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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】抗体を産生するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0781 20100101AFI20230906BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230906BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20230906BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230906BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230906BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230906BHJP
【FI】
C12N5/0781 ZNA
C12Q1/04
G01N33/48 N
G01N33/68
C12N15/09 Z
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513624
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021048447
(87)【国際公開番号】W WO2022047381
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/072,794
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リャン, ウェイ-チン
(72)【発明者】
【氏名】リン, ウェイユー
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ヤン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA29
2G045CA18
2G045CA19
2G045CA20
2G045CA26
2G045DA36
2G045DA37
2G045FB01
2G045FB03
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QS33
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BA21
4B065BD14
4B065CA44
(57)【要約】
標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体の産生及び同定のための方法が本明細書で提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的タンパク質の所望の領域に結合する1つ以上の抗体を同定する方法であって、
(a)前記所望の領域を含む前記標的タンパク質又はその断片で免疫化されている動物からの試料を提供することであって、前記試料がIgGB細胞を含む、試料を提供することと、
(b)前記試料中の1つ以上の望ましくない細胞型から前記IgGB細胞を分離することによって前記試料をIgGB細胞について濃縮することであって、前記分離することが、
(i)前記試料を、前記1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させることであって、前記1つ以上の抗体又は抗体断片がタグを含む、前記試料を、前記1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させること、及び
(ii)前記試料を、前記タグに対する親和性を有する表面と接触させることであって、前記1つ以上の抗体又は抗体断片に結合した前記1つ以上の望ましくない細胞型が前記表面に保持され、それにより、前記IgGB細胞を前記1つ以上の望ましくない細胞型から分離し、前記試料をIgGB細胞について濃縮する、前記試料を、前記タグに対する親和性を有する表面と接触させること
を含む、前記試料をIgGB細胞について濃縮することと、
(c)工程(b)の分離された前記IgGB細胞を個別に培養することと、
(d)前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する抗体を産生する1つ以上のIgGB細胞を同定することであって、前記同定することが、工程(c)の個別に培養されたIgGB細胞の上清の親和性を、
(i)前記所望の領域を含む前記標的タンパク質又はその断片、及び
(ii)前記標的タンパク質又は非標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質
の両方について評価することを含む、1つ以上のIgGB細胞を同定することと
を含み、
前記標的タンパク質又はその断片に対する親和性を有し、前記対照タンパク質に対する親和性を有しない上清が、前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する抗体を産生するIgGB細胞を同定する、方法。
【請求項2】
前記動物が、ウサギ又はラットである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物がウサギである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が、血液試料又は血清試料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記血液試料が末梢血単核球(PBMC)試料である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記動物が約8週間免疫化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、マクロファージ及び単球を除去するために処理されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記望ましくない細胞型が、IgM B細胞、骨髄細胞、及びT細胞のうちの1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記望ましくない細胞型が、IgM B細胞、骨髄細胞、及びT細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
IgM B細胞に結合する前記1つ以上の抗体又は抗体断片が、IgMに結合する1つ以上の抗IgM抗体又はその抗体断片である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
骨髄系細胞に結合する前記1つ以上の抗体又は抗体断片が、CD11bに結合する1つ以上の抗CD11b抗体又はその抗体断片である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
T細胞に結合する前記1つ以上の抗体又は抗体断片が、Tリンパ球に結合する抗Tリンパ球抗体又はその抗体断片である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の望ましくない細胞型に結合する前記1つ以上の抗体又は抗体断片がビオチンタグを含み、前記表面がストレプトアビジンを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記表面がビーズである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ビーズが磁気ビーズである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)が、(iii)濃縮された前記試料を、第1のマーカーを含み、かつIgGB細胞に結合する抗体又は抗体断片及び生細胞を同定する薬剤と接触させることを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
IgGB細胞に結合する前記抗体又は抗体断片が抗IgG抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
生細胞を同定する前記薬剤がヨウ化プロピジウムである、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
工程(b)(iii)が、前記試料を、前記所望の領域を含む前記標的タンパク質又はその断片と接触させることを更に含み、前記標的タンパク質又はその断片が第2のマーカーを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(b)(iii)が、前記試料を、前記標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質と接触させることを更に含み、前記対照タンパク質が第3のマーカーを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のマーカー、前記第2のマーカー、及び前記第3のマーカーが蛍光マーカーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)が、(iv)生細胞を同定する前記薬剤によって生存可能であると同定され、前記第1のマーカー及び前記第2のマーカーを含むが、前記第3のマーカーを含まない細胞を単離することを更に含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記単離することが、マルチパラメータ蛍光活性化細胞選別(FACS)によるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程(d)において、(i)前記標的タンパク質又はその断片、及び(ii)前記対照タンパク質の両方に対する前記上清の親和性を評価するためにELISAが行われる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
(e)前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する抗体を産生すると同定されている1つ以上のIgGB細胞のVH領域及びVL領域をクローニングすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記標的タンパク質が、抗体又は抗体断片である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体又は抗体断片の前記所望の領域が相補性決定領域(CDR)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記動物が、前記所望の領域を含む前記抗体の断片で免疫化されている、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記所望の領域を含む前記抗体の前記断片が抗原結合断片(Fab)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記標的タンパク質の前記1つ以上の望ましくない結合部位が、前記抗体又は抗体断片の1つ以上のフレームワーク領域である、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む前記対照タンパク質が、
(i)前記標的タンパク質の軽鎖(LC)フレームワーク領域に対して少なくとも85%の同一性を有するフレームワーク領域と、無関係なLC CDRのセットとを含むLC、及び
(ii)前記標的タンパク質の重鎖(HC)フレームワーク領域に対して少なくとも85%の同一性を有するフレームワーク領域と、無関係なHC CDRのセットとを含むHC
を含むFab断片である、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記無関係なLC CDR及び前記無関係なHC CDRが、抗gDモノクローナル抗体(mAb)の前記CDRである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗gD mAbが5B6である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記標的タンパク質が、抗体又は抗体断片ではない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記標的タンパク質の前記所望の領域が、前記標的タンパク質のドメインである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(d)が、工程(c)の個別に培養されたIgGB細胞の上清の、前記所望の領域を含む前記標的タンパク質の断片に対する前記親和性を評価することを含む、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記所望の領域を含む前記標的タンパク質の前記断片が、無関係のタンパク質に連結されている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
工程(d)の前記対照タンパク質が、
(i)前記所望の領域を欠く前記標的タンパク質のバージョン、
(ii)前記標的タンパク質に関連し、前記所望の領域を含まないタンパク質、又は
(iii)無関係な対照タンパク質
である、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
標的タンパク質の所望の領域に結合する複数の抗体が産生される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも100個の抗体が産生される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも500個の抗体が産生される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1,000個の抗体が産生される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも10,000個の抗体が産生される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも20,000個の抗体が産生される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
約30,000個の抗体が産生される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
