(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20230907BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20230907BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20230907BHJP
C22B 3/08 20060101ALI20230907BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C01G53/00 B
C22B23/00 102
C22B5/12
C22B3/08
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507653
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 GB2021052084
(87)【国際公開番号】W WO2022038337
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523202163
【氏名又は名称】ジェライオン・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Gelion Technologies Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ブリーズ、バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】イード、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】スコフィールド、エマ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデール、コエン
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AA07
4G048AB02
4G048AB08
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4K001AA19
4K001BA22
4K001DB03
4K001HA09
5H031RR02
(57)【要約】
廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法が記載されている。方法は、ニッケル含有酸化物を含む廃電池材料を準備する工程と、廃電池材料中のニッケルをゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)
4を形成する工程と、Ni(CO)
4をスルファート供給源と反応させてNiSO
4を形成する工程と、を含む。NiSO
4生成物は、新しい電池材料を調製するプロセスを含む、ニッケル供給源を必要とする様々なプロセスにおけるニッケル供給原料として有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であって、
(a)ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)前記廃電池材料中の前記ニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)
4を形成する工程と、
(d)前記Ni(CO)
4をスルファート供給源と反応させて、NiSO
4を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記廃電池材料が廃電池カソード材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニッケル含有酸化物が、リチウム、コバルト及びマンガンのうちの1つ又は複数を更に含み、任意選択で、鉄、アルミニウム、銅及び炭素のうちの1つ又は複数を更に含む混合酸化物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ニッケルを還元することが、前記廃電池材料を、H
2を含む還元ガスと接触させることを含み、前記還元ガスと接触させることが、少なくとも500℃の温度で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
還元後及び前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させる前に、前記還元された廃電池材料を少なくとも500℃の温度から45~85℃の温度に冷却することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記還元ガスが、一酸化炭素を更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、45~85℃の温度で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、110kPa~200kPaの絶対圧力で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、140~200℃の温度で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、6MPa~8MPaの圧力で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記廃電池材料のNi含有量が、10~80重量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記Ni(CO)
4がH
2SO
4と反応して前記NiSO
4を形成するように、前記スルファート供給源がH
2SO
4である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記H
2SO
4が水溶液であり、前記溶液の総量に基づいて10~35%の濃度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Ni(CO)
4をH
2SO
4と反応させることが、前記還元された廃電池材料と一酸化炭素との反応中に適用される圧力と同じ圧力下で行われる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記Ni(CO)
4をH
2SO
4と反応させることが、Ni(CO)
4がガス状である温度及び圧力の条件下で行われる、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Ni(CO)
4とH
2SO
4との間の前記反応の副生成物として生成されるH
2の少なくとも一部をリサイクルすることを更に含み、前記リサイクルされたH
2がプロセスに戻される、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Ni(CO)
4とH
2SO
4との間の前記反応の副生成物として生成されるCOの少なくとも一部をリサイクルすることを更に含み、前記リサイクルされたCOがプロセスに戻されて、前記還元された廃電池材料と反応する、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記NiSO
4生成物を電池材料の製造における供給原料として使用することを更に含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記NiSO
4を形成するために前記Ni(CO)
4を前記H
2SO
4と反応させることが、前記H
2SO
4に加えてHNO
3の存在下で行われる、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、廃電池材料からニッケルをリサイクルするガス相プロセスである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)の終了と工程(c)の開始との間の時間が1時間未満である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)の前又は後にギ酸浸出プロセスを更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であって、
還元された電池材料を含む組成物を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)
4を形成する工程であって、前記還元された電池材料がゼロ酸化状態のニッケルを含む、工程と、
前記Ni(CO)
4をスルファート供給源と反応させて、NiSO
