(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】エゾオヤマリンドウ抽出物を含むインスリン敏感性改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/515 20060101AFI20230907BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230907BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230907BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230907BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230907BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230907BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20230907BHJP
【FI】
A61K36/515
A61P3/10
A61P27/02
A61P13/12
A61P25/00
A61P43/00 111
A23L33/105
A23K10/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513880
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 KR2021011530
(87)【国際公開番号】W WO2022045834
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109373
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522135628
【氏名又は名称】エムセラ ファーマ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523066842
【氏名又は名称】アファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ソン ミ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム シニョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム セ ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジ ソン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジン ス
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150AE01
2B150AE13
2B150AE40
2B150AE49
2B150BA01
2B150BC06
2B150BD01
2B150BD06
2B150BE01
2B150CE30
2B150CJ01
2B150CJ02
2B150CJ05
2B150DD44
2B150DD57
4B018MD61
4B018ME03
4B018MF01
4C088AB67
4C088AC01
4C088AC11
4C088ZA01
4C088ZA33
4C088ZA81
4C088ZC35
4C088ZC41
(57)【要約】
本発明はエゾオヤマリンドウ抽出物を含むインスリン敏感性改善用組成物に関する。本発明に係る組成物はITIH1の発現を減少させることによってインスリン敏感性を改善させるので、糖尿病、糖尿合併症、耐糖能異常およびインスリン抵抗性症候群(Insulin resistance syndrome)等の治療剤として有用に使われ得る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゾオヤマリンドウ(Gentiana triflora Pallas)抽出物を含む、インスリン敏感性改善用薬学組成物。
【請求項2】
インスリン感受性上昇およびインスリン抵抗性減少効果を有することを特徴とする、請求項1に記載のインスリン敏感性改善用薬学組成物。
【請求項3】
糖尿病、糖尿合併症、耐糖能異常、およびインスリン抵抗性症候群(Insulin resistance syndrome)で構成された群から選択された一つ以上の疾患の予防または治療用であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記糖尿合併症は糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、および糖尿病性神経障害で構成された群から選択された一つ以上の疾患であることを特徴とする、請求項3に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記インスリン抵抗性症候群はインスリン抵抗性による肥満、高血圧、動脈硬化、高脂血症、高インスリン血症、非アルコール性脂肪肝、および2型糖尿病で構成された群から選択された一つ以上の疾患であることを特徴とする、請求項3に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記エゾオヤマリンドウ抽出物はエゾオヤマリンドウ全草抽出物またはエゾオヤマリンドウ根抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記エゾオヤマリンドウ抽出物はITIH1(Inter-alpha