(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ナノ構造化表面と囲まれた空隙とを含む物品、それを製造する方法、及び光学素子
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20230906BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20230906BHJP
G02B 1/118 20150101ALN20230906BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B3/26 A
G02B1/118
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513583
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 IB2021056879
(87)【国際公開番号】W WO2022043787
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン,ジェフリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ライオンズ,クリストファー エス.
(72)【発明者】
【氏名】スパグノーラ,ジョーゼフ シー.
(72)【発明者】
【氏名】クラン,トーマス ピー.
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA01
2K009DD05
2K009DD06
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(57)【要約】
本開示は、物品であって、ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面とを有する層と、ナノ構造化第1表面の一部分に結合された主表面を含む無機層と、を含む、物品を提供する。ナノ構造化第1表面は、単一組成で形成された凸状フィーチャ及び/又は凹状フィーチャを含む。物品は、ナノ構造化第1表面によって部分的に画定された少なくとも1つの囲まれた空隙を含む。本開示はまた、物品を製造する方法であって、無機層の主表面をカップリング剤で処理することと、層のナノ構造化表面を処理された無機層と接触させることと、ナノ構造化表面又は処理された無機層のうちの少なくとも1つを結合することによって、結合カップリング剤を介して、2つの層を一緒に固定することと、を含む、方法を提供する。加えて、本開示は、物品を含む光学素子を提供する。物品のナノ構造化表面は、無機層によって損傷及び汚染から保護される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層であって、前記ナノ構造化第1表面が、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む、第1の層と、
b)第1主表面と、反対側の第2主表面と、を含む第2の層であって、前記第1主表面が前記第1の層の前記ナノ構造化第1表面の一部分に結合された、第2の層と、
を含み、
前記物品が、前記第1の層の前記ナノ構造化第1表面によって部分的に画定された少なくとも1つの囲まれた空隙を含み、前記第2の層が無機材料を含む、物品。
【請求項2】
前記第2の層の前記第1主表面が結合カップリング剤を介して前記第1の層の前記ナノ構造化第1表面の一部分に結合されている、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記結合カップリング剤が、100ナノメートル(nm)未満、50nm未満、又は25nm未満の厚さを有するカップリング剤層の一部分として存在する、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記結合カップリング剤が前記第2の層の前記第1主表面を前記第1の層の前記ナノ構造化第1表面に直接結合する、請求項2又は3に記載の物品。
【請求項5】
前記無機材料が、金属若しくは非金属の酸化物、窒化物、炭化物、若しくはホウ化物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記無機材料が、チタン、インジウム、スズ、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、アルミニウム、ケイ素、又はこれらの組み合わせの酸化物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記無機材料がガラスを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記無機材料が自己支持層の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記無機材料が、自己支持型ではないコーティング又は層の形態であり、前記第2の層が、ポリマー材料上に支持された前記無機材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記少なくとも1つの囲まれた空隙がガスを含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記第1の層が架橋材料又は架橋性材料を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記結合カップリング剤が、アクリレート、ウレタン、尿素、アルキレン、ウレイド、イソシアネート、エポキシ、アルコール、アミン、チオール、フェノール、アミノ、酸から選択される少なくとも1つの官能基、ヘテロ原子、並びにケイ素、リン、チタン、又はジルコニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記第2の層が非多孔質である、請求項1~12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の物品を含む光学素子。
【請求項15】
物品を製造する方法であって、
a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層であって、前記ナノ構造化第1表面が、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む、第1の層を得ることと、
b)第2の層の第1主表面をカップリング剤で処理して、前記カップリング剤を前記第2の層と結合することであって、前記第2の層の前記第1主表面が無機材料を含む、ことと、
c)前記第2の層の前記処理された第1主表面を、前記第1の層の前記ナノ構造化第1表面の一部分と接触させることと、
d)前記第1の層又は前記カップリング剤の反応生成物のうちの少なくとも1つを前記第2の層と結合して、結合カップリング剤を介して、前記第1の層と前記第2の層とを一緒に結合することであって、前記結合カップリング剤が、前記第2の層の前記第1主表面を前記第1の層の前記ナノ構造化第1表面に直接結合し、又はカップリング剤層の一部分として存在する、ことと、
を含み、
前記第1の層の前記ナノ構造化第1表面と、前記第2の層の前記第1主表面又は前記カップリング剤層のいずれかとが、協同して少なくとも1つの空隙を画定する、方法。
【請求項16】
前記結合することが、前記第1の層、前記第2の層と結合した前記カップリング剤、又はその両方を、化学線、熱、又はその両方に供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の層、前記第2の層と結合した前記カップリング剤、又はその両方が、部分的に硬化した材料を含み、前記部分的に硬化した材料が反応して、前記第1の層と前記第2の層とを一緒に共有結合する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理することが、前記第2の層の前記第1主表面上にカップリング剤組成物のコーティングを適用することと、前記組成物を乾燥させることと、を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記カップリング剤組成物が、前記カップリング剤、溶媒、及び光開始剤又は熱開始剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の層の前記処理された第1主表面を洗浄して、未結合のカップリング剤を除去することを更に含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、ナノ構造化表面を含む物品、及びそのような物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ構造化表面は、素子の色及び効率を改善するなど、様々な用途に有用な光学効果を提供することができる。ナノ構造化表面が所望の光学的機能性を提供するためには、ナノ構造化界面において屈折率差又はコントラストが必要である。ナノ構造化表面は、屈折率コントラストを提供するために周囲環境に曝露することができるが、曝露された表面は、ナノ構造化表面の他の表面への付着を制限し、環境からの損傷及び/又は汚染を受けやすい。したがって、ナノ構造化表面の保護における改善が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様では、物品が提供される。物品は、a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層と、b)第1主表面と、反対側の第2主表面と、を含む第2の層であって、第1主表面が、第1の層のナノ構造化第1表面の一部分に結合された、第2の層と、を含み、第2の層は無機材料を含む。ナノ構造化第1表面は、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む。物品は、第1の層のナノ構造化第1表面によって部分的に画定された少なくとも1つの囲まれた空隙を含む。
【0004】
第2の態様では、第1の態様による物品を含む光学素子が提供される。
【0005】
第3の態様では、物品を製造する方法が提供される。本方法は、a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層を得ることと、b)第2の層の第1主表面をカップリング剤で処理して、カップリング剤を第2の層と結合することであって、第2の層の第1主表面が無機材料を含む、ことと、c)第2の層の処理された第1主表面を、第1の層のナノ構造化第1表面の一部分と接触させることと、d)第1の層、又は第2の層と結合したカップリング剤のうちの少なくとも1つを結合して、結合カップリング剤を介して、第1の層と第2の層とを一緒に結合することと、を含む。結合カップリング剤は、第2の層の第1主表面を第1の層のナノ構造化第1表面に直接結合し、又はカップリング剤層の一部分として存在する。ナノ構造化第1表面は、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む。第1の層のナノフィーチャ及び第2の層の第1主表面は、協同して少なくとも1つの空隙を画定する。
【0006】
本開示の少なくとも特定の実施形態による物品及び方法は、ナノ構造化表面を保護し、空気界面の屈折率コントラストを維持する、囲まれたナノ構造化表面を提供する。
【0007】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通していくつかの箇所において、例を列挙することによって指針が示されるが、それらの例は様々な組み合わせで使用することができる。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本出願による例示的な物品の概略断面図である。
【
図2A】本出願による2,000倍の倍率での実施例1の例示的な物品の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図2B】20,000倍の倍率での
図2Aの例示的な物品の断面のSEM画像である。
【
図2C】50,000倍の倍率での
図2Aの例示的な物品の断面のSEM画像である。
【
図3A】本出願による2,000倍の倍率での実施例2の例示的な物品の第1のナノ構造化領域の断面のSEM画像である。
【
図3B】10,000倍の倍率での
図3Aの例示的な物品の断面のSEM画像である。
【
図3C】100,000倍の倍率での
図3Aの例示的な物品の断面のSEM画像である。
【
図3D】100,000倍の倍率での実施例2の例示的な物品の第2のナノ構造化領域の断面のSEM画像である。
【
図4A】実施例2による例示的な物品の概略断面図である。
【
図4B】使用中の実施例2の例示的な物品の写真である。
【
