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特表2023-5393925-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体及びその遊離酸を合成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体及びその遊離酸を合成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/14 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
C07D231/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578197
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-30
(86)【国際出願番号】 CN2021134408
(87)【国際公開番号】W WO2022233129
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021111587.6
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519299739
【氏名又は名称】福建永晶科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN YONGJING TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6, Jin Ling Road, Jin Tang Industry Park, SHAOWU NANPING, Fujian 354003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】キュイ、ウェンロン
(72)【発明者】
【氏名】リュオ、ウェイフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェンティン
(57)【要約】
本発明は、耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて直接フッ素化反応が行われることを含む5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体及びその遊離酸を合成する新規方法を提供する。本発明の方法では、不活性溶媒に溶解したジフルオロメチル-ピラゾール化合物を原料として直接フッ素化反応が行われる。本発明の方法により製造可能な5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体のいくつかの具体的な例としては、3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-フッ化カルボニル化合物が挙げられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造するための方法であって、
【化1】
ここで:
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
XはF(フッ素原子)又は-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、
この方法では、式(II)で示されるジフルオロメチル-ピラゾール化合物は原料として、
【化2】
ここで:
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、F(フッ素原子)を表し、かつ
YはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又は-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、
式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成するために、
耐単体フッ素(F)及びフッ化水素の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて不活性溶媒[不活性溶媒=不活性有機溶媒及びフッ化水素(HF)]に溶解した溶液に対して直接フッ素化反応を行い、
ここで、Rは上記で定義された意味を有し、かつ条件は、
(i)式(II)中のYがH(水素原子)又はCl(塩素原子)又はBr(臭素原子)であれば、式(I)中のXはF(フッ素原子)であり、かつ
(ii)式(II)中のYが-O-R基であれば、式(I)中のXは-O-R基であり、かつ、RはXとYについて上記で定義されるように、かつX中のRはYと同じ意味を有し、
及び任意に、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、前記反応混合物を分離及び/又は精製する、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造するための方法。
【請求項2】
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
XはF(フッ素原子)を表し、
ここで、前記方法では、式(II)で示されるジフルオロメチル-ピラゾール化合物は原料として、ここで
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
YはH(水素原子)、Cl(塩素原子)を表し、
式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成するために、
耐単体フッ素(F)及びフッ化水素の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて不活性溶媒に溶解した溶液に対して直接フッ素化反応を行い、
及び任意に、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、前記反応混合物を分離及び/又は精製する、請求項1に記載の式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造するための方法。
【請求項3】
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
Xは-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、かつ好ましくは、ここで、RはC1-C4アルキル基を表し、
ここで、前記方法では、式(II)で示されるジフルオロメチル-ピラゾール化合物は原料として、ここで
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
Yは-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、かつ好ましくは、ここで、RはC1-C4アルキル基を表し、
式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成するために、
耐単体フッ素(F)及びフッ化水素の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて不活性溶媒に溶解した溶液に対して直接フッ素化反応を行い、
及び任意に、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、前記反応混合物を分離及び/又は精製する、請求項1に記載の式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造するための方法。
【請求項4】
式(Ia)で示される5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を製造する方法であって、
【化3】
ここで:
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、F(フッ素原子)を表し、
そして、前記方法では、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物は、原料として、
【化4】
ここで:
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
XはF(フッ素原子)又は-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、
(i)加水分解及び/又はけん化反応が行われるか、又は
(ii)-O-R基において、置換基Rがベンジル基又は置換されたベンジル基を表す場合、加水分解及び/又はけん化反応が行われるか、又は選択的に、(温和)触媒水素化反応が行われ、
置換基Xを-OH基に転化して、式(Ia)で示される酸化合物5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を得、
及び任意に、式(Ia)で示される分離及び/又は精製された酸化合物5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸化合物を得るために、分離及び/又は精製する、式(Ia)で示される5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を製造する方法。
【請求項5】
放熱活性が観察されなくなるまで前記直接フッ素化反応が行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物で放熱活性が観察されなくなるまで前記直接フッ素化反応が行われる、請求項1~3及び5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記直接フッ素化反応が前記反応混合物で、約55℃を超えない温度、好ましくは約50℃を超えない温度、より好ましくは約45℃を超えない温度、さらにより好ましくは約40℃を超えない温度下で行われる、請求項1~3及び5~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法の実施は、不活性ガス流れが反応混合物を通過した後に、不活性ガス流れ中でHF(フッ化水素)が検出されなくなるまで、前記反応混合物を不活性ガス流れでパージすることによって、直接フッ素化反応で形成されたHF(フッ化水素)を前記反応混合物から除去する、請求項1~3及び5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物を分離及び/又は精製するために、前記反応混合物を1回又は複数回の再結晶し、これにより、分離及び/又は精製された式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得る、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物を分離及び/又は精製するために、前記反応混合物から不活性溶媒を真空下で蒸発させることによって、蒸発残渣としての式(I)で示される分離された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得、及び任意に、式(I)で示される分離及び精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、前記蒸発残渣をさらに精製する、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸発残渣をさらに精製することが、1回又は複数回の再結晶を含み、これにより、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記単体フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、最高約20体積%(vol.-%)又は約20体積%(vol.-%)の(「比較的低い」)濃度で存在する、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記単体フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、0.1体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、0.5体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、1体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、5体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、10体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、15体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)の「比較的低い」範囲内の濃度、又は約20体積%(vol.-%)の濃度で存在する、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記単体フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、少なくとも約15体積%、特に少なくとも約20体積%、好ましくは少なくとも約25体積%、さらに好ましくは少なくとも約30体積%、より好ましくは少なくとも約35体積%、さらにより好ましくは少なくとも約45体積%の高濃度で存在する、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、約15-100体積%、好ましくは約20-100体積%、より好ましくは約25-100体積%、またより好ましくは約30-100体積%、さらにより好ましくは約35-100体積%、またより好ましくは約45-100体積%の高濃度で存在する、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記直接フッ素化反応が(密閉)塔型反応器にて行われ、任意に、バッチ式又は連続式で動作され、不活性溶媒に溶解した原料ジフルオロメチル-ピラゾール化合物の溶液を回路中で循環させながら、高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスをカラム式反応器に投入し、液体媒体を介して出発化合物反応と反応させて、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成し、フッ素化反応が完了するまで回路中でさらに循環させ、好ましくは、回路を1500 l/hないし5000 l/h、より好ましくは3500 l/hないし4500 l/hの循環速度で動作させる、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記塔型反応器は、
(i)少なくとも1つの冷却器(システム)、不活性溶媒に溶解した原料ジフルオロメチル-ピラゾール化合物に用いられる入口と出口を有し、そして、液体媒体としての不活性溶媒に溶解した原料ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含み、及び直接フッ素化反応の進行に伴い、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物をさらに含む、少なくとも1つの液体貯蔵槽、
(ii)塔型反応器中の(i)の液体媒体をポンプ輸送及び循環するためのポンプ、
(iii)好ましくは、そのうちの1つ又は複数の(噴射ノズル)噴出口が塔型反応器の頂部に配置され、(i)の循環液体媒体を塔型反応器に噴入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴出口、又は代替的に、(i)の液体媒体を塔型反応器に循環させるための高効率ポンプと共に使用される塔型反応器の上部に配置された多孔金属シート、
(iv)高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを前記塔型反応器に導入するための1つ又は複数の投入入口、
(v)任意に、1つ又は複数の濾過スクリーン、好ましくは2つの濾過スクリーン、好ましくは1つ又は複数の濾過スクリーンが塔型反応器の底部に配置されている、濾過スクリーン、及び、
(vi)圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、及び式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を取り出すための少なくとも1つの出口、のうちの少なくとも1つを備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塔型反応器は充填床塔型反応器であり、好ましくは耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物(例えばRaschig充填物及び/又は金属充填物を充填した)を充填した充填床塔型反応器であり、より好ましくは、充填床塔型反応器は、耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物(例えばRaschig充填物及び/又は金属充填物)を充填したガス回路(洗浄器)システム(塔)である、請求項16及び17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記直接フッ素化反応は、a)の循環液体媒体と、塔型反応器に投入されたb)のフッ素化ガスとの逆流流動下で行われ、ここで、a)の循環液体媒体は、出発化合物を含むか、又はそれからなり、かつb)のフッ素化ガスは、高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなる、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記直接フッ素化反応が連続式で動作する(密閉)塔型反応器にて行われる、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記直接フッ素化反応がハステロイ(Hastelloy)から作られ、好ましくはハステロイC4から作られた(密閉)塔型反応器にて行われる、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記直接フッ素化反応が連続式で動作するコイル式反応器にて行われる、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記直接フッ素化反応がハステロイから作られ、好ましくはハステロイC4から作られたコイル式反応器にて行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記直接フッ素化反応が連続式で動作する上部幅方向寸法が約≦5 mm又は約≦4 mmである連続流反応器にて行われる、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記直接フッ素化反応が連続式で動作するマイクロ反応器にて行われる、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記直接フッ素化反応がマイクロ反応器にて、
