(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】類似の経路挙動をもたらすために既存の薬物療法の特徴を用いて代替の薬物療法を開発するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20230908BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504192
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021042263
(87)【国際公開番号】W WO2022020277
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523021955
【氏名又は名称】ジャリ,インダープリート
【氏名又は名称原語表記】JALLI, Inderpreet
【住所又は居所原語表記】1825 San Jacinto St., Apt 532, Houston, TX 77002 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャリ,インダープリート
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
既存の薬物療法の特徴を用いて新たな薬物療法を開発する方法であって、方法は、標的になる生物学的ネットワークの新しい治療の数学モデルを開発するステップと、新しい治療の数学モデルに基づいて薬物療法を合成するステップとを含む。新しい治療の数学モデルは、標的になる生物学的ネットワークの既存治療の数学モデルにおける既存治療の経時的進行に見出される経時的進行シグネチャを含む、新しい治療の経時的進行を生成することができる。経時的進行シグネチャは、標的になる生物学的ネットワークのアウトカムに関連し得る。新しい治療の介入定数ごとに薬物レジメンを合成することができ、薬物レジメンは合わせて新しい薬物療法になり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の薬物療法の特徴を用いて新たな薬物療法を開発する方法であって、前記方法が、
標的になる生物学的ネットワークの新しい治療の数学モデルを開発するステップであって、前記新しい治療の数学モデルが、前記標的になる生物学的ネットワークの既存治療の数学モデルにおける既存治療の経時的進行に見出される経時的進行シグネチャを含む、新しい治療の経時的進行を生成することができ、前記経時的進行シグネチャが、前記標的になる生物学的ネットワークのアウトカムに関連し、
前記新しい治療の数学モデルが、新しい治療の介入ノードのセットにおける新しい治療の介入ノードの各々をモデル化する新しい治療の介入関数と、前記新しい治療の数学モデルの他の全てのノードをモデル化する未治療ノード速度関数の第1のセットとを含み、前記新しい治療の介入関数の各々が、新しい治療の介入定数のセットからの新しい治療の1つ又は複数の介入定数を含み、
前記既存治療の数学モデルが、既存治療介入ノードのセットの各既存治療介入ノードをモデル化する既存治療介入方程式と、前記既存治療の数学モデルの他の全てのノードをモデル化する未治療速度方程式とを含み、前記既存治療介入方程式の各々が、既存治療介入定数のセットからの既存治療介入定数を含み、
前記新しい治療のノードのセットが、前記既存治療のノードのセットと同一ではなく、さらに、前記新しい治療のノードのセットが、前記既存治療のノードのセットに含まれない少なくとも1つのノードを含み、さらに、前記既存治療のノードのセットが、前記新しい治療のノードのセットに含まれない少なくとも1つのノードを含む、ステップと、
前記新しい治療の介入定数ごとに薬物レジメンを合成するステップであって、前記薬物レジメンは合わせて新しい薬物療法である、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記新しい治療の経時的進行のセットが、前記標的になる生物学的ネットワーク内の化学物質のセットの化学物質ごとに新しい治療の経時的進行を含み、
前記既存治療の経時的進行のセットが、前記化学物質のセットの前記化学物質ごとに既存治療の経時的進行を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記新しい治療の経時的進行のセットがさらに、前記標的になる生物学的ネットワーク内のタンパク質のセットのタンパク質ごとに新しい治療の経時的進行を含み、
前記既存治療の経時的進行のセットがさらに、前記タンパク質のセットの前記タンパク質ごとに既存治療の経時的進行を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記経時的進行シグネチャが、閾値に達する又は閾値を超える前記化学物質の第1の化学物質の第1の化学物質濃度を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記経時的進行シグネチャが、一連の事象を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記一連の事象が、第1の閾値を満たす又は超える第1の化学物質濃度を有する第1の化学物質と、それに続く、第2の閾値を満たす又は超える第2の化学物質濃度を有する第2の化学物質とによって少なくとも部分的に定義される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一連の事象が、第2の閾値を満たす又は超える第1の化学物質濃度に続く、第1の閾値を満たす又は超える第1の化学物質濃度を有する第1の化学物質によって、少なくとも部分的に定義される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記経時的進行シグネチャが、第1の閾値を満たす又は超える前記化学物質のセットの第1の化学物質の第1の化学物質濃度を含み、一方で、前記化学物質の第2の化学物質の第2の化学物質