(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ゾーンフリーIHクッカーの方法及びコントローラ
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
H05B6/12 314
H05B6/12 308
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514449
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020074357
(87)【国際公開番号】W WO2022048732
(87)【国際公開日】2022-03-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513121384
【氏名又は名称】ベステル エレクトロニク サナイー ベ ティカレト エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】キュズラル フセイン ジェム
(72)【発明者】
【氏名】キリスケン バルバロス
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA14
3K151CA01
3K151CA22
(57)【要約】
IHクッカー(100)を制御する方法及びコントローラ(300)が提供される。IHクッカー(100)は、料理用容器(400)を誘導加熱するための少なくとも2つの誘導コイル(200)を備える。誘導コイルのうち第1の誘導コイル(200a)に検出信号(500a)が与えられ、誘導コイルのうち第2の誘導コイル(200b)に検出信号(500b)が与えられる。第1の誘導コイル(200a)からの応答信号(501a)が測定される。第1の誘導コイル(200a)からの応答信号(501a)が、第2の誘導コイル(200b)に与えられた検出信号(500b)に応じて第2の誘導コイル(200b)で生成された応答信号(501b)の兆候(550)を含んでいれば、同じ料理用容器(400)が第1の誘導コイル(200a)と第2の誘導コイル(200b)の両方を占有していると判定される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
料理用容器(400)を誘導加熱するための少なくとも2つの誘導コイル(200)を備えるIHクッカー(100)を制御する方法であって、
前記誘導コイルのうち第1の誘導コイル(200a)に検出信号(500a)を与え、
前記誘導コイルのうち第2の誘導コイル(200b)に検出信号(500b)を与え、
前記第1の誘導コイル(200a)からの応答信号(501a)を測定し、
前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号(501a)が、前記第2の誘導コイル(200b)に与えられた前記検出信号(500b)に応じて前記第2の誘導コイル(200b)で生成された応答信号(501b)の兆候(550)を含むことを特定することにより、同じ料理用容器(400)が前記第1の誘導コイル(200a)と前記第2の誘導コイル(200b)の両方を占有していると判定する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第2の誘導コイル(200b)に与えられる前記検出信号(500b)は、前記検出信号(500a)が前記第1の誘導コイル(200a)に与えられるよりも後の時間に与えられ、前記第2の誘導コイル(200b)で生成された前記応答信号(501b)の前記兆候(550)は、前記検出信号(500b)が前記第2の誘導コイル(200b)に与えられた時間に対応する時点における、前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号(501a)の振幅の増加である方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、前記第2の誘導コイル(200b)に与えられた前記検出信号(500b)は前記第1の誘導コイル(200a)に与えられた前記検出信号(500a)とは異なる周波数を有し、前記第2の誘導コイル(200b)で生成された前記応答信号(501b)の前記兆候(550)は前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号(501a)と前記第2の誘導コイル(200b)からの前記応答信号(501b)の和である方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法であって、前記第2の誘導コイル(200b)からの前記応答信号(501b)を測定し、前記特定は前記応答信号(501a、501b)が両方減衰すると行われる方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法であって、同じ料理用容器(400)が前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)を両方占有していると判定されると、前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)が1つの制御設定によって制御されるように、前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)を同じ制御ゾーンに割り当てる方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記第2の誘導コイル(200b)からの前記応答信号(501b)を測定し、
前記応答信号(501a、501b)が両方減衰しているが、前記第2の検出信号(500b)に応じて前記第2の誘導コイル(200b)で生成された応答信号(501b)の兆候(550)がないことを特定することにより、2つの別個の料理用容器が前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)をそれぞれ占有していると判定し、
