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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】抗体療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230907BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230907BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/02
A61K39/02
A61K39/12
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514116
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021074314
(87)【国際公開番号】W WO2022049220
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】20194018.6
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ベノニソン,フライン
(72)【発明者】
【氏名】ミデルバーグ,ジム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・ホール,ソーボールド
(72)【発明者】
【氏名】アルティンタス,イシル
(72)【発明者】
【氏名】ケンパー,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】シューマン,ジャニーン
(72)【発明者】
【氏名】ロイド,ケイティ・アン
(72)【発明者】
【氏名】オフチンニコフ,ヴィタリス
(72)【発明者】
【氏名】ゾム,ギスベルトゥス
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085AA14
4C085BA07
4C085BA51
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC07
4C085CC08
4C085CC23
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF11
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、腫瘍学の分野における併用療法、特に、ワクチンとCD3および腫瘍細胞上の標的抗原に結合する結合剤との併用療法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の成長を予防もしくは低減するための、またはそれを必要とする対象における癌の治療のための方法であって、
i)ヒトCD3などのCD3に結合する抗原結合領域、および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤と、
ii)少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、
を前記対象に提供することを含む、方法。
【請求項2】
前記ワクチン抗原が、非腫瘍特異的ワクチン抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫原性組成物が、予防ワクチンまたは治療ワクチンなどのワクチンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫原性組成物が、感染症、例えば、ウイルスまたは細菌感染に対するワクチンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記感染症または感染が、コレラ(V.コレラ(V.cholerae)、例えば、WC/rBS、ジフテリア(ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae))、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型(Hib)、A型肝炎、B型肝炎、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス、脳炎、麻疹、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)(リンパ球性脈絡髄膜炎マンマレナウイルス(lymphocytic choriomeningitis mammarenavirus、LCMV))、髄膜炎疾患(髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))、流行性耳下腺炎、百日咳/咳嗽(百日咳菌(Bordetella pertussis))、肺炎球菌疾患/感染症(肺炎連鎖球菌(streptococcus pneumoniae))、灰白髄炎(ポリオ)、狂犬病、ロタウイルス感染症、風疹/ドイツ麻疹、破傷風(破傷風菌(Clostridium tetani))、天然痘、腸チフス(チフス菌(Salmonella typhi))、水痘/水疱瘡、黄熱病、結核、プラーク(ペスト菌(Yersinia pestis))、バットリセウイルス、日本脳炎、Q熱(コクシエラ菌(Coxiella burnetiid))、水痘帯状疱疹(水疱瘡)、炭疽(炭疽菌(Bacillus anthracis))からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記感染が、コロナウイルス感染、例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記感染症が、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
前記感染が、インフルエンザ感染である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記感染症が、インフルエンザである、請求項4または8に記載の方法。
【請求項10】
前記感染が、リンパ球性脈絡髄膜炎マンマレナウイルス(LCMV)感染である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記感染症が、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)である、請求項4または10に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫原性組成物が、
弱毒化生ワクチンなどの生ワクチン、
不活化ワクチン、
スプリットウイルスワクチンなどのスプリットワクチン、
ウイルス様粒子に基づくワクチン、
サブユニットワクチン、タンパク質ベースのワクチン、ペプチドベースのワクチン、多糖ベースのワクチン、またはコンジュゲートワクチンなどの部分ワクチン、
組換えワクチン;および
ウイルスベクターベースのワクチンなどの核酸ベースのワクチン、
からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫原性組成物が、生ワクチン、例えば弱毒化生ワクチン、例えば、
弱毒化生ウイルスワクチン;例えば、弱毒化生麻疹ワクチン、弱毒化生ムンプスワクチン、弱毒化生風疹ワクチン、弱毒化生インフルエンザワクチン、弱毒化生水痘/水痘帯状疱疹ワクチン、弱毒化生ワクシニア(天然痘)ワクチン、弱毒化生経口ポリオワクチン(OPV)(Sabin)、弱毒化生ロタウイルスワクチンまたは弱毒化生黄熱病ワクチン;
または、例えば、
弱毒化生細菌ワクチン;例えば、BCGワクチン、チフス菌(Ty21)に対する弱毒化生ワクチン(経口腸チフスワクチンもしくは流行性チフスワクチン)、弱毒化生コレラワクチン、
である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫原性組成物が、不活化ワクチン;例えば、
不活化ウイルスワクチン;例えば、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)(ソークワクチン)、不活化インフルエンザワクチン、不活化狂犬病ワクチン、不活化日本脳炎ワクチンまたは不活化A型肝炎ワクチン;
または、例えば、
不活化細菌ワクチン、例えば不活化腸チフスワクチン、不活化コレラワクチン、不活化ペストワクチン、不活化Q熱ワクチン、不活化炭疽ワクチンもしくは不活化百日咳ワクチン、
である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記部分ワクチンが、
トキシドワクチン、例えば破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドを含むワクチン;
サブユニットワクチン;および
サブビリオンワクチン、
からなる群から選択されるタンパク質ベースのワクチンである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記部分ワクチンが、多糖ベースのワクチン;例えば、多糖ベースの髄膜炎菌性疾患(髄膜炎菌(A,C,Y.W135))ワクチン、多糖ベースのチフスワクチンまたは多糖ベースの肺炎球菌性疾患(肺炎連鎖球菌ワクチンである、請求項12または15に記載の方法。
【請求項17】
前記部分ワクチンが、ポリペプチドに連結された多糖を含むコンジュゲートワクチン、例えばコンジュゲート型血友病インフルエンザb型(Hib)ワクチン、コンジュゲート型肺炎連鎖球菌ワクチン、コンジュゲート型髄膜炎ワクチンである、請求項12、15および16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫原性組成物が、組換えワクチンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫原性組成物が、BCG;コレラ:不活化経口;4価デング熱(生、弱毒化);ジフテリア-破傷風;ジフテリア破傷風(抗原含有量の減少);ジフテリア-破傷風-百日咳(無細胞)(DTaP/Tdap);ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳菌およびインフルエンザ菌b型(DTaP-Hib);ジフテリア-破傷風-百日咳(無細胞)-B型肝炎-インフルエンザ菌b型-ポリオ(不活化);ジフテリア-破傷風-百日咳(全細胞)(DTP);ジフテリア-破傷風-百日咳菌(全細胞)-インフルエンザ菌b型(DTP-Hib);ジフテリア-破傷風-百日咳(全細胞)-B型肝炎;ジフテリア-破傷風-百日咳(全細胞)-B型肝炎インフルエンザ菌b型;エボラザイール(rVSVΔG-ZEBOV-GP、弱毒化生);インフルエンザ菌b型(Hib);A型肝炎(ヒト二倍体細胞)、不活化(成人);A型肝炎(ヒト二倍体細胞)、不活化(小児);B型肝炎、B型肝炎(小児);ヒトパピローマウイルス(二価);ヒトパピローマウイルス(九価);ヒトパピローマウイルス(四価);インフルエンザ、パンデミックH1N1;インフルエンザ、季節性(四価);インフルエンザ、季節性(三価);日本脳炎ワクチン(不活化);日本脳炎ワクチン(生、弱毒化);はしか;麻疹および風疹;麻疹、流行性耳下腺炎および風疹(MMR);麻疹、流行性耳下腺炎、風疹および水痘(MMRV)麻疹、流行性耳下腺炎および風疹(MMR);髄膜炎菌Aコンジュゲート10μg;髄膜炎菌Aコンジュゲート5μg;髄膜炎菌ACYW-135(コンジュゲートワクチン);肺炎球菌(コンジュゲート);ポリオワクチン-不活化(IPV);ポリオワクチン-経口(OPV)二価1および3型;ポリオワクチン-経口(OPV)一価1型;ポリオワクチン-経口(OPV)三価;狂犬病;ロタウイルス;ロタウイルス(生、弱毒化);風疹;破傷風トキソイド;腸チフス(コンジュゲート);腸チフス(多糖);水痘;黄熱病、カルメット・ゲリン桿菌(BCG)からなる群から選択されるワクチンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫原性組成物が、COVID-19ワクチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記COVID-19ワクチンが、BNT162b2/COMIRNATY(Tozinameran)(Pfizer BioNTech)、CVnCoV/CV07050101(Zorecimeran)(CureVac)、AZD1222バキスゼブリア(AstraZeneca)、mRNA-1273(Moderna)、SARS-CoV-2ワクチン(Vero Cell)、Inactivated(lnCoV)(Sinopharm/ Beijing Institute of Biological Products Co.,Ltd.(BIBP)、CoV2 preS d(商標)-AS03ワクチン(Sanofi)およびCovishield(ChAdOx1_nCoV-19)(Serum Institute of India Pvt.Ltd)、Sputnik V(rAd26およびrAd5)(Acellena)、Sputnik Light(rAd26)(Acellena)、Ad26.COV2.S(JNJ78436735)(Janssen)、CoronaVav(Sinovac)、BBIBP-CorV(Beijing Institute of Biological Products;China National Pharmaceutical Group(Sinopharm))、EpiVacCorona(Federal Budgetary Research Institution State Research Center of Virology and Biotechnology)、Convidicea(CanSino Biologics)およびMVC-COV1901(Medigen Vaccine Biologics Corp.;Dynavax)からなる群から選択される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫原性組成物が、インフルエンザワクチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫原性組成物が、インフルエンザパンデミック(H1N1)、インフルエンザ季節性(三価)、およびインフルエンザ季節性(四価)からなる群から選択されるタイプのインフルエンザワクチンである、請求項19または22に記載の方法。
【請求項24】
前記感染症が、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ワクチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫原性組成物が、小児ワクチンまたは子どもワクチンである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫原性組成物が、子どもブースターワクチンである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫原性組成物が、予防的または治療的癌ワクチンなどの癌ワクチンである、請求項1または3に記載の方法。
【請求項28】
前記ワクチン抗原が、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原である、請求項1、3、および27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫原性組成物が、前記腫瘍または癌によって発現されるワクチン抗原を含む、請求項1、3、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記標的抗原およびワクチン抗原の両方が、前記腫瘍または癌によって発現される、請求項1、3および27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記結合角(binding angent)および前記免疫原性組成物が、同じ腫瘍または癌を指向するかまたは標的とする、請求項1、3および27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ワクチン抗原および前記標的抗原が、同じであるか、または前記ワクチン抗原が、前記標的抗原の一部、部分配列もしくは変異体である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫原性組成物が、Her2/neu、サバイビンまたはMuc-1などの前記腫瘍によって過剰発現される抗原;癌ネオ抗原、例えばp53ネオ抗原;MAGE-A3、MAGE-A2、MAGE-A4、PRAME、CT83、SSX2またはNY-ESO-1などの癌精巣抗原;Mart1、PSAまたはPAPなどの分化抗原およびHPV抗原などのウイルス関連抗原からなる群から選択されるワクチン抗原を含む、請求項1、3および27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫原性組成物が、個別化癌ワクチンであり、前記ワクチン抗原が、前記対象の腫瘍に特異的なネオ抗原である、請求項1、3および27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ワクチン抗原が、T細胞エピトープを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫原性組成物が、インビボおよび/またはインビトロで細胞傷害性T細胞応答を誘発することができる、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ワクチンが、前記腫瘍または癌のT細胞活性化および/またはT細胞浸潤を含むT細胞応答を誘発することができる、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記免疫原性組成物が、i)前記腫瘍もしくは癌のT細胞浸潤および腫瘍浸潤T細胞の活性化を含むT細胞応答を誘発すること、かつ/またはii)腫瘍における免疫細胞の浸潤および/もしくは拡大、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞および/もしくは樹状細胞(DC)の浸潤および/もしくは拡大を誘発すること、を行うことができる、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
T細胞浸潤および/または活性化が、前記結合剤の前記第2の結合領域が結合する抗原を発現する腫瘍を有するマウスにおいて、前記マウスを腫瘍特異的T細胞の移入に供し、次いで前記免疫原性組成物を皮下注射し、続いて前記結合剤を注射する手順を使用して決定される、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
浸潤および/または活性化が、
i)前記結合剤が結合することができる抗原を発現し、第1の生物発光を生じさせることができる第1の酸化酵素および第2の生物発光を生じさせることができる第2の酸化酵素を構成的に発現するT細胞を提供するステップであって、前記第2の酸化酵素の発現が、T細胞活性化によって、例えば活性化T細胞核因子(NFAT)によって誘導される、ステップと、
ii)AlbinoC57BL/6マウスなどの、前記結合剤の前記腫瘍標的化結合領域が結合する抗原を発現する腫瘍を有するマウスに、i)で定義される前記T細胞を尾静脈内注射によって注射するステップと、
iii)ii)における前記T細胞の注射の1日後および8日後に、尾部基部での皮下注射によって2用量の前記免疫原性組成物をマウスに投与するステップと、
iv)ii)における前記T細胞の注射の10日後および14日後に、静脈内注射または注入によって2用量の前記結合剤を前記マウスに投与するステップと、
v)前記酸化酵素のそれぞれの基質を前記マウスに注射し、前記第1および第2の生物発光を測定するステップと、
を含む手順において決定される、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
T細胞浸潤および/または活性化が、本明細書の実施例5に本質的に記載の手順を使用して、または実施例5に記載の手順を使用して決定される、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が、前記対象における既存のT細胞免疫、例えば、以前のワクチン接種または感染からの既存のT細胞免疫を決定することを含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
既存のT細胞免疫が、末梢T細胞活性化の測定によって決定される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、子どもワクチン接種プログラムなどのワクチン接種プログラムへの前記対象の以前の参加を決定することを含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫原性組成物が、前記対象が以前に有したことがある、および/またはT細胞免疫応答を発生させたことがある、感染または感染症、例えば、請求項のいずれか一項に定義される感染または感染症または感染に対するワクチンである、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、アジュバントの投与をさらに含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記アジュバントが、Th1/Th2アジュバント、Th1アジュバントまたはTh2アジュバント、好ましくはTh1アジュバントである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記アジュバントと共に投与された場合の前記免疫原性組成物が、Th1/Th2型免疫応答、Th1型免疫応答またはTh2型免疫応答、好ましくはTh1型免疫応答を誘発することができる、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫原性組成物が、アジュバントを含む、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
アジュバントを含む免疫原性組成物が、NK細胞応答および/またはTh1/Th2型免疫応答、Th1型免疫応答、もしくはTh2型免疫応答、好ましくはTh1型免疫応答を誘発することができる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記アジュバントが、アルミニウム塩、例えばミョウバン(XAl(SO・12HO(式中、Xは、KまたはNH などの一価カチオンである))を含む、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記アジュバントが、水中油型エマルジョンなどのエマルジョン系アジュバントである、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記アジュバントが、
a)スクアレン、ポリソルベート80およびソルビタントリオレエートを含むアジュバント;例えばMF59、
b)スクアレン、ポリソルベート80およびα-トコフェロールを含むアジュバント;例えばAS03、
c)スクアレン、ポリオキシエチレン、セトステアリルエーテル、マンニトールおよびソルビタンオレエートを含むアジュバント;例えば、AF03、
d)3-O-デサシル-4’-モノホスホリルリピドA(MPL)、キラヤサポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)、フラクション21(QS-21)およびリポソームを含むアジュバント;例えばAS01;ならびに
e)3-O-デサシル-4’-モノホスホリルリピドA(MPL)および水酸化アルミニウムを含むアジュバント;例えば、AS04、
からなる群から選択される、請求項46~50および52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記アジュバントが、Toll様受容体7(TLR7)アゴニスト、例えば、イミキモド(Aldara)、レシキモドおよびガルディキモドからなる群から選択されるTLR7アゴニストを含む、請求項46または49に記載の方法。
【請求項55】
前記アジュバントが、
i)Toll様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、髄膜炎菌ポリンB(porB)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)およびチルソトリモドからなる群から選択されるTLR9アゴニスト、
ii)Toll様受容体4(TLR4)アゴニスト、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)、グルコピラノシルリピドA(GLA)およびネオセプチン-3からなる群から選択されるTLR4アゴニスト、
iii)Toll様受容体5(TLR5)アゴニスト、例えばモビラン、エントリモドもしくは組換えフラジェリンFlicCからなる群から選択されるTLR5アゴニスト;ならびに/または
iv)Toll様受容体3(TLR3)アゴニスト、例えばPoly-ICおよびその誘導体からなる群から選択されるTLR3アゴニスト、
を含む、請求項46または49に記載の方法。
【請求項56】
前記アジュバントが、脂質ナノ粒子(LPN)などのナノ粒子、例えばアジュバントが組み込まれた脂質ナノ粒子を含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記免疫原性組成物または前記アジュバントが、サイトカインを含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記方法が、サイトカインと組み合わせて前記免疫原性組成物を投与することを含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記サイトカインが、IL2/アルデスロイキンなどのインターロイキン-2(IL2)受容体アゴニストまたはインターロイキン-15である、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記結合剤が、注射または注入などの非経口投与または全身投与によって、例えば静脈内注射または注入によって、前記対象に投与される、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記結合剤が、1つ以上の治療サイクルで前記対象に提供される、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記結合剤が、1週間に1回(1Q1W)、2週間に1回(1Q2W)、3週間に1回(1Q3W)または4週間に1回(1Q4W)投与される、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記免疫原性組成物が、局所効果を達成するために/皮膚へのクリームの塗布などによる局所投与によって前記対象に投与される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記免疫原性組成物が、全身効果を達成するために/全身投与によって、例えば経口投与、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射または経粘膜経路によって投与される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記アジュバントが、局所効果を達成するために/皮膚へのクリームの塗布などによる局所投与によって前記対象に投与される、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記アジュバントが、全身効果を達成するために/全身投与によって、例えば経口投与、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射または経粘膜経路によって投与される、請求項46~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
インターロイキン2受容体アゴニストなどの前記サイトカインが、注射または注入などの非経口投与または全身投与によって、例えば、静脈内注射または注入によって前記対象に投与される、請求項58~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記免疫原性組成物、ならびに、場合により、前記アジュバント、および/または前記サイトカイン、例えば前記インターロイキン2受容体アゴニストが、前記腫瘍の成長を減少させるために、および/または前記癌を治療するために提供される治療レジメンの一部として投与される、請求項1~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記免疫原性組成物および前記結合剤の投与が、養子T細胞療法と組み合わされる、請求項1~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
複数のT細胞を前記対象に投与することを含む、請求項1~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記免疫原性組成物が、前記結合剤の投与と同時にもしくはそれと同日に、前記結合剤の第1の用量の投与と同時にもしくはそれと同日に、および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの一部として前記対象に投与される、請求項1~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記免疫原性組成物の投与および前記結合剤の投与、例えば前記免疫原性組成物の投与、ならびに前記結合剤の第1の用量の投与および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの開始が、最大で2ヶ月、例えば最大で1ヶ月、最大で4週間、最大で3週間、最大で2週間、最大で1週間、最大で6日間、最大で5日間、最大で4日間、最大で3日間または最大で2日間の期間で区切られる、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記免疫原性組成物の投与および前記結合剤の投与、例えば前記免疫原性組成物の投与および前記結合剤の第1の用量の投与および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの開始が、2日~2ヶ月、例えば、2日~1ヶ月、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月、3日~1ヶ月、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月、4日~1ヶ月、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月、5日~1ヶ月、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月、例えば6日~1ヶ月、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月、1週間~1ヶ月、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月、3週間~1ヶ月または3~4週間の期間で区切られる、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記免疫原性組成物が、前記結合剤の投与前、前記結合剤の第1の投与量の投与前および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの前に前記対象に投与される、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記免疫原性組成物が、前記結合剤の投与の、前記結合剤の第1の投与量の投与の、および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの、2日前~2ヶ月前、例えば、前記結合剤の投与の、前記結合剤の第1の投与量の投与の、および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの、2日~1ヶ月、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月、3日~1ヶ月、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月、4日~1ヶ月、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月、5日~1ヶ月、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月、6日~1ヶ月、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月、1週間~1ヶ月、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月、3週間~1ヶ月、または例えば3~4週間前に前記対象に投与される、請求項1~71および74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記複数のT細胞が、前記対象に投与されるか、または前記養子T細胞療法が、前記結合剤の投与と同時もしくは同日に、前記結合剤の第1の用量の投与と同時もしくはそれと同日に、および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの一部として、前記対象に提供される、請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記複数のT細胞が、前記対象に投与されるか、または前記養子T細胞療法が、前記結合剤の投与前に、前記結合剤の第1の投与量の投与前に、および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの前に、前記対象に提供される、請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
i)前記免疫原性組成物の投与および前記複数のT細胞の投与、または前記養子T細胞療法、ならびに
ii)前記結合剤の投与、例えば、前記結合剤の第1の用量の投与および/または前記結合剤による第1の治療サイクルの開始、
