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特表2023-539395パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)を製造するための工業プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)を製造するための工業プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/24 20060101AFI20230907BHJP
   C07C 43/17 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 41/22 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 43/12 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 41/58 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C07C41/24
C07C43/17
C07C41/22
C07C43/12
C07C41/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578201
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2021-12-30
(86)【国際出願番号】 CN2021120887
(87)【国際公開番号】W WO2022111033
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020131159.1
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519299739
【氏名又は名称】福建永晶科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN YONGJING TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6, Jin Ling Road, Jin Tang Industry Park, SHAOWU NANPING, Fujian 354003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】キュイ、ウェンロン
(72)【発明者】
【氏名】リュオ、ウェイフェン
(72)【発明者】
【氏名】キウ,リョンゾウ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC13
4H006AC30
4H006AD11
4H006BA91
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BD81
4H006BD84
4H006BM10
4H006BM71
4H006BP10
4H006GP01
4H006GP20
(57)【要約】
本発明は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するための新規工業プロセス、液相反応、及び例えば、それぞれ(密閉)塔型反応器又はマイクロ反応器にて反応が行われることに関する。本発明は、化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)に対してHF除去が行われることにより、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造する新規工業プロセスにも関する。本発明は、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を選択的にフッ素化し、即ち、化合物HFE-254のCHO基(即ち、メチルオキシ)のパーフルオロ化のみをCFO-基(即ち、トリフルオロメトキシ)に選択的にフッ素化することにより、化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造する新規工業プロセスにも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスであって、
【化1】
前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムでの直接フッ素化反応(A)と、除去HF反応(B)のステップとを含み、
(A)第一反応ステップにおいて、式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を反応させることにより、直接フッ素化し、
【化2】
フッ素化ガスに含まれる約化学量論量の元素状フッ素(F)を用いて、式(III)化合物において式(III)の化合物HFE-254の1-(メチルオキシ)基の3つの水素原子を選択的に置換し、そして、約0℃ないし約+60℃範囲内の温度下で
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で反応が行われ、
式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)が生成され、
【化3】
分離及び/又は精製(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)のある又はなく、好ましくは分離及び/又は精製(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)がなく、
(B)第二反応ステップにおいて、除去反応が行われ、ここで、ステップ(A)で得られた式(II)の(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)からHF(フッ化水素)を除去し、そして、除去反応は以下のように行われ、
(i)1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、(放熱)除去反応として、
及び/又は
1つ又は複数の無機塩基の存在下で、
ここで、前記(放熱)除去反応の温度が約60℃を超えない温度に制御され、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で前記(放熱)除去反応が行われ、
又は
(ii)式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)が生成されるために、
約60℃ないし約120℃範囲内の温度下で、非触媒又は好ましくは触媒、より好ましくはNi(ニッケル)触媒の熱除去反応として、

(C)ステップ(B)で得られた式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を反応器又は反応器システムから取り出して収集し、

(D)任意に、式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を分離及び/又は精製する、ことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスであって、
【化4】
前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムにて、HF除去反応ステップ(B)が行われることを含み、前記除去反応において、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)からHF(フッ化水素)を除去し、
【化5】
そして、以下のように前記除去反応ステップ(B)が行われ、
(i)1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、(放熱)除去反応として、
及び/又は
1つ又は複数の無機塩基の存在下で、
ここで、前記(放熱)除去反応の温度が約60℃を超えない温度に制御され、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で前記(放熱)除去反応が行われ、
又は
(ii)式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)が生成されるために、
約60℃ないし約120℃範囲内の温度下で、非触媒又は好ましくは触媒、より好ましくはNi(ニッケル)触媒の熱除去反応として、

(C)ステップ(B)で得られた式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を前記反応器又は反応器システムから取り出して収集し、