Trypsin Inhibitor Heavy chain 1)mRNAまたは蛋白質の発現を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記エゾオヤマリンドウ抽出物はogt(O-GlcNAc Transferase)mRNAの発現を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項9】
エゾオヤマリンドウ抽出物を含む、インスリン敏感性改善用食品組成物。
【請求項10】
インスリン感受性上昇およびインスリン抵抗性減少効果を有することを特徴とする、請求項9に記載のインスリン敏感性改善用食品組成物。
【請求項11】
糖尿病、糖尿合併症、耐糖能異常、およびインスリン抵抗性症候群(Insulin resistance syndrome)で構成された群から選択された一つ以上の疾患の予防または改善用であることを特徴とする、請求項9に記載の食品組成物。
【請求項12】
エゾオヤマリンドウ抽出物を含む、インスリン敏感性改善用動物用飼料組成物。
【請求項13】
インスリン感受性上昇およびインスリン抵抗性減少効果を有することを特徴とする、請求項12に記載のインスリン敏感性改善用動物用飼料組成物。
【請求項14】
糖尿病、糖尿合併症、耐糖能異常、およびインスリン抵抗性症候群(Insulin resistance syndrome)で構成された群から選択された一つ以上の疾患の予防または改善用であることを特徴とする、請求項12に記載の動物用飼料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエゾオヤマリンドウ抽出物を含むインスリン敏感性改善用組成物に関し、さらに詳細にはITIH1(Inter-alpha Trypsin Inhibitor Heavy chain 1)の発現を減少させることによってインスリン敏感性を改善することを特徴とする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な場合、体内では血中ブドウ糖濃度を調節することによって恒常性を維持するが、代謝性疾患、インスリン抵抗性を伴う疾患では血糖が過度に増加し、このような高血糖が持続する場合、組織の損傷を起こして機能障害を誘発する。
【0003】
インスリン抵抗性はインスリンに対する敏感性が正常な基準に比べて減少したもので、筋肉と脂肪組織でインスリンの増加を感知できないか、感知してもインスリンの作用が効果的に起きない場合をいう。この場合、血糖を下げることができないため細胞代謝および物質代謝のバランスが効果的に維持されなくなる。
【0004】
インスリン敏感性を改善させるために、膵臓のベータ(β)細胞でインスリン自体の分泌を増加させるか、物質代謝経路でインスリン受容体がインスリンと結合して伝達する信号(signal)を増幅させる方法が主に考慮されるが、高血糖を誘発する生物学的メカニズムに基づいて、これに関与する蛋白質自体の活性を調節することによって高血糖を制御する方法に対する研究は不備であるのが実情である。
【0005】
ITIH1(Inter-alpha Trypsin Inhibitor Heavy chain 1)は肝細胞で生成されて血液に分泌される蛋白質であり、ブドウ糖の刺激によって細胞内濃度およびその分泌量が増加する(Science Translational Medicine、Vol.11、Issue 513、eaan4735、2019)。具体的には、ITIH1増加は高血糖でG蛋白質の一種であるG13の減少とOGT(O-GlcNAc transferase)酵素の発現量増加によってなされる。高血糖環境でOGTがITIH1のセリン残基にO-GlcNAcylation変形を起こしてITIH1の安定性が増加し、これに伴いITIH1の濃度が増加するとITIH1はヒアルロン酸に結合して筋肉および脂肪細胞でインスリン敏感性を低下させる。
【0006】
一方、エゾオヤマリンドウ(Gentiana triflora Pallas)はリンドウ科の多年草で、花は7-8月に空色で咲き、根茎は太く元の幹はまっすぐに立って毛はない。韓国、満州、日本、東部シベリアなどの地に分布し、リンドウ(Gentiana scabra)と類似しているが、幹と葉の下面の主脈に突起がなく、花がぱあっと咲かず、花冠裂片が反り返らない点でリンドウとは区別される。秋に根を掘って乾燥したものを消化不良、胆嚢炎、黄疸、頭痛、脳炎、膀胱炎、尿道炎などに使うが、エゾオヤマリンドウのインスリン敏感性改善効果については知られていない。
【0007】