濃度が、第2の閾値を満たす又は超える、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記経時的進行シグネチャが、前記化学物質濃度が一緒になって前記化学物質の各々の目標濃度のセットから閾値以上逸脱しないような範囲に入る、前記化学物質のセットの前記化学物質の化学物質濃度を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記化学物質濃度と前記目標濃度のセットとの間の偏差が、二乗平均平方根計算を使用して決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記新しい治療の介入方程式の少なくとも1つが阻害方程式であり、前記阻害方程式に関連する前記介入定数が阻害定数である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記新しい治療の介入方程式の少なくとも1つが加速方程式であり、前記加速方程式に関連する前記介入定数が加速定数である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記未治療方程式の少なくとも1つが、ミカエリス・メンテンの式である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記既存治療のノードのセットが、1つのノードのみを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記既存治療のノードのセット及び前記新しい治療のノードのセットに共通のノードが存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記既存治療のノードのセットと前記新しい治療のノードのセットとの間に共通の各ノードが、対応する新しい治療の介入定数と比較して、異なる既存治療介入定数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
新しい薬物療法が既存の薬物療法と同様のアウトカムをもたらすように、前記新しい薬物療法のパラメータのセットを見つける方法であって、前記方法が、
数学モデル内で、前記数学モデルがそのような介入関数を有する場合に、既存の薬物療法に関連する任意の介入関数を、前記数学モデルに関連する未治療ノード関数に置き換えるステップと、
複数のパラメータの各々についてパラメータ範囲を選択するステップと、
経時的進行を生成するために、順列を使用して、複数の順列の各順列について、新しい治療の数学モデルの経時的進行を毎回生成するステップと、
各順列について、その経時的進行が、前記既存の薬物療法に関連する既存治療の経時的進行に存在する経時的進行シグネチャを含むかどうかを判定するステップであって、前記経時的進行シグネチャが前記既存の薬物療法のアウトカムに関連する、ステップと、
新しい薬物療法をもたらすために、前記経時的進行シグネチャを含む少なくとも1つの順列について、その1つの順列の動態パラメータと実質的に一致する動態特性を有する物質を合成するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記パラメータ範囲が、介入され得るノードのセットの指定を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パラメータ範囲が、考慮すべき複数の介入方程式を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
パラメータ範囲が、1つ又は複数の介入方程式に対する1つ又は複数の介入定数の範囲を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
パラメータ範囲が介入定数範囲を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
パラメータ範囲が空間的考慮事項を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、類似の経路挙動をもたらすために既存の薬物療法の特徴を用いて代替の薬物療法を開発するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、薬物療法は、病原体及び疾患を治療するために使用されている。薬物療法は、病原体の特定の経路に沿って攻撃することによって作用する。一般的に言えば、経路は、病原体の標的化可能な生物学的要素と化学的に相互作用する薬物療法によって開始される病原体の正常機能の変化をもたらす相互作用の因果連鎖である。
【0003】
多くの薬物療法が存在するが、薬物療法がまだ存在していない病原体と戦うため、又は現在の不適切な薬物療法を置き換えるために、新しい薬物療法を見つけるためにさらに多くの調査が行われている。薬物療法は、いくつかの理由で不十分であり得る。
【0004】
第1に、いくつかの薬物療法は疾患を治癒せず、単に有病率又は症状を減少させるだけである。そのような薬物療法の例としてはHIV又はヘルペスウイルスと戦うために用いられる薬物療法が挙げられる。どちらの場合も、薬物療法はヒト内のウイルス量を減少させるが、いずれの薬物療法もウイルスを完全に排除しない。
【0005】
第2に、いくつかの薬物療法は、軽度から重度の範囲の副作用を有し、場合によっては生命を脅かす。薬物療法の標的になる生物学的要素は、標的になる要素の経路挙動に変化をもたらし、その結果、連鎖反応の結果として他の生物学的要素とのその相互作用をもたらす。しかしながら、これらの変化した経路挙動は、生物学的ネットワークに対して有意な悪影響をもたらし得る。さらに、治療用分子は、ネットワーク内の既知又は未知の非標的要素と相互作用することができ、これはまた、上記のように標的ネットワーク内で負の全体的な経路挙動を生じさせることができる。
【0006】
第3に、薬物療法はしばしば、経時的に進化する病原体に抵抗される傾向がある。具体的には、細菌、ウイルス、寄生虫、又は癌細胞などの病原性生物を標的とする治療剤の場合、治療剤は、標的集団の進化により有効性を失う可能性がある。耐性は、標的とされた生物又は細胞のセットのサブセットが、そのサブセットの特定の形質に起因する曝露を生き延び、次いでそのような耐性形質を次世代に伝える場合に生じる。
【0007】
第4に、いくつかの薬物療法は、作るのに費用がかかる可能性がある。薬物合成は多段階プロセスであり、一段階は薬物を製造するためのコストにかなりの影響を及ぼし得る。例えば、2011年、4-フェニル-1は、わずか50グラムを作るのに260ドルかかった。
【0008】
新しい薬物の合理的なコンピュータ支援開発のための一般的な戦略は、細胞機能にとって重要であり得る生物学的要素間の新しい相互作用又は完全に新しい生物学的要素を最初に識別することである。次いで、非常に有望な生物学的要素は、潜在的な治療剤との相互作用と共に分子レベルで構造的に特徴付けられる。目的は、標的細胞の機能を所望の様式で有意に変化させる確率が高い特定の生物学的要素を標的とすることである。
【0009】
しかしながら、そのような方法は重大な問題を提起する。既知の要素内の新しい生物学的要素又は相互作用の発見は、非常に時間がかかり、資源集約的であり、又は相互作用結果の偽陽性が多い。最初の実験室試験における細胞機能にとって重要な相互作用又は生物学的要素の発見も、標的生物学的要素の破壊が連鎖反応機構を介して生物全体に所望の効果をもたらすか?という中心的な疑問に答えることができない。
【0010】
したがって、類似の経路挙動をもたらすために既存の薬物療法の特徴を用いて病原体の経路を標的とする新規な薬物療法を設計するためのシステム及び方法を有することが有利であろう。
【発明の概要】
【0011】
新しい薬物療法が既存の薬物療法と同様のアウトカム(結果)をもたらすように、新しい薬物療法のパラメータのセットを見つける方法。第1のステップにおいて、本方法は、数学モデル内で、数学モデルが任意のそのような介入関数を有する場合に、既存の薬物療法に関連する任意の介入関数を、数学モデルに関連する未治療ノード関数に置き換えることを含むことができる。次のステップでは、本方法は、複数のパラメータの各々についてパラメータ範囲を選択することを含むことができる。次に、本方法は、経時的進行を生成するために、順列を使用して、複数の順列の各順列について、新しい治療の数学モデルの経時的進行を毎回生成することを含むことができる。次に、本方法は、各順列について、その経時的進行が、既存の薬物療法に関連する既存治療の経時的進行に存在する経時的進行シグネチャを含むかどうかを判定することを含むことができ、経時的進行シグネチャは既存の薬物療法のアウトカムに関連する。次に、本方法は、新しい薬物療法をもたらすために、経時的進行シグネチャを含む少なくとも1つの順列について、その1つの順列の動態パラメータと実質的に一致する動態特性を有する物質を合成することを含むことができる。
【0012】
既存の薬物療法の特徴を用いて新たな薬物療法を開発する方法であって、方法は、標的になる生物学的ネットワークの新しい治療の数学モデルを開発するステップと、新しい治療の数学モデルに基づいて薬物療法を合成するステップとを含む。新しい治療の数学モデルは、標的になる生物学的ネットワークの既存治療の数学モデルにおける既存治療の経時的進行に見出される経時的進行シグネチャを含む、新しい治療の経時的進行を生成することができる。経時的進行シグネチャは、標的になる生物学的ネットワークのアウトカムに関連し得る。新しい治療の数学モデルは、新しい治療の介入ノードのセットにおける新しい治療の介入ノードの各々をモデル化する新しい治療の介入関数と、新しい治療の数学モデルの他の全てのノードをモデル化する未治療ノード速度関数の第1のセットとを含むことができる。新しい治療の介入関数の各々は、新しい治療の介入定数のセットからもう1つの新しい治療の介入定数を含むことができる。既存治療の数学モデルは、既存治療介入ノードのセットの各既存治療介入ノードをモデル化する既存治療介入方程式と、既存治療の数学モデルの他の全てのノードをモデル化する未治療速度方程式とを含むことができる。既存治療介入方程式の各々は、既存治療介入定数のセットから既存治療介入定数を含むことができる。新しい治療のノードのセットは、既存治療のノードのセットと同一でなくてもよい。さらに、新しい治療のノードのセットは、既存治療のノードのセットにない少なくとも1つのノードを含むことができる。さらに、既存治療のノードのセットは、新しい治療のノードのセットにない少なくとも1つのノードを含むことができる。新しい治療の介入定数ごとに薬物レジメンを合成することができ、薬物レジメンは合わせて新しい薬物療法になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】生物学的ネットワークと相互作用する薬物療法を示す。
【0014】
【
図2】生物学的ネットワークの例示的な反応モデルを示す。
【0015】
【
図3】生物学的ネットワークの経時的進行、具体的には実際の経時的進行を示す。
【0016】
【
図4】生物学的ネットワークの数学モデルa、特に治療前数学モデルを示す。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【
図16】新しい治療の介入関数の第2のセットを示す。
【0029】
【0030】
【0031】
【
図19】未治療ノード速度関数の第2のセットを示す。
【0032】
