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特表2023-539334切削インサートおよび高送りフライス工具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】切削インサートおよび高送りフライス工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20230906BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/10 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514042
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021073502
(87)【国際公開番号】W WO2022048966
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】20194028.5
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カカイ, イサク
(72)【発明者】
【氏名】ガングスタド, ラーシュ
(72)【発明者】
【氏名】カヴァリン, ソフィー
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK12
3C022LL01
3C022LL02
3C022LL03
3C022LL05
(57)【要約】
高送りフライス加工で使用するための切削インサートは、中心軸線(C)を中心として180°回転対称であり、- 第1および第2の主面(2、3)と、- 前記主面の間を中心軸線に垂直に延在する正中面(MP)と、- 第1の主切れ刃(31)および関連する第1のランピング切れ刃(51)と、- 第2の主切れ刃および関連する第2のランピング切れ刃とを備える。各主切れ刃は、関連するランピング切れ刃を向く第1の端部(31a)と、反対側の第2の端部(31b)とを有する。各ランピング切れ刃は、関連する主切れ刃を向く第1の端部(51a)と、反対側の第2の端部(51b)とを有する。前記切れ刃は、それらの第2の端部が、それらの第1の端部よりも正中面(MP)の近くに配置され、主切れ刃の第2の端部が、ランピング切れ刃の第2の端部よりも正中面の近くに配置されるように傾斜している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高送りフライス加工で使用するための切削インサートであって、
- 前記切削インサート(1)の反対側に配置されて前記切削インサートの頂面および底面として機能する第1および第2の主面(2、3)と、
- 前記第1の主面(2)と前記第2の主面(3)との間を延在する中心軸線(C)であって、前記切削インサート(1)が、前記中心軸線(C)を中心として180°回転対称である、中心軸線(C)と、
- 前記第1の主面(2)と前記第2の主面(3)との間の中間を前記中心軸線(C)に垂直に延在する正中面(MP)と、
- 前記第1の主面(2)と前記第2の主面(3)との間で前記切削インサート(1)の周りを延在し、第1の主側面(11)、第2の主側面(12)、第3の主側面(13)、第4の主側面(14)、第1のコーナー側面(15)、第2のコーナー側面(16)、第3のコーナー側面(17)、および第4のコーナー側面(18)を備える周囲の逃げ面(10)であって、
・前記第1のコーナー側面(15)が、前記第1の主側面(11)と前記第2の主側面(12)との間に配置され、
・前記第2のコーナー側面(16)が、前記第2の主側面(12)と前記第3の主側面(13)との間に配置され、
・前記第3のコーナー側面(17)が、前記第3の主側面(13)と前記第4の主側面(14)との間に配置され、
・前記第4のコーナー側面(18)が、前記第1の主側面(11)と前記第4の主側面(14)との間に配置され、
・前記第1の主側面(11)および前記第3の主側面(13)が、第1の対向する主側面の対を形成し、
・前記第2の主側面(12)および前記第4の主側面(14)が、第2の対向する主側面の対を形成する、
周囲の逃げ面(10)と、
- 前記第1の主側面(11)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第1の側面切れ刃(21)と、
- 前記第3の主側面(13)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第2の側面切れ刃(22)と、
- 前記第2の主側面(12)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第1の主切れ刃(31)、第1の副切れ刃(41)、および第1のランピング切れ刃(51)であって、前記第1の副切れ刃(41)が、前記第1の主切れ刃(31)と前記第1のランピング切れ刃(51)との間に配置された、第1の主切れ刃(31)、第1の副切れ刃(41)、および第1のランピング切れ刃(51)と、
- 前記第4の主側面(14)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第2の主切れ刃(32)、第2の副切れ刃(42)、および第2のランピング切れ刃(52)であって、前記第2の副切れ刃(42)が、前記第2の主切れ刃(32)と前記第2のランピング切れ刃(52)との間に配置された、第2の主切れ刃(32)、第2の副切れ刃(42)、および第2のランピング切れ刃(52)と、
- 前記第1のコーナー側面(15)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)であって、前記第1の側面切れ刃(21)と前記第1の主切れ刃(31)との間に配置された第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)と、
- 前記第2のコーナー側面(16)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第2の湾曲したコーナー切れ刃(62)であって、前記第1のランピング切れ刃(51)と前記第2の側面切れ刃(22)との間に配置された第2の湾曲したコーナー切れ刃(62)と、
- 前記第3のコーナー側面(17)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)であって、前記第2の側面切れ刃(22)と前記第2の主切れ刃(32)との間に配置された第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)と、
- 前記第4のコーナー側面(18)と前記第1の主面(2)の交線に形成された第4の湾曲したコーナー切れ刃(64)であって、前記第2のランピング切れ刃(52)と前記第1の側面切れ刃(21)との間に配置された第4の湾曲したコーナー切れ刃(64)と
を備え、
対向する前記第1の主切れ刃(31)と前記第2の主切れ刃(32)との間の最短距離(d1)が、対向する前記第1の側面切れ刃(21)と前記第2の側面切れ刃(22)との間の最短距離(d2)に等しいかそれより長く、
前記第1の主切れ刃(31)が、前記第1の副切れ刃(41)に接続した第1の端部(31a)と、前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)に接続した第2の端部(31b)とを有し、前記第2の主切れ刃(32)が、前記第2の副切れ刃(42)に接続した第1の端部(32a)と、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)に接続した第2の端部(32b)とを有し、前記第1および第2の主切れ刃(31、32)のそれぞれが、その第1の端部(31a、32a)と第2の端部(31b、32b)との間に、その第2の端部(31b、32b)がその第1の端部(31a、32a)よりも前記正中面(MP)の近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有し、
前記第1のランピング切れ刃(51)が、前記第1の副切れ刃(41)に接続した第1の端部(51a)と、前記第2の湾曲したコーナー切れ刃(62)に接続した第2の端部(51b)とを有し、前記第2のランピング切れ刃(52)が、前記第2の副切れ刃(42)に接続した第1の端部(52a)と、前記第4の湾曲したコーナー切れ刃(64)に接続した第2の端部(52b)とを有し、前記第1および第2のランピング切れ刃(51、52)のそれぞれが、その第1の端部(51a、52a)と第2の端部(51b、52b)との間に、その第2の端部(51b、52b)がその第1の端部(51a、52a)よりも前記正中面(MP)の近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有し、
前記第1の主切れ刃(31)および前記第1のランピング切れ刃(51)が、前記切削インサート(1)の平面図で見ると、互いに対して鈍角(α)で延在し、前記第2の主切れ刃(32)および前記第2のランピング切れ刃(52)が、前記切削インサート(1)の平面図で見ると、互いに対して対応する鈍角(α)で延在する、
切削インサートであり、