これと関連して、本発明の発明者らはエゾオヤマリンドウ抽出物がITIH1の発現を抑制することによってインスリン敏感性を改善させる可能性があることを発見して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Science Translational Medicine、Vol.11、Issue 513、eaan4735(2019.10.09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はITIH1の発現を減少させることによってインスリン敏感性を改善可能な、エゾオヤマリンドウ抽出物を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明はエゾオヤマリンドウ抽出物を含むインスリン敏感性改善用組成物を提供する。
【0011】
前記組成物は薬学組成物、食品組成物、または動物用飼料組成物であり得る。
【0012】
一実施態様において、前記組成物はインスリン感受性上昇およびインスリン抵抗性減少効果を有するものである。
【0013】
一実施態様において、前記組成物は糖尿病、糖尿合併症、耐糖能異常、およびインスリン抵抗性症候群(Insulin resistance syndrome)で構成された群から選択された一つ以上の疾患の予防、治療または改善用であり得る。
【0014】
一実施態様において、前記糖尿合併症は糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、および糖尿病性神経障害で構成された群から選択された一つ以上の疾患であり得る。
【0015】
一実施態様において、前記インスリン抵抗性症候群はインスリン抵抗性による肥満、高血圧、動脈硬化、高脂血症、高インスリン血症、非アルコール性脂肪肝、および2型糖尿病で構成された群から選択された一つ以上の疾患であり得る。
【0016】
一実施態様において、前記エゾオヤマリンドウ抽出物はエゾオヤマリンドウ全草抽出物、根抽出物、葉抽出物、花抽出物または茎抽出物であり得、好ましくはエゾオヤマリンドウ全草抽出物またはエゾオヤマリンドウ根抽出物であり得る。
【0017】
一実施態様において、前記エゾオヤマリンドウ抽出物はitih1(Inter-alpha Trypsin Inhibitor Heavy chain 1)mRNAまたはITIH1蛋白質の発現を減少させるものであり得る。
【0018】
一実施態様において、前記エゾオヤマリンドウ抽出物はogt(O-GlcNAc Transferase)mRNAの発現を減少させるものであり得る。
【0019】
一実施態様において、前記抽出物は水、C1~C6のアルコール、およびこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒で抽出されたものであり得、メタノール抽出物であり得る。
【0020】
一実施態様において、前記抽出物はエゾオヤマリンドウ重量対比10倍数のメタノール水溶液で抽出したものであり得るが、これに限定されない。
【0021】
一実施態様において、前記抽出物は40~50℃で超音波抽出したものであり得るが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るエゾオヤマリンドウ抽出物を含む組成物は、ITIH1の発現を減少させることによってインスリン敏感性を改善させる効果を有する。したがって、本発明の組成物は糖尿病、糖尿合併症、耐糖能異常およびインスリン抵抗性症候群(Insulin resistance syndrome)等の治療剤として有用に使われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】エゾオヤマリンドウ抽出物の細胞毒性を示す。
【
図2】高濃度ブドウ糖条件でitih1 mRNA発現増加を示す。
【
図3】エゾオヤマリンドウ抽出物を処理した時itih1 mRNA発現抑制効果を示す。
【
図4】エゾオヤマリンドウ抽出物を処理した時ITIH1蛋白質発現抑制効果を示す。
【
図5】高濃度ブドウ糖条件でMGO処理時ogt mRNA発現増加を示す。
【
図6】エゾオヤマリンドウ抽出物を処理した時ogt mRNA発現抑制効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本願の実施態様および実施例を詳細に説明する。しかし、本願は多様な形態で具現され得、ここで説明する実施態様および実施例に限定されない。
【0025】
本願明細書全体において、或る部分が何らかの構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0026】
本発明はエゾオヤマリンドウ(Gentiana triflora Pallas)抽出物を含むインスリン敏感性改善用組成物に関する。
【0027】
本発明のエゾオヤマリンドウ抽出物は、エゾオヤマリンドウ全草抽出物、根抽出物、葉抽出物、花抽出物または茎抽出物であり得る。全草は花、根、葉、茎などを有する草のすべてを意味する。
【0028】
前記組成物はITIH1(Inter-alpha Trypsin Inhibitor Heavy chain 1)の発現を抑制する効能がある。ITIH1は肝細胞で生成されて血液に分泌される蛋白質であり、ブドウ糖の刺激によって細胞内濃度およびその分泌量が増加し、ヒアルロン酸に結合して筋肉および脂肪細胞でインスリン敏感性を低下させる。
