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特表2023-539450信号の適応送信タイミング制御を行う超音波走査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】信号の適応送信タイミング制御を行う超音波走査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20230907BHJP
   G01N 29/44 20060101ALI20230907BHJP
   G01N 29/11 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N29/44
G01N29/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023510402
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2021057792
(87)【国際公開番号】W WO2022034565
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】2012729.6
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2103798.1
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521181596
【氏名又は名称】ドルフィテック、アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】DOLPHITECH AS
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】エスキル、スコグルンド
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047AB05
2G047BA03
2G047BC03
2G047BC07
2G047BC11
2G047BC18
2G047CA01
2G047DA02
2G047DA03
2G047DB02
2G047GB02
2G047GF22
2G047GG02
2G047GG20
2G047GG24
2G047GG28
2G047GG33
2G047GH06
(57)【要約】
対象物の表面下の構造的特徴を画像化する走査装置が提供され、本走査装置は、対象物に向かって超音波信号を送信して、対象物から反射される超音波信号を受信することにより、対象物の内部構造に関するデータが取得され得るように構成された振動子モジュールと、振動子モジュールに結合され、受信超音波信号を解析して、受信超音波信号内の特徴を識別するように構成された解析モジュールと、を備え、振動子モジュールは、超音波信号の後に生じる遅延時間tで更なる超音波信号を送信するように構成されており、遅延時間tは、識別された特徴に応じて決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面下の構造的特徴を画像化する走査装置であって、
対象物に向かって超音波信号を送信して、前記対象物から反射される超音波信号を受信することにより、前記対象物の内部構造に関するデータが取得され得るように構成された振動子モジュールと、
前記振動子モジュールに結合され、受信超音波信号を解析して、前記受信超音波信号内の特徴を識別するように構成された解析モジュールと、を備え、
前記振動子モジュールは、前記超音波信号の後に生じる遅延時間tで更なる超音波信号を送信するように構成されており、前記遅延時間tは、前記識別された特徴に応じて決定される、
走査装置。
【請求項2】
前記解析モジュールが、前記受信超音波信号のピーク振幅を識別するように構成されており、前記識別された特徴が前記ピーク振幅の変化量を備える、請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記受信超音波信号の前記ピークが、前記対象物内から受信した反射のピークである、請求項2に記載の走査装置。
【請求項4】
前記識別された特徴が、前記ピーク振幅の変化率を備える、請求項2又は3に記載の走査装置。
【請求項5】
前記識別された特徴が、当初に測定された前記ピーク振幅と比較した前記ピーク振幅の変化率を備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項6】
前記識別された特徴が、振幅閾値を超える前記ピーク振幅の変化量を備える、請求項2から5のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項7】
前記振幅閾値が、
走査対象物の材料、
走査対象物の構造、
関心特徴(feature of interest)の深度、
調査対象の欠陥、
走査対象物の厚さ、
前記振動子モジュールと走査対象物との間に使用される結合媒体、
前記振動子モジュールの特性、又は
選択閾値
のうちの1つ又は複数に基づいている、請求項6に記載の走査装置。
【請求項8】
前記識別された特徴が、前記対象物の腐食レベルを示す、請求項1から7のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項9】
前記識別された特徴が、前記腐食が前記対象物の外面上に生じているか、かつ/又は前記対象物の内部に生じているかを示す、請求項8に記載の走査装置。
【請求項10】
前記識別された特徴が、前記振動子モジュールの伝搬面と前記対象物との間の超音波経路長を示す、請求項1から9のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項11】
前記識別された特徴が、前記伝搬面と前記対象物との間に配置された結合パッド(a coupling pad)の厚さを示す、請求項1から10のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項12】
前記識別された特徴が、前記伝搬面と前記対象物との間の結合流体(coupling fluid)の深度を示す、請求項1から11のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項13】
前記識別された特徴が、前記受信超音波信号の雑音レベルを示す、請求項1から12のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項14】
前記振動子モジュールが、アレイ状に配置された複数の振動素子を備え、また前記遅延時間tが、各前記振動素子において同一である、請求項1から13のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項15】
前記振動子モジュールが、アレイ状に配置された複数の振動素子を備え、また前記遅延時間tが、前記振動素子の第1のサブセットに対する第1の遅延時間tと、前記振動素子の第2のサブセットに対する第2の遅延時間tとを備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項16】
前記第1の遅延時間tが、前記振動素子の前記第1のサブセットで受信された超音波信号に応じて決定され、また前記第2の遅延時間tが、前記振動素子の前記第2のサブセットで受信された超音波信号に応じて決定される、請求項15に記載の走査装置。
【請求項17】
前記解析モジュールが、前記振動素子ごとにそれぞれ、前記振動素子が受信した超音波信号を解析して、前記受信超音波信号内のそれぞれの特徴を識別するように構成されており、また
それぞれの遅延時間trespが、前記振動素子において前記識別されたそれぞれの特徴に応じて決定される、請求項16に記載の走査装置。
【請求項18】
前記アレイ内の各前記振動素子の前記それぞれの遅延時間trespが、前記アレイ内の位置と共に平滑に変化する関数に適合する、請求項17に記載の走査装置。
【請求項19】
前記走査装置が、前記受信超音波信号に応じて、対象物の表面下の構造的特徴を表す走査画像を生成するように構成された画像生成器と、前記画像生成器に結合され、前記走査画像を表示するように構成されたディスプレイと、前記表示される走査画像の一部をユーザが指定することができる指示信号を生成するように構成されたユーザ入力装置と、を備え、前記解析モジュールが、前記生成された指示信号に応答して前記特徴を識別するように構成されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項20】
対象物の表面下の構造的特徴を画像化する方法であって、
対象物に向かって超音波信号を送信して、前記対象物から反射される超音波信号を受信することにより、前記対象物の内部構造に関するデータが取得され得ることと、
受信超音波信号を解析して、前記受信超音波信号内の特徴を識別することと、
前記超音波信号の後に生じる遅延時間tで更なる超音波信号を送信することであって、前記遅延時間tは、前記識別された特徴に応じて決定される、更なる超音波信号を送信することと、を備える、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面下の構造的特徴を画像化する超音波走査装置に関する。より詳細には、本開示は、受信超音波信号内で識別された特徴に応じて、超音波信号の送信間の遅延時間を決定することができる走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査装置は、典型的には振動子モジュールを含む。振動子モジュールは、例えば対象物の表面下の構造的特徴を画像化するために、対象物を撮像するためのものである。振動子モジュールは、層間剥離、剥離、及び剥落などの表面下材料の欠陥を画像化するのにとりわけ有用であり得る。
【0003】
超音波を使用して、対象物の特定の構造的特徴を識別することができる。例えば、試料中の欠陥の寸法及び位置を検出することにより、非破壊試験に超音波を使用することができる。積層構造内の個々の層、衝撃損傷、ボアホールなどといった構造的特徴の様々な材料、試料深度及び種類を対象範囲に含む非破壊試験が有効となり得る、広範囲にわたる用途がある。超音波は、対象物を検出し、その距離を測定するために使用できる振動音圧波である。異なる音響インピーダンス特性を有する材料に衝突すると、送信された音波は反射すると共に屈折する。これらの反射及び屈折が検出かつ解析される場合、結果として得られるデータを使用して、音波が伝搬した環境を記述することができる。超音波走査の精度を高めるために、結果として得られるデータの品質を向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様によれば、対象物の表面下の構造的特徴を画像化する走査装置が提供され、本走査装置は、
対象物に向かって超音波信号を送信して、当該対象物から反射される超音波信号を受信することにより、当該対象物の内部構造に関するデータが取得され得るように構成された振動子モジュールと、
振動子モジュールに結合され、受信超音波信号を解析して、受信超音波信号内の特徴を識別するように構成された解析モジュールと、を備え、
振動子モジュールは、超音波信号の後に生じる遅延時間tで更なる超音波信号を送信するように構成されており、遅延時間tは、識別された特徴に応じて決定される。
【0005】
解析モジュールは、受信超音波信号のピーク振幅を識別するように構成されてもよく、識別された特徴はピーク振幅の変化量を備えてもよい。受信超音波信号のピークは、対象物内から受信した反射のピークであってもよい。識別された特徴は、ピーク振幅の変化率を備えてもよい。識別された特徴は、当初に測定されたピーク振幅と比較したピーク振幅の変化率を備えてもよい。識別された特徴は、振幅閾値を超えるピーク振幅の変化量を備えてもよい。振幅閾値は、走査対象物の材料、走査対象物の構造、識別対象の特徴の深度、調査対象の欠陥、走査対象物の厚さ、振動子モジュールと走査対象物との間に使用される結合媒体、振動子モジュールの特性、又は選択閾値のうちの1つ又は複数に基づいてもよい。
【0006】
識別された特徴は、対象物の腐食レベルを示してもよい。識別された特徴は、腐食が対象物の外面上に生じているか、かつ/又は対象物の内部に生じているかを示してもよい。
【0007】
