(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】僧帽弁閉鎖不全症治療用の人工弁デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514052
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021073468
(87)【国際公開番号】W WO2022043365
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】102020122386.2
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523069337
【氏名又は名称】メディラ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MEDIRA GMBH
【住所又は居所原語表記】Ziegelwasen 4,72336 Balingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チェントラ,マルコス
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ピサーニ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】モゲンターレ,ダビデ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC12
4C097DD10
4C097EE11
4C097EE13
4C097MM02
4C097SB02
4C097SB09
(57)【要約】
本発明は、僧帽弁閉鎖不全症の治療用の人工弁デバイスおよびその製造方法に関する。このデバイスは、柔軟性ステントフレームと該ステントフレームを少なくとも部分的に被覆する補綴材とを有する本体と、弁構造とを含み、該弁構造は、該補綴材が取り付けられた細長いループ構造を有するワイヤー要素によって形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
僧帽弁閉鎖不全症の治療用の人工弁デバイス(100)であって、
該人工弁デバイス(100)が、内腔(121)を有する本体(120)を含み、該本体(120)が、内面(112a)および外面(112b)を有する管状の柔軟性ステントフレーム(112)と、該ステントフレーム(112)を少なくとも部分的に被覆する補綴材(113)とを含み、前記内腔(121)が弁構造(116)を含み、
前記柔軟性ステントフレーム(112)が、第1のワイヤー端部(103)と第2のワイヤー端部(104)とを有する1本のワイヤー(102)で形成されたワイヤー要素(101)を複数設けて構成されており、各ワイヤー要素(101)が、細長いループ構造(107)を備えたワイヤー要素近位部(105)と、ワイヤー要素遠位部(106)とを有し、該細長いループ構造(107)が、近位曲線部(108)と、遠位曲線部(109)と、該近位曲線部(108)と該遠位曲線部(109)の間に中間部(110)とを含み、前記補綴材(113)が、前記ワイヤー要素近位部を被覆し、前記ステントフレーム(112)の内面(112a)で前記近位曲線部(108)に固定され、前記ステントフレームの外面(112b)で前記遠位曲線部に固定されている、
人工弁デバイス(100)。
【請求項2】
管状要素(130)をさらに含み、該管状要素(130)が、該管状要素(130)を貫通して延在する少なくとも1つの内腔(131)を含み、該内腔(131)が、前記第1と第2のワイヤー端部(103、104)を収容するように設計されている、請求項1に記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項3】
前記複数のワイヤー要素(101)が、3つ以上のワイヤー要素(101)からなる、請求項1または2に記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項4】
前記ループ構造(107)が、開ループ構造または閉ループ構造(107)である、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項5】
前記ワイヤー(102)の第1と第2のワイヤー端部(103、104)が、前記遠位曲線部(109)に隣接した遠位側において、少なくとも一定の距離にわたって結線されており、好ましくは圧着構造(142)または該ワイヤー(102)の撚りによって結線されている、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項6】
前記第1と第2のワイヤー端部(103、104)が、前記遠位曲線部(109)に隣接した位置から実質的にその全長にわたって、スリーブ(141)によって結線されている、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項7】
前記近位曲線部(108)において前記ワイヤー(102)が2重になっており、前記遠位曲線部(109)において前記ワイヤー(102)が1重になっている、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項8】
前記ワイヤー要素(101)同士を連結する圧着要素(140;140a、140b、140c)が設けられている、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項9】
前記管状要素(130)が、該管状要素(130)を貫通して延在する複数の内腔(131)を有し、該管状要素(130)の複数の内腔(131)の各々に、各ワイヤー(102)の第1と第2のワイヤー端部(103、104)がそれぞれ個別にまたはこれら2つが一組で誘導されている、請求項2~8のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項10】
前記管状要素(130)が、少なくとも3つもしくは6つの内腔(131)または3つもしくは6つの内腔(131)を含む、請求項2~9のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項11】
前記ワイヤー要素(101)が、形状記憶合金、好ましくはニチノールからなる、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項12】
前記補綴材が、前記近位曲線部と前記遠位曲線部にのみ固定されている、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項13】
前記細長いループ構造(107)が、実質的に楕円形である、先行する請求項のいずれかに記載の人工弁デバイス(100)。
【請求項14】
人工弁デバイス(100)の製造方法であって、
a)第1のワイヤー端部(103)と第2のワイヤー端部(104)とを有する1本のワイヤー(102)で形成されたワイヤー要素(101)を複数、好ましくは3つ設ける工程であって、各ワイヤー要素(101)が、細長いループ構造(107)を備えたワイヤー要素近位部(105)と、ワイヤー要素遠位部(106)とを有し、各細長いループ構造(107)が、近位曲線部(108)と、遠位曲線部(109)と、該近位曲線部(108)と該遠位曲線部(109)の間に中間部(110)とを含む、工程;
