(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】改質触媒担体及びその上に担持された触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/75 20060101AFI20230907BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230907BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20230907BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230907BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20230907BHJP
B01J 23/83 20060101ALI20230907BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20230907BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20230907BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20230907BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
B01J23/75 M
B01J35/10 301A
B01J35/08 Z
B01J37/02 101Z
B01J23/89 M
B01J23/83 M
C10G2/00
C07C1/04
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579143
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 GB2021052006
(87)【国際公開番号】W WO2022053773
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】マーサー、リチャード
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA01
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(57)【要約】
ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム及びネオジムからなる群から選択される1つ以上の金属の耐火性酸化物で改質された、100~1000μmの範囲の体積メジアン径を有するチタニア粒子の形態の改質触媒担体であって、改質触媒担体の総耐火性酸化物含有量が、0.1~15重量%の範囲であり、改質触媒担体が、0.2~0.6cm3/gの範囲の細孔容積及び30~60nmの範囲の平均細孔直径を有する、改質触媒担体が記載されている。改質触媒担体は、固定床プロセスでの使用に適したコバルトフィッシャー・トロプシュ触媒を調製するために使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム及びネオジムからなる群から選択される1つ以上の金属の耐火性酸化物で改質された、100~1000μmの範囲の体積メジアン径を有するチタニア粒子の形態の改質触媒担体であって、前記改質触媒担体の総耐火性酸化物含有量が、0.1~15重量%の範囲であり、前記改質触媒担体が、0.2~0.6cm
3/gの範囲の細孔容積及び30~60nmの範囲の平均細孔直径を有する、改質触媒担体。
【請求項2】
前記体積メジアン径D[v,0.5]が、300~900μm、好ましくは350~650μm、より好ましくは400~500μmの範囲である、請求項1に記載の改質触媒担体。
【請求項3】
前記チタニア粒子が、少なくとも約0.90、好ましくは少なくとも約0.95の球形度(ψ)を有する球状である、請求項1又は請求項2に記載の改質触媒担体。
【請求項4】
前記改質チタニア触媒担体が、前記担体の少なくとも70重量%、好ましくは前記担体の少なくとも80重量%のアナターゼ含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の改質触媒担体。
【請求項5】
1500ppmw未満、好ましくは650ppmw未満の塩化物含有量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の改質触媒担体。
【請求項6】
前記耐火性酸化物が、ジルコニア、ZrO
2からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の改質触媒担体。
【請求項7】
前記改質触媒担体の前記耐火性酸化物含有量が、1.0~10重量%、好ましくは1.5~8.5重量%の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の改質触媒担体。
【請求項8】
前記細孔容積が、0.30~0.50cm
3/g、好ましくは0.35~0.45cm
3/gの範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の改質触媒担体。
【請求項9】
前記平均細孔直径が、40~60nmの範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の改質触媒担体。
【請求項10】
25~75m
2/g、好ましくは45~55m
2/gの範囲のBET表面積を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の改質触媒担体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の改質触媒担体の細孔内に配置された酸化コバルト結晶子を含む、触媒前駆体。
【請求項12】
前記酸化コバルト結晶子が、6~18ナノメートル(nm)、好ましくは7~16nm、より好ましくは8~12nmの範囲の平均粒径を有する、請求項11に記載の触媒前駆体。
【請求項13】
前記平均酸化コバルト結晶子サイズと前記平均細孔直径との比が、0.1:1~0.6:1、好ましくは0.2:1~0.4:1の範囲にある、請求項11又は請求項12に記載の触媒前駆体。
【請求項14】
無損失基準でCoとして表して、5~25重量%、好ましくは8~16重量%の範囲のコバルト含有量を有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の触媒前駆体。
【請求項15】
ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、トリウム(Th)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)又はケイ素(Si)から選択される1つ以上の添加金属の酸化物から選択される1つ以上の添加物を、合計で1~15重量%含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の触媒前駆体。
【請求項16】
ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)から選択される1つ以上のプロモーター金属を、合計で0.01~1.00重量%含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の触媒前駆体。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項に記載の改質触媒担体の前記細孔内に配置されたコバルト金属結晶子を含む、触媒。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか一項に記載の前記改質触媒担体を調製する方法であって、100~1000μmの範囲の体積メジアン径、0.2~0.6cm