2つの別個の容器が前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)をそれぞれ占有していると判定されると、前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)がそれぞれ異なる制御設定によって制御されるように、前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)それぞれを別個の制御ゾーンに割り当てる方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法であって、前記IHクッカー(100)は、少なくとも3つの誘導コイル(200a、200b、200c)を備え、当該方法は、
前記誘導コイルのうち第3の誘導コイル(200c)に検出信号を与えて、前記第3の誘導コイル(200c)に応答信号を生成させ、
前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号が、前記第3の誘導コイル(200c)に与えられた前記検出信号に応じて前記第3の誘導コイル(200c)で生成された応答信号の兆候(550)を含むことを特定することにより、同じ料理用容器(400)が前記第1の誘導コイル(200a)と前記第3の誘導コイル(200c)の両方を占有していると判定する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記第3の誘導コイル(200c)に与えられる前記検出信号は、前記検出信号(500a、500b)が前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)に与えられるよりも後の時間に与えられ、前記第3の誘導コイル(200c)で生成された前記応答信号の前記兆候(550)は、前記検出信号が前記第3の誘導コイル(200c)に与えられた時間に対応する時点における、前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号(501a)の振幅の増加である方法。
【請求項9】
料理用容器(400)を誘導加熱するための少なくとも2つの誘導コイル(200)を備えるIHクッカー(100)のコントローラ(300)であって、当該コントローラ(300)はIHクッカー(100)に搭載されるとき、
前記誘導コイルのうち第1の誘導コイル(200a)に検出信号(500a)を与え、
前記誘導コイルのうち第2の誘導コイル(200b)に検出信号(500b)を与え、
前記第1の誘導コイル(200a)からの応答信号(501a)を測定し、
前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号(501a)が、前記第2の検出信号(500b)に応じて前記第2の誘導コイル(200b)で生成された応答信号(501b)の兆候(550)を含むかを特定することにより、同じ料理用容器(400)が前記第1の誘導コイル(200a)と前記第2の誘導コイル(200b)の両方を占有していると判定するコントローラ。
【請求項10】
請求項9に記載のコントローラ(300)であって、前記第2の誘導コイル(200b)への前記検出信号(500b)を前記第1の誘導コイル(200a)への前記検出信号(500a)よりも後の時間に与え、前記第2の誘導コイル(200b)で生成された前記応答信号(501b)の前記兆候(550)は、前記検出信号(500b)が前記第2の誘導コイル(200b)に与えられた時間に対応する時点における、前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号(501a)の振幅の増加であるコントローラ。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載のコントローラ(300)であって、前記第2の誘導コイル(200b)に与えられた前記検出信号(500b)は前記第1の誘導コイル(200a)に与えられた前記検出信号(500a)とは異なる周波数を有し、前記第2の誘導コイル(200b)で生成された前記応答信号(501b)の前記兆候(550)は前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号(501a)と前記第2の誘導コイル(200b)からの前記応答信号(501b)の和であるコントローラ。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のコントローラ(300)であって、前記第2の誘導コイル(200b)からの前記応答信号(501b)を測定し、前記応答信号(501a、501b)が両方減衰すると前記特定を行うコントローラ。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか一項に記載のコントローラ(300)であって、同じ料理用容器(400)が前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)を両方占有していると判定すると、前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)が1つの制御設定によって制御されるように、前記第1及び第2の誘導コイル(200a、200b)を同じ制御ゾーンに割り当てるコントローラ。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか一項に記載のコントローラ(300)であって、前記IHクッカー(100)は少なくとも3つの誘導コイル(200a、200b、200c)を備え、当該コントローラ(300)は、
前記誘導コイルのうち第3の誘導コイル(200c)に検出信号を与えて、前記第3の誘導コイル(200c)に応答信号を生成させ、