4を形成する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法に関し、特に廃電池カソード材料からニッケルをリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、現在、現代社会に遍在しており、携帯電話及びラップトップコンピュータ等の小型携帯用機器だけでなく、電気自動車にもますます使用が見出される。
【0003】
リチウムイオン電池は、一般に、電解質によってカソードから分離されたアノード(例えば、グラファイト)を含み、充放電サイクル中にリチウムイオンが電解質を通って流れる。リチウムイオン電池のカソードは、リチウム遷移金属酸化物、例えば、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物若しくはリチウムマンガン酸化物、又は2つ以上の遷移金属の混合物を含むリチウム混合遷移金属酸化物を含んでもよい。
【0004】
リチウムイオン及び他の現代の再充電可能な電池は、将来のための有望な低炭素エネルギー貯蔵を提供するが、1つの懸念は、リチウム、ニッケル、コバルト又はマンガン等の、電池の製造に必要とされる金属が、必要とされる純度でのそれらの限られた利用可能性及び天然供給源からの抽出の困難に起因して、しばしば高い価格を要求することである。ニッケル及びコバルト等の金属の供給の有限性は、持続可能性及び環境上の理由の両方のために、埋立てによるごみ処理における電池材料の廃棄によるこれらの元素の損失を制限することが望ましい。それにもかかわらず、電池材料から上記元素をリサイクルするための既存の方法の複雑さは、元素がこのようにして失われることが多いことを意味する。したがって、電池のカソード内に存在する金属等の、電池内に存在する金属を回収及びリサイクルして、電池製造における供給原料として使用され得るリサイクルされた材料を提供する方法が必要とされている。
【0005】
中国特許第103031441号には、廃ニッケル水素電池から金属元素をリサイクルする方法が記載されている。廃ニッケル水素電池粉末を還元、か焼した後、亜鉛塩溶液と反応させる。溶液を濾過し、濾過残留物を酸化剤と共に酸溶液に添加し、続いて過マンガン酸カリウムを添加する。溶液を濾過し、二酸化マンガンを濾過残留物から回収でき、ニッケル及びコバルトを濾液から回収できる。そのような方法は、様々な反応及び濾過工程を含む多くの工程を有し、回収された金属は、更なる電池材料の製造に有用な形態になる前に更なる処理工程を必要とするであろう。
【0006】
したがって、経済的であり、更なる処理のためにより有用な形態で金属元素を提供する、カソード材料等の廃電池材料からニッケル等の金属元素を回収及びリサイクルするための改善されたプロセスが必要とされている。
【0007】
リチウムイオン電池分野における最近の動きを考慮すると、高いニッケル充填量を有する電極材料に向けて、これらの材料から有用な形態でニッケルを回収及びリサイクルすることが特に興味深い。ニッケルは比較的一般的な元素であるが、電池材料の製造に使用するのに必要な純度レベルでニッケルを得ることは困難である。したがって、これらの材料からニッケルを回収するだけでなく、電池製造用途に適した形態及び純度で回収する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載される第1の態様は、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であり、
(a)ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程と、
(d)Ni(CO)4をスルファート供給源と反応させて、NiSO4を形成する工程と、
を含む。
【0009】
この方法は、廃電池材料から硫酸ニッケル(NiSO4)を生成する。次いで、硫酸ニッケルは、新しい電池材料を調製するプロセスを含むニッケル供給源を必要とする様々なプロセスにおいてニッケル供給原料として使用されてもよく、又はニッケル供給原料として有用な他の化合物を調製するための中間体として使用されてもよい。
【0010】
したがって、本発明は、Ni(CO)4中間体を介して、廃電池材料からニッケルをリサイクルすることができる有用なプロセスを提供する。プロセスは、リサイクルされるニッケルの収率が高くなるように、少数の試薬を用いて少数の工程のみを必要とする点で経済的である。工程(c)で試薬として使用される一酸化炭素は、工程(d)でのNi(CO)4中間体の分解から得ることができ、廃棄物が非常に少ない循環プロセスを提供する。還元工程及びカルボニル化工程の両方が実施され得る単一の反応容器中でプロセスを実施することも可能であり、材料を移動又は取り扱う必要性を排除し、それによってプロセスを単純化し、スケールアップをより実行可能かつ簡単にする。
【0011】
このプロセスから生じるNi(CO)4中間体は、本質的に不純物を含まず、電池材料製造に使用するための非常に高純度のニッケル供給原料に変換され得るニッケルを含有する。本発明のプロセスは廃電池材料からニッケルを除去するので、これにより、ニッケル含有量が減少するため、材料からのコバルト又はマンガン等の残留金属のその後のリサイクルがより容易になる。
【0012】
本明細書に記載の第2の態様は、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であり、
還元された廃電池材料を含む組成物を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程であって、還元された電池材料がゼロ酸化状態のニッケルを含む、工程と、
Ni(CO)4をスルファート供給源と反応させて、NiSO4を形成する工程と、
を含む。
【0013】
本明細書に記載の第3の態様は、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であり、
還元されたカルボニル化廃電池材料を含む組成物をスルファート供給源と反応させて、NiSO4を形成する工程であって、還元されたカルボニル化廃電池材料がNi(CO)4を含む、工程を含む。
【0014】
本明細書に記載される第4の態様は、還元された廃電池材料を含む組成物をNi(CO)4に変換するためのカルボニル化試薬としての一酸化炭素の使用である。
【0015】
本明細書に記載の第5の態様は、還元されたカルボニル化廃電池材料を含む組成物をNiSO4に変換するための試薬としての硫酸の使用であり、還元されたカルボニル化廃電池材料はNi(CO)4を含む。
【0016】
本明細書に記載される第6の態様は、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であり、
(a)ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)廃電池材料をギ酸で処理してギ酸ニッケルを形成する工程と、
(b)廃電池材料中のギ酸ニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程と、
(d)任意選択で、Ni(CO)4をスルファート供給源と反応させて、NiSO4を形成する工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ガススクラバーのネットワークを使用して、Ni(CO)
4ガスを硫酸と反応させるための機構の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これより、本発明の好ましいかつ/又は任意選択的な特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の好ましい及び/又は任意選択的な特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせのいずれかで、組み合わせることができる。
【0019】
廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法が提供され、
(a)ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程と、
を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、廃電池材料からニッケルをリサイクルするガス相プロセスである。本明細書において、「ガス相プロセス」という用語は、少なくとも1つの反応物、中間体又は生成物が反応条件下でガス状であるプロセスを指す。
【0021】
方法の第1の工程は、ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備することを含む。