図5】本出願による物品を製造する例示的な方法のフロー図である。
【0009】
上記で特定された図は、本開示のいくつかの実施形態を記載するものであるが、本明細書で言及される通り、他の実施形態もまた企図される。図は、必ずしも原寸に比例して描かれているとは限らない。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。当業者によって多数の他の改変及び実施形態が考案され得、それらは、本発明の原理の範囲内及び趣旨内に含まれることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語解説
本明細書で使用するとき、用語「隣接する」は、別の材料若しくは層と接触(すなわち、直接隣接)し得る、又は中間の材料、層、若しくは間隙によって別の材料若しくは層から分離され得る、材料又は層を指す。
【0011】
「平面接触」又は「平面的に接触する」という語句は、1つの層又は層状構造体が別の層又は層状構造体と接触している(及び、上方又は下方のいずれかに配置されている)ことを示すために使用される。このような接触は、縁部での接触ではなく面での接触である。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「有機層」は、炭化水素化合物若しくはそれらのハロゲン化類似体、3次元的に連続したポリマーマトリックス、又はその両方を含む1つ以上の材料を大部分(例えば、50重量パーセント超)含む層を指す。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「無機層」は、炭素水素結合を有する化合物又はそれらのハロゲン化類似体を欠く1つ以上の材料を過半で(例えば、50重量パーセント超)含む層を指す。
【0014】
本明細書で使用するとき、「ナノ構造化」は、設計されたパターンを有するナノフィーチャの形態のトポグラフィーを含む表面を指し、ナノフィーチャは表面を画定する材料を含み、ナノフィーチャの高さ又はナノフィーチャの幅のうちの少なくとも1つが約1ミクロン(すなわち、1マイクロメートル、又は1000ナノメートル)未満かつ10ナノメートル以上である。
【0015】
本明細書で使用するとき、「屈折率(index of refraction)」は、別段の指定がない限り、材料の平面内における、垂直入射させた633nmの光に対する材料の屈折率を指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、「ガス」は、標準的な温度及び標準的な圧力(すなわち、摂氏0度及び105パスカル)で気相にある任意の材料を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、「複屈折」は、全て同じというものではない、直交するx、y、及びz方向における屈折率を意味する。屈折率は、x、y、及びz方向についてそれぞれnx、ny、及びnzとして示される。本明細書で記載される層においては、軸は、x及びy軸が層の平面内にあり、z軸が層の平面に対して鉛直であり、典型的には層の厚み又は高さに相当するように選択される。1つの面内方向の屈折率が別の面内方向の屈折率よりも大きい場合、x軸は、概して、最大屈折率を有する面内方向であるように選択される。
【0018】
本明細書で使用するとき、「可視光に対して透過性」とは、パターン形成されていない基材の又は物品の透過率のレベルが、可視光の少なくとも1つの偏光状態に対して、60パーセント以上、70パーセント以上、80パーセント以上、90パーセント以上、95パーセント以上、又は98パーセント以上、透過性であることを意味し、透過率のパーセントは、任意選択で偏光された、入射光の強度に対して正規化される。「可視光に対して透過性」に関連する用語「可視」は、物品が透過性になるような光の波長範囲を指定するように、用語「光」という用語を修飾する。
【0019】
「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」という言葉は、特定の状況下で特定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0020】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、全般分類を含み、その具体例を、例示のために使用し得る。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つの」と互換的に使用される。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0022】
また、本明細書では、全ての数は「約」という用語で修飾されるものと想定され、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されると想定される。本明細書で使用するとき、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0023】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用するとき、用語「概して」は、特に定めのない限り、その特性又は属性が、当業者によって容易に認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではないこと(例えば、定量化可能な特性に関しては、±20%の範囲内)を意味する。用語「実質的に」は、特に定めのない限り、高い近似度(例えば、定量化可能な特性に関しては、±10%の範囲内)を意味するが、この場合もまた、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではない。同一の、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではなく、特定の状況に適用可能な、通常の許容誤差又は測定誤差の範囲内にあるものと理解される。
【0024】
物品
第1の態様では、物品が提供される。物品は、
a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層であって、ナノ構造化第1表面が、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む、第1の層と、
b)第1主表面と、反対側の第2主表面と、を含む第2の層であって、第1主表面が、第1の層のナノ構造化第1表面の一部分に結合された、第2の層と、を含み、当該物品は、第1の層のナノ構造化第1表面によって部分的に画定された少なくとも1つの囲まれた空隙を含み、第2の層は無機材料を含む。
【0025】
ナノ構造化表面が損傷又は汚染から保護される、1つ以上の空隙を含有し、屈折率差を示す物品を形成することが可能であることが発見された。
【0026】
図1は、本出願による例示的物品1000の概略断面図である。物品1000は、ナノフィーチャ114を含むナノ構造化第1表面112と、反対側の第2表面116と、を含む第1の層110と、ナノ構造化第1表面112の一部分に結合された(この場合、ナノフィーチャ114の一部分に結合された)第1主表面122を含む第2の層120と、を含み、第2の層120は無機層である。ナノ構造化第1表面は、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む。「単一組成」とは、凸状フィーチャが、同じフィーチャの別の部分とは異なる組成を有するフィーチャの一部分分を含むのではなく、凸状フィーチャ全体にわたって同じ材料から製造されることを意味する。いくつかの実施形態では、凸状フィーチャは、第1の層110(例えば、そのバルク)と同じ組成を有する。いくつかの実施形態では、凹状フィーチャは、単一組成(例えば、第1の層)で形成される構造によって画定される。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、ポリマー、ポリマーブレンド、及び/又はポリマーマトリックス中に分散されたナノ粒子を含有するポリマーマトリックスであり得る。1つの組成からなる凸状フィーチャの利点は、例えば、フィルムAに関して以下の実施例に記載されるように、比較的単純なナノ複製法によって凸状フィーチャを形成できることが多いことである。
【0027】
この実施形態では、第1の層110のナノフィーチャ114及び第2の層120の第1主表面122は、協同して少なくとも1つの空隙130を(例えば、第1の層110と第2の層120との間のネガティブスペースの形態で)画定する。囲まれた空隙130は、固体又は液体で充填されず、むしろ真空又はガスを含む。好適なガスとしては、例えば、周囲空気(例えば、自然状態の大気)、ガス、又はガスブレンド(例えば、90%窒素及び10%酸素)が挙げられる。いくつかの実施形態では、好適なガスは、少なくとも1つの不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノンなど)を含むことができる。
図1に示される実施形態では、ナノ構造化第1表面112は、凹状フィーチャ117及び凸状フィーチャ119の両方を含む。あるいは、物品は、凹状フィーチャ117又は凸状フィーチャ119のうちの1つのみを含むことができる。凹状フィーチャのみを使用する利点は、第2の層が、多数の凸状フィーチャの頂部ではなく第1の層の主表面に接触することができ、結果として得られる物品が、凸状フィーチャを有する物品よりも壊れにくいものになり得ることである。
図1に示される実施形態は、凹状フィーチャ117内に設けられた個々の空隙130と、複数の凸状フィーチャ119の周囲に延びる大きな接続空隙130との両方を含む。
【0028】
図2A~
図2Cは、以下の実施例1に従って製造された物品1000の3つの倍率のSEM画像を示している。
図2A(すなわち、2,000倍の倍率)を参照すると、物品1000は、複数のナノフィーチャ114を含む第1の層110と、第1の層110のナノ構造化表面の一部分に付着した(すなわち、ナノフィーチャ114の一部分に付着した)第2の層120と、を含む。第1の層110は約8マイクロメートルの厚さを有する。この物品1000は、第1の層110の反対側の第2表面116に付着した第3の層140を更に含む。第3の層140は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETg)を含み、約15マイクロメートルの厚さを有する。
図2B(すなわち、20,000倍の倍率)を参照すると、第1の層110、ナノフィーチャ114を含むナノ構造化第1表面112、第2の層120、及びナノフィーチャ114の一部分に付着したカップリング剤層111。
図2Bの実施形態では、(例えば、凸状の)ナノフィーチャ114の多く、ほとんど、又は全てを取り囲む1つの接続された空隙130が存在する。
図2C(すなわち、50,000倍の倍率)を参照すると、ナノフィーチャ114のうちのいくつかの形状がより明確に見られる。
【0029】
任意選択的に、第2の層120は実質的に平面であってもよい。本明細書で使用するとき、層に関して「実質的に平面」は、層の表面が、層の平面の上方及び/又は下方に延びる凹部及び/又は凸部を本質的に含まないことを意味し、凹部及び/又は凸部は、100マイクロメートル、90マイクロメートル、80マイクロメートル、70マイクロメートル、60マイクロメートル、50マイクロメートル、40マイクロメートル、30マイクロメートル、25マイクロメートル、20マイクロメートル、15マイクロメートル、10マイクロメートル、9マイクロメートル、8マイクロメートル、7マイクロメートル、6マイクロメートル、5マイクロメートル、4マイクロメートル、3マイクロメートル、2マイクロメートル超、又は1マイクロメートル超の深さ又は高さを有する。典型的には、凹部及び/又は凸部は、1ミリメートル未満、例えば、900マイクロメートル以下、800マイクロメートル、700マイクロメートル、600マイクロメートル、500マイクロメートル、400マイクロメートル、又は300マイクロメートル以下の深さ又は高さを有する。層表面に存在する凹部又は凸部の深さ又は高さは、共焦点顕微鏡を用いて測定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の層はポリマー層などの有機層である。第1の層110は架橋材料又は架橋性材料を含んでもよい。第1の層110は、例えば、1.2から2.2の範囲、又は1.4から1.75の範囲の屈折率を有してもよい。屈折率は、別段の指定のない限り、又は文脈上他を明確に示すのでない限り、632nmで測定した屈折率を指す。いくつかの実施形態では、第1の層110は、1.3以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、又は1.75以上の屈折率、及び2.2以下、2.1以下、又は2.0以下の屈折率を有する。物品1000は、屈折率コントラスト(第1の層110の屈折率と、空隙130の屈折率との差の絶対値)を提供する。いくつかの実施形態では、屈折率コントラストは、0.1~1.0、0.3~1.0、又は0.5~1.0の範囲にある。
