IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マルティチュード・インコーポレーテッドの特許一覧

<>
  • 特表-療法抗体およびその使用 図1
  • 特表-療法抗体およびその使用 図2
  • 特表-療法抗体およびその使用 図3
  • 特表-療法抗体およびその使用 図4
  • 特表-療法抗体およびその使用 図5
  • 特表-療法抗体およびその使用 図6
  • 特表-療法抗体およびその使用 図7
  • 特表-療法抗体およびその使用 図8
  • 特表-療法抗体およびその使用 図9
  • 特表-療法抗体およびその使用 図10
  • 特表-療法抗体およびその使用 図11
  • 特表-療法抗体およびその使用 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】療法抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230907BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230907BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230907BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 15/81 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230907BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230907BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230907BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230907BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N15/81 Z
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/08
C12P21/02 A
C07K1/14
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P11/00
A61P35/02
A61K38/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514053
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2020112033
(87)【国際公開番号】W WO2022041104
(87)【国際公開日】2022-03-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521102856
【氏名又は名称】マルティチュード・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】メン,シュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シュウ-フェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG26
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA02
4C084BA41
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA14
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
CD44遺伝子の変異体エクソンv9(CD44v9)に特異的な抗体またはその抗原結合断片、該抗体または抗原結合断片を含む抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)、および他の誘導体を提供する。該抗体または抗原結合断片をコードする核酸分子、および該抗体または抗原結合断片を作製する方法を提供する。該抗体および抗原結合断片を含む医薬組成物、および疾患の治療における、または疾患、例えば癌の治療のための薬剤製造における該抗体または抗原結合断片の使用をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD44v9に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体が:
(1)重鎖可変領域(HCVR)であって:
(a)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)最大5アミノ酸変異を含む、配列番号3のHCVR CDR3配列
を含む、前記HCVR;ならびに
(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって:
(d)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む、前記LCVR
を含み、任意選択で、モノクローナル抗体がmAb116ではないことを条件とする、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
請求項1のモノクローナル抗体または抗原結合断片であって、
(1)重鎖可変領域(HCVR)が:
(a)配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)6位のアラニン残基で最大1アミノ酸変異を含む、配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)2位のアルギニン残基、4位のアラニン残基、5位のアスパラギン酸残基、7位のアスパラギン残基、8位のプロリン残基で最大5アミノ酸変異を含む、配列番号3のHCVR CDR3配列
を含み;そして
(2)軽鎖可変領域(LCVR)が:
(d)配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)1位および8位のロイシン残基で最大2アミノ酸変異を含む、配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む
前記モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
請求項2のモノクローナル抗体または抗原結合断片であって、
(1)重鎖可変領域(HCVR)が:
(a)配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)6位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)2位のアルギニン残基がセリンで置換されていてもよく、4位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよく、5位のアスパラギン酸残基がグルタミン酸で置換されていてもよく、7位のアスパラギン残基がスレオニンで置換されていてもよく、8位のプロリン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号3のHCVR CDR3配列
を含み;そして
(2)軽鎖可変領域(LCVR)が:
(d)配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)1位のロイシン残基がメチオニンで置換されていてもよく、そして8位のロイシン残基がフェニルアラニンで置換されていてもよい、配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む
前記モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
請求項3のモノクローナル抗体または抗原結合断片であって、
(1)重鎖可変領域(HCVR)が:
(a)配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)配列番号3のHCVR CDR3配列
を含み;そして
(2)軽鎖可変領域(LCVR)が:
(d)配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む
前記モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
マウスモノクローナル抗体である、請求項1~4のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項5記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(1)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号7のFR1、配列番号8のFR2、配列番号9のFR3、および配列番号10のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(2)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号11のFR1、配列番号12のFR2、配列番号13のFR3、および配列番号14のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列;
または、
(i)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号37のFR1、配列番号38のFR2、配列番号39のFR3、および配列番号40のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(ii)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号41のFR1、配列番号42のFR2、配列番号43のFR3、および配列番号44のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
をさらに含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項6記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(1)それぞれ、配列番号7のFR1、配列番号8のFR2、配列番号9のFR3、および配列番号10のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(2)それぞれ、配列番号11のFR1、配列番号12のFR2、配列番号13のFR3、および配列番号14のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項6記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(1)それぞれ、配列番号37のFR1、配列番号38のFR2、配列番号39のFR3、および配列番号40のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(2)それぞれ、配列番号41のFR1、配列番号42のFR2、配列番号43のFR3、および配列番号44のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
ヒト化マウスモノクローナル抗体である、請求項1~4のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
請求項9記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(3)それぞれ、配列番号15のFR1、配列番号16のFR2、配列番号17のFR3、および配列番号18のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(4)それぞれ、配列番号19のFR1、配列番号20のFR2、配列番号21のFR3、および配列番号22のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
をさらに含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
請求項9記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(3)それぞれ、配列番号23のFR1、配列番号24のFR2、配列番号25のFR3、および配列番号26のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(4)それぞれ、配列番号27のFR1、配列番号28のFR2、配列番号29のFR3、および配列番号30のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
をさらに含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
CD44v9、またはCD44v9を発現している細胞に、約40nM、20nM、10nM、約5nM、約2nM、約1nMまたはそれ未満のKで結合する、請求項1~11のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
その前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、F、一本鎖FvまたはscFv、ジスルフィド連結F、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ディアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)、あるいはscFv-Fcである、請求項1~12のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項のHCVRおよび/またはLCVRを含む、ポリペプチド。
【請求項15】
融合タンパク質(例えばキメラ抗原T細胞受容体)である、請求項14のポリペプチド。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか1つの重鎖または軽鎖をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項14または15のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項16または17のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項19】
発現ベクター(例えば哺乳動物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または細菌発現ベクター)である、請求項18のベクター。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、請求項14または15のポリペプチド、請求項16または17のポリヌクレオチド、あるいは請求項18または19のベクターを含む、細胞。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチドを発現する、請求項20の細胞。
【請求項22】
BHK細胞、CHO細胞、またはCOS細胞である、請求項20または21の細胞。
【請求項23】
請求項20の細胞であって、該細胞表面上に請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチドを含む、前記細胞。
【請求項24】
請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチドを含む、キメラ抗原受容体を所持するT細胞(CAR-T細胞)である、請求項23の細胞。
【請求項25】
請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチドを産生する方法であって:
(a)請求項20、21、または22の細胞を培養し;そして
(b)前記培養細胞から、前記抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを単離する
工程を含む、前記方法。
【請求項26】
前記細胞が真核細胞である、請求項25の方法。
【請求項27】
以下の式:
Ab-[-L-D]
式中:
Abは、リンカー・薬剤部分-[-L-D]の1つまたはそれより多い単位に共有結合している、請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてDは細胞傷害性薬剤であり;そして
nは1~20(例えば1~12)の整数であり;そして
各リンカー・薬剤部分は同じまたは異なるリンカーLまたは細胞傷害性薬剤Dを有してもよい
を有する、イムノコンジュゲート(または抗体・薬剤コンジュゲートまたはADC)。
【請求項28】
各リンカー・薬剤部分-[-L-D]が、Lysの側鎖アミノ基を通じてAbに共有結合している、請求項27のイムノコンジュゲート。
【請求項29】
各リンカー・薬剤部分-[-L-D]が、Cysの側鎖チオール基を通じてAbに共有結合している、請求項27のイムノコンジュゲート。
【請求項30】
各リンカー・薬剤部分-[-L-D]が、部位特異的に取り込まれた非天然アミノ酸を通じてAbに共有結合している、請求項27のイムノコンジュゲート。
【請求項31】
各リンカーLがペプチド単位を含む、請求項27~30のいずれか一項のイムノコンジュゲート。
【請求項32】
ペプチド単位が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2~10、または2~5のアミノ酸残基を含む、請求項31のイムノコンジュゲート。
【請求項33】
リンカーLがプロテアーゼ(例えばカテプシン)によって切断不能である、請求項27~32のいずれか一項のイムノコンジュゲート。
【請求項34】
リンカーLが、プロテアーゼ(例えばカテプシン)、酸性環境、または酸化還元状態変化によって切断可能な切断可能リンカーである、請求項27~32のいずれか一項のイムノコンジュゲート。
【請求項35】
細胞傷害性薬剤が、DNA挿入剤、微小管結合剤、トポイソメラーゼI阻害剤、またはDNA副溝結合剤である、請求項27~34のいずれか一項のイムノコンジュゲート。
【請求項36】
細胞傷害性薬剤が、オーリスタチン・クラス、例えばモノメチルオーリスタチンE(MMAE)およびMMAF、メイタンシン・クラス、例えばDM-1、DM-3、DM-4、カリケアマイシン、例えばオゾガマイシン、SN-38、またはPBD(ピロロベンゾジアゼピン)である、請求項35のイムノコンジュゲート。
【請求項37】
請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチド、あるいは請求項27~36のいずれか一項のイムノコンジュゲート、および医薬的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項38】
CD44v9を発現する細胞の増殖を阻害するための方法であって、該細胞を、請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチド、あるいは請求項27~36のいずれか一項のイムノコンジュゲート、あるいは請求項37の医薬組成物と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項39】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項38の方法。
【請求項40】
前記腫瘍細胞が肺癌(例えばNSCLC)由来である、請求項39の方法。
【請求項41】
前記腫瘍細胞が、結腸直腸癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、膀胱癌、膵臓癌、または脳の転移性癌由来である、請求項39の方法。
【請求項42】
癌を有する被験体を治療するための方法であって、癌細胞がCD44v9を発現し、該方法が、前記被験体に、療法的有効量の、CD44v9抗体またはその抗原結合断片を含むCD44v9アンタゴニストを投与する工程を含む、前記方法。
【請求項43】
被験体において、細胞増殖性障害を治療するための方法であって、細胞増殖性障害の細胞がCD44v9を発現し、該方法が、前記被験体に、療法的有効量の、CD44v9抗体またはその抗原結合断片を含むCD44v9アンタゴニストを投与する工程を含む、前記方法。
【請求項44】
CD44v9アンタゴニストが、請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチド、あるいは請求項27~36のいずれか一項のイムノコンジュゲート、あるいは請求項37の医薬組成物を含む、請求項42または43の方法。
【請求項45】
前記癌が、乳房、肺、肝臓、結腸直腸、頭頸部、食道、膵臓、卵巣、膀胱、胃、皮膚、子宮内膜、卵巣、精巣、食道、前立腺または腎臓起源のものを含む上皮癌;骨および軟組織肉腫、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、平滑筋腫、造血性悪性疾患、例えばホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または白血病;神経外胚葉性腫瘍、例えば末梢神経腫瘍、星状細胞腫、または黒色腫;あるいは中皮腫である、請求項42または44の方法。
【請求項46】
被験体由来の試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定する方法であって、該試料を、請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項47】
癌を有する被験体を診断し、そして治療する方法であって、癌細胞がCD44v9を発現し、該方法が:
(1)請求項46の方法を用いて、癌試料中でCD44v9を発現する被験体を同定するため、該被験体由来の癌試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定し;
(2)前記被験体に、請求項1~13のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項14または15のポリペプチド、あるいは請求項27~36のいずれか一項のイムノコンジュゲート、あるいは請求項37の医薬組成物の療法的有効量を投与し;
それによって、癌を有する被験体を診断し、そして治療する
工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CD44は、同型細胞、細胞マトリックス、および細胞・細胞骨格相互作用に関与する、膜貫通糖タンパク質ファミリーである。CD44の細胞外ドメインは、多くのマトリックス置換基(substituent):ヒアルロン酸、エズリン、ラディキシン、モエシンおよびマーリン、ヘパリン・アフィニティ増殖因子、血管内皮増殖因子、p185HER2、上皮増殖因子、および肝細胞増殖因子に結合する。その細胞内ドメインは、細胞骨格置換基アンキリンに結合し、こうして細胞および組織構築型を決定する(Bourguignonら, 1998, Front. Biosci. 3:D637-649;Welchら, 1995, J. Cell. Physiol. 164:605-612)。
【0002】
CD44遺伝子は、染色体11にマッピングされ、60kbに渡って20のエクソンを含有し、そして5つの構造ドメインに細分されうる。20のエクソンのうちの10、エクソン1~5および16~20は、CD44の標準型(CD44sまたはCD44std)を構成する。この最小CD44アイソフォーム(CD44s)は、上皮細胞を含む異なる組織中に遍在性に発現される一方、特定のCD44スプライス変異体(CD44v、CD44var)は、上皮細胞のサブセット上にのみ発現される。
【0003】
CD44変異体は、メッセンジャーRNA(mRNA)レベルで選択的スプライシングにより、該タンパク質の細胞外部分中の10のエクソン(v1~v10)の配列がCD44s中では完全に切除されるが、より大きな変異体では異なる組み合わせで現れうる方式で、生成される(Screatonら、1992;Tоelgら、1993;Hofmannら、1991)。変異体は、タンパク質の細胞外部分の特定の部位で、異なるアミノ酸配列が挿入される点で異なる。理論的には、CD44変異体(CD44v)アイソフォームには、1000を超える潜在的なペプチドドメイン組み合わせがある。すべての変異体エクソンを含めると、分子量230kDのタンパク質が生じるが、大部分の変異体アイソフォームは120kD未満である。より長い変異体アイソフォーム(CD44v1~10)には、エクソン6~15の1つまたはそれより多くがスプライシングにより含まれるが、ヒトにおいては、エクソン6(v1)は発現されない。
【0004】
いくつかのスプライス変異体は、組織特異的方式で、正常な上皮細胞によって発現される。例えば、CD44v10は、正常なリンパ球によって発現される(Okamotoら, 1998, J. Natl. Cancer Inst. 90:307-315)。
【0005】
しかし、近年、非転移性ラット膵臓腺癌細胞株ならびに非転移性ラット線維肉腫細胞株のいわゆる自発的転移挙動(spontaneous metastatic behaviour)を引き起こすには、特定のCD44変異体の発現が必要でありそして十分であることが示されてきている(Guenthertら、1991)。こうした変異体は、多様なヒト腫瘍細胞で、ならびにヒト腫瘍組織で検出されうる。
【0006】
例えば、Okamotoら(Okamotoら, 2002, Am. J. Pathol. 160:441-447;Okamotoら, 2001, J. Cell. Biol. 155:755-762;Murakamiら, 2003, Oncogene 22:1511-1516)は、いくつかのヒト腫瘍(前立腺癌を除く)において、25~30kDの切断産物が、CD44の細胞質部分に対する抗体を用いたウェスタンブロットによって検出可能であることを示している。CD44の可溶性部分は、該分子の細胞外部分に対する抗CD44vモノクローナル抗体を用いて、100~160kD断片として血清中で検出されてきている(Gansaugeら, 1997, Cancer 80:1733-1739)。循環内に脱落したCD44アイソフォームのウェスタンブロット検出は、悪性腫瘍に関する診断または予後試験として働きうる(Taylorら, 1996, J. Soc. Gynecol. Invest. 3:289-294)。次いで、タンパク質の高感度でより容易な検出のため、酵素連結血清イムノアッセイ(ELISA)を発展させてもよい。CD44v6の増幅は、膵臓癌の転移性表現型(RallおよびRustgi, 1995, Cancer Res. 55:1831-1835)および乳癌等級の増加(Woodmanら, 1996, Am. J. Pathol. 149:1519-1530;Bourguignonら, 1999, Cell Motil. Cytoskeleton 43:269-287)に伴って認められる。多くの良性および癌組織において、RT-PCRおよび配列決定によって、単一または連続変異体エクソンの包含が記載されてきている(Okamotoら, 1998, J. Natl. Cancer Inst. 90:307-315;Okamotoら, 2002, Am. J. Pathol. 160:441-447;RallおよびRustgi, 1995, Cancer Res. 55:1831-1835;Woodmanら, 1996, Am. J. Pathol. 149:1519-1530;Bourguignonら, 1999, Cell Motil. Cytoskeleton 43:269-287;Rocaら, 1998, Am. J. Pathol. 153:183-190;Franzmannら, 2001, Otolaryngol. Head Neck Surg. 124:426-432;Terpeら, 1996, Am. J. Pathol. 148:453-463;Christら, 2001, J. Leukoc. Biol. 69:343-352;Morteganiら, 1999, Am. J. Pathol. 154:291-300;Miyakeら, 1998, Int. J. Cancer. 18:560-564;Yamaguchiら, 1996, J. Clin. Oncol. 14:1122-1127)。
