IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェネンテック, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-539278バイオ医薬開発中のポリソルベート分解リスクを評価するためのハイスループット蛍光系エステラーゼ活性アッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】バイオ医薬開発中のポリソルベート分解リスクを評価するためのハイスループット蛍光系エステラーゼ活性アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/00 20060101AFI20230906BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230906BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C12Q1/00 Z
C12P21/02 A
G01N33/52 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513621
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021048526
(87)【国際公開番号】W WO2022047416
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/072,656
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/119,451
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/140,592
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/218,103
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イー, リー
(72)【発明者】
【氏名】バルガヴァ, アディティ チャンドラセカール
(72)【発明者】
【氏名】ユク, イン フアム
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B064
【Fターム(参考)】
2G045DA20
2G045FB12
2G045GC15
4B063QA01
4B063QR58
4B063QS28
4B063QX02
4B064AG01
4B064CE09
4B064DA03
(57)【要約】
本開示は、脂肪分解活性を検出するための組成物、方法及びキットを提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、水性アッセイ試料及び有機溶媒を含み、有機溶媒は、4-メチルウンベリフェリルカプリレート(MU-C8)を含む。タンパク質調製物の安定性を決定するための方法も本明細書で提供される。
【選択図】図1A図1B図1C図1D図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の宿主細胞タンパク質(HCP)の酵素活性を決定するためのアッセイであって、前記HCPが加水分解酵素を含み、前記アッセイが、
a)マイクロプレート内で反応混合物を得る工程であって、前記反応混合物が、前記試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質としての4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルとを含む、マイクロプレート内で反応混合物を得る工程;
b)陰性対照を得る工程;
c)前記反応混合物及び前記陰性対照を蛍光シグナルに曝露する工程;
d)前記蛍光シグナルへの曝露から生じる前記反応混合物中の前記蛍光発生基質の非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程であって、前記蛍光生成物が4-メチルウンベリフェロン(MU)である、非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程;並びに
e)工程d)における前記蛍光発生基質の変換に基づいて前記HCP酵素活性を決定及び定量する工程
を含む、アッセイ。
【請求項2】
前記試料が2つ以上の異なるHCPを含む、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
工程e)における前記HCP酵素活性が、前記試料中の2つ以上のHCPの集合的活性を表す、請求項1又は2に記載のアッセイ。
【請求項4】
前記反応混合物が少なくとも2つの異なる蛍光発生基質を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記HCPがエステラーゼを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項6】
前記HCPがカルボン酸エステルヒドロラーゼを含み、前記HCPが任意にリパーゼ及びカルボキシルエステラーゼを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記蛍光発生基質が、8、10、12、16及び/又は18の炭素鎖長を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項8】
前記蛍光発生基質が、4-メチルウンベリフェリルカプリレート(MU-C8)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項9】
前記蛍光発生基質が、4-メチルウンベリフェリルデカノエート(MU-C10)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項10】
前記試料が、原核生物宿主又は真核生物宿主からの生成物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項11】
前記試料が、原核生物宿主又は真核生物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項12】
前記試料が、細菌宿主又は哺乳動物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項13】
前記試料が、IgGフォーマットに基づき、かつ細菌宿主又は哺乳動物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項14】
前記試料が、IgGフォーマットに基づき、かつ大腸菌又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項15】
前記試料が、IgG1 mAb、IgG4 mAb、二重特異性抗体、細菌宿主によって産生されるmAb、及び哺乳動物宿主によって産生されるmAbからなる群から選択される組換えタンパク質を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項16】
前記陰性対照が酵素ブランクである、請求項1~15のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項17】
前記反応混合物中の前記蛍光発生基質が、約0.1~5mM、約0.1~4mM、約0.1~3mM、約0.1~2mM、又は約0.5~1.0mMの濃度を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項18】
前記試料がクロマトグラフィー精製プール試料である、請求項1~17のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項19】
工程b)において、前記試料を、それぞれ300~400nm及び400~500nm、任意に、それぞれ約355nm及び460nmの励起波長及び発光波長を使用して蛍光シグナルの増加に曝露する、請求項1~18のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項20】
工程c)において、前記試料が、任意に、約1~5時間、約1~4時間、約1~3時間、又は約2時間インキュベートされている、請求項1~19のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項21】
工程c)において、前記試料が5~15分ごとにモニターされるか、又は前記試料が、任意に10分ごとにモニターされる、請求項1~20のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項22】
前記反応混合物が、約4~9、約5~9、約6~9、約7~9又は約8のpHを有する、請求項1~21のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項23】
前記酵素活性が、前記試料中のポリソルベート分解に対する加水分解活性のレベルを評価するために使用される、請求項1~22のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項24】
前記アッセイの出力が、加水分解性HCPの除去を改善するための精製プロセスを比較及び選択するために使用される、請求項1~23のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項25】
試料中の宿主細胞タンパク質(HCP)の酵素活性を決定するためのアッセイであって、前記HCPが加水分解酵素を含み、前記アッセイが、
a)前記試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質とを含む反応混合物を得る工程であって、前記蛍光発生基質が4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルであり、前記4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルの前記カルボキシレートエステルが10個以下の炭素を含む、反応混合物を得る工程;
b)1つ以上の時点で前記蛍光シグナルを測定する工程;並びに
c)測定された前記蛍光に基づいて前記HCP酵素活性を決定及び定量する工程
を含む、アッセイ。
【請求項26】
前記4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルの前記カルボキシレートエステルが、8個以下の炭素を含む、請求項25に記載のアッセイ。
【請求項27】
前記4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルが、MU-C8である、請求項25に記載のアッセイ。
【請求項28】
前記4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルが、MU-C10である、請求項25に記載のアッセイ。
【請求項29】
工程c)で決定及び定量された前記HCP酵素活性が、前記試料中の2つ以上のHCPの集合的活性を表す、請求項25に記載のアッセイ。
【請求項30】
前記アッセイが、
a.前記反応混合物と同じ反応緩衝液及び蛍光発生基質を含む陰性対照を得ること;
b.同じ1つ以上の時点で前記陰性対照の前記蛍光シグナルを測定すること;並びに
c.前記反応混合物中で観察された前記蛍光シグナルの量から前記陰性対照中で観察された前記蛍光シグナルの量を差し引くことによって、前記HCP酵素活性を決定及び定量すること
を含む、請求項25~29のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項31】
前記反応混合物が、少なくとも2つの異なる蛍光発生基質を含む、請求項25~30のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項32】
前記HCPがエステラーゼを含む、請求項25~31のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項33】
前記HCPがカルボン酸エステルヒドロラーゼを含み、任意に、前記HCPがリパーゼ及びカルボキシルエステラーゼを含む、請求項25~32のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項34】
前記試料が、原核生物宿主又は真核生物宿主からの生成物を含む、請求項25~33のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項35】
前記試料が、原核生物宿主又は真核生物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項25~34のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項36】
前記試料が、細菌宿主又は哺乳動物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項25~35のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項37】
前記試料が、IgGフォーマットに基づき、かつ細菌宿主又は哺乳動物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項25~36のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項38】
前記試料が、IgGフォーマットに基づき、かつ大腸菌又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主によって産生される組換えタンパク質を含む、請求項25~37のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項39】
前記試料が、IgG1 mAb、IgG4 mAb、二重特異性抗体、細菌宿主によって産生されるmAb、及び哺乳動物宿主によって産生されるmAbからなる群から選択される組換えタンパク質を含む、請求項25~38のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項40】
前記陰性対照が酵素ブランクである、請求項25~39のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項41】
前記反応混合物中の前記蛍光発生基質が、約0.1~5mM、約0.1~4mM、約0.1~3mM、約0.1~2mM、又は約0.5~1.0mMの濃度を有する、請求項25~40のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項42】
前記試料がクロマトグラフィー精製プール試料である、請求項25~41のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項43】
工程b)において、前記試料を、それぞれ300~400nm及び400~500nm、任意に、それぞれ約355nm及び約460nmの励起波長及び発光波長を使用して蛍光シグナルの増加に曝露する、請求項25~42のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項44】
工程c)において、前記試料を、任意に約2時間、約1~5時間、約1~4時間、又は約1~3時間インキュベートする、請求項25~43のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項45】
工程c)において、前記試料が5~15分ごとにモニターされるか、又は前記試料が、任意に10分ごとにモニターされる、請求項25~44のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項46】
前記反応混合物が、約4~9、約5~9、約6~9、約7~9又は約8のpHを有する、請求項25~45のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項47】
前記酵素活性が、前記試料中のポリソルベート分解に対する加水分解活性のレベルを評価するために使用される、請求項25~46のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項48】
前記アッセイの出力が、加水分解性HCPの除去を改善するための精製プロセスを比較及び選択するために使用される、請求項25~47のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項49】
組成物であって、
(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料と、
(b)反応緩衝液、及び少なくとも1つの4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルを含む有機溶媒と
を含み、
前記蛍光発生基質が4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルであり、前記4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルの前記カルボキシレートエステルが10個以下の炭素原子を含む、組成物。
【請求項50】
タンパク質調製物の安定性を決定する方法であって、
a.マイクロプレート内で反応混合物を得る工程であって、前記反応混合物が、前記試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質としての4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルとを含む、マイクロプレート内で反応混合物を得る工程;
b.陰性対照を得る工程;
c.前記反応混合物及び前記陰性対照を蛍光シグナルに曝露する工程;
d.前記蛍光シグナルへの曝露から生じる前記反応混合物中の前記蛍光発生基質の非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程であって、前記蛍光生成物が4-メチルウンベリフェロン(MU)である、非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程;並びに
e.工程d)における前記蛍光発生基質の変換に基づいて前記HCP酵素活性を決定及び定量する工程
を含む、方法。
【請求項51】
加水分解性HCPの除去を改善するためにタンパク質精製プロセスを最適化又は選択する方法であって、前記方法が、
a.マイクロプレート内で反応混合物を得る工程であって、前記反応混合物が、前記試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質としての4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルとを含む、マイクロプレート内で反応混合物を得る工程;
b.陰性対照を得る工程;
c.前記反応混合物及び前記陰性対照を蛍光シグナルに曝露する工程;
d.前記蛍光シグナルへの曝露から生じる前記反応混合物中の前記蛍光発生基質の非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程であって、前記蛍光生成物が4-メチルウンベリフェロン(MU)である、非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程;並びに
e.工程d)における前記蛍光発生基質の変換に基づいて前記HCP酵素活性を決定及び定量する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
タンパク質系生物治療薬は、様々な形態の癌及び免疫媒介障害等の重篤な疾患の処置において顕著な成功を収めている。しかしながら、過去数十年にわたる生物学的治療製造の技術的進歩にもかかわらず、非経口タンパク質製剤は、それぞれが独自の特徴的な欠点及び課題を有する少数の一般的に展開される界面活性剤に制限されている。ポリソルベート(PS)は、生物医薬製剤中の最も一般的なクラスの界面活性剤であり、タンパク質安定化特性、生体適合性及び安全性に関してベンチマークを設定している。最も一般的に使用されるポリソルベート、PS20及びPS80は、脱水ソルビトールのコア、すなわちポリエトキシル化され、脂肪酸、主にPS20中のラウリン酸及びPS80中のオレイン酸でエステル化されたソルビタンとイソソルビドとの混合物からなる。ポリソルベートの分解は、酸化又は化学的加水分解によって起こり得、遊離脂肪酸(FFA)の蓄積をもたらす。経時的な(医薬品の貯蔵寿命中の)分解は、(i)ポリソルベート分解物の不溶性物質に起因する目に見える微粒子の発生;(ii)タンパク質品質への悪影響;(iii)界面応力に対するタンパク質の保護が不十分になる界面活性剤の濃度の低下;及び(iv)製品の安全性プロファイルの潜在的差異をもたらし得るため、懸念事項である。
【0002】
PS分解の主な寄与因子は、宿主細胞タンパク質(HCP)である。タンパク質系治療薬は、哺乳動物又は微生物細胞培養物中で治療用タンパク質を発現させることによって製造されることが多い。タンパク質製剤は、細胞培養上清から発現された標的タンパク質を単離することによって調製される。治療用タンパク質を発現することに加えて、これらの細胞培養物は、タンパク質製剤を汚染し、ポリソルベートを加水分解することができるそれら自体の天然タンパク質、すなわちHCPを産生する。下流の精製プロセスは、上清中に見られるHCPの大部分を治療用タンパク質と共に除去するが、典型的には、微量のHCPが残る。タンパク質製剤で同定されることがあり、加水分解に関連するHCPタンパク質の例には、リソソームホスホリパーゼA2(LPLA2)、推定ホスホリパーゼB様2(PLBL2)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、肝臓カルボキシルエステラーゼB-1様(CES-B1L)、及び肝臓カルボキシルエステラーゼ1様(CES-1L)が含まれる。典型的な製剤(DP)中の加水分解酵素(HCP)の量は非常に少なく、PS分解は高い触媒活性を有する1つ以上の酵素に起因し得るので、所与のタンパク質製剤中のHCPを引き起こす分解の完全な程度及び同一性を測定することは困難である。
【0003】
ポリソルベート分解を検出するための様々な方法が開発されてきた。蒸発光散乱検出器(ELSD)と組み合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、溶液中のインタクトなポリソルベートを測定及び定量するための有用なツールを提供する。ELSDを備えたシャローグラジエント(shallow gradient)逆相クロマトグラフィー法は、ポリソルベートエステル及び亜種の分離及び定性的評価を可能にするが、ロバストな定量は可能にしない。最近、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を備えた逆相超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)を使用してポリソルベート溶液中に見出される脂肪酸を定量することができるFFAアッセイの開発及び実施が報告されている。ポリソルベート分解生成物を定量するための更なる質量分析法も報告されている。これらの方法は時間がかかり、十分なレベルの分解が起こるまでポリソルベート含有量の変化を検出する感度を有さない。