産生された前記抗体の少なくとも50%がユニークである、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記複数の抗体が、約200nM以下のKで前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記複数の抗体が、約50nM以下のKで前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記複数の抗体が、約10nM以下のKで前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記複数の抗体が、約1nM以下のKで前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記複数の抗体が、約0.1nM以下のKで前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記複数の抗体が、約0.01nM以下のKで前記標的タンパク質の前記所望の領域に結合する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記標的タンパク質が抗体又は抗体断片であり、前記複数の抗体が少なくとも1つの抗原遮断抗体を含む、請求項39~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記標的タンパク質が抗体又は抗体断片であり、前記複数の抗体が少なくとも1つの抗原非遮断抗体を含む、請求項39~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記抗原非遮断抗体が抗原抗体複合体に結合する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
工程(c)の前記IgGB細胞が、請求項1に記載のIgGB細胞について前記試料を濃縮する工程を含まない方法を用いて単離されているIgGB細胞と比較して増加した生存率を有する、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
工程(a)~(e)が12週間以内に行われる、請求項25~56のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2021年8月30日に作成された当該ASCIIコピーの名称は50474-237WO2_Sequence_Listing_8_30_21_ST25であり、サイズは65,075バイトである。
【0002】
発明の分野
標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体の産生及び同定のための方法が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
多数の抗体治療薬が、前臨床開発及び臨床試験に進められている。高品質抗イディオタイプ試薬抗体(抗ID)、特に相補性決定領域(CDR)特異的抗IDは、治療用抗体薬物開発のための生物分析アッセイに重要である。これらのタイプの試薬抗体を生成するために使用される一般的なアプローチには、in vivoハイブリドーマ技術、in vitroファージディスプレイ免疫化ライブラリ、及び合成抗体ライブラリが含まれる。これらの技術は、長いタイムラインを必要とし、多くの場合、数が少ないか、エピトープ結合多様性を欠くか、又は弱い親和性を有する抗体のパネルをもたらす。したがって、当技術分野では、明確に定義されたエピトープ結合特異性を有する抗IDの大きなパネルを迅速に製造する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、標的タンパク質の所望の領域に結合する1つ以上抗体を同定する方法を特徴とし、本方法は、(a)所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片で免疫化されている動物からの試料を提供することであって、試料がIgGB細胞を含む、提供することと、(b)試料中の1つ以上の望ましくない細胞型からIgGB細胞を分離することによって試料をIgGB細胞について濃縮することであって、分離することが、(i)試料を、1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させることであって、1つ以上の抗体又は抗体断片がタグを含む、試料を、1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させること、及び(ii)試料を、タグに対する親和性を有する表面と接触させることであって、1つ以上の抗体又は抗体断片に結合した1つ以上の望ましくない細胞型が表面に保持され、それにより、IgGB細胞を1つ以上の望ましくない細胞型から分離し、試料をIgGB細胞について濃縮する、試料を、タグに対する親和性を有する表面と接触させること、を含む、試料をIgGB細胞について濃縮することと、(c)工程(b)の分離されたIgGB細胞を個別に培養することと、(d)標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体を産生する1つ以上のIgGB細胞を同定することであって、同定することが、工程(c)の個別に培養されたIgGB細胞の上清の親和性を、(i)所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片、及び(ii)標的タンパク質又は非標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質の両方について評価することを含む、1つ以上のIgGB細胞同定することと、を含み、標的タンパク質又はその断片に対する親和性を有し、対照タンパク質に対する親和性を有しない上清が、標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体を産生するIgGB細胞を同定する。
【0005】
いくつかの態様では、動物はウサギ又はラットである。いくつかの態様では、動物はウサギである。
【0006】
いくつかの態様では、試料は血液試料又は血清試料である。いくつかの態様では、血液試料は末梢血単核球(PBMC)試料である。
【0007】
いくつかの態様では、動物は約8週間免疫化されている。
【0008】
いくつかの態様では、試料を処理してマクロファージ及び単球を除去した。
【0009】
いくつかの態様では、望ましくない細胞型は、IgM B細胞、骨髄細胞、及びT細胞農地の1つ以上である。いくつかの態様では、望ましくない細胞型は、IgM B細胞、骨髄細胞、及びT細胞である。いくつかの態様では、IgM B細胞に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片は、IgMに結合する1つ以上の抗IgM抗体又はその抗体断片である。いくつかの態様では、骨髄細胞に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片は、CD11bに結合する1つ以上の抗CD11b抗体又はその抗体断片である。いくつかの態様では、T細胞に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片は、Tリンパ球に結合する抗Tリンパ球抗体又はその抗体断片である。
【0010】
いくつかの態様では、1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片はビオチンタグを含み、表面はストレプトアビジンを含む。
【0011】
いくつかの態様では、表面はビーズである。いくつかの態様では、ビーズは磁気ビーズである。
【0012】
いくつかの態様では、工程(b)は、(iii)濃縮試料を、第1のマーカーを含み、IgGB細胞に結合する抗体又は抗体断片及び生細胞を同定する薬剤と接触させることを更に含む。
【0013】
いくつかの態様では、IgGB細胞に結合する抗体又は抗体断片は抗IgG抗体である。
【0014】
いくつかの態様では、生細胞を同定する薬剤はヨウ化プロピジウムである。
【0015】
いくつかの態様では、工程(b)(iii)は試料を、所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片と接触させることを更に含み、標的タンパク質又はその断片が第2のマーカーを含む。
【0016】
いくつかの態様では、工程(b)(iii)は、試料を、標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質と接触させることを更に含み、対照タンパク質が第3のマーカーを含む。いくつかの態様では、第1のマーカー、第2のマーカー、及び第3のマーカーは蛍光マーカーである。
【0017】
いくつかの態様では、工程(b)は、(iv)生細胞を同定する薬剤によって生存可能であると同定され、第1のマーカー及び第2のマーカーを含むが、第3のマーカーを含まない細胞を単離することを更に含む。いくつかの態様では、単離することは、マルチパラメータ蛍光活性化細胞選別(FACS)によるものである。
【0018】
いくつかの態様では、工程(d)において、(i)標的タンパク質又はその断片、及び(ii)対照タンパク質の両方に対する上清の親和性を評価するためにELISAが行われる。
【0019】
いくつかの態様では、本方法は、(e)標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体を産生すると同定されている1つ以上のIgGB細胞のVH領域及びVL領域をクローニングすることを更に含む。
【0020】
いくつかの態様では、標的タンパク質は抗体又は抗体断片である。いくつかの態様では、抗体又は抗体断片の所望の領域は相補性決定領域(CDR)である。いくつかの態様では、動物は、所望の領域を含む抗体の断片で免疫化されている。いくつかの態様では、所望の領域を含む抗体の断片は抗原結合断片(Fab)である。
【0021】
いくつかの態様では、標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位は、抗体又は抗体断片の1つ以上のフレームワーク領域である。いくつかの態様では、標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質は、(i)標的タンパク質の軽鎖(LC)フレームワーク領域に対して少なくとも85%の同一性を有するフレームワーク領域と、無関係なLC CDRのセットとを含むLC、及び(ii)標的タンパク質の重鎖(HC)フレームワーク領域に対して少なくとも85%の同一性を有するフレームワーク領域と、無関係なHC CDRのセットとを含むHC、とを含むFab断片である。いくつかの態様では、無関係なLC CDR及び無関係なHC CDRは、抗gDモノクローナル抗体(mAb)のCDRである。いくつかの態様では、抗gD mAbは5B6である。
【0022】
いくつかの態様では、標的タンパク質は抗体又は抗体断片ではない。いくつかの態様では、標的タンパク質の所望の領域は、標的タンパク質のドメインである。
【0023】
いくつかの態様では、工程(d)は、工程(c)の個別に培養されたIgGB細胞の上清の、所望の領域を含む標的タンパク質の断片に対する親和性を評価することを含む。いくつかの態様では、所望の領域を含む標的タンパク質の断片は無関係のタンパク質に連結されている。
【0024】
いくつかの態様では、工程(d)の対照タンパク質は、(i)所望の領域を欠く標的タンパク質のバージョン;(ii)標的タンパク質に関連し、所望の領域を含まないタンパク質;又は(iii)無関係な対照タンパク質である。
【0025】
いくつかの態様では、標的タンパク質の所望の領域に結合する複数の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも100個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも500個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも1,000個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも10,000個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも20,000個の抗体が産生される。いくつかの態様では、約30,000個の抗体が産生される。
【0026】
いくつかの態様では、産生される抗体の少なくとも50%がユニークである。
【0027】
いくつかの態様では、複数の抗体は、約200nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。
【0028】
いくつかの態様では、複数の抗体は、約50nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体は、約10nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体は、約1nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体は、約0.1nM以下のK標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体は、約0.01nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。
【0029】
いくつかの態様では、標的タンパク質は抗体又は抗体断片であり、複数の抗体が少なくとも1つの抗原遮断抗体を含む。
【0030】
いくつかの態様では、標的タンパク質は抗体又は抗体断片であり、複数の抗体が少なくとも1つの抗原非遮断抗体を含む。いくつかの態様では、抗原非遮断抗体は抗原抗体複合体に結合する。
【0031】
いくつかの態様では、工程(c)のIgGB細胞は、本明細書に提供される方法に従ってIgGB細胞について試料を濃縮する工程を含まない方法を使用して単離されたIgGB細胞と比較して増加した生存率を有する。
【0032】
いくつかの態様では、工程(a)~(e)は12週間以内に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A図1Aは、ウサギからのCDR特異的抗イディオタイプ抗体(抗ID)の作製のタイムラインを示すフローチャートである。ウサギを治療用抗体(Ab1)抗原結合断片(Fab)で8週間免疫化した;ウサギ末梢血からIgGであり、Ab1 Fabに結合し(Ab1 Fab)、対照Fabに結合しなかった(Ab1ctrl Fab)B細胞のフローサイトメトリー単離培養を1週間行った;一次ELISAスクリーニング、分子クローニング及びウサギ抗体(rAb)発現を2週間で完了した;並びにAb1 CDR特異的抗イディオタイプ抗体(Ab2)を1週間で特性評価のために同定した。
図1B図1Bは、フローサイトメトリーを使用したAb1 Fab/Ab1ctrl Fab/IgGB細胞についての免疫ウサギ末梢血からのIgGB細胞の濃縮を示す一組の散布図である。左パネル:血液由来のIgGB細胞。中央パネル:IgGB細胞濃縮工程後のIgGB細胞。右パネル:IgG、Ab1 Fab、及びAb1ctrl FabであるB細胞。
図1C図1Cは、ELISAを用いて測定した、Ab1 Fabに対する3匹のウサギの血清力価を示すグラフである。予め免疫した血清試料を陰性対照として提供する。
図1D図1Dは、Ab1 Fab及びAb1ctrl Fabへの培養ウサギB細胞上清の結合についてのハイスループット一次ELISAスクリーニングの結果を示すプロットである。OD>0.25及びOD<0.1の光学密度(OD)閾値を、それぞれ結合上清及び非結合上清を同定するための閾値として使用した。
