(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】プレチスモグラムセンサを有するウェアラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0205 20060101AFI20230907BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61B5/0205
A61B5/02 310A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573512
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 IB2021054655
(87)【国際公開番号】W WO2021240439
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519316634
【氏名又は名称】アトコア メディカル ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ガーセム,アーマッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ローレンス
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AC26
4C017BC01
4C017CC03
(57)【要約】
中心血圧のパラメータが、スマートウォッチ又はスマートバンドを使用してモニターされる。スマートウォッチ又はスマートバンド上のPPGセンサが、スマートウォッチ又はスマートバンドを装着している人の指(又は下部手首/橈骨動脈)における血液灌流を感知するように適応している。PPG信号は、適切なフィルタリング及び処理の後に検出することができる心血管特徴を捕捉する。伝達関数法を使用した信号処理によって、未較正の中心圧波形が結果として生じ、これを使用して、スマートウォッチ又はスマートバンド上に表示される様々な心血管パラメータ又はパラメータの指標を計算することができる。デジタル信号処理は、スマートウォッチ又はスマートバンド上、スマートフォン、ノートパソコン上、クラウドにおいて実施することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルなスマートウォッチ又はスマートバンドを提供するステップであって、前記ウェアラブルなスマートウォッチ又はスマートバンドは、マイクロコントローラユニット(MCU)及び前記スマートウォッチ又はスマートバンドを装着している人の指における血液灌流を感知するように適応したPPGセンサを有し、前記PPGセンサは、前記PPGセンサの露出した光学部分にユーザが指を押し当てたときに生のアナログPPG信号を出力する、ステップと、
約5秒を超える期間、前記PPGセンサの露出した光学部分に前記ユーザの指を押し当て、生のアナログPPG信号を前記MCUに出力するステップと、
前記生のアナログPPG信号をデジタル化信号に変換するステップと、
ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して前記デジタル化信号を処理するステップと、
前記ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して処理した後に前記デジタル化信号を反転させるステップと、
フィルタをかけ且つ反転させた後に前記デジタル化PPG信号における個々のパルスを検出するステップと、
いくつかの個々のパルスを平均して、平均の未較正のPPGパルスを生成するステップと、
前記平均の未較正のPPGパルスに1つ以上の伝達関数を適用して、心血管波形の特徴が保存された未較正の大動脈圧波形を生成するステップであって、前記未較正の大動脈圧波形の保存された心血管波形の特徴は、第1のショルダー、第2のショルダー、及び切痕を含み、一般化された前記1つ以上の伝達関数は、平均の未較正のPPGパルスを、前記心血管波形の特徴が保存された未較正の大動脈圧波形に変換するための、振幅及び位相における調和比を表す、ステップと、
前記未較正の大動脈圧波形における波形特徴を検出し、前記未較正の大動脈圧波形に関係するパラメータを計算するステップと、
前記計算されたパラメータ又は前記計算されたパラメータの指標のうち1つ以上を表示するステップと、
を含む、中心血圧パラメータをモニターする方法。
【請求項2】
前記PPGセンサは、前記スマートウォッチ又はスマートバンドのハウジングに埋め込まれ、前記PPGセンサの光学部分は、前記ハウジングの側壁又は前記ハウジングの側壁上のベゼルを介して露出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PPGセンサは、前記スマートウォッチ又はスマートバンドに接続されたリストバンドに取り付けられ、前記PPGセンサの光学部分は、前記リストバンドから外側に露出される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PPGセンサの光学部分は、スマートウォッチの一面を介して露出される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の伝達関数は、前記平均の反転させられたPPG信号を未較正の末梢圧波形に変換する第1の伝達関数と、未較正の中心圧波形に変換する第2の伝達関数とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生のアナログPPG信号がデジタル化信号に変換された後の1つ以上のステップが、クラウドにおいて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生のアナログPPG信号がデジタル化信号に変換された後の1つ以上のステップが、スマートフォン上で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光学部分の全体がユーザの指によって覆われているかどうかの触覚フィードバックを前記ユーザの指が受けるように、前記PPGセンサの露出した光学部分は、周囲の前記PPGセンサの表面に対して凹んでいるか又は周囲の前記PPGセンサの表面に対して隆起している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スマートウォッチ又はスマートバンドを提供するステップであって、前記スマートウォッチ又はスマートバンドは、マイクロコントローラユニット(MCU)及び前記スマートウォッチ又はスマートバンドを装着している人の手首における血液灌流を感知するように適応したPPGセンサを有し、前記PPGセンサは、前記PPGセンサの露出した光学部分にユーザが下部手首を押し当てたときに生のアナログPPG信号を出力する、ステップと、
約5秒を超える期間、前記スマートウォッチに前記ユーザの下部手首を押し当て、生のアナログPPG信号を前記MCUに出力するステップと、
前記生のアナログPPG信号をデジタル化信号に変換するステップと、
ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して前記デジタル化信号を処理するステップと、
前記ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して処理した後に前記デジタル化信号を反転させるステップと、
フィルタをかけ且つ反転させた後に前記デジタル化PPG信号における個々のパルスを検出するステップと、
いくつかの個々のパルスを平均して、平均の未較正のPPGパルスを生成するステップと、
前記平均の未較正のPPGパルスに1つ以上の伝達関数を適用して、心血管波形の特徴が保存された未較正の大動脈圧波形を生成するステップであって、前記未較正の大動脈圧波形の保存された心血管波形の特徴は、第1のショルダー、第2のショルダー、及び切痕を含み、一般化された前記1つ以上の伝達関数は、平均の未較正のPPGパルスを、前記心血管波形の特徴が保存された未較正の大動脈圧波形に変換するための、振幅及び位相における調和比を表す、ステップと、
前記未較正の大動脈圧波形における波形特徴を検出し、前記未較正の大動脈圧波形に関係するパラメータを計算するステップと、
前記計算されたパラメータ又は前記計算されたパラメータの指標のうち1つ以上を表示するステップと、
を含む、中心血圧パラメータをモニターする方法。
【請求項10】
前記1つ以上の伝達関数は、前記平均の反転させられたPPG信号を未較正の末梢圧波形に変換する第1の伝達関数と、未較正の中心圧波形に変換する第2の伝達関数とを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生のアナログPPG信号がデジタル化信号に変換された後の1つ以上のステップが、クラウドにおいて実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記生のアナログPPG信号がデジタル化信号に変換された後の1つ以上のステップが、スマートフォン上で実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
人の指における血液灌流を感知するように適応したPPGセンサを提供するステップであって、前記PPGセンサは、前記PPGセンサの露出した光学部分に前記人が指を押し当てたときに生のアナログPPG信号を出力する、ステップと、
約5秒を超える期間、前記PPGセンサの露出した光学部分に前記人の指を押し当て、生のアナログPPG信号をマイクロコントローラに出力するステップと、
前記生のアナログPPG信号をデジタル化信号に変換するステップと、
ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して前記デジタル化信号を処理するステップと、
前記ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して処理した後に前記デジタル化信号を反転させるステップと、
フィルタをかけ且つ反転させた後に前記デジタル化PPG信号における個々のパルスを検出するステップと、
いくつかの個々のパルスを平均して、平均の未較正のPPGパルスを生成するステップと、
前記平均の未較正のPPGパルスに1つ以上の伝達関数を適用して、心血管波形の特徴が保存された未較正の大動脈圧波形を生成するステップであって、前記未較正の大動脈圧波形の保存された心血管波形の特徴は、第1のショルダー、第2のショルダー、及び切痕を含み、一般化された前記1つ以上の伝達関数は、平均の未較正のPPGパルスを、前記心血管波形の特徴が保存された未較正の大動脈圧波形に変換するための、振幅及び位相における調和比を表す、ステップと、
前記未較正の大動脈圧波形における波形特徴を検出し、前記未較正の大動脈圧波形に関係するパラメータを計算するステップと、
前記計算されたパラメータ又は前記計算されたパラメータの指標のうち1つ以上を表示するステップと、
を含む、中心血圧パラメータをモニターする方法。
【請求項14】