前記第1および第2の主切れ刃(31、32)のそれぞれの前記第2の端部(31b、32b)が、前記第1および第2のランピング切れ刃(51、52)のそれぞれの前記第2の端部(51b、52b)よりも前記正中面(MP)の近くに配置されることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
前記鈍角(α)が95°~160°であり、100°~125°が好ましく、112°±5°がより好ましいことを特徴とする、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記第1および第2の主切れ刃(31、32)のそれぞれが、その第1の端部(31a、32a)からその第2の端部(31b、32b)まで行くとき、その長さの主要部分に沿って、好ましくは、その第1の端部(31a、32a)からその第2の端部(31b、32b)までその全長に沿って前記正中面(MP)に向かって傾斜していることを特徴とする、請求項1または2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記第1および第2の主切れ刃(31、32)のそれぞれが、その第1の端部(31a、32a)からその第2の端部(31b、32b)までその全長に沿って見たとき、一定または増大する傾斜で前記正中面(MP)に向かって傾斜していることを特徴とする、請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記第1の主切れ刃(31)が、前記正中面(MP)と平行な視線方向で、前記第1の主切れ刃の前記第1および第2の端部(31a、31b)と交わる交線(L1)の第1の直線に垂直な視線方向から見たとき、直線もしくは凸状の線に沿って、または、1つまたは複数の凸状の線と組み合わさった一連の1つまたは複数の直線である線に沿って延在し、前記第2の主切れ刃(32)が、前記正中面(MP)と平行な視線方向で、前記第2の主切れ刃の前記第1および第2の端部(32a、32b)と交わる交線(L2)の第2の直線に垂直な視線方向から見たとき、対応する線に沿って延在することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記第1および第2のランピング切れ刃(51、52)のそれぞれが、その第1の端部(51a、52a)からその第2の端部(51b、52b)までその全長に沿って前記正中面(MP)に向かって傾斜していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項7】
- 前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)が、前記第1の主切れ刃(31)に接続した第1の端部(61a)と、前記第1の側面切れ刃(21)に接続した第2の端部(61b)とを有し、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)が、前記第2の主切れ刃(32)に接続した第1の端部(63a)と、前記第2の側面切れ刃(22)に接続した第2の端部(63b)とを有し、
- 前記第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃(61、63)のそれぞれが、その第1の端部(61a、63a)と第2の端部(61b、63b)との間に、その第2の端部(61b、63b)がその第1の端部(61a、63a)よりも前記正中面(MP)の近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項8】
前記第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃(61、63)のそれぞれが、その第1の端部(61a、63a)からその第2の端部(61b、63b)までその全長に沿って前記正中面(MP)に向かって傾斜していることを特徴とする、請求項7に記載の切削インサート。
【請求項9】
前記第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃(61、63)のそれぞれが、その第1の端部(61a、63a)からその第2の端部(61b、63b)までその全長に沿って見たとき、一定または増大する傾斜で前記正中面(MP)に向かって傾斜していることを特徴とする、請求項8に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)が、前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)に沿ったあらゆる点において、前記第1の主切れ刃(31)に沿ったすべての点での、前記第1の主切れ刃(31)の最小の傾斜に等しいかそれよりも大きい傾斜を有し、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)が、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)に沿ったあらゆる点において、前記第2の主切れ刃(32)に沿ったすべての点での、前記第2の主切れ刃(32)の最小の傾斜に等しいかそれよりも大きい傾斜を有することを特徴とする、請求項9に記載の切削インサート。
【請求項11】
前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)に沿ったあらゆる点において、前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)と前記正中面(MP)との間の距離が、前記第1の主切れ刃(31)の前記第2の端部(31b)と前記正中面(MP)との間の距離に等しいかそれより短く、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)に沿ったあらゆる点において、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)と前記正中面(MP)との間の距離が、前記第2の主切れ刃(32)の前記第2の端部(32b)と前記正中面(MP)との間の距離に等しいかそれより短いことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項12】
前記第1の主切れ刃(31)および前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)が、前記正中面(MP)と平行な視線方向で、前記第1の主切れ刃(31)の前記第1および第2の端部(31a、31b)と交わる交線(L1)の第1の直線に垂直な視線方向から見たとき、前記正中面(MP)と、前記第1の主切れ刃(31)に沿った点に引くことができるあらゆる接線との間に前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)が配置されるように構成され、前記第2の主切れ刃(32)および前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)が、前記正中面(MP)と平行な方向で、前記第2の主切れ刃(32)の前記第1および第2の端部(32a、32b)と交わる交線(L2)の第2の直線に垂直な方向から見たとき、前記正中面(MP)と、前記第2の主切れ刃(32)に沿った点に引くことができるあらゆる接線との間に前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)が配置されるように構成されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項13】
- 前記第1の主切れ刃(31)に関連する第1のチップブレーカ(71)が、前記第1の主面(2)に形成され、前記第1の主切れ刃(31)の少なくとも一部に沿って、好ましくは、前記第1の主切れ刃(31)の全長に沿って前記第1の主面(2)に延在し、前記第1のチップブレーカ(71)が、前記第1のランピング切れ刃(51)の方を向く第1の端部(71a)と、前記第1の主側面(11)の方を向く反対側の第2の端部(71b)とを有し、前記第1のチップブレーカ(71)がまた、好ましくは、前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)に関連し、前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)に沿って延在するように構成され、
- 前記第2の主切れ刃(32)に関連する第2のチップブレーカ(72)が、前記第1の主面(2)に形成され、前記第2の主切れ刃(32)の少なくとも一部に沿って、好ましくは、前記第2の主切れ刃(32)の全長に沿って前記第1の主面(2)に延在し、前記第2のチップブレーカ(72)が、前記第2のランピング切れ刃(52)の方を向く第1の端部(72a)と、前記第3の主側面(13)の方を向く反対側の第2の端部(72b)とを有し、前記第2のチップブレーカ(72)がまた、好ましくは、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)に関連し、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)に沿って延在するように構成されている
ことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項14】
- 前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)が、前記第1の主切れ刃(31)に接続した第1の端部(61a)と、前記第1の側面切れ刃(21)に接続した第2の端部(61b)とを有し、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)が、前記第2の主切れ刃(32)に接続した第1の端部(63a)と、前記第2の側面切れ刃(22)に接続した第2の端部(63b)とを有し、
- 前記第1のチップブレーカ(71)の前記第2の端部(71b)が、前記第1の湾曲したコーナー切れ刃(61)の前記第2の端部(61b)に隣接し、前記第2のチップブレーカ(72)の前記第2の端部(72b)が、前記第3の湾曲したコーナー切れ刃(63)の前記第2の端部(63b)に隣接する
ことを特徴とする、請求項13に記載の切削インサート。
【請求項15】
- 前記第1のチップブレーカ(71)が、前記第1の主側面(2)と前記第3の主側面(3)との間の中間を前記正中面(MP)に垂直に延在し、前記中心軸線(C)を含む前記切削インサートの長手方向面(LP)と平行に前記第1のチップブレーカ(71)の断面を見たとき、実質的にU字形またはV字形のプロファイルを有し、それによって、前記第1の主面(2)に、前記第1のチップブレーカ(71)の前記第1の端部(71a)と前記第2の端部(71b)との間に延在する細長い第1の谷部(73)を形成し、
- 前記第2のチップブレーカ(72)が、前記長手方向面(LP)と平行に前記第2のチップブレーカ(72)の断面を見たとき、実質的にU字形またはV字形のプロファイルを有し、それによって、前記第1の主面(2)に、前記第2のチップブレーカ(72)の前記第1の端部(72a)と前記第2の端部(72b)との間に延在する細長い第2の谷部(74)を形成する
ことを特徴とする、請求項13または14に記載の切削インサート。
【請求項16】
前記第1の谷部(73)が、前記第1のチップブレーカ(71)の前記第1の端部(71a)から前記第1のチップブレーカ(71)の前記第2の端部(71b)の方に前記第1のチップブレーカ(71)に沿った方向に見たとき、増大する深さを有し、前記第2の谷部(74)が、前記第2のチップブレーカ(72)の前記第1の端部(72a)から前記第2のチップブレーカ(72)の前記第2の端部(72b)の方に前記第2のチップブレーカ(72)に沿った方向に見たとき、増大する深さを有することを特徴とする、請求項15に記載の切削インサート。
【請求項17】
前記第1の谷部(73)が、前記第1のチップブレーカ(71)の前記第1の端部(71a)から前記第1のチップブレーカ(71)の前記第2の端部(71b)の方に前記第1のチップブレーカ(71)に沿った方向に見たとき、増大する幅(w)を有し、前記第2の谷部(74)が、前記第2のチップブレーカ(72)の前記第1の端部(72a)から前記第2のチップブレーカ(72)の前記第2の端部(72b)の方に前記第2のチップブレーカ(72)に沿った方向に見たとき、増大する幅(w)を有することを特徴とする、請求項15または16に記載の切削インサート。
【請求項18】
前記第1および第2の主切れ刃(31、32)のそれぞれ、ならびに、好ましくは、前記第1および第2の副切れ刃(41、42)のそれぞれも、正または0の公称すくい角を有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項19】
前記切削インサート(1)が、片面で2通りに使える刃先交換式切削インサートであり、前記第2の主面(3)が、好ましくは、平坦で、前記中心軸線(C)に対して垂直方向に延在することを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの切削インサート(1)を備える高送りフライス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の高送りフライス加工用の切削インサートに関する。本発明はまた、そのような切削インサートを備える高送りフライス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
フライス工具は、回転切削工具であり、1つまたは複数の切削インサートを備えることがある。フライス工具は、例えば、ポケット加工を含むランピング加工を行うために、高送りフライス加工で使用することができるエンドミル工具の形態を有することがある。
【0003】
高送りフライス加工用の刃先交換式切削インサートは、以前から様々な構成で知られており、そのような切削インサートの例は、例えば、米国特許第10245695(B2)号および欧州特許出願公開第3199284(A1)号に開示されている。
【発明の概要】
【0004】
発明の目的
本発明の目的は、新しく好ましい設計の上記のタイプの切削インサートを提供することである。
【0005】
本発明によれば、前記目的は、請求項1に規定する特徴を有する切削インサートによって達成される。
【0006】
本発明による切削インサートは、
- 切削インサートの反対側に配置されて、切削インサートの頂面および底面として機能する第1および第2の主面であって、切削インサートが、第1の主面と第2の主面との間を延在する切削インサートの中心軸線を中心として180°回転対称である、第1および第2の主面と、
- 第1の主面と第2の主面との間で切削インサートの周りを延在し、第1の主側面、第2の主側面、第3の主側面、第4の主側面、第1のコーナー側面、第2のコーナー側面、第3のコーナー側面、および第4のコーナー側面を備える周囲の逃げ面であって、
・第1のコーナー側面が、第1の主側面と第2の主側面との間に配置され、
・第2のコーナー側面が、第2の主側面と第3の主側面との間に配置され、
・第3のコーナー側面が、第3の主側面と第4の主側面との間に配置され、
・第4のコーナー側面が、第1の主側面と第4の主側面との間に配置され、
・第1の主側面および第3の主側面が、第1の対向する主側面の対を形成し、
・前2の主側面および第4の主側面が、第2の対向する主側面の対を形成する
周囲の逃げ面と、
- 第1の主側面と第1の主面の交線に形成された第1の側面切れ刃と、
- 第3の主側面と第1の主面の交線に形成された第2の側面切れ刃と、
- 第2の主側面と第1の主面の交線に形成された第1の主切れ刃、第1の副切れ刃、および第1のランピング切れ刃であって、第1の副切れ刃が、第1の主切れ刃と第1のランピング切れ刃との間に配置された、第1の主切れ刃、第1の副切れ刃、および第1のランピング切れ刃と、
- 第4の主側面と第1の主面の交線に形成された第2の主切れ刃、第2の副切れ刃、および第2のランピング切れ刃であって、第2の副切れ刃が、第2の主切れ刃と第2のランピング切れ刃との間に配置され、対向する第1の主切れ刃と第2の主切れ刃との間の最短距離が、対向する第1の側面切れ刃と第2の側面切れ刃との間の最短距離に等しいかそれより長い、第2の主切れ刃、第2の副切れ刃、および第2のランピング切れ刃と、
- 第1のコーナー側面と第1の主面の交線に形成された第1の湾曲したコーナー切れ刃であって、第1の側面切れ刃と第1の主切れ刃との間に配置された第1の湾曲したコーナー切れ刃と、
- 第2のコーナー側面と第1の主面の交線に形成された第2の湾曲したコーナー切れ刃であって、第1のランピング切れ刃と第2の側面切れ刃との間に配置された第2の湾曲したコーナー切れ刃と、
- 第3のコーナー側面と第1の主面の交線に形成された第3の湾曲したコーナー切れ刃であって、第2の側面切れ刃と第2の主切れ刃との間に配置された第3の湾曲したコーナー切れ刃と、
- 第4のコーナー側面と第1の主面の交線に形成された第4の湾曲したコーナー切れ刃であって、第2のランピング切れ刃と第1の側面切れ刃との間に配置された第4の湾曲したコーナー切れ刃と
を備える。
【0007】
切削インサートの平面図で見ると、第1の主切れ刃および第1のランピング切れ刃は互いに対して鈍角で延在し、切削インサートの平面図で見ると、第2の主切れ刃および第2のランピング切れ刃とは互いに対して対応する鈍角で延在する。平面図とは、上方から見た図、すなわち上面図であり、ここでは、切削インサートの中心軸線の方向に第1の主面の真上から切削インサートを見た図に相当する。言い換えれば、平面図とは、中心軸線に沿って第1の主面の方を見たときの図である。したがって、切削インサートの平面図は、切削インサートの中心軸線に垂直な観察面を構成する。第1および第2の主切れ刃、ならびに/または、第1および第2のランピング切れ刃が、切削インサートの平面図で見たときに湾曲している場合、平面図におけるこれらの湾曲した切れ刃のいずれの延長方向も、当該切れ刃の反対側の2つの端点と交わる直線によって定義される。上記の鈍角は、通常、95°~160°の範囲であり、100°~125°の範囲が好ましく、112°±5°の範囲がより好ましい。
【0008】
仮想正中面は、切削インサートの第1の主面と第2の主面との間の中間を切削インサートの中心軸線に垂直に延在する。この正中面は、本明細書では、本発明を適切なように規定することができるようにするために導入される。
【0009】