【0007】
転移中、腫瘍細胞は、原発部位を離れ、細胞外マトリックス内に遊走して、そして血管およびリンパ管に侵入する。転移部位での腫瘍増生(outgrowth)は、CD44などの接着タンパク質を通じた新規細胞外マトリックスへの付着を必要とする。これは、多くの癌が、脱制御されたCD44 mRNAスプライシングを有し、転移において役割を果たしうる新規CD44変異体アイソフォームの発現を導くという事実と一致する。
【0008】
実際、結腸直腸発癌経過におけるCD44変異体の発現が、最近、研究されてきている(Heiderら、1993a)。CD44変異体の発現は、正常ヒト結腸上皮には存在せず、そしてクリプトの増殖中の細胞において弱い発現が検出可能であるのみである。腫瘍進行のより後の段階では、例えば腺癌において、すべての悪性腫瘍がCD44の変異体を発現する。高レベルでの変異体CD44の組織発現はまた、侵襲性非ホジキンリンパ腫でも示されてきている(Koopmanら、1993)。
【0009】
エクソンv6は、転移伝播の経過で特に特別な役割を果たすようである(Rudyら、1993)。動物モデルにおいて、v6特異的エピトープに対する抗体は、転移細胞の定着および転移の増殖を防止しうる(Seiterら、1993)。結腸癌において、v6発現は腫瘍進行と相関する(Wielengaら、1993)。胃癌において、v6発現は、びまん型のものから、腸管型の腫瘍を区別する、重要な診断マーカーである(Heiderら、1993b)。後の2つの刊行物において、v6発現はv6特異的エピトープに対する抗体を用いて決定されてきている。
【0010】
CD44v6は、ヒト腫瘍および正常組織において好ましい発現パターンを持つ腫瘍関連抗原であることが示されてきている(Heiderら、1995;Heiderら、1996)ため、抗体に基づく診断および療法アプローチの対象になっている(Heiderら、1996;WO 95/33771;WO 97/21104)。
【0011】
一方、CD44v9の異常な発現は、胃癌、結腸癌、乳癌、肺癌、および頭頸部扁平上皮癌と関連付けられてきている(US20170137810A1)。CD44v6およびCD44v9はどちらも、結腸癌において過剰発現されることが以前示された(Wielengaら, Am. J. Pathol., 1999, 154: 515-523)。CD44v9はまた、胃癌においても過剰発現することが見出されてきている(Ueら, Co-expression of osteopontin and CD44v9 in gastric cancer. Int J Cancer 1998; 79:127-132)。
【0012】
CD44v9陽性細胞は、ROS産生を抑制する能力の増進を示し、それに続いて、療法耐性、再発、および腫瘍転移を生じる(Ishimotoら、2011;Tsugawaetら、2012;Yaeら、2012)。CD44v9は、多様な腫瘍タイプにおける癌幹細胞マーカーであることもまた報告されてきている(Asoら、2015)。
【0013】
ヒトにおける適用のために非ヒト抗体を用いた際に生じる1つの深刻な問題は、これらの抗体が、迅速にヒト抗非ヒト反応を生じさせて、これが患者において該抗体の有効性を減少させ、そして連続投与を損なうことである。この問題を克服するため、「ヒト化」非ヒト抗体の概念が当該技術分野において発展してきている。最初のアプローチにおいて、非ヒト可変領域をヒト定常領域に連結させる、非ヒト/ヒトキメラ抗体を構築することによって、非ヒト抗体のヒト化の達成が試みられてきている(Boulianne G. L., Hozumi N.およびShulman, M. J.(1984) Production of functional chimeric mouse/human antibody Nature 312: 643)。こうして生成されたキメラ抗体は、元来の非ヒト抗体の結合特異性およびアフィニティを保持する。
【0014】
キメラ抗体はマウス抗体よりもかなり優れているが、なお、ヒトにおいて抗キメラ反応を誘発しうる(LoBuglio A. F., Wheeler R. H., Trang J., Haynes A., Rogers K., Harvey E. B., Sun L., Ghrayeb J.およびKhazaeli M. B.(1989) Mouse/human chimeric monoclonal antibody in man: Kinetics and immune response. Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 4220)。このアプローチは、後に、ヒト可変領域に、非ヒト可変領域由来の相補性決定領域(CDR)を移植し、そして次いでこれらの「再形成(reshaped)ヒト」可変領域をヒト定常領域に連結することにより、非ヒト配列の量をさらに減少させることによって、改良された(Riechmann L., Clark M., Waldmann H.およびWinter G. (1988) Reshaping human antibodies for therapy. Nature 332: 323)。CDR移植または再形成ヒト抗体は、マウス抗体由来であると同定されうるタンパク質配列をほとんどまたはまったく含有しない。天然ヒト抗体でさえ見られるように、CDR移植によってヒト化された抗体はなお、何らかの免疫反応、例えば抗アロタイプまたは抗イディオタイプ反応を誘発可能でありうるが、CDR移植抗体は、マウス抗体よりも有意により免疫原性でなく、したがって、患者のより長期の治療を可能にする。
【0015】
しかし、CDR移植単独では、十分な結合アフィニティを持つ抗体を常に生じるわけではないことがすぐに明らかになった。CDR移植抗体は、例えばCDR内のものよりも多くのアミノ酸が抗原結合に関与しうるため、その親非ヒト抗体に比較した際、時に、比較的劣った結合特性を有する。その結果、劣った結合アフィニティのCDR移植抗体は、療法において有用であるとはみなされない。したがって、CDR移植抗体の低い免疫原性を、非ヒト親抗体の優れた結合特性と組み合わせた抗体を生成する試みがなされてきている。CDR移植に加えて、ヒト化フレームワーク領域中の1つないしいくつかのアミノ酸を、結合アフィニティを保持するための齧歯類ドナー起源の残基として保持しなければならないという概念が発展してきた(Queenら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 10029-10033)。
【0016】
こうした抗体が診断および療法において有しうる高い潜在的有用性のため、ヒト疾患、例えば多様な癌の治療に適した改善された特性を持つ抗体の必要性がある。
【0017】
本発明の根底にある1つの問題は、好ましくは既知のCD44v9特異的抗体に比較して、より優れた特性を持つ、別のCD44v9特異的抗体を提供することであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO 95/33771
【特許文献2】WO 97/21104
【特許文献3】US20170137810A1
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Bourguignonら, 1998, Front. Biosci. 3:D637-649
【非特許文献2】Welchら, 1995, J. Cell. Physiol. 164:605-612
【非特許文献3】Screatonら、1992
【非特許文献4】Tоelgら、1993
【非特許文献5】Hofmannら、1991
【非特許文献6】Okamotoら, 1998, J. Natl. Cancer Inst. 90:307-315
【非特許文献7】Guenthertら、1991
【非特許文献8】Okamotoら, 2002, Am. J. Pathol. 160:441-447
【非特許文献9】Okamotoら, 2001, J. Cell. Biol. 155:755-762
【非特許文献10】Murakamiら, 2003, Oncogene 22:1511-1516
【非特許文献11】Gansaugeら, 1997, Cancer 80:1733-1739
【非特許文献12】Taylorら, 1996, J. Soc. Gynecol. Invest. 3:289-294
【非特許文献13】RallおよびRustgi, 1995, Cancer Res. 55:1831-1835
【非特許文献14】Woodmanら, 1996, Am. J. Pathol. 149:1519-1530
【非特許文献15】Bourguignonら, 1999, Cell Motil. Cytoskeleton 43:269-287
【非特許文献16】Rocaら, 1998, Am. J. Pathol. 153:183-190
【非特許文献17】Franzmannら, 2001, Otolaryngol. Head Neck Surg. 124:426-432
【非特許文献18】Terpeら, 1996, Am. J. Pathol. 148:453-463
【非特許文献19】Christら, 2001, J. Leukoc. Biol. 69:343-352
【非特許文献20】Morteganiら, 1999, Am. J. Pathol. 154:291-300
【非特許文献21】Miyakeら, 1998, Int. J. Cancer. 18:560-564
【非特許文献22】Yamaguchiら, 1996, J. Clin. Oncol. 14:1122-1127
【非特許文献23】Heiderら、1993a
【非特許文献24】Koopmanら、1993
【非特許文献25】Rudyら、1993
【非特許文献26】Seiterら、1993
【非特許文献27】Wielengaら、1993
【非特許文献28】Heiderら、1993b
【非特許文献29】Heiderら、1995
【非特許文献30】Heiderら、1996
【非特許文献31】Wielengaら, Am. J. Pathol., 1999, 154: 515-523
【非特許文献32】Ueら, Co-expression of osteopontin and CD44v9 in gastric cancer. Int J Cancer 1998; 79:127-132
【非特許文献33】Ishimotoら、2011
【非特許文献34】Tsugawaetら、2012
【非特許文献35】Yaeら、2012
【非特許文献36】Asoら、2015
【非特許文献37】Boulianne G. L., Hozumi N.およびShulman, M. J.(1984) Production of functional chimeric mouse/human antibody Nature 312: 643
【非特許文献38】LoBuglio A. F., Wheeler R. H., Trang J., Haynes A., Rogers K., Harvey E. B., Sun L., Ghrayeb J.およびKhazaeli M. B.(1989) Mouse/human chimeric monoclonal antibody in man: Kinetics and immune response. Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 4220
【非特許文献39】Riechmann L., Clark M., Waldmann H. and Winter G. (1988) Reshaping human antibodies for therapy. Nature 332: 323
【非特許文献40】Queenら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 10029-10033
【発明の概要】
【0020】
本発明の1つの側面は、CD44v9に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体が:(1)重鎖可変領域(HCVR)であって、(a)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号1のHCVR CDR1配列、(b)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号2のHCVR CDR2配列、および/または(c)最大5アミノ酸変異を含む、配列番号3のHCVR CDR3配列を含む、前記HCVR、ならびに/あるいは(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって、(d)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号4のLCVR CDR1配列、(e)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号5のLCVR CDR2配列、および/または(f)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号6のLCVR CDR3配列を含む、前記LCVRを含み、任意選択で、モノクローナル抗体がmAb116ではないことを条件とする、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0021】
特定の態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片の重鎖可変領域(HCVR)は、(a)配列番号1のHCVR CDR1配列、(b)6位のアラニン残基で最大1アミノ酸変異を含む、配列番号2のHCVR CDR2配列、ならびに/あるいは(c)2位のアルギニン残基、4位のアラニン残基、5位のアスパラギン酸残基、7位のアスパラギン残基、および8位のプロリン残基で最大5アミノ酸変異を含む、配列番号3のHCVR CDR3配列を含み、そして/または軽鎖可変領域(LCVR)は、(d)配列番号4のLCVR CDR1配列;(e)配列番号5のLCVR CDR2配列;ならびに/あるいは(f)1位および8位のロイシン残基で最大2アミノ酸変異を含む、配列番号6のLCVR CDR3配列を含む。
【0022】
特定の態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片の重鎖可変領域(HCVR)は、(a)配列番号1のHCVR CDR1配列、(b)6位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号2のHCVR CDR2配列、および/または(c)2位のアルギニン残基がセリンで置換されていてもよく、4位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよく、5位のアスパラギン酸残基がグルタミン酸で置換されていてもよく、7位のアスパラギン残基がスレオニンで置換されていてもよく、そして8位のプロリン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号3のHCVR CDR3配列を含み、そして/または軽鎖可変領域(LCVR)は、(d)配列番号4のLCVR CDR1配列、(e)配列番号5のLCVR CDR2配列、および/または(f)1位のロイシン残基がメチオニンで置換されていてもよく、そして8位のロイシン残基がフェニルアラニンで置換されていてもよい、配列番号6のLCVR CDR3配列を含む。
【0023】
特定の態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片は、(1)重鎖可変領域(HCVR)であって、(a)配列番号1のHCVR CDR1配列、(b)配列番号2のHCVR CDR2配列、および/または(c)配列番号3のHCVR CDR3配列を含む、前記HCVR;ならびに/あるいは(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって、(d)配列番号4のLCVR CDR1配列、(e)配列番号5のLCVR CDR2配列および/または(f)配列番号6のLCVR CDR3配列を含む、前記LCVRを含む。
【0024】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、前記CD44v9、または前記CD44v9を有する細胞に、約40nM、20nM、10nM、約5nM、約2nM、約1nMまたはそれ未満のKで結合する。
【0025】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、マウスモノクローナル抗体である。
【0026】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体または抗原結合断片は、(1)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号7のFR1、配列番号8のFR2、配列番号9のFR3、および/または配列番号10のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに/あるいは(2)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号11のFR1、配列番号12のFR2、配列番号13のFR3、および/または配列番号14のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列;あるいは、(i)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号37のFR1、配列番号38のFR2、配列番号39のFR3、および配列番号40のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに(ii)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号41のFR1、配列番号42のFR2、配列番号43のFR3、および配列番号44のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列をさらに含む。
【0027】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(1)それぞれ、配列番号7のFR1、配列番号8のFR2、配列番号9のFR3、および/または配列番号10のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに/あるいは(2)それぞれ、配列番号11のFR1、配列番号12のFR2、配列番号13のFR3、および/または配列番号14のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列を含む。
【0028】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体または抗原結合断片は、(1)それぞれ、配列番号37のFR1、配列番号38のFR2、配列番号39のFR3、および/または配列番号40のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに/あるいは(2)それぞれ、配列番号41のFR1、配列番号42のFR2、配列番号43のFR3、および/または配列番号44のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列を含む。
【0029】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒト・マウスキメラ抗体である。
【0030】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化マウスモノクローナル抗体である。
【0031】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(1)それぞれ、配列番号15のFR1、配列番号16のFR2、配列番号17のFR3、および/または配列番号18のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに/あるいは(2)それぞれ、配列番号19のFR1、配列番号20のFR2、配列番号21のFR3、および/または配列番号22のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列をさらに含む。
【0032】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(1)それぞれ、配列番号23のFR1、配列番号24のFR2、配列番号25のFR3、および/または配列番号26のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに/あるいは(2)それぞれ、配列番号27のFR1、配列番号28のFR2、配列番号29のFR3、および/または配列番号30のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列をさらに含む。
【0033】
特定の態様において、その抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、F、一本鎖FvまたはscFv、ジスルフィド連結F、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ディアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)、あるいはscFv-Fcである。
【0034】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか1つのHCVRおよび/またはLCVRを含む、ポリペプチドを提供する。
【0035】
特定の態様において、ポリペプチドは融合タンパク質(例えばキメラ抗原T細胞受容体)である。
【0036】
本発明の別の側面は、対象ポリペプチドのいずれかをコードする、ポリヌクレオチドを提供する。
【0037】
本発明の別の側面は、対象ポリヌクレオチドのいずれかを含む、ベクターを提供する。
【0038】
特定の態様において、ベクターは発現ベクター(例えば哺乳動物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または細菌発現ベクター)である。
【0039】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか、対象ポリペプチドのいずれか、対象ポリヌクレオチドのいずれか、あるいは対象ベクターのいずれかを含む、細胞を提供する。
【0040】
特定の態様において、細胞は、対象抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいは対象ポリペプチドのいずれかを発現する。
【0041】
特定の態様において、細胞はBHK細胞、CHO細胞、またはCOS細胞である。
【0042】
特定の態様において、細胞は、該細胞表面上に対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいは対象ポリペプチドのいずれかを含む。
【0043】
特定の態様において、細胞は、対象抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいは対象ポリペプチドのいずれかを含む、キメラ抗原受容体を所持するT細胞(CAR-T細胞)である。
【0044】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、対象細胞を培養し、そして該培養細胞から、対象抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを単離する工程を含む、前記方法を提供する。
【0045】
本発明の別の側面は、以下の式:Ab-[-L-D]、式中:Abは、リンカー・薬剤部分-[-L-D]の1つまたはそれより多い単位に共有結合している、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいはその対象ポリペプチドのいずれかであり、Lはリンカーであり、そしてDは細胞傷害性薬剤であり;そしてnは1~20(例えば1~12)の整数であり;そして各リンカー・薬剤部分は同じまたは異なるリンカーLまたは細胞傷害性薬剤Dを有してもよい、を有する、イムノコンジュゲート(または抗体・薬剤コンジュゲートまたはADC)を提供する。
【0046】
特定の態様において、各リンカー・薬剤部分-[-L-D]は、Lysの側鎖アミノ基を通じてAbに共有結合している。
【0047】
特定の態様において、各リンカー・薬剤部分-[-L-D]は、Cysの側鎖チオール基を通じてAbに共有結合している。
【0048】
特定の態様において、各リンカー・薬剤部分-[-L-D]は、部位特異的に取り込まれた非天然アミノ酸を通じてAbに共有結合している。
【0049】
特定の態様において、各リンカーLはペプチド単位を含む。
【0050】
特定の態様において、ペプチド単位は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2~10、または2~5のアミノ酸残基を含む。
【0051】
特定の態様において、リンカーLはプロテアーゼ(例えばカテプシン)によって切断不能である。
【0052】
特定の態様において、リンカーLは、プロテアーゼ(例えばカテプシン)、酸性環境、または酸化還元状態変化によって切断可能な切断可能リンカーである。
【0053】
特定の態様において、細胞傷害性薬剤は、DNA挿入剤、微小管結合剤、トポイソメラーゼI阻害剤、またはDNA副溝結合剤である。
