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特表2023-539293保護された反応性構成成分を有するシーラントドレッシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】保護された反応性構成成分を有するシーラントドレッシング
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/22 20060101AFI20230906BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20230906BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20230906BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61L15/22 310
A61L15/26 100
A61L15/18 100
A61L15/20 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513689
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2021057063
(87)【国際公開番号】W WO2022043796
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】17/007,712
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ワインドル・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リュー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤノス・ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ワン・イ-ラン
(72)【発明者】
【氏名】コソル・ウィライ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081BB08
4C081CA182
4C081CC04
4C081CE08
4C081CE11
4C081CF26
4C081DA02
4C081DC02
4C081DC03
4C081DC04
4C081EA06
4C081EA11
(57)【要約】
本発明は、担体層、少なくとも2つの副層を有する多層創傷ドレッシングであって、各副層が、少なくとも1つの反応性架橋成分を含有し、少なくとも2つの反応性架橋成分が、その他の成分と共反応性であり、少なくとも1つの反応性架橋成分が、保護脱離基及び緩衝塩剤を有する、多層創傷ドレッシングを対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層創傷ドレッシングであって、
a.担体層と、
b.少なくとも2つの副層であって、各副層が、少なくとも1つの反応性架橋成分を含有し、前記少なくとも2つの反応性架橋成分が、その他の成分と共反応性であり、少なくとも1つの反応性架橋成分が、保護脱離基を有する、少なくとも2つの副層と、
c.緩衝塩剤と、
を備える、前記多層創傷ドレッシング。
【請求項2】
少なくとも2つの別個の共反応性含有副層を有する、請求項1に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項3】
前記担体層が、超音波溶接、ニードルパンチ加工、熱溶接、化学的付着、縫合接着又はそれらの組合せにより構造的に一体化される少なくとも2つの化学的に異なる層を有する、請求項1に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項4】
前記少なくとも1つの保護された反応性架橋成分が、ハロゲン化水素脱離基によりエンドキャップされたアミン基を実質的にすべて有する、請求項1に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項5】
前記少なくとも1つの保護された反応性基が、実質的にすべての一級アミン基上に保護脱離基を有するPEG-アミンである、請求項4に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項6】
前記保護脱離基が、前記緩衝剤と反応し、前記一級アミン基を反応に利用可能にする、請求項5に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項7】
2つの別個の共反応性含有副層を有し、一方の層に、共反応性保護架橋基でコーティングされた対向する副層内で使用可能である基と共反応性である成分が設けられている、請求項1に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項8】
前記担体層及び前記2つの副層が、積層配列にある、請求項7に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項9】
前記担体層が、緩衝剤、共反応性架橋剤及び保護された共反応性架橋剤での3つの積層された副層コーティングを有する、請求項8に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項10】
前記緩衝剤が、アルカリ化合物であり、前記共反応性架橋剤が、PEG-NHSであり、前記保護性共反応性架橋成分が、複数のハロゲン化水素保護脱離基を有するPEG-アミンである、請求項9に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項11】
前記緩衝剤副層が、前記担体層に直接隣接しており、前記保護された共反応性架橋性コーティングされた副層剤が、前記緩衝剤でコーティングされた副層に隣接しており、前記共反応性架橋剤でコーティングされた副層が、前記保護された共反応性架橋性コーティングされた副層に直接隣接している最上部層である、請求項10に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項12】
積層配列で2つの別個の副層を備える担体層と、前記担体層に隣接している緩衝剤でコーティングされた副層と、前記緩衝剤でコーティングされた副層に隣接する最上部層として共に堆積された、保護されたPEG-アミン及びPEG-NHSの、反応剤でコーティングされた副層と、を有する、請求項1に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項13】
前記緩衝剤がアルカリ化合物である、請求項1に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項14】
前記緩衝剤が、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム又は四ホウ酸二ナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス-トリスメタン(ビス-トリス)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム及びそれらの組合せである、請求項13に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項15】
可撓性を増大させるために柔軟化が施されている、請求項1に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項16】
ローラ圧縮柔軟化が施されている、請求項15に記載の多層創傷ドレッシング。
【請求項17】
請求項1に記載の多層創傷ドレッシングを製造する方法であって、共反応性架橋剤及び緩衝剤の層でコーティング基材に噴霧コーティングすることによる、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