第1の主切れ刃は、第1の副切れ刃に接続した第1の端部と、第1の湾曲したコーナー切れ刃に接続した第2の端部とを有し、第2の主切れ刃は、第2の副切れ刃に接続した第1の端部と、第3の湾曲したコーナー切れ刃に接続した第2の端部とを有し、第1および第2の主切れ刃のそれぞれは、その第1の端部と第2の端部との間に、その第2の端部がその第1の端部よりも正中面の近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する。したがって、正中面に対して見たとき、隣接する湾曲したコーナー切れ刃に面する各主切れ刃の第2の端部は、隣接する副切れ刃に面する各主切れ刃の第1の端部よりも高さが低い位置に、すなわち正中面の近くに配置される。
【0010】
第1のランピング切れ刃は、第1の副切れ刃に接続した第1の端部と、第2の湾曲したコーナー切れ刃に接続した第2の端部とを有し、第2のランピング切れ刃は、第2の副切れ刃に接続した第1の端部と、第4の湾曲したコーナー切れ刃に接続した第2の端部とを有し、第1および第2のランピング切れ刃のそれぞれは、その第1の端部と第2の端部との間に、その第2の端部がその第1の端部よりも正中面の近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する。したがって、正中面に対して見たとき、隣接する湾曲したコーナー切れ刃に面する各ランピング切れ刃の第2の端部は、隣接する副切れ刃に面する各ランピング切れ刃の第1の端部よりも高さが低い位置に、すなわち正中面の近くに配置される。
【0011】
本発明によれば、第1および第2の主切れ刃のそれぞれの第2の端部は、第1および第2のランピング切れ刃のそれぞれの第2の端部よりも正中面の近くに配置される。したがって、正中面に対して見たとき、第1の主切れ刃の第2の端部は、第1のランピング切れ刃の第2の端部よりも高さが低い位置に配置され、第2の主切れ刃の第2の端部は、第2のランピング切れ刃の第2の端部よりも高さが低い位置に配置される。この特徴は、より滑らかな切削加工により、ならびに、被加工物と、有効な主切れ刃および有効なコーナー切れ刃に関連する周囲の逃げ面の部分との間に切屑が押し込められる危険性が減少することにより、ポケット加工を含むランピング加工において切削インサートの性能を改善する。有効なコーナー切れ刃とは、有効な主切れ刃と側面切れ刃とに隣接し、それらの間にあるコーナー切れ刃を意味する。さらに、ポケット加工において、前記特徴は、被加工物の加工されているポケットの底壁および鉛直壁に切屑が押し込められる危険性が減少することを意味する。
【0012】
切削インサートがフライス工具の工具本体のインサートシートに取り付けられているとき、主切れ刃の1つは、フライス工具の有効な主切れ刃を形成するように配置され、関連するランピング切れ刃は、フライス工具の有効なランピング切れ刃を形成するように配置され、有効な主切れ刃に隣接する湾曲したコーナー切れ刃は、フライス工具の有効なコーナー切れ刃を形成するように配置される。有効な主切れ刃は、その第1の端部がフライス工具の回転軸線に向かって工具本体の半径方向内側に面し、その第2の端部がフライス工具の回転軸線から離れるように工具本体の半径方向外側に面して配置され、一方、有効なランピング切れ刃は、有効な主切れ刃の半径方向内側に配置される。有効な主切れ刃の第2の端部を、有効なランピング切れ刃の第2の端部よりも正中面の近くに配置することにより、有効なランピング切れ刃の第2の端部によって形成された切屑は、有効なランピング切れ刃から半径方向内側に移動する代わりに、有効なランピング切れ刃から有効な主切れ刃および有効なコーナー切れ刃の方向へ、すなわち、工具本体の半径方向外側の方向へ移動するような改善された傾向を有する。前記切屑が有効なランピング切れ刃から半径方向内側に移動する場合、切屑は有効な主切れ刃の下の領域に達することがあり、被加工物と、有効な主切れ刃および有効なコーナー切れ刃に関連する周囲の逃げ面の部分との間に押し込められることがある。
【0013】
本発明の実施形態によれば、第1および第2の主切れ刃のそれぞれは、その第1の端部からその第2の端部まで行くとき、その長さの主要部分に沿って、好ましくは、その第1の端部からその第2の端部までその全長に沿って正中面に向かって傾斜している。これにより、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑は、有効な主切れ刃に沿って滑らかに移動することができる。第1および第2のランピング切れ刃のそれぞれはまた、その第1の端部からその第2の端部までその全長に沿って正中面に向かって傾斜していることが好ましい。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、第1および第2の主切れ刃のそれぞれが、その第1の端部からその第2の端部までその全長に沿って見たとき、一定または増大する傾斜で正中面に向かって傾斜している。これにより、この主切れ刃に沿った上記の切屑の移動を妨げる可能性のある有効な主切れ刃の部分はない。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、正中面と平行な視線方向で、第1の主切れ刃の第1および第2の端部と交わる交線の第1の直線に垂直な視線方向から見たとき、第1の主切れ刃は、直線もしくは凸状の線に沿って、または、1つまたは複数の凸状の線と組み合わさった一連の1つまたは複数の直線である線に沿って延在し、正中面と平行な視線方向で、第2の主切れ刃の第1および第2の端部と交わる交線の第2の直線に垂直な視線方向から見たとき、第2の主切れ刃は、対応する線に沿って延在する。これにより、切削インサートの製造が容易になり、有効な主切り刃に沿った上記の切屑の移動が改善される。
【0016】
第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃のそれぞれは、隣接する主切れ刃に接続した第1の端部と、隣接する側面切れ刃に接続した第2の端部とを有する。第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃のそれぞれは、その第1の端部と第2の端部との間に、その第2の端部がその第1の端部よりも正中面の近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有することが好ましい。したがって、正中面に対して見たとき、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃のそれぞれの第2の端部は、それらの第1の端部よりも高さが低い位置に配置され、それによってまた、隣接する主切れ刃の第2の端部よりも高さが低い位置に配置される。これにより、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑は、傾斜した有効な主切れ刃に沿って半径方向外側に移動した後、傾斜した有効なコーナー切れ刃に沿って半径方向外側に容易に移動し続けることができる。有効な主切れ刃によって形成された切屑はまた、傾斜した有効なコーナー切れ刃に沿って半径方向外側に容易に移動することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃のそれぞれは、その第1の端部からその第2の端部までその全長に沿って正中面に向かって傾斜している。これにより、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑は、有効なコーナー切れ刃に沿って滑らかに移動することができる。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃のそれぞれは、その第1の端部からその第2の端部までその全長に沿って見たとき、一定または増大する傾斜で正中面に向かって傾斜している。これにより、このコーナー切れ刃に沿った上記の切屑の移動を妨げる可能性のある有効なコーナー切れ刃の部分はない。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃は、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃のいずれにも沿ったあらゆる点において、湾曲したコーナー切れ刃は、隣接する主切れ刃に沿ったすべての点での、この主切れ刃の最小の傾斜に等しいかそれよりも大きい傾斜を有するように構成される。これにより、有効なコーナー切れ刃が、有効なコーナー切れ刃に沿って半径方向外側への上記の切屑の移動を妨げることが効率的に防止される。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃は、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃のいずれにも沿ったあらゆる点において、湾曲したコーナー切れ刃と正中面との間の距離が、隣接する主切れ刃の第2の端部と正中面との間の距離に等しいかそれより短いように構成される。これにより、有効なコーナー切れ刃に沿った半径方向外側への上記の切屑の移動が容易になる。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、第1の主切れ刃および第1の湾曲したコーナー切れ刃は、正中面と平行な視線方向で、第1の主切れ刃の第1および第2の端部と交わる交線の第1の直線に垂直な視線方向から見たとき、正中面と、第1の主切れ刃に沿った点に引くことができるあらゆる接線との間に第1の湾曲したコーナー切れ刃が配置されるように構成され、第2の主切れ刃および第3の湾曲したコーナー切れ刃は、正中面と平行な視線方向で、第2の主切れ刃の第1および第2の端部と交わる交線の第2の直線に垂直な視線方向から見たとき、正中面と、第2の主切れ刃に沿った点に引くことができるあらゆる接線との間に第3の湾曲したコーナー切れ刃が配置されるように構成される。これにより、有効なコーナー切れ刃が、有効なコーナー切れ刃に沿って半径方向外側への上記の切屑の移動を妨げることが効率的に防止される。第1の主切れ刃が、正中面と平行な視線方向で、前記第1の交線に垂直な視線方向から見たとき、直線で延在する区域を備える場合、この区域と位置が合って、その延長部を形成する仮想直線は、ここではこの区域に沿った任意の点に対する接線に相当すると考えられる。第2の主切れ刃が、正中面と平行な視線方向で、前記第2の交線に垂直な視線方向から見たとき、直線で延在する区域を備える場合、この区域と位置が合って、その延長部を形成する仮想直線は、ここではこの区域に沿った任意の点に対する接線に相当すると考えられる。