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書に記載されているのは、同様の経路挙動をもたらすために既存の薬物療法の特徴を用いて代替の薬物療法を開発するためのシステム及び方法である。以下の説明は、特許請求される本発明を当業者が作成及び使用することを可能にするために提示され、以下に説明する特定の実施例の文脈で提供され、その変形は当業者には容易に明らかであろう。明確にするために、実際の実施態様の全ての特徴が本明細書に記載されているわけではない。(任意の開発プロジェクトにおけるような)任意のそのような実際の実装の開発において、設計者の特定の目標(例えば、システム及びビジネス関連の制約の遵守)を達成するために設計上の決定を行わなければならず、これらの目標は実装ごとに異なることが理解されよう。このような開発努力は、複雑で時間がかかるかもしれないが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する適切な技術分野の当業者にとって日常的な仕事であることも理解されよう。したがって、本明細書に添付された特許請求の範囲は、開示された実施形態によって限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理及び特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0034】
図1は、生物学的ネットワーク102と相互作用する薬物療法101を示す。本開示の文脈内で、生物学的ネットワーク102は、標的生物学的ネットワーク(TBN)102a又は非標的生物学的ネットワーク(非TBN)102bであり得る。TBN102aは、病原体又は疾患の全部又は一部を含むことができるが、これらに限定されない。TBN102aは、多細胞、単一細胞、又はRNA若しくはDNAであってもよい。TBN102aの例示的なカテゴリは、寄生動物、細菌、ウイルス、又は真菌を含むことができる。具体例としては、大腸菌、COVID-19、又は癌を挙げることができる。非TBN102bは、本開示の目的のために、宿主と共生関係にある宿主又は生物内の生物学的ネットワーク102である。
【0035】
本開示は、TBN101aを破壊する1つ又は複数の薬物療法101を開発するためのシステム及び方法を記載する。薬物療法101は、疾患又は異常状態の症状を予防、診断、治療、又は軽減するために使用される、食品以外の任意の1つ又は複数の薬物レジメン103である。さらに、本開示の目的のために、薬物レジメン103は物質104によって定義することができる。物質104は、本開示の目的のために、均一な特性を有する特定の種類の物質である。さらに、薬物レジメン103は、投与量105及びスケジュール106によって定義することができる。スケジュール106は、一実施形態では、期間及び/又は持続期間(例えば、8時間毎に3日間)によって定義することができる。薬物レジメン103のいくつかの実施形態では、投与量105は、経時的に増加又は減少するなど、スケジュール106によって変動し得る。本開示の目的のために、投与量105は、絶対量で、体重、年齢、成熟度など他の患者固有の情報によってスケーリングされることを意味する量で、意図される濃度として、又は当技術分野で公知の投与量を記載する任意の他の方法として記載することができる。
【0036】
生物学的ネットワーク102は、ノード107を備える。本開示の目的のために、ノード107は、生物学的ネットワーク102内の化学的相互変換を加速、減速、防止、又は開始することなどによって薬物療法101が潜在的に介入することができる、生物学的ネットワーク102の態様である。さらに、本開示の目的のために、TBN102aのノード107はターゲットノード107aであり、非TBN102bのノード107は非ターゲットノード107bである。
【0037】
図2は、例示的な反応モデル200、特に生物学的ネットワーク102の治療前反応モデル200aを示す。本開示の目的のために、治療前モデル200aは、生物学的モデル102が薬物療法101による治療を受けていないときの生物学的ネットワーク102の反応モデルである。
図2に示すように、反応モデル200はノード107のネットワークを表し、各々は、生物学的ネットワーク102内の化学物質201の化学的相互変換である。そのような化学的相互変換は、多くの場合、タンパク質202によって促進される。タンパク質202は酵素であり得、多くの場合酵素である。さらに、化学物質201は、非酵素タンパク質202であり得る。示されている反応モデル200は、以下のように7つのノード107を含む生物学的ネットワーク102を表す。
a.ノード1:化学物質Aは、タンパク質1によって促進されて化学物質Bに変換される。
b.ノード2,3:化学物質Bは、タンパク質2及びタンパク質3によって促進されて化学物質Cに変換される。
c.ノード4:化学物質Cは、タンパク質4によって促進されて化学物質Dに変換される。
d.ノード5:化学物質Cは、タンパク質5によって促進されて化学物質Dに変換される。
e.ノード6:化学物質Bは、タンパク質6によって化学物質A及び化学物質Eに変換される。
f.ノード7:化学物質D及びFは、タンパク質7によって促進されて一緒に化学物質Aに変換される。
g.ノードX
E:化学物質Eは、モデル化されたタンパク質なしで化学物質Fに変換される。
【0038】
当業者は、生物学的ネットワーク102内で起こる全ての化学的相互変換が反応モデル200に表される必要はないことを認識するであろう。さらに、反応モデル200内に表される各化学的相互変換内で、化学的相互変換に関与する全ての化学物質201又はタンパク質202が反応モデル200内でモデル化される必要はない。例えば、プロセス1では、A+Z1→Bは実際にはA+x1+Z1→B+y1であり得、x1はプロセス1の非モデル化反応物のセットであり、y1はプロセス1の非モデル化生成物のセットである。
【0039】
図3は、生物学的ネットワーク102の経時的進行300、具体的には実際の経時的進行300zを示す。本開示の目的のために、実際の経時的進行300zは、実験的に測定された化学物質201の濃度の経時的進行である。
【0040】