図1E図1Eは、24個のユニークAb2クローンの精製された組換えIgGの、正常ヒト血漿中の天然IgGに由来するAb1 Fab、Ab1ctrl Fab及び別のヒト対照Fab(Huctrl Fab)への結合についてのスクリーニングの結果を示すプロットである。
図2A図2Aは、Ab1軽鎖相補性決定領域(CDR)を有するAb1軽鎖(LC)フレームワーク領域(hIGKV1-16)の配列及び抗gD LC-CDRを有する4つ全てのヒトIgGカッパLCコンセンサスフレームワークの配列を示す配列アラインメント図である。ドットは同一のアミノ酸残基を示し、文字は異なるアミノ酸残基を示す。位置はKabatシステムに従ってナンバリングされる。CDRは、IMGT(登録商標)のKabat及びChothiaの定義に従って示される。
図2B図2Bは、Ab1重鎖(HC)フレームワーク領域(hIGHV3-23)及びAb1重鎖CDRの配列、並びに抗gD LC-CDRを有する4つ全てのヒトIgG HCコンセンサスフレームワークの配列を示す配列アラインメント図である。ドットは同一のアミノ酸残基を示し、文字は異なるアミノ酸残基を示す。位置はKabatシステムに従ってナンバリングされる。CDRは、IMGT(登録商標)のKabat及びChothiaの定義に従って示される。
図3A図3Aは、Ab2が抗原(Ag)遮断又は非遮断エピトープ型を有するかどうかを決定するための実験設定を示す概略図である。Ab2をプロテインAによって捕捉し、Ab1 Fabと接触させ、続いて抗原と接触させる。結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して評価する。
図3B図3Bは、Ab1 Fab及び抗原に対するAb2クローン3E3及び18C9の(応答単位(RU)での)結合を示す一対のセンサーグラムである。3E3はAg非遮断抗IDであると決定され(左パネル)、18C9はAg遮断抗IDであると決定された。
図3C図3Cは、Ab2がAb1抗原複合体に結合するかどうかを決定するための実験設定を示す概略図である。Ab2をプロテインAによって捕捉し、AgとAb1のFab複合体と接触させる。結合を、SPRを使用して評価する。
図3D図3Dは、Ag及びAb1 Fab複合体に対するAb2クローン3E3及び21A6の(応答単位(RU)での)結合を示す一対のセンサーグラムである。3E3はAg及びAb1複合体を認識できると決定されたが、21A6は認識できなかった。
図4図4は、3種類の抗IDを示す模式図である。左:Ag遮断抗ID(Ab2)は薬物抗体(Ab1)のパラトープに結合し、標的(Ag)へのAb1の結合を阻害する。Ag遮断抗IDは、遊離Ab1の検出に有用である。中央:Ag非遮断抗ID(Ab2)が薬物パラトープの外側に結合する。右:Ag+Ab1複合体抗IDは、薬物-標的複合体に特異的であり、結合薬物検出にのみ使用される。
図5A図5Aは、マイクロフルイディクスシステムにおける抗ID(Ab2)のエピトープビニングの実験設定を示す概略図である。固定化されたAb2を最初にAb1 Fabに結合させ、続いてペアワイズAb2結合を検出する。
図5B図5Bは、実施例1において本明細書中に記載される、プロジェクトEからの群2の抗ID(Ab2)のビニングから推定されるエピトープクラスタを示すネットワークプロットである。Ab2をノードで表す。コードは、ノード間の競合関係を示す。斜線領域は、他のAb2に対して試験した場合に同一の遮断プロファイルを共有するAb2のファミリーを示す。
図5C図5Cは、プロジェクトEからの群1抗ID(Ab2)のビニングから推定されたエピトープクラスタを示すネットワークプロットである。Ab2をノードで表す。コードは、ノード間の競合関係を示す。斜線領域は、他のAb2に対して試験した場合に同一の遮断プロファイルを共有するAb2のファミリーを示す。
図5D図5Dは、プロジェクトEからの群3抗ID(Ab2)のビニングから推定されたエピトープクラスタを示すネットワークプロットである。Ab2をノードで表す。コードは、ノード間の競合関係を示す。斜線領域は、他のAb2に対して試験した場合に同一の遮断プロファイルを共有するAb2のファミリーを示す。
図5E図5Eは、プロジェクトEからの24個の抗ID(Ab2)のパネルのビニングから推定されたエピトープクラスタを示すネットワークプロットである。Ab2をノードで表す。コードは、ノード間の競合関係を示す。斜線領域は、他のAb2に対して試験した場合に同一の遮断プロファイルを共有するAb2のファミリーを示す。群1(3E3、14B11)と群2(19C4)Ab2との間のエピトープ関係を示す。
図6A図6Aは、サンドイッチELISA PKアッセイの実験設定を示す概略図である。各Ab2をELISAプレートに固定化してAb1捕捉試薬とし、他のAb2抗体をビオチン化してストレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートして検出試薬とした。
図6B図6Bは、プロジェクトEからの5つのAb2のPKアッセイの結果を示すプロットのセットであり、クローン3E3(群1)及び19C4(群2)が適切な捕捉及び検出抗体対であることを示す。
図7A図7Aは、抗薬物抗体(ADA)開発のための架橋ELISAの実験設定を示す概略図である。ストレプトアビジン捕捉ビオチン化Ab1をELISAプレートに固定化した。検出試薬としてマウス抗DIG HRPコンジュゲートを使用して、捕捉されたAb1とDIGコンジュゲートAb1とを架橋するためにAb2を試験した。
図7B図7Bは、図7Aに示されるブリッジングELISAアッセイにおけるプロジェクトEの5つのAb2クローンの滴定を示すグラフである。
図8図8は、プロジェクトE(VH:VL CDR連結ストリング)の24個のユニークAb2クローンのCDRの違いを示す未定着の系統樹である。スケールバーは4%の配列差を表す。個々の配列の相違は、それに応じて各分岐にラベル付けされる。クローンは、表3に記載のグループ化指定に従って色分けされる:赤色は群1であり、緑色は群2であり、青色は群3である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
I. 定義
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別途示されない限り、複数のものを含む。
【0035】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者であれば容易に理解する、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書において、値又はパラメータについての「約」の参照は、それ自体がその値又はパラメータに向けられた態様を含む(及び説明する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含む。いくつかの実施形態では、「約」は、当業者によって理解されるように、±15%、±10%、±5%、又は±1%を指す場合がある。
【0036】
本明細書に記載される本発明の態様は、「含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」態様を含むことが理解される。
【0037】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で用いられ、限定はしないが、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片(例えば、bis-Fab)を含めた、様々な抗体構造を包含する。「完全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で、ネイティブ抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同義に使用される。
【0038】
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原を結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、bis-Fab;Fv;Fab;Fab、Fab’-SH;F(ab’);ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv、ScFab);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。抗体断片は、組換え生産され得る。
【0039】
「Fab」断片は、抗体のパパイン消化によって作製されるか又は組換え生産された抗原結合断片であり、H鎖の可変領域ドメイン(VH)及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と共にL鎖全体からなる。抗体のパパイン消化により、2つの同一のFab断片を生成する。抗体のペプシン処理により単一の大きなF(ab’)断片が生じ、これは二価の抗原結合活性を有するジスルフィドで連結された2つのFab断片にほぼ対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に追加のいくつかの残基を有している点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’の本明細書での命名である。F(ab’)抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0040】
「Fv」は、1つの重鎖及び1つの軽鎖可変領域ドメインが、堅固な非共有結合をなした二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、かつ抗原結合特異性を抗体に与える6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖から各3つのループ)が生じる。ただし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性であることが多いものの、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0041】
本明細書において「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226の位置のアミノ酸残基から又はPro230からそのカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生若しくは精製の間に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって取り除かれ得る。したがって、インタクトな抗体の組成物は、全てのLys447残基が除かれた抗体集団、Lys447残基が除かれていない抗体集団、及びLys447残基を有する抗体と有さない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0042】
「単一ドメイン抗体」は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部、あるいは軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片を指す。特定の態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(例えば、米国特許第6248516号B1を参照)。単一ドメイン抗体の例には、VHHが含まれるが、これに限定されない。
【0043】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関するレビューについては、例えば、Pluckthuen,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0044】
「ダイアボディ」という用語は、二つの抗原結合部位を持つ抗体断片を指し、その断片は、同一ポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは二価でも二特異性でもよい。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)において、より完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)においても記載されている。
【0045】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域の型を指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分類することができる抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の態様では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、該標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma 14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全てを有するヒト又はヒト様抗体を動物で産生するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);U.S.Pat.Nos.5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;and 5,661,016;Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg et al.,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995))を含む様々な技法によって作製され得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、in vivoでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによる混入がないという点で有利である。
【0047】
「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変性であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、及び/又は構造的に所定のループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有する抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。