【0054】
特定の態様において、細胞傷害性薬剤は、オーリスタチン・クラス、例えばモノメチルオーリスタチンE(MMAE)およびMMAF、メイタンシン・クラス、例えばDM-1、DM-3、DM-4、カリケアマイシン、例えばオゾガマイシン、SN-38、またはPBD(ピロロベンゾジアゼピン)である。
【0055】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはそのポリペプチド、あるいはそのイムノコンジュゲートのいずれか、および医薬的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0056】
本発明の別の側面は、CD44v9を発現する細胞の増殖を阻害するための方法であって、該細胞を、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはその対象ポリペプチド、あるいはその対象イムノコンジュゲート、あるいはその対象医薬組成物のいずれかと接触させる工程を含む、前記方法を提供する。
【0057】
特定の態様において、細胞は腫瘍細胞である。
【0058】
特定の態様において、腫瘍細胞は肺癌(例えばNSCLC)由来である。
【0059】
特定の態様において、腫瘍細胞は、結腸直腸癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、膀胱癌、膵臓癌、または脳の転移性癌由来である。
【0060】
本発明の別の側面は、CD44v9を発現する細胞の増殖を阻害するための方法であって、該細胞を、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはそのポリペプチド、あるいはそのイムノコンジュゲート、あるいはその医薬組成物のいずれかと接触させる工程を含む、前記方法を提供する。
【0061】
特定の態様において、細胞は腫瘍細胞である。
【0062】
特定の態様において、腫瘍細胞は肺癌(例えばNSCLC)由来である。
【0063】
特定の態様において、腫瘍細胞は、結腸直腸癌、乳癌、肝臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、膀胱癌、膵臓癌、または脳の転移性癌由来である。
【0064】
本発明の別の側面は、癌を有する被験体を治療するための方法であって、癌細胞がCD44v9を発現し、該方法が、前記被験体に、療法的有効量の、CD44v9抗体またはその抗原結合断片を含むCD44v9アンタゴニストを投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0065】
本発明の別の側面は、被験体において、細胞増殖性障害を治療するための方法であって、細胞増殖性障害の細胞がCD44v9を発現し、該方法が、前記被験体に、療法的有効量の、CD44v9抗体またはその抗原結合断片を含むCD44v9アンタゴニストを投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0066】
特定の態様において、CD44v9アンタゴニストは、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはその対象ポリペプチド、あるいはその対象イムノコンジュゲート、あるいはその対象医薬組成物のいずれかを含む。
【0067】
特定の態様において、癌は、乳房、肺、肝臓、結腸直腸、頭頸部、食道、膵臓、卵巣、膀胱、胃、皮膚、子宮内膜、卵巣、精巣、食道、前立腺または腎臓起源のものを含む上皮癌;骨および軟組織肉腫、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、平滑筋腫;造血性悪性疾患、例えばホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または白血病;神経外胚葉性腫瘍、例えば末梢神経腫瘍、星状細胞腫、または黒色腫;あるいは中皮腫である。
【0068】
本発明の別の側面は、被験体由来の試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定する方法であって、該試料を、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれかと接触させる工程を含む、前記方法を提供する。
【0069】
本発明の別の側面は、癌を有する被験体を診断し、そして治療する方法であって、癌細胞がCD44v9を発現し、該方法が:(1)前記方法を用いて、癌試料中でCD44v9を発現する被験体を同定するため、該被験体由来の癌試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定し;(2)前記被験体に、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはそのポリペプチド、あるいはそのイムノコンジュゲート、あるいはその医薬組成物のいずれかの療法的有効量を投与し;それによって、癌を有する被験体を診断し、そして治療する工程を含む、前記方法を提供する。
【0070】
特定の態様において、抗体CDRおよびフレームワーク領域配列は、すべて、IMGT番号付けスキームに基づく。
【0071】
本明細書記載の態様はいずれも、実施例のみに記載されるものおよび本発明の1つの側面下にのみ記載されるものを含めて、明らかに否定されるかまたは不適切でない限り、1つまたはそれより多い他の態様と組み合わせてもよいことが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、異なるCD44ペプチドの存在下での、CD44組換えタンパク質に対するモノクローナルマウス抗体HTS033の結合結果を示す。CD44v9特異的ペプチドであるP14は、組換えCD44に対するHTS033の結合を遮断した。
図2図2は、CD44-FLAGを過剰発現しているHEK293細胞に対するモノクローナルマウス抗体HTS033のFACS分析の結果を示す。FLAGに関して陽性染色された過剰発現細胞はまた、HTS033による染色に関しても陽性であった。
図3図3は、CD44v9を発現する細胞および発現しない細胞に対するHTS033のFACS分析を示す。SKME-1腫瘍細胞はHTS033抗体に結合しない一方、HTS033はBxPC3、NCl-H226およびNCl-H526に結合した。
図4図4A~4Dは、CD44v9のsiRNA仲介ノックダウン後に、腫瘍細胞へのHTS033の結合が減少したことを示す。対照、あるいはCD44v9またはCD44v6をターゲティングするsiRNAでトランスフェクションされた細胞をHTS033と、そして続いてFITCコンジュゲート化抗マウスIgGとインキュベーションした。図4Aは、BXPC-3細胞へのHTS033結合を示すが、シグナルはノックダウン細胞において減少した。BXPC-3におけるFITCシグナルの定量化およびCD44v9のノックダウン%を図4Bに列挙する。同様に、図4Cは、HUH7細胞に結合したHTS033を示すが、シグナルはノックダウン細胞において減少した。HUH7におけるFITC-Aシグナルの定量化およびCD44v9のノックダウン%を図4Dに列挙する。
図5図5は、MDA-MB-468、NCl-H226、5637、RT-4およびNCl-H520細胞に対するFACS分析によって測定されたHTS033の抗体アフィニティを示す。HTS033の連続希釈(17~1000,000pM)と細胞をインキュベーションし、そして続いてFITCコンジュゲート化抗マウスIgGで細胞を染色することによって、HTS033のFACS力価決定を行った。EC50値は、2~8nMの範囲であることが決定された。
図6図6A~6Bは、いくつかの腫瘍試料における、HTS033によるCD44v9の陽性免疫組織化学染色を示す。図6Aにおいて、HTS033染色は、1+(1)、2+(2)および3+(3)の範囲の染色強度で、トリプルネガティブ乳癌試料において陽性であった。同様に、図6Bは、正常試料(右)におけるHTS033の陰性染色を示す一方、HTS033は非小細胞肺癌試料(左)において陽性染色を示した。LUSCC:肺の扁平上皮癌。
図7図7は、異なるCD44ペプチドの存在下でのCD44組換えタンパク質に対するキメラHTS033の結合結果を示す。CD44v9特異的ペプチド、P14は、組換えCD44へのHTS033の結合を遮断する一方、他のペプチドは遮断しなかった。
図8図8A~8Bは、FACS分析を用い、PC-9細胞への抗体の結合によって測定された、HTS033のキメラおよびヒト化型の抗体アフィニティを示す。抗体の連続希釈(13~750,000pM)と細胞をインキュベーションし、そして続いて適切な二次抗体で細胞を染色することによって、各抗体のFACS力価決定を行った(図8A)。抗体のEC50値を図8Bに列挙する。
図9図9は、膵臓(BXPC-3)、肺(NCl-H520およびNCl-H226)、肝臓(HUH7およびSK-HEP-1)および膀胱(5637)癌細胞株におけるHTS033および二次MMAE抗体・薬剤コンジュゲートの細胞傷害性を示す。細胞を、MMAEコンジュゲート化抗マウスIgG抗体とともに、HTS033またはIgG対照の連続希釈(1.5pM~30nM)で処理した。グラフは、非処理対照に比較した細胞生存%を示す。HTS033のIC50値は、試験した細胞株に関して、14~315pMの範囲であった。
図10図10は、乳房(MDA-MB-231およびMDA-MB-468)および膀胱(RT-4)癌細胞株におけるHTS033および二次MMAE抗体・薬剤コンジュゲートの細胞傷害性を示す。HTS033のIC50値は、試験した細胞株に関して、22~224pMの範囲であった。
図11図11は、肺(PC-9)、頭頸部(A253)および膵臓(BxPC-3)癌細胞株におけるMMAEとコンジュゲート化されたヒト化HTS033 25-1の細胞傷害性を示す。細胞を、連続希釈したヒト化HTS033-25-1-MMAEまたはMMAEコンジュゲート化陰性対照抗体(1.5pM~30nM)で処理した。ヒト化HTS033-25-1 MMAEのIC50値は、それぞれ、269pM(PC-9)、203pM(A253)、および309pM(BxPC3)であった。
図12図12は、PC-9肺癌細胞に対するHTS033 CAR-Tの細胞傷害性を示す。HTS033可変ドメイン配列で作製されたCAR-T細胞および対照T細胞を、異なるE:T比(E:T細胞、T:腫瘍細胞)で、PC-9細胞と24時間インキュベーションした。T細胞除去後のPC-9細胞の生存度をCCK-8アッセイによって決定した。ターゲットPC-9細胞の効率的な殺傷がすべてのE:T比で観察された。
【発明を実施するための形態】
【0073】
1.概説
本明細書記載の本発明は、特定の抗CD44v9抗体、例えば本明細書に記載されるものが、癌などの疾患を治療するために有効であるという知見に部分的に基づく。
【0074】
したがって、本発明の1つの側面は、CD44v9に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、(1)重鎖可変領域(HCVR)であって、(a)配列番号1のHCVR CDR1配列、(b)配列番号2のHCVR CDR2配列、および/または(c)配列番号3のHCVR CDR3配列を含む、前記HCVR;ならびに/あるいは(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって、(d)配列番号4のLCVR CDR1配列、(e)配列番号5のLCVR CDR2配列および/または(f)配列番号6のLCVR CDR3配列を含む、前記LCVRを含み、任意選択で、モノクローナル抗体がmAb116ではないことを条件とする、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0075】
タンパク質中のアミノ酸変異は、タンパク質の結合特性および他の機能に影響を及ぼすことなく起こりうることが一般的に認識される。これは、変異が、タンパク質の構造および機能に本質的ではないアミノ酸で起こる場合、または置換が保存性である、すなわち類似の特性のアミノ酸間で起こり、そしてしたがって非かく乱性である場合に可能である。保存的置換の予測は、PechmannおよびFrydman(2014) PLoS Comput Biol 10(6): e1003674によって列挙され、該文献の内容は本明細書に援用される。
【0076】
したがって、本発明の1つの側面は、CD44v9に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体が、(1)重鎖可変領域(HCVR)であって、(a)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号1のHCVR CDR1配列、(b)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号2のHCVR CDR2配列、および/または(c)最大5アミノ酸変異を含む、配列番号3のHCVR CDR3配列を含む、前記HCVR、ならびに/あるいは(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって、(d)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号4のLCVR CDR1配列、(e)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号5のLCVR CDR2配列、および/または(f)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号6のLCVR CDR3配列を含む、前記LCVRを含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0077】
特定の態様において、モノクローナル抗体または抗原結合断片の重鎖可変領域(HCVR)は、(a)配列番号1のHCVR CDR1配列、(b)6位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号2のHCVR CDR2配列、および/または(c)2位のアルギニン残基がセリンで置換されていてもよく、4位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよく、5位のアスパラギン酸残基がグルタミン酸で置換されていてもよく、7位のアスパラギン残基がスレオニンで置換されていてもよく、そして8位のプロリン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号3のHCVR CDR3配列を含み、そして/または軽鎖可変領域(LCVR)は、(d)配列番号4のLCVR CDR1配列、(e)配列番号5のLCVR CDR2配列、および/または(f)1位のロイシン残基がメチオニンで置換されていてもよく、そして8位のロイシン残基がフェニルアラニンで置換されていてもよい、配列番号6のLCVR CDR3配列を含む。
【0078】
mAb116と称されるモノクローナルマウス抗CD44v9抗体が生成されており、そしてその内容が本明細書に援用される出願PCT/CN2018/076958に記載される。1つの態様において、CD44v9に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(1)重鎖可変領域(HCVR)であって、(a)配列番号31のHCVR CDR1配列、(b)配列番号32のHCVR CDR2配列、および/または(c)配列番号33のHCVR CDR2配列を含む、前記HCVR;ならびに/あるいは(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって、(d)配列番号34のLCVR CDR1配列、(e)配列番号35のLCVR CDR2配列および/または(f)配列番号36のLCVR CDR3配列を含む、前記LCVRを含む。
【0079】
特定の態様において、単離抗CD44v9モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、CD44v9、または前記CD44v9を有する細胞に、約40nM、20nM、10nM、約5nM、または約2nM、あるいはそれ未満のKで結合する。
【0080】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、マウス抗体である。
【0081】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体または抗原結合断片は、(1)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号7のFR1、配列番号8のFR2、配列番号9のFR3、および/または配列番号10のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに/あるいは(2)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号11のFR1、配列番号12のFR2、配列番号13のFR3、および/または配列番号14のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列を含む。
【0082】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化抗体、例えばヒト化マウスモノクローナル抗体である。
【0083】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(1)それぞれ、配列番号15のFR1、配列番号16のFR2、配列番号17のFR3、および/または配列番号18のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに/あるいは(2)それぞれ、配列番号19のFR1、配列番号20のFR2、配列番号21のFR3、および/または配列番号22のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列をさらに含む。
【0084】
特定の態様において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(1)それぞれ、配列番号23のFR1、配列番号24のFR2、配列番号25のFR3、および/または配列番号26のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに/あるいは(2)それぞれ、配列番号27のFR1、配列番号28のFR2、配列番号29のFR3、および/または配列番号30のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列をさらに含む。
【0085】
特定の態様において、その抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、F、一本鎖FvまたはscFv、ジスルフィド連結F、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ディアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)、あるいはscFv-Fcである。
【0086】
関連する側面において、本発明は、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、参照モノクローナル抗体によって結合されるCD44v9の同じエピトープに結合するか、またはCD44v9の同じエピトープへの結合に関して、前記参照モノクローナル抗体と競合し、前記参照モノクローナル抗体が:(1)重鎖可変領域(HCVR)であって、配列番号1のHCVR CDR1配列、配列番号2のHCVR CDR2配列、および/または配列番号3のHCVR CDR3配列を含む、前記HCVR;ならびに/あるいは(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって、配列番号4のLCVR CDR1配列、配列番号5のLCVR CDR2配列、および/または配列番号6のLCVR CDR3配列を含む、前記LCVRを含み、任意選択で、モノクローナル抗体がmAb116ではないことを条件とする、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0087】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか1つのHCVRおよび/またはLCVRを含む、ポリペプチドを提供する。
【0088】
特定の態様において、ポリペプチドは融合タンパク質(例えばキメラ抗原T細胞受容体)である。
【0089】
キメラ抗原T細胞受容体(CAR-T)はまた、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体、または人工T細胞受容体としても知られる。これは、免疫エフェクターT細胞上に恣意的な特異性を移植する、操作受容体である。典型的には、これらの受容体は、T細胞上にモノクローナル抗体の特異性を移植するために用いられ、そのコード配列のトランスファーはレトロウイルスベクターによって容易となる。該受容体は、異なる供給源由来の部分で構成されるため、キメラと称される。CAR-Tは、T細胞を患者から取り除き、そしてこれらが患者の特定の癌、例えば癌細胞上に発現されるCD44v9に特異的な受容体を発現するように修飾される、養子細胞移入を用いた癌の治療に用いられうる。次いで、癌細胞を認識し、そして殺すことが可能になったT細胞は、患者に再導入される。患者以外のドナーから供給されたT細胞の修飾もまた、同様に用いられうる。
【0090】
特定の態様において、本発明のCAR-Tは、膜貫通ドメイン(例えばCD3-ゼータ膜貫通ドメイン)およびエンドドメイン(例えばCD3-ゼータ・エンドドメイン)に融合された、対象モノクローナル抗CD44v9抗体のいずれかに由来する対象一本鎖可変断片(scFv)の融合体である。
【0091】
特定の態様において、scFvにはシグナルペプチドが先行し、新生タンパク質を小胞体に、そして続いて表面発現に導く。任意の真核シグナルペプチド配列を用いてもよい。特定の態様において、アミノ末端に天然に付着したシグナルペプチドを用いる(例えば、軽鎖-リンカー-重鎖の配向を持つscFvにおいて、軽鎖の天然シグナルを用いる)。
【0092】
特定の態様において、最適な抗原結合を可能にするために、柔軟なスペーサーを付加して、scFvが異なる方向で配向することを可能にする。スペーサーは好ましくは、抗原結合ドメインが異なる方向に配向して、抗原認識を促進することを可能にするために十分に柔軟である。特定の態様において、IgG1由来のヒンジ領域をスペーサーとして用いる。特定の態様において、免疫グロブリンのCHCH領域およびCD3の部分をスペーサーとして用いる。大部分のscFvに基づく構築物では、IgG1ヒンジが通常、十分である。
【0093】
特定の態様において、構築物は、細胞内に突き出し、そして所望のシグナルを伝達する、シグナル伝達エンドドメインの元来の分子に由来する、典型的な疎水性アルファらせんである、膜貫通ドメインを含む。特定の態様において、エンドドメインの最も膜に近い構成要素由来の膜貫通ドメイン、例えばCD3-ゼータ膜貫通ドメインを用いる。
【0094】
特定の態様において、エンドドメインは、本発明の抗原結合断片が抗原に結合した後、T細胞に活性化シグナルを伝達する、3つのITAMを含有するCD3-ゼータ・エンドドメインである。
【0095】
特定の態様において、エンドドメインは、T細胞へのさらなるシグナルを提供するため、構築物の細胞質テール(CD3-ゼータドメインのNまたはC末端側)に融合した共刺激タンパク質受容体(例えばCD28、41BB、ICOSのもの)由来の細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0096】
特定の態様において、エンドドメインは、多数のシグナル伝達ドメイン、例えばCD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40を組み合わせて、強度を増大させるか、または増殖/生存シグナルを伝達する。
【0097】
特定の態様において、本発明のキメラ抗原受容体は、迅速な精製のための同定マーカーを操作T細胞に提供するため、StrepタグII配列(ストレプトアビジンに固有のアフィニティを示す8残基最小ペプチド配列(Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys))をさらに含む。
【0098】
本発明の別の側面は、任意の対象ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0099】
本発明の別の側面は、任意の対象ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0100】
特定の態様において、ベクターは、発現ベクター(例えば哺乳動物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または細菌発現ベクター)である。
【0101】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか、対象ポリペプチドのいずれか、対象ポリヌクレオチドのいずれか、または対象ベクターのいずれかを含む細胞を提供する。
【0102】
特定の態様において、細胞は、対象抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいは対象ポリペプチドのいずれかを発現する。
【0103】
特定の態様において、細胞はBHK細胞、CHO細胞、またはCOS細胞である。
【0104】
特定の態様において、細胞は、該細胞表面上に、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいは対象ポリペプチドのいずれかを含む。
【0105】
特定の態様において、細胞は、対象抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいは対象ポリペプチドのいずれかを含む、キメラ抗原受容体を所持するT細胞(CAR-T細胞)である。
【0106】
特定の態様において、ウイルスベクター、例えばレトロウイルス、レンチウイルスまたはトランスポゾンを用いて、宿主細胞ゲノム内に対象CAR-T構築物を所持する導入遺伝子を組み込んでもよい。
【0107】
特定の態様において、非組込みベクターまたはエピソームDNA/RNA構築物、例えばプラスミドまたはmRNAを代わりに用いてもよい。
【0108】
特定の態様において、ゲノム内に組み込まれることなく、T細胞中で安定に維持されるベクターを用いて、挿入性突然変異誘発または遺伝毒性のリスクなしに、長期導入遺伝子発現を可能にする。
【0109】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいは対象ポリペプチドのいずれかを産生する方法であって:(a)対象細胞のいずれかを培養し;そして(b)前記培養細胞から、前記抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを単離する工程を含む、前記方法を提供する。
