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特表2023-539524エンゲージャを含む薬物治療剤の開発及び応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】エンゲージャを含む薬物治療剤の開発及び応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230907BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230907BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230907BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230907BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230907BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230907BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K35/12
A61K47/68
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K31/337
A61K31/475
A61K38/10
A61K31/407
A61K31/473
A61K31/4745
A61K31/7048
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514106
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2021114847
(87)【国際公開番号】W WO2022042661
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010873215.X
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523069832
【氏名又は名称】北京天諾健成医葯科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING TIANNUOJIANCHENG PHARMA TECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 瑩
(72)【発明者】
【氏名】徐 剛
(72)【発明者】
【氏名】陳 博
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA20
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA04
4C084DA42
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA14
4C085AA25
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC30
4C086CB03
4C086CB09
4C086CB14
4C086CB22
4C086EA11
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC41
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA71
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、CD20及びCD3に結合する二重特異的抗体及びその使用に関する。当該二重特異的抗体は、標的細胞表面に結合するCD20の第1の結合ドメイン、及び、T細胞表面に結合するCD3の第2の結合ドメインを含む。当該二重特異的抗体は、耐性が良く、低用量の条件でB細胞を効果的に除去することができ。治療効果及び安全性が同類の抗体に優れている。
【選択図】図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞表面に結合するCD20の第1の結合ドメイン及びT細胞表面に結合するCD3的第2の結合ドメインを含む二重特異的抗体又はその抗原結合部分であって、前記第1の結合ドメインは、第1の軽鎖及び第1の重鎖を含み、前記第1の結合ドメインは、下記の軽鎖及び重鎖から選ばれるCDRの組み合わせを含む、二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
(1)それぞれSEQ ID NO:56、57、58を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:66、67、68を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(2)それぞれSEQ ID NO:56、57、58を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:66、67、71的第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(3)それぞれSEQ ID NO:61、62、63を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:76、77、78を含む第1の重鎖CDR1、CDR及びCDR3配列、
(4)それぞれSEQ ID NO:61、62、63を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:76、77、85を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
【請求項2】
前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54、59又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:64、69、72、74、79、81、83又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:64又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:69又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:72又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:74又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:79又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:81又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域と、アミノ酸配列SEQ ID NO:83又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む、
請求項1に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記第2の結合ドメインは、第2の軽鎖及び第2の重鎖を含み,前記第2の結合ドメインは、下記の軽鎖及び重鎖から選ばれるCDRの組み合わせを含む、請求項1または又は2に記載の二重特異的抗体または又はその抗原結合部分。
(1)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(2)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(3)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(4)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(5)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(6)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(7)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(8)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(9)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(10)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(11)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(12)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(13)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(14)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(15)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(16)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(17)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(18)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(19)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(20)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(21)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(22)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(23)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(24)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(25)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(26)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(27)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(28)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
【請求項4】
前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5、10、12、16、18、22又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:24、29、32、35、38、41、44、48、50、52又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:48又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:10又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:12又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:24又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:48又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
前記第1の軽鎖は、SEQ ID NO:88、96、100、102、110、118又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖を含み、前記第1の重鎖は、SEQ ID NO:86、94、98、104、112、120又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
前記第2の軽鎖は、SEQ ID NO:92、106、114又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖を含み、前記第2の重鎖は、SEQ ID NO:90、108、116又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:88又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:86又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:96又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:94又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:100又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:98又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:118又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:120又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:88又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:86又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:96又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:94又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:100又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:98又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:118又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:120又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸であって、
好ましくは、前記第1の軽鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:55、60又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第1の重鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:65、70、73、75、80、82、84又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の軽鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:6、11、13、17、19、23又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の重鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:25、30、33、36、39、42、45、49、51、53又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第1の軽鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:89、97、101、103、111、119又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第1の重鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:87、95、99、105、113、121又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の軽鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:93、107、115又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の重鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:91、109、117又はそれらの任意の変異体から選ばれる、核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸又は請求項8に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター及び/又は請求項9に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項11】
治療部分に共有結合する請求項1~6のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分を含む、抗体-薬物コンジュゲートであって、
好ましくは、前記治療部分は、細胞毒性部分、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激剤、分解ペプチド又は放射性同位体から選ばれるものであり、
好ましくは、前記細胞毒性部分は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン(Cephaeline)、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、マイタンシン又はその類似体若しくは誘導体などのチューブリン阻害剤、モノメチルアウリスタチンE若しくはF又はその類似体若しくは誘導体などの有糸分裂阻害剤、ドラスタチン10若しくは15又はその類似体、イリノテカン又はその類似体、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD(actinomycin D)、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン(Puromycin)、カリケアミシン又はその類似体若しくは誘導体、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン又はクラドリビンなどの代謝拮抗剤、メクロレタミン、チオプリン(thiopurine)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンCなどのアルキル化剤、シスプラチン又はカルボプラチン等の白金系誘導体、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065)又はその類似体若しくは誘導体、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミスラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリマイシン(primycin)、アントラマイシン(AMC)などの抗生物質、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)、ジフテリア毒素及びジフテリアA鎖及びその活性フラグメント及びハイブリッド分子などの関連分子、リシンA又は脱グリコシル化リシンA鎖毒素、コレラ毒素などのリシン、SLT I、SLT II、SLT IIVなどのシガ様毒素、LT毒素、C3毒素、シガ毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ボウマン・バーク大豆プロテアーゼ阻害剤、シュードモナス外毒素、アロリン、サポリン(Saporin)、モデシン(modeccin)、ゲラニン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、PAPI、PAPII及びPAP-Sなどのアメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン(crotin)、サポナリアコン(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン及びエノマイシン毒素、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、ブドウ球菌エンドトキシンA、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、シュードモナスエンドトキシンから選ばれるものであり、
好ましくは、前記サイトカインは、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα、IFN3、IFNγ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム及びTNFαから選ばれるものであり、
好ましくは、前記放射性同位体は、H、14C、15N、35S、67Cu、90Y、99Tc、125I、131I、186Re、188Re、211At、212Bi、212Pb、213Bi、225Ac及び227Thから選ばれるものである、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の特異的抗体又はその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の細胞、請求項10に記載の組成物及び/又は請求項11に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、キット。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の特異的抗体又はその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の細胞、請求項10に記載の組成物及び/又は請求項11に記載の抗体-薬物コンジュゲートの、CD20関連疾患を診断、治療又は予防する薬物又はキットの製造における使用であって、
好ましくは、CD20関連疾患は、B細胞疾患、例えば、B細胞増殖性疾患、特にCD20陽性B細胞疾患を含み、