前記第1の誘導コイル(200a)からの前記応答信号が、前記第3の誘導コイル(200c)に与えられた前記検出信号に応じて前記第3の誘導コイル(200c)で生成された応答信号の兆候(550)を含むことを特定することにより、同じ料理用容器(400)が前記第1の誘導コイル(200a)と前記第3の誘導コイル(200c)の両方を占有していると判定するコントローラ。
【請求項15】
請求項9から請求項14のいずれか一項に記載の前記コントローラ(300)と、複数の誘導コイル(200)とを備えるIHクッカー(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゾーンフリーIHクッカーの制御方法、及び、ゾーンフリーIHクッカーを制御するためのコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
誘導コイルの数と配置により区別される、IHクックトップ又はクッカーといった2種類の一般的な構成がある。調理面(例えば、ガラス面)は誘導コイルの上方に配置される。先行技術において周知のように、料理用容器は、電磁誘導を用いる1つ以上(構成による)の誘導コイルによって容器を加熱可能な調理面上に置かれることがある。誘導加熱に適した料理用容器には、例えば、強磁性体からなる又はを含む料理用容器がある。
【0003】
一般に固定ゾーン式のIHクッカーと称される構成では、少ない数(例えば4つ)の誘導コイルが設けられる。各誘導コイルは特定の「コンロエリア」を規定する。料理用容器は、これらのコンロエリアの1つの中に実質的に置かれる場合にのみ加熱可能となる。このため、ユーザは料理用容器の配置に注意しなければならない上、クッカーに置くことができる料理用容器の数も限定される。
【0004】
一般にゾーンフリーIHクッカーと称される別の構成では、多く(例えば、20つ、40つ、又はそれ以上)のより小型の誘導コイルが設けられる。誘導コイルは通常調理面全体に亘っており、このことは、料理用容器を特定のコンロエリアに制限されることなく、実際には調理面上のどこにでも置くことができることを意味する。そして、上方に料理用容器が配置されている、いずれか1つ又は複数(通常、複数)の誘導コイルによって、料理用容器は誘導加熱されることになる。対応する誘導コイルに然るべく電力が供給可能となるように料理用容器の位置を検出するため、光学、容量、及び、超音波センサといった検知装置が通常設けられる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示される第1の態様によれば、料理用容器を誘導加熱するための少なくとも2つの誘導コイルを備えるIHクッカーを制御する方法が提供され、当該方法は、前記誘導コイルのうち第1の誘導コイルに検出信号を与え、前記誘導コイルのうち第2の誘導コイルに検出信号を与え、前記第1の誘導コイルからの応答信号を測定し、前記第1の誘導コイルからの前記応答信号が、前記第2の誘導コイルに与えられた前記検出信号に応じて前記第2の誘導コイルで生成された応答信号の兆候を含むことを特定することにより、同じ料理用容器が前記第1の誘導コイルと前記第2の誘導コイルの両方を占有していると判定する。
【0006】
これにより、さらに以下で記載されるように、個別センサといった別々の検知装置が設けられること及びそれに伴うデメリットが回避される。
【0007】
一例において、前記第2の誘導コイルに与えられる前記検出信号は、前記検出信号が前記第1の誘導コイルに与えられるよりも後の時間に与えられ、前記第2の誘導コイルで生成された前記応答信号の前記兆候は、前記検出信号が前記第2の誘導コイルに与えられた時間に対応する時点における、前記第1の誘導コイルからの前記応答信号の振幅の増加である。
【0008】
一例において、前記第2の誘導コイルに与えられた前記検出信号は前記第1の誘導コイルに与えられた前記検出信号とは異なる周波数を有し、前記第2の誘導コイルで生成された前記応答信号の前記兆候は前記第1の誘導コイルからの前記応答信号と前記第2の誘導コイルからの前記応答信号の和である。
【0009】
一例において、前記方法では、前記第2の誘導コイルからの前記応答信号を測定し、前記特定は前記応答信号が両方減衰すると行われる。一般に、誘導コイルからの応答信号は、その誘導コイルを占有する料理用容器(の少なくとも一部)の存在により減衰するだろう。
【0010】
一例において、前記方法では、同じ料理用容器が前記第1及び第2の誘導コイルを両方占有していると判定されると、前記第1及び第2の誘導コイルが1つの制御設定によって制御されるように、前記第1及び第2の誘導コイルを同じ制御ゾーンに割り当てる。
【0011】
一例において、前記方法では、前記第2の誘導コイルからの前記応答信号を測定し、前記応答信号が両方減衰しているが、前記第2の検出信号に応じて前記第2の誘導コイルで生成された応答信号の兆候がないことを特定することにより、2つの別個の料理用容器が前記第1及び第2の誘導コイルをそれぞれ占有していると判定し、2つの別個の容器が前記第1及び第2の誘導コイルをそれぞれ占有していると判定されると、前記第1及び第2の誘導コイルがそれぞれ異なる制御設定によって制御されるように、前記第1及び第2の誘導コイルそれぞれを別個の制御ゾーンに割り当てる。
【0012】
一例において、前記IHクッカーは、少なくとも3つの誘導コイルを備え、当該方法では、前記誘導コイルのうち第3の誘導コイルに検出信号を与えて、前記第3の誘導コイルに応答信号を生成させ、前記第1の誘導コイルからの前記応答信号が、前記第3の誘導コイルに与えられた前記検出信号に応じて前記第3の誘導コイルで生成された応答信号の兆候を含むことを特定することにより、同じ料理用容器が前記第1の誘導コイルと前記第3の誘導コイルの両方を占有していると判定する。
【0013】
一例において、前記第3の誘導コイルに与えられる前記検出信号は、前記検出信号が前記第1及び第2の誘導コイルに与えられるよりも後の時間に与えられ、前記第3の誘導コイルで生成された前記応答信号の前記兆候は、前記検出信号が前記第3の誘導コイルに与えられた時間に対応する時点における、前記第1の誘導コイルからの前記応答信号の振幅の増加である。
