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特表2023-539555移動床バイオフィルムリアクタ用のバイオフィルム担体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】移動床バイオフィルムリアクタ用のバイオフィルム担体
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/10 20230101AFI20230908BHJP
   C02F 3/08 20230101ALI20230908BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C02F3/10 Z
C02F3/08
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508012
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2021073882
(87)【国際公開番号】W WO2022043550
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】2051008-7
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503289595
【氏名又は名称】ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マグヌソン ペル
【テーマコード(参考)】
4B029
4D003
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029CC02
4B029CC11
4D003AA12
4D003EA14
4D003EA15
4D003EA30
4D003EA38
(57)【要約】
本発明は、環境応力に対して改善された安定性を有する移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)内でバイオフィルムを担持するための担体に関する。この担体は担体材料を含み、この担体材料は、二峰性分子量分布を有する少なくとも1種の高密度ポリエチレンを含み、これによりこの担体材料は二峰性又は多峰性の分子量分布を有する。移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)プロセスにおける当該担体の使用も提供される。
【選択図】図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)内でバイオフィルムを担持するための担体であって、前記担体は担体材料を含み、
前記担体材料は、二峰性分子量分布を有する少なくとも1種の高密度ポリエチレンを含み、
これにより前記担体材料は二峰性又は多峰性の分子量分布を有する
ことを特徴とする担体。
【請求項2】
前記担体材料が、0.9~1.1g/cmの密度、例えば0.92~0.98g/cmの密度、例えば0.94~0.96g/cmの密度を有する請求項1に記載の担体。
【請求項3】
前記担体材料が、<15rad/s、好ましくは6rad/s未満、さらにより好ましくは<3rad/sの角周波数にクロスオーバー点を有する請求項1又は請求項2に記載の担体。
【請求項4】
前記担体材料が、25000~45000Paの弾性率でクロスオーバー点を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の担体。
【請求項5】
前記担体材料が35度未満、より好ましくは25度未満、より好ましくは20度未満、さらにより好ましくは15度未満のδ終了値を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の担体。
【請求項6】
前記担体材料が、
少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%又は45重量%の二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含み、
これにより前記担体材料が二峰性又は多峰性の分子量分布を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の担体。
【請求項7】
前記担体材料が、
少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%又は45重量%の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、
第2の高密度ポリエチレンであって、前記第2の高密度ポリエチレンは単峰性、二峰性又は多峰性の分子量分布を有し、好ましくは単峰性分子量分布を有する第2の高密度ポリエチレンと
を含み、これにより前記担体材料が多峰性分子量分布を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の担体。
【請求項8】
前記担体材料が、
少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレン
を含み、これにより前記担体材料が二峰性又は多峰性の分子量分布を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の担体。
【請求項9】
前記担体材料が、
少なくとも50重量%の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、
単峰性、二峰性又は多峰性の分子量分布のいずれかを有し、好ましくは単峰性分子量分布を有する第2の高密度ポリエチレンと
を含み、これにより前記担体材料が多峰性分子量分布を有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の担体。
【請求項10】
前記担体材料が、単一の、二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンからなり、これにより前記担体材料が二峰性分子量分布を有する請求項1から請求項6及び請求項8のいずれか1項に記載の担体。
【請求項11】
前記担体材料が、
第1の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、第2の二峰性分子量分布を有する第2の高密度ポリエチレンと
を含み、これにより前記担体材料が多峰性分子量分布を有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の担体。
【請求項12】
前記担体材料が、
少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、50重量%、95重量%の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、
二峰性分子量分布を有する第2の高密度ポリエチレンと
を含み、これにより前記担体材料が多峰性分子量分布を有する請求項11に記載の担体。
【請求項13】
前記担体材料が、
第1の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、
単峰性又は二峰性又は多峰性の分子量分布を有する少なくとも1種以上の高密度ポリエチレンと
を含み、これにより前記担体材料が多峰性分子量分布を有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の担体。
【請求項14】
二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含む前記担体材料が、
低分子量画分(LMW)、及び
高分子量画分(HMW)
を含み、前記LMW画分対前記HMW画分のピーク比が、10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、より好ましくは2.5:1~1:2.5、より好ましくは2:1~1:2、最も好ましくは1.5:1~1:1.5である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の担体。
【請求項15】
二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含む前記担体材料が、
低分子量画分(LMW)、及び
高分子量画分(HMW)
を含み、前記LMWがホモポリマー又はコポリマーであり、前記HMWがホモポリマー又はコポリマーであり、好ましくは前記LMWがホモポリマーであり、前記HMWがコポリマーである請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の担体。
【請求項16】
前記担体が、バイオフィルム成長のための保護された表面を可能にする構造を有する請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の担体。
【請求項17】
前記担体が円盤状又はサドル形状である請求項16に記載の担体。
【請求項18】
前記保護された表面が、穴、ウェル、突起、ハニカム構造又はラスタ構造の存在によって促進され、前記担体が応力損傷を受けやすくなっている請求項16又は請求項17に記載の担体。
【請求項19】
環境応力に対して改善された安定性を有する移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)内でバイオフィルムを担持するための担体である請求項1に記載の担体。
【請求項20】
移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)プロセスにおける請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の担体の使用。
【請求項21】
前記MBBRプロセスが高エネルギーMBBRプロセスである請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記MBBRプロセスが、浸漬した機械的ミキサを利用するバイオリアクタ中で前記担体を混合することを含む請求項20または請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記MBBRプロセスが、欠陥又は高粗度を有する内壁を有するバイオリアクタにおいて、例えばMBBR改造物又はリアクタ壁の状態が悪い既存のMBBRプラントにおいて行われる請求項20から請求項22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記MBBRプロセスで精製される廃水が、前記担体に有害な有害物質を含有する請求項20から請求項23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記MBBRプロセスの機能が、外部炭素源等の外部化学物質の添加に依存する請求項20から請求項24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記MBBRプロセスが飲料水の製造のための処理である請求項20から請求項25のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、担体を使用する移動床バイオフィルムリアクタの分野に関する。より具体的には、本発明は、バイオフィルムを成長させるための担体要素であって、上記成長バイオフィルムによって生物学的に混入物質から精製される液体中を自由に流れるように設計される担体要素に関する。さらには、上記担体要素は、従来技術の上記使用の担体要素と比較して、上記精製プロセスにおいて著しく改善された寿命を有するようにさらに設計される。
【背景技術】
【0002】
水又は廃水の生物学的処理において、その水は、その水の中の汚染物質を二酸化炭素及び水等の無害な最終生成物に変換するために微生物が利用される、あるタイプのリアクタ又はいくつかのリアクタ(容器又は別の空間)に通されることが知られている。この処理は、空気の供給下で(好気的に)、空気の供給なしで(嫌気的に)、又は空気の供給はないがかなりの量の硝酸(イオン)の存在下で(無酸素的に)行うことができる。
【0003】
処理プロセスの効率を高めるために、リアクタ内で活性微生物を懸濁させて成長させ、リアクタ後の分離段階において水から微生物を分離し、微生物をリアクタに戻すこと(例えば、活性汚泥プロセス)、又は活性微生物がバイオフィルムとして成長し、従ってプロセス中に保持されることが可能である表面を有する何らかの種類の支持材料をプロセスリアクタに導入すること(バイオフィルムプロセス)のいずれかによる、上記のような生物が処理水と共に逃げるのを防ぐことによって、プロセス中の活性微生物の含有量を高くすることを目的とするのが一般的である。
【0004】
懸濁微生物並びにバイオフィルムで成長する微生物がプロセスにおいて利用できるように、支持材料が活性汚泥プロセスに導入される、ハイブリッドプロセスと呼ばれる上記の2つのプロセスタイプの混合形態もある。バイオフィルムプロセスは、活性汚泥プロセスと比較していくつかの利点を有する。例えば、より高い負荷を印加することができ、バイオフィルムプロセスは、変動及び外乱に対して実質的に感受性が低い。多くの従来のバイオフィルムプロセスは、処理リアクタ内に担体材料を充填することに基づいており、この材料は、プロセス中に固定され不動に維持される充填体又はブロックを含む。プロセスのこれらの実施形態は、バイオマス又は別の粒子状物質によるバイオフィルム床の詰まりのリスク、及び水と活性微生物との間の接触が不充分であるデッドゾーンがプロセスにおいて形成するリスクを伴う。
【0005】