図4は、生物学的ネットワーク102の数学モデル400、特に治療前数学モデル400aを示す。本開示の目的のために、数学モデル400は反応モデル200に関連し、反応モデル200が関連する生物学的ネットワーク102の挙動を正確に予測することができるように、十分な精度で生物学的ネットワーク102の挙動を合わせて記述する方程式401を含む。さらに、本開示の目的のために、治療前数学モデル400aは治療前反応モデル200aに関し、いかなる薬物療法101による治療も受けていないときの生物学的ネットワーク102の挙動を合わせて記述する方程式401を含む。方程式401は、一実施形態では、反応モデル200内の特定の化学物質201の濃度の変化率をそれぞれ記述する濃度変化方程式401aを含むことができる。例えば、化学物質Aに関する濃度変化方程式301aは以下の通りである:dA/dt=V6(B,V6max,kB6)+V7(D,F,V7max,kD7,kF7)-V1(V1max,
A,kA1)。
【0041】
濃度変化方程式401aは、ノード107の挙動を記述し、かつ様々な変数の関数として
図4に示されている、ノード速度関数V
n()402を含むことができる。例えば、変数A~Fはそれぞれ、反応モデル201における対応する化学物質201A~Fの濃度403を表す。V
nmaxは、タンパク質202が反応物を生成物に変換することができる最大ノード速度404を表す。ノード速度関数402は各々、ノード速度を決定するために使用することができ、ノード速度は、化学物質201の濃度の変化を計算するために使用することができる。当業者は、ノード速度をミカエリス・メンテンの式でモデル化できることを認識するであろう。一例として、ノード速度V
1は、方程式V
1=(V
1max*A)/(k
A1+A)でモデル化することができる。このような式において、k
A1は、化学物質A及びタンパク質1に特異的な速度定数405である。当業者は、V
1max及びK
A1の両方が実験的に決定され得ることを認識するであろう。これらの値は推定することもできる。さらに、タンパク質202は、複数の化学物質で動作するか、又は複数の化学物質を出力することができ、より複雑な方程式をもたらす。同様に、いくつかのノードは、複数のタンパク質を必要とする場合があり、これもまた、より複雑な方程式をもたらし得る。
【0042】
図5は、治療を受けていない生物学的ネットワーク102のモデルである治療前数学モデル400aに対する治療前ノード速度関数のセット500を示し、各ノード速度関数は治療前速度関数501である。本開示の目的のために、治療前速度関数501は、そのようなノードが薬物レジメン103によって介入されていないときにノード107をモデル化するノード速度関数である。
【0043】
図6は、治療前の経時的進行300aを示す。治療前数学モデル300aの一目的は、治療前の経時的進行300aを生成することである。本開示の目的のために、治療前の経時的進行は、治療前数学モデル300aの経時的進行であり、十分な精度で実際の経時的進行300zをモデル化することを意図している。
【0044】
経時的進行300は、測定又はモデル化された生物学的ネットワーク102内の化学物質201の化学物質濃度のレベルを時間の関数として含む。治療前の経時的進行300aは、薬物療法101による任意の治療の前に、時間の関数として生物学的ネットワーク102内の化学物質201の化学物質濃度のレベルをモデル化する。治療がない場合、化学物質201の濃度は、サイクル内で変化し得るが、そうでなければ、典型的には、生物学的ネットワーク102のライフサイクル内の持続期間にわたって予測可能な制約されたレベル内にとどまる。これは、濃度がライフサイクル全体にわたって制約されたままであるということではなく、期間中、濃度は制約されたままであり、ある期間から次の期間への変化にわたって実質的に予測可能なままであることを意味する。治療前の経時的進行400aの重要な機能は、生物学的ネットワーク102のベースラインダイナミクスを確立できることである。
【0045】
図7は、既存治療の反応モデル200bを示す。本開示の目的のために、既存治療の反応モデル200bは、既存の薬物療法が生物学的ネットワーク102とどのように相互作用するかをモデル化する反応モデルである。既存治療の反応モデル200bは、少なくとも1つの既存治療介入ノード107aを含む。既存治療介入ノード107aは、薬物レジメン103によって介入される。介入されない残りのノード107は、治療前速度関数501を有する未治療ノード107bとしてモデル化される。既存の薬物療法101は、市場に到達した薬物療法101のみに限定されるのではなく、生物学的ネットワーク102上での使用が以前に考慮され、アウトカムをもたらす、任意の薬物療法を含むことに留意されたい。標的生物学的ネットワーク102aの場合、アウトカムの例としては、限定されないが、標的生物学的ネットワーク102aを死滅させること、標的生物学的ネットワーク102aを複製できないようにすること、又は免疫系などの他の条件又は力が標的生物学的ネットワーク102aを死滅させることができるように標的生物学的ネットワーク102aを実質的に損なうことが挙げられる。非標的生物学的ネットワーク102bの場合、アウトカムの例は、非標的生物学的ネットワーク102bを強化すること、又は何らかの状態に抵抗性若しくは免疫性の非標的生物学的ネットワーク102bを破壊することを含み得る。
【0046】
図8は、既存治療の数学モデル400bを示す。既存治療の数学モデル400bにおいて、既存治療介入ノード107aをモデル化する各ノード速度関数402は、介入関数402aとすることができる。介入関数の種類は、阻害関数又は加速関数の2つの主要なカテゴリに分類される。阻害関数は、既存治療介入ノード107aにおける化学的相互変換の遅延又は実質的な停止をモデル化する。逆に、加速関数は、既存治療介入ノード107aにおける化学的相互変換の開始又は高速化をモデル化する。
【0047】
図9は、既存治療介入関数の第1のセット900を示す。
図9に示すように、第1のセット900は、1つ以上の既存治療介入関数のセットとすることができる。
【0048】
図10は、既存治療介入定数のセット1000を示す。各介入関数402aは、既存治療の数学モデル400bに関連する既存の薬物療法101の一薬物レジメン103に関連する1つ又は複数の介入定数1001を有することができる。介入定数1001は、関連する薬物レジメン103がノード107に与えるノードの速度への影響を表す数である。