前記PPGセンサは、スマートウォッチ又はスマートバンドのハウジングに埋め込まれ、前記PPGセンサの光学部分は、前記ハウジングの側壁を介して又は前記ハウジングの側壁上のベゼルを介して露出される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PPGセンサは、前記人によって装着されるように構成されたリストバンドに取り付けられ、前記PPGセンサの光学部分は、前記リストバンドから外側に露出される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記PPGセンサは、ラップトップコンピュータ上に位置し、前記光学部分は露出されるため、前記人は、人差し指を前記PPGセンサの光学部分の上に置いて、前記人の指における血液灌流測定を行うことができる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記PPGセンサは、コンピュータマウスのボタンのうち1つに位置し、前記光学部分は露出されるため、前記人は、人差し指を前記PPGセンサの光学部分の上に置いて、前記人の指における血液灌流測定を行うことができる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の伝達関数は、前記平均の反転させられたPPG信号を未較正の末梢圧波形に変換する第1の伝達関数と、未較正の中心圧波形に変換する第2の伝達関数とを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記生のアナログPPG信号がデジタル化信号に変換された後の1つ以上のステップが、クラウドにおいて実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記光学部分の全体が前記人の指によって覆われているかどうかの触覚フィードバックを前記人の指が受けるように、前記PPGセンサの露出した光学部分は、周囲の前記PPGセンサの表面に対して凹んでいるか又は周囲の前記PPGセンサの表面に対して隆起している、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心血圧パラメータをモニターする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大動脈血圧波形は、心臓に近接しているため、心血管系の状態を反映する波形特徴を有している。これらの特徴は、動脈及び心臓の負荷の臨床的に重要な指標であり、心血管事象及び疾患の独立した早期予測マーカーである。しかし、過去において高忠実度の大動脈血圧波形を正確に記録するには、圧力センサを有するカテーテルを動脈の内側に挿入する侵襲的な手順が必要であった。その結果、末梢(例えば、橈骨、上腕)動脈圧パルス記録から心血管関連の特徴を有する大動脈圧波形を推定する非侵襲的な方法が創造された。
【0003】
最も使用され、検証されている方法の1つは、伝達関数を使用して、高忠実度の非侵襲的に記録された末梢圧波形を、心血管関連の特徴を有する中心大動脈圧波形に変換する方法である(特許文献1)。伝達関数は、入力された末梢圧波形と出力された中心大動脈圧波形との調和比として表される。圧力間伝達関数を使用する代わりに、別の方法では、カフにより取得された上腕動脈体積変位波形を、特徴を有する中心圧波形に変換する異なる伝達関数が適用された(特許文献2)。一貫した上腕体積変位信号を記録するためには、設定された圧力値まで上腕カフを膨らませる必要があった。
【0004】
これらの方法から推定された中心圧波形及びその特徴は検証されており、動脈硬化度、心臓負荷ストレス、動脈年齢、心臓運動能力、及び心血管リスクの予測因子の臨床的に価値のある指標を提供することが証明されている。症状がない場合でさえも、これらの測定された特徴をモニター、管理、及び制御することが重要である。これらの特徴に関するデータ又は情報を母集団に提供することは、心臓の健康をモニターする上で有用且つ有益であろう。しかし、現在、これらの臨床的に重要な特徴は、橈骨動脈脈信号の細かいトノメータ記録を必要とする医療機器を使用して、又は上腕体積変位パルスを記録するために設定された圧力までカフを膨らませることを必要とする医療機器を使用して、臨床現場において測定される必要がある。
【0005】
本発明は、モバイルスマートフォン、フィットネスバンド、又はスマートウォッチ上の一般的なウェアラブルPPG(プレチスモグラフ)センサからの信号を、特許文献1及び2による方法の出力と類似の心血管関連の特徴を有する中心大動脈圧波形に変換することによって、母集団に対するこれらの特徴の利便性に取り組む。この新しい方法は、指からのPPG信号を中心圧波形信号に変換する伝達関数を適用し、次に、中心圧波形から特徴を計算し、それらを心臓の健康指標として表示して、頻繁に健康状態をモニターするようにユーザを導く。
【0006】
本発明の目的は、一般的なウェアラブルスマートウォッチ又はモバイルPPGセンサの信号を処理し、且つ心血管関連の特徴を有する中心大動脈圧パルスに変換して、これらの健康指標を表示し、心臓の健康状態を維持及び管理するように一般ユーザを導くことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,265,011号