b)前記近位曲線部(108)に、管状補綴材(113)、好ましくは哺乳動物の心膜を取り付ける、好ましくは縫着する工程であって、該管状補綴材(113)が、内面(115)、外面(114)、第1の補綴材端部(113a)、第2の補綴材端部(113b)および該第1の補綴材端部(113a)と該第2の補綴材端部(113b)の間に補綴材中間部(113c)を含み、この取付工程b)により、該第2の補綴材端部(113b)と該補綴材中間部(113c)は未固定のままで、該第1の補綴材端部(113a)の外面(115)にのみ前記ワイヤー要素(101)が取り付けられる、工程;
c)次いで、前記管状補綴材(113)の内面(115)が前記ワイヤー要素近位部(105)の細長いループ構造(107)に覆い被さるように該管状補綴材(113)を外側に折り返して、前記第2の補綴材端部(113b)と前記補綴材中間部(113c)を、前記遠位曲線部(109)の方向に向けて該細長いループ構造に覆い被せる工程;ならびに
d)次いで、前記第2の補綴材端部(113b)を前記細長いループ構造(107)の遠位曲線部(109)に取り付けることにより、人工弁デバイス(100)を作製する工程
を含む製造方法。
【請求項15】
e)各ワイヤー要素の第1のワイヤー端部(103)と第2のワイヤー端部(104)を管状要素(130)の内腔(131)に通線する工程をさらに含み、該管状要素(130)が、該管状要素(130)を貫通して延在する少なくとも1つの内腔(131)を含み、該内腔(131)が、前記第1と第2のワイヤー端部(103、104)をそれぞれ個別にまたはこれら2つを一組で収容するように設計されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記管状要素(130)が、前記第1と第2のワイヤー端部(103、104)を収容するように設計された少なくとも3つもしくは6つの内腔(131)または3つもしくは6つの内腔(131)を含む多腔管状要素である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
内腔(121)を有する本体(120)を含む人工弁デバイス(100)であって、該本体が、管状の柔軟性ステントフレームと、該ステントフレーム(112)を少なくとも部分的に被覆する補綴材(113)とを含み、前記内腔(121)が弁構造を含み、前記人工弁デバイス(100)が、請求項14~16のいずれかに記載の方法により製造されることを特徴とする人工弁デバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓弁膜症、特に僧帽弁閉鎖不全症の治療用の人工弁デバイスに関し、該デバイスは、内腔を有する本体を含み、該本体が、内面および外面を有する管状の柔軟性ステントフレームと、該ステントフレームを少なくとも部分的に被覆する補綴材とを含み、前記内腔が弁構造を含むことを特徴とする。また、本発明は、このようなデバイスの製造方法および治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
僧帽弁膜症は、成人の弁膜症の中で2番目に多く見られる臨床的に重要な病態である。僧帽弁逆流症は、加齢に伴う退行性変化(一次性または退行性僧帽弁逆流症)として、また心筋拡大による心室の解剖学的変化の結果(二次性または機能性僧帽弁逆流症)として生じるケースが増えている。
【0003】
哺乳動物の心臓は、4つの部屋、すなわち血液が貯留される部屋である2つの心房と、血液を送り出す部屋である2つの心室で構成されている。哺乳動物の心臓には、4つの心臓弁が存在し、これらの弁によって、血液が心臓内を通常一方向にのみに流れるようになっており、各心臓弁は、弁の両側の血圧の差に応じて開閉する。
【0004】
心臓内の主要な4つの弁のうち、二尖弁である僧帽弁と三尖弁は、それぞれ上部に位置する心房と下部に位置する心室の間にあり、そのため房室(AV)弁と呼ばれる。大動脈弁と肺動脈弁は、心臓から出る動脈にある。なお、僧帽弁と大動脈弁は左心に、三尖弁と肺動脈弁は右心に位置する。
【0005】
各弁には弁尖、いわゆるカスプが存在し、僧帽弁以外はそれぞれ3つのカスプを有するが、僧帽弁のカスプは2つである。
【0006】
僧帽弁と三尖弁は、それぞれ心房と心室の間に位置しており、収縮期における心室から心房への逆流を防ぐ。これらの弁は、腱索によって心室壁につなぎ止められており、この腱索が弁の反転を防いでいる。腱索は乳頭筋に付着しており、この乳頭筋に引っ張られることで弁がしっかり支えられている。乳頭筋と腱索は、共に弁下組織として知られている。弁下組織は、弁が閉じる際に弁が心房内へ逸脱するのを防止する機能を有するが、弁の開閉には作用せず、弁の開閉は弁の両側の圧力勾配によってのみ起こる。
【0007】
拡張期に、左心房が血液で満たされて左心房側からの圧力が上昇すると(前負荷)、正常に機能している僧帽弁は開く。心房内圧が左心室の内圧より高くなると僧帽弁が開き、弁が開くことで血液が受動的に左心室へと流れる。拡張期は心房収縮によって終了し、この心房収縮により、最後に、左心房から左心室に移動する血液の20%が放出される。心房収縮の終了時には僧帽弁が閉じて、血液の逆流を防ぐ。
【0008】
弁の障害としてはいくつかの種類が知られており、例えば、硬化または癒合した弁尖が心臓弁の正常な開放を妨げ、心臓弁が完全に開放されない狭窄症や、弁のフラップがスムーズにまたは均等に閉まらず、密閉すべき心腔内へと逆に落ち込む逸脱症などが挙げられる。
【0009】
弁逆流症(逆流)もよく見られる障害であり、心臓弁がしっかりと閉まらないことで、弁による密閉が得られず、血液が弁を通って逆方向へと漏出する。この症状(弁閉鎖不全症とも言う)は、心臓のポンプ機能の効率を低下させる。心臓が収縮すると、血液は順方向へ送り出されるが、同時に損傷した弁を通って逆方向へも流れてしまう。この漏出が悪化するにつれ、心臓は漏出を起こしている弁の機能を補うためにより激しく拍動しなければならず、また、身体の他の部位へと送り出される血液が減少する可能性がある。このような症状は、障害を有する弁の種類によって、三尖弁逆流症、肺動脈弁逆流症、僧帽弁逆流症または大動脈弁逆流症と呼ばれる。
【0010】
僧帽弁逆流症(MR)、すなわち左心室の収縮時に血液が僧帽弁を通って左心室から左心房へと漏出する異常な状態は、よく見られる弁障害の一つであり、心臓弁膜症を患っている成人の24%、75歳人口の7%で見られる。左室機能不全または左室拡大を伴う、重度の症候性僧帽弁逆流症または重度の無症候性僧帽弁逆流症には、外科的治療が推奨される。重度の退行性僧帽弁逆流症の外科的治療において、僧帽弁置換より僧帽弁修復の治療成績が優れているという結果が得られていることから、治療法は僧帽弁置換から僧帽弁修復へと変化してきている。
【0011】
先進国における(一次性)退行性僧帽弁膜症の年間発症率は、約2%~3%と推定されている。退行性変化に加えて、二次性の僧帽弁逆流症は、心虚血、感染性心内膜炎、リウマチ性疾患などを含み、発展途上国での発生頻度が高い。
【0012】
