(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(54)【発明の名称】正極材料及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/50 20100101AFI20230906BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230906BHJP
H01M 10/36 20100101ALI20230906BHJP
C01G 45/02 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H01M4/50
H01M4/02 A
H01M10/36 A
C01G45/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514120
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2021102125
(87)【国際公開番号】W WO2022041989
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010890030.X
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523069946
【氏名又は名称】瑞海泊(常州)能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】REHAB(CHANGZHOU)ENERGY TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.66,Tianshan Road,Xinbei District,Changzhou City,Jiangsu 213031,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】傅洋
(72)【発明者】
【氏名】羅云峰
(72)【発明者】
【氏名】陳璞
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL11
5H029AM00
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029CJ28
5H029HJ02
5H029HJ14
5H050AA07
5H050BA08
5H050CA09
5H050CB13
5H050GA02
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
正極材料及びその製造方法並びに応用を開示する。前記方法は、可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して共沈反応を行い、M
xMn
1-xCO
3を含有する共沈物を得るステップ(1)と、前記M
xMn
1-xCO
3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結し、M
xMn
1-xO
2を含有する正極材料を得るステップ(2)と、を含み、Mは、Al、Zr、Ti、Ni、Co、Mg、Ta、Ca、Fe、Na、K、Cu、Zn、Nb、Sn、Sb、La及びInから選ばれた少なくとも1つであり、xは0~1で、端点0と1を含まない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材料を製造する方法であって、
可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して共沈反応を行い、M
xMn
1-xCO
3を含有する共沈物を得るステップ(1)と、
前記M
xMn
1-xCO
3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結し、M
xMn
1-xO
2を含有する正極材料を得るステップ(2)と、を含み、
Mは、Al、Zr、Ti、Ni、Co、Mg、Ta、Ca、Fe、Na、K、Cu、Zn、Nb、Sn、Sb、La及びInから選ばれた少なくとも1つであり、xは0~1で、端点0と1を含まない正極材料を製造する方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記可溶性マンガン塩は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン及び塩化マンガンから選ばれた少なくとも1つである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記可溶性金属M塩は硫酸M、硝酸M、酢酸M、シュウ酸M及び塩化Mから選ばれた少なくとも1つである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、前記可溶性マンガン塩と前記可溶性M塩との総モル