【0031】
ナノ構造は、1マイクロメートル未満かつ10ナノメートル以上の幅又は高さなどの少なくとも1つの寸法を有する構造であり、加えて、設計された形状及びパターンを有する(例えば、材料の自然に生じるナノスケールの粗さの結果である代わりに意図的な設計を有する)。ナノ構造化表面は、ナノ構造化表面を有するツールを使用して製造することができる。いくつかの実施形態では、ツールは、基材に部分的に埋め込まれた複数の粒子を含む。ツールを製造するための有用な技術は、米国特許出願公開第2014/0193612号(Yuら)、及び米国特許第8,460,568号(Davidら)に記載されている。ツールのナノ構造化表面は、原子間力顕微鏡(AFM)によって特定することができる有用なナノ構造化表面及びナノ構造化表面を製造する方法に関する更なる詳細は、国際公開第2009/002637(A2)号(Zhangら)及び国際公開第2017/205174号(Freierら)に記載されているように見出すことができる。
図2Cを参照すると、第1の層110のSEMが示されている。第1の層110は、ナノフィーチャ114を含むナノ構造化第1表面112を含む。
【0032】
ナノフィーチャの特性の例としては、ピッチ、高さ、深さ、アスペクト比、直径、側壁角度、及び形状が挙げられる。ピッチは、隣接するナノフィーチャ間の距離を指し、典型的には、凸状ナノフィーチャについてはそれらの最上部分の中心から、又は凹状ナノフィーチャについてはそれらの最下部分の中心から測定される。高さは、それらの基部(下にある層と接触している)から最上部分まで測定された凸状ナノフィーチャの高さを指す。深さは、それらの最上部分(層の主表面における開口部)から最深部分まで測定された凹状ナノフィーチャの深さを指す。アスペクト比は、ナノフィーチャの高さ又は深さに対する断面幅(最も広い部分)の比を指す。直径は、ナノフィーチャの高さ又は深さに沿った点において、1つ表面から、中心点を通り、反対側の表面までナノフィーチャを横切って引くことができる最長の線を指す。側壁角度は、ナノフィーチャの側壁と、ナノフィーチャが凸出する又はナノフィーチャが凹む層の主表面と、の間に形成される最小角度を指す。側壁角度は、ナノフィーチャの高さ又は深さに沿った様々な点で異なり得る。形状は、ナノフィーチャの断面形状を指す。任意選択的に、断面形状(及び直径)は、ナノフィーチャの高さ又は深さに沿った様々な点で異なり得る。
【0033】
図1に示すように、特定の実施形態では、第1の層110のナノ構造化第1表面112は、規則的な高さHを有するナノフィーチャ114を含むが、他の実施形態では、第1の層110のナノ構造化第1表面112は、様々な高さを有するナノフィーチャ114を含む。これは、ナノ構造化表面を形成する方法に依存し得る。再び
図1を参照すると、ナノフィーチャ114の高さH又は幅Wの少なくとも1つの寸法は、1マイクロメートル未満であり、必要とされる小さいサイズのフィーチャを提供する。いくつかの実施形態では、ナノフィーチャ114の(例えば、平均)高さHは、1マイクロメートル未満、950ナノメートル(nm)以下、900nm以下、850nm以下、800nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、又は600nm以下であり、ナノフィーチャ114の高さHは、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、又は500nm以上である。いくつかの実施形態では、ナノフィーチャ114の(例えば、平均)幅Wは、1マイクロメートル未満、950ナノメートル(nm)以下、900nm以下、850nm以下、800nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、又は600nm以下であり、ナノフィーチャ114の幅Wは、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、又は500nm以上である。
【0034】
ナノ構造化表面は各々が、例えば、ナノカラム、又はナノカラムを含む連続ナノウォールなどのナノフィーチャを備え得る。
図1及び
図2Cのそれぞれを参照すると、特定の実施形態では、ナノフィーチャ114は、少なくとも1つの方向に少なくとも1つの非線形表面115を含む。例えば、
図1に示されるナノフィーチャ114のいくつかは、曲面115を(例えば、凹状フィーチャ114の下面に)有し、
図2Cに示されるナノフィーチャ114の少なくともいくつかは、曲面115を(例えば、凸状フィーチャ114の側壁面に)有する。ナノ複製プロセスによって好都合に形成される任意の形状が、ナノフィーチャ114(例えば、プリズム、リッジ、線形及び/又は湾曲多角形)のために採用され得る。本明細書で使用するとき、「ナノ複製」は、例えば硬化性又は熱可塑性材料を使用して、あるナノ構造化表面を別のナノ構造化表面から成形するプロセスを指す。ナノ複製は、例えば、「Micro/Nano Replication」、Shinill Kang、John Wiley&Sons,Inc.、2012年、第1章及び第5~6章に更に記載されている。ナノフィーチャは、任意選択的に、第1の層又は第2の層の反対側の第2表面に対して概ね垂直である急勾配の側壁を有する。特定の個々のナノフィーチャは、ナノ構造化第1表面に沿って1つの方向に等間隔に配置され得るが、直交方向には配置され得ない。いくつかの実施形態では、特定の個々のナノフィーチャは、少なくとも2つの方向に、ナノ構造化第1表面に沿って等間隔に配置される。特定の個々のナノフィーチャは、ナノ構造化第1表面に沿ったいずれの方向にも、直交方向に等間隔にも配置され得ない。
【0035】
上述したように、第2の層120は無機材料を含む。好適な無機材料は、酸化ケイ素に限定されず、金属若しくは非金属の酸化物、窒化物、炭化物、若しくはホウ化物、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、無機材料は、チタン、インジウム、スズ、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、アルミニウム、ケイ素、又はこれらの組み合わせの酸化物を含む。例えば、好適な酸化物としては、シリカ、アルミナなどの酸化アルミニウム、チタニアなどの酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、無機材料はガラスを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、無機材料は自己支持層の形態で存在する。いくつかの実施形態では、無機材料は、自己支持型ではないコーティング又は層の形態であり、第2の層は、ポリマー材料上に支持された無機材料を含む。例えば、無機材料は、スパッタ堆積、反応性スパッタリング、化学気相堆積(CVD)、物理気相堆積、原子層堆積(ALD)、蒸着、プラズマ堆積、若しくはプラズマ強化蒸着、プラズマ強化CVD、プラズマ強化ALD、又はこれらの任意の組み合わせを使用して、ポリマー材料上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、無機材料は、液体コーティング技術を使用してポリマー材料上にコーティングされてもよい。これは、ゾルゲル前駆体などの無機材料を形成することができる、又はハイブリッド無機/有機材料を形成することができる、無機粒子又は反応性前駆体を含有する液体を含む。任意の実施形態では、第2の層は、1nm超、例えば、2nm以上、3nm以上、5nm以上、7nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、25nm以上、30nm以上、35nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、75nm以上,100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、500nm以上、700nm以上、900nm以上、1マイクロメートル以上、1.25マイクロメートル以上、1.5マイクロメートル以上、1.75マイクロメートル以上、2マイクロメートル以上、2.25マイクロメートル以上、2.5マイクロメートル以上、2.75マイクロメートル以上、又は3マイクロメートル以上の平均厚さ、及び1ミリメートル(mm)以下、0.75mm以下、0.5mm以下、0.25mm以下、0.1mm以下、0.05mm以下、又は0.01mm以下の平均厚さを有する。選択された実施形態では、第2の層は非多孔質である。
【0037】
典型的には、カップリング剤は、有機層と(共有結合又は非共有結合で)結合する少なくとも1つの基と、無機層と(共有結合又は非共有結合で)結合する少なくとも1つの基と、を含む。共有結合は、基が、それが接触している表面と反応することを必要とする。例えば、以下の構造
【化1】
を有するカップリング剤2-(3-トリメトキシシリルプロピルカルバモイルオキシ)エチルプロパ-2-エン酸(K90)について、アクリレート基は、それに隣接する有機層中の他のアクリレートと反応して、アクリレートコポリマーを形成することができる。(メタ)アクリレートコーティングと(共有結合又は非共有結合で)結合し得る他の官能基としては、(メタ)アクリレート、ビニル、アミン、ウレタン、尿素、及びチオール官能基を挙げることができる。同様に、トリメトキシシリル基は、それに隣接する無機層の1つ以上の金属M(例えば、ケイ素、アルミニウム)ヒドロキシド基と、例えば、1回、2回、又は3回反応して、-Si-O-M-結合を形成することができる。他の基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、又はリン酸基などの酸基は、カップリング剤が隣接する、有機層又は無機層のいずれかにおける部分と水素結合を介して非共有結合してもよい。少なくとも1つの表面に結合する前のカップリング剤は、別個の化合物であり、少なくとも1つの表面に結合した後は、「結合カップリング剤」と称され得る。したがって、ケイ素、リン、チタン、又はジルコニウムなどの任意の無機原子は、依然として結合カップリング剤の一部であり得る。そのような無機原子が金属Mと同じでない場合、いくつかの実施形態では、その存在は分析方法によって検出可能であり得る。
【0038】
好適なカップリング剤としては、例えば、ケイ素原子に結合した加水分解性アルコキシ基又は塩素化基を有する官能性シランが挙げられるが、これらに限定されず、(メタ)アクリルシランカップリング剤が特に有用である。このようなカップリング剤は、Momentive、Gelest、Evonik、信越化学工業などから市販されている。好適なシラン材料は、(メタ)アクリレート、ビニル、アミン、ウレタン、尿素、及びチオール官能基を含む、(メタ)アクリレートコーティングと(共有結合又は非共有結合で)結合する官能基を含み得る。好適な材料は、加水分解性シラン基、酸(リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、及びカルボン酸基を含む)、並びにフェノール、ポリフェノール、アミン、アルコール、及びチオールなどの他の基などの、無機層と(共有結合又は非共有結合で)結合する官能基を含み得る。アクリルシランカップリング剤2-(3-トリメトキシシリルプロピルカルバモイルオキシ)エチルプロパ-2-エン酸、及び米国特許第7,799,888号(Arklesら);同第9,029,586号(Arklesら);同第9,254,506号(Roehrigら);同第9,790,396号(Klunら);同第9,982,160号(Klunら);同第10,011,735号(Klunら)、並びに米国特許出願公開第2015/0203707号(Klunら)及び同第2015/0218294号(Klunら)に示されている他のものが挙げられる。更に、ホスホン酸基を有する好適なカップリング剤としては、米国特許出願公開第2020/0017623号(Yeら)及び国際公開第2020/046654号(Linら)に示されているものが挙げられる。
【0039】
カップリング剤は、多くの場合、最初に第2の層と共有結合的又は非共有結合的に結合され、続いて、第1の層、又は第2の層と結合したカップリング剤のうちの少なくとも1つに結合して、結合カップリング剤を介して、第1の層と第2の層とを一緒に結合する。あるいは、結合カップリング剤は、カップリング剤が第1の層又は第2の層のうちの1つと結合し、別のカップリング剤化合物又は存在する他の光反応性成分(例えば、モノマー、オリゴマー、又はポリマー)とも結合するときに形成されてもよい。これは、カップリング剤が、カップリング剤化合物の長さと少なくとも同じ程の厚さである(又はより厚い)カップリング剤層の一部として存在する場合、より起こりやすい。