3/gの範囲の細孔容積、及び30~60nmの範囲の平均細孔直径を有するチタニア粒子に、ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム及びネオジムからなる群から選択される1つ以上の金属の溶液を含浸させる工程と、含浸された前記チタニア担体を乾燥及び焼成して、0.1~15重量%の範囲の耐火性酸化物を含む耐火性金属酸化物改質チタニア担体を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項19】
前記焼成工程が、移動床反応器内で400~900℃、好ましくは450~850℃、より好ましくは450~750℃の範囲の温度で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記改質チタニア担体にコバルト化合物を含浸させる工程と、含浸させた前記改質チタニア担体を乾燥及び焼成して、前記改質チタニア担体の前記細孔内に酸化コバルト結晶子を形成する工程とを含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の触媒前駆体を調製する方法。
【請求項21】
反応器の反応管での使用に適した触媒キャリア内に配置された、請求項11~16のいずれか一項に記載の触媒前駆体、又は請求項17に記載の触媒の組み合わせ。
【請求項22】
マイクロチャネル反応器のチャネル内に配置された、請求項11~16のいずれか一項に記載の触媒前駆体、又は請求項17に記載の触媒の組み合わせ。
【請求項23】
水素及び一酸化炭素を含む合成ガスから炭化水素を生成するプロセスでの反応器における、請求項11~16のいずれか一項に記載の触媒前駆体、請求項17に記載の触媒、又は請求項21及び22に記載の組み合わせの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質触媒担体材料、並びにコバルト含有フィッシャー・トロプシュ触媒前駆体及びその上に担持された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
公称直径が約1mm未満のフィッシャー・トロプシュ触媒により、高い反応速度及びC5+炭化水素に対する選択性改善の可能性が提供される。このような触媒は、商業規模での固定床における使用が、許容できないほど高い圧力低下によって通常は実用的でなくなるため、通常はスラリー気泡塔反応器におけるような懸濁状態と関連付けられて使用される。国際公開第2012/146903(A1)号は、小粒子触媒の固定床を使用するフィッシャー・トロプシュ法を開示しており、この触媒は、外部冷却反応管内に置かれた複数の触媒容器内に配置されている。触媒粒子は、約100μm~約1mmの直径を有してもよい。
【0003】
チタニア微小球は、形状が規則的であり得、本質的に毒がなく、メジアン細孔直径が大きくなり得、十分に分散した小さなコバルト結晶子上での長い炭化水素鎖の成長を促進するので、固定床コバルトフィッシャー・トロプシュ触媒に理想的な担体を提供する。
【0004】
しかし、チタニア微小球の強度は他の担体よりも低くなる可能性があり、強度を上げるために高温で焼成すると、細孔容積が急速に崩壊し、アナターゼがルチルに変換される。これらの変化は、細孔中にコバルト結晶子を維持する担体の能力に影響を与え、ひいては触媒の活性及び選択性に影響を与える可能性があるため、望ましくない。更に、チタニア微小球は、典型的には、四塩化チタンの火炎加水分解によって生成されたチタニア粒子から調製される。これにより、触媒製造装置において典型的に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼の応力腐食割れのリスクを引き起こす高塩化物含有量の微小球が得られる。
【0005】
驚くべきことに、ある種の耐火性金属酸化物を低濃度で用いてチタニア微小球を改質すると、有効なフィッシャー・トロプシュ触媒を生成するのに必要な細孔構造を保持しながら、強度が改善されることが見出された。驚くべきことに、これらの改質された担体は、改質されていないチタニア担体と比較して改善された触媒活性を提供することも見出された。改質された担体の塩化物含有量が非常に減少することも見出された。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム及びネオジムからなる群から選択される1つ以上の金属の耐火性酸化物で改質された、100~1000μmの範囲の体積メジアン径を有するチタニア粒子の形態の改質触媒担体であって、改質触媒担体の総耐火性酸化物含有量が、0.1~15重量%の範囲であり、改質触媒担体が、0.2~0.6cm3/gの範囲の細孔容積及び30~60nmの範囲の平均細孔直径を有する、改質触媒担体を提供する。
【0007】
本発明は、改質触媒担体の細孔内に配置された酸化コバルト結晶子を含む触媒前駆体を更に提供する。
【0008】
本発明は、改質触媒担体の細孔内に配置されたコバルト金属結晶子を含む触媒を更に提供する。
【0009】
本発明は、改質触媒担体を調製する方法であって、100~1000μmの範囲の体積メジアン径を有するチタニア粒子に、ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム及びネオジムからなる群から選択される1つ以上の金属の溶液を含浸させる工程と、含浸されたチタニア担体を乾燥及び焼成して、0.1~15重量%の範囲の耐火性酸化物を含む耐火性金属酸化物改質チタニア担体を形成する工程と、を含む、方法を更に提供する。
【0010】
本発明は、改質チタニア担体にコバルト化合物を含浸させる工程と、含浸させた改質チタニア担体を乾燥及び焼成して、改質チタニア担体の細孔内に酸化コバルト結晶子を形成する工程とを含む、触媒前駆体の調製方法を更に提供する。
【0011】
本発明は、反応器の反応管での、又はマイクロチャネル反応器のチャネル内での使用に適した触媒キャリア内に配置された触媒前駆体又は触媒の組み合わせを更に提供する。
【0012】
本発明は、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスから炭化水素を生成するプロセスにおける、反応器内での触媒前駆体、触媒又は組み合わせの使用を更に提供する。
【0013】
改質触媒担体、触媒前駆体、触媒及び組み合わせは全て、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスから炭化水素を合成するためのフィッシャー・トロプシュ法での使用に特に適している。
【0014】
「チタニア」とは、二酸化チタン、TiO2を意味する。
【0015】
改質チタニア担体の体積メジアン径D[v,0.5]は、100~1000μmの範囲であるが、好ましくは300~900μm、より好ましくは350~650μm、最も好ましくは400~500μmの範囲である。体積メジアン径D[v,0.5]という用語は、D50又はD0.5とされることもあるもので、報文Malvern Instruments Ltd(Malvern,UK)(www.malvern.co.uk)から入手可能な論文「Basic Principles of Particle Size Analysis」でAlan Rawle博士によって定義されており、例えば、Malvern Mastersizer(商標)を使用して、レーザー回折によって好都合に達成され得る粒径分析から計算される。粒径は、ASTM D4464に従って適切に求められる。
【0016】