【0004】
エステラーゼ活性の検出のための最近開発された方法は、ポリソルベートエステル結合を模倣するために脂肪酸側鎖を含有するように改変された蛍光発生基質又は発色基質を使用する。ウンベリフェロンのアシルオキシメチルエーテル及び1-アシルオキシ-1-シアノ-3-プロピルエーテルは、過ヨウ素酸塩及びウシ血清アルブミンとの二次反応のために、エステラーゼ及びリパーゼ検出のための安定な蛍光基質として同定されている。4-メチルウンベリフェロン(MU)を用いたエンドポイント及び動態アッセイも報告されている。最後に、EnzChek(商標)のような市販のキットもまた、LPLに対して非常に感受性であることが報告されており、リパーゼ活性をモニタリングするための有用なツールとなり得る。
【0005】
タンパク質治療薬溶液中に存在する微量の加水分解酵素は、検出が困難な場合がある。したがって、これらの酵素の迅速なハイスループット検出のための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
様々な実施形態において、本開示は、試料中の宿主細胞タンパク質(HCP)の酵素活性を決定するためのアッセイであって、HCPが加水分解酵素を含み、アッセイは、マイクロプレート内で反応混合物を得る工程であって、反応混合物が、試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質としての4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルとを含む、マイクロプレート内で反応混合物を得る工程;陰性対照を得る工程;反応混合物及び陰性対照を蛍光シグナルに曝露する工程;蛍光シグナルへの曝露から生じる反応混合物中の蛍光発生基質の非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程であって、蛍光生成物が4-メチルウンベリフェロン(MU)である、非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングする工程;並びに蛍光発生基質の変換に基づいてHCP酵素活性を決定及び定量する工程を含む、アッセイに関する。
【0007】
様々な実施形態において、試料は2つ以上の異なるHCPを含む。様々な実施形態において、HCP酵素活性は、試料中の2つ以上のHCPの集合的活性を表す。様々な実施形態において、反応混合物は、少なくとも2つの異なる蛍光発生基質を含む。様々な実施形態において、HCPはエステラーゼを含む。様々な実施形態において、HCPは、カルボン酸エステルヒドロラーゼを含み、HCPは、任意にリパーゼ及びカルボキシルエステラーゼを含む。様々な実施形態において、蛍光発生基質のHCPは、8、10、12、16及び/又は18の炭素鎖長を有する。様々な実施形態において、蛍光発生基質は4-メチルウンベリフェリルカプリレート(MU-C8)である。様々な実施形態において、蛍光発生基質は、4-メチルウンベリフェリルデカノエート(MU-C10)である。
【0008】
様々な実施形態において、試料は、原核生物宿主又は真核生物宿主からの生成物を含む。様々な実施形態において、試料は、原核生物宿主又は真核生物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料宿主は、細菌又は哺乳動物宿主によって産生された組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料は、原核生物宿主又は真核生物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料は、IgGフォーマットに基づき、かつ細菌宿主又は哺乳動物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料は、IgGフォーマットに基づき、かつ大腸菌又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主によって産生される組換えタンパク質を含む。
【0009】
様々な実施形態において、試料は、IgG1 mAb、IgG4 mAb、二重特異性抗体、細菌宿主によって産生されるmAb、及び哺乳動物宿主によって産生されるmAbからなる群から選択される組換えタンパク質を含む。
【0010】
様々な実施形態において、陰性対照は酵素ブランクである。様々な実施形態において、反応混合物中の蛍光発生基質は、約0.1~5mM、約0.1~4mM、約0.1~3mM、約0.1~2mM、又は約0.5~1.0mMの濃度を有する。様々な実施形態において、試料はクロマトグラフィー精製プール試料である。様々な実施形態において、試料は、それぞれ300~400nm及び400~500nm、任意に、それぞれ約355nm及び460nmの励起波長及び発光波長を使用して、蛍光シグナルの増加に曝露される。様々な実施形態において、試料は、任意に、約1~5時間、約1~4時間、約1~3時間、又は約2時間インキュベートされる。様々な実施形態において、試料は5~15分ごとにモニターされるか、又は試料は、任意に10分ごとにモニターされる。様々な実施形態において、反応混合物は、約4~9、約5~9、約6~9、約7~9又は約8のpHを有する。
【0011】
様々な実施形態において、酵素活性を使用して、試料中のポリソルベート分解に対する加水分解活性のレベルを評価する。様々な実施形態において、アッセイの出力は、加水分解HCPの除去を改善するための精製プロセスを比較及び選択するために使用される。
【0012】
様々な実施形態において、本開示は、試料中の宿主細胞タンパク質(HCP)の酵素活性を決定するためのアッセイであって、HCPが加水分解酵素を含み、アッセイは、(a)試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質とを含む反応混合物を得る工程であって、蛍光発生基質が4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルであり、前記4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルの前記カルボキシレートエステルが10個以下の炭素を含む、反応混合物を工程;(b)1つ以上の時点で蛍光シグナルを測定する工程;並びに(c)測定された蛍光に基づいてHCP酵素活性を決定及び定量する工程、を含む、アッセイに関する。様々な実施形態において、4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルのカルボキシレートエステルは、8個以下の炭素を含む。
【0013】
様々な実施形態において、4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルはMU-C8である。様々な実施形態において、4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルはMU-C10である。様々な実施形態において、工程c)で決定及び定量されたHCP酵素活性は、試料中の2つ以上のHCPの集合的活性を表す。様々な実施形態において、アッセイは、反応混合物と同じ反応緩衝液及び蛍光発生基質を含む陰性対照を得ること;同じ1つ以上の時点で陰性対照の蛍光シグナルを測定すること;並びに反応混合物中で観察された蛍光シグナルの量から陰性対照中で観察された蛍光シグナルの量を差し引くことによってHCP酵素活性を決定及び定量することを含む。様々な実施形態において、反応混合物は、少なくとも2つの異なる蛍光発生基質を含む。様々な実施形態において、HCPはエステラーゼを含む。様々な実施形態において、HCPはカルボン酸エステルヒドロラーゼを含み、任意に、HCPは、リパーゼ及びカルボキシルエステラーゼを含む。
【0014】
様々な実施形態において、試料は、原核生物宿主又は真核生物宿主からの生成物を含む。様々な実施形態において、試料は、原核生物宿主又は真核生物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料宿主は、細菌又は哺乳動物宿主によって産生された組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料は、IgGフォーマットに基づき、かつ細菌宿主又は哺乳動物宿主によって産生される組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料は、IgGフォーマットに基づき、かつ大腸菌又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主によって産生される組換えタンパク質を含む。様々な実施形態において、試料は、IgG1 mAb、IgG4 mAb、二重特異性抗体、細菌宿主によって産生されるmAb、及び哺乳動物宿主によって産生されるmAbからなる群から選択される組換えタンパク質を含む。
【0015】
様々な実施形態において、陰性対照は酵素ブランクである。様々な実施形態において、反応混合物中の蛍光発生基質は、約0.1~5mM、約0.1~4mM、約0.1~3mM、約0.1~2mM、又は約0.5~1.0mMの濃度を有する。様々な実施形態において、試料はクロマトグラフィー精製プール試料である。様々な実施形態において、工程b)において、試料は、それぞれ300~400nm及び400~500nm、任意に、それぞれ約355nm及び約460nmの励起波長及び発光波長を使用して、蛍光シグナルの増加に曝露される。様々な実施形態において、工程c)において、試料は、任意に、約2時間、約1~5時間、約1~4時間、又は約1~3時間インキュベートされる。様々な実施形態において、工程c)において、試料は5~15分ごとにモニターされるか、又は試料は、任意に10分ごとにモニターされる。様々な実施形態において、反応混合物は、約4~9、約5~9、約6~9、約7~9又は約8のpHを有する。様々な実施形態において、酵素活性を使用して、試料中のポリソルベート分解に対する加水分解活性のレベルを評価する。様々な実施形態において、アッセイの出力は、加水分解HCPの除去を改善するための精製プロセスを比較及び選択するために使用される。
【0016】
様々な実施形態において、本開示は、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料、(b)反応緩衝液及び少なくとも1つの4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルを含む有機溶媒を含む組成物に関し、蛍光発生基質は、4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルであり、4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルのカルボキシレートエステルは10個以下の炭素原子を含む。
【0017】
様々な実施形態において、本開示は、タンパク質調製物の安定性を決定する方法であって、(a)マイクロプレート内で反応混合物を得ることであって、反応混合物が、試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質としての4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルとを含む、マイクロプレート内で反応混合物を得ること;(b)陰性対照を得ること;(c)反応混合物及び陰性対照を蛍光シグナルに曝露すること;(d)蛍光シグナルへの曝露から生じる反応混合物中の蛍光発生基質の非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングすることであって、蛍光生成物が4-メチルウンベリフェロン(MU)である、非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングすること;並びに(e)工程(d)における蛍光発生基質の変換に基づいてHCP酵素活性を決定及び定量することを含む、方法に関する。
【0018】
様々な実施形態において、本開示は、加水分解性HCPの除去を改善するためにタンパク質精製プロセスを最適化又は選択する方法であって、当該方法は、(a)マイクロプレート内で反応混合物を得ることであって、反応混合物が、試料と、反応緩衝液と、蛍光発生基質としての4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルとを含む、マイクロプレート内で反応混合物を得ること;(b)陰性対照を得ること;(c)反応混合物及び陰性対照を蛍光シグナルに曝露すること;(d)蛍光シグナルへの曝露から生じる反応混合物中の蛍光発生基質の非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングすることであって、蛍光生成物が4-メチルウンベリフェロン(MU)である、非蛍光状態から蛍光生成物への変換をモニタリングすること;並びに(e)工程(d)における蛍光発生基質の変換に基づいてHCP酵素活性を決定及び定量することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1A~1Eは、アッセイ開発で使用される基質の化学構造を示す:a)4-メチルウンベリフェリルカプリレート(MU-C8);b)4-メチルウンベリフェリルデカノエート(MU-C10);c)4-メチルウンベリフェリルドデカノエート(MU-C12);d)4-メチルウンベリフェリルパルミテート(MU-C16);e)4-メチルウンベリフェリルオレエート(MU-C18:1)。
図2図2は、異なる炭素鎖長の4-メチルウンベリフェロン基質に対する3つのモデル酵素及び3つの精製タンパク質試料のエステラーゼ活性速度及び基質特異性を示す。PCL(20ng/ml)、LPLA2(20ng/ml)、PLBL2(400μg/ml)及び精製タンパク質試料(無溶媒、mAb1~3、150~225mg/ml)を試験した。結果は、単一プレートからの2連試料の平均として報告する;エラーバーは、平均から±1SDを表す。
図3図3A~3Bは、蛍光発生基質としてMU-C8を使用したエステラーゼ活性アッセイの典型的な蛍光時間経過プロファイルを示す。図3Aは、精製mAb2の存在下及び非存在下でのMU-C8インキュベーションからの経時的な蛍光シグナルを示す。精製されたmAb2の存在下での蛍光は、加水分解の総量(酵素的及び非酵素的の両方)を表し、krawを計算するために使用され、mAb2の非存在下での蛍光(酵素ブランク)は、非酵素加水分解(バックグラウンド蛍光)を表し、k非酵素加水分解を計算するために使用される。図3Bは、様々なMU濃度でのインキュベーション時間にわたるMU蛍光の標準曲線を示す(右)。結果は、単一プレートからの二連試料の平均として報告する;エラーバーは、平均から±1SDを表す。
図4図4は、オルリスタットインキュベーション、並びにモデル酵素PCL及びLPLA2(オルリスタットインキュベーションで50ng/ml)、並びに精製mAb1(オルリスタットインキュベーションで25mg/ml)に対してMU-C8基質を使用して測定した対応するエステラーゼ活性速度を示す。結果は、単一プレートからの2連試料又は対照の平均として報告される。エラーバーは、平均から±1SDを表す。
図5図5A~5Cは、エステラーゼ活性アッセイに対するpHの影響を示す。基質を含まない反応緩衝液中のMU蛍光のpH依存性(左上):結果は、3つの独立したプレート調製物にわたる3つの測定値の平均として報告される。反応緩衝液中のMU-C8基質の非酵素加水分解のpH依存性(右上):結果は、3つの独立したプレート調製物にわたる5つの測定値の平均として報告される。モデル酵素PCL及び精製mAb2のエステラーゼ活性速度のpH依存性(下):PCLについての結果を、3つの独立したプレート調製物にわたる3つの測定値の平均として報告する。mAb2についての結果を、合計8つのプレートにわたる2連測定の平均として報告する(1つのpHレベルあたり1つのプレートを試験した)。示されるpH値は、実験終了直後にMU、MU-C8又は試料ウェルから得られた測定値を表す。全てのエラーバーは、平均から±1SDを表す。
図6図6A~6Bは、蛍光発生基質(MU-C8)の存在下での異なる試料マトリックスによる蛍光(上)及び非酵素加水分解(下)の変化を示す。対照(水)と比較して変化を計算した。結果は、2連ウェル測定値の平均として報告される;エラーバーは、平均から±1SDを表す。
図7図7A~7Cは、エステラーゼ活性アッセイに対するタンパク質及び賦形剤の効果に関する研究を示す。MU-C8加水分解に基づくエステラーゼ活性速度を、180mg/mlのmAb4の存在下又は非存在下、異なる濃度のLPLA2で計算した(左上)。MU蛍光を、様々なMU濃度(0、5及び10μM)でmAb1の存在下(50、100、200mg/mL)又は非存在下で測定した(右上)。モデル酵素PCL、精製mAb1(無溶媒)及び精製mAb3(無溶媒)のエステラーゼ活性速度を、対照試料(スパイクなし)、又は0.1%PS20若しくは0.1%PS80を添加した試料(下)について測定した。結果は、2連ウェル測定値の平均として報告される;エラーバーは、平均から±1SDを表す。
図8図8A~8Bは、エステラーゼ活性速度及びポリソルベート分解に対するそれらの影響について、mAb5に使用される3つの精製プロセスの比較を示す。試験した試料は、mAb5(方法A、B及びC)に使用される3つの異なる精製スキームによって生成されたUFDFプールから採取した。精製した試料を蛍光発生MU-C8基質とインキュベートして、エステラーゼ活性速度を評価した(左):結果は2連ウェルの平均として報告する;エラーバーは、平均から±1SDを表す。精製された試料をPS20と製剤化し、各試料のPS20含有量を、HPLC-ELSD法(右)によって40℃で7日間のインキュベーションの前後に測定した:結果は、二重HPLC注入の平均から測定されたPS20含有量の減少パーセントとして報告される。
図9図9A~9Bは、mAb2試料についてのPS80分解速度とエステラーゼ活性との間の相関を示す。C18:1 FFA放出によるPS80分解の速度を、FFAアッセイを使用して決定した(左)。HPLC-ELSD法を用いて、PS80含量低下によるPS80分解率を求めた(右)。PS80分解を、25℃で42日間のインキュベーションの前後に採取した試料で測定した。エステラーゼ活性速度を、MU-C8基質を使用して同じ試料(42日間のインキュベーションなし)について測定した。試験した試料は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞培養採取物に適用された2つの異なる精製プロセススキームから得た;これらのmAb2試料は、精製プロセスの多段階(アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及びUFDF)をカバーした。結果は、2連ウェルの平均として報告され、エラーバーは、平均から±1SDを表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本開示は、酵素活性を検出するため、ポリソルベート分解を検出するため、及びタンパク質製剤の安定性を決定するための組成物、方法、及びキットに関する。高速ハイスループット蛍光系エステラーゼ活性アッセイが現在開発されており、バイオプロセス開発のための定量化及びリスク評価ツールとして有用である。タンパク質調製物及び有機溶媒を含む水性アッセイ試料を含む組成物であって、反応緩衝液及び少なくとも1つの蛍光発生基質を含み、蛍光発生基質が4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルであり、4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルのカルボキシレートエステルが10個以下の炭素を含む組成物を本明細書中に更に提供する。本明細書で提供される組成物及び方法は、タンパク質調製物の安定性の決定、及び/又は加水分解HCPの除去を改善するためのタンパク質精製プロセスを最適化若しくは選択に更に有用である。
【0021】
本明細書に開示されるこのアッセイによって測定されたエステラーゼ活性速度は、ポリソルベート分解速度と相関することが実証されている。様々な実施形態において、蛍光発生基質中のカルボン酸エステル結合の加水分解によって測定されるエステラーゼ活性の増加は、PS20含有量の減少、PS80含有量の減少及び/又はFFAの増加に対応する。本明細書に開示される方法は、バイオプロセス開発中のポリソルベート分解のリスクを迅速かつハイスループットに評価するための適切なアッセイを提供する。本明細書に開示されるアッセイは、高感度であり、広く適用可能であり、多種多様な精製タンパク質及び精製インプロセス(in-process)プール試料タイプ及びマトリックスに適合することが分かっている。
【0022】
様々な実施形態において、タンパク質試料中の宿主細胞タンパク質の酵素活性を測定する方法が提供される。そのようなアッセイは、タンパク質試料、反応緩衝液及び蛍光発生基質を含む反応混合物を得ることを含み得る。代表的なタンパク質試料、反応緩衝液及び蛍光発生基質の非限定的な例を以下に詳細に提供する。様々な実施形態において、反応混合物から放出される蛍光シグナルは、1つ以上の時点で経時的に測定される。本明細書に開示される様々な実施形態の利点の1つは、アッセイが酵素活性の迅速でハイスループットな決定を提供することである。様々な実施形態において、蛍光は、0時間、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、1.1時間、1.2時間、1.3時間、1.4時間、1.5時間、1.6時間、1.7時間、1.8時間、1.9時間、2時間、2.5時間、及び/又は3時間で測定される。様々な実施形態において、蛍光は、30分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間又は3時間の期間にわたって連続的に測定される。
【0023】