【0048】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一の結合部位の間の非共有性相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(K)によって表し得る。親和性は、本明細書に記載するものを含め、当技術分野で公知である一般的な方法によって測定し得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「結合する」、「~に特異的に結合する」、又は「~に特異的である」という用語は、標的と抗体との間の結合等、測定可能かつ再生可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む分子の異種集団の存在下において、標的の存在を決定づけるものである。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、又はそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、及び/又はより長期間結合する抗体である。いくつかの態様では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合、抗体の標的への結合の約10%未満である。いくつかの態様では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、又は0.1nM以下の解離定数(K)を有する。いくつかの態様では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の態様では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0050】
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体、又はヒト抗体レパートリー等のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト由来の抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当技術分野で知られている様々な技法を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter.J.Mol.Biol.227:381,1991;Marks et al.J.Mol.Biol.222:581,1991.Cole et al.Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.J.Immunol.,147(1):86-95,1991に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel.Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74,2001.も参照されたいヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技法に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.103:3557-3562,2006を参照されたい。
【0051】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3におけるようなサブグループである。一態様では、VLの場合、サブグループは、上述のKabat et al.に記載のように、サブグループカッパIである。一態様では、VHの場合、サブグループは、上述のKabat et al.におけるようなサブグループカッパIIIである。
【0052】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の態様では、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを含み、全て又は実質的に全てのHVR(例えば、CDR)は、非ヒト抗体のものに対応し、全て又は実質的に全てのFRはヒト抗体のFRに対応する。ヒト化抗体のFRの全て又は実質的に全てのFRがヒト抗体のFRに対応する特定の態様では、ヒト化抗体のFRのいずれかは、非ヒトFR(複数可)からの1つ以上のアミノ酸残基(例えば、FRの1つ以上のVernier位置残基)を含んでいてもよい。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0053】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原分子上の特定の部位を指す。いくつかの態様では、抗体が結合する抗原分子上の特定の部位は、ヒドロキシルラジカルフットプリントによって決定される。いくつかの態様では、抗体が結合する抗原分子上の特定の部位は、結晶学的に決定される。
【0054】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした場合の、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当分野の技術の範囲内にある様々な方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような一般に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して得ることができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成している。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルし得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含め、UNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。
【0055】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、特定のアミノ酸配列同一性%を有する又は含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述され得る)は、以下のように計算される:
100 × 分数X/Y
このとき、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2により、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一であるとして一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落で説明したように得られる。
【0056】
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/又は生理学的特性に基づいて、特徴付けられ及び/又は同定される細胞及び/又は他の分子実体を含有する、目的の対象及び/又は個体から得られるか、又はそれに由来する組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句及びその変形は、特徴付けられるべき細胞及び/又は分子実体を含有することが期待されるか又は含有することが知られている、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料は、限定されないが、組織試料、初代若しくは培養細胞又は細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳汁、全血、血漿、血清、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、頬スワブ、痰、涙液、発汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、ホモジナイズした組織等の組織抽出物、腫瘍組織、細胞抽出物、及びそれらの組み合わせを含む。試料は、アーカイブ試料、新鮮な試料、又は凍結試料であってよい。いくつかの態様では、試料は血液試料、例えば末梢血単核球(PBMC)試料である。
【0057】
II. 方法
いくつかの態様では、本開示は、標的タンパク質の所望の領域に結合する1つ以上抗体を同定する方法を特徴とし、本方法は、(a)所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片で免疫化されている動物からの試料を提供することであって、試料がIgGB細胞を含む、試料を提供することと、(b)試料中の1つ以上の望ましくない細胞型からIgGB細胞を分離することによって試料をIgGB細胞について濃縮することであって、分離することが、(i)試料を、1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させることであって、1つ以上の抗体又は抗体断片がタグを含む、試料を、1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させること、及び(ii)試料を、タグに対する親和性を有する表面と接触させることであって、1つ以上の抗体又は抗体断片に結合した1つ以上の望ましくない細胞型が表面に保持され、それにより、IgGB細胞を1つ以上の望ましくない細胞型から分離し、試料をIgGB細胞について濃縮する、試料を、タグに対する親和性を有する表面と接触させる接触させること、を含む、試料をIgGB細胞について濃縮することと、(c)工程(b)の分離されたIgGB細胞を個別に培養することと、(d)標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体を産生する1つ以上のIgGB細胞を同定することであって、同定することが、工程(c)の個別に培養されたIgGB細胞の上清の親和性を、(i)所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片、及び(ii)標的タンパク質又は非標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質の両方について評価することを含む、1つ以上のIgGB細胞を同定することと、を含み、標的タンパク質又はその断片に対する親和性を有し、対照タンパク質に対する親和性を有しない上清が、標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体を産生するIgGB細胞を同定する。
【0058】
A. 標的タンパク質
i. 抗体標的タンパク質
いくつかの態様では、標的タンパク質は、抗体又は抗体断片、例えば治療用抗体(薬物抗体)又はその断片である。標的抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、例えばT細胞依存性二重特異性抗体(TDB))、及び/又は抗体誘導体であり得る。抗体断片は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の任意の分子を含む。抗体断片の例としては、抗原結合断片(Fab);Fab’’;Fab’-SH;F(ab’)断片;ビスFab;可変ドメイン(Fv);ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv、scFab);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これに限定されない。
【0059】
標的タンパク質が抗体又は抗体断片である態様では、抗体が作製される所望の領域は、標的抗体又は抗体断片の任意の領域であり得る。いくつかの態様では、所望の領域は標的抗体又は抗体断片の相補性決定領域(CDR)であり、すなわち、本方法によって作製される抗体は抗イディオタイプ(抗ID)抗体である。いくつかの態様では、標的抗体又は抗体断片は2つ以上のCDR(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は6つを超えるCDRを含む)を含み、CDRのいずれかを標的とする抗体が所望され、例えば所望の領域は標的抗体又は抗体断片のCDRの全てを含む。他の態様では、標的抗体又は抗体断片は2つ以上のCDRを含み、CDRの1つ又はサブセットのみを標的とする抗体が所望され、例えば所望の領域は標的抗体又は抗体断片の選択されたCDRを含む。
【0060】
動物は、標的抗体若しくは抗体断片全体、又は所望の領域の適切に折り畳まれたバージョンを含むその任意の断片で免疫化され得る。いくつかの態様では、動物は、標的抗体又は抗体断片のFabにより免疫化される。
【0061】
ii. 非抗体標的タンパク質
いくつかの態様では、標的タンパク質は抗体又は抗体断片ではない。標的タンパク質は、任意のタンパク質若しくはペプチド、例えばヒトタンパク質若しくはペプチド、動物タンパク質若しくはペプチド(例えば、カニクイザルタンパク質又はペプチド)、細菌若しくは真菌のタンパク質若しくはペプチド、又は人工タンパク質若しくはペプチドであり得る。抗体が作製される所望の領域は、標的タンパク質の任意の適切な領域、例えば標的タンパク質のドメイン、構造又はモチーフであり得る。例示的なドメインとしては、細胞外ドメイン、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン及び結合ドメインが挙げられる、これらに限定されない。いくつかの態様では、標的タンパク質の所望の領域は、標的タンパク質のドメインである。
【0062】
動物は、所望の領域の適切に折り畳まれたバージョン(例えば、ドメイン、構造又はモチーフ)を含む標的タンパク質の任意の断片で免疫化され得る。いくつかの態様では、動物を標的タンパク質で免疫化する。いくつかの態様では、動物は、無関係のタンパク質に連結された標的タンパク質の所望の領域(例えば、ドメイン、構造又はモチーフ)を含むタンパク質で免疫化される。無関係なタンパク質としては、標的タンパク質の所望の領域と構造的又は機能的類似性を有するドメイン、構造、又はモチーフを有さないタンパク質が挙げられる。いくつかの態様では、所望の領域を無関係のタンパク質に連結することにより、標的タンパク質の他のドメイン、構造又はモチーフの非存在下で、所望の領域の適切に折り畳まれたバージョンに対する抗体の作製が可能になる。無関係なタンパク質は、それに結合する抗体を排除するための陰性選択スクリーニングとして使用され得る。いくつかの態様では、本明細書中に記載される方法によって作製される抗体は、種特異的であり、例えば、目的とする種の標的タンパク質に特異的に結合し、望ましくない種の関連タンパク質(例えば、標的タンパク質のホモログ)には結合しない。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法によって作製された抗体は、ヒト標的タンパク質に結合するが、関連するマウスタンパク質(例えば、マウスホモログ)には結合しない。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法によって生成された抗体は、ヒト標的タンパク質及び関連するカニクイザル(cyno)タンパク質(例えば、カニクイザルのホモログ)に結合するが、関連するマウスタンパク質(例えば、マウスホモログ)には結合しない。
【0063】
B. IgGB細胞を含む試料
免疫化は、任意の適切な動物、例えば哺乳動物、例えばラット、ウサギ、ハムスター、又はマウスにおいて実施され得、免疫化された試料が提供され得る。いくつかの態様では、動物はウサギ又はラットである。いくつかの態様では、動物はウサギである。
【0064】
いくつかの態様では、動物は、約6~約15週間、所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片で免疫化されており、例えば、約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、又は15週間免疫化されている(例えば、約6週間~約10週間免疫化されている)。いくつかの態様では、動物は約8週間免疫化されている。免疫化は、所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片の複数回投与を含み得る。