【0022】
本明細書において、「廃電池材料」という用語は、更なる使用のために成分要素のうちの1つ又は複数をリサイクルすることが望まれる、セル若しくは電池、又はそれらの派生物等の電気エネルギー貯蔵装置の任意の材料構成要素を示す。廃電池材料は、電気エネルギー貯蔵装置内で以前に使用されていてもよいが、これは必須ではない。廃電池材料は、例えば、廃中間材料又は失敗したバッチを含む、電池材料の製造中に生成される廃材料であってもよい。更なる使用は、任意の用途におけるものであってもよいが、いくつかの実施形態では、更なる使用は、電気エネルギー貯蔵装置において使用するための更なる材料の製造におけるものである。
【0023】
セル又はバッテリ等の電気エネルギー貯蔵装置の材料構成要素に関して本明細書で使用される「派生物」という用語は、材料構成要素を1つ又は複数の処理工程にかけてその化学組成を変化させることから得られる材料を示す。いくつかの実施形態では、廃電池材料は廃電池カソード材料又はその派生物を含む。
【0024】
リチウムイオン電池等の電池のカソードは、リチウムインターカレーションを提供する活物質として混合酸化物を含むことが多い。混合酸化物は、混合遷移金属酸化物であってもよい。方法で使用される廃電池材料は、ニッケル含有化合物を含む。いくつかの実施形態では、ニッケル含有化合物はニッケル含有酸化物である。いくつかの実施形態では、ニッケル含有酸化物は、ニッケル及び1つ又は複数の追加の金属を含有する混合酸化物である。
【0025】
ニッケル含有化合物は、ニッケル含有酸化物、例えばニッケル及びリチウムを含む混合酸化物、すなわちリチウムニッケル酸化物(LNO)であってもよい。ニッケル含有化合物は、ニッケル、リチウム及びコバルトを含む混合酸化物、すなわちリチウムニッケルコバルト酸化物(LNCO)であってもよい。ニッケル含有化合物は、ニッケル、リチウム及びマンガンを含む混合酸化物、すなわちリチウムマンガンニッケル酸化物(LMNO)であってもよい。ニッケル含有化合物は、ニッケル、リチウム、マンガン及びコバルトを含む混合酸化物、すなわちリチウムマンガンニッケルコバルト酸化物(LMNCO)であってもよい。ニッケル含有化合物は特に限定されず、ニッケルは、ニッケル含有化合物を含む任意の電池材料からリサイクルされてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、ニッケル含有化合物は、リチウム、コバルト及びマンガンのうちの1つ又は複数を更に含み、任意選択で鉄、アルミニウム、銅及び炭素のうちの1つ又は複数を更に含む、混合酸化物である。いくつかの実施形態では、ニッケル含有化合物は、リチウム、コバルト及びマンガンのうちの2つ以上を更に含む混合酸化物である。いくつかの実施形態では、ニッケル含有化合物は、リチウム、コバルト及びマンガンを更に含む混合酸化物である。
【0027】
廃電池材料はまた、炭素を含んでもよく、炭素は、カソード材料等の電池材料において結合剤としてしばしば使用され得る。このような炭素はまた、炭素熱還元のための炭素質雰囲気を提供するために、以下に記載される還元工程の間に有用であり得る。
【0028】
本発明の方法の利点は、ニッケルカルボニルが、還元された廃電池材料と一酸化炭素との反応中に形成され得る他の生成物から容易に分離されることである。ニッケルカルボニルは揮発性であり、大気圧及び43℃を超える温度で気体として存在し、容易に抽出することができるガス相中間体として本方法によって生成される。鉄カルボニル(Fe(CO)5)は、ニッケル含有酸化物中の任意の鉄とCOとの反応を通して形成され得るが、104℃の沸点を有するNi(CO)4より揮発性が低い。コバルトカルボニル、Co2(CO)8は、51℃未満で固体である。
【0029】
したがって、本発明の方法は、廃電池材料がニッケル、コバルト及び/又は鉄等の金属の混合物を含む場合に、廃電池材料からニッケルをNi(CO)4を介して、ニッケルを選択的に回収及びリサイクルする手段を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、廃電池材料は、電池の機械的分解から得られるブラックマス(black mass)を含む。このような「ブラックマス」は、当業者に周知の材料である。ブラックマスは、カソードブラックマスを含んでもよく、又はカソードブラックマス及びアノードブラックマスの混合物を含んでもよい。機械的分解は、電池パックを細断する工程と、構成要素のうちの1つ又は複数を分離する工程と、を含み得る。
【0031】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて少なくとも10重量%、例えば少なくとも12重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%又は少なくとも25重量%のNiを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて最大80重量%、例えば最大75重量%、最大70重量%又は最大50重量%のNiを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて10~80重量%のNiを含み得る。
【0032】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて少なくとも0重量%、例えば少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%のMnを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて、最大33重量%、例えば、最大30重量%、最大28重量%又は最大25重量%のMnを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて0~33重量%のMnを含み得る。
【0033】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて少なくとも0重量%、例えば少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%のCoを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて、最大33重量%、例えば、最大30重量%、最大28重量%又は最大25重量%のCoを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて0~33重量%のCoを含み得る。
【0034】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて少なくとも0重量%、例えば少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%又は少なくとも6重量%のLiを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて最大20重量%、例えば最大18重量%、最大15重量%又は最大12重量%のLiを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて0~20重量%のLiを含み得る。
【0035】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて少なくとも0重量%、例えば少なくとも1重量%、少なくとも2重量%又は少なくとも3重量%のFeを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて最大10重量%、例えば最大9重量%、最大8重量%又は最大7重量%のFeを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて0~10重量%のFeを含み得る。
【0036】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて少なくとも0重量%、例えば少なくとも1重量%、少なくとも2重量%又は少なくとも3重量%のAlを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて最大10重量%、例えば最大9重量%、最大8重量%、又は最大7重量%のAlを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて0~10重量%のAlを含み得る。