2つの架橋成分を含有する吸収性止血パッチが、米国特許出願公開第2011/0045047A1号を含む文献に記載されている。このようなパッチの架橋成分は、一対の共反応性化合物であり得るか、又は担体基材上の対応する共反応性基と共有結合性架橋を形成することができる利用可能な単位を有する共反応性化合物でコーティングされている担体基材であり得る。このような特許の主な制約は、共反応性成分が水性/湿潤環境で反応し得、これが、パッチ効力を経時的に低下させる場合があることである。本問題を克服するための1つの取り組みは、低水分条件下で共反応性含有パッチを加工及び包装することであった。別の取り組みは、ドレッシングの対向する側の上にコーティングを適用することによって、又は共反応性成分の間にフィルムバリア層を配置することによって、共反応性層の間に若干の空間又は間隔を生成することであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本出願人らは、安全性及び効力を改善する代替方法であって、ドレッシング表面に適用される共反応性架橋成分の1つ以上が、保護脱離基により化学修飾されており、緩衝塩剤と共に送達される代替方法を特定した。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、担体層、少なくとも2つの副層を有する多層創傷ドレッシングであって、各副層が、少なくとも1つの反応性架橋成分を含有し、少なくとも2つの反応性架橋成分が、その他の成分と共反応性であり、少なくとも1つの反応性架橋成分が、保護脱離基及び緩衝塩剤を有する、多層創傷ドレッシングを対象とする。創傷ドレッシングは、少なくとも2つの別個の共反応性含有副層を有することができる。担体層は、超音波溶接、ニードルパンチ加工、熱溶接、化学的付着、縫合接着又はそれらの組合せにより、構造的に一体化される、少なくとも2つの化学的に異なる層を有することができる。
【0004】
少なくとも1つの保護された反応性架橋成分は、ハロゲン化水素脱離基によりエンドキャップされたアミン基を実質的にすべて有することができる。一実施形態では、少なくとも1つの保護されている反応性基は、実質的にすべての一級アミン基上に保護脱離基を有するPEG-アミンである。保護脱離基は、緩衝液と反応し、一級アミン基を反応に利用可能にすることができる。
【0005】
2つの別個の共反応性含有副層は、共反応性保護架橋基である第2の好ましくは対向する副層内で利用可能である基と共反応性である成分を有する、第1の層の形態で設けられ得る。
【0006】
担体及び2つの副層は、積層配列に配列され得る。一実施形態では、担体は、緩衝剤、共反応性架橋剤及び保護された共反応性架橋剤での3つの積層された副層コーティングを有する。緩衝剤副層は、担体層に直接隣接することができ、保護された共反応性架橋性コーティング副層剤は、緩衝剤でコーティングされた副層に隣接しており、共反応性架橋剤でコーティングされた副層は、保護された共反応性架橋性コーティングされた副層に直接隣接している最上部層である。別の実施形態では、本多層創傷ドレッシングは、積層配列で2つの別個の副層を備える担体層と、担体層に隣接している緩衝剤でコーティングされた副層と、緩衝剤でコーティングされた副層に隣接する最上部層として共に堆積された、保護されたPEG-アミン及びPEG-NHSの、反応剤でコーティングされた副層と、を有することができる。
【0007】
緩衝剤は、アルカリ化合物とすることができる一方、共反応性架橋剤は、PEG-NHSとすることができ、共反応性保護架橋成分は、複数のハロゲン化水素保護脱離基を有するPEG-アミンである。緩衝剤は、好ましくは、アルカリ化合物であり得る。一実施形態では、緩衝剤は、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム又は四ホウ酸二ナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス-トリスメタン(ビス-トリス)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム及びそれらの組合せであり得る。
【0008】
一実施形態では、上記の多層創傷ドレッシングには、可撓性を増大させるために柔軟化(pliabilization)が施されている。別の実施形態では、上記の創傷ドレッシングには、ローラ圧縮柔軟化が施されている。
【0009】
本発明はまた、共反応性架橋剤及び緩衝剤の層でコーティング基材を噴霧コーティングすることによる、上記の多層創傷ドレッシングを製造する方法に関する。本発明はまた、組織表面に、上記の多層創傷ドレッシングを適用することを含む、処置方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の創傷ドレッシングの実施形態を例示する。
図2】複数の試料に関する組織剥離力のグラフを例示する。
図3】剥離力の値を比較したグラフを例示する。
図4】さまざまな緩衝剤の場合の組織剥離力に関する比較値を例示する。
図5】最大負荷対重量のプロットを例示する。
図6】最大負荷対表面形態のプロットを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のドレッシングは、共反応性架橋成分及び緩衝剤層を含有する、少なくとも2つの副層を有する担体層を含む。担体層は、超音波溶接、ニードルパンチ加工、熱溶接、化学的付着、縫合接着により、構造的に一体化されている、少なくとも2つの化学的に異なる層を有することができる。更に代替的な実施形態では、本創傷ドレッシングには、少なくとも2つの別個の共反応性含有層が設けられることができ、好ましくはアルカリ緩衝剤として、緩衝塩剤と一緒にされ得るか、又はこれと共に送達され得る。
【0012】
担体基材及び基材層は、場合により、織布、不織布又は多孔質スポンジ材料の形態であり得る。例示的な構造体材料は、セルロース系、合成ポリマー、ゼラチン、コラーゲン、及び細胞外マトリックスである。担体基材及び副層は、ゼラチン、コラーゲン、酸化多糖類、脂肪族ポリエステルポリマー、並びに/又はD-乳酸、L-乳酸、ラクチド(L-、D-、メソ形を含む)、グリコール酸、グリコリド、カプロラクトン、p-ジオキサノン及びトリメチレンカーボネート、並びにこれらの混合物又はブレンドからなる群から選択される1つ以上のモノマーのコポリマーから選択される成分からなり得る。分解性脂肪族ポリエステルジオール及び分解性鎖延長剤(例えば、2-ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロパノエート、4-((1-(1-アミノ-2-フェニルエトキシ)エトキシ)メチルシクロヘキシル)メチル-2-アミノ-3-フェニルプロパノエート、1,1-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(3-(2-ヒドロキシエチル尿素、エタン-1,2-ジイルビス(3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ビス(2-ヒドロキシエチル)ホスフェート及びビス(2-ヒドロキシヘキシル)ホスフェート))と共に、ジイソシアネート(例えば、2,6-ジイソシアネートヘキサン酸エチル(ELDI)及び2,6-ジイソシアネートヘキサン酸メチル(MLDI))を使用(しかし、これらに限定されない)して調製された生分解性ポリウレタンもまた、基材の作製に好適であり得る。
【0013】
一形態では、担体基材は、酸化多糖類、特に酸化セルロース及びこれらの中和誘導体の層からなる。例えば、セルロースは、カルボキシル-酸化又はアルデヒド-酸化セルロースであってもよい。一形態では、酸化再生セルロースを含むがこれに限定されない酸化再生多糖を使用して、第2の吸収性織布又は編布を調製してもよい。再生セルロースは、再生されていないセルロースに比べて、より高い均一性を有する。再生セルロース、及び酸化再生セルロースを作製する方法の詳細な説明が、米国特許第3,364,200号、同第5,180,398号、及び同第4,626,253号に記載されており、これらの特許の内容は、そのすべての内容が記載されたものとして、参照により本明細書に組み込まれる。利用され得る布の例としては、以下に限定されないが、各々が、Ethicon,Inc.,Somerville、N.J.から入手可能な、Interceed吸収性接着バリア、Surgicel吸収性止血剤、Surgicel Nu-Knit吸収性止血剤及びSurgicel Fibrillar吸収性止血剤が挙げられる。米国特許第5,007,916号は、前述のInterceed吸収性接着バリア及びその作製方法を開示しており、その内容は、それらが開示するすべてについて参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