過去25年間に非常に成功した廃水処理のためのバイオフィルムプロセスの種類は、MBBRプロセス、すなわち「移動床バイオフィルムリアクタ(Moving Bed Biofilm Reactor)」と呼ばれ、このプロセスでは、プロセスリアクタ容積内で懸濁及び移動状態に保たれる担体材料が利用される。微生物が成長している担体材料は、処理水が通過する間に担体材料が通過できないほど小さい開口直径又はスロット幅を有するストレーナ(篩又はグリッド)に流出水を通過させることによって、プロセス中に維持される。この種のプロセスの利点は、バイオフィルム床を詰まらせるリスク及びデッドゾーンの形成のリスクが排除されることである。プロセスにおいて懸濁及び移動状態に保たれる担体材料の使用は、異なるハイブリッドプロセス用途について元々報告されており、すなわち、懸濁担体は、その機能を改善するために活性汚泥プロセスに供給されていた。
【0006】
移動床リアクタでは、バイオフィルムは、リアクタ内で自由に浮遊する担体上で成長する。担体材料は、一般に発泡ゴム片又はプラスチックの小片である。発泡ゴム片を使用するプロセスは、Captor及びLinporという名前で知られている。発泡ゴム片の欠点は、発泡ゴム片の外側の成長が細孔を詰まらせ、発泡ゴム片の内部への基質及び酸素の侵入を妨げるため、有効なバイオフィルム面積が小さいことである。さらには、発泡ゴム片がリアクタから出るのを防止する篩を使用しなければならず、発泡ゴム片を篩から定期的に汲み上げてこれらが詰まるのを防止するシステムを有しなければならない。それゆえ、担体材料として発泡ゴムを用いて構築されたプラントはごくわずかであった。
【0007】
しかしながら、今日、多くの精製プラントは、担体材料がプラスチックの小片である移動床プロセスを用いて構築されている。プラスチック片は、通常、水体積全体に均等に分布し、実際には、リアクタ容積の最大約90%までバイオフィルム担体媒体で充填する程度で運転される。篩は、リアクタ内の適所にプラスチック片を保持する。リアクタは、バックフラッシングを必要とせずに連続的に操作される。このプロセスは、バイオリアクタの形状に関して非常に柔軟である。比バイオフィルム表面積は、散水濾床の場合よりも高いが、生物学的曝気フィルタ(biological aerated filter、BAF)プロセスの場合よりもかなり小さい。しかしながら、総体積基準では、小さいプラスチック片の担体材料を用いた移動床プロセスは、BAFプロセスにおけるフィルタ床の膨張及びフラッシング水リザーバに必要な余分な容積を考慮すると、BAFプロセスと同程度に効率的であることが分かっている。担体材料として小さいプラスチック片を用いる移動床プロセスの供給業者の例は、Veolia Water Technologies(ヴェオリア・ウォーター・テクノロジーズ)、Infilco(インフィルコ)、Degremont(デグレモン)、Biowater Technology(バイオウォーター・テクノロジー)、及びAqwise(アクワイズ)のシステムである。
【0008】
MBBRプロセスにおける担体は、互いとの、並びにリアクタ壁、浸漬ミキサ、篩、及びリアクタ内のさらに他の設備等のリアクタ内の他の表面との繰り返しの衝突に曝されるため、他の担体又はリアクタ内の他の表面に曝される表面は、バイオフィルム成長から清浄に保たれる。それゆえ、プロセスの効率は、衝突から保護される領域、例えば担体の内部通路又は内部区画に大きく依存する。実際、担体媒体のこの保護された表面積と、プラスチック片が互い及び他のリアクタ内面との衝突によって過剰のバイオフィルム形成から互いを洗浄し、これにより詰まり及びデッドボリュームを排除する能力とは、プラスチック媒体を用いたMBBRプロセスをかなり効率的かつ有効にする。
【0009】
MBBR用途のためのプラスチック担体媒体は、長期間にわたって過酷な環境に耐える必要がある。廃水処理のために世界中のMBBRプラントで使用される場合、それらプラスチック担体媒体は、とりわけ、集中した一定の混合剪断力、壁掻き取りによる剪断力、季節的温度変化、及び廃水中に存在し水性媒体中で長期間廃水処理プロセスで使用されるすべての種類の化学物質に耐える必要がある。リアクタの壁の状態が悪い場合(例えば、裂けた壁及び粗い壁)、又は高速ミキサ、高い曝気速度(これによるより高い剪断力及びより多くの衝突)、若しくはリアクタ容積と比較して高度の担体充填(これによるより多くの衝突)の利用のために、環境はさらに過酷になる可能性がある。これらの環境が続くと、最終的にプラスチック担体片を壊し、その最終寿命に到達させる。プラスチック担体が破壊されると、プラスチック担体はMBBRにおけるバイオフィルム担体として機能することが不可能になる。当然ながら、あらゆる廃水処理プラント(WWTP)は可能な限り長い担体媒体寿命を望むことになる。これは、壊れたプラスチック担体を、生物学的廃水処理プロセスが廃水を処理するために必要な新しいプラスチック製担体ピースと交換することが費用を要するためである。加えて、担体が破壊前の時間内に交換されない場合、破損した媒体片は、篩を通過し、WWTPの下流で重大な問題を引き起こし、最終的にプラントを離れ、自然界に広がる場合がある。
【0010】
採用される従来技術のプラスチック担体媒体の寿命は、上述のように異なる廃水処理プラントにおける異なる環境条件に照らして広く変動する可能性があり、条件がより粗い場合、寿命はより短くなり、条件に応じて、限定されないが5~25年の間で変動しうる。従来技術の担体の寿命の終わりに、MBBRタンク壁及びより古い摩耗した設備は、新しい従来技術のプラスチック担体媒体をリアクタに懸濁するときに剪断及び摩擦を低減するために、高コストで改修又は交換されなければならない場合がある。これは、そうしなければ、新しい媒体の寿命が、プラントが最初に構築されたときよりも著しく短くなることになりかねないからである。
【0011】
従って、より長い寿命を有する担体、とりわけ、より古い又は摩耗した設備においてさえ機能することができる担体が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、好ましくは、当該技術分野における上記で特定された欠点及び短所の1つ以上を単独で又は任意の組み合わせで軽減、緩和又は排除しようとし、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)内でバイオフィルムを担持するための担体を提供することによって少なくとも上記の課題を解決する。この担体は、環境応力に対して改善された安定性を有し、担体材料を含み、この担体材料は二峰性分子量分布を有する少なくとも1種の高密度ポリエチレンを含み、これによりこの担体材料は二峰性又は多峰性の分子量分布を有することを特徴とする。
【0013】
また、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)プロセスにおける上記担体の使用も提供される。
【0014】
本発明は、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)におけるバイオフィルムを担持するための担体が環境応力に対して改善された安定性を有するという、先行技術に対して利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明が可能なこれら並びに他の態様、特徴及び利点は、添付の図面を参照する本発明の実施形態の以下の説明から明らかになり、明瞭になるであろう。
【0016】
図1図1は、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)という最も一般的な種類の分子構造の図である。
図2図2は、応力印加中の半結晶性ポリマーの引張延性変形からの歪み応答の図である。
図3図3は、脆性破壊の各段階の図である。(a)結晶ラメラが引き離され始め、(b)タイ分子が緊密に伸び始め、(c)ラメラがきれいに壊れる。
図4図4は、半結晶性ポリマーから作製されたパイプの内部静水圧試験における破壊モード-を示す図である。
図5図5は、クリープ破断曲線を示すグラフである。
図6図6は、角周波数の関数としての貯蔵弾性率及び損失弾性率のクロスオーバー点の分子量及び分子量分布の依存性を示す図である。
図7図7は、180℃でのレオロジー周波数掃引における角周波数の関数として、寿命終了媒体1、寿命終了媒体2及び使用前のバージン媒体の貯蔵弾性率及び損失弾性率のクロスオーバー点を示すグラフである。
図8図8は、左側は未使用のバージン媒体1片の、及び右側はMBBRで利用した媒体1片の非破壊部分の光学顕微鏡画像である。
図9図9は、左側は未使用のバージン担体媒体1片の、及び右側は破損した担体媒体1片の光学顕微鏡「フェイスアップ(上面)」画像である。
図10図10は、左側は未使用のバージン担体媒体1片の、及び右側は破損した担体媒体1片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図11図11は、損傷した担体媒体1片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図12図12は、損傷した担体媒体1片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図13図13は、損傷した担体媒体1片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図14図14は、損傷した担体媒体1片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図15図15は、左側は未使用のバージン担体媒体2片の、及び右側は利用された担体媒体2片の光学顕微鏡「フェイスアップ」画像である。
図16図16は、左側は未使用のバージン担体媒体2片の、及び右側は損傷した担体媒体2片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図17図17は、損傷した担体媒体2片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図18図18は、左側は未使用のバージン担体媒体2片の、及び右側は損傷した担体媒体2片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図19図19は、損傷した担体媒体2片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図20図20は、損傷した担体媒体2片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図21図21は、損傷した担体媒体2片の光学顕微鏡「側面」画像である。
図22図22は、破損した担体媒体2片の光学顕微鏡「フェイスアップ」画像である。
図23図23は、(a)チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレン、(b)タンデムプロセスにおいてチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレン、(c)メタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンについての、コモノマー組成/SCB分布を有する典型的なMWDを示す3つのグラフを示す。
図24図24は、ほとんどの合成ポリマーの分子量分布のグラフを示す。
図25図25は、増加した耐応力亀裂性を与える高分子量コポリマー及び改善された加工性及びより高い剛性を与える低分子量ホモポリマーからなる二峰性分子量分布の図である。
図26図26は、ヘビーミキシング(高負荷混合)試験で使用された混合ブレードの写真である。
図27図27は、溶融レオロジー周波数掃引における角周波数の関数として、異なるHDPE担体材料の貯蔵弾性率及び損失弾性率のクロスオーバー点を示すグラフである。
図28図28は、溶融レオロジー周波数掃引における角周波数の関数として、異なるHDPE担体材料のδ値を示すグラフである。
図29図29は、典型的な単峰性分子量分布(MWD)(破線)及び2つの異なる二峰性分子量分布の図である。
図30図30は、液体流中の混入物質の処理のためのMBBR用途におけるバイオフィルム形成に利用される保護された表面積を有するプラスチック担体媒体の一例を上から、横から、及び3次元で示す図である。
図31図31は、液体流中の混入物質の処理のためのMBBR用途におけるバイオフィルム形成に利用される保護された表面積を有するプラスチック担体媒体の一例を上から、横から、及び3次元で示す図である。
図32図32は、液体流中の混入物質の処理のためのMBBR用途におけるバイオフィルム形成に利用される保護された表面積を有するプラスチック担体媒体の一例を上から、横から、及び3次元で示す図である。
図33図33は、液体流中の混入物質の処理のためのMBBR用途におけるバイオフィルム形成に利用される保護された表面積を有するプラスチック担体媒体の一例を上から、横から、及び3次元で示す図である。
図34図34は、液体流中の混入物質の処理のためのMBBR用途におけるバイオフィルム形成に利用される保護された表面積を有するプラスチック担体媒体の一例を上から、横から、及び3次元で示す図である。
図35図35は、液体流中の混入物質の処理のためのMBBR用途におけるバイオフィルム形成に利用される保護された表面積を有するプラスチック担体媒体の一例を上から、横から、及び3次元で示す図である。
図36図36は、液体流中の混入物質の処理のためのMBBR用途におけるバイオフィルム形成に利用される保護された表面積を有するプラスチック担体媒体の一例を上から、横から、及び3次元で示す図である。
図37図37は、MBBRバイオリアクタ内の滑らかな内壁の一例の写真である。