濃度の和は0.001~10mol/Lである請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、前記炭酸塩のモル濃度は0.001~10mol/Lである請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、前記焼結の温度は150~700摂氏度である請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記焼結の温度は320~470摂氏度である請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記焼結の時間は0.1~20時間である請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、前記焼結の時間は2~8時間である請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記M
xMn
1-xCO
3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結する前に、前記M
xMn
1-xCO
3を含有する共沈物を予め洗浄、乾燥する請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法で製造された正極材料。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法で得られた正極材料又は請求項11に記載の正極材料で製造された正極極シート。
【請求項13】
請求項12に記載の正極極シートを備える水系亜鉛イオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はエネルギー材料分野に属し、具体的には、正極材料及びその製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
すでに報告されている水系亜鉛イオン電池の正極材料の多くは、金属イオンをドープしていない二酸化マンガンを水系亜鉛イオン電池の正極材料として採用している。しかしながら、従来の水系亜鉛イオン電池では、金属イオンをドープしていないMnO2正極を使用しているため、初期グラム容量が低く、サイクル性能が悪い。また、MnO2正極材料中の+4価のMnが+2価のMnに還元されやすく、正極材料が電解液に溶解することにより、サイクル性能が悪くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、関連技術における技術的な問題の1つを少なくともある程度解決することを目的としている。このため、本開示は正極材料及びその製造方法並びに応用を提出することを1つの目的とし、該方法で得られた正極材料は充放電中に構造が安定化し、これにより水系亜鉛イオン電池のサイクル性能を向上させる。
【0004】
本開示の1つの態様において、本開示は正極材料を製造する方法を提出する。本開示の実施例によれば、前記方法は、
可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して共沈反応を行い、MxMn1-xCO3を含有する共沈物を得るステップ(1)と、
前記MxMn1-xCO3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結し、MxMn1-xO2を含有する正極材料を得るステップ(2)と、を含み、
ただし、Mは、Al、Zr、Ti、Ni、Co、Mg、Ta、Ca、Fe、Na、K、Cu、Zn、Nb、Sn、Sb、La及びInから選ばれた少なくとも1つであり、xは0~1で、端点0と1を含まない。
【0005】
本開示の実施例による正極材料を製造する方法によれば、可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して共沈反応を行うことにより、Mn2+と金属イオンMは同時に沈殿を生成し、そして、得られたMxMn1-xCO3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結し、MxMn1-xO2を含有する正極材料を得、つまり、本願はMnO2正極材料に他の金属元素をドープし、イオン間の相互作用により、より安定な材料構造を形成し、充放電中の正極材料の構造をより安定化させ、これによりセルのサイクル性能を向上させるとともに、他の金属元素の導入により、該正極材料は良好な電気化学的性能と比容量を有する。また、該方法は、製造工程が簡単であり、共沈法でMxMn1-xCO3を含む共沈物を合成し、その後熱処理工程を調整することにより製造することができ、原材料のコストが低く、大規模な工業化生産に適用されることができ、該正極材料を水系亜鉛イオン電池に適用することで、水系亜鉛イオン電池系のサイクル性能が悪いという問題を解決することができる。
【0006】
また、本開示の上記実施例による正極材料を製造する方法は以下のような付加的な技術的特徴を有することもできる。