様々な実施形態において、反応混合物から放出される蛍光の量は、反応混合物中に存在するHCP酵素活性の量を表す。しかしながら、様々な実施形態において、蛍光の量はまた、非酵素活性を表す場合があり、陰性対照が必要な場合がある。様々な実施形態において、酵素ブランク反応(すなわち、陰性対照)は、各反応混合物/タンパク質試料に対して、試料と同一の緩衝液マトリックスを用いるが、溶液からタンパク質を省いて得られる。様々な実施形態において、このブランク反応は、基質の非酵素加水分解を測定し、反応混合物/タンパク質試料で測定された総加水分解活性から差し引かれて、試料の酵素活性を導出する。酵素ブランク反応速度は、特定の試料マトリックス中の基質の非酵素加水分解速度(k非酵素加水分解)を表す。いくつかの試料バックグラウンド(例えば、酢酸塩、ヒスチジン、アルギニン及び硫酸塩)は、MU反応生成物の蛍光シグナルを変化させたか、又は非酵素加水分解の速度に影響を与えた。したがって、エステラーゼ活性速度を計算する際に、全蛍光シグナルからバックグラウンド蛍光を差し引くことが重要である。これまでに報告されている従来の界面活性剤スパイク及びインキュベーション法並びに他の活性アッセイよりもかなり短い3時間未満の総所要時間を提供することによって、このアッセイは、バイオ医薬品開発中のポリソルベート分解リスクのより迅速な評価を支援することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、対照試料を、脂肪分解活性について水性アッセイ試料と並行して測定する。いくつかの実施形態において、本開示は、水性アッセイ試料中の酵素活性を検出する方法を提供し、本方法は、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステル(4Mu)を含む有機溶媒と組み合わせて、アッセイ組成物を形成すること;(b)タンパク質調製物及びリパーゼ阻害剤を含む対照試料を、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステル(4Mu)を含む有機溶媒と組み合わせて対照組成物を形成すること;並びに(c)アッセイ組成物及び対照組成物中の蛍光によってカルボキシレートエステル及び4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することを含む。いくつかの実施形態において、(a)のタンパク質調製物及び(b)のタンパク質調製物は、同じタンパク質調製物から提供される。例えば、2つのアリコートを取り出すことができる細胞培養物からのタンパク質調製物が得られる。一方のアリコートは水性アッセイ試料のタンパク質調製物であり得、他方のアリコートは対照試料のタンパク質調製物であり得る。いくつかの実施形態において、(a)のタンパク質調製物及び(b)のタンパク質調製物は、実質的に同じ成分を含む。いくつかの実施形態において、(a)のタンパク質調製物及び(b)のタンパク質調製物は、同じレベルの酵素活性を有すると予想される。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料及び対照試料は、対照試料中のリパーゼ阻害剤を除いて実質的に同じ成分を有する。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤を含む対照試料は陰性対照試料であり、すなわち蛍光は検出されないと予想される。いくつかの実施形態では、本方法は、陽性対照試料を更に利用する、すなわち蛍光が予想される。いくつかの実施形態において、陽性対照試料は、既知量の4Muを含む。いくつかの実施形態において、陽性対照試料は、既知量の4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステル及び既知量の活性酵素を含む。
【0025】
本明細書で論じるように、加水分解活性を有する酵素は、タンパク質調製物の成分に干渉し得る。いくつかの実施形態において、加水分解活性を有する酵素は、タンパク質調製物中に存在する脂肪酸及び/又はエステルを加水分解する。いくつかの実施形態において、加水分解活性を有する酵素は、タンパク質調製物中に存在する界面活性剤を加水分解する。いくつかの実施形態において、界面活性剤の加水分解は、タンパク質調製物の安定性を低下させる。本明細書で提供される方法を使用して加水分解活性の量を測定することによって、その後、タンパク質調製物で生じた加水分解のレベルを、測定された加水分解活性の量に基づいて決定することができ、それによってタンパク質調製物の安定性を決定することができる。いくつかの実施形態において、本開示は、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェロンカルボキシレートエステルを含む有機溶媒と組み合わせること、(b)カルボキシレートエステル及び4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を蛍光によって測定すること;並びに(c)測定された蛍光に基づいてタンパク質調製物の安定性を決定することを含む、タンパク質調製物の安定性を決定する方法を提供する。例えば、対照と比較して蛍光の増加は酵素活性の存在を示し、賦形剤、例えばポリソルベート等の界面活性剤が加水分解され、それによってタンパク質調製物中のタンパク質を不安定化し得る非極性、したがって不溶性の長鎖脂肪酸が形成されたことを示す。いくつかの実施形態において、本方法は、医薬製剤のためのタンパク質製剤の安定性を決定するために使用される。
【0026】
タンパク質の調製
様々な実施形態において、本明細書に開示される発明は、精製を受けたタンパク質調製物中の宿主細胞タンパク質の酵素活性を検出する、又はタンパク質調製物の安定性を決定する方法に関する。タンパク質調製物に関連して本明細書で使用される場合、「精製」は、複雑な混合物、典型的には細胞、組織、又は生物から1つ以上の物質、例えばタンパク質が単離されるプロセスを指す。「精製された」タンパク質試料又はタンパク質調製物は、細胞、組織、又は生物の1つ以上の非水溶性成分(例えば、細胞膜、脂質、凝集したタンパク質又は核酸、及び他の疎水性物質等)が減少又は除去され、可溶性成分(例えば、可溶性タンパク質等)のみが残っている試料を指すことができる。本明細書で使用される場合、「可溶性」は、物質が特定の溶媒、例えば細胞培養培地、緩衝液、水又は有機溶媒に溶解する能力を指し得る。タンパク質の文脈において、「可溶性」はまた、特定の溶媒、例えば細胞培養培地、緩衝液、水又は有機溶媒中で沈殿及び/又は凝集しないタンパク質を指すことができる。
【0027】
例示的な精製プロセスは、目的のタンパク質、例えば治療用タンパク質を含有する細胞培養物を増殖させること;培養培地から細胞を分離すること;細胞を溶解し、溶解した細胞を分離して、可溶性成分を含有する細胞培養上清及び本明細書に記載の不溶性成分を含有するペレットを生成すること;並びに、細胞培養上清を緩衝液交換、pH調整、遠心分離、濾過(例えば、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む)、クロマトグラフィー又はそれらの任意の組み合わせに供して精製タンパク質調製物を生成することを含み得る。いくつかの実施形態において、本開示の精製タンパク質調製物は、本明細書に記載の方法によって精製される。いくつかの実施形態において、本開示の部分的に精製されたタンパク質調製物は、本明細書に記載の精製プロセスの一部に供されている。例えば、部分的に精製されたタンパク質調製物は、精製タンパク質調製物を生成するために使用される緩衝液交換、pH調整、遠心分離、濾過、及び/又はクロマトグラフィー工程の全てに供されていない場合がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細胞培養上清は、本開示の治療用タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の部分的に精製されたタンパク質調製物は、本開示の治療用タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の精製タンパク質調製物は、本開示の治療用タンパク質を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「水性」(例えば、水性アッセイ試料)は、水が溶媒である溶液又は試料を指す。したがって、本開示の水性アッセイ試料は、細胞培養培地、緩衝液、タンパク質試料等を含むことができる。いくつかの実施形態において、本開示の水性アッセイ試料は、タンパク質調製物を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は細胞培養上清である。細胞培養上清は本明細書に記載されており、例えば目的のタンパク質を産生するための細胞培養物から得ることができる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、治療用タンパク質である。いくつかの実施形態において、細胞培養上清は、培養細胞を溶解し、例えば遠心分離によって可溶性及び不溶性の成分を分離した後に産生される。培養及びタンパク質産生に適した細胞及び細胞株の例を本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、細胞培養上清は、目的のタンパク質、例えば治療用タンパク質、及び追加の宿主細胞成分を含む。いくつかの実施形態において、追加の宿主細胞成分は、酵素活性を有する追加の宿主細胞タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、追加の宿主細胞タンパク質はリパーゼを含む。いくつかの実施形態において、リパーゼは脂肪分解活性を有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は、部分的に精製されたタンパク質調製物である。部分的に精製されたタンパク質調製物は本明細書に記載されており、例えば、細胞培養物から目的のタンパク質の部分的精製手順(例えば、本明細書に記載の精製プロセス)を経た後に得ることができる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、治療用タンパク質である。いくつかの実施形態において、部分的に精製されたタンパク質調製物は、細胞培養上清と比較して追加の精製工程を経ている。いくつかの実施形態において、部分的に精製されたタンパク質調製物は、治療用タンパク質及び宿主細胞の追加の成分を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞成分は、宿主細胞タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質はリパーゼを含む。いくつかの実施形態において、リパーゼは脂肪分解活性を有する。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、部分的に精製されたタンパク質調製物中の全タンパク質の20%~95%(w/w)、30%~90%(w/w)又は40%~80%(w/w)である。
【0031】
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は、精製タンパク質調製物である。精製タンパク質調製物は本明細書に記載されており、例えば、細胞培養物から目的のタンパク質の精製手順(例えば、本明細書に記載の精製プロセス)を経た後に得ることができる。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質は治療用タンパク質である。いくつかの実施形態において、精製タンパク質調製物は、治療用タンパク質及び宿主細胞の追加の成分である。いくつかの実施形態において、宿主細胞成分は、宿主細胞タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質はリパーゼを含む。いくつかの実施形態において、リパーゼは脂肪分解活性を有する。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、精製タンパク質調製物中の全タンパク質の70%(w/w)超、80%(w/w)超、85%(w/w)超、90%(w/w)超、95%(w/w)超、又は99%(w/w)超である。
【0032】
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は治療用タンパク質を含む。治療用タンパク質の非限定的な例としては、抗体(モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体等)及び抗体断片;タンパク質系ワクチン(例えば、B型肝炎表面抗原等);血液因子(例えば、第VIII因子及び第IX因子等);血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子等);ホルモン(例えば、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン、及びゴナドトロピン等);造血成長因子(例えば、エリスロポエチン及びコロニー刺激因子等);インターフェロン(例えば、インターフェロン-α、インターフェロン-β及びインターフェロン-γ等);インターロイキン系タンパク質(例えば、インターロイキン-12等);腫瘍壊死因子及び治療用酵素等の他のタンパク質が挙げられる。タンパク質治療薬の更なる例は、例えば、Dimitrov,Methods Mol Biol 899:1-26(2012),Lagasse et al.,F1000Res 6:113(2017),and Protein Therapeutics,Eds:Vaughan et al.,2017:Wiley-VCH Verlagに記載されている。治療用タンパク質としては、組換えタンパク質、修飾タンパク質及び融合タンパク質、例えば、抗体-薬物コンジュゲート、抗体-サイトカイン融合物、Fc融合物、二重特異性抗体、多重特異性抗体、アフィボディ融合物、グリコシル化タンパク質及びペプチド等、並びに操作された受容体アンタゴニストが挙げられ得る。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質を含むタンパク質調製物は、医薬製剤に使用される。
【0033】
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は、商業的に重要なタンパク質、例えば工業用酵素を含む。商業的に重要なタンパク質は、医薬品、化学品製造、バイオ燃料、食品及び飲料、並びに消費製品等の様々な産業で使用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は、所望の生成物を生成するためのプロセス内で使用される酵素であるか、又は目的の生成物であり得る。いくつかの実施形態において、商業的に重要なタンパク質は、食品、医薬品合成、バイオ燃料、化学、又は製造産業で使用される。いくつかの実施形態において、産業用酵素としては、限定されないが、パラターゼリポザイム、リポファン、キシロースイソメラーゼ、ブロメライン及びノパザイム(食品産業で使用される)、セルラーゼ及びアミラーゼ(バイオ燃料産業で使用される)、レジナーゼ(製紙産業で使用される)、アミダーゼ(化学産業で使用される)、ノボザイム-435(ミリスチン酸イソプロピルの化粧品製造で使用される)、又はサブチリシン(洗剤で使用される)が挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は医薬賦形剤を含む。薬学的賦形剤は、例えば、製造前、製造中、又は製造後の薬物送達系の処理を助けるため;安定性、バイオアベイラビリティ、又は患者の受容性を保護、支援、又は向上させる;製品の識別を補助、全体的な安全性を高める;使用中の薬物の有効性及び/又は送達を補助するために、;及び/又は保存中の製剤の完全性の維持を補助するために含まれる。医薬賦形剤の非限定的な例としては、界面活性剤、充填剤、希釈剤、結合剤、懸濁化剤、粘性剤、コーティング、香味剤、崩壊剤、着色剤、潤滑剤、流動促進剤、保存剤、甘味料等が挙げられる。いくつかの実施形態において、医薬賦形剤をタンパク質調製物に添加する。いくつかの実施形態において、医薬賦形剤は、精製前、精製後、又は精製中にタンパク質調製物に添加される。
【0035】
いくつかの実施形態において、治療用タンパク質を含むタンパク質調製物を精製し、次いで、一定期間(例えば、4時間未満、8時間未満、1日未満、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、1週間超、約2週間、2週間超、約3週間、3週間超、約1ヶ月超、1ヶ月超、約2ヶ月超、2ヶ月超、約3ヶ月超、又は3ヶ月超)保存する。次いで、タンパク質調製物を本方法に供して脂肪分解活性を検出する。
【0036】
いくつかの実施形態において、医薬賦形剤は界面活性剤である。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、2つの液体間の表面張力又は界面張力を低下させる薬剤を指す。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、組成物の1つ以上の成分の凝集及び/又は沈殿を最小限に抑え、及び/又は溶解度(例えば、表面張力を低下させ、タンパク質表面吸着を阻害することによって;例えば、Agarkhed et al.,AAPS PharmSciTech 14:1-9(2013)を参照されたい)を改善することによって、組成物、例えば本明細書に記載のタンパク質調製物を安定化することができる。医薬組成物中の界面活性剤はまた、活性医薬成分(API)のバイオアベイラビリティを調節すること;APIが好ましい多形体を維持するのを助けること;凝集若しくは解離を防止すること;及び/又は有効成分の免疫原性応答を調節することができる。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、双性イオン性、両性及び/又は両性界面活性剤を含むことができる。界面活性剤の非限定的な例としては、脂肪酸(例えば、ポリソルベート20中のラウリン酸及びポリソルベート80中のオレイン酸)でエステル化されたエトキシル化ソルビタンから誘導されたポリソルベート(例えば、それぞれポリソルベート20、ポリソルベート80としても知られるTWEEN(登録商標)20及びTWEEN(登録商標)80等のTWEEN(登録商標)界面活性剤);チロキサポール;ポロキサマー((例えば、PLURONIC(登録商標)F68LF、PLURONIC(登録商標)L-G2LF、PLURONIC(登録商標)L62D、LUTROL(登録商標)F68、及びKOLLIPHOR(登録商標)P188));ポリオキシエチレンヒマシ油(例えば、例えば、KOLLIPHOR(登録商標)EL)及びその誘導体;Spansとしても知られるソルビタンエステル;ステアリン酸ポリオキシル;レシチン;リン脂質;ポリオキシエチレン界面活性剤(例えば、TRITON(登録商標)(例えば、TRITON(登録商標)X-100)及びBRIJ(登録商標)(例えば、BRIJ(登録商標)35)等);及びポリエトキシル化脂肪酸(例えば、MYRJ(登録商標)S40、MYRJ(登録商標)S100、及びMYRJ(登録商標)52等)が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は脂肪酸を含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤はエステルを含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤はポリソルベートである。ポリソルベートは、脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタンに由来する化合物のクラスであり、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリソルベート21、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート81及びポリソルベート81を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるタンパク質調製物は、ポリソルベートを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤中のポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はそれらの組み合わせである。
【0038】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.001%w/v~約2%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.005%w/v~約2%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.01%w/v~約2%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.02%w/v~約1.5%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.03%w/v~約1.0%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.04%w/v~約0.8%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.05%w/v~約0.6%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.06%w/v~約0.4%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.07%w/v~約0.2%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.08%w/v~約0.15%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.09%w/v~約0.10%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.01%w/v~約0.04%w/vである。いくつかの実施形態において、界面活性剤はポリソルベートである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はそれらの組み合わせである。
【0039】
宿主細胞タンパク質の酵素活性
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は、1つ以上の追加の宿主細胞タンパク質を更に含む。本明細書に記載されるように、タンパク質調製物は、細胞培養物、すなわち目的のタンパク質、例えば治療用タンパク質の宿主細胞を含む細胞培養物から調製される。いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は、1つ以上の追加の宿主細胞タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、追加の宿主細胞タンパク質は、目的のタンパク質、例えば治療用タンパク質と実質的に同じ条件で可溶性である。いくつかの実施形態において、追加の宿主細胞タンパク質は、目的のタンパク質、例えば治療用タンパク質から容易には分離できない。いくつかの実施形態において、追加の宿主細胞タンパク質はリパーゼを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の宿主細胞タンパク質は、脂肪分解活性を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示は、脂肪分解活性の検出のための組成物及び方法に関する。脂肪分解活性、すなわち。脂肪分解は、一般に、脂質の加水分解を指す。脂肪分解反応は、エステラーゼ酵素のサブクラスであるリパーゼ酵素によって触媒することができる。したがって、「リパーゼ」は、脂質、例えばトリグリセリド、リン脂質、コレステリルエステル等のエステル結合を加水分解する酵素を指す。リパーゼには、例えば、トリグリセリドリパーゼ、リポタンパク質リパーゼ、膵臓リパーゼ、肝臓リパーゼ、胃リパーゼ、舌リパーゼ、内皮リパーゼ及びホスファチジルセリンホスホリパーゼが含まれる。リパーゼは、天然に産生される、例えば哺乳動物の膵臓、肝臓、舌腺、胃、甲状腺及び/又は粘膜によって産生される、特定の細菌及び真菌によって分泌される、及び/又はリソソーム内に見出される。いくつかの実施形態において、リパーゼは、タンパク質精製におけるタンパク質が由来した細胞に対して内因性である。いくつかの実施形態において、リパーゼは、タンパク質調製物中の別の生物学的成分、例えばタンパク質調製物に添加された安定化タンパク質を含む生物学的成分に対して内因性である。