(D)任意に、式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を分離及び/又は精製する、ことを特徴とするプロセス。
【請求項3】
式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、
【化6】
前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムにて、直接フッ素化反応ステップ(A)が行われることを含み、前記直接フッ素化反応において、式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)は、
【化7】
式(III)の化合物中において、式(III)の化合物HFE-254の1-(メチルオキシ)基の3つの水素原子をフッ素で選択的に置換するために、フッ素化ガス中に含まれる約化学量論量の元素状フッ素(F)でフッ素化され、そして、
式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)が生成されるために、
約0℃ないし約+60℃範囲内の温度及び約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で、反応が行われ、
【化8】
(C)ステップ(A)で得られた式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を前記反応器又は反応器システムから取り出して収集し、
(D)任意に、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を分離及び/又は精製する、ことを特徴とするプロセス。
【請求項4】
逆流反応器システム、特に、在ループ型反応器システム、又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にて前記フッ素化(A)反応が行われ、及び
フッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度範囲は、体積に基づいて計算される前記Fフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約1%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)であり、
好ましくは、ここで、
(i)前記Fフッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度範囲は、体積に基づいて計算される約1%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約30%の元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約5%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約25%の元素状フッ素(F)、更により好ましくは体積に基づいて計算される約5%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約20%の元素状フッ素(F)であり、各範囲は、いずれも体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、又は
(ii)前記Fフッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度範囲は、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約85%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約90%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)である、ことを特徴とする請求項1に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項5】
管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムにて前記フッ素化(A)反応が行われ、そして、Fフッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度範囲は、体積に基づいて計算される前記Fフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約85%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約90%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)である、ことを特徴とする請求項1に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項6】
(密閉)塔型反応器にて前記直接フッ素化反応(A)及び/又は前記HF除去反応(B)が行われる、ことを特徴とする請求項1又は2又は4に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項7】
前記直接フッ素化反応(A)の液体反応媒体は、(密閉)塔型反応器中の環状管で循環して前記フッ素化反応(A)を行い、同時に、元素状フッ素(F)を含むフッ素化ガスを前記(密閉)塔型反応器に投入し、前記液体反応媒体を介して式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)と反応させ、好ましくは、前記環状管は、約1000l/hないし約2000l/h、より好ましくは約1250l/hないし約1750l/hの循環速度で動作し、更に好ましくは、前記環状管は、約1500l/h±200l/h、更により好ましくは約1500l/h±100l/h、特に好ましくは約1500l/h±50l/h範囲内の循環速度で動作する、ことを特徴とする請求項1に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項8】
前記直接フッ素化反応(A)の場合、前記(密閉)塔型反応器は、
(i)少なくとも1つの熱交換器(システム)、前記液体反応媒体を含み、前記液体反応媒体用の入口及び出口を有する少なくとも1つの液体貯蔵槽、
(ii)前記液体反応媒体をポンプ輸送/循環するためのポンプ、
(iii)好ましくは前記塔型反応器の頂部に配置され、前記循環反応媒体を前記(密閉)塔型反応器に噴入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴射器、
(iv)元素状フッ素(F)を含むか、又は元素状フッ素(F)からなるフッ素化ガスを前記(密閉)塔型反応器に導入するための1つ又は複数の投入入口、
(v)任意に、1つ又は複数の篩、好ましくは2つの篩、好ましくは前記(密閉)塔型反応器の底部に配置された1つ又は複数の篩、及び
(vi)圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、及び前記(密閉)塔型反応器から式(II)のフッ素化的化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を取り出すための少なくとも1つの出口、のうちの少なくとも1つを備える、ことを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記HF除去反応(B)の液体反応媒体は、前記HF除去反応(B)を行うために、(密閉)塔型反応器の環状管で循環され、前記環状管は、約1000l/hないし約2000l/h、好ましくは約1250l/hないし約1750l/h範囲内の循環速度で動作し、より好ましくは、前記環状管は、約1500l/h±200l/h、さらにより好ましくは、約1500l/h±100l/h、特にましくは、約1500l/h±50l/h範囲内の循環速度で動作する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス。
【請求項10】
前記HF除去反応(B)の場合、前記(密閉)塔型反応器は、
(i)少なくとも1つの熱交換器(システム)、前記液体反応媒体を含み、前記液体反応媒体用の入口及び出口を有する少なくとも1つの液体貯蔵槽、
(ii)液体反応媒体をポンプ輸送/循環するためのポンプ、
(iii)好ましくは前記塔型反応器の頂部に配置され、前記循環反応媒体を前記(密閉)塔型反応器に噴入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴射器、
(iv)任意に、(i)では、好ましくは1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で(放熱)除去反応としてHF除去反応が行われる場合、1つ又は複数の含窒素有機塩基を前記(密閉)塔型反応器に導入するための1つ又は複数の投入入口、
(v)任意に、1つ又は複数の篩、好ましくは2つの篩、好ましくは前記(密閉)塔型反応器の底部に配置している1つ又は複数の篩、及び、
(vi)圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、及び前記(密閉)塔型反応器から式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を取り出すための少なくとも1つの出口、のうちの少なくとも1つを備える、ことを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
塔型反応器は、充填床塔型反応器であり、好ましくは、耐反応物、かつ特に耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物、例えば、ラッシヒ充填物、E-TFE充填物及び/又は耐HFの金属充填物、例えばHastelloy金属充填物及び/又は(好適)HDPTFE充填物を充填した充填床塔型反応器であり、より好ましくは、充填床塔型反応器は、任意の上記耐HFのHastelloy金属充填物及び/又はHDPTFE充填物、好ましくはHDPTFE充填物を充填したガス洗浄器システム(塔)である、ことを特徴とする請求項6に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項12】
上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器での少なくとも1つのステップ、より好ましくはマイクロ反応器での少なくとも1つのステップにおいて、前記直接フッ素化反応(A)及び/又は前記HF除去反応(B)が行われ、
またより好ましくは、前記直接フッ素化反応(A)及び/又は前記HF除去反応(B)は、少なくとも1つのステップにおいて、少なくとも1つの上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器にて行われる連続プロセスとして行われ、
さらにより好ましくは、前記直接フッ素化反応(A)及び/又は前記HF除去反応(B)は、少なくとも1つのステップにおいて、少なくとも1つのマイクロ反応器にて行われる連続プロセスとして行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項13】
任意のプロセスステップ(A)と(B)を開始する前に、使用される反応器、好ましくは使用される各反応器及び任意の1つの反応器を不活性ガス又は不活性ガスの混合物でパージし、好ましくはHe(ヘリウム)及び/又はN(窒素ガス)、より好ましくはN(窒素ガス)を前記不活性ガスとする、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項14】
前記フッ素化反応ステップ(A)において、SiC反応器にて反応が行われ、好ましくは、前記フッ素化反応ステップ(A)において、SiCマイクロ反応器にて反応が行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。
【請求項15】
前記HF除去ステップ(B)において、ニッケル反応器(Ni反応器)又は高ニッケル含有量(Ni含有量)の内表面を有する反応器にて反応が行われ、好ましくは、前記HF除去ステップ(B)において、ニッケルマイクロ反応器(Niマイクロ反応器)又は高ニッケル含有量(Ni含有量)の内表面を有するマイクロ反応器にて反応が行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス。
【請求項16】
前記フッ素化反応ステップ(A)から生成された生成物及び/又は前記HF除去ステップ(B)から生成された生成物に対して、独立して蒸留を行う、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するための新規工業プロセスに関する。本発明は、1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)からパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造する新規工業プロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)(パーフルオロメトキシエチレン(IUPAC)又はパーフルオロメトキシエチレンとも呼ばれる)と化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)は、従来技術において公知である。化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)はメトキシエチレン(HC-O-CH=CH、CAS番号:107-25-5、その他の名称はメチルビニルエーテル又はメトキシエチレンであるが、好ましくはIUPAC名称はメトキシエチレンである)のハロゲン化誘導体であり、メトキシエチレンはエチレン(IUPAC名称:エチレン、HC=CH、CAS番号:74-85-1)の誘導体である。
【0003】
化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)は、一般的に、トリフルオロメチル-1H-ペンタフルオロエチルエーテル、2-ヒドロキシ-F-エチルF-メチルエーテル、1,1,2,2-トラフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル;パーフルオロ2H-エチルメチルエーテル、1-トリフルオロメトキシ-1,1,2,2-トラフルオロエタン又は CFOCFCHFとも呼ばれる。
【0004】
化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)は、化合物2-フルオロ-1,2-ジクロロ-トリフルオロメトキシエチレン(FCTFE)により製造されるか、又はそれから製造されてもよく、後者は、2-フルオロ-1,2-ジクロロ-トリフルオロメチル-ビニルエーテル又は2-フルオロ-1,2-ジクロロ-トリフルオロメトキシエチレン(IUPAC)とも呼ばれ、この化合物及びその製造も従来技術において公知である。
【0005】
例えば、パーフルオロメチルビニルエーテルは、いくつかの含フッ素エラストマーを製造するためのモノマーである。
【0006】
これらの次の式(I)と(II)を有する化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)の合成方式も従来技術において公知であり、化合物2-フルオロ-1,2-ジクロロ-トリフルオロメトキシエチレン(FCTFE)(式(IV)参照)の合成方式も従来技術において公知である。
【化1】
【0007】
しかしながら、以下で例示するように、化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)、1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)及びPFMVE前駆体化合物2-フルオロ-1,2-ジクロロ-トリフルオロメトキシエチレン(FCTFE)の公知の合成方式は欠点があるため、改善されたプロセス、特に前記化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)と1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)をそれぞれ製造するための改善されたプロセスの提供が期待される。
【0008】
早期、デュポン社(Du Pont)はUS3180895(1965)において、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドとフルオライドとを反応させた後、脱カルボキシル化してPFMVEを製造する方法を開示した。該方法は、以下のとおりである:
【化2】
【0009】
[metal fluoride:金属フッ素化合物]
この経路は、原材料の処理、安全及び利用可能性の方面で非常に複雑である。特に有毒ガス原料から始まり、次いで液体中間体と塩形態の中間体(脱カルボキシル化に対しては、多くの場合、塩が好ましい)、再びガスで終了することは非常に挑戦的なことである。処理に加えて、大量の有毒廃水と有毒副生成物が生じ、環境問題を引き起こすおそれがある。また、2-パーフルオロメトキシプロパン酸フルオリドを300℃で乾燥の硫酸カリウムペレットの改良と改善に直接応用することが記載された。これは触媒プロセスではないため、硫酸カリウムを再循環させることはできない。この2つの方法は、いずれも大きな工業規模に適していない。
【0010】
代替的に、中藍晨光化学公司はCN1318366(2005)において、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロ-2-(トリフルオロメトキシ)エタンからPFVMEを製造する方法が開示されている。
【化3】
【0011】
中化藍天は、CN107814689(2018)において、流動床で2-パーフルオロメトキシプロパン酸フルオリドを熱分解することを含む別の経路を提案している。別の出願では、中化藍天は、CN105367392においてCFO-アンモニア塩の用途及びクロロトリフルオロエチレンとの反応が開示されているが、反応後の処理が複雑で、生成されたアンモニア塩は回収利用できない。
【化4】
【0012】
水素含有誘導体の製造のために用いられる公知の他の方法もかなり複雑である。例えば、US3162622((1994、デュポン))にはトリフルオロメトキシビニルエーテルが開示されている。このような化合物については、パーフルオロメチルビニルエーテルよりも技術的にはるかに容易であり、デュポン社がハロトリフルオロメチルビニルエーテルから始まり、塩基処理を利用するプロセスが開示されている。出発原料である2-クロロ-トリフルオロメチル-エーテル又は2-臭化-トリフルオロメチル-エーテルをスリーステップ法により製造し、2-ハロアルコールとカルボニルフッ化物との反応から中間体を得て、最終的にSFを用いて2-ハロ-トリフルオロメチル-エテニル-エーテルにフッ素化される。ここでは2-クロロヒドリンを例に挙げる。
【化5】
【0013】
Kamilらは、トリフルオロメトキシビニルエーテルを製造する他の方法が開示されている。「無機化学(Inorganic Chemistry)」(1986),25(3),376-80において、ハロゲン化アルケンを用いてトリフルオロメチル亜塩素酸塩を1,2-付加反応で相応なハロトリフルオロメトキシハロゲン化アルカンに転化し、次いで、H-Hal除去が行われる。
【化6】
【0014】
DE1953144(1969)に開示されているように、カルボニルフッ化物とClFとの反応によりCFOClの製造が公知である。ソルベイスペシャルティポリマーズ社(Solvay Specialty Polymers)は、EP1801091(2007)において、攪拌容器にてCFOFをトリクロルエチレンに添加することが開示されており、数年後、WO2019/110710において同様の反応が開示されているが、いわゆるマイクロ反応器を用いて、非常に低い温度-50℃で動作し、98%の1、2-付加生成物混合物を生成するという欠点がある。そして、この混合物をテトラブチル水酸化アンモニウム水溶液で処理して92%FCTFEを生成するが、環境に優しくない塩や廃水が多く形成されるという欠点がある。
【化7】
【0015】
PFMVEを製造するために、付加ステップにおいて、FCTFEに対してF付加と脱ハロゲン化水素反応が行われ、後者もソルベイスペシャルティポリマーズ社によってWO2012/104365で開示されている。
【化8】
【0016】
全てのステップにおいて、良好な選択性が報告されているが、2つのステップは低温反応であり、一つのステップにおいて廃水と塩を形成し、一つは気相であり、これらのステップはいずれもエネルギー消費が非常に高く、工業化規模上でいくつかの経済的な制限を受けるかもしれない。
【0017】
従来技術では、PFMVEを製造するための全ての従来の方法は、例えば、(1)ガス状有機フッ素化出発材料及びガス状生成物の処理、(2)猛毒材料、例えばフルオロホスゲン(COF、カルボニルビフルオリドとも呼ばれる)、フッ化水素(HF)とヘキサフルオロプロピレンオキサイド(HFPO)などの処理、及び(3)反応物が反応器及び他の装置に対して非常に強い腐食活性があるといういくつかの課題に関わる。
【0018】
従来技術の全ての既存のプロセスは、ノンフロン出発材料(例えばクロロフォルム(CHCl))から始まる少なくとも5つの化学ステップに関し、クロロフォルム(CHCl)は、例えば、化合物ジフルオロクロロメタン(CFClH)の出発材料であり、後者は、化合物ヘキサフルオロプロピレン(HFP)を製造するための出発材料であり、さらに、製造困難のフルオロホスゲン(COF;カルボニルビフルオリドとも呼ばれる)及び化合物ヘキサフルオロプロピレン(HFP)から製造された反応感度の中間体化合物、例えばヘキサフルオロプロピレンエポキシド化合物(HFPO)を使用する。これらの全ての課題は、かなり高い製造コスト、高エネルギー消費及び大量の有毒廃棄物の形成、例えば非所望の塩及び/又は非所望の有機化合物の形成を招く。
【0019】
なお、化合物E 227(TFTFME)については、既知の工業的な適用の経済プロセスはない。例えばGubanov,V.AらがZhurnalObshcheiKhimii (1964), 34(8), 2802-3に開示されているように、ハロゲン化水素(H-Hal)を化合物PFMVEに添加することにより、化合物E 227(TFTFME)を製造する。
【0020】
本明細書で上記示されたように、従来技術のプロセスはまだ最適ではなく、いくつかの欠点がある。従来技術プロセスのこのような欠点は、例えば、特に塩の形成及び高エネルギー消費を含む。従来技術プロセスにおける高エネルギー消費、例えば、反応ステップの順序に起因するものであり、1つのステップ(液相反応ステップ)において冷却され、別のステップ(気相反応ステップ)において加熱される必要がある。
【0021】
そのため、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を大規模及び/又は工業化製造でき、また化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための適切な中間体)から製造されること及び化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)自体を製造することは、重要な切実要求になっている。ここで、PFMVE及び/又はTFTFME(E 227)の製造は、従来技術の欠点を回避し、特に塩を形成することを含まず、そして、上記従来技術よりもエネルギー消費が少なくなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許公開番号3180895(1965)
【特許文献2】中国特許公開番号1318366(2005)
【特許文献3】中国特許公開番号107814689(2018)
【特許文献4】中国特許公開番号105367392
【特許文献5】米国特許公開番号3162622(1994)
【特許文献6】ドイツ特許公開番号1953144(1969)
【特許文献7】欧州特許公開番号1801091(2007)
【特許文献8】国際公開番号2019/110710
【特許文献9】国際公開番号2012/104365
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】無機化学(Inorganic Chemistry)」(1986),25(3),376-80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
そのため、本発明の一つの目的は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(前記パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための中間体化合物として用いられてもよい)をそれぞれ製造するための有効かつ簡略化された新規工業プロセスを提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)からパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための、又はそれからパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための有効かつ簡略化された新規工業プロセスを提供することである。
【0026】
好ましくは、本発明の別の目的は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するための有効かつ簡略化された新規工業プロセスを提供することであり、好ましくは、特殊装置及び特殊反応器の設計を介してPFMVE及び/又はTFTFME(E 227)の大規模及び/又は工業化生産を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の目的は、特許請求の範囲で定義されるよう、以下で詳細に説明されるように解決される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)及びFフッ素化ガス、中間体化合物としてE 227(TFTFME)を用いて、逆流反応器システム(例えば、ガス洗浄器システム)を用いてPFVMEを製造する。 逆流システムにおける2工程バッチ処理。例えば、以下の反応スキーム3と実施例1を参照されたい。貯蔵槽には、第一ステップに用いられる液状原料HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を含有する。第一ステップにおいて、Fフッ素化ガス原料を投入することによって、以下に記載のフッ素化(A)反応が行われ、中間体化合物としてのフッ素化生成物E 227(TFTFME)が得られる。第二ステップ(図示せず)において、中間体フッ素化生成物E 227(TFTFME)化合物に対してHF除去(B)反応を行って生成物PFVMEが生成され、この生成物を未精製生成物としてトラップに収集する。HF除去(B)反応(第二ステップ)で生成されたHFは、第二ステップの反応期間で本明細書で記載されている反応器システムをパージするための不活性ガスと共にパージガスとして脱出される。この実施例1では、HF除去(B)反応ステップは、塩基化誘発された除去として、有機塩基としてNEt(トリエチルアミン)を用いて行われる。第二ステップが行われない場合、フッ素化生成物E 227(TFTFME)化合物は最終生成物であり、そして、例えば実施例3に示されるように、分離及び/又は精製されてもよい。図1の反応器設計(1つ又は複数の充填床塔)は、逆流反応器システムにて反応が行われ、特にループ型反応器システム、又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にて反応が行われることを表す。
図2】HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)とFフッ素化ガスを反応させ、中間体化合物としてE 227(TFTFME)を使用することにより、2つのマイクロ反応器の配列にてPFMVEを製造する。 第1のマイクロ反応器は、フッ素化(A)反応に用いられるSiCマイクロ反応器であり、第2のマイクロ反応器は、除去HF(B)反応に用いられるNiマイクロ反応器である。例えば、以下の反応スキーム3と実施例4を参照されたい。貯蔵槽には、第一ステップに用いられる液状原料HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を含有する。第一ステップにおいて、Fフッ素化ガス原料を投入することによって、以下に記載のフッ素化(A)反応が行われ、中間体化合物としてのフッ素化生成物E 227(TFTFME)が得られる。第一フッ素化ステップ(A)で生成されたフッ素化生成物E 227(TFTFME)及びHFは、バッファ槽に収集され、不活性ガス(例えば、N)は、パージガスとして脱出される。本明細書で説明されるように、第二ステップにおいて、中間体フッ素化生成物E 227(TFTFME)化合物をHF除去(B)反応させて生成物PFVMEが生成され、生成物PFVMEを未精製生成物として、HF除去(B)反応(第二ステップ)で生成されたHFと共にトラップに収集する。この実施例4では、HF除去(B)反応ステップは、触媒化熱除去ステップとして行われる。後述するように、マイクロ反応器に含まれるNi(ニッケル)上で触媒化が行われる。第二ステップが行われない場合、フッ素化生成物E 227(TFTFME)化合物は最終生成物であり、そして、例えば実施例3に示されるように、分離及び/又は精製されてもよい。図2の反応器設計(1つ又は複数のマイクロ反応器)は、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムにて反応が行われることを表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
驚いたことに、原理的には、以下の反応スキーム1によって、式(I)の化合物パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PFMVE)を容易に製造することができ、特にフルオロホスゲン(COF、カルボニルビフルオリドとも呼ばれる)などの有害のガス状化合物を回避した。特に、これは、(開始)出発化合物として化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン(HFE-254)を使用することに基づき、例えば、式(II)の中間体化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)の製造において、後者が逆に式(I)の化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための出発化合物であってもよく、本発明のプロセスによって実現される。化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン(HFE-254)の製造は、例えば、反応スキーム2の第一反応に示されるように、さらに以下に示されるように、特にメタノール(CH-OH)を化合物テトラクロロエタン(TFE)に添加することが従来技術で知られている。(開始)化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン(HFE-254)(CAS番号:425-88-7)も公知であり、例えば、以下の名称(同義語)又は常用用語:1,1,2,2-トラフルオロ-1-メチルオキシエタン(1,1,2,2-トラフルオロ-1-メチルオキシ-エタン);1-メチルオキシ-1,1,2,2-トラフルオロエタン;1,1,2,2-トラフルオロエチルメチルエーテル(1,1,2,2-トラフルオロエチルメチルエーテル);メチル1,1,2,2-トラフルオロエチルエーテル(メチル-1,1,2,2-トラフルオロエチルエーテル);メチル1,1,2,2-トラフルオロエチル(7Cl,8Cl)エーテル;1,1,2,2-トラフルオロエチルメチルエーテル;HFE-254;HFE-254CB1;HFE-254cb2;HFE-254pc;COを有する。(開始)出発化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン(HFE-254cb2)の分子量は132.057g/mol、密度は1.2939g/cm(20℃)、沸騰点は36.5℃(760mmHg)、溶融点は107℃である。
【0030】
【化9】
【0031】
本発明は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための適切な中間体)をそれぞれ製造するための新規工業プロセスにさらに関し、本明細書及び特許請求の範囲に記載されるように、液相において反応が行われ、及び例えば逆流反応器システムにて反応が行われ、特にループ型反応器システム、又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)、及び管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはそれぞれ逆流反応器システム又は在マイクロ反応器にて反応が行われることに関する。
【0032】
そのため、本発明、以下でより詳細説明及び特許請求の範囲に定義されるように、一態様は化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)から、中間体化合物としてE 227(TFTFME)を介してパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造する工業的合成新規プロセス、又は化合物E 227(TFTFME)から直接製造することに関する。特に、本発明の好適な態様では、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)の工業的合成新規プロセスは、初期出発材料として使用される化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を、元素状フッ素(F)を用いて選択的に直接フッ素化するステップを含む。ここで、別の態様では、本発明は、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)から化合物E 227(TFTFME)を最終生成物化合物として製造する工業的合成新規プロセスにさらに関する。
【0033】
化合物E 227(TFTFME)は、特にパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)工業的合成新規プロセスにおける環境親和出発材料として使用することができ、又は化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)から開始時に、中間体E 227(TFTFME)として、又は前記パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)合成におけるE 227(TFTFME)出発材料化合物として直接に使用することもできる。
【0034】
化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(CAS番号:2356-61-8)の分子量は186.028 g/mol、密度は1.512 g /cm、沸騰点は-12.105℃(760 mmHg)である。
【0035】
なお、S. Devottaが<国際冷凍ジャーナル(International Journal of Refrigeration)>(1993),16(2), 84-90に開示されているように、分離され、及び任意に精製された化合物E 227(TFTFME)は、環境友好性のCFC-12冷媒代替品として使用することができ、及びWO9711138では、ダイキン社(Daikin)がJP2012241128に開示されているように、潜在的に、重合反応における溶媒として使用することができる。ダイキン社は、JPH11124352において、エッチングガスとして化合物E 227(TFTFME)を使用することも開示している。
【0036】
JPH11124352では、ダイキン社は高転化率、副生成物をほとんど発生しないフッ素化エーテルを製造する方法を提案している。フッ素化エーテルの製造方法は、フッ化水素又はフッ化水素以外のフッ素ガスに対して不活性を呈する溶媒の存在下で、又は気相におけるフッ素ガスに対して不活性を呈するガスで希釈する場合、1,1,2,2-トラフルオロエチルメチルエーテルをフッ素ガスと接触反応させることを含む。例えば、ダイキン社は、クロロトリフルオロエチレン油でのフッ素化プロセスについて説明しているが、このプロセスは、反応器システム、それぞれ本明細書及び特許請求の範囲に記載されるように、例えば逆流反応器システム、特にループ型反応器システム又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)、及び管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくは逆流反応器システム又はマイクロ反応器という本発明の文脈で使用される条件下で行われるのではなかった。しかしながら、なお、ダイキン社がJPH11124352に説明されたプロセスは、別の生成物に次ぐ2.57%の非常に低い収率で化合物E 227(TFTFME)を生成した。例えば、ドライエッチングガスとして使用される化合物(データなし)は、(1)HCFCFOMeとフッ素(F)とのHFの存在下での反応又は(2)HCFCFOMeとフッ素(F)とのフッ素(F)に対して不活性を呈するガスの存在下での気相反応のいずれか1つによって製造することができる。例えば、JPH11124352(ダイキン社)では、化合物HCFCFOCH(E 227)(TFTFME)は、溶媒としてのクロロトリフルオロエチレン低重合物油で、室温で、フッ素(F)でフッ素化され、HCFOCFCF、CFOCFCHF(即ち、化合物E 227、TFTFME)が得られ、CHFOCFCF、HCFOCFCHFとFCHOCFCHFは、選択性はそれぞれ9.27%、2.57%(即ち、化合物E 227、TFTFME)、6.5%、50.56%及び31.1%、転化率は98%であった。