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(1)において、前記可溶性マンガン塩は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン及び塩化マンガンから選ばれた少なくとも1つである。
【0007】
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(1)において、前記可溶性金属M塩は硫酸M、硝酸M、酢酸M、シュウ酸M及び塩化Mから選ばれた少なくとも1つである。
【0008】
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(1)において、前記可溶性マンガン塩と前記可溶性M塩との総モル濃度の和は0.001~10mol/Lである。
【0009】
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(1)において、前記炭酸塩のモル濃度は0.001~10mol/Lである。
【0010】
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(2)において、前記焼結の温度は150~700摂氏度である。
【0011】
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(2)において、前記焼結の温度は320~470摂氏度である。
【0012】
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(2)において、前記焼結の時間は0.1~20時間である。
【0013】
本開示のいくつかの実施例において、ステップ(2)において、前記焼結の時間は2~8時間である。
【0014】
本開示のいくつかの実施例において、前記MxMn1-xCO3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結する前に、前記MxMn1-xCO3を含有する共沈物を予め洗浄、乾燥する。
【0015】
本開示の他の態様において、本開示は正極材料を提出する。本開示の実施例によれば、前記正極材料は上記の方法で製造される。これにより、該正極材料は優れたサイクル性能及び比容量を有する。
【0016】
本開示の第3の態様において、本開示は正極極シートを提出する。本開示の実施例によれば、前記正極極シートは上記の方法で得られた正極材料又は上記の正極材料で製造される。これにより、該正極極シートは優れたサイクル性能及び比容量を有する。
【0017】
本開示の第4の態様において、本開示は水系亜鉛イオン電池を提出する。本開示の実施例によれば、前記水系亜鉛イオン電池は上記の正極極シートを含む。これにより、該水系亜鉛イオン電池は優れたサイクル性能及び比容量を有する。
【0018】
本開示の付加的な態様および利点は、以下の説明の中で一部与えられ、一部は以下の説明から明らかになるか、または本開示の実践を通して理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の上記および/または追加的な態様および利点は、以下の図面に関連して実施例の説明から明らかになり、容易に理解される。
【
図1】本開示の実施例による正極材料を製造する方法のフローチャートである。
【
図2】実施例1で得られた正極材料と比較例で得られたMnO
2のXRDスペクトルである。
【
図3】実施例1及び比較例で得られた水系亜鉛イオン電池のサイクルカーブである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施例を詳しく説明し、本開示を説明するためのものであり、本開示の制限を理解することはできない。
【0021】
本開示の1つの態様において、本開示は正極材料を製造する方法を提供する。本開示の実施例によれば、
図1を参照して、該方法は、S100及びS200を含む。
S100において、可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して共沈反応を行う。
【0022】
該ステップにおいて、攪拌に伴い、可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して、Mn2+と金属イオンMは同時に炭酸根と反応して沈殿を生成し、MxMn1-xCO3を含有する共沈物を得、ただし、Mは、Al、Zr、Ti、Ni、Co、Mg、Ta、Ca、Fe、Na、K、Cu、Zn、Nb、Sn、Sb、La及びInから選ばれた少なくとも1つであり、xは0~1のいずれかの値で、端点0と1は含まない。発明者は、可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して共沈反応を行うことにより、Mn2+と金属イオンMは同時に沈殿を生成し、イオン間の相互作用により、より安定な材料構造を形成し、充放電中の正極材料の構造をより安定化させ、これによりセルのサイクル性能を向上させるとともに、他の金属元素の導入により、該正極材料は良好な電気化学的性能と比容量を有することを見いだした。