【0041】
本明細書で言及される場合、「活性」リパーゼは、脂肪分解を行うことができるリパーゼ(本明細書では「脂肪分解活性」を有するとも呼ばれる)である。タンパク質調製物中に存在する活性リパーゼは、目的のタンパク質、例えば治療用タンパク質が関与する下流プロセスを妨害し得る。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質、例えば治療用タンパク質及びリパーゼを含むタンパク質調製物は、医薬製剤に含まれる。いくつかの実施形態において、賦形剤はタンパク質調製物に添加される。いくつかの実施形態において、賦形剤は、例えば界面ストレスを最小限に抑え、タンパク質凝集を減少させ、及び/又はタンパク質溶解性を改善することによって、タンパク質調製物を安定化する。いくつかの実施形態において、賦形剤は界面活性剤である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、脂肪酸、エステル、又はその両方を含む。いくつかの実施形態において、賦形剤は活性リパーゼによる加水分解を受けやすい。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質及び賦形剤を含むタンパク質調製物中の活性リパーゼの存在は、調製物の安定性を低下させる。したがって、賦形剤のリパーゼ加水分解によって引き起こされる粒子の増加、安全性の懸念(例えば、注射部位反応の増加に起因する)、及び品質の低下等の悪影響を最小限に抑えるために、タンパク質調製物中の脂肪分解活性を確実に検出するために有利である。
【0042】
いくつかの実施形態において、リパーゼは、細胞培養物中の細胞によって産生される。いくつかの実施形態において、リパーゼは、目的のタンパク質を産生するための細胞培養物中の細胞によって産生される。目的のタンパク質の産生に適した細胞の非限定的な例としては、細菌、昆虫、酵母、哺乳動物及び/又はトランスジェニック細胞が挙げられる。細胞株の非限定的な例としては、CHO、HEK293、HT-1080、PER.C6、CAP、VERO、BHK、HeLa、CV1、Cos、MDCK、3T3、NS0、NS1、PC12、W138、Sp2/0、HKB-11、TM4、MMT060562、TR1、MRC5、FS4、骨髄腫細胞株、ハイブリドーマ細胞株及びヘパトーマ細胞株が挙げられる。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を産生するための細胞株は、例えば目的のタンパク質の遺伝子が細胞のゲノムに安定に組み込まれている安定な細胞株である。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を産生するための細胞株は、例えば、細胞が遺伝子を発現するがゲノムに組み込まない一過性細胞株である。
【0043】
蛍光発生基質
様々な実施形態において、本発明は、カルボキシレート酸にエステル化された蛍光色素4-メチルウンベリフェロン(MU)で構成されるモデルエステラーゼ基質4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルを利用する酵素アッセイに関する。蛍光発生基質はインタクトのままクエンチされるが、カルボン酸エステル結合が切断されてMUを放出すると蛍光を検出することができる。カルボキシレートエステルは、任意の炭素長であり得る。好ましい実施形態において、カルボキシレートエステルは、12未満、11未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、又は2未満のエステルを含む。様々な実施形態において、蛍光発生基質は、カプリル酸、8炭素飽和脂肪酸にエステル化された蛍光色素4-メチルウンベリフェロン(MU)で構成される4-メチルウンベリフェリルカプリレート(MU-C8)である。様々な実施形態において、蛍光発生基質はMUC-C10である。
【0044】
いくつかの実施形態において、4Muの蛍光は、加水分解酵素による4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルの加水分解を検出するために使用され、したがって、加水分解活性の指標である。当業者は、(4Mu蛍光によって測定される)4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルの加水分解が、タンパク質調製物において加水分解活性が生じたこと、すなわち、界面活性剤が加水分解された可能性があり、おそらくタンパク質調製物を不安定にしたことを示す可能性があることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、4Muの蛍光は、約330nmの励起波長及び約495nmの発光波長で測定することができる。いくつかの実施形態において、4Muの蛍光は、約327nmの励起波長及び約449nmの発光波長で測定することができる。いくつかの実施形態において、4Muの蛍光は、約300nm~約350nmの励起波長及び約420nm~約500nmの発光波長で測定することができる。いくつかの実施形態において、4Mu(例えば、励起波長及び発光波長)の蛍光測定パラメータは、pHが変化すると変動する。いくつかの実施形態において、4Muの蛍光測定パラメータは、塩濃度及び/又は緩衝剤濃度が変化すると変動する。いくつかの実施形態において、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルは、リパーゼの基質である。いくつかの実施形態において、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルは、本明細書に記載のタンパク質調製物中のリパーゼによって加水分解される。いくつかの実施形態において、4Mu形成は、蛍光によって測定される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のタンパク質調製物を含むアッセイ試料の加水分解活性は、4Muの蛍光によって測定される。
【0045】
緩衝液及び反応条件
いくつかの実施形態において、タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料は、緩衝剤、塩、又はその両方を更に含む。一般に、本開示の塩とは、そのアニオンがOH及びO2-ではないイオン性化合物を指す。いくつかの実施形態において、塩は、組成物中の1つ以上の成分の分解を低減及び/又は防止する。水性アッセイ試料に含めることができる適切な塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を含む)は、当業者が選択することができる。いくつかの実施形態において、塩は、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸ナトリウム(NaCO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、酢酸アンモニウム(NHCHCOO)、硫酸アンモニウム((NHSO)、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、塩は、NaCl、CaCl、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、塩はNaCl及びCaClの両方である。
【0046】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClの濃度は、試料中の脂肪分解活性の正確及び/又は効率的な検出を容易にする。いくつかの実施形態において、NaClは、水性アッセイ試料中で約10mM~約500mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、水性アッセイ試料中で約25mM~約400mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、水性アッセイ試料中で約50mM~約300mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、水性アッセイ試料中で約75mM~約250mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、水性アッセイ試料中で約100mM~約200mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、水性アッセイ緩衝液中で約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、又は200mMである。
【0047】
いくつかの実施形態において、NaClは、最終組成物(水性アッセイ試料及び有機溶媒)中で約10mM~約500mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、最終組成物中で約25mM~約400mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、最終組成物中で約50mM~約300mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、最終組成物中で約75mM~約250mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、最終組成物中で約100mM~約200mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、最終組成物中で約100mM~約140mM、例えば120mMである。いくつかの実施形態において、NaClは、最終組成物中で約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、又は200mMである。
【0048】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のCaClの濃度は、試料中の脂肪分解活性の正確及び/又は効率的な検出を容易にする。いくつかの実施形態において、CaClは、水性アッセイ試料中で約0.1mM~約20mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、水性アッセイ試料中で約0.2mM~約10mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、水性アッセイ試料中で約0.5mM~約5.0mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、水性アッセイ試料中で約0.7mM~約3.0mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、水性アッセイ試料中で約1.0mM~約2.0mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、水性アッセイ試料中で約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1.0mM、約1.1mM、約1.2mM、約1.3mM、約1.5mM、約1.5mM、約1.6mM、約1.7mM、約1.8mM、約1.9mM、約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM、約4.5mM、又は約5.0mMである。
【0049】
いくつかの実施形態において、CaClは、最終組成物(水性アッセイ試料及び有機溶媒)中で約0.1mM~約20mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、最終組成物中で約0.2mM~約10mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、最終組成物中で約0.5mM~約5.0mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、最終組成物中で約0.7mM~約3.0mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、最終組成物中で約1.0mM~約2.0mMである。いくつかの実施形態において、CaClは、最終組成物中で約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1.0mM、約1.1mM、約1.2mM、約1.3mM、約1.5mM、約1.5mM、約1.6mM、約1.7mM、約1.8mM、約1.9mM、約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM、約4.5mM、又は約5.0mMである。
【0050】
いくつかの実施形態において、NaCl及びCaClは、水性アッセイ試料中の1つ以上の成分の分解を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、NaCl及びCaClは、タンパク質、例えば治療用タンパク質の凝集及び/又は沈殿を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、NaCl及びCaClは、水性アッセイ試料中、例えば有機溶媒中にない、組成物中の1つ以上の成分の分解を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、NaCl及びCaClは、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルの自己加水分解を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約10mM~約500mMであり、CaClは約0.1mM~約20mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約25mM~約400mMであり、CaClは約0.2mM~約10mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約50mM~約300mMであり、CaClは約0.5mM~約5.0mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約75mM~約250mMであり、CaClは約0.7mM~約3.0mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約100mM~約200mMであり、CaClは約1.0mM~約2.0mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約150mMであり、CaClは約0.3mMである。
【0051】
本明細書で使用される場合、「緩衝剤」は、溶液のpHを維持するために溶液中で使用される物質を指す。緩衝剤は、溶液を特定のpH範囲(すなわち、所与の範囲内の緩衝能力)に維持し、追加の成分を溶液に添加した場合にpHの急激な変化を防ぐことができる。一般に、緩衝剤は弱酸又は弱塩基であり得る。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、約pH5.0、約pH5.5、約pH6.0、約pH6.5又は約pH7.0の緩衝能を有する。約pH5.0~約pH7.0の緩衝能を有する緩衝剤としては、例えば、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、MES、Bis-Tris、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、Bis-Trisプロパン、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO及びTrisが挙げられる。緩衝剤の緩衝能力は、当業者によって決定することができる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中の緩衝剤は、試料中の脂肪分解活性の正確及び/又は効率的な検出を容易にする。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中の1つ以上の成分の分解を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、タンパク質、例えば治療用タンパク質の凝集を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中、例えば組成物の有機溶媒中にない、組成物中の1つ以上の成分の分解を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルの自己加水分解を低減及び/又は防止する。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性緩衝液として水性アッセイ試料中に提供される。
【0052】
いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約5mM~約200mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約10mM~約100mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約20mM~約80mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約30mM~約70mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約40mM~約60mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中、約10mM、約12mM、約15mM、約18mM、約20mM、約22mM、約25mM、約28mM、約30mM、約32mM、約35mM、約38mM、約40mM、約42mM、約45mM、約48mM、約50mM、約52mM、約55mM、約58mM、約60mM、約62mM、約65mM、約68mM、約70mM、約72mM、約75mM、約78mM、約80mM、約82mM、約85mM、約88mM、約90mM、約92mM、約95mM、約98mM又は約100mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤はBis-Trisである。いくつかの実施形態において、緩衝剤はTrisである。
【0053】
いくつかの実施形態において、緩衝剤は、最終組成物(水性アッセイ試料及び有機溶媒)中で約5mM~約200mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、最終組成物(水性アッセイ試料及び有機溶媒)中で約10mM~約100mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、最終組成物中で約20mM~約80mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、最終組成物中で約30mM~約70mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、最終組成物中で約40mM~約60mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、最終組成物中、約10mM、約12mM、約15mM、約18mM、約20mM、約22mM、約25mM、約28mM、約30mM、約32mM、約35mM、約38mM、約40mM、約42mM、約45mM、約48mM、約50mM、約52mM、約55mM、約58mM、約60mM、約62mM、約65mM、約68mM、約70mM、約72mM、約75mM、約78mM、約80mM、約82mM、約85mM、約88mM、約90mM、約92mM、約95mM、約98mM又は約100mMである。
【0054】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、NaCl、CaCl及び緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約10mM~約500mMであり、CaClは約0.1mM~約20mMであり、緩衝剤は約5mM~約200mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約25mM~約400mMであり、CaClは約0.2mM~約10mMであり、緩衝剤は約10mM~約100mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約50mM~約300mMであり、CaClは約0.5mM~約5.0mMであり、緩衝剤は約20mM~約8mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約75mM~約250mMであり、CaClは約0.7mM~約3.0mMであり、緩衝剤は約30mM~約70mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約100mM~約200mMであり、CaClは約1.0mM~約2.0mMであり、緩衝剤は約40mM~約60mMである。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料中のNaClは約150mMであり、CaClは約0.3mMであり、緩衝剤は約45mM~約55mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤はBis-Trisである。いくつかの実施形態において、緩衝剤はTrisである。当業者は、塩及び緩衝液が一般にタンパク質調製物中に見出され、したがって上記のパーセンテージは例としてのみ提供されることを認識するであろう。