好ましくは、前記疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)から選ばれる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重特異的抗体及びその使用、特にCD20及びCD3に結合する二重特異的抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD20は、Bリンパ球の表面に発現するグリコシル化膜タンパク質であり、前駆B細胞及び末期の形質細胞を除いて、ヒトB細胞は、ほぼ全分化周期中にCD20抗原を発現する(Tedder et al.,J.Immunol,135(2):973-979,1985)。CD20も、B細胞腫瘍関連抗原であり、95%以上のB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)やその他のB細胞悪性腫瘍に発現する(Anderson et al.,Blood 63(6):1424-1433,1984)。1997年では、CD20に対するキメラ抗体であるリツキシマブ(Rituximab)は、承認され、リツキシマブ(Rituximab)と他の薬物との併用治療を受けた患者は、5年生存率が平均60~70%に達した。第2世代CD20抗体オファツムマブ(Ofatumumab)(Teeling et al.,Blood 104(6):1793-800,2004)及び第3世代CD20抗体オビヌツズマブ(obinutuzumab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)等は、慢性リンパ性白血病又は多発性硬化症を治療するために開発されている。CD20モノクローナル抗体は、多くのB-NHL患者に治療効果を示すが、10%以上の患者が依然として原発性・難治性の症例である。また、リツキシマブ(Rituximab)によって治癒された患者のうち、約30~40%の患者は、2~3年以内に再発し、既存の治療に耐性を持ち、平均生存期間が6.3ヶ月に過ぎない。そのため、このような患者のニーズに合わせて、新しいメカニズムを持つ治療薬物の開発は、急務となっている。
【0003】
T細胞二重特異的抗体(又はT細胞エンゲージャとも呼ばれる。)は、その一端を介して標的細胞表面抗原(抗原アーム)を認識し、他端を介してT細胞CD3受容体(CD3アーム)に結合することができる人工的に構築された特殊な抗体分子である。CD3ε鎖を標的する抗体を利用して、TCR/ペプチド/HLAと類似する方式でT細胞上のCD3を凝集させることにより、T細胞を活性化させ、かつ腫瘍を殺す。20世紀80年代、二重特異的抗体を利用して腫瘍細胞を殺傷することが報告され(Nature.1985 Apr 18-24; 314(6012):628-31;Nature.1985 Jul 25-31;316(6026):354-6)、2005年、CD20×CD3二重特異的抗体を利用してリツキシマブ(Rituximab)耐性腫瘍細胞を殺傷することは、Gallなどに報告された(2005 Experimental Hematology 33:452)。類似な報告として、Stanglmaierなどのマウス及びラットのIgGから構築された二重特異的抗体Bi20/FBTA05(Int.J.Cancer:123,1181,2008)、Wuらが開発した新規なDVD-Ig抗体(Nat Biotechnol.25:1290-1297,2007)、Sunらが開発したCD3抗体であるUCHT1に基づくCD20-TDB二重特異的抗体(Science translational medicine.2015;7:287ra270-287ra270)、及び、Smithらが開発したVelocImmuneマウスに基づくREGN1979(Clin Trans Immunol.2015;4:e31)などがある。
【0004】
CD20×CD3二重特異的分子は、B細胞に発現されたCD20及びT細胞に存在しているCD3ε鎖(CD3e)を標的するT細胞二重特異的(TCB)抗体である。CD20×CD3二重特異的分子の作用機序は、同時的にCD20B細胞及びCD3T細胞に結合して、T細胞の活性化及びT細胞に媒介されたB細胞の殺傷を引き起こすことを含む。
【0005】
正常な免疫応答過程において、TCRは、低アフィニティー(約1~100μM)で感染又は突然変異した細胞の外因性ペプチド-ヒト白血球抗原複合体(HLA)に結合し、CD3を介して活性化シグナルを核内に伝達し、転写因子及びその下流タンパク質(サイトカイン、グランザイム、パーフォリン等)の発現を活性化させ、そのうち、TCR複合体に産生されたシグナル強度は、T細胞の運命を決定するものである。シグナル伝達複合体は、ε、γ、δ及びζサブユニットが互いに会合してCD3ε-γヘテロ二量体、CD3ε-δヘテロ二量体及びCD3ζ-ζ相同二量体を形成する。初期に開発されたCD3二重特異的抗体は、主にOKT3、L2K、UCHT1及びTR66などの少数のマウス由来抗体に基づくものであり、アフィニティーが高い。臨床研究では、CD3抗体のアフィニティーが強すぎると、T細胞の過剰活性化につながり、多数のサイトカインを放出してサイトカインストーム症候群を形成すると共に、高いアフィニティーが二次リンパ器官における二重特異的抗体の募集し、腫瘍組織への曝露が減少することが見出された。抗体Fc部分とFcγ受容体との結合能力は、薬物の安全に影響を与えるもう1つの要因であり、Fcγ受容体は、多種の正常な組織で発現しているため、二重特異的抗体は、Fcを介して細胞膜のFcγ受容体に結合した後、他端に結合したCD3受容体がFcγ受容体の凝集によって架橋されて活性化され、重篤なオフターゲット毒性を生じ、例えば、初期に承認されたカツマキソマブ(catumaxomab)は、Fcセグメントが肝臓のKupffer細胞に発現されるFcγ受容体に結合するため、急速なサイトカイン放出を引き起こす。Fcγ受容体への結合能力が弱いヒトIgG2サブタイプ又はIgG4サブタイプを使用することにより、或は、さらにCH2の対応サイトにアミノ酸置換を行うことにより、例えば、Armourらは、IgG1及びIgG4の第233~236サイト(EU配列番号)をIgG2の対応配列に置換することにより、Fcγ受容体への結合(Eur.J.Immunol.1999)を減少し、Newmanらは、IgG4に突然変異Ser228Pro及びLeu235Gluを導入することにより、IgG4構造を安定させながら、Fcγ受容体への結合を減少し(Clin Immunol.2001)、Idusogieらは、Asp270、Lys322、Pro329又はPro331をそれぞれAlaに置換することにより、IgG1と補体C1qとの結合を減少する(J Immunol.2000)。
【発明の概要】
【0006】
従来技術に存在する問題を解決するために、本開示は、全長IgG構造を採用し、電荷を導入し、並びにアフィニティーを最適化することにより、κλ二重特異的抗体がCD20腫瘍組織に優先的に定位され、低濃度で活性化T細胞を募集し、標的細胞に対して効果的な殺傷を生じ、標的細胞が存在しない場合、T細胞が活性化されず、また、κλ二重特異的抗体がFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIAなどの受容体に結合せず、サイトカインストームのリスクを減らすことができる新規なCD20-CD3κλ二重特異的抗体を提供する。薬効試験により、この新規なCD20-CD3κλ二重特異的抗体は、極めて低用量で腫瘍の成長を阻害し、免疫最構成マウス移植腫瘍の成長を効果的に阻害できることが確認された。また、カニクイザル体内での毒性研究では、動物が新規なCD20-CD3κλ二重特異的抗体に対して良好な耐性を持ち、低用量条件では、B細胞が効果的に除去され、新規なCD20-CD3κλ二重特異的抗体の有効性及び安全性が同種類の抗体に優れていることを示した。
【0007】
従って、一態様において、本開示は、二重特異的抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0008】
一態様において、本開示は、前記の態様の二重特異的抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を提供する。
【0009】
一態様において、本開示は、前記の態様の核酸を含むベクターを提供する。
【0010】
一態様において、本開示は、前記の態様の核酸又はベクターを含む細胞を提供する。
前記のいずれかの態様の抗体又はその抗原結合部分によれば、前記抗体又はその抗原結合部分は、ヒト化されたものである。
【0011】
一態様において、本開示は、前記のいずれかの態様の抗体又はその抗原結合部分、或いは、それをコードする核酸、及び薬学的に許容される担体を含む、薬物組成物又はキットを提供する。
【0012】
一態様において、本開示は、治療部分に共有結合する前記のいずれかの態様に記載の抗体又はその抗原結合部分、二重特異的又は多重特異的分子を含む、抗体-薬物コンジュゲートを提供する。
【0013】
一態様において、本開示は、治療有効量の前記のいずれかの態様の抗体又はその抗原結合フラグメント、核酸、ベクター、細胞及び/又は薬物組成物を前記哺乳動物に投与するステップを含む、CD20関連疾患を治療する方法を提供する。
【0014】
一態様において、本開示は、哺乳動物のCD20関連疾患を治療するための薬物又はキットの製造における、前記のいずれかの態様の抗体又はその抗原結合フラグメント、核酸、ベクター、細胞及び/又は薬物組成物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る抗体は、CD20タンパク質の検出、CD20関連疾患の診断、治療又は予防を含む、多種の応用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】フローサイトメトリーによりヒト及びサルのCD20安定トランスフェクト細胞を検出しましたところ、ヒトCD20安定トランスフェクト細胞(CHO-hCD20-3G6)及びサルCD20安定トランスフェクト細胞(CHO-cyCD20-1G9)がいずれも高いレベルのCD20を発現したことを示す。
図2】CD3εγ-Fc組換えタンパク質のSDS-PAGE結果を示す。
図3】ヒト化CD3抗体のCD3εγ-Fc組換えタンパク質への結合を示す。
図4】ヒト化CD3抗体のJurkat細胞への結合を示す。
図5】ヒト化CD20抗体のRaji細胞への結合を示す。
図6】ヒト化CD20抗体のDaudi細胞への結合を示す。
図7】CD20×CD3抗体の組合せのRaji細胞への結合を示す。
図8】CD20×CD3抗体の組合せのJurkat細胞への結合を示す。
図9】異なるCD20×CD3抗体の組み合わせによるRaji細胞の殺傷活性及びT細胞の活性化を示し、そのうち、図9Aは、異なるCD20×CD3抗体の組み合わせに媒介されたTDCC殺傷作用を示し、図9Bは、TDCC殺傷過程中、CD20×CD3抗体の組み合わせがT細胞活性化マーカーであるCD69及びCD25の向上を刺激できることを示す。
図10】異なるCD20×CD3抗体の組み合わせによるNFAT経路の特異的活性化を示す。
図11】本開示に係るCD20×CD3κλ二重特異的抗体を示す。
図12】CD20×CD3κλ二重特異的抗体のキャピラリー電気泳動結果を示す。
図13】CD20×CD3κλ二重特異的抗体の精製を示す。
図14】CD20×CD3κλ二重特異的抗体の質量分析結果を示す。
図15】CD20×CD3κλ二重特異的抗体のCD20安定トランスフェクト細胞への結合を示す。
図16】CD20×CD3κλ二重特異的抗体の高アフィニティーでCD20腫瘍細胞への結合を示す。
図17】CD20×CD3κλ二重特異的抗体のヒト及びカニクイザルCD3εγ組換え抗原への結合を示す。
図18】CD20×CD3κλ二重特異的抗体のJurkat細胞への結合を示す。
図19】CD20×CD3κλ二重特異的抗体のヒト末梢血T細胞への結合を示す。
図20】CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるNalm-6細胞への殺傷及びT細胞の活性化を示し、そのうち、図20Aは、Nalm-6細胞に対する殺傷を示し、図20Bは、T細胞に対する活性化を示す。
図21】CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるTMD-8細胞への殺傷及びT細胞の活性化を示し、そのうち、図21Aは、TMD-8細胞に対する殺傷を示し、図21Bは、T細胞に対する活性化を示す。
図22】CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるToledo細胞への殺傷及びT細胞の活性化を示し、そのうち、図22Aは、Toledo細胞に対する殺傷を示し、図22Bは、T細胞に対する活性化を示す。
図23】CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるT細胞シグナル経路の活性化を示す。
図24-26】CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるサイトカイン放出の活性化を示し、そのうち、図24は、CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるRaji細胞のTDCC活性化及びその過程中のT細胞の活性化を示し、図25は、CD20×CD3κλ二重特異的抗体による自己B細胞の除去及びその過程中のT細胞の活性化を示し、図26は、Raji細胞に対する殺傷及び自己B細胞の除去過程中の関連サイトカインの放出を示す。
図27】免疫不全マウスにRajiを皮下移植した腫瘍モデルに対する、CD20×CD3κλ二重特異的抗体の抑制効果を示す。
図28-29】免疫不全マウスにヒトPBMC及びRajiを混合し、皮下接種した腫瘍モデルに対する、CD20×CD3κλ二重特異的抗体の抑制効果を示し、そのうち、図29は、低用量群の治療效果の比較を示す。
図30】CD20×CD3κλ二重特異的抗体を投与した後、カニクイザルB細胞が急速に除去されることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
I.定義
本発明では、特に断らない限り、本明細書で使用される科学的及び技術的用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用されるタンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学に関連する用語及び試験室の操作手順は、対応する分野で広く使用される用語及び日常手順である。一方、本発明をよりよく理解するために、関連用語の定義及び説明を以下に示す。
【0018】
CD20(Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu-16、Bp35、BM5、及び、LF5とも称され、ヒトタンパク質は、UniProtデータベースエントリーP11836から得られる)は、前Bリンパ球及び成熟Bリンパ球に発現される約35kD分子量の疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine,M.A.et al.,J.Biol.Chem.264(1989) 11282-11287;Tedder,T.F.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85(1988)208-212;Stamenkovic,I.et al.,J.Exp.Med.167(1988)1975-1980;Einfeld,D.A.et al.,EMBO J.7(1988)711-717;Tedder,T.F.et al.,J.Immunol.142(1989)2560-2568)。対応するヒト遺伝子は、膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1であり、MS4A1とも呼ばれている。この遺伝子は、膜貫通4A遺伝子ファミリーのメンバーの1つをコードする。この一次タンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴及び類似イントロン/エクソンスプライシング境界を特徴とし、かつ造血細胞及び非リンパ組織で独特の発現パターンを示す。この遺伝子は、B細胞の形質細胞への発生と分化に機能するBリンパ球表面分子をコードする。ファミリーメンバーのクラスターでは、このファミリーメンバーは、11q12に位置している。この遺伝子の可変スプライシングは、同じタンパク質をコードする2つの転写産物変異体を生成する。
【0019】
本明細書で使用されている「CD20」という用語は、特に明記されていない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物に由来する天然CD20を指す。この用語は、「全長」で未加工のCD20及び細胞内で処理された任意の形態のCD20に由来するものをカバーする。この用語は、さらに、スプライシング変異体又は対立変異体などのCD20の自然発生変異体をカバーする。一実施形態では、CD20は、ヒトCD20である。例示的なヒトCD20のアミノ酸配列は、SEQID NO:1で示される。
【0020】
「抗CD20抗体」及び「CD20に結合する抗体」という用語は、十分なアフィニティーでCD20に結合して当該抗体が診断剤及び/又は治療剤としてCD20を標的することに有用な抗体を指す。一実施形態では、抗CD20抗体は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された無関係な非CD20タンパク質に対する抗CD20抗体の結合度が、CD20に対する当該抗体の結合度の約10%未満である。いくつの実施形態では、CD20に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は、≦0.001nM(例えば、10-8M又は10-8M未満、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、異なる種由来CD20の間における保存的なCD20エピトープに結合する。
【0021】
「CD3」とは、特に明記されていない限り、霊長動物(例えば、ヒト)、非ヒト霊長動物(例えば、カニクイザル)及びげっ歯動物(例えば、マウス及びラット)のような哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の天然CD3を指す。この用語は、「全長」で未加工のCD3、及び細胞内で処理された任意の形態のCD3に由来するものをカバーする。この用語は、さらにスプライシング変異体又は対立変異体などのCD3の自然発生変異体をカバーする。一実施形態では、CD3は、ヒトCD3であり、特にヒトCD3のεサブユニット(CD3ε)である。ヒトCD3εのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)登録番号P07766(バージョン144)、又はNCBI (www.ncbi.nlm.nih.gov/) RefSeq NP_000724.1に示される。カニクイザル[Macaca fascicularis]CD3εのアミノ酸配列は、NCBI GenBank no.BAB71849.1に示される。
【0022】
「細胞表面」という用語は、当分野におけるその通常の意味に従い、使用されるから、タンパク質や他の分子への結合によってアクセス可能な細胞外部を含む。
本明細書で使用されている「約」又は「およそ」という用語は、特に明記されていない限り、特定の値又は範囲±10%以内である。整数であると要求されている場合、当該用語は、特定の値又は範囲±10%以内で最も近い整数に繰り上げ又は繰り下げてなるものである。
【0023】
抗体鎖ポリペプチド配列に関して、「実質的に同一」という用語は、リファレンスポリペプチド配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又はそれ以上の配列同一性を示す抗体鎖であると理解される。核酸配列に関して、前記用語は、リファレンス核酸配列に対して少なくとも60%を超え、少なくとも65%を超え、少なくとも70%を超え、少なくとも75%を超え、少なくとも80%を超え、少なくとも85%を超え、少なくとも90%を超え、少なくとも95%を超え、少なくとも96%を超え、少なくとも97%を超え、少なくとも98%を超え、少なくとも99%を超え、又はそれ以上の配列同一性を示すヌクレオチド配列であると理解される。
【0024】
配列の「相同性」又は「同一性」は、本分野で周知されている意味を有し、従来技術を使用して2つの核酸又はポリペプチド分子又は領域間の配列同一性の百分率を計算することができる。ポリヌクレオチド又はポリペプチドの全長に沿って、又は当該分子の領域に沿って配列同一性を測定することができる。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド間の同一性を測定する方法は、多く存在するが、「同一性」という用語は、当業者に周知られているものである(Carrillo,H.&Lipman,D.,SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
【0025】
「置換型」変異体は、ネイティブ配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、かつ異なるアミノ酸が同位置に挿入された変異体である。前記置換は、分子内で1つのアミノ酸のみが置換されている単一の置換、又は同じ分子に2つ以上のアミノ酸が置換されている複数の置換であり得る。複数の置換は、連続するサイトでの置換であり得る。同様に、1つのアミノ酸は、複数の残基に置換され得、そのような変異体は、置換及び挿入の両方を含む。「挿入型」変異体は、1つ又は複数のアミノ酸がネイティブ配列の特定の位置にあるアミノ酸に直接隣接するように挿入されているアミノ酸の変異体である。アミノ酸に直接隣接することは、当該アミノ酸のα-カルボキシル又はα-アミノ官能基に結合していることを意味する。「欠失型」変異体は、天然アミノ酸配列中の1つ又は複数のアミノ酸が除去された変異体である。通常、欠失型変異体は、分子の特定の領域に1つ又は2つのアミノ酸が欠失しているものである。
【0026】
抗体の可変ドメインに関して、「可変」という用語は、抗体の間に配列が大きく異なり、特定の標的に対する特定の抗体の特異的認識及び結合に使用される、関連する分子の特定の部分を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一的に分布していない。可変性は、相補性決定領域(CDRs、即ちCDR1、CDR2及びCDR3)又は超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中しており、すべて軽鎖及び重鎖の可変ドメイン内にある。可変ドメイン内でより高い程度に保存される部分は、フレームワーク(FR)領域又はフレームワークシーケンスと呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の各可変ドメインには、いずれも主にβシート構造を採用する4つのFR領域が含まれ、これらは、3つのCDRsを介して連結され、CDRsらは、ループを形成し、前記ループは、βシート構造を連結し、ある場合、βシート構造の一部を形成する。各鎖のCDRsは、通常、FR領域によって隣接して連結されており、他の鎖からのCDRにより、抗体の標的結合部位(エピトープ又は決定基)の形成に寄与する。本明細書で使用されるように、免疫グロブリンアミノ酸残基の番号付けは、特に明記しない限り、Kabatらの免疫グロブリンアミノ酸残基番号付けシステムに従う。1つのCDRは、関連するエピトープに特異的に結合する能力を有し得る。
【0027】