が、2日間~2ヶ月、例えば、2日~1ヶ月、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月、3日~1ヶ月、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月、4日~1ヶ月、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月、5日~1ヶ月、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月、例えば6日~1ヶ月、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月、1週間~1ヶ月、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月、3週間~1ヶ月または3~4週間の期間で区切られる、請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記免疫原性組成物および前記複数のT細胞の投与、または前記養子T細胞療法が、前記結合剤の投与の、前記結合剤の第1の投与量の投与の、および/または前記結合剤による前記第1の治療サイクルの、2日前~2ヶ月前、例えば、前記結合剤の投与の、前記結合剤の第1の投与量の投与の、および/または前記結合剤による前記第1の治療サイクルの、2日~1ヶ月、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月、3日~1ヶ月、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月、4日~1ヶ月、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月、5日~1ヶ月、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月、6日~1ヶ月、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月、1週間~1ヶ月、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月、3週間~1ヶ月、または例えば3~4週間前に、前記対象に投与される、請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記結合剤、前記免疫原性組成物、ならびに、場合により、前記アジュバント、前記複数のT細胞およびインターロイキン2のそれぞれが、有効量で前記対象に提供される、請求項65~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記結合剤の第1の投与量が、前記免疫原性組成物の投与前に前記対象に投与され、および/または前記免疫原性組成物が、前記結合剤を用いた第2または後続の処置スケジュールの一部として投与される、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記方法が、前記対象の前記免疫原性組成物に対するT細胞特異的応答があるかどうかを決定すること、および/または、前記免疫原性組成物に特異的なT細胞の前記対象における増殖を監視することを含んでもよい、前記免疫原性組成物に対する任意のT細胞特異的応答を監視すること、を含む、請求項1~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記標的抗原が、前記腫瘍に特異的な抗原である、請求項1~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記標的抗原が、前記腫瘍または癌の細胞によって過剰発現される、例えば、健常組織の細胞と比較した場合に過剰発現される抗原である、請求項1~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記標的抗原が、前記腫瘍または癌の細胞によって排他的に発現される抗原であるか、または前記腫瘍微小環境(例えば、TAM、MDSC、Treg)内の免疫抑制細胞上で過剰発現される抗原である、請求項1~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記標的抗原が、Her2、CD19、EpCAM、EGFR、CD66e(CEA、CEACAM5)、CD33、EphA2およびMCSP(HMW-MAA)からなる群から選択される、請求項1~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記標的抗原に結合する抗原結合領域が、Her2/neuに結合するハーセプチンの抗原結合領域、CD19に結合するブリナツモマブの抗原結合領域、EpCAMに結合するカツマキソマブの抗原結合領域、EGFRに結合するセツキシマブまたはパニツムマブの抗原結合領域、およびCD33に結合するリンツズマブの抗原結合領域からなる群から選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記腫瘍が、固形腫瘍である、請求項1~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記腫瘍または癌が、乳癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、食道癌および頭頸部の扁平上皮癌、子宮頸癌、膵臓癌、精巣癌、悪性黒色腫、軟部組織癌、例えば滑膜肉腫からなる群から選択される、請求項1~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記腫瘍が、黒色腫および腺癌(例えば、乳管腺癌)からなる群から選択される、請求項1~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記腫瘍が、血液腫瘍である、請求項1~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記血液腫瘍が、B細胞リンパ腫、および慢性リンパ性白血病または急性リンパ性白血病からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記腫瘍が、免疫浸潤物を欠いている、例えば、機能的免疫濾液を欠いている、請求項1~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記腫瘍が、制御性T細胞(Treg)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)およびM2型マクロファージからなる群から選択される免疫細胞などの抑制性免疫細胞の存在を特徴とする、請求項1~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
CD3に結合する前記抗原結合領域が、ヒトCD3ε(イプシロン)、例えば配列番号1に指定されるヒトCD3ε(イプシロン)に結合する、請求項1~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
CD3に結合する前記抗原結合領域が、
それぞれ配列番号2、配列番号3および配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH);[野生型抗CD3(SP34/ヒト化SP34、国際公開第2015001085号(Genmab))-VH CDR配列]を含み、
ならびに、それぞれ配列番号6、GTNおよび7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型抗CD3、VL CDR配列]を含んでもよい、請求項1~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
CD3に結合する前記抗原結合領域が、
配列番号57の配列、または配列番号5の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)[野生型抗CD3-VH全長配列]を含み、
および、配列番号60の配列、または配列番号8の配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型抗CD3-VL全長配列]を含んでもよい、請求項1~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記結合剤が、配列番号5に示されるVH配列および配列番号8に示されるVL配列[野生型抗CD3(ヒト化SP34、国際公開第2015001085号(Genmab))VHおよびVL配列]を含む抗原結合領域を有する結合剤よりも低いヒトCD3ε結合親和性を有し、好ましくは、前記親和性が、少なくとも5倍低い、例えば少なくとも10倍低い、例えば少なくとも20倍低い、少なくとも30倍低い、少なくとも40倍低い、少なくとも45倍低いまたは例えば少なくとも50倍低い、請求項1~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記抗原結合領域が、200nM~1000nMの範囲内、例えば300~1000nMの範囲内、400~1000nMの範囲内、500~1000nMの範囲内、300~900nMの範囲内、400~900nMの範囲内、400~700nMの範囲内、500~900nMの範囲内、500~800nMの範囲内、500~700nMの範囲内、600~1000nMの範囲内、600~900nMの範囲内、600~800nMの範囲内、または例えば600~700nMの範囲内の平衡解離定数KでCD3に結合する、請求項1~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記抗原結合領域が、1~100nMの範囲内、例えば5~100nMの範囲内、10~100nMの範囲内、1~80nMの範囲内、1~60nMの範囲内、1~40nMの範囲内、1~20nMの範囲内、5~80nMの範囲内、5~60nMの範囲内、5~40nMの範囲内、5~20nMの範囲内、10~80nMの範囲内、10~60nMの範囲内、10~40nMの範囲内、または例えば10~20nMの範囲内の平衡解離定数KでCD3に結合する、請求項1~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
CD3に結合する前記抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含み、
前記重鎖可変(VH)領域が、配列番号5に示される配列を含む重鎖可変(VH)領域と比較した場合、前記CDR配列のうちの1つにおいてアミノ酸置換を有し、前記置換が、T31、N57、H101、G105、S110およびY114からなる群から選択される位置であり、前記位置が、配列番号5の配列に従ってナンバリングされ[VH_huCD3-H1L1]、
前記野生型軽鎖可変(VL)領域が、それぞれ配列番号6、GTNおよび配列番号7に示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、請求項1~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
CD3に結合する前記抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域の前記CDR1、CDR2およびCDR3が、配列番号5に示される配列のCDR1、CDR2およびCDR3と比較した場合、合計で最大で1、2、3、4または5個のアミノ酸置換を含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
CD3に結合する前記抗原結合領域の前記重鎖可変(VH)領域の前記CDR1、CDR2およびCDR3の前記アミノ酸配列が、前記野生型重鎖可変(VH)領域の前記CDR1、CDR2およびCDR3の前記アミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性または少なくとも99%の配列同一性を有し、配列同一性が、CDに結合する前記抗原結合領域の前記重鎖可変(VH)領域の前記CDR1、CDR2およびCDR3の配列からなるアミノ酸配列を、前記野生型重鎖可変(VH)領域の前記CDR1、CDR2およびCDR3の配列を含むアミノ酸配列と整列することに基づいて計算される、請求項101または102に記載の方法。
【請求項104】
CD3に結合する前記抗原結合領域が、T31M、T31P、N57E、H101G、H101N、G105P、S110A、S110G、Y114M、Y114R、Y114Vからなる群から選択される変異を含む、請求項1~95および98~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
CD3に結合することができる前記抗原結合領域が、
a)配列番号9、配列番号3および配列番号4に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[VH CDR1-T31P+野生型VH CDR2、3]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
b)配列番号11、配列番号3および配列番号4に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[VH CDR1-T31M+野生型VH CDR2、3]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
c)配列番号2、配列番号13および配列番号4に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[VH CDR-N57E+野生型VH CDR1、3]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
d)配列番号2、配列番号3および配列番号15に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-H101G]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、
e)配列番号2、配列番号3および配列番号17に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-H101N]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3];
f)配列番号2、配列番号3および配列番号19に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-G105P]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3];
g)配列番号2、配列番号3および配列番号21に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-S110A]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
h)配列番号2、配列番号3および配列番号23に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-S110G]、ならびに配列番号658に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、
i)配列番号2、配列番号3および配列番号25に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-Y114V]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
j)配列番号2、配列番号3および配列番号27に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-Y114M]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
k)配列番号2、配列番号3および配列番号29に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-Y114R]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、
を含む、請求項1~95および98~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
CD3に結合することができる前記抗原結合領域が、配列番号2、配列番号3および配列番号15に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-H101G]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]を含む、請求項1~83および86~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
ヒトCD3に結合することができる前記抗原結合領域が、
a)配列番号10に示されるVH配列[VH T31P全長配列]および配列番号8に示されるVL配列[野生型全長配列]、
b)配列番号12に示されるVH配列[VH T31M全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
c)配列番号14に示されるVH配列[VH N57E全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
d)配列番号16に示されるVH配列[VH H101G全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
e)配列番号18に示されるVH配列[VH H101N全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
f)配列番号20に示されるVH配列[VH G105P全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
g)配列番号22に示されるVH配列[VH S110A全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
h)配列番号24に示されるVH配列[VH S110G全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
i)配列番号26に示されるVH配列[VH Y114V全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
j)配列番号28に示されるVH配列[VH Y114M全長配列]および配列番号8に示されるVL配列;ならびに
k)配列番号30に示されるVH配列[VH Y114R全長配列]および配列番号8に示されるVL配列
からなる群から選択されるVH配列およびVL配列を含む、請求項1~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
ヒトCD3に結合することができる前記抗原結合領域が、配列番号10に示されるVH配列[VH H101G全長配列]および配列番号8に示されるVL配列を含む、請求項1~95および98~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記抗体が、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群から選択されるアイソタイプのものである、請求項1~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記結合剤が、全長抗体、例えば全長IgG1抗体である、請求項1~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記結合剤が、IgG1m(f)アロタイプの抗体である、請求項1~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記結合剤が、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である、請求項1~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
各抗原結合領域が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記可変領域がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2およびCDR3と、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4とを含む、請求項1~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記結合剤が、2つの重鎖定常領域(CH)および2つの軽鎖定常領域(CL)を含む、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記結合剤が、第1および第2の重鎖を含み、前記第1および第2の重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含み、前記第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群から選択される位置に対応する前記位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、前記第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群から選択される位置に対応する前記位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、前記第1および第2の重鎖の前記置換が、同じ位置にはなく、前記アミノ酸位置が、EUナンバリングに従ってナンバリングされている、請求項113または114に記載の方法。
【請求項116】
前記結合剤が、第1および第2の重鎖を含み、ヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸が、前記第1の重鎖のRであり、ヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸が、前記第2重鎖のLであるか、またはその逆である、請求項1~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記結合剤が、第1および第2の重鎖を含み、前記第1および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸残基が、それぞれFおよびEである、請求項1~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記結合剤が、第1および第2の重鎖を含み、前記第1および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングでヒトIgG1重鎖の位置D265に対応する位置のアミノ酸残基がAである、請求項1~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記結合剤が、第1の重鎖を含み、および第2の重鎖を含んでもよく、前記第1の重鎖および存在する場合には前記第2の重鎖が、前記抗体が同一の非改変抗体に対してより少ない程度でFc媒介エフェクター機能を誘導するように改変されている、請求項1~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記結合剤が、カッパ(κ)軽鎖を含む、請求項1~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記結合剤が、ラムダ(λ)軽鎖を含む、請求項1~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記結合剤が、CD3に結合する結合領域を含む重鎖およびラムダ(λ)軽鎖を含む、請求項1~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記結合剤が、CD3に結合する前記結合領域を含む重鎖およびカッパ(κ)軽鎖を含む、請求項1~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記カッパ(κ)軽鎖が、
a)配列番号31に示される配列、
b)a)で定義された配列のN末端またはC末端から出発して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続する(consequtive)アミノ酸が欠失している部分配列などの、a)の配列の部分配列、および
c)a)またはb)で定義されたアミノ酸配列と比較して、最大で5個の置換、例えば最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個または最大で1個の置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記ラムダ(λ)軽鎖が、
a)配列番号32に示される配列、
b)a)で定義された配列のN末端またはC末端から出発して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列などの、a)の配列の部分配列、および
c)a)またはb)で定義されたアミノ酸配列と比較して、最大で5個の置換、例えば最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個または最大で1個の置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項122に記載の方法。
【請求項126】
前記抗体が、第1の重鎖および/または第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖および/または第2の重鎖の定常領域が、
a)配列番号33に示される配列、
b)a)で定義された配列のN末端またはC末端から出発して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列などの、a)の配列の部分配列、および
c)a)またはb)で定義されたアミノ酸配列と比較して、最大で5個の置換、例えば最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個または最大で1個の置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、または本質的にそれらからなる、またはそれらからなる、請求項1~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記最大で5個の置換が、L234F、L235E、D265A、F405LおよびK409Rからなる群から選択される1個以上の置換、例えば1、2、3または4個の置換を含む、請求項124~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
腫瘍の成長の予防または低減を必要とする対象における腫瘍の成長を予防または低減するための方法であって、
少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物を前記対象に提供し、それによって前記腫瘍中の生細胞集団内の免疫細胞の相対量を増加させ、場合により、前記免疫細胞の活性化を増加させることと、
ヒトCD3などのCD3に結合する抗原結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤を前記対象に提供することと、
を含む、方法。
【請求項129】
前記免疫細胞が、CD8T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞などのT細胞からなる群から選択される、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
腫瘍の成長を予防もしくは低減するための、またはそれを必要とする対象における癌の治療のための方法であって、
i)ヒトCD3などのCD3に結合する抗原結合領域、および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤をコードする核酸構築物と、
ii)少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、
を前記対象に提供することを含む、方法。
【請求項131】
前記結合剤が、請求項1、83~115のいずれか一項に定義される通りである、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記免疫原性組成物が、請求項1~45のいずれか一項に定義される通りである、請求項130または131に記載の方法。
【請求項133】
前記結合剤が、インターロイキン2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15またはその類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与される、請求項132~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記結合剤が、アジュバント、例えば、請求項35~44のいずれか一項で定義されるアジュバントとさらに組み合わせて投与される、請求項131~133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
対象における癌の腫瘍増殖または治療を予防または低減するのに使用するための結合剤であって、当該結合剤が、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含み、前記使用が、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と組み合わせて前記抗体を前記対象に提供することを含む、結合剤。
【請求項136】
前記結合剤が、請求項1、95~127のいずれか一項に定義される通りである、請求項135に記載の使用のための結合剤。
【請求項137】
前記免疫原性組成物が、請求項1~45のいずれか一項に定義される通りである、請求項135または136に記載の使用のための結合剤。
【請求項138】
前記結合剤が、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与される、請求項135または136に記載の使用のための結合剤。
【請求項139】
前記結合剤が、アジュバント、例えば、請求項46~5544のいずれか一項に記載のアジュバントとさらに組み合わせて投与される、請求項135または136に記載の使用のための結合剤。
【請求項140】
対象における腫瘍増殖または癌の治療を予防または低減するのに使用するための少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物であって、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と組み合わせて前記対象に提供される、免疫原性組成物。
【請求項141】
前記結合剤が、請求項1、95~127のいずれか一項に定義される通りである、請求項140に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項142】
前記免疫原性組成物が、請求項1~45のいずれか一項に定義される通りである、請求項140または141に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項143】
前記免疫原性組成物剤が、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与される、請求項140~142のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項144】
前記免疫原性組成物が、アジュバント、例えば請求項45~55のいずれか一項で定義されるアジュバントまたは例えば、免疫原性核酸配列または脂質ナノ粒子(LNP)を含む、遺伝子ベースの療法のための免疫原性組成物とさらに組み合わせて投与される、請求項140~143のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項145】
対象における癌を治療するための医薬品の製造における結合剤の使用であって、前記結合剤が、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含み、前記治療が、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と組み合わせて前記結合剤を前記対象に提供することを含む、使用。
【請求項146】
前記結合剤が、請求項1、95~127のいずれか一項に定義される通りである、請求項145に記載の結合剤の使用。
【請求項147】
前記免疫原性組成物が、請求項1~45のいずれか一項に定義される通りである、請求項145または146に記載の結合剤の使用。
【請求項148】
前記結合剤が、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与される、請求項145または146に記載の結合剤の使用。
【請求項149】
前記結合剤が、アジュバント、例えば、請求項45~55のいずれか一項に記載のアジュバントとさらに組み合わせて投与される、請求項145~148のいずれか一項に記載の結合剤の使用。
【請求項150】
対象における癌を治療するための医薬品の製造における少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物の使用であって、前記免疫原性組成物が、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と組み合わせて前記対象に提供される、使用。
【請求項151】
前記結合剤が、請求項1、95~127のいずれか一項に定義される通りである、請求項150に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項152】
前記免疫原性組成物が、請求項1~45のいずれか一項に定義される通りである、請求項150または151に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項153】
CD3に結合する結合領域および腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と、
少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と
を含む、キットオブパーツ。
【請求項154】
前記結合剤が、請求項1、95~127のいずれか一項に定義される通りである、請求項153に記載のキットオブパーツ。
【請求項155】
前記免疫原性組成物が、請求項1~45のいずれか一項に定義される通りである、請求項153または154に記載のキットオブパーツ。
【請求項156】
アジュバント、例えば、請求項45~55のいずれか一項に定義されるアジュバントをさらに含む、請求項153~155のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【請求項157】
ある量のインターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15またはその類似体をさらに含む、請求項153~156のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【請求項158】
前記免疫原性組成物と組み合わせた前記結合剤の投与などの使用説明書をさらに含む、請求項153~157のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、CD3に結合する抗原結合領域および腫瘍細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤と、を用いた治療を組み合わせた癌療法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法の進歩は、癌療法の分野を変えた。古典的な化学療法および放射線照射とは別に、多種多様な癌タイプの患者が、モノクローナル抗体(mAb)治療および養子細胞移入(ACT)などの治療選択肢を利用するようになってきた。単一特異性モノクローナル抗体は、細胞上に発現された抗原、例えば腫瘍関連抗原またはT細胞特異的標的に特異的かつ二価に結合することができる。しかしながら、二重特異性抗体(bsAb)は、2つの異なる標的に一価で結合することができ、1つの細胞上の2つのエピトープまたは異なる細胞上の2つの抗原の標的化を可能にする。後者の状況では、bsAbは、本質的に2つの細胞、例えばT細胞を腫瘍細胞に近接させる。T細胞係合bsAbまたはCD3bsAbとしても知られる、T細胞特異的アームおよび腫瘍関連抗原特異的アームを含有するBsAbは、T細胞を腫瘍細胞と架橋し、それにより、T細胞のTCR特異性にかかわらず、腫瘍細胞のT細胞媒介死滅を誘導することができる。ACTは、免疫細胞、主に一般的にはT細胞の癌患者への養子移入を含む。特に、人工の高親和性T細胞受容体を発現するように遺伝子操作されたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を使用する2つの療法が、血液癌の治療のためにFDAによって承認されている(Schuster et al.N Engl J Med 2019;380:45-56,Neelapu et al.N Engl J Med 2017;377:2531-2544)。予防ワクチンは、疾患を予防するために感染因子に対する抗体応答を誘導することを目的とすることが多い。一方、治療用癌ワクチンは、例えば腫瘍特異的配列を有するペプチドを注射することによって、既存の腫瘍特異的T細胞をブーストするために適用され得る(Zwaveling et al.,J Immunol.2002;169(1):350-8)。