【0029】
また、前記組成物はOGT(O-GlcNAc transferase)の発現を抑制する。OGTはITIH1蛋白質のセリン残基にO-GlcNAcylation変形を起こすことによってITIH1の安定性および濃度を増加させる。したがって、本発明の組成物はITIH1およびOGTの発現を減少させることによってインスリン敏感性改善効果を有する。
【0030】
前記インスリン敏感性改善効果は、インスリン感受性(insulin sensitivity)の上昇およびインスリン抵抗性(insulin resistance)の減少を意味する。インスリン感受性はインスリンに対して反応する程度を意味し、インスリン感受性の低下すなわち、インスリン抵抗性はインスリンに対する反応が正常な基準に比べて減少することによって、血糖を下げるインスリンの機能が低下して細胞がブドウ糖を効果的に燃焼させないことを意味する。
【0031】
本発明のエゾオヤマリンドウ抽出物の抽出方法としては、撹はん抽出、濾過法、熱水抽出、浸漬抽出、還流冷却抽出および超音波抽出など、当業界の通常の方法を利用することができる。
【0032】
本発明の薬学組成物は目的とする方法により非経口投与または経口投与することができ、投与量は患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによりその範囲が多様である。また、前記組成物の治療的に有効な量は投与方法、目的部位、患者の状態により変わり得、人体に使用時投与量は安全性および効率性を共に考慮して適正量で決定されなければならない。
【0033】
本発明の薬学組成物は、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、軟質または硬質のカプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、軟膏、クリームなどの皮膚外用剤、座剤、注射剤および滅菌注射溶液などをはじめとして、薬剤学的製剤に適合ないかなる形態であれ、剤形化して使われ得る。
【0034】
前記製剤化のために通常的に使う充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、希釈剤などの賦形剤を追加で含むことができる。例えば、本発明の薬学組成物に含まれ得る賦形剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油などを使うことができるが、これに制限されない。また、単純な賦形剤の他にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使われ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤および座剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われ得る。座剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、トウイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使われ得る。
【0035】
本発明の食品組成物は健康機能食品であり得、前記「健康機能食品」は人体に有用な機能性を有する原料や成分を使って製造および加工した食品を意味し、「機能性」は人体の構造および機能に対して栄養素を調節したり生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
【0036】
食品組成物はティーバッグ製、浸出茶、健康飲料などの形態である健康機能食品に製造および加工が可能であり、その他パン類、菓子類、アイスクリーム類、麺類などへの加工も可能である。また、前記食品組成物は健康補助食品または食品添加物であり得、「食品添加物」としての適合有無は他の規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物規準の総則および一般試験法などにより該当品目に関する規格および基準によって判定する。
【0037】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例は単に説明の目的のためのものに過ぎず、本願発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0038】
[製造例]
エゾオヤマリンドウ抽出物の製造
韓国植物抽出物行で分譲を受けたエゾオヤマリンドウ(Gentiana triflora Pallas)全草および根の部位別に乾燥された粉末100gに、99.9%メタノール10倍数を加えて45℃で超音波抽出を進めた。超音波抽出機を15分間稼動後2時間の間停止する過程を1回と規定して、3日間総30回進めて抽出液を得た。この抽出液を濾過した後、45℃で減圧濃縮して粉末を収得して以下の実験を進めた。
【0039】
[実施例1]
エゾオヤマリンドウ抽出物の細胞毒性(cell cytotoxicity)確認