【特許文献2】米国特許第9,314,170号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、望ましくはスマートウォッチ又はスマートバンド上のPPGセンサを使用して中心血圧パラメータをモニターする方法を対象にしているが、本発明の態様は、ラップトップ又はマウスを利用する実施形態にも有用であり得る。スマートウォッチ又はスマートバンドは、マイクロコントローラユニット(MCU)、及びスマートウォッチ又はスマートバンドを装着している人の指(例えば、人差し指等)における血液灌流を感知するように適応したPPGセンサを有するように構築される。指における血液灌流を感知することによって、適切なフィルタリング及び処理の後に心血管特徴を検出することができる信号が結果として生じるということが発見されている。一方で、PPGセンサに手首の裏側を押し当てても、少なくとも確実に心血管特徴を検出することはできない。
図8は、反転させられた指のPPGパルス、及び反転させられた上部手首のPPGパルスの一例を示している。反転させられた指のPPGパルスには、矢印によって示されているような特徴があるが、反転させられた上部手首のPPGパルスには特徴がない。
【0009】
PPGセンサは、PPGセンサの露出した光学部分にユーザが指を押し当てると、生のアナログPPG信号を出力する。一部の実施形態において、PPGセンサは、スマートウォッチ又はスマートバンドのハウジングに埋め込まれ、PPGセンサの光学部分は、スマートウォッチ又はスマートバンドの側壁及び/又は側壁上のベゼルを介して露出される。PPGセンサの光学部分は、ハウジングの表面と同一平面であってもよいが、光学部分は、ハウジング表面に対して凹んでいるか又は隆起していることが所望される。光学部分の隆起又は凹みは、ユーザに触覚フィードバックを提供するため、指がPPGセンサの光学部分を完全に覆うということを容易に確実にすることができる。他の実施形態では、PPGセンサの光学部分がリストバンドから外側に露出した状態で、スマートウォッチ又はスマートバンドに接続されたリストバンドにPPGセンサを取り付けることができる。他の実施形態では、PPGセンサは、時計又はスマートバンドの電子モジュールの一面に位置することができる。ユーザは、いくつかのサイクルを捕捉するために、約5秒を超える期間、PPGセンサに指を押し当てる。PPGセンサは、生のアナログPPG信号をスマートウォッチ又はスマートバンド上のMCUに出力する。スマートウォッチ又はスマートバンド上のMCU又は他の電子回路は、生のアナログPPG信号をデジタル化信号に変換する。このデジタル化信号は、クラウドを使用して本発明を実施することは可能であるけれども、望ましくは、そのMCUを使用してスマートウォッチ又はスマートバンド上で処理される。クラウドが使用される場合、デジタル化信号は、さらなるコンピューティングのために、スマートウォッチ又はスマートバンドからクラウドに送信される。スマートウォッチ又はスマートバンド上のMCUは、データをクラウドに送信する前にデータを処理することができる。加えて、スマートウォッチ又はスマートバンドに関連付けられたスマートフォン上で、又はスマートフォンとクラウドとの組み合わせで、デジタル処理の一部を実施することが可能である。
【0010】
デジタル化信号は、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して処理される。ハイパスフィルタの目的は、信号からドリフトを取り除くことである。ローパスフィルタの目的は、ノイズを取り除くことであるが、ローパスフィルタは、関連する生理学的データを除外しないことが重要である。デジタル化信号は、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを介して処理された後に反転させられなければならない。フィルタをかけた指のPPG信号は、指における血液の体積に反比例する。中心大動脈圧波形の足に対応する波の一部を見つけることが重要である。反転の理由は、フィルタをかけた指のPPGが、パルスの開始時に負の傾きを有するが、圧力信号は正の傾き(上昇行程)を有するためである。PPG信号を反転させることによって、指のPPG及び圧力パルスは、伝達関数を推定する際に重要な類似の特徴を有することになる。伝達関数は、入力信号及び出力信号が共通の整列した特徴を有する場合に、より安定する傾向がある。次のステップは、フィルタをかけ且つ反転させられた後で、デジタル化PPG信号における個々のパルスを検出することである。次に、いくつかの個々のパルスが平均されて、平均の未較正のPPGパルスが生成される。
【0011】
伝達関数又は伝達関数の組み合わせが、平均の未較正のPPGパルスに適用されて、心血管波形の特徴が保存された未較正の大動脈圧波形が生成される。第1のショルダー、第2のショルダー、及び切痕(incisura)を含む未較正の大動脈圧波形の保存された心血管波形の特徴は、例えば
図7等を参照されたい。1つ以上の一般化された伝達関数は、平均の未較正のPPGパルスを、心血管に関連する特徴が保存された未較正の大動脈圧波形に変換するための、振幅及び位相における調和比を表す。一実施形態では、2つの伝達関数があり:1つは、平均のPPGパルスを、未較正の橈骨圧パルスに変換するものであり、第2の伝達関数は、未較正の橈骨圧パルスを、未較正の中心大動脈パルスに変換するものである。別の実施形態では、1つの伝達関数は、平均のPPGパルスを、未較正の中心大動脈パルスに変換するものである。
【0012】
次のステップは、未較正の大動脈圧波形における波形特徴を検出し、未較正の大動脈圧波形に関係するパラメータを計算することである。有用なパラメータには、収縮期曲線下面積を拡張期曲線下面積で割ったもの等の比、又は高さ全体に関する第1及び第2のショルダーにおける収縮期圧の比、又は中心圧波形の高さに対する末梢圧波形の高さの比、又は総合スコア等の他のパラメータ若しくは計算値が含まれ得る。計算されたパラメータ又はこの計算されたパラメータの指標のうち1つ以上が、ユーザが便利に見ることができるように、スマートウォッチ又はスマートバンドに表示される。