【0037】
JPH11124352では、ダイキン社は高転化率、副生成物をほとんど発生しないフッ素化エーテルを製造する方法を提案している。フッ素化エーテルの製造方法は、フッ化水素又はフッ化水素以外のフッ素ガスに対して不活性を呈する溶媒の存在下で、又は気相におけるフッ素ガスに対して不活性を呈するガスで希釈する場合、1,1,2,2-トラフルオロエチルメチルエーテルをフッ素ガスと接触反応させることを含む。ダイキン社の方法は、クロロトリフルオロエチレン油でのフッ素化について説明しているが、反応器システム及び条件、例えば、それぞれ本明細書で使用されるような、例えば特に循環反応器又はマイクロ反応器にて行われるのではなかった。なお、このプロセスは、化合物E 227(TFTFME)のみが得られ、収率は2.57%であった。
【0038】
しかしながら、化合物E 227(TFTFME)については、工業上で適切的かつ経済的なプロセスがないことが公知である。ここまで、例えば、Gubanov, V. A.らがZhurnalObshcheiKhimii(1964),34(8),2802-3に開示されているように、ハロゲン化水素(H-Hal)を化合物PFMVEに添加することにより、化合物E 227(TFTFME)を製造する。
【0039】
化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)は、CN110343227に記載されるように、大規模商業用でフォーム発泡剤として使用されるか、又はリチウムイオン槽電解液の添加剤(JP2019135730参照)として使用されるよくあるハイドロフルオロエーテルである。JP2011073984に開示されるように、化合物HFE-254は、ジフルオロ乙フルオライド(DFAF)を合成するための出発材料としても使用される。DFAFは、ビラゾールに基づく抗菌剤ファミリーの主な原料(例えばBASFのFluxopyroxad(登録商標)、シンジェンタ(Syngenta)のIsoprazam(登録商標)とバイエル クロップサイエンス(Bayer Cropscience)のBixafen(登録商標))であり、いずれも側鎖にCFH-基を有する。例えば、CN103772156和RU2203881に開示されるように、従来技術では、多くの会社がメタノール(CHOH)をテトラクロロエタン(TFE)に添加することにより、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を製造することが知られている。例えば、反応スキーム2を参照すると、本発明のプロセスを行うために、(開始)出発化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を提供するのに特に好適な合成方法を示す。
【0040】
スキーム2:
多くの会社がメタノール(CH3OH)をテトラクロロエタン(TFE)に添加することにより、HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を合成する。
【化10】
【0041】
本発明は、上記塩形成及び高エネルギー消費の欠点、例えば、従来技術プロセスの上記欠点、例えば塩形成及び高エネルギー消費という欠点を回避した。従来技術プロセスにおける高エネルギー消費は、例えば、反応ステップの順序に起因するものであり、それは一つのステップ(液相反応ステップ)において冷却され、別のステップ(気相反応ステップ)において加熱される必要がある。
【0042】
従来技術プロセスに比べて、限定ではなく例によって、例えば(代表的に)便利に購入することができる化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)により、かつ上記スキーム1に示されるような反応順序に基づいて、そのメチルオキシをトリフルオロメトキシに直接フッ素化(特別選択的に直接フッ素化)することにより、本発明による反応ステップ手順は、このような非所望の塩形成及び非所望の高エネルギー消費を回避した。
【0043】
驚いたことに、本発明によれば、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)のメチルオキシ(CH-O-基)の選択的直接フッ素化が、基本的には、攻撃しないか、又は得られた(中間体)化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)中のフッ素化期間に形成された第二位のCFH基のみを攻撃する。2つの強電子求引のフッ素原子により前記CFH-基を強く不活性化し、それによって、前記CFH基における水素(H)を保留する。一方、驚いたことに、メチルオキシ(CH-O-基)の酸素原子は、その直接結合したメチル(CH-基)を強く活性してメチルオキシ(CH-O-基)のパーフルオロ化を促進し、それによって、必要とされるトリフルオロメトキシ(CF-O-基)を直接生成する。そのため、驚いたことに、中間体基には2つの不活性化のフッ素原子を含んでも、中間体O-CFH-O-基上にフッ素化は停止しない。そのため、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)において、化合物のCHO-基(即ち、メチルオキシ)のみがCFO-基(即ち、トリフルオロメトキシ)に選択的にフッ素化される。
【0044】
本発明は、例えば、それぞれ図1及び図2に示されるように、以下でさらに説明されるように、1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタンを直接フッ素化することにより、特に特殊設備と特殊反応器設計によって、最終生成物化合物及び/又は中間体化合物としての化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造又は調製するための選択的に直接フッ素化プロセス(A)をさらに提供する。本発明で採用される特殊設備と特殊反応器設計は、1つ又は複数の充填床塔(例えばガス洗浄器システムの形式)、又は1つ又は複数のマイクロ反応器を含んでもよい。
【0045】
直接フッ素化反応が放熱特徴を有するにもかかわらず、例えば、所定の期間内(例えば、10時間未満、又はさらに5時間未満)、本発明の反応は、より大きい規模で、高転化率で反応が行われてもよく、そして得られたフッ素化生成物には主な不純物を含まない。フッ素化生成物をキログラム規模の量で生成することができ、例えば、本発明の直接フッ素化方法は、フッ素化無機化合物又はフッ素化有機化合物の大規模及び/又は工業的生産においてそれぞれ行われてもよいことが発見されている。
【0046】
図1(密閉塔型反応器システム)及び図2(マイクロ反応器システム)の文脈で本発明方法を実施する特定実施例について説明した。
【0047】
直接フッ素化(A)プロセスとHF除去(B)プロセスは、フッ素化生成物化合物E 227(TFTFME)又はHF除去生成物化合物PFVMEを独立して互いに区別して行われてもよい。
【0048】
代替的に、直接フッ素化(A)プロセスとHF除去(B)プロセスは、分離及び/又は精製中間体フッ素化生成物化合物E 227(TFTFME)を有するか、又は有さなく、最終的にHF除去生成物化合物PFVMEが生成される2ステッププロセスとして順序に行われてもよい。
【0049】
マイクロ反応器システムを使用する場合、例えば、図2に示されるように、第一フッ素化ステップ(A)で形成されたフッ素化生成物化合物E 227(TFTFME)とHFは、好ましくはバッファ槽に収集され、そして、不活性ガス(例えば、N)はパージガスとして脱出する。必要な場合、前記バッファ槽に一緒に収集された化合物E 227(TFTFME)及びHFは、蒸留により相互に分離されてもよい。その後、必要な場合、最終的にHF除去生成物化合物PFVMEが生成されるために、化合物E 227(TFTFME)がさらに精製されるか、又は精製されなく、HF除去(B)プロセスのために第2のマイクロ反応器に移送される。
【0050】
代替的に、直接フッ素化(A)プロセス及びHF除去(B)プロセスが2ステッププロセスとしてその後に行われ、最終的にHF除去生成物化合物PFVMEが生成される場合、直接フッ素化(A)プロセスで形成されたHFを分離する必要はない。フッ素化生成物化合物E 227(TFTFME)と第一フッ素化ステップ(A)で形成されたHFは、好ましくはバッファ槽に収集され、不活性ガス(例えば、N)はパージガスとして脱出され、そして、中間体フッ素化生成物化合物E 227(TFTFME)をHFと共に第2のマイクロ反応器に移送してHF除去(B)プロセスを行い、最終的にHF除去生成物化合物PFVMEが生成される。この場合、最終的なHF除去生成物化合物PFVMEを生成した後、直接フッ素化(A)及びHF除去(B)の2つの後継プロセスステップで形成されたHFのみを分離しなければならない。例えば、前記2つの後続プロセスステップ(A)及び(B)で形成されたHFを、蒸留により分離してもよい。代替的に、例えば、好ましくは本明細書で説明されるような有機塩基、そして、より好ましくは、例えばNEt及びNBuのような有機塩基を使用することによって、前記2つの後続プロセスステップ(A)及び(B)で形成されたHFを分離してもよい。
【0051】
直接フッ素化(A):
用語「直接フッ素化」は、出発化合物(例えば、本発明によれば、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン))を元素状フッ素(F)と化学反応させることにより、1つ又は複数のフッ素原子を化合物に導入し、1つ又は複数のフッ素原子が前記化合物に共有結合されることによって、そのうちの1つ又は複数の水素原子を置換することを指す。用語「選択的に直接フッ素化」は、フッ素原子のみを上記化合物のメチルオキシ(CHO-基)に導入することを指す。
【0052】
そのため、本発明の直接フッ素化は、フッ素ガス(F)を使用することにより、1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタンを選択的に直接フッ素化する最終生成物化合物及び/又は中間体化合物としての化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造又は調製するための高効率プロセスを提供し、フッ素ガス(F)は、本明細書で「Fフッ素化ガス」とも呼ばれる。
【0053】
本発明で使用されるFフッ素化ガスは、任意の提供源のものであってもよい。例えば、本発明は、フッ素ガス(F)を使用する直接フッ素化ステップ(A)において、直接にF電解反応器(フッ素槽)から(例えば、更なる精製されていない)、そして、任意に、不活性ガス(又はそれらの混合物)のみによって所望のフッ素(F)濃度に希釈されたFフッ素化ガスを用いてもよい。もちろん、必要な場合、F電解反応器(フッ素槽)からのフッ素ガス(F)は、直接フッ素化ステップ(A)に用いられる前に精製されてもよく、任意に、最初にF電解反応器(フッ素槽)からのこのような精製されたフッ素ガス(F)は、不活性ガス(又はそれらの混合物)のみによって所望のフッ素(F)濃度に一定程度上で希釈されてもよい。
【0054】
必要な場合、F電解反応器(フッ素槽)に形成された副生成物及び微量物質の一部又は全部を除去するために、F電解反応器(フッ素槽)からのフッ素化ガスを本発明の方法におけるフッ素化ガスとして使用する前に、精製する。しかしながら、本発明の方法では、このような部分的又は完全な精製は必須ではなく、フッ素化ガスは、F電解反応器(フッ素槽)から放出される時に直接使用されてもよいが、必要な場合、任意に、不活性ガスのみによって所望のフッ素(F)濃度まで希釈してもよい。F電解反応器(フッ素槽)からの精製又は未精製のFフッ素化ガスを利用する場合、不活性ガス、特に好ましくは窒素ガス(N)によって所望の程度まで希釈してもよい。
【0055】
フッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度は、例えば、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス粗成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約1%元素状フッ素(F)から体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)までの広い範囲内で変化してもよい。用語「体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)」は、技術的原因から、例えば、元素状フッ素(F)がフッ素槽から得られると、工業レベルの元素状フッ素(F)には微量不純物を含有することを指し、例えば、電解過程にいくつかのテトラフルオロメタン(CF)が形成される。そのため、当業者によって理解されるように、用語「体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)」は、例えば、それぞれ元素状フッ素(F)の体積に基づいて計算され、それぞれ最大約99.9%、最大約99.8%、最大約99.7%、最大約99.6%、最大約99.5%又は最大約99±1%である。
【0056】
フッ素化ガスにおける比較的低いフッ素(F)濃度の典型的な範囲は、例えば、体積に基づいて計算される約1%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約30%元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約5%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約25%元素状フッ素(F)、更により好ましくは体積に基づいて計算される約5%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約20%元素状フッ素(F)であり、各範囲は、いずれも体積に基づいて計算されるF2フッ素化ガス組成が合計100%であることに基づく。例えば、逆流反応器システム、特に循環反応器システム又は逆流(ループ)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)にて反応が行われる時、Fフッ素化ガスにおける比較的低いフッ素(F)濃度を適用することができる。
【0057】
フッ素化ガスにおける比較的高いフッ素(F)濃度の典型的な範囲は、例えば、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約85%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)(上記に定義されるように)、好ましくは体積に基づいて計算される約90%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)(上記に定義されるように)である。例えば、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムにて反応が行われる時、好ましくはFフッ素化ガスにおける比較的高いフッ素(F)濃度を適用する。しかしながら、例えば、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム、又は逆流(ループ)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)にて反応が行われる時、Fフッ素化ガスにおける前記比較的高いフッ素(F)濃度を適用する可能である。
【0058】
当業者によって理解されるように、上述した任意の所定範囲内で、任意の中間値及び中間範囲を選択してもよいことは言うまでもない。
【0059】
本明細書で使用される用語「体積%」は、「体積に基づいて計算される%」を指す。特に説明されない限り、本明細書で使用される全ての百分比(%)は、それぞれ「体積%」又は「体積に基づいて計算される%」を表す。
【0060】
用語「不活性ガス」は、1組みの一定条件下で化学反応を起こさないガスを指す。典型的な不活性ガスは、類似性質を有する一類の化学元素を構成する任意の希ガスを含み、そして、標準条件下で、いずれも無臭、無色、化学反応性が非常に低い単原子ガスであり、例えば、希ガスであるヘリウム(He)、ネオン(Ne)とアルゴン(Ar)、又は窒素ガス(N)である。好ましくは、(精製済みの)アルゴンガス(Ar)及び/又は窒素ガス(N)は、その高天然存在量(空気中78.3%N、1%Ar)と比較的低い相対的コストのため、不活性ガスとして用いられている。本発明の文脈では、より好適な不活性ガスは、窒素ガス(N)である。前記不活性ガスの混合物を用いてもよい。
【0061】
不活性ガス又はその混合物でフッ素(F)ガスを希釈する程度、即ち、フッ素化プロセスステップで使用されるFフッ素化ガスのフッ素(F)濃度は、使用される特殊設備及び特殊反応器設計に依存してもよく、例えば、図1(1つ又は複数の充填床塔)に示されるように、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム又は逆流(ループ)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)にて反応が行われることを表し、更に例えば、図2に示されるように、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムにて反応が行われることを表す。
【0062】
特に、逆流反応器システムにて反応が行われる反応器設計の場合、フッ素化方法ステップ(A)で使用されるFフッ素化ガスのフッ素(F)濃度は、例えば、一方、図1に示されるように(1つ又は複数の充填床塔)、マイクロ反応器システムにて反応が行われるための反応器設計(例えば、図2に示されるように(1つ又は複数のマイクロ反応器))と異なってもよい。
【0063】
塔型反応器における直接フッ素化(A)、例えば、逆流反応器システムにて:
好ましくは、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム、又は逆流(ループ)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)にて反応が行われる場合、フッ素化ガスにおいて、以下の(F)濃度を調整する。
【0064】
フッ素化ガス組成物におけるF濃度については、注意すべきことは、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム、又は逆流(ループ)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)の場合、例えば、図1に示されるように、不活性ガスで希釈されたFと濃縮されたFとをそれぞれ用いて、直接フッ素化(A)プロセスを等価に行うことができ、不活性ガスが圧力制御弁を介して塔の頂部から放出されることができるので、何の問題もなく、例えば、反応器内に選択性と収率を低下させるホットスポットなどはない。
【0065】
そのため、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム、又は逆流(ループ)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)にてフッ素化(A)反応が行われる場合、Fフッ素化ガスにおけるフッ素F濃度の全ての広い範囲内で行われてもよく、前述したように、即ちFフッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度は、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約1%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)である。そのため、この場合、フッ素化(A)反応が行われてもよく、例えば(i)上記のFフッ素化ガスにおける比較的低いフッ素(F)濃度の典型範囲、(ii)上記のFフッ素化ガスにおける比較的高いフッ素(F)濃度の典型範囲、ただし、(iii)Fフッ素化ガスにおける中等のフッ素(F)濃度範囲内、例えば、体積に基づいて計算される約>30%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約<85%の元素状フッ素(F)である。
【0066】
当業者によって理解されるように、上述した任意の所定範囲内で、任意の中間値及び中間範囲を選択してもよいことは言うまでもない。
【0067】
連続流反応器システム(例えばマイクロ反応器システム)における直接フッ素化(A):
好ましくは、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムにて反応が行われる場合、Fフッ素化ガスにおいて、以下のフッ素(F)濃度を調整する。
【0068】
フッ素化ガス組成物におけるF濃度については、特に、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムの場合、好ましくは上述したFフッ素化ガスにおける比較的高いフッ素(F)濃度の典型範囲でフッ素化(A)反応が行われる。そのため、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムに好ましく用いられるFフッ素化ガスにおける比較的高いフッ素(F)濃度は、例えば、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約85%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)、好ましくは体積に基づいて計算される約90%元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%元素状フッ素(F)である。
【0069】
なお、Fフッ素化ガス組成物におけるF濃度については、注意すべきことは、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム、又は逆流(ループ)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)の場合、不活性ガスで希釈されたFと濃縮されたFとをそれぞれ用いて、直接フッ素化(A)プロセスを等価に行うことができるが、逆に、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムにて反応が行われる場合、Fフッ素化ガス組成物には不活性ガスが少ないか、又はほとんど存在しないことが強く推奨され、及び好ましい。前記管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムにて反応が行われる過程において、ガスを放出することができなくなり、即ち、マイクロ反応器システムの通路に気泡が生じることによって、熱交換を阻害し、ホットスポットの発生を招くので、不活性ガスは不利であり、これも選択性及び収率を低下させるであろう。
【0070】
そのため、マイクロ反応器システムの反応を開始する前に、不活性ガス(例えば、窒素ガス(N)のような不活性ガス)を用いてパージして、システムを連続的に浮揚させると、マイクロ反応器システムのフッ素化(A)反応を開始する前に、原料投入が開始されると、不活性ガスの投入量を迅速に低下させることが好ましく、Fフッ素化ガスにおけるF濃度を、上述したFフッ素化ガスにおける比較的高いフッ素(F)濃度範囲に調整する。不活性ガスがマイクロチャネル反応器の熱交換率を急速に低下させるため、不活性ガスの投入を急速低下させることが必要である。
【0071】
当業者によって理解されるように、上述した任意の所定範囲内で、任意の中間値及び中間範囲を選択してもよいことは言うまでもない。
【0072】
HF除去反応(B):
驚いたことに、本発明によれば、第一反応ステップにおいて、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)のメチルオキシの直接フッ素化(特に選択的に直接フッ素化)により得られる化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を中間体化合物として、第二反応ステップにおいて直接にさらに反応させ、即ち、HF除去において、分離及び/又は精製を必要とせず、最終的に化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を生成することができることが発見されている。反応スキーム3を参照されたい。
【0073】
スキーム3:
HFE-254から、化合物TFTFME(E 227)によりPFMVEを合成することは、中間体化合物TFTFME(E 227)を分離及び/又は精製する必要はない。
【化11】
【0074】
代替的に、必要な場合、化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)のメチルオキシの直接フッ素化(特に選択的に直接フッ素化)により得られる化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)は、分離及び/又は精製されてもよく、最終的に、分離及び/又は精製された生成物の自体として、化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)が生成される。
【0075】
なお、驚いたことに、メチルオキシの選択的にフッ素化の場合、逆流システムをバッチ式又は連続式で使用してもよく、代替的に、連続動作モードは、マイクロ反応器又はコイル式反応器システムを適用してもよい。
【0076】
本発明の一態様では、HF除去ステップは、熱(非触媒化)のみで行われてもよく、例えば、約100℃以上に加熱することにより(ただし、いくつかの非所望の重合をもたらすおそれがある)、又はマイクロ反応器中の触媒としてNi(ニッケル)などの触媒としてNi(ニッケル)を使用することにより、1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)出発材料と接触させ、熱触媒化HF除去として行われてもよい。このマイクロ反応器は、ニッケルから作られるか、又は内部Ni表面を少なくとも含むか、又は高Ni(ニッケル)含有量の表面を有する。
【0077】
代替的に、本発明の別の態様では、HF除去ステップは、(放熱の)無機及び/又は有機塩基によって誘発されるHF除去として行われてもよい。有機塩基によって誘発されるHF除去は、無機塩基によって誘発されるHF除去よりも優れ、特に、必要な場合、相分離で分離及び/又は精製して、最終的に化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を目標化合物生成物として生成する。なお、有機塩基によって誘発されるHF除去は、無機塩基によって誘発されるHF除去よりも優れ、特に、本発明のプロセスにおいてマイクロ反応器システムが使用され、特に、HF除去ステップ(B)がマイクロ反応器システムにて行われるべきである場合、最終的に化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を目標化合物生成物として生成する。
【0078】
例えば、HF除去ステップは、(放熱)有機塩基によって誘発されるHF除去ステップとして行われてもよく、例えば、好ましくは無水の窒素含有塩基、例えばNEt(トリエチルアミン)を用いて、無水HF除去ステップを行うことが望ましい。
【0079】
なお、HF除去ステップは、(放熱)無機塩基によって誘発される反応として行われてもよく、例えば、好ましくは水性HF除去ステップ、例えば水性無機塩基、例えばNaOH(水素化ナトリウム)、KOH(水素化カリウム))及び/又はCaCO(炭酸カルシウム)、より好ましくは、無機塩基が水溶液である水性HF除去ステップとして行われる。本発明に利用可能な典型的な無機塩基は、特にNaOH(水素化ナトリウム)、KOH(水素化カリウム)及び/又はCaCO(炭酸カルシウム)であるが、LiOH(水素化リチウム)又はNHOH水素化アンモニウムを用いてもよい。そして、これらの任意の組み合わせが使用可能である。
【0080】
相間移動触媒(PTC)が存在するか、又は存在しない場合、無機塩基を使用したHF除去ステップは、(放熱)無機塩基によって誘発される水性HF除去ステップとして行われてもよい。HF除去ステップは、相間移動触媒(PTC)が存在しない場合よりも速いHF除去反応を提供し、後者の場合にはHF除去反応が遅いので、相間移動触媒(PTC)の存在下で、(放熱)無機塩基によって誘発される水性HF除去ステップとして行われることが好ましい。
【0081】
無機塩基を用いたHF除去ステップは、(放熱)無機塩基によって誘発される水性HF除去ステップとして、逆流反応器システム、例えば、特にループ型反応器システム、逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にて行われてもよい。管型反応器システム、連続流反応器システム又はマイクロ反応器システムで無機塩基を使用することも可能であるが、これらの管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムは、形成塩及び非所望の沈殿詰まりを招く可能性があるので、あまり好ましくない。
【0082】
そのため、無機塩基を用いたHF除去ステップを選択する場合、好ましくは逆流反応器システム、例えば、特に、ループ反応器システム、逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にて(放熱)無機塩基によって誘発されるHF除去ステップが行われる。
【0083】
HF除去ステップは、(放熱)有機塩基によって誘発されるHF除去ステップとして、例えば、好適な無水の窒素含有塩基を使用することにより、それぞれ、任意の反応器システム、例えば逆流反応器システム、特に、ループ型反応器システム又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)、及び管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムにて行われてもよい。
【0084】
しかしながら、それぞれ、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システムを使用する場合、好ましくは例えばNi(ニッケル)を触媒として使用して、1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(E 227)出発材料と接触させることにより、HF除去ステップが行われる。
【0085】
例えば、Ni(ニッケル)は触媒として、それぞれ、管型反応器システム、連続流反応器システム又はマイクロ反応器システムに用られてもよく、ここで、これらの反応器はNi(ニッケル)から作られ、又は反応器には、少なくとも1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(E 227)出発材料と接触するための内部Ni表面又は高Ni(ニッケル)含有量の表面を有する。好ましくは、マイクロ反応器でNi(ニッケル)を触媒として使用し、このマイクロ反応器はNi(ニッケル)から作られるか、又は少なくとも1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(E 227)出発材料と接触するためのNi表面又は高Ni(ニッケル)含有量の表面を有する。
【0086】
原理的には、本発明によるHF除去ステップにおいて、任意の有機塩基を用いてもよい。しかしながら、経済的に、好適な有機塩基は、NEt(トリエチルアミン)、NBu(トリブチルアミン)、ピリジン、N,N-ジメチルピリジン、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-アルケン)、DBN(1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン-5-アルケン)及びその任意の誘導体、及びその組み合わせから選ばれる。
【0087】
なお、有機塩基の場合、NEt及びNBuのような有機塩基は1当量を超えるHF、例えば最大3当量のHF、例えばNBuの場合、最大NBu×3HFを吸収できるので、「準化学量論量」で使用されてもよい。この理由は、NEt(トリエチルアミン)及びNBu(トリブチルアミン)は、1つ以上及び最大3つのフッ化水素(HF)と錯合物を形成することである。
【0088】
例えば、フッ素化ステップ(A)後の1mol HFE-254の量に基づき、フッ素化ステップ(A)で形成された3mol HFを除去しているため、それ自体は1mol有機塩基しかない。例えば、HF除去ステップ(B)の(1:1)化学量論を考慮すると、NEt及びNBuは、HF除去ステップ(B)で生成される1mol HFを除去するために必要であるべきである。有機塩基としては、例えばNEt及びNBu、さらに3つのHF(錯合物形成)を吸収することができ、論理的に、3分の1(1/3)molの有機塩基(例えばNEt及びNBu)は1mol有機塩基(例えばNEt及びNBu)を置換することに必要なものであり、化学量論比(1:1)、そして、1当量あたりの有機塩基は最大3当量のHFを吸収できると考えられる。しかしながら、相分離が必要とされる場合、(1:1)化学量論に比べて、有機塩基(例えばNEt及びNBu)は、高過剰量の有機塩基で使用されることが好ましく、例えば高過剰量は、それぞれ、一(1)mol HFE-254又は一(1)mol TFTFME(E 227)に基づく約≧1molないし約1.3mol有機塩基で、例えばNEt及びNBuである。例えば、それぞれ、好ましくは過剰量約≧1.1molないし約1.3mol有機塩基、より好ましくは過剰量約1.15molないし約1.3mol有機塩基、更により好ましくは過剰量約1.15molないし約1.25mol有機塩基、特に好ましくは過剰量約1.20mol±0.02mol有機塩基であり、それぞれ、一(1)mol HFE-254又は一(1)molTFTFME(E 227)に基づく。
【0089】
相分離を行わない場合、(1:3)有機塩基及びHF化学量論に比べて、有機塩基(例えばNEt及びNBu)は、軽微過剰量で使用されることが好ましく、様々な有機塩基が最大3当量HFを占めることができることを考慮すると、例えば、(1:3)有機塩基及びHF化学量論一(1)mol HFE-254又は一(1)mol TFTFME(E 227)に比べて、有機塩基は、約≧1%ないし約20%の範囲内でそれぞれ略過剰である。例えば、好ましくは有機塩基(例えばNEt及びNBu)は、約≧2%、≧3%又は≧4%ないし約20%の範囲内で過剰であり、より好ましくは5%ないし約20%の有機塩基、更により好ましくは5%ないし約15%の有機塩基、特に好ましくは約10%±2%の有機塩基の過剰量であり、それぞれ、(1:3)有機塩基とHF化学量論及び一(1)mol HFE-254又は一(1)mol TFTFME(E 227)に基づく。
【0090】
例えば、四(4)mol HF消費が必要であれば、(1:1)化学量論を考慮すると、一(1)mol HFE-254は、それぞれ、四(4)mol有機塩基又は一(1)mol TFTFME(E 227)を必要とする。しかしながら、当量あたり機塩基が最大3当量のHFを吸収できることを考慮すると、(1:3)有機塩基及びHF化学量論に比べて、及び一(1)mol HFE-254又は一(1)mol TFTFME(E 227)は、それぞれ4/3mol(1.333mol)有機塩基しか必要としない。そのため、この前に算出された4/3mol(1.333mol)有機塩基ではなく、約1.5mol(例えば1467mol)有機塩基(例えばNEt及びNBu)を用いて四(4)mol HFを消費すると、10%の有機塩基過剰に相当する。相分離を行わない場合、例示的に、推定によると、約10%過剰量の有機塩基(例えばNEt及びNBu)であればよい。
【0091】
これらの有機塩基は、HF吸収後も液体状であるため、それぞれ、管型反応器システム、連続流反応器システム又はマイクロ反応器システムに適用可能であり、特にマイクロ反応器システムにも適用可能である。
【0092】
脂肪族有機塩基は、複素芳香族有機塩基よりも塩基強度が適しているため、脂肪族有機塩基がより速いHF除去反応、即ち、より短い反応時間をもたらし、さらに直ちに反応する可能性がある。ピリジンを使用する場合、比較的遅いHF除去反応、即ち、比較的長い反応時間が発生する可能性がある。
【0093】
脱ハロゲン化水素は、基質からハロゲン化水素(H-Hal)を消除(除去)する除去反応である。ハロゲン化水素(H-Hal)は、式H-Halを有する二原子無機化合物であり、そのうちの「Hal」は、例えば文脈又は本発明におけるフッ素又は塩素であるハロゲンの一つであることが知られている。ハロゲン化水素(例えば、本発明ではHF(フッ化水素)又はHCl(塩化水素))はガスである(この条件下)。
【0094】
好ましくは、本発明によれば、HF除去生成物を容易に生成するために、Ni反応器又は高Ni含有量表面を有する反応器(例えばHastelloy鋼)にて、100℃で、液相でHF除去(B)反応が行われてもよい。
【0095】
まず、上記に本発明を例にとって説明したが、より一般的に、本発明の方法は、式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスに関し、
【化12】