図38図38は、MBBRバイオリアクタ内の壁空洞を有する内壁の一例の写真である。
図39図39は、MBBRバイオリアクタ内の鋭利な物体を有する内壁の一例の写真である。
図40図40は、MBBRバイオリアクタ内の粗い接合部を有する内壁の一例の写真である。
図41図41は、MBBRバイオリアクタ内の非平滑化接合部を有する内壁の一例の写真である。
図42図42は、MBBRバイオリアクタ内の不完全な勾配(グレード)を有する内壁の一例の写真である。
図43図43は、長期間にわたって滑らかな状態から粗い状態に分解されている、MBBRバイオリアクタ内の内壁の一例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は、異なる廃水処理プラントにおいて一般的に採用される粗い条件に耐えるために著しく増加した耐性を有し、これにより担体寿命を著しく延長する本発明に係るプラスチック担体に適用可能な本発明の実施形態に焦点を当てる。
【0018】
従って、担体寿命が一般的なMBBR用途のために延長されるだけでなく、耐性の増加は、より古い又は摩耗した設備の改修を遅延又は排除することを容易にする可能性がある。
【0019】
本発明に係るプラスチック担体は、浸漬可能なミキサのより良好な使用をも容易にする可能性がある。
【0020】
同様に、必要であれば、それは、一般的な混合エネルギーよりも高い混合エネルギーの利用を容易にしてもよい。
【0021】
さらには、それは、より深刻なプラスチック有害物質を含む廃水の処理を容易にしてもよい。
【0022】
本発明に係る担体媒体の改善された特性は、従来技術のプラスチック担体媒体と比較して、はるかに長時間にわたってより粗い条件に対処することができ、プラスチック担体媒体に由来するマイクロプラスチックの生成を顕著に低減又は排除することができると思われるので、本発明に係るプラスチック担体は、飲料水の製造のための処理ラインの一部としてMBBR技術を利用することも容易にする可能性がある。
【0023】
MBBR担体は、概して、バイオフィルム成長に適応する高い表面積を可能にする構造を有するように設計される(図30~36の担体設計の例を参照)。通常、この担体は、1種以上のプラスチック原材料から押出成形又は射出成形によって製造され、このプラスチック原材料は、押出加工設備内で溶融又は溶融混合されると担体材料となり、次いで、これは、溶融段階で所望の担体設計及び形状に成形され、その後、担体材料の溶融物を固体担体片に冷却される。しかしながら、担体は、押出プロセスにおける着色剤の添加によって着色されてもよく、追加の機能性のための金属ストリップ(条片)等の材料インサートと共押出されてもよく、密度を変化させるために様々な無機物を押出溶融プロセスにおいて添加することができ、この場合、これらも担体材料の一部となる。
【0024】
担体製造プロセスは、概して連続的であり、担体片は、例えば射出成形の場合は個々に、又は押出の場合のように冷却され固化した長いストランドを個々の片に切断することによって形成することができる。
【0025】
従って、MBBR担体は、本質的に担体材料からなる。
【0026】
MBBR用のプラスチック担体は、概して、ポリマープラスチックから作製される。
【0027】
ポリマープラスチックの1つの群は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリメチルペンテン及びポリプロピレンを含む高分子量炭化水素であるプラスチックポリオレフィンである。
【0028】
これらだけは、水よりも低い比重を有するプラスチックを表し、言い換えれば、これらだけが、水よりも軽い一般的なプラスチックである。MBBR用のプラスチック媒体が過剰のエネルギーを使用する必要なくリアクタ(反応器)容積内の水中に懸濁して流れるのを容易に保つために、MBBR用のプラスチック媒体の比重は水より小さくなければならないので、ポリオレフィンは、発泡していないプラスチック担体媒体のための良好な選択肢である(発泡は、材料の比重を当然に減少させる)。
【0029】
ポリオレフィンのうち、MBBR用の担体媒体の製造のための選択肢はポリエチレンであり、その理由は、ポリエチレンはこのタイプの用途に非常に汎用性があり好適な特性を有する汎用ポリマーであり、担体媒体の所望の設計に合わせて高速で容易に成形されるからである。ポリエチレンは、例えばポリプロピレンよりも高い密度(依然として水の密度未満)を有するように作製することもでき、これにより、担体が表面上でまさに浮遊しないように、より低い浮力のために懸濁状態に保つのがより容易である。
【0030】
ポリエチレンの一般的な説明
ポリエチレンは、多くの他の種類のポリマーと同様に、その構造に依存する様々な特性を有する多様な材料挙動を有し、異なるタイプのポリエチレンが容易に商業的に入手可能である。その多様性は、その分子構造によって説明することができる。
【0031】
ポリエチレンは、共に結合して高分子量生成物を形成する炭素原子及び水素原子から構成される熱可塑性材料である。概して言えば、エチレンは、熱及び圧力の印加によってポリエチレンに変換される。ポリマー鎖は、数十万~数百万個の炭素単位(すなわち、メチレン基)の長さであってもよい。短い及び/又は長い側鎖分子(分岐鎖)が、ポリマーの長い主鎖分子と共に存在する。主鎖が長いほど原子数が多くなり、その結果、分子量が大きくなる。分子量、分子量分布及び分岐の量が最終生成物の物性の多くを決定する。
【0032】
分子量、その分布及び結晶化度(密度)は、PEの特性に最も大きい影響を与える。この結晶化度は分子量及び分岐度に依存する。ポリマー鎖の分岐が少ないほど、また分子量が低いほどポリエチレンの結晶化度は高くなる。
【0033】
最も一般的な種類のポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)である。LDPEは、主鎖に沿って高度の短鎖分岐及び長鎖分岐を有するが、LLDPEは高度の短鎖分岐のみを有し、HDPEは少量の短鎖分岐を有する(図1)。それゆえ、LDPEは、溶融物からの冷却時に結晶性領域を形成するようにより拘束され(分子の線状性がより低いため)、密度を低下させる。これは、ポリマー鎖が高度に秩序化された結晶折り畳み構造に容易に折り畳まれることができないためである。他方、LLDPE及びHDPEは、より線状のポリマー鎖(特にHDPE)を有し、それらの結晶化度を増加させ、これによりMBBRとしての用途に必要とされる優れた機械的特性及びより高い剛性を与える。しかしながら、LLDPEは、より多量の分岐のためにHDPE(0.93~0.97g/cm)より低い密度(0.91~0.93g/cm)を有し、MBBRで使用される担体媒体の製造のための材料として使用するにはHDPEよりも適さない。
【0034】
一実施形態によれば、HDPEは、本明細書で使用する場合、0.93~0.97g/cmの密度を有するポリエチレンに関する。典型的には、その密度は0.93g/cmを超える。
【0035】
一実施形態によれば、HDPEは、本明細書で使用する場合、ホモポリマー又はコポリマーのいずれかに関し、ホモポリマーはモノマーエチレンから生成されるのに対して、コポリマーはさらに少なくとも1種の他のモノマーアルケン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンを含む。
【0036】
MBBRプラスチック担体の破壊の一般的な経路
MBBR用途用のプラスチック担体(限定されないが、異なるタイプの担体媒体の例が図30~36に見られる)は、長期間にわたって過酷な環境に耐える必要がある。廃水処理のために世界中のMBBRプラントで使用される場合、それらは、とりわけ、機械的ミキサからの集中した一定の剪断力、壁衝撃からの一定の剪断力、担体どうしの衝撃からの一定の剪断力、季節的温度変化、及び廃水中に存在し水性媒体中で長期間廃水処理プロセスで使用されるすべての種類の化学物質に耐える必要がある。リアクタの壁の状態が悪い場合(例えば、裂けた壁及び粗い壁)、又は高速ミキサ、高い曝気速度(これによるより高い剪断力及びより多くの衝突)、若しくはリアクタ容積と比較して高度の担体充填(これによるより多くの衝突)の利用のために、環境はさらに過酷になる可能性がある。これらの環境が続くと、最終的にプラスチック担体片を壊し、その最終寿命に到達させる。当然ながら、それらを新しいプラスチック担体片と交換することは費用を要するので、あらゆるWWTPは、可能な限り長い担体媒体寿命を望むことになり、また、新しいバイオフィルムが新しい担体媒体上で成長しなければならないので、既存の担体の交換は、生物学的処理プロセスを一時的に妨害することになる。加えて、担体が破損前の時間内に交換されない場合、破損した媒体片は、篩を通過し、最終的にWWTPを離れ、自然界に広がる場合がある。
【0037】
MBBR技術を採用する廃水処理プラントは、プラスチック担体媒体がその最終寿命に達したときに、プラスチック担体媒体を遅かれ早かれ交換しなければならない。採用される担体媒体の寿命は、上述のように異なる廃水処理プラントにおける異なる環境条件に照らして広く変動する可能性があり、条件がより粗い場合、寿命はより短くなるが、条件に応じて、限定されないが5~25年の間で変動しうる。しかしながら、プラスチック担体媒体の製造に使用されるポリマー材料の種類も、担体寿命の決定において大きい役割を果たす可能性がある。当然ながら、異なる種類の材料は異なる特性を有し、これらの異なる特性のいくつかは、MBBRプロセスにおいて利用される担体媒体の寿命を改善するために非常に重要であってもよい。MBBRプロセスにおける担体寿命に影響を及ぼす、この場合はHDPE(これは、先に説明したような担体媒体製造のための原材料としてのその特性が理由で本発明において選択される)の特性(単数又は複数)を特定することができれば、多くの場合、機能的MBBRプロセスを有するために必要とされるHDPEの他の特性を損なうことなく、上記HDPE材料を改変しようと試み、これによりその特定の特性(単数又は複数)を改善する努力も行うことができよう。
【0038】
長寿命のプラスチック担体媒体を製造するために原材料が持つべき最も重要な特性を特定するためには、最初に、なぜそしてどのようにして担体の破損が起こるかを理解しなければならない。担体の破損は、多くの理由により引き起こされることが可能であるが、一般に、3つのカテゴリーに分けることができる。
・例えばUV分解又は化学物質がポリマー主鎖を攻撃することによるHDPE材料構造の分子分解は、鎖切断及び物理的特性の劣化をもたらし、これはリアクタ内の連続剪断応力(高い又は低い)と組み合わさって担体を破壊する。分子構造が変化しない場合、これは、材料が溶融されて再び担体に成形された場合には、機械的特性が回復されることが可能であろうということを意味する。分子構造が劣化した場合、その材料は、再溶融してもその機械的特性を永久に失っているであろう。
・連続剪断応力、温度変化及び化学物質等の環境要因に起因するHDPE材料の経時的な物理的劣化は、材料に応力亀裂を引き起こす。これは、主ポリマー主鎖中のポリマー結合を破壊しないが、代わりにポリマー鎖間の二次連結、例えばファンデルワールス結合を破壊するため、分子分解とは異なる。これらは、低い機械的応力が伸長を引き起こすときに破壊され、結果として起こるポリマーの非晶質相の経時的な鎖の滑りが亀裂を伝播させ、最終的にプラスチックを破壊する。応力亀裂は、例えば、より高い温度、増加した応力集中及び化学的集中によって加速され、最終的に脆性破壊をもたらす。応力亀裂は、系内の剪断応力が可能な限り最小限に保たれる場合、顕著により長い時間にわたって抑制することができる。物理的分解は、材料を再溶融することによって元に戻すことができるが、当然、MBBR担体に関しては、これは実際には実現可能ではない。
・塑性変形 - バージンの材料としての材料の降伏応力よりも高いMBBRリアクタ内のあまりに高い剪断力は、その材料が降伏し突然の延性破壊まで伸張し始めることにつながる。この延性破壊は、リアクタにおいて突然の著しく高い剪断力が加えられる場合、例えば、機械的ミキサ又は他の場所において担体媒体が固着し、固着した担体にかなりの力が加えられる場合の、MBBR担体の破壊の態様であることができよう。
【0039】
プラスチック材料の分子分解を排除することができる(これは測定することができる)場合、担体媒体を最終的に破損させ寿命の終わりに到達させるのは、経時的なプラスチックの可塑性変形又は物理的分解のいずれかであると言えよう。
【0040】
経時的な物理的劣化及び塑性変形は、それぞれ、プラスチック材料の2つのタイプの機械的破壊、延性破壊(塑性変形による)及び脆性破壊(経時的な物理的劣化による)をもたらす。延性破壊は、一般に、高応力レベルで短時間にわたって生じる種類の破壊である。巨視的レベルでは、延性引張破壊は、ポリマー試料における目に見える変形(ネッキング)の観察をもたらす。延性破壊と比較して、脆性破壊を受けるポリマーは、長期間にわたってより低い応力レベルによって応力を受けることに起因して、材料変形がほとんどないきれいな(破断面が滑らかな)破壊を有する。
【0041】
引張延性挙動は、材料の半結晶性によって影響を受ける。図2において、引張延性変形についての応力-歪み曲線は、ミクロスケールにおいて半結晶性ポリマーマトリクス内で起こるものの図を伴う。最初に、降伏点の前には、材料の目に見える変形は観察されず、荷重は主に硬質の結晶ラメラによって持ち応えられる。歪みが増加するにつれて、応力も増加し、降伏が生じる。降伏点と歪み硬化の開始との間の期間中、試験試料に対する荷重は、比較的一定のレベルのままである。この領域における変形は、非晶質相の再配列自体と、結晶ラメラが互いに滑り合うこととの組み合わせによるものであるが、しかしながら、個々の結晶自体は依然として無傷である。