担体基材は、代替的又は追加的に、脂肪族ポリエステルポリマー、コポリマー又はそれらのブレンドの布の層からなり得る。脂肪族ポリエステルは、典型的には、ラクチド(L-及びD-、メソ形を含む)、グリコール酸、グリコリド、カプロラクトン、p-ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)、及びトリメチレンカーボネート(1,3-ジオキサン-2-オン)を含むが、これらに限定されないモノマーの開環重合において合成される。脂肪族ポリエステルは、場合によっては、例えば、D-乳酸、L-乳酸、及び/又はグリコール酸の重縮合によって作製することができる。一形態では、布は、グリコリドとラクチドとのコポリマーを、グリコリド及び残りのラクチドのモル基準で約70~95%の範囲の量で含む。
【0015】
担体基材はまた、Ethicon,IncからProceedという商標名にて市販されている酸化再生セルロース/ポリプロピレン/ポリジオキサノン(PDS)メッシュを含んでもよい。米国特許公開第2005/0113849A1号及び同第2008/0071300A1号は、前述のProceed酸化再生セルロース/ポリプロピレン/PDSメッシュ基材及びそれを作製するための方法を開示し、その内容は、それらが開示するすべてについて参照により本明細書に組み込まれる。一形態では、酸化再生セルロース/ポリプロピレン/PDSメッシュの両方の外側表面は、ポリマーコーティングで実質的にコーティングされてもよく、別の形態では、本基材の一方の外面のみがポリマーコーティングで実質的にコーティングされてもよい。基材を形成するために使用される布は、脂肪族ポリエステルポリマー、コポリマー、又はこれらのブレンドを単独で、あるいは酸化多糖類繊維と組み合わせて含んでもよい。
【0016】
一実施形態では、担体基材は、生体材料、好ましくはタンパク質、バイオポリマー、又は多糖類マトリックス、とりわけコラーゲン、ゼラチン、フィブリン、デンプン又はキトサンマトリックス、及びそれらの混合物からなる群から選択される生体材料の層から作製されている。好ましくは、本発明のマトリックスは生分解性である、すなわち、ある時間の経過後、患者の身体に自然に吸収される。いずれにせよ、材料(マトリックスを含む)は、生体適合性でなければならない、すなわち、材料は、それを投与される患者に影響を与えない。このような生分解性材料は、止血が体内で、すなわち手術の過程で達成され、本部位が手術後に閉止される状況において特に好適である。
【0017】
したがって、一実施形態では、担体基材は、好ましくは、タンパク質などのバイオポリマー又は多糖類から選択される生体材料である。とりわけ好ましくは、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、多糖類、例えば、ヒアルロン酸、キトサン、及びこれらの誘導体、特に好ましくは、ゼラチン、コラーゲン、及びキトサン、とりわけ好ましくはゼラチン及びコラーゲンからなる群から選択される生体材料である。本発明に使用されるかかるゼラチン又はコラーゲンマトリックスは、多孔質又は繊維性マトリックス、並びに粒子に加工され得る液体、ペースト状、繊維状又は粉末状のコラーゲン材料からの材料など、ゲルを形成するのに好適な任意のコラーゲン由来であり得る。スポンジ又はシートの製造のためのコラーゲンゲルの調製は、ゲル形成が起こるまでの酸性化及びその後のpH中和を含み得る。ゲル形成能力又は溶解性を改善するために、乾燥時に安定したスポンジ又はシートを形成する特性が低下しないかぎり、コラーゲンは(部分的に)加水分解又は修飾され得る。トロンビン受容体活性化剤をカップリングするために使用されるマトリックスは、バイオポリマー、すなわち、天然に存在するポリマー若しくはその誘導体であり得るか、又は合成ポリマーであり得る。本発明による止血材料において有用なバイオポリマーの例としては、コラーゲン、ゼラチンなどのコラーゲン誘導体、エラスチン、及びエラスチン誘導体などのポリペプチドが挙げられる。
【0018】
本開示によるコラーゲンを含有する実施形態は、多孔質担体基材の第1の部分に適用される第1の共反応性架橋成分と、多孔質担体基材の第2の部分に適用される第2の共反応性架橋成分と、を有する、多孔質担体基材を含む。
【0019】
ドレッシングの多孔質担体基材は、その表面の少なくとも一部分にわたり開口部又は細孔を有する。以下に一層詳細に記載するように、多孔質担体基材を形成するために好適な材料としては、繊維状構造体(例えば、編組構造、織布構造、不織布構造等)及び/又は発泡体(例えば、連続気泡発泡体又は独立気泡発泡体)が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態では、細孔は、多孔質担体基材の厚さ全体にわたって相互接続するように十分な数及びサイズであってもよい。織布、編布、及び連続気泡発泡体は、細孔が多孔質担体基材の厚さ全体にわたり相互接続するように十分な数及びサイズであり得る構造の例示的な例である。実施形態では、細孔は、多孔質担体基材の厚さ全体にわたって相互接続しない。独立気泡発泡体又は融合不織布材料は、細孔が多孔質担体基材の厚さ全体にわたって相互接続していなくてもよい構造の例示的な例である。発泡多孔質基材の細孔は、多孔質担体基材の厚さ全体に広がってもよい。更に他の実施形態では、細孔は、多孔質担体基材の厚さ全体に延在せず、むしろその厚さの一部分に存在する。実施形態では、開口部又は細孔は、多孔質担体基材の表面の一部分に位置し、多孔質担体基材の他の部分は、非多孔質テクスチャを有する。
【0020】
多孔質担体基材が繊維質である場合、多孔質担体基材は、編組、織組、不織技術、湿式紡糸、電界紡糸、押出、共押出などが挙げられるがこれらに限定されない、繊維状構造体の形成に好適な任意の方法を用いて形成され得る。繊維状構造体を作製するために好適な技術は、当業者の認識範囲内である。実施形態では、織物は、米国特許第7,021,086号及び同第6,443,964号に記載されている織物など三次元構造を有し、これらの開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
実施形態では、多孔質担体基材は、酸化セルロースの繊維から作製される。そのような材料は周知であり、SURGICELという商標名にて市販されている酸化セルロース止血材料が挙げられる。酸化セルロース止血材料を調製するための方法は、当業者に周知であり、例えば米国特許第3,364,200号、同第4,626,253号、同第5,484,913号及び同第6,500,777号に開示されており、これらの開示は、それらの全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
多孔質担体基材が発泡体である場合、多孔質担体基材は、組成物の凍結乾燥又はフリーズドライが挙げられるがこれに限定されない、発泡体又はスポンジの形成に好適な任意の方法を使用して形成されてもよい。発泡体は、架橋性又は非架橋性であってもよく、共有結合又はイオン結合を含んでもよい。発泡体を作製するために好適な技術は、当業者の認識範囲内である。
【0023】
多孔質担体基材の1層以上の副層は、少なくとも0.1cmの厚さであり得、ある特定の実施形態では、約0.2~約1.5cmの厚さであり得る。多孔質担体基材の副層中の細孔のサイズは、約2マイクロメートル~約300マイクロメートル、実施形態では、約50マイクロメートル~約150マイクロメートルであり得る。基材の副層の細孔は、基材中に任意の様式で配置され得ることが想定される。例えば、細孔はランダム又は均一な様式で構成され得る。一部の実施形態では、アルギン酸銅(copper alginate)を使用して細孔を形成し、ハニカム形状の多孔質基材を作製してもよい。更にその他の実施形態では、細孔は、多孔質基材に勾配を作り出すように構成されてもよい。勾配は、生理液を吸収し、第1の共反応性成分を担持する生理液の移動を第2の共反応性成分に対して向ける、多孔質基材の能力を更に高め得る。