ここで、前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムでの直接フッ素化反応(A)と、除去HF反応(B)のステップとを含み、
(A)第一反応ステップにおいて、式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を反応させることにより、直接フッ素化し、
【化13】
フッ素化ガスに含まれる約化学量論量の元素状フッ素(F)を用いて、式(III)化合物において式(III)の化合物HFE-254の1-(メチルオキシ)基の3つの水素原子を選択的に置換し、そして、約0℃ないし約+60℃範囲内の温度下で
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で反応が行われ、
式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)が生成され、
【化14】
と、
分離及び/又は精製(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)のある又はなく、好ましくは分離及び/又は精製(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)がなく、
(B)第二反応ステップにおいて、除去反応が行われ、ここで、ステップ(A)で得られた式(II)の(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)からHF(フッ化水素)を除去し、そして、除去反応は以下のように行われ、
(i)1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、(放熱)除去反応として、
及び/又は
1つ又は複数の無機塩基の存在下で、
ここで、(放熱)除去反応の温度が約60℃を超えない温度に制御され、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で(放熱)除去反応が行われ、
又は
(ii)式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)が生成されるために、
約60℃ないし約120℃範囲内の温度下で、非触媒又は好ましくは触媒、より好ましくはNi(ニッケル)触媒の熱除去反応として、