改質触媒担体を調製するために使用されるチタニア粒子は、市販されているか、又は市販のチタニア粉末から都合よく調製することができる。市販のチタニア粉末は、典型的には非常に小さい粒径、典型的には約5マイクロメートル未満の粒径を有するので、改質触媒担体を調製するために使用されるチタニア担体は、このようなチタニア粉末の凝集体を含み得る。凝集体は、噴霧乾燥、造粒、噴霧造粒、ドリップキャスト、又は押出/球状化などの球体を生成する任意の好適な成形技術によって形成され得る。
【0017】
改質チタニア触媒担体は、含浸によって未改質チタニア粒子から調製されるので、改質チタニア触媒担体の粒径は、未改質チタニア粒子の粒径と同じである。
【0018】
チタニア粒子は、操作時に容易に流動し、触媒床内に一貫して充填されて、チタニア粒子が配置される反応器にわたって許容可能な圧力低下をもたらすように、球状であることが望ましい。担体を説明するために使用される「球状」という用語は、少なくとも約0.90、好ましくは少なくとも約0.95の球形度(ψ)を有する形状、及びチタニア粉末のおよそ球状の凝集体を含む。球状チタニア粒子及び得られた改質触媒担体は、「微小球」と呼ぶことができる。
【0019】
チタニアは、ルチル又はアナターゼ結晶形態で存在し得る。改質チタニア触媒担体は、好ましくはアナターゼ型のチタニアが担体の50重量%より多い量で存在する、アナターゼリッチ担体である。より好ましくは、改質チタニア触媒担体は、担体の少なくとも70重量%、最も好ましくは担体の少なくとも80重量%、例えば担体の80~90重量%のアナターゼ含有量を有する。アナターゼ型のチタニアは、ルチル型よりも多孔性かつ軟質であり、フィッシャー・トロプシュ触媒担体としての使用を特に好適なものとする。触媒担体に耐火性酸化物を含めることで、担体及び触媒の製造中にアナターゼからルチルへの変換が有利に抑制され、より高い焼成温度を使用できることが見出されている。
【0020】
改質チタニア触媒担体は、好ましくは、硫黄及びアルカリ金属などのコバルト触媒フィッシャー・トロプシュ反応の毒であることが見出されている元素が少ないことが好ましい。したがって、改質チタニア触媒担体の硫黄含有量は、望ましくは30ppmw未満であり、改質チタニア触媒担体のアルカリ金属(例えば、Na又はK)含有量は、望ましくは50ppmw未満である。更に、触媒製造及び処理装置の腐食を回避するために、改質チタニア触媒担体の塩化物含有量は、好ましくは1500ppmw未満、特に650ppmw未満である。
【0021】
チタニア担体は、ジルコニウム、ランタン、セリウム、イットリウム及びネオジムからなる群から選択される金属の1つ以上の耐火性酸化物で改質される。これらの酸化物は、融点が高いため、耐火性酸化物と呼ばれる。ジルコニア(ZrO2)は、高融点(2715℃)を特徴とする耐火性金属酸化物である。類似の材料は、La2O3(2315℃)、CeO2(2400℃)、Y2O3(2425℃)及びNd2O3(2233℃)である。したがって、チタニアの改質酸化物は、ZrO2、La2O3、CeO2、Y2O3及びNd2O3のうちの1つ以上である。CeO2は、触媒担体の強度は増加するが、活性の利点が得られない可能性があるため、あまり好ましくない。ZrO2は、触媒性能、入手可能性及び使い易さのバランスのために好ましい。改質触媒担体の耐火性酸化物含有量は、0.1~15重量%、好ましくは1.0~10重量%、最も好ましくは1.5~8.5重量%の範囲である。
【0022】
改質触媒担体の細孔容積は、0.20~0.60cm3/g、好ましくは0.30~0.50cm3/g、より好ましくは0.35~0.45cm3/gの範囲である。改質触媒担体の平均細孔直径は、好ましくは30~60nm、より好ましくは40~50nmの範囲である。
【0023】
改質触媒担体のBET表面積は、25~75m2/g、好ましくは45~55m2/gの範囲であり得る。
【0024】
BET表面積及び窒素細孔容積は、窒素物理吸着技術を使用して測定することができる。BET表面積は、ASTM法D3663-03に従って、このように求めることができる。細孔容積はまた、水銀ポロシメトリーを使用して決定されてもよい。本発明では、細孔直径が比較的大きいため、水銀圧入ポロシメトリーとしても知られる水銀ポロシメトリーをより好適に使用することができる。水銀圧入ポロシメトリーは、粉末サンプルを圧力下で水銀に曝露し、体積の変化を測定することを伴う周知の技術である。このように細孔容積を確立するのに特に適した方法は、ASTM法D4284-03である。
【0025】
「平均細孔直径」とは、細孔容積の4倍を表面積で割ったもの(4V/A)を意味する。この関係は、直径D及び高さhの直円柱の形状から導出され、この場合、表面積(A)はπDhで与えられ、体積(V)はπD2h/4で与えられる。
【0026】
改質チタニア担体の細孔容積及び平均細孔直径は、焼成によって影響され得る。典型的には、多孔質材料を焼成すると、その細孔容積が減少する。平均細孔直径に対する焼成の影響はあまり予測できず、焼成から明らかに生じる小さな変化は、実際には実験誤差である可能性がある。好適には、未改質チタニア粒子の細孔容積は、0.2~0.6cm3/gの範囲であり得る。好適には、未改質チタニア粒子の平均細孔直径は、30~60nmの範囲であり得る。
【0027】
改質触媒担体は、チタニア担体に耐火性金属を含浸させ、含浸されたチタニア担体を乾燥及び焼成して、改質チタニア担体を形成することによって調製される。必要に応じて、含浸、乾燥、及び/又は焼成を繰り返して、所望の耐火性金属酸化物の担持量を得ることができる。
【0028】
耐火性金属は、既知のいずれかの方法によってチタニア粒子に含浸させることができる。耐火性金属は、適切な耐火性金属化合物の溶液を形成し、それを適切なミキサー中でチタニア粒子の表面に適用することによって導入することができる。耐火性金属化合物は、金属塩、例えば金属硝酸塩若しくはオキシ硝酸塩、又は金属酢酸塩、又は金属アセチルアセトネートなどの適切な有機金属化合物であり得る。水溶液は、大規模での使用がより容易であるので好ましい。耐火性金属塩のような水溶性金属化合物が好ましい。金属硝酸塩は、容易に入手可能であり、水に適切に溶解し、フィッシャー・トロプシュ触媒の性能を低下させ得る微量の毒を残すことなく酸化物に分解するので、特に好ましい。含浸は、10~95℃の範囲の温度で都合よく行うことができる。含浸は、減圧下若しくは加圧下で、又は周囲圧力下で行うことができる。溶液中の耐火性金属の濃度は、溶媒を除去するのに必要なエネルギー量を低減するために、できるだけ高いことが望ましい。
【0029】
使用される耐火性金属化合物溶液の体積は、未改質チタニア担体の全細孔容積に近似するか、又はそれ未満であることが好ましい。このような含浸は、必要とされる乾燥の量を有利に最小にする。好ましい方法では、含浸溶液の体積をチタニア粒子の細孔容積に近似させるか、又はそれ未満とし、溶液中の耐火性金属の濃度を調整して、改質触媒担体中の耐火性金属酸化物の量を制御する。
【0030】
含浸された担体を乾燥させて、耐火性金属化合物溶液中に存在する溶媒、典型的には水を除去する。乾燥工程は、特に溶媒が水である場合、好ましくは50~150℃の範囲の温度で行われる。乾燥工程は、空気中若しくは窒素などの不活性ガス中の大気圧で、又は真空下で実施することができる。乾燥時間は、必要に応じて0.5~16時間の範囲であり得るが、より好ましくは80~120℃で1~5時間実施される。
【0031】