【0040】
任意選択的に、結合カップリング剤は、ケイ素、リン、チタン、又はジルコニウムのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、結合カップリング剤は、アクリレート、ウレタン、尿素、アルキレン、ウレイド、イソシアネート、エポキシ、アルコール、アミン、チオール、フェノール、アミノ、酸から選択される少なくとも1つの官能基、ヘテロ原子、並びにケイ素、リン、チタン、又はジルコニウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
第1の層のナノ構造化第1表面が凸状ナノフィーチャを含む場合、結合カップリング剤は凸状ナノフィーチャの一部分に結合される。第1の層のナノ構造化第1表面のナノフィーチャが全て凹状ナノフィーチャである場合、結合カップリング剤は第1の層の主表面の一部分に結合される。いくつかの実施形態では、第2の層の第1主表面は結合カップリング剤を介して第1の層のナノ構造化第1表面の一部分に共有結合されている。本明細書で使用するとき、用語「残基」は、第1の層及び第2の層への結合(共有結合又は非共有結合)を形成することができる基の除去後に残るカップリング剤の部分を定義するために使用される。典型的には、共有結合は非共有結合よりも強い。
【0042】
上述したように、結合カップリング剤は、両末端基が反応中に除去されたときにのみ残基になる。例えば、以下:
【化2】
に示されるカップリング剤2-(3-トリメトキシシリルプロピルカルバモイルオキシ)エチルプロパ-2-エン酸(K90)の「残基」は、-CH
2CH
2OC(O)NHCH
2CH
2-CH
2-である。
【0043】
別の例示的なカップリング剤は、
【化3】
である。
【0044】
このカップリング剤の残基は、-CH2CH2OC(O)CH2CH2-である。
【0045】
場合によっては、例えば、
【化4】
については、カップリング剤残基は共有結合である。
【0046】
カップリング剤の残基は、末端官能基と第1の層及び第2の層との反応後に残るカップリング剤の「コア」である。
【0047】
いくつかの実施形態では、結合カップリング剤は、100ナノメートル(nm)未満、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、又は25nm未満の厚さを有し、かつ5nm以上の厚さを有するカップリング剤層として存在する。このような実施形態では、少なくとも1つの囲まれた空隙は、第1の層のナノ構造化第1表面及びカップリング剤層の第1主表面によって画定される。例えば、
図2B~
図2Cを参照すると、結合カップリング剤はカップリング剤層111として存在し、囲まれた空隙130は、第1の層110のナノ構造化第1表面112及びカップリング剤層111の第1主表面113によって画定される。このような実施形態では、多くの場合、カップリング剤層の第1主表面又はその付近に位置するカップリング剤の分子は、第1の層のナノ構造化第1表面に結合し、一方、カップリング剤層の反対側の主表面又はその付近に位置するカップリング剤の他の分子は、第2の層の第1主表面に結合する。より大きな厚さのカップリング剤層では、より小さな厚さのカップリング剤層よりも多くのカップリング剤分子がカップリング剤層の2つの主表面の間に位置する。任意選択的に、カップリング剤層のバルク内に位置するカップリング剤分子は、第1の層及び第2の層を一緒に結合する際に、互いに及び/又は他の光反応性成分に結合される。
【0048】
いくつかの実施形態では、結合カップリング剤は第2の層の第1主表面を第1の層のナノ構造化第1表面に直接結合する。このような実施形態では、少なくとも1つの囲まれた空隙は、第1の層のナノ構造化第1表面及び第2の層の第1主表面によって画定される。
【0049】
再び
図1を参照すると、示される実施形態では、物品1000は、第1の層110の反対側の第2表面116に付着した第3の層140を更に含む。いくつかの実施形態では、物品1000は、第2の層120の第2主表面124に付着した第4の層150を更に含む。好適な第3の層及び/又は第4の層は無機材料及び有機材料を含み、いくつかの実施形態では、第3の層140、第4の層150、又はその両方はポリマー層を含む。第3の層又は第4の層のいずれか又は両方は基材と称され得る。ポリマー基材に好適な材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETg)などのコポリエステルポリマー、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、脂環式アクリレートなどのアクリレートポリマー又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン、及びキャストセルロースジアセテート、並びにこれらの材料を含む混合物又はコポリマーが挙げられる。基材の厚さは特に限定されず、1マイクロメートル~1センチメートル、5マイクロメートル~1センチメートル、10マイクロメートル~500ミリメートル、又は50マイクロメートル~250ミリメートルの厚さの範囲であり得る。換言すれば、ポリマー基材は、1マイクロメートル以上、2マイクロメートル以上、3マイクロメートル以上、5マイクロメートル以上、7マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、20マイクロメートル以上、35マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、75マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、250マイクロメートル以上、500マイクロメートル以上、750マイクロメートル以上、又は1ミリメートル以上;かつ、1センチメートル以下、9ミリメートル以下、8ミリメートル以下、7ミリメートル以下、6ミリメートル以下、5ミリメートル以下、3.5ミリメートル以下、2.5ミリメートル以下、1ミリメートル以下、0.50ミリメートル以下、0.25ミリメートル以下、又は0.10ミリメートル以下の厚さを有してもよい。更に、追加の好適な基材としては、金属、プラスチック、及びガラスを含む、塗装された又は図柄が印刷された基材を含み得る。
【0050】
特定の実施形態では、第3の層140又は第4の層150の一方又は両方は、ポリマーフィルムを含む。ポリマー「フィルム」は、ロールツーロール方式で加工されるのに十分な可撓性を有しかつ強い、略平坦なシートの形態のポリマー材料である。本明細書で説明される物品中で使用されるポリマーフィルムは、ベースフィルムと称される場合がある。ロールツーロールとは、材料が支持体上に巻き取られるか、又は支持体から巻き出されると共に、何らかの方式で更に加工されるプロセスを意味する。更なるプロセスの例としては、コーティング、ラミネート加工(laminating)、スリット加工、打ち抜き加工、及び放射線への曝露などが挙げられる。ポリマーフィルムは、概ね、約5マイクロメートル~1000マイクロメートルの範囲の、様々な厚さで製造することができる。同様に、第1の層は、ナノ構造化表面以外は概ね平坦なフィルムを含み得る。
【0051】
任意選択的に、第3の層140又は第4の層150の一方又は両方は、低複屈折層を含む。「低複屈折」とは、対象となる1つ以上の波長(例えば、可視又は赤外波長)において25nm以下の光位相遅延を有する層を意味する。層の光位相遅延は、AXOSCAN Mueller Matrix Polarimeter(Axometrics Inc.(Huntsville,AL)から入手可能)などの偏光計を使用して測定することができる。低複屈折層に好適な材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート及び脂環式アクリレートなどのアクリレートポリマー、ポリカーボネートポリマー、シクロオレフィンポリマー及びコポリマー、コポリエステルポリマー(例えば、PETg)、並びにキャストセルロースジアセテートが挙げられる。
【0052】
好ましくは、物品は可視光に対して透過性である。可視光に対して透過性の物品を有することの利点は、多くの用途に対するその好適性である。例えば、物品は、回折格子などの光学素子として、又は拡張現実導波路用途において有用であり得る。
【0053】
第1の層110に好適な材料の例としては、高屈折率有機材料、ナノ粒子で充填されたポリマー材料、高屈折率無機材料で充填されたポリマー、及び高屈折率の共役ポリマーが挙げられる。高屈折率ポリマー及びモノマーの例は、C.Yangらによる、Chem.Mater.7,1276(1995)、及びR.Burzynskiらによる、Polymer 31,627(1990)、及び、米国特許第6,005,137号に記載されており、これら全ての文献は、本明細書に矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。高屈折率無機材料で充填されたポリマーの例は、米国特許第6,329,058号に記載されている。ナノ粒子で充填されたポリマー材料のナノ粒子の例としては、TiO2、ZrO2、HfO2、又は他の無機材料などの高屈折率材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、第1の層110に好適な材料としては、米国特許第8,012,567号(Gaidesら)に記載されているものなどの低屈折率材料、又は米国特許出願公開第2012/0038990号(Haoら)に記載されているものなどの超低屈折率材料が挙げられる。選択された実施形態では、第1の層110は、アクリルポリマー又はコポリマー、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの重合性成分を含む。本明細書で使用するとき、「モノマー」又は「オリゴマー」は、ポリマーに変換できる任意の物質である。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物の両方を指す。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1の層を形成するために使用される重合性組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート官能基を含む(メタ)アクリレートモノマーとして、架橋剤を(例えば単独で)含む。いくつかの実施形態では、架橋性モノマーは、少なくとも4つ、5つ又は6つの(メタ)アクリレート官能基を含む。アクリレート官能基は、(メタ)アクリレート官能基よりも好まれる傾向にある。好ましい市販の架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Company(Exton,PA)より商品名「SR351」で市販されている)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Companyより商品名「SR454」で市販されている)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomer Companyより商品名「SR444」で市販されている)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer Companyより商品名「SR399」で市販されている)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerより商品名「SR494」で市販されている)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomerより商品名「SR368」で市販されている)が挙げられる。
【0055】
有用なマルチ(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーとしては、次のものが挙げられる。
(a)ジ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、及びトリプロピレングリコールジアクリレート、
(b)トリ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、並びに
(c)より多官能性の(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなど。
【0056】
