(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】BCMAと結合する単一可変ドメイン及び抗原結合分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230907BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230907BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230907BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230907BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230907BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230907BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/30
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61K48/00
C12N15/85 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023510435
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 CN2021112758
(87)【国際公開番号】W WO2022037528
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010842501.X
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甄 子 朋
(72)【発明者】
【氏名】謝 美 娟
(72)【発明者】
【氏名】杜 秀 貞
(72)【発明者】
【氏名】馬 毅 敏
(72)【発明者】
【氏名】張 兵
(72)【発明者】
【氏名】徐 同 杰
(72)【発明者】
【氏名】張 喜 全
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、BCMAに結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン及び抗原結合性分子、具体的には免疫グロブリン単一可変ドメイン及び抗原結合性分子、それらをコードする核酸、当該核酸を含むベクター、当該ベクターを含む細胞、それらを含む医薬組成物、及びそれらの治療的使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BCMAに結合する単離された単一可変ドメインであって、前記単一可変ドメインには、以下から選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む:
(a)SEQ ID NO:10、13、7及び16から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するCDR1;
(b)SEQ ID NO:11、14、8及び17から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR2;及び
(c) SEQ ID NO:12、15、9及び18から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR3。
【請求項2】
請求項1に記載の分離された単一可変ドメインであって、前記単一可変ドメインには、以下のいずれか1つのグループから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む:
(ii)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するCDR1、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR2、及びSEQ ID NO:12のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR3;
(iii)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するCDR1、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR2、及びSEQ ID NO:15のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR3;
(i)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するCDR1、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR2、及びSEQ ID NO:9のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR3;或いは、
(iv)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するCDR1、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR2、及びSEQ ID NO:18のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR3。
【請求項3】
請求項2に記載の分離された単一可変ドメインであって、前記単一可変ドメインには、以下のいずれか1つのグループから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む:
(ii)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR3;
(iii)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR3;
(i)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR3;或いは
(iv)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDR3。
【請求項4】
SEQ ID NO:19、21、23又は25のアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む、分離された単一可変ドメイン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の分離された単一可変ドメインであって、前記単一可変ドメインには、SEQ ID NO:19、21、23又は25の配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;或いは前記単一可変ドメインは、SEQ ID NO:19、21、23又は25のアミノ酸配列を含む。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の分離された単一可変ドメインであって、前記の単一可変ドメインは、ラクダ科動物のもの又はヒト化したものである;任意に、前記の単一可変ドメインは、V
HHである。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の分離された単一可変ドメインであって、前記単一可変ドメインは、以下の性質のうちの1つ又は複数の組み合わせを示す:
(i)ヒトBCMAに結合すること;
(ii)サルBCMAに結合すること;
(iii)APRILとBCMAとの結合をブロックすること;或いは
(iv)ヒトTACI又は/及びBAFFRタンパク質に結合しないこと。
【請求項8】
BCMAに結合し、且つ請求項1~7のいずれかに記載の少なくとも1つの単一可変ドメインを含む、分離された抗原結合分子。
【請求項9】
請求項8に記載の分離された抗原結合分子であって、前記抗原結合分子は、抗体、単一特異性抗体、多重特異的抗体又は免疫コンジュゲートである;任意に、前記抗体又は免疫コンジュゲートは、免疫グロブリン定常領域を含む;任意に、前記免疫グロブリン定常領域には、ヒト免疫グロブリンFc、好ましくはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFcを含む;任意に、前記抗原結合分子は、SEQ ID NO:27、29、31又は33で示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の分離された抗原結合分子であって、以下の性質のうちの1つ又は複数の組み合わせを示す:
(i)ヒトBCMAに結合すること;
(ii)サルBCMAに結合すること;
(iii)APRILとBCMAとの結合をブロックすること;及び、
(iv)ヒトTACI又は/及びBAFFRタンパク質に結合しないこと。
【請求項11】
活性成分及び薬学的に許容されるベクターを含み、活性成分は、請求項1~7のいずれかに記載の単一可変ドメイン又は請求項8~10のいずれかに記載の抗原結合分子である、組成物。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載の単一可変ドメイン又は請求項8~10のいずれかに記載の抗原結合分子をコードする、分離された核酸。
【請求項13】
BCMAを発現する腫瘍にかかっている被験者を治療する方法であって、治療上有効量の請求項1~7のいずれかに記載の単一可変ドメイン、請求項8~10のいずれかに記載の抗原結合分子又は請求項11に記載の組成物を前記被験者に投与させることが含まれる;任意に、前記した腫瘍は、B細胞悪性腫瘍である;任意に、前記B細胞悪性腫瘍は、リンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫又は白血病である、前記方法。
【請求項14】
細胞におけるBCMAシグナル伝達を抑制、低減又はブロッキングする方法であって、有効量の請求項1~7のいずれかに記載の単一可変ドメイン、請求項8~10のいずれかに記載の抗原結合分子又は請求項11に記載の組成物を前記細胞に投与することが含まる;任意に、細胞は、B細胞悪性腫瘍細胞である;任意に、前記B細胞悪性腫瘍は、リンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫又は白血病である、前記方法。
【請求項15】
自己免疫疾患にかかっている被験者を治療する方法であって、治療上有効量の請求項1~7のいずれかに記載の単一可変ドメイン、請求項8~10のいずれかに記載の抗原結合分子又は請求項11に記載の組成物を前記被験者に投与することを含み、任意に、前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデスである、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、抗原結合分子に関し、特にBCMAと結合する単一可変ドメイン及び抗原結合分子に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
B細胞成熟抗原(BCMA)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRS17)とも言われ、人体のTNFRSF17遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0003】
BAFF、APRILは、BCMAのリガンドであり、その中のBAFF(BLyS、TALL-1、THANK、zTNF4、TNFSF20、D8Ertd387eとも言われる)は、BCMAの高親和性リガンドであり、APRIL(増殖誘発リガンド、TNFSF13、TALL-2、TRDL-1とも言われる)は、BCMAの低親和性リガンドである。そして、BAFF、APRILは、さらに腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーメンバーB細胞活性化因子受容体(B-cell activationfactor receptor;BAFF-R)、膜貫通活性化剤及びカルシウム調整シクロパンリガンド相互作用分子(transmembrane activator and calcium modulator and cyclophilin ligand interactor;TACI)のリガンドである。BCMAは、BAFF-R、TACIと一緒にB細胞の増殖、生存、成熟、及び分化を調節する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多発性骨髄腫は、悪性乳管細胞疾患であり、多発性骨髄腫細胞において、BCMAの発現レベルが大幅に増加している。BCMAは多発性骨髄腫に対する免疫療法剤のための適切な腫瘍抗原標的であり得る。BCMAに結合する抗体などの免疫治療薬は、BCMAとその天然リガンドであるBAFF又は/及びAPRILとの結合を阻害することができる。潜在的な治療標的として、BCMAを標的とするいくつかの抗体が開発されたが、それらはまだ限られており、より多くの選択肢が必要である。
【0005】