エゾオヤマリンドウ抽出物の細胞毒性の有無を確認するために、次のようにMTT分析を進めた。HepG2細胞を96 well plateに4×10
4cell/mlとなるように分注した後、24時間の間培養して付着化および安定化を進めた。24時間培養後、エゾオヤマリンドウ全草、根抽出物の最終抽出濃度が10μg/mlとなるように培養液に希釈して細胞株に供給し、24時間の間培養した。24時間後、培地を除去し、MTT溶液(0.5mg/ml in PBS)を100μlずつ分注して37℃、5%条件の二酸化炭素湿潤培養器(CO
2 Incubator)でMTTが還元されるように30分間反応させた。各ウェル(well)に生成されたホルマザン結晶(formazan crystal)をDMSO(dimethyl sulfoxide)200μlで溶解させた。各サンプルを多重モードプレートリーダー(Varioskan LUX multimode plate reader、Thermo Scientific、Vantaa、Finland)を利用して570nmで吸光度を測定し、未処理群を陰性対象群(Negative Control)として細胞生存率(Cell Viability)を確認し
図1に示した。
【0040】
図1に示した通り、HepG2細胞株で細胞毒性を測定した結果、エゾオヤマリンドウ抽出物はいずれも対照群と比較して90%以上の細胞生存率を示して細胞毒性がないことを確認した。
【0041】
[実施例2]
高濃度ブドウ糖条件でitih1 mRNAの発現増加確認
ITIH1はヒアルロン酸に結合して肝細胞に沈着し、細胞のインスリン敏感性を低下させると知られており、次のようにITIH1抑制効能の評価方法を確認した。
【0042】
細胞株または動物から分離した1次細胞を低濃度(5mM)と高濃度(25mM)ブドウ糖が含まれた細胞培養培地にそれぞれ24時間培養した。この時、高濃度のブドウ糖が含まれた培地でO-GlcNAc変形(CTD 110.6 clone)が増加しながら、ITIH1の発現が増加することを確認した。
【0043】
追加で、HepG2細胞をブドウ糖、果糖、メチルグリオキサール(MGO)、グリオキサール(GO)、グリセルアルデヒド3-燐酸(G3P)、グリセルアルデヒド、グリコールアルデヒドが含まれた細胞培養培地にそれぞれ24時間培養し、itih1 mRNAの発現量を測定して
図2に示した。
【0044】
図2に示した通り、正常群に比べて高濃度(25mM)ブドウ糖が含まれた細胞培養培地で培養した細胞でitih1 mRNA発現が約1.5倍増加した。したがって、以下では高濃度ブドウ糖培地で生長したHepG2細胞でエゾオヤマリンドウ抽出物の処理によるITIH1の発現をmRNAおよび蛋白質水準で確認した。
【0045】
[実施例3]
エゾオヤマリンドウ抽出物のitih1 mRNA発現抑制効果確認
HepG2細胞にエゾオヤマリンドウ抽出物を処理した後、itih1 mRNA発現抑制効果を確認するために、次のようにリアルタイム重合酵素連鎖反応(quantitative PCR、qPCR)を進めた。
【0046】
高濃度(25mM)ブドウ糖が含まれた細胞培養培地で細胞を24時間培養した後、エゾオヤマリンドウ全草、根抽出物の最終抽出濃度が10μg/mlとなるように培養液に希釈して細胞株に供給し、24時間の間培養した。24時間後、培地を除去し、PBSでウォッシング(washing)を進めた後、スクレーパ(scraper)で付着された細胞をかき出して遠心分離機で収集した。miRNA抽出キット(mirVana miRNA Isolation Kit)を利用して前記細胞から全体RNAを抽出し、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Removerを利用してcDNAを合成した後、これを鋳型DNAとして転写体発現水準を確認するために使った。itih1 mRNAの発現の有無を確認するために、itih1-qpcr1およびitih1-qpcr2のプライマー対を使ったし、基準遺伝子(reference gene)としてgapdh-qpcr1およびgapdh-qpcr2のプライマー対を使ってそれぞれqPCR反応を遂行し、転写体水準で該当遺伝子配列の増幅有無を確認した。各プライマー対の配列を下記の表1に示した。
【0047】
【0048】
エゾオヤマリンドウ全草および根抽出物を処理した細胞でのitih1 mRNA発現量を
図3に示した。
【0049】
図3で確認されるように、エゾオヤマリンドウ抽出物を処理した場合のitih1 mRNA発現は、抽出物を処理しなかった高濃度ブドウ糖条件に比べて顕著に減少したし、高濃度ブドウ糖を処理しなかった正常群と類似する水準に回復することを確認した。
【0050】
[実施例4]
エゾオヤマリンドウ抽出物のITIH1蛋白質発現抑制効果確認