識別された特徴は、振動子モジュールの伝搬面と対象物との間の超音波経路長を示してもよい。識別された特徴は、伝搬面と対象物との間に配置された結合パッド(a coupling pad)の厚さを示してもよい。識別された特徴は、伝搬面と対象物との間における結合流体(coupling fluid)の深度を示してもよい。
【0008】
識別された特徴は、受信超音波信号の雑音レベルを示してもよい。
【0009】
振動子モジュールは、アレイ状に配置された複数の振動素子を備えてもよく、また遅延時間tは、各振動素子において同一であってもよい。
【0010】
振動子モジュールは、アレイ状に配置された複数の振動素子を備えてもよく、また遅延時間tは、振動素子の第1のサブセットに対する第1の遅延時間tと、振動素子の第2のサブセットに対する第2の遅延時間tとを備えてもよい。第1の遅延時間tは、振動素子の第1のサブセットで受信された超音波信号に応じて決定されてもよく、また第2の遅延時間tは、振動素子の第2のサブセットで受信された超音波信号に応じて決定されてもよい。解析モジュールは、振動素子ごとにそれぞれ、当該振動素子が受信した超音波信号を解析して、受信超音波信号内のそれぞれの特徴を識別するように構成されてもよく、またそれぞれの遅延時間trespは、当該振動素子において識別されたそれぞれの特徴に応じて決定されてもよい。アレイ内の各振動素子のそれぞれの遅延時間trespは、アレイ内の位置と共に平滑に変化する関数に適合してもよい。
【0011】
本走査装置は、受信超音波信号に応じて、対象物の表面下の構造的特徴を表す走査画像を生成するように構成された画像生成器と、画像生成器に結合され、走査画像を表示するように構成されたディスプレイと、表示される走査画像の一部をユーザが指定することができる指示信号を生成するように構成されたユーザ入力装置と、を備え、解析モジュールは、生成された指示信号に応答して特徴を識別するように構成されてもよい。
【0012】
本発明の別の態様によれば、対象物の表面下の構造的特徴を画像化する方法が提供され、本方法は、
対象物に向かって超音波信号を送信して、当該対象物から反射される超音波信号を受信することにより、当該対象物の内部構造に関するデータが取得され得ることと、
受信超音波信号を解析して、受信超音波信号内の特徴を識別することと、
超音波信号の後に生じる遅延時間tで更なる超音波信号を送信することであって、遅延時間tは、識別された特徴に応じて決定される、更なる超音波信号を送信することと、を備える。
【0013】
上記の任意の態様のうちの任意の1つ又は複数の特徴を、他の任意の態様と組み合わせてもよい。単に簡潔さを期すために、これらについて本明細書では詳細に記載していない。
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明を例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】対象物を画像化する装置を示す図である。
図2】走査装置及び対象物の一実施例を示す図である。
図3】走査装置の機能ブロックの一実施例を示す図である。
図4】振動子モジュールを示す概略図である。
図5】パイプに結合された走査装置の一実施例を示す図である。
図6図5に示す装置を使用して得られるB走査を概略的に示す図である。
図7】対象物に結合された振動子モジュールを示す図である。
図8図7に示す装置を使用して得られるB走査を概略的に示す図である。
図9】走査装置を示すブロック図である。
図10】受信超音波反射の例を概略的に示す図である。
図11】超音波反射をゲーティングする例示的な方法を示すフローチャートである。
図12】超音波反射をゲーティングする別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図13】超音波信号の特徴を識別する例示的な方法を示すフローチャートである。
図14】超音波反射をゲーティングする別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図15】遅延時間を決定する例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
走査装置は、画像化対象物に向かって音波パルスを送信し、次いで対象物からの反射音波パルスを受信することにより、対象物を画像化することができる。互いの送信の間隔が近過ぎると、音波パルスが互いに干渉し合う可能性がある。例えば、第2の音波パルスが送信された後でも、第1の音波パルスからのエコーが対象物内に残留する可能性がある。この残留エコーにより、反射音波パルスを使用して生成された画像にアーチファクトが発生する可能性がある。本技術は、第1の音波パルスの後に第2の音波パルスを遅延させる遅延時間t(又はより概略的には、走査中の後続パルス間の遅延時間である)を自動的に決定することにより、この問題に対処している。この遅延時間は、受信超音波信号内で識別された特徴に基づいて決定される。したがって、本走査装置は、走査の結果に反応することができるので、例えばフレームレートと信号対雑音比との間のバランスを最適化するために、必要に応じて遅延時間が動的に修正され得る。本アプローチに従った走査装置について、以下でより詳述する。
【0017】
走査装置は、典型的には、対象物の表面下の異なる深度に位置する構造的特徴に関する情報を収集する。当該情報を取得する方法の1つは、対象物に音波パルスを送信して、任意の反射を検出することである。人間のオペレータが対象物の表面下の構造的欠陥の寸法、形状、及び深度を認識かつ評価できるように、収集された情報を描写する画像を生成することが有用である。こうした画像生成は、表面下の構造的欠陥が危険なものになり得る多くの産業用途にとって不可欠な作業である。航空機整備がその一例である。
【0018】
オペレータは多くの場合、自身が視認したい構造が対象物の表面下にあるため、装置によって生成される画像に完全に依存することになる。このため、オペレータが対象物の構造を効果的に評価できるように、当該情報が画像化されることが重要である。
【0019】
超音波振動子は圧電材料を活用するものであり、電気信号によって駆動されて圧電材料を振動させ、超音波信号を生成する。その一方で、音声信号を受信すると、超音波振動子は圧電材料を振動させ、検出可能な電気信号を生成する。
【0020】
振動子が受信した超音波信号は、それらの振幅及び飛行時間に基づいて解析され得る。当該データを使用して、典型的には走査対象物を通る断面を示すB走査画像、及び/又は、典型的には対象物の平面図を示すC走査画像を生成することができる。対象物の表面が平坦である、例えば平坦な金属板などである場合、B走査画像(又は単に「B走査」とする)とC走査画像(又は単に「C走査」とする)とが容易に解析され得る。B走査における透過エコーは、B走査における平坦な、典型的には水平な(例えば、平面振動子が対象物の平面に垂直である場合)線状になる。関心特徴(feature of interest)に関する深度情報は、比較的小さな処理を追加で行うことでB走査から抽出され得、かつ/又はB走査を視認する際に、人間のオペレータによって容易に理解され得る。同様に、C走査は、対象物の深度に直接対応し得る、振動子からの距離に基づくデータを含む。ここでも、関心特徴に関する情報は、比較的小さな処理を追加で行うことでC走査から抽出され得、かつ/又はC走査を視認する際に、人間のオペレータによって容易に理解され得る。
【0021】
超音波信号のゲーティング
対象物の表面が平面でない場合、かつ/又は振動子モジュールと対象物の表面との間の距離が振動子の幅にわたって一定でない場合がある。このような場合、B走査及びC走査で示されるデータの解析は、より困難になる可能性がある。データの解析から正確な結果が取得され得る前に、データに対して追加の処理を実行する必要がある場合がある。走査データが走査自体の実行の後に解析されている場合、対象物を再走査すること、又は対象物を走査するための走査パラメータを調整することができない場合がある。
【0022】
走査装置は、データをより効果的に解析できるように、超音波信号を適応的にゲーティングすることができる。この適応型ゲーティングは、対象物の走査と同時に実行され得、対象物の走査中にゲーティングを動的に実行できるようになる。
【0023】
例えば振動子モジュールと解析中の対象物の表面との間の距離に基づいて、受信超音波信号を動的にゲーティングすることは、概念上、結果として得られた走査データを「平坦化」するものと考えられ得、その結果、走査データに対する解析がより容易に実行され得る。例えば、当該特徴の位置は、そのような「平坦化された」走査において、このように「平坦化」されていない走査と比較して、より容易に対象物の表面下の深度に対応する場合がある。
【0024】
好適には、動的ゲーティングが、少なくとも一方向にある湾曲を考慮に入れることができる。したがって、本技術は、円筒パイプなどの一方向に表面湾曲を有する対象物や、湾曲した車体パネルなどの2つ以上の方向に表面湾曲を有する対象物を解析するのに有用であり得る。
【0025】
超音波走査装置などの走査装置は、対象物を画像化するのに有用である。本走査装置は、超音波振動子を好適に含む振動子モジュールと、振動子モジュールに結合された解析モジュールと、ゲーティングモジュールとを備える。振動子モジュールは、対象物に向かって超音波信号を送信し、次いで当該対象物から反射される超音波信号を受信することができる。解析モジュールは、受信超音波信号を解析して、受信超音波信号内の特徴を識別することができる。ゲーティングモジュールは、受信超音波信号を識別された特徴に応じてゲーティングすることができる。
【0026】
本アプローチにより、それらの信号内の特徴に基づいて、かつ/又は従前に受信した信号内の特徴に基づいて、超音波信号のゲーティングを行うことができる。すなわち、振動子モジュールは、超音波信号の第1のセットを送信し、次いで対応する反射超音波信号の第1のセットを受信することができる。解析モジュールは、反射超音波信号の第1のセットにおける1つ又は複数の特徴の有無及び/又はその特性を判別することができる。次いで、ゲーティングモジュールは、反射超音波信号の第1のセットの解析に基づいて、超音波信号に適用するゲーティングを決定することができる。
【0027】
決定されたゲーティングは、反射超音波信号の第1のセットに適用され得る。例えば、反射信号は、ローカルデータストア及び/又はリモートデータストアなどの記憶媒体、例えばRAMなどのメモリに記憶され得る。反射信号は、解析を実行するために解析モジュールによってアクセスされ得、かつ/又は解析モジュールが利用できる状態になり得る。反射信号は、ゲーティングモジュールが解析に基づいてそれらの反射信号をゲーティングすることができるように、ゲーティングモジュールによってアクセスされ得、かつ/又はゲーティングモジュールが利用できる状態になり得る。
【0028】
決定されたゲーティング、すなわち反射超音波信号の第1のセットの解析に基づくゲーティングは、付加的に又は代替的に、振動子モジュールによる超音波信号の第2のセットの送信に応答して受信することができる、反射超音波信号の第2のセットに適用され得る。
【0029】
そのような走査装置は、超音波反射を適応的かつ/又は動的にゲーティングできるように、関連する超音波反射の特徴を判別することができる。これにより、透過エコー、後壁エコー、及び解析対象物の内部構造的特徴によって発生する反射などの特徴に関連する反射の特性に従って、反射のゲーティングを行うことができる。その結果、本装置は例えば、対象物の表面湾曲、振動子-対象物間距離、対象物厚さ、対象物材料、及び/又は内部特徴の深度などに自動的に配慮できる超音波解析から、より正確なデータを生成することができる。
【0030】
これにより、精度及び/又は使用性が向上した、より柔軟な走査装置を提供することができる。
【0031】
付加的に又は代替的に、走査装置は、振動素子アレイを形成する複数の振動素子を好適に含む。各素子は超音波信号を送信し、次いでそれらの送信超音波信号の反射を受信することができる。本走査装置は、複数の振動子から受信超音波信号を取得し、次いで受信信号を処理して、解析対象物の内部を画像化する信号処理部を含む。当該処理は、信号が受信される振動素子アレイ内の位置に基づいて、信号をゲーティングすることを好適に備える。
【0032】