【0037】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて少なくとも0重量%、例えば少なくとも1重量%、少なくとも2重量%又は少なくとも3重量%のCuを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて最大20重量%、例えば最大15重量%、最大10重量%、最大9重量%、最大8重量%又は最大7重量%のCuを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて0~20重量%のCuを含み得る。
【0038】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて、少なくとも0重量%、例えば少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%のCを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて最大50重量%、例えば最大45重量%、最大40重量%又は最大30重量%のCを含み得る。廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて0~50重量%のCを含み得る。
【0039】
廃電池材料は、廃電池材料の総量に基づいて、10~80重量%のNi、0~33重量%のMn、0~33重量%のCo、0~20重量%のLi、0~10重量%のFe、0~10重量%のAl、0~20重量%のCu及び0~50重量%のCを含み得る。
【0040】
廃電池材料は、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、固体状態リチウム金属電池及び金属空気電池を含むがこれらに限定されない任意の好適な電池に由来し得る。本発明の方法を使用して、カソード材料、アノード材料及び電解質を含むがこれらに限定されない、電池の任意の適切なニッケル含有構成要素をリサイクルすることができる。
【0041】
廃電池材料内の活物質は、式Iによる組成を有し得る。
LixNiyCozMnpAlqMrOa 式I
[式中、
Mは、Al、V、Ti、B、Zr、Sr、Ca、Mg、Cu、Sn、Cr、Fe、Ga、Si、W、Mo、Ta、Y、Sc、Nb、Pb、Ru、Rh及びZnのうちの1つ又は複数であり、
0.5≦x≦1.5、
0<y≦1.0、
0≦z≦1.0、
0≦p≦1.0、
0≦q≦1.0
0≦r≦0.1及び
1.8≦a≦2.2である]
【0042】
いくつかの実施形態では、r=0であり、その結果、廃電池材料内の活物質は、組成LixNiyCozMnpAlqOaを有する。
【0043】
方法の第2の工程は、廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供することを含む。廃電池材料中のニッケルは、ニッケル(及び存在する任意の他の金属)が0より大きい酸化状態で存在する酸化ニッケルの形態であり得、したがって、ニッケルの還元は、酸化状態を0に還元し、元素ニッケルを提供して、その後、一酸化炭素との反応を可能にする。
【0044】
廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部を還元する工程は、材料中のニッケル含有化合物の直接還元、すなわちニッケル含有化合物を還元することによる単一工程でのゼロ酸化状態ニッケルへの変換を含むことができる。あるいは、還元は多段階プロセスで行われてもよい。例えば、廃電池材料中のニッケル含有化合物は、最初に酸化ニッケルのニッケル含有誘導体に変換されるニッケル含有酸化物であってもよい。いくつかの実施形態では、廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部を還元する工程は、ニッケル含有酸化物を酸化物以外のニッケル含有誘導体に変換することを含む。
【0045】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、
(a)ニッケル含有酸化物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)還元が、
(i)ニッケル含有酸化物を酸化物以外のニッケル含有誘導体に変換する工程、及び
(ii)ニッケル含有誘導体中のニッケルの少なくとも一部を還元して、還元された廃電池材料を提供する工程、
を含む、廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程と、
を含む。
【0046】
本明細書において、「還元された廃電池材料」という用語は、廃電池材料内に存在する1つ又は複数の金属が、初期のより高い酸化状態からその後のより低い酸化状態への酸化状態の変化を受けるように、還元プロセスを経た(例えば、還元剤と反応した)電池材料を示す。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスにおけるニッケルを還元する工程は、廃電池材料を還元雰囲気と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ニッケルを還元することは、高温の還元雰囲気下に廃電池材料を置くことを含む。いくつかの実施形態では、還元雰囲気は還元ガスを含む。還元ガスは、H2を含んでもよい。これは、ニッケル含有化合物が、ニッケル金属に直接還元されるニッケル含有酸化物である場合に好適な選択肢であり得る。他の実施形態では、還元は、炭素熱還元であってもよく、還元ガスは、廃電池材料中に存在する炭素、又は還元前に廃電池材料に添加された炭素のいずれかから生成される。
【0048】
リチウムイオン電池カソード材料等の電池材料は、例えば結合剤としていくらかの炭素を含有することが一般的である。このような場合、これらの材料に由来する廃電池材料はまた、いくらかの炭素を含有する。したがって、これらの廃電池材料中のニッケルの還元は、既に存在する炭素が還元剤として作用する炭素熱還元によって達成することができ、そのような状況では、H2等の追加の還元剤を使用する必要がない場合がある。いくつかの実施形態では、炭素熱還元が行われる場合、これは、不活性雰囲気、例えばN2雰囲気下で行われる。しかしながら、炭素熱還元中に雰囲気中にいくらかのH2を含むことが依然として好ましい場合があり、これは、ガス供給物中に存在するあらゆる酸素による、還元されたニッケル金属のあらゆる再酸化を防止するのに役立つ。
【0049】
廃電池材料が炭素を含まない実施形態では、炭素熱還元を行うことができるように、廃電池材料に炭素を導入することが可能であるであろう。しかしながら、そのような実施形態では、材料に炭素を添加するための更なる供給物調製工程がプロセスの効率に有害であるため、廃電池材料に炭素を添加せずに、還元剤、例えばH2又はCOを含む還元雰囲気を使用することが代わりに好ましい。
【0050】
還元雰囲気と接触させる前に、方法は、廃電池材料を還元に適した温度まで加熱することを含んでもよい。還元性雰囲気中に供給する前に廃電池材料を加熱することによって、還元性雰囲気からのガスが浪費されないので、プロセスはより効率的になる。廃電池材料は、少なくとも350℃、例えば少なくとも400℃、例えば少なくとも450℃、例えば少なくとも500℃、例えば少なくとも520℃、少なくとも540℃、少なくとも560℃、少なくとも580℃、又は少なくとも600℃の温度まで加熱されてもよい。廃電池材料は、最大1000℃、例えば、最大950℃、最大900℃、最大850℃又は最大800℃の温度まで加熱されてもよい。廃電池材料は、600℃~900℃の温度まで加熱されてもよい。このような温度は、ニッケル含有化合物が、ニッケル金属に直接還元されるニッケル含有酸化物である場合に好適な選択肢であり得る。廃電池材料の加熱及びその後の還元は、ガス入口及び出口を備えた適切な密封反応容器内で実施することができる。
【0051】
方法は、還元雰囲気を生成するために、例えばガス入口を通して、廃電池材料を含有する容器に還元ガスを供給することを含み得る。ガスの供給は、還元のための所望の温度まで容器を加熱する前、その間、又はその後に開始されてもよい。
【0052】
還元雰囲気との接触は、少なくとも350℃、例えば少なくとも400℃、例えば少なくとも450℃、例えば少なくとも500℃、例えば少なくとも520℃、少なくとも540℃、少なくとも560℃、少なくとも580℃又は少なくとも600℃の温度で行われてもよい。還元ガスとの接触は、最大1000℃、例えば最大950℃、最大900℃、最大850℃、又は最大800℃の温度で行うことができる。還元雰囲気との接触は、600℃~900℃の温度で行うことができる。このような温度は、ニッケル含有化合物が、ニッケル金属に直接還元されるニッケル含有酸化物である場合に好適な選択肢であり得る。
【0053】
方法は、廃電池材料上に還元ガス流を流すことを含んでもよい。
【0054】