乾燥した改質担体は、典型的には、1つ以上の耐火性金属化合物を含有する流動性のある粉末である。改質触媒担体を製造するために、乾燥された材料を焼成と呼ばれ得る熱処理にかけ、1つ以上の耐火性金属化合物を酸化物形態に変換する。熱処理は、従来どおり、空気中で、若しくは乾燥した材料を窒素若しくは別の適切なガス混合物の下で加熱することによって、又は真空下で加熱することによって実施することができる。熱処理は、静止床オーブン又は移動床オーブン、好ましくは回転焼成炉又は流動床焼成炉で行うことができる。焼成温度は、望ましくは400~900℃、好ましくは450~850℃、より好ましくは450~750℃の温度範囲である。可能な限り高い焼成温度を使用することにより、改質担体の他の特性を劣化させることなく、可能な限り大きい強度増加が得られるので、有益である。焼成時間は0.5~16時間の範囲であってもよいが、好ましくは400~900℃、好ましくは450~850℃、より好ましくは450~750℃で1~4時間行われる。流動床条件下では、焼成ガスの毎時空間速度(GHSV)は、常温常圧(NTP)で1000~5000hr-1、好ましくは2000~4000hr-1であり得る。
【0032】
理論に束縛されるものではないが、高温焼成と組み合わせた耐火性金属化合物によるチタニア粒子の改質により、担体の特性が改善し、結果として触媒前駆体及び触媒が得られることが観察された。改質なしでは、担体の気孔率及びアナターゼ含有量を低下させることなく、改良された強度を達成するのに必要な高温にチタニア粒子を加熱することは不可能である。
【0033】
触媒前駆体は、改質チタニア触媒担体の細孔中に酸化コバルト結晶子を含む。前駆体中のコバルトは、1つ以上の酸化コバルトとして存在し得るが、好ましくは、酸化コバルト結晶子は本質的にCo3O4からなる。酸化コバルト結晶子の平均粒径は、6~18ナノメートル(nm)、好ましくは7~16nm、より好ましくは8~12nmの範囲であり得る。平均粒径は、X線回折(XRD)によって求めることができる。特に好適な方法は、Lynxeye PSD検出部を備えたCuKα波長1.5406ÅでBruker D8 Advance XRD装置を使用する。この検出システムは、コバルトの存在によって生成される蛍光を抑制するように動作設定を調整することができるため有用である。リートベルト解析及び線拡大(シェラー)は、結晶子サイズ決定の一般的な方法である。いずれの方法も使用することができるが、リートベルト解析が好ましい。
【0034】
触媒前駆体は、平均酸化コバルト結晶子サイズと触媒前駆体の平均細孔直径との比が、0.1:1~0.6:1、好ましくは0.2:1~0.4:1の範囲であり得る。この比率は驚くべきものであり、その理由は、担体の細孔直径が金属酸化物結晶子サイズを制御し、その結果、平均直径が大きい細孔は大きな酸化コバルト結晶子をもたらすと概して考えられているためである。本出願人は、驚くべきことに、小さな酸化コバルト結晶子が改質チタニア担体の比較的大きな細孔内に形成されることを発見した。本出願人は、改質チタニア担体の物理的特性、コバルト源及び調製条件の組み合わせにより、未改質チタニア担持触媒と比較して性能が向上したフィッシャー・トロプシュ触媒が得られることを見出した。
【0035】
触媒前駆体のコバルト含有量は、無損失基準でCoとして表して、5~25重量%、好ましくは8~16重量%の範囲であり得る。比較的低いコバルト含有量にもかかわらず、得られた触媒は、フィッシャー・トロプシュ反応においてグラム当たり驚くほど高い活性を有する。活性触媒では、触媒前駆体中の酸化コバルトの少なくとも一部分が元素形態に還元され、酸化コバルト中の酸素原子が除去されるにつれて、活性触媒中のコバルトの割合が増加する。特に有効な触媒は、70モル%以上の酸化コバルトの還元度で8~12重量%のコバルトを含む。
【0036】
触媒前駆体は、改質チタニア担体と同じ粒径特性を有する。したがって、触媒前駆体は、商業規模の固定床で使用されるとき、特に、マルチチューブ型フィッシャー・トロプシュ反応容器内の触媒キャリア内の固定床として使用されるとき、許容可能な圧力低下を伴い高活性触媒を提供する。
【0037】
触媒前駆体は、任意選択で、フィッシャー・トロプシュ法における触媒性能を向上させるために、酸化物として存在し得る1つ以上の添加物を更に含み得る。好適な添加物は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、トリウム(Th)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)又はケイ素(Si)から選択される1つ以上の添加金属の酸化物から選択される。代替的に、又はそれに加えて、触媒前駆体は、触媒の活性化又は還元を改善するために、酸化物又は元素の形態で存在し得る1つ以上のプロモーターを任意選択で含み得る。好適なプロモーター金属としては、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)のうちの1つ以上が挙げられる。添加物及び/又はプロモーターは、コバルト含浸の前又は後に、例えば、過レニウム酸などの酸、金属塩、例えば、金属硝酸塩及びオキシ硝酸塩若しくは金属酢酸塩、又は金属アルコキシド若しくは金属アセチルアセトネートなどの好適な有機金属化合物などの好適な化合物を使用することによって改質触媒担体上の触媒前駆体に組み込むことができる。添加金属の量は、触媒前駆体中、合計で1~15重量%、好ましくは1~10重量%の間で変動し得る。プロモーター金属の量は、触媒前駆体中、合計で0.01~1.00重量%、好ましくは0.01~0.50重量%の間で変動し得る。
【0038】
触媒前駆体は、改質チタニア担体にコバルト化合物を含浸させることによって調製される。これは、コバルト化合物の溶液を形成し、それを改質触媒担体に適用することによって好都合に実施することができる。コバルト化合物は、コバルト塩又はコバルト錯体など、いずれかの好適な可溶性コバルト化合物であり得るが、硝酸コバルトは、触媒毒を導入せず、他の化合物と比較して取り扱いが比較的簡単であるため、特に好適である。コバルト化合物は、好ましくは硝酸コバルト(II)六水和物であり、これは、例えば50℃を超えるまで加熱することによってその水和水に溶解して、溶融硝酸コバルトの濃縮溶液を形成することができる。あるいは、硝酸コバルトを水又は別の溶媒に溶解して、より希薄な溶液を形成することができる。水が好ましい溶媒である。
【0039】
含浸された改質チタニア担体を乾燥し、焼成して、改質チタニア担体の細孔内に酸化コバルト結晶子を形成する。必要に応じて、含浸、乾燥、及び/又は焼成を繰り返して、所望の触媒前駆体を得ることができる。
【0040】
含浸は、コバルト化合物溶液を、プローシェアミキサーなどの好適なミキサー内の改質チタニア担体に添加することによって実施することができる。使用されるコバルト化合物溶液の体積は、好ましくは、改質チタニア担体の総細孔容積に近似する。「乾式含浸」又は「初期湿潤含浸」と呼ばれ得るそのような含浸は、改質担体の細孔内のコバルト化合物の堆積を有利に改善し、必要な乾燥の量を最小限に抑える。所望であれば、好適な添加物及び/又はプロモーターの化合物は、コバルト化合物溶液に好適な量で添加されてもよい。あるいは、これらは、乾燥前若しくは乾燥後、及び/又は最終焼成前に触媒前駆体と組み合わされてもよい。
【0041】
含浸された改質担体は、コバルト化合物溶液中に存在する溶媒、典型的には水を除去するために乾燥され、望ましくは、担体の細孔内にコバルト化合物を残す。乾燥工程は、好ましくは、50~150℃の範囲の温度で実施される。乾燥工程は、空気中若しくは窒素などの不活性ガス中の大気圧で、又は真空下で実施することができる。乾燥時間は、必要に応じて0.5~16時間の範囲であり得るが、より好ましくは80~120℃で1~5時間実施される。
【0042】