【0022】
本発明の別の実施形態は、
- 第1の主切れ刃に関連する第1のチップブレーカが、第1の主面に形成され、第1の主切れ刃の少なくとも一部に沿って、好ましくは、第1の主切れ刃の全長に沿って第1の主面に延在し、第1のチップブレーカが、第1のランピング切れ刃の方を向く第1の端部と、第1の主側面の方を向く反対側の第2の端部とを有し、第1のチップブレーカがまた、好ましくは、第1の湾曲したコーナー切れ刃に関連し、第1の湾曲したコーナー切れ刃に沿って延在するように構成され、
- 第2の主切れ刃に関連する第2のチップブレーカが、第1の主面に形成され、第2の主切れ刃の少なくとも一部に沿って、好ましくは、第2の主切れ刃の全長に沿って第1の主面に延在し、第2のチップブレーカが、第2のランピング切れ刃の方を向く第1の端部と、第3の主側面の方を向く反対側の第2の端部とを有し、第2のチップブレーカがまた、好ましくは、第3の湾曲したコーナー切れ刃に関連し、第3の湾曲したコーナー切れ刃に沿って延在するように構成されている
ことを特徴とする。
【0023】
これらのチップブレーカは、有効な主切れ刃によって形成される切屑をより有利に形成する、またはより有利に破砕し、これらの切屑を有利な方向に移動させることに寄与し、それによって切削加工を改善する。これらチップブレーカはまた、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑が半径方向外側に移動することをより容易にし、それによってこれらの切屑の排出性を高める。第1のチップブレーカの第1の端部は、第1の副切れ刃に関連し、場合によっては、第1のランピング切れ刃にも関連する別のチップブレーカにいくぶん連続して隣接してもよく、第2のチップブレーカの第1の端部は、第2の副切れ刃に関連し、場合によっては、第2のランピング切れ刃にも関連する別のチップブレーカにいくぶん連続して隣接してもよい。
【0024】
第1のチップブレーカの第2の端部は、第1の湾曲したコーナー切れ刃の第2の端部に隣接し、すなわち、第1の側面切れ刃に接続する端部に隣接することが好ましく、第2のチップブレーカの第2の端部は、第3の湾曲したコーナー切れ刃の第2の端部に隣接し、すなわち、第2の側面切れ刃に接続する端部に隣接することが好ましい。第1のチップブレーカの第2の端部はまた、第1の側面切れ刃の一部に隣接することが好ましく、第2のチップブレーカの第2の端部はまた、第2の側面切れ刃の一部にも隣接することが好ましい。
【0025】
本発明の別の実施形態は、
- 第1のチップブレーカが、第1の主側面と第3の主側面との間の中間を正中面に垂直に延在し、中心軸線を含む切削インサートの長手方向面と平行に第1のチップブレーカの断面を見たとき、実質的にU字形またはV字形のプロファイルを有し、それによって、第1の主面に、第1のチップブレーカの第1の端部と第2の端部との間に延在する細長い第1の谷部を形成し、
- 第2のチップブレーカが、前記長手方向面と平行に第2のチップブレーカの断面を見たとき、実質的にU字形またはV字形のプロファイルを有し、それによって、第1の主面に、第2のチップブレーカの第1の端部と第2の端部との間に延在する細長い第2の谷部を形成する
ことを特徴とする。これにより、細長い谷部は、有効なランピング切れ刃に隣接する領域から、有効な主側面切れ刃に向かう方向に、有効な主切れ刃に沿って第1の主面に設けられる。この谷部は、有効な主切れ刃によって形成された切屑に対して、従来のチップブレーカとして機能し、また、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑の上記の外側へ向かう移動も容易にする。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、第1の谷部は、第1のチップブレーカの第1の端部から第1のチップブレーカの第2の端部の方に第1のチップブレーカに沿った方向に見たとき、増大する深さを有し、第2の谷部は、第2のチップブレーカの第1の端部から第2のチップブレーカの第2の端部の方に第2のチップブレーカに沿った方向に見たとき、増大する深さを有する。第1および第2のチップブレーカによって形成される谷部のこの設計によって、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑の外側へ向かう移動がさらに促進される。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、第1の谷部は、第1のチップブレーカの第1の端部から第1のチップブレーカの第2の端部の方に第1のチップブレーカに沿った方向に見たとき、増大する幅を有し、第2の谷部は、第2のチップブレーカの第1の端部から第2のチップブレーカの第2の端部の方に第2のチップブレーカに沿った方向に見たとき、増大する幅を有する。第1および第2のチップブレーカによって形成される谷部のこの設計によって、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑の外側へ向かう移動がさらに促進される。ここで、谷部の幅は、切削インサートの上記の長手方向面と平行に延在する平面で測定したとき、谷部の対向する2つの長手方向の縁の間の距離を指す。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、第1および第2の主切れ刃のそれぞれ、ならびに、好ましくは、第1および第2の副切れ刃のそれぞれも、正または0の公称すくい角を有する。これにより、有効なランピング切れ刃によって形成された切屑の外側へ向かう移動がさらに促進される。
【0029】
本発明の切削インサートは、片面で2通りに使える刃先交換式切削インサートであることが有利であり、第2の主面は、平坦で、中心軸線に対して垂直方向に延在することが好ましい。これにより、切削インサートの製造が容易になる。しかしながら、本発明の切削インサートは、代替案として、切削インサートの上記の主面の両方の周りに切れ刃が同じく配置された、両面で4通りに使える刃先交換式切削インサートであってもよい。
【0030】
本発明による切削インサートのさらなる有利な特徴は、以下の説明から明らかになろう。
【0031】
本発明はまた、上記のタイプの切削インサートを備える高送りフライス工具に関する。
【0032】
本発明による高送りフライス工具のさらなる有利な特徴は、以下の説明から明らかになろう。
【0033】
以下、添付図面を参照しながら、例として挙げた本発明の実施形態を具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1a-1c】本発明の第1の実施形態による切削インサートを異なる方向から見た斜視図である。
図1d図1a~図1cの切削インサートを上方から見た平面図である。
図1e-1j】図1a~図1cの切削インサートを異なる側方から見た横方向図である。
図2a-2c】本発明の第2の実施形態による切削インサートを異なる方向から見た斜視図である。
図2d図2a~図2cの切削インサートを上方から見た平面図である。
図2e-2j】図2a~図2cの切削インサートを異なる側方から見た横方向図である。
図3図1a~図1jに示した実施形態による切削インサートを備えたフライス工具の横方向図である。
図4図3のフライス工具の前面図である。
図5図3のフライス工具の前端の斜視図である。
図6】切削インサートをフライス工具の工具本体のインサートシートから取り外したところを見たときの、図5に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明による切削インサート1の2つの異なる実施形態が、図1a~図1jおよび図2a~図2jに示されている。切削インサート1は、高送りフライス加工で使用するために構成され、フライス工具80、例えば、図3図6に示すタイプのフライス工具に使用するために構成される。切削インサート1は、特に、ポケット加工を含むランピング加工に使用するために構成される。
【0036】
切削インサート1は、切削インサート1の反対側に配置されて切削インサートの頂面および底面として機能する第1および第2の主面2、3を備える。切削インサート1は、第1の主面2と第2の主面3との間を延在する中心軸線Cを有し、切削インサート1は、中心軸線Cを中心として180°回転対称である。仮想平面を構成する正中面MPが、第1の主面2と第2の主面3との間の中間を中心軸線Cに垂直に延在する。
【0037】