ラクダ科動物の体内のIgG抗体は、従来の軽鎖と重鎖を含む4鎖構造抗体IgG1に加え、さらに軽鎖を含まず重鎖のみの抗体(HcAb)IgG2とIgG3が天然に存在している。重鎖のみの抗体中の単一の可変領域ドメイン(VHH又は単一可変ドメイン)が、抗原に特異的な結合の特性を有し、且つ抗原に対して高い親和性を有し、単一ドメイン抗体(sdAb)と言われる。その独自性に基づいて、従来のscFv、Fabのような抗体フラグメントよりも、VHHドメインを単独で、又はより大きな抗原結合分子の一部として使用することは、いくつかの顕著な利点を有し、例えば、単一ドメインだけで高親和性で抗原を特異的に結合し、容易に多価及び多重特異性形式に改造することができ、VHHドメインは高度に可溶かつ凝集傾向がなく、分子が小さくて高い組織透過性を示し、単一ドメイン抗体は軽鎖とペアリングする必要がない、重鎖ミスマッチの問題は、二重特異性抗体又は多重特異性抗体を構成する際には存在しないなどがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、BCMAと結合する単一可変ドメイン及び抗原結合分子を提供する。本発明は、係る単一可変ドメイン及び抗原結合分子をコードする、関係なヌクレオチド、ベクター、細胞、組成物、構築方法及び使用をさらに提供する。
【0007】
一面において、本発明は、BCMAと結合する、分離された単一可変ドメインを提供する。前記単一可変ドメインには、以下から選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む
(a)SEQ ID NO:7、10、13及び16から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するCDR1;
(b)SEQ ID NO:8、11、14及び17から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR2;及び
(c)SEQ ID NO:9、12、15及び18から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するCDR3。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記単一可変ドメインには、以下のいずれか1つのグループから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む
(i)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR3;
(ii)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR3;
(iii)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR3;或いは
(iv)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDR3。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記単一可変ドメインには、SEQ ID NO:19、21、23又は25の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0010】
一面において、本発明は、分離された単一可変ドメインを提供する。前記単一可変ドメインには、SEQ ID NO:19、21、23又は25のアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0011】
一面において、本発明は、分離された単一可変ドメインを提供する。前記単一可変ドメインには、SEQ ID NO:19、21、23又は25のアミノ酸配列を含む。
【0012】
一面において、BCMA細胞外領域に結合し、結合部位がSEQ ID NO:35又はSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列を有するBCMA細胞外領域のGln7-His19、Pro23-Ser30及びAsn31-Ser44の位置の1つ又は複数のアミノ酸に位置する、分離された単一可変ドメインを提供する。ここの前記位置はヒトBCMA細胞外領域の1番目のアミノ酸(位置1)から順次に番号付ける。
【0013】
一面において、本発明は、本明細書のいずれかの実施形態で説明された単一可変ドメインに対して同じエピトープを結合する、分離された単一可変ドメインを提供する。
【0014】
一面において、本発明は、BCMAとの結合に対して、本明細書のいずれかの実施形態に記載された単一可変ドメインと競合する、分離された単一可変ドメインを提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書の上記単一可変ドメインは、ラクダ科動物のもの又はヒト化したものである。いくつかの実施形態では、本明細書の上記単一可変ドメインは、VHHであり、好ましくは、ラクダ科動物のVHH又はヒト化したVHHである。
【0016】
一面において、本発明は、本明細書に記載した単一可変ドメインの使用を提供する。前記の使用には、抗体を好ましい例とする抗原結合分子、単一特異性抗体、多重特異的抗体又は免疫コンジュゲートを構築するための使用が含まれる。
【0017】
一面において、本発明は、分離された抗原結合分子を提供する。それがBCMAに結合し、且つ少なくとも1つの本明細書に記載した単一可変ドメインを含む。
【0018】
一面において、本発明は、活性成分及び薬学的に許容されるベクターを含み、その有効成分は、本明細書に記載した単一可変ドメイン又は本明細書に記載した抗原結合分子である、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前記抗原結合分子は、SEQ ID NO:27、29、31又は33で示されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
一面において、本発明は、本明細書に記載の単一可変ドメインまたは抗原結合分子をコードする単離された核酸を提供する。
【0020】
一面において、本発明は、本明細書に記載の単離された核酸を含むベクターを提供する。
【0021】
一面において、本発明は、本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0022】
一面において、試料中のBCMAを検出または測定する方法であって、試料を、本明細書に記載の単一可変ドメインまたは抗原結合分子と接触させ、結合複合体を検出または測定することを含む方法を提供する。
【0023】
一面において、本発明は、前記宿主細胞を培養し、発現された単一可変ドメインを単離することを含み、ここで、ベクターは発現ベクターであり、前記宿主細胞は前記単一可変ドメインをコードする核酸を含む、本明細書に記載の単一可変ドメインを調製する方法を提供する。
【0024】
一面において、本発明は、前記宿主細胞を培養し、発現された抗原結合分子を単離することを含み、ここで、ベクターは発現ベクターであり、前記宿主細胞が前記抗原結合分子をコードする核酸を含む、前記抗原結合分子を調製する方法を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、BCMAを発現する腫瘍に罹患している被験体を処置する方法であって、該被験体に、治療上有効量の前記単一可変ドメイン、前記抗原結合分子、または前記組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0026】
別の態様では、細胞内のBCMAシグナル伝達を阻害、低減またはブロックする方法であって、有効量の前記単一可変ドメイン、前記抗原結合分子または前記組成物を細胞に投与することを含む方法。
【0027】
別の態様では、本発明は、BCMAを発現する腫瘍細胞を殺傷する、または増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞を、前記単一可変ドメイン、前記抗原結合分子または前記組成物と接触させることを含む、方法を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患に罹患している被験体を治療する方法であって、治療上有効量の本明細書に記載の単一可変ドメイン、本明細書に記載の抗原結合分子、または本明細書に記載の組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、ELISA測定による抗ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体と抗原との結合曲線である。
【
図2A】
図2Aは、フローサイトメトリー測定による抗ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体とCHO-hBCMA細胞の結合曲線である。
【
図2B】
図2Bは、フローサイトメトリー測定による抗ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体とU266細胞の結合曲線である。
【
図2C】
図2Cは、フローサイトメトリー測定による抗ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体とRPMI8226細胞の結合曲線である。
【
図2D】
図2Dは、フローサイトメトリー測定による抗ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体とHUVEC細胞の結合曲線である。
【
図3A】
図3Aは、フローサイトメトリー測定による1A10-Fc、1A11-Fcキメラ抗体とHEK293T-CynoBCMAの結合曲線である。
【
図3B】
図3Bは、フローサイトメトリー測定による1A10-Fc、1A11-Fcキメラ抗体とHEK293Tの結合曲線である。
【
図4】
図4は、ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体とリガンドAPRILの競合ELISAの測定結果を示す。
【
図5A】
図5Aは、ヒトとカニクイザルとのBCMAの細胞外領域アミノ酸配列の対比図である。
【
図5B】
図5Bは、ヒトBCMAの細胞外領域結晶構造である。
【
図5C】
図5Cは、1A1、1A10、1A11及び1B10のエピトープ関係である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
用語
「抗原結合分子」という用語は、最も広い意味で抗原決定基と特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子のいくつかの代表例は、抗体、融合タンパク質、抗体コンジュゲートである。
【0031】
「免疫グロブリン」という用語は、天然抗体構造を持つタンパク質を指す。例えば、ヒトIgG類の免疫グロブリンが約150,000のダルトンのエイリアンバスクリンタンパク質であり、ジスルフィド結合で接続された2つの軽鎖と2つの重鎖で構成されている。N末端からC末端まで、各重鎖には、重鎖可変領域(VH)があり、その後、ヒンジ領域(HR)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)は、重鎖定常領域とも言われる。IgE免疫グロブリンの場合、重鎖にはさらにCH4ドメインを有する。従って、免疫グロブリン重鎖は、N末端からC末端の方向まで以下で構成されるポリペプチドである:VH-CH1~HR-CH2-CH3~(CH4)。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖には、軽鎖可変領域(VH)があり、その後、定常軽鎖ドメインは、軽鎖定常領域(CL)とも言われる。従って、免疫グロブリン軽鎖は、N末端からC末端の方向まで以下で構成されるポリペプチドである:VL-CL。ヒト免疫グロブリンは、基本的に免疫グロブリンヒンジ領域で接続された2つのFab及びFcドメインで構成されている。
【0032】
「抗体」という用語は、最も広範な意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異性抗体、三重特異性抗体)、及び抗体断片の様々な抗体構造を含むが、希望の抗原結合活性を示す限り、これらに限定されない。
【0033】
「可変ドメイン」又は「可変領域」という用語は、当該抗体と抗原との結合に関与する抗体のドメインを指す。天然抗体の各可変ドメインは、基本的に4つの「フレーム領域」と3つの相補性決定領域で構成されている。4つの「フレーム領域」は、本分野及び下文において、それぞれが「フレーム領域1」又は「FR1」、「フレーム領域2」又は「FR2」、「フレーム領域3」又は「FR3」、及び「フレーム領域4」又は「FR4」と呼ばれる;前記フレーム領域は、本分野及び下文において、それぞれが「相補性決定領域1」又は「CDR1」、「相補性決定領域2」又は「CDR2」、及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と呼ばれる3つの「相補性決定領域」又は「CDR」で分離されている。従って、可変ドメインの一般的な構造又は配列は、次のように表現できる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。可変ドメインでは、抗原結合部位により抗原に対する抗体の特異性を与える。