一実施形態では、好適な重合性組成物は、少なくとも1つのモノマー又はオリゴマーの(メタ)アクリレート、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートを含む。典型的には、モノマー又はオリゴマーの(メタ)アクリレートは、マルチ(メタ)アクリレートである。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルを表すために使用され、「マルチ(メタ)アクリレート」は、一般に(メタ)アクリレートポリマーを表す「ポリ(メタ)アクリレート」と対比して、2つ以上の(メタ)アクリレート基を含む分子を表す。ほとんどの場合、マルチ(メタ)アクリレートはジ(メタ)アクリレートであるが、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレートなどを用いることもまた想定される。好適なモノマー又はオリゴマーの(メタ)アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、1-プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、及びt-ブチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリレートは、(メタ)アクリル酸の(フルオロ)アルキルエステルモノマーを含んでもよく、モノマーは部分的に及び/又は完全にフッ素化されており、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレートである。
【0057】
市販のマルチ(メタ)アクリレート樹脂の例としては、三菱レイヨン製のDIABEAMシリーズ;長瀬産業からのDINACOLシリーズ;新中村化学工業製のNK ESTERシリーズ;大日本インキ化学工業製のUNIDICシリーズ、東亞合成製のARONIXシリーズ;NOF Corp.製のBLENMERシリーズ;日本化薬製のKAYARADシリーズ、並びに共栄社化学製のLIGHT ESTERシリーズ及びLIGHT ACRYLATEシリーズが挙げられる。
【0058】
オリゴマーウレタンマルチ(メタ)アクリレートは、例えば、IGM Resinsから「PHOTOMER 6000 Series」、例えば「PHOTOMER 6010」及び「PHOTOMER 6210」という商品名で、また、Sartomer Companyから「CN 900 Series」、例えば「CN966B85」、「CN964」及び「CN972」という商品名で市販品を入手することができる。オリゴマーウレタン(メタ)アクリレートはまた、Surface Specialtiesからも入手可能であり、例えば「EBECRYL 8402」、「EBECRYL 8807」及び「EBECRYL 4827」という商品名で入手可能である。オリゴマーウレタン(メタ)アクリレートはまた、アルキレン又は式OCN-R3-NCOの芳香族ジイソシアネートとポリオールとの初期反応によっても調製することができる。ほとんどの場合、ポリオールは、式HO-R4-OHのジオールであり、ここでR3はC2~100アルキレン基又はアリーレン基であり、R4はC2~100アルキレン基である。アルキレン基及びアリーレン基は、エーテル基又はエステル基を含んでもよい。その場合、中間生成物はウレタンジオールジイソシアネートであり、これは次にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応を起こし得る。好適なジイソシアネートとしては、2,2,4-トリメチルヘキシレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートが挙げられる。一般にはアルキレンジイソシアネートが好ましい。特に好ましい、このタイプの化合物は、ヘキサンジイソシアネート、ポリ(カプロラクトン)ジオール、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートから調製することができる。少なくともいくつかの場合では、ウレタン(メタ)アクリレートは好ましくは脂肪族である。
【0059】
重合性組成物は、同じ又は異なる反応性官能基を有する様々なモノマー及び/又はオリゴマーの混合物であり得る。(メタ)アクリレート、エポキシ、及びウレタンを含む、2つ以上の異なる官能基を含む重合性組成物を用いてもよい。異なる官能性は、異なるモノマー及び/又はオリゴマー部分、又は同じモノマー及び/又はオリゴマー部分に含まれてもよい。例えば、樹脂組成物は、側鎖中にエポキシ基及び/又はヒドロキシル基を有するアクリル又はウレタン樹脂、アミノ基を有する化合物、並びに任意選択で、分子中にエポキシ基又はアミノ基を有するシラン化合物を含んでもよい。
【0060】
組成物は、熱硬化、光硬化(化学線による硬化)、及び/又は電子ビーム硬化などの従来技術を使用して重合可能である。一実施形態では、組成物は、紫外線(UV)及び/又は可視光に曝露することにより光重合される。より全般的には、光重合性組成物は、典型的には、紫外線、電子ビーム放射線、可視放射線、又はこれらの任意の組み合わせなどの化学線を使用して硬化される。当業者は、過度の実験を行うことなく、特定の用途に好適な放射線源及び波長の範囲を選択することができる。
【0061】
従来の硬化剤及び/又は触媒が、重合性組成物中に使用されてもよく、組成物中の官能基に基づいて選択されてもよい。複数の硬化官能基が使用される場合、複数の硬化剤及び/又は触媒が必要となる場合がある。熱硬化、光硬化及び電子ビーム硬化などのうちの1つ以上の硬化技術を組み合わせることは、本開示の範囲内である。
【0062】
更には、重合性組成物は、少なくとも1つの他のモノマー及び/又はオリゴマーを含み得る(すなわち、上記以外の、すなわち、モノマー又はオリゴマーの(メタ)アクリレート、及びオリゴマーのウレタン(メタ)アクリレート)。この他のモノマーは、粘度を低下させ、かつ/又はサーモメカニカル性質を向上させ、かつ/又は屈折率を増加させ得る。これら特性を有するモノマーとしては、アクリル系モノマー(すなわち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類)、スチレンモノマー、エチレン性不飽和窒素複素環が挙げられる。
【0063】
別の官能性を有する(メタ)アクリレートエステルもまた含まれる。このタイプの化合物は、2-(N-ブチルカルバミル)エチル(メタ)アクリレート、2,4-ジクロロフェニルアクリレート、2,4,6-トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェノキシルエチルアクリレート、t-ブチルフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルチオアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、アルコキシ化フェニルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びフェノキシエチルアクリレートによって表される。テトラブロモビスフェノールAジエポキシドと(メタ)アクリル酸の反応生成物もまた好適である。他のモノマーはまた、モノマーN-置換又はN,N-二置換(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドであり得る。これらには、N-アルキルアクリルアミド及びN,N-ジアルキルアクリルアミド、特に、C1~4アルキル基を含有するものが含まれる。例は、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジエチルアクリルアミドである。用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタクリルアミドを意味する。
【0064】
別のモノマーとして使用するのに好適なスチレン化合物としては、スチレン、ジクロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、4-メチルスチレン及び4-フェノキシスチレンが挙げられる。エチレン性不飽和窒素複素環としては、N-ビニルピロリドン及びビニルピリジンが挙げられる。
【0065】
本開示による光重合性組成物は、典型的には、少なくとも1つの光開始剤を含む。好適な例示的光開始剤は、IGM Resins(Waalwijk,The Netherlands)から商品名OMNIRADで入手可能なものであり、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(OMNIRAD 184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(OMNIRAD 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(OMNIRAD 819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(OMNIRAD 2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(OMNIRAD 369)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(OMNIRAD 379)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(OMNIRAD 907)、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]ESACURE ONE(Lamberti S.p.A.,Gallarate,Italy)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR 1173)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(OMNIRAD TPO)、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(OMNIRAD TPO-L)が挙げられる。追加の好適な光開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル、芳香族塩化スルホニル、光活性オキシム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態では、カチオン性光開始剤が、例えば、エポキシ成分を含む組成物中に存在する。更に、熱開始剤はまた、本明細書に記載の光重合性組成物中に任意選択的に存在し得る。例えば、フリーラジカル光開始剤、カチオン性光開始剤、熱光開始剤又はそれらの任意の組み合わせが、光重合性組成物中に存在してもよい。
【0067】
好適なカチオン性光開始剤としては、例えば、ビス[4-ジフェニルスルホニウムフェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Chitec(Houston,TX)からCHIVACURE1176として入手可能)、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メチド、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、[4-(1-メチルエチル)フェニル](4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-[4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、及び(PF6-m(CnF2n+1)m)-(式中、mは1~5の整数であり、nは1~4の整数である)のアニオンを有する芳香族スルホニウム塩(San-Apro Ltd.(Kyoto,JP)製の一価スルホニウム塩であるCPI-200K又はCPI-200Sとして入手可能、San-Apro Ltd.から入手可能なTK-1、又はSan-Apro Ltd.から入手可能なHS-1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施形態では、光開始剤が、光重合性組成物中の重合性成分の(例えば、粒子などの成分を含まない)総重量に基づいて、最大で約5重量%の量で光重合性組成物中に存在する。場合によっては、光開始剤が、光重合性組成物の総重量に基づいて、約0.1~5重量%、0.2~5重量%又は0.5~5重量%の量で存在してもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、熱開始剤は、重合性組成物中の重合性成分の総重量に基づいて、重合性組成物中に、最大約5重量%、例えば、約0.1~5重量%の量で存在する。好適な熱開始剤としては、例えば、限定するものではないが、過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、シクロヘキサンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ヒドロパーオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、2,2,-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、並びにt-ブチルパーベンゾエートが挙げられる。市販の熱開始剤の例としては、VAZO67(2,2’-アゾ-ビス(2-メチルブチロニトリル))、VAZO64(2,2’-アゾ-ビス(イソブチロニトリル))、及びVAZO52(2,2’-アゾ-ビス(2,2-ジメチルバレロニトリル))を含む、商品名VAZOとしてDuPont Specialty Chemical(Wilmington,DE)から入手可能な開始剤、並びにLUCIDOL70としてElf AtochemNorth America,Philadelphia,Pa.から入手可能な開始剤が挙げられる。