(C)ステップ(B)で得られた式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を反応器又は反応器システムから取り出して収集し、

(D)任意に、式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を分離及び/又は精製する。
【0096】
次に、上記に本発明を例にとって説明したが、本発明は、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスにさらに関し、
【化15】
ここで、前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムにて、HF除去反応ステップ(B)が行われることを含み、除去反応において、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)からHF(フッ化水素)を除去し、
【化16】
そして、以下のように除去反応ステップ(B)が行われ、
(i)1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、(放熱)除去反応として、
及び/又は
1つ又は複数の無機塩基の存在下で、
ここで、(放熱)除去反応の温度が約60℃を超えない温度に制御され、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で(放熱)除去反応が行われ、
又は
(ii)式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)が生成されるために、
約60℃ないし約120℃範囲内の温度下で、非触媒又は好ましくは触媒、より好ましくはNi(ニッケル)触媒の熱除去反応として、

(C)ステップ(B)で得られた式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を反応器又は反応器システムから取り出して収集し、

(D)任意に、式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を分離及び/又は精製する。
【0097】
第三、上記に本発明を例にとって説明したが、本発明は、式(II)の化合物(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関し、
【化17】
ここで、前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムにて、直接フッ素化反応ステップ(A)が行われることを含み、直接フッ素化反応において、式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)は、
【化18】
式(III)の化合物中において、式(III)の化合物HFE-254の1-(メチルオキシ)基の3つの水素原子をフッ素で選択的に置換するために、フッ素化ガス中に含まれる約化学量論量の元素状フッ素(F)でフッ素化され、そして、
式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)が生成されるために、
約0℃ないし約+60℃範囲内の温度及び約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下で、反応が行われ、
【化19】

(C)ステップ(A)で得られた式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を反応器又は反応器システムから取り出して収集し、
(D)任意に、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を分離及び/又は精製する。
【0098】
そのため、前記第三態様では、本発明は、式(II)を有する化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスに関し、
【化20】
これは、本発明の第一態様における重要中間体であり、そして、本発明の第二態様において、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するための重要出発材料である。
【化21】
【0099】
本明細書及び特許請求の範囲に記載されているように、様々な反応器設計において本発明によるプロセスにおける反応ステップ(A)(直接フッ素化反応)と(B)(除去反応、H-Hal除去、H=水素、Hal=ハロゲン原子、即ち、フッ素、ハロゲン化水素除去、即ち、HF除去)が行われてもよい。例示的な反応器設計は、ループ型反応器システム、逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)、マイクロ反応器システム(1つ又は複数を含んでもよい)及びコイル式反応器設計を含む。図1(ガス洗浄器システム、逆流[環状管]システム)、図2(マイクロ反応器システム)には特定の反応器設計が示されている。なお、本発明プロセスにおける直接フッ素化ステップは、それぞれバッチ式又は連続式で行ってもよい。なお、本発明プロセスにおける任意の直接フッ素化ステップ(A)及び除去ステップ(B)は、それぞれバッチ式又は連続式で行ってもよい。
【0100】
本発明のステップ(A)~(B)のうちのいずれか1つ(例えば、(A)~(B)の1つ又は複数又は全てのステップ)で使用される好適な反応器は、独立してマイクロ反応器システムである。好ましくは、ステップ(B)(除去反応、H-Hal除去)の場合、反応器は、マイクロ反応器システム(1つ又は複数を含んでもよい)である。
【0101】
本発明方法のステップ(A)~(B)における何れかのステップは、反応に関わる液相として行われる。
【0102】
本発明では、反応ステップ(A)~(B)において、少なくとも1つの液状原料を使用し、反応器は、ループ型反応器システム、逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)であってもよいが、好ましくはマイクロ反応器システム(1つ又は複数を含んでもよい)である。それぞれ、図1(ガス洗浄器システム、逆流[環状管]システム)又は図2(マイクロ反応器システム)を参照されたい。
【0103】
連続式プロセスの場合、即ち、ステップ(A)~(B)における何れかのステップにおいて(例えば、(A)~(B)の1つ又は複数又は全てのステップにおいて)、本発明による連続プロセスが行われる場合、本明細書及び特許請求の範囲に記載されているように、本発明の反応器システムは独立してマイクロ反応器システム(1つ又は複数を含んでもよい)であり、かつ連続動作方式で使用される。
【0104】
バッチ式方式プロセスの場合、本発明によるバッチ式プロセスは、逆流システムにて行ってもよく、好ましくは、本明細書及び特許請求の範囲に記載されているように、バッチ式動作方式で行われる。
【0105】
本発明は、化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(即ち、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)の前駆体又は中間体化合物)を製造するために、本明細書及び特許請求の範囲に記載されているように、フッ素化プロセスステップ(A)及び/又はHF除去ステップ(B)が任意に独立してバッチ式で動作するか、又は連続式で動作することにさらに関する。本明細書及び特許請求の範囲に定義されているように、連続プロセスとしてステップ(A)及び(B)のうちの少なくとも1つのステップにおいて反応が行われ、ここで、この連続プロセスは、少なくとも1つの上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器にて行われ、
好ましくは、少なくとも1つのマイクロ反応器にて、
より好ましくは、前記ステップにおいて、少なくとも(A)フッ素化反応のステップが、少なくとも1つのマイクロ反応器にて、
流速:約10 ml/h~約400 l/h、
温度:それぞれ約-20℃~約150℃、又は-10℃~約150℃、又は0℃~約150℃、又は10℃~約150℃、又は20℃~約150℃、又は約30℃~約150℃、
圧力:約1バール(1大気圧絶対圧力)~約50バール、好ましくは約1バール(1大気圧絶対圧力)~約20バール、より好ましくは約1バール(1大気圧絶対圧力)~約5バール、特に好ましくは約1バール(1大気圧絶対圧力)~約4バール、一実施例では、圧力が約3バールであること、
滞留時間:約1秒(好ましくは約1分)~約60分。1つ又は複数の条件下での連続プロセスである。
【0106】
本発明は、本明細書に記載されているように、任意にバッチ式方式で動作するか、又は連続式で動作する式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)を有する化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関する。上記プロセスでは、ステップ(A)において、第一の反応器にて、SiC反応器にて付加反応が行われることを特徴とする。
【0107】
本発明は、本明細書に記載されているように、任意にバッチ式方式で動作するか、又は連続式で動作する式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)を有する化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関する。上記プロセスでは、ステップ(B)において、第二の反応器にて、ニッケル反応器(Ni反応器)又は高ニッケル含有量(Ni含有量)の内表面を有する反応器にて除去反応が行われることを特徴とする。
【0108】
パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)化合物の沸騰点が-22℃(常圧又は環境圧力下)であるため、室温下では、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)化合物はガス状である。そのため、本発明プロセスの一実施形態では、化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)が分離され、反応後、例えば、HF除去ステップ(B)反応器の後に、冷却器を用いて反応混合物全体を0℃(冷却器は図示せず)まで冷却し、さらに、例えばHF除去ステップ(B)で形成されたHFの大部分がサイクロン分離器を介して洗浄器にパージされるので、そして、化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を、温度が特定の圧力下でPFMVE沸騰点(例えば、PFMVE沸騰点にあるか、又はよりも低い-22℃)よりも低い温度に保持する冷却トラップに収集する。例えば、冷却トラップは、約-20℃よりも低い温度、好ましくは約-30℃の温度に保持されている。
【0109】
概要において簡単に説明され、特許請求の範囲において定義され、かつ本明細書の以下の説明及び実施例によってさらに詳述されるように、本発明は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための適切な中間体)を製造するための新規工業プロセスに関し、本明細書の以下説明及び特許請求の範囲に記載されているように、液相反応、そして、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム、又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)、及び管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくは、それぞれ逆流反応器システム又はマイクロ反応器にて反応が行われることに関する。
【0110】
一態様では、本発明は、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスに関し、
【化22】
ここで、前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムでの直接フッ素化反応(A)と、除去HF反応(B)のステップとを含み、
(A)第一反応ステップにおいて、式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を反応させることにより、直接フッ素化し、
【化23】
フッ素化ガスに含まれる約化学量論量の元素状フッ素(F)を用いて、式(III)の化合物において式(III)の化合物HFE-254の1-(メチルオキシ)基の3つの水素原子をフッ素で選択的に置換し、そして、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)が生成されるために、約0℃ないし約+60℃範囲内の温度下、
好ましくは約0℃ないし約+60℃範囲内の温度下、より好ましくは約10℃ないし約+50℃範囲内の温度下、更により好ましくは約20℃ないし約+40℃範囲内の温度下で、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、
好ましくは約5バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、より好ましくは約5バール絶対圧力ないし約15バール絶対圧力範囲内の圧力下、更により好ましくは約5バール絶対圧力ないし約12バール絶対圧力範囲内の圧力下、特に好ましくは約6バール絶対圧力ないし約11バール絶対圧力範囲内の圧力下で反応が行われ、
【化24】
分離及び/又は精製(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)のある又はなく、好ましくは分離及び/又は精製(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)がなく、
(B)第二反応ステップにおいて、除去反応が行われ、ここで、ステップ(A)で得られた式(II)の(中間体)フッ素化生成物(TFTFME)(E 227)からHF(フッ化水素)を除去し、そして、除去反応は以下のように行われ、
(i)1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、(放熱)除去反応として、
好ましくは1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、無水(放熱)除去反応として、
及び/又は
1つ又は複数の無機塩基の存在下で、
好ましくは1つ又は複数の無機塩基を含有する水溶液と反応する(放熱)除去反応、より好ましくは1つ又は複数の相間移動触媒の存在下で、1つ又は複数の無機塩基を含有する水溶液と反応する(放熱)除去反応として、
ここで、(放熱)除去反応の温度が、約60℃を超えない温度、
好ましくは約50℃を超えない温度、より好ましくは約45℃を超えない温度、更により好ましくは約40℃を超えない温度に制御され、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、
好ましくは約4バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、より好ましくは約4バール絶対圧力ないし約15バール絶対圧力範囲内の圧力下、更により好ましくは約4バール絶対圧力ないし約10バール絶対圧力範囲内の圧力下、特に好ましくは約4バール絶対圧力ないし約8絶対圧力範囲内の圧力下で(放熱)除去反応が行われ、
又は
(ii)式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)が生成されるために、
約60℃ないし約120℃範囲内の温度下、
好ましくは約70℃ないし約110℃範囲内の温度下、より好ましくは約70℃ないし約100℃範囲内の温度下、更により好ましくは約70℃ないし約90℃範囲内の温度下で、非触媒又は好ましくは触媒、より好ましくはNi(ニッケル)触媒の熱除去反応として、

(C)ステップ(B)で得られた式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を反応器又は反応器システムから取り出して収集し、

(D)任意に、式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を分離及び/又は精製する。
【0111】
別の態様では、本発明は、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスに関し、
【化25】
ここで、前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムにて、HF除去反応ステップ(B)が行われることを含み、除去反応において、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)からHF(フッ化水素)を除去し、
【化26】
そして、以下のように除去反応ステップ(B)が行われ、
(i)1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、(放熱)除去反応として、
好ましくは1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で、無水(放熱)除去反応として、
及び/又は
1つ又は複数の無機塩基の存在下で、
好ましくは1つ又は複数の無機塩基を含有する水溶液と反応する(放熱)除去反応、より好ましくは1つ又は複数の相間移動触媒の存在下で、1つ又は複数の無機塩基を含有する水溶液と反応する(放熱)除去反応として、
ここで、(放熱)除去反応の温度が、約60℃を超えない温度、
好ましくは約50℃を超えない温度、より好ましくは約45℃を超えない温度、更により好ましくは約40℃を超えない温度に制御され、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、
好ましくは約4バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、より好ましくは約4バール絶対圧力ないし約15バール絶対圧力範囲内の圧力下、更により好ましくは約4バール絶対圧力ないし約10バール絶対圧力範囲内の圧力下、特に好ましくは約4バール絶対圧力ないし約8絶対圧力範囲内の圧力下で(放熱)除去反応が行われ、
又は
(ii)式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)が生成されるために、
約60℃ないし約120℃範囲内の温度下、
好ましくは約70℃ないし約110℃範囲内の温度下、より好ましくは約70℃ないし約100℃範囲内の温度下、更により好ましくは約70℃ないし約90℃範囲内の温度下で、非触媒又は好ましくは触媒、より好ましくはNi(ニッケル)触媒の熱除去反応として、