実施例3で確保した細胞を対象にウェスタンブロット(western blot)を通じてITIH1蛋白質発現の有無を確認した。具体的には、細胞溶解バッファー(RIPA lysis buffer(25mM Tris-HCl pH 7.6、150mM NaCl、1% NP-40、1% sodium deoxycholate、0.1% SDS)、120mM、Protease Inhibitor Cocktail(AEBSF、Aprotinin、Bestatin、E64、Leupeptin、and Pepstatin A)、Phosphatase Inhibitor Cocktail(sodium fluoride、sodium pyrophosphate、β-glycerophosphate、and sodium orthovanadate))で細胞を溶解することによって細胞溶解液を確保し、細胞溶解液をサンプルバッファー(60mM Tris-HCl(pH 6.8)、25% glycerol、0.1% bromophenol blue、2% SDS、2% mercapto ethanol)と混ぜて100℃のヒーティングブロックで10分間培養した。13,000rpm、4℃で5分間遠心分離を進めて上清液を収集し、SDS PAGEゲル(12%)を作って各サンプルをローディングして120Vで電気泳動した。SDS PAGEゲル内分離された全体蛋白質をNC膜に移した後、ITIH1(matured form)とβ-actinに対する抗体を利用してITIH1蛋白質発現を確認し、その結果を
図4に示したし、
図4の蛋白質バンドを数値化した結果を下記の表2に示した。
【0051】
【0052】
図4および表2に示した通り、高濃度ブドウ糖が含まれた培地でITIH1蛋白質発現が1.5倍以上増加した細胞株に各1、10μg/ml濃度でエゾオヤマリンドウ根抽出物を処理した場合、いずれもITIH1蛋白質量が顕著に減少したことを確認した。
【0053】
結果として、エゾオヤマリンドウ抽出物は高血糖環境でインスリン敏感性を低下させるITIH1のmRNA発現および蛋白質発現をいずれも優秀に抑制することによって、インスリン敏感性改善効果およびインスリン抵抗性関連疾患の治療効果を有することが分かる。
【0054】
[実施例5]
高濃度ブドウ糖条件でogt mRNAの発現増加確認
高血糖状態でG13(G protein alpha-13)の減少によるOGT(O-GlcNAc transferase)の増加はITIH1の安定性を増加させてITIH1の細胞内濃度および分泌量が増加すると知られており、次のようにogt mRNA抑制効能の評価方法を確認した。
【0055】
HepG2細胞をブドウ糖、果糖、メチルグリオキサール(MGO)、グリオキサール(GO)、グリセルアルデヒド3-燐酸(G3P)、グリセルアルデヒド、グリコールアルデヒドが含まれた細胞培養培地にそれぞれ24時間培養してogt mRNAの発現量を測定して
図5に示した。
【0056】
図5に示した通り、終末糖化産物の前駆体であって糖尿および糖尿合併症を誘発するものと知られているMGOを処理した場合、ogt mRNA発現が対照群に比べて2倍近く増加した。したがって、以下では高濃度ブドウ糖およびMGO処理条件のHepG2細胞で、エゾオヤマリンドウ抽出物の処理によるogt mRNA発現を確認した。
【0057】
[実施例6]
エゾオヤマリンドウ抽出物のogt mRNA発現抑制効果確認
HepG2細胞にエゾオヤマリンドウ抽出物を処理した後、ogt mRNA発現抑制効果があるかどうかを確認するために、次のようにリアルタイム重合酵素連鎖反応(quantitative PCR、qPCR)を進めた。
【0058】
高濃度(25mM)ブドウ糖が含まれた細胞培養培地でHepG2細胞を24時間培養した後、500μM MGOを1時間の間誘導(induction)させた。処理後、エゾオヤマリンドウ根抽出物の最終抽出濃度が10μg/mlとなるように培養液に希釈して細胞株に供給し、24時間の間培養した。24時間後、培地を除去し、PBSでウォッシング(washing)を進めた後、スクレーパ(scraper)で付着された細胞をかき出して遠心分離機で収集した。miRNA抽出キット(mirVana miRNA Isolation Kit)を利用して前記細胞から全体RNAを抽出し、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Removerを利用してcDNAを合成した後、これを鋳型DNAとして転写体発現水準を確認するために使った。ogt mRNAの発現の有無を確認するためにogt-qpcr1およびogt-qpcr2のプライマー対を使ったし、基準遺伝子(reference gene)としてgapdh-qpcr1およびgapdh-qpcr2のプライマー対を使ってそれぞれqPCR反応を遂行し、転写体水準で該当遺伝子配列の増幅の有無を確認した。各プライマー対の配列を下記の表3に示した。
【0059】
【0060】
エゾオヤマリンドウ根抽出物を処理した細胞でのogt mRNA発現量を
図6に示した。
【0061】
図6に示した通り、正常群に比べて高濃度ブドウ糖およびMGO処理群のogt mRNA発現が1.41倍に増加したが、エゾオヤマリンドウ根抽出物を処理した場合にはogt mRNA発現が正常群の0.03倍水準に減少して顕著なOGT抑制効果を有することを確認した。
【0062】
結果として、エゾオヤマリンドウ抽出物はITIH1を増加させる作用をするOGTを顕著に減少させることによって、インスリン敏感性改善効果およびインスリン抵抗性関連疾患の治療効果を有することが分かる。
【配列表】
【国際調査報告】