僧帽弁置換は、成人心臓手術の中でも、世界のほとんどの施設で最もリスクが高いとされる手術であり、手術による死亡率は20~30%に上ると言われている。新技術の導入や修復法の改良、リングを用いた弁輪形成術、弁尖再建術や腱索短縮術/移植術を組み合わせたCarpentierの統合的アプローチにより優れた成績が示されており、僧帽弁修復は僧帽弁閉鎖不全症の治療選択肢として確立されつつある。
【0013】
重度のMR患者のうち少なくとも50%は、年齢や併存疾患により手術の適応外となっている。
【0014】
最近では、経カテーテル僧帽弁修復が、病変した僧帽弁や機能不全の僧帽弁を置換または補助するための代替手段となっている。経皮僧帽弁修復は、現在、手術適応外の高リスクの退行性僧帽弁逆流症患者に対して適用可能である。その他のカテーテルを用いた僧帽弁逆流症の修復・置換術について、前臨床試験や臨床試験の様々な段階で試験が行われているが、現在試験中のデバイスは、経カテーテル大動脈弁置換で使用されているものより、難易度が高いことが示されている。これは、僧帽弁の解剖学的構造がより複雑で、治療を要する僧帽弁疾患が多様であることに起因している。
【0015】
経皮僧帽弁修復術は、概ね僧帽弁手術と同じ原理に基づいている。すなわち、新しい腱索の設置、弁尖のひだ形成、弁輪の形成、乳頭筋の修正、左室の再構築である。数年前に、手術経験に基づかない別の治療法が提案された。これは、本来の弁尖同士の間に人工的な空間を作り、弁尖同士の接合性を高めるという発想に基づくものである。この治療法のために開発された「スペーサー」と名付けられた血管内バルーンカテーテルは、僧帽弁の弁尖の間に経心尖的に留置され、通気ポートが皮下に埋め込まれることで、バルーンの容量をコントロールできるようになっている。
【0016】
この治療法は、僧帽弁逆流量を減少させるのに有効であることが証明されているが、未解決の合併症もある。例えば、バルーン材料の血栓形成性により、脳卒中リスクを軽減するための抗凝固療法が必要となるという問題があり、また、バルーンが占める空間による弁口面積の減少により、心房と心室の間の血流が減少し、僧帽弁の医原性狭窄が生じるという問題もある。
【0017】
上記のことから、心臓に対する外傷的影響を最小限に抑えつつ、心臓弁逆流症を効果的に治療することができる人工心臓弁が今もなお必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明において、上記の目的およびその他の目的は、下記の僧帽弁閉鎖不全症の治療用の人工弁デバイスによって解決される。この人工弁デバイスは、内腔を有する本体を含み、該本体が、内面および外面を有する管状の柔軟性ステントフレームと、該ステントフレームを少なくとも部分的に被覆する補綴材とを含み、前記内腔が弁構造を含み、前記柔軟性ステントフレームが、第1のワイヤー端部と第2のワイヤー端部とを有する1本のワイヤーで形成されたワイヤー要素を複数設けて構成されており、各ワイヤー要素が、細長いループ構造を備えたワイヤー要素近位部と、ワイヤー要素遠位部とを有し、該細長いループ構造が、近位曲線部と、遠位曲線部と、該近位曲線部と該遠位曲線部の間に中間部とを含み、前記補綴材が、前記ワイヤー要素近位部を被覆し、前記ステントフレームの内面で前記近位曲線部に固定され、前記ステントフレームの外面で前記遠位曲線部に固定されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の人工弁デバイスにより、本来の僧帽弁尖同士の接合を強化するためのスペーサーを作製することが可能であり、同時に先行技術のスペーサーデバイスによる関連合併症を回避することができる。
【0020】
本発明の人工弁デバイスは、治療する患者の心臓の本来の僧帽弁領域への導入、解放、配置、左心室の心尖部への固定が容易に行えるとともに、外れて心臓組織を傷つける危険性もない。本発明の人工弁デバイスは、心室腔に管状要素が配置される柔軟性フレームを提供することで、耐疲労性を向上させることができるという利点を有する。また、弁尖用の適切な固定具を有するモジュール構造も設けられる。本発明の人工弁デバイスを用いることで、患者の心臓の左心房から左心室への移行部に当該デバイスの弁を配置することができ、接合円筒体内の圧力を本来の弁尖閉鎖圧と釣り合わせて、過剰な圧縮を抑えることができる。また、補綴材のステントフレームへの特異な取り付けにより、収縮期における接合円筒体のバルーン効果が発揮され、付加的に接合性を向上させることができる。
【0021】
本発明の人工弁デバイスの「本体」は、ステントフレームを含むか、ステントフレームからなり、該ステントフレームは、少なくとも部分的に補綴材で被覆されている。ここで、補綴材に関して「少なくとも部分的に」という表現は、ステントフレームの全長に対して実質的な部分が、特に細長いループ構造/要素を有するステントフレームの領域が、補綴材で周方向に被覆されていることを意味する。前記ステントフレームにおいて細長いループ構造/要素を有する部分のみが、前記補綴材で覆われていることが好ましい。前記ワイヤー端部は遠位/流出方向にさらに延在しており、一定の長さにわたって、補綴材で被覆されたり、いかなる要素にも収容されていないため、ワイヤーで支持された円筒体内に血液の通り道ができる。
【0022】
さらに、本明細書において、「弁構造」とは、血液の流れる方向を一方向のみに制御するための任意の要素を意味し、具体的には、哺乳動物、特にヒトの本来の心臓弁に似た人工弁、人工・天然混合弁または弁組織を含む。すなわち、本発明において、「弁構造」は、健康な本来の心臓弁と同様の機能、すなわち、血液が一方向のみに流れるように機能する弁要素である。
【0023】
本明細書において、「ワイヤー要素」とは、1本のワイヤーで/1本のワイヤーによって形成される要素である。「ワイヤー」は、本明細書で使用され、定義されているように、また先行技術で知られているように、2つの末端を有する細くて柔軟な長い糸状の形態に引き伸ばされた任意の金属/合金を含む。
【0024】
これに関連して、ワイヤー要素端部は、流入端を近位、流出端を遠位として、ワイヤー要素の近位または遠位に位置する端部の区域または領域を示す。
【0025】
本明細書において、「細長いループ構造」とは、1本のワイヤーの一部をそのワイヤーの別の部分と交差するまで湾曲させてリング状にしたときにできるあらゆる曲線形状を意味し包含するものであり、このリングの形状は細長く、すなわち円形というよりもむしろ楕円形または実質的に楕円形である。好ましい一実施形態において、前記細長いループ構造における近位-遠位方向の直径は、周方向の直径より大きい。前記複数の細長いループ状要素のそれぞれの近位-遠位方向の直径が同じ長さであることが好ましい。
【0026】
「曲線部」は、定義に応じて近位または遠位にある細長いループ状要素の曲線領域/部分を示し、近位曲線部は、近位/流入方向に湾曲した曲線を示し、遠位曲線部は、遠位/流出方向を向いている。
【0027】
本発明において、「ワイヤー要素」は、ワイヤー要素近位部にループを有し、好ましくは、第1と第2の端部は、曲がったり湾曲したりしておらず、一定の長さにわたって遠位方向に直線状に延在する端部で構成されている。これらの端部は同じ長さであることが好ましい。
【0028】