乾燥された含浸改質担体は、1つ以上のコバルト化合物、好ましくはCo(NO3)2・xH2O(x<6)などの部分水和硝酸コバルトを含有する流動性のある粉末である。触媒前駆体を生成するために、乾燥した材料を熱処理(焼成と呼ばれることがある)に供し、コバルト化合物を酸化コバルト結晶子に変換することができる。熱処理は、従来どおり、空気中で、若しくは乾燥した材料を窒素若しくは別の非還元ガス混合物の下で加熱することによって、又は真空下で加熱することによって実施することができる。熱処理は、静的若しくは移動床オーブンで、又は、好ましくは流動床反応器で実施することができる。流動床反応器は、驚くべきことに、例えば6~12nm、特に8~10nmの範囲の小さい平均酸化コバルト結晶子サイズを有する触媒前駆体を生成することが見出された。焼成温度は、酸化コバルト結晶子の焼結を最小限に抑え、コバルト表面積を維持するために、220~320℃、好ましくは240~300℃の温度範囲であり得る。焼成時間は、必要に応じて0.5~16時間の範囲であり得るが、好ましくは240~300℃で1~4時間実施される。流動床条件下では、焼成ガスの毎時空間速度(GHSV)は、常温常圧(NTP)で1000~5000hr-1、好ましくは2000~4000hr-1であり得る。
【0043】
所望であれば、焼成工程の後に、焼成された材料が、酸化コバルトの元素形態への還元を引き起こさない条件下で、希釈水素流中で加熱されるポリッシング工程が続く場合がある。ポリッシング工程は、焼成された材料の残留硝酸塩含有量を低下させるために有利に使用され得る。水素流は、例えば、窒素などの不活性ガス中で、例えば、0.1~10体積%の水素、好ましくは1~5体積%の水素からなってもよい。圧力は、絶対圧1~10バール、好ましくは絶対圧1~3バールであり得る。ポリッシング工程の最高温度は、100~225℃、好ましくは140~200℃の範囲であってよい。ポリッシング工程は、必要に応じて0.5~16時間、好適に実施することができるが、好ましくは、140~200℃で1~3時間実施される。ポリッシング工程における水素/不活性ガス流のガス毎時空間速度(GHSV)は50~2000hr-1であってもよいが、常温常圧(NTP)で好ましくは50~1000hr-1、より好ましくは100~500hr-1である。これらの条件下では、本質的に酸化コバルトの還元は起こらない。ポリッシング工程は、触媒前駆体中の残留硝酸塩を0.1重量%未満のレベルまで低減するので、その後の還元は、還元中に形成されるアンモニアを管理するための特別な工程を踏む必要なしに実施され得る。これは、触媒前駆体がin-situで還元される場合、すなわち、フィッシャー・トロプシュ法に使用される反応器内で還元される場合に特に有用である。
【0044】
触媒前駆体は、フィッシャー・トロプシュ反応に使用される反応器に導入され、活性化されて、酸化コバルトの少なくとも一部をin-situで元素形態に還元することによって触媒を形成することができる。このような活性化は、任意の適切な還元剤を用いて行うことができるが、好ましくは、還元ガス流を用いて行われる。還元ガス流は、水素ガス流、又は水素及び一酸化炭素を含む合成ガス流から選択することができる。したがって、還元ガス流は、窒素などの不活性ガス中の1~100体積%の水素からなり得る。あるいは、水素及び一酸化炭素、並びに任意選択で他の成分を含有する合成ガスが使用され得る。合成ガスは、好適には、水素:一酸化炭素のモル比が1.6~2.2の範囲であり得る、水素及び一酸化炭素から本質的になるフィッシャー・トロプシュ合成ガスであり得る。あるいは、還元ガスは、これらのガスの混合物を含み得る。触媒前駆体を通過する還元ガスのガス毎時空間速度(GHSV)は、常温常圧(NTP)で4000~10000hr-1であり得る。還元ガスのガス毎時空間速度は、酸化コバルト及び還元コバルトの、還元中に副生成物として形成される水蒸気への曝露を制御するために、還元中に変更され得る。還元段階に使用される最高温度は、250~400℃の範囲であり得るが、還元されたコバルト結晶子の焼結を最小限にするために、好ましくは、250~300℃の範囲である。還元は、周囲圧力又は上昇圧力で実施することができ、すなわち、還元ガスの圧力は、1~50バールの絶対圧であり得る。
【0045】
あるいは、触媒前駆体は、触媒を提供するために、還元容器内でex-situで予備還元され得る。予備還元は、任意の好適な還元剤を使用して実施することができるが、好ましくは、再循環された還元ガス流から副生成水を除去するループで作動する水素ガス流を使用して実施する。水素流は、窒素などの不活性ガス中の10~100体積%の水素からなり得る。還元ガス流中の水素の濃度は、還元中に変化する場合がある。水素/不活性ガス流のガス毎時空間速度(GHSV)は、常温常圧(NTP)で4000~10000hr-1であり得る。還元ガス流のガス毎時空間速度は、酸化コバルト及び還元コバルトの水蒸気への曝露を制御するために、還元中に変更され得る。還元段階に使用される最高温度は、250~400℃の範囲であり得るが、還元されたコバルト結晶子の焼結を最小限にするために、好ましくは、250~300℃の範囲である。還元は、周囲圧力又は上昇圧力で実施することができ、すなわち、還元ガスの圧力は、1~50、好ましくは1~20、より好ましくは1~10バールの絶対圧であり得る。
【0046】
還元状態の触媒は、酸素と自発的に反応する可能性があり、これが望ましくない自己発熱及び活性の喪失につながる可能性があるため、取り扱いが困難であり得る。結果として、還元された触媒は、好適なバリアコーティングで還元された触媒を封入することによって保護され得る。フィッシャー・トロプシュ触媒の場合、これは、好適には、フィッシャー・トロプシュ合成によって生成されたワックスなどの炭化水素ワックスであり得る。封入用のワックスは、例えば水素ガス流又は合成ガス流の下で触媒を加熱することにより、フィッシャー・トロプシュ反応器内に導入された後、触媒から除去することができる。あるいは、還元された触媒を、窒素などのキャリアガス中の希薄酸素に曝露することによって不動態化し、酸化コバルトの保護層が各酸化コバルト結晶子の周囲に形成されるようにすることもできる。
【0047】
酸化触媒前駆体を活性FT触媒に変換するためにどの経路を選択しても、耐火性金属改質チタニア担体から調製されたコバルト触媒は、還元金属1グラム当たりの金属表面積が大きくなる。例えば、触媒前駆体は、250℃で水素により還元されたとき、水素化学吸着によって測定される場合、好ましくは5m2/g以上のコバルト表面積を有し得る。
【0048】
触媒前駆体から得られる触媒は、炭化水素のフィッシャー・トロプシュ合成に特に有効である。コバルト触媒を使用した炭化水素のフィッシャー・トロプシュ合成は十分に確立されている。フィッシャー・トロプシュ合成は、一酸化炭素及び水素の混合物を炭化水素、好ましくは炭素鎖長が5以上の炭化水素に変換する。一酸化炭素及び水素の混合物は、典型的には、水素:一酸化炭素比が1.6~2.2:1の範囲を有する合成ガスである。反応は、固定床反応器、スラリー相反応器、バブルカラム反応器、ループ反応器、又は流動床反応器などの1つ以上の反応器を使用する連続又はバッチプロセスで実施することができる。このプロセスは、0.1~10Mpaの範囲の圧力及び150~350℃の範囲の温度で稼働できる。連続運転のガス毎時空間速度(GHSV)は、1000~25000hr-1の範囲であり得る。本発明の触媒は、固定床触媒、すなわち、反応物合成ガスが通過する反応容器内に固定された触媒床として特に好適である。
【0049】
触媒前駆体の物理的特性は、マイクロチャネル反応器、すなわち、合成ガスが通過する2~10mmの範囲の幅又は高さを有する複数の触媒含有チャネルを有するフィッシャー・トロプシュ反応器での使用に適していることを意味する。
【0050】
触媒前駆体の物理的特性は、ダウンフロー多管式フィッシャー・トロプシュ反応容器などのフィッシャー・トロプシュ反応容器内の反応管に配置される触媒キャリアに使用するのに特に適していることを意味する。
【0051】