そのような走査装置により、振動素子アレイ内の個々の振動素子間で異なり得るゲーティング関数を適用することができる。本アプローチは、本走査装置及び/又は解析対象物の特性がそれぞれ、本走査装置及び/又は当該対象物にわたって異なる場合に有用であり得る。例えば、当該対象物の表面は平面でなくてもよい。アレイ中の位置によってそれぞれ異なり得るゲーティング関数を使用することにより、対象物にわたって異なる位置から発せられる信号を選択的にゲーティングすることができる。そのようなアプローチにより、当該対象物が既知又は未知の表面プロファイル(surface profiles)を有するかどうかにかかわらず、異なる対象物を走査する際の超音波信号解析を向上させたり、本走査装置の柔軟性を増大させたりすることができる。
【0033】
適応型ゲーティングに関する技術に従った走査装置の更なる詳細が、図面を参照しながら以下に述べられる。本明細書に記載の対象物の表面下を画像化する走査装置などのハンドヘルド装置の例を、図1に示す。装置101は、一体型ディスプレイを有し得るが、本実施例では、タブレットコンピュータ102に画像を出力している。タブレットとの接続は、図示のように有線であってもよいし、又は無線であってもよい。本装置は、超音波信号を送受信するマトリックスアレイ(a matrix array)103を有する。振動素子アレイを形成するように交差するパターンで配置された複数の電極を備える超音波振動子によって、アレイが好適に実装されている。これらの振動素子は、送信と受信との間で切り替えられてもよい。図示のハンドヘルド装置は、超音波信号を対象物に伝達するための乾式結合層104などの結合層を備える。結合層はまた、振動子が送信側から受信側に切り替わる時間が発生するように、超音波信号を遅延させる。この結合層がすべての実施例で設けられる必要はない。本走査装置は、振動子の前面に取り付けられた結合シュー(a coupling shoe)を備え得る。
【0034】
マトリックスアレイ103は二次元であるため、画像を取得するために対象物を横切って移動させる必要はない。典型的なマトリックスアレイは約30mm×30mmであり得るが、マトリックスアレイの寸法及び形状は、用途に合わせて変更され得る。本装置は、オペレータによって対象物に対し直接保持されてもよい。オペレータは通常、対象物が表面下の欠陥又は材料欠陥を有し得る場所について、すでに十分な見当を付けており、例えばある部品が衝撃を受けている可能性があるか、又は応力集中を発生させ得る1つ又は複数のドリル孔若しくはリベット孔を備えている可能性がある。本装置は反射パルスをリアルタイムで好適に処理するので、オペレータは本装置を任意の対象領域に簡単に配置することができる。
【0035】
ハンドヘルド装置は、パルス波形及び対応するフィルタを変更する際にオペレータが使用できる、ダイヤル105又は他のユーザ入力装置をさらに備える。他の実施例では、ダイヤルを設ける必要はない。パルス波形及び/又はフィルタの選択は、ソフトウェアで行われ得る。最も適切なパルス波形は、画像化中の構造的特徴の種類や、当該特徴が位置する対象物内の場所に依存することがある。オペレータは、ディスプレイを介して時間ゲーティングを手動で調整することにより、異なる深度で対象物を視認することができる。本装置にタブレット102などのハンドヘルドディスプレイ又は一体型ディスプレイに向けて出力させることで、オペレータがディスプレイ上で視認したいものに応じて対象物上で振動子を容易に移動させたり、本装置の設定を変更したりすることができるので、結果を瞬時に得ることができて有利である。他の構成では、オペレータは、非ハンドヘルドディスプレイ(PCなど)と対象物との間を歩いて、対象物上の新たな設定又は位置が検査されるたびに再走査し続ける必要があり得る。
【0036】
対象物の表面下の構造的特徴を画像化する走査装置を、図2に示す。全体を201で示されている本装置は、トランスミッタ202と、レシーバ203と、信号処理部204と、画像生成器205とを備える。いくつかの実施例では、トランスミッタ及びレシーバは、超音波振動子によって実装されてもよい。トランスミッタ及びレシーバは、図示を容易にすることのみを目的として、図2において互いに隣り合って示されている。トランスミッタ202は、画像化対象物206に特定の波形を有する音波パルスを送信するように好適に構成されている。レシーバ203は、対象物から送信された音波パルスの反射を受信するように好適に構成されている。対象物の表面下の特徴は、207で示されている。
【0037】
本装置の一実施形態に備えられる機能ブロックの一実施例を、図3に示す。本実施例では、トランスミッタとレシーバとは、振動素子312のマトリックスアレイを備える超音波振動子301によって実装されている。振動素子は、超音波を送信かつ/又は受信している。マトリックスアレイは、交差するパターンで配置されたいくつかの細長い平行電極を備えてもよく、すなわちこれらの交差部分が、振動素子を形成している。これらトランスミッタ電極は、特定の波形を有するパルスパターンを特定の電極に供給するトランスミッタモジュール302に接続されている。トランスミッタ制御部304は、駆動対象のトランスミッタ電極を選択する。所与の瞬間に駆動されるトランスミッタ電極の数は変化してもよい。トランスミッタ電極は個別に、又は集合的に次々に駆動されてもよい。好適には、トランスミッタ制御部が、トランスミッタ電極に一連の音波パルスを対象物内に送信させて、生成される画像を連続的に更新できるようにしている。トランスミッタ電極はまた、特定の周波数を使用してこれらのパルスを送信するように制御されてもよい。周波数は100kHz~30MHzであってもよく、好適には0.5MHz~15MHzであり、最も好適には0.5MHz~10MHzである。
【0038】
レシーバ電極は、対象物から放射される音波を検知する。これらの音波は、対象物に伝達された音波パルスが反射したものである。レシーバモジュールは、これらの信号を受信して増幅する。これらの信号は、アナログ-デジタル変換器によってサンプリングされる。レシーバ制御部は、トランスミッタ電極が送信した後にレシーバ電極が当該送信を受信するように、レシーバ電極を好適に制御する。本装置は、交互に送信と受信とを行ってもよい。一実施形態では、これらの電極は送信及び受信の両方を行うことができてもよく、その場合、レシーバ制御部及びトランスミッタ制御部は、電極をそれらの送信状態と受信状態との間で切り替えることになる。送信される音波パルスと、本装置で受信されるそれらの反射との間に若干の遅延が好適に生じる。本装置は、電極を送信側から受信側に切り替えるのに必要な遅延を付与するための結合層(乾式結合及び/又は結合シューによって提供されるものなど)を含んでもよい。相対深度を計算する場合、任意の遅延が補償されてもよい。結合層は、送信音波の低減衰を好適にもたらしている。
【0039】
各振動素子は、画像内の画素に対応してもよい。すなわち、各画素は、振動素子のうちの1つが受信した信号を表してもよい。この対応は、1対1対応である必要はない。単一の振動素子は、2つ以上の画素に対応してもよく、その逆も可能である。各画像は、1つのパルスから受信した信号を表してもよい。「1つの」パルスが通常、多くの異なる振動素子によって送信されることを理解されたい。「1つの」パルスのこれらの型はまた、異なる時間に送信されてもよく、例えばマトリックスアレイは、アレイの各行を順に駆動することによって、振動素子の「波」を引き起こすように構成され得る。しかしながら、試料の単一画像を生成するために使用されるのはそのパルスの反射であるため、この送信パルスの集合は、依然として「1つの」パルスを表すと見なされ得る。試料の画像のビデオストリーム(video stream)を生成するために使用される一連のパルス内のすべてのパルスについても、同じことが言える。
【0040】
パルス選択モジュール303は、送信対象の特定のパルス波形を選択する。パルス選択モジュールは、振動子によって超音波パルスに変換される電子パルスパターンをトランスミッタモジュールに供給するパルス発生器を備えてもよい。パルス選択モジュールは、メモリ314に記憶された複数の所定のパルス波形を利用することができる。パルス選択モジュールは、自動的に、又はユーザ入力に基づいて送信されるパルス波形を選択してもよい。パルス波形は、画像化中の構造的特徴の種類、その深度、材料の種類などに応じて選択されてもよい。パルス波形は通常、信号処理部305によって収集され得る、かつ/又は画像強調モジュール310によって改善され得る情報を最適化して、対象物の高分解能画像をオペレータに提供するために選択されるべきである。
【0041】
図4は、振動子モジュールを概略的に示す図である。振動子モジュール(TRM)は、全体を400で示されている。ケーブル401などの電気的接続により、TRMをリモートシステム(a remote system)に結合している。リモートシステムは駆動信号を付与することができ、また検出信号を受信することができる。振動子モジュールが、試験対象物402に接着配置されているものとして示されている。TRMは振動子404を備える。振動子404はトランスミッタを備える。当該振動子はレシーバを備える。トランスミッタとレシーバとは別々に設けられてもよい。振動子構造及びその電気的接続の詳細は、明確さを期すためにこの図では省略されている。当該振動子は、画像化対象物に向かって超音波信号を送信するように構成されている。当該振動子は、406で示される方向に超音波信号を送信するように好適に構成されている。
【0042】
図5は、パイプの外面を走査するために、結合シュー504を介してパイプ506に結合された振動子モジュール502を備える、走査装置を示す。図6は、図5に示す装置を使用して得られるB走査600を示す図である。図示のB走査では、曲線状の実線はパイプの前壁及び後壁を表す。上側実線602は、透過エコー、すなわち、結合シューとパイプ表面との間の界面から受信される反射を表す。下側実線604は、後壁エコー、すなわち、パイプ内面と中空パイプ内部の空気との間の界面から受信される反射を表す。
【0043】
走査装置に適用される従来のゲーティングを、図6の606及び608に示す。平坦型ゲーティングは、中央位置における振動子モジュール502とパイプ506との間の離隔距離に基づいている。平坦型ゲーティングは、透過エコーの直後(ゲーティングされたデータに透過エコーを含ませないように)、及び後壁エコーの直後(ゲーティングされたデータに後壁に関するデータを含ませるように)に適用される。走査装置は、極めて限られた横方向範囲の単一の振動素子を備え得る。パイプ全体を画像化するために、そのような振動子をパイプの表面を横切って移動させる必要がある。この場合、各位置で見られる曲率が最小になっているため、平坦型ゲーティングが適している。なぜなら、走査中のパイプ位置でパイプの表面に対して垂直になるように、振動子が移動するにつれて連続的に角度付けされるためである。
【0044】
本発明者らは、この従来の平坦型ゲーティングが、そのような単一の振動素子を使用する走査装置において有用であるが、単一の振動素子がより大きな物理的範囲を有する場合、又はアレイ内の各素子が対象物の表面に対して別々に配置され得る(すなわち、振動子アレイ又は対象物の表面のうちの一方若しくは両方が、少なくとも一方向において非平面状である場合)場合において、アレイ内で複数の振動素子が共に使用されるときは、平坦型ゲーティングの精度が低下することを認識している。
【0045】
この場合、図6から理解されるように、平坦型ゲーティングが不正確になっている。図6の左側を見ると、平坦型ゲーティングでは透過エコーを除外することができないばかりか、後壁エコーや、パイプの内部に関する他の潜在的に望ましいデータも除外してしまっていることが分かる。このため、平坦型ゲーティングでは、画像の中央付近の狭い領域を除いて、超音波信号を正確にゲーティングしている可能性が低い。平坦型ゲーティングが依然として有用となる画像の幅は、振動子モジュール及び対象物の両方の表面プロファイルに大きく依存する。
【0046】