【0049】
図11は、既存治療介入濃度のセット1100を示す。各介入関数402aは、既存の薬物療法101の一薬物レジメン103の濃度をモデル化する濃度定数1102を含むことができる。既存治療介入濃度のセット1100は、これらの濃度定数1102を含む。
【0050】
図12は未治療ノード速度関数の第1のセット1200を示す。既存治療の数学モデル400b内で、未治療ノード107bは、治療前速度関数501でモデル化される。未治療ノード速度関数の第1のセット1200は、これらの治療前速度関数501の各々を含む。
【0051】
図13は、既存治療の経時的進行300bを示す。既存の経時的進行300bは、上述のようにアウトカムを予測する経時的進行シグネチャ1301を含むことができる。経時的進行シグネチャ1301は、1つ又は複数の属性を含むことができる。一実施形態では、経時的進行シグネチャ1301は、第1の化学物質201の第1の化学物質濃度403aが閾値1302に達することであり得る。別の実施形態では、経時的進行シグネチャ1301は、一連の事象を含むことができる。例えば、一連の事象は、第1の閾値1302aを満たす又は超える第1の化学物質濃度403aを有する第1の化学物質201aと、それに続く、第2の閾値1302bを満たす又は超える第2の化学物質濃度403bを有する第2の化学物質201bとによって少なくとも部分的に定義することができる。別の例として、一連の事象は、第1の閾値を満たす又は超える第1の化学物質濃度403aを有し、第2の閾値1302bを満たす又は超える第1の化学物質濃度aが続く、第1の化学物質201aによって少なくとも部分的に定義され得る。別の実施形態では、経時的進行シグネチャ1301は、第1の閾値を満たす又は超える第1の化学物質201aの第1の化学物質濃度403aを含むことができ、第2の化学物質201の第2の化学物質濃度403bは、第2の閾値1302bを満たす又は超える。別の実施形態では、経時的進行シグネチャは、化学物質濃度が一緒になって化学物質201の各々の目標濃度のセット1304から偏差閾値以上逸脱しないような範囲に入る、化学物質のセット1303の化学物質201の化学物質濃度403を含むことができる。そのような実施形態では、化学物質濃度のセット1303と目標濃度のセット1304との間の偏差は、二乗平均平方根計算を使用して決定することができる。
【0052】
一実施形態では、新しい薬物療法が既存の薬物療法と同様のアウトカムをもたらすように、新しい薬物療法のパラメータのセットを見出すことができる。第1のステップにおいて、本方法は、数学モデル内で、数学モデルが任意のそのような介入関数を有する場合に、既存の薬物療法に関連する任意の介入関数を、数学モデルに関連する未治療ノード関数に置き換えることを含むことができる。次のステップでは、本方法は、複数のパラメータの各々についてパラメータ範囲を選択することを含むことができる。次に、本方法は、経時的進行を生成するために、順列を使用して、複数の順列の各順列について、新しい治療の数学モデルの経時的進行を毎回生成することを含むことができる。次に、本方法は、各順列について、その経時的進行が、既存の薬物療法に関連する既存治療の経時的進行に存在する経時的進行シグネチャを含むかどうかを判定することを含むことができ、経時的進行シグネチャは既存の薬物療法のアウトカムに関連する。次に、本方法は、新しい薬物療法をもたらすために、経時的進行シグネチャを含む少なくとも1つの順列について、その1つの順列の動態パラメータと実質的に一致する動態特性を有する物質を合成することを含むことができる。
【0053】
一実施形態では、パラメータ範囲は、介入され得るノードのセットの指定を含むことができる。別の実施形態では、パラメータ範囲は、ノード内の化学的介入を加速又は減速することによるなど、介入の方法を含むことができる。そのような実施形態では、パラメータ範囲は、考慮されるべき複数の介入方程式を含むことができる。別の実施形態では、パラメータ範囲は、1つ又は複数の介入方程式に対する1つ又は複数の介入定数の範囲を含むことができる。別の実施形態では、パラメータ範囲は、許容可能な介入濃度の範囲を含むことができる。別の実施形態では、パラメータ範囲は空間的考慮事項を含むことができる。
【0054】
図14は、新しい治療の反応モデル200cを示す。本開示の目的のために、新しい治療の反応モデル200cは、新しい薬物療法が生物学的ネットワーク102とどのように相互作用し得るかをモデル化する反応モデルである。新しい治療の反応モデル200cは、少なくとも1つの新しい治療の介入ノード107aを含む。新しい治療の介入ノード107aは、新しい薬物療法101の薬物レジメン103によって介入される。介入されない残りのノード107は、治療前速度関数501を有する未治療ノード107bとしてモデル化される。
【0055】
図15は、新しい治療の数学モデル400cを示す。新しい治療の数学モデル400cにおいて、新しい治療の介入ノード107aをモデル化する各ノード速度関数402は、介入関数402aとすることができる。介入関数の種類は、阻害関数又は加速関数の2つの主要なカテゴリに分類される。阻害関数は、新しい治療の介入ノード107aにおける化学的相互変換の遅延又は実質的な停止をモデル化する。逆に、加速関数は、新しい治療の介入ノード107aにおける化学的相互変換の開始又は高速化をモデル化する。
【0056】
図16は、新しい治療の介入関数の第2のセット1600を示す。
図16に示すように、第2のセット1600は、新しい治療の1つ又は複数の介入関数のセットとすることができる。
【0057】
図17は、新しい治療の介入定数のセット1700を示す。各介入関数402aは、新しい治療の数学モデル400cに関連する新しい薬物療法101の一薬物レジメン103に関連する1つ又は複数の介入定数1001を有することができる。介入定数1001は、関連する薬物レジメン103がノード107に与えるノードの速度への影響を表す数である。
【0058】