流速:約10 ml/h~約400 l/h、
温度:約-20℃~約150℃、
圧力:約1バール(例えば1つの標準大気圧)~約50バール、
滞留時間:約1秒、好ましくは約1分、最高約60分、のうちの一つ又は複数の条件で、連続プロセスで行われる、請求項1~3及び5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロ反応器がSiCマイクロ反応器である、請求項25又は26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体、即ち、そのうちのカルボン酸基が誘導体化された5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(遊離酸)の誘導体及びその遊離酸(即ち、5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸)を合成する新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)は、穀類、果物及び野菜を10年以上に保護するための疾患抑制用よく知られている農薬製品(抗真菌剤)である。例えば、よく知られている市販の代表的な化合物としては、Isoflucypram、ビキサフェン(Bixafen)、フルキサピロキサド(Fluxapyroxad)、フルインダピル(Fluindapyr)、セダキサン(Sedaxane)、イソピラザム(Isopyrazam)及びBenzovindifupyrが挙げられる。これらの化合物の製造又は合成は、主要原料(主要構成単位)としてのフッ化ピラゾールに強く依存し、及び環境友好性及び工業的に適切な方法に依存して前記フッ化ピラゾール原料を提供し、そして環境友好性及び工業的に適切な方法での製造又は合成を可能にする。
【0003】
学術文献、例えばJournal Pest ManagSci 76(2020),page 3340-3347(DOI: https://doi.org/10.1002/ps.5951)において、最近の科学発展及び一般的な改良、特に化合物Isofucypramに対する改良について総説している。
【化1】
【0004】
標的分子構造を提供するピラゾール部分は、多くの合成課題を招く。そのため、ピラゾール構成単位の多段合成経路の相異点上で、例えば、標的分子のピラゾール部分のフッ素化、環状化、及び潜在的にさらなる官能基化を化学的に改良することができる。
【0005】
フッ化ピラゾール構成単位の合成について、有機プロセス研究開発において、総説(OPRD 2014、18、1055-1059)が発表された。及び環状化ステップの改良について、例えば、水及び特殊な反応器設計の応用を回避することで、位置異性体の形成及び大量の有毒廃水処理の必要性を回避したため、総合収率を向上させた無水ヒドラジンを使用する方法はWO2020/093715に記述されている。
【0006】
化合物Isoflucypramについては、5-フッ素原子で置換されたジフルオロメチルピラゾール部分が初めて使用され、ピラゾール構成単位の大規模工業と環境友好性合成を確保する別の一つの課題の増加を招いた。
【0007】
WO2011/061205では、以下のスキームに概説するように、代表的な5-フルオロ-ジフルオロメチルピラゾール構成単位の合成は、化合物ジフルオロアセト酢酸エチル(EDFAA)から始め、モノメチルヒドラジン(MMH)を用いて初期環状化反応を行い、次いで、POClを用いて5位で塩素化し、そして、DMFを用いてホルミル化して3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボアルデヒドを得る。Kumiaiは、CF3-誘導体に対して、ピラゾールとイソキサゾリルのこの合成経路の原理についてWO2003/000686及びWO2004/014138に記述されている。
【化2】
【0008】
この合成経路は、出発化合物EDFAAがかなり不安定であること、MMHが水溶液として使用しなければならないこと(水は安全上のみ)、得られた5-位塩素化アルデヒドが別のかなり敏感な中間体であること、最終的に5-位フッ素化された目標ピラゾール(5F-DFMPA)が得られるために、フッ素化剤としてKFを用いたかなり粗(「汚れ」)のHalex反応が必要である多くの欠点がある。工業的に行われるHalex反応は、大量の溶媒が必要であること、形成されたKCl(さらに有毒物質によって汚染された)が加水分解により、5F-DFMPA生成物から分離しなければならず、有毒廃水が形成されるという主な欠点がある。要約すると、この合成経路により、合成における複数の段階、例えば環状化ステップ、塩素化ステップ及びフッ素化ステップで有毒廃水が形成される。これは、工業規模全体の製造のための該合成路線の利用可能性を損なった。
【0009】
上述したCF2H-基に関する合成経路における不安定性及び欠点を踏まえて、上記合成経路の修正は、原料中のより安定した部分としてのCF2Cl-基に関係しなく、公開特許WO2015/110493に開示されている。5% Pd/CaCO3触媒上に水素還元を用いて脱ハロゲンすることにより、CF2Cl-基からCF2H-基を形成する。別の公開特許(WO2011/131615)は、3-(ジフルオロメチル)-5-ハロゲン-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸ハライドの製造を目的としているが、塩素化、次いでフッ素化のような2つのステップも使用され、そして、粗(「汚れ」)Halex反応も使用される。上記合成経路において不利な加水分解以外、Halex反応においてSulfolanas溶媒や他の溶媒を不利に使用する必要があり、これらの溶媒の除去が困難であるか、又は除去できなくなる。このような合成経路のこれらの全ての欠点は、再度、任意の工業規模製造のための利用可能性を極めて大きく損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開番号2020/093715
【特許文献2】国際公開番号2011/061205
【特許文献3】国際公開番号2003/000686
【特許文献4】国際公開番号2004/014138
【特許文献5】国際公開番号2015/110493
【特許文献6】国際公開番号2011/131615
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal Pest ManagSci 76(2020),page 3340-3347
【非特許文献2】OPRD 2014、18、1055-1059
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、フッ化ピラゾール構成単位、例えば、特に5-フルオロ-ジフルオロメチルピラゾール構成単位を合成するための従来技術の方法の欠点を克服することである。別の目的は、大規模工業及び環境友好的にフッ化ピラゾール構成単位、例えば特に5-フルオロ-ジフルオロメチルピラゾール構成単位を合成するのに適したフッ化ピラゾール構成単位、例えば特に5-フルオロ-ジフルオロメチルピラゾール構成単位の方法を提供することである。もう一つの目的は、フッ化ピラゾール構成単位を高収率かつ高位置選択性で合成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、特許請求の範囲で限定されるよう、以下で詳細に説明されるように解決される。
【0014】
本発明は、耐単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)の反応器にて、単体フッ素(F2)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて直接フッ素化反応が行われることを含む5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体及びその遊離酸を合成する新規方法を提供する。この方法では、不活性溶媒に溶解したジフルオロメチル-ピラゾール化合物を原料として直接フッ素化反応が行われる。
【0015】
本発明の文脈では、用語「誘導体(derivative)」は、カルボン酸誘導体を指し、即ち、5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体は、そのうちのカルボン酸基が誘導体化された5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(即ち、遊離酸)の誘導体を指す。一般に知られているカルボン酸誘導体は、カルボン酸ハライド、カルボン酸エステルとカルボン酸アミドである。一般に知られているカルボン酸ハライド(Hal)は、カルボン酸フルオライド(Hal=F)、カルボン酸アシルクロリド(Hal=Cl)又はカルボン酸臭化アセチル(Hal=Br)である。本発明の方法によれば、特に、カルボン酸ハライド(Hal)においてカルボン酸フルオライド(Hal=F)が好ましい。典型的かつ一般的に好適なカルボン酸エステルは、例えばカルボン酸メチルエステルとカルボン酸エステル、及びカルボン酸ベンジルエステルである。必要な場合、本発明の方法によって製造されたカルボン酸エステルは、当業者に知られている従来方法によってカルボン酸ハライド(Hal)転化にすることができる。実際、任意の耐単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)の溶媒は、本発明の直接フッ素化反応又は方法において溶媒(即ち、不活性溶媒として)として用いられることができる。本発明の文脈では、用語「不活性溶媒(inert solvent)」は、不活性有機溶媒及び/又はフッ化水素(HF)を指し、ここで、不活性溶媒は、単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)に対して良好な不活性を有する。不活性溶媒はまた、原料や生成物(原)材料に対して良好な溶解性を有するべきである。
【0016】
発明で使用される原料が高沸騰点油性と粘性物質(例えば、以下のスキーム1bに示されるアルデヒド沸騰点が260℃であり、例えば、以下のスキーム1aに示されるアシルクロリド沸騰点が276℃である)又は固体(例えば、以下のスキーム1aに示されるエチルエステル)であるため、不活性溶媒を使用することは有利である。そのため、理論的に、不活性溶媒を含まない油性原料を使用してもよいが、不活性溶媒を使用することが好ましい。
【0017】
驚いたことに、本発明は、F2-ガスフッ素化反応において通常にフッ素化部位が観察される低選択性の従来技術(例えば、所望のC-Hフッ素化部位の後にC-H結合が存在するたびに)とは逆に、上述した従来技術における問題、特に粗(「汚」)塩素化(例えばHalex反応)及び/又は粗(「汚」)フッ素化(例えばKFをフッ素化剤として用いられる)に関連する欠陥を回避した。前述したように、両従来技術の反応は、いずれも大量の廃水を不利に発生させている。
【0018】
前述の2つの粗(「汚」)反応ステップ(例えばHalex塩素化とKFを用いたフッ素化)の代わりに、単体フッ素(F2)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスの直接フッ素化反応を用いることにより、そして、不活性溶媒に溶解したジフルオロメチル-ピラゾール化合物を原料として用いることにより、意外と本発明の利点を実現した。
【0019】
本発明の文脈では、5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の酸誘導体は、次の式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物であり、
【化3】
ここで: RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ XはF(フッ素原子)又は-O-R1基を表し、ここで、R1はC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表す。
【0020】
そのため、本発明の一態様では、本発明は、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造する方法に関し、ここで、Rは上記で定義された意味を有し、かつXは上記で定義された意味を有し、かつこの方法では、式(II)で示されるジフルオロメチル-ピラゾール化合物は、原料として、
【化4】
ここで: RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、F(フッ素原子)を表し、かつ YはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又は-O-R1基を表し、ここで、1はC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、 式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成するために、 耐単体フッ素(F2)及びフッ化水素の反応器にて、単体フッ素(F2)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて不活性溶媒に溶解した溶液に対して直接フッ素化反応を行い、 ここで、Rは上記で定義された意味を有し、かつ条件は、 (i)式(II)中のYがH(水素原子)又はCl(塩素原子)又はBr(臭素原子)であれば、式(I)中のXはF(フッ素原子)であり、かつ (ii)式(II)中のYが-O-R1基であれば、式(I)中のXは-O-R1基であり、かつ、R1はXとYについて上記で定義されるように、かつX中のR1はYと同じ意味を有し、 及び任意に、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、この反応混合物を分離及び/又は精製する。
【0021】
本発明の文脈では、5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸は、次の式(Ia)し示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物であり、
【化5】
ここで: RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、F(フッ素原子)を表す。
【0022】
上式(Ia)で示される5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸は、そのカルボン酸誘導体、例えば、上式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物から、当業者に知られている常規反応により得ることができ、ここで、Rは上記で定義された意味を有し、かつXは上記で定義された意味を有し、ここで、式(I)で示される酸誘導体における-C(=O)-X基は、カルボン酸基-C(=O)-OH)に転化され、これにより、式(I)化合物における置換基Xは、-OH基に転化される。このような転化は、例えば、加水分解及び/又はけん化によって実現することができる。置換基Xがベンジル基又は置換されたベンジル基であれば、例えば、Pt、Pd、Rh又は他の貴金属触媒上で水素化することによって、遊離酸に触媒転化することもできる。しかしながら、そのうちの置換基Xがベンジル基又は置換されたベンジル基である酸誘導体の場合、加水分解及び/又はけん化してもよい。
【0023】
そのため、本発明別の態様では、本発明は、式(Ia)で示される5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を製造する方法にさらに関し、
【化6】
ここで: RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、F(フッ素原子)を表し、 そして、この方法では、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物は、原料として、
【化7】
ここで:
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
XはF(フッ素原子)又は-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、
(i)加水分解及び/又はけん化反応が行われるか、又は
(ii)-O-R基において、置換基Rがベンジル基又は置換されたベンジル基を表す場合、加水分解及び/又はけん化反応が行われるか、又は選択的に、(温和)触媒水素化反応が行われ、
置換基Xを-OH基に転化して、式(Ia)で示される酸化合物5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を得、
及び任意に、式(Ia)で示される分離及び/又は精製された酸化合物5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸化合物を得るために、この反応混合物を分離及び/又は精製する。
【0024】
本発明の別の態様では、より重要なのは、本発明により製造された5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の酸誘導体、即ち、上記で定義された次の式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物は、農薬製品(例えば抗真菌剤)の活性成分、例えば、穀類、果物及び野菜を10年以上に保護するための疾患抑制用コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)の活性成分を製造するために用いられることができる。このようなコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)の製造又は合成は、主要原料(主要構成単位)としてのフッ化ピラゾールに強く依存する。
【0025】