【0042】
図2の歪み値0.5と1.0との間では、応力-歪み値の増加と共に、結晶相及び非晶質相の延伸方向における配向の増加が見られる。1.5の歪み後、歪みの増加に伴う応力値の急激な増加は、歪み硬化の発生を示す。歪み硬化の間、非晶質相はその完全な伸長に達し、この段階でのポリマーのさらなる変形は、結晶ラメラの破壊及び展開によるものである。結晶ラメラのより小さい塊への破壊は、走査電子顕微鏡(SEM)下で観察することができるとおり、延性破壊の特徴的な粗い繊維表面をもたらす。応力が歪みの増加と共に増加し続けると、究極的な破壊が起こり、材料が破断する。
【0043】
延性破壊と比較して、脆性破壊を受けるポリマーは、材料変形が少ないきれいな破壊を有する。見た目には、破壊表面は滑らかに見える。SEM下では、表面は、実際には短いランダムな引き抜きからなることが分かる。脆性型破壊は、長期間にわたって低応力が加わった場合に起こる。
【0044】
図3a~bに示すように、脆性破壊の初期段階において、非晶質相は応力下で伸び始める。より長い時間のため、応力下の非晶質相におけるラメラ間連結は、残りの連結の数が非常に少なくなるまで、緩和し、互いから解かれ始める。少数の残りのラメラ間連結がそれらの限界まで伸張されると、それらは結晶ラメラを引き離すことができず、その結果、図3cに示すようにポリマーの脆性破壊が生じる。
【0045】
応力亀裂成長(SCG)は、HDPE等の半結晶性材料における現象であり、その際、材料中の応力の存在に起因してゆっくりと成長する亀裂が生じることが可能である。材料の長期耐久性は、亀裂の開始及びゆっくりとした成長を阻害するその抵抗性に依存することができる。研究により、SCGが半結晶性ポリマーの3つの主要な破壊モード(図4)の1つであることが示されている。
【0046】
延性破壊モードIは、降伏をもたらし、応力下で大規模な不可逆的な「塑性」変形を受ける材料の傾向を反映する。この機構は、変形したゾーンの局所的な拡張(膨張)及び最終的な破裂(破壊、割れ)をもたらす。
【0047】
破壊モードIIは、クリープ、クリープ破断及びSCGに関連する。クリープは、一定の引張応力にさらされた場合の時間依存的な不可逆的変形である。クリープ破断はクリープの最終事象であり、一定の印加引張荷重下の材料が破損するのにかかる時間の尺度である。
【0048】
クリープ破断は、
・温度
・応力集中
・疲労
・化学環境
によって加速することができる。
【0049】
図5は、延性-脆性遷移が開始SCGを示すクリープ破断曲線を表す。
【0050】
亀裂開始後、亀裂の前に空隙(ボイド)が発生する。これらの空隙は、高度に配向された耐荷重フィブリルが広がるより大きい空隙に徐々に融合する。クレージングとして知られるこのプロセスは、最も高度に伸張されたフィブリルが破断して破壊をもたらす点に達するまで続く。
【0051】
ここで、かなりの時間にわたって動作し、その寿命の終わりに到達したか又は寿命に非常に近いMBBR担体媒体を調べることが重要である。そうすることによって、どの破壊経路がその寿命の終わりを引き起こしたかを決定することが可能であろう。その後、その破壊経路を可能な限り遮断するために、プラスチック原材料に対して何を行うことができるかを決定することが可能であろう。
【0052】
それゆえ、調べる第1のことは、プラスチック原材料の分子分解が、(サイズ、形態及び形状に関して)2つの異なる種類の担体設計を有する2つの異なるMBBRプロセスにおいて起こり、両方のプラントにおける担体媒体が寿命の終わりに達するのに充分長い時間稼動したかどうかを確認することであろう。これは、バージンの未使用の担体媒体中のHDPE原料の分子構造(両方のタイプの媒体について同じであった)を、寿命の終わりに達した2つの異なる担体媒体中の原材料の分子構造と比較することによって行った。
【0053】
バージンのHDPE原材料と寿命の終わりに達した担体媒体中のHDPEとの分子構造を比較するために、それら異なる材料の溶融レオロジー測定を行った。HDPEのような熱可塑性ポリマーは、溶融温度を超えて加熱されると粘弾性流体になる。これは、熱可塑性ポリマーがその溶融加工においてどれだけ速く流動するか又は変形されるかに応じて、それらが溶融状態で粘性的又は弾性的に挙動することを意味する。
【0054】
ポリマー構造-レオロジー関係は、加工のための正確なレオロジーを有するポリマーの開発の鍵である。設計エンジニアの最終的な目標は、最終製品の性能(例えば機械的特性)を犠牲にすることなく、より良好な溶融加工性能を与えるように材料構造を変更(調整)することである。ポリマー構造変化に対するその感受性に起因して、溶融レオロジーは、異なるHDPE原材料間の分子構造差を非常に正確に比較するための望ましい技術である。変態プロセスは、材料の小さな変化に対して非常に敏感に反応する、すなわち、ポリマー溶融物のレオロジーは、ポリマー構造の小さな変化に対して非常に敏感である。
【0055】
MBBRプラスチック担体の破壊経路の決定
レオロジーの感度のため、レオロジーはポリマーを特徴付けるのに最も便利な方法である。少量の高分子量ポリマーは、加工挙動を劇的に変化させることができ、従って溶融レオロジーも変化させる。ポリマー溶融物のレオロジーを規定する重要な構造パラメータは、分子量(MW)、分子量分布(MWD)及び分岐である。分子量の増加は粘度の増加を引き起こすが、分子量分布及び分岐の変化は、主として溶融物の弾性に影響を及ぼす。時間依存性は両方の影響を受ける。
【0056】
それゆえ、レオロジー測定は、寿命の終わりに達した担体を製造するために使用された特定のHDPE原材料が特定のMBBRプロセスにおけるその使用中に分子的に分解されているか否かを判定するための正確で信頼できるデータを提供する。
【0057】
損失弾性率は、材料の粘性特性、すなわちエネルギー散逸を特徴付ける。貯蔵弾性率は、弾性特性の尺度であり、材料に貯蔵されるエネルギーを特定する。ニュートンプラトー(ニュートン平坦域)の範囲において、損失弾性率曲線は、低い角周波数において一定の傾きを有し、貯蔵弾性率は、データが両対数スケールで提示されるとき、低い周波数において別の一定の傾きを有する。この領域では、損失弾性率G”は貯蔵弾性率G’を超えており、これは試料の挙動が流体の挙動と同様であることを意味する。角周波数を増加させることによって、貯蔵弾性率と損失弾性率との間のいわゆるクロスオーバー点(COP)は、より粘性様の変形挙動からより弾性的な変形挙動への移行を示す。それゆえ、COPは、定性的材料特性評価の基準として使用することができる。
【0058】
COPの位置から得られる情報は、材料の平均モル質量及びそのモル質量分布(MMD)に関する定性的情報である。増加する平均モル質量は、より低い角周波数に移動したCOPで表される。より高い角周波数では、より短い分子は可動性のままであるが、より長い分子は、より低い角周波数で既に不動になる。より低い弾性率に向かうCOPの垂直シフトは、より広いMMDを示す。これは図6に見ることができる。COPを上回る角周波数では、分子がほつれるのに充分な時間が残っていない。所与の歪み又は剪断速度に対して、材料はゴムのような応答を有する。弾性特性は、粘性特性又は流体特性よりも優勢である。この領域は、いわゆるゴム状領域である。
【0059】
図6による周波数掃引は分子量、分子量分布及び分岐に関する詳細な情報を与えるので、2つの異なるMBBRリアクタから採取した2つの異なる寿命の終わりの担体を、プラントで利用する前のバージンのHDPE材料と比較し、分析して、図6によるクロスオーバー点でのそれぞれのG及びωを決定した。目的は、変化したか否かを判定するために、各試料についてこれらの値を確立することであった。変化していなければ、寿命の終わりのHDPE試料の分子構造は無傷であり、そのような場合、MBBR担体の破壊の原因ではないことになる。
【0060】
図7は、2つの異なるMBBRプロセスにおける使用後の2つの異なる寿命の終わりの担体(図30に示す媒体1及び図31に示す媒体2)と、使用前のバージンのHDPE材料との比較を示す。図7から分かるように、周波数掃引融解曲線は、基本的に互いに重なり、非常に小さな差しかない。すべての分析された試料についてのクロスオーバー点の値は、表1に見ることができる。これらの結果は、MBBRプロセスにおける稼働中にHDPE原材料の分子分解がなかったことを明らかに示しており、これは、担体の破損及び寿命の終わりが、経時的な物理的劣化(応力亀裂の形成)又は塑性変形のいずれかによる物理的劣化に起因するに違いないことを意味する。
【0061】
【表1】
【0062】
分子分解は起こっていなかったので、物理的劣化経路を調べる必要があった。これは光学顕微鏡法を利用して行った。2つの異なるMBBRプロセスからの2つの異なるタイプの破損した担体媒体片試料の顕微鏡写真が、プロセス番号1(媒体1)については図8図14に、プロセス番号2(媒体2)については図15図21に示される。
【0063】
図8及び図9は、左側はバージン媒体を、右側は担体の非破壊部分(媒体1、図8)及び担体の破断部分(媒体1、図9)を示す。これらの画像から、壁厚は、MBBRリアクタの稼働時間中に特に影響を受けていないことが明らかである。それゆえ、壁の掻き取り/浸食はあまり多くは見られなかった。これは、試験したすべての小片において確認され(しかしここでは示さず)、破損片でも確認された。これは、壁の薄化による掻き取りによる媒体の浸食が、媒体の破損とほとんど又は全く関係ないことを意味する。しかしながら、図9では、右側で、担体の外側壁部分が、各側部における垂直な内壁によってきれいな破断で切り取られていることが分かる。
【0064】
図10は、側面で立てた、左側のバージン担体媒体、及び損傷した担体媒体片(媒体1)を示す。図11図14は、側面で立てた、損傷した担体媒体(媒体1)を示す。立ち上がった角度から、形成された応力亀裂が、すべての図10図14において容易に見られる。成長し始めたばかりのより小さな開始亀裂と、より大きく成長し、常に図10に示すような脆性破壊で終わる応力亀裂によって引き起こされる外側壁を破壊する寸前の大きい応力亀裂との両方が見られる。
【0065】
図15は、左側のバージン媒体、及び異なるMBBRプロセスからの損傷した担体媒体(媒体1と比較して別の設計形状を有する媒体2)を示す。この画像から、壁厚は、媒体1の場合と同様に、MBBRリアクタの稼働時間中に特に影響を受けていないことが明らかである。それゆえ、壁の掻き取り/浸食はあまり多くは見られなかった。これは、試験したすべての小片において確認された(しかしここでは示さず)。これは、壁の薄化による掻き取りによる媒体の浸食が、媒体の破損とほとんど又は全く関係ないことを意味する。図15では、外側フィンはより短いことが分かるが、これは掻き取り/浸食による可能性がある。しかしながら、図16は、これが別の原因によるものであることを指摘している。
【0066】
図16では、応力亀裂が開始され、媒体2の外側フィンの垂直方向に成長し始め、フィンを外側壁から分離し始めていることが分かる。この応力亀裂の伝播は脆性破壊で終わり、フィンが外側壁から脱落するので、図15ではフィンがバージン媒体と比較して短いと考えられる。侵食によるものではない。これは、図17においてもより明確に見られ、図17では、応力亀裂は、外側壁のノッチ内でフィンの垂直軸に沿って成長している。これは、長期間の連続的な低応力耐久による応力亀裂の開始、伝播及び最終的な破損の明確な挙動である。
【0067】
典型的には、担体の外側部分(媒体1の場合の外側壁及び媒体2の場合の外側のフィン及び壁)は、リアクタ内の剪断応力の大部分を吸収し、それらが部分的又は完全に剥離される(scaled off)と、継続的な剪断応力が外側壁の90度の角に印加される。その時点で、応力亀裂は、代わりに、図18図20に見られるように、外側壁内の剥離部分から開始及び成長するであろう。
【0068】
最後に、外側壁は、図21に見られるように破裂し、図21では、完全な脆性破裂が、外側壁の1つの特定の場所で見ることができる。当然ながら、亀裂は、異なる時に開始され、異なる速度で伝播するが、最終的には、図22に見られるように、2つの亀裂は、破壊につながるほどに伝播し、これにより、外側壁の全部分を切断する。一般に、第1の破裂は、この「より重い」領域によって吸収される剪断応力がより大きいため、内壁と外側壁との間の角で生じる。すべての外側壁部分が最終的に切断されると、リアクタ内の剪断応力が内壁によって吸収され、次いで、内壁は同様に劣化し始めることになる。
【0069】
それゆえ、驚くべきことに、MBBRプロセスにおける担体媒体の破壊メカニズムは、応力亀裂の形成及び伝播による脆性破裂であることが見出された。試験した媒体1及び媒体2は、異なる種類の廃水のための非常に異なるプロセスで使用されてきた異なる担体タイプであったため、これは予想されなかった。媒体1は、使用する好気性プロセスで使用されていたが、媒体2は、浸漬された機械的混合を使用する無酸素プロセスで使用されていたため、媒体1及び媒体2については担体の破損の異なる経路が予想されよう。
【0070】
それゆえ、MBBR担体媒体の製造に利用されるHDPE原材料構造は、応力亀裂形成に対する耐性に関してより良好な特性を有するように強化されるべきであることが明らかになった。
【0071】
MBBRプラスチック担体の寿命を延ばす方法
ポリマーの靭性及び脆性破裂に対する耐性は、分子構造、特に分子量、分子量分布、分岐、結晶化度及びタイ分子(結合分子、tie molecule)に大きく依存する。タイ分子は、微結晶領域及び横断非晶質領域に埋め込まれ(図3を参照)、結晶ドメイン間の機械的リンクとして作用し、それゆえ、応力にさらされたときの脆性破壊に対する耐性及び全体的な機械的特性において決定的な役割を果たす。
【0072】
