量のスーパーウェッター(1種以上)が含まれることで、その組成物から提供されるコーティングの外観及び剥離しやすさが改善されることが分かった。例えば、10%(w/w)の固形分含量を有するがスーパーウェッターを含まない組成物は、塗布中に著しいディウェッティング(de-wetting)を示すのに対し、少量(例えば、0.5%(w/w))のスーパーウェッターを含む同一の組成物は、ほとんど乃至全くディウェッティングを示さない。さらに、驚くべきことに、接着テープをそのロールから剥離する過程の間に発せられる音は、ジッピー(zippy)(産業環境によっては、作業者の耳の保護が必要となることがある)からはるかに小さい音量に著しく低減することができる。
【0046】
理論に縛られることを望まないが、上記水性組成物にスーパーウェッターを含めると、(コーティングの水の蒸発及びコアレッセンス時に)剥離コーティングで覆われていない基材部分の数及び/又は大きさを減らすことができると考えられる。裸の基材は、剥離時、すなわちPSAロールの巻き戻し時にノイズを生じるスリップスティック現象を生じさせると考えられる。
【0047】
低濃度であっても、スーパーウェッターは水性組成物の表面張力を大幅に低下させ、疎水性表面にわたるその分散を容易にし、場合によっては、そのような分散を達成するため及び/又は表面を超親水性にするために必要な時間量を減少させることができる。この能力は、表面に非常に有効にパッキングする能力に基づくと考えられる。
【0048】
スーパーウェッターとみなすことのできる化合物の非限定的な例としては、シリコーンポリエーテルコポリマー(分子量及び構造は様々)、ジェミニシリコーン界面活性剤、アセチレン系ジオール、特定のフルオロ界面活性剤、有機シリコーン、トリシロキサンベースの界面活性剤、カルボシラン、フルオロ有機界面活性剤、アルコキシル化アセチレン系グリコール、ヒドロキシチオエーテルなどが挙げられる。米国特許第10,552,557号、第10,485,739号、第10,456,766号、第10,415,000号、第9,834,699号、第8,648,211号、第7,264,885号、第7,160,373号、第6,926,766号、第6,645,392号、第6,566,322号、第6,495,058号、第6,475,953号及び第6,407,042号明細書を参照。
【0049】
上に具体的に記載した剥離ポリマーとの関連で特に興味深いものは、シリコーン系(すなわち、シロキサン基を含むもの)でもフッ素系(すなわち、F原子を含むもの)でもないスーパーウェッターである。
【0050】
スーパーウェッターは、Silwet(商標)(Momentive;ニューヨーク州ウォーターフォード)、Dowsil(商標)(Dow;ミシガン州ミッドランド)、Surfynol(商標)及びDynol(商標)(Evonik;ドイツ国エッセン)、Ammonyx(商標)(Stepan;イリノイ州ノースフィールド)、Tween(商標)(Croda Intl.;英国イーストヨークシャー)、Easy-Wet(商標)(Ashland;デラウェア州ウィルミントン)などの製品名で商業的に入手可能である。
【0051】
明確な塗工性及び剥離時の音の改善が、スルホスクシネート(例えば、DOSS)や、ミリスチルジメチルアミンオキシドなどのC12-C16アルキルアミンオキシドや、ポリソルベートや、1-ウンデカノールとラウリル硫酸ナトリウムと1-オクチル-2-ピロリドンとエトキシル化ウンデカノールとの混合物を用いた場合に観察された。
【0052】
特に興味深いコーティング組成物としては、実施例のセクションで以下に説明するものが挙げられる。実施例で使用した特定のスーパーウェッターとしては、DOSS、ポリソルベート(これは無毒であり、実際に食用であるとみなされているため、食品接触、包装などを含む最終用途で特に興味深い)、アミンオキシド(任意選択的に、スーパーウェッターの起こりうる黄変を抑制するための抗酸化剤などの添加物の存在下で)及び1-アルキル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0053】