【0013】
PPGセンサの位置に応じて、センサに手首の手のひら側を押し当てることによって、血液灌流を感知することもできる。より具体的には、PPGセンサを使用して下部手首から主要な橈骨動脈内の灌流を測定することによって、適切に測定された場合に、心血管特徴を示す波形が結果として生じ得る。例えば、適切な位置において下部又は手のひら側の手首に対してPPGセンサが置かれるリストバンドを使用することは可能なことである。下部手首にPPGセンサを押し当てて主要な橈骨動脈を通る血液灌流を測定することにより血液灌流を感知することによって、適切なフィルタリング及び処理の後に心血管特徴を検出することができる信号が結果として生じるということが発見されている。当然ながら、下部又は手のひら側の手首からのPPG信号を変換するための伝達関数は、指からのPPG信号を変換するための伝達関数とは別に決定されなければならない。
【0014】
本発明のさらなる実施形態には、ラップトップコンピュータ又はマウス上にPPGセンサを置くことが含まれる。ラップトップの実施形態において、PPGセンサは、キーボード上に位置することができるか、又はキーボード及びトラックパッドとは別の場所に位置することができる。ユーザは、測定のために、PPGセンサ上にユーザの(人差し)指を置くことができる。マウスの実施形態において、PPGセンサは、マウスボタンの1つに位置することができ、そこには(人差し)指が自然に置かれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】指における血液灌流を感知するためにPPGセンサを使用すること、及び、伝達関数法を使用して信号を部分的に処理することによって、未較正の中心圧力パルスが結果として生じ、この未較正の中心圧力パルスから、心血管特徴が検出され、例えば、スマートウォッチ上にパラメータが表示されることに関与するステップを例示した流れ図である。
【
図2】光学要素が時計のベゼル又はクラウンを介して露出している、埋め込まれたPPGセンサを有するスマートウォッチの一実施形態の概略図である。
【
図3】光学要素がバンドから上方に露出している、時計のバンドに取り付けられたPPGセンサを有するスマートウォッチの別の実施形態の概略図である。
【
図4】光学要素がベゼルの反対側にある時計のハウジングの側壁を介して露出している、埋め込まれたPPGセンサを有するスマートウォッチの別の実施形態の概略図である。
図4Aは、凹んだ光学部分を有するPPGセンサを示している。
図4Bは、隆起した光学部分を有するPPGセンサを示している。
【
図5】PPG信号を感知すること、及び、平均のPPGパルスを得るために信号を処理し、この平均のPPGパルスが、次に、伝達関数法を使用して中心圧力パルスに変換されることに関与するステップを例示した流れ図である。
【
図6】反転したPPG信号における上昇行程の開始を検出する方法の態様を例示した概略図である。
【
図7】未較正の中心大動脈圧波形において検出された波形特徴を例示した概略図である。
【
図8】指からのフィルタをかけ反転させられたPPG信号と、手首の裏側からのフィルタをかけ反転させられた信号とを比較した図である。
【
図9】スマートウォッチのためのディスプレイを示した図であり、ソフトウェアが、未較正の中心圧力パルス及び/又は未較正の末梢圧力パルスから計算された波形パラメータの指標を表示している。
【
図10】光学要素が電子モジュールに対するハウジングの側面に沿って露出している、埋め込まれたPPGセンサを有するスマートバンドの一実施形態の概略図である。
【
図11】SphygmoCor(登録商標)システムの精度と比較して、本発明の精度をテストするための設定を例示した概略図である。
【
図12A】
図12A及び12Bは、本発明及びSphygmoCorシステムに対して収集したデータのオーグメンテーションインデックスの計算及び比較を例示した図である。
【
図12B】
図12A及び12Bは、本発明及びSphygmoCorシステムに対して収集したデータのオーグメンテーションインデックスの計算及び比較を例示した図である。
【
図13A】
図13A及び13Bは、本発明及びSphygmoCorシステムに対して収集したデータの圧力増幅の計算及び比較を例示した図である。
【
図13B】
図13A及び13Bは、本発明及びSphygmoCorシステムに対して収集したデータの圧力増幅の計算及び比較を例示した図である。
【
図14A】
図14A及び14Bは、本発明及びSphygmoCorシステムに対して収集したデータの運動能力の計算及び比較を例示した図である。
【
図14B】
図14A及び14Bは、本発明及びSphygmoCorシステムに対して収集したデータの運動能力の計算及び比較を例示した図である。
【
図15A】
図15Aは、本発明を使用して生成された健常者の中心大動脈波形と、SphygmoCorシステムを使用して生成された中心大動脈波形との比較を示した図である。
【
図15B】
図15Bは、本発明を使用して生成された非健常者の中心大動脈波形と、SphygmoCorシステムを使用して生成された中心大動脈波形との比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明を実施する一般的なステップを示している。一般に、第1のステップであるブロック1では、指又は手首からPPG信号を測定するように設計されたPPGセンサを用いて生の信号を感知する。好ましくは、PPGセンサは、ユーザの人差し指からPPG信号を測定するように構成される。PPGセンサは、望ましくは、スマートウォッチ又はスマートバンド上に位置するが、ラップトップ上、マウス上に位置することができるか、又はスマートフォン等の電子デバイスにテザリングさせることもできる。第2のステップであるブロック2では、生の信号を処理し、これによって、