【0014】
本明細書に開示される第2の態様によれば、料理用容器を誘導加熱するための少なくとも2つの誘導コイルを備えるIHクッカーのコントローラが提供され、当該コントローラはIHクッカーに搭載されるとき、前記誘導コイルのうち第1の誘導コイルに検出信号を与え、前記誘導コイルのうち第2の誘導コイルに検出信号を与え、前記第1の誘導コイルからの応答信号を測定し、前記第1の誘導コイルからの前記応答信号が、前記第2の検出信号に応じて前記第2の誘導コイルで生成された応答信号の兆候を含むかを特定することにより、同じ料理用容器が前記第1の誘導コイルと前記第2の誘導コイルの両方を占有していると判定する。
【0015】
一例において、当該コントローラは前記第2の誘導コイルへの前記検出信号を前記第1の誘導コイルへの前記検出信号よりも後の時間に与え、前記第2の誘導コイルで生成された前記応答信号の前記兆候は、前記検出信号が前記第2の誘導コイルに与えられた時間に対応する時点における、前記第1の誘導コイルからの前記応答信号の振幅の増加である。
【0016】
一例において、前記第2の誘導コイルに与えられた前記検出信号は前記第1の誘導コイルに与えられた前記検出信号とは異なる周波数を有し、前記第2の誘導コイルで生成された前記応答信号の前記兆候は前記第1の誘導コイルからの前記応答信号と前記第2の誘導コイルからの前記応答信号の和である。
【0017】
一例において、当該コントローラは、前記第2の誘導コイルからの前記応答信号を測定し、前記応答信号が両方減衰すると前記特定を行う。
【0018】
一例において、当該コントローラは、同じ料理用容器が前記第1及び第2の誘導コイルを両方占有していると判定すると、前記第1及び第2の誘導コイルが1つの制御設定によって制御されるように、前記第1及び第2の誘導コイルを同じ制御ゾーンに割り当てる。
【0019】
一例において、前記IHクッカーは少なくとも3つの誘導コイルを備え、当該コントローラは、前記誘導コイルのうち第3の誘導コイルに検出信号を与えて、前記第3の誘導コイルに応答信号を生成させ、前記第1の誘導コイルからの前記応答信号が、前記第3の誘導コイルに与えられた前記検出信号に応じて前記第3の誘導コイルで生成された応答信号の兆候を含むことを特定することにより、同じ料理用容器が前記第1の誘導コイルと前記第3の誘導コイルの両方を占有していると判定する。
【0020】
本明細書に開示される第3の態様によれば、前記第2の態様に係る前記コントローラと複数の誘導コイルとを備えるIHクッカーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本開示の理解を促し、かつ、実施形態がどのように実施されうるかを示すために、例として以下の添付図面が参照される。
【0022】
【
図1】本明細書で開示される一例に係るIHクッカーを概略的に示す。
【
図2】料理用容器に現在占有されていない誘導コイルに検出信号を印加する例を概略的に示す。
【
図3】料理用容器に現在占有されている誘導コイルに検出信号を印加する例を概略的に示す。
【
図4】3つの調理用容器がIHクッカー上に存在する例を概略的に示す。
【
図5A】2つの別個の料理用容器が2つの誘導コイルを占有する第1の場面を概略的に示す。
【
図5B】1つの料理用容器が2つの誘導コイルを占有する第2の場面を概略的に示す。
【
図6】2つの誘導コイルに印加された遅延させた検出信号の一例を概略的に示す。
【
図7】第1の場面に係る応答信号の例を概略的に示す。
【
図8】第2の場面に係る応答信号の例を概略的に示す。
【
図9】本明細書に記載される一例における例示的な方法を示す。
【
図10】誘導コイルの矩形配列のための、第1の例示的な検出信号方式を示す。
【
図11】誘導コイルの矩形配列のための、第2の例示的な検出信号方式を示す。
【
図12】誘導コイルの六角形配列のための、例示的な検出信号方式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本開示に係るIHクッカー100の一例を示す。より明確になるという理由から、IHクッカー100は「ゾーンフリー」又は「フリーゾーン」IHクッカーと称されることがある。
【0024】
IHクッカー100は、複数の誘導コイル200とコントローラ300を備える。調理面(例えば、ガラス面)は、誘導コイル200の上方に配置される。強磁性体からなる又はを含む容器(すなわち、料理用容器)は、電磁誘導を用いる1つ以上の誘導コイル200によって容器を加熱可能な調理面上に置かれてもよい。調理面の右上に配置された料理用容器400の一例が
図1に示される。料理用容器400は、例えば、強磁性体からなる又はを含む深鍋や平鍋等でもよい。
【0025】
いわゆる「フリーゾーン」IHクッカー100の誘導コイル200は、「固定ゾーン式」のIHクッカーのものより小さい。例えば、各誘導コイル200は、通常の料理用容器より(大分)小さくてもよい。これは、特定の或いは明確なコンロエリアは存在せず、ユーザは各料理用容器を調理面上に自由に置くことができることを意味する。そして、偶然その位置の下方に配置されていたいずれかの誘導コイル200によって料理用容器を加熱することができる。
図1の例では、例示した料理用容器400は4つの誘導コイル200の上方に配置されている。
【0026】
図1の例では、IHクッカー100は、6×7の矩形格子状に配列された42個の誘導コイル200を備える。別の例では、誘導コイル200は、これより多くても少なくてもよい。別の例では、誘導コイル200は、非矩形の規則的な(例えば、六角形格子)或いは不規則なパターンで配列されてもよい。
【0027】
コントローラ300は、複数の誘導コイル200に動作可能に接続される。動作時、コントローラ300は、複数の誘導コイル200それぞれに供給される電力を適宜制御することにより、存在する料理用容器がどんなものであれ、実施される誘導加熱の量を制御する。コントローラ300は、例えば1つ以上のプロセッサによって実現されてもよい。