【0055】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料のpHは、4Muの蛍光強度を最大化するように調整される。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料のpHは、水性アッセイ試料及び/又は有機溶媒の1つ以上の成分を安定化するように調整される。いくつかの実施形態において、わずかに酸性から中性のpH(例えば、約5.0~約7.0)は、水性アッセイ試料中の成分の分解を最小限に抑える。いくつかの実施形態において、わずかに酸性から中性のpH(例えば、約5.0~約7.0)は、治療用タンパク質の凝集を最小限に抑える。いくつかの実施形態において、わずかに酸性から中性のpH(例えば、約5.0~約7.0)は、4-メチルウンベリフェリル基質(4Mu)の自己加水分解を最小限に抑える。
【0056】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は酸性pHを有する。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、5.0~7.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9又は約7.0のpHを有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、本明細書に記載の水性アッセイ試料及び有機溶媒を含む。本明細書で使用される場合、「有機溶媒」は、1つ以上の溶質を溶解するために使用することができる炭素系物質を指す。有機溶媒の例としては、限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、及びハロゲン化炭化水素を含む炭化水素;ケトン;アミン;エステル;アルコール;アルデヒド;エーテル;ニトリル;スルホキシド等が挙げられる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、4-メチルウンベリフェリル基質(4Mu)を可溶化することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ニトリル、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アセトニトリル(ACN)を含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒はアルコールを含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒はC~Cアルコールである。いくつかの実施形態において、C~Cアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、又はヘキサノールである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アセトニトリルとアルコールとの混合物を含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アセトニトリルとイソプロパノールとの混合物を含む。いくつかの実施形態において、アセトニトリル及びイソプロパノールは、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1又は約1:1の比で混合される。
【0059】
本明細書に記載の組成物及び方法では、様々な濃度の4Muを使用することができる。一般に、4Muの量は、自己加水分解の影響を最小限に抑えるために最小限にすべきである。いくつかの実施形態において、有機溶媒中の4Muは、約1μM~約1mM、又は約10μM~約500μM、又は約20μM~約200μM、又は約50μM~約150μM、又は約75μM~約125μM、又は約100μMである。
【0060】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載のタンパク質調製物、及び有機溶媒(本明細書に記載の4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルを含む)を含む水性アッセイ試料を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、等体積の水性アッセイ試料及び有機溶媒を含まない。いくつかの実施形態において、タンパク質調製物、特に治療用タンパク質に対する有機溶媒の潜在的な悪影響を最小限に抑えるために、組成物中の有機溶媒の量は、組成物中の水性アッセイ緩衝液の量よりも少ない。例えば、有機溶媒の量が多すぎると、治療用タンパク質が凝集する可能性がある。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約70%~約99.9%であり、有機溶媒は、組成物の体積の約0.1%~約30%である。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約70%~約99.5%であり、有機溶媒は、組成物の体積の約0.5%~約30%である。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約70%~約99%であり、有機溶媒は、組成物の体積の約1%~約30%である。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約75%~約99%であり、有機溶媒は、組成物の体積の約1%~約25%である。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約80%~約98%であり、有機溶媒は、組成物の体積の約2%~約20%である。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約90%~約98%であり、有機溶媒は、組成物の体積の約2%~約10%である。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約95%~約98%であり、有機溶媒は、組成物の体積の約2%~約5%である。
【0061】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、組成物の体積の約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%又は約99.9%である。いくつかの実施形態において、タンパク質調製物は、組成物の体積の約70%~約85%、約75%~約85%、又は約80%~約85%であり、水性アッセイ試料の非タンパク質調製物成分、例えば緩衝剤及び/又は塩は、組成物の体積の約15%~約30%、約15%~約25%、約15%~約20%を構成する。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、組成物の体積の約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%又は約50%である。当業者は、塩及び緩衝液が一般にタンパク質調製物中に見出され、したがって上記のパーセンテージは例としてのみ使用されることを認識するであろう。
【0062】
いくつかの実施形態において、組成物は、リパーゼ阻害剤を更に含む。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、リパーゼを不活性化することによって組成物中の脂肪分解活性を減少又は消失させる。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、脂肪分解活性の検出のための陰性対照を提供するために組成物に含まれる、すなわち、リパーゼ阻害剤を含む組成物は脂肪分解活性を有すると予想されない。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、例えば4Muの蛍光を測定することによって、脂肪分解活性を検出した後で、組成物に添加される。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は水性アッセイ試料中にある。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は水溶性である。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は有機溶媒中にある。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は水溶性ではない。
【0063】
いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中の脂肪分解活性を減少させるか又は消失させるのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中の脂肪分解活性を組成物中で約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%又は約100%低下させるのに十分な濃度である。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約1μM~約50μMである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約2μM~約40μMである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約3μM~約35μMである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約4μM~約30μMである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約5μM~約25μMである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約8μM、約9μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約15μM、約16μM、約17μM、約17μM、約18μM、約19μM、約20μM、約21μM、約22μM、約23μM、約24μM、約25μM、約30μM、約35μM、約40μM、約45μM又は約50μMである。
【0064】
いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤はアルカロイド、例えばカフェイン、テオフィリン及びテオブロミンである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、カロテノイド、例えばフコキサンチンである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、グリコシド、例えば、アクテオシド、ケンペロール-3-O-ルチノシド、ルチン、ケンペロール、ケルセチン、及びルテオリンである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤はポリフェノール、例えばガランギン、ヘスペリジン、リコハルコンA、CT-II、7-フロレコール及びイソリキリチゲニンである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、サポニン、例えば、セシロシド及びキリアノシドである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤はテルペン、例えばクロシン及びクロセチンである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、細菌由来し、例えば、リプスタチン、バリラクトン、ペルシキニン、パンクリシン、エベラクトン、ビブララクトン及びエステルアスパラギンである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、合成リパーゼ阻害剤、例えば天然脂肪の合成類縁体である。リパーゼ阻害剤は、Lunagariya yet al.,EXCLI J 13:897-921(2014)に概説されている。
【0065】
いくつかの実施形態において、本開示は、(a)約90%~約99.9%(vol/vol)の水性アッセイ試料であって、(i)タンパク質及び脂質を含む精製タンパク質調製物と、(ii)緩衝剤と、(iii)約1.0mM~約2.0mM塩化カルシウムと、(iv)約100mM~約200mM塩化ナトリウムとを含む水性アッセイ試料;並びに(b)約10%~約0.1%(vol/vol)のメタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソ-ブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル又はこれらの組み合わせから選択される有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルを更に含む、有機溶媒を含み、水性アッセイ試料が5.0~7.0のpHを有する組成物を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示は、(a)約90%~約99.9%(vol/vol)の水性アッセイ試料であって、(i)タンパク質及びポリソルベート界面活性剤を含む精製タンパク質調製物と、(ii)緩衝剤と、(iii)約1.0mM~約2.0mM塩化カルシウムと、(iv)約100mM~約200mM塩化ナトリウムとを含む水性アッセイ試料;並びに(b)約10%~約0.1%(vol/vol)のメタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソ-ブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル又はこれらの組み合わせから選択される有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルを更に含む、有機溶媒を含み、水性アッセイ試料が5.0~7.0のpHを有する組成物を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示は、(a)約90%~約99.9%(vol/vol)の水性アッセイ試料であって、(i)タンパク質及び脂質を含む部分的に精製されたタンパク質調製物と、(ii)緩衝剤と、(iii)約1.0mM~約2.0mM塩化カルシウムと、(iv)約100mM~約200mM塩化ナトリウムとを含む水性アッセイ試料;並びに(b)約10%~約0.1%(vol/vol)のメタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソ-ブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル又はこれらの組み合わせから選択される有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルを更に含む、有機溶媒を含み、水性アッセイ試料が5.0~7.0のpHを有する組成物を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態において、本開示は、(a)約90%~約99.9%(vol/vol)の水性アッセイ試料であって、(i)タンパク質及び脂質を含む細胞培養上清と、(ii)緩衝剤と、(iii)約1.0mM~約2.0mM塩化カルシウムと、(iv)約100mM~約200mM塩化ナトリウムとを含む水性アッセイ試料;並びに(b)約10%~約0.1%(vol/vol)のメタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソ-ブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル又はこれらの組み合わせから選択される有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルを更に含む、有機溶媒を含み、水性アッセイ試料が5.0~7.0のpHを有する組成物を提供する。
【0069】
更なる実施形態において、本明細書で提供される組成物は、タンパク質調製物中の脂肪分解活性を検出する方法で使用するのに適している。いくつかの実施形態において、本開示は、水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法を更に提供する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本開示は、水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法であって、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルを含む有機溶媒と組み合わせること;並びに(b)オレイン酸塩及び4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を蛍光によって測定することを含む方法を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、本明細書中に記載される水性アッセイ試料である。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、5.0~7.0のpHを有する。
【0072】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、本明細書中に記載される緩衝剤、塩又はその両方を更に含む。本方法に適した緩衝剤及び塩並びにその濃度の例も本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl)、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、塩は、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムである。いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムは、水性アッセイ試料中で約50mM~約400mMである。いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムは、水性アッセイ試料中で約100mM~約200mMである。いくつかの実施形態において、塩化カルシウムは、水性アッセイ試料中で約0.2mM~約10mMである。いくつかの実施形態において、塩化カルシウムは、水性アッセイ試料中で約1.0mM~約2.0mMである。
【0073】
いくつかの実施形態において、緩衝剤は、約pH6.0の緩衝能を有する。いくつかの実施形態において、緩衝剤はTrisである。いくつかの実施形態において、緩衝剤はBis-Trisである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約2mM~約200mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約10mM~約100mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約40mM~約60mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で約45mM~約55mMである。
【0074】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、本明細書に記載の有機溶媒である。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ニトリル、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。いくつかの実施形態において、有機溶媒はアセトニトリルを含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒はアルコールを含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒はC~Cアルコールである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アセトニトリルとイソプロパノールとの混合物を含む。いくつかの実施形態において、アセトニトリル及びイソプロパノールは、約3:1の比で混合される。
【0075】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルである。様々な4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルの構造を本明細書で提供する。いくつかの実施形態において、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルが加水分解して、カルボキシレートエステル及び4-メチルウンベリフェロン(4Mu)を形成する。4Muの構造を以下に示す:いくつかの実施形態において、4Muは蛍光性である。いくつかの実施形態において、4Mu蛍光は、約330nmの励起及び495mmの発光で測定される。
【0076】
いくつかの実施形態において、本方法は、蛍光を24時間まで測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、蛍光は約24時間~約400時間測定される。いくつかの実施形態において、蛍光は約24時間超にわたって測定される。いくつかの実施形態において、蛍光は約100時間超にわたって測定される。いくつかの実施形態において、蛍光は約300時間超にわたって測定される。蛍光測定は必ずしも連続的な測定である必要はなく、所定の時点で測定することができることを理解されたい。いくつかの実施形態において、蛍光は、約12時間~約400時間の間の選択された時点において測定される。いくつかの実施形態において、蛍光は、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、約144時間、約168時間、約192時間、約216時間、約240時間、約264時間、約288時間、約312時間、約336時間、約360時間、約384時間、又は約400時間の時点で測定される。蛍光が測定される期間は、タンパク質調製物中のリパーゼ活性のレベルで選択することができる。例えば、低レベルの脂肪分解活性は、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルのより遅い加水分解のために、より長い検出期間を必要とし得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料及び有機溶媒を、約70:30~約99:1の比で合わせる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料及び有機溶媒を、約75:25~約99:1の比で合わせる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料及び有機溶媒を、約80:20~約98:2の比で合わせる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料及び有機溶媒を、約85:15~約98:2の比で合わせる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料及び有機溶媒を、約90:10~約98:2の比で合わせる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料及び有機溶媒を、約95:5~約98:2の比で合わせる。