【0110】
特定の態様において、細胞は真核細胞である。
【0111】
本発明の別の側面は、以下の式:Ab-[-L-D]、式中:Abは、リンカー・薬剤部分-[-L-D]の1つまたはそれより多い単位に共有結合している、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれか、あるいはその対象ポリペプチドのいずれかであり、Lはリンカーであり、そしてDは細胞傷害性薬剤であり;そしてnは1~20(例えば1~12)の整数であり;そして各リンカー・薬剤部分は同じまたは異なるリンカーLまたは細胞傷害性薬剤Dを有してもよい、を有する、イムノコンジュゲート(または抗体・薬剤コンジュゲートまたはADC)を提供する。
【0112】
特定の態様において、各リンカー・薬剤部分-[-L-D]は、Lysの側鎖アミノ基を通じてAbに共有結合している。
【0113】
特定の態様において、各リンカー・薬剤部分-[-L-D]は、Cysの側鎖チオール基を通じてAbに共有結合している。
【0114】
特定の態様において、各リンカー・薬剤部分-[-L-D]は、部位特異的に取り込まれた非天然アミノ酸を通じてAbに共有結合している。
【0115】
特定の態様において、各リンカーLはペプチド単位を含む。
【0116】
特定の態様において、ペプチド単位は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2~10、または2~5のアミノ酸残基を含む。
【0117】
特定の態様において、リンカーLはプロテアーゼ(例えばカテプシン)によって切断不能である。
【0118】
特定の態様において、リンカーLは、プロテアーゼ(例えばカテプシン)、酸性環境、または酸化還元状態変化によって切断可能な切断可能リンカーである。
【0119】
特定の態様において、細胞傷害性薬剤は、DNA挿入剤、微小管結合剤、トポイソメラーゼI阻害剤、またはDNA副溝結合剤である。
【0120】
特定の態様において、細胞傷害性薬剤は、オーリスタチン・クラス、例えばモノメチルオーリスタチンE(MMAE)およびMMAF、メイタンシン・クラス、例えばDM-1、DM-3、DM-4、カリケアマイシン、例えばオゾガマイシン、SN-38、またはPBD(ピロロベンゾジアゼピン)である。
【0121】
関連する側面において、D部分は、それ自体薬剤分子ではなく、アダプター分子に特異的な普遍的CAR-Tが緊密に結合しうるアダプター分子(例えばFITC)である。本発明のこの側面にしたがって、アダプター分子、例えばFITCに非常に高いアフィニティで結合する単一の普遍的CAR-T細胞は、二重特異性SMDC(小分子薬剤コンジュゲート)アダプター分子と同時投与されて、多様な癌タイプを治療するために用いられる。これらのユニークな二重特異性アダプターは、アダプター、例えばFITC分子、および腫瘍ホーミング分子、例えば対象抗CD44v9抗体の抗原結合断片とともに構築されて、普遍的CAR-T細胞と癌細胞を正確に架橋して、これが局所T細胞活性化を引き起こす。抗腫瘍活性は、普遍的CAR-T細胞および正しい抗原特異的アダプター分子の両方が存在する場合にのみ誘導される。抗腫瘍活性および毒性は、投与されるアダプター分子投薬量を調整することによって、さらに制御されうる。抗原が不均一である腫瘍の治療は、所望の抗原特異的アダプターの混合物を投与することによって達成されうる。
【0122】
本発明の別の側面は、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはそのポリペプチド、あるいはそのイムノコンジュゲートのいずれか、および医薬的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0123】
本発明の別の側面は、CD44v9を発現する細胞の増殖を阻害するための方法であって、該細胞を、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはその対象ポリペプチド、あるいはその対象イムノコンジュゲート、あるいはその対象医薬組成物のいずれかと接触させる工程を含む、前記方法を提供する。
【0124】
特定の態様において、細胞は腫瘍細胞である。
【0125】
特定の態様において、腫瘍細胞は肺癌(例えばNSCLC)由来である。
【0126】
特定の態様において、腫瘍細胞は、結腸直腸癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、膀胱癌、膵臓癌、または脳の転移性癌由来である。
【0127】
本発明の別の側面は、癌を有する被験体を治療するための方法であって、癌細胞がCD44v9を発現し、該方法が、前記被験体に、療法的有効量の、CD44v9抗体またはその抗原結合断片を含むCD44v9アンタゴニストを投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0128】
本発明の別の側面は、被験体において、細胞増殖性障害を治療するための方法であって、細胞増殖性障害の細胞がCD44v9を発現し、該方法が、前記被験体に、療法的有効量の、CD44v9抗体またはその抗原結合断片を含むCD44v9アンタゴニストを投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0129】
特定の態様において、CD44v9アンタゴニストは、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはその対象ポリペプチド、あるいはその対象イムノコンジュゲート、あるいはその対象医薬組成物のいずれかを含む。
【0130】
特定の態様において、癌は、乳房、肺、肝臓、結腸直腸、頭頸部、食道、膵臓、卵巣、膀胱、胃、皮膚、子宮内膜、卵巣、精巣、食道、前立腺または腎臓起源のものを含む上皮癌;骨および軟組織肉腫、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、平滑筋腫;造血性悪性疾患、例えばホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または白血病;神経外胚葉性腫瘍、例えば末梢神経腫瘍、星状細胞腫、または黒色腫;あるいは中皮腫である。
【0131】
本発明の別の側面は、被験体由来の試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定する方法であって、該試料を、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片のいずれかと接触させる工程を含む、前記方法を提供する。
【0132】
本発明の別の側面は、癌を有する被験体を診断し、そして治療する方法であって、癌細胞がCD44v9を発現し、該方法が:(1)対象の方法を用いて、癌試料中でCD44v9を発現する被験体を同定するため、該被験体由来の癌試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定し;(2)前記被験体に、対象抗CD44v9抗体またはその抗原結合断片、あるいはそのポリペプチド、あるいはそのイムノコンジュゲート、あるいはその医薬組成物のいずれかの療法的有効量を投与し;それによって、癌を有する被験体を診断し、そして治療する工程を含む、前記方法を提供する。
【0133】
本発明は一般的に上述されるが、本発明のある特定の側面または態様が、以下のセクションにさらに記載される。
【0134】
2. 定義
用語「抗体」、「抗体分子」、および「抗体タンパク質」は、本明細書において、交換可能に用いられ、そして同等と見なされなければならない。これらには、免疫グロブリン分子であって、ターゲット分子、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または前述のものの組み合わせを、該免疫グロブリン分子の軽鎖および/または重鎖可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を通じて認識し、そして該ターゲット分子に該抗原認識部位を通じて特異的に結合する、前記免疫グロブリン分子が含まれる。本明細書において、用語「抗体」は、損なわれていない(intact)ポリクローナル抗体、損なわれていないモノクローナル抗体を含み、そして短縮型として、抗体断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片)、一本鎖Fv(scFv)突然変異体、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、および抗体が所望の生物学的活性を示す限り、抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリンが含まれうる。抗体は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと称される重鎖定常ドメインの同一性に基づく、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のいずれであってもよい。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なるおよび周知のサブユニット構造および三次元立体配置を有する。抗体は、裸であってもよいし、または毒素、放射性同位体等の他の分子にコンジュゲート化されていてもよい。
【0135】
いくつかの態様において、抗体は、非天然存在の組換え生成抗体である。いくつかの態様において、抗体は、天然構成要素から精製される。いくつかの態様において、抗体は組換え的に産生される。いくつかの態様において、抗体はハイブリドーマによって産生されるか、または抗体ライブラリー中で生成される。
【0136】
「モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)」は、ChothiaおよびLesk(ChothiaおよびLesk(1987) J. Mol. Biol. 196:901-917、本明細書に援用される)と関連して、Kabat(Kabat E. A., Wu T. T., Perry H. M., Gottesman K. S.およびFoeller C.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版). NIH Publication No. 91-3242. U.S. Department of Health and Human Services, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.、本明細書に援用される)にしたがった、特異的抗原結合に関与するアミノ酸配列と理解される。
【0137】
本明細書において、用語「フレームワーク修飾」は、個々の相補性決定領域を取り巻く可変領域中の単一のまたは複数のアミノ酸の交換、欠失または付加を指す。フレームワーク修飾は、抗体タンパク質の免疫原性、産生性または結合特異性に影響を有しうる。
【0138】
「抗原結合断片」、「抗原結合部分」、または短く「断片」は、本明細書において、全長配列よりも短い核酸分子によってコードされるが、なおその抗体結合活性を保持する(例えば実質的に同じ結合特異性であるが、Kによって測定されるようなわずかにより劣った結合アフィニティであってもよい)点で特徴づけられる、より短い型の抗体分子、すなわち任意のポリペプチドサブセットを指す。
【0139】
これらの用語は、損なわれていない抗体の部分を指し、そして損なわれていない抗体の抗原性決定可変領域を指す。抗体断片の例には、限定されるわけではないが、Fab、Fab’、F(ab’)、およびF断片、直鎖抗体、一本鎖抗体、および抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。用語、抗体の「抗原結合断片」には、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたはそれより多い断片が含まれる。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の特定の断片によって実行可能であることが示されてきている。用語、抗体の「抗原結合断片」内に含まれる結合断片の例には(限定なしに):(i)Fab断片、V、V、C、およびCH1ドメインからなる一価断片(例えばパパインによって消化された抗体は、3つの断片:2つの抗原結合Fab断片、および抗原に結合しない1つのFc断片を生じる);(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片(例えば、ペプシンによって消化された抗体は、2つの断片:二価抗原結合F(ab’)断片、および抗原に結合しないpFc’断片を生じる)およびその関連F(ab’)一価単位;(iii)VおよびCH1ドメインからなるF断片(すなわちFabに含まれる重鎖の部分);(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるF断片、および関連ジスルフィド架橋F;(v)Vドメインからなる、dAb(ドメイン抗体)またはsdAb(単一ドメイン抗体)断片(Wardら, Nature 341:544-546, 1989);および(vi)単離相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0140】
抗体断片を産生するための多様な技術が知られる。伝統的に、これらの断片は、損なわれていない抗体のタンパク質分解的消化から得られる(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24: 107-117, 1993;Brennanら, Science 229:81, 1985)。特定の態様において、抗体断片は組換え的に産生される。Fab、Fv、およびscFv抗体断片はすべて、大腸菌(E. coli)または他の宿主細胞で発現され、そして分泌されてもよく、こうしてこれらの断片を多量に産生することを可能にしてもよい。こうした抗体断片はまた、抗体ファージライブラリーから単離されてもよい。抗体断片はまた、例えば米国特許第5,641,870号に記載されるように直鎖抗体であってもよく、そして単一特異性または二重特異性であってもよい。抗体断片の産生のための他の技術が当業者には明らかであろう。
【0141】
「モノクローナル抗体」は、単一抗原決定基、またはエピトープの非常に特異的な認識および結合に関与する、均質な抗体集団を指す。これは、典型的には異なる抗原決定基に対して向けられる異なる抗体を含む、ポリクローナル抗体とは対照的である。用語「モノクローナル抗体」は、損なわれていないおよび全長モノクローナル抗体、ならびに抗体断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)、F)、一本鎖(scFv)突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子の両方を含む。さらに、「モノクローナル抗体」は、限定されるわけではないが、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、およびトランスジェニック動物を含む、任意の多くの方式で作製される抗体を指す。
【0142】
KohlerおよびMilstein(1975) Nature 256:495に記載されるものなどのハイブリドーマ法を用いてモノクローナル抗体を調製してもよい。ハイブリドーマ法を用いて、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を免疫して、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を誘発する。また、リンパ球をin vitroで免疫してもよい。免疫後、リンパ球を単離し、そして例えばポリエチレングリコールを用いて適切な骨髄腫細胞株と融合してハイブリドーマ細胞を形成し、次いでこれを非融合リンパ球および骨髄腫細胞から選び取ってもよい。免疫沈降、イムノブロッティングによって、またはin vitro結合アッセイ(例えばラジオイムノアッセイ(RIA);酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定されるように、選択した抗原に対して特異的に向けられるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、次いで、標準法を用いたin vitro培養(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986)で、または動物における腹水腫瘍としてin vivoでのいずれかで、増殖させてもよい。次いで、ポリクローナル抗体に関して記載されるように、モノクローナル抗体を培地または腹水から精製してもよい。
【0143】
あるいは、また、米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法を用いて、モノクローナル抗体を作製してもよい。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、例えば抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたRT-PCRによって、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から単離し、そして慣用的な方法を用いて、その配列を決定する。次いで、重鎖および軽鎖をコードする単離ポリヌクレオチドを適切な発現ベクター内にクローニングし、これを次いで、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクションした際、宿主細胞によってモノクローナル抗体が生成される。また、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはその断片を、記載されるように所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリーから単離してもよい(McCaffertyら, Nature 348:552-554, 1990;Clacksonら, Nature, 352:624-628, 1991;およびMarksら, J. Mol. Biol. 222:581-597, 1991)。
【0144】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド(単数または複数)を、組換えDNA技術を用い、いくつかの異なる方式でさらに修飾して、別の抗体を生成してもよい。いくつかの態様において、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインを1)例えばキメラ抗体を生成するため、ヒト抗体の領域に関して、または2)融合タンパク質を生成するため、非免疫グロブリンポリペプチドに関して、置換してもよい。いくつかの態様において、定常領域を一部切除するかまたは除去して、モノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成する。可変領域の部位特異的または高密度突然変異誘発を用いて、モノクローナル抗体の特異性、アフィニティ等を最適化してもよい。
【0145】
用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えばネズミ)配列を含有する、特異的免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、またはその断片である、非ヒト(例えばネズミ)抗体の型を指す。典型的には、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、アフィニティ、および能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDR由来の残基によって置換されているヒト免疫グロブリンである(Jonesら, Nature 321:522-525, 1986;Riechmannら, Nature 332:323-327, 1988;Verhoeyenら, Science 239:1534-1536, 1988)。
【0146】
非ヒトまたはヒト抗体を操作するか、ヒト化するか、または表面を修正する(resurfacing)ための方法もまた用いてもよく、そしてこれらは当該技術分野に周知である。ヒト化、表面修正または類似の操作抗体は、例えば限定されるわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類または他の哺乳動物である非ヒトである供給源に由来する1つまたはそれより多いアミノ酸残基を有してもよい。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には、既知のヒト配列の「移入(import)」可変、定常または他のドメインから採られる、「移入」残基としばしば称される残基によって置換される。
【0147】
こうした移入配列を用いて、免疫原性を減少させるか、あるいは結合、アフィニティ、オン速度、オフ速度、アビディティ、特異性、半減期、または当該技術分野に知られるような任意の他の適切な特性を減少させるか、増進させるかまたは修飾してもよい。一般的に、CDR残基は、CD44v9結合に影響を及ぼす際に直接および最も実質的に関与する。したがって、非ヒトまたはヒトCDR配列の一部またはすべては維持される一方、可変および定常領域の非ヒト配列は、ヒトまたは他のアミノ酸で置換されてもよい。
【0148】
抗体はまた任意選択で、抗原CD44v9に関する高アフィニティの保持および他の好ましい生物学的特性を含むように操作された、ヒト化、表面修正、操作またはヒト抗体であってもよい。この目的を達成するため、ヒト化(またはヒト)または操作抗CD44v9抗体および表面修正抗体は、任意選択で、親、操作、およびヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列ならびに多様な概念的ヒト化および操作産物の分析プロセスによって、調製されてもよい。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用可能であり、そして当業者にはよく知られる。選択される候補免疫グロブリン配列のありうる三次元コンホメーション構造を例示し、そしてディスプレイする、コンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの検査によって、候補免疫グロブリン配列が機能する際の残基のありうる役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンが、CD44v9などのその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。この方式で、コンセンサスおよび移入配列から、フレームワーク(FR)残基を選択し、そして組み合わせて、所望の抗体特性、例えばターゲット抗原(単数または複数)に関するアフィニティ増加が達成されるようにしてもよい。
【0149】
本発明の抗体のヒト化、表面修正または操作は、限定されるわけではないが、文献中に引用される参考文献を含めて、各々、本明細書にその全体が援用される、Winter(Jonesら, Nature 321:522, 1986;Riechmannら, Nature 332:323, 1988;Verhoeyenら, Science 239:1534, 1988、Simsら, J. Immunol. 151:2296, 1993;ChothiaおよびLesk, J. Mol. Biol. 196:901, 1987、Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:4285, 1992;Prestaら, J. Immunol. 151:2623, 1993;Raguskaら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91(3):969-973, 1994;米国特許第5,639,641号、第5,723,323号;第5,976,862号;第5,824,514号;第5,817,483号;第5,814,476号;第5,763,192号;第5,723,323号;第5,766,886号;第5,714,352号;第6,204,023号;第6,180,370号;第5,693,762号;第5,530,101号;第5,585,089号;第5,225,539号;第4,816,567号;PCT/:US98/16280;US96/18978;US91/09630;US91/05939;US94/01234;GB89/01334;GB91/01134;GB92/01755;WO90/14443;WO90/14424;WO90/14430;EP229246;第7,557,189号;第7,538,195号;および第7,342,110号に記載されるものなどの、任意の既知の方法を用いて、実行されてもよい。
【0150】
特定の別の態様において、CD44v9に対する抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野に知られる多様な技術を用いて、直接調製されてもよい。ターゲット抗原に対して向けられる抗体を産生する、in vitroで免疫した、または免疫個体から単離した、不死化ヒトBリンパ球を生成してもよい(例えば、Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boemerら, 1991, J. Immunol, 147 (l):86-95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい)。また、例えばVaughanら, Nat. Biotech. 14:309-314, 1996、Sheetsら, Proc. Nat’l. Acad. Sci. 95:6157-6162, 1998、HoogenboomおよびWinter, J. Mol. Biol. 227:381, 1991、ならびにMarksら, J. Mol. Biol. 222:581, 1991に記載されるように、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから、ヒト抗体を選択してもよい。抗体ファージライブラリーの生成および使用のための技術はまた、米国特許第5,969,108号、第6,172,197号、第5,885,793号、第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号;第6,593,081号;第6,300,064号;第6,653,068号;第6,706,484号;および第7,264,963号;ならびにRotheら, J. Mol. Bio. doi: 10.1016/j.jmb.2007.12.018, 2007にも記載される(これらは各々、その全体が本明細書に援用される)。アフィニティ成熟戦略および鎖シャフリング戦略(Marksら, Bio/Technology 10:779-783, 1992、本明細書にその全体が援用される)が当該技術分野に知られ、そしてこれを使用して高アフィニティヒト抗体を生成してもよい。