【0034】
「単一可変ドメイン」という用語は、他の可変ドメインとペアリングせずに抗原エピトープを特異的に結合できる可変ドメインを指す。単一可変ドメインの抗原結合部位は、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)によって形成され、単一のドメインに存在する。ある場合には、単一の抗原結合ユニット(つまり、基本的に単一可変ドメインで構成される機能的抗原結合ユニットで、このように、単一抗原結合ドメインは、機能性抗原結合ユニットを形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要はない)を形成できる限り、単一可変ドメインは重鎖可変ドメイン(例えばVH)又はその適切なフラグメントであり得る。単一可変ドメインの別の代表例は、ラクダ科の「VHHドメイン」である(又は「VHH」又は「VHH」と簡単に言う)。
【0035】
「VHHドメイン」は、VHH、VHH、VHHドメイン又は単一ドメイン抗体とも言われ、最初は「重鎖抗体のみ」(つまり、「軽鎖欠如抗体」)の抗原と結合する可変ドメインとして説明されていた。「VHHドメイン」という用語を使用して、これらの可変ドメインを、従来の4鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書では、「VHドメイン」又は「VH」と呼ばれる) と区別するため、及び従来の4鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメインと区別するため(本明細書では、と呼ばれる「VLドメイン」又は「VL」)である。VHHドメインは他の抗原結合ドメインなしで特異的にエピトープに結合する(これは、従来の4鎖抗体のVH又はVLドメインとは異なる。4鎖抗体では、VLドメインとVHドメインともにエピトープを識別する。)。VHHドメインは、単一のドメインによって形成される小さな安定化、効率的な抗原認識ユニットである。
【0036】
「CDR」(相補性決定領域)は、「超可変領域(HVR)」とも言われ、通常、配列上に高度に可変及び/又は構造化された環を形成する個々抗体可変領域を指す。天然の4鎖抗体には通常、6つのCDRが含まれ、3つは重鎖可変領域にあり(重鎖CDR1、重鎖CDR2及び重鎖CDR3)、3つは軽鎖可変領域にある(軽鎖CDR1、軽鎖CDR2及び軽鎖CDR3)。重鎖抗体又は単一可変ドメインのみが通常3つのCDR(CDR1(又はHVR1)、CDR2(又はHVR2)、及びCDR3(又はHVR3))を有する。CDR3は、3つのCDRの中で最も多様なものであり、抗体に優れた特異性を与える上でユニークな役割を果たすと考えられている。
【0037】
現在、CDRを定義する方法はいくつかある。中では、Kabatの定義は、配列の可変性に基づいてCDRを分割し、最も一般的に使用されている(Elvin A.Kabat、et al、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991));一方、Chothiaの定義は構造リングの位置に基づいている(Cyrus Chothia、et al、Canonical Structures for the Hypervariable Regions of Immunoglobulins、J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM定義は、Kabatの定義とChothiaの定義の間のトレードオフであり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用されている。「接触(contact)」では、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づいて、CDRを定義しているものである。これらのCDRの各残基は、以下の表S1に記載されている。
【0038】
表S1 CDRの分割
【0039】
【0040】
本明細書の特定のコンテキストの下で、「相補性決定領域」、「CDR」、又は「HVR」は、Kabatによって定義されたCDRのことを指す(Elvin A.Kabat、et al、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。当業者は、抗体のアミノ酸配列の可変領域に基づいて任意に定義されたCDRに含まれるアミノ酸残基を通常的に決定でき、他の定義された(例えばChothia、AbMによる定義など)CDRについても、本発明の範囲にある。
【0041】
単一可変ドメイン(例えばVHH)のアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら(Elvin A.Kabat、et al、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))によって与えられたVHユニバーサル番号付けシステムによる行われる。例えば、Riechmannなどによる論文(L Riechmann、et al、Single domain antibodies:comparison of camel VH and camelised human VH domains、J.Immunol.Methods.(1999))でラクダ科動物のVHHドメインに適用されていた。この番号付けにしたがって、VHHのFR1には、位置1~30のアミノ酸残基が含まれ、VHHのCDR1には、位置31~35のアミノ酸残基が含まれ、VHHのFR2には、位置36~49のアミノ酸が含まれ、VHHのCDR2には、位置50-65のアミノ酸残基が含まれ、VHHのFR3には、位置66~94のアミノ酸残基が含まれ、VHHのCDR3には、位置95~102のアミノ酸残基が含まれ、VHHのFR4には、位置103~113のアミノ酸残基が含まれる。この点で、注意すべきことは、本分野でよく知られているVH及びVHHのように、各CDRでアミノ酸残基の総数を変更でき、そしてKabat番号に示されているアミノ酸残基の総数に対応できない場合がある(つまり、実際の配列において、Kabat番号に基づく1つ以上の位置が占有されていなくてもよい、又は実際の配列がKabat番号によって許容される数よりも多くのアミノ酸残基を含んでいてもよい)。
【0042】
「Kabatの可変ドメイン残基番号」又は「Kabatのアミノ酸の位置番号」及びその変化とは、Kabatらによる抗体の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを番号付けするシステムを意味する(Elvin A.Kabat、et al、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。この番号付けシステムを使用して、実際の線形アミノ酸配列には、可変ドメインのFR又はCDRの短縮又は挿入に対応する、より少ない又は追加のアミノ酸を含むことができる。例えば、重鎖可変ドメインには、CDR2アミノ酸残基52番目の後の単一のアミノ酸インサート(Kabatによるアミノ酸残基52a)及び重鎖FRアミノ酸残基82番目の後の単一の挿入されたアミノ酸残基(例えばKabatによるアミノ酸残基82a、82b及び82cなど)が含まれる。規定の抗体のアミノ酸残基のKabat番号は、抗体配列を「標準的な」Kabat番号の相同領域配列と照合することにより決定することができる。
【0043】
用語「フレーム領域」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるCDR残基以外の可変ドメインのアミノ酸残基である。
【0044】
「ヒト共通フレームワーク領域」または「受容体ヒトフレームワーク」という用語は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク領域の配列の中で最もよく出現するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから得られる。一般に、配列のサブグループはKabatらによるSequences of Proteins of ImmunologicalInterest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)におけるサブグループである。例として、VLについては、サブグループはKabatら(出典は同じ)が述べたサブグループκI、κII、κIIIまたはκIVであってもよい。また、VHについては、サブグループは、Kabatらが述べたサブグループI、サブグループIIまたはサブグループIIIであってもよい。或いは、ヒト共通フレーム領域が上文の特定的残基から誘導され、例えば、ドナーフレーム領域配列を様々なヒトフレーム領域配列の集合と照合することにより、ヒトフレーム領域残基とドナーフレーム領域との相同性に基づいてヒトフレーム領域残基を選択する場合、ヒト共通フレーム領域から「誘導された」受容体ヒトフレームは、同じアミノ酸配列を含んでいてもよい、又はアミノ酸配列の既存の変化を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は10以下であり、9 以下であり、8以下であり、7以下であり、6以下であり、5以下であり、4以下であり、3以下であり又は2以下である。
【0045】
「Fcドメイン」又は「Fc」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用され、少なくともいくつかの定常領域を含む。この用語には、天然の配列Fc及び変異体Fcが含まれる。FcのC末端リシン(EU番号付けシステムに従うLys447)は存在するか、存在しない可能性がある。
【0046】
「EC50」という用語は、有効濃度であり、最大応答の50%における抗原結合分子の濃度を意味する。「IC50」という用語は、抗原結合分子の50%の最大応答を抑制する濃度を意味する。EC50とIC50の両方は、ELISA又はFACS分析、又は当技術分野で知られている他の方法によって測定することができる。
【0047】
「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、平衡解離定数を指し、モル濃度(M)で表される。抗原結合分子のKD値は、当業者に公知の方法を用いて測定することができる。抗原結合分子KDを測定する方法は、例えばBiacoreのようなバイオセンサシステムを用いるなど、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)を用いる。
【0048】
「治療」という用語は、統計学的に有意的に疾患(例えば、疾病)、疾患の症状を治療、治癒、軽減、緩和、変化、修復、救済、改善、改良、又は影響を与えるため、又は症状、合併症、生化学的指標の発作を予防又は遅らせるため、又はその他の方法で疾患、病気、又は病状のさらなる進行を阻止又は抑制するために、処置を使用することを意味する。
【0049】
用語「治療上有効量」は、治療的及び/又は予防的利益を被験体に提供するために必要な抗原結合性分子又は組成物又は他の投与物の量である。
【0050】
「被験者」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、馬、牛、ニワトリ、両生類、爬虫類など哺乳類や非哺乳類動物を含む。好ましくは、本発明の被験者はヒトである。「患者」又は「被験者」という用語は、明示されていない限り、交換して使用されてもよい。
【0051】
「特異的な結合」又は「特異的結合」という用語は、結合が抗原に対して選択的であり、不必要又は非特異的な相互作用から区別できることを意味する。特定の抗原決定基に結合する抗原結合分子又は単一可変ドメインの能力は、酵素結合免疫測定法(ELISA)又は表面プラズモン共鳴(SPR)技術(Biacore装置上での分析)のような当業者によく知られた他の技術によって測定することができる。
【0052】
「分離された」という用語は、自然環境から分離された標的化合物(例えば、VHH、抗原結合分子、抗体、又は核酸)を指す。
【0053】
「エピトープ」又は交換可能に使用される用語「抗原決定基」という用語は、抗体の相補部位が結合した抗原上の任意の抗原決定基を指す。抗原決定基は、一般に、アミノ酸又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面基を含み、一般に、特定の三次元構造的特徴及び特定の電荷的特徴を有する。例えば、エピトープは、一般に、「線形」エピトープ又は「コンホメーション」エピトープとすることができる、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個の連続又は非連続のアミノ酸を特徴とする。線状エピトープでは、タンパク質と相互作用分子(例えば、抗体)との間の相互作用のすべての点が、タンパク質の1次アミノ酸配列に沿って線状に存在する。コンホメーションエピトープでは、相互作用の点が互いに離れたタンパク質アミノ酸残基にまたがって存在する。
【0054】