本明細書で使用される抗体の「抗体フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」とは、全長未満であるが、抗原に結合する前記抗体の可変領域(例えば、1つ又は複数のCDR及び/又は1つ又は複数の抗体結合サイト)の少なくとも一部を含むことによって結合特異性及び前記全長抗体の特異的結合能力の少なくとも一部が保持されている全長抗体の任意の部分を指す。従って、抗原結合フラグメントとは、抗体フラグメントを誘導する抗体と同じ抗原に結合する抗原結合部分を含む抗体フラグメントを指す。抗体フラグメントは、全長抗体の酵素触媒処理によって産生された抗体誘導体、並びに合成によって産生された誘導体、例えば、組換えて産生された誘導体を含む。抗体は、抗体フラグメントを含む。抗体フラグメントの実例として、Fab、Fab’、F(ab’)、1本鎖Fv(scFv)、Fv、dsFv、ダイアボディ、FdとFd’フラグメント、及び、修飾フラグメントを含む他のフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。前記フラグメントは、例えば、ジスルフィド結合及び/又はペプチドリンカーによって連結された複数の鎖を含み得る。抗体フラグメントは、通常、少なくとも50個のアミノ酸又は約50個のアミノ酸を含み、典型的には少なくとも200個のアミノ酸又は約200個のアミノ酸を含む。抗原結合フラグメントは、抗体フレームワークに(例えば、対応する領域を置換することによって)挿入されるときに免疫特異的に(即ち、少なくとも10~10-1のKa又は少なくとも約10~10-1のKaを示す)抗原に結合する抗体をもたらす、任意の抗体フラグメントを含む。「機能的フラグメント」又は「抗CD20抗体の類似体」は、受容体がリガンドに結合する能力又はシグナル伝達を開始する能力を防止又は実質的に低下させるフラグメント又は類似体である。本明細書で使用される場合、機能的フラグメントは、通常、「抗体フラグメント」と同じ意味を有し、抗体である場合、受容体のリガンドに結合する能力又はシグナル伝達を開始する能力を防止又は実質的に低下させるフラグメント、例えば、Fv、Fab、F(ab’)などを指し得る。「Fv」フラグメントは、1つの重鎖の可変ドメインと1つの軽鎖の可変ドメインとの非共有結合によって形成された二量体(V-V二量体)からなる。この構造では、インタクトな抗体の場合と同様に、各可変ドメインの3つのCDRsが相互作用してV-V二量体の表面における標的結合部位を決定する。前記の6つのCDRsは、相乗的にインタクトな抗体の標的結合特異性を付与する。ただし、単一の可変ドメイン(又は3つの標的特異的なCDRsのみを含むFvの半分)でも、標的を認識・結合する機能を持つことができる。
【0028】
本明細書で使用される「二重特異性」(Bispecific antibody、BsAb)という用語は、抗体及び/又は抗原結合分子が2つの異なる抗原決定基に特異的に結合することができることを指し、通常、二重特異性の抗体及び/又は抗原結合分子は、それぞれが異なる抗原決定基に特異的に結合できる2つの抗原結合部位を含む。いくつかの実施形態において、前記二重特異性抗体及び/又は抗原結合分子は、2つの抗原決定基、特に2つの異なる細胞に発現される2つの抗原決定基に同時に結合することができる。
【0029】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」とは、同一の抗体の集団を指し、モノクローナル抗体集団における個々の抗体分子が他の抗体分子と同一であることを意味する。この特性は、さまざまな異なる配列を持つ抗体を含む抗体のポリクローナル群の特性とは逆である。モノクローナル抗体は、多くのよく知られた方法で調製することができる(Smith et al.(2004)J.Clin.Pathol.57,912-917、及び、Nelson et al.,J Clin Pathol(2000),53,111-117)。例えば、モノクローナル抗体は、B細胞を不死化することによって調製でき、例えば、骨髄腫細胞に融合してハイブリドーマ細胞株を産生することによって、又はB細胞をEBVなどのウイルスに感染させることによって調製することができる。組換え技術は、また、抗体をコードするヌクレオチドの人工配列を保有するプラスミドで宿主細胞を形質転換することにより、インビトロで宿主細胞のクローン集団から抗体を調製することに用いられる。
【0030】
本明細書で使用される「ハイブリドーマ」又は「ハイブリドーマ細胞」という用語は、抗体産生リンパ球と非抗体産生がん細胞との融合によって産生される細胞又は細胞株(通常、骨髄腫又はリンパ腫細胞)を指す。当業者に知られているように、ハイブリドーマは増殖し、かつ継続的に供給して特定のモノクローナル抗体を産生することができる。ハイブリドーマを生成する方法は、当分野で知られている。「ハイブリドーマ」又は「ハイブリドーマ細胞」という用語が言及される場合、ハイブリドーマのサブクローン及び後代細胞も含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、全長抗体は、2つの全長重鎖(例えば、VH-CH1-CH2-CH3又はVH-CH1-CH2-CH3-CH4)及び2つの全長軽鎖(VL-CL)及びヒンジ領域を有する抗体であり、例えば、抗体を分泌するB細胞によって天然に産生される抗体、合成的に産生される同じドメインを有する抗体などがある。
【0032】
「キメラ抗体」という用語は、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体のような、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体を指す。
【0033】
「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)又は抗体の他の抗原に結合するサブシーケンス)である非ヒト(例えば、マウス)の抗体を指す。好ましくは、ヒト化抗体が、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、前記レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギなどの所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)に由来するCDR残基で置換されたヒト免疫グロブリンである。
【0034】
さらに、ヒト化において、VH及び/又はVLのCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を突然変異させることも可能であり、これにより、抗体の1つ又は複数の結合特性(例えば、親和性)を改善する。例えば、PCRを介した突然変異により突然変異を導入することができ、抗体結合又は他の機能的特性に対する影響は、本明細書に記載のインビトロ又はインビボアッセイで評価することができる。通常、保存的突然変異を導入する。このような突然変異は、アミノ酸の置換、追加、又は欠失であってもよい。また、CDR内の突然変異は、通常、1つ又は2つ以下である。従って、本発明に記載のヒト化抗体は、CDR内に1つ又は2つのアミノ酸の突然変異を含む、抗体をさらに含む。
【0035】
本明細書で使用される「CDR」という用語は、相補性決定領域(complementarity-determining region)を指し、抗体分子の各重鎖及び軽鎖は、3つのCDRを有することが知られている。CDRは、超可変領域とも呼ばれ、抗体の各重鎖及び軽鎖の可変領域に存在し、CDRの一次構造に変動性の極めて高い部位がある。本明細書では、重鎖のCDRは、重鎖に由来するアミノ末端配列のアミノ末端のCDR1、CDR2、及びCDR3で表され、軽鎖のCDRは、軽鎖に由来するアミノ末端配列のアミノ末端のCDR1、CDR2、及びCDR3で表される。これらの部位は三次構造で互いに隣接しており、抗体が結合する抗原の特異性を決定する。
【0036】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原の任意の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸や糖側鎖などの化学的に活性な分子の表面タイピングを含み、通常、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。
【0037】
本明細書で使用される抗体又はその抗原結合フラグメントに関する「特異的に結合する」又は「免疫特異的に結合する」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、抗体と抗原の抗体結合サイトとの間の非共有相互作用を介して同種抗原と1つ又は複数の非共有結合を形成する抗体又は抗原結合フラグメントの能力を指す。前記抗原は、分離された抗原であってもよく、腫瘍細胞に存在してもよい。一般的に、抗原に免疫特異的結合(又は特異的結合)する抗体は、約1×10-1又は約1×10-1又はそれより大きな親和定数Ka(1×10-7又は1×10-8M以下の解離定数(Kd))で前記抗原に結合する。親和定数は、抗体反応の標準的な動力学的方法、例えば、免疫測定、表面プラズモン共鳴(SPR)(Rich and Myszka(2000)Curr.Opin.Biotechnol 11:54、Englebienne(1998)Analyst.123:1599)、等温滴定熱測定(ITC)又は本分野で知られている他の動的相互作用により測定することができる。また、抗体の結合アフィニティーを計算することに用いる示例的なSPR及びITC方法が記載されている米国特許第7,229,619号が参照されたい。結合速度をリアルタイムに検出し、モニタリングするための装置及び方法は、既知であり、かつ市販から購入可能である(BiaCore 2000、Biacore AB、Upsala、Sweden and GE Healthcare Life Sciences、Malmqvist(2000)Biochem.Soc.Trans.27:335が参照されたい)。
【0038】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」という用語は、少なくとも2つの連結されているヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体を含むオリゴマー又はポリマーを指し、通常、ホスホジエステル結合で結合しているデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含む。本明細書で使用される「核酸分子」という用語は、DNA分子、RNA分子を含むことを意図している。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であってもよく、そしてcDNAであってもよい。
本明細書で使用される単離された核酸分子は、核酸分子の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子である。例えば、cDNA分子の「単離された」核酸分子は、組換え技術によって調製される場合、他の細胞材又は培地を実質的に含まず、又は、化学的に合成される場合、化学前駆体又は他の化学成分を実質的に含まない。本明細書で提供される例示的な単離された核酸分子は、提供される抗体又は抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子を含む。
【0039】
本明細書で使用される、核酸配列、領域、エレメント又はドメインの「作動可能に連結されている」について、核酸領域が互いに機能的に関連していることを意味する。例えば、プロモーターは、核酸の転写を調整又は媒介できるように、ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結され得る。
【0040】
本明細書に記載の配列表に記載されている配列の「保存的配列修飾」、即ち、ヌクレオチド配列にコードされ、又は、アミノ酸配列を含む、抗体の抗原に結合するヌクレオチド及びアミノ酸配列を影響しない修飾を提供する。これら保存的配列修飾は、保存的ヌクレオチド及びアミノ酸の置換、並びに、ヌクレオチド及びアミノ酸の付加及び欠失を含む。例えば、修飾は、当技術分野で知られている標準的な技術(例えば、部位特異的変異誘発及びPCRによる変異誘発などの)で、本明細書に記載の配列リストに導入することができる。保存的配列修飾は、アミノ酸残基が類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置換される、保存的アミノ酸置換を含む。類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されているものである。これらファミリーとして、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖を持つアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。従って、抗CD20抗体の予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。抗原に結合するヌクレオチド及びアミノ酸を影響しない保存的置換を同定するための方法は、当技術分野で周知である(例えば、Brummell et al., Biochem.32:1180-1187(1993); Kobayashi et al.,Protein Eng.12(10):879-884(1999); Burks et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94: 412-417(1997)が参照されたい)。
【0041】
別の実施形態において、別の選択肢として、例えば、飽和変異誘発により、抗CD20抗体をコードする配列の全部又は一部に沿ってランダムに突然変異を導入することができ、得られた修飾抗CD20抗体を、改善された結合活性についてスクリーニングすることができる。
【0042】
本明細書で使用される「発現」は、ポリヌクレオチドの転写及び翻訳により、ポリペプチドを生成するプロセスを指す。ポリペプチドの発現レベルは、例えば、宿主細胞から産生されるポリペプチドの量を決定する方法を含む、当技術分野で知られている任意の方法を使用して評価することができる。このような方法として、ELISAによる細胞溶解物中のポリペプチドの定量、ゲル電気泳動後のクーマシーブルー染色、Lowryタンパク質アッセイ、及び、Bradfordタンパク質アッセイを含むが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される「宿主細胞」は、ベクターを受け取り、維持し、複製し、そして増幅するために使用される細胞である。宿主細胞は、さらに、ベクターにコードされるポリペプチドを発現させることもできる。宿主細胞が分裂すると、ベクターに含まれる核酸が複製され、これにより、核酸が増幅する。宿主細胞は、真核細胞又は原核細胞であっても良い。適切な宿主細胞として、CHO細胞、様々なCOS細胞、HeLa細胞、HEK293細胞などのHEK細胞を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「ベクター」は、適切な宿主細胞に形質転換されると1つ又は複数の異種タンパク質を発現させることができる、複製可能な核酸である。ベクターについて、通常、制限酵素消化及びライゲーションによりポリペプチド又はそのフラグメントをコードする核酸を導入することができるものを含む。ベクターについて、ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターも含む。ベクターは、ポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞に導入し、核酸を増幅し、又は、核酸にコードされるポリペプチドを発現/表示するために用いられる。ベクターは、通常、遊離のままであるが、遺伝子又はその一部がゲノムに組み込まれている染色体に設計してもよい。また、酵母人工ベクター及び哺乳動物人工染色体などの人工染色体のベクターも考えられる。このようのビヒクルの選択及び使用は、当業者に周知されている。
【0044】
本明細書で使用されるベクターは、また、「ウイルスであるベクター」又は「ウイルスのベクター」を含む。ウイルスのベクターは、外来遺伝子を(ビヒクル又はシャトル(shuttle)としての)細胞に移すために、外来遺伝子に作動可能に連結されている、遺伝子操作されたウイルスである。
【0045】
本明細書で使用される「発現ベクター」は、例えば、プロモーター領域の、DNAフラグメントの発現に影響を与えることができる調節配列に作動可能に連結されているDNAを発現することができるベクターを含む。このような追加のフラグメントとして、プロモーター配列及びターミネーター配列、かつ、任意に1つ又は複数の複製起点、1つ又は複数の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含んでもよい。発現ベクターは、通常、プラスミド若しくはウイルスDNAに由来するか、又は、その両方のエレメントを含んでもよい。従って、発現ベクターは、適切な宿主細胞に導入されると、DNAをクローニングする発現をもたらす、プラスミド、ファージ、組換えウイルス、又は他のベクターなどの組換えDNA又はRNA構築物を指す。適切な発現ベクターは、当業者によく知られており、真核細胞及び/又は原核細胞において複製できる発現ベクター、並びに、遊離のままであるか、又は、宿主細胞ゲノムに組み込まれる発現ベクターを含む。
本明細書で使用される疾患又は疾患の症状を有する個体を「治療する」とは、前記個体の症状が部分的又は完全に寛解されるか、又は治療後変わりのないままであることを意味する。従って、治療は、予防、治療、及び/又は治癒を含む。予防とは、潜在的な疾患を防止すること、及び/又は、症状の悪化又は疾患の発症を防止することを指す。治療は、提供される抗体又はその抗原結合フラグメント及び本明細書で提供される組成物のいずれかの医薬的使用を含む。
【0046】
本明細書で使用される「治療効果」は、個人に対する治療により、疾患又は疾患の症状を変化させ、一般に改良又は改善し、又は疾患又は疾患の症状を治癒するという効果を指す。
【0047】
本明細書で使用される「治療に有効な量」又は「治療に有効な用量」は、被験者に投与した後に少なくとも治療効果を生じるのに十分な物質、化合物、材料、又は化合物を含む組成物の量を指す。従って、それは、疾患又は疾患の症状を予防、治癒、改善、遅延、又は部分的に遅延させるために必要な量である。
【0048】
本明細書で使用される「予防に有効な量」又は「予防に有効な用量」とは、対象に投与されたと、例えば、疾患や症状の発生や再発を予防又は遅延させ、疾患や症状の発生や再発の可能性を減らすという所望の予防効果を有する物質、化合物、材料、又は化合物を含む組成物の量を指す。完全に予防に有効な用量は、単一の使用量を投与することで発生する必要はなく、一連の使用量を投与した後にのみ発生する可能性がある。従って、予防に有効な量は、1回又は複数回の投与により投与することができる。
【0049】
本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を指す。
【0050】
II.発明を実施するための形態
【0051】
一態様において、本開示は、標的細胞表面のCD20に結合する第1の結合ドメイン、及び、T細胞表面のCD3に結合する第2の結合ドメインを含む二重特異的抗体又はその抗原結合部分であって,前記第1の結合ドメインが第1の軽鎖及び第1の重鎖を含み、前記第1の軽鎖がアミノ酸配列SEQ ID NO:56、57、58、61、62、63又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖CDRを含み、及び/又は、前記第1の重鎖がアミノ酸配列SEQ ID NO:66、67、68、71、76、77、78、85又は任意の変異体から選ばれる重鎖CDRを含む、二重特異的抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0052】
前述態様に係る抗体又はその抗原結合部分によれば、前記第1の結合ドメインの第1の軽鎖は、アミノ酸配列SEQ ID NO:56、61又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖CDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO:57、62又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖CDR2、アミノ酸配列SEQ ID NO:58、63又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖CDR3を含み、及び/又は、前記第1の結合ドメインの第1の重鎖は、アミノ酸配列SEQ ID NO:66、76又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖CDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO:67、77又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖CDR2、アミノ酸配列SEQ ID NO:68、71、78、85又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖CDR3を含む。
【0053】
前述態様に係る抗体又はその抗原結合部分によれば、前記第1の結合ドメインは、下記から選ばれる軽鎖及び重鎖のCDR組み合わせを含む。
(1)それぞれSEQ ID NO:56-58を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又は、それぞれSEQ ID NO:66-68を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
(2)それぞれSEQ ID NO:56-58を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又は、それぞれSEQ ID NO:66、67、71を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
(3)それぞれSEQ ID NO:61-63を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又は、それぞれSEQ ID NO:76-78を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
(4)それぞれSEQ ID NO:61-63を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又は、それぞれSEQ ID NO:76、77、85を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
【0054】
前述態様に係る抗体又はその抗原結合部分によれば、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54、59又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64、69、72、74、79、81、83又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖可変領域を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:64又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:69又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域とを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:72又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:74又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:79又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:81又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:83又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む。
【0062】