【0151】
また、内因性免疫グロブリン産生の欠如下で、免疫に際して、ヒト抗体の全レパートリーを産生可能な、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいて、ヒト化抗体を作製してもよい。このアプローチは、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;および第5,661,016号に記載される。
【0152】
いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFフレームワーク領域(FR)残基は、所望の特異性、アフィニティ、および能力を有する非ヒト種由来の抗体中の対応する残基で置き換えられる。Fフレームワーク領域中および/または置換された非ヒト残基内のいずれかで、さらなる残基の置換によって、ヒト化抗体をさらに修飾して、抗体特異性、アフィニティ、および/または能力を改良し、そして最適化してもよい。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域のすべてまたは実質的にすべてを含有する、少なくとも1つ、および典型的には2つまたは3つの可変ドメインの実質的にすべてを含む一方、FR領域のすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(F)の少なくとも一部も含んでもよい。ヒト化抗体を生成するために用いられる方法の例は、米国特許第5,225,539号および第5,639,641号、Roguskaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91(3):969-973, 1994;およびRoguskaら, Protein Eng. 9(10):895-904, 1996(すべて本明細書に援用される)に記載される。いくつかの態様において、「ヒト化抗体」は、表面修正抗体である。いくつかの態様において、「ヒト化抗体」は、CDR移植抗体である。
【0153】
抗体の「可変領域」は、単独のまたは組み合わせのいずれかの抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域は、各々、超可変領域としてもまた知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって連結された、4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって緊密に保持され、そして他方の鎖由来のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技術:(1)異種間配列可変性に基づくアプローチ(すなわちKabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 1991, National Institutes of Health, Bethesda Md.);および(2)抗原・抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikaniら, J. Molec. Biol. 273:927-948, 1997)がある。さらに、ときに、当該技術分野ではCDRを決定するため、これらの2つのアプローチの組み合わせが用いられる。
【0154】
可変ドメインにおける残基(軽鎖の残基およそ1~107および重鎖の残基およそ1~113)を指す際に、一般的に、Kabat番号付けシステムが用いられる(例えば、Kabatら, Sequences of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991))。
【0155】
Kabatにおけるようなアミノ酸位番号付けは、Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991)(本明細書に援用される)における抗体の編集物(compilation)の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の直鎖アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮、またはこれらへの挿入に対応する、より少ないまたはさらなるアミノ酸を含有しうる。例えば重鎖可変ドメインには、H2の残基52の後の単一アミノ酸挿入(Kabatによれば残基52a)、および重鎖FR残基82の後の挿入残基(例えば、Kabatによれば、残基82a、82b、および82c等)が含まれてもよい。残基のKabat番号付けは、抗体配列と「標準」Kabat番号付け配列の相同性領域での整列によって、所定の抗体に関して決定されうる。Chothiaは、その代わり、構造ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk, J. Mol. Biol. 196:901-917,1987)。Chothia CDR-H1ループ末端を、Kabat番号付け慣用法を用いて番号付けすると、ループの長さに応じて、H32およびH34の間で多様である。これは、Kabat番号付けスキームが、H35AおよびH35Bの間に挿入を置くためであり、35Aまたは35Bのいずれも存在しない場合、ループは32で終わり;35Aのみが存在する場合、ループは33で終わり;35Aおよび35Bの両方が存在する場合、ループは34で終わる。AbM超可変領域は、Kabat CDRおよびChothia構造ループの間の妥協に相当し、そしてOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられる。
【0156】
【表1】
特定の態様において、抗体CDRおよびフレームワーク領域配列は、すべて、IMGT番号付けスキームに基づく。
【0157】
用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、または当該技術分野に知られる任意の技術を用いて作製された、ヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。特定の態様において、ヒト抗体は、非ヒト配列を持たない。ヒト抗体のこの定義には、損なわれていないまたは全長抗体、あるいはその抗原結合断片が含まれる。
【0158】
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つまたはそれより多くの種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、所望の特異性、アフィニティ、および能力を持つ哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ等)の1つの種に由来する抗体の可変領域に対応する一方、定常領域は、別の種(通常はヒト)由来の抗体中の配列に相同であり、その種(例えばヒト)における免疫反応を誘発する可能性を回避するかまたは減少させる。特定の態様において、キメラ抗体には、少なくとも1つのヒト重鎖および/または軽鎖ポリペプチドを含む抗体またはその抗原結合断片、例えばネズミ軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれてもよい。
【0159】
本発明の目的のため、修飾抗体は、ヒトCD44v9のポリペプチドと抗体の会合を提供する、任意のタイプの可変領域を含んでもよいことが認識されなければならない。これに関連して、可変領域は、体液反応を生じさせ、そして所望の腫瘍関連抗原に対する免疫グロブリンを生成するように誘導されうる、任意のタイプの哺乳動物のものを含んでもよいしまたはこれに由来してもよい。こうしたものとして、修飾抗体の可変領域は、例えば、ヒト、ネズミ、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル(cynomolgus monkey)、マカク(macaque)等)またはオオカミ(lupine)起源であってもよい。いくつかの態様において、修飾免疫グロブリンの可変および定常領域はどちらも、ヒトである。他の態様において、適合する抗体の可変領域(通常、非ヒト供給源由来)を操作するかまたは特異的にあつらえて(tailor)、該分子の結合特性を改善するかまたは免疫原性を減少させてもよい。これに関連して、本発明に有用な可変領域は、移入アミノ酸配列の包含を通じて、ヒト化されるか、または別の方式で改変されてもよい。
【0160】
特定の態様において、重鎖および軽鎖両方の可変ドメインは、1つまたはそれより多いCDRの少なくとも部分的な置換によって、そして必要であれば、部分的フレームワーク領域置換および配列変異によって、改変される。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラスまたはさらには同じサブクラスの抗体に由来してもよいが、CDRが異なるクラスの抗体に、そして特定の態様において、異なる種由来の抗体に由来することが想定される。1つの可変ドメインの抗原結合能を別のものにトランスファーするために、ドナー可変領域由来の完全なCDRで、CDRのすべてを置換する必要はない可能性もある。むしろ、抗原結合部位の活性を維持するために必要な残基をトランスファーすることのみが必要である可能性もある。米国特許第5,585,089号、第5,693,761号および第5,693,762号に示される説明を考慮すると、免疫原性が減少した機能抗体を得ることは、ルーチンの実験を実行することによって、または試行錯誤試験によってのいずれかで、十分に、当業者の能力の範囲内であろう。
【0161】
可変領域に対する改変にもかかわらず、当業者は、本発明の修飾抗体が、天然または非改変定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較した際、望ましい生化学的特性、例えば腫瘍局在増加または血清半減期減少を提供するように、定常領域ドメインの1つまたはそれより多くの少なくとも部分が、欠失されるかまたは別の方式で改変されている抗体(例えば全長抗体またはその免疫反応断片)を含むことを認識するであろう。いくつかの態様において、修飾抗体の定常領域は、ヒト定常領域を含む。本発明に適合する定常領域に対する修飾は、1つまたはそれより多いドメインにおける1つまたはそれより多いアミノ酸の付加、欠失または置換を含む。すなわち、本明細書に開示される修飾抗体は、3つの重鎖定量ドメイン(CH1、CH2、またはCH3)の1つまたはそれより多くに対する、そして/または軽鎖定常ドメイン(CL)に対する、改変または修飾を含んでもよい。いくつかの態様において、1つまたはそれより多いドメインが部分的にまたは完全に欠失されている修飾定常領域が意図される。いくつかの態様において、修飾抗体は、全CH2ドメインが除去されているドメイン欠失構築物または変異体(ACH2構築物)を含む。いくつかの態様において、除去された定常領域ドメインは、存在しない定常領域によって典型的には与えられる分子柔軟性のある程度を提供する、短いアミノ酸スペーサー(例えば10残基)によって置換される。
【0162】
特定の態様において、修飾抗体を操作して、CH3ドメインを、それぞれの修飾抗体のヒンジ領域に直接融合させてもよいことが注目される。他の構築物において、ヒンジ領域ならびに修飾CH2および/またはCH3ドメインの間にペプチドスペーサーを提供することが望ましい可能性もある。例えば、CH2ドメインを欠失させ、そして残りのCH3ドメイン(修飾または未修飾)を、5~20アミノ酸スペーサーとともに、ヒンジ領域に連結する、適合性構築物を発現してもよい。こうしたスペーサーは、例えば、定常ドメインの制御要素が未結合のままであり、そしてアクセス可能であるか、またはヒンジ領域が柔軟なままであることを確実にするため、付加されうる。しかし、いくつかの場合、アミノ酸スペーサーが免疫原性であり、そして該構築物に対する望ましくない免疫反応を誘発することが示されうることに注目しなければならない。したがって、特定の態様において、構築物に付加されるいかなるスペーサーも、修飾抗体の所望の生化学品質を維持するために、比較的非免疫原性であるかまたはさらには完全に除去される。
【0163】
全定常領域ドメインの欠失に加えて、本発明の抗体がいくつかのまたはさらに単一のアミノ酸の部分的欠失または置換によって提供されうることが認識されるであろう。例えば、Fc結合を実質的に減少させ、そしてそれによって腫瘍局在を増加させるため、CH2ドメインの選択される領域における単一アミノ酸の突然変異が十分でありうる。同様に、エフェクター機能(例えば補体C1Q結合)が調節されるように制御する1つまたはそれより多い定常領域ドメインの部分を、単純に欠失させることが望ましい可能性もある。定常領域のこうした部分的欠失は、抗体の選択される特性(血清半減期)を改善する一方、対象定常領域ドメインと関連する他の所望の機能を損なわれていないままにしうる。さらに、上記から示唆されるように、例えば生じる構築物のプロファイルを増進させうる、1つまたはそれより多いアミノ酸の突然変異または置換を通じて、開示する抗体の定常領域を、修飾してもよい。これに関連して、保存される結合部位によって提供される活性(例えばFc結合)を破壊する一方、修飾抗体の立体配置および免疫原性プロファイルを実質的に維持することも可能でありうる。特定の態様は、定常領域に対する1つまたはそれより多いアミノ酸の付加を含んで、所望の特性、例えばエフェクター機能の減少または増加を増進させ、あるいはより多くの細胞毒または炭水化物付着を提供してもよい。こうした態様において、選択される定常領域ドメイン由来の特定の配列を挿入するかまたは複製することが望ましい可能性もある。
【0164】
本発明は、本明細書に示すキメラ、ヒト化およびヒト抗体、またはその抗体断片に実質的に相同である変異体および同等物をさらに含む。これらは、例えば、保存的置換突然変異、すなわち類似のアミノ酸による1つまたはそれより多いアミノ酸の置換を含有しうる。例えば、保存的置換は、あるアミノ酸の同じ一般的なクラス内の別のものでの置換、例えば1つの酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸、1つの塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸、または1つの中性アミノ酸の別の中性アミノ酸による置換を指す。保存的アミノ酸置換によって意図されるものは、上に定義されるものなど、当該技術分野に周知である。
【0165】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、本明細書において交換可能に用いられ、そして特定の抗体によって認識されそして特異的に結合されることが可能な抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、隣接アミノ酸、およびタンパク質の三次元フォールディングによって並置される非隣接アミノ酸の両方から形成されうる。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、タンパク質変性に際して典型的には保持される一方、三次元フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的にはタンパク質変性に際して失われる。エピトープには、ユニークな空間コンホメーションの典型的には少なくとも3、そしてより一般的には少なくとも5または8~10のアミノ酸が含まれる。
【0166】
「結合アフィニティ」は、一般的に、分子(例えば抗体)の単一結合部位およびその結合パートナー(例えば抗原)の間の非共有相互作用の総計の強度を指す。別に示さない限り、本明細書において、「結合アフィニティ」は、結合対(例えば抗体および抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティを指す。分子XのそのパートナーYに関するアフィニティは、一般的に、解離定数(K)または最大半有効濃度(EC50)によって示されうる。本明細書に記載するものを含む、当該技術分野に知られる一般的な方法によって、アフィニティを測定してもよい。低アフィニティ抗体は、一般的に、抗原にゆっくりと結合し、そして容易に解離する傾向がある一方、高アフィニティ抗体は、一般に、抗原に迅速に結合し、そしてより長く結合したままである傾向がある。結合アフィニティを測定する多様な方法が当該技術分野に知られ、本発明の目的のため、このいずれを用いてもよい。特定の例示的態様を本明細書に記載する。
【0167】
句「実質的に類似」または「実質的に同じ」は、本明細書において、当業者が2つの値(例えばK値)によって測定される生物学的特性の背景内で、生物学的および/または統計学的有意性が2つの値の間でわずかであるかまたはまったくないと見なすであろうような、2つの数値(一般的に一方は本発明の抗体と関連し、そしてもう一方は参照/比較抗体と関連する)間の類似性の十分な高い度合いを示す。前記の2つの値の間の相違は、参照/比較抗体に関する値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満である。
【0168】
「単離されている」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、天然には見られない型であるポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物である。単離ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物には、もはや天然に見られる型にはない度合いまで精製されているものが含まれる。いくつかの態様において、単離されている抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、実質的に純粋である。
【0169】
抗体および他のタンパク質を精製するための当該技術分野に知られる方法にはまた、各々、その全体が本明細書に援用される、米国特許公報第2008/0312425号、第2008/0177048号、および第2009/0187005号に記載されるものも含まれる。
【0170】
本明細書において、「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(すなわち混入物質不含)、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋、または少なくとも99%純粋である物質を指す。
【0171】
本発明記載の抗体の「機能変異体」は、本発明記載の抗体分子に実質的に類似である生物学的活性(機能的または構造的いずれか)、すなわち実質的に類似の基質特異性または基質切断を所持する抗体分子である。
【0172】
用語「機能変異体」にはまた、「断片」、「アレル変異体」、「機能変異体」、「縮重核酸コードに基づく変異体」または「化学的誘導体」も含まれる。こうした「機能変異体」は、1つまたはいくつかの点突然変異、コード配列における1つまたはいくつかの核酸交換、欠失または挿入、あるいは1つまたはいくつかのアミノ酸交換、欠失または挿入を所持してもよい。前記機能変異体は、抗体結合活性などの生物学的活性をなお、少なくとも部分的に保持するか、またはさらに、前記生物学的活性の改善を伴う。
【0173】
本発明記載の抗体分子の「機能変異体」にはまた、本発明記載の抗体分子に実質的に類似である生物学的活性(機能的または構造的いずれか)、すなわち実質的に類似のターゲット分子結合活性を所持する抗体分子も含まれてもよい。
【0174】
「アレル変異体」は、アレル変異、例えばヒトにおける2つのアレルの相違による変異体である。前記変異体は、抗体ターゲット結合活性などの生物学的活性をなお、少なくとも部分的に保持するか、またはさらに、前記生物学的活性の改善を伴う。
【0175】
「遺伝暗号の縮重に基づく変異体」は、特定のアミノ酸が、いくつかの異なるヌクレオチド3つ組によってコードされうるという事実による変異体である。前記変異体は、抗体結合活性などの生物学的活性をなお、少なくとも部分的に保持するか、またはさらに、前記生物学的活性の改善を伴う。
【0176】
「融合分子」は、例えば、レポーター、例えば放射標識、化学分子、例えば毒素または蛍光標識、あるいは当該技術分野に知られる任意の他の分子と融合される、本発明記載の抗体分子であってもよい。
【0177】
本明細書において、本発明記載の「化学誘導体」は、化学的に修飾されるか、または通常は該分子の一部ではないさらなる化学部分を含有する、本発明記載の抗体分子である。こうした部分は、分子の活性、例えばターゲット破壊(例えば腫瘍細胞の殺細胞)を改善してもよいし、またはその可溶性、吸収、生物学的半減期等を改善してもよい。
【0178】
分子は、両方の分子が実質的に類似の構造または生物学的活性を有するならば、別の分子に「実質的に類似である」。したがって、2つの分子が類似の活性を所持する限り、2つの分子は、用語、変異体が本明細書に使用される場合、分子の一方がもう一方の分子には見られない構造を有するか、またはアミノ酸残基配列が同一でない場合であっても、変異体と見なされる。
【0179】
本発明の「試料」または「生物学的試料」は、特定の態様において、真核生物由来など、生物学的起源のものである。いくつかの態様において、試料はヒト試料であるが、動物試料もまた用いてもよい。本発明で使用するための試料の限定されない供給源には、例えば、固形組織、生検吸引物、腹水、液性抽出物、血液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚の外部部分、呼吸器、腸管、および泌尿生殖器管、涙、唾液、ミルク、腫瘍、臓器、細胞培養および/または細胞培養構成要素が含まれる。「癌性/腫瘍試料」は、癌性細胞を含有する試料である。該方法を用いて、CD44v9の発現または試料の状態の側面を調べてもよく、これには、限定されるわけではないが、異なるタイプの細胞または試料を比較すること、異なる発展段階を比較すること、および疾患または異常の存在および/またはタイプを検出するかまたは決定することが含まれる。
【0180】
本発明記載の抗体の多くの使用のため、最小のありうる抗原結合、すなわちCD44v9結合単位を有することが望ましい。したがって、別の好ましい態様において、本発明記載の抗体タンパク質は、Fab断片(抗原結合断片(Fragment antigen-binding)=Fab)である。本発明記載のこれらのCD44v9特異的抗体タンパク質は、隣接する定常領域によってともに保持される、両鎖の可変領域からなる。これらは、例えばパパインでの、プロテアーゼ消化によって、慣用的な抗体から形成されてもよいが、また、一方で、遺伝子操作によって類似のFab断片を産生してもよい。別の好ましい態様において、本発明記載の抗体タンパク質は、ペプシンでのタンパク質分解的切断によって調製されうるF(ab’)2断片である。
【0181】
遺伝子操作法を用いると、重鎖の可変領域(VH)および軽鎖の可変領域(VL)のみからなる短縮化抗体断片を産生することが可能である。これらは、Fv断片(可変断片(Fragment variable)=可変部分の断片)と称される。別の好ましい態様において、本発明記載のCD44v9特異的抗体分子は、こうしたFv断片である。これらのFv断片は、定常鎖のシステインによる2つの鎖の共有結合を欠くため、Fv断片は、しばしば安定化される。短いペプチド断片、例えば10~30アミノ酸、好ましくは15アミノ酸の断片によって重鎖および軽鎖の可変領域を連結することが好適である。この方式で、ペプチドリンカーによって連結された、VHおよびVLからなる単一ペプチド鎖が得られる。この種の抗体タンパク質は、一本鎖Fv(scFv)として知られる。先行技術から知られるこの種のscFv抗体タンパク質の例は、Hustonら(1988, PNAS 16: 5879-5883)に記載される。したがって、別の好ましい態様において、本発明記載のCD44v9特異的抗体タンパク質は、一本鎖Fvタンパク質(scFv)である。
【0182】
近年、scFvを多量体誘導体として調製するために多様な戦略が開発されてきている。これは、特に、改善された薬物動態学的および生体分布特性、ならびに増加した結合アビディティを持つ組換え抗体を導くことを意図される。scFvの多量体化を達成するため、scFvは多量体化ドメインを持つ融合タンパク質として調製された。多量体化ドメインは、例えば、IgGのCH3領域、またはコイルドコイル構造(らせん構造)、例えばロイシンジッパードメインであってもよい。しかし、scFvのVH/VL領域間の相互作用が多量体化に用いられる戦略もまたある(例えばジボディ、トリボディ、およびペンタボディ)。したがって、別の態様において、本発明記載の抗体タンパク質は、CD44v9特異的ディアボディ抗体断片である。ディアボディによって、当業者は、二価ホモ二量体scFv誘導体を意味する(Huら, 1996, PNAS 16: 5879-5883)。scFv分子中のリンカーを5~10アミノ酸に短縮すると、鎖間VH/NL上書き(superimposition)が起こる、ホモ二量体形成が導かれる。ディアボディは、ジスルフィド架橋の取り込みによってさらに安定化されうる。先行技術に由来するディアボディ・抗体タンパク質の例は、Perisicら(1994, Structure 2: 1217-1226)に見出されうる。
【0183】
ミニボディによって、当業者は、二価ホモ二量体scFv誘導体を意味する。ミニボディは、免疫グロブリン、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1のCH3領域を、二量体化領域として含有し、この領域がヒンジ領域(例えばやはりIgG1由来の)およびリンカー領域を通じて、scFvに連結される、融合タンパク質からなる。ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋は、より高次の細胞では大抵形成されるが、原核生物では形成されない。別の好ましい態様において、本発明記載の抗体タンパク質は、CD44v9特異的ミニボディ抗体断片である。先行技術に由来するミニボディ・抗体タンパク質の例は、Huら(1996, Cancer Res. 56: 3055-61)に見出されうる。
【0184】
トリアボディによって、当業者は:三価ホモ三量体scFv誘導体を意味する(Korttら 1997 Protein Engineering 10: 423-433)。VH-VLがリンカー配列なしに直接融合するScFv誘導体は、三量体の形成を導く。
【0185】
当業者はまた、二価、三価または四価構造を有し、そしてscFvに由来する、いわゆるミニ抗体もよく知っている。二量体、三量体または四量体コイルドコイル構造によって、多量体化が行われる(Packら, 1993 Biotechnology II:, 1271-1277;Lovejoyら 1993 Science 259: 1288-1293;Packら, 1995 J. Mol. Biol. 246: 28-34)。
【0186】
したがって、1つの態様において、本発明記載の抗体は、前述の抗体断片に基づくCD44v9特異的多量体化分子であり、そして例えばトリアボディ、四価ミニ抗体またはペンタボディであってもよい。