図示の実施形態では、切削インサート1は、第1の主面2と第2の主面3との間を、切削インサートの中央を通って延在する貫通穴5を備える。貫通穴5は、例えば、ねじの形態の締結要素6(図3図5、および図6参照)を受け入れるように構成されており、これによって切削インサート1は、フライス工具80のインサートシート84に取外し可能に固定することができる。切削インサート1の中心軸線Cは、貫通穴5の中心軸線と一致する。切削インサート1は、代替案として、貫通穴5がなくてもよく、この場合、切削インサートは、適切なクランプ手段によってフライス工具のインサートシートに取外し可能に固定されるように構成される。
【0038】
周囲の逃げ面10は、第1の主面2と第2の主面3との間で切削インサート1の周りを延在する。周囲の逃げ面10は、第1の主側面11、第2の主側面12、第3の主側面13、および第4の主側面14を備える。周辺の逃げ面10はまた、
- 第1の主側面11と第2の主側面12との間に配置された第1のコーナー側面15と、
- 第2の主側面12と第3の主側面13との間に配置された第2のコーナー側面16と、
- 第3の主側面13と第4の主側面14との間に配置された第3のコーナー側面17と、
- 第1の主側面11と第4の主側面14との間に配置された第4のコーナー側面18と
を備える。
【0039】
第1の主側面11および第3の主側面13は、第1の対向する主側面の対を形成し、第2の主側面12および第4の主側面14は、第2の対向する主側面の対を形成する。仮想平面を構成する長手方向面LP(図1dおよび図2d参照)は、第1の主側面11と第3の主側面13との間の中間を正中面MPに垂直に、切削インサート1を横切って延在し、中心軸線Cを含む。したがって、中心軸線Cは、この長手方向面LP内にその延長部を有する。別の仮想平面を構成する中央面CPは、正中面MPに垂直に、かつ長手方向面LPに垂直に、切削インサート1を横切って延在し、中心軸線Cを含む。したがって、中心軸線Cは、この中央面CP内にもその延長部を有し、その結果、中心軸線Cは、長手方向面LPと中央面Cの交線に沿って延在する。長手方向面LPは、第2の主側面12と第4の主側面14との間を延在し、中央面CPは、第1の主側面11と第3の主側面13との間を延在する。
【0040】
第1の側面切れ刃21は、第1の主側面11に沿って延在し、第1の主側面11と第1の主面2の交線に形成される。第2の側面切れ刃22は、第3の主側面13に沿って延在し、第3の主側面13と第1の主面2の交線に形成される。
【0041】
第1の主切れ刃31、第1の副切れ刃41、および第1のランピング切れ刃51は、第2の主側面12に沿って順に延在し、第2の主側面12と第1の主面2の交線に形成される。第1の副切れ刃41は、第1の主切れ刃31と第1のランピング切れ刃51との間に配置される。
【0042】
第2の主切れ刃32、第2の副切れ刃42、および第2のランピング切れ刃52は、第4の主側面14に沿って順に延在し、第4の主側面14と第1の主面2の交線に形成される。第2の副切れ刃42は、第2の主切れ刃32と第2のランピング切れ刃52との間に配置される。
【0043】
第1および第2の副切れ刃41、42のそれぞれは、表面さらい切れ刃区域43を備える。
【0044】
第1の側面切れ刃21および第2の側面切れ刃22は、図1dおよび図2dに示すように、長手方向面LPの反対側に互いに対向して配置される。第1の主切れ刃31および第2の主切れ刃32は、中央面CPの反対側に互いに対向して配置される。図2a~図2jに示す実施形態では、第1の主切れ刃31および第2の主切れ刃32もまた、長手方向面LPの反対側に配置される。第1の副切れ刃41および第2の副切れ刃42は、中央面CPの反対側に互いに対向して配置される。図1a~図1jに示す実施形態では、第1の副切れ刃41および第2の副切れ刃42もまた、長手方向面LPの反対側に配置される。第1のランピング切れ刃51および第2のランピング切れ刃52は、中央面CPの反対側に、また長手方向面LPの反対側にも互いに対向して配置される。
【0045】
本発明の切削インサート1は、対向する第1の主切れ刃31と第2の主切れ刃32との間の最短距離d1が、対向する第1の側面切れ刃21と第2の側面切れ刃22との間の最短距離d2に等しいかそれより長いような形状を有する。距離d1と距離d2との間の関係は、d1/d2が1.1より大きいことが好ましく、1.1~2.0がより好ましく、1.2~1.7がさらにより好ましく、1.36~1.46が最も好ましい。
【0046】
図1dおよび図2dに示すように、本発明の切削インサート1はまた、切削インサート1の平面図で見ると、すなわち、上方から視線方向に見たとき、第1の主切れ刃31および第1のランピング切れ刃51が互いに対して鈍角αで延在し、切削インサートの平面図で見ると、第2の主切れ刃32と第2のランピング切れ刃52が互いに対して対応する鈍角αで延在するような形状を有する。図1a~図1jに示す実施形態では、第1および第2の主切れ刃31、32は、平面図で見ると、わずかに凸状である。この場合、第1のランピング切れ刃51と第1の主切れ刃31との間の角度αは、平面図において第1のランピング切れ刃51に沿って延在する直線と、第1の主切れ刃31の反対側の2つの端点31a、31bと交わる直線との間で測定され、第2のランピング切れ刃52と第2の主切れ刃32との間の角度αは、これに相当する方法で測定される。角度αは、図1a~図1jに示す実施形態では約112°、図2a~図2jに示す実施形態では約150°であるが、任意の他の適切な値であってもよく、95°~160°の範囲が好ましく、100°~125°の範囲がより好ましい。
【0047】
第1の湾曲したコーナー切れ刃61は、第1のコーナー側面15に沿って延在し、第1のコーナー側面15と第1の主面2の交線に形成される。第2の湾曲したコーナー切れ刃62は、第2のコーナー側面16に沿って延在し、第2のコーナー側面16と第1の主面2の交線に形成される。第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、第3のコーナー側面17に沿って延在し、第3のコーナー側面17と第1の主面2の交線に形成される。第4の湾曲したコーナー切れ刃64は、第4のコーナー側面18に沿って延在し、第4のコーナー側面18と第1の主面2の交線に形成される。第1の湾曲したコーナー切れ刃61は、第1の側面切れ刃21と第1の主切れ刃31との間に延在し、第2の湾曲したコーナー切れ刃62は、第1のランピング切れ刃51と第2の側面切れ刃22との間に延在し、第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、第2の側面切れ刃22と第2の主切れ刃32との間に延在し、第4の湾曲したコーナー切れ刃64は、第2のランピング切れ刃52と第1の側面切れ刃21との間に延在する。第1、第2、第3、および第4の湾曲したコーナー切れ刃61、62、63、64は、切削インサートのR部が形成されたそれぞれのコーナーに沿って延在する。第1の湾曲したコーナー切れ刃61および第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、長手方向面LPの反対側で互いに対角線方向に対向して、また、中央面CPの反対側に配置される。第2の湾曲したコーナー切れ刃62および第4の湾曲したコーナー切れ刃64は、長手方向面LPの反対側で互いに対角線方向に対向して、また、中央面CPの反対側に配置される。
【0048】
上記の、中心軸線Cを中心として180°回転対称であるとは、
- 第1の側面切れ刃21および第2の側面切れ刃22は、製造公差内で互いに同一である
- 第1の主切れ刃31および第2の主切れ刃32は、製造公差内で互いに同一である
- 第1の副切れ刃41および第2の副切れ刃42は、製造公差内で互いに同一である
- 第1のランピング切れ刃51および第2のランピング切れ刃52は、製造公差内で互いに同一である
- 第1の湾曲したコーナー切れ刃61および第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、製造公差内で互いに同一である
- 第2の湾曲したコーナー切れ刃62および第4の湾曲したコーナー切れ刃64は、製造公差内で互いに同一である
ことを意味する。
【0049】
第1の主切れ刃31は、第1の副切れ刃41に接続した第1の端部31aと、第1の湾曲したコーナー切れ刃61に接続した第2の端部31bとを有する。第2の主切れ刃32は、第2の副切れ刃42に接続した第1の端部32aと、第3の湾曲したコーナー切れ刃63に接続した第2の端部32bとを有する。第1の主切れ刃31は、その第1の端部31aと第2の端部31bとの間に、その第2の端部31bがその第1の端部31aよりも正中面MPの近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する。第2の主切れ刃32は、第1の主切れ刃31と同じように傾斜し、その第1の端部32aと第2の端部32bとの間に、その第2の端部32bがその第1の端部32aよりも正中面MPの近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する。
【0050】