脆性破壊は、ラメラ間連結の絡み合いを解くことによって引き起こされると考えられると以前に説明された。これらのタイ分子の数及び種類は、ポリエチレンの耐応力亀裂性に重要な役割を果たす。2つのタイプのラメラ間連結がある。
【0073】
第1の種類は、架橋タイ分子と呼ばれるものである。これらの分子の2つの末端は、2つの異なる結晶ラメラに埋め込まれ、従ってそれらを接続する。架橋タイ分子は、共有結合により強度を有する。他の種類のラメラ間連結は、緩いループと繊毛との絡み合いで作られ、ファンデルワールス力によって共に保持されると考えられる。架橋タイ分子はタイ分子と呼ばれる。すべての他の種類のラメラ間連合は、絡み合いと称される。
【0074】
タイ分子の概念は、ポリエチレンの脆性破壊の研究において、Brown及びWardによって最初に提案された。Brown及びWardは、ポリエチレンの非晶相中に2種類の耐荷重性分子結合が存在することを理論化した。第1のタイプは架橋タイ分子の共有結合からなり、第2のタイプは非晶質鎖間のファンデルワールス結合を含む。それゆえ、ポリマーの脆性破壊応力σは、両方のタイプの結合によって持ちこたえられる応力の合計である
【0075】
Brown及びWardによる研究に基づいて、Huang及びBrownは、ポリマー鎖が、2つのラメラ中で結晶化し、従ってタイ分子になるために、2つの結晶ラメラ層の厚さより大きい末端間距離(r、回転半径)を有しなければならないことを理論化した(再び図2を参照)。
【0076】
Huang及びBrownは、3つのタイプの非晶質相材料、すなわち繊毛、緩いループ、及びタイ分子のみが存在し、2Lより大きい末端間距離を有する任意の鎖が、3つの非晶質相構成のいずれか1つを取る等しい機会を有すると考えた。それゆえ、鎖はタイ分子になる機会は1/3しかない。
【0077】
分子の回転半径は、その分子量の関数である。確率理論及び(経験的)実験的観察に基づいて、Huang及びBrownは、ポリマーの重量平均分子量(Mw)の関数として架橋タイ分子によって占有される非晶質領域の面積の割合を説明する理論を開発した。
【0078】
この研究は、特定の分子量未満ではタイ分子が見出され得ないことを示した。他の研究も、重量平均分子量が増加するにつれて、形成されるタイ分子の数も増加することを見出した。これは、重量平均分子量が増加するにつれて、タイ分子濃度が増加するため、ポリエチレンの耐応力亀裂性は増加することを意味する。
【0079】
Huang及びBrownのモデルは、ポリエチレンの耐応力亀裂性に対する分子量効果についての良好な説明を与えた。従って、過去20年間、ポリエチレンの耐応力亀裂性に関するほとんどの研究は、タイ分子の効果のみに焦点を当ててきた。しかしながら、Huang及びBrownの理論は、分子量分布の高分子量端においてより高いコモノマー(例えば、ポリエチレン骨格への1-ブテン又は1-ヘキサンという小さな介在物)含有量を有するポリエチレンのより高い耐応力亀裂性を説明できなかった。加えて、ファンデルワールス結合は共有結合よりもはるかに弱いが、Brown及びWardはそれらを無視すべきではないと感じた。過去10~20年の他の研究も、タイ分子に加えて、他のラメラ間連結(すなわち鎖の絡み合い)がポリエチレンの全体的な耐環境応力亀裂性に寄与しうると推測した。
【0080】
短鎖分岐(SCB)は、鎖の絡み合いを促進し、同時に材料密度を低下させることによってポリマー特性に影響を及ぼす。研究により、SCB含有量が1000個の炭素原子あたり0から4.6ブチルに増加すると、観察された低速亀裂成長の速度が104倍低下することが示されている。Janimak及びStevensは、短鎖分岐とタイ分子密度との間の関係を明らかにした。彼らは、分岐密度に対するタイ分子分率のプロット上で、Huang及びBrownからのデータとともにそれらの結果をチャート化した。両方のデータセットとも、SCBの増加と共にタイ分子分率の増加を示した。SCBの数に加えて、SCBの長さもポリエチレンの耐応力亀裂性に影響を及ぼす。Yehらによって行われた研究は、SCB長が2個から6個の炭素原子に増加するにつれて、ポリエチレンの耐応力亀裂性が劇的に増加することを見出した。この理由は、より長いSCB分岐を有する鎖の摺動抵抗の増加であると考えられる。
【0081】
重合に使用される触媒の種類は、ポリエチレン中の短鎖分岐分布(SCBD)に影響を及ぼす。チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒を用いて製造されたポリエチレンは、図23aに示すように、分子量分布(MWD)の低分子量端においてより高いSCB含有量を有することが知られている。他方、タンデム重合リアクタにおけるチーグラー・ナッタ触媒の使用は、MWDの高分子量端においてより短い鎖分岐を有するPEを生成することができるが(図22b)、これらのポリエチレン材料は、二峰性MWDも有する傾向がある。メタロセン触媒に関する検討により、図23cに示すように、短鎖分岐がMWDにわたって均等に分布していることが示されている。メタロセン触媒によるPE及びタンデム重合PEの場合、より高いMW鎖におけるSCBの存在は、より高いタイ分子密度をもたらし、従って、ラメラ形成のための規則的な鎖折り畳み機構のより大きい破壊をもたらす。従って、これら2種類のポリエチレンは、一般に、標準的なプロセスにおいてチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンよりも高い耐応力亀裂性を有する。
【0082】
SCBは、タイ分子の形成を容易にする。しかしながら、SCBは、微結晶の規則性も破壊し、微結晶の強度も損なう。結晶性の低下は、材料密度が低いことを意味する。密度は、ポリマーの剛性及び引張降伏強度に直接関連する。異なる量のモデルタイ分子を線状ポリマーに組み込むことによって、タイ分子密度が特定の点を超えて増加すると、ポリマー結晶化度及び引張強度が失われることが見出される。MBBR廃水処理プラント等の用途で使用されるポリエチレンについては、高い耐環境応力亀裂性並びに高い機械的剛性及び強度の両方が望ましい品質である。それゆえ、これら2つの特性のバランスをとることが重要である。それゆえ、見出された損傷の性質に起因して、MWDの高分子量端における鎖分岐を含む二峰性製造技術(タンデムプロセス)とともにHDPEを利用することは、剛性及び引張降伏強度のために充分に高い密度を生成すると同時に、はるかに延長された寿命を有するMBBR用のプラスチック担体媒体の製造のための原材料として使用するためのはるかに改善された耐応力亀裂性を促進するであろうと仮定された。
【0083】
要約すると、耐応力亀裂性は、表2に示されるパラメータによって、記載されたように影響を受ける。
【0084】
【表2】
【0085】
MBBRプラスチック担体の寿命を改善するための原材料
一般的に言えば、HDPEの3つの異なる主なタイプは、それらがどのように製造されるかに応じて異なるカテゴリーに分類される。これらのカテゴリーは、HDPEの単峰性ホモポリマー、HDPEの単峰性コポリマー及びHDPEの二峰性ホモポリマー又はコポリマーである。
【0086】
HDPEホモポリマーの分子構造は、繰り返し単位(-CH2-CH2-)の線状骨格であり、これは、HDPEホモポリマーは単一モノマータイプから製造されるホモポリマーであるため、エチレンのみが、製造のためのモノマーとして使用されることを意味する。この種のHDPEは、1つのリアクタ内で1つの触媒を用いて製造される。このプロセスの結果は、図24に見られるように、適度に広い分子量分布(広いMWD)を有するポリマーである。例えば、ポリエチレンの試料について、いくつかの鎖が5万個の炭素原子をその中に有し、他は5万2個の炭素原子をその中に有するとしよう。この小さな差は何にもならない。しかしながら、すべての鎖が同じ分子量を有する合成ポリマーの試料はほとんど見出されない。代わりに、通常、ベル曲線又は分子量の分布が見られる。ポリマー鎖のいくつかは他のすべてよりもはるかに大きく、曲線の高分子量端にある。いくつかは、はるかに小さく、曲線の低分子量端にある。最大の数は、通常、曲線上の最高点である中心点の周りに累積される。単峰性のポリエチレンホモポリマーについては、図24における広いMWDが与えられる。
【0087】
ますます洗練されたポリエチレン技術の進化に伴い、αオレフィン4、6及び8は、広範囲の単峰性コポリマーHDPE樹脂の製造に有益なコモノマーとなっている。これは、もはやエチレンがHDPE製造のためのモノマーとして使用されるだけでなく、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンという小さな介在物がポリマー主鎖に組み込まれることが可能であるということも意味する。これらのモノマーを含むことによって、鎖分岐を増加することができる。
【0088】
1つの実施形態では、HDPEは、エチレン及び少なくとも1つの他のアルケン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンを含み、これによってHDPEはHDPEコポリマーになる。
【0089】
HDPEの単峰性ホモポリマーは、高い曲げ剛性(曲げ弾性率)を有するが、低い耐応力亀裂性(ESCR)を有する。メルトインデックスを低下させること(溶融粘度を増加させることは、平均分子量を増加させることを意味する)は、低応力亀裂を軽減するのに役立つことが可能であるが、ポリマーの加工性は、より低い流量により損なわれる。コモノマーとしてのαオレフィン4、6又は8の添加は、得られるポリマーの短鎖分岐を増加させ、これにより、耐応力亀裂性を増加させながら流動特性を改善する。
【0090】
さらに厳しい稼働要件を有する新しい用途の出現は、HDPE樹脂に対する性能要求を新しいレベルに押し上げた。今日の単峰性HDPE樹脂のクラスは、一般に、物理的特性及び耐応力亀裂性(SCR)の点で非常に良好に機能するが、二峰性HDPE樹脂は、これらの特性のすべてにおいてさらに顕著な改善を表す。単峰性HDPE樹脂は、1つのリアクタ内で1つの触媒を用いて製造される。このプロセスの結果は、図24に示すように適度に広い分子量分布を有するポリマーである。この広範囲のポリマー鎖サイズは、加工性(例えば、押出流量)に影響を及ぼすより小さい分子と、機械的特性及び耐応力亀裂性等の物理的特性に影響を及ぼすはるかにより大きい分子の両方を含む。密度はPE樹脂の重要な属性である。所与のポリエチレン材料に関して、密度を低下させることは、SCR及び多くの機械的特性等の延性(又は脆性の欠如)に関連する多くの重要な物理的特性を改善する。
【0091】
密度は、重合中に比較的低いレベルでコモノマーをポリマーに組み込むことによって制御される。これらは、結晶構造を破壊するように作用する短い側鎖分岐、及びより低い密度を生成する。しかしながら、このプロセスは完全に効率的というわけではない。というのも、コモノマーは、物理的特性に影響を及ぼすことにおいて(より長いポリマー鎖よりも)あまり効果的でない、より小さなより低分子量の鎖に優先的に入からである(図23a参照)。より短いポリマー鎖へのコモノマーの組み込みのこの傾向は、所与の密度での単峰性樹脂の耐応力亀裂性及び特定の物理的特性を制限する。
【0092】
二峰性樹脂は、本質的に、高分子量(HMW)ポリマーと低分子量(LMW)ポリマーの2つのポリマーの組み合わせに基づく。
【0093】
通常、これらの樹脂は、それぞれ別々のプロセス条件下で操作される直列の2つの重合リアクタ(LMW及びHMW)を使用して製造される。このプロセスは、コモノマーのすべてが高分子量画分に組み込まれることを可能にし、コモノマーのすべてが高分子量画分に組み込まれることは、特性に影響を及ぼすために最も必要とされる(図25)。この技術の結果は、所与の樹脂密度における物理的特性の実質的な跳躍(劇的な改善)である。最終的に、この範囲の改善された性能は、より長い耐用年数に相当し、より要求の厳しい種類の環境を通して担体がその完全性を維持するであろうという信頼性を増加させることに相当する可能性がある。
【0094】
また、例えば、担体媒体の製造中に溶融状態で、単峰性分子量分布(図29)を図29の二峰性分子量分布の1つと混合することによって、又は図29の2つの二峰性分子量分布を混合することによって、又は図29の分子量分布のすべてを混合することによって、多峰性分子量分布を有するMBBR用の担体媒体を形成することができよう。そのような組成物は、担体がより要求の厳しい種類の環境を通じてその完全性を維持するという信頼性も増加させる可能性がある。それゆえ、多峰性分布を有する担体媒体を利用し、ASTM D6474に従って決定することができよう。
【0095】
それゆえ、本発明に記載されるように、単峰性分子量分布は、図29に1つのピークを有するように記載され、二峰性分子量分布は、図29に2つのピークを有するように記載され、多峰性分子量分布は、その分子量分布全体にわたって2つを超えるピークを有するものとして記載される。
【0096】
1つの実施形態では、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)内でバイオフィルムを担持するための担体であって、この担体は担体材料を含み、この担体材料は、二峰性分子量分布を有する少なくとも1種の高密度ポリエチレンを含み、これによりこの担体材料は二峰性又は多峰性の分子量分布を有することを特徴とする担体が提供される。
【0097】
本発明の担体は、より要求の厳しい種類の環境を通してその完全性を維持し、そのため、1つの実施形態では、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)内でバイオフィルムを担持するための当該担体は、環境応力に対して改善された安定性を有する。
【0098】