還元ガスは、H2を含んでもよい。還元ガスはH2からなってもよい。いくつかの実施形態では、還元ガスはH2を含み、更に一酸化炭素を含む。還元ガスは、H2及びCOを含む混合物であってもよい。このようにして、同じガス供給物を還元及び後のカルボニル化の両方に使用することができ、効率が改善され、プロセスが簡略化される。いくつかの実施形態では、ニッケルの少なくとも一部を還元することは、廃電池材料をH2を含む還元ガスと接触させることを含み、還元ガスとの接触は、少なくとも350℃、例えば少なくとも500℃の温度で行われる。
【0055】
理論に束縛されることを望まないが、Ni、Co、及びFeを含む廃電池材料のいくつかの金属構成要素は、還元ガスへの曝露によって還元され、その結果、少なくとも原子のいくつかが、それらの元素(ゼロ酸化状態)形態に変換されると考えられる。Mnはゼロ酸化状態に還元されず、MnO2からMnOに還元されることが予想される。いかなるAl2O3も還元されないことも予想される。
【0056】
廃電池材料と還元ガスとの反応は、少なくとも30分間、例えば少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも90分間、少なくとも120分間又は少なくとも150分間行われてもよい。廃電池材料と還元ガスとの反応は、最大10時間、例えば最大8時間、最大5時間又は最大4時間行われてもよい。廃電池材料と還元ガスとの反応は、30分~10時間、例えば45分~8時間、1時間~5時間又は2時間~5時間の期間にわたって行われてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、ニッケル含有化合物は、大気圧で還元される。1kgのNi当たり450~4500LのH2、例えば、1kgのNi当たり450~4000LのH2、1kgのNi当たり450~3500LのH2、1kgのNi当たり450~3000LのH2、1kgのNi当たり450~2000LのH2、1kgのNi当たり450~1500LのH2、又は1kgのNi当たり約900LのH2が大気圧で供給されるように、還元ガスが供給されてもよい。
【0058】
方法は、還元後及び還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させる前に、還元が行われる温度から45~85℃の範囲の温度に還元された廃電池材料を冷却することを更に含んでもよい。冷却工程は、最初に、冷却前に還元された電池材料を窒素雰囲気下に置くことを含むことができる。これは、冷却手順中の鉄カルボニルの形成を防止するのに役立つ。いくつかの実施形態では、温度が45~85℃の範囲内のより低い温度に達した後、窒素ガス流が停止され、好適なカルボニル化ガスが容器に供給される。冷却は、材料を自然に、すなわち、いかなる能動的冷却もなしに、又は窒素ガスの流れの下で冷却することによって冷却させることを含み得る。
【0059】
プロセスは、バッチプロセス又は連続プロセスであってもよい。プロセスで使用される反応器のタイプは限定されないが、好適な反応器としては、管状炉、回転炉及び流動床反応器が挙げられる。微細材料を取り扱い、固体-気体相互作用を最大化し、熱伝達を可能にするための任意の適切な反応器を使用することができる。
【0060】
廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部は、この工程で還元される。いくつかの実施形態では、廃電池材料中のニッケルの少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%又は少なくとも50重量%が、ゼロ酸化状態に還元される。いくつかの実施形態では、廃電池材料中のニッケルの最大100重量%が、ゼロ酸化状態に還元される。
【0061】
いくつかの実施形態では、還元工程は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、中国特許第103031441号に記載されるプロセスにおける対応する還元工程に従って実施され得る。
【0062】
任意選択で、廃電池材料は、還元工程の前にギ酸浸出プロセスを経る。そのようなギ酸浸出工程は、廃電池材料からLiを選択的に浸出させるために使用することができる。そのようなプロセスの例は、2020年10月15日に出願された英国特許出願第2016329.1号に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるようなその後の処理のための供給物調製工程としてギ酸を使用することには、以下に記載される更なる利点があることが見出された。
【0063】
ギ酸浸出中(例えば、沸騰無水ギ酸又は水と混合されたギ酸による)中に、Liはギ酸中に選択的に溶解される。この浸出プロセス中に、Ni、Co及びMnの混合酸化物がギ酸と反応し、不溶性ギ酸塩を形成する。残留物を濾別した後、残留物中に存在するNiホルマート及びCoホルマートは、Ni及びCoの酸化物自体の還元と比較して、著しくより低い温度で金属Ni及びCoに還元することができる。次いで、より低い温度の還元プロセスは、Ni及びCoのより微細な粒子を生じる。本プロセスにおいて還元工程の前にギ酸処理工程を使用する利点としては、以下が挙げられる。
-500~1000℃と比較して、より低い還元温度、すなわち250~350℃により、還元プロセスのエネルギーコストの大幅な削減を可能にする。
-低い還元温度の結果として、試行は、低い還元温度でより少ない焼結(より少ない粒子成長)が存在するため、より微細なNi粒子が形成されることを示した。
-小さなNi粒子は、ニッケルカルボニル形成の速度論がNiの表面積と相関するため、Ni(CO)4の形成が加速する。
-ギ酸ニッケル及びギ酸コバルトは、著しく異なる温度、すなわち、ギ酸Niについては約250℃に対して、ギ酸Coについては約310℃で分解するため、250℃~310℃の温度、例えば270℃で混合ホルマート供給物の熱分解を行うことによって、Niをギ酸Coから磁気的に分離することができる。
【0064】
上記を考慮して、本明細書の特定の方法は、
(a)ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)廃電池材料をギ酸で処理してギ酸ニッケルを形成する工程と、
(b)廃電池材料中のギ酸ニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程と、
(d)任意選択で、Ni(CO)4をスルファート供給源と反応させて、NiSO4を形成する工程と、
を含む。
【0065】
還元工程の前にギ酸浸出プロセスを実施することに加えて、又はその代わりに、還元工程の後に(例えば、H2還元の後に)ギ酸浸出工程を実施して、ゼロ酸化状態にない任意の残留酸化ニッケルをギ酸ニッケルに変換することが望ましい場合もある。これにより、Ni(CO)4プロセスの収率を改善することができる。したがって、ギ酸浸出プロセスは、還元工程の前又は後に提供されてもよい。
【0066】
一部の実施形態では、還元された材料は、いかなる介在工程もなしに、カルボニル化に直接供される。しかしながら、プロセスは、還元とカルボニル化との間に1つ又は複数の追加のプロセス工程を含んでもよい。例えば、還元された物質は、カルボニル化の前にH2Sと反応され得る。理論に束縛されることを望むものではないが、H-2Sとのそのような反応は、カルボニル化のために材料を活性化し得ると考えられる。以下のカルボニル化の説明において、「還元された廃電池材料」への言及は、還元の直接生成物又は1つ又は複数のそのような介在プロセス工程の生成物を包含する。
【0067】
廃電池材料の還元後、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、カルボニル化反応においてNi(CO)4を形成する。
【0068】
理論に束縛されることを望むものではないが、Niのカルボニル化は、以下の式に従って進行すると考えられる。
Ni+4CO→Ni(CO)4
【0069】
いくつかの実施形態では、カルボニル化は、還元された廃電池材料をCOを含むカルボニル化ガスと接触させることによって行われる。いくつかの実施形態では、カルボニル化ガスは、H2及びCOの混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カルボニル化ガスは、合成ガス(「シンガス」)であるか、又はシンガスを含む。シンガスは、天然ガス、石炭又はバイオマスを含む多くの供給源から生成される燃料ガス混合物である。シンガスの正確な組成は、供給源及び生成方法に応じて変化するが、典型的には、水素及び一酸化炭素を、しばしば二酸化炭素と共に含有する。シンガスの一例は、いくらかのメタン及び窒素と共に、約11mol%のH2、約22mol%のCO、約12mol%のCO2を含有し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、カルボニル化ガスは、H2及びCOの予め調製された混合物である。