【0065】
IgGB細胞を含有する免疫化動物由来の試料は、例えば、血液試料又は血清試料であり得る。いくつかの態様では、血液試料は末梢血単核球(PBMC)試料である。
【0066】
いくつかの態様では、試料(例えば、血液試料、例えば、PBMC試料)は、特定の抗原でワクチン接種されたか、疾患を生き延びたか、又は疾患を有するヒトから提供される。
【0067】
いくつかの態様では、免疫化動物(例えば、血液試料、例えばPMBC試料)からの試料は、試料からマクロファージ及び/又は単球を除去するために処理されている。プレート上への非特異的接着によって試料からマクロファージ及び単球を除去するための例示的な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSeeber et al.PLoS One,9:e86184,2014に記載されている。
【0068】
C. IgGB細胞について試料を濃縮する方法
いくつかの態様では、本開示は、動物由来の試料を1つ以上の望ましくない細胞型からIgGB細胞を分離することによってIgGB細胞について試料を濃縮する方法を特徴とし、分離することは、(i)試料を、1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させることであって、該1つ以上の抗体又は抗体断片はタグを含む、試料を、1つ以上の望ましくない細胞型に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片と接触させることと、(ii)該試料を、タグに対する親和性を有する表面と接触させることであって、1つ以上の抗体又は抗体断片に結合した1つ以上の望ましくない細胞型が表面に保持され、それにより、IgGB細胞を1つ以上の望ましくない細胞型から分離し、試料をIgGB細胞について濃縮する、該試料を、タグに対する親和性を有する表面と接触させることとを含む。
【0069】
いくつかの態様では、望ましくない細胞型は、動物由来の試料、例えば血液試料又は血漿試料中に存在する1つ以上の望ましくない細胞型である。いくつかの態様では、望ましくない細胞型としては、IgM B細胞、骨髄細胞、及びT細胞のうちの1つ、2つ又は3つ全てが挙げられる。いくつかの態様では、望ましくない細胞型は、IgM B細胞、骨髄細胞、及びT細胞である。
【0070】
いくつかの態様では、望ましくない細胞型はIgM B細胞を含み、本方法は、試料をIgM B細胞に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片、例えばIgMに結合する1つ以上の抗IgM抗体又はその抗体断片と接触させることを含む。
【0071】
いくつかの態様では、望ましくない細胞型は骨髄細胞を含み、本方法は、試料を骨髄細胞に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片、例えばCD11bに結合する1つ以上の抗CD11b抗体又はその抗体断片と接触させることを含む。
【0072】
いくつかの態様では、望ましくない細胞型はT細胞を含み、本方法は、試料をT細胞に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片、例えばTリンパ球に結合する1つ以上の抗Tリンパ球抗体又はその抗体断片と接触させることを含む。
【0073】
いくつかの態様では、IgGB細胞は、試料中の望ましくない細胞型の細胞(例えば、IgM B細胞、骨髄細胞及び/又はT細胞)の少なくとも5%から分離され、例えば、試料中の望ましくない細胞型の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、若しくは99%から分離されるか、又は試料中の望ましくない細胞型の細胞の100%から分離され、例えば、試料中の望ましくない細胞型の細胞の5%~25%、25%~50%、50%~70%、70%~80%、80%~90%、90%~95%、95%~98%、若しくは98%~100%から分離される。いくつかの態様では、IgGB細胞は、試料中の望ましくない細胞型の細胞の少なくとも50%~70%から分離される。いくつかの態様では、IgGB細胞は、試料中の望ましくない細胞型の細胞の少なくとも98%から分離される。
【0074】
1つ以上の望ましくない細胞型(例えば、抗IgM抗体、抗CD11b抗体、抗Tリンパ球抗体、及び/又はそれらの断片)に結合する1つ以上の抗体又は抗体断片によって含まれるタグは、任意の適切なタグであり得る。いくつかの態様では、タグはビオチンタグである。
【0075】
タグに対して親和性を有する表面は、例えば、タグに対して親和性を有する部分を含む表面であり得る。いくつかの態様では、タグはビオチンタグであり、表面はストレプトアビジンを含む。いくつかの態様では、表面はビーズ、例えば磁気ビーズである。表面(例えばビーズ、例えば磁気ビーズ))は、カラム精製システムの構成要素であり得る。タグに対する親和性を有する表面と試料とを接触させることは、例えば、試料を表面上に流すこと(例えば、表面を含むカラム精製システムに試料を流すこと)を含み得る。
【0076】
D. 所望の標的特異性を有すIgGB細胞を選択する方法
i. 生存IgG細胞を選択する方法
本明細書に記載される方法のいくつかの態様では、本方法の工程(b)は、(iii)濃縮試料を、第1のマーカーを含み、IgGB細胞に結合する抗体又は抗体断片及び生細胞を同定する薬剤と接触させることを更に含む。
【0077】
いくつかの態様では、第1のマーカーを含み、IgGB細胞に結合する抗体又は抗体断片は、抗IgG抗体である。第1のマーカーは、例えば、蛍光マーカーであり得る。いくつかの態様では、第1のマーカーはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である。
【0078】
いくつかの態様では、生細胞を同定する薬剤はヨウ化プロピジウム(PI)である。PIは非生細胞を染色するため、比較的低レベルのPI染色(例えば、PI染色の非存在又は基準レベル未満のPI染色レベル)を使用して、細胞を生存可能であると同定することができる。生細胞を同定するために使用され得る他の方法及び薬剤としては、エチジウムホモダイマーアッセイ、TUNELアッセイ、エバンスブルー染色、フルオレセインジアセテート(FDA)加水分解アッセイ、ホルマザン色素染色、MTTアッセイ、ニュートラルレッド染色、レサズリン染色、ヤヌスグリーンB染色、7-AAD染色及びトリパンブルー染色が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの態様では、本方法は、第1のマーカーの検出(例えば、基準レベルを上回る第1のマーカーからの蛍光シグナルの検出)に基づいてIgGとして同定され、生細胞を(例えば、基準レベル未満であるPI染色のレベルに基づいて生存可能であると同定される)同定する薬剤によって生細胞として同定される細胞を選択すること、例えばそのような細胞を試料から分離することを更に含む。
【0080】
いくつかの態様では、第1のマーカー及び生細胞を同定する薬剤(例えば、PI)は蛍光マーカーであり、フローサイトメトリーを使用して、個々の細胞のマーカー及び薬剤からの蛍光シグナルを評価する。いくつかの態様では、フローサイトメトリーは蛍光活性化細胞選別(FACS)であり、IgGとして同定され、生存可能な細胞が選択され、FACSを使用して試料から分離される。
【0081】
ii 所望の標的特異性を有すIgGB細胞を選択する方法
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、工程(b)(iii)は試料を、所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片と接触させることを更に含み、標的タンパク質又はその断片が第2のマーカーを含む。第2のマーカーは、例えば、蛍光マーカーであり得る。いくつかの態様では、第2のマーカーはR-フィコエリトリン(RPE)である。
【0082】
いくつかの態様では、本方法は、第1のマーカーの検出に基づいてIgGとして同定される;生細胞を同定する薬剤によって生存可能であると同定される;第2のマーカーの検出(例えば、参照レベルを上回る第2のマーカーからの蛍光シグナルの検出)に基づいて標的タンパク質又はその断片に結合すると同定される細胞を選択すること、例えば、そのような細胞を試料から分離することを更に含む。
【0083】
いくつかの態様では、工程(b)(iii)が、試料を、標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質と接触させることを更に含み、対照タンパク質が第3のマーカーを含む。第3のマーカーは、例えば、蛍光マーカーであり得る。いくつかの態様では、第3のマーカーはアロフィコシアニン(APC)である。
【0084】
いくつかの態様では、本方法は、第1のマーカーの検出に基づいてIgGとして同定される;生細胞を同定する薬剤によって生存可能であると同定される;第2のマーカーの検出に基づいて、標的タンパク質又はその断片に結合すると同定される;第3のマーカーの検出(例えば、第3のマーカーの非存在、又は基準レベル未満である第3のマーカーからの蛍光シグナルの検出)に基づいて、対照タンパク質に結合しないと同定される細胞を選択すること、例えば、そのような細胞を試料から分離することを更に含む。
【0085】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、工程(b)は、(iv)生細胞を同定する薬剤によって生存可能であると同定され、第1のマーカー及び第2のマーカーを含むが、第3のマーカーを含まない細胞を単離することを更に含む。いくつかの態様では、単離することは、マルチパラメータ蛍光活性化細胞選別(FACS)によるものである。
【0086】
いくつかの態様では、第1のマーカー、第2のマーカー、第3のマーカー、及び生細胞を同定する薬剤(例えば、PI)は、識別可能な発光スペクトルを有する蛍光マーカーであり、フローサイトメトリーを使用して、個々の細胞のマーカー及び薬剤からの蛍光シグナルを評価する。いくつかの態様では、フローサイトメトリーは蛍光活性化細胞選別(FACS)であり、IgGとして同定され、生存可能であり、標的タンパク質又はその断片に結合し、対照タンパク質に結合しない細胞が選択され、FACSを使用して試料から分離される。
【0087】
いくつかの態様では、本開示は、所望の標的特異性を有するIgGB細胞を単離する方法であって、(a)所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片で免疫化されている動物から試料を提供することであって、試料がIgGB細胞を含む、試料を提供することと、(b)試料を生細胞を同定する薬剤と接触させることと(第1のマーカーを含み、IgGB細胞に結合する抗体又は抗体断片;所望の領域を含む標的タンパク質又はその断片であって、第2のマーカーを含む標的タンパク質又はその断片;及び標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質であって、第3のマーカーを含む対照タンパク質)、及び(c)生細胞を同定する薬剤によって生細胞であると同定され、第1のマーカー及び第2のマーカーを含むが、第3のマーカーを含まない細胞を単離することを含む。
【0088】
E. 対照タンパク質
いくつかの態様では、本明細書中に記載される方法は、望ましくない特異性を有する抗体を同定するために、抗体による結合が望まれないタンパク質領域、ドメイン、構造又はモチーフ、例えば、標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位、又は非標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む陰性対照の使用を伴う。いくつかの態様では、望ましくない結合部位は、動物が免疫化されている標的タンパク質又はその断片中に存在する。他の態様では、望ましくない結合部位は、免疫に使用されるタンパク質又はその断片には存在しない。
【0089】
i. 抗体対照タンパク質
標的タンパク質が抗体又は抗体断片である態様では、標的タンパク質の1以上の望ましくない結合部位は、例えば、抗体又は抗体断片の1つ以上のフレームワーク領域又は1つ以上の定常領域であり得る。
【0090】
いくつかの態様では、標的タンパク質は抗体又は抗体断片であり、標的タンパク質の1つ又は複数の望ましくない結合部位は、抗体又は抗体断片の1つ以上のフレームワーク領域である。いくつかの態様では、標的抗体又は抗体断片は2つ以上のフレームワーク領域を含み(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は8つを超えるフレームワーク領域を含む)、望ましくない結合部位は標的抗体又は抗体断片のフレームワーク領域の全てを含む。他の態様では、望ましくない結合部位は、標的抗体又は抗体断片のフレームワーク領域の1つ又はサブセットを含む。
【0091】
いくつかの態様では、標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質は、(i)標的抗体又は抗体断片の軽鎖(LC)フレームワーク領域に対して少なくとも80%の同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有するフレームワーク領域と、無関係なLC CDRのセットとを含むLC、及び(ii)標的抗体又は抗体断片の重鎖(HC)フレームワーク領域に対して少なくとも80%の同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性又は100%の同一性)を有するフレームワーク領域と、無関係なHC CDRのセットとを含むHCを含むFab断片である。
【0092】
いくつかの態様では、標的タンパク質の1つ以上の望ましくない結合部位を含む対照タンパク質は、(i)標的タンパク質の軽鎖(LC)フレームワーク領域に対して少なくとも85%の同一性を有するフレームワーク領域と、無関係なLC CDRのセットとを含むLC、及び(ii)標的タンパク質の重鎖(HC)フレームワーク領域に対して少なくとも85%の同一性を有するフレームワーク領域と、無関係なHC CDRのセットとを含むHC、とを含むFab断片である。
【0093】
無関係なLC CDR及び無関係なHC CDRは、例えば、標的抗体又は抗体断片のエピトープに結合しない任意の抗体のCDRであり得る。あるいは、無関係なLC CDR及び無関係なHC CDRは、例えば、標的抗体又は抗体断片のエピトープに結合する抗体のCDRであり得、CDRは、標的抗体のCDRと実質的な配列類似性を共有せず、例えば、標的抗体のCDRと70%未満の同一性を有する(例えば、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%未満の同一性)。いくつかの態様では、無関係なLC CDR及び無関係なHC CDRは、抗gDモノクローナル抗体(mAb)のCDRである。いくつかの態様では、抗gD mAbは5B6である。いくつかの態様では、無関係なLC又はHC CDRは、表1に提供されるCDR断片である。