(C)ステップ(B)で得られた式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を前記反応器又は反応器システムから取り出して収集し、

(D)任意に、式(I)の化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を分離及び/又は精製する。
【0112】
別の態様では、本発明は、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスに関し、
【化27】
ここで、前記プロセスは、耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の反応器又は反応器システムにて、直接フッ素化反応ステップ(A)が行われることを含み、直接フッ素化反応において、式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)は、
【化28】
式(III)の化合物中において、式(III)の化合物HFE-254の1-(メチルオキシ)基の3つの水素原子をフッ素で選択的に置換するために、フッ素化ガス中に含まれる約化学量論量の元素状フッ素(F)でフッ素化され、そして、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)が生成されるために、
約0℃ないし約+60℃範囲内の温度下、
好ましくは約0℃ないし約+60℃範囲内の温度下、より好ましくは約10℃ないし約+50℃範囲内の温度下、更により好ましくは約20℃ないし約+40℃範囲内の温度下で、
そして、約1バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、
好ましくは約5バール絶対圧力ないし約20バール絶対圧力範囲内の圧力下、より好ましくは約5バール絶対圧力ないし約15バール絶対圧力範囲内の圧力下、更により好ましくは約5バール絶対圧力ないし約12バール絶対圧力範囲内の圧力下、特に好ましくは約6バール絶対圧力ないし約11バール絶対圧力範囲内の圧力下で反応が行われ、
【化29】
(C)ステップ(A)で得られた式(II)化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を前記反応器又は反応器システムから取り出して収集し、
(D)任意に、(II)化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を分離及び/又は精製する。
【0113】
別の態様では、本発明は、前述に定義されているように、(密閉)塔型反応器にて直接フッ素化反応(A)及び/又はHF除去反応(B)が行われる式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関する。
【0114】
さらに別の態様では、本発明は、前述に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は請求項3に記載の式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、直接フッ素化反応(A)の液体反応媒体は、(密閉)塔型反応器中の環状管で循環してフッ素化反応(A)を行い、同時に、元素状フッ素(F)を含むフッ素化ガスを前記(密閉)塔型反応器に投入し、液体反応媒体を介して式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)と反応させるプロセスに関する。好ましくは、環状管は、約1000l/hないし約2000l/h、より好ましくは約1250l/hないし約1750l/hの循環速度で動作し、更に好ましくは、環状管は、約1500l/h±200l/h、更により好ましくは約1500l/h±100l/h、特に好ましくは約1500l/h±50l/h範囲内の循環速度で動作する。
【0115】
例えば、前述に限定されているように、本発明に記載の別の態様では、直接フッ素化反応(A)の場合、(密閉)塔型反応器が以下(i)~(vi)のうちの少なくとも1つを備えるプロセスに関する。
【0116】
(i)少なくとも1つの熱交換器(システム)、液体反応媒体を含み、液体反応媒体用の入口及び出口を有する少なくとも1つの液体貯蔵槽、
例えば、最初に式(III)の化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)を含むか、又はそれからなるか、又は反応が行われることに伴って、式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を徐々に含むか、又はそれからなり、
(ii)液体反応媒体をポンプ輸送/循環するためのポンプ、
(iii)好ましくは前記塔型反応器の頂部に配置され、循環反応媒体を前記(密閉)塔型反応器に噴入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴射器、
(iv)元素状フッ素(F)を含むか、又は元素状フッ素(F)からなるフッ素化ガスを前記(密閉)塔型反応器に導入するための1つ又は複数の投入入口、
(v)任意に、1つ又は複数の篩、好ましくは2つの篩、好ましくは前記(密閉)塔型反応器の底部に配置された1つ又は複数の篩、
(vi)圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、及び前記(密閉)塔型反応器から式(II)のフッ素化的化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を取り出すための少なくとも1つの出口。
【0117】
以上のように、逆流反応器システム、特に、ループ型反応器システム、又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にてフッ素化(A)反応が行われる場合、フッ素化(A)反応は、Fフッ素化ガスにおけるフッ素F濃度の全範囲内で行われてもよく、この範囲は、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、1%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)である。
【0118】
この態様では、例えば、本発明は、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1, 2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、逆流反応器システム、特に、在ループ型反応器システム、又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にてフッ素化(A)反応が行われ、及び
フッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度範囲は、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約1%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)であり、
好ましくは、ここで、
(i)Fフッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度範囲は、体積に基づいて計算される約1%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約30%の元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約5%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約25%の元素状フッ素(F)、更により好ましくは体積に基づいて計算される約5%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約20%の元素状フッ素(F)であり、各範囲は、いずれも体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、又は
(ii)Fフッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度範囲は、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約85%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約90%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)である、プロセスに関する。
【0119】
そのため、逆流反応器システム、特にループ型反応器システム、又は在逆流(環状管)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)にてフッ素化(A)反応が行われる場合、一態様では、本発明は、上記に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)のプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、Fフッ素化ガスに比較的低いフッ素(F)濃度を応用し、そして、直接フッ素化反応ステップ(A)におけるフッ素化ガスは、1つ又は複数の不活性ガスで希釈された元素状フッ素(F)であり、そして、元素状フッ素(F)のフッ素化ガスにおける濃度範囲は、体積に基づいて計算される約1%ないし体積に基づいて計算される約30%の元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約5%ないし体積に基づいて計算される約25%の元素状フッ素(F)、更により好ましくは体積に基づいて計算される約5%ないし体積に基づいて計算される約20%の元素状フッ素(F)であり、各範囲は、いずれも体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づく、プロセスに関する。更により好ましくは、前記逆流反応器システム、特に循環反応器システム又は逆流(環状管)システム(「逆向ガス洗浄器システム」)にて反応が行われる場合、直接フッ素化反応ステップ(A)におけるフッ素化ガスは、1つ又は複数の不活性ガスで希釈された元素状フッ素(F)であり、そして、元素状フッ素(F)のフッ素化ガスにおける濃度範囲は、体積に基づいて計算される約5%ないし体積に基づいて計算される約15%の元素状フッ素(F)、依然として、より好ましくは体積に基づいて計算される約8%ないし体積に基づいて計算される約15%の元素状フッ素(F)、特に好ましくは体積に基づいて計算される約8%ないし体積に基づいて計算される約12%の元素状フッ素(F)の範囲内にあり、例えば元素状フッ素(F)のフッ素化ガスにおける濃度範囲は、体積に基づいて計算される約10%(例えば、それぞれ体積に基づいて計算される10±2%又は体積に基づいて計算される10±1%)である。当業者によって理解されるように、上述した任意の所定範囲内で、任意の中間値及び中間範囲を選択してもよいことは言うまでもない。
【0120】
そのため、逆流反応器システム、特に、ループ型反応器システム又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にてフッ素化(A)反応が行われる場合、別の態様では、本発明は、上記に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、Fフッ素化ガスに比較的高いフッ素(F)濃度を応用し、そして、元素状フッ素(F)のフッ素化ガスにおける濃度範囲は、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約85%ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%(上記に定義されているように)の元素状フッ素(F)、特に好ましくは体積に基づいて計算される約90%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)(上記に定義されているように)である、プロセスに関する。さらにより好ましくは、前記逆流反応器システム、特に、ループ型反応器システム又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にて反応が行われる場合、本発明のフッ素化プロセスステップ(A)で使用されるFフッ素化ガスは、例えば不活性ガスに一定程度のみまで希釈されたフッ素(F)ガス(そして、それらは共にFフッ素化ガスを構成する)であり、フッ素(F)の濃度範囲は、例えば、最大濃度が体積に基づいて計算される約ほとんど100%(体積)の元素状フッ素(F)の場合、体積に基づいて計算される約85%からの範囲、特に、体積に基づいて計算される約90%からの範囲、又は特に、体積に基づいて計算される約92%からの範囲の元素状フッ素(F)、特に体積に基づいて計算される約94%からの範囲の元素状フッ素(F)である。各所定範囲は、体積に基づいて計算されることに基づくフッ素Fガスと不活性ガスが合計100%であり、即ち、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づく。
【0121】
別の態様では、逆流反応器システム、特に、ループ型反応器システム又は逆流(環状管)システム(「逆方向ガス洗浄器システム」)にてフッ素化(A)反応が行われる場合、本発明は、上記に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、Fフッ素化ガスに比較的高いフッ素(F)濃度を応用して、そして、非常実用の範囲内で、例えば、特に、精製済み又は未精製のFフッ素化ガスがF電解反応器(フッ素槽)から、そしてF電解反応器(フッ素槽)からのフッ素(F)ガスが不活性ガスで(そして、それらは共にFフッ素化ガスを構成する)一定程度だけ希釈された場合、フッ素Fの濃度範囲は、体積に基づいて計算される約92%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約99%の元素状フッ素(F)、特に好ましくは体積に基づいて計算される約94%ないし体積に基づいて計算される約99%の非常実用範囲内にある、プロセスに関する。各所定範囲は、体積に基づいて計算されることに基づくフッ素Fガスと不活性ガスが合計100%であり、即ち、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づく。
【0122】
当業者によって理解されるように、上述した任意の所定範囲内で、任意の中間値及び中間範囲を選択してもよいことは言うまでもない。
【0123】
別の態様では、本発明は、前述に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するための方法であって、HF除去反応(B)の液体反応媒体は、HF除去反応(B)を行うために(密閉)塔型反応器の環状管で循環され、そして、環状管は、環状管は、約1000l/hないし約2000l/h、好ましくは約1250l/hないし約1750l/h範囲内の循環速度で動作し、より好ましくは、環状管は、約1500l/h±200l/h、さらにより好ましくは、約1500l/h±100l/h、特にましくは、約1500l/h±50l/h範囲内の循環速度で動作する、方法に関する。
【0124】
例えば、上記に定義されているように、本発明に記載の別の態様では、HF除去反応(B)の場合、(密閉)塔型反応器が以下(i)~(vi)のうちの少なくとも1つを備えるプロセスに関する。
【0125】
(i)少なくとも1つの熱交換器(システム)、液体反応媒体を含み、液体反応媒体用の入口及び出口を有する少なくとも1つの液体貯蔵槽、
例えば、最初に式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を含むか、又はそれからなるか、又は反応が行われることに伴って、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を徐々に含むか、又はそれからなり、
(ii)液体反応媒体をポンプ輸送/循環するためのポンプ、
(iii)好ましくは塔型反応器の頂部に配置され、循環反応媒体を(密閉)塔型反応器に注入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴射器、
(iv)任意に、(i)では、好ましくは1つ又は複数の含窒素有機塩基の存在下で(放熱)除去反応としてHF除去反応が行われる場合、1つ又は複数の含窒素有機塩基を(密閉)塔型反応器に導入するための1つ又は複数の投入入口、
(v)任意に、1つ又は複数の篩、好ましくは2つの篩、好ましくは(密閉)塔型反応器の底部に配置している1つ又は複数の篩、及び、
(vi)圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、及び(密閉)塔型反応器から式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を取り出すための少なくとも1つの出口。
【0126】
本発明の一態様では、直接フッ素化反応(A)及び/又はHF除去反応(B)は(密閉)塔型反応器にて行われ、本発明は、上記に定義されるように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、塔型反応器は、充填床塔型反応器であり、好ましくは、耐反応物、かつ特に耐元素状フッ素(F)及びフッ化水素(HF)の充填物、例えば、ラッシヒ充填物、E-TFE充填物及び/又は耐HFの金属充填物、例えばHastelloy金属充填物及び/又は(好適)HDPTFE充填物を充填した充填床塔型反応器であり、より好ましくは、充填床塔型反応器は、任意の上記耐HFのHastelloy金属充填物及び/又はHDPTFE充填物、好ましくはHDPTFE充填物を充填したガス洗浄器システム(塔)である、プロセスに関する。
【0127】
さらに別の態様では、本発明は、前述に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスに関する。ここで、上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器での少なくとも1つのステップ、より好ましくはマイクロ反応器での少なくとも1つのステップにおいて、直接フッ素化反応(A)及び/又はHF除去反応(B)が行われ、
またより好ましくは、直接フッ素化反応(A)及び/又はHF除去反応(B)は、少なくとも1つのステップにおいて、少なくとも1つの上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器にて行われる連続プロセスとして行われ、
さらにより好ましくは、直接フッ素化反応(A)及び/又はHF除去反応(B)は、少なくとも1つのステップにおいて、少なくとも1つのマイクロ反応器にて行われる連続プロセスとして行われる。
【0128】
別の態様では、本発明は、前述に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、任意のプロセスステップ(A)と(B)を開始する前に、使用される1つ又は複数の反応器を不活性ガス又は不活性ガスの混合物でパージし、好ましくはHe(ヘリウム)及び/又はN(窒素ガス)、より好ましくはN(窒素ガス)を不活性ガスとしてパージする、ことを特徴とするプロセスに関する。
【0129】
特定の態様では、本発明は、前述に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、フッ素化反応ステップ(A)において、SiC反応器にて反応が行われ、好ましくは、フッ素化反応ステップ(A)において、SiCマイクロ反応器にて反応が行われる、ことを特徴とするプロセスに関する。
【0130】
別の特定の態様では、本発明は、前述に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスであって、HF除去ステップ(B)において、ニッケル反応器(Ni反応器)又は高ニッケル含有量(Ni含有量)の内表面を有する反応器にて反応が行われ、好ましくは、HF除去ステップ(B)において、ニッケルマイクロ反応器(Niマイクロ反応器)又は高ニッケル含有量(Ni含有量)の内表面を有するマイクロ反応器にて反応が行われる、ことを特徴とするプロセスに関する。
【0131】
別の特定の態様では、本発明は、前述に定義されているように、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は式(II)の化合物TFTFME(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、フッ素化反応ステップ(A)から生成された生成物及び/又はHF除去ステップ(B)から生成された生成物に対して、独立して蒸留を行う、ことを特徴とするプロセスに関する。
【0132】
別の態様では、本発明は、任意に、前述に定義されるように、式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は、任意に、前述に定義されるように、式(II)を有する1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスであって、第二の反応器でのステップ(B)において、ニッケル反応器(Ni反応器)又は高ニッケル含有量(Ni含有量)の内表面を有する反応器にて除去反応が行われる、ことを特徴とするプロセスに関する。好ましくは、本発明の文脈では、用語「高ニッケル含有量」は、ニッケル反応器を製造する金属合金におけるニッケル(Ni)含有量が少なくとも50%であることを指す。特に好ましくはHastelloy C4ニッケル合金からなるニッケル反応器である。従来技術において、Hastelloy C4ニッケル合金は、クロム及び高モリブデン含有量の組み合わせを含むニッケル合金であることが知られている。このようなHastelloy C4 ニッケル合金は、大量の化学媒体、例えば、汚染された還元性無機酸、塩化物及び塩化物で汚染された有機と無機媒体に対する超絶の抵抗力を示した。
【0133】
Hastelloy C4ニッケル合金は、例えば、それぞれ製品名がNicrofer(登録商標) 6616 hMo又はHastelloy C-4(登録商標)である市販のものであってもよい。Hastelloy C4ニッケル合金の密度は8.6g/cm、溶融温度範囲は1335~1380℃である。
【0134】
Hastelloy C4ニッケル合金は、その特殊なC4化学組成のため、良好な構造安定性及び高抗増感性能を有する。
【0135】
Hastelloy C4(ニッケル合金)の化学組成を例にとると、以下の表1に示されるように、金属合金におけるニッケル(Ni)含有量は少なくとも50%であり、ニッケル(Ni)含有量にHastelloy C4ニッケル合金成分を加算して合計100%の金属合金となる。
Hastelloy C4(ニッケル合金)の化学成分
【表1】
【0136】
別の態様では、本発明は、任意に、前述に定義されるように、式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は任意に、前述に定義されるように、式(II)を有する1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関する。上記プロセスでは、ステップ(A)において、連続式で、好ましくはマイクロ反応器にて、連続式でフッ素化反応が行われることを特徴とする。
【0137】
別の特定かつ好適な態様では、本発明は、任意に、前述に定義されるように、式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセスにさらに関する。上記プロセスでは、ステップ(B)において、連続式で、好ましくはマイクロ反応器にて、連続式で除去反応が行われることを特徴とする。
【0138】
別の特定かつ好適な態様では、本発明は、任意に、前述に定義されるように、式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は任意に、前述に定義されるように、式(II)を有する1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関する。上記プロセスでは、少なくとも1つの反応ステップ(A)と(B)において、反応は連続プロセスとして行われ、ここで、少なくとも1つの上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器にて、少なくとも1つの反応ステップ(A)と(B)における連続プロセスが行われ、好ましくは少なくとも1つの連続流反応器はマイクロ反応器であることを特徴とする。
【0139】
さらに好適な態様では、本発明は、任意に、前述に定義されるように、式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は任意に、前述に定義されるように、式(II)を有する1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関する。上記プロセスでは、少なくとも1つの反応ステップ(A)と(B)において、反応は連続プロセスとして行われ、ここで、少なくとも1つの上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器中にて該連続プロセスが行われ、好ましくは少なくとも1つのマイクロ反応器にて行われ、
より好ましくは、前記ステップ(A)と(B)において、少なくともフッ素化反応のステップ(A)は、少なくとも1つのマイクロ反応器にて、
流速:約10 ml/h~約400 l/h、
温度:それぞれ約-20℃~約150℃、又は-10℃~約150℃、又は0℃~約150℃、又は10℃~約150℃、又は20℃~約150℃、又は約30℃~約150℃、
圧力:約1バール(1大気圧絶対圧力)~約50バール、好ましくは約1バール(1大気圧絶対圧力)~約20バール、より好ましくは約1バール(1大気圧絶対圧力)~約5バール、特に好ましくは約1バール(1大気圧絶対圧力)~約4バール、一実施例では、圧力が約3バールであること、
滞留時間:約1秒(好ましくは約1分)~約60分、のうちの1つ又は複数の条件下での連続プロセスである、ことを特徴とする。
【0140】
別の態様では、本発明は、任意に、前述に定義されるように、式(I)を有するPFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)を製造するためのプロセス、又は、任意に、前述に定義されるように、式(II)を有する1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスにさらに関する。上記プロセスは、ステップ(A)から生成された生成物及び/又はステップ(B)から生成された生成物に対して蒸留を行うことを特徴とする。
【0141】
バッチプロセス:
本発明は、バッチ式で行われる特定プロセスステップを含み、好ましくは塔型反応器にてバッチプロセスステップが行われるフッ素化化合物を製造するためのプロセスにも関する。以下の塔型反応器の配置において、プロセスはバッチプロセスとして記述されるが、任意に、このプロセスは前記塔型反応器の配置において連続プロセスとして行われてもよい。前記塔型反応器の配置において連続プロセスである場合、追加の入口及び出口が予想され、それぞれ出発化合物の投入及び生成物化合物、及び/又は任意の中間体化合物(必要な場合)の排出のために用いられることは言うまでもない。図4と実施例9を参照されたい。
【0142】
本発明がバッチプロセスに関する場合、好ましくは塔型反応器にて、バッチプロセス、即ち、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1((トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための適切な中間体)を製造するための方法プロセスが行われ、特に好ましくは、(密閉)塔型反応器(システム)にて、液体出発化合物(例えば、それぞれ化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)又はTFTFME(E 227))又はそれからなる液体媒体を液体媒体として環状管で循環させることを含む反応が行われる。好ましくは、塔型反応器における環状管は、1500l/hないし5000l/h、より好ましくは3500l/hないし4500l/hの循環速度で動作する。