【0023】
さらに、上記可溶性マンガン塩は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン及び塩化マンガンから選ばれた少なくとも1つであり、可溶性金属M塩は硫酸M、硝酸M、酢酸M、シュウ酸M及び塩化Mから選ばれた少なくとも1つであり、且つ炭酸塩のモル濃度は0.001~10mol/Lであり、例えば5mol/Lであり、且つ炭酸塩は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムであってもよい。同時に、可溶性マンガン塩と可溶性M塩との総モル濃度の和は0.001~10mol/Lであり、例えば5mol/Lである。発明者は、可溶性マンガン塩と可溶性M塩の総モル濃度が高すぎると凝集現象が起こり、製造した材料の分散性が悪く、可溶性マンガン塩と可溶性M塩の総モル濃度が低すぎると生産量が低下し、大規模生産に不利であると発見する。且つ本願において、可溶性マンガン塩と可溶性M塩を、Mn元素とM元素とのモル比が(1-x):xであるように混合し、つまり、本願においてマンガンイオンとMイオンのモル和が1であると限定し、その原理は、結晶セル中では、マンガンイオンの位置をMイオンが占めることにより、安定な構造を形成し、実際のドープ量が制御されることである。比率が1より大きいか小さいと、実際の合成材料中のイオンのドープ量が制御されることができなくなり、計算値からずれ、材料の均一性に影響を及ぼす。
【0024】
S200において、MxMn1-xCO3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結する。
【0025】
該ステップにおいて、上記で得られたMxMn1-xCO3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結し、炭酸塩沈殿を分解し、MxMn1-xO2を含有する正極材料を得る。本開示の1つの具体的な実施例によれば、焼結の温度は150~700摂氏度である。発明者は、焼結温度が低すぎると、材料の相転移温度に達しないため、材料はMnCO3相からMnO2相に相転移しにくく、焼結温度が高すぎると、MnO2相はMn3O4相又はMn2O3相に相転移しやすく、これにより本願の焼結温度によりMnCO3相がMnO2相に相転移することが確保されることができることを見いだした。本開示の別の具体的な実施例によれば、焼結の温度は320~470摂氏度である。本開示の別の具体的な実施例によれば、焼結の時間は0.1~20時間である。発明者は、焼結時間が短すぎると、材料の結晶化が低すぎて、材料のサイクル性能が悪くなり、焼結時間が長すぎると、材料の結晶化が高すぎて、グラム容量の発揮が抑制されることを見いだした。本開示の別の具体的な実施例によれば、焼結の時間は2~8時間である。
【0026】
具体的には、上記で得られたMxMn1-xCO3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結し、上記で得られたMxMn1-xCO3を含む共沈物を予め洗浄し、乾燥する。なお、当業者は実際の必要に応じて洗浄の方式と乾燥条件を選択することができるが、ここでは説明を省略する。
【0027】
本開示の実施例による正極材料を製造する方法によれば、可溶性マンガン塩、可溶性金属M塩と炭酸塩を混合して共沈反応を行うことにより、Mn2+と金属イオンMは同時に沈殿を生成し、そして、得られたMxMn1-xCO3を含有する共沈物を空気雰囲気下で焼結し、MxMn1-xO2を含有する正極材料を得、つまり本願はMnO2正極材料に他の金属元素をドープし、イオン間の相互作用により、より安定な材料構造を形成し、充放電中の正極材料の構造をより安定化させ、これによりセルのサイクル性能を向上させるとともに、他の金属元素の導入により、該正極材料は良好な電気化学的性能と比容量を有する。また、該方法は製造工程が簡単であり、共沈法でMxMn1-xCO3を含む共沈物を合成し、その後熱処理工程を調整することにより製造することができ、原材料コストが低く、大規模な工業生産に応用することができ、該正極材料を水系亜鉛イオン電池に適用することで、水系亜鉛イオン電池系のサイクル性が悪い問題を解決することができる。
【0028】
本開示の他の態様において、本開示は正極材料を提供する。本開示の実施例によれば、前記正極材料は上記の方法で製造される。これにより、該正極材料は上記の共沈及び熱処理プロセスで製造され、これにより該正極材料は優れたサイクル性能及び比容量を有する。なお、上記の正極材料を製造する方法について説明する特徴と利点は、該正極材料にも同様に適用されることができるので、ここでは説明を省略する。
【0029】