配列「同一性(identity)」という用語は、一致性とも呼ばれる。2つのシーケンス間のパーセンテージ同一性は、シーケンスに共通する同一位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一位置の数/位置の総数×100)。ここでは、2つのシーケンスを生成する最適な比較するためいに、導入すべきノッチの数と各ノッチの長さを考慮する必要がある。以下の非限定的な実施形態に示されるように、シーケンスの比較及び2つのシーケンス間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。E.Meyers及びW.Millerのアルゴリズムを用いて(Comput.Appl.Biosci.、4:11~17(1988))2つのアミノ酸配列間の的パーセント同一性を測定することができ、このアルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120残基の重み表を使用して、ノッチ長のペナルティが12、ノッチペナルティが4であることが示されている。さらに、両アミノ酸配列のパーセント同一性は、GCGパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.484-453(1970))を使用して決定することができ、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックスを使用し、16、14、12、10、8、6又は4のノッチ重み、1、2、3、4、5又は6の長さ重みを有する。
【0055】
本明細書で使用されるように、「約」は、特定の値がどのように検査又は測定されるか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存して、当業者が特定の値に対して許容できると判断した誤差の範囲内であることを意味する。例えば、「約」は、当業者の慣行に従った標準偏差の1倍以内又はそれを超える1倍以内を表すことができる。代替的に、「約」は、例えば、与えられた特定の数値範囲±2%の範囲、±1%の範囲、又は±0.5%の範囲内で変動するような、多くて5%(すなわち±5%)の範囲を表すことができる。さらに、特に生物学的システム又は方法に関しては、この用語は、1桁以上、又はある値の5倍以上を表すことができる。本出願又は特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合は、別段の記載がない限り、「約」の意味は、特定の値の許容可能な誤差の範囲内にあるものとみなされる。
【0056】
本明細書では、別段の記載がない限り、用語「含む」又はその同等物(例えば、含有、含むなど)は、明示された要素、ステップ又は構成要素を含むがこれに限定されるものではなく、明示されていない要素、ステップ又は構成要素に対してオープンであることを意味するオープン用語である。
【0057】
本明細書では、別段の記載がない限り、単数の用語は複数の参照をカバーし、その逆も同様である。
【0058】
すべての特許、特許出願及び他の特定された出版物は、説明及び開示の目的のために、ここにおいて明示的に本明細書に引用によって組み込まれる。これらの出版物は、その公開が出願の出願日より前であることのみを理由として提供される。書類の日付又は書類の内容に関するすべての表示は、出願人が入手可能な情報に基づくものであり、書類の日付又は書類の内容の正当性に関するいかなる承認も構成しないものとする。さらに、いずれの国においても、本明細書におけるこれらの出版物へのいかなる引用も、その出版物がその分野の公知の常識の一部であるという認識を構成するものではない。本発明の様々な態様について、以下のセクションでさらに詳細に説明する。
【0059】
単一可変ドメイン
本発明の一態様は、BCMA(例えばヒトBCMA)に結合された分離された単一変動ドメインを提供する。単一可変ドメインは、BCMA標的薬の開発又は薬物構造の構築のためのより利用可能な選択を提供する。単一可変ドメインは、ヒトBCMAに対して良好な親和性を有し、増殖誘導リガンドAPRILのBCMAへの結合をブロックすることができるなど、多くの望ましい治療特性を有する。特別に、いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはヒトTACI及びBAFFRタンパク質と結合せず、特異性を示す。いくつかの実施形態では、サルBCMAと交差反応があり、サルは薬物毒性実験における理想的な実験動物であるため、サルとの交差反応は薬物毒物実験の展開に有利である。
【0060】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:19で示される単一可変ドメインの1つ、2つ、又は3つのCDRのすべてを含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。ある特定の実施形態では、SEQ ID NO:19で示される単一可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:21で示される単一可変ドメインの1つ、2つ、又は3つのCDRのすべてを含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。ある特定の実施形態では、SEQ ID NO:21で示される単一可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:23で示される単一可変ドメインの1つ、2つ、又は3つのCDRのすべてを含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。ある特定の実施形態では、SEQ ID NO:23で示される単一可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:25で示される単一可変ドメインの1つ、2つ、又は3つのCDRのすべてを含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。ある特定の実施形態では、SEQ ID NO:25で示される単一可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはラクダ科動物のものである。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはヒト化されている。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインは受容体ヒトフレームワークを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、以下の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全ての3つのCDRから選択されるCDRを含み、BCMAと結合する単一可変ドメインが提供される:(a)SEQ ID NO7、10、13及び16から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1;(b)SEQ ID NO:8、11、14及び17から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2;(c)SEQ ID NO:9、12、15及び18から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはラクダ科動物のものである。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはヒト化されている。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインは受容体ヒトフレームワークを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、(a)7、10、13及び16から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR1;(b)SEQ ID NO:8、11、14及び17から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR2;及び(c)SEQ ID NO:9、12、15及び18から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR3。いくつかの具体的な実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、(a)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR1;(b)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列と少なくとも約 85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR2;及び(c)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR3。いくつかの具体的な実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、(a)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR1;(b)SEQ ID NO:11のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR2;及び(c)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR3。いくつかの具体的な実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、(a)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR1;(b)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR2;及び(c)SEQ ID NO:15のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR3。いくつかの具体的な実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、(a)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列と少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR1;(b)SEQ ID NO:17のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約 99%又は約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR2;及び(c)SEQ ID NO:18のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDR3。いくつかの実施形態では、少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するCDRは、参照配列に対して置換(例えば、保守的置換)、挿入、又は欠失を含むが、この配列を含む単一可変ドメインは、BCMAに結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む単一可変ドメインを提供し、前記CDRは、下記の(a)~(c)を含む;(a)SEQ ID NO:7、10、13及び16から選択されるアミノ酸配列と比較して、約1つまたは約2つのいずれか1つのアミノ酸置換(例えば、保守的な交換)、挿入、又は欠失を有するCDR1;(b)SEQ ID NO:8、11、14及び17から選択されるアミノ酸配列と比較して、約1つ、約2つまたは約3つのいずれか1つのアミノ酸置換(例えば、保守的な交換)、挿入又は欠失を有するCDR2;及び(c)SEQ ID NO:9、12、15及び18から選択されるアミノ酸配列と比較して、約1つ、約2つまたは約3つのいずれか1つのアミノ酸置換(例えば、保守的な交換)、挿入又は欠失を有するCDR3。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインは、成熟した親和性である。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはラクダ科動物のものである。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはヒト化されている。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインは受容体ヒトフレームワークを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含むBCMAと結合する単一可変ドメインを提供する。前記CDRには、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDR1;SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDR2;及びSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはラクダ科動物のものである。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインはヒト化されている。