【0078】
いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料を、工程(a)の前に約10分~約1時間、リパーゼ阻害剤と共にインキュベートし、タンパク質調製物及び有機溶媒を含む水性アッセイ試料を合わせる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料は、工程(a)の前に約15分間~約45分間、約20分間~約40分間、又は約30分間、リパーゼ阻害剤と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料とリパーゼ阻害剤とのインキュベーションは脂肪分解活性を低下させるか又は消失させる。いくつかの実施形態において、水性アッセイ試料とリパーゼ阻害剤とのインキュベーションは、脂肪分解活性の検出のための陰性対照を提供する。水性アッセイ試料が工程(a)の前にリパーゼ阻害剤とインキュベートされる実施形態において、測定された蛍光は低いと予想され、すなわち脂肪分解活性が低いか又は欠如していることを示す。リパーゼ阻害剤は、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約1μM~約50μMである。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、組成物中で約5μM~約25μMである。
【0079】
キット
いくつかの実施形態において、本開示は、本発明の組成物を提供するのに適したキットを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本発明の方法を達成するために使用することができるキットを提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本開示は、2つ以上の容器に、(a)有機溶媒;(b)4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステル;(c)リパーゼ阻害剤を含むキットを更に提供する。
【0080】
本明細書に記載のキットでは、任意の適切な容器を使用することができる。いくつかの実施形態において、容器はバイアルである。いくつかの実施形態において、容器はボトルである。いくつかの実施形態において、各容器は多区画容器の区画である。いくつかの実施形態において、有機溶媒及び4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルは第1の容器内にあり、リパーゼ阻害剤は第2の容器内にある。いくつかの実施形態において、有機溶媒及びリパーゼ阻害剤は第1の容器内にあり、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルは第2の容器内にある。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤及び4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルは第1の容器にあり、有機溶媒は第2の容器にある。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤及び有機溶媒は第1の容器内にあり、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステル及び有機溶媒は第2の容器内にある。いくつかの実施形態において、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルは、固体、例えば粉末として提供される。いくつかの実施形態において、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルは、溶液中、例えば有機溶媒中で提供される。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、固体、例えば凍結乾燥粉末等の粉末として提供される。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、溶液中、例えば有機溶媒中で提供される。上記の実施形態のいずれかにおいて、(a)有機溶媒;(b)4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステル;及び/又は(c)リパーゼ阻害剤は、所定の特定量のタンパク質調製物を受け入れるためにそれぞれの容器に含めることができ、各成分の量は、本明細書に記載の脂肪分解活性を決定する方法を実施するのに十分である。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載の方法のように、キットを利用して脂肪分解活性を決定するための説明書を更に含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、キットは、緩衝剤、塩、又はその両方を更に含む。適切な緩衝剤及び塩は、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、キットのユーザは、キットと共に使用するためのタンパク質調製物を提供する。いくつかの実施形態において、ユーザのタンパク質調製物は、キットでの使用に適していない緩衝液、例えば、4-メチルウンベリフェリルカルボキシレートエステルの自己加水分解及び/又はリパーゼ阻害剤の分解を促進する緩衝液中にある。いくつかの実施形態において、キットは緩衝液交換カラムを提供する。いくつかの実施形態において、緩衝液交換カラムは、ユーザのタンパク質調製物の緩衝液を、本明細書で提供されるキットと共に使用するのに適した緩衝液に交換する。緩衝液交換カラムの例と指定は、限定されないが、THERMO FISHE製のZEBA(登録商標)カラム、GE HEALTHCARE製のPD-10(登録商標)、SEPHADEX(登録商標)、HIPREP(登録商標)、及びHITRAP(登録商標)カラム、SARTORIUS製のVIVAFLOW(登録商標)及びVIVASPIN(登録商標)濃縮器、BIO-RAD製のBIO-SPIN(登録商標)及びECONO(登録商標)カラム、並びにG-BIOSCIENCES製のSPINOUT(登録商標)カラムが挙げられる。
【0082】
本明細書に記載のキットのカラムは、緩衝系を交換するために使用することができる。この目的のために使用されるカラムは当業者に公知である。例えば、カラムを使用して、タンパク質調製物中の緩衝液を、本明細書に記載の脂肪分解活性を測定する方法を実施するのにより適した緩衝液に交換することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示は、(a)4-メチルウンベリフェリル基質(4Mu)を含む有機溶媒;(b)タンパク質調製物の緩衝液を交換するのに適したカラム;(c)リパーゼ阻害剤を含むキットを提供する。
【0084】
本開示のキットに適した有機溶媒には、本明細書に記載の有機溶媒が含まれる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ニトリル、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。いくつかの実施形態において、有機溶媒はアセトニトリルを含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒はアルコールを含む。いくつかの実施形態において、有機溶媒はC~Cアルコールである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、アセトニトリルとイソプロピルアルコールとの混合物を含む。
【0085】
本開示のキットに適したリパーゼ阻害剤には、本明細書に記載のリパーゼ阻害剤が含まれる。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。いくつかの実施形態において、リパーゼ阻害剤は、本明細書に記載の脂肪分解活性を決定する方法を実施する場合、対照として使用される。
【0086】
本開示のキットに適した塩には、本明細書に記載の塩が含まれる。いくつかの実施形態において、塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、塩は、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムである。
【0087】
本開示のキットに適した緩衝剤には、本明細書に記載の緩衝剤が含まれる。いくつかの実施形態において、緩衝剤はTrisである。いくつかの実施形態において、緩衝剤はBis-Trisである。
【0088】
いくつかの実施形態において、キットは、脂肪分解活性を決定するためのアッセイを実施するための説明書を更に含む。いくつかの実施形態において、アッセイは、本明細書中に記載される方法を含む。
【0089】
特許、特許出願、論文、教科書等を含む本明細書に引用された全ての参考文献、及びそれらに引用された参考文献は、それらがまだない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
定義
本明細書の説明は例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されよう。本出願では、特に明記しない限り、単数形の使用は複数形を含む。
【0091】
本明細書で使用されるいかなる項目の見出しも、構成上の目的のみのためであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。本出願で引用された全ての文書、又は文書の一部(特許、特許出願、記事、書籍、及び論文)は、任意の目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本開示に従って利用される場合、以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0092】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という単語と組み合わせて使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という単語は、1つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の(another)」又は「更なる(a further)」は、少なくとも第2又はそれ以上を意味し得る。
【0093】
本出願を通して、「約」という用語は、値が、値を決定するために使用されている方法/装置の誤差の固有の変動、又は研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、「約」という用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%より大きな変動未満を包含することを意味する。いくつかの実施形態において、当業者は、本明細書で使用される文脈により、「約」という用語によって示される変動性のレベルを理解するであろう。「約」という用語の使用は、具体的に列挙された値も含むことも理解されるべきである。
【0094】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示されない限り、又は代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物と「及び/又は」のみを指す定義を支持する。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等の含む任意の変形又は形態)、「有する(having)」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」等の、有するの任意の変形又は形態)、「含む(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」等の、)又は「含有する(containing)」(及び「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」等の含むの任意の変形又は形態)は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を排除しない。本明細書で論じられる任意の実施形態は、本開示の任意の方法、組成物、及び/又はキットに関して実施することができると考えられる。さらに、本開示の組成物は、本開示の方法及びキットを達成するために使用することができる。
【0096】
「例えば(for example)」という用語及びその対応する略語「例えば(e.g)」の使用は、(イタリック体であるか否かにかかわらず)列挙された特定の用語が、特に明記しない限り、参照又は引用された具体的な例に限定されることを意図しない本開示の代表的な例及び実施形態であることを意味する。
【0097】
本明細書で使用される場合、「間」は、範囲の端部を含む範囲である。例えば、xとyとの間の数は、明示的に、数x及びy、並びにx及びy内に入る任意の数を含む。
【0098】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」、「ペプチド」又は「ポリペプチド」は、任意の長さであり得るアミノ酸のポリマー形態を指す。タンパク質には、例えば、抗体、構造タンパク質、酵素、膜、膜結合及び/又は膜貫通タンパク質、輸送体、受容体、シグナル伝達タンパク質等が含まれ得る。本開示のタンパク質及び/又はペプチドはまた、例えば、薬物、標的化部分、可視化タグ等のタグ等の1つ以上の非ペプチド物質にコンジュゲートされた修飾タンパク質を包含する。本開示のタンパク質は、例えば、疾患又は障害の診断、処置、及び/又は予防に使用される治療用タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリソルベートは、医薬製剤中のタンパク質の安定性を改善することができる。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は抗体である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は抗体-薬物コンジュゲートである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のタンパク質調製物は、タンパク質、例えば治療用タンパク質を含む。
【0099】
「単離された」という用語は、(i)通常見られる少なくともいくつかの他のタンパク質を含まない;(ii)同じ供給源、例えば同じ種からの他のタンパク質を本質的に含まない;(iii)自然界で関連しているポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、又は他の材料の少なくとも約50%から分離されている;(iv)自然界で関連していないポリペプチドと(共有結合又は非共有結合相互作用によって)作動可能に関連している;又は(v)自然界では存在しないことを意味する。
【0100】
ポリペプチド(例えば、抗原結合分子)の「変異体」は、1つ以上のアミノ酸残基が別のポリペプチド配列と比較してアミノ酸配列に挿入、欠失及び/又は置換されているアミノ酸配列を含む。変異体には、例えば、融合タンパク質が含まれる。
【0101】
「誘導体」という用語は、アミノ酸(又は核酸)の挿入、欠失、又は置換以外の化学修飾を含む分子を指す。特定の実施形態において、誘導体は、限定されないが、ポリマー、脂質、又は他の有機若しくは無機部分との化学結合を含む共有結合修飾を含む。特定の実施形態において、化学的に修飾された抗原結合分子は、化学的に修飾されていない抗原結合分子よりも大きい循環半減期を有することができる。いくつかの実施形態において、誘導体抗原結合分子は、限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールを含む1つ以上の水溶性ポリマー付着を含むように共有結合的に修飾される。
【0102】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)には、標準的な技術を使用することができる。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って、又は当技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように実施することができる。前述の技術及び手順は、一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従って、本明細書を通して引用及び議論される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されているように実行することができる。例えば、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0103】
本明細書で使用される場合、「実質的に」又は「本質的に」という用語は、基準量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量又は長さと比較して約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%高い量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量又は長さを指す。一実施形態において、「本質的に同じ」又は「実質的に同じ」という用語は、基準量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量又は長さとほぼ同じ量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量又は長さの範囲を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」及び「本質的に含まない」という用語は互換的に使用され、細胞集団又は培養培地等の組成物を説明するために使用される場合、特定の物質を含まない、例えば95%含まない、96%含まない、97%含まない、98%含まない、99%含まない、又は従来の手段で測定して検出不能な組成物を指す。同様の意味は、組成物の特定の物質又は成分の非存在を指す「非存在」という用語にも適用することができる。
【0105】
本明細書で使用される場合、「認識できる」という用語は、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量若しくは長さの範囲、又は1つ以上の標準的な方法によって容易に検出可能な事象を指す。「認識不可能」及び「認識できない」という用語及び等価物は、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量若しくは長さの範囲、又は標準的な方法では容易に検出できない若しくは検出不可能な事象を指す。一実施形態において、事象は、それが5%、4%、3%、2%、1%、0.1%、0.001%、又はそれ未満の時間で発生する場合、認識できない。
【0106】
本明細書を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「追加の実施形態」、又は「更なる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における前述の語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせられることができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ヒドロラーゼ」という用語は、ヒドロラーゼ(EC3)として知られる酵素のEnzyme Commission(EC)主要クラスに属する宿主細胞タンパク質(HCP)を指す。本明細書で使用される場合、「エステラーゼ」という用語は、エステル結合に作用するヒドロラーゼのサブクラスに属するHCPを意味する。本明細書で使用される場合、「カルボン酸エステルヒドロラーゼ」という用語は、リパーゼ及びカルボキシルエステラーゼ等の公知のカルボン酸エステルヒドロラーゼの酵素のヒドロラーゼサブクラスに属するHCPを意味する。本明細書で使用される場合、「蛍光発生基質」という用語は、4-メチルウンベリフェリルオレエートを任意に除外し得る。本明細書で使用される場合、「HCP酵素活性」という用語は、蛍光発生基質中のエステル結合を加水分解するためのHCP酵素活性速度を決定することを意味する。実施形態において、試料中のHCP酵素活性を決定することは、試料中の全てのHCPの集合的な活性を決定することを意味する。
【実施例
【0108】
実施例1.改善されたMU系エステル基材及びアッセイ条件
当技術分野におけるリパーゼアッセイを改善するために、以下の追加の因子を調査した:(1)最も感受性の高い基質を同定するためのいくつかのMU系エステル基質;(2)より広い関連性を実証するためのいくつかのモデル酵素;(3)多様な製品への適用性を確保するための異なるフォーマット及び産生宿主を網羅するいくつかのmAb;(4)潜在的なアッセイ干渉を同定するためにタンパク質製剤で一般的に使用される範囲に及ぶ複数の緩衝マトリックス;(5)バイオプロセス及び製剤試料に対する適用性を評価するための、精製インプロセスプール及び異なる配合を有する精製材料を含む異なる試料マトリックス;(6)特異性、精度、検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)を特性評価するアッセイ性能;(7)ポリソルベート分解の対応するリスクを区別するためのいくつかの精製スキーム;(8)エステラーゼ活性とポリソルベート分解との間の相関を決定するためのFFA及びポリソルベートレベル;並びに(9)より高いスループット及びより速いアッセイ所要時間のためのマイクロプレートフォーマット。これらの調査を通して、本発明者らは、4-メチルウンベリフェリルカプリレート(MU-C8)蛍光発生基質に対するエステラーゼ活性を検出することによってポリソルベート分解のリスクを評価するために使用することができる迅速な(総所要時間<3時間)ハイスループットのプレートベースのアッセイを開発した。
【0109】
1.材料及び方法
1.1.材料