本開示の第3の態様において、本開示は正極極シートを提供する。本開示の実施例によれば、前記正極極シートは上記の方法で得られた正極材料又は上記の正極材料で製造される。具体的には、上記正極材料を研磨した後導電剤と結着剤とを混合して正極ペーストを製造し、該ペーストを導電膜に塗布した後、乾燥することにより正極極シートを得ることができる。これにより、該正極極シートは優れたサイクル性能及び比容量を有する。なお、該正極極シートを製造する過程において使用した導電剤、結着剤及び導電膜は本分野で一般的に使用されている原料タイプであり、且つ上記の正極材料及びその製造方法について説明する特徴と利点は、該正極極シートにも同様に適用されることができるので、ここでは説明を省略する。
【0030】
本開示の第4の態様において、本開示は水系亜鉛イオン電池を提供する。本開示の実施例によれば、前記水系亜鉛イオン電池は上記の正極極シートを含む。これにより、該水系亜鉛イオン電池は優れたサイクル性能及び比容量を有する。なお、上記の正極極シートについて説明する特徴と利点は、該正極材料にも同様に適用されることができるので、ここでは説明を省略する。
【0031】
以下、本開示の実施例について詳細に説明するが、以下に説明する実施例は例示であり、本開示を説明するためだけのものであり、本開示の制限を理解することはできない。また、特に明記限り、以下の実施例で使用する試薬はすべて市販されているか、または本明細書または公知の方法に従って合成することができ、記載されていない反応条件についても当業者が容易に入手できるものである。
【0032】
実施例1
(1)Al
2(SO
4)
3及びMnSO
4を原料とし、Al
2(SO
4)
3及びMnSO
4をn(Al):n(Mn)=0.03:0.97で混合溶液Aを調製し、該混合溶液の濃度が0.5mol/Lであり、総体積が500mLであり、Na
2CO
3を原料として溶液Bを調製し、その濃度が0.5mol/Lであり、総体積が500mLである。
(2)A、B溶液を等速で同時に2Lのビーカーに添加し、磁力攪拌を2h行った後、蒸留水で材料を3回洗浄し、70℃で乾燥し、Al
0.03Mn
0.97CO
3を含む共沈粉末を得る。
(3)Al
0.03Mn
0.97CO
3を含む共沈粉末をオーブンに入れて熱処理し、焼結温度410℃、焼結時間4hで、Al
0.03Mn
0.97O
2を含む正極材料を得る。
(4)上記のAl
0.03Mn
0.97O
2を含む正極材料を室温まで冷却した後、材料を取り出してメノウ乳鉢で研磨し、そしてXRDテストを行い、そのXRDテスト結果は
図2に示すように、該材料はε-MnO
2の純相であり、ドープされたイオンが材料の結晶セルに入り、ヘテロ相として存在することがないと証明し、同時にEDSテストを行い、該材料にはAl及びMn元素が含まれていることを見いだした。
(5)電池の正極極シートを製造する。正極材料、アセチレンブラック、PVDFを質量比7:2:1でホモジネートした後、均一に攪拌した正極ペーストを導電性PE膜上に均一に塗布し、オーブンに入れて真空乾燥し、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が10hであり、正極極シートを得る。
(6)電池を組み立てる(正極:上記ステップ(5)で得られた正極極シート、負極:亜鉛箔または銅メッシュ集電体でスラリー引きして得られた亜鉛粉負極、セパレータ:AGMセパレータ、電解液:濃度が1.8mol/Lの硫酸亜鉛水溶液)。
AGMセパレータを液体電解液(1.8mol/Lの硫酸亜鉛水溶液)に十分に浸した後、正極極シート、負極Zn箔を組み付けて、水性亜鉛イオン電池を組み立てる。
(7)電池をテストする。
図3を参照されたい。上記組み立てられた水性亜鉛イオン電池の25℃環境下での50mA/g電流密度での最高比容量は278mAh/gであり、50回サイクル後、容量保持率が95%である。
【0033】
実施例2
3%のTi元素がドープされることを除いて、他のステップは実施例1と同じで、正極材料(Ti0.03Mn0.97O2)を得る。XRDテストにより、該材料がMnO2の純相であり、ドープされたイオンが材料の結晶セルに入り、ヘテロ相として存在することがないと証明し、同時にEDSテストを行い、該材料にはTi及びMn元素が含まれると発見する。
電池テストについて、組み立てられた水性亜鉛イオン電池の25℃環境下での50mA/g電流密度での最高比容量は223mAh/gであり、50回サイクル後、容量保持率が86%である。
【0034】
実施例3
3%のMg元素(Mg0.03Mn0.97O2)がドープされることを除いて、他のステップは実施例1と同じで、正極材料を得る。XRDテストにより、該材料がMnO2の純相であり、ドープされたイオンが材料の結晶セルに入り、ヘテロ相として存在することがないと証明し、同時にEDSテストを行い、該材料にはMg及びMn元素が含まれていることを見いだした。
電池テストについて、組み立てられた水性亜鉛イオン電池の25℃環境下での50mA/g電流密度での最高比容量は228mAh/gであり、50回サイクル後、容量保持率は83%である。