第1のランピング切れ刃51は、第1の副切れ刃41に接続した第1の端部51aと、第2の湾曲したコーナー切れ刃62に接続した第2の端部51bとを有する。第2のランピング切れ刃52は、第2の副切れ刃42に接続した第1の端部52aと、第4の湾曲したコーナー切れ刃64に接続した第2の端部52bとを有する。第1のランピング切れ刃51は、その第1の端部51aと第2の端部51bとの間に、その第2の端部51bがその第1の端部51aよりも正中面MPの近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する。第2のランピング切れ刃52は、第1のランピング切れ刃51と同じように傾斜し、その第1の端部52aと第2の端部52bとの間に、その第2の端部52bがその第1の端部52aよりも正中面MPの近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する。
【0051】
本発明によれば、図1gおよび図2gに示すように、第1の主切れ刃31の第2の端部31bは、第1のランピング切れ刃51の第2の端部51bよりも正中面MPの近くに配置され、第2の主切れ刃32の第2の端部32bは、これに相当する態様で、図1hおよび図2hに示すように、第2のランピング切れ刃52の第2の端部52bよりも正中面MPの近くに配置される。したがって、主切れ刃31、32の第2の端部31b、32bは、図1g、図1h、図2g、および図2hに示すように、正中面MPと、ランピング切れ刃51、52の第2の端部51b、52bと交わって正中面MPと平行に延在する仮想基準面RPとの間に配置される。図1gおよび図2gは、正中面MPと平行な視線方向で、第1の主切れ刃31の第2の端部31bおよび第1のランピング切れ刃51の第2の端部51bと交わる交線L3の直線に垂直な視線方向に切削インサート1を示し、図1hおよび図2hは、正中面MPと平行な視線方向で、第2の主切れ刃32の第2の端部32bおよび第2のランピング切れ刃52の第2の端部52bと交わる交線L4の直線に垂直な視線方向に切削インサート1を示す。
【0052】
図示の実施形態では、ランピング切れ刃51、52のそれぞれは、その第1の端部51a、52aからその第2の端部51b、52bまでその全長に沿って正中面MPに向かって傾斜している。主切れ刃31、32のそれぞれは、その第1の端部31a、32aからその第2の端部31b、32bまでその長さの主要部分に沿って正中面MPに向かって傾斜している。主切れ刃31、32および/またはランピング切れ刃51、52は、代替案として、正中面MPと平行に延在する1つまたは複数の区域を備えてもよい。主切れ刃31、32は、その第1の端部31a、32aに隣接して凸状区域を有してもよい。さらなる代替案として、この凸状区域は、ランピング切れ刃51、52と主切れ刃31、32との間をより滑らかに移行させるために、主切れ刃に沿ってその第1の端部からその第2の端部に向かって見たとき、正中面MPから離れるように傾斜する部分を有してもよい。主切れ刃31、32およびランピング切れ刃51、52のそれぞれは、その第1の端部31a、32a、51a、52aからその第2の端部31b、32b、51b、52bまでその全長に沿って見たとき、一定または増大する傾斜で正中面MPに向かって傾斜していることが好ましい。
【0053】
図1a~図1jに示す実施形態では、図1iに示すように、第1の主切れ刃31は、正中面MPと平行な視線方向で、第1の主切れ刃の第1および第2の端部31a、31bと交わる交線L1の直線に垂直な視線方向から見たとき、直線または実質的に直線に沿って主要部分まで延在し、その第1の端部31aに隣接して凸状部分を有し、この場合、図1jに示すように、第2の主切れ刃32は、正中面MPと平行な視線方向で、第2の主切れ刃32の第1および第2の端部32a、32bと交わる交線L2の直線に垂直な視線方向から見たとき、対応する直線または実質的に直線に沿って主要部分まで延在し、その第1の端部32aに隣接して凸状部分を有する。また、図2a~図2jに示す実施形態では、図2iおよび図2jに示すように、前述の視線方向で見たとき、第1および第2の主切れ刃31、32は、直線または少なくとも実質的に直線に沿って延在する。
【0054】
第1の湾曲したコーナー切れ刃61は、第1の主切れ刃31の第2の端部31bに接続した第1の端部61aと、第1の側面切れ刃21に接続した第2の端部61bとを有する。第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、第2の主切れ刃32の第2の端部32bに接続した第1の端部63aと、第2の側面切れ刃22に接続した第2の端部63bとを有する。第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃61、63は、正中面MPと平行に延在してもよい。しかしながら、図示の実施形態では、第1の湾曲したコーナー切れ刃61は、その第1の端部61aと第2の端部61bとの間に、その第2の端部61bがその第1の端部61aよりも正中面MPの近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有し、この場合、第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、第1の湾曲した切れ刃61と同じように傾斜し、その第1の端部63aと第2の端部63bとの間に、その第2の端部63bがその第1の端部63aよりも正中面MPの近くに配置されるような1つまたは複数の傾斜を有する1つまたは複数の傾斜部を有する。
【0055】
図示の実施形態では、第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃61、63のそれぞれは、その第1の端部61a、63aからその第2の端部61b、63bまでその全長に沿って正中面MPに向かって傾斜しているが、代替案として、正中面MPと平行に延在する1つまたは複数の区域を備えてもよい。第1および第3の湾曲したコーナー切れ刃61、63のそれぞれは、その第1の端部61a、63aからその第2の端部61b、63bまでその全長に沿って見たとき、一定または増大する傾斜で正中面MPに向かって傾斜していることが好ましい。
【0056】
第1の湾曲したコーナー切れ刃61は、その延在部に沿ったあらゆる点において、第1の主切れ刃31に沿ったすべての点での、第1の主切れ刃31の最小の傾斜に等しいかそれよりも大きい傾斜を有することが好ましく、この場合、第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、その延在部に沿ったあらゆる点において、第2の主切れ刃32に沿ったすべての点での、第2の主切れ刃32の最小の傾斜に等しいかそれよりも大きい傾斜を有する。
【0057】
第1の湾曲したコーナー切れ刃61に沿ったあらゆる点において、第1の湾曲したコーナー切れ刃61と正中面MPとの間の距離は、第1の主切れ刃31の第2の端部31bと正中面MPとの間の距離に等しいかそれより短いことが好ましく、この場合、第3の湾曲したコーナー切れ刃63に沿ったあらゆる点において、第3の湾曲したコーナー切れ刃63と正中面MPとの間の距離は、第2の主切れ刃32の第2の端部32bと正中面MPとの間の距離に等しいかそれより短い。
【0058】
さらに、第1の主切れ刃31および第1の湾曲したコーナー切れ刃61は、正中面MPと平行な視線方向で、第1の主切れ刃31の第1および第2の端部31a、31bと交わる交線L1の直線に垂直な視線方向から見たとき、すなわち、図1iおよび図2iによる横方向図を見たとき、正中面MPと、第1の主切れ刃31に沿った点に引くことができるあらゆる接線との間に第1の湾曲したコーナー切れ刃61が配置されるように構成されることが好ましく、この場合、第2の主切れ刃32および第3の湾曲したコーナー切れ刃63は、正中面MPと平行な視線方向で、第2の主切れ刃32の第1および第2の端部32a、32bと交わる交線L2の直線に垂直な視線方向から見たとき、すなわち、図1jおよび図2jによる横方向図を見たとき、正中面MPと、第2の主切れ刃32に沿った点に引くことができるあらゆる接線との間に第3の湾曲したコーナー切れ刃63が配置されるように構成される。
【0059】
第1の主切れ刃31に関連する第1のチップブレーカ71は、第1の主面2に形成され、第1の主切れ刃31の少なくとも一部に沿って第1の主面2に延在するように構成されることが有利であり、この場合、第2の主切れ刃32に関連する第2のチップブレーカ72は、第1の主面2に形成され、第2の主切れ刃32の少なくとも一部に沿って第1の主面2に延在するように構成される。第1および第2のチップブレーカ71、72は、第1および第2の主切れ刃31、32にずっと沿って延在するように構成されることが好ましい。図示の実施形態では、第1のチップブレーカ71は、第1の主切れ刃31にずっと沿って延在し、第1の湾曲したコーナー切れ刃61にも沿って延在し、この場合、第2のチップブレーカ72は、第2の主切れ刃32にずっと沿って延在し、第3の湾曲したコーナー切れ刃63にも沿って延在する。したがって、第1のチップブレーカ71および第2のチップブレーカ72は、この場合、第1の湾曲したコーナー切れ刃61および第3の第1の湾曲したコーナー切れ刃63にもそれぞれ関連する。第1のチップブレーカ71は、第1のランピング切れ刃51の方を向く第1の端部71aと、第1の主側面11の方を向く反対側の第2の端部71bとを有し、この場合、第2のチップブレーカ72は、第2のランピング切れ刃52の方を向く第1の端部72aと、第3の主側面13の方を向く反対側の第2の端部72bとを有する。図示の実施形態では、第1のチップブレーカ71の第2の端部71bは、第1の湾曲したコーナー切れ刃61の第2の端部61bに隣接し、また、第1の湾曲したコーナー切れ刃61の第2の端部61bに隣接した第1の側面切れ刃21の一部にも隣接し、一方、第2のチップブレーカ72の第2の端部72bは、第3の湾曲したコーナー切れ刃63の第2の端部63bに隣接し、また、第3の湾曲したコーナー切れ刃63の第2の端部63bに隣接した第2の側面切れ刃22の一部にも隣接する。