【0187】
ヒト化CD44v9特異的抗体タンパク質を、当該技術分野に知られる分子生物学法によって生成してもよい。
【0188】
本発明の抗体タンパク質の可変領域は、典型的には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの、少なくとも部分に連結される。ヒト定常領域DNA配列は、多様なヒト細胞から、しかし好ましくは不死化B細胞から、周知の方法にしたがって単離されてもよい(Kabatら、上記、およびWO 87/02671を参照されたい)。したがって、本発明の抗体タンパク質は、定常領域のすべて、またはCD44v9抗原への特異的結合を示す限り、一部のみを含有してもよい。定常領域のタイプおよび度合いの選択は、補体結合または抗体依存性細胞傷害性のようなエフェクター機能が望ましいかどうか、および抗体タンパク質の所望の薬理学的特性に応じる。本発明の抗体タンパク質は、典型的には、2つの軽鎖/重鎖対からなる四量体であるが、また、二量体、すなわち軽鎖/重鎖対からなるもの、例えばFabまたはFv断片であってもよい。
【0189】
したがって、さらなる態様において、本発明は、各々、ヒト定常領域に連結された、可変軽鎖領域および可変重鎖領域を有する点で特徴づけられる、本発明記載の抗体タンパク質に関する。特に、軽鎖可変領域は、ヒトカッパ定常領域に連結され、そして重鎖可変領域は、ヒト・ガンマ-1定常領域に連結された。軽鎖および重鎖をキメラ化するため、他のヒト定常領域もまた利用可能である。
【0190】
当該技術分野に知られる方法を使用して、ネズミ抗体の可変領域のヒト化を達成してもよい。EP 0239400は、ヒト可変領域のフレームワーク内にネズミ可変領域のCDRを移植する工程を開示する。WO 90/07861は、さらなるフレームワーク修飾を導入することによって、CDR移植可変領域を再形成する方法を開示する。WO 92/11018は、ドナーフレームワークに高い相同性を有するアクセプターフレームワークとドナーCDRを組み合わせてヒト化Igを産生する方法を開示する。WO 92/05274は、ネズミ抗体から出発する、フレームワーク突然変異抗体の調製を開示する。ネズミモノクローナル抗体のヒト化に関連するさらなる先行技術参考文献は、EP 0368684;EP 0438310;WO 92/07075、またはWO 92/22653である。これらはすべて、本明細書に援用される。
【0191】
別の態様において、本発明は、前記軽鎖可変領域および前記重鎖可変領域の各々が、ヒト定常領域に別個に連結される点で特徴づけられる、本発明記載の抗体分子に関する。
【0192】
別の態様において、本発明は、前記軽鎖ヒト定常領域がヒトカッパ定常領域である、本発明記載の抗体分子に関する。
【0193】
別の態様において、本発明は、前記重鎖ヒト定常領域がヒトIgG1定常領域である、本発明記載の抗体タンパク質に関する。
【0194】
本発明の抗体タンパク質は、療法剤をCD44v9抗原にターゲティングするための非常に特異的なツールを提供する。したがって、さらなる側面において、本発明は、前記抗体タンパク質が、抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)において、任意選択でリンカーを通じて、療法剤にコンジュゲート化される、本発明記載の抗体タンパク質に関する。当該技術分野に知られる多くの療法剤のうち、放射性同位体、毒素、トキソイド、炎症原性(inflammatogenic)剤、酵素、アンチセンス分子、ペプチド、サイトカイン、および化学療法剤からなる群より選択される療法剤が好ましい。放射性同位体のうち、ガンマ、ベータおよびアルファ放出放射性同位体が療法剤として使用されうる。β放出放射性同位体は、療法放射性同位体として好ましい。186レニウム、188レニウム、131ヨウ素および90イットリウムは、局所照射および悪性腫瘍細胞の破壊を達成するために特に有用なβ放出同位体であることが立証されてきている。したがって、186レニウム、188レニウム、131ヨウ素および90イットリウムからなる群より選択される放射性同位体は、本発明の抗体タンパク質にコンジュゲート化された療法剤として特に好ましい。例えば、本発明の抗体の放射性ヨウ素化のため、WO 93/05804に開示されるような方法を使用してもよい。
【0195】
用語「イムノコンジュゲート」、「コンジュゲート」、または「ADC」は、本明細書において、細胞結合剤(すなわち抗CD44v9抗体またはその断片)に連結され、そして一般式:A-L-C、式中、C=細胞毒、L=リンカー、およびA=細胞結合剤(CBA)、例えば抗CD44v9抗体または抗体断片によって定義される、化合物またはその誘導体を指す。イムノコンジュゲートはまた、逆の順序の一般式:C-L-Aによって定義されてもよい。
【0196】
「リンカー」は、化合物、通常は薬剤、例えば本明細書記載の細胞傷害剤を、安定な共有方式で、抗CD44v9抗体またはその断片などの細胞結合剤に連結可能な、任意の化学部分である。リンカーは、化合物または抗体が活性のままである条件下で、酸誘導性切断、光誘導性切断、ペプチダーゼ誘導性切断、エステラーゼ誘導性切断、およびジスルフィド結合切断に感受性であってもまたは実質的に耐性であってもよい。適切なリンカーが当該技術分野に周知であり、そしてこれには、例えば、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基およびエステラーゼ不安定基が含まれる。リンカーにはまた、本明細書に記載され、そして当該技術分野に知られるような、荷電リンカー、およびその親水性型も含まれる。
【0197】
用語「癌細胞」、「腫瘍細胞」、および文法的同等物は、大量の腫瘍細胞集団を含む非腫瘍原性細胞、および腫瘍原性幹細胞(癌幹細胞)の両方を含む、腫瘍または前癌病変由来の細胞の総集団を指す。本明細書において、用語「腫瘍細胞」は、再生し、そして癌幹細胞から腫瘍細胞を区別するように分化する能力を欠く腫瘍細胞のみを単独で指す場合、用語「非腫瘍原性」によって修飾される。
【0198】
用語「被験体」は、限定されるわけではないが、特定の治療のレシピエントとなるはずであるヒト、非ヒト霊長類、齧歯類等を含む、任意の動物(例えば哺乳動物)を指す。典型的には、用語「被験体」および「患者」は、本明細書において、ヒト被験体に関して、交換可能に用いられる。
【0199】
1つまたはそれより多いさらなる療法剤「と組み合わせた」投与には、同時(併用)投与および任意の順序での連続投与が含まれる。
【0200】
用語「医薬配合物」は、活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にする型であり、そして配合物を投与する被験体に許容しえないほど毒性であるさらなる構成要素を含有しない調製物を指す。こうした配合物は無菌であってもよい。
【0201】
本明細書に開示されるような抗体またはイムノコンジュゲートの「有効量」は、特に言及される目的を実行するために十分な量である。「有効量」は、言及される目的に関して、経験的に、そしてルーチンの方式で決定されてもよい。
【0202】
用語「療法的有効量」は、被験体または哺乳動物において、疾患または障害を「治療する」ために有効な抗体または他の薬剤の量を指す。癌の場合、薬剤の療法的有効量は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを減少させ;末梢臓器内への癌細胞浸潤を阻害し(すなわちある度合いまで遅延させ、そして特定の態様において、停止させ);腫瘍転移を阻害し(すなわちある度合いまで遅延させ、そして特定の態様において、停止させ);ある度合いまで腫瘍増殖を阻害し;癌に関連する症状の1つまたはそれより多くを、ある度合いまで緩和し;そして/または好ましい反応、例えば無進行生存(PFS)、無病生存(DFS)、または全生存(OS)、完全反応(CR)、部分反応(PR)、またはいくつかの場合、安定疾患(SD)、進行疾患の減少(PD)、増悪期間(TTP)減少、またはその任意の組み合わせを生じてもよい。「治療」の本明細書の定義を参照されたい。薬剤が、存在する癌細胞の増殖を防止し、そして/または癌細胞を殺す度合いまで、細胞分裂停止性および/または細胞傷害性であってもよい。
【0203】
「予防的に有効な量」は、所望の予防的結果を達成するため、必要な投薬量および期間で有効な量を指す。典型的には、予防用量は、疾患前または疾患のより初期の段階で被験体において用いられるため、予防的に有効な量は、療法的に有効な量より低いが、必ずしもそうではない。
【0204】
「化学療法剤」は、作用機構に関わらず、癌の治療において有用な化学化合物である。用語、例えば「治療すること」または「治療」または「治療する」または「軽減」または「軽減すること」は、診断された病的状態または障害を治癒させ、緩慢にし、その症状を減少させ、そして/またはその進行を停止させる療法的手段を指す。したがって、治療が必要なものには、障害が既に診断されたものが含まれ、そしてまた最小限の残った疾患、または耐性疾患、または再発疾患を有するものも含まれてもよい。特定の態様において、患者が以下:癌細胞数の減少またはその完全な欠如;腫瘍サイズの減少;例えば軟組織および骨内への癌の伝播を含む末梢臓器内への癌細胞の浸潤の阻害または欠如;腫瘍転移の阻害または欠如;腫瘍増殖の阻害または欠如;特定の癌と関連する1つまたはそれより多い症状の緩和;罹患率および死亡率の減少;生活の質の改善;腫瘍の腫瘍原性、腫瘍原性頻度、または腫瘍原能の減少;腫瘍中の癌幹細胞の数または頻度の減少;腫瘍原性細胞から非腫瘍原性状態への分化;無進行生存(PFS)、無病生存(DFS)、または全生存(OS)の増加、完全反応(CR)、部分反応(PR)、安定疾患(SD)、進行疾患の減少(PD)、増悪期間(TTP)減少、またはその任意の組み合わせの1つまたはそれより多くを示すならば、本発明の方法にしたがって、被験体は、癌に関して、成功裡に「治療」されている。
【0205】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書において交換可能に用いられ、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、そしてDNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/またはその類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによってポリマー内に取り込まれうる任意の基質であってもよい。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびその類似体を含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマー組み立ての前または後に与えられてもよい。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後、例えば標識構成要素とのコンジュゲート化によってさらに修飾されてもよい。修飾の他のタイプには、例えば、「キャップ」、1つまたはそれより多くの天然存在ヌクレオチドの類似体での置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結を含むもの(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カバメート(cabamate)等)および荷電連結を含むもの(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリLリジン等)を含有するもの、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレン等)を含むもの、キレーター(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾連結を含むもの(例えばアルファアノマー性核酸等)、ならびにポリヌクレオチド(単数または複数)の非修飾型が含まれる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかを、例えばホスホネート基、リン酸基によって置換するか、標準的保護基によって保護するか、またはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を準備するために活性化するか、または固体支持体にコンジュゲート化してもよい。5’および3’末端OHをリン酸化するか、あるいは1~20の炭素原子のアミンまたは有機キャッピング基部分で置換してもよい。他のヒドロキシルもまた、標準保護基に誘導体化してもよい。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロまたは2’-アジド-リボース、炭素環糖類似体、アルファアノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、無環類似体および無塩基ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドを含む、当該技術分野に一般的に知られるリボースまたはデオキシリボース糖の類似型も含有してもよい。1つまたはそれより多いホスホジエステル連結を、別の連結基によって置換してもよい。これらの別の連結基には、限定されるわけではないが、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR、COまたはCH(「ホルムアセチル」)、式中、各RまたはRが独立に、H、あるいは任意選択でエーテル(-O-)連結を含有する置換または非置換アルキル(1~20 C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルである、によって置換される態様が含まれる。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。先行する説明は、RNAおよびDNAを含む、本明細書に言及されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0206】
用語「ベクター」は、関心対象の1つまたはそれより多い遺伝子または配列を宿主細胞に送達し、そして該細胞中で発現させることが可能な構築物を意味する。ベクターの例には、限定されるわけではないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン縮合剤と関連するDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に被包されたDNAまたはRNA発現ベクター、および特定の真核細胞、例えばプロデューサー細胞が含まれる。
【0207】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において交換可能に用いられ、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指す。ポリマーは直鎖または分枝鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、そして非アミノ酸によって中断されてもよい。該用語はまた、天然に修飾されるかまたは介入;例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ホスホリル化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば標識構成要素でのコンジュゲート化によって修飾されているアミノ酸ポリマーも含む。この定義内にやはり含まれるのは、例えばアミノ酸の1つまたはそれより多い類似体(例えば非天然アミノ酸等を含む)、ならびに当該技術分野に知られる他の修飾を含有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、抗体に基づくため、特定の態様において、ポリペプチドは、一本鎖としてまたは会合鎖として存在してもよいことが理解される。いくつかの態様において、ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質は非天然存在である。いくつかの態様において、ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質は、他の天然存在構成要素から精製される。いくつかの態様において、ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質は、組換え的に産生される。
【0208】
用語「同一」またはパーセント「同一性」は、2つまたはそれより多い核酸またはポリペプチドの背景で、配列同一性の一部として、いかなる保存的アミノ酸置換も考慮せずに、比較し、そして最大対応のために整列させた(必要であればギャップを導入する)際、同じであるか、または同じである特定の割合のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を持つ2つまたはそれより多い配列または下位配列を指す。配列比較ソフトウェアまたはアルゴリズムを用いて、あるいは視覚的検査によって、パーセント同一性を測定してもよい。アミノ酸またはヌクレオチド配列の整列を得るために使用可能な多様なアルゴリズムおよびソフトウェアが当該技術分野に知られる。配列整列アルゴリズムの1つのこうした限定されない例は、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. 90:5873-5877, 1993によって修飾され、そしてNBLASTおよびXBLASTプログラム(Altschulら, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1991)に取り込まれるような、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. 87:2264-2268, 1990に記載されるアルゴリズムである。特定の態様において、ギャップ化BLASTを、Altschulら, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997に記載されるように用いてもよく;BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschulら, Methods in Enzymology 266:460-480, 1996)、ALIGN、ALIGN-2(Genentech、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)またはMegalign(DNASTAR)は、配列を整列するために用いてもよい、さらなる公的に入手可能なソフトウェアプログラムである。特定の態様において、GCGソフトウェア中のGAPプログラムを用いて(例えば、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または90のギャップ加重、および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用いて)、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性を決定する。特定の別の態様において、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (48):444-453, 1970)のアルゴリズムを取り込んだ、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定してもよい(例えば、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ加重および1、2、3、4、5の長さ加重を用いる)。あるいは、特定の態様において、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性を、MyersおよびMiller(CABIOS, 4:11-17, 1989)のアルゴリズムを用いて決定する。例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を用いて、そして残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを伴うPAM120を用いて、パーセント同一性を決定してもよい。特定の整列ソフトウェアによる最大整列のための適切なパラメータは、当業者によって決定されうる。特定の態様において、整列ソフトウェアのデフォルトパラメータを用いる。特定の態様において、第二の配列アミノ酸に対する第一のアミノ酸配列のパーセント同一性「X」は、100x(Y/Z)、式中、Yは第一および第二の配列の整列中で同一マッチとスコア付けされるアミノ酸残基の数であり(視覚的検査または特定の配列整列プログラムによって整列された際)、そしてZは第二の配列中の残基総数である、として計算される。第一の配列の長さが第二の配列よりも長い場合、第二の配列に対する第一の配列のパーセント同一性は、第一の配列に対する第二の配列のパーセント同一性よりも長いであろう。
【0209】
限定されない例として、参照配列に対して、任意の特定のポリヌクレオチドが特定のパーセント配列同一性を有する(例えば少なくとも80%同一であり、少なくとも85%同一であり、少なくとも90%同一であり、そしていくつかの態様において、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である)かどうかは、特定の態様において、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)を用いて決定されてもよい。Bestfitは、2つの配列間の相同性が最高であるセグメントを発見するため、SmithおよびWaterman, Advances in Applied Mathematics 2:482-489, 1981の局所相同性アルゴリズムを用いる。特定の配列が、例えば、本発明記載の参照配列に、95%同一であるかどうかを決定するために、Bestfitまたは任意の他の配列整列プログラムを用いる場合、参照ヌクレオチド配列の全長に渡って同一性パーセントを計算し、そして参照配列中のヌクレオチド総数の最大5%までの相同性におけるギャップを許容するように、パラメータを設定する。
【0210】
いくつかの態様において、本発明の2つの核酸またはポリペプチドは実質的に同一であり、つまり、配列比較アルゴリズムを用いて、または視覚的検査によって測定した際、比較し、そして最大対応のために整列した場合、これらは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、そしていくつかの態様において、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する。特定の態様において、同一性は、長さ少なくとも約10、約20、約40~60残基またはその間の任意の整数値である配列領域に渡って、あるいは60~80残基より長い領域、少なくとも90~100残基に渡って存在するか、あるいは配列は比較される配列、例えばヌクレオチド配列のコード領域などの全長に渡って、実質的に同一である。
【0211】
「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは当該技術分野において定義されてきており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。例えば、チロシンに関するフェニルアラニンの置換は保存的置換である。特定の態様において、本発明のポリペプチドおよび抗体の配列中の保存的置換は、抗原(単数または複数)、すなわちポリペプチドまたは抗体が結合するCD123/IL-3Rαへの該アミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体の結合を抑制しない。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当該技術分野に周知である(例えばBrummellら, Biochem. 32:1180-1187, 1993;Kobayashiら, Protein Eng. 12(10):879-884, 1999;およびBurksら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417, 1997を参照されたい)。
【0212】
本発明の別の側面は、療法剤に連結された本発明記載の抗体タンパク質であって、前記療法剤が、放射性同位体、毒素、トキソイド、プロドラッグおよび化学療法剤からなる群より選択される療法剤である、前記抗体タンパク質を提供する。
【0213】
特定の態様において、療法剤は、MAG-3(米国特許第5,082,930 A号、EP 0247866 B1(2ページ55~56行から3ページ1~23行));MAG-2 GABA(米国特許第5,681,927 A号、EP 0284071 B1(6ページ9~29行));およびN2S2((=フェンチオエート)米国特許第4,897,255 A号、第5,242,679 A号、EP 0188256 B1(2ページ38行~3ページ18行))、(Ac)Phe-Lys(アロク)-PABC-PNP、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、6-キノキサリンカルボン酸、2,3-ビス(ブロモメチル)-Fmoc-Val-Cit-PAB、Fmoc-Val-Cit-PAB-PNP、Mc-Val-Cit-PABC-PNP、Val-cit-PAB-OHの群より選択されるリンカーを通じて抗体タンパク質に連結され、文献はすべて本明細書に援用される。
【0214】
特定の態様において、放射性同位体は、186レニウム、188レニウム、131ヨウ素および90イットリウムからなる群より選択される。
【0215】
特定の態様において、本発明記載の抗体タンパク質は、標識される。こうしたCD44v9特異的標識抗体は、in vitroおよび/またはin vivoのCD44v9抗原の局在および/または検出を可能にする。
【0216】
標識は、直接または間接的に検出可能でありうるマーカーと定義される。間接的マーカーは、それ自体検出不能であるが、間接的マーカーに特異的なさらなる直接検出可能マーカーを必要とするマーカーと定義される。本発明を実施するために好ましい標識は検出可能マーカーである。非常に多様な検出可能マーカーから、検出可能マーカーは、酵素、色素、放射性同位体、ジゴキシゲニン、およびビオチンからなる群より選択されてもよい。
【0217】
特定の態様において、標識は、検出可能マーカー、例えば酵素、色素、放射性同位体、ジゴキシゲニン、およびビオチンからなる群より選択されるものである。
【0218】
特定の態様において、本発明記載の抗体タンパク質は、画像化可能な剤にコンジュゲート化される。非常に多様な画像化可能な剤、特に放射性同位体が、当該技術分野から利用可能である。特定の態様において、画像化可能な剤は、ガンマ放出同位体、例えば125ヨウ素である。特定の態様において、抗体タンパク質は、約0.5~約15mCi/mg、または約0.5~約14mCi/mg、または約1~約10mCi/mg、または約1~約5mCi/mg、および約2~6mCi/mgまたは1~3mCi/mgの比活性を有する。