本明細書において、「近位」という表現は、一般に、人工弁デバイスで血液の流入が起こる方向、すなわち、人工弁デバイスにおける位置関係において、血液が心房から人工弁デバイスの内腔へと流れるための進入口がある方向を意味する。したがって、「遠位」という表現は、人工弁デバイスで血液の流出が起こる方向、すなわち、血液が内腔から心室内へと流出する端部を意味する。したがって、「近位」という表現は、「流入」と同義に、「遠位」は「流出」と同義に使用することもできる。
【0029】
本発明において、前記補綴材は、細長いループ構造を有するワイヤー要素近位部を被覆するように、ステントフレームに固定されている。固定は、任意の適切な固定手段または取り付け手段、特に縫着によって、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはその他の生体適合性素材で作られた外科用糸を用いた縫着によって行われる/達成される。前記補綴材は、ワイヤー要素遠位部を被覆していないことが好ましい。
【0030】
本発明の人工弁デバイスの一実施形態において、前記ワイヤー要素近位部に、細長いループ構造が設けられており、前記ワイヤー要素遠位部に、前記第1と第2のワイヤー端部が延在する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、前記ループ構造は、ワイヤーの長さにおいて、その長さのほぼ中央に湾曲部を設けて近位湾曲部/曲線部を形成することと、第1と第2のワイヤー端部のそれぞれに半湾曲部を設けて、これらを合わせて遠位ワイヤー曲線部とすることにより、形成することができる。あるいは、別の好ましい実施形態において、前記近位および遠位の曲線部は、ワイヤー要素を環状に巻き付けることにより形成される。
【0032】
本発明の人工弁デバイスの好ましい一実施形態において、前記ループ構造は、開ループ構造または閉ループ構造として設けられていてもよい。
【0033】
「開」ループ構造の場合、ワイヤーの長さにおいて、その長さのほぼ中央に湾曲部を設けて近位湾曲部/曲線部を形成することと、第1と第2のワイヤー端部を合わせて遠位ワイヤー曲線部または湾曲部とする、好ましくは、各ワイヤー端部が遠位曲線部を半分ずつ形成することにより、ループが形成されることが好ましい。このように、前記細長いループ構造は、ワイヤー要素近位部に形成されており、第1と第2のワイヤー端部は、別々の端部として、ワイヤー要素遠位部に/ワイヤー要素遠位部方向に、すなわち、近位湾曲部/曲線部とは反対の方向に延在する。
【0034】
「閉」ループ構造の場合、前記ワイヤーの湾曲部/近位曲線部の反対側に位置する第1と第2のワイヤー端部は、前記遠位曲線部に隣接した遠位側において、少なくとも一定の距離にわたって結線されており、好ましくは圧着、スリーブまたは撚りによって結線されていることが好ましい。
【0035】
さらに別の好ましい実施形態において、閉ループ構造が設けられている場合、第1と第2のワイヤー端部は、前記遠位曲線部に隣接した位置から実質的にその全長にわたって、スリーブによって結線されていてもよく、それによって、連結した第1と第2のワイヤー端部によりワイヤー要素連結遠位部が形成される。つまり、第1と第2のワイヤー端部は、連結して/2つ一組で一体となってワイヤー要素遠位部に/ワイヤー要素遠位部方向に延在する。
【0036】
さらなる別の実施形態において、前記近位曲線部は、1本のワイヤーが2重になっており、前記遠位曲線部はこのワイヤーが1重になっている。すなわち、この実施形態は、1本のワイヤーを楕円形に誘導することによって生じるものである。また、この場合、第1と第2のワイヤー端部は、ワイヤー要素遠位部で別々の端部として延在していてもよく、2つの端部が連結して一体となって延在していてもよい。後者の場合、前記ワイヤーの湾曲部/近位曲線部の反対側に位置する第1と第2のワイヤー端部は、前記遠位曲線部に隣接した遠位側において、少なくとも一定の距離にわたって結線されており、好ましくは圧着、スリーブまたは撚りによって結線されている。
【0037】
本発明の人工弁デバイスの一実施形態において、前記細長いループ構造は、近位曲線部と、遠位曲線部と、該近位曲線部と該遠位曲線部との間に延在する中間部とを有するように設計されており、好ましくは、該中間部において、前記ワイヤーが実質的に直線状に延在する。より好ましくは、前記ワイヤーは、前記近位曲線部から前記中間部まで左右の直線状のワイヤー部分に分かれて延び、さらに前記遠位曲線部まで延び、前記遠位曲線部で該左右のワイヤー部分が互いに接近するよう湾曲して遠位側の曲線が形成されている。
【0038】
好ましい一実施形態において、前記近位曲線部は、近位-遠位長軸および/または内腔に対して外方に曲げられている。
【0039】
本発明の人工弁デバイスの別の実施形態において、前記ワイヤー要素同士は、連結されており、好ましくは、該ワイヤー要素同士を圧着する圧着要素によって連結されている。改良形態において、1つのワイヤー要素の第1と第2のワイヤー末端も、スリーブ内で2つ一組になっている。
【0040】
この実施形態の改良形態において、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの圧着要素が、好ましくは前記近位曲線部に隣接して設けられており、さらに好ましくは1つの圧着要素により、2つの別々のワイヤー要素の一方の左ワイヤー部分ともう一方の右ワイヤー部分が連結されている。
【0041】
この実施形態により、前記ワイヤー要素の連結/作製がより安定的に行われる。したがって、3つのワイヤー要素を使用する場合、ワイヤー要素同士の連結に3つの圧着要素が必要となる。
【0042】
本発明の改良形態において、本発明の人工弁デバイスは、管状要素をさらに含み、該管状要素は、該管状要素を貫通して延在する少なくとも1つの内腔を含み、該内腔は、前記ワイヤー要素遠位部を収容するように設計されており、好ましくは、前記第1および/または第2のワイヤー端部をそれぞれ個別にまたはこれら2つを一組で収容するように設計されている。
【0043】
前記管状要素を用いることにより、前記ワイヤー要素の自由端/端部をその内腔に誘導/通線/導入することができるので、該自由端が心臓組織に接触したり損傷を与えることを回避することができる。また、前記管状要素を用いることで、前記ワイヤーを「束ねた」管状要素を心尖部または中隔に固定することによって、前記ワイヤー要素の端部を安定かつ確実に固定することができる。したがって、前記「管状」要素は、前記ワイヤー端部を収容して、本発明のデバイスを心尖部または中隔に固定するためのシャフトの役割を果たす。
【0044】
本発明において、前記管状要素を、前記ステントフレームの被覆部から距離を置いて配置する、つまり、前記遠位曲線部から離れて配置することにより、被覆されず前記管状要素に収容されていないむき出しのステントフレーム部分が形成される。これにより、前述したように、ワイヤーで支持された管状構造体内に血液の通り道ができる。
【0045】
好ましい一実施形態において、前記複数のワイヤー要素は、少なくとも3つ、4つ、5つもしくは6つのワイヤー要素または3つ、4つ、5つもしくは6つのワイヤー要素からなる。3本のワイヤーを使用する場合、6つのワイヤー端部、すなわち1本のワイヤーにつき2つのワイヤー端部が遠位方向に延在し、ループ部は各ワイヤーの近位端に位置する。
【0046】