図1において示されているように、PPGパルスが結果として生じる。第3のステップであるブロック3では、1つ以上の伝達関数を適用して大動脈圧波形を生成し、大動脈圧波形は、中心圧力パルスとして
図1において示されている。第4のステップであるブロック4では、中心大動脈圧波形における波形特徴を検出し、サマリースコアを含む1つ以上の臨床的に重要なパラメータを計算する。第5のステップであるブロック5では、計算されたパラメータ及びサマリースコアを、例えば、スマートウォッチ若しくはスマートバンドのディスプレイ上、又は別のディスプレイ上に表示する。
【0017】
PPGセンサユニットは、例えば緑色、赤色、又は赤外線等の1つ以上のLED光源、光検出器、並びに、LED及び光検出器を駆動するために必要な回路を含む。PPGセンサユニットは、光学部分及び電気部分の2つの部分を有する。光学部分は、1つ又は複数の透明な材料で構成されており、光が、PPGセンサユニットからヒトに、ヒトからPPGセンサユニットに通過するのを可能にしている。PPGセンサユニットの光学部分は、1つ又は複数のライトパイプを使用して延ばすことができる。
【0018】
PPGセンサユニットを、スマートウォッチ又はスマートバンド等のウェアラブルデバイスの内側に埋め込むことができる。PPG信号を、さらなる処理及び計算のために、MCU(マイクロコントローラユニット)若しくはクラウドまで、又はスマートフォンまで送ることができる。PPGセンサパッケージは、反射モード又は透過モードで動作するように設計することができる。
【0019】
図2は、本発明を実施するスマートウォッチ14の一実施形態を例示している。
図2において、PPGセンサユニット10は、時計14に埋め込まれており、光学部分12はクラウン又はベゼル16に向いている。ユーザは、人差し指等の指をクラウン16上に置いて、生の指のPPGパルスを記録する。
【0020】
図3は、本発明を実施するスマートウォッチ114の別の実施形態を例示している。PPGセンサユニット110は、リストバンド118上にあり、光学部分112は上に向いてスマートウォッチ114の本体の隣で露出している。ユーザは、人差し指等の指を光学部分112上に置いて、生の指のPPGパルスを記録する。
【0021】
図4は、本発明を実施するスマートウォッチ214の別の実施形態を例示している。PPGセンサユニット210は、時計のハウジング214に埋め込まれており、光学部分212は時計214のベゼル216から見て外方に向いている。ユーザは、人差し指等の指を光学部分212に押し当てて、生の指のPPGパルスを記録する。
【0022】
図4Aは、凹んだ光学部分212Aを有するPPGセンサ210Aを示している。
図4Bは、隆起した光学部分212Bを有するPPGセンサ210Bを示している。凹んだ部分212A及び隆起した部分212Bは、PPGセンサの光学部分の上に指を置くための触覚フィードバックをユーザに提供する。触覚フィードバックは、ユーザがPPGセンサの露出した光学部分212を完全に覆うのに寄与し、これによって、測定指からの反射光の量が最大になり、システムの信頼性及び精度が改善される。
【0023】
図5は、生のPPG信号(6)を処理するためのデジタル処理ステップを示している。生のPPG記録信号(6)は、5秒以上の持続時間を有し得るアナログ信号であり、好ましくはスマートウォッチ若しくはスマートバンドの、又は関連するスマートフォンのMCU上でのデジタル信号処理のために、PPGセンサからスマートウォッチ又はスマートバンドまで送られ、さらに、一部の処理はクラウドでも発生し得る。
図5において示されている信号処理ステップには、A/Dコンバータを介してアナログ信号をデジタル信号に変換すること(7)、ハイパスフィルタ及びローパスフィルタを介してデジタル信号にフィルタをかけること(8)、フィルタをかけたデジタルPPG信号を反転させること(10)、反転させたPPG信号におけるパルスを検出すること(12)、及びPPGパルスを平均すること(13)が含まれている。これらのステップ及び計算は全て、MCUにおいて又はクラウド上で実施することができる。
【0024】
さらに
図5を参照すると、A/Dコンバータ(7)は、生のアナログPPG信号(6)をデジタル化し、100Hz以上のサンプリング周波数(fs)で信号をサンプリングする。次に、デジタル化信号にハイパスフィルタを適用して信号ベースラインドリフトを低減し、ローパスフィルタを適用して高周波アーティファクトノイズを取り除く(ステップ(8)を参照されたい)。ハイパスフィルタの場合、停止周波数は0.003~0.05Hzであってもよく、通過周波数は0.95~1.05Hzであってもよい。ハイパスフィルタの一例は、0.01Hzの-50dB停止周波数、1Hzの-3dB通過周波数を用いたバターワースハイパスフィルタである。ローパスフィルタは、30から50Hzの-3dB周波数を有することになる。どちらのフィルタも、小さい位相遅延を有するべきである。どちらのフィルタも、デジタル化信号に適用され、フィルタをかけたPPG信号(9)を生成する。
【0025】
次に、以下の式
【0026】
【数1】