本技術では、ゲーティングは、受信超音波信号内で識別された特徴に基づいて適合されている。例えば、再度図6を参照すると、透過エコーが識別され得、当該透過エコー下のあらかじめ設定された深度にゲーティングが適用されている。こうした適用は、B走査600における透過エコー曲線に追従する破線610によって示されている。後壁エコーも同様に識別され得、当該後壁エコー下のあらかじめ設定された深度にゲーティングが適用されている。こうした適用は、B走査600における後壁エコー曲線に追従する更なる破線612によって示されている。好適には、それぞれの超音波特徴下に適用される適応型ゲーティングにおいて、あらかじめ設定された深度が同一である。場合によっては、適応型ゲーティングは、透過エコー下(又はエコー後)の第1の深度と、後壁エコー下(又はエコー後)の第2の深度とに適用され得る。これら第1及び第2の深度(又は時間)が同一である必要はない。これらの深度は、ユーザの選択に従って、又は本走査装置によって自動的に選択され得る。本走査装置は、例えば、特徴の振幅、特徴の幅、特徴の形状、データ内の複数の特徴、画像化中の材料又は材料の種類、画像化中の欠陥又は欠陥の種類などのうちの1つ又は複数に基づいて、深度を決定するように構成され得る。本走査装置は、例えば振動子の分解能、振動子の周波数、振動子の周波数範囲、振動子の寸法などのうちの1つ又は複数などの本走査装置の特性に基づいて、深度を決定するように構成され得る。
【0047】
受信超音波信号内の1つ又は複数の特徴を識別し、それらの1つ又は複数の特徴に基づいて適応型ゲーティングを行うということは、解析対象物の固有の特性が解析前に把握されている必要がないことを意味する。この点に関する実施例を図7及び図8に示す。図7は、不揃いな非平面表面を有する対象物706に結合部704を介して結合された、振動子モジュール702を示す。当該結合部は、場合により乾式結合部などである。当該結合部は通常、遅延ラインを備え得るか、又は形成することができる。当該結合部は、当該結合部によって振動子モジュールと不揃いな非平面表面とを結合できるように、軟質かつ/又は可撓性の結合材料、例えばエラストマー材料を好適に備える。
【0048】
図8は、図7に示す装置を使用して得られるB走査800を概略的に示す図である。図示のB走査では、曲線状の実線は対象物の前壁及び後壁を表す。上側実線802は、透過エコー、すなわち、結合部と対象物の上面との間の界面から(図7の配向で)受信される反射を表す。下側実線804は、後壁エコー、すなわち、対象物の下面と対象物の背後にある空気との間の界面から(図7の配向で)受信される反射を表す。
【0049】
本走査装置は、受信超音波信号において、透過エコー及び後壁エコーを識別するように構成されている。本実施例では、適応型ゲーティングは、透過エコー802下及び後壁エコー804下の両方の(又はエコー後の)あらかじめ設定された深度で適用されている。結果として得られる適応型ゲーティングは、それぞれ806及び808で示されている。図から分かるように、適応型ゲーティングは対象物の湾曲に追従している。対象物の前面から受信した反射に適用されるゲーティングは、対象物の背面から(かつ/又は対象物の任意の内部特徴から)受信した反射に適用されるゲーティングと同一であってもよいし、又は異なっていてもよい。透過エコーに適用されるゲーティングは、後壁エコーに適用されるゲーティングと同一であってもよいし、又は異なっていてもよい。対象物の厚さが、必ずしも一定であるものとして扱われるわけではないが、一定である可能性もある。厚さは、対象物の幅にわたって変化するものとして扱われてもよい。厚さは、線形関数又は非線形関数などの既知の、又は定められた関数に従って変動してもよい。例えば、対象物がウェッジ(Wedge)である場合、厚さが一方向に漸増してもよい。また例えば、対象物の前面又は背面のうちの一方が波形である場合、厚さが交互に増減してもよい。本適応型ゲーティング技術を使用して、他の厚さの変動にも対応することができる。
【0050】
受信超音波信号内の1つ又は複数の特徴を本走査装置によって識別することができるため、本装置は、1つ又は複数の識別特徴に基づいて適応型ゲーティングを行うことができる。したがって、本アプローチにより、対象物から反射される超音波信号に適切なゲーティングを適用することができる。対象物の前面プロファイルが事前に把握されている必要はない。対象物の後面プロファイルが事前に把握されている必要はない。本技術は、対象物の厚さが未知の場合にも有効である。本技術は、対象物の厚さが一定である場合、又は対象物にわたって厚さが変動し得る場合に有用である。
【0051】
走査装置900が、対象物の表面下の構造的特徴を画像化するための装置であると好適である。本走査装置は、対象物の内部特徴、又は対象物の内部を画像化することができる。本走査装置は、振動子モジュール902と、解析モジュール904と、ゲーティングモジュール906とを備える。
【0052】
振動子モジュール902は、対象物に向かって超音波信号を送信し、次いで当該対象物から反射される超音波信号を受信するためのモジュールである。これにより、対象物の内部構造に関するデータを取得することができる。振動子モジュールは、超音波信号を送信し、かつ反射を受信するように好適に構成されている。振動子モジュール902は、1つ又は複数の振動子又は振動素子908を好適に備える。
【0053】
解析モジュール904は、振動子モジュール902に結合されている。解析モジュールは、受信超音波信号を解析することができる。解析モジュールは、受信超音波信号を解析するように好適に構成されている。これにより、解析モジュールは、受信超音波信号内の1つ又は複数の特徴、例えば透過エコー、後壁エコー、及び対象物の内部(すなわち、透過エコーと後壁エコーとの間である)にある欠陥などの1つ又は複数の特徴を識別することができる。
【0054】
ゲーティングモジュール906は、解析モジュールによって識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、受信超音波信号をゲーティングすることができる。ゲーティングモジュールは、例えば、受信データ内の1つ又は複数の識別特徴及び/又は1つ又は複数の識別特徴の深度/時間に基づいて、受信信号の一部を選択的に保持することによって、1つ又は複数の識別特徴に応じて受信超音波信号をゲーティングするように構成されている。この点については、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。
【0055】
解析モジュール904は、受信超音波信号内の透過エコーを識別するように構成されており、またゲーティングモジュール906は、透過エコーの後に受信した信号を選択的に保持するために、受信超音波信号をゲーティングするように構成されている。ゲーティングモジュール906は、透過エコー後のそれぞれの時間に受信した複数の信号のサブセットを保持するために、受信超音波信号をゲーティングするように構成され得る。例えば、一実施態様では、ゲーティングモジュールは、透過エコーの後に受信したすべてのデータ、又は透過エコーの後から後壁エコーの直後までに受信したすべてのデータを保持することができる。別の実施態様では、ゲーティングモジュールは、透過エコーの後に受信したデータの選択部分(selective portions)を保持することができる。当該部分は、受信超音波信号内で識別された特徴に基づいて選択されてもよい。例えば、関心特徴の周囲又は中心にある部分が保持され得る。保持部分(the retained portion)の幅はあらかじめ設定され得、あるいは解析対象物及び/若しくは本走査装置の特性並びに/又は受信信号の特性(例えば、ピーク振幅、ピーク幅、信号対雑音比、ピーク分離、特徴の種類など)に基づいて選択され得る。本アプローチにより、識別対象の特徴に関連するデータを保持できる一方で、関心特徴に関連しないデータを破棄することもできる。したがって、そのようなアプローチは、解析対象の関連データを保持しながら、データ保管のコスト、データ転送コスト、及びデータ処理コストを削減するのに寄与し得る。
【0056】
複数のサブセット(subsets)が受信されるそれぞれの時間は、不連続であり得る。すなわち、保持されたデータは、解析対象物の内部で互いから離隔した1つ又は複数の特徴に関連してもよい。例えば、適応型ゲーティングにより、透過エコーの直後に対象物から受信したデータを、後壁エコーの直前に対象物から受信するデータと共に保持してもよい。さらに適応型ゲーティングにより、又は代替的に、1つ又は複数の内部材料境界及び/又は層間剥離などの内部欠陥を示すデータなど、対象物内の異なる特徴に関するデータを保持してもよい。
【0057】
ゲーティングモジュール906は、ゲーティング関数群から選択されたゲーティング関数に従って、受信超音波信号をゲーティングするように好適に構成されている。これらのゲーティング関数群は、ゲーティングモジュール906内にあるか、又はゲーティングモジュール906にアクセスできるメモリ(例えば、RAMなど)などのデータストア910に記憶されてもよい。ゲーティングモジュールとは別個にデータストアが設けられる場合、ゲーティングモジュール906はデータストア910に結合される。ゲーティングモジュール906は、以下のうちの1つ又は複数に基づいてゲーティング関数を選択するように構成されており、これらはすなわち、
走査対象物の材料、
対象物の表面プロファイル及び/又は厚さなどの走査対象物の構造、
関心特徴の深度、
亀裂、応力破壊、層間剥離など、調査対象の欠陥又は欠陥の種類、
振動子モジュールと走査対象物との間に使用される結合媒体、又は
ゲーティングモジュールによって受信されるゲーティング選択信号(どのゲーティング選択信号が上記の選択肢の表示を備え得るか)である。
【0058】
解析モジュール904は、受信超音波信号内の後壁エコーを識別するように好適に構成されており、またゲーティングモジュール906は、後壁エコーのタイミングに基づいて信号を選択的に保持するために、受信超音波信号をゲーティングするように好適に構成されている。例えば、適応型ゲーティングを、後壁エコーの前の時間範囲で受信した信号、又は後壁エコーの受信タイミングの前後の両方に及ぶ時間範囲で受信した信号を保持するようなゲーティングとすることができる。この時間範囲はあらかじめ設定されてもよく、あるいは解析対象物及び/若しくは本走査装置の特性並びに/又は受信信号の特性(例えば、ピーク振幅、ピーク幅、信号対雑音比、ピーク分離、特徴の種類など)に基づいて選択され得る。
【0059】
解析モジュール904は、受信超音波信号内の材料不連続特徴を識別するように好適に構成されており、またゲーティングモジュール906は、識別された材料不連続特徴に応じて、受信超音波信号をゲーティングするように好適に構成されている。材料不連続特徴は、透過エコーと後壁エコーとの間に受信した超音波信号において識別され得る。例えば、適応型ゲーティングは、当該特徴が識別されるタイミングの前、当該特徴が識別されるタイミングの後、又は当該特徴が識別されるタイミングの前及び後の両方に及ぶ時間範囲内で受信した信号を保持するように適用され得る。この時間範囲は、識別された特徴、又は識別された特徴のピークを中心としてもよいが、必ずしもそうする必要はない。特徴が識別される前後の時間範囲の限度はあらかじめ設定され得、あるいは解析対象物及び/若しくは本走査装置の特性並びに/又は受信信号の特性(例えば、ピーク振幅、ピーク幅、信号対雑音比、ピーク分離、特徴の種類など)に基づいて選択され得る。
【0060】
好適には、複数の信号のサブセットのそれぞれの時間が、透過エコー、後壁エコー、又は材料不連続特徴が発生するタイミングのうちの1つ又は複数から決定される。
【0061】
ここで、受信超音波反射を概略的に示す図10を参照する。透過エコーは1002で示されており、ピーク振幅P1を有する。後壁エコーは1004で示されており、ピーク振幅P2を有する。内部特徴エコーは、1006及び1008で示されており、それぞれピーク振幅P3及びP4を有する。解析モジュール904は、透過エコーの振幅閾値P_th1を超える振幅を有する受信超音波信号内の第1のピークを識別することにより、透過エコー1002を識別するように構成されている。P_th1よりも大きい振幅を有するピークを識別することにより、雑音に起因して生じるピークが、透過エコーとして確実に誤識別されないようにすることができる。透過エコーの振幅が大きくなると予想されるため、透過エコーの振幅閾値の値は、透過エコーが確実に正しく識別されるように選択され得る。振幅閾値の値は、解析対象物及び/又は本走査装置の特性に応じて選択され得る。振幅閾値の値は、ユーザが選択することができる。例えば、値P_th1を、最大振幅P_th2を6dB下回るものにすることができる(以下を参照されたい)。値P_th1は、出力振幅又は強度などの、振動子モジュールの最大出力の所与の割合として計算されてもよい。例えば、値P_th1は、振動子モジュールの最大出力を18dB下回ってもよい。
【0062】