【0143】
本発明がこのようなバッチプロセスに関する場合、前記液体媒体を塔型反応器にて乱流又は層流の形式で循環させ、好ましくは乱流の形式で循環させるように、本発明によるパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスが行われてもよい。
【0144】
一般的に、それぞれ、目標生成物化合物及び/又は任意の中間体化合物(必要な場合)に必要な化学量論に基づいて、ガス状出発化合物(例えば、Fフッ素化ガス)を環状管に投入し、反応速度に適応させる。
【0145】
例えば、本発明による化合物PFMVE及び/又はTFTFME(E 227)を製造するための前記プロセスは、例えばバッチ式で行われてもよい。ここで、塔型反応器は、少なくとも1つの冷却器(システム)、液体出発化合物を含むか、又はそれらからなる液体媒体に用いられる少なくとも1つの液体貯蔵槽、ポンプ(液体媒体をポンプ輸送/循環するために用いられる)、好ましくは塔型反応器の頂部に配置され、循環媒体を塔型反応器に注入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴射器、ガス状出発化合物(例えば、Fフッ素化ガス)を導入するための1つ又は複数の投入入口、任意に、1つ又は複数の篩、好ましくは2つの篩、好ましくは塔型反応器の底部に配置された1つ又は複数の篩、及び圧力弁を備えた少なくとも1つのガス出口、のうちの少なくとも1つを備える。
【0146】
そのため、本発明によるパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)化合物を製造するためのプロセスは、
(i)少なくとも1つの冷却器(システム)、液体媒体に用いられる入口と出口を有し、そして出発化合物を含むか、又はそれらからなる液体媒体、好ましくはそれぞれ化合物HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)又はTFTFME(E 227)である液体媒体を含む少なくとも1つの液体貯蔵槽、
(ii)塔型反応器中の液体媒体をポンプ輸送及び循環するためのポンプ、
(iii)好ましくはそのうちの1つ又は複数の(噴射ノズル)噴射器が塔型反応器の頂部に配置され、循環液体媒体を塔型反応器に注入するための1つ又は複数の(噴射ノズル)噴射器、
(iv)ガス状出発化合物(例えば、不活性ガス又は Fフッ素化ガス)を塔型反応器にそれぞれ導入するための1つ又は複数の投入入口、
(v)任意に、1つ又は複数の篩、好ましくは2つの篩、好ましくは塔型反応器の底部に配置された1つ又は複数の篩、
(vi)及び、少なくとも1つに圧力弁をそれぞれ備えたガス出口と、生成物化合物及び/又は必要な任意の中間体化合物を取り出すための少なくとも1つの出口、のうちの少なくとも1つを備えた塔型反応器にて行われてもよい。
【0147】
一実施形態では、本発明によるパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)化合物を製造するためのプロセスは、塔型反応器にて行われてもよく、この塔型反応器は充填床塔型反応器であり、好ましくは耐反応物(特に耐フッ化水素)の充填物(用語「充填物」及び「充填材」は本発明の文脈において同義である)を充填した充填床塔型反応器(HF)である。本発明の文脈において、適用した反応物かつ特に耐フッ化水素(HF)の充填物は、特にHFプラスチック充填物及び/又は耐HF金属充填物である。例えば、場合によっては、充填床塔型反応器にはステンレス(1.4571)充填物を充填する場合があるが、ステンレス(1.4571)充填物は、反応器システムにおいて(微量)湿気が存在するリスクがあるので、以下に記載されている他の充填物に及ばない。好ましくは、例えば、本発明では、充填床塔型反応器には、耐反応物、かつ特に耐フッ化水素(HF)の充填物、例えばラッシヒ充填物、E-TFE充填物及び/又は耐HFの金属充填物、例えばHastelloy金属充填物、及び/又は(好適)HDPTFE充填物を充填し、より好ましくは、充填床塔型反応器は、前述の任意の耐HFのHastelloy金属充填物及び/又はHDPTFE充填物、好ましくはHDPTFE充填物を充填したガス洗浄器システム(塔)である。
【0148】
別の実施形態では、本発明によるパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)化合物を製造するためのプロセスは、液体出発化合物又はそれからなる循環液体媒体を含む逆流及びガス状出発化合物又はHF-フッ素化ガスの逆流をそれぞれ用いて反応し、上記両者は塔型反応器に投入される。
【0149】
圧力弁の役割は、反応に必要な圧力を保持し、任意の排気、例えば、フッ素化ガスに含まれる不活性キャリアガスを放出することであり、適用可能である場合、反応から釈放する任意のハロゲン化水素ガスと共に放出される。
【0150】
本発明によるパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)化合物を製造するための前記プロセスは、例えばバッチ式で行われてもよく、それによって、前記プロセスにおいて、塔型反応器が前述した充填床塔型反応器、好ましくはHDPTFE充填物を充填した充填床塔型反応器である。
【0151】
図4の充填塔は、Hastelloy C4(ニッケル合金)(当業者に知られている)から作られ、100又は200mmの直径(循環流速及び規模に依存する)を有してもよく、そして、直径100mmの塔の長さは3メートル、直径200mmの塔の長さは6メートルである(より高い容量が必要な場合は後者)。Hastelloyから作られた塔には、前述した任意の充填物を充填するか、又は好適なHDPTFE充填物を充填する。各種の直径は10mmであり、市販のものであってもよい。充填物のサイズは非常に柔軟であり、充填物のタイプも非常に柔軟であり、上述した特性範囲内、即ち、以下の実施例1に開示されている試験では、HDPTFE充填物(又はそれぞれHDPTFE充填剤)が使用され、任意のガス状(開始)化合物を逆流方式で投入する際に、大きな圧力低下(圧力損失)をもたらすことなく、同じ性能を示した。
【0152】
連続流反応器システム(例えば、マイクロ反応器システム)における方法:
マイクロ反応器を利用する本発明の好適な方法は、連続流反応器システム及び管型反応器システムに適用可能であり、そして、コイル式反応器システムを有する変形態様にも適用可能である。
【0153】
上述のように、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムにてフッ素化(A)反応が行われる場合、好ましくはフッ素化(A)反応が行われる時にFフッ素化ガスにおける比較的高いフッ素(F)濃度(上記に定義されるように)を調整する。
【0154】
ここで、例えば、本発明は、式(I)を有する化合物PFMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)又は式(II)の化合物TFTFME(1,1, 2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン)(E 227)を製造するためのプロセスであって、フッ素化(A)反応は、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムにて行われ、そして、Fフッ素化ガスにおけるフッ素(F)濃度は、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づき、体積に基づいて計算される約85%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)、より好ましくは体積に基づいて計算される約90%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%の元素状フッ素(F)の範囲内にある、プロセスに関する。
【0155】
そのため、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムにてフッ素化(A)反応が行われる場合、本発明のフッ素化プロセスステップ(A)で使用されるFフッ素化ガスは、例えば不活性ガスで一定程度だけまで希釈されたフッ素(F)ガス(そして、それらは共にFフッ素化ガスを構成する)であり、フッ素(F)の濃度範囲は、例えば、最大濃度が最大体積に基づいて計算される約ほとんど100%(体積)の元素状フッ素(F)の場合、体積に基づいて計算される約85%からの範囲、特に、体積に基づいて計算される約90%からの範囲、又は特に、体積に基づいて計算される約92%の元素状フッ素(F)からの範囲、特に体積に基づいて計算される約94%からの範囲である。各所定範囲は、体積に基づいて計算されることに基づくフッ素Fガスと不活性ガスが合計100%であり、即ち、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づく。
【0156】
そのため、管型反応器システム、連続流反応器システム、コイル式反応器システム又はマイクロ反応器システム、好ましくはマイクロ反応器システムにてフッ素化(A)反応が行われる場合、本発明における前記フッ素化プロセスステップ(A)、例えば、フッ素(F)ガスを不活性ガスで(そして、それらは共にFフッ素化ガスを構成する)で一定程度だけ希釈され、フッ素(F)の濃度が、より好ましくは体積に基づいて計算される約92%ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%、更により好ましくは体積に基づいて計算される約94%ないし体積に基づいて計算される約ほとんど100%範囲内、またより好ましくは非常に実用の範囲内、例えば、特に、精製済み又は未精製のFフッ素化ガスが、F電解反応器(フッ素槽)からのものである場合、体積に基づいて計算される約92%の元素状フッ素(F)ないし体積に基づいて計算される約99%の元素状フッ素(F)、特に好ましくは体積に基づいて計算される約94%ないし体積に基づいて計算される約99%の非常に実用の範囲内にあり、各所定範囲は、体積に基づいて計算されることに基づくフッ素Fガスと不活性ガスが合計100%であり、即ち、体積に基づいて計算されるFフッ素化ガス組成が合計100%であることに基づく。
【0157】
本発明の好適な実施形態によれば、化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)をそれぞれ連続式で製造してもよい。より好ましくは、マイクロ反応器にて化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)をそれぞれ製造する。
【0158】
任意に、本発明によるパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)化合物を製造するためのプロセスにおける任意の中間体を分離及び/又は精製してもよく、次いで、そのような分離及び/又は精製された中間体を必要に応じてさらに処理してもよい。例えば、化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するのに適切な中間体であり、分離及び/又は精製されてもよい。例えば、第1のマイクロ反応器にてフッ素化(A)により、任意に分離及び/又は精製されることができる化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造し、次いで、HF除去のための反応ステップ(B)においてさらに反応させるために、化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を別の(第2の)マイクロ反応器に移す。
【0159】
上述の第1のマイクロ反応器配列にてフッ素化(A)とHF除去(B)反応により、任意に、分離及び/又は精製されることができる中間体化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)が生成され、そして、分離及び/又は精製形態の最終生成物を構成することができる。
【0160】
代替的に、第1のマイクロ反応器にてフッ素化(A)反応により(中間体)化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を得られた未精製化合物(例えば、さらに精製されていない)として、上述の(第2の)別のマイクロ反応器に移して、HF除去(B)反応においてさらに反応させて、化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)が生成される。
【0161】
本発明の別の変形形態では、例えば、実施例2及び反応スキーム3を参照すると、最終目標化合物パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)は、上記でより詳細に説明したように、(中間体)化合物1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)から製造してもよい。好ましくは、反応は連続式で行われてもよい。
【0162】
マイクロ反応器プロセス:
本発明は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)(パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)を製造するための適切な中間体)を製造するためのプロセスにも関する。ここで、このプロセスは連続プロセスであり、好ましくは、この連続プロセスは、マイクロ反応器にて行われる。
【0163】
本発明は、1つ以上のマイクロ反応器を用いてもよく、即ち、本発明は、容量又は滞留時間を延長するために、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のマイクロ反応器、例えば、10個までの並列のマイクロ反応器又は直列の4つのマイクロ反応器を用いてもよい。1つより多くのマイクロ反応器を使用する場合、複数のマイクロ反応器は、順序的に、又は並列的に配置されてもよく、3つ又はそれ以上のマイクロ反応器を使用する場合、それらは、順序的に配置されてもよいし、並列的に配置されてもよく、又は両方を兼ねてもよい。
【0164】
本発明は、本発明によるパーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスが、任意の連続流反応器システム、又は好ましくはマイクロ反応器システムにて行われることに非常に有利である。
【0165】
好適な実施形態では、本発明は、パーフルオロメチルビニルエーテル(PFMVE)及び/又は1,1,2,2-トラフルオロ-1-(トリフルオロメトキシ)エタン(TFTFME)(E 227)を製造するためのプロセスであって、少なくとも1つの反応ステップが、少なくとも1つの上部幅方向寸法が約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器にて行われる連続プロセスとして行われ、
好ましくは少なくとも1つのマイクロ反応器にて、より好ましくは前記少なくとも1つの反応ステップが少なくとも1つのマイクロ反応器にて、
流速:約10 ml/h~約400 l/h;
温度:約0℃~約150℃;
圧力:約4バール~約50バール;
滞留時間:約1秒(好ましくは約1分)~約60分、のうちの1つ又は複数の条件下での連続プロセスである。
【0166】
別の好適な実施形態では、本発明は、このような本発明による化合物を製造するプロセスに関し、ここで、少なくとも1つの前記連続流反応器、好ましくは少なくとも1つのマイクロ反応器は、独立してSiC連続流反応器、好ましくは独立してSiCマイクロ反応器である。
【0167】
連続流反応器とマイクロ反応器:
上記に加えて、本発明の一態様によれば、プロセス発明で使用されるか、及び本明細書に記載されているような工場工程発明がさらに提供され、この発明は、任意の、及びプロセスのいくつかの実施形態に関し、さらにこのプロセスは、マイクロ反応器にて実施されることが好ましい。
【0168】
用語「マイクロ反応器」について:本発明の一実施形態では、「マイクロ反応器」又は「マイクロ構造反応器」又は「マイクロチャネル反応器」は、化学反応が約≦1mmの典型的な幅方向寸法を有する範囲内で行われる装置であり、このような制限的な典型形態の一例は、マイクロチャネルである。一般的に、本発明の文脈では、用語「マイクロ反応器」、「マイクロ反応器」又は「マイクロ構造化反応器」又は「マイクロチャネル反応器」は、化学反応が約≦5mmの典型的な幅方向寸法範囲内で行われる装置を表す。
【0169】
マイクロ反応器は、物理プロセスが発生する他の設備(例えば、マイクロ熱交換器)とともにマイクロプロセス工学の分野で研究されている。マイクロ反応器は、一般的に、連続流反応器(バッチ式反応器に比べて)である。従来規模の反応器に比べて、マイクロ反応器は、エネルギー効率、反応速度と収率、安全性、信頼性、可拡張性、現場/オンデマンド製造及びより高い程度のプロセス制御などの方面の巨大な改良を含む多くの利点を有する。
【0170】
マイクロ反応器は、化学反応を行うために、「流動化学」に用いられる。
【0171】
マイクロ反応器がよく用いられる流動化学では、化学反応は、バッチ生産ではなく連続流動の流れで行われる。バッチ生産は、一連のワークステーション上で議論対象を段階的に作成され、そして、異なるロットの製品を生産する製造用の技術である。作業生産(一括生産)及びロット生産(フロー生産又は連続生産)と共に、3つの主要な生産プロセスの1つである。逆に、流動化学では、化学反応は、ポンプが流体を管内に移動させ、そして流体を管の相互接続場所にて互いに接触させる連続流動の流れで行われる。これらの流体が反応性であれば、反応する。流動化学は、成熟した技術であり、大量の所定材料を製造する際に大規模に利用することができる。しかし、この用語は、この間の実験室規模での応用によって創出されたものである。
【0172】
連続流反応器(例えば、マイクロ反応器として用いられる)は、一般的に、管状のものであり、かつ非反応性材料から作られ、例えば、従来の技術で知られているように、可能なエッチ液及び/又は反応物の特定目的及び特性に依存する。混合プロセスは、例えば反応器の直径が狭い(例えば<1mm)場合、マイクロ反応器と静的混合器において単独拡散することを含む。連続流反応器は、伝熱、時間及び混合を含む反応条件を良好に制御することができる。反応器内での試薬の滞留時間、即ち反応が加熱又は冷却される時間は、反応器の体積と通過する流速から計算される:滞留時間=反応器体積/流速。そのため、より長い滞留時間を得るために、試薬をより緩やかにポンプ輸送してもよく、より大容量の反応器を用いてもよく、及び/又はさらにいくつかのマイクロ反応器を直列に配置してもよく、反応ステップを完了させるために必要であれば、それらの間にいくつかの円筒のみを配置して滞留時間を増加させてもよい。後者の場合、各マイクロ反応器後のサイクロン分離器は、いくつかの低沸騰点物質(例えば、任意及び(存在可能の)不活性ガスと共に形成されたPFVME)の放出に寄与し、それによって、反応性能に積極的な影響を与える。生産効率は、ml毎分からリットル毎時間まで様々であってもよい。
【0173】
流反応器のいくつかの具体例は、回転ディスク反応器(Colin Ramshaw)、紡糸管反応器、多室流動床反応器、振動流反応器、マイクロ反応器六角反応器及び吸気式反応器である。吸気式反応器において、反応物を吸入されるように試薬をポンプにより推進する。プラグ流反応器と管状流反応器について更に言及する。
【0174】
本発明では、一実施形態では、特に好ましくはマイクロ反応器を採用する。
【0175】
好適な実施形態では、本発明による用途とプロセスにおいて、本発明はマイクロ反応器を使用する。ただし、本発明のより一般的な実施形態では、本発明の前記好適な実施形態がマイクロ反応器を使用することに加えて、他の任意の反応器、本明細書で定義されるように、例えば、好ましくは上部幅方向寸法が最高約1cmである管状連続流反応器を用いてもよい。そのため、このような連続流反応器は、好ましくは最高約≦5mm又は約≦4mm上部幅方向寸法を有し、これは、本発明の好適な実施形態、例えば、マイクロ反応器が好適であることを指す。一連のSTRを連続作動させることは、別の選択であるが、マイクロ反応器を使用することに比べて、比較的好ましくない。
【0176】
本発明の上述した実施例の前に、その最小の幅方向寸法は、例えば1mmである。好ましくは管状連続流反応器は、約>5mmであってもよいが、一般的に、1cmを超えない。そのため、例えば、好ましくは管状連続流反応器の幅方向寸法は、約>5mm~約1cmの範囲内にあってもよく、そして、両者の間の任意の値であってもよい。例えば、好ましくは管状連続流反応器の幅方向寸法は、約5.1mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5mm、約10mmであってもよく、又は前記値の間の任意の値であってもよい。
【0177】
先に、本発明のマイクロ反応器を使用する実施形態では、好ましくはマイクロ反応器の最小幅方向寸法は、少なくとも約0.25mm、好ましくは少なくとも約0.5mmであってもよいが、マイクロ反応器の最大幅方向寸法は約≦5mmを超えない。そのため、例えば、好ましくはマイクロ反応器の幅方向寸法は、約0.25mm~約≦5mm、好ましくは約0.5mm~約≦5mmの範囲内にあってもよく、そして、両者の間の任意の値であってもよい。例えば、好ましくはマイクロ反応器の幅方向寸法は、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mmと約5mmであってもよく、又は前記値の間の任意の値であってもよい。
【0178】
前述したように、本発明の実施形態では、その最も広い意味は、好ましくは上部幅方向最高約1cmの管状連続流反応器を使用することである。このような連続流反応器は、例えばプラグ流反応器(PFR)である。
【0179】
プラグ流反応器(PFR)は、連続管状反応器、CTR又はプラグ流れ反応器と呼ぶ場合もあり、円柱幾何学的形状の連続流動システムにおいて化学反応が行われ、記述するための反応器である。PFR反応器モデルは、重要な反応器変量、例えば、反応器の寸法を推定することができるように、このように設計された化学反応器の行為を予測するために用いられる。
【0180】
PFRを流れる流体を、反応器を流れる一連の無限薄いコヒーレンス「プラグ」にモデル化してもよく、各プラグは反応器の軸方向上に移動し、各プラグの成分は均一であり、かつ各プラグの成分はその前後とは異なる。重要な仮定は、プラグがPFRを流れると、流体が径方向(即ち、横方向)上に完全に混合され、軸方向(前方向又は後方向)上に完全に混合されないことである。
【0181】
そのため、本明細書で用いられる本発明の文脈で用いられる反応器のタイプを定義するための用語、例えば、「連続流反応器」、「プラグ流反応器」、「管状反応器」、「連続流反応器システム」、「プラグ流反応器システム」、「管状反応器システム」、「連続流システム」、「プラグ流システム」、「管状システム」は、互いに同義であり、かつ区別なく使用することができる。
【0182】
反応器又はシステムは、例えば、線形、環状、蛇行性、円形、渦巻き式、又はそれらの組み合わせである複数の管として配置されてもよい。例えば、渦巻き式であれば、反応器又はシステムは、「コイル管反応器」又は「コイル管システム」とも呼ばれる。
【0183】
径方向、即ち横向方向において、このような反応器又はシステムは、最高約1cmの内径又は内断面寸法(即ち、それぞれ径方向寸法又は幅方向寸法)を有してもよい。そのため、一実施形態では、反応器又はシステムの幅方向寸法は、約0.25mm~約1cm、好ましくは約0.5mm~約1cm、より好ましくは約1mm~約1cmの範囲内にあってもよい。
【0184】
さらに別の実施形態では、反応器又はシステムの幅方向寸法は、約>5mm~約1cm、又は約5.1mm~約1cmの範囲内にあってもよい。
【0185】
幅方向寸法が最高約≦5mm、又は最高約≦4mmである場合、この反応器は「マイクロ反応器」と呼ばれる。そのため、よりさらに別のマイクロ反応器実施形態では、反応器又はシステムの幅方向寸法は、約0.25mm~約≦5mm、好ましくは約0.5mm~約≦5mm、より好ましくは約1mm~約≦5mmの範囲内にあってもよく、又は反応器又はシステムの幅方向寸法は、約0.25mm~約≦4mm、好ましくは約0.5mm~約≦4mm、より好ましくは約1mm~約≦4mmの範囲内にあってもよい。
【0186】
本発明の代替的実施形態では、さらに任意に、マイクロ反応器以外の別の連続流反応器を使用することが望ましい。好ましくは、例えば、ハロゲン化又はフッ素化に使用される(ハロゲン化促進、例えばハロゲン化又は好ましくはハロゲン化)触媒組成物が、反応過程において粘稠になることが多い場合、又は前記触媒として自体が粘稠である。この場合、連続流反応器、即ち、その中に化学反応を制限する装置は、その下部幅方向寸法がマイクロ反応器の上述した幅方向寸法、即ち約1mmより大きいが、上部幅方向寸法が約≦4mmである。そのため、本発明のこの代替的実施形態では、連続流反応器を用いており、用語「連続流反応器」は、好ましくは化学反応が制限下で行われる装置を指し、その典型的な幅方向寸法は、約≧1mm~約≦4mmである。本発明のこのような実施形態では、特に好ましくは、連続流反応器として、前記幅方向寸法を有するプラグ流反応器及び/又は管状流反応器を採用する。同様に、本発明のこのような実施形態では、マイクロ反応器を採用した実施形態に比べて、特に好ましくは、連続流反応器において、好ましくはプラグ流反応器及び/又は管状流反応器において、比較的高い流速を採用し、上述した幅方向寸法を有する。例えば、マイクロ反応器に対して本明細書で述べた典型的な流速に比べて、このような比較的高い流速は、それぞれ約2倍高い、約3倍高い、約4倍高い、約5倍高い、約6倍高い、約7倍高い、又は約≧1~約≦7倍高い、約≧1~約≦6倍高い、約≧1~約≦5倍高い、約≧1約~≦4倍高い、約≧1~約≦3倍高い、又は約≧1~約≦2倍高い倍数のうちのいずれかの中間流速よりも高い。好ましくは、本発明のこの実施形態で用いられる前記連続流反応器、より好ましくはプラグ流反応器及び/又は管状流反応器には、本明細書で定義されるマイクロ反応器に用いられる構造材料が配置されている。例えば、このような建築材料は、ケイ素炭化物(SiC)及び/又は合金、例えば、高度耐腐食のニッケルクロムモリブデンタングステン合金、本明細書でマイクロ反応器に対して記述したように、例えばHastelloy(登録商標)である。
【0187】
本発明の一つの非常に特殊な利点は、上述した幅方向寸法を有するマイクロ反応器又は連続流反応器を採用することであり、分離ステップの数を減少及び簡略化させることができ、そして、時間及びエネルギー消費を節約させることができ、例えば、中間蒸留ステップを減少させた。特に、マイクロ反応器又は上述した幅方向寸法を有する連続流反応器を使用する本発明の特別な利点は、簡単な相分離プロセスを用いて分離することができ、そして、未消費の反応成分をプロセスに再循環させるか、又は必要に応じて、又は製品自体として適切に使用されることができることである。
【0188】
本発明によるマイクロ反応器を使用する本発明の好適な実施形態に加えて、マイクロ反応器を使用することに加えて、又は代替として、プラグ流反応器又は管状流反応器をそれぞれ採用することが可能である。
【0189】
プラグ流反応器又は管状流反応器及びその動作条件は、それぞれ当業者に知られている。
【0190】
本発明では、場合によっては、特に好ましくは幅方向寸法がそれぞれ約≦5mm又は約≦4mmである連続流反応器、特にマイクロ反応器を使用するが、マイクロ反応器を放棄し、それぞれプラグ流反応器又は乱流反応器を採用する人が想定されると、収率を損失させ、滞留時間を延長させ、温度を向上させることは当然である。しかし、これは潜在的利点を有する可能性があり、上述した可能性のある不利な収率損失を考慮し、即ち、利点はプラグ流反応器の管又は通路の直径がマイクロ反応器の管又は通路の直径よりも大きいため、詰まり発生の可能性を減少させることである(非最適駆動方式でタール顆粒を形成する)。
【0191】
しかしながら、プラグ流反応器又は管状流反応器を使用するような変化形の可能性のある欠点は、主観的な観点のみとみなされる場合もあるが、別の態様では、地域又は生産施設のいくつかのプロセスの制約下で、依然として適切なものである可能性があり、他の利点、又は制限を回避したことを考慮し、収率損失はあまり重要ではないこととみなされ、さらに許容されてもよい。
【0192】