【0003】
これらの療法の実装形態は、多くの癌タイプにおいてより良好な全生存率をもたらしたが、すべての癌患者が免疫療法から恩恵を受けるわけではない。注目すべきことに、T細胞係合bsAbは、血液腫瘍において有望な臨床結果を示しているが、臨床的有効性はこれまで実証されていないので、CD3bsAbは、固形腫瘍の治療についてまだ承認されていない(Yu et al.J Hematol Oncol.2017;10:155)。免疫療法は、(機能的な)免疫浸潤物を欠く腫瘍であるいわゆる「冷たい」腫瘍では顕著に有効性が低い。また、制御性T細胞(Treg)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)および/またはM2型マクロファージ(Xiong et al.Adv Biol 2021;5(3):e1900311)などの抑制性免疫細胞の存在を特徴とする免疫抑制性腫瘍微小環境は、T細胞浸潤を予防するか、またはT細胞機能を局所的に抑制し得る。この抑制環境を変換するために、(アジュバント非添加)季節性インフルエンザワクチン(Newman et al,PNAS 2020)、遺伝子操作マウスサイトメガロウイルス(Erkes et al,Molecular Therapy 2016)または不活化改変ワクシニアウイルスAnkara(Dai et al,Science Immunol 2017)の腫瘍内注射が研究されており、これらはすべてマウス腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果の増強をもたらした。機構的には、そのような療法は、腫瘍常在抗原提示細胞によって発現されるパターン認識受容体の誘発を介して作用し、免疫抑制性腫瘍微小環境の免疫浸潤およびT細胞活性化を支援する環境への変換をもたらすと仮定される。非筋肉浸潤性膀胱癌を治療するためのバチルス・カルメット・ゲリン(BCG)免疫療法の臨床使用もまた、腫瘍における局所炎症および免疫細胞浸潤の誘発に寄与する(Redelman-Sidi et al.Nat Rev Urol 2014;11(3):153-62)。
【0004】
腫瘍浸潤T細胞の数を増加させることは、多くの治療ワクチン接種研究の目的であった。しかしながら、治療ワクチン接種は、前悪性病変において有望な結果を示したが、そのようなワクチン接種は、癌患者において効率的な臨床的有効性を示さなかった。したがって、併用療法は、より有効であり得る(Melief et al.,J Clin Invest.2015;125(9):3401-3412)。これはまた、Benonisson et al.によって結論付けられ、この研究では、マウスT細胞係合bsAbによるマウス黒色腫(B16F10)を有するマウスの処置が、腫瘍T細胞浸潤および活性化の増強をもたらしたことが実証されたが、T細胞免疫は、組み込まれなかった(Benonisson et al.,Mol Cancer Ther.2019 Feb;18(2):312-322)。米国特許出願公開第2015095811号および同第20190382490号の両方は、癌特異的ワクチンおよびモノクローナル抗体による免疫チェックポイント阻害からなる併用療法を記載している。さらに、Ly et al.は、ACT、腫瘍特異的ペプチドワクチン接種、アジュバントToll様受容体リガンド(TLR-L)7およびIL-2からなる併用療法を調査し、腫瘍根絶を媒介し得るT細胞数の大幅な増加を見出した(Ly et al.Cancer Res.2010;70(21):8339-46)。
固形腫瘍中の腫瘍浸潤T細胞の数を増加させる方法が依然として必要とされており、これはその後、T細胞係合bsAb抗体治療との併用療法に活用することができる。特に、T細胞係合bsAbおよび腫瘍非特異的ワクチンを含む療法が依然として必要とされており、これは、患者の特定の癌タイプに関係なく、患者への一般的なワクチンの投与を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015095811号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20190382490号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schuster et al.N Engl J Med 2019;380:45-56
【非特許文献2】Neelapu et al.N Engl J Med 2017;377:2531-2544
【非特許文献3】Zwaveling et al.,J Immunol.2002;169(1):350-8
【非特許文献4】Yu et al.J Hematol Oncol.2017;10:155
【非特許文献5】Xiong et al.Adv Biol 2021;5(3):e1900311
【非特許文献6】Newman et al,PNAS 2020
【非特許文献7】Erkes et al, Molecular Therapy 2016
【非特許文献8】Dai et al,Science Immunol 2017
【非特許文献9】Redelman-Sidi et al.Nat Rev Urol 2014;11(3):153-62
【非特許文献10】Melief et al.,J Clin Invest.2015;125(9):3401-3412
【非特許文献11】Benonisson et al.,Mol Cancer Ther.2019 Feb;18(2):312-322
【非特許文献12】Ly et al.Cancer Res.2010;70(21):8339-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、腫瘍の成長を予防もしくは低減するための方法、またはそれを必要とする対象における癌の治療のための方法であって、
i)ヒトCD3などのCD3に結合する抗原結合領域、および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤と、
ii)少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、を対象に提供することを含む、方法を提供することである。
【0008】
第2の態様では、本発明は、腫瘍の成長を予防もしくは低減する方法、またはそれを必要とする対象の癌を治療する方法であって、
i)CD3に結合する第1の結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する第2の結合領域を含む結合剤をコードする核酸構築物と、
ii)少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、を対象に提供することを含む、方法に関する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、対象における癌の腫瘍増殖または治療を予防または低減するのに使用するための結合剤であって、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含み、その使用が、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と組み合わせて対象に抗体を提供することを含む、結合剤に関する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、対象における癌の腫瘍増殖または治療を予防または低減するのに使用するための少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物であって、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と組み合わせて対象に提供される、免疫原性組成物に関する。
【0011】
第5の態様では、本発明は、対象における癌を治療するための医薬品の製造における結合剤の使用であって、結合剤が、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含み、その治療が、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と組み合わせて前記結合剤を対象に提供することを含む、結合剤の使用に関する。
【0012】
第6の態様では、本発明は、対象における癌を治療するための医薬品の製造における少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物の使用であって、免疫原性組成物が、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と組み合わせて対象に提供される、免疫原性組成物の使用に関する。
【0013】
最後に、本発明はまた、CD3に結合する結合領域および腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、を含むキットオブパーツを提供する。
【0014】
これらおよび他の態様および実施形態は、以下の節でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】CD3xTA99二重特異性抗体処置に対するCXCR3媒介性免疫細胞浸潤の効果を示す図である。(図1A)処置タイムラインを示す図である。0日目に、WTまたはCXCR3ノックアウト(KO)C57BL/6マウスに、50,000個の同系B16F10黒色腫細胞を皮下注射した。6日目および9日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。腫瘍の増殖を、腫瘍を週に2回測定し、腫瘍体積が1000mmを超えたときに屠殺することによって監視した。(図1B)CD3xTA99二重特異性抗体処置に対するCXCR3媒介性免疫細胞浸潤の効果を示す図である。個々のマウスの腫瘍成長曲線(n=6~10)を示す図である。(図1C)CD3xTA99二重特異性抗体処置に対するCXCR3媒介性免疫細胞浸潤の効果を示す図である。処置群内のマウスの生存を示すKaplan-Meierプロットを示す図である。生存における統計学的に有意な差を、Mantel-Cox分析によって計算した。(図1D)CD3xTA99二重特異性抗体処置に対するCXCR3媒介性免疫細胞浸潤の効果を示す図である。別個の実験において(A)に示されたものと同じ処置タイムラインに従って、マウス(n=4~5)を20日目に屠殺し、腫瘍および脾臓を免疫浸潤物の分析のために処理した。フローサイトメトリーによって測定したT細胞およびNK細胞の総CD45陽性細胞浸潤および割合を示す。(E~G)CD3xTA99二重特異性処置と組み合わせたOT1ACT+OVAワクチン接種に対するCXCR3媒介内因性細胞浸潤の効果。(図1E)CD3xTA99二重特異性抗体処置に対するCXCR3媒介性免疫細胞浸潤の効果を示す図である。処置タイムラインを示す図である。0日目に、CXCR3ノックアウトC57BL/6マウスに、50,000個のB16F10腫瘍細胞を皮下注射した。マウスは、3日目に1×10個のOT1濃縮脾細胞を受けた。3日目および10日目に、マウスをOVAペプチドで免疫した。免疫化に対するアジュバントとして、3日目および10日目に注射部位にAldaraを局所適用し、10日目および11日目に組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。12日目および15日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。腫瘍成長を週に3回監視し、腫瘍体積が1000mmを超えたらマウスを屠殺した。(図1F)CD3xTA99二重特異性抗体処置に対するCXCR3媒介性免疫細胞浸潤の効果を示す図である。個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す図である。(図1G)CD3xTA99二重特異性抗体処置に対するCXCR3媒介性免疫細胞浸潤の効果を示す図である。処置群内の生存マウスのパーセンテージを示す図である。(F)および(G)では、(A)からの未処置対照マウスを参照のために示す。生存における統計学的に有意な差を、Mantel-Cox分析によって計算した。ns=有意でない、*P<0.05
図2】C57BL/6マウスに、0日目に100,000個の同系B16F10黒色腫細胞を皮下注射した。5日目に、3×10個のPmel-1T細胞を静脈内投与した。6日目および9日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。6日目および13日目に、マウスをKVPペプチドで皮下免疫した。免疫化に対するアジュバントとして、Aldaraを注射部位に局所適用した。加えて、13および14日目に、組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。腫瘍成長を週に2回監視し、腫瘍体積が1000mmを超えたらマウスを屠殺した。(図2A)実験の概略図。(図2B)個々のマウスの腫瘍成長曲線。(図2C)処置群内の生存マウスのパーセンテージをプロットし、未処置マウスの生存と比較した(**P<0.01、***P<0.001)。生存における統計学的に有意な差を、Mantel-Cox分析によって計算した。
図3】-1日目に、C57BL/6マウスに1×10個の濃縮OT1 T細胞を静脈内投与した。0日目に、それらに100,000個の同系B16F10黒色腫細胞を皮下注射した。3日目および10日目に、マウスをKVPまたはOVAペプチドで免疫した。アジュバントとして、3日目および10日目にAldaraを注射部位に局所適用し、10日目および11日目に組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。12日目および15日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。腫瘍成長を週に2回監視し、腫瘍体積が1000mmを超えたらマウスを屠殺した。(図3A)実験の概略図。(図3B)個々のマウスの腫瘍成長曲線。(図3C)処置群内の生存マウスのパーセンテージをプロットし、未処置マウスの生存と比較した(*P<0.05)。生存における統計学的に有意な差を、Mantel-Cox分析によって計算した。
図4】CD3xTA99 bsAbと腫瘍特異的ワクチン接種との組み合わせ、または適合する腫瘍非特異的T細胞のACTと組み合わせたCD3xTA99 bsAbと腫瘍非特異的ワクチン接種との組み合わせが同様に抗腫瘍有効性を増強することを示す図である。(図4A)-1日目に、1×10個の濃縮OT-IT細胞をC57BL/6マウスに静脈内投与した。0日目に、それらに100,000個のマウスB16F10黒色腫細胞を皮下注射した。3日目および10日目に、マウスをKVPまたはOVAペプチドで免疫した。アジュバントとして、3日目および10日目にAldaraを注射部位に局所適用し、加えて、10日目および11日目に組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。12日目および15日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。腫瘍成長を週に2回監視した。(図4B)CD3xTA99 bsAbと腫瘍特異的ワクチン接種との組み合わせ、または適合する腫瘍非特異的T細胞のACTと組み合わせたCD3xTA99 bsAbと腫瘍非特異的ワクチン接種との組み合わせが同様に抗腫瘍有効性を増強することを示す図である。すべての処置群についての腫瘍成長曲線を示す。(図4C)CD3xTA99 bsAbと腫瘍特異的ワクチン接種との組み合わせ、または適合する腫瘍非特異的T細胞のACTと組み合わせたCD3xTA99 bsAbと腫瘍非特異的ワクチン接種との組み合わせが同様に抗腫瘍有効性を増強することを示す図である。異なる処置群のマウスの生存を示すKaplan-Meierプロットを示す。腫瘍体積が1000mmを超えた場合、マウスを屠殺し、処置群内の生存マウスのパーセントをプロットし、未処置マウスの生存と比較した(**P<0.01)。生存における統計学的に有意な差を、Mantel-Cox分析によって計算した。
図5】OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。(図5A)処置タイムラインを示す図である。0日目に、C57BL/6マウスに、背中の左側(TRP1陰性KPC3細胞)および右側(TRP1陽性KPC3細胞)の両方に80,000個のKPC3腫瘍細胞を皮下注射した。5日目に、1×10個の濃縮TbiLuc×OT1脾細胞をすべてのマウスに静脈内投与し、OVAワクチン接種を受けたマウスに、6日目および13日目にCpG ODN1826と混合した卵白アルブミン由来合成長ペプチドを皮下注射した。CD3xTA99 bsAbを15日目および19日目に腹腔内注射した(矢印で示す)。(図5B)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。Cycluc1生物発光束/秒として測定されるOT1 T細胞のT細胞活性化が、OT1 T細胞ACTおよびCD3xTA99 bsAb処置を受けたマウスの群において示される図である。(図5C)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。Cycluc1生物発光束/秒として測定されるOT1 T細胞のT細胞活性化が、OT1 T細胞ACTおよびOVAワクチン接種を受けたマウスの群において示される図である。(図5D)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。Cycluc1生物発光束/秒として測定されるOT1 T細胞のT細胞活性化が、OT1 T細胞ACT、CD3xTA99 bsAb処置およびOVAワクチン接種を受けたマウスの群において示される図である。(図5E)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。D-ルシフェリン生物発光束/秒として測定されるOT1 T細胞のT細胞浸潤が、OT1 T細胞ACTおよびCD3xTA99 bsAb処置を受けたマウスの群において示される図である。(図5F)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。D-ルシフェリン生物発光束/秒として測定されるOT1 T細胞のT細胞浸潤が、OT1 T細胞ACTおよびOVAワクチン接種を受けたマウスの群において示される図である。(図5G)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。D-ルシフェリン生物発光束/秒として測定されるOT1 T細胞のT細胞浸潤が、OT1 T細胞ACT、CD3xTA99 bsAb処置およびOVAワクチン接種を受けたマウスの群において示される図である。同じデータセットが(H~K)に提示されている。(図5H)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。KPC3腫瘍におけるT細胞活性化を示す図である。(図5I)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。KPC3-TRP1腫瘍におけるT細胞活性化を示す図である。(図5J)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。KPC3腫瘍におけるT細胞浸潤を示す図である。(図5K)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。KPC3-TRP1腫瘍におけるT細胞浸潤を示す図である。15日目および19日目のCD3xTA99 bsAb注射を矢印で示す。(図5L)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。処置タイムラインを示す図である。0日目~13日目のスケジュールは、(A)について記載したスケジュールと同一であった。16日目に、マウスを安楽死させ、血液、脾臓および腫瘍の単一細胞懸濁液を調製して、フローサイトメトリーによって免疫サブセット浸潤を分析した。(図5M)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。血液におけるCD45集団およびOT1ナイーブ(CD44CD62L)対エフェクター(CD44CD62L)表現型内のOT1 T細胞のパーセンテージを示す図である。(図5N)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。脾臓におけるCD45集団およびOT1ナイーブ(CD44CD62L)対エフェクター(CD44CD62L)表現型内のOT1 T細胞のパーセンテージを示す図である。(図5O)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。TRP1陰性およびTRP1陽性KPC3腫瘍におけるCD45集団およびOT1ナイーブ(CD44CD62L)対エフェクター(CD44CD62L)表現型内のOT1 T細胞のパーセンテージを示す図である。(図5P)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。処置タイムラインを示す図である。0日目~13日目のスケジュールは、(L)について記載したスケジュールと同一であった。CD3xTA99 bsAbを16および19日目に腹腔内注射し、20日目にマウスを安楽死させた。(図5Q)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。血液におけるエフェクター(CD44CD62L)表現型に対するCD45集団およびOT1ナイーブ(CD44CD62L)表現型内のOT1 T細胞のパーセンテージを示す図である。(図5R)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。脾臓におけるエフェクター(CD44CD62L)表現型に対するCD45集団およびOT1ナイーブ(CD44CD62L)表現型内のOT1 T細胞のパーセンテージを示す図である。(図5S)OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbの組み合わせで処置したアルビノC57BL/6マウスのKPC3-TRP1陽性およびKPC3-TRP1陰性腫瘍におけるOT1 T細胞浸潤および活性化を示す図である。左:示された処置を受けたマウスのTRP1陰性およびTRP1陽性KPC3腫瘍におけるCD45集団内のOT1 T細胞のパーセンテージを示す図である。中央:OT1 T細胞ACTとOVAワクチン接種との組み合わせへのbsAbの添加後のOT1 T細胞上のCD69の表面レベル発現を示す図である。右:CD45集団内のエフェクター表現型(CD44CD62L)を有するOT1 T細胞のパーセンテージを示す図である。統計学的有意性は、Welcht検定を使用して決定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図6】フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(図6A)処置タイムラインを示す図である。(図6B)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。未処置のまま、IL-2、AldaraまたはIL-2とAldaraとの組み合わせで処置されたマウスに由来する腫瘍の生細胞ゲート内のCD45細胞(免疫細胞)のパーセンテージを示す図である。(図6C)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍におけるCD45集団内の従来のDC(cDC1)のパーセンテージを示す図である。(図6D)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍におけるCD45集団内の単球由来DC(MoDC)のパーセンテージを示す図である。(図6E)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍におけるCD45集団内のNK1.1/CD3(NK)細胞のパーセンテージを示す図である。(図6F)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍におけるCD45集団内のM1型マクロファージのパーセンテージを示す図である。(図6G)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍におけるCD45集団内の静止マクロファージ(M0マクロファージ)のパーセンテージを示す図である。(図6H)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍におけるCD45集団内の未成熟マクロファージのパーセンテージを示す図である。(図6I)フローサイトメトリーによって決定された、IL-2、AldaraクリームまたはIL-2とAldaraとの組み合わせのいずれかで処置されたマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍におけるCD45集団内のT細胞のパーセンテージを示す図である。Mann Whitney検定による統計解析、*p<0.05。
図7】CD3xTA99 bsAbを腫瘍特異的ワクチン接種または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせると、同様に抗腫瘍有効性が増強されることを示す図である。(図7A)実験の概略図である。0日目に、C57BL/6マウスに80,000個のマウスB16F10黒色腫細胞を皮下注射した。3日目および10日目に、マウスをKVPまたはRpl18ペプチドで免疫した。アジュバントとして、3日目および10日目にAldaraを注射部位に局所適用し、加えて、10日目および11日目に組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。12日目および15日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。腫瘍成長を週に2回監視した。(図7B)CD3xTA99 bsAbを腫瘍特異的ワクチン接種または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせると、同様に抗腫瘍有効性が増強されることを示す図である。個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す図である。(図7C)CD3xTA99 bsAbを腫瘍特異的ワクチン接種または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせると、同様に抗腫瘍有効性が増強されることを示す図である。異なる処置群のマウスの生存を示すKaplan-Meierプロットを示す図である。腫瘍体積が1000mmを超えた場合、マウスを屠殺し、処置群内の生存マウスのパーセントをプロットし、CD3xTA99二重特異性のみで処置したマウスの生存と比較した(*P<0.05、**P<0.01)。生存における統計学的に有意な差を、Mantel-Cox分析によって計算した。
図8】フローサイトメトリーによって決定した、腫瘍非特異的ペプチド(Rpl18)をワクチン接種したマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。(図8A)処置タイムラインを示す図である。(図8B)フローサイトメトリーによって決定した、腫瘍非特異的ペプチド(Rpl18)をワクチン接種したマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。未処置のままのマウスまたはRpl18ペプチド、AldaraおよびIL-2をワクチン接種したマウスに由来する腫瘍の生細胞ゲート内のCD45細胞(免疫細胞)、CD8T細胞、NK細胞、NKT細胞、CD8/CD4T細胞の比、CD8/Tregの比、CD8T細胞およびCD4T細胞の記憶表現型(ナイーブT細胞[CD44CD62L]、エフェクターT細胞[Teff、CD44CD62LおよびセントラルメモリーT細胞[Tcm、CD44CD62L])、単球由来DC(MoDC)、未成熟マクロファージ、好酸球、好中球および従来のDC(cDC1)のパーセンテージを示す図である。(図8C)フローサイトメトリーによって決定した、腫瘍非特異的ペプチド(Rpl18)をワクチン接種したマウスのB16F10腫瘍内の異なる免疫細胞サブセットのパーセンテージを示す図である。CD103、グランザイムB(GzmB)について陽性のCD8T細胞、CD4T細胞、NK細胞、NKT細胞およびCD19B細胞のパーセンテージ、(B)で示されるように処置されたマウス由来の腫瘍集団内のCD8T細胞、CD4T細胞、PD-1およびNKG2Aについて陽性のNK細胞およびNKT細胞のパーセンテージを示す図である。Welcht検定により実行した統計分析、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図9】CD3xTA99 bsAb単独または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせて処置したKPC3-TRP1保有マウスの腫瘍および脾臓における免疫細胞の表現型検査を示す図である。(図9A)処置タイムラインを示す図である。0日目に、C57BL/6マウスに80,000個のTRP1陽性KPC3腫瘍細胞を皮下注射した。8日目および15日目に、ワクチン接種群のマウスを150μgのOVAペプチドで免疫した。アジュバントとして、8日目および15日目にAldaraを注射部位に局所適用し、加えて、15日目および16日目に600.000 UI hIL-2を腹腔内注射した。17日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。19日目に、マウスを屠殺し、腫瘍および脾臓を分析のために処理した。(図9B)CD3xTA99 bsAb単独または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせて処置したKPC3-TRP1保有マウスの腫瘍および脾臓における免疫細胞の表現型検査を示す図である。腫瘍内のCD45、T細胞、T細胞サブセット組成物(CD8、CD4FoxP3、CD4FoxP3、ナイーブT細胞[CD44CD62L]、エフェクターT細胞[Teff、CD44CD62L]およびセントラルメモリーT細胞[Tcm、CD44CD62L])、B細胞およびNK細胞の分析を示す図である。(図9C)CD3xTA99 bsAb単独または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせて処置したKPC3-TRP1保有マウスの腫瘍および脾臓における免疫細胞の表現型検査を示す図である。脾臓内のCD45、T細胞、T細胞サブセット組成物(CD8、CD4FoxP3、CD4FoxP3、ナイーブT細胞[CD44CD62L]、エフェクターT細胞[Teff、CD44CD62L]およびセントラルメモリーT細胞[Tcm、CD44CD62L])、B細胞およびNK細胞の分析を示す図である。(図9D)CD3xTA99 bsAb単独または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせて処置したKPC3-TRP1保有マウスの腫瘍および脾臓における免疫細胞の表現型検査を示す図である。腫瘍内のCD8T細胞における活性化および阻害性表面マーカー、エフェクター分子および転写因子(4-1BB、CD27、OX40、GzmB、CD49a、CD40L、CD69、PD-1、TIGIT、Tim3、CD39、NKG2A、KLRG1、Ki67、TCF-1、Eomes、Tbet、GATA-3およびRorγT)の発現を示す図である。(図9E)CD3xTA99 bsAb単独または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせて処置したKPC3-TRP1保有マウスの腫瘍および脾臓における免疫細胞の表現型検査を示す図である。脾臓内のCD8T細胞における活性化および阻害性表面マーカー、エフェクター分子および転写因子(4-1BB、CD27、OX40、GzmB、CD49a、CD40L、CD69、PD-1、TIGIT、Tim3、CD39、NKG2A、KLRG1、Ki67、TCF-1、Eomes、Tbet、GATA-3およびRorγT)の発現を示す図である。(図9F)CD3xTA99 bsAb単独または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせて処置したKPC3-TRP1保有マウスの腫瘍および脾臓における免疫細胞の表現型検査を示す図である。腫瘍内のNK細胞上の活性化および阻害性表面マーカーおよびエフェクター分子(GzmB、CD69、CD49a、CD39、KLRG1、NKG2A)の発現を示す図である。(図9G)CD3xTA99 bsAb単独または腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせて処置したKPC3-TRP1保有マウスの腫瘍および脾臓における免疫細胞の表現型検査を示す図である。上:腫瘍中のCD45細胞内のマクロファージの頻度を示す図である。下:iNOS-Egr2-(M0)、iNOS+Egr2-(M1)およびiNOS-Egr2+(M2)マクロファージ表現型の分布を示す図である。統計分析を、Brown-ForsytheおよびWelchのANOVAを使用して実行し、p値をDunnettのT3多重比較検定で決定した。ns=有意でない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図10】(図10A)実験のタイムラインの概略図である。-30日目に、C57BL/6マウスに100×TCID50のHKx31インフルエンザウイルスを投与した。0日目に、それらに80,000個の同系B16F10黒色腫細胞を皮下注射した。10日目に、マウスを2×10個のTCID50熱不活化インフルエンザウイルスで免疫した。アジュバントとして、10日目にAldaraを注射部位に局所適用し、10日目および11日目に組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。12日目および15日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。(図10B)腫瘍体積が1000mmを超えた場合、マウスを屠殺した、異なる処置群における個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す図である。腫瘍体積をmmとして示した。(図10C)未処置マウスの生存と比較した処置群内のマウスの生存を示すKaplan-Meierプロット(**P<0.01)を示す図である。生存における統計学的に有意な差を、Mantel-Cox分析によって計算した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本発明の文脈における「結合剤」という用語は、所望の抗原に結合することができる任意の剤を指す。本発明の特定の実施形態では、結合剤は、抗体、抗体断片、またはその構築物である。結合剤はまた、合成、修飾または天然に存在しない部分、特に非ペプチド部分を含み得る。そのような部分は、例えば、抗体または抗体断片などの所望の抗原結合官能基または領域を連結し得る。一実施形態では、結合剤は、抗原結合相補性決定領域(CDR)または可変領域を含む合成構築物である。