【0024】
実施形態では、ドレッシングは、分子量が100kDaに近い、主に非加水分解アルファ鎖からなる、非変性コラーゲン、又は加熱若しくは任意の他の方法によってその螺旋構造を少なくとも部分的に欠損しているコラーゲンから作製される。用語「非変性コラーゲン」とは、その螺旋構造を欠損していないコラーゲンを意味する。本明細書のドレッシングの、ドレッシングに使用されるコラーゲンは、天然コラーゲンであっても、あるいは、とりわけ、ペプシン消化によって得られる、及び/又は上記で定義した中度の加熱後に得られる、アテロコラーゲンであってもよい。コラーゲンは、酸化、メチル化、エチル化、スクシニル化、又は任意のその他の周知のプロセスによって予め化学的に修飾されていてもよい。コラーゲンはまた、ゲニピン、イソシアネート及びアルデヒドなどの任意の好適な架橋剤で架橋されていてもよい。コラーゲンの起源及びタイプは、上記の非ドレッシングについて示されたとおりであってもよい。
【0025】
他の実施形態では、ゼラチン又はコラーゲン(本明細書に記載される任意のコラーゲンを含む)は、前駆体の1つとして利用されてもよい。以下に一層詳細に記載されているとおり、コラーゲン前駆体上のアミン基(これは、求核性である)は、第1の共反応性成分上の求電子性基と自由に反応し得、それによって、本開示の基材を形成する。
【0026】
実施形態では、担体基材又はその多孔質コラーゲン層は、2~50グラム/リットル(g/L)の濃度及び4~25Cの初期温度で、コラーゲンの酸性水溶液を凍結乾燥することによって得ることができる。溶液中のコラーゲンの濃度は、約1g/L~約30g/L、実施形態では約10g/Lであり得る。本溶液は、有利には、約6~8のpHに中和される。ドレッシングはまた、コラーゲン又は加熱コラーゲンの溶液から調製され、それぞれの可変量のある体積の空気(空気対水の体積は約1~約10で変化する)の存在下で乳化された流体発泡体を凍結乾燥することによって得ることができる。
【0027】
一実施形態では、担体基材は、第1の副層上に適用された第1の共反応性成分と、そこに適用された第2の共反応性成分と、を有する。用語「第1の共反応性成分」及び「第2の共反応性成分」とは、ヒドロゲルなどの架橋分子のネットワークを形成する反応に関与し得るポリマー、機能性ポリマー、巨大分子、低分子、又は架橋剤をそれぞれ意味する。
【0028】
一実施形態では、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分のそれぞれは、多官能性であり、これは、例えば、第1の共反応性成分上の求核性官能基が第2の共反応性成分上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成し得るように、2つ以上の求電子性基又は求核性官能基を含むことを意味する。第1の共反応性成分又は第2の共反応性成分の少なくとも一方は、求電子性-求核性反応の結果として前駆体が合わさり架橋ポリマー生成物を形成するように、2つ超の官能基を含む。このような反応を「架橋反応」と称する。
【0029】
ある特定の実施形態では、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分のそれぞれは、求核性前駆体及び求電子性前駆体の両方が架橋反応で使用されるかぎり、求核性基のみ又は求電子性官能基のみのいずれかの官能基の一分類しか含まない。したがって、例えば、第1の共反応性成分がアミンなどの求核性官能基を有する場合、第2の共反応性成分は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子性官能基を有してもよい。一方、第1の共反応性成分がスルホスクシンイミドなどの求電子性官能基を有する場合、第2の共反応性成分は、アミン又はチオールなどの求核性官能基を有してもよい。したがって、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、スチレンスルホン酸、又はアミン末端二機能性若しくは多機能性ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)などの機能性ポリマーを使用することができる。
【0030】
第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分は、生物学的に不活性かつ水溶性のコアを有してもよい。コアが水溶性のポリマー領域である場合、使用されてもよい好ましいポリマーとしては、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマー、及びポリビニルアルコール(「PVA」)などのポリアルキレンオキシド;ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);デキストラン、キトサン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒアルロン酸などのポリ(サッカライド);並びにアルブミン、コラーゲン、カゼイン、及びゼラチンなどのタンパク質が挙げられる。ポリエーテル、より具体的にはポリ(オキシアルキレン)若しくはポリ(エチレングリコール)、又はポリエチレングリコールがとりわけ有用である。コアが本質的に低分子である場合、種々の親水性官能性のいずれかを使用して、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分を水溶性にし得る。例えば、水溶性であるヒドロキシル、アミン、スルホン酸、及びカルボン酸のような官能基を使用して、前駆体を水溶性にしてもよい。更に、スベリン酸(subaric acid)のN-ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは水に不溶性であるが、スクシンイミド環にスルホネート基を付加することにより、アミン基に対する反応性に影響を与えることなく、スベリン酸のNHSエステルを水溶性にすることができる。
【0031】
ある特定の実施形態では、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分のどちらも、架橋することができる大きな分子であってもよい。例えば、実施形態では、前駆体のうちの1つは、約2,000~約20,000ダルトンの分子量を有する多官能性PEGであってもよい。本多官能性PEGは、求電子性基を有する実施形態では、約100,000ダルトンの分子量を有するコラーゲンと反応することができる。他の実施形態では、約50,000~約100,000ダルトンの分子量を有するゼラチンを、コラーゲンの代わりに使用してもよい。
【0032】
すべての実施形態において、共反応性成分の少なくとも1つは、保護脱離基を有しており、緩衝塩剤は、副層として供給される。PEG-アミンは、例えば、保護脱離基として、PEG-アミンの塩化物塩形態などの塩形態で供給され得る。好ましい緩衝塩剤の例は、四ホウ酸二ナトリウム(ホウ砂)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス-トリスメタン(ビス-トリス)、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム及びそれらの組合せである。
【0033】
代替的な実施形態では、共反応性成分及び緩衝剤は、パッチ上に設けられてもよい。例示的な密閉パッチ/パッドは、PEG-NH2HCl及びPEG-NHS、好ましくはアルカリ緩衝剤として緩衝塩剤を含み、各々は、吸収性基材上に層として堆積される。
【0034】