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインは受容体ヒトフレームワークを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、単一可変ドメイン(上記の実施形態のいずれかを含み、例えば上記特定のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む単一可変ドメイン)は、SEQ ID NO:19、21、23及び25から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含む。いくつかの具体的な実施形態では、単一可変ドメイン(上記の実施形態のいずれかを含み、例えば上記特定のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む単一可変ドメイン)は、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含む。いくつかの具体的な実施形態では、単一可変ドメイン(上記の実施形態のいずれかを含み、例えば上記特定のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む単一可変ドメイン)は、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含む。いくつかの具体的な実施形態では、単一可変ドメイン(上記の実施形態のいずれかを含み、例えば上記特定のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む単一可変ドメイン)は、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHドメインを含む。いくつかの具体的な実施形態では、単一可変ドメイン(上記の実施形態のいずれかを含み、例えば上記特定のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む単一可変ドメイン)は、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含む。いくつかのより具体的な実施形態では、単一可変ドメインは、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含み、そして、VHHは、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかのより具体的な実施形態では、単一可変ドメインは、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含み、そして、VHHは、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかのより具体的な実施形態では、単一可変ドメインは、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含み、そして、VHHは、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかのより具体的な実施形態では、単一可変ドメインは、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列と少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%のいずれか1つの配列同一性を有するVHHを含み、そして、VHHは、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDR1を含み、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDR3、を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%のいずれか1つの配列同一性を有する的VHH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保守的置換)、挿入、又は欠失を含むが、この配列を含む単一可変ドメインは、BCMAに結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:19、21、23及び25からなる群から選択されるアミノ酸配列において、合計1~18、1~16、1~14、1~12、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失される。いくつかの実施形態では、置換、挿入又は欠失は、CDR以外の区域で(即ち、FRで)発生する。いくつかの実施形態では、置換、挿入又は欠失は、CDR領域で発生し、例えばCDR1、CDR2、CDR3のうちの1つ、2つ又は3つで発生する。いくつかの実施形態では、置換、挿入又は欠失は、CDR領域及び非CDR領域で発生する。任意的に、単一可変ドメインは、SEQ ID NO19、21、23及び25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、この配列の翻訳後修飾を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:19、21、23又は25のアミノ酸配列を有するVHHを含む分離された単一可変ドメインを提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記単一可変ドメイン(上記の実施形態のいずれかを含み、例えば上記特定のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む単一可変ドメイン)はVHHである。基本的に、VHHは、N-末端からC-末端まで以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有し、その中で、FR1~FR4はそれぞれフレーム領域1~4を指し、CDR1~CDR3は相補性決定領域1~3を指す。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記単一可変ドメイン(上記の実施形態のいずれかを含み、例えば上記特定のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む単一可変ドメイン)はヒト化したVHHである。非ヒト由来の単一可変ドメインは、ヒトの従来の4本鎖抗体のVHドメインの対応する位置に存在する1つ以上のアミノ酸残基で、元の単一可変ドメイン配列のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基を置換することによって「ヒト化」され得る。ヒト化により免疫原性を低下することが期待できる。
【0068】
いくつかの実施形態では、上記のいずれかの実施形態による単一の可変ドメインは、以下の特性特徴のうちの1つ又は複数を個別に又は組み合わせて含むことができる。
(i)ヒトBCMAに結合すること;
(ii)サルBCMAに結合すること;
(iii)APRILとBCMAとの結合をブロックすること;或いは
(iv)ヒトTACI又は/及びBAFFRタンパク質に結合しないこと。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインは、ヒトBCMAに結合する。いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインはヒトBCMA及びカニクイザルBCMAなどのサルBCMAに結合する。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインは、APRILとBCMAとの結合をブロックする。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインは、ヒトTACI又は/及びBAFFRタンパク質に結合しなく、良好な特異性を示す。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインは、上記性質特徴(i)-(ii)の組み合せを有する。いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインは、上記の性質特徴(i)及び(iii)の組み合せを有する。いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインは、上記性質特徴(i)、(iii)と(iv)の組み合せを有する。いくつかの実施形態では、前記の単一可変ドメインは、上記性質特徴(i)-(iv)の組み合せを有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載した単一可変ドメインのいずれか1つに対して同じエピトープに結合する単一可変ドメインを提供する。いくつかの具体的な実施形態では、SEQ ID NO:19、21、23又は25のアミノ酸配列を含む単一可変ドメインに対して同じエピトープに結合する単一可変ドメインを提供する。いくつかの実施形態では、前記同じエピトープに結合する単一可変ドメインは、ラクダ科動物のものであるか、又はヒト化されたものである。
【0074】
当業者に知られている従来技術を用いて、単一の可変ドメインを、同じエピトープとの結合に関して競合的にスクリーニングすることができる。例えば、競合及び交差競合研究は、抗原との結合上、互いに競合するか又は交差競合する単一の可変ドメインを得るために行われ得る。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載した単一可変ドメインのいずれか1つと競合してBCMAに結合する単一可変ドメインを提供する。いくつかの具体的な実施形態では、SEQ ID NO:19、21、23又は25のアミノ酸配列を含む単一可変ドメインと競合的にBCMAに結合する単一可変ドメインを提供する。BCMAとの結合は、ELISA、フローサイトメトリー、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、又は当技術分野で知られている他の任意の方法によって測定することができる。いくつかの実施形態では、前記BCMAに競合的に結合する単一可変ドメインは、ラクダ科動物のものであるか、又はヒト化されたものである。
【0075】
本発明は、BCMAに結合されたいくつかの例示的な単一可変ドメインを提供する。本明細書で提供される例示的な単一可変ドメインのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)のアミノ酸配列は、以下の表S2に示されている。例示的な単一可変ドメインの全長アミノ酸配列は、以下の表S3に示されている。
【0076】
表S2:単一可変ドメインのCDR配列
【0077】
【0078】
表S3:単一可変ドメイン全長配列
【0079】
【0080】
抗原結合分子
本発明の単一可変ドメインは、任意の所望の抗原結合分子を構築するために使用され、それによって抗原結合分子にBCMAに標的結合する特性又は他の単一可変ドメインの特性を与えることができる。従って、本発明は、少なくとも1つ(1つ以上)の本発明の単一可変ドメインを含む単離された抗原結合分子を提供する。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記抗原結合分子は、以下のいずれか1つのグループから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む少なくとも1つの単一可変ドメインを含む
(i)SEQ ID NO:7に示されるCDR1、SEQ ID NO:8に示されるCDR2、及びSEQ ID NO:9に示されるCDR3;
(ii)SEQ ID NO:10に示されるCDR1、SEQ ID NO:11に示されるCDR2、及びSEQ ID NO:12に示されるCDR3;
(iii)SEQ ID NO:13に示されるCDR1、SEQ ID NO:14に示されるCDR2、及びSEQ ID NO:15に示されるCDR3;或いは
(iv)SEQ ID NO:16に示されるCDR1、SEQ ID NO:17に示されるCDR2、及びSEQ ID NO:18に示されるCDR3。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記単一可変ドメインは、SEQ ID NO:19、21、23又は25で示されるアミノ酸配列を含む。いくつかのより具体的な実施形態では、前記単一可変ドメインのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:19、21、23又は25に示されるようである。
【0083】
抗原結合分子が含む単一可変ドメインは2つ以上である場合に、同一又は異なる単一可変ドメインを選択することができる。
【0084】
前記した抗原結合分子は、抗体、単一特異性抗体、多重特異的抗体又は免疫コンジュゲートが含まれる。1つの実施形態では、前記した抗原結合分子は、抗体である。1つの具体的な例では、抗体は、単一特異性抗体であり、もう1つの具体的な例では、抗体は、二重特異性抗体である。1つの実施形態では、前記抗体又は免疫コンジュゲートは、免疫グロブリン定常領域を含む。1つより具体的な実施形態では、前記した抗体又は免疫コンジュゲートは、ヒト免疫グロブリンFcを含む。好ましくは、前記Fcは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFcである。