【0017】
「免疫グロブリン」という用語は、2対のポリペプチド鎖、1対の軽(L)低分子量鎖および1対の重(H)鎖からなる構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指し、4つすべてがジスルフィド結合によって相互接続されている。免疫グロブリンの構造は、十分に特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい。簡潔には、各重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および重鎖定常領域(本明細書ではCHと略す)で構成されている。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン:CH1、CH2、およびCH3で構成されている。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、非常に柔軟である。ヒンジ領域中のジスルフィド結合は、IgG分子中の2つの重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)および軽鎖定常領域(本明細書ではCLと略す)で構成されている。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変領域(または配列および/もしくは構造的に定義されたループの形態で超可変であり得る超可変領域)にさらに細分されてもよい。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196,901-917(1987)も参照されたい)。特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書のCDR配列は、DomainGapAlignを使用してIMGT規則に従って識別される(Lefranc MP.,Nucleic Acids Research 1999;27:209-212 and Ehrenmann F.,Kaas Q.and Lefranc M.-P.Nucleic Acids Res.,38,D301-307(2010)、インターネットhttpアドレスwww.imgt.org/も参照されたい)。特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明における定常領域のアミノ酸位置への言及は、Euナンバリングによるものとする(Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)。例えば、本明細書の配列番号33は、IgG1m(f)重鎖定常領域のEuナンバリングによるアミノ酸位置118~446を示す。
【0018】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、限定的であると理解されるべきではない。アミノ酸は、各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)と共にアミン(-NH)およびカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機化合物である。本発明の文脈において、アミノ酸は、構造および化学的特性に基づいて分類され得る。したがって、アミノ酸のクラスは、以下の表の一方または両方に反映され得る。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
あるアミノ酸の別のアミノ酸への置換は、保存的置換または非保存的置換として分類され得る。本発明の文脈において、「保存的置換」は、あるアミノ酸の、同様の構造的および/または化学的特徴を有する別のアミノ酸による置換、例えば、上記の2つの表のいずれかで定義されるのと同じクラスの別のアミノ酸残基に対する1つのアミノ酸残基の置換である:例えば、ロイシンは、両方とも脂肪族分岐疎水性であるので、イソロイシンで置換されていてもよい。同様に、アスパラギン酸は、両方とも小さい負荷電残基であるため、グルタミン酸で置換されていてもよい。
【0022】
本明細書で使用される「位置...に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖のアミノ酸位置番号を指す。他の免疫グロブリン中の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアラインメントによって見出され得る。したがって、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」1つの配列中のアミノ酸またはセグメントは、他の配列がヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するという条件で、典型的にはデフォルト設定で、ALIGN、ClustalWまたは同様のものなどの標準的な配列アラインメントプログラムを使用して他のアミノ酸またはセグメントと整列するものである。配列または配列中のセグメントを整列させ、それによって本発明によるアミノ酸位置に対する配列中の対応する位置を決定する方法は、当技術分野で周知であると考えられる。
【0023】
本発明の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、典型的な生理学的条件下で、有意な期間の半減期、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間以上など、または任意の他の関連する機能的に定義された期間(例えば、抗原への抗体結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強および/または調節するのに十分な時間および/または抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)で抗原に特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそれらのいずれかの誘導体を指す。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体という用語は、本明細書で使用される場合、単一特異性抗体だけでなく、2つ以上などの複数、例えば3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体の定常領域(Ab)は、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞など)および補体活性化の古典的経路における第1の成分であるC1qなどの補体系の成分を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。上記のように、本明細書における抗体という用語は、特に明記しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実行され得る得ることが示されている。「抗体」という用語に包含される抗原結合断片の例としては、(i)Fab’もしくはFab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、または国際公開第2007059782号(Genmab)に記載されている一価抗体、(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VHドメインおよび本質的にCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよび本質的にVHドメインからなるFv断片、(v)本質的にVHドメインからなり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;21(11):484-90)とも呼ばれるdAb断片(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989))、(vi)ラクダ科動物またはナノボディ分子(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;(1):111-24)、ならびに(vii)単離されたCDRが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る(一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)として公知、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)and Huston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照されたい)。そのような一本鎖抗体は、特に明記されない限り、または文脈によって明確に示されない限り、抗体という用語に包含される。そのような断片は、一般に抗体の意味の範囲内に含まれるが、それらは、集合的におよびそれぞれ独立して本発明の固有の特徴であり、異なる生物学的特性および有用性を示す。抗体という用語は、特に明記しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技術などの任意の公知の技術によって提供される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。本明細書で使用される「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリン(サブ)クラス(例えば、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)、IgD、IgA、IgEもしくはIgM)またはその任意のアロタイプ、例えばIgG1m(za)およびIgG1m(f)[配列番号33]を指す。したがって、一実施形態では、抗体は、IgG1クラスの免疫グロブリンまたはその任意のアロタイプの重鎖を含む。さらに、各重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)軽鎖またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせることができる。
【0024】
したがって、特定のアイソタイプ、例えばIgG1が本明細書で言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されず、抗体が他のアイソタイプよりもそのアイソタイプ、例えばIgG1に配列が近いことを示すために使用される。したがって、例えば、本発明のIgG1抗体は、定常領域の変異を含む、天然に存在するIgG1抗体の配列変異体であり得る。
【0025】
本発明の文脈における「多重特異性抗体」という用語は、異なる抗体配列によって定義される2つ以上の異なる抗原結合領域を有する抗体を指す。抗体が異なる抗体配列によって定義される2つの異なる抗原結合領域を有する場合、それは「二重特異性抗体」と称される。多重特異性抗体は、任意の二重特異性抗体フォーマットを含む任意のフォーマットであり得る。
【0026】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列およびヒト免疫グロブリン定常ドメインに由来する可変領域およびフレームワーク領域を有する抗体を含むことを意図している。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異、挿入もしくは欠失)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の非ヒト種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。
【0027】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインおよびヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含有するように改変された非ヒト可変ドメインを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒に抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体CDRを相同ヒトアクセプターFRにグラフトすることによって達成することができる(国際公開第92/22653号および欧州特許第0629240号明細書を参照されたい)。親抗体の結合親和性および結合特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からヒトフレームワーク領域へのフレームワーク残基の置換(復帰突然変異)が必要とされ得る。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域中のアミノ酸残基を同定するのに役立ち得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列に対する1つ以上のアミノ酸復帰変異を含んでいてもよいヒトフレームワーク領域、および完全ヒト定常領域を含み得る。必ずしも復帰突然変異ではないさらなるアミノ酸修飾を適用して、親和性および生化学的特性などの好ましい特徴を有するヒト化抗体を得てもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、文脈に矛盾しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域を指し、前記Fc配列は、抗体のN末端からC末端に向かう方向に、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。抗体のFc領域は、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞など)および補体系の成分を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0029】
本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabatに記載のEuナンバリングによるアミノ酸216~230に対応する(Kabat,E.A.etal.,Sequences of proteins of immunological interest.第5版-米国保健福祉省、NIH公開番号91-3242、pp662,680,689(1991))。しかしながら、ヒンジ領域は、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれかであってもよい。
【0030】
本明細書で使用される「CH1領域」または「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH1領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(同上)に示されるようなEuナンバリングによるアミノ酸118~215に対応する。しかしながら、CH1領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれかであり得る。
【0031】
本明細書で使用される「CH2領域」または「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(同上)に示されるようなEuナンバリングによるアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれかであり得る。
【0032】
本明細書で使用される「CH3領域」または「CH3ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(同上)に示されるようなEuナンバリングによるアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれかであり得る。
【0033】
「全長」という用語は、抗体の文脈で使用される場合、抗体が断片ではないが、そのアイソタイプについて自然界で通常見られる特定のアイソタイプのドメイン、例えばIgG1抗体のVH、CH1領域、CH2領域、CH3領域、ヒンジ、VLおよびCLドメインのすべてを含有することを示す。
【0034】
本明細書で使用される場合、所定の抗原またはエピトープへの抗体の結合の文脈における「結合する」または「結合することができる」という用語は、典型的には、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して決定される場合、または例えば、リガンドとして抗原および検体として抗体を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して決定される場合、約10-7M以下、例えば約10-7M以下、例えば10-8M以下、例えば10-8M以下、例えば10-9M以下、例えば10-9M以下、例えば約10-10M以下、例えば約10-10M以下、例えば10-11、もしくは例えば10-11M以下、またはそれ以下のKに対応する親和性での結合である。抗体は、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン)への結合について、そのKよりも少なくとも十倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより高い量は、抗体のKに依存するので、抗体のKが非常に低い場合(すなわち、抗体は高度に特異的である)、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い程度は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0035】
本明細書で使用される「k」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも称される。
【0036】
本明細書で使用される「K」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0037】
本明細書で使用される「結合領域」という用語は、例えば細胞、細菌、またはビリオン上に存在するポリペプチドなどの分子に結合することができる、抗体などの結合剤の領域を指す。本明細書で使用される場合、「結合領域」は、特に、抗原と相互作用し、かつ重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域の両方を含む抗体などの結合剤の領域を指し得る。
【0038】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、免疫応答を誘発することができる任意の物質を広く指す。いくつかの実施形態では、「抗原」は、タンパク質性であってもよく、または多糖であってもよい。
【0039】
本明細書で使用される「標的抗原」という用語は、(治療用)抗体によって結合することができる分子である。
【0040】
本明細書で使用される「免疫原性組成物」という用語は、アジュバントまたは抗原に対する免疫応答を増加させるために使用される分子などの免疫刺激剤の有無にかかわらず、抗原および/または抗原をコードする少なくとも1つの核酸分子を含有する組成物を指す。免疫原性組成物は、ヒトまたは動物対象への投与時に、前記動物またはヒト対象内で体液性応答(例えば、抗体応答)、細胞性応答(例えば、T細胞応答)、または先天性応答(例えば、顆粒球、抗原提示細胞、NK細胞の活性化)および/または局所炎症を誘発する組成物であると当業者によって理解されるであろう。
【0041】
本明細書で使用される「ワクチン」は、少なくとも1つのワクチン抗原および/またはワクチン抗原をコードする少なくとも1つの核酸分子、ならびに薬学的に許容される希釈剤または担体を含み、賦形剤、アジュバントおよび/もしくは添加剤または保護剤を組み合わせて含んでもよい調製物であると理解される。ワクチン抗原は、ワクチン接種に適した任意の材料に由来してもよく、例えば、抗原または免疫原は、病原体、例えば細菌もしくはウイルス粒子など、または腫瘍もしくは癌性組織に由来してもよい。抗原または免疫原は、アジュバントの存在下または非存在下のいずれかで、体液性応答(例えば、抗体応答)および/または細胞性応答(例えば、T細胞応答)などの適応免疫応答を提供するように身体の適応免疫系を刺激する。本発明の文脈において、ワクチンは、感染後または対象が腫瘍もしくは癌と診断された後に対象に与えられる治療ワクチンであり得、疾患の進行を軽減または停止することを意図している。ワクチンはまた、感染因子への曝露前または対象が腫瘍もしくは癌と診断される前に対象に提供される防止的または予防的ワクチンであってもよく、初期感染もしくは腫瘍形成を予防すること、または感染もしくは腫瘍成長の速度もしくは負荷を低減することを意図している。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ワクチン抗原」という用語は、前記抗原に特異的なBリンパ球および/またはTリンパ球の産生をもたらす体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘導することができる分子である。
【0043】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体および/または対象の免疫系によって、具体的には抗体、B細胞、またはT細胞によって認識される抗原の一部を指す。エピトープとしては、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープが挙げられる。B細胞エピトープは、特異的抗体産生B細胞による認識に必要なペプチド配列または炭水化物である。B細胞エピトープは、抗体によって認識される抗原の特定の領域を指す。エピトープに結合する抗体の部分は、パラトープと呼ばれる。エピトープは、構造およびパラトープとの相互作用に基づいて、立体構造エピトープまたは線状エピトープであり得る。線状または連続的なエピトープは、タンパク質の特定の領域の一次アミノ酸配列によって定義されるか、または単糖組成によって定義することができる。抗体と相互作用する配列は、タンパク質または炭水化物上で連続的に互いに隣接して位置し、エピトープは、通常、単一のペプチドによって模倣され得る。立体配座エピトープは、天然タンパク質、炭水化物または糖タンパク質の立体配座構造によって定義されるエピトープである。これらのエピトープは、連続的であっても不連続的であってもよく、すなわち、エピトープの成分は、折り畳まれた天然のタンパク質構造において互いに近接したタンパク質の異なる部分に位置することができる。T細胞エピトープは、細胞表面上のタンパク質に関連して特異的T細胞による認識に必要とされるペプチド配列、脂質、炭水化物または代謝産物から構成される。T細胞エピトープは、APCによって細胞内でプロセシングされ、かつ抗原提示細胞(APC)を含むすべての有核細胞の表面上に提示されるポリペプチド、脂質、炭水化物または代謝産物に由来し、それらは、MHCクラスIおよびMHCクラスIIを含む古典的主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、またはMR1、CD1もしくはブトロフィリン(BTN3A1)などの非古典的MHC様分子に結合する。MHCクラスIまたはMHCクラスII分子の文脈で提示されるT細胞エピトープは、特定のT細胞のT細胞受容体によって認識され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「生ワクチン」は、生きている微生物またはウイルスを含むワクチンを指す。ほとんどの生ワクチンは、生きている微生物またはウイルスから調製された 「弱毒化生ワクチン」 であり、これらは、病原性ではないか、または関連する対象において病原性が低下しているか、または防御免疫などの免疫応答を誘導する能力を保持しながら、病原性を低下または消失させるための治療を受けているかのいずれかである。治療は、例えば、それらの病原性の喪失をもたらす有害条件下での培養を含み得る。
【0045】
本明細書で使用される「不活化ワクチン」という用語は、制御された条件下で成長させ、次いで、典型的には化学処理、例えばホルムアルデヒドによる処理、または熱処理によって、死滅または不活化させた微生物またはウイルス粒子を含むワクチンを指す。
【0046】
本明細書で使用される「ウイルス様粒子」および「VLP」という用語は、いかなるウイルス遺伝物質も含有しないウイルスに似た非感染性粒子を指す。VLPは、カプシドタンパク質などのウイルス構造タンパク質の発現およびそれらの自己集合の結果である。
【0047】
本発明の文脈において、「部分ワクチン」という用語は、細菌、ウイルスまたは他の微生物の一部のみを含むワクチンを指す。「部分ワクチン」は、タンパク質ベースまたは多糖ベースのいずれであってもよく、サブユニット、トキソイド(不活化細菌毒素)、非コンジュゲート/純粋多糖および/またはコンジュゲート多糖、例えば非コンジュゲート/純粋もしくはコンジュゲート細菌細胞壁多糖を含み得る。
【0048】
本明細書で使用される「サブユニットワクチン」は、免疫応答を誘発することができる細菌もしくはウイルスもしくは他の微生物の単離されたもしくは精製されたワクチン抗原、またはウイルスもしくは細菌ポリペプチドもしくはそのようなポリペプチドをコードする核酸などのいくつかの単離されたおよび/もしくは精製された抗原の組み合わせを含むワクチンを指す。
【0049】
本文脈において、「タンパク質ベースのワクチン」という用語は、細菌、ウイルスまたは他の微生物由来のタンパク質性抗原などの単離、精製または組換えタンパク質性ワクチン抗原を含むワクチンを指す。
【0050】
本発明の文脈において、「多糖ベースのワクチン」という用語は、単離または精製多糖ワクチン抗原、例えば細菌/細菌莢膜多糖のカプセルに由来する多糖を含むワクチンを指す。
【0051】
「コンジュゲートワクチン」という用語は、互いにコンジュゲートされた2つの抗原を含むワクチンを広く指し、典型的には、「弱い」ワクチン抗原は、より強い抗原にコンジュゲートされる。コンジュゲートワクチンの例としては、免疫原性を増強するためにタンパク質にコンジュゲートされた細菌莢膜多糖などの多糖を含むワクチンが挙げられる。
【0052】
「組換えワクチン」という用語は、組換えDNA技術によって産生されたワクチン抗原を含むワクチンを指す。一般に、これは、ワクチン抗原をコードするヌクレオチド配列を細菌、真菌または哺乳動物細胞に挿入し、これらの細胞で抗原を発現させ、次いで細菌、真菌または哺乳動物細胞の培養物から抗原を精製することを伴う。
【0053】
本文脈において、「核酸ベースのワクチン」という用語は、ワクチン抗原をコードする核酸分子を含む組成物を広く指す。核酸分子は、例えば、プラスミドの形態でデオキシリボ核酸(DNA)であり得、または例えば、mRNAの形態でリボ核酸(RNA)であり得る。ナノ粒子ベースのヌクレオチドワクチン、例えば脂質ベース、ペプチドベース、多糖ベースおよび/または無機ナノ粒子製剤であり得る。
【0054】
「ウイルスベクターベースのワクチン」という用語は、ワクチン抗原をコードする核酸配列を保有するように遺伝子操作を受けた生きている複製ウイルスを含む組成物を指す。ウイルスは、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、またはセンダイウイルスであり得る。
【0055】
本発明の文脈において、「小児ワクチン」および「子どもワクチン」という用語は、感染および/または感染症の発症のリスクを予防または低減するために子ども用に意図され、推奨され、および/または子どもに与えられるワクチンを指すために互換的に使用される。
【0056】
定期的なワクチン接種/免疫化の推奨は、世界保健機関(WHO)によって提供されている:一部の定期的なワクチン接種/免疫化は、すべての子どもに推奨されているが、例えば特定の地理的地域に居住する子どもおよび特に高リスク集団の子どもにも別個の推奨がある。定期的なワクチン接種に関する推奨は、以下の感染症/病原体およびワクチンに関する、WHOによって公開されたポジションペーパーに見出すことができる:
Tuberculosis/BCG vaccination:Weekly Epid.Record(2018,93:73-96)
Hepatitis B:Weekly Epid.Record(2017,92:369-392)
Polio/OPV and IPV:Weekly Epid.Record(2016,9:145-168)
Diphtheria:Weekly Epid.Record(2017,92:417-436)
Tetanus:Weekly Epid.Record(2017,92:53-76)
Pertussis:Weekly Epid.Record(2015,90:433-460)
Rotavirus:Weekly Epid.Record(2013,88:49-64)
Measles:Weekly Epid.Record(2017,92:205-228)
Pneumococcal:Weekly Epid.Record(2019,94:85-104)
Rubella:Weekly Epid.Record(2011,86:301-316)
Japanese Encephalitis:Weekly Epid.Record(2015,90:69-88)
Human papillomavirus(HPV):Weekly Epid.Record(2017,92:241-268)
Yellow Fever:Weekly Epid.Record(2013,88:269-284)
Tick-Borne Encephalitis(TBE):Weekly Epid.Record(2011,86:241-256)
Typhoid:Weekly Epid.Record(2018,93:153-172)
Cholera:Weekly Epid.Record(2017,92:477-500)
Hepatitis A:Weekly Epid.Record(2012,87:261-276)
Meningococcal reference:Weekly Epid.Record(2011,86:521-540);update for MenA conjugate:Weekly Epid Record(2015,90:57-68)
Rabies:Weekly Epid.Record(2018,93:201-220)
Mumps:Weekly Epid.Record(2007,82:49-60)
Seasonal influenza(inactivated vaccine):Weekly Epid.Record(2012,87:461-476)
Dengue:Weekly Epid.Record(2018,93,457-76)
Varicella:Weekly Epid.Record(2014,89:265-288)
【0057】
本明細書で使用される「ワクチン接種プログラム」は、居住国に応じて推奨または強制のいずれかであり得るすべての用量のタイミングを含む一連のワクチン接種を指す。
【0058】
本明細書で使用される「ブースターワクチン」は、(1又は複数の)一次ワクチン用量の(1又は複数の)ワクチン抗原に対する免疫応答を増加させるために、(1又は複数の)一次用量の後に与えられる、2回目以降のワクチン用量として投与されるワクチンを指す。ブースターワクチンとして与えられるワクチンは、一次ワクチンと同じであっても、同じでなくてもよい。
【0059】
本明細書で使用される「癌ワクチン」は、腫瘍、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原に対する特異的免疫応答を誘導する組成物を指す。「腫瘍関連抗原」という用語は、対象の健康な組織の非腫瘍細胞または細胞の中または上に存在する量と比較して、対象の腫瘍細胞の中または上に大量に存在する抗原を指す。構造に関して、腫瘍関連抗原は、一般に、正常細胞の中または上に見られる抗原と質的に異ならないが、それらは、有意により多量に存在する。
【0060】
「腫瘍特異的抗原」という用語は、腫瘍内の細胞で特異的に発現または産生され、同じ起源の非癌性細胞と比較して、それぞれの腫瘍の細胞で特異的に発現またはアップレギュレートされる抗原を指す。腫瘍抗原またはそれに由来するエピトープは、免疫応答を誘導するために免疫系によって認識され得る。腫瘍特異的抗原は、すべてのタンパク質クラス、例えば酵素、受容体、転写因子などに由来し得る。
【0061】
「ネオ抗原」は、ネオエピトープ、すなわち、腫瘍細胞に生じるランダムな体細胞変異を介して生成された抗原性エピトープを含む抗原を指す。ネオエピトープは、通常、個々の細胞または細胞の系統に特異的な特異的腫瘍抗原またはユニーク抗原に由来し、したがってネオエピトープは、それが由来する細胞または腫瘍細胞の系統に特異的である。
【0062】
本明細書で使用される目的のペプチドまたはポリペプチドの「変異体」は、1つ以上のアミノ酸によって変化し、したがって参照アミノ酸配列から逸脱するアミノ酸配列を指す。変異体は、置換アミノ酸が同様の構造的または化学的特性(例えば、イソロイシンによるロイシンの置換)を有する「保存剤」変化を有し得る。よりまれに、変異体は、「非保存性」変化を有し得る(例えば、トリプトファンによるグリシンの置換)。同様の小さな変形はまた、アミノ酸の欠失もしくは挿入、またはその両方を含み得る。変異体ペプチドまたはポリペプチドは、参照ペプチドもしくはポリペプチドと同じ活性もしくは機能を有し得るか、または参照ペプチドもしくはポリペプチドよりも大きいもしくは小さい活性もしくは機能を有し得るが、少なくとも参照ペプチドまたはポリペプチドの部分的な活性または機能を保持しなければならない。
【0063】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、免疫系の抗原非依存性刺激を引き起こすか、または抗原の免疫原性を増強することができる物質もしくは物質の混合物を指す。本発明の文脈において、アジュバントは、ワクチン抗原に対する免疫応答を増強するために使用され得る。
【0064】
本発明の文脈において、「Th1型免疫応答」という用語は、活性化時に炎症性サイトカイン、典型的にはインターフェロンγ(IFNγ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)およびインターロイキン-2(IL-2)を主に分泌する能力を特徴とするヘルパーT細胞のサブセットの活性化を指す。Th1型免疫応答は、主に、病原体または癌性細胞に対する細胞性免疫応答の増幅をもたらす。
【0065】
本明細書で使用される「Th2型免疫応答」という用語は、好酸球の活性化およびアレルギー性疾患の促進に関連するIL-4、IL-5、およびIL-13などのサイトカイン、ならびに抗炎症性サイトカインIL-10を主に分泌する能力を特徴とするヘルパーT細胞のサブセットの活性化を指す。Th2型免疫応答は、主に、抗体応答などの体液性免疫応答の発生を促進する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「養子T細胞療法」は、腫瘍特異的または腫瘍非特異的T細胞の単離、および対象においてより多数のそのようなT細胞を達成するための複数のそのような腫瘍特異的または腫瘍非特異的T細胞のエクスビボ増殖を伴う。
【0067】
T細胞は、公知の技術に従って、本発明による治療を受ける対象の腫瘍(腫瘍浸潤リンパ球、TIL)などの腫瘍、または本発明による治療を受ける対象から採取された末梢血などの末梢血(末梢血リンパ球)のいずれかから収集され得る。
【0068】
T細胞は、細胞傷害性T細胞(CTL、表面上にCD8を発現するTリンパ球(すなわちCD8+T細胞)、CD4+T細胞、キメラ抗原受容体T細胞(CART細胞)およびT細胞受容体遺伝子導入(TCRtg)リンパ球を含むが、これらに限定されない任意の適切なタイプのT細胞であり得る。
【0069】
T細胞は、ヒト対象から単離され得るが、原則として、任意の哺乳動物、好ましくは霊長類の種から単離され得る。T細胞は、レシピエント対象として同種異系(すなわち、同じ種からであるが異なるドナーから単離される)であり得、あるいは、T細胞は、自家(すなわち、ドナーとレシピエントは同じである)であり得る。