図18は、新しい治療の介入濃度のセット1800を示す。各介入関数402aは、新しい薬物療法101の一薬物レジメン103の濃度をモデル化する濃度定数1102を含むことができる。既存治療介入濃度のセット1800は、これらの濃度定数1102を含む。
【0059】
図19は、未治療ノード速度関数の第2のセット1900を示す。新しい治療の数学モデル400b内で、未治療ノード107bは、治療前速度関数501でモデル化される。未治療ノード速度関数の第1のセット1200は、これらの治療前速度関数501の各々を含む。
【0060】
図20は、新しい治療の経時的進行300cを示す。新しい経時的進行300cは経時的進行シグネチャ1301を含むことができ、既存治療の経時的進行300bを予測し一般的である、又は関連する、あるいは既存治療の経時的進行300bに存在する。
【0061】
既存の薬物療法の特徴を用いて新たな薬物療法を開発する方法であって、方法は、標的になる生物学的ネットワークの新しい治療の数学モデルを開発するステップと、新しい治療の数学モデルに基づいて薬物療法を合成するステップとを含む。新しい治療の数学モデルは、標的になる生物学的ネットワークの既存治療の数学モデルにおける既存治療の経時的進行に見出される経時的進行シグネチャを含む、新しい治療の経時的進行を生成することができる。経時的進行シグネチャは、標的になる生物学的ネットワークのアウトカムに関連し得る。新しい治療の数学モデルは、新しい治療の介入ノードのセットにおける新しい治療の介入ノードの各々をモデル化する新しい治療の介入関数と、新しい治療の数学モデルの他の全てのノードをモデル化する未治療ノード速度関数の第1のセットとを含むことができる。新しい治療の介入関数の各々は、新しい治療の介入定数のセットからもう1つの新しい治療の介入定数を含むことができる。既存治療の数学モデルは、既存治療介入ノードのセットの各既存治療介入ノードをモデル化する既存治療介入方程式と、既存治療の数学モデルの他の全てのノードをモデル化する未治療速度方程式とを含むことができる。既存治療介入方程式の各々は、既存治療介入定数のセットから既存治療介入定数を含むことができる。新しい治療のノードのセットは、既存治療のノードのセットと同一でなくてもよい。さらに、新しい治療のノードのセットは、既存治療のノードのセットにない少なくとも1つのノードを含むことができる。さらに、既存治療のノードのセットは、新しい治療のノードのセットにない少なくとも1つのノードを含むことができる。新しい治療の介入定数ごとに薬物レジメンを合成することができ、薬物レジメンは合わせて新しい薬物療法になり得る。
【0062】
本開示は、前述の方法のいずれかを使用して設計された新しい薬物療法を教示する。例えば、本開示は、複数の薬物レジメンを有する薬物療法を教示し、各レジメンは、上記の方法を使用して確認されたパラメータを有する物質である。さらに、パラメータは、新しい薬物療法が既存の薬物療法と共通のアウトカムを有するようなものである。さらに、薬物レジメンはそれぞれノードを介入させ、ノードを合わせてノードのセットとなり、そのようなノードのセットは、既存の薬物療法によって介入されるノードの第2のセットと共通ではない。
【0063】
メモリに保存することができる新しい薬物開発及び設計アプリケーションは、対応する現実世界の潜在的な治療剤化合物を同定するために使用することができる理論的治療剤化合物の特性及び特徴を提供することができる。既知の治療剤化合物と相互作用する識別された生化学的又は生物学的ネットワークから開発された高解像度モデルは、薬物開発及び設計システムを使用して生成及び処理される。このような方法は、本開示ではDASS法と呼ばれることもある。DASS法は、識別された生化学的又は生物学的ネットワークを有する既知の治療薬の効果に関するモデル及び情報を提供することができる。一実施形態では、DASS法は、既知の治療薬なしで、識別された生化学的又は生物学的ネットワークに関するモデル及び情報を提供する際にも使用することができる。DASS法を用いた処理の後、元の治療薬がネットワークに影響を及ぼすのと同じように、識別された生化学的又は生物学的ネットワークに影響を及ぼす理論的治療薬化合物の特徴及び特性を同定することができる。同様に、既知の治療薬を用いずに、識別された生化学的又は生物学的ネットワークにおける特定の標的細胞に対する理論的治療薬を、この方法を用いて見つけることができる。
【0064】
DASS法の一実施形態では、システムは、識別された生化学的又は生物学的ネットワークと相互作用するために使用することができる理論的治療薬化合物の理論的特性及び特徴を出力する。理論的治療剤化合物の特性及び特徴を使用して、現実の治療剤化合物と比較し、その結果、識別された生化学的又は生物学的ネットワーク上で試験することができる、生物学的又は生化学的ネットワーク又は少なくとも標的細胞と同様の経路挙動を生じる、潜在的な治療剤化合物を見つけることができる。
【0065】
別の実施形態において、潜在的な治療剤化合物は、潜在的な治療剤化合物が高品質の薬物候補であり得るかどうかをチェックするために、識別された生化学的又は生物学的ネットワークに対してシミュレートされる。高品質の薬物候補は、標的細胞に対して元の治療剤化合物と同じ又はより良好な効果をもたらすことができ、非標的細胞に対して最小限の摂動を引き起こすか、又は元の治療薬が行うように、識別された生化学的又は生物学的ネットワークに対して全体的に同様の経路挙動を生じる、識別された潜在的な治療剤化合物である。
【0066】
別の実施形態では、生化学的又は生物学的ネットワークのモデリング及びシミュレーションは、薬物開発及び設計システムによって実行され、実行された任意のモデリングに関する全ての情報は、システムのデータ記憶装置に記憶させることができる。
【0067】
本明細書に記載の方法を実行するシステムは、ネットワークを介して接続された複数の電子デバイス及びサーバを備える典型的なネットワーキング環境を備え得る。電子デバイスの例は、コンピュータ、スマートフォン、及び/又はタブレットを含むことができるが、これらに限定されない。一実施形態では、電子デバイスとサーバとは互いに通信することができる。ネットワーク107は、有線、無線、又はその両方の組合せとすることができる。LANの例は、単一の建物内のネットワークである。WANの例はインターネットである。