【0028】
次に
図2及び
図3を参照して説明されるように、コントローラ300は、所定の誘導コイル200に対して、当該誘導コイル200上に料理用容器が現在存在しているか否かを判定することができる。この情報は、例えば、(料理用容器がその上に置かれていることから)使用される必要がある誘導コイル200のみに電力が供給されるように、また、(料理用容器がその上に置かれていないことから)現在使用されていない誘導コイル200に電力が供給されないように、コントローラ300によって使用され得る。
【0029】
所定の誘導コイル200が現在占有されているか(料理用容器が400その上に配置されているか)を判定する際、コントローラ30は、検出信号500を誘導コイル200に印加し、その誘導コイル200からの応答信号501を測定することにより誘導コイル200を調べる。例えば、コントローラ300は周知の電圧(例えば、正弦波交流電圧)で誘導コイル200を駆動して、得られた電流を観察してもよい。
【0030】
図2は、料理用容器400に現在占有されていない誘導コイル200に検出信号500を印加する例を示す。この場合、得られた応答信号501aは実質的に非減衰であり、単にゆっくりと弱まる。
【0031】
図3は、料理用容器に現在占有されている誘導コイル200に検出信号500を印加する例を示す。この場合、得られた応答信号501bは(大幅に)減衰しており、すぐに弱まる。これは、検出信号50から電力を取った料理用容器に発生した渦電流によるものである。
【0032】
図4は、3つの調理用容器400a、400b、400cがIHクッカー100上に置かれている例を示す。第1の料理用容器400aは調理面の右上に配置される。第2の料理用容器400bは第1の料理用容器400aに隣接し、境界線450を共有する。第3の料理用容器400cは、第1の料理用容器400aと第2の料理用容器400bのいずれとも隣接しない。
【0033】
ユーザがコントローラ300にユーザ入力を行うことができるユーザインターフェース350が設けられる。ユーザインターフェース350は、例えば、タッチスクリーンでもよく、又は、操作可能なボタン等を有してもよい。固定ゾーン式のIHクッカーに比べ、既定の「コンロ」ではなく調理面上のどこにでも容器を置いてよいため、より高度な制御が必要とされる。
【0034】
各料理用容器400に対し個別に行う加熱をユーザが変更できるように、誘導コイル200は「制御ゾーン」に分けられてもよい。各制御ゾーンは、共通の制御設定(例えば、電力設定)を共有する1つ以上の誘導コイル200のセットである。理想的には、各制御ゾーンは、1つの料理用容器400(の底面積)に対応する。コントローラ300は、ユーザが各制御ゾーンの制御設定を指定できるように、ユーザに現在の制御ゾーンを(例えば、グラフィカル・ユーザ・インターフェース上に)示してもよい。言い換えると、各制御ゾーンは、ユーザによって独立して制御可能である。
【0035】
制御ゾーンは、料理用容器の配置と位置によりその場その場で規定されてもよい。この例では、第1の制御ゾーンAが第1の料理用容器400a用に規定され、第2の制御ゾーンBが第2の料理用容器400b用に規定され、第3の制御ゾーンCが第3の料理用容器400c用に規定される。第1の制御ゾーンAは第1の料理用容器400aが配置される誘導コイル200を備え、第2の制御ゾーンBは第2の料理用容器400bが配置される誘導コイル200を備え、第3の制御ゾーンCは第3の料理用容器400cが配置される誘導コイル200を備える。
【0036】
図2及び
図3に関連して前述したように、検出信号500は、どの誘導コイル200が料理用容器400(少なくともその一部)によって現在占有されているかを判定する際に用いられ得る。コントローラ300が、1つの料理用容器と、隣接又は密接して配置された2つの料理用容器とを区別できなければ、コントローラ300は、実際には2つの別個の料理用容器であるものに対して1つの制御ゾーンを割り当てることになる。これではユーザは各料理用容器のための別個の制御設定を指定することができず、好ましくない。
【0037】
このことを回避するため、コントローラ300は、互いに隣接する第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bに対し、
図5A及び
図5Bに図示される2つの場面を区別可能である必要がある。
【0038】
図5Aにおいて、第1の料理用容器400aは第1の誘導コイル200aを占有し、第2の料理用容器400bは第2の誘導コイル200bを占有する。この場合、第1の料理用容器400aと第2の料理用容器400bにはそれぞれ、別個の制御設定が要求されてもよい。したがって、コントローラ300は、例えば料理用容器ごとに、適宜ユーザが異なる電力設定を用いて異なる制御設定を指定してもよいように、第1の誘導コイル200aのみを有する、第1の料理用容器400a用の第1の制御ゾーンと、第2の誘導コイル200bのみを有する、第2の料理用容器400b用の第2の制御ゾーンといった別個の制御ゾーンを割り当てることになる。
【0039】
図5Bにおいて、1つの料理用容器400cが第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bを両方占有する。この場合、1つの料理用容器400c用に1つの制御設定のみが必要とされる。したがって、コントローラ300は、第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bの両方からなる、1つの料理用容器400a用の1つの制御ゾーンを割り当てることになる。そして、ユーザは、同じ電力設定等で第1の誘導コイル200aと第2の誘導200bを両方制御するためにコントローラ300によって用いられる、1つの料理用容器400a用の1つの制御設定を指定してもよい。
【0040】