有利なことに、接着テープ基材に剥離性を付与するのに有用な本発明の水性組成物は、水性送達可能な剥離ポリマー(aqueous deliverable release polymers)に基づく他の組成物と同様に処理及び使用することができる。標準的な商業的条件、コーティング厚さ、コーティング速度などを使用して、様々な紙、箔及びポリマーフィルムなどの様々な基材をコーティングすることができる。
【0054】
本組成物から提供される剥離コーティングは、1種以上のポリマー、例えば天然ゴム、ブチルゴム、ビニルエーテル、様々なアクリレートのいずれか、ポリエンマー(polyene mer)、特にポリジエン、例えば1,3-ブタジエン、イソプレンなどのポリマー、ブロックコポリマー(例えばSBS、SISなど)、ランダムコポリマー(例えばSBRなど)、シリコーンゴムなどを含む様々な接着剤、典型的には感圧接着剤(PSA)に関連して使用することができる。前述のものは例示的なものであり、限定的なものではないとみなされるべきであり、本発明の剥離ポリマーは、多くのタイプの接着剤で良好に機能することが確認された。
【0055】
本発明の様々な実施形態を提供したが、それらは例示として提示されたものであり、限定するものではない。実現可能な範囲において、上記の特徴及び実施形態は、干渉しない又は相反しない限り、個別に他の特徴及び実施形態と組み合わせることができる。
【0056】
上記の文章又は以下の実施例で具体的に参照する文献の関連部分は、参照により本開示に援用する。
【0057】
以下の非限定的な例示的な実施例は、本発明の実施に有用な詳細な条件及び材料を読者に提供する。
【実施例
【0058】
具体的な供給元が示されていない限り、以下の実施例で使用した全ての化学物質は、例えば、Sigma-Aldrich Co.(ミズーリ州セントルイス)などの一般的な化学物質供給業者から入手可能である。
【0059】
Suncryl(商標) HP 114アクリレートポリマーエマルジョン(OMNOVA Solutions Inc.;オハイオ州ビーチウッド)から、それぞれ10%(w/w)固形分の一連の水性コーティング組成物を調製した。これらに様々な量(0.1~1.0質量%)のDOSSスーパーウェッターを添加した。
【0060】
これらの組成物のアリコートを、0#ロッドを使用して厚さ0.051mm(2ミル)のPETフィルムに塗布した後、約116℃(240°F)で約120秒間乾燥させた。
【0061】
次に、これらの被覆されたフィルムを、フィルムテープtesa(商標) 7475アクリル接着剤テープ(tesa tape inc.;ノースカロライナ州シャーロット)の接着剤面にラミネートした。
【0062】
被覆された試験フィルム(テープラミネート)を、65℃の一定温度及び60%の相対湿度において約16時間エージング(ヒートコンディショニング)した。
【0063】
幅約2.54cm(1インチ)及び長さ約12cm(5インチ)に切断した自己巻回テープ物品のストリップを、試験ストリップの剥離面に適用された幅2.54cmのダブルコート接着剤紙テープを使用して、熱を用いずにラミネートした。取り付けた試験ストリップを、約0.005m/sec(1フィート/分)の速度で移動する2kgのゴムローラーを用いて作業プラテン上で2回圧延した。
【0064】
感圧テープ協議会(Pressure Sensitive Tape Council)の感圧テープの剥離接着方法(PSTC-101、改訂05-2007、試験方法A(180°剥離)及びF(90°剥離))を使用して各試験フィルムを評価した。得られた剥離試験値は、特定の角度及び剥離速度で所定の剥離材料のコーティングから柔軟な接着テープを剥がすのに必要な力の定量的尺度である。
【0065】
以下で101-Aと呼ぶ試験において、接着テープのストリップを、180°の角度及び0.005m/秒(1フィート/分)の速度で、剥離コーティングが施された材料から引き剥がした。剥離コーティングから接着剤を除去するのに必要な力を、5秒間のデータ収集時間にわたって測定した。
【0066】
以下で101-Fと呼ぶ試験において、接着テープのストリップを、90°の角度及び0.255m/秒(50フィート/分)の速度で剥離コーティングが施された材料から引き剥がした。剥離コーティングから接着剤を除去するのに必要な力を、5秒間のデータ収集時間にわたって測定した。
【0067】
以下で101-Eと呼ぶ試験において、PSTC-101の方法Eを用いて、いわゆる後接着性評価を実施した。