【0071】
いくつかの実施形態では、還元ガスとして使用されるガスは、その後、カルボニル化ガスとしても使用される。このようにして、還元工程及びカルボニル化工程の両方に同じガス供給を使用することができ、プロセス全体の効率が改善される。例えば、H2及びCOの予め調製された混合物を、還元ガス及びカルボニル化ガスの両方として使用することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、廃電池材料の還元中に使用される還元雰囲気は、H2及びCOの混合物を含み、還元された廃電池材料のカルボニル化中の雰囲気もまた、H2及びCOの混合物を含む。いくつかの実施形態では、還元中に存在するガス及びカルボニル化中に存在するガスは同じである。このようにして、還元とカルボニル化との間でキャリアガスを変える必要がなく、より効率的なプロセスが提供される。
【0073】
還元工程が炭素熱還元を含む場合、この還元の生成物はCOであり得る(式NiO+C→Ni+COに従う)。いくつかの実施形態では、還元の副生成物であるCOは、その後、カルボニル化反応中にカルボニル化ガス中に含まれる。これにより、プロセスの効率が向上する。
【0074】
上で説明したように、いくつかの実施形態では、廃電池材料の還元後、材料は窒素雰囲気下で冷却される。したがって、いくつかの実施形態では、プロセスは、N2下で冷却した後、N2雰囲気をカルボニル化ガスを含む雰囲気で置き換え、カルボニル化を行うことを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、少なくとも45℃、例えば、少なくとも46℃、少なくとも47℃、少なくとも48℃又は少なくとも49℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、最大85℃、例えば、最大80℃、最大70℃、又は最大60℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、45~85℃、例えば、45~80℃、45~75℃、45~70℃、45~65℃、45~60℃、45~55℃、46~54℃、48~52℃の温度、又は約50℃の温度で実施される。そのような実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、最大200kPa、例えば、最大190kPa、最大180kPa、最大170kPa、最大160kPa、又は最大150kPaの圧力で行われ得る。還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、大気圧~200kPaの圧力で行われ得る。このような温度及び圧力の利点は、還元された廃電池材料が還元後に冷却されるのと同じ温度でカルボニル化が行われるため、還元後に材料を更に加熱する必要がないことである。更に、より低い温度及び圧力はより安全であり、より経済的である。
【0076】
代替的な実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、少なくとも140℃、例えば、少なくとも145℃、少なくとも150℃、少なくとも155℃又は少なくとも160℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、最大200℃、例えば最大190℃又は最大180℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、140~200℃、例えば150~190℃、160~180℃、又は約170℃の温度で行われる。そのような実施形態では、還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることは、6MPa~8MPa、例えば6.5MPa~7.5MPa、又は約7MPaの圧力で行われる。
【0077】
いくつかの実施形態では、工程(b)の終了と工程(c)の開始との間の期間は、1時間未満である。
【0078】
いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料は、工程(b)の終了と工程(c)の開始との間、常に不活性雰囲気下に保たれる。これは、工程(b)の生成物中の元素ニッケル金属が工程(c)の前にいかなる反応も受けず、高い収率を維持することを確実にする。
【0079】
カルボニル化反応時間は、使用される圧力に依存する。大気圧付近では、カルボニル化反応器中の材料の滞留時間は約100時間であり得る。滞留時間は、より高い圧力において減少され得る。
【0080】
上述したように、Ni(CO)4は、カルボニル化反応の条件下で揮発性であるため、方法は、ガス状Ni(CO)4生成物を反応容器から抽出することを含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、カルボニル化は、還元と同じ容器内で還元された廃電池材料に対して行われる。このようにして、異なる反応工程間で材料を取り扱うか、又は移動させる必要がなく、単純かつ安全な方法が提供される。
【0082】
いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料がカルボニル化を経た後、1つ又は複数の更なる還元-カルボニル化工程が行われる。これは、可能な限り多くのニッケルが廃電池材料からリサイクルされることを確実にする。還元の効率に依存して、いくらかの未還元ニッケルが、第1の還元及びカルボニル化後に材料中に残存し得る。したがって、1つ又は複数の更なる還元-カルボニル化工程を実施することは、リサイクルされるニッケルの量を最大にし、それによってプロセスの収率を最大にする方法である。
【0083】
したがって、いくつかの実施形態では、プロセスは、
(a)ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)(i)還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程と、
(c)(ii)工程(c)(i)の副生成物である還元されたカルボニル化物質に対して、工程(b)及び(c)(i)を1回又は複数回繰り返す工程と、
を含む。
【0084】
方法の生成物であるニッケルカルボニルは、様々な用途において、特にニッケル金属供給源として使用され得る有用なニッケル供給源である。例えば、Ni(CO)4は、高温(例えば、約300℃)でモンドプロセスにおいて一酸化炭素及びニッケルへの熱分解を経ることが知られている。しかしながら、好ましい実施形態では、本発明の方法で生成されたNi(CO)4は、以下でより詳細に説明するように、生成物としてNiSO4を生成するために硫酸(H2SO4)等のスルファート供給源で処理される。NiSO4は、電池で使用するための混合遷移金属酸化物活物質の調製において前駆体として伝統的に使用されている。したがって、NiSO4をリサイクルされた電池材料から生成物として生成するプロセスは、NiSO4が次いで電池材料の更なる製造のための供給原料として使用され得、「閉ループ」システムを提供するので、有利である。
【0085】
したがって、方法は、Ni(CO)4をスルファート供給源と反応させてNiSO4を形成することを更に含む。換言すれば、本発明の実施形態は、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法に関し、
(a)ニッケル含有化合物(例えば、ニッケル含有酸化物)を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)廃電池材料中のニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)4を形成する工程と、
(d)Ni(CO)4をスルファート供給源と反応させて、NiSO4を形成する工程と、
を含む。
【0086】
このようにして、より少ないプロセス工程でリサイクルされた電池材料から硫酸ニッケルを調製するためのプロセスが提供される。ニッケルカルボニルは、硫酸ニッケルに直接変換され、次いで、更なる電池材料の調製における供給原料として、いかなる更なるプロセス工程もなしに使用可能である。結果として、プロセスは単純かつ経済的である。
【0087】
任意の適切なスルファート供給源を使用してニッケルカルボニルと反応させることができるが、スルファート供給源は好ましくはH2SO4である。H2SO4は、ニッケルカルボニルと反応して純粋なNiSO4をガス状副生成物のみと共に生成し、それによって、別個の精製工程を何ら必要とせずに使用することができる非常に高純度の硫酸ニッケル生成物の生成を容易にするので、好ましい。