誘導コイル200a、200bへの検出信号の単純な印加により、コントローラ300に誘導コイルが占有されていることを特定させることができる。しかしながら、両場面において、料理用容器(の一部)が両コイルの上方に配置されているため、コイルからの応答信号は減衰するものと思われる。すなわち、他の対策が取られなければ、コントローラは、適切な制御オプションをユーザに提供するために
図5Aの場面と
図5Bの場面を区別することができない。
【0041】
先行技術の解決策では、料理用容器の位置を検出するための1つ以上の追加の検知装置が用いられる。このような追加の検知装置として、光学、容量、及び、超音波センサが挙げられる。この点のデメリットには、追加のハードウェア費用と製造アセンブリ費用が生じることが挙げられる。また、追加の構成要素によりハードウェアの複雑さが増し、不具合の可能性が高まる恐れもある。このような検知装置を用いる別のデメリットは、判定成功率が低くなり得ることである。この理由は、調理面が厚くなり得ることで感度が低下すること、また、クッカーの使用により検知装置は時間と共に汚れやすく、これによってもセンサ感度が低下することの両方である。
【0042】
本明細書に記載される各例では、追加の個別の検出装置(先行技術で使用されるような光学、容量、及び、超音波センサ)を必要としない解決策が提供される。その代わり、コントローラ300は各誘導コイル200に対し、(異なる時間に供給される、或いは、検出信号自体が何らかの検出可能な方法で互いに相違するかのいずれかであるため)互いに区別可能な検出信号を与え、その応答信号を観察して、ある誘導コイル200が与える応答信号の兆候が他のコイル400から受信した応答信号中にあるかを特定する。このような兆候は、同じ料理用容器400が両方の誘導コイル200を占有する場合にのみ見られるだろう。これは、その場合、両方の検出信号が同じ料理用容器に作用しているため、互いに有効に干渉するからである。各誘導コイル200上に別個の料理用容器400があるとき、このような干渉は起こらないため、ある検出信号の兆候が他の応答信号中に特定され得ない。
【0043】
各誘導コイル200に与えられた検出信号を区別可能にする又は「異なる」ものにするような方法はいくつかある。説明の便宜上、まず、検出信号が各誘導コイル200に対し異なる時間に(すなわち、互いに時間がずれて)与えられる例を説明する。その後、以下で別の例を説明する。
【0044】
図6は、本明細書に記載される例に係る第1の検出信号500aと第2の検出信号500bを示す。各検出信号は正弦波電圧を有する。
【0045】
第1の検出信号500aは、時間t=0において第1の誘導コイル200aに与えられる。第2の検出信号500bは、その後の時間において第2の誘導コイル200bに与えられる。すなわち、第2の検出信号500bは、時間遅延Δtだけ第1の検出信号500aから時間がずれる。
【0046】
図7は、
図5Aの場面(別個の料理用容器400)に係る、検出信号500a、500bに応じて第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bから受信した応答信号を示す。
【0047】
この場合、第1の応答信号501aと第2の応答信号501bはそれぞれ減衰正弦曲線であり、誘導コイル200a、200bが両方とも料理用容器400によって占有されていることを示す。第2の応答信号501bは第1の応答信号501aに対して時間がΔtだけ遅れる。
【0048】
図8は、
図5Bの場面(1つの料理用容器400)に係る、検出信号500a、500bに応じて第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bから受信した応答信号を示す。
【0049】
この場合、前述同様、第1の応答信号501aと第2の応答信号501bは減衰正弦曲線である。しかしながら、第1の応答信号501a中に第2の検出信号500bの兆候550もある。この兆候550は、第2の誘導コイル200bに与えられた検出信号500bが同じ料理用容器400(すなわち、同じ一個の物質)に作用し、そのため第1の誘導コイル200aで観察される応答信号501aを変化させることが原因で生じる。
【0050】
この兆候は、応答信号501aの振幅におけるさらなる増加として現われてもよい。すなわち、第1の応答信号501は単純な減衰信号ではなく、第2の検出信号500bに対応する追加の要素を含む。すなわち、第1の応答信号501aは第2の応答信号501bのアーチファクト(artefact)を示す。これは、第2の誘導コイル200bに印加された第2の検出信号500bが、第1の誘導コイル200aに何らかの影響を持っていたことを意味する。前述のように、これは、同じ料理用容器が誘導コイル200a、200bの両方を占有している場合限定である。したがって、このような兆候550の存在は、同じ料理用容器400が第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bの両方を占有していることを判定する際に(すなわち、1つの料理用容器と別個の料理用容器とを区別する際に)用いることができる。
【0051】
なお、第1の応答信号501aの開始に対する兆候550の時間遅延Δtは、第2の検出信号500bと第1の検出信号500aとの間の時間遅延Δtに対応する。このことは以下でまた言及される。
【0052】
図9は、コントローラ300によって実行される例示的な方法を示す。
【0053】
S900において、コントローラ300は第1の誘導コイル200aに第1の検出信号500aを与える。これにより、第1の誘導コイル200aは第1の応答信号501aを生成する。
【0054】
S901において、コントローラ300は第2の誘導コイル200bに第2の検出信号500bを与える。これにより、第2の誘導コイル200bは第2の応答信号501bを生成する。
【0055】
S902において、コントローラ300は第1の誘導コイル200aからの第1の応答信号501aを測定する。
【0056】
S903において、コントローラ300は、第1の応答信号501a中に第2の検出信号の兆候550があるか特定する。