【0219】
3.組成物および医薬組成物
本発明には、本明細書記載の対象抗体またはその抗原結合断片、あるいはそのイムノコンジュゲート、およびキャリアー(例えば医薬的に許容されうるキャリアー)を含む組成物(例えば医薬組成物)が含まれる。本発明にはまた、対象抗体またはその抗原結合断片、あるいはそのコンジュゲート、およびキャリアー(例えば医薬的に許容されうるキャリアー)を含み、そして第二の療法剤をさらに含む、組成物(例えば医薬組成物)も含まれる。本組成物は、哺乳動物(例えばヒト)における異常な細胞増殖を阻害するか、あるいは血液性癌、白血病、またはリンパ腫を含む、増殖性障害を治療するために有用である。
【0220】
特に、本発明は、本明細書記載のCD44v9結合剤またはそのイムノコンジュゲートの1つまたはそれより多くを含む、医薬組成物を提供する。特定の態様において、医薬組成物は、医薬的に許容されうるビヒクルをさらに含む。これらの医薬組成物は、血液性癌、白血病、またはリンパ腫を含む、ヒト患者における腫瘍増殖を阻害し、そして癌を治療する際に使用を見出す。
【0221】
特定の態様において、本発明の精製抗体、またはそのイムノコンジュゲートを、医薬的に許容されうるビヒクル(例えばキャリアー、賦形剤)(Remington, The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing, 2000)と合わせることによって、保存および使用のための配合物を調製する。適切な医薬的に許容されうるビヒクルには、限定されるわけではないが、非毒性緩衝剤、例えばリン酸、クエン酸、および他の有機酸;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド(例えば約10アミノ酸残基未満);タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;炭水化物、例えば単糖、二糖、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0222】
医薬的に許容されうるキャリアーは、例えばAMPAグルタミン酸受容体アゴニスト、アンタゴニストまたは調節剤の吸収を安定化させるかまたは増加させるように作用する、生理学的に許容されうる化合物を含有してもよい。こうした生理学的に許容されうる化合物には、例えば、炭水化物、例えばグルコース、スクロースまたはデキストラン、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸またはグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質あるいは他の安定化剤または賦形剤が含まれる(また、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences (1990), 第18版 Mack Publ., Eastonも参照されたい)。当業者は、生理学的に許容されうる化合物を含む、医薬的に許容されうるキャリアーの選択は、例えば組成物の投与経路に応じることを知っている。
【0223】
適切な医薬的に許容されうるキャリアー、希釈剤、および賦形剤は、一般的に周知であり、そして臨床的状況保証として一般の当業者によって決定されてもよい。適切なキャリアー、希釈剤および/または賦形剤の例には:(1)約1mg/mL~25mg/mLのヒト血清アルブミンを含有するかまたは含有しない、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、pH約7.4、(2)0.9%生理食塩水(0.9%w/vNaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロースが含まれ;そしてまた、酸化防止剤、例えばトリプタミン、および安定化剤、例えばTween(登録商標)20も含有してもよい。
【0224】
本明細書記載の医薬組成物を、局所または全身治療のいずれかのため、任意の方法のいずれで投与してもよい。投与は局所(例えば膣および直腸送達を含む粘膜に対するもの)、例えば経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、ドロップ、座薬、スプレー、液体および粉末;肺(例えばネブライザーによるものを含む粉末またはエアロゾル吸入またはガス注入;クモ膜下腔、鼻内、上皮および経皮を含む);経口;あるいは静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋内注射または注入を含む非経口;または頭蓋内(例えばクモ膜下腔内または脳室内)投与であってもよい。いくつかの特定の態様において、投与は静脈内である。本明細書記載の医薬組成物はまた、in vitroまたはex vivoで用いられてもよい。
【0225】
動物またはヒトの体内において、上述のような医薬組成物を、治療する疾患または問題、例えば腫瘍のタイプおよび起源に応じて、静脈内または他の経路で、例えば全身性、局所または局部的に、関心対象の組織または臓器に適用することが好適であることを立証可能である。例えば、全身性自己免疫疾患、またはアレルギー、または外来(foreign)臓器または組織の移植、あるいはびまん性であるかまたは位置決定が困難である腫瘍におけるような、異なる臓器または臓器系の治療が必要である場合、作用の全身様式が望ましい。新生物または免疫作用の局所徴候のみが予期される場合、例えば局所腫瘍の場合、局所作用様式が考慮される。
【0226】
本発明の抗体タンパク質を含む医薬組成物を、専門家に知られる適用の異なる経路、特に静脈内注射またはターゲット組織内への直接注射によって、適用してもよい。全身適用のため、静脈内、血管内、筋内、動脈内、腹腔内、経口、またはクモ膜下腔内経路が好ましい。より局所の適用を、皮下、皮内、心内、葉内、髄内、肺内、または治療しようとする組織(結合組織、骨組織、筋組織、神経組織、上皮組織)中またはその近傍に直接投与して達成してもよい。治療の望ましい期間および有効性に応じて、医薬抗体組成物を1回または数回、また断続的に、例えば数日間、数週間または数か月間毎日、そして異なる投薬量で投与してもよい。
【0227】
上記適用のための抗体調製物を含む適切な医薬組成物を調製するため、既知の注射可能な生理学的に許容されうる無菌溶液を用いてもよい。非経口注射または注入のためのすぐに使用できる溶液を調製するため、水性等張溶液、例えば生理食塩水または対応する血漿タンパク質溶液が容易に入手可能である。医薬組成物は、凍結乾燥物または乾燥調製物として存在してもよく、これを使用直前に、無菌条件下で、例えばパーツのキットとして、既知の注射可能溶液で再構成してもよい。本発明の抗体組成物の最終調製物は、既知のキャリアー物質または/および添加剤(例えば血清アルブミン、デキストロース、亜硫酸水素ナトリウム、EDTA)を補充してもよい、無菌の生理学的に許容されうる溶液と、本発明記載の精製抗体を混合することによって、注射、注入または灌流のために調製される。
【0228】
適用される抗体の量は、疾患の性質に応じる。癌患者において、本発明記載の医薬組成物中に含まれる「裸」の抗体の適用される用量は、0.1~100mg/mの間、適用あたり5~50mg/mの間、10mg/m~約40mg/m、10mg/m~約30mg/m、また、20mg/m~約30mg/m、および約25mg/m体表面積であってもよい。約50mg/m体表面積の抗体タンパク質用量もまた用いてもよい。
【0229】
投与あたり患者に適用される放射能の用量は、有効であるために十分に高くなければならないが、用量制限毒性(DLT)未満でなければならない。例えば186レニウムでの放射標識抗体を含む医薬組成物のため、療法設定を超えてはならない最大許容用量(MTD)を決定しなければならない。次いで、MTD未満である用量の反復(毎月または毎週)静脈内注入によって、癌患者への放射標識抗体の適用を行ってもよい(例えば、Weltら(1994) J. Clin. Oncol. 12: 1193-1203を参照されたい)。多数回の投与、一般的には毎週間隔の投与が好ましい;が、放射標識物質は、より長い間隔、すなわち4~24週間離れて、好ましくは12~20週間離れて投与されるべきである。しかし、当業者は、投与を2回またはそれより多い適用に分けてもよく、これを互いにわずかに遅れて、または何らかの他のあらかじめ決定された間隔範囲、例えば1日~1週間で適用してもよい。
【0230】
さらに、適用される放射能用量は、以下に概略する指針にしたがう。一般的に、投与あたりの放射能用量は30~75mCi/m体表面積(BSA)の間であろう。したがって、患者に適用される、186レニウム、188レニウム、99mテクネチウム、131ヨウ素または90イットリウムで標識される、好ましくは186レニウムで標識される、本発明記載の医薬組成物中の放射標識抗体の量は、10、20、30、40、50または60mCi/m、好ましくは50mCi/mである。1つの態様において、本発明は、本発明記載の前記放射標識抗体の用量がMTD、50mCi/mである医薬組成物に関する。
【0231】
特定の態様において、本発明記載の医薬組成物は、アスコルビン酸、ゲンチシン酸、還元酸、エリソルビン酸、p-アニノ安息香酸(aninobenzoic acid)、4ヒドロキシ安息香酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジスルホン酸、ポビドン、イノシトール、および/またはクエン酸の群より選択される、1つまたはそれより多い放射線保護剤(radioprotectant)をさらに含む。特定の態様において、放射線保護剤はアスコルビン酸である。
【0232】
本発明の抗体またはイムノコンジュゲートを、医薬組み合わせ配合物中で、または併用療法としての投薬措置で、第二の化合物、例えば関心対象の疾患または障害を治療する際に有効であることが知られるものと組み合わせてもよい。いくつかの態様において、第二の化合物は抗癌剤である。いくつかの態様において、方法は、第二の化合物および本発明のイムノコンジュゲートの投与を含み、イムノコンジュゲート単独の投与に比較した際、より優れた有効性を生じる。第二の化合物を、例えば局所、肺、経口、非経口、または頭蓋内投与を含むいくつかの任意の方法を通じて投与してもよい。いくつかの場合、投与は経口である。いくつかの態様において、投与は静脈内である。いくつかの態様において、投与は経口および静脈内の両方である。
【0233】
抗体またはイムノコンジュゲートはまた、医薬組み合わせ配合物中で、または組み合わせ療法としての投薬措置で、鎮痛剤、または他の医薬と組み合わされてもよい。
【0234】
抗体またはイムノコンジュゲートは、医薬組み合わせ配合物中で、または組み合わせ療法としての投薬措置で、抗癌特性を有する第二の化合物と組み合わされてもよい。医薬組み合わせ配合物または投薬措置の第二の化合物は、互いに不都合に影響を及ぼさないような組み合わせのADCに対する相補活性を有してもよい。CD44v9結合剤および第二の抗癌剤を含む医薬組成物もまた提供される。
【0235】
特定の態様において、本明細書記載の対象抗体またはその抗原結合断片、あるいはイムノコンジュゲート、あるいはその組成物の療法的有効量は、単独で、または第二の療法剤と組み合わせて、白血病幹細胞(LSC)、白血病先駆細胞(LP)、および/または白血病芽球、正常を超えた(over normal)造血幹細胞(HSC)の増殖を優先的に阻害する。特定の態様において、上記対象剤が白血病幹細胞(LSC)、白血病先駆細胞(LP)、および/または白血病芽球の増殖を阻害するIC50値または最大半濃度は、正常造血幹細胞(HSC)に関するものよりも、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、300、500倍またはそれより低い。
【0236】
4.治療法
本発明には、哺乳動物(例えばヒト)において異常な細胞増殖を阻害するかまたは増殖性障害を治療する方法であって、前記哺乳動物に、本明細書記載の対象抗体またはその抗原結合断片、あるいはイムノコンジュゲート、あるいはその組成物を、単独で、または第二の療法剤と組み合わせて投与する工程を含む、前記方法が含まれる。
【0237】
本発明の別の側面は、癌の治療のための薬剤製造における、本発明記載の抗体タンパク質の使用である。本発明の別の側面は、癌治療のため、上述の療法剤とコンジュゲート化された、本発明記載の抗体タンパク質の使用に関する。癌には、固形腫瘍、肉腫および白血病などの、悪性増殖と関連するいかなる疾患も含まれる。こうした疾患に必要な前条件は、CD44v9発現である。
【0238】
本発明はまた、本発明の対象抗体またはその抗原結合断片、あるいはイムノコンジュゲートの有効量と、ターゲット細胞またはターゲット細胞を含有する組織を接触させることを含む、選択される細胞集団において、細胞死を誘導するための方法も提供する。ターゲット細胞は、コンジュゲートの細胞結合剤が結合可能である細胞である。
【0239】
選択される細胞集団において、細胞死を誘導する、細胞増殖を阻害する、そして/または癌を治療するための本発明の方法は、in vitro、in vivoまたはex vivoで実行されてもよい。臨床in vivo使用のため、本発明の細胞傷害性化合物またはコンジュゲートを、溶液または凍結乾燥粉末として供給して、無菌性およびエンドトキシンレベルに関して試験する。
【0240】
特定の態様において、哺乳動物における異常な細胞増殖または増殖性障害は、CD44v9の発現に関連するかまたはこれによって特徴づけられる疾患または状態、例えば癌である。
【0241】
例えば、癌は:乳房、肺、肝臓、結腸直腸、頭頸部、食道、膵臓、卵巣、膀胱、胃、皮膚、子宮内膜、卵巣、精巣、食道、前立腺または腎臓起源のものを含む、上皮癌;骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、および平滑筋腫を含む、骨および軟組織肉腫;リンパ腫および白血病を含む、造血性悪性疾患;末梢神経腫瘍、星状細胞腫、および黒色腫を含む、神経外胚葉性腫瘍、ならびに中皮腫からなる群より選択されてもよい。
【0242】
本発明記載の癌にはまた、限定されるわけではないが:1)乳房、肺、肝臓、結腸直腸、頭頸部、食道、膵臓、卵巣、膀胱、胃、皮膚、子宮内膜、卵巣、精巣、食道、前立腺または腎臓起源のものを含む上皮癌;2)骨および軟組織肉腫:骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、平滑筋腫;3)造血性悪性疾患:ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、白血病;4)神経外胚葉性腫瘍;末梢神経腫瘍、星状細胞腫、黒色腫;5)中皮腫が含まれてもよく、そしてこれらに限定されない。
【0243】
固形腫瘍と関連する癌性疾患状態の例には、限定されるわけではないが:結腸直腸癌、非小細胞肺癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、膵臓癌および脳の転移性癌が含まれる。
【0244】
特定の態様において、癌は、少なくとも1つの負の予後因子を有する。
【0245】
本発明の別の側面は、癌の治療のための医薬製造における、上に定義するような本発明記載の抗体タンパク質の使用に関し、ここで、適用あたりの抗体タンパク質の量は、0.1~100mg/mの間、5~50mg/mの間、10mg/m~約40mg/m、10mg/m~約30mg/m、または20mg/m~約30mg/m、または25mg/m体表面積、または約50mg/m体表面積である。
【0246】
特定の態様において、上に定義するような本発明記載の放射性同位体にコンジュゲート化された抗体タンパク質を癌の治療のための医薬製造に用い、投与あたりの放射能用量は30~75mCi/m体表面積(BSA)の間である。特定の態様において、本発明記載の抗体タンパク質は、186レニウム、188レニウム、99mテクネチウム、131ヨウ素または90イットリウム、例えば186レニウムで標識される。さらに別の態様において、本発明は、癌の治療のための医薬製造において、上に定義されるように、本発明記載の放射性同位体とコンジュゲート化される抗体タンパク質の使用に関し、ここで、抗体用量は、10、20、30、40、50または60mCi/m、または50mCi/mである。
【0247】
特定の態様において、上に定義されるような本発明記載の放射性同位体にコンジュゲート化された抗体タンパク質を、癌治療のための医薬製造に用い、ここで、抗体タンパク質は、約0.5~約15mCi/mg、または約0.5~約14mCi/mg、好ましくは約1~約10mCi/mg、好ましくは約1~約5mCi/mg、および最も好ましくは2~6mCi/mgまたは1~3mCi/mgの比活性を有する。
【0248】
やはり好ましいのは、癌治療のための医薬製造における、上に定義するような本発明記載の放射性同位体にコンジュゲート化された抗体タンパク質の使用であり、前記抗体または抗体誘導体は、約7~約8のpHの水溶液中であり、そして約0.5~約2.0mg/mlの濃度である。
【0249】
本発明はさらに、癌治療の方法であって、本発明記載の抗体を、その必要がある個体に1回から数回投与し、前記抗体タンパク質がCD44v9に選択的に結合し、該抗体タンパク質に連結された療法剤を通じて腫瘍細胞を破壊し、そして療法の成功を監視する、前記方法に関する。前記抗体タンパク質は、裸の/未修飾抗体タンパク質、修飾抗体タンパク質、例えば融合タンパク質、または療法剤にコンジュゲート化された抗体タンパク質として存在してもよく、前記抗体の有効量と腫瘍を接触させる工程を含む。上述のように腫瘍を治療する方法は、in vitroまたはin vivoで有効であってもよい。癌は、上述のような癌のいずれかである。
【0250】
癌療法、ならびにその投薬量、投与経路および推奨される使用法は、当該技術分野に知られ、そしてPhysician’s Desk Reference(PDR)のような文献に記載されている。PDRは、多様な癌の治療に用いられている剤の投薬量を開示する。療法的に有効である、これらの前述の化学療法薬剤の投薬措置および投薬量は、治療する特定の癌、疾患の度合いおよび当該技術分野の医師によく知られる他の要因に応じ、そして医師によって決定可能である。PDRの内容は、本明細書にその全体が完全に援用される。当業者は、1つまたはそれより多い以下のパラメータを用いて、PDRを概観し、本発明の解説にしたがって使用されうる化学療法剤およびコンジュゲートの投薬措置および投薬量を決定してもよい。これらのパラメータには:総合インデックス;製造者;製品(企業の登録商標薬剤名);カテゴリーインデックス;ジェネリック/化学薬品インデックス(非商標一般薬剤名);薬剤の色イメージ;FDAラベリングと一致する製品情報;化学薬品情報;機能/作用;徴候および禁忌;試験研究、副作用、警告が含まれる。
【0251】
適用される抗体の量は、疾患の性質に応じる。癌患者において、「裸の」抗体の適用用量は、0.1~100mg/m、適用あたり5~50mg/m、10mg/m~約40mg/m、10mg/m~約30mg/m、また、20mg/m~約30mg/m、および約25mg/m体表面積、または約50mg/m体表面積である。
【0252】
投与あたり、患者に適用される放射能の用量は、有効であるために十分に高くなければならないが、用量制限毒性(DLT)未満でなければならない。例えば186レニウムでの放射標識抗体に関して、療法設定を超えてはならない最大許容用量(MTD)を決定しなければならない。次いで、MTD未満である用量の反復(毎月または毎週)静脈内注入によって、癌患者への放射標識抗体の適用を行ってもよい(例えばWeltら(1994) J. Clin. Oncol. 12: 1193-1203を参照されたい)。多数回の投与、一般的には毎週間隔の投与が好ましい;が、放射標識物質は、より長い間隔、すなわち4~24週間離れて、または12~20週間離れて投与されるべきである。しかし、当業者は、投与を2回またはそれより多い適用に分けてもよく、これを互いにわずかに遅れて、または何らかの他のあらかじめ決定された間隔範囲、例えば1日~1週間で適用してもよい。
【0253】
やはり提供されるのは、本発明記載の癌治療法(上記を参照されたい)であり、ここで、上記に定義されるような、本発明記載の放射性同位体にコンジュゲート化された抗体タンパク質は、約0.5~約15mCi/mg、または約0.5~約14mCi/mg、好ましくは約1~約10mCi/mg、好ましくは約1~約5mCi/mg、および最も好ましくは2~6mCi/mgまたは1~3mCi/mgの比活性を有する。
【0254】
やはり提供されるのは、本発明記載の癌治療法(上記を参照されたい)であり、上に定義されるような、本発明記載の放射性同位体にコンジュゲート化された抗体タンパク質は、約7~約8のpHの水溶液中であり、そして約0.5~約2.0mg/mlの濃度である。
【0255】
特定の態様において、癌は、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、膵臓癌または脳の転移性癌である。
【0256】
本発明の方法はまた、細胞、例えば癌細胞を殺すin vitro法も提供する。in vitro使用の例には、疾患または悪性細胞を殺すための、同じ患者への移植前に自己骨髄の処置;適格T細胞を殺し、そして移植片対宿主病(GVHD)を防止するための、移植前の骨髄の処置;ターゲット抗原を発現しない、所望の変異体以外のすべての細胞を殺すための;または望ましくない抗原を発現する変異体を殺すための、細胞培養の処置が含まれる。
【0257】
非臨床in vitro使用の条件は、一般の当業者によって容易に決定される。
【0258】
臨床的ex vivo使用の例は、癌治療または自己免疫疾患治療において、自己移植前に、骨髄から腫瘍細胞またはリンパ細胞を除去するか、あるいはGVHDを防止するため、移植前に、自己または同種骨髄または組織からT細胞および他のリンパ細胞を除去することである。治療を以下のように行ってもよい。患者または他の個体から骨髄を採取し、そして次いで、約10μM~1pMの濃度範囲の本発明の細胞傷害剤を添加した血清を含有する培地中で、約30分間~約48時間、約37℃でインキュベーションする。インキュベーションの濃度および時間の正確な条件、すなわち用量は、一般の当業者によって容易に決定される。インキュベーション後、骨髄細胞を、血清を含有する培地で洗浄し、そして既知の方法にしたがって、患者に静脈内で戻す。患者が、骨髄採取および処置細胞の再注入の間に、他の治療、例えば除去性化学療法(ablative chemotherapy)または全身照射コースを受けている場合、標準的医学装置を用いて、液体窒素中で処置骨髄細胞を凍結保存する。
【0259】
5.核酸
本発明のさらなる側面は、本発明記載の抗体またはタンパク質をコードする点で特徴づけられる核酸である。前記核酸は、RNA、または好ましくはDNAであってもよい。前記DNA分子は化学的に合成されてもよい。まず、適切なオリゴヌクレオチドを、合成遺伝子を産生するために用いてもよい、当該技術分野に知られる方法で合成してもよい(例えば、Gait, M. J., 1984, Oligonucleotide Synthesis. A Practical Approach. IRL Press, Oxford, UK)。合成遺伝子を生成する方法が当該技術分野に知られる(例えば、Stemmerら 1995, Single-step assembly of a gene and entire plasmid from large numbers of oligodeoxyribonucleotides, Gene 164(1): 49-53;Yeら 1992, Gene synthesis and expression in E. coli for pump, a human matrix metalloproteinase, Biochem Biophys Res Commun 186(1):143-9;HaydenおよびMandecki 1988, Gene synthesis by serial cloning of oligonucleotides, DNA 7(8): 571-7)。これらの方法を用いて、本出願に開示される任意のDNA分子を合成してもよい。
【0260】
本発明記載の核酸は、5’または3’または5’および3’非翻訳領域を含有してもよい。本発明記載の核酸は、上流および/または下流に他の非翻訳領域を含有してもよい。非翻訳領域は、制御要素、例えば転写開始単位(プロモーター)またはエンハンサーを含有してもよい。前記プロモーターは、例えば恒常性、誘導性または発展制御プロモーターであってもよい。特定の態様において、そして他の既知のプロモーターを排除することなく、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)の恒常性プロモーター、ならびにサルウイルス40(SV40)および単純ヘルペスプロモーター。本発明記載の誘導性プロモーターは、抗生物質耐性プロモーター、ヒートショックプロモーター、ホルモン誘導性「乳腺腫瘍ウイルスプロモーター」およびメタロチオネインプロモーターを含む。本発明記載の核酸は、本発明記載の抗体タンパク質の断片をコードしてもよい。これは、本発明記載のポリペプチドの部分を指す。
【0261】
6.ベクター
本発明の別の重要な側面は、本発明記載の核酸を含有する点で特徴づけられる、組換えDNAベクターである。その例は、ウイルスベクター、例えばワクシニア、セムリキ森林ウイルスおよびアデノウイルスである。COS細胞で使用するためのベクターは、SV40複製基点を有し、そして高コピー数のプラスミドを達成することが可能になる。昆虫細胞における使用のためのベクターは、例えば、大腸菌トランスファーベクターであり、そして例えばプロモーターとしてポリヘドリンをコードするDNAを含有する。
【0262】
本発明の別の側面は、発現ベクターである点で特徴づけられる、本発明記載の組換えDNAベクターである。
【0263】
本発明の別の側面は、ベクターpAD-CMVまたはその機能的誘導体である点で特徴づけられる、本発明記載の組換えDNAベクターである。こうした誘導体は、例えば、pAD-CMV1、pAD-CMV19またはpAD-CMV25である。
【0264】
ベクターは、本発明記載のヌクレオチド配列を含む、米国特許第5,648,267A号または第5,733,779A号に開示されるものであってもよい。本発明の別の側面は、ベクターN5KG1 Valまたはその誘導体である点で特徴づけられる、本発明記載の組換えDNAベクターである。
【0265】
7.細胞または宿主細胞
別の側面は、本発明記載のベクターを含有する点で特徴づけられる宿主である。
【0266】
別の側面は、真核宿主細胞である点で特徴づけられる、本発明記載の宿主である。本発明記載の真核宿主細胞には、真菌、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、トリコダーマ属(Trichoderma)、昆虫細胞(例えばバキュロウイルス発現系を伴う、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)Sf-9由来のもの)、植物細胞、例えばタバコ(Nicotiana tabacum)由来のもの、哺乳動物細胞、例えばCOS細胞、BHK、CHOまたは骨髄腫細胞が含まれる。