【0070】
層を形成するために重合性組成物中に2つ以上の開始剤(例えば、光開始剤及び/又は熱開始剤)が使用される場合、得られる層は、典型的には、層中に存在する第1の開始剤又は開始剤断片及び第2の開始剤又は開始剤断片の両方のいくらかの残量を含む。
【0071】
予想外に、いくつかの実施形態では、物品の第1の層及び第2の層の付着は、5グラム/センチメートル(g/cm)以上、7g/cm以上、10g/cm以上、12g/cm以上、15g/cm以上、17g/cm以上、20g/cm以上、22g/cm以上、25g/cm以上、27g/cm以上、30g/cm以上、32g/cm以上、35g/cm以上、37g/cm以上、40g/cm以上、42g/cm以上、45g/cm以上、47g/cm以上、又は更には50g/cm以上;かつ100g/cm以下、90g/cm以下、80g/cm以下、70g/cm以下、又は60g/cm以下の剥離力を示すのに十分に強い。実施形態では、2つの層が互いに分離する代わりに、第1の層又は第2の層の少なくとも1つ自体が破壊する。層の破壊とは、その構造的完全性を維持することとは対照的に、層が分裂、破砕、断片化等することを意味する。剥離力(又は層破壊)は、以下の実施例に記載される剥離力試験方法を使用して決定することができる。
【0072】
第2の態様では、光学素子が提供される。光学素子は、上記に詳細に記載される第1の態様による物品を含む。例えば、
図3A~
図3Dを参照すると、実施例2の例示的な物品(以下に詳細に記載される)の一部分の断面のSEM画像が示されている。
図3Aは、2,000倍の倍率を有し、複数のナノフィーチャ314を含むナノ構造化第1表面を含む第1の層310と、ガラスを含み、ナノ構造化第1表面のナノフィーチャ114の一部分に付着した第2の層320と、を含む、物品300を示す。この物品300は、第1の層310の反対側の第2表面316に付着した第3の層340を更に含む。第3の層340は、約10マイクロメートルの厚さを有するコポリエステル層を含む。
図3B(すなわち、10,000倍の倍率)を参照すると、第1の層310、ナノフィーチャ314を含むナノ構造化第1表面312、第2の層320、及びナノフィーチャ314の一部分に付着したカップリング剤層311(
図3B~
図3D)が全て示されている。
図3Bの実施形態では、(例えば、凸状の)ナノフィーチャ314の多く、ほとんど、又は全てを取り囲む1つの接続された空隙330が存在する。
図3C及び
図3D(すなわち、100,000倍の倍率)を参照すると、物品(例えば、
図4A参照)の2つの分離されたナノ構造化領域のナノフィーチャ314のいくつかの形状がより明確に見られる。
【0073】
図4Aを参照すると、例えば、実施例2の例示的な物品400の断面の概略図が示されており、層410は、ガラスを含む第2の層420に結合されたナノ構造化表面を含む第1の層であり、複数の囲まれた空隙430を含む。第1の層410に向けられた光入力LIは、入力格子440の位置で物品400に入る。光の一部分は、非結合光NCとして第2の層420を通って物品400を出る。光の一部分は、第2の層420のガラスを導波光として矢印GLの方向に伝搬する。囲まれた空隙430を欠く第1の層410の平面領域を通過した後、伝搬光の一部は、出力格子450において、例えば、4つの出力スポット(例えば、物品400から離れる方向を指す矢印によって示される)において物品400を出る。伝搬光は、様々な角度(例えば、
図4Aの4つの矢印によって示されるように、必ずしも物品に対して垂直ではない)で物品を出ることができる。出射角に影響を及ぼし得る要因としては、例えば、入力結合角、入力格子のナノフィーチャのピッチ、及びガラスと入力格子との間の屈折率差が挙げられる。伝搬光の残りは、散乱光460として第2の層420の艶消し領域425を通って物品400から出る。この物品400は拡張現実導波路用途において有用であり得る。一実施形態では、光学素子は回折格子を含む。
【0074】
図4Bは、使用中の実施例2の物品の写真である。より具体的には、
図4Bは、光入力LIの位置において(例えば、入力格子において)
図4Aの物品400にレーザ光を向けるレーザポインタ470を示す。物品400を通る伝搬に続いて、導波光として、伝搬光455の一部は、物品400を(例えば、出力格子において)出て、例えば、複数の重複する光スポットを提供する。更に、一部の伝搬光は、散乱光460として(例えば、第2の層の艶消し領域を通って)物品400から出る。
【0075】
方法
上述の第1の態様による物品を調製するために、本開示に従う様々な方法を用いてもよい。より具体的には、第3の態様では、物品を製造する方法が提供される。方法は、
a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層であって、ナノ構造化第1表面が、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む、第1の層を得ることと、
b)第2の層の第1主表面をカップリング剤で処理して、カップリング剤を第2の層と結合することであって、第2の層の第1主表面が無機材料を含む、ことと、
c)第2の層の処理された第1主表面を、第1の層のナノ構造化第1表面の一部分と接触させることと、
d)第1の層、又は第2の層と結合したカップリング剤のうちの少なくとも1つを結合して、結合カップリング剤を介して、第1の層と第2の層とを一緒に結合することであって、結合カップリング剤が、第2の層の第1主表面を第1の層のナノ構造化第1表面に直接結合し、又はカップリング剤層として存在する、ことと、を含み、
第1の層のナノ構造化第1表面と、第2の層の第1主表面又はカップリング剤層のいずれかとが、協同して少なくとも1つの空隙を画定する。
【0076】
図5は、本出願による物品を製造する例示的な製造方法のフロー図である。
図5を参照すると、物品を製造するための方法は、ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層であって、ナノ構造化第1表面が、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む、第1の層を得るステップ510を含む。次いで、本方法は、第2の層の第1主表面をカップリング剤で処理して、カップリング剤を第2の層と結合するステップであって、第2の層の第1主表面が無機材料を含む、ステップ520を含む。任意の実施形態では、処理する(例えば、機能化する)ことは、第2の層の第1主表面上にカップリング剤組成物のコーティングを適用することと、組成物を乾燥させることと、を含んでもよい。そのようなカップリング剤組成物は、典型的には、カップリング剤及び溶媒を含む。特定の実施形態では、カップリング剤組成物は、光開始剤又は熱開始剤のうちの少なくとも1つを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、第2の層の処理された第1主表面を洗浄して、未結合の(例えば、未反応の)カップリング剤を除去することを更に含む。
【0077】
本方法は次いで、第2の層の処理された第1主表面を、第1の層のナノ構造化第1表面の一部分と接触させるステップ530を含む。任意の実施形態では、第1の層及び第2の層を共にラミネート加工することによって、第1の層を第2の層と接触させる。層のラミネート加工は周知であり、多くの場合、層のスタックの少なくとも1つの外側主表面を加重ローラーに供する、又はスタックされた層をニップローラーライン若しくはベンチトップラミネータに通すなどのプロセスを伴う。
【0078】
第1の層又は第2の層の主表面に付着した任意の追加の層(例えば、第3の層、第4の層など)を含む実施形態では、追加の層は、好ましくは、第1の層を第2の層と接触させる前に、第1の層又は第2の層のうちの1つに付着させられる。例えば、第1の層の反対側の第2表面は、基材(例えば、層)に付着させることができ、及び/又は第2の層は、基材(例えば、層)に付着させた第2主表面を有することができる。
【0079】
本方法は、第1の層又はカップリング剤のうちの少なくとも1つを結合して、結合カップリング剤を介して、第1の層と第2の層とを一緒に結合(共有結合又は非共有結合)するステップであって、結合カップリング剤が、第2の層の第1主表面を第1の層のナノ構造化第1表面に直接結合し、又はカップリング剤層として存在し、第1の層のナノ構造化第1表面及び第2の層の第1主表面が、協同して少なくとも1つの空隙を画定する、ステップ540を更に含む。任意の実施形態では、ステップ540の結合(例えば、反応)は、第1の層及び/又は第2の層と結合したカップリング剤を化学線に供するステップを含んでもよい。化学線の好適な形態は、紫外線(UV)光、可視光、電子ビーム、ガンマ、又はこれらの任意の組み合わせを含む。あるいは又は加えて、第1の層及び/又はカップリング剤並びに第2の層は、第1の層及び/又は第2の層を熱に供することによって結合される。第1の層又はカップリング剤のうちの1つ以上を第2の層と結合することの利点は、特に、ナノフィーチャが凸状ナノフィーチャである場合、第2の層の主表面は、典型的には、第1の層の主表面全体と接触するのではなく、ナノ構造化第1表面の一部分のみと接触するため、結合が、通常、第1の層及び第2の層の外側主表面に物理的圧力を適用すること(例えば、ラミネート加工(lamination))単独で達成されるよりも、第1の層と第2の層との間により強い接続を作り出すことである。例えば、架橋性材料を反応させることにより、結合カップリング剤を介して、第1の層と第2の層との間に架橋を生成することができる。いくつかの実施形態では、第1の層、又は第2の層と結合したカップリング剤のうちの少なくとも1つは、部分的に硬化した材料を含み、部分的に硬化した材料が反応して、第1の層と第2の層とを一緒に固定する、例えば、2つの層を一緒に共有結合する。任意選択的に、第1の層は、光開始剤、熱開始剤、又はその両方を含む。
【0080】
本開示の選択された実施形態
第1の実施形態では、本開示は、物品を提供する。物品は、a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層と、b)第1主表面と、反対側の第2主表面と、を含む第2の層であって、第1主表面が、第1の層のナノ構造化第1表面の一部分に結合された、第2の層と、を含む。ナノ構造化第1表面は、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む。第2の層は無機材料を含む。物品は、第1の層のナノ構造化第1表面によって部分的に画定された少なくとも1つの囲まれた空隙を含む。
【0081】
第2の実施形態では、本開示は、第2の層の第1主表面が結合カップリング剤を介して第1の層のナノ構造化表面の一部分に結合されている、第1の実施形態に記載の物品を提供する。
【0082】
第3の実施形態では、本開示は、結合カップリング剤が、100ナノメートル(nm)未満、50nm未満、又は25nm未満の厚さを有するカップリング剤層の一部分として存在する、第2の実施形態に記載の物品を提供する。
【0083】
第4の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの囲まれた空隙が、第1の層のナノ構造化第1表面及びカップリング剤層の第1主表面によって画定されている、第3の実施形態に記載の物品を提供する。
【0084】
第5の実施形態では、本開示は、結合カップリング剤が第2の層の第1主表面を第1の層のナノ構造化第1表面に直接結合する、第2の実施形態又は第3の実施形態に記載の物品を提供する。
【0085】
第6の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの囲まれた空隙が、第1の層のナノ構造化第1表面及び第2の層の第1主表面によって画定されている、第1、第2、又は第5の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0086】