【表1】
【0094】
ii. 非抗体対照タンパク質
標的タンパク質が抗体又は抗体断片でない態様では、対照タンパク質は、例えば、(i)所望の領域を欠く標的タンパク質のバージョン(例えば、所望の領域を含む1つ以上のドメイン、構造若しくはモチーフを欠く(例えば、欠落するように改変されている)標的タンパク質のバージョン、又は所望の領域を含むアミノ酸が無関係のアミノ酸で置き換えられている標的タンパク質のバージョン);(ii)標的タンパク質に関連し、所望の領域を含まないタンパク質(例えば、標的タンパク質のオーソログ又はホモログ);又は(iii)無関係な対照タンパク質であり得る。無関係な対照タンパク質には、標的タンパク質の所望の領域と構造的又は機能的類似性を有するドメイン、構造、又はモチーフを有しないタンパク質、例えば、そのようなドメイン、構造、又はモチーフを有しない標的タンパク質のファミリーのタンパク質が含まれる。
【0095】
F. B細胞培養
本明細書に記載される方法のいくつかの態様では、本方法は、工程(b)の分離されたIgGB細胞を個別に培養する工程(c)を含む。いくつかの態様では、細胞は、馴化培地、例えば、rbTSNにおいて培養される。いくつかの態様では、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSeeber et al.,PLoS One,9:e86184,2014及び国際公開第2013/076139号に記載されているように、フィーダー細胞を含む馴化培地で細胞を培養する。
【0096】
いくつかの態様では、培養工程におけるIgGB細胞の生存率は、少なくとも40%であり、例えば、少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%であるか、又は95%より大きい。いくつかの態様では、IgGB細胞の生存率は約50%~80%である。
【0097】
G. 標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体を産生するIgGB細胞を同定する方法
本明細書に記載される方法のいくつかの態様では、方法の工程(d)は、(i)標的タンパク質又はその断片、及び(ii)対照タンパク質(例えば、本明細書のセクションIIEに記載の対照タンパク質)の両方に対する上清の親和性を評価するための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を行うことを含む。個々の実験のための適切なカットオフ閾値(例えば、光学濃度(OD)閾値)は、例えば、上清中の抗体の濃度、バックグラウンド結合のレベル、及びスクリーニングされるクローンの数に基づいて決定され得る。
【0098】
H. IgGB細胞のクローニング方法
本明細書に提供される方法のいくつかの態様では、(e)標的タンパク質の所望の領域に結合する抗体を産生すると同定されている1つ以上のIgGB細胞のVH領域及びVL領域をクローニングすることを更に含む。
【0099】
I. 抗体ライブラリの特性
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、標的タンパク質の所望の領域に結合する複数の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100個の抗体(例えば、5~25、25~50、50~75、又は75~100個の抗体)が産生される。いくつかの態様では、少なくとも100個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも150、200、250、300、350、400、450、又は500個の抗体(例えば、150~250、250~350、350~450、又は450~500抗体)が産生される。いくつかの態様では、少なくとも500個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも550、600、650、700、750、800、850、900、950個又は1000個の抗体(例えば、550~650、650~750、750~850、850~950又は950~1000の抗体)が産生される。いくつかの態様では、少なくとも1000個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500又は10000個の抗体(例えば、1500~2500、2500~3500、3500~4500、4500~5500、5500~6500、6500~7500、7500~8500、8500~9500、又は9500~10,000の抗体)が産生される。いくつかの態様では、少なくとも10,000個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500又は20,000個の抗体(例えば、10,500~11,500、11,500~12,500、12,500~13,500、13,500~14,500、14,500~15,500、15,500~16,500、16,500~17,500、17,500~18,500、18,500~19,500、又は19,500~20,000の抗体)が産生される。いくつかの態様では、少なくとも20,000個の抗体が産生される。いくつかの態様では、少なくとも20,500、21,000、21,500、22,000、22,500、23,000、23,500、24,000、24,500、25,000、25,500、26,000、26,500、27,000、27,500、28,000、28,500、29,000、29,500、又は30,000個の抗体(例えば、20,500~21,500、21,500~22,500、22,500~23,500、23,500~24,500、24,500~25,500、25,500~26,500、26,500~27,500、27,500~28,500、28,500~29,500、又は29,500~30,000の抗体)が産生される。いくつかの態様では、少なくとも30,000個の抗体が産生される。
【0100】
本明細書中に記載される方法のいくつかの態様では、産生される抗体の少なくとも50%(例えば、産生された抗体の少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%)がユニークである。
【0101】
いくつかの態様では、複数の抗体(例えば、複数の抗体の少なくともサブセット、例えば、抗体の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%)は、約200nM以下、例えば約175nM以下、150nM以下、125nM以下、100nM以下又は75nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体のサブセットは、約50nM以下、例えば約45nM以下、40nM以下、35nM以下、30nM以下、25nM以下、20nM以下、又は15nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体のサブセットは、約10nM以下、例えば約9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、又は1.5nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体のサブセットは、約1nM以下、例えば約0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、又は0.15nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体のサブセットは、約0.1nM以下、例えば、約0.09nM以下、0.08nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下、0.05nM以下、0.04nM以下、0.03nM以下、0.02nM以下、又は0.015nMのKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。いくつかの態様では、複数の抗体のサブセットは、約0.01nM以下、例えば約0.009nM以下、0.008nM以下、0.007nM以下、0.006nM以下、0.005nM以下、0.004nM以下、0.003nM以下、0.002nM以下、又は0.001nM以下のKで標的タンパク質の所望の領域に結合する。
【0102】
標的タンパク質が抗体又は抗体断片であるいくつかの態様では、複数の抗体は少なくとも1つの抗原遮断抗体(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、100、又は100を超える抗原遮断抗体)を含む。抗原遮断抗体は、標的抗体又は抗体断片のパラトープに結合し、抗原結合を妨害し、したがって、遊離標的抗体又は抗体断片の検出に有用である。
【0103】
標的タンパク質が抗体又は抗体断片であるいくつかの態様では、複数の抗体は少なくとも1つの抗原非遮断抗体(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、100、又は100を超える抗原非遮断抗体)を含む。抗原非遮断抗体は、標的抗体又は抗体断片のパラトープの外側に結合し、抗原の結合を遮断しないため、遊離標的抗体又は抗体断片の検出に有用であり、おそらく抗原によって部分的又は完全に結合した標的抗体又は抗体断片の検出に有用である。いくつかの態様では、抗原遮断抗体は抗原抗体複合体に結合する。他の態様では、抗原遮断抗体は抗原抗体複合体に結合しない。
【0104】
本明細書で提供される方法のいくつかの態様では、工程(c)のIgGB細胞は、本明細書で提供される方法に従ってIgGB細胞について試料を濃縮する工程を含まない方法を使用して単離されたIgGB細胞と比較して増加した生存率を有し、例えば、本明細書で提供される方法に従ってIgGB細胞について試料を濃縮する工程を含まない方法を使用して単離されたIgGB細胞と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%増加した生存率を有する。
【0105】
本明細書で提供される方法のいくつかの態様では、工程(a)~(e)は、約10~14週間以内に行われ、例えば、約10週間、11週間、12週間、13週間、又は14週間以内に行われる。いくつかの態様では、工程(a)~(e)は12週間以内に行われる。
【実施例
【0106】
III.実施例
以下は、本発明の方法、使用及び組成物の例である。上記に提供された一般的な記述を考慮すると、様々な他の態様が実施され得ることが理解され、その例は特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。
【0107】
実施例1.in vitroクローン増殖培養のためのAb1特異的単一ウサギIgGB細胞を単離するための効率的なワークフロー
治療用抗体(Ab1)CDR特異的抗ID(Ab2)発見のための最適化ウサギ単一B細胞選別培養及びクローニング方法が開発され、これは、(1)選別前のIgG細胞濃縮、(2)Ab1フレームワーク特異的B細胞を排除するための「陰性ゲート」として設計されたAb1フレームワーク対照Fab(Ab1ctrlFab)を使用した陰性選択、(3)B細胞培養上清のスクリーニングスループットを高めるための統合ロボットシステムの使用、及び(4)フォローアップの迅速なクローニング及び組換えIgG発現のためのスクリーニングにおける保存B細胞の4つの段階を含んだ。この手法は、抗IDの大きなパネルを日常的にかつ高い成功度で作製することを可能にする。以前の抗体発見アプローチと比較して、新たなプラットフォームは、高い程度のAb1-CDR特異性及びより多様なエピトープを有する高親和性抗IDをわずかな時間で一貫して効果的に送達し、組換え治療用抗体(Ab1)プロジェクトを支援する生物分析プログラムに有形の利益を提供する。
【0108】
この新規アプローチを使用して、プロセスにおいて同定されているクローンの数にかかわらず、高い配列多様性(>55%)及び広い親和性範囲(低pM~高nM)を有する抗IDの作製と共に、ユニークAb1を使用する11個のプロジェクトが首尾よく達成された(表2)。組換え抗IDは、ウサギ免疫化の開始から12週間以内に薬物動態及び免疫原性研究を支援するためのアッセイ開発に利用可能であった。ここでは、プロジェクトEに関連する詳細が例示的な例として強調されている。
【表2】
【0109】
A. ウサギ免疫及びポリクローナル血清力価の確認
Western Oregon Rabbit Company(WORC)から購入したNew Zealand White(NZW)ウサギを、地元の契約研究機関において標的抗体の抗原結合断片(Ab1 Fab)で免疫した。各プロジェクトにおける3匹のウサギを、完全フロイントアジュバント(CFA)と1:1混合物で製剤化したAb1 Fab(500μg)で、ウサギの背部に沿った皮下(SC)注射及び皮内(ID)注射によって免疫化した。1:1混合物中の不完全フロイントアジュバント(IFA)と製剤化したAb1Fabの3つの更なる追加免疫(250μg)を、一次免疫の3週間後にSC注射によって投与した。Fab免疫原アプローチは、抗原決定基としての定常HC、CH2及びCH3の提示を介した抗体の定常領域に対する望ましくない反応性を回避するためだけでなく、Fc配列がウサギB細胞選別中に非特異的相互作用を引き起こすのを防ぐためにも選択された。
【0110】
標準的なELISAプロトコルを使用して、以下のように、免疫化期間中に抗Ab1 Fabポリクローナル血清力価をモニターした:最初に、96ウェルNUNC(商標)MICROWELL(商標)マイクロタイタープレートを、コーティング緩衝液(0.05M炭酸ナトリウム、pH9.6)中のAb1Fab(1μg/mL)で4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートをアッセイバッファー(1×PBS、0.5%BSA及び0.05%ポリソルベート20)でブロッキングした後、ウサギ血清の段階希釈と共に1時間インキュベートした。結合を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(12-348、Sigma)に結合体化されたヤギ抗ウサギIgGをTMB基質(Surmodics,Inc.)と共に使用して検出し、5分後にStop Solution(BSTP-1000-01、Surmodics,Inc.)によって反応を停止させ、650nmでの光学密度(OD)読み取りを行った。
【0111】
プロジェクトEでは、ワークフローはAb1 Fabによる8週間の免疫化で開始され(図1A)、3匹のウサギは強力な抗Ab1血清IgG力価を示し、最大1:1,000,000希釈因子で正の結合を示し、ロバストなAb1免疫化を実証した(図1C)。
【0112】
B. PBMC単離及びIgGB細胞濃縮
この実施例は、マルチパラメータ蛍光活性化細胞選別(FACS)の前にGB細胞を濃縮し、したがって末梢血単核細胞(PBMC)からの抗原特異的IgGB細胞の同定効率を改善し、FACS選別プロセス時間を短縮する方法を記載する。
【0113】