そのため、本発明により製造された5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の酸誘導体、即ち、上記で定義された次の(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物は、前記農薬製品(例えば抗真菌剤)、例えば、Isoflucypram、ビキサフェン(Bixafen)、フルキサピロキサド(Fluxapyroxad)、フルインダピル(Fluindapyr)、セダキサン(Sedaxane)、イソピラザム(Isopyrazam)及びBenzovindifupyrの活性成分(「AI」)を製造するために用いられることができる。このような化合物の製造又は合成は、主要原料(主要構成単位)としてのフッ化ピラゾールに強く依存し、例えば、以下で示されるように、Isoflucypramを製造するために用いられ、
【化8】
ピラゾールカルボン酸誘導体(即ち、本発明により製造された5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の酸誘導体、即ち、上記で定義された次の(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物)から生成された前述の活性成分(「AI」)は、上記Isoflucypramの代表的な式で示されるように、いずれもアミド化合物である。
【0026】
そのため、好ましくは、上記で定義された次の式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物の酸誘導体の相応なカルボン酸ハライド(例えば、そのうちのRが上記で定義され、かつXがF(フッ素原子)である式(I)で示されるカルボン酸フッ化物(carboxylic acid fluoride)又は相応なカルボン酸アシルクロリド(X=FではなくClである)から、前述の農薬製品(例えば抗真菌剤)例えば、Isoflucypram、ビキサフェン(Bixafen)、フルキサピロキサド(Fluxapyroxad)、フルインダピル(Fluindapyr)、セダキサン(Sedaxane)、イソピラザム(Isopyrazam)及びBenzovindifupyrの活性成分(「AI」)を製造する。
【0027】
より好ましくは、相応なカルボン酸アシルクロリド(X=FではなくClである)から、前述の農薬製品(例えば抗真菌剤)、例えば、Isoflucypram、ビキサフェン(Bixafen)、フルキサピロキサド(Fluxapyroxad)、フルインダピル(Fluindapyr)、セダキサン(Sedaxane)、イソピラザム(Isopyrazam)及びBenzovindifupyrの活性成分(「AI」)を製造する。次の式(Ib)で示される前記相応なアシルクロリドは、上記で定義された次の式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物の酸誘導体又は上式(Ia)で示される5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸から、当業者に知られている方法により製造することができる。
【0028】
式(I)又は(Ia)で示されるピラゾール化合物から製造することができる5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アシルクロリドは、次の式(Ib)で示され、
【化9】
ここで:
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)又はF(フッ素原子)を表す。
【0029】
前述したように、上記ピラゾールカルボン酸誘導体から生成される活性成分(AI)は、いずれもアミド化合物であり、即ち、これらは、好ましくはカルボン酸ハライド、特にカルボン酸アシルクロリドから、置換されたアミノ又はNH基を含有する相応な前駆体と反応することにより生成される(ショッテン・バウマン法)。例えばEP2920151を参照されたい。もちろん、これらのカルボン酸フルオライドも役に立つが、一部の液態のHF(沸騰点:21℃)はある程度上に分離がより困難であり、そして、沸騰点が80℃であるHClよりも危険である。以前の出版物では、塩基は依然としてHCl捕獲剤(ショッテン・バウマン法)として必要であり、そうでない場合、即ち、塩基がない場合、これらの活性成分(AI)のHClが得られる。前記ピラゾールに基づく活性成分(AI)は、例えばWO 2016016298 (Solvay)中の相応なピラゾールカルボン酸エステルから製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ガス洗浄器システムを用いた直接フッ素化。逆流システムにて、F2-ガスを用いてバッチフッ素化する(原料貯蔵槽は、液体原料又は任意の不活性溶媒における原料を含有する)。いくつかの不活性ガス(90%又は80%N2又は他の不活性ガス、例えばHe又はAr)で希釈されたF2が使用される場合、フッ素化過程の圧力は、圧力弁を介して20バール(bar)に保持される。不活性ガスは、(わずかに)いくつかのHFと共に、反応中にパージガスとして離れている。従来技術の「インサイチュ」で製造された濃縮F2ガスの場合、電解槽又は2-オンサイト発生器は、Lindeによって提供される(https://www.linde-gas.com/en/products_and_supply/electronic_gases_and_chemicals/on_site_gas_generation/generation_f_on_site_fluorine_generation/index.html)。充填床反応器は、例えば、(耐性)金属充填物を装備しており、そして、HDPTFE充填物(Raschig)を装備してもよい。充填床反応器に用いられる典型的な充填材料の直径は、約1cm以上(例えば、約1±0.05cm以上)である。
図2】1つ又は複数のマイクロ反応器(直列)システムでの連続フッ素化。
図3】コイル式反応器システムでの連続フッ素化。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
直接フッ素化:出発化合物を単体フッ素(F)と化学反応させることにより、1つ又は複数のフッ素原子を化合物に導入し、1つ又は複数のフッ素原子が反応出発化合物に共有結合するようにする。
【0032】
用語「液体媒体(liquid medium)」は、直接フッ素化の反応条件下で、フッ素化に対して不活性を示す溶媒を意味してもよい。ここで、出発化合物及び/又はフッ素化目標化合物が溶解可能であり、及び/又は出発化合物自体が液体媒体として使用される液体であってもよく、そして、フッ素化目標化合物が液体でなければ、溶解可能であり、又は液体であれば、液体媒体として使用されてもよい。
【0033】
本明細書で開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む全ての値からの値を含む。明確値を含む範囲(例えば、1ないし7)の場合、任意の2つの明確値の間の任意のサブ範囲(例えば、1ないし2、2ないし6、5ないし7、3ないし7、5ないし6、など)を含む。
【0034】
用語「備える(Comprising)」、「含むincluding」、「有する(Having)」及びそれらの派生語は、具体的に開示されているか否かにかかわらず、追加の成分、ステップ、又はプロセスの存在を排除することを意図していない。任意の誤解を避けるために、逆の意味が示されない限り、「備える」という用語を使用することによって、権利主張される全ての組成物は、ポリマー又は他のものにかかわらず、任意の追加の添加剤、助剤又は化合物を含んでもよい。逆に、用語「基本的に~からなる(Consisting Essentially Of)」は、操作性のために重要でないものを除いて、後述する任意の範囲外の任意の他の成分、ステップ、又はプロセスを排除する。用語「~からなる(Consisting Of)は、具体的に説明又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又はプロセスを排除する。特に説明がない限り、用語「又は(or)」は、単独及び任意の組み合わせの形態で列挙されたメンバを指す。単数の使用は複数の使用を含み、その逆も成り立つ。
【0035】
本明細書で使用される用語「vol.-%」は、「体積%」を指す。特に説明がない限り、本明細書で使用される全ての百分比(%)は、それぞれ「vol.-%」又は「体積%」を表す。
【0036】
例えば、F電解反応器(フッ素電解槽)からFガスが直接放出されるにつれて基本的にそれからなるフッ素化ガスに関わる場合、用語「基本的(essentially)」の使用は、このようなFガスを提供することが主に精製及び/又は、単独及び/又は混合された別のガス(例えば不活性ガス)を提供することを指す。その量及び/又は条件は、F電解反応器(フッ素電解槽)で生成され、ガス状生成物としてそれから取り出されるFガスの約±5体積%より大きく、又は好ましくは約±3体積%より大きい組成変化を提供するのに十分である。そのため、このような基本的にFガスからなるフッ素化ガスは、F電解反応器(フッ素電解槽)から直接に放出される時に、濃度が少なくとも約92体積%、又は好ましくは少なくとも約95体積%である単体フッ素(F)を含むことを指す。特に、このような基本的にFガスからなるフッ素化ガスは、F電解反応器(フッ素電解槽)から直接に放出される時に、濃度範囲が約92-100体積%、又は好ましくは約95-100体積%、又はより好ましくは約92-99体積%、又は好ましくは約95-99体積%、又は約92-97体積%、又は好ましくは約95-97体積%である単体フッ素(F)を含んでもよい。
【0037】
本発明は、耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて直接フッ素化反応が行われることを含む5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体及びその遊離酸を合成する新規方法を提供する。この方法では、不活性溶媒に溶解したジフルオロメチル-ピラゾール化合物を原料として直接フッ素化反応が行われる。本発明の新規方法は、5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体、即ち、そのうちのカルボン酸基が誘導体化された5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(遊離酸)の誘導体を合成するのに適用し、及びその遊離酸、即ち、5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を合成するのに適用する。
【0038】
本発明の方法は、不活性溶媒で行われ、例えば、出発化合物及び得られた生成物を不活性溶媒に溶解する。実際、任意の耐単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)の溶媒は、本発明の直接フッ素化反応又は方法において溶媒(即ち、不活性溶媒として)として使用されることができる。本発明の文脈では、用語「不活性溶媒(inert solvent)」は、不活性有機溶媒及び/又はフッ化水素(HF)を指し、そのうちの不活性溶媒は、単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)に対して良好な不活性を有する。不活性溶媒はまた、原料や生成物(原)材料に対して良好な溶解性を有するべきである。不活性溶媒の具体的な例としては、フッ化水素(HF)に加えて、例えば無水フッ化水素(無水HF)がギ酸、トリフルオロ酢酸、アセトニトリルである。
【0039】
例えば、本発明方法に適用した不活性有機溶媒は、例えばアセトニトリル(CH3CN)、ギ酸及びトリフルオロ酢酸、又は完全又は一部フッ素化されたアルカン、例えばペンタフルオロブタン(365mfc)、直鎖又は環状部分又は完全フッ素化されたエーテル例えば、CF3-CH2-OCHF2(E245)又はペルハロゲンエーテル、例えばCF3-O-CF2-CCl3(b.p.87℃)、又はオクタフルオロテトラヒドロフランである。単体フッ素(F2)に関連し、完全フッ素化(又は少なくとも完全ハロゲン化)の溶媒、例えばペルハロゲン化化合物、例えばCFCl3(比較的高い圧力下のみ使用される)、CF2Cl-CFCl2(113、好ましくは沸騰点が48℃である)も適切な不活性有機溶媒である。
【0040】
前述したように、フッ化水素(HF)、例えば無水フッ化水素(無水HF)も本発明方法に用いられる適切な(無機)溶媒である。不活性溶媒は、オラー試薬(Olah’s reagent)(ピリジン/HF)であってもよい。不活性溶媒がオラー試薬(ピリジン/HF)であれば、原料溶液の製造を容易にするが、ピリジンのため、反応後に、この不活性溶媒を生成物から除去することがより困難になる。
【0041】
そのため、本発明の方法では、不活性溶媒は、フッ化水素(HF)、無水フッ化水素(無水HF)、オラー試薬(ピリジン/HF)、アセトニトリル(CH3CN)、ギ酸及びトリフルオロ酢酸、フッ素化アルカンペンタフルオロブタン(365mfc)、フッ素化エーテルCF3-CH2-OCHF2(E245)、ペルハロゲンエーテルCF3-O-CF2-CCl3、オクタフルオロテトラヒドロフラン、ペルハロゲン化合物CFCl3及びペルハロゲン化合物CF2Cl-CFCl2(113)から選ばれる。これらの不活性溶媒は、いずれも材料に対して良好な溶解性を有し、そして、単体フッ素(F2)及びフッ化水素(HF)に対して不活性を有する。
【0042】
本発明方法により製造可能な5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体のいくつかの具体的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0043】
─3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸フッ化物(5F-DFMPAF)、3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-フッかカルボニル化合物とも呼ばれる(例えば実施例1参照)。
─3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(5F-DFMP)(例えば実施例2参照)、又は同様に、3-(クロロジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステル(例えば、実施例2の製造と同様である)。
─3-(クロロジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(5F-CDFMP)、(例えば実施例3参照)、又は同様に、3-(クロロジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メチルエステル(例えば、実施例3の製造と同様である)。
【0044】
以下の反応スキーム1aないし1cに、本発明方法による前記化合物の合成を例示している。
【0045】
式(II)で示されるアシル塩化合物(R=Cl)が本発明方法における原料であれば、得られる生成物は、フッ素化によって形成されたHFがCl/F交換反応をもたらして相応なアシルフッ素化合物(即ち、フッかカルボニル化合物)を形成するので、ピラゾール環の5-位フッ素化の相応なアシルフッ素化合物である。例えば以下反応スキーム1aを参照されたい。
【0046】
式(II)で示されるアルデヒド化合物(R=H)が本発明方法における原料であれば、得られる生成物は、-CH=O基(アルデヒド基)もフッ素化されて相応なアシルフッ素基(即ち、カルボニルフッ素基)を形成するので、ピラゾール環の5-位フッ素化の相応なアシルフッ素化合物である。例えば以下反応スキーム1bを参照されたい。
【0047】
式(II)で示されるエステル化合物(R=-O-R、ここでRが下記の式(II)に対応する定義)が本発明方法における原料であれば、得られる生成物は、ピラゾール環の5位フッ素化の相応なエステル化合物であるが、エステル基(R=-O-R)はフッ素化の影響を受けず、そのため、生成物に保留される。例えば以下反応スキーム1cを参照されたい。
【0048】
反応スキーム1aないし1c:
スキームにおける意味:R=H、Cl、F、Et=エチル(-CH2CH3)。
【0049】
スキーム1a:アシル塩化合物を原料とした。
【化10】
【0050】
スキーム1b:アルデヒド化合物を原料とした。
【化11】
【0051】
スキーム1b:エステル化合物を原料とした。
【化12】
【0052】
本発明は、目標5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導化合物の製造が、単体フッ素(F2)でフッ素化された特定の出発化合物を含むより効率的なフッ素化反応の方法によって実現される点で、従来技術の方法とは異なる。
【0053】
そのため、本発明は、従来技術の方法の不足又は欠点をそれぞれ克服し、特に目標5-フルオロ-3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸誘導体化合物を製造するためのより効率的な方法、特に工業的方法、より好ましくは大規模工業方法を確立する既存の高需要を満たした。
【0054】
この点に関して、本発明は、大量廃水及び非常に猛毒の粒子を含有する可能性のある回収不可の塩を形成することなく、経済的に回収できない塩の形成を回避する大規模及び/又は工業的製造方法を有利にさらに提供する。
【0055】
フッ素化反応は、バッチ反応器にて、又は一連のSTR、プラグ、又はいわゆるマイクロ反応器又はコイル式反応器にて連続的に行われてもよい。後処理を行うために、HF又はHFの少なくとも一部を効率的な回路(洗浄器)システムに凝縮するために、軽微な真空を印加するか、又は少量の不活性ガス流れを使用して等モル形成されたHFをフッ素化された最終溶液から除去して冷却トラップに入ってもよい。従来技術STRを用いたバッチシステムでは、不活性ガスで希釈したFのみが経済的に可能である(不活性ガスはホットスポットの回避に寄与する)。逆流システム、マイクロ反応器システムとコイル式反応器システムでは、任意に、F電解槽から直接放出される高濃度Fが良好な収率が得られ、そして、適用可能である。
【0056】
本発明の方法では、例えば、高生産性とより良い選択性を可能するために、乱流反応状態が好ましい。しかし、当業者によって理解されるように、乱流は本発明の方法を制限することを意図しておらず、特に反応システム、例えばそれぞれ逆流反応器システム、マイクロ反応器システム又はコイル式反応器システムの場合、化学的な乱流(chemistry-wise turbulence)は強制的ではない。
【0057】
特に、マイクロ反応器システムの動作性能が良いほど、存在する不活性ガスが少ない(通路に気泡が形成されると、伝熱/熱交換器の効率が抑制される可能性がある)。