【0088】
理論に束縛されることを望むものではないが、ニッケルカルボニルは硫酸と反応して、次式に従う反応において硫酸ニッケル、水素及び一酸化炭素を生成すると考えられる。
Ni(CO)4+H2SO4→NiSO4+H2+4CO
【0089】
いくつかの実施形態では、H2SO4は、溶液の総量に基づいて10~98重量%、好ましくは10~35%の濃度を有する水溶液として提供される。
【0090】
高濃度の硫酸は水を吸収するため、この濃度の硫酸が好ましい。水は、上記反応で生成された水素の酸化によって生成され得る。しかしながら、水はニッケルカルボニルの形成を阻害することが知られているので、水の存在は望ましくない。したがって、より濃縮された硫酸によるこの水の吸収は、より効率的なプロセスを提供する。
【0091】
代替的に又は追加的に、プロセスは、反応で生成されたガスを硫酸で乾燥させる工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、乾燥は、ガスを発煙硫酸と接触させることによって達成され得る。発煙硫酸は、硫酸中の三酸化硫黄の溶液である。発煙硫酸は水と反応し、それによって発煙硫酸と接触するガスから水を除去する。この反応のガス状生成物のこのような乾燥は、水の存在がニッケルカルボニルの形成を阻害するため、例えばガスがプロセスにリサイクルされている場合に必要であり得る。
【0092】
ニッケルカルボニルは、硫酸溶液を通してニッケルカルボニルガスをバブリングすることによって、又はガススクラバーを使用することによって、硫酸と接触され得る。
【0093】
Ni(CO)4とH2SO4との反応は、上記の還元工程及びカルボニル化工程とは異なる容器中で行われ得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、Ni(CO)4をH2SO4と反応させることは、還元された廃電池材料と一酸化炭素との反応中に適用されるのと同じ圧力下で行われる。このようにして、工程(c)と(d)との間のプロセス中の圧力の変化が回避され、その結果、方法はより簡単でより経済的である。
【0095】
Ni(CO)4をH2SO4と反応させることは、反応圧力におけるNi(CO)4の沸点よりも高い温度で行うことができる。例えば、大気圧では、Ni(CO)4の沸点は43℃であり、したがって、反応が大気圧で行われる場合、温度は43℃超に維持され得る。このようにして、液体ニッケルカルボニルの蓄積が防止される。ニッケルカルボニルの蓄積を防止することは、より効率的で安全なプロセスを提供する。ニッケルカルボニルがスクラバー内で凝縮すると、スクラバー効率が低下する。また、未反応の液体ニッケルカルボニルが蓄積すると、全てが一度に分解して大量のガスを放出し、圧力上昇による容器の破損又は爆発を引き起こす可能性があるというリスクもある。ニッケルカルボニルの沸点より高い温度で反応を行うことは、この危険性を減少させる。
【0096】
必要に応じて、H2SO4に加えてHNO3の存在下で、Ni(CO)4をH2SO4と反応させてNiSO4を形成する。分解媒体としてのHNO3及びH2SO4の混合物の使用は、H2SO4単独によるNi(CO)4の分解が特定のプロセスに対して十分に有効でない場合に実施され得る。HNO3及びH2SO4の混合物は、H2SO4単独よりも酸化され、HNO3及びH2SO4の加熱された混合物は、Ni(CO)4ガスとHNO3ガスとの間の均一な反応を可能にするHNO3蒸気を生成し、過剰のH2SO4中でNi(NO3)2及びその後のNiSO4を形成する。
【0097】
いくつかの実施形態では、方法は、Ni(CO)4とH2SO4との間の反応の副生成物として生成されるH2の少なくとも一部をリサイクルすることを更に含み、リサイクルされたH2はプロセスに戻される。例えば、生成されたH2は、工程(a)において廃電池材料を還元するために使用される還元ガス中にリサイクルされてもよい。このようにして、無駄な材料をほとんど又は全く伴わない効率的な方法が提供される。
【0098】
Ni(CO)4とH2SO4との間の反応の副生成物として生成されるH2は、プロセスに戻される前に乾燥されてもよい。いくつかの実施形態では、H2は、発煙硫酸と接触させることによって乾燥される。
【0099】
いくつかの実施形態では、方法は、Ni(CO)4とH2SO4との間の反応の副生成物として生成されるCOの少なくとも一部をリサイクルすることを更に含み、リサイクルされたCOは、還元された廃電池材料と反応するためにプロセスに戻される。例えば、発生したCOは、工程(b)において還元された廃電池材料と反応させるために使用されるカルボニル化ガス中にリサイクルされてもよい。このようにして、無駄な材料をほとんど又は全く伴わない効率的な方法が提供される。
【0100】
Ni(CO)4とH2SO4との間の反応の副生成物として生成されるCOは、プロセスに戻される前に乾燥されてもよい。いくつかの実施形態では、COは、発煙硫酸と接触させることによって乾燥される。
【0101】
いくつかの実施形態では、方法は、Ni(CO)4とH2SO4との間の反応の副生成物として生成されるH2とCOとの混合物の少なくとも一部をリサイクルすることを更に含み、リサイクルされたH2及びCOはプロセスに戻される。例えば、生成されたH2及びCOの混合物は、工程(a)において廃電池材料を還元するために使用される還元ガス及び/又は工程(b)において還元された廃電池材料と反応させるために使用されるカルボニル化ガス中にリサイクルされ得る。このようにして、無駄な材料をほとんど又は全く伴わない効率的な方法が提供される。
【0102】
Ni(CO)4とH2SO4との間の反応の副生成物として生成されるH2とCOとの混合物は、プロセスに戻される前に乾燥されてもよい。いくつかの実施形態では、H2及びCOの混合物は、発煙硫酸と接触させることによって乾燥される。
【0103】
いくつかの実施形態では、方法は、反応混合物からNiSO4生成物を単離することを含む。これは、結晶化等の標準的な方法によって達成することができる。あるいは、NiSO4溶液生成物を直接使用してもよく、又は使用前により濃縮された形態に変換してもよい。いくつかの実施形態では、NiSO4溶液生成物を酸中和に供して、任意の残留硫酸を除去する。
【0104】
プロセスは、NiSO4を他の有用な生成物に変換する更なる工程を含んでもよい。例えば、プロセスは、NiSO4をニッケル金属に変換するための電解採取工程を含んでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、方法は、NiSO4生成物を、電池材料等の電気エネルギー貯蔵装置において使用するための材料の製造における供給原料として使用することを更に含む。
【0106】
本明細書の別の態様は、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であり、
還元された廃電池材料を含む組成物を一酸化炭素と反応させてNi(CO)4を形成する工程であって、還元された電池材料がゼロ酸化状態のニッケルを含む、工程を含む。
【0107】
還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させる工程を含むこのような方法は、リサイクルされた電池材料、例えばリサイクルされたカソード材料からニッケルカルボニルを生成する手段を提供する。生成されたニッケルカルボニルは、例えばニッケル又は硫酸ニッケルの生成のための下流プロセスにおいて利用され得る有用な生成物である。この方法に供給される還元された廃電池材料は、廃電池材料内に存在する1つ又は複数の金属が、最初のより高い酸化状態からその後のより低い酸化状態への酸化状態の変化を受けるように、還元プロセスにかけられた(例えば、還元剤と反応させられた)電池材料(すなわち、電池の構成要素において以前に使用された、及び/又は電池の構成要素において使用される材料の製造中に生成された材料)である。いくつかの実施形態では、還元された廃電池材料は、還元された廃カソード材料であり、これは、電池のカソードにおいて以前に使用された材料、及び/又は電池のカソードにおいて使用される材料の製造中に生成された材料である。
【0108】
この態様の実施形態は、Ni(CO)4をスルファート供給源(例えば、H2SO4)と反応させてNiSO4を形成することを更に含む。上で詳細に説明したように、NiSO4は、更なる電池材料の調製において前駆体として直接使用することができるため、望ましい生成物である。
【0109】
本明細書はまた、廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法を提供し、