別の改良形態において、前記管状要素は、該管状要素を貫通して延在する複数の内腔を有し、該複数の内腔が、該管状要素の断面で見ると放射状に存在するよう選択されており、この複数の内腔の各々に、各ワイヤーの第1と第2のワイヤー端部がそれぞれ個別に誘導されている。好ましい一実施形態において、前記管状要素は、少なくとも3つもしくは6つの内腔または3つもしくは6つの内腔を含む。3つのワイヤー要素が設けられていて、この3つのワイヤー要素の第1と第2の末端がそれぞれ2つ一組で1つの内腔に誘導される場合、前記管状要素は、3つの内腔を有することが好ましい。また、3つのワイヤー要素が設けられていて、この3つのワイヤー要素の第1と第2の末端がそれぞれ別々に前記管状要素の1つの内腔に誘導される場合、前記管状要素は、6つの内腔を有することが好ましい。
【0047】
この実施形態では、前記ワイヤー要素の両方のワイヤー端部が、それぞれ別々にまたは2つ一組で前記管状要素内に固定および誘導されるため、ワイヤー同士の摩擦を回避することができる。
【0048】
好ましい一実施形態において、前記管状要素の長さは、前記ワイヤーの自由端/非被覆端部の長さより短い。また、固定を目的とする場合、前記ワイヤー末端/ワイヤー端部は、前記管状要素の内腔を貫通して内腔外へと誘導され、治療する患者の心臓に人工弁デバイスを固定するために使用することができる。
【0049】
好ましい一実施形態において、前記管状要素は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテル(PE)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の任意の生体適合性ポリマーまたは生体適合性プラスチック;セラミックス;動物由来またはヒト由来の材料;および一般的な合成材料から選択される材料からなるか、これらから選択される材料を含む。
【0050】
好ましい一実施形態において、前記補綴材は、生体適合性と柔軟性を有する材料であり、より好ましくは哺乳動物の組織およびPFTEから選択される材料、最も好ましくは哺乳動物の心膜である。
【0051】
別の好ましい実施形態において、前記ワイヤーは、形状記憶合金、好ましくはニチノールからなる。
【0052】
ニチノールワイヤーを使用することで、個別のニーズ/要求または一般的なニーズ/要求に合わせて、前記ワイヤー要素の細長いループ構造を予め形成することができる。すなわち、前記細長いループ構造の近位-遠位方向の直径を大きくしたり小さくしたりすることができるため、治療/支持する心臓/弁の寸法に合わせて、前記管状要素または被覆部分を長くしたり短くすることができる。
【0053】
好ましい一実施形態において、本発明の人工弁デバイスにおいて、前記補綴材は、前記近位曲線部と前記遠位曲線部にのみ固定されている。
【0054】
この実施形態では、前記補綴材の中間部が前記ステントフレームに取り付けられていないため、バルーン状に膨らんで、収縮期に本来の僧帽弁に当接することが可能である。
【0055】
本発明のデバイスの好ましい一実施形態において、前記細長いループ構造は、実質的に楕円形である。
【0056】
また、本発明は、人工弁デバイスの製造方法に関する。該方法は、
【0057】
a)第1のワイヤー端部と第2のワイヤー端部とを有する1本のワイヤーで形成されたワイヤー要素を複数、好ましくは3つ設ける工程であって、各ワイヤー要素が、細長いループ構造を備えたワイヤー要素近位部と、前記第1と第2のワイヤー端部が延在するワイヤー要素遠位部とを有し、各細長いループ構造が、近位曲線部と、遠位曲線部と、該近位曲線部と該遠位曲線部の間に中間部とを含む、工程;
【0058】
b)前記近位曲線部に、管状補綴材、好ましくは哺乳動物の心膜を取り付ける、好ましくは縫着する工程であって、該管状補綴材が、内面、外面、第1の補綴材端部、第2の補綴材端部および該第1の補綴材端部と該第2の補綴材端部の間に補綴材中間部を含み、この取付工程b)により、該第2の補綴材端部と該補綴材中間部は未固定のままで、該第1の補綴材端部の外面にのみ前記ワイヤー要素が取り付けられる、工程;
【0059】
c)次いで、前記管状補綴材の内面が前記ワイヤー要素近位部の細長いループ構造に覆い被さるように該管状補綴材を外側に折り返して、前記第2の補綴材端部と前記補綴材中間部を、前記ワイヤー要素遠位部の方向に向けて該細長いループ構造に覆い被せる工程;ならびに
【0060】
d)次いで、前記第2の補綴材端部を前記細長いループ構造の遠位曲線部に取り付けることにより、人工弁デバイスを作製する工程
を含む。
【0061】
この方法により、人工弁デバイス、特に上記で詳述した本発明の人工弁デバイスを、費用対効果高く効率的に製造することができる。前記ワイヤー要素をその細長いループ構造を介して前記管状補綴材の外面に取り付け、該管状補綴材の内面が該細長いループ構造に覆い被さるように該管状補綴材を外側に裏返すか折り返すことにより、人工弁デバイスの内腔に弁要素が形成される。
【0062】
本発明の方法および人工弁デバイスにおいて、初めの工程で、前記ワイヤー要素は、各細長いループ構造が周方向に同じ高さで並ぶように前記管状補綴材の外面に配置される。
【0063】
好ましい一実施形態において、工程a)で、前記ワイヤー要素同士は、圧着要素によって連結され、これによりステントフレームが形成される。
【0064】
本発明の方法および人工弁デバイスの改良形態において、前記管状補綴材が第1の補綴材端部および第2の補綴材端部を有し、工程b)で、前記ワイヤー要素が、前記管状補綴材の外面の第1の補綴材端部に取り付けられ、該管状補綴材の第1の補綴材端部が前記ワイヤー要素の近位曲線部で覆われるが、その割合が、この工程b)において該補綴材の外面の約半分、3分の1、4分の1および5分の1の範囲から選択されることが好ましい。前記管状補綴材を前記細長いループ構造の近位曲線部に取り付ける際に、その第1の補綴材端部は、該細長いループ構造の絶対近位端から一定の所望の距離X離れた位置に固定される。
【0065】
好ましい一実施形態において、3つのワイヤー要素が設けられる場合、各ワイヤー要素の細長いループ構造は、前記補綴材の周方向に配置したときに、互いに当接するような寸法で設計されている。この構成では、前記ワイヤー要素、より正確には、前記細長いループ構造は、工程b)で前記補綴材を周方向に包囲するように略三角形状に配置される。
【0066】
本発明の改良形態、すなわち本発明の方法および/またはデバイスの改良形態において、例えば、前記ワイヤー要素同士が当接する部位を縫着することにより、該ワイヤー要素同士をさらに固定することができる。
【0067】
別の改良形態において、前記方法は、e)各ワイヤー要素の第1のワイヤー端部と第2のワイヤー端部を管状要素の内腔に通線する工程をさらに含み、該管状要素は、該管状要素を貫通して延在する少なくとも1つの内腔を含み、該内腔は、前記第1と第2のワイヤー末端/端部を収容するように設計されている。
【0068】
この改良形態では、前記ステントフレームの被覆部を有する本体と該管状要素とが一定の距離を置いて配置されるように前記ワイヤー末端/端部が前記管状要素に導入することが特に好ましく、それにより、むき出しのステントフレーム部分が形成され、血液の通り道ができる。
【0069】