【0058】
一態様では、本発明は、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造する方法に関し、
【化13】
ここで:
Rは、H(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
XはF(フッ素原子)又は-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、
この方法では、式(II)で示されるジフルオロメチル-ピラゾール化合物は原料として、
【化14】
ここで:
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、F(フッ素原子)を表し、かつ
YはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はO-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、
式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成するために、
耐単体フッ素(F)及びフッ化水素の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて不活性溶媒に溶解した溶液に対して直接フッ素化反応を行い、
ここで、Rは上記で定義された意味を有し、かつ条件は、
(i)式(II)中のYがH(水素原子)又はCl(塩素原子)又はBr(臭素原子)であれば、式(I)中のXはF(フッ素原子)であり、かつ
(ii)式(II)中のYが-O-R基であれば、式(I)中のXは-O-R基であり、かつ、RはXとYについて上記で定義されるように、かつX中のRはYと同じ意味を有し、
及び任意に、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、この反応混合物を分離及び/又は精製する。
【0059】
別の態様では、本発明は、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造する方法に関し、ここで
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
XはF(フッ素原子)を表し、
この方法では、式(II)で示されるジフルオロメチル-ピラゾール化合物は原料として、ここで
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
YはH(水素原子)、Cl(塩素原子)を表し、
式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成するために、
耐単体フッ素(F)及びフッ化水素の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて不活性溶媒に溶解した溶液に対して直接フッ素化反応を行い、
及び任意に、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、この反応混合物を分離及び/又は精製する。
【0060】
別の態様では、本発明は、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を製造する方法に関し、ここで
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
Xは-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、かつ好ましくはRはC1-C4アルキル基を表し、
この方法では、式(II)で示されるジフルオロメチル-ピラゾール化合物は原料として、ここで
RはH(水素原子)、Cl(塩素原子)又はF(フッ素原子)を表し、かつ
Yは-O-R基を表し、ここで、RはC1-C4アルキル基、ベンジル基又は置換されたベンジル基を表し、かつ好ましくはRはC1-C4アルキル基を表し、
式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成するために、
耐単体フッ素(F)及びフッ化水素の反応器にて、単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを用いて不活性溶媒に溶解した溶液に対して直接フッ素化反応を行い、
及び任意に、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、この反応混合物を分離及び/又は精製する。
【0061】
本発明は、放熱活性が観察されなくなるまで直接フッ素化反応が行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0062】
本発明は、反応混合物で放熱活性が観察されなくなるまで直接フッ素化反応が行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0063】
本発明は、直接フッ素化反応が反応混合物で、約55℃を超えない温度、好ましくは約50℃を超えない温度、より好ましくは約45℃を超えない温度、さらにより好ましくは約40℃を超えない温度下で行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0064】
本発明は、上述のような直接フッ素化方法に関する。ここで、この方法の実施は、不活性ガス流れが反応混合物を通過した後に、不活性ガス流れ中でHF(フッ化水素)が検出されなくなるまで、反応混合物を不活性ガス流れでパージすることによって、直接フッ素化反応で形成されたHF(フッ化水素)を反応混合物から除去する。
【0065】
本発明は、反応混合物を分離及び/又は精製するために、反応混合物を1回又は複数回の再結晶し、これにより、分離及び/又は精製された式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得る、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0066】
本発明は、反応混合物を分離及び/又は精製するために、反応混合物から不活性溶媒を真空下で蒸発させることによって、蒸発残渣としての式(I)で示される分離された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得、及び任意に、式(I)で示される分離及び精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得るために、蒸発残渣をさらに精製する、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0067】
本発明は、蒸発残渣をさらに精製することが、1回又は複数回の再結晶を含み、これにより、式(I)で示される分離及び/又は精製された5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を得る、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0068】
本発明は、単体フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、最高約20体積%(vol.-%)又は約20体積%(vol.-%)の(「比較的低い」)濃度で存在する、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0069】
本発明は、単体フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、0.1体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、0.5体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、1体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、5体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、10体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)、15体積%(vol.-%)ないし最高約20体積%(vol.-%)の「比較的低い」範囲内の濃度、又は約20体積%(vol.-%)の濃度で存在する、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0070】
本発明は、単体フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、少なくとも約15体積%、特に少なくとも約20体積%、好ましくは少なくとも約25体積%、さらに好ましくは少なくとも約30体積%、より好ましくは少なくとも約35体積%、さらにより好ましくは少なくとも約45体積%の高濃度で存在する、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0071】
本発明は、フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、約15-100体積%、好ましくは約20-100体積%、より好ましくは約25-100体積%、またより好ましくは約30-100体積%、さらにより好ましくは約35-100体積%、またより好ましくは約45-100体積%の高濃度で存在する、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0072】
フッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、フッ素化ガスにおける単体フッ素(F)は、上記体積%(vol.-%)の範囲内(「比較的低い」又は「比較的高い」)の濃度で使用される。単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスは、フッ素電解槽又は「現場」フッ素発生器から直接又は間接的に由来してもよく、そして、理論的には最大98体積%のF濃度を有してもよい。しかし、実際には、不活性ガスは、反応生成物(例えばHCl)を流出させる輸送媒体としても使用することができるので、いくつかの不活性ガスが添加されることが一般的である。
【0073】
そのため、好ましくは、本発明は、フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、約15-98体積%、好ましくは約20-98体積%、より好ましくは約25-98体積%、またより好ましくは約30-98体積%、さらにより好ましくは約35-98体積%、またより好ましくは約45-98体積%の高濃度で存在する、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0074】
なお、より好ましくは、本発明は、フッ素(F)がb)のフッ素化ガスにおいて、それぞれフッ素化ガスの総体積が100体積%であることに基づき、約15-90体積%、好ましくは約20-90体積%、より好ましくは約25-90体積%、またより好ましくは約30-90体積%、さらにより好ましくは約35-90体積%、またより好ましくは約45-90体積%の高濃度で存在する、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0075】
本発明は、直接フッ素化反応が(密閉)塔型反応器にて行われ、任意に、バッチ式又は連続式で動作され、不活性溶媒に溶解した原料ジフルオロメチル-ピラゾール化合物の溶液を回路中で循環させながら、高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスをカラム式反応器に投入し、液体媒体を介して出発化合物反応と反応させて、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を形成し、フッ素化反応が完了するまで回路中でさらに循環させ、好ましくは、回路を1500 l/hないし5000 l/h、より好ましくは3500 l/hないし4500 l/hの循環速度で動作させる、上述のような、直接フッ素化方法に関する。
【0076】
本発明は、前記塔型反応器は、
(i)少なくとも1つの冷却器(システム)、不活性溶媒に溶解した原料ジフルオロメチル-ピラゾール化合物に用いられる入口と出口を有し、そして、液体媒体としての不活性溶媒に溶解した原料ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含み、及び直接フッ素化反応の進行に伴い、式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物をさらに含む、少なくとも1つの液体貯蔵槽、
(ii)塔型反応器中の(i)の液体媒体をポンプ輸送及び循環するためのポンプ、
(iii)好ましくは、そのうちの1つ又は複数の(噴射ノズル)噴出口が塔型反応器の頂部に配置され、(i)の循環液体媒体を塔型反応器に噴入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴出口、又は代替的に、(i)の液体媒体を塔型反応器に循環させるための高効率ポンプと共に使用される塔型反応器の上部に配置された多孔金属シート、
(iv)高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるフッ素化ガスを塔型反応器に導入するための1つ又は複数の投入入口、
(v)任意に、1つ又は複数の濾過スクリーン、好ましくは2つの濾過スクリーン、好ましくは1つ又は複数の濾過スクリーンが塔型反応器の底部に配置されている、濾過スクリーン、及び、
(vi)圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、及び式(I)で示される5-フルオロ-ジフルオロメチル-ピラゾール化合物を含有する反応混合物を取り出すための少なくとも1つの出口、のうちの少なくとも1つを備える、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0077】
本発明は、塔型反応器は充填床塔型反応器であり、好ましくは耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物(例えばRaschig充填物及び/又は金属充填物を充填した)を充填した充填床塔型反応器であり、より好ましくは、充填床塔型反応器は、直径が約10 mm(約1 cm以上、例えば、約1±0.05 cm以上)以上である耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物(例えばHDPTFE Raschig充填物及び/又は金属充填物)を充填したガス回路(洗浄器)システム(塔)である、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0078】
本発明は、上述のような直接フッ素化方法に関する。ここで、直接フッ素化反応は、a)の循環液体媒体と、塔型反応器に投入されたb)のフッ素化ガスとの逆流流動下で行われ、ここで、a)の循環液体媒体は、出発化合物を含むか、又はそれからなり、かつb)のフッ素化ガスは、高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなる。
【0079】
本発明は、直接フッ素化反応が連続式で動作する(密閉)塔型反応器にて行われる上述のような直接フッ素化方法に関する。用語「密閉(closed)」は、存在する可能性のある安全弁、任意に少なくとも一部又は代替的に大部分又はさらには大部分(必要な場合)フッ化水素(HF)ガスと共に、例えば(制御下)不活性ガス放出を提供する流出装置を排除することを意味するものではない。もちろん、上述したように、必要な場合、フッ化水素(HF)の少なくとも一部又は代替的に大部分又はさらには実質的な部分は、直接フッ素化反応に用いられる溶媒として反応器システムに保持されてもよい。
【0080】
本発明は、直接フッ素化反応がハステロイ(Hastelloy)から作られ、好ましくはハステロイC4から作られた(密閉)塔型反応器にて行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0081】
ハステロイC4(ニッケル合金)の化学組成:
【表1】
【0082】
上述したように、上記好適なHastelloy(登録商標)C4以外、Hastelloy(登録商標)C22も好適なものであるが、Hastelloy(登録商標)C4とはやや異なる組成を有する。Hastelloy(登録商標)Cは、化学式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、又は「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)C22」とも呼ばれる。前記合金は、周知の高耐食ニッケルクロムモリブデンタングステン合金であり、そして、優れた抗酸化還元性と混合酸の性能を有する。前記合金は、排気脱硫黄工場、化学工業、環境保全システム、ゴミ焼却場、廃水処理工場に用いられている。上述した例に加えて、本発明の別の実施形態では、一般的に、他の製造業者からの、かつ当業者に知られているニッケルクロムモリブデンタングステン合金も本発明に用いられてもよい。このようなニッケルクロムモリブデンタングステン合金の典型的な化学組成(いずれも重量%で計算される)は、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、少なくとも約51.0%、例えば主成分(余剰量)としてのNi(ニッケル)が少なくとも約51.0%~約63.0%、約20.0%~約22.5%のCr(クロム)、約12.5%~約14.5%のMo(モリブデン)、約2.5%~3.5%のW(それぞれタングステン(tungsten)又はウォルフラム(wolfram)である)、及び最高約6.0%、例えば約1.0%~約6.0%、好ましくは約1.5%~約6.0%、より好ましくは約2.0%~約6.0%であるFe(鉄)。任意に、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、Co(コバルト)の合金における存在量は、最高約2.5%、例えば約0.1%~約2.5%の範囲内にあってもよい。任意に、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、V(バナジウム)の合金における存在量は、最高約0.35%、例えば約0.1%~約0.35%の範囲内にあってもよい。なお、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、任意に、少量(即ち、≦0.1%)の他の微量元素、例えば、C(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)が独立して存在する。少量(即ち、≦0.1%)他の元素の場合、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、前記元素、例えばC(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、それぞれ独立して存在量が最高約0.1%であってもよく、例えばそれぞれ独立して約0.01%~約0.1%の範囲内、好ましくはそれぞれの量が独立して最高約0.08%、例えばそれぞれ独立して約0.01%~約0.08%の範囲内にある。例えば、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、前記元素、例えばC(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、それぞれ独立して、C≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の量で存在してもよく、各値は、丸め値である。一般的に、上述した合金組成において、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかの微量元素も見つからない。