【0070】
複数のT細胞は、単一のタイプのT細胞を含み得るか、または細胞タイプの混合物であり得る。必要とされる細胞の数は、その中に含まれる細胞のタイプと同様に、T細胞集団が意図される最終用途に依存する。例えば、特定の抗原に特異的な細胞が望まれる場合、集団は、そのような細胞の70%超、例えば80%超、85%超、90%超または例えば95%超を含有し得る。
【0071】
複数のT細胞は、抗体への親和性結合などの公知の技術によって所望のタイプのT細胞について濃縮され得る。濃縮ステップの後、所望のT細胞のインビトロ増殖を、公知の技術(米国特許第6,040,177号明細書に記載されているものを含むが、これらに限定されない)または当業者には明らかであろうその変形に従って実施することができる。例えば、所望のT細胞集団または亜集団は、初期Tリンパ球集団をインビトロで培養培地に添加し、次いで、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)(例えば、得られた細胞集団が、増殖させるべき初期集団中の各Tリンパ球について少なくとも約5、10、20または40以上のPBMCフィーダー細胞を含有するように)などのフィーダー細胞を培養培地に添加することと、培養物をインキュベートすること(例えば、T細胞の数を増殖させるのに十分な時間)と、によって増殖させ得る。T細胞およびフィーダー細胞を培地に添加する順序は、必要に応じて逆にしてもよい。培養物は、典型的には、Tリンパ球の成長に好適な温度などの条件下でインキュベートすることができる。例えば、ヒトTリンパ球の成長のために、温度は、一般に、少なくとも約25℃、好ましくは少なくとも約30℃、より好ましくは約37℃である。
CART細胞は、当技術分野で公知の技術によって産生され得る:簡潔に言えば、T細胞は、対象から収集される。次に、T細胞は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターのいずれかを使用して、T細胞シグナル伝達ドメインに融合された抗体結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように形質導入される。増殖後、遺伝子操作されたT細胞は、注入によって治療される対象に投与される。
【0072】
「治療サイクル」は、本明細書では、定期的なスケジュールで繰り返される治療期間とそれに続く休止期間(治療なし)として定義される。例えば、治療サイクルは、1週間の治療とそれに続く3週間の休薬とを含み得る。また、治療サイクルは、単回用量の医薬品の投与と、それに続く休止期間、例えば別の用量を投与する前の1、2または3週間の休止期間とを含み得る。小さな時間窓での複数の小用量、例えば、2~12時間または同日などの2~24時間以内は、特に用量間に生成物のクリアランスがないか実質的なクリアランスがない場合、より大きな単回用量に等しいとみなされ得る。
【0073】
「治療」という用語は、有効量の1つ以上の治療活性生成物、例えば、症状または疾患状態を緩和、改善、停止または根絶する目的を有する免疫原性組成物および結合剤(本出願で定義される)の投与を指す。
【0074】
本明細書で互換的に使用される「治療有効量」または「有効量、」という用語は、単独でまたは他の活性成分などの他の化合物と組み合わせて投与された場合、治療されている障害、疾患、または状態の症状の1つ以上の発症を予防するか、またはある程度緩和するのに十分であり得る医薬組成物中の活性成分などの化合物の量を指すことができる。「治療有効量」という用語はまた、研究者、獣医、医師または臨床医によって求められている細胞、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するのに十分な化合物の量を指すことができる。
【0075】
本明細書で使用される「ヒトCD3」という用語は、T細胞共受容体タンパク質複合体の一部であり、4つの異なる鎖で構成される分化ヒトクラスター3タンパク質を指す。CD3は、他の種にも見られ、したがって「CD3」という用語は、本明細書で使用され得、文脈によって矛盾しない限り、ヒトCD3に限定されない。哺乳動物では、複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖(例えば、ヒトCD3γ鎖Swissprot P09693またはカニクイザルCD3γ Swissprot Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(例えば、ヒトCD3δSwissprot P04234またはカニクイザルCD3δSwissprot Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(例えば、ヒトCD3εSwissprot P07766;カニクイザルCD3εSwissprot Q95LI5またはアカゲザルCD3ε(SwissprotG7NCB9))、およびCD3ζ鎖(ゼータ)鎖(例えば、ヒトCD3ζSwissprot P20963、カニクイザルCD3ζSwissprot Q09TK0)を含有する。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として公知の分子と会合し、T細胞において活性化シグナルを生成する。TCRおよびCD3分子は、共にTCR複合体を含む。
【0076】
配列番号1は、成熟ヒトCD3ε(イプシロン)のアミノ酸配列を示し、本明細書で使用される「成熟」という用語は、いかなるシグナルまたはリーダー配列も含まないタンパク質を指す。
【0077】
シグナルペプチド配列の相同性、長さ、および切断部位の位置が、異なるタンパク質間で有意に変動することは周知である。シグナルペプチドは、例えば、SignalPアプリケーション(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/で入手可能)に従って、異なる方法によって決定され得る。
【0078】
特定の実施形態では、本発明の結合剤は、CD3のイプシロン鎖、例えばヒトCD3のイプシロン鎖(配列番号1)に結合する。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体またはキメラ抗体は、ヒトCD3ε(イプシロン)のN末端部分のアミノ酸1~27内のエピトープに結合する(配列番号1)。そのような特定の実施形態では、抗体は、カニクイザル(カニクイザルCD3イプシロン)および/またはアカゲザル(アカゲザルCD3イプシロン)などの他の非ヒト霊長類種とさらに交差反応し得る。
【0079】
本発明は、CD3に結合する結合剤および腫瘍標的による腫瘍または癌の治療が腫瘍特異的T細胞の存在を必要としないことを確認する実験データに基づく。したがって、腫瘍部位におけるT細胞の単なる存在は、結合剤が腫瘍成長に対する効果を提供するのに十分であるように見え、ワクチン活性化T細胞は腫瘍内に移動するように見える。
【0080】
データは、対象において既存のT細胞応答をブーストすることができるワクチン、例えば子どもワクチンブースターを、CD3および腫瘍細胞上の標的抗原に結合し、それによって結合の抗腫瘍活性を増加させる結合剤と組み合わせて使用され得ることをさらに示す。
【0081】
したがって、第1の態様では、本発明は、腫瘍の成長を予防もしくは低減するための方法、またはそれを必要とする対象の癌を治療するための方法であって、
i)ヒトCD3などのCD3に結合する抗原結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤、および薬剤と、
ii)少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、を対象に提供することを含む、方法を提供する。
【0082】
ワクチン抗原は、特に、非腫瘍特異的ワクチン抗原であり得る。
免疫原性組成物は、予防ワクチンまたは治療ワクチンなどのワクチンであり得る。
免疫原性組成物が感染症に対するワクチンであることが現在好ましく、例えば、そのようなワクチンとしてのウイルスまたは細菌感染は、一般に容易に入手可能であり、低コストである。
【0083】
ワクチンは、コレラ(V.コレラ(V.cholerae)、例えば、WC/rBS、ジフテリア(ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae))、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型(Hib)、A型肝炎、B型肝炎、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス、脳炎、麻疹、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)(リンパ球性脈絡髄膜炎マレナウイルス(マンマレナウイルス(lymphocytic choriomeningitis mammarenavirus、LCMV))、コロナウイルス、脳炎、麻疹、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)(リンパ球性脈絡髄膜炎マレナウイルス(LCMV))、髄膜炎疾患(髄膜炎菌(Neisseria meningitidis))、流行性耳下腺炎、百日咳/咳嗽(百日咳菌(Bordetella pertussis))、肺炎球菌疾患/感染症(肺炎連鎖球菌(streptococcus pneumoniae))、灰白髄炎(ポリオ)、狂犬病、ロタウイルス感染症、風疹/ドイツ麻疹、破傷風(破傷風菌(Clostridium tetani))、天然痘、腸チフス(チフス菌(Salmonella typhi))、水痘/水疱瘡、黄熱病、結核、プラーク(ペスト菌(Yersinia pestis))、バットリセウイルス、日本脳炎、Q熱(コクシエラ菌(Coxiella burnetiid))、水痘帯状疱疹(水疱瘡)、炭疽(炭疽菌(Bacillus anthracis))からなる群から選択される感染症または感染に対するものであり得る。
【0084】
感染は、特に、コロナウイルス感染、例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染であり得る。
【0085】
感染症は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)であり得る。
【0086】
感染は、インフルエンザ感染であり得る。
【0087】
感染症は、インフルエンザであり得る。
【0088】
感染は、リンパ球性脈絡髄膜炎マンマレナウイルス(LCMV)感染であり得る。
【0089】
感染症は、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)であり得る。
【0090】
免疫原性組成物は、
弱毒化生ワクチンなどの生ワクチン、
不活化ワクチン、
スプリットウイルスワクチンなどのスプリットワクチン、
ウイルス様粒子に基づくワクチン、
サブユニットワクチン、タンパク質ベースのワクチン、ペプチドベースのワクチン、多糖ベースのワクチン、またはコンジュゲートワクチンなどの部分ワクチン、
組換えワクチン、および
ウイルスベクターベースまたはmRNAベースのワクチンなどの核酸ベースのワクチン、からなる群から選択され得る。
【0091】
特に、免疫原性組成物は、生ワクチン、例えば弱毒化生ワクチン;例えば、
弱毒化生ウイルスワクチン;例えば、弱毒化生麻疹ワクチン、弱毒化生ムンプスワクチン、弱毒化生風疹ワクチン、弱毒化生インフルエンザワクチン、弱毒化生水痘/水痘帯状疱疹ワクチン、弱毒化生ワクシニア(天然痘)ワクチン、弱毒化生経口ポリオワクチン(OPV)(Sabin)、弱毒化生ロタウイルスワクチンまたは弱毒化生黄熱病ワクチン;
または、例えば、
弱毒化生細菌ワクチン;例えば、BCGワクチン、チフス菌(Ty21)に対する弱毒化生ワクチン(経口腸チフスワクチンもしくは流行性チフスワクチン)、弱毒化生コレラワクチン、であり得る。
【0092】
あるいは、免疫原性組成物は、不活化ワクチン;例えば、
不活化ウイルスワクチン;例えば、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)(ソークワクチン)、不活化インフルエンザワクチン、不活化狂犬病ワクチン、不活化日本脳炎ワクチンまたは不活化A型肝炎ワクチン;
または、例えば、
不活化細菌ワクチン、例えば不活化腸チフスワクチン、不活化コレラワクチン、不活化ペストワクチン、不活化Q熱ワクチン、不活化炭疽ワクチンもしくは不活化百日咳ワクチン、であり得る。
【0093】
部分ワクチンは、
トキソイドワクチン、例えば破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドを含むワクチン;
サブユニットワクチン;および
サブビリオンワクチン、からなる群から選択されるタンパク質ベースのワクチンであり得る。
【0094】
部分ワクチンは、多糖ベースのワクチン、例えば多糖ベースの髄膜炎菌性疾患(髄膜炎菌(A,C,Y.W135))ワクチン、多糖ベースのチフス菌ワクチンまたは多糖ベースの肺炎球菌性疾患(肺炎連鎖球菌)ワクチンであり得る。
【0095】
部分ワクチンは、ポリペプチドに連結された多糖を含むコンジュゲートワクチン、例えば、コンジュゲート型血友病インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン、コンジュゲート型肺炎連鎖球菌ワクチン、コンジュゲート型髄膜炎菌ワクチンであり得る。
【0096】
免疫原性組成物は、組換えワクチンであり得る。
【0097】
世界保健機関(WHO)は、事前資格のあるワクチンのリストを提供しており、これはhttps://extranet.who.int/gavi/PQ_Web/で入手可能である。ワクチンのWHOの事前資格付与は、製品が免疫化プログラムにおける安全性および有効性の要件を満たすかどうかを決定することを目的とした標準化された手順を通して行われる包括的な評価である。したがって、WHOの事前資格のあるワクチンは、安全で有効であり、本明細書で定義される結合剤と組み合わせて本発明に従って使用するために利用可能である。
【0098】
【表3】

【0099】
したがって、本発明に従って使用される免疫原性組成物は、BCG;コレラ:不活化経口;4価デング熱(生、弱毒化);ジフテリア-破傷風;ジフテリア破傷風(抗原含有量の減少);ジフテリア-破傷風-百日咳(無細胞)(DTaP/Tdap);ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳菌およびインフルエンザ菌b型(DTaP-Hib);ジフテリア-破傷風-百日咳(無細胞)-B型肝炎-インフルエンザ菌タイプb-ポリオ(不活化);ジフテリア-破傷風-百日咳(全細胞)(DTP);ジフテリア-破傷風-百日咳菌(全細胞)-インフルエンザ菌b型(DTP-Hib);ジフテリア-破傷風-百日咳(全細胞)-B型肝炎;ジフテリア-破傷風-百日咳(全細胞)-B型肝炎インフルエンザ菌b型;エボラザイール(rVSVΔG-ZEBOV-GP、弱毒化生);インフルエンザ菌b型(Hib);A型肝炎(ヒト二倍体細胞)、不活化(成人);A型肝炎(ヒト二倍体細胞)、不活化(小児);B型肝炎、B型肝炎(小児);ヒトパピローマウイルス(二価);ヒトパピローマウイルス(九価);ヒトパピローマウイルス(四価);インフルエンザ、パンデミックH1N1;インフルエンザ、季節性(四価);インフルエンザ、季節性(三価);日本脳炎ワクチン(不活化);日本脳炎ワクチン(生、弱毒化);はしか;麻疹および風疹;麻疹、流行性耳下腺炎および風疹(MMR);麻疹、流行性耳下腺炎、風疹および水痘(MMRV)麻疹、流行性耳下腺炎および風疹(MMR);髄膜炎菌Aコンジュゲート10μg;髄膜炎菌Aコンジュゲート5μg;髄膜炎菌ACYW-135(コンジュゲートワクチン);肺炎球菌(コンジュゲート);ポリオワクチン-不活化(IPV);ポリオワクチン-経口(OPV)二価1および3型;ポリオワクチン-経口(OPV)一価1型;ポリオワクチン-経口(OPV)三価;狂犬病;ロタウイルス;ロタウイルス(生、弱毒化);風疹;破傷風トキソイド;腸チフス(コンジュゲート);腸チフス(多糖);水痘;黄熱病、カルメット・ゲリン桿菌(BCG)からなる群から選択され得る。
【0100】
免疫原性組成物は、COVID-19ワクチンであり得る。
【0101】
COVID-19ワクチンは、BNT162b2/COMIRNATY(Tozinameran)(Pfizer BioNTech)、CVnCoV/CV07050101(Zorecimeran)(CureVac)、AZD1222バキスゼブリア(AstraZeneca)、mRNA-1273(Moderna)、SARS-CoV-2ワクチン(Vero Cell)、Inactivated(lnCoV)(Sinopharm/ Beijing Institute of Biological Products Co.,Ltd.(BIBP)、CoV2 preS d(商標)-AS03ワクチン(Sanofi)およびCovishield(ChAdOx1_nCoV-19)(Serum Institute of India Pvt.Ltd)、Sputnik V(rAd26およびrAd5)(Acellena)、Sputnik Light(rAd26)(Acellena)、Ad26.COV2.S(JNJ78436735)(Janssen)、CoronaVav(Sinovac)、BBIBP-CorV(Beijing Institute of Biological Products;China National Pharmaceutical Group(Sinopharm))、EpiVacCorona(Federal Budgetary Research Institution State Research Center of Virology and Biotechnology)、Convidicea(CanSino Biologics)およびMVC-COV1901(Medigen Vaccine Biologics Corp.;Dynavax)からなる群から選択され得る。
【0102】
免疫原性組成物は、インフルエンザワクチンであり得る。
【0103】
免疫原性組成物は、インフルエンザパンデミック(H1N1)、インフルエンザ季節性(三価)、およびインフルエンザ季節性(四価)からなる群から選択されるタイプのインフルエンザワクチンであり得る。
【0104】
感染症は、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ワクチンであり得る。
【0105】
免疫原性組成物は、小児ワクチンまたは子どもワクチンであり得る。
【0106】
免疫原性組成物は、特に子どもブースターワクチンであり得る。
【0107】
あるいは、免疫原性組成物は、予防的または治療的癌ワクチンなどの癌ワクチンであり得る。
【0108】
ワクチン抗原は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原であり得る。
【0109】
免疫原性組成物は、前記腫瘍または癌によって発現されるワクチン抗原を含み得る。
【0110】
標的抗原およびワクチン抗原は両方とも、前記腫瘍または癌によって発現され得る。そのような実施形態によれば、結合剤および免疫原性組成物は、同じ腫瘍または癌を指向するかまたは標的とする。
【0111】
本発明の方法において、ワクチン抗原と標的抗原は同じであってもよく、またはワクチン抗原は標的抗原の一部、部分配列もしくは変異体であってもよい。
【0112】
免疫原性組成物は、Her2/neu、サバイビンまたはMuc-1などの前記腫瘍によって過剰発現される抗原;癌ネオ抗原、例えばp53ネオ抗原;MAGE-A3、MAGE-A2、MAGE-A4、PRAME、CT83、SSX2またはNY-ESO-1などの癌精巣抗原;Mart1、PSAまたはPAPなどの分化抗原およびHPV抗原などのウイルス関連抗原からなる群から選択されるワクチン抗原を含み得る。
【0113】
免疫原性組成物は、個別化癌ワクチンであってもよく、ワクチン抗原は、対象の腫瘍に特異的なネオ抗原であり得る。
【0114】
好ましくは、ワクチン抗原は、1つ以上のT細胞エピトープを含む。
【0115】
また、免疫原性組成物は、好ましくは、インビボおよび/またはインビトロで細胞傷害性T細胞応答を誘発することができる。
【0116】
ワクチンは、前記腫瘍または癌のT細胞活性化および/またはT細胞浸潤を含むT細胞応答を誘発することができることがさらに好ましい。
【0117】
また、本発明による方法で使用される免疫原性組成物は、前記腫瘍または癌のT細胞浸潤および腫瘍浸潤T細胞の活性化を含むT細胞応答を誘発することができ得る。
【0118】
本発明による方法で使用される免疫原性組成物は、腫瘍における免疫細胞の浸潤および/または増殖、例えば浸潤および/または増殖ナチュラルキラー(NK)細胞および/または樹状細胞(DC)を誘発することができ得る。
【0119】
当業者は、T細胞浸潤またはT細胞活性化を誘発する免疫原性組成物の能力を容易に決定することができるであろう。一例として、T細胞浸潤および/またはT細胞活性化は、前記結合剤の第2の結合領域が結合する抗原を発現する腫瘍を有するマウスにおいて、マウスを腫瘍特異的T細胞の移入に供し、次いで免疫原性組成物を皮下注射し、続いて結合剤を皮下注射する手順を使用して決定され得る。
【0120】
例として、T細胞浸潤および/または活性化は、
i)結合剤が結合することができる抗原を発現し、第1の生物発光を生じさせることができる第1の酸化酵素および第2の生物発光を生じさせることができる第2の酸化酵素を構成的に発現するT細胞を提供するステップであって、第2の酸化酵素の発現が、T細胞活性化によって、例えば活性化T細胞核因子(NFAT)などによって誘導される、ステップと、
ii)AlbinoC57BL/6マウスなどの、前記結合剤の腫瘍標的化結合領域が結合する抗原を発現する腫瘍を有するマウスに、i)で定義されるT細胞を尾静脈内注射によって注射するステップと、
iii)ii)におけるT細胞の注射の1日後および8日後に、尾部基部での皮下注射によって2用量の免疫原性組成物をマウスに投与するステップと、
iv)ii)におけるT細胞の注射の10日後および14日後に、静脈内注射または注入によって2用量の前記結合剤をマウスに投与するステップと、
v)前記酸化酵素のそれぞれの基質をマウスに注射し、前記第1および第2の生物発光を測定するステップと、を含む手順で決定され得る。
【0121】
さらに、例として、T細胞浸潤および/または活性化は、本質的に本明細書の例4に記載の手順を使用して、または例4に記載の手順を使用して決定される。
【0122】
さらなる実施形態では、本発明による方法は、前記対象における既存のT細胞免疫を決定することを含む。既存のT細胞免疫は、例えば上で定義したワクチンによる以前のワクチン接種からのものであり得る。あるいは、既存のT細胞免疫は、上で定義された病原体のいずれか1つによる感染を含む以前の感染の結果であり得るか、または前記腫瘍に対する免疫応答の結果であり得る。
【0123】
既存のT細胞免疫は、末梢T細胞活性化の測定によって決定される。
【0124】
本発明による方法は、子どもワクチン接種プログラムなどのワクチン接種プログラムへの対象の以前の参加を決定することを含み得る。これは、特に子どもワクチン接種プログラムが長年にわたって確立され、十分に文書化されている国または地域において、本発明による方法の一部としてブーストされ得る既存のT細胞免疫を決定する簡便な方法であり得る。
【0125】
本発明による方法は、対象が以前に有していた、および/またはT細胞免疫応答を発生させた感染または感染症、例えば、上で定義した感染または感染症のいずれかに対するワクチンである免疫原性組成物を使用し得る。
【0126】
免疫原性組成物は、従来の技術に従って、薬学的に許容される担体または希釈剤、ならびに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤と共に製剤化され得る。薬学的に許容される担体または希釈剤、ならびに任意の他の公知の賦形剤は、ワクチン抗原および選択された投与様式と共に使用するのに好適であるべきである。本発明に従って使用される免疫原性組成物はまた、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、界面活性剤(例えば、Tween-20もしくはTween-80などの非イオン性界面活性剤)、安定剤(例えば、糖もしくはタンパク質を含まないアミノ酸)、保存剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または医薬組成物に含めるのに好適な他の材料を含み得る。
【0127】
本発明による方法は、アジュバントの投与をさらに含み得る。
【0128】
免疫応答をTh1応答またはTh2応答に向かわせる能力を有するアジュバントと同様に、Th1応答およびTh2応答の両方を誘発することができるアジュバントが利用可能である。したがって、本発明による方法で使用されるアジュバントは、Th1/Th2アジュバント、Th1アジュバントまたはTh2アジュバント、好ましくはTh1アジュバントであり得る。
【0129】
同様に、免疫原性組成物は、アジュバントと一緒に投与された場合、NK細胞応答および/またはTh1/Th2型免疫応答、Th1型免疫応答またはTh2型免疫応答、好ましくはTh1型免疫応答を誘発することができ得る。
【0130】
本発明による方法で使用される免疫原性組成物は、アジュバントを含むものであり得る。そのような実施形態では、特に、アジュバントの別個の投与は、いかなる追加の利益も提供し得ないことが企図される。
【0131】
これらの実施形態によれば、アジュバントを含む免疫原性組成物は、Th1/Th2型免疫応答、Th1型免疫応答、またはTh2型免疫応答、好ましくはTh1型免疫応答を誘発することができ得る。本発明の文脈において、Th1型免疫応答は、抗原発現腫瘍細胞を標的とし溶解する能力を有する細胞傷害性T細胞を生成するため、好ましい場合がある。
【0132】
本発明の目的のために、アルミニウム塩、例えばミョウバン(XAl(SO・12HO(式中、Xは、KまたはNH などの一価カチオンである))を含むアジュバントを使用してもよい。伝統的に、アルミニウム塩を含むアジュバントは、感染性細菌およびウイルスに対するワクチンに一般的に使用されてきた。
【0133】
あるいは、アジュバントは、水中油型エマルジョンなどのエマルジョン系アジュバントであり得る。
【0134】
特定の実施形態では、アジュバントは、認可ワクチン(Del Giudice et al.,Seminars in Immunology 39,14-21,2018)に一般的に使用されるアジュバントの群から選択される。したがって、アジュバントは、
a)スクアレン、ポリソルベート80およびソルビタントリオレエートを含むアジュバント;例えばMF59、
b)スクアレン、ポリソルベート80およびα-トコフェロールを含むアジュバント;例えばAS03、
c)スクアレン、ポリオキシエチレン、セトステアリルエーテル、マンニトールおよびソルビタンオレエートを含むアジュバント;例えば、AF03、
d)3-O-デサシル-4’-モノホスホリルリピドA(MPL)、キラヤサポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)、フラクション21(QS-21)およびリポソームを含むアジュバント;例えばAS01;ならびに
e)3-O-デサシル-4’-モノホスホリルリピドA(MPL)および水酸化アルミニウムを含むアジュバント;例えば、AS04、からなる群から選択され得る。
あるいは、アジュバントは、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、例えば、イミキモド(Aldara)、レシキモドおよびガルディキモドからなる群から選択されるTLR7アゴニストであり得る。
【0135】
アジュバントは、
i)Toll様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、髄膜炎菌ポリンB(porB)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)およびチルソトリモドからなる群から選択されるTLR9アゴニスト、
ii)Toll様受容体4(TLR4)アゴニスト、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)、グルコピラノシルリピドA(GLA)およびネオセプチン-3からなる群から選択されるTLR4アゴニスト、
iii)Toll様受容体5(TLR5)アゴニスト、例えばモビラン、エントリモドもしくは組換えフラジェリンFlicCからなる群から選択されるTLR5アゴニスト;ならびに/または
iv)Toll様受容体3(TLR3)アゴニスト、例えばPoly-ICおよびその誘導体からなる群から選択されるTLR3アゴニスト、を含み得る。
【0136】
アジュバントは、脂質ナノ粒子(LPN)などのナノ粒子、例えば、アジュバントが組み込まれた脂質ナノ粒子を含み得る。
【0137】
本発明による方法で使用される免疫原性組成物は、サイトカインを含み得る。あるいは、サイトカインを免疫原性組成物と組み合わせて投与してもよく、またはサイトカインをアジュバントに含めてもよく、またはアジュバントと組み合わせてもよく、これは、免疫原性組成物と組み合わせて対象に投与されてもよく、例えば上に開示されるアジュバントのいずれかである。
【0138】
したがって、本発明による方法は、サイトカインと組み合わせて免疫原性組成物を投与するステップを含み得る。サイトカインは、好ましくは、インターロイキン-2(IL2)受容体アゴニスト、例えば、ヒトIL2/アルデスロイキン、もしくはヒトインターロイキン-15、またはこれら2つのいずれかの類似体である。ヒトインターロイキン-2(予測シグナルペプチドを除く成熟配列)のアミノ酸配列を配列番号55に示す。ヒトインターロイキン-15(予測シグナルペプチドおよびプロペプチド配列を除く成熟配列)のアミノ酸配列を配列番号56に示す。
【0139】
さらに、改変されたサイトカインまたは遺伝子操作されたサイトカイン、例えば、半減期延長免疫サイトカイン、条件付き活性CD25ヌル結合サイトカインが本発明に従って使用され得る。特定の例としては、NKTR-214(ベンペガルデロイキン、PEG化IL2)Nektar Therapeutics、Neo-2/15(デノボ設計IL-2/IL-15模倣物)Neoleukin、IL-2v(CD25ヌル結合)Rocheが挙げられる。
【0140】
本発明による方法では、結合剤は、非経口投与または全身投与、例えば注射または注入によって、例えば、静脈内注射または注入によって対象に投与され得る。
【0141】
好ましくは、結合剤は、1つ以上の治療サイクルで対象に提供される。
【0142】
結合剤は、1週間に1回(1Q1W)、2週間に1回(1Q2W)、3週間に1回(1Q3W)または4週間に1回(1Q4W)投薬され得る。
【0143】
免疫原性組成物は、局所効果を達成するために対象に投与されてもよく、および/または治療される腫瘍への注射などによる局所投与によって投与されてもよい。
【0144】
あるいは、免疫原性組成物は、全身効果を達成するために投与されてもよく、および/または全身投与、例えば経口投与、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射もしくは経粘膜経路によって投与されてもよい。
【0145】
アジュバントは、局所効果を達成するために/局所投与によって対象に投与され得る。例えば、アジュバントは、前記腫瘍への注射によって投与され得る。
【0146】
アジュバントは、全身効果を達成するために/全身投与によって、例えば経口投与、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射または経粘膜経路によって投与され得る。
【0147】
サイトカインは、注射または注入などによる非経口投与または全身投与によって、例えば、静脈内注射または注入によって、対象に投与され得る。それはまた、前記サイトカインのインサイチュ産生のために、核酸製剤(例えばmRNA)の形態で対象に投与され得る。
【0148】
本発明による治療を受ける前に、対象は、免疫原性組成物、例えばワクチン、および異なる目的のための、例えば感染症または感染症を治療するためのアジュバントでの治療を受けていてもよい。また、対象は、本発明による治療の前に、サイトカイン、例えばIL-2による治療を受けていてもよい。IL-2は、転移性腎細胞癌および転移性黒色腫の治療のために承認されており、したがって、癌免疫療法として対象に提供されていてもよい。しかしながら、本発明による方法では、免疫原性組成物、ならびに、場合により、アジュバントおよび/またはサイトカイン(インターロイキン2受容体アゴニストなど)は、好ましくは、前記腫瘍の成長を減少させるために、および/または前記癌を治療するために提供される治療レジメン/同じ治療レジメンの一部として投与されてもよいことを理解されたい。
【0149】
本発明のさらなる実施形態では、免疫原性組成物の投与および結合剤の投与は、養子T細胞療法と組み合わされる。したがって、本発明による方法は、複数のT細胞を対象に投与することを含み得る。
【0150】
免疫原性組成物は、結合剤の投与と同時にまたはそれと同日に、結合剤の第1の用量の投与と同時にまたはそれと同日に、および/または結合剤による第1の治療サイクルの一部として、前記対象に投与され得る。
【0151】
免疫原性組成物の投与および結合剤の投与、例えば免疫原性組成物の投与および結合剤の最初の用量の投与および/または結合剤による第1の治療サイクルの開始は、最大で2ヶ月、例えば最大で1ヶ月、最大で4週間、最大で3週間、最大で2週間、最大で1週間、最大で6日間、最大で5日間、最大で4日間、最大で3日間、または最大で2日間の期間で区切られ得る。
【0152】
免疫原性組成物の投与および結合剤の投与、例えば免疫原性組成物の投与および結合剤の最初の用量の投与および/または結合剤による第1の治療サイクルの開始は、2日~2ヶ月間、例えば2日~1ヶ月間、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月間、3日~1ヶ月間、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月間、4日~1ヶ月間、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月間、5日~1ヶ月間、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月間、例えば6日~1ヶ月間、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月間、1週間~1ヶ月間、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月間、3週間~1ヶ月間または3~4週間の期間で区切られ得る。
【0153】
免疫原性組成物は、結合剤の投与前、結合剤の第1の投与量の投与前および/または結合剤による第1の治療サイクルの前に前記対象に投与され得る。
【0154】
免疫原性組成物は、結合剤の投与の、結合剤の第1の投与量の投与の、および/または結合剤による第1の治療サイクルの、2日前~2ヶ月前、例えば、結合剤の投与の、結合剤の第1の投与量の投与の、および/または結合剤による第1の治療サイクルの、2日~1ヶ月、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月、3日~1ヶ月、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月、4日~1ヶ月、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月、5日~1ヶ月、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月、6日~1ヶ月、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月、1週間~1ヶ月、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月、3週間~1ヶ月、または例えば3~4週間前に対象に投与され得る。