を実施することによって、フィルタをかけたPPG信号を反転させ(ステップ(10)を参照されたい)、ここで、PPGSigは、フィルタをかけたPPG信号(9)であり、InvPPGSigは、反転させたPPG信号(11)である。フィルタをかけたPPG信号の反転が必要なのは、中心圧力パルスが、心臓駆出を示す上昇行程(高い正の傾斜線)で始まる一方で、記録されたフィルタをかけた指のPPGパルスは、負の傾斜線で始まるためである。中心圧力パルスを生成することが目的であるため、2つのパルスに類似の開始特徴を有することが重要である。従って、指のPPGパルスは、中心圧力パルスのようにパルスの開始時に上昇行程特徴を有するように反転させられる。
【0027】
次のステップ(12)は、反転させたPPG信号(11)における各パルスの開始及び終了を検出することである。パルスの開始は、1次微分を計算し、ピークを特定することによって決定され(
図6を参照されたい)、これは、パルス開始時のパルスの上昇行程に対応する。パルスが検出された(12)後で、多数の信号パルス、例えば10のパルスが生成される。これらのパルスを平均することによって、1つの平均のPPGパルスが生成される(
図5におけるステップ(14)を参照されたい)。
【0028】
平均のPPGパルス(14)は、1つ以上の伝達関数に入力されて(
図1におけるステップ3を参照されたい)、心血管特徴が保存された平均の中心圧波形が生成される。伝達関数は、入力信号と出力信号との間の振幅及び位相における調和比を表す。伝達関数の式は、周波数又は時間領域の形式で記述することができる。PPG波形から大動脈圧への伝達関数は、PPG波形及び侵襲的な(例えばカテーテル等)又は同等の非侵襲的な(例えばSphygmoCor等)大動脈圧波形の同時記録から事前に決定される。推定には、周波数調和解析又はインパルス応答に対する係数の推定が含まれる。伝達関数は、以下の周波数領域形式で表す及び記述することができる。
(a) 振幅
【0029】
【数2】
ここで|H
a→b(f)|は、Sig
aに対するSig
bの伝達関数周波数振幅比であり、
Sig
aは、周波数領域における入力信号であり、
Sig
bは、周波数領域における出力信号であり、さらに、
fは、Hzで0からfs/2に及ぶ周波数である。
(b) 位相
【0030】
【数3】
ここで、Phase(H
a→b(f))は、周波数fにおけるH
a→b(f)の角度であり、
Phase(Sig
a(f))は、周波数fにおけるSig
aの角度であり、さらに、
Phase(Sig
b(f))は、周波数fにおけるSig
bの角度である。
【0031】
時間領域では、インパルス応答、又は、周波数領域に変換されるとHa→b(f)に等しくなり得る係数のセットとして伝達関数を表すことができる。
【0032】
【数4】
ここで、Imp(t)は、時間領域におけるインパルス応答であり、
IFFTは、逆高速フーリエ変換であり、さらに、
tは、0からパルス長時間までの時間(ミリ秒)である。
【0033】
Sigbを周波数領域における中心大動脈圧波形、Sigaを周波数領域における平均PPG信号(14)であると仮定する。
【0034】
【0035】
【数6】
ここで、AoPW(t)は、時間領域における中心大動脈圧波形であり、
PPG(t)は、平均PPGパルス(14)であり、さらに、
FFTは、高速フーリエ変換である。
【0036】
伝達関数を使用したPPGパルス(14)からの大動脈圧波形の計算は、周波数又は時間領域において行うことができる。第一に、周波数領域では、周波数における大動脈圧を、
【0037】
【数7】
として計算することができ、ここで、Sigb(f)は、逆高速フーリエ変換(IFFT)を使用して、時間領域における大動脈圧波形AoPW(t)に変換することができる。
【0038】
【数8】
時間領域におけるAoPW(t)を計算するために、以下の式
【0039】
【数9】
が使用され、ここで、*は、畳み込み演算である。
【0040】
或いは、PPG波形を橈骨圧波形に変換する中間伝達関数を、トノメータを使用したPPG波形及び橈骨圧波形の同時記録から、事前に決定することができる。中間伝達関数を、上記と類似の技術を使用して決定することができる。次に、橈骨圧波形を表すデータを、当技術分野において知られているように、橈骨圧波形を中心大動脈圧波形に変換する伝達関数に入力することができる。
【0041】
図7は、1つ以上の伝達関数の適用から結果として生じる特徴を有する中心大動脈圧波形を示している。
図1のボックス4において示されているように、ソフトウェアが、
図7において示されている特徴を検出するように構成される。ソフトウェアは、ピーク後の切痕を検出するために1次微分法を適用する。切痕は、大動脈パルスピーク後の1次微分の第1のゼロクロッシングとなる。切痕は、収縮期相(心臓駆出)の終わり及び拡張期相(心臓血液充満)の始まりを表す。第2ピークは、心臓での負荷に加えられる反射圧力の結果であるため、第1及び第2の収縮期ピークを検出することによって、心臓での過剰な負荷が推定される。また、
図7において示されているように、収縮期曲線下面積(AUC1)を計算するようにソフトウェアを構成することができ、収縮期曲線下面積(AUC1)は、ポンプ作用中の心臓の仕事量を表しており、これは、酸素を豊富に含んだ血液に対する身体の需要も反映している。
図7において示されているように、拡張期曲線下面積(AUC2)を計算するようにソフトウェアを構成することもでき、拡張期曲線下面積(AUC2)は、心室充満中の心臓の仕事量を表しており、これは、酸素を豊富に含んだ血液の心臓による供給も反映している。AUC1に対するAUC2の比は、身体の需要に対する酸素を豊富に含んだ血液の供給の比でもあり、身体フィットネス及び持久力に関連することが示されている。
図7において示されているこれらのパラメータは、例えば、ユーザがその健康状態をモニターするのに寄与する健康指標として、スマートウォッチ又はスマートバンドのディスプレイ上に表示される。