【0083】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、溶接問題を緩和した世界初めての鍛造ニッケルクロムモリブデン材料(極めて低い炭素とケイ素含有量により)である。そのため、化学プロセスと関連業界で幅広く受け入れられ、多くの耐食性化学薬品でその性能が証明され、既に50年の歴史がある。他のニッケル合金と同様に、圧延性を有し、成形及び溶接しやすく、そして、塩素含有溶液中で優れた耐応力腐食割れ性(オーステナイトステンレスが分解しやすい形態)を有する。その高クロムとモリブデン含有量によって、酸化性と非酸化性酸に耐えることができ、そして、塩化物と他のハロゲン化物が存在する場合でも、優れた耐孔食と細隙侵食能力を示した。総組成物が100%であることに基づき、重量%で計算される公称成分は、Ni(ニッケル)57%(余剰量)、Co(コバルト)2.5%(最大値)、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(それぞれタングステン(tungsten)又はウォルフラム(wolfram)である)4%であり、含有量が比較的低い他の成分は、最高1%(最大値)のMn(マンガン)、最高0.35%(最大値)のV(バナジウム)、最高0.08%(最大値)のSi(ケイ素)、0.01(最大値)のC(炭素)、最高0.5%(最大値)のCu(銅)である。
【0084】
本発明は、直接フッ素化反応が連続式で動作するコイル式反応器にて行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0085】
本発明は、直接フッ素化反応がハステロイ(Hastelloy)から作られ、好ましくはハステロイC4から作られたコイル式反応器にて行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0086】
本発明は、直接フッ素化反応が連続式で動作する上部幅方向寸法が約≦5 mm又は約≦4 mmである連続流反応器にて行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0087】
本発明は、直接フッ素化反応が連続式で動作するマイクロ反応器にて行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0088】
本発明は、直接フッ素化反応がマイクロ反応器にて、
流速:約10 ml/h~約400 l/h、
温度:約-20℃~約150℃、
圧力:約1バール(例えば1つの標準大気圧)~約50バール、
滞留時間:約1秒、好ましくは約1分、最高約60分、のうちの一つ又は複数の条件で、連続プロセスで行われる、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0089】
本発明は、前記マイクロ反応器がケイ素炭化物(SiC)マイクロ反応器である、上述のような直接フッ素化方法に関する。
【0090】
反応器設計と直接フッ素化:
本発明では、フッ素化反応は、有利に、そして、好ましくは特殊反応器設計を有する特殊設備にて、例えばマイクロ反応器又は充填床塔(好ましくはハステロイから作られる)、特に充填物、例えば金属充填物(例えばハステロイ)又はプラスチック充填物を含有する充填床塔、好ましくは塔(例えばハステロイから作られる)にはE-TFE又は金属充填物(ハステロイ)、例えばRaschig(http://www.raschig.de/Fllkrper)から得られる直径が約10 mmである金属充填物を充填した特殊設備にて行われてもよいことが発見されている。充填物のタイプは非常に柔軟であり、ハステロイから作られたラシヒリング(Raschigs)ポールリング(Pall-Rings)を使用してもよく、そして、有利に、E-TFE充填物、特にHDPTFE充填物を使用してもよい。
【0091】
特殊反応器設計を有する前記特殊設備、例えばマイクロ反応器又は充填床塔(好ましくはハステロイから作られる)において、上記及び特許請求の範囲に定義されているような濃度のフッ素ガスは、化学合成、特にフッ素化化合物を製造するために用いられてもよい。
【0092】
本発明を応用したフッ素化方法では、FがF電解反応器(フッ素電解槽)から直接に放出される場合、Fで化学処理してもよい。フッ素電解槽から生成するフッ素ガスの代表的な組成は、それぞれ体積%かつフッ素含有ガス総体積が100体積%であることに基づき、97%のF、最大3%のCF(電極破損による形成されたもの)、例えば微量のHF、NO、OF、COFである。
【0093】
フッ素化ガスでは、単体フッ素(F)は不活性ガスで希釈することができる。そして、不活性ガスは、顕著な差を構成する(例えば、フッ素化ガスにおいて、約5体積%を超えなく、好ましくは約3体積%を超えない少量の副生成物(例えば、CF)と微量不純物(例えば、HF、NO、OF、COF)のみが存在する場合がある)。
【0094】
不活性ガスは、1組みの一定条件下で化学反応を起こさないガスである。希ガスは、通常多くの物質と反応せず、そして、歴史的に不活性ガスと呼ばれている。試料を分解させる望ましくない化学反応を避けるために不活性ガスがよく使用される。これらの望ましくない化学反応としては、通常、空気中の酸素及び湿気との酸化、及び加水分解反応が挙げられる。
【0095】
典型的な不活性ガスは、希ガスと非常に一般的な不活性ガス窒素(N)である。希ガス(歴史的にも不活性ガスであり、時々ガス発生剤とも呼ばれる)は、1組みの類似性質を有する化学元素を構成する。標準条件下で、いずれも無臭、無色、化学反応性が非常に低い単原子ガスである。自然に存在する6種類の希ガスは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、放射性ラドン(Rn)である。
【0096】
精製済みのアルゴンガス及び窒素ガスは、その高天然存在量(空気中78.3%N、1%Ar)と比較的低いコストのため、よく不活性ガスとして用いられている。本明細書で定義されるように、不活性ガスとして窒素ガス(N)が好ましく、フッ素化ガスにおける単体フッ素(F2)を所望の高濃度に希釈するために用いられる。
【0097】
単体フッ素(F)が窒素ガス(N)で希釈されているフッ素化ガスが好ましい。不活性ガスとして窒素ガス(N)を用いたフッ素化ガスの例示的な組成は、(本明細書では、ガスボンベに充填された精製組成物(フッ素-窒素ガス混合物)として)以下の通りである。
【表2】
【0098】
フッ素化反応:
本発明の直接フッ素化反応は、反応条件下でフッ素化反応に対して不活性を呈する溶媒で行われてもよい。前述したように、本発明の方法では、不活性溶媒は、フッ化水素(HF)、無水フッ化水素(無水HF)、オラー試薬(ピリジン/HF)、アセトニトリル(CHCN)、ギ酸及びトリフルオロ酢酸、フッ素化アルカンペンタフルオロブタン(365mfc)、フッ素化エーテルCF-CH-OCHF(E245)、ペルハロゲンエーテルCF-O-CF-CCl、オクタフルオロテトラヒドロフラン、ペルハロゲン化合物CFCl及びペルハロゲン化合物CFCl-CFCl(113)から選ばれる。これらの不活性溶媒は、いずれも材料に対して良好な溶解性を有し、そして、単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)に対して不活性を有する。
【0099】
例えば、不活性溶媒は、無水HF、オラー試薬(ピリジン/HF:ピリジン/ HF:出発原料溶液の製造を容易にするが、反応後に、生成物から除去することが困難である)、アセトニトリル(CHCN)、ギ酸及びトリフルオロ酢酸、又はペルハロゲン化合物、例えばCFCl(より高い圧力でのみ使用される)、CFCl-CClF(113、好ましくは沸騰点が48℃である)及びペルハロゲンエーテル類、例えばCF-O-CF-CCl(沸騰点87℃)、ギ酸及びトリフルオロ酢酸であってもよい。
【0100】
この場合、フッ素化は溶媒で行われ、そして、本発明による直接フッ素化は、少量亜モル量の高濃度のFガスを含むフッ素化ガスを用いて有利に行われる。出発化合物が固体である場合、特に、溶媒(例えばアセトニトリル)が使用される。
【0101】
なお、直接フッ素化反応が放熱特徴を有するにもかかわらず、例えば、所定の期間内(例えば、10時間未満、又はさらに5時間未満)、本発明の反応は、より大きい規模で、高転化率で反応が行われてもよく、そして得られたフッ素化生成物には主な不純物を含まないことが発見されている。本明細書で上記に本発明による定義されるように、フッ素化生成物は、それぞれキログラム規模の量と最大(メートル)トン規模の量(1メートルトンは1000 kgに対応する)で製造することができ、例えば、本発明の直接フッ素化方法は、フッ素化化合物の大規模及び/又は工業生産において行うことができる。そのため、用語「大規模生産(large-scale production)」及び/又は「工業生産(industrial production)」は、例えば約1キログラムの開始範囲内から、そして、最大約数(メートル)トン(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、さらには最大約数十(メートル)トン)範囲内の生産規模をそれぞれ定義することを意味する。例えば、用語「大規模生産」及び/又は「工業生産」は、例えば、少なくとも約1キログラム、約2キログラム、約3キログラム、約4キログラム、約5キログラム、約6キログラム、約7キログラム、約8キログラム、約9キログラム、約10キログラム、約15キログラム、約20キログラム、約25キログラム、約30キログラム、約35キログラム、約40キログラム、約45キログラム、約50キログラム、約100キログラム、約150キログラム、約200キログラム、約250キログラム、約300キログラム、約350キログラム、約400キログラム、約450キログラム、約500キログラム、約600キログラム、約700キログラム、約800キログラム、約900キログラムの範囲内に生産規模をそれぞれ定義することを意味する。又は、用語「大規模生産」及び/又は「工業生産」は、例えば少なくとも約1(メートル)トン、約2(メートル)トン、約3(メートル)トン、約4(メートル)トン、約5(メートル)トン、約6(メートル)トン、約7(メートル)トン、約8(メートル)トン、約9(メートル)トン、約10(メートル)トンの範囲内に生産規模をそれぞれ定義することを意味する。
【0102】
そのため、本発明の直接フッ素化方法は、上記に定義されるような本発明によるフッ素化化合物の大規模及び/又は工業生産において、例えば少なくともキログラム規模の量で行われることが好ましいが、好ましくは、上記に定義されるように、「大規模生産」及び/又は「工業生産」の規模で行われる。
【0103】
この反応は、等モル量の高濃度Fガス下で行われ、かつ任意に約0.01~約0.1 mol/hの少量亜モル量、好ましくは約-0.01~約0.1 mol/hの少量亜モル量、より好ましくは約-0.02~約-0.09 mol/h、さらにより好ましくは約-0.03ないし約-0.08 mol/h、特に好ましくは約-0.5~約-0.07 mol/hの少量亜モル量の高濃度Fガス下で行われる。
【0104】
高濃度単体フッ素を含有するフッ素化ガスを用いて、フッ素化が行われる:
請求項に概述及び限定され、及び本明細書で以下の説明及び実施例によってさらに詳述されるように、本発明は、特に、単体フッ素(F)が高濃度で存在するフッ素化ガスの用途、単体フッ素(F)が高濃度で存在するフッ素化ガスを用いることにより、上記に定義されたフッ素化化合物を直接フッ素化製造する方法に関する。以下、本発明のこの特定の態様についてさらに説明する。
【0105】
実施例に示すように、フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づき、直接フッ素化は、少なくとも20体積%の単体フッ素(F)及び最高約80体積%の不活性ガス、好ましくは窒素ガス(N)、例えば不活性ガスとして窒素ガス(N)を用いたフッ素化ガスの組成、上述したように、鋼製ガス容器に充填されたフッ素-窒素ガスガス混合物としての精製組成を含むフッ素化ガスを用いて行われてもよい。
【0106】
フッ素化反応のプロセス制御性方面では、例えば、単体フッ素(F)とフッ素化対象液体化合物との効率的混合、熱伝達制御(例えば、悪い熱交換)、及び反応混合物のマイクロ環境下で所望の反応条件を維持する方面で、比較的大きい不活性ガスと単体フッ素との比で不活性ガスを使用することは欠点がある。これらの欠点は、床塔型反応器(ガス洗浄器システム)技術及び微泡マイクロ反応器又は同等の連続流動技術にも同様に適用可能である。例えば、コイル式反応器又はマイクロ反応器では、高不活性ガス濃度、例えば低(F)濃度下で、悪い熱交換以外、(不活性)気泡を有する無効(反応)領域が存在し、コイル式反応器又はマイクロ反応器を使用する利点が無効となり、そして、床塔型反応器(ガス洗浄器システム)技術でも同様のことが観察される。
【0107】
しかしながら、本発明はまた、フッ素化ガス総組成物が100体積%であることに基づき、フッ素化ガス中の単体フッ素(F)の濃度を20体積%よりも大きく、例えば好ましくは25体積%よりも大きく、より好ましくは30体積%又は40体積%よりも大きく、かつ特に好ましくは50体積%よりも大きい比較的高い濃度に増加し、一方、不活性ガス、例えば不活性ガス窒素ガス(N)の濃度を80体積%、例えば好ましくは75体積%、より好ましくは70体積%又は60体積%、かつ特に好ましくは50体積%よりも小さい相応な比較的低い濃度に低下し、工業方法の場合、転化率を約30%~45%以上まで徐々に増加し、例えば、50体積%、好ましくは60体積%、又は70体積%、さらにより好ましくは80体積%、かつ特に好ましくは90体積%よりも大きい転化率を実現することができることが発見されている。
【0108】
理論の束縛を受けることが望ましくなく、推定によると、上記のような背景技術で説明されているように、単体フッ素(F)を処理及び輸送する時に、セキュリティ上の理由から、必要な強酸化剤単体フッ素(F)反応性を希釈するための不活性ガス(例えば、欧州では95体積%のN(不活性ガス)と5体積%のみのFガスとの混合物、又は、アジアでは、例えば少なくとも80体積%のN(不活性ガス)と最高20体積%のFガスとの混合物)は、このような希釈されたフッ素化ガス中に実際に含まれる単体フッ素(F)は、依然として強酸化剤であるにもかかわらず、フッ素化反応に危害を及ぼす。
【0109】
驚いたことに、本発明によれば、単体フッ素(F)が不活性ガスで希釈されない場合、又は単体フッ素(F)が、フッ素化ガス中の単体フッ素(F)の50体積%よりも大きい濃度(フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づく)にのみ不活性ガスで希釈されると、前記常規希釈されたフッ素化ガスを用いて得られる化合物よりも高い転化率を有する化合物の直接フッ素化を実現することができることが発見されている。
【0110】
そのため、本発明は、特に好ましくは、F電解反応器(フッ素電解槽)から直接放出されるフッ素ガス(F)を用いて、直接フッ素化によりフッ素化化合物を製造するフッ素化方法を提供する。
【0111】
フッ素電解槽から生成するフッ素ガスの代表的な組成は、それぞれ体積%かつフッ素含有ガス総体積が100体積%であることに基づき、97%のF、最大3%のCF(電極破損による形成されたもの)、微量のHF、NO、OF、COFである。
【0112】
本発明方法においてフッ素化ガスとして使用される前に、必要な場合、F電解反応器(フッ素電解槽)からのフッ素化ガスを精製し、任意に、F電解反応器(フッ素電解槽)で形成された副生成物及び微量生成物を一部又は全部除去する。しかしながら、在本発明の方法では、このような部分又は完全精製を必要とせず、そして、フッ素化ガスは、F電解反応器(フッ素電解槽)から直接放出される時に直接使用してもよい。
【0113】
精製済み又は未精製のF電解反応器(フッ素電解槽)からのフッ素化ガスを用いる場合、必要な場合、任意に、不活性ガス、好ましくは窒素ガス(N)を用いて一定程度まで希釈してもよい。
【0114】
そのため、フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づき、必要な場合、このような精製済み又は未精製のF電解反応器(フッ素電解槽)からのフッ素化ガスは、任意に、最高約45体積%の不活性ガスを用いて希釈してもよいが、好ましくはフッ素化ガスは、不活性ガスを用いずにフッ素化ガス中の単体フッ素(F)を80体積%、好ましくは85体積%、より好ましくは90体積%よりも小さい濃度に希釈する。
【0115】
フッ素化ガス中の単体フッ素(F)と任意の不活性ガスとの和と100体積%との差値(差値があれば)は、副生成物(例えばCF)とF電解反応器(フッ素電解槽)の電極破損による形成された微量のHF、NO、OF、COFから構成されてもよい。本発明では、F電解反応器(フッ素電解槽)から直接放出されるフッ素ガス(F)をフッ素化ガスとして使用されると、これは、一般的に、上記及び以下に与えられる体積%値に適用される。
【0116】
そのため、本発明の好適な方法では、フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づき、約80体積%~97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0%~17±1体積%の不活性ガス、好ましくは窒素ガス(N)を含むフッ素化ガスを用いて直接フッ素化が行われる。