【0267】
抗体タンパク質もまたヒト体内で形成する免疫系細胞子孫において、本発明記載の抗体タンパク質は、特によくフォールディングされ、そしてグリコシル化される。哺乳動物宿主細胞、好ましくはCHOまたはCOS細胞、例えばCHO DG44(UrlaubおよびChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 77(7): 4216-20(1980))、またはCHO-K1(ATCC CCL-61)細胞が好ましい。したがって、別の側面は、BHK、CHOまたはCOS細胞、最も好ましくはCHO DG44またはCHO-K1(ATCC CCL-61)細胞である点で特徴づけられる、本発明記載の宿主である。
【0268】
特定の態様において、宿主はバクテリオファージである。
【0269】
特定の態様において、宿主は原核宿主細胞である。原核宿主細胞の例は、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)またはプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)である。
【0270】
本発明はさらに、以下の工程を含む点で特徴づけられる、本発明記載の抗体タンパク質を調製するためのプロセスに関する:本発明記載の宿主を、前記抗体タンパク質が前記宿主細胞によって発現される条件下で培養し、そして前記抗体タンパク質を単離する。本発明記載の抗体は、以下のように産生されてもよい。軽鎖および重鎖をコードする核酸分子を化学的および酵素的に、標準法によって合成してもよい。まず、適切なオリゴヌクレオチドを当該技術分野に知られる方法(詳細上記)で合成してもよい。オリゴヌクレオチドから合成遺伝子を生成する方法が当該技術分野に知られる(詳細上記)。抗体重鎖および軽鎖をコードするこれらの核酸分子を、発現ベクター(両方の鎖を1つのベクター分子中、または各鎖を別個のベクター分子中のいずれか)内にクローニングしてもよく、これを次いで、宿主細胞内に導入する。宿主細胞は哺乳動物宿主細胞(詳細上記)、例えばCOS、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、またはBHK細胞であってもよい。次いで、宿主細胞を、抗体が産生される条件下で、適切な培地中で培養し、そして次いで、標準法にしたがって、抗体を培養から単離する。宿主細胞中の組換えDNAおよびそれぞれの発現ベクターから抗体を産生する方法は当該技術分野に周知である(例えばWO 94/11523、WO 97/9351、EP 0481790を参照されたい)。
【0271】
本発明はまた、宿主が哺乳動物細胞、好ましくはCHOまたはCOS細胞であるプロセスにも関する。
【0272】
特定の態様において、宿主細胞を、軽鎖または重鎖の発現単位を所持する2つのプラスミドで同時トランスフェクションする。
【実施例
【0273】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するよう働く;が、本明細書に開示される本発明の範囲を限定すると見なされてはならない。
【0274】
実施例1 マウスモノクローナル抗体HTS033は、ヒトCD44v9エクソンをターゲティングする
図1は、標準ELISA法による、異なるCD44ペプチドの存在下での、ヒトCD44組換えタンパク質へのモノクローナルマウス抗体HTS033の結合を示す。試験したペプチドのうち、CD44v特異的ペプチドであるP14は、組換えCD44へのHTS033の結合を遮断し、HTS033がCD44 v9エクソンに特異的であることが示唆された。
【0275】
実施例2 マウスモノクローナル抗体HTS033は、癌細胞の細胞表面CD44v9をターゲティングする
HTS033を、対照、およびv9エクソンを含むCD44-FLAGを過剰発現するHEK293細胞に対して試験した。対照およびCD44-FLAG過剰発現HEK293を抗FLAGおよびHTS033と30分間、そして次いで二次抗体と30分間インキュベーションした。BD Accuri C6によって、FACS分析を行った。図2に示すように、元来のHEK293細胞は抗FLAGまたはHTS033抗体のいずれによっても染色されなかった。一方、FLAG陽性の過剰発現細胞はまた、HTS033によっても陽性染色された。この結果は、HTS033が細胞表面上のCD44v9に結合しうることを示す。
【0276】
さらに、HTS033は、多数の癌細胞株に選択的に結合する。FACS分析において、いくつかの癌細胞株をHTS033と30分間、そして次いで、FITCコンジュゲート化抗マウスIgG抗体と30分間インキュベーションした。SKMES-1腫瘍細胞は、HTS033に結合せず、BxPC3、NCl-H266およびNCl-H256はHTS033によって染色された(図3を参照されたい)。
【0277】
癌細胞へのHTS033の結合は、CD44v9のsiRNA仲介ノックダウン後に減少した。具体的には、BxPC-3およびHUH7細胞を対照siRNAあるいはCD44v9またはCD44v6をターゲティングするsiRNAで48時間トランスフェクションし、そして次いで、FACS分析に供した。対照siRNA(CON-HTS033)で処理したBxPC-3およびHUH7細胞は、どちらもHTS033によって陽性に染色された(図4Aおよび4C)。CD44のエクソン9をターゲティングするsiRNAは、BxPC3では~43%、そしてHUH7では~61%、CD44v9発現低下をもたらし(図4Bおよび4D)、両細胞株において、表面染色強度を減少させ(図4A、4C)、そして中央値シグナル強度を下方にシフトした(図4B、4D)。いくつかのCD44分子は、エクソン6およびエクソン9の両方を含むようであり、そしてしたがって、CD44のエクソン6のターゲティングもまた、全体のCD44レベルの低下をもたらし、エクソン9含有CD44のある程度の発現をノックダウンし、そしてHTS033による染色を減少させた。
【0278】
MDA-MB-468、NCl-H226、5637、RT-4およびNCl-H520細胞に対するHTS033の結合アフィニティをFACS分析によって測定した。HTS033の連続希釈(17~1000,000pM)と細胞をインキュベーションし、そして続いてFITCコンジュゲート化抗マウスIgGで細胞を染色することによって、HTS033のFACS力価決定を行った。EC50値は、2~8nMの範囲であると決定された(図5を参照されたい)。
【0279】
以下の表Aは、FACS分析による多数の腫瘍タイプを提示する細胞株パネルに対するHTS033の結合を列挙する。
【0280】
表A:多数の癌細胞株に対するHTS033抗体FACS結合
【0281】
【表2】
実施例3 ヒト非小細胞肺癌および乳癌におけるCD44v9の発現
HTS033によるCD44v9の染色はいくつかの腫瘍試料において陽性であった。特に、HTS033による免疫組織化学染色は、25のトリプルネガティブ乳癌患者試料のうち13で陽性であった(図6Aに代表的な画像)。HTS033染色はまた、54の非小細胞肺癌患者試料のうち、34で陽性であった(図6Bに代表的な画像)。これは、CD44v9の発現が、乳癌および肺癌患者において上方制御され、そしてCD44v9がターゲティング療法に有用でありうることを示唆する。
【0282】
実施例4. HTS033のキメラおよびヒト化抗体は、CD44 v9エクソンに対する結合および特異性を保持する
ヒトにおける適用により適した抗体を得るため、それぞれ、chHTS033およびhHTS033と称される、HTS033のキメラおよびヒト化型を生成した。2つの生じたhHTS033抗体を25-1および25-3と称する。
【0283】
図7は、異なるCD44ペプチドの存在下で、ヒトCD44組換えタンパク質に対するキメラHTS033の結合結果を示す。大部分のペプチドの存在は組換えCD44に対するキメラHTS033の結合に干渉しなかったが、CD44v9特異的ペプチド、P14は例外であり、結合を完全に遮断した。これは、キメラHTS033が、v9エクソンで組換えCD44に結合し、そして該抗体がv9エクソンに特異的であるであることを示す。
【0284】
PC-9細胞への抗体の結合のFACS分析によって、キメラおよびヒト化HTS033の抗体アフィニティを測定した。抗体の連続希釈(17~1000,000pM)と細胞をインキュベーションし、そして続いてAlexa-488コンジュゲート化ヤギ抗マウス二次抗体で細胞を染色することによって、各抗体のFACS力価決定を行った(図8A)。キメラHTS033のEC50値は、約34.7nMであった。2つのヒト化HTS033、25-1および25-3抗体のEC50値は、それぞれ、21.8および17.8nMであった(図8B)。
【0285】
実施例5 HTS033の間接的な細胞傷害性は、癌細胞における、CD44v9発現レベルと相関する
図9および図10は、HTS033および対照IgGの間接的な細胞傷害性を示す。細胞を培養し、そして次いで、MMAEコンジュゲート化抗マウスIgG抗体とともに、HTS033またはIgG対照の連続希釈で72時間処理した。CCK-8細胞生存度アッセイによって、細胞数を決定した。グラフは、非処理対照に比較した、生存細胞%を示す。細胞株各々に関して、HTS033のIC50値を決定した。全体に、MMAEコンジュゲート化二次抗体とHTS033のカクテルミックスは、すべての細胞株に対してある程度のレベルで毒性である一方、IgG対照カクテルは影響がなかった。
【0286】
さらに、HTS033および薬剤カクテルの有効性、ならびに異なる細胞株上のCD44v9の発現レベルの間には相関が存在する。試験した細胞株のうち、BxPC-3、NCl-H520、5637、MDA-MB-468およびRT-4を含む、より高いレベルのCD44v9発現を有する細胞株の大部分(表Aを参照されたい)は、14~42pM範囲のより低い概算IC50値を有した。より低いCD44v9発現レベルを有する細胞株、例えばHUH7、SK-HEP-1およびMDA-MB-231は、126~316pM範囲で、ほぼ1桁高いIC50値を有した。このデータは、HTS033抗体およびそれに由来する抗体が、高いCD44v9発現を有する癌に関するターゲティング治療において非常に有効でありうることを示唆する。
【0287】
実施例6 癌細胞に対するヒト化HTS033の間接的細胞傷害性
図11は、MMAEとコンジュゲート化されたヒト化HTS033を用いた直接細胞傷害性アッセイを示す。細胞を、連続希釈ヒト化HTS033-25-1-MMAEまたは陰性対照抗体コンジュゲート化MMAE(1.5pM~30nM)で72時間処理した。CCK-8細胞生存度アッセイによって細胞生存度を決定した。ヒト化HTS033-25-1 MMAEのIC50値は、それぞれ、269pM(PC-9)、203pM(A253)、および309pM(BxPC3)であった。
【0288】
実施例7 HTS033の抗原結合ドメインの発現を通じた、CD44v9ターゲティングCAR-T細胞の細胞傷害性
図12は、PC-9肺癌細胞に対するHTS033 CAR-Tの細胞傷害性を示す。HTS033可変ドメイン配列で作製したCAR-T細胞および対照T細胞をPC-9細胞と、1:1、3:1および6:1のE:T比で24時間インキュベーションした。T細胞除去後、CCK-8アッセイによってPC-9細胞の生存度を決定した。細胞傷害性%を以下のように計算した:(1-処理生存度/対照生存度)x100%。対照生存度は、T細胞を添加せずにターゲット細胞のみから得られる値である。
【0289】
試験したすべてのE:T比で、HTS033 CAR-Tは、PC-9細胞を殺す際に有効であった。
【0290】
実施例8 抗体配列
HTS033、hHTS033 25-1およびhHTS033 25-3の可変領域/ドメインの配列を以下に列挙する。
【0291】
表1:HTS033の可変領域配列
【0292】
【表3】
表2:hHTS033、25-1の可変領域配列
【0293】
【表4】
表3:hHTS033、25-3の可変領域配列
【0294】
【表5】
表4:mAb116の可変領域配列
【0295】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD44v9に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体が:
(1)重鎖可変領域(HCVR)であって:
(a)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)最大5アミノ酸変異を含む、配列番号3のHCVR CDR3配列
を含む、前記HCVR;ならびに
(2)軽鎖可変領域(LCVR)であって:
(d)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)最大2アミノ酸変異を含む、配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む、前記LCVR
を含み、任意選択で、モノクローナル抗体がmAb116ではないことを条件とする、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
請求項1のモノクローナル抗体または抗原結合断片であって、
(1)重鎖可変領域(HCVR)が:
(a)配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)6位のアラニン残基で最大1アミノ酸変異を含む、配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)2位のアルギニン残基、4位のアラニン残基、5位のアスパラギン酸残基、7位のアスパラギン残基、8位のプロリン残基で最大5アミノ酸変異を含む、配列番号3のHCVR CDR3配列
を含み;そして
(2)軽鎖可変領域(LCVR)が:
(d)配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)1位および8位のロイシン残基で最大2アミノ酸変異を含む、配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む
前記モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
請求項2のモノクローナル抗体または抗原結合断片であって、
(1)重鎖可変領域(HCVR)が:
(a)配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)6位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)2位のアルギニン残基がセリンで置換されていてもよく、4位のアラニン残基がグリシンで置換されていてもよく、5位のアスパラギン酸残基がグルタミン酸で置換されていてもよく、7位のアスパラギン残基がスレオニンで置換されていてもよく、8位のプロリン残基がグリシンで置換されていてもよい、配列番号3のHCVR CDR3配列を含み;そして
(2)軽鎖可変領域(LCVR)が:
(d)配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)1位のロイシン残基がメチオニンで置換されていてもよく、そして8位のロイシン残基がフェニルアラニンで置換されていてもよい、配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む
前記モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
請求項3のモノクローナル抗体または抗原結合断片であって、
(1)重鎖可変領域(HCVR)が:
(a)配列番号1のHCVR CDR1配列;
(b)配列番号2のHCVR CDR2配列;および、
(c)配列番号3のHCVR CDR3配列
を含み;そして
(2)軽鎖可変領域(LCVR)が:
(d)配列番号4のLCVR CDR1配列;
(e)配列番号5のLCVR CDR2配列;および
(f)配列番号6のLCVR CDR3配列
を含む
前記モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(1)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号7のFR1、配列番号8のFR2、配列番号9のFR3、および配列番号10のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(2)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号11のFR1、配列番号12のFR2、配列番号13のFR3、および配列番号14のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列;
または、
(i)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号37のFR1、配列番号38のFR2、配列番号39のFR3、および配列番号40のFR4の重鎖フレームワーク領域配列;ならびに
(ii)各フレームワーク領域配列中に最大2アミノ酸変異を含む、それぞれ、配列番号41のFR1、配列番号42のFR2、配列番号43のFR3、および配列番号44のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
をさらに含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(1)それぞれ、配列番号7のFR1、配列番号8のFR2、配列番号9のFR3、および配列番号10のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに、それぞれ、配列番号11のFR1、配列番号12のFR2、配列番号13のFR3、および配列番号14のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
または、
(2)それぞれ、配列番号37のFR1、配列番号38のFR2、配列番号39のFR3、および配列番号40のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに、それぞれ、配列番号41のFR1、配列番号42のFR2、配列番号43のFR3、および配列番号44のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
ヒト化マウスモノクローナル抗体である、請求項1~4のいずれか一項記載の単離モノ
クローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
(3)それぞれ、配列番号15のFR1、配列番号16のFR2、配列番号17のFR3、および配列番号18のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに、それぞれ、配列番号19のFR1、配列番号20のFR2、配列番号21のFR3、および配列番号22のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
または
(4)それぞれ、配列番号23のFR1、配列番号24のFR2、配列番号25のFR3、および配列番号26のFR4の重鎖フレームワーク領域配列、ならびに、それぞれ、配列番号27のFR1、配列番号28のFR2、配列番号29のFR3、および配列番号30のFR4の軽鎖フレームワーク領域配列
をさらに含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
CD44v9、またはCD44v9を発現している細胞に、約40nM、20nM、10nM、約5nM、約2nM、約1nMまたはそれ未満のKで結合する、請求項1~のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
その前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、F、一本鎖FvまたはscFv、ジスルフィド連結F、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ディアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)、あるいはscFv-Fcである、請求項1~のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項のHCVRおよび/またはLCVRを含む、ポリペプチド、ここで、該ポリペプチドは融合タンパク質(例えばキメラ抗原T細胞受容体)であってもよい、ポリペプチド
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか1つの重鎖または軽鎖、あるいは請求項11記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、請求項11のポリペプチド、請求項12のポリヌクレオチド、あるいは請求項13のベクターを含む、細胞。
【請求項15】
請求項14の細胞であって、該細胞表面上に請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項11のポリペプチドを含む、前記細胞。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項11のポリペプチドを含む、キメラ抗原受容体を所持するT細胞(CAR-T細胞)である、請求項15の細胞。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項11のポリペプチドを産生する方法であって:
(a)請求項14の細胞を培養し;そして
(b)前記培養細胞から、前記抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを単離する
工程を含む、前記方法。
【請求項18】
以下の式:
Ab-[-L-D]
式中:
Abは、リンカー・薬剤部分-[-L-D]の1つまたはそれより多い単位に共有結合している、請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項11のポリペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてDは細胞傷害性薬剤であり;そして
nは1~20(例えば1~12)の整数であり;そして
各リンカー・薬剤部分は同じまたは異なるリンカーLまたは細胞傷害性薬剤Dを有してもよい
を有する、イムノコンジュゲート(または抗体・薬剤コンジュゲートまたはADC)。
【請求項19】
各リンカー・薬剤部分-[-L-D]が、
(1)Lysの側鎖アミノ基
(2)Cysの側鎖チオール基、または
(3)部位特異的に取り込まれた非天然アミノ酸
を通じてAbに共有結合している、請求項18のイムノコンジュゲート。
【請求項20】
各リンカーLがペプチド単位を含む、請求項18または19のイムノコンジュゲート、ここで、該ペプチド単位が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2~10、または2~5のアミノ酸残基を含んでいてもよい、イムノコンジュゲート
【請求項21】
リンカーLがプロテアーゼ(例えばカテプシン)によって切断不能である、または、リンカーLが、プロテアーゼ(例えばカテプシン)、酸性環境、または酸化還元状態変化によって切断可能な切断可能リンカーである、請求項18~20のいずれか一項のイムノコンジュゲート。
【請求項22】
細胞傷害性薬剤が、DNA挿入剤、微小管結合剤、トポイソメラーゼI阻害剤、DNA副溝結合剤、あるいは、オーリスタチン・クラスの薬剤、例えばモノメチルオーリスタチンE(MMAE)およびMMAF、メイタンシン・クラス、例えばDM-1、DM-3、DM-4、カリケアマイシン、例えばオゾガマイシン、SN-38、またはPBD(ピロロベンゾジアゼピン)である、請求項18~21のいずれか一項のイムノコンジュゲート。
【請求項23】
請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項11のポリペプチド、あるいは請求項18~22のいずれか一項のイムノコンジュゲート、および医薬的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項24】
CD44v9を発現する細胞の増殖を阻害するための方法であって、該細胞を、請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項11のポリペプチド、あるいは請求項18~22のいずれか一項のイムノコンジュゲート、あるいは請求項23の医薬組成物と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項25】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項24の方法。
【請求項26】
前記腫瘍細胞が、肺癌(例えばNSCLC)、結腸直腸癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、膀胱癌、膵臓癌、または脳の転移性癌由来である、請求項25の方法。
【請求項27】
または細胞増殖性障害を有する被験体を治療する方法に用いる、CD44v9抗体またはその抗原結合断片を含むCD44v9アンタゴニスト、ここで、癌または細胞増殖性障害がCD44v9を発現する、CD44v9アンタゴニスト
【請求項28】
CD44v9アンタゴニストが、請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項11のポリペプチド、あるいは請求項18~22のいずれか一項のイムノコンジュゲート、あるいは請求項23の医薬組成物を含む、請求項27のCD44v9アンタゴニスト
【請求項29】
前記癌が、乳房、肺、肝臓、結腸直腸、頭頸部、食道、膵臓、卵巣、膀胱、胃、皮膚、子宮内膜、卵巣、精巣、食道、前立腺または腎臓起源のものを含む上皮癌;骨および軟組織肉腫、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、平滑筋腫、造血性悪性疾患、例えばホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または白血病;神経外胚葉性腫瘍、例えば末梢神経腫瘍、星状細胞腫、または黒色腫;あるいは中皮腫である、請求項27または28のCD44v9アンタゴニスト
【請求項30】
被験体由来の試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定する方法であって、該試料を、請求項1~10のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項31】
癌を有する被験体を診断する方法であって、癌細胞がCD44v9を発現し、該方法が
請求項30の方法を用いて、癌試料中でCD44v9を発現する被験体を同定するため、該被験体由来の癌試料中のCD44v9の存在および/または存在量を決定しそれによって、癌を有する被験体を診断する工程を含む、前記方法。
【国際調査報告】