1つの実施形態では、環境応力に対して改善された安定性を有する、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)内でバイオフィルムを担持するための担体であって、この担体は担体材料を含み、この担体材料は、二峰性分子量分布を有する少なくとも1種の高密度ポリエチレンを含み、これにより担体材料は二峰性又は多峰性の分子量分布を有することを特徴とする担体が提供される。
【0099】
二峰性又は多峰性の重量分布を有するHDPEを含む担体は、環境応力に対して改善された安定性を有する。これは、この担体が、上記で特徴付けられた長期損傷、すなわち、使用中にMBBR担体が受ける応力亀裂の形成及び伝播に起因する脆性破裂に対する耐性が増大することを意味する。
【0100】
これは、一般的なMBBR用途のための担体寿命を延ばすだけでなく、耐性の増加は、担体上のより高い摩耗を有する、より古い又は摩耗した設備の改修を促進、遅延、又は排除する可能性がある。
【0101】
それは、当該担体が混合エネルギーに対してより抵抗性があり、浸漬可能なミキサのより良好な使用、又は必要であれば一般的な混合エネルギーよりも高いエネルギーの利用を容易にする可能性があることも意味する。
【0102】
改善された担体特性は、より深刻なプラスチック有害物質を含む廃水において、又は飲料水の製造のための処理ラインにおいて利点でもあり、これらの場面において、プラスチック担体媒体に由来するマイクロプラスチックの生成は大幅に低減される可能性がある。
【0103】
4種の二峰性HDPE原材料が、図30に示すMBBR用の第1の担体媒体タイプの製造に利用された。これらは、水及び担体媒体を含有するリアクタ容積における第1のヘビーミキシング試験における寿命に関して、単峰性HDPEホモポリマー及び単峰性HDPEコポリマーの原材料から製造された担体材料(図30)と比較された。試験は、塑性変形を回避するが応力亀裂形成及び脆性破壊を誘発するために、時間制限のため当然に実世界の状況よりも高いが、原材料の降伏応力よりも依然として低い、担体媒体に上昇した剪断応力を誘発するように設定した。
【0104】
例えば、担体媒体の製造中に単峰性分子量分布を有するHDPEを二峰性分子量分布を有するHDPEと混合することによって、又は例えば、二峰性分子量分布を有する2種のHDPEを混合することによって、多峰性分子量分布を有するMBBR用の担体媒体を形成することができよう。本発明によれば、多峰性分布を利用し、ASTM D6474に従って決定することができよう。上記の多峰性分子量分布を有するMBBR用の担体媒体を利用することは、担体媒体の耐応力亀裂性を過度に低下させることなく担体媒体の製造価格を低下させる可能性があるので、それも本発明に従って興味深いものであり得よう。5重量%の二峰性HDPEコポリマー及び95重量%の単峰性HDPEコポリマー、20重量%の二峰性HDPEコポリマー及び80重量%の単峰性HDPEコポリマー、100%の二峰性HDPEコポリマー、並びに100%単峰性HDPEコポリマー(対照)を含む、図32に示すMBBR用の第2の担体媒体タイプの4つのバッチ(3つは本発明に係るものであり、1つの対照である)も、第2のヘビーミキシング試験において寿命に関して試験した。
【0105】
従来技術のMBBR担体に対する改変されたMBBRプラスチック担体の改善された寿命の試験
試験は、直径80cm、長さ150cmの円筒形リアクタ容積内で、35cmの全ブレード長を有する図26によるミキサブレードを使用して実施した。加えて、バッフル板をリアクタ内にしっかりと固定する。
【0106】
このリアクタを340Lの水及び選択した担体タイプの170Lのバルク体積で満たし、水体積に対して担体媒体のバルク体積で50%の充填度を得る。担体を最初に低速で24時間混合して担体を湿らせ、混合時にそれらを水体積中に容易に懸濁するようにする。次いで、周波数を60m/sの先端速度及び1700~2200W/mの電力密度を有するように上昇させる。効率が80%である場合、電力密度は1700W/mとなる。
【0107】
このヘビーミキシングを、目に見える担体の破損(担体の毎日の目視検査)まで行う。異なる種類の二峰性HDPEコポリマー、単峰性HDPEコポリマー又はホモポリマーを含む第1のタイプの担体媒体(図30に描くとおり)の間で破断までの時間を比較する試験の結果は、表3に見ることができる。加えて、ブレンドに組み込まれた異なる量の二峰性HDPEとの二峰性及び単峰性のHDPEコポリマーのブレンド(混合物)を含む第2の種類の担体媒体(図32に示すとおり)について、同じヘビーミキシング試験を行った。これらの試験の結果は、表4に見ることができる。
【0108】
予想外にも、二峰性分子量分布を有する5重量%程度の低い第1の高密度ポリエチレンを有する担体でさえ、100%の単峰性のコポリマー担体と比較した場合、100%超の延長された寿命を示すことが見出された。
【0109】
従って、1つの実施形態では、当該担体材料は、少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%又は45重量%の二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含み、
これにより、この担体材料は、二峰性又は多峰性の分子量分布を有する。
【0110】
1つの実施形態では、当該担体材料は、少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%又は45重量%の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、第2の高密度ポリエチレンとを含み、この第2の高密度ポリエチレンは単峰性、二峰性又は多峰性の分子量分布を有し、好ましくは単峰性分子量分布を有し、これにより当該担体材料は多峰性分子量分布を有する。
【0111】
表4には、20重量%の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンを含む担体に関する結果も示されている。この担体は、100%の単峰性コポリマー担体の7日間と比較して28日間の試験寿命を示した。
【0112】
1つの実施形態では、当該担体材料は、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含み、これにより当該担体材料は二峰性又は多峰性の分子量分布を有する。
【0113】
1つの実施形態では、当該担体材料は、少なくとも50重量%の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、単峰性、二峰性又は多峰性の分子量分布のいずれかを有し、好ましくは単峰性分子量分布を有する第2の高密度ポリエチレンとを含み、これにより当該担体材料は多峰性分子量分布を有する。
【0114】
100%の二峰性コポリマーは、標準的な100%の単峰性コポリマー担体の7日間の寿命と比較して、驚くべき51日間の寿命を示した。粗い条件(異なる廃水処理プラントにおいて一般的に採用されるものを模倣する)に耐えるこのような顕著に増加した抵抗は、これにより担体寿命を顕著に延長する。
【0115】
1つの実施形態では、当該担体材料は、第1の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、第2の二峰性分子量分布を有する第2の高密度ポリエチレンとを含み、これにより当該担体材料は多峰性分子量分布を有する。
【0116】
従って、1つの実施形態では、当該担体材料は、少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、50重量%、95重量%の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、二峰性分子量分布を有する第2の高密度ポリエチレンとを含み、これにより当該担体材料は多峰性分子量分布を有する。
【0117】
1つの実施形態では、当該担体材料は、第1の二峰性分子量分布を有する第1の高密度ポリエチレンと、単峰性又は二峰性又は多峰性の分子量分布を有する少なくとも1種以上の高密度ポリエチレンとを含み、これにより当該担体材料は多峰性分子量分布を有する。
【0118】
1つの実施形態では、当該担体は、複数の、二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含む。
【0119】
1つの実施形態では、当該担体材料は、単一の、二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンからなり、これにより当該担体材料は二峰性分子量分布を有する。
【0120】
1つの実施形態では、当該担体は、100%の二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含む。
【0121】
1つの実施形態では、二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含む当該担体材料は、低分子量画分(LMW)及び高分子量画分(HMW)を含み、LMW画分対HMW画分のピーク比は、10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、より好ましくは2.5:1~1:2.5、より好ましくは2:1~1:2、最も好ましくは1.5:1~1:1.5である。
【0122】
1つの実施形態では、このピーク比は方法ASTM D6474に従って決定される。
【0123】
本発明に係る担体媒体の改善された特性は、従来技術のプラスチック担体媒体と比較して、はるかに長い時間にわたってより粗い条件に対処することができるので、上記のような耐性の大幅な増加は、MBBRプラントのより古い又は摩耗した設備の改修が必要でない場合があることを意味する可能性がある。これは、資源とコストの両方の節約をもたらすことになろう。加えて、改善されたプラスチック担体は、浸漬可能なミキサの利用の延長、HDPE特性に有害である物質を含有する廃水の処理、必要な場合のより高い混合エネルギーの利用、並びに飲料水の製造のための処理ラインにおけるプラスチック担体から生じるマイクロプラスチックの生成の排除及び/又は最小化等の可能なMBBR用途の範囲を増大させるであろう。
【0124】
二峰性-コ-1~4の担体媒体は、二峰性-コ-5~6を含む担体よりも優れており、この二峰性-コ-5~6を含む担体は、単峰性のコポリマー担体媒体よりも優れており、単峰性のホモポリマー担体媒体は、寿命が最も短いものであることが表3から明らかである。
【0125】
単峰性HDPEとのブレンド中の二峰性HDPEの量を増加させると寿命が著しく増加することが表4から明らかである。しかしながら、二峰性HDPEの量がより少ないMBBR担体媒体を有することも依然として興味深い。というのも、二峰性HDPEの量がより少ないMBBR担体媒体は安価に製造され、これは、より低い寿命に価格を支払うことになるがエンドユーザにとってはより低い初期コストを意味するからである。表3(図30)と比較して表4(図32)で使用された担体媒体のはるかに長い寿命は、表4のヘビーミキシング試験で使用された異なるタイプのより軽い担体媒体のためであり、これによりリアクタ内で生成する剪断力が少なくなり、寿命が長くなる。
【0126】
二峰性-1~二峰性-6は、二峰性分子量分布を有する様々な市販のHDPEコポリマーである。単峰性-コ-1~単峰性-コ-4は、単峰性分子量分布を有する様々な市販のHDPEコポリマーである。単峰性-ホモは、単峰性分子量分布を有する市販のHDPEホモポリマーである。
【0127】
100%二峰性コポリマーは、二峰性分子量分布を有する市販のHDPEコポリマーである。100%単峰性のコポリマー(対照)は、単峰性分子量分布を有する市販のHDPEコポリマーである。5%二峰性-コ-95%単峰性-コ、及び20%二峰性-コ-80%単峰性-コは、それぞれ上記の二峰性コポリマー及び単峰性コポリマーの5:95重量%及び20:80重量%の混合物である。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
改良されたMBBRプラスチック担体の特性評価
表3に見られたように、二峰性担体媒体のいくつかは、他のものと比較して、ヘビーミキシング試験においてより長い寿命を有した。また、いくつかの単峰性コポリマー系担体媒体は、他の単峰性コポリマー系担体媒体よりも長い寿命を有した。それゆえ、本発明に係るHDPE担体媒体の好ましい分子構造を理解するために、これらの差異を特徴付けることが重要であった。これは、異なる移動床バイオリアクタ用途における担体媒体としての延長された寿命に必要とされる特定の特徴を測定する以下の方法に従って行った。
【0131】
貯蔵弾性率(G’、Pa単位)は、試料の固体状態挙動を記述する粘弾性挙動の弾性部分を表す。損失弾性率(G”、Pa単位)は、粘弾性挙動の粘性部分を特徴付け、これは、試料の液体状態挙動として見ることができる。
【0132】
貯蔵弾性率G’は貯蔵変形エネルギーを表し、損失弾性率G”は、流動時に内部摩擦によって失われる(散逸される)変形エネルギーを特徴付ける。G’>G”を有する粘弾性固体は、損失弾性率よりも高い貯蔵弾性率を有する。これは、材料内部の連結、例えば化学結合又は物理的-化学的相互作用によるものである。一方、G”>G’を有する粘弾性液体は、貯蔵弾性率よりも高い損失弾性率を有する。この理由は、これらの材料のほとんどにおいて、個々の分子間にそのような強力な結合が存在しないということである。
【0133】
それゆえ、さらなる特性評価のために、図6に記載されるような材料を特徴付けるためのクロスオーバー点を決定することとは別に、tanδ値を、すべての材料について周波数の関数として決定することができよう。次いで、tanδ値は、それら材料を比較して、材料間の内部結合強度の差を調べる。より高い内部結合強度は、MBBR用途に非常に好ましいと考えられる。