【0117】
本発明の別の好適な方法では、フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づき、約85体積%~97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0%~12±1体積%の不活性ガス、好ましくは窒素ガス(N)を含むフッ素化ガスを用いて直接フッ素化が行われる。
【0118】
本発明のさらに好適な方法では、フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づき、約87体積%~97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0%~10±1体積%の不活性ガス、好ましくは窒素ガス(N)を含むフッ素化ガスを用いて直接フッ素化が行われる。
【0119】
本発明のさらに別の好適な方法では、フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づき、約90体積%~97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0%~7±1体積%の不活性ガス、好ましくは窒素ガス(N)を含むフッ素化ガスを用いて直接フッ素化が行われる。
【0120】
本発明の別の好適な方法では、フッ素化ガス総組成が100体積%であることに基づき、約95体積%~97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0%~2±1体積%の不活性ガス、好ましくは窒素ガス(N)を含むフッ素化ガスを用いて直接フッ素化が行われる。
【0121】
当業者によって理解されるように、任意の所定範囲内で、任意の中間値及び中間範囲を選択してもよいことは言うまでもない。
【0122】
バッチプロセス(Batch Process):
本発明は、フッ素化化合物を製造する方法にも関する。ここで、前記方法は、バッチプロセスであり、好ましくは前記バッチプロセスは、カラム式反応器にて行われる。以下の反応器配置では、好適な方法として該方法が記述されるが、例えば、高生成物濃度の場合、任意に、この方法は前記反応器配置にて連続プロセス(continuous process)として行われてもよい。前記反応器配置にて連続プロセスの場合、説明するまでもないが、出発化合物の投入及び生成物化合物の取り出しための追加入口及び出口が予想される。
【0123】
本発明がバッチプロセスに関する場合、好ましくは、前記バッチプロセスは、カラム式反応器にて行われ、フッ素化化合物を製造する方法では、特に好ましくは、(密閉)カラム式反応器(システム)にて反応が行われ、ここで、出発化合物を含むか、又はそれからなるa)の液体媒体を回路内で循環させながら、高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるb)のフッ素化ガスをc)の塔型反応器に投入して、ステップd)において液体媒体を介して出発化合物と反応させる。好ましくは、回路は、1500l/hないし5000l/h、より好ましくは3500l/hないし4500l/hの循環速度で動作する。
【0124】
本発明がバッチプロセスに関する場合、本発明で定義されるようなフッ素化化合物を製造するための方法は、出発化合物を含むか、又はそれからなるa)の液体媒体をカラム式反応器にて乱流又は層流、好ましくは乱流の形式で循環させる方式で行われてもよい。
【0125】
一般的に、単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスは、目標フッ素化生成物に必要な化学量論比及びフッ素化度に基づいて、回路に投入され、反応速度に適合される。
【0126】
例えば、本発明で定義されるように、フッ素化化合物を製造するための前記方法は、例えばバッチ式で行われてもよく、ここで、カラム式反応器は、少なくとも1つの冷却器(システム)、出発化合物を含むか、又はそれからなるa)の液体媒体用の少なくとも1つの液体貯蔵槽、(液体媒体をポンプ輸送/循環するために用いられる)ポンプ、好ましくは、そのうちの1つ又は複数の(噴射ノズル)噴出口がカラム式反応器の頂部に配置され、循環媒体をカラム式反応器に噴入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴出口、又は代替的に、(i)の液体媒体をカラム式反応器に循環させるための高効率ポンプと共に使用されるカラム式反応器の上部に配置された多孔金属板(1つ又は複数の(噴射ノズル)噴出口の代わりに)、高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなるb)のフッ素化ガスを導入するための1つ又は複数の投入入口、任意に、1つ又は複数の濾過スクリーン、好ましくは2つの濾過スクリーン、好ましくは1つ又は複数の濾過スクリーンが塔型反応器の底部に配置されている濾過スクリーン、及び、圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、のうちの少なくとも1つを備える。
【0127】
ポンプの性能が許すのであれば、例えば高効率ポンプの場合、具体的には、いわゆる多孔金属板を用いてもよい。この場合、いわゆる多孔金属板を用いることが有利であるかもしれなく、例えば、(噴射ノズル)噴出口詰まりの潜在的なリスクがある。
【0128】
一実施形態では、本発明で定義されるように、フッ素化化合物を製造するための方法は、塔型反応器にて行われてもよく、この塔型反応器は充填床塔型反応器であり、好ましくは耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物(例えばRaschig充填物及び/又は金属充填物)を充填した充填床塔型反応器であり、より好ましくは、充填床塔型反応器は、耐単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物(例えばRaschig充填物及び/又は金属充填物)を充填したガス回路(洗浄器)システム(塔)である。
【0129】
別の実施形態では、本発明で定義されるように、フッ素化化合物を製造するための方法は、前記反応がa)の循環液体媒体と、塔型反応器に投入されたb)のフッ素化ガスとの逆流流動下で行われ、ここで、a)の循環液体媒体が出発化合物を含むか、又はそれからなり、かつb)のフッ素化ガスが高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなる。
【0130】
圧力弁は、反応に必要な圧力を保持し、任意の排気、例えば、フッ素化ガスに含まれる不活性キャリアガスを放出するために用いられ、適用可能である場合、反応から釈放する任意のフッ化水素(HF)と共に放出される。
【0131】
本発明で定義されるように、前記フッ素化化合物を製造するための方法は、例えばバッチ式で行われてもよく、それによって、前記フッ素化化合物を製造するための方法において、塔型反応器が充填床塔型反応器、好ましくは金属充填物を充填した充填床塔型反応器である。
【0132】
図1による充填塔は、高級ステンレス(1.4571)又はハステロイ(好ましくはハステロイC4)から作られ、その直径は100又は200mm(循環流速及び規模に依存する)であり、直径100mmの塔の場合、長さが3メートルであり、直径200mmの塔の場合、長さが6メートルであった。作られた塔には、Raschig(http://www.raschig.de/Fllkrper)から得られたそれぞれ直径が10mmであるE-TFE又はHDPTFE充填物又は金属充填物を充填した。充填物のタイプは非常に柔軟であり、以下に開示されている試験では、ハステロイから作られるラシヒリング(Raschigs)ポールリング(Pall-Rings)が使用された。かつ、E-TFE充填物は、Fガスを逆流方式で投入する際に、両者も大きな圧力低下(圧力損失)をもたらすことなく、同じ性能を示した。塔の構造材料としてのプラスチック(例えばHD-PTFE)も適切なものであるが、比較的低い圧力にのみ使用される。プラスチックを使用する場合、静電気を避けるための措置をとるべきである。
【0133】
本発明の任意の実施例で定義されるように、フッ素化化合物を製造するための方法では、反応は、a)の循環液体媒体と、塔型反応器に投入されたb)のフッ素化ガスとの逆流流動下で行われ、ここで、a)の循環液体媒体は、出発化合物を含むか、又はそれからなり、及びb)のフッ素化ガスは高濃度の単体フッ素(F)を含むか、又はそれからなる。
【0134】
マイクロ反応器プロセス:
本発明は、本発明の任意の実施例で定義されるように、フッ素化化合物を製造するための方法にも関する。ここで、前記方法は、連続プロセスであり、好ましくは、前記連続プロセスは、マイクロ反応器にて行われる。図2を参照されたい。
【0135】
一般的に、単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスは、目標フッ素化生成物に必要な化学量論比(場合によってやや過剰量)及びフッ素化度に基づいて、マイクロ反応器に投入され、反応速度に適合される。
【0136】
本発明は、1つ以上のマイクロ反応器を使用してもよく、即ち、本発明は、容量又は滞留時間を延長するために、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のマイクロ反応器、例えば、10個の並列のマイクロ反応器又は直列の4つのマイクロ反応器を使用してもよい。1つより多くのマイクロ反応器を使用する場合、複数のマイクロ反応器は、順序的に、又は並列的に配置されてもよく、そして、3つ又はそれ以上のマイクロ反応器を使用する場合、それらのマイクロ反応器は、順序的に配置されてもよいし、並列的に配置されてもよく、又は両方を兼ねてもよい。
【0137】
本発明は、本発明の直接フッ素化が、任意に、連続流反応器システム又は好ましくはマイクロ反応器システムにて行われる一実施形態においても非常に有利である。
【0138】
一好適な実施形態では、本発明は、上記により詳細にさらに定義されるように、反応が連続プロセスで少なくとも1つのステップにて行われ、連続プロセスが少なくとも1つの連続流反応器にて行われ、この反応器の上部幅方向寸法が約≦5 mm又は約≦4 mmである、本発明によるフッ素化化合物を製造するための方法に関する。
【0139】
別の好適な実施形態では、本発明は、少なくとも1つの前記連続流反応器、好ましくは少なくとも1つのマイクロ反応器が、独立して、SiC連続流反応器であり、好ましくは、独立してSiCマイクロ反応器である、このような本発明による化合物を製造するための方法に関する。
【0140】
連続流反応器とマイクロ反応器:
上記に加えて、本発明の一態様によれば、本発明方法で使用されるか、及び上記に記載の植物工学発明がさらに提供され、任意の、及び本発明の方法のいくつかの実施形態における方法に関し、この方法は、さらにマイクロ反応器にて実施されることが好ましい。
【0141】
用語「マイクロ反応器(microreactor)」について:本発明の一実施形態では、「マイクロ反応器」又は「マイクロ構造反応器(microstructured reactor)」又は「マイクロチャネル反応器(microchannel reactor)」は、化学反応が約≦1mmの典型的な幅方向寸法である制限領域(confinement)で行われる装置であり、このような制限領域の典型形態の具体的な例は、マイクロチャネルである。一般的に、本発明の文脈では、用語「マイクロ反応器」、「マイクロ反応器」又は「マイクロ構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」は、化学反応が約≦5mmの典型的な幅方向寸法である制限領域で行われる装置を示す。
【0142】
マイクロプロセス工学の分野において、マイクロ反応器及び物理プロセスが発生する他の設備(例えば、マイクロ熱交換器)について研究している。マイクロ反応器は、通常、連続流反応器(バッチ式反応器とは対照的である)である。従来規模の反応器に比べて、マイクロ反応器は、エネルギー効率、反応速度と収率、安全性、信頼性、可拡張性、現場/オンデマンド製造及びより精細のプロセス制御などの方面の巨大な改良を含む多くの利点を提供する。
【0143】
マイクロ反応器は、「流動化学」において化学反応が行われるために用いられる。
【0144】
流動化学では、一般に、マイクロ反応器を用いて、化学反応がバッチ式生産ではなく連続流動の流れで行われる。バッチ式生産は、一連のワークステーションを介して生産対象を段階的に作成して、異なるロットの製品を製造する製造用の技術である。作業生産(一括生産)、大規模生産(フロー生産又は連続生産)と共に、3大生産方式の1つである。逆に、流動化学では、化学反応は、ポンプが流体を管内に移動させ、そして、管が互いに接続され、流体が互いに接触させる連続流動の流れで行われる。これらの流体が反応性であれば、反応する。大量の所定材料を製造する時に、流動化学は、大規模応用に用いられる公認の技術である。しかしながら、この用語は、近年、実験室規模でのみ応用されている。
【0145】
例えば、マイクロ反応器として用いられる連続流反応器は、通常、管状のものであり、そして、従来の技術において公知であり、そして、可能なエッチ液及び/又は反応物の具体的な目的と特性に依存する非反応性材料から作られる。混合方法は、例えば反応器の直径が狭い(例えば<1mm)場合、例えばマイクロ反応器と静的混合器において単独拡散することを含む。連続流反応器は、(伝熱、時間及び混合を含む)反応条件を良好に制御することができる。反応器内での試薬の滞留時間、即ち、反応が加熱又は冷却される時間は、反応器の体積と通過する流速から計算される:滞留時間=反応器体積/流速。そのため、より長い滞留時間を獲得するために、試薬をより緩やかにポンプ輸送してもよく、より大きい体積の反応器を使用してもよく、及び/又はさらにいくつかのマイクロ反応器を直列に配置してもよく、任意に、反応ステップを完了させるために必要であれば、それらの間にいくつかの円筒のみを配置して滞留時間を増加させてもよい。後者の場合、各マイクロ反応器後のサイクロン分離器は、形成されたHClが放出されることに寄与し、そして、反応性能に積極的な影響を与える。生産効率は、ミリリットル毎分からリットル毎時間まで様々であってもよい。
【0146】
流動反応器のいくつかの実例は、回転ディスク反応器(Colin Ramshaw)、旋状管反応器、多層流動反応器、振動流反応器、マイクロ反応器、熱交換反応器及び吸気式反応器である。吸気式反応器において、反応物を吸入させるように1種の試薬をポンプにより推進する。プラグ流反応器と管状流反応器について更に言及する。
【0147】
本発明では、一実施形態では、特に好ましくはマイクロ反応器を使用する。
【0148】
本発明による用途と方法において、好適な実施形態では、本発明はマイクロ反応器を使用する。しかし、本発明のより一般的な実施形態では、マイクロ反応器を使用する本発明の前記好適な実施形態に加えて、他の任意の反応器、本明細書で定義されるように、例えば、好ましくは上部幅方向寸法が最高約1cm管状連続流反応器を使用してもよいことは留意されるべきである。そのため、このような最高約≦5mm又は約≦4mm上部幅方向寸法を有する好適な連続流反応器は、本発明の好適な実施形態、例えば、好ましくはマイクロ反応器に関する。一連のSTRを連続作動させることは、別の選択であるが、マイクロ反応器を使用することに及ばない。
【0149】
本発明の前述した実施形態では、例えば、好ましくは管状連続流反応器の最小の幅方向寸法は、約>5mmであってもよいが、一般的に、1cmを超えない。そのため、例えば、好ましくは管状連続流反応器の幅方向寸法は、約>5mm~約1cmの範囲内にあってもよく、そして、そのうちの任意の値であってもよい。例えば、好ましくは管状連続流反応器の幅方向寸法は、約5.1mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5mm及び約10mmであってもよく、又は前記値の間の任意の値であってもよい。
【0150】
マイクロ反応器を使用する本発明の前述した実施形態では、好ましくはマイクロ反応器の最小幅方向寸法は、少なくとも約0.25mm、そして、好ましくは少なくとも約0.5mmであってもよいが、マイクロ反応器の最大幅方向寸法は、約≦5mmを超えない。そのため、例えば、好ましくはマイクロ反応器の幅方向寸法は、約0.25mm~約≦5mmの範囲内、そして、好ましくは約0.5mm~約≦5mmの範囲内にあってもよく、そして、その間の任意の値であってもよい。例えば、好ましくはマイクロ反応器の幅方向寸法は、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mmと約5mmであってもよく、又は前記値の間の任意の値であってもよい。
【0151】
前述したように、本発明の実施形態では、その最も広い意味は、上部横方向最高約1cmの管状連続流反応器を使用することが好ましい。このような連続流反応器は、例えばプラグ流反応器(PFR、plug flow reactor)である。
【0152】
プラグ流反応器(PFR)は、連続管型反応器(CTR)又はプラグ流れ反応器(piston flow reactor)と呼ぶ場合もあり、円柱幾何学的形状の連続流動システムにおいて化学反応を行い、記述するための反応器である。PFR反応器モデルは、重要な反応器変量、例えば、反応器の寸法を推定することができるように、このように設計された化学反応器の行為を予測するために用いられる。
【0153】
PFRを流れる流体を、反応器を流れる一連の無限薄いコヒーレンス「プラグ」にモデル化してもよく、各プラグは均一の成分を有し、反応器の軸方向上に移動し、各プラグの成分はその前後とは異なる。重要な仮定は、プラグがPFRを流れると、流体が軸方向(前方向又は後方向)上ではなく、径方向(即ち、横方向)上で完全に混合される。
【0154】
そのため、本明細書で本発明で使用される反応器のタイプを定義するための用語、例えば、「連続流反応器」、「プラグ流反応器」、「管型反応器」、「連続流反応器システム」、「プラグ流反応器システム」、「管型反応器システム」、「連続流システム」、「プラグ流システム」、「管状システム」は、互いに同義であり、かつ区別なく使用することができる。
【0155】
反応器又はシステムは、例えば、線形、環状、蛇行性、コイル式、渦巻き式、又はそれらの組み合わせである複数の管として配置されてもよい。例えば、渦巻き式であれば、反応器又はシステムは、例えば、図3に示されるように、渦巻き式又はイル管反応器、「渦巻き式反応器」(コイル管反応器)又は「コイル管システム」とも呼ばれる。例えば、環状であれば、反応器又はシステムは、例えば、図4に示されるように、環流反応器、「環流反応器」又は「環流システム」とも呼ばれる。図1に示される塔型反応器は、「環流反応器」又は「環流システム」ともみなされ、例えば、逆流(環流)システム(「逆ガス洗浄器システム」)とみなされる。