第7の実施形態では、本開示は、無機材料が、金属若しくは非金属の、酸化物、窒化物、炭化物、若しくはホウ化物、又はこれらの組み合わせを含む、第1~第6の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0087】
第8の実施形態では、本開示は、無機材料が、チタン、インジウム、スズ、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、アルミニウム、ケイ素、又はこれらの組み合わせの酸化物を含む、第1~第7の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0088】
第9の実施形態では、本開示は、無機材料がガラスを含む、第1~第8の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0089】
第10の実施形態では、本開示は、無機材料が自己支持層の形態である、第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0090】
第11の実施形態では、本開示は、無機材料が、自己支持型ではないコーティング又は層の形態であり、第2の層が、ポリマー材料上に支持された無機材料を含む、第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0091】
第12の実施形態では、本開示は、第2の層が実質的に平面である、第1~第11の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0092】
第13の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの囲まれた空隙がガスを含有する、第1~第12の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0093】
第14の実施形態では、本開示は、第1の層が有機層である、第1~第13の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0094】
第15の実施形態では、本開示は、第1の層がポリマー材料を含む、第1~第14の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0095】
第16の実施形態では、本開示は、第1の層が架橋材料又は架橋性材料を含む、第1~第15の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0096】
第17の実施形態では、本開示は、第1の層がアクリルポリマー又はコポリマーを含む、第1~第16の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0097】
第18の実施形態では、本開示は、結合カップリング剤が、ケイ素、リン、チタン、又はジルコニウムのうちの少なくとも1つを含む、第1~第17の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0098】
第19の実施形態では、本開示は、結合カップリング剤が、アクリレート、ウレタン、尿素、アルキレン、ウレイド、イソシアネート、エポキシ、アルコール、アミン、チオール、フェノール、アミノ、酸から選択される少なくとも1つの官能基、ヘテロ原子、並びにケイ素、リン、チタン、又はジルコニウムのうちの少なくとも1つを含む、第1~第17の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0099】
第20の実施形態では、本開示は、ナノフィーチャの高さが、1マイクロメートル未満かつ少なくとも10ナノメートルである、第1~第19の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0100】
第21の実施形態では、本開示は、ナノフィーチャの幅が、1マイクロメートル未満かつ少なくとも10ナノメートルである、第1~第20の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0101】
第22の実施形態では、本開示は、ナノフィーチャが、少なくとも1つの方向に少なくとも1つの非線形表面を含む、第1~第21の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0102】
第23の実施形態では、本開示は、ナノ構造化第1表面が、凹状フィーチャを含む、第1~第22の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0103】
第24の実施形態では、本開示は、ナノ構造化第1表面が、凹状フィーチャのみを含む、第1~第23の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0104】
第25の実施形態では、本開示は、ナノ構造化第1表面が、凸状フィーチャを含む、第1~第23の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0105】
第26の実施形態では、本開示は、ナノ構造化第1表面が、凸状フィーチャのみを含む、第1~第22又は第25の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0106】
第27の実施形態では、本開示は、剥離力試験によって決定されたとき、5グラム/センチメートル(g/cm)以上、10g/cm以上、20g/cm以上、30g/cm以上、若しくは50g/cm以上の剥離力を示す、又は第1の層若しくは第2の層の破壊を示す、第1~第26の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0107】
第28の実施形態では、本開示は、第2の層が、1ナノメートル、10ナノメートル、50ナノメートル、100ナノメートル、500ナノメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、又は3マイクロメートル超の平均厚さを有する、第1~第27の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0108】
第29の実施形態では、本開示は、第1の層の反対側の第2表面に付着した第3の層を更に含む、第1~第28の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0109】
第30の実施形態では、本開示は、第3の層がポリマー層を含む、第29の実施形態に記載の物品を提供する。
【0110】
第31の実施形態では、本開示は、第3の層が低複屈折層を含む、第29の実施形態又は第30の実施形態に記載の物品を提供する。
【0111】
第32の実施形態では、本開示は、第2の層の第2主表面に付着した第4の層を更に含む、第1~第31の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0112】
第33の実施形態では、本開示は、第4の層がポリマー層を含む、第32の実施形態に記載の物品を提供する。
【0113】
第34の実施形態では、本開示は、第4の層が低複屈折層を含む、第32の実施形態又は第33の実施形態に記載の物品を提供する。
【0114】
第35の実施形態では、本開示は、第2の層が非多孔質である、第1~第34の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0115】
第36の実施形態では、本開示は、第1の層が、第1の開始剤又は開始剤断片及び第2の開始剤又は開始剤断片を更に含む、第1~第35の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0116】
第37の実施形態では、本開示は、第2の層の第1主表面が結合カップリング剤を介して第1の層のナノ構造化第1表面の一部分に共有結合されている、第1~第17の実施形態又は第20~第36の実施形態のいずれか1つに記載の物品を提供する。
【0117】
第38の実施形態では、本開示は、第1~第37の実施形態のいずれか1つに記載の物品を含む光学素子を提供する。
【0118】
第39の実施形態では、本開示は、物品を製造する方法を提供する。本方法は、a)ナノフィーチャを含むナノ構造化第1表面と、反対側の第2表面と、を含む第1の層を得ることと、b)第2の層の第1主表面をカップリング剤で処理して、カップリング剤を第2の層と結合することであって、第2の層の第1主表面が無機材料を含む、ことと、c)第2の層の処理された第1主表面を、第1の層のナノ構造化第1表面の一部分と接触させることと、d)第1の層、又は第2の層と結合したカップリング剤のうちの少なくとも1つを結合して、結合カップリング剤を介して、第1の層と第2の層とを一緒に結合することと、を含み、結合カップリング剤は、第2の層の第1主表面を第1の層のナノ構造化第1表面に直接結合し、又はカップリング剤層の一部分として存在する。ナノ構造化第1表面は、凹状フィーチャ、単一組成で形成された凸状フィーチャ、あるいは、凹状フィーチャ及び凸状フィーチャの両方を含む。第1の層のナノ構造化第1表面と、第2の層の第1主表面又はカップリング剤層のいずれかとが、協同して少なくとも1つの空隙を画定する。
【0119】
第40の実施形態では、本開示は、結合することが、第1の層、第2の層と結合したカップリング剤、又はその両方を、化学線に供することを含む、第39の実施形態に記載の方法を提供する。
【0120】
第41の実施形態では、本開示は、化学線が、紫外(UV)光、可視光、電子ビーム、ガンマ、又はこれらの任意の組み合わせを含む、第40の実施形態に記載の方法を提供する。
【0121】
第42の実施形態では、本開示は、結合することが、第1の層、第2の層と結合したカップリング剤、又はその両方を、熱に供することを含む、第39~第41の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0122】
第43の実施形態では、本開示は、第1の層、第2の層と結合したカップリング剤、又はその両方が、部分的に硬化した材料を含み、部分的に硬化した材料が反応して、第1の層と第2の層とを一緒に共有結合する、第39~第42の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0123】
第44の実施形態では、本開示は、第1の層が、光開始剤、熱開始剤、又はその両方を含む、第39~第43の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0124】
第45の実施形態では、本開示は、第1の層の反対側の第2表面が、基材に付着する、第39~第44の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0125】
第46の実施形態では、本開示は、第2の層が、基材に付着した第2主表面を含む、第39~第45の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0126】
第47の実施形態では、本開示は、接触させることが、第2の層及び第1の層を共にラミネート加工することを含む、第39~第46の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0127】
第48の実施形態では、本開示は、処理することが、第2の層の第1主表面上にカップリング剤組成物のコーティングを適用することと、組成物を乾燥させることと、を含む、第39~第47の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0128】
第49の実施形態では、本開示は、カップリング剤組成物が、カップリング剤、溶媒、及び光開始剤又は熱開始剤のうちの少なくとも1つを含む、第48の実施形態に記載の方法を提供する。
【0129】
第50の実施形態では、本開示は、第2の層の処理された第1主表面を洗浄して、未結合のカップリング剤を除去することを更に含む、第39~第49の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【実施例】
【0130】
本発明の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に説明するが、これらの実施例において述べられる特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。
【0131】
【0132】
試験方法
剥離力試験