触媒又は触媒前駆体は、管状反応器での使用に好適な触媒キャリアと組み合わせて使用される場合に特に有効なものであることが見出された。任意の好適な触媒キャリアを使用してもよい。「触媒キャリア」とは、例えばカップ又は缶の形態の触媒容器であって、ガス及び/又は液体がキャリアを出入りし、キャリア内に配置された触媒又は触媒前駆体の床を通過して流れることを可能にするように構成されたものを意味する。触媒キャリア内のガス及び/又は液体の流れは、半径方向及び/又は軸方向であり得る。好ましくは、触媒又は触媒前駆体は、触媒キャリアの中心部内に環状触媒床として配置される。キャリア内の触媒床を通る流れは、好ましくは放射状である。触媒床は、周辺部で熱伝達ゾーンに取り囲まれ、熱伝達ゾーンから間隔を空けて配置され得る。触媒床及び熱交換ゾーンは、互いに流体連通していてもよい。一構成では、触媒キャリアは、国際公開第2011/048361号に記載されているものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。国際公開第2011/048361号に記載されている触媒キャリアは、使用中の触媒を保持するための環状容器であって、当該容器は、管を画定する有孔内壁と、有孔外壁と、環状容器を閉鎖する上面と、環状容器に注入する底面とを有する、環状容器と;環状容器の内壁によって形成された当該管の底を閉鎖する表面と;環状容器の有孔外壁から当該容器の底面又はその近くの位置からシールの位置より下の位置まで上方に延びるスカートと;上面又はその近くに配置され、スカートの外面を超えて延びる距離だけ容器から延びるシールと、を備える。好ましい構成では、触媒キャリアは、国際公開第2016/050520号に開示されているものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、触媒キャリアは、触媒前駆体又は触媒を所定の位置に保持するのに好適な容器であって、当該容器は、容器を閉鎖する底面と、上面とを有する、容器と;当該容器の底面から上面まで延びるキャリア外壁と;容器からキャリア外壁を超えて延びる距離だけ延びるシールと;を備え得、当該キャリア外壁は、シールの下に配置された開口部を有する。好ましい構成では、触媒キャリアは、所定の位置に触媒前駆体又は触媒を保持するのに好適な環状容器を含み得、当該容器が、内側チャネルを画定する有孔内側容器壁と、有孔外側容器壁と、環状容器を閉鎖する上面と、環状容器を閉鎖する底面と、環状容器の内側容器壁によって形成された当該内側チャネルの底を閉鎖する表面と、を有する。触媒キャリアは、概して、それが使用時に配置される反応管の内部寸法よりも小さい寸法であるようなサイズにされる。シールは、本発明の触媒キャリアが反応管内の所定の位置にあるときに、反応管の内壁と相互作用するようなサイズにされる。
【0052】
ダウンフローのある垂直反応器で使用する場合、反応物は反応管を通って下向きに流れ、したがって最初に触媒キャリアの上面に接触する。シールは、キャリアの側面の周りを反応物が通過するのを遮断するので、その上面は、それらを、内側容器壁によって画定される内側チャネルに方向付ける。次いで、反応物は、有孔内側容器壁を通って環状容器に入り、次いで、有孔外側容器壁に向かって触媒床を半径方向に通過する。内側容器壁から外側容器壁への通過中に、反応物が触媒に接触し、フィッシャー・トロプシュ反応が発生する。次いで、未変換の反応物及び反応生成物は、有孔外側容器壁を通って容器から流出する。次いで、キャリア外壁は、キャリア外壁の内側表面と環状容器の有孔外側容器壁との間で、キャリア外壁内の開口部に達するまで、反応物及び生成物を上向きに方向付ける。次いで、それらは、キャリア外壁に配置された開口部を通って方向付けられ、キャリア外壁の外側表面と反応管の内側表面との間を下向きに流れ、ここで熱伝達が生じる。流れが逆になるように反応器が操作された場合、反応物及び生成物の経路も逆になる。
【0053】
触媒前駆体を触媒キャリアに充填し、得られた組み合わせをフィッシャー・トロプシュ反応容器の反応管に充填して、上記のようにin-situで触媒を還元及び活性化することができる。あるいは、組み合わせを還元容器内でのex-situ還元に供してもよく、組み合わせを封入又は不動態化してもよい。得られた組み合わせを、フィッシャー・トロプシュ反応容器の反応管に安全に装填して、酸化触媒前駆体を使用した場合よりも迅速かつ簡単にin-situで活性化することができる。
【実施例】
【0054】
ここで、以下の実施例を参照して、本発明を更に説明する。
【0055】
実施例では、以下の測定を行った。
【0056】
粒径:粒径は、機器ソフトウェアのMalvern MS3000光学特性データベースからのTiO2(アナターゼ)の光学特性を使用する、Malvern Mastersizer3000レーザー回折粒径アナライザーを使用したレーザー光散乱によってASTMD4464に従って決定した。(屈折率2.51、吸収率0.01)。湿式分散測定は、0%及び85%の超音波処理、及びHydro MVサンプル分散ユニットを使用した50%の撹拌速度を使用して、脱イオン水中で実行された。レーザー光線が0.1~20%遮られるまで、十分なサンプルをユニットに添加した。サンプルの各アリコートに対して5回の測定が行われ、測定時間は5秒であった。乾式分散測定は、サイト圧縮空気を使用して0.5バール及び3.0バールの分散空気圧を使用して、マイクロボリュームトレイ及び標準ベンチュリを備えたAero乾式分散ユニットにて20%の供給率で行った。サンプルのアリコート当たり1回の測定を行い、各測定でアリコート全体を測定した。レーザー光線が0.1~10%遮られている場合、測定時間は15秒である。結果を計算するために、Malvernソフトウェアは、ミー理論を使用して、得られた回折パターンを粒径分布に変換する。
【0057】
細孔容積。水銀圧入/押出データは、ASTM法D4284-03;水銀圧入ポロシメトリーによる触媒の細孔容積分布を求めるための試験方法に従って、Micromeritics AutoPore 9520水銀ポロシメータで測定した。圧入曲線を、0.5~60000psiaの圧力範囲にわたって測定し、その後、大気圧まで押し出した。圧入曲線及び押出曲線の両方の各データ点に対して15秒の平衡時間を使用し、水銀の接触角を140°、水銀の表面張力を485ダイン/cmとした。分析前に、サンプルをオーブン内で、115℃で一晩乾燥した。ポロシメトリー測定中に現れる温度及び圧力の影響は、空の硬度計管でのブランク補正の実行を計算に入れ、その後、実験データから減算された。
【0058】
Micromeritics 2420 ASAP物理吸着アナライザーを使用して、ASTM Method D 3663-03;表面積の標準試験に従ったBET法を適用して、表面積を測定した。窒素を吸着質として使用し、液体窒素温度(77K)で測定を行った。窒素分子の断面積は16.2Åとした。分析前に、140℃で最低1時間、乾燥窒素ガスでパージすることにより、サンプルを脱ガスした。0.05~0.20P/Poを含む相対圧力領域にわたって、5つの相対圧力/体積データペアを取得した。各点の平衡化時間は、10秒であった。表面積は、脱ガス後のサンプルの重量に基づいて報告される。
【0059】
平均細孔直径。平均細孔直径は、細孔容積及び表面積の測定値から計算した。平均細孔直径は、補正された細孔容積の4倍を計算された表面積で割ったもの(4V/A)である。この関係は、直径D及び高さhの直円柱の形状から導出され、この場合、表面積(A)はπDhで与えられ、体積(V)はπD2h/4で与えられる。
【0060】
メジアン細孔直径。メジアン細孔直径は、細孔容積の測定値から導出された。「メジアン細孔直径」とは、累積水銀圧入曲線の中点を表す細孔直径を意味し、粒子間のボイド充填を補正したものである。
【0061】