本発明の人工弁デバイスについて既に詳述したように、好ましい一実施形態において、前記管状要素は、前記第1と第2のワイヤー端部を収容するように設計された少なくとも3つもしくは6つの内腔または3つもしくは6つの内腔を含む多腔管状要素である。
【0070】
また、本発明の方法において、前記ワイヤーは、形状記憶合金、好ましくはニチノールからなるか、この材料を含むことが好ましい。
【0071】
本発明の方法の工程a)に先行して、工程a')を設けることができる。工程a')は、ワイヤーに細長いループ構造を形成することを含み、例えば、ワイヤーの一端を、1つのピンまたは間隔をおいて配置された2つのピンに巻き付けた後、ワイヤーを加熱することで、ワイヤー要素の細長いループ構造を形成する工程である。
【0072】
本発明の別の態様において、円筒形状の本体を含む人工弁デバイスであって、該本体が、本体近位端から本体遠位端まで延在する内腔を含み、前記デバイスが、該本体遠位端に弁を含み、前記デバイスが、上記で詳述した方法で製造されることを特徴とする人工弁デバイスが提供される。
【0073】
本発明のさらに別の態様において、僧帽弁疾患の治療を必要とする対象、好ましくはヒトにおける僧帽弁疾患を治療する方法が開示される。該方法は、上記で詳述した人工弁デバイスを提供する工程と、治療する僧帽弁の領域に人工弁デバイスを移植する工程とを含む。したがって、本発明は、僧帽弁疾患の治療を必要とする対象、好ましくはヒトにおける僧帽弁疾患を治療するための、本明細書に記載の人工弁デバイスの使用にも関する。
【0074】
本発明の人工弁デバイスは、外科的に植え込むことも、また経カテーテル法で送達することもできる。後者の場合、すなわち経カテーテル法では、本発明のデバイスを、抜去可能なシース、チューブまたは同様のものによって圧縮された状態で適当な配置用カテーテルに装填する。この配置用カテーテルを、僧帽弁の置換または補助を必要とする患者の心臓に挿入する。この方法では、その後、前記管状要素を心尖部アンカーに接合して心尖部に固定する。この心尖部アンカーは、この管状要素を所望の位置で把持または保持することができる。前記管状要素は、心尖部アンカー内の最適な接合位置まで移動させた後、例えば、フックまたはプラグを介して心尖組織に固定することができる。
【0075】
僧帽弁を経心尖的に治療する場合、左心室の心尖部にアクセスするための小手術を伴う移植を行う。本発明によるデバイスが圧縮状態で装填された配置用カテーテルを、心尖部から左心室内に進入させ、僧帽弁を超えたところで弁保持部が心房側に位置するように配置する。
【0076】
あるいは、圧縮したデバイスを、大腿静脈または頚静脈から体内に導入して右心房に進入させ、中隔を経由して左心房に進入させた後、僧帽弁を超えてカテーテル先端が左心室の心尖部に到達した時点で、心房側で弁保持部が拡張されるように配置することもできる。特定のメカニズムにより、前記ワイヤーが前記管状要素/カテーテルの先端から押し出されてロックされ、該ワイヤーの先端が心筋に係止される。また、圧縮したデバイスを、小開胸手術により肺静脈(右下、左下、右上または左上の肺静脈)に導入し、左心房に到達させた後、心房側で弁保持部が拡張されるように配置することも可能である。
【0077】
正しく配置されたところで、シースまたはその他の圧縮手段を抜去することにより、本発明の人工弁デバイスが段階的に解放され、該デバイスのステントフレームが拡張する。
【0078】
本発明のさらなる利点および特徴を、以下の記載および添付の図面に示す。
【0079】
当然のことながら、上述した特徴および以下に説明する特徴は、個々に明記した組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない限りは、他の組み合わせまたは単独でも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
本発明の上述の特徴および以下にさらに説明する特徴を以下の図に示す。
【0081】
【0082】
【
図2】哺乳動物の心臓の僧帽弁領域に留置されている、移植された本発明の人工弁デバイスの一実施形態の概略図である。
【0083】
【
図3】本発明の人工弁デバイスの一実施形態の製造工程をA~Dの模式図で示したものである。なお、この模式図は原寸に比例して描写したものではない。(A)は、補綴材が取り付けられていない1つのワイヤー要素を示す。(B)は、3本のワイヤーで構成された細長いループ構造の近位曲線部に補綴材が取り付けられた状態を示している。(C)は、取り付けた管状補綴材を外側に折り返して、細長いループ構造に覆い被さるようにした工程を示したものである。(D)は、ワイヤー端部を管状要素に通線し、むき出しのステントフレーム部分を残しながら、管状要素と、補綴材で覆われたステントフレーム部とを間隔を空けて配置した状態を示し、(E)、(F)、(G)および(H)には、4種類の別のワイヤー要素が示されている。
【0084】
【
図4】本発明の人工弁デバイスのさらに別の2つの実施形態を示し、a)は第1の固定手段を有する実施形態を示し、b)は第2の固定手段を有する実施形態を示している。
【0085】
【
図5】
図3Fに示したデバイスに類似した、本発明の人工弁デバイスの別の実施形態の概略図である。補綴材が取り付けられているステントフレームを2つの異なる視点から見た図(A)と(B)、補綴材が取り付けられていないステントフレームの図(C)、および近位端から当該デバイスの内腔を見た図(D)である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1に、右心房54、右心室55、左心房56および左心室57を有するヒトの心臓50を示す。また、
図1には右心房54を経由して心臓50に入る上大静脈52の一部および下大静脈53の一部も示されている。
【0087】
より詳細には、上大静脈52は、上半身からの血液を戻す血管であり、右心房54の上後部に開口し、その開口部52aは下前方を向いている。開口部52aは弁を有していない。
【0088】
上大静脈52より径の大きい下大静脈53は、下半身からの血液を戻す血管であり、右心房54の最下部に開口している。その開口部53aは上後方を向いており、胎生期の遺残物である下大静脈弁(ユースタキオ弁、図示せず)でガードされている。
【0089】
右心室55は、三角形状を有し、右心房54から心臓50の尖端59近くまで広がっている。
【0090】
右房室口(
図1に図示せず)は、右心房54と右心室55とを連通する長円形状の大きな開口であり、三角形状の3つの弁尖(cusp(カスプ)/segment/leaflet)64を含む三尖弁60でガードされている。
【0091】
肺動脈62の開口部61は、円形状であり、房室口の左上に位置する。また、開口部61は、肺動脈弁63でガードされている。
【0092】
上述した通り、三尖弁60は、右心房54への血液の逆流を防ぐ働きをしている。矢印70および71は、右心房54へと流入する血液の正常な流れを示す。
【0093】
左心房56は、右心房54より小さい。左心室57は、右心室55より長く、より円錐形に近い。左房室口(僧帽弁口、
図1に図示せず)は、大動脈口65の左側に位置しており、二尖弁である僧帽弁66でガードされている。
【0094】
大動脈口65は、円形状の開口であり、房室口の右前に位置する。大動脈口は、3つの大動脈弁67でガードされている。参照番号68は、大動脈を示す。