第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分の反応から生じる生体適合性架橋ポリマーが生分解性又は吸収性であることが望ましい場合、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分の1つ以上は、官能基間に存在する生分解性結合を有してもよい。生分解性結合は、場合により、1つ以上の前駆体の水溶性コアとしても機能し得る。代替的に、又は加えて、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分の官能基は、それらの間の反応の生成物が生分解性結合をもたらすように選択されてもよい。各手法では、得られた生分解性生体適合性架橋ポリマーが、所望の期間内に分解、溶解又は吸収されるように、生分解性結合が選択されてもよい。好ましくは、生理学的条件下において非毒性生成物へと分解する生分解性結合が選択される。
【0035】
生分解性結合は、キレート、又は化学的若しくは酵素的に加水分解性若しくは吸収性であってもよい。例示的な化学的に加水分解可能な生分解性結合としては、グリコリド、d-ラクチド、ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートの、ポリマー、コポリマー及びオリゴマーが挙げられる。例示的な酵素的に加水分解可能な生分解性結合としては、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼによって切断可能なペプチド性結合が挙げられる。更なる例示的な生分解性結合としては、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(サッカライド)、及びポリ(ホスホネート)のポリマー並びにコポリマーが挙げられる。実施形態では、生分解性結合は、エステル結合を含有してもよい。いくつかの非限定的な例としては、コハク酸、グルタル酸、プロピオン酸、アジピン酸、又はアミノ酸のエステル、並びにカルボキシメチルエステルが挙げられる。
【0036】
実施形態では、複数のNHS基で官能化されたマルチARM PEGなどの多官能性求電子性ポリマーは、第1の共反応性成分として使用されてもよく、トリリジンなどの多官能性求核性成分は、第2の共反応性成分として使用されてもよい。他の実施形態では、複数のNHS基で官能化されたマルチARM PEGなどの多官能性求電子性ポリマーは、第1の共反応性成分として使用されてもよく、コラーゲン及び/又はコラーゲン誘導体などの多官能性求核性ポリマーは、第2の共反応性成分として使用されてもよい。複数のNHS基で官能化されたマルチARM PEGは、例えば、4つ、6つ又は8つのARM部を有し得、約5,000~約25,000の分子量を有し得る。好適な第1の前駆体及び第2の前駆体の多くの他の例は、米国特許第6,152,943号、同第6,165,201号、同第6,179,862号、同第6,514,534号、同第6,566,406号、同第6,605,294号、同第6,673,093号、同第6,703,047号、同第6,818,018号、同第7,009,034号及び同第7,347,850号に記載され、これらのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
パッチの実施形態に関すると、共反応性成分及び緩衝剤は、個々の層としてマトリックス上に堆積させることができる。代替的に、共反応性成分は、混合物として堆積され得る一方、緩衝剤は、別個の層として設けられる。層の順序は変わり得るが、PEG-NH2HCl(又は、任意の他のハロゲン化水素)、PEG-NHS及び緩衝塩(四ホウ酸二ナトリウム、MES、TRIS、ビス-トリス、炭酸水素ナトリウムなど)で、パッチ又はパッドをコーティングするための好ましい順序は、マトリックスで始まり、次いで緩衝塩の層、保護されたPEG-アミンの層、及びPEG-NHSの層である。
【0038】
更に、ARMの数及び材料の分子量は変化し得るが、有効性及び安定性の観点から、4-ARM-10K-NH2HCl及び4-ARM-10K-NHSが好ましいバリアントである。実施形態を異なるコーティング順序で評価した。性能及び安定性は、噴霧コーティングプロセスを用いるマトリックス上の堆積緩衝液の位置によって大きく影響される。緩衝液を両方のPEGの下に堆積させた場合(すなわち、マトリックスが適用された場合に組織から最も遠く離れている)、性能及び安定性は最適であった。
【0039】
第1の共反応性成分は、噴霧、はけ塗り、浸漬、注入、ラミネート加工等を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の任意の好適な方法を使用して多孔質担体基材に適用されてもよい。実施形態では、第1の共反応性成分は、止血ドレッシングを形成することができる任意の濃度、寸法及び構成で担体基材上にコーティングとして適用されてもよい。実施形態では、第1の共反応性成分コーティングは、多孔質担体基材の細孔に浸透することができる。実施形態では、第1の共反応性成分は、基材の少なくとも片面に積層されたフィルムとして多孔質基材に適用されてもよい。
【0040】
パッチの実施形態は、マトリックス表面に堆積させた緩衝剤の存在下で、及び非存在下で評価した。組織剥離試験の間に0.2M TRIS(pH=7.4)を媒体として使用した場合、緩衝能は、PEG-NH2HClを脱保護するには不十分であり、組織への粘着は不良となった。媒体を1M炭酸水素ナトリウム(pH=8.3)と交換した場合、PEG-NH2HClは、十分に脱保護され、対照としての標準配合物よりも粘着特性を改善させることが可能となる。実施形態1及び2に記載されているとおりにマトリックス表面自体に緩衝剤を施す際に、緩衝剤は製品内部に施されているので、緩衝剤が事前に血液又は体液中に予め存在する必要がなくなる。
【0041】
同様に、第2の共反応性成分及び緩衝剤は、噴霧、はけ塗り、浸漬、注入、ラミネート加工等を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の任意の好適な方法を用いて多孔質基材に適用することができる。更に他の実施形態では、第2の共反応性成分及び緩衝剤はそれぞれ、溶液中で多孔質基材に適用され、続いて溶媒の蒸発又は凍結乾燥が行われてもよい。実施形態では、第2の共反応性成分及び緩衝剤はそれぞれ、担体基材の少なくとも片面上のコーティングとして、又は担体基材の少なくとも片面上に積層されたフィルムとして多孔質基材に適用されてもよい。
【0042】
発泡コラーゲン又はゼラチンの代替として、多孔質担体基材が、繊維状構造体であってもよいことを、理解すべきである。したがって、実施形態では、多孔質基材は、繊維状構造体、すなわち織布又は不織布構造体であってもよい。第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分、並びに緩衝剤は、発泡多孔質担体基材に関して上に記載したものと実質的に同じ技法を使用して、繊維状多孔質担体基材に適用することができる。したがって、多孔質担体基材が繊維状である上記の発泡多孔質担体基材と同様に、第1の共反応性成分及び/又は第2の共反応性成分、並びに緩衝剤は、例えば、溶液から堆積させた粒子、フィルム形成性溶液を乾燥させることによって形成された非多孔質フィルムとして、又は繊維状多孔質担体基材の少なくとも一部分に適用された発泡体として、適用されてもよい。
【0043】
一実施形態では、1つ以上の副層は、不織布及び強化布を含む。強化布は、不織布を直接又は間接的のどちらか一方で取り付けることができる裏材を提供する。不織布は、本明細書に記載される強化された吸収性多層布の第1の吸収性不織布として機能する。第1の吸収性不織布は、脂肪族ポリエステルポリマー、コポリマー、又はこれらのブレンドを含む繊維からなる。脂肪族ポリエステルは、通常、乳酸、ラクチド(L-、D-、メソ、及びD、L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、イプシロン-カプロラクトン、p-ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)、及びトリメチレンカーボネート(1,3-ジオキサン-2-オン)を含むが、これらに限定されないモノマーの開環重合において合成される。好ましくは、第1の吸収性不織布は、グリコリドとラクチドとのコポリマーを、グリコリド及び残りのラクチドのモル基準で約70~95%の範囲の量で含む。