塩化物及び硫黄含有量。塩化物及び硫黄含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)によって測定した。試験サンプルを、流動的な水分を含有する空気の存在下で炉内で加熱した。サンプル中に存在するハロゲン化物及び/又は硫黄化合物を燃焼させ、空気流中に放出した。炉から出た空気を冷却して、液体凝縮物を生成した。得られた液体を設定容量に希釈し、アリコートをイオンクロマトグラフィー(IC)カラムに注入し、それによって目的のアニオンを分離した。ICカラムからの溶出液を導電率検出器に通し、サンプル中に存在するアニオンに対応する一連のピークを発生させた。標準アニオン溶液を用いた検出器の較正により、サンプルの塩化物及び/又は硫黄含有量の計算が容易になった。
【0062】
コバルト含有量。焼成触媒前駆体のICPAES(誘導結合プラズマ原子発光分光法)又はICPMS(誘導結合プラズマ質量分析法)によって決定され、無損失基準でのコバルトの重量パーセントとして表される。
【0063】
酸化コバルト結晶子サイズ。酸化コバルト結晶子サイズは、Bruker D8 AdvanceX線回折計を使用したXRDによって決定した。粉末状の触媒前駆体サンプルをサンプルホルダーに押し込み、機器に装填した。平行光線(Gobel鏡)光学機器。ソフトウェア;相識別用のBruker EVA;パターン化用のTopas。回折計の条件は次のとおりであった:
【0064】
【0065】
リートベルト分析(Bruker Topas v4.2)を使用して、酸化コバルト結晶子サイズを決定した。粉末XRDデータのリートベルト解析は、対称性情報及び近似構造に基づいて計算された回折パターンから始まる。次いで、リートベルト解析では、最小二乗最小化を使用して、全ての観測点を計算されたプロットと比較し、計算された構造を精緻化して差異を最小化する。
【0066】
コバルト表面積。コバルト金属の表面積は、Micromeritics 2480 HTP 6 Station Chemisorption Analyserで測定した。サンプルを、200SCCMの水素流量で、250℃で120分間、100体積%の水素で還元した。還元段階が完了した後、サンプルをヘリウムで15分間パージした後、真空下で35℃の分析温度まで冷却した。10μmHg未満の真空に達した後、45分間排気を継続した。次いで、サンプルに、100~760mmHgの圧力範囲にわたって100体積%の水素を添加した。各圧力で、化学吸着された水素を平衡化させ、水素の取り込み体積を測定して、自動的に記録した。圧力/取り込みのペアをプロットして、明確に定義されたプラトー領域を示す等温線を得た。この領域内でデータ点を選択して、最近似直線フィットを達成し、これを外挿してゼロ圧力に戻した。切片値を用いて、H2/Coに対して1.0の化学量論を使用してコバルト表面積を計算し、還元された触媒の質量に基づいてコバルト表面積を報告した。
【0067】
実施例1:ジルコニア改質チタニア担体
a)ZrO2含有量の増加の影響
一連のジルコニア改質TiO2微小球担体を、ZrO(NO3)2・2H2O(計算されたZr含有量34.133重量/重量%)の水溶液を使用して初期湿潤含浸によって調製した。いずれの場合も、水の細孔容積が0.41cm3/gのTiO2微小球300gを秤量し、予熱したZブレードミキサー(50℃)に装填し、およそ15分間放置して温めた。目標ZrO2担持量(以下の表に記載)に必要とされるオキシ硝酸ジルコニウム(IV)二水和物(ZrO(NO3)2・2H2O)の質量を、脱塩水100mLを入れたビーカーに秤量した。次いで、これをホットプレートスターラー上に置き、50℃に加熱した。温度に達したら、脱塩水で120cm3の体積にし、50℃に再加熱した。次いで、溶液を、Zブレードミキサー中で混合しているTiO2微小球にゆっくりと添加した。溶液の添加には約90秒かかった。溶液を添加した後、サンプルを更に60秒間混合した。次いで、サンプルをZブレードミキサーから出し、アルミナサガーに入れた。サガーを110℃に予熱した炉に入れ、3時間保持した。この後、炉を2℃/分で500℃まで昇温させ、2時間保持した。
【0068】
【0069】
ZrO(NO3)2・2H2O及びTiO2微小球は市販のものを入手した。
【0070】
入手状態のままのTiO2微小球は、以下の典型的な特性を有していた:
【0071】
【0072】
比較のために、未改質チタニア微小球のサンプルも500℃で焼成した。
【0073】
エアジェット摩耗試験によって測定される粒子強度は、ZrO2担持量と共に増加し、残留塩化物含有量が減少することが見出された。結果を以下に示す。
【0074】
【0075】
ZrO2担持量による強度の大幅な増加にもかかわらず、ジルコニア改質の結果として、表面積の損失はなく、気孔率の損失はほとんどなかった。
【0076】
b)焼成温度の影響
400、600、700、800及び900℃の焼成温度で実験を繰り返した。結果は以下のとおりである:
【0077】
【0078】
残留塩化物含有量は焼成温度が上昇するにつれて減少するが、これらの結果は、耐火性酸化物の非存在下での表面積及び気孔率の低下、並びにアナターゼからルチルへの変換を実証する。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
驚くべきことに、焼成温度が上昇しても、改質担体の細孔容積及びBET表面積及び細孔容積は、750~800℃の範囲の最大焼成温度まで比較的変化しないままであった。この観察は、調査したジルコニア含有量の範囲について有効であった。ZrO2改質担体のそれぞれについて、XRDによるアナターゼ含有量は、約750℃の焼成温度まで80~90重量/重量%で安定なままである。低濃度のZrO2を添加すると、チタニアの焼成に対する反応が変化し、BET表面積及び細孔容積の損失を開始するにはより高い温度が必要になることが明らかである。並行して、チタニアのジルコニア改質は、アナターゼからルチルへの転移及びルチル結晶子の成長を、未改質TiO2の場合よりも高い温度で生じさせた。TiO2と同様に、改質TiO2をより高温で焼成すると、いずれの場合も塩化物含有量が減少した。
【0083】
実施例2:La2O3、CeO2、Y2O3及びNd2O3改質チタニア担体
実施例1の方法を用いて、同じチタニア微小球担体を使用し、それぞれ3.5重量/重量%の耐火性金属酸化物担持量及び750℃の焼成温度で、一連の改質TiO2微小球担体を調製した。いずれの場合も、水の細孔容積が0.42cm3/gのTiO2微小球300gを秤量し、50℃で予熱したZブレードミキサーに装填し、およそ15分間放置して温めた。以下の表に記載されているように、必要とされる改質金属硝酸塩結晶の質量を、脱塩水100mLを入れたビーカーに秤量した。次いで、これをホットプレートスターラー上に置き、50℃に加熱した。温度に達したら、脱塩水で129cm3の体積にした。各触媒調製において添加された余分な水を以下の表に詳述する。次いで、溶液を、Zブレードミキサー中で混合しているTiO2微小球にゆっくりと添加した。溶液の添加には約40秒かかった。溶液を加えた後、サンプルを更に30秒間混合した。この後、サンプルをZブレードミキサーから出し、アルミナサガーに入れた。サガーを110℃に予熱した炉に入れ、3時間保持した。この後、炉を2℃/分で750℃まで上昇させ、2時間保持した。
【0084】
【0085】
これらの改質担体の特性を以下に示す:
【0086】
【0087】
改質担体の物理的特性は著しく類似している。母体のアナターゼ/ルチル比は維持され、アナターゼ及びルチルの結晶子サイズも維持される。全ての改質酸化物について強度の劇的な増加があり、エアジェット摩耗は、入手状態の68重量/重量%から14~19重量/重量%に低下する(3~4倍の減少)。メジアン水銀細孔直径は、改質プロセスの結果としてわずかな増加を示す。
【0088】
実施例3:触媒前駆体の調製
実施例2の担体を、促進されていない(Co)及び促進された(Co/Pt及びCo/Ru)酸化フィッシャー・トロプシュ触媒前駆体に変換した。それぞれの場合において、担体を、目的の触媒配合物によって必要とされる金属溶液で含浸し、乾燥し、焼成した。使用した金属塩は、硝酸コバルト(II)六水和物、硝酸テトラアンミン白金(II)、及びニトロシル硝酸ルテニウム(III)であった。酸化物FT触媒前駆体においてXRDによって同定された酸化コバルトの唯一の結晶形態は、Co3O4であった。