前述態様に係る抗体又はその抗原結合部分によれば、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:7、14又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の軽鎖CDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO:8、15、20又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の軽鎖CDR2、アミノ酸配列SEQ ID NO:9、21又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の軽鎖CDR3、及び/又は、アミノ酸配列SEQ ID NO:26、31、46又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の重鎖CDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO:27、47又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の重鎖CDR2、アミノ酸配列SEQ ID NO:28、34、37、40、43又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の重鎖CDR3を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、第2の軽鎖及び第2の重鎖を含み、前記第2の結合ドメインは、下記から選ばれる軽鎖及び重鎖のCDR組み合わせを含む。
(1)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(2)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(3)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(4)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(5)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(6)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(7)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(8)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(9)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(10)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(11)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(12)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(13)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(14)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(15)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(16)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(17)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(18)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(19)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(20)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(21)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(22)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(23)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(24)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(25)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(26)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(27)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(28)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5、10、12、16、18、22又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列SEQ ID NO:24、29、32、35、38、41、44、48、50、52又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖可変領域を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:48又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の重鎖可変領域を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:10又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の重鎖可変領域を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:12又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の重鎖可変領域を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:24又はそれらの任意の変異体から選ばれる第2の重鎖可変領域を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:48又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含む。
【0072】
前述態様に係る抗体又はその抗原結合部分によれば、前記第1の軽鎖は、SEQ ID NO:88、96、100、102、110、118又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖を含み、前記第1の重鎖は、SEQ ID NO:86、94、98、104、112、120又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖を含む。
【0073】
前述態様に係る抗体又はその抗原結合部分によれば、前記第2の軽鎖は、SEQ ID NO:92、106、114又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖を含み、前記第2の重鎖は、SEQ ID NO:90、108、116又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖を含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:88又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:86又はその任意の変異体である第1の重鎖を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:96又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:94又はその任意の変異体である第1の重鎖を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:100又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:98又はその任意の変異体である第1の重鎖を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:118又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:120又はその任意の変異体である第1の重鎖を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:88又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:86又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:96又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:94又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:100又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:98又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:118又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:120又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖及びアミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む。
【0091】
CD20に結合する抗体又はその抗原結合部分は、前述したいずれかの態様の抗体又はその抗原結合部分と少なくとも60%超え、65%超え、70%超え、75%超え、80%超え、85%超え、90%超え、95%超え、96%超え、97%超え、98%超え、99%超え、又は、それより高い配列同一性を有する。
【0092】
前述したいずれかの態様の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸、又はそれと少なくとも60%超え、65%超え、70%超え、75%超え、80%超え、85%超え、90%超え、95%超え、96%超え、97%超え、98%超え、99%超え、又は、それより高い配列同一性を有する核酸分子である。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記第1の軽鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:55、60又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記第1の重鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:65、70、73、75、80、82、84又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記第2の軽鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:6、11、13、17、19、23又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記第2の重鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:25、30、33、36、39、42、45、49、51、53又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記第1の軽鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:89、97、101、103、111、119又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記第1の重鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:87、95、99、105、113、121又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記第2の軽鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:93、107、115又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記第2の重鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:91、109、117又はそれらの任意の変異体から選ばれる核酸配列である。
【0101】
前記核酸を含むベクターを提供する。
【0102】
前記核酸又はベクターを含む細胞を提供する。
【0103】
前記二重特異的抗体又はその抗原結合部分、核酸、ベクター及び/又は細胞を含む組成物を提供する。
【0104】
治療部分に共有結合する前記二重特異的抗体又はその抗原結合部分を含む抗体-薬物コンジュゲートを提供する。
【0105】
好ましくは、前記治療部分は、細胞毒性部分、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激剤、分解ペプチド又は放射性同位体から選ばれるものである。
【0106】
本開示に係る抗体は、CD20が不利に発現又は表現された様々な疾患の治療又は診断ツールとして有用である。
【0107】
CD20関連疾患の一実施形態において、CD20は、疾患組織や臓器の細胞における発現が、健康な組織や臓器中の状態に比べて増加する。増加とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%又はそれより多く増加する。一実施形態において、発現は、疾患組織のみに見つかれ、対応する健康な組織中の発現は、抑制される。本開示によれば、CD20関連疾患は、例えば、B細胞増殖性疾患、特にCD20陽性B細胞疾患などのB細胞疾患を含む。
【0108】
「B細胞増殖性疾患」とは、患者のB細胞の数が健康被験者のB細胞の数に比べて増加している疾患、特にB細胞数の増加が疾患の原因又は徴候である疾患を意味する。「CD20陽性B細胞増殖性疾患」は、B細胞、特に悪性B細胞(正常B細胞以外)がCD20を発現するB細胞増殖性疾患を意味する。
示例的なB細胞増殖性疾患として、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、及び、いくつかのタイプの多発性骨髄腫(MM)とホジキンリンパ腫(HL)を含む。
【0109】
本開示に係る方法は、複数種の疾患の治療に応用・使用される治療剤に決まれる。しかしながら、当該方法は、B細胞増殖性疾患の治療、特に(CD20陽性)B細胞が大量(即ち、罹患疾患の被験者は、健康被験者に比べて,B細胞の存在数が増加する)に存在するCD20陽性B細胞疾患の治療に特に有効である。このように、一実施形態において、疾患は、B細胞増殖性疾患、特にCD20陽性B細胞疾患である。
【0110】
いくつかの実施形態において、当該治療剤は、がんの治療に用いると明示される抗体を含む。一実施形態において、当該治療剤は、がんの治療に用いると明示される。一実施形態において、当該がんは、B細胞増殖性疾患である。一実施形態において、当該がんは、CD20陽性B細胞増殖性疾患である。一実施形態において、当該がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)、及び、ホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選ばれる。一実施形態において、当該治療剤は、免疫治療剤である。
【0111】
いくつかの実施形態において、当該治療剤は、活性化されたT細胞抗原に特異的に結合する抗体を含む。
【0112】
一実施形態において、当該治療剤は、CD3、特にCD3εに特異的に結合する抗体を含む。
【0113】
一つの特定の実施形態において、疾患は、NHL、特に再発性/難治性(r/r)NHLである。一実施形態において、疾患は、DLBCLである。一実施形態において、疾患は、FLである。一実施形態において、疾患は、MCLである。一実施形態において、疾患は、MZLである。
【0114】
本開示に係るCD20抗体で疾患や症状を治療する方法は、前記哺乳動物に治療に有効な量の前記のいずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合フラグメント、又は核酸分子、又はベクター、又は細胞、又は薬物組成物を投与するステップを含む
いくつかの実施形態において、本開示は、患者に少なくとも40μg/mlの血清レベルを提供できるようにCD20に結合できる抗体を投与することを含む、がん疾患の治療又は予防方法を提供する。異なる実施形態において、前記抗体の投与により、少なくとも50μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも400μg/ml、或は、少なくとも500μg/mlの血清レベルを提供する。異なる実施形態において、前記抗体の投与により、800μg/ml以下、700μg/ml以下、600μg/ml以下、550μg/ml以下、或は、500μg/ml以下の血清レベルを提供する。一実施形態において、提供される血清レベルは、40μg/ml~700μg/mlであり、好ましくは40μg/ml~600μg/mlであり、好ましくは50μg/ml~500μg/mlであり、例えば、150μg/ml~500μg/ml又は300μg/ml~500μg/mlである。本明細書に用いられる「血清レベル」という用語は、血清における検討されている物質の濃度を意味する。一実施形態において、少なくとも7日又は少なくとも14日の前記血清レベルを提供する。一実施形態において、前記方法は、少なくとも300mg/m、例えば、少なくとも600mg/m、かつ好ましくは1500mg/m以下、1200mg/m以下、又は1000mg/m以下の用量の抗体を投与することを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、本開示は、患者にCD20に結合できる抗体を、少なくとも300mg/m、例えば、少なくとも600mg/m、かつ好ましくは1500mg/m以下、1200mg/m以下、又は1000mg/m以下の用量で投与することを含む、がん疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態において、本開示は、患者にCD20に結合できる抗体を投与することを含む、がん疾患を治療又は予防する方法を提供し、そのうち、前記患者は、少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%又は90%のがん細胞がCD20陽性であり、及び/又は、前記患者は、少なくとも40%、好ましくは50%又は60%のがん細胞がCD20の表面発現陽性である。これについて、本開示は、さらに、a.少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%又は90%のCD20陽性がん細胞、及び/又は、少なくとも40%、好ましくは50%又は60%のがん細胞を示す患者を鑑定するステップであって、前記がん細胞がCD20の表面発現陽性であるステップ、及び、b.前記患者にCD20に結合できる抗体を投与するステップ、を含むがん疾患を治療又は予防する方法を提供する。一実施形態において、前記患者は、少なくとも95%又は少なくとも98%のがん細胞がCD20陽性である。一実施形態において、前記患者は、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%のがん細胞がCD20の表面発現陽性である。
【0117】
本明細書に記載のいずれかの態様に係る方法の一実施形態において、がん疾患の治療結果は、病状の安定化を実現することである。一実施形態において、病状の安定化として、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、或は、少なくとも6ヶ月を実現する。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示は、患者にCD20に結合できる抗体を投与することを含む、がん患者の病状の安定化を実現する方法を提供する。一実施形態において、病状の安定化として、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、或は、少なくとも6ヶ月を実現する。
【0119】
本明細書に記載のいずれかの態様の方法の一実施形態において、単一な用量又は複数の用量で抗体を投与する。
【0120】
いくつかの実施形態において、本開示は、患者にCD20に結合できる抗体を複数の用量で投与することを含む、がん疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0121】
本開示によれば、複数の用量で前記抗体を投与する場合、好ましくは、少なくとも3回の用量、少なくとも4回の用量、少なくとも5回の用量、少なくとも6回の用量、少なくとも7回の用量、少なくとも8回の用量、少なくとも9回の用量、又は、少なくとも10回の用量、かつ好ましくは30回以下の用量、25回以下の用量、20回以下の用量、15回以下の用量、又は、10回以下の用量で前記抗体を投与する。好ましくは、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも14日、又は、少なくとも20日の時間間隔で前記抗体の用量を投与する。好ましくは、7~30日、10~20日、且つ好ましくは約14日の時間間隔で前記抗体の用量を投与する。
一実施形態において、少なくとも40μg/mlの血清レベルを提供するように前記抗体を投与する。異なる実施形態において、少なくとも50μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも400μg/ml、又は、少なくとも500μg/mlの血清レベルを提供するように前記抗体を投与する。異なる実施形態において、800μg/ml以下、700μg/ml以下、600μg/ml以下、550μg/ml以下、又は、500μg/ml以下の血清レベルを提供するように前記抗体を投与する。一実施形態において、提供される血清レベルは、40μg/ml~700μg/mlであり、好ましくは40μg/ml~600μg/mlであり、好ましくは50μg/ml~500μg/ml、例えば、150μg/ml~500μg/ml、又は、300μg/ml~500μg/mlである。一実施形態において、前記血清レベルを少なくとも7日、又は、少なくとも14日提供する。一実施形態において、前記方法は、少なくとも300mg/m、例えば、少なくとも600mg/m、かつ好ましくは1500mg/m以下、1200mg/m以下、又は、1000mg/m以下の抗体の用量を投与することを含む。
【0122】
哺乳動物のCD20関連疾患を治療するための薬物の製造における、前述のいずれかの態様の抗体又はその抗原結合フラグメント、又は核酸分子、又はベクター、又は細胞、又は薬物組成物の使用。
【0123】
前記のいずれかの態様によれば、任意に、前記抗体は、他の薬物にカップリングし、例えば、標識を付けるか、又は、細胞毒性を有するコンジュゲートである。
【0124】
一態様において、本開示は、さらに、キットを含み、例えば、前記キットは、本開示に係る抗体、そのフラグメント、ホモログ、その誘導体など、例えば、標識を付けるか、又は、細胞毒性を有するコンジュゲート、及び、抗体の取扱説明書、特定の種類の細胞を殺すコンジュゲートなどを含む。当該取扱説明書は、抗体、コンジュゲートなどのインビトロ、インビボ又はエクスビボでの使用ガイドを含んでもよい。抗体は、液体又は固体であり、通常、凍結乾燥されている。当該キットは、さらに緩衝液、再構成溶液などの他の適当な試薬及び予定使用に応じて必要な他の成分を含んでもよい。所定の量でパッケージ化された試薬の組み合わせとそれらの治療使用又は診断アッセイ使用などの使用に用いる取扱説明書とも考えられる。抗体が標識されている場合、例えば、酵素で標識されている場合、当該キットは、基質及び酵素に必要な補因子(例えば、検出可能な発色団又はフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含んでもよい。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロッキング緩衝液又は溶解緩衝液)などの他の添加剤も含んでもよい。様々な試薬の相対量を変化させて、試薬溶液の濃縮物を提供することができ、これにより、ユーザーの柔軟性、スペースの節約、試薬の節約などを提供する。これら試薬は、乾燥粉末の形で提供することもでき、通常、凍結乾燥されたものとして提供され、賦形剤を含むため、溶解すると適切な濃度の試薬の溶液を提供することができる。