【0085】
いくつかの実施形態では、前記抗原結合分子は、ラクダ科動物のもの、キメラのもの又はヒト化されたものである。
【0086】
いくつかの実施形態では、上記の実施形態のいずれか1つの抗原結合分子は、独自又は組み合わせで以下の性質特徴の1つ以上を含む
(i)ヒトBCMAに結合すること;
(ii)サルBCMAに結合すること;
(iii)APRILとBCMAとの結合をブロックすること;或いは
(iv)ヒトTACI又は/及びBAFFRタンパク質に結合しないこと。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子はヒトBCMAに結合する。いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、ヒトBCMAに対して以下の結合親和性(KD)を有する:約1E-12Mから約1E-08Mまで、約1E-11Mから約1E-08Mまで、約8.12E-10Mから約1.29E-10Mまで、又は約8.12E-10Mから約3.13E-10Mまでの範囲内。いくつかの実施形態では、前記抗原結合分子は、ヒトBCMAに対して以下の結合親和性(KD)を有する:約1E-08M以下であり、約1E-09M以下であり、約8.12E-10M以下であり、約6.49E-10M以下であり、約3.13E-10M以下であり、又は、約1.29E-10M以下である。いくつかの実施形態では、Biacoreにより本明細書で提供された抗原結合分子の結合親和性KDを測定する。
【0088】
いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、ヒトBCMA及びサルBCMAを結合する。例えば1A10単一可変ドメイン、1A11単一可変ドメイン、1A10-Fc、1A11-Fcは、ヒトBCMAに対して良好な親和性を有するだけでなく、カニクイザルBCMAとも結合する。サルBCMAとの交差反応は、薬物毒性実験の開発と進みに寄与する。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、APRILとBCMAとの結合をブロックする。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、ヒトTACI又は/及びBAFFRタンパク質に結合しなく、良好な特異性を示す。
【0091】
いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、上記性質特徴(i)-(ii)の組み合せを有する。いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、上記性質特徴(i)と(iii)の組み合せを有する。いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、上記性質特徴(i)、(iii)と(iv)の組み合せを有する。いくつかの実施形態では、前記した抗原結合分子は、上記性質特徴(i)-(iv)の組み合せを有する。
【0092】
本発明は、ヒトIgG1のFcに単一の可変ドメインを融合させ、Fcを介して形成したホモ二量体である、単一特異的抗体(1A1-Fc、1A10-Fc、1A11-Fc及び1B10-Fc抗体を含む)のような抗原結合分子の例を提供する。例示的な単一特異性抗体のアミノ酸配列は、次の表S4に示される。
【0093】
表S4:例示的抗原結合分子の全長配列
【0094】
【0095】
組成物
本発明は、有効成分と薬学的に受容可能な担体とを含む薬学的組成物であって、ここで、有効成分が、本明細書に記載の単一可変ドメイン又は本明細書に記載の抗原結合分子である、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、1A1-Fc、1A10-Fc、1A11-Fc及び1B10-Fc抗体のいずれか1つ又は複数と、薬学的に許容される担体とを医薬組成物とする。薬学的に受容可能な担体は、例えば、賦形剤、希釈剤、封入剤、充填剤、緩衝剤、又は他の試薬を含む。
【0096】
分離された核酸
本発明は、本明細書に記載の単一可変ドメインまたは抗原結合分子をコードする単離された核酸を提供する。いくつかの実施形態では、前記核酸は、1A1-Fc、1A10-Fc、1A11-Fc又は1B10-Fcのような単一可変ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、前記核酸は、1A1-Fc、1A10-Fc、1A11-Fc又は1B10-Fcのような抗原結合分子をコードする。配列表には、単一可変ドメイン、抗原結合分子の核酸配列が例示的に示されている。
【0097】
ベクター
本発明は、前記した分離された核酸を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、前記したベクターは、クローニングベクターである。さらにいくつかの実施形態では、前記したベクターは、発現ベクターである。前記発現ベクターは、本明細書に記載の単一可変ドメイン又は抗原結合分子を発現することができる任意の発現ベクターであり、1つの具体例では、発現ベクターはpcDNA3.1である。
【0098】
宿主細胞
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載したベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、単一可変ドメイン又は抗原結合分子をクローニング又は発現するための適切な宿主細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、原核細胞である。さらにいくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、イースト細胞、哺乳細胞又は抗原結合分子の調製に適切なその他の細胞から選択される。哺乳細胞は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-S細胞である。
【0099】
単一可変ドメイン又は抗原結合分子を調製する方法
いくつかの実施形態では、本発明は、単一可変ドメインを調製する方法を提供する。前記方法には、本明細書に記載した単一可変ドメインをコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、前記宿主細胞又は宿主細胞の培地から前記単一可変ドメインを回収することを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、抗原結合分子を調製する方法を提供する。前記方法は、本明細書に記載した抗原結合分子をコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、前記宿主細胞又は宿主細胞培地から前記抗原結合分子を回収することを含む。
【0100】
前記の単一可変ドメイン又は抗原結合分子を生成するために、前記単一可変ドメイン又は抗原結合分子をコードする核酸をベクターに挿入して、さらに宿主細胞でクローニング又は/及び発現させる。前記核酸は、遺伝子の連結、化学的合成などの様々な本分野でよく知っている方法で取得することができる。
【0101】
使用
本発明は、単一可変ドメイン又は抗原結合分子の使用を提供する。
【0102】
本発明は、BCMA発現腫瘍がかかっている被験者を治療する方法を提供する。その方法は、前記被験者に治療上有効量の本明細書に記載した単一可変ドメイン、本明細書に記載した抗原結合分子又は本明細書に記載した組成物を投与することを含む。治療を受ける必要がある被験者には、すでに病気や症状にかかっている被験者、及び病気や状態に苦しむ可能性のある被験者や、そして疾患又は病態の予防、遅延又は緩和を目的とする被験者が含まれる。本発明は、さらに、BCMAを発現する腫瘍にかかっている被験者を治療する薬物の調製における本明細書に記載した単一可変ドメイン、本明細書に記載した抗原結合分子又は本明細書に記載した組成物の使用を提供する。
【0103】
本発明は、細胞におけるBCMAシグナル伝達を抑制、低減又はブロッキングする方法を提供する。その方法には、前記細胞に有効量の本明細書に記載した単一可変ドメイン、本明細書に記載した抗原結合分子又は本明細書に記載した組成物を投与することがふくまれる。さらに細胞におけるBCMAシグナル伝達を抑制、低減又はブロッキングするための薬物の調製における単一可変ドメイン又は抗原結合分子の使用を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は腫瘍細胞である。
【0104】
本発明は、BCMAを発現する腫瘍細胞を殺傷する又はBCMAを発現する腫瘍細胞の成長を抑制する方法を提供する。その方法は、前記腫瘍細胞を本明細書に記載した単一可変ドメイン、本明細書に記載した抗原結合分子又は本明細書に記載した組成物に接触させることを含む。本発明は、さらにBCMAを発現する腫瘍細胞を殺傷する又はBCMAを発現する腫瘍細胞の成長を抑制する薬物の調製における前記の単一可変ドメイン、抗原結合分子又は本明細書に記載した組成物の使用を提供する。
【0105】
上記腫瘍は、B細胞悪性腫瘍であり、具体的には、リンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫又は白血病が挙げられる。
【0106】
本発明は、自己免疫疾患に罹患している被験体を治療する方法であって、本明細書に記載の単一可変ドメイン、本明細書に記載の抗原結合分子、または本明細書に記載の組成物の治療上有効量を被験体に投与することを含む方法を提供する。本発明は、さらに自己免疫疾患にかかっている被験者を治療する薬物の調製における、本明細書に記載した単一可変ドメイン、本明細書に記載した抗原結合分子又は本明細書に記載した組成物の使用を提供する。前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデスであって良い。
【0107】
いくつかの実施形態では、サンプルにおけるBCMAを検査又は測定する方法を提供する。その方法には、前記サンプルを本明細書に記載した単一可変ドメイン又は抗原結合分子と接触させ、結合複合体を検査又は測定することを含む。
【0108】
明確に理解する目的で、前述の発明は例示及び実施形態によってかなり詳細に説明されてきたが、本発明の教示から、本発明が、添付の請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、さらにいくつかの変更及び修正を加えてもよいことは、当業者には明白であろう。以下の実施形態は、例示的に提供されるだけであって、限定的なものではない。当業者は、実質的に同様の結果をもたらすように変更又は修正され得る複数の非重要性パラメータを容易に識別するであろう。
【0109】
発明を実施するための形態
実施例1 抗BCMA単一ドメイン抗体ファージディズプレイ・ライブラリーの構築
1.1 動物免疫
組み換えヒトBCMA-Fc融合タンパク質(ACRO、製品カタログNo.BC7-H5254)と完全フロイントを体積比1:1で混合乳化し、フタコブラクダに初めて皮下多点注射免疫を行った。その後、2週間ごとに組換えヒトBCMA-Fc融合蛋白質と不完全フルードアジュバントを体積比1:1で混合乳化して免疫強化を行った。4回目又は5回目の免疫後に血清を採取して抗ヒトBCMA抗体の力価を検出する。多回免疫後にフタコブラクダの末梢血を採取し、末梢血単核球(PBMC)を分離した。
【0110】
1.2 RNA抽出
TRIzol(商標)薬剤を用いてPBMC(1.1由来)から全RNAを抽出した。抽出された全RNAを1%アガロースゲル電気泳動より品質を評価して、260nmと280nmでの吸光度を測定して定量し、OD260nm/OD280nmの比値は1.8~2.0の範囲である。
【0111】
1.3 VHH増幅
cDNA合成キットPrimeScript(商標)II 1st Strand cDNA Synthesis Kit(TAKARA、製品カタログNo.6210A)を用いて、指示にしたがって、全RNAをcDNAに逆転写した。nested PCR法を用いて、ラクダ抗体の可変領域配列を以下の方法で増幅した。cDNAをテンプレートとして、プライマーCall001(SEQ ID NO:1)及びCall002(SEQ ID NO:2)を用いて第1回PCR増幅を行い、増幅により得られたDNA産物の短片部分をガム回収キット(QIAGEN、製品カタログNo.28706)により精製した。第1回PCR産物を鋳型として、プライマーV-Back(SEQ ID NO:3)及びV-Fwd(SEQ ID NO:4)を用いて第2回PCR増幅を行い、増幅により得られたDNA産物であるVHHコーディングセグメントをゲル回収キット(QIAGEN、製品カタログNo.28706)を用いて精製した。
【0112】
Call001(SEQ ID NO:1):GTCCTGGCTGCTCTTCTACAAGG
Call002(SEQ ID NO:2):GGTACGTGCTGTTGAACTGTTCC
V-Back(SEQ ID NO:3):GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGRGGAGG
V-Fwd(SEQ ID NO:4):CTAGTGCGGCCGCTGAGGAGACGGTGACCTGGGT