【0089】
a)ジルコニア改質TiO2微小球担体
触媒A:チタニア/ジルコニア微小球上の11重量/重量%のCo
250.00gのジルコニア改質チタニア微小球(3.5重量/重量%のZrO2、750℃で焼成)を、Zブレードミキサーの予熱した混合チャンバに入れた。循環水浴を90℃に設定した。硝酸コバルト六水和物結晶163.4g及び脱塩水14.3gをステンレス鋼製ビーカーに入れ、ホットプレート上で75℃に加熱した。溶液の添加前のチタニアの温度は63℃であり、ミキサー壁の温度は68℃であった。溶液を混合球体に43秒かけて注いだ。溶液添加後、混合を1分間継続した。413.0gの含浸された材料を出し、3つのステンレス鋼トレイに入れた。次いで、この材料を110℃で3時間乾燥させた。温度を2℃/分で250℃の焼成温度まで上昇させ、2時間保持した。
【0090】
触媒B:チタニア/ジルコニア微小球上の11重量/重量%のCo、0.022重量/重量%のPt
250.03gの同じジルコニア改質チタニア球を、Zブレードミキサーの予熱した混合チャンバに入れた。循環水浴を90℃に設定した。163.6gの硝酸コバルト六水和物結晶、2.0gの硝酸テトラアンミン白金(II)溶液(3.367重量/重量%のPt)及び13.2gの脱塩水をステンレス鋼ビーカーに入れ、ホットプレート上で75℃に加熱した。溶液の添加前のチタニアの温度は65℃であり、ミキサー壁の温度は69℃であった。溶液を混合チタニア微小球に43秒かけて注いだ。溶液添加後、混合を1分間継続した。413.1gの含浸された材料を出し、3つのステンレス鋼トレイに入れた。次いで、この材料を110℃で3時間乾燥させた。温度を2℃/分で250℃の焼成温度まで上昇させ、2時間保持した。
【0091】
触媒C:チタニア/ジルコニア微小球上の11重量/重量%のCo、0.11重量/重量%のRu
250.3gの同じジルコニア改質チタニア球を、Zブレードミキサーの予熱した混合チャンバに入れた。循環水浴を90℃に設定した。163.8gの硝酸コバルト六水和物結晶、2.3gのニトロシル硝酸ルテニウム(III)溶液(13.88重量/重量%のRu)及び12.8gの脱塩水をステンレス鋼ビーカーに入れ、ホットプレート上で75℃に加熱した。溶液の添加前のチタニア微小球の温度は64℃であり、ミキサー壁の温度は66℃であった。溶液を混合チタニア微小球に40秒かけて注いだ。溶液添加後、混合を1分間継続した。412.3gの含浸された材料を出し、3つのステンレス鋼トレイに入れた。次いで、この材料を110℃で3時間乾燥させた。温度を2℃/分で250℃の焼成温度まで上昇させ、2時間保持した。
【0092】
比較のために、実施例1に記載された入手状態のままの未改質TiO2微小球を使用して、同じ方法及び装置を使用して同様の触媒を調製した。
比較触媒D:チタニア微小球上11重量/重量%のCo。
比較触媒E:チタニア微小球上の11重量/重量%のCo、0.022重量/重量%のPt。
比較触媒F:チタニア微小球上の11重量/重量%のCo、0.11重量/重量%のRu。
【0093】
【0094】
FT触媒酸化物前駆体のエアジェット摩耗は、担体上への触媒金属の含浸に関連して密度が増加するので、前駆体担体のエアジェット摩耗よりも低い。改質担体上で作製された触媒A、B及びCは、未改質TiO2上で作製された触媒D、E及びFよりも摩耗がわずかに低い。また、担体改質プロセスにより、触媒酸化物の塩化物含有量が減少した。
【0095】
b)耐火性酸化物改質TiO2微小球担体
La2O3、CeO2、Y2O3及びNd2O3で改質されたTiO2担体のための触媒前駆体の調製方法。
【0096】
それぞれについて、実施例2の改質TiO2微小球担体50gをプラスチックバッグに秤量した。硝酸コバルト六水和物、脱塩水及び必要なプロモーター(存在する場合)を秤量してガラスビーカーに入れた(重量については以下の表を参照されたい)。次いでビーカーを加熱し、内容物を完全に溶解するまでホットプレート/マグネチックスターラー上で撹拌した。次いで、溶液を3つのアリコートで担体に添加した。各添加の間はバッグを密封し、内容物を振ったりバッグの外側から揉んだりして、流動性のある粉末を得た。次いで、混合した中間体をステンレス鋼トレイ上に置き、110℃に予熱したオーブンで3時間乾燥させた。次いで、オーブン温度を2℃/分で250℃の焼成温度まで上昇させ、2時間保持した。
【0097】
【0098】
この方法を用いて、以下の酸化物FT触媒前駆体を作製した。
【0099】
【0100】
【0101】
実施例4:触媒試験
試験は、2.00gのSiCで希釈された0.5gの触媒前駆体を用いて、内径4mmの実験用反応管に入れて行った。60mL/分の流量を用いて、純水素中で7時間300℃(勾配1℃/分)でin situ還元した後、温度を150℃に下げ、ガスを合成ガス(H2:CO=2:1)に切り替え、反応器を、110mL/分の流量を用いて20bargに加圧した。6時間後、温度を210℃に上昇させ(1℃/分)、約16時間にわたって一晩放置した。次いで、流量を最初に50mL/分に減少させ、次いで50%の合成ガス変換を達成するために必要な流量まで減少させ、データ収集を試験期間中(特に明記しない限り約160時間)継続した。マスフローコントローラーを使用して、流入ガスを反応器内に計量した。ガス状、液体、及び固体の炭化水素生成物並びに水相をガスクロマトグラフィーで分析して、CO変換及び選択性を計算するための質量バランスを達成した。アルファは、nの関数としてのlog(Wn/n)のプロットの傾きから計算され、ここで、勾配はlog(α)であり、ここで、Wnは、炭素数nの炭化水素の重量分率であり、αは、鎖成長確率である。この式は、アンダーソンシュルツ-フローリー分布、Wn=nαn-1(1-α)2から導出された。典型的には、C20~C40は、アルファの計算に使用される炭素数の範囲であった。ジルコニア改質触媒の性能データを以下の表に示す。
【0102】
【0103】
未改質TiO2担体上で、白金及びルテニウムによる促進は、促進されていないコバルトと比較して相対的な活性の予想される増加を示し、メタン選択性のわずかな増加も一緒に示している。驚くべきことに、TiO2/ZrO2担持触媒は、同等のTiO2担持触媒よりもはるかに活性が高くなっている。促進されていないコバルトについては、相対活性の増加は1.00から1.57(57%)である。白金及びルテニウムで促進された触媒変種について、相対活性の増加は、それぞれ34%及び16%である。
【0104】
他の耐火性酸化物改質触媒の性能データを以下の表に示す。
【0105】
【0106】
Co/TiO2/CeO2触媒を除いて、改質TiO2担体から調製された触媒の全てが、未改質TiO2で担持された同等物と比較して、活性が向上していることは明らかである。最も活性の高い触媒は、触媒H(Co/Pt/TiO2/La2O3)、触媒B(Co/Pt/TiO2/ZrO2)及び触媒Q(Co/Pt/TiO2/Nd2O3)であった。これらの触媒の相対活性は、それぞれ1.92、1.95及び1.97であり、すなわち、これらの試験では、未改質の促進されていない触媒Dのほぼ2倍の活性であった。
【0107】
要約すると、TiO2微小球を耐火性金属で改質し、続いて乾燥及び高温焼成することにより、母体の微小球よりも強く、母体の微小球より塩化物含有量が少ない触媒担体が得られ、活性及び選択性のフィッシャー・トロプシュ触媒を作製するのに必要な組織特性を保持する。上記のように耐火性金属酸化物で改質されたTiO2微小球担体上で調製されたコバルト系フィッシャー・トロプシュ触媒は、概して、未改質TiO2微小球上で調製された同等の触媒よりも著しく活性が高い。
【国際調査報告】