【0068】
電子デバイスは、ローカルメモリ及びローカルプロセッサを備えることができる。ローカルメモリは、ローカルアプリケーション及びローカルデータを含むことができる。
【0069】
サーバは、サーバメモリ及びサーバプロセッサを備えることができる。サーバメモリは、サーバアプリケーション及びサーバデータを含むことができる。
【0070】
一実施形態では、薬物開発及び設計アプリケーションは、インターフェース、プレゼンテーション、ロジック、及びデータストレージが電子デバイス上でローカルに制御されるローカルアプリケーションを意味することができる。そのような実施形態では、メモリはローカルメモリを意味することができ、プロセッサはローカルプロセッサを意味することができ、データはローカルデータを意味することができる。
【0071】
別の実施形態では、薬物開発及び設計アプリケーションは、サーバアプリケーションと共にローカルアプリケーションを意味することができる。そのような実施形態の一例は、ローカルアプリケーションが汎用(ブラウザ)アプリケーションである場合である。そのような実施形態の別の例は、ローカルアプリケーションが特定目的(非ブラウザ)アプリケーションである場合である。
【0072】
第1の例では、ブラウザは、ウェブサイトを介してサーバアプリケーションにアクセスする。そのような実施形態では、ユーザとのインターフェースは電子デバイスを使用して行われ、プレゼンテーションはローカルアプリケーション及びサーバアプリケーションによって実行することができ、ロジック及びデータはサーバによって実行することができる。そのような例では、メモリは電子デバイスメモリ及び/又はサーバメモリを意味してもよく、プロセッサは電子デバイスプロセッサ及び/又はサーバプロセッサを意味してもよく、データはサーバデータを意味してもよい。
【0073】
第2の例では、特定用途アプリケーションは、サーバアプリケーション103bにアクセスする。そのような実施形態では、ユーザとのインターフェースは電子デバイス上で行うことができ、プレゼンテーション、ロジック、及びデータストレージは電子デバイスとサーバの両方に分散させることができる。そのような例では、メモリは電子デバイスメモリ及び/又はサーバメモリを意味し得、プロセッサは電子デバイスプロセッサ及び/又はサーバプロセッサを意味してもよく、データはローカルデータ及び/又はサーバデータを意味し得る。
【0074】
本明細書で上述したメモリには、データと、プロセッサによって実行可能ないくつかのコンポーネントの両方が格納されている。特に、メモリに格納され、プロセッサによって実行可能なのは、DASS法及び潜在的に他のアプリケーションである。また、既知の治療剤化合物と標的細胞との相互作用、治療剤化合物と非標的細胞との動態特性評価データ、及び他のデータなどの情報もメモリに格納することができる。さらに、オペレーティングシステムをメモリに格納し、プロセッサによって実行することができる。
【0075】
本明細書に記載の薬物開発及び設計システム及び他の様々なシステムは、上述のように汎用ハードウェアによって実行されるソフトウェア又はコードで実施することができるが、代替として、専用ハードウェア又はソフトウェア/汎用ハードウェアと専用ハードウェアとの組合せで実施することもできる。専用ハードウェアで実施される場合、各々は、いくつかの技術のうちの任意の1つ又は組合せを使用する回路又はステートマシンとして実施することができる。これらの技術は、1つ又は複数のデータ信号の印加時に様々な論理関数を実施するための論理ゲートを有するディスクリート論理回路、適切な論理ゲートを有する特定用途向け集積回路、又は他のコンポーネントなどを含むことができるが、これらに限定されない。そのような技術は、一般に当業者に周知であり、したがって、本明細書では詳細に説明されない。
【0076】
また、ソフトウェア又はコードを含む、薬物開発及び設計システムを含む本明細書に記載の任意のロジック又はアプリケーションは、例えば、コンピュータシステム又は他のシステムのプロセッサなどの命令実行システムによって、又はそれに関連して使用するための任意のコンピュータ可読記憶媒体で具現化することができる。この意味で、ロジックは、例えば、コンピュータ可読記憶媒体からフェッチされ、命令実行システムによって実行され得る、命令及び宣言を含む文を含むことができる。
【0077】
本開示の上述の実施形態は、本開示の原理の明確な理解のために記載された実装形態の可能な例にすぎないことが強調されるべきである。本開示の精神及び原理から実質的に逸脱することなく、上述の実施形態に対して多くの変形及び修正を行うことができる。そのような修正及び変形は全て、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【0078】
以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、例示した動作方法の詳細に様々な変更が可能である。いくつかの実施形態は、別個のステップとして本明細書に記載の活動を組み合わせることができる。同様に、本方法が実施されている特定の動作環境に応じて、説明したステップのうちの1つ又は複数を省略することができる。上記の説明は例示を意図しており、限定を意図していないことを理解されたい。例えば、上述の実施形態は、互いに組み合わせて使用されてもよい。上記の説明を検討すれば、多くの他の実施形態が当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に決定されるべきである。添付の特許請求の範囲において、「含む(including)」及び「そこにおいて(in which)」という用語は、それぞれ「含む(comprising)」及び「ここで(wherein)」という用語の平易な英語の同義語として使用される。
【国際調査報告】