【0125】
前記のいずれかの態様に係る抗体又はその機能的フラグメント、又は核酸分子、又はベクター、又は細胞、又は薬物組成物、又はキットの、CD20への結合を阻害するための試薬の調製における使用を提供する。
【0126】
また、本発明に係る抗体は、免疫測定、精製方法及び他の免疫グロブリン又はそのフラグメントを用いる方法に用いられてもよい。このような使用は、当業者が周知されているものである。
【0127】
対応的に、本開示は、また、本開示に係る抗CD20抗体又はそのフラグメントを含む組成物を提供し、前記抗体は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を便宜に組み合わせることができ、これは、本分野の通常手段である。
【0128】
本開示に使用される「薬物組成物」という用語は、さまざまな調製物の製剤を指す。治療に有効な量の多価抗体を含む製剤は、無菌液体溶液、液体懸濁液又は凍結乾燥形態であり、任意に安定剤又は賦形剤を含んでもよい。
【0129】
本開示に係る抗体は、単独で投与される組成物として使用することができ、又は他の活性剤と組み合わせて使用することができる。
いくつかの実施形態において、本開示に係るヒト化抗体は、治療部分(即ち、薬物)にカップリングしている。治療部分は、例えば、細胞毒素、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激剤、分解ペプチド又は放射性同位体であってもよい。このようなコンジュゲートは、本明細書に「抗体-薬物コンジュゲート」又は「ADC」と称される。
【0130】
いくつかの実施形態において、抗体は、細胞毒性部分にコンジュゲートしている。細胞毒性部分は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン(Cephaeline)、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、マイタンシン又はその類似体若しくは誘導体などのチューブリン阻害剤、モノメチルアウリスタチンE若しくはF又はその類似体若しくは誘導体などの有糸分裂阻害剤、ドラスタチン10若しくは15又はその類似体、イリノテカン又はその類似体、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD(actinomycin D)、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン(Puromycin)、カリケアミシン又はその類似体若しくは誘導体、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン又はクラドリビンなどの代謝拮抗剤、例えば、メクロレタミン、チオプリン(thiopurine)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンCなどのアルキル化剤、シスプラチン又はカルボプラチン等の白金系誘導体、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065)又はその類似体若しくは誘導体、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミスラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリマイシン(primycin)、アントラマイシン(AMC)などの抗生物質、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)、ジフテリア毒素及びジフテリアA鎖及びその活性フラグメント及びハイブリッド分子などの関連分子、リシンA又は脱グリコシル化リシンA鎖毒素、コレラ毒素などのリシン、SLT I、SLT II、SLT IIVなどのシガ様毒素、LT毒素、C3毒素、シガ毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ボウマン・バーク大豆プロテアーゼ阻害剤、シュードモナス外毒素、アロリン、サポリン(Saporin)、モデシン(modeccin)、ゲラニン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、PAPI、PAPII及びPAP-Sなどのアメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン(crotin)、サポナリアコン(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン及びエノマイシン毒素、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、ブドウ球菌エンドトキシンA、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、シュードモナスエンドトキシンから選ばれるものであってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、抗体は、アウリスタチン又はそのペプチド類似体、誘導体又はプロドラッグにコンジュゲートする。アウリスタチンは、微小管のダイナミクス、GTP加水分解並びに核分裂及び細胞分裂に影響し、抗がん活性及び抗真菌活性を有することが示された。例えば,アウリスタチンEは、p-アセチル安息香酸又はベンゾイル吉草酸と反応し、それぞれAEB、AEVBを生成することができる。他の典型的なアウリスタチン誘導体として、AFP、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)及びMMAE(モノメチルアウリスタチンE)を含む。好適なアウリスタチン、アウリスタチンの類似体、誘導体及びプロドラッグ、並びにアウリスタチンとAbとのコンジュゲートに好適なリンカーは、例えば、米国特許第5,635,483号、第5,780,588号、第6,214,345号及び国際特許出願公開WO02088172、WO2004010957、WO2005081711、WO2005084390、WO2006132670、WO03026577、WO200700860、WO207011968及びWO205082023に記載されている。
【0132】
いくつかの実施形態において、抗体は、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)、そのペプチド類似体、誘導体又はプロドラッグにコンジュゲートする。適切なPDB、PDB誘導体及び関連技術は、例えば、Hartley J.A.et al.,Cancer Res 2010、70(17):6849-6858、Antonow D.et al.,Cancer J 2008、14(3):154-169、Howard P.W.et al.,Bioorg Med Chem Lett 2009;19:6463-6466、及び、Sagnouet al.,Bioorg MedChem Lett 2000;10(18):2083-2086に記載されている。
【0133】
いくつかの実施形態において、抗体は、アントラサイクリン系抗生素、メルタンシン、カリケアミシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC-1065)、ドラスタチン10、ドラスタチン15、イリノテカン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、PDB、又は、これらのいずれの類似体、誘導体又はプロドラッグから選ばれる細胞毒性部分にコンジュゲートする。
【0134】
いくつかの実施形態において、抗体は、アントラサイクリン系抗生素又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、メルタンシン又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、カリケアミシン又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、デュオカルマイシン又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、ラケルマイシン(CC-1065)又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、ドラスタチン10又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、ドラスタチン15又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、モノメチルアウリスタチンE又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、モノメチルアウリスタチンF又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。いくつかの実施形態において、抗体は、イリノテカン又はその類似体、誘導体或はプロドラッグにコンジュゲートする。
【0135】
いくつかの実施形態において、抗体は、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNa、IFN3、IFNy、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム(ancestim)及びTNFa)にコンジュゲートする。
【0136】
いくつかの実施態様では、抗体を、放射性同位体又は放射性同位体を含有するキレートにコンジュゲートする。例えば、抗体を、キレートリンカー、例えばDOTA、DTPA、又はチウキセタンにコンジュゲートさせることができる。該抗体は、さらに、又は、代替的に、1つ以上の放射標識されたアミノ酸又は他の放射標識された分子を含むか又はこれにコンジュゲートさせ得る。放射性同位体の非限定的な例としては、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、131I、186Re、213Bi、225Ac及び227Thを含む。治療の目的のために、β又はα粒子放射線を放出する放射性同位体、例えば、131I、90Y、211At、212Bi、67Cu、186Re、188Re及び212Pbを使用してもよい。
【0137】
分子を抗体にコンジュゲートする技術は、本分野でよく知られているものである。通常、核酸分子は、それぞれN-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はマレイミド官能基を介して、抗体におけるリシン又はシステインに共有的に連結している。操作システインを用いるか、又は、非天然アミノ酸を組み込んだコンジュゲーション方法は、コンジュゲートの同一性を改善され得ることが報告されている。当業者は、特に、アシル供与体グルタミン含有タグ(例えば、Gin含有ペプチドタグまたはQタグ)またはポリペプチド操作(例えば、アミノ酸の欠失、挿入、置換またはポリペプチドの変異によるもの)によって反応性にした内在性グルタミンで操作したFc含有ポリペプチドが考えられよう。次いで、トランスグルタミナーゼがアミン供与剤(例えば、反応性アミンを含むか、これと結合した小分子)と共有結合により架橋し、アミン供与剤がアシル供与体グルタミン含有タグまたは接触可能な/露出した/反応性の内在性グルタミンを介してFc含有ポリペプチドと部位特異的にコンジュゲートした操作Fc含有ポリペプチドコンジュゲートの安定で均一な集団を形成し得る(WO2012059882)。
【0138】
前記実施形態に係る治療薬は、改善された移転、送達、耐性などを提供するために製剤に組み込まれる適切な薬学的に許容される担体、賦形剤及び他の試薬とともに投与されることが理解される。医薬品化学者らに知られている薬局方には、多数の適切な製剤が記載されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第15版,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1975))、特にそのうちのBlaug、Seymourによる第87章が挙げられる。これらの製剤として、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゲル、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン又はアニオン)含有担体(例如、LipofectinTM)、DNAコンジュゲート、無水スラリー、水中油型及び油中水型エマルジョン、エマルジョンポリエチレングリコール(さまざまな分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びポリエチレングリコールを含む半固体混合物が挙げられる。前記混合物は、いずれも製剤における有効成分が製剤に不活化されず、生理学的適合性があり、投与経路に耐えるという条件で、本発明に係る治療又は治療方法に適用される。
【0139】
一実施形態において、前記の抗体は、治療薬として使用することができる。このような薬剤は、通常、被験者の異常なCD20の発現、活性、及び/又はシグナル伝達に関連する疾患又は病状を治療、寛解、及び/又は予防するために使用される。治療レジメンは、標準的な方法で、被験者、例えば、異常なCD20発現、活性、及び/又はシグナル伝達に関連する疾患又は障害、例えば、CD20関連障害(又は、リスクがあるが、若しくは発症している)に罹るヒト患者を特定することで実施することができる。抗体製剤、好ましくは標的抗原に対して高い特異性及び高い親和性を有する抗体製剤を被験者に投与し、かつ、一般に、標的への結合によって効果を生じる。投与された抗体は、標的(例えば、CD20)の発現、活性、及び/又はシグナル伝達機能を解消するか、阻害するか、又は妨害する可能性がある。投与された抗体は、標的(例えば、CD20)と自然的にそれに結合する内因性リガンドとの結合を解消するか、阻害するか、又は妨害する可能性がある。例えば、抗体は、標的に結合し、CD20の発現、活性、及び/又はシグナル伝達を調節、阻害、抑制、低下、拮抗、中和、及び/又はその他の方式で妨害する。いくつかの実施形態において、異常なCD20発現に関連する疾患又は障害を治療するために、重鎖及び軽鎖CDRを有する抗体を被験者に投与することができる。
【0140】
別の実施形態において、CD20に対する抗体は、当分野で知られているCD20のローカリゼーション及び/又は定量化に関連する方法に用いられる(例えば、適切な生体試料におけるCD20及び/又はCD20のレベルの決定、診断方法、タンパク質イメージングなどに用いられる)。特定の実施形態において、CD20又はその誘導体、フラグメント、類似体又は同族体に特異的な、抗体に由来する抗原結合ドメインを含む抗体は、薬学的に活性な化合物(以下、「治療薬」と呼ばれる)として使用される。
【0141】
別の実施形態において、免疫アフィニティー、クロマトグラフィー又は免疫沈降などの標準的な技術により、CD20に特異的な抗体を使用し、CD20ポリペプチドを単離し得る。CD20タンパク質に対する抗体(又はそのフラグメント)は、生体試料におけるタンパク質を検出することに用いられる。いくつかの実施形態において、例えば、特定の治療レジメンの有効性を決定するために、臨床試験手順の一部として生体試料におけるCD20を検出する。抗体を検出可能な物質にコンジュゲートする(即ち、物理的に結合する)ことは、検出に有利である。検出可能な物質として、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料が挙げられる。適切な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含み、適切な蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン、塩化ダンシルアミド、又は、フィコエリトリンを含み、発光材料の例として、ルミノールを含み、生物発光材料の例として、ルシフェラーゼ、フルオレセイン及びイクオリンを含み、適切な放射性材料の例として、125I、131I、35S、又はHを含む。
【0142】
別の実施形態において、本開示に係る抗体は、試料におけるCD20又はそのタンパク質フラグメントの存在を検出するための試薬として使用することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、検出可能な標識を含む。抗体は、ポリクローナル抗体、又は、より好ましくはモノクローナル抗体である。インタクトな抗体又はそのフラグメント(例えば、Fab、scFv又はF(ab’))を使用する。抗体に関する「標識」という用語は、検出可能な物質を抗体にコンジュゲートする(即ち、物理的に結合する)ことで当該抗体を直接に標識し、及び、直接に標識された別の試薬との反応によって当該抗体を間接に標識することを含む。間接に標識する例として、蛍光で標識された二次抗体による一次抗体の検出、及び、蛍光で標識されたストレプトアビジンによる検出を可能にするためのビオチンによる抗体の末端標識が挙げられる。「生体試料」という用語は、被験者から単離された組織、細胞、及び生体流体、並びに被験者の体内に存在する組織、細胞、及び流体を含むことを意図している。従って、「生体試料」という用語は、血清、血漿、又はリンパ液を含む、血液及び血液中の画分又は成分を含む。言い換えれば、前記実施形態に係る検出方法は、インビトロ及びインビボで、生体試料における分析物であるmRNA、タンパク質、又はゲノムDNAの検出に用いられる。例えば、分析物であるmRNAのインビトロ検出技術は、ノーザンハイブリダイゼーション及びインサイチュハイブリダイゼーションを含む。分析物であるタンパク質のインビトロ検出技術として、酵素結合免疫吸着試験(ELISA)、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、及び免疫蛍光を含む。分析物であるゲノムDNAのインビトロ検出技術は、サザンハイブリダイゼーションを含む。イムノアッセイの実施手順は、例えば、「ELISA:Theory and Practice:Methods in Molecular Biology」,第42卷,J.R.Crowther(編集)Human Press,Totowa, N.J.,1995;「Immunoassay」,E.Diamandis&T.Christopoulus,Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.,1996;及び、「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」,P.Tijssen,Elsevier Science Publishers,Amsterdam,1985に記載されている。また、分析物であるタンパク質のインビボ検出技術は、標識された抗分析物タンパク質抗体を被験者に導入することを含む。例えば、抗体を放射性標識で標識し、そして、被験者体内の当該放射性標識の存在及び位置を、標準的な画像技術により検出する。
【0143】
本明細書に係る抗体及びその誘導体、フラグメント、類似体及び同族体は、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。このような組成物の調製に関する原理、考慮事項、及び、組成成分を選択するためのガイドラインは、当分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences: The Science And Practice Of Pharmacy 19th Edition(Alfonso R.Gennaroら編集)Mack Pub.Co.,Easton,Pa.:1995;Drug Absorption Enhancement:Concepts,Possibilities, Limitations,And Trends,Harwood Academic Publishers,Langhorne,Pa.,1994;及びPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences,第4卷),1991,M.Dekker,New Yorkに参照されたい。
このような組成物は、通常、抗体及び薬学的に許容される担体を含む。抗体のフラグメントを用いる場合、好ましくは、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小限の抑制フラグメントである。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学合成及び/又は組換えDNA技術により産生することができる(例えば、Marasco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889-7893(1993)に参照されたい)。
【0144】
本明細書に使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬品投与に許容される任意及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図している。適切な薬学的に許容される担体は、最新版のRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されており、これは、当分野の標準の参考書誌であり、参照により本明細書に組み込まれる。このような担体又は希釈剤の好ましい例として、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンを含むが、これらに限定されない。リポソーム及び固定化油などの非水性ベクターも使用することができる。このような媒体及び試薬を薬学的に活性な物質に使用することは、当分野で周知されているものである。抗体と相容しない通常の培地又は試薬以外、組成物におけるその使用が想定されている。
【0145】
前記実施形態の薬物組成物を、それらの意図された投与経路に適合するように調製される。投与経路の例として、例えば、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(即ち、局所)、経粘膜、及び直腸投与を含む。非経口、皮内又は皮下投与用溶液又は懸濁液として、注射用無菌希釈剤、例えば、水、塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール系、グリセロール、プロピレングリコール又は他の合成溶媒、抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はp-ヒドロキシ安息香酸メチル、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム、キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩、及び浸透圧調節剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースを含む。pHは、酸又は塩基、例えば、塩酸や水酸化ナトリウムで調整できる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、ガラス又はプラスチック製の複数回投与用バイアルに包装することができる。
【0146】