【0156】
径方向、即ち、横向方向において、このような反応器又はシステムは、最高約1cmの内径又は内断面寸法(即ち、それぞれ径方向寸法又は幅方向寸法)を有してもよい。そのため、一実施形態では、反応器又はシステムの幅方向寸法は、約0.25mm~約1cm、好ましくは約0.5mm~約1cm、より好ましくは約1mm~1cmであってもよい。
【0157】
さらに別の実施形態では、反応器又はシステムの幅方向寸法は、約>5mm~約1cm、又は約5.1mm~約1cmであってもよい。
【0158】
幅方向寸法が最高約≦5mm、又は最高約≦4mmである場合、反応器は「マイクロ反応器」と呼ばれる。そのため、よりさらに別のマイクロ反応器実施形態では、反応器又はシステムの幅方向寸法は、約0.25mm~約≦5mm、好ましくは約0.5mm~約≦5mm、より好ましくは約1mm~約≦5mmであってもよく、又は反応器又はシステムの幅方向寸法は、約0.25mm~約≦4mm、好ましくは約0.5mm~約≦4mm、より好ましくは約1mm~約≦4mmであってもよい。
【0159】
反応物が固体又は油性である場合、不活性溶媒を使用してもよい。そのため、固体及び/又は油性原料を使用すると、固体及び/又は油性原料を不活性溶媒に溶解する。上述のような任意の適切な不活性溶媒は、この方法に用いられてもよい。例えば、アセトニトリル、ギ酸、トリフルオロ酢酸、又は完全又は一部フッ素化されたアルカン、例えばペンタフルオロブタン(365mfc)、直鎖又は環状部分又は完全フッ素化されたエーテル、例えばCF-CH-OCHF(E245)又はオクタフルオロテトラヒドロフラン、及び単体フッ素(F)不活性に関連し、完全フッ素化された(又は少なくとも完全ペルハロゲン化の)溶媒、例えばCFCl、CFCl-CFClが好ましい。
【0160】
本発明の一つの代替的実施形態では、さらに任意に、マイクロ反応器以外の別の一つの連続流反応器を使用することが望ましい。好ましくは、例えば、ハロゲン化又はフッ素化に使用される(ハロゲン化促進、例えばハロゲン化又は好ましくはハロゲン化)触媒組成物が、反応過程において粘稠になるか、又は前記触媒として自体が粘稠である。この場合、連続流反応器は、下部幅方向寸法が上記マイクロ反応器の幅方向寸法、即ち、約1mmより大きいが上部幅方向寸法が約≦4mmである制限領域で化学反応が行われる装置である。そのため、連続流反応器を使用する本発明の代替的実施形態では、用語「連続流反応器」とは、好ましくは、典型的な横方向寸法が約≧1mm~約≦4mmである制限領域で化学反応が行われる装置を示す。本発明のこのような実施形態では、特に好ましくは、連続流反応器として、幅方向寸法を有するプラグ流反応器及び/又は管状流反応器を採用する。また、本発明のこのような実施形態では、マイクロ反応器を使用した実施形態に比べて、特に好ましくは、前記横方向寸法を有する連続流反応器、好ましくはプラグ流反応器及び/又は管状流反応器において、より高い流速を使用する。例えば、本明細書に示されるマイクロ反応器の典型的な流速に比べて、このようなより高い流速は、それぞれ約2倍高い、約3倍高い、約4倍高い、約5倍高い、約6倍高い、約7倍高い、又は任意の中間流速が約≧1~約≦7倍高い、約≧1~約≦6倍高い、約≧1~約≦5倍高い、約≧1約~≦4倍高い、約≧1~約≦3倍高い、又は約≧1~約≦2倍高いものである。好ましくは、本発明のこの実施形態で用いられる前記連続流反応器、より好ましくはプラグ流反応器及び/又は管状流反応器は、本明細書で定義されるマイクロ反応器に用いられる構造材料を配置する。例えば、このような構造材料は、ケイ素炭化物(SiC)及び/又は合金、例えば、高度耐腐食のニッケルクロムモリブデンタングステン合金、例えば、本明細書で記述したように、マイクロ反応器用のHastelloy(登録商標)である。
【0161】
本発明の非常に特殊な利点の一つは、前記幅方向寸法を有するマイクロ反応器又は連続流反応器を使用して、分離ステップの数を減少及び簡略化し、そして、時間及びエネルギー消費、例えば、中間蒸留ステップを回避したことである。特に、本発明の特別な利点の一つは、前記幅方向寸法を有するマイクロ反応器又は連続流反応器を使用して、簡単な相分離方法を用いて分離することができ、そして、未消費の反応成分をプロセスに再循環させるか、又は製品自体として、必要に応じて利用されることができることである。
【0162】
本発明によるマイクロ反応器を使用する本発明の好適な実施形態に加えて、マイクロ反応器を使用することに加えて、又は代替として、プラグ流反応器又は管状流反応器をそれぞれ使用することが可能である。
【0163】
プラグ流反応器又は管状流反応器及びそれらの動作条件は、当業者に知られている。
【0164】
本発明では、場合によっては、特に好ましくは上部幅方向寸法がそれぞれ約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器、特にマイクロ反応器を使用するが、マイクロ反応器を省略し、それぞれプラグ流反応器又は乱流反応器を採用する人が想定されると、収率損失、より長い滞留時間、より高い温度に伴うことは当然である。しかしながら、上述した可能性のある不利な収率損失は潜在的利点を有する可能性があることに留意されたい。即ち、プラグ流反応器の管又は通路の直径がマイクロ反応器の管又は通路の直径よりも大きいため、発生可能の詰まりを減少させるという利点である(非最適駆動方式でタール顆粒を形成する)。
【0165】
しかしながら、プラグ流反応器又は管状流反応器を使用するこのような変化形に潜在的に存在する欠点は、主観的な観点のみとみなされる場合もあるが、別の態様では、地域又は生産施設のいくつかのプロセスの制約下で、依然として適切なものである可能性があり、他の利点又は制限を回避したことを考慮し、収率損失はあまり重要ではないこととみなされ、さらに許容されてもよい。
【0166】
以下では、マイクロ反応器を使用する場合、本発明についてより具体的に説明する。好ましくは、本発明による使用されるマイクロ反応器は、セラミック連続流反応器であり、より好ましくは、SiC(ケイ素炭化物)連続流反応器であり、そして、様々な寸法の材料の製造に用いられることができる。一体化された熱交換器とSiC構造材料において、挑戦的な流動化学応用のために最適な制御を提供した。流量発生反応器のコンパクト化及びモジュール化構造は、異なるプロセスタイプに対する長期的な柔軟性、一定の範囲の生産量(5~400l/h)獲得、空間が限られた場所に化学生産強化、未実証の化学的相容性と熱制御を有利に実現した。
【0167】
セラミック(SiC)マイクロ反応器は、例えば、有利に拡散結合された3M SiC反応器、特に、無半田と無金属、FDAによって認証された構造材料、又は他の薬物規制機関(例えば、EMA)によって認証された構造材料の優れた伝熱及び物質移動、優れた化学的相容性を提供する反応器である。ケイ素炭化物(SiC)は金剛砂とも呼ばれ、ケイ素と炭素を含み、そして、当業者に知られている。例えば、大量合成され、そして多くの技術応用に加工されているSiC粉末がある。
【0168】
例えば、本発明の実施形態では、前記目的は、少なくとも1つの反応ステップがマイクロ反応器にて行われる方法によって実現される。特に、本発明の好適な実施形態では、前記目的は、少なくとも1つの反応ステップが、SiCを含むか、又はそれから作られたマイクロ反応器(「SiC-マイクロ反応器」)にて行われるか、又は合金、例えば、ハステロイC(Hastelloy C)を含むか、又はそれからなるマイクロ反応器にて行われる方法によって実現され、以下で、それぞれより詳細に定義される。
【0169】
そのため、例えば、これに限定するものではないが、好ましくは工業生産に適用したマイクロ反応器は、SiC(ケイ素炭化物、例えばダウコーニング(Dow Corning)によって、又はChemtrix MR555 Plantrixによって提供されるG1型SiC)を含むか、又はそれからなる「SiCマイクロ反応器」であり、例えば、約5-約400 kg/hの生産能力を提供する。又はこれに限定されるものではなく、例えば、本発明の別の実施形態では、工業生産に適用したマイクロ反応器は、Ehrfeldによって提供されるハステロイCを含むか、又はそれからなる。このようなマイクロ反応器は、特に、好ましくは工業上で本発明のフッ素化生成物を製造することに適用する。
【0170】
生産規模レベルの流動反応器の機械的と化学的要求を満たすために、Plantrixモジュールは、3MTMSiC(C級)から作られる。特許を取得した3M(EP1637271B1及び海外特許)拡散接着技術を用いて得られた反応器全体は、気密性があるものであり、そして、溶接ライン/継手及びロウ剤を有さない。Chemtrix MR555 Plantrixについてのより多くの技術情報は、全体として参照によって本明細書に組み入れられるChemtrix BVが2017年に出版した小冊子<CHEMTRIX-拡張可能流動化学-技術情報Plantrix(登録商標) MR555シリーズ、(CHEMTRIX-Scalable Flow Chemistry-Technical Information Plantrix(登録商標) MR555 Series)>において見出すことができる。
【0171】
前述した実施例に加えて、本発明の別の実施形態では、通常、他の製造業者からの、かつ当業者に知られているSiCは、本発明に用いられてもよいことは言うまでもない。
【0172】
そのため、本発明では、マイクロ反応器としてChemtrix社によって提供されるProtrix(登録商標)を用いてもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)ケイ素炭化物から作られたモジュール化連続流反応器であり、優れた耐薬品性と伝熱性を提供する。流動反応器の機械的と化学的要求を満たすために、Protrix(登録商標)モジュールは、3M(登録商標)SiC(C級)から作られる。特許を取得した3M(EP1637271B1及び海外特許)拡散接着技術を用いて製造された反応器全体は、気密性があるものであり、そして、溶接ライン/継手及びロウ剤を有さない。この製造技術は、固体SiC反応器(熱膨張率=4.1x10-6-1)を生成する生産方法である。
【0173】
Protrix(登録商標)は、0.2~20ml/minの流速及び最高25バールの圧力のために設計され、ユーザが実験室レベル上で連続流プロセスを開発し、その後、材料製造のためのPlantrix(登録商標) MR555(×340比例係数)に移行することを可能にする。Protrix(登録商標)反応器は、拡散結合された3M(登録商標)SiCモジュール、素晴らしい熱制御と優れた耐薬品性を提供する一体化熱交換器、標準通風室においてg級の極端反応条件を安全に使用でき、試薬注入数、容量又は反応時間の方面では効率的かつ柔軟に生産できるという利点を有する流動反応器である。Protrix(登録商標)流動反応器の汎用仕様は、以下で概述するように、可能な反応タイプが、例えばA+B→P1+Q(又はC)→Pであり、ここで、用語「A」、「B」及び「C」は遊離体を表し、「P」及び「P1」は生成物を表し、及び「Q」はクエンチャーを表す。通過量(throughput)(ml/min)は約0.2~約20、通路寸法(mm)は1×1(予熱と混合領域)、1.4×1.4(滞留通路)、試薬投入は1~3、モジュール寸法(幅×高さ)(mm)は110×260、枠寸法(幅×高さ×長さ)(mm)は約400×300×250、モジュール/枠の数は1つ(最小)~4つ(最大)である。Chemtrix MR555 Plantrixについてのより多くの技術情報は、全体として参照によって本明細書に組み入れられるChemtrix BVが2017年に出版した小冊子<CHEMTRIX-拡張可能流動化学-技術情報Plantrix(登録商標) MR555シリーズ、(CHEMTRIX-Scalable Flow Chemistry-Technical Information Plantrix(登録商標) MR555 Series)>において見出すことができる。
【0174】
ダウコーニング社によって提供されるG1型SiCマイクロ反応器は工業生産に用いられてもよく、そして、プロセス開発と小規模生産にも適用しており、その寸法特徴は、典型的な反応器寸法(長さ×幅×高さ)が88cm×38cm×72cm、典型的な流体モジュール寸法が188mm×162mmである。ダウコーニングによって提供されるG1型SiCマイクロ反応器の特徴は、優れた混合と熱交換、特許を取得したHEART設計、内部容積が比較的小さく、滞留時間が比較的長く、高度柔軟及び多用途、高薬品耐久性により高pH値の化合物、特にヒドロフルオロ酸に適用できること、構造材料用の混合ガラス/SiC溶液、他の先進流動反応器と無差別(seamless scale-up)に拡大できることにまとめられることができる。ダウコーニングによって提供されるG1型SiCマイクロ反応器の典型的な仕様は、流速が約30ml/min~約200ml/min、動作温度が約-60℃~約200℃、動作圧力が最高約18バール(「barg」とは、ゲージ圧の単位、即ち、バールを単位としての環境又は大気圧である)、使用材料がケイ素炭化物、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、パーフルオロエラストマー、内部容積が10mlである流体モジュールであり、オプション:例えば、FDA又はEMAによって提供される規制機関認証。ダウコーニングによって提供されるG1型SiCマイクロ反応器の反応器構造の特徴は、様々な用途及びカスタム配置可能である。前記反応器上の任意の部位に注入点を追加してもよい。
【0175】
Hastelloy(登録商標)Cは、式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、又は「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)-C22」とも呼ばれる。前記合金は、周知の高耐食ニッケルクロムモリブデンタングステン合金であり、そして、優れた抗酸化還元性と混合酸の性能を有する。前記合金は、排気脱硫黄工場、化学工業、環境保全システム、ゴミ焼却場、廃水処理工場に用いられている。前述した例に加えて、本発明の別の実施例では、一般的に、他の製造業者からの、かつ当業者に知られているニッケルクロムモリブデンタングステン合金も本発明に用いられてもよい。このようなニッケルクロムモリブデンタングステン合金の典型的な化学組成(いずれも重量%で計算される)は、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、少なくとも約51.0%、例えば主成分(余剰量)としてのNi(ニッケル)が少なくとも約51.0%~約63.0%、約20.0%~約22.5%のCr(クロム)、約12.5%~約14.5%のMo(モリブデン)、約2.5%~3.5%のW(それぞれタングステン(tungsten)又はウォルフラム(wolfram)である)、及び最高約6.0%、例えば約1.0%~約6.0%、好ましくは約1.5%~約6.0%、より好ましくは約2.0%~約6.0%であるFe(鉄)。任意に、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、Co(コバルト)の合金における存在量は、最高約2.5%、例えば約0.1%~約2.5%の範囲内にあってもよい。任意に、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、V(バナジウム)の合金における存在量は、最高約0.35%、例えば約0.1%~約0.35%の範囲内にあってもよい。なお、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、任意に、少量(即ち、≦0.1%)の他の微量元素、例えば、C(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)が独立して存在する。少量(即ち、≦0.1%)他の元素の場合、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、前記元素、例えばC(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、それぞれ独立して存在量が最高約0.1%であってもよく、例えばそれぞれ独立して約0.01%~約0.1%の範囲内、好ましくはそれぞれの量が独立して最高約0.08%、例えばそれぞれ独立して約0.01%~約0.08%の範囲内にある。例えば、合金総組成の各百分比が100%であることに基づき、前記元素、例えばC(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、それぞれ独立して、C≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の量で存在してもよく、各値は、丸め値である。一般的に、上述した合金組成において、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかの微量元素も見つからない。
【0176】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、溶接問題を緩和した世界初めての鍛造ニッケルクロムモリブデン材料(極めて低い炭素とケイ素含有量により)である。そのため、化学プロセスと関連業界で幅広く受け入れられ、多くの耐食性化学薬品でその性能が証明され、既に50年の歴史がある。他のニッケル合金と同様に、圧延性を有し、成形及び溶接しやすく、そして、塩素含有溶液中で優れた耐応力腐食割れ性(オーステナイトステンレスが分解しやすい形態)を有する。その高クロムとモリブデン含有量によって、酸化性と非酸化性酸に耐えることができ、そして、塩化物と他のハロゲン化物が存在する場合でも、優れた耐孔食と細隙侵食能力を示した。総組成物が100%であることに基づき、重量%で計算される公称成分は、Ni(ニッケル)57%(余剰量)、Co(コバルト)2.5%(最大値)、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(それぞれタングステン(tungsten)又はウォルフラム(wolfram)である)4%であり、含有量が比較的低い他の成分は、最高1%(最大値)のMn(マンガン)、最高0.35%(最大値)のV(バナジウム)、最高0.08%(最大値)のSi(ケイ素)、0.01(最大値)のC(炭素)、最高0.5%(最大値)のCu(銅)である。
【0177】