【0155】
複数のT細胞を前記対象に投与してもよく、または養子T細胞療法を、結合剤の投与と同時もしくは同日に、結合剤の第1の用量の投与と同時もしくは同日に、および/または結合剤による第1の治療サイクルの一部として、前記対象に提供してもよい。
【0156】
複数のT細胞を前記対象に投与してもよく、または養子T細胞療法を、結合剤の投与前に、結合剤の第1の投与量の投与前に、および/または結合剤による第1の治療サイクルの前に、前記対象に提供してもよい。
【0157】
本発明による方法では、
i)免疫原性組成物の投与および複数のT細胞の投与、または養子T細胞療法、ならびに
ii)結合剤の投与、例えば、結合剤の第1の用量の投与および/または結合剤による第1の治療サイクルの開始、
は、2日~2ヶ月、例えば2日~1ヶ月、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月、3日~1ヶ月、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月、4日~1ヶ月、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月、5日~1ヶ月、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月、例えば6日~1ヶ月、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月、1週間~1ヶ月、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月、3週間~1ヶ月または3~4週間の期間で区切られ得る。
【0158】
免疫原性組成物および複数のT細胞、または養子T細胞療法は、結合剤の投与の、結合剤の第1の投与量の投与の、および/または結合剤による第1の治療サイクルの、2日前~2ヶ月前、例えば、結合剤の投与の、結合剤の第1の投与量の投与の、および/または結合剤による第1の治療サイクルの、2日~1ヶ月、2日~4週間、2日~3週間、2日~2週間、2日~1週間、3日~2ヶ月、3日~1ヶ月、3日~4週間、3日~3週間、3日~2週間、3日~1週間、4日~2ヶ月、4日~1ヶ月、4日~4週間、4日~3週間、4日~2週間、4日~1週間、5日~2ヶ月、5日~1ヶ月、5日~4週間、5日~3週間、5日~2週間、5日~1週間、6日~2ヶ月、6日~1ヶ月、6日~4週間、6日~3週間、6日~2週間、1週間~2ヶ月、1週間~1ヶ月、1~4週間、1~3週間、1~2週間、3週間~2ヶ月、3週間~1ヶ月、または例えば3~4週間前に対象に投与され得る。
【0159】
結合剤、免疫原性組成物、ならびに、場合により、アジュバント、複数のT細胞およびサイトカイン、例えばインターロイキン-2受容体アゴニストのそれぞれは、有効量で対象に提供されてもよいことが理解されるべきである。当業者が理解するように、本発明による免疫原性組成物と組み合わせて使用される場合の結合剤の効率的な投与量および投与レジメンは、例えば、選択される特定の結合剤および投与経路、ならびに治療される特定の腫瘍または癌に依存し得る。それは、対象の症状の重症度、対象の大きさおよび全体的な健康ならびに治療に対する対象または癌もしくは腫瘍の応答を含むいくつかのさらなる因子にさらに依存し得る。
【0160】
有効量および投与レジメンは、当業者によって決定され得る。例えば、治療的使用のための結合剤の「有効量」は、腫瘍成長を阻害もしくは停止する能力、疾患の進行を遅らせる能力、または疾患を安定化する能力によって測定され得る。
【0161】
特に、本発明による治療の有効性は、固形腫瘍における応答評価基準、バージョン1.1(RECIST基準v1.1)に従って評価され得る。RECIST基準を以下の表4に示す。
【0162】
【表4】
【0163】
本発明の特定の実施形態では、結合剤の第1の投与量は、免疫原性組成物の投与前に前記対象に投与され、および/または免疫原性組成物は、前記結合剤を用いた第2または後続の処置スケジュールの一部として投与される。
【0164】
本発明による方法は、対象において免疫原性組成物に対するT細胞特異的応答があるかどうかを決定すること、および/または、免疫原性組成物に特異的なT細胞の前記対象における拡大を監視することを含んでもよい、免疫原性組成物に対する任意のT細胞特異的応答を監視すること、をさらに含んでもよい。
【0165】
標的抗原は、前記腫瘍に特異的な抗原であり得る。
【0166】
標的抗原は、前記腫瘍または癌の細胞によって過剰発現される、例えば、健常組織の細胞と比較した場合に過剰発現される抗原であり得る。
【0167】
特に、標的抗原は、前記腫瘍または癌の細胞によって排他的に発現される抗原であってもよく、または腫瘍微小環境(例えば、TAM、MDSC、Treg)内の免疫抑制細胞上で過剰発現される抗原であってもよい。
【0168】
標的抗原は、例えば、受容体チロシン-プロテインキナーゼerbB-2(Her2)、例えばヒトHer2(UniProtKB-P04626);Bリンパ球抗原CD19、例えばヒトBリンパ球抗原CD19(UniProtKB-P15391);上皮細胞接着分子(EpCAM)、例えばヒトEpCAM(UniProtKB-P16422);上皮成長因子受容体(EGFR)、例えばヒトEGFR(UniProtKB-P00533);癌胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEA、CEACAM5、CD66e)、例えばヒトCEA(UniProtKB-P06731);骨髄細胞表面抗原CD33(CD33)、例えばヒトCD33(UniProtKB-P20138);エフリンA型受容体2(EphA2)、例えばヒトEphA2(UniProtKB-P29317);コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(MCSPまたはHMW-MAA)、例えばヒトMSCP)からなる群から選択され得る。
【0169】
前記標的抗原に結合する抗原結合領域は、Her2に結合するハーセプチンの抗原結合領域、CD19に結合するブリナツモマブの抗原結合領域、EpCAMに結合するカツマキソマブの抗原結合領域、EGFRに結合するセツキシマブまたはパニツムマブの抗原結合領域、およびCD33に結合するリンツズマブの抗原結合領域からなる群から選択され得る。
【0170】
本発明による方法で治療される腫瘍は、特に固形腫瘍であり得る。
【0171】
腫瘍または癌は、乳癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、食道癌および頭頸部の扁平上皮癌、子宮頸癌、膵臓癌、精巣癌、悪性黒色腫、軟部組織癌、例えば滑膜肉腫からなる群から選択され得る。
【0172】
本発明に従って治療される腫瘍は、黒色腫および腺癌(例えば、乳管腺癌)からなる群からさらに選択され得る。
【0173】
あるいは、本発明に従って治療される腫瘍は、血液腫瘍であり得る。
【0174】
血液腫瘍は、B細胞リンパ腫、および慢性リンパ性白血病または急性リンパ性白血病からなる群から選択され得る。
【0175】
本発明に従って治療される腫瘍は、特に、いわゆる「冷たい」腫瘍、すなわち、いかなる(機能的な)免疫浸潤物もない腫瘍であり得る。冷たい腫瘍は、特に、腫瘍T細胞浸潤の欠如または不足を特徴とし得る。T細胞浸潤の欠如または不足の原因となる機構には、腫瘍抗原の欠如、抗原提示の欠如、ならびにT細胞活性化の欠如および腫瘍床へのホーミングの欠如が含まれ得る。
【0176】
また、本発明による方法は、制御性T細胞(Treg)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)および/またはM2型マクロファージなどの抑制性免疫細胞の存在を再び特徴とする免疫抑制性腫瘍微小環境を特徴とする腫瘍を治療するのに特に有効であり得る。抑制性免疫細胞は、腫瘍のT細胞浸潤を予防もしくは低減し得る、かつ/またはT細胞機能を局所的に抑制し得る。
【0177】
本発明による方法で使用される結合剤では、CD3に結合する抗原結合領域は、特に、配列番号1で指定されるヒトCD3ε(イプシロン)などのヒトCD3ε(イプシロン)に結合するものであり得る。
【0178】
本発明の特定の実施形態では、CD3に結合する抗原結合領域は、
それぞれ配列番号2、配列番号3および配列番号4のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH);[野生型抗CD3(SP34/ヒト化SP34、国際公開第2015001085号(Genmab))-VH CDR配列]を含み、
ならびに、それぞれ配列番号6、GTNおよび7のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型抗CD3、VL CDR配列]を含んでもよい。
【0179】
CD3に結合する抗原結合領域は、
配列番号57の配列、または配列番号5の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)[野生型抗CD3-VH全長配列]を含み、
および、配列番号60の配列、または配列番号8の配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型抗CD3-VL全長配列]を含んでもよい。
【0180】
本発明による方法で使用される結合剤は、配列番号5に示されるVH配列および配列番号8に示されるVL配列を含む抗原結合領域[野生型抗CD3(ヒト化SP34、国際公開第2015001085号(Genmab))VHおよびVL配列]を有する結合剤よりも低いヒトCD3ε結合親和性を有するものであり得、好ましくは、前記親和性は、少なくとも5倍低い、例えば少なくとも10倍低い、例えば少なくとも20倍低い、少なくとも30倍低い、少なくとも40倍低い、少なくとも45倍低いまたは例えば少なくとも50倍低い。
【0181】
CD3に結合する前記抗原結合領域は、200~1000nMの範囲内、例えば300~1000nMの範囲内、400~1000nMの範囲内、500~1000nMの範囲内、300~900nMの範囲内、400~900nMの範囲内、400~700nMの範囲内、500~900nMの範囲内、500~800nMの範囲内、500~700nMの範囲内、600~1000nMの範囲内、600~900nMの範囲内、600~800nMの範囲内、または例えば600~700nMの範囲内の平衡解離定数Kで結合するものであり得る。
【0182】
CD3に結合する抗原結合領域は、1~100nMの範囲内、例えば5~100nMの範囲内、10~100nMの範囲内、1~80nMの範囲内、1~60nMの範囲内、1~40nMの範囲内、1~20nMの範囲内、5~80nMの範囲内、5~60nMの範囲内、5~40nMの範囲内、5~20nMの範囲内、10~80nMの範囲内、10~60nMの範囲内、10~40nMの範囲内、または例えば10~20nMの範囲内の平衡解離定数Kで結合するものであり得る。
【0183】
本発明のいくつかの実施形態では、CD3に結合する抗原結合領域は、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含み、
重鎖可変(VH)領域は、配列番号5に示される配列を含む重鎖可変(VH)領域と比較した場合、CDR配列のうちの1つにおいてアミノ酸置換を有し、置換は、T31、N57、H101、G105、S110およびY114からなる群から選択される位置であり、位置は、配列番号5の配列に従ってナンバリングされ[VH_huCD3-H1L1]、
野生型軽鎖可変(VL)領域は、それぞれ配列番号6、GTNおよび配列番号7に示されるCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0184】
CD3に結合する抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2およびCDR3は、配列番号5に示される配列のCDR1、CDR2およびCDR3と比較した場合、合計で最大1、2、3、4または5個のアミノ酸置換を含み得る。
【0185】
CD3に結合する抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列は、野生型重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性または少なくとも99%の配列同一性を有し得、配列同一性は、CDに結合する抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2およびCDR3の配列からなるアミノ酸配列を、野生型重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2およびCDR3の配列を含むアミノ酸配列と整列させることに基づいて計算される。
【0186】
CD3に結合する抗原結合領域は、特に、T31M、T31P、N57E、H101G、H101N、G105P、S110A、S110G、Y114M、Y114R、Y114Vからなる群から選択される変異を含み得る。
【0187】
CD3に結合することができる抗原結合領域は、
a)配列番号9、配列番号3および配列番号4に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[VH CDR1-T31P+野生型VH CDR2、3]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
b)配列番号11、配列番号3および配列番号4に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[VH CDR1-T31M+野生型VH CDR2、3]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
c)配列番号2、配列番号13および配列番号4に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[VH CDR-N57E+野生型VH CDR1、3]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
d)配列番号2、配列番号3および配列番号15に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-H101G]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、
e)配列番号2、配列番号3および配列番号17に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-H101N]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3];
f)配列番号2、配列番号3および配列番号19に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-G105P]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3];
g)配列番号2、配列番号3および配列番号21に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-S110A]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
h)配列番号2、配列番号3および配列番号23に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-S110G]、ならびに配列番号658に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、
i)配列番号2、配列番号3および配列番号25に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-Y114V]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
j)配列番号2、配列番号3および配列番号27に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-Y114M]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、または
k)配列番号2、配列番号3および配列番号29に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-Y114R]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]、を含み得る。
【0188】
CD3に結合することができる抗原結合領域は、配列番号2、配列番号3および配列番号15に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH)[野生型VH CDR1、2+VH CDR3-H101G]、ならびに配列番号6に示される配列、配列GTNおよび配列番号7に示される配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[野生型VL CDR1、2、3]を含み得る。
【0189】
ヒトCD3に結合することができる抗原結合領域は、
a)配列番号10に示されるVH配列[VH T31P全長配列]および配列番号8に示されるVL配列[野生型全長配列]、
b)配列番号12に示されるVH配列[VH T31M全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
c)配列番号14に示されるVH配列[VH N57E全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
d)配列番号16に示されるVH配列[VH H101G全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
e)配列番号18に示されるVH配列[VH H101N全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
f)配列番号20に示されるVH配列[VH G105P全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
g)配列番号22に示されるVH配列[VH S110A全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
h)配列番号24に示されるVH配列[VH S110G全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
i)配列番号26に示されるVH配列[VH Y114V全長配列]および配列番号8に示されるVL配列、
j)配列番号28に示されるVH配列[VH Y114M全長配列]および配列番号8に示されるVL配列;ならびに
k)配列番号30に示されるVH配列[VH Y114R全長配列]および配列番号8に示されるVL配列
からなる群から選択されるVH配列およびVL配列を含み得る。
【0190】
ヒトCD3に結合することができる抗原結合領域は、配列番号10に示されるVH配列[VH H101G全長配列]および配列番号8に示されるVL配列を含むことが現在好ましい。
【0191】
結合剤は、抗体、例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群から選択されるイソタイプサブクラスの抗体であることがさらに好ましい。
【0192】
結合剤は、全長IgG1抗体などの全長抗体であり得る。
【0193】
一実施形態では、抗体は、ヒト抗体であるか、またはすべての可変領域および定常領域がヒト抗体のものである抗体である。あるいは、抗体は、ヒト化抗体またはすべての可変領域がヒト化抗体に由来する抗体であり得る。
【0194】
抗体はまた、CD3に結合する結合領域を含む第1のアームおよび標的抗原に結合する結合領域を含む第2のアームを有し得、第1の結合アームは、ヒト抗体のものであり、第2の結合アームは、ヒト化抗体のものであり、またはその逆である。
【0195】
結合剤は、IgG1m(f)アロタイプの抗体であり得る。
【0196】
結合剤は、特に二重特異性抗体などの多重特異性抗体であり得る。
【0197】
本発明において使用され得る二重特異性抗体分子の例は、(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一抗体、(ii)例えば、余分なペプチドリンカーによってタンデムに連結された2つのscFvを介して、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する一本鎖抗体、(iii)二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig(商標))であって、各軽鎖および重鎖が、短いペプチド結合によってタンデムに2つの可変ドメインを含有する、二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig(商標))(Wu et al.,Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin(DVD-Ig(商標))Molecule,In:Antibody Engineering,Springer Berlin Heidelberg(2010));(iv)化学結合二重特異性(Fab’)2断片;(v)標的抗原のそれぞれに対して2つの結合部位を有する四価二重特異性抗体をもたらす2つの一本鎖ダイアボディの融合物であるTandab(登録商標);(vi)多価分子をもたらすscFvとダイアボディとの組み合わせである屈曲体;(vii)Fabに適用すると、異なるFab断片に連結された2つの同一のFab断片からなる三価二重特異性結合タンパク質を生じ得る、プロテインキナーゼAの「二量体化およびドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドックおよびロック」分子(Dock-and-Lock(登録商標));(viii)例えば、ヒトFabアームの両末端に融合した2つのscFvを含む、いわゆるScorpion分子;ならびに(ix)ダイアボディを含む。
【0198】
一実施形態では、本発明に従って使用される二重特異性抗体は、ダイアボディ、CrossMabなどのクロスボディ、または(国際公開第2011/131746号;GenmabA/S)に記載されるような制御されたFabアーム交換を介して得られる二重特異性抗体である。
【0199】
異なるクラスの二重特異性抗体の例としては、(i)ヘテロ二量体化を強制するための相補的なCH3ドメインを有するIgG様分子、(ii)分子の両面がそれぞれ、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片またはFab断片の一部を含有する、組換えIgG様二重標的化分子;(iii)全長IgG抗体が余分なFab断片またはFab断片の一部に融合されている、IgG融合分子;(iv)一本鎖Fv分子または安定化ダイアボディが重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部に融合されている、Fc融合分子;(v)異なるFab断片が一緒に融合され、重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部に融合された、Fab融合分子;ならびに(vi)異なる一本鎖Fv分子または異なるダイアボディまたは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ(登録商標))が、互いに、または重鎖定常ドメイン、Fc領域もしくはその一部に融合した別のタンパク質もしくは担体分子に融合した、ScFvおよびダイアボディ系ならびに重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例としては、Triomab(登録商標)(Trion Pharma/Fresenius Biotech、国際公開第2002/020039号;Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knobs-into-Holes(Genentech、国際公開第2011117329号;Roche)、CrossMAb(Roche、[33])およびthe electrostatically-matched(Amgen、欧州特許第1870459号明細書;Amgenおよび国際公開第2009089004号;Amgen;Chugai[米国特許出願公開第201000155133号;Chugai;Oncomed、国際公開第2010129304号;Oncomed)、LUZ-Y(Genentech)、DIG-bodyおよびPIG-body(Pharmabcine)、the Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono、国際公開第2007110205号;EMD Serono)、the Biclonics(Merus)、FcΔAdp(Regeneron、国際公開第2010/015792号;Regeneron)、二重特異性IgG1およびIgG2(Pfizer/Rinat、国際公開第11143545号;Pfizer/Rinat)、Azymetric scaffold(Zymeworks/Merck、国際公開第2012058768号:Zymeworks/Merck)、mAb-Fv(Xencor、国際公開第2011028952号;Xencor)、二価二重特異性抗体(Roche国際公開第2009/080254号;Roche)およびDuoBody(登録商標)分子(Genmab A/S、国際公開第2011/131746号;Genmab A/S)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
組換えIgG様二重標的化分子の例としては、Dual Targeting(DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Antibody(Genentech)、Cross-linked Mabs(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star、[44])、Zybodies(商標)(Zyngenia)、共通軽鎖を用いたアプローチ(Crucell/Merus、[45])、κλBodies(NovImmune)およびCovX-body(CovX/Pfizer)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
IgG融合分子の例としては、Dual Variable Domain(DVD)-Ig(商標)(Abbott、米国特許第7,612,181号;Abbott、Dual domain double head antibodies(Unilever;Sanofi Aventis、国際公開第20100226923号;Unilever、Sanofi Aventis)、IgG-like Bispecific(ImClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)およびBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(BiogenIdec,米国特許第007951918号;Biogen Idec)、scFv fusion(Novartis)、scFv fusion(Changzhou Adam BiotechInc.、中国特許第102250246号;Changzhou Adam BiotechInc.)およびTvAb(Roche、国際公開第2012025525号;Roche、国際公開第2012025530号;Roche)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0203】
Fc融合分子の例としては、ScFv/Fc Fusions(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion、Zymogenetics/BMS)、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DART(商標))(MacroGenics,国際公開第2008157379号;Macrogenics、国際公開第2010/080538号;MacrogenicsおよびDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine-中国)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
Fab融合二重特異性抗体の例としては、F(ab)(Medarex/AMGEN)、Dual-Action or Bis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(登録商標)(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)およびFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0205】
ScFv系、ダイアボディ系およびドメイン抗体の例としては、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))(Micromet、タンデムダイアボディ(Tandab(商標))(Affimed)、二重親和性リターゲティング技術(DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合(Merrimack)およびCOMBODY(Epigen Biotech)、dual targeting nanobodies(登録商標)(Ablynx)、二重標的化重鎖のみのドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
本発明に従って使用される結合剤において、各抗原結合領域は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み得、前記可変領域はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4を含む。
【0207】
結合剤は、2つの重鎖定常領域(CH)および2つの軽鎖定常領域(CL)を含み得る。
【0208】
本発明による方法で使用される結合剤は、第1および第2の重鎖を含み得、前記第1および第2の重鎖のそれぞれは、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含み、前記第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群から選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、前記第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖のT366、L368、K370、D399、F405、Y407およびK409からなる群から選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、前記第1および前記第2の重鎖の前記置換は、同じ位置にはなく、前記アミノ酸位置は、EUナンバリングに従ってナンバリングされている。
【0209】
ヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置のアミノ酸は、特に前記第1の重鎖のRであり得、ヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置のアミノ酸は、特に前記第2の重鎖のLであり得、またはその逆であり得る。
【0210】
本発明に従って使用される結合剤は、第1および第2の重鎖を含む結合剤であり得、第1および第2の重鎖の両方において、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸残基は、それぞれFおよびEである。
【0211】
本発明に従って使用される結合剤は、第1および第2の重鎖を含む結合剤であり得、第1および第2の重鎖の両方において、EuナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置D265に対応する位置のアミノ酸残基はAである。
【0212】
本発明に従って使用される結合剤はまた、第1および第2の重鎖を含む結合剤であり得、第1および第2の重鎖の両方において、EuナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置G236に対応する位置のアミノ酸残基はRである。
【0213】
本発明に従って使用される結合剤は、第1の重鎖を含み、および第2の重鎖を含んでもよい結合剤であり得、第1の重鎖、および存在する場合には第2の重鎖は、同一の非改変抗体と比較して、抗体がより少ない程度でFc媒介エフェクター機能を誘導するように改変されている。
【0214】
結合剤は、カッパ(κ)軽鎖を含み得る。
【0215】
あるいは、結合剤は、ラムダ(λ)軽鎖を含み得る。
【0216】
特に、結合剤は、CD3に結合する結合領域を含む重鎖およびラムダ(λ)軽鎖を含み得る。
【0217】
あるいは、結合剤は、CD3に結合する結合領域を含む重鎖およびカッパ(κ)軽鎖を含み得る。
【0218】
本発明に従って使用される結合剤に含まれる場合、カッパ(κ)軽鎖は、
a)配列番号31に示される配列と、
b)a)で定義された配列のN末端またはC末端から出発して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列などの、a)の配列の部分配列と、
c)a)またはb)で定義されたアミノ酸配列と比較して、最大で5個の置換、例えば最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個または最大で1個の置換を有する配列と、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0219】
本発明に従って使用される結合剤に含まれる場合、ラムダ(λ)軽鎖は、
a)配列番号32に示される配列と、
b)a)で定義された配列のN末端またはC末端から出発して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列などの、a)の配列の部分配列と、
c)a)またはb)で定義されたアミノ酸配列と比較して、最大で5個の置換、例えば最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個または最大で1個の置換を有する配列と、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0220】
前記第1および/または第2の重鎖の定常領域は、
a)配列番号33に示される配列と、
b)a)で定義された配列のN末端またはC末端から出発して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列などの、a)の配列の部分配列と、
c)a)またはb)で定義されたアミノ酸配列と比較して、最大で5個の置換、例えば最大で4個の置換、最大で3個、最大で2個または最大で1個の置換を有する配列と、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなり得る。
【0221】
最大で5個の置換は、L234F、L235E、D265A、F405LおよびK409Rからなる群から選択される1個以上の置換、例えば1、2、3または4個の置換を含み得る。
【0222】