このアプローチの目的は、MACSビーズベースの陰性選択戦略を使用して、PBMCからIgM B細胞、骨髄細胞、及びT細胞を含む非IgGB細胞を排除することであった。この陰性選択濃縮アプローチは、非IgG B細胞を排除するためにFACS選別中の「ダンプチャネル」選択よりも効率的であり、潜在的な活性化誘導細胞死を回避すると考えられている。この方法は、IgGB細胞集団を最大25倍増加させ、選別時間も短縮し(プレートあたり3~30分対プレートあたり30~90分)、B細胞生存率を潜在的に改善した。
【0114】
LYMPHOLYTE(登録商標)-M(CL5030、CEDARLANE(登録商標))を用いて、ウサギ耳動脈から採取した血液(PBSで1:1希釈)の密度遠心分離によりウサギ末梢血単核球(PBMC)を単離した。PBSで洗浄した後、Seeber et al.,PLoS One,9:e86184,2014に記載されているように、PBMCをサプリメントを含む培養培地RPMIに再懸濁し、6ウェルプレートに移して、プレート上への非特異的接着を通してマクロファージ及び単球を除去した。次いで、B細胞濃縮のために非接着細胞を回収した。試料を、高度に選択的なプロファイルを有する市販のビオチン化抗体:抗ウサギCD11b抗体(MCA802GA、Bio-Rad)、抗ウサギTリンパ球抗体(MCA800GA、BioRad)、及び抗ウサギIgM抗体(550938、BD Bioscience)を含有する抗体カクテルと共にインキュベートした。次いで、試料をストレプトアビジン被覆磁気ビーズの存在下でMACS(登録商標)カラム(130-042-401、Miltenyi Biotec)に通した。ビオチン化抗体に結合した細胞のみが、磁場を印加したカラムを通過するときにビーズに結合した:したがって、ウサギ骨髄細胞、T細胞及びIgM B細胞は、このプロセスによって試料から枯渇した。IgGB細胞を含む未結合細胞は、カラムを通過することができ、したがってプロセスによって濃縮された(図1B)。
【0115】
C. Ab1 CDR特異的IgGB細胞単一細胞選別及び培養
濃縮ウサギIgGB細胞をFITC標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(STAR121F、Bio-Rad)で染色し、染色緩衝液(2%FBSを含むPBS)中でRPE標識Ab1 Fab及びAPC標識Ab1ctrl Fab(実施例2)と4℃で20分間接触させた。蛍光活性化細胞選別(FACS選別)の前に、細胞を洗浄し、5μg/mLヨウ化プロピジウム(PI;556463、BD Biosciences)を含有する染色緩衝液に再懸濁して、死細胞と生細胞との間の分化を可能にした。Ab1特異的IgG単一B細胞を、BD FACSARIA(商標)選別機(BD)を使用して選別した。試料を最初に生(PI)、IgG(FITC)細胞上でゲートし、次いで、X軸上にRPE標識Ab1 Fabシグナル、及びY軸上にAPC標識Ab1ctrl Fabシグナルを示すプロット上に表示した(図1B)。
【0116】
RPE、APC集団からの単一B細胞を、馴化培地(rbTSN)及びフィーダー細胞を含む96ウェルプレートに文字通り選別し、以前記載されたように(Seeber et al.,PLoS One,9:e86184,2014)(図1A)、37℃で7日間培養した(in vitroクローン増殖)。フィーダー細胞は、CD40リガンド結合を提供し、ウサギ胸腺細胞及び単球のマイトジェン-PMA刺激共培養から作製されたrbTSNは、B細胞の増殖及び分化に必要なサイトカインを供給した(Seeber et al.,PLoS One,9:e86184,2014)。
【0117】
最適なB細胞培養条件は、個々のB細胞生存率及び抗体分泌形質細胞への分化を推進する重要な因子の1つであることが観察された。IgGクローンの全生存率はプロジェクト全体で50~80%であり、平均IgG上清濃度は約2~3μg/mLであった。培養されたウサギB細胞に由来する上清は、分子クローニング前に所望のAb1 Fab及びAb1ctrl Fab表現型を有するクローンを確認するための一次ELISAスクリーニングの以下の工程のための最も不可欠な資源であった(図1A)。
【0118】
実施例2.Ab1及びAb1フレームワーク制御(Ab1ctrl)Fabの調製及び標識
各Ab1ctrl Fab(ヒトコンセンサスフレームワーク対照とも呼ばれる)を、所与の位置で最も優勢なアミノ酸残基を選択することによって、ヒトフレームワーク生殖系列遺伝子の個々のセットから誘導した。全てのヒトコンセンサスフレームワーク対照のCDRを無関係な抗gDタグ抗体で模倣して、Ab1 CDRに特異的に抗ID選択を誘導した。Ab1フレームワーク対照Fab(Ab1ctrlFab)を、無関係の抗gD mAb(5B6;Genentech)の軽鎖(LC)及び重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)を4つのヒトLC(hIGKV1/V2/V3/V4又はK1/K2/K3/K4)及び4つのヒトHC(hIGHV1/V2/V3/V4又はH1/H2/H3/H4)コンセンサスフレームワークにそれぞれグラフトすることによって設計した。コンセンサスフレームワークは、天然のヒト抗体レパートリーで最も頻繁に使用されるヒトフレームワーク生殖系列遺伝子の所与の位置で最も優勢なアミノ酸残基を選択することによって決定した(Ippolito et al.,PLoS One,7:e35497,2012;Lefranc et al.,Nucleic Acids Res,27:209-212,1999)。16個のAb1ctrl Fab断片の全組合せ(KnHn、n=1/2/3/4)をEXPI293F(商標)細胞(A14528、Thermo Fisher Scientific)で一過性に発現させ、以前に報告されているようにプロテインGアフィニティークロマトグラフィー(17088601、GE Healthcare)によって精製した(Bos et al.,Biotechnol Bioeng,112:1832-1842,2015)。
【0119】
表2は、各プロジェクト由来のAb1軽鎖(LC)及び重鎖(HC)ヒトフレームワーク生殖系列を示す。最も高い配列同一性を有する最も近いヒトコンセンサスフレームワーク対照を選択して、選択を誘導した。例えば、プロジェクトEでは、Ab1フレームワーク生殖系列のLC(hIGKV1-16)及びHC(hIGHV3-23)を、それぞれ4つ全ての設計されたヒトLCコンセンサスフレームワーク(hIGKV1~hIGKV4)、及び4つのヒトHCコンセンサスフレームワーク(hIGHV1~hIGHV4)と整列させて、配列の差を比較した(図2A及び2B)。コンセンサスフレームワーク制御の配列を表1に示す。hIGKV1(K1)及びhIGHV3(H3)コンセンサスフレームワークは、Ab1フレームワーク生殖系列LC及びHC配列に対して最大の配列同一性を有していた(それぞれ100%及び98%の同一性):したがって、K1H3コンセンサスフレームワークを、FACS選別におけるフレームワーク特異的B細胞を排除するための陰性ゲートとして、及び培養上清一次ELISAスクリーニングにおける陰性対照として使用するためのプロジェクトEに対する適切なAb1ctrlFabとして選択した(図1A)。
【0120】
リジルエンドペプチダーゼ(129-02541、Wako Chemicals,Inc.)消化、続いてプロテインL-アガロースカラム精製(Wranik et al.,J Biol Chem,287:43331-43339,2012)によって、治療用IgG抗体の抗原結合断片(Ab1 Fab)を調製した。
【0121】
蛍光標識のために、Ab1及びAb1ctrl Fab断片を、製造業者の説明書に従って、それぞれR-フィコエリトリン(RPE;703-0003、Innova Biosciences)及びアロフィコシアニン(APC;705-0030、Innova Biosciences)とコンジュゲートさせた。
【0122】
4つのヒトIgGカッパLCファミリー(κ1-κ4)及び4つのヒトHCファミリー(VH1-VH4)を組み合わせたヒトコンセンサスフレームワーク設計を展開する概念は、ここで非常に有益であり、ラムダLC及び他のHC等の他の抗体ファミリーに容易に適用可能であることが示された。
【0123】
実施例3.組換えクローニングのためのAb1特異的クローンを同定するためのハイスループットスクリーニング
Ab1特異的クローンをハイスループット(HTP)様式でスクリーニングするために、多機能アッセイを1つのプロトコルに組み込んだロボットシステムを社内で確立した。このシステムにより、複数の抗原結合アッセイを同時に実行して、B細胞培養上清の大きなパネル(>50 96ウェルプレート)のスクリーニングを1日で処理することが可能になった。このシステムを構築する利点は、高速でロバストな抗体スクリーニングプラットフォームを提供するだけでなく、下流の処理時間を節約するために不要なクローンを排除することである。
【0124】
いくつかのプロジェクト(プロジェクトB、D、E、F、G、及びI)では、おそらくそれらの標的に対するCDRの低い免疫原性のために、一次ELISAスクリーニング後のより低い抗ID収量が観察された。しかしながら、プロジェクトEの事例研究で例示されるように、ウサギ単一B細胞選別培養及びクローニング技術の力により、これらのプロジェクトにおける弱い免疫応答は、多様な機能を有する十分な数の抗IDを送達し、下流アッセイ開発努力を十分に供給することによって補償された。このプラットフォームを使用して生成された抗IDの大部分の強い一価結合親和性は、低pMから低nMに及ぶ11個のプロジェクト全てにおいて、更なる親和性成熟なしにアッセイ性能要件を満たすのに十分に感受性であった。
【0125】
A. Ab1 CDR特異的IgGB細胞単一細胞スクリーニング
実施例1Cの培養工程の後、B細胞培養上清をハイスループットロボットシステム(BioCelシステム、Agilent)によって384ウェルマイクロプレートに移して、実施例1Aに記載の標準的ELISAプロトコルを用いてAb1 Fab及びAb1ctrl Fab結合についてスクリーニングした。Ab1 Fabに結合し(Ab1 Fab)、Ab1ctrl Fabに結合しなかった上清を有するクローン(Ab1ctrl Fab)は、Ab1 CDR特異的抗イディオタイプクローン(Ab2)であると考えられ、分子クローニングのために元のRLT溶解緩衝液(79216、Qiagen)処理ソースプレートから慎重に採取した。
【0126】
治療薬のフレームワークを模倣するように設計されたヒトコンセンサスフレームワークに陰性選択工程を組み込むことにより、治療薬CDRのユニークアミノ酸配列に対して高度に特異的な抗IDを選択的に産生する能力が大幅に増強される。モノクローナル抗体治療薬(しばしばヒト化抗体又はヒト抗体)のCDRに特異的に向けられた抗IDは、血清等の生物学的マトリックス中に存在するAb1に類似するIgフレームワークを有する過剰量の内因性ヒト免疫グロブリンからの干渉を受けにくい。
【0127】
プロジェクトEでは、数千のクローンの培養上清を一次ELISAスクリーニングに供し、クローンの大部分がAb1Fabに対して陽性であったが(OD>0.25)、Ab1ctrlFabに対しては陽性でなかった(OD<0.1)(図1D)。Ab1 Fab結合についてのアッセイにおいて有意に強いシグナル(OD>1)を示し、Ab1ctrl Fab結合についてのアッセイにおいて相対的に10倍低いシグナル(OD<0.1)を示した上位34個のAb2クローンを、以下に記載されるような分子クローニングのために選択した。
【0128】
B. Ab2分子クローニング、配列分析及び発現
選択したAb2の分子クローニングについて、最初に、NUCLEOSPIN(登録商標)96 RNA Core Kit(740466.4、Macherey-Nagel)を製造者の説明書に従って使用して、Ab2クローンの全RNAを単離した。SUPERSCRIPT(商標)III First-Strand Synthesis SuperMix(18080400、INVITROGEN(商標))を用いて、全RNAからmRNAを逆転写することによってcDNAを調製した。個々のウサギB細胞のV領域を、以前に記載されたように(Seeber et al.,PLoS One,9:e86184,2014)、V領域及びV領域を標的とするように設計されたフォワードプライマー及びリバースプライマーと共にACCUPRIME(商標)Pfx SuperMix(12344040、NVITROGEN(商標))を使用するPCR反応によって増幅した。次いで、VL及びVHのPCR産物を、NUCLEOSPIN(登録商標)96 Extract IIキット(740658.1、Macherey-Nagel)を用いてクリーンアップし、IN-FUSION(登録商標)HD ECODRY(商標)Cloning Kit(638915、Takara)を用いて、ウサギIgG LC及びHC定常領域をそれぞれコードする発現ベクターにクローニングした。次いで、配列分析(各フレームワーク及びCDR領域で動的プログラミングアライメントアルゴリズムによって決定される)及びトランスフェクションのためにNUCLEOSPIN(登録商標)96 Plasmid Mini Kit(740616.4、Macherey-Nagel)を使用してプラスミドDNAを精製して、組換えウサギIgGを発現させた(Bos et al.,Biotechnol Bioeng,112:1832-1842,2015)。
【0129】
プロジェクトEにおける配列多様性分析のために、24個のユニークなクローンのVH及びVLの両方のCDR領域を個別に抽出し、続いて、各ユニークなクローンについて連続ストリングに連結した。次いで、24残基ストリングを、Clustal Wを使用して、局所アラインメントと同等のゼロに設定されたギャップ開放及び伸長ペナルティの両方でアラインメントした(Larkin et al,Bioinformatics,23:2947-2948,2007)(図2A及び2B)。24個のクローンの配列類似性を可視化するために、図8に示されるように、無根系統樹を作成するため、近隣結合法と共に使用するために配列アラインメント結果を参照した。系統樹の下部に向かう2つのクレードは主に群2のクローンからなることが観察でき、これらが共通の祖先クローンに由来する親和性成熟変異体であり得ることを示唆している。一方、群1及び群3の両方のクローンは、独立して誘導される傾向があり、系統樹に沿って散在した位置をもたらす。
【0130】
C. Ab2結合親和性についてのELISAアッセイ
クローニング後に発現したAb2クローンの組換えIgGをELISAによってAb1特異性について再確認した。Ab2ウサギ抗体(rAb)クローンの結合親和性を測定するため、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを、Biacore(商標)-T200機器(GE Healthcare)を使用して行った。Series SセンサーチッププロテインA(29127555、GE Healthcare)を適用して、異なるフローセル(FC)上の各Ab2クローンを捕捉しておよそ100応答単位(RU)を達成し、続いてHBS-EP緩衝液(100mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%(v/v)界面活性剤P20)中のAb1 Fabの5倍段階希釈物(0.03nM~100nM)を25℃で50μl/分の流速で注入した。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(Biacore T200評価ソフトウェアバージョン2.0)を用いて計算した。平衡解離定数(K)を、koff/konの比として計算した。