解析モジュール904は、所定の最大振幅P_th2よりも小さい振幅を第1のピークが有することを識別することにより、透過エコー1002を識別するように構成されている。透過エコーの振幅が大きくなると予想されるが、ピーク振幅が大き過ぎると、以下のデータが解析を行うのに適していないことを示す場合がある。例えば、振動子モジュールから空気中に放射する場合(これは、セットアップ(set-up)手順の一部として、又は本走査装置のオペレータによって不注意から実行される場合がある)、ピーク振幅は、典型的な透過エコーのピーク振幅に対して予想されるよりも大きくなる可能性がある。したがって、振幅がより大きくなる場合、超音波信号が対象物を透過していないことを示し得る。振動子モジュールが解析対象物に向けられている場合でも、振動子モジュールと対象物との間の結合が不十分であるときは、対象物に伝達される超音波の割合が低くなり得、また振動子モジュールに向かって反射される超音波の割合が高くなり得る。ここでもピーク振幅は、典型的な透過エコーのピーク振幅に対して予想されるよりも大きくなる可能性がある。この場合、こうして振幅がより大きくなることは、不十分なエネルギーが対象物に透過したことを示している可能性があり、その結果として低分解能かつ/又は小振幅の内部反射をもたらすことになり得る。対象物を透過するエネルギーが不十分である場合、結果として得られる反射の信号対雑音比が、正確な解析結果を得るには低くなり過ぎる可能性がある。この場合、「低い(low)」という用語は相対的なものである。対象物に伝達させることが望ましいエネルギーの割合は、対象物及び/又は本走査装置の性質又は特性に依存し得る。例えば、表面に近接した領域が解析されている場合、送信超音波エネルギー中の対象物に伝達される割合が低くなることは許容可能であってもよい。対象物内のより深い領域が解析される場合、送信超音波エネルギー中の対象物に伝達される割合が、比較的高くなると望ましい。超音波の周波数は、透過深度に影響を与える。このため、対象物に伝達される伝達エネルギーの割合が十分であると見なされるか否かは、送信周波数、受信周波数応答などの振動子の特性にも依存し得る。
【0063】
したがって、対象物に伝達されるエネルギーの割合が「低い」と見なされるか否かは、少なくとも本明細書で言及される要因に依存し得る。対象物に伝達させるエネルギーの閾値割合は、実行される解析のパラメータ及び/又は所定の値若しくはユーザ選択に基づいて決定され得る。このエネルギーの閾値割合を使用して、最大振幅P_th2として選択する振幅値を通知することができる。値P_th2は、出力振幅又は強度などの、振動子モジュールの最大出力の所与の割合として計算されてもよい。例えば、値P_th2は、振動子モジュールの最大出力を12dB下回り得る。
【0064】
したがって、P_th1よりは大きいが、P_th2よりは小さい振幅を有する第1のピークの識別は、受信する後続の反射を、解析を行うのに確実に適したものにするのに寄与し得る。
【0065】
解析モジュール904は、透過エコーを識別した後の最小振幅を識別するように構成されており、またゲーティングモジュール906は、最小振幅を識別した後に受信した信号を選択的に保持するために、受信超音波信号をゲーティングするように構成されている。識別された最小振幅は、透過エコーのピークP1を識別した直後の最小値であってもよい。解析モジュール904は、例えば振幅が振幅閾値の値を下回る場合に、透過エコー1002のピークP1の次の最小値を決定することによって、最小振幅を識別するように構成されている。振幅閾値の値は、透過エコーの最大振幅の割合である。振幅閾値の値として選択された透過エコーの最大振幅の割合は、例えば対象物及び/若しくは本走査装置の特性、並びに/又はユーザ選択に基づいて、必要に応じて選択され得る。
【0066】
解析モジュール904は、後壁エコーの振幅閾値P_th3を超える振幅P2を有する受信超音波信号内の最終ピークを識別することにより、後壁エコー1004を識別するように構成されている。P_th3よりも大きい振幅を有するピークを識別することにより、雑音に起因して生じるピークが、後壁エコーとして確実に誤識別されないようにすることができる。振幅閾値の値は、解析対象物の特性(例えば、予想厚さ又は予想厚さの範囲など)及び/又は本走査装置の特性に応じて選択され得る。振幅閾値の値は、ユーザが選択することができる。例えば、値P_th3を、P_th1を3dB又は4dB下回るものとすることができる。
【0067】
解析モジュール904は、後壁エコー1004のピークを識別した後の更なる最小振幅を識別するように構成されており、またゲーティングモジュール906は、更なる最小振幅が識別される前に受信した信号を選択的に保持するために、受信超音波信号をゲーティングするように構成されている。当該アプローチは、その後解析を行うために後壁エコー自体が保持されることを意味する。他の実施例では、後壁エコーが保持される必要はない。更なる最小振幅は、後壁エコーのピークP2を識別した直後の最小値であってもよい。解析モジュール904は、例えば振幅が更なる振幅閾値の値を下回る場合に、後壁エコーのピークに続く更なる次の最小値を決定することによって、更なる最小振幅を識別するように構成されている。更なる振幅閾値の値は、後壁エコーの最大振幅の割合である。更なる振幅閾値の値として選択された後壁エコーの最大振幅の割合は、例えば対象物及び/若しくは本走査装置の特性、並びに/又はユーザ選択に基づいて、必要に応じて選択され得る。
【0068】
解析モジュール904は、透過エコー1002と後壁エコー1004との間で受信した超音波信号内の特徴1006、1008のうちの1つ又は複数のピークP3、P4を識別することにより、1つ又は複数の材料不連続特徴を識別するように構成されている。解析モジュール904は、所与の振幅範囲内の振幅を有する受信超音波信号内のピークを識別することにより、1つ又は複数の材料不連続特徴を識別するように構成されている。所与の振幅範囲は、透過エコー1002又は後壁エコー1004のうちの一方若しくは両方の振幅、及び/又は対象物の1つ又は複数の材料、本走査装置の特性などに依存してもよい。好適には、所与の振幅範囲が、内部特徴の振幅閾値P_th4よりも大きい振幅範囲である。P_th4よりも大きい振幅を有するピークを使用して内部特徴を識別することは、雑音に起因して生じている可能性があると識別される「偽」ピークの数を低減するのに寄与し得る。閾値を大きくすることにより、雑音ピークを内部特徴に起因して生じるピークとして識別する可能性を低減することができる。
【0069】
走査装置900は、任意選択的に、画像生成器912と、画像生成器912に結合されたディスプレイ914と、ユーザ入力装置916とを備える。画像生成器912は、受信超音波信号に応じて、対象物の表面下の構造的特徴を表す走査画像を生成するように構成されている。ディスプレイ914は、走査画像を表示するように構成されている。ユーザ入力装置916は、表示される走査画像の一部をユーザが指定することができる指示信号を生成するように構成されている。解析モジュール904は、生成された指示信号に応答して特徴を識別するように構成されている。
【0070】
走査装置900は、画像生成器912、ディスプレイ914、又はユーザ入力装置916のうちの1つ又は複数を備える必要がない。走査装置900は、代替的に又は付加的に、走査装置900から離隔したディスプレイに生成された走査画像を表示させる信号を出力する、通信ポート918を備えてもよい。通信ポート918は、リモート画像生成器が走査画像を生成できるようにするために、受信超音波信号を表すデータを出力してもよい。リモート生成された走査画像は、例えば、ディスプレイ914に表示するために通信ポート918を介して、リモートディスプレイに表示され、かつ/又は転送され(passed back)得る。こうした構成の柔軟性により、走査装置900を、適切な場所で外部システムに結合することができ、これにより、例えば必要に応じて、外部処理機能を使用することができる。
【0071】
振動子モジュール902は、アレイ状に配置された複数の振動素子908を備え得る。解析モジュール904は、振動素子ごとにそれぞれ、その振動素子で受信された超音波信号を解析して、受信超音波信号内のそれぞれの特徴を識別するように好適に構成されている。ゲーティングモジュール906は、識別されたそれぞれの特徴に応じて、その振動素子で受信された超音波信号をゲーティングするように好適に構成されている。アレイは、振動素子の二次元アレイであってもよい。ゲーティング関数は、アレイに沿った様々な方向に異なるプロファイルを有してもよい。
【0072】
ゲーティングモジュール906は、振動子モジュールの速度に応じて、受信超音波信号をゲーティングするように構成されてもよい。当該速度が、好適には、解析対象物に対する振動子モジュールの速度である。速度がより高速になる場合、より広いゲーティングが使用され得、例えば、より広いゲーティングは、より多くの画素及び/又はより長い飛行時間若しくは飛行時間の範囲を含んでもよい。本アプローチにより、関心特徴がゲーティングされた信号に確実に保持されるようにしながら、振動子モジュール-対象物間速度がより高速になる場合でも、適応型ゲーティング技術を用いることができる。
【0073】
次に、図11を参照しながら方法について説明する。超音波信号は振動子モジュールによって、例えば振動子モジュールの少なくとも一部を形成する1つ又は複数の振動素子によって送信される。1102で、送信超音波信号の反射が受信される。1104で、受信超音波信号が解析される。1106で、当該解析により、受信超音波信号内の1つ又は複数の特徴が識別され得る。これら1つ又は複数の特徴は、特徴照合アルゴリズムなどによって識別され得る。例えば、マッチフィルタ(a match filter)を使用して、反射信号の予想形状に一致しているかどうかが識別され得る。A 1108で、識別された特徴、又は識別された特徴を表すデータが出力され得る。当該出力は、更なるモジュールにデータを送信すること、及び/又は、例えばメモリ、一例としてRAMなどのローカルデータストア及び/又はリモートデータストアにデータを記憶することによって、その後のアクセスのためにデータを記憶することを備え得る。データをローカルに記憶することにより、保存時間及びロード時間をより高速化することができる。クラウドなどにデータをリモートに記憶することにより、本走査装置のコスト、複雑性、及び/又は寸法を増大させることなく、より大量のデータを記憶することができる。1110で、1つ又は複数の識別特徴に従って受信超音波信号がゲーティングされる。例えば、1つ又は複数の識別特徴を表すデータを使用して、受信超音波信号がゲーティングされ得る。
【0074】
したがって、受信超音波信号のセットを使用して、1つ又は複数の識別特徴が判別され得、次いで、それら1つ又は複数の識別特徴に基づいてゲーティングが決定され得る。そのゲーティングを使用して、受信超音波信号のセットがゲーティングされ得る。
【0075】
付加的に、又は代替的に、1202で更なる超音波信号が送信され得、また更なる反射超音波信号のセットが振動子モジュールによって受信され得る。1204で受信超音波信号のセットを使用して識別された1つ又は複数の識別特徴を表すデータを使用して、1つ又は複数の識別特徴に基づいて、更なる反射超音波信号のセットが1206でゲーティングされる。
【0076】
したがって、超音波反射のセット、例えば透過エコー、後壁エコー、又は解析対象物の内部特徴から導出されるエコーのうちの1つ又は複数においてひとたび特徴が識別されると、それらの特徴を使用してゲーティング関数(又はゲーティング関数のセット)が求められ得る。次いで、そのゲーティング関数(又はゲーティング関数のセット)を使用して、超音波反射のセット、及び/又は超音波反射のセットに続いて受信される場合がある更なる超音波反射のセットがゲーティングされ得る。
【0077】
ここで図13を参照すると、1302で超音波信号が送信され、そしてそれらの送信超音波信号の反射が受信される。1304で、受信超音波信号を使用して走査画像が生成される。例えば、走査画像は、ローカル画像生成器及び/又はリモート画像生成器によって生成され得る。1306で、生成された走査画像がディスプレイに表示される。当該ディスプレイを、ローカルディスプレイ及び/又はリモートディスプレイとすることができる。1308で、ユーザ入力装置を使用して指示信号が生成される。ユーザ入力装置は、本走査装置の一部を形成し得るが、必ずしもそうである必要はない。ユーザは、ローカルディスプレイ及び/又はリモートディスプレイ上で、例えば本走査装置の一部を形成するハンドヘルドディスプレイ上で、かつ/又は本走査装置に通信可能に結合されたモニタ上で走査画像を視認してもよい。1310で、本走査装置は指示信号に基づいて、受信超音波信号内の特徴を識別する。