注射使用に適する薬物組成物として、無菌水性溶液(ここで、水溶性である)又は分散体、及び無菌の注射液又は分散体を即時調製するための無菌粉末を含む。静脈内投与に適する薬学的に許容される担体として、生理食塩水、無菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,N.J.)又は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は、無菌でなければならず、注射しやすい流動性を有しなければならない。また、製造及び保管の条件で安定している必要があり、細菌や真菌などの微生物の汚染作用を防止できる必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)を含む溶媒又は分散媒体、及び、それらの適切な混合物であってもよい。コーティング、例えば、レシチンを利用し、分散体の場合に所望の粒子サイズを維持し、また、界面活性剤を利用し、適切な流動性を維持することができる。微生物作用の防止は、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤及び抗真菌剤により達成することができる。多くの場合、糖、ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンなどの吸収を遅らせる試薬を組成物に含むことで達成できる。
【0147】
必要に応じて、抗体を必要な量で上記に挙げられた成分の1種又は組み合わせ(必要に応じて)の適切な溶媒に組み込むことで無菌注射液を調製し、そしてフィルターして消毒する。通常、抗体を、塩基性分散媒体及び上記に挙げられたものからの他の必要成分を含む無菌担体に組み込むことで分散体を調製する。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末について、調製方法として、前記成分の無菌濾過溶液からの、活性成分及び任意の追加の所望の成分を含む、粉末の真空乾燥及び凍結乾燥を得る。
【0148】
吸入投与について、推進薬、例えば、二酸化炭素等のガスを適切に供給する加圧容器又は分配器又は噴霧器より、エアロゾル噴霧形式で化合物を送達する。
また、経粘膜的又は経皮的手段により全身投与をすることであってもよい。経粘膜又は経皮投与について、製剤にバリアを透過することに適する浸透剤を使用する。このような浸透剤は、当分野で周知されており、例えば、経粘膜投与用洗剤、胆汁酸塩、フシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬又は坐剤を使用することで達成できる。経皮投与について、1つ又は複数の抗体を、当技術分野で周知されているペースト、軟膏、ゲル、又はクリームに調製することができる。
【0149】
化合物は、さらに、(例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤ベースを有する)坐剤又は保持型浣腸剤の形態で調製し直腸送達することができる。
【0150】
一実施形態において、前記抗体は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む徐放性/制御放出製剤など、身体に急速に排泄されないことを防ぐ担体を用いて調製することができる。生分解する可能な、生体適合性を有するポリマーとして、例えば、エチレン‐酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような製剤を調製するための方法は、当業者にとって自明である。
【0151】
投与の容易性及び用量の均一性のために、単位剤形で非経口組成物を調製ことは特に有利である。本明細書で使用される単位剤形とは、治療される被験者の単回用量に適する物理的に分離されている単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体と組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算された特定量の1種又は複数種の前記抗体を含む。前記実施形態の単位剤形の仕様は、抗体の固有の特性及び達成しようとする具体的な治療効果、並びに個体を治療するためのこのような抗体の調製技術に固有の制限に決定され、かつそれに直接的に依存される。
【0152】
前記薬物組成物は、投与取扱説明書とともに容器、パック、又はディスペンサーに入れてもよい。
【0153】
本明細書に係る製剤は、治療しようとする具体的な状態に応じて1種を超える前記抗体、好ましくは相補的活性を有するが互いに悪影響を及ぼさない抗体をさらに含でもよい。また、又は、これ以外、組成物は、組成物の機能を増強する試薬、例えば、細胞毒素、サイトカイン、化学療法剤、又は成長抑制剤を含んでもよい。このような分子は、意図された目的に有効量で適切に組み合わせて存在し得る。例えば、キットに組み合わせて存在してもよく、使用時に組み合わせて存在してもよい。
【0154】
一実施形態において、1種又は複数種の前記抗体は、併用療法で、即ち、他の試薬、例えば、治療薬(病理的状態又は障害を治療するための、例えば、様々な形態のがん、自己免疫障害及び炎症性疾患)と併用する。本明細書で使用される「併用」という用語は、実質的に同時に、同時に、又は順に試薬を投与することを指す。順に投与すると、好ましくは、第2化合物の投与を開始する時、2つの化合物における第1化合物が依然として治療部位で有効濃度で検出することができる。ある場合、「併用」は、キットに本開示に係る抗体及び他の治療薬を同時に含んでもよい。
例えば、併用治療は、本開示に係る1種又は複数種の抗体と1種又は複数種の追加の治療剤(例えば、1種又は複数種のサイトカイン及び成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤及び/又は細胞毒素又は細胞増殖阻害剤、以下でより詳しく説明する。)との同時調製及び/又は同時投与を含む。このような併用療法は、投与された治療剤を低い投与用量で利用することができるため、様々な単一療法に関連する可能な毒性又は合併症を回避することができる。
【0155】
一実施形態において、抗CD20抗体の投与及び治療剤の投与により、当該被験者のB細胞の数を低下させることができる。
【0156】
一実施形態において、当該治療レジメンは、対応する抗CD20抗体を投与しない治療レジメンに比べて、当該被験者の当該T細胞活性化治療剤の投与に関するサイトカイン放出を効果的に低下させることができる。
【0157】
明確かつ簡潔に説明するために、技術特徴を同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されているが、本発明の範囲は、説明されるすべて又はいくつかの特徴の組み合わせてなる実施形態を含んでもよいと理解される。
【0158】
実施例
実施例1:CD20安定トランスフェクト細胞及びCD3組換え抗原
1.ヒト又はサルCD20安定トランスフェクト細胞株の構築
ヒトCD20又はカニクイザル(Cynomologus monkey)CD20の全長配列(cDNAは、Sino Biologicalから購入、HG11007-UT、CG90052-G)を含むレンチウイルスベクタープラスミドを構築し、レンチウイルスパッケージキット(Lenti-Pac HIV Expression Packaging Kit、Gene Copoeia、#HPK-LvTR-20)で構築されたレンチウイルスプラスミド及びパッケージプラスミドをHEK293T細胞にコトランスフェクトし、48時間後、上清を取った。レンチウイルス粒子を含む培養上清を10μL取り、対数増殖期にあるCHO細胞を添加し、2日後、puromycin 10μg/mLを添加し、スクリーニングした。耐性クローンから限界希釈法でさらに高発現ヒト又はサルCD20の安定トランスフェクト細胞株CHO-ヒトCD20(クローン3G6)及びCHO-カニクイザルCD20(クローン1G9)を得た。
【0159】
図1に示されるように、APC標識CD20抗体(BioLegend #302309)を利用し、フローサイトメトリー検出を行い、ヒトCD20安定トランスフェクト細胞(CHO-hCD20-3G6)及びサルCD20安定トランスフェクト細胞(CHO-cyCD20-1G9)は、トランスフェクトされないCHO細胞に比べて、いずれも高いレベルのCD20を発現した。
【0160】
2.ヒト又はサルCD3εγヘテロ二量体の構築
ヒトCD3γ(UniProt P09693、Gln23-Asn116)及びCD3ε(UniProt P07766、Gln23-Asp126)細胞外領域ヌクレオチド配列を合成し、C末端は、それぞれヒトIgG Fcホール又はFcノブに融合し、ヒトCD3εγ-Fcヘテロ二量体(ヒトCD3γ IgG Fc(hole)アミノ酸配列をSEQ ID NO.1に示し、ヒトCD3ε IgG Fc(knob)のアミノ酸配列をSEQ ID NO.2に示す)を発現して形成された。同様に、カニクイザルCD3γ(UniProt Q95LI7,Gln23-Asn110)及びCD3ε(UniProt Q95LI5,Gln22-Asp117)を合成し、C末端は、カニクイザルIgG Fcホール又はFcノブに融合し、カニクイザルCD3εγ-Fcヘテロ二量体(カニクイザルCD3γ IgG Fc(hole)のアミノ酸配列をSEQ ID NO.3に示し、カニクイザルCD3γ IgG Fc(knob)のアミノ酸配列を、SEQ ID NO.4に示す)を発現して形成された。CD3γ-Fc及びCD3ε-Fcを発現する組換えプラスミドを、PEI(Polysciences,#24765-2)3mg/mLと混合し、HEK293E細胞(培地OPM-293 CD03 DPM)にコトランスフェクトし、37℃、120rpm、5%COで7日培養した後、培地上清を回収し、Protein Aアフィニティクロマトグラフィーで精製してヒト又はカニクイザルCD3εγ-Fc組換えタンパク質を得、SDS-PAGEによる純度は、95%を超える(図2)。
【0161】
実施例2:CD3ヒト化抗体
マウス由来ハイブリドーマのCD3抗体(EMBO J.1985.4(2):337-344;J.Immunol.1986,137(4):1097-100; J.Exp.Med.1991,174:319-326;J.Immunol.1991,147(9):3047-52)は、ヒト及びサルCD3受容体を認識し、その配列は、以下の通りであった。
【0162】
抗CD3マウスモノクローナル抗体軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO.122):
【化1】
【0163】
抗CD3マウスモノクローナル抗体重鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO. 123):
【化2】
【0164】
抗CD3マウスモノクローナル抗体をヒト化し、同一性の最も高いヒト生殖系列遺伝子IMGT_hVL7-43を選択し、軽鎖CDR移植を行い、FM4としてヒトIGLJ3*02を用い、ヒトIMGT_hVH3-73を選択し、重鎖CDR移植を行い、FM4としてヒトIGHJ4*01を用いた。設計して異なる重鎖変異体と軽鎖変異体を得た(表1、2)。
【表1】
【化3】
【表2】
【化4】
【0165】
軽鎖、重鎖のヒト化変異体の全配列をそれぞれ合成した後、抗体lambda軽鎖定常領域又はヒトIgG4重鎖定常領域CH1-CH3を含む真核発現ベクターにクローニングし、HEK293E細胞にコトランスフェクトし、37℃、120rpm、5%COで5~6日培養した後、培地上清液を回収し、Protein Aカラムにより精製した。
【0166】
ELISAによるアフィニティー測定
ヒトCD3εγタンパク質を4℃で一晩コーティングした。2%スキムミルクでブロックした後、各ウェルに異なる希釈倍数のCD3抗体を加え、1時間インキュベートし、二次抗体としてHPR標識ヤギ抗ヒトIgG Fcを添加し、TMB溶液で発色させた後、濃硫酸で反応を終了させ、かつ450nmの吸光度を読み取った(結果を図3に示す)。
【0167】
図3は、ヒトCD3εγタンパク質に結合する抗CD3ヒト化抗体の組み合わせ(aCD3-hVH8/VL1、aCD3-hVH9/VL1、aCD3-hVH9/VL2、aCD3-hVH9/VL3、aCD3-hVH1/VL5、aCD3-hVH8/VL5、aCD3-hVH9/VL5を含む)を示し、CD3ヒト化抗体は、高いアフィニティーでCD3εγ組換えタンパク質に結合した。
【0168】
Jurkat T細胞のアフィニティー測定
対数増殖期にあるJurkat細胞を取り、3%BSAで30分間ブロックし、U型96ウェルプレートに5×10細胞/ウェルを添加し、遠心分離し、上清を捨て、各ウェルに勾配希釈抗体(抗体濃度は、30μg/mlから3倍希釈で5つの勾配である)50μLを入れ、4℃で1時間インキュベートした。洗浄して一次抗体を除去した後、二次抗体として1:300で希釈されたAlexa Fluro647で標識されたヤギ抗ヒトIgG Fc(Jackson ImmunoResearch、109-606-170)を添加し、4℃で45分間インキュベートし、洗浄した後、各ウェルに対してPBS 50μlに再懸濁してFACS(iQue,Intellicyt)検出を行った(結果を図4に示す)。
図4は、Jurkat細胞に結合した抗CD3ヒト化抗体の組み合わせを示し、CD3ヒト化抗体hVH9/VL5(aCD3-hVH9/VL5)は、中度アフィニティーでJurkat細胞に結合した。
【0169】
実施例3:CD20ヒト化抗体
マウスCD20抗体又は対照抗体は、文献US5736137、US8529902を参照して合成し、その可変領域アミノ酸配列は、以下の通りであった。
【化5】
【0170】
CDR移植及び点突然変異により、CD20抗体に対して最適化設計し、等電点を低下させ、マウス又は対照CD20抗体の軽鎖CDRをヒト抗体の生殖系列遺伝子Vk3-20フレームに移植し、Joint領域としてヒトKJ2*01を採用し、重鎖CDRをヒトVH1-69又はVH3-23フレームに移植し、Lys77Asnなどの突然変異を導入し、Fv領域の電荷密度を低下させ、Joint領域としてヒトHJ4*01を採用し、それぞれヒト化Mab001抗体、Mab002抗体、Mab003抗体、Mab004抗体、Mab005抗体、Mab006抗体、Mab007抗体(表3、4)を得た。
【0171】
軽鎖可変領域を、kappa軽鎖定常領域を含む真核発現ベクターにクローニングし、重鎖可変領域を、IgG4 CH1-3定常領域を含む真核発現ベクターにクローニングした。HEK293E細胞にトランスフェクトし、5~6日発現した後、培養上清を回収し、Protein Aアフィニティクロマトグラフィーにより精製し、Nanodrop分光光度計及び理論吸光値により抗体濃度を決定した。
【表3】
【表4】
【0172】
Mab001抗体軽鎖の可変領域(VK)アミノ酸配列をSEQ ID NO. 54に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.55にし、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.56-58に示す。
【化6】
【0173】
Mab001抗体重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をSEQ ID NO.64に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.65に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.66-68に示す。
【化7】
【0174】
Mab002抗体軽鎖可変領域(VK)アミノ酸配列をSEQ ID NO.54に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.55に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.56-58に示す。
【化8】
【0175】
Mab002抗体重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をSEQ ID NO.69に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.70に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.66、67、71に示す。
【化9】
【0176】
Mab003抗体軽鎖可変領域(VK)アミノ酸配列をSEQ ID NO.54に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.55に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.56-58に示す。
【化10】
【0177】
Mab003抗体重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をSEQ ID NO.72に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.73に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.66-68に示す。
【化11】
【0178】
Mab004抗体軽鎖可変領域(VK)アミノ酸配列をSEQ ID NO.59に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.60に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.61-63に示す。
【化12】
【0179】
Mab004抗体重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をSEQ ID NO.74に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.75に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.76-78に示す。
【化13】
【0180】
Mab005抗体軽鎖可変領域(VK)アミノ酸配列をSEQ ID NO.59に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.60に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.61-63に示す。
【化14】
【0181】
Mab005抗体重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をSEQ ID NO.79に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.80に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.76-78に示す。
【化15】
【0182】
Mab006抗体軽鎖可変領域(VK)アミノ酸配列をSEQ ID NO.59に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.60に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.61-63に示す。
【化16】
【0183】
Mab006抗体重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をSEQ ID NO.81に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.82に示され、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.76-78に示す。
【化17】
【0184】
Mab007抗体軽鎖可変領域(VK)アミノ酸配列をSEQ ID NO.59に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.60に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.61-63に示す。
【化18】
【0185】
Mab007抗体重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をSEQ ID NO.83に示し、そのコード核酸をSEQ ID NO.84に示し、そのCDR1、CDR2及びCDR3をSEQ ID NO.76、77、85に示す。
【化19】
【0186】
ヒト化CD20抗体の腫瘍細胞への結合
対数増殖期にあるリンバ腫細胞系Raji細胞及びDaudi細胞を取り、マウスIgG(Jackson ImmunoResearch)200μg/mLを加え、30分間ブロックした。U型96ウェルプレートの各ウェルに5×10細胞及び勾配希釈抗体(初期濃度200nMから5倍希釈で合計8つの勾配である)50μLを添加し、氷上で45分間インキュベーターした。洗浄した後、各ウェルにAlexa Fluro647で標識されたヤギ抗ヒトIgG Fc(1:300希釈)50μLを添加し、氷上で45分間インキュベーターした。PI(Sigma,P4170)60μL/ウェルを添加し、5分間インキュベーターし、フローサイトメトリー(iQue Screener)で検出した。図5は、ヒト化CD20抗体とRaji細胞との結合を示し、図6は、ヒト化CD20抗体とDaudi細胞との結合を示す。
【0187】
実施例4:ヒト化CD20抗体とCD3抗体との組み合わせのスクリーニング
1.抗体の組み合わせから二機能性抗体のスクリーニング
等電点最適化により得られたヒト化CD20抗体Mab002、Mab005及びMab007を選択し、ヒト化CD3抗体と二重特異的抗体を構築した。Schaefer Wら(PNAS, 2011)を参照し、ヒト化CD20抗体とCD3抗体との組み合わせをスクリーニングし、ヒト化CD20抗体の軽鎖可変領域をkappa軽鎖定常領域を含む真核発現ベクターにクローニングし、重鎖可変領域を突然変異したヒトIgG4定常領域を含む真核発現ベクターにクローニングし、ヒト化CD3抗体の軽鎖可変領域を、lambda軽鎖定常領域、重鎖ヒンジ領域及び定常領域CH2、CH3を含む真核発現ベクターにクローニングし、CD3抗体の重鎖可変領域をヒトCH1定常領域を含む真核発現ベクターにクローニングし、軽鎖、重鎖の遺伝子をコードする4種類のプラスミドを1:1:1:1の比率で混合し、HEK293E細胞にトランスフェクトし、5~6日発現した後、培地上清を回収し、Protein Aアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。SEC-HPLCにおいて、当該方法で調製された二機能性抗体Mab002×CD3、Mab005×CD3及びMab007×CD3のモノマー含有量が55%を超えることを示し、下記の標的細胞結合及び殺傷作用の相対的活性評価に用いられた。
【0188】
抗体組み合わせから二機能性抗体をスクリーニングすることに用いられる配列を表5に示す。
【表5】
【表6】
【0189】
2.CD20+細胞及びJurkat細胞への認識
対数増殖期にあるRaji細胞及びヒト末梢血白血病T細胞系Jurkat細胞を取り、マウスIgG200μg/mLを加え、30分間ブロックした。U型96ウェルプレートの各ウェルに5×10細胞及び勾配希釈抗体(初期濃度1800nMから5倍希釈で合計8つの勾配である)を添加し、氷上で45分間インキュベーターした。洗浄して一次抗体を除去した後、各ウェルにAlexa Fluro647で標識されたヤギ抗ヒトIgG Fc(1:300希釈)50μLを添加し、氷上で45分間インキュベーターし、PI60μL/ウェルを添加し、5分間インキュベーターし、フローサイトメトリーで検出した。
【0190】
図7hは、CD20×CD3抗体の組み合わせとRaji細胞との結合を示し、図8は、CD20×CD3抗体の組み合わせとJurkat細胞との結合を示す。
【0191】
3.T細胞依存細胞毒試験(TDCC)