【0044】
代替的実施形態では、第1の吸収性不織布は、酸化多糖類繊維と組み合わせて、脂肪族ポリエステルポリマー、コポリマー、又はこれらのブレンドからなる繊維を含む。好ましくは、不織布は、紡糸、織組、又は編組以外のプロセスによって作製される。例えば、不織布は、紡糸、織組又は編組を含むプロセスによって作製された編み糸、スクリム、網又はフィラメントから調製されてもよい。編み糸、スクリム、網及び/又はフィラメントは、互いの絡み合い及び第2の吸収性織布又は編布への付着を強化するために捲縮される。次に、このような捲縮された編み糸、スクリム、網及び/又はフィラメントを、絡み合うのに十分な長さのステープルへと切断してもよい。ステープルは、長さが約0.1~3.0インチ、好ましくは約0.75~2.5インチ、最も好ましくは約1.5~2.0インチであってもよい。ステープルをカード加工して不織布バットを作製し、次にこれをニードルパンチ又はカレンダー加工して第1の吸収性不織布にしてもよい。更に、ステープルは、捻じれてもよい又は積み重ねられてもよい。
【0045】
不織布の副層の厚さは、約0.25~2mmの範囲であってもよい。不織布の坪量は、約0.01~0.2g/in、好ましくは約0.03~0.1g/in、最も好ましくは約0.04~0.08g/inの範囲である。第1の吸収性不織布の重量%は、強化吸収性多層布の総重量に基づいて、約10~80%の範囲であってもよい。
【0046】
第2の吸収性織布又は編布は、強化繊維として機能し、また酸化多糖類、特に酸化セルロース及びその中和誘導体を含む。例えば、セルロースは、カルボキシル-酸化又はアルデヒド-酸化セルロースであってもよい。より好ましくは、酸化再生セルロースを含むがこれに限定されない酸化再生多糖を使用して、第2の吸収性織布又は編布を調製してもよい。再生セルロースは、再生されていないセルロースに比べて、そのより高い均一性のために好ましい。再生セルロース、及び酸化再生セルロースを作製する方法の詳細な説明が、米国特許第3,364,200号、同第5,180,398号、及び同第4,626,253号に記載されており、これらの特許のそれぞれの内容は、そのすべての内容が記載されたものとして、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本発明に利用されている強化布は、布が企図される用途で使用するのに必要な物理的特性を有するならば、織られていても又は編まれていてもよい。このような布は、例えば、米国特許第4,626,253号、同第5,002,551号、及び同第5,007,916号に記載されており、これらの内容は、その全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態では、強化布は、ブライトレーヨン糸で構成された縦編みトリコット生地であり、これは続いて、布に生分解性を与えるのに有効な量のカルボキシル部分又はアルデヒド部分を含ませるために酸化される。
【0048】
別の実施形態では、第2の吸収性織布又は編布は、脂肪族ポリエステルポリマー、コポリマー、又はこれらのブレンドからなる繊維と組み合わせて酸化多糖類繊維を含む。
【0049】
第2の吸収性織布又は編布は、好ましくは酸化再生セルロースを含み、約0.001~0.2g/inの範囲、好ましくは約0.01~0.1g/inの範囲、最も好ましくは約0.04~0.07g/inの範囲の坪量を有してもよい。
【0050】
第1の吸収性不織布は、第2の吸収性織布又は編布に直接又は間接的のいずれかで取り付けられる。例えば、不織布は、ニードルパンチ加工、カレンダー加工、エンボス加工、又は水流絡合(hydroentanglement)、あるいは化学的接合若しくは熱接合を介して、第2の吸収性織布又は編布に組み込まれてもよい。第1の吸収性不織布のステープルは、互いに絡み合って、第2の吸収性織布又は編布に埋め込まれてもよい。より具体的には、化学的接着又は熱接着以外の方法では、第1の吸収性不織布のステープルの少なくとも約1%、好ましくは約10~20%、好ましくは約50%以下が、第2の吸収性織布又は編布の他方の側上に露出するように、第1の吸収性不織布を第2の吸収性織布又は編布に取り付けてもよい。このことによって、第1の吸収性不織布及び第2の吸収性織布又は編布が接合されたままとなり、通常の取り扱い条件下で離層しないことが確実になる。強化された吸収性多層布は均一であり、これによって、実質的に、第2の吸収性織布又は編布のいずれも、第1の吸収性不織布による被覆を視覚的に欠いていない。
【0051】
使用中、パッチドレッシングは、組織表面に直接適用された共反応性構成成と共に配向される。ある種の実施形態では、第1の共反応性部分及び第2の共反応性部分は、造影染料、表面テクスチャ、着色又はその他の視覚的手がかりを付与することによって互いに区別可能となり得る。例えば、損傷組織などの組織と接触する際、ドレッシングは、生理学的流体を吸い上げ、第1のヒドロゲルは、流体によって溶解されるであろう。流体がドレッシングに吸い取られ、ドレッシングを通じて移動すると、この流体は、溶解した第1の共反応性成分を第2の共反応性成分及び緩衝剤へと運ぶであろう。最終的に、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分は、反応して、生体適合性架橋材料を形成し、それにより、足場が分解するにつれて組織内殖及び再構築を補助する。一部の実施形態では、第1の共反応性成分及び第2の共反応性成分の反応によって生成される生体適合性架橋材料はまた、抗接着特性を有するドレッシングを提供する。
【0052】
以下の実施例は、単なる例示目的のために提示されているに過ぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0053】
実施例1:
4種の例となる堆積パターン。コーティングの順序は、担体基材への層の近さとして定義し(第1の層は担体基材に最も近く、第2の層が2番目に近いなど)、材料が噴霧プロセスで堆積される順序を表す。
【0054】
図1に示されている例(a-第1のコーティング順序)、(b-第2のコーティング順序)及び(c-第3のコーティング順序)は、緩衝塩、PEG-アミンの保護形態及びPEG-MHSからなる固有の堆積層を示す。例(d)は、単一の均一層に、PEG-アミンの保護形態及びPEG-NHSを一緒に共堆積させた混合物を例示する。90%のグリコリド及び10%のL-ラクチドから作製されたコポリマーからなる繊維の層に接合された酸化セルロースの層を含む二層担体基材表面への各成分の超音波噴霧を使用してこれらの層を適用した。4ARM-10K-PEG-アミン塩酸塩は、平均コーティング密度14.2mg/cmで堆積させた。4ARM-10K-PEG-SGは、平均コーティング密度17.7mg/cmで堆積させた。四ホウ酸二ナトリウムは、平均コーティング密度1.0mg/cmで、本検討における緩衝剤として使用した。
【0055】
実施例2:さまざまな緩衝剤コーティング順序の組織剥離力の試験。
【0056】
プロトタイプの組織剥離力は、条件の増加する厳しさについて評価し、図2に例示した。最も厳しくない条件はガンマ線-照射をしない0週間時とした一方、最も厳しい条件は、ガンマ線照射後、40℃で2週間の条件とした。
【0057】
実施例3:図3を参照されたい