使用される試薬としては、トリス塩基及び塩化トリス(Sigma Aldrich)、Triton X-100(US Biological)、アラビアガム(Acros Organics)、4-メチルウンベリフェロン(MU)及びウンベリフェロン反応生成物(Sigma Aldrich、純度>98%)、オルリスタット(Sigma、純度>98%)及びジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。4-メチルウンベリフェリルカルボキシレート基質を購入するか、又はカスタム合成し、使用前にDMSOに可溶化した。4-メチルウンベリフェリルカプリレート(MU-C8、Research Organics、純度99%)、4-メチルウンベリフェリルデカノエート(MU-C10、Santa Cruz Biotechnology、純度98%)、4-メチルウンベリフェリルドデカノエート(MU-C12、Hande Sciences、純度>99%)、4-メチルウンベリフェリルパルミテート(MU-C16、Biosynth、純度>99%)及び4-メチルウンベリフェリルオレエート(MU-C18:1、Chemodex、純度>95%)を使用し、化学構造を図1に示す。使用したモデル酵素は、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ(PCL、Sigma Aldrich、35U/mg)、リソソームホスホリパーゼA2(LPLA2、自社製)及びホスホリパーゼB様2(PLBL2自社製)であった。使用した7つのモノクローナル抗体(mAb1-mAb7)は自社で製造した。これらのmAbを、種々の分子フォーマット及び産生宿主を含む一連の産物を網羅するように選択した:mAb1及び5~7はIgG1であった;mAb2~4は、1つの二重特異性抗体を含むIgG4であった;mAb3は細菌宿主大腸菌によって産生されたが、他のmAbはCHO系統の哺乳動物宿主によって産生された。試験した全ての精製タンパク質(すなわち、mAb)試料は、特に明記しない限り、限外濾過透析濾過(UFDF)プールからのものであった。UFDFプールを生成するために、CHO又は大腸菌(E.coli)採取物をクロマトグラフィーステップを通してUFDF段階まで精製し、最終的に57~225mg/mlのmAb濃度をもたらした。全てのプレート(96ウェル、カタログ番号3882、Corning)を、SpectraMax M2/M2e(Molecular Devices)又はSynergy Neo2(Biotek)プレートリーダーを使用して読み取った。
【0110】
1.2.エステラーゼ活性アッセイ
エステラーゼ活性アッセイは、エステル結合の切断を介した非蛍光基質4-メチルウンベリフェリル脂肪酸エステルの蛍光生成物MUへの変換を監視する。反応混合物は、80μlの反応緩衝液(150mM塩化トリスpH8.0、0.25%(w/v)Triton X-100及び0.125%(w/v)アラビアガム)、1mMの最終濃度の10μlの基質、及び10μlのモデル酵素溶液又はタンパク質試料を含んでいた。各緩衝液成分の濃度は、社内アッセイ開発研究(データは示さず)に基づいて選択した。0.01%アラビアガムを含むpH8.0の50mMの塩化トリスランニング緩衝液を以前に使用して、リパーゼ及びエステラーゼ活性アッセイにおける活性速度を決定した(Nalder TD,et al.,Biochimie.2016;128-129:127-132)。Triton X-100は、ビス(4-メチルウンベリフェリル)ホスフェートの加水分解を促進することが示された(Jones CS,et al.,Biochim Biophys Acta.1982;71(3):261-268.)。
【0111】
モデル酵素を水で所望の濃度に希釈した。タンパク質試料は、精製インプロセスプール試料又はUFDFプールからの精製タンパク質試料からなった。タンパク質試料を無溶媒でアッセイして十分な蛍光シグナルを得るか、無溶媒試料で観察された速度が高い(>10μM MU/h)ことが分かった場合は2~4倍に希釈した。反応を96ウェルプレートにセットアップし、プレートリーダーにおいて反応プレートを37℃で2時間インキュベートすることによって蛍光シグナル(それぞれ355nm及び460nmの励起波長及び発光波長を使用)の増加を10分ごとに監視した。(酵素加水分解及び非酵素加水分解からの)総加水分解活性を表すMUの生成速度は、30分~120分の蛍光時間経過の勾配から導出され、反応生速度(kraw)によって示される。
【0112】
酵素ブランク反応(すなわち、陰性対照)を各試料に必要とし、試料と同一の緩衝液マトリックスを用いたが、酵素(又はタンパク質溶液からのタンパク質)は省略した。このブランク反応は、基質の非酵素加水分解を測定し、これを総加水分解活性から差し引いて試料の酵素活性を導いた。酵素ブランク反応速度は、特定の試料マトリックス中の基質の非酵素加水分解速度(k非酵素加水分解)を表す。
【0113】
酵素加水分解速度は、本明細書ではエステラーゼ活性速度と呼ばれる。所与の試料について、反応生速度から非酵素加水分解速度を差し引き、相対蛍光単位/時間(RFU/h)からの蛍光シグナルをμMのMU/時間(μM MU/h)に変換することによって、エステラーゼ活性速度を決定した。この変換は、同じプレート上で遊離MU生成物の標準曲線を描くことによって支持された。アッセイ測定値を複製物間で平均し、エラーバーは平均からの1の標準偏差(±1SD)を表す。エステラーゼ活性速度の計算は、式1によって記述される:
式中
raw=RFU/hでの試料の反応生速度、
非酵素加水分解=RFU/hでの酵素ブランクの反応速度、
α=RFU/μM MU中のMUの濃度に対する蛍光シグナルの計算された変換係数
【0114】
1.3.基質特異性
基質特異性実験で使用したMU基質を図1に示す。PCL、LPLA2、PLBL2、mAb1、mAb2、及びmAb3を、様々な鎖長を有する5つの4-メチルウンベリフェリルカルボキシレート基質(MU-CX、X=カルボキシレート基の炭素数)で試験した。基質をDMSOに溶解して0.5mMの最終基質濃度にしたが、これは先に記載したアッセイ設定に対してなされた唯一の改変であった。エステラーゼ活性速度は、先に記載したように全ての試料について計算した。
【0115】
1.4.オルリスタット阻害
DMSO中のオルリスタット原液を各阻害反応について新たに調製した。精製mAb1(225mg/ml無溶媒、インキュベーション中は25mg/ml)、PCL(50ng/ml)及びLPLA2(50ng/ml)を、0、0.5、1及び10μMの最終オルリスタットインキュベーション濃度でオルリスタットと共に室温で2~3時間インキュベートした後、エステラーゼ活性アッセイによる測定を行った。mAb1製剤緩衝液又は水(モデル酵素希釈に使用)をオルリスタットと共にインキュベートすることによって、酵素ブランク(陰性対照)試料を調製した。MU標準曲線はまた、対応する試料マトリックス中の変換係数aの正確な決定を支持するために、試験試料と同じ濃度のオルリスタット及びDMSOを含んでいた。酵素ブランク(陰性対照)ウェルによって測定したバックグラウンド蛍光について速度を調整した。先に記載したように、全ての試料について、μM MU/時間でのエステラーゼ活性速度を計算した。
【0116】
PS20分解に対するオルリスタットの効果を調べるために、mAb2(28mg/mL)、mAb6(22mg/ml)及びmAb7(22mg/ml)のアフィニティークロマトグラフィー精製試料を、オルリスタット(0.2μM及び20μM)又はオルリスタットなしのDMSO(10%v/v)の存在下、室温で5時間インキュベートした。次いで、試料にPS20(0.04%v/v)及びメチオニン(20mg/ml)をスパイクし、25℃で12日間インキュベートした。インキュベーション後、試料を、以前に詳細に記載されたように(Cheng Y,et al.,J Pharm Sci.2019;108(9):2880-2886).FFA分解物(ラウリン酸)を定量することによってPS20加水分解について分析した。
【0117】
1.5.pH依存性
異なるpHでのPCL及びmAb2のエステラーゼ活性を、蛍光発生基質としてMU-C8を使用して特性評価した。150mMの塩化トリス系ランニング緩衝液を、7~9の拡張pH範囲の試験を可能にするように調整した。pH4~6でアッセイするために、150mM酢酸ナトリウム緩衝液を利用した。使用前に各緩衝液のpHを測定して、緩衝液が標的pHの0.1単位以内に調製されたことを確認した。アッセイ中のpHドリフトが最小であることを確認するために、Apix-pHロボット(AB対照)によってエステラーゼ活性アッセイを実施した直後に、各試料及び対照ウェルのpHを測定した。測定されたpH値を利用して、pH依存性プロファイルをプロットした。
【0118】
1.6.試料マトリックス干渉
MUの非酵素加水分解速度及び蛍光強度に対する試料マトリックス(すなわち、緩衝液組成)の影響を、蛍光発生基質としてMU-C8を使用して評価した。酢酸ナトリウムpH5.5(20及び50mM)、酢酸トリスpH5.5(20及び500mM)、塩化ヒスチジンpH5.5(20及び50mM)、塩化トリスpH8.0(20及び200mM)、塩化HEPES pH8.0(20及び200mM)、塩化アルギニン(500及び1000mM)、塩化ナトリウム(500及び1000mm)及び硫酸ナトリウム(500及び600mM)を試料マトリックス研究で評価した。
【0119】
1.7.タンパク質及び賦形剤の干渉
エステラーゼ活性アッセイとの潜在的なタンパク質干渉を決定するために、0、20、50、及び100ng/ml(最終濃度)のモデル酵素LPLA2に、180mg/mlのmAb4でスパイクして、又はスパイクせずに、十分に混合して直ちにアッセイした。LPLA2をスパイクしなかった試料については、LPLA2の代わりに水を添加した。この研究に加えて、各タンパク質濃度レベルにおいて、0、5又は10μMのMUを含有する標準アッセイ反応緩衝液(基質なし)と混合した0~200mg/mlのmAb1について、蛍光シグナルを測定した。反応ウェルにスパイクするために使用されるMUのストック濃度を調整し、体積付加を一定(10μL)に保つことによって、MU濃度を達成した。蛍光に対するタンパク質干渉を、ウェル内の測定された蛍光をタンパク質(試験)と比較することによって、及びタンパク質なし(ブランク)と比較することによって、完全な混合後に評価した。最後に、典型的な製剤賦形剤(PS20及びPS80)からの潜在的なアッセイ干渉を、PCL、精製mAb1又は精製mAb3に0.1%PS20又は0.1%PS80をスパイクすることによって試験した。対照試料(スパイクなし)は、PS20又はPS80でスパイクする代わりに、等量の水を添加することによって生成した。全ての試料を十分に混合し、室温で30分間インキュベートした後、蛍光発生基質としてMU-C8を使用してエステラーゼ活性についてアッセイした。
【0120】
1.8.アッセイ性能の特性評価
エステラーゼ活性アッセイの特異性、精度(再現性及び中間精度)、LOD及びLOQを、mAb精製インプロセスプール試料を用いて決定した。異なるレベルのエステラーゼ活性を網羅するために、3種類のmAb試料を選択した:(1)mAb1(220mg/mLのUFDFプール試料)は高いエステラーゼ活性を示した;(2)mAb6(57mg/mlのUFDFプール試料)は、中程度のエステラーゼ活性を示した;(3)mAb2(12mg/mlのアフィニティープール試料)は低いエステラーゼ活性を示した。最初に、アッセイ特異性及び精度を、2つのアッセイセッションにわたって6つのプレートを使用して評価した。1プレートあたり10個の試料の試料サイズ(n)を使用して、再現性に関するアッセイ精度を評価した。アッセイの中間精度は、異なるロットの試薬から調製された試料を使用して2人の分析者によって評価され、次いで、異なるロットのプレートを用いた別々の試験セッションで分析された。アッセイ特異性を、試料において測定されたMU-C8加水分解速度と、式2に従って計算された緩衝液ブランク(陰性対照)との間の最小差によって評価した:
式中、
平均試料=試料のMU-C8加水分解速度の平均、
SD試料=試料のMU-C8加水分解速度の標準偏差、
平均緩衝液=緩衝液のMU-C8加水分解速度の平均、
SD緩衝液=緩衝液のMU-C8加水分解速度の標準偏差。
【0121】
次に、LOD及びLOQを、3つのプレート(プレートあたりn=12)における3つの緩衝系について評価した:(i)pH5.5の50mM酢酸トリス;(ii)pH5.5の50mM塩化ヒスチジン;及び(iii)200mM塩化アルギニン試料マトリックス干渉研究の結果に基づいて緩衝液を選択した。アッセイLODは、エステラーゼ活性速度(CIエステラーゼ活性速度)についての片側95%信頼区間の2倍として決定した。アッセイLOQを、片側95%CIエステラーゼ活性速度の6倍として決定した。緩衝液ブランクで測定された非酵素加水分解を、エステラーゼ活性速度の計算(式1)において差し引いたため、緩衝液ブランクのMU-C8加水分解速度の平均値は、エステラーゼ活性アッセイのLOD及びLOQの計算に含めなかった。片側95%のCIエステラーゼ活性速度を、式3を使用して計算した:
【0122】
1.9.遊離脂肪酸(FFA)アッセイ
mAb2精製インプロセス及び精製されたUFDFプール試料におけるPS80分解を、PS80との25℃での42日間のインキュベーションの前後にFFAを定量することによって測定した。この方法は、Tomlinson et al.(Mol Pharm.2015;12(11):3805-3815)によって以前に開発され、記載された。簡潔には、Oasis HLB樹脂を使用してFFAポリソルベート分解物を試料から抽出し、I-ピレニルジアゾメタンで一晩誘導体化し、Acquity PDA検出器及びAcquity BEH-300 C18逆相カラムを備えたUHPLCを使用してクロマトグラフィーによる分析を行った。
【0123】
1.10.ポリソルベート含有量アッセイ
mAb5精製UFDFプール試料中のPS 20分解を、Hewitt et al.(2008;1215(1-2):156-160)によって以前に詳述されたHPLC-ELSD法によってPS20含有量(40℃で7日間のインキュベーションの前後)を定量することによって決定した。同じHPLC-ELSD法を使用してPS80含有量(25℃で42日間のインキュベーションの前後)を定量することによって、mAb2精製インプロセス及び精製UFDFプール試料におけるPS80分解を決定した。簡潔には、ポリソルベートと製剤化した試料を、混合モードで操作したHPLCに無溶媒で注入した。疎水性ポリソルベートをWater Oasis MAXカートリッジカラムに保持し、段階勾配によって溶出し、ELSDによって単一ピークとして定量した。
【0124】
2.結果
2.1.基質特異性
MU系蛍光発生基質を試験するために選択された3つのモデル酵素は、主なクラスの加水分解酵素(EC3)のエステラーゼ(EC3.1)のサブクラスに属するカルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC3.1.1)のサブクラスに含まれる。PCL、LPLA2及びPLBL2は、ポリソルベート中に存在するカルボン酸エステル結合を加水分解することができる一連の酵素を網羅するように選択した。精製されたmAb1~3を、異なるIgGサブクラス(IgG1及びIgG4)及び産生宿主(CHO及び大腸菌)を含むように選択した。これらのモデル酵素及びmAbは、ポリソルベートを分解すると予想されたので、エステラーゼ活性アッセイの陽性対照として役立つことを意図した。これらの実験に対し、MU-C16等のより長い鎖長を有する基質の溶解度限界のために、0.5mMの最終基質濃度を選択した。
【0125】
基質特異性実験(図2)は、モデル酵素が試験した炭素鎖長の2つ以上についてMUエステルに対する活性を示したが(例えば、3つ全ての酵素がMU-C8及びMU-C10を加水分解した)、タンパク質試料がMU-C8基質に対して最も高い感度を示したことを示す。このため、MU-C8をエステラーゼ活性アッセイの一次基質として選択した。したがって、MU-C8は、以降の全ての研究で使用される蛍光発生基質であった。
【0126】
2.2.エステラーゼ活性アッセイ
エステラーゼ活性アッセイ(MU-C8基質を使用)における酵素ブランクの反応生速度(kraw)及び反応速度((k非酵素加水分解)を示す典型的な蛍光時間経過プロットを図3(左)に示す。krawは精製mAb2の存在下で生成され、MU-C8のカルボン酸エステル結合の加水分解切断に対する全活性(酵素加水分解及び非酵素加水分解の両方)を示す。k非酵素加水分解は、精製mAbの非存在下で生成され(すなわち、陰性対照)、MU-C8の非酵素加水分解からのバックグラウンド蛍光を示す。MU標準曲線(MU-C8基質なし)の経時的な蛍光トレースは、30~120分のアッセイ期間にわたって各MU濃度で加水分解反応生成物(MU)の定常シグナルを示す(図3、右)。蛍光の初期変化は、室温から37℃へのアッセイプレートの平衡化及びこの初期期間(0~30分)後の蛍光シグナルの安定化に起因する。kraw、k非酵素加水分解、及びMU蛍光は、反応条件(例えば、pH、試料及び緩衝液マトリックス)に特異的である。したがって、酵素ブランクは、あらゆる試料タイプ及びアッセイ条件について陰性対照として含まれなければならならず、酵素ブランクは、エステラーゼ活性速度を計算する際のバックグラウンド蛍光を説明する。
【0127】
2.3.オルリスタット阻害
オルリスタットは、PPL、微生物リパーゼ、及び哺乳動物カルボキシルエステラーゼを阻害するが、効力は異なる。したがって、オルリスタットをエステラーゼ活性アッセイの陰性対照としてここに含めた。オルリスタット阻害を検出するアッセイの能力を評価するために、mAb1並びにモデル酵素PCL及びLPLA2をスパイクし、オルリスタットとプレインキュベートし、次いでエステラーゼ活性について試験した。図4に示すように、DMSO対照(0μMオルリスタット)と比較して、オルリスタットで処置したmAb1について、エステラーゼ活性速度の用量依存的減少が観察された。さらに、試験したオルリスタットの濃度について、PCL及びLPLA2モデル酵素によるエステラーゼ活性の完全な阻害が観察された。
【0128】
mAb試料におけるポリソルベート分解の阻害に対するオルリスタットの効果を直接調べるために、mAb2、mAb6及びmAb7についてのアフィニティークロマトグラフィー精製CHO細胞培養採取物をオルリスタットと共に又はオルリスタットなしでインキュベートした。ラウリン酸は、PS20加水分解からの一次分解物であり、したがって、試料中に存在する最も豊富で確実に定量されたFFA種である。ラウリン酸放出速度は、試料中の加水分解PS20分解速度を示すであろう。PS20分解の阻害に対するオルリスタットの有効性を、オルリスタット処置なしの同じ試料と比較した、オルリスタット処置ありのmAb試料におけるFFA放出速度の低下率を計算することによって評価した(表1)。例えば、オルリスタット処置による加水分解PS20分解の完全な阻害は、FFA放出速度の100%の減少をもたらすであろう。エステラーゼ活性アッセイによって評価したmAb 1のオルリスタットインキュベーションからの知見(図4)と同様に、オルリスタット阻害の用量依存的影響がmAb2、6、及び7について観察された。FFA放出速度の低下によって示されるPS20分解速度の低下が、陰性対照(0μMオルリスタット)と比較してオルリスタットで処置した試料で観察された。
【表1】
報告された結果は、オルリスタット処置なしの試料(陰性対照)と比較したものである。FFA放出速度をラウリン酸に基づいて測定し、PS20分解速度を示した。
【0129】
2.4.pH依存性
次の研究では、MU-C8の酵素加水分解及び非酵素加水分解のpH依存性を調査した。これらの実験のため、アッセイ実行緩衝液を、150mM酢酸ナトリウム(pH4~6)及び150mM塩化トリス(pH7~9)からなるように調整した。図5に示すトレースは、反応が完了した後の各試料ウェルについての測定pH値(実験開始前に各緩衝液について測定)を示し、標的pHと実験直後に測定された試料のpHとの間の観察されたオフセットは小さかった。公称pH4~9の範囲からの基質のMU蛍光及び非酵素加水分解を図5に示す(上段の左及び右)。酵素の非存在下であるが基質及び反応緩衝液の存在下で測定した、pHによる非酵素加水分解速度の増加は、MU-C8加水分解のpH依存性を強調している(図5、右上)。
【0130】
試料(タンパク質を含む)及び陰性対照(タンパク質を含まない)ウェルからの蛍光シグナルの分離を慎重に監視して、信頼性の高い試料シグナルを確保した。PCLのpH依存性プロファイルは、mAb2で観察された傾向とは異なる依存性を示す(図5、下)。PCLはより低いpH最適値を示すが、精製mAb2(UFDFプール)試料はより高いpH最適値を示す。エステラーゼ活性アッセイの目的は、mAb2試料によって表される精製インプロセスプール及び精製材料(例えば、UFDFプール、原薬又は製剤)において加水分解酵素活性を検出することであるため、pH8.0をこのアッセイのデフォルトpHとして選択した。
【0131】
2.5.緩衝液マトリックス干渉
アッセイに対する緩衝マトリックスの効果を評価するために、8つの一般的に使用される製剤緩衝液及び塩を試験した。図6は、水(黒色で示す)と比較した、異なる試料マトリックスによる平均MU蛍光及び基質非酵素加水分解を示す。試料濃度は、精製プロセス及び原薬又は製剤処方との関連性に基づいて選択した。各緩衝液又は塩を2つの濃度で評価した。水対照と比較して、高濃度(500mM)の酢酸TrisはMU蛍光を20%超減少させ、500mM及び600mMの硫酸ナトリウムはMU蛍光を10~20%増加させた。さらに、非酵素加水分解速度は、高レベルの酢酸トリス(500mM)で減少し、試験した塩化ヒスチジン(20-50mM)及び塩化アルギニン(500-1000mM)のレベルで増加した。他の全ての条件は、水対照と比較して、MU蛍光又は非酵素速度の10%を超える変化をもたらさなかった。
【0132】
2.6.タンパク質及び賦形剤の干渉
アッセイに対するタンパク質産物(例えば、インプロセス精製プール又は精製mAbから)の潜在的な影響を調査するために、3つのタンパク質干渉実験を行った。図7(左上)の平行線によって示されるように、最大100ng/mlのモデル酵素LPLA2に180mg/mlのmAb4を添加しても、計算されたエステラーゼ活性速度は変化しなかった。図7(右上)はまた、0、50、100及び200mg/mlのmAb1を0、5及び10μMのMUに添加することによる蛍光に対するタンパク質干渉の欠如を示す。これは、高濃度のタンパク質の存在が、エステラーゼ活性速度の計算又は測定された蛍光を妨げてはならないことを更に実証する。
【0133】
賦形剤の存在下でのタンパク質産物のアッセイに対する潜在的影響を更に調べるために、モデル酵素PCL、精製mAb1及び精製mAb3を水(スパイクなし)とインキュベートするか、又は賦形剤(PS20又はPS80)でスパイクした。図7(下)に示すように、PS20又はPS80の添加は、ポリソルベートの代わりに水を添加した対照と比較して、試験したタンパク質試料のエステラーゼ活性速度を変化させなかった(スパイクなし)。
【0134】
2.7.アッセイ性能の特性評価
エステラーゼ活性アッセイの性能を特徴付けるために、特異性、精度(再現性及び中間精度)、LOD及びLOQを評価した。アッセイの特異性及び精度を評価するために使用した3種類のmAb試料を、一連のエステラーゼ活性速度を網羅するように選択した(表2)。アッセイ特異性に関して、mAb試料と緩衝液ブランク(陰性対照)との間のMU-C8加水分解速度の最小差は、試験した3つ全てのmAbについて1μM MU/hを超えた。再現性及び中間精度の相対標準偏差(RSD)値は、試験した3つの試料タイプ全てで<6%であった。

【表2】
精製インプロセスプール試料タイプ。