還元されたカルボニル化廃電池材料を含む組成物をスルファート供給源と反応させて、NiSO4を形成する工程であって、還元されたカルボニル化廃電池材料がNi(CO)4を含む、工程を含む。
【0110】
還元されたカルボニル化廃電池材料を硫酸等のスルファート供給源と反応させる工程を含むこのような方法は、リサイクルされた電池材料、例えばリサイクルされたカソード材料から硫酸ニッケルを生成する手段を提供する。生成された硫酸ニッケルは、下流のプロセスにおいて利用され得る有用な生成物であり、例えば、更なる電池材料の調製のための供給原料として直接使用され得る。この方法に供給される還元されたカルボニル化廃電池材料は、廃電池材料内に存在する1つ又は複数の金属が初期のより高い酸化状態からその後のより低い酸化状態への酸化状態の変化を受けて、還元された廃電池材料を生成するような還元プロセス(例えば、還元剤と反応される)、及び還元された廃電池材料内の1つ又は複数の金属が一酸化炭素と反応するその後のカルボニル化プロセスに供された電池材料(すなわち、電池の構成要素において以前に使用された、及び/又は電池の構成要素において使用される材料の製造中に生成された材料)である。いくつかの実施形態では、還元されたカルボニル化廃電池材料は、還元されたカルボニル化廃カソード材料であり、これは、電池のカソードにおいて以前に使用された材料、及び/又は電池のカソードにおいて使用される材料の製造中に生成された材料である。
【0111】
本明細書はまた、還元された廃電池材料を含む組成物をNi(CO)4に変換するためのカルボニル化試薬としての一酸化炭素の使用を提供する。
【0112】
本明細書の別の態様は、還元されたカルボニル化廃電池材料を含む組成物をNiSO4に変換するための試薬として硫酸等のスルファート供給源を使用することであり、還元されたカルボニル化廃電池材料はNi(CO)4を含む。
【0113】
最初に記載された態様に関して上述された選択肢及び選好の全ては、本明細書のこれらの他の態様に等しく適用される。
【実施例】
【0114】
実施例1
酸化物形態のニッケル、マンガン及びコバルトと、金属形態又は酸化物形態のいずれかの銅及び鉄との混合酸化物と、結合材料としての炭素とを含有する電池カソード材料を反応容器内で700℃に加熱する。容器が700℃に達した後、水素及び一酸化炭素のガス状混合物をカソード材料上に流す。
【0115】
ガス供給を停止し、反応容器に不活性窒素雰囲気を供給する。次いで、還元された材料を約50℃に冷却する。温度が50℃に達したら、窒素ガス供給を停止し、水素及び一酸化炭素のガス状混合物の供給を再開する。
【0116】
次いで、反応容器を出るガスを、一連のガススクラバー中で濃硫酸と反応させる。これは対向流的に行われる。
【0117】
図1は、Ni(CO)
4ガスを硫酸と反応させるための機構の一実施形態を示す。この機構は、対向流で作動する4つのガススクラバーを含む。CO及びNi(CO)
4を含有するガスは、「スクラバー1」に供給され、次いで「スクラバー2」に供給され、他も同様である。H
2SO
4溶液は、ガスに対向流で供給され、最初に「スクラバー4」、次に「スクラバー3」に供給され、他も同様である。硫酸濃度は、より多くの硫酸が硫酸ニッケルを生成するために消費されるので、1つのスクラバーから次のスクラバーへ移動するにつれて減少する。硫酸ニッケル生成物は、スクラバー1から取り出され、電池製造プロセスにおいてニッケル前駆体として使用するための正しい仕様である。しかしながら、硫酸ニッケル生成物が電池製造プロセスで使用される前に、1つ又は複数の濃縮又は酸中和工程が行われてもよい。
【0118】
硫酸を濃縮して、還元で生成した水を除去する。反応で生成したCO及びH2はリサイクルすることができる。反応が完了したら、硫酸ニッケルを反応混合物から単離する。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であって、
(a)ニッケル含有化合物を含む廃電池材料を準備する工程と、
(b)前記廃電池材料中の前記ニッケルの少なくとも一部をゼロ酸化状態に還元して、還元された廃電池材料を提供する工程と、
(c)前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)
4を形成する工程と、
(d)前記Ni(CO)
4をスルファート供給源と反応させて、NiSO
4を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ニッケル含有化合物が、リチウム、コバルト及びマンガンのうちの1つ又は複数を更に含み、任意選択で、鉄、アルミニウム、銅及び炭素のうちの1つ又は複数を更に含む混合酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニッケルを還元することが、前記廃電池材料を、H
2を含む還元ガスと接触させることを含み、前記還元ガスと接触させることが、少なくとも500℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
還元後及び前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させる前に、前記還元された廃電池材料を少なくとも500℃の温度から45~85℃の温度に冷却することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記還元ガスが、一酸化炭素を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、45~85℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、110kPa~200kPaの絶対圧力で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、140~200℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記還元された廃電池材料を一酸化炭素と反応させることが、6MPa~8MPaの圧力で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Ni(CO)
4がH
2SO
4と反応して、前記NiSO
4を形成するように、前記スルファート供給源がH
2SO
4である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記H
2SO
4が水溶液であり、前記溶液の総量に基づいて10~35%の濃度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Ni(CO)
4をH
2SO
4と反応させることが、前記還元された廃電池材料と一酸化炭素との反応中に適用される圧力と同じ圧力下で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記Ni(CO)
4をH
2SO
4と反応させることが、Ni(CO)
4がガス状である温度及び圧力の条件下で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
Ni(CO)
4とH
2SO
4との間の前記反応の副生成物として生成されるH
2の少なくとも一部をリサイクルすることを更に含み、前記リサイクルされたH
2がプロセスに戻される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
Ni(CO)
4とH
2SO
4との間の前記反応の副生成物として生成されるCOの少なくとも一部をリサイクルすることを更に含み、前記リサイクルされたCOがプロセスに戻されて、前記還元された廃電池材料と反応する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記NiSO
4を形成するために、前記Ni(CO)
4を前記H
2SO
4と反応させることが、前記H
2SO
4に加えてHNO
3の存在下で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
工程(b)の前又は後にギ酸浸出プロセスを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
廃電池材料からニッケルをリサイクルする方法であって、
還元された電池材料を含む組成物を一酸化炭素と反応させて、Ni(CO)
4を形成する工程であって、前記還元された電池材料がゼロ酸化状態のニッケルを含む、工程と、
前記Ni(CO)
4をスルファート供給源と反応させて、NiSO
4を形成する工程と、
を含む、廃電池材料から方法。
【国際調査報告】