さまざまな候補緩衝剤を用いるさまざまなプロトタイプの組織剥離力(a)-実施例1の第1のコーティング順序における緩衝剤の全部。プロトタイプの組織剥離力は、条件(b)の増加する厳しさについて評価した。最も厳しくない条件はガンマ線-照射をしない0週間時とした一方、最も厳しい条件は、ガンマ線照射後、40℃で2週間の条件とした。目標緩衝剤密度は、プロトタイプの製造に先だって、個々の緩衝剤を用いて、PEG-アミン塩酸塩を滴定することにより概数を求めた。超音波噴霧を使用して、90%グリコリド及び10%L-ラクチドから作製されたコポリマーからなる繊維の層に接合された酸化セルロースの層を備える二層担体基材表面に成分を堆積した。それぞれの緩衝剤(例えば、ビス-トリス、酢酸ナトリウムなど)を、ビス-トリスの場合、平均コーティング密度2.2mg/cm、酢酸ナトリウムの場合、2.0mg/cm2、炭酸水素ナトリウムの場合、1.2mg/cm2、ナトリウムMESの場合、2.2mg/cm、四ホウ酸二ナトリウムの場合、0.8mg/cm、及びTrisの場合、0.5mg/cmで最初に担体基材表面に、最初に堆積した。4ARM-10K-PEG-アミン塩酸塩(12mg/cm)及び4ARM-10K-PEG-SG(18mg/cm)をそれぞれ、指定の緩衝剤の後に逐次順序で、担体基材表面に、それぞれ、コーティングした。0週からの非照射データは、ビス-トリス及び炭酸水素ナトリウムプロトタイプの場合、入手できなかった。200N/mの標準品S1基準線は、組織剥離力測定に関する、典型的な結果に相当する一方、40N/mにおける「SOA」基準線は、酸化セルロースから作製された吸収性裏材、及び化学的に保護されていない一対の自己粘着性ヒドロゲル成分とから構成される市販の局所止血製品に関する組織剥離力に対応する。S1パッチは、共反応性架橋成分が保護されておらず、緩衝剤と共に供給されない、標準配合物に相当する。
【0058】
実施例4:
異なる緩衝材料を用いた交互積層(LbL)及び混合層(ML)プロトタイプの組織剥離結果を図4に示す。すべてのプロトタイプは、第1のコーティング順序で、緩衝剤を用いて製造した。すべての結果は、t=0からのものである。超音波噴霧を使用して、90%グリコリド及び10%L-ラクチドから作製されたコポリマーからなる繊維の層に接合された酸化セルロースの層を備える二層担体基材表面に成分を堆積した。緩衝剤は、ビス-トリスの場合、1.9mg/cm、炭酸水素ナトリウムの場合、2.4mg/cm、及び四ホウ酸二ナトリウムの場合、1.1mg/cmの目標コーティング密度で、それらのそれぞれの担体基材表面に最初に堆積した。4ARM-10K-PEG-アミン塩酸塩(7mg/cm)及び4ARM-10K-PEG-SG(7.8mg/cm)の共混合物を、指定の緩衝剤の後に、層として担体基材表面にコーティングした。
【0059】
酸化再生セルロース(ORC)及びポリグラクチン90:10(PG910)から製造されたマトリックスなどのマトリックス材料を、音波噴霧技法を使用して、4-ARM-5K PEG-NH2及び4-ARM-10K PEG-NHS又は4-ARM-10K PEG-NH2HCl及び4-ARM-10K PEG-NHSによりコーティングした場合、得られたマトリックスは、コーティングされていないマトリックスよりもかなり硬くなる。この特性は、平坦でない臓器表面の周りを完全に覆うことができず、したがって、組織表面の最適な封止をもたらさないので、臨床適用の間、望ましいものではない。この問題に対処するため、コーティングされたマトリックスを柔軟にした。柔軟化は、金属ローラを使用して圧縮することにより達成した。これは、コーティングされたマトリックス材料に一層大きな可撓性を付与する。更に、コーティング密度、摩損度及び効力を維持すると同時に、コーティング材料を除去することなく可撓性を増大することが重要である。
【0060】
実施例5:コーティングされた硬くなった基材マトリックスの柔軟性の増大。
1つ以上のPEG組成物(例えば、PEG-NH2+PEG-NHS)で噴霧コーティングされた平面基材マトリックス(例えば、ORC+90%のグリコリド及び10%のL-ラクチドから作製されたコポリマーからなる繊維)の柔軟性を増大する方法であって、噴霧コーティングされた基材マトリックスを金属ローラで圧縮する工程を含む方法。
【0061】
ORC+ポリグラクチン90:10マトリックスから作製された担体基材マトリックスを、1.2のモル比で、PEG-NHS-10K(18mg/cm)4ARM及びPEG-NH2-5K(7.5mg/cm)4ARMによりコーティングした。このコーティングしたマトリックスは、動物モデルにおいて、有効であることが分かった。しかし、PEG材料でコーティングした後の同じコーティングされたマトリックス構築物は、不規則な組織表面に容易には適合しなかった。次に、コーティングされたマトリックス材料の試料を、金属ローラを使用して、平坦な金属表面に圧縮した。次に、この改変済みのコーティングされたマトリックス材料を使用し、不規則な組織表面に適合するという著しい改善を実証した。
【0062】
手順:
1.コーティングされたマトリックス材料からなる4枚の2”×4”片-試験試料を得る。
【0063】
2.試験試料のコーティング側の表面の上に円筒形ステンレス鋼を回転することにより、又はその表面を直接圧縮することによって圧力を印加した。回転方向は試料の長さに沿った。回転は、各試料に対して異なった(以下の条件:A、B及びD)。
A:885グラムの質量を有する円筒形ステンレス鋼製の重しを、試料の長さに沿って、3回(3トリップ)前後に転がす。
B:5650グラムの質量を有する円筒形ステンレス鋼製の重しを、試料の長さに沿って、1回(1トリップ)前後に転がす。
D:5650グラムの質量を有する重しを用いて、約3秒間、試料の表面に直接、圧力を適用する。
【0064】
条件A-対照及び圧縮物は、5度未満の偏向度という最小差を有する。
【0065】
条件B-対照は、約30度の偏向の最大差異度を有した。
【0066】
条件D-対照は、偏向について、7度という中度の差異を有した。
【0067】
実施例6:
ORC+ポリグラクチン90:10マトリックスから作製された担体基材マトリックスを、1.2のモル比で、PEG-NHS-10K(18mg/cm)4ARM及びPEG-NH2-5K(7.5mg/cm)4ARMによりコーティングした。ローラの異なる接触面設計(正方形ノブ、長手方向ノブ、平坦面と見なされるノブなし)の影響を、さまざまな死重量(900グラム、5650グラム、8190グラム)で調査した。試料情報:4-ARM PEG-NH2-5K/PEG-NHS-10Kを有する、上記のマトリックス。
【0068】
手順:
1. コーティングされたマトリックス材料からなる4枚の2”×4”片-試験試料を得る。
【0069】
2. 2”×4”の試料をそれぞれ秤量し、「前重量」と記録する。
【0070】
3. 表1における設計に従う重量と共に、その上に印刷されたポリマー層で覆われた円筒形ステンレス鋼を、試験試料のコーティング側の表面で回転させることによって圧力を印加した。回転方向は試料の長さに沿った。
【0071】
4. 試料を再秤量し、「後重量」と記録する。
【0072】
可撓性を定量するため、試料の3点屈曲を試験した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
結果は、最少の摩損度は、この手順によって引き起こされ、したがって、反応性材料の大部分が、この柔軟化法を使用して試料表面に留まったことを示唆する。
【0076】
実施例7:3点屈曲試験を使用する可撓性の定量
圧力は、可撓性に影響を及ぼす:図5に示されている結果は、900グラムの重しを使用して、試料のコーティング側に3トリップ、回転すると、可撓性が、対照と比較すると大幅に改善されたことを実証している。5650グラムの金属を使用して、試料のコーティング側に1トリップ回転すると、コーティングしたマトリックスの可撓性は、900gの場合よりも、一層高く大幅に増大する。しかし、試料のコーティング側の上に8190グラムの金属ローラを使用した場合、マトリックスの生じた可撓性は、5650グラムのものと大きな違いがない。これは可撓性がプラトーに到達したことを示唆する。
【0077】
ローラで加重した表面の表面形態は、可撓性に対して顕著な影響を及ぼさない。使用された900グラムの最低値は、対照のものよりも試料の柔軟性を大幅に改善し、適用した5650グラムの重しは、900グラムと比較した場合、大幅に柔軟な試料をもたらしたことが見出された。5650グラムと比較すると、より重量のある重し(8190グラム)を適用しても、一層高い可撓性のある試験試料をもたらさなかった。まとめると、この結果は、これらの試験材料が試験材料にとって効果的に柔軟にされ得る範囲は900グラム~5650グラムであることを実証した。しかし、これらの結果は、調査した表面形態の設計が、試験試料の柔軟性に大きな影響を及ぼさなかったことを示唆する。ローラの接触面は、さまざまなノブの形態の場合はSLAである一方、ノブのない群の場合は接触面が金属であったことに留意されたい。