【0042】
図9は、スマートウォッチのためのディスプレイ(又はスマートバンド上のディスプレイ等の他のディスプレイ)を示しており、ソフトウェアが、未較正の平均の中心圧力パルスから計算された心臓パラメータの指標を表示している。「心臓ストレス」とのラベルは、パルスの高さに関する第1の収縮期ピーク及び第2の収縮期ピークの差として計算される。
図9における矢印は、緑色の領域に向けられており、これは、計算されたパラメータが良好であるということを意味している。表示された「心臓年齢」は、増幅比、すなわち中心パルスの高さに対する末梢パルスの高さの比を計算し、さらに、その増幅比を、公表された健康な集団の研究と比較することによって、健康な心血管年齢と相関している。「運動能力」とのラベルは、収縮期曲線下面積に対する拡張期曲線下面積の比である。総合スコア(ARTY)は、検出された心臓特徴の組み合わせに基づいている。
【0043】
図10は、光学要素312が電子モジュールのハウジングの側面に沿って露出している、埋め込まれたPPGセンサ310を有するスマートバンド314の一実施形態の概略図である。示されていないけれども、スマートバンド314は、例えばLED等の視覚的な指標を有し得るが、必ずしもUI(ユーザインタフェース)画面を有しているわけではない。表示画面を有している場合は、
図9において示されているものに類似の情報を表示することができる。有していない場合は、視覚的な指標を適応させる必要があるか、又は、情報/データを、表示のために、場合によってはさらなる処理のために、別のデバイスに送ることができる。
【0044】
本発明の精度を、非侵襲的な末梢血圧波形測定に基づき中心大動脈圧パルスを生成するためのSphygmoCorシステムに対してテストした。SphygmoCorシステムは、上記の特許文献1に記載されているシステムの商業的な実施形態であり、FDAによって認可されており、中心大動脈圧波形の非侵襲的な測定のためのゴールドスタンダードであると考えられている。
図11は、SphygmoCorシステムと比較して本発明の精度をテストするための設定を例示した概略図である。いくつかの記録(3から9)を、10秒の持続時間、20歳から65歳の13人の被験者(女性4名、男性9名)から取った。被験者は、広範囲の中心大動脈圧波形の形状(若年、老年、健常、非健常)を提供した。
図11を参照すると、トノメータ402を使用して、既知の技術に従って被験者400の橈骨圧力パルスを測定した。同時に、PPGセンサ404を使用して被験者の人差し指を測定した。トノメータ402からの信号をSphygmoCorシステム406に送って、SphygmoCorシステム406から出力された中心圧波形データをデータ取得システム408において記録した。同時に、PPGセンサ404からの信号を、本発明に従って構築されたシステム410に送って、システム410から出力された中心圧波形データもデータ取得システム408において記録した。
【0045】
図12Aは、オーグメンテーションインデックス(AIx)を計算するために特定され且つ使用される中心大動脈圧波形及びパラメータを例示している。
図12Bは、PPGセンサを用いる本発明を使用して収集されたデータ上で得られる計算された中心大動脈圧波形に対するオーグメンテーションインデックス(AIx)と、SphygmoCorシステムを使用して収集されたデータ上で得られる中心大動脈圧波形に対するオーグメンテーションインデックス(AIx)とを比較したプロットである。その相関は全体で0.91であり、AIxの値が高いほどさらに密接しているように思われる。
【0046】
図13Aは、中心圧波形(心臓)と末梢圧波形(手首又は指)との間の圧力増幅を例示している。
図13Bは、指における圧力を検出するためにPPGセンサを用いる本発明を使用して収集されたデータ上で得られる中心大動脈圧波形に対する計算された圧力増幅と、橈骨圧波形を測定するためにトノメータ及びSphygmoCorシステムを使用して収集されたデータ上で得られる中心大動脈圧波形に対する圧力増幅とを比較したプロットである。相関は、全体で0.96である。
【0047】
図14Aは、運動能力(EC)を計算するために特定され且つ使用される中心大動脈圧波形及びパラメータを例示している。
図14Bは、指における圧力を検出するためにPPGセンサを用いる本発明を使用して収集されたデータ上で得られる中心大動脈圧波形に対する計算された運動能力(EC)と、橈骨圧波形を測定するためにトノメータ及びSphygmoCorシステムを使用して収集されたデータ上で得られる中心大動脈圧波形に対する運動能力(EC)とを比較したプロットである。相関は、全体で0.94である。
【0048】
図15Aは、本発明を使用して生成された健常者の中心大動脈波形と、SphygmoCorシステムを使用して生成された中心大動脈波形との比較を示している。
図15Bは、本発明を使用して生成された非健常者の中心大動脈波形と、SphygmoCorシステムを使用して生成された中心大動脈波形との比較を示している。
【0049】
上述のように、本発明は、下部手首又は手のひら側をPPGセンサに押し当てて血液灌流を測定することによって実施することもできる。1つ又は複数の伝達関数は、入力データを得るために異なる位置に順応しなければならないけれども、デジタル信号処理の他の態様(フィルタリング、反転、波形の足の検出、未較正の中心圧波形への変換、波形特徴の検出、パラメータの計算、及びスマートウォッチ上での表示)は、指に関して上記したものに類似しているべきである。
【国際調査報告】