【0078】
超音波信号は、単一素子振動子又は多素子振動子から送信され得る。一実施例では、1402でアレイ内の複数の振動素子から超音波信号が送信され、次いでそれらの送信超音波信号の反射が、アレイ内の複数の振動素子のうちの1つ又は複数によって受信される。1404で、超音波信号が受信される振動素子アレイ内の位置に応じて、受信超音波信号がゲーティングされる。
【0079】
対象物の表面下の構造的特徴(当該対象物の内部特徴など)を画像化する走査装置は、以下の特徴に加えて上記の特徴のうちのいずれか1つ又は複数を任意選択的に備え得るが、本走査装置は、アレイを形成する複数の振動素子を備え得る。アレイ内の各振動素子は、対象物に向かって超音波信号を送信し、次いで当該対象物から反射される超音波信号を受信するように構成されており、これによって当該対象物の内部構造に関するデータが取得され得る。本走査装置は、複数の振動子から受信超音波信号を取得し、次いで受信超音波信号を処理して、対象物の内部を画像化する信号処理部さらに備える。当該処理は、受信超音波信号が受信される振動素子アレイ内の位置に基づいて、受信超音波信号をゲーティングすることを好適に備える。
【0080】
振動子アレイが平面である場合、アレイ内の振動子の位置は、アレイの走査面に対する、横方向位置と呼ばれてもよい位置を画定する。当該位置はまた、本走査装置によって走査される対象物に対して相対的であり得る。例えば、平面アレイが走査対象物の平坦な(又は略平坦な)表面に平行である場合、アレイ内の位置は、対象物に対する位置に一致する(本走査装置は、例えば、対象物に対して固定された相対位置に保持される)。
【0081】
好適には、アレイ内の振動子は、超音波信号を同時に送信するように構成されている。すなわち、アレイ内の各振動子によって送信される超音波信号の送信タイミングに遅延がないか、又は大幅な遅延がない場合が好適である。
【0082】
ゲーティングは、振動子アレイ内の振動子の位置の線形関数又は非線形関数であってもよい。
【0083】
信号処理部は、アレイ内の各振動子のそれぞれのゲーティング値を定義するゲーティング関数に従って、受信超音波信号をゲーティングするように好適に構成されている。ゲーティング値を、アレイ内の位置の関数とすることができる。ゲーティング関数は、アレイ内の少なくとも2つの振動子について同一のゲーティング値を定義することができる。好適には、これらのゲーティング値が、アレイに沿った位置の平滑関数を表す。ゲーティング関数は、転回点及び/又は変曲点を備えてもよいし、又は記述してもよい。平滑関数は、円又は楕円などの曲線形状の円弧を好適に記述する。したがって、ゲーティング関数は、パイプの曲率に一致してもよいし、又は適合してもよい。例えば、超音波反射が円形断面を有するパイプ又は同様の対象物から受信される場合、円弧を記述するゲーティング関数が使用され得る。他の断面形状が、ゲーティング関数の他の適切な曲率によって適合され得ることが理解されるであろう。
【0084】
信号処理部は、振動子アレイ内の隣接振動子に対してゲーティングをオフセットするように好適に構成されている。当該オフセットは、振動子アレイにわたる距離に応じて変動してもよく、例えば当該オフセットは、振動子アレイにわたる距離の関数として変動し得る。当該オフセットは、線形又は非線形に変動し得る。すなわち、ゲーティングタイミングを距離に応じて平滑に変化させることができる。ゲーティングタイミングは、曲線関数に追従する値を備え得る。曲線関数によって円弧を記述してもよい。好適には、振動素子がアレイ内で規則的に間隔を置いて配置されているが、そのように配置される必要はない。各振動素子に適用されるゲーティング関数は、アレイ内の振動素子間の相対分離距離に基づいてもよい。
【0085】
一次元振動子アレイ(例えば、振動素子は、x方向に沿って配置されている)の場合、ゲーティング関数は、x方向又はx~z方向(ここで、z方向は対象物内にあり、例えば、超音波送信方向である)に変化してもよい。二次元振動子アレイ(例えば、振動素子は、x-y平面内に配置されている)の場合、ゲーティング関数は一方向又は多方向に変化してもよい。ゲーティング関数は、x方向、x方向及びy方向、又はx方向、y方向及びz方向に変化してもよい。x方向にゲーティング関数値を変化させることにより、円筒パイプに対して適切な適応型ゲーティングを施すことができる。x方向及びy方向の両方にゲーティング関数値を変化させることにより、湾曲した車体パネルなどの二次元湾曲面に対して適切な適応型ゲーティングを施すことができる。x方向、y方向、及びz方向にゲーティング関数値を変化させることにより、1つ又は複数の関心特徴に深度変動がある場合の対象物に対して適切な適応型ゲーティングをさらに施すことができる。
【0086】
信号処理部は、ゲーティング選択信号に応答してゲーティング関数群からゲーティング関数を選択するように構成されている。これらゲーティング関数群は、アレイ内の位置のそれぞれの関数を記述するゲーティング値をそれぞれが定義する複数のゲーティング関数を備える。それぞれの関数は、互いに異なる曲率の曲線を記述することができる。例えば、それぞれの関数は、直径が異なる円弧を記述することができる。これにより、ゲーティング関数を直径が異なるパイプに適合させることができる。好適には、これらゲーティング関数群は、一般的なパイプの直径、例えば50mm、100mm、300mm、600mmなどに一致するゲーティング関数を備える。
【0087】
信号処理部は、オペレータ入力からゲーティング選択信号を受信するように構成されている。オペレータ入力は、ボタン、ダイヤル又はスイッチなどの物理的入力装置を備え得る。そのような場合、本走査装置が、ボタン、ダイヤル又はスイッチを備えると好適である。オペレータ入力は、オペレータ選択に関連するソフトウェア入力を受信するように構成された、本走査装置の入力ポートを備え得る。オペレータ入力は通信ポートを備え得る。当該ソフトウェア入力は、本走査装置に結合されたコンピューティングシステムによって提供され得る。
【0088】
好適には、ユーザがパイプ径を選択することができ、本装置は、ユーザ選択に基づいてそのパイプ径に適したゲーティング関数を選択することができる。例えば、本装置は、選択されたパイプ径に一致するゲーティング関数、又は本走査装置が利用できるゲーティング関数群から選択されたパイプ径に最も近似一致するゲーティング関数を選択することができる。
【0089】
本走査装置は、例えばアレイ内の複数の振動子に対して、複数の位置で透過エコーのピークを識別するように構成され得る。個々の振動素子から識別された透過エコーのピークまでの深度又は飛行時間に基づいて、解析対象物の曲率が求められ得る。求められた曲率に最も近似一致する、最近似の適合ゲーティング関数が選択され得る。したがって、超音波反射に基づいてパイプの曲率が推定され得、当該パイプから反射される信号をゲーティングするために、当該パイプの曲率に一致するゲーティング関数が自動的に選択され得る。
【0090】
好適には、本走査装置が、受信超音波信号の第1のセットを解析して、受信超音波信号の第1のセット内の特徴を識別し、ゲーティング関数を選択するために、識別された特徴に基づいてゲーティング選択信号を生成し、そして選択されたゲーティング関数を使用して、受信超音波信号の第2のセットを処理するように構成されている。特徴を識別することは、特性のセットに対して超音波信号の第1のセットを評価することを備え得る。特徴を識別することは、最小振幅若しくはそれぞれの最小振幅よりも大きい振幅、又は最大振幅若しくはそれぞれの最大振幅よりも小さい振幅のうちの一方又は両方を有する受信超音波信号内の1つ又は複数のピークを識別することを備え得る。
【0091】
特徴を識別することは、透過エコーの振幅閾値を超える第1のピークを透過エコーとして識別することを含み得、またゲーティング選択信号を生成することは、透過エコーの後に受信した超音波信号を選択的に保持するように構成されたゲーティング関数を選択することを備え得る。透過エコーが識別される前に受信したデータは破棄されてもよい。特徴を識別することは、透過エコーの後に受信した超音波信号の最小振幅を識別することを備え得、またゲーティング選択信号を生成することは、最小振幅が識別された後に受信した超音波信号を保持するように構成されたゲーティング関数を選択することを備え得る。最小振幅が識別される前に受信した超音波信号は破棄されてもよい。
【0092】
本走査装置は、透過エコーの後の所与の飛行時間(すなわち、走査対象物の表面下の所与の深度)で受信信号の一部を保持するように好適に構成されている。例えば、関心領域が当該対象物の上部15mmである場合、保持された部分は、透過エコーに続く15mmの深度を表す受信信号を備え得る。
【0093】
特徴を識別することは、後壁振幅閾値を超える最終ピークを後壁エコーとして識別することを備え得、またゲーティング選択信号を生成することは、後壁エコーのタイミングに基づいて超音波信号を選択的に保持するように構成されたゲーティング関数を選択することを備え得る。特徴を識別することは、後壁エコーが識別された後に更なる最小振幅を識別することを備え得、またゲーティング選択信号を生成することは、更なる最小振幅が識別される前に受信した超音波信号を保持するように構成されたゲーティング関数を選択することを備え得る。
【0094】
好適には、信号処理部が、処理された信号を出力するように構成されている。信号処理部は、処理信号をローカルメモリ及び/又はリモートメモリなどの記憶装置に出力するように構成されてもよい。処理された信号は、対象物の内部を解析する解析モジュールに対して出力され得る。処理信号は、対象物の内部の画像を生成する画像生成器に対して出力され得る。生成された画像は、ディスプレイに表示するために好適に出力される。このように、対象物の内部が可視化され得、そして、オペレータによってより容易に認識され得る。
【0095】
対象物の表面下の構造的特徴を画像化する方法は、アレイ内の複数の振動素子から、対象物に向かって超音波信号を送信することを好適に備える。本方法は、対象物から反射される超音波信号を複数の振動素子で受信することで、対象物の内部構造に関するデータを取得できるようにすることをさらに備える。受信超音波信号は、対象物の内部を画像化するために処理され、当該処理は、受信超音波信号が受信される振動素子アレイ内の位置に基づいて、受信超音波信号をゲーティングすることを備える。
【0096】
パルス繰返し速度
対象物の表面下構造をリアルタイムで画像化できることが望ましい。この画像化を達成するために、比較的高いパルス繰返し速度で超音波パルスが対象物に向かって送信され得る。ここで、典型的な走査速度及びパルス繰返し速度の例を示す。炭素繊維強化ポリマー(CFRP)からなる比較的薄い対象物(例えば、4~8mmである)を検査する場合、毎秒20枚の画像又はフレームを取得するように走査装置を構成することができる。一実施態様では、各画像又はフレームを生成するプロセスにおいて、2つの信号が平均化され得る。1台の走査装置では、16個の並列チャネルで信号が受信される。したがって、この場合、128×128の振動素子アレイでは、(128×128×2×20/16)=40960パルス/秒となる。したがって、パルス繰返し速度が約40kHzであることが分かり得る。すなわち、パルス又はパルスシーケンスは、対象物に向かって毎秒40960回送信され得る。パルスシーケンスは複合パルスを備え得る。パルス繰返し速度は、40kHzよりも高くても低くてもよい。受信超音波信号の解析を通じてデータを収集することにより、対象物の構造を画像化することができる。
【0097】
毎秒20フレームを超えるフレームレートが望まれる場合、かつ/又はフレームごとに2つを超える信号が平均化される場合、パルス繰返し速度は上昇する。超音波パルスが対象物に向かってひとたび送信されると、パルスエネルギーが当該対象物を透過する。振動子に向かって反射が送り返される。超音波信号のエネルギーのすべてが振動子に送り返されるわけではない。超音波信号が内部で反射するため、エネルギーの一部が対象物内に残留することになる。こうした内部反射は、対象物内の超音波信号のエネルギーが消滅するまで、又はノイズフロアであり得る検出エネルギーレベルの閾値を下回るまでに、有限の時間を要することを意味する。
【0098】