【0078】
実施例8
酸化再生セルロース(ORC)及びポリグラクチン90:10から製造されたマトリックスなどの担体マトリックス材料(図1(第1のコーティング順序a))を、超音波噴霧技法を使用して、4-ARM-10K PEG-NH2HCl及び4-ARM-10K PEG-NHSによりコーティングする。試料を実施例1に記載したものと同じ手順を用いて処理し、接触面はすべて金属である。試料情報:PEG-NH.HCL-10K+PEG-NHS-10K+四ホウ酸二ナトリウムを最初に噴霧した上記のアミン塩マトリックス、及び非緩衝化マトリックス/4ARM PEG-NH/4ARM PEG-SG-10K)
【0079】
【表3】
【0080】
注:
1. 圧力はすべて、反応性コーティング側(存在する場合)表面に印加した。
【0081】
2. 1トリップは、試料長さに沿って、前後に回転させることを意味する(1往復トリップ)。
【0082】
手順:
1. 各サンプルを秤量し、重量を「前重量」として記録する。
【0083】
2. 対照試料「前写真」の写真を撮る
【0084】
3. 回転により重しを適用する
【0085】
4. 試料を秤量し、重量を「後重量」として記録する
【0086】
この実施例からの定性的結果は、可撓性結果を達成するために必要な最小重量が存在し、このアミン塩(B)配合物の場合には最小5650グラムが必要である一方、実験2に示されるとおり、3回、前後に回転させることによって非アミン配合物を柔軟にするためには、わずか900グラムの重しで十分であったことを示す。
【0087】
5650グラムの重しをコーティング側の前後に1回、回転させることによって、アミン塩試料及び非アミン塩試料の両方の試験試料の結果として得られた可撓性の増大は、両方の製剤(B及びH)について、類似した偏向角によって同様に観察される。
【0088】
両方の配合物からの試料の柔軟化は、反応性粉末の最小限の損失を伴って実現された。しかし、同じ手順を使用して、SOA創傷ドレッシングを柔軟化することはできなかった。3点屈曲を使用する試験試料の柔軟性に関する更なる分析に関する結果は、以下のとおりである。
【0089】
【表4】
【0090】
Tukey法及び95%信頼性を使用した情報のグループ化
【0091】
【表5】
【0092】
文字を共有しない平均値は、有意な差である。
【0093】
3点屈曲結果に基づいて、以下のとおり結論付けることができる。
【0094】
1. 試料(試料A)のコーティング側の表面で前後に3回回転させることにより、885グラムの重しによって、柔軟性は、対照(試料C)と比較すると大幅に増大する。この結果は、試料を柔軟にするためには、885グラムを3トリップで十分であることを示唆する。
【0095】
2. 試料(試料A)のコーティング側の表面で前後に3回回転させることにより、885グラムによって、柔軟性は、5650グラムで1トリップの試料(試料B)に比較すると増大しない。この結果は、3回のトリップで885グラム及び1回のトリップで5650グラムにより、同様の柔軟性が達成され得ること、及びこの達成された柔軟性は、対照(試料C)の柔軟性よりも大幅に高かったことを示唆する。
【0096】
3. 試料のコーティング側に2540グラムの重しを1トリップ(試料D)すると、対照(試料C)と比較して、柔軟性が大幅に増大した。
【0097】
4. 金属円筒の重量を2540グラムの重し(試料D)から5650グラム(試料B)に増加すると、試料の柔軟性が大幅に増大する。
【0098】
5. 5650グラム(試料E)で直接、圧縮した試料は、5650グラムの重しを1トリップ、回転させた試料(試料B)ほど大幅な柔軟性がなかった。
【0099】
6. 5650gの重しで直接、圧縮すると(試料E)、対照(試料C)のそれと類似した。
【0100】
7. 5650グラムの重量のローラによって6トリップ圧縮したSOA試料は、SOA対照の試料のそれに類似した。
【0101】
5650グラムの重しを使用して柔軟にした試料B及び試料Hは、同等であった。
【0102】
〔実施の態様〕
(1) 多層創傷ドレッシングであって、
a.担体層と、
b.少なくとも2つの副層であって、各副層が、少なくとも1つの反応性架橋成分を含有し、前記少なくとも2つの反応性架橋成分が、その他の成分と共反応性であり、少なくとも1つの反応性架橋成分が、保護脱離基を有する、少なくとも2つの副層と、
c.緩衝塩剤と、
を備える、前記多層創傷ドレッシング。
(2) 少なくとも2つの別個の共反応性含有副層(co-reactive-containing sublayers)を有する、実施態様1に記載の多層創傷ドレッシング。
(3) 前記担体層が、超音波溶接、ニードルパンチ加工、熱溶接、化学的付着、縫合接着又はそれらの組合せにより構造的に一体化される少なくとも2つの化学的に異なる層を有する、実施態様1に記載の多層創傷ドレッシング。
(4) 前記少なくとも1つの保護された反応性架橋成分が、ハロゲン化水素脱離基によりエンドキャップされたアミン基を実質的にすべて有する、実施態様1に記載の多層創傷ドレッシング。
(5) 前記少なくとも1つの保護された反応性基が、実質的にすべての一級アミン基上に保護脱離基を有するPEG-アミンである、実施態様4に記載の多層創傷ドレッシング。
【0103】
(6) 前記保護脱離基が、前記緩衝剤と反応し、前記一級アミン基を反応に利用可能にする、実施態様5に記載の多層創傷ドレッシング。
(7) 2つの別個の共反応性含有副層を有し、一方の層に、共反応性保護架橋基でコーティングされた対向する副層内で使用可能である基と共反応性である成分が設けられている、実施態様1に記載の多層創傷ドレッシング。
(8) 前記担体層及び前記2つの副層が、積層配列にある、実施態様7に記載の多層創傷ドレッシング。
(9) 前記担体層が、緩衝剤、共反応性架橋剤及び保護された共反応性架橋剤での3つの積層された副層コーティングを有する、実施態様8に記載の多層創傷ドレッシング。
(10) 前記緩衝剤が、アルカリ化合物であり、前記共反応性架橋剤が、PEG-NHSであり、前記保護性共反応性架橋成分が、複数のハロゲン化水素保護脱離基を有するPEG-アミンである、実施態様9に記載の多層創傷ドレッシング。
【0104】
(11) 前記緩衝剤副層が、前記担体層に直接隣接しており、前記保護された共反応性架橋性コーティングされた副層剤が、前記緩衝剤でコーティングされた副層に隣接しており、前記共反応性架橋剤でコーティングされた副層が、前記保護された共反応性架橋性コーティングされた副層に直接隣接している最上部層である、実施態様10に記載の多層創傷ドレッシング。
(12) 積層配列で2つの別個の副層を備える担体層と、前記担体層に隣接している緩衝剤でコーティングされた副層と、前記緩衝剤でコーティングされた副層に隣接する最上部層として共に堆積された、保護されたPEG-アミン及びPEG-NHSの、反応剤でコーティングされた副層と、を有する、実施態様1に記載の多層創傷ドレッシング。
(13) 前記緩衝剤がアルカリ化合物である、実施態様1に記載の多層創傷ドレッシング。
(14) 前記緩衝剤が、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム又は四ホウ酸二ナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス-トリスメタン(ビス-トリス)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム及びそれらの組合せである、実施態様13に記載の多層創傷ドレッシング。
(15) 可撓性を増大させるために柔軟化(pliabilization)が施されている、実施態様1に記載の多層創傷ドレッシング。
【0105】
(16) ローラ圧縮柔軟化が施されている、実施態様15に記載の多層創傷ドレッシング。
(17) 実施態様1に記載の多層創傷ドレッシングを製造する方法であって、共反応性架橋剤及び緩衝剤の層でコーティング基材に噴霧コーティングすることによる、方法。
(18) 組織表面に実施態様1に記載の多層創傷を適用することを含む、処置の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】