あるいは、最大5個の置換は、L234F、L235E、G236R、F405LおよびK409Rからなる群から選択される1個以上の置換、例えば1、2、3または4個の置換を含み得る。
【0223】
本発明は、腫瘍の成長の予防または低減を必要とする対象における腫瘍の成長を予防または低減するための方法であって、
【0224】
少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物を対象に提供し、それによって腫瘍中の生細胞集団内の免疫細胞の相対量を増加させ、場合により、前記免疫細胞の活性化を増加させることと、
【0225】
ヒトCD3などのCD3に結合する抗原結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤を対象に提供することと、を含む、方法をさらに提供する。
【0226】
免疫細胞は、CD8T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞などのT細胞からなる群から選択される。
【0227】
代替アプローチでは、本発明による方法で使用される結合剤は、遺伝子送達によって対象に投与され得る。したがって、本発明の第2の態様は、腫瘍の成長を予防もしくは低減するための方法、またはそれを必要とする対象の癌を治療するための方法であって、
i)ヒトCD3などのCD3に結合する抗原結合領域、および前記腫瘍または癌の細胞上の標的抗原に結合する抗原結合領域を含む結合剤をコードする核酸構築物と、
ii)少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、を対象に提供することを含む、方法を提供する。
【0228】
結合剤をコードする(1又は複数の)ポリヌクレオチドを送達するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのベクターの使用を含む、結合剤の効率的な遺伝子送達のために異なる戦略を利用し得る。代替的なアプローチでは、ナノ粒子製剤、例えば脂質ベース、ペプチドベース、多糖ベース、または無機ナノ粒子を介して、結合剤をコードするmRNAを送達し得る。mRNAは、結合剤の発現が望まれる(1又は複数の)臓器に直接送達されてもよく、または注射もしくは注入によって全身的に送達されてもよく、これは経時的に発現を生じさせる(数時間以内に開始し、数日まで続く)。後者のアプローチでは、mRNAは、免疫活性化を予防し、安定性を増加させ、経時的に凝集する傾向を減少させ、および/または不純物を回避するために1つ以上の手段によって最適化され得るそのような最適化は、mRNA中の修飾ヌクレオシド(例えば、l-メチルプソイドウリジンを用いて)の使用を含み得、かつ/または細胞内安定性および翻訳効率を改善するための特定の5’TR、3’UTR、および/もしくはポリ(A)尾部を含み得る(例えば、Stadler Nat Med.2017;23(7):815-817を参照されたい)。
【0229】
遺伝子療法によって送達される結合剤は、タンパク質ベースの送達アプローチの文脈で上記に記載された特徴のいずれかを有し得ることが理解されるべきである。また、免疫原性組成物は、上に開示されるような組成物であり得る。
【0230】
さらに、本発明の第1の態様による方法に関連して開示された特徴は、本発明の第2の態様の方法にも等しく良好に適用されることが理解されよう。特に、結合剤をコードする核酸構築物は、上に開示されるように、TLRアゴニストなどのアジュバントと組み合わせて投与され得る。それはまた、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、またはヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与されてもよく、これらはすべて上記で提供される通りである。
【0231】
第3の態様では、本発明は、対象における癌の腫瘍増殖または治療を予防または低減するのに使用するための結合剤であって、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含み、使用が、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と組み合わせて対象に抗体を提供することを含む、結合剤を提供する。
【0232】
本発明による使用のための結合剤は、本発明による方法に関して上で定義した通りであり得る。
【0233】
また、本発明のこの態様に関連して、免疫原性組成物は、本発明による方法に関連して上で定義した通りであり得る。
【0234】
ここでも、本発明の第1の態様による方法に関連して開示された特徴は、本発明の第3の態様による使用にも等しく良好に適用されることが理解されよう。特に、結合剤は、上に開示されるようなアジュバントと組み合わせて投与され得る。それはまた、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与されてもよく、これらはすべて上記で提供される通りである。
【0235】
特に、結合剤は、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン2、ヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与される。
【0236】
また、本明細書中上記で開示されるように、結合剤は、アジュバント(例えば、上記で定義されるようなアジュバント)とさらに組み合わせて投与され得る。
【0237】
あるいは、結合剤は、例えば、免疫原性核酸配列または脂質ナノ粒子(LNP)を含む、遺伝子ベースの治療のための免疫原性組成物と組み合わせて投与されてもよい。
【0238】
本発明の第4の態様は、対象における癌の腫瘍増殖または治療を予防または減少させるのに使用するための少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物に関し、免疫原性組成物は、CD3に結合する結合領域、および前記腫瘍もしくは癌の細胞上の標的または腫瘍微小環境内の免疫抑制細胞上に発現される標的に結合する結合領域を含む結合剤と組み合わせて対象に提供される。
【0239】
免疫原性組成物は、上記で定義された特徴および特性のうちのいずれか1つ以上を有し得る。
【0240】
本発明に従って使用するための免疫原性組成物に関して、結合剤は、本発明の第1の態様に関して定義される結合剤であり得る。
【0241】
加えて、本発明の第1の態様による方法に関連して開示された特徴のうちのいずれか1つ以上は、本発明の第4の態様による使用にも等しく良好に適用される。特に、免疫原性組成物および結合剤は、上に開示されるアジュバントとさらに組み合わせて投与され得る。それはまた、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与されてもよく、これらはすべて上記で提供される通りである。
【0242】
本発明の第5の態様は、対象の癌を治療するための医薬品の製造における結合剤の使用に関し、結合剤は、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含み、治療は、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と組み合わせて前記結合剤を対象に提供することを含む。
【0243】
結合剤および免疫原性組成物は、本発明の第1の態様に関して定義される通りであり得る。
【0244】
ここでも、本発明の第1の態様による方法に関連して開示された特徴のうちのいずれか1つ以上は、本発明の第5の態様による使用に等しく良好に適用される。特に、免疫原性組成物および結合剤は、上に開示されるアジュバントとさらに組み合わせて投与され得る。それはまた、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン2またはその類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与されてもよく、これらはすべて上記で提供される通りである。
【0245】
本発明は、第6の態様では、対象の癌を治療するための医薬品の製造における少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物の使用であって、CD3に結合する結合領域および前記腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と組み合わせて対象に提供される、使用をさらに提供する。
【0246】
免疫原性組成物および結合剤は、本発明の第1の態様に関連して定義された特徴および特性のいずれかを有し得る。
【0247】
加えて、本発明の第1の態様による方法に関連して開示された特徴のうちのいずれか1つ以上は、本発明の第4の態様による使用にも等しく良好に適用される。特に、免疫原性組成物および結合剤は、上に開示されるアジュバントとさらに組み合わせて投与され得る。それはまた、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、ヒトインターロイキン-15、またはそれらの類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与されてもよく、これらはすべて上記で提供される通りである。
【0248】
本発明の最終態様では、CD3に結合する結合領域および腫瘍または癌の細胞上の標的に結合する結合領域を含む結合剤と、少なくとも1つのワクチン抗原を含む免疫原性組成物と、を含むキットオブパーツが提供される。
【0249】
キットオブパーツは、アジュバント、例えば上で定義したアジュバントをさらに含み得る。
【0250】
キットオブパーツは、インターロイキン-2またはインターロイキン-2受容体アゴニストなどの、本発明の第1の態様に関連して開示されるサイトカインの量をさらに含み得る。
【0251】
加えて、本発明の第1の態様による方法に関連して開示される特徴のうちのいずれか1つ以上は、本発明に従って提供されるキットオブパーツの構成要素およびそれらが治療目的のために使用される方法に等しく良好に適用される。特に、免疫原性組成物および結合剤は、上に開示されるアジュバントとさらに組み合わせて投与され得る。それはまた、インターロイキン-2受容体アゴニスト、例えばヒトインターロイキン-2、またはその類似体などのサイトカインとさらに組み合わせて投与されてもよく、これらはすべて上記で提供される通りである。
【0252】
キットオブパーツは、免疫原性組成物と組み合わせた結合剤の投与などの使用説明書をさらに備え得る。説明書はまた、結合剤および免疫原性組成物を、上で定義したアジュバントおよび/もしくは上で定義したサイトカインと組み合わせてさらに組み合わせるか、または結合剤および免疫原性組成物を投与するための指示を提供し得る。
【0253】
【表5】
【0254】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これは特許請求の範囲をさらに限定するものと解釈されるべきではない。
【0255】
[実施例]
[実施例1]
CD3xTA99二重特異性抗体処置の抗腫瘍有効性は、腫瘍への免疫細胞のCXCR3媒介性浸潤に依存する
【0256】
CD3を1つのアームで標的化する二重特異性抗体(bsAb)は、T細胞上のCD3を腫瘍関連抗原(TAA)で架橋することによって、T細胞を再誘導して腫瘍細胞を死滅させることができる。腫瘍微小環境からのCXCL9、CXCL10およびCXCL11などのケモカインの分泌により、ケモカイン受容体CXCR3を発現するT細胞およびNK細胞を腫瘍に引き付けることができる。実施例では、bsAb処置が免疫浸潤物のレベルおよびT細胞を含む免疫細胞の腫瘍に到達する能力によってどのように影響されるかを調べた。この問題に対処するために、腫瘍へのT細胞浸潤において非冗長な役割を果たすCXCL9、CXCL10およびCXCL11媒介性細胞輸送の破壊を示すCXCR3ノックアウト(CXCR3-KO)マウスを使用した(Mikucki et al.Non-redundant requirement for CXCR3 signaling during tumoricidal T-cell trafficking across tumor vascular checkpoints.Nat Commun.2015 Jun 25;6:7458)。
【0257】
すべてのマウス系統は、Leiden University Medical Centre(LUMC)動物施設で飼育され、すべてのマウス実験は、LUMC、Leiden、オランダの動物施設で実行した。動物の健康状態を経時的に監視し、試験したすべての動物は、特定病原体を含まないマウスコロニーについてFELASA(欧州実験動物科学協会連盟)ガイドラインに記載されている薬剤について陰性であった。すべてのマウス研究は、オランダ動物倫理委員会(CCD)およびLUMCの現地動物福祉委員会によって、許可番号AVD11600202010004(実施例1、10および11)、AVD1160020188604(実施例12)ならびにAVD116002015271(すべての他の実施例)で承認された。実験は、動物実験に関するオランダ法およびEU指令2010/63/EU(「科学目的で使用される動物の保護に関する」)に従って実行した。B16F10マウス黒色腫細胞株(American Type Culture Collection[ATCC]、カタログ番号CRL-6475)を、5%のCOを含有する加湿雰囲気中、37℃で8%ウシ胎児血清(FCS,Bodinco、カタログ番号5010(Gibco、カタログ番号10378-016)を補充したIscove改変ダルベッコ培地(IMDM;Invitrogen、カタログ番号12440-053)で成長させた。
【0258】
不活性Fc尾部を有するCD3xTA99 bsAb(bsIGg2amm-2C11xTA99-LALA)は、マウスCD3εおよびTAAgp75をそれぞれ認識する親抗CD3145-2C11および抗糖タンパク質(gp)75TA99抗体に基づく。CD3結合アームの重鎖(VH)可変領域および軽鎖(VL)可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号42および配列番号45に示す。gp75結合アームの重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号49および配列番号52に示す。CD3結合アームについては、VHCDR1、-2および-3配列をそれぞれ配列番号39、配列番号40、配列番号41に提供する。VL CDR1、-2および-3配列は、それぞれ配列番号43、YTNおよび配列番号44である。gp75結合アームについては、VHCDR1、-2および-3配列をそれぞれ配列番号46、配列番号47、配列番号48に提供する。VL CDR1、-2および-3配列は、それぞれ配列番号50、DAKおよび配列番号51である。Fc尾部をLeu234AlaおよびLeu235Ala(LALA)変異で不活性にした(Schlothauer et al.,Protein Eng.Design and Selection 2016;29(10):457-66)。bsAbは、制御されたFabアーム交換を可能にした親抗体(2C11-145中のVal370LysおよびLys409Arg、TA99中のPhe405LeuおよびAsn411Thr)のCH3ドメインに適合する点変異を導入することによって生成した。bsAbは、以前に記載されたように社内で産生および精製した(Labrijn et al.,Efficient Generation of Bispecific Murine Antibodies for Pre-Clinical Investigations in Syngeneic Rodent Models,Sci Reports,2017)。
【0259】
野生型(WT)雄C57BL/6マウス(C57BL/6NCrl、Charles River、オランダ)およびC57BL/6CXCR3-KOマウス(The Jackson Laboratory;ストック番号005796)の右側腹部に、0日目に50,000個の同系B16F10黒色腫細胞(0.1%ウシ血清アルブミン[BSA;Sigma、カタログ番号A3912]を含有する200μLリン酸緩衝生理食塩水[PBS;Fresenius Kabi、カタログ番号M090001]中)を皮下(s.c.)注射した。6日目および9日目に、マウスに12.5μg(およそ0.5mg/kg)のCD3xTA99 bsAb)を腹腔内(i.p.)注射した。処置スケジュールのタイムラインを図1Aに示す。腫瘍サイズをノギスによって週に3回測定し、長さ×幅×高さを乗算することによって計算した。腫瘍が1000mmの体積に達したとき、マウスを安楽死させた。Mantel-Cox検定を使用して、処置マウスの生存が未処置対照群の生存と比較して有意に改善されたかどうかを決定した。
【0260】
未処置WTマウスおよびCXCR3-KOマウスの両方において、B16F10腫瘍は、急速な増殖を示し、それぞれ生存期間中央値24日および20日、WT群では1匹のマウスが無腫瘍のままであった(図1B図1C)。CD3xTA99 bsAb処置群では、CXCR3-KOマウスの生存は、WT群と比較して有意に短く、60日後に腫瘍が残っていないマウスは少なかった(CXCR3-KO群で2/10対WT群で6/10)。CXCR3-KOマウスは、有意ではないが、全体的なCD45陽性浸潤物が少なく、T細胞およびNK細胞の頻度が低いという一貫した傾向を示した(図1D)。この傾向は、CD3xTA99 bsAbで処置したマウスで維持され、浸潤物内のT細胞の存在は、有意に低かった。
【0261】
まとめると、これらのデータは、CD3係合bsAb療法の有効性におけるCXCR3媒介免疫細胞輸送の役割を確認している。これは、免疫細胞浸潤の調節が、T細胞係合bsAb処置の転帰の改善に寄与し得ることをさらに示唆する。
【0262】
[実施例2]
腫瘍特異的T細胞の移入と組み合わせた腫瘍特異的ワクチン接種は、T細胞係合二重特異性抗体CD3xTA99の有効性を増強する
【0263】
実施例1では、腫瘍微小環境へのT細胞の動員が、T細胞係合bsAb処置の抗腫瘍有効性に影響を及ぼすことが示された。ここでは、T細胞係合bsAbの抗腫瘍効果が、腫瘍特異的T細胞と組み合わせた腫瘍特異的ワクチン接種の投与によって増強され得るかどうかを試験した。
【0264】
ここで100,000個のB16F10細胞を注射したことを除いて、腫瘍接種およびbsAb処理を本質的に実施例1に記載したように実行した。処置スケジュールのタイムラインを図2Aに示す。養子細胞移入(ACT)のために、gp10025-33/H-2D特異的T細胞受容体(TCR)を有する脾細胞を、コンジェニックマーカーCD45.1またはCD90.1を発現するように交配されたPmel-1TCRトランスジェニックマウス(OverwijkWW et al.,Tumor regression and autoimmunity after reversal of a functionally tolerant state of self-reactive CD8T cells.J Exp Med2003;198:569-80;Dr.N.P.Restifo,Center for Cancer Research,National Cancer Institute,NIH,Bethesda,MDのご厚意により贈られた)から濃縮した。Pmel-1TCRトランスジェニックマウスの脾臓およびリンパ節からのリンパ球を単離し、ナイロンウールカラム(Kisker Biotech GMBH、カタログ番号MKN-50)上のPmel-1Tリンパ球について濃縮した。これらのTリンパ球は、Pmel-1T細胞とさらに称される。
【0265】
6日目および13日目に、各マウスを20μLの20mg/mLのキシラジン(Dechra、カタログ番号615319)、20μLの10%ケタミン(Alfasan、カタログ番号1907184-06)および60μLのPBSの混合物を腹腔内注射し、続いてgp100由来の合成ペプチドで免疫化することによって麻酔した。手短に言えば、マウスの剃毛した左側腹部に、100μlのPBSに溶解したH-2D拘束性CD8T細胞エピトープ(KVPRNQDWL;配列番号35)を有する100μgのgp10020-39ペプチド(「KVP」)(AVGALKVPRNQDWLGVPRQL;配列番号34相同ヒト配列;Fmocベースの固相ペプチド合成により、オランダのライデン大学医療センターで合成)を皮下注射した。アジュバントとして、60mgの5%イミキモド含有クリームAldara(3M Pharmaceuticals、カタログGTI102C番号)を注射部位に同時に局所適用した。組換えヒトインターロイキン(IL)-2(100μLPBS中600,000IU、Proleukin(登録商標)、Novartis、カタログ番号601381Z)を、2回目の免疫化の日(13日目)および1日後(14日目)に腹腔内注射した。KVPワクチン接種などの実施例で使用されるワクチン接種という用語は、AldaraアジュバントおよびIL-2処置を含む、または示される場合はアジュバントCpGを含むKVPペプチドなどのペプチドワクチンによるワクチン接種を指す。
【0266】
未処置対照マウスでは、同系B16F10腫瘍細胞は、攻撃的な腫瘍成長を示し、生存期間の中央値は18日であった(図2B)。bsAb CD3xTA99での処置は、生存を有意に延長し(図2C;Mantel-Cox試験;P=0.0013)、4/7のマウスにおいて腫瘍の増殖を予防した。KVPワクチン接種およびPmel-1T細胞のACTによるCD3xTA99処置の組み合わせは、抗腫瘍有効性をさらに増加させ、6/8のマウスにおいて腫瘍増殖を予防した。対照的に、KVPワクチン接種単独と組み合わせたPmel-1細胞のACTは、腫瘍増殖を予防するのに十分ではなく、マウスの生存期間中央値(29日間)は、未処置対照の生存期間よりもわずかに増加したが、処置は、生存期間を有意に改善しなかった(Mantel-Cox試験;P=0.0755)。
【0267】
まとめると、これらのデータは、腫瘍特異的T細胞のACTと組み合わせた腫瘍特異的ワクチン接種がCD3xTA99の抗腫瘍有効性を増強することを示す。
【0268】
[実施例3]
CD3xTA99の抗腫瘍効果は、非適合の腫瘍非特異的T細胞のACTと組み合わせた腫瘍特異的ワクチン接種によって、および適合する腫瘍非特異的T細胞のACTと組み合わせた腫瘍非特異的ワクチン接種によって増強され得る。
【0269】
実施例2に示されるように、適合する腫瘍特異的Pmel-1T細胞のACTと組み合わせた腫瘍特異的KVPワクチン接種の投与は、同系B16F10黒色腫腫瘍を有するC57BL/6マウスにおけるCD3xTA99処置の抗腫瘍効果を増強した。
【0270】
ここでは、CD3xTA99の抗腫瘍効果が、非適合の腫瘍非特異的T細胞のACTと組み合わせた腫瘍特異的ワクチン接種によって、または適合する腫瘍非特異的T細胞のACTと組み合わせた腫瘍非特異的ワクチン接種によっても増強され得るかどうかを試験した。
【0271】
実験は、実施例1および2に記載されているように実行し、以下に記載されているようにいくつかの小さな順応を行った。ニワトリ卵白アルブミンOVA257-264/H-2Kに特異的なTCRを有する脾細胞を、コンジェニックマーカーCD45.1またはCD90.1を発現するように飼育されたOT1 TCRトランスジェニックマウス(The Jackson Laboratory、ストック番号003831)から濃縮した。Pmel-1T細胞について実施例2に記載したように脾細胞濃縮を実行した。これらのOVA特異的脾細胞は、OT1 T細胞とさらに称される。
-1日目に、雄C57BL/6マウスに、尾静脈注射によって1×10個の濃縮OT1 T細胞(200μLのPBS中)を投与した。0日目に、マウスの右側腹部に100,000個の同系B16F10黒色腫細胞(0.1%BSAを含む200μLのPBS中)を皮下注射した。3日目および10日目に、各マウスを、実施例2に記載されるように麻酔した後、150μgの実施例2に記載されるようなgp10020-39ペプチド(「KVPペプチド」)、または100μLのPBSに溶解した、H-2K拘束性CD8T細胞エピトープ(SIINFEKL)を有する150μgのニワトリ卵白アルブミンOVA241-270ペプチド(「OVAペプチド」)(SMLVLLPDEVSGLEQLESIINFEKLTEWTS;Fmocベースの固相ペプチド合成によってオランダのライデン大学医療センターで合成)で免疫化した。アジュバントとして、Aldaraを3日目および10日目に注射部位に局所適用し、IL-2を10および11日目に腹腔内注射した。12および15日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。実施例1に記載されるように腫瘍成長を監視した。処置スケジュールのタイムラインを図3Aに示す。
【0272】
未処置対照マウスでは、同系B16F10腫瘍細胞は、攻撃的な腫瘍成長を示し、生存期間の中央値は21日であった(図3B)。8匹中1匹のマウスにおいて、腫瘍の増殖は、観察されなかった。bsAb CD3xTA99による処置は、生存を有意に延長しなかった(図3C;Mantel-Cox試験;P=0.0972)が、生存期間の中央値を31日に延長した。この有効性の欠如は、実施例2と比較してbsAbの投与が遅延したためである可能性が高い(実施例2の6日目および9日目に対して、実施例3の12日目および15日目)。腫瘍非特異的OVAワクチン接種によるCD3xTA99処置と適合する腫瘍非特異的OT1 T細胞のACTとの組み合わせは、抗腫瘍有効性を有意に増加させ(*P=0.0147)、生存期間中央値は、68日であった。加えて、8匹のマウスのうち4匹において、腫瘍の増殖を予防した。同様に、CD3xTA99処置と腫瘍特異的KVPワクチン接種との組み合わせ、および非適合の腫瘍非特異的OT1 T細胞のACTは、腫瘍増殖を有意に遅延させ(*P=0.0147;75日間の生存期間中央値)、8匹中2匹のマウスにおいて腫瘍増殖を予防した。対照的に、適合する腫瘍非特異的OT1 T細胞と組み合わせた腫瘍非特異的OVAワクチン接種のみによる処置は、生存を有意に延長せず(P=0.4;28日間の生存期間中央値)、または腫瘍増殖を予防しなかった。
【0273】
まとめると、これらのデータは、非適合のACTと組み合わせた腫瘍特異的ワクチン接種、腫瘍非特異的T細胞、または適合するACTと組み合わせた腫瘍非特異的ワクチン接種、腫瘍非特異的T細胞は両方とも、適合するACTである腫瘍特異的T細胞と組み合わせた腫瘍特異的ワクチン接種と同程度にCD3xTA99の抗腫瘍有効性を増強することができることを示す。
【0274】
[実施例4]
CD3xTA99 bsAbと腫瘍特異的ワクチン接種との組み合わせ、または適合するACTと組み合わせたCD3xTA99 bsAbと腫瘍非特異的ワクチン接種との組み合わせ、腫瘍非特異的T細胞は同様に抗腫瘍有効性を増強する
【0275】
実施例2および3に示されるように、bsAb CD3xTA99の抗腫瘍効果は、CD3xTA99処置を腫瘍特異的ACTおよび腫瘍特異的ワクチン接種と組み合わせることによって、CD3xTA99を腫瘍非特異的ACTおよび適合する腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせることによって、またはCD3xTA99処置を腫瘍非特異的ACTおよび腫瘍特異的ワクチン接種と組み合わせることによって、増強することができる。ここで、本発明者らは、マウスB16F10黒色腫腫瘍を有するC57BL/6マウスにおいて、CD3xTA99処置を腫瘍特異的ワクチン接種と組み合わせることによっても、CD3xTA99の抗腫瘍効果を増強することができるかどうかを試験した。
【0276】
実験は、本質的に実施例3に記載されるように実施した。腫瘍成長は、実施例1に記載されるように監視した。図4Aは、処置タイムラインを示す。
【0277】
未処置対照マウスでは、同系B16F10腫瘍細胞は、攻撃的な腫瘍成長を示し、生存期間の中央値は22日であった(図4B)。bsAb CD3xTA99のみでの処置またはAldaraおよびIL-2のみでの処置のいずれによっても有意に延長された生存期間は得られなかったが(図4C)、生存期間中央値は、それぞれ29.5日および26日に延長された。CD3xTA99、AldaraおよびIL-2での処置後に腫瘍増殖の有意な遅延が観察され、有意に長い生存期間が得られた(P=0.0077)が、腫瘍負荷のためにすべてのマウスを59日目までに屠殺する必要があった。CD3xTA99、AldaraおよびIL-2で処置したマウス群の生存は、CD3xTA99 bsAbのみまたはAldaraおよびIL-2のみで処置したマウス群と比較して有意に延長されなかった。CD3xTA99処置を腫瘍非特異的(OVA)ワクチン接種、腫瘍非特異的ACT(OT1)と組み合わせた場合、8匹のマウスのうち2匹が生存し、無処置群と比較して有意に延長された生存が観察された(P=0.0084)。同様に、腫瘍特異的(KVP)ワクチン接種、AldaraおよびIL-2と組み合わせたCD3xTA99で処置した場合、8匹のマウスのうち3匹が腫瘍チャレンジを生存した。この併用処置は、未処置群と比較した場合、生存を有意に延長した(P=0.0092)。
【0278】
まとめると、これらのデータは、CD3xTA99処置と腫瘍非特異的ACTおよび適合するする腫瘍非特異的ワクチン接種との組み合わせと同程度に、ACTの非存在下でCD3xTA99処置と腫瘍特異的ワクチン接種とを組み合わせることによって、CD3xTA99の抗腫瘍有効性を増強できることを示している。対照的に、CD3xTA99処置へのAldaraおよびIL-2の添加は、生存を有意に増加させなかった。
【0279】
[実施例5]
T細胞浸潤および活性化は、腫瘍非特異的ACTと腫瘍非特異的ワクチン接種とを組み合わせてCD3xTA99 bsAbで処置したTRP1発現腫瘍において増強される
【0280】
実施例2、3および4に示されるように、B16F10マウス腫瘍モデルにおけるbsAb CD3xTA99の抗腫瘍効果は、CD3xTA99処置と腫瘍特異的または腫瘍非特異的ACTおよびワクチン接種とを組み合わせることによって、ならびにCD3xTA99処置と腫瘍特異的ワクチン接種とを組み合わせることによって増強ことができる。ここで、本発明者らは、腫瘍非特異的ACTとワクチン接種とを組み合わせたCD3xTA99での処置後に、TA99抗体によって認識されるTRP1抗原(gp75としても公知)を発現する腫瘍においてT細胞浸潤および活性化が特異的に増強されるかどうかを研究した。
【0281】
インビボでのT細胞浸潤および活性化を研究するために、TbiLucxOT1マウス由来のOT1CD8T細胞を使用した(Kleinovink et al.,Front.Immunol.2018;9:3097)。二重ルシフェラーゼTbiLucマウス由来のT細胞は、緑色発光クリックビートルルシフェラーゼ(CBG99)およびT細胞活性化時に赤色発光ホタルルシフェラーゼ(PpyRE9)を構成的に発現する。後者は、T細胞活性化時に活性化される活性化T細胞の核因子(NFAT)の活性化によって誘導される。これにより、T細胞の位置および活性化の多色生物発光イメージングが可能になる。KPC3腫瘍細胞株を、K-rasG12D/+、p53R172H/+ならびに膵臓および十二指腸ホメオボックス1(Pdx-1)-Cre導入遺伝子を有する遺伝的膵管腺癌「KPC」マウスモデルから単離した(Hingorani et al.,Cancer Cell 2005;7(5):469-83)。KPC3-TRP1細胞は、以前に記載されたように、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用したTRP1/gp75コードプラスミドのトランスフェクションによって生成した(Benonisson et al.,Molec Canc Ther 2019;18(2):312-22)。このプラスミドは、Gestur Vidarsson(アカデミックメディカルセンター、アムステルダム、オランダ)によるご厚意で提供され、ゼオシン選択遺伝子をネオマイシン選択遺伝子と交換し、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターをCMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーターおよびウサギβ-グロビンスプライスアクセプター部位(CAG)プロモーターで置き換えることによって最適化された。トランスフェクト細胞を400μgのネオマイシンで7日間選択し、その後、TA99抗体および二次AlexaFluor標識抗マウスIgG(Biolegend)を使用して、TRP1/gp75発現について蛍光活性化細胞選別(FACS)によって濃縮した。
【0282】
処置スケジュールのタイムラインを図5Aに示す。アルビノC57BL/6マウス(Jackson Laboratories、ストック番号000058)を背中の2箇所で剃毛し、0日目に80,000個のKPC3腫瘍細胞(背中の左側)および80,000個の腫瘍KPC3-TRP1細胞(背中の右側)を皮下注射した。5日目に、マウスは、尾静脈への静脈注射によって1×10個のTbiLuc×OT1濃縮脾細胞(200μLのPBS中)を受けた。次に、無作為化マウス(群当たりn=4)を、以下に記載されるように、OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99抗体処置の種々の組み合わせで処置した。50μLのPBS中の20μgのTLR9-リガンドCpG(ODN-1826、カタログ番号tlrl-1826、InvivoGen)と混合した100μgのOVA241-270合成長ペプチドでの免疫化を、6日目および13日目に尾部基部に皮下注射によって与えた。マウスは、15日目および19日目に200μLのPBS中の12.5μgのCD3xTA99(およそ0.5mg/kg)を腹腔内で受けた。生物発光の可視化のために、イソフルラン吸入(4%誘導、1.5%維持、Fendigo、カタログ番号1221894)によってマウスを麻酔し、続いて100μLのPBS中の4.88mg/kgのCycluc1(Aobious、カタログ番号AOB1117)を首の皮膚に皮下注射した。マウスを、IVIS Spectrumイメージャ(Perkin Elmer、カタログ番号124262)を使用して、13日目(2回目の免疫化の直前)、14日目、16日目、19日目(CD3xTA99 bsAb注射の直前)、23日目および26日目にイメージングした。Cycluc1注射の15分後に、自動曝露時間のオープンフィルタを使用して生物発光を測定した。次に、イソフルラン誘発麻酔下で維持しながら、マウスの首の皮膚に100μLのPBS中の150mg/kgD-ルシフェリン(Synchem、カタログ番号bc219)を皮下注射した。生物発光を、540nmフィルターおよび自動曝露時間設定を使用して15分後に測定した。特定の関心領域(ROI)におけるシグナル定量化を、LivingImage4.2ソフトウェア(PerkinElmer)を使用して実験全体を通して固定サイズROIを使用することによって実行した。
【0283】
TRP1陽性およびTRP1陰性KPC3腫瘍の両方において、CD3xTA99およびOT1 T細胞による併用処置は、T細胞活性化または浸潤を誘導しなかった(図5B図5E)。OT1 T細胞と腫瘍非特異的OVAワクチン接種との併用ACTは、TRP1陽性KPC3腫瘍を有するマウスの一部でT細胞活性化および浸潤をもたらしたが、TRP1発現のないKPC3腫瘍を有するマウスでは、T細胞浸潤および活性化のわずかな増加が観察された(図5C図5F)。CD3xTA99 bsAb処理をOT1 T細胞ACTおよび腫瘍非特異的OVAワクチン接種に加えると、強いT細胞浸潤およびOT1 T細胞の活性化がTRP1陽性腫瘍において観察された(図5D、G)。T細胞浸潤および活性化はまた、TRP1陰性腫瘍においてある程度観察された(図5H、J)。加えて、KPC3-TRP1腫瘍におけるT細胞活性化は、OT1 T細胞ACT、OVAワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbを受けたマウスでは、OT1 T細胞およびCD3xTA99 bsAbを受けたマウスと比較して、またOT1 T細胞ACTおよびOVAワクチン接種を受けたマウスと比較して増強された(図5I)。同様に、OT1 T細胞ACT、OVAワクチン接種およびCD3xTA99 bsAbを受けたマウスでは、OT1 T細胞ACTおよびCD3xTA99 bsAbを受けたマウスと比較して、またOT1 T細胞ACTおよびOVAワクチン接種を受けたマウスと比較して、T細胞浸潤が増強された(図5K)。