【0134】
tanδ値は、以下に従って粘弾性挙動の2つの部分の比を表し、G”/G’によって計算される。次いで、tanδ値から、δ値を計算することができよう。
1. 理想的な弾性挙動については、δ=0°である。粘性部分はない。それゆえ、G”=0であり、tanδ=G”/G’=0である。
2. 理想的には粘性挙動については、δ=90°である。弾性部分はない。それゆえ、G’=0であり、従ってtanδ=G”/G’の値は、ゼロで割る試みのために無限大に近づく。
【0135】
それゆえ、δ値は0~90°の間で変化することになる。δ値が低いほど、材料の挙動はより弾性的であり、それにより、内部化学結合又は物理化学的相互作用がより強くなり、それにより、材料がMBBR用途により適するようになる。
【0136】
それゆえ、ヘビーミキシング試験で試験した担体媒体を、振動レオロジー試験を利用して特徴付けて、以下の方法1に従って表3及び表4のすべての材料についてクロスオーバー点及びδ値を決定した。
【0137】
方法1
プレート-プレート構成を備えたTA instruments(ティーエー・インスツルメンツ) Discovery HR-2ハイブリッドレオメータを利用した。0.4736gの固体プラスチック担体試料を底部(下側)プレート上に置き、レオメータ内でプレート間の隙間が25.0mmになるようにし、その後、オーブンチャンバを閉じ、次いで試料を180℃で完全に溶融させた。次いで、チャンバを開放し、溶融ポリマー試料を塗抹し、底部プレート上に均等に分配した。オーブンを再び閉じ、再び180℃に到達させた。プレート間の隙間を1.0mmに減少させ、下記に従って振動測定を行った。
1. 2.0%歪み及び10Hzの周波数で、180℃で600秒間の振動時間掃引
2. 上記振動時間掃引の直後に、180℃、周波数1.0Hz及び0.01~100%の対数歪み掃引で振動振幅掃引を行い、5点/ディケードを記録した
3. 上記振動振幅掃引の直後に、5.0%の歪みでの180℃での振動周波数掃引及び0.1~64.0Hzの対数周波数掃引が続き、10点/ディケードを記録した
【0138】
クロスオーバー点は、(方法1の工程3からの)角周波数の関数としてプロットした損失弾性率と貯蔵弾性率との交点として決定した。
【0139】
方法1の工程3の後に生成された振動溶融周波数掃引曲線データは、貯蔵弾性率及び損失弾性率を角周波数の関数としてプロットした図27に見ることができる。次いで、試験した材料を特徴付けるためにクロスオーバー点データを図27から決定して、これは表5に見ることができる。
【0140】
加えて、δ値をすべての材料について周波数の関数として計算した。そのデータを図28に示す。各材料について試験した周波数のδ値の範囲も表6に見ることができる。
【0141】
改変されたHDPE特性が、依然としてMBBR用途で利用可能であるために従来技術の担体と同様の範囲内にある必要がある担体の密度を劇的には変化させないことを確認するために、密度値をASTM 1505法に従って測定した。これらの結果は表7で見られる。
【0142】
ポリエチレンの分子量分布(単峰性又は二峰性)のモーダル性(様相)は、ASTM D6474に従って決定し、単峰性及び二峰性の分子量分布は、図29による例として定義することができた。
【0143】
MBBR用途における利用のために充分に高い密度(>0.94g/cm)を依然として維持しながら、α-オレフィンを利用する少量のコモノマー分岐を含めることは、本発明においてHDPEコポリマーを定義するが、HDPEホモポリマーは、そのようなコモノマー分岐を含有しないと定義された。
【0144】
1つの実施形態では、当該担体材料は、0.9~1.1g/cmの密度、より好ましくは0.92~0.98g/cmの密度、さらにより好ましくは0.94~0.96g/cmの密度を有する。
【0145】
密度は、ASTM D1505の方法に従って決定される。
【0146】
【表5】
【0147】
二峰性担体媒体を含むMBBR担体(表4の二峰性-コ-1~4)は、単峰性HDPEを含むMBBR担体(約6~40)よりも有意に低い(約1~1.5)クロスオーバー点での角周波数を有することは図27から明らかである。加えて、2つの追加の二峰性担体媒体(二峰性-コ-5及び6)は、クロスオーバー点でより高い角周波数(約5~13)を有することができるということが表5で分かるが、それには、表3に見られるように、ヘビーミキシング試験における破損までの時間が短くなるという結果が伴う。
【0148】
従って、1つの実施形態では、当該担体材料は、<15rad/s、好ましくは6rad/s未満、さらにより好ましくは<3rad/sの角周波数にクロスオーバー点を有する。クロスオーバー点での角周波数及び/又は弾性率は、方法1に従って決定されてもよい。
【0149】
1つの実施形態では、当該担体材料は、25000~45000Paの弾性率でクロスオーバー点を有する。クロスオーバー点の角周波数及び/又は弾性率は、方法1に従って決定されてもよい。
【0150】
1つの実施形態では、方法1は、プレート-プレート構成を備えたTA instruments Discovery HR-2ハイブリッドレオメータを使用してクロスオーバー点角周波数、弾性率及び/又はδ終了値(end value)を決定する工程を含み、この方法では、0.4736gの固体プラスチック担体試料を底部プレート上に置き、レオメータ内でプレート間の隙間が25.0mmになるようにし、その後、オーブンチャンバを閉じ、次いで試料を180℃で完全に溶融させた。次いで、チャンバを開放し、溶融ポリマー試料を塗抹し、底部プレート上に均等に分配した。オーブンを再び閉じ、再び180℃に到達させた。プレート間の隙間を1.0mmに減少させ、以下の工程に従って振動測定を行った:2.0%歪み及び10Hzの周波数で、180℃で600秒間の振動時間掃引を行う工程、その直後に、180℃、周波数1.0Hzでの振動振幅掃引及び0.01~100%の対数歪み掃引を行い、5点/ディケードを記録する工程、その直後に、5.0%の歪みでの180℃の振動周波数掃引及び0.1~64.0Hzの対数周波数掃引を行い、10点/ディケードを記録する工程。
【0151】
同時に、担体媒体二峰性コ-5と比較してクロスオーバー点でより低い角周波数を有していた担体媒体単峰性-コ3及び4は、ヘビーミキシング試験において依然としてより低い寿命を有していた。これは、コモノマーがより高分子量の部分に組み込まれた二峰性の重要な利点を示す。表5において、担体媒体単峰性-コ-1及び2は、担体媒体単峰性-コ-3及び4と比較して、クロスオーバー点で有意に高い角周波数(より低い平均分子量)を有することも見られ、それゆえ、表3に見られるように、ヘビーミキシング試験においてより短い寿命(より低い分子量)を有する。最後に、クロスオーバー点ではるかに高い角周波数を示し、コモノマーが含まれていない単峰性のホモポリマーは、ヘビーミキシング試験において最も短い寿命を有した(表3)。
【0152】
これは、単峰性に対する二峰性の重要性を明確に実証し、異なる二峰性担体媒体だけでなく単峰性担体媒体に対しても、より高い分子量の重要な利点も実証した。高分子量部分にのみコポリマーを含む二峰性は、より高い耐応力亀裂性に最も高い効果を有し、クロスオーバー点でのより高い角周波数(より高い平均分子量)が続く。より高い耐応力亀裂性は、担体媒体に、より長いプロセス寿命、又はMBBR用途におけるより過酷な条件に有意により長い時間耐える能力を与える。
【0153】
1つの実施形態では、当該担体材料は、低分子量画分(LMW)及び高分子量画分(HMW)を含む二峰性分子量分布を有する高密度ポリエチレンを含み、このLMWはホモポリマー又はコポリマーであり、HMWはホモポリマー又はコポリマーであり、好ましくはLMWはホモポリマーであり、HMWはコポリマーである。
【0154】
さらには、単峰性HDPE及び異なる量の二峰性HDPEのブレンドを含む表4のヘビーミキシング試験で試験した担体媒体(図32に描かれる)のクロスオーバー点を決定した。これらのブレンドのクロスオーバー点の値を表6に示す。
【0155】
【表6】
【0156】
担体媒体が含む二峰性HDPEが多いほど、クロスオーバー点での角周波数は低くなり、これは、担体媒体中の二峰性の量を増加させたときのブレンドの平均分子量が高くなることを示すことが表6から明らかである。これは、表4に示されるような、これらの担体媒体の破損までの時間の増加によく適合する。これにより、100%純粋な二峰性担体媒体を利用することが性能の点で好ましいが、しかしながら、担体媒体は、二峰性HDPEのより小さい介在物でも改善することができる。二峰性HDPEは一般に単峰性HDPEよりも製造するのに費用がかかるので、二峰性HDPEと単峰性HDPEとのブレンドを利用することによって、又は異なる二峰性HDPE材料をブレンドすることによってさえも、100%よりも少ない量の純粋な二峰性HDPEを利用することは、特定の用途にとって興味深い可能性がある。
【0157】
1つの実施形態では、当該担体材料は、δ終了値<35度、より好ましくは<25度、より好ましくは<20度、さらにより好ましくは<15度を有する。δ終了値は、方法1に従って決定されてもよい。
【0158】
図28及び表7のデータから、二峰性-コ-1~4の担体媒体を含むMBBR担体が、単峰性-コ-3及び4の担体媒体と同様のδ値を有する二峰性-コ-5及び6の担体媒体を含む担体と比較して、上記周波数範囲全体にわたって有意に低いδ値を有し、とりわけ、より高い剪断が試料上に誘発される場合にはより高い周波数範囲において有意に低いδ値を有することが明らかである。単峰性-コ-1及び2の担体媒体は、上述のものと比較して、周波数範囲全体にわたってより高いδ値を有し、単峰性-ホモ担体媒体は、最も低いδ値を有した。これは、クロスオーバー点で最も低い角周波数を有する二峰性-コ-1~4の担体媒体を含む担体が、二峰性-コ-5及び6並びに単峰性の試料と比較して、より高い周波数で溶融物中でより弾性的であることを示した。二峰性-コ-5担体媒体は、単峰性-コ-3及び4の試料と比較してクロスオーバー点でより高い角周波数(より低い平均分子量)を有するが、高周波数範囲において同様のδ値を有し、ここでも、コモノマーが高分子量部分に組み込まれた二峰性が、単峰性コポリマーと比較してより低い平均分子量を相殺することができるということを示す。より高い周波数におけるより低いδ値は、材料内部の内部連結、例えば化学結合又は物理的-化学的相互作用がより強いことを意味した。これも、単峰性担体媒体と比較して二峰性担体媒体の特性の有意な改善、及び二峰性担体媒体の分子量を増加させ、これによりMBBRプロセスにおけるその寿命を有意に改善するというさらなる改善を強調した。
【0159】
【表7】
【0160】
表8に見られるように、δ終了値は、二峰性-単峰性のブレンドにおいて二峰性含有量の増加に伴って低下し、これは、純粋な単峰性担体媒体と比較して上記ブレンドにおいてより強い内部連結を示す。
【0161】
【表8】
【0162】
表9によると、二峰性HDPEを含む担体のほとんどは、単峰性HDPEを含む担体よりもわずかに低い密度を有するが、しかしながら、依然として充分にMBBR用途に適した範囲内にある。
【0163】
【表9】
【0164】
図29によると、異なるHDPEの分子量分布は、単峰性又は二峰性のいずれかであることができ、単峰性分子量分布は、分布全体にわたって1つのピークを示し、二峰性分布は、分子量分布全体にわたって2つのピークを示す。本発明によれば、二峰性分布が一般に利用され、ASTM D6474に従って決定される。
【0165】
異なるMBBR用途における機械的応力に対する安定性が改善されたプラスチック担体媒体の使用
本発明において特許請求される環境応力に対して改善された安定性を有するMBBR用の担体媒体は、一般的なMBBR用途におけるプラスチック担体媒体の寿命を著しく延ばし、コスト効率及び処理性能に関してエンドユーザの価値を改善するだけでなく、加えて、経時的な摩耗した担体媒体からのマイクロプラスチック汚染の排除、及びより長い寿命のおかげで担体媒体の製造のためのCOフットプリントの減少等の他の環境上の利益もたらすためにも重要である。
【0166】
1つの実施形態は、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)プロセスにおける担体の使用である。
【0167】
MBBRプロセスは、当該技術分野において周知であり、いくつかの刊行物、例えば、H.Odegaardら(1994)に記載されている。要するに、MBBRは、所望の不純物変換を促進するバイオフィルムを有する担体を含有するリアクタに廃水を供給する水浄化方法である。担体は、伝統的に押出成形又は射出成形されたプラスチックから作製され、通常、同じ寸法の滑らかな要素よりも大きい表面を有する(多くの場合、対応する滑らかな物体よりも最大100倍大きい成長表面を有する)、0.90~1.20、通常は0.92~0.98、特に0.94~0.96kg/dmの範囲の密度を有する等の特性を共有する。最近では、MBBR担体は、その比保護表面積を増加させ、しばしば500m/m以上の保護された表面積を有し、プロセス性能を改善し、必要とされるリアクタタンク容積を低下させることができるように、サイズがより大きく、より複雑な部分構造を有するようになってきている。
【0168】
バイオフィルムを有するMBBR担体は、好気性、無酸素性又は嫌気性の水浄化のためにリアクタ中の水中に懸濁されたままにされる。そのようなリアクタは、典型的には、入口管及び出口管と、リアクタ内の担体及び任意選択で混合手段を保持し、担体の保護表面上にバイオフィルム形成を有する多数の担体を含有する篩ストレーナとを含む。従って、担体は、繰り返し互いに衝突し、空気及び/又は機械的ミキサの利用によってリアクタ容積内に懸濁されると、リアクタ壁及びリアクタ内部の他の設備と繰り返し衝突し、かなりの剪断応力を担体に連続的に作用させる。