対象物内でエコーが消滅するのに要する時間は、多くの要因に依存する。これらの要因は、周波数、持続時間、又はエネルギーのうちの1つ又は複数など、送信超音波信号の特性を含む場合がある。これらの要因は、対象物の材料、その構造又はその厚さのうちの1つ又は複数など、画像化対象物の特性を含む場合がある。これらの要因は、振動子の特性(例えば、振動子の分解能、振動子の周波数、振動子の周波数範囲、振動子の寸法、振動素子の数などのうちの1つ又は複数である)、及び振動子モジュールと対象物との間の結合(例えば、乾式結合の材料及び/又は厚さ及び/又は形状、結合シューの材料及び/又は厚さ及び/又は形状、結合流体の材料及び/又は深度など)など、対象物を画像化するために使用される本走査装置の特性を含み得る。エコーが消滅するのに要する時間は、周波数に依存する。なぜなら、周波数が低くなると、通常減衰が小さくなるからである。
【0099】
一例として、金属製の、又は金属を備える材料内の超音波エコーは、複合材料内の同様の超音波エコーよりも消滅に時間を要する。
【0100】
パルス繰返し速度が十分に高い場合、従前のパルスからのエコーがバックグラウンドレベルまで低下する前に、後続パルスが対象物に向かって送信される。このことは、従前のパルスによって発生した反射が、現行パルスによって発生する反射と共に振動子で受信されることを意味する。これらの反射が組み合わさることで、結果として得られる超音波画像にアーチファクトが発生する可能性がある。そのようなアーチファクトは、例えばスプリアス効果を発生させることによって、又は特徴をマスキングすることによって、超音波画像の分解能を低下させる可能性がある。
【0101】
これらのアーチファクトはまた、超音波振動子の送信面から超音波送信方向に沿って配置された遅延ライン内のエコーによっても発生し得る。遅延ラインは、乾式結合などの結合パッドを備え得る。遅延ラインは、結合流体を保持するためのリザーバを備える結合シューなどの、結合シューを備え得る。
【0102】
これらのアーチファクトは、超音波信号内の各パルス又はパルスシーケンスの送信間に生じる遅延時間を手動で制御することにより、低減又は回避され得る。上記の例では、超音波信号は、信号のセット間の遅延時間tで送信されてもよい(ここで、送信超音波信号のセットは、有限の持続時間を有するパルス又はパルスシーケンスを備える)。パルス又はパルスシーケンスの持続時間が3μsである例では、パルス繰返し速度が40960Hzであり、フレームレートが毎秒20フレームである場合、最大約20μsの遅延時間tが付与され得る。複合パルス又は複合パルスシーケンスの持続時間は3μsよりも長くなってもよく、このことは、パルス繰返し速度及びフレームレートを維持する一方で、利用可能な遅延時間が短縮されることを意味する。
【0103】
対象物内の長時間エコーによって発生するアーチファクトを低減するために、遅延時間を、例えば30μs又は40μsまで延長することができる。他の変動がない場合、これにより、パルス繰返し速度が約40kHzから約30kHz又は約20kHzまで低下する可能性がある。パルス間又はパルスシーケンス間の遅延時間を延長することは、フレームレートの実現可能性に影響を与え得る。遅延時間を延長することは、より短い遅延時間で取得できる等価のデータ量を取得するのに、より長い時間を要することを意味し、したがってフレームレートが低下する可能性がある。フレームレートは、フレームごとに取り込まれるデータの量を犠牲にすることにより、例えばフレームごとに得られる僅少の結果を平均化することによって維持され得る。
【0104】
したがって、フレームレートを高くすること(動的プロセスにおけるより高速な走査及び/又はより正確な走査を可能にする)と、信号対雑音比を高くすること(取得されるデータの精度を高める)との間にはトレードオフが存在する。パルス繰返し速度を調整することは、可能な限り高いフレームレートの達成を試みる一方で、関心データに「従前の」エコー(又は前回の測定からの反射)が確実に存在しないようにするのに寄与し得る。
【0105】
フレームレートと信号対雑音比との間のバランスを求めて各走査の前に走査装置を手動で再構成することは、困難で多くの時間を要する可能性がある。走査中にその構成を更新することも困難であり、こうした更新は、標準のデータ取込みを中断して遅延時間を手動で変更し、走査装置を使用して取得された結果画像を視認することによって結果を評価する必要がある。
【0106】
手動システムでは、1つの領域の走査から、異なる材料や構造を有する別の領域の走査へと切り替わるように走査装置を移動させる場合、遅延時間やパルス繰返し速度の使用はもはや最適とは言えない。このことは、ある状況(例えば、エコーが消滅するまでにより長い時間を要する領域に移動する状況)ではアーチファクトの発生を招き、別の状況(例えば、エコーがより迅速に消滅する領域に移動する状況)ではフレームレートが必要以上に低くなる事態を招く可能性がある。
【0107】
したがって、最適な、又は所望の遅延時間を識別する自動的な方法を提供することが望ましい。また走査プロセス中に、確実に遅延時間が動的に更新され、又は最適化されるようにすることも望ましい。パルス繰返し速度を可能な限り高くして、閾値信号対雑音比などの信号対雑音条件を満たす場合に、最適な遅延時間が求められ得る。パルス繰返し速度を可能な限り高くして、例えばアーチファクトに関連するピーク振幅閾値を一例とする、アーチファクトの振幅閾値などのアーチファクト条件を満たす場合に、最適な遅延時間が求められ得る。通常、アーチファクトは、対象物から受信した超音波信号の特徴であるか、又はその少なくとも一部を形成するものと見なされ得る。
【0108】
パルス繰返し速度に関する技術に従った走査装置の更なる詳細が、図面を参照しながら以下に述べられる。
【0109】
走査装置は、対象物の表面下の構造的特徴を画像化するための装置である。本走査装置は、振動子モジュールと、解析モジュールとを備える。振動子モジュールは、対象物に向かって超音波信号を送信し、次いで当該対象物から反射される超音波信号を受信することにより、当該対象物の内部構造に関するデータが取得され得るように構成されている。解析モジュールは振動子モジュールに結合されており、受信超音波信号を解析して、受信超音波信号内の特徴を識別するように構成されている。振動子モジュールは、超音波信号の後に生じる遅延時間tで更なる超音波信号を送信するように構成されており、遅延時間tは、識別された特徴に応じて決定される。
【0110】
好適には、解析モジュールが、受信超音波信号のピーク振幅を識別するように構成されており、識別された特徴はピーク振幅の変化量を備える。好適には、受信超音波信号のピークが、対象物内から受信した反射のピークである。
【0111】
本明細書の他の箇所で述べているように、本走査装置は、受信超音波信号において、透過エコー及び後壁エコーを識別するように構成されている。透過エコーを使用して、受信超音波信号内の特徴が判別されてもよい。透過エコーの振幅は、対象物に伝達されるエネルギー量に関する情報を示し得る。透過エコーが比較的小さい場合、送信超音波信号内の比較的多量のエネルギーが対象物に伝達していると判定することができ、また透過エコーが比較的大きい場合、送信超音波信号内の比較的少量のエネルギーが対象物に伝達していると判定することができる。比較的多量のエネルギーが対象物に伝達される場合、対象物の内部反射が消滅するまで、比較的長い時間を要する可能性が高い(例えば、ノイズフロアなどの検出限界閾値を下回ることによって)。
【0112】
解析モジュールは、透過エコーを使用しなくてもよい。解析モジュールは、透過エコーに続く受信超音波信号のピークを求め、この後続のピークを使用して、受信超音波信号内の特徴を判別することができる。後続のピークは、後壁エコーであってもよい(この後壁エコーは、例えば、本明細書の他の箇所で述べているように識別され得る)。解析モジュールは、いくつかの実施態様では、複数のピークに応じて特徴を判別するように構成されてもよい。好適には、これら複数のピークが、透過エコーに続くピークを備える。例えば、これら複数のピークは、透過エコーに続き、なおかつ後壁エコーに先行するピークを備える。すなわち、受信超音波信号内の特徴を判別するために解析モジュールによって使用される1つ又は複数のピークが、好適には透過エコーと後壁エコーとの間に存在する。
【0113】
複数のピークに基づいて特徴の判別を行うことにより、例えば、特徴が判別されるデータセットのサイズを大きくすることで、特徴の判別精度を高めることができる。
【0114】
当該特徴は、透過エコー、透過エコーと後壁エコーとの間の1つ又は複数のピーク、又は後壁エコーのうちのいくつかを組み合わせたものに基づき得る。最適な組合せを選択することにより、例えば、特徴が判別されるデータセットのサイズを大きくすることで、判別精度を高めることができる。使用される特定の組合せは、ピークのうちの1つ又は複数の信号対雑音比、対象物の材料、振動子モジュールと対象物との間の結合材料の材料、送信超音波信号の周波数若しくは周波数範囲、又は送信超音波信号のエネルギーのうちの1つ又は任意の組合せに基づいて選択され得る。
【0115】
本走査装置を使用して標準試験片を走査し、その走査からの結果を用いて、画像化対象物に対して実行される後続の走査に使用する遅延時間を決定することができる。例えば、同一若しくは類似の材料、又は超音波に対して類似の応答を有する材料で作製されることにより、走査対象物に近似ししてもよい標準試験片が選択され得る。例えば、標準試験片は、走査対象物の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有してもよい。走査対象物の正確な特質は、走査前に把握されていなくてもよい。しかしながら、この場合、予想若しくは予測される特性又は挙動が判別され、この予想される特性又は挙動に基づいて適切な標準試験片が選択されてもよい。例えば、予想される対象物の音響インピーダンスに最も近い音響インピーダンスを有する標準試験片が、異なる標準試験片範囲から選択され得る。使用すべき標準試験片は、音響インピーダンス、標準試験片の厚さ、標準試験片の形状、標準試験片内の材料不連続性などの特徴を含む、1つ又は複数の要因に基づいて選択され得る。
【0116】
標準試験片を走査することに基づいて、解析モジュールは遅延時間を決定することができる。この遅延時間は、対象物を走査する際に使用され得る。こうして決定された遅延時間は、対象物の走査全体を通して使用され得る。あるいは、こうして決定された遅延時間は、対象物上での走査開始時に使用される遅延開始時間として使用され得る。本アプローチは、初期走査の精度を高めることができる。その後遅延時間は、対象物から受信した超音波信号に対して解析モジュールで実行される更なる解析に基づいて、引き続き動的に修正され得る。
【0117】
いくつかの実施態様では、超音波走査中に取得されたデータが正規化される。本明細書で述べている技術を使用すると、透過エコーに基づいて、検査中の正規化後の待機時間を短縮することができる。なぜなら、透過エコーを解析することで、対象物に入射するエネルギーの量(例えば、送信パルスのパーセンテージとしての)を求めることができるからである。
【0118】
好適には、識別された特徴が、ピーク振幅の変化率を備える。振幅の変化率は、内部エコーが対象物内でどのように消滅しているかを示し得る。識別された特徴は、当初に測定されたピーク振幅と比較したピーク振幅の変化率を備えてもよい。本アプローチにより、1つ又は複数のエコーの振幅(又はエネルギー)が小さくなる割合又はパーセンテージを求めることができる。例えば、(1つのピーク又はピークの組合せの)振幅が初期振幅(又は他の任意の所望の又は所定の閾値パーセンテージ)の60%未満まで小さくなる時点を求めることができる。当該状態は、これらのエコーが反射信号の解析に悪影響を及ぼすことなく、後続パルスを発生させるのに十分な程度まで消滅したことを示し得る。
【0119】
識別された特徴は、例えば振幅が所定の閾値よりも小さくなる場合に、振幅閾値を超えるピーク振幅の変化量を備え得る。本アプローチにより、対象物内又は対象物からのエコーの絶対振幅が、後続パルスを発生させる前に許容可能なレベルまで確実に小さくなる。振幅閾値が、好適には、走査対象物の材料、走査対象物の構造、識別対象の特徴の深度、調査対象の欠陥、走査対象物の厚さ、振動子モジュールと走査対象物との間に使用される結合媒体、振動子モジュールの特性、又は選択閾値のうちの1つ又は複数に基づいている。選択閾値は、走査前にユーザが設定することができる。選択閾値は、走査中にユーザが設定することができ、これによってユーザが動的選択を行うことができる。