【0095】
左側に位置する心房腔である左心房56と左心室57とを隔てる僧帽弁66は、上述した通り房室弁であり、左心室57と左心房56との解剖学的接合部を構成する僧帽弁輪70を有する。弁輪70は、弁尖組織(図示せず)の付着部としての機能も果たす。
【0096】
正常な僧帽弁66は、左心室57が弛緩する(拡張期)と開き、これによって、低圧状態の左心室57に左心房56から血液が流入して、左心室57が血液で満たされる。左心室57が収縮する収縮期には、該心室57内の圧力が上昇するため、僧帽弁66は閉じる。これにより、左心房56への血液の漏出が防止され、左心室から出た血液はすべて大動脈弁67を通って確実に大動脈68へ、さらに全身へと送り出される。僧帽弁が正常に機能するためには、弁輪70、弁尖および弁下組織(いずれも
図1に図示せず)間の複雑な相互作用が不可欠である。
【0097】
僧帽弁66が完全に閉鎖されない場合、僧帽弁66による逆流が起こり、血液が左心房56へと逆向きに流れて漏出する。
【0098】
図2に、本発明の人工弁デバイス100の一実施形態を示す。人工弁デバイス100は、患者の心臓に留置されている。人工弁デバイス100は、実質的に円筒形状の本体120を有し、該本体は、本体近位端122から本体遠位端123まで延在する内腔121を含む。人工弁デバイス100は、ステントフレーム112(例えば、
図3B参照)と、ステントフレーム112に取り付けられた補綴材113と、弁構造116(
図3C参照)とをさらに有する。ステントフレーム112は、内面112aと外面112bを有する。
【0099】
図3に、本発明の人工弁デバイス100の一実施形態の各要素をより詳細に示すとともに、本発明の人工弁デバイス100の製造方法を示す。
図3Aに、ワイヤー要素101を示す。このワイヤー要素は、1本のワイヤー102で形成されており、ワイヤー102は、第1のワイヤー端部103と第2のワイヤー端部104、および第1のワイヤー末端103aと第2のワイヤー末端104bを有する。ワイヤー要素101は、ワイヤー要素近位部105とワイヤー要素遠位部106を有する。
図3Aから分かるように、ワイヤー要素101は、ワイヤー要素近位部105に形成された細長いループ構造107を有する。この実施形態では、細長いループ構造107は、ワイヤーを1回巻いて作られており、楕円形のループ構造107が形成されている。このループ構造は、近位から遠位の方向の直径d1が、周方向の直径d2よりも大きく、楕円形になっている。
【0100】
細長いループ構造107は、近位曲線部108と遠位曲線部109、さらに近位曲線部108と遠位曲線部109の間に中間部110を有する。
【0101】
図3Aから分かるように、ワイヤー端部103と104は、ともに同じ方向、すなわち、細長いループ構造が設けられている方向とは反対の遠位/流出方向に延在する。
【0102】
ここで、すなわち、本発明全体を通して、「ワイヤー末端」103a、104aという用語は、ワイヤー102の最端部を意味し、「ワイヤー端部」103、104は、ワイヤー102のワイヤー末端103、104に直接隣接する部分を意味するが、いくつかの箇所でこれらが代替的に用いられる場合もあり、その場合は、この2つの選択肢、すなわち最端部と「端部」/端部区域のどちらを意味するかは明らかであろう。
【0103】
本発明の人工弁デバイス100の製造において、少なくとも2つ、好ましくは3つのワイヤー要素101を設ける。該ワイヤー要素はニチノールから作られていることが好ましい。各ワイヤー要素101を、例えば、特定の所望の間隔を空けて配置された2つのピンに巻き付けるようにして細長いループ構造107を形成する。この2つのピンの間隔により、細長いループ構造107の直径d1が決まる。このワイヤー要素を加熱することで、細長いループ構造107が保持される。
【0104】
次に、
図3Bから明らかなように、3つのワイヤー要素101a、101bおよび101cを補綴材113に取り付ける。補綴材113は、
図3Bに示すように、管状、すなわち管のような形状であり、外面114と内面115を有し、第1の補綴材端部113aと第2の補綴材端部113bを有する。この3つのワイヤー要素101a、101bおよび101cを、補綴材113の外面114の第1の補綴材端部113aに固定、好ましくは縫着する。このとき、補綴材113の約3分の1の範囲がワイヤー要素101a、101bおよび101cの細長いループ構造107の近位曲線部108で覆われるようにする。
図3に示す実施形態から分かるように、3つのワイヤー要素101a、101bおよび101cは、管状補綴材113の第1の補綴材端部113aを周方向に包囲するように三角形状に配置され、該管状補綴材の外面114に縫着により取り付けられている。
【0105】
弁構造116を形成するために、管状補綴材113を、
図3Bの矢印117で示すように裏返すか折り返して、管状補綴材113が細長いループ構造107の近位曲線部108に覆い被さるようにし、さらに、細長いループ構造107の遠位曲線部109までワイヤー要素が被覆されるように管状補綴材113を引き下げる。このようにすることで、管状補綴材113の内面115が外側に向いた状態で、細長いループ構造107が管状補綴材113で被覆される。
【0106】
次の工程では、
図3Cから明らかなように、第2の補綴材端部113bを、細長いループ構造107の遠位曲線部109に固定するか、取り付ける。好ましくは縫着する。
図3に示す実施形態において、管状補綴材113の第2の補綴材端部113bのみが細長いループ構造に固定されており、管状補綴材113の中間部113cは未固定のままである。このため、収縮期に管状補綴材113がバルーン状に膨らみ、人工弁デバイス100と本来の僧帽弁の当接が可能になる。
【0107】
この工程、すなわち、細長いループ構造107の近位曲線部108に覆い被さるように管状補綴材113を裏返すか折り返す工程により、補綴材113の第1の補綴材端部113aの取り付け部位に弁構造116が形成される。この第1の補綴材端部113aは、概して近位曲線部108に位置しているが、細長いループ構造107の近位最端部111から距離X離れた位置にある(
図3B参照)。この距離X離れた位置に、本体120の内部に弁構造116が形成される。
【0108】
各ワイヤー要素の第1と第2の端部103、104は、ワイヤー要素遠位部106方向に延在する。
【0109】
図3Dに、本発明の一実施形態による人工弁デバイス100の作製における最後の工程を示す。ここで、ワイヤー要素101a、101bおよび101cの第1と第2の端部103、104を管状要素130内に導入/誘導/通線する。
図3Bの実施形態に示す管状要素130は、複数の内腔131を有する。この実施形態では、内腔131の数が、使用しているワイヤー要素101の個数の第1と第2の端部103、104の数と同じである。
図3Dからも明らかなように、管状要素130は、細長いループ構造107の遠位曲線部から一定の距離離れた位置に配置されており、それにより、むき出しのステントフレーム部分132が形成されている。
【0110】
ワイヤー要素101を収容する管状要素130を設けることで、末端/端部103、104、103a、104aが心臓組織に損傷を与えることを回避できるため有利である。また、ワイヤー要素101を摩耗させるようなワイヤー端部103、104の摩擦も回避することができる。