以下では、マイクロ反応器を使用する文脈で本発明についてより具体的に説明する。好ましくは、本発明による使用されるマイクロ反応器は、セラミック連続流反応器であり、より好ましくは、SiC(ケイ素炭化物)連続流反応器であり、そして、多規模な材料製造に用いられることができる。一体化された熱交換器と構造SiC材料において、挑戦的な流動化学用途のために最適な制御を提供することができる。流量発生反応器のコンパクト化かつモジュール化構造は、異なるプロセスタイプに対する長期的な柔軟性、一定の生産量(5~400l/h)達成可能、空間が限られた場合に化学生産強化、素晴らしい化学的相容性と熱制御に有利である。
【0193】
例えば、セラミック(SiC)マイクロ反応器は、拡散結合された3M SiC反応器、特に無半田と無金属の反応器に有利であり、FDA認証を有する建築材料又は他の薬物規制機関(例えば、EMA)によって認証された建築材料の優れた伝熱及び物質移動、優れた化学的相容性を有する。ケイ素炭化物(SiC)は金剛砂とも呼ばれ、ケイ素と炭素を含み、そして、当業者に知られている。例えば、合成SiC粉末は多くの技術応用に大量生産され、加工されている。
【0194】
例えば、本発明の実施形態では、少なくとも1つの反応ステップが、マイクロ反応器にて行われるプロセスによって実現されることを目的とする。特に、本発明の好適な実施形態では、少なくとも1つの反応ステップが、SiCを含むか、又はSiCから作られたマイクロ反応器(「SiCマイクロ反応器」)にて行われるか、又は合金(例えば、Hastelloy C)を含むか、又は合金(Hastelloy C)から作られたマイクロ反応器にて行われるプロセスによって実現されることを目的とし、それぞれ、以下でより詳細に定義される。
【0195】
以上は、好適なHastelloy C4ニッケル合金についてさらに説明した。例えば、表1を参照されたい。
【0196】
そのため、例えば、これに限定するものではないが、本発明の一実施形態では、このマイクロ反応器は、(好ましくは工業)生産に適しており、「SiCマイクロ反応器」は、SiCを含むか、又はSiC(ケイ素炭化物、例えばダウコーニング(Dow Corning)G1SiC型又はChemtrix MR555 Plant-rixによって提供されるSiC)から作られ、例えば、1時間当たり約5~約400kgの生産能力を提供する。又は、例えば、これに限定するものではないが、本発明の別の実施形態では、工業生産に適用されるマイクロ反応器は、Ehrfeldによって提供されるHastelloy Cを含むか、又はそれから作られる。このようなマイクロ反応器は、(好ましくは工業)本発明によるフッ素化生成物を生産するのに特に適している。
【0197】
生産規模の流量反応器に対する提出された機械的と化学的要求を満たすために、Plantrixモジュールは、3M(登録商標)SiC(C級)から作られる。特許を取得した3M(EP 1 637 271 B1及び海外特許)拡散接着技術を用いて製造された反応器全体は、気密性があるものであり、そして溶接ライン/継手及びロウ剤を有さない。Chemtrix MR 555 Plantrixについてのより多くの技術情報は、全体として参照によって本明細書に組み入れられるChemtrix BVが2017年に出版した小冊子<CHEMTRIX-拡張可能流動化学技術情報Protrix(登録商標)(CHEMTRIX-Scalable Flow Chemistry-Technical Information Protrix(登録商標)>において見出すことができる。
【0198】
上述した実施例に加えて、本発明の別の実施形態では、一般的に、他の製造業者からの、かつ当業者に知られているSiCは、本発明に用いられてもよいことは言うまでもない。
【0199】
そのため、本発明では、マイクロ反応器としてChemtrix社のProtrix(登録商標)を用いてもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)ケイ素炭化物から作られたモジュール化連続流反応器であり、優れた耐薬品性と伝熱性を有する。流反応器に対する機械的と化学的要求を満たすために、Protrix(登録商標)モジュールは、3M(登録商標) SiC(C級)から作られる。特許を取得した3M(EP 1 637 271 B1及び海外特許)拡散接着技術を用いて製造された反応器全体は、気密性があるものであり、溶接ライン/継手及びロウ剤を有さない。このような製造技術は、製造プロセスであり、固態SiC反応器(熱膨張率=4.1x10-6-1)を提供することができる。
【0200】
Protrix(登録商標)は、0.2~20ml/minの流速及び最高25バールの圧力のために設計され、ユーザが実験室レベルの連続流技術を開発し、その後、材料製造のためのPlantrix(登録商標) MR555(×340比例係数)に移行することを可能にする。Protrix(登録商標)反応器は、一体化された熱交換器の拡散結合式3M(登録商標) SiCモジュールを備え、無段の熱制御と優れた耐薬品性を提供でき、標準通風室においてg級の極端反応条件を安全に使用でき、試薬注入数、容量又は反応時間の方面では効率的かつ柔軟に生産できるという利点を有するフロー反応器である。Protrix(登録商標)流反応器の汎用仕様は、以下で概述するように、可能な反応タイプが、例えばA+B→P1+Q(又はC)→Pであり、ここで、用語「A」、「B」及び「C」は遊離体を表し、「P」及び「P1」は生成物を表し、「Q」はクエンチャーを表す。収量(ml/min)は約0.2~約20であり、通路寸法(mm)は1×1(予熱と混合領域)、1.4×1.4(滞留通路)であり、投入1~3、モジュール寸法(幅×高さ)(mm)は110×260であり、枠寸法(幅×高さ×長さ)(mm)は約400×300×250であり、各モジュールのモジュールの数は1つ(最小)~4つ(最大)である。ChemtrixProtrix(登録商標)反応器についてのより多くの技術情報は、全体として参照によって本明細書に組み入れられるChemtrix BVが2017年に出版した小冊子<CHEMTRIX-拡張可能流動化学技術情報Protrix(登録商標)(CHEMTRIX-Scalable Flow Chemistry-Technical Information Protrix(登録商標))>において見出すことができる。
【0201】
ダウコーニングG1SiC型マイクロ反応器は工業生産に拡張してもよく、プロセス開発と小バッチ式にも適しており、その寸法は、典型的な反応器寸法(長さ×幅×高さ)が88cm×38cm×72cmであり、典型的な流体モジュール寸法が188mm×162mmであることに特徴付けられることができる。ダウコーニングG1SiC型マイクロ反応器の特徴は、優れた混合と熱交換、特許を取得したHEART設計、内部体積が小さく、滞留時間が長く、高度柔軟かつ用途が広く、高薬品耐久性により高pH値の化合物、特にヒドロフルオロ酸に適用できること、建築材料用の混合ガラス/SiC溶液、他の先進流反応器と無差別に拡大できることにまとめられることができる。ダウコーニングG1SiC型マイクロ反応器の典型的な仕様は、流速が約30ml/min~約200ml/minで、動作温度が約-60℃~約200℃で、動作圧力が約18barg(「barg」とは、ゲージ圧の単位、即ち、バールで計算される環境圧力又は大気圧の圧力単位である)、使用材料がケイ素炭化物、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、パーフルオロエラストマーで、内部容積が10mlである流体モジュールであり、オプション:規制機関認証、例えば、それぞれFDA又はEMAである。ダウコーニングG1SiC型マイクロ反応器の反応器配置は、様々な用途の特徴を有し、そしてカスタム配置可能であり、前記反応器上の任意の部位に注入点を追加してもよい。
【0202】
Hastelloy(登録商標) Cは、化学式がNiCr21Mo14Wである合金であり、「合金22」又は「Hastelloy(登録商標) C-22」とも呼ばれる。前記合金は、周知の高耐食ニッケルクロムモリブデンタングステン合金であり、そして、優れた抗酸化還元性と混合酸の能力を有する。前記合金は、排気脱硫黄工場、化学工業、環境保全システム、廃棄物焼却工場、廃水処理工場に用いられている。上述した実施例に加えて、本発明の別の実施形態では、一般的に、他の製造業者からの、かつ当業者に知られているニッケルクロムモリブデンタングステン合金も本発明に用いられてもよい。総合金組成が100%であることに基づき、このようなニッケルクロムモリブデンタングステン合金の典型的な化学組成(いずれも重量%で計算される)は、主成分(余剰量)としてのNi(ニッケル)が少なくとも約51.0%、例えば、約51.0%~約63.0%、Cr(クロム)が約20.0%~約22.5%、Mo(モリブデン)が約12.5%~約14.5%、W(それぞれタングステン(tungsten)又はタングステン(wolfram)である)が約2.5~3.5%、及びFe(鉄)の含有量が最高約6.0%、例えば約1.0%~約6.0%、好ましくは約1.5%~約6.0%、より好ましくは約2.0%~約6.0%の範囲内にある。任意に、総合金組成の百分比が100%であることに基づき、Co(コバルト)の合金における存在量は、最高約2.5%、例えば約0.1%~約2.5%の範囲内にあってもよい。任意に、総合金組成の百分比が100%であることに基づき、V(バナジウム)の合金における存在量は、最高約0.35%、例えば約0.1%~約0.35%の範囲内にあってもよい。同様に、総合金組成の百分比が100%であることに基づき、任意に、少量(即ち≦0.1%)の他の元素微量物質、例えば、独立してC(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)がある。少量(即ち≦0.1%)他の元素の場合、総合金組成の百分比が100%であることに基づき、前記元素、例えばC(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、それぞれ独立して存在量が最高約0.1%、例えばそれぞれ独立して約0.01%~約0.1%の範囲内にあり、好ましくはそれぞれの量が独立して最高約0.08%、例えばそれぞれ独立して約0.01%~約0.08%の範囲内にある。例えば、総合金組成の百分比が100%であることに基づき、前記元素、例えばC(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、それぞれ独立して存在の量(各値は、およそ値である)は、C≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%である。一般的に、上述した合金組成において、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかの微量元素も見つからない。
【0203】
Hastelloy(登録商標) C-276合金は、溶接の潜在的な危険を軽減することができる鍛造ニッケルクロムモリブデン材料(炭素とケイ素との含有量が極めて低いため)である。そのため、化学プロセスと関連業界で幅広く受け入れられ、そして、多くの耐食性化学薬品で証明された性能も50年の歴史を持っている。他のニッケル合金と同様、圧延性を有し、成形及び溶接しやすく、そして、塩素含有溶液中で優れた耐応力腐食割れ性(オーステナイトステンレスが分解しやすい形態)を有する。その比較的高いクロムとモリブデン含有量によって、酸化性と非酸化性酸に耐えることができ、塩化物と他のハロゲン化物が存在する場合でも、優れた耐孔食と細隙侵食能力を示した。総成分が100%であることに基づき、重量%で計算された公称組成物は、Ni(ニッケル)57%(余剰量)、Co(コバルト)2.5%(最大)、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(それぞれタングステン(tungsten)又はタングステン(wolfram)である)4%であり、含有量が比較的低い他の成分は、Mn(マンガン)が最高1%(最大)、V(バナジウム)が最高0.35%(最大)、Si(ケイ素)が最高0.08%(最大)、C(炭素)0.01(最大)、Cu(銅)が最高0.5%(最大)である。
【0204】
本発明の別の実施形態では、例えば、これに限定するものではないが、前記生産に適しており、好ましくは前記工業生産に用いられるマイクロ反応器は、SiCを含むか、又はSiCのみを建築材料として(ケイ素炭化物、例えばダウコーニング社によって提供されるG1SiC型又はChemtrix MR555 Plant-rixによって提供されるSiC)作られたSiCマイクロ反応器であり、例えば、1時間当たり約5~約400kgの生産能力を提供する。
【0205】
本発明によれば、本発明によるフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産では、1つ又は複数のマイクロ反応器、好ましくは1つ又は複数のSiCマイクロ反応器を使用することができることは言うまでもない。本発明によるフッ素化生成物の生産では、好ましくは工業生産では、1つより多くのマイクロ反応器、好ましくは1つより多くのSiCマイクロ反応器を使用する場合、これらのマイクロ反応器、好ましくはこれらのSiCマイクロ反応器は、並列に使用及び/又は後続に配置されてもよい。例えば、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のマイクロ反応器、好ましくは2つ、3つ、4つ又はそれ以上のSiCマイクロ反応器を並列及び/又は連続に配置使用してもよい。
【0206】
実験室研究にとって、例えば、適用の反応及び/又は拡大条件下で、例えば、これに限定するものではないが、マイクロ反応器としてChemtrix社のPlantrix型反応器は適切である。場合によって、マイクロ反応器のガスケットがHDPTFE以外の材料から作られ、短時間操作後に膨潤によるすぐに漏れが発生するため、HDPTFEガスケットを介してマイクロ反応器の長時間運転を保証することができ、及び沈降器と蒸留塔のような他の設備部品に関する。
【0207】
例えば、工業流反応器(「IFR」、例えば、Plantrix(登録商標)MR555)は、(湿潤化されていない)ステンレスフレーム内に収容されたSiCモジュール(例えば、3M(登録商標)SiC)からなり、このモジュールを介して標準スウェージロック(Swagelok)アクセサリーを用いて投入ラインと動作媒体とを接続することができる。動作媒体(熱流体又は蒸気)と組み合わせて使用する場合、プラグ流が生成され、高熱交換能力を有する目的を達成するように、モジュール内でプロセス流体を、一体化熱交換器を用いて加熱又は冷却し、鋸歯形又は双鋸歯形メソ孔構造で反応させてもよい。基本的なIFR(例えば、Plantrix(登録商標)MR555)システムは、A+B→Pタイプの反応を行うことができる1つのSiCモジュール(例えば、3M(登録商標)SiC)と、混合器(「MRX」)とを含む。モジュール数の増加により、反応時間及び/又はシステム収率の向上をもたらす。クエンチングQ/Cモジュールを追加することは、反応タイプをA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡張することができ、そして、遮蔽板により2つの温度領域を提供する。ここで、用語「A」、「B」及び「C」は遊離体を表し、「P」及び「P1」は生成物を表し、「Q」はクエンチャーを表す。
【0208】
工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な寸法は、4×4(「MRX」、混合器)と5×5(MRH-I/MRH-II、「MRH」は滞留モジュールを表す)であり、モジュール寸法(幅×高さ)は、200mm×555mmであり、枠寸法(幅×高さ)は、322mm×811mmである。工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的な通過量は、例えば約50l/h~約400l/hの範囲内にある。さらに、使用される流体特性及びプロセス条件に従って、工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の通過量は、例えば、>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、必要な反応量又は収率を提供するために、直列に配置されてもよい。直列に配置可能なモジュールの数は、流体属性及び目標流速に依存する。
【0209】
工業流反応器(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な動作又はプロセス条件は、例えば、約-30℃~約200℃の温度範囲、温度差(動作-処理)<70℃、投入1~3、約200℃の温度下、最大動作圧力(動作流体)約5バール、約≦200℃の温度下、最大動作圧力(処理流体)約25バールである。
【0210】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものとされ、特許請求の範囲を限定することは意図していない。
【0211】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものとされ、特許請求の範囲を限定することは意図していない。
【0212】
実施例1:
逆流システムにて、HFE-254を希釈されたFガスでE 227(TFTFME)(第一ステップ)にフッ素化し、PFMVE(第二ステップ)を得るために、E 227(TFTFME)に対して塩基によって誘発されるHF除去が行われた。
【0213】
設備:
次の図に従って、Hastelloy C4から作られた30cm長さと、直径5cm、HDPTFEを充填したカラムを用いた。液体貯蔵槽の体積は2リットルであった。ポンプはSchmitt社からの遠心ポンプであった。塔頂には圧力を調節するための圧力弁が1つ取り付けられた。加熱冷却用の熱交換器は、図1に示されるように、環状管に取り付けられた。
【0214】
実施例1a(第一ステップ):
HFE-254をE 227(TFTFME)に選択的に直接フッ素化した。
【0215】
貯蔵槽を1000g(7.57mol)HFE-254(1,1,2,2-トラフルオロ-1-(メチルオキシ)エタン)で満たし、ポンプ(流量約1500l/h)を起動した。10%Fガス(Nで希釈された)は、反応温度が30℃に保持されながら、塔上の圧力を、圧力弁を介して10バール絶対圧力に保持されるように、Bronkhorst質量流量計により塔に添加された。1時間後、893g(23.5mol)F(不活性ガスとしてのN中の10%F)をシステムに投入し、不活性Nは、いくつかの微量の形成されたHFと微量のE 227と共に、上部の圧力弁を介して設備から離れて高効率洗浄器に入った。いかなる投入量なしに、さらに10分間還流させた後、ポンプを停止した。ステンレスボンベを用いて液体貯蔵槽から試料を取り出し、ポンプ停止後、全ての材料が貯蔵槽に入った。この貯蔵槽には、今、主に生成物E 227(TFTFME)(中間生成物又は最終生成物として)と、フッ素化反応で形成されたHF(いくつかのHFは、既に不活性ガスと共に放出された)の大部分とを含んだ。ボンベ中の物質を別の圧力容器(体積2リットル)中の氷水に注意深く注入し、5分間揺動して水相中のHFを除去し、蒸発された有機相のGC分析(GC=ガスクロマトグラフィ)によると、E 227(TFTFME)濃度が96%であることを示した。
【0216】
各相を分離し、中間生成物としてのE 227(TFTFME)を含有する有機相(さらに乾燥されていない)を、次のステップのために逆流システムに再導入した。実施例1bを参照されたい。
【0217】
代替的に、最終生成物としての分離及び/又はさらに精製されたE 227(TFTFME)が生成されるために、E 227(TFTFME)を含有する有機相をさらに後処理した。実施例3を参照されたい。
【0218】
実施例1b(第二ステップ):
PFMVEを得るために、E 227(TFTFME)に対して塩基によって誘発されるHF除去が行われた。
【0219】
次のステップにおいて、ポンプを再起動し、熱交換器の前に、ピストン計量ポンプを用いて、921g(9.1mol)NEtを還流反応混合物に投入した。
【0220】
本実施例で使用されるNEtの量(9.1mol)についての注釈:実施例1aでは、フッ素化ステップで形成された3mol HFを氷水で除去したため、1000g(7.57mol)量のHFE-254に基づき、HF除去ステップの(1:1)化学量論を考慮すると、自体は7.57mol NEtのみが必要とされる。NEtは3つのHF(錯合物形成)を吸収できるため、理論的に、7.57mol NEt化学量論(1:1)ではなく2.52mol NEtしか必要ではない。しかしながら、ここでは相分離が必要であるため、(1:1)化学量論に比べて、塩基NEtが高過剰量のNEtで使用される。
【0221】
この第二ステップの場合、圧力は7バール絶対圧力に低下した。そして、放熱除去反応の温度が40℃を超えないようにNEt投入を調整した。40分間後、全てのNEtを投入した。いかなる投入量なしに、10分間さらに循環させた後、シュミット(Schmitt)ポンプを停止し、さらに10分間後(混合物の温度が20℃に達した)、第二相が観察され、下相を分析すると、PFMVE濃度が96%であり、20cmVigreuxカラムにて蒸留した後、純度が98.6%(GC)である1.17kg PFMVE(93%の収率に対応する)を得たことを示した。GC試料をガス管口に取り込み、ガス試料としてGC(GCカラム:50m Angilent CP-SIL8)に注入した。
【0222】
実施例2:
(粗)E 227(TFTFME)をNEtで処理することにより、PFMVEを合成した。
【0223】
この実施例2では、PFMVEを得るために、E 227(TFTFME)に対して塩基によって誘発されるHF除去を行い、そして、PFMVEを蒸留によりさらに分離及び精製した。
【0224】
実施例1aに記載の逆流システムにて化合物E 227(TFTFME)原料を調製したが、氷水で処理するのではなく、フッ素化された貯蔵槽中の材料(E 227と形成されたHFを含有する)を、凝縮器を備えたHastelloy C4 から作られた圧力蒸留塔に移した。次いで、40℃の最高温度下で、放熱活動が観察されなくなるまで、緩慢投入されるNEt(11mol)を用いて、粗E 227を含有する原料を注意深く処理した。最後に、5バール絶対圧力と1℃の移行温度下で、生成物E 227を蒸留除去し、黄色液体である1029 g(82%)PFMVEを得た。
【0225】
本実施例で使用されるNEtの量(11mol)についての注釈:消費する4mol HFについては、(1:1)化学量論を考慮すると、30.28mol NEtの量が必要である。ここで、本実施例において分離を行わず、11molのNEtのみで十分であり、塩基NEt過剰量10%に相当するからである。もちろん、代替的に、本実施例2で記述されるこのような処理と蒸留は、HFを依然として含有する粗E 227の処理に代わりに、分離及び精製されたE 227(即ち、HFを含まないE 227)を用いて行われてもよい。
【0226】
実施例3:
E 227(TFTFME)を蒸留により分離及びさらに精製した。
【0227】
実施例1aに記載されるように、逆流システムにて化合物E 227(TFTFME)原料を調製した。氷水で処理した後、未精製化合物E 227(TFTFME)を含有する有機相をNaSO上で30分間乾燥した。次いで、未精製化合物E 227(TFTFME)を含有する乾燥有機相を、凝縮器を備えてかつ-20℃の温度に保持したHastelloy C4から作られた圧力蒸留塔に移した。
【0228】
最後に、5バール絶対圧力と18℃の移行温度下で、生成物E 227を蒸留して、純度が98.4%(GC)である1310g(93%)を得た。
【0229】
実施例4:
2工程マイクロ反応器システムにて、HFE 254をPFMVEに連続転化した。
【0230】
設備:
第一ステップ(フッ素化)の場合、SiC(ケイ素炭化物)から作られた27mlマイクロ反応器(マイクロ反応器I)を用いた。除去ステップの場合、Ni(ニッケル)から作られ、体積が54mlである第2のマイクロ反応器(マイクロ反応器II)を直列に取り付けた。冷却によって第1のマイクロ反応器を室温(環境温度、例えば約25℃)に保持し、第2のマイクロ反応器を80℃まで加熱した。第1のマイクロ反応器の後に、いくつかの不活性ガスがサイクロン分離器に取り付けられた圧力弁を介して、システムから離れることを可能にするサイクロン分離器(図2には図示せず)がある。第1と第2のマイクロ反応器との間には、スウェージロック(Swagelok)手動弁を介して反応器間の投入の調整及び平衡を可能にする液面測定付きのバッファ槽が取り付けられている。第2のマイクロ反応器(図2にも図示せず)の後に冷却器が1つ取り付けられ、反応混合物を0℃まで冷却し、そして、マイクロ反応器IIの後に、深管を介して冷却トラップ(-40℃に保持している)(トラップは、深管、ガス出口、及びガス出口に位置する圧力弁を有するステンレスボンベである)に投入した。
【0231】
実施例4a(第一ステップ):
HFE-254をE 227(TFTFME)に選択的に直接フッ素化した。
【0232】
反応:反応を開始する前に、システムは、窒素ガス不活性ガスを連続的に吹き込んでパージし、原料投入が開始されると、窒素ガス不活性ガスパージを急速に約5体積%(Fに対する)まで減少した。不活性ガスがマイクロチャネル反応器での熱交換効率を急激に低下させるため、不活性ガス投入の急速減少は不可欠であった。Fは、Bronkhorst質量流制御器により、150g(1.14mol)液体HFE 254と共に、1時間(h)にフッ素電解槽から該装置に直接に投入され、第1のマイクロ反応器内の圧力を圧力弁部に7バール絶対圧力に調整した。バッファ槽で得られた液相には、E 227(TFTFME)とHFを含有した。
【0233】
実施例4b(第二ステップ):
PFMVEを得るために、E 227(TFTFME)に対してNiによって触媒化するHF除去が行われた。
【0234】
実施例4aで得られた生成物E 227(TFTFME)を含有する液相を第2のマイクロ反応器(Niから作られる)にて80℃まで加熱して、PFMVEが形成されたHFと共に、-30℃下でトラップに収集されるように、5バール絶対圧力下で行われる最終HF除去を行った。PFMVEの最終蒸留は、5バール絶対圧力のHastelloy C4から作られた圧力塔にて完了し、HFE 254出発材料に基づき、低沸騰点物質としての89%のPFMVE(99.9%GC純度)が生成され、HFを塔底生成物として塔に残した。
【0235】
実施例5:
2工程マイクロ反応器システムにて、HFE 254をPFMVEに連続転化し、NEtを用いてクエンチング(塩基によって誘発されるHF除去)した。
【0236】
HFで生成物E 227(TFTFME)(中間体又は最終生成物として)を生成するために、HFE 254に対して選択的に直接フッ素化を行う第1の反応ステップは、実施例4で記述されるように行った。しかし、第二反応ステップ、即ちクエンチング又は塩基によって誘発されるHF除去に対して、第2のマイクロ反応器(マイクロ反応器II)の前のバッファ槽の後に、第一ステップにおけるHFE 254の1.33当量(各NEtで3当量HFを除去する)に対して、有機塩基NEt(トリエチルアミン)を反応に投入し、そして、第2のマイクロ反応器における恒温装置を加熱中から第2のマイクロ反応器で20℃まで冷却する温度に切り替えた。トラップ(-30℃に保持しているが)のガス出口に位置する圧力弁を用いて、圧力を5バール絶対圧力に調整した。NEtを塩基とするHFクエンチングとHF除去は、放熱プロセスであるため、高効率冷却が必要であった。第二相は、直ちにトラップに形成され、そのうちの下相は生成物PFMVEを含有した。任意のさらなる精製を必要とせずに、純度が97.9%(GC)である生成物PFMVEを得ることができ、収率は95%であった。
【0237】
実施例6:
2工程マイクロ反応器システムにて、HFE 254をPFMVEに連続転化し、NBuを用いてクエンチング(塩基によって誘発されるHF除去)した。
【0238】
実施例5を繰り返したが、有機塩基としてNEtの代わりにNBu(トリブチルアミン)を用いた。相分離所要時間は1時間と長く、粗PFMVE相(純度94%)はまた、いくつかのアミン化合物を含む。
【0239】
5バール絶対圧力の短Vigreuxカラムで蒸留することにより、粗PFMVE相の最終精製(例えば、実施例4で記載されるように)を完成し、生成物として82%PFMVEを生成した。

図1
図2
【国際調査報告】