【0120】
鋼及びアルミニウムなどの材料は非常に低い減衰を有し、このことは、数ミリメートルの厚さの板において音が何度も前後に移動することを意味する。音速、すなわち厚さを校正する場合、材料の厚さに基づいて検知可能な往復遅延時間(すなわち、後続パルスの送信間における遅延時間である)を計算して推定することができる。このように、往復遅延時間は、ステップウェッジなどの既知の材料に行う「校正」の一部と考えられ得る。
【0121】
識別された特徴が、好適には対象物の腐食レベルを示す。例えば、識別された特徴は、対象物内の錆などの腐食の存在を示し得る。当該腐食は、対象物の前面、すなわち本走査装置に面する対象物の表面であってもよい。当該腐食は、対象物の背面、すなわち走査面に背向する対象物の表面であってもよい。好適には、対象物の前面が、対象物の背面に対向している。識別された特徴が、好適には、腐食が前面及び/又は背面に生じているかどうかを示す。識別された特徴が、好適には、当該腐食が対象物の外面上に生じているか、かつ/又は対象物の内部に生じているかを示す。解析モジュールは、典型的には対象物の腐食に関連する受信超音波信号の特徴的パターンを探索することにより、腐食の有無を判定するように構成され得る。同様に、解析モジュールは、受信超音波信号と既知の超音波信号のセット、又はそのような既知の超音波信号のセットの特性とを比較することにより、腐食が対象物の外面上又は外面の一点に生じているか、かつ/又は対象物の内部に生じているかを判定するように構成され得る。例えば、マッチフィルタを使用して、既知の信号パターンとの一致、又は最も近似した一致が判定され得る。そのような比較のうちの1つ又は複数を行うことにより、解析モジュールは、受信超音波信号内の1つ又は複数の特徴を判別することができる。
【0122】
識別された特徴は、振動子モジュールの伝搬面と対象物との間の超音波経路長を示し得る。例えば、識別された特徴は、伝搬面と対象物との間に配置された結合パッドなどの遅延ラインの厚さ、及び/又は伝搬面と対象物との間の結合流体の深度を示し得る。結合流体の深度を、結合流体を保持するために使用される結合シューの深度(又は厚さ)とすることができる。結合流体の深度を、例えば、結合シューの結合流体リザーバの深度とすることができる。結合流体の深度を、伝搬面と対象物の表面との間の超音波の送信方向に、超音波が移動した距離とすることができる。超音波経路長を把握することは、超音波エコーが経時的にどのように消滅するかを判定するのに有用であり得る。例えば、経路長が比較的長いということは、典型的には、経路長が比較的短い場合よりも吸収が大きくなることを意味する。したがって、これらのエコーがより迅速に消滅する可能性が高くなる。個々の材料を通る経路長を把握することは、超音波信号が経時的にどのように消滅するかを判定するのに有用であり得る。例えば、経路内の材料の数が多いほど、音響境界での反射が多くなり得、これによってエコーの消滅速度が上昇する可能性がある。
【0123】
識別された特徴が、好適には受信超音波信号の雑音レベルを示す。例えば、雑音レベルは、受信超音波信号のノイズフロアのレベル、又は経時的な平均雑音レベルを備え得る。ノイズフロアを超えるパルス(例えば、パルス振幅がノイズフロアのレベルを超える場合)が発生しているかどうかを検出することで、予期しない位置にパルスが存在することを識別できる可能性がある。この想定外のパルスは、超音波画像にアーチファクトを発生させる可能性がある。例えば正規化ステップ又は校正ステップ中に本技術を用いて、そのような想定外のパルスを識別することができる。これら想定外のパルスがひとたび識別されると、それに応じて遅延時間が調整され得る。例えば遅延時間を延長することによる遅延時間の調整が、好適には、これらのパルスの振幅を小さくし、これに伴って生じるアーチファクトを低減する。
【0124】
本明細書の他の箇所で述べているように、振動子モジュールは、アレイ状に配置された複数の振動素子を備え得る。このような振動子モジュールでは、好適には、遅延時間tが各振動素子において同一である。遅延時間tは、振動素子の第1のサブセットに対する第1の遅延時間tと、振動素子の第2のサブセットに対する第2の遅延時間tとを備え得る。第1の遅延時間tは、振動素子の第1のサブセットで受信された超音波信号に応じて決定され、また第2の遅延時間tは、振動素子の第2のサブセットで受信された超音波信号に応じて決定される。解析モジュールは、振動素子ごとにそれぞれ、当該振動素子が受信した超音波信号を解析して、受信超音波信号内のそれぞれの特徴を識別するように構成されており、またそれぞれの遅延時間trespは、当該振動素子において識別されたそれぞれの特徴に応じて決定される。好適には、アレイ内の各振動素子のそれぞれの遅延時間trespは、アレイ内の位置と共に平滑に変化する関数に適合する。
【0125】
本アプローチにより、振動子モジュールを形成する振動子アレイ内の個々の振動子に、遅延時間を別々に決定することができる。遅延時間が、アレイ内の振動子グループごとに、さらにはアレイ内の個々の振動子ごとに別々に決定され得る。これにより、各振動子グループのアレイ又は各振動子のアレイ内の位置に適した遅延時間を設けることができる。本アプローチは、材料特性及び/又は材料結合が対象物にわたって異なる場合に有用であり得る。振動子モジュールと対象物との間でステップウェッジが使用され得る。結合流体が供給され得、当該流体の厚さは、界面の様々な部分で異なる場合がある。これら及び他の要因は、振動子モジュールと対象物との間の結合に影響を与え得る。各振動子グループ又は各振動子で受信された超音波信号を解析することにより、振動子モジュール内の各振動子に適した遅延時間を決定する際に、これらの結合効果を考慮に入れることができる。したがって、本走査装置は、その後の解析を行うためにより正確なデータを取得することができる。例えば、ステップウェッジの肉厚部に隣接する振動素子の遅延時間を短縮するとより適切であり得、これはなぜなら、超音波が材料内を通過する時点までに消滅するエコーの量が増大し、このために、遅延時間を短縮すると適切となり得るためである。その一方で、対象物内のエコーは、超音波信号が対象物の当該部分に伝達される前に消滅に使用する時間が少ないため、ステップウェッジの薄肉部に隣接する振動素子の遅延時間を延長するとより適切であり得る。
【0126】
計算された遅延時間がそれぞれ異なる場合でも、各グループ又は振動素子若しくは各振動素子で遅延時間が必ずしも異なる必要はない。いくつかの実施態様では、計算された最長の遅延時間が各振動素子に適用される。
【0127】
本明細書の他の箇所で述べているように、走査装置900は、受信超音波信号に応じて、対象物の表面下の構造的特徴を表す走査画像を生成するように構成された画像生成器912と、画像生成器に結合され、1306で走査画像を表示するように構成されたディスプレイ914と、表示される走査画像の一部をユーザが指定することができる指示信号を、1308で生成するように構成されたユーザ入力装置と、を備え得る。1310で、解析モジュールは、生成された指示信号に応答して特徴を識別するように構成されている。このようにして、ユーザは、後続信号の送信タイミングのベースとなる画像内の位置を選択することができる。ユーザは、パルス再発生のタイミングを調整する際に、示されたアーチファクトを反映させるように、画像内のアーチファクトを示すことができる。ユーザは、画像内の複数の位置を選択することができる。画像内で複数の位置が選択されている場合、解析モジュールは、各位置で別々に解析を実行するか、又は例えば各位置から振幅などを平均化することによって、複数の位置における解析を組み合わせることができる。
【0128】
なお、図9に関連して、ゲーティングモジュール906が、すべての実施態様において本走査装置の一部として設けられる必要はない。解析モジュールは、マッチフィルタモジュール(図示せず)及び/又は遅延時間計算モジュール920を備えてもよい。本走査装置は、本明細書に記載の解析を実行するために、ハードウェア及び/又はソフトウェアによって構成された1つ又は複数のプロセッサを好適に備える。例えば、1つ又は複数のプロセッサのうちの少なくとも1つは、解析モジュール904内に、又は解析モジュールの一部として設けられ得る。
【0129】
次に、図15を参照しながら更なる方法について説明する。超音波信号は振動子モジュールによって、例えば振動子モジュールの少なくとも一部を形成する1つ又は複数の振動素子によって送信される。1502で、送信超音波信号の反射が受信される。1504で、受信超音波信号が解析される。1506で、当該解析により、受信超音波信号内の1つ又は複数の特徴が識別され得る。これら1つ又は複数の特徴は、特徴照合アルゴリズムなどによって識別され得る。例えば、マッチフィルタを使用して、反射信号の予想形状に一致しているかどうかが識別され得る。1508で、更なる超音波信号が、超音波信号の後に生じる遅延時間tで送信される。遅延時間tは、1つ又は複数の識別特徴に応じて決定される。
【0130】
パルス繰返し速度に関して本明細書に記載している技術のうちの任意の1つ又は複数は、必要に応じて、ゲーティング超音波信号に関して本明細書に記載している技術のうちの任意の1つ又は複数と組み合わせることができる。
【0131】
本明細書に記載の装置及び方法は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)などの複合材料の剥離及び層間剥離を検出するのにとりわけ適している。この点は、航空機整備にとって重要である。また、本装置を使用して、応力集中部分として作用し得るリベット孔周辺の剥離を検出することができる。本装置は、金属又は金属構造物の腐食、溶着、亀裂などを検出するのにとりわけ有用である。本装置は、非常に大きな構成要素の小領域を画像化することが望まれる用途に、とりわけ適している。本装置は、軽量で可搬型の装置であり、取扱いが容易である。本装置は、対象物上の必要な場所に配置されるように、オペレータが手で容易に持ち運ぶことができる。
【0132】
本明細書の図に示す構造は、装置内のいくつかの機能ブロックに対応することを意図している。この対応は例示のみを目的としている。図に示されている機能ブロックは、本装置が実行するように構成されている様々な機能を表しており、それらは、本装置内の物理的構成要素間の厳密な区分を定めることを意図していない。一部の機能の性能は、いくつかの異なる物理的構成要素にわたって分割されてもよい。1つの特定の構成要素は、いくつかの異なる機能を実行してもよい。図面は、チップ上のハードウェアの異なる部分間、又はソフトウェア内の異なるプログラム、手順若しくは機能間の厳密な区分を定めることを意図していない。これらの機能は、ハードウェア若しくはソフトウェア、又はこれら2つの組合せで実行されてもよい。任意のそのようなソフトウェアが、好ましくはメモリ(RAM、キャッシュ、フラッシュ、ROM、ハードディスクなど)又は他の記憶手段(USBメモリ、フラッシュ、ROM、CD、ディスクなど)などの非一時的コンピュータ可読媒体に記憶される。本装置は、1つの物理的装置のみを備えてもよいし、いくつかの別個の装置を備えてもよい。例えば、信号処理及び画像生成の一部は、可搬型のハンドヘルド装置で実行されてもよく、また一部は、PC、PDA、又はタブレットなどの別個の装置で実行されてもよい。いくつかの実施例では、画像生成全般が別個の装置で実行されてもよい。本明細書に記載している機能単位のいずれも、クラウドの一部として実装され得る。
【0133】
本出願人は、本明細書に記載している個々の特徴及び2つ又はそれ以上のそのような特徴の任意の組合せを、そのような特徴又は特徴の組合せが本明細書に開示しているいずれかの問題を解決するかどうかにかかわらず、また特許請求の範囲を限定するものでもなく、当業者の共通の一般知識に照らして、そのような特徴又は組合せが全体として本明細書に基づいて実行され得る範囲で、単独で開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のそのような個々の特徴又は特徴の組合せからなり得ると述べている。上記の説明に鑑みて、本発明の範囲内で様々な変更が行われてもよいことが当業者には明らかであろう。
図1
図2
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【国際調査報告】