【0060】
図1a~図1jに示す実施形態では、第1のチップブレーカ71の第1の端部71aは、第1の副切れ刃41および第1のランピング切れ刃51に関連する第3のチップブレーカ76に隣接し、一方、第2のチップブレーカ72の第1の端部72aは、第2の副切れ刃42および第2のランピング切れ刃52に関連する第4のチップブレーカ77に隣接する。第1のチップブレーカ71および第3のチップブレーカ76は、第1のランピング切れ刃51と第1の側面切れ刃21の一部との間すべてに延在する連続したチップブレーカを一緒に形成する。第2のチップブレーカ72および第4のチップブレーカ77は、第2のランピング切れ刃52と第2の側面切れ刃22の一部との間すべてに延在する連続したチップブレーカを一緒に形成する。
【0061】
第1のチップブレーカ71は、長手方向面LPと平行に第1のチップブレーカの断面を見たとき、実質的にU字形またはV字形のプロファイルを有し、それによって、第1の主面2に、第1のチップブレーカの第1の端部71aと第2の端部71bとの間に延在する細長い第1の谷部73を形成することが好ましい。この場合、同じく、第2のチップブレーカ72は、前記長手方向面LPと平行に第2のチップブレーカ72の断面を見たとき、実質的にU字形またはV字形のプロファイルを有し、それによって、第1の主面2に、第2のチップブレーカの第1の端部72aと第2の端部72bとの間に延在する細長い第2の谷部74を形成する。第1および第2の谷部73、74のそれぞれは、チップブレーカの第1の端部71a、72aからチップブレーカの第2の端部71b、72bの方にチップブレーカに沿った方向に見たとき、増大する深さを有することが好ましい。図示された実施形態では、第1および第2の谷部73、74のそれぞれは、チップブレーカの第1の端部71a、72aからチップブレーカの第2の端部71b、72bの方にチップブレーカに沿った方向に見たとき、増大する幅wを有し、ここで、谷部73、74の幅wは、谷部の第1の側における谷部の第1の長手方向の縁と谷部の反対側の第2の側における谷部の第2の長手方向の縁との間の、長手方向面LPと平行に延在する平面における距離として測定される。
【0062】
第1および第2の主切れ刃31、32のそれぞれ、ならびに第1および第2の副切れ刃41、42のそれぞれは、正または0の公称すくい角を有することが好ましい。図示の実施形態では、主切れ刃31、32および副切れ刃41、42の公称すくい角は正である。また、第1および第2のランピング切れ刃51、52の公称すくい角は、図示の実施形態では、正である。
【0063】
幅の狭い面取りの形態の補強ランド9が、従来の態様で、切れ刃21、22、31、32、41、42、51、52、61~63のうちの1つまたは複数と、関連するすくい面との間で第1の主面2に配置されてもよい。補強ランド9は、負、0、または正の公称すくい角を有してもよい。
【0064】
図1a~図1jに示す切削インサート1は、切れ刃が第1の主面2の外周に沿ってのみ配置された片面で2通りに使える刃先交換式切削インサートであり、これは、中心軸線Cを中心に切削インサートを180°回転させることにより、フライス工具の2つの異なる割出し位置に切削インサート1を取り付けることができることを意味する。この場合、第2の主面3、すなわち切削インサートの底面は、平坦で、中心軸線Cに対して垂直方向に延在するように構成されることが好ましい。しかしながら、このタイプの片面で2通りに使える刃先交換式切削インサート1は、プロファイルのある底面を有することもできる。
【0065】
図2a~図2jに示す切削インサート1は、切れ刃が第1の主面2の外周に沿って、および、第2の主面3の外周にも沿って配置された両面で4通りに使える刃先交換式切削インサートであり、これは、フライス工具の4つの異なる割出し位置に切削インサート1を取り付けることができることを意味する。この場合、第1の主面2および第2の主面3は、製造公差内で互いに同一であり、第2の主面3の外周に沿って配置された切れ刃は、第1の主面2の外周に沿って配置された上記の切れ刃21、22、31、32、41、42、51、52、61~64と製造公差内で同一である。
【0066】
図3図6は、ランピング加工およびポケット加工に使用するのに適したエンドミル工具の形態のフライス工具80を示す。フライス工具80は、細長い工具本体81を備え、回転軸線82を中心に回転するように構成される。工具本体81は、後端81aおよび反対側の前端81bを有する。工具本体81の長手方向軸線83は、工具本体の後端81aと前端81bとの間に延在し、ここでは、この長手方向軸線83は、フライス工具80の回転軸線82と一致する。後端81aにおいて、工具本体81は、例えば工具ホルダによってフライス加工機械の回転スピンドル等に取り付けられる。前端81bにおいて、工具本体81は、切削インサート1を受け入れるように構成されたインサートシート84を備える。図示の例では、工具本体81は、工具本体の長手方向軸線83の周りに均等に分配され切削インサート1を受け入れるように構成された3つのインサートシート84を備える。しかしながら、工具本体81は、代替案として、特に、工具本体の直径に応じて、任意の他の適切な数のインサートシート84を備えてもよい。より小さい直径の工具本体は、例えば、2つのインサートシートを備えてもよく、一方、より大きい直径の工具本体は、4つ以上のインサートシートを備えてもよい。
【0067】
切削インサート1は、工具本体81のインサートシート84のそれぞれに取り付けられる。図3図6に示す実施形態では、フライス工具80は、図1a~図1jに示すタイプの切削インサート1を備える。各切削インサート1は、関連するインサートシート84に取外し可能に取り付けられるように構成される。図示の実施形態では、各切削インサート1は、ねじの形態の締結要素6によって、関連するインサートシート84に固定され、締結要素6は、切削インサート1の貫通孔5を通って延在し、インサートシートの接戦方向支持面86のねじ孔85(図6参照)に係合される。インサートシート84はまた、半径方向支持面87および軸線方向支持面88を備える。切削インサート1は、第1および第3の主側面11、13のそれぞれに半径方向当接面7を備え、第2および第4の主側面12、14のそれぞれに軸線方向当接面8を備える。第1および第2の主側面11、12の半径方向および軸線方向当接面7、8は、第1の当接面の対を形成し、第3および第4の主側面13、14の半径方向および軸線方向当接面7、8は、第2の当接面の対を形成する。それぞれの対の半径方向および軸線方向当接面7、8は、正中面MPと平行な切削インサート1の断面で見たとき、互いに対して鋭角に配置されることが好ましく、この場合、各インサートシート84の半径方向および軸線方向支持面87、88は、互いに対して、対応する鋭角に配置される。
【0068】
切削インサート1は、インサートシート84に取り付けられたとき、第2の主面3またはその少なくとも一部分がインサートシートの接線方向支持面86に当接し、前記対のうちの一方の半径方向および軸線方向当接面7、8がインサートシートの半径方向支持面87および軸線方向支持面88にそれぞれ当接するように配置される。前記第2の対の半径方向および軸線方向当接面7、8が半径方向および軸線方向支持面87、88に当接するように切削インサート1が配置されると、第1の側面切れ刃21、第1の湾曲したコーナー切れ刃61、第1の主切れ刃31、第1の副切れ刃41、および第1のランピング切れ刃51は有効な位置にあり有効な切れ刃を構成する。前記第1の対の半径方向および軸線方向当接面7、8が半径方向および軸線方向支持面87、88に当接するように切削インサート1が配置されると、第2の側面切れ刃22、第3の湾曲したコーナー切れ刃63、第2の主切れ刃32、第2の副切れ刃42、および第2のランピング切れ刃52は有効な位置にあり有効な切れ刃を構成する。
【0069】
ランピング加工では、有効な主切れ刃31、32、有効なランピング切れ刃51、52、および場合によっては、有効な湾曲したコーナー切れ刃61、63も、被加工物に主要な切削を行い、一方、有効な副切れ刃41、42の表面さらい切れ刃区域43は、表面を浅く切削して滑らかにするのみである。
【0070】
本発明は、もちろん、上記の実施形態に決して限定されるものではない。それどころか、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の基本的な考え方から逸脱することなく、それらを修正する多くの可能性があることは当業者には明らかであろう。
図1a
図1b-1c】
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図1i
図1j
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図2i
図2j
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】