第1回及第2回PCR反応プログラムは、94℃で6min前変性し、その後94℃で30s変性し、55℃で30sアニーリングして、72℃で30s伸長し、計30回サイクルして、最後に72℃で10min伸長した。
【0113】
1.4 VHHファージライブラリーの構築
nested PCR増幅により得られたVHHコーディングセグメントをPstI/NotIエンドヌクレアーゼで消化した後、ファージミドベクターpMECS(NTCCプラスミドベクター菌種細胞遺伝子寄託センター、製品カタログNo.pMECS)に挿入して、組み換えベクターに構築し、大腸菌TG1(Lucigen、製品カタログNo.60502-1)へ電気法にて導入した。形質転換後の菌液の一部を取り出し、希釈した後、100μg/mlアンピシリンを含む選択性プレートに塗布し、コロニーカウンタ法によりライブラリーの容量を算出し、無作為に100個のクローンを選択し、配列決定して、ライブラリー品質を評価した。残りの菌液100μg/mlアンピシリンを含む選択性プレートに塗布し、プレートからコロニーをかきとり、グリセリンを補充した後-80℃でライブラリー原種として保存した。VHHライブラリー原種を対数増殖期までに増幅した、M13KO7介助ファージ(New England Biolabs、製品カタログNo.N0315S)を入れてライブラリー増幅を行い、28℃、200rpm/分を一晩振って培養した。菌液を遠心して上清を取り、上清体積1/4のPEG6000/NaCl溶液(20%PEG6000(w/v)、2.5M NaCl)を入れて、氷上で1~2時間インキュベーションして、ファージを沈降し、遠心してファージ沈殿を回収し、PBSで再懸濁後、20%グリセリンを入れて単一ドメイン抗体ファージディズプレイ・ライブラリーとして-80℃で保存した。
【0114】
実施例2 抗ヒトBCMA単一ドメイン抗体のスクリーニング
2.1 スクリーニング
固相スクリーニングによって単一ドメイン抗体ファージディズプレイ・ライブラリーに対してスクリーニングした。組み換えBCMA-Avitage(商標)(ACRO、製品カタログNo.BCA-H82E4)をマイクロプレートリーダー用高吸着プレートに固定し、ブロッキング後、1.4で得られたファージをマイクロプレートに入れ、37℃で1~2時間インキュベーションした。リン酸塩/TWEEN緩衝液(PBST)で10回洗浄して、非特異的結合したファージを除去し、PBSで洗浄した後、trypsin酵素で結合したファージを溶出させ、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)で中和した後、大腸菌TG1に感染して増幅した後、次のライブラリースクリーニングを行った。2~3回スクリーニングした後、収集したファージを対数増殖期大腸菌TG1に感染させ、20%(w/v)ブドウ糖及び100μg/mlアンピシリンを含む選択性プレートにコーティングした。単一のクローンを選んで培養し、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)にて発現を誘導して上清を調製した。
【0115】
2.2 陽性クローンの同定
選抜されたクローンは、ヒトBCMA-His(ACRO、製品カタログNo.BCA-H522y)を対象とした間接ELISA法により陽性判定された。ヒトBCMA-His又は対照蛋白質ヒトFc蛋白(ACRO、製品カタログNo.FCC-H5214)をマイクロプレートリーダー用高吸着プレートにコーティングした後、ブロッキング液でブロッキングし、2.1で調製した上清を加えて37℃で1時間インキュベートし、洗浄後にHRP結合抗HAタグ二次抗体(GenScript、製品カタログNo.A01296)を加え、37℃で0.5時間インキュベーションし、5回洗浄し、発色基質を加えて発色し、波長450nm及び基準波長650nmにおける光吸収シグナル値を検出した。ヒトBCMA-Hisのみに結合且つシグナル値が比較的高い陽性クローンを選んで保存と配列決定を行った。スクリーニングにより陽性クローン1A1、1A10、1A11及び1B10を獲得した。配列解析の結果、1A1のVHHヌクレオチド配列がSEQ ID NO:20であり、アミノ酸配列がSEQ ID NO:19であり、1A10のVHHヌクレオチド配列がSEQ ID NO:22であり、アミノ酸配列がSEQ ID NO:21であり、1A11のVHHヌクレオチド配列がSEQ ID NO:24であり、アミノ酸配列がSEQ ID NO:23であり、1B10のVHHヌクレオチド配列がSEQ ID NO:26であり、アミノ酸配列がSEQ ID NO:25である。
【0116】
実施例3 抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体の調製
3.1 VHH-Fcキメラ抗体の調製
スクリーニングされた陽性クローンのVHH配列とヒトFc領域に連結し、VHH-Fcキメラ抗体を構築した。具体的に、2.2で配列決定によって得られたVHH配列又は抗ヒトBCMA VHH対照抗体(BM)配列(アミノ酸配列とCN109153731A中のSEQ ID NO:125と同じ)をヒトIgG1定常領域(アミノ酸配列がSEQ ID NO:5)を含有するpCDNA3.1真核発現ベクターに挿入し、Expifectamine (商標)CHO Transfection Kit一過性発現システム(Thermo Fisher Scientific Inc.、製品カタログNo.A29129)でこれらのVHH-Fcキメラ抗体を発現した(BM-Fcが対照である)。プロティンAアフィニティーカラムを用いて精製した後、ヒトBCMA-Hisタンパク質に対する間接ELISA法(方法は3.2を参照)によってVHH-Fcキメラ抗体とヒトBCMAタンパク質との結合活性を測定し、表面プラズモン共鳴技術により抗体とヒトTACI、BAFFRタンパク質の結合状況(方法は3.3を参照)を測定した。測定により、1A1-Fc、1A10-Fc、1A11‐Fc、及び1B10-Fcは、すべてBCMA-Hisタンパク質と特異に結合するが、ヒトTACI、BAFFRタンパク質に結合しなかった。配列解析の結果、1A1-Fcの全長アミノ酸配列は、SEQ ID NO:27のようであり、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28のようであり、1A10-Fcの全長アミノ酸配列は、SEQ ID NO:29のようであり、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:30のようであり、1A11-Fcの全長アミノ酸配列は、SEQ ID NO:31のようであり、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:32のようであり、1B10-Fcの全長アミノ酸配列は、SEQ ID NO:33のようであり、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:34のようである。
【0117】
3.2 間接ELISA法による抗体とヒトBCMA-Hisタンパク質との結合測定
2μg/mlヒトBCMA-Hisタンパク質(ACRO、製品カタログNo.BCA-H522y)をマイクロプレートリーダー用高吸着プレートにコーティングした後、3%(w/v)BSAブロッキング液でブロッキングし、100μl/wellで勾配希釈(初期濃度126nM、5倍勾配希釈、7つの濃度)した抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体を加え、37℃で1時間インキュベーションし、洗浄後HRP結合抗ヒトIgG Fcタグ二次抗体(PerkinElmer、製品カタログNo.NEF802001EA)を加え、37℃で0.5時間インキュベーションし、5回洗浄し、100μl/wellでTMB基質溶液(TIANGEN、製品カタログNo.PA107)を加えて発色させ、450nm波長及び650nm基準波長での光吸收シグナル値を測定し、カーブフィッティング(
図1)してEC50値を算出した(表1)。
【0118】
表1 VHH-Fcキメラ抗体とヒトBCMA-Hisタンパク質との親和性
【0119】
【0120】
3.3 表面プラズモン共鳴技術による抗体とヒトTACI、BAFFRタンパク質の結合測定
生体分子相互作用分析システム(GE、Biacore T200)を用いて抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体の特異性を測定した。アミノ結合によりAnti-hIgG(Fc)Antibody(GE、製品カタログNo.BR-1008-39)をCM5センサーチップに結合させ、ランニングバッファ(137mM Nacl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4・12H2O、1.8mM KH2PO4、0.05%surfactant P-20(w/v)、pH 7.4)を用いて抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体を2μg/mlまで希釈し、30μl/minの流速で実験通路を通過して90s捕集した。ランニングバッファを用いてヒトTACI又はBAFFRタンパク質を100nMに希釈し、50μl/min流速で結合させ、結合シグナル曲線を観察した。1A1-Fc、1A10-Fc、1A11-Fc及び1B10-Fcは、いずれも結合曲線が観察されず、TACIとBAFFRタンパク質とも結合しなかった。
【0121】
実施例4 抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体とヒト、カニクイザルBCMAとの親和性
4.1 表面プラズモン共鳴技術による抗体とヒトBCMA、カニクイザルとの親和性測定
生体分子相互作用分析システム(GE、Biacore T200)を使用して抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体の親和性を測定した。アミノ結合によりAnti-hIgG(Fc)Antibody(GE、製品カタログNo.BR-1008-39)をCM5センサーチップに結合させ、ランニングバッファ(137mM Nacl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4・12H2O、1.8mM KH2PO4、0.05% surfactant P-20(w/v)、pH 7.4)を用いて抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体に1μg/ml希釈し、30μl/minの流速で実験通路を通過して捕集した。ランニングバッファを用いてヒトBCMA-His(ACRO、製品カタログNo.BCA-H522y)又はカニクイザルBCMA-His(ACRO、製品カタログNo.BCA-C52H7)を100nM、50nM、25nM、12.5nmol/L、6.25nM、3.125nMに希釈し、50μl/minの流速で結合し、結合時間は200sに設定し、その後アプライを停止して解離し、解離時間は800sに設定した。ソフトウエアBiaControl Software 2.0でデータシグナルをアルタイムで採集し、ソフトウエアBiaEvaluation Software 2.0でデータ分析を行い、Langmuir 1:1でフィッティングし、結合速度定数Ka(1/Ms)、解離速度定数Kd(1/s)、平衡常数KD(M)値を算出した。測定結果を表2に示すように、1A1-Fc、1A10-Fc、1A11-Fc及び1B10-FcとヒトBCMAタンパク質と高い親和性を有しており、その中で、1A10-Fc及び1A11-FcはカニクイザルBCMAタンパク質と交差反応がある。
【0122】
表2 VHH-Fcキメラ抗体とヒト、カニクイザルBCMAの親和性
【0123】
【0124】
4.2 フローサイトメトリーにより抗体と細胞との結合を測定する
フローサイトメトリーを用いて、抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体とBCMAの発現レベルの異なる標的細胞との結合を測定し、ここで、CHO-hBCMA細胞(iCarTab Biotechnology co.ltd(蘇州)、製品カタログNo.AKD001A)は、BCMA高発現安定化細胞株であり、U266細胞(中国医学科学院基礎医学研究所基礎医学細胞センター、製品カタログNo.3111C0001CCC000684)は、中程度のBCMA発現レベルを有する天然ヒト骨髄腫細胞株、PRMI8226細胞(中国医学科学院基礎医学研究所基礎医学細胞センター、製品カタログNo.3111C0001CCC000083)は、BCMAの発現量が低い天然ヒト骨髄腫細胞株であり、HUVEC細胞(ScienCell Research Laboratories、製品カタログNo.AKD001A 8000)は、BCMAを発現しないヒト臍帯静脈内皮細胞株である。勾配希釈(初始濃度126nM、5倍勾配希釈、6つの濃度)した抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体を2×105標的細胞とともにインキュベーションし、氷上で1時間インキュベーションした後細胞を洗浄し、PE標識抗ヒトIgG Fc抗体(Jackson Immuno Research、製品カタログNo.109-116~170)を入れ、氷上0.5時間インキュベーションし、細胞を洗浄後、フローサイトメトリー(Thermo Fisher Scientific Inc.、Attune NXT)により測定した。