【0057】
第1の応答信号501a中に第2の検出信号500bの兆候550があれば、コントローラ300はS904に進み、コントローラ300は、同じ容器400が第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bの両方を占有していると判定する。
【0058】
一方、第1の応答信号501a中に第2の検出信号500bの兆候550がなければ、コントローラはS905に進み、同じ料理用容器400が第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bの両方を占有している場合ではないと判定される。
【0059】
なお、
図9の方法は例示的であり、他の例において、コントローラ300は追加の動作を行ったり、異なる順序で動作を行ったり等してもよい。
【0060】
例えば、コントローラ300は、さらに第2の応答信号501bを測定し、第1の応答信号501aと第2の応答信号501bの両方が減衰している場合のみ、S903において特定を行ってもよい。このことは、応答信号501a、501bの一方(又は両方)が減衰していなのであれば、それぞれの誘導コイル上に料理用容器400はないため、コントローラ300は前述のように兆候550の有無を特定するまでもなく、1つの料理用容器400が誘導コイル200a、200bの両方を占有している可能性を除外できるため、有利である。
【0061】
一般に、コントローラ300はそれぞれの検出信号500を与え、存在するいずれかの誘導コイル200からのそれぞれの応答信号501を測定してもよい。減衰した応答信号501を与える誘導コイル200は、料理用容器400(の一部)によって占有されていると判定することができる。前述したように、コントローラ300はさらに、応答信号501を分析してどの誘導コイル200がどの他の誘導コイル200と干渉しているか特定し、それを用いて調理面上の料理用容器400の配置を判定することができる。特に、2つの隣接する誘導コイル200が減衰した応答信号501を与えるが、いずれの応答信号501にも別の応答信号501の兆候550が存在しなければ、コントローラ300は、2つの隣接する料理用容器400間の境界線を特定することができる。
【0062】
コントローラ300が料理用容器400の配置を判定すると、ユーザに適当な制御オプションを与えることができる。上記例に続き、コントローラは、同じ容器400が誘導コイル200a、200bの両方を占有していると判定すると、自動的に第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200b双方に対して1つの制御設定を与え、2つの別個の料理用容器400が誘導コイル200a、200bを占有していると判定すると、自動的に第1の誘導コイル200aと第2の誘導コイル200bに対して別個の制御設定を与えてもよい。
【0063】
実際のIHクッカー100は、前述の簡略化された例における2つではなく、むしろ多くの誘導コイル200を備えてもよい。このような場合、1つの料理用容器400が、正確にどの2つ(又はそれ以上)の誘導コイル200を占有しているのかが曖昧である可能性がある。各例において、コントローラ300は、各誘導コイル400に与えられた検出信号500の性質(時間遅延等)を活用することにより、これがどの隣接する誘導コイル400であるかを特定することもできる。
【0064】
例えば、3つの誘導コイル200a、200b、200cを備えるIHクッカー100において、第1の誘導コイル200aは第2の誘導コイル200bと第3の誘導コイル200cに隣接し、第2の誘導コイル200bと第3の誘導コイル200cは互いに隣接しない場合を考えてみる。
【0065】
この構成では、コントローラ300は異なる時間遅延で各誘導コイル200に検出信号500をそれぞれ与える。例えば、コントローラ300は、第1の検出信号を第1の誘導コイル200aに時間t=0msに与え、第2の検出信号を第2の誘導コイル200bに時間t=10msに与え、第3の検出信号を第3の誘導コイル200cに時間t=20msに与える。
【0066】
そして、コントローラ300は、第1の誘導コイル200aからの応答信号を測定するときに、応答信号の開始と兆候550との間の遅延を判定することができる。遅延が約10msであれば、コントローラ300は、第1の誘導コイル200aを占有している料理用容器400が第2の誘導コイル200bも占有していると判定する。それに代って、遅延が約20msであれば、コントローラ300は、第1の誘導コイル200aを占有している料理用容器400が第3の誘導コイル200cも占有していると判定する。それぞれ10msと20msで2つの兆候があれば、コントローラ300は、第1の誘導コイル200aを占有している料理用容器400が第2の誘導コイル200bと第3の誘導コイル200cの両方も占有していると判定する。
【0067】
同様の原理は、IHクッカー100が備える誘導コイル200の数がいくつであっても成り立つ。単純な例では、各誘導コイル200は、固有の時間遅延で駆動されてもよい。このことは、コントローラ300が各検出信号500の兆候550を区別できるようになるには確かに十分である。しかしながら、誘導コイル200のレイアウトによっては、より少数の異なる時間遅延を用いることができる。これは、特に、コントローラ300が隣接しない(例えば、遠く離れた)誘導コイル200上に配置される料理用容器400を検出した場合、これらが同じ料理用容器400ではないと想定され得るからである。これは、同じ検出信号(同じ性質、例えば時間遅延や周波数(さらに以下を参照)等を有する)をこれらの誘導コイル200双方に用いることができることを意味する。一般に、異なる検出信号500は、所定の誘導コイル200に最も近い隣接するコイルに対してのみ必要である。
【0068】