プロジェクトEでは、クローニング後に発現された24個のユニークAb2クローンの組換えIgGを上記のようにAb1特異性について評価し、Ab1 Fabに対する正の結合(OD>0.3)、
並びに設計されたAb1ctrlFab(K1H3)及び正常ヒト血漿IgGに由来する他の天然IgG Fab断片(Huctrl Fab;401116、Sigma)を含む、任意の対照Fabに対するほぼ検出不能な結合(OD<0.05)を示した(図1A及び1E)。
【0131】
実施例4.抗ID親和性及びエピトープの特性評価
A. 抗ID親和性
高親和性抗IDは、抗体薬物(Ab1)のアッセイ開発における望ましいツールである。例えば、架橋アッセイでは、両アームでの表面への潜在的なAb1結合を回避するために、捕捉試薬としての抗IDの低いコーティング密度が必要であり、これはアッセイ感度を低下させる。抗IDの親和性は、この要件を満たすための決定因子である。
【0132】
Ab2 rAbクローンの結合親和性を測定するため、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを、Biacore(商標)-T200機器(GE Healthcare)を使用して行った。Series SセンサーチッププロテインA(29127555、GE Healthcare)を適用して、異なるフローセル(FC)上の各Ab2クローンを捕捉しておよそ100応答単位(RU)を達成し、続いてHBS-EP緩衝液(100mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%(v/v)界面活性剤P20)中のAb1 Fabの5倍段階希釈物(0.03nM~100nM)を25℃で50μl/分の流速で注入した。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(Biacore T200評価ソフトウェアバージョン2.0)を用いて計算した。平衡解離定数(K)を、koff/konの比として計算した。
【0133】
本明細書中に記載される11個のユニークAb1抗IDプロジェクトのうちの6個は、一桁のpM親和性を有する抗体をもたらし、残りのプロジェクトは、中~高pM親和性範囲の親和性を有する抗体をもたらした(表2)。プロジェクトEでは、抗IDの大部分(24個中22個)が<0.5nMのAb1 Fabに対する親和性を有し、最良のクローン(14F9)は4pMの親和性を有していた(表3)。
【表3】
【0134】
B. エピトープ特性評価
Ab1は血清中の可溶性又は脱落標的分子(抗原;以後Agと呼ぶ)と相互作用し得ることから、循環中に存在するAb1のいくつかの形態、すなわち遊離した、部分的に結合した、又は完全に結合した形態が存在し得る。したがって、特にAb1と比較したAgのモル濃度が、プロジェクトE等の治療濃度測定の時点で無視できない場合、所与のアッセイにおいてどの形態のAb1を測定すべきかを積極的に確立することが重要である。
【0135】
高感度及びハイスループットBiacore(商標)SPRを使用して、Ag遮断、Ag非遮断、及びAg+Ab1複合体としてのAgの存在下でのそれらの活性に従って抗IDエピトープ型を分類した(図4)。Ag遮断型は、Ab1のパラトープに結合してAg結合を妨害し、それによって遊離Ab1のみの検出を可能にする抗IDである(例えば、図3Bの18C9)。対照的に、Ag非遮断型抗IDは、Ab1のパラトープの外側に結合し、それでもAgがAb1に結合することを可能にすることから、遊離、場合によっては部分的に結合した、及び完全に結合したAb1を検出するために使用することができる(例えば、図3Bの3E3)。
【0136】
各Ab2クローンのエピトープ型を決定するため、上記の形式(図4)を使用して、各FC上の個々のAb2ウサギIgGを捕捉した。抗原(Ag)遮断又は非遮断エピトープ研究のため、100nM Ab1 Fabを最初に5分間注入して飽和に達し、続いて2回目の50nM Agを3分間注入して結合を検出した(図3A)。Ab1 Fab~Ab2とその後のAg~Ab1 Fabとの間の相互作用を別々に記録して、結合応答(Ag-Ab1 Fab)の差、並びに理論的Ag結合Rmaxを計算した。次いで、両方の因子を使用して、実際のAg結合Rmaxを百分率で決定し、これはAg非遮断エピトープについては>0であり、Ag遮断エピトープについては≦0である(表4)。Ag及びAb1複合体特異的エピトープ研究のため、500nM Ag+50nM Ab1 Fab複合体(Ab1 Fabを飽和させるために10倍過剰のAgと予備混合)及び50nM Ab1 Fabの、プロテインAによって捕捉された同程度のAb2のみに対する結合Rmaxを記録し(図3C)、それらの間の比を百分率として計算した。値が>10%である場合、Ab2をAg+Ab1複合体エピトープ型であると見なし、そうでなければ、非Ag+Ab1複合体エピトープタイプに属した(表5)。
【0137】
Ag非遮断型の抗IDがAb1の結合形態も認識できるかどうかを確認するため、Ag+Ab1複合体(Ab1結合部位を飽和させるために10倍過剰のAgを用いる)を生成して、Ab1のみと比較して結合を決定した。19個中5個の抗IDがAg+Ab1複合体に結合することができた(例えば、図3Dの3E3)。
【表4】
【表5】
【0138】
C. Carterra SPRを使用したAb2ウサギ抗体エピトープビニング
全体として、プロジェクトEの24個全てのユニーク抗IDは、3つの群に分類することができる:群1:Ag+Ab1複合体に対する特異性を有するAg非遮断(5クローン);群2:Ag+Ab1複合体に特異性のないAg非遮断(14クローン);第3群:(5クローン)。結果は、群1の抗IDは全Ab1検出に機能上適し得るが、群2及び3の抗IDは遊離Ab1検出にのみ使用することができ、それらがAg結合を妨害するかどうかが異なることを示す。
【0139】
抗IDの各群における微妙なエピトープの違いを解明するため、古典的なサンドイッチ形式(図5A)の下でハイスループットCarterra SPRマイクロフルイディクスによってペアワイズ競合実験を行った。マイクロアレイに基づく96×96マイクロ流体システム(IBIS-MX96 SPRi、Carterra、米国)をAb2rAbエピトープビニング実験に使用した。最初に、各Ab2ウサギIgG(10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4.5中10μg/mL)を、連続流マイクロスポッター(CFM、Carterra、米国)においてアミンカップリング化学反応を使用して、センサープリズムCMD 200Mセンサーチップ(CMD 200M、XanTec Bioanalytics、ドイツ)に直接固定化した。次に、100nM Ab1 Fabをセンサーチップ上に4分間結合させて注入し、続いて各Ab2ウサギIgG(HBS-EP緩衝液中10μg/mL)を25℃で更に4分間注入した。10mMグリシンpH1.5を使用して各サイクルの間にチップ表面を再生し、結合応答を記録し、ヒートマップ作成及びネットワークプロットのためのCarterraマイクロフルイディクスのビニングソフトウェアで分析した。Ab2(ノード)間の競合関係(コード)は、抗IDがビン(エンベロープにより内接する)にクラスタリングされることを可能にし、ビンは、他の抗IDに対して試験されたときに同一の遮断プロファイルを共有する抗IDのファミリーを表す(図5B~5D)。
【0140】
群1の抗IDでは、この研究によって証明される3つのビンがあり、クローン14B11は、クローン21E2、3E3、及びその他の間の架橋エピトープに結合する(図5C)。群2の抗IDでは、架橋エピトープ(図5B)を標的とするはるかに大きな群の抗ID(14個のうち10個)を除いて、同様の結果が観察された。群3の抗IDでは、興味深いことに、1つのビンのみが識別された(図5D)。
【0141】
実施例5.抗IDを使用したPK及びADAアッセイの開発
プロジェクトEにおける薬物動態(PK)アッセイ及び抗薬物抗体(ADA)アッセイの開発のため、Agが測定時に血清試料中のAb1と比較して無視できない濃度で存在したため、5つの抗IDを群1(3E3及び14B11;全Ab1の検出を目的とする)及び群2(9H10、19C4及び24B4;Ag干渉の存在下で遊離Ab1を検出することを目的とする)から選択的に選んで、機能アッセイ開発の規模を管理した。
【0142】
十分に特徴付けられた抗IDのパネルを有することは、いくつかの方法で臨床PKアッセイ及びADAアッセイの両方の開発に有利であり得る。PKアッセイの場合、複数の抗IDクローンの利用可能性は、本明細書中に記載される抗ID/抗IDブリッジングフォーマットを含む様々なアッセイ形式間の評価及び比較を可能にする。遊離薬物PKアッセイの開発に好ましいこの形式は、一般的な非薬物特異的試薬の使用よりもアッセイの感度及び特異性の両方を改善することができる(Kelley et al.,AAPS J.,9(2):E156-E163,2007)。さらに、特定の試薬の使用は、許容可能な正確性及び精度を維持しながら、アッセイの広いダイナミックレンジをカバーするロバストな用量反応曲線を確実にする。(DeSilva et al.,Pharm Res,20(11):1885-1900,2003)多くの場合、同様の特徴を共有するクローンは、(クローン9H10及び24B4で実証されるように)アッセイにおいて異なる性能を示し得る。これは、抗ID間のプレートコーティング効率の様々な程度、コンジュゲート形成プロセス中に導入された構造変化、又はマトリックス効果(例えば、血液、血漿血清等に存在する干渉因子)に起因し得る。したがって、スクリーニング及び選択に利用可能なクローンの十分に多様なパネルは、抗ID試薬製造プログラムの成功の重要な要素である。エピトープの特性評価及びグループ化は、アッセイ開発の決定を更に知らせ、全薬物アッセイ又は遊離薬物アッセイの開発の間の選択を提供することができ、したがって研究データの解釈に影響を及ぼす。
【0143】
一方、ADAアッセイの抗IDの選択基準は、PKアッセイのものほど厳密ではない。代用陽性ADA源としてアッセイの性能を経時的に制御することを超えて、抗IDを使用して、感度、特異性、薬物耐性、精度、及び分析物安定性等の重要なアッセイパラメータを検証中に実証及び評価する。さらに、抗IDを使用して、競合アッセイにおける使用を通じて、Ab1上の特定のエピトープに対する抗体応答を特徴付けることもできる。
【0144】
A. PKアッセイのためのAb2開発
PKアッセイの開発のため、サンドイッチELISA形式を使用した(図6A)。最初に、96ウェルマイクロタイタープレートを、4℃で一晩、各Ab2 rAbクローン(1μg/mL)で別々にコーティングした。次いで、2%プール正常ヒト血清を含有するアッセイ緩衝液(1×PBS、0.5%BSA、及び0.05%ポリソルベート20)中の治療用抗体Ab1の2倍連続希釈物(20ng/mL~0.3ng/mL)をプレートに添加し、2時間インキュベートした。結合したAb1を検出するため、各Ab2クローンのビオチン化バージョン(0.2μg/mL;10:1ビオチン化比)を添加し、続いて発色のためにストレプトアビジンHRPコンジュゲート(DY998、R&D Systems)及びTMB基質(5120-0047,KPL,Inc.)を添加した。1Mリン酸を添加することによってプレート反応を停止させ、630nmの参照波長を用いて450nmで吸光度を読み取った。
【0145】
図6Aに示されるサンドイッチELISA形式を使用して、3E3(群1)及び19C4(群2)を、Ab1を捕捉して検出するのに適した抗体対を形成するものとして同定した(図6B)。この対は、いずれの方向においても高いシグナル対ノイズ比及びロバストな用量反応曲線滴定を示した。エピトープビニング特性評価研究で明らかなように、3E3及び19C4は、別個の重複しないエピトープを有し、両方の試薬がAb1をサンドイッチすることを可能にする(図5E)。対照的に、クローン14B11(3E3と同じ群1)、9H10及び24B4(19C4と同じ群2)は、3E3又は19C4のいずれとの適合性も示さなかった。クローン9H10及び24B4は、クローン3E3と重複しないエピトープを有するが、19C4と同様の特徴を共有しているにもかかわらず、19C4が3E3と対になったときに同じロバストな用量反応曲線を提供しない。これらの結果は、この種の試薬選択プロセスにおける実験的生物分析データの重要性を強調し、試薬特性評価データを補完する。プレートを3E3又は19C4のいずれかでコーティングし、残りのクローンを検出試薬として使用すると許容可能なアッセイが得られるが、3E3を、その良好なシグナル対ノイズ比のために捕捉抗体として使用するために選択した。より重要なことに、この試薬対はまた、遊離及び結合した薬物(循環標的抗原と複合体化した薬物)のより良好な検出及び定量をもたらした。これは全薬物アッセイと考えられるが、反対向きのアッセイは遊離薬物アッセイと考えられ、循環標的の存在による干渉の増加を受ける。
【0146】
B. ADAアッセイのためのAb2開発
治療患者における抗薬物抗体(ADA)の存在を検出するための高感度アッセイは、組換え治療薬に対する免疫応答を評価するために極めて重要である。ADAアッセイの開発のため、抗IDは、好ましくは薬物分子にユニークなエピトープを標的とすべきである。本明細書に記載の産生及び選択戦略を使用してB細胞に由来するAb1に対する抗体は、おそらく抗IDである。したがって、上記の5つのクローンを、プロジェクトEの臨床免疫原性アッセイにおける代用陽性対照としての適合性について調査した。
【0147】
ADAアッセイの開発のため、架橋ELISA形式を使用した(図7A)。ADA試料は、1000ng/mLの個々のAb2クローンを健康なドナーからの純粋なヒト血清に添加することによって調製した。試料を1/20希釈し、続いて2倍段階希釈して滴定曲線を作成した(1000ng/mL~7.8ng/mL)。ビオチン化及びジゴキシゲニン複合化治療用Ab1抗体試薬を添加し(各4μg/mL;10:1抗原チャレンジ比)、希釈した試料と一晩インキュベートし、Ab2と免疫複合体を形成した。その後、複合体をストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート(11734776001、Roche)上に捕捉し、続いてマウス抗DIG HRPコンジュゲートmAb(200032156、Jackson Immunoresearch)を用いて検出し、PKアッセイについて上記のように発色させた。
【0148】
3E3及び24B4の両方が、他の抗IDよりも優れた特徴を有する特異的でロバストな結合曲線をもたらし、したがって、このプロジェクトにおけるADAアッセイ開発のための好適な抗ID試薬である(図7B)。
【0149】
理解を明確にするために、上記発明は図示及び例示によって程度詳細に説明されているが、これらの説明及び例示は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
【配列表】
2023539279000001.app
【国際調査報告】