【0169】
本発明において、MBBR担体は、(図8図22に示すように)応力損傷に特に敏感であることが見出され、二峰性又は多峰性の分子量分布を有する担体材料を有するMBBR担体は、特定のMBBR用途において環境応力に対して改善された安定性を獲得するということが見出された。これは、より大きい担体及びより小さいリアクタタンク容積を有するプロセスを使用する場合にとりわけ明らかになる。というのも、より大きいサイズの担体及びより小さいタンク容積は各特定の担体に作用する剪断力を増加させることになるからである。同様に、複雑な部分構造を有する担体は、破損することなくこれらのより高い剪断力に対処するという観点からは担体をより弱くする可能性が高い。
【0170】
1つの実施形態では、当該担体は、少なくとも200m/m、好ましくは少なくとも300m/m、より好ましくは少なくとも400m/m、例えば少なくとも500m/m、例えば少なくとも600m/m、例えば少なくとも800m/mの保護された表面積、又は200~1200m/m、例えば300~1100m/m、例えば300~1000m/mの保護された表面積を有する。
【0171】
1つの実施形態では、担体の使用は、混入物質から液体を精製するためのMBBRプロセスにおいてであり、そのMBBRプロセスは、少なくとも1つのバイオリアクタを含むMBBRシステムを利用し、このバイオリアクタは、連続的又は断続的に曝気及び/又は混合され、この担体は、少なくとも1つのバイオリアクタ内に保持され、この担体は、精製される液体の中で、曝気により及び/又は精製される液体の混合により、連続的又は断続的のいずれかで懸濁及び移動状態に保たれ、この担体は、バイオフィルム成長のための保護された表面を提供する。
【0172】
1つの実施形態では、MBBRシステムを利用して混入物質から液体を精製する方法であって、
改善された耐性を有するMBBR担体を含み保持しているバイオリアクタに、精製されるべき液体を連続的又は断続的に添加する工程と、
その液体を連続的又は断続的に曝気及び/又は混合し、これにより担体を懸濁及び移動状態に保つ工程と、
上記少なくとも1つのバイオリアクタから精製された液体を連続的又は断続的に取り出す工程と
を含み、上記担体は、精製される液体中の混入物質を餌にする微生物のバイオフィルム成長のための保護された表面を提供する方法が提供される。
【0173】
1つの実施形態では、当該担体は、バイオフィルム成長のための保護された表面を可能にする構造を有し、この保護された表面は、穴、ウェル、突起、ハニカム構造又はラスタ構造(薄い材料から作製される)の存在によって促進され、担体が応力損傷を受けやすくなる。
【0174】
しかしながら、いくつかの特定のMBBR用途は、本発明に係る担体媒体を利用することから、一般的なMBBR用途よりもさらに多くの利益を得るであろう。これらの具体的な用途を以下に列挙する。
【0175】
高エネルギーMBBR用途
高い混合エネルギー又は曝気エネルギーが必要とされるMBBR用途では、バイオリアクタ内の剪断力、それゆえ担体媒体に加えられる剪断力は、より低い混合エネルギー又は曝気エネルギーが利用されるMBBR用途よりも著しく高い。媒体に作用するこれらのより高い剪断力は、破損までのその寿命を短縮し、プラントのオペレータに、かなりのコストで通常よりもかなり短い時間で担体媒体を交換することを強いる。加えて、担体媒体を適時的に交換しないと、壊れたプラスチック片が篩を通過し、生物学的処理性能を劣化させ、マイクロプラスチック及びマクロプラスチックの汚染の観点でプラスチックを自然界に放出する可能性がある。本発明に係る担体媒体を利用することによって、高い混合エネルギー及び/又は曝気エネルギーを用いるMBBR用途を利用する廃水処理プラントのオペレータは、不必要なコストを回避し、マイクロプラスチック及びマクロプラスチックの潜在的な放出を回避し、担体媒体の大幅に改善された特性及び寿命に起因してCOフットプリントを減少させることができる。
【0176】
剪断力は、リアクタの配置(レイアウト)等のいくつかの要因に依存するが、本質的には、リアクタのサイズ及び担体の運動エネルギーに関連付けられる。機械的に混合されたリアクタの場合、少なくとも15W/mリアクタ容積の供給撹拌エネルギーは、概して、高エネルギーMBBR用途と見なされる。同様に、少なくとも40W/mリアクタ容積の曝気エネルギーの供給効果を有する曝気リアクタは、概して、高エネルギー用途と見なされる。
【0177】
1つの実施形態では、移動床バイオフィルムリアクタ(MBBR)プロセスは、高エネルギーMBBRプロセスである。1つのさらなる実施形態では、この高エネルギープロセスは、少なくとも15W/mリアクタ容積の撹拌エネルギー又は少なくとも40W/mリアクタ容積の曝気エネルギーを有する。
【0178】
浸漬可能ミキサ用途
浸漬(水中)ミキサを利用するMBBRプラントは、概して、上部に取り付けられたミキサと比較して、動いているとき、より高い剪断応力をMBBR担体に呈する。それゆえ、いくつかの廃水処理プラントにおいて設計及び現場制限のために必要であるそのようなミキサの利用は、担体媒体寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。それゆえ、そのようなプラントにおいて本発明に係る担体媒体を利用することは、浸漬可能ミキサの使用にもかかわらず、担体媒体の寿命を大幅に向上させるであろう。
【0179】
1つの実施形態では、MBBRプロセスは、浸漬した機械的ミキサを利用するバイオリアクタ中で担体を混合することを含む。
【0180】
MBBRの改造物、又はリアクタ壁の状態が悪い既存のMBBRプラント
既存の廃水処理プラント及びそのインフラストラクチャを都市下水の平均濃度に合わせて改造することは、プラントへの有機物負荷率が増加する場合に一般に必要である。流出物限界を依然として満たすことができるようにするために、プラントはアップグレード又は改造される必要がある。改造は、処理能力を増加させるために既存のリアクタ容積にMBBR担体媒体を追加することを含んでもよい。概して、新しく建設され、利用されていないMBBRバイオリアクタは、図38に描かれるように滑らかな内壁を有するであろう。既存のすでに利用されている容積は、摩耗により経時的に劣化した不良な内部リアクタ壁を有する可能性があり、これは、例えば、限定されないが、壁空洞(図39)、突き出ている鋭利な物体(図40)、粗い接合部(図41及び図42)、不完全な勾配(グレード)(図43)、又はより深刻な壁劣化(図44)を引き起こす可能性がある。これらのタイプの欠陥又は劣化はすべて、担体媒体がリアクタ壁に当たるときに、曝気中に保たれる担体媒体に対する剪断応力の増加を引き起こし、これによりそれらの寿命を短くする。
【0181】
概して、リアクタ壁は、担体媒体の摩耗の増強を引き起こさないように平滑でなければならない。コンクリートタンクの内壁は、鋼製型枠を使用して通常達成される滑らかさを有するべきであり、接合隆起部は、滑らかに研削されるべきである。摩耗した粗い壁を滑らかな内壁構造に修復することは高価であり、また、リアクタが修復中に使用停止されなければならないことも意味する。代わりに、環境応力に対して著しく改善された安定性を有する本発明の担体媒体を利用することにより、動作中に粗い壁構造に依然として耐えることができる担体媒体を用いて、壁の修復が回避される可能性がある。
【0182】
1つの実施形態では、MBBRプロセスは、例えばMBBR改造物又はリアクタ壁の状態が悪い既存のMBBRプラントにおいて、欠陥又は高粗度を有する平滑でない内壁を有するバイオリアクタを利用する。
【0183】
廃水が担体媒体に有害な有害物質を含有するMBBR用途
応力下での担体媒体の応力亀裂挙動及び脆性破壊までの時間は、応力亀裂剤に曝露されるとさらに短縮されることが可能である。例えば溶媒又は洗浄剤等の応力亀裂剤は、タイ分子を微結晶内に維持する凝集力を低下させるように作用し、従って、結晶ラメラ領域からのより速い(絡み合いの)解きほぐしを促進する。その結果、応力亀裂は、さらに低い応力値でさえも開始される。廃水及びとりわけより濃縮された工業廃水流は、より低い濃度又はより高い濃度のいずれかで、いくつかのそのような応力亀裂剤を含有する可能性があるため、本発明に係る担体媒体を利用することは、そのような応力亀裂剤に対する抵抗性を著しく増加させ、これにより、担体媒体の寿命を有意に延長するであろう。廃水が従来技術のプラスチックMBBR担体媒体の分子的安定性及び/又は物理的安定性に有害な影響を及ぼす物質で高度に汚染されているいくつかの工業用途では、本発明に係るプラスチックMBBR担体媒体の改善された安定性は、その有害な影響を軽減するであろう。
【0184】
1つの実施形態では、MBBRプロセスで精製される廃水は、担体に有害な有害物質を含有する。
【0185】
外部化学物質添加が行われるMBBR用途
多くの生物学的廃水処理プラントでは、廃水中の脱窒を促進するために、メタノール又はエタノール等の外部炭素源が特定の生物学的リアクタに添加される。このような炭素源は、上述のように応力亀裂剤として作用し、担体媒体における応力亀裂形成までの時間を短縮し、これによりその寿命を短縮する可能性がある。そのような用途では、本発明に係る担体媒体を利用することで、そのような有害な影響を軽減し、そのような外部炭素源添加が行われる環境及び用途における担体媒体寿命を著しく増加させることができよう。
【0186】
1つの実施形態では、MBBRプロセス機能は、例えば、限定されないが、外部炭素源等の外部化学物質の添加に依存する。
【0187】
飲料水の製造用途のための処理ラインの一部としてのMBBR
飲料水の製造のための処理ラインの一部としてMBBRを利用することは、新興技術である。飲料水を生成するためにMBBR処理を利用すると、リアクタ内に顕著な量の余剰懸濁汚泥が生成されない。というのも、飲料水を製造するために処理される水が非常に希薄であり、廃水ほど多くの汚染物質を含有しないため、バイオマスのほとんどすべてが担体媒体上にバイオフィルムとして形成されるからである。それゆえ、マイクロプラスチックを生成するMBBRリアクタにおける剪断応力に起因する担体媒体のあらゆる可能性のある劣化は、処理プロセスからの流出物に移され、さらに処理ライン及び製造された飲料水に入る可能性がある。廃水処理のための一般的なMBBR用途では、この起こり得るマイクロプラスチック混入物は、懸濁汚泥中に詰まり、次いでこの懸濁汚泥は、処理された流出物から分離され、これにより、流出物中の起こり得るマイクロプラスチック混入を可能にしない。しかしながら、マイクロプラスチックの生成のための処理ラインでは、これは必ずしも当てはまらない。というのは、希釈された水に起因して非常にわずかな懸濁固体しか生成されず、担体媒体から生じるあらゆる可能性のあるマイクロプラスチック汚染が処理ラインにおいてさらに下流に進む可能性があるからである。本発明の担体媒体を利用すると、担体媒体の特性が著しく向上することに起因してマイクロプラスチックの形成は起こらず、これにより本発明の担体媒体は飲料水の製造における処理ラインの一部としてのMBBR用途での使用に良好に適合する。
【0188】
1つの実施形態では、MBBRプロセスは、飲料水の製造のための処理として利用される。
【0189】
本発明は、特定の(場合によっては複数の)実施形態を参照して上述されたが、本発明は、本明細書に記載される特定の形態に限定されることは意図されない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、特定の上記の実施形態以外の実施形態も、例えば、上記で説明されたものとは異なる、これらの添付の特許請求の範囲の射程内で等しく可能である。
【0190】
請求項において、用語「含む(comprises/comprising)」は、他の要素又は工程の存在を除外しない。さらには、個々に列挙されていても、複数の手段、要素又は方法工程は、たとえば単一のユニット又はプロセッサによって実装されてもよい。加えて、個々の特徴が異なる請求項に含まれていることがあるが、これらは可能であれば有利に組み合わされてもよく、異なる請求項に含まれることは、特徴の組み合わせが実現可能ではなくかつ/又は有利ではないことを含意するものではない。加えて、単数形での言及は複数形を除外しない。用語「a」、「an」、「第1」、「第2」等は、複数を排除しない。請求項における参照符号は、単に明確な例として提供され、請求項の範囲を限定するとは決して解釈されないものとする。
【0191】
参考文献
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Yeh,J.T.及びRunt,J.(1991)、「Fatigue crack propagation in high-density polyethylene」、Journal of Polymer Science,Part B:Polymer Physics、第29巻、371-388頁.
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図13
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図37
図38
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図40
図41
図42
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【国際調査報告】