**プレートあたり10個の反復試料を用いた2回のアッセイセッションにわたる6つのプレートの平均エステラーゼ活性速度。
***式2を使用して計算した加水分解速度の最小差。
****2人の分析者による別々のアッセイセッションでの中程度の精度についてのRSD(%)(n=10/プレート;分析者及びアッセイセッションあたり3つのプレート;分析者毎に別々の試薬調製)。
【0135】
アッセイ性能に対する異なる試料マトリックスの影響を更に特性評価するために、マトリックス干渉の可能性のある範囲を網羅するために3つの緩衝液を選択した:50mMの酢酸トリスは最小の干渉でマトリックスを表し、一方、50mMの塩化ヒスチジン及び200mMの塩化アルギニンは観察可能なマトリックス干渉でヒスチジン及びアルギニン緩衝液を表した(図6)。これらの3つの緩衝液を使用してエステラーゼ活性アッセイのLOD値及びLOQ値を確立した(表3)。
【表3】
アッセイLOD及びLOQを、3つのプレート及び3つのタイプの緩衝液(1プレートあたりn=12)を使用して評価した。
**LODは、片側95%Clエステラーゼ活性速度の2倍を使用して計算した(式3)。
***片側95%Clエステラーゼ活性速度の6倍を使用してLOQを計算した(式3)。
【0136】
2.8.精製プロセスにわたるUFDFプール試料の比較
バイオプロセス開発のためのアッセイの使用を評価するために、3つの異なる精製プロセスによってUFDFプールに精製されたmAb5試料についてエステラーゼ活性速度を比較した:プロセスA、プロセスB及びプロセスC(図8)。3つのプロセスは、クロマトグラフィー樹脂、充填密度及びプール基準において変動した。測定されたエステラーゼ活性速度によって示されるように、プロセスCは、プロセスA及びBで測定されたエステラーゼ活性速度がプロセスCと比較して低いために、プロセスA又はBよりもエステラーゼの除去において効率が低いと仮定される。この仮説は、3つのプロセスのそれぞれについてHPLC-ELSD法によって測定された40℃でのPS20含有量の変化によって更に支持される。エステラーゼ活性測定と同じ傾向が観察された:プロセスA及びBは最小のPS20分解を示したが、プロセスCはプロセスA又はBよりも実質的に高いPS20分解を示した(図8、右)。さらに、プロセスA及びプロセスBのエステラーゼ活性速度の類似性は、PS20含有量の損失におけるそれらの類似性と裏付けられる。これらの所見は、精製プロセスからのポリソルベート分解リスクの評価におけるこのエステラーゼ活性アッセイの関連性を例証している:ポリソルベートを分解する残留エステラーゼを除去するための異なる下流処理条件の有効性を比較するための迅速な出力(総アッセイ所要時間で<3時間)を提供する。
【0137】
2.9.FFA及びポリソルベート分解相関
ポリソルベート分解リスクを予測するためのアッセイの使用を調べるために、mAb2の異なるプール試料におけるPS80分解速度及びエステラーゼ活性を比較した(図9)。試験した試料は、mAb2に適用された2つの異なる精製プロセスのための多段階(アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びUFDF)からの精製インプロセスプールを含んでいた。比較を容易にするために、全ての試料を25mg/mlで同じ製剤に加工した。PS80分解を、主要分解産物(C18:1FFA)の増加及びPS80含有量の減少によって測定した。C18:1 FFA放出速度とエステラーゼ活性との間(図9、左)及びPS80含有量減少速度とエステラーゼ活性との間(図9、右)の正の相関が観察された。
【0138】
3.考察
本明細書に開示される結果は、バイオプロセス開発中のポリソルベート分解のリスクを迅速かつハイスループットな方法で評価するためのこのエステラーゼ活性アッセイの適合性を実証する。MU-C8基質を、一連の精製インプロセスプール及び精製されたタンパク質(UFDFプール)試料に対して試験した(図2図5図7図9)。精製された試料(mAb1~5)は、残留HCPを除去するためにクロマトグラフィー工程を経ており、原薬及び医薬品に加工されるUFDFプールとなる。したがって、ここで試験された試料は、Jahn et al.によって試験されたスパイク試料よりも低いレベルのHCPを有すると予想される。ここで試験した試料はまた、複数のmAb産物(CHO宿主によって産生される4つのIgG1及び2つのIgG4、並びに大腸菌宿主によって産生されるIgG4)を含んでいた。エステラーゼ活性アッセイの初期開発中に、励起波長及びアッセイ実行緩衝液成分(塩化トリス、Triton X-100及びアラビアガム)の濃度を最適化した(データは示さず)。ここで試験されるアッセイ条件は、最適化された条件を表し、以前に報告されたものとは異なる。
【0139】
エステラーゼ活性アッセイを使用して収集されたデータに基づいて、このアッセイは、精製インプロセス(図9及び表2)及び精製されたタンパク質試料(図2図5図7図9)において残存エステラーゼ活性を検出することができることが明らかである。図3は、(非酵素加水分解に起因する)バックグラウンド蛍光と区別可能な信頼性の高い測定可能な活性がUFDFプール試料に存在することを実証しており、MU-C8中のカルボン酸エステル結合を加水分解することができる酵素(複数可)の存在を示している。反応生速度及び非酵素加水分解の蛍光トレースは、重複する試料にわたる標準偏差を表す小さい重複しないエラーバーによって示されるように、高度の再現性を示す(図3)。図5からの更なる蛍光トレースは、マイクロプレートベースのエステラーゼ活性アッセイがプレート内及びプレート間で信頼性が高く再現性のあるデータを生成したことを更に実証している。
【0140】
より迅速なバイオプロセス開発及び効率的な調査を支援するために、本発明者らは、加水分解反応にエッペンドルフチューブを使用するリパーゼアッセイについてJahn et al.によって報告されたアッセイインキュベーション時間(約24~300時間)を短縮することを目的とした。図3に示すように、エステラーゼ活性アッセイは、より短いインキュベーション時間(2時間)を提供し、同日の読み出しを支持する。マイクロプレートベースのフォーマットは、より多くの試料及びアッセイ条件のハイスループットスクリーニングを可能にする(最大7つの異なる緩衝液ブランクマトリックスからなる二連で実行される1プレートあたり30個の試料)。このマイクロプレートフォーマットはまた、自動化による更なる効率向上にも適している。適切な蛍光発生MUエステル基質を選択するために、5つのMUエステル:MU-C8、MU-C10、MU-C12、MU-C16及びMU-C18:1を試験した。エステラーゼ活性に対する立体障害及び炭素鎖長の影響を評価するために、様々なMUエステルを選択した。しかしながら、MU-C4はリパーゼ及びホスホリパーゼの最適以下の基質であることが示され、C2及びC4を有する発色基質は、試験した33個の加水分解酵素(主にリパーゼ)にわたって不十分な応答を有することが以前に示されたので、より短い鎖長を有するMUエステルは選択されなかった。
【0141】
図2に示す基質特異性実験は、MU-C8が、モデル酵素及び精製タンパク質試料の両方に使用するための広く高感度の基質であることを示した。MU-C16は、最も可溶性の低い基質であることが見出され、これらの実験ではその濃度を0.5mMに制限した。PS80中に存在するオレイン酸(C18:1)側鎖の意味を理解するために、MU-C18:1基質を含めた。MU-C8とは異なり、このMU-C18:1基質は、試験した精製タンパク質(mAb1~3)試料のいずれに対しても活性を示さなかった。文献で報告された以前の研究は、ウンベリフェロンが4-MUと比較してより安定なフルオロフォアであることを示している。しかしながら、これらの研究は生物医薬品試料を試験しなかった。対照的に、本発明者らの研究は、生物医薬に関連するプロセスを使用して生成された精製mAb試料を試験し、本発明者らの結果は、MU-C8が再現性の高いエステラーゼ活性アッセイに、様々な試料タイプにわたって利用できることを示している(表2)。
【0142】
様々なMUエステル基質を試験することに加えて、本発明者らはまた、様々なモデル酵素及び試料タイプを試験した。3つのモデル酵素を、ポリソルベート分解に対するそれらの関係について陽性対照として選択した:(1)PCLは、PS20及びPS80を分解するモデルリパーゼを表す;(2)LPLA2はPS20及びPS80を分解し、mAb製剤中に見出された(9);(3)PLBL2を、スルファターゼ医薬品中のPS20分解に関連する残存HCPとして同定した。アッセイは、基質特異性(図2)及びpH依存性(図5)実験に示すように、モデル酵素(PCL、LPLA2、及びPLBL2)及び精製タンパク質(mAb1~3)のエステラーゼ活性を検出した。さらに、大腸菌由来の精製タンパク質試料(mAb3)を含めることにより、細菌産生系から酵素活性を検出するこのアッセイの能力が実証される(図2)。
【0143】
この研究でPLBL2について観察された制限されたエステラーゼ活性は、PLBD2としても知られるPLBL2がPS分解に寄与する可能性が低いことを示す最近の知見と一致している。図2に示すように、PLBL2は、試験した5つのMUエステルの加水分解に対して、他の2つの酵素(PCL及びLPLA2)よりも有意に活性が低く、PCL及びLPLA2(両方とも20ng/mlで試験)と比較してMUエステル加水分解を誘発するために、20,000倍高いPLBL2濃度(400μg/ml)が必要であった。
【0144】
リパーゼ阻害剤オルリスタットの存在下では、精製タンパク質試料及びモデル酵素は、MU-C8加水分解に対する減少したエステラーゼ活性を示した(図4)。オルリスタットは、膵臓リパーゼを阻害するために開発され、異なる酵素に対して異なる効力を示す。特に、オルリスタットはカルボキシルエステラーゼ2を有意に阻害したが、カルボキシルエステラーゼ1を阻害しなかった。カルボキシルエステラーゼ1(CES1)に対するオルリスタット効力のこの欠如は、CES1が、mAb製剤中のポリソルベート分解の根本原因として最近同定された2つのCHOカルボキシルエステラーゼ(CES-B1L及びCES-1L)と実質的な配列相同性を有するので注目に値する。
【0145】
タンパク質試料(mAb2、6及び7)におけるPS20分解に対するオルリスタットの効果を、PS20加水分解からの一次FFA分解物であるラウリン酸の放出を測定することによって直接評価するために、別個のオルリスタットインキュベーション研究を行った。オルリスタット濃度を0.2μMから20μMに増加させても、オルリスタットはこれらのタンパク質試料中のPS20の加水分解を完全に阻害しなかった(表1)。同様に、オルリスタット濃度を0.5μMから10μMに増加させても、オルリスタットはmAb1試料のMU-C8の加水分解を完全に阻害しなかった(図4)。様々な精製mAb試料を用いた他のオルリスタットインキュベーション研究では、オルリスタット阻害の有効性の範囲も観察された(データは示さず)。まとめると、これらの所見は、オルリスタットインキュベーションが異なるタンパク質試料においてPS20分解を様々な程度まで緩和したことを示している。本発明者らは、(1)オルリスタットは、ポリソルベートを分解するCHO由来酵素HCPのいくつかを阻害するのに十分に有効ではない;並びに(2)オルリスタット阻害に抵抗性であるか又は感受性が低い残留加水分解性HCPの同一性及び量は、精製タンパク質試料間で異なり得ると仮定する。したがって、オルリスタットは、MU-C8を加水分解することができるmAb1試料中に存在する残留HCPの全部ではないが一部を阻害することができることが予想される。同様に、オルリスタットは、PS20を加水分解することができるmAb2、mAb6及びmAb7試料中に存在する残留HCPの全部ではないが一部を阻害することができることが予想される。
【0146】
pH依存性実験は、最大蛍光シグナルと信頼できる速度測定値との間の妥協の必要性を実証した。図5に示すpH依存性曲線は、pH7.5とpH8.5との間の精製タンパク質試料(mAb2)からの活性速度の急激な増加を示す。mAb試料で観察されたより高い活性速度は、MU-C8基質に対するアルカリ性pH範囲でのより高い酵素活性に関連し得る。CHO由来mAb試料(15、20)中のポリソルベートを分解することが以前に示された酵素は、アルカリ性pH範囲でより活性であり得る:LPLはpH8以上で上昇した活性を有する(39)。カルボキシルエステラーゼは、pH約6.5~8.0で最適な活性を有する(14)。増加したpHで観察されたより高い活性速度は、基質の塩基媒介性非酵素加水分解の増加に起因し得る。観察された非酵素加水分解速度の急激な増加は、より高いpHで操作すると、アッセイ感度を低下させる可能性がある。しかしながら、pH8.0であっても、本発明者らの研究は、試料(試験)と酵素ブランク(陰性対照)反応ウェルとの間の蛍光の明確な差を示している。したがって、バックグラウンド蛍光(すなわち、陰性対照における非酵素加水分解からのシグナル)が総蛍光(試験試料)から一貫して減算されることを確実にすることによって、所与の試料のエステラーゼ活性速度を計算することができる。エステラーゼ活性アッセイのために選択されたpH8.0は、低活性試料の感度と、よりアルカリ性のpH条件での非酵素加水分解の増加との間の最適なバランスを提供する。
【0147】
pH8.0では、エステラーゼ活性アッセイに使用されるpHは、製剤中の典型的なpHよりも高い。対照的に、FFAレベルを検出するアッセイは、製剤pHにおける加水分解性ポリソルベート分解を測定するために設定される;しかしながら、分解速度は非常に低いため、信頼できる定量化を支援するために十分に高いレベルのFFAを生成するには、長時間(>1週間)のインキュベーションが必要である。精製試料中の微量の残留加水分解性HCPを検出することの困難さに照らして、本発明者らは、代表的な製剤pHの使用よりもエステラーゼ活性を増強するアッセイpHの選択を優先した。本発明者らは、より高いアッセイpH8でより高い酵素活性を観察したが、理論的には異なる傾向が可能である。所与の精製タンパク質試料について、エステラーゼ活性の最適pHは、その酵素プロファイルに依存すると予想される。試料が、より低いpHで上昇したエステラーゼ活性を有する残留HCPを含む場合、その試料は、エステラーゼ活性アッセイにおいて対応してより低い最適pHを示すと予想される。そのような場合、エステラーゼ活性アッセイのpHを低下させて、アッセイ感度を改善することができる。しかしながら、このアッセイは、製剤開発の代わりに(例えば、ポリソルベート分解リスクのための精製スキーム及び条件をランク付けするための)バイオプロセス開発を支援するために主に使用されるので、このようなアッセイのpH調整は必要ではない場合がある。mAb5のバイオプロセス開発例(図8)によって示されるように、加水分解HCPを除去するのに最も効果的でなかった精製プロセス(すなわち、プロセスC)は、最高のエステラーゼ活性速度(pH8.0で試験)及び最高のポリソルベート分解(製剤pH<6.0で試験)をもたらした。
【0148】
図6に示す緩衝液及び塩種に関する包括的評価は、試料バックグラウンドの大部分がエステラーゼ活性アッセイでの使用に適していることを示した。試験した試料マトリックスは、測定された蛍光及び非酵素加水分解速度に悪影響を及ぼさなかった。バイオプロセスで一般的に使用される高レベルの酢酸塩及び硫酸塩は、測定された蛍光に影響を与える可能性があり、アッセイ感度を低下させる可能性がある。高レベルの酢酸塩、低レベルのヒスチジン及び高レベルのアルギニンは、基質の塩基媒介非酵素加水分解を増加させた。関連するバックグラウンド蛍光は、エステラーゼ活性速度を計算するために使用される反応生速度(kraw)から非酵素加水分解速度(k非酵素加水分解)が常に差し引かれることを確実にすることによって対処される。しかしながら、より高い非酵素加水分解速度は、より低いバックグラウンド蛍光を示す緩衝液を含む試料と比較した場合、より低いアッセイ感度をもたらし得る。そのような場合、kraw加水分解とk非酵素加水分解との間の明確な差を検証するための生データの検査は、追加の試料処理工程が必要かどうかを決定するのに役立つ。例えば、krawとk非酵素加水分解との間の明確な分離が観察されない場合、試料調整手段(例えば、緩衝液交換)を実施することができる。ヒスチジンについて試験した範囲は製剤処方に関連しており、試料調整手段なしでこれらの試料をアッセイする能力に影響を及ぼし得る。そのような製剤について、アッセイ感度を高める必要がある場合、バックグラウンド干渉を最小限に抑えるために試料を緩衝液交換することができる。しかしながら、本発明者らの研究は、大部分の試料(ヒスチジン又はアルギニンを含有する試料であっても)を事前の試料コンディショニング工程なしで直接アッセイすることができることを示している。
【0149】
アッセイ基質(図2)及び条件(図5及び図6)を最適化した後、タンパク質又は賦形剤の干渉の欠如を検証するためにアッセイを更に試験した(図7)。水でスパイクしたLPLA2とmAb4でスパイクしたLPLA2との間の平行活性線によって実証されるように、高濃度のmAb4(180mg/ml)は、モデル酵素LPLA2の計算されたエステラーゼ活性速度を妨害しなかった(図7、左上)。これらの2つの線の間の垂直差は、mAb4自体のエステラーゼ活性速度に起因し、それ自体が測定可能な活性速度を示した。この垂直差は、試験した濃度範囲を通して一定のままであり、したがって、モデル酵素LPLA2の活性速度計算に影響を及ぼさなかった。さらに、蛍光は高濃度のタンパク質の影響を受けず(図7、右)、エステラーゼ活性速度は、バイオ医薬品製剤に関連する範囲で、スクロース(データは示さず)、PS20及びPS80(図7、下)等の賦形剤の影響を受けなかった。
【0150】
エステラーゼ活性アッセイの性能を、特異性、精度、LOD及びLOQについて更に評価した(表2及び3)。特性評価研究は、アッセイの特異性及び精度(<6%RSD)を実証する。予想通り、より高いマトリックス干渉に関連するヒスチジン緩衝液及びアルギニン緩衝液(図6)のLOD値及びLOQ値は、酢酸トリス(50mM)の場合よりも高かった。それにもかかわらず、試験した3つ全ての緩衝液におけるエステラーゼ活性アッセイのLOD及びLOQ値は、典型的なアッセイ出力範囲(>1μM MU/h;図2図4図9)と比較して比較的低かった(<1μM MU/h;表3)。
【0151】
最後に、このアッセイは、代表的なバイオプロセス条件におけるポリソルベート分解のリスクを評価するのに適していることが実証された。具体的には、このアッセイを、バイオプロセス開発中のポリソルベート分解を定量するための2つの従来の(及びより時間のかかる)方法、すなわちポリソルベート含有量を測定する方法(6)及びFFAポリソルベート分解物を測定する方法(8)と比較した。エステラーゼ活性アッセイは、PS20分解の相対リスクの低下をもたらしたバイオプロセスの同定に成功した(図8)。エステラーゼ活性速度はまた、従来の方法の両方によって測定されたPS80分解速度と正の相関があった(図9)。さらに、本発明者らは、ポリソルベート分解が観察された他のmAbについて同様の正の相関を見出した(データは示さず)。まとめると、これらの調査は、このエステラーゼ活性アッセイがバイオプロセス開発中及び通例ではない調査中(例えば、技術移転中のトラブルシューティング)のポリソルベート分解リスクの迅速な評価を提供できることを示している。エステラーゼ活性速度とポリソルベート分解速度との間に正の相関が観察されたにもかかわらず、このエステラーゼ活性アッセイには理論的限界がある。このアッセイの主な強度、すなわち、より容易で迅速なアッセイ読み出しを提供するための蛍光発生MU-C8基質の使用はまた、その主な弱点を表す。MU-C8は、PS20又はPS80(典型的には薬物製品に使用される界面活性剤)ではない。残留HCPは、MU-C8対PS20又はPS80のカルボン酸エステル結合に対するそれらの加水分解活性が異なり得る。同様に、このアッセイで使用されるpH8.0は、精製試料中のエステラーゼ活性の検出を増強し得るが、非経口製剤で使用されるより低いpHを表すものではない。
【0152】
エステラーゼ活性アッセイの理論的限界を補償するために、バイオプロセス開発中に2段階アプローチを適用することができる:(1)エステラーゼ活性アッセイを使用して最も有望な精製プロセスを同定するためのスクリーニング精製スキーム/条件;(2)FFA系アッセイを使用して最終的な下流プロセスを選択するために、主要なバイオプロセスオプションについて精製生成物中のポリソルベート分解を直接評価する。第1段階では、MU-C8を分解するHCPの残留レベルを測定することによって、エステラーゼ活性アッセイは、HCP除去のための下流処理を最適化するバイオプロセス開発における重要な目標を支援する。エステラーゼ活性アッセイは、(基質としてポリソルベートを用いた最終製剤化条件における)FFA系アッセイによるその後の試験のためのサブセットを選択するために多数の試料をスクリーニングすることができる。第2段階では、ポリソルベート分解の程度を直接測定し、第1段階中に得られたエステラーゼ活性速度と相関させることによって、ポリソルベート分解リスクを評価するためのエステラーゼ活性アッセイの関連性及び相関性を決定することができる(図8及び図9の例によって示される)。このようにして、2段階アプローチは、バイオプロセス開発を導くための各アッセイの強度を活用しながら、ポリソルベート分解を評価するための各ツールの限界に対処する。
【0153】
略語
α:RFU/μM MU中のMUの濃度に対する蛍光シグナルの計算された変換係数
C18:1:オレイン酸
CES1:カルボキシルエステラーゼ1
CES-1L:カルボキシルエステラーゼ1様
CES-B1L:カルボキシルエステラーゼB-1様
CHO:チャイニーズハムスター卵巣
クレステラーゼ活性速度:エステラーゼ活性速度の信頼区間
DMSO:ジメチルスルホキシド
E.coli:大腸菌
ELSD:蒸発光散乱検出器
FFA:遊離脂肪酸
HCP:宿主細胞タンパク質
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
非酵素加水分解:RFU/hでの酵素ブランクの反応速度
raw:試料の反応生速度(RFU/h)
LOD:検出限界
LOQ:定量限界
LPL:リポタンパク質リパーゼ
LPLA2:リソソームホスホリパーゼA2
mAb:モノクローナル抗体
MU:4-メチルウンベリフェロン
MU-C7:4-メチルウンベリフェリルヘプタノエートMU-C8:4-メチルウンベリフェリルカプリレートMU-C10:4-メチルウンベリフェリルデカノエート
MU-C12:4-メチルウンベリフェリルドデカノエート
MU-C16:4-メチルウンベリフェリルパルミテート
MU-C18:1:4-メチルウンベリフェリルオレエート
n:試料サイズ
PCL:シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ
PDA:フォトダイオードアレイ
PLBL2/PLDB2:ホスホリパーゼB様2
PPL:ブタ膵臓リパーゼ
PS20:ポリソルベート20
PS80:ポリソルベート80:
RFU:相対蛍光単位
RSD:相対標準偏差
SD:標準偏差
UFDF:限外濾過ダイアフィルトレーション
UHPLC:超高速液体クロマトグラフィー
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
【国際調査報告】