【0035】
実施例4
3%のAl元素がドープされるとともに、1%のZr元素がドープされることを除いて、他のステップは実施例1と同じで、正極材料(Al0.03Zr0.01Mn0.96O2)を得る。XRDテストにより、該材料がMnO2の純相であり、ドープされたイオンが材料の結晶セルに入り、ヘテロ相として存在することがないと証明し、同時にEDSテストを行い、該材料にはAl、Zr及びMn元素が含まれていることを見いだした。
電池テストについて、組み立てられた水性亜鉛イオン電池の25℃環境下での50mA/g電流密度での最高比容量は253mAh/gであり、50回サイクル後、容量保持率は96.5%である。
【0036】
実施例5
Al(NO3)3及びMn(NO3)2を原料とし、Al(NO3)3及びMn(NO3)2をn(Al):n(Mn)=0.05:0.95で混合溶液Aを調製し、該混合溶液の濃度が0.8mol/Lであり、総体積が300mLであり、Na2CO3を原料として溶液Bを調製し、その濃度が0.8mol/Lであり、総体積が300mLであることを除いて、他のステップは実施例1と同じである。実験的に合成すると、最終的に得られた材料に対してXRDテストを行い、MnO2の純相であり、ドープされたイオンが材料の結晶セルに入り、ヘテロ相として存在することがないと証明し、同時にEDSテストを行い、該材料にはAl、Mn元素が含まれていることを見いだした。
電池テストについて、組み立てられた水性亜鉛イオン電池の25℃環境下での50mA/g電流密度での最高比容量は228mAh/gであり、50回サイクル後、容量保持率は93%である。
【0037】
実施例6
AlCl3及びMnCl2を原料とし、AlCl3とMnCl2をn(Al):n(Mn)=0.05:0.95で混合溶液Aを調製し、該混合溶液の濃度が0.3mol/Lであり、総体積が800mLであり、Na2CO3を原料として溶液Bを調製し、その濃度が0.3mol/Lであり、総体積が800mLであることを除いて、他のステップは実施例1と同じである。実験的に合成すると、最終的に得られた材料に対してXRDテストを行い、MnO2の純相であり、ドープされたイオンが材料の結晶セルに入り、ヘテロ相として存在することないと証明し、同時にEDSテストを行い、該材料にはAl、Mn元素が含まれていることを見いだした。
電池テストについて、組み立てられた水性亜鉛イオン電池の25℃環境下での50mA/g電流密度での最高比容量は226mAh/gであり、50回サイクル後、容量保持率は89%である。
【0038】
比較例
他の金属元素がドープされないように、MnCO
3を合成し、且つMnCO
3を熱処理し、MnO
2を得、そのXRDテスト結果は、
図2に示すように、そのXRDパターンは、実施例1においてAlがドープされ後形成されたAl
0.03Mn
0.97O
2のXRDパターンと同じであり、実施例1の材料に金属イオンがドープされていることで合成された材料と、比較例1で他の金属イオンがドープされていないことで合成された材料とは結晶型構造が一致していることを示し、同物相であり、実施例1では他のヘテロ相の生成がないことを検証した。そして、実施例1のステップと同じであるように電池極シートを製造して、水性亜鉛イオン電池を組み立てる。
電池テストについて、
図3を参照されたい。組み立てられた水性亜鉛イオン電池の25℃環境下での50mA/g電流密度での最高比容量は219mAh/gであり、50回サイクル後、容量保持率は64%である。
【0039】
本明細書の説明において、「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例示」、「具体的な例示」又は「幾つかの例示」等の用語が含まれた説明は、当該実施例又は例を用いて説明される具体的な特徴、構造、材料又は利点が本開示の少なくとも1つの実施例又は例示に含まれることが意図されるものである。本明細書において、上記用語に関する例示的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例に関するものとは限らない。なお、説明される具体的な特徴、構造、材料又は利点はいずれか1つ又は複数の実施例もしくは例で、適切な方式で組み合わせることができる。さらに、互いに矛盾しない限り、当業者は、本明細書に記載の異なる実施例または例示及び異なる実施例または例示の特徴を、融合するか又は組み合わせることができる。
【0040】
以上、本開示の実施例について示して説明したが、上記実施例が例示であり、本開示の制限を理解することはできない。当業者は本開示の範囲内で上記実施例を変更、修正、置換、および変形することができる。
【0041】
本開示は、2020年08月28日に中国特許庁に提出された、出願番号が202010890030.Xで、発明の名称が「正極材料及びその製造方法並びに応用」である中国特許出願の優先権を主張し、その全部内容は、すべて援用により本願に組み込まれる。
【国際調査報告】