分離して得られた新鮮なPBMC及び対数増殖期にあるRaji細胞(エフェクター細胞/標的細胞=10:1)を混合し、各ウェルに勾配希釈抗体(初期濃度66.7nMから10倍希釈で8つの勾配である)を添加し、5%CO、37℃で24時間培養した。培養終了後、1000rmpで3分間遠心分離し、上清を取ってLDH放出を検出し、上清50μLを黒色ELISAプレートに移し、LDH検出基質50μL/ウェルを添加し、10分間後、反応を終了させ、検出し(Biotek Synergy HT)、下記の式で殺傷率を計算し、上清を捨てた後、ウェル内の残留細胞を4%ウシ血清で2回洗浄した後、ヒトIgG 100μg/mLを添加し、10分間ブロックし、T細胞活性化の早期標識CD69及び後期標識CD25を添加し、抗体(CD25-PE,CD4-APC,CD69-FITC及びCD8-APC)を検出し、氷上で20分間インキュベーターした。インキュベーター終了後,各ウェルに4%ウシ血清200μLを添加して3回洗浄し、上清を捨て、PI(1:200希釈)60μL/ウェルを添加し、氷上で5分間インキュベーターし、フローサイトメトリー(BD FACS celesta)で検出した。
【0192】
殺傷率の計算式は、以下の通りである。
【数1】
【0193】
図9Aは、異なるCD20×CD3抗体の組み合わせに媒介されたTDCC殺傷作用を示し、図9Bは、TDCC殺傷過程中、CD20×CD3抗体の組み合わせがT細胞活性化マーカーであるCD69及びCD25の向上を刺激できることを示す。
【0194】
4.T細胞シグナル経路の活性化
ルシフェラーゼレポータープラスミドpGL4.30[luc2P/NFAT-RE/Hygro](Promega、E8481)をJurkat細胞にトランスフェクトし、ハイグロマイシンB200μg/mlを添加し、スクリーニングし、Jurkat-NFAT luc安定トランスフェクトレポーター細胞を得た。CD20+標的細胞、CD20×CD3抗体及びJurkat-NFAT-lucレポーター細胞をコインキュベーターし、CD20×CD3抗体が標的細胞に結合した後、他端は、Jurkat細胞表面CD3受容体に結合し、CD3胞内シグナルモチーフの凝集を引き起こし、活性化シグナルがNFAT経路を通じて核内に伝達され、最終にレポーター遺伝子ルシフェラーゼの発現アップレギュレートを招致する。それぞれ対数増殖期にあるJurkat-NFAT-lucレポーター細胞及びRaji細胞を取り、1000rpmで10分間遠心分離し、上清を捨て、細胞を2×10細胞/mlに再懸濁した。50μL/ウェルでRaji細胞懸濁液を96ウェルプレートに添加し、300gで5分間遠心分離し、上清を捨て、Jurkat-NFAT-luc細胞懸濁液50μL/ウェル及び勾配希釈抗体(初期濃度20μg/mlから10倍希釈で10勾配である)50μLを添加し、5%CO、37℃で6時間培養した。培養終了後、ONE-Glo Luciferase Assay System(Promega)取扱説明書に従い、操作し、検出用試薬を100μL/ウェル添加し、室温で3分間放置し、蛍光シグナル(Biotek Synergy HT)を検出した。
図10は、Raji細胞とコインキュベーターした時、各群のCD20×CD3抗体がJurkat細胞のNFATシグナル経路を活性化することができるが、標的細胞を存在しない場合、CD20×CD3抗体がJurkat細胞のNFATシグナル経路を活性化しないことを示した。
【0195】
実施例5:異なるタイプの軽鎖が形成されたCD20×CD3κλ二重特異的抗体の構築
ヒト化CD3アーム(λ軽鎖及び対重鎖)及びヒト化CD20抗原アーム(κ軽鎖及び対重鎖)から天然IgG構造を有する新規なCD20×CD3κλ二重特異的抗体を構築した。自由に組み合わせた場合、κ軽鎖やλ軽鎖は、通常、相同重鎖とペアリングする傾向があるから、CD3アーム及びCD20抗原アームのネイティブ配列を保持するCD20×CD3κλ001を構築し、同時に、生じる可能性があるミスマッチをさらに低減するために、κ及びλ軽鎖が相同重鎖とペアリングする上、安定したFvの電荷変異体(Tan et al.,1998)、或いは、C1/Cκの間に相補的な電荷対Glu123Lys/Gln124Lys及びLys152Glu/Lys218Gluを導入し、合計5種類の下記のCD20×CD3κλ二重特異的抗体を設計・構築した。
【0196】
(1)CD20×CD3κλ001:CD3アーム及びCD20抗原アームのネイティブ配列を保持した;
(2)CD20×CD3κλ002:CD20抗原アーム及びCD3アームに同時に電荷変異体を導入した(VκCD20:Gln38Lys;VHCD20:Gln39Glu;VλCD3:Gln40Glu;VHCD3:Gln39Lys);
(3)CD20×CD3κλ003:CD20×CD3κλ002に基づき、CH1/Cκの間に相補的な電荷対(Vκ-CkCD20:Gln38Lys\Glu123Lys\Gln124Lys;V-CCD20:Gln39Glu\Lys152Glu\Lys218Glu;VλCD3:Gln40Glu;VHCD3:Gln39Lys)を追加した;
(4)CD20×CD3κλ004:CD20抗原アームにFvを安定させるための電荷変異体(VκCD20:Gln38Lys;VHCD20:Gln39Glu)を導入した;
(5)CD20×CD3κλ005:CD3アームに電荷変異体(VλCD3:Gln40Glu;VHCD3:Gln39Lys)を導入した。
【0197】
異種二量体ペアリング(Atwellら、1997)を実現するために、CD20×CD3κλ二重特異的抗体のFc部分として、ヒトIgG4knob-into-hole構造を採用し、突然変異Ser228Pro、Leu235Glu及びPro329Alaにより、ヒンジ領域の安定を維持し、Fcγ受容体とC1qとの相互作用を低下した。図11は、新規なCD20×CD3κλ二重特異的抗体を示す。
【0198】
CD20×CD3κλ二重特異的抗体の配列を表6に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【0199】
CD20×CD3κλ二重特異的抗体の発現及び精製
対応する抗体フラグメントをコードするプラスミドを、κ軽鎖:λ軽鎖:重鎖1:重鎖2=2:2:1:1の比率で混合し、PEI3mg/mLと混合した後、CHO-S細胞にコトランスフェクトし、CD CHO AGT培地(Gibco#12490-001)500mLに37℃、5%CO、150rpmで培養し、それぞれ一過的にトランスフェクトしてから、第2日目、第4日目及び第6日目に4%CHO Feed C+フィード(Gibco #A25031-05)を添加した。細胞活率が85%程度に低下した時、発酵液を収穫し、ろ過した後、Protein Aアフィニティクロマトグラフィーで精製した。濃縮しPBSに移行し、吸光度(Nanodrop)を測定し、理論的な消光係数を利用してタンパク質濃度を計算した。
【0200】
SEC-HPLC及びキャピラリー電気泳動検出において、CD20×CD3 κλ二重特異的抗体は、モノマー純度が90%に近く、若しくは90%超え(表7)、κλ軽鎖の比率が1:1に近い(図12)ことを示す。
【表10】
【0201】
Capto S ImpActイオン交換クロマトグラフィーで、CD20×CD3κλ二重特異的抗体をさらに精製し、勾配溶出し、溶出ピークを合併し、SEC-HPLCモノマー含有量が99%を超えると示す(図13)。CD20×CD3 κλ002及びCD20×CD3κλ003の精製試料において、軽鎖ミスマッチの比率は、極めて低く(<1%)、CD3相同二量体又はCD20相同二量体を検出しなかった(図14)。
【0202】
実施例6:CD20×CD3κλ二重特異的抗体の結合活性
各々CD20過剰発現の安定トランスフェクト細胞又はCD20+腫瘍細胞との結合を検出することで、二重特異的抗体CD20抗原アームのアフィニティーを決定し、CD3組換え抗原、Jurkat細胞又は分離された新鮮な末梢血T細胞との結合を検出することで、二重特異的抗体CD3アームのアフィニティーを決定した。検出結果に示されているように、新規なCD20×CD3κλ二重特異的抗体と腫瘍細胞とのアフィニティーが、T細胞とのアフィニティーより約3~5倍高いと示す。陽性対照抗体bsAB1は、文献US20170174781に従い合成し、発現して調製した。
【0203】
1.CD20×CD3κλ二重特異的抗体とヒト及びサルCD20安定トランスフェクト細胞との結合
対数増殖期にある実施例1で調製されたCHO-ヒトCD20及びCHO-サルCD20安定トランスフェクト細胞を取り、4%ウシ血清(Hyclone,SH30626.06)で細胞を5×10個細胞/mlに調節し、細胞懸濁液100μl/ウェルをU型96ウェルプレートに添加し、300gで5分間遠心分離し、上清を捨て、各ウェルに勾配希釈抗体(初期濃度1800nMから3倍希釈で12個の勾配である)100μLを添加し、4℃で60分間インキュベーターした。二次抗体としてAlexa Fluro647で標識されたヤギ抗ヒトIgG Fc(1:300希釈)50μL/ウェルを添加し、氷上で20分間インキュベーターし、1回洗浄した後、PI溶液(1:300)50μL/ウェルを添加し、5分間インキュベーターし、フローサイトメトリーにより検出した。
【0204】
図15及び表8に示されているように、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、高アフィニティーで細胞CD20受容体に結合し、ヒト及びサルCD20安定トランスフェクト細胞とのアフィニティーが同程度であった。
【表11】
【0205】
2.CD20×CD3κλ二重特異的抗体とヒトCD20腫瘍細胞との結合
対数増殖期にあるSU-DHL-4、Raji及びNALM-6細胞を取り、マウスIgG(Jackson ImmunoResearch,115-005-03)200μg/mLを添加し、氷浴で30分間ブロックし、4%ウシ血清で細胞を5×10細胞/mLに調節し、U型96ウェルプレートの各ウェルに100μLを添加し、300gで5分間遠心分離し、上清を捨て、各ウェルに勾配希釈抗体(初期濃度1800nMから3倍希釈で12個の勾配である)を添加し、4℃で60分間インキュベーターした。洗浄して一次抗体を除去し、Alexa Fluro647で標識されたヤギ抗ヒトIgG Fc(1:300希釈)50μL/ウェルを添加し、氷上で20分間インキュベーターし、1回洗浄した後PI 50μL/ウェルを添加し、5分間インキュベーターし、フローサイトメトリーで検出した。
【0206】
検出結果を図16及び表9に示し、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、高アフィニティーでCD20+腫瘍細胞SU-DHL-4、Raji及びNALM-6に結合した。
【表12】
【0207】
3.CD20×CD3κλ二重特異的抗体とヒト及びサルCD3組換え抗原との結合
ヒト又はサルCD3γ/ε組換え抗原1μg/mLを4℃で一晩コーティングした。スキムミルクでブロックした後、各ウェルに抗体(初期濃度60μg/mLから3倍希釈で合計12個の勾配である)を100μL/ウェル添加し、室温で1時間インキュベーターした。二次抗体としてヤギ抗ヒトF′(ab)2(1:4000希釈)を100μL/ウェル添加し、室温で1時間インキュベーターした。TMBで10分間発色させ、濃硫酸を50μL添加して反応を終了させ、マイクロプレートリーダーでOD450nmを読み取り、Graphpadソフトウェアで3パラメータフィッティング曲線を作成した。
【0208】
検出結果を図17に示し、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、ヒト及びカニクイザルCD3εγ組換え抗原を認識し、アフィニティーが同程度であった。
【0209】
4.CD20×CD3κλ二重特異的抗体とCD3組換え抗原とのアフィニティー測定
アミノカップリングによりヒト又はサルCD3εγ組換え抗原10μg/mLをCM5チップ(GE healthcare)に結合させ、抗原結合量を約200RUに制御した。ベースラインが安定した後、勾配希釈抗体(10μg/mLから2倍希釈で7つの勾配である)を、結合時間350秒間、解離時間600秒間で30μL/minの流速でチップに流した。Biacore T200 evaluationソフトウェアで、1:1の結合モデルにより、フィッティングして動的定数を得た。アフィニティーの測定結果を表10に示す。
【表13】
【0210】
5.CD20×CD3κλ二重特異的抗体とJurkat細胞との結合
対数増殖期にあるJurkat細胞を取り、マウスIgG(Jackson ImmunoResearch,115-005-03)を200μg/mL加え、30分間氷浴した。4%ウシ血清で細胞を5×10細胞/mLに調節し、U型96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加し、300gで遠心分離し、上清を捨て、勾配希釈抗体(初期濃度1800nMから3倍希釈で12個の勾配である)を100μLウェル添加し、4℃で60分間インキュベーターした。二次抗体としてAlexa Fluro647で標識さえrたヤギ抗ヒトIgG Fc(1:300希釈)50μL/ウェルを添加し、氷上で20分間インキュベーターし、1回洗浄した後PI50μL/ウェルを添加し、5分間インキュベーターし、フローサイトメトリー(BD C6)により検出した。
【0211】
検出結果を図18及び表11に示し、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、中等アフィニティーでヒト白血病T細胞系Jurkat細胞に結合し、EC50が約71~120nMであり、CD20抗原アームとCD20受容体との結合力より約10倍低かった。
【表14】
【0212】
6.CD20×CD3κλ二重特異的抗体とヒト又はカニクイザル末梢血T細胞との結合
新鮮なヒト又はカニクイザルの末梢血を取り、Ficoll.Paque Plu(GE,17-1440-03)で分離してPBMCを得た。PBMCについて、4%ウシ血清(Hyclone,SH30626.06)で細胞を5×10个細胞/mLに調節し、U型96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加し、遠心分離し、上清を捨て、勾配希釈抗体(初期濃度1800nMから3倍希釈で11個の勾配である)を100μL/ウェル添加し、4℃で60分間インキュベーターした。二次抗体としてAlexa Fluro647で標識されたヤギ抗ヒトIgG Fc(1:300希釈)50μL/ウェルを添加し、20分間氷浴し、1回洗浄した後、PI 50μL/ウェルを添加し、5分間インキュベーターし、フローサイトメトリー(BD C6)により検出した。
【0213】
検出結果を図19及び表12に示し、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、ヒト又はカニクイザル末梢血におけるCD4T及びCD8T細胞を認識し、ヒトT細胞とのアフィニティーが約65~98nMであり、カニクイザルT細胞とのアフィニティーが約89~124nMであり、アフィニティーが同程度であり、いずれもCD20抗原アームのCD20受容体との結合力より約10倍低く、二重特異的抗体の腫瘍細胞への優先的募集に有利である。
【表15】
【0214】
実施例7: CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるTDCC
分離して得られた新鮮なPBMCを取り、各々対数増殖期にある標的細胞NALM-6、TMD-8及びToledo細胞と混合し、エフェクター細胞/標的細胞=8:1、勾配希釈抗体(抗体濃度66.7nMから10倍希釈で8つの勾配である)を50μL/ウェル添加し、5%CO、37℃で24時間培養した。培養終了後、上清50μLを新しい黒色ELISAプレートに移し、LDH検出基質50μL/ウェルを添加し、10分間後反応を終了させ、LDH放出を検出した。ウェル内の残留細胞を4%ウシ血清で2回洗浄した後、ヒトIgGを100μg/mL添加し、10分間インキュベーターし、そして、T細胞活性化検出用抗体(CD25-PE、CD4-APC、CD69-FITC及びCD8-APC)を添加し、氷上で20分間インキュベーターした。洗浄し、上清を捨て、PI60μL/ウェルを添加し、氷の上に置いて5分間インキュベーターし、フローサイトメトリーにより検出した。
【0215】
図20A、20Bは、各々CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるヒトBリンバ白血病細胞Nalm-6の殺傷及びT細胞の活性化を示す。図21A、21Bは、各々CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるTMD-8細胞の殺傷及びT細胞の活性化を示す。図22A、22Bは、各々CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるToledo細胞の殺傷及びT細胞の活性化を示す。異なるCD20発現レベルの腫瘍細胞Nalm-6、TMD-8及びToledoに対して、CD20×CD3κλ002及びCD20×CD3κλ003は、いずれも、T細胞による効果的な殺傷を媒介させ、殺傷活性は、対照抗体bsAB1に同程度又はわずかに強く、かつT細胞の活性化が後者よりも穏やかでした。
【0216】
実施例8:CD20×CD3κλ二重特異的抗体のT細胞活性化経路への活性化
対数増殖期にあるJurkat-NFAT-lucレポーター細胞及びCD20陽性標的細胞(SU-DHL-4、Raji及びNALM-6細胞)を取り、遠心分離し、上清を捨て、2×10个細胞/mlになるように再懸濁した。標的細胞50μl/ウェルを96ウェルプレートに接種し、300gで5分間遠心分離し、上清を捨て、Jurkat-NFAT-lucレポーター細胞50μl/ウェルを96ウェルプレートに接種し、勾配希釈されたCD20×CD3κλ二重特異的抗体又は対照抗体KLH×CD3(初期濃度20μg/mlから10倍希釈で10個の勾配である)50μl/ウェルを添加し、5%CO、37℃で6時間培養した。培養終了後、ONE-Glo Luciferase Assay Systemの取扱説明書に従い、検出用試薬100μL/ウェルを添加し、室温で3分間放置し、マイクロプレートリーダー(Biotek Synergy HT)で検出した。
【0217】
検出結果を図23及び表13に示し、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、異なるCD20発現レベルの腫瘍細胞を標的細胞とする場合、いずれもT細胞のNFATシグナル経路を活性化させることができる。
【表16】
【0218】
実施例9:CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるサイトカインの放出の活性化
B-NHL腫瘍細胞Raji又は自己B細胞の殺傷を媒介する過程において、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、T細胞を活性化させ、PBMCにおける関連サイトカインの放出を刺激することができる。各ウェルに新鮮なPBMC2×10個を添加し、Raji細胞1×10個及び勾配希釈抗体(初期濃度66.7nMから10倍希釈で8つの勾配である)50μLと混合し、5%CO、37℃で24時間培養した。微量試料の複数指標サイトメトリックビーズアレイ(cytometric bead array,CBA)により、培養上清におけるIL-2、IL-6、IFN-γ及びTNF-α等の含有量を測定した。ウェル内の上清を捨て、ウェル内の残留細胞を4%ウシ血清で2回洗浄した後、ヒトIgG100μg/mLを添加して10分間ブロックし、そして、T細胞を添加して検出用抗体(CD25-PE、CD4-APC、CD69-FITC及びCD8-APC)を活性化させ、氷上で20分間インキュベーターした。洗浄し、上清を捨て、PI60μL/ウェルを添加し、5分間インキュベーターし、フローサイトメトリー(BD FACS celesta)によりCD4+及びCD8+T細胞の活性化マーカーを検出した。自己B細胞の殺傷試験手順は、上記と同様であるが、インキュベートする時、Raji細胞を添加しなかった。
【0219】
図24は、CD20×CD3κλ二重特異的抗体によるRaji細胞のTDCC活性及びこの過程におけるT細胞の活性化を示した。図25は、CD20×CD3κλ二重特異的抗体による自己B細胞の除去及びこの過程におけるT細胞の活性化を示す。図26は、Raji細胞に対する殺傷又は自己B細胞の除去過程における関連サイトカインの放出を示す。CD20×CD3κλ二重特異的抗体がCD20高発現のRaji細胞及びPBMCとコインキュベートする時、或は、PBMCのみとインキュベートする時、それによるRaji細胞又は自己B細胞への殺傷活性は、対照抗体bsAB1と同程度又はわずか強いが、TDCC過程におけるT細胞に対する活性化作用が比較的に穏やかであり、マーカーCD69及びCD25の発現アップレギュレートは、対照抗体に比べて、著しく低く、或いは、高くなく、同様に、刺激されたサイトカインIL-6、INF-γ、IL-2及びTNF-αの分泌量は、後者に比べて、著しく低く、或いは、高くないが、IL-6及びINF-γ等の大量放出は、重度のサイトカインストーム症候群を引き起こす可能性がある。
【0220】
実施例10:CD20×CD3κλ二重特異的抗体とFcγ受容体との結合
アミノカップリングにより、His-Tag抗体50μg/mlをCM5チップに結合させ、各々Hisタグ付きFcγRI、FcγRIIAH131及びFcγRIIIAV158組換えタンパク質(Sino Biological、#10256-H08H/10374-H08H1/10389-H08H1)を捕捉し、捕捉時間は、40秒間であり、流速は、10μL/minであり、ベースラインが安定化した後、勾配希釈抗体(初期濃度37.5μg/mLから2倍希釈)を30μL/minの流速でチップを流し、結合時間は、120秒間であり、解離時間は、200秒間であり、Biacore evaluationソフトウェアでフィッティングしてアフィニティー定数を得た。
【0221】
表14に示されるように、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、FcγRI、FcγRIIAH131及びFcγRIIIAV158に結合せず、野生型IgG4対照抗体は、比較的に強いアフィニティーでFcγRIに結合し、FcγRIIAH131にわずか弱く結合した。
【表17】
【0222】
実施例11:マウス皮下Raji移植腫瘍モデルの免疫再構築
6~8周齢B-NGDメスマウス(Biocytogen Pharmaceuticals Co., Ltd.)を選択し、Raji細胞3×10を皮下接種し、腫瘍が60mmに達すると、ランダムに群分けし、各々投与群3.0mg/kg、投与群0.6mg/kg、投与群0.12mg/kg及び陰性対照群KLH×CD3 3mg/kgとした。マウス1匹あたりPBMC細胞1×10個を尾静脈に注射し、3日後1回目のマウス投与を始め、投与間隔は、5日1回であり、合計3回投与した。マウスの腫瘍体積及びマウスの体重をモニターし、実験終了後、首を切断してマウスを処刑し、腫瘍を取り出して秤量し、その結果を記録した。
結果を図27に示し、CD20×CD3κλ二重特異性抗体は、インビボでの薬効が用量依存性を示し、中用量及び高用量での腫瘍抑制率が各々82%、89%である。腫瘍担持マウスは、上記用量に対して良好の耐性を示し、体重減少などの副作用を示しない。図28は、低用量群(0.12mg/kg)においてCD20×CD3κλ002が4匹のマウスでの腫瘍抑制を達成したことを示す(n=5)。
【0223】
実施例12:免疫不全マウス皮下RajiとヒトPBMCとの混合腫瘍接種モデル
6~8週齢のB-NGDメスマウス(Biocytogen Pharmaceuticals Co., Ltd.)を選択し、Raji(3×10個)及びヒトPBMC(5×10個)を混合してマウスの皮下に接種し、腫瘍体積が60~100mmに達すると、ランダムに群分けした。各々投与群3.0mg/mL、投与群0.6mg/mL、投与群0.12mg/mL及び陰性対照群KLH×CD3 3 mg/kgとした。投与間隔は、5日ごとに1回、合計2回で投与した。マウスの腫瘍体積及びマウスの体重をモニターし、実験終了後、首を切断してマウスを処刑し、腫瘍を取り出して秤量し、その結果を記録した。