スリップ/剥離試験機(Slip/Peel Tester)(iMass,Inc(Accord,MA)から商品名「IMASS SP-2100」で入手)を使用して180°剥離試験を実行することによって、剥離力を評価した。1インチ(2.54cm)幅の3M REMOVABLE REPOSITIONABLE TAPE 665を用いてラミネート(laminate)のガラススライド側をプラテンに取り付けることによって、試験試料をSP-2100のプラテンに取り付けた。ラミネート(laminate)をフィルム/ガラス界面で分離し、フィルムをiMassロードセルに取り付けた。プラテンを毎秒0.508センチメートル(cm/秒)で前進させ、力を10秒間記録した。その時間にわたる平均剥離力を報告した。
【0133】
SEM撮像
フィルム/ガラスラミネート(laminate)試験試料の多層フィルムの外側3層を除去した。試料をペンチで保持し、試料を液体窒素中に浸漬した直後に小さな黄銅ハンマーでラミネート(laminate)を破砕することによって、得られた構造体を断面に切断した。この手順は、ポリマー層の領域が最小の変形で破砕されるように実行された。断面を金属めっきし(<2nm厚のAuPd合金)、試料に影響を及ぼさないことが観察された条件下でHitachi 4700電界放出走査型電子顕微鏡で撮像した。
【0134】
調製例:
最初に540gのHMDIを1000gのTERETHANE 1000に加え、0.38gのジブチルスズ(dibutyultin)ジラウレートを触媒として加えることによって、ポリウレタンアクリレート混合物を調製した。このイソシアネート末端プレポリマーを、1.4gのBHT及び0.1gのMEHQの存在下で239.4gのHEAと更に反応させた。フーリエ変換赤外分光法により2275cm-1付近にイソシアネートピークが存在しなくなったときに、反応が完了したとみなした。次いで、得られたポリウレタンアクリレートを1021gのSR454で希釈した。
【0135】
特に断らない限り、全ての成分を加えた後、樹脂組成物を、約50℃に加温し、ローラーミキサーで12時間混合することによってブレンドした。混合物を均質に見えるまでブレンドした。
【0136】
ポリウレタンアクリレート混合物、SR602、SR601、SR351、及びETERMER 210を、それぞれ60/20/4/8/8の重量比で組み合わせて混合して、樹脂Aを製造した。
【0137】
100部の樹脂Aに対して、IRGACURE TPO、DAROCUR 1173、及びIRGANOX 1035をそれぞれ0.35/0.1/0.2部の重量比で加えて混合することによって、樹脂Bを調製した。
【0138】
PHOTOMER 6210、SR238、SR351、及びIRGACUR TPOを60/20/20/0.5の重量比で組み合わせて混合することによって、樹脂Cを調製した。
【0139】
米国特許第8,530,572号に記載されているもののようなカルボン酸ナノ粒子表面改質剤を使用して、米国特許第9,360,591号の発明実施例として、樹脂Dを調製した。得られた樹脂Dは、633nmの波長において1.67の屈折率を有した。
【0140】
K90、DAROCURE 1173、及び2-プロパノールをそれぞれ0.1/0.002/100の重量比で混合することによって、混合物Aを調製した。
【0141】
国際公開第2019/032635(A1)号(Johnsonら)に記載されている方法を使用して多層フィルムを最初に調製することによって、フィルムAを調製した。得られた多層フィルムは、43マイクロメートルのポリエチレンテレフタレート(PET)層、6~7マイクロメートルの線状トリブロックコポリマー層(「KRATON G1645」)、60重量部のポリプロピレン(「PP9074MED」)と40重量部のトリブロックコポリマー(「KRATON G1645」)とのブレンドを含む6~7マイクロメートルの層、及び15マイクロメートルのコポリエステル層(「EASTAR GN071」)を有していた。樹脂Bを、加熱貯蔵容器から、全て65.5℃に設定した加熱ホース及び加熱ダイを通して、多層フィルムのコポリエステル表面上にダイコーティングした。フィルムのコーティングされた側を、毎分7.6メートル(m/分)の速度でゴム被覆ローラーを使用して、71℃に制御されたスチールローラーに取り付けられたナノ構造化ニッケル表面にプレスした。フィルム上の樹脂Bのコーティング厚さは、コーティングされたフィルムがナノ構造化ニッケル表面にプレスされたときに、ニッケル表面を完全に濡らし、樹脂のローリングビーズを形成するのに十分であった。樹脂コーティングされたフィルムを、ナノ構造化ニッケル表面と接触させながら、100%出力で動作するPhoseon UV LED硬化システム(Phoseon Technologies(Hillsboro,OR)から商品名「FIREJET FJ 300X20AC405-12W」で入手)からの放射線に曝露した。ナノ構造化フィルムAをナノ構造化ニッケル表面から剥離した。
【0142】
フィルムBを、フィルムAを製造するために使用される多層フィルム上に室温で樹脂Cを最初にダイコーティングすることによって調製した。コーティングされたフィルムを、15.2m/分の速度でゴム被覆ローラーを使用して、60℃に制御されたスチールローラーに取り付けられたナノ構造化ニッケル表面にプレスした。ナノ構造化ニッケル表面は、線状ナノ構造化フィーチャの2つの領域を有し、第1のナノ構造化領域は、フィーチャ間の名目ピッチが400ナノメートルであり、第2のナノ構造化領域は、フィーチャ間の名目ピッチが600ナノメートルであった。フィルム上の樹脂Cのコーティング厚さは、コーティングされたフィルムが線状ナノ構造の2つの領域を有するナノ構造化ニッケル表面にプレスされたときに、ニッケル表面を完全に濡らし、樹脂のローリングビーズを形成するのに十分であった。フィルムを、ナノ構造化ニッケル表面と接触させながら、両方とも142W/cmで動作するDバルブを取り付けた2つのFusion UVランプシステム(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD)から商品名「F600」で入手)からの放射線に曝露した。ナノ構造化ニッケル表面からフィルムを剥離した後、フィルムのナノ構造化側を、142W/cmで動作するFusion UVランプシステムからの放射線に再び曝露した。
【0143】
米国特許第6,696,157号(Davidら)及び同第8,664,323号(Iyerら)並びに米国特許出願公開第2013/0229378号(Iyerら)に記載の方法によるケイ素含有剥離層を、平行板容量結合プラズマ反応器内でナノ構造化フィルムに適用した。チャンバは、1.7m2(18.3ft2)の表面積を有する中央円筒型の電力供給された電極を有している。ナノ構造化フィルムを電力供給された電極の上に配置した後、反応器チャンバを1.3Pa(2ミリトル)未満のベース圧力までポンプダウンした。O2ガスを、1000SCCMの流量でチャンバ内に導入した。RF電力を13.56MHzの周波数及び2000ワットの印加電力で反応器内に結合することにより、プラズマ強化CVD法を使用して、処理を実施した。ナノ構造化フィルムを、反応区域の中を9.1メートル/分(30フィート/分)の速度で移動させることによって、処理時間を制御し、結果的におおよその曝露時間は10秒であった。堆積の完了後、RF電力をオフにし、ガスを反応器から排気した。1回目の処理に続いて、チャンバを大気圧に戻すことなく、同じ反応器内で2回目のプラズマ処理を行った。HMDSOガスを約1750SCCMでチャンバ内に流して、9ミリトルの圧力を達成した。続いて、13.56MHzのRF電力を1000Wの印加電力で反応器に結合した。次いで、フィルムを、反応区域の中を9.1メートル/分(30フィート/分)の速度で搬送し、結果的におおよその曝露時間は10秒であった。この処理時間の終わりに、RF電力及びガス供給を停止し、チャンバを大気圧に戻し、得られたフィルムBをチャンバから取り出した。
【0144】
国際公開第2019/032635(A1)号(Johnsonら)に記載されている方法を使用して、フィルムCを調製した。得られた多層フィルムは、43マイクロメートルのポリエチレンテレフタレート(PET)層、6~7マイクロメートルの線状トリブロックコポリマー層(「KRATON G1645」)、70重量部のポリプロピレン(「PP9074MED」)と30重量部のトリブロックコポリマー(「KRATON G1645」)とのブレンドを含む6~7マイクロメートルの層、及び10マイクロメートルのコポリエステル層(「EASTAR GN071」)を有していた。
【0145】
ガラス製顕微鏡用スライド(Fisher Scientific(Pittsburgh,PA)から商品名Premium Microscope Slides,Cat番号12-544-2で入手)を、スライドをオゾンクリーナー(Jelight Company(Irvine,CA)から商品名UVO Cleaner モデル144AXで入手)に5分間入れることによりクリーニングした。混合物Aを数滴、各スライドの前縁に沿って配置することによって、混合物Aをガラススライドに適用した。7番巻線コーティングロッド(RD Specialties,Inc.(Webster NY)から商品名RDS07で入手)を使用して、混合物Aをスライド上に広げた。次いで、混合物Aを周囲条件で約1分間乾燥させた。コーティングされたガラススライドを、76℃に設定されたオーブン内に60分間入れた。
【0146】
実施例1
フィルムAを、ハンドインクローラーを使用して、コーティングされたガラススライドのコーティングされた側にラミネート加工(laminate)した。次いで、ラミネート(laminate)構造体を、毎分25フィート(ft/分)(7.62メートル/分)の速度で、236ワット/センチメートル(W/cm)で動作するDバルブを取り付けたUVランプシステム(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD)から商品名「F600」で入手)からの放射線に曝露した。
【0147】
3つのラミネートを上述の剥離力試験に従って試験し、3つのラミネートの平均剥離力は、23グラム/センチメートル(g/cm)であった。
【0148】
1つのラミネートを、上記のSEM撮像を使用して分析し、得られた画像を
図2A~
図2Cに示す。
【0149】
実施例2
フィルムBを、ナノ構造化側を上にして1.6mm厚のアルミニウムプレートに接着し、次いで、フィルムCの一片を、コポリエステル側を下にしてフィルムBの上に配置し、テープを使用してその前縁に沿ってフィルムBに接着した。樹脂Dのビーズを、2つのフィルムの間の構造体の前縁に沿って配置した。ハンドローラーを使用して2枚のフィルムを一緒にプレスし、樹脂Dを2枚のフィルムの間に広げた。ラミネート加工された構造体を、60℃に設定されたオーブン内に1分間入れた。次いで、アルミニウムプレート、フィルムB、樹脂D、及びフィルムCの構造体を、30.5m/分の速度で、10%出力で動作するPhoseon UV LED硬化システム(「FIREJET FJ 300X20AC405-12W」)からの放射線に曝露した。フィルムC及び硬化樹脂D構造体をフィルムBから除去した。フィルムC及び樹脂D構造体のナノ構造化樹脂D表面を、ガラススライドのコーティングされた側にプレスした。フィルムC、樹脂D、及びガラススライドの構造体を、毎分25フィート(ft/分)(7.62メートル/分)の速度で、236W/cmで動作するDバルブを取り付けたFusion UVランプシステム(「F600」)からのUV光下で、フィルムC側をUVランプシステムに向けてプレスした。
【0150】
フィルムC、樹脂D、及びガラススライドの構造体のフィルムC側から、ポリエチレンテレフタレート、線状トリブロックコポリマー層、及びポリプロピレンとトリブロックコポリマーとのブレンドを含む層を除去することによって、実施例2を調製した。実施例2の第1のナノ構造化領域を、
図4A~
図4Bに示すように、赤色レーザポインタで照射した。第1のナノ構造化領域を介して実施例2に結合されたレーザポインタからの光の一部は、実施例2において伝搬し、伝搬光の一部は、第2のナノ構造化領域において抜かれた。実施例2の第1及び第2のナノ構造化領域を、上述のSEM撮像を使用して分析し、得られた画像を
図3A~
図3Dに示す。
【0151】
上記の特許及び特許出願の全ては、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本出願の開示内容と参照により本明細書に組み込まれたいずれかの文書の開示内容との間に何らかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示内容が優先するものとする。上述の実施形態は本発明を例示するものであり、他の構造もまた可能である。したがって、本発明は、上記に詳細に説明し、添付図面に示した実施形態に限定されるものとみなされるべきではなく、均等物を併せた以下の特許請求の範囲の正当な範囲によってのみ限定されるものである。
【国際調査報告】