図10は、誘導コイル200の正矩形配列の一例を示す。この場合、同じ時間遅延を有する2つの隣接するコイルがない状況を依然として達成する一方、9つの異なる時間遅延を用いることができる。すなわち、誘導コイル200を9つのセットにグループ化することができ、各グループ中の誘導コイル200は同じ時間遅延を有する。便宜上、時間遅延は単に1~9と表示される。なお、実際の時間遅延は、コントローラ300によって正確に解明されるのであれば、どんな時間遅延でもよい。例えば、時間遅延は、0ms、10ms、20ms、…、80msでもよい。そして、これは繰り返される、つまりコントローラ300は、任意の大きさのIHクッカー100に対し、1秒足らずで料理用容器レイアウト判定を行えることを意味する。
【0069】
図11に示されるように、対角線が除外される場合、6つの異なる時間遅延のみでよい。
【0070】
図12は、誘導コイル200の正六角形配列の一例を示す。この場合、同じ時間遅延を有する2つの隣接するコイルがない状況を依然として達成する一方、7つの異なる時間遅延を用いることができる。
【0071】
先に前述したように、各誘導コイル200に与えられた検出信号が「異なる」、又は、そうでなければ区別可能となるような方法は他にもある。一般に、同じ料理用容器400が存在するときの、隣接する誘導コイル200からの応答中に検出可能な検出信号の任意の性質を用いてもよい。例えば、検出信号は、異なる周波数を有してもよく、及び/又は、何らかのやり方で変調され(例えば、振幅変調、周波数変調、パルス幅変調)、例えば、各検出信号500に異なるコードを埋め込んでもよい。このような場合、第1の応答信号501aは第2の応答信号501bによって変調される(料理用容器400が両誘導コイル200の上にある場合で、そうでない場合は除く)。すなわち、第1の応答信号501aは第2の応答信号501bのアーチファクトを示す。
【0072】
図10から
図12に関連した上記と同様の考察は、検出信号が異なる周波数を有したり、異なるやり方で変調されていたりする場合等にも適用される。
【0073】
具体例として、
図10、
図11、及び
図12を参照して、番号1~9が異なる周波数を有する検出信号500を表わしてもよい。この場合、検出信号500を互いに遅延させる必要はない。むしろ、コントローラ300によって同時に全て印加可能である(とはいえ、いくつかの例では、異なる時間に異なる周波数を有する検出信号500が印加されてもよく、このことは検出された応答信号501を解明するさらなる一助になり得る)。コントローラ300は、様々な手法を適用して与えられた応答信号501中の兆候550を特定、特に、どの他の誘導コイル200が兆候550の原因であったかを特定してもよい。
【0074】
例えば、異なる検出信号500に対し2つの異なるが類似する周波数が用いられるとき、コントローラ300は、応答信号501中のうなり周波数を特定し、そのうなり周波数を作り出すのに必要な特定の周波数を有する検出信号500が与えられた他の誘導コイル200と料理用容器400が重なると判定してもよい。
【0075】
別の例では、コントローラ300はフーリエ変換(例えば、FFT)を行って、応答信号501の周波数成分を特定してもよい。そして、コントローラ300は、1つの料理用容器200が誘導コイル200全てを占有しているに違いない場合に、それらの周波数が与えられた誘導コイル200全てに対し1つの制御ゾーンを割り当てることができる。
【0076】
なお、本明細書で言及されるプロセッサ、又は、処理システム或いは回路は、特に単一のチップ又は集積回路、或いは複数のチップ又は集積回路でもよく、任意でチップセット、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、グラフィック・プロセシング・ユニット(GPU)等として実現されてもよい。チップ又は各チップは、各実施形態に従って動作するように構成可能な、データプロセッサ又は各データプロセッサ、デジタル・シグナル・プロセッサ又は各デジタル・シグナル・プロセッサ、ベースバンド回路、及び無線周波数回路のうち少なくとも1つ以上を具現化するための回路(場合によりファームウェア)を備えてもよい。この点に関し、各実施形態は、少なくとも部分的に、(非一時的な)メモリに保存され、プロセッサによって実行可能なコンピュータソフトウェアによって、又はハードウェアによって、又は有形で保存されるソフトウェアとハードウェア(及び有形で保存されるファームウェア)の組み合わせによって実現されてもよい。
【0077】
図面を参照して本明細書で記載された少なくともいくつかの実施形態の態様は、処理システム又はプロセッサで実施されるコンピュータ処理を有するが、本発明は、本発明を実現可能なコンピュータプログラム、特に、キャリア上ないし内のコンピュータプログラムにも及ぶ。プログラムは、部分コンパイラ形式といった、非一次的なソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース、オブジェクトコードの形式、又は、本発明に係る各処理の実現の際に使用に適した他の非一次的な形式であってもよい。キャリアは、プログラムを担持可能な任意の実体又はデバイスであってもよい。例えば、キャリアは、ソリッドステートドライブ(SSD)や他の半導体系RAMといった記憶媒体、CD ROMや半導体ROM等のROM、フロッピーディスクやハードディスク等の磁気記録媒体、一般的な光メモリデバイス、等を備えてもよい。
【0078】
本明細書に記載される例は、本発明の実施形態の説明を目的とした例として理解されるものである。さらなる実施形態及び例が想定される。いずれかの例又は実施形態に関連して記載される特徴事項は、単独で使用されてもよいし、他の特徴事項と組み合わせて使用されてもよい。また、いずれかの例又は実施形態に関連して記載される特徴事項は、他の例又は実施形態の1つ以上の特徴事項と組み合わせて用いられてもよく、又、他の例又は実施形態と組み合わせて用いられてもよい。さらに、本明細書で記載されない均等物及び変形例も、特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内で採用されてもよい。
【国際調査報告】