【0125】
図2A~2C、表3に示すように、1A1‐Fc、1A10-Fc、1A11-Fc及び1B10-Fcは、BCMA発現レベルが比較的高いCHO-hBCMA細胞及びBCMA発現レベルの中程度のU266細胞に効果的に標的結合し、BCMA発現レベルが低いRPMI8226細胞にも明らかに結合し、1A10-Fcと1A11-FcのU266細胞に対する結合はBM-Fcより優れている。
図2Dに示すように、1A10-Fc及び1A11-Fcは、BCMAを発現しないHUVEC細胞に結合しなっかたが、1A1‐Fc及び1B10-Fcは、BCMAを発現しないHUVEC細胞に結合した。
【0126】
表3 抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体と標的細胞との親和性
【0127】
【0128】
4.3 フローサイトメトリーによる、抗体とカニクイザルBCMA一過性トランスフェクションHEK293T細胞との結合の測定
in vitroでカニクイザルBCMA全長(SEQ ID NO:6)遺伝子を合成してpCDNA3.1真核発現ベクターに挿入した。メーカーのプロトコルによると、Lipofectamine(商標)3000(Thermo Fisher Scientific Inc.、製品カタログNo.L3000015)を用いて発現ベクターをHEK293T細胞にトランスフェクションした。要するに、HEK293T細胞を5×105/穴で6穴プレートに播種した。約24時間後、ウシ胎児血清含有培地を吸引してPBSで細胞を洗浄し、その後一穴あたりDNA:Lipo3000=5μg:7.5μlの割合でトランスフェクション薬剤に入れた。約6時間後、10%ウシ胎児血清(v/v)含有培地に交換した。トランスフェクションしたから約24時間後、細胞を採取しフローサイトメトリー検査を行った。
【0129】
1A10-Fc、1A11-Fc及びBM-Fc抗体に対して勾配希釈(初始濃度126nM、5倍勾配希釈、5つの濃度、サンプル希釈液が陰性対照群)を行い、それぞれ2×10
5個の一過性トランスフェクションカニクイザルBCMAとトランスフェクションされていないHEK293T細胞とともにインキュベーションし、氷上で1時間インキュベーションした後、細胞を洗浄し、PEラベルした抗ヒトIgG Fc抗体(Jackson Immuno Research、製品カタログNo.109-116-170)を入れて、氷上0.5時間インキュベーションし、細胞を洗浄後、フローサイトメトリー(Thermo Fisher Scientific Inc.、Attune NXT)により測定した。
図3AにはカニクイザルBCMA一過性トランスフェクションHEK293T細胞(HEK293T-CynoBCMA)を、
図3BにはカニクイザルBCMAをトランスフェクションしていないHEK293T細胞を用い、表4にはFcキメラ抗体がカニクイザルBCMA一過性トランスフェクションHEK293T細胞に結合したEC50値と最大結合MFI値(Bmax)を示した。その結果、1A10-Fc、1A11-Fcは細胞のカニクイザルBCMAに結合し、BM-Fc抗体はカニクイザルBCMAに結合しなかった。
【0130】
表4 抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体とカニクイザルBCMA一過性トランスフェクションHEK293T細胞との結合
【0131】
【0132】
実施例5 抗ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体によるAPRILとBCMAとの結合に対するブロック
勾配希釈(初始濃度252nM、5倍勾配希釈、7つの濃度)の抗ヒトBCMA V
HH-Fcキメラ抗体1A10-Fc、1A11-Fcのそれぞれは100ng/mlビオチン結合組み換えBCMA-Hisタンパク質(ACRO、製品カタログNo.BCA-H522y)を1:1の体積比で混合し、室温で1時間インキュベーションした後、組換えAPRILタンパク質(ACRO、製品カタログNo.APL-H5244)を固定化したマイクロプレートリーダー用高吸着プレートに加え、同時に対照群に50ng/mlのビオチン結合組換えBCMA-His蛋白のみを加えた。37℃で1時間インキュベーションし、結合していないビオチン結合BCMA-Hisタンパク質を洗浄し、HRP結合ストレプトアビジン(eBioscience、製品カタログNo.18-4100-51)を加え、5回洗浄後発色させた。450nm波長及び650nm基準波長での光吸收シグナル値を測定した。式:結合量=サンプル信号値/対照群信号値×100%に従って、各抗体の各濃度サンプルに対するBCMAとAPRIL結合量を計算し、そしてカーブフィッティングを行った。結果は、
図4と表5に示すように1A1-Fc、1B10-Fc、1A10-Fc及び1A11‐Fcは、APRILとBCMAとの結合を効果的にブロックした。
【0133】
図5Aに示すように、ヒトBCMA細胞外領域とカニクイザルBCMA細胞外領域のアミノ酸配列が異なる位置はGly6、Ala20、Ile22、Asn31、Val45和Thr52である。クローナル1A10及び1A11はカニクイザルBCMAタンパク質と交差反応があり、これにより、この2つクローナルのエピトープはGln7~His19、及び/又はPro23~Ser30、及び/又はAsn31~Ser44、及び/又はThr46~Gly51に位置する可能性あると推測された。
図5Bは、PDBデータベースでヒトBCMAの細胞外領域構造(PDB番号:2kn1)である。
図5A、5Bに示すように、ヒトBCMAの細胞外領域は、3対ジスルフィド結合を有し、それぞれはCys8-Cys21、Cys24-Cys37及びCys28-Cys41である。ヒトBCMAは、APRILと主にβ-ヘアピン構造で結合し(Bossen,C.et al.Semin.Immunol.2006,18(5):263~275)、これによってクローナル1A10-Fc及び1A11‐Fcの主な結合部位はGln7~His19の間にあり、及び/又はPro23~Ser30の間にあり、及び/又はAsn31~Ser44の間にあると推測された。
【0134】
表5 抗ヒトBCMA VHH-Fcによる、APRILとBCMAとの結合をブロックする
【0135】
【0136】
実施例6 抗ヒトBCMA VHHクローン同士のエピトープ差異分析
6.1 ELISA(チェッカーボード法)測定による抗ヒトBCMA VHH同士の競合関係の検出
ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体を2μg/mlに希釈し、マイクロプレートリーダー用高吸着プレートにコーティングし、洗浄した後、ブロッキングした。20μg/mlのヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体とビオチン結合BCMA-Hisタンパク質(ACRO、製品カタログNo.BCA-H522y)を室温で0.5時間インキュベーションし、抗原抗体混合物を得た。チェッカーボードの配置方法により、インキュベートした抗体抗原混合物又はビオチン結合BCMA-Hisタンパク質のみ(対照群)を順に100μl/孔でマイクロプレートに加え37℃で1時間インキュベートし、結合していないビオチン結合BCMA-Hisタンパク質を洗し、HRP結合ストレプトアビジン(eBioscience、製品カタログNo.18-4100-51)を加え、5回洗浄して発色させた。450nm波長及び650nm基準波長での光吸收シグナル値を測定した。式:ブロッキング率=(対照群シグナル値-サンプル組シグナル値)/対照群シグナル値×100%により、1つの抗体の、もう1つの抗体とBCMA-Bioとの結合シグナルに対するブロッキング率を算出した。結果は、表6に示すように、チェッカーボードにおいて、「\」対角線位置(灰色マーク)は抗体自己競合の陽性対照群であり、ブロッキング率はいずれも99%以上に達していた。1A10-Fcによる1A11-FcとヒトBCMAとの結合に対するブロッキング率(32.6%)は50%未満であり、且つ1A11‐Fcによる1A10-FcとヒトBCMAとの結合に対するブロッキング率(21.6%)も50%未満であり、この結果から、1A10-Fcと1A11-Fcの間、顕著な競合関係が存在しないことが示され、1A10-Fcと1A11-Fcは同時にBCMAタンパク質の異なるエピトープに結合できることが明らかである。同様に、1A10-Fcと1A1-Fc、1A10-Fcと1B10-Fcの間にも顕著な競合関係が存在しないことが示され、1A10-Fcと1A1-Fcは、同時にBCMAタンパク質の異なるエピトープに結合できることが明らかであり、1A10-Fcと1B10は、同時にBCMAタンパク質の異なるエピトープに結合できることが明らかである。1A1-Fc、1A11-Fc及び1B10-Fcの相互的なブロッキング率はすべて99%を超えている。
【0137】
表6 ELISA(チェッカーボード法)によるエピトープ競合
【0138】
【0139】
6.2 表面プラズマ共鳴技術によるエピトープ差異分析
生体分子相互作用分析システム(GE、Biacore T200)を用いてエピトープ競合関係の分析を行った。アミノ結合によりAnti-His Antibody(GE、製品カタログNo.28995056)をCM5センサーチップに結合させ、BCMA-Hisタンパク質(ACRO、製品カタログNo.BCA-H522y)をランニングバッファーを用いて1μg/ml程度に希釈し、30μl/minの流速で実験流路で捕集し、結合時間を調整することにより、キャプチャシグナルを180RU~190RUに制御した。ランニングバッファを用いて抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体VHH-Fc1を10μg/ml(飽和濃度、濃度が増加した後、結合されたシグナル値が変化しない)に希釈して、シグナルをプラットフォームに到達したまで、サンプルを注入する。サンプル注入終了後、直ちに別の抗ヒトBCMA VHH-Fcキメラ抗体VHH-Fc2を注入した。抗体結合曲線を観察し、2つの抗体の結合シグナル値をそれぞれ記録した。シグナル値の変化は表7に示すように、1A10-Fc抗体がBCMAと結合して飽和に達したシグナル値は472.5RUであった。このときさらに1A11-Fcを注入したが、飽和シグナル値は579.0RUであり、1A11-Fcを単独で注入した場合の飽和シグナル値653.1RUと同等であった。逆もまた然りであり、正逆二種類のサンプル注入順序の累積シグナル値は同等であり、1A10-Fcと1A11-Fcは同時にBCMA蛋白上の異なるエピトープと結合できることを説明した。
【0140】
表7 VHH-Fc抗体SPRシグナル値の変化と分析
【0141】
【0142】
6.3 フローサイトメトリーによるエピトープ差異分析
細胞膜上に発現しているBCMA蛋白質と遊離蛋白質はエピトープの有効な露出に差がある可能性があるため、フローサイトメトリーを用いて1A10、1A11の二つのクローンが同時に細胞膜上のBCMA蛋白質に結合できるかどうかをさらに確認した。標的細胞はU266細胞である。20μg/ml又は10μg/mlの1A10-Fc、1A11‐Fc抗体単独で2×105標的細胞をインキュベーションし、又は20μg/mlの1A10-Fc抗体と20μg/mlの1A11-Fc抗体を1:1体積比で混合した後、2×105の標的細胞をインキュベーションし、氷上で1時間インキュベーションした後、細胞を洗浄し、PEラベルした抗ヒトIgG Fc抗体(Jackson Immuno Research、製品カタログNo.109-116-170)を入れて、氷上0.5時間インキュベーションし、細胞を洗浄後、フローサイトメトリー(Thermo Fisher Scientific Inc.、Attune NXT)により測定した。結果は、表8に示すように、10μg/mlの同じ抗体が増加した場合、1A10-Fcサンプルの蛍光平均値は増加率は902.0/823.5-1=9.5%で、1A11-Fcサンプルの蛍光平均値増加率は702.0/697.5-1=0.6%であり、10μg/mlの2つ抗体は飽和濃度に近いことを示した。これに異なる抗体を10μg/ml加え、すなわち10μg/mlの1A10-Fcに10μg/mlの1A11-Fcを加え、蛍光平均値増加率は1443.5/823.5-1=75.3%である。10μg/mlの1A11-Fcに10μg/mlの1A10-Fcを加え、蛍光平均値増加率は1443.5/697.5-1=107.0%であり、二つの抗体1A10-Fc、1A11-Fcは同時に細胞膜上のBCMA蛋白の異なるエピトープに結合できることを説明した。
【0143】
推測した1A1、1A10、1A11と1B10のエピトープ関係は、
図5Cに示すように、ヒトBCMAでの1A10の結合エピトープは、1A1、1A11、1B10のエピトープと重なり合わないか、又は一部が重なり合うが、ヒトBCMAでの1A1、1A11、1B10の結合エピトープは、大部分が重なり合うか、又は完全に重なり合った。
【0144】
表8抗ヒトBCMA VHHキメラ抗体とU266細胞との結合
【0145】
【0146】
【配列表】
【国際調査報告】