本発明の別の実施形態では、例えば、これに限定するものではないが、前記生産に適用しており、好ましくは前記工業生産に適用するマイクロ反応器は、建築材料として(ケイ素炭化物:例えばダウコーニング社又はChemtrix MR555 Plantrixによって提供されるG1型SiC)ケイ素炭化物を含むSiCマイクロ反応器であり、例えば、約5~約400kg/hの生産能力を提供する。
【0178】
本発明によれば、もちろん、本発明によるフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産では、1つ又は複数のマイクロ反応器、好ましくは1つ又は複数のSiCマイクロ反応器を使用してもよい。本発明によるフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産では、1つ以上のマイクロ反応器、好ましくは1つ以上のSiCマイクロ反応器を使用する場合、これらのマイクロ反応器、好ましくはこれらのSiCマイクロ反応器は、並列及び/又は順序に配置使用されてもよい。例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のマイクロ反応器、好ましくは、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のSiCマイクロ反応器は、並列及び/又は順序に配置使用されてもよい。
【0179】
実験室研究にとって、例えば、適用の反応及び/又は拡大条件下で、例えば、これに限定するものではないが、マイクロ反応器としてChemtrix社のPlantrix型反応器は適切である。場合によって、マイクロ反応器のガスケットがHDPTFE以外の別の材料から作られ、短時間操作後に膨潤によるすぐに漏れが発生するため、HDPTFEガスケットを介してマイクロ反応器及び関連する沈降器と蒸留塔のような他の設備部品の長時間運転を保証する。
【0180】
例えば、工業流反応器(「IFR」、例えば、Plantrix(登録商標)MR555)は、(湿潤化されていない)ステンレスフレーム内に収容されたSiCモジュール(例えば、3M(登録商標)SiC)を含み、このモジュールを介して標準Swagelokアクセサリーを用いて投入ラインと動作媒体とを接続することができる。動作媒体(熱流体又は蒸気)と組み合わせて使用する場合、モジュール内でプロセス流体を、一体化熱交換器を用いて加熱又は冷却し、鋸歯形又は双鋸歯形通路構造で反応させ、プラグ流を提供するとともに、高熱交換能力を有するように設計されている。基本的なIFR(例えば、Plantrix(登録商標)MR555)システムは、1つのSiCモジュール(例えば、3M(登録商標)SiC)と、A+B→Pタイプの反応経路を提供する混合器(「MRX」)とを含む。モジュール数の増加により、反応時間及び/又はシステム収率の向上をもたらす。クエンチングQ/Cモジュールを追加することは、反応タイプをA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡張し、そして、遮蔽板(blanking plate)により2つの温度領域を提供する。ここで、用語「A」、「B」及び「C」は遊離体を表し、「P」及び「P1」は生成物を表し、「Q」はクエンチャーを表す。FFKM(パーフルオロゴム又は高フッ素量含有量のパーフルオロエラストマー化合物)は、このようなガスケットに適用した別の非常に新規な適切な材料である(市販可能:FFPMと呼ばれる場合もある)。FFKM(FFPMに相当する)は、FKMフッ素含有エラストマーよりも高量のフッ素を含むパーフルオロエラストマー化合物である。FKMは国際標準で定義されたフッ素含有エラストマー材料であり、FPMに相当する。全てのFKMは、モノマーとしてフッ化ビニリデンを含む。それらは追加の耐熱性と耐薬品性を提供する。
【0181】
工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な寸法は、通路寸法(mm)は、4×4(「MRX」、混合器)と5×5(MRH-I/MRH-II、「MRH」は滞留モジュールを表す)であり、モジュール寸法(幅×高さ)は、200mm×555mmであり、枠寸法(幅×高さ)は、322mm×811mmである。工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的な通過量は、例えば約50l/h~約400l/hである。さらに、使用される流体特性及びプロセス条件に従って、工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の通過量は、例えば、>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、必要な反応体積又は収率を搬送するために、直列に配置されてもよい。直列に配置可能なモジュールの数は、流体特性及び目標流速に依存する。
【0182】
工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な動作又はプロセス条件は、例えば、約-30℃~約200℃の温度範囲、温度差(動作-プロセス)<70℃、試薬投入1~3、約200℃の温度下、最大動作圧力(動作流体)約5バール、約≦200℃の温度下、最大動作圧力(プロセス流体)約25バールである。
【0183】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0184】
実施例1:
3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボアルデヒド(DFMPA)を3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸フッ化物(5F-DFMPAF)にバッチ式でフッ素化した。
【化15】
【0185】
原料3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボアルデヒドは、EP2008996に従ってジフルオロアセトンから製造され、ジフルオロアセトンは、EP0623575及びCN103214355に従ってジフルオロアセト酢酸エチルから製造された。
【0186】
氷浴中の還流凝縮器、磁気撹拌機、及びガス入口管を備えた500 mlPTFEフラスコに、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボアルデヒド50 g(0.312 mol)を50 ml無水アセトニトリルに溶解し、20% F/80% N流れを入口管を介して、溶液を5℃以上に加熱せずにゆっくりと溶液に供給した。HPLCにより原料転化率を観察した。F投入1時間後(放熱活性が観察されなくなった後に停止する)、原料の定量転化を検出することができた。後処理(work up):Fガスの代わりに入口管を介して投入されるN流れを用いて、等モル形成されたHFをパージした。離れたガス流れを有効なKOH洗浄器に投入した。フラスコから離れたガス流れ中でHFが検出されなくなった後、残りの結晶溶液における溶媒を真空で蒸発させて、黄色油を残した。GCは、内部標準としてスチレンを用い、71%の収率に対応する434 gの3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸フッ化物(5F-DFMPAF)の存在(Hewlett Packard 6890ガスクロマトグラフィー5973質量分析装置、50 m Carbowax CP-Sil 8カラム分析化合物を用いた)を示した。
【0187】
GC-MS: m/z = 196。
【0188】
実施例2:
3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(DFMP)を3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(5F-DFMP)にバッチ式でフッ素化した。
【化16】
【0189】
実施例1の磁気撹拌機に用いた装置に、乾燥CHCN 50 mlを予め入れておく。次いで、WO2012/010692に従って製造した50g(245 mmol)3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(参照試料はSigma-Aldrich/Merckから購入した)を溶解し、フラスコを氷浴に入れた。次いで、放熱活性(~80 min)が観察されなくなるまで20% Fガスを40℃以下の温度で深管に投入した。HPLCにより原料の定量転化率を測定した。後処理(work up):Fガスの代わりに入口管を介して投入されるN流れを用いて、等モル形成されたHFをパージした。離れたガス流れを有効なKOH洗浄器に収集した。フラスコから離れたガス流れ中でHFが検出されなくなった後、残りの油性溶液における溶媒を真空で蒸発させて、油を残した。GC分析は、内部標準としてスチレンを用い、67%の収率に対応する36.5gの3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステルの存在を示した。イソプロパノール/水から再結晶して、28gの純度が99.2%(GC-)である3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステルを得た。
【0190】
実施例3:
3-(クロロジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(CDFMP)を3-(クロロジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(5F-CDFMP)にバッチ式でフッ素化した。
【化17】
【0191】
実施例1の磁気撹拌機に用いた装置に、乾燥CHCN 50 mlを予め入れておく。次いで、WO2012010692に従って製造した35 g(147 mmol)3-(クロロジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(CDFMP)を溶解し、フラスコを氷浴に入れた。次いで、放熱活性(~45 min)が観察されなくなるまで20% Fガスを、50℃を超えない温度で深管に投入通過した。HPLCにより原料の定量転化率を測定した。後処理(work up):Fガスの代わりに入口管を介して投入されるN流れを用いて、等モル形成されたHFをパージした。離れたガス流れを有効なKOH洗浄器に収集した。フラスコから離れたガス流れ中でHFが検出されなくなった後、残りの油性溶液における溶媒を真空で蒸発させて、一部の結晶された油を残した。イソプロパノール/水から再結晶して、21.9 g3-(クロロジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(5F-CDFMP)を得、WO2015/110493に従って分析用の参照試料を製造した。これは、58%の収率に対応した。GC分析は、純度が>99.0%であることを示した。
【0192】
実施例4:
逆流装置にて、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アシルクロリド(DFMAC)を3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸フッ化物(5F-DFMAF)にバッチ式でフッ素化した。
装置及び反応は図1を参照されたい。
【化18】
【0193】
装置:逆流システムは、CN 111349018に示されるように、ハステロイC4から作られた。液体貯蔵槽には、液体、例えば油状原料又は任意に、不活性溶媒における原料を含む。
【0194】
フッ素化過程の圧力は、圧力弁によって維持された。不活性ガスは、反応中にパージガスとして(のみ)極めて微量のHFと共に放出された(HFはアシルフルオロと連続的に反応するので)。冷却器の場合、水温8℃の水冷却システムを用いた。逆流装置では、頂部の圧力弁を3バール(絶対圧力)に設定し、総体積を5 l(図面参照)とし、2.5 lの無水アセトニトリルを溶媒として、WO2008/053043中の実施例6に従ってSOClを用いて製造した200 g(1.03 mol)の3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アシルクロリド(DFMAC)と共に充填した。ポンプを作動させた。アセトニトリルの温度が20℃(回路開始後26℃から)に達したとき、20%F用量弁(質量流量計はBronkhorstから購入した)を1 mol Fガス(20%、N中で)の用量で開いた。全てのパージガス(N)は、形成されたHFの大部分と共に圧力弁を介して装置から離れ、非常に少ない微量Fと共に基本的な洗浄器システム(プラスチック製)に入った。41.8 g (1.1 mol)Fガス(20%)を合計1.25 h以内にこの循環反応混合物に投入し、投入1 h後に、この前に観察された放熱活性が遅くなり始めた。15分ごとに、ステンレス円筒(完全に密封されたサンプリングシステム)を用いて反応試料を注意深く取り出し、真空ポンプで蒸発させることによってHF(及び揮発物)を脱ガスし、残渣及び反応プロセスをHPLCにより分析した。投入を停止した後、分析は、原料が完全に消失したことを示した(転化率100%)。溶媒を真空蒸発させ、黄色油状物を残し、GC-MSにより純度が96である生成物であることが確認され、現在このような形態の油状物は、さらに精製せずに多くの反応に用いることができる。
【0195】
GC-MS: m/z = 196。
【0196】
実施例5:
マイクロ流れシステムにて、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アシルクロリド(DFMAC)を3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アシルクロリド(5F-DFMAF)に転化した。
装置及び反応は図2を参照されたい。(スキームマイクロ反応器フッ素化)
【化19】
【0197】
3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アシルクロリド1000 g(5.14 mol)を1.0 l無水アセトニトリルに溶解し、抽出するように原料貯蔵槽に入れた。マイクロ反応器はChemtrix製の27 ml体積のSiCマイクロ反応器であった。使用されたポンプはLewa製のものであり、各材料投入はbBronkhorst質量流制御器によって制御された。
【0198】
フッ素電解槽からの高濃度のFを20%Nに混合し、ポンプ後に化学量論比量でマイクロ反応器に投入し、このマイクロ反応器は、冷却により40℃に保持して強放熱活性を除去した。1 l/hで原料貯蔵槽から投入開始し、その後、直ちにDFMACに相対する化学量論比量でFを投入開始した。システムの圧力は、原料/未精製生成物貯蔵槽(体積5 l、ハステロイC4から作られた)上の圧力弁を介して3バール(絶対圧力)に保持され、この貯蔵槽は、室温下で保持され、そして、不活性ガス流れ内容物(N)は、いくつかのHFと共に装置から離れることを可能にするが、CHCN(アセトニトリル)に溶解した全ての未精製生成物を収集した。この間で行ったHPLC分析は、原料の定量転化率を示した。材料投入を完了し、全ての弁を閉じた後、軽微なな真空(全ての微量のHFも除去する)を添加することによって、未精製生成物貯蔵槽中の内容物を脱ガスし、その後、回転蒸発器上に20ミリバールで濃縮し、純度が98%である黄色油状生成物を生成した(GC及びGC-MSによって確認された)。注釈:推定によると、このような装置配置は、はるかに高い材料投入(より高い生産効率)を可能にする。
【0199】
実施例6:
実施例5を繰り返したが、マイクロ反応器をハステロイC4(長さ1 m、直径:0.5 cm)から作られたコイル式反応器に交換した。
装置及び反応は図3を参照されたい。
【0200】
フッ素電解槽からの高濃度のFを20%Nに混合し、ポンプ後に化学量論比量で、冷却により40℃に保持したコイル式反応器に投入した。1 l/hで原料貯蔵槽から投入開始し、その後、直ちにFを投入開始した。システムの圧力は、原料/未精製生成物貯蔵槽(体積5 l、ハステロイC4から作られた)上の圧力弁を介して3バール(絶対圧力)に保持され、この貯蔵槽は、冷却により室温下で保持され、そして、不活性ガス流れ内容物(N)は、極めて微量のH(~<1000 ppm)Fと共に装置から離れることを可能にするが、最終的に、該部に全ての時間内の未精製生成物を収集した。投入間及び1時間後に行ったHPLC分析は、実施例5に相対する定量転化率も示したが、得られた3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸フッ化物に対する選択性が77%+副生成物の混合物のみであった。これはコイル式反応器において、熱交換がホットスポットを避けるのに十分に良好ではない可能性があることを示した。この実験は更なる後処理しなかった。
【0201】
実施例7:
ハステロイC4から作られたコイル式反応器(長さ1 m、直径:0.5 cm)にて、HF及び溶媒としての希釈されたFにおいて、3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(DFMP)を3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステルに連続フッ素化した。
【0202】
3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステル(DFMP)1000 g(4.90 mol)を909 g(1.0 l)無水HFに溶解(予備混合)し、実施例6にプロット及び使用したように装置内の原料貯蔵槽に入れた。ポンプはLewa製のものであり、各材料投入はbBronkhorst質量流制御器によって制御された。円筒からのF(20%、N中で)を投入材料として使用し、反応中に外部冷却により35℃に保持したDFMPに相対する化学量論比量でコイル式反応器に入った。まず、1 l/hで原料貯蔵槽から投入開始し、その後、直ちにFを投入開始した。システムの圧力は、原料/未精製生成物貯蔵槽(体積5 l、ハステロイC4から作られた)上の圧力弁を介して10バール(絶対圧力)に保持され、この未精製生成物収集器は、外部冷却により室温下で保持されるが、不活性ガス流れ内容物(N)が少量のHFと共に離れて有効洗浄器に入ることを可能にする。投入開始10分後、40分後、及び1000 gのDFMP投入が完了した後、取り出した加水分解及び中和された試料のHPLC分析は、67%の転化率及び3-(ジフルオロメチル)-5-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エステルに対する選択性98%+微量だけの副生成物を示し、全ての副生成物は類似した組成物であった。この実験は更なる後処理しなかった。
図1
図2
図3
【国際調査報告】