【0224】
結果を図29に示し、CD20×CD3κλ二重特異的抗体は、インビボでの薬効が用量依存性を示し、低用量、中用量及び高用量での腫瘍抑制率が各々65%、98%、162%であり、高用量群、中用量群では腫瘍が完全に抑制又は消失する。
【0225】
実施例13:カニクイザルでのCD20×CD3κλ二重特異的抗体の薬効
8匹のカニクイザルを4用量群に分配し、各用量群は、2匹のサルからなる(1匹:メス、1匹:オス)。各投与群に受けた投与量は、各々CD20×CD3κλ002二重特異性抗体0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg(週に1回、3週間、合計4回投与する)及び1mg/kg(単回投与)であり、投与レジメンを表15に示す。投与期間及び回復期間に、各群におけるすべてのサルは、一般的状況が良好であり、毒性反応が見られず、死亡又は瀕死が見られなかった。各投与量群では、体温に明らかな異常変化が見られず、II誘導心電図波形が正常で、その心拍数、R-R間期、P-R間期、QT間期、QRS時限、収縮期圧、拡張期圧等の指標に明らかな異常が見られなかった。投与後の異なる時点で、フローサイトメトリーにより末梢血におけるB細胞及びT細胞の集団の数の変化を分析し、B細胞は、細胞表面標識物CD20で(CD20+細胞)鑑定され、T細胞はCD3で(CD3+細胞)鑑定される。投与してから8時間、末梢血におけるBは、急速に除去され、24時間後、検出下限を下回った(図30)。
【表18】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【配列表】
2023539524000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞表面に結合するCD20の第1の結合ドメイン及びT細胞表面に結合するCD3的第2の結合ドメインを含む二重特異的抗体又はその抗原結合部分であって、前記第1の結合ドメインは、第1の軽鎖及び第1の重鎖を含み、前記第1の結合ドメインは、下記の軽鎖及び重鎖から選ばれるCDRの組み合わせを含む、二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
(1)それぞれSEQ ID NO:56、57、58を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:66、67、68を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(2)それぞれSEQ ID NO:56、57、58を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:66、67、71的第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(3)それぞれSEQ ID NO:61、62、63を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:76、77、78を含む第1の重鎖CDR1、CDR及びCDR3配列、
(4)それぞれSEQ ID NO:61、62、63を含む第1の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び
それぞれSEQ ID NO:76、77、85を含む第1の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
【請求項2】
前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54、59又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:64、69、72、74、79、81、83又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:64又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:69又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:54又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:72又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:74又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:79又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:81又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:59又はその任意の変異体である第1の軽鎖可変領域と、アミノ酸配列SEQ ID NO:83又はその任意の変異体である第1の重鎖可変領域を含む、
請求項1に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記第2の結合ドメインは、第2の軽鎖及び第2の重鎖を含み,前記第2の結合ドメインは、下記の軽鎖及び重鎖から選ばれるCDRの組み合わせを含む、請求項1または又は2に記載の二重特異的抗体または又はその抗原結合部分。
(1)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(2)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(3)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(4)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(5)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(6)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(7)それぞれSEQ ID NO:7、8、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(8)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(9)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(10)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(11)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(12)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(13)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(14)それぞれSEQ ID NO:14、15、9を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(15)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(16)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(17)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(18)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(19)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(20)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(21)それぞれSEQ ID NO:7、8、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(22)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:26、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(23)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(24)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、34を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(25)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、37を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(26)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、40を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(27)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:31、27、43を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、
(28)それぞれSEQ ID NO:7、20、21を含む第2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び、それぞれSEQ ID NO:46、47、28を含む第2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列。
【請求項4】
前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5、10、12、16、18、22又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:24、29、32、35、38、41、44、48、50、52又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:48又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:10又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:12又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:24又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:48又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:18又はその任意の変異体である第2の軽鎖可変領域、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:50又はその任意の変異体である第2の重鎖可変領域を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
前記第1の軽鎖は、SEQ ID NO:88、96、100、102、110、118又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖を含み、前記第1の重鎖は、SEQ ID NO:86、94、98、104、112、120又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
前記第2の軽鎖は、SEQ ID NO:92、106、114又はそれらの任意の変異体から選ばれる軽鎖を含み、前記第2の重鎖は、SEQ ID NO:90、108、116又はそれらの任意の変異体から選ばれる重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:88又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:86又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:96又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:94又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:100又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:98又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第1の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:118又はその任意の変異体である第1の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:120又はその任意の変異体である第1の重鎖を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
好ましくは、前記第2の結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:88又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:86又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:96又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:94又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:100又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:98又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:92又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:90又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:118又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:120又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:110又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:112又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:106又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:108又はその任意の変異体である第2の重鎖を含み、
より好ましくは、前記二重特異的抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:102又はその任意の変異体である第1の軽鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:104又はその任意の変異体である第1の重鎖、アミノ酸配列SEQ ID NO:114又はその任意の変異体である第2の軽鎖、及び、アミノ酸配列SEQ ID NO:116又はその任意の変異体である第2の重鎖を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸であって、
好ましくは、前記第1の軽鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:55、60又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第1の重鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:65、70、73、75、80、82、84又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の軽鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:6、11、13、17、19、23又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の重鎖可変領域のコード核酸は、SEQ ID NO:25、30、33、36、39、42、45、49、51、53又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第1の軽鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:89、97、101、103、111、119又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第1の重鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:87、95、99、105、113、121又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の軽鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:93、107、115又はそれらの任意の変異体から選ばれ、
好ましくは、前記第2の重鎖のコード核酸は、SEQ ID NO:91、109、117又はそれらの任意の変異体から選ばれる、核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸又は請求項8に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター及び/又は請求項9に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項11】
治療部分に共有結合する請求項1~6のいずれか1項に記載の二重特異的抗体又はその抗原結合部分を含む、抗体-薬物コンジュゲートであって、
好ましくは、前記治療部分は、細胞毒性部分、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激剤、分解ペプチド又は放射性同位体から選ばれるものであり、
好ましくは、前記細胞毒性部分は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン(Cephaeline)、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、マイタンシン又はその類似体若しくは誘導体などのチューブリン阻害剤、モノメチルアウリスタチンE若しくはF又はその類似体若しくは誘導体などの有糸分裂阻害剤、ドラスタチン10若しくは15又はその類似体、イリノテカン又はその類似体、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD(actinomycin D)、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン(Puromycin)、カリケアミシン又はその類似体若しくは誘導体、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン又はクラドリビンなどの代謝拮抗剤、メクロレタミン、チオプリン(thiopurine)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンCなどのアルキル化剤、シスプラチン又はカルボプラチン等の白金系誘導体、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065)又はその類似体若しくは誘導体、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミスラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリマイシン(primycin)、アントラマイシン(AMC)などの抗生物質、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)、ジフテリア毒素及びジフテリアA鎖及びその活性フラグメント及びハイブリッド分子などの関連分子、リシンA又は脱グリコシル化リシンA鎖毒素、コレラ毒素などのリシン、SLT I、SLT II、SLT IIVなどのシガ様毒素、LT毒素、C3毒素、シガ毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ボウマン・バーク大豆プロテアーゼ阻害剤、シュードモナス外毒素、アロリン、サポリン(Saporin)、モデシン(modeccin)、ゲラニン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、PAPI、PAPII及びPAP-Sなどのアメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン(crotin)、サポナリアコン(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン及びエノマイシン毒素、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、ブドウ球菌エンドトキシンA、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、シュードモナスエンドトキシンから選ばれるものであり、
好ましくは、前記サイトカインは、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα、IFN3、IFNγ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム及びTNFαから選ばれるものであり、
好ましくは、前記放射性同位体は、H、14C、15N、35S、67Cu、90Y、99Tc、125I、131I、186Re、188Re、211At、212Bi、212Pb、213Bi、225Ac及び227Thから選ばれるものである、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の特異的抗体又はその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の細胞、請求項10に記載の組成物及び/又は請求項11に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、キット。
【請求項13】
CD20関連疾患の診断、治療又は予防において使用されるための、請求項1~6のいずれか1項に記載の特異的抗体又はその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の細胞、請求項10に記載の組成物及び/又は請求項11に記載の抗体-薬物コンジュゲートあって、
好ましくは、CD20関連疾患は、B細胞疾患、例えば、B細胞増殖性疾患、特にCD20陽性B細胞疾患を含み、
好ましくは、前記疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)から選ばれる、請求項1~6のいずれか1項に記載の特異的抗体又はその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の細胞、請求項10に記載の組成物及び/又は請求項11に記載の抗体-薬物コンジュゲート
【国際調査報告】