【0284】
生物発光イメージングに加えて、フローサイトメトリーを使用して、OT1 T細胞活性化および腫瘍浸潤に対するワクチン接種の効果を確認した。処置スケジュールのタイムラインが図5Lおよび図5Pに示されており、これらは、上記の処置スケジュールと一致している。無作為化マウス(群当たりn=4)を、上記のように、OT1 T細胞ACT、OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99抗体処置の異なる組み合わせで処置した。マウスを、それぞれベースラインおよびbsAb投与後の時点について、16日目または20日目に安楽死させた。腫瘍の単一細胞懸濁液を物理的断片化によって調製し、続いて300μLの385μg/mLのLiberase(商標)(Roche、カタログ番号05401020001)と共に、5%のCOを含有する加湿雰囲気中、37℃で10分間インキュベートした。最後に、70μmセルストレーナー(Falcon)で細胞をすり潰した。脾臓の単一細胞懸濁液を、70μmセルストレーナー(Falcon)によるすり潰しによって物理的に断片化し、続いて溶解緩衝液(LUMC Pharmacy、NH4Cl8.4g/LおよびKHCO31g/L、pH=7.4+/-0.2)で処理して赤血球を溶解することによって調製した。16日目および20日目に採取した血液試料を溶解緩衝液で処理した。単一細胞懸濁液を、フローサイトメトリー染色のために96ウェルプレート(Greiner、カタログ番号650101)に蒔いた。
【0285】
細胞をPBS中の40μLのFcBlock(1:400、BD、カタログ番号553141)に再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中の40μLのZombieAqua生存色素(1:800、Biolegend、カタログ番号423102)に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。次に、細胞をPBSで1回洗浄し、表面マーカー(CD45.1、CD45、CD8、CD44、CD62L、表6の詳細を40μLのBrilliant Stain Buffer(BD、カタログ番号566349)で氷上で20分間染色した。サンプルをFortessaサイトメーター(BD Biosciences)で測定し、FlowJoソフトウェア(Treestar)で分析した。
【0286】
【表6】
【0287】
実験の16日目に、bsAb投与前に、OT1 T細胞単独のACTは、血液(図5M)、脾臓(図5N)、またはTRP1陽性およびTRP1陰性KPC3腫瘍の両方でT細胞活性化または拡大を誘導しなかった(図5O)。OT1 T細胞ACTと腫瘍非特異的OVAワクチン接種との組み合わせは、血液および脾臓でOT1 T細胞増殖を誘導し(図5M、5N)、ACT単独と比較して、TRP1陽性KPC3腫瘍を有するマウスでOT1 T細胞を有意に増加させた(図5O;*p<0.05)。あまり顕著ではなく有意ではないが、TRP1発現のないKPC3腫瘍を有するマウスにおいて、併用処置後に増加も観察された。OT1 T細胞は、ワクチン接種後にナイーブT(Teff)細胞からエフェクターT(Teff)細胞に切り替わり、表面CD44のレベルは有意に高く、CD62Lのレベルは低下した(図5M~5O)。
【0288】
その後の時点(20日目;図5P)で、OT1 T細胞ACTと、CD3xTA99 bsAbの添加の有無にかかわらない腫瘍非特異的OVAワクチン接種との組み合わせは、OT1 T細胞ACT単独と比較して、血液(図5Q;**、p<0.01)および脾臓(図5R;**、p<0.01)における末梢OT1 T細胞数の有意な増加をもたらした。ワクチン接種後、血液(図5Q)および脾臓(図5R)中のOT1 T細胞の大部分がエフェクターT(Teff)細胞に切り替わった。OT1 T細胞ACTとOVAワクチン接種との組み合わせへのCD3xTA99 bsAb処置の追加は、OT1 T細胞ACTおよびOVAワクチン接種のみで処置した群と比較して、脾臓で検出されたOT1 T細胞のパーセンテージを有意に減少させたが、同様の傾向が血液であった(図5Q、5R)。
【0289】
OT1 T細胞ACTと腫瘍非特異的OVAワクチン接種との組み合わせは、TRP1陽性腫瘍およびTRP1陰性腫瘍の両方においてOT1 T細胞の有意な増加をもたらした(図4S)。CD3xTA99 bsAb処置をOT1 T細胞ACTと腫瘍非特異的OVAワクチン接種との組み合わせに加えた場合、TRP1陽性腫瘍におけるOT1 T細胞の有意に増強されたT細胞浸潤および活性化があった(図5S)。これらのデータは、CD3xTA99 bsAbとワクチン接種との組み合わせについて末梢CD8OT1 T細胞の観察された減少によって裏付けられる(図5Q、5R)。加えて、OT1 T細胞ACT、OVAワクチン接種およびbsAbを含む併用処置後のTRP1陽性腫瘍中のOT1 T細胞は、有意に増加したCD69発現によって反映されるように、より活性化された。腫瘍内のOT1 T細胞は、エフェクターT細胞表現型を示した。
【0290】
まとめると、これらのデータは、OT1 T細胞ACT、腫瘍非特異的OVAペプチドワクチン接種およびCD3xTA99 bsAb処置の組み合わせによる処置時に、OT1 T細胞がCD3xTA99 bsAbによって標的化されるTRP1抗原を発現するKPC3腫瘍に特異的に浸潤することを示す。加えて、これらの浸潤T細胞のほとんどは、CD3xTA99処理後に活性化されるようになる。これらのデータはまた、併用処置を伴う代替アジュバント(CpG)の使用が腫瘍浸潤およびT細胞の活性化ももたらすことを示す。
【0291】
[実施例6]
B16F10黒色腫腫瘍を有するC57BL/6のAldaraおよびIL-2処理後のNK細胞、マクロファージおよび樹状細胞の腫瘍浸潤の増強
【0292】
実施例2~5では、Aldara(イミキモド)およびIL-2またはCpGのいずれかと組み合わせた、CD3xTA99抗体処置、ACTおよびペプチドワクチン接種を含む併用処置の抗腫瘍効果が示された。後者の処置の組み合わせは、B16F10黒色腫腫瘍モデルにおける抗腫瘍有効性の増強、およびCD3xTA99抗体によって標的化されるTRP1抗原を発現するKPC3腫瘍におけるT細胞浸潤および活性化の増加をもたらした。ここで、本発明者らは、C57BL/6マウスにおけるB16F10腫瘍の腫瘍微小環境への異なる免疫細胞集団の浸潤に対するアジュバントAldaraおよびIL-2の効果を研究した。
【0293】
C57BL/6マウスの右側腹部に0.1%BSAを補充した200μLのPBS中の100,000個のB16F10細胞を皮下注射した。マウスを無作為化し、異なる処置群に分配した(群当たりn=4~6匹のマウス)。7日目および14日目に、60mgの5%イミキモド含有クリームAldaraを局所適用し、14日目および15日目に100μLのPBS中の組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。16日目に、すべてのマウスを安楽死させた。腫瘍の単一細胞懸濁液を物理的断片化によって調製し、続いて300μLの385μg/mLのLiberase(商標)(Roche、カタログ番号05401020001)と共に、5%のCOを含有する加湿雰囲気中、37℃で10分間インキュベートした。最後に、細胞を70μmセルストレーナー(Falcon)ですり潰し、フローサイトメトリー染色のために96ウェルプレート(Greiner、カタログ#650101)に蒔いた。
【0294】
細胞をPBS中の40μLのFcBlock(1:400、BD、カタログ番号553141)に再懸濁し、氷上で10分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中の40μLのZombieAqua生存色素(1:800、Biolegend、カタログ番号423102)に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。次に、細胞をPBSで1回洗浄し、表面マーカー(MHC-II、Ly6C、CCR2、Siglec-H、Siglec-F、Ly6G、CD103、F4/80、CD11b、CD45、CD11c、CD3、CD19、NK1.1、すべて表6)を40μLのBrilliant Stain Buffer(BD、カタログ番号566349)で氷上で20分間染色した。細胞内Egr2およびiNOS染色(表7)を、FoxP3染色キット(eBioscience、カタログ番号00-5523-00)と共に提供される緩衝液を製造者の説明書に従って使用して実行した。サンプルをFortessaサイトメーター(BD Biosciences)で測定し、FlowJoソフトウェア(Treestar)で分析した。実験のタイムラインを図6Aに示す。
【0295】
【表7】
【0296】
マウスを未処置のままにした(n=4)か、IL-2(n=5)、Aldara(n=5)、またはIL-2とAldaraとの組み合わせ(n=6)で処置した。腫瘍中の生細胞集団内の免疫細胞(CD45細胞)の平均パーセンテージにおいて処置群間に有意差は、観察されなかった(図6B)。次に、CD45集団内で、腫瘍浸潤樹状細胞(DC)サブセット、T細胞、NK細胞およびマクロファージサブセットのパーセンテージを分析した(表8)。
【0297】
【表8】
【0298】
IL-2またはAldaraの処置時に、従来の樹状細胞(cDC1)および単球由来DC(moDC)の両方による腫瘍浸潤の有意な増加が観察された(*p<0.05;図6C図6D)。IL-2、Aldara、またはこれらの組み合わせによる処置は、未処置マウスと比較して、NK細胞による腫瘍浸潤の有意な増加をもたらした(図6E)。M1マクロファージによる腫瘍浸潤の強い有意な増加が、Aldaraによる処理後に観察された(図6F)が、IL-2またはIL-2とAldaraとの組み合わせでは観察されなかった。休止マクロファージとしても公知のM0マクロファージによる腫瘍浸潤は、AldaraまたはAldaraとIL-2との組み合わせによる処理後に減少した(図6G)。各群内でかなり大きな広がりがあったにもかかわらず、腫瘍浸潤未成熟マクロファージのパーセンテージは、IL-2またはAldaraで処置した場合に有意に増加しなかったが、IL-2とAldaraとの組み合わせは、浸潤未成熟マクロファージのパーセンテージを有意に増加させた(図6H;*p<0.05)。T細胞の浸潤に対して、Aldara、IL-2またはAldaraとIL-2との組み合わせの有意な効果は、検出されなかった(図6I)。
【0299】
まとめると、これらのデータは、アジュバントであるアルダラ(Aldara)およびIL-2による処置が、単独でまたは組み合わせて、DCサブセット、NK細胞およびマクロファージによる増強されたB16F10腫瘍浸潤を誘導することを示す。しかしながら、マクロファージによる腫瘍浸潤は、サブセットごとに異なる。AldaraおよびIL-2による処置後にマウスの腫瘍内で低下したパーセンテージを示した唯一のサブセットは、静止マクロファージのサブセットであった。
【0300】
[実施例7]
内因性細胞のインタクトな輸送は、抗原特異的ACT、同族抗原ワクチン接種および二重特異性抗体処置からなる併用処置の抗腫瘍効果に寄与する
【0301】
実施例3および4では、腫瘍非特異的ACT、適合する抗原ワクチン接種および腫瘍標的化bsAb処置からなる併用処置が、インビボ腫瘍モデルにおいて抗腫瘍有効性を実証したことが示された。ここでは、実施例3および4で観察された養子移入されたOT1細胞による腫瘍制御が内因性区画の寄与を必要とするかどうかを調べた。この問題に対処するために、内因性T細胞輸送が破壊されたCXCR3-KOマウスに、実施例1で概説したようにB16F10腫瘍を移植した。マウスは、CXCR3-十分なOT1 T細胞を、3日目にOVAワクチン接種(AldaraおよびIL-2を使用)と組み合わせ、続いて10日目にのみOVAワクチン接種(AldaraおよびIL-2を使用)を受けた。12日目および15日目に、マウスに本質的には実施例1に記載されているように、CD3xTA99処置を腹腔内注射した。処置スケジュールのタイムラインを図1Eに示す。
【0302】
実施例1で強調したように、未処置のままにしたWTマウスとCXCR3-KOマウスとの間で腫瘍増殖の差は、観察されなかった(図1F、G)。OVAワクチン接種とCD3xTA99 bsAb処置とが一体となったOT1 T細胞のACTで処置した腫瘍担持CXCR3-KOマウスの生存期間中央値は、33日に延長された(図1F、G)。同じ処置を受けたWTマウスの生存は、有意に延長され(p=0.0171)、8匹のマウスのうち5匹が60日後に無腫瘍のままであった。
【0303】
これらの結果は、内因性免疫浸潤物が、外因的に移入されたワクチン特異的OT1 T細胞によって駆動される場合、腫瘍非特異的OVAワクチン接種およびCD3xTA99 bsAb処置からなる併用処置の抗腫瘍効果に寄与することを示している。
【0304】
[実施例8]
CD3xTA99 bsAb処置と腫瘍特異的ワクチン接種または腫瘍非特異的ワクチン接種との併用は、ACTを必要とせずに抗腫瘍有効性を同様に増強する
【0305】
実施例4に示すように、CD3xTA99の抗腫瘍効果は、CD3xTA99処置と腫瘍非特異的ACTおよび適合する腫瘍非特異的ワクチン接種との組み合わせと同程度に、ACTの非存在下でCD3xTA99処置と腫瘍特異的ワクチン接種とを組み合わせることによって増強することができた。ここで、本発明者らは、マウスB16F10黒色腫腫瘍を有するC57BL/6マウスにおいて、CD3xTA99 bsAb処置を、ACTの非存在下での腫瘍非特異的ワクチン接種と組み合わせることによっても、CD3xTA99の抗腫瘍効果を増強することができるかどうかを試験した。
【0306】
実験は、以下を除いて、本質的に実施例2に記載のように実行した:ワクチン接種を受けたマウスに、100μLのPBS中の150μgの腫瘍特異的KVP合成長ペプチドまたはリボソームタンパク質L18由来の腫瘍非特異的合成長ペプチド(Rpl18;配列番号57)のいずれかを尾部基部に皮下注射し、ACTは与えなかった。実施例1に記載されるように腫瘍成長を監視した。図7Aは、処置タイムラインを示す。
【0307】
未処置対照マウスでは、同系B16F10腫瘍細胞は、攻撃的な腫瘍成長を示し、生存期間の中央値は21日であった(図7B)。CD3xTA99 bsAbのみまたはRpl18もしくはKVPワクチン接種のいずれかによる処置によって有意に延長された生存は得られなかったが、生存期間中央値はそれぞれ25.5、24および29日に延長された。CD3xTA99 bsAbをRpl18またはKVPワクチン接種のいずれかと組み合わせると、腫瘍増殖の有意な遅延が観察され、CD3xTA99 bsAb処置単独と比較した場合、有意に長い生存期間が得られた(それぞれP=0.0173およびP=0.0027;図7C)。生存期間中央値は、CD3xTA99 bsAbおよび腫瘍非特異的Rpl18ワクチン接種で処置されたマウスの群では31日間に延長され、6匹のマウスのうち1匹が腫瘍チャレンジを生存した。CD3xTA99 bsAb処置を腫瘍特異的KVPワクチン接種と組み合わせた場合、生存期間中央値は、65日に延長され、8匹のマウスのうち4匹が生存した。
【0308】
まとめると、これらのデータは、CD3xTA99 bsAb処置をACTの非存在下での腫瘍特異的ワクチン接種または腫瘍非特異的ワクチン接種のいずれかと組み合わせることによって、CD3xTA99 bsAbの抗腫瘍有効性を増強することができることを示している。加えて、Rpl18ペプチドの非外来性にもかかわらず、抗腫瘍効果は、適切なアジュバントと組み合わせて投与された場合に達成され得、これは、非外来起源のワクチン抗原へのアジュバントの添加が自己寛容を克服し得ることを示す公開された報告からのデータによって裏付けられる(Baumgaertner et al.Int J Cancer,2011;130(11):2607-2617,Lienard et al.J Immunother.2009;32(8):875-83)。特に、CD3xTA99処置とアジュバントまたはアジュバントのみとの組み合わせは、実施例4にのみ示されるように、CD3xTA99処置と比較して生存を増強せず、本実施例で観察された抗腫瘍効果がワクチン抗原の添加に依存するという仮説を裏付けた。
【0309】
[実施例9]
腫瘍非特異的ワクチン接種は、bsAb投与の時点で免疫細胞の割合および腫瘍内の活性化を増加させ、CD3xTA99 bsAbと組み合わせた場合に生存率の向上をもたらす
【0310】
実施例8では、ACTを必要としないCD3xTA99 bsAbおよび腫瘍非特異的ワクチン接種併用処置の抗腫瘍有効性を提示した。実施例6では、アジュバントAldaraおよび/またはIL-2は、腫瘍内のcDC1、MoDC、NK細胞、M1マクロファージおよび未成熟マクロファージ集団の頻度の増加、ならびに静止マクロファージの頻度の減少を誘導することができるが、T細胞頻度の有意な変化は観察されなかったことが示された。ここで、本発明者らは、C57BL/6マウスにおけるB16F10腫瘍の腫瘍微小環境への異なる免疫細胞集団の浸潤に対する腫瘍非特異的ワクチン接種の効果を研究した。
【0311】
C57BL/6マウスの右側腹部に0.1%BSAを補充した200μLのPBS中の80,000個のB16F10細胞を皮下注射した。マウスを無作為化し、異なる処置群に分配した(群当たりn=6匹のマウス)。7日目および14日目に、60mgの5%イミキモド含有クリームAldaraを局所適用し、100μLのPBS中の150μgのRpl18長ペプチドを右脇腹に皮下注射した。14日目および15日目に100μLのPBS中の組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。16日目に、すべてのマウスを安楽死させた。腫瘍の単一細胞懸濁液を実施例5に記載されるように調製した。
【0312】
実施例6に記載するように、異なるフローサイトメトリー染色パネル(表9および10の詳細)を使用して、様々な表面および細胞内マーカーを指向する蛍光標識抗体で細胞を染色した。実験のタイムラインを図8Aに示す。
【0313】
【表9】
【0314】
【表10】
【0315】
マウスを未処置のままにしたか(n=6)、またはアジュバントであるAldaraおよびIL-2によるRpl18ワクチン接種の組み合わせで処置した(n=6)。
【0316】
免疫細胞サブセットを、表11に示すマーカーの発現によって特徴付けた。腫瘍非特異的ワクチン接種後の腫瘍における生細胞集団内の免疫細胞(CD45細胞)のパーセンテージの有意な増加があった(図8B)。全免疫細胞集団内で、CD8T細胞、NK細胞およびNKT細胞の割合も、腫瘍非特異的ワクチン接種時に有意に増加した(図8B;*、p<0.05)。同様に、ワクチン接種は、CD8/CD4T細胞およびCD8/Treg細胞の比の増加をもたらした。CD8TエフェクターおよびCD4Tセントラルメモリー細胞もまた、ワクチン接種後に有意に増加した(図8B;**、p<0.01)。
【0317】
割合の増加に加えて、リンパ系集団もより活性化された(図8C)。グランザイムBは、ワクチン接種後にCD8T細胞(**、p<0.01)、CD4T細胞(****、p<0.0001)、NK細胞(****、p<0.0001)、NKT細胞(*、p<0.01)およびCD19B細胞(*、p<0.05)において有意にアップレギュレートされた。腫瘍非特異的ワクチン接種で処置したマウスでは、有意により多くのCD103発現CD4T細胞およびNK細胞もあり、これは腫瘍微小環境におけるこれらの細胞の組織滞留の指標である(それぞれp<0.001およびp<0.01)。加えて、PD-1およびNKG2Aの発現は、CD8T細胞(p<0.05)およびNKT細胞(p<0.05およびp<0.01)で有意に増加した。
【0318】
【表11】
【0319】
次に、腫瘍中のCD45集団内の骨髄細胞サブセットのパーセンテージをフローサイトメトリーによって分析した。腫瘍非特異的ワクチン接種で処置すると、単球由来DCの増殖増加(moDC;*、p<0.05)が腫瘍で観察されたが、未成熟マクロファージ、好酸球および従来の樹状細胞では増殖増加の傾向が観察された(cDC1;図8B)。
【0320】
まとめると、これらのデータは、腫瘍非特異的ワクチン接種による処置が、二重特異性投与に先立ってB16F10腫瘍内のT細胞、NK細胞およびDCサブセットの割合を高めたことを示す。加えて、腫瘍内の免疫細胞サブセットは、腫瘍非特異的ワクチン接種後により活性化され、グランザイムBおよび活性化マーカーのレベルが上昇した。実施例6および実施例9に示された結果を比較すると、Rpl18ペプチドワクチン接種およびアジュバントであるAldaraおよびIL-2を含む併用療法でマウスを処置した場合、AldaraおよびIL-2のみで処置したマウス(実施例6)と比較して、実施例9でのみT細胞浸潤の増加が観察される。これは、アジュバントが、骨髄サブセットおよびNK細胞による腫瘍浸潤の増加または減少を誘導することによって(実施例6に示すように)、非抗原特異的様式で腫瘍微小環境を調節し得るが、T細胞の活性化を誘発するワクチン抗原が腫瘍へのT細胞浸潤に必要であり得ることを示唆する。
【0321】
[実施例10]
腫瘍非特異的外来抗原によるワクチン接種は、T細胞係合bsAb処置後のCD8T細胞の浸潤、活性化およびエフェクター分子発現の増加をもたらす
【0322】
以前の実施例は、腫瘍特異的ワクチン接種(KVP)、腫瘍非特異的ワクチン接種(Rpl18)またはOT1 T細胞ACTと腫瘍非特異的外来抗原ワクチン接種(OVA)との組み合わせと一緒のCD3xTA99 bsAbによる処置後の改善された腫瘍制御を実証した。さらに、実施例9では、Rpl18ペプチドワクチン接種で処置した腫瘍内で免疫細胞の存在および活性化の増強が観察された。ここでは、腫瘍内の免疫細胞の存在および活性化状態に対するCD3xTA99 bsAb処置への寄与を、腫瘍非特異的外来抗原(OVA)によるワクチン接種について研究した。
【0323】
これに対処するために、C57BL/6マウスの右側腹部に0日目に、0.1%BSAを補充した100μLPBS中の80,000個のTRP1発現KPC3細胞を移植した(図9A)。マウスを無作為化し、異なる処置群に分配した(群当たりn=7匹のマウス)。8日目および15日目に、ワクチン群のマウスを、実施例2に記載のように麻酔した後、100μLのPBSに溶解した150μgのOVA241-270ペプチドで免疫した。アジュバントとして、Aldaraを8日目および15日目に注射部位に局所適用し、15日目および16日目に、IL-2を腹腔内注射した。17日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射した。bsAb処置の2日後、すべてのマウスを屠殺した。腫瘍および脾臓の単一細胞懸濁液を実施例5に記載されるように調製した。染色を、表12、13および14に示される抗体パネルを使用して、実施例6に概説される手順に従って実行した。
【0324】
【表12】
【0325】
【表13】
【0326】
【表14】
【0327】
異なる免疫細胞集団によって発現されるマーカーを実施例6の表8に提供する。
【0328】
マウスをCD3xTA99 bsAbで処置すると、ワクチン接種群と非ワクチン接種群の両方で腫瘍内のCD45細胞の割合が増加した(図9B)。しかしながら、ワクチン接種群では、これは、CD3xTA99のみで処置したマウスまたは未処置のままにしたマウスと比較して、T細胞頻度の有意な増加と並行していた。さらに、併用処置は、従来の(FoxP3)CD4T細胞および制御性(Foxp3)CD4T細胞の両方の減少によって反映される、主にCD8T細胞に対するT細胞レパートリーのスキューイングをもたらした。加えて、腫瘍内のCD8T細胞は、未処理群またはCD3xTA99 bsAb単独と比較した場合、エフェクターT(Teff)細胞にほぼ排他的に切り替わり、実施例5および9に記載された結果と一致した。併用処置は、CD3xTA99 bsAb処置のみの群と比較して、腫瘍中のB細胞の相対頻度を有意に減少させたが、NK細胞の割合は有意に増加した。脾臓では、変化はあまり顕著ではなかった(図9C)。それでも、CD8T細胞へのT細胞組成物のわずかなシフト、ナイーブCD8T細胞の減少、およびこの群内の全身活性化を示唆するCD8eff細胞の対応する増加が観察された。さらに、脾臓におけるB細胞頻度は、CD3xTA99 bsAb処置のみの群と比較して、併用処置群で有意に減少したが、NK細胞頻度に影響は観察されなかった。
【0329】
ワクチン接種がT細胞浸潤物にどのように影響するかを理解するために、腫瘍および脾臓内のCD8T細胞の詳細な表現型決定を実施した(図9D図9E)。腫瘍において、CD3xTA99 bsAb単独での処置は、4-1BB発現および陰性チェックポイントTIGITの中程度の増加をもたらした(図9D)。他方、ワクチン接種の追加は、4-1BB、CD27、CD49aおよびOX40について陽性の細胞のさらなる増加をもたらした。併用群の細胞の3分の1がエフェクター分子グランザイムBについて陽性であった。同時に、陰性チェックポイント発現、具体的にはPD-1、Tim3およびNKG2Aならびに免疫抑制性エクトヌクレアーゼCD39の増加があった。さらに、ワクチン接種マウス由来のCD8T細胞は、Ki-67の発現によって測定されるように、より増殖性であった。転写因子分析により、両方の処置群が、通常はナイーブ状態に関連するTCF-1をダウンレギュレートしたが、組み合わせ群は、Tbet陽性CTL表現型に対するより大きなスキューイングの傾向を示したことが明らかになった。これらの結果を脾臓に存在するCD8T細胞の表現型検査と比較すると、bsAb単独によって引き起こされる変化が腫瘍に局在していることが明らかになった(図9E)。逆に、併用処置の効果はより全身的であった。
【0330】
T細胞区画の変化に加えて、併用療法後に腫瘍におけるNK細胞頻度の増加が観察された(図9B)。さらに検査すると、より高い割合のNK細胞が活性化され、併用処置群においてより多くのグランザイムBを発現した(図9F)。さらに、腫瘍マクロファージの表現型のシフトが観察され、M2マクロファージのほぼ完全な喪失、M0マクロファージの減少およびM1マクロファージの対応する増加が観察された(図9G)。まとめると、これらの所見は、併用処置効果がT細胞に限定されず、腫瘍微小環境のより好ましい骨髄組成ももたらすことを示唆している。
【0331】
全体として、これらのデータは、bsAb処置と外来腫瘍非特異的抗原によるワクチン接種との組み合わせが、bsAb処置単独と比較してより活性化されたより大きなCD8T細胞およびNK細胞浸潤物をもたらすことを示している。
【0332】
[実施例11]
CD3xTA99二重特異性抗体処置の抗腫瘍有効性に対する腫瘍非特異的外来抗原(OVA)ワクチン接種の効果
実施例10では、CD3xTA99 bsAb処置への腫瘍非特異的外来抗原ワクチン接種の追加が、内因性T細胞およびNK細胞の浸潤および活性化の著しい増加をもたらしたことが示された。したがって、実施例8に示すように、この処置レジメンが腫瘍特異的抗原(KVP)または腫瘍非特異的抗原(Rpl18)による免疫化と同様に、腫瘍増殖の制御の増強ももたらすかどうかをここで研究する。さらに、実施例10では、ワクチン接種およびCD3bsAb処理後のNK細胞浸潤物の増加およびグランザイムBの発現増強が観察された。したがって、併用処置レジメンに対するNK細胞の寄与は、ワクチン接種前にそれらを枯渇させることによって研究される。
【0333】
これに対処するために、0日目に、C57BL/6マウスの右側腹部に0.1%BSAを補充した100μLのPBS中の50,000個のB16F10腫瘍細胞を移植する。マウスを無作為化し、異なる処置群に分配する(群当たりn=8~12匹のマウス)。NK細胞の役割を調べるために、100μgの枯渇抗NK1.1抗体(Invivoplus抗NK1.1、BioXcell BP0036)を腫瘍注射の2日前に腹腔内注射し、次いで、2日目、9日目および16日目に腹腔内注射する。3日目および10日目に、ワクチン群のマウスを、実施例2に記載のように麻酔した後、100μLのPBSに溶解した150μgのOVA241-270ペプチドで免疫する。アジュバントとして、Aldaraを3日目および10日目に注射部位に局所適用し、10および11日目に、組換えヒトIL-2を腹腔内注射する。12日目および15日目に、マウスに12.5μgのCD3xTA99 bsAbを腹腔内注射する。腫瘍の増殖を腫瘍を週2回測定することによって監視し、腫瘍体積が1000mmを超えたらマウスを屠殺する。
【0334】
[実施例12]
マウス腫瘍モデルにおけるCD3xTA99 bsAbおよびプライム-ブーストインフルエンザワクチン接種レジメンから構成される併用処置による抗腫瘍効果の増強。
【0335】
実施例8では、マウス腫瘍モデルにおける抗腫瘍効果が、ACTを必要としない腫瘍特異的bsAbおよび腫瘍非特異的ワクチン接種を含む併用処置によって増強され得ることが示された。ここでは、マウス腫瘍モデルにおいて既存のウイルス特異的T細胞をブーストするためにワクチンレジメンと一緒にbsAb処置を組み合わせることによって抗腫瘍効果も増強できるかどうかを研究した。
【0336】
C57BL/6マウスに、低用量インフルエンザウイルス100×TCID50(HKx31;Sanquin、オランダ)を研究の-30日目に鼻腔内投与した。活動性感染の完全な消散後、0日目に、マウスの右側腹部に0.1%BSAを補充した200μLのPBS中の80,000個のB16F10細胞を皮下注射した。マウスを無作為化し、異なる処置群に分配した(群当たりn=10匹のマウス)。10日目に、60mgの5%イミキモド含有クリームAldaraを局所適用し、2×10個のTCID50熱不活化インフルエンザウイルス(70℃で1時間)を対側腹部に皮下注射した。10日目および11日目に100μLのPBS中の組換えヒトIL-2を腹腔内注射した。マウスは、12日目および15日目に200μLのPBS中の12.5μgのCD3xTA99(およそ0.5mg/kg)を腹腔内で受けた。実施例1に記載されるように腫瘍成長を監視した。処置スケジュールのタイムラインを図10Aに示す。
【0337】
未処置対照マウスでは、同系B16F10腫瘍細胞は、攻撃的な腫瘍成長を示し、生存期間の中央値は20日であった(図10B)。bsAb CD3xTA99のみによる処置によって有意に延長された生存は得られなかったが、生存期間中央値は24日に延長された(図10B)。活性インフルエンザ感染後または活性感染とワクチン接種との組み合わせ後にCD3xTA99 bsAbを投与すると、腫瘍増殖の有意な遅延が観察され、未処置マウスと比較した場合、有意に長い生存期間が得られた(それぞれP=0.0096およびP=0.0011;図10C)。生存期間中央値は、活動性インフルエンザ感染後にCD3xTA99 bsAbで処置されたマウス群では25.5日間に延長され、10匹のマウスのうち1匹が腫瘍チャレンジを生存した。CD3xTA99 bsAb処置を活動性感染およびワクチン接種と組み合わせた場合、生存期間中央値は、37.5日に延長され、10匹のマウスのうち3匹が生存した。
【0338】
まとめると、これらのデータは、CD3xTA99 bsAb処置の抗腫瘍有効性が、マウス腫瘍モデルにおいてCD3xTA99 bsAb処置とブーストされた既存のウイルス特異的T細胞とを組み合わせることによって増強され得ることを示す。
【0339】
[実施例13]
マウス腫瘍モデルにおけるブーストされた既存の腫瘍非特異的LCMV特異的T細胞とCD3xTA99 bsAb処置との組み合わせによる抗腫瘍効果の増強
【0340】
先の実施例では、CD3係合bsAbの抗腫瘍効果は、それを腫瘍非特異的ワクチンと組み合わせることによって増強され得ることが実証された。実施例12では、活性インフルエンザ感染が先行する、CD3係合bsAbおよびインフルエンザワクチンを含む併用処置が、抗腫瘍効果を増強することが示された。ここでは、CD3係合bsAbの抗腫瘍効果が、LCMVに以前に感染したマウスにおいて、CD3係合bsAb処置をリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)特異的ワクチン接種と組み合わせることによっても増強され得るかどうかが研究される。
【0341】
これを研究するために、試験の-30日目にC57BL/6マウスに100μlのPBS中の2×10PFUのLCMV-Armstrong(LUMC、オランダ)を腹腔内投与する。LCMVは、非自己抗原gp33およびgp34を発現する。活動性感染の完全な消散後、0日目に、マウスの右側腹部に0.1%BSAを補充した100μLのPBS中の50,000個のB16F10細胞を皮下注射する。マウスを無作為化し、異なる処置群(対照群のn=8匹のマウス;処置群のn=12匹のマウス)に分配する。8日目に、PBSに溶解した20μgのCpG-ODN1826と共に、gp33およびgp34エピトープ(社内で合成、LUMC、オランダ;配列番号58)を含有する100μgのSSP27-48合成長ペプチドをマウスの尾部基部に皮下注射する。マウスは、12日目および15日目に200μLのPBS中の12.5μgのCD3xTA99(およそ0.5mg/kg)を腹腔内で受けた。腫瘍成長を、実施例1に記載されるように監視する。
【0342】
実施例のまとめ
上記の実施例に提示されたデータは、T細胞係合bsAbの抗腫瘍効果を増強するための様々な提案されたレジメンを実証している。第1に、同種ワクチンと組み合わせて投与した場合、養子移入された腫瘍特異的または腫瘍非特異的T細胞が、T細胞係合bsAbがそれらの抗腫瘍効果を発揮することを可能にするためのT細胞のさらなる供給源を構成し得ることが示された。第2に、T細胞係合bsAbの抗腫瘍効果は、腫瘍特異的または腫瘍非特異的ワクチンと養子移入されたT細胞の非存在下でのbsAb処置との組み合わせによっても増強され得ることが示された。さらに、そのようなワクチン組成物に共製剤化されたアジュバントの効果は、抗原提示細胞およびNK細胞などの非抑制性白血球集団の頻度を増加させることによって、抑制性腫瘍微小環境を調節するのに役立ち得ることが示された。ワクチン抗原およびアジュバントを含む併用処置は、提案されたbsAb処置のタイミングの前に、腫瘍において、より活性化された表現型を示すT細胞およびNK細胞の頻度の増加を誘導することが示された。最後に、腫瘍特異的抗原を標的とするT細胞係合bsAbと、既存のT細胞をブーストすることができる腫瘍非特異的免疫原性組成物とを含む併用処置は、主に活性化されたTeff表現型を有する腫瘍浸潤T細胞の有意に増加した頻度を誘導することが示された。
【0343】
そのようなbsAbを、既存の腫瘍非特異的または腫瘍特異的T細胞をブーストするように設計されたワクチン接種レジメンと組み合わせることによって、T細胞係合bsAbの抗腫瘍効力を増強するための一般化された概念が示される。そのようなT細胞は、その後、ワクチン成分によって予め調節され得る腫瘍微小環境に浸潤し得る。そのような浸潤は、CXCR3依存性機構を介して(部分的に)起こると考えられている。そのような既存のT細胞をブーストすることによって、腫瘍標的にも一価で結合することができるT細胞係合bsAbによる係合のために、より大きくより活性化されたT細胞のプールが利用可能になり得る。そのようなT細胞は、T細胞係合bsAbに結合すると腫瘍細胞の死滅を誘導し得るが、活性化T細胞の流入および腫瘍微小環境における抑制性細胞集団の頻度の減少は、腫瘍浸潤NK細胞の活性化と並行している。合わせて、これらの因子は、T細胞係合bsAb処置の抗腫瘍有効性の改善に寄与する。
OT1
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【配列表】
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【国際調査報告】