【0068】
試験結果は表1に記載されており、文字は以下の試料を表す(括弧内の数字は含まれるDOSSの質量パーセントを表す):
A(1%) - エッジクロール(edge crawl)が僅かな、非常に良好なクリアコーティング。
B(0.75%) - Aよりも僅かにエッジクロールが多い、良好なクリアコーティング。
C(0.5%) - Bよりもエッジクロールが多く、エッジ付近に若干のウォーブリング(warbling)(「オレンジピール」)があるクリアコーティング。
D(0.25%) - エッジクロールが顕著で、ドローダウン中に多くの小さなディウェッティングスポットがある。
E(0.1%) - エッジクロールはDと同様だが、ディウェッティングの領域がより多い。
「音」と書かれた欄は主観で決定した:
Z(ジッピー(zippy)) - 引き裂けるような音。
SZ(僅かにジッピー) - 制御された引き裂けるような音。
VSZ(非常に僅かにジッピー) - 若干の引き裂けるような音が聞こえる。
SS(微音) - 引き裂けるような音はしないが、少し離れた距離で聞こえる。
VSS(極微音) - 近くで聞こえる。
【表1】
【0069】
上記の試験を、異なる剥離コーティング、Suncryl(商標) CL 223B(OMNOVA Solutions)、及び異なる総固形分含量(10%ではなく20%)で繰り返した。
【0070】
これらの試験の結果は、表2に記載されており、文字は以下の試料を表す:
F - スーパーウェッター0%
G - スーパーウェッター0.25%
H - スーパーウェッター0.5%
I - スーパーウェッター0.75%
【表2】
【0071】
以上から、水性コーティング組成物に少量のスーパーウェッターを含めることで、剥離性を改善し、接着テープをロールから剥離する過程の間に発せられる音の量を減らした剥離コーティングを提供できることが分かる。
【0072】
上記の一連の試験の両方において、スーパーウェッターとしてDOSSを使用することで、2種類の剥離コーティング組成物の直接の比較が可能となる。しかしながら、これは限定的なものと考えるべきでなく、同様の添加レベルで他のタイプのスーパーウェットも同様の傾向を示すと予想される。
【0073】
Suncryl(商標) HP 114アクリレートポリマーエマルジョンから、それぞれ10%(w/w)の固形分である、別の一連の水性コーティング組成物を調製した。スーパーウェッターを含まない対照試料(J、32.70%)及び1%(w/w)のスーパーウェッターを含む4つ、すなわち
K - Surfynol(商標) AS 5120 湿潤剤(33.60%)、
L - Tween(商標) 80 ポリソルベート(33.24%)、
M - Easy-Wet(商標) 20 1-オクチル-2-ピロリドン(32.52%)、及び
N - Ammonyx(商標) LO ラウラミンオキシド(33.45%)、
を調製した。(括弧内の数字は、コーティング組成物の総固形分含量を表す。)
【0074】
これらの組成物のアリコートを、#3ロッドを使用して厚さ0.051mm(2ミル)のPETフィルムに塗布した。試料K及びMのドローダウンは、良好にコートされ、エッジクローリングが僅かであり、試料L及びNのドローダウンは、良好にコートされ、エッジクローリングが非常に少なかったのに対し、対照試料Jのドローダウンは、クリアにコートされたものの、全体に0.5cmサイズのディウェッティング領域が存在した。各試料を、約116℃(240°F)で約120秒間乾燥させた。
【0075】
次に、これらの被覆されたフィルムを、フィルムテープtesa(商標) 7475アクリル接着剤テープの接着剤面にラミネートした。
【0076】
被覆された試験フィルム(テープラミネート)を、約49℃(120°F)の一定温度及び50%の相対湿度において約16時間エージング(ヒートコンディショニング)した。
【0077】
各試料について各試験を3回行い、それらの試験の平均値及び標準偏差を表3a及び3bに記載した。
【表3】
【表4】
【0078】
試験したスーパーウェッターはそれぞれ1%(w/w)で、関連する接着性試験において有意な改善をもたらした。しかし、接着テープをそのロールから剥離する過程の間に発せられる音をDOSSの場合と同程度に改善することはできなかった。
【国際調査報告】