【0111】
【0112】
実施形態3Eと3Fで見られるように、近位曲線部108は、長手方向軸Aに対して、外方に曲げられている(
図3F参照)。さらに、
図3Eと3Fから明らかなように、ステントフレーム112は、3つのワイヤー要素101同士を圧着要素140によって連結することにより形成されている。圧着要素140は、近位曲線部108に隣接して設けられており、2つの別々のワイヤー要素101の一方の左ワイヤー部分136ともう一方の右ワイヤー部分137を連結している。
【0113】
図3Eにおいて、ワイヤー102で形成されるワイヤー要素101のループ構造107は、湾曲している近位曲線部108と、遠位曲線部109方向に延在する左ワイヤー部分136と右ワイヤー部分137で示される実質的に直線状の中間ワイヤー部分110を含む。左右のワイヤー部分136、137が互いに接近するように遠位曲線部109方向に誘導または湾曲されて、遠位曲線部109が形成されている。
図3Eに示す実施形態の遠位曲線部109では、左右のワイヤー部分136、137は連結されていない。よって、形成されたループ構造107は、ワイヤー要素遠位部106に第1と第2のワイヤー端部103、104が別々に延在する「開」ループを有する。
【0114】
図3Fに示す代替的な実施形態は、
図3Eに示した実施形態と全体的な構造は同じであるが、第1と第2のワイヤー端部103、104は、2つ一組で、遠位曲線部109に隣接した遠位側に位置するスリーブ141内に誘導/配置されている。つまり、完成した人工弁デバイスでは、第1と第2のワイヤー端部103、104は2つ一組で、管状要素130(
図3E~
図3Hには示されていない)内に、すなわち管状要素130の3つの内腔131内に誘導されている。一方、
図3Eに示した実施形態では、管状要素130に6つの内腔131(
図3Eには示されていない)が設けられており、それぞれの内腔131に第1と第2のワイヤー端部103、104が個別に通線されている。
【0115】
次に、
図3Gと
図3Hを参照すると、本発明のデバイス100に用いられるワイヤー要素101のさらに別の実施形態が示されている。
図3Gと
図3Hにそれぞれ示すワイヤー要素101も、近位曲線部108と、遠位曲線部109と、中間ワイヤー部分110とを有する細長いループ構造107を含む。
【0116】
図3Gに示す実施形態では、第1と第2のワイヤー端部103、104は、遠位曲線部109の遠位側で、圧着構造142を用いた圧着によって結線されている。
【0117】
あるいは、
図3Hに示すように、第1と第2のワイヤー端部103、104は、遠位湾曲部109の遠位側で、一緒に撚られている。
【0118】
この2つの実施形態では、第1と第2のワイヤー端部103、104が、それぞれ別々に管状要素103に誘導されていてもよく、2つ一組で誘導されていてもよい。
【0119】
好ましい一実施形態において、前記近位曲線部は、近位-遠位長軸および/または内腔に対して外方に曲げられている。
【0120】
本発明の人工弁デバイスの別の実施形態において、前記ワイヤー要素同士は、連結されており、好ましくは、該ワイヤー要素同士を圧着する圧着要素によって連結されている。
【0121】
この実施形態の改良形態において、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの圧着要素が、好ましくは前記近位曲線部に隣接して設けられており、さらに好ましくは1つの圧着要素により、2つの別々のワイヤー要素の一方の左ワイヤー部分ともう一方の右ワイヤー部分が連結されている。
【0122】
この実施形態により、前記ワイヤー要素の連結/作製がより安定的に行われる。したがって、3つのワイヤー要素を使用する場合、ワイヤー要素同士の連結に3つの圧着要素が必要となる。
【0123】
本発明の改良形態において、本発明の人工弁デバイスは、管状要素をさらに含み、該管状要素は、該管状要素を貫通して延在する少なくとも1つの内腔を含み、該内腔は、前記ワイヤー要素遠位部を収容するように設計されており、好ましくは、前記第1および/または第2のワイヤー端部をそれぞれ個別にまたはこれら2つを一組で収容するように設計されている。
【0124】
図4に、患者の心臓に人工弁デバイス100を固定するための2つの異なる可能性を示す。
図4Aは、本発明の人工弁デバイス100を経心尖的に移植する場合に用いられる例示的な実施形態を示しており、
図4Bは本発明の人工弁デバイス100を経中隔的に移植する場合に用いられる例示的な実施形態を示している。
【0125】
経心尖移植は、左心室の心尖部にアクセスするための小手術によって行われ、人工弁デバイス100は経心尖カテーテル(図示せず)を用いて配置される。管状要素130を、管状要素130を所望の位置で把持することができる心尖部アンカー133に接合して、心尖部に固定する。管状要素130は、アンカー133内の最適な接合位置まで移動させた後、例えば、プラグ方式により固定することができる。
【0126】
経中隔移植では、人工弁デバイス100を送達するために、体内に挿入したカテーテル先端が大腿静脈、右心房、中隔、左心房、僧帽弁を経て左心室の心尖部に到達するようなカテーテル(図示せず)が必要である。ワイヤーを管状要素の外にスライドさせてロックする機構を用いて、ワイヤー要素をフック135を介して心筋に係止することができる。
【0127】
図5に、本発明の人工弁デバイスの別の実施形態を示す。これは、
図3Fに示したデバイスに類似しているため、同じ特徴には同じ参照番号を付している。
図5Aと
図5Bはそれぞれ、補綴材113がステントフレーム112に取り付けられた状態にある本実施形態の側面図である。
図5Cは、補綴材113がステントフレーム112に取り付けられていない本実施形態のステントフレーム112を示しており、
図5Dは、弁構造116を表示した、本実施形態のデバイス100の内腔121内を示している。
【0128】
図面から分かるように、近位曲線部108は、長手方向軸Aに対して、わずかに外方に曲げられている。さらに、ステントフレーム112は、3つのワイヤー要素101同士を、2つの異なる位置、すなわち、近位側の位置140aおよび遠位側の位置140bで圧着要素140a、140bによって連結することにより形成されている。近位側の圧着要素140aは、近位曲線部108に隣接して設けられており、2つの別々のワイヤー要素101の一方の左ワイヤー部分136ともう一方の右ワイヤー部分137を連結している。遠位側の圧着要素140bは、遠位曲線部109の近位に、近位側の圧着要素104aから一定の距離を置いて設けられている。
【0129】
図5に示す実施形態では、近位側および遠位側の圧着要素140a、140bによって圧着された2つのワイヤー要素101、より正確には、その左右のワイヤー部分136、137により、近位および遠位の圧着要素140a、104bの間に、概して楕円形のシングルセル構造146が形成されている。遠位曲線部109の遠位側では、3つのワイヤー要素101のそれぞれの第1と第2のワイヤー端部103、104が、第3の圧着要素140cによって圧着されている。
図5にも示されているように、補綴材113がステントフレーム112に固定され、内腔121内に弁116